1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○復興金融金庫法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=0
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001・会議録情報2
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委員氏名
委員長 子爵 高橋是賢君
副委員長 男爵 杉溪由言君
公爵 徳川慶光君
侯爵 嵯峨實勝君
侯爵 西郷吉之助君
伯爵 金子武麿君
子爵 瀧脇宏光君
子爵 水野勝邦君
子爵 稻葉正凱君
男爵 伊藤文吉君
長谷川赳夫君
男爵 長基連君
男爵 中村貫之君
男爵 村田保定君
黒田英雄君
板谷順助君
石川一郎君
橋本辰二郎君
野村茂久馬君
名取和作君
河西豊太郎君
山地土佐太郎君
片倉兼太郎君
栗栖赳夫君
大野木秀次郎君
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昭和二十一年九月二十五日(水曜日)午前十時二十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=1
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002・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 是より委員會を開會致します、先づ大藏大臣より本案に付ての説明を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=2
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003・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 復興金融金庫法案に付きましては、本會議で大體のことを申上げて置きましたが、尚附加へて若干の御説明を申上げます、御承知のやうに政府は今囘戰時補償の徹底的解決を致すことに致しまして、從つて今後は企業及び金融機關共に過去の厖大な負債の過重から解放され、新たな活動の基盤を確立致すことが出來る譯でありまして、即ち企業は健全な資産のみを以て經營致すことになりますので、從つて資金の借入れが容易となり、金融機關は又軍需融資の囘收を顧慮することなく新たな融資に專念致し得ることになりました結果、理論的には金融梗塞の根本的な原因が除去せられたものと信ずるのであります、併し此の經濟整理の過程に於きまして、一時的にも金融機關の機能が低下し、爲に整理の不圓滑を來すが如きことがあつてはなりませぬのみならず、今後日本經濟が一應の安定を見るに至る迄の間に於きましては、事業の先行に不安がある企業や、茲當分採算の立たない企業、或は從來とも物的な信用の薄弱であつた中小企業等に對しまして、假令其の必要とする資金は、我が國經濟の復興に不可缺なものでありましても、其の總てを從來の一般の金融機關から通常の方法に依つて併給を確保することは困難な場合が少くないものと想像されるのであります、斯樣な見地から何時如何なる場合に於きましても、苟くも我が國經濟の復興に寄與する、企業の必要とする資金は之を圓滑迅速に供給し、以て民需生産の再興を促進する爲には、何等か特別の金融機關を設立し、一般金融の爲し得ない金融を國家の爲に分擔せしむることが絶對に必要であると豫て考へまして、其の結果本法案を提出することと致した次第でございます、本法案の主なる點に付て申上げますと、先づ第一に本金庫の組織でありますが、資本金は百億圓と致し、其の全額を政府が出資致します、さうして其の百億圓の中、四十億圓を設立と同時に拂込む次第であります、是は其の中二億圓は既に改定豫算に依つて御協贊を得て居る譯でありますが、殘り三十八億圓は近く御審議を願ふ追加豫算中に計上致すことになつて居ります、又本金庫の役員と致しましては、理事長、副理事長各一人、理事二人以上、監事一人以上を置きまして、復興金融委員會の推薦に基いて政府が之を任命致すことに致します、次に本金庫の業務に付御説明申上げますが、本金庫は我が國經濟の復興を促進する爲必要な資金で、他の金融機關等から供給を受けることが困難なものを供給することでありまして、其の爲には必要な資金の融通、債務の引受又は保證及び社債の應募又は引受を行ふものでありますが、別に復興金融委員會の承認を受けまして、色々の金庫の目的達成上必要な業務を行ふことが出來ることになつて居ります、本金庫の業務と一般金融機關業務との關係に付きましては、從來の一般金融機關は今後共我が國經濟の復興に必要なる資金は進んで之を供給し、生産の促進を圖るべきことは言ふ迄もございませぬが、之が爲に資金の不足を生じました場合には、日本銀行から積極的に援助をすることになつて居ります、併し前にも述べました通り企業の内容に依りましては、一般の金融機關が自己の危險負擔に於て之に融資することの出來ないものが起ることが相像されますので、此のやうな場合の融資を擔當させるのが即ち本金庫でございます、從ひまして本金庫と一般金融機關との競合と云ふことはあり得ない建前になつて居るのでありますが、尚其の運營に於きまして、他種金融機關との競合を避ける爲には、復興金融委員會の活用、融資の申込手續の工夫等に適切な手段を講ずる所存でございます、それから本金庫の業務を遂行致しまする爲には、相當多額の資金を必要と致します見込でありますが、此の資金は曩に申上げました拂込資本金四十億圓の外に、未拂込資本金額六十億圓がございます、其の六十億圓の範圍に於きまして本金庫は債務の引受、又は保證等を致しまして、尚それ等の債務引受又は保證等の金額を控除した額を限度と致しまして、復興金融債券を發行して之を賄ふことに相成つて居ります、次に本金庫に對する監督でありますが、本金庫の國家的使命に鑑みまして、之を主務大臣の監督の下に置き、主務大臣に於て必要があると認めました時には、金庫の業務及び財産の状況を檢査し、又は役員を解任することが出來ることに相成つて居ります、又本金庫の業務の運營に付きましては、別に復興金融委員會を設けまして、其の基本方針を定めます外、日常の業務に付ても總て同委員會に於て之を監督することと致しまして、其の萬全を期すると共に、所謂民主的經營を確保したいと思ふのであります、それから本金庫から融通をした資金が果して所期の目的に使用されて居るかどうかと云ふ點に付きましても、主務大臣は本金庫から資金の供給を受けた者から報告を徴し、或は當該官吏をして檢査を行はせることが出來ると云ふことに致して十分其の監督の實を擧げたいと考へて居ります、次に本金庫の存續期間でございますが、前に述べましたやうに、本金庫は補償打切等に伴ふ非常措置に對處して事業界に與へる混亂を防止することに努むると共に、我が國經濟の安定を見る迄の間に於て事業の育成に當る爲に設立せられるものでありますから、其の觀點から致しまして、本金庫の新たな業務を行ふ期間を一應設立の時から三箇年と云ふことに限りまして、其の後は新たな業務を行ふことが出來ないと云ふことに致した譯であります、最後に是は本會議で申上げました所でありますが、本案の成立に先立ちまして既に日本興業銀行をして本金庫の行ふのと同趣旨の特別融資を現に實施せしめて居るのでありますが、是は本金庫が設立せられました曉に於きましては、本金庫は其の業務を引繼ぐことに致します、さうして既に行はれて居る特別融資に對しましては債務者にそれと同額の貸付を致しまして、さうしてそれを日本興業銀行に返濟せしめることに致す次第であります、以上は復興金融金庫法案に付ての極く概略の御説明でございますが、何卒御審議の上速かに御協贊下されむことを御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=3
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004・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 大藏大臣はまだ一時間程御暇ださうですから、此の間に大藏大臣に對する御質問の方は御願を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=4
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005・板谷順助
