1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○罹災都市借地借家臨時處理法案
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月十六日(火曜日)午前十時三十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=1
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002・高木正得
○委員長(伯爵高木正得君) 是より罹災都市借地借家臨時處理法案の特別委員會を開きます.昨日の續きで各條審議を致します、昨日は第二條迄を問題に供しました、二條の中にまだ御質疑があれば此の際願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=2
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003・霜山精一
○霜山精一君 土地の所有者が建物を建てて、さうして人に貸して地代を取つてやつて居る者に付てですが、それで賃料を取つて生活をして居る譯ですが、戰爭最中に其の建物が滅失してしまつた、さう云ふ場合に土地の所有者としてはもう一遍家を建てて、それを貸して行くことが出來れば一番宜いのでせうが、色々な關係で所有者自身がなかなか建物を建てると云ふことが出來ないやうな状態に實際上居る譯です、所有者としてはさう云ふ場合には自分で建てられなければ誰か適當な賃借人を探して資力もあり、地代も間違ひなく拂ふやうな、建築も直ぐやつて呉れることが出來ると云ふやうな人を探して、其の人に土地を貸して地代を取つて行くと云ふ風なことに勢ひならざるを得ない譯なんです、なかなかさう云ふ人を探すことも色々骨の折れる困難なことだらうと思ふのです、戰時罹災土地物件令に依りますと、第四條で其の建物に居住して居つた者が其の敷地を使ふ權利があると云ふことにして、さうして居住した者との間に賃貸借があつたものと看做され、それから二箇月内に建物が滅失した時は二箇月内にさう云ふ居住者が土地を使用しないやうな場合には所有者は其の土地を自分で使用するか、或は他人をして使用せしめることが出來る、斯う物件令の方ではなつて居りますけれども、建物に居住して居つたと云ふものは、大部分は其の借家の建物の借主である場合が大部分多いのではないかと思はれる、從つて建物の居住者であつて同時に借主であつた人間は、第四條の一項に依つて建物を建てる爲に土地を使ふ權利を認められて居る譯なんですさうして其の土地の賃貸借に付ては本法の附則の二十九條以下の規定に依つて保護を受けて居る、斯う云ふことに大體なる譯です、さう云ふことになると此の本法第二條に依つて保護される建物の借主と云ふものは、第四條の一項に依つて權利を行使しなかつた借主に限定される譯になる、物件令に依つて權利を執行することを許されて保護を與へられて居るに拘らず、其の保護を享有しないで、何處か疎開でもして行つて居る者が此の本法二條に依つて本法施行の日から一年以内は其の土地に付て賃貸の申出が出來る、斯う云ふやうに二條に依つて再び保護をしなければならぬ、保護することが適當であるかどうか、一遍四條で以て保護を與へて居る、さうして其の建物を建てる機會も與へられて居るに拘らず其の權利を行使しないものが權利の行使を怠つて居るか、或は權利の上に眠つて居るものが再び眼を覺して、第二條に依つて保護を受ける、遲播きに出て來たに拘らず再びそれを保護して其の土地に付て優先的に賃借の申出が出來ると云ふことを認めることは、建物の借主と云ふものを餘に保護をし過ぎるのではあるまいか、一面土地所有者は色々外に立派な借主を探して家を建てさせようと云ふ風な計畫を持つて居るかも知れない、所有者との關聯に於て建物の借主をそれ程迄に二重に保護を與へることは、其の當を得ないのではないかと云ふ風な感じを持つ者ですが、此の建物の借主は疎開か何かしてなかなか未だ其の土地に歸つて來ない者も澤山あるかも知れない、さう云ふものを是で保護しようと云ふことになるのかも知れない、元來建物の借主と云ふものは其の建物があるので其處へ偶偶住んで居るだけであつて、土地其のものに本當に密接な關係が必ずしもある譯ではない其處へ偶偶住んだと云ふことに依つて、四條以外に二條で再び此の土地を借りる權利迄與へると云ふことは、保護が過ぎるのではないかと云ふやうに私は考へる、其の點の政府當局の御意見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=3
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004・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 仰せの如く罹災建物の居住者に付きましては二十九條、三十二條に依つて土地の借地權を取得する保護を與へて居ります、でありますから多くは其の建物の居住者と借主は一致することと思ひますが、一致しない場合、居住者に非ざる借主にも矢張り本案の第二條に依つて其の敷地の借地權を得る途を與へたのでありまして、此の點は借主に保護厚きに失するのではないかと云ふ御尋でありますで、建物居住者を保護する必要のあることは當然でありますが、建物の罹災當時の借主も、最も其處に住むことに付て利害關係を持ち、又其處に住みたいと云ふ意欲も最も旺盛なものが所謂借主であらうかと思ふのであります、現在の状態に於きまして地主が自ら建築すると云ふやうなことに付ても、資材或は資力等に於てそこ迄意欲が向はないと云ふやうな場合でも、建物の借主であつた者はどうしても其處に住みたい、多少無理をしても其處に住むと云ふ意欲が旺盛であるのが普通で、復興と云ふやうな面から言つても此の建物の借主にさう云ふ保護を與へるのが適當ぢやないか、即ち居住者に付て順位から言ひますれば一番、第一位に與へ、第二位にそれに準ずるものとして建物の借主に同じやうな借地權を得る途を拓いたのであります、實は爰で少しく三十二條との關係を御話したいと思ふのでありますが三士二條に依つて二條以下が準用されて居りますので、是等に對して借地權設定を求められた場合に地主に於て正當な事由がなければ斷はれないと云ふことに兩方ともなつて居りますが、實際の適用に於ては、其の間に非常に差のあるものと云ふ風に立案當時から考へて居るのであります、即ち三十二條の場合に於ては、現に其の燒跡に建物が建つて居る場合であります、從つて若しそれに正當の事由に依つて拒まれた、拒絶された場合に於ては其の建物の買取請求權を三十二條の二項で認めて居る次第であります、特に二條以下本文の方では、本文と言ひますか、附則でない本案の二條以下に於きましては、更地の場合を考へて居るのでありまして、何等の建物も建つて居ない場合、若し何人かが適法に現に建物があつた場合には、第二條の第一項但書で、借地權設定を求めることが出來ないことになつて居るのでありまして、即ち二條以下に於ては、何もない、更地の場合を考へて居るのであります從つて同じくさう云ふ借地權取得の申出があつて、それに對して地主が拒絶する場合に、正當な事由なりや否やと云ふことは、此の場合非常に兩者の間に於て差があるのでありまして、三十二條の場合は、現に前の居住者が先に住んで居つて、そこを生活の本據として居りますが故に、之に對して拒む場合に於ては、相當餘程地主の方に於て正當性が強くなければ拒めぬと考へるべきであるのに對して二條の場合に於ては、現在土地は更地になつて居りまして、前の建物の借主もそこには現に何等住んで居ないと云ふ状態になつて居りますが故に、地主の方で使ふ必要があると云ふやうな正當な事由は三十二條の場合と、非常に其の比重が違つて參つて來るのでありまして、地主の方で、自分の方で使ふと云ふ客觀的な事情、必要とする事情がありますれば、多く是は正當な事由となるのではないか、其の意味に於て、此の建物の借主を居住者と全然同一に保護したと云ふのではなく、此の意味に於て第二次的に保護を與へると云ふことになつて居るのであります、尚附加へて申します、此の建物の借主が賃借の申出をする前に地主等が既にそこに自分で家を建つて居るか或は人に家を建たして居ると云ふことでありますれば、二條の但書が働きまして、現に建物の所有の目的で使用して居るものがあると云ふことになりますから、借主は借地權の設定を求めることが出來ないと云ふことになりますので、さう云ふ意味に於きまして、二條の借地權の設定を求めた建物の借主の保護と云ふものは、それ程御心配になる程強いものでないと云ふことに相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=4
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005・霜山精一
○霜山精一君 只今の御説明で略略了解致しましたが、此の地主と致しましては、要するに自分で家を建てられれば結構なんですが、先程御話したやうに今なかなか建てられない、さうなると地面を遊ばして置いては是は何にもならないですから、良い借地人を求めてそれを貸して地代を取ると同時に其處に借地人が家を建てると云ふことに依つて住宅も復興すると云ふことに落ちて來るだらうと思ふそこで地代を十分に拂ひ、又建物を建てるだけの信用、資力のある人を見付けると云ふことは非常に困難なことであります、其の建物の借主が果して其の資格を持つて居るかどうかと云ふことも大いに疑はしい場合があらうと思ひます此の前の建物の借主は、極く貧弱な奴で、唯此の權利を取得して居れば何かなるだらうと云ふので申出をするかも知れない、資力も何もない、家を建てる力もなささうだ、處が自分の探して來た借主の方は、地面を借りる方は十分に資力信用もある、家も建てるらしい斯う云ふやうな場合を考へて見た場合に、是はさう云ふ建物の借主に貸すよりも、新らしく探した別な他人に地面を貸す方がどの位地主の得になる分らない、さう云ふ場合でも、矢張り其の建物の敷地建物の借主を保護して其の賃借權の申出に應じなければならぬかと云ふことを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=5
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006・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 大體其の建物を借りて居つた人は、其處で商賣をやるなり、其處を生活の大體本據として住つて居つた人でありますので、罹災者として成るべく其の居住の保護を與へてやりたいと云ふ趣旨で、借主の保護と云ふことに規定致したのでありますが、御説明の如く、若し借主が非常に不信で、前々の家賃の拂ひ方とか、或は前々の事情に依つて信用の置けない借主であつたと云ふことが明かであり、假令其の者に借地權の設定を得さしても、賃料の満足な支拂ひを受ける望みは到底ないと云ふことが明白であつたやうな場合には、恐らく正當な事由に依つて拒絶し得る場合と云ふ風に認められる場合が多からうと存じますので、更に其の後賃料の怠りがあれば、一般原則に依つて契約も解除出來ることは勿論の話でありますが、さう云つたやうな方法に依つて其の間の調節は出來るのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=6
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007・霜山精一
○霜山精一君 二條の三項に「その他正當な事由が」と云ふことがありますから、此の中の「正當な事由」と云ふことで解釋が付けば大體宜いのではないかと思ひまするが、三項は「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合その他正當な事由」とあるので何か自分で使ふとか云ふ風なことが例示されて居るので、其の建物の借主が無資力であると云ふやうなことが正當の事由になるかどうかが十分是だけでははつきり分らないのです、自ら使用することを必要とする場合を例示して居るので、斯う云ふ例に當る場合でなければならぬので、借主の無資力と云ふことが正當の事由になるかならないか、寧ろ非常に疑問になるのではないかと思ふのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=7
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008・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の他正當な事由でありますので、是は個々の具體的な場合に依つて判定せられる事柄であるのでありますが、建物所有の目的で自ら使用することを必要とすると云ふことに匹敵する位の重さのある正當な事由と云ふことにならうかと思ひますが、其の他正當な事由の中に非常に申出人の不信用であるとか云つたやうなことが自ら此の中に含めて宜いかと考へるのであります或は又話は少し横道に外れますが不法占據と言ひますか、例へば此の居住者の場合に賃料不拂等に依つて解除されたと云ふ風なことで權限がないのに、偶偶居住して居つたと云ふやうな場合に、果して物件令四條の所謂居住者としてあの保護を受けるかどうかと云ふやうなことは稍稍疑問かと思ひますが、假令さう云ふものが居住して居つたと云ふ事實をあの物件令第四條が押へて居るものと假定致しましてそれ等のものに本法三十二條等に依つて借地權の設定を受ける權限が認められるものと致しましてもさう云ふ場合は拒むのには正當な事由があるものと云ふ風に考へて居るのでありまして、さう云ふ意味で其の他正當な事由と云ふのは相當廣範圍な意味を持つて居りますので、具體的な場合でなければ決定致されぬと思ひますが非常に不信な者が申出て參つたと云ふやうな場合は大體之を正當な事由として拒み得るのではないかと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=8
