1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年八月十二日(月曜日)午前十時五分開議
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議事日程 第十八號
昭和二十一年八月十二日
午前十時開議
第一 改定豫算に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道敷設の請願 會 議
第三 豫定線上總龜山、上總中野間鐵道速成の請願 會 議
第四 津輕環状線鐵道速成竝經由地變更に關する請願 會 議
第五 瀬棚線瀬棚、岩内線岩内の兩驛間に鐵道敷設の請願 會 議
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=0
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 諸般の報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
去る七日議決に係る議員子爵冷泉爲勇君に對する弔辭は即日之を贈れり
武者小路實篤君
同日願に依り貴族院議員を免せらる
同日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
政府出資特別會計法外二十一法令の廢止等に關する法律案
同日委員長より左の報告書を提出せり
請願文書表(第六囘報告)
同日内閣總理大臣より左の通第九十囘帝國議會政府委員仰付けられたる旨の通牒を受領せり
大藏省所管事務政府委員
大藏事務官 河野通一君
同 酒井俊彦君
去る八日委員長より請願委員板谷順助君を第三分科擔當委員に選定したる旨の報告書を提出せり
去る九日委員長より請願委員第三分科擔當委員秋田三一君を第一分科兼務委員に選定したる旨の報告書を提出せり同日内閣總理大臣より左の通第九十囘帝國議會政府委員仰付けられたる旨の通牒を受領せり
運輸省所管事務政府委員
運輸次官 平山孝君
一、昨十日政府より左の議案を提出せり
電氣事業法の一部を改正する法律案
同日衆議院より左の政府提出案を受領せり
改定豫算に關する法律案
同日内閣總理大臣より左の通第九十囘帝國議會政府委員仰付けられたる旨の通牒を受領せり
遞信省所管事務政府委員
遞信事務官 大野勝三君
同 小笠原光壽君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、請暇の件に付御諮りを致します、子爵仙石久英君、病氣に付き十三日間、男爵小畑大太郎君、病氣に付九日間請暇の申出がございました、許可を致して御異議がございますか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=2
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003・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 一昨十日豫算委員男爵小畑大太郎君より病氣に付委員辭任の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、就きましては第八部に於て其の補闕選擧を行はれむことを望みます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=5
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006・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第一、改定豫算に關する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=6
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007・会議録情報2
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改定豫算に關する法律案
右の政府提出案は本院において可決した、因つて議院法第五十四條により送付する。
昭和二十一年八月十日
衆議院議長 樋貝詮三
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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改定豫算に關する法律案
昭和二十一年度においては、豫算を適實簡明ならしめるため、政府は、施行豫算から不用とする費額を減じ、又必要とする費額をこれに加へ、その他昭和二十一年勅令第二百四十二號に規定する經費をこれに統合する等必要な調整を施して、改定豫算を今期の帝國議會に提出することができる。
改定豫算の成立前に、施行豫算の定額から支出した金額、豫備金支出に基いて支出した金額及び昭和二十一年勅令第二百四十二號に基いて支出した金額は、これを、改定豫算の定めるところによつて、改定豫算の定額から支出したものとみなす。
改定豫算には、會計法第九條の豫備金の外に、豫備費として經濟安定費を設けることができる。
經濟安定費は、經濟安定に關する豫算の不足を補ひ又は豫算外に生じた經濟安定に關する費用に充てるものとする。
經濟安定費を以て支辨したものは、年度經過後の常會において、帝國議會に提出してその承諾を求めなければならない。
附 則
第一項及び第二項の施行豫算には、改定豫算の成立前に成立した昭和二十一年度追加豫算があるときは、これを含むものとする。
昭和二十一年度における豫算超過又は豫算外の支出にかかるものは、改定豫算の提出に伴つて、會計法第十條の規定にかかはらず、今期の帝國議會に提出して、その承諾を求めなければならない。
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題となりました改定豫算に關する法律案提出の理由を御説明申上げます、御承知の如く昭和二十一年度豫算は、昨年十二月十八日衆議院が解散と相成りまして、其の後總選擧が豫定より遲延致した爲に、遂に年度初迄に成立するに至りませぬでした、爲に政府は憲法第七十一條に依りまして、前年度豫算、即ち昭和二十年度豫算を施行致したのでありますが、申上げる迄もなく、昭和二十年度豫算は戰爭の遂行を前提として編成せられたものでありまして、事態が一變致しました今日に於ては、之を其の儘昭和二十一年度豫算として踏襲することは許されない状況にございます、又斯樣な場合に、從來の慣行に依りますれば、實行豫算を編成を致し、施行豫算にては支辨し難き歳入出は追加豫算の御協贊を願ふのでありますが、斯樣に致しましては、本年度としましては、豫算の數字は徒に厖大に相成りまして、財政全體の形を表はすことが困難になりますと云ふ弊害がございますので、仍て政府は施行豫算の定額から昭和二十一年度に於ては、支出する必要のない費額、又は支出するのを適當としない費額は之を減じますると共に、昭和二十一年度に於ては、緊急の必要であつて施行豫算では不足する金額、又は施行豫算では處理の出來ませぬ費額は、之を施行豫算に加へまして、更に昭和二十一年勅令第二百四十二號に規定する經費をも之に統合致します等必要な調整を施しまして、實質的の昭和二十一年度豫算を編成を致し、之を改定豫算として帝國議會の協贊を經るやうに致したいと存ずるのであります、本法律案は即ち以上の趣旨に依りまして、改定豫算を今期の帝國議會に提出することが出來る法律案でございます、尚此の改定豫算には會計法第九條に規定する第一豫備金及び第二豫備金の外に、新しい種類の豫備費と致しまして經濟安定費を設けることが出來るやうに致したいと存じます、此の經濟安定費は經濟安定に關する豫算の不足を補ひ、又は豫算外に生じた經濟安定に關する費用に充てようとするものでございます、以上を以ちまして此の法律案提出の理由を御説明申上げました、何卒御審議の上速かに御協贊を與へられむことを御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=8
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009・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 質疑の通告がございます、佐々木惣一君
〔佐々木惣一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=9
