1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○罹災都市借地借家臨時處理法案
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月十九日(金曜日)午前十時十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=1
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002・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 是より罹災都市借地借家臨時處理法案の委員會を開きます、今日は昨日の續きで十一條から十五條迄の間の質疑を行ひたいと存じます、私は他の委員會の關係上肝付副委員長に此の席を御讓り致します
〔委員長退席副委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=2
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003・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) それでは代行させて戴きます、十一條から十五條迄を問題に供します御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=3
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004・霜山精一
○霜山精一君 文字の問題ですけれども、十二條に「土地所有者は、この法律施行の日から一箇年以内に、第十條に規定する借地權者(罹災建物が滅失し、又は疎開建物が除却された後、更に借地權を設定してゐる者を除く。)」と斯う書いてありますが「借地權を設定してゐる者」と云ふのは、借地權設定者ぢやなく、設定を受けた者の意味だらうと思ふのですが、「設定してゐる者」と云ふと、何だか設定者のやうな風に讀まれる虞があり「設定してゐる者」とは設定者のことを言ふのが普通なんですが、是は設定を受けて居る者と云ふ意味でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=4
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005・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は設定者と云ふ意味でございます、それから後更に轉貸借されたやうな人は、もうさう云ふ借地權者は矢張り借地權放棄の意思のないことが極めて明瞭でありますから、斯う云ふ者に對して制限すると云ふことは不必要であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=5
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006・霜山精一
○霜山精一君 設定者の意味ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=6
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007・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=7
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008・霜山精一
○霜山精一君 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=8
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009・作間耕逸
○作間耕逸君 此の第十五條の鑑定委員會のことに關して御尋を致したいと存じます、十五條の中に「裁判所は鑑定委員會の意見を聽き」とあります、さうして云々、「これを定めることができる」とあります、是は鑑定委員會の意見を聽くことが要件、必要なんでありまするか、或は大抵は聽くけれども、必ずしも鑑定委員會の意見を聽かぬでも、裁判所が獨自の決定が出來る、斯う云ふ建前なんでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=9
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010・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 此の建前と致しましては拘束はされないが、意見を聽いて決定しなければならないと云ふ積りでございます、唯此處で是は解釋問題になると考へますが、例へば地代とか、敷金借賃、其の他の借地條件、或は借地借家條件に付て協議が調はない場合に於きましては、鑑定委員會の意見を必ず聽くべき建前でありますが、處が借地權の設定自體、或は借地權讓渡に關するそれ自體の有效無效の法律關係、之に付て當事者に爭ひのあつたと云ふ場合には、鑑定委員會の性質上さう云ふ基本と云ひますか、借地權の設定が有效であるや否か、借地權の讓渡が有效であるかどうかと云ふ根本の法律關係自體を定めるに付ては、鑑定委員會の意見を聽く必要がなく、裁判所が獨自の判斷で判斷すべきものではなからうかと此の條文の建前は漠然として居りますが、實は色々研究した結果、其の後の條文、例へば十六條等に於ては其の鑑定委員會の意見を聽くことを必要としない、然るに十七條のやうな借地借家の條件に付ては必ず鑑定委員會の意見を聽かなければならないと云ふやうな條文と睨み合はして、法律關係自體の確定に付ては要らないが、其の地代の金額とか、家賃の金額とか敷金とか云つたやうな借地借家の條件を決定する上に於ては、一應鑑定委員會の意見を聽くと云ふやうに解釋し得るものと云ふ風に、我々の考はさう云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=10
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011・作間耕逸
