1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)(第三〇號)
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昭和二十一年八月二十六日(月曜日)午前十時五十九分開議
出席委員
委員長代理 小島徹三君
理事 坂田道太君 理事 小野瀬忠兵衞君
理事 富吉榮二君
磯崎貞序君 白井秀吉君
及川規君 松尾トシ君
森本義夫君 川越博君
平野八郎君 布利秋君
出席政府委員
法制局長官 入江俊郎君
内閣事務官 三橋則雄君
文部事務官 日高第四郎君
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本日の會議に付した議案
恩給法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=0
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001・小島徹三
○小島委員長代理 本日は委員長が差支へでございまするから、不肖私が此の席を汚すことを御許しを願ひます、それでは是より會議を開き、前會に引續いて質疑を續行します——富吉榮二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=1
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002・冨吉榮二
○冨吉委員 過日の私の官吏制度の改革に對する長官からの御意見を承つたのでありまするが、現在の一級、二級、三級制度は、決して身分的な關係を現はして居るものではないと云ふことを、御言明になつたのであります、けれども官吏それ自體と致しましても、又一役世間と致しましても、是は結局勅任、奏任、判任と云ふものの置替であると云つたやうな風の感じが強いやうでありまして、此の點に付ては尚ほ一層の御檢討を加へられまして、眞に官吏が上から下まで、一貫して平等なる身分に依つて國家に御奉公が出來るやうな制度へ、更に一層の御檢討を願ひたいと思ふのであります、更に政府は戰時中一時中止致しました高等文官試驗制度を復活されるやうであります、さう云ふことを新聞等で承つて居りまするが、是も私共と致しましては、最早斯くの如き制度は必要でないのぢやないか、さうして大いに任意登用の實を擧げるやうにして、斯うした制度に拘泥せずに、本當に適所適材の官吏の配置が出來得るやうな措置を御執りになつた方が宜いのぢやないか、斯う云ふことを先づ考へるのでありまするが、之に對する何か深い御意見がありましたら一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=2
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003・入江俊郎
○入江政府委員 只今の御尋ねでございまするが、初めに仰しやいました一級、二級、三級の區別に付きまして、それが官吏の身分的の上下を現はすやうな風に考へられて、折角の趣旨が徹底して居らぬと云ふ御言葉に付きましては、さう云ふ面もあらうかと存じて居りまして、尚ほ十分考究したいと存じて居ります、唯官吏の上下平等と云ふことを決定するに付きましても、やはり其の能力なり、或は其の職務の内容に依つて或る程度の區別を付けませぬと、運用上も困ると云ふやうな樣子もありますので、それ等が所謂封建的な感じを持たないやうに、極めて合理的にさう云ふ風な制度が出來るやうに研究致したいと考へて居ります
それから次の高等文官試驗の問題でありますが、此の高等試驗の制度に付きましては、今の御説でありますと、斯かる制度に依らずに、自由に適材を任用し適所に配置する、斯う云ふことが出來るではないかと云ふことでございますけれども、私共の考へと致しましては、適材を自由に簡拔して之を適所に配置することは、言ふことは易いのでありますが、實際行ふ場合には場合に依つて相當の弊害も之に伴ふことは見逃せないと思ふのであります、又特別に官廳方面に縁故のある者が利益を得て、さう云ふやうな縁故もなく、又何等學歴もないと云ふ風な者が、遂に自分の能力を本當に現はす機會を失ふと云ふ風な場合もあるのであつて、此の高等試驗の制度がございますことに依つて、何等學歴なく、又何等知人等もないやうな、全くの獨學力行の士であつても、此の高等試驗に於きまして、相當の成績を示したと云ふことに依つて認められ、是が官界に於て十分の働きをして居ると云ふ事例は、間々あるのであります、高等試驗の運用の方法、或は又其の制度の内容に付ては、十分科學的に之を再檢討することの必要なることは認めますけれども、やはり公平な見地に立つて、一應の能力を判定すると云ふやうな、機會均等の主義に依る一つの資格を與へると云ふ風な行き方は、やはり必要であるやうに考へて居りまして、私共としては官吏制度の改革に付きましても、高等試驗の制度を廢してしまふと云ふやうなことは、今日考へて居らないのであります、尤も御承知のやうに現在の任用制度は、既に戰時中からさうでありましたが、今年の四月一日の改正に依つて、更にそれが明確になつたのであります、けれども高等試驗を通らいい者であつても、其の過去に於ける經歴と云ふ風なものを十分尊重致しまして、銓衡に依つて任用をすると云ふやうな制度が、相當廣く開けて居ります、隨て仰しやいましたやうな、適材を簡拔すると云ふやうな面は、相當の途が開けて居るやうに思ふのでありまして、唯それのみに依りますと、折角獨學力行をして來た所の人々に、十分腕を伸ばせる機會を失はせると云ふ風な點が慮られますので、一面又高等試驗の公平なる制を存置すると云ふことも、必要のやうに考へて居るのであります、兎に角高等試驗の試驗科目の選擇とか、或は又其のやり方に付きましては、私共としても是が完全なものとは思つて居りまませぬ、本年度之を再開することに致しましたけれども、併し四月一日以降の高等試驗の制度で、相當内容を新しくはしてありますけれども、併しそれを以て理想的とは實は考へて居らないのであります、從前の制度よりは更に著眼點は宜かつたと思ふのでありますけれども、併し新制度に依つての施行が今年初めてでありますから、尚ほ其の施行の結果等を見て、十分反省もし又改善もして行きたいとは思つて居ります、尚ほ斯う云ふ試驗制度或は官吏制度全般に付きましては、十分科學的に愼重に之を研究致しまして、本當に民主的な制度にすることに付て、我々としては萬善の努力をしたいと思つて居るのであります、御承知のやうに先日臨時法制調査會に於きまして、憲法改正の施行に伴ふ各種の法令の改廢に付ての御意見を聽取したのでありますが、其の中にも官吏制度の改正の事項がございました、併し是は何分にも官吏制度の問題に付て、拔本的な、全面的な立案をする暇が今日なかつたものですから、先日中間報告として發表されました案は、微温的な案であつたことは已むを得なかつたのでありますが、決してそれに滿足をして居るものではないのでありまして、政府と致しましても十分此の點に付ては、拔本的の改革を致したいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=3