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010・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今本院に提出せられました改定豫算に關する法律案は極めて簡單な條項を有するものでありまするけれども、私は我が國の豫算の豫算法理及び豫算政策と云ふ點から見まして、此の法律案に付て頗る重要な意味を持つ質疑を抱いて居るのであります、仍て私は之に付て少しく質問を試みたいと思ふのであります、尤も是は私の或は知らざる何等かの理論、又は事實がありまして、それに基いて私が抱く質疑であるかも知れませぬ、其のことは政府の御答辯に依りまして明かになりまするならば、私は潔く私の誤つて居ることを正して行く積りであります、私の質疑は便宜上五點に分ちます、第一點は本法律案に改定豫算と稱するもの、及び此の改定豫算なるものを茲に定めまする所の此の法律案と帝國憲法との關係に付て御尋ね致したいのであります、只今大藏大臣の御説明には改定豫算なるものは如何なる性質を持ち、如何なる内容を持つて居るものであるかと云ふことに付て正確なる御説明はなかつたやうに私は伺ひます、併し此の法律自體に第一項に斯う云ふことがある、「昭和二十一年度においては、豫算を適實簡明ならしめるため、政府は、施行豫算から不用とする費額を減じ、又必要とする費額をこれに加へ、その他昭和二十一年勅令第二百四十二號に規定する經費をこれに統合する等必要な調整を施して、改定豫算を今期の帝國議會に提出することが出來る。」是が即ち本法律案の第一項の規定でありまして、此の所謂改定豫算なるものが如何なる性質を持つて居るものであるかと云ふことは、實は明かになつて居ないのであります、そこで此の法律案自身の言葉を表面から見ますると云ふと、改定豫算なるものは、既に憲法或は又此の法律以外に既に其の觀念が明かに定つて居るものであつて、其の改定豫算なるものを此の昭和二十一年度の爲に、即ち帝國議會に提出せられるのであると云ふ、さう云ふ御趣旨のやうに此の法律は見えますが、然らば此の改定豫算と云ふものは、果してどう云ふものであるかと云ふことを先づ詳しく我々が知つて置く必要があるのであります、そこで先づ是は今大臣の御説明にもありました通りに、兎に角昭和二十一年度に於ける總豫算に總豫算として改正を加へて、其の改正を加へられたるものを改定豫算と云ふの御趣旨であるやうに拜承致しましたのでありまするが、さう云ふ改定豫算なるものは、必ずしも昭和二十一年度に限りませぬ一般に我が國に於て、帝國憲法の下に認められるものでありませうか、之を私は疑問と先づするのであります、此の點に付きまして政府の御意見を伺ひたいと思ふのでありまするが、併し是は實は稍稍正確なる考察を要する法理でありまするから、斯かることに付きまして、總理大臣に御尋すると云ふのは、私の個人的の性質より致しますれば實は遠慮したいのでありまするけれども、併しながら事は單に行政事務とか、會計事務とか云ふやうなことに關することではないのであります、豫算と云ふ國務に關する問題でありまするから、甚だ御氣毒ではありまするけれども總理大臣に御答辯を御願ひ致したいのであります、大藏大臣の御答辯は是は言ふ迄もありませぬ、其の他の大臣方に於きましても、此の點に付て御意見がありますれば、謹んで伺ひたいと思ふのであります、併しながら私がさう云ふ疑問を抱きました以上は、何故にさう云ふ疑問を抱いたかと云ふことに付きまして、私の意見を申上げなければ疑問其のものが分りませぬ、私の意見其のものを申上げる趣旨では決してありませぬ、疑問の生ずる所以を明かにする爲に申上げるのであります、帝國憲法では皆樣が御存じの通りに、豫算は一年毎に存在すべきものであつて、且成るべく單一の豫算として存在すべきものと相成つて居るのでありまするが、併し固より之に對しましては通常所謂追加豫算、或は又特別會計豫算のあることは言ふ迄もありませぬ、其の問題はこ、で姑く別にして置きます、右申上げました一年毎に存在して、單一の豫算で終始すると云ふことでは固より不都合なことがあるかも知れませぬからして、それで即ち緊急財政處分と云ふものが帝國憲法上認められて居るのであります、是は只今大藏大臣が御話になりました通りに、既に本年度に於て此の處置が執られてあつたと云ふことでもありますが、併し此の緊急財政處分なるものは、豫算を豫算其のものとして變更する性質を持つて居るものではありませぬ、豫算の定むる所に異つたる所の處置を或特別の場合に認むるものではありまするけれども、豫算其のものを變更するものではないのであります、豫算其のものとして此の點ははつきりと先づして置かなければならぬ、要するに我が國の憲法の下に於きましては、一度總豫算が存在を見るに至りました以上は、之を豫算其のものとして改正をすると云ふが如きことは許されないのであります、今囘の此の法律に於て定めむとして居りまする所の改定豫算なるものが、今迄私が前提と致しました意味の改定豫算でありまするならば、實は是は帝國憲法上認められないものである、從つて此の改定豫算なるものを定むる所の本法律案を帝國憲法に違反と言はざるを得ないのであります、此の點に付きまして先刻申しましたやうに、誠に何ですけれども、事が事でありますから總理大臣の御答辯を得れば幸と思ふのであります、それから第二は、此の昭和二十一年度に限つて改定豫算なるものを認めるの理由が特にありとせられるのであるか、此の點に付きましても御答辯を願ひたいのであります、第一點は一般に所謂改定豫算なるもの、一般に付て申して居るのでありまするが、それは認められないとしても、併しながら此の昭和二十一年度の豫算としては之を認むると云ふ、さう云ふ理由が特にあるのでありまするか、之を御伺ひしたいのであります、先刻大藏大臣の御説明にもありましたやうに、昭和二十一年度の豫算は所謂成立に至つて居りませぬ、それで帝國憲法の第七十一條に依りまして前年度の豫算を施行すると云ふことに相成つて居るのでありまするが、併し前年度の豫算を施行すると云ふことは、前年度の豫算が其の儘に今年度に效力を持つと云ふ意味ではないのでありまして、前年度の豫算と同じ内容を持つ所の豫算が本年度、昭和二十一年度の豫算として出來るのであります、是が即ち前年度豫算と云ふことに關する所の憲法學者の總て一致した解釋であります、それで昭和二十一年度に於きましては、今申しました意味に於ける總豫算と云ふものは既に存在して居るのであります、さう致しますれば、前に第一點の質問に於て述べましたるが如く、凡そ既に存在して居る所の其の總豫算を、之を豫算として改正をすると云ふやうなことは憲法上認められないと云ふ第一の理論が茲にはつきりと當嵌まるのである、即ち第一に私が申上げました憲法上の理論は本年度、即ち昭和二十一年度に付て特に之を除外すると云ふ理由を何等發見しないのでありますと、私は思つて居るのであります、唯茲に念の爲に申上げまするが、斯くの如き状態を、豫算上困難なる状態を生じたと云ふことは、今の大藏大臣の御説明の中にもありました通りに皆樣が御存じの通り、衆議院の解散、次いで起る選擧と云ふやうなことから今日に至つたのでありまして、そこには何等か政略的な意義がありましたか、或は豫算を編成ではない調整、行政事務的に調整することに付ての種々な困難があつたと云ふやうな行政的の便宜と云ふやうな點があつて、遂に初めから此の豫算を前年の、今年度に入る前に帝國議會の審議に掛けると云ふやうなことを政略的に、又は行政便宜的に避けたことがあるかどうかは是は知りませぬ、今私は知らむと欲する者でもありませぬ、併し何れに致しましても其の事は、さう云ふ事情に立到らしたと云ふことは、現内閣の罪ではないのでありまして、前内閣の罪でありまするから、今私は此の内閣に對して、殊に總理大臣に、此の内閣の總理大臣に對して質問は致して居りまするけれども、それは唯國家の國務を互に正當に導きたいと云ふやうな氣持だけでありまして、決して責める意味ではない、責めるべきは即ち前内閣であります、現内閣でない、さう云ふ状態に立到らしたと云ふことを責むるとすれば、さう云ふことは私の今の趣旨ではありませぬ、今度は第三點と致しまして、今現に改定豫算が提出されて居るのであります、それは如何なる法的根據に依つて提出され、審議されて居るかと云ふことを御尋ね致したいと思ふのであります、此の點に付きましても誠に御氣の毒とは思ふけれども、事が大事でありまするから明白なる所の御答辯を得たいと思ふのであります、今第一點及び第二點の説明に於て申上げました如く、所謂改定豫算なるもの、及び之を認めまする所の改定豫算に關する法律なるものが、私の言ふやうに本來許されざるものであるかどうかと云ふことは姑く別と致しまして、兎に角さう云ふ改定豫算を今期の議會に提出し得る爲には、さう云ふものを提出することが出來ると云ふ法律がなくちやならない、即ち改定豫算を提出する前に今茲で審議に上つて居りまする所の法律がなくてはならないのである、處が此の法律は何時帝國議會に提出されたかと申しますると云ふと、是は言ふ迄もなく衆議院の方に先に提出されて居るのであります、それは七月十二日に衆議院に提出されまして、さうして七月二十五日に衆議院に上程されました、さうして是は衆議院公報に依つたものでありまするが、其の後は調べるのに必要のある關係の公報を手にしませぬから分りませぬけれども、何か昨日邊り聞きまする所に依れば、昨日衆議院に於きまして、緊急に上程されたと云ふことであります、さうして昨日上程されまして、直ぐ可決になつたものが、何時こちらに參つたかそれは知りませぬけれども、兎に角こちらに送付されて、今日茲に議することに相成つたのであります、普通の場合の議案の取扱ひに比しまして、頗る慌しさの感じが致しまするけれども、是も私の今の論點ではありませぬ、要するに此の改定豫算を提出することが出來ると云ふ、此の法律案の未だ存在せざる前に既に提出されて、さうして審議されてしまつたのである、斯う云ふことは果して如何なる説明を以て理解し得ることでありませうか、即ち改定豫算と云ふものを、姑くそれ自身は認めると致しましても、それを議會に提出すると云ふこと、其のことに付きましては、又別に法的の根據がなくちやならないのでありまするが、實は其の法的の根據なしに議會に提出されて、さうして審議されて居ると云ふことである、未だ之に關して其の審議中の各方面から、如何なる質疑も出たと云ふことを私は聞きませぬが、それ故に恐らく私の何等か理論的に、或は技術的に誤解であるかも知れませぬけれども、兎に角どの方面からも此の點に付て質疑がないと云ふことは別で、それはどうも私は誠に無力な者でありまするけれども、一度疑問を起しました以上は、どうも質疑を致さなければならぬと云ふ氣持で、此處に實は昨日から俄かに、此の質疑の準備に掛つた譯であります、さう云ふことに相成りますると云ふと、此の改定豫算は全く法的の根據なきに提出されて、審議する、之を認むると云ふ、さう云ふ法律案其のものも遡つて見ると云ふと、憲法に牴觸するのではないか、斯う云ふ風なことが私の疑問でありまして、是は所謂普通の政治家、實際家と云ふ者から見ればつまらない問題かも知れませぬけれども、私の如く、或は皆さんも思ひませうが、國家を永久に秩序ある所の發展をせしめようとする者に取りましては、可なり重大な意味を以て居る問題であります、それ故に私が此の點に付き、誤つて居る所がありまするならば、どうか政府者諸君から御教へを願ひたい、斯う云ふ意味であります、それから第四點と致しましては、改定豫算編成に付て、改正の目標と云ふやうなことを、如何なる點に置くべきものとせられて居るのであるか、と云ふことを御尋ねするのであります、先刻は前は改定豫算の謂はば、存在と云ふやうなことに付ての根本の、豫算法理のことを申しました、今度は少し豫算政策に付て、御尋ね致すのであります、固より改定豫算なるものを御編成になりまして、さうして提出なされたのは、即ち本年度、終戰後に於ては、戰時状態にありました所の、昭和二十年度の豫算を、其の儘實行することは適當でないと云ふので、それに何等か必要な調整を施して、さうして此の豫算を改正したいと云ふ、さう云ふ御氣持でありまして、是はもう非常に能く分つて居る、が併し改正を加へると云ふことは、改正の爲の改正であるべき筈はない、又二十一年度に於て、二十年の通りの豫算を實行すると云ふことが、國家の實情に適せないと云ふことも、言ふ迄もないことでありますけれども、併しながら兎に角此の豫算に改正を加へると云ふやうな場合に於きましては、豫算其のものではないにしても、さう云ふ豫算を定めると云ふ、さう云ふ法律の立案の時に、何等か改正の目標と云ふものに、著眼しなくてはならぬかと思ふのであります、必ずあるに違ひない、そこで是はちよつと誤解されるかも知れませぬが、是から此の法律に基いて、編成提出せらるべき、と云つても、其の言葉が早や言へない、もう出て居るのだから……、さう云ふ豫算其のもののことに似て居りまするけれども、さうではないのであります、さう云ふ改定豫算と云ふものを作る場合に、どう云ふことに著眼して、改正と云ふことを必要と考へて、さう云ふ改定豫算なるものを定むるかと云ふ問題でありまして、改定豫算其のものの問題ではないのでありまするから、そこで此處で此の法律に關する質疑として申上ぐることは差支ないのであります、事實出來まする所の改定豫算は、此の法律が明示して居ないにしても、兎に角根柢になくてはならぬ所の、其の目標と云ふものを、現實に具體的に達して居るかどうかは、それは即ち改定豫算其のものの問題である、併しながら改定豫算と云ふやうな、豫算の改正と云ふやうなことを、法律が認めると云ふ、其の法律的必要と云ふものの著眼點は、是は改定豫算其のものの問題ではないのであります、そこで此の點に付て、少しく御尋ねして見たいと思ふのでありますが、其の第一點と致しまして、此處以下は何も新しいことでも何でもありませぬけれども、併し豫算の編成と云ふことに付きまして、多少不斷から考へて居る點でありまするから、そこで改定豫算と云ふことに付て、之を御尋ねして見たいと思ふのであります、此の改定豫算を御認めになると云ふことに際しまして、豫算と云ふものは國務の全般の立場と云ふものに重きを置いて之を決定しなくちやならぬものである、それが從來に於ては十分でなかつたと云ふやうな、さう云ふ點に何等か著眼せられまして、さうしてさう云ふことを一つ改めよう、此の次の此の法律に基いて生ずる所の豫算に於ては、さう云ふ從來の態度を改めてやらうと云ふさう云ふやうなことを意識的に一つの目標とでもせられたことはないでありませうかと云ふことを御尋ねするのであります、國務大臣と云ふ者は言ふ迄もなく國務の全般と云ふ立場から此の豫算と云ふものを考うべきものであつて、其の國務大臣が同時に主任となつて居りまする所の各省大臣と云ふさう云ふ立場に囚はれるものでない、囚はれてはならぬと云ふことはそれは此處に私が言はなくても理論としては明かなことでありまするけれども、併し從來傳つて居りまする所が本當でありまするならば、此の點に付て非常に遺憾なものがあると云ふ風に感ぜられて居るのであります、所謂各省大臣の割據分取主義と云ふやうなことがあるやに世人が言つて居りまするが、果してさうであるかどうかは私は知りませぬ、それがさうであるならば固より一般的に豫算の編成と云ふことに付て改めなくてはならぬのでありますが、殊に今後國家再建と云ふやうなことに關する所の財政上の基礎を作る豫算に於きましては注意しなくてはならぬ、更に殊に其の再建の財政的基礎を作る所の第一年たる所の本年度に於きましては、特にさう云ふことを注意しなくてはならない、豫算は皆さん御存じの通りに法理上の形に於きましては一年毎に其の一年の財政を決めるものでありまするけれども、それは即ち事務處理の便宜上さうして居るのでありまして、凡そ國家のことは即ち事柄の性質にも依りますけれども大體繼續的の影響を與ふるものであります、それ故に本年度に於きまして豫算面上計畫せられたることは決して本年度限りのことと思つては大間違ひでありまして、更に來年度、來々年度ずつと引續き其の影響があるものと考へなくてはならないのでありまするから、それ故に若し從來豫算編成上何等か改むべきことがあると致しますればそれは今日、殊に再建第一年の今日に於きまして、其の點から著眼して改めなくてはならぬかと思ふのであります、今年度限りの問題と考へることは非常に誤つて全く事務的の工作に過ぎない、國務的の考へではないと斯う云ふ風に思ふのでありまするから、そこで斯う云ふ點を特に今年度の豫算に付て關係して御尋ねするのでありまするけれども、實は是は我が國家の繼續的の財政状態を左右する見地から御尋ねするのであります、處が是は一般に政府者のみを責めてはいけない、世間も惡い、大臣の評判と云ふものは今申しましたやうな國務を全般的に見て事柄を決すると云ふ人の方は却て評判にしない、唯自己の省の爲に豫算を澤山取ると云ふやうなこと、それを力量と言つて居りますが、さう云ふ力量のあるものを偉い大臣だと云ふ風に從來言つて居るのである、今日でも或はさうであるかも知れませぬ、嘗て或大將が文部大臣であられたことがある、餘程古いことでありますが、それは俺は何にも省内のことは知らない、教育のことは知らない、併しまあ閣議に於て豫算を取ると云ふやうなことはやると云ふやうなことを言はれたと云ふやうなことを傳へ聞いて居りますが、それで以て其の省内の諸君は勿論のこと、世人も偉いと云つて居つた、我々も屡屡さう云ふことを聞きました、又曾て或政黨の有力なる領袖が或省、或省と云ふとをかしいが、司法大臣であつたことがある、司法省と云ふものは今でもさうでありまして、曾てはさう云ふ事自體は反對だと云ふことを此處でも申上げたと思ひますが、恐らく内心は政黨と云ふやうなことは、從つて政黨の領袖と云ふやうなことは、餘り尊敬して居ないかも知れない、斯う云ふ時勢になつたから今は違ふかも知れませぬ、處が從來の司法大臣中最も其の省内の評判の良かつたのは其の政黨出身者たる政黨領袖でありました所の其の大臣であつた、何故か、詰り其の省の豫算を餘計取つて來たから…斯