○作間耕逸君 さうすると各條項の性質から鑑定委員會の意見を聽くことを必要とするもの、又は鑑定委員會の意見を聽くべからざるもの、斯う云ふやうに分かれるのですね、例へば只今政府委員の仰せらるる如く、此の法律關係の效力等に付ては、裁判所は鑑定委員會の意見を聽いては寧ろをかしなことになるので、聽かない方が宜い、それから地代家賃、敷金、權利金、借地借家の期間、期限、斯う云ふ問題は鑑定委員會の意見を聽くことが必要の條件になる、斯う云ふやうに解して宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=11
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012・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 鑑定委員會の意見は、元來諮問機關としてでありますが、今仰せになりましたやうなことの法律上の性質からしてさう云ふ風に解釋すべきものであらうかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=12
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013・作間耕逸
○作間耕逸君 諮問機關ならば裁判所は聽くも可なり、聽かざるも亦可なりで、聽くと聽かざるとは裁判所の自由である、裁判所は聽くことが必要である、若しくは適當である、或は便宜であると思つた場合には聽き、自分獨自の見解で能く分つて居る、聽くに及ばぬと云ふ時には聽かぬでも宜いことになるんですが、左樣ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=13
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014・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 例へば十七條のやうな場合に於ては、之を聽いた上で條件變更と云ふやうなことに相成る譯であります、十七條の中でも其の後段のやうな場合に於きましては、此の委員會の意見を聽かないと云ふやうなことになるのであります、十六條の場合に於ては委員會の意見を聽くと云ふことは規定して居りませぬが唯十五條の場合に於きまして、其の事柄の性質に依つて十六條、十七條と睨み合せて見て、法律關係に付ては聽かないで、其の他の借地條件或は借家條件に付ては聽くべき建前に於て規定致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=14
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015・作間耕逸
○作間耕逸君 さうすると法文に「裁判所は鑑定委員會の意見を聽き」と明文に規定してある場合には聽くことが必須の條件である、其の他の場合に於ては裁判所は獨自の見解に依つて裁判を下して宜しい、斯う云ふことに結局なるんですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=15
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016・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=16
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017・作間耕逸
○作間耕逸君 此の手續は是は全部非訟事件として御取扱になるんですな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=17
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018・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=18
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019・作間耕逸
○作間耕逸君 さうすると云ふと其の貼用すべき印紙はあれは非訟事件は確か四十錢又は二十錢となつて居る、目的の價格に依ては變らない、一律に四十錢かと思つて居ります、其の點確めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=19
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020・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 是は民事訴訟費用法の第十六第、民事訴訟用印紙法第十六條の當然適用を受けると云ふ考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=20
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021・作間耕逸
○作間耕逸君 ですから金額は幾らですか、一律に決つて居ると云ふ、其の一律にと云ふのは…是は四十錢か二十五錢か二十錢か此の三つの中です、一圓ではない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=21
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022・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 民事訴訟用印紙法第十六條に依りまして請求の價格が二十圓以下なる場合に於ては二十錢の印紙、二十圓を超過する場合に於ては二十五銭の印紙を貼用することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=22
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023・作間耕逸
