1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月二十七日(土曜日)午前十時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=1
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002・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 是より罹災都市借地借家臨時處理法案特別委員會を開きます、今回「辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案」が此の委員會に併託されました、從つて是より同法案に付て審議致したいと存じます、先づ司法大臣より提案の理由を御説明願ひたいと存じます、司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=2
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003・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 「辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案」の提出理由に付きましては、本會議に於きまして御説明申上げた通りでございまするが、更に敷衍致しまして其の理由を御説明申上げたいと存じます終戰に伴ひまして、海外からの引揚者は日々其の數を増加して參つて居りますることは御承知の通りであります、是等の同胞は突如として故國に引揚を餘儀なくされた者でありまして、其の多くは多年其の地で培ひ來りました生業を一朝にして失つてしまひ、引揚げた後に於きまして尚相當なる職を得て業に就くことは、今日の場合甚だ困難な情勢でありまして、是等の者に對しまして救濟援護の必要の極めて切なるものがあるのでございます、本案は引揚者であつて從來朝鮮に於ける司法の協力者と致しまして朝鮮辯護士の令に依る辯護士たる資格を有する者及び朝鮮辯護士試補たる資格を有する者に對しまして、辯護士法に依る辯護士又は辯護士試補たるの途を拓かむとするものでございます、先づ第一條に於きましては、朝鮮辯護士令に依る辯護士たる資格を有する者は、辯護士法に依る官制上の辯護士審査委員會の銓衡に掛けまして、之に通つた者には辯護士法の辯護士試補として、一年六箇月以上の實務修習を了へ、考試を經ることなくして、辯護士法の辯護士たるの資格を附與することを規定致して居るのであります、而して辯護士審査委員會は、現在辯護士法第十三條第二項に依りまして司法大臣の諮問機關として、辯護士會の行つた辯護士の登録若くは登録換請求の進達の拒絶又は退會の命に關する不服申立の當否を審査することになつて居りますが、今回本案に依つて此の審査委員會の機能を擴充して、獨自の銓衡機關ともする積りであります、之に伴ひまして官制の改正を必要とすることは申す迄もないことであります、銓衡することとしたのは、朝鮮辯護士令に依る辯護士の有資格者でありましても、例へば、永年辯護士業務から遠ざかつて居て法律知識や實務に疎いやうな者は、直に正義の擁護者として此方に於ける辯護士業務を營むことを得せしめることはどうかと思料されますからであります、次に第二條では、第一條の銓衡に漏れた者と雖も、更に辯護士法に依る實務修習の機會を與へ、考試を終ることに依つて、將來辯護士となることを得せしめることとすると同時に、朝鮮辯護士令第五十一條の規定に依る朝鮮辯護士試驗は此方の司法科試驗又は辯護士試驗と略略同程度のものと思はれますので、朝鮮辯護士試驗の合格者で朝鮮辯護士試補たるの資格を有する者にも、同樣に辯護士法に依る實務修習の機會を與へ、考試を經て、將來辯護士たり得るの途を拓かむとする趣旨を規定して居るのであります、更に第三條に付て申上げまするが、禁錮以上に處せられた者や懲戒の處分を受けた後一定期間經過しない者は、朝鮮辯護士令に依る辯護士及び辯護士法に依る辯護士たる資格を缺くのであり、又朝鮮辯護士試驗の受驗資格が無く從つて朝鮮辯護士試補となり得ない譯であります、處が所謂政治犯を犯した者に付きましては、昨年十月公布された勅令第五百七十九號に依りまして、刑の言渡しが將來に向つて效力を失ひ、此の恩典に浴し得なかつた者も、更に其の後に公布された勅令第七百三十號(政治犯人等の資格回復に關する件)に依りまして、將來に向つて人の資格を回復して居るのでありまして、他方懲戒の處分を受けた者と致しましても、過般大赦令と共に公布されました勅令第五百八十二號(官吏、官吏待遇者等の懲戒及び懲罰の免除に關する件)勅令第五百八十五號(公證人、辯護士、司法書士、辨理士及び計理士の懲戒免除に關する件)等に依つて將來に向つて懲戒を免除されたのでありまするから、是等の恩典に浴した政治犯は將來に向つて辯護士又は辯護士試補たる資格を回復して居る譯であります、殊に政治犯と申しましても、政治的、社會的、思想的、宗教的自由又は言論、著作、印行、集會若くは結社の自由を制限する法令で、而も終戰後廢止又は停止されるに至つたやうなものにありましては、嘗て之に違反した廉で拘禁又は有罪の言渡等を受けた事實がありましても、斯かる事實があつたと云ふ理由で辯護士審査委員會の銓衡が左右されるべきものでないことは申す迄もないのでありますが、事人權の保障に關することでありますので、先づ此のことを法文上明かに致したのであります、それと同時に、右申上げました法令の違反者は、恐らく全部前申し述べました恩赦等に依つて救濟され、從つて辯護士たる資格を有することに於て何等妨げがなくなつて居ると思料されるのでありまするが、何分にも内外地に於ける數多い法令の違反のことでありまするので、萬一救濟漏の場合に、違反者たることを理由として辯護士としての缺格者とすることなからしめると共に、禁錮以上の刑に處せられた等の爲に受驗資格を缺き、從つて朝鮮辯護士試驗の合格を取消され延いて辯護士試補たる資格を失ふことなからしめることと致したのであります、終りに第四條でありますが、前三條は辯護士及び辯護士試補の資格に關する特例を爲すものでありますので、濫りに之を擴張することは目下の所辯護士の品位の保持等の點から考へても最も考慮を要する問題であることは申上げる迄もない所でありますが終戰に伴ふ引揚者の救濟援護の爲是等引揚者に限り此の特例を認めることを第四條に於て明かにしたのであります、尚「引揚げ」と云ふことに關しては、朝鮮からの引揚者を狙つたのでありますが、例へば朝鮮に於て辯護士開業中應召して、終戰後朝鮮を經由することなくして復員する者もあるかと考へられますので、疑義を避ける爲引揚地を敢へて朝鮮に限定しなかつたのであります、又本州、北海道、四國、九州又は命令を以て定める其の附屬島嶼に限定したのはそれ以外の地域に對しましては、曩に聯合軍最高司令部から日本政府の統治權行使が禁止されて居り實際上我が國の司法の協力者として辯護士業務を營むことが出來ない状況にあるからであります、以上本案提出の理由の概要を御説明申上げたのであります、何卒愼重御審護の上速かに可決せられむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=3
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004・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 是より本案に付て質疑を始めたいと存じます、僅かな條數でございますから、總括的及び逐條的どちらでも宜しうございます、御質疑はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=4
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005・霜山精一