う云ふ考へ方が即ち禍根であります、斯う云ふ考へ方がありますが故に、即ち大臣はどう致しましても其の省内の部局的のことの爲に大いに努力すると云ふことにまあなる、尤も高い人は別でありますが、さう云ふことになるかと思ひます、是は非常に重大なことかと思ふのであります、さう云ふことは其の部下に對しても評判が良いのみならず、世間にも評判が良い、部下のことは姑く別と致しまして、是は即ち我々世間人が考を變へなくてはいけない、此の場合に徒に大臣のみを責めてはいけませぬと私は思ふのであります、それで大臣と云ふものは言ふ迄もなくそれぞれ自分の擔當して居られます所の部局部局を發展せしめなければならぬことは當然でありますけれども、其の自己の部下の言ふ所、要求する所、常に必ずしも正しきとは限らないのであります、正しからざることを主張する部下は之を抑へると云ふことが即ちそれなんで、唯部下の言ふ所であるからと云つて之に從つて之を採り上げると云ふのでは、それはどうも人の長たる者でない、是は一見すると云ふと、今日流行つて居ります所の民主主義或は「デモクラシー」と違ふやうに見えますけれども、決してさうではないのであります、そこに眞の「デモクラシー」がある、各各の構成して居ります所の其の組織内に於て自己に與へられたる所の其の任務を自分の良心に從つて完全に遂げ得ると云ふ所に根本的基礎があるのでありますから、大臣は國家の爲に其の部下の主張が無理だと云へば、どうも其の無理のある所を説いて悟らしむると云ふことが出來る、そこに本當の「デモクラシー」があると私は信じて居るのでありますが、此の點に付きましてどうも徒に我々が大臣と云ふやうな人々を非難してばかり居てはいけない、我々自身が大臣に對する見方と云ふものを餘程變へなければいけないと思ふのでありますが、さう云ふ點から見て、即ち私は豫算の編成と云ふことに付きまして何等か目標を變へると云ふ必要がありはしないか、斯う云ふ風に考へて居るのであります、それで此の改定豫算を御編成になつた時に於きましても何かさう云ふやうな點に御著眼なされたことがあるだらうか、どうだらうかと云ふことを御尋ね致すのであります、此の點に關聯して申上げたいのは大藏大臣と云ふものの地位であります、大藏大臣は私の理解する所に依りますれば、豫算に於て現れまする所の國務計畫を決すると云ふ立場に於ける限りに於きましては、内閣の一員として他の國務大臣と共同して之を決定すると云ふ筈のものであります、固より大藏大臣が各省大臣として、大藏大臣として大藏省所管の行政事務を執ると云ふ立場は是は別であります、處が從來直接ではありませぬ、間接に人傳に、或は出版物等に於て教へられて居る所から察しますると云ふと、どうも此の豫算に於ける國務計畫の決定に付て、大藏大臣と云ふものが非常に力強い支配力を持つて居る、まあ從來でありますが、豫算に於ける所の收支の事務でありませぬ、豫算に於ける國務計畫と云ふものは、何か大藏大臣の一顰一笑に依つて定まると云ふやうな、假に言葉を少し形容的に申しますればさう云ふことになると云ふやうなことを聞いて居るのでありまするが、例へばさう云ふことがありますれば、是は非常に誤りであるのみならず、是は實は大藏大臣に對して非常に氣の毒なのです、是は何も如何にも冷笑的に氣の毒と云ふのではない、實際に言ふ意味に於きまして、それは大藏大臣が豫算に現れた所の國務計畫に付て一人で世評の焦點になるのであります、又他の國務大臣は不當に自己の責任を免れてしまふ、そんな筈はない、苟も豫算に於て現はれます所の國務計畫に付きましては、單り特に大藏大臣を目懸けて彼此批評すべきものではない、是は即ち國務大臣、内閣全體の爲の責任だらうと思ふのであります、例へば軍需補償の問題に付きましても、事務的にはそれは大藏大臣及び其の以下の行政機關が之を實行するのでありまするけれども、軍需補償を國家の爲に切捨るかどうかと云ふやうなさう云ふことは是は決して大藏大臣のみの問題ではない、内閣全體の問題である、どうも是は從來から非常に誤りがありはしないかと思ふのであります、此の點に付きまして思ひまするが、此の議會に於ける國務上の方針に付ての大臣方の御演説に於きましては、總理大臣と云ふものは財政上から見た國務上の計畫に付きましては御演説がないのであります、何時でも大藏大臣がやつて居る、茲に私は非常な疑點を持つのであります、是は矢張り國務上の施政演説、其の中でも宜いが、或はそれと別に財政上から見た所の國務上の計畫と云ふものに付て少くとも今日言及されて居るより以上に總理大臣が之を議會に御説明になつて然るべきものだと私は思つて居りまするが、私は過去は咎めませぬけれども、將來さう云ふ風に總理大臣も財政に現はれる國務上の計畫に付ても、議會に對して説明するものだと云ふ風に致したいと思ふのであります、兎に角それは別と致しまして、斯う云ふことは國家再建の第一年の財政計畫を樹てる時に當つて、去年の財政計畫ではいけないと云ふことは、金が足る足らぬと云ふやうなさう云ふ事務的だけのことでなしに、凡そ豫算に於ける國務決定と云ふものが國家の發展に如何なる意義を持つものであるかと云ふさう云ふ大きな、或は根本的の立場から御著眼になるやうなことがありますのでありませうか、さう云ふことを御尋ね致したいのであります、是は今申しました目標の中の國務全般と云ふ譯でありますが、其の目標に關する私の申上げたいことの第二と致しまして、何と申しましても今日我が國に於きましては豫算に現はれます所の、豫算と無關係な國務は別でありますが、豫算に依つて初めて實現せらるべき性質の國務に付きましては澤山ありますが、其の澤山の中で所謂重點主義と云ふやうなことは今日私は適當でない、少くとも語弊があると思ひます、即ち戰時状態に於きましては、兎に角此の戰爭の目的を遂行すると云ふことの爲に、それが即ち唯一の其の當時の目標であつた、でありますから兎に角それに役立つやうに即ち國務遂行を爲すのであるが、其の以外のものは先づ睡眠状態に置くと云ふことになつて居つたのであります、其の意味に於ける重點と云ふものが軍事目的遂行にあつたと思ひます、併し今日に於てはさう云ふことの言へぬことは云ふ迄もないのであります、そこで今日は國家再建の時に當りまして、各方面に遂行すべき國務と云ふものが非常にあると思ふのであります、從つて其の間に取捨をすると云ふことが即ち財政計畫に於て最も重要なことだらうと思ふ、從つて其の取捨に於きましては、何等か客觀的な標準がなくてはならない、言ふ迄もありませぬが即ち日本國家は此の日本人が共に生きむとして居る所の、一緒に相提携して生きようとして居ります所の協同體、私は斯う云ふものを指しまして自分一人で日本人共生體と言つて居りますが、此の日本人共生體と云ふものの其の活動を先づ積極的に又消極的に良くせしむると云ふことを爲すより外はない、それが國家の目標でありますから、そこでそれは色々のことがありましても、要するに其の共生體を時に矢張り整理しなければならぬ、又其の共生體を鼓舞せなければならぬ、そこで國家の任務、政治の任務と云ふものは、政治せらるべき、即ち日本人共生體と云ふものを始終整理し、又始終鼓舞して居ると云ふことでありまするから、それで此の豫算に於ける所の國務計畫に於きましても、此の日本人共生體に對する所の整理、鼓舞と云ふものが、其の時時の事情に應じて適切に行はれると云ふやうな、さう云ふ政治の出來るやうにと云ふことが、即ち豫算に於ける國務計畫の根本義であらうかと思ふのでありまするが、それは極めて抽象的に言ふことでありまして、さう云ふ一面、或は整理し、或は鼓舞すると云ふやうな、さう云ふこととしてどう云ふ政治をすべきかと云ふことは、それは迚も私共は實際に於て分りませぬ、唯學問的の立場で抽象的の言葉で言へと仰しやれば言へますけれども、併しそんなことは今の質問には意味がないから止めまして、要するにさう云ふ點から見て、兎に角必要な事柄が從來と違ひまして今後はあるのでありまするから、そこでさう云ふ點に於きまして兎に角取捨選擇をしなければならぬ、取捨選擇と云ふ意味が、總てのものを取上げる、總花と云ふ意味ぢやありませぬ、取捨です、取るものもあれば捨てるものもある、そこで總花主義と云ふことの主義になるのであらうか、さうでなしに取捨選擇主義と云ふことになるのであらうかと云ふことが、根本的の著眼點でありまするから、まあこんなことに付きまして、何か其の豫算の編成に付きまして改正をする、從來はどうも其の點が多小工合が惡かつたけれども、將來改正の目標に付て、さう云ふ點にも考へて此の豫算と云ふものを作るのだと云ふやうなことでありませうか、ちよつとまあ伺つて置きたいのであります、それから第五點と致しまして、是は一般論になるのでありまするけれども、豫算を改定せられむとするに際しまして、豫算編成に付ての豫算と云ふものの性質から見た道義性、豫算編成の道義性と云ふやうなものに付て、ちよつと御尋ね申したいと思ふのであります、それはまあ先刻來申しましたやうに、豫算と云ふものは、其の當該の一年に