1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十一年九月二十日(金曜日)午前十時五分開議
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議事日程 第三十四號
昭和二十一年九月二十日
午前十時開議
第一 昭和十九年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第二 昭和十九年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第三 昭和十九年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第四 昭和十九年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第五 昭和二十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第六 昭和二十年度豫備金外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第七 昭和二十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第八 昭和二十年度特別會計豫備金外支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第九 昭和二十年度緊急財政處分に依る支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第十 昭和二十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第十一 昭和二十一年度緊急財政處分に依る支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第十二 昭和二十一年度緊急對策費第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(衆議院送付) 會 議
第十三 東京都制の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十四 市制の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十五 町村制の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十六 府縣制の一部を改正する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十七 衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十八 勞働關係調整法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=0
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001・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 去る十七日、橋本萬右衞門君貴族院令第一條第六號に依り貴族院議員に任ぜられました、就きましては部屬を第二部に定めました、又一昨十八日高木八尺君、萱野長知君貴族院令第一條第四號に依り貴族院議員に任ぜられました、就きましては部屬を高木君を第三部に、萱野君を第四部に各各編入致しました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=1
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002・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 其の他諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=2
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003・会議録情報2
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〔參照〕
去る十七日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案
同日本院に於て承諾することを議決したる左の政府提出案は即日之を奏上し又承諾することを議決したる旨を衆議院に通知せり
食糧緊急措置令(承諾を求むる件)
同日本院に於て採擇することを議決したる北海道枝幸船入澗修築の請願外二十件の請願は各各意見書を附し即日之を政府に送付せり
同日委員長より左の報告書を提出せり
地方競馬法案可決報告書
同日内閣總理大臣より左の通第九十囘帝國議會政府委員仰付けられたる旨の通牒を受領せり
厚生省所管事務政府委員
引揚援護院次長 高辻武邦君
一 昨十八日委員長より左の報告書を提出せり
東京都制の一部を改正する法律案可決報告書
市制の一部を改正する法律案可決報告書
町村制の一部を改正する法律案可決報告書
府縣制の一部を改正する法律案可決報告書
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案可決報告書
請願文書表(第十二囘報告)
昨十九日委員長より左の報告書を提出せり
勞働關係調整法案可決報告書
同日衆議院より左の政府提出案を受領せり
昭和十九年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十九年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和十九年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)
昭和十九年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十年度豫備金外支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十年度特別會計豫備金外支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十年度緊急財政處分に依る支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十一年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十一年度緊急財政處分に依る支出の件(承諾を求むる件)
昭和二十一年度緊急對策費第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=3
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004・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 是より本日の會議を開きます、昨十九日、帝國憲法改正案特別委員野村嘉六君より委員辭任の申出がございました、許可を致して御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=4
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005・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、就きましては補闕として高木八尺君を指名致します
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=5
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006・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第一、昭和十九年度第一豫備金支出の件、日程第二、昭和十九年度特別會計第一豫備金支出の件、日程第三、昭和十九年度特別會計豫備費支出の件、日程第四、昭和十九年度特別會計第二豫備金支出の件、日程第五、昭和二十年度第二豫備金支出の件、日程第六、昭和二十年度豫備金外支出の件、日程第七、昭和二十年度特別會計第二豫備金支出の件、日程第八、昭和二十年度特別會計豫備金外支出の件、日程第九、昭和二十年度緊急財政處分に依る支出の件、日程第十、昭和二十一年度第二豫備金支出の件、日程第十一、昭和二十一年度緊急財政處分に依る支出の件、日程第十二、昭和二十一年度緊急對策費第一豫備金支出の件、承諾を求むる件、衆議院送付、會議、是等十二件を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=6
