1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○郵便貯金法等の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月二十七日(土曜日)午前十時十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=1
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002・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) それでは會議を始めます、昨日は郵便貯金に關して御質疑があつたのでありますが、尚此の點に付きまして御質問になりたい方がお有りでございましたら、どうぞ御續けを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=2
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003・江口文雄
○江口文雄君 先日の本會議の席上で、小山委員の質問に對して大臣は郵便配達の遲著或は電報の遲延等に付きまして、極力善處をすると云ふ御言葉がありました、尚昨日からの委員會の各質問に對して犯罪防止、其の他の點に付きましても、十分善處をすると云ふ御言葉がありましたし、近く又全國を行脚されて、各郵便局に直接當つて、尚其の萬全を期すると云ふ御言葉があつたのでございますけれども、唯それだけでは、私達は十分ではなからうと云ふ風に考へます、例へば各地方の裁判所に於きまして、聽訴所と云ふものを設けられまして、司法行政の完璧を期せられて居ります、且又、勤勞署に於きましては連絡員の設置が實現致しまして、勤勞行政の完璧を期して居ります、近く又、警察制度改善に於きましては、委員竝に地方の警察署には參與制度を設けて、警察行政の完璧を期すると云ふことに邁進して居られるやうでございますが、斯う云ふことは犯罪防止、或は事故の防止、其の外一般に民衆では分らない諸種の手續等の連絡、或は遞信行政の運營を完璧にする爲に、遞信省に於きましても、さう云ふ風な制度を新たに設けてはどうかと云ふ風に考へる譯であります、尚又昨日來、各委員から速達郵便の遲延、或は電報の遲著と云ふことに對しまして、痛烈に御希望があつた譯でありますが、是等に對しましても、現實に速達の遲延の場合は、其の速達料金は拂戻しする、或は電報の遲著に付きましても、其の料金の拂戻し、甚だしきに至りましては、電報でありながら、列車で其の電報を運送すると云ふ場合があるやうな風評を聞いて居りますが、さう云ふ風な場合には、多額の電報料金を取りつつ汽車に於て之を運送する、さうして其の儘其の料金を取つて置くと云ふのは、不都合ではないかと云ふ風に考へる譯でございますから、實現の方法と致しましては、さう云ふ風なものは拂戻制度を新しく設けられてはどうか、それから今度郵便料金の値上に付きまして實際速達郵便の遲著、或は電報の遲延と云ふ風なものを緩和する爲に、簡易保險の民營を今度計畫されて居りますが、それに準じて大都市に於きましては「メッセンヂャー・ボーイ」も至極結構ではなからうか、斯く致しましたならば、一般民衆の受くる利便と云ふものは、非常に大なるものでありまして、郵便事故の不備を、之に依つて補ふことが出來はしないかと云ふ風に考へる譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=3
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004・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今江口委員の御質問に關しまして、最後の方でちよつと聽き取れなかつた點がございますから、其の點は、私御答へ申上げまして、御答が出來ない所は更に御質問を續けて戴きたいと云ふことを御願ひして置きまして、只今の御質問に御答へ致します、犯罪防止に關して、若しくは其の省の行政に關して、民衆に不便、不利を與へるとか、或は其の他の障碍になることを除去する爲に、色々な手段方法を各省とも考へて居る、就中、司法省の聽訴所とか、或は内務省の方面の參與制とか云ふやうなものを設けて、それ等の不都合を除去することに付て、民間の聲を聽くと云ふことは宜いことであるが、遞信省では其の點に付てどう考へて居るかと云ふ御質問でございました、之に付きましては、只今遞信省の各局に遞信相談所と云ふものを設けて置きまして、さう云ふやうなことを十分に民衆から承りまして、其の不都合な所を是正し、民衆の聲を聽いて、改善すべきことは改善すると云ふ制度を採つて居ります、併し私は、まだ是だけでは十分に滿足を致して居りませぬ、只今、省の關係局課長などと色々相談を致して居りまするが、犯罪捜査若しくは摘發と云ふやうなことに關しましては、遞信省内に監察の方面を掌る職責のある者を設置して居りまして、それ等の者が其の方に從事し得ると云ふことにもなつて居りますが、之を一つ擴大強化して、さう云ふ點に付ては、司法警察官の職務迄も行ふことが出來るやうにしてはどうかと云ふやうなことを今考慮して居りまして、之に依つて遞信内部の者の犯罪とかと云ふやうなものを、檢擧することは勿論、遞信省の遞信行政に關して、外部から行はれるやうな犯罪等に付ても之を搜査し、さうして取調をして司法當局に送ると云ふやうなことも、實は今、考へて居ります、只今、江口委員の御注意の點は、御尤もであらうと私は思ふのでございますから、それは一つ急速に善處したい、斯樣に考へて居ります、それから料金の拂戻の點、速達料を取りながら、速達でなくて普通よりも遲れて著いた、或は至急報の料金を取りながら、其の電報が大變遲配したと云ふやうな場合に、其の料金を返すと云ふやうなことを考へてはどうか、大變好い御注意でありまして、私も感謝して居りますが、丁度鐵道省の汽車に乘りまして、急行料を取つたものが、二時間其の豫定の時間より遲れた時分には、急行料を返すと云ふ制度が今あることは御承知の通りでございますが、斯う云ふやうなことは私は好いことだと思ひます、是は遞信省の係員が自分の職責に於て料金を取りながら、其の料金通りに運ばなかつたと云ふ場合には、相當の時間内にそれが送達が出來なかつたと云ふやうな時には、是は拂戻と云ふことは當然でないかと云ふやうなことも考へて居ります、是は一つ、十分に研究致しまして、成たけ御意見に副ふやうに善處致したいと思ひますが、御承知のやうに豫算にも關係致しますことでありますから、出來得べき限り、其の御厚意を採入れまして善處したいと、斯樣に考へて居ります、小山議員が本會議に於て、それは詐欺ではないかと云ふやうな大變手嚴しき御糾彈のありました點に付きましては、私は非常に心に懸けて居るのでございます、只今江口委員の御質問に對しましては、御尤もな御注意であると思ひますから、是は一つ、直ちに研究致しまして、豫算等の關係もありますから睨み合せまして、出來得べきことでありますならば、さう云ふ方法を、一つ考慮致したいと思つて居りますが、今之を此の席で、直ちに左樣に取運びますと云ふ言明だけは、ちよつと遠慮さして戴きたいと云ふことを御願ひ致して置きます、それから其の次に、料金の値上問題に付て、或部分を民營に移してはどうかと云ふやうな御質問でございましたが、是ははつきり分りませぬでしたから、此のことはもう一度発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=4