行はるべき國務計畫に關しまして、其の支出と收入と云ふやうなものを成るべく全面的に、而も組織立てて、さうして計算をすると云ふのが豫算であることは、是は言ふ迄もないことであります、それは單に行政内部の事務を處理すると云ふことに付てそれが便宜であると云ふのではないのであります、さう云ふ風に一年のことを成るべく全面的に組織立てて、さうして其處に計算をして置くと云ふことは、是は之に依つて以て國民をして、單に行政内部の行政事務の處理の爲のみでなしに、それもありますけれども、國民をして其の時の時々の自國の財政状態が全面的に如何になつて居るかと云ふことを知らしむるにそれが便宜である、政治的に言へばそれが必要である、斯う云ふ爲にさう云ふことになつて居るのでありますが、處が今日の我が國の豫算と云ふものは、總豫算の外に所謂特別會計豫算と云ふものもありまするし、又年々に追加豫算と云ふものも出る、特別會計豫算と云ふやうなものは、それぞれの理由がありまして出るのでありませうが、其のことは時間を取りまするから申しませぬが、特別會計の豫算の性質などは兎に角非常に澤山ある、是も必要が生じた所以は一々あるのでありませうが、先日本院に於きまして、此の所謂多數の特別會計法を廢止すると云ふさう云ふ案が出ましたときに、其の委員長の……又名を間違つたら失禮であります、御許しを願はなければならないのが、古市男爵と耳に挾みます、其の委員長の方の御報告に依りますと云ふと、尚二十二の特別會計法があるのでありますが、是等のものもそれぞれ今日迄無論存在の理由があるのでありますけれども、矢張り將來斯う云ふものに付きましては何等かどう云ふ意味を、どう云ふ風にすると云ふやうな一つの方策が立つて、一つ其の方策を實行するものとして各年度の豫算と云ふものが計畫せられなければならぬと私は思ふのであります、それから例の追加豫算も、是も固よりそれぞれの必要があるのでありまするのであつて、言ふ迄もなく豫算の經費に不足を生じた場合に追加豫算が許されて居るのでありますけれども、是も或は初めから總豫算を作る時に、是は追加豫算でやつたら宜いだらうと云ふやうな、初めから追加豫算と云ふやうなものに委ねると云ふやうなことを頭に持つて居ると云ふことはありはしないか、已むを得ず、避くべからざる經費に不足を生じたと云ふ爲に、後から生ずべき、考へらるべき追加豫算と云ふことが前以て考へられて、こいつは追加豫算に廻せと云ふやうな氣持がありはしないか、若それしがありますならば、是は法律上の意味に於きまして追加豫算の性質を根本から誤つて居るやうに思ふのであります、さう云ふ法律論は別として、兎に角今日の豫算の性質上、國務上の混亂を來すものでありますから、是等のことに付て政府の方々がどう云ふやうに御考になつて居つて、此の豫算を改正すると云ふやうな時に、何等かさう云ふ心配を、何等か考慮、斯う云ふ問題に思ひを致されたことがありはしないかと云ふやうなことを私は御尋ねするのであります、元來我が國の今日の豫算は、無論それぞれに適法と云ふ根據はありますけれども、頗る複雜になつて居る、それで是は一般國民は固より分りませぬ、只今申しました特別會計、追加豫算、總豫算と云ふやうなさう云ふ關係のみならず、其の豫算の編成と云ふ言葉は私は使はないが、もつと行政事務上の、事務的なことがあつて、豫算の調整に於きましても一般國民は到底分らないやうになつて居ります、款と項とは、是は憲法上意義ある區別でありますから重要視されるのでありまするけれども、併しながら其の款項の區別と云ふもの其のものは既に大藏大臣が之を定めるのである、又更に項を目に分ちます、無論是は憲法上の法則の意味はないにしても、兎に角目に分つのであるか、是等の時に、決して是は私はさう云ふことがあると申すのではありませぬが、所謂金を取扱ひます所の都合の好いやうに款項、項を定め、目に分つと云ふやうなことがありはしないか、款項目の分ち方と云ふものは、是は非常に重大なんで實際の豫算之に依つて、どんなに形の上で豫算が立派に出來ましても、是が所謂行政…低い意味に於ての行政技術的に出來て居るならば、此處でどうにでも誤魔化される、そこで是等の點に付ても何等か將來もつと根本的の問題に、國民の膏血と迄言へませぬけれども、國民の負擔と云ふものに於て、即ち此の豫算を編成して實質上、それでありますから、一厘一毛たりとも妄りに其の支出をしてはならぬと云ふやうな、さう云ふ眞の國士的の氣魄を以て此の豫算と云ふものを見る必要が非常にある、殊に、是は蛇足であると云ふことは私は分つて居りますけれども、ちよつと申上げたいのですが、戰時中に於ける所の色色な戰爭犯罪者と云ふものを、法律上頻に責めて居るし、政治的には我々は責めて居りますけれども、併しながらあの戰爭と云ふものを事實上可能ならしめたのは實は豫算の方法にある、而して其の豫算の方法に付きましては、單り政府のみを責めてはいかぬ、此の豫算を協贊しました所の議會は皆倶に是は責任を負はなければいかぬ、斯う云ふ點から致しまして、我々は將來の爲に此の豫算の調整の方法と云ふものに付きまして、もつと眞劍に研究調査すると云ふ必要はありはしないか、從つて政府に於かれましても將來此の豫算の調整方法と云ふもの、即ち進みましては調整より更にもつと高い段階に於ける所の追加豫算或は特別會計豫算との關係と云ふやうなことから、編成の方法、豫算の編成及び豫算の調整と云ふやうなさう云ふことに付きまして、更に一つ眞面目に討究をすると云ふこと、今來年度の爲の豫算だからどう斯う云ふことにせずに、一般に此の豫算の編成及び調整と云ふことに付て、國家の爲にもつと何等か適當なる方法がありはしないかと云ふことを一つ調査するやうな機關を御作になつたら如何だらうかと思つて、是も政府に御尋ねする、其の場合は固より政府の人、殊に行政官等は入らなければいかぬが、併しながら民間から有識な併し色々な人を入れまして、さうして茲に豫算の編成及び調整に關する所の根本的の調査機關と云ふやうなものを作られると云ふやうなことは、如何でありませうか、斯う云ふやうなことをまあ御尋ねするのであります、私は豫算と云ふやうなことに付きましては實は餘り能く存じませぬ、それで以上は私の學徒としての立場に於て研究して居りまする其の範圍に於ける材料に基いて言うたんでありまして、決して空言を言うた譯ちやありませぬですけれども、併し固より初めから御斷りして居りまするやうに、私の知識上、或は事情の認識上、誤つたことがあるかも知れませぬ、どうかさう云ふ點がありまするならば、遠慮なく御教へ願つて、さうして同時に私が御尋ねしたことに付て、簡單で宜いですけれども、御答へ願つたら大變幸ひだと思ふのであります(拍手)
〔國務大臣吉田茂君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=10
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011・吉田茂
○國務大臣(吉田茂君) 佐々木博士に御答へ致します、改定豫算の提出及び改正豫算提出の法的根據等に付きまして、縷縷御意見がございましたが、謹んで拜聽致しました、政府と致しましては、改定豫算を提出することは憲法上差支ないと云ふ見解から、提出致しましたのであります、又終戰の今日に於て改定豫算を提出することの必要已むを得ざりし事情もあるのでありますが、其の邊の詳細に付ては大藏大臣から詳細説明を致す筈であります、又私の施政方針の演説の中に財政計畫に付て相當觸れた考へでありますが、尚將來の施政方針等に於て更に一層詳しく財政計畫等に於て觸れるが宜しいと云ふ御注意は謹んで伺つて置きます、又豫算の編成の方法、經緯等に付きましては、御承知の如く大藏大臣が各省の要求に檢討を加へて、大藏大臣に於て豫算の原案を作り、更に之を閣議に於て有らゆる角度から研究致しまして、審議決定致す譯でありますが、殊に今年度に於きましては、終戰後の今日に於て、又御話の通りに日本再建の發足の第一年に於きましての豫算に於ては、各方面から日本再建の爲に要する費用等は十分研究致しまして取入れた筈であります、尚此の點に付ては十分御審議を願ひます、尚又本豫算、追加豫算、特別豫算等の調整方針等に付ての御意見も伺ひましたが、此の點に付ても大藏大臣から詳細説明がある筈でございます
〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=11