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009・霜山精一
○霜山精一君 大體了承致しましたが、尚もう一點二條に依る賃借の申出が權利濫用に屬すると云ふやうな場合もあり得ると思ふのです、例へば借主に全然資力がないが、是だけの賃借權だけは取つて置かう、賃借權を又他へ賣つて金にすることも出來るかも知れないから、家は建てることも出來ないし、建てることもしないのだけれども、借地權だけは是でものにして置かうと云ふ風な、濫用的に或權利を行ふ者が出て來ないとも私は限らぬと思ふ、さう云ふ場合の出で來た時に、正當の事由だ、お前は少し權利濫用でいかぬと言つて、正當の事由の中に入ると解釋せられるものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=9
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010・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに、權利濫用のやうな場合は此の正當な事由に入ると考へます此の正當な事由と云ひますのは、自分の方で「自ら使用することを必要とする場合」と云ふ風に斷る方の側に正當な事由があると云ふ如合のみならず、其の對手方の方の條件等に付ても双方斟酌し、或は更に場合に依つては社會通念其の他に照して、廣く正當な事由ありや否やと云ふことを判斷して差支がないと考へますので、此の申し出る方に付て權利濫用であるとか、さう云つたやうな事由があれば、此の場合の正當な事由と云ふ中に考へて差支がないと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=10
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011・霜山精一
○霜山精一君 其の次に御尋したい點は、本法施行の日から一箇年内に賃借の申出が出來ると云ふことになつて居りまして、此の建物の滅失以後、もう既に一箇年以上を經過して居ります、此の本法が施行されるのはいつかはつきり知りませぬけれども、今後施行されて一箇年と云ふのですから、どうしても二箇年餘の間は此の申出があるのですから、地主は自分で使へば使へるのですけれども、使ふことが出來ない、建物は建てることが出來ない、二箇年餘の間はいつ申出て來るかも分らないから其の地面を遊ばせて置かなければならぬ、家を早く建てれば宜いけれども、適當な借手もないと云ふ状態になつて居つて、建設すると云ふことが、建物が非常に必要な時代に於きまして滅失後二箇年の間地面を遊はして、而も此の賃借の申出を待つて居らなければならぬと云ふことは非常に地主に酷ではないかと考へる、斯う云ふ場合には地主を保護する爲に此の建物の借主に對して催告權を認めたらどうか、お前賃借を申出るならば直ぐして呉れ、それがいけなければ催告期間を設けて其の期間内に賃借の申出をしなければ外に探さう斯う云ふ風なことをしないと、建物を早く復興しようとしても、是があれば二箇年餘のものは復興を阻害して居る譯ですから、さう云ふことがどうしても此の場合に付ては必要ではないか、若し其の人間が何處へ行つて居るか分らないから公告なんかで催告をしてやるさう云ふ風にして成るべく一年の間を短かくして早く法律關係を確定して家を早く建てると云ふ方面に努力を向けなければならぬのぢやないか、斯う云ふ風に私は考へるのですが、其の點如何なものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=11
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012・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな御意見と拜承するのでありますが、併し餘り短かい期間と云ふことになりますと、催告を受けて餘り短かい期間の間に其の土地の借地權の申出をするかどうかと云ふことを決定せしめると云ふことも或は借主に酷ではないかと云ふ風にも考へましたので、色々考へまして、大體一年位の間に其の申出をなすかどうかを決定する餘裕の期間を與へると云ふことに致したのであります、尤も其の間に地主の方で自ら建物を建てるなり、或は借地權を他に設定をして其の者が借地の上に建物を早く建てれば借主の申出權は消滅することになるのでありますから、地主に其の間色々な資金の關係とか或はさう云ふ適当な借地權者を探すに暇が掛かると仰せられますが、地主の方で本當に早く其處に家を建てて利用したいと云ふ場合には、其の借主の申出前に土地に建物を築造することに依つて、其の借主の申出權を消滅せしむることが出來ますから、大體借主に一年位の餘裕を見て居つても、それ程地主の方に不利益にならないやうに考へましたのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=12
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013・霜山精一
○霜山精一君 私は催告權を認めて法律關係を早く確定させることが、地主の保護の上に非常に必要であると云ふ風に、私の意見としては考へて居る、それ以上は議論になりますから申しませぬ、それからもう一つ、是は字句の問題で恐縮ですか、二條に「他の者に優先して」賃借りすることが出來ると云ふ風に規定してありまするが優先すると云ふのはどう云ふ意味なのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=13