○板谷順助君 只今大藏大臣の御説明になつたる通り、此の法案の目的は經濟復興の爲に一般の金融業者から融通の出來ない困難なるものに供給するのが目的である、斯う云ふ御話でありまするが、御承知の通り現在我が國の事業界は殆ど全滅に近い状態になつて居りまして、所謂壞れたものを建直さねばならぬと云ふ重大な時期に直面をして居るのであります、又今御話の通り採算の取れぬものに對しても之を育て上げると云ふことは當然のことでありまするが、昨日本會議に於て大藏大臣は、此の法案は整理機關ではない、救濟機關ではないと云ふ御話があつたのであります、勿論整理機關ではありますまい、併しながら今御話したる通り何と言っても破壞されたるものを建直さねばならぬと云ふ此の方面に對する所謂復興に對する金融でありますから、勿論救濟と云ふことになると或は消極的になりませう、併しながら積極的に今金庫を活かすと云ふことになれば新たに仕事を始めて、之に對する準備をしなければならぬ、先づ第一に現在破壞されたるものを復興すると云ふ意味であるから、結局救濟してそれを復興させると云ふことに陷るのぢやないかと思ふ、是が差當つての此の金庫の使命ではないかと思ふのであります、今御承知の通り例へば失業救濟の爲に六十億の金を使ふ、或は生活保護の爲に三十億の金を使ふ、勿論現在の社會情勢に於ては已むを得ぬことでありますけれども、それと同時に今申上げました通り何としてもあなたの御言葉の救濟と云ふ意味ぢやないと云ふことは此の法案を運用する上に於て其の趣意で、其の覺悟で以て或場合に於ては此の仕事は實際見込があると云ふ見當が付きましたならば、例へばそれは將來に於て囘收困難であると云ふ場合が起つても、其の覺悟を以て此の本法を運用せねばならぬと斯う考へるのでありますが、如何でございますか、大臣の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=5
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006・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 救濟機關ではないと申しました意味は、唯困つて居るから救つてやると云ふやうな機關ではないと云ふ意味でありまして、御話のやうに將來それは有望の事業である、或はどうしても民生安定の爲に必要な事業である、併しながら現在經營が困難であるから、詰り差當つて之を救つて、さうして將來の育成を圖る、斯う云ふ意味に於ては、無論救濟と云ふ言葉を使へば使つても差支ないと思ひます、唯何と申しまするか、何も構はず、國家に必要あるなしに拘らず、或は前途有望であるかないかに拘らず、現在困つて居るから、それを救つてやる、斯う云ふ一律一體の意味でない、さう云ふ救濟機關ではない、斯う云ふことであります、ですから御質問の趣意に於ては、それに救濟と云ふ言葉を使ふなら使つても差支ない、斯う考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=6
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007・板谷順助
○板谷順助君 大體現在有らゆる産業、所謂重要産業と申しましても、困つて居ないものは一つもないのであります、見樣に依つては所謂重要な産業であると云ふ所から、私が今申上げるのは非常に何と言ひますか、從來の戰時金融金庫の如きものが、税が増して其の貸付をしても、金は出し放しで後の始末が付かない、或は又戰時の際に事業家が出鱈目な豫算を出して、さうして金を引張り出す、斯う云ふやうな弊害は勿論除却せねばならぬことは當然であります、當然でありますけれども御承知の通り一般金融業者から金融を受けて困るものにのみ之を出すと云ふやうな御説明でありますけれども、御承知の通り現在の一般の金融機關が一體どう云ふ状態でありますか、是は私が申上げませぬでも大臣能く御分りでありませう、現在の新圓が退藏され、殆ど金融機關に對して集つて居らぬ此の状態に於きまして、金融業者が果して融通が思ふやうに出來るかどうか、又一般の機關に於きましては、御承知の通り第一、第二の封鎖に依つて殆ど資金と云ふものが枯渇をして居ると云ふ状態でありますから、此の金融金庫を利用して、將來に於ける事業の發展を圖る、是以外に途はないと私は考へる、恐らくは一般の金融業者に持つて行きましても、必ず最近に於ける所の例が、殆ど現在取扱つて居る所の興業銀行に持込んで居るやうな情勢であります、でありますから、此の法案の運用と云ふことに付ては、私が申上げますやうに、餘程廣く御考になつて、所謂日本再建の爲の事業家を今日復興させると云ふことに付ては非常な覺悟を或程度迄以て、若し正當に出資して萬一是が失敗に終るとしても、所謂國家の義務として之を救ふと云ふだけの決心を以て之を運用せねばならぬと斯う考へるのでありますが、其の御覺悟が付いて此の金庫を運用なさる御考でありますか、又今日迄興業銀行が代理として相當金が恐らくは出て居るものと私は想像するのでありますが、現在幾ら出て居るか分らぬが、勿論之に對しては所謂政府の命令に依つて銀行が出したものと思ふのでありますが、其の金の中に政府の政策が變り、或は又或程度迄時代の變化に依つて損失をした場合に於て、勿論正當の出資でありませうけれども、損した場合に於ては、國家が之を負擔せねばならぬと云ふ必ずしも運命にならぬとも限らぬのでありますが、私は此の金庫と云ふものは、所謂今日の破壞されたる所の事業家を或程度迄救ふ、之を救はなければ、從つて仕事は起きない、起きなければ從つて失業者が簇出する、其の時は失業對策にも利用されることになるのでありまするが、其の考で此の本法を運用なさるのが當然ぢやないかと、斯う私は考へて居りますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 無論政府が國家の資金で救つて、資本金は全部是は國家が出すと云ふことは、まかり間違へばそこに損失を生ずることがある危險がありますから、國家が之だけの負擔を致す譯であります、從つて危險があり、損失をすると云ふことを無論覺悟しての話であります、併しながら其の貸付はそれ故に國家が之を負擔するんだから、困つて居る事業には、どんな事業にでも融通をして宜いと、斯う云ふのではありませぬので、日本の經濟復興に是は必要である事業だと云ふことを十分檢査し、又其の經營の良否、將來の見透しと云ふものを十分檢討致しまして融通をする譯であります、其の檢討の上、尚無論それは普通の金融機關では融資が出來ないと云ふのでありますから、危險がそれだけあるものを融資するのでありますから、其の危險に對して損害の生ずる場合は、無論覺悟して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=8
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009・板谷順助
○板谷順助君 大體此の資金の運用と云ふことに付ては、申上げる迄もなく最近御出しになりまする金融機關の整備、或は又補償打切の結果、企業整備の問題と睨み合せて、果してどの方面に資金を融通するか、どの方面にどれだけの資金が要るかと云ふことが問題であると私は思ふのでありますが、併し差當つて四十億の金を出すと云ふことに付ては、何か目標がなくちやならぬ、どう云ふ方面にどう云ふ金を融通するかと云ふことに付ての目標は一體何處に御置きになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=9
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010・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 大體目標は付いて居りますし、それから現在迄日本興業銀行に、どの位の、どう云ふものが申込があり、現にどれ位の融資をして居るかと云ふことも分ります、それは政府委員をして數字で御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=10
