1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○臨時物資需給調整法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月二十五日(水曜日)午前十時九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=1
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002・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) それでは一昨日に引續きまして、臨時物資需給調整法案の特別委員會を開きます、何卒御質問がおありでしたら発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=2
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003・京極高鋭
○子爵京極高鋭君 私は今直ぐでなくても結構ですが、御願ひして置きたい紙、新聞用紙及び印刷用紙、それから映畫用の「フイルム」、それから「ラヂオ」の受信機、其の眞空管資材の今の生産状態と、それから現在の保有量それから配給、所謂需給、配給の方法を一つ、成るべく詳細に、適當の機會に御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=3
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004・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 「ラヂオ」受信機及び資材ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=4
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005・京極高鋭
○子爵京極高鋭君 資材部品、それの状況発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=5
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006・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 午後に、取調べまして御答へ申します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=6
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007・川上嘉市
○川上嘉市君 御尋ねしますが宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=7
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008・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) どうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=8
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009・川上嘉市
○川上嘉市君 此の「臨時物資需給調整法によつて配給統制を實施せんとする物資(案)」、之の「甲現に法規統制實施中のもの」と云ふ中で、例へば終ひの二枚目の野獸原皮だとか、皮革原料たる水産動物、それから蔬菜種苗食糧品罐詰用空罐、斯う云ふものは是は元のものが殘つて居るので、其の儘掲げたのではないかと云ふ感じがするのですが、こんなものは如何でせうか政府の方では、戰時中必要だつたが、今必要ぢやないぢやないかと云ふやうな氣がするのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=9
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010・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 御話のやうな例のものも矢張り現在非常に必要でございまして、矢張り或程度、それぞれの生産者の方に大體の能力に依りました割當を致しませぬ爲に、自由に任せますると、其處に非常な競爭が起ると云ふやうなことで、もう少し是は續けて行きたい、斯う云ふ意味でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=10
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011・川上嘉市
○川上嘉市君 それから乙の方に「今後新たに法規統制を實施せんとするもの」の中に木材と云ふものがありますが、此の木材と云ふのは、日木社を解散して今後どんな風な機構でおやりになる積りでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=11
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012・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 木材に付きましては、農林省でございますから農林省の政府委員から御答辯致すやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=12
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013・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 配給でございますね、配給は輸送迄入りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=13
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014・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 配給は現實に輸送の面は此の法律の中に入つて參りませぬ、是は矢張り運輸省の方で方針と致しましては配給の「ルート」何處から何處に流すと云ふ方向だけ示して、現實の輸送は之に入つて參りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=14
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015・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 輸送を入れませぬで、配給迄やらなくて、うまく行きますですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=15
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016・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 仰せの通りに、現實に物が到著致しませぬと、物の實際の配給にならぬのであります、其の點は、只今の御説の通りでございますけれども、此の法律の對象と致しましては、矢張り別の系統になりますものですから、此處に入つて居りませぬが、勿論輸送が伴ひませぬと、物資の需給調整と云ふことで、是は重要物資に付きましては、御承知の通りに運輸省に中央輸送協議會と云ふものがございまして、それぞれの計畫を立てまして、實行に當つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=16
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017・長岡半太郎
○長岡半太郎君 是は此の期間に輸入品がないものとしておやりになるのですか、輸入品が來たら、又分配すると云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=17
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018・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 今後の物資の需給計畫は、勿論輸入品が或程度入りませぬと、目途が立たぬのであります、本當に正直に申しますと、現在の國内の資材だけでは、例へば石炭を復興致しますに致しましても、なかなか急速に今の増産が出來ないことになつて居ります、從ひまして、相當の輸入と云ふものは私共と致しましては今懇請中でございます、恐らく或程度聯合軍の方も、其の事實を認めて置いて戴けますので、實現することと思ひますが、唯現實にどれ位の數量が入るかと云ふことは、是はまだ確定致して居りませぬので、私共の計畫の中に今日入つて居りませぬ、併しながら成るべく早く、殊に復興用の資材の輸入を圖りまして、此の計畫を立てて行きたい、斯ふ云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=18
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019・長岡半太郎
○長岡半太郎君 ちよつと伺ひますが「ソーダ」工業藥品と云ふものも非常に今缺乏して困つて居るのです、鹽酸なんと云ふものも、此の爲に出來ず、人絹の如きは、「ソーダ」工業に俟つ所が大部分ありまするので、是が迅速にどうか配給をして戴かぬと、工業が止つてしまふ譯でありまして、幾ら石炭が出來ても、意味を成さないのでありますからして、さう云ふ場合に於て、此の原料である鹽の増産と云ふことが眞先に必要であると思ふ、其の方は此處には別に書いてないやうでございまするが、是は別箇に屬するものでございませうか、それとも、自然此處に含まれて居ると云ふ御見込でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=19
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020・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 「ソーダ」工業が今後の日本の生きて行きまする上に、非常に重要な産業であることは仰せの通りであります、其の原料であります鹽、是も我が國は御承知の通り非常に貧弱な生産しかない譯であります、今後色々開發のことを考へましても、どうも工業鹽と致しまして、大量に造ると云ふことは困難だらうと考へて居ります、從ひまして、矢張り是は輸入に仰がなければならぬと考へて居りまして、其の點も色々輸入を御願ひ致して居ります、聯合軍の方も、鹽は矢張り入れてやらうと云ふことを言つて下さいまして、現在もぼつぼつ臺灣其の他の方面から入つて居ります、勿論今日の「ソーダ」工業を十分に賄ふに必要な程度の數量はまだ入つて居りませぬ、今後中國方面、或は臺灣方面關東州等に於きまする鹽は勿論、遠い方面の鹽も必ず是は矢張り戰前のやうな輸入を圖りまして、此の「ソーダ」工業と云ふものを囘復して行かなければならぬと考へて居ります、仰せの通り、人絹等の輸出の問題にも絡みまするし、國民の生きて行く上に、一番必要なもてだらうと思ふのであります、唯、鹽は御承知の通り、專賣制を執つて居りまして、民間で之を扱つて居らぬのであります、總て大藏省で、輸入致しましたものも、又國内で出來ましたものも買上げまして、專賣と云ふ「ルート」で配給を致して居りますので、直接此の法案でどう斯うすると云ふことに相成つて居らぬのであります大藏省に其の實情を商工省から、連絡を執りまして、どう云ふ工場に如何程の鹽を分けて貰ひたい、其の數の計畫に付きましては、從來商工省も關係を致して居りまして、今後は恐らく經濟安定本部が中心になりまして計畫を立てて行くことと考へて居りますが、其處ら邊で大枠を立てまして、箇々の工場別の割當に付きましては、商工省で割當てる、斯う云ふ風にならうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=20
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021・長岡半太郎
○長岡半太郎君 次に御伺ひ致したいのは、「カリ」鹽でございますが、「カリ」鹽は戰前四十萬「トン」位、多くは「ドイツ」から輸入されて居つたのでありまするが、日本にも無いこはない、併しそれを採るに可なりの費用が掛ると云ふので、伊豆の萬藏山などと云ふやうな所には、硅酸「カリ」が澤山あるのでございますけれども、之を利用しないと云ふことは、矢張り石炭の不足と云ふ點でありまするか、それとも何か、又それを利用して肥料に轉化すると云ふやうな研究でもやつたら宜からうと私は思ふのですが、必ずしも是迄の「カリ」鹽でなくとも、外の形に日本産の「カリ」を少しく變化して、肥料に適するやうに致したならば宜いのではなからうかと思はれますのですが、さう云ふことは此の中に含んで居らぬ譯でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=21
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022・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今仰せのやうなことは、此の法律の施行と致しましては考へて居りませぬ、勿論さう云ふことは、日本と致しまして、御研究を各方面から御願ひする譯でございまするが、一應此の法律と致しましては、依然「カリ」鹽の輸入を考へて居りまして、輸入致したものを、之に依つて分けて行くと云ふ方法を考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=22
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023・長岡半太郎
○長岡半太郎君 餘り續くやうでございますが、此の石綿はどうも日本産のものも幾らかはありまするけれども、之を糸にすることが甚だ困難であります、此の糸にならない石綿ぢや、ちよつと仕事に困ることがありまするが、之を糸にすると云ふ研究も必要ではないかと思はれるのです、若し出來なければ、どうしても外國品に俟たなければならぬ、さう云ふものが輸入出夾るやうに、一つ即急の場合に應ずる爲には必要だらうと思ひまするが、此の中で、多少さう云ふ意味を持つて居るものを御選びになつて、一つ至急に需要に應ずるだけの少額でも宜しうございますが、輸入することを御圖りになつて戴けば、餘程工業界は喜ぶだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=23
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024・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 石綿は御承知の通り、國内のは非常に短い纖維でございまして、長纖維のものはございませぬ、従ひまして、どうしても「カナダ」製の品物を得たいと思ひまして只今輸入を御顧ひ致して居ります、大體輸入を御願ひ致して居りまする品物は、どうしても日本に無い物、而も緊急に産業が復興致しまするに必要な資材と云ふことに限定致しまして、金額も日本から輸出し得る品物の金額に大體押へられて居りまするから、最も重點的なものを取入れまして、最小限ではございまするが、それで數重を押へまして、輸入を御願ひ致して居るのでございます、石綿も十分ではございませうが、長纎維のものを入れるやうに懇請中でございまして、何とか是は實現致したい考とへて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=24
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025・長岡半太郎
○長岡半太郎君 石綿と一緒に出る雲母のやうなものも、どうしても電氣事業者は不足を感じて居りまするからして、是れも是非一つ、御願ひしなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=25
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026・三橋四郎次
○三橋四郎次君 今、長岡委員から、「ソーダ」工業の鹽の問題に付ての質問がありましたが、之に對する政府委員の御答では、「ソーダ」工業の生産の上には、是だけの分量が必要である、「カリ」鹽に對しては是だけの分量が必要であると云ふことを大藏省の方に要求して、こちらとしては大藏省の方から受けるだけである、斯う云ふ風に承知致したのですが、而も此の部分に付ては、輸入鹽に俟たなければ、内地製鹽では之に届かぬと云ふ風に伺つたのでありますが、若しさうであるとすると、外から入れて貰ふことに付ての案ははつきり立つて居るのか、此の大事な工業に、内地産は考へないで、一切他に依ると云ふことが、果して將來の日本の「ソーダ」工業、「カリ」鹽に取つてどうであるか、其の邊はどう御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=26
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027・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 大藏省の所管は鹽だけでございまして、あとの品物は、大藏省の所管ではございませぬ、鹽の需給關係、國内に於て、其の大部分のものが生産が出來て、足らぬものを輸入に仰ぐと云ふことが出來ますれば、一番宜しいのでございまするが、日本の色々な状況から考へまして非常に高い鹽になるのでございます、現在の電氣製鹽其の他に付て考へて見ましても、非常に高い鹽になりまして是が輸出産業であります所の人絹、其の他「ソーダ」等に使ふ所のものとしては、迚も立ち行かぬと云ふことになると考へます、從ひまして、さう云ふ點を考へますと、矢張り安い輸入鹽を考へなければ、日本の工業として成立たぬのではないか、斯う云ふ風に考へて居ります、のみならず、絶對數量も足らぬのでございまして、段々我が國の纖維産業が是から囘復致しまして、消費量が殖えて參りますれば、到底國内で造るだけのものでは足らぬことと考へまして、輸入に御願ひすることに致して居る譯であります、尚輸入の計畫に付きましては、もう既に御承知のことと思ひまするが、今日の我が國の貿易は、總て聯合軍の管埋下にございまして、我が國の政府と致しましては獨力で之を決定し得ない状況にございます、一々聯合軍に輸入を懇請致しまして、聯合軍の承認下に於て輸入を致すと云ふことになつて居ります、日本に於ける需給計畫の大體の内容はこちらで作りまして、輸入の基礎になりまする數字は出して居る譯でございまするが、聯合軍と致しましては、色々國際の情勢、其の他を考へて、輸入をし得るものを今日迄決定して居らるるやうでございます、全般的に最小限に必要なものの輸入を懇請中でございまして、それの決定はまだございませぬ、ぼつぼつ決つて居るやうなものがあるやうであります、まだ非常に品物と致しましては、今日迄食糧が中心ございまして、無論食糧の意味で鹽も入つて居りますが、其の他のものも非常に少い種類しか輸入されて居りませぬ、今後段々さう云ふものの範圍が擴がつて來るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=27
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028・三橋四郎次
○三橋四郎次君 さう云ふ風にしますと、内地の生産では高い、安いものでなければ工業の上に於ての差支がある之が爲に外鹽を使ふの已むなきに至つて居ると云ふ風に今伺ひましたが、是は長い目で見て、日本の國策からどう云ふものかと云ふ危惧の面もある、今に於ては宜いのでありますが、一に之を外鹽に依ると云ふ風なことはどんなものか、それが現在高いものとして決めて掛ることがどう云ふものか、是だけの海の只の水があるが、それを處理の方法に依れば、遠くから持つて來るより良いものが出來ると云ふやうなことが考へられぬことはないかと思ひますが、唯もう今、日本でやるものは高い、だから外鹽に依ると云ふ考へ方はどう云ふものか、非常に其處の邊に何等かの場合で、若し來ない場合がないと云ふことを誰が保證するのでありますか、斯う云ふ場合に對して、一應どんな風な御考を持つて居りますか、其の邊を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=28
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029・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 鹽は國民の生活の必需品でございます、食糧としても必需品でございますが、出來るならば國内に於て自給することが一番望ましいことと考へますが、終戰少し前から鹽の輸入が止り掛つて居りましたので、是は大藏省が中心になりまして自給製鹽と云ふものを色々と計畫致して居ります、今日迄電氣を使ひ、或は石炭を使ひ、薪を使ひ、海岸に於ては色々な自給製鹽の計畫が實施されまして、相當出來て居りますが、まだ其の數量は國内の消費に對しまして微々たるものであるのでございます、從ひまして、國内で自給し得ると申しましても、其の限度は非常に少いものでございます、一面、工業鹽となりますと、非常に多い數量を豫定せねばなりませぬので、それ等を造ると云ふことは實際上困難と思ひますのみならず、今後の電氣の價格、或は石炭の價格と云ふものは、まあ、さう長い將來は別と致しまして、ここ十年、二十年先を考へましても、さう安くなり得ると云ふ見込がないのであります、さう云ふ熱源の價値、動力源の價値と云ふものが高い日本に於きましては、どうも鹽と云ふものが安くなり得ないのではないかと考へるのであります、今後日本は武裝解除致しまして、實力、自ら護る力はなくなつたのでございますけれども鹽を自給し得ると云ふ状況には、恐らく困難なことであらうと考へます、矢張り近い中國なり、或は臺灣から、是はもう非常に安く出來る鹽があるのでありますから、之に供給を仰ぐと云ふ以外に方法がなからうかと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=29
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030・三橋四郎次
○三橋四郎次君 さうしますと、戰前に於て工業鹽の原料として、大體一年にどの位づつ入つて來ましたか、それが戰爭が始まつて全然なくなつてしまつたのでありますか、現在の「カリ」工業其の他の復興に從つて、二十一年度に於てどの位要り、二十二年度以降に於てどの位要ると云ふことで、今輸入計畫が一々許可を得なければならぬと思ひますが、其の邊は許可を得る手續の上に於て或は必要量がちやんと出してあると思ひますが、其の邊の斯ふ云ふ計畫豫想はどんなものでありますか、ちよつと數字的に伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=30
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031・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今鹽の細かい數字を持つて居りませぬので、孰れ是は大藏省の政府委員が來て御説明を致すことと思ひます、鹽の輸入が一番多い時は百萬「トン」、少い時は六十萬「トン」位從來致して居つたやうでございます、最近の状況は、ちよつと數字が今分りませぬので、後程御答へ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=31
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032・河端作兵衞
○河端作兵衞君 硼酸と硼砂のことに付てちよつと御伺ひしたいのですが、現在國内にありまする量はどの位ありますか、さうして何時頃再び日本に入る見込がありますか、尚現在の在庫と現在の想定消費量とを比較して是はどの位あるかと云ふやうなことを御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=32
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033・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 是も一つ取調べまして、御答へ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=33
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034・川上嘉市
○川上嘉市君 革の問題でありますが革の鞣し方が、日本の技術が非常に幼稚な爲に、同じ革を鞣めした外國の革の壽命の半分しかないと云ふことを、是は前の大阪工業試驗所の所長が私に戰時中話して居つたのであります、是は專門の方に聽くと事實さうだと思ひますが、斯う云ふ風な問題が日本に於て革を鞣めすことを始めてから何十年ですか、或は何百年と云ふか、其の間殆ど顧みられずに居つたと云ふことは日本全體として非常な損失だと思ふ、それでこんなことは外國では何處の國でも皆持つて居るのですから、外國の技術を採入れて倍にしますれば、革が皆倍になつたと同じ結果になる、是非是は一つ實行して戴きたい、序に申上げますが、例へば内地製鹽をやると云ふ時に、此の技術の指導は、唯大藏省が作ると云ふだけでありますか、何か商工省の關係はありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=34
