1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○罹災都市借地借家臨時處理法案
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月十七日(水曜日)午前十時二十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=1
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002・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 是より罹災都市借地借家臨時處理法案の特別委員會を開催致します、皆樣に御諮り致しますが、委員長は各條審議のことを皆樣に申上げて御賛成を得ましたが、それぞれ牽聯する處がありますので、各條よりはもう少し廣めまして五條位づつを一括して議題と致したいと存じますが如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=2
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003・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 御異議ないと認めます、然らば今後は五箇條づつを以て議題と致しますそれから尚念の爲申上げて置きますが、質疑應答でございますから御議論、御意見の點は簡單に御願ひして置きたいと斯う存じます、申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=3
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004・竹下豐次
○竹下豐次君 昨日霜山委員と政府當局との間に法律問題に付きまして色々意見の御交換があつたやうであります、私は念入りに拜聽致したつもりでありますが、實は御議論を十分に理解することが出來なかつたのであります、恐入りますけれども、念の爲にもう一遍御説明を伺ひたいと思ひます、それは昨日議題になりましたのは第二條であつたのであります、此の第二條に依りますると、借地權の存在しない場合も第二條では規定して居る、處が御兩人の問答で最も時間を多く潰された問題は、其の土地に既に借地の權限を持つて居る、而もそれを登記して居ると云ふやうな場合に、其の登記して居る借地權を有つて居る者に對しても燒けた建物の借主が優先しての權利を持つと云ふことになるかならないか、斯う云ふ問題であつたやうに承つたのであります、其の問題は第二條の場合には起らないのぢやないかと云ふのが私の議論であります、或は第三條の場合には借地權の讓渡の問題で起り得ることと思つて居りますが、第二條の場合にさう云ふ問題が起りましたのは私の想像のつかない點で何か論據がおありになつたのではないか、之が私の議論であります何れからでも宜しいから其の點を御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=4
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005・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 仰せののやうに第二條は既に借地權のない場合の規定でありまして、既に何人かが其の土地の上に對抗力ある借地權を持つて居る場合は、第三條に依りまして、其の借地權の讓受を求めることが出來ると云ふのでありまして、第二條は何人も借地權のない場合の規定であります唯昨日霜山委員と質疑應答で問題になりましたのは、第二條で現在は借地權はない、そこで借地權の設定を此の第二條で受けた場合にそれにも拘らず其の後、他に所有者が借地權を設定をして、其の者が先に登記等をした場合に、此の第二條で借受けた借地權者の權利はどうなるかと云ふことで、其の場合に於ては、所謂「他の者に優先して」と云ふことで、其の點は此の第二條の借受人の借地權が優先するのだと云ふ風に御答へ致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=5
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006・竹下豐次
○竹下豐次君 さうしますると云ふと、さう云ふ場合には借地權の矢張り存在しない場合と云ふ、中に今のやうな場合は入ることになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=6
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007・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 結局借地權の申出をする迄に、其の土地に全然借地權のない場合は第二條既に其の時に借地權が何人かが持つて居れば第三條で其の借地權を讓受けると云ふ形式で行きたいと云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=7
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008・竹下豐次
○竹下豐次君 さうしますると云ふと滅失した當時に於ける建物の借主と地主との問題でなくして、元の建物の借主と借地權を有して居る者との間の間題になりますですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=8
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009・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の場合は、借地權者がある場合に於ては第三條の問題になります、即ち借地權があれば、地主から直接借受けようと致しましても、地主は既に借地人があるから自分の勝手に出來ないから、さう云ふ場合には、其の上にある借地權の讓受をさすと云ふので、二條の場合にはさう云ふ借地權が現在無いので、地主が自由に貸し得る状態と云ふ意味で、其の場合には直接地主から借地權の設定を受けると云ふのが二條で、既に其の當時の借地權者が他にある場合に於ては、其の借地權の方を讓受けると云ふ方法に依つて、結局は前の借主が借地權を何等かの形に於て直接若くは借地權者からの讓受けに依つて借地權を得ると云ふ途を開くと云ふのが二條と三條であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=9
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010・竹下豐次
○竹下豐次君 第三條に付きまして…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=10
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011・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) ちよつと御待ち願ひます、是から議題に致しますから…只今御諮り致しましたやうに本日は第一條から第五條迄の五ケ條に付ての質疑を行ひたいと思ひます、是より質疑を御許し致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=11