○霜山精一君 朝鮮辯護士令に依つて辯護士たる資格を持つて居る者、或は朝鮮辯護士試補たる資格を持つて居る者が内地に引揚げて參りました場合に、之を辯護士たる資格を與へて此の引揚者の保護をすると云ふ此の法律の趣旨には全幅的に賛意を表する次第であります、唯是が朝鮮の辯護士に限つて保護をする、又内地に歸つて參りました場合に辯護士としての資格を與へると云ふ點に於て保護を與へると云ふのでありますが、朝鮮以外に於きましても、内地から内地人が出掛けて參りまして司法事務に從事して居つた者は非常に澤山ある次第でありまして、臺灣に於ける判事、檢事、辯護士の如き、或は又關東州に於ける判事、檢事、辯護士がありますが、それから戰爭の始まりました後には、占領地に多數の判檢事、書記のやうなものを送り出した、是が矢張り既に大多數は引揚げて來て居ると思ひますが、まだ是から引揚げる者もあるかと思ひます、其の外支那に於きまして司法事務に從事して居つた者も少なくないと思ひます、例へば滿洲に於ける辯護士或は判事、檢事、書記もありますし、或は又蒙疆方面に於ける者もあります、或は北支、中支、南支等に亘つて色々、辯護士も居りまするし、判檢事の如き者が居ります、是等の多數の引揚者が戻つて參りまするが、是は内地に歸りましてどう云ふ保護を受けるかと云ふと、朝鮮の辯護士は辯護士たる資格を與へられて一應の保護は受けますが、其の他の者に付てどう云ふ保護を受けるかと云ふことは必らずしもはつきりして居らないので、辯護士たる資格を與へられて保護を受けるのか、それだけに止まるのか、或は又内地の判事、檢事として再び就職し、或は書記として再び就職する、斯う云ふことにして之を救濟することにしておいでになるのかどうか、此の點は判事、檢事の定員と云ふものがありまするから、無暗に引揚者を採用すると云ふことは必らずしも出來ないかも知れませぬ、最近に於きましては、戰時中廢止されました區裁判所の復活とか、支部の復活或は支部の權限の擴張と云ふやうなことに依りまして、相當程度の判檢事、書記の増員が豫想せられると思ふのであります、さう云ふ風に定員の餘裕のある限りに於ては、是等の引揚者を司法部自身が之を採用して救濟せらるることが最も手近な救濟ではないかと考へて居ります、是等の點に關する司法當局の御考へを御尋ねして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=5
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006・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、朝鮮以外の外地から引揚げた司法官、是は書記を含めて申上げるのでありますが、それに付きましては、司法當局と致しましては大いに考慮を拂つて、現に是等の引揚司法官に付ては、内地の判事檢事に就職して居る者が多分にあります、又書記等に付ても同樣であります、出來るだけ其の人達を任用したいと云ふ方針で實行に着手する次第であります、次に辯護士でありますが、御承知の通り朝鮮に於きましては内地の辯護士法が適用になつて居らないのでありますので、已むを得ず此の法案を提案した次第であります臺灣、滿洲其の他に於きましては其の土地で辯護士をして居る人は矢張り内地に於きましても辯護士たる資格を有して居る、それ等の人は内地で辯護士たることは毫も差支ありませぬから、此の法案から拔いた譯であります、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=6
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007・霜山精一
○霜山精一君 先程の質問と同じなのでありますが、相當數の引揚者があらうかと考へるのでありますが、司法省でも、それを十分に定員内で復員させる餘裕があるのでございませうか、どうでございますか、其の點を一つ承りたい、現在の定員を以てして、多數の引揚者を全部復員して判檢事、書記に採用し得る定員の餘裕を持つて居られるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=7
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008・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、是は御承知の通り定員があるのでありますが、定員外に置いて空き次第其の人を埋めて行かうと云ふ方針で居ります、現在でも相當數はもう、就職して居ります、南方司政官として外地で仕事をして居つた人は殆ど大多數もう判檢事に就職して居るやうな現状であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=8
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009・霜山精一
○霜山精一君 外地から引揚げて來る者は定員外でも採用して宜いと云ふ何か法制上の根據がおありになるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=9
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010・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 南方からの歸還者に對しては確か一年間は定員外に置けると云ふ勅令がありますが、其の外の中國、滿洲等からの歸還者に付ては今ちよつと記憶がはつきり致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=10
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011・霜山精一
○霜山精一君 朝鮮に於ける辯護士たる賃格を有する者がどの位な數に上つて居るかと云ふことは、只今受取つた表で大體分りましたが、是が内地に歸りまして辯護士となれる譯であります、現在に於きまして内地の辯護士の數はどう云ふ風になつて居るのでございませうか、是だけの者が朝鮮から歸つて來て辯護士となつて、辯護士の過剩になると云ふやうな状態に或は陷るかどうかと云ふことを私は心配して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=11
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012・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 僅かな數字でありますから大したことはなからうと思ひます、今御疑問の過剩かどうかと云ふ、此の過剩と云ふことは相對的のことでありまして、仕事がどんどんあれば幾ら辯護士が居つても過剩にならないのであります、數が少くても仕事がなければ是は過剩になるのであります、其の點がはつきりしなければ分りませぬが、現状と致しましては、斯樣な少數の者が日本に歸りましても從來の辯護士に對しての影響と云ふことは少いでありませうし、又是等の人が業務を始めると云ふことに付きましても別段非常に苦しむと云ふやうなことではなからうかと存じます、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=12
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013・霜山精一
○霜山精一君 現在に於ける内地辯護士の數をちよつと御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=13
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014・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 正確な數字は御答へ申上げることが出來ませぬが、全國を通じて約七千名だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=14
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015・霜山精一
○霜山精一君 私は能く知らないのでありますが、辯護士法の改正と云ふやうな議があると云ふことを多少聞いて居りまするが、此の問題は必ずしも此の朝鮮辯護士に直接關係のあることではございませぬが、多少の關係がない譯でもありませぬが、若し此の機會に、辯護士法改正の議があるかないかと云ふ問題…司法制度としては裁判所構成法以下非常な大改正をしなければならぬ現状でありますから、恐らく辯護士法に對しても何等かの改正が企てられるのではないかと考へて居ります、其の改正をどう云ふ方面に持つて行くかと云ふことは問題でありまするが若し司法當局に於きまして其の點の御考へ、御腹案がございましたならば、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=15