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004・冨吉榮二
○冨吉委員 國家試驗制度に對する長官の御意見は、從來の所謂弊害を認めつつ、新たなる方向に向つて更に一層の完璧を期したいと云ふ御意見でありまして、之に付ては私共も多少の意見を持つて居りますけれども、是れ以上は意見の相違でありますから申しませぬ、次に私は技術官吏の優遇の問題を、制度としてもう一つ御伺ひ致したいのであります、科學が重大なる文化の基礎でありますことは是は私が喋々を要しないので、今回の我が國の悲劇も亦實に科學の劣勢にあつたと云ふことは申すまでもないのであります、大體現在の官吏制度の下に於ては、私の見る所では技術官が非常に冷遇されたと考へて居ります、恐らく是は獨り私の考へのみならず、大體世間の常識ではないかと思ひます、例へば同じく大學を出た者でも、所謂法科系統に屬する者の地位に比べて、理學、工學、其の他專門の學術に依つて立たれた技術官の地位は洵に低い、從來に於ける官吏の身分の上から言つても恐ろしく低いが、其の待遇、俸給、給與等の面から見ても著しく劣勢である、局長、課長と云ふやうな所では極く特別少數の者を除いては、殆ど技術官吏は容れられないと云ふやうな状態にあつたと思ひます、又現在あると思ひます、是は色々な事情もありますが、法科系統の方から色々其の理由として言はれる所に依ると、專門の學問を修めて居る技術官の諸君は、其の見識視野が狹い、隨てさう云ふ綜合的な重要な「ポスト」には、之を採用することは出來ないと云ふことが、最も大きな理由の一つであるやうに思はれます、それでは一體どう云ふ譯でさう云ふ工合に追ひ込んだか、日本の殊に技術者、科學者と云ふものは非常に視野が狹くて、分科的ではあるけれども、綜合的でないと云ふことは、凡そ當を得た批評であらうと私は思ふ、さう云ふ所に追ひ込んだと云ふことは過去の官吏制度なり過去の國民の一般的思想が非科學的であつて、法律萬能的な思想から出發して居る、斯う云ふことを私は考へる、茲に於て斯うした事柄も十分今後の施政の上に於て、改革をして戴きたいと云ふことを、強く主張したいのであります、之に付て當局の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=4
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005・入江俊郎
○入江政府委員 只今の技術官に對する取扱に付ての御意見は全面的に同感であり、又政府も其の方針に從つて努力をしつつあります、御話のやうに技術官の待遇は實際從來甚だ良くなかつたと云ふことは認めざるを得ないのでありまして、之に付ては色々なる沿革あり、理由があるかと思ひますけれども、是は甚だ不適當だつたと思ひます、此の四月一日の官吏制度の改正に於ても、技術官を出來るだけ事務官と平等の立場に立つて、之に平公平な扱ひをしないやうにと云ふ點に著眼をして作り、其の後も其の線に沿うて運用して居るのであります、恐らく今後は御話のやうな弊害は、漸次除去されて行くのだらうと思ひますけれども、何分にも官界を流れて居る一つの因循姑息的な氣分の爲に、未だ我々が意圖するやうに行はれて居らない面もあらうかと思ひますので、之に付ては出來るだけ努力して、さう云ふものは一日も早く拂拭されるやうに努めます、尚ほ今申上げました官吏制度の四月以降の改正に依つてどう云ふ點が變つたかと申しますと、從前に於ても或は官等の問題とか、俸給の問題とかは、制度上は別段不平等なことになつて居なかつたのでありますが、官廳内部に於ける内規があつて、例へば俸給を上げる場合、或は又官等を上げる場合、技術官の方が非常に不平等な扱ひを受けて居りました、そこで四月以降は俸給を上げる場合でも、今度官等はなくなりましたが、級を上げる場合の扱ひに付ても、全く其の内規を撤廢して平等に扱ふと云ふことで實は運用して居るのであります、更に又任用の場合に於ても、是は從前からもあつたのでありますが、技術官をして居り、若干の經驗がある以上は、同じやうな系統の事務官にもなれると云ふ途が認められて居りまして、此の點は今度の官吏制度改革の中にも入つて居りまして、十分其の趣旨で運用したいと思つて居ります、又四月一日の改正に依つて、例へば各省の局長は從來は特別の官、獨立の官になつて居りましたが、之を職に致しまして、補職にすることに致しましたが、其の時に特に各省官制通則中に、局長は一級の事務官又は技官を以て充つと明瞭に書きまして、其の扱ひを制度上も對等にしたのであります、從前も技術官出身程度を局長にすることは是は可能であつたのでありますが、其の心持を更にはつきりする意味に於て、各省の局長も、局長の性質上本來的に技官でも事務官でも宜いと云ふことにしてあります、是も具體的には自ら技術の關係ある方面に技術官が局長になるのでありませうが、技術官として相當の經歴があれば、勿論純然たる事務の方にも之を活用する方法を認めて居り、其の方に努力しつつあります、大體左樣に御諒承願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=5
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006・冨吉榮二
○冨吉委員 技術官に對すする當局の方針は洵に結構だと思ひます、從來の官廳に於けるやり方が實際民間にも影響致しまして、民間會社等に於ても殆ど技術畑の人は冷遇を受けて居りました、自由であるべき會社のなくてならない地位にありながら、彼が技術出身の爲に、重役に採用されない、重要な「ポスト」にも就けない、斯う云ふ弊害は隨所にある、是か所謂我が國の一つの科學の進展の非常に大きな弊害の一つであつたと私は思ひます、國民思想に及ぼす影響に於ても亦同じやうで、或る高等學校に入るのでも出來るだけ頭の良い者は文科に行く、俺の倅は理科だと云ふと、何か惜しいなと云つた感じ、是は過日の憲法委員會に於ける尾崎さんの話の中に出て來た一つの感じ、官尊民卑的な思想を織り込んで居ると思ひますが、官吏の中に於て又さうした差別がある、之に付ては意を十分用ひられて、今後誤りなきを期せられたいと思ひます