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005・江口文雄
○江口文雄君 料金が値上げされますと、同時に「メッセンヂャー・ボーイ」を使つて色々な郵便を配達すると云ふ事業が、當然成立ち得る譯でごさいます、斯う云ふ風な郵便、電報等の遲配と云ふことを補ふ爲に、「メッセンヂャー・ボーイ」的の事業を民間に許してはどうかと云ふ風に考へます、是は簡易保險の方でも、政府獨占を廢止すると云ふやうなことと同一に於きましても、さう云ふ風なことをしても宜いぢやないかと云ふ風に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=5
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006・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 成る程、「メッセンヂャー・ボーイ」を使ふと云ふやうなことも、一つの思ひ附きであるやうに思ひますが、併し「メッセンヂャー・ボーイ」を使ふと云ふことに關しましては、色々な手續や、費用や、監督等に付ても、十分是は研究しなければならぬことがあらうと思ひますが、併しながら、さう云ふ趣旨に副ひまして、例へば人員を選擇する、或は人員を増加すると云ふやうな方法に依りまして、此の「メッセンヂャー・ボーイ」を使ふと同じ位な效果を擧げるべく、只今改善すべきを改善すると云ふことを研究中でございます、成るべく御趣旨に副ふやうに致しますが、直ちにそれに依つて「メッセンヂャー・ボーイ」を使ふと云ふことの言明は、只今ちよつと差控へたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=6
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007・長谷川赳夫
○長谷川赳夫君 今、江口さんの御質問の中に、至急電報が非常に遲著した場合に、至急電報としての割増料金を返す方法はないか、それに付て大臣は御尤ものことだから十分研究をして見たいと云ふやうな御答辯がありましたが、是は實は私共も考へないのではないことでございますが、實際問題として、是は非常に實行が困難ではないか、斯う思ひます、汽車の場合ですと、ちやんと時間表もありまして、さうして或急行列車が何時間遲れると云ふことは是は直ぐ分ることなのでありますが、運輸省では、從來二時間以上遲れた場合には急行券の料金を返すと云ふことをやり、又是は容易なことであると思ふ、併し至急電報は個人々々の場合でありますし、なかなか實行困難だと思ひますが、何かそれに代るやうな、もう少し實行の容易な方法を、一つ遞信省に於て御研究願ひたいと思つて居ります、鐵道關係と睨み合せまして、何人もそれは直ぐ頭に浮ぶことですが、可なり困難なことではないかと私推測致します、どうか今の點を御考究下さることは、勿論結構でありますが、それとは別に、當局の專門的なことだから、他の實現可能な便法はないかと云ふことも、御考慮願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=7
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008・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今長谷川委員から、料金の拂戻問題に關しまして、大變御理解ある御質問をして戴きまして、誠に有難うございます、感謝致します、私が江口委員に對しまして御答へ致しました、大變理論としては正しいことであるが、色々な事情等もあるから、十分研究すると云ふことを御返事申上げました中には、只今長谷川委員の御注意のありましたやうな代案等も實は考へて居つたのであります、大變良い御注意でありまして、さう云ふ點に迄調査研究を進めまして、何等かの方法に依つて、世人の遲配、遲延に關する不信の點を除くやうに努力致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=8
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009・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 昨日長谷川委員から、明治十四年に貯金の總額制限が撤廢されて居るが、どう云ふ事情に依るかと云ふ御尋がございました、色々調査して見ましたが、何分其の當時の記録が全部燒失致して居りますので、殘念ながらはつきりしたことは分り兼ねるのでありますが、唯想像に依りますと、明治財政史を見ますと、明治十年から十三、四年頃は、西南戰爭の後でありまして、政府は財政の都合から不換紙幣を大量出しまして、民間には紙幣が氾濫して居る所謂「インフレ」の状態になつて居つたと云ふやうなことが書かれて居ることから想像しますれば、斯樣な經濟状態に對應致しまして、政府と致しましては、大いに郵便貯金を奬勵する必要があり、それが爲に取扱の制限を緩和することが必要である、斯樣な譯で撤廢を致したのかと想像致します、唯併しながら、其の撤廢は如何にも思ひ切つたやうなやり方ではありまするが、當時は總額制限の外にも御手許に差上げてある參考書にも載せてありますやうに、總額制限の外に猶一箇月百圓迄と云ふ二重の制限がありまして、是は餘りに窮屈である、詰り一方に於て總額が制限され、又一箇月の預入額も制限されて居ると云ふことでは餘りに窮屈であると云ふので、一箇月の制限百圓を三十圓に引下げると同時に、一方に於て總額制限を撤廢致したやうな次第ではなからうかと想像致します、要しまするに總額制限を撤廢したことはありまするけれども、是は郵便貯金をさう云ふ無制限にしたと云ふ譯ではなく、一方に於て一箇月なり、或は一日分の預入高に制限を附けて居つたのであります、郵便貯金、或は簡易保險の性質から考へましても、元々貯金なり簡易保險は、民間事業としては喜ばれなかつた歡迎されない小口のものを取扱ふのが、本來の趣旨でありまして、それが爲に民間事業の分野に迄入つて行く、言葉を換へて言ひますれば、民間事業を壓迫すると云ふやうなことは、本來の趣旨ではないのではないかと思ひます、更に又、是が爲郵便貯金に致しましても、簡易保險に致しましても、色々政府の保護、特權と云ふものが與へられて居ります、斯う云ふ事業が官業であると云ふことそれ自身が、一つの特權であり、之に依りまして、利用者が間接的に利益を受ける譯でありまするが、其の外、尚御承知の通り、是等の事業に付きましては、印紙税、郵便料、或は郵便貯金に對しましては資本利子税の免除、斯樣に色々特典が付せられて居りますので、さう云ふ性質の貯金なり、保險なりを無制限にすると云ふことは、是は國の財政から言ひましても、或は又、外の銀行貯金、或は民間の保險事業と云ふものに對しても權衡を失する譯でありまして、或程度制限を設けると云ふことは、是は貯金なり、保險なりの從來の性格なり之に對する取扱方を變へない以上、是は已むを得ないのぢやないかと考へて居ります、以上を以ちまして、此の問題に付きましての御了承を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=9