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016・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御承知の通り憲法草案實施の曉に於きましては、有らゆる部面から司法部面に於ける法制の改革と云ふことは行はれなくてはならぬのであります、從ひまして辯護士法に付ても數々改正しなければならぬ點があると存じて居ります、其の點に付きましては目下司法法制審議會に於て、裁判所構成法其の他の法案と共に審議されて居る所かと考へられます、其の内容に付きましては今私が申上げることは出來ないのであります、又司法本省としても或一定の改革案は練つて居るやうでありますが、まだ成案を得る迄に至つて居りませぬので、此處で言明致し兼ねると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=16
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017・霜山精一
○霜山精一君 第一條に關することでございまするが、第一條に依りますと、此の朝鮮辯護士令に依る辯護士たる資格を有する者を辯護士法第十三條第二項に規定する審査委員會の銓衡に掛ける、斯う云ふことになつて居りますけれども、此の辯護士審査委員會と云ふものは本來斯う云ふ銓衡機關ではないのであります、ですから只今も御説明の通り、何か官制を改正して斯う云ふ銓衡が出來るやうにすると云ふやうな御話でありまするが、それが果して官制の改正に依つてさう云ふことが出來るだらうかと云ふことは一つの法律問題ではないかと思ふ、此の辯護士審査委員會と云ふのは、結局辯護士の登録又は登録換の進達を拒絶せられた場合、それから退會をさせられた場合、其の不服の申立の當否を審査する機關、是が辯護士審査委員會であります、さうして此の辯護士法に依れば、司法大臣の諮問に應じてさう云ふ不服の申立の當否を審査すると云ふことになつて居る、さうして其の審査委員會に關することは勅令で決めることが出來る、即ちさう云ふ不服の申立を審査する辯護士審査委員會と云ふものは勅令で決められる、さう云ふことになつて勅令で決めてある譯であります、即ち勅令が出て官制が決められて居る譯であります、さう云ふ不服の申立を審査する機關が一躍して銓衡する機關になるとするには、是は勅令の改正だけではいけないのぢやないか、斯う云ふ銓衡をする機關を設ける、其の機關に付ては勅令で決められる、斯う云ふことを法律で決めなければ、此の審査委員會に此の銓衡の仕事を併託する譯にはいかない、其の點が私は一つの疑問ではないかと考へて居るのであまりすが、どう云ふやうに當局としては御解釋になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=17
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018・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 御答へ致します、只今御疑問の點は私共事務當局と致しましても其の點を最初疑問に致しまして、現行辯護士法の十三條を修正する必要があるのではないかと云ふことを研究を致したのでありますが、能く考へて見ますると、現行辯護士法の十三條に依つて確かに審査委員會と云ふものが設けられることになつて居りまして、現在の審査委員會は第十三條の目的のみを有する審査委員會でございまするけれども、今般提出致しました法律案に依つて、此の法案が通過致しますれば、其の限りに於て現行辯護士法が修正されることになりまするので、本法案の第一條に依つて新に審査委員會の目的が追加せられることとなりまするので、別に現行法の十三條を訂正しなくとも、此の特例に依つて審査委員會の目的が當然附加されたことになると云ふ風に解釋が出來ますと思ひまして、別に現行法には手を觸れなかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=18
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019・霜山精一
○霜山精一君 此の法律の御趣旨は分りましたが、法律の規定に依つて當然辯護士法の十三條が改正になつたと云ふことになるのでしたら、官制の改正を必要とする理由もないやうに思ふのですが、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=19
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020・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 仰せの通り此の辯護士審査委員會の目的に付ては、本法案の成立と同時に追加せられますから、官制に於て特に改正する必要はないのでありまするけれども、現行の審査委員會が新なる目的を附與せられます結果として、其の機構をどうしても擴充しなければ十分な運營が出來ませぬので、さう云ふ意味合に於て官制を改正致したい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=20
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021・霜山精一
○霜山精一君 さうすると官制の改正と云ふことは、此の機構を擴大すると云ふことに限られる譯なんですか、或は又此の官制に依りますと、官制の第一條に「辯護士審査委員會は司法大臣の監督に屬し其の諮問に應じ辯護士法第十三條第一項の規定に依る不服の申立を審査す」と斯う云ふやうに書いてある、此の第一條は別に改める御意思はないのでせうか、機構だけの問題なんでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=21
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022・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 其の點は確かに仰せの通り第一條に於きまして、司法大臣の監督に屬して審査委員會はどう云ふ事務を掌るかと云ふ點に付きまして、一號の他に第二號として、本法案の第一條の規定に依る銓衡に關する事務と云ふものを官制の第一條の第二號として附加致したいと考へて居ります、尚詳しく申上げれば、其の銓衡に關する事務に付ても官制の中に若干追加しなければならぬ斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=22
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023・霜山精一
○霜山精一君 さうなると第一條に第二號が追加されることになる詰り權限を官制に書く譯ですね、權限を官制に書くに付ては法律の委任がなくてはいかぬ譯です、詰りさう云ふ權限をすることに付ては、法律に依つて勅令に委せる、さう云ふ權限のある審査機關を作ると云ふことに付ては、法律に依つて勅令に委ねると云ふ基本があつて初めて其の權限の擴張と云ふことが出來るのであつて、唯此の官制を改正するだけでは勅令を以て法律を改めると云ふことは出來ない、法律的の權限を書かなければいけないのぢやないかと私は思ふ、此の審査委員會の權限の擴張に付ては勅令で以て別に決める、斯う云ふ規定があつて初めて其の官制の改正と云ふものが勅令で出來る、斯う云ふことになるのぢやないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=23
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024・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 此の立案當時、私共の考と致しましては本法に依つて審査委員會の權限が第一條に依つて追加される、其の法律に依つて權限が付與された審査委員會、其の審査委員會の機構及職務等に付ては、辯護士法第十四條に依つて勅令を以て之を定めれば其の連絡が十分付くのではないか、斯樣に考へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=24
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025・霜山精一
