1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月十八日(木曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 坂東幸太郎君
理事 青木孝義君 理事 松浦薫君
理事 青木清左ヱ門君 理事 高津正道君
菊池長右エ門君 瀧清麻吉君
江部順治君 太田秋之助君
新妻イト君 松本七郎君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
復員事務官 遠藤武勝君
復員事務官 荒尾興功君
復員事務官 山本丑之助君
大藏事務官 江澤省三君
大藏事務官 加藤八郎君
大藏事務官 石原周夫君
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本日の會議に付した議案
會計法戰時特例廢止等に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=0
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001・坂東幸太郎
○坂東委員長 是より會計法戰時特例廢止等に關する法律案の委員會を開會致します──青木清左エ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=1
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002・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 前會に引續きまして質疑を致したいと思ひます、先づ御出席になつて居られる參與官に關することから始めます、先づ國有財産の處分の問題でありますが、是は敗戰後の色色な情勢より致しまして、神社及び寺院と云ふものが、各各法人として今までの立場と異なつたことに相成つて居るのでありますが、それ等のものが過去に於て使用し、若しくは管理して居りました國有財産の處分の問題に付ては、相當是等の關係者乃至神社、或は寺院の將來の運營の上に於て、種々の問題が起きて來て居るのではないかと思ふのでありますが、是が處置に付てどう云ふやうな方法を御執りになる御考へであるか、御示し願ひたいと思ひます
尚ほ既に農地調整法等に於きましても、從來耕作して居る小作人に對して、其の開放された土地は委讓すると云ふやうな方法が執られて居る今日、從來の神社及び佛閣が使用し、或は管理して居りました土地の委讓と云ふものは、寧ろ是等の神社及び佛閣になすべきものであると云ふことを一應考へられるのでありますが、是等の點に對し、政府は現在どう云ふことを考へ、又今後執らんとして居るか、御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=2
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003・加藤八郎
○加藤(八)政府委員 御答へ申上げます、只今御質問でございましたやうに、國有財産の中で、從來寺院、佛堂に無償で貸して居りました境内地に付きましては、昭和十四年に特別な法律が出まして、其の境内地を無償でお寺に讓與すると云ふことに相成つたのでございます、其の當時約四萬程の申請がございましたけれども、一萬程處理致しまして、まだ三萬程殘つて居るのでございます、是は戰時中に於きまして事務停止になりました關係上未處理になつて居る次第でございます、之に付きましては、戰爭も濟みましたので、引續き續行することにしたいと考へて居るのでございますが、唯ここに問題になりますことは、憲法草案の八十五條に於きまして、公の財産を宗教法人に供與してはならないと云ふやうな規定がございますので、此の關係から見ると、國有境内地を寺院等に無償でやると云ふことは、憲法に抵觸しないかと云ふやうな心配があるのでございます、併しながら現在國有地になつて居ります境内地は、元々寺院のものであつたのを、明治の初めに於て上地せしめたものであると云ふ考へを持つて居りますので、上地せしめたものを元の所有者である寺院に返すことは、新たに利益を與へることにはなるまいと云ふ見解を持つて居るのでございます、尚ほ神社の方でございますが、神社は御承知のやうに從來公法人と致しまして、國有財産法上其の境内地は公用財産と云ふことになつて居つたのでございます、此の度神社と國家と云ふものが分離致しまして、神社は新たな法人として發足した譯でございますが、之に對し其の境内地をどうするかと云ふ問題が新たに起きて參つたのであります、其の措置と致しましては、本年の二月に「ポツダム」勅令を以ちまして、現在神社の用に供して居ります土地を、一應無償で貸付けてしまつたのであります、現在貸付けた儘で之を處分するかどうかと云ふことに相成つて參るのでありますが、是は寺院と同樣に神社に對してもやはり宗教法人として讓與することが然るべきではないか、さう云ふやうな考へを以て、神社、寺院共に國有境内地を無償で讓與すると云ふ方針でございます、尚ほ此の點に付きましては憲法八十五條との關係もございますので、關係筋に目下諒解を求めて居る次第でございまして、それが決まりましたならば早速開始したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=3
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004・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 大體今のことで了承致しましたが、どうぞ一つ、關係筋との交渉には萬全を期して戴きたいと思ひます
其の次に復員省關係に付きまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=4
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005・坂東幸太郎
○坂東委員長 御相談致します、國有財産部長に關聯事項で御質問がありましたら御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=5
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006・新妻イト
○新妻委員 是は大藏省の管轄になつて居るかどうか分らないのでございますけれども、大日本婦人會の解散後、殘つて居ります殘金がある筈でございますが、それは只今何處で保管されて居りますことやら、又どの位の殘額がありますことやら、又其の當時皇后陛下からの御下賜金の百萬圓も、何處かに保管されて居ると思ひますが、それは大藏省では御分りにならないのでございますか、一寸御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=6
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007・加藤八郎
○加藤(八)政府委員 それは大藏省所管ではございませぬ、内務省關係ではございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=7
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008・新妻イト
○新妻委員 厚生省の方に伺ひましたが、やはり分らないと云ふ御話でございますし、是は私共婦人の立場と致しまして色々伺ひたいと思つて居ります、皆さんの要望でございますから、一つどなたでも結構でございますから、伺はせて戴きたいと思ひます
それからもう一つ伺ひたいのですが、戰爭保險は大藏省でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=8
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009・加藤八郎
○加藤(八)政府委員 銀行局長來て居りませぬし、私所管が違つて居りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=9
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010・新妻イト
○新妻委員 此の戰爭保險は半分だけは現金で支拂はれたのでございますが、半分は特殊預金になつて居ります、是は銀行から拂出され、政府の方から多分補償があつただらうと思ひますが、どの位拂出されたかと云ふことと、あとの特殊預金を一般の者は打切られるのではないかと非常に心配を持つて居りますので、其の邊伺はして戴いたらと思ひます
それから論功行賞の公債の件でございますが、是は大藏省の方でございますか、それとも復員廳の方でございますか、支那事變當時の論功行賞が無效になつたのでございますけれども、之に付きましては、大藏省と云ふ御話でございますからあとで伺つても結構でございますが、唯御質問だけ申上げて置きます、實は私の伜も戰死致しましたけれども、支那事變の論功行賞を戴いて居りました、今度是は無效になつたのでございます、私金高の無效になることはちつとも厭はないのでございます、勿論伜まで差上げたのでございますから、お金まで要らないのでありますけれども、人に依りまして非常に御困りになる方もあるではないかと思ふのであります、私の粗相で新聞を讀み損ねた點もございますけれども、いつの間にか是が無效になつて居て、新聞に發表せられたこともつい存じませぬで、後になつて承知した譯でありますが、何かの方法で以て之を御通知あつたら宜かつたではないかしらと云ふことも考へられるのでございます、又此の論功行賞と云ふのは、頂戴致しました其のお金でなく、其の働きを稱讃して戴いたことと私は思ふのでございますが、それが無になつたと云ふことは、是は私達母と致しまして、子供を出しました以上非常に殘念に堪へないのでございます、それが一つと、もう一つそれと同じやうな問題で、遺族の扶助料でございますけれども、是は二月に打切られたと云ふことは私も能く存じて居ります、それに付きまして是は貰つた人と貰はない人があるのでございます、すると是は非常に不公平なことだと思ひますので、二月に打切られたと致しましても、二月までのものを貰はなかつた人は與へらるべきではないかしらと云ふことも考へられたのでございます、其の邊如何でございますか、伺はせて戴きたいと思ひます
又私の所に問合せが來て居りますけれども、傷病賜金、是もやはり取れるやうになつて居ながら取れずに居ると云ふのがございます、問合せが來て居りますので、何れそれも伺はさして戴きたいと思ふのでございます、此の點後で復員廳關係の時に御返事を戴けば結構でございます
それからもう一つ獻金の問題でございますが、私共一機も多く造らなければならないと云ふことで──戰爭に對しましては私共全面的に嫌つて、斯う云ふ人道的でないことはしたくないと云ふことは常に申して居りましたけれども、日本の國民である以上、日本が戰爭を遂行すると云ふことであるならば、私達も一生懸命にやらなければならない、飛行機が一臺でも多く欲しい、又戰爭にいらつしやる方を御慰安申上げなければならないと云ふことで、恤兵金も致しました、さう云ふことで、それこそ一生懸命皆獻金致したのでございます、是は強制的に取られるのぢやなくて、私達自主的に出したお金でありますけれども、此のお金が、大東亞戰爭になりましてからどの位集まつたかと云ふことも、私達はまだ御報告を受けてないやうに思ふのでございます、それに付きまして、一體國民が捧げたお金でどれだけの飛行機が出來たか、又どれだけの軍艦が出來たか、其の當時に於きましては、非常に素晴しい軍艦が出來たとか、素晴しい高射砲が出來たと云ふことを伺つたのですけれども、唯さう云ふ御話だけでさつぱり分らなかつた、斯う云ふ點で、若し出來得るだけの細かい御返事が戴けましたならば、私も大變喜びますし、國民もきつと喜ぶことと思ふのであります、假令戰爭に負けましても、さう云ふ自分達がしたことに付て、幾分かのお役に立つたことが數字の上に分れば、大變結構ぢやないかと思ひまして、是もお序での時に御報告を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=10