○作間耕逸君 さうすると二十五錢か又は二十錢の印紙を貼用すれば此の事件は申立が出來ると云ふことになるのでありますか、更に訴訟費用印紙法が時勢の物價騰貴と共に改正せられた後は別で貼りますけれども、少くも現在に於ては其の額の印紙さへ貼用すれば此の問題は非訟事件として取扱つて戴けるのです、處が裁判所に於ては先程來御尋ねしました通り鑑定委員會を開く場合が多いのである鑑定委員は三人出頭して參つて、それが旅費も日當も宿泊料も貰へることになる、裁判所は族費は日當宿泊料を支給しなければならぬことになる、さうすると云ふと、國民の爲には誠に有難いことで、僅かに二十五錢又は二十錢の印紙を納めれば、それでそれだけの手續はして貰へるのでありますが、國家の經濟から云ふと可なり國家が重い負擔を致さなければならぬ恐らく此の場合には鑑定委員會の旅費、日當、宿泊料を當事者から納めさせる趣旨ではないのでせう矢張り之を當事者が別に納めると云ふことになる、當事者は大變又經濟關係から考慮しなければならぬ、なかなか無暗に申立は出來ない、それは當事者には關係ないのだ、當事者は唯所定の印紙さへ納めれば宜いのだと云ふことになると、それ等の費用は國家が負擔をしなければならぬ、是は可なり全體の上から云へば當事者の納める印紙に比べて國家の支出する負擔が多くなり過ぎるだらうと云ふ虞があるのでてりますが、其の點は如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=23
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024・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 鑑定委員に支給する旅費、日當、宿泊料等に付きましては、是は當事者に負擔せしめないで、國庫の負擔と相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=24
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025・作間耕逸
○作間耕逸君 私は質問としては是で一應宜しうございます、又後で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=25
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026・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 十一條から十五條迄の間に於て、他に御質問はございませぬか、別に御發言もないやうであります、御諮を致しますが、其の次十六、十七、十八條、此の三箇條を一括して議題に致したいと思ひますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=26
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027・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 然らば十六條、十七傑、十八條を議題と致します、別に御發言もございませぬか、御發言がないやうでありまするから次に進みます、第十九條から第二十五條迄を議題に致したいと思ひますが、御異議ございまぬか
〔「異議なしと」呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=27
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028・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 御異議ないと認ます、然らば第十九條の鑑定委員會の件から第二十五條迄を議題に供します、御質問はございませぬか、次の箇條に進んで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=28
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029・作間耕逸
○作間耕逸君 ちよつと伺ひますが、鑑定委員會は「地方裁判所長が、毎年豫め、特別の知識經驗のある者その他適當な者の中から選任した者」此の候補者たるものは實際に於ては假に東京や大阪のやうな或は京都や名古屋のやうな大都市に於て、行政區に分れて居るやうな場合、區長か誰かに豫め推薦でもさせるのでありますか、或は裁判所は世間の知合の中から任意簡拔せられるのでありますか、要するに候補者推薦又は選定の方法に付て、内部的のことでありますが、其の御取扱の方法を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=29
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030・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は此の法律の公布實施の準備として、地方裁判所長の會同等を催す豫定になつて居りまするから、其の候補者の選定等に付て、地方裁判所長と協議の上で、適當なる方法を執りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=30
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031・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 他に御發言はございませぬか、御發言がなければ次に移ります、附則第二十六條から第三十條迄を一應議題に致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=31
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032・霜山精一
○霜山精一君 第三十條の括弧の中の昭和二十年法律第四十四號附則第二項、此の法律はどう云ふ法律なのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=32
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033・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 戰時緊急措置法廢止の法律でございまして、其の二項でそれに基く勅令は六箇月間尚其の效力を有すると云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=33
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034・村田保定