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012・竹下豐次
○竹下豐次君 さう致しますと昨日の御問答の中に包含されて居つたことかと存じますが、前條第一項の借主が借地權を持つて居る者に對して一年以内の期間に其の者の有する借地權の讓渡の申出をする場合、其の時には借地權者は申出を應諾しなければならない、又爭のあつた場合には、元の建物の借主の方が優先するのだと云ふ風に承つたのでありますが、さう云ふ風になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=12
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013・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります、第三條の終の方に「この場合には、前條第一項但書及び第二項乃至第四項の規定を準用する」と云ふことに致して居ります結果、三項等に依つて正當な事由がなければ申出を拒めないと云ふことになつて居ります、で結局は二條の後の方の規定を三條で準用して居りますから、只今仰せのやうに大體に於て正當な事由がなければ應諾しなければならないと云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=13
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014・竹下豐次
○竹下豐次君 さうすると借地權を登記して居つた場合は、まあ私共の普通の法律常識から言ひますと、さう云ふのは正當の事由の中に入るべきものだと云ふ風に考へるのでありますが、それは併し優先と云ふ言葉が使つてあるので、正當の事由にならない、御話では斯う云ふ御解釋であつたやうでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=14
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015・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の登記ある借地權を持つて居つた場合に於て、其の登記ある借地權の讓受けを請求することが出來ることになる、從つて登記ある借地權者と雖も正當な事由がなければ讓渡しに應じなければならないと云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=15
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016・竹下豐次
○竹下豐次君 登記してないやうな場合、第三者に封する對抗力と云ふものがあるのが普通でありますね、それを正當の理由として斷ることが出來ない譯なんですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=16
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017・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 斷ることは出來ない譯であります、實は登記ある借地權を持つて居るやうな借地權者が初めて其の借地權の讓渡しに正當な事由がなければ應じなければならないと云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=17
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018・竹下豐次
○竹下豐次君 私專門家でありませぬので能く分りませぬが、此の條文をすらつと讀んで見たところでは、「他の者に優先して」と云ふのは、借地權者は其の他の者と云ふ中に包含するのでなくして、借地權者に讓渡して貰ひたいと云ふ希望の者が數人ある時に、其の中の一人として優先權を持たせると云ふ風な書き方ぢやないかとあつさり疑問も起さず解釋して居つたのでありますが、さう云ふ風に解釋される方が宜いぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=18
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019・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 其の意味であります、受人と云ふか、借地權の讓渡を申出て來る者が數人あつたやうな場合に、此の第三條の所謂前の借主が優先して其の讓受けを受ける權利がある発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=19
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020・竹下豐次
○竹下豐次君 私の今の御尋が不十分だつたかも知れませぬが、外の競爭者がある場合に、外の者に優先する權利はあるけれども、借地權者が誰にも讓らないのだと云ふ考を持つて居る時には、此の正當な、前の登記はして居るぢやないかと云ふやうな正當の事由で拒絶することが出來るのだ、さう云ふ風ぢやないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=20
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021・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふ風ぢやないのでありまして、登記ある借地權を持つて居つたと云ふだけでは、斷るのに正當な事由にならないで、其の他に、要するに借地權者がどうしても其の借地權に基いて自分で土地を持たなければならぬ必要があると言つたやうな正當な事由がなければ、自分の持つて居る借地權の讓渡を拒むことは出來ないと云ふ趣旨であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=21
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022・竹下豐次
○竹下豐次君 さうしますると、此の條文の書き方が、昨日霜山さんからの色々な御意見も出たやうでありますが、優先權を有すると云ふことと、それから讓渡を申受けた時にはそれを斷ることが出來ないのだと云ふことをはつきり謳はれませぬと、唯競爭者よりも強い權利を持つと云ふだけのやうに解釋するのが普通の解釋のしやうぢやないかと思ひます、此の書き方では…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=22
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023・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) まあ申出を斷ることが出來ない、言ひ換へれば、其の申出の承諾を大體に於てしなければならないと云ふことで、それ自體も一つの優先と云ふ意味にも解釋し得ると思ひますが、「他の者に優先して」と云ふことを特に書きましたのは、さう云つたやうな含みもあることはあります、他の申出があつても、其の者に貸してやらなければならないと云ふ意味も勿論でありますけれども、更に此の優先と云ふことに付きましては、昨日來質疑應答がありましたやうに、法律的に細かい意味に於て優先と云ふことが他に影響を及ぼす場合があるのでありますが一應すらつと讀みまして競爭の借地權者に勝つたのだ、此の三條に依つて借地權の讓受けを受けた者が優先するのだと云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=23
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024・竹下豐次
○竹下豐次君 幾ら聽いても同じことのやうでありますから、是で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=24
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025・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 外に御質疑がございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=25
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026・霜山精一
○霜山精一君 私はまだ二條に付て、少し外にも關聯して居りますけれども、御尋ねしてみたい、土地の所有者が自分の土地の上に家を建てて他人に貸して居つた、處が、其の建物の借主が疎開でもして、後に他の居住者が入つて居つた、斯う云ふ際に、其の建物が今度の戰災に遭つて滅失した、斯う云ふ場合を考へて見ますると、所有者と建物の借主と居住者と、此の三者の關係が茲に發生する譯であります、此の場合に於きまして其の居住者と云ふものが、舊令第四條一項の規定に依りまして、其處に「バラツク」を建てて敷地を使つて居る、斯う云ふ場合には其の居住者が其の土地に付て賃借したものと看做されて居る譯であります、此の土地の所有者と居住者たる「バラツク」に付ての賃借人と、それから疎開して居る建物の借主との、此の三者の間には色々利害の衝突する點があるのでありまして、之をどう云ふ風に調整するかは非常にむつかしい問題でありまするが、此の法律の規定に依ると、第一に「バラツク」に居住して居る者を保護すると云ふ建前になつて居るやうでありまして、本法の二十九條に依りまして、其の「バラツク」居住者の借地權の本法施行の日から一年間は存續すると云ふことになり、さうして三十二條に依りまして、二條を凖用して居りますからして、此の「バラツク」居住者が土地の所有者に對して二條の規定に依つて賃借の申出をして借地權を取得することが出來る、斯う云ふ風にして最も第一位に此の居住者を保護して居ると云ふ建前になつて居るやうであります、從つて是が「バラツク」を持つて居住して居る間は、其の疎開して居る建物の借主と云ふものは此の二條の規定に依つて其の土地の賃借の申出をすることは出來ないと云ふことは、二條の但書の中の前段「その土地を、權原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」には「申出をすることができない」と云ふことになつて居りますから、此の但書の前段に依つて建物の借主は押へられてしまつて、此の土地を借りることは出來ないと云ふ結果になつて居る、處が、「バラツク」の居住者が、此の權利は一年間存續すると云ふのですから、まあ一年使つて居る、此の法律施行の時から一年使つて居る、一年經つてから之を撤去してしまつた、此使用を止めた、「バラツク」ですから一年もすると住めなくなつて、撤去してしまつた、斯う云ふやうな場合には、其の次の順位としては、建物の借主、前の疎開して居つた建物の借主の權利を認めなければならぬのぢやないかと思ふ、「バラツク」があるから建物の借主は申出が出來なかつた、「バラツク」がなくなれば建物の借主が賃借の申出をすると云ふ權利を認めて宜いのではないかと思ふのでありますが此の第二條の規定に依ると、此の法律施行の時から一箇年でなければ賃借の申出は出來ないと云ふことになつて、期間を一箇年と制限して居りまするから、「バラツク」を撤去したのが一年内なら結構でありますけれども、一年の終りの頃に「バラツク」を撤去したと云ふやうな場合に於きましては、一年の中に申出が出來ないと云ふやうなことになつて、建物の借主が非常に迷惑を蒙り、二條に依る權利を行使することが出來ないと云ふやうなことになりはしないか、それから「バラツク」の居住者は必ずしも此の第二條の規定に依つて一年内に建物所有の目的で賃借の申出をしなければならぬ譯ぢやない、する權利があるだけであつて、此の申出をしないで宜いやうな場合には、建物の借主の方に此の權利を認めて差支ないのぢやあるまいか、「バラツク」の居住者は何處迄も此の地面を使つて賃借の申出をすれば、それはまあ保護しても宜いのですけれども、一年内に賃借の申出をしないかも知れない、さう云ふ場合には第二次的に疎開して居つた建物の借主の方に此の權利を認める方が適當ではあるまいか、其の權利を認めると云ふことになれば、法律施行の日から一箇年と云ふのぢや間に合はないと云ふやうな結果になりはしないか、要するに建物の借主を第二次的に保護する必要はないだらうかと云ふことを御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=26
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027・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 建前は仰せのやうに一應居住者が此の物件令四條等に依つて使用權のあるものに付て第一位に保護して、さう云ふやうなものがない場合に始めて前の建物の借主を第二條以下に依つて之を保護して行くと云ふ建前であります、而して第二條に依りますと一年間の間に借地權の設定の申出をしなければならないことになつて居ります關係から、仰せのやうに前の居住者が其の儘の状態で一年間使用が出來ることになつて居り、若し其の一年間の間に二條の凖用等に依つて自分で借地權を得たいと云ふ申出のない限りは、一年で以て消滅することになる譯であります、從ひまして一年間全部居住者が使用して、さうして更に借地權の設定を受けないと云ふやうな場合になりますと期間の關係から致しまして、御話のやうに建物の借主と云ふものは最早や二條に依つて借地權の設定を申出ることが出來なくなる譯であります、勿論二十九條の第二項で、前の居住者が其の敷地の使用を止めてしまへば、若しそれが一年以内でありますれば、二條に依つて前の借主が借地權の設定を受けると云ふ機會はありまするが、さう云ふ意味で前の居住者と前の家屋の借主とは何等かの關係があるでせうから、其の間に於て適當に話合等に依つて、其の居住者も二十九條に依る權利の放棄と云つたやうなことに付ての話合と云ふやうなことも考へ得るかと思ひますが、さう云ふことのない限りには、期間の關係上一年經つてしまへば、前の建物の借主は借地權の設定を申出ることが出來ないと云ふ關係になりまして、それでは借主の保護に付て十分ではないから更にさう云ふ場合には一年後と雖も借主に保護を與へたらどうかと云ふ御意見でありますが、餘りさう云ふ權利關係を長くすることは矢張り土地の所有者或は初めよりの借地權者等の關係から致しまして、それ等の權利の安定性を害すると云ふ風な考から致しまして、一年と云ふ劃一的な時期を以て兩方とも限つた譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=27
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028・霜山精一