○霜山精一君 只今の官制の改正問題は私大變疑問と思ひますけれども、まあ御説明を承つて、是で措くことに致します、次に第一條に於て「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」の中には朝鮮に於ける判事、檢事たりし者を包含して居るのでありますか、朝鮮に於ける判事、檢事たりし者は多くの場合に於ては内地に於ける辯護士たる資格を持つて居るのではないかと思ふのです、斯う云ふ風に「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」と云ふ中に、さう云ふ判檢事が若し入ると云ふことになると、又それを銓衡すると云ふことになる、當然資格を持つて居る者を銓衡すると云ふやうな結果になると思ふのですが此の「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」と云ふ中には、朝鮮に於ける判檢事の如き、内地に於ける辯護士たる資格を持つて居る者を包含しない趣旨かと思ふのですが、其の點が條文上は規定の上では明かにされて居らないやうに思ふのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=25
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026・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」の中には、仰せの通り内地に於ける辯護士たる資格を有する者及内地に於て判檢事たる資格を有する者は全部含むことになるのでありますが、本法に於て救濟される「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」の中には入つて來ないのでありまして、それは申す迄もなく、内地に於て既に内地の辯護士たる資格があつて、又判檢事たる資格を有する者でありますから、本法に於て救濟する範圍以外に屬するのでありまして、第一條の銓衡を經て内地の辯護士たる資格を新たに得むとする者には、内地の辯護士たる資格を有する者及判檢事たる資格を有する者は當然除外されるものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=26
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027・霜山精一
○霜山精一君 御趣旨は能く分りましたが、第一條に「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」と斯う書いてありますから、文字の上ではさう云ふ者を包含して居ることになつて居る、私はそれがいけないと云ふのです、それを除外して規定を設けることは譯のないことですから、當然資格を持つて居る者は除外するのだと、斯う云ふことならば分るのですけれども、廣く「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」と斯う云ふ風に廣い文字を使つて居りますから、其の點に於て誤解を生ずる虞があると、斯う云ふ風に私は考へる発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=27
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028・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 御疑問の點は能く分りましたが、第一條に於て冐頭に「朝鮮辯護士令による辯護士たる資格を有する者」、此の「者」の中には確かに内地に於て既に内地の辯護士たる資格を有する者、判檢事たる資格を有する者は總て包含されることになりますけれども、其の一條の中で「同法第二條第一項第二號の規定にかかはらず」と云ふ此の文字に依りまして、第二條第一項第二號の規定にある即ち内地の辯護士たる資格のある者は、其の意味に於て本法から當然除外されることになる斯樣な解釋の下に、冐頭の方からは除外しない、本文をずつと讀んで戴けば、自然そこにどの部分が銓衡を受ける部分で、どの部分が銓衡を受けなくても宜い部分かと云ふことが、自ら出て來るのではないか、斯樣な解釋で簡單に致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=28
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029・霜山精一
○霜山精一君 第二條に於きまして「同令第五十一條の規定による朝鮮辯護士試補たる資格を有する者は」云々と、斯う云ふ風に規定してありまするが、五十一條の規定に依らない普通の朝鮮辯護士試補に付ては、此の第二條の適用はないと私は考へますが、如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=29
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030・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 朝鮮辯護士令第五十一條に依つて規定されて居りまする「辯護士試補たる資格を有する者」と云ふのは、從前の規定に依つて、即ち朝鮮辯護士令と云ふものが制定される前から朝鮮辯護士試驗に依つて資格を得て居る者がありまするので、さう云ふ朝鮮辯護士試驗が其の後も存續して居りましたので、從前の規定に依る朝鮮辯護士試驗に合格した者は朝鮮辯護士試補たる資格を尚有すると云ふ特例が、朝鮮辯護士令の第五十一條に依つて設けられて居るのでありまして、其の點を本法案の第二條に規定致したのであります、朝鮮辯護士試補と云ふのは、是は朝鮮辯護士令の第三條に「朝鮮辯護士試補は辯護士法に依る辯護士試補たる資格を有する者なることを要す」と云ふ規定がございまするので、朝鮮の辯護士試補は、朝鮮辯護士令制定後は總て内地の辯護士法に依つて辯護士試補たる資格を有して居りまするので、特に掲げなくとも、内地の辯護士試補たる資格を當然有して居りまするので、第二條に於ては特に救濟規定を設けなかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=30
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031・霜山精一
○霜山精一君 第二條の問題は能く分りました、第三條の問題を少し伺ひたいのです、第三條は色々な細かい點が疑問になるのですが先づ「拘禁され」と云ふ風に書いてありますが、罪を犯した廉で拘禁された者は、其の理由に依つては辯護士又は辯護士試補たる資格を有しないと云ふことを前提として此の規定が出來て居る譯です、拘禁と云ふことは別に少しも資格喪失の原因になつて居らないのです、「拘禁され、有罪の言渡を受け」と續けて讀めば幾らか意味があるかも分りませぬが、「拘禁され」で切れて居ります、拘禁されて居る者は「其の理由によつては前二條の場合において」云々、斯う云ふ風になりますから、何か拘禁されたと云ふことが資格喪失の原因であるかの如く此の規定に依つては見える譯です、併しながら他の法律を讀んで見ましても、拘禁に依つて斯う云ふ資格を失ふと云ふことは何處にもない、拘禁と云ふことが特に此處に出て來た理由はどう云ふのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=31
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032・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 御答へ致します、仰せの如く拘禁と云ふ理由に依つて資格の有無が定まるのではございませぬけれどき、嘗て政治犯を犯したと云ふことに依つて拘禁せられ、又何日間拘禁或は何年間拘禁せられたと云ふことの爲に、銓衡に際して何等か不利なる取扱を受くることのないやうに、其の意味に於て斯樣な廣い規定を設くる方が人權保護になるのではないかと云ふ考の下に、有罪のみならず有罪の言渡の外に、有罪の言渡は受けなくとも、政治犯を犯した爲に拘禁された、其の理由に依つて不利なる取扱は毫も受けるものではないと云ふ、當然のことではありまするが、當然のことを掲げて、さうして人權保護に全からしめようと斯樣な考で廣く規定致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=32
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033・霜山精一