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010・長谷川赳夫
○長谷川赳夫君 只今政府委員から詳細に御説明を下さいまして有難うございました、恐らく政府委員の御推測になつたやうな理由があつて、明治十一年から十五年迄は、きつと最高制限額を撤廢されたことと思ひます、それから考へましても、昨今の此の我が國の「インフレ」状況を考慮しまして、最高制限額一萬圓と云ふことは、どうも實際に即せないのぢやないか、少な過ぎるのぢやないかと云ふやうに思ひます、昨日他の方からもさう云ふ御質疑が出ましたが、何と申しませうか、此の委員會の空氣と致しましても、どうも一萬圓は少いのぢやないかと云ふやうに私は受取れるのであります、大臣始め政府委員の方の御説明に依りまして、遞信省だけで出來る問題でもなく、大藏省關係とも御協議の結果先づ一萬圓あたりが適當ぢやないかと云ふことで、斯う云ふ原案が出來たと云ふやうな御説明でございましたが、今直ぐと申しませぬけれども、尚其の點は、大藏當局と御協議の上に、近き將來に於きまして、若しも兩省の間に議が纒りましたならば、相當額御引上になつたらどうかと思ふのであります、此の點御調査を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=10
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011・一松定吉
○国務大臣(一松定吉君) 昨日及び本日來、此の一萬圓増額の點に付きまして、色々御注意を承つたのでありますが、實は遞信省と致しましては、昨日來と本日に掛けまして、皆樣方の一萬圓は少いからもつと引上げよと云ふ點に對しましては、非常に有難く感じて居るのであります、其處迄遞信省の郵便貯金と云ふものに對して、民衆が信頼を拂つて戴くと云ふことに付ては、何處迄も是は感謝しなければならぬのであります、私共の方では大藏省竝に關係筋の諒解を得さへ致しますれば、矢張り撤廢しても宜しいし、或は十萬圓に引上げても宜しいと云ふ位の考を實は持つて居るのであります、唯昨日來申しましたやうに、關係方面や大藏省等との話合が斯う云ふことになつて居ると云ふので、將來機會がありますれば、成るたけさう云ふやうな御趣旨に副ふやうに致しまして、一層此の郵便貯金の眞價を發揮致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=11
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012・伊藤一郎
○男爵伊藤一郎君 度々此の最高制限額の問題が出ますが、ちよつと念の爲に御尋ねしたいのですが、此の最高制限額をもつと大きくする、無制限にすると云ふことは、極めて結構なことであります、それに付ては、皆さんと意見が同じなのですが、それに對して、遞信省として準備工作と申しますか、受入れ體制と云ふか、安心して郵便貯金を利用し得ると云ふやうな、所謂準備工作も必要ぢやないかと思ふのでございますが、昨日御話のあつたやうに、貯金原簿が支局のみにあつて、郵便局にないと云ふことになると、非常に我々は不安で以て、餘りに大金を、現在自分が持つて居つても、直ぐ貯金すると云ふやうな氣にならないのであります、さう云ふ點に付て、遞信省として、何か今よりもつと、昨日も御話になりました迅速、確實と申しますか、正確、丁寧と云ふやうな「モットー」を以て、遞信大臣より御話がありましたやうに、確實に先程も申上げました通りに、安心して我々が貯金し得るやうな制度にして戴きたいと思ひますが、それに對する對策と云ふものはお有りになるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=12
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013・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 此の原簿の問題に付きまして、昨日色々御質問に與かり、又私竝に政府委員から御答へ致したのでありますが、所謂原簿と云ふものは各支局に之を必ず備へ付けて居るのだと、然らば其の受入れた郵便局其のものには、何ももう無いのかと云ふと、矢張り補助的なものが備へ附けられて居ると云ふことが、取扱者の方から、申出がありました場合には、それは全く、此の預入れた時に幾ら受取つたのか何もかも分らぬと云ふやうな出鱈目のことではないと云ふことに御理解を願ひたい、唯戰災等に依つて、さう云ふものもなくした、それから支局が燒けた爲に原簿が燒けたと云ふやうな時に、已むを得ず預金者の持つて居る通帳を基礎にして詳細に之を檢討して、それ等の預金の間違ひないと云ふことを認めた上で支拂をすると云ふやうな、愼重な手續を取つて居ると云ふのでございまするから、其の邊に付きましては、決して預金者に不安を與へると云ふやうなことはないと思ふのでありますけれども、併しながら、尚より以上に確實にすると云ふやうなことは、預金者も安心する方法ではないかと云ふ伊藤副委員長の御質問も御尤もでありますから、此の點に付きましては、本當にさう云ふ不慮の災害等があつても、預金者に迷惑を掛けないやうにすると云ふ方法は、一層一つ研究致しまして、之を實行に移したいと考へて居ります、今一つ、附加へて私申上げて見たいのは、此の銀行預金と云ふものに對しましては、往々にして税金の問題とか打切りの問題とか、色色の問題が世間に流布されて居るやうでありまするが、郵便貯金に付きましては、成るべくさう云ふ世人の誤解を招くやうなことを致したくないと私共は考へて居りまするので、さう云ふ點から致しますると、寧ろ銀行にするよりも郵便局にした方が安心だなと云ふやうな氣持も、預金者にありはしないかと、實は自惚れでありますが考へて居ります、一層御質問の御趣旨に從ひまして深切、迅速、確實と云ふことに即應致しまして、預金者が安心して預金が出來ると云ふことに付きましては、一層努力を拂ひたいと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=13
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014・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 貯金關係に付きましては、大體の御質疑は終つたと存じます、是より簡易生命保險に關する質疑に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=14
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015・江口文雄
