1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
政府出資特別會計法外二十一法令の廢止等に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十四日(水曜日)午前十時五十六分開議
出席委員
委員長 坂東幸太郎君
理事 青木孝義君 理事 青木清左ヱ門君
田中實司君 江部順治君
太田秋之助君 新妻イト君
吉川兼光君 松本瀧藏君
竹谷源太郎君
出席政府委員
復員事務官 荒尾興功君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 江澤省三君
大藏事務官 加藤八郎君
大藏事務官 石原周夫君
司法參與官 中村又一君
農林事務官 石川準吉君
運輸事務官 伊能繁次郎君
委員長の許可を得た出席者
内務事務官 溝淵増巳君
遞信事務官 白根玉喜君
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本日の會議に付した議案
政府出資特別會計法外二十一法令の廢止等に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=0
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001・坂東幸太郎
○坂東委員長 是より會計法戰時特例の廢止等に關する法律案外一件の委員會を開會致します、本日の日程は政府出資特別會計法外二十一法令の廢止等に關する法律案であります、内容は廣汎でありますが、議案全部を議題に供します──新妻イト君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=1
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002・新妻イト
○新妻委員 私は今日「プリント」を戴きましたので、まだ其の内容が能く分つて居りませぬので、前に御聽きしたいと思ひましたことだけを一寸御伺ひしたいと思ひます、是は在外資金のことでございますけれども、此の處理方法がどう云ふ風になるのかと云ふことを、先づ一つ伺ひたいと思ふのでございます、それから例へば在外資金が賠償金として充てられる場合には、勤勞貯蓄と申しますか、零細な積立金が其の中にも含まれて居るのではないかと思ひます、勿論含まれて居ると思ふのでありますが、御承知のやうに、今こちらに引揚げて居ります海外の同胞の悲慘な状態を見ましても、在外資金が其の儘に打切られては非常に氣の毒なことだと私は思はれるのであります、そこで此の人達にも、其の金が其の儘に凍結されて向ふに行つてしまふのか、或は又賠償金として其の儘拂はれてしまふものか、それから政府では其の人達に對して、それをどう云ふ風になさる御積りかと云ふことも、伺ひたいのでございます
それから朝鮮の簡易保險等に付てでございますけれども、簡易保險とか年金保險とか云ふものは、お金持の方がなさるよりも、割合に庶民階級の人が多く積立てられてあると思ふのでありますけれども、それに對してどう云ふ御處置をなさいますものか、それを伺はして戴きたいと思ふのでございます
それからもう一つ、是は此の中のどれに入りますか、まだ私研究してございませぬので分りませぬけれども、戰時中主に海軍だつたと思ふのでありますけれども、白金だの「ダイヤ」を買上げてある、それが未だに使はれない部分が大分あると云ふことを承知致して居つたのでありますけれども、其の現物が今どうなつて居るか、斯う云ふものは賠償の爲に取上げられるものかどうかと云ふことでございます、勿論一般の者はそれを賣つてしまつたのでありますから、何でもないことではありますけれども、それが再びお役に立つならば私共大變喜ばしいことでありますが、其の金額が何處に入つて、どう云ふ風に使はれるかと云ふことも、私共知つて置きたいことだと思ひます、こんな大變取留めないことでありますが、一つ伺はさして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=2
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003・野田卯一
○野田政府委員 御尋ねの三點に付きまして簡單に御答へ致します、第一の在外財産がどうなるかと云ふ點でありますが、在外財産は原則として賠償に充當されることになつて居ります、其の賠償に充當される方に付きましては色色な問題があります、例へば在外財産の中に於きましても、工場とか、鑛山とか、波止場とか、船とか云ふやうな有形物もありますれば、それから債權關係のものもございます、それの處理は債權關係から見ますと貸して居るもの、或は債務者、それが日本人である場合もあるし、或は外國人である場合もある、色々錯雜した關係になつて居りますが、原則として在外財産は賠償に充當すると云ふことになつて居ります、細かい點は今の所まだはつきりして居りませぬ
それから今預金の御話を主として御話しになつたのでありますが、まあ支那其の他に於きまして相當の預金を持つて居られ、それが歸つて來られてどうにもならぬと云ふので、窮情に陷つて居られる事情は兼ね兼ね承つて居ります、それを内地で拂戻が出來ぬかと云ふやうな御要求もあるのでありますが、只今の所は外國に於きまする財産を内地に於て處分する、或はそれを取得すると云ふことは一種の爲替行爲になります、爲替關係の行爲は盡く司令部の承認を得なければならぬと云ふことになつて居りまして、現在の所は、普通の銀行預金等に致しましても、其の内地に於ける處分は許されないと云ふやうな實情になつて居ります、併しながら、御承知の如く海外に於きまする預金に付きましても、朝鮮邊りの郵便貯金、尚ほ其の他の所でも、政府の郵便貯金等に付きましては、内地で其の支拂ひを認める、斯う云ふ方針になつて居ります
それから在外財産が全面的に賠償に充當されたやうな場合に、細かい財産を持つて居る人に對してどう云ふ待遇をするかと云ふやうな問題でありますが、一般的に見まして、在外財産の沒收と申しますよりは、寧ろ賠償充當でありますが、其の際に於て、被害者と申しますか、其の影響を被る人に對する日本政府の救濟策と申しますか、補償策と申しますか、さう云ふものの内容に付きましては、未だ具體的に決まつて居りませぬ、それは軍事補償、其の他の補償の問題、其の他色々な問題がございまして、それ等と睨み合はせて考へたい、又是は日本政府の一存でも出來ないやうな關係にあるのでありますから、十分今後研究して行きたい、斯う云ふ風に考へて居ります
それから第二點でありますが、朝鮮の簡易生命保險、郵便年金なんかに付てはどう處理して貰へるかと云ふ御質疑のやうでありましたが、此の點に付きましては、先程申しましたやうに向ふの郵便貯金はこちらで拂つて居ります、それと相當關係があると思ひます、是は少し立入つた話でありますが、朝鮮に於ける郵便貯金はなぜ内地で支拂が認められて居るかと云ふと、朝鮮で受入れて居ります郵便貯金の資金は大體に於て内地に來て居る譯であります、預金部に送つて來られて内地に取得されて居る、又金額自體も小さいと云ふ特殊の事情に依りまして、内地で支拂が認められて居る、此の朝鮮の簡易生命保險、郵便年金等も大體金額等も餘り大きくない、又其の資金も相當内地に來て居るものが多いだらうと思ひます、さう云ふやうな點も考へまして、今後適當に處理して行きたいと思ひますが、普通の銀行預金などよりは幾分宜い取扱を受け得るやうな私は考へを持つて居ります、是は關係方面と打合はさなければならぬ問題ですから、はつきりとは申せませぬが、郵便貯金と似て居りますので、多少一般の預金よりは有利の取扱が出來るのではなからうかと考へて居ります
それから第三點の、戰爭中陸軍と海軍方面に於きまして買上げた白金とか「ダイヤモンド」がどうなつて居るかと云ふ點でございますが、是は大體に於きまして現在は進駐軍の管理下にあります、進駐軍が全部詳しく調べまして、之を一箇所或は數箇所に集めまして、先方が嚴重に之を保管を致して居りますので、之を御返しをすると云ふことは、只今の所は一寸望みがございませぬ、寧ろ先方は之を以て賠償に充當するかのやうな氣持を持つて居るやうでありますので、一寸今の所はそれを戻して貰つて、之の所有者に御返しをすると云ふ望みは、先づ薄いと斯う云ふ風の見込を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=3
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004・新妻イト
○新妻委員 今の朝鮮の簡易保險や郵便年金のことは能く分りましたが、其の金が内地の方に入つて居る關係上、是も支拂が出來るかも知れないと云ふことで、大變に明るい氣持になれるのでありますが、それと同時に、之をやはり繼續して掛金を掛けて行くことが出來るのでありませうか、それも併せて伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=4
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005・野田卯一
○野田政府委員 只今の問題に付きましては、私から御答へするより、寧ろ遞信省の方から御答へになつた方が宜いかと思ひますが、向ふで掛けて居つたものを、内地へ持つて來まして引續いて掛け得るかと云ふやうな問題に付きましては、其の元の權利を日本側で認めるかどうかと云ふやうな點がまだ未定でございますので、隨て只今の所ははつきり申上げ兼ねると云ふことでございます
それから尚ほ私が先程申上げたことが、餘りに樂觀的に取られると、若し誤解を來すといけませぬので補足して置きますが、其の會計の内譯と申しますか、關東州とか、臺灣とか、朝鮮とか色々な所にさう云ふ制度があります、さう云ふ制度と内地の制度との繋がりが地域に依つて違つて居ります、厚薄があります、それで臺灣、關東州の方が内地との繋がりが濃いのであります、朝鮮の方は薄いのであります、厚薄があつて色々取扱が違つて居りますので、今後假に斟酌が加へられると致しましても、其の間に色々の問題があるだらうと云ふやうな點を一つ補追して置きますから、御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=5
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006・新妻イト
○新妻委員 是は一つの實例でございますけれども、上海で起つたことでございます、終戰間際だつたと私聞いて居りますけれども、大使館の方から隣組へ通して、内地で三萬圓取れるやうに送金をするやうに、それは向ふの方の相場で千八百圓とか掛けて、内地で、三萬圓とか取れるやうになるとか云ふやうなことを大使館の方が激勵なすつて、送つたと云ふ事實を私聞いて來たのでありますけれども、それがこちらに著いて居れば内地の會計の中に入つたんでせうし、著いて居なければ勿論それは向ふで沒收の形になるのではないかと思ひますけれども、是も内地へ來てから三萬圓の金が欲しいと云ふ氣持で、借金してまでもそれに掛金を掛けて、こつちで借金だけが負擔になつて居ると云ふ、實際引揚者の困つた話を耳にして參つたのでございますけれども、さう云ふ事實は各地にもあつたのではないかと云ふことを考へられるのであります、是は外務省の方が獨斷でおやりになりましたのか、或は又内地の方から、お金を多少でも引揚げる爲におやりになりましたのか、其の邊は私共分りませぬから伺はさして戴きたいのでございますけれども、兎も角下の方の人達が借金してもそれだけのことをしなければならなかつたと云ふ點は、やはりこちらへ來て非常に困るだらうと云ふ點にあるので、總て先程の貯金に致しましても、斯う云ふ金に致しましても、幾分かでも外地引揚者の爲に有利にして差上げたいので、もう一つ此のことを御聽きして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=6
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007・野田卯一
○野田政府委員 只今上海のお話でありますが、私上海の事實は的確に存じて居りませぬが、それと同じやうなことが、支那の各地で行はれたとか聞いて居ります、北支から歸つて來た者あたりも、さう云ふ問題を持つて來て居るのであります、之に付きましては、終戰の前後にでしたか、終戰の當時に行はれたのでありまして、金はこちらの方に著いて居りませぬ、通知も大體途中で何處か紛失したのか、こちらに著いて居ないのであります、隨て其の關係が今の所はどうも明瞭になつて居ないのであります、今後どう致しますか、今後の問題に殘されて居ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=7
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008・坂東幸太郎
○坂東委員長 一寸關聯して御伺ひしますが、終戰前に北支の正金銀行の支店で爲替を組んで歸つたら、こちらで取れないと云ふのでありますが、それはどう云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=8