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014・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は實はなかなか…此の前の借地借家臨時處理法の先例に倣つて「優先して、」と云ふことに致したのでありますが、御承知のやうに借地權は物權ではなく債權であると云ふ關係からして、優先すると云ふ意味は一體法律的にどう云ふ效果を持つかと云ふことに付ては色々疑問の點があるのでありまして、是は今迄の震災當時の借地借家臨時處理法の用例に倣つた譯でありますが、唯茲で考へられますことは此の前に既に其の土地に借地權があつた場合に於ては、三條でそれを讓受けるのでありますから、此の優先と云ふ問題が起らないやうなことになる譯であります、唯前に借地權が設定或は後で借地權の設定を受けても、此の二條に依る借地權の申出後に前の他の借地權者が對抗要件を備へたやうな場合には、其の借地權の讓受けを受けることになつて、三條の適用になりまするが、其の後でこちらの、こちらと申しますと、二條の借地權に付ての對抗要件なんか備へて居ない中に、後から他の者が借地權の設定を受けるなり、對抗要件を備へるなりしても、さう云ふ者には優先して此の二條の申出た借地權が有效になると云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=14
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015・霜山精一
○霜山精一君 法律で優先と云ふことは、同じ權利があつて、さうして一方が他方に先んじて力のある場合には優先と、斯う云ふ風に法律に於ては言ふのです、權利の競合のある場合ですね、優先と云ふことは…處が茲で言ふのは此の建物の借主は賃借の申出をするそれから他に又賃借人が賃貸賃借申出をする、斯う云ふ風に同じ敷地に付て二人此の建物の借主の賃貸の申出と賃借の申出と、それから他の、それ以外の第三者の地主に對する賃借の申出とが競合した場合に、それは一方の申出が強いので、一方が弱いと云ふことになれば一方が優先する譯ですね、處が此の法律では、此の建物の借主は申出をする權利を認めて居る、此の優先と云ふ字を取つて考へて見れば權利がある、一方の借主の方は申出をする權利はない、契約の申出ですから、申出ることは何時でも出來る、こつちの方は申出をする權利があつて、地主の方は正當の理由がある場合は拒めるがさうでなければ拒めないのですから必ず成立してしまふ、第三者の方の申出は申込だけであつて承諾する義務がないのですから、承諾しないかも知れない、此の規定に依つて當然建物の借主の方が借る權利があり、賃貸借になることは優先と云ふ字があつてもなくてもあると却て邪魔になるのぢやないかと思ふ位です、優先するのぢやない、此の規定を設ければ當然其の方が有效なる契約になる譯ですそれから又此の契約が二つ併存したと考へるのですね、此の建物の借主が賃貸の申出をして契約が出來る、さうすると又他の者が其の前でも後でも、兎に角賃貸の申出をして、地主がそつちにも貸すと云つた賃貸借が二つ出來たと、斯う假定すれば、其の時にはどちらの賃貸借が有效なのであらうかと言へば、是は實を言ふと、そこが問題なんですが、非常に問題が起きて來るのですが、實は私の考では登記の有無で決まるのではないかと思ふ、どちらが先に登記したかで決まるのであつて、前の奴が優先しないのぢやないかと思ふのです、そこは解釋上疑がある所です、建物の借主が借りて居る、他の方にも賃貸借の契約が出來た、此の二つの賃貸借をどちらを勝たせるかと云ふ問題は、時の前後で行くか、土地の賃貸借の登記で行くかと云ふことは、非常に議論の餘地のある問題だらうと思ひますが、何れにしても、若し此の優先と云ふ文字が、他の賃借人が先に登記しても、尚優先して之を無效にするのだと云ふ意味であると、是は非常に登記法に對する一大例外に此の優先と云ふ文字があるが爲になる譯で、非常に困ると私は思ふ、其の點の解釋を一つ御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=15
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016・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 仰せのやうに若し優先と云ふ字がなければ、此の借地權の設定と云ふことは御承知のやうに債權契約でありますが故に、此の二條に依る借地權の設定も承諾致し、又他の人にも借地權を設定すると云ふことは債權法の理論から行きますと兩方成立するので、其の意味に於てまあ兩方が存立し得ると云ふことことになると思ひますが、此處で「他の者に優先して」と云ふ文字がありまするが故に、若し此の文字がなければどちらか先に、其の兩方成立した借地權の内でどちらか先に對抗要件、即ち登記等をした者が結局に於て勝つと云ふことに、優先すると云ふことになると思ひますが、此處に「他の者に優先して」と云ふ字を使つた結果、假に借主以外の者の借地權に付て登記があつても、それは此の借主の借地權の方が優先する、前のと言ひますか、他の借地權者の登記を經たものでも否認されると云ふことになるのであります、唯ここで普通ならば前後を問はずさう云ふことに相成るのであります、斯う云ふ三條の關係のある結果借地權の申出前に他の者が借地權の設定を受けて對抗要件を備へた場合を想像しますと、其の場合は三條に依つて其の對抗力ある借地權の讓受を受けると云ふ關係になりますので、先に申出前に借地權が他にあつて對抗要件を備へた場合は此處に入らなくなることになりまして借地權の申出をしてから後で他の者が對抗要件を備へたと云ふやうな借地權があつた場合に、結局それに優先してそれを否認することが出來ると云ふ效力があるものと云ふ風に解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=16
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017・霜山精一
○霜山精一君 少し私と解釋が違ふのですけれども、第三條で借地權の讓渡のある者は其の敷地の上に既存の借地權のあつた者です、既に從前から其の敷地の上に既存の借地權があつたものを讓受けようと云ふのが第三條の問題、第三條の問題は既存の借地權がないのです、ですから此の賃貸の申出を建物の借主がやる前の場合もあり後の場合もある、詰り滅失後、滅失の時は借地權がないのです、滅失後此の申出のある前に第三者に貸して登記をする場合もあるし、それから此の貸借の申出をした後に又他の人に貸して登記をすると云ふ場合もあるのです、前後を問はず此の優先と云ふことが其の登記した賃貸借に付ても優先すると云ふ風に之を讀むことは、是は甚だ困難なものぢやないかと思ふのです、優先と云ふ文字を唯さう云ふ意味に使ふと云ふことは今迄聽いたことがないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=17