○霜山精一君 御答は了承致しましたが、「バラツク」の居住者が二條の規定に依つて新たに借地權を取得して呉れれば、それを保護すると云ふことは尤もで、其の人間が實際に戰災を蒙つて現に其處に居住して居るのですから宜いと思ふのですが、其の人間が一年内に二條の規定に依つて權利を取得する申出をしないし取得する意思もない、斯う云ふ風な場合には、詰りそれは何時迄も其處に居る積りはない譯なんですから、法律では「バラツク」があるのだから一年間は使つても宜いと云ふことになつて居るけれども、それを一年過ぎて使ふのには、二條の規定に依つて借地權を得てやらなければならぬのみならず、一年内にさう云ふ手續を執らないと云ふやうな場合には、其の建物の借主の方を保護すると云ふ二條の建前から行つて、そこに幾らか建物の借主保護の餘地を與へて置かないといけないのぢやないかと思ふのですが、其の點はどう云ふものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=28
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029・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もでありますが、大體に於きまして建物の借主と居住者と云ふやうなものは、多くの場合一致するものと云ふ風に考へまして、分ければ分けることが出來ますが、罹災者と云ふやうな大きな範疇に於きまして、大體一致すると云ふ風な建前で一年と云ふ風に致したのでありまして、仰せのやうに借主と居住者と違つて居る場合に、居住者が一年經つてそれから後は使はないと云ふ場合に、さうすると借主も使へなくなつて、寧ろ土地の所有者に好過ぎはしないかと云ふ感じも致すのでありますが、一面土地の所有者と致しましては、一年以内に誰からか借地權の設定を申出るかも知れぬと云ふさう云ふ不安は已むを得ないと致しまして、さう云ふ方針を採つたのでありますが、一年以後又誰からか借地權設定の申出があるかも知れぬと云ふのでは、所有者なり借地權者の地位が餘りに不安定ではなからうか、それから又居住者が放棄した場合に於て、借主は更に或一定の期限内に申出が出來ると云ふ風にすれば宜いのではないかと云ふ御意見で、御尤もと思ひますが、其の關係も益益複雜な規定を必要と致しますので、一應は土地の所有者或は借地權者としては、一年内に誰からか申出なり或は借地權の讓受の申出が來るかも知れぬと云ふことだけは已むを得ないとして一年經てばさう云ふ心配がなくなると云ふことも、所有者の方の立場から、一應そこを明確にして、其の地位の安定を圖るのも利益があるのぢやないかと云ふやうに思ひまして、斯う云ふ風に兩方とも一年と云ふことに決つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=29
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030・霜山精一
○霜山精一君 大體は細かい問題になりますから強ひて申上げませぬ、もう一つ私は此の居住者が「バラツク」を建てて住んで居ると云ふのが現在の都市の状況であります、此の「バラツク」居住者の權利關係と云ふものに付て少し明確にして置きたいと思ふ、是は非常に適用の多い問題ではないかと思ひますから、色々「バラツク」の法律關係と云ふものは非常に複雜なものではないか「バラツク」を建てるに付きましても、此の土地を使用する權原等から色々な場合が澤山出て參りまして、それを一一分けて考へますと、「バラツク」居住者の法律關係と云ふものは實に複雜多岐でありまして、一概に論定することは出來ないのであります、だが私が多少問題と考へますのは、此の第二十九條に依りまして、舊令第四條第一項に依つて居住者が「バラツク」を建てて居る場合、此の場合は本法施行の日から一箇年と云ふ、一箇年限りの權利と云ふ風に出て居る、さうして此の權利は一箇年に依つて消滅すると云ふことになつて居るのでありまするが、此の權利に付て借地法の適用があるのかないのか、借地法には借地權が消滅した場合の規定が澤山ございまして、其の場合は建物を保護する爲に其の權利の繼續の出來るやうな規定を設けて、例へば借地法第四條の規定に依つて契約の更新を請求出來ると云ふやうな、契約更新の請求があつた場合には借地權の續存期間は二十年、三十年と云ふ風になつて居るのであります、それから借地法六條に依れば、所謂法定更新の規定がありまして、此の場合に於きましても六條の第一項の後段に依りまして、借地法第五條第一項を凖用して居りますが、矢張り此の法定更新の借地權の存續期間も二十年、三十年、斯う云ふことに相成ります、それから借地法七條に依りましての適用があるとすれば、又建物滅失の時から二十年三十年と云ふ風に借地權が存續することになる、是が所謂舊令第四條の一項の規定に依つて認められて居る「バラツク」賃貸借に付て借地法の適用があると見るかどうか、是は何にも規定がないのでして、借地法は規定がない場合は、前回の質問の時にございました通り被さつて適用になる、斯う云ふ風に解釋するより外はない、此の舊令第四條の第一項は賃貸借は賃貸借なんですが、是には借地法の適用はないのだと云ふことの明文がない限りは、矢張り今御話したやうな借地法四條、五條、六條、七條と云ふ風な存續期間を長める規定の適用があるべき筈ぢやないかと思ふが其の點は如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=30
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031・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな御質問でございますが、大體に於て舊令四條一項等の賃借權の關係を二十九條、三十條で拾ひ上げて來ましたので、其の存續期間等が一箇年と云ふ風なこと、或は若し賃借の申出をして、萬一拒まれた場合に於ては、其の建物の買取請求權と云ふやうなことのあることを、明かに三十二條なり二十九條に依つてして居りますから、さう云ふ關係は明かになつて居りまするが、此の舊令當時に於ても其の關係が四條一項の、此の場合の賃借權はどう云ふのがあるかと云ふことに付きましては、我々の間に於きましても非常に議論のあつた點であります、此の點に付きましては私一個の考と致しましては、本建築以外の目的の爲に所謂「バラツク」使用の爲に「バラツク」處理の爲にと云ふことでありますが故に、借地法に關する限りに於ては、一時使用の目的の借地權と云ひますか、賃借權と云ふ風に解して居るのであります、從つてさう云ふ意味で更新に關する規定とか、或は其の他又御指摘になりました規定の適用がないと云ふ風に考へて居ります、殊に本令に依りましては、所謂借地權と云ふ場合に於きましては、第一條で借地權とは云々と云ふ風に、丁度借地法と同じやうに「建物の所有を目的とする地上權及び賃借權をいひ」と云ふ風に云つて居りまして本令に於きましては舊令の第四條一項の賃借權は借地權と申して居らないのでありまして、是は二十九條等にも明かであるやうに、賃借權と云ふ言葉を使ひまして、借地權と云ふこととは別個に取扱つて居る次第でありまして、借地權と云つた場合には、何も規定がなければ借地法の借地權の規定を其の儘適用を受けると云ふ、大體さう云ふ頭になつて居るのでありますが、まあ賃借權と云ふやうなことで、其の點は純然と借地法の適用を受けるのだと云ふのでなくてまあ強ひて借地法の中に入れれば一時使用の目的の借地權と云ふ風に解して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=31
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032・霜山精一