○(江口文雄君) 先づ御尋ね致したいのは、「簡易生命保險事業の政府獨占に關する規定を廢止すること」と云ふことが第一項にありますが、「簡易生命保險事業の政府獨占を廢止するも、この事業創始當時懸念せられたやうな弊害を惹起し、加入者に迷惑を及ぼすといつた危險も殆ど豫想せられない」と云ふ點に付きまして、政府は初めどう云ふ弊害を惹起し、迷惑を及すと思うて居られたのであらうか、又其の弊害と迷惑が、今日豫想せられないと云ふ理由と、其の二點を御尋ね致したいと思ひます、次に改正法律案の要旨十九「ページ」の第四表でございます、是は御當局に御尋ねせねば、私は能く分らないと思ひますけれども、此の表に依りまして收入保險料と支拂保險金の比率を見ますと、收入保險料に對する支拂保險金の率は、昭和十五年度に於きましては二割六分九厘となつて居ります、是は私の計算致しましたものですから、正確な所はどうかと思ひます、昭和二十年度に於きましては二割九分四厘と云ふ風になつて居りまして、戰前、戰後の比較を見ますると云ふと、累増の傾向を辿つて居ると、斯う思ひます、尚又、今の要旨の十三頁、參考資料第一表、現在契約保險金額、此の昭和十五年度と昭和二十年度との比較を見ますと、昭和十五年度に於きましては約一割三分一厘、昭和二十年度に於きましては一割六分一厘と云ふ風な概數になります、是はどう云ふことを意味して居るか、色々其の理由はありませうけれども、滿期拂戻のこともありませうし、其の他の事由もあることだと存じますけれども、是は死亡率の増大を多少加味して居るのではなからうか、其の理由と致しましては、戰爭の末期から食糧不足に依る國民體位の低下、或は衞生設備の不備、傳染病の猖獗、結核、性病の蔓延と云ふ風な、色々な惡條件に依りまして、此の収入保險料或は保險金額と云ふものと支拂保險金との比率の増大の原因が幾らか此處にありはしないかと云ふ風に考へる譯でございますが、此の點を後で御説明を御願ひしたいと思ひます、それと、元來簡易保險は中流以下の一般大衆相互扶助の設備でありますると同時に、其の積立金の利用等は、確實有利にして公共の利益の爲運用せられねばならない性質のものだと云ふ風に、大體の趣意書にも書いてありますし、又さうだらうと私も考へて居ります、けれども、其の本來の性質から申しますと、どうしても簡易保險積立金の其の主力は、事情の許す限りに於ては國民保健の衞生施設と云ふ風な面に放資せられるのが本筋ではなからうか、其の他社會公共の事業の爲に、上下水道或は土木事業、増産と云ふ面に放資なさることも宜いのですけれども、大體簡易保險の趣旨と致しましては、國民の體位を向上すると云ふことが保險事業自體の爲でもあるし、又國民大衆の爲でもありますから、さう云ふ風な面に其の放資の主力を注ぐのが順當ではなからうかと云ふ風に考へる譯でございますが、此の保險事業の現況の「パンフレット」を拜見致しますと、其の三十七頁、積立金の「事業別公共團體等放資状況」それを拜見致しますと、産業施設等に對しまして約二億四百萬圓、土木施設に於きまして二億九千四百萬圓、其の他の施設二億六千三百萬圓、大略斯う云ふ風になつて居りますが、保健衞生施設に付きましては約一億五千萬圓でありまして、總放資額の約一割四分八厘に過ぎないのでございます、更に其の保健衞生施設の内容を見ますと云ふと、此の約一億五千萬圓の中、一億四千萬圓は上下水道へ對する貸付及地方債券でありまして、直接保健衞生に關係の深い金額は約一千萬圓程度と云ふ僅かなものでありまして、其の實體は最も保健衞生に關係のあるべき實費診療所とか、或は公立病院、産院、傳染病院、保健所、體育施設所、兒童保健施設所、結核療養所等、斯う云ふ風な直接保健衞生に對して關係のあるものは、僅かに一千萬圓程度に過ぎないのでありまして、今後益益食糧の不足、或は其の他の惡條件に依りまして、死亡率が増加する傾向にあるだらうと思ひます節に、此の位のことでは國民生活の安定を期すると云ふことに甚だ力が弱いのではなからうかと云ふ風に考へるのでありますが、此の點を御伺ひしたいと思ひます、それから此の積立金の放資額は、郵便年金とも關聯がありますけれども、郵便年金、簡易保險、合計して見ますると、昭和二十年度に於きまして七十二億七千四百萬圓と云ふ厖大なものでありまして、此の積立金の放資に付ては、特別會計でありまして、議會の協贊を經ることは要らないのでありますから、唯單に積立金運營委員會の手に委ねられて居る實體でありまして、此の委員會は、元は遞信院總裁と書いてありましたが、只今は大臣でありませう、大臣が委員長でありまして、學識經驗者、或は貴衆兩院議員と云ふ風な面から、之を任命して作つてあるやうでございますけれども、大體の金額が七十億以上の厖大な金額でありますので、私共と致しましては、此の積立金の放資に付きましては、もう少し民主的で強力なる機關として之を擴張する、さうして大藏省、或は其の他の各省から、色々此の厖大な金額に對して要求なり、或は御注文なり、あるだらうと思ひますけれども、本來の簡易保險の事業と云ふ風な面に全力を注ぐと云ふことが宜くはないだらうか、さうして此の積立金の放資に付きましては、遞信省告示か何か知りませぬけれども、さう云ふ風な面で、收支の計算と云ひますか、さう云ふ風なものを御發表になつて居ることだらうと思ひますけれども、さう云ふことは、定期的に新聞紙等に依つて公表せられまして、さうして此の保險加入者に對して安心を與へると云ふことが宜くはなからうかと私は考へるのでございます、それから、其の次に極く簡單なことでありますけれども、「簡易生命保險事業の現況」と云ふ「パンフレット」の三十八頁、終りより三行目「安價調劑事業」と云ふのがありまして、是は「證書貸付」と云ふのは零になつて居ります、「地方債證券」と云ふのも零になつて居りますけれども、合計額だけ六千圓と云ふ金額が出て居りますが、是は印刷の間違ひぢやなからうかと存じます、御調査を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=15
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016・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 江口委員の御質問の中で、獨占事業の廢止、沿革等に關しますることや放資問題に關する具體的數字のことに關しましては、政府委員から答辯させて戴きたいのでございます、唯、あなたの御質問の中で、此の放資問題に關して、此の「パンフレット」の三十七頁以下、四十一頁の「事業別公共團體等放資状況」と云ふ此の表に依れば、どうも簡易生命保險と直接して居るやうな事業に、放資して居ることが少ないやうに思ふが、成るたけ是は、それと直結して、關係の深い方面に放資することが宜いぢやないかと云ふこと、是は私も此の「パンフレット」の表を見まして、江口委員と同感でございまするが、將來一つ、さう云ふ方面に向つて、一層善處すると云ふことを御誓ひ申上げたいのでございます、それから之に關しまする學識經驗者等を集めて、色々な委員會に依つて、之を善處して貰ひたい、安心するやうにと云ふことも、御尤もでございます、それは成るたけ、さう云ふ御趣旨に副つて、一つ善處致したいと考へて居ります、他のことは、政府委員から一つ、御答へさせて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=16