○男爵村田保定君 此の法律の適用の地區は戰時罹災土地物件令の地區と同一でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=34
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035・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 實は其の點に付きましては、現在と言ひますか、戰時罹災土地物件令は七十二の地區のみに適用して居ります、處が此の罹災都市を見て見ますと、七十二地區以上に亙つて居りまして、此の點は昭和二十年十一月十二日閣議了解事項に依つて其の罹災の地が大體確定されて居ります、其の閣議了解の地區は戰時罹災土地物件令の適用地區よりも多くなつて居りますので、其の閣議了解の戰災地區全部に及すべきや否やは研究問題でありますが少くとも戰時罹災土地物件令の適用地區より廣く、而も相當の戸數の罹災、或は相當戸數の疎開のある市、或は其の都市に隣接する町村に適用せしめる積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=35
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036・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 他に御質問はございませぬか、御質問がなければ次に移ります、第三十一條から第三十五條を問題に供します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=36
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037・霜山精一
○霜山精一君 三十二條の問題に付て前回大分御尋ねして了解して居るのでありまするが、尚多少疑問の殘つて居る點を御尋ねして見たい、二十九條の第三項に依りまして土地の所有者が敷地を使つて居つた、舊令第四條第四項に依る譯であります、それはまあ六箇月か或は一年の間使ふ權利があると云ふことは、二十九條の第三項の末段に「同項に規定する土地所有者の權利については、前二項の規定を凖用する。」、とあります、六箇月か或は一年の間は其の權利がある譯であります、所が此の土地所有者が其處に建物を所有する目的で尚其の敷地を自分で繼續して使ひたい、斯う云ふ場合に付きましては二條乃至五條の規定を凖用して二條、三條の規定の凖用がある、所が此の場合御説明になりました通り、二條の規定は適用がないやうであります、自分に對して借地權を設定して呉れと云ふことは出來ないのですから、二條の適用は自らないと云へばさうである、是も御尤もである、それから三條の適用の問題に付きましては所有者が其の敷地の上にある借地權者に對して其の借地權の讓渡を請求出來ると云ふ、之も非常にをかしなことなのですけれども、凖用した結果は仕方なくさう云ふ解釋になると云ふことも分りましたが、三條凖用の結果として借地權の讓渡を所有者が受けると云ふことです、詰り自分の地面の上に借地權を持つて居ると云ふことになりますから、直ちに混同に依つて其の借地權は消滅することになるのでありまして、是も政府委員御説明の通りだらうと思ひます、そこで三十二條に依りますと、七條の第二項を凖用して居ります、七條の第二項に依りますと、建物所有の目的で其の土地の使用を始めた後建物の完成前に其の使用を止めたと云ふ場合を七條の二項は書いて居りまして、此の前項と同樣であると云ふ意味もはつきりしませぬけれども、大體使用を止めてから六箇月を經過しても、其の土地の使用を始めなかつた時には、借地權の讓渡人は其の讓渡契約の解除が出來る、斯う云ふ風になつて居りまして、土地の所有者に付て此の七條二項の規定を凖用致しますると云ふと、土地の所有者が賃借權の讓渡を受けて、さうして其の賃借權は消滅する、消滅したが其の土地の使用を始めた後に建物の完成前に其の使用を止めた、斯う云ふ風な場合には後建物を建てない、建てて居らぬ、建物を建てて其の敷地の使用をして、居らない斯う云ふ場合には借地權の讓渡人は此の讓渡契約の解除が出來る、斯う云ふことに凖用の結果はなるのでありまするが、既に其の借地權なるものは混同に依つて消滅して居るのであります、混同に依つて消滅して居りまするから、讓渡契約の解除をやりましても、其の消滅した借地權が復活する理由はない、斯う云ふ風に私は考へますが、今の此の土地所有者の權利に付て七條二項をどう云ふ風に凖用したら宜いのか、此の點の説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=37
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038・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 七條の二項で前項と同樣であると云ふ言葉が此の前議論になりまして、是は前項と又同じと云ふことを申上げましたので、何故準用では惡いのかと云ふ議論も其の點でありまして、準用と云ふことに致しますると、恰も六箇月の期間を經過して始めて解除が出來ると云ふ所迄準用せられる虞があるので、使用を止めた場合には別段更に六箇月の經過を待たずして解除が出來るのだと云ふ趣旨を現はす爲に、前項と同樣であると云ふ風に規定した譯であります、そこで御質疑のやうに、所有者が舊令第四條の第四項に依りまして建物所有の目的で使用を始めた場合に於て、第三條の適用を受けて借地權の讓渡を受けた後、其の建物の完成前に使用を止めたと云ふ非常な稀有の例でありますが、若しさう云ふ場合がありました場合に於ては、矢張り第七條の第二項に依つて借地權讓渡の契約を解除することにならうと思ひます、さうすると既に混同に依つて借地權が消滅して居るのであるから、解除しても復活するやうなことにならないのではないかと云ふ御議論でありますが、此の點は或は議論の點と相成りますが、さう云ふ風に借地權讓渡契約を解除して遡及的に消滅せしめることになりますと、前の混同に依つて消滅した借地權も遡及して復活して元に還るやうに解釋出來るのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=38
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039・霜山精一