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011・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 先づ資本金を百億圓と致しましたことに付きまして御説明申上げますれば、本年度即ち來年の三月迄の産業資金の需要を大體二百億と云ふ風に見當致したのであります、二百億圓の中、一般の市中銀行に於て賄ひ得べきものが、約七割と見ますると、差額の六十億と云ふものが一般市中銀行では賄へると云ふ金額に相成る譯でありまして、此の六十億圓を復興金融金庫に於て負擔致します、斯樣なことに考へたのであります、併しながら現在此の過渡期の段階でありまして、企業界は色々ごたごたが起つて居る、左樣な状況下に於きまして六十億かつきりと云ふのも如何かと思ひ、過渡期に於きまして、此の資金封鎖等の關係上、給與の支拂も出來ないと云ふやうな會社もあらうかと思ふのでありまして、さう云ふやうな場合に、ちよつと若干の備と云ふことも必要かと思ふのであります、そこで豫備と致しまして四十億圓と云ふものを加へまして百億圓、百億圓を、之を來年三月迄の所要と致しまして、資本金百億圓、そこで其の中、百億圓の資本金の中、差當り四十億圓と云ふものを政府に於て出資致しまして、さうして其の差額の六十億圓と云ふものは復興金融債券と云ふものを發行致しまして處分致す、斯樣な計畫であります、尚復興金融債券を發行して置きますが、それを發行致しました場合に於きまして、次の議會又は次の次の議會と云ふ機會に於きまして其の資本金を増加致しまして之を控へる、斯樣なことを考へて居るやうな次第であります、大體左樣な仕組になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=11
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012・板谷順助
○板谷順助君 大體分りましたが、只今申上げましたる通り、普通銀行は御承知の通り短期を主に取扱つて居ります、短期貸付が大體の其の使命と見ねばならぬのであります、從つて此の金融金庫が所謂事業の困難なる者に對する例へば設備であるとか、或は又其の囘復の爲に要する資金、資材の買入れなるものが主なるものとせねばならぬが、要するに是は長期に亙ると云ふことを覺悟せねばならぬのでありますが、一體三年に大體の目標を御置きになつたのはどう云ふ御見込で御立てになつたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=12
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013・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 御話のやうに普通銀行は其の資金の源泉が大體短期でありますから、餘り長期の金融は出來ない譯であります、併し日本興業銀行、或は日本勸業銀行の如き長期金融機關もございます、平常時でありますならば、是等の從來の長期金融機關、尤も是は屡屡申上げますやうに、前内閣の時でも金融制度調査會を作りまして、將來の日本の金融制度をどうするかと云ふことを研究を致して居つたのでありまして、現内閣も近いうちに其の調査會を再興致しまして、將來の金融制度に付きましては一つの根本的の改革案を立てて見たいと考へて居る譯でありますから、長期金融機關等に付きましても、今後或程度の改正が行はれるかも知れませぬが、兎に角現状に於きましては、勸銀、興銀等の金融機關がございます、それ等の金融機關をして金融を營ましめる、是は今日に於きましてもさうでありまして、勸銀、興銀等で行へる長期金融は矢張りそれ等の銀行に行はせる積りでございますし、又現に行つて居るのであります、それに補充する意味で復興金融金庫を作りまして、此の金融は比較的短期のものもあり、或は長期のものもあると存じますが、兎に角茲三年位の間には日本の經濟も常態に戻り得る、此の過渡期は茲三年位で以て一應通過し得るだらう、斯樣な見込で先づ三年もありましたら新たな業務を營む必要は復興金融金庫でなくなるのぢやないか、無論跡始末は後に殘ります、新たな貸付を行ふと云ふが如きことは三年を限る、斯樣なことに一應致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=13
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014・板谷順助
○板谷順助君 先程大臣の御辯明に依りまして、將來我が國の産業の復興と云ふことに付て、所謂正當な手段に依つて審査の結果貸付けた場合に於て、萬一其の事業が損失に陷つた場合に於ては、國家の責任に於て之を負擔すると云ふ御辯明を得たので、恐らくは事業界に於きましても今後に於て仕事をする上に於て眞面目に、堅實に其の方針を以て進む、萬一時代の變遷、或は又世の中の變化に依つて不幸損失を招いた場合に於ては國家が負擔すると云ふことでありますから、恐らくは安心して積極的にやることと私は思ふのであります、從つて又今申上げましたる通り、失業者が續出する現在、勞働爭議を恐れて事業家が仕事をやる氣分がない、所謂生産意欲に缺けて居ると云ふ場合に於て、恐らくは其の決心を以て進むことと思ふのであります、そこで問題は此の金融委員會のことであります、此の法案を見ますと、役員であるが如く、監査役であるが如く、或は大臣の監督の下に置かれるとすれば諮問機關であるが如きと云ふやうなことでありまするが、今現在興業銀行が代行して居る其の徑路を聞いて見ますと、先づ普通銀行に持つて行く、普通銀行は、是は自分の方で到底融通が出來ないと云ふので更に日本銀行に持つて行く、日本銀行で審査して更に又日本銀行から興業銀行に持つて行く、興業銀行が更に之を再調査して、其の結果一箇月以上も掛かると云ふやうな現在の情勢であります、でありますからして、此の金融委員會と云ふものの運用がどの程度迄是は働くべきか、此の規定に依りますと、例へば貸付の條件、或は又業務の變更等に付ては金融委員會に掛けると云ふことになつて居るのであります、又恐らくは戰時金融金庫に懲りた結果でありませう、所謂役員に對する、或は又債務者に對する所の非常な嚴重な罰則が之に盛られて居るのでありますが、今日の場合に於ては出來るだけ早く復興させなければならぬ、事業に對する資金を出してやらなければならぬと云ふのでありまするが、斯う云ふやうなことであると云ふと、私は果してそれが今大臣の御話の如く圓滑に行くかどうか、此の點はどう御考になつて居りますか、又此の金融委員會と云ふものがどの程度迄之に關係するのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=14
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015・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 御話の點は寛嚴むつかしい點で、嚴重にすれば暇が掛かりますし、寛にすれば濫に流れると云ふことで、むつかしい點でありますが、復興金融委員會は機動的に動いて戴きたいと思つて居ります、但し一々之に細かい貸付の諮問などをすると云ふことでは暇が掛かつて致し方がないので、尚政府委員から數字に付て御答が出來るかと思ひますが、地方毎に相當の金額迄は現地で以てどんどん捌かせるやうに致します、それから復興金融委員會の方はさう云ふ全體の方針に付ての一つ協議を願ふ、それから貸付に付きましては、今我々の考へて居る所では、特に問題のあるものに付ては、此の復興金融委員會の議に掛けたらばどうか、ですから、さう云ふ具體的の問題に付て掛ける場合は極く少いと考へて居る譯であります、尚細かいことは一つ政府委員から御説明を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=15
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016・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 復興金融委員會は、其の性質は二つあります、一つは此の金庫に對する監督的權能を持つて居る譯であります、一つは金庫に對して政策と言ひまするか、運營の方針を指示する、斯樣な役目を持つて居るのであります、そこで此の法令に定められた各種の事項の監督に付ては、只今御質問の範圍外でありますが、事業の運營に付きましては、相當詳細なる運營方針を金庫に對して示しまして、此の運營方針と云ふものは委員會で作成する譯であります、さうして先づ其の方針に基きまして金庫は機動的なる運營を致します、斯樣な恰好になるのであります、併しながら只今大臣が申しました通り、特異な事例、或は非常に金額が多額な場合、例へば一千五百萬圓以上と云ふやうな多額な事例に亙りますものは、是は委員會が取上げまして、具體的な審査を致す、斯樣なことでありまするが、金額がさう云ふ風な多額なものに亙らない場合、又は特殊異例と申上げにくいやうな場合、斯樣な場合に於きましては、委員會に諮るやうなことは致しませぬ、各店舖々々に於て自動的に處理致す、さう云ふやうな仕組に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=16