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011・荒尾興功
○荒尾政府委員 只今の賜金若しくは扶助料の未拂の件に關しまして、復員廳の關係から御答へ致します、國家の爲に御亡くなりになりました方々に對して、恩典殊に賜金であるとか、扶助料を御渡し致しますことは、當然實行されなければならぬ極めて生計上大事な問題であると思つて居ります、是が支給は、當然迅速に當事者としてせねばならなかつたのでありますが、戰時中は御承知のやうに色々な障碍がございまして、事務手續も成べく簡易にしまして、大部分には御渡し出來たのだとは思つて居りますが、只今御質問のございました通りに、不渡の、所謂不公平な状態が生じて居ります、其の原因は、爆撃が激しくなりまして、都市から非常に疎開をされて居られる、燒出されて居られる、それから交通が不便になりまして、通信が中々通じない、御遺族の住所が變更せられる、其の他頻繁に住所が變更せられると云ふやうなことに依りまして、書類が遲達と申しますか、又燒失、是等に依りまして、事務が昭和二十年三月頃からは、私の方から見て居りますと、大體先づ休止状態に近い状態になつて居りまして、洵に困つて居つたのでありますが、終戰後の所謂混亂から、是等の整理も中々行きませぬでしたが、逐次平靜化致しましたので、事務が逐次軌道に乘りました所、昭和二十年十一月二十四日附を以て、聯合軍最高司令部の指令に依りまして停止を命ぜられました、隨て扶助料は一律に昭和二十一年二月を以て停止したのでございます、それ以前の分である所の扶助料竝に賜金に付きましても、同じく戰死者の遺族でありながら、受領出來る者と出來ない者と云ふのは、其の指令に依つて、前の事務が戰爭の混亂、終戰後の混亂と云ふやうな問題から御渡しの出來なかつたと云ふ方がありまして、此の點は洵に申譯ない次第と思つて居ります、實情が斯う云ふ風でありました點は、是非御諒承を願ひたいと思つて居ります、それから傷病賜金で一部御渡りになつて居らないと云ふ方がおありになりましたならば、具體的に御知らせ戴きますれば、是は司令部から許可を受けて居りますので、事務の誤り或は手續の遲れて居ることと思ひますから、早速手續を致させます、尚ほ扶助料、特に多くの未亡人、孤兒の身の上を考へますと、洵に斷腸の思ひがございますので、政府としては色々の施策を考へられて居ることと思ひます、何れ本會議に各種の法案が出ることと思ひますが、それに致しましても、其の金額も微々であり、全般的に之を普及することが甚だ至難の状況にありまするので、どうぞ斯くの如く國の爲に死なれたと云ふ美しい精神に對しまして、社會的に十分な御庇護を──先般の本會議で議決になられましたやうな御氣持が滲透せられましたならば、恐らく是等の未亡人、孤兒も精神的に生返りまして、國家の再建に寄與する所が極めて大であると思つて居りまして、洵に微力でありますが、此の上とも協力を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=11
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012・遠藤武勝
○遠藤(武)政府委員 國防獻金のことに付きましては、毎年の議會の決算委員會に於きまして報告をして參つて居りますが、今囘の議會に於きましても、其の決算委員會等が開かれましたら、今までのものを纒めて御報告を致す積りで居つたのでありますが、今御質問がございましたので、一應御答へ申上げます、支那事變以來國防獻金を受けました總額は、陸軍に於きましては十一億五千四百五十三萬八千餘圓でございます、端數は省略致します、それに預金の利子等が四千四百六十萬餘圓ございまして、合計十一億九千九百十九萬一千餘圓が國防獻金として受入れた總額でございます、それに對しまして、兵器を製作致しまして使用致しました金額が六億六千七百九十五萬七千餘圓でございまして、殘りました金額が五億三千百二十三萬三千餘圓となつて居ります、此の殘りました金は大藏省に引繼ぎまして、大藏省で處理されて居ります、恐らく一般會計の歳入に入れると云ふ處理になつて居るやうに思ひますが、さう云ふ風になつて居ります、其の使用の内容に付きましては、陸軍に於きましては飛行機、戰車關係、それから其の他の器材を製作致したのでございまして、それに拂ひましたのが六億六千七百餘萬圓になつて居りますが、是は各品種の作りました正確な數と云ふのは、實は甚だ遺憾ながら、全部の數量が今の所は手許にはつきりして居りませぬけれども、此の國防獻金を以ちまして造らうと計畫しました數字は分つて居ります、其の數字は、大體申上げますと、飛行機關係で申上げますと、各品種ございますが、例へば重爆撃機百十三、輕爆百七十四、戰鬪機約八千、其の他の偵察、輸送機其の他ございます、それから各種の火砲が二千百二門、それから機關銃が二千二百十二、其の他の資材が各品種に亙りまして、數字其の他持つて居ります、さう云ふ状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=12
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013・山本丑之助
○山本(丑)政府委員 海軍關係の國防獻金に付て御答へ申上げます、只今第一復員局の政府委員から申されました通り、毎年決算の時期に於て詳しい數字を御報告致して居るのであります、今年はまだ其の時期でありませぬので、其の時期には申上げようと思つて居つたのであります、海軍關係と致しまして、名方面から獻金が多額に上つて居ります、是は其の獻金者の御趣意に從ひまして有效に使用致して參つたのであります、其の金額に付て申しますと、滿州事變以來の受入總額を申しますと、十億二千九百三十萬餘圓であります、是は預金の利息も含んで居ります、支拂ひましたのは七億九千六百二十八萬七千餘圓、殘高が二億三千三百一萬二千餘圓であります、此の殘高に付きましては、其の儘本年三月二十日大藏省に移管を致しました、此の國防獻金はどう云ふ所に使つたかと云ふ御質問がありましたが、是は飛行機の製作費、艦艇の建造費、各種の兵器の製作費、軍事施設費、其の他になつて居ります、數のことは今一寸持合せがございませぬから……、さう云ふ風で、飛行機の製作費と致しまして、金額で申しますと四億一千萬圓、艦艇建造費では八千五百萬圓、各種兵器の製作費は二億七千百萬圓、軍事施設費は千四百萬圓、其の他千六百萬圓と云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=13
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014・太田秋之助
○太田(秋)委員 私は國有地の處分の點に付きまして御伺ひ致したいのであります、勿論國有地と申しましても、軍用に供された所の、今日不用になつて居る土地であります、それ等は相當各地に散在して居りまして、又今日農耕地として非常に適當な平坦地も多くあるのであります、殊に飛行場に使つたやうな場所は、直ちに畑地になると云ふやうな關係になつて居ります、是に於て最近開發營團の手に依つて、此の廣漠たる耕地の開發に著々と進んで居りますが、此の開發營團の手に依つて出來ました耕地は、是は色々の方法に依りまして、自作農創設其の他に拂下をすると云ふことに相成るのでありませうが、是等の點に付て、現在開發營團が開墾して居る所の土地は、開發營團の手に依つてそれぞれの耕作者を定めるのであるか、又大藏省自體が此の所有權移轉に付て處理をされるのであるか、此の點を伺つて置きたいのであります、と云ふことは、大體軍が急速に各地の施設を爲す場合に於きましては、適當な地域を定めまして、是から此の地域に於ては飛行場を設置する、そこで、向ふ一箇月とか二箇月の間に、其處にある所の住宅、其の他總ての工場を取拂へと云ふやうなことを命じたのであります、一例を申しますと私は自分の居村が之に遭つて居ります、面積は八十萬坪ばかりの土地でございますが、そこに約百戸の戸數がありまして畑作であります、それを昭和十四年の十一月に軍の方から命令がありまして、縣を通して、之を二箇月間に取拂へ、其の取拂ひ方に付ては、地元の町村長が與つて地主會を開いて、軍の豫算は畑は是だけ、原野、山林は是だけの値段で買上げる、是は絶對的の豫算であるから、是れ以上の金は出せないと云ふので、軍の指定した價格を以て買上げたのであります、我々も町村長の職務にありまして、今戰爭の眞最中に、軍が是れだけの土地を必要とする場合に、價格の高い安いを論ずる場合でもなし、又折角開墾した畑地でございまして、約二十年ばかりになりますので、相當熟田になつて、收穫も擧げ得る立派な土地になつた所を立拂ふと云ふことは、非常に辛いことであります、私の村は八十四戸ございましたが、其の行き場所に困つて、色々縣廳其の他に諮つた所が、是は滿州の方に集團移民をすると云ふことになりましたが、中々其の部落の相談も纒まりませぬ、どうしても自分は此の村に居りたいと云ふことでございましたので、餘儀なく各地の各部落に分散致しまして、さうして僅かな宅地を持つて今日勞働に從事し、生活を營んで居る、何れも土地は二町四、五段の畑地を持つて居つた、又小作の者も畑二町以上を小作して居た、斯樣な譯でございますが、軍の命令に依つて取上げられた土地であるから、今度不用になつた場合には、之を優先的に元の所有者或は小作者、是等の者に拂下をして欲しいと云ふので、航空本部を通し、尚ほ大藏當局宛に地元から申請をして居るのであります、然るに此の土地は最近になつて開發營團が著々開墾し、又進駐軍から許可を受けたと稱して、總て其の土地を開發、開墾して、暫定的な作物の作付をして居ります、是は將來は縁故拂下をすると云ふやうなことを言つて居りますが、其の前の所有者は、願書を出したからお上の方でも之を受理して下さると思つて待望して居ります、私も直接さう云ふことに關係をして居りますが、斯う云ふ土地は國内各所にあることと思ふのでありますが、是等に對して、所謂國有地、軍用地の處理と云ふことに付きまして、政府はどう云ふ方針を以て臨むのでありますか、此の機會に承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=14
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015・加藤八郎