制度の問題としては以上でありますが、私は官吏の所謂指導方面に付て極めて簡單に御伺ひ致します、幾ら良い法制を作りましても、それを運營して行くのは人でありますが、官吏の指導に宜しきを得なかつたならば、結局總ては死文化致すのであります、官吏の今までの最大の弊害は、所謂責任觀念が缺如して居たことであると思ひます、一應非常に立派な計畫も立て、それを行ふ際には國家權力を總動員しておやりになるけれども、其の結果に付ては一寸も責任を負はない、是は上は大臣から下は判任官の末に至るまで、殆ど此の責任を負はない、何か個人の特殊な失態とか何とか云ふ場合は兎に角と致しまして、其のやつたことが非常に國家の不利益を來す、或は國民に迷惑を與へたと云ふやうなことも、一向責任が執られなくて、寧ろそれを援護するが如く轉任と云ふやうなことで濟ます、殊に地方廳あたりに於ける知事、或は部長と云ふやうな諸君の其の責任觀念に至りましては、もう旅の恥は掻き捨て式な状態に陷つて居る、之を何とかして是正して、本當に責任を持つて事に當り、若し間違つたら、昔の武士道で云へば腹を切るのであるが、自分が本當に責任を負ふと云ふ氣持、外の方面から云ひましたならば、所謂信賞必罰の制度と云ふものがはつきりしなければならないと考へるのであります、斯うしたことが從來喧ましく言はれながら中々實行されて居りませぬ、此の新しき日本再建の爲の官吏諸君は、重要なる任務に就いて貰はなければならないのでありますが、之に付ての當局の指導方針、又何か具體的な方法でもありましたならば、此の際承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=6
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007・入江俊郎
○入江政府委員 只今の御意見には私共としては全面的に同感でありまして、現在の官吏制度の運用の面に於て持つて居る重大な缺點を衝かれたものと考へるのであります、官吏の指導に付きまして折角良い人を採りましても、是が一つの官僚的な氣分の中に育成されますと、折角の良い人も場合に依つて其の能力を伸ばすことが出來なくなるやうな虞もあるので、能く前には官吏の再教育と云ふやうなことが云はれましたが、官吏自身の研修制度——研究修養の制度と云ふものを擴充して行かなければならぬと考へて居るのであります、此の點も實は四月の官吏制度の改正の際に閣議決定を致しまして、官吏研修制度を確立することの方針を立てたのでありまするが、豫算の關係であるとか、或は又其の後の色々な内外の行政事務の錯雜の結果として遺憾ながら是が十分に行つて居りませぬ、今日外務省には外務省官吏の研修所と云ふものが出來まして、是は將來の我が國の國際社會に於ける地位を考へつつ、外交官の研修を根本的にやつて行かうと云ふことになつて居ります、又文部省に於きましても、教育事務に從事する官吏の研修所と云ふものが設けられまして、之に付ても段々と内容は充實しつつありますが、他の省に於きましては未だ十分に立至つて居りませぬ、併し是もやはり出來得る限り其の方向に進むことに努めたいと思つて、次の機會に於ける官吏制度の改正の重要眼目としたいと思つて居ります
責任觀念の缺如の點も仰しやる通りでありまして、どうも遺憾な點が多かつたと思ひます、併し是は官吏全部が惡いと云ふのではなくして、官吏の中にも實際眞面目な立派な者が多いので、寧ろ其の數から云つては少數の者ではないかと思ひますけれども、苟くも一般の國民に接する官吏に於て、假令少數であつてもさう云ふ者があることは洵に申譯ない次第であり、宜くないことでありますから、是等の點に付ても十分檢討を加へたいと思ふのであります、それに付きましては今御述べになりました信賞必罰、此の言葉も前々から言はれて居ながら實行が十分でなかつたのであります、是は要するに官吏制度の運營の面に、科學性を缺いて居つた點であらうと思ふのでありまして、どうも現在の官吏制度は非常に科學性を缺いて居ると私自身感ずるのであります、苟くも行政事務を擔任する多くの行政職員に付て、所謂人事行政に付ての眞面目な研究と云ふものが遺憾ながら十分でありませぬ、現業員等を包容する役所に於ては、待遇の方面からさう云ふ研究も大分進んで居りますけれども、單に現業のみでなく、「テーブル・ワーク」をするやうな官吏に付て、特に其の必要があらうと思ふのであります、其處を辭めればそれで恬として顧みないと云ふやうな氣風が、確かに一部にあるのでありまして、是は非常に殘念なことであります、隨て私共は唯信賞必罰と言葉で言つて居るだけでは仕方がありませぬから、一面に於ては官吏の勤務状況を、十分科學的、合理的に考査をする制度所謂考課制度と云ふものを確立したいと思つて居るのであります、最近に於ても色々行政能率の研究を科學的に致して居る人々も居りますので、それ等の人々とも相談したいと思つて居りますし、又「アメリカ」に於てはさう云ふ方面が特に發達して居りますので、それ等の資料等を集めて今日折角研究しつつあります、極めて合理的な考課表と云ふやうなものを作り、之を集積して、心理的にも又事務的にも、十分信憑の出來るやうなものを作つて行きたいと思つて居ります、「アメリカ」には「レーティング」と云ひますか、相當良い制度が出來て居るやうでありますから、さう云ふ書類等も集めて居りますし、最近「アメリカ」方面の人にも色々意見を聽いて研究しつつあります、尚ほ之に伴つて監察制度と云ふやうなものも考へたいと思つて居りますが、監察の制度は兎もすると人の非違を發き立てると云ふ虞がありますので、今日の行き方としては、寧ろ事務の能率状況を監査し、さうして其の能率を如何にして合理化するか、又増進するかと云ふ方面、事務の指導方面から監察し、併せて其の事務を擔任して居る官吏の考課の場合に之を參考にして行く、さう云ふ風な方法で以て、賞すべきは必ず賞し、罰すべきは嚴罰を以て臨むと云ふやうなことが初めて出來るであらうと思ふのであります、又是は研究中でありますが、一つの私見として申上げれば、從來の官吏が官吏の在職中にやつた行爲に付ては、單純に官吏法上の責任、即ち其の人間が官を辭めれば、それで責任が最大の點に於て盡されたと云ふやうなことになつて居りましたが、之に付ては官吏が在職中にやつた服務上の過失に付きましても、場合に依つては刑罰を以て臨むと云ふことも、必要ではあるまいかとも考へて居ります、斯う云ふ立法例も外國には少しあり、又さう云ふ意見も相當ありますから、それ等に付ても考へて居ります、それから官吏が轉々として其の職を轉ずることは甚だ宜くないのでありまして、責任觀念の方から申しましても、一つの地位を長く其の人にやらせると云ふことがないとどうも無責任になります、此の點も成るべく官吏は長く其の地位に就て安んじて職務が執れるやうにしよう、斯う云ふことが四月一日に於ける官吏制度の改革の重要な狙ひであつたのであります、併し其の後も必ずしもそれと同じでないやうな遺憾な事例もありますけれども、已むを得ない場合もあらうかと思ひますが、方向としては成るべく一つの地位に長く官吏を置きまして、さうして官吏は行政官としては專門家にして行かう、事務をやつて居る者が何となく其の事務を輕んじて、何か派手やかな政治面の方に乘出さうと云ふやうな心持を起させないやうに、一つの地位に就いたならば、假令其の地位が地味なものであつても、それを天職と考へて、俸給も上り、社會的待遇も良くなつて行くと云ふやうな面があれば、其の地位を長く保ち、責任も感ずるやうになるだらう、さう云ふ風に運用の面、制度の面からも努力したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=7
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008・冨吉榮二