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035・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 商工省の方と致しましては、特別な今日迄の技術を持つて居りませぬので、電力を使つて電氣製鹽をやりまする場合に、電力設備の方から色々と御指導は致して居りますが、まだ是も私共技術と致しまして、十分熟して居りませぬ、あつちこつち試驗をやつて居ると云ふ程度でございまして、其の結果に依つて、又御互の相互啓發が出來ると云ふ程度でございまして、最後的な最も良い制鹽の方法と云ふものをまだ持つて居りませぬので、研究を致して居る程度でございます、まだ其の外の方面、電氣以外の方法に依る製鹽もまだ決定的な製鹽方法と云ふものは確定致して居りませぬ、それで實は製鹽の技術に付きましても製革以上の、革鞣めし以上の非常な幼稚な點からして、初めから申しますと、生の海水を煮詰めて鹽を作つて居る、海水の中には三「パーセント」の鹽がありますけれども、併しながら、之を其の儘に煮詰めると云ふ方法は私は始終言つて居つたのですが、十萬年前の野蕃人でもやつて居なかつたやうな、それを今日本ではやつて居る、其の後になつて、電氣製鹽で電氣で煮詰める、是も殆ど生の海水を其の儘煮詰めて居る、化學を知つて居る者はそんな方法は迚も行はれべきものでないと云ふことは重々承知であらうと思ひます、例へば此の水の蒸發量は表面積に比例するとか或は温度に比例するとか、或は壓力に反比例するとか云ふやうな其の化學の原則はありますけれども、一つも利用しないで以て、其の儘やつて居る、實は今迄やつて居りました電氣製鹽では大抵一「トン」造るのに五萬「キロワツト・アワー」要つて居つた、それが帝人が代表して日本の人絹會社全部の合同でやりましたら、廣島縣の三原では二千五百「キロワツト・アワー」でやつた、それは今迄の二十分の一であります、是は初めから分つて居るので、私は其の主張をして居つたが、例へば粉「ミルク」を造るのに「アメリカ」から來たそつくり其の儘の方法ですが、初め煮詰める時に、低壓蒸溜をやる、眞空蒸溜をやる、さうして出來ましたものは非常に蒸發の「エフイシエンシー」が好くなります、それを温かい部屋へ持つて行つて霧に吹くのであります、霧になると、普通の液に固つて居るのに比べて面積は殆ど無限大になります、其の爲に吹きますと其の部屋で粉になつて下に落ちると云ふ方法がある、私は必ずさうなるべきものだ、さうでなければ、今のやうな、全部でどれだけ電力が足らないで損して居るか分らぬと云ふことを始終言つて居るのです、それが二月か三月か、廣島縣の三原では眞空蒸溜をやつて霧に吹くと云ふことでそれで電力が二十分の一になつて居るのです、斯う云ふやうなことは、國全體として考へると、折角政府が色々工業試驗所を持つて居りながら、大藏省はさう云ふものを持つて居らないが、國全體では、唯造れ々々と言つて居つて、それで二十倍の電力を使つて居る此の頃は電力の制限で工場は、私共の方は一週間に四日しか來なかつたやうなことでありまして、是も全體として一つ御考になつて、斯う云ふやうな色色な物資調整法とかやりましても、元の方が拔けて居ると、倍、三倍、五倍の勞力を費して、結果は一向擧らぬと云ふことになりはしないか、之に付ては御注意願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=35
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036・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 製鹽の技術に付きましては、御話の通り非常にまだ不十分であると思ひます、從來此の自家制鹽を始めました時代が戰爭の末期でございまして、何とかして無理矢理にも造らうと云ふことから致しまして、どうも不十分なものも御認め願つた譯でありますが、今後は矢張り能率の好いものだけしか電氣の供給も出來なくなつて參ります、電力がさう餘力がございませぬ關係上、さう云ふことで自然惡いものは淘汰して行くと云ふことで、優良のものを殘すやうにしたいと思ひます、併しながら製鹽の爲に從來政府の指導は必ずしも良くなかつたと思ひます、今後は何とか改めて行きたい、斬う云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=36
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037・長岡半太郎
○長岡半太郎君 此の法案を拜見致しますると、恰も復興産業と云ふものは元の儘の戰前の方法を以て實行するやうなことに御考になつて、此の法案が出來たものでなからうかと考へる所がございます、併し戰後に於ては、大分戰爭中しくじりなどがございまして、大いに示唆する所もあつたし、又教へられる所もありました、それで幾分か需給の方に變化を來しましたのぢやないかと思ひます、一つの例を申上げますと、是は或は速記を暫く止めて戴かぬといかぬかも知れかせぬが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=37
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038・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=38
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039・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 速記を初めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=39
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040・長岡半太郎
○長岡半太郎君 只今御話の製鹽法の如きに於ても、諸方面で研究を進めて居りますが、元の海水を蒸發してやると云ふ蒸發の方法、或はそれを凍らして鹽だけ取つてしまふと云ふやうな方法も考へて居るやうであります、色々のやり方がありますに依つて、是等の「ソーダ」工業を基本として居る會社などの方面に於ても、此の點は特に研究餘力があれば御努力願ひたい、四方海を以て圍まれて居る日本で鹽が不足すると云ふことは、如何にも外國に對しては言ひにくい恥でありますから、どうぞ此の點は十分御研究を願ひたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=40
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041・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 先程ちよつと他の委員から御話がございましたが、大體此の法案を拜見致しますと、國家總動員法の中の物の關係だけを摘出してあるやうな感が致すのであります、國家總動員法の場合には、有らゆる生産要素と云ふものを全部包括的に掲げてあつたのでありますが、其の他の方、例へば資金の關係でありますとか、勞力の問題、輸送の問題とか輸入計畫、貿易計畫、さう云つた他の色々な「フアクター」に付ては、別途に何か立法をなさるのでせうか、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=41
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042・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 御話の通り、戰時中の總動員法は、生産の有らゆる要素に付ての何と申しますか、戰爭目的に之を集中する規定があつたのであります、物資需給調整法は、此の物資の面だけの統制で産業の囘復及び振興を圖つて行かうと云ふことを考へて居りますので、嚴密に申しますならば、確かに不十分であると考へるのであります、要するに物資を重點的に配給して、今荒廢して居る産業を活き返らせて行かうと云ふだけでありますから、勞務の點、資金の點、輸送の點、總て是は關係のある問題であります、それに付ては此の法律は何も言つて居りませぬ、從ひまして不十分だと考へます、他に法律でどう云ふことを考へるかと云ふと、資金の點に付きましては御承知の通り軍需補償打切の問題に絡みまして、是は金融臨時措置令が出まして、一應今日迄の資金と云ふものは、極く少額のものを除きまして、全部打切られてしまつたのであります、之の對策と致しまして、御承知の通り復興金融金庫と云ふ新らしい金融機關を設けまして、是で資金の繋ぎをやつて行かう、三年間の施行期限を以て、重要な産業の復興の爲には、此の金庫を通じまして資金を流して行かうと云ふことになつて居るのでありますが、此の運用に當りましては、産業の復興と云ふことに重點を置いた運用のやり方をして參りたいと考へて居ります、即ち資金を貸出します場合に、中央及び地方、それぞれに資金を運用致します場合の協議會と云ふものを作りまして、それに關係各省竝に民間の産業界の方々、或は他の金融業者の方々等を入れました協議會で、重點的に資金の流れ方を決定して行く、斯う云ふことになつて居りまして、大體戰時中のやり方と同じやうな方法を考へて居るのであります、尚資金調整法等まだ殘つて居りまして、重點的に新らしい事業計畫の場合の資金の面に付ても、政府としては調整をし得る途を殘して居ります、次に輸送の問題でございますが先程廣幡委員の御話にございましたやうに、直接は特別の法規を今度設けて居りませぬ、併しながら輸送の大部分のものは、現在國が陸も船も實施を致して居ります關係上、運輸省のやり方如何に依つて、是は裏附出來るものと考へて居ります、特別の法律を要せずに、大體の輸送と云ふものが産業囘復の線に沿つて行き得るものと考へて居ります、次に勞務の問題でございます、戰時中の勞務動員に關するやうな規定と云ふものは、今日の状況から致しますれば、勿論新らしい法規を作ることは不可能な状態でございますし、又一面勞務が非常に剩つて居る状態でもございますので、其の方面に付きましては、特別の法規を要せず、勞務者を集めると云ふことは、まあ今日の状態から申しまして可能ではなからうか、斯う云ふことで、特別の手を打つて居らぬのであります、要するに資材を重點的に配給し、之に資金の裏附けを致して參りますれば、産業の囘復と云ふものは望めるのではなからうか、是が此の法案の狙ひ所でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=42
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043・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 只今の詳細な御説明に依りまして、大體了承致したのでありますが、當面の生産の關係を見ます場合に、資金の問題、勞働問題と云ふ風なものが生産を阻害して居る大きな要素のやうに思はれます、只今の復興金融に關する運用協議會の資金面の御話がございましたが、是は例へば、本法に依りまして、各會社工場等に付て、第一條の生産命令が發令されますやうな場合には、自動的にそれが行はれるやうになつて居るのでございませうか、其の點と、もう一つは、先般の財政金融措置で、生産關依は、一方は第二封鎖に、他方は棚上げと云ふやうな恰好になつて居りまして、生産を再開するに當りましては、どうしても相當多額な先行資金、運轉資金が放出されませぬと「スタート」が切れないぢやないかと思ひます、其の二點に付きまして伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=43
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044・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 第一條の第三號で、生産命令を出します場合に金融の措置が伴はなければいかぬではないか、斯う云ふ御話でありますが、其の通りでございます、私共と致しましては、第三號の規定は餘り容易に動かす積りでございませぬ、普通は生産に相當する資材を割當てまして、それに依つて生産を御願ひする譯でありまして、之を命令と云ふ形で生産を御願ひする積りはないのでございますが、特に緊急なもので、どうしてもそれがなくてはいかぬもの、或は需給が「アンバランス」になつて居りまして、どうしても其の物を造らねばならぬと云ふやうな場合、一例を擧げますれば、最近の鋼材の中で、薄板と云ふものが非常に需給が逼迫致して居ります、建築用其の他に使ひまするには、薄鐵板と云ふものが非常に足らぬのであります、さう云ふ場合に、一應は資材の割當の際に、鐵の會社に對しては、薄板を造るやうに御願ひ致しまするが、それで十分でない場合には、薄板を幾ら造ると云ふ命令で行く場合があると豫想されるのであります、さう云ふ場合に、特に資金が必要な場合には、勿論其の金額に依つて地方々々孰れかの協議會に掛けまして、資金の供給も考へて行く、斯う云ふ豫定になつて居るのであります、それから新らしく事業を再開する場合は之に先行する所の資金が要ると云ふ御話、是も御尤もでございます、併しながら斯う云ふ場合には、所謂第二封鎖と云ふものを使ふことは、今日考へて居りませぬ、第二封鎖は企業の整理が出來まして、金融機關等の現實の損失がはつきり分りまして、さうして幾ら殘るかと云ふことが確定致さなければ、此の封鎭は解けないことであると考へて居ります、從ひまして、さう云ふ場合にも、總て此の新らしい資金と云ふものは、復興金融金庫の資金を使ふことだけになつて居ります、從ひまして、其の産業が重要である限りに於ては、今日の事態を考へまして、不可缺の産業であると云ふことがはつきり致して居りまする限りに於ては、復興資金を豫め融通して行く、斯う云ふことで行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=44
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045・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 整理に入りませぬ會社の場合でありましても、八月十一日以降は金融機關と一般産業とが同時に處置をされたものでありますから、何處の會社に參りましても、當面の運轉資金に付ては非常に逼迫をして居るやうな聲を聞くのでありますが、只今の御話のやうに、整理が終りましてからと云ふことでは、或産業に於きましては、又現在活動して居ります生産企業であります場合には、寧ろ折角此の春以降、上り掛けた「カーヴ」が止つてしまふと云ふ風な場合も多々あると思ふのでありますが、さう云ふ風な本格的な整理會社でない一般の生産企業に對しまして、何等か商工省と致しまして、金融機關に對して、一方は棚上でやり、一方は第二封鎖になつたやうな場合に運轉資金の供給に付きまして、特に御考の所がございましたらば、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=45
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046・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 今後も生産が續け得る會社に於きまして、所謂第二封鎖になりました爲に、資金として使ひ得る金がなくなつたと云ふ場合には、勿論是は新らしい金融を致しまして、其の仕事を繼續するやうする積りであります、第二封鎖の點は、先程も御話の中にありましたやうに、是は整理の爲の棚上でございまして、整理が附く迄は、是はどうも之を擔保にどう斯うすると云ふ譯には行かぬものでございまして、矢張り第二封鎖になりました爲に資金の非常に窮屈になつたと云ふ場合に於きましては、新らしい資金を普通銀行なり、普通銀行で融通が困難な場合に於きましては、復興金融金庫の資金を、新勘定の方に貸付けて行く、斯う云ふ形で行くことになつて居りまして、此の點は能く大藏當局とも連絡を致しまして、從來程度の資金と云ふものは當然に貸付けて行くと云ふ方針をそれぞれの金融機關に指示を致して居る譯であります、大體は、從來の通り仕事を續けて居られます所に於ては、資金がさう困難でなく動き得るやうに指令が行つて居る筈でありますから、若しさう云ふ、非常に不便を感じて居られます所に對しましては、それぞれの地方の商工局、或は財務局等に御連絡下されば、是は或程度解決が附くのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=46
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047・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 先程勞務關係のことに付きまして、戰時中のやうな不安定ではない、大分勞働力と云ふものは餘裕があると云ふ御話でございましたが、戰後の今日の勞務關係は從前迄のやうな、所謂頭割りの問題でありませぬで、新らしい勞働問題と云ふ風なものが非常に大きな要素になつて居ると思ふのであります、處が、一方政府の勞働關係に於ける態度から申しましても、積極的に生産の指示慫慂をした場合に、其の數量に付て、積極的な御立場を執れないでないかと思ふのでありますが、さう云つた場合に、矢張り生産指示なり慫慂を受けました會社に取りましては、事實上、所期の生産が出來ないと云ふやうな面が多々あると思ふのであります、さう云ふ關係に付きまして、矢張りそれを生産計畫なり、生産量に豫定されることは、非常な齟齬が來るやうな結果になると思ふのでありますが、如何です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=47
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048・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 勞務の關係に付きましては、強制力を用ひる所の法制を今囘は作つて居りませぬ、從ひまして、人が足らぬ、或は人が働かないと云つたやうな場合に、生産命令を出しましても所期の生産が起らぬではないかと云ふ御話は、成る程起り得ることがあると考へます、唯過去に於きまして、肥料等に付て執つた政策でございますが、御承知のやうな状況で、國内として肥料は非常に重要であるのでございますが、各肥料會社に對しましては、生産の豫定數量と云ふものを決めて、是は命令ではございませぬが、指示を致しまして、其の目標達成の爲の御努力を御願ひして居るのでありますが、其の際には、實は併せまして勞働組合の方にも御願ひして居る、政府と致しましても、此の肥料は是非必要なものだから、其の工場は何「トン」と云ふやうな硫安なら硫安、石炭窒素なら石炭窒素を造る豫定になつて居るから、協力して貰ひたいと云ふことを御願ひしまして、非常に此の方面の支持が強うございまして、資材方面等は存外不十分であつたにも拘らず、まあ百「パーセント」迄は參りませぬでしたけれども、非常に好い成績を擧げた工場が多々あつたのでございまして、今後は矢張り勞務の方面に於ても現状を能く認識理解して貰つて、協力して貰ふ、さう云ふ方法で行くことが一番賢明であり、又實際の效果があるのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=48
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049・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 それから他の生産要素の問題でありますが、電力は電力石炭は石炭で、先般單行法が出て居りましたのでありますが、今後は逐次、斯う云つた包括的な委任立法でなく、單行法に逐次振り替へておいでになる御豫定でありませうか、どうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=49
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050・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 今日のやうな經濟の非常に不安定な状況に於きましては、一つの物資が足りなくなると、次の物資に直ぐ影響があると云ふやうな關係でございまして、已むを得ず斯う云ふ包括的な立法になつて居るのでございますが、勿論斯う云ふ立法は、特別な經濟状態の際に設けるものでございまして、此の施行期限も後にございますやうに、一年半を最長と致して居ります、其の内に經濟が大體安定をして參ることと思ひます、さう致しますれば、どう云ふものだけはどうしても最後迄法制的な統制を殘すべきかどうかと云ふことが段々判明して來ることと思ひます、さう致しまするとそれを矢張り此の法律に係はる場合に於ては、單行法と致しまして設けて行きたい、さうして一般的の包括的な法制と云ふものは、成るべく早く止めたい、斯う云ふ考へで居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=50
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051・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 次に、物資の割當配給等の根源になります供給力の中の今後大きな要素になると思ひますが、先程御話が出ました貿易關係、就中、輸入の問題でありますけれども、貿易關係では物資の諸統制、それから輸出入業者に對する或程度の統制と申しますものは、事實貿易廳が絶對に力を持つて出來るかも知れないと思ひますが矢張り臨時物資需給調整法の關係を適用されるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=51
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052・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 貿易は先程申上げましたやうに、聯合軍の完全なる管理下にございます、從ひまして物の出し入れに付きましては、完全に民間の手にないのでございますが、一旦是が國内に入つて參りますと、矢張り民間の團體に流して行く譯であります、其の際には、勿論此の需給調整法の適用の下に、重要な資材は流れて參るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=52
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053・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 其の場合に現在、又將來も、相當計畫性を持つた貿易計畫と云ふものが行はれるのでありますが、其の末端の下部機構は矢張り集荷機關なり何なりの貿易業者と云ふものが相當活躍しなければならないと思ひます、其の所謂貿易業者と云ふものが今後相當、我が國が見返り物資の供給を爲しそれに基きまして、更に不足物資を輸入すると云ふやうな關係に當然立つて參ると思ふのであります、さう云つた時に見返り物資の生産をして居ります各工業組合傘下の「メーカー」があると思ふのですが、さう云つたものは各地の事業の關係で、銘柄が非常に雜多であり、逐次變化して來るやうな状況になつて居ると思ふのでありますけれども、さう云ふものに付ての原材料が、過去に於ては問屋と云ふ風なものから支給されて運營されたと思ひます、處が本法に依りますと、茲に大體産業團體としてありますが、其の産業團體と云ふものの内容は、主として、例へば鐵は鐵鋼統制會とか、石炭は石炭統制會とか云ふ風な、其の物資を生産する産業團體と云ふ風に取れるのでありますけれども、其の所謂過去の問屋のやうな貿易業者が、物資を「メーカー」の方に供給して、急速な生産をさせるとか何とか云ふ風なことは御考になつて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=53
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054・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 輸出品の場合に於きまして、從來の貿易商なり問屋と云ふものの地位でございますが從來は仰せの通り、其の邊は原材料を買つて加工させて、買入れて輸出して居つたと云ふ状態でございました、今後に於きましても矢張りさう云ふ形が復活して行くものと思ひますが、今日は先程申しましたやうな聯合國の管下にございますので、此の形は執れぬのでありまして、輸出入に付きましてはさう云ふ問屋の方々、貿易業者の方々を以て組織した原材料の統制會社からそれぞれの原材料を工業組合、其の他の工業者の方へ、一手に供給致しまして、其處で加工させて、それを政府で買上げて行く、斯う云ふ形を取つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=54
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055・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 今私の申上げましたのは、貿易廳と云ふものが、もつと強い力を益益御持ちになるやうになつて、貿易廳自體が相當程度に資材の配當なり、何なりに關與されると云ふ風な恰好になつて行くのぢやないかと思ふのでありますが、それと今迄ありました物資の配給なり、何なりの統制のやり方と云ふものとが、一方は貿易業者と云ふものは、矢張り飽く迄も商業機構と云ふ風な恰好になつて居りますので、其の關係が二元化しやしないかと云ふことに付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=55
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056・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 貿易の統制團體として、嘗て交易營團と云ふものがありましたが、現在は解散を致しまして清算中であります、從ひまして今日に於ては、貿易廳が主たるさう云ふ割當の實權を持つて居るのであります、唯さう云ふ民間の統制團體を使つて居りまするが、實際の割當に付きましては、貿易廳が完全な指示權を持つてやつて居るのでありまして、仰せの通り貿易に關する關係に於ては、貿易廳の力でやつて居る譯であります、從來の商業機構と云ふものは、唯其の技術的な方面を、言葉が惡うございますが、利用する、活用する、斯う云ふ形になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=56