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017・板谷順助
○板谷順助君 次に御伺ひしたいことは、最も重大なる問題である中小商工業に對する融資であります、恐らくは現在の我が國に於てはもう資本家らしい資本家などはありはしない、結局中小商工業です、之を活かす以外に途はないと私は思ふのでありまするが、今御話のやうに之を審査に掛けて、さうして一々面倒臭いことを言つて居つたならば、現在のやうに一月以上も掛かるやうな融資のやり方では到底其の急に間に合ひはしないのでありまするが、幸ひ經濟安定本部長官の膳大臣も御出でになることでありまするが、此の方面に對するどう云ふやうな腹案を持つておいでになりまするか、恐らくは此の金庫を利用する、さう云ふことも相當の金額に上ると思ふのでありまするが、此の際御意見の御發表を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ちよつと私から……中小商工業に對する金融に付きましては、實は非常に苦心をして居る譯で、又板谷君も御認になるやうに困難な仕事でございますが、又之に付きましては日本興業銀行あたりに特に中小企業金融に付ての特別の部を設けられた時期にあつたかと思ひます、復興金融金庫に於ては何かさう云ふ方法を講じまして、特に中小企業に付ての金融に付て便宜を圖りたいと思ひます、尚是は先の金庫が出來ましてからのことでありますが、私の腹案と致しましては、金庫には一つ中小企業、是は中小企業に限る必要もないかも知れませぬが、兎に角積極的の事業、企業の指導と云ふやうなこと迄一つ金庫の仕事としてやつて貰ひたい、或は中小企業の如きは向ふから金を借りに來なくても、お前の所では金を借りてやれと云ふやうな積極性を一つ持たせたい、斯樣に政府當局としては考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=18
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019・板谷順助
○板谷順助君 私ばかり質問して甚だ恐縮でございまするが、諸君の御許しを得まして、私は此の際資金の運用に付て御意見を承りたいと思ふのであります、それは運輸大臣が御出でになれば大變都合が好いけれども、併し金の元方は大藏大臣と經濟安定本部長官の膳さんの協議に依り、又運輸大臣と三人の御協議に依つて決定する問題でありまするが、御承知の通りもう既に明年は恐らくは講和會議も出來ませうし、從つて自由貿易も許され、自由貿易が許されることに付ては先づ何と言つても海運の問題、之を解決せねばならぬ、然るに現在の我が國の海運の情勢は殆ど破壞に瀕して居る、是は大臣も屡屡海運協會其の他から陳情して能く御承知でありませうが、戰前六百萬「トン」あつたものが戰後に於て四百萬「トン」造り、千萬「トン」の中殆ど九百萬「トン」と云ふものは喪失して居る、一面又優秀なる船員も五萬三千人も藻屑になつて居る、之を建直すと云ふことに付きましては、今から其の用意をせねばならぬ、御承知の通り現在の船舶はもう殆ど丸裸、丸裸でありまするから、補償を打切られても已むを得ぬとして、總浚ひ、全國民が新たに出直す、此の覺悟を持つて臨まなければならぬのでありまするが、之に付きまして御承知の通り「マッカーサー」司令部から十五萬「トン」許されて居る、明年三月迄何としても其の半分の七萬五千「トン」を造らなければならぬ、のみならず續行船に對する資金其の他に於きましても、民間の融資或は一般の銀行から仰ぐなんと云ふことは勿論長期の貸付になるのでございまするから、殆ど不可能であります、私がさう詳しく申上げませぬでも大體に於て御承知のことでありますが、何と言つても此の復興金融金庫を利用する以外の途はないのであります、又今後に於て或は聯合軍から許された場合に於きましては船の輸入も圖らなければならぬ、是等の資金に於きましても現在の船主の状態を今申上げるやうに丸裸、到底之に對する所の金融の途はないのでありまするが、我が國の將來の再建を圖ることに付て一體政府はどれ迄積極的の御考を持つて居りますか、金の元締であり、或は經濟安定本部の長官である膳國務大臣の一つ御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=19
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020・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 是は運輸大臣が色々計畫をして居られるのでありまして、詳細なることは知りませぬが、併し運輸大臣及び政府が海運の建設に付ては無論其の必要を非常に存じて居りますので、鋭意其の建直しに運輸大臣を中心にして考究し、又其の手段を講じて居るものであります、金融の方から申しますと、是は興銀、勸銀等から相當の融資が行はれると思ひます、其の復興金融金庫に於ても無論之を致す考でありまして、若し他の金融機關に於て行ひ得ない部面があるとしますれば、復興金融金庫で引受ける積りになつて居ります、唯それは造船能率、それから「アメリカ」等から入る船がどれ程買へるか、又それがどれ程日本に適當な船であるかと云ふこと等を考へまして、其の範圍に於て爲せる限りに於ては金融に支障を來させない積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=20
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021・板谷順助
○板谷順助君 今一言だけ伺ひますが、御承知の通り有ゆる方面に於て補償が打切られる、私は此の際、此の際或は金融業者、事業家も困るでありませうけれども、徹底的に之を整理せねば、或は關東大震災の後に於ける所の整理の不徹底の爲に財界が相當に混亂した事例もあるのでありますから、私は此の際政府として思ひ切つた徹底的の整理をして本當に國民が丸裸になつて之を建直しすると云ふ此の覺悟を持たなければならぬと思ふのでありますが、其處で此の問題は、例へば喪失船のことは補償は打切つて帳消しになる、併しながら此の船に對する保險を附けて、所謂抵當權を設定して居る、であるから斯う云ふやうなものは總浚ひの意味に於て所謂お互に其の損得なし、之を相殺するのが當然ぢやないか、別に新たに金を取らうとか或は拂ふと云ふのではなく、今申上げます通り、所謂抵當權を設定して、既に所有權は現在の代理店である所の興業銀行にそれは移つて居る、それが補償を打切られるのでありまするから是は當然其の御取扱を爲さるのが公平ぢやないかと、斯う考へるのでありまするが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=21
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022・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) ちよつと御尋の意味がはつきりしませぬでしたが、今度の補償打切り等の處置に付きましては、各銀行等の、所謂不良資産と云ふものは全部整理されることになつて居ります、御話のことがそれに入るのかちよつとはつきりしませぬが、關東大震災後のなんとか云ふ手形が殘つて居りまして、昭和二年の恐慌を後に起したやうな、さう云ふ不良資産は金融機關には殘らない筈であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=22
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023・板谷順助