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009・野田卯一
○野田政府委員 終戰後の何時頃でござますか、終戰後はやはり、九月の半ば過ぎまでに向ふから内地へ著いた爲替、さう云ふものに付ては一部分支拂ひを認められることになつて居りますが、それ以外に付きましては、先程申しました爲替行爲の全般的取締と云ふ關係から、非常に嚴重な制限が付けられて居りまして、支拂ひが出來ないと云ふ場合が多い、それに該當して居るのではないかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=9
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010・坂東幸太郎
○坂東委員長 青木清左ェ門君、何かありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=10
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011・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 封鎖預金の解除或は引出しの問題でありますが
〔委員長退席青木〔孝〕委員長代理著席〕
政治家には政治資金と云ふものが必要であります、一般の生活資金に付ては拂出を認められて居るが、我々は有權者に對して挨拶状を出す、或は議會報告の演説會をやると云ふやうなこと、或は次の選擧に備へる色々な伏線的な政治活動をやる、又我々の主張する政治の部面を一般的に感知せしめる、凡ゆる施設を行ふと云ふやうな場合に、封鎖預金の封鎖支拂ひ及び新圓の獲得と云ふものが必要になつて來るのであるが、政治家に對するそれ等の途が開かれて居るかどうか、又開く御意思があるかどうか、それを御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=11
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012・野田卯一
○野田政府委員 只今の封鎖預金を、政治活動の爲に封鎖を緩和するかどうか、此の點は私から御答へするより、銀行局長が御答へした方が宜いと思ひますので、今呼びにやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=12
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013・江部順治
○江部委員 戰爭中内地其の他にございました敵産の管理は、終戰後如何なる措置をなさつて居りますか、又此の會計法の如何なる所に現はれて居りますか、尚ほ戰爭中内地から獻納と云ふか、沒收されました刀劍の處置は如何になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=13
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014・野田卯一
○野田政府委員 只今御質問の敵産の管理でございますが、是は敵産管理法に依つて、戰爭中敵産を管理して參つたのでありますが、終戰後に於きましても依然として向ふから受取人が現はれて來るまでは、從來の管理人が管理して居ります、最近ぼつぼつ所有者が歸つて參りまして、それの返還を求める、或は現状囘復を求めると云ふやうな問題がございますので、それに付ては司令部當局と能く打合せまして、それぞれの事態に即して善處して居ります、それから刀劍の問題、是は大體内務省で取扱つて居りますので、又後の機會に内務省から御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=14
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015・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 新圓の分布状況に付て調査したものはありませぬか、又其の分布状況に付て、職業別とか、或は方面別とか、或は民族別とか云ふやうなものが、推定でも結構でありますが、大體どう云ふことになつて居りますか、御調査になつたものはありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=15
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016・野田卯一
○野田政府委員 只今の新圓の分布状況の、色々な角度から見た資料でございますが、是は銀行局と日本銀行で協力して、或る程度の推定したものが出來て居ると思ひますが、是亦後で銀行局長が參りました時に御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=16
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017・青木孝義
○青木(孝)委員長代理 青木さん、遞信省關係の説明員の方が御見えになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=17
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018・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 大體本委員會に提出されました幾つかの廢案がありますが、是等は總て戰爭繼續中の凡ゆる財政部面の、戰爭中止に伴ふ處置であります、是等を審議する上に於ては、どうしても終戰時の混亂、是は經濟上、行政上凡ゆる部面に亙るのでありますが、其の終戰時の混亂、それが尚ほ繼續されて居る社會情勢の不安と云ふものの内容を、或る程度檢討して見たいと考へて居るのであります、それ等に關する質問の一環と致しまして、今遞信省關係の方が來られるやうでありますから、遞信省關係の事項に付て御伺ひ致したいと思ふのであります、私の考へて居りますことは、現在の社會情勢の不安と云ふものは、勿論經濟的にも不安を釀成する原因がありますが、併し現在の日本の行政が、國民の意に滿たないやうな混亂を來して居る點が多々ある、遞信部面から見ましても、速達郵便の遲配、或は各種郵便物の遲配及び不著、小包郵便物の拔取りと云ふやうな、凡ゆる問題が錯綜した所に、國民が日本の政治力と云ふものに對する一つの疑念と、不信用を持つて居ると思ふのであります、隨て遞信方面に於きましては、現在是等の混亂が、戰爭後尚ほ持續されて居り、寧ろ戰爭後の混亂以上のものが現在あり、今後益益此の混亂は擴大されて行くのではないかと云ふ疑ひを我々は持つのであります、曩に郵便料の値上等に關して、本院としては協贊を與へたのでありまするが、是が單なる從業員の待遇の向上と云ふ點にのみ消化されて、郵便事務の本質的改善と云ふものに對して、振向けられないと云ふことに相成りますれば、我々衆議院の意思と云ふものは沒却される譯であると思ふ、それに付て現在どう云ふことになつて居るか、又今後どう云ふ處置を執らんとするか、一つ御辯明が願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=18
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019・白根玉喜
○白根説明員 御答へ致します、先づ郵便關係、遞信關係の各種事務に付きまして弛緩があり、世の要望に副はない點があつて、是が現在立ち直らんとする日本の態勢から見まして、非常に癌になつて居るのではないかと云ふ御話でございます、此の點に付きましては、郵便料金値上の際に於きましても、或は事に觸れ院内の皆樣方からも御叱りを蒙り、院外に於きましても各公衆の方々から御話がありまして、我我と致しましては洵に慚愧に堪えない次第でございます、大臣も御就任以來、此の點に對しまして特に御關心を深められ、如何にしても公衆の要望に副ふべく、通信の復興、事業の整齋を期する爲に、非常な御決意を以ちましてやられて居るのでございます、我々と致しましても公衆の要望に御應へすべく、現に先づ郵便の正確、其の次は敏速と云ふやうな風に、事業の各般に亙りまして整備を圖るべく、毎日如何にすれば宜いかと云ふことを檢討致して居る次第でございます、お蔭樣を以ちまして、料金値上も御協贊を得るやうな運びになりまして、從業員の一部と致しまして、生活苦からする業務の運營上の弛緩は、相當程度解除されたのでございまして、從業員の方面から致しましても、今のやうな現状では世間に對して申譯ない、管理者側と話合ひを致しまして、通信事業費の復興に對しまして、一つやらうぢやないかと云ふ雰圍氣に、徐々になりつつあるのでございます、我々と致しましては、此の機を逸せず、具體的な整備を圖りたいと思ふのでございます、それに付きまして先づ問題になりますのは、何と申しましても、郵便關係であれ、電話關係であれ、電信關係であれ、相當な戰災の影響を受けて居るのでございますから、速かにそれ等の面の復興に對しまして、力を重點的に配すると同時に、仕事のやり振りに對しまして、世の御期待に副ふやうな風にやるべく、一生懸命今畫策致して居る次第でございます、之を以ちまして御答へと致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=19
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020・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 昨日の或る新聞に依ると、生命保險の打切りと云ふやうなことが出て居るのでありますが、果して政府はさう云ふことに付て考へて居るか、又勿論簡易生命保險などは、さう云ふことは全然ないと思ひますが、ああした話の出た根據などに付て承り得れば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=20
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021・野田卯一
○野田政府委員 生命保險の打切りの問題は、是は御承知のやうに、最近軍需補償の打切り等と絡みまして、各種各樣の噂が飛んで居るのであります、恐らく新聞に出て居つたとすれば、それは各種各樣の巷説の一つであります、之に付きましては、生命保險の打切りと云ふことは非常に重大な問題でありまして、簡單に取扱ひ得ることではないと考へて居ります、之に對して政府はどう考へるかと云ふ問題に付きましては、補償の問題に關する各種の措置として、我々としてはそれに對する態度を、此の際具體的に發表すると云ふ問題になつて來て居りますが、生命保險の中で、今遞信省に付て御尋ねのありました簡易生命保險などに付きましては、是は政府の方の債務であります、併し市中の生命保險は生命保險會社の關係するもので、別に政府の關係するものではありませぬ、之に付ては能く噂の出て來る内容は分りませぬ、さう云ふことは能く知りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=21
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022・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 遞信省關係のことに戻るのでありますが、遞信省の方では郵便事務以外に、郵便年金、簡易生命保險と云ふやうに、他の部面の事業が非常に多いやうに思ふのでありますが、是は少し多過ぎはせぬか、餘りに郵便局に對する中央の指示と云ふか、依頼と云ふか、事務をさせる上に於て非常に郵便局は仕事が多くて困ると云ふやうな話をよく聞いて居るのですが、是等の運營上何等か改善の途を御考へになつて居るかどうか、一つ御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=22
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023・白根玉喜
○白根説明員 御答へ致します、御説のやうに只今郵便局の事務は相當複雜多岐であつて、相當過重な負擔を掛けて居る向きもあるのであります、併し今までの建前と致しましても、簡易保險、郵便年金、斯う云ふ仕事の分野と、郵便通信關係の仕事の分野とは、出來るだけ分課的な體制を執りつつ、忙しい時には相互融通するやうに育てて參つたのであります、そこで最近新圓問題其の他に依りまして、通信關係の窓口が相當忙しくなつて參つたと云ふので、それに對しましては或る程度實行上定員の配置を考へると同時に、他部の繰合せと申しますか、郵便の方へ簡易保險、年金の方の其の時忙しくない時には、他部繰合せを致しまして、相互融通に依りまして出來るだけ事務繁忙を緩和するやうにやつて參つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=23
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024・青木孝義