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018・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 第三條の場合に於きましては、勿論從前から引續いて借地權の存する場合にも起りますが、申出前に苟も對抗力の備つて居る借地權があれば滅失後設定された借地權であつてもそれが對抗要件を備へて居るものであれば、其の借地權の讓渡の申出をすると云ふことに致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=18
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019・霜山精一
○霜山精一君 分りましたが、さうなると此の建物が滅失以後此の賃貸借の申出をして賃貸借が成立した其の後になつて其の土地を地主が再び第三者に賃貸して、さうして其の方に先に登記した、斯う云ふやつに對して登記のない賃貸借を以て優先すると云ふことに付ては、優先と云ふ文字だけで其の意味を表はすことは出來ない、さう云ふ登記のものにも優先するんだと云ふ規定を置かなければ、優先と云ふ文字だけで其處迄解釋をすると云ふことは、解釋は出來るか出來ないか問題ですけれども、若し不明であれば其の點を明文を以て明かにして置かなければならぬと思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=19
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020・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は殆ど其の場合を見て優先と云ふことに依つて、それを意味して居るものと考へるのでありまして、さうでないと向ふからの借地權の對抗を受けることはないのでありますから、衝突すると云ふことがありませぬので、優先と云ふ問題が起らないので、さう云ふ風に向ふが對抗要件が備つてこちらに競合してこちらの權利が排斥される虞があると云ふ風な競合状態になつた時に、優先と云ふ状態に於てそれを抑へると云ふことに考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=20
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021・霜山精一
○霜山精一君 一般の原則としては借地權が二重に設定されたやうな場合には、どちらを勝たせるかと云ふ問題に付ては登記の前後で行くのです、先へ登記した方が勝つ、後で借地對の設定を受けて其の方が先に登記すれば、前の借地人に優先する力がある、是が原則なんです、處が此の二條に依りますと、前の賃貸借に付ては、此の建物の借主の賃貸借に付ては登記がなくして、此の登記のある第二の賃貸借に對して優先して對抗力がある、斯う云ふことにするのは民法の原則に對する一大例外に私はなると思ふ、是が例外になるのであれば、さう云ふ御解釋であれば、優先すると云ふやうな單純な文句では分りにくいのであつて、其の民法の大原則を打破する非常な例外になるのだからして、其の點をはつきり書かないと不明でないかと云ふことを私は申上げるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=21
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022・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御意見のやうに、此の優先と云ふ字がなければ、勿論先に登記した者が優先することになることは御説の通りであります、そこで特に例外としてこちらの方が優先するのだ、如何なる場合でも優先するのだと云ふ意味を持たしたのでありまして、而して優先と云ふことが現れて來るのは、向ふが對抗力を備へなければ優先と云ふ問題は起つて來ないから、優先と云ふ問題の起るのは、向ふに對抗力の備つた場合にこちらが初めて優先するのだと云ふ意味に解釋出來るかと實は思つて居りまして、此の文例等は前の借地借家臨時處理法、是は建物の先借の場合でもありますがさう云つたやうな前の文例もありまして、斯う云ふ優先してと云ふことに依つて、其の點大體對抗の例外になる譯でありますが、さう云ふ趣旨に解釋しなければ優先と云ふ意味が解釋出來ないのぢやないかと云ふことに依つて、自ら明かになるのではないかと思ひまして、其の儘に致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=22
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023・霜山精一
○霜山精一君 此の建物の借主の得た賃貸借が登記がなくても優先すると云ふことは、是は優先と云ふ文字だけでは少し不明なんですね、登記があつて初めて、さう云ふ效力があると云ふのならまだ分るのですけれども、從つて登記がなくても外のものに對して、外の登記した權利に對して優先するのだと、斯う書いて戴けば非常に其の點が明確になる、何も筆を惜しむ必要はないのです、一般の人民が此の規定で賃貸借が得られるかどうかと云ふ大事な問題であります、ですから優先と云ふ文字は法律家のやうに、そんなことは分ると濟まして居るべきでなく、法文を簡易明白に、一般大衆には讀んで分る法律を造らなければならぬと思ふのであります、隨處にさう云ふ問題が出て參りまするけれども、此の中の最も優先的なる例ぢやないかと考へるのであります、如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=23
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024・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 此の法文は隨處に色々法律家が讀んでも極めて難解と思はれる點がありまして、立案者としましては非常に恐縮致して居るのでありますが、まあ此の點も其の場合の一つにならうかと思ひまして、實は我々の方に於きましても、借地權は抑も債權であるのに、優先と云ふのは一體どう云ふことになるかと云ふことに付て非常に研究致しまして只今申上げましたやうな場合に初めて鍔競合が起つて來るので、其の場合に初めて優先の、何と云ふか效果を發揮する場合であらうと云ふ風に考へたのでありまして、先例も斯う云ふ文字を使つて居りました關係上、それを踏襲致した譯でありまして、分りにくいと云ふ御叱りは重々理由のあることと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=24