○霜山精一君 さうすると此の點をはつきりして置かぬと、「バラツク」の居住者は非常に不安なことになる譯ですが、此處に何時迄居住出來るかどうかと云ふことですから、非常に影響の大きい問題になる、此の「バラツク」居住の爲にする第四條の賃貸借と云ふものは、借地法に所謂借地權ではない何と云ひますか、一時使用の爲の借地權であるからして、更新其の他の前七條の規定は適用はないのだ、斯う云ふ見解なりとすれば第二十九條の規定に依つて此の法律の施行の日から一年、斯う云ふことに依つて區切られてしまふ、一年で「バラツク」の賃貸借と云ふものは消滅する、斯う云ふことになりますから、此の法律を施行して一年目には其の「バラツク」を收去して、「バラツク」の敷地を所有者に返さなければならぬ、斯う云ふ風に了解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=32
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033・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣でございます、此の點は一年と限り其の間に本當の借地權に乘移る機會を與へ、さうして正當な事由で拒まれた場合は、其の買取請求を與へると云ふやうな場合を綜合して自ら明かになるのぢやなからうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=33
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034・霜山精一
○霜山精一君 是は非常に重大な關係のあることですから、さう云ふ點をはつきり民衆に、一般の借地人に分り易くして置く必要があるのではないかと思ふのです、法律家が斯う云ふ風に議論すれば自ら落付く所に落付いて分るやうですけれども、一般の人にはなかなか分りにくいですから、此の「バラツク」の居住者が二條の規定に依つて、借地權を取得して居らない限り、此の法律施行の日から一年以内に此の「バラツク」の借地權と云ふものは、賃貸借と云ふものは終了するものだ、無くなるものだと斯う云ふことは餘程規定を明確にして置く必要があるのではないかと思ひます、法律家が色々議論した結果、そこに落付くのですが、一般の民衆が之を讀んで、いやもう「バラツク」の所有權は是は一年限りのものであると云ふ風に、法律を分り良く書かないと法律が何時迄も民衆から離してしまふと云ふ結果になるのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=34
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035・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) まあ仰せの通りでありますが、寧ろ法律家が讀むから借地法の關係でさう云ふ風に疑問が我々に起きるやうに思ふのでありまして、此の本令自體を讀んで、一年間だけは存續せしめて、其の間に借地權の讓渡の規定を準用して、正當の事由に依つて拒まれた場合には、其の建物を買取つて貰へるのだと云ふ風に書けば、却て借地法と何等關聯しないで、普通に讀む素人としては、少くとも此の點だけは割合にはつきりして居るのではないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=35
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036・霜山精一
○霜山精一君 此の「バラツク」の居住者が舊令第四條の規定に依つて賃借權を既に取得して居る譯です、其の土地を使用する權利を得て居る譯で、其の地代、賃料の如きものもちやんと決つて居るし期間も今の一年と云ふことになるのでせう、さう云ふ風に立派な借地權を舊令に依つて與へられて居る譯ですから、是が此の二條に依つて借地權を持つて居る者が、借地權を再び取得すると云ふことは持つて居る者に持つて居る者を重ねるやうな嫌ひがないぢやないか、寧ろさう云ふものに付ては新に借地權を設定させるよりも、此の既に存する借地權は、此の法律で認めて居る二條の借地權と同じ效力を與へればそれで宜いのではないか、詰りそれの繼續を認めれば宜いのであつて、何も新しく取得させる必要はない、もう既に元から賃貸借をして、土地を借りて使つて居る譯なんで、法律の規定に依る賃貸借でありますけれども其の賃貸借の繼續を認めれば宜いのであつて、其の繼續することを承諾するかどうかと云ふやうなことはあるかも知れませぬが、別に新たなる借地權を設定する、賃貸借權を設定する必要はないのではあるまいか、斯う云を風に思はれるのでありますが、そこはまあ法律の作り方の問題になるかも知れませぬ、繼續してはいけなかつたのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=36
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037・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説の通り、さう云ふ考へ方も我々も致したのであります、唯此の建前と致しましては、前の建物の借主に借地權を新しく設定する途を正面の方から開いて參つた關係上、後の、と云ひますか、經過的な所に參つて、其の性質が變るのだと云ふ風に規定することが、なかなか法律技術の上からむづかしくあつた關係上、前に舊令第四條一項に依つて借地權と云ひますか賃借權を持つて居つた者も本法に依つて新しく借地權を得るのだと云ふ風な法律構成で參つたのでありまして、其の關係上第二十九條の第二項の後段に、「又はあらたにその敷地につき使用若しくは收益を目的とする權利を取得したときは、同項の期間滿了前でも、これに因つて消滅する」と云ふをかしな規定を入れざるを得なくなりまして、即ち舊令四條の一項に依つて賃借權を持つて居る者が一年以内に、即ち期間滿了前に、二條等の準用に依つて、自分が本當のと云ひますか、本令に依る正式の借地權を取得した場合に於きましては二重になるので、或は法律上混同と云ふやうなことを…法理に依つて當然前の一時的な借地權は消滅すると云ふ解釋もつくかと思ふのでありますが、此の場合少くとも前の一時的な借地權、後の恒久的な借地權と二重に重なりまするので其の場合にはつきりする必要があると云ふことになりまして、此の二十九條の第二項の後段に於きまして、二重に重なつた時は期間滿了前と雖も一時的の借地權と云ふものは消滅すると云ふことを念の爲に規定したのでありまして、是は法律上の立法の技術的な關係から斯う云ふ風に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=37
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038・霜山精一
○霜山精一君 此の二條の規定の必要なことは認めて居るのですけれども、二十九條の關係に於て此の二條を準用することが立法技術上果して巧みであるかどうかと云ふことは問題ではないかと思ひます、それで質問致したのであります、それからもう一點、三十一條に、二十九條一項本文に基いて存續する借地權は、第二條一項の規定の適用に付ては、之を借地權ではないものと看做すと云ふのでありますから、「バラツク」の借地權は、借地權でないものと看做すと云ふのはどう云ふ理由でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=38