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012・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今の佐々木博士からの御質問に對しまして、總理からも御答へ致しましたが、尚私から申上げますと、改定豫算は先程も申上げましたやうに、憲法第七十一條に依る施行豫算に付きまして、其の款項金額の内不使用と致すべき費額を之に依つて決定致しますと共に、新たに必要とする費額を追加する行爲、此の二つを併せて行ふ形式を取つたのであります、從來豫算が不成立になりまして、前年度豫算を施行する場合に、之に基いて實行豫算を編成し、施行豫算の款項の一部を政府内部限りの考で不用と致しまして、更に必要額に付きましては、追加豫算を議會に提出して其の御承認を願ふと云ふことが永年我が國の行政慣行として認められて參りましたことは御承知の通りでありまして、此の場合に豫算の一部の不使用と云ふことを政府内部の考だけで決定すると云ふのが今迄のやり方でありますが、それを左樣に致さずに議會の協贊を經て確定的に定めると云ふことは何等差支ないことと考へられます、又追加豫算は申迄もなく會計法に依つて其の提出が認められて居る所でありまする、從つて此の二つを併せて改定豫算の形式で議會の協贊を求めると云ふことは憲法上何等差支がない、斯樣に考へる次第であります、のみならず御質問の第二點に觸れる譯でありますが、昭和二十一年度の財政と致しましては、先程説明の中にも簡單に申上げましたやうに、前年度の豫算を踏襲し、それに追加豫算を以て新しい必要なる費額の御協贊を願ふと云ふ形でありましては、如何にも財政の全貌が分らなく相成りまして、實際の處理の上にも非常に不便でありますし、又御質問の中にもありましたやうに、それでなくても甚だ分りにくい我が國の豫算が一層分りにくいものに本年度はなると云ふやうな嫌ひがございまして、斯樣な觀點から先程申上げましたやうに、今迄は政府内部限りで決定致して居りました、不使用の部分、それから追加豫算で御協贊を願ふ部分とを併せて改定豫算として御協贊を願ふことは、却て立憲的である、斯樣に考へて致したのでございます、尚今迄繼續費に付きましては、既に議會の協贊を經た年割額を減額する、又新たに所要額を追加する、斯う云ふことを致しまして、改定の形式で議會の協贊を求めて來たのであります、此の點から申しますと、今囘の改定豫算は豫算は豫算全體に付て繼續費改定の例を採つたとも見れば見らる、次第でございます、二十一年度に於て特に改定豫算を必要と政府が認めました理由は只今申上げたやうな次第でありますが、次に改定豫算の豫算其のものと、それから改定豫算を提出し得る法律案との時期が不當である、即ち此の法律が通過してから初めて改定豫算なるものが編成が出來、議會に提出が出來、議會に提出が出來る譯でありますが、それが一緒になつて居るのはどう云ふ譯かと云ふ御尋ねでありましたが、此の點は誠に一面から申しますと相濟まない次第でありますが、實は終戰後の色色の事情に依りまして、改定豫算の編成が甚だ遲れて居りました等の關係から、法律と豫算其のものとが殆ど同時期に議會に提出せらるるやうな事態に相成りました次第であります、併し是も從來、例へば増税案と、それから其の増税案に依る歳入に盛りました豫算とが同時に議會に提出されると云ふやうな先例もございましたので、其の先例必ずしも良いか惡いかと云ふことは別問題と致しまして、事情已むを得ず斯樣な時期の調整が十分に出來なかつたと云ふことも必ずしも違法又は不法とも考へて居なかつた次第でございます、それから第四點の改定豫算に付ては國務全體を目標として考へたか、或は又大藏大臣と豫算との關係と云ふやうな御質問であつたやうに思ひますが、是は先程總理大臣からも御答へ申上げましたやうに、改定豫算の編成に當りましては、特に終戰後の事情に鑑みまして、深く國務全體の上から豫算を編成致した譯であります、實は左樣な必要から改定豫算と云ふものを編成をしなければならぬ、又改定豫算を編成するのが適當であると考へたやうな譯でありまして、改定豫算を編成した其のことが國務全體を考へようと、又考へました一つの證據と御覽を願ひたいのであります、左樣な譯でありますから、編成に當りまして事務的な當務者としては無論官制上大藏大臣が之に當つた次第でありますが、豫算全般に付きましては、全閣僚の十分な協議に依りまして按排を致した次第でございます、最後に特別會計及び追加豫算の問題でございます、特別會計は現在まだ相當數が殘つて居りますが、是は一般會計と合併致したのでは却て財政全般が明瞭でなくなる不都合を來す、斯樣なもののみに特別會計は限る譯でありまして、尚現在殘つて居ります特別會計も、追て整理の出來るものは之を整理致したいと考へて居る次第でございます、又追加豫算の方は、是は全く已むを得ず追加に相成る譯でありまして、決して初まりから總豫算に入れ得べきものを追加豫算に廻はすと云ふやうなことは從來も認めて居らなかつたと存じますが、我々も左樣なことは致して居りませぬ、唯既に左樣な費用の必要なことは分つて居りましても、其の金額をはつきり確定することが出來ないと云ふ場合がなかなか起るのであります、而も總豫算、即ち本年度に於きましては改定豫算を提出致しますのには其の時機がございまして、成るべく早く是も提出致さなければならぬ、其の提出する迄に此の部分の費額がはつきり決め得ないと云ふやうなことがございまして、已むなく是が追加豫算に廻はるやうな次第でございます、是も今後段々斯樣な終戰直後の色々の混雜が一應鎭靜致しまして、豫算編成の仕事が常態化するに至りますれば、次第に斯樣な追加豫算の必要は減じて來るものと考へて居る次第であります、それから同時に豫算調整上の御意見と御質問がございましたが、是は私共も常に痛感を致して居る次第で、御意見の通り今日の日本の豫算なるものはなかなか分り難いものになつて居ります、是では實は國務にも支障を生ずる譯でありますし、一般國民が豫算に對して關心を持ち得ない理由と考へますので、目下政府は之を改める考を以ちまして研究を進めて居る次第であります、出來れば明年度からでも、一つ新しい方式を採つて行きたいと只今勉強を致しち居る次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=12
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013・佐々木惣一
○佐々木惣一君 簡單ですから此處で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=14
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015・佐々木惣一
○佐々木惣一君 只今私の質問に對しまして、總理大臣及び大藏大臣より御答辯下さつて有難うございます、實は私の問を以て問に答へられて居られることが多いやうでありますが、さう云ふことを一々申上げて居つては時間が掛りますから、是で質問は終へて置きますが、唯其の内で尚御聽きして置きたいのは、此の改定豫算なるものが憲法違反でない、それからして此の改定豫算に關する法律案がまだ成立して居ないのに、其の法律に基いて初めて提出し得る改定豫算を議會に提出することは別に違法ぢやない、是は大藏大臣だけのことである、殊に租税と、租税に基く計算を豫算案に入れると云ふやうなことを申しますが、それは全然違ふのでありまして、租税の問題と此の場合と違ふのです、私共此の點は全然御承認することが出來ないのです、今の御答辯ではそれだけのことを申上げて置きます、他の問題に付ても御尋ねしたいことがありましても、今日は是で質問を打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=15
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016・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 佐々木君、只今の御答辯を御求になつたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=16
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017・佐々木惣一
○佐々木惣一君 さうではありませぬ、別に答辯をして戴ければ結構でありますけれども、それでは長くなりませうから是で質問を打切ります、唯其の御説明はどうも承認出來ないと云ふことだけを、特に其の點を明かにして置くと云ふだけのことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=17
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018・秋田重季
○子爵秋田重季君 只今議題となりました改定豫算に關する法律案の特別委員の數を十九名と致し、議長に於て指名致されむことの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=18