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007・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、石橋大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=7
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008・会議録情報3
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昭和十九年度第一豫備金支出の件
昭和十九年度特別會計第一豫備金支出の件
昭和十九年度特別會計豫備費支出の件
昭和十九年度特別會計第二豫備金支出の件
昭和二十年度第二豫備金支出の件
昭和二十年度豫備金外支出の件
昭和二十年度特別會計第二豫備金支出の件
昭和二十年度特別會計豫備金外支出の件
昭和二十年度緊急財政處分に依る支出の件
昭和二十一年度第二豫備金支出の件
昭和二十一年度緊急財政處分に依る支出の件
昭和二十一年度緊急對策費第一豫備金支出の件
右は本院において承諾と議決した、因つて議院法第五十四條により送付する
昭和二十一年九月十九日
衆議院議長 山崎猛
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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〔各案は掲載を略す〕
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〔國務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=8
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009・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今議題に供せられました昭和十九年度第一豫備金支出の件外事後承諾を求むる件十一件に付、大體の御説明を申上げます、昭和十九年度一般會計第一豫備金の豫算額は一億四千萬圓でありまして、内會計規則等戰時特例第三十二條の二に依り補充致しました金額は一億三千七十餘萬圓でございます、今其の重要なる事項を申述べますれば、戰時事變臨時手當、軍事扶助費、徴兵旅費、戰時災害保護費、警察費連帶支辨金等でございます、次に昭和十九年度に於て其の第一豫備金より豫算超過支出を致しました特別會計は、朝鮮總督府、朝鮮簡易生命保險及郵便年金、臺灣總督府、臺灣食糧管理、樺太廳、造幣局、專賣局、金資金、損害保險國營再保險、陸軍造兵廠、厚生保險、勞働者災害扶助責任保險、關東局、食糧管理、薪炭需給調節、農業家蓄再保險、漁船再保險、燃料局、通信事業、簡易生命保險及郵便年金の二十特別會計でございます、又其の豫備費より豫算超過支出を致しましたものは、帝國鐵道、通信事業の二特別會計であります、又昭和十九年度に於て其の第二豫備金を以て豫算外支出を致しましたものは、帝國鐵道特別會計でございます、次に昭和二十年度一般會計第二豫備金の豫算額は二十億圓でございますが、内昭和二十年四月十七日から同二十一年二月五日に至る間に於きまして、其の全額を支出致しました、其の重要なる事項は終戰前に支出致しましたものと致しましては、防空緊急施設諸費、鹽及樟腦緊急増産對策費、食糧増産應急諸費、林産物生産緊急施設費等でありまして、又終戰後に支出致しましたものと致しましては、外國爲替損失補償金、動員學徒援護會事業費補助補足、食糧増産對策諸費、臨時醫療施設諸費等でございます、次に昭和二十年度一般會計に於て豫備金外に國庫剩餘金を以て豫算外支出を致しました金額は一億八千萬餘圓であります、其の主要なるものは蔬菜類に對する價格調整補給金、北海道臨時國有林増伐諸費、財産税等創設準備諸費、政府職員臨時給與等でございます、次に昭和二十年度に於て其の第二豫備金を以て豫算外支出を致しました特別會計は朝鮮總督府、臺灣總督府、樺太廳、關東局、通信事業、厚生保險、帝國鐵道の七會計でございます、又豫備金外に於て其の國庫剩餘金其の他の歳入金、昭和二十一年勅令第百十一號及同第百八十號即ち緊急財政處分に依る借入金、公債金又は資金を以て豫算超過又は豫算外支出を致しましたものに、朝鮮總督府、臺灣總督府、印刷局、専賣局、大藏省預金部、通信事業、簡易生命保險及郵便年金、厚生保險、薪炭需給調節、漁船再保險、帝國鐵道の十一特別會計があるのであります、次に昭和二十年度一般會計に於て緊急財政處分に依り支出を致しました金額は四十三億七千五百八十餘萬圓でございます、是は昭和二十一年勅令第百二十七號、第百五十九號及第百七十九號に依りまして、昭和二十年度歳入歳出豫算實行上の歳入超過額を財源と致し、豫算超過及豫算外支出を致したものでございます、今其の重要なる事項を申上げますれば、復員諸費、船舶運營會損失補償及補助、價格調整補給金、食糧増産對策諸費、風水害應急復舊諸費、河川災害復舊費、政府職員臨時給與、地方職員臨時給與補助、都市疎開事業費補助等でございます、次に昭和二十一年度一般會計施行豫算に於ける第二豫備金の豫算額は二十億圓でございますが、内昭和二十一年四月十六日より同年四月二十三日に至る間に於て其の全額を支出致しました、其の主要なる事項は、終戰處理費、復員諸費、引揚民對策諸費、蔬菜價格調整補給金、石炭價格調整補給金、救濟福祉事業費補助、政府職員給與特別措置費等でございます、次に昭和二十一年度一般會計に於て、緊急財政處分に依りまして支出を致しました金額は二十一億二千三百萬圓でございます、是は昭和二十一年勅令第二百四十二號に依り豫算外支出を致したものであります、今其の主要なる事項を申述べますれば、復員諸費、終戰處理費、石炭價格調整補給金、歸還輸送費等でございます、次に昭和二十一年度一般會計施行豫算に於ける緊急對策費第一豫備金の豫算額は二十億圓でありまして、内會計規則等戰時特例第三十二條の二に依りまして補充致しました金額は四億圓でございます、さうして昭和二十年度に於て府縣の立替支辨致したる戰時災害保護法に依る保護費でございます、尚昭和二十一年度一般會計に於て施行豫算計上の第二豫備金、又は緊急對策費第一豫備金より支出致しました金額及緊急財政處分に依り支出致しました金額は別途提出の改定豫算に關する法律に依りまして、昭和二十一年度改定豫算の定額より支出致したものと看做されることになつて居る次第であります、以上簡略でございますが、昭和十九年度第一豫備金支出の件外事後承諾を求むる件十一件に付ての御説明を申上げた次第であります、何卒御審議の上、速かに御承諾を下さらむことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=9
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010・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました昭和十九年度第一豫備金支出の件外十一件の特別委員の數を十五名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=10
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011・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=11
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012・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=12
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013・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
昭和十九年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外十一件特別委員
侯爵 大炊御門經輝君 侯爵 大久保利謙君
伯爵 前田利男君 子爵 植村家治君
子爵 藤井兼誼君 子爵 牧野忠永君
男爵 高崎弓彦君 男爵 内田敏雄君
男爵 水谷川忠麿君 中村藤兵衞君
坂田幹太君 塩田團平君
畠山一清君 奧主一郎君