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039・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 此の二條と三條とを適用する上に於て、「バラツク」を持つて居る者が、若し是が借地權と云ふ風に致しますと、現に借地權があると云ふ建前になりますから、自分の持つて居る借地權を讓受けなければならぬと云つたやうな法律的にをかしい關係になりますので、さう云ふ場合には三條の方の適用に行かないで、二條の方の適用に依つて借地權の設定を求め得るのだ、即ち自分の一時的に持つて居る借地權と云ふのは、所謂借地權と見ないで、新らしく借地權の設定を受けることを認めると云ふ風に適用せしむる爲に書いたのでありまして若し其の場合に自分の持つて居る借地權も借地權なりとすれば、三條の方の適用に行かざるを得なくなつて、其の借地權の存する場合と云ふことになつて、自分の借地權の讓渡を申出ると云ふ風な技術的な議論を展開する、さう云ふをかしなことになるから、さう云ふ場合には借地權でないものと看做すと云つただけのことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=39
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040・霜山精一
○霜山精一君 能く分りましたが「バラツク」の借地權者が二條を適用するか三條を適用するかと云ふ場合に、要するに「バラツク」の借地權者が、其の土地の上に正式に借地權が得たい譯なんですから、從つて正式に權利を得たいとすれば二條に依るか三條に依る外はない譯です、三條に依ると云つても、自分の權利を自分で讓り受けるなんと云ふやうなことは法律上不可能でありますから、斯う云ふ規定がなくても自から當然第二條の規定に依つて借地權を取得すると云ふことは、三十一條のやうな規定を置かなくても自明の理ではないかと思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=40
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041・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 先程の二十九條の第二項の後段と謂ひ、今の三十一條の點と謂ひ、多く自明の理である場合があるかと思ひますが、色々法律的の議論を致しました結果、はつきりさせようと云ふことで、斯う云ふ稍稍ぎごちない規定が入つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=41
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042・霜山精一
○霜山精一君 もう一つ關聯した問題でありますが、此の「バラツク」の居住者が、二十九條、三十二條に依つて…本法第二條の規定に依つて借地權が一つ出來る譯です、其の場合に三十二條に依りますと、第二條乃至第五條、それから第七條第二項の規定を準用して居るのですけれども、第七條第二項の規定を準用しますと、此の「バラツク」の借主が其の建物の使用を止めた場合は、「前項と同樣である」と書いてある、止めた場合は前項と同樣であると云ふのですから、止めたらば解除が出來ると云ふことになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=42
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043・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) さう云ふ譯であります、此の場合には自ら建物所有の目的で使用して居るのでありますから、七條の一項の方は適用がない譯でありますが、一應所有の目的で建物を持つて使用して居つた場合でも、それを止めた場合には、矢張り借地權の設定なり或は讓渡を解除してやると云ふことを準備して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=43
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044・霜山精一
○霜山精一君 前項と同樣であると云ふのは、準用と違ふのですか「前項と同樣である」と云ふのは法律上前項を準用すると云ふのと違ふのですか、是は初めての用例だと思ふのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=44
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045・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は實は法制局等の用例で出たのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=45
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046・霜山精一
○霜山精一君 斯う云ふことが今迄あるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=46
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047・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 恐らく今度の新憲法に斯う云ふ風な用例があるやうであります、準用と大體同じやうな意味なんださうでありますが、準用では稍稍分りにくいと云ふので同樣と致したのであります、憲法にも斯う云ふ用例がある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=47
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048・霜山精一
○霜山精一君 どう云ふ點が準用であるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=48
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049・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 普通の例で前の用例で行きますと、「又同じ」と云ふ所になるのを斯う分けた關係上さうなると思ふ、まあ「前項に又同じ」と云ふ風なことでも宜いかと思ひますが、近頃の用例で斯う云ふ風に法制局等に於て用ひるさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=49
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050・霜山精一
○霜山精一君 此の第二條の規定に依つて權利を得た者が其處に六箇月を經過しても建物を建てない土地の使用を始めないと云ふやうな時には所有者は設定契約を解除出來ると云ふことにして、所有者を保護して居る、是は宜いと思ひますが、今度はそれとあべこべに所有者が自分で使ふからと言つて、拒絶して置いて何時迄も六箇月も一年も其の土地に少しも家を建てない、斯う云ふやうな場合には此の七條の規定をした以上はさう云ふ不當なる地主に對しては矢張り第二條の規定をもう少しさう云ふ時にはやれるのだとか、期間を經過してもさう云ふ不當な地主に對しては建物所有の賃貸の申出が出來るのだ、斯う云ふ風に一方にする必要はないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=50