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057・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 それは從來の統制の關係からしましても、過去の活溌な貿易が行はれた時代と戰時中になりましてからの變化が起つてさうなつて居ると思ひますが、矢張り今後は相當我が國の見返り品の製造業と云ふものが零細な中小規模の産業になつて參ると思ふのであります、さう云つた場合に戰時中の大軍需工業會社等に割當をしたやうな割當方法では、非常にむづかしいことになりはせぬか、詰り地域的にも、又銘柄から言ひましても、複合生産が多くなつて、各工場の規模も小さくなつて行く、地域的にも分散され同時に下請の關係も複雜化して居る、斯う云ふ場合に、矢張り資材なり何なりと云ふものは、従來戰前にありましたやうな問屋と云ふ風なものを使はなければ結局出來ないのぢやないかと云ふ氣がするのであります、それは勿論國家計畫としましては、貿易廳竝に其の傘下の諸團體が總括して扱ふやうになりますけれども、今度は「メーカー」に對する實際の力と云ふものは、矢張り問屋方面が握つて行くのぢやないか又握らせなければ、迅速に市況に應じて銘柄の雜多なものを作れないのぢやないかと云ふ風に考へるのでありますが、是は將來の問題として、ちよつと意見になるやうでありますけれども、考を申上げた次第であります、次に今迄の統制の缺陷でありますが、今迄の統制に色々缺陷があつたとしましても其の一番大きな要素は、何と言つても商業機構と云ふものを輕視したことぢやないかと思ふのです、當時は作戰其の他の機密がありましたし、さう云ふ色々の闢係で特に商業と云ふものが排斥されたのでありますけれども、其の結果はどうなりますかと云ふと、結局矢張り「メーカー」が本當に能率を發揮するやうな恰好にならないのぢやないか、本當に良いものを作る所に物が流れて行くと云ふ風な恰好になります爲には、どうしても商業就中、問屋と云ふ風なももの活用が考へられるのかと思ひますが、此の臨時物資需給の調整法が出來ますと、矢張り戰時中と同じやうに其の生産を扱つて居るものの産業團體であり、それが傘下の「メーカー」に對して資材配當をすると云ふことは、結局能率と云ふ問題で非常に低いことになるやうに思ふのであります、それに付て、此の産業團體と云ふ解釋でありますが、此の中に、所謂商業關係の團體をも含めて御考へになつて戴けるのでありますか、どうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=57
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058・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 商業者が物の流れなり、生産の上に於て非常な重要な地位を占めて居りましたことは御承知の通りであります、今後も其の力を復活さして參りますことが、我が國の商品の品質を高め、又色々な效率を擧げる上から申しまして好いことは仰せの通りであります、唯物が非常に極端に逼迫して居ります今日は、物の流れを正すことに急でございまして、商業者の力を取入れることが非常に少なくなつて居りますのでございますが此の新らしく臨時物資需給調整法を施行致すに當りまして、少し其の點を變へて行きたいと思ふのであります、尚第二條の産業團體と申しますのは、ちよつと誤解があるといけませぬから申上げますが、是は所謂割當を致す機關でありまして、假に鐵鋼業者の方は鐵鋼協議會と云ふものを作つて居ります、是が産業團體になるのであります、是は鐵を造る場合に於ける割當を致す機關であります、併しながら鐵を流しますものは、別な鐵鋼販賣會社と云ふ配給會社がありまして、それを通じて物が流れて行く、斯う云ふのでありまして、問屋の方は、此の配給會社の方の側になつて居るのであります、御手許の資料の中にありますやうに、現實に物の流れます「ルート」と致しまして、配給業者で行きますものと、配給協議會で行くものと二色になつて居ります、從來は配給統制會社と云ふ形で一本でやつて居ましたものを、大分配給協議會と云ふ形に引直して居るものが數箇あるのであります、此の配給協議會と云ふものは、どう云ふものかと申しますと、是は主として問屋の方が中心になりまして、生産業者、或は消費者を入れました一つの協議會でありまして、是で物の流れ方を決めて行くのであります、即ち第二條の産業團體で工場別の資材の割當を致します切符を其處で切るのであります、假に「セメント」を千「トン」と云ふ切符を工場に切りますと、配給協議會ではそれを小野田「セメント」に何袋、或は秩父「セメント」に何袋と云ふ、此處で問屋さんが從來の機能を復活致しまして、輸送の關係などを見て、合計千「トン」になるやうに、物を分けて、どの工場の關係の問屋さんから幾ら出荷すると云ふやうなことを計畫致す譯でありまして、さう云ふ意味に於て、問屋の機能を一部復活して行く形にして居るのであります、原則と致しまして、斯う云ふ配給協議會を作るものは「メーカー」も消費者も割合に數が少い場合に、之を作ることに致して居りまして、「メーカー」、消費者が共に多いやうな場合には、さう云ふ「コンビネーシヨン」がむづかしい關係で、さう云ふ情勢の許す限りに於ては、配給協議會と云ふ形を問屋機能を一部活かしながら行きたいと、斯う云ふ風に致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=58
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059・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 第二條の今御説明で、配給協議會と云ふものが具體的な割當權を持つと云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=59
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060・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 物の流れ方に付ては、配給協議會が指示をすると云ふことになる譯であります、甲の工場に千「トン」ならば千「トン」の割當をする、鐵鋼協議會、或は肥料の團體が致します、昭和電工に二千「トン」の鐵を入れると云ふことになると切符を持つて行つて鐵鋼販で鐵を買つて來る譯であります、さう云ふ問屋の團體は、配給統制會社の方に參りまして、物の割當團體と云ふのは、其の生産の計畫及び配給は商業者の團體が之に當る、割當機關と配給機關は別でございますから、工場別の資材割當機關と現實の物の流れまする「ルート」と云ふものは別でございますから、別の機關になつて居るのであります、第二條は資材の割當切符を切るだけの團體であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=60
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061・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 さう致しますと、從來も矢張り鐵鋼販の中に協議會がございまして、又其の下部には、各各「メーカー」指定の問屋と云ふものがあつて、其の形は今度の形と變つて居ない割當權は矢張り從來と同樣に生産業者の團體が、傘下の團體に對して割當をし、所謂其の指示に從つて現物を供給すると云ふだけが問屋を使ふのだ、斯う云ふことになれば、産業團體の直接商業者と云ふものは擴張解釋で含まないと云ふことになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=61
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062・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 鐵鋼に付ては從來通りの機構になつて居るのですが、其の他のものは御手許に只今差上げました資料にありますやうに、配給協議會の形に引直したのがあります、此の表にございますやうに、配給協議會配給の指示機關と云ふ欄がございまして、配給協議會と云ふのが四つ、五つ、六つ程ございます譯でございますが、是が從來もやつたものもございますが、成るべく問屋機構を斯う云ふ形で活かして行かうと云ふことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=62
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063・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 只今の御話で大體分つたのでございますが、尚まあ、結局此の本條にございますやうに、物資が極度に不足をしたから統制をするのだと云ふことでありまして、さう云ふ風になつて居りますけれども、物資が不足した場合に、統制が必要になつて來ると云ふことは、大體原因が二つあるのではないかと思ふのであります、一つは主要食糧とか、其の他消費物資の關係でありまして、是は所謂足らざるを憂へず、均しからざるを憂へると云ふ風な思想から、どうしても物が足りないから統制を必要とするのだ、斯う云ふ風な思想が起つて來る、併しもう一方には、矢張り先程來御説明がありましたやうに、急速に復興をしなければならぬ、それから特定の産業を政府が助成するのだ、斯う云ふ風に國家意思を強力に出して、斯う云ふ風なものが重點的になつて來ると云ふ意味合で統制の必要論と云ふものが矢張り起つて居るのではないかと思ひます、其の場合に一つは今迄の統制物資、終戰後の統制物資を見ましても左樣でありますが、消費物資が大部分でありまして、是ならば矢張り分配量、配給の公平と云ふことが主眼でありますから宜いと思ふのでありますが、以下追加されようと思ふ物資と云ふものは、寧ろ生産資材、生産財の關係でありまして此の關係の所謂統制の狙ひと云ふものは、飽く迄も生産増強なり、急速な復興なりでなければならぬと思ふのであります、さう云つた場合に、現在の機構で行きますと、どうしても所謂會社工場の能率の向上と云ふやうなことが主たる狙ひになつて居ることと思ふのであります、それで本法にもございますやうに、特に産業の民主化を圖ると云ふことは、結局産業の民主化と云ふものを引換へて考へて見ますれば、能力のある「メーカー」に優秀な製品を造らせ、又技術の向上をさせる、さう云ふ風な自由な機會を與へて行くと云ふことと、もう一つは、需要者に欲しいものを得るやうな自由な機會を與へて行つて、それが又同時に「メーカー」を批判し刺戟して行く、生産を刺戟して行くと云ふ風なことが結局産業の民主化の根本であり、生産財の配當、割當と云ふものも、さう云つた線に沿ふべきものでないかと思ふのですが、さう云ふ際に、所謂需要家の代辯である商業機構と云ふものが、是非とも此の際は活動して、同業の團體が傘下の「メーカー」に對する所謂總花の實績主義と云ふことにならないやうに、常に「カツト・アウト」をすると云ふやうな方向に行かなければならないものだと云ふ風な氣がするのであります、それに付きまして、今の此の産業の民主化に關しましての政府御當局の御意見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=63
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064・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 今後の此の法律の狙つて居ります所は、第一條にもありますやうに産業全般の囘復、振興、復興と云ふことでございます、從ひまして、苟も基礎的な産業と云ふものに先づ重點を置きまして、是が囘復致しませぬ時は、一般の國民の消費財と云ふものの生産は起つて參らぬ譯でありますから、さう云ふ意味に於きまして、急速に産業の囘復を圖ります爲には、重點的に能率の宜しいものに資材を分けて行つて、さうして生産財の増産を圖つて行くと云ふことが狙ひの一つであらうと思ひます、從ひまして産業團體等に於て資材を分けて戴く譯でありますが、さう云ふ場合には、矢張り能率と云ふものを御話のやうに考へまして、一番能率の好い工場、又製品の品質の良い工場と云ふものに資材が餘計に參りますやうな割當基準と云ふものを作つて戴きたいと考へて居ります、民主的に割當をする譯でございますけれども、割當の基準は、飽く迄經濟安定本部總裁が決めた方策に依つて、最も能率好く資材を使ふと云ふ所へ資材を流すやうな矢張り基準と云ふものを作つて戴きまして、其の基準を構成員の議決に依つて決めて戴いて各團體で分けて戴く、斯う云ふことになるのではなからうかと思つて居ります、同業者が良いものを的確に流すと云ふことは、御話の通り、さう云ふ機能は持つて居るのでありますが、唯此の法律の施行して居りまする期間でありまするここ一年間と云ふ程度のものに於きましては、物資の需給と云ふものは、依然逼迫した状況でございませうし、事業者もさう云ふ良い所を活躍させる爲には、他のものへの資材の供給もなかなか困難だらうと思ひますので、此の法律と致しましては、さう云ふ風な程度で産業團體、同業者の方の組織されて居ります産業團體、其處で能率的な割當を行ひ、能率の好い所へ出すと云ふやうな割當基準を作つて行くと云ふことで、能率の好い工場を伸ばして行つて、さうして増産を圖ると云ふことに重點を置いて居りまして、問屋機能の復活と云ふことに付きましては別途考へて行かなければならぬものと考へて居ります、只今の配給協議會と云ふやうな程度でまあ復興して行つて、此の法律の施行の終る頃には、逐次増産も或程度出來ることと思ひますので、事業者の活動の範圍も擴めて行くと、斯う云ふことにしたいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=64
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065・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 戰時企畫院がありまして、團體令が出來ました場合に矢張り同じやうなことが言はれたのであります、結局それが戰時中は先程來申しましたやうに、特に軍需工業を振興して、民需を抑壓しなければならぬ又軍の作戰用兵の祕密があるからしてどうしても官の割當が必要でありまして、其の爲に工業組合が中心の割當の機構が出來上つたのであります、其の時に、矢張り能率の問題が主として起つた際に、それを補ふ手段と致しまして、結局最初は統制官廳に「フユーラー・システム」で、絶對の權能を與へて行く、さうして同業者の中から選ばれた者が、利害を超越して傘下の「メンバー」に對して資材割當をやつて行く、斯う云ふやうな方法をやつたと思ひますが、其の際に結局「フユーラー・システム」を執つても、矢張り其の同業團體と云ふものは、職員其の他全部の給與は協議會から出て居るとか何とか云ふことで、高能率を發揮し得ないで了つたのであります、處が就中終戰になりましてから、今日此處に本法にありますやうな合議制を採つて行くやうな場合でありますと、其の面が更に強くなつて、結局同業團體は高能率の重點化が出來ないと云ふ風な懸念がするのであります、尚工場別の割當の場合には、其の程度で宜いかも知れませぬが、今後陸海軍に居りました優秀な技術者が、矢張りさう云つた小さな中小工業の會社工場に入るやうになりますと、さうすると工場單位では分らない、結局何々會社の「オイル・ポンプ」は良いのだとか、どの會社の「ダイヤ・グラフ」は良いのだと云ふやうなことになつて來るではないかと思ひます、さうした場合に、誰が重點的な配當をするかと云ふことになりまして具體的に考へました場合には、殆ど甲乙がないと云ふやうな結果になるのぢやないか、結局産業の民主化は、前の戰時中の統制會よりも、もつと合議制を採るだけに重點化が出來ないと云ふ結果になると思ひます、政府の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=65
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066・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 此の第二條には民主的に組織されたと云ふことが書いてございます爲に、合議制になることは仰せの通りであります、構成員の議決に依つて基準を決めまして割當をする譯でありますから、構成員の方の御同意を得なければ、能率本位の割當と云ふことは出來ない譯でありますが、併しながら總動員法が施行されて居りました時代と、今日のことを考へますと、斯う云ふことが多少違ふではないかと思ひます、過去に於ける統制と云ふものは物資がじり貧になつて行した時代の統制でありまして、若干「ボーナス」を取つて、それを優秀なる工場に割當てようとしましても、割當會議を開く度に資材が減つて參りまして、さう云ふことを開く餘裕がなかつたのです、今日は非常に少いものではありますけれども、是が因となりまして、是から恐らく伸びて行く統制であると思ひます、從つて毎期々々、若干づづの餘裕を生ずるではないかと思ひます、其の餘裕のあります物の中の若干を「ボーナス」に取つて行きまして能率の良いものに分けて行くと云ふ形を取りますので、多勢の方の解釋ではありますけれども、其處に過去よりもやり易いやうな情勢があるのではないかと云ふ風に考へて居ります、のみならず、經濟安定本部で數字などの基礎的なものを定める譯でありまして、日本の經濟がどう云ふ風に行くべきかと云ふやうなことは、從來のやうに總て祕密に隱された時代とは違ひまして、我が國經濟の建て直りに關しての色々な數字と云ふものは、時々刻々公表されるのでありますから、前の指導者原理の時代より能く理解せられて、さう云ふ物を保留する、良い工場に對する特別なる資材の枠を保留することが出來ると云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=66
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067・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 今迄の統制機關の終戰後の情勢でありますが、要するに斯う云ふ風に物資需給計畫と申しますものは、最高の計畫意思が末端迄滲透しなければ、何にもならないやうな氣がするのであります、で、終戰後各色色な統制機關が、或は解散せられたものがありますし、又或は業務を止めて居りますものもあるかと思ふのでありますけれども、今度新らしく組織された民主的な團體と申しましても、結局矢張り元の組合なり何なりが、活用されざるを得ないぢやないかと思ひます、殊に其の從來の組合の終戰後の色色な業績に付きましては、再び相當な割當の權利と云ふやうなものを持つて參ると云ふことは、非常に色々な問題で危惧される點がなきにしも非ずであります、其の問題は別としましても、今の新らしい統制を御考になつて居られまするものは、今迄の統制とどう云ふ點に相違がありますか、承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=67
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068・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 從來の統制と今後の統制と、根本的に違ひます點は、從來の總てを戰力化することに集中して居つた統制であります、無理であらうが何であらうが、兎に角やり遂げなければならぬと云ふ、切羽詰つたものでありましたが、今後目標はそれぞれの産業に付て立てられるのであります、恐らく經濟安定本部が今後數箇月後に於きましては、重要産業に付ては、大體の基礎的な計畫を御建てになると思ひます、さうなりますと、其の目的を達成される爲に、斯う云ふことをやるのだと云ふことが明かになる譯でありまして、之を受けて立ちまする産業團體も、其の目標がはつきり與へられますので、それに合ふやうに協力を願へると考へて居ります、從來の闇雲の統制と事變りまして、此處迄到達すべきものであると云ふことが明かにされ、それに配するに、色々な勞務、金融等、總て同じやうに計畫を建直しまして、祕密は今後ない譯でありますから、公開されて行く譯でございますから、恐らく從來と違ひ、明瞭に統制の内容が分つて協力して戴けることになるのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=68
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069・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 田中委員にちよつと申上げますが、只今、川上委員の御請求に依つて、山林局長が御見えですが、午後に外に御用がございますので、出來ますればちよつと、川上委員に先へ御願ひ致したいのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=69
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070・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 私の方は是で中斷致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=70
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071・川上嘉市
○川上嘉市君 木材は從來、日木社、縣木社で統制されて居つたのでありますが、兎角聯繋が十分でなく木材は出廻らない、其の爲に建築も思ふやうに行かないと之ふやうな状況にあつたのでありますが、今度此處に矢張り物調法に木材が入つて居ります、今後どんな組織を以て、どんな方法に依つて木材が統制されますか、又本年度は非常に澤山の需要が、荷造材等が殖えて居りますが、どんな見透しを以て御やりになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=71
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072・中尾勇
○政府委員(中尾勇君) 木材の統制の法案に付きましては、林業會法案を只今衆議院で御審議願つて居るのでありますが、其の内容は木材統制法の廢止竝に日本木材會社及び地方木材會社を今囘廢止致しまして、それに代るべき實績統制機關と致しまして、中央に日本林業會を設けることに致して居ります、尚其の下部機構と致しまして、都道府縣に都道府縣の林業會を構成することに致して居るのであります、尚都道府縣の林業會の下部機構と致しましては、只今出來て居ります縣の森林組合聯合會と、木材關係業者で新たに林産組合と云ふものを作りまして、此の林産組合と縣森林組合聯合會とを以ちまして、都道府縣の林業會と云ふものを作るのであります、更に其の下部機構と致しましては、縣森聯の方には森林組合がありますし、又林産組合の方には地區別に林産組合を結成することに致して居るのであります、統制の法規と致しましては、割當の方は總括的の割當を經濟安定本部で致されまして、それを先刻申上げました日本林業會の方に諮問致しまして、日本林業會で木材の需給計畫を建てまして、農林省の許可を得まして、都道府縣の林業會に指示を致します、都道府縣の林業會は更に農林省の指示に基きまして、今の日本林業會の指示に基きまして、更に細かい割當を致すのであります、都道府縣の林業會に於きましては、更に傘下の組合竝に組合員に、生産と配給の割當を致すことに相成つて居るのであります、尚其の現物の需給の方式でありますが、現物の取引關係は只今申しました配給割當が決定致しました場合に、其の配給割當の範圍内に於きまして切符を發行致しまして、其の切符に依りまして取引をすることに致して居ります、例へば東京都の林業會に於きまして、集荷の割當を受けました業者が、生産縣の方の、例へば秋田の方と取引をする場合に、秋田の方では供出の割當を各業者に致して居りまして、集荷の割當を受けた業者が秋田の方に參りまして、秋田の林業會に、其の割當證に依り秋田の林業會の認證を得まして、さうして供出の割當を受けた秋田の組合員と直接取引をすると云ふやうな、行き方に致したいと存じて居るのであります、尚縣内の生産のものでありますれば、其の割當の切符を貰ひました者が、直接林業會の承認を得まして、さうして縣内の生産を致して居ります、組合員から直接取引をすると云ふやうな行き方に致したいと存じて居るのであります、それから、大體の木材の取引は、以上申上げたやうな事情にあるのでありまするが、大體本年度の木材の見透しに付て御尋があつたのでありまするが、本年度の木材の生産目標は、七千五百萬石を目標と致しまして、只今生産確保に努力を致して居るのであります、第一四半期の實績は、大體前年度同期の七十四「パーセント」程度の實績を示して居ります、數量で申上げますと、一千四百萬石程度の生産を確保したのであります、然るに此の七月以降、食糧の逼迫の爲に生産も下向きになりまして、相當心配を致して居るのでありまするが、大體只今の見透しに於きましては、六千五百萬石程度が確保出來るぢやないかと云ふ風に考へて居るのであります、然るに一方需要の方は、御承知の通り、最近賠償物資の包裝用材等の需要も出て參りましたし、且復興用材と致しましても、千二百萬石程度の數量を必要と致しますし、更に又進駐軍の宿舍用材、兵舍用材と致しましても、約一千萬石以上の需要がある實情にあるのでありまして、此の供給に付きましては、政府當局と致しましても、非常に憂慮致して居る次第でありますが、幸に只今の處に於きましては、進駐軍用材の宿舍用材、それから兵舍用材、是は大體此の九月末が期限になつて居りますが、大部分完納し得る見込であります、尚復興用材に付きましても、第一四半期は大體七十二「パーセント」程度の實績を收めて居るのでありますが、是も豫定致しました數量は、年度末迄に大體完納の見込があるのであります、併し今御質問になりました賠償物資の包裝用材の方は、まだ商工省の方から正式に細かい交渉もあつて居りませぬし、只今の處、計畫も立つて居ない實情にあるのでありまするが、是は大體千六百萬石程度を二箇年間に所要すると云ふ御話も聞いて居りますし、今年度の所要量はどれ位になりますか、はつきり致しませぬが、大體此の方面の供給は出來るのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=72
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073・川上嘉市
○川上嘉市君 輸入材を御使ひになるやうな計畫、或は見込はありませぬでせうか、此の點と、それから木材の今後の價格であります、實を申しますと、今日既にあの價格では、殆ど家も建てることも出來ないし、又木工製品を造つても、賣れないやうな價格になりつつあるのであります、此の價格を今後御下げになるやうな御計畫であるか、或は見透しに付て御尋ね申したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=73
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074・中尾勇
○政府委員(中尾勇君) 價格の方の間題は、只今物價廳の方で御審議願つて居りまするので、私の方からはつきり御答へすることは出來ないのであります、今一つは発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=74
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075・川上嘉市
○川上嘉市君 輸入材です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=75
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076・中尾勇