岩元達一君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=13
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014・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第十三、東京都制の一部を改正する法律案、日程第十四、市制の一部を改正する法律案、日程第十五、町村制の一部を改正する法律案、日程第十六、府縣制の一部を改正する法律案、日程第十七、衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、是等の五案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=14
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015・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、委員長白根竹介君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=15
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016・会議録情報4
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東京都制の一部を改正する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十八日
委員長 白根竹介
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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市制の一部を改正する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十八日
委員長 白根竹介
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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町村制の一部を改正する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十八日
委員長 白根竹介
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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府縣制の一部を改正する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十八日
委員長 白根竹介
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十八日
委員長 白根竹介
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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〔白根竹介君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=16
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017・白根竹介
○白根竹介君 只今より本委員會の經過竝に結果を御報告致します、委員會は九月四日に開會致しまして、前後八囘審議を重ねました、去る十八日東京都制の一部を改正する法律案外自治に關する法律案三件は、四案共に衆議院修正の原案通り可決致しました、衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案は政府の原案通り可決致しました、先づ内務大臣から五案の説明がありまして、殊に自治制度の問題に付ては詳細な説明がございました、簡單に申上げますと、此の法律案は終戰後の國情に即應して、現行諸法制の下に於て、新憲法草案の精神を出來る限り採り入れて地方自治の民主化を圖つたものであります、其の主なる點を申上げますと、自治體の住民の行政に參與する權利を飛躍的に擴大して居るのであります、或は選擧資格を衆議院並に致しまして、男女共に二十歳に低下致し、又被選擧資格も擴大致しました、又自治體の首長たる知事、都長官、市長、町村長等を直接選擧するの權利を住民に認めました、又是等の者の解職、地方議會の解散請求權を認め、其の他條例規則の制定、或は自治事務監査の請求權等を住民に認めまして、所謂住民に直接參政の途を拓いたのであります、是が一番大きい所であります、尚又選擧管理委員會を常設致しまして、從來執行機關の權限にありました選擧の事務を獨立の機關と致しました、又監査委員と云ふものを常設して、自治事務の監査を行はしむることに致しました、其の他地方議會の權限を擴張し、定例會を毎年六囘開くと云ふことに致しました、又北海道を府縣並に取扱ひまして、現在の府縣制を道府縣制と名を改めたやうな次第であります、それ等の原案に對する衆議院の修正は、箇條に致しまして四十箇條に上つて居るのでありまして、相當多くの點に修正が加へられて居りまして、此の委員會の審議はなかなか面倒でありました、其の主なる點を申上げますと、都道府縣の首長を官吏とす、と云ふ規定が政府原案にはございますが、それを削除致しまして、首長の身分は改正憲法實施の時迄官吏とす、と云ふ風に附則に規定せられたのであります、又政府原案では、府縣知事の場合で申しますと云ふと、其の解職をする規定は、府縣會議員の選擧權を有する者の總數の五分の一以上の者の連署を以て代表者から内務大臣に對して免官の請求をした時には、内務大臣は關係者の出頭を求めて、之を審査して、其の理由ありと認める時は内閣總理大臣に報告し、内閣總理大臣は其の報告に依つて免官の奏請を爲すべし、と云ふ風になつて居りますのを、衆議院では右連署者の數を五分の一と云ふのを三分の一に高めまして、内務大臣に請求をしないで、直ちに府縣の選擧管理委員會に對して免官の請求を爲して、其の請求のありました時には、管理委員會は、府縣會議員選擧人の一般の投票に付すべし、と云ふことになつて居りまして、其の投票に於て若し其の知事が過半數の同意を選擧人から得られますると云ふと、其の官を失ふと云ふことになりました、尚之に伴つて首長の地位の安定性を考慮致しまして、其の請求は知事就職後一箇年間、又は投票後一筒年間は出來ないことにしてあります、右と同樣の趣旨の修正が府縣會議員選擧管理委員、監査委員等の解職の場合等に付ても爲さるるのであります、又選擧管理委員會、監査委員の獨立性を更に強化致しまして、それぞれ首長の監督を受けないことにしました、都會、府縣會、市町村會、東京都の區會の議員の定數を増加修正して居ります、又市町村長に其の管内の各種團體、例へば農會とか、商工會とか云ふものの活動の綜合調整を圖る爲、之を指導監督するの權能を與へまして、現行規定を更に強化したことと、同時に之を市町村會の決議事項としたのであります、東京都の區長を區民の直接選擧にしましたことであります、是等の修正に對しまして、政府の所見を質しました處、政府は、衆議院の修正を尊重し、且提案の根本趣旨に反するものではないからして、運用上困ることはないと云ふ言明でありました、是から其の間に於ける質疑應答の主なものを申上げます、漏れたる點は速記録に依つて御了承を願ひます、先づ知事を何故直ちに公吏としなかつたかと云ふ質問に對しまして、知事を公選とすれば公吏が本筋である、併しながら現行制度の下に於ては、知事のする仕事は地方の自治事務の分量よりも國家事務の分量の方が多いからして、只今の處は公吏としては運用が不都合な所が多いと思ふ、併し近き將來に於て、自治體を強化する意味に於て國の事務を、例へば警察行政、或は教育、保健衞生、財政、勞務等の國の行政を大幅に自治體若しくは知事に委讓する積りであるからして、其の時に公吏としたい、斯う云ふ問題は内務省だけの問題ではなくて、各省に亙ることでありますからして、憲法實施前に各方面の意見を採入れて、地方制度調査會と云ふやうなものを設けて、成るべく早き機會に第二次の地方制度改正をしたいと思ふ、さうして名實共に完全な自治權を確立しよう、さう云ふ風になりますと云ふと、中央政府と云ふものは、委讓した事務に付きましては、全國的基準を設けたり、各團體間の調整、情報の蒐集、分配等を爲すことにならうと云ふ答辯であります、知事公選の制度は、選擧人から選擧された知事が官吏であつて、さうして其の官吏が今申しました所