○冨吉委員 極めて廣範圍に亘つての御意見を拜聽しましたが、是非其の具體化に向つて御盡力願ひたいと思ふのであります、戰時中に於きましても御承知の通り頻りに統制會社、統制組合と云ふやうなものが出來た、私は其の制度の問題に付ての是非善惡の議論を致すのではありませぬが、此の統制會社乃至組合、或は營團なんと云ふ澤山出來ました組織と官吏の間に、どうも忌はしい事件が澤山起つて居る、さう云ふことを行つて居りますので生産に阻碍を來し、配給は紊れると云つたやうな、種種の點に非常な支障を來して居る、是等は要するに制度の問題だけでなくして、官吏の志操、心構へと云ふ方面に於ても、大いに檢討しなければならぬ問題だと私は考へます、從來官吏は總て國民の指導者としての責任、指導者だと云ふ考へを持つて居つた、此の誇りとしての面は結構でありますが、私はそれを變へて本當の公僕主義に徹底して貰はなければ困る、或は率先垂範だとか、或は陣頭指揮だとか、云ふやうな言葉、次から次にさう云ふ熟語、漢語が生れて來まして、洵に華やかな状態であつたのでありますが、其の實全く言ふことと實際と逆になつて居る、是は官吏が國民を指導して居るのだ、國民の上に君臨して居るのだと云ふ封建的な考へ方から出發して來たのである、隨ひまして殆ど日本の軍に於きましても、官廳に於きましても、或はそれを眞似て居る會社に於きましても、日本の總ての組織の上に於て、殆ど上の方は仕事をしない、命令だけを下して居る、自分の責任に於て、判斷に於て善良な方向に向ふと云ふことが出來ないで、下の方になればなる程、唯命是れ從ふと云ふやうな制度になつて居まりすから、各各の責任感念を持てない、一個の獨立した人格と其の職責と云ふものが確保されて居ない、斯う云ふことに原因するのだと思ふのであります、進駐軍なんかのやつて居りますことを見まして我々は實に驚くのでありますが、全く上の人が責任を持つて仕事をやつて居る、日本などに於ては、少し上の方になると仕事はしないで、會議をやつたり出張したりして居つて、本當の仕事をするのはほんの下つ端だけ少ししかやつて居ない、軍隊に於きましても上から下へ次第々々に命令が來まして、本當に仕事をするのは所謂兵卒で、其の兵卒の中でも新兵だけだと云ふ風であつた、上の方になればなる程仕事をしない、責任を負はない、斯う云つた方法で日本の組織は總て貫かれて來て居つたと思ふのであります、此の點ははつきり國民の公僕として其の各各が其の地位其の場所に於て責任を持ち、同時に前に仰しやつたやうに任免黜陟に致しましても、上役の考へで勝手に首を馘つたり左遷したりと云ふやうなことのないやうに、十分其の點に付ての御指導を願はなければならぬと思ふのであります
更に私は非常に學閥の弊害が多過ぎたと思ふのであります、何處に行つても學閥なんだ、地方長官あたりは東大を出なければいかんと云ふやうな風になつて居る、醫者に於きましても九大閥慈惠閥、是は獨り制度の問題だけでなく、日本の國民性の然らしむる所もありませう、此の點に於ても非常にお互ひ考へなければならぬ點だと思ふ、文化の問題もありませう、東大閥、一高閥、一中閥と云つたやうなものを世間往々にして聞く、斯う云ふやうなものを本當に廢止することは、是は制度の問題ぢやございませぬので、官吏の心構へと云ふ問題が、大きな之を左右する鍵になるのでありますから、所謂從來の情實主義に依る任免黜陟を廢して、公明正大なる公僕主義を、徹底せる思想に依つて左右するならば、恐らく斯うした學閥と云ふやうな問題も——全然知らない人と知つた人とは又多少の相違がありませうが、目立つた社會に害惡を流すやうな學閥の醜状とはならないと思うのであります、此の點に付きましても、今後十分に御指導をなさるやうに御願ひしますが、何かそれ等に付ての御意見がございましたら此の際承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=8
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009・入江俊郎
○入江政府委員 今の御話の、色色な民間の會社等との間に忌はしいことがあると云ふやうな點も間間聞くのでありまして、是は御話のやうに官吏各自が責任を本當に自覺しない所から來るものであらうかと思ひます、又一方に於きましては、下級の官吏に對する十分の待遇が出來ないと云ふ所からも起る問題かと思ふのでありまして、一面に於きましては御話のやうに、官紀を振肅して秋霜烈日の態度を持つと同時に、片方に於きましては十分福利施設、若しくは給與等の面を考へまして、兩方面から斯かる弊害をなくするやうに努力したいと思つて居ります
學閥の御話がございましたが、私の觀ずる所では、最近は學閥と云ふやうなものは餘程減つたやうに思ふのであります、私共が役人になつた頃はまだ相當あつたやうに思ひますけれども、最近は大分減つたと思ひます、併し是もやはり若干は殘つて居るかと思ひます、是は官界ばかりでなく民間に於ては隨分著しい點もありますが、民間は一つの私の方面ですから宜いとしても、官界に於てはさう云ふ不公正な閥と云ふものは、一日も早くなくしなければ本當の意味の民主革命も確立しない譯でありますから、それに付きましてはやはり情實主義を排しまして、公明正大に人事行政を行つて行くと云ふことが必要であらうと思ひますので、是等に付ても科學的な運營をするやうにして行きたいと思つて居ります、之に付きまして官吏服務紀律と云ふのは、御承知のやうに明治二十年に出來たもので今日行はれて居りますが、是は根本的に考へ方の建直しをしなければならぬものと思つて居ります、尤も服務紀律と云ふやうな文句をどう書かうと、其の心が直らなければ何にもなりませぬけれども、やはり一つの理想を示した官吏の服務令と云ふものを、十分明かにする必要があらうと思ふので、憲法施行に伴ふ官吏法の中には、是非此の服務に關する規定を、新しい見地から置きたいと考へて居ります、唯服務に關する規定が徒らに美辭麗句を竝べて宙に浮いてもいけませぬので、それに付ては色々頭を惱まして居りますが、是等に付ては御意見でもございましたら一つ御教へを願ひたいと思つて居ります、本當の意味で、公僕と申しますか、全體の奉仕者としての官吏の行くべき途を示す恰好の文言、或は良い注意と云ふやうなものは、實は出來るだけ廣く御意見も伺ひたいと思つて居りますので、斯う云ふ席で御願ひしては甚だどうかと思ひますけれども、一つ皆さん方からもさう云ふ方面に付ての御指導を受けたいと思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=9
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010・冨吉榮二