○加藤(八)政府委員 元の軍用土地に付きまして、農耕に適しまする土地は、此の食糧事情から鑑みまして、一刻も早く開發する必要がございまするので、一時使用の形を以ちまして、兎に角鍬入れ開墾をすると云ふ方針でやつて來て居るのであります、最終的な處分は聯合軍の方の許可を要することになつて居りまして、其の許可の方針と云ふものに付ては、對日理事會等に於ても色々檢討されて居りまして、まだ確定的な御示しがありませぬので、最終拂下は致して居りませぬ、唯一時使用の形に於きまして、一刻も早く農耕地化すると云ふ方針でやつて居る次第であります、唯元の所有者との關係がどうなるかと云ふ點に付きましては、差支へのない限り元の所有者に返したい、殊に最近の急速な軍備擴充の爲に買收になつたやうな土地に付きましては、元の所有者に御返ししたいと云ふ考へでやつて來て居るのであります、唯茲に一つ必ずしもさう行かない場合が起きますことは、御承知のやうに昨年緊急開拓實施要領と云ふものが閣議決定になりまして、相當纒つた團地に付きましては、國家が直營或は委託の形に於きまして、之を開墾すると云ふことになりまして、全國それぞれの纒つた團地に付きまして實行されて居るのでございます、其の團地の中に入つて居ります場合には、其の開發事業主體に於きまして之を開發すると云ふのが建前でございます、此の事業主體の決定に付きましては、大體五十町歩以上の團地に付きましては、農林省が中央で大體御決定になり、又それより小さいものは、地方長官が其の事業主體を決めると云ふやうな建前になつて居るのでございます、それで其の團地に含まれて緊急開拓として實行せられる場合には、それぞれ定められました事業主體に於て決行すると云ふことになりますので、其の定められた者に對して我々と致しましては一時使用をやつて行く、斯う云ふやうなことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=15
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016・太田秋之助
○太田(秋)委員 重ねて御伺ひ致します、今の御説明に依つて大體の御方針も分つたのでありますが、元々軍用地として御買上げになる場合に、各轉々として居た所有者の面積を集めて、是が一團となつて居るのであります、之に付ては何百坪から何千坪と云ふのを集めて、それが全部國有になつて居るのでありますが、其の本を糺しますと、各各一戸當りの耕作面積は二町歩或は一町五段と云ふやうに分散されて居つたのであります、是が買上當時は、時價四百圓位して居つた畑地でございますが、それを軍の方では二百四十圓しか豫算がない、又原野の方は百五十圓しか豫算がないと云ふので、向ふの言ひなりで私共は渡したのであります、是も致し方がない、今軍として此處が適地であると云ふことを見込んで指定された以上は、どう云つても致し方がない、自分の住宅も移轉しようと云ふので、我々は晝夜兼行で八十何戸移轉した、後に土地を持つて居りませぬ、今日二、三段のものを漸く原や山を起してやつて居りますが、元々土地がないのであります、そこで成べくならば、斯う云ふ無理な値段で買上げた土地でもあるから、元の所有者に返して戴きたい、又多く纒つた大地主もありますが、是等は一つも拂下げて呉れとは申しませぬ、二十町歩三十町歩持つて居た者もあります、私も六十町歩持つて居つた、それでも一度も國から拂下げて呉れとは言ひませぬ、唯小作者とか或は二町以内の自作者とか云ふやうな者に對しては、優先して國家は之に渡して貰ひたいと云ふ願ひであります、中には小作農に顛落し、日傭人になつて居る者もあります、併し是等は多年の經驗から其の土地の土壤の性質も能く分り、又畑の作付方も分つて居る、さうして誰よりも能く研究して居る者でありますから、それ等の者にやらせれば、農作物の收穫も十分に擧げ得るのであります、唯點々としてあちこち國がやつて居りますが、是は迚も收穫を擧げることは出來ない、宅地である、さう云ふやうな所は又それぞれの肥料の關係、其の他の事情もあるし、色々の設備が要るのであります、さう云ふ經驗のある者を活かして使ふと云ふことが一つ、又もう一つは、國家が一旦買上げたのだ、假令安くても高くても買上げたのだ、後はこちらの自由にするのだと云ふやうな御考へでなく、之を元の縁故者に戻して戴きたい、唯開發營團が機械力を以て開墾して呉れると云ふことは大變有難いことでありまして、是等に對する保護助長は固より差支へないことでありますが、斯う云ふ點に於きましては、又營團の方では、營團として與へられた範圍内に於て、營團の方の自作農を作ると云ふことになれば、今御述べになつたことは構はないと思ひます、私の質問は此の點に付て、政府の何分の御同情ある御處置を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=16
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017・和田博雄
○和田國務大臣 私から御答へ致した方が宜いと思ひます、軍用地の開墾の問題でありますが、御話のやうに我々としましてはやはり地元の者を第一に考へて居ります、殊に小作者や自作者、零細な人達が其の土地を追はれて居りまする場合には、さう云つた者を先づ最初に考へて、出來るだけ努めて返して行くと云ふ方針を執つて居ります、それから營團の場合も、大集團の開墾をやりましても、軍用地に付ては、やはり地元の者を優先的に其の中に加へて入植させて行く、斯う云ふ方針を執つて居ります、其の點は御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=17
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018・坂東幸太郎
○坂東委員長 先程新妻イトさんから、戰災保險に對する質問がありましたが、大藏省の銀行局の江澤省三さんから御答辯願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=18
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019・江澤省三
○江澤政府委員 新妻さんの御質問は、戰災保險金の支拂が現在如何程になつて居るか、それから後特殊預金になつて居る分がどうなつて居るか、此の二點だと御聽き致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=19
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020・新妻イト
○新妻委員 それからもう一つ、是はさう云ふことであるかどうか分らないと思ひますが、是が打切られるであらうと云ふことも大分あるのであります、それの御答へもはつきり……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=20
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021・江澤省三
○江澤政府委員 御答へ致します、最近の數字で申上げますると、個人に對する保險金が百八十億ございまして、此の中現金支拂額が七十億、特殊預金になつて居ります分が、百十億、法人の分が保險金二百六十億、其の中現金の支拂になつて居ります分が五十億、特殊預金になつて居ります分が二百十億、之を合計致しますると、保險金總額四百四十億の中、現金支拂が百二十億、特殊預金になつて居ります分が三百二十億、斯う云ふやうな數字になつて居ります
それから特殊預金になつて居ります分に付て、是がどうなるか非常に不安だ、斯う云ふやうな御質問でございました、之に付きましては、政府の側と致しましても、出來るだけ御拂ひするやうに努力はして居りますのですが、關係方面との折衝の都合もありまして、又國の財政全體に關する事情もありますので、中々此の點は思ふやうに進行して居らぬと云ふことは御諒解願ひたいと思ひます、唯少額の分に付きましては、出來るだけ是は御迷惑を掛けないやうにしたい、少くとも少額の分に付ては御迷惑を掛けないやうに努力する、斯う云ふことだけ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=21
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022・新妻イト
○新妻委員 もう一つ此のことに付て伺はせて戴きたいと思ふのであります、私も非常に厖大な金額に驚いて居る譯でございますけれども、其の當時の内閣の方達は、是が後にどれだけの影響が來ると云ふことを御承知なすつて、斯う云ふことをおやりになつたのかどうかと云ふことが、私共考へられるのでございます、尚ほそれなるが故に、一般の人も是が拂はれないのではないかと云ふ虞を持つて居ります、戰爭の時に泥縄式に、是は掛けとけば宜いと云ふので掛けた點があるし、又保險屋さんも非常に勸誘した點があると思ふのでありますが、其の當時から、此の日本の金融の上に於て不安になるのぢやないかと云ふことは、素人でも考へたのでありますが、其の爲に特殊預金の方は打切られると云ふ不安が多いのでございます、さう云ふ場合に於きましても、ある者とない者との差では大變違ふと思ひますので、若し打切られる場合には、さう云ふ點を御考慮を仰いだならば、困つて居る者が救はれるのではないかと思ひます、斯う云ふことだけ附加へて御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=22
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023・坂東幸太郎
○坂東委員長 松浦薫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=23
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024・松浦薫
○松浦(薫)委員 私は、巨額の軍事費が終戰と同時に不當に放出された、さうして其の行方がどうなつて居るかと云ふことは、今日國民が非常に疑惑を持つて居ると云ふことに付て、大藏大臣の之に對する御説明を承りたいと存ずるのでございますが、政府は戰時中、此の會計法戰時特例法に依つて巨額の軍事費を使つて居た、然るに一旦終戰と同時に、僅か一箇月或は一箇月半のどさくさに紛れまして、多額の金額が不當に放出され、同時に凡ゆる物資も民間に放出された、併しながら物資は、凡ゆる隱匿物を摘發する、其の他の不明なる所を探し出すと云ふことに依つて、漸次國民の前に現はされて、國民に均等に分ち與へられて居ると云ふ状況なるに拘らず、終戰と同時に出た數十億の巨額の金と云ふものは何處へ行つたか分らない、金なるが故に或は之を探し求める餘地がないと云ふのかも分りませぬけれども、さう云ふ状況であつて、軍需會社は終戰と同時に終戰成金になつたと云ふやうな、我々聞くだに忌はしいやうなことさへ聞いて居りますので、是が行方はどうなつて居るか、それに對して現在大藏當局はどう云ふやうな方策を執つて是が行方を探して居るか、其の解決なり、今後の之に對する處置を執つて居られるかと云ふことに付て、大藏大臣から御返答を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=24
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025・石橋湛山