○霜山精一君 其の點が御尋ねしようと思つて居つた點なんでございますが、「その理由によつては、前二條の場合において辯護士又は辯護士試補たる資格を有しないとすることを得ない。」斯う云ふ風に規定してありまして、「前二條の場合において」と云ふことが必ずしも明かでない、「前二條の場合において」と云ふのは、第一條に付て云へば、朝鮮辯護士令に依る辯護士たる資格を有する者か否かと云ふ問題に付て、資格を有しないとすることを得ないと斯う云ふ意味なのか、或は第一條に付ては銓衡する時に、其の銓衡の標準を斯う云ふことに置いてはいかぬと云ふ意味なのかがはつきりしない「前二條の場合において」と云ふのは、第一條に付ては「場合」と云ふのは何を抑へて居るのか、「前二條の場合において」と云ふのは第一條は資格の有無の問題なんですから、第一條の斯う云ふまあ思想的の何かあつたから辯護士たる資格を有しない、斯う云ふ犯罪があつたが爲に辯護士たる資格を失つて居る、だから辯護士たる資格を有する者でないけれども、此の第三條の規定に依つて資格を有する者だと解釋しなければならぬ、斯う云ふ風に適用されるのか、或は「前二條の場合において」と云ふのは、銓衡する場合に、さう云ふ犯罪を考慮に入れてはならぬと斯う云ふ意味に解釋するのか、斯う云ふ點が「前二條の場合において」とだけ書いたのでは明瞭でない、其の御解釋は本來當つて居るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=33
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034・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 第三條のやうな規定は、從來斯樣な分り切つたやうな規定を丁寧過ぎる程規定すると云ふやうな前例は今迄殆どないのでありまするが、目下の新たなる情勢に即應して斯樣な特別な規定を設けるやうになつたのでございますが、此の規定自體が一口で申上げますれば、政治犯に依つて曾て拘禁された、或は有罪の言渡を受けた、斯樣な者は、今後内地の辯護士の資格、或は辯護士試補たる資格を得るに付て何等不利益を蒙らない、不利な取扱を受けないと云ふ趣旨で規定致したのでありまするが、前文の方が長く、さうして終りの方が只今仰せのやうに餘りに簡單に書きましたので、銓衡に際しての注意規定を言つたのか、或は缺格した者を又有資格者として資格を附與する意味の規定であるのか、どちらを狙つて居るのか、疑問の餘地がありますのは御尤でありまするが、立案の者の考へとしま致しては、銓衡に際して、曾て左樣な處分を受けた者を不利な取扱をしないと云ふことと、尚もう一つは、政治犯を犯してさうして禁錮以上の刑に處せられた者は、申上ぐる迄もなく辯護士又は辯護士試補たる資格を有しなくなるのであります、所謂缺格者になるのでありまするが、是迄昨年の十月十七日の恩赦令に依りまして大部分は恩赦になつて居るのであります、其の後落ち零れの者に對しましては昨年末に政治犯人の資格回復に關する特別の勅令が公布せられましたのでそれ等の者も復權致したのであります、内地に關する限りに於きましては、政治犯人は總て復權したと申しても差支ないのであります又事務當局の方でも全部網羅する趣旨に於て立案致したのであります、處が其の後能く考へて見ますると、關東州其の他外地に於きまして處分を受けた者が、觀念上まだ復權しない者が幾らか殘り得る餘地を發見致したのであります、若しさう云ふ殘つて居る者が實際上萬一ありまして、さうして其の人達が内地に復員し、而も辯護士又は辯護士試補たる資格を得むとする者に對しましては、本法の第三條に依つて左樣な者にも資格を回復させたい、斯樣な意味合も含んで居るのでありまして、結局只今御疑問になりました點は、銓衡に際して不利な取扱をしないと云ふことと、今尚若しも曾て政治犯を犯した爲に缺格者が殘つ居てるものとすれば、其の者は資格を有することになると云ふ資格附與の點と、二つ狙つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=34
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035・霜山精一
○霜山精一君 只今關東州其の他外地で處分を受けた者の中には、未だ復權しない者が殘つて居るかも知れない、斯う云ふ御話でございましたが、此の規定は朝鮮で處分を受けた者に關する規定でありますから、關東州等で處分を受けてまだ復權しない者に付ては、本法の適用がないのではないかと思ふのであります、さう云ふことになると、結局此の第三條で「前二條の場合において」と云ふ其の前二條の場合、第一條の場合と云ふのは、結局銓衡の標準を示したと云ふことに解釋して差支ないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=35
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036・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 第三條の適用を受くる者は、全部と申しても宜しい位、大部分銓衡に際する取扱の注意規定となるのでありまするけれども、只今申上げましたやうに、觀念論としては、昭和二十年十月十五日勅令第五百七十六號に依つて廢止されました關東州防禦營造物地帶令、明治三十九年勅令第二百六十三號、旅順港規則制定及諸規則違反者罰則の件の違反者の如きは、昨年の大赦令にも該當しなかつたのであります、又政治犯人等の資格回復に關する件の勅令制定の際にも考慮に加へられて居らなかつたのでありまするから、それ等の該當者が若し現存して居るとすれば、今日に於てはそれ等の者も救濟する必要がありまするので、第三條に於て左樣な者にも資格を有するものと致したい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=36
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037・霜山精一
○霜山精一君 もう一點御伺ひしたいのですが、第三條に「懲戒により免官、免職、除名若しくは業務禁止の處分を受け、又は退會の處分を受けた者」と云ふ風になつて居ります、「懲戒により免官、免職、除名」是は懲戒の方は大體職務上の義務に違背するとか、或は威信を失墜したとか、さう云ふ所爲のあつた場合に大體懲戒することになつて居る、職務上の義務に違背したかどうか、斯う云ふ政治犯をやつた場合に、それが威信を失墜する行爲であると云ふことで懲戒を受けると云ふことはあるかも知れないと思ふのです、併しながらそれは結局さう云ふ政治犯を直接の理由として免職になるのではなくして、威信を失墜する行爲、或は職務上の義務に違背した行爲があつたと云ふので免職、免官等になると思ふのであります、其の免職、免官の基礎となつて居る事實は、成程政治犯のやうなものもあるかも知れないが、「その理由によつては」と云ふのは、其の懲戒を受けたる理由、詰り職務上の義務に違背した所爲があつたと云ふことに直接はなるのであつて、其の政治犯をやつたからと云ふことが直接其の理由に必ずしもなつて居るとは言へないぢやないか、ですから懲戒の場合には、其の政治犯をやつたが爲に、其の事實に基いて職務上の義務に違背があつたとか、或は威信を失墜する所爲があつたとか、と云ふ風に認定されて、其の認定の基礎となつて居る事實に付て、それが政治犯であれば資格の喪失にならぬ、斯う云ふ意味になるのではないかと思ふのですが、犯罪の方は「その理由によつて」と云ふことは直ぐ了解し得るのですけれども、懲戒に付ては「その理由によつては」と云ふことは少しく間接になつて直接當らないのぢやないかと云ふ風に思ふのです、どう云ふ御考でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=37
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038・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 懲戒免官、懲戒免職と云ふことの理由が政治犯をやつたと云ふことであれば稍稍間接になるかも知れませぬが、矢張り政治犯をやつたと云ふ理由に依つて斯樣な處分を受けたものとして廣く取扱ひたいと、斯樣な趣旨で全部を包含致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=38
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039・霜山精一
○霜山精一君 其の點も能く分りました、先程の御説明に依りまして、此の第三條の規定は殆ど其の適用の餘地はないぢやないかと疑ふのであります、大部分のものは復權を受けて、今御心配になつた關東州に何か或特別な法律が殘つて居るかも知れぬと云ふ御心配のやうですけれども、是は殆ど絶無稀有とも言つても宜いかも知れない、此の政治犯に付ては悉く復權を受けて居りまして、さうして資格を恢復して居る譯なのです、資格を恢復して居る者に「資格を有しないとすることを得ない」と云ふことは殆ど意味のない規定であります、關東州等の極く絶無、稀有なる場合を豫想する以外には、此の規定を適用する餘地と云ふものは公然ないと思ふのです、而も尚此の規定を存置する必要があると云ふ御考なのでありませうか、其の點を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=39