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019・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 秋田子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=20
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021・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
改定豫算に關する法律案特別委員
公爵 桂廣太郎君 侯爵 大炊御門經輝君
伯爵 黒田清君 子爵 保科正昭君
子爵 綾小路護君 子爵 稻垣長賢君
永井松三君 河井彌八君
松村眞一郎君 男爵 久保田敬一君
男爵 稻田昌植君 男爵 古市六三君
黒田英雄君 諸橋久太郎君
奧村嘉藏君 片岡直方君
長島銀藏君 男爵 坂本大造君
木下謙次郎君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 一昨十日政府より提出せられました電氣事業法の一部を改正する法律案を此の際議事日程に追加して第一讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=22
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023・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、小林商工政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=23
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024・会議録情報3
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電氣事業法の一部を改正する法律案
右
勅旨を奉じて帝國議會に提出する。
昭和二十一年八月十日
内閣總理大臣 吉田茂
商工大臣 星島二郎
大藏大臣 石橋湛山
…………………………………
電氣事業法の一部を改正する法律案
電氣事業法の一部を、次のやうに改正する。
第一條第二號及び第三號を次のやうに改める。
二 前號の事業に電氣を供給する事業
第十五條の二 電氣を使用する爲の器具、機械其の他電氣用品の效用の増進又は危險の防止に關する事項は命令を以て之を定む
第十五條の三 主務大臣は電氣の需給を調節する爲必要ありと認むる場合に於ては電氣事業者又は電氣使用者に對し地域、用途又は其の他の事項を指定して電氣の供給若は使用を制限し又は其の制限の爲必要なる措置を命ずることを得
第十六條第二項、第二十一條及び第二十六條の二第一項中「第一條第一號又は第三號の」を削る。
第十七條第二項を同條第三項とし、同條第一項中「電氣事業者」を「第一條第二號の電氣事業者」に改め、同項を第二項とし、同條第一項として左の一項を加へる。
主務大臣は第一條第一號の電氣事業者の電氣料金を決定す
第十八條 第一條第一號の電氣事業會社の資本金額の變更及利益金の處分の決議は主務大臣の認可を受くるに非されば其の效力を生ぜず前項の電氣事業會社の取締役及監査役の選任は主務大臣の認可を受くるに非されば其の效力を生ぜず
第十九條 電氣事業會社の社債權者は當該會社の財産に付他の債權者に先ちて自己の債權の辨濟を受くる權利を有す
前項の先取特權の順位は民法上の一般の先取特權に次ぐ
第二十四條 主務大臣は公益上必要ありと認むる場合に於ては電氣設備の效用を増進し又は電氣の需給を調節する爲電氣事業者又は第三十條第一項の規定に依る電氣施設者に對し左の事項を命ずることを得
一 電氣工作物の施設、變更、共用若は貸借又は工事に關する期間の伸縮
二 電氣の生産、供給、受入又は託送
前項の命令に因り必要を生じたる工事費用の負擔其の他の事項は關係電氣事業者又は第三十條第一項の規定に依る電氣施設者間の協議に依る協議調はず又は協議を爲すこと能はざるときは主務大臣之を裁定す
第二十五條の二 電氣事業者は命令の定むる所に依り主務大臣の認可を受くるに非ざれば事業設備を讓渡し又は所有權以外の權利の目的と爲すことを得ず
第二十九條第一項中「第一條第一號又は第三號の事業」を「電氣事業」に改める。
第三十一條第二項中「及第三十五條乃至第三十八條」を「第三十四條乃至第三十七條、第三十九條及第四十條」に改める。
第三十二條 主務大臣の諮問に應じ又は其の諮問を俟たずして電氣事業に關する重要事項を調査審議する爲中央電氣委員會を置く
中央電氣委員會は電氣事業に關する事項に付關係大臣に建議することを得
主務大臣は發電及送電の豫定計畫若は電氣料金に關する事項の決定又は第十五條の三、第二十四條第一項、第二十六條の二第一項若は第二十八條第一項の規定に依る命令若は處分にして重要なるものに付ては中央電氣委員會の議を經べし
第三十二條の二 中央電氣委員會は電氣事業者(法人なるときは其の代表者)、電氣事業從業者、電氣使用者(法人なるときは其の代表者)、貴族院議員、衆議院議員、學識經驗者及關係各廳官吏の中より命ぜられたる委員竝に委員の互選に依る委員長を以て之を組織す
中央電氣委員會には專門委員其の他必要なる職員を置くことを得
第三十二條の三 地方に於ける電氣の需給の調節、電氣の普及又は電氣施設若は電氣供給業務の改善其の他電氣事業の運營に關し行政官廳の諮問に應ずる爲地方電氣委員會を置く
第三十二條の四 中央電氣委員會又は地方電氣委員會は電氣事業者に對し必要なる資料の提供又は閲覽を求むることを得
第三十二條の五 前四條に定むるものの外中央電氣委員會及地方電氣委員會に關する事項は勅令を以て之を定む
第三十四條 第三條第一項の規定に違反し許可を受けずして電氣事業を營みたる者は五千圓以下の罰金に處す
第三十五條 左の各號の一に該當する者は三千圓以下の罰金に處す
一 第三條第二項の規定に依る許可を受けずして同條第一項の書類に掲ぐる事項中重要なるものを變更したる者
二 第十六條第一項の規定に依る許可を受けずして供給事業の全部又は一部を休止し又は廢止したる者
三 第二十五條第一項の規定に依る認可を受けずして事業の全部又は一部を讓渡したる者
四 第二十六條の規定に依る認可を受けずして合併を爲したる者
五 第二十六條の二第一項の規定に依る命令に違反したる者
第三十六條 左の各號の一に該當する者は千圓以下の罰金に處す
一 第五條の規定に依る認可を受けずして工事を施行し又は電氣工作物を使用したる者
二 第十三條、第十五條の二若は第三十條第一項の規定に基きて發する命令又は第十七條第三項、第二十三條第二項若は第二十四條第一項の規定に依る命令に違反したる者
三 第十五條第一項の規定に違反して電氣の供給を拒みたる者
四 第十五條の三の規定に依る制限又は命令に違反したる者
五 第十七條第二項の規定に依る認可を受けずして電氣料金其の他供給條件を設定し又は變更したる者
六 第二十一條の規定に依る認可を受けずして他の事業を營みたる者
七 第二十五條の二の規定に依る認可を受けずして事業設備を讓渡し又は所有權以外の權利の目的と爲したる者
第三十七條 第二十三條第一項の規定に依る檢査を拒み、妨げ若は忌避し又は報告を爲さず若は虚僞の報告を爲したる者は五百圓以下の罰金に處す
第三十八條 電氣事業者の承諾を得ずして濫に電氣工作物の施設を變更したる者は五百圓以下の罰金又は科料に處す
第三十九條 法人又は人は其の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の法人又は人の業務に關し第三十四條乃至第三十六條又は第三十七條後段の違反行爲を爲したるときは自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免かるることを得ず
第四十條 第三十四條乃至第三十六條及第三十七條後段の罰則は其の者が法人なるときは取締役其の他の法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
附 則
この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
この法律施行前になした從前の規定に基く行爲に對する罰則の適用については、從前の規定は、なほその效力を有する。
この法律施行前に從前の第十九條の規定により拂ひ込んだ株金額を超えて募集した社債については、當分の間商法第二百九十七條の規定を適用しない。
電力管理法の一部を次のやうに改正する。
第五條 削除
配電統制令は、これを廢止する。
配電統制令廢止前に、同令による配電事業の統制のためにする經營を目的とする株式會社は、株式總會の決議により、主務大臣の認可を受け、その會社が、配電事業の統制のためにする經營を目的としない電氣事業會社となるについて必要な定款の變更その他の手續をすることができる。