○冨吉委員 學閥の問題も、最近漸く其の弊害が除去されつつあるやに承つたのでありまするが、是は恐らく少し御考へ違ひぢやないかと私は考へて居る、それは、成程戰爭中で非常に人が餘計要つた爲に、偶偶一向浮ばれなかつた連中が出世したり何かは致しましたけれども、實際又さうでなくなつて來る傾向にあると私は見て居る、殊に先程御話になつた苦學力行の士であるとか云つても、間拔すべき高文試驗に「パス」した者が、私學出となると、殆ど三丁目一番地まで行けば其處で戸惑ひして、勅任にはしないと云ふ從來のやり方を實際にやつて居るのです、此の私學出の諸君などは、實際問題として、地方廳の部長級、高等官三等級までしか殆ど上つて居りませぬ、折角さうした途を開いたと云つても、お前達の所は此處までだ、奏任以上には出られないのだと云ふ一つの事實を示したやうに思はれて、折角良い意味に於て御作りになつた制度も、斯うした運營宜しきを得ないと、非常な弊害が出て來ると思ふのであります、尚ほ私共も單に官吏を仇敵の如く攻撃することに依つては、再建日本の確立は出來ない、是は要するに官吏も國民の一人であると同時に、又今後國家の再建の爲に、大きな役割を果して戴かなければならぬからこそ斯う云ふ苦言を呈するのでありますが、どうぞ此の際思切つた頭の切換へをやつて進んで貰ふ、從來の所謂出世主義、官等の上ることと勳章を貰ふこと、さうした出世主義を排して、さうして自分の職務を最も正しく理解して、それに向つて邁進し得るやうな剛健なる所の氣持を養ふと云ふ方針に付て、更に一層の研究と御努力を御願ひ致したいのであります、不肖私共も其の意味合に於て出來るだけの協力をすることは、國民の義務の一つであると考へるのであります、例へば事務簡素の問題とか、其の他轉勤等の弊害の問題とか云ふことは色色ございますけれども、皆さん御疲れのやうですから大體此の程度で私の質問は打切りたいと思ふのでありますが、要するに民主主義と云ふことを口頭禪に終らしめないやうにして戴きたい、明治の御一新も文明開化と云ふ言葉で胡麻化した革新である、表の面から見ると非常な改革のやうであるが、徳川時代の封建制度に於ける大名が、華族と云ふ皇室の藩屏として社會的地位を保ち、貴族院と云ふ政治上の特權階級として存在すると云ふやうなことであつた、武家時代の所謂武士は、刀を取上げられ、其の特權を取上げられたかのやうに見えたけれども、又是は軍人官吏となつて明治政府、或は大正、昭和を通じての途を開いて、是が今日我が國を不幸に陷れて居る、あの明治維新に於て思切つた改革をして、世界の進運に伴ふやうな改革が出來て居れば、私は斯うした弊害は繰返さずに濟んだと思ふ、結局形式上の問題だけで口頭禪に終つた、又今度も、民主主義——「ドイツ」華かならば鉤十字の旗を振り、「ロシヤ」盛んならば赤い旗を振り、「アメリカ」來れば星條旗を振る、さうして民主主義自由平等だと言つても、それは口だけの問題であつてはならない、本當にそれに徹して、さうして我が國の在り方に付て、官吏は勿論公僕でありまして指導者ではないと雖も、今日占める役割は非常に大きいのでありますから、其の心構へを徹底するやうな御指導と御努力が、更に必要であると云ふことを申上げ、今回の我が國の革新が本當の掲げて居ります所の文化國家が完成し得る其の基礎をなす所の、確乎不拔の信念の確立に、一段の御努力あらんことを御願ひ申上げて私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=10
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011・小島徹三
○小島委員長代理 小野瀬忠兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=11
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012・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員 私は、先日委員長から質問を許された際に、私の質問が先陣の各委員の方々の質問と、殆ど同趣旨のものであつた爲に質問を取消したのでございますが、唯一點だけ簡單に文部省の政府委員に質問致したいと思ひます、私の質問は本改正案とは稍稍縁遠いやうな感がするのでありますが、事恩給に關する問題でございますので、此の際御尋ねしたいと思ひます、質問の要點は、私立學校の恩給財團に對する國庫補助金に關する問題でございます、我が日本が是から文化國家として新しい發展をする爲には、どうしても教育の發達と云ふことが、最も緊要なことであると私は信ずるのであります、而して、文化の興隆とか或は科學の發達と云ふことに貢献して來た點に付きましては、過去に於ても、又將來に於ても、何等私學と官學との間に其の別はないと思ふのであります、併しながら我が國に於きましては、官尊民卑の弊風陋習と云ふものは實に牢固でございまして、教育面にまでも滲透して居るのでございます、學校方面に付て見ましても、官學に對しては非常に政府は熱意を持つて監督或は援助をして居るに拘らず、私學に對しては、先程別な意味に於て富吉委員からも縷縷御話があつたやうに、案外冷淡であるやうに考へられるのであります、施設の面に於きましても、或は人件費の補助と云ふやうな面に於きましても、極めて政府の補助は微々たるものでございまして、何等見るべきものはないのであります、先頃私立大學方面から補助金の増額と云ふやうな運動も起つて居り、或は陳情も參つて居るやうに聞いて居りますけれども、此の際私は私學を勃興させることが民主主義を徹底させる爲には必要なことであると考へるのであります、此の意味に於きまして是非私學に對する補助を増額して戴きたいと考へるのであります、從來私學に優秀な教職員が集まらなかつたと云ふことは、單に在職當時の給與が惡い、待遇が惡いと云ふことばかりでなく、退職後の恩給と云ふものに對して、確實なる制度が出來て居らない、出來て居つてもそれは僅かに自主的の共濟制度であると云ふ程度であります爲め、老後の不安から致しまして、折角良い教職員が參りましても、轉々として官學方面に流れて行つてしまふ、或は著述界に流れて行つてしまふと云ふやうな状態が繰返されて居つたと思ふのであります、私は寡聞にして私立大學或は專門學校等に於ける、恩給財團と云ふものに付ては詳細存じませぬが、先頃私立中等學校の方面にあります恩給財團の方から、色色な現在に於きまする財團の經營困難なる事情を承りまして、本日此の質問を致すやうな次第なのでありますが、例を中等學校の恩給財團に取つて申上げます、此の中等學校の恩給財團に對しまする政府の補助は、昭和四年の議會に於きまして、一人當り四十八圓の補助額が議決されたのださうであります、其の後已むを得ない事情ではあるると思ひますが、所謂戰時財政と申しますか、其の爲め、或は緊縮財政の結果から致しまして、此の補助額と云ふものは昭和二十年度に於きましては、僅かに加入職員一人に對して七圓に過ぎなかつたと云ふことを承つて居るのでございます、斯かる僅かな補助では本當に雀の涙位でありまして、政府の補助としては餘りにも意味がなさ過ぎると私は考へるのであります、さうして此の恩給財團の現在給付の目標として居ります額は、一人當り三百圓から五百圓までの間で年金を出して居る、而も其の財源は利息とか或は職員、學校からの掛金を以て賄つて