の解職請求權に依つて一般から官吏を剥奪されてしまつて知事の地位を失ふ、さう云ふことは憲法に違反するのではないかと云ふ質問に對しまして、憲法十條に、「天皇は」「文武官を任免す、但し此の憲法又は他の法律に特例を掲けたるものは各各其の條項に依る」、其の特例に該當するのであるからして決して憲法違反ではない、知事の解職請求權が住民に在る爲に其の位置が不安定ではないかと云ふことに付きましては、衆議院は連署者數を原案の五分の一を三分の一に高めましたし、又一般投票に依つて過半數を占めた場合でなければ解職されないのであるからして、まあそんな心配はないと思ふ、尚此の衆議院の修正に依りますと云ふと、憲法實施の時に既に知事である者は當然其の職を失ふのだが、其の間に實施後との間に何か法律を作らなければ位置が中ぶらりんになりはしないか、それは特別の規定を設ける積りである、それから地方の自治權の膨脹に伴ひまして、地方の財政が隨分負擔が大きくなるが、其の財源に付てはどう云ふ風に考へて居るが、之に付ては、府縣に住民税を新しく設けますし、又市町村の住民税も増徴する、國税附加税の率も増加する、使用料、手數料も増徴する、尚不足の額は配付税の増額に依つて「バランス」を取る、尚分與税の方法を現在の實情に即したやうに改正をする、尚其の外に國税附加税の制限外課税と云ふものがあるのであるからしてまあまあ大概賄つて行かれると思ふ、併し尚不十分な場合には、是は國の財政と關係を持つものであるからして十分早い機會に國税地方税を通じて改正をしたいと思ふ、起債の取扱ひはどうするのだ、只今は起債の發行額と云ふものは金融全體に關係しますからして地方だけに莫大に委す譯に行かない、前よりは餘程窮屈にならう、配電事業の如き收益事業は「サーヴィス」の上から言つても、亦財源の上から言つても公共團體に持たしたら宜いのぢやないかと思ふがどうか、是は電氣事業法の改正を待つて其の機會に能く檢討して見よう、一體今度の地方制度の改正で地方事務の分量は殖へたのか減つたのか、減つたことはないのだらうけれどもどの位殖へたのだ、差當り形の上では餘り變つて居ない、市長が住民から選擧せられる結果、住民の「バック」を持つことになりますし、又府縣會の權限が擴充されますから運用上は餘程自主性が強くなつたと思ふ、又行政警察の委讓はどの程度にするのだ、自分の試みとしては消防とか衞生、風俗等の警察事務は成るべく地方團體に委任したいと思ふ、併し治安維持に關係あるものはどうもさう云ふ譯に行きませぬ、折角地方の自治體を強化しても、地方には色々の中央官廳直屬の官廳がありまして、此の官廳が此の機會に權限を擴大することになると地方の自治體の仕事は壓迫される、さう云ふことに付ては餘程今度の改正の時に政府として注意を拂つて貰はなくちやならぬ、折角の自治體の強化が弱化になる虞はないかと云ふやうなことに付て強き注意がありました、それから市町村長が今度は市町村外の農會とか、商工會に對して指揮監督することになりましたので、それを無茶苦茶にやると云ふと本來の監督系統を亂すやうなことになりはしないか、それに抵觸することがありはしないか、是は運用上餘程圓滿にやつて行かなければならぬと思ふ、若し市町村長の處分が不當であれば是は監督官廳が取消すことが出來ますし、又其處迄行かなくても、市町村長が言ふことを聽かないやうな場合には其の當該監督官廳に事情を具陳することも出來るし、適當に運用が出來ると思ふ、地方事務局、地方事務所をどうするのだ、地方事務局、地方事務所は衆議院の希望にもありました通り、事務局の方は廢止する、地方事務所の方は其の地方々々に依つて色々事情が異るからして地方々々の事情に委せる、人口其の他文化施設等の都市集中に對して何か之を抑制する方法はないか、之に付ては内務省として只今小規模の國土計畫をやつて居る、そこで今小さい研究をして居るけれども、こんな小さいものでは駄目であるからして、將來は國土計畫審議會と云ふやうなものを作つてやつて行きたい、是から此の秋から冬に掛けて非常に澤山選擧が行はれる、府縣會議員の選擧、市町村會議員の選擧、都長官の選擧、知事の選擧色々の選擧が行はれるのでありますが、選擧が延びるに從つて色々の弊害が續出して、地方行政に紛更を來す虞があるからして成るべく早くやらぬか、内務省としては地方の主任官の會議を屡屡やりまして、諸般の準備を整へて居るし、先づ此の法案が順調に可決されて行きますと、此の十二月から來年の三月初め頃迄に其の選擧は完了したいと思ふ、名簿に前の衆議院議員選擧の時に大分手落があつたが、今度はああ云ふやうにしないやうにして貰ひたいと云ふやうな注意がありまして、名簿に付ては今度は衆議院議員の選擧が大分利用出來るのでありますからして、まあ愼重を期して調整しまして間違ひないやうにしたい、將來は名簿は一定の原簿を作つて、登録名簿と云ふやうなものを作つて置いて、それに依つて其の時々の加除修正の、又他に名簿を作つて二本建にしてやつて行きたいと思ふ、我が國の現状ではまだ市町村住民の政治意識が非常に低い、殊に女子に於てさうである、仍て頻繁に行はれる所の各種の選擧に、果して我々が期待して居るやうな立派な人物が出、又公正な方法を講ずることが出來るかどうか非常に懸念に堪へない、と云ふのは是は委員殆ど皆一致した觀念でありましたが、政府は之に對してどう考へるか、政府としては此の改正憲法、又は地方制度の改正の機會に急速に一般民の啓蒙運動を起す、内閣と文部省が中心になつて、内務省が協力して大啓蒙運動を起す、併し今迄の行き方のやうでなく、官僚的でなく民主的にやる積りだ、將來は各地方の公民館等を利用して、それを中心として政治的訓練をしたいと思ふ、選擧には隨分紙が澤山要るが、其の手當はどうだ、又「ポスター」等無駄なものが出やしないかと思ふが、其の邊に付てはどう云ふやうにして居るか、紙の手配は既に考慮して居る、實施に當りましては「ポスター」等は申合せで以て制限をして行きたいと思ふ、選擧費用が隨分掛るのだが、それを節減する方法はないか、或は候補者の濫立を防ぐ方法はないかと云ふやうなこともありましたが、選擧費用の方はまあ選擧公營の面からも能く考へて行きたい、費用の制限は自治體の選擧にもやつて見たいと思ふ、知事の公選に付ては大體衆議院の一候補者竝の費用ではないかと思ふ、候補者濫立と云ふ方は政黨が發達すれば、事實上段々それを防ぐことが出來やしないかと思ふ、現任知事が立候補出來ることになりましたのですが、それに對して政府はどう云ふ方針を持つて居るか、是は止めもしないし、奬勵もしない、唯地位の濫用の虞があるから、細心の注意を要することで、恐らくは第三者の推薦と云ふことが多くなるであらう、町村其の他の名譽職とか、公民權と云ふものを外したのはどうだ、公民權に付ては住民の中から公民權を持つて居る者と然らざる者と二つ出來るのは、此の時世に副はないからして是は廢めたのだ、名譽職を廢めたのは、矢張り財的力のない者が此の自治體の事務に參與することは出來ないと云ふやうな觀念が出來るからして、さう云ふ區別は廢めて、之も相當の自治體の事務に携はる者は相當の報酬を出すことにした、刑餘者、前科者の選擧權は與へても宜いのではないか、是は他の法令とも色々關係があるからして、今度の改正にはそれは削除しなかつた、元通りにした、それから當選者の資格審査の標準と云ふものを事前に發表して貰はないと、非常に混亂を來すがどうか、是は能く調べて事前に發表する積りだ、議員の定數を各團體共に引上げたのは、是は時代逆行ぢやないか、少數の方が宜いと思ふけれども、又考へ方に依つては民主的の訓練を多數の者に與へると云ふ意味から言つても、是は理由があることと思ふ、市長などの國家的待遇は如何にも低いし、他の者の市長其の他の公務員にも國家的待遇を與へて宜いと思ふがどうだ、是は何れ官吏の待遇問題と云ふものは今日の時世に於ては再檢討を要するものであつて、公務員も官吏と同じ待遇にすべきものであらうと思ふ、近く制定せらるべき公務員法と同時に研究しようと思ふ、其の他知事が官吏たる部下を使ふことが出來るか、部下の統率に困るぢやないか、或は吏僚制度の確立、公務員の訓練等に關聯して質問がございました、又教員が此の度は現職の儘知事にもなれると云ふことになつた、是は政治と教育と混淆する虞はないか、之に對して、國民學校の教員は其の團體から給與を受けるものであるからして、それが出來ないのであるが、まあ其の職務の分量を比較して見まして、非常に困るやうな場合にはどつちかを辭めさせなければならぬだらう、殊に教員に付ては身分上の監督權を外で持つて居るから差支ないことと思ふ、選擧管理委員會竝に監査委員と云ふものに付て獨立性を與へた結果、執行機關たる知事、市町村長等の權限を阻害するやうなことがありはしないか、併し執行機關の權限に付ては從來よりも餘程強化してあるからして、又一方に於てさう云ふ獨立性を持つ機關があると云ふことは、行政の公正を期する上に於て必要であるからして是はそんな心配はないと思ふ、道州