前項の決議は、商法第三百四十三條の規定によらなければ、これをなすことができない。
第六項の認可を受けようとするときは、認可申請書に株主總會の議事録の謄本を添へなければならない。
配電統制令による配電事業の統制のためにする經營を目的とする株式會社(第六項の規定により、配電事業の統制のためにする經營を目的としない電氣事業會社となつたものを含む。以下配電株式會社といふ。)の、同令第二條第二項又は第二十六條第一項の規定による出資又は譲渡をなした者に對する一定金額の支拂及び配電株式會社に對する法人税の輕減については、同令第三十四條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
工場財團、鐵道財團又は軌道財團に屬するもので、配電統制令第四十五條の規定により、原財團に屬するものとされたものについては、同條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
配電統制令第四十六條第一項の規定により供託した擔保及び同條第二項の質權については、同條の規定は、この法律施行後も、なほその效力を有する。
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〔政府委員小林かなえ君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=24
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025・小林かなえ
○政府委員(小林かなえ君) 只今議題になりました電氣事業法中改正法律案の趣旨を簡單に御説明申上げます、國家總動員法に基く配電統制令及び電力調整令の二勅令は來る十月一日より失效することとなりますので、其の中今後も存置するを適當と認められる規定を電氣事業法中に織込むと同時に、新たに電氣委員會に關する規定を設ける爲、電氣事業法を改正せむとするものであります、其の要點を申上げますれば次の通りであります、第一は配電統制令に規定せられた配電會社に關する規定の一部を電氣事業法中に追加しようとする點であります、配電會社は今後も獨占的公益事業として存續せしめる必要がありますので、政府の之に對する監督及び保護に遺憾なきを期する爲、電氣事業法に必要なる改正を加へむとするのであります、第二は電力調整令中の必要な規定を織込む點であります、最近電力の需要は急激に増加致しまして、今年の冬には渇水の程度及び發電用石炭の入手状況如何に依りましては、相當の電力消費制限をする必要があると考へられるのであります、我が國の水力發電の出力は渇水期と豐水期とに依りまして著しい差があります關係上、今後も當分冬の渇水期には電力制限を行はねばならない場合が多いと豫想されますので、今囘電氣事業法を改正致しまして、電力の消費竝に供給制限に關する規定を設けようとするのでございます、第三は電氣委員會の設置に關する點でございます、電氣事業として直接國民生活に對し、又基礎産業として廣く各種の産業に對し至大の關係を持つて居るものでありますから、電氣事業に關する重要事項に付きましては、電氣に關係ある各方面の意見を十分に反映せしめる必要がありますので、此の際從來の電力審議會及び電力調整委員會を廢止致しまして、新たに中央地方に電氣委員會を設け、今後新しい見地から電力問題を審議する機關として活用して參りたいと考へるのでございます、以上電氣事業法中改正法律案の趣旨の説明を終ります、何卒御審議の上速かに協贊あらせられむことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=25
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026・秋田重季
○子爵秋田重季君 只今議題となりました電氣事業法中改正法律案の特別委員の數を十九名とし、其の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=26
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027・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 秋田子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名は選定次第御報告致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=29
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030・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第二より日程第五迄の請願、會議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=30
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031・会議録情報4
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意見書案
七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道敷設の件
石川縣七尾市長松川長康呈出
右の請願は七尾線七尾、氷見線氷見の兩驛間に鐵道を敷設するは地方産業の開發と輸送力の強化に寄與するのみならす七尾、伏木の兩港を連絡して日本海海運の發展に資する所大なるに依り速に之か實現を圖り以て新生日本の發展興隆に貢獻せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵 徳川家正
内閣總理大臣 吉田茂殿
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意見書案
豫定線上總龜山、上總中野間鐵道速成の件
千葉縣夷隅郡老川村長永島勘
左衞門外六名呈出
右の請願は房總半島の中部を横斷する豫定線木原線は上總龜山、上總中野間僅々六哩を殘して工事休止となり爲に首尾の連絡を得さるは甚た遺憾なるに依り速に之か實現を圖り以て地方産業の開發に資すると共に鐵道本來の機能を發揮せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵 徳川家正
内閣總理大臣 吉田茂殿
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意見書案
津輕環状線鐵道速成竝經由地變更に關する件
青森縣東津輕郡一本木村長田中金兵衞外七名呈出
右の請願は未成線鐵道津輕環状線鐵道は大東亞戰爭の爲工事中止となり沿線地方に於ける豐富なる水、陸資源も空しく放置されあるは甚た遺憾なるに依り當初の計畫通り津輕郡蟹田町より平舘村、一本木村等を經由する海岸線に變更の上速に同鐵道を敷設し以て地方文化の進展と産業開發に資せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵 徳川家正
内閣總理大臣 吉田茂殿
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意見書案
瀬棚線瀬棚、岩内線岩内の兩驛間に鐵道敷設の件
北海道岩内郡岩内町長淺野目浦吉外九名呈出
右の請願は瀬棚線瀬棚驛より壽都を經て岩内線岩内驛に至る鐵道を敷設するは沿線地方に於ける豐富なる海産及農、林、鑛産の資源開發上裨益する所大なるのみならす運輸交通上亦須要なるに依り速に之か實現を圖り以て地方産業の伸展に資せられたしとの旨趣にして貴族院は願意の大體は採擇すへきものと議決致候因て議院法第六十五條に依り別册及送付候也
昭和二十一年 月 日
貴族院議長 公爵 徳川家正
内閣總理大臣 吉田茂殿
―――――――――――――――――――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=31
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032・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是等の請願は請願委員長の報告通り、採擇することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十一時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X01819460812&spkNum=33
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