○霜山精一君 讓渡契約に依つて混同を生じて消滅した借地權が、其の讓渡契約を解除することに依つて物權的に復活するかどうかと云ふことは、是はもう學問上非常な問題になる所でありまして、普通の學問上の問題をそこ迄論及して行きますと、例へば所有權を讓渡契約で以て移した、甲から乙に所有權を讓渡契約に依つて移した其の所有權はある譯です、其のある所有權を其の讓渡契約を解除した場合に、其の存續して居る所有權が物權的に復歸する、斯う云ふことはまあ大體大審院の判例でも認めて居る所でありまして、そこは學問上としては非常に議論のある所ですけれども、裁判所の方面の實際の判例上の取扱ひとしてはさう云ふ物權的に原状に戻ると云ふ説を取つて居りまして、それは戻ると解釋されるのです、今の問題の場合は讓渡契約に依つて權利がなくなつてしまつて居る、混同を生じてなくなつてしまつて居るさう云ふなくなつてしまつて居る、權利迄も物權的に復舊すると云ふことは、今の學説でもちよつとそこ迄は論じて居らぬのです、そこ迄解釋して居る譯ではないので、さう云ふ風に解釋するのだと、斯う一方的に政府の方で主張されればそれで宜いのですけれども、學問上の問題としてはまだそこ迄決つて居る問題ではないと思ひます、さう云ふ非常な困難な問題が實は此の所有者の此の權利に付ては起きるのでして、無理に此の所有者の權利を此の三十二條で入れて、さうして準用もされない、二條を入れたり、或は其の他の規定を準用して見ますけれども、四條も五條も準用して居りますけれども、今の所有者の權利に付ては四條は無論何も準用がない、それから五條も準用がない、自分の權利は、賃借權は消滅するんですから、五條を凖用して居りますけれども、五條の權利も、所有者の權利に付てはない、ですから二條乃至五條を凖用すると言つても、二條は凖用はない、四條も準用はない五條も準用はないと云ふことになる、三條だけが僅かに準用する、併し準用してもむづかしい結果になるのでありまして、其の點は詰り強ひて此の土地所有者の權利の三十二條に入れて特に借地權を與へようとする、斯う云ふ所に大いに無理があるのではないかと思ふのです、さうして此の土地所有者は若し此の土地を續けて所有したいと云ふ場合には、借地權者との間に交渉を開始して、適當に其の借地權の消滅を圖ると云ふことにするのがまあ宜いのではあるまいか、殊に第十二條に依つて此の借地權者に對して催告して其の借地權を消滅せしめる方法迄認められて居るのですから、土地所有者が此の土地を續けて借りたいと云ふ時には、借地權者に交渉して相當の金を出して、其の借地權を消滅せしめると云ふ、斯う云ふ當事者間の問題として置いてもさう無理なことはないのではあるまいか、強ひて三十二條に突込まふとする所に法律を作る技術の上に於ても非常に困難な問題があると斯う云ふやうに私は考へます、是は併し土地所有者の權利を三十二條に入れるかどうか、準用するかどうかと云ふ問題になるのですから、其の點に何か御意見があれば伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=39
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040・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御説のやうに所有者と借地權者との間に於てお互ひに話合で解決が付きますれば是程結構なことはないのでありまして、強ひて三十二條の中にさう云ふものを置く必要はないかと思ひますが、まあうまく行かなかつた場合を一應豫想しまして土地所有者を入れまして、其の結果二條以下の準用と言つても、三條等が準用されるのも、準用の外の部分、他の權利者に付て準用せられると一緒に規定致しました關係上、所有者に付ては非常に準用される餘地が少いと云ふことになる譯でありますが、尚借地權の讓渡を受けた場合に、而してそれが混同に依つて消滅した後は、借地權の讓渡契約の解除した場合には復活するかと云ふ問題に付きましては、御意見も一つの理由があると思ひますが、唯普通に此の借地權を讓渡をした場合に於て、借地權がなくなるのは、結局借地權讓渡の効果の結果、混同と云ふことになつて消滅するので、借地權讓渡契約自體が解除に依つてなくなると云ふことになると、其の効果もなくなると云ふことを考へて行きますと、或は復活と言ひますか混同の効果もなくなる結果、復活と云ふやうなことも考へ得るのではないかと思ひまして、先程申上げたのでありますが、此の點まあ法律の解釋議論の點と考へます、さう云ふ意味に於きまして、三十二條に於て所有者を一緒につっくるめて準用することは、其の適用の範圍、準用の範圍も可なり狹いのでありまして、御説の通り分りにくい關係もありますが、まあ兎に角さう云ふ稀有な場合ではありますが、若し御説のやうに圓滿に解決出來れば結構でありますが、出來ない場合もありまするが故に其の場合を分けて、正確に、所有者の場合は何條を準用すると云ふ風に書けば宜しいのでありませうが、他の者と一緒に二十九條一項及三項の場合に付て準用しました結果、三十二條と云ふ風に、包括的に準用と云ふことになつて居りますので、其の點色々分りにくい點もあるかとも思ひますので、まあ其の儘でも必ずしも全然適用、準用がない譯でもありませぬので斯う云ふ風に規定を設けた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=40
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041・霜山精一
○霜山精一君 もう一點だけ今の同じ問題を伺つて置きます、土地所有者の今の問題になつて居る權利に付て、二條の準用のないこと四條の準用のないこと、五條の準用のないこと、五條の準用のないことは疑ひないのです、三條の準用がまあ今のやうにして變な準用で、辛うじて準用されると云ふ此の三條の後段に、「此の場合には前條」云々の規定を準用すると、前條云々の規定は、前條第一項、第二項乃至第四項と云ふもの、之を準用して居りまして、第三者に對抗することの出來ない借地權は此の三條の適用に付ては借地權のないものと看做すと、斯う云ふ風になつて居ります、此の關係を其の儘準用して宜いかどうか、第三者に對抗の出來ない借地權と云ふのは、對第三者の關係なんですね土地の所有者に對する關係に於ては對抗力ある譯なんです、ですから此の土地所有者の權利に對する關係に於ては、此の借地權の第三條を適用する關係に於て借地權のないものと看ると云ふことは、少しく當り失して居るんぢやあるまいか、第三者に對抗の出來ないやつは、そんなものは借地權と看ないから、そんなものを借地權と看ないで二條、三條を適用して行かうと、斯う云ふ問題になるんですけれども、今の其の問題は土地所有者と借地人との關係なんですね、其の間に於ては第三者に對抗することの出來ない借地權でも、土地所有者と借地人との關係に於ては立派な借地權なんです、之をないものとしてしまふ理由は少しもないものと思ふ、對抗の出來ない權利でも矢張りそれを讓受けるなら讓受ける、斯う云ふことにして宜くはないでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=41