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017・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 先程の御質問に對しまして、御答へさせて戴きます、第一點の獨占廢止の理由と云ふことを申上げます、之に付きましては、立法當時、詰り簡易保險事業を創始致します當時、なぜ獨占に致したかと云ふことから申上げた方が便宜かと思ひます、なぜ獨占に致しましたかと申しますれば、本來、簡易保險と申しまするものは、普通の保險と全く異りまして、小口であります、集金を致します、さう云ふ關係で、非常に事業費が嵩む性質を持つて居る保險でありまするからして、是は餘程、經營上注意致さなければ、豫定の通り育成發展すると云ふことがむづかしい性質の事業であると思ひます、從ひまして、之を若し、民營の競爭の經營を許しましたと致しましたならば、政府事業と致しましても、其の競爭の影響を受けて、事業が十分うまく行かない、一方に於きまして、經營する會社の方と致しましても、斯う云ふ採算の取れない事業を、而も競爭的にやると云ふ結果、遂に收支が償はれない、場合に依りましたならば、倒産する事業會社も出て來ないと限らないと云ふことになりますと、之に加入致して居りまする契約者は、非常な迷惑を蒙ると云ふ、斯う云ふ風なことから致しまして、詰り、政府事業を豫定通り育成發展せしむる爲、又是と競爭する會社が、之に依つて倒産して、契約者が迷惑を蒙ると云ふやうなことのないようにする爲に、獨占に致したのであります、併しながら、今となりましては、即ち簡易保險の件數九千萬件、保險金額二百四十三億圓と云ふ風な、厖大な事業に發展致しました今日に於きましては、今更民營を許しましても、之が爲、政府の事業は影響を蒙つて、發展を阻止される心配はありませぬ、のみならず、民營それ自體に於きましても、長い間の經驗に依りまして、簡易保險とは全く違つた分野を開拓し、之を維持して居ると云ふやうな状態でありまして、之を今、經營が許されたからと言つて、簡易保險を是から大いにやらうと云ふやうな會社はないと斷定して宜しいかと存じます、尤も、多少は此の簡易保險の分野に食ひ込んで來ると云ふものもあるかも知りませぬけれども、併し、それは御互の死命を制する程の競爭は起らないかと思ひます、多少の競爭は起りませうが、それは却て、政府事業と御互に切磋致しまして、さうして、之が爲に經營の合理化を圖り、保險料も出來るだけ安くなると云ふやうな點に於きまして、努力致しまするから、好都合ぢやないかと思ひます、更に第三の理由と致しまして、現在高額保險は一千圓以上五千圓迄の分をやつて居ります、若し此の獨占規定を其の儘に置いて置きますと、簡易保險の金額制限が五千圓以上になりましたのでありますから、今やつて居りまする高額保險は、法律改正と同時にやれなくなる、今迄やつて居つたのが、明日からもうやれなくなると云ふ、斯樣な困つた事情が出來て參ります、將來保險金額を引上げまするが爲に、昨日迄やつて居つた民營の部分が、明日からやれないと云ふ、斯樣に民業に取りましては、誠に迷惑な結果と相成りまするので、旁旁於きまして、斯樣に決定致したのであります、それから第二の點は死亡率に關する御尋ねでありまするが、昭和十五年頃の保險料に對する支拂保險金額を、昭和十九年のそれとを比較致しまして、段々と殖えて參つて居る、是は死亡率が段々と高くなつて來た結果ではないかと云ふ御尋ねでありまするが、保險金額の保險料收入に對する比率が高まつて居ると云ふことは、死亡率の關係ではないやうに思ひます、是は外の原因で、詰り其の頃になつて滿期になるものが非常に多い、偶偶さう云ふことの結果、保險金額が多くなつたのであつて、死亡率と云ふことは影響致して居らないと見て居りまする、なぜかと申しますれば、實際の死亡率を調べて見ますれば、昭和十五年度に於きましては、豫定死亡率が〇・〇一三五九に對して、實際の死亡率は〇・〇一一二〇、而も此の中戰死を除きますると、是は〇・〇一〇四三となります、段々と實際の死亡率は下がりまして、昭和一九年度に於きましては豫定率〇・〇一二一三に對しまして、實際の死亡率が〇・〇一一一二となつて居りまして、戰死支拂を控除致しますると、是が更に下がりまして〇・〇〇八四九となつて居ります、此の割合は、實際の死亡率の豫定死亡率に對する割合は九割二分と云ふことになつて居ります、斯う云ふやうな次第で、保險金の支拂が殖えたと云ふことは必ずしも死亡率の増加に依るものでないと云ふことを申上げて置きます、唯戰死の爲に、昭和十五年から今日迄約一億六千萬圓を支拂つて居りまするから、其の影響は多少ありますが、併し一般の死亡率と云ふものの影響はないと考へて宜しいと思ひます、それから、運用に關しまして、簡易保險の積立金の如きは、被保險者の利益になるやうに、衞生施設の爲に大いに奇與すべきであるのに、現状は衞生施設に對する比率が餘りに少い、斯樣な御質問であつたかと存じまするが、此の問題に付きまして御斷り申上げて置かなければなりませぬのは、簡易保險竝に郵便年金の積立金は、本年の一月、其の筋の指令に依りまして、契約者貸付を除きました全部を大藏省の預金部へ預入すべし、遞信省に於きましては、契約者貸付以外は一文と雖も運用してはならない、斯樣な指令が參つて居りますので、現在に於きましては、此の積立金と云ふものは全部預金部で運用することになりましたので、直ちに御希望に應ずると云ふことは遺憾ながら出來ませぬが、併しながら是等の積立金を事業經營主體自身がやらなければならぬと云ふことは、是は事業の性質上當然のことでありまして、出來るだけ早い機會に、其の筋の了解を得まして、昔の通り遞信省自ら運用して行かなければならぬと思つて居るのであります、其の機會が到來致しました曉に於きましては、只今御注意のありましたやうな線に沿ひまして、精々、衞生施設に付きましても、投資額を大きくすることに努めたいと存じます、尚、是は投資の問題ではありませぬが、被保險者の福利増進と云ふことに付きましては、簡易保險事業創始當時から、大いに意を用ひて居る所でございまして、以前には保險相談所と云ふものが全國に三百二十何箇所もありまして、大いに被保險者の爲に利益を供與して居つたのでありますが、是れ亦、昭和十九年に於きまして國營醫療機關統一と云ふ見地から、厚生省の方へ移管致しまして、只今は、斯う云ふ大規模の施設は持つて居りませぬが、唯併しながら、小規模ながら巡囘相談と云ふやうなものを以ちまして、甚だ細々ではありますが、被保險者の體位向上と云ふことに付きましては、努力致して居るのであります、それから、差上げました參考書の三十八頁の誤りを御指摘になられまして恐縮でございますが、是は間違ひでございました、「證書貸付」の欄へ六千圓を掲げて戴きたいと存じます、さうしますと、あとは是で宜しうございます、「證書貸付」が六千圓、合計六千圓、斯樣に相成つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=17