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025・霜山精一
○霜山精一君 只今御説明の通り賃貸借は債權でありまするから元來對抗力を持たないのです、從つて二重にも三重にも賃貸借をしても債權關係でありまするからして少しも妨げない、物權のやうな譯には行かないのであります、從つて其の間に優先の問題は元來起きないのですけれども、從つて其の二重にも三重にも賃貸借をすると困るのです、實際困るのです、誰が本當の借主か分らない、困る、困るからそれで民法でも登記を以て抑へて居る、建物の方でも建物の登記をすることに依つて優先と云ふ順位を決めると云ふ建前になつて居る、是は民法の大原則なんであります、然るに此の法律に於きましては建物の賃貸借が競合して居る、さうして第一の借主と貸主との賃貸借に付ては登記もして居ない、之に反して第三者の借手等は立派な登記が出來て居る、之に優先させる必要はないのです、法律上から言へば民法の建前から少しも優先させる理由はないのであります、唯建物の借主を保護すると云ふに過ぎない、法理の上から言つても少しも優先させる理由はない、若しも之を優先させるのであれば第一の建物の借主の權利に付て登記をして置かなければいかぬぞ、登記をして置かなければ優先しないのだ、斯う抑へなければいけない、さうしないで登記がなくても優先すると云ふのは第三者に非常な迷惑な話である、是では困る、さう私は思ふ、如何なものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=25
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026・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 今迄の觀念から行きますと其の通りなのでありますが、此の場合に於きまして優先に依つてさう云ふ他の賃貸借に優先するのだと云ふことを表はし、他の賃貸借の關係に於てどつちが勝つかと云ふ問題が起るのは、他の賃貸借に對抗要件が備つて居なければ出來ないのでありますから、對抗要件の備つた他の賃貸借のある場合を豫想して、其の場合に他の者に對してどちらが優先するのですと云ふことに依つて、此の二條の借受けた借地權を優先することを表はした積りでありますが、今迄の觀念で何等の茲に優先と云ふやうな文字もなければ、御説の通りに先に登記をした借地權が優先することになることは當然でありますが、それに打ち勝つ意味で茲に優先と云ふ文字を使つたのでありますが、是で分るやうに考へて居るのであります、或は此の點見解の相違と云ふことになりはせぬかと思ひますが、それにしても書き表はし方がある、今少し分るやうに時いたらどうかと云ふ仰せは御尤もと考へます、何れ全般的に色々な問題は、最後に又申上げる場合もあるかと思ひますが一應は…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=26
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027・霜山精一
○霜山精一君 書き方の問題も問題でありまするが、私の御尋して居るのは此の建物の借主のやりました第一の賃貸借を登記しないで第三者に對抗させると、非常に第三者が迷惑を被りはしないかと云ふ問題なのです、登記がなくとも對抗さして行くと云ふのはどう云ふ根據に由らるるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=27
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028・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 此の場合に於きましては普通の場合に於きましては普通の場合であれば借地權の設定を受ける場合、地主も承諾の上で借地權の設定を受けるのでありますが、此の場合は場合に依つては地主の意思に反しても半強制的に借地權の設定を受ける關係になりまするので、登記を直ぐしろと申しましても所有者の方で直ぐには應じない、結局判決等に依つて強制すると云ふことになりますれば、其の間に於て單に借地權を設定することに依つて之を破壞することが出來ると云ふことになりまして、それでは借主の保護は十分ぢやないと云ふ考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=28
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029・霜山精一
○霜山精一君 此の建物の借主の第一の賃貸借と云ふものは強制ではありますけれども、矢張り拒絶出來ない、承諾の意思表示をする譯です、拒絶の意思表示をしない時には申出を承諾したものと看做す、申出と承諾に依つて茲に契約が成立するのですから、此の契約の成立した以上は之に付て土地賃貸借の登記をすることは出來る譯です、地主が應じない時には假登記と云ふやうな方法で以て其の權利を保全することは十分に出來る、或は外に處分することがいけなければ假處分、假差押等の方法に依つて權利の保全をする途もある譯です、さう云ふ途があるのですから、其の外に登記をして居る間に外のものに登記をしてしまふと云ふことは此の場合だけでなく外にも澤山事例がある、此の場合だけにそれが該當する譯ではないさう云ふ理由から登記はやらぬでも第三者に對抗出來ると云ふことは私は理窟にならぬと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=29
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030・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御言葉を返すやうで恐縮でありますが、是で假に承諾あつたものと云ふ風にしましても、登記の關係に於ては矢張り一方的では出來ないのでありまして、地主との契約書、承諾書を持つて來なければ登記が出來ない關係になりますので、其の間相當期間が掛かる虞があるのではないか、殊に判決迄行くと云ふことになばれ相當の期間を經過するのではないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=30
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031・霜山精一