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040・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 誠に此の規定は絶無の場合を豫想された規定でありまするが、此の規定は多分に政治的考慮を拂つた規定であると云ふことを御承知を願ひたい、それだけを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=40
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041・霜山精一
○霜山精一君 私の質疑は是迄で終りと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=41
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042・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 此の際ちよつと申上げたいのですが、先刻私が霜山委員の御質問に對して御答中、内地の辯護士の數約七千名と申上げたのですが訂正致したいと思ひます、昭和二十一年五月三十日現在で五千四百四十九名其の後若干の増加ある見込であります、左樣御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=42
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043・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 他に御質疑がございませぬから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=43
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044・作間耕逸
○作間耕逸君 政府は此の法案を出されました御趣旨の全體に付て只今司法大臣から政治的考慮に由つたものであると云ふ御説明で大體御推察も出來、又納得も致したのであります、それに付て先づ政府委員に御伺ひを致したいことは此の第三條は、此の範圍、此の種類の罪ありとして刑を受けた者、是は如何に其の刑が重い者でも、又其の質が惡い、惡質の者でも、總て例外なしに當然此の適用を受くる趣旨であらうとは解しますけれども、是が從來の辯護士法の趣旨、司法省の方針に對してえらい違ひでありまするが、それが其の大臣の所謂政治的考慮と仰せらるるものに當るのかも知れませぬ、併し政府委員に對して只今御尋ね申上げる通り、どんなに惡質、どんなに重刑に當る者でも、總て此の種類、此の範圍の罪と刑を受けた者に付ては、全面的に例外なしに斯樣な特典に浴するのでありますか、勿論さうであらうとは解しまするけれども、念の爲に伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=44
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045・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 第三條に依りまして銓衡に際して政治犯を犯したと云ふことに依つて不利な取扱を受けないと云ふ保障は與へられるのでありまするが、例へば銓衡に依つて、學術が十分でない、辯護士としての業務を執る資格がないと云ふことが若し認定されることがありますれば、其の能力の方面に於て、場合に依つては銓衡を漏れると云ふことがあるかも存じませぬけれども、單に政治犯を犯したと云ふことでは、如何に過去に於て重い政治犯を犯したと云ふことがあつても、其の點に取扱の輕重はないこととなると思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=45
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046・作間耕逸
○作間耕逸君 質の惡い者でもさうですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=46
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047・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 尚此の第三條に於て救濟致しまするのは政治犯だけでありまするから、例へば刑事犯を伴ふ政治犯が若しあつたと致しますれば、それは勿論第三條の適用は出來ないことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=47
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048・作間耕逸
○作間耕逸君 私の御尋の仕方が宜くなかつたのでありまするか御答辯が少し外れて居ります、私は唯率直に…此處に色々書いてありますから、之を此の範圍内と言つたのです、政治犯、思想犯に該當して居る者であれば、それに違反した者であるならば、如何に重い刑に該當する者でも、又如何に實際上惡質のことを犯した者でも一切例外なしに此の有利の取扱を受くる趣旨でありますかと云ふことを念の爲に伺つたのであります唯それだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=48
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049・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 只今の作間君の御質問は其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=49
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050・作間耕逸
○作間耕逸君 そこで尚政府委員に御尋ねしたいことは、辯護士法に依つて「辯護士會は會の秩序又は信用を害する虞ある者の登録若は登録換の請求の進達を拒絶し又は退會を命ずること」が出來る、第三條は、斯う云ふ理由に依つては辯護士若しくは辯護士たる資格を失はない、資格を保有せしめてやると云ふ趣旨であります、處が斯う云ふ政治的、社會的、思想的宗教的、又は言論、著作、印行、集會或は結社の自由、是等を制限する法令に違反したり、罪を犯したり、拘禁されたり、有罪になつたりした者は、從來全部とは申しませぬが、其の中には動もすれば辯護士會の秩序…信用の方には餘り關係はない、信用を害するとは言はれないが、辯護士會の廣い意味に於ての會の秩序を害する虞ありと…害する事實があつた場合は問題ないが、害する虞あると認められる者がないでもない、絶無とは申されませぬ、稀にはさう云ふ人も混つて居る、さうして辯護士會に於て左樣な虞ありと認めました者は、此の第三條の規定に拘はらず、資格は假令第三條に於て留保されても、入會を拒絶する若は登録換を拒絶して、實際に於て辯護士の職務を行ふことの出來ないやうな結果になると云ふことは、是はあり得ることであり、又認められて然るべきと思ふのでありますが、此の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=50
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051・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、第三條に規定されました各種の犯罪、之を犯したと云ふ理由を以て、不利益な取扱は出來ない、過去に左樣な犯罪を犯したと云ふことで以て不利益な取扱は出來ない、併し其の當該の人が外の觀點から見て、今の辯護士法に該當するやうな者であれば、是は拒絶も出來ることと相成ることと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=51
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052・作間耕逸