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051・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな話で、實は立案の當時さう云ふ議論が非常に出たのでありまして此の七條で解除し、又更に一定の期間地主の方で建てない場合には又更に前の關係を復活せしめると云ふことに致しますことは、余りに法文が複雜になります關係と、さう云ふやうな事情は既に申出を拒む場合の正當な事由の際に宜しくさう云ふ關係も能く調査して判斷して、正當な事由として拒み得る、自分で建てる積りもなく又建てるらしき客觀的情勢もないのに唯拒むと云ふやうなことは、所謂正當な事由と見ないやうな、此の正當な事由の判斷の時にさう云ふ事情を非常に斟酌して判斷すれば非常に複雜になる規定を設けなくてもそれで大體賄ひが付くのではないかと云ふので、御説のやうな此の先の場合に關する規定を入れるのを止めた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=51
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052・霜山精一
○霜山精一君 私ばかり質問して居るやうで時間を獨占するやうでいけませぬから、暫く私の質問を此の程度で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=52
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053・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 承りました、一條から五條迄の間でどなたか御質疑がおありでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=53
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054・作間耕逸
○作間耕逸君 借地權の設定に付てもさうでありまするが、借地權の讓渡の申出をしまする者は、戰災當時の建物と借主である、是はそれで結構でありますが、建物の借主以外と雖も實際そこに建築の熱意があつて、其の用意があつて其の實力があつて、都市復興の爲に協力しようと云ふ趣旨で其の申出を致した場合には、是が矢張り此の法律に於て認められて然るべきではないか、何も單り戰災當時の建物の借主に限らぬではないか借主に優先權を與へることは結構であるが、借主が申出をしなかつた場合等に付ては只今申したやうな人にも矢張り同樣の申出權を認めてやつて宜いのではないか、否それが却て都市復興の促進になるのではないか、此の點を所謂第二條、第三條の各論的質問としてもう一遍確かめて置きたいのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=54
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055・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もでありまして、復興と云ふことから考へますれば、資材資力等其の土地に家屋を建設する能力のある者に對して、借地權者がそれ等の者に自由に借地權を讓渡すことに依つて復興を増進して行くと云ふことは望ましいことと考へます唯本案に於きましては、戰災者の復興と云ふことに大體の重點を置きました結果、前の建物の居住者或は借主と云ふものに付て借地權の讓渡を受ける權原を與へた次第でありまして、それよりも更にさう云ふ縁故と云ひますか、實際關係のない者にも廣く借地權の讓受をせしむるやうにするのが宜いではないかと云ふ御意見も御尤もであると思ふのでありますが、本案に關する限りに於て、先程申しましたやうに、罹災者の保護と云ふことに重點を置きました結果、罹災者に限つて半強制的の讓渡受けしむる途を開きまして、此の場合に於ては地主は其の讓渡に反對が出來ないと云ふことに第四條で致した次第であります、廣く借地權を讓渡を認めて、地主の承諾權と云ひますか、民法に依りますと第六百十二條で、借地權の讓渡は地主が承諾しなければ效力を持たないことになつて居りますが、其の地主の承諾權に付て制限を與へると云ふ場合に、罹災者以外の場合に讓渡する場合にも、地主の承諾權にさう云つた制限を與へると云ふ所迄は、此の法案としてはそこ迄は廣がることは案の目的から致しまして如何かと思ひまして、其の點迄は擴張致さなかつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=55
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056・作間耕逸
○作間耕逸君 無論さう云ふものを御認めになる時には、地主たる賃貸人の承諾はあつたものと看做すと云ふやうなことでなく、矢張り地主も十分考慮して、或は自分の事情をも考へて、正當なる理由があつた場合には地主も之を拒み得ることが出來ると云ふ建前に改めなければなるまいと思ふのであります、それは前例になるのであります、一體其の點に付て、原案で外の所は皆賃貸人は正當の理由がなければ申出を拒絶することが出來ないと云ふやうに書いてありまするのに拘らず、此の第四條に於ては何故當然賃貸人の承諾があつたものと看做すと、斯う云ふやうな規定を置かれて、もう否應なしに地主の承諾は當然あつたものと看做してしまふ、考慮の餘地なんかは一つもない、況や正當の理由があつても申出を拒絶することが出來ないと云ふやうな趣旨で規定せられたのはどう云ふ譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=56
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057・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是には罹災者が借地權がない土地であれば直接地主から借地權を得しむると云ふ途を開き、借地權があれば其の借地權の讓受けを得しむると云ふ建前で、丁度其の相手方になるのは前の場合に於ては地主、後の場合に於ては前の借地人と云ふことに致しまして、其の相手方になる者の立場に於て正當な事由があれば同じく之を拒むことが出來ると云ふ建前に致したのであります、併しながら借地權の讓渡の場合に於ては、民法の建前上更に地主の承諾を得なければ地主に對抗が出來ない、是は無効であると云ふやうに解釋するか、對抗が出來ないと云ふやうに解釋するかは學問上の爭ひでありますが、兎に角地主の承諾を必要とすると云ふことになつて居る關係上、若し地主が之を拒むと云ふことでありますれば、折角讓渡人の方で之を承諾するとか、或は正當な拒む事由がない、從つて讓渡を受けることが出來るにも拘らず、地主の意思に依つて其の目的を達することが出來ないと云ふことでは、折角借地權の讓渡の途を開いた趣旨を沒却することに相成ります關係と、それから大體都市に於きましては借地權を設定致しますれば、地主の權原は相當其の範圍に於て縮減されて參りますので、借地權の讓渡も多く慣習上借地權者が殆ど自由に讓渡して居るやうな状況にありますので、即ち此の都市に於ける宅地の借地權と云ふものは、大體地代を取ると云ふだけの權能でありまして、地主の方の權能としては地代を取ると云ふだけの權能でありまして此の點は極めて地上權と同樣になつて