○青木(孝)委員長代理 御相談を致しますが、如何でせう、是からまだ續けまして、午後一時からやると云ふやうなことに致しますか、新妻さん、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=24
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025・新妻イト
○新妻委員 私之を戴いたばかりで、出來ますならば今日一日お暇を戴いて、勉強さして戴いた方が結構だと思つて居りますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=25
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026・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 一つ政府委員の揃ふまで休憩されたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=26
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027・青木孝義
○青木(孝)委員長代理 それで宜しうございませうか──それでは午前は是で質問を打切りまして、午後から再び開會致します、どうぞ午後一時に御參集願ひたいと思ひます
午前十一時三十三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=27
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028・会議録情報2
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午後一時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=28
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029・坂東幸太郎
○坂東委員長 午前に引續いて是より開會致します──青木清左ェ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=29
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030・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは今度は運輸省の關係に付て質疑を續けて行きたいと思ひます、現在の鐵道の運行其の他の亂脈状態を考へて見ますと、寧ろ私は戰爭中よりはひどいのぢやないかと思ひます、終戰後列車の「ガラス」戸が壞れると云ふ程にまで乘客の統制が取れなかつたと云ふことは、私は非常に遺憾と思ふのでありまして、是等の起つて居る現象其のものが、國民に對して一種不安の念を起す、又政府に對する不信の念を起す、其の源動力をなして居るものと考へるのであります、鐵道と致しまして、今後如何なる方法を以て是が改善を行ふ御豫定であるか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=30
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031・伊能繁次郎
○伊能政府委員 只今青木さんから御尋ねのありました件に付きまして、御答へを申上げます、御承知のやうに、昨年の八月半ばに戰爭が終了致しました當時、日本國人誰もが經驗を致さなかつた事態に逢著致しました爲に、日本の凡ゆる機能が停頓、停止のやうな状態に相成つたのでありまするが、獨り輸送だけは國民生活の維持の上から一日も停止、停頓を許さない状況でありましたので、我々は平常通り運行を確保するやうにと云ふ指令を出して、終戰後の混亂防止に全力を傾倒致したのでありますが、御承知のやうな状況で必ずしもそれが萬全であつたとは申上げ兼ねるのであります、例へば、輸送途中にあります物資の盜難等に付きましても、各府縣と連絡を致しまして、是が確保に當ると同時に、一部軍の放出物資の放出方法に付きましても、全體の統制が取れなかつた憾みがありまして、さう云つたものに對する一般民衆の明確な正義觀念の廢頽と申しますか、色々な形で鐵道の驛等に混亂の起り掛けた事態もありますが、是等に付きましては、警察と協力の上で萬全の措置を執つて參つたやうな次第であります、又一般旅客輸送に付きましては、戰爭中軍需物資を出來得る限り的確に輸送致しまして、戰力の増強に資しようと云ふ意圖に出て居りました關係上、旅客は昭和十七、八年當時の最も旅客輸送が盛んであつた項に比較致しますと、六十「パーセント」程度の輸送力しか持つて居りませぬでした、然るに終戰直後の復員其の他の旅客輸送の非常な輻湊がございましたので、之に對處致します爲に、旅客の輸送力を極力増強致しまして、復員輸送に當つたやうな次第でありますが、當時各軍管區等に於て、それぞれ個々の復員解除の措置がありました爲に、一般輸送にも相當な支障を及ぼしました關係上、陸軍省、海軍省と連絡致しまして、地方的な復員解除に付てはそれぞれ所管鐵道局が適正な輸送措置を執る、又遠距離の、鐵道局を異にして輸送せられる復員輸送に付ては、中央に於て是が臨時的な手を打つと云ふことで、各般の措置を講じまして復員輸送の萬全を期しました、又終戰直後の食糧事情を考慮致しまして、又治安維持の點からも、六大都市の人口を出來るだけ集中せしめないと云ふ見地から、八月十六日より九月の半ばまで、六大都市に對する入込みの輸送制限をやると云ふやうな措置も執りました、又終戰後の旅客輸送の非常な輻湊に對しましては、當時御承知の如く、戰爭の爲に二千數百輛の客車が戰災を蒙つて居りましたので、是が補足と致しましては、臨時的に貨車を客車に代へましたり、貨物列車等に依つて旅客輸送を緩和すると云ふやうな措置を執つたやうな次第であります、又貨物輸送に對しましては、終戰と共に重要産業が殆ど停頓の状態に相成りました爲に、──戰爭中空襲の激化と共に、昭和二十年度に於きましては、四、五、六、七、八と逐次輸送が減退しつつあつたのでありまするが、それでも八月前半に於きましては一日三十萬「トン」程度の輸送を繼續致して居りました、それが終戰と共に十四、五萬「トン」と云ふやうな所まで落ちまして、是では國民生活に必要な最小限度の物資をも輸送するには不足であると存じましたので、極力生活必需物資の輸送の促進、出荷方に相努めまして、是亦逐次囘復を致して參りました、九月には一日當り二十二、三萬「トン」、十月には二十五、六萬「トン」十一月には三十萬「トン」近い所まで囘復をして參つたやうな状態であります、然るに全體と致しましては、只今御指摘のありました如く、未だ曾て經驗をしないやうな事態に逢著致しました爲に、日本を擧げて混迷の状態に落ち、又其の間隙に乘じまして、各般の障碍と申しまするか、色々な國民生活を脅かすやうな事態も起つて參りました爲に、それが輸送に總て掛つて參りまして、著しく輸送の混亂を來たし、御指摘の如く或は窓から飛込み、或は窓を破壞する、それが單に邦人だけでないと云ふやうな状態に相成りまして、日本の警察力に依りまして、之を何とか舊態に復したいと云ふやうな努力を、政府としては擧げて致したのでありまするが、終戰後の日本自身の力では何事も出來ないと云ふやうな状況から、十分滿足の行くやうな治安の状態にならぬと云ふ状況で其の影響を受けまして旅客に多大の御迷惑をお掛けしたやうな次第であります、其の點は甚だ申譯ないと存じて居ります、其の後輸送が旅客貨物共逐次囘復して參りました所を、昨年の十二月の石炭危機の爲に非常な支障を蒙りまして、折角十一月に旅客列車、貨物列車の輸送力の増強を致しましたものが、十二月一箇月を經ずして其の半分を削減しなければならぬと云ふやうな輸送の危機に逢著致しました爲に、輸送上の混亂を一層助長したかの感があるのであります、其の後一、二、三、四月と、逐月石炭生産も順調になつて參りまして、輸送も稍稍緩和され、私共と致しましては、六月には一般列車に付ては出來得る限り切符の自由販賣態勢を執りたいと云ふ所まで決意致したのでありますが、御承知の如く夏期の石炭減産期に入りました爲に、四月を最頂と致しまして、五、六、七、と逐次石炭の割當を減らされると云ふ状況になりまして、さう云つた旅客の自由乘車、切符の自由販賣、貨物の自由受託と云ふやうな所までは參り兼ねて、今日に至つて居るやうな次第であります、最近特に社會問題にまでなり掛けて、皆樣に御迷惑を御掛けして居ります東京都内の電車輸送等の問題に付きましても、我々と致しましては終戰直後、昨年九月に戰災車輛の復舊と、車輛の新製に付きまして劃期的な計畫を樹立して、之を各「メーカー」に其の生産方を命令を致したのでありますが、終戰後の勞働事情、食糧事情、其の他の關係から、洵に遺憾ながら是が實現が遲々として進みませぬ、特に電車の生命であります「モーター」關係、電動機の生産が殆ど停頓して進まない、それが爲に折角電車、客車の車體は出來ても、電送部分、電動機が出來ない爲に、是が機能を發揮し得ないと云ふやうな状態になりましたので、今日に於きましては、省自らの工場を動員致しまして、是が整備に當つて居るやうな次第であります、三月、四月、五月と、客車電車整備清掃運動を展開致しましてから、相當な好成績を收めて參つたのでありまするが、先月、六月に至りまして、食糧事情其の他の關係から、意の如く勞働能率を、官民一致して十分に發揮せしめることが出來ないやうな事態になりました、六月に能率が相當落ちた爲に、最近特に色々と御批判を戴いたやうな電車輸送の現状にありますが、今月から各方面からの御協力に依りまして「モーター」の修理、新製も相當顯著な進展を示しましたので、私共と致しましては、先づ今月を最低として、八、九、十、此の三箇月の間に出來る限り舊態に復したい、出來れば十二月までに輸送を昔のやうに、それ程御迷惑を掛けずに、電車も新しいものを作り、古いものを修復してやつて參りたい、勿論之には勞働能率の向上、勤勞意欲の増強、増進、資材の整備、其の他凡ゆる困難が伴ひますが、私共としては極力力を傾けまして、其の方向に進んで參りたいと考へて居ります、又最前御指摘の交通秩序の維持、列車の混亂と云ふ問題に對して如何考へるか、今後の對策如何と云ふやうな御話もございましたが、此の點は獨り運輸省の力のみを以ちましては、中々困難でありまして、國民全體が輸送に御協力を願ふと共に、私共自身も國家國民の鐵道を、出來得る限りより良い状態に運營すると云ふことを心掛けて居ります、又一部朝鮮人、臺灣省民等の列車内に於ける各般の「トラブル」等に付きましても、政府と致しましては一般司法警察の外に、鐵道行政警察を強化致しまして、交通秩序の確保、正當旅客の乘車保護、竝に一般荷物輸送の安全、的確な輸送を確保して參りたいと云ふ決意を以て、著々準備を進めて居るやうな次第でございますので、何分宜しく御協力願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=31
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032・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 只今の御懇篤なる御答辯に依りまして、私は元々鐵道の職員及び運營の衝に當らるる方の熱誠には、非常な好意を以て對して居つた譯なのであります、唯驛員などが相當努力して居るにも拘らず、其の努力が現はれて來ない、報いられないと云ふことに對して、私は寧ろお氣の毒に考へて居る譯なのであります、隨て私の質疑も、斯うした考へを基本として申上げる譯でありまするが、旅行の調整に付ても、只今の御答辯の中にありましたが、私は旅行の調整と云ふものは、もつと是は強化すべきものではないかと思ふのであります、又現在車内に持込む荷物──此の間私も一寸家まで歸つて來たのでありまするが、車内に持込む荷物が甚だ大きいこと、さうして之を持込む人の態度の不遜なことなどを考へまして、どうしても是は警察力と「タイアツプ」して只今のやうな鐵道警察と云ふやうなことも、一つの方法でありまするが、一つ是等の荷物の點檢、又持込みの禁止、即ち旅行調整でありまするが、是は戰爭中にやつた旅行調整と云ふことに付ては、或る程度不評判であつた、不評判でありまするが、現在の闇市に流れる品物、或は闇に流れる品物を運ぶものは、恐らく私は鐵道であらうと思ふ、決して自働車ではないと思ふのであります、此の意味に於て、鐵道の社會不安除去に對する役割と云ふものは、私は非常に大きいと思ふのであります、隨て是が徹底した取締を強化して戴きたいと思ふのでありますが、此の旅行調整に關してどう云ふ御考へでありますか、又今後どう云ふ手段を御執りになりますか、もう少し詳しく御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=32
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033・伊能繁次郎