制を設けてはどうか、是は諸般の情勢に鑑みまして、まだ時期は早いと思ふ、但し府縣「ブロック」の弊は十分是正して行きたい、大都市の特別市制をどうするか、東京都の外にまだ特別市制を布いて宜いやうな所が澤山あるがどうするか、是は近い將來に地方制度調査會と云ふものを設けて其所で研究して見たい、又東京都の區が今度は非常に強化されたのであります、其の自治權の範圍はどうしたものだ、是は東京都の一體性を害さざる程度に於て、都の條例で以て其の範圍を決めるべきである、財源はどうするか、區税を認めましたし、又都から區に對する交付金等に依つて賄つて行く、起債は許すのか、區債は大體營造物を目的とする起債が多く、それのみに限りたいと思ふが、結局起債の償還財源は營造物の使用料で賄へる程度に止めたいと思ふ、東京都の廢置分合と云ふことは必要と思ふがどうなつて居るか、是は現在戰災を蒙つて、或區の如きは一萬で、或區の如きは四十萬人と云ふ非常に凸凹になつて居るが、此の次の選擧迄に之を何とか調整して行き、適當に廢置分合をしたいと云ふ意味で只今東京都の方で研究中である、町内會、部落會を法制化する意思はないか、是は目下發達しつつあるのであるから今直ちに法制化するのはどうかと思ふ、唯町内會長、部落會町の事實上の負擔が非常に重いから是は成べく輕くしてやつて、例へば啓蒙運動の如きは町内會長にさせないことにしたいと思ふ、それから最後に、四法律案を見ますと可なり共通の規定が澤山ある、將來共通したものは一括して一つの法制に建直す意思はないかと云ふ質問に對しまして、新憲法にも地方自治のことが明定されて居るからして、自治性に付ても將來一本の法律を作ることが必要だと思ふ、是は直ぐやると云ふ譯には行かないからして暫く時間を假して貰ひたいと云ふやうな大體の質問應答があつたのであります、それから自治制度に關する四案を議題としまして先づ討論に入りました、一委員から、大都市に特別市制を布くと云ふ法律案を成るたけ早く提出して貰ひたい、又實現するやうにやつて貰ひたいと云ふ熱心なる希望がありまして、内務大臣は此のことは既に衆議院の希望にもありますし、又衆議院の委員會でもやると云ふことを言明して居る、又新聞にも聲明をして居るのであるから、出來るだけ早く實現したいと思ふと云ふ御答辯がありました、尚他の委員よりも發言がありまして、此の四つは衆議院の修正原案の通り可決した次第であります、それから衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案を付議致しまして、是にも贊成の演説がありまして、是も何等修正なく原案通り可決致した次第であります、右御報告申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=17
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018・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 討論の通告がございます、男爵松平外與麿君
〔男爵松平外與麿君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=18
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019・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 只今上程せられました都制、市制、町村制竝に府縣制の一部改正に關する法律案に付きまして自分は贊意を表する次第でありますが、自分の希望を若干申述べたいと思ひます、此の諸法案が本會議に上程されました時にも申したのでありますが、此の新しき思想、非常な進歩的、非常な自由な、民主的、此の新しき制度が生れ出まして是から新しき發足をするに當りましては、從來の國家行政と地方行政との間が餘程違つて參ります、從つて從來の觀念の下に此の新しき法制に對處したならば、却て過ちが起りはしないかと思ひます、此の意味に於きまして所謂國家行政と地方行政とは今後一層緊密の連絡を持ち、足らざる所は補ひ、餘れる所は之を省くと云ふ意味で、お互ひの協力的態度を以て行きませぬければ、折角出來ました所の美しき制度は其の效果を見ることは出來ないと思ふのであります、殊に先程委員長の御報告にございました通り、例へば例を申しますると、知事の身分の問題に付きまして、知事を何故直ちに公吏にしなかつたかと云ふ質問がありました時に、所謂知事は現在官吏で國家の行政事務を多量に持つて居る、此の一面から考へましても所謂國の委任事務と地方の固有事務との關係と云ふものを、此の際餘程英斷的に御考を願はなければ、此の新しき制度の發足は非常に困難にならうと思ひます、どうぞ此の委任事務と固有事務の按配に付きましては、從來の因襲、從來の慣行、從來の權限爭ひ、是等を全部御破算にしまして、白紙に還つて新しき氣分の下に之に對して善處せられむことを希望する次第であります、其の次には先程もございましたが、現在の政府直結機關の數の非常に多いことであります、一例を申しますが、現場關係を除きまして他の各省の關係を見ますると、全國に四百七十一箇所もあるのであります、是は全部國費支辨の國家の直結機關であります、此の直結機關と云ふものを整理することは當然起るべき問題であります、各部門を見ましても比較的に多いのは農林關係であります、農林關係が其の中二百二十七箇所持つて居るのであります、斯う云ふやうな配置を考へ、又新しき制度の運用の上に於て是等を整理按配する場合に於て、所謂各省の權限爭ひを固執したならば決して好い效果は得られませぬ、内務大臣に於かれましては、各省との關係はございませうけれども、是等の政府の直結機關の整理敢行と云ふものを一大英斷を以て、飽く迄も初志を貫くだけの度胸と熱意とを以て之を爲さいませぬければ、恐らく其の效果を得ることは出來ないと思ひます、是は特に御願ひ致したいと思ひます、第三番目には先程もございましたが、地方財政の確立であります、是はどうしても爲さねばならぬと思ひます、今迄の地方財政の根本、竝に國家的の之に對する財政上の補助、是等の問題はございますけれども、是から將來十年二十年の先を考へて見ます場合、果して今日の制度を以て滿足すべきや否や、是は非常な疑問であります、寧ろ新しく是亦御破算にしまして、國税と地方税と云ふものに對する新しき所の制度、新しい方針と云ふものを確立せられまして、それに依つて斷行されますならば始めて地方の財政と云ふものは從來に比して確實となります、又國家財政もそれ等の相手方をなくなしまして、國家財政は國家だけの支辨に充當すると云ふので、分野が非常に明確化する感じが致すのであります、此の點を考へられまして、どうしても地方財政と云ふものは此の際十分なる御研究の下に、大藏省當局と御研究下さいまして、立派なる所の税制と云ふものの確立を切に希望する次第であります、以上三點の希望を以ちまして、私は本案、各原案に贊成する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=19
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020・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 中川望君
〔中川望君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=20
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021・中川望