居るべきものが、現在では到底其の年金を支拂ふことが出來ませぬので、準備積立金の中から毎年なし崩しに拂つて居ると云ふやうな状況で、毎年々々其の積立金の額は減つて居ると云ふやうな状況にあるさうでございます、數字は簡單に申上げますが、事業費としまして年金の支拂額が、昭和十七年度に於ては三十三萬三千圓ばかりでありましたものが、二十一年度には五十九萬六千圓ばかりになつて居る、それから事務費の方も十七年度に僅かに一萬圓であつたものが、二十一年度には七萬六千圓になつて居る、非常なる増額でございます、而も此の僅か三百圓乃至五百圓の恩給に依りましては、此の物價騰貴或は「インフレ」の昂進時代に、生活の補助としては余りに少い額でありますので、此の際斯かる法人の恩給財團に對しましては、政府は思切つて増額をしてやつたらどうか、さうすることが私學を勃興させ、我が國の文化水準を高めるのに、非常なる大きな役割を果す所以ではないかと私は信ずるのであります、政府に於きましては此の點に付きましてどのやうに御考へになりますか、現在の恩給法の制度の下に於きましては、勿論此の法の適用に依つて、恩給の全部を國庫に於て負擔すると云ふことは出來ないのでありますから、是非とも補助金の形に於きまして、政府は自主的恩給財團に對して補助の増額をして戴きたいと私は思ふのでありますが、文部當局の御意見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=12
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013・日高第四郎
○日高政府委員 私立中等學校の恩給財團の國庫補助は、大正十三年に定めまして現在尚ほ年に九萬三千六百圓と云ふ少額でございます、是は當時と今日との物價の指數の相違と云ふことも考へ、又其の財團に屬する教職員の數の増加と云ふことも考へまして、是非とも此の補助額を増大する必要を感じて居りますので、實は今年の豫算には間に合ひませぬので甚だ申譯ございませぬけれども、明年度には補助願を増大する爲に極力骨折りたいと存じて居ります、尤も恩給の國庫補助よりはもつと根本的な意味に於て、今日私立學校が日本の教育を擔つて居る重大な役割をなして居るにも拘らず、其の存立の基礎を脅かされて居るやうな状態にございますので、是は經濟的の變動其の他で、敗戰の結果已むを得ないと申しますが、從來日本の私立學校が、「アメリカ」其の他「ヨーロッパ」諸國の私立學校に比べまして、財政上の基礎が貧弱でありまする爲に、經濟的な危機を乘切るのに非常な困難を致して居ります、それ等の根本的な救濟若しくは援助、助長、さう云ふやうな點と絡み合せまして考へなければならないと存じますが、恩給財團に對する國庫補助の點は、其の施策の一つとして十分考慮致しますし、又増大するやうに骨を折りたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=13
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014・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員 諒承致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=14
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015・小島徹三
○小島委員長代理 布利秋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=15
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016・布利秋
○布委員 私として御伺ひしたいのは、此の恩給法の改正は實に廣汎に亘りまして、檢討するだけでも容易なものではありませぬが、茲に是非御尋ねしたいことは、恩給局だけで此の法案を御作りになつたのであるが、先づ私は最初に之を御聽きしたい、是は委員會でも開いて、さうして廣く民間の意見を容れて基礎を御決めになつたものであるか、此の點に私は不明な點がある、斯う云ふ恩給法を御決めになる場合には、廣く恩給に關係のある民間人、又は有識者有能の士を委員にして、一應之を研究をされて御やりになると云ふのが本筋ぢやないか、是は私の意見ですが、無論是はおやりになつた後かも知れませぬが、之を先づ御尋ねして掛らぬと、私の質問が出ない、是はなぜさう云ふ質問をするかと言ひますと、自分達のみで斯う云ふことを、昔の習慣の儘で以て新事態に對處されると云ふことは、私は此の點に不服がある、それを一つ恩給局側から御答へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=16
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017・三橋則雄
○三橋政府委員 今回の改正の案を立てますに付きましては、特に民間の有識者の方々の意見を徴するやうなことは致しませぬでした、政府部内の關係當局、其の他の間に於きまして御打合せを致しまして、案を作つたやうな次第であります、今回の案は既に本會議に於きましての法制局長官の説明に於きましても、又此の委員會に於きまする説明に於きましても明かなやうに、終戰に伴ひまする事務的な事柄であるとか、或は官吏制度の改正に伴ひまする已むを得ない改正であるとか、さう云ふやうな事柄を主たる内容として居るやうなものでありまして、特に民間有識の方々の意見を徴しまして、改正の議を進める程のこともないではなからうか、斯う云ふ風に考へまして、今申上げますやうな風に致された次第であります、勿論改正の内容の如何に依りましては——恩給法の改正をする場合に於きましては、私達だけでなく、民間の有識其の他の方々の意見を十分に徴しまして改正しなければならないと云ふことは、十分考へて居る所でございますけれども、今回の改正案に付きましては、今申上げたやうな事情でございまして、特に民間有識者の意見を徴するやうなことは致さなかつた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=17
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018・布利秋