○政府委員(中尾勇君) 輸入材の件に付きましては、本年の十二月迄に約百五十萬石、更に來年の一月から十二月迄に二千萬石程度を只今輸入して戴くやうに懇請中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=76
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077・川上嘉市
○川上嘉市君 それは見込がありますですか、御見込は如何ですか、申出しただけですか、或は相當見込がありさうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=77
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078・中尾勇
○政府委員(中尾勇君) まだ只今の所はつきりした何は分りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=78
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079・川上嘉市
○川上嘉市君 別に了解があつておやりになつた譯でもないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=79
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080・中尾勇
○政府委員(中尾勇君) さうでありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=80
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081・川上嘉市
○川上嘉市君 さうでありませぬか、有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=81
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082・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) それでは是で休憩致します、午後は一時より開會致します
午前十一時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=82
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083・会議録情報3
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午後一時二十分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=83
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084・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 午前に引續き會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=84
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085・鈴木重郎
○政府委員(鈴木重郎君) 御質問のございました「フイルム」に關する概況を御説明申上げます、「フイルム」に付きましては、是の「メーカー」は大體二社でございまして、戰前と同樣でございます、是の大體の生産能力と致しましては、之を分けて申上げますと、所謂映畫用の「フイルム」と、其の他普通の「フイルム」、或は「エッキス」光線の「フイルム」と云ふやうに分れるのでございますが、此の兩者を併せまして、現在の生産能力と致しましては、映畫用の「フイルム」に致しまして申上げますると、約八百十萬「フイート」の生産能力でございます、それから「エッキス・レイ・フイルム」、「ロール・フイルム」と云つたやうな、其の他の「フイルム」のを申上げますと、約十萬平方「メーター」の生産能力を持つて居るのであります、此の生産に付きましては、現在「ジイ・エイチ・キユウ」の民間情報教育部の方の指示に依りまして、其の生産を致して居るのでございますが、大體今日迄の處、毎月向ふの指圖通りの生産實績を擧げて居るのであります、大體其の生産の實績を申上げますると、普通の映畫用「フイルム」に付て申上げますれば、三百六十萬「フイート」、其の他の一般「フイルム」と致しましては、三萬平方「メーター」に相成つて居るのでありまして、操業率で申上げますると、大體現在の所では、約四割と云ふやうなことに相成つて居ります、在庫量の現在は大體一箇月分程度の在庫を持つて居るのであります、之を需要の方面から考へて見ますと無論正確に申上げますと相當に多いかと存じますが、我々の方の生産を擔當致して居ります者と致しまして、大體此の程度が最少限度ではなからうか、所謂推定して居りまする需要量で申上げますれば、映畫用「フイルム」では約六百萬「フイート」其の他の「フイルム」では五萬平方「メーター」と云つたやうなのが大體各方面の御要求を入れますれば、此の程度ではなからうかと存ぜられるのでございます、唯、今日今申上げたやうな司令部の指示がございまするので、其の限度に現在は生産を續けて居るのでございます、其の配給に付きましても、映畫用の「フイルム」に付きましては總て「ジイ・エイチ・キユウ」の民間情報教育部の指圖の通りに從ひまして此の二社の「メーカー」から、それぞれの關係の映畫製作社に直接配給を致して居るのでございます、其の他の「フイルム」に付きましては、矢張り是も亦大體總司令部と協議を致しまして、現在は寫眞感光材料協議會、斯う云ふ協議會を作つて居りまして、此の協議會に於きまして、大體各地區別の卸商業組合に各「メーカー」から配給を致し、更に其の卸商業組合傘下の各小賣業の組合を經由致しまして、配給を致して居るのでございます、唯現在の處では、此の大部分の約六、七割は御承知の進駐軍の所謂「ピー・エックス」用と致しまして、「ピー・エックス」に納入致して居りますので、一般民間には三、四割が配給されて流れて居ると云ふやうな状況でございます、今後の大體の生産と致しましても、今申上げましたやうに、相當の生産能力を持つて居りますので、關係方面の了解を得更に燃料其の他の状況さへ緩和出來ますならば、相當の生産餘力を持つて居るのであります、尚差當り、ちよつと今問題になつて居りますのは、此の「フイルム」の基礎になります「セルロイド」の問題でございまして、「セルロイド」生産の基礎の硝化綿の製造工場が火藥の原料であると云ふやうな關係から、今般賠償指定を受けた工場が相當ございまして、今後此の「セルロイド」の生産が相當窮屈になるのではなからうか、斯う云ふやうな豫想がされるのでございます、此の問題に付きましては、尚關係方面と「セルロイド」生産の工場の存置方、即ち硝化綿の生産方に付きまして、御相談を今致して居るやうな状況でございます、尚之に關聯致しまして、ちよつと價格の點を申上げて置きたいと存ずるのでありますが、此の「フイルム」の價格に付きましては、現在迄相當の物品税が賦課されて居りまして、相當高價に附いて居るのであります、今般の税制改革に依りまして、多少の引下は見たのでございますが、尚相當額十割と云ふ風に今囘改正されたのですが、從來は十二割の物品税が附いて居りましたので、相當に消費者負擔は税負擔の關係で可なり高價に相成つて居ります、唯今般映畫用「フイルム」の中で、「ニユース」映畫用のものに付きましては、特に免税の手續が今年の八月執られましたので、此の方面は、「ニユース」用の「フイルム」に付ては、免税に相成りましたことを附加へて申上げて置きたいと思ひます、尚、次は「ラヂオ」受信機竝に眞空管の御質疑に對しまして御答を致したいと存ずるのであります「ラヂオ」の「メーカー」と致しましては、是も部分品なり或は小さい「メーカー」を入れますと、相當に多數に相成るのでございますが、先づ相當なる、所謂「ラヂオ」組合に單獨加入を致して居りますやうな主要「メーカー」だけを申しますと、現在約三十五社に相成つて居るのでございます、此の「メーカー」の生産能力と致しましては、從來の戰時中、其の他に於て、最高生産を擧げましたのは、約年間百二十萬臺位の生産を擧げて居たのでございます、現在の處は約其の四分の一程度の生産に相成つて居るのであります、大體、一四半期十五萬乃至十六萬の生産を致して居るのでございます、此の「ラジオ」の配給に付きましては、現在の處、全部各社で出來ました「ラジオ・セツト」を「ラヂオ」配給株式會社と云ふ、統制會社がございまして此の會社が現在一手に買取つて居る譯でございます、此の「ラヂオ」配給會社から、各府縣に「ラヂオ」配給組合がございまして、中央に於て割當の協議會を開きまして、放送協會とか、遞信省とか、或は其の他の事業團體を含めました配給協議會に依りまして、各府縣別の大體の割當を致しまして、其の割當に基きまして、「ラヂオ」配給會社が買取つたものを順次各府縣の配給組合に配給を申しまして、其の配給組合の傘下にありまする各販賣店がそれぞれ需要者に配給する、斯う云ふ風な經路に相成つて居るのでございます、今日の「ラヂオ・セツト」として、相當聯合軍方面から、大體に於て全世帶の少くとも約半數は「ラヂオ・セツト」を備へ附けると云ふやうな風な指示もございまして、出來得る限り此の増産に努めて居るのでございまするが、現在一番の隘路と相成つて居りまするのは、寧ろ「ラヂオ・セツト」に附ける眞空管の球の生産にあるのでござます從ひまして、今日球のない「セツト」が相當に手持になつて居りまして、在庫と致しまして約十萬臺の球なし「セツト」が今日出來て居る状況でございまして、之に付きましては極力眞空管の生産を促進致しまして、之を完全なものとして配給するやうに努力中でございます、次には眞空管の生産状況を申上げたいと存じまするが、眞空管の「メーカー」と致しましては、約十四社程あるのでございます、此の中御承知の東京芝浦電氣が大部分、約生産割合に致しますると、七割乃至八割は此の東京芝浦電氣が供給を致して居るのでありまして、其の他の各社は比較的小さな「メーカー」である譯でございます、戰前に於きまする大體の生産實績から申しますると、年間約十萬箇位の眞空管を造つて居たのでございます其の中約半數が此の「ラヂオ」の「セツト」に附けるものでございまして、さう云ふ風に新らしい「セツト」用として配給を致したのでございます、後の半數は所謂普通の一般「ラヂオ」聽取者の補修用と致しまして、眞空管として各「ラヂオ」店に配給を致して居たやうな状況でございます、今日の處では、今申上げましたやうに、成るべく「ラヂオ・セツト」を普及させるやうな意味に於きまして、出來得る限り新しい「セツト」用と致しまして、配給を致して居るのでございまして、補修用の方の眞空管としては、約二割程度を配給を致して居るのでございます、現在の生産實績を申上げますると、本年度の四月、六月に出來ました眞空管は五十二萬八千でございます、それから七月から九月に出來たものが七十一萬一千でございます、大體さう云ふ状況でございまして、今年の大體の見込と致しましては三百七、八十萬箇を生産致したいと、斯う云ふ大體目論見で現在作業を進めて居るのでございます眞空管の在庫は從ひまして、出來ますると順次新らしい「ラヂオ」に附けて配給するなり、或は直ちに下部の「ラヂオ」取扱店の方に配給を致して居りまするので、眞空管其のものの「メーカー」在庫と云ふものは、所謂其の日其の日に出來て來るものが多少あると云ふことで、特に在庫として申上げる程の數字はないやうであります、眞空管の増産を飽く迄圖らねばならないのでございますが、今日相當の能力はありながらも、尚思はしく生産が進みませぬ譯は、矢張り根本的には石炭の問題であるのであります、是等も關係方面と相談を致しまして、出來得る限り資材の配當を御考慮願ひまして、此の眞空管の増産に當るやうに致したいと考へて居るのでございます、尚特別の眞空管、特に國際放送、或は「ラヂオ」放送用の眞空管等に付きましては、現在の處特に不足はないやうな状況でございます、是は無論箇數に致しまして、さう大した數量ではございませぬので、極く全體の生産の中の精々二、三「パーセント」の數量でございまして、是は孰れも其の注文に應じまして造つて居るやうな状況でございます、是も大部分は東京芝浦電氣が製作を致して居りまして、國際通信の關係なり放送協會の關係のものは、現在此の大型眞空管に付きましては、大體充足を致して居る状況でございます、大體以上でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=85
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086・松田太郎
○政府委員(松田太郎君) 紙の問題に付きまして生産状況、或は在庫状況、其の他配給機構等の問題に付きまして御質問がございましたさうでありまするが、紙の問題に付きましては、全般的に申しますならば、御承知のやうに樺太の喪失等の關係から致しまして、供給は約四割の減り方になつて居る譯でありまするが、併しながら何と申しましても、言論の自由と申しますか、所謂文化方面に寄與する上から申しましても、それから又教育方面の教科書、或は「ノート」、さう云つたやうな方面から申しましても、或は産業關係の「セメント」、粉食等の包裝用の「クラフト」、其の他に致しましても、孰れに致しましても、紙の需要は終戰後特に殖えるばかりでありまして、さう云ふ意味で、此の生産の状況に付きましては、政府と致しましても業界と一致協力致しまして、或は大事な石炭の問題でありますとか、或は「パルプ」の問題でありますとか云ふことに付きまして、創意工夫を凝らして、之が供給に努めて居りまする結果、幸にして順次生産は殖えて居るのであります、之を假に昨年の終戰當時の九月頃の生産に比較して見ますると云ふと、新聞用紙に付きましては、當時九月の生産が千三百二十萬「ポンド」程の生産でありましたのが、今年の八月には約千六百萬「ポンド」の生産に上つて居ります、それから又それ以外の一般の用紙に付て申しますならば、矢張り昨年の九月當時が千萬「ポンド」程度でございましたのが、此の八月には千九百八十八萬「ポンド」の生産に上つて居るのであります、「クラフト・パルプ」に付て申しますならば、昨年の九月當時が八萬三千「ポンド」が、此の八月には百七萬九千「ポンド」と云ふやうに、其の他和紙の關係に付ても、大體同じやうな歩調で進んで參つて居るのであります併しながら今申しましたやうに、需要關係が有らゆる方面に於て非常に多い爲に、殆ど其の日暮しと申しますか、其の月其の月暮しを致して居りまして、在庫と申しましても、さ程申上げる程の今日在庫はないのであります、尚それだけに供給が少い所に持つて行つて、需要が非常に多いのでありますから、之の配給機構と申しますか、給配方法の問題に付きましては、極力善處すべく考へて居るのでありまして、從來は總て中央に紙統制會社と云ふ一つの統制機關がございまして、其處が各「メーカー」の方から一手に買取りまして之を其の機關に於きまして、需要先の方に配給すると云ふ、簡單に申せばさう云ふ形になつて居たのであります、併しながら御承知のやうに總動員法も今月末を以ちまして廢止になります關係上、統制會社令の廢止に伴つて、今囘其の機會に從來の紙統制會社と云ふものの缺陷等も十分是正することに致しまして、此の際中央にそれぞれの生産者配給業者、或は需要者と云ふ方々から成りまする紙配給協議會と云ふものを作りまして、其處で、それぞれ「メーカー」の方からどれだけ出來たか、どう云ふものが出來たかと云ふものをそれぞれの需要面の要求に應じまして之をどう云ふ工合に配給するかと云ふことに付ての指示を其處で致すことに致しまして、實際の物の流れと云ふものは、從來の問屋さん、其の他或は組合なり、さう云つた組織をそれぞれ各地方に作つて貰ひまして、さう云ふ方々の從來の經驗なり手腕と云ふものを活かして貰つて、本當に欲しいものが欲しい時期に廻るやうに、從來のやうな闇流れと云ふものを極力之を防ぎ得るやうに、さう云つた本當に活用し得る處は活用する、それから又中央に於ては、本當のあら方の指圖をすると云ふやうな形に致しまして、今後配給面に付きましても、極力實情に副ふやうに闇等に流れるものが一つでもなくなるやうに、さう云ふ方法を講じて參りたい、斯樣に考へて居る次第であります簡單でございますが、一應實情だけを御説明申上げました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=86
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087・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 輸送のことに付てちよつと伺ひたいのですが、配給が問題になるのでございますが、配給には輸送と云ふものは必ず伴ふものでありますが、現状を見ますと、此の生産の基礎になる石炭の輸送などが元來斯う云ふやうな「バルキー・カーゴウ」で總て運ばれる性質のものが汽車で運ばれて居る、其の他のものでも、當然船で運ばれなければならぬものが汽車で運ばれて居るものがあるのでありますが、其の實情を一つ御説明を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=87
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088・長井實行
○政府委員(長井實行君) 御答申を上げます、他に鐵道總局の伊能業務局長も參つて居りますので、私の答で足りませぬ點は業務局長から御話し申上げることに致します、海上輸送と陸上輸送との關係に付きまして、只今御指摘になりましたやうな事實がありますることは、私共と致しましても遺憾に存じて居る處でございまして、目下色々努力は致して居るのでございまするが其の状況に付きまして、少しく申述べて見たいと存じます、戰爭中に船舶が非常に少くなりました爲に、又海上の航行に危險がございました爲に、當然船で運ぶべき「バルキー・カーゴウ」等に付きまして、戰爭中之に陸運轉移を致しました譯であります主に對象になりましたのは、九州の石炭、或は北海道の石炭、さう云ふやうなものでございましたのであります、例へて申しますれば、北海道の石炭を室蘭から京濱に運びまするのに、當然是は船で直送致すべきものであるのでございますが、之を汽車で京濱迄運びまするとか或は石炭を八戸に揚げます、或は鹽釜に揚げますと云ふやうな方法を講じまして、後を汽車で送る、船腹を使ふことを極力少くすると云ふ方法を執つて參りましたことは御承知の通りであります、戰爭が終りましたので、此の方法に付きましても固より舊の状況に復すべき筋合のものであると存じますし殊に今日の状況を見ますと、陸運の關係に於きましては、輸送力はまだ相當逼迫致しまするに反しまして、海運の方に於きましては、船復が相當剰つて居る、斯樣な、謂はば跛行的な現状でありまする譯でありますから、此の海運貨物を速かに陸運から海運に再復歸すると云ふことは、どうしてもやらなければならぬ問題でありまするし、陸海の輸送を併せ行つて居ります運輸省として當然執らなければならぬ方策であるのであります、勿論執れまする物に付きましては、早速此の手段を執りました譯でございます、例へて申上げますれば、先程申上げましたる室蘭から京濱に運びます石炭の如きは、今日に於きましては京濱に船舶を以て直送すると云ふ方法を執つて居りますし、其の外木材でございますとか、紙「パルプ」でございますとか、さう云ふ物に付きましては海運を以て運んで居ります、又逆に内地の方面から北海道の方に運びます食糧に付きましては、是亦船を利用して居る、斯う云ふやうな状況であります、其の外に北海道と表日本、裏日本との間に、定期の航路を開きまして、之に付きまして小口の雜貨に至ります迄、成るべく海運を利用させたい、斯う云ふ方法を執つたのであります、其の外、例へば鐵鑛石に付きましても、釜石の鐵鑛石を戰時中は眞直ぐ鐵道に積んで運んで居つたのでありますが、是等は船に大部分轉移する方法が目下行はれて居ります、唯最も問題になりまするのは、九州の石炭でございます、一時は月に百萬「トン」を越えて居りました機帆船に依りまする九州炭の輸送も、今日に於きましては八月の實績を見ますと、約十六萬「トン」程度と云ふ、極めて少い數字になつて居りまするし、汽船に於きましても八萬「トン」そこそこの數字に相成つて居るのでございます、然るに此の鐵道の方面の九州方面からの輸送状況を見ますると、關門「トンネル」を通過致しまする數量の中で、石炭が非常に大きな割合を占めて居りまして、其の爲に九州方面から參ります食糧、肥料、雜貨さう云ふ物が本州向けに送らるべき輸送が閉鎖されて居るやうな状況であると斯樣な工合に承知致して居るのでございます、之を私共と致しましては、石炭を海運の方に轉移致しまして、陸運の方は、只今申上げました如き九州方面からの本州へ送られます雜貨類に充てて貰ふことが最も適當であると斯樣に考へまして、色々努力を致して居りまするのでございますが、是が尚今日に於きまして、容易に實現が期待通り參りませぬのでございます其の原因は色々あると存ずるのでございますが、第一番は今日の石炭の状況殊に消費者側の手持の石炭状況が非常に逼迫致して居ることでございます、船舶を以て九州から、或は阪神方面に運びますことになりますと、九州に於きまして船舶に石炭を積みますのに、相當の日數を要しまするし、又之が阪神迄航海します日數も、相當要する譯でございます、處が、貨車でございますると少量の數量を速かに消費地に届けると云ふことが出來まする爲に、今日のやうな、謂はば其の日暮しのやうな状況になりますると、鐵道の方がぴつたり當て嵌る、船舶では之を待つ餘裕がないと云ふやうな状況にございまする爲に今日海運を利用して居りまするものは、比較的餘裕のありまする方面のみでありまして、石炭が鐵道輸送に依存して居る程度が今日非常に多いと云ふ状況であるのでございます、此の點は、もう少し石炭の状況が好轉致しまして、消費者側にもう少し貯炭が出來まするならば、此の方法を斷行することが出來るのではないかと、斯樣に存じて居るのでございます、いま一つの原因と致しまして海陸の運賃に均衡を失して居る點があると云ふ點でございます、今日の状況に於きましては、石炭を九州から阪神に運びまする場合に、汽車に依りまする場合に比較致しますると、汽船の方が非常に高くなつて居ります、機帆船は又それよりも非常に高くなつて居ると云ふやうな状況でございまして、是が九州の、石炭ばかりでございませぬで、他の貨物に付きましても、似たやうな状況が割合に多いのでございまして、斯う云ふ状況が陸運貨物が海運貨物に容易に復歸しない一つの原因になつて居りまして、御承知の如く戰爭中の船が非常に性質が惡うございまするし、又海上の航行等の関係、さう云ふやうな點から申しまして、其の外輸送原價が高く附きまする状況でございますので、船舶の運賃を更に引下げると云ふことが、非常に困難な状況にあるのでございますが何かの方法に依りまして、陸海の輸送費の調整を圖らなければならぬ、斯樣に存じて居るのでございます、若し鐵道の運賃が傳へられまするが如く、引上が行はれますることになりますれば、此の點の調整が餘程緩和されるのではないか、斯樣に存じて居ります、其の外今日、私共海運關係の者が、荷物を扱ひまする點に於きまして、努力が十分であるか、或はさう云ふ組織が適當であるかと云ふやうなことに付きましても、問題はあり得ると、斯樣に存じまするので、それ等の點に付きましても、今後十分力を注ぎまして、陸運貨物が本來の海運の方に復歸することが出來まするやうに努力を致したいと、斯樣に存じて居る次第でございます、簡單でございまするが御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=88
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089・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 今伺ひまして大體分りましたが、此の海運の運賃の高くなると云ふ理由でございますが、それは集荷が非常に暇が掛る、それは船が惡いから缺損が出る、從つて保險料が高いのだと、色々な原因はありませうが何が一體、一番の原因でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=89
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090・長井實行
○政府委員(長井實行君) 運賃の一番高いのは何であるかと云ふ仰せのやうでございますが、今日一番影響致して居りまするのは、船の廻轉率が非常に惡い、此の點が運賃が安く計算されない最も大きなものであると、斯樣に存じて居るのでございます、御承知の如き船舶でございまするので、船自體も非常に能率が惡うございまするし、又今日に於きましては餘程緩和して參りましたけれども、尚海上に航海上の危險が殘存致して居りまして、非常に能率的に航海することが出來ない状況でございます、更に今日の食糧事情から申しまして、船が食糧を積みまする爲、態態用のない港に寄港しなければならぬ、甚だしい時には、遠廻りをしなければならない、斯樣な状況の爲に、船の航海が思ふやうに行かない譯であります、港に入りましても、先程申しました食糧事情等の關係から致しまして荷役が私共の期待しまするが如く早くは參らない、さう云ふやうな爲に、一航海當りの日數が非常に餘計に掛りまして、廻轉率の成績が惡いと云ふ點が最も運賃が高くなつて居りまする原因のやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=90
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091・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 是は御説は分りましたが、一つは船が惡い爲に、修繕其の他で以て、働く時間が非常に短いのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=91
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092・長井實行
○政府委員(長井實行君) 今日の船の働きまする割合、航海の割合等を數字的に申上げて見ますると、侯爵は最も能く御承知の通り、今日迄は船は一年の間に十一箇月働き、一月は休んで居ると云ふことを私共、常識として思つて居つたのでございますが、今日の私共の計算の基礎に致しまするのは、一年の内六割五分程度の日數しか稼がない、三割五分程度は修繕に入つて居ると、斯う云ふやうな工合に考へて居ります、大雜把に申しますると、八月位しか稼がない、四月は「ドツク」、其の他の小修理の爲に休んで居る、斯樣な工合の數字に考へて居る譯でございます、それから一月當りの航海の數でございますが、色々考へ方もあるかと思ひまするが、今日に於きましては、一月に大體一・二航海位の程度の航海しかして居ないのぢやないかと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=92