○板谷順助君 あなたが私の申上げたことが御分にならぬのならもう一遍申上げます、是はあなたの方にもう再三御話してある筈でありますが、御承知の通り、船が喪失して、特殊預金になつて、それが今度全部打切られることになるのでありませう、處が其の喪失した船に對する政府の低利資金、興業銀行に對する、此の船に保險を附けて低當權を設定して、それがなくなる、それで未だに興業銀行に低利資金が殘つて居るのでありますから、私の申上げるのは、所謂總浚ひで以て損得なしに之を相殺してしまふ、是が當然ぢやないか、斯う云ふ意味の質問であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=23
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024・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 左樣な場合に於きまして、國の出して居る低利資金と云ふやうなものをどうするかと云ふ問題は、非常にむつかしい問題でございます、元々今囘の補償打切り措置と云ふものが、先づ國家財政と云ふものを建直すと云ふことが經濟再建の第一歩であると云ふ見地から出發して居るのでありまして、左樣な趣旨から見ますると、國家から融資をして居ると云ふやうなものを此の補償打切りと同時に相殺すると云ふことは、相當問題があるのぢやないかと云ふ風に考へて居るのであります、只今の處、それを如何樣に致しますか、まだ方針が決つて居らぬ、斯樣に御了承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=24
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025・板谷順助
○板谷順助君 私は大臣初め政府委員の答辯には滿足致しませぬ、併し餘り長くなつて、關聯質問でありますから、此の程度で質問を保留致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=25
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026・膳桂之助
○國務大臣(膳桂之助君) 只今御尋のありましたことに、大藏大臣、政府委員から御答を申上げましたこと以外に私から特に附加へることはございませぬけれども、唯中小工業の金融のことに付きまして一言申上げたいと存じます、中小工業方面の金融の困難なること、又御縣念のやうに、なかなか行渡らないと云ふやうな心配も確にあるやうに存じます、實は中小工業者が本當に資金、或は其の他の問題でも、何處に相談に行つて宜いかと云ふやうなことに、或役所から役所、又地方廳から中央へと、何處に相談をして宜いか分らず、折角の途がありまするのに、之を承知しないと云ふやうな面も隨分ございます、是はまだ決定的ではございませぬけれども、安定本部に於きましては、關係各省、殊に中小工業の指導の直接の責任でありまする商工省等と協議を致して居るのでございまするが、若し出來るならば、なんと申しますか、中小工業の助成局とでも申しますか、是は通常の役所と違ひまして、官民合同の形にでも致し、中央及び各地方商工局のありまするやうな所に其の支部を調けまして、一方には技術的の指導を致しますると同時に、一方には相談部とでも申しますか、積極的に中小工業の相談相手になると云ふやうな部局を作つて、現在ありまする各官廳間の連絡を取り、又金融などに付きましても、其の機關が今度出來まする金庫、或は從來ありまする各種の金融機關との連繋を保ち、積極的に指導しては如何かと、斯う云ふやうな構想を持つて居りまして、是は出來るならば成るべく早く實現したいと、斯う云ふので折角研究を致して居ります、御參考迄に申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=26
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027・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 只今の大藏大臣の御答辯及び政府委員の御答辯で、了解した所と、ちよつと分りにくい所もございまするので、二三點御尋ねして見たいと思ひます、此の法案を概見して見ますると、大體企業の大きいものの經濟復興を目的として居るやうに見えるのであります、けれども今中小工業に對してもやることに考慮して居る、其の積りであると云ふことでございましたが、是はそれに相違ございませぬか、是が一つ、それから此の復興金融金庫が大體三年と云ふことの見透しに付ては、銀行局長からの御説明で了解致しました、さうしますと、從來地方銀行及び特殊銀行が金融して居るものとの關係はどうなりますか、今ちよつと聽き取りにくかつたのでありますけれども、千五百萬圓以上のものを大體目標としてる居と云ふやうに聽えましたが、復興金融金庫の運営の委員會に取上げるものは大體千五百萬圓を目標として居ると、さうすると、千五百萬圓以下貸出は、從來の特殊銀行及び地方銀行に御やらせになると云ふことでありますか、是が第二點、それから長期の金融になりまするから、特殊銀行は行けまするけれども、普通銀行はなかなか困難な所もあります、それに對して、最近は多ければ整理が行はれて居るので、普通銀行も新しい發足で經營をされなければならぬ、普通銀行にも、此の復興金融金庫から資金を供給して、今の千五百萬圓以下のものに對しては從來と同じやうに資金の融通が出來るやうに、之を奬勵し援助して載けるのでありませうか、是が第三點、それから第一條の困難な資金を供給すると云ふ意味をもう少し詳しく伺ひたいのですが、之を具體的に伺ひますれば、從來銀行家と云ふものは、大體物件に依つて時價の六割とか、七掛位を目標にして居る、勸業銀行の如きは、甚だしきは五割位でなければ擔保に取らない、處が今日緊急を要して居る經濟を復興さすと云ふことになれば、さう云ふ貸出に付ても餘程手加減を加へなければならぬと思ふ、それで假に茲に船舶を建造するとか或は工業を建設するとか云ふやうな場合に、まあ其處に千萬圓、二千萬圓金が掛る、之に對して今迄のやうな七掛とか八掛とか云ふやうなことでなくして、千萬圓要れば千萬圓貸してやる、是が困難なる復興金融を付けてやると云ふことが、其處にあると思ふ、是がまあ經濟の復興を圖る上に非常な問題で、又其の位の度胸を以て其の位の覺悟を以ておやりにならないと云ふと、實際に於て經濟の復興が困難であると思ひますが、無論さう云ふ意味で資金の供給を受けることが困難な者に供給すると云ふのは其處にあると思ひます、重點はそれに置いて居りませうか、之を一つ伺ひたい、それだけを取敢ず御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=27
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028・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 第一點は中小企業の問題であつたやうに拜聽しましたが、是は復興金融金庫は決して大企業だけをやると云ふやうな積りは初まりからなかつたのでありまして、此の法案の上にもさう云ふ色合が出ては居らぬ積りであります、唯中小企業と云ふものは別段に、特段に謳つて居りませぬことは事實であります、先程申上げましたやうに、無論大企業に對しても、此の金庫の目的上金融すべき者には金融致す譯であります、中小企業には事實重きを置いて居ると云ふことを御了承願ひたいと思ひます、それから第二點の、千五百萬圓と先程政府委員から申上げましたのは、復興金融委員會に掛ける資金であります、普通の融資は各地方の窓口に迄相當に金額を託しまして、現場で以てどしどし處理して行くと云ふことに致します、併しながら是は一例でありますが、例へば一口千五百萬圓と云ふやうな大きな貸付に付ては、是は單に現場とか、或は復興金融の本店の役員だけでなく、さう云つたものは委員會に掛けたらどうだと云ふことでありまして、決して千五百萬圓以上の金融だけをすると云ふ意味ではありませぬ、委員會に掛けるのにそんな風に大口のものだけを掛けたらどうだ、斯う云ふことであります、それから復興金融金庫から一般銀行へ融資を致して、それから銀行から貸出すと云ふ考を持つて居りませぬ、無論此の銀行の窓口を使ひます、是は復興金融金庫自身には現在の處窓口がないのでありますが、是は興銀、勸銀、或は場合に依つては普通銀行等の窓口を使はせて貰ふ、それは然るべき契約の下に其の銀行にも取扱ひの收入のあるやうに致して窓口を使はして貰ふ、斯う云ふ意味でやつて參りますが、金庫から銀行へ貸付ける、斯う云ふ形は現在執らない積りで居ります、それから困難な融資と云ふ意味は、是は無論金融機關でありますから建前は一應擔保を取る、それから又擔保の査定もし、又出來れば今迄の勸銀や興銀のやうに辛い擔保も取りたい處だと思ひます、併しながら是は此の金庫の性質に鑑みまして無擔保でも宜しい、それから況や今のやうに場合に依つては、擔保一ぱいの貸付をすると云ふ場合もあり得る、それだけの覺悟は致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=28