○布委員 今の御答へであると、結局全委員から官僚々々と云ふことを論駁されて居りますが、官僚獨善の考へ方を以て遂行されて居ると云ふことが、立派に茲に立證されて居る、新憲法が出ると云ふことは、御承知である、さうした新事態を眼の前に控へながら、此の恩給に依つて茲に多數の人間が生活をして居ります、民間人になつてしまつた者、是等の考へ方も聽かずに、唯恩給の法律を取扱ふ立場に居る人のみがおやりになると云ふことは、結局昔ながらの封建體制を維持されるのであつて、先程からの御答へを聽きますと、餘程民主的なやうな御答へをなさるけれども、結局事實は私は官僚より一歩も出て居ないと思ふ、だから言ひますと、斯う云ふ法律案を作つてさうして此の委員會に出して、國民を代表した者が兎に角之を認めて呉れ、是は一種の方便に我々が利用されて居ると云ふ形が感じられぬ譯でもない、さうなりますと實際此の恩給を貰つて食つて居る者と、恩給局との間に非常な間隔があるやうに私は見受けます、是は實際言ふと、斯う云ふことは前以て能く民間の代表者と打割つて話をしておやりになるべきものである、出來上つたから之を認めて呉れといきなり出して來る、是は一種の方便です、是で多數決に依つて我々が原案を通しさへすれば宜いんだと云ふ御心持であるか、良心的に良いことならば改正をすると云ふ御考へがありますか、私は休んだ日もありまして御答へを聽いて居ない點がありますから、重複する御答へが出るかも知れませぬが、此の點御聽かせ戴きたい——私の質問の要點が分りましたか、之を方便的にここで認めさせてしまひたいと仰しやるのか、良いことは改正して行かうと云ふ御心持であるのか
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=18
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019・布利秋
○布委員 今委員長の御説明で、私の缺席しました部分の補足が出來て有難く感謝致します、それで此の恩給法を、今度は單に軍人の關係で改正したと仰しやる、來年は根本的な恩給法の改正をやると云ふ御言葉を聽きましたが、併し斯う云ふものを御作りになるならば、是は餘計なことではありますけれども、今日過去の恩給者は其の生活が刻々と迫つて居るんですから、來年になれば其の恩給制度をどうしようかと仰しやるのは、來年以後に恩給を貰ふ人は宜いかも知れませぬが、其の間に空間があります、其の間に恩給を貰ふやうな順序になる人に取つては大變な不便を來す、だから斯う云ふことは早く御決めになつて、來年と云はず、次の議會あたりまでに、早く根本的な改正案を作つて御出しになるのが、御親切な立場ぢやないかと云ふ考へ方を持つて居ります、それから過去のことはもう遡らないと云ふやうなことになりますが、併し過去に恩給を貰つて居る人と、是から恩給を貰ふ人と大なる差を生じて居る、次には七月豫算で上ります本俸に依つて恩給が決まります、併し過去の人は大正年間に決まつた恩給に依つて食つて居る、其の當時よりは物價が何倍上つて居るか、大體今日は「インフレ」の生活であるし、過去の人は「デフレ」に似た生活をして居る、其の時の安い本俸に依つて其の何分の一かの恩給を貰つて居ると云ふ其の人達は見殺しにしてしまふ、今後の新本俸に決定されたならば、それに對しての恩給を貰ふからそれでどうにか食つて行けるだらうと云ふ所を御考へになりますでせうが、それでは過去に於て社會の爲に働いて、いま年を取つてしまつて居ると云ふ其の人達に對しては、何等の波動を起さないと云ふことになりまして、唯法律的にも過去には遡らぬと云ふことのみに行きますと、むごたらしい状態になるから、先程言ふ國庫の補助云々が出たのだらうと思ふ、だから其の點は十分考へると云ふ御話でありますが、私が斯うして話して居る間に「インフレ」は増大して居るのですから、さう云ふ點を生活面に御考へ願ひたい、是は愛媛縣の元中學校、國民學校の校長外二十二名の請願でありますが、皆六十から七十以上の人で、其の人達が議長に宛て、嘆願して來ましたものを一寸讀ませて戴きたい、是で古い人達がどう困つて居るかと云ふことも想像が付きはせんかと思ひます、ですから次の改革案を御作りになるとか、國家補助の問題が出た時にはどうか其の心持を織込んで戴きたい
戰後急激なる經濟界の變動にて物價暴騰、十倍乃至數十倍の高價となり昔日の恩給にては到底凌ぎ難く、生活は日々に窮迫に陷り、此の儘にては餓死の外なき次第に御座候、元來教育界は經濟的に惠まれず、在職中の待遇極めて菲薄にて、數十年教育に從事し一生獻身的の奉公をなして隱退の時に一級、二級俸に達する者は極めて稀にして、俸給中位に過ぎざる者が大多數と云ふ有樣、一級、二級俸は單なる形式的の裝飾にて實際に到達し得ざる架空俸に過ぎざる有樣に候、それ故在職中にも辛うじて一家を支へ得るに止まり、蓄へなどの餘裕なく、退職の際にも一錢の賜金あるにあらずと云ふ有樣にて、本俸に基ける恩給の少額なることは申すまでもなく、平常にても漸く露命を繋ぐ有樣に候、然るに戰後急に「インフレ」状態となり、私共教職恩給生活者の慘状は、實に言語に絶し、蓄へなき老耄の身は全く餓死の窮迫状態に御座候、何卒窮状御諒承の上、此の際至急恩給を十倍に増額方御盡力下され度云々
斯う書いてあります、其の他私宛に來たものもありますが、詰る所、斯うだらうと思ひます、四十歳で恩給を貰ふ人はまだ働けるから、他で働いて二重に貰ふことが出來る、其の場合恩給は一時停止すると云ふことも恩給局で考へて戴きたい、又六十歳でも十分二重に働ける人がありますが、病弱者で働けぬ人も出て來る、是は其の緩急性を十分に附けて、普遍的に唯恩給をやると云ふのでは、そこに不平等が出て來はしないか、恩給の大體の根本が説明の限りでない程はつきりして居りますから、其の目的を達するにはやはり老後のことを考へてやる意味に於て、其の點に重きを置いて戴きたい、病弱者に付ては調べることは出來ないから、斯う云ふ命術的な方面を考へて恩給の取扱をして貰ひたいと云ふのが私の希望であります、此の改正法案に對しては反對はありませぬが、軍人の恩給が是でなくなると云ふはつきりしたものをお作りになるのですから、來年お作りになると云ふ恩給法改正案の中に、國民の希望を容れて戴きたい、之をやらなければ思想界は餘程腐つて來る、現在は安い本俸ですから、思想界が腐るのは本當ですが、本俸が上つても腐らぬとは言へない、現在一つの家で、兄も弟も國民學校教員である、兄は部屋に共産黨の赤い旗を立てて見たり、弟は小さい白い旗を玩具に立てて見たりして居る、さうして教へる先生の考へ方は一學校、一教員室に居つて二つに分れて居る、是はどの校長も認めて居り、如何ともすることが出來ない、教育の中心になる芯棒がなくなつてしまつたのだし、どうにもならない、校長に屡屡質問した結果得た答へは斯うであります、丁度上げ凧の紐が切れたやうなものである、結局どつちに向いて行くか分らないやうな教育のやり方をふらふらやつて居るから、そこへ切れ凧の足が見える譯ですが、是はどうあつても根本的に早く民主主義で「シンボル」をお作りなることであるが、併し是は恩給局に言つても仕方がないことである、だが、今は本俸を取つて居るが、自分達はやめてしまつたらあれだけの恩給になるが、どうせそれでは食つて行かれぬと思ふと寂しい氣持を持つと、學校の教員諸君が言ふのです、だから自然に氣が腐つて來る、だから教育にも餘り深入りしないで、お座なりの教育をすると云ふ結果になつて來るのは、皆生活問題から來るのではないか、此の生活問題、現在は本俸を取つて居るからどうにか食つて行くけれども、年を取つてよいよいの爺さんになつたらどうするかと云ふ心配に對して、やはり之を何とか切り開いてやる必要がありはせぬか、其の點に於て、先程から申上げる通り、恩給は年を取る程少し殖えるやうにでもして貰ふか、加算するやうに何とかそこを方法して貰ふ、若い者が非常に安く貰ふ、四十歳の者は五十歳の者より安く貰ふ、年を取る程少し殖やしてやると云ふやうな方法で、劃一主義では、四十も六十も七十も同じやうな状態では、恩給の精神を徹底さすことに無理がありはせぬかと云ふ點を此の改正法律案を見て御參考に申上げるのに過ぎないのです、ですから何とかして公平に扱つて戴きたいと云ふのが、私の希望附きの意見でありまして、此の改正法案に對する質疑と云ふものは大して私は持ちませぬ、どうか其の意味を御含み下すつて、簡單なる希望を述べて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=19