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093・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 大體分りましたのですが、將來の計算其の他の點に付て考へますと、海運の運賃と云ふものは陸運の運賃との關係から考へましてももう少し差がなければならないのぢやないか、先程政府委員の御説明で鐵道運賃が上れば海運との「バランス」が取れるのぢやないかと仰せられましたが、さうでなくて、寧ろ海運の運賃を下げて掛らなければならないのぢやないかと思ひますが、其の點に對する政府の御見解はどうなんでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=93
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094・長井實行
○政府委員(長井實行君) 仰せの如く海運運賃は陸運と比較致しまして、石炭等の如きものに付きましては、遙かに安く附かねばならぬものであると、斯樣に存じて居る譯であります、海運の運賃を引下げるに付きましては、私共の方と致しましても努力は致して居るのでございますが、今日に於きましては、例へば汽船に付て申上げますると、船舶運營會が相當の帳尻補助金を貰ひまして、それでやつと、やつて居る程度でございまして、今日の状況から申しますると、船運賃を是以上下げると云ふことは、ちよつと困難な状況にある譯であります、尚、先程來申上げました陸送の場合と海送の場合とを比べまして、海送の方が餘計に掛つて居ると、斯樣に申上げましたのは、單に鐵道それ自體の運賃と船舶それ自體の運賃だけの比較ではないのでございまして、積込地及び揚地に於きまする兩端の費用迄加へました場合に於きまして、海陸の相違が相當にあると、斯樣な意味でございまして、さう云ふ點から申しますると、單り汽船、又は機帆船の運賃だけでございませぬで、港に於きまする荷役賃等に付きましても、調整を圖らなければ、海陸の間の輸送費の調整と云ふことが出來ない次第でございます、此の點は、本船の側と兩端の荷役をやりまする側と、共に一緒になりまして「コスト」を更に下げて行くと云ふことに努力致さなければならぬ次第であると、斯樣に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=94
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095・廣幡忠隆
○侯爵廣幡忠隆君 私の質問は是で打切りますが、どうぞ陸運と海運の輸送の關係を調整して、本道に歸るやうに御努力願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=95
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096・長岡半太郎
○長岡半太郎君 先に「ラヂオ」の御報告がありましたが、ちよつと承りたいのは、此の「ラヂオ」の「バルブ」は相當出掛りつつあると云ふことは、誠に喜ばしいことでありまするけれども、どうも多くの人の批評に依ると、「ラヂオ・バルブ」と云ふものは、近頃、大分戰前と比べて質が惡くなつて不同なやつが澤山ある、之をどうも是正して貰はなければ工合が惡いがと云ふ話があります、是は私も同感でありまするが、何か其處に手を拔くとか、或は材料が惡くなつたと云ふやうなことを御突き止めになつて居ることぢやなからうかと思はれます、無論「アメリカ」の「レイデオ・コーパレーシヨン」の球だとか、或は「フイリツプス」の球であるとか云ふものに比べると落ちることは、前から我々知つて居つたのですけれども、戰時中に於て、既に軍用に供せられるものでも、酷く違ひがあつて、或人は三十の「バルブ」の中に一つしか役に立つものがないと云つたやうな批評迄蒙つたのでありますけれども、其の弊害が今日も、平和になつて持續して居る結果ぢやなからうかと思はれます、兎に角、技術も向上し、又材料も向上し「ユニフオーム」な、均一の球を拵へて賣るやうに御努力を一つ御願ひしたいと思ひます、此の點を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=96
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097・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 工務局長が今居りませぬから、後程御答へ申上げます、一番大きな原因は、材材の點が大きい原因になつて居ると思ひます最近の低下の内容は、何れ是は、詳細は工務局長から御返事を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=97
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098・河端作兵衞
○河端作兵衞君 電壓が非常に下つて居るので、眞空管が働かぬと云ふことになつて居る所が、市内に多々あります、燃料もないものですから、電熱器を使ふと云ふやうなことがどうしても大きくなると思ひますが、唯眞空管を増産するだけでなく、電氣方面に十分の御注意を願ひたいと思つて居りますちよつと希望だけ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=98
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099・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 田中委員午前に引續いて御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=99
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100・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 先程來、詳細な政府當局の御説明を承りましたが、本法が終戰前の統制と變つて、非常に民主化されたと云ふのが、改正の御趣旨だらうと思ふのでありますが、大體戰前の統制に對しまする色々な非難なり、問題は、所謂最高の國家計畫の點にありませぬで、寧ろ現實の末端の配給上の問題に基因するものが多いのぢやないかと思ひます、それで此の新らしい今囘の統制が、終戰前の統制とは客觀情勢も非常に變つて居ると思ふのでありますが、今囘の此の物資需給調整法に基きましてなさいます統制が、今迄の統制とどう云ふ點に違ひがありますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=100
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101・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 戰時中の國家總動員法の下にやつて居りました所謂戰時統制と云ふもの、是は先程もちよつと觸れた譯でありますが、戰爭目的の爲に資材なり何なりを集中致しまして動員した譯であります、それの計畫は極く一部のことにだけしか明かになつて居らなかつたのであります、終戰後、今日の此の物資の需給調整と申しまするものは、經濟安定本部に於きまして、全般的の計畫が目下立案中でございまして、是は其の案が確定された曉に於きましては、經濟安定會議等に諮問せられる譯でありますが、最後的には是は一般に發表せられる譯でありまして、國民は其の内容を大體、それに依つて御承知を願へるものであらうと考へます、即ち大きな國家の計畫と云ふものが、國民の前に總て明かにせられまして、其の計畫を達成する爲に、此の法律を運用すると云ふ形になるのでございますから、此の各産業部門別の團體等に於きましても、國の向ふべき方向と云ふものは明かにされた所で、末端迄さう云ふことを承知した上で、統制、調整と云ふものが行はれる譯でありますから、戰時中のやうな、さう云ふことが分らずに、非常に拙かつたと云ふ御話でありましたが、其の通りでありまして、根本が分らぬ爲に、末端に於て色々行き違ひなり、摩擦なりがあつた譯でありますが、今後はさう云ふ點が能く御理解を願ひまして、調整が出來ると考へますので、先程申しましたやうに民主的に組織された團體に御委せしても、大體の目的は達成するのではないかと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=101
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102・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 計畫内容の發表の點は誠に結構なことでありまして、是非ともさう願ひたいと思ひます、更に問題が、今迄の統制の色々な問題は、其の運營の點に非常に大きな缺陷があつたのではないかと思ひます、今迄の統制と、今度の統制とを比べて見ましても、大體物資別、産業別の割當と云ふものは、從來は企畫院なり總動員局で致したものを、今度、安定本部ですると云ふことが第一であります、第二は、其の當該産業内の業者別の、物資別の割當を、今度の産業團體がする是は今迄の統制と同じ行き方と思ふのであります、更に又第三には、更に一歩下りまして、各社別の、物資別の割當を、此の時に所謂配給協議會とか何とか云ふやうな合議機關を以てやつて行くやうになると思ふのでありますが、其の次には、今度は公表と云ふ點もありますが、大體其の程度の差と考へて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=102
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103・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 具體的に表面に出て參りますことは、さう云ふ所であらうと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=103
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104・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 さう致しますと、例へば私なら私が、電氣冷藏庫が欲しいとする場合に、今囘の統制で參りますと、どう云ふことになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=104
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105・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 一般國民が消費致しまする物資に對しましては、此の臨時物資需給調整法は直接の規定を持つて居りませぬ、例へば衣料品、纖維品と云つたものを、是も國民必需品でございますが、是は造りますことに付て、資材の配給をして參りたいと考へて居ります、今日ありまする原材料を以て是だけの布を造り、是だけの布帛製品を造ると云ふ計畫を致しまして、其の物を造りまして、最後的に國民に渡しまする場合に付ては、此の法律は直接の規定を設けて居らぬものであります、消費統制を致して居らぬのであります、唯造りますことを、國民の頭はどれ位になると云ふことで押へます、從ひまして、一般に著物を一枚なり、或は電氣冷藏庫なりを欲しいと云ふ方が、此の法律に依つて如何に其の個人に直結するかと云ふことは、此の法律は直接目的と致して居りませぬ、恐らく電氣冷藏庫は、非常に稀な需要でございますから、此の法律では規定致しませぬが、纖維製品等に於きましては、例へば學童洋服なら學童洋服と云ふものを、服を一つ造る、計畫的に造る、要するに一年に一著分だけは造つて行かうと云ふ計畫を立てますれば、それだけの數量を造る譯でありまして、最後に之を國民の個々に渡しまする場合は、恐らく配給統制會社の手元から、之を學校當局等と連絡致しまして分けてやる、此の最後の段階に於ては強制力を持たない切符制度を執りまして、切符と引換に買つて戴くと云ふやうなことになるのではなからうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=105
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106・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 只今の御説明は、纖維製品等のやうな、主として消費物資の點に付て例を御取り戴いたのでありますけれども、是は先程もちよつと觸れましたやうに、消費物資の場合の統制でありますれば、寧ろ負擔の衡平とかさう云ふ風な關係で、割合に分配の點で、配給の點で、寧ろ技術的には簡單かと思ふのでありますが、只今私が伺ひました別な例、例へば機械類とか何とかと云ふ風なものになりますと、結局統制と申しましても、生産増強と云ふ點が大きな別箇の「フアクター」になりまして、結局政府としましては、各生産企業體の能率の向上なり品質の優秀化なり、さう云ふ風な點で有らゆる生産要素と云ふものを面倒見て、其の生産増強をなすことが大きな施策の「ポイント」だと思ふのであります、處が終戰迄の統制は是は軍需と云ふ別箇な大きなものがあつた關係上、さう云ふ風な、此の表で見ますと、今後追加される御豫定のものが主たる統制の對象物だと思ひます、そこで今の關係から言ひますと、矢張り只今の御説明は、今後鐵とか、非鐵金屬とか、何とか云ふ風なもの迄御擴げになる御豫定でありますれば、さう言つた機械加工の關係のものも、進駐軍用と一般民需用と、斯う云ふ風に大きな二つに分けて、一般民需の關係は民需品の分は、自由販賣を許すだけの若し量がないとするならば、矢張り戰前と同じやうな申請書を出して、それでどう斯うすると云ふやうな、前と同じやうな規正が必然的に起るのではないかと思ふのであります、此の點如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=106
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107・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) ちよつと誤解がないやうに申上げて置きたいと思ひますが、御手許へ差上げました資料に、甲乙と云ふ二つの此の統制法適用の分類がございまして、乙の方、即ち「今後新に法規統制を實施せんとするもの」と云ふ中に、非鐵金屬、金屬屑、鐵鋼等が入つて居ります、是等は勿論戰時中に統制をやつて居つたものでありますが、終戰直後、一應統制規則を廢したものでございまして、今後又新らしくやる形になつて居ります、併しながら戰時中統制をやつたものでございまして、形式上新らしいのでございますが、從來の統制機構が其の儘殘つて居るものでございます、純然たる新らしいものは石鹸とか、革製品とか云ふやうな本當の新らしいものでございまして、主として是等は國民生活必需の關係のものでございます、此の調整法は大きな狙ひと致しましては、基礎的産業の復興を狙つて居る譯でございますが、併せまして國民生活に必需なものに付ての配給の公平を期するやうな仕事も狙つて居る譯でありまして、纖維製品等は其の後者の例でございます、鐵鋼、非鐵金屬、斯う云ふものは前者の例でございまして、基礎的産業を興して、之に依つて國民民需の必要なる原材料の増産を圖つて行かうと云ふ點でございます、只今の御質問の中にありましたやうに、此の配給の機構が、戰前に比べてさう變らぬではないかと云ふ御話でございますが、形から申しますと、成る程さう云ふことになるのではなからうかと思ひます、例へば肥料工場の補修なり増産の計畫を取急ぎまする爲に、肥料用の機械と云ふものを造ることが只今必要でございますが、其の爲に、鐵を色々な機械「メーカー」に割當てまして、肥料用の機械と云ふものを生産致して居ります、是等は此の調整法に基きまして、産業機械の團體に於て、さう云ふ鐵鋼を割當てて行く澤でございますが、其の場合に、先づ肥料用の機械と云ふものに優先的にさう云ふ鐵を使ふやうにと云ふ割當を、産業機械團體を通じて致す澤であります、又石炭の増産の爲に、色々な鑛山用の機械と云ふものを生産致して居ります、是等も同じやうに石炭を興す爲に必要な機械を優先して造るやうにと云ふことで、それぞれの産業機械の「メーカー」の團體に於て鐵鋼の割當を致して居る澤であります、大體さう云ふ製品の名前を豫定致しまして割當を致して居る澤でございますから、統制の形と致しましては、昔と同じではございませんが、今後の産業の恢復には之を以て十分であらうと考へまするし、又戰時中の色々な非難がありましたやうなことは、是も先程申上げまするやうな石炭なり肥料なりを興すと云ふ大きな方針が一般にはつきり致して居りまする今日から申しまするならば、さう非難がないやうに統制が運用されて行くんではないかと考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=107
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108・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 私の今迄致しました質問を要約して、ちよつと誤解のないやうに申上げて置きたいと思ひますが、今迄の統制の非常な缺陷の叫ばれましたのは、あのうるさい色々な事務手續と言ひますか、非常に煩瑣な切符制度とか、申請樣式とか、さう云ふ點が非難を受けたことが第一點だと思ひます、それから其の次は生産財の關係で主要物資だけを取上げられましたことが、結局、例へて言ひますれば、「モーター」の生産が出來ないと云ふやうな時に、何が原因かと云ふと、結局絶縁物がないのだ、詰り主要物資以外のものに隘路が出て來るやうな結果になる、高度の複合生産物になりますと、加工工業では雜多なものが加りますので、一層さう云ふ結果になりはせぬかさう云ふ風な點が懸念されるのであります、そこで伺ひたいことは、今迄のやうなああ云ふむずかしい手續が今後も又續かなければならないのか、それからもう一つは今迄色々言はれて居りました製品物動と云ふものの考へ方を御加へになる御考はあるかないかと云ふこと是は終戰になりましてから、特殊物件の色々の割當でありますとか、それから終戰前でも、轉廢業の關係の轉用の割當此の二つで、製品で需要者に割當てると云ふことが政府の方でも慣れて居るのぢやないかと思ふのであります、素材關係だけを素材物動と云ふことにして置く所に非常にむづかしい事務手續と、もう一つは主原料と副原料の「マッチ」しない部面と色んな面が起つて來るのぢやないか、さう云ふ點で進駐軍用は別としまして、其の他の物は出來るだけ自由にして、それで其の間、生産の筋だけを立つて、出來たものは報告を受けて、此の製品で以て一般の需要に御配りになる、さう云ふ製品物動と云ふものは一體考へて居られますか、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=108
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109・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今の御質問は主として機械類に重點を置いて居る御話かと思ひますが、御話の通りに、一つの機械を造りますにも、色んな資材が要りまして、其の隅々に迄亙つての統制を致しますことは、餘りに煩雜になりまして、實際上不可能であると考へます、成るべく製品物動の形に移行して行くべきものである、私も左樣に考へます、唯、今日直ちにさう云ふ總ての物に付て、さう云ふことが不可能でございまするので、逐次出來まするものから、製品物動の形を整へて實行して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=109
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110・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 次に中央の斯う云つた統制は、非常に中央集權的な恰好になり勝ちのやうに思はれるのであります、例へば地方制度なども、今度大分變りまして、知事や何かの關係も官吏とか、公吏とか云ふやうな問題も出て居ります、さうしますと、今迄でも地方配給の面がございましたが、今後中央の割當の關係と、地方長官の致しまする割當の關係に付て、非常な問題が起りはしないか、さう云ふ點に付きましては、どう云ふ風な御考を持つて居られますか、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=110
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111・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 此の臨時物動需給調整法で取上げます物資は、大體に於て全國的に見ての統制を實施する品物を豫定して居るのでございます、唯、寧ろ地方的にも非常に重點を置いて考へねばならぬものがあるのでごさいますが、是は此の法律が直接目的と致しませぬので、自治的統制と申しますか、地方的の、或はさう云ふ統制團體を通じて、地方長官が指揮をすると云ふことを考へて居るのでございます、尚此の全國的の統制に致しましても、一應其の自治的統制で行くものも相當ある豫定でございます、此の法律の何と申しますか、裏附けを以て實施致しますのは、此處に掲げてございまするやうな、甲乙兩分類に擧げますやうなものでございまして、それ以外のものは、寧ろ是以外にも、國民の必需品がある譯でございますが、是は或物は全國的の考を以ちまして、自治統制に委す物もございますし、或物は地方的な統制と云ふものに迄委す物もあるのでございます、それ等は此の法規の實施の裏附けを行はずに、實際上の、主として國民生活必需品の配給の問題でございますが、さう云ふものは地方限りの配給と云ふことに致しまして、成るべく自治的に之を進めて行きたい、法律の強制力を以てやるものは、成るべく少くして行きたいと云ふ意味で、此の問題を取上げて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=111
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112・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 それから現在は、業界間の融通が相當認められて居ると思ふのでありますが、戰時中でも、工場隣組とか何とか云ふ風な色んな制度は、寧ろ積極的に將勵したやうな關係もありまして、各工場間で彼此融通をして居つた面が相當あると思ひます、さう云ふ風な面が、今後とも尚新らしく統制物資になりました物に付きましても、御認になつて戴けるのでございませうか、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=112
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113・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今の御尋の、所謂手持の資材と云ふものは、今度軍需補償の打切りに依りまして、大分整理される工場もございまして、所謂遊休の資材と云ふものが、あちらこちらに出て來る豫定でございます、さう云ふものをも含めまして、資材を交換することの必要が、今後も昔以上に必要があるかと考へて居ります、從ひまして此の臨時物資需給調整法を適用致しますやうな、重要な資材に付きましても、或程度の資材の交換と云ふものは、之を爲し得る途を開いて行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=113
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114・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 今迄の配給統制規則には、商工大臣の指定する團體が指定した物以外には、賣買が出來ないやうな統制規定が色々ございましたやうですが、今後さう云ふ風になりました場合には、自分の手持材料を更に他の會社、工場に融通して行くと云ふ場合には、轉賣と云ふものは御認になる譯でございますか、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=114
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115・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) まだ機構等に付きましては、最後的に決定は致して居りませぬが、特別な斡旋機關を民間のものとして作つて行きたいと考へて居りまして、さう云ふ所の斡旋に基くものは、融通が出來るやうな途を開いて行きたいと、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=115
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116・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 それから此の損失補償の關係に付て伺ひたいのですが、今の終戰後の状態は、色々物價其の他が値上りしましたり、それから十二月以降、各統制法規が一應「ストツプ」になつたりしまして、其の間に買入れた物も、工場等には相當あると思ふのでありますが、此の規定に依ります損失の補償と云ふのは、政府の命令に基いて、施設其の他を撤去したり、増築したりする時の損失の補償でありまして、今度は逆に、政府の指示に基いて物資を割當てる、斯う云ふ場合に、公定價格では賣れない、調辨價格でなければ事實上出來ないと云ふ「ヶース」が多々起つて來るのぢやないかと思ひます、さう云ふ點に付てはどう云ふ風な御意見でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=116
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117・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 損失を補償致しますのは、此の法律案にもございますやうに、會社に對しまして政府が物資の生産を命令致しましたり、或は既に持つて居る製品の出荷を命令致しましたり、或は、或工事をしろと云ふ命令を致しましたり、或は最後の第四號にありまする物資の讓渡を致しましたり、或は引渡、又は貸與を命じましたり、或は遊休設備の讓渡、引渡を命令しました場合に、損失を生じましたときに、之に對して補償すると云ふことになつて居ります、原則と致しまして、斯う云ふ場合には損失が行かないやうな値段を成るべく決めるやうに致します譯でございますが、只今仰せの通り、色々の「ケース」があるのでございます、從ひまして、之を只今から豫定して、一律に決めて置くと云ふことは非常に困難でございますので、一應は當事者がある場合には、當事者双方の協議に基いて値段を決め、讓渡を御願ひするので、それが非常にむづかしく、話が、何と申しますか、「デツド・ロツク」に乘り上げた場合には損失補償委員と云つたやうなもので、公平に一つ判斷をして戴きまして、通常の生じました損失と云ふものは、之を政府が補償してやる、斯う云ふ考で居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=117