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029・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 さう致しますと、窓口で普通銀行其の他特殊銀行から取次をやると云ふやうな場合にそれに對して、是は借る方か貸す方かどつちからか相當手數料を拂つて、興業銀行なり其の他の銀行も復興金融金庫の手先となると云ふか、仕事を取次いでやつて相當銀行も立行くやうな御考を御持になつて居りませうか、是で今の中小金融も圖るし、さうして千五百萬圓以下のものは委員會に掛けずにどんどん取次銀行なり、店舖の主任者の裁量に依つてやると云ふことになると、相當金も餘計出ると思ひますが、それはどう云ふ御方針でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=29
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030・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 窓口を使はして貰ひます銀行には手數料を拂ひます、それから地方に於きましては此の中央に於けるが如く、復興金融委員と云ふやうなものは出來ませぬが、現在でもやつて居りますやうに、日銀の支店長、それから財務局長と云ふ者で連絡委員を各地方に作つて居ります、それで地方に於ける金庫の金融は絶えずそれ等の連絡委員の協議に依りまして誤りのないやうに致したいと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=30
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031・片倉兼太郎
○片倉兼太郎君 まだ大臣は御都合が宜しうございますか……それでは少し伺はさして戴きたいと思ひますが、銀行に於て既に貸付けてあります事業主に對して銀行としても是以上の所謂融通貸付が出來得ないと云ふやうな場合に於て、本金庫が御貸付になる、融通をすると云ふやうな場合に於きましては、今後其の事業主からして金を返濟すると云ふやうな場合に於て、銀行を先にするか、金庫を先にすべきものか、輕重があるべきものとは思ひませぬが、併しながらそれの取扱に自然と何れから先にしなければならぬやうなことが起きると思ひますが、如何になりませうか、それを御伺ひ致したいと思ひます、尚第二の問題は政府が是も一つの官營でありますが、政府の今迄やりましたことがどうも私共普通實業家から見ると甚だ結末が良くないやうに思ひます、尤も本金庫法の如きものは救濟であるとか、事業資金を仕方がないから出すと云ふことでありまする爲に致すのでありますから、到底さう滿足のことは出來ないのでありますが、矢張り此の金庫に關係しまする理事とか、職員とか云ふ者は公吏のやうな程度に御認になるものでありませうか、如何でありませうか、又之に從事する者が他より、物品の贈與を受けるとか、或は饗應と云ふやうな場合に於て、如何なる御取扱、御處置をなさる御見込でありませうか、之を一つ伺ひたいと思ひます、第三に、只今大臣から擔保の云々と云ふ御説明がありましたけれども、勿論擔保があれば取ることでありませうが、此のことは詰り事業が國家の爲に必要であるのだ、是は本金庫が貸付をしなければ國家の爲にいけないのだ、其の事業の爲に融通をすると云ふことになつて居りまする爲に、大體に於て信用として御融通になるべきものと思ひますが、如何でありますか、之を第三に伺ひたい、第四は私が斯う云ふことを伺つて、或は總ての上に於て御迷惑を來すやうでありますれば、甚だ遺憾でありますので、場合に依りましては委員長に於て速記の御取消其の他のことは御一任を致しますから宜しく一つ御承知を願つて置きたい、それで第四に伺ひますのは、在外資産で聯合國に對しまして補償となるべきものに對しては政府は如何なる御處置を執りますか、又補償とならないでも、在外資産を持つて居る者に對して是も亦どう云ふ御取扱をなされますか伺ひたい、第五は朝鮮とか或は滿洲、中華民國、南太平洋に於て、我が國の日本銀行が發行した紙幣はまだ澤山撒布されて居ると思ひますが、之に對して、茲に日本が曾ての占領地域に於きまして撒布されました紙幣と申しませうか、軍票の如きものに對しては如何なる政府としては御處置を爲さる御見込でありますか、伺ひたいと思ひます、それから約一箇月ばかり前に大藏大臣の御話だと云ふことで新圓に對する措置と云ふことが出て居りました、是はどう云ふ御措置を爲さると云ふ御考でありまするか、今日ちよつと新聞の切拔きを持つて參りませぬでいけませぬが、どう云ふことを爲さる御見込みでありますか、措置と云ふことに付て新聞に書いたことは果してどうであるかは存じませぬが、其のことを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=31
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032・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 第一點の御尋の貸付先から囘收する場合の順位の問題であるかと思ひますが、何か事件が起りまして貸付を囘收すると云ふやうな場合には一般銀行が優先致し、金庫が其の後になると云ふことになつて居ります、それから第二點の役員でございますが、是は只今愼重に考へて居る譯でありまして、此の中には十分此の金庫を運營を致して行くのに間違ひのないやうな方に御願ひしたいと存じて居ります、尚資格と申しますか、是は公務員に相成る譯であります、第三の擔保の問題でありますが、是は先程申上げましたやうに擔保のある向には是は擔保を出して貰ふと云ふことがどこ迄も建前であります、併しながら擔保のない場合には無論信用に依つて融通を致す譯であります、それから第四の在外資産の問題は實はまだ如何なる取扱をするか、在外資産なるものが個人の資産等はどう云ふ取扱をされるかと云ふことがまだ決らない状況でありまして、今の所では全部なくなつてしまふやうにも考へられるのでありますが、さうでもないやうな風でありまして、まだ決らないので、從つて日本政府としても之に對してどう處置すべきかと云ふことが決められずに居ります、賠償等に取られるのは是は大體想像をして居る譯でありますが、從つて其の範圍もはつきりしないと云ふことで、要するにまだ態度を決められないと云ふ譯でございます、それから外地で出しました紙幣に付きましては實ははつきりまだ私調べて居りませぬが、是は矢張り此の點は一つ委員長に於て速記を取止め願つた方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=32
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033・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは速記を止めて……
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=33
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034・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=34