○伊能政府委員 只今御質問の點に付て、御答へを申上げたいと存じます、六月以前に於きましては、各鐵道局とも或る程度の輸送制限を行つて居りました、それを六月初めから特に雜沓致します區間、竝に只今御指摘のやうな、巨大な荷物を持込むやうな地域、端的に申上げますと、闇買の容易に行はれるやうな、北陸、東北地帶と云ふやうな方面に付て、例へば現在は山陽線、常磐線、東北線、奧羽線、信越線、大阪から青森に參ります裏縱貫線、其の他關門、青函、是等の區間に付きましては、毎日の販賣枚數を制限致して居ります、其の他の區間は原則として自由販賣に致して居る譯でありますが、此の點に付ては、戰時中輸送抑制措置が必ずしも成功でなかつたと云ふ御指摘がございました、私共も其の點に付ては全く申譯ないと思つて居りますが、今日の平和な時代、殊に所謂民主主義が各方面に於て色々な角度から主張せられる時代に於きましては、輸送の抑制と云ふことは非常な困難が伴ふのであります、理想的に申上げますならば、私は出來得る限り輸送力を増強致しまして、切符を自由販賣することが、一番輸送を圓滑にする方法である、斯樣に確信を致して居ります、現在輸送が抑制せられて居りまするが故に、各般の不正行爲者が殘念ながら出て居ります、是は必ずしも汽車賃の逋脱をすると云ふやうな目的ばかりでもないやうに私共考へますので、輸送を圓滑ならしむる方法は、出來得る限り早い機會に輸送の抑制措置を解除する、斯樣に私は考へて居りますが、遺憾ながら現状に於きましては、石炭の不足な關係、又石炭の「カロリー」が著しく低下を致して居ります關係、其の他車輛が二千數百輛も戰災を蒙つて居る現状に於きまして、直ちに全面的な輸送抑制解除を致すことは出來難いやうな状況でありますので、ここ當分は現状で推移して參らなければならないと斯樣に考へます
唯荷物の點に於きましては、只今御指摘の通りでありまして、私共としては凡ゆる方法を以て、輸送すべからざるものを車内に持ち込むことを御遠慮願ふことに致して居りまするが、指定せられた驛の驛長若しくは助役でありませぬと、行政警察權を持つて居りませぬ、隨ひまして改札係や小荷物係の言ふことは中々諒解して戴けませぬ爲に、兎角ああ云ふやうに車内に荷物が山となると云ふやうな状況でありますので、此の點に付きましては今後一般司法警察の御協力も得、又例外的な、暫定的な措置でありますが、鐵道行政警察を整備致しまして、輸送の適正化、交通秩序の維持、正當旅客の保護、不法物資の積込みの抑制と云ふことに努力を致して參りたい、斯樣に考へて居ります、殊に最近は積込禁止を致して居りますやうな危險品を往々にして積込みまして、それが煙草の吸殻其の他に因りまして時々事故を起しまして、列車火災も生ずると云ふやうなことが屡屡頻發して居ることに鑑みまして、何とか國民各位の自肅自戒を御願ひ致しまして、其の御協力を得まして、あの巨大な輸送禁止荷物を車内に持ち込むことに付ての防止方の努力を致して參りたい、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=33
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034・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に客車の運行の問題でありますが、只今の所長距離區間の列車と云ふものは非常に數が制限されて居るやうに考へられる、寧ろ短區間の列車が、乘客がなくて非常に樂だし、長距離區間のものが非常に乘客が多くて混亂して居る、混亂して居るから從つて荷物の點檢も出來ないと云ふやうな問題になると思ふのでありますが、もう少し長距離區間の列車を御増しになつて、短區間の列車の如きは、先刻御説明になつた貨車を廻すと云ふやうな方法に依つて、極く必要區間の特殊運轉をやる、其の他は出來る限り長距離區間の列車運轉をやられた方が却つて宜いのぢやないか、現在の此の列車の運轉方法は、却つて乘客を混亂に導いて居る原因ではないかと私は思ふのでありまするが、此の點何か特殊な御考へで現在の方法を御執りになつて居るかどうか、之を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=34
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035・伊能繁次郎
○伊能政府委員 只今專門的な御質問がございました、私共と致しましては、現在の旅客輸送の重點は、御指摘の如く、遠距離輸送の確保と、もう一つは通勤旅客輸送の確保、此の二點に重點を置いて輸送をやつて居る次第でございまするが、御指摘のやうに、遠距離の輸送は必ずしも私共が見ましても直通列車が餘り多くございませぬ、殊に急行列車に付きましては、東海道線に付きましても僅かに數本、東北線は一本と云ふやうな、昔の平和時代の輸送に比べますと、實に數分の一と云ふやうな貧弱な輸送を致して居るやうな次第でございます、然るに都市近郊の通勤輸送に付きましては、御承知のやうに非常に輻輳致して居ります、最も端的に其の事情を反映致して居りますものは、大部分の國内の都市が戰災に遭つて居りまする爲に、通勤の足が非常に伸びて參りまして、電車區間に於きましても、定期券の平均乘車「キロ」と云ふものは、戰時中大體十一「キロメートル」か十二「キロメートル」でございました、それが現在に於きましては三十「キロ」近くに相成つて居る譯でありまして、それだけでも一人のお客さんが倍の距離の座席を占有する、乘込んで居ると云ふことで、非常な混雜を致して居ります爲に、遠距離の輸送緩和を致す遑がないやうな状況であります、殊に遠距離に付きましては、根本的な問題と致しまして石炭の消費量が非常に多くなることであります、現在國有鐵道に於きましては、大體月間五十五萬「トン」程度の石炭の割當を受けて居ります爲に、貨物列車に付きましては、戰時中の四〇%程度しか運行が出來ない状態であり、旅客列車に付きましては、最前申上げましたやうに六〇%程度であります、而も乘車人員は、定期旅客の方は、御承知の如く登録制其の他に依りまして不正、買出防止等の措置を執つて居りますが爲に、又一般重要生産事業が逐次減退して參ります爲に、逐月減少致して居りまするが、普通旅客、切符を御求め下すつて御乘車を願ふ普通旅客に付ては、三月の運賃値上以來、四、五、六と逐月非常な増加を致して居ります、殊に六月の如きは五割近い増加を致して居ると云ふやうな状況でございまして、我我としては何とか遠距離の乘車客にもう少し適正な「サービス」を提供したい、斯樣に考へて居りまして、此の點は車輛の面に於きましても、機關車、客車共に尚ほまだ捻出し得る餘地を持つて居ります、唯燃料たる石炭の面に於きまして、非常な制約を受けて居ります爲に、御指摘のやうな御迷惑を掛け、洵に申譯ない次第と存ずるのでありますが、現状に於ては、通勤輸送のあの雜踏を見ます時に、之を何とか救濟しなければならぬ、又乘車の比率から見ましても、遙かに通勤輸送の方が多く乘つて居りまして、朝から晩まで平均で見ましても、二〇〇%・二五〇%、甚しきは三〇〇%と云ふやうな比率を示して居るやうな次第で、遠距離竝に急行の方は、それに比較致しますと、稍稍緩和されて居ると云ふ状況にあります爲に、已むを得ず御承知のやうな措置を執つて居る次第でありまして、石炭の需給が改善せられた際は、御指摘のやうな遠距離の疲勞の多い輸送に付きましては、極力輸送力を整備して改善致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=35
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036・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の鐵道問題に付ては、先程から申上げて居るやうに、現在の社會不安除去、殊に闇物資の運送と云ふことに付て、重大なる役割を鐵道としては分擔させられて居る、此の現在の終戰時の混亂に伴ふ社會不安、最も除去されるべき筈のものが更に深くなつて行くと云ふ現在を御考へになりまして、それ等の面に於て、どうか國家の施策に御協力願ふと同時に、非日本國民の人々が是等の社會不安を釀成する面に於て、非常に惡い役割を持つて居ると云ふ點に付ても、御考慮の上精々御努力願ひたい、鐵道關係の質疑は之を以て打切ります
次に警察權擴充の問題に付て御質問申上げたい、私が此の委員會に於て特に終戰時の混亂と之に伴ふ社會不安と云ふことに付て御質疑申上げて居るのは、唯政府當局から説明を聽かんとすることのみが目的ではない、此の議院に於ける凡ゆる質問が、社會に與へる影響と云ふものを考へて居る、是等の問題は或る意味に於ては豫算が提出されてから、豫算委員會に於て御質疑申上げる性質を多分に含むかも知れませぬ、併し何時提出されるか分らない豫算を目當てとしてのみでなく現在刻々迫りつつある社會不安の除去と云ふ重大な役割を我々衆議院議員として果す爲に努力すると云ふことは、洵に私は意義があると思ふ、殊に現在此の委員會に付議されて居る凡ゆる法律の廢止の法案と云ふものは、先程來申上げて居るやうに、戰爭に關係する法律の廢止であります、隨て私が現在の終戰時に伴ふ社會不安と云ふものに對して質疑申上げることも、相當の關聯性を持つて居り、我々は此の法案の審議の上に、十分研究しなければならない問題だと考へるのであります、此の點に付て私の態度をはつきり致した上で御質疑申上げたい、先づ警察權擴充の問題でありますが、此の間地方制度の委員會に於て、或る委員の方から警察大學を作ると云ふ事柄は、警察の官僚化の温床であると云ふ御意見を承つたのでありますが、私はさうは思はないのであります、寧ろ現在の状況に於ては、警察權は擴充すべきものである、又警察大學と云ふ教養機關は設置して、本當に日本の警察力と云ふものを確立し、教養のある警察官に依つて軍隊のない、戰爭を放棄した日本の國民を守つて戴かねばならないと、私は痛切に考へるのであります、此の間金曜日に、私は午後の二十時東京發の急行列車に乘りまして、自宅に歸つたのでありますが、其の時に檢札に來ました鐵道員に協力した警察官と、三人程の某國人との間に、色々な物言ひがあつた現場を私は目撃して居るのであります、私が斯う云ふことを申上げても、どうぞ其の當時の警察官を御叱りのないやうに御願ひします、私は此のやつた事柄に對しては或る考を持つて居るのでありますが、此の人の態度其のことに付て、私は寧ろ是は賞贊すべき日本の警察官であると云ふことを考へて居るのであります、是は前提として申上げる、所が、其の警察官の方が──人と云ふ言葉を使つた其の──人と云ふ言葉を使つた爲めに喰つて掛られた、此の某國人三人の者は三等の切符を持つて二等に乘つて居つた、是はまだ宜い方だと思ふ、無切符で乘車する者が澤山あらうが、此の某國人は三等の切符を持つて二等に乘つて居つた、さうして──人と云ふ言葉が出た爲に喰つて掛つた、それを見た乘客はみんな齒ぎしりをして居つた、何とかして此の問題を一つと云つて齒ぎしりして居つた併し殘念ながら警察官は其の某國人に、私は──人と云ふ言葉を使つた覺えはない、併し萬一使つて居るとしたならば此處で謝罪をすると云ふやうなことで話の鳧が付きまして、約一時間程掛つて居る、斯う云ふ點からして、私は警察官の素養と云ふことに付ては重大なる關心を持つて來るのであります、即ち警察官の數の點に付て、現在の警察官を以て日本の治安維持に當り得るかどうか、是が一つの疑問であります、是は「マッカーサー」司令部との色々な問題になると思ひますが、私は現在の數は或る程度増さねばならぬと思ふ、又先に申しました質の問題、教養の問題、又武器の問題であります、相手が機關銃を持つて居るのに、こちらは棍棒を持つて對する、向ふは拔身の白刃を振り翳して居るのに、こちらは棍棒を持つて對立すると云ふことは、餘りに滑稽な對照ぢやないかと思ふ、斯う云ふことを申上げると、私は軍國主義者のやうに考へられる、警察官の擴充が將來の日本の軍國主義の温床になるのぢやないかと云ふことを、占領軍として御考へになるかも知れないと思ひまするが、私は是から復員省の方、其の他にも質疑を申上げたいと思ひますが、私の質疑の目的は、日本の國の力と云ふものは、戰爭當時の状態に付ても同樣でありますが、能く國民に認識させさへすれば、警察力を如何に擴充したからと云つて、其の擴充された警察力を以て、優秀なる聯合國の武力に對抗すると云ふことは、大それた考へであると云ふことは、國民が百も承知である、又知らさねばならぬと思ふ、だから、此の點は一つ、日本國民が「ポツダム」宣言を忠實に履行して居るのだと云ふ點をはつきりさして、警察權の擴充の爲に、關係筋の方々とどうぞ折角折衝されまして、我々の期待に副ふ國内治安が齎せるやうに、私は御願ひしたいと思ふのであります、隨て是等の點に付て、内務省としては如何なる今後の構想を持つて居るか、私は此の儘放任致しますならば、今日は内務省關係のみならず、凡ゆる關係のことに付て御質疑申上げて居りまするが、それ等はみな一連の關係を持つて居る、それ等の一連の關係を持つて居る色々な現象を、此の際斷乎として解除して行かなければ、場合に依つては寧ろ聯合軍其のものが出動しなければならないやうな社會不安の状態に立到らぬとも限らぬ、斯う思ふ、斯う云ふことは日本國民として甚だ不名譽である、現在の占領形式其の儘を寧ろ日本の國に有利に轉換されんことを望む、其の前提として、私は何處までも「ポツダム」宣言の忠實なる履行者であり、戰爭を放棄した平和な日本國であると云ふことを建前として考へて居るのでありますが、一つ内務當局の方々は、今後警察力と云ふものをどう云ふ風に布陣して行くか、御考へがありましたならば、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=36