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118・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 其の中に政府の配給指示に基く物も、所謂調辨價格でなく、實價格で以て場合に依つては流し得るやうな妙な損失補償の仕方でありまするが、さう云ふやうな點はちよつとむづかしいと云ふやうに了承致しますが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=118
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119・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 公定價格なり、或は限界價格なり、價格に付て政府の決めましたものがありまする場合には、矢張りそれに依らなければならぬものかと考へます、唯其の他の費用に於て、實際に要つて居りまする費用でありますれば、其の原價、原價と申しまするか、必要な經費と致しまして、補償の中に入れて然るべきものと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=119
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120・田中龍夫
○男爵田中龍夫君 餘り長くなりますから、私は一應此の程度で止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=120
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121・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 此の法案に付きまして二、三伺ひたいと思ふのでありますが、第一は、所謂供給が非常に不足して居る物資に付て、戰時統制と同じやうな統制をやる、それに付きまして結局基礎物資と致しましては、石炭と鐵があると思ひます、それで石炭に關しましては、資源が國内にもありますし、且、世間に於ても相當問題になりまして、其の増産對策に付ては、著々政府としても手を御打ちになつて居りますから論ないと致しまして、主として鐵に關して二、三伺ひたいと思ひますが、鑛山局長でも御出席にならぬで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=121
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122・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 院内に居りますから呼びます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=122
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123・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 それぢや、其の前に一般的のことを二、三伺ひます、結局今度は一手買取販賣を又御始めになる、其の場合に販賣會社とか何とか云ふものが、其處に一つある譯でありますが、其の外に鐵なら鐵鋼協議會、「セメント」なら「セメント」と、それぞれさう云ふものに付ては、協議會があり且販賣會社がある、是は二重なものぢやないかと思ひます、結局協議會でも販賣會社でも、別に現場に「タツチ」して居る譯ぢやなく、御役所と同じやうに紙の上で計畫を立てて居る、紙の上で分配をして居る、さう云ふものが二つあると云ふことは結局屋上屋で、只でさへ紙が足りない時に、書類ばかり作つて居る、それ等の其の會社なら會社を維持する爲の費用と云ふものは結局需要者の「コスト」の中に入つて來ると云ふやうな、徒に二重の損害が起つて來るのぢやないかと考へられるのですが、斯う云ふことをやらぬで、此の説明資料を拜見致しますと、配給協議會でやると云ふ物資も御有りになるやうでありますが、態々總て買取販賣をやらぬでも宜いぢやないか、斯う考へまするが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=123
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124・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 此の割當と配給と云ふものは、別箇の機關で大體やつて行かうと云ふ建前になつて居ります、所謂第二條の産業團體と云ふものは、割當機關であります、又鐵なら鐵の同業者の方々が製鐵工場を動かす爲の資材の割當と云ふものは、是は鐵の業者の方々の「メーカー」の團體でやります、出來ました製品は、是は鐵の「メーカー」が使はれるのもありますが、原則としては、他の業者が使はれるのですから、是は一應配給會社に移しまして、其處で配給をして行く斯う云ふ建前になつて居ります、配給協議會と申しますのは、先程纖維局長がちよつと觸れましたけれども、大體「メーカー」、問屋及び消費者と云ふ關係方面の代表者が入られまして作られるものであつて、主として問屋が中心になる譯でありますが、物の流れ方に付て規正をして行くと云ふ譯でありまして、是は主として消費者が少い、或は「メーカー」が少い場合に可能であつて、非常に「メーカー」が多過ぎたり、又消費者が多方面に、多岐に亘つて居ると云ふ場合には、協議會ではなかなか仕事がやりにくい、斯う云ふことになつて居りまして、一應、取敢ず出來さうなものから配給協議會に直すと云ふことで、先程も紙の例を擧げられて居りますが、「セメント」等もさう云ふ風なものに致したい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=124
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125・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 只今の御答に關しまして、少し細かいことになりますが例へば製鐵會社なら製鐵會社と、「モーター」なら「モーター」を造つて居る會社とが、現在に於ては直接賣買して居る譯であります、そこで非常に密接な關係が出來て居る、さう云ふ場合には、假に製鐵工場の「モーター」が壞れたと云ふ時には、自分の得意先である「モーター」の製造會社に言へば、公で直ぐ入つて來ると云ふのが現状であります、是が途中に販賣會社と云ふものが入つてしまふと、其の「コンネクシヨン」が切れてしまふ、其の結果としまして、急に工場の「モーター」が燒け切れてしまつた、何とかしなければならぬと云ふ場合に方法がない譯であります、さう云ふことは大きな意味から言つて、生産を阻害して居ると云ふことになるのぢやないかと思ひます、もう一つは戰爭中は矢張り斯う云ふ形態になつて居りましたが、其の場合は販賣會社と云ふものがあつて、所謂補給金を扱ふ所である、其處で帳簿を取ることに依つて、補給金を貰へると云ふことに依つて、存在の意義があつたやうに思ひます、處が、現在それがなくなりつつある現況に於ては、さう云ふものがあつても、今迄程の「レーゾン・デートル」がないのぢやないか、斯う考へて居ります、さうして戰爭中に於きましては、總ての原料が一應統制されて居た、そこで製造會社と致しましては、公で取れた譯です、それが現状になりますと、特殊な主要物資だけが此の法案で嚴重に統制をされる、それ以外の物は自由競爭で取らなければならぬと云ふことになりますれば、所謂闇で買つて來ると云ふものが主原料ではないかも知れませぬが、それがない爲に製品が出來ないと云ふことが多々起るのぢやないかと思はれます、そこで結局、戰爭中に於ける、まあ不完全であつたとは言へますが、此の法案でやられます以上、廣汎なる物資を統制して居りました時なら宜かつたのでありますが、今度は中途半端になり、結局生産を阻害すると云ふ結果になるのぢやないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=125
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126・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 最初の御示しの例等は、正しく便利な方法であらうと思ひます、「モーター」が燒け切れたら、平生取引のある「モーター」工場がある爲に直ぐ直して貰へる、斯う云ふのは非常に便利だと思ひます、同じやうなことを現在石炭に付て、今特別の例外で、所謂炭と稱して、石炭の増産の爲に必要な工場等には特別の炭を山から「リンク」さして流して居るのであります、唯斯う云ふ範圍が廣くなりますと、有らゆる物資の需給調整と云ふことが不可能になりますから其の線の引き方が非常に困難な問題に直面致しまして、最近は此の炭を極力減少さして居ります、非常に少くして居ります、本當に必要な方面に炭が流れずに、食糧とか、色々な物を得る爲に石炭山が流して居ると云ふやうなことにもなりまして、實際の炭の狙つて居る趣旨とは、非常に違ふやうな風にも參つて居りますので、非常に制限して居ります、要するに統制をやりますれば、或程度我慢を願ふことが必要だらうと思ひます、今の「モーター」を直すやうな場合には、確かにさう云ふ便利もありまするけれども、一面に於きましては、矢張り必要な方面に鋼材が流れて行くことが必要でありまして、是は實際上の問題として、或程度の、政府なり、或は工場なりが、關係會社の御理解を願ふより以外にはないかと考へて居ります、只今の配給機構の問題、色々御話御尤もでありまするが、今後は補給金等も一應なくなる譯でありまするし、尤も、今度石炭の補給金の問題に絡みまして、或は鐵鋼の補給金と云ふものが逆に出來るのかも知れませぬ、さう云ふ點は、總て未定でございますが、さう云ふことの利益は、假にないものと致しますれば、販賣會社と云ふものの、何と申しますか、「メーカー」から見た利益と云ふものは、減つて來ると思ひます、併しながら、一面に於て矢張り非常に澤山の消費者と云ふものが間に控へて居りまする以上は、現存の機構でありますから、さう云ふものを成るべく使つて行きたい、將來問屋と云ふものが獨立して、さう云ふ統制に順應し得るだけの力を持ち作用が出來ますならば、極めて一案でございますけれども、取敢ずの問題と致しましては、さう云ふことは困難であらうと云ふことから致しまして、鐵鋼等に於ては、販賣は差支ない、斯う云ふやうな積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=126
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127・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 鑛山局長がおいでになる迄、御待ち致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=127
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128・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) どなたか商務局長に御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=128
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129・中山太一
○中山太一君 滿洲、朝鮮、臺灣、樺太、千島等の舊日本領でありました所から、原料、材料が今後獲得され得るかどうか、さう云ふことが聯合國に許容せらるるやうに、既に手續なり、懇願なりがされて居るのでありませうかどうでありませうか、其の内容が差支がなかつたならば、一つ御説明を戴きたいと存じます、一應、それを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=129
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130・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今の舊領土から、資材を得る問題でございますが、物に依りましては、もう既に懇請を致しまして、實現を致して居るものもございます、例へば臺灣に於ける鹽のやうなものが其の例でございます併しながら、例へば樺太の石炭、或は滿洲方面に於ける石炭、鐵と云つたやうなもの、是は地域に依つて、色々違ふ譯でありますが、「ソ」聯の占領下に於けるものに付ては、まだ今日全然さう云ふ見透しが附いて居りませぬ、御承知の通り、製鐵所の炭と云ふものは、主としてさう云ふ方面、或は開らん炭等でございますが、それ等に付ては中國からは開らん炭を交換したいと云ふやうな御申込もあつたやうでございますが、滿洲なり、樺太なりの炭と云ふものは、今日殆ど消息が絶えて居ります、交渉も、今日迄何も實現されて居らぬやうでございます、其の他の資材も原則と致しまして、まだ我が國との取引と致す迄の状況に立至つて居りませね、特殊の例外、只今の臺灣の鹽とか、或は朝鮮の米、さう云ふものに付ては、少しづつ御願を致して居りまするが、極く一部が實現されただけでございまして、まだ殆ど、其の大部分のものに付ての取引は實現を致して居りませぬ、計畫も具體化して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=130
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131・中山太一
○中山太一君 政府の物資を統制される根本の理念に於て、或一定、殊に不足勝ちの物資を強權で統制し、管理しようとされる所に力點が置かれて居るやうでありますが、是が良いのであるか、又は出來得るだけ、さう云ふものに對しては、増産に全力を注ぐと云ふことに力を、所謂考を持たれる方が宜いのであるか、どうも色々の點が、少いものを無理に嚴重な取締りをされる爲に、有らゆる産業が隘路、所謂行き詰りを生ずるやうなことになる、それよりも、量を多く殖やす方法を少々犠牲を拂つてでもおやりになる方が、茲に物資の流れの上に好い結果を齎すと思ひます、此の點に付て、積極的な一つ施策を御持ちであるならば、御話を願ひたいと思ひます、尚勞働問題、是は先程午前中、田中委員から御尋があつた時と思ひますが、其の時に、勞働者の數が多數であるからと云ふことでありましたけれども、勞働者の數が如何に多數、所謂勞働力の獲得が十分出來る程餘裕がある、所謂失業者が澤山ある、併し是は幾らあつても、生産機能に貢献する力として現れて居らない今日の勞働力は、生産増強の上には非常に微弱な力しか現れて居らないやうに思はれます、是は政策の上に於て、適當な方法を出されれば、是が必ず生産増強の上に效果を現して來るだらうと思ひます、さうして民需物資が豐富になり、價格も適正になつて行き、國民生活の上にも脅威を感じさすやうなことがなく、段々と生活の安定を得ることが出來、さうして一般物價が正常化して來れば、眞に需要も増加して來ますから、失業者を收容する、所謂就職せしむる機會も段々多くなつて來れば、又國内に物資の良い物が豐富になつて來れば、見返り物資としても、之を出す時も、更に良い物が安く出來て來れば、茲にも失業者を救濟することが出來る、今のやうに、勞働者を求むることが出來る數があると云ふ所が、殆ど生産に對しての機能が十分に現れて居らぬと云ふと、昔の言葉にありますけれども、山が高いから貴いのぢやない、樹があるからこそ貴いのである人が肥えて居るから貴いのぢやない、智があるから貴いのだ、唯働く人が澤山あるからと云つて、決して生産の役には立たない、眞に働いて生産機能を發揮するから價値があると思ふが、政府には産業行政の上に、此の勞働問題を有效に活用されて居るやうに、我々には思はれぬ點があるが、之に對する御當局の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=131
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132・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 此の物資の需給調整をやるよりも、寧ろ増産に勵んだ方が宜いと云ふ御話は御尤もであります、私共は矢張り、増産と云ふことを第一に考へなくちやいかぬことであると考へて居ります、寧ろ此の調整法自身も、矢張り増産を目的とするものでございます、併しながら如何せむ、餘りに今資材が少いのでございます、御手許に此の四月九月の物資需給計畫の表を差上げてございますが、假に鋼材の例から申しましても、一般の需要を此の三箇月分と致しまして、五十數萬「トン」に押へて居ります、此の五十數萬「トン」の鋼材の需要は、非常に切りに切りました需要でございまして、最低限と考へて居るのでございますが、それに對しても、二割二分程の供給力しかございませぬ、從ひまして、是は矢張り自由に放任致しますとどうしても、取敢ず金の儲かる方の事業が、それの鋼材を買つて參りまして、取敢ず必要な資材として重要な例へば肥料とか鐵とかと云ふ方に資材が流れるかどうか、非常に疑問があると云ふことを考へます、從ひまして、或程度此の統制と云ふことは、斯う云ふ時代に於ても、矢張り重點的な配給と云ふことを目指して行はるべきものと考へます、先程も御話がございましたが、全面的にやらなければいかぬと云ふことにもなりますが、其處は、斯う云ふ終戰後の状況でございますから、最小限度のもので主要な資材に付ての統制を實施致して參りまして、一面増産の方は増産の方で、強力に之をやつて行きたい、斯う云ふ風に考へて居るのでございます、其の増産の手段と致しまして、勞働力の使ひ方が政府がまづいと云ふ御話は、成る程さう云ふ御批評もあらうかと思ひます、本當に働く人が、一生懸命になつて働いて呉れれば、相當増産が出來ることは御話の通りだと思ひます、一例を擧げますれば、現に此の夏も九州の石炭に付きましては、あの三池の大きな勞働爭議があつたのでありますが、それにも拘らず、八月は豫定以上に十數萬「トン」の増産を致した譯であります、さう云ふ譯で、働き手が本當に一生懸命になつて來れば、我々の豫期して居る以上の生産が望み得ないことはないのであります、之に付きまして、矢張り勞働者の側に於ても、十分に今日の時代と云ふものを認識して貰つて、政府から申せば、認識するやうな指導を致しまして、其の協力を得て行くと云ふことが、有らゆる増産の政策であることは御説の通りだと思ふのであります、我々と致しましても、成るべく早く、此の安定本部の計畫と云ふものを作つて戴きまして、之を外部に發表し、企業者は勿論、勞働者、國民一般に付ての十分の御理解を得て、國民全般の増産への協力と云ふことを得て行かなければいかぬものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=132
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133・中山太一
○中山太一君 唯物資の統制なり、強權の發動を加味すると云ふことよりも一層増産に力を致すと云ふ御意見を承りまして、幾分力を強く致しますが、我が政府當局の從來のやり方を見ますと、足らない物資を増強して行くと云ふことよりも、何處かにあるものを徴用すると云ふことに重きを置かれる、それで其の結果が他の生産を阻止するばかりでなく、甚だしきものは、金屬囘收の如きは、「ラジエーター」なり、「エレベーター」を取り、或は書籍箱を取る、斯う云ふやうなことは殆ど邪道と言うても宜い、是だけでも戰に敗ける十分な私は國民的愚を繰返して居る、是が國民がして居るのでなく、政府がやつて居る、こんな風であつたならば、建設でなく、破壞を自らするのだから、國の力は弱くなる、國民の活動力が鈍つて來る、「ラジエーター」がなくなつた爲に、工場に於て、或は斯う云ふ普通の「コンクリート」で造つた建物に依り、どれだけ肺炎患者を多くしたか、又「エレベーター」がなくなつた爲にどれだけ活動力を減じたか、それから金屬の書庫、其の他のものを供出した爲に、どれだけ燒かなくても宜いものを多く燒いたか、あの多くの「ビルデイング」を燒かなくても濟むものがあつた、それから資材が足らぬと言ひながら、ああ云ふものを取りに行つて、直ぐ木材を持つて行つて澤山の書類箱を拵へなければならぬ、斯う云ふ無駄をして居る、而もそれは原料だけで濟むのでない、色々の工賃が掛つたり、勞力が掛つて居る、又それを取る爲に勞力を掛けて、さうして或所へ運搬してそれが用を爲さない、私は茲にもう少し積極的な、もう少し聰明な産業行政をやつて貰ひたいと、斯う考へます、若しも其の時に非常な優れた商工大臣がおありであつたならば、必ず其の要る鐵が何十萬「トン」であるかと云ふことを調べて、さう云ふものを取除くのを一年でも、三年でも待たして、此の鐵鑛石なり、石炭をまだ當時は輸入が出來るのですから、どんどん輸入して、三倍掛つても五倍掛つても、それを増産すると云ふことに依つて、それを引受けてやられれば、斯う云ふ無駄なことなくして濟むと云ふことになつたと思ひます、さう云ふ風に金を掛けても、其の方が非常に國家の爲になる、又縱しやさう云ふものを囘收するなら囘收しても、高層建築やなんぞは、鐵扉を作るには資材が要る、それを供給したもので鐵扉を作ると云ふやうになれば或は防火の「バケツ」運動と違つて、確かに聰明な積極的な意義がある、さうでないと、全く徒勞になる、全くの破壞、所謂野蠻國に日本が行くやうに行くやうに仕向けるやうなことは、政治の私は要諦ではないと思ひます、それで政治は國を興したり、文化を進めたりしなければならぬのに、國を弱めたり、滅して行つて、文化を低下さして行くやうなことになつた時は罪惡で、私はかう云ふ人が位にあることは非常な罪惡だと思ふ、此處迄大きな天罰を受けて、我々は非常な不幸に遭つて居りますから、是からなりと、一つ正しい出發點に立つて、新日本の再建に意義あり、價値ある仕事をし、政治をやつて貰ひたいと斯う思ひます、此の夏にも食糧不足の爲に、さあ此の飢餓を救はなければならぬと云ふことで、多くの人が何をやつて居るかと云ふと、官民寄つて隱退藏物資を調べる、食糧の隱退藏物資を調べたつて知れて居る、それで以て飢餓を救ふことは出來ない、それが或工場にあれば、工場の人が責任を負うて、或期間、例へば半月でも、一月でも飢餓を救ふ、それを一般にやつても何にも出來ない、さう云ふことばかりやつて、人の物を出させる、斯う云ふ觀念が私は宜くない、それよりも、まだあの時は南爪なり、芋を植ゑればうんと出來るから、それに重點を置いて行けば宜い、そんな僅かな物を拾つて行くより一層地上に物を餘計作らなければいかぬ、米の方に付ても一層増産されるやうな風に、矢張り農家が活動するやうにしなくちやいかぬ、或府縣に於ては、それを直ぐ言うて戴いて農家は翌日直ぐ案を立つて居る、又或都市の燒跡の廣い所には何十萬の芋の苗を中等學校なり、國民學校、或は隣組へ何して、全部燒跡の放任してある所に植ゑるとか、外の方にもやる、私はさう云ふ風にして行く方が、僅かのものをあつちへやり、こつちへやるに云ふ吝な考をするよりも宜い、當局は積極的な、而も價値のある政治をやつて戴けば、斯う言つた時でも、段々と物資が地上に殖えて來ると云ふことになつて來ると思ひます、私は昨日要望しました生産計畫其の他の比率と云ふのは、さう云ふ點もありましたけれども、是は色々の點に於て支障があるやうでありますから、それは要求致しませぬけれども、一つそんなことを繰返さぬやうに御考慮願ひたいが、現商工當局の之に對する御考へと云ふか、御所見はどうでありますか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=133
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134・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 戰時中の統制のやり方に付きましては、今日から之を振り返つて見ますと、何と申しますか、隨分批評の餘地のある仕事が澤山あつたやうに私共考へます、今後はさう云ふ經驗に徴しまして、さう云ふ愚を繰返さぬやうに、最善の案を立てて行かねばならぬと考へます、經濟安定會議、經濟安定本部が出來まして此の物資の需給の實際問題に付きましては、色々の實際家の方の御經驗に依つて、實行案が練られることと思ひますが、私共はさう云ふ方面の御意見を十分伺つて行きたいと思ひまするし、又各民間の團體等に於かれましても、さう云ふ意見をどんどん政府に具申を願ひまして、政府の實行策に付ての御協力を願つて行くべきものと考へて居ります、新らしい統制法規と、形は從來の總動員法中の物資統制令と云ふものに非常に似て居る譯でございますが、運用は全然變へて行きたい心掛けで居ります、戰時中に囘收致しました「スクラツプ」が、今尚其處ら邊に一杯轉がつて居るやうなざまでございまして、實際に役に立たなかつたものが多數ある譯でありまして、而もそれを持つて居られる方には、隨分御不便を願つたものもある譯でございますから、今後はさう云ふことのないやうに、計畫と實際がぴつたり合ひますやうに、又必要以上の無駄をしないと云ふことが、仰しやつた通り必要でございますので、それ等のことは、もう少し此の統制を致します場合には、能く經驗のある方の、意見を十分に容れまして、今後はさう急いでやると云ふことも、戰時中と違ひますので、十分に議を練り、案を練りまして、實行をして行きたいと、斯う云ふやうに考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=134
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135・川上嘉市
○川上嘉市君 一昨日本會議で以て、私は質問致しました工業生産の意欲、此の點に付きまして、大藏大臣から御答辯がありましたけれども、詰り只今の税制にしても、法人税が殆ど資本に對して二割五分以上、所得に對しては九十九「パーセント」となると云ふやうな風な状況でありまして、而も其の最高の所得の如きは、僅かに六・六五「パーセント」しか殘らぬと云ふのでは、殆ど工業家の生産意欲は揚らぬだらう、無くなるだらう、それに對して政府は將來税をもつと下げる心持がないかと云ふ御話を致しました處が、大藏大臣は税制委員會に出して、さうして案が出來たならば、次の議會にでも出さうと云ふやうな話がありましたけれども、實は商工當局が生産に對して、農林當局の農民に對する熱意に比べて、非常に低調なやうに私は考へる、有らゆる場合に農林當局は農民、農山漁村の生産意欲と云ふことを殆ど口癖のやうに言つて居られます、さうして其の爲に、値段を吊り上げる時も、此の間も御話し申したやうに、五倍、六倍と一度に上げる、處が、商工關係の方は、殆ど生産者を「エンカレージ」すると云ふやうな方面に付ては、何も爲さぬと云ふやうな感じが致します、是は農山漁村の方は、衆議院の方の議員諸君が皆其の地盤の關係もありませうし、色々なことで以て、大分後援する人がある、或は勞働運動とか、色々なことにも結附きまして、大分後援者があると云ふことも、一つの理由ではあると思ひますけれども、併しそれに比べて、工業家の方が非常に低調であつて、殆ど忘れられて居ると云ふやうな感じがするのでありますが、大藏當局に御考を伺ひましたが、商工當局は之に對して、どんな風な御考を持つて居られますか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=135