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035・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) それから第六點の新圓の措置と云ふことはどう云ふことでどう云ふ新聞に出て居つたかはつきりしないのでありますが、特別に新圓に對して何かの措置をすると云ふことは申したことはございませぬし、又考へては居りませぬ、と云ふのは恐らく新聞に出て居つたとすれば、貯蓄奬勵其の他の方法に依つて新圓の吸收をすると云ふことは考へて居りますから、其のことを措置と云ふやうな言葉で現したのぢやないか、或は誤り傳へられたのではないかと考へて居りますので、それは金融機關等の整理が一應濟みますか、或は今度の整理案が發表せられました際等を期しまして、相當貯蓄奬勵其の他のことは一つ始めたいと考へて居る次第であります、其の他に世間に傳ふるやうに、新圓を囘收するとか何とか云ふやうなことは今全然考へて居りませぬし、又今の有樣で若し新圓を何か囘收すると云ふやうなことをしますと、是は紙幣其のものの信用を害することになりまして、退藏其のことは良いことではありませぬが、折角退藏して居つて呉れればまだ弊害が少いのに、今度は退藏もせずに紙幣を手にすれば直ぐに何か物に換へたいと云ふことなどが起りますれば、却て處理に困りますので、さう云ふことは絶對に致さない積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=35
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036・片倉兼太郎
○片倉兼太郎君 只今大臣からの御話で能く分りましたが、何れ最後に伺ひました新圓措置のことは此の次新聞を持つて參りまして御伺ひ致したいと思ひます、唯先程二に申しました本金庫に關係すべき職員と申しますか、役員は勿論でありますが、職員等に對しましても相當な取締と申しませうか、御考を願つて置かなければ折角良いことだと思つておやりになつたことが逆の結果を來すやうなことに相成る虞があると思ひます、どうか其のことに付ては尚特に一つ御考慮を願ひたいと存じます、一時質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=36
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037・名取和作
○名取和作君 今新圓の御話が出ましたが、大蔵大臣に伺ひたいのは、此の復興金融と云ふものは今政府委員の御説明に依れば民間の銀行を主として、是は政府の補助のやうに御考になりはしないか、民間の銀行がどうして預金を囘收するかと云ふことは今も大臣の御考になつて居るやうに、坊間傳ふる所に依れば、朝鮮人とか中國人と云ふのが大變な新圓を持つて居る、例へば日本銀行の調に依れば八十億と云ふが、それは嘘で二百億位持つて居るだらう、斯う云ふやうなこと、例へば京都では朝鮮人が毎晩豪遊して居る、さう云ふことが諸所にあつて、凡そ二百億位持つて居るだらう、税金も掛からぬし、之を何とかして政府が囘收すると云ふことは何か御考になつて居るのか、是は民間では大藏大臣は新圓に對して手を打たぬと御言ひになるが、いつか手を打つだらう、さう云ふ風なこともあるから、いつか手を打つだらう打つだらうと、我々の知つて居る現に議員の中でもいつ手を打たれるか、まあ何千圓の金は「ポケット」に持つて居らなければならぬと云ふことがありますので、是は一日も早く政府は其のことに付てはつきりした聲明なさらないと云ふと、銀行に預金も入りませぬし、金錢上の不安もありまして、結局それが爲に「インフレ」を起すやうなことになるかも知れぬと思ふから、大藏大臣は度々新圓は何ともせぬ何ともせぬと云ふけれども、何ともしないで果して預金が集りませうか、假令今の日本銀行の調の八十億でも大變です、是は早く一つはつきり何とか新圓の手を御打ちになる、電光石火直ちにやると云ふやうな何かなさらないと收拾すべからざることになりはせぬかと思ひます、それに付て大藏大臣は言明されることに御困りのやうだが、言明だけで宜しい、それから復興金融金庫は餘り歡迎してない、歡迎してないと云ふのは失禮でありますが、世間では大したことは出來ないと言つて居ります、矢張り戰時金融金庫のやうなものになつてしまふだらうと云ふことを言つて居りますから、それ等のものの運營の上から非常に御注意下さることを希望して、私は本案に贊成であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=37
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038・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) どうも名取さんが言はれたやうな疑を世間で持つので困るのであります、中國人、朝鮮人等が相當に現金を、紙幣を持つて居ると云ふことは事實でありますけれども、果して八十億圓とか、二百億圓と云ふ數字が何處で出たか、調査の出來る譯はないのでありまして、孰れも唯澤山持つて居るから三分の一位持つて居るのぢやないかと云ふ推測に過ぎないと思ひますが、相當持つて居ることは事實であります、是は彼等が色々の物を買ふ状況から見て、相當に紙幣を持つて居るなと云ふことは想像出來ます、此の紙幣其のものを追駈けて囘收する、現在日本の府政が之を交換しようと致しましても左樣な紙幣の準備が無いのであります、證紙を貼たものは僞造が多く、最近非常に苦情が起つて困りましたので、證紙を貼つた紙幣の交換だけを十月一杯に致すと云ふやうな譯であります、無論六百億の紙幣を交換するのに一時に六百億要る譯でありませぬから少くて濟みますが、矢張り相當の紙幣を準備しなければならぬ、之に付ては世間に色々な噂がありまして、既に政府は紙幣を刷つて居る或は「アメリカ」で刷つて居ると云ふことを言ふ人もあるさうでありますが、「アメリカで」刷つて居ると云ふことは全然ございませぬ、それでは内地で刷つて居るかと言へば刷つて居りませぬ、實は現在の新紙幣は如何にも粗末な紙幣でありまして、あれは凹版と云ふか、版が紙幣の版でない、舊紙幣のやうな紙幣が印刷されなければいけない、此の新紙幣はどうしても取替へなければならぬが、舊紙幣は流通禁止でありまするし、又模樣が現在には適用しない舊時代の模樣であります、從つて舊紙幣の版を使ふ譯に行かない、併し新紙幣を何時迄も流通させて行く譯に行かないから、いつかは改めなければならぬと云ふことは事實であります、併し其の圖案さへ出來て居らない、若し今日圖案が假に出來たと致しましても、それを版に起すには幾面か刷る、針で掘るさうであります、印刷局に何人か技術者が居りますが、それが全部掛つて急いでやつても、一圓紙幣、五圓紙幣、百圓紙幣等の版を起すのだけで半年位掛る、それから印刷にどの位掛るかと云ふと、今の印刷能力で何百億かの紙幣を印刷するには、私能く分りませぬが、半年位掛るのぢやないか、さうして出來た紙幣を各日本銀行の支店に廻して、さあ來い、交換すると云ふ時迄には輸送に又半年位掛ると云ふやうな譯でありまして、今日假に圖案が出米たとしても一年か一年半經たなければ紙幣の交換は出來ないと云ふ現状で情ないやうなことであります、さう云ふ譯でありますから、技術的にも紙幣を交換すると云ふことは、不可能であります、さうかと云つて、證紙を貼れば僞造が起り、判を捺し孔をあけると云ふことも無論駄目であります、さう云ふ譯で、是は一面に於て日本が如何に無力かと云ふ證據になりまして、誠に困つたことであります、實情は左樣であります、併しさう云ふことは措きまして、假に今日紙幣があつたとして、果して交換をするのが宜いかどうかと言ひますと、今名取さんの御話の中にも出て居りますやうに、政府が又何かするか知らぬから紙幣を持つて居やう、是は紙幣其のものに對する懸念よりは銀行に預けたら危い、又封鎖されるのぢやないかと云ふ危なさであります、ですから是は金融機關を整理するだけしまして、此の上は預金なんぞに政府と雖も手を著けることはない、安心だと云ふことを國民にはつきりさせれば自ら紙幣は集つて來ると思ひます、現在紙幣を澤山持つて居る者の話を聞きますと、藏の中に入れたがどうも狙はれて危險だと云ふので、今度は分らないやうに納屋に入れたが、それでも不安だからと云ふので、夜寢る時枕元に置くと云ふやうに隨分苦心して居ると云ふことでありますが、是が預けて安心だと云ふことになれば相當囘收されると思ひます、金融機關の整理と云ふことを此の際第一にやらなければならぬ、是が取急いで數日中に法案の御審議を願ふ譯であります、それ等の法案が實施されまして是で宜しいと云ふことになれば、そこで私共は更に貯蓄奬勵の新しい案を立てて各金融機關總動員で新圓を貯蓄して貰ふやうに努力致したいと考へて居ります、どうも斯う云ふ常道を通らないで、茲で以て變なことをやりますれば、今度は紙幣を持つても危險だと云ふことになると大變なことになります、それから假に囘收が出來たとしても、二月に囘收した經驗から見ましても、皆が預金して呉れるやうな氣分にならないことには、是亦日が經ちますと又元に戻つて又之をやらなければならぬと云ふことになれば、滅茶々々でございますから、此處暫く紙幣は殖えて不愉快でありますけれども、眼をつむつて行くより外ない、斯う云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=38