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020・小島徹三
○小島委員長代理 布君に申上げますが、文部省政府委員に對しては質問はないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=20
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021・布利秋
○布委員 兩方一緒に來て居るのですから、文部省の分だけ文部省の方から御答へ願つて、恩給局の分は恩給局の方で…、ですから二つに分けて希望を傅へて貰へば宜い発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=21
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022・小島徹三
○小島委員長代理 それで宜いのですか、政府委員の答辯は要らないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=22
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023・布利秋
○布委員 だから兩方お分けになつてやつて戴く、今話したのは恩給に關係するものと、一寸兩方の分野がつかぬかも知れませぬが、質問でなく、私のは希望ですから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=23
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024・三橋則雄
○三橋政府委員 只今色々と、今後の恩給を改正する場合に付きましての參考になるやうな御希望を御述べになりましたが、それ等のことに付きましては、十分に將來の改正の參考にして取計らふことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=24
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025・日高第四郎
○日高政府委員 長年教育に携はつて居りまして、其の人が退職をして恩給生活をする時に、非常な慘めな状態にあることは御指摘の通りでございまして、私共の方にもさう云ふ陳情めいた書類も來て居ります、來の邊は出來るだけ正しい待遇を受けられるやうに骨折ります、尤も今後受ける者と從前の者との色々の關係もございませうし、他の官廳との振合ひもございませうから、特別に教員の待遇だけを良くすると云ふことは、今此の際は難かしいと存じますけれども、成べく相應な待遇の出來るやうに骨折りたいと存じます、それは全般的の待遇を良くしますと、恩給の基礎額が向上致しますから、今後のものに付ては他の一般の官吏に準じたものにはなるかと存じます、それを基準にして、過去のものにも法規其の他財政等の點で、許し得る限りは成べくそれに準じたやうな取扱をして貰ひたく存じて居ります、今後關係當局の方と御相談しまして成べく御趣旨に副ふやうに取計らひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=25
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026・布利秋
○布委員 御心持ははつきりしまして有難うございますが、來年度に改正法が出來るとします際には、前以て議會人の有能の士何人かを、兎に角御相談相手なり委員なりして、一應役人だけで法律を御作りにならぬやうに、恩給などと云ふものは廣い意味があるのですから、さう云ふ希望も能く御聽きになつて、法案を作ることに對しての御考へ方を、最後に一言聽いて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=26
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027・三橋則雄
○三橋政府委員 此の恩給法の改正に付きましては、先程私から申上げましたやうな風に、今回特に民間有識者の意見を御伺ひするやうなこともしなかつたのでありますが、案の内容に依りましては、勿論民間有識者の方々の意見を能く伺ひまして、取計らひたいやうに考へて居ると申上げて居るのであります、此の次に致します恩給法の改正が、全般的な、根本的な大きな改正と云ふことになつて來ますれば、勿論今の御話のやうな風に、民間有識者の意見なんかも十分に徴しまして、さうして過誤なきを期したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=27
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028・布利秋
○布委員 私は是で自分の質疑で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=28
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029・小島徹三
○小島委員長代理 之を以て發言の通告をした人は濟んだのでございますが、其の他にどなたかございませぬか——それでは是で質疑を終結致したいと思ひますが御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=29
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030・小島徹三
○小島委員長代理 御異議ございませぬから、之を以て質疑を終結致します、さうして討論と採決を、明後二十八日の午前十時から會議を開いてやりたいと思ひますから、左樣御諒承願ひます、是で散會致します
午後零時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010159X00519460826&spkNum=30
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