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018・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 私から御尋ね致したいと思ひますが、簡易保險事業は、是は一つの獨立した事業であると存じます、遞信省所管のものの中に於きましては、郵便、電氣、通信、或は貯金の如きものがありまするが、簡易保險に先程御述になりました獨占の理由及び郵便局が、此の保險料の徴收及び保險金の支拂に付きまして、果す所の業務が、此の事業に非常に便利であると云ふやうな理由からと存じまするが、此の簡易保險事業と云ふものを遞信省が運營して居られたのであります、此の事業と云ふものは簡易保險法に明かなる如く、保險料を取つて保險金を支拂ふと云ふ所に、主眼を置いて居るのでありまして、民間の生命事業と何等異る所のないものでありまして、其の意味に於きましては簡易保險事業と云ふものは、完全に獨立した經營體に於て經營されなければならないものと存じて居るのであります、然るに遞信省に於かれましては、此の制度を御運營に相成りまする上に於きまして、現在は郵便貯金と一緒に御經營になつて居る、今日の如き簡易生命保險が盛大な状況に立至りましたのには、幾多先輩の御活躍があつたことと存じまするが、其の人的の活躍と云ふものの外に、此の制度が完全に獨立して居つた、以前は遞信省の外局として運營されて居つた、其の制度上の長所からも、斯くの如き成果が得られたのであると存じます、然るに今日に於ては誠に情けないやうな状況になつて居るのでありまして、斯くの如き事態に於きましては、此の簡易生命保險事業の將來と云ふものが、以前の如く優秀な成果を擧げて行かれるのに、萬全を期して行かれるかと云ふ點に付きまして、遞信大臣の御所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=18
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019・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今委員長の御質問に關しまして、將來の運營方法等に付きましては、就任後、日淺くまだ、それ等の點に迄十分檢討を加へて居りませぬので、此の點は、政府委員の方から答へさせて載きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=19
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020・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 簡易保險事業竝に郵便年金事業を、現在貯金と同じ部局でやつて居る、是は不都合ではないか、獨立すべきではないか、左樣な御質問の趣旨かと思ひまするが、全く御同感であります、簡易保險事業に致しましても、郵便年金事業に致しましても、或は又是が對象となつて居りまする郵便貯金に致しましても、各各非常な大きい仕事であります、預金額から申しましても、保險の方で申しますれば、契約高から申しましても、非常に厖大な事業と申しましても敢て過言ではないと思ひます、而も尚簡易保險、郵便年金に付きましては、死亡率とか運用附加率とか、斯う云ふものを綜合したやうな高度な技術を要する事業でありまするので、之を郵便貯金と一緒にやる、謂はば二兎をかけると申しますか、局長が兩方に足を突込むと云ふことでは、御互に事業がうまく行かないと云ふことは、全く御説の通りであります、是は私共、事業の事務當局と致しましては、出來るだけ近い將來に、元々通り分離致しまして、尚且、簡易保險事業に付きましては、是が特別會計になつて居ると云ふ趣旨に鑑みまして、遞信省の外局とすべきものであると考へて居ります、固より是は、私共の希望でありまして、遞信省全體、或は政府全體と致しましては色々又他に考究を要することもあると思ひます、果して具現するかどうかと云ふことに付きましては、私も此の際申上げ兼るのでありますけれども、少くとも、趣旨に於きましては、委員長の御説と全く御同感でありますと云ふことを申上げまして、御答辯に代へたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=20
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021・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 次に承りたいのは、運用の點でございまするが、社債其の他有價證券投資等に於きまして、外地の投資と云ふものは、どの位になつて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=21
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022・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 保險と年金の積立金、合計致しまして、外地投資は五億三千四百萬圓になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=22
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023・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 此の五億三千四百萬圓は焦げつきになる虞のあるものがありはしないかと心配致しまするが、其の點如何でありませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=23
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024・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 外地投資五億三千四百萬圓の内容は、滿洲國の國債であるとか、滿鐵の株式、社債などでありまして、是は想像致します迄もなく、恐らく賠償に充てられるのではないかと思ひます、而して之に對しまして國家が補償致しますかどうか、若し補償致しまするとすれば懸念はないのでありまするが、補償致さないと云ふことになりますると、此の額は、運用資産の中から喪失すると云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=24
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025・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 今の御説明で、簡易保險及び郵便年金事業の積立金に於きまして、五億三千四百萬圓の高額な金額が、將來消失すると云ふやうな懸念があると云ふことが、明かになつたのでありますが、斯くの如き金額が積立金の中から消失致しました場合に、保險金及び年金の支拂に於て支障が起りませうか、起りませぬでせうか、其の點を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=25