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039・名取和作
○名取和作君 能く分りました、結構だと思ひますが、大藏大臣の御話では、銀行に信用が無いから預金が集らないと云ふやうに、責は銀行にあるやうな御話でありますが、私は責は銀行でなく政府にあると思ひます、私別に行家の辯護をする譯でありませぬが、どうも話が金融機關に信用が無いからと云ふやうに聞えましたが、金融機關ではなく、政府の施策に信用が無い、大藏省と云ふか、政府に信用が無いからであります、今大藏大臣の言ふやうに、新圓に付ては大藏省は何も考へて居らない、今迄通り行くのだと云ふことをはつきり皆に徹底すれば自然に預金も集るだらうと思ひます、今の御説に贊成でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=39
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040・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 私は決して銀行其のものが惡くて信用が無いと申したのではありませぬ、御承知のやうに此の春封鎖をし、今度又第一封鎖、第二封鎖をすると云ふやうなことで、政策が銀行の預金と云ふやうなものに對する信用を害した譯でありまして、銀行の罪と申したことはありませぬから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=40
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041・山地土佐太郎
○山地土佐太郎君 私は是は今日御尋ねする積りでありませぬでしたが、今片倉委員から海外資産のことに付て御質問がありましたので、此の際伺つて見たいと思ひます、此の文章の中に於て海外に關係した者の經濟復興と云ふことは相當國の爲に重要だと思ひます、そこで海外に二三十年前から資産を持つて居つて、戰爭の爲に向ふに取られた、今度こちらの方に取返す、其の場合に自分の從來築き上げた財産を管理運用する爲に、新築して居てからに、戰爭の推移に依つて軍の爲に徴用又は強制命令、色々なことに付いて、自分の仕事はやらずに命令の、例へて言へば食糧を作つて兵隊に供給するとか、色々な軍需品の資材を作る爲に其の方へ轉用されて居る、それに對する經費は、軍が所謂南方開發金庫及び正金銀行を通して資金を供給して居り、それが此の終戰に依つて、少い所でも何百萬圓大きい所では何千圓萬と云ふ……それ以上何億萬圓と云ふものも無論ありませう、さう云ふやうな企業家が場所に依つて、例へて申しますと、「ホンコン」邊りは軍の方が非常に利巧なので、もうさう云ふものは總て軍の命令で出したものだから棒引にして貸借なし、海南島邊りに於きますと、支那から接收に來まして、そこに非常に「インフレ」が起りまして、借金どころではない、あべこべに支那側へ渡したり、又臺灣銀行なんかへ預金として、寧ろ何百萬圓と云ふものを債權にして引揚げて來て居る者もあります、けれどもさうでなくして、「ジヤワ」、「スマトラ」或は「マレー」、「ボルネオ」と云ふやうな所では概ね何もせずに、もう是はお前の責任でないから宜しい、心配するには及ばぬと云ふので、まあ正金銀行なり、臺灣銀行なり、南方開發金庫なり、何百萬圓、何千萬圓、何億圓と云ふものを其の儘になつて來て居る、之をこちらの方へ浴せかけて來ますと、それ等の方面に何十年海外發展の爲に苦心慘憺して相當の地盤を築き上げた中小企業家なり、又相當大きい企業家は、もう是は全滅してしまふ、どうしても斯う云ふものは經濟復興に入らない、それではどうも國家としても甚だ不公平なのであるし、又さう云ふやうな人に經濟復興をやらす方が、將來の日本の經濟再建に最も意義のあることで、又最も必要なることと考へます、それを早く一つ、所謂太平洋戰爭後に於ける軍需設備、軍需補償と云ふものと少し性質が違ひますから之を切離して、さう云ふものはもう棒引である、それはお前等委託經營でやつたもんだから、お前等の方の利害關係でない、それだから是はもう、さう云ふ債務は債務でないと云ふことを早く、無論さう決めるべきものだと私は考へて居りますが、それを早く御決になつて、それは心配ない、是だけは何も…皆それは本社の帳面には、載つて居ないのです、皆現地の帳面であります、だから本社の帳面には入らない、之を切離して、さうして此の頃言うて居る特別經理會社を解除するなら解除する、第二會社なら第二會社になる、新勘定なら新勘定に入れると云ふやうなことを早くおやりにならぬと、此の復興金融金庫と云ふ折角斯う云ふ良い金庫が出來ましても、さう云ふやうな從來海外發展の爲に非常に盡して居る者に恩典が一つも行かなくなる、それ等の者を利用して、それ等の者の從來の尊い經驗を利用して、再建を圖ると云ふことが出來なくなる、是は今日直ぐに御答を御要求しても、ちよつと事が大きい問題でございますから、どうぞ一つ御研究の上で、此の委員會のある間に何かそれに對するしつかりした一つ御見解なり御方針なりを、御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=41
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042・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 在外財産、それから今御話の在外財産に伴つての負債等の問題に付きましては、實は今調査を致して居る譯でありまして、御話の點は御尤もと存じて居りますが、此の委員會のある間に其の結論を申上げる段取にもちよつとなり兼ねると思ひますから、どうか…まあ政府としてはどうしても此の經濟の復興と云ふことが眼目でありますから、それに副ふやうな方策を執りたいと斯う云ふことだけで、具體的な御答はちよつと出來兼ねることでありますから、御了承願ひたいと思ひます、尚さう云ふ風な大きなものに於きまして、各個人の在外引揚者に付ての問題も只今調査を致して居ります、例へば是等の人の預貯金等を内地の預貯金者と同じやうに取扱ふと致しましても、相當大きな金額を要しますので、其の財源等に付ては實は頭を惱まして居る問題でありますが、是は何とか致さなければならぬと考へて、今も調査し考究致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=42
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043・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 本日は是にて散會を致します、次會は明日午前十時より開會致します
午前十一時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=43
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044・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 高橋是賢君
副委員長 男爵 杉溪由言君
委員
侯爵 嵯峨實勝君
侯爵 西郷吉之助君
伯爵 金子武麿君
子爵 瀧脇宏光君
子爵 水野勝邦君
子爵 稻葉正凱君
男爵 伊藤文吉君
長谷川赳夫君
男爵 長基連君
男爵 中村貫之君
男爵 村田保定君
黒田英雄君
板谷順助君
石川一郎君
野村茂久馬君
名取和作君
河西豊太郎君
山地土佐太郎君
片倉兼太郎君
栗栖赳夫君
國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
同 三井武雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003079X00119460925&spkNum=44
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