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037・溝淵増己
○溝淵説明員 只今警察官に對しまして非常に御理解のある御話を伺ひましたが、昨日來新聞記事、又議會方面にも御配りして居りますやうに、内務省と致しましては、現在の警察力を其の少い員數で、而も時代の要求である民主化する方面と同時に、其の噛分けの非常に難かしい警察活動の強化と云ふことに付きまして、苦心を致しました案を御示し致して居る譯であります、要點は御話戴きましたやうに、質と數との問題であります、數の問題は御話のやうに簡單に參らないのであります、色々の方法で此の方面の折衝も致して居るのでありますが、差當りは質の問題を改善するより途がないのであります、それに付きましては教養機關の擴充、是は相當年月の掛ることでありますが、どうしても此の方面の努力をしなければならぬ、さうして同時に氣魄の取返しと云ふことが極めて必要であらうと思ひます、戰爭後に於きまして色々の社會情勢から致しまして、警察官が一時元氣がなくなつたと思ひます、實際やるべきことに付ても遠慮すると云ふやうな傾向があります、幸ひに最近に於きましては非常に元氣が出て參りました、色々事件と致しましては、世の中の人々が十分御安心の出來る程度にはまだ至つて居りませぬが、個々の警察官の事件に對する態度に付きましては、相當從來にも見られないやうな元氣のある復興振りを見せて居る面がありまして、私非常に嬉しく存じて居ります、此の事は最近に於ける情勢から致しまして、一般國民各位の警察に對する理解が深まつて來たことと相俟つて、さうした傾向になつて居ることと思ひますが、我々と致しましては、更に待遇の改善其の他に付きまして努力致しまして、警察官が後顧の憂ひなく活動の出來るやうに致したい、斯樣に存じて居るのであります、甚だ抽象的な御答へでありますが、現在我々の考へて居りますことを一言申上げた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=37
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038・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 まあ只今の答辯の程度で滿足しなければならぬのでせう、致し方ありませぬが、一つ精々私の質問の内容を吟味されまして、善處されんことを望みます
もう一つは、現在展開されて居りまする澁谷、新橋方面の日本國民と非日本國民との葛藤の問題でありますが、之を取上げる前に、私は自分の考へを一應申上げぬと、或は世の中の誤解を受けるのぢやないかと思ふのでありまするが、私は日本國民は先づ申上げたやうに、「ポツダム」宣言を忠實に履行する點に於ては、恐らく聯合國は、斯の如く忠實な國民ではないと從來考へて居つたと思ひます、占領して見て初めて日本人の本當のおとなしさ、文化的な日本國民の在り方に付て、私は能く認識されたことと思ふのであります、併しながら此の落著いた日本國民の考へに、何と云ふか、一つの敵愾心を與へて、此の落著を失はせるものは何かと申しますと、今まで我々が統治して居りました民族、被統治民族と申しますか、是が終戰後其の統治を解かれた地位に置かれました爲に、あのやうな事件が惹起されて居る、是等の事件を目のあたり日本國民が見て、殘念だつた、何とかしてと云ふやうなことを考へると云ふ所に、私は「ポツダム」宣言の忠實な履行と云ふ面に於て、場合に依つては感心出來ないやうな事態が起ることを憂へるのであります、隨て是等の問題を今直ちに解決すると云ふことは、結局我々日本國の問題だけでなくして、進駐軍の問題でもないかと私は考へるのであります、隨て此の問題は相當大きく取上げて檢討しなければならない問題だと思ひます、隨て此の問題は日本國民の現在の終戰後やつと取戻した此の落著を、更に深く持耐へさせる爲の質問でありますから、左樣御諒承を得たいのであります、新聞紙其の他に依つて色々なことが報道されて居るのでありますが、此の事件の内容はどう云ふやうな性質のもので、どの程度のものであるか、是も御差支へのない範圍に於て御答へを戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=38
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039・溝淵増己
○溝淵説明員 澁谷に於きまする日本人と非日本人との衝突と云ふ點に付て御説明を申上げる次第でありますが、實はあの問題は極めて複雜でありまして、一寸申上げにくいのでありますが、最初はどうも兩者の間が不穩であると云ふやうな空氣がありまして、放つて置けば彼等お互ひ同士が相當亂鬪するかも知れないと云ふ懸念がありまして、それが爲には双方の闇市場に於ける取締を相當公平に、嚴重にやる必要がある、それに依つて寧ろ未然に防ぐことが出來るのではないかと云ふやうな感じを持ちまして、警視廳に於て取締をやつたのでありますが、其の結果が却て一部の方で誤解されて居るやうであります、日本人の取締に付ては却て寛大ではなかつたかと云ふやうな、何かそこに誤解があつて、それが進展して、其の結果却て所謂非日本人の方から日本人の方面に對する反感を持つて、相當な人員を擁して出動したと云ふ結果になつたのではないかと云ふやうに、私共は想像して居るのでありますが、之に對しましては、警視廳の方で相當準備を致して、事前の聽き込に依つて對策を立てて居りまして、其の結果現在二十數名警視廳に於て取調を致して居るやうな状況であります、其の間警察官が數名の負傷者を出して居ると云ふやうな結果になつて居ります、さうして現在御承知のやうに、新橋、澁谷の兩市場が閉鎖を命ぜられて居ると云ふ結果になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=39
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040・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是も是れ以上の説明は求めないで置きませう、併し問題は警察官の教養と問題であります、此の出來上つた事件に付ては、過去の檢討は我々議員としては止めるが宜いと思ひます、併しながら、是は皆樣の意見ではなく、私一個としてさう思ふのですが、斯う云ふ事件が恐らく今後も起るであらうと云ふことを豫想致します、起きた時に、彼の所謂滿州に於ける張作霖の爆破事件、蘆溝橋事件と云ふが如く、日本の警官の方から事件を惹起すると云ふやうな虞がないやうに、又法の解釋、又其の事態々々に對する處置に付ては、警察官が教養が高くて、其の時の實際の状況を能く認識し、能く判斷して、然る後に日本國民として恥ぢないだけの適正な行動を、日本の警察官が斷乎として執つて戴きたいと云ふことが、私の要求であり、日本國民の要求である、隨て其の爲に私は巷間色々の流説を聞いて居ります、併し其の流説が果して眞なりや否やは分らぬのでありますが、危險に曝されて居る警官の身の上に對しては、私は洵に同情を禁じ得ない、併し平和な日本、武器を棄てた日本、是はやはり警察官に依つて護つて行かなければならぬ、どうか此の私の氣持を一つ全國警察官に愬へて戴きたい
是で大體警察關係は終る譯でありますが、關聯して司法當局に對しまして御伺ひ致したいことは、選擧取締の問題であります、社會不安を釀成する原因は各種各樣でありまするけれども、選擧が公正に行はれたかどうか、殊に國會議員の選擧に於ては──日本の國の凡ゆる法律の基本が帝國議會に於て決せられるのでありますから、其の帝國議會の構成員である所の代議士の選擧に於きましては、最も公正でなければならぬと云ふことは當然であります、併し是は立候補した者が公正なることに努力することも勿論であるが、若し萬一其の間不正があつたならば、檢察當局としては斷乎として之を排撃しなければならぬと思ひます、此の間の選擧に於きましては、勿論關係筋其の他の方々の御意見もあることとは思ひますが、殆ど選擧中は取締を放任して居つたのであります、斯う云ふことは私は面白くないと思ふ、特に顯著なる問題等がありました時に、勿論警察官が此の警察權を發動する場合には、或は選擧干捗と云ふやうなことが取沙汰されるかも知れないが、司法當局として色々な投書があり、聽き込があると思ふ、それ等に對しては斷固たる態度を以て、今後の選擧には臨んで戴きたいと思ふのであります、又司法省等に付きましても、相當投書があります、此の投書の内容を吟味して見ると、匿名のものと記名のものとある、併し匿名のものは恐らく故意のものか、取るに足らぬものが全部だと思ふ、隨て今後は匿名の投書の如きものは決して取上げない、併しそこに堂々と自己の名前を書き、或は本人自ら警察官署へ行つて申告したものであるならば、それは特に徹底的に、選擧後と雖も搜索して貰はなければならぬ、又さう云ふやうなことを警察官に申出た者があるにも拘らず、之を警察官署が握り潰すと云ふやうな事件があつた時には、司法省としてはどう云ふ態度を御執りになるか、私は此の點に付て司法當局の御答辯を得たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=40
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041・中村又一
○中村政府委員 御答へ致します、今囘の選擧に際しましては、事件の極く輕微なものに付きましての取扱ひ、或は少しく大きく考へらるる種類の事件などに對しまして、其の種類を分つて、選擧違反と思はるる嫌疑の問題に對しましては研究をすると云ふやうなことは、中央よりも地方の檢察當局に向つての指示連絡は行れて居つたやうであります、併し從來此の選擧違反と云ふものは、選擧中には其の事犯の輕微、重大、其の種類の如何に拘らず成べく檢擧をしない、選擧は公平に行はしめる、一歩進んで行けば、惡質の買收犯と雖も、選擧の投票の終つた直後の其の夕頃、若しくは翌日に檢擧を行ふと云ふ方針を過去に於て行つて居つたことは事實であるのであります、而も今囘の選擧は御承知の通り民主主義にして、最も公正な選擧を斷行しようと云ふ、第一囘の試みとも言ふべき選擧の理想的なる實行をやつたのでありまして、此の線に沿うて、司法當局と致しましても非常に進歩したる、奮發した所の態度に依つて、此の選擧戰に臨んで居つたのは事實であるのであります、併しながら數字ははつきり致しませぬが、昭和十七年の東條選擧と言はるるあの恐しい彈壓を加へましたる選擧の當時よりも、今囘行ひました選擧は、此の選擧違反と云ふものは非常に多數に上つて居るのでございます、併しながら只今此の選擧中に於ても投書がある、投書には記名と無記名とがある筈である、之を申告した場合に於て、それを警察當局に於て取扱が一、二になると云うやうな考へ方もあるのではないかと云ふやうなことが御想像の御意見のやうでありますが、從來勿論公正なるべき所の檢察當局が、假令投書を檢擧の相當なる參考資料と假にする場合に於きましても、判斷の資料に於て、又人に依つて甲乙にされるやうな不公正なる所の檢擧、檢察の方針を執つたことは斷じてないのであります、そこで今後と雖も、選擧に臨みまして、其の違反事實の檢擧などに對しましては、勿論公正を期することは固よりであるのであります、併し私共の實際の經驗から考へましても、此の選擧に對する違反事件と云ふものは、中々理論と實際と云ふものとの裏表は困難なる事件でございまして今囘行はれたる所の選擧の如き、あの空氣の中に於ける所の選擧の檢擧方針なるものは、實際第一線に立つて居る所の其の苦心と云ふものも、相當御考へ願つて置かなければならぬと思ひます、併し現に──只今御質問の關係から、更に一言加へて置くのでありますが、今囘の事件に致しましても、出來るだけ今囘の選擧の精神に則りまして、此の事犯の解決に向ひましても、例へば無用なる所の拘留に如きは一日も早く打切つて、而も又當然代議士の人達で、此の檢擧の手に掛つて居られたと云うやうな人達でも、此の憲法議會の如きに於ては直ぐに御出席が得られるやうに、司法省の方針と致しましても、非常な苦心の方針を實行致して參つて居ると云ふやうな譯であります、そこで第一線の警察官の檢擧は、此の選擧違反に對する檢擧云々と云ふやうな御言葉に對しては、是は所謂簡單なる泥棒か何かを檢擧すると云ふやうな、そんな生易しい性質の事柄ではありませぬから、選擧違反事件と云ふ本質に鑑みまして、當局も實に苦心を拂つて、將來御質問のやうな憂へがないやうに努めて居るやうな次第であります、一言御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=41
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042・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は來るべき幾つかの選擧を迎へまして、どうしても金がなくても、又勞力がなくても、理想的な法の認める範圍内に於て、選擧戰に立つた者は必ず勝つ時代を作りたい、其の時代を作らなければ、やはり現在の政治と云ふものに對する國民の信頼の念が缺ける、政治に對する國民の信頼の念が缺ければ、隨てそれが社會不安の一翼をなすものであると云ふやうな立場から、只今御質疑申したのでありまして、尚ほ司法當局と致しましては、此の日本人と非日本人との鬪爭の問題に付きましても、國家の重大な觀點から、決して私は日本國民を壓迫せよと言ふのではないのであります、唯此の社會不安の除去に向つて、公正な警察官の御活動を御願ひして、司法關係の質疑は終ります