○作間耕逸君 分りました、もう二點ばかり御尋ねしたいと思ひます、是は朝鮮辯護士令に依る辯護士若しくは辯護士試補の資格其の他に關する特別の法律案でありまするが、現在で言へばまだ内地と申しても宜いでせう、將來は日本…日本に於ける日本人辯護士に對して適用されます辯護士法の第五條は、まだ現在明文として此の法律案に關する規定が殘つて居ります、表面的には效力を維持して居ります、即ち禁錮以上の刑に處せられたる者、懲戒の處分に因り免官若は免職せられたる者、是は何れも種類、原因を問はないから、此の法律案の第三條に列擧されたやうな種類に依るものも無論含まれるのであります、處が是は終戰以來大赦其の他の恩典に依つて復權と相成つて、此の條項は適用されずに、實際に於ては濟んで居るのでありまするが、或は又特別の法令、勅令等に依つて、辯護士法に斯う云ふ反對條項が殘つて居つても、其の條項は效力が消滅した結果に相成つて居るのでありませうが、併し明文の上では、辯護士法だけの明文の上では、日本辯護士に限つては朝鮮辯護士のやうな斯樣な特例が辯護士法には認められない、そこで辯護士法としての御取扱はどう云ふやうになるのでありますか、何れ先刻霜山委員の御質問に對して大臣から御答がありました通り、目下辯護士法も政府に於かれて御改正の審議中だと云ふことでありますが、其の機會に是等の點も矢張り辯護士法其のものを御改正になる思召でありまするか、或は辯護士法に此の法文を存置して置いても、他の特殊の法律、勅令等に依つて差支へはないのだと云ふことになるのでありますか、此の辯護士法の御取扱に付て伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=52
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053・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 現行辯護士法の第五條に辯護士たる資格を有しない者として、缺格條項が規定されて居るのでありまするが是等の缺格條項に當る者でありましても、所謂政治組、思想組等に依つて嘗て處斷せられた者は只今の所全部復權致して居りまするので、第五條に付て特に手を入れなくとも、本法案の第三條に依つて救濟される朝鮮辯護士或は朝鮮辯護士試補との均衡に付きましては差支へないものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=53
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054・作間耕逸
○作間耕逸君 それでは日本内地の辯護士に適用される辯護士法には、此の法案の第三條に依るやうな趣旨は、辯護士法自體又は特別の法令にも現されずして、此の儘に存續して置かれて、單に事實上皆復權して居るから、それで差支へはないのだ、斯う云ふ御趣旨になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=54
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055・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 只今の所左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=55
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056・作間耕逸
○作間耕逸君 實は大臣に一つ御尋をしたいことがありましたのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=56
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057・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) もう直ぐ御出席を願ひます、大臣の御見え迄に若し政府委員に御質問の御方がございましたら、此の機會に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=57
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058・作間耕逸
○作間耕逸君 霜山さんからも精細に御質問がありましたので助かりましたが、ちよつと…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=58
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059・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 別に政府委員に對して御質疑がなければ、大臣の見える迄御待ちを願ひます…それでは作間君より特に大臣の御出席を求められましたが只今御出席になりましたから、是より御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=59
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060・作間耕逸
○作間耕逸君 只今大臣が自ら發言を訂正されました通り、現在日本には辯護士は五千四百有餘名居ります、是が道都府縣に分れて居りまして、各辯護士會と云ふものを組織致して居るのであります、さうして辯護士法に依つて大臣の監督に服して居るのでありまするが、其の辯護士法に依りますれば道都府縣に於て三百人以上の辯護士が意見が一致されまして、別に辯護士會を設立することを得となつて居るのであります、從つて外の道及び府縣は又一會限り、さうして地方裁判所も勿論一箇所だけ一地方裁判所一辯護士會、是が殆ど絶對的と言つて宜しい原則となつて居るのであります、然るに東京だけは只今申上げましたやうな例外的の規定に依つて三辯護士會が併立致して居るのであります、即ち東京辯護士會、第一東京辯護士、第二東京辯護士、さうして此の會の目的、主義に於てさう大した變りがないのであります、勿論同氣相求むる者が會を作つて居るのでありますから、思想、感情等の上に於て多少差異はあるかも知れませぬけれども、大體辯護士會其のものの精神、主義、目的は三會とも先づ大同にして小異、處が在野法曹即ち辯護士達の大部分と言つては言ひ過ぎであるか知れませぬけれども大半は東京三辯護士會は全く特別の意義のない存在である、是は地方の辯護士會としても此の交渉をして行くと云ふことが三つに分れて居つては誠にどうも不自由である、連絡の上にもうまく行かぬと云ふことを頻りに主張致して居るのであります、又東京辯護士會並に第二東京辯護士會の一般は、矢張り東京三辯護士會は須らく統一合同すべきものであるさうしなければ政府との連絡、又政府に對する協力の上から言つても、廣く辯護士の發展向上の上から言つても、害あつて益なき存在である、宜しく統合して一元化すべきものである、斯う云ふ輿論が辯護士會全部とは固より申上げませぬが、先づ辯護士の大半以上、それから社會は殆ど全國的に、それはさうすべきである、さうなるべきものであると、其の統合論に共感、同意を表して居る次第であります、此の問題は國民全般の上から餘り痛痒のない小さな問題でありますけれども、辯護士會、法曹界、司法界に於ては從來大問題である、さうして且つ多年の懸案として屡屡論ぜられて、いつも行はれず、今日に及んでもまだ依然と致して居るのであります、現司法大臣は最も有力なる第一東京辯護會の御出身であつて、而して從來は個人としては我々の東京辯護士會側の主張にも同感を表せられたこともあり、極めて公正なる意見を支持して居られるものと信じて居りますが、まだ公の御意見をはつきり伺つたことはないのであります、幸ひ此の法案に關聯しました問題として、此の機會に於て大臣の辯護士會統合に關する御所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=60