○中川望君 私は過般來本議案に關する委員の一人として審査に當つて居りましたが、其の間に於ける感想の一端を述べて本案に對する衆議院の修正案に贊成の意を表したいと存じます、今囘政府提出の地方制度改正案は一部改正と稱せられては居りますが、其の實體は根本的革新と申すべきものでありまして、新憲法の制定と相竝んで最も重大なる事業と存じます、御承知の如く、我が國に於ける地方自治制の制定は明治二十一年でありまして、只今より八年前即ち昭和十四年の四月十七日宮城前廣場に於きまして、内務大臣主催の下に全國より一萬三千の代表者列席の上、聖上陛下の親臨を仰ぎまして自治制發布五十周年記念式典が擧げられました、是こそ昭代の盛儀、盛典と謳はれたことは國民の記憶に新たなる所であります、明治維新の鴻業中憲法竝に地方自治制の制定は其の雙璧と稱せられまして最も重要なるものでありました、從つて憲法に於ける伊藤公に對し、地方自治に於ける山縣公は何人も聯想して共に其の功績を偲ぶ所であります、明治十六年山縣公が内務卿に就任せられて、先づ力を注いだのが是でありまして、當時五箇條の御誓文に基く自由民權の叫びに應じて、憲法の制定が公約せられたに付て、立憲制の實施に當つては先づ地方自治の制を建てて之を以て國家の基礎を鞏固にする必要があると共に、國民をして政治參與に習熟せしむる要ありとして之が制定を急いだ次第であります、而して當時我が國國政運營の基本的方向に合致する如く、中央集權の色彩極めて濃厚なる「プロイセン」の地方自治制度に範を採つたものであります、又府縣の制度は徹底的に獨佛等大陸系統の官治行政主義に則つて組立てられたものでありまして、府縣が不完全自治體と謂はれたのも正に其の所以であります、我が國自治制度の確立運營が爾來國家の發展に貢獻したる所大なるものであることは、記念式典に於ける治績見るべきものありとの御言葉に明かであります、五十餘年の間に我が地方制度は時代の思潮と要求とに應じまして十數囘の改正を經て居りますが、今次の改正こそは現行諸制度に對する正に百八十度の方向轉換であります、即ち「ドイツ」流の中央集權主義を基調とし、官治統制を建前とする從來の地方制度を、地方分權主義を基調とし、住民の自治の思想を根幹とする英米流の地方制度に切換へると云ふことでありまして、誠に並々ならぬ努力を要する大事業であります、さりながら今や我が國は「ポツダム」宣言受諾の大方針に則つて、國政全般の徹底的なる民主化を圖ることに相成つたのであります、惟ふに聯合國の期待する所は從來好戰國、侵略國と目されたる日本國をして、永久に眞に平和を愛好する民主國たらしめむとする所にありませう、之が爲には假令戰爭を抛棄すると申しても、實際に於て戰爭の出來ない仕組にすることが要望せらる、譯でありませう、即ち新憲法の精神に基いて茲に打ち建てらるべき我が國地方制度は徹底的に地方分權主義であり、住民自治に徹しなければならぬとせらる、所以であると存じます、前申す如く從來の我が地方制度は主として「プロシァ」の制度に傚つたものでありますが、之に付て想ひ起すことは從來米國の政治學者の日本觀であります、今其の一例を申上げますれば、日本の政治組織は多くの點に於て「プロシァ」の専制的政治組織に類似して居る、それは人民に依る政治たるよりも寧ろ人民の爲の政治である、米國の憲法制定當時に「モンテスキュー」が尊重せられ、植民地時代の政治に英國の政治組織が踏襲せらるべき理想や模範を提供したやうに、日本では「ビスマルク」が神の使者であり、「プロシァ」人と「プロシァ」憲法等が其の模範を爲すものであつた、伊藤公も英國の制度は成文法でないから、其の儘寫し取つて歸れなかつたであらうと云ふことも申して居ります、尚更に「ドイツ」が模範とせられたのは、何等怪しむに足らない、氣風から言つても「ドイツ」人と日本人とは過去に於ても現在に於ても多分に共通點を持つて居る、國家主義、帝國主義、軍國主義、形式主義、法律崇拜、體系組織、能率尊重、是等の點に於て兩國民は共通性を有し、又有して來た、是が從來よりの米國人の日本觀の一つであつたことは注目すべき點であると思はれます、扨、立憲制竝に自治制に付ては、何と申しても英國が其の模範であることは「グナイスト」以來の定論でありまして、今更申す迄もありませぬが、米國のそれは如何であつた、又現在如何でありませうか、「キリスト」教國に於ける最惡のものは米國の市役所である、最も浪費的で、最も非能率で、且つ最も腐敗せるものである、是は米國の都市行政學者が千八百九十年に「アメリカ」の市政に對して痛罵を與へた原因であります、只今より五十六年前のことであります、其の後も所謂「ターマネー」黨の名と、其の政治家の公器を私する「スポイル・システム」とは天下周知のことであります、去りながら米國市民の覺醒と輿論の動きに依る、自治權擁護運動に依つて著々自治制は改善せられました、彼の少數理事者に依る市政、即ち委員制度、「コンミテイ・システム」、是より進展したる支配人制度、是等の制度は周く米國各地に採用せられる外、海を越えて「ヨーロッパ」大陸にも之に傚ふものを見るに至つて居ります、更に最も注意すべきは、住民自治の眞諦とも稱すべき住民の一般投票に依る請求權、即ち議會の解散を請求する「レフェレンダム」、自治體の首長竝に議員の解職を請求する「リコール」、竝に條例若しくは規則の制定を請求する「イニシヤチーブ」、是等の三制度の如きは、實に廣く外國に範を示すものとして米國自治制の誇りとする所であります、以上申述べましたる所を以て、只今議題と致して居りまする地方自治制改正案を通覽すれば、政府原案と言ひ、亦衆議院の修正と言ひ、孰れも洩れなく此の精神に副うて企畫立案せられたるものと云ふことが明白であります、唯政府原案に付ては、過般本會議に於ける質問中にもありました通り、此の提案は餘りに急ぎ過ぎては居らぬか、新憲法の確定を待つて熟慮考案を盡くして提案すべきではなかつたかと云ふことでありまするが、去りながら時々刻々遷り變るとも申すべき此の頃の情勢下に於きましては、一日も速かに國家の基本法を改定して、國家再建の準備を整へることは「ジー・エッチ・キュー」の熱望する所でありませうし、衆議院が此の情勢を達觀して、寧ろ此の際禍を轉じて福と爲す一大決心を以て、勇躍政府原案に一大修正を加へて、理想の實現に驀進したるものと察せられます、蓋し「ジー・エッチ・キュー」の期待に副ふものと存ずる次第であります、而も率直に申せば、政府原案にも、衆議院の修正にも體系の必ずしも整はぬものもあると思はれまするが、是も今囘勿々の際に企てられた改正としては誠に已むを得ぬことと存ずるものであります、而して政府は引續き第二次の地方制度の改正を次の議會でしようと云ふことでありまするので、今次改正に於て彼此階調の整はざる點、民主化の尚不徹底なる點等に於ても其の際十分再檢討を加へらるると共に、徒に理念に趨つて全く我が國情に副はざるが如き結果に相成らぬやうな、十分に御配慮あらむことを望むものであります、尚本改正案の實施に當つて特に政府の考慮を煩したき希望事項に付きましては、只今委員長の報告竝に松平男爵の御演説中にも現れて居りまするが、此の際私も特に御願ひ致したいと存じまするので、一二點を附加へることを御許を得たく存じます、第一に、今囘の改正は根本的革新でありまして、我が國民に取つては全く新規の制度であります、從つて國民竝に自治當局者に於て、果して能く其の運營を誤ることなきや否や、多年自治改善のことに微力を致して居りまする私と致しまして、甚だ懸念に堪へぬものがあるのであります、徹底的住民自治の精神が正しく國民の間に了解せられ、自治當局者亦新制度の眞髓に徹して、運營の衝に當り得ると云ふ點に付ては、先づ以て政府に於て、速かに今次改正の趣旨の普及徹底と其の訓練とに施策を要するものと信じます、而して之に付ては一時的の宣傳に止めず、繼續的、計畫的方法を講じて、是が實施に努力をせらる、ことは、極めて必要なる事項と信じます、第二に制度運營の成果の大部分は、當局其の人に依るのであります、政府に於ては此の機會に新たに公務員制を制定せらるる由でありますが、從來の公吏の實績に鑑みられまして、公務員精神の向上を主眼とし、其の任務の遂行に對する責任觀を深からしむる點に、十分なる考慮を廻らされまして、且公務員に對する不斷の訓練を施し、制度實施に遺憾なからしむるやう留意あらむことを希望して已みませぬ、第三に、前にも申述べました通り、米國に於ては自治行政の刷新に付て、啻に制度の改正に依るのみならず、市民の覺醒に依つて、自治行政の腐敗防止、弊風刷新を圖つたのであります、是が爲に各自治體の市政調査會、市政刷新倶樂部とも申すべき、幾多の團體が成立して熱心に調査研究を遂げて、改善の實を擧げつつあるのであります、政府に於きましては、此の諸施設の實現、奬勵、指導せらるることも亦必要なることと存ずる次第であります、以上の希望を附して本修正案に贊成する次第でありまするが、終に臨んで本件に關し、今春來今日に至る迄、内務大臣初め内務當局の容易ならざる御努力に對して敬意を表し、向後一層の御奮勵を祈る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=21
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022・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 他に御發言もなければ五案の採決を致します、五案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=22
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023・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=23
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024・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=24