○石橋國務大臣 終戰直後軍需會社等に對する支拂に、色々好ましくないことがあつたと云ふことは我々も聞いて居るのであります、是は結局拂はれたものか、或は辭めさせた從業員などに分ち與へられたと云ふやうなものは、無論其の行方を一々探して居る譯には行きませぬが、併し何處へどう云ふ風に拂はれたかと云ふことは大體分つて居りますから、今も新妻さんの御話の中にも、保險金の御話がありましたが、例へば火災保險に付ての今後處理をするにしましても、是は拂つたものも一緒に加へてする、其外の一般の補償の問題に付ても、やはり拂つたものも──能く世間の噂に、若し之を打切るとすれば、拂つたものは取返すと云ふ處置はするだけにはなつて居ります、併しながら保險の問題も、其の外の問題も、世間で能く打切り打切りと言ひますが、決してさう定つたものではありませぬから、さう即斷されては困るのですが、何等かの整理をしなければならぬと云ふことは認めて居りまして、是は我々の方でも案を立て、又關係方面とも目下折衝して居りますが、色色細かい技術上の問題で決まらぬ所もありますので、まだ發表出來ぬのでありますが、近い内に何等かの處置をしたい、其の場合には、今の御質問の既に持つて行つたものも含めて處理を進める積りで居りますから、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=25
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026・松浦薫
○松浦(薫)委員 軍需會社等に於きましては、契約をしてまだ納入になつて居らない分も、終戰と共に恰も既に納入したかの如く、又工事の未完成の部分を、恰も完成したかの如く處理して、巨額の金が拂出された、而も其の證據書類たるや、聯合國に對する資料湮滅と云ふ意味に於きまして、之を焼却してしまつて、現在之を探すとも到底分り得ないやうな事情であると云ふことも、色々噂を聞いて居る、爲に軍需會社は、終戰と同時にもう懷ろ一ぱい取込んで居るのだ、隨て軍需會社は補償しなくとも、自己を整理しただけで立つて行けるのだと云ふやうな噂が、巷間多々傳はつて居るやうな所があると思ひます、此の點に付きましてさう云ふ事實があるかどうか、或はあるのだけれども調べるに方法がないと云うやうな状況であるかどうかと云ふ點を、もう一度御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=26
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027・石橋湛山
○石橋國務大臣 左樣な事實がどれ程どう云ふ風にあつたかと云ふことは、調査は致して居りますが、是は取調が非常に困難なので、まだ御報告申すやうな結果は出來て居りませぬが、全般的に申して、特に終戰直後多額の支拂を受けたやうな軍需會社は、其の外の損害が非常に大きいので、私の大體の觀測から申しますと、今後一般補償と稱せられるやうなものが、若し支拂はれないやうな場合になりますと、存續し得ないものが寧ろ多いと考へて居りますので、終戰直後拂はれても、會社自體が非常に儲かつて居るとは考へて居りませぬ、解雇者に對する手當其の他に依つて大體は散つてしまつた、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=27
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028・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 先程から私の質問が中斷されて居りましたが、先づ農林省關係の事項に付て質問を繼續して行きたいと思ひます、先に大藏大臣は現在の財政上の逼迫、殊に新圓の偏廻りと云ふことに付て、私は傳家の寶刀である新圓の再封鎖をしたらどうかと云ふことを大藏大臣に質問申上げたる所、斯うした強權發動に依つては成べく此の問題は取扱ひたくないと云ふ御話であります、併し一方に於て、農家が一番問題として居るのは主食に對する強權發動であるが、勿論私共は傳家の寶刀を備へて置くと云ふことに付ては異議はないのであります、併し之を徒らに拔放しにすると云ふことの甚だ危險性を考へて居るのであります、農林大臣は大藏大臣の如く、傳家の寶刀は備へて居るけれども、之を一旦拔いたら再び拔くことには相當の考慮を拂つて戴きたいのである、傳家の寶刀を過去に於て拔いた、拔いたことに對して甚だ不評判である、而して之を將來拔かないことを我々は希望するのであるが、拔かない爲には何等かの方策が講じられなければならない、大藏大臣は相當の方策を講じて居ると云ふ御言明でありますが、私は其の御言明に對して一々承服する譯に行きませぬ、併しながら農林大臣は今後如何なる方法に依つてか此の寶刀を拔かないだけの覺悟があるかどうか、先づそれを御聽きした上で、私の質疑を續けて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、強權發動の問題でありますが、強權發動と云ふことは私が屡屡御説明申上げましたやうに、是は謂はば傳家の寶刀でありまして、寶刀は拔きたくないのであります、隨ひまして從來と雖も強權を發動しますに付きましては、愼重なる考慮を拂つてやつたのでございます、件數も比較的極く僅かでございまするし、發動しまする長官に於ても相當の考慮を拂つたことと思ふのであります、今後強權發動なくして供出が旨く行きまするならば、之に越したことはないのであります、隨ひまして、強權の發動に付きましては、從來非難のありました供出割當方法と云ふものを合理的ならしめまして、農家が納得の行くやうな方法に於て割當てて行くと云ふことに致したいと思つて居ります、それから強權の發動に付きましても、市町村に出來まする食糧調整委員會と云ふものを、耕作農家を主體にしまして民主的な機構に變へまして、さうして古い言葉で申しますれば、村吟味と言ひますか、村の人達が集まつて供出の割當もやる、それから村に流れて來まする肥料の配分もやる、村内の消費の規正と云ふこともやつて行くのであります、併し尚ほさう云ふことをやつても、中には二、三の惡い人がある譯であります、是は人間が總て善人と云ふ譯には參りませぬので、どうしてもさう云ふ人に對しては、やはり村の人達の總意を以て、あの人に強權を發動してやれば供出が旨く行くやうになると云ふ時には、あの人に強權を發動して貰ひたいのだ、斯う云ふ申請があつた時に、初めて國家が動いて、其の締括りを付けると云ふやうに致して行きたいと思ひますが、出來るだけ其の前提である割當を合理化すると云ふ方法と、村内に於きまする市町村調整委員會の構成を立派なものに致しまして、其の運營に依つてやつて行く、斯う云ふ方針を執つて居るのであります、唯今までのやうに、供出制度と云ふ一種の統制的なことをやらなければなりませぬ以上は、其の統制のやり方が民主的になりましても、最後の所に於ては、やはり其の民主的な基礎の上に、國が最後の締括りをすると云ふことは必要と考へまするので、さう云ふ意味に於きまして、強權發動を内容としまする緊急措置令と云ふものは存置致したい、斯樣に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=29
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030・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は只今のやうな對策では、やはり強權は發動しなければならぬし又強權發動の規定も持たなければならぬのは諒承致します、併しもう一歩を進めて、更に別個の方法を以て、國家の經濟機構と米の供出問題とを結付けて考へる時に、強權發動と云ふ寶刀は拔かなくとも宜しいと云ふ一つの確信を持つて居ります、何れそれは順次御質問申上げたいと思ひますが、其の順序として先づ之を聽きたいと思ふのであります、食糧は現在「マ」司令部から放出されて居るのでありますが、之に對する見返り物資は相當出て居る筈でありますが、此の見返り物資と食糧放出との關係に付て御説明戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=30
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031・和田博雄
○和田國務大臣 數字は後で御示し致しますが、一應食糧關係だけに付て見ますれば、農業の方に於て見返り物資として一番大きなものは生絲であります、生絲は目下の所向ふの値段は相當好いのでありまして、殆ど生絲だけの見返りで食糧の輸入の金額と釣合つて居り、又少し餘る位になつて居るのでありますが、細かい數字は今私材料を持つて居りませぬから、何れ御答へすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=31
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032・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 して見ると現在の我が國は賣食ひと云ふことになりませぬか、私さう思つて居ります、見返り物資を出して米を入れると云ふことは一種の賣食ひである、さう云ふやうな賣食ひは此の際是正して、同じ見返り物資を出して或る物を輸入するに致しましても、必ず來年は子を産むと云ふやうな、根本的な見方に依る貿易と云ふことを私は考へなければならぬと思ふ、隨て現在の農家には果して米があるのかないのかと云ふことを先づ檢討して見ると、私は米があると云ふことを斷言致します、其のある米は賣り米ではないのであります、自分等が食べる米であります、故に今肥料の闇と云ふことが行はれて居るのでありますが、此の肥料の闇は肥料二に對して米一であります、肥料二叺に對して米一俵であります、それ程現在の農家は肥料が欲しい、自分等の食べる米を節約してでも肥料を買ふ、餘分な米は絶對にないのであります、自分等の食べる米を節約して、切詰めて切詰めて來年子を産ませる爲の肥料と云ふものに農家が著目して居る、隨て既に農家其のものが著目して居るのでありますから、政府も著目しなければならぬ、所が肥料の増産と云ふことは、國内に於ては或る程度以上には進むことが出來ない、して見たら、寧ろ此の際米の輸入よりは肥料の輸入だ、生絲を見返り物資として出した時に、其の交換に肥料を輸入する、さうして農家が食べる米と之を交換する時に、農家も納得して呉れるだらうと思ふのであります、此の點に付て農林大臣は如何なる御考へを持つて居られるか、御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=32
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033・和田博雄
○和田國務大臣 米の代りに肥料を輸入したら宜いぢやないかと云ふ御話でありますが、我々と致しましても七月から十二月の此の下期に於て、國内の肥料生産だけでは需要を充すに足らないと云ふことははつきり致して居りまするので、肥料の輸入に付ては申請を致して居るのであります、早くから之を考へまして、「マッカーサー」司令部の方へ硫安に付ても、燐鑛石に付ても、加里鹽に付ても輸入を申請致して居るのであります、併し御承知のやうに硫安に付ては今入つて來る場所はありませぬ、「アメリカ」も國内の需要が非常に多うございまして、硫安に付ては今年度は入つて來る見込はないのであります、燐鑛石に付ては、「マッカーサー」司令部の厚意に依りまして、先づ此大東島の燐鑛石から手を付けて、大體今までの所二萬「トン」ばかりのものが入つて來たやうな次第でございます、肥料の輸入に付ても我々としても十分努力は致して居るのでありますが、是は何としてもこちらだけの經濟から結論を下す譯には行かないのでありまして、「アメリカ」、殊に外の國との關係もございますので、さう簡單には參らないのでありますが、肥料の點に付ての輸入に付ても、我々としては十分努力は致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=33