參つて居ります、從ひまして借地法、或は本法に於きましても地上權と賃借權と云ふのは大體に於て同列に置いて居るのでありまして、此のことは第一條に「借地權とは、建物の所有を目的とする地上權及び賃借權をいひ」とありまして、此のことは借地法に於ても同樣であります、即ち借地權と地上權とは都市に於ける宅地の利用關係に於ては大體同樣に扱つて宜いのではないか、而して形式が地上權でありますれば其の讓渡に付ては全然地主の承諾を必要としないのに、賃貸借でありますれば、民法第六百十二條で地主の承諾を必要とすると云ふことは、均衡上是はどうかと思はれる、其の權利の内容に付てもう既に同じであると致しますれば、其の點に付ても同樣に取扱つて宜くはないかと云ふ色々な考慮から致しまして、折角借地權の讓渡を受けしめることを第三條で認めた以上、それが地上權なれば地主の承諾を全然必要としないが、偶偶賃貸借であると云ふ場合に地主の承諾を必要とし、地主が之を拒めば其の目的を達し得ないと云ふのでは、結局罹災者の保護を全うすることが出來ないのではないかと云ふことから致しまして、第四條の規定を設けた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=57
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058・作間耕逸
○作間耕逸君 時間がありませぬが、もう一點だけ御許しを願ひたい、それは總括的質問の時に申上げたのでありますが、司法當局が戰災者の救濟に重きを置かれてさうして其の權利を特に認めて優先的に優待しよう、それは結構な話でありまするが、扨て復興と云ふ建前からどうなるか、復舊は是で結構でありますが、復舊以上に積極的に、擴大的に復興する場合に於ては、復舊は必ずしも復興ではないのでありまして、政府委員が言ひました復興の趣旨も含んで居ると言つて、時折許可なきものは許可を得なければいけないと云ふ第二條の但書等を援用されまするが、是はまださう云ふことでは十分でありませぬ、更に復興の本家本元たる主管の復興院の方ではどうであるか、是は設計、建設、都市計畫、道路、緑地帶、斯う云ふことに一生縣命になられて、現に先般も戰災都市特別計畫法を出された、是は復興に關する個人間の土地、建物の權利義務に付ては一切復興院はお構ひなしである、技術方面に主として重きを置いて居る、戰災都市特別計畫法が即ちそれである、司法省の此の案は罹災者の救濟、權利の復活、其の優待法が斯う云ふものに置かれて居るさうすると云ふと、どちらも少しづつ離れ離れになつて居つて、其の中間にもう一本復興を目的とする復興關係の個人間の權利義務をしつかりと規定する何等かの法律がなくても宜いのであるか、それが必要なんではないですか、是は極く極端に申すと、餘り復舊ばかりで、ちつぽけな家がちよこちよこ出來たんでは、さうしてそれに根に生えたんではならない、却て場合に依つては、状況に依つては復興の妨げとなるやうなことがあるのではないか、我々は戰災者には無論是は同情して優待してやらなければならぬ、保護してやらなければならぬ、此の司法省の思召は多と致す、けれども大都市の復興と云ふものは大所高所から大局的大乘的に見なければならぬので、罹災者個人に對する感傷、同情等ばかりでは復興の爲にはならぬのであります、其の邊の所の法律關係が今少し積極的に此の法律案に現はれて居るか、或は復興院と御連絡下さつて、復興院をして復興の爲の技術設計關係ばかりでなく土地建物に對する權利の關係を、所謂復興法律を考慮せられる必要があらうと思ひますが、司法省の方に於かれる政府當局としては、一體復興院へさう云ふことを交渉をして何等かの連絡協調を遂げて戴く必要はありませぬか、さう云ふことを御考になつたことはございませぬか、それを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=58
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059・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説御尤もと思ひます、復興の爲には單に本案のやうな罹災關係の土地の權利關係のみの一應の確定だけでは、所謂復舊になるかも知れないが、發展する復興と云ふ點に付ては非常に消極的であると云ふ御批判は御尤もと思ふのでありまして復興には色々な都市計畫であるとか、其の他の色々な計畫及び更に復興の助成に對する財政の方面の必要も多からうと思ふのでありまして、其の點司法省だけでは到底之を能くし得ないので、各省協力しなけしなければならないことは勿論でありまして、復興院との關係に於ては常に連絡を保ちつつ、此の法案にしろ、或は特別都市計畫法にしろ、常に連絡を保つて居るのでありまするが、更に財政關係等に於ても大藏省との關係、其の他色々な關係があらうと思ふのであります、が我々と致しましては唯此の案、此の法律のみを以て復興を大いに増進するとは考へて居りませぬ、唯復興の一助にもと思ふだけでありまして、更に發展的に復興の助成の方針を執る必要があることは作間委員の御意見と同感でありまして、此の點は事務當局と致しましては出來るだけ各方面との關係を遂げて努力を致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=59
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060・作間耕逸
○作間耕逸君 能く分りました、さう云ふ思召があれば結構であります、我々は此の案は此の案として罹災者の救濟保護に重きを置いて審議を致したら宜からうと思ひます、けれども只今政府委員の仰せられます如く、一面に於ては矢張り積極的發展上の法律關係、無論是は政府の事業ならば、土地收用法だとか、公共團體の事業ならば、收用法の適用に依つて處置の出來るものもありますけれども、復興關係に於ても個人間の權利義務、土地建物の權利關係が矢張り複雜錯綜して來るであらうと思ひます、それ等のことに付て遠からざる中に一つ復興當局と御協力下さつて復興院にやらした方が宜しいでありませう、司法省の御主管以外かも知れませぬが、さう云ふ只今御述べになりましたやうな御見解、御意見を持つて居られますれば、それで結構であります、私共は滿足致します、了承致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=60
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061・高木正得
○委員長(男爵高木正得君) 今日は時間も過ぎたやうでありますから、此の程度で散會致したいと思もます、明日午前十時から開會致します、では本日は是で散會致します
午前十一時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=61
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062・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 高木正得君
副委員長 男爵 肝付兼英君
委員
侯爵 東郷彪君
侯爵 嵯峨實勝君
伯爵 東久世通忠君
子爵 森俊成君
霜山精一君
男爵 村田保定君
竹下豐次君
原泰一君
作間耕逸君
政府委員
司法事務官 奧野健一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00519460717&spkNum=62
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