○霜山精一君 此の問題の賃貸借が地主の判がなければ登記出來ないと云ふことは私も能く分つて居ります、地主が承諾したけれども登記に應じないで、登記を求める訴訟を起さなければならぬと云ふやうな、非常な煩瑣な手續を履まなければならぬ、其の間に登記が遲れると云ふやうなことの有り得ることは御話の通りですが、唯假登記等に依つて權利の保全の方法があるのですから、本登記は延びても登記しなければ、第三者に對抗出來ないものだと云ふ風にして少しも妨げないのみならず、さうして置かなければ、そんなことをしない第三者者は非常な迷惑を蒙る結果になるのではないかと思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=31
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032・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 土地の賃貸借の關係になりますので、一般の物權と違ひまして、必ずしも士地所有者の方で賃貸借の登記に應じなければならない義務があるのぢやないかと考へますので…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=32
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033・霜山精一
○霜山精一君 昔通の賃貸借に付ては義務はないと云ふのは議論はあるがまあ通説のやぬですが、さうすると、地主が登記に應じない時にはどうしようと云ふのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=33
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034・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 場合に依つては判決を以てしますが、或はどうにもならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=34
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035・霜山精一
○霜山精一君 二條一項の但書に「他の法令により、その土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合に、その許可がないときは、その申出をすることができない」と云ふことになつて居りますが、是は建物の借主は此の規定に依つて借地權を得て、さうして愈愈建物を建てようとする時に、其の許可が必要になつて來るぢやないかと私は想像するのでありますが、但書に依ると土地に付ては何にも權利を持つて居ないに拘らず建物を建てるのだからと云つて許可を得て、其の許可がないと此の申出も出來ない、斯う云ふ風になるのでせうか、私はよく分らないが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=35
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036・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 法令に依つて一般的に其の土地に建物を築造するに付ては許可が要ると云ふ一般的の場合を、即ち都市計畫法であるとか、市街地建築物法であるとか、特別都市計畫法に依りまして、其の土地に建物を築造するに一般的に許可が要ると云ふやうな場合を考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=36
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037・霜山精一
○霜山精一君 例へば堅固な建物を建てると云ふやうな具體的の場合に、此の法令の規定に依つて矢張り一々建築の許可を必要とすると云ふ風に、一般的の法令に依らないで、具體的の個々の建物築造に付て建築の許可が要ると云ふ風な許可は之に入りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=37
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038・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふ許可は要らぬ積りであります、其の土地に建物を建築すると云ふことに付て他の法令で特に許可を得なければならぬと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=38
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039・霜山精一
○霜山精一君 其の點も少し明確にして置かないといけないぢやないかと思ふのでありますが、個々の建物建築の許可が之に入るぢやないかと云ふやうな問題ではない之に入らないのだと云ふことを明確にする方が宜くはないかと考へる、成る程「その土地に」とありますけれども、具體的の場合でも、其の土地に建物を築造する場合があるから、其の場合は具體的の場合も之に包含すると讀めないでもないが、さう云ふ點を明かにする必要があるのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=39
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040・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もでありますが、先程仰せのやうに其の土地に建物を築造すると云ふので大體讀めようと云ふ私共の方の考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=40
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041・竹下豐次
○竹下豐次君 只今霜山さんから一年以内の問題に付きまして御質問がありまして、それに對して政府當局としましては、元の借主に無理が行くやうなことがあると氣の毒だと云ふやうな御説明がありましたが、霜山さんの御話の通りもう白ぐ一年餘り經過して居りまするし、更に一年を加へる、それから之を施行される間に又相當の手續が掛かると云ふことになりますと大方二年半位になるのぢやないかと思つて居りあすが、そんなに長い期間置かないでも迷惑が起りさうにも思はれないのでありますが、何か具體的の問題で斯う云ふ場合が想像されると云ふ點が御ありだらうと思つて居りますが、其の點を御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=41