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034・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私の言ふ肥料の輸入は、日本の國内に肥料が足りないからと云ふ其の基本に基く要求とは多少違ふのであります、肥料一と米一とを交換する目的のものであります、同じ船を使ふならば、其の船に米を滿載して來るよりは肥料を滿載して來る方が宜い、併しそれを寧ろ一對一にしても、今年の米の一俵は來年の米の五俵になる、一が五の子を産むと云ふことに基本を持つた私の考へなのであります
更に今度は一つ大藏大臣に御聽きしたいのでありますが、「インフレ」に「インフレ」を重ねて居ると云ふ現在の事情の根本は何が故であるか、此の間の大藏大臣の御説明では、先づ是は石炭の増産が必要であると云ふやうな御話でありましたが、私は現在の「インフレ」は根本的に何が原因して居るか、それを先づ大藏大臣に御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=34
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035・石橋湛山
○石橋國務大臣 「インフレ」の原因と云ふと困るのですが、根本は、私は今の所謂「インフレ」なるものは飢饉だと思ひます、總ての物資の生産が非常に減つたと居ふことなんだ、此の間も一寸申上げたのですが、普通言ふ意味の「インフレ」と云ふものは、生産はあるが、それ以上に通貨が膨脹して物が上る、詰りそれ以上に通貨を膨脹さしても物が出來ないやうになつて居るにも拘らず、通貨を膨脹させる、戰時などに是が起るのでありますが、さう云ふ場合が「インフレ」なのであります、今日の「インフレ」は、「インフレ」と云ふ名前を使ふのが私から言へば間違ひだ、或は若し「インフレ」と云ふならば、「インフレ」の中の一種特別の、變態の「インフレ」だ、それが起つて居ることは、一番の根本は物資が非常に不足して居る、生産が中々増加しないと云ふ所に基本がある、其の事も影響し他のことも影響して、人心が一般に不安である、經濟界の前途の見透しが困難である、斯う云ふ一種の恐慌状態が起つて居る、此の二つが現在の「インフレ」の根本原因であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=35
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036・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論大藏大臣の御説明の通りであると思ひます、併し物の面から考へた時に、衣食住の中、衣は場合に依つたら、殊に現在のやうに夏でありますならば我慢が出來る、住も同樣に恐らく我慢が出來ると思ふ、唯一つ我慢が出來ないのは食であります、私は現在の「インフレ」の原因、或は各地に勞働問題が起つて居る、其の勞働問題の眞因は、やはり賃金の問題、金の問題である、其の金の根本問題は何かと云ふと、やはり我々の食を求める聲である、斯う思ふ、今日の第九十議會が憲法に主力を注ぐべきにも拘はらず、尚ほ食の問題が國民の腦裡を離れない、議會に於ても重大なる問題として取上げられて居ると云ふことは、私は現在の日本の凡ゆる混亂の基本は、主食の缺配に基いて居ると云ふことが先づ考へられるのであります、其の意味に於きまして、私は現在の此の米の闇値と云ふものをどうしてもなくしなければならぬ、米の闇があるが故に凡ゆる物資の闇と云ふものがそれに引續いて起つて來るのである、隨て此の米の闇値を追放する爲に米の増産と云ふことが必要であり、此の増産の爲に肥料の増産、石炭の増産と云ふことが必要である、それは肥料の増産の根源になるのであるが、私は肥料を増産し、米を増産しても迚も追付かない、寧ろ曩に申上げたやうに、農林大臣の御意見を聽きましたやうに、肥料其のものに輸入の根柢を持たなければ、現在の日本は絶對に救はれないと考へるのであります、此の問題に付て農林大臣は、色々各般の事情があるでありませうが、其の筋との協調の重點なども、私は──私の此の發言に依つて農村に米があるかの如く關係筋に取られると云ふことは非常に苦しいのでありますけれども、今日の事態を救ふ爲には、百姓へ肥料を一叺持つて行けば必ず米一俵が出る、是は事實なんです、私は二町歩作つて居る百姓です、二町歩作つて居る百姓自身が考へて、今肥料を一叺貰つたら必ず米を一俵出すと云ふ、此の心理状態を實際行ふことに依つて、農林大臣は決して寶刀を拔かなくても宜しい、斯う云ふことを特に考へるのでありますが、此の點に付て大臣は、更に之を強力に行ふ御決心ありや否や、もう一應御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=36
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037・和田博雄
○和田國務大臣 肥料の輸入に付きましては、我々として十分努力を今後も致す積りで居ります、食糧を輸入するのと肥料を輸入するのとは、直ぐ食へるものを輸入するのと、生産材を輸入して次の年度の米を作ることになるのでありますから、結果に於ては同じでありますが、併し日本の食糧事情は、御承知のやうに非常に窮迫して居りますので、差當つての食糧輸入の懇請と云ふことはどうしても必要なのであります、併しやはり生産が繼續して行はれなければならぬと云ふ觀點に立ちますれば、肥料は必要なのでありますから、私は肥料に付ては國内の生産を増加して、國内需要を自給出來るやうに日本の肥料工業を發達さして行きたいと云ふ希望は持つて居りますが、差當つて肥料の生産が需要とうまく「マッチ」しないのでありますから、是が足らないものは何處までも輸入して行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=37
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038・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは次に農地調整法と財務の關係に付て御尋ね致したいと思ふのであります、農地調整法が今議會に提案さるるやに聞いて居るのでありまして、尚ほ農林當局と致しましても、相當の調査がもう出來て居るものと思ふのでありますが、農地證券を何れ發行になるでありませうが、其の發行の總額がどれだけになるかと云ふ大體の見透しを聽きたいのであります、又私は斯う云ふ意見を持つて居るのであります、土地と云ふものは小作人に對して賣却すべからず、寧ろ小作人に土地を只で交付したら宜しい、斯う云ふ主張を持つて居る、さうすると一方に於て地主が土地を手離す時に、無償で手離せるかと云ふ問題が附帶して起るのであります、是は勿論無償で手離すことは出來ないかも知れませぬ、併しながら私は土地を賣ると云ふやうなことは地主は考へないと思ふ、地主の子孫が祖先の恩惠に依つて生活を立てて行く、全面的に祖先の力に頼ると云ふことは、恐らく現在の地主は考へて居らない、併しながら少くとも半分程度のものは生活の扶助を祖先に仰ぎ、半分は地主の子弟が自己の努力に依つて開拓した職業に依つて補ふと云ふやうなことを、恐らく考へて居ると思ふ、隨て此の調整法に依る農地の開放の場合に、小作人からは金を取らずに──此の問題は何れ調整法が出ましてから、私は或る程度意見を申したいと思ひますけれども、小作人の出した金に依つて土地を賣つて、それに依つて地主が食つて行くと云ふのでなくて、寧ろ此の土地の開放は、現在の日本を再建する上に於て必要であると云ふ國家的要求に基いて、地主が犧牲になるのでありますから、國有地の拂下とか、或は財産税の如きを此の方に振向けると云ふやうに、何等かの財源を求めて地主の生活扶助の途を御立てになる方が、私は宜いのぢやないかと思ふのでありますが、之に對する農林大臣及び大藏大臣の御考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=38
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039・和田博雄
○和田國務大臣 農地關係の此の數字に付きましては、計畫が明確に決まつてから御答へすることに致したいと思ひます、地主の生活保護でありますが、之に付ては、我々としまして、此の國家的な日本の再建を致します上に於きまして必要な農地の改革をやりますに付て、地主が小作人に土地を賣つた、其の賣却代金の有效な利用方法と云ふことに付きましては十分に考慮致しまして、土地の代金が徒費されることのないやうに、有效な方面に利用されるやうに十分考慮致したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=39
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040・石橋湛山
○石橋國務大臣 今の青木君の御質問は何か私有財産の否定を御主張になるやうな風に私は聽いたのでありますが、只今の制度では、地主の持つて居る其の財産は財産として承認し、之を買取るなら國家が買取つて、小作人に讓渡すと云ふ方法もありませうし、直接地主から讓渡すると云ふやうな、色々な方法もありませうが、地主から無償で取上げて、さうして地主の保護を國家でやると云ふことは、現在の制度ではどうしてもやれないのではないか、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=40
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041・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私の言ふのは、私有財産の否認と云ふ問題とは違ふのであります、是は現在の地主は、僅かに一段歩七百圓とか八百圓とか云ふ金を以て自己の財産を處分するやうな氣持になり切れない、寧ろ是は自分を取卷く小作人達に對して、而も自分を取卷いて居る小作人と云ふものは、祖先傳來地主を中心としてお互ひに結び合つて來た仲の好い一つの「グループ」である、して見れば、私共の土地と云ふものは、寧ろ是等の小作人に金で買はせるのではなく、之を只で與へて、さうして孫子末代自分達は其の隣組の隣人愛に依つて生かして行きたいと云ふことを、現在の地主の感情としては考へられるのであります、故に私は此の感情を基點として土地の開放と云ふことを考へて居るのでありまして、私有財産の否認と云ふやうなことを基點として考へて居るのではない、隨て一方に於て小作人に對して之を金で賣却せずに再配分する、勿論再配分するのには、私は少くとも主食の供出の「パーセント」として、其の大字に於ける平均の「パーセント」以下の者には土地の再配分の權利を與へない、是は農民から不正農と惰農とを放逐すると云ふことになると考へるのであります、斯う云ふ政策を實行すれば、所謂主食の供出には、土地の再配分と云ふ裏付があるから、私は必ず直ちに完成されると思ふ、傳家の寶刀を農林大臣は拔く必要がないと云ふことを私は考へる、それを實行する方法として財源關係になると、地主は小作人に無料で其の土地を賣るのであるから、地主として貰ふ金がない、勿論地主としては先のやうな感情があるから、自分の土地を賣らうと云ふ考へはない、故に其の財源が捻出されれば、地主の子弟は將來それ全體に頼る譯に行かないけれども、或る程度の生活の保障が得られることになる、斯う云ふことならば別であるが、さうでなければ、地主としては現在の國家の一大轉換期に際して、自分の土地を賣らうと云ふやうなことは考へて居らないと云ふことを、私は二町歩を作つて居り、又地主ですが、自分等の考へを基本として思ひ、それに付て聽いて居るのであります、此の意味に於てもう一應御答辯が願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=41