次に復員廳關係に參りますが、是は此の前の會議の時に御質疑申上げようと思つたのですが、其の機會がなかつたのでありますが、現在日本の軍隊──と言ふと語弊があるかも知れませぬが、昔の軍隊であります、是が何處かの土地に於てまだ「ゲリラ」戰と云ふか、戰爭を續けて居る所があると云ふことを仄かに聞いて居るのであります、どの地區に於てどのやうなものが行はれて居るか、又之を何とかして止めさせる方法がないかと云ふことに付て、先づ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=42
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043・荒尾興功
○荒尾政府委員 停戰の事實を知らずに戰つて居る者がないかと云ふことでございますが、世評に上つて居りまする状況を多少申上げます、第一は比島方面に於きまして、「レイテ」方面から歸りました者の色々な話から、相當數の者が戰鬪して居ると云ふやうな情報がありますが、其の後段々確めました所、さう云ふ大きな數字は居らないと云ふ感じを持つて居ります、本件に關しまして「アメリカ」の軍司令部と能く情報を御打合せをしました結果では、向ふ側は非常に少いやうに感じて居るやうであります、即ち二、三百も居るまいと云ふことであります、「グアム」、島に於きましては、當初四、五十人「ゲリラ」戰をやつて居ると云ふ話がありましたが、其の一部は收容せられて居りまして、殘つて居る者は極めて僅少で、あるかないかと判斷して居ります、「サイパン」島に於きましても數名の者が山地に殘つたと云ふ斷片的情勢がありましたが、其の後ございませぬ、「モロタイ」島に於きましては、二十五名前後の者が停戰後戰鬪して居ると云ふ情報がありましたが、其の後情報はありませぬ、大體以上のやうなもので、實際の數字は御想像よりは遙かに少いものと思ひますが、一名でもありましたならば終戰の方針に服して居らぬと云ふことになりますので、現地の部隊と致しましては、現地の米軍の協力を得まして、極力是等を收容することに努力をして參りました、部隊が出發を命ぜられまして、尚ほ心殘りのある者に付きましては、現地軍に搜索の續行を依頼して歸つて居ります、中央に於きましては、東京の司令部に對しまして是等の搜索に關し十分なる理解を得るやうに、從來協議を進めて居ります、本件に關しまして「アメリカ」の司令部に於きましては、聯合軍自身が自國の行衞不明者、死者等の搜査の爲に相當大規模に搜索を實施して居ります、此の搜索の中に日本軍の部隊と連絡取れず、尚ほ斯う云ふやうに山の中に殘つて居る者に對しては、飛行機に依るびらの撒布、「ラジオ」放送、或は現地の日本軍人、邦人等を利用致しまして、廣汎な組織の中に織込んで、是等の救出に御協力をして戴いて居るのは、極めて力強い次第でありまして、其の點御傳へして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=43
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044・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是等の人々は、萬一生きて歸れば、私は平和な時代に於ては、又日本の國に於て平和の方面に活躍する上に於ては、決して人後に落ちない有爲なる人材と思ふのでありまして、斯う云ふ人を死なせるのは非常に惜しいと思ひます、隨て政府と致しましては、是が戰爭の中止及び復歸に付ては、萬遺憾ないやうに御願ひしたいと思ひます
其の次は所謂平和國家を建設する上に於て、過去の戰爭と云ふものがどう云ふものであつたかと云ふことを、國民にはつきり知らせるのは道だと思ふ、是も或は私の質問に對して、全面的な御答へは願へないかとも思ふのでありますが、過去に於ける大本營の發表と實際との食違ひに付て、私は聽きたいのであります、又是が今一々數字的に御答へを願ふことが出來なければ、成べく出來る範圍に於ける作戰の實際と、大本營の發表との食違ひに付て御指示を願つた方が、國民が平和國家を作る上に於て、非常に參考となると思ふのでありますが、如何なものでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=44
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045・荒尾興功
○荒尾政府委員 大變難かしい御質問だと思ひます、只今私の役所と致しましては、聯合軍の要求に基きまして、過去の史實の一切のものを記述致しまして提出を致して居ります、其の記録を讀みました感じでは、過去の發表は迅速と云ふ點を要望されて居つたことと、發表する數字に付きましては、日本軍側に關することは大體發表した範圍は正しいのぢやないかと思ひますが、發表漏れの部分があると思ひます、それから當時の敵側に對する發表は、こちらで相當の正確さに差を付けて發表されて居ると思ひますが、是は飽まで向ふ側のことでありますので、過去の戰史は、何處の國でも爾後數年掛りまして是等の資料を整備して、彼我の戰史を突合はせて研究することになつて居りまするから、過去の大本營發表と現在の發表とに於て、どう云ふ風な具體的な差があるかと云ふことを此處で申上げることは、今のやうなざつとしたことなら申上げられますが、具體的事例としては頗る御答へし難い問題だと思ひます、斯う云ふ點と指定して戴きますれば御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=45
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046・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の點に付ては本席に於ける質問は此の程度にして置きまして、又出來る範圍の御發表を適當な時に御願ひすることに致します
次は農林省關係に參ります、現在の社會不安を招いて居る原因は、何と言つても私は主食の缺乏であると考へて居ります、それで主食の供出を圓滑にしさへすれば、或は主食の輸入等を促進しさへすれば、現在の社會不安は除去されるのではないかと云ふことを前提として考へて居りますので、私は農林當局に御尋ねしたいのであります、米の供出に對する強權發動に對しては、農民擧つて反對である、又本院に於きましても、此の問題に付て食糧問題緊急措置令に關する委員會に於きまして、相當の意見が續出して居るのであります、併しながら日本の食糧は聯合軍の方から補給されて居ると云ふ現在より見まして、強權を發動して國民の主食を國内から引出すと云ふまでの誠意を、私は否決し去ることはどうかと思ふ、寧ろ現在の警察官が持つて居る「サーベル」のやうに、現在の警察官が掛けて居る拳銃のやうに、放つことのなき一つの武器として、私は強權發動を殘さなければならぬと云ふやうなことを考へる、併しながら此の主食の供出問題を完全に解決し得なければ、勢ひ強權發動と云ふものが濫用される虞が出て來る、濫用と言つては語弊があるかも知れませぬが、今までに於ても強權發動に對する農民の反對と云ふ事象が起つて居るのでありますが、それと同じやうな事象が私は今後と雖も續けられると思ふ、隨て私は現在の如き農民の状況と供出の關係を考へて見ますると、農民の中には惰農がある、又不正農があります、米を闇で賣る農民があります、此の惰農とか不正農に對しては、如何に強權を發動致しましても、もう是れ以上の米は恐らく出ないと思ふ、それで今後の國民の主食はどの方面から出るかと云ふと、是は精農家、篤農家に御願ひしてお米を出して貰はなければならぬ、所が供出百「パーセント」してしまつた者に、それ以上の米を持つて居るとすれば、それ以上の供出を願ふとか、或は供出百「パーセント」の方々に、自分達の今後食べて行くお米を出して貰ふ爲に、一段歩に對しまして一貫匁の「アンモニア」をやるとか、或は地下足袋一足をやると云ふやうな、子供騙しの方法では決して米は出て來ないと私は思ふ、それは米三俵供出致しまして地下足袋一足貰ふよりは、米三升持つて行つて地下足袋を一足貰つて來る方が簡單であります、而も米を供出致しますと、それに税金が掛る、さう云ふ馬鹿なことをするよりは寧ろ闇で賣つた方が宜いと云ふやうに、精農と云ひ、篤農家と云ふやうな方面の方々までが考へるやうなことになりはせぬかと私は按ずるのであります、政府は強權發動と云ふやうな手に依らずして篤農家、精農家に保有米を割つて出して戴く爲の、何等かの方法を御考へになつていらつしやるか、之を一つ御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=46
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047・石川準吉
○石川政府委員 只今の御質問に對して御答へ致します、今御質問の要點に付きましては、外の緊急措置の委員會に於きましても十分論議されて居ることと思ふのであります、勿論強制收用、所謂強權發動と云ふものは、仰しやるやうに、是は一般の善良なる農民を目的にしたのではない、どうしても世の中には惰農があり、或は不正なる農家がある、其の惰農なり不正なる農家に對しては何等かの制裁がなければ、善良なる農民も結局それに引摺られてしまふと云ふやうな状況に於きましては、各市町村長とか、或は其の他村の方の話を聞いて居るのでありますが、善良なる農民が、寧ろさう云ふ惰農とか、不正なる農家の眞似をするやうなことになつては大變であると云ふやうな意味合からしまして、不正なものに對しては、どうしても或る意味での寶刀を用意しなければならぬだらうと云ふやうな意味合から此の強權發動が用意されたのであります、勿論今囘の強權の發動に付きまして、或はさう云ふ法律の趣旨に反するやうな場合もあつたかも知れませぬが、併しながら法律の趣旨としましては、所謂傳家の寶刀でありまして、十軒ある村の中で九軒までは本當に出した、併し一軒はどうしても出さない、而も物があつて出さないと云ふ場合には、それに何等かの制裁がなければ、殘りの出した者は馬鹿を見ると云ふことになつて、翌年供出に當然響くのでありますから、其の點を是正したいと云ふのが當局の狙ひであります、併しながら此の強權發動一本槍で行くことは、勿論現在の社會情勢、或は經濟情勢に於きまして、不可能でありますので、我々の方と致しましては、色々あの手此の手と考へまして、結局農村に於きまして農機具であるとか、或は肥料であるとか、或は作業衣であるとか云ふやうな物は、容易に手に入るやうでありながら入らなくて、農村の要求はやはり熾烈なものがあるのであります、隨ひまして末端に行きますと極めて少い、或は一足とか一著とか云ふやうな少い數字になると思ひますけれども、出來るだけ、場合に依つては都市の需要方面のものを削つても、農村に廻すと云ふやうな思切つた方法に依りまして、出來るだけのさう云ふ報奬を農村に廻はしたい、それに依つて別段農民の御機嫌を取ると云ふのではなくて、本當に農民に必要なものは公定價格で流さなければ、結局闇の對象になると云ふことも考慮しまして、供出を圓滑にする爲には、農民の要るものをどうしても出さなければならぬと云ふ意味合から報奬を考へて居るのであります、併しながらそれだけでも尚ほ足らない、斯う思ふのでありまして、最近に於きましては各市町村に市町村調整委員會と云ふものを設けて行つて居るのであります、從來の供出委員會と云ふものもございますが、それは場合に依りましては、或は地主ばかりの委員會であつたり、或は役場の吏員の委員會であつたりして、色々そこに不公正な構成があつたのでありますから、之を是正致しまして、本當に民主的な委員會を作らなければならぬと云ふ意味合から致しまして、市町村の調整委員會と云ふものを作り、是には自作農、小作農、其の他場合に依つては第三者も入ると云ふやうな工合に致しまして、どう云ふやうに割當てたならば最も適當であるか、先程申したやうに、篤農家、精農家に對しましては、土地の者としては是位出さなければならぬ、此の家に對しましては、斯う云ふ事情があるから、是で止めると云ふやうな、色々な地方の實際の事情に適した割當方法を、其處の調整委員會に於て決定して貰ふ、又調整委員會に於きましては、其の部落に必要な食糧の策定、さうしてどれだけ餘所に持つて行かれるかと云ふやうなことまでやつて貰ふ、さう云ふやうに從來の組織を改めまして、本當に下部から策定されるやうな委員會を置きまして、供出を本然の姿に持つて行きたい、斯う云ふやうに考へて居るのであります、隨ひまして、まあそれだけでは或は不十分かも知れませぬが、現在に於きましては、さう云ふやうな色々の手を以ちまして、兎に角傳家の寶刀を拔くことなしに、圓滿に供出が完了されたいと云ふやうなことを、考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=47