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136・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 農林省の方が、農民に對して色々直接の助成的な、熱心な立場を執つて居る、商工省はさうでないと云ふ御話でございますが、決して商工省はさう云ふ譯ではございませぬ、有らゆる機會に於て、有らゆる努力を致しまして、商工業の確立に努力を致して居る譯であります、税金の御話は、本會議でも私伺ひましたやうな譯でありまして、増産を招來致しまする立場から致しまして、成るべく是は低い方が宜しいのであります、大藏省にも、其のことを極力御願ひする豫定でありますが、一般に商工業の方は農業と比べまして、成るべく業者の方の自力で行きたいと云ふことが私共の念願であります、自力でやつて行けるやうに政府が仕向けると云ふやうなことが、一番宜しいと考へて居りまして、從來も、私共さう云ふ方針で政府はあつたと思ひます、生産の障碍になる事項を除いて行くと云ふことでございまして、能く紡績業者の方も仰せになつて居りましたが、紡績は政府から一文の補助も貰はぬが、世界一の産業になつたと云ふことを誇つて居られるさう云ふ風に御向け願ふのが、一番宜いことであらうと考へて居ります、唯政府と致しましては、現在取敢ず生産の障碍になつて居る事項、或は今日で申しますれば、設備の荒廢等を囘復する爲に、工業者の方が有らゆる努力をせらるる仕事に對して裏附けを與へて行く、斯う云ふ意味で、物資需給調整法も運用したいと考へて居りまして、或程度囘復が出來まして、原料資材の生産と云ふものが相當に供給が出來、又將來輸入と云ふものが相當出來まして供給が潤澤になりますれば、政府は唯後に居つて御援助すると云ふ建前を從來も執つて居りましたし、今後も執るべきものと考へて居ります、租税、其の他價格の問題等に付きましては、十分な努力の足りなかつた點は御詫びしなければなりませぬが、私共と致しましては、一面價格を上げますことは、其の業自體から申すと、非常に宜しいのでありますが、同時に又、其の資材、製品と云ふ物が、他の原材料にもなる場合があるし、又一般物價の構成等にも關係を致しますので、其處ら邊は、各方面の利害を考へまして、適當な案と云ふものを考へて居つたのでございまして、十分に行かぬ點もあつたかと思ひますが、今後は、先づ増産第一と云ふ見地から、物價廳にも考へて戴きまして、成るべく早い機會に、今日の物價水準も確定をして戴きまして、全般的に「バランス」の取れた生産と云ふものが出來るやうな價格體系に行くやうに、物價廳に御願ひをして居ります、税金等に付きましては、更めて能く大藏省と相談致しまして、今日の財政、其の他の見地の事情も伺ひまして、此改の善に付ての案を練つて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=136
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137・川上嘉市
○川上嘉市君 私の話が多少、物價をもつと上げて呉れ、斯う云ふ風に響きましたかも知れませぬが、さう云ふ意味でないので、非常に私共が見ると、不當と思はれるやうな高い税を廢めるとか、或は物品税でも、さう云ふことの御話がありましたが、「フイルム」ならば「フイルム」、「ラヂオ」も、或は樂器も、皆物品税が百「パーセント」であります、其の他家具類なんかは四十「パーセント」、是等は總額に於ては、税は知れたものであります、今の日本の全體の税制から云ふと、殆ど問題にならぬのであります、是は是非廢するなり、或は非常に低く下げると云ふのが私共は當然と考へますが、それ等に對して、どう云ふ風な御考を持つて居られるか知りませぬが、商工當局としての産業を保護すると云ふ、それを育成すると云ふ立場で以て、物價を上げずして、もう少し仕事が成立つやうに御援助願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=137
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138・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今の物品税等に付きましては、目下大藏省とも折衝して居ります、成るべく斯う云ふ税金は低い方が増産の役にも立ちますし、國民生活の安定の上にも、御承知の通りの結果になると思ひますので、成るべく低くして戴きたいと考へて居ります、箇々の物資に付て、目下色々と御相談は致して居りますから、其の際に御希望の點を達成致しますやうに努力致す積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=138
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139・中山太一
○中山太一君 今後の産業復興、新日本の再建に付きましては、中小商工業の振興が餘程重點とされなければならぬ、是は當局も御話になつて居るが、さう云ふ場合に雜貨工業と云ふものは餘程重きを置かれなければならぬものだと思ひますが、當局は此の雜貨工業の振興に對して、相當な御計畫があり又力を盡される御考があるのでありませうかどうか、殊に日本の機械の幼稚である、又大量生産の出來ない、「アメリカ」式でない、此の日本で、一番製品としての特長のあるのは雜貨工業だと思ひますが、之に對して中小商工業の復興と關聯して、政府の力の入れ方に對する御考を承りたいと存じます、又見返り物資の生産に對しても、民需品の生産に付ても、相當生産機關が軌道に乘つて來て居つても、支障を來すのは食糧の人手難の爲であるのであります、是が三、四箇月前から工員の加配米が殆ど停止されて居る、是は速かに又各工業、今は重點的に、一部には若干あるやうですが、之を今の日本の中小商工業の復興が必要であるとすれば、是等の雜貨工業等に於ても、相當な規模を以て民需物資を、見返り物資を造つて居る所には、加配米を再開されなければ、生産の上に大さな支障を來すばかりでなく、食糧入手の爲に横流れになり物々交換、色々のことになつて、非常に弊害を來して居りますから、此の點等も考へられて、速かに之が解決を農林當局と御進めになつて實行して戴きたいと存ずるのであります、以上に對する御考を聽かして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=139
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140・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 今後の我が國の産業に、中小工業と云ふものが非常に大きな地位を占めることは、只今御話の通りでございます、大工業と云ふものは、今後は主として原材料方面に於て殘るのが大部分でございまして、一般の加工業と云ふものは、恐らく所謂中小工業と云ふ「カテゴリー」に屬するもてになるものと存じます、殊に今後、我が國の輸出産業として大きな地位を占めるものは、此の中小工業であらうと思ひます、其の中でも、豫て商工大臣も御答へ申上げて居る事柄と思ひますが、輸出に付ては、纖維産業が中心であると云つて居りますが、雜貨工業も、之に劣らず大きな輸出品として役割を占めて居るものと考へます、存外小さな物で、金高の増すものは此の雜貨工業であります、又東亞市場を見ましても、斯う云ふ雜貨工業、纖維と云ふものは、存外壽命が長く輸出されるものでありまして、非常に有望なものであり、我が國のやうな所では之に重點的に力を入れることが非常に將來とも必要だらうと考へて居ります從ひまして、國内の民需用と致しましては、兎も角、取敢ず問題として、輸出見返り用の雜貨工業の振興に努力致したいと考へて居ります、それが爲に取敢ず原材料の御世話と云ふことが第一の仕事でございます、之に伴ひまして、金融の方の世話を、輸出見返りの物には御世話を致して居る譯でありますが、さう云ふもので雜貨工業を直接振興したいと考へて居ります、唯一般的に見まして、國内民需用のものを含めまして、雜貨工業に付きましては、他の中少工業と同じやうに、矢張り組織化と云ふことが前提になるのぢやないかと考へて居ります、ばらばらの小さい形の、各各獨立した工業でありますと、政府が一々之に對して御手を貸すと云ふこともなかなか困難でございますし、又金融機關等に於て、之に對して金融をしたいと云ふことから致しましても、どうも非常に不安でございまして、矢張り組合等を作りまして、或程度の規模に纒つた生産單位と云ふものが出來ますことが必要でありまして即ち組織化と云ふことを、一日も早くやつて戴くと云ふことが、基礎的要件と考へて居ります、其の上に、金融なり、仕事を流して參りますことが此の工業を興す上に於ても、他の中小工業と同じやうに必要なことであらうと考へて居ります、其の詳細に付きまして商工協同組合法を此の委員會に御審議を願ふこととなれば、一般的な問題を細かく御説明申上げる機會があると考へて居ります、それから加配米のことでごさいます、最近停つて困つて居ると云ふ話で、誠に是は御困りだらうと考へます唯一般的に申しますれば、食糧事情が段々好轉して參りましたならば、恐らく十一月頃からは、一般の勞務加配米と云ふものを數量的にも増加し、又今日、工場配給致して居りまする處の工場以外に、少し其の範圍を擴げたいと云ふことで、目下農林當局と相談を致して居る譯でございまして是は近く解決を致しまして、或程度實現するものと考へて居ります、大分話が進みまして、其の範圍竝に量の増加と云ふことに付て、何れ近い内に之を具體的に申上げる機會があるのではなからうかと考へて居ります、是は主として輸出品を造つて居ります工場に付て、先づ優先されて適用されると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=140
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141・中山太一
○中山太一君 雜貨工業の振興を國内の民需物資としても、相當に之を復興しなければなりませぬが、見返り物資として之を當てますに、其の雜貨品を造る見本、原材料の獲得に、非常な困難を感じて居るのが一般の現状であるやうでございます、之に對しては、適當な方法で當局に願ひ出れば、或一定の數だけは、それに必要な見本を分讓されると云ふやうなことがなけらねばならない、矢張り雜貨は、或程度工藝美術的な意味が相當含まれて居るのでございますから、色々の工夫をし、ずつと一貫して居れば宜いけれども、一時中絶して居りましたから、是には相當な矢張り見本を持つて試作をしなければならぬことでございますから、それが行はれないやうな現状であります、關係者が困つて居るやうでございます、其の甚だしいものは、絹を原料とする工業、さう云ふやうなものは、僅かに絹を應用してやれば各種の雜貨が出來るのが、絹の使ふことも禁ぜられて居る又其の見本だけを造ることも得ることが困難であると云ふので、支障を來して居る例が相當あるやうでございます、それから硝子のやうなものでも、輸出するとすれば良品でなければいかぬ、今の國内にあるやうな不良のものであつたならば、到底輸出市場に於て、是は歡迎される氣遣ひはない、一度は出ませうが、二度三度はもう需要されない、閉め出しを食ふ、恥曝しに出すやうなことになります、斯う云ふ點にも相當考慮を拂つて、良い硝子を造るには、硝石の不足を矢張り補はなければならぬ、さうして行かなければならないのみならず、熱度の相當上る石炭燃料等の配給がない限りは、良品は出來ないと云ふこともありますから、將來、輸出の出來るやうな點に指導もされ、面倒も見て貰ふと云ふことが、産業行政當局に於て行はれない限りは、民間では如何とも出來ない、縱しや、今あります工業統制組合等がやらうとしても、是はさう云ふ力を持つて居らないから、矢張り當局が昔から工業試驗所を持たれたやうに、今度はそれが所謂象牙の塔に籠つて居るのではなくして、全く街に乘り出して、街の指導者として、一々起るさう云ふものを解決すると云ふことに當つて貰ひたい、必要の場合には實際持つて行つたならば其の試驗所なり、商務局なりが、よし、造る是々の見本ならば、直ぐ出してやると云ふ風に、其の場でも相手が信ずべきものならば解決してやると云ふことが必要ぢやないかと思ひます、それから次は、當局は居られませぬけれども、纎維の關係でも非常な矛盾があるやうでありますが、是は統制機關が不適當であるから起るのでありますけれども、先程も食堂で其の方の關係の人が話して居りましたが、「メリヤス」に非常に必要な絲は、右撚りの緩く撚つたものでなければならぬ、それにも拘らず、織物の左撚りの撚りのきつい固いものを配給される、それで以て「メリヤス」を造るから良いものが出來ない、斯う云ふ一貫性のない、連絡性のないことをして、絲を「メリヤス」工業統制組合に配給されるそれでまあ生産者は、それぢや良い物が出來ぬからと云ふので相當な希望、注文を原料生産者に言ひますけれども、それを他人事のやうに考へて、こんなことが放任されるから、良い品物が出來る筈がない、輸出市場に於て歡迎される物を出す筈がない、こんな分り切つた矛盾をやりながら、統制組合は手數料を取れば宜い、それで普通にないやうな高い報酬が貰へれば、それで自分の任務は了つたやうに考へて居る、果して斯う云ふ機關が必要であるかどうか、今日統制組合は解消されると云ふことでありますが、次に起る共同組合が同じ人間が之に代つて行く、さうして矢張り同じやうな惡指令が相續されて行つたならば、私は健全な中小商工業の振興を見ることが出來ぬのぢやないか、斯う思ひます、此の點に付ても、相當な私は、所謂民主主義時代にもう少し公明正大な組合經營が出來るやうな方法を當局として指導し、又は監督されることが必要ぢやないかと思はれます、それから今の「メリヤス」のことを申しましたから、序でございますけれとも、又世界的に重要なる絹其の「ネクタイ」のやうなもの日本の「ネクタイ」あたりは、生絲の材料を相當食つて居るが織物の面もありますから、研究して行くと、世界に例のないものが、どんどん出來て行く、隨分斯う云ふものは見返り物資として宜いのに斯う云ふものを眼中に置いて居られないのみならず「メリヤス」工業統制組合あたりは、さう云ふものに適する原料も供給しない、唯、今迄のあり來りのものを配給すれば宜い、新らしい建設的なものに興味も持たなければ、好意も持たない、是ならば、日本の産業再建なり雜貨の復興なりは出來ないのでありますから、商工省では色々の相談所を設けて居られるが、雜貨の復興なり、生産に對して商務局あたりに指導し相談に應ぜられ、さうして直ちに種々なる隘路を解決するやうな面倒を見られる機關を御設けになる御考はないものか之も併せて御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=141
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142・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 只今現在の統制のやり方に付ての色々な缺點を御指摘になりまして、併せて其の改善の御意見を承つたのであります、一々御尤もなことでございまして、私共は成るべく其の線に沿つて一つ研究して參りたいと思ひます、「メリヤス」糸の配給等の御話、適切な御話でございますので、さう云ふ問題は當然今後民主的な團體として民間の團體、是は從來と同じやうな人が、今一應幹部等にも坐つて居られますけれども、今後の運營は、總て民主的になると云ふ此の氣持から致しまして、恐らく從來のやうなことではなく、非常に明るい、自由な討議が行はれて、統制の方針等も論議されることと考へて居ります、今仰せのやうな點は、はつきりした問題でごさいますので、其の邊のことも討究の結果、逐次變へられると思ひますので、場合に依れば、不服の愬へと云ふやうな形に於て、さう云ふ問題を御出しになる方、統制團體以外の業者の方、及び第三者をも入れて、其の解決を圖ると云ふことも可能であると考へます、さう云ふ問題は、今後の統制方式を民主化すると云ふことに依つて、期待されて宜いのではないかと考へて居ります、又一案として、商工省の一部に、さう云ふ適當な相談機關を作つたらどうかと云ふ御案でありますが、之も結構でありまして、私共と致しましては、本當に今、民間に於て必要として居られることに對する聲を聽く意味に於て、相談所を作つて居ります、現在迄に御利用になつて居る状況から見ますと、殆ど大部分は、此の仕事は何處に行つたら宜いかと云ふやうな、謂はば案内役に御使ひになるやうなことでありまして、今のやうな實質的な問題を提げての御相談は殆どございませぬ、併しながら、今後は仰せのやうな問題を取扱ふやうに、一つ成るべく此の機關を取扱つて參りたいと考へて居りますし、又さう云ふことの關係の局課に御紹介致しまして、適切な御意見を伺ふと云うことに、此の組織を活用する積りでありますから、御遠慮なく御利用願ひたいと思ひます、商工相談所の組織は、今日迄は十分ではごさいませぬが、是は逐次擴充を致しまして、御希望に副ふやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=142
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143・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 壬生委員鑛山局長が御見えになつて居りますから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=143
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144・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 一つ伺ひますが、先刻ちよつと申上げましたやうに、物資統制は結局、足りないものを一生懸命に統制すると云ふよりも、積極的に増産すると云ふことを考へなければならぬのぢやないかと思ひます、それで所謂基礎産業である石炭と鐵のことに付て伺ひたいと思ふのでありますが、石炭は從來相當に問題になりまして、又政府當局としても、それぞれ適切なる手を御打ちになつて居るやうに考へられますので止めまして、鐵に付きまして、鑛山局長から政府の御考を伺ひたいと思ひます、先づ第一に「ポーレー」大使が昨年の十二月の七日に、所謂日本に於ける製鋼能力を年産二百五十萬「トン」と云ふ發表を致しました又極東委員會が今年の六月の十二日に鋼塊の生産能力を三百五十萬「トン」にすると云ふ案を採擇されたと云ふことは、新聞紙上其の他に於て知らされたことでございますが、現状に於ては是だけの生産をやると云ふことは、絶對に不可能なりと考へます、假に國内の原料だけに頼つて居た場合には、百萬「トン」造ると云ふことも不可能ではないかと考へられます、さうなりますと、之に代るべき方法としては、輸入に依つて殖やさなければならぬと云ふ面しか殘つて居ないと思ひます、勿論只今の状態に於きましては「ジー・エツチ・キユー」との關係に於て、政府獨自の考でどうすると云ふことも御發表になることは出來ないと思ひますが、今ちよつと、さう云ふ關係を別と致しまして考へて見ますのに、輸入すると言つても、色々の場合があると考へます、大雜把に分けまして三つございまして、第一は所謂原材料を輸入する、詰り石炭と鐵鑛石を輸入すると云ふ方法と、次には銑鐵を輸入すると云ふ方法と、第三には鋼材を輸入する、此の三つの方法があると考へられますさうして其の第三番目の鋼材を輸入すると云ふ方法は、一番まあ下策と申しますか、拙い方法であつて、同時に現状に於きましては、「アメリカ」其の他に於きましても、鋼材の不足を來して居ると云ふことを聞いて居りますので實現も不可能であると思ひます、さう致しますと、殘る處は鑛石、石炭で輸入するか、或は銑鐵で輸入するか、此の二つになると思ひます、此の二つの方法に付きまして、今簡單に利害得失を考へて見ますと、結局、此の二つの方法の利害と云ふのは、お互に片方の利益とする處は片方の不利とする處となるのではないかと云ふ風に考へられる、即ち鑛石、石炭を輸入する場合には、先づ第一に船腹が餘計要る、少くとも銑鐵を輸入する場合の二、三倍の船腹は之を必要とするのぢやないかと考へるのであります、而して之をやりました場合に於ては、他の不利益な點としては、鑛石はまだ宜しうございますが、石炭は相當銘柄を選ばなければならぬ、所謂強粘結を持つて來なければならぬ、此處で先刻商務局長も仰しやいましたやうに、開らんとか北支から持つて來るとしても、どの炭でも宜いから持つて來い、運び易いから持つて來ると云ふやうな譯に行かないと云ふ難點がございます、同時に、内地で原料から拵へて行くと、どうしても値段が高くなる、斯う云ふことになると考へますが、さうなりますと、之を原料として致しまする他の産業が非常に困つて來るのぢやないかと、斯う考へるのであります、併しながら、此の場合の一番良い點としては、結局副産物、「コークス」爐に於ける副産物としての化學製品、是が非常に重要な問題となると思ひます、私は即ち、ちよつと例を申上げますと、「ベンゾール」系の製品が、昭和十八年度には日本の全生産の八十一「パーセント」、十九年度には七十七「パーセント」、二十年度に七十五「パーセント」と云ふものが、「コークス」爐の副産物として出來て居る、同時に「コールタール」製品を調べて見ますと、矢張り十八年度に於て六十「パーセント」、十九年度に於て六十七「パーセント」、二十年度に於て六十「パーセント」と云ふものが、鐵鋼業者の骸炭爐から副産物として、日本に於ける全生産量の中に、是だけの數字を占めて居ると云ふことがございまして、是が第一のまあ利益であると考へます、同時に熔鑛爐を動かすと云ふことに依つて、失業問題も、或程度緩和されると云ふことが考へられるのでありますが、是は銑鐵其の他を輸入すると云ふ場合に於ては、之の逆になりまして、船腹が非常に節約され、それから平爐の加熱用ならば、炭は何でも構はない、或程度のことは我慢が出來る、おまけに、其の生産價格は安くなると云ふことが言へると思ふのであります、但し失業と云ふ問題を考へますと、前の場合よりも餘計に失業者を生ずると云ふ難點があると思ひます、勿論先刻も申上げましたやうに、「ジー・エツチ・キユー」との關係があつて、今、政府としては斯うしたいのだと云ふことは仰しやれないと思ひますが、過去の實績を見ましても、大體昭和十二年でございますか、銑鐵が大體百萬「トン」位入つて居る、それならば、何處から銑鐵を持つて來るかと云ふことをちよつと考へて見ますと、北支、朝鮮其の他は、まあ現状に於ては不可能である、其の他の諸國もちよつと不可能でございまして、結局「インド」か何かから持つて來なければならないさうなつた場合に、「インド」の銑鐵の過去の實績をちよつと見ますと、昭和四年に四十萬「トン」入つて居る、是が最高だと思ふのであります、それで只今としては、應急處置としては、假に入れば、鋼材を其の儘輸入すると云ふことは宜いことではるあと考へられますが、日本の基礎産業を維持する上に於ては、最も策を得ないものであるし、是は全然論外と致しまして、此の二つの内、どちらを所謂政府として出來るならばやりたいのだと云ふやうなことを伺ひたいと思ひます、それに依つて現在の製造業者の生産意欲と云ふものが、はつきりして來るのぢやないか、振起されるのぢやないかと、斯う考へます、政府の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=144
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145・池田欽三郎
○政府委員(池田欽三郎君) 只今鐵鋼につきまして、御質問があつたのでありまするが、鐵鋼の生産事情に付きまして、現状を御説明申上げますると、終戰後、日本の平和産業の維持、民生の安定の爲に、どの程度の鋼材を必要とするかと云ふ點に付きまして、各需要部門に付きまして檢討を致したのでありまするが、普通鋼鋼材三百萬「トン」、特殊鋼、鍛鋼、鑄鋼、合せまして三百三十萬「トン」の鋼材を必要とすると云ふ結論に到達致しまして、賠償の問題が取上げられました時に、「ポーレー」大使、其の他關係の方面に、其の旨を陳情致したのであります、然るに「ポーレー」大使の中間報告として發表せられました所に依りますと、鋼材と致しまして二百五十萬「トン」を許容すると云ふことに相成りまして、我々の希望する所と多少隔りがあつたのであります、其の後、極東委員會に於きまして、此の問題の決定を見たのでありまするが、其の結論は只今御述べになりましたやうに、銑鐵二百萬「トン」、普通鋼鋼塊三百五十萬「トン」と云ふ所に決定を致しました、此の鋼塊三百五十萬「トン」と申しますのは、「ポーレー」大使の報告致されました二百五十萬「トン」の鋼材に略略匹敵するのであります、斯樣な所に我が國の鐵鋼業の限界を置かれたのでありまするが、現在の鐵鋼の生産状況は主として石炭の不足から致しまして、生産が極めて不振でありまして、月々に二萬「トン」そこそこの鋼材きり生産が出來ないと云ふやうな、誠に憂ふべき状態になつて居るのであります、國内の資源、鐵鑛石、屑鐵、さう云ふ物を活用致しまして、どの程度の鋼材銑鐵が生産出來るかと云ふことを計算致しますると、大體七、八十萬「トン」銑鐵、鋼材各各七、八十萬「トン」と云ふ所が大體の數字になるのでありまして、それ以上造りませうとすれば、海外から優良な鐵鑛石、「スクラツプ」さう云ふ物を輸入しなければならない石炭に付きましては勿論でありまして相當海外資源に原料を仰がなければならぬと云ふやうな状況であります、從ひまして銑鐵に二百萬「トン」、鋼塊三百五十萬「トン」と云ふ所迄持つて行きますには、此處二、三年では到底出來ないのでありまして、大體五年程度の年數を要するものと考へて居るのであります、差當りの目標と致しまして、日本の鐵鑛石、「スクラツプ」を利用致しまして、大體七、八十萬「トン」の物を造りたい、それには一番問題になりますのは、石炭、又は石炭に代る重油の問題でありまして、之に付きましては聯合軍に懇請を致しまして、輸入を仰がねばならぬと考へて居るのであります、次に其の不足分をどうするかと云ふ問題に付きまして、只今御話のありましたやうに、鐵鑛石なり石炭で輸入する方法、銑鐵、「スクラツプ」で輸入する方法、鋼材で輸入する方法、此の三つの方法があるのであります、鋼材に付きましては、現在「アメリカ」に於ても相當の品不足でありまして、全面的に此の輸入を望むと云ふことは非常に困難な事情にあるのでありますが、併し日本の事情と致しまして、特殊の品種の物に付きましては、輸入を仰ぐ必要があると考へまして、努力をしなければならぬと考へて居るのであります、又銑鐵の輸入に付きましても銑鐵二百萬「トン」、鋼塊三百五十萬「トン」の「バランス」を考へますと鑄物銑其の他のことを考えますと、二百萬「トン」は若干不足でありまして銑鐵の輸入と云ふことも、是も我々としては考へなければならぬ問題と思つて居るのであります、併しながら根本の問題と致しましては、聯合軍側と致しまして、二百萬「トン」の銑鐵の生産も一應承認をして居るのであります原料から鋼材を造る銑鋼一貫作業を建前としてやつて行きたい、是には今御話になつたやうな化學製品の副産物が相當取れると云ふ事情、それから多數の勞務者を吸收出來ると云ふやうな事情、又海外の支拂が鋼材、銑鐵で入れますよりも、鐵鑛石、石炭で入れた方が、支拂が少く濟むと云ふやうな事情もありまして、建前としては銑鋼一貫作業と云ふことを考へて行かなければならぬと思ふのでありますが、先程申しましたやうに、特殊の鋼材に付きましては、過渡的方法として輸入を懇請しなければならぬと思つて居りまするし、又銑鐵に付きましても、不足する分は輸入をして行かねばならぬ、斯樣に考へて居るのであります、大體以上の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=145