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042・石橋湛山
○石橋國務大臣 失禮致しました、大變能く分りましたが、それも亦非常に重大な思想を含んで居ると私は考へます、大變研究すべき又我々として頭に入れて置かなければならぬ思想と思ひますけれども、それは或る意味に於ては私有財産の否定よりもつと重大な思想的變化を含んで居ると思ひます、ですから今農地に關する立法が、直ちに御指示のやうな思想を織込み得るや否や、私には當局者ではありませぬから何も言へませぬが、非常に有難く承つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=42
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043・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に農民の家計の問題であります、是は現在各地の農民に於て、非常な重大問題として取上げられて居るのであります、此の間、是も貴族院に於ける大藏大臣の御答辯であつたかと思ふのでありますが、農村方面には、相當の闇の物資が農村から出て居る、農村は非常に富裕な階級になつて居る、而も新圓の半分近くのものが農村にある、隨て農村に對する賦課と云ふものは、日本の國の歳入の上の一つの財源になると云ふやうな意味の御答辯が貴族院であつたやうに思ふのであります、是は此の點をもう少し私ははつきりして置かなければならぬと思ふのでありますが、仄かに聞く所に依りますと、各税務署に對する所得税なら所得税の賦課徴收の基本は、一種の割當制を執つて居るのではないかと云ふやうなことが一般に言はれて居るのであります、私は福井縣でありますが、福井縣に戰災地の福井があり、敦賀がある、是等の戰災者に割當られた所得税を取る譯に行かないから、之を農村方面に轉嫁したと云ふやうな事實があるのでありますが、此の割當方法は如何なる方法をやつて居られるか、先づ御聽きしたい點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=43
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044・石橋湛山
○石橋國務大臣 税務署毎に税金を割當てると云ふやうなことは、昔から能く噂はありますが、絶對にありませぬ、唯今年は農村の方面に對する所得税が急に重くなつたと云ふので、色々苦情を聞いて居りますが、是は以前から私など民間に居りまして、財政の方面の委員などを頼まれて居ります時分から、常に問題になつたと思ひますが、必ずしも農村と限らず、本當の實收に對して──税としては闇とか闇でないとか云ふことは問題でないので、所得税と申しますれば、各人の本當の所得に對して課税するのが公平なんであると云ふ建前で、それをやらなければいかぬと云ふことで、是は民間の學者等から常に論ぜられて居つた所であります、先年東京都に於て、賀屋君が大藏大臣の頃でありましたが、やはりさう云ふ建前で東京都の商人に所得税の課税をしました所が、急に重くなつたと云ふので大問題を起しまして、其の場合にも誤りのあつた部分は躊躇なく之を訂正すると云ふことでやりました、事實其の訂正が澤山數があつたかと云ふと、案外訂正は少かつたやうでありますが、今までの課税が一度に急に殖えるものですから驚く、殊に又斯う云ふ誤解がある、妙な誤解ですけれども、所得の査定額が直ぐに課税だと思ふ、それで五萬圓と云ふ所得の査定をすると、其の五萬圓の税を取られるのだと云ふ風に考へて驚くと云ふやうなことも屡屡あることで、今度もさう云ふやうな傾きもあるやうに思ひます、無理などは致して居りませぬ積りであります、若しも間違ひがありますれば、躊躇なく訂正致します、又事實間違があることも發見致しましたら訂正して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=44
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045・新妻イト
○新妻委員 ほんの五分間で宜いですが、農林大臣に御伺ひ致します、此の間農林中央金庫の御説明で、養蠶の方が大事だ、見返り物資として、只今の食糧輸入上非常に必要だと云ふ御話がありましたが、それに對して今度繭手形が出ると云ふ話を聽いて居りましたのですけれども、其の手形は何處から出て來るのか、又さうして養蠶家に對して農林金庫があれだけのことをなさうと云ふのに、もう一つそれを拵へると云ふのはどう云ふ理由か、慥か日本經濟かなんかに繭手形のことが出て居りましたものですから、農村で新圓に困つて居りますので、さう云ふものがあるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=45
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046・和田博雄
○和田國務大臣 私何にも聞いて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=46
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047・松浦薫
○松浦(薫)委員 私の先程の質問の最後の結果だけが殘つて居つたやうに思ひます、先程申しました終戰當時の軍事費の行方に付きましては、政府は須く十分に御檢討戴きまして、決算時に發表して戴きまして、國民に疑惑のないやうな處置を執つて戴きたいと云ふことを大藏大臣に御願ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=47
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048・瀧清麻吉
○瀧清委員 一寸此の機會に大藏當局に御尋ねしたいのですが、私の御尋ねしたいのは、地方起債の問題であります、其の中一點は、戰時中に地方に於て軍事に關聯して起債に依つて企てられました事業で、尚ほ繼續中のものは如何に處分されるか、是が一點、それから之に關聯致しまして、今地方では財源が非常に涸渇して居りまして、政府は曩に此の實情に鑑みて、地方分與税の増額とか、或は市町村民税の増率を實施されることになりましたが、是では到底まだ地方の財政と云ふものはやり切れない、斯樣に思ふのであります、而も尚ほなすべき事業は澤山あります、是等の場合、唯俟つべきものは起債のみだと私は思ふのであります、然るに從來の政府の起債方針と云ふものは、餘り確立して居らぬやうな傾向があります、地方でも其の爲に非常に弱つて居ります、果してどう云ふものに對して起債を許されるのか、又是は許されないと云ふやうなことが確定して居らぬ結果、唯惡く言ふと、強く交渉した者が起債を許される、今俗に言ふ正直者には起債を許されぬ、斯う云ふやうな傾きがあります、府縣町村に於きましては、起債の交渉には老練熟達の者を内務省や大藏省に派遣しまして、交渉する、所が中々それが容易に許されるのやら許されないのやら分らぬものだから、遂には其の交渉吏員は神經衰弱になつて歸つて、或はそれが爲に自殺をしたと云ふやうな實例が殘つて居る、是は要するに政府の起債の方針が確立して居らぬから、斯う云ふことになるのぢやないかと思ふのであります、是から頻々と起りまする起債と云ふものは、地方に取りましては相當重要な問題だと考へて居りまするが、此の際一つ起債の方針を確立して戴くと同時に之を地方に御示しを願ひたい、斯樣に思ふのであります
尚ほそれと關聯して、今地方では財源に非常に困つて居りまするが、其の困る理由の一つは、是は豫算委員會等の問題になることでありまして、此處で申上げることはどうかと思ひますけれども、最近、先程も御話の新圓の大部分は、某國人の闇商人に流れてしまつて、さうして是等の商人は税は絶對納めませぬ、是は私共の方で最近あつた事實でございますが、税の取立に參ると、地方吏員の自轉車を破壞し、暴力を以て之を毆打したと云ふ事實があつて、此の點は警察問題になりましたが、併し斯樣なことで、地方の財政と云ふものは貧困の上に益益困難を加へるのではないかと思ふのであります、是等の税の徴收に對する大藏當局の御意見も、併せて御伺ひ致して置きたい
それから其の次にもう一つ、是は大藏文部兩方面に亙る問題でありまするが、大藏大臣の御意見を伺へれば洵に結構だと思ひますが、先程來國有財産、特に地方に散在しまする軍事施設と云ふやうなものに付て問題になりましたが、私は之を利用して、現在食糧不足と交通地獄の爲に非常に惱んで居ります各專門學校以上の學徒であります、之を分散する意思はないか、若し其の筋の諒解が得られましたならば、私は極めて適當なる場所と施設があると思ふのであります、殊に我々は之を受入れるだけの十分なる用意を持つて居るのであります、若し此の機會を逸してしまつたならば、斯う云ふ建物は各方面に流れる、或は腐朽するとかして、再び其の機會が來ぬのではないか、此の際一つ政府はさう云ふ方面にも積極的に乘出される意思がないかと云ふことを、是は文部大臣の所管ではあらうと思ひますけれども、物を管理され、財政を管理される大藏大臣の御意見を、此の機會に御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=48
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049・石橋湛山
○石橋國務大臣 戰時中に軍の關係で始められた地方事業を繼續するや否や、是は實はどう云ふ事業でありますか私存じませぬですが、併し抽象的に申上げますれば、それ等の事業にして今度の日本の産業、或は平和日本の建設の爲に必要なものは、無論繼續すべきものと考へて居ります、具體的のことは尚ほ一つ一つに付て調べなければ分りませぬが、方針は左樣に考へて宜しいと思ひます
それから地方起債の問題でありますが、御話のやうに、從來地方起債の方針が確立しなかつたと云ふことは實際だらうと思ひます、是は併しながら、恐らく主として資金の關係に因つたものであります、今までの地方起債と云ふものは、大部分預金部の資金を利用すると云ふやうな種類のものであります、其の預金部資金と云ふのは國も亦利用しなければならぬと云ふことで、そこに資金の需要の競合が起るものですから、自然地方の記債は之を成べく抑へる、斯う云ふ方針を執られて居つた、もう一つは、地方の將來の負擔が殖えると云ふことの考慮があつたものと考へます、私は、今後は地方起債と云ふものも少し考へ方を變へて行く必要があるのではないか、何もかも預金部に持込むと云ふことでは起債は出來ませぬ、そこで地方の資金をそれぞれの地方で利用する、斯う云ふ建前で之を考へ直して見たい、斯う考へて居ります、それから事業としては、差詰めはどうしても人を多く使ふ事業、是は資材を多く使ふ事業は今の所では中々やれない、同じ金を掛けましても、土地を買收するとか、或は資材を澤山使ふとか云ふものになりますと、土地を買ふのでは土地に金が出てしまひますし、資材を買ふのですと資材が不足する、斯う云ふことでありますから、是は差詰めの話でありますが、事業が中中起しにくい、それで成べく勞力を多く使ふ事業を進めて行きたいと云ふのが、現在の政府の大體の方針でございます、一面に於て經濟界の整理がどうしても行はれる、隨て失業者が多數現はれると云ふことも已むを得ないことであります、其の失業者を受入れる強力な體制を作りたい、又作らなければならぬ、斯う考へて居る次第であります、それには地方にそれぞれの事業を起して貰ふことが必要である、其の爲には豫算の方面からも、出來るだけ公共事業費其の他を其の方へ振向けて行くと云ふ考へを持つて居ります、尚ほそれで足りない所は、各地方で地方の資金の使へる場合には之を使ふやうな方針にしたい、斯樣に大藏省としては考へて居ります