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026・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 五億三千四百萬圓程度の喪失で事が濟みました揚合には、保險金或は郵便年金額の支拂を一部停止すると云ふ問題は起さなくて濟む、斯樣に確信致して居ります、其の理由と致しましては、此の法律が、若し通過致しますれば、既往の契約に付て、委員會の議を經て、或程度其の利益を削減することが出來ると云ふことになりまするが、さう致しますれば、既往の契約に附隨致して居りまする長期還付金、此の額を先づ削減すべきぢやないかと思ひまするが、其の場合には、長期還付金の爲に積立てた金が、凡そ八億圓足らずありまするので、此の八億圓と、只今の在外資産五億三千なにがしと較べて見ますと、十分見合ひが出來まするので、長期還付金を削減すると云ふことは、是は已むを得ないと思ひまするが、それ以上保險金額、或は年金額と云ふやうな基本額に迄立ち到つて既往の契約者の利益を阻害すると云ふ事態は起さなくて濟む、又、是はどうしても起してはならない、小口の庶民階級の保險でありまするから、どうあつても、せめて基本額だけは、手を附けないやうに保護してやる必要がある、斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=26
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027・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 改正案の第二十八條の二にありまする「命令を變更する場合」と云ふ此の「命令」は、どう云ふことを考へて居られませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=27
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028・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 此處の「命令」と申しまするのは、勅令及び省令などの規則を指して居ります、其の内容と致しまして、然らばどう云ふことを勅令なり規則に於て、變更する積りであるかと云ふことを申しますれば、例へば、只今申上げましたやうな長期還付金の削減、或は保險料の引上、豫定利率の變更、保險金額の削減、斯う云つた總ての契約條項を含んで居る規定は、實際に於きまして、此の規定を適用致しまして、契約者の利益に觸れると云ふやうなことになりますと、先程申しましたやうに、最大限度、長期還付金の削減、此の程度に止めたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=28
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029・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 只今の政府委員の御説明に依りますると、簡易保險に於きましては、從來一般の民營の生命保險がやつて居りまするやうな利益配當に相當致します所の長期契約還付金と稱する、誠に分りにくい名前でありまするが、概算として受取つた保險料が實際に必要だつた保險料よりも多くなつて餘つて來たと云ふものを、長く契約を續けて來た人達に還すと云ふ制度、長く契約して居つた人達に利益を配當すると云ふやうな制度、其の制度に於てだけ、只今申されました資産上の赤字を「カバー」させて、政府の本來約束致して居りまする所の保險金に付ては何等變更を加へないと云ふことに了解致しまして、斯くの如きことは誠に有難いことだと思つて居ります、是れ偏へに、簡易保險の經營宜しきを得た結果であるかと思ふのでありまして、長年の間御苦勞になりました當事者の方々に滿腔の謝意を表する次第であります、尚、細かい點に付て伺ひたいと存ずるのでありまするが、第四條の二に於きまして、「勅令の定むる所に依り保險金額の一部を支拂はさることを得」とありますが、是は如何なることを考へておいでになるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=29
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030・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 御手許に差上げて置きました「簡易生命保險法改正に伴ふ關係法令の新舊比較」の二「ページ」の下の段に、「第四條の二、被保險者六歳未滿にて死亡したるときは勅令の定むる所に依り保險金額の一部を支拂はさることを得」、是は改正規定の案でありますが、之に基く勅令と致しまして、次の「ページ」の第七條の二、是は上に掲げてありますのが、現行のものでありまして、其の下に掲げてありますのが、改正しようと致す案であります、改正しようとする案に於きましては、第七條の二、「簡易生命保險法第四條の二の規定に依り支拂ふへき金額は保險金額に左の區別に依る割合を乘したる金額」でありまして、三歳未滿で死にました時は、其の保險金額の百分の三十、六歳未滿で死亡致しましたる時は保險金額の百分の六十、斯う云ふことに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=30
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031・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 小兒保險の創設當時に於きまして、今、御示しになりました表の如く、二歳未滿百四十圓、三歳未滿百七十五圓等の制限を設けましたのには、小兒に對する犯罪が行はれはしないかと云ふ關係から、斯くの如き保險金の規定を作つたものと存じまするが、其の當時は、例へば「フランス」に於きまして、子供に保險金を掛けて、其の子供を殺して保險金を取つたと云ふやうな、誠に忌はしい事件が昔あつたと云ふことから、斯くの如き制度を御決めになつたと存じまするが、日本に於きまして、此の制度を始めてから今日迄、斯くの如き憂ひは最早ないと云ふ確信を得て、斯くの如き改正をなさつたのであると存じますが、此の間に於きまして、斯くの如き犯罪があつたのかなかつたのか、其の點を一應はつきりしたいと存じます、此の點御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=31
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032・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 日本に於きましては、小兒殺し、保險に掛けて置いて小兒を殺すと云ふ事例は、今迄なかつたやうに記憶して居ります、從ひまして、最早此の危險は恐らく今後と雖もないのではないかと思ひます、尚且、道徳的の危險が多少ありと致しましても、是は第四條の三以下の規定を其の儘殘して居るのでありまするから、此の方に依つて、若しありと致しましても、十分防遏出來ると、斯樣に心得まして、第四條の二を、斯くの如く改正致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=32