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048・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 只今の説明では私まだ不充分であります、篤農家、精農家に米を出して貰ふと云ふことに付て、實は私も色々考へて居るのでありますが、強權發動と云ふやうなことは、所謂米のない者に對しての一つの制裁である、是は來年、再來年の米の供出に對して影響を與へることは勿論です、併しながらさう云ふ方面は或る程度此の際打切つてしまつて、さうして米のある方に助けて貰はなければならない、其の爲には、私は御説明のやうな現在の委員會を作ると云ふことも一つでありますが、もう一歩進めて、主食全體を耕作者と云ひますか、供出者と云ひますか、其の一つの團體に對して御任かせになつてしまつた方が或は米が出るのではないかと思ふ、米が出るのではなくて、日本の國としては「マ」司令部の方から是だけの米を受けるだけの諒解が出來た、現在の人間が是だけ居つて、是だけの米を食ふ、だから百姓の皆さんは、皆さんの持つて居る米を、十のものを七つにする、六つにする、さうしてお互ひに一つ鍋のお粥を食べて行かなければならないと云ふことの、本當の觀念を植付けて、自發的に是等の處置をする爲には、さうした今までの供出委員會の唯燒直しのやうな姑息な方法では、私は絶對に駄目だと思ふ、根本的に主食の農民管理を行ふ、又農民自身に管理させることも一方に偏するかも分りませぬから、消費者の方々も「オブザーバー」として之に加へる、併し今までの米の供出に付て強權を發動した官僚、或は食糧營團の人々は、農民に取つては不評判な存在であるから、一切手を引いて貰つて、所謂其の家の御飯の杓子をお姑さんから若い嫁に渡すと云ふやうな風に、一つ米を持つて居る農民自身に、此の食糧の管理其のものを凡ゆる面に於て任した方が、現在の食糧危機を乘切る一つの途だと思ふのであります、又是も一つの飛躍的な考へ方でありまして、現在の政府の方々は、そこまでは御贊成を得られるかどうかと思ふのでありますが、之を念頭に置いて一つもう少し──私は是も最善の方法だとも考へて居りませぬ、併しながらもう米の出るのは、篤農家と精農家から米が出るのであるから、それ以外の所は強權發動をやらうが何をやらうが、農家に米がない、ないものはいくら言つて行つたとて駄目でありますから、此の根本の所に一つ「メス」を突込んだ農政と云ふものを、今後やつて戴きたいと思ふのでありますが、もう一應一つ御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=48
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049・石川準吉
○石川政府委員 只今の御設例は御尤もと思ひますが、先程私が申上げました市町村の食糧調整委員會と云ふやうなものも、此の構成は今青木さんの仰しやつたやうな、所謂村の本當の農民の組織に依つて作られた一つの委員會でありまして、謂はば或る意味に於きましては、それは農民の管理とも言へると思ひます、併しながら、何れに致しましても農民全體の一つの管理機構を作ると云ふことは、將來に對して考へられるかも知れませぬが、現在に於きましては、兎に角明日のものをどうするかと云ふ差迫つた段階に追はれて居るから、現在の供出委員會を改組して、所謂本當の農民の實情を知つて居る農民諸君を、此の調整委員會に入れて居ると云ふやうな段階に立つて居る譯でありまして、御趣旨の點は、斯う云ふやうな調整委員會に於きまして、組織と運用さへ宜ければ十分達せられるのではなからうかと、斯う云ふやうな氣がするのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=49
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050・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 もう一つ考へられることは米の價格の問題であります、總ての農民の必需物資、其の他凡ゆる物資の價格と、農村の生産物資の價格との間に、平衡を失して居ると云ふことに對する不平があると思ふ、又精農家、篤農家は供出を完了して居る、供出を完了して尚ほ米を出すと云ふ者に對しては、多少の奬勵金でなく、米一俵が二千六百圓もするならば、少くとも一俵千圓位の思ひ切つた奬勵金を出される方が、只今申されることが立どころに出來、米が得られる方法だと思ふ、私は農家に米があると云ふことを斷言する、餘分に出せる米があるのぢやありませぬ、闇の肥料が現在米と物交されると云ふことは、百姓が米が餘つて居るから肥料と換へるのぢやない、百姓は今食ふ米、是から野良に出て働く時腹が減つてふらふらになるけれども、お粥を食べて我慢して明日の増産に備へて居る、それ程農民は現在眞面目である、純眞である、ですから此の眞面目、純眞な農民に酬ゆる爲には、些細なものを見返物資として與へるのでなくて、一層のこと米一俵千圓程の金を出して、是等の篤農家から買上げる位の英斷が政府にあつて欲しいと思ふ、私は實際やるならばそれ位のことをやらなければ效果がないと思ふのでありますが、此の物價と農村生産物資との均衡を求める點に於て、農林當局としてはどう云ふ考へを持つて居られるか、御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=50
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051・石川準吉
○石川政府委員 米價が外の一般工業生産品に對して「バランス」が取れて居らぬと云ふ御話でございますが、此の物價の點に付きましては、一般の物價體制と併せて考へなければならぬ問題が相當澤山あると思ふのであります、現在石三百圓、是が現在の他の諸物價に比較して安いか高いかと云ふ問題は當然出ると思ひますが、今度物價廳が出來まして、そこで新しく全體の物價體系が作られると思ひますが、其の際に於て農産物の價格に付ても十分檢討致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=51
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052・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 えらい長いこと質問致しまして洵に相濟みませぬが、米を供出させることに付て、今年の米の問題に付ては此の程度に止めて置きますが、今度は來年の問題であります、是は誰しも言ふことでありますが、強權發動が遲過ぎたと云ふ問題であります、もう既に今年の秋の取締に付ては、恐らく農林省當局としては對策は立つていらしやると思ふのでありますが、まだ立つて居らなければ去年と同じ失敗を必ず繰返すものだと私は思ひます、もう立つて居ればそれで宜いが、立たなければ今年は早急に御立てになつて戴きたい、又來年度の供出問題に付ては、どう云ふ處置を御執りになる御決心であるか、其の内容を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=52
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053・石川準吉
○石川政府委員 來年の、所謂二十一年産米に付きましては今研究中でありますので、此處で具體的な内容は申上げ兼ねますが、併しながら是は時期が遲れないやうに、出來るだけ早く發表したい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=53
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054・坂東幸太郎
○坂東委員長 一寸御伺ひしますが、此の米價の問題は經濟安定本部で以て十分研究するでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=54
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055・石川準吉
○石川政府委員 經濟安定本部と今度物價廳が出來ましたから、そこで……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=55
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056・坂東幸太郎
○坂東委員長 經濟安定本部はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=56
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057・石川準吉
○石川政府委員 經濟安定本部でもやります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=57
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058・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に肥料の問題でありますが、是は新聞紙上に於ては、肥料の國家管理と云ふことに付て具體案があるやうでありますが、是は政府の施策を持つて居ります、至急肥料に對する具體案を御立てを願ひたいと思ひます、次に野菜の問題でありますが、野菜が再統制になりました爲に、野菜が出廻らぬと云ふやうな問題がある、又馬鈴薯の問題に付ても、私は福井縣でありますが、福井縣の農民は一貫目十五圓を要求して居りますが、縣廳は七圓と云ふことで押付けた、所が其の後新潟縣の新聞を見ますと、其の新潟縣の新聞では新潟の馬鈴薯の生産費が八圓四十何錢と云ふやうなことで出て居るのであります、どうも現在の政府の物價と云ふものが、やはり蔬菜の面に於きましても、統制と云ふことは或は宜いかも知れませぬ、併し統制に依る價格の指示が誤つて居る場合には統制が失敗すると云ふやうなことが起る、是は統制されて却て惡い現象になつて居るのではないかと思ふのですが、今後の見透しに確信がありますかどうですか、御聽きしたいと思ひます、尚ほ特に農村の我々が都會に參つて痛切に感じますことは、都市の自給菜園がなつて居ないと云ふことであります、之に對して指導の方法はどうであるか、又色々作物を植えて居るが、草だらけである、或は東京市内でもまだ耕やして植える餘地が隨分あると思ひます、非常に多くの自給菜園を作り得る可能性があると思ふのでありますが、農村の者が一番ここに都會人に對する不信用と申しますか、敵愾心と申しますか、それを起して居る、街の人は働かずに自分が食ふことばかり考へて居る、我々は一生懸命汗水垂らして、朝早くから夜遲くまで働いて居る、さうして得たものを、統制の名目の下に安い價格を以て街の者に食はせる理由は全然ない、其の理由は街の菜園はあの通り草林になつて居るぢやないか、遊んで居るのにあの菜園の草位もつたつて宜いぢやないか、又澤山農耕適地があるではないか、勿論戰災地であるから石もあれば瓦もある、併し之を除去するだけの人手は必ず都會にある、都會の人はごろごろ遊んで居るぢやないか、殊に燒土は肥料分が百「パーセント」ある、此の燒土を利用することに依つて、蔬菜と云ふものは必ず能く稔つて來るだらうと云ふやうなことを、我々百姓の者は考へるのでありますが、此の點都會の者に對して、自給菜園を活用することに付て、政府としてはどう云ふ御考へを持つていらつしやるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=58
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059・石川準吉
○石川政府委員 野菜のやうなものの統制に付きまして、將來やつて行ける見透しがあるかどうかと云ふ御尋ねでありますが、蔬菜及び魚に付きましては、中々是は出荷地方が多いのと、それから出荷の組織其の他が複雜でありますので、思ふやうにきちんとは行かぬのでありますが、併しながら昨年の暮から今年の初めに掛けまして、統制を外しました結果に依りますと、あの當時の豫想では、誰しも統制を外せば物がうんと安くなつて澤山出るのだ、統制を外したならば一時は物が高いかも知れぬが物が澤山出る、需要供給の關係で物が安くなると信じて居つたのであります、所が蓋を開けて見ると、月日が經つに從つて段々と騰貴して來る、隨ひまして買ひ得る者は買ふが、買ひ得ない者はちつとも買へないと云ふ極めて不公平な結果に陷りました經驗に鑑みまして、再統制をやつたのであります、隨ひまして統制の方法に付きましては十分注意致しまして、少くとも消費者、或は生産者に御迷惑にならぬやうな方法をやつて行くことを念願して居りますが、今の所統制は撤廢すると云ふことは考へて居りませぬし、之に依つて飽くまで或る程度の需給の「バランス」は圖つて行きたいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=59
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060・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の問題に付ては、政府の政策をもう少し見送りませう、さうしてまあ恐らく是は失敗すると思ひまするが、失敗した時に於てもう少し私として之に對して御質疑を繼續したいと思ふのであります、一應農林關係は此の程度で止めます