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042・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 仰せのやうに此の第三者に對することが出來ないと云ふのは、本當の第三者との關係を主に目標として規定して居るのでありまして、所有者と借地權者と云ふ關係になりますと、第三者と云ふ關係は全然ないのでありまして、對抗要件を備へてなくても其の二人の關係に於ては借地權は否認することが出來ない關係になつて居りまして、若し假にさう云ふ形式的に第三者に對する對抗要件がないから此の場合借地權がないものと看做して地主が自ら使用權ありとして之を無視して使用すると云ふ風なことであれば、其の借地關係は地主との間に於ては否認出來ないのでありますから、必ずや債務不履行と云ふやうなことに依つて借地權者から權利の主張をされることになる譯でありまして、さう云ふ意味を以ちまして此の場合だけに於ては矢張り地主と借地權者との間に於ては其の借地權を否認出來ないものと思ひますので、即ち第二條の末項第三者に對抗することの出來ないものはと云ふのは、否認出來る場合は否認してさう云ふものは借地權者でないと見て、其の借地權の讓受けと云ふことは無視して直接地主から借受けると云ふ二條が働くと云ふだけの趣旨でありますから、偶偶問題になりましたやうに所有者と借地權者との間に於ては其の借地權を否認すると云ふことは所有者としては出來ない譯でありますから、此の場合に於ては所有者との間に於ては矢張り借地權のあるものとして取扱ふべきものと云ふ風に解釋すべきかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=42
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043・霜山精一
○霜山精一君 能く了解致しましたが、さう致しますると結局三條を準用する、三條を準用すると云ふことにして置きますと、結局三條に依つて前條の第二條の四項の規定も準用されると云ふ風な形になつて參りまして、法文の體裁から言つても其の點が放つて置けばさう云ふもの迄此處に入つたやうな法文の形になつて居りますが、法文上の一つの缺陷ではないかと私は考へるのであります、それは私の意見で別に質問ではありませぬ、私の質問は以上で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=43
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044・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 他に御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=44
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045・作間耕逸
○作間耕逸君 私は此の第三十二條の規定に付て實際問題として是が戰災地復興の前途に大いなる影響と消長を與へる關係の最も深い規定だと考へるのであります、先づ此の規定を實際の問題として當篏めて見ますと云ふと、舊令に依り居住者が假建築をした場合、それから居住者に非らざる第三者が地主の好意ある同意に依つて假建築を致したる場合、其の場合には第二條、第三條に依つて今度は其の假建築主が地主若しくは借地權者に對して借地權の設定或は借地權の讓渡、此の申出が出來ると云ふことになつて居る、そこで地主なり借地權者が幸に其の申出を拒絶しなかつたとすればどうなるか、此の場合には若干の權利金みたいなものを取つて、さうして依然として引續き其の假建築たるあの「バラツク」、あれを存續せしめなければならない、此の存續は都市計畫に依つて取拂ひにならぬ限りは、此の法律に依つても十年間、處が假建築主は隨分高い犧牲を拂つて大きな負擔をして今のあの建築をして居るのです、そこへ持つて行つて、又地主は借地權人に權利金を若干取られる、ですから是はもう強制的に法令の力、若しくは裁判の強制執行等で立退かせらるる限りは立退きはしませぬ、あの「バラツク」は餘り體裁の良いものでない、不體裁の儘不衞生の儘、今後幾年間依然として存續するのであります、それから今度反對に申出を地主や借地權者が拒絶した、斷つた、斷つたらどうなるかと云ふと、斷ると今の「バラツク」の假建築主は、それでは之を買取つて貰ひたいと云ふことを地主若しくは借地權者に申出ずる、其の買取値段は此の法律案の第三條二條に依りますと相當の對價になつて居ります、併しながら實際問題としてはもう少くともそれは建築費は主張する、或は時價はそれ以上だと云つて時價を主張するかも知れませぬ、少くとも建築費以下損をして手離さうとしないのは居住者の立場です、さうすると云ふと、假に東京都の實例を引きますと云ふと、どうしても少くもあの假建築ぢや先づ一坪二千圓は平均掛つて居ります、或は三千圓、最近に於てはそれ以上にも掛りませうか、先づ最低二千圓、假りにそれが十坪の假建築であると二萬圓、二萬圓を地主なり借地權者が拂はなければならない、拂つて今度其の買取つた假建築を、地主や借地權者はどうされる、之を取り崩して更地にしてしまへば、今度貸す者に對して土地の權利金、或は借地權の封價をどれだけ貰ふかと云ふと、假建築の價額は此の時勢でうんと暴騰致して居るにも拘らず、土地の價額或は土地の權利金の價額と云ふものは其の割合に値上りして居ないから、假に十坪の「バラツク」を買取つて、其の敷地を五割増の十五坪、倍に致しまして二十坪あつたとして、こんな小さい敷地はもう戰災都市特別計畫法でなくなつてしまふのでありますが、最低敷地を三十坪と致します、三十坪以上が認められたのですから…、三十坪と致