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146・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 それで大體分りましたのですが、それは箇々の品種に付きましても、先刻商務局長も申されましたやうに、鐵板の薄板が足りない、硅素鋼板が足りない、殊に進駐軍の住宅建築で要請されて居る壓延鐵板が非常に不足して居る、斯う云ふことは結局、只今戰災復興、其の他で御實行にならうとして居る戰災都市の家屋復興の上に、非常に隘路になつて居るのではないかと考へられるのであります、大體月に三百「トン」位しか出來ない然るに進駐軍からの要求が五百「トン」位もある、是ぢや、何時迄經つても、日本人はああ云ふものは手に入らぬ、瓦も何もない、斯う云ふ時に「バラツク」を建てましても、屋根が出來ない斯う云ふことになりますので、之に對して、至急何等かの手を御打にならぬことには、もう行き詰つて來るのぢやないかと思ひますが、非常に細かい問題で恐縮でございますが、何か應急處置を御考になつて居りますかどうかを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=146
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147・池田欽三郎
○政府委員(池田欽三郎君) 只今御話になりました通り、鐵鋼は全般として非常に需給が窮屈でありまするが、品種別に見ますると、例へば特殊鋼の如きものは、それ程の所迄は行き詰つて居ない、又品種に依りまして鐵板だとか、それから線鐵材、さう云ふやうなものは非常に行き詰つて居るのでありまして、之が對策と致しましては、どうしても壓延用の石炭、發生爐炭を確保することが先決問題でありまして、之を確保することに努めなければならぬと考へて居りまするし、又それに代るものと致しまして、重油の輸入を是非一つ實現するやうに努力をしなければならぬ、此處に一番重點を置いて考へて居るのであります、尚特殊の進駐軍用のもの等に付きましては、それに必要な石炭を特配をして貰ふと云ふやうな方法で確保して行きたいと考へて居るのであります、又配給面に付きましても、現在指示配給を居して居るのでありまするが、必要な方へ流れるやうに、此の需給調整法の成立致しました暁に、其の運營に依つて確保して參りたい、其樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=147
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148・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 最後にもう一つ伺ひますが、結局是は、先般問題になつたのでございますが、割當になりますと、割當を貰つた者は全部買はなきや損だと云うやうな一種の心理になりまして、要らない品種迄、即ち外の物資でございますと、單一品種で濟みますけれども、鋼材みたいな、寸法も違ひ形状も違ふ色々なものがあると、必ずしもそれに「マツチ」しない、自分の欲しい物がないと云ふやうな場合でも割當だけ、折角切符を貰つたのだから是だけ物にしようと云ふやうな傾向が多いやうに考へるのであります、其の結果と致しまして、終戰後に隱退藏物資が摘發されて、相當の物資が、現在寄與したとも考へられますが、是も非常に不足をして、戰爭中の生産から見ますと、高々一、二割になつて居ると云ふのに、更に又さう云ふ退藏されるやうなものが出來ると云ふやうな心配があるのぢやないかと考へます、そこに於て此の割當、是が民主的におやりになると云ふ色々御説明を伺ひましたが、結局紙の上でやる結果として、要らないんぢやない、欲しい物がないのだ、だけれども、仕樣がないから、代りに取つて置くと云つて、倉に藏つて置く場合と、それから欲しいのだけれども、丁度只今金融措置令の關係上、支拂が出來ない、さうなると「メーカー」の方も金融に詰つて居りますから直ぐ新圓なら新圓で買つて貰はなければ賣れないと云ふやうな現象が起るのでないかと思ひますが、是等に付て、何か此の運用の場合に於きまして、うまい方法を御執り戴きまして、戰爭中に於けるやうな統制の失敗と云ふやうなことを除去して戴きたいと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=148
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149・吉田悌二郎
○政府委員(吉田悌二郎君) 格別御説明は要らぬかと思ひますが、先程どなたかの御質問にありましたやうに、或程度持つて居る資材の交換と云ふことも考へて見たいと思つて居ります、現在大分工場の整理等に依りまして事業を止めて居るもの、或は一部しか操業して居らぬもの、澤山ございまして、資材等も隨分偏在して居るやうでございます、從ひまして資材の融通等は成るべく之を認めて行く意味で、資材の交換會等もあちこちへ勸奬して居りますし、又今度、整理會社等に付ては一つ、さう云ふ社團法人でも設けたらどうかと云ふことで、色々考へて居る譯でありまして、さう云ふ場合の融通は例外的に認めて行くことに致したいと思つて居ります、其の他の點は仰せの通り計畫生産が實際上に合ふか合はぬかと云ふ問題でございまして、是は非常にむづかしい問題でございます、併しながら、今後の需給關係を能く睨みまして、現在の一番逼迫して居る資材に付ては、少くとも之を計畫生産に入れて實現して行くやうに努力致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=149
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150・壬生基泰
○伯爵壬生基泰君 私は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=150
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151・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) 只今大臣がおいでになりましたが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=151
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152・中山太一
○中山太一君 先程、川上委員から御質問ありましたが、只今の所得税其の他の税制は、産業の復興振興等に對して、其の生産の意欲を振起しないと云ふばかりでなく、實際に、是ではほんまの建設的な振興をすることが出來ないやうになつて居ると存じます、殊に補償の打切りなり、預金の封鎖なり、或は賠償工場の問題なり、財産税の問題等に依つて、餘程の打撃を受けて居る者が、是が復興するには、相當な餘力を持つて行かねばならぬ、それが矢張り一生懸命、勞資一體になつて奮鬪しても、纔かに其の缺陷を補ふやうなことになるのでは、復興は不可能となる處がある、此の點に於ては、過去のことは兎も角も、或期間さう云ふやうなものが復興するには、或率迄は相當蓄積が出來ると云ふことは、是は産業復興の爲に考へなければならぬ、それで國庫の收入のことばかり考へられて、眼に見えない大きな國力を涵養する所の産業の復興を第二義的に考へられることは、延いては國民の生活の上にも、又失業者を救濟する上にも、又見返り物資としての製品を増産して行く上にも、事實上支障があると思ひますから、商工當局は大藏省の言ひなり放題、所謂大藏省が欲せられるが儘のああ云ふ税制を通されるよりも、産業を正しく經營する爲には、此の程度は保護しなければならぬと云ふ一つの線を引いて戴いて、それを斷乎として主張もして貰ひ、守つて貰ふと云ふことは出來ないものでありませうか、現在決定した所得税の如きは、此の戰後の復興に竝々ならぬ重壓を加へられて、之で産業が生きて行けるのは不思議だと思ふ程の状態に對して、それを更に復興して行かなければならぬ、此の儘では丁度食糧不足で、榮養失調をやつて居る所に、更に又食糧を減して行くとか、一層惡條件を加へられたやうなもので、さうすると其の者は死するより仕方がないと云ふ結果になる、是は由々しき問題だと思ひます、處が、此の税制、所得税の負擔が重いとか何とか言ふことは、何か利己的の主張のやうに當るから、比較的遠慮して居るけれども、是は商工大臣の立場から言へば、全く國家の産業を振興させ、救濟する爲に、又失業を一層防止し、救濟する爲に、國民の生活を安定さす爲にも必要でありますから、一番公正な、さうして有力なる發言者であるやうに思ひますが、此のことに關して、大臣の率直な御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=152
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153・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 産業方面から言ひまして、誠に御力強い御言葉を戴いたのでありまして、從來動もすれば何と言ひますか、産業界が金融界に押され氣味であつて、さう云ふ關係から言ひましても、政府の仕事から言ひましても、豫算の關係上、矢張り商工省は大藏省に壓力を加へられるやうな感じが從來なきにしもあらず、私もさう考へて居りましたから、そこで今囘の復興金融金庫等に付ても、是は産業の爲に復興を圖るのであつて、金融の爲に新らしき事業を起すのではないのでありますから、どうしても共管に移して貰ひたい、共管に移して貰ふ以上は、商工大臣が一枚加つたからと云つて、別にどう斯うと云ふことはありませぬけれども、少くともさう云ふ趣旨から、復興金融委員會は、今隣りの部屋で委員會が開かれて居りますが、強く長官が主張致したやうな趣旨でありまして、概ね中山委員の勵ましの御言葉と同じやうな積りでやつて居る譯であります、併し是は今囘安定本部の會議が設けられましたのは、一面から言へば好い政治でありまして、それ等の會議に依りまして、公平なる論議を鬪はし、而も其の委員の中には學識經驗者、貴衆兩院の方も入つて居られる譯でありますから、財政經濟の根本的な考を持つて其處に行かれる、そこで從來の所謂一面から言へば「セクシヨナリズム」、各省割據の何がありましたが、其の所を離れて經濟安定本部で豫算を組む所へ行くのではないか、さう云ふ際には、從來よりももつと強い主張が言はれると思ふのであります、又此の議會が終了後、次の冬の議會の準備迄には、税制の改正の委員會が設けられまして、それ等に對しましては、勿論貴衆兩院の方も、其の委員として御參加になると思ひますので、それ等の時には、十分一つ意見を御發表願ひまして、只今仰せのやうな風に運んで行きたい、商工省の立場から言ひますれば、御言葉の通りの意味に考へて居るのでありますけれども、目前色々な費用が要りますので、已むを得ぬこととは思ひますが、併し陸海軍のなくなつた日本が、此の終戰事務が結了致しますれば、將來私は相當さう云ふ面は輕くなりまして、産業の方面に十分働き得る時が來るだらう、今暫く辛抱だ辛抱し切れぬことになつて居る物品等は殊に多い、所得税に付ても無理がありますから、それ等の改正されるものは、此の冬の協議會で十分意見を述べまして、其のことの完成を致したいと斯樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=153
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154・中山太一
○中山太一君 只今物品税の御話がありましたが、此の國民生活の安定、又は適正物價の權限等は政府の非常に重點を置かれて居るにも拘らず、大藏省の施策は斯う云ふことに無關心で、殆ど常識を逸するやうな、高率な物品税が課けられて居ること等は、是は再檢討の上、大部分のものは撤廢さるべきぢやないかと存じて居る次第であります、さうして行くことが、又生活費を一層低下さして、勤勞階級も收入が減じても、生活に餘裕が出來ることになるのであります、今では少々増加して貰つても、生活が貧困で、其の日の暮しに困ると云ふことになつて居るのであります、斯う云ふことが適當に解決されねばならぬ、のみならずさう云ふ不合理な税に依つて物價が不當に騰貴して行きますと、家庭生活の生活費と云ふものが非常に高くなる爲に、今の世界中、何處にもないやうな不合理な家族手當と云ふやうな名儀で大きな負擔をされる、生産に何にも關係ないものが負擔されて、日本の品物が、良い物が安く出來る筈がない、一昨日も膳國務大臣が、川上委員の質問に對して御答になつたやうに、さう云ふ不合理なものを止めて、何處迄も能率的な賃金、或種の固定賃金は必要だけれども大部分は能率的な賃金でなければならぬ、農家は一人で働くのではない、家族が居れば皆働いて、さうして收穫を得て生活を營む、都市に於ては概して一人が一事業に從事して、それで一家族が皆生活する、而も高物價である、斯う云ふことの不合理を改めて貰つて事業家は能力のある、眞に事業に貢献する者に對しては實際の支拂はそれ以上拂つても構はないけれども、今の熟練工と不熟練工、不熟練工が家族が多い爲に、却て熟練工より收入の多いことがある、此處に横綱と幕下の者が居つて、其の待遇は幕下の方が家族が多い爲に收入が多いと云ふことになつては、是では納まらない、是では其の方の奬勵にはならぬ、今日實に矛盾したことが平氣で行はれて居る、政府としても之に盲從して居られる形がある、此の點はつきりしたこんな間違ひを繰返しちやいかぬと思ふ、どうしても技術の優れた人、熱心に努力し能率を上げた者に對して、相當の優遇が出來ると云ふことでなければならぬ、それが出來れば出來る程、事業家も宜ければ勤勞者にも宜い、一般消費者は良い物が安く買へ、日本の産業が興つて來ることになります、今のやうでは、日本の事業が益益不振となり行詰つて來ます、是は産業行政の最高の責任を持つて居られる商工大臣として、勞銀其の他には直接關係ないけれども、物價問題なり、産業振興なり、色々なことに深い因果關係を持つて居りますから、此の點に付ては、どう御考へでございませうか、積極的に之が解決に御乘出しになるやうな御考はないのでございませうか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=154
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155・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 大體御説のやうなことの必要を感じて居ります、勿論物品税は改廢を致さなければなりませぬし、其の他技術の進歩を圖る爲にも、中小工業の振興に對しては、特にそれから發足しなければならぬ、斯樣に考へまして、今囘安定本部の中か、或は商工省の中か、今迄決定をまだ得ませぬけれども、中小工業振興對策委員會とか、或は其の結果として、振興助成局と云ふやうなものを設くべしとの議が今熟しつつあるのも、偏へにさう云ふ見地から、全然從來の行き方と變つた行き方を考へて行く、國民全體が一つ立上つて、此の復興を圖るのだと云ふ所へ行きまして、從來のやうな官僚臭いことから脱却して、さうして活き活きとした一つの生産部面に精進したいと、斯樣な考は、誠にさう云ふ業界に最も御堪能の中山委員の仰しやられるやうな趣旨に副うて、今後政府は舊來のことに囚はれないで、どしどし實行して行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=155
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156・中山太一
○中山太一君 色々の方面で生産の上らないのは、經營者なり、資本家の「サボ」に依るとかと云ふやうな意味で、生産意欲が揚らない爲のやうに、且、それが經營者側の責任のやうに唱へられて居りますが、是は原料、材料、又は食糧問題、其の他各般の事情に依ることは明かであります、其の方に付ては御尋ねする必要はありませぬが、此の産業の振興に又缺くべからざることは、經營者なり、勤勞者なりの心理關係を無視することは出來ない、此の能率の上る上らぬと云ふことを考へると、是は大きな關係を持つて居ることでありまして、それで矢張り産業の復興、生産の増強に付ては、經營關係の者が前途に希望があるやうに、又勤勞者の非常に興味を持つて、希望を持つて働けるやうに、さうして勞資一體となつて、之に當ることが出來るやうな方法も講ぜられなければならぬと思ひますが、嘗て私の部下である一人の技師が「アメリカ」で研究して來ました、其の研究の結果を、私は非常に參考になり、其の通りだと思ひました、人間は機械ではない、人間の能率を上げることに付ての色々研究した結果に依ると其の動機は、食物のことに對して人間が、どんなに榮養分のある消化の良い食べ物でも、其の人が嫌ひなものであつたならば、それを完全に消化しない却て健康上にも害があり、榮養分を攝取しないのである、反對に、其の人に好物のものであれば、少々消化不良のものでも、完全に消化して榮養分も攝取することが出來ると云ふ、さう云ふ動機を得て、勤勞の上で、厭々で仕事をするとか、反感の上でやるとか、興味を持つてやらないと云ふことで仕事をやると、一日三時間乃至五時間働いても、非常な疲勞度が現はれる、愉快な氣持を持ち、興味を持つて、好意を持つて、其の仕事をする時は、八時間乃至十時間働いても、疲勞度が其處に現はれることが少い、非常な倍以上の仕事をする、さうして一時間當りの仕事の量を考へると、量に於ても、八時間なり十時間愉快な感じを持つた者は量が多く、質に於ては更に正確な良い物が出來て居る、良い物が三倍も出來て居る、斯う云ふことになる、だから、復興と言つても、皆人間の何であるから、政治の上に人間の心理を無視したことを以て、どんなにやつても、産業の復興は出來ないと思ひますから、此の經營關係なり、勤勞關係の心理状態を把握して、それに適當な産業行政、立派な政治を大臣が行つて貰ひたいと存じますが、私はどうも今の儘の機機的に扱つたり、それから政府は、政府を惡く言ふのではありませぬけれども、どうも考へると、飢餓に直面した時に、食糧はどうか斯うか苦心して與へて貰つたが、それから後に起ることは、迚も堪へられない問題が起つて居る、まるで動物のやうに、食糧だけ與へて命を繋がせて、後のことは、非常な人間としての取扱ひでないやうなことを繰返し繰返しやつて居る、我々は動物と同じやうに取扱はれて居るのではないかと産業人の一人として考へることがあります、私は反對に人間として其の心理状態を極めて能く扱つて戴いて、産業の復興なり日本の再建に對して、効果的な産業行政を行つて貰ひたいと、斯う考へ希望するのでありますが、商工大臣の之に對する御所見を聽かせて貰へれば、本懷に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=156
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157・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) それは無論中山さんの仰せの通りでありまして、私は今囘非常に感じて居りますことは九州の地方で八月の石炭が十萬「トン」程増産になつた、それを色々調べて見ますと云ふと、結局勞働組合の幹部級の人が眞に目覺めて、日本の爲に石炭は要るんだと云ふので、精神的に感奮して、他の人は缺配して居るにも拘らず六合、三合と云ふ其の標準に依つて食物の特別配給を受けた、それでは相濟まぬと云ふやうな氣持を十分末端迄宣傳されまして、是は出さなければならぬと云ふやうなことから起つたのが主なる原因であると云ふことが昨今分つて參りまして、非常に、矢張り一つの石炭が増すのにも、本は氣持の問題である、勿論食糧が現實に行かなければなりませぬでせうが、少々食糧が行きましても、他の北海道方面では、其處迄成績が上らぬのは、本當に其處に精神的なものがないからであります、さう云ふことから通して見ましても、是からの日本の色々な産業の發展に對しましては、私は色々な物の部面や、色々な法律の力や、其の他色々なことよりも、寧ろ一つの精神運動、日本を建て直すには、斯う斯うあるべきだと云ふ精神運動が本だらうと、我々は石炭が足らぬ爲に、有らゆる苦勞を致して居りますが、其の石炭を使ふ方面から言ひましても、鐵道省の機關の人達が、まるで一つの寶石のやうに思うて此の使ひ方を大事に注意して呉れると呉れぬとでは、非常な差が起るであらうと、だから、根本は一つの精神運動が重大である、それが敗戰後の虚脱状態から、自暴自棄的な色々な思想が入つて來まして、非常に惡化して居る今日の状態でありますから、之を建て直すには、只今仰せのやうなことが十分取入れられて、之を一つやらなければならぬ、殊に平靜になつた後に於きましても、それぞれ人間には適性があるから、是は米國等に於きましては、相當科學的に發達して居るさうでありますけれども、性能の研究を十分に致しますとか、或は勞働科學を十分に調査致しまして、それぞれ自分の向く仕事に入るやうに、厭々ながら行かないで、進んで自分の仕事に從事するやうな所迄考へて行かなければ、能率は上るものではない、それは周圍の環境なり、色々ありませうけれども、特に政府の機關の中に適性調査所、何と言ひますか、さう云ふやうな調査機關も必要でありませうし、或は現在働いて居る人達の間にも、それぞれの希望を活かしまして、自分は石炭山に働くよりも、自轉車工業に從事した方が自分に向くのだと云ふやうなことがあれば、それは或程度迄希望を容れてやるやうに、厚生省がありまして、色々な調査が出來る譯でありまするから、さう云ふ方面にも、それぞれ意を用ひた所迄、少し世の中が落ち著きましたならばやつて戴いて、さうして日本か働いてこそ、立派な國になる、日本の將來は軍備もないのでありますから、何處迄も働いて、立派な製品を造つて、之を外國に賣つて、食糧を輸入するなり、原材料を輸入するなり、それをこなして行くと云ふやうなことで、日本が將來、文化國家になつて、何處の國にも負けないやうな立派な國になるやうに、丁度「スウエーデン」が一時非常に戰爭に負けたけれども、其の後に於きまして眼が醒めて、非常な文化國家に致しましたと云ふことに付きましては、有らゆる部面に、非常に仕事々々に合つた方面に向けたことが、餘程成功の因になつたと云ふことを聞きまして、日本は將來、さう云ふ方面に留意して行くべきだ、商工省も目先の石炭や、食糧や、肥料の問題が濟みましたならば、少しは産業性能の何とか調査會と云ふやうなものを設ける位の餘裕が一つあつて、日本の將來の産業に資したいと斯樣に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=157
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158・中山太一
○中山太一君 只今御尋ねしたことに付て、全幅の御賛同を得ましたことは大變國家の爲に有難いと存ずる次第であります、それと同時に、後で大臣から御話がありました精神運動を徹底しなければならぬと云ふことに付きましては、此の精神運動が過去の國民精神總動員のやうな、ああ云ふ盲目的な、迷信的な意味であつたならば、却て行き過ぎになつたり、失敗をします、今大臣が仰しやつたそれに勞働科學、其の他科學の方面を相當、所謂正しい精神運動と、極めて適切な科學知識を有らゆる角度に理解して、採用して行つて、精神と科學とが渾然一體になつた所に、産業の合理化もあり、能率増進も百「パーセント」此處に現れるのでありますから、私、今の大臣の御話になりましたことで、甚だ滿足するのであります、どうか其の意味で、此の産業復興の爲眞の能率増進の原理を應用して戴いて、從業員の選擇等に當りましても、所謂身體檢査だけでなしに、精神檢査、或は思想なり、其の人の心理状態なりは無論のことですが、他の意味の肉體の動作等のことも科學的に研究して、適材適所の原理を科學的に應用して戴く、それから又製造する人達も、それに當る經營者の方も、製造の過程の標準化、作業の單一化、或は照明なり、通風設備なり、温度なり、濕度なり、有らゆる方面に於て科學的に之を改善することに依つて、一人の工員が三倍、五倍の能率を擧げて居る實例があります、さうして好い成績を擧げて、勞働者を優遇して行つても、生産費は非常に安い、良品廉價の實が擧がり、勞資の間も立派に行きます、今御示しになつた意味が、一つ日本の産業界に徹底するやうに、施策の上に御活躍を希望しまして、私の質問は一應今日、打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=158
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159・古市六三
○委員長(男爵古市六三君) では、今日は是で散會致します、明日は午前十時から再開致します
午後四時十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=159
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160・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 男爵 古市六三君
副委員長 子爵 柳澤光治君
委員
公爵 桂廣太郎君
侯爵 廣幡忠隆君
伯爵 壬生基泰君
子爵 森俊成君
子爵 鳥居忠博君
子爵 京極高鋭君
長岡半太郎君
男爵 伊藤一郎君
男爵 奧田剛郎君
男爵 加藤成之君
男爵 田中龍夫君
大木操君
川上嘉市君
三橋四郎次君
松本勝太郎君
中山太一君
河端作兵衞君
岩淵辰雄君
上野喜左衞門君
國務大臣
商工大臣 星島二郎君
政府委員
農林技官 中尾勇君
農林事務官 平川守君
商工事務官 吉田悌二郎君
同 鈴木重郎君
同 松田太郎君
同 池田欽三郎君
同 玉置敬三君
同 松尾金藏君
運輸事務官 伊能繁次郎君
同 長井實行君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003744X00219460925&spkNum=160
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