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025・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=25
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026・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=26
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027・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=27
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028・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 五案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、五案全部委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=28
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029・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=29
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030・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=30
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031・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=31
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032・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=32
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033・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=33
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034・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 五案の第三讀會を開きます、五案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=34
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035・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=35
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036・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 日程第十八、勞働關係調整法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、渡邊男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=36
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037・会議録情報5
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勞働關係調整法案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十一年九月十九日
委員長 男爵 渡邊修二
貴族院議長 公爵 徳川家正殿
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〔男爵渡邊修二君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=37
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038・渡邊修二
○男爵渡邊修二君 勞働關係調整法案特別委員會の經過竝に結果を御報告致します、本法案の内容を簡單に申上げますれば、勞働爭議が發生したる場合に勞働委員會をして斡旋、調停及び仲裁を爲さしめ、爭議を公正迅速に解決せむとするものであります、而して尚勞働爭議權に最小限度の制限を加へまして、公共事業に付きましては所謂拔打爭議を禁止し、三十日間の餘裕を與へむとし、且警察官吏、消防職員、監獄勤務者、官公吏等の爭議行爲を禁止して公共の福祉を擁護せむとするものであります、特別委員會は本月七日委員長、副委員長の互選を行ひ、昨十九日迄七囘開催致しまして、政府當局と委員との間に熱心なる質疑應答を重ね、又懇談會を開きまして、愼重審議の末、本法案は原案通り可決すべきものと議決せられました、先づ河合厚生大臣より本法案の説明を聽き、次で質疑に入りました、質疑應答の集中せられましたのは次の諸問題でありました、第一は賃金に付てでありました、我が國では目下賃金の不合理が許されて居り、原價計算の採れない賃金で出鱈目であるが、賃金制度に付政府の所見は如何と云ふ質疑に對しまして、政府は賃金問題に付て國家が指導することはむづかしい、最低賃金は通貨にも物價にも安定なき時は定むることはむづかしい、最高賃金を指定すればそれに吸收せらる、故に、最高最低共に指定出來ない旨の答辯でありました、次は勞働者は唯高額の賃金を得れば宜いと考へて居ります、企業者と勞働者とが業績が良ければ株主の配當も良くし、勞働者の賃金も良くするやうにする方が現下の状況上宜しくはないかと云ふ質疑に對しまして、政府は、社會の秩序は明確に定むべきものでありまして、將來の目標は資本と勞力とは繩のやうになつて進むべきものと思ひます、利潤無き時は賃金が無くなり、勞働者が利潤の有無に依り賃金の高低を生ずれば、勞働者の生活權は危くなります、是では宜くないと思ふ旨の答辯でありました、次に賃金は資本主義又は社會主義の孰れに依つて之を定めむとするかと云ふ質疑に對しまして、政府は、組合側では生活權の保障を主張し、經營者側では、生産能率を考へて能率賃金を望むで居りますが、生活賃金のみでは宜しくなく、之に能率賃金を加味すべきと思ふ旨の答辯がありました、次に我が國では今迄形式賃金が行はれて居りますが、今後は如何にすべきかとの質疑に對しまして、政府は、物價指數に依る賃金、「カロリー」に依る賃金を定めざるべからず、只今は之を定むる意思なき旨の答辯でありました、第二は、家族手當に付てであります、家族手當は生産に關係なき者に支給すべきものであるから之を續行すれば日本の産業は危くならう、政府の所見如何と云ふ質疑に對しまして、政府は、家族手當の膨脹は終戰後起りました正當化すべきものと思ひます、一面に於て食べて行けなければ仕方がないから之を中止することは今直ちに出來ませぬ、生活保護の面に於て何とかすべきと思ひますが、變動期が濟みましたならば解決に努力すべき旨の答辯でありました、第三は、經營協議會に付てでありました、經營協議會は勞資の間に於て行はれて居るが、株主と經營者との間にも之を開く必要があると思ふ、目下我が國に於ては使用者は孤立して居り、使用者組合の結成を促進すべきではないかと云ふ質疑に對しまして、政府は、勞働權と經營權とは別々に考へて居ります、事實上の問題としては工場經營には勞務を無視することは出來ませぬ、生産の實行上勞働者と折衝の必要があり、經營權は十分尊重するも、使用者團體の結成に付ては事實上民主主義の實行上勞務者の方面を早くする必要があつて、勞働組合法を先に制定しました、事業者の方は、組織的になつて居りますから、後になつた旨の答辯がありました、第四は、勞働爭議の現状に付ての問題であります、勞働爭議の現状如何と云ふ質疑に對して、政府は、勞働爭議は昨年十二月から増加致しました、昨年九月十月は一箇月二件、十二月は百件、本年一月二月には各各二百件、三月四月は百數十件でありまして、二月が頂上でありました、昨年十二月から物價が上り、現實に生活が苦しくなりましたのと、民主主義とで俄に自