しましても、土地は非常に地位の宜い所と都心を離れた地位の惡い所に依つて値打が違ふことは御承知の通り、平均して假に東京都の譬としますと、坪百圓の權利金とします、さうすると敷地三十坪として三千圓の權利金しか取れない、「バラツク」は東京都内何處へ行つても大抵建築費は同じことである、而もそれが一般的に暴騰を致して居る、土地は中心と邊鄙に依つて同じ東京都内でもうんと違ひまするし、其の上建物の割合迄騰貴して居ないから、さう云ふ結果になる、それぢや地主や借地權者はそれを取毀さずにどうするか、依然として貸家として貸して置くか、それぢや買取費に對して相當高い家賃を取らなければ貸せないのであります、採算が採れぬのでありますから、そんな高い家賃ぢや借り手はない、假に幸に借り手があつたとするならば、矢張り依然としてあの不體裁な「バラツク」が其の儘殘つて居る、取崩してしまつても、後の敷地に對してそれ程の權利金は取れない、斯う云ふやうな結果になりますることは、餘りに地主なり借地權者に取つて負擔が重過ぎる、不公平である、假建築主の保護に過ぎはしないか元來假建築主と云ふものは、今日誓約をして居るのです、自分等は假建築を致すけれども、都市計畫で本建築になる揚合は、何時と雖も無償で取毀し立退き申すべく候と云ふやうに誓約を致して居る、然るに其の誓約はもう實行せぬでも宜しいと云ふことになつて、却て買取の請求が出來る、是は「バラツク」の建築主から言へば豫期せざる喜びである、仕合せである、私は罹災者、當時の居住者の建築した「バラツク」を保護しておやりになると云ふ此の法律の精神には深く敬意を表するものでありまするけれども、之を實際に當嵌めました經濟上の問題としては、どうも地主、借地人は豫期せざる損失となり、それから「バラツク」の建築主は豫期以上の利益を受くる殊に地主の好意ある同意に依つて建てさせて貰つた第三者、是は戰災者ではない、戰災者の場合もあるし、戰災者でない揚合もある、それ等は地主に對して戰災者と同樣の主張をすることが出來ると云ふことになりますと、俗に言へば情を仇で返すと云ふやうな結果にもなるのであります、是は此の立案の當初から、或は其の時には、まださう云ふやうな經濟上の變則的現象は現れて居ない當時の御意見に基かれたかとも思ひまするけれども、之を今日の事態に當嵌められて、餘りに假建築主の利益に過ぎ、餘りに其の敷地を提供した借地權者或は地主の負擔が過重に失すると云ふやうな御見解が生れて來ませぬでしたか、如何なものでせうか、之を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=45
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046・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 御尤もな御意見でありますが、實際現在の状態に於きまして、要するに燒跡に「バラツク」を持つて居る者は居住者も相當あらうかと思ひますが、居住者であつた者以外の者が其の罹災當時の實情から、不法ではいけませぬが、所有者の許諾、所謂情に依つて使用して、「バラツク」を現に持つて居る者が相當の割合にならうかと思ふのでありまして、現に行き所がなくて、さう云ふ情に依つて「バラツク」を持つて、現に本據を其處に置いて生活をして居ると云ふものに付きましては、矢張り居住者であつた者が其處に「バラツク」を持つて居つた者と同樣に現在の状態から見て矢張り保護してやる、戰災者と同じやうに保護してやつて宜いのぢやないか、或はそれ等の者が多く何等かの戰災を受けて、行き所がなくて、其處に地主から借りて居る者と云ふ風に見られる場合が多からうと思ひまして、居住者と同じやうな保護を與へることに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=46
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047・作間耕逸
○作間耕逸君 私の御尋は、地主の好意ある同意に依つて家を建てたものを罹災者と同樣に扱はれるのは、餘り好過ぎはしないかと云ふことばかりを御尋ねした譯ぢやないのです、罹災者の假建築としても、今の地主、或は敷地の借地權者との間に經濟上甚だ負擔の不權衡な問題を生じはしませぬですか、それに對する御見解は如何でありますかと云ふことを伺つたのであります、其の御答も得たいのでありまするが、それに關聯して私は前回以來、其の土地に縁故のない者でも復興に適當なる建物を作りたい、で、其の人に借地權の讓渡若しくは借地權の設定を認めて下されば、斯う云ふ今の假建築の「バラツク」は、私の必要なる範圍内にあるものは皆私は買取りませう、それで、「バラツク」の建築主にも御迷惑を掛けない、買取ります、假に地主或は借地權者がそれを買取られたあとならば、あなたの出された代金は私の方で全部納めます、あなたの方に御損は掛けない、さうして私の大いなる敷地の下に永遠の設計をして、さうして復興に適當なる大きな「ビルディング」を作つて、或は「アパート」を作る、さうして今の此の居住者、或は居住者でなくとも假建築の持主、之を皆收容しませう、だから斯んな不體裁な小さな假建築は皆取拂つて宜しいでせう其の對價が要れば、代金が要れば私の方で資本の中からそれを支辨します、さうして尚大きな「アパート」ですから、其の方々を收容する位のことは造作もなく出來るから收容して上げると、若し斯樣な復興第一主義の目的を以て、此の借地權の讓渡、若くは借地權の設定を申出でた者があれば、之を寧ろ認めてやつた方が復興の前途に非常に便宜である、且必ずしもそれが現在の「バラツク」の持主假建築主に迷惑を與へるものでないと云ふ見解を持つて居るのでありまするから、私は是は此の場合申上ぐるのは早いかも知れませぬが、若し委員會に許されるならば之に對してさう云ふ趣旨だけは明かにして戴きたいと云ふやうな希望を持つて居るのであります、で之に對して政府の御意見は如何と伺ひたい所でありますけれども、それは又其の時の機會に讓りまして、甚だ意見を述べて失禮でありますけれども、質問としては此の程度に止めて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=47