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033・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 次に御尋ね致したいのは、第四條の二の第二項、「第八條及び第二十三條第二項中「一年六月」を「二年」に改める」と云ふ點でありますが、此の削減期間を半年御延しになつた理由に付て、少しく伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=33
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034・岡井彌三郎
○政府委員(岡井彌三郎君) 削減期間を、一年半から二年に何故延長したかと云ふ御質問でありますが、是は的確な計數を御示しすることは私は出來兼ねますけれども、常識上から考へましても、金額が高くなればなる程、弱體者が入つて來ると云ふ危險が増大する、是は事實でありまして、今囘一年に契約し得る金額一千圓から、一足飛びに其の五倍の五千圓に致したのでありますから、斯う云ふ機會に於きまして、從來より一層多くの弱體者が、無審査であると云ふ隙を狙ひまして入つて來ると云ふ危險があると、斯樣に信じましたので、保險經營の強化安固を期するが爲に致したのであります、尚、詳しい計數など御要求でしたら、係官から御示し致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=34
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035・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 簡易生命保險法に於きましては、創始當時に於ては、確か削減期間が二年でありまして、一應之を半年縮めたのであります、然るに今囘之を又二年に御改めになるのでありますから、多少の弊害等も御認めになつての上のことと存じます、係官より此の點御説明を願ひます、――政府より説明員に説明を致させたいと希望して居られますが、説明を致させて宜しうございませうか、御諮り致します
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=35
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036・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=36
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037・中村喜代嗣
○説明員(中村喜代嗣君) 從來此の簡易保險の死亡率を保險金階級別に計算して見ますと、低い保險金額の階級の死亡率よりも、高額の保險金の階級の死亡率は稍稍豫定よりも高いと云ふことは、今迄經驗して居つた所でありますが、又之を經過年數別に死亡率を算定して見ますと、從來一年六箇月と云ふ點が非常に死亡率が高く、尚一年半以内に於きましても、死亡率は若干豫定よりも高かつたのであります、併しながら、其の當時、利差益、事業費利益、さう云ふ利益が非常に澤山ありまして、先程御話しましたやうに、過去の保險料から餘つた、所謂剩餘金が、利益配當の財源として積立てた額が八億圓近くもあると云ふ結果になつて居つたのでありまして、其の當時剩餘金が非常に澤山發生致しましたので、一年六箇月に改正しても、大體事業の經營の安固には差支へないと云ふことでやつたのでありますが、最近事業費が相當膨大する懸念もありまするし、先程局長が御話しましたやうに、保險金額が高くなればそれだけ増大すると云ふ懸念もありますので、二年に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=37
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038・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 先程、どなたからかも御要求がありましたが、簡易生命保險の事業の内容を公表してはどうかと云ふ御尋があつたのであります、從来と申しますか、以前は簡易生命保險の成績等の詳細なものが公表されて居つたのでありますが、最近はそれがないのでありまして、殊に今囘簡易生命保險事業の獨占を抛棄なさると云ふことになりますと、民間保險會社に於ても、場所に依りましては、此の簡易生命保險をやりたいと云ふ希望を持つて居る所もあるやに推測されるのでありまするが、其の際事業の基礎計算を致します際に、手掛りとなりますのは、我が國に於ける簡易生命保險の長年の成績であります、斯う云ふものを御發表に相成りますることは、民間の事業を稗益する點、甚だ大なるものがあると思ひますから、詳細御發表を願ひたいと存じます、尚、先程事業の内容の公表と云ふやうな御話がありましたが、重ねて申しまするが、其の公表と云ふものの中には、御座なりの公表でなく、民間の會社等が其の内容を發表致しますやうな、詳細な發表をなさつて戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=38
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039・一松定吉
○國務大臣(一松定吉君) 只今の委員長の御要求は、御尤もな御要求であると思ひます、さう云ふやうな御意見に副ひまして、善處致して、他の生命保險の契約者、其の他の人々に、安心して、此の事業の運營に協力して戴くやうに、努力致す考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=39
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040・齋藤齊
○委員長(子爵齋藤齊君) 本日は此の程度で散會致します、尚次會は、來週火曜日、午前十時から開きたいと存じます
午前十一時四十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=40
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041・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 齋藤齊君
副委員長 男爵 伊藤一郎君
委員
侯爵 淺野長武君
子爵 内藤政光君
長谷川赳夫君
塩田團平君
伯爵 清閑寺良貞君
江口文雄君
男爵 沖貞男君
男爵 中村徹雄君
木下謙次郎君
國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
政府委員
遞信政務次官 中川重春君
遞信事務官 小池行政君
同 岡井彌三郎君
説明員
遞信事務官 中村喜代嗣君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003518X00319460727&spkNum=41
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