是から財務關係に入るのでありますが、其の内農村關係に多少縁故のある問題に付て申上げたいと思ふ、私は前に大藏大臣に對しまして、農家の課税問題に付て御質疑を申上げました所が、此の委員會に於ける大藏大臣の御答辯は、私は滿足すべきものであつたと思ふのであります、併しながら他の場所に於ける大藏大臣の説明は、極めて滿足し得ないことが新聞紙の報道に依つて明かになつて居るのでありまして、私は此の點に付て政府委員の御答辯、場合に依つたら大藏大臣自身の御答辯を得たいと考へるのであります、是は新聞の報道でありまして、私は其の時の状況が果してどう云ふものがあつたか分らないのでありますけれども、貴族院に於ける説明に於て、農民に對する課税は、供出の部分に對しては供出の數字を以て課税したのだ、未供出の部分、即ち一段歩當りどれだけの收穫があると云ふことを税務署として認定した場合に、未供出の部分に對しては、特殊の値段を以て算定して居ると云ふやうなことが新聞紙に出て居るのでありますが、果して斯う云ふことを大藏大臣が本氣に御説明になつて居るのかどうか、大藏省としてはどう云ふ方針を以て農民に課税をやつて居るのであるか、もう一應詳しく御説明を得たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=60
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061・野田卯一
○野田政府委員 只今の問題は主税局の關係でございますので、別の機會に主税局長又は大藏大臣が御説明申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=61
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062・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは此の問題に付ては改めて御答辯を得たい、若しさう云ふ御説明が眞でありますならば、茲に色々な問題が出て來る、即ち殊に是は對象となるのは、蔬菜の問題などが農家として對象になるのでありますが、家族の數に依つて、段別は澤山持つて居つてもそれを家の者が食べてしまふと云ふやうな問題が起るのであります、又轉落農家はそれだげの收穫を擧げ得ない、殊に蔬菜の問題などに付ては、菜つ葉位ならば或る程度穫れるかも知れませぬが、其の他の問題に付ては是が耕作の如何に依つて收穫に非常に差があるのであります、隨て供出と云ふことに付ては、中々思ふやうに參らぬ、又米の問題に付ても同樣であります、現在米を完納しない農家が、必ずしも是が不精農とは言はれない、勿論其の中に先刻申上げましたやうに惰農──どう云ふ方法を以てやつても隣の人のやうに澤山の段當りのお米が穫れないと云ふやうな、轉落農家があるのであります、此の轉落農家も、家族の多い農家も、一齋に全部不正農家と見られると云ふ所に私は異議があるのでありまして、此の點どうぞ大藏省當局の課税方針に對する明快なる御答辯を、適當な時機に御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=62
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063・坂東幸太郎
○坂東委員長 太田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=63
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064・太田秋之助
○太田(秋)委員 私は今議題になつて居る本案に對しまして、簡單に御尋ねしたいのであります、政府の出資特別會計法が實施されて以來、現在に至るまでの間に於きましては、相當政府の出資に關する資金は厖大なる金額に達して居ると思ふのであります、就中是等に依りまして政府の投資したる金額は、内地外地を問はず、それぞれの事業會社に對して出資をされて居ると思ふのでありますが、それ等の金の囘收は、敗戰の今日不可能に陷つた金額も相當額に上るのではないかと思ひます、此の法律の廢止に伴ひまして今日まで投資した是等の金額の總額は幾ら、此の法律を廢止すると同時に、又國庫の損失に期すべきものがどれだけになつて居るかと云ふ點を改めて御伺ひしたいのであります
次に海外資産と稱する所の、それぞれ我が國の領土であつた臺灣、朝鮮、其の他滿州、北支方面の開發、或は滿鐵の如きは、相當政府の投資金額も、出資金額もあると存ずるのでありますが、是等の海外資産は、延いては我々の聞く所に依りますと、所謂戰爭の賠償金として充當されるのであると云ふことであります、斯う云ふ金額を今日賠償金に充當される場合に、どう云ふやうな金額の高に上るか、又之には民間の投資も含んで居ると思ひますが、所謂滿鐵の如き民間の投資に付ては、政府は補償の責任があると思ふのであります、戰爭賠償金に充當される限りに於きましては、斯う云ふ處置に付て政府はどう云ふ方針を執りますか、其の點を私は伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=64
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065・野田卯一
○野田政府委員 只今御尋ねの第一點、政府の投資がどう云ふ工合になつて居るか、其の現状でありますが、少し古い數字でありますけれども申上げます、先づ内地關係と外地關係の概數を申上げます、内地關係に於きましては、政府が是だけの金を出すと云ふ公稱資本金二十二億八千四百萬圓、それの拂込みになつて居るものが十七億四千五百萬圓、それから外地關係に付きましては、公稱資本金が十二億四千四百萬圓、拂込み資本金が十億八千四百萬圓、斯う云ふ數字になつて居ります、大體法人の數に致しますと、内地關係が四十七、外地關係が三十五、斯う云ふやうな状況になつて居ります
それから次に外地投資は賠償に充當されるかどうかと云ふやうな御質問でありますが、外地に對する投資は、それが政府のものでありましても、或は民間のものでありましても、原則として賠償に充當されるものと考へて居ります、又是等の資産が賠償に充當された場合に、政府資産に付ては、其の儘政府の資産がなくなると云ふ關係でございますが、民間のものに對しては政府はどう云ふ處置を執るかと云ふやうな點に付きましては、是は御承知の軍需補償、其の他色々な補償の問題とも絡み合つて居る問題でありまして、政府と致しましては、さう云ふ各般の政府の補償問題の一環として考へて行きたい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=65
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066・太田秋之助
○太田(秋)委員 重ねて御尋ね致しますが、外地資産に對して政府補償をすると云ふやうなもので、政府より前渡金を貰つたり、前金を貰つたりしてやつた軍需工業會社が戰災に遭つた、所謂戰災補償が出來ると云ふやうな會社と違つて、海外に行つて多年經營した民間の内地資産、所謂臺灣製糖の如きものを、軍需工業と同一視して、戰爭の賠償金に充當したにも拘らず政府賠償の責任がないと云ふやうなことは、私は甚だ宜しくないと考へるのでありますが、斯う云ふ問題に付きましても、政府はやはり内地に於ける軍需工業會社のやうなものと同一に考へられるかどうか、其の點をはつきり御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=66
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067・野田卯一
○野田政府委員 内地に於きます軍需會社に對する補償の取扱と、斯う云ふ外地に於ける投資の取扱と全然同一にするかどうかと云ふやうな御質問でございますが、此の取扱方に付ては、色色な點から考へなければならぬと思ふのであります、外地に於ける投資と申しましても、色々な種類の投資がありまして、一概に皆同じに見ることが出來ない、大きいものもあれば少さいものもある、中には非常に軍需的なものがあれば、平和的なものもある、又縣で行つたものもありませうし、自發的に民間が行つたものもあると云ふやうに、非常に異つて居る、又内地の軍需會社の方も千差萬別になつて居りまして、是とそれと一體的に、皆同じやうにやると云ふやうなことに致しますか、或はそこに、それぞれの事情に依つて差別を付けて取扱ふことに致しますか、是等は政府としては今後愼重に取扱はなければならぬ、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=67
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068・太田秋之助
○太田(秋)委員 次に御伺ひしたいのは、政府出資特別會計法に依りまして爲されました所の公債、借入金、其の他の政府の負擔に歸すべき公債利子の支拂、是等の本法廢止後の經理方法は、まだ私は詳しく調査して居りませぬが、どう云ふことになりますか、是は御伺ひした方が手取早いので、此の點御伺ひしたいのでありますが、是等の借入金、公債利子と云ふものは、一般會計に依つて處理するのか、又他の方法に依つて之を經理するのか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=68
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069・野田卯一
○野田政府委員 只今の御質問の點は、一般會計に於て處理いたします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=69
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070・太田秋之助
○太田(秋)委員 更に重ねて御尋ねします、從來種々な低利資金と云ふやうなものを、事業團體或は公共團體に貸與されてあつたやうでありますが、最近政府の御方針としては、是等の低利資金と云ふやうなものは、政府自ら資金を出さないで、中央農林金庫の方から融通すると云ふやうな、過般農林大臣の説明もあつたやうでありますが、斯樣な關係に相成りました場合に於きまして、從來政府の保證のある特殊會社でありまして、損失補填とか、或は豫算外の負擔の契約と云ふのは色々ございますが、斯う云ふもの、例を擧げれば東北振興、日本發送電、斯う云ふやうなものに對しては、政府ではどう云ふ扱ひをなさるのでありますか、是等は政府の方針に則つて、其の約束された金額は政府負擔となさる御積りであるか、又是等の保證を打切るのであるか、之を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=70
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071・野田卯一
○野田政府委員 低利資金の問題でありますが、從來低利資金は總て預金部から出て居つた、其の低利資金の問題でありますが、預金部から各種の團體、特殊法人に對して低利資金を供給して居つたのでありますが、最近金融情勢が非常に逼迫致しまして、預金部は先づ優先的に國債を引受けると云ふ政府の方針であり、又政府としてもさうせざるを得ないのでありますが、隨ひまして差當り預金部に若し資金がありますれば、公債の方に專ら向けなければならぬと云ふ實情で、隨て他の方面に供給する力が非常に乏しくなつて參ります、隨て只今では農林中金あたりに比較的農村關係の資金が集まつて居り、さう云ふものを利用してやつて戴く、斯う云ふやうな方法に向つて居るのであります
それから特殊法人に對して從來之を財政的な觀點から、保護すると云ふ意味から、色々な措置を執つて居ります、御承知の配當を保證する、或は借金を致した場合に、元利の支拂保證をする、或は其の他補給金を與へるとか云ふことをやつて居りますが、最近關係方面と色々打合せまして、向ふから指令も參つて居ります、大體配當補給と云ふことは禁止されることになつて居ります、隨ひまして近く又特殊會社に對する配當補給をすることを打切ると云ふ法律案を議會に提出致しまして、御審議を願ふことになるだらうと思ひます、大體さう云ふ譯で、特殊法人に對する色々な財政的援助は、原則として之を止めるやうな方向に持つて行かざるを得ないやうな状況に現在なつて居ります、配當補給の外、元利保證、是も將來のものに付きましては止めざるを得ないと云ふ状態になつて居ります、低利資金の融通に付きましても、是が若し財政的援助と云ふ意味を以ちまして流れる場合は、やはり問題になるものと存じて居るのであります、それに付きまして御尋ねの中にあつたやうでありますが、從來の元利保證をして居るものに付て政府はどうするのか、今後元利保證をしないと云ふことは分りますが、從來出した社債等に付て、政府の元利保證はどうするか、其のものに付ても政府は其の義務を免れてしまふ、或は義務を果さないと云ふ考へ方に付きましては、是は先程一寸申上げました各種の補償、政府の公約と申しますか、色々約束をし、義務を負うて居るのでありますが、それ等の問題處理は、他のものと