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048・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 他に御質問はございませぬか、他に御質問もなければ此の法案の逐條審議は一應終つたことに相成ります、一應逐條審議は終りましたが再び此の法案の總括的な御質問に戻りまして、御希望の方は御質問戴くことに致したいと思ひますが、特に先般の村田男爵から大臣の御出席を御希望になつて居るやうでございますが、大臣の御出席を御希望のやうでしたら、明日御出で願ふやうに取計ひまして、今日は奧野政府委員に御質問の點がございますれば總括的御質問願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=48
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049・村田保定
○男爵村田保定君 只今三十二條に關しての作間委員の御發言は、此の法案に付て重大な意義を持つて居る問題と思ひます、其の御趣旨、此の委員會としても相當に尊重して何かの是は…少し今申上げるのは早いかも分りませぬが、さう云ふやうな線に沿つて戴くことを今から私希望して置きます、それに關聯して此の前私耕作權の問題でちよつと御尋ねしたのでありますが、政府委員に御尋ねしたいのは耕作權の問題も左樣でありましたが、今の三十二條の場合も同じやうに思ひますが、大體之をどの位の社會的範圍で以て適用される客觀的情勢と云ひますか、實情があるのか、それの御調査を詰り實情に基いて此の法律が適用されると云ふ社會に對する影響と云ふことはどの程度迄御考になつたのか、實質が權利關係の規定は無論重要なことでありますが、それの及ぶ範圍と云ふことが先づ第一ではないかと思ひます、先日ちよつと伺ひました處が、はつきりと其の御調査が出來て居らなかつたやうに伺ひましたので、大體無論此の御調査が出來て居らなくとも急いで處理する必要上から此の法律を御立案になつたものと思ひまするが、根本は其處の點が非常に重大な此の處理法案の取扱に非常に大きな影響を持つと思ふ、先程の作間委員の御意見などもさう云ふ意味で大きい影響を持つて來るのではないかと思ふのでありますが、總て法律の立案に付てはさうであらうと思ふのでありまするが殊に斯う云ふ場合に實際の實情の調査と云ふことが兎角疎かにされ勝ちだと思ふ、さう云ふことは甚だ不仕合せだと思ひまするが、從來の例から申しましても、先日の御答から申しましても、多少さう云ふ嫌ひがありはしないかと思ひますが、其の點に付て御當局の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=49
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050・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 罹災跡地の關係に付きましては、先般の戰時罹災土地物件令に一應の權利關係を規定して居るのでありますが、其の後をどうしても之を何とか處理しなければならないと云ふ必要と、一應のどう云ふ方向に向つて罹災跡地の權利關係を處理し安定せしむべきかと云ふ骨格としての權利關係の確定を致した次第であります、實際の跡地の法律關係に付きましては、色々各區役所等に依頼して調査したものもありますし、現在調査中のものもあります、で實際に今居住者と或は先程作間委員の問題にされました第三者との關係の割合と云ふやうなものも全國的には到底調査が行屆かないのでありますが、東京都内の各區と云ふやうな所で非公式には調査致して居ります、而して此の法律全體は大體のさう云ふ罹災跡地の罹災者等に斯う云ふ權利がある、即ち地主或は借地人、居住者、罹災建物の借主と云ふやうな各當事者間の權利關係に付ての一應の骨格的權利關係を確定して居るのでありまして、方向を示して居る程度でありまして、勿論實際問題としては是が總て此の通りの權利を主張して、爭を起し裁判所の問題になるとは考へて居りませぬが、其の前提に於て適當に御互ひに話し合ひ、或は調停と云ふやうなことに依つて解決して行くものと考へて居るのでありまして、唯ぎりぎりの最後の線に行くと、何處にどう云ふ風に法律的に保護され、準據して行くべきかと云ふ目安、さう云ふ調整を此の法律に依つて規定しようとするものでありまして、個々の具體的な紛爭なり、色々な關係は御互ひの話し合等に依つて圓滿に自ら解決して行くものと思ふ、又さう云ふことを希望して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=50
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051・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 他に御質問はございませぬか、別段御質問がございませぬければ、本日は此の程度に於て散會を致します、明日は午前十時から開會致しますが、大臣の御出席を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=51
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052・奧野健一
○政府委員(奧野健一君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=52
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053・肝付兼英
○副委員長(男爵肝付兼英君) 本日はそれでは散會致します
午前十一時四十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=53
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054・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 高木正得君
副委員長 男爵 肝付兼英君
委員
侯爵 東郷彪君
侯爵 嵯峨實勝君
伯爵 東久世通忠君
子爵 森俊成君
子爵 大久保教尚君
霜山精一君
男爵 村田保定君
竹下豐次君
原泰一君
中島徳太郎君
作間耕逸君
政府委員
司法事務官 奧野健一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X00719460719&spkNum=54
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