それから中國人などの納税の問題でありますが、是はもう確かに現在さう云ふ現象がありまして、洵に困つたことだと思つて居ります、是は關係方面とも目下連絡致しまして、段々左樣なことがないやうに、強力に納税させるものは納税させるやうに致す處置を講ずるやうに、今準備を進めて居るのであります
それから國有財産を利用して學校を分散したらどうかと云ふこと、是は文部大臣の管轄でありますから、私から文部大臣の代りに答へる譯には行きませぬが、私としては贊成であります、其のやうにして國有財産を有益に利用をして戴くことは大藏省としては最も望む所でありますから、之を具體的に文部省と御交渉下すつて結構だと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=49
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050・瀧清麻吉
○瀧清委員 某國人の税の問題でありますが、速かに是は一つ方針を立てて戴きたいと思ひます
それから起債の問題でありますが、地方では出來るならば安い利息と云ふやうなことで、政府の預金部あたりの金を借りたいのでありますが、併しさう云ふことばかり實は考へて居りませぬ、多少利子が高くても、御説のやうな地方の資金を融通して戴くと云ふことで結構なんです、さう云ふ場合には一つさう云ふ方針で進めて戴きたい、斯樣に存じます
それから學校問題でありますが、大藏大臣の御意見は能く分りましたが、是は私が文部大臣に迫つても仕方がない、意見を聽くだけであります、大藏大臣がさう云ふ御意見ならば、一つ閣議とか、さう云ふ際に意見を持出して戴いて、實現を圖り得るやうに御努め願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=50
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051・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話は承知致しました、文部大臣に能く話して置きます、唯是は私の考へですが、何處にどう云ふ財産がありまして、それを利用してどう云ふ學校を立てると云ふことを、やはり各地方で大いに熱を入れてやつて下さらなければ、中々實現しないと思ふのです、政府が何處へ何を持つて行くなんと云ふことでは、迚も間に合ふものではありませぬ、さつきの失業問題でも、實は迚も政府のみでやる仕事ではない、政府も無論やらなければならぬが、どうしても議會人等を中心にして、民間の人達にうんとやつて貰はなければ始末が出來ぬと思つて居るのであります、學校などの問題も同樣でありまして、是非さう云ふ要求をして戴くと云ふことが必要だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=51
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052・瀧清麻吉
○瀧清委員 私は燒け殘つた奈良でありまして、非常に場所も良く、建物もありますから、大藏大臣がさう云ふ御意見ならば、大いに熱を けることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=52
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053・坂東幸太郎
○坂東委員長 青木孝義君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=53
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054・青木孝義
○青木(孝)委員 時間がもうありませぬから、一點だけ伺ひます、前にさう云ふ問題も出たのでありますが、今の御質問に關聯して御伺ひ致したいのであります
一體大藏省本省で、國有財産の中の陸海軍の所有に係るもの、さう云ふものを一應使用許可と云ふことを御與へになつて居るのが現状であらうと思ふのでありますが、之に付きまして、特に都市の燒失したる學校、被害を蒙つた學校あたりでは、文部大臣もおいでになると非常に都合が好いのでありますが、それ等の學校がお互ひに競爭致しまして、各地の施設物を要求致して居るのであります、さう云ふ場合に色々折衝に當つて見ますると、單に學校方面だけでなしに、其の他の産業部面、殊に運輸省あたりは、日本全國に亙つて各地域に色々な施設物を要求して居るので、我々が經驗致しました關係に於きましても、數箇所が要求されて居るのであります、さう云ふことになりますと、大藏省の國有財産第一課、第二課に參りましても、どうしても埓が開かないのであります、さうすると第一にどう云ふ所に持つて行くか、第二にどう云ふ所に持つて行くか、第三にどうかと云ふことが御決まりになつて居るかどうか、さう云ふことは決まつて居らぬで、唯漠然と、必要とするなら何處へでもやらうと云ふのか、どうもそこらの所がはつきりしないのであります、其の爲に色々な運動をしなければならぬと云ふやうなことで、幾ら走り廻つて見ても解決は付かぬ、又それぞれ進駐區域の管轄と云ふやうなことがあり、其の事が今日解消して居るかどうかは知りませぬが、地方の財務局と云ひますか、支部と云ひますか、さう云ふ所へ參りましてもどうも埓が明かないのでありますが、其の外に文部省へ行けば、お前の方は使つて宜しいと云ふ、大藏省へ行けばそれはまだ旨くこちらの方で調ばつて居ないと云ふ譯で、未だに解決しないで居るものの數が非常に多からうと思ふ、それからもう一つは、現在使用許可を願つて置きますると、將來之を拂下げて戴くと云ふことの契機になるのではないかと云ふ風に、恐らく各方面でも考へてさうして居るのだと思ひますが、さうだと致しますると、一つ各省の御關係に於きまして、最も簡單に適當だと決めることの出來るやうな委員會でも構成して、そこで是れ是れのものは此の方面へ貸與する、是れ是れのものは斯く斯くの方に貸與すると云ふやうな、一つの計畫でも御立て戴くならば、斯う云ふ問題の解決が早いのではないかと思ふのでありますが、一體是はどう云ふ風な御方針で使用許可を御與へになつて居るのでありませうか、一つ茲で大藏大臣の御明確なる御説明を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=54
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055・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の如き弊害が現にどれ程か知らぬあると云ふことは、私も薄々感じて居ります、國有財産の處分に付て何等かの方法を講じたいと思つて居りますが、そこまで今實は手が廻り兼ねて居ります、近い中に是が處理に付ての相當の方法を講じたいと考へて居ります、尚ほ委員會のことは、現在でも委員會がある譯でございますが、其の委員會が甚だ微力、或は又委員の選擇が役所側の方の者ばかりだと云ふことになつて居るやうであります、是などはやはり民間からも委員を出して、適當な處置を講ずると云ふやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=55
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056・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 先刻大藏大臣の御答辯の中に、戰災保險は近き將來に何とか處理すると云ふ御話があつたのですが、要するに戰災保險の問題は、善處すると云へば拂ふか或は打切るか、此の二つであらうと思ふのであります、どう云ふ風に考へれば宜いのか、それと同時に、軍需會社の補償は恐らく打切りと云ふことが相當輿論になつて居るやうでございます、それと同時に、將來の國家の財政を考へます場合に、戰災保險竝に軍需補償等、今まで戰爭に使用した國債と云ふものは、此の場合思ひ切つて棒引にしてしまふと云ふやうな方針を御執りになる意思があるかどうか、それから最近或は「デマ」であらうと思ひますが、封鎖預金を全然無效にしてしまふ、或は一萬圓だけを限度として、全部を封鎖すると云ふことが巷間傳へられて居るのでありますが、さう云ふやうなことを果して大藏大臣は考へて居られるかどうか、それに付て御伺ひしたいと思ひます、それから現在の通貨の面を見ますと、非常に増加する傾向がある、一體通貨と云ふものは國民所得とどう云ふやうな比率になれば宜いか、國民所得の一割とか二割とか云ふ通貨があれば宜いと思ひますが、現在の日本と致しましては、或は三割でも四割でも構はぬ、或る限度に於てそれで「ストップ」する傾向あれば宜いと思ひますが、其の點に付て大臣はどう云ふやうな所へ落付けば宜いと御考へになるか、之に對して御答辯を御願ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=56
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057・石橋湛山
○石橋國務大臣 戰時保險の問題は、拂ふか打切るかと云ふさう簡單な問題ではないと思ひます、其の間にもまだ色色處置があります、是はまだ決まりませぬから一つ御待ち願ひたい、併しながら唯斯う云ふことは言ひ得ると思ひます、さつきも銀行局長が申しましたが、少くとも小額の被保險者に迷惑を掛けるやうなことは致したくない、斯う考へて居ります
それから軍需補償の打切りの問題も同樣でありまして、是も中々世の中に誤解がありまして、軍需補償も一口に申して狹い意味もあり、廣い意味もある、世間で一般軍需補償と云ふのは狹い意味のもので、今會社の方で屆出た金額が百六十五億圓、それを前内閣の商工省の委員會で色々の方式を決めまして、大體六十二、三億で止めて宜いのではないかと云ふことを言うて居ります、あの部分が軍需補償と云ふので、之を政府側では一般補償と言うて居るやうであります、「ゼネラル・ウワー・インデムニティ」と云ふので、何もかも封ぜられる、隨て日本の全部の「インデムニテイ」を打切るのである、全部の「インデムニティ」と云ふと火災保險も何も含まれる、斯う云ふやうな言葉の上の誤解から、實質上色々の支障を來したのであります、でありますから、此の問題は、少くとも言葉に於て餘程愼重に取扱はないと誤解を招く譯であります、私の今の考へは、狹い意味の軍需補償に致しましても、或は廣い意味の軍需補償に致しましても、假に是は國家の財政上、其の全部を約束通りに支拂はないと致しましても、日本の經濟が成立つやうにと云ふ大きな見地から、必要な限りは拂ひ、或は拂はないことも起る、さう云ふ見地から處理を致したい、斯う考へて居る次第であります