由になつたのと相俟つて爭議が起つたのであります、三月に封鎖制度が採られたので少し落付き、事業主も自發的に賃金の値上を致しました、三月から經營民主化の傾向が現れまして、經營協議會の問題が起りました、爭議は「メーデー」が頂上でありましたと思はれる、六月は食糧爭議で、七月八月は爭議衰へ、最近は減じました、國鐵、海員組合の爭議は消極的爭議で、首切心配の爭議であり、勞働者側から見れば失業不安の爭議でありましたが、爭議も漸次軌道に乘つたと思はれる旨の答辯がありました、第五は、爭議行爲の正當性に付であります、國鐵「ゼネスト」が行はれむとするに際しまして、國鐵「ゼネスト」特別時間表を發表したり、馘首絶對反對と列車に大書したる等は犯罪を構成すると思はれるが、政府の所見は如何と云ふ質疑に對しまして、政府は斯かる行爲は事實に依り能く調べて判斷すべきであるが、大體犯罪を構成すると思ふ旨の答辯でありました、次に爭議に際し暴行、脅迫、侮辱、虚僞の宣傳等を爲す行爲が、個人であれば罰せられるが、爭議行爲として之を爲す時は如何、特に司法當局の見解如何と云ふ質問に對しまして、政府は、勞働組合法第一條に方向を示してあります、正當なる爭議行爲のみが行爲の違法性を阻却されるものでありまして、最近の爭議行爲は行過ぎである、勞働者の反省を要すると思ふ、今後は取締をする旨の答辯がありました、次に同情罷業に付て政府の所見如何との質疑に對しまして、政府は、唯の同情罷業は好みませぬが、具體的の對策は今考へて居りませぬ旨の答辯でありました、第六は勞働爭議の解決方法に付てであります、調停に付裁判所に勞務爭議部を置き、調停を取扱はしめてはどうか、又調停に代る裁判を認めては如何との質疑に對しまして、政府は、爭議を裁判所にかけなかつたのは、爭議は法律問題でなく事實問題であり、根本は勞務者の生活權に基礎を置いて居り、個人は生活には徹底せる權利を有するが故に、裁判所にて定められることを欲しない、只今の處勞資共協調的態度を望んで居ると思ふ旨の答辯でありました、第七は生産管理に付てであります、生産管理を合法的にやれば宜しく、非合法的にやればいけないではないか、如何との質疑に對しまして、政府は、生産管理に合法、非合法ありと云ふが如きは大衆には分りませぬ、政府の謂ふ生産管理は所有權を犯し、相手方を害するものを意味する旨の答辯でありました、又生産管理は、生産「サボタージ」に對應してやつて居ると思はれるが如何との質疑に對しまして、政府は、生産管理は生産「サボタージを原因とせずして起つて居ります、財産權の侵犯あるものが生産管理と思ひます、侵犯なきものは生産管理でありませぬ、故に生産管理は今後取締つて行かうと思ふ旨の答辯でありました、次に生産管理を認めざる理由如何と云ふ質疑に對しまして、政府は生産管理は根本的に考ふれば、個人は生存權、勤勞權を有しまして、又財産權を有します、財産權に伴ふものは經營權でありまして、多人數が同時に權利を享有すべきであります、從つて他人の權利を尊重すべきであるのであります、此處に公共の福祉があります、一つの工場では勞働權と、經營權とがあり、承諾を得ざれば互に犯すことを得ない、從つて他人の權利を犯すことは出來ませぬ、故に財産權侵害のある生産管理は正當でない旨の答辯でありました、第八は、失業對策に付てであります、新憲法には勤勞の權利、義務が定められて居るに拘らず、職を求めて求められず、働かむとして働くことの出來ない現状であるが、對策は如何と云ふ質疑に對しまして、政府は、勤勞の機會を與へることは勤勞署に於て取扱つて居ります、豫算も六十億圓取つてありますから、之に依つて實行をしませう、都市方面に六億圓位使用出來ると思ひます、道路の修繕等を考へ補導所、共同作業所、工場「アパート」等を考へて居ります、又一般の産業にも關係がありますので、殊に石炭増産を考慮して居ります、大正六年の失業の時も、地方的に吸收せられまして、大した失業者は出さなかつた旨の答辯がありました、右の外重要なる質疑應答は澤山ありましたが、之を省略致しまして速記録に讓りたいと思ひます、斯くして質疑を終りまして、討論に入りました處、三委員より原案贊成の意見の開陳がありまして、採決に入り、本法案は全會一致、原案通り可決すべきものと議決されました、以上を以て報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=38
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039・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 別に御發言もなければ本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
異議〔「なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=39
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040・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=40
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041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=41
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042・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=42
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043・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=43
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044・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=44
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045・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=45
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046・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=46
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047・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=47
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048・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=48
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049・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=49
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050・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=50
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051・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=51
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052・徳川家正
○議長(公爵徳川家正君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は、決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午前十一時二十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003242X03419460920&spkNum=52
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