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042・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 別段に具體的と云ふ譯ではないのでありますが、若し現在の状況から致しまして、資材等の入手等から考へて、愈々そこに借地權の設定を受けるだけの決心が付くかどうかと云ふ爲には、其の決心を考へる迄には、或は多少の日を與へて置くべきではなからうか、どの程度の期間を考慮期間として與へて宜いかと云ふことに付ては、色々考へましたが、餘り長い期間でありますと、地主に迹惑を及すことでありますし、餘り短い期間では借主がそれだけの決心を付けるに至らないと云ふので大體一年位、一年以内が相當ではなからうかと云ふことで一年以内とした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=42
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043・竹下豐次
○竹下豐次君 其の問題に付きましては、私の氣持としましては、既に今日迄一年半も經つて居るのであるから、矢張り家を自分で造るか或は造ることが出來ないかと云ふことは、既に考が大方立つて居ることと思ふ、だから猶豫の期間をさう長く御認になる必要はないかと思ひますが、是はまあ意見の相違であります、それから此の「一箇年以内に建物所有の目的で賃借の申出をすることによって、他の者に優先して、相當な借地條件で、その土地を賃借することができる」、之に依りますと云ふと、他の者に優先する權利を與へると云ふことと、それから土地の所有者から借入れると云ふ權利を與へると云ふことの二つになつて居る譯でありますが、一年後に於てまだ其の土地が休んで居る、それを借りたい、併し外に借りたいと云ふ人はないのだと云ふやうな場合には、地主は假に元の借主から、家屋の借主から申出があつても、それに應ずる義務はないのであらうと云ふやうに解釋して宜しいのかと思ひますが、それで宜いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=43
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044・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説の通りです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=44
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045・竹下豐次
○竹下豐次君 それから第三項の「自ら使用することを必要とする場合」と云ふことなしですが、是は其の時、其の時の事實を判斷して決めなければ仕樣のない問題であらうと思ひますが、最も起り易い場合を想像しますると、自分で今迄貸して居つたが、今後は貸さないで、自分で店を出さう、或は自分で建物は造るが、併しそれを親類の者が燒け出されて困つて居るから、それを置く積りだと云ふ場合、最も起り易い場合だらうと思つて居りますから、特に例を採つて御伺ひ致しますが、どう云ふやうに御取扱ひになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=45
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046・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 具體的な場合に依つて判斷することになりませうと思ひますが、只今仰せのやうに、貸家を止めて其處で自分が店を出して生活を營まなければならないのだと云ふ必要に見られて居ると云ふことでありまして勿論此處にある「建物所有の目的で自ら使用することを必要とする場合」と云ふ風に見て大體差支がないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=46
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047・竹下豐次
○竹下豐次君 此の條文の文句は「自ら使用することを必要とする場合」と書いてありまして、必要已むを得ざる場合と云ふやうな窮屈な言葉が使つてない、そこで其の解釋が、是は裁判にでもなれば判定が地主の方に餘程樂に解釋されると云ふやうな風にも想像されるのであります、必要已むを得ざる場合と云ふやうな意味なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=47
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048・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 已むを得ざる場合と迄は行きませぬが、ここで單に自ら使用したいと云ふ風な考を持つて居ると云ふだけではいけなくて、便用することを必要とすると云ふので、そこに客觀的に其の必要性を認め得ると云ふ所迄意味して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=48
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049・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) まだ第二條に付て御質問があるかも知れませぬが、本日は此の程度で散會致します、明日午前十時から會を開きます
午前十一時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=49
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050・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 高木正得君
副委員長 男爵 肝付兼英君
委員 侯爵 東郷彪君
侯爵 嵯峨實勝君
伯爵 東久世通忠君
子爵 森俊成君
子爵 大久保教尚君
霜山精尚君
竹下豐次君
政府委員
司法事務官 奧野健一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00419460716&spkNum=50
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