それから封鎖預金の問題でございますが、一萬圓とか、一萬五千圓以上の封鎖預金を全部凍結するとか何とか、そんなことは全然考へて居りませぬし、問題にもなつて居りませぬ、何か外の事柄が誤り傳へられて、さう云つたことになつたと考へます、其の點は恐らくどんな場合があつても、さつきの火災保險と同じやうに、一萬圓とか、一萬五千圓以下の預金には目は掛けないと云ふやうなことがどつかから傳はつて、其の逆にそれ以上のものは全部打切るのだ、凍結するとか云ふやうに傳はつて居るのだと考へます
それから通貨の分量でありますが、是は國民所得に對してどの位の通貨があればと云ふことは、其の時の取引状況に依りますから、一概に言へないのであります、日本の現在のやうに信用取引が殆どなく、殆ど全部が現金取引だと云ふやうな場合には、相當通貨量は要るものと考へて居ります、それならば現在日本の通貨量がどの位あれば宜いかと云ふことは、實は計算をして居りませぬから、數字的に申されませぬが、可なり私は多く要るものと思ひます、現に各家庭にある紙幣の數量と云ふものは、戰爭以前などから見ると迚も比較にならぬ程多いのであります、是は一面物價が騰貴して、それから總ての取引が現金買であると云ふことに因るものであります、今通貨が四百何十億に殖えて居ると云ふことは、確かに退藏が相當多い、先程農村に退藏が多いと私が申したと、誰か仰しやいましたが、農村にも依りまして、純農の如きは近頃却て現金がなくて困つて居ると云ふことも聞きますが、それも本當であると思ふ、何れにしても退藏されて居る部分が相當多いやうに考へて居る、是は何時か申上げましたやうに、補償問題でありますとか、財産税問題でありますとか云ふものが一應片付きまして、金融機關の預金と云ふものが一萬九千圓以上は封鎖してしまふと云ふやうな風説が立たないやうに致しますれば、自ら解消するものと實は樂觀をして居る譯でございます、前途に對してそれ程心配することはないと、斯う考へて居ります
國債の問題は、是もうつかり仰しやつて戴いては困る問題でありまして、國債の所有者の九割までは銀行、保險會社であります、國債を打切ると云ふことは預金を打切ることであります、我々個人が戰時中國債を買つて、家の箪笥に藏つてある國債は、全部取上げました所が、それを持つて居る人が損をするだけであつて、他に何も影響がありませぬが全般に國債を處理する、或は國債の金利を引下げると云ふことでも、それはそれだけではやれぬのでありまして、直ぐ預金に響いて來る、郵便貯金さへも穴が開いてしまふ、郵便貯金の如きは其の資金は國債で持つて居る、國債を「キャンセル」されると云ふことになれば、郵便貯金も支拂はれないと云ふことになる譯でありまして、是はやはり預金を「キャンセル」すると云ふ方式を採らなければ、同時に國債を「キャンセル」することは出來ないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=57
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058・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 今後の財政を考へる時に、國債を完全に支拂つて行く、或は利子を完全に支拂つて行くと云ふ見透しは、大藏大臣としては當然氣付かれて居ることと思ひますが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=58
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059・石橋湛山
○石橋國務大臣 そこで前内閣時代から計畫された財産税の問題が絡んで來るのであります、財産税等を取りますると、預金の一部も財産税に掛つて囘收されることになります、又其の他の物的資産に付ても財産税が掛ります、それも第一次としては預金、現金で租税を拂つて貰ひ、次いで國債等で拂つて貰ふと云ふ處置でやつて行きますから、それ等に依つて出來るだけの處理をして其の後の分は確實なる資産として國民に殘るやうに致したい、隨て財政の處理もさうすれば出來る、是だけの處置を致したいと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=59
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060・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 さつき所得税の調査のことで、各税務署には決して割當ては居らぬと云ふ大臣の御答辯でありましたが私も二十何年間所得税の調査委員をやつて居りますが、如何にも割當はないのでありませうけれども、或る程度の目安と云ふものを與へなければ、恐らく歳入の豫算が面倒だらうと思ふのであります、さう云ふやうな意味に於きまして、今年の所得税の調査を見ましても、非常に農村或は漁村方面に闇の取引が多かつたから、闇所得が相當に算定されて居ると云ふやうな實情は、私岩手縣でありますが、仙臺の監督局の方から、さう云ふやうな指令が來て居つたと云ふやうな事實は確かなのであります、さう云ふやうな闇の所得を見ると云ふのは、やはり大藏省の方針であつたかどうか、それから勤勞所得に對して、勤勞所得と第三種の所得が或る程度不公平になるのではないかと思ふのであります、それは勤勞所得は御承知の通り月々の給料等から税金を差引かれる、第三種の所得は四期に取ると云ふやうな點から見ましても、そこに不公平があるやうに思ふ、勤勞所得を此の儘おやりになるなら、免税點を相當引上げられる御意思があるか、さう云ふことを御伺ひします、それから先刻地方債に付ても御答辯がありましたが、今までの地方債と云ふものは認可制度になつて居る、地方債と云ふものは、大藏省の預金部の資金を借りる場合は大藏省の御厄介にならなければならないのでありますけれども、地方に於て其の資金を賄ひ得るやうな場合は、必ずしも認可制を執らないでも宜いのではないか、或は假に認可を與へても、其の市町村の財政状態が惡ければ恐らく金融の途は付かぬのでありまして、認可があつたから必ずしも金が集まると云ふ譯でないのでありますから、今後地方債に付ては認可の必要はないではないかと云ふやうに考へますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=60
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061・石橋湛山
○石橋國務大臣 各税務署へ、お前の所では是れだけの金額を必ず上げろと云ふやうな指令は、無論出して居る譯ではありませぬが、方針は年々──今年の微税方針は斯う云ふ方針でやるのだと云ふことは、無論全體に申さなければなりませぬから、方針は授けて居ります、それから本年は闇に課税したのではないかと云ふのでありますが、私は、闇などには課税しては居らぬのでありまして、各人の所得に課税して居るものと御承知を願ひたいと思ひます、大藏省としては闇か闇でないかは分らない、兎に角其の人に是れだけの所得があつたものと認めれば、其の所得に課税すると云ふ方針を執つて居ります
それから勤勞所得税の問題でありますが、是は屡屡申上げましたやうに、日本の所得の構成は、高額の所得者と云ふものが甚だ少いのでありまして、少額の所得者が多い、是は或る意味に於て日本が貧乏だと云ふ證據であり、或る意味に於て又日本は貧富の懸隔が少いとも言へる現象であります、税の方から申しますと、高額所得者があつて呉れると樂でありますが、是がありませぬので、そこでどうしても比較的少額の所得者にも納税して貰はなければならぬと云ふことになると同時に、又各國民がそれぞれ、假令少額の所得者であつても、分に應じて納税をすると云ふことも亦他の意味に於て必要であると考へて居ります、隨て勤勞所得税と云ふものは、世の中で屡屡御要求があるやうに、少くとも現状に於ては現在以上に免税點を引上げると云ふことは困難であります、將來のことは、別に國民所得の構成が變りますれば又變へなければなりませぬが、今日に於ては、此の春五十圓から二百圓に上げました其の程度で我慢して戴くより外はないと考へるのであります
それから地方起債でありますが、是はやはりずつと將來のことは兎も角と致しまして、現状に於ては一應認可制にしないと色々の弊害が生ずると考へます、ですから認可制を續けまして、其の樣子に依りまして、或る部分のものは地方に自由にやらせると云ふことが出來る時期もあらうかと思ひますが、現在に於てはやはり暫く認可制に致して置く方が宜しいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=61
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062・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 關聯質問であります、只今利子の話を聽いたのでありますが、公債利子は引下げるべきであり、預金の方の、特に新圓預金に對しては、利子は相當引上げるのが策ではないかと思ふのですが、大藏大臣は此の利子をどう云ふやうに考へて居られるか、關聯して御聽きして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=62
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063・石橋湛山
○石橋國務大臣 利子の問題は物價の問題と同じで、中々難かしいことであります、殊に日本の現状に於ては、色色の統制等の關係から、眞の意味の所謂「マーケット」がございませぬので、物價の方も日本の物價水準が何處にあるかと云ふことがはつきりしないのであります、金利の方も同樣でありまして、現在の金利が果して現在の日本の現状に適するか適しないかと云ふことは、確實なことは分らないのでありますが、併し大體の私共の觀測に於ては、日本は是れだけの損害を受けて、資本の蓄積がなくなつたのであります、此の資本の蓄積を更にやらなければなりませぬから、金利は當然高かるべきものと考へて居ります、それが幾らになるかと云ふことは分りませぬが、兎に角現状より高かるべきものと考へて居ります、併し國債を下げ、それから新圓の預金の利子は上げると云ふことは、是は多分出來ない、技術上出來ないと思ひます、國債に付ても預金に付ても、自ら均衡する點があるのでありますから、其の點に落著けるより外にないと考へて居ります、特に國債の金利を下げると云ふ説がありますが、是は特別な國債と云ふことにならざるを得ないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=63
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064・坂東幸太郎
○坂東委員長 是にて大體の質疑は終りましたが、如何でせう、此の程度で質疑を打切ることに御異議はありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=64
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065・坂東幸太郎
○坂東委員長 それでは質疑は此の程度で打切ります、次に討論に入るのでありますが、それは二十日の午前十時からやります、本日は是で散會致します
午後零時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00519460718&spkNum=65
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