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061・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 御答へ致します、只今作間委員の仰せの如く、現下東京に於きましては三辯護士會併立して居るのであります、元來が是は東京辯護士會一つであつたのでありまするが、確か大正十一年かと記憶して居ります、色々の事情がありまして、東京辯護士會の會員中有志者が別に第一東京辯護士會なるものを設立し其の後又或有志が第一東京辯護士會の例に倣つて第二東京辯護士會を設立して現在に至つて居るのであります、其の間二つの辯護士會が一つの辯護士會から分れ去つたと云ふことは、色々な事情が伏在して居るので、此處で其の詳しいことを申上げることは省略致しまするが、現在の事情と致しましても、是が統一して宜いのか、或は分離の儘で宜いのか、是は各方面から論ぜられて居る所であります、一利一害があることと思はれるのでありまするが、併し現情勢は當時の分離した時の情勢とは非常に變つて居るのであります、殊に憲法草案實施の曉に至りますると、有らゆる部面から考へまして司法制度も改正しなくちや相成らぬのであります、是等の點から睨み合せまして、目下司法法制審議會に於て裁判所構成法などと共に其の問題が多くの委員達の上に議題に上るかと考へて居ります、只今私は如何なる方針で將來臨むかと云ふことに對しては、色々な事情の下に茲に言明することを差控へたいと思ふのでありまするが、將來の行き方としては、或は作間委員の仰せの如くなるのぢやなからうかとも考へて居ることを茲に申上げて置きまして、御答へと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=61
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062・作間耕逸
○作間耕逸君 私はもう宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=62
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063・原泰一
○原泰一君 司法大臣に御伺を致したいのでございますが、それは此の法律に依りまして、特に政治的の意味ありと云ふ御趣旨で、特別な資格を前科の相當惡質な者に付ても附與すると云ふ事に付て、さう云ふ法律を御定めになる譯でございますが、先程の御言葉に依りますと、多分に政治的な意味があると云ふことは十分了承を致したのでございますが、私共の考から申せば、政治的な意味も去ることながら、もう少し實質的な意味で御考へ戴ける點が今日多分にあるのぢやないか、それは即ち從來前科者と云ふものは非常に涙の生活をして參つたのでございます、無論前科、さう云ふ犯罪をしたと云ふことに付きましては、憎むべき點もあつたでありませうか、中には憎めない犯罪も澤山あつたのであります、さう云ふ人達か總て前科者扱ひをされまして、色々な資格を剥奪されて居る、現に辯護士法の第五條の如きも明にさう云ふ規定かあるのでありますが、さうした規定を設けられて居る法律規則と云ふものは非常に多いのでありまして、それが爲に實際本當に悔悟した者も職に就けないで困つて居る者もあるのであります、其の爲に、世を呪ひ人を恨みまして、又重ねて犯罪を犯すと云ふやうな實例が非常に多いのでありまして、私共約數十年に亙ります經驗から申しまして、若しも斯う云ふことがなかつたならば、それ等の人達が明らかに日本國民として正業に就いて世渡りをして行けるのぢやないかと云ふことを感じて居るのでありまして、斯う云ふことを考へますと、前科ある者に總て斯う云ふ資格の制限を撤廢をすると云ふことは無理でありませうけれども、或は五年無事經過した者であるとか、或は七年無事經過したとか云ふやうな者には、當然復權をさせると云ふやうな措置を…是は外國にもさう云ふ例があるのでありますから、さう云ふ措置を御執りになることが今日の新日本の建設の上に於ては最も必要なことではないかと云ふ風に考へて居ります、從來も市町村に於きまする前科者名簿と云ふものが如何に多くの人を泣かせ、又其の家族を苦しめて來たかと云ふことを考へますと、今日こそさう云ふことに對して、司法大臣としては御英斷をして戴くことが必要ではないかと云ふことを考へまして、此の點に關しまして何か御考へになつて居ります點がありましたならば御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=63
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064・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 原委員の御質問に御答へ致します、只今前科者に付ての御質疑誠に御尤もであると思ひます、申されました實例は世の中に澤山あらうかと思ひます、誠に御氣の毒と思つて居ります、此の前科者名簿の取扱に付ては私今非常に考慮をして居りまして、或點迄、御希望に副ふことになることと考へて居ります相當な善後策を講ずべく今考究中であります、左樣御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=64
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065・原泰一
○原泰一君 前科者名簿のことに付きまして御考究戴くことでありますれば、其の爲に非常に多數の者が苦みから逃れることが出來ますと存じまして、一日も早く御實現を願ひたいと思ひますが、尚一つ先程申上げました一つの點でありまする色々な制限…辯護士法の第五條の如く、前科者であるが故に就職の出來ない制限を設けて居るのは、私只今茲に記憶して居りませぬが、相當澤山あります、其のことの爲に就職が出來ないで困つて居るのみならず、其のことを明るみに出されるのが恐さに名前を僞つて、更に又別な犯罪を構成して居ると云ふ事實もあるのでありますから、先程申上げましたやうに五年も經つたならば當然復權した者の扱ひをして戴くやうに願ひたいと存じます、只今のやうに皇室の御關係のことで恩赦とか特赦復權とか云ふやうなことがあるから宜いではないかと云ふやうな御意見も從來あつたやうでありますが、寧ろさう云ふことでありますると、それ等の人が却つて皇室に事あれかしと心中願ふと云ふやうな、誠に遺憾な心情に立至る場合が非常に多いのでありますから、其の點も考慮されまして、それ等のことに付て御善處を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=65
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066・木村篤太郎
○國務大臣(木村篤太郎君) 私も多年司法保護委員を仰付かつて居りまして、其の方面から今原委員の仰せになつて居るやうな事柄も實見して居るのであります、それ等の點に付きましても十分將來考慮を拂ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=66
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067・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 他に御質疑がございませぬか…ないものと認めます、是にて「辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案」の質疑は終りました次で討論に入ります、御發言がございませぬか…御發言もなければ討論は是にて終結致しまして、次に採決に入ります、本法案に付て可決すべきものとする方の擧手を願ひます
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=67
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068・高木正得
○委員長(子爵高木正得君) 全會一致と認めます、然らば「辯護士及び辯護士試補の資格の特例に關する法律案」は可決すべきものと決しました、尚罹災都市借地借家臨時處理法案特別委員會は是にて總ての法律案を議決致しましたから、之を以て散會致します
午後零時九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=68
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069・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 高木正得君
副委員長 男爵 肝付兼英君
委員 侯爵 東郷彪君
侯爵 嵯峨實勝君
伯爵 東久世通忠君
子爵 森俊成君
子爵 大久保教尚君
霜山精一君
男爵 林忠一君
竹下豐次君
原泰一君
作間耕逸君
國務大臣
司法大臣 木村篤太郎君
政府委員
司法事務官 佐藤藤佐君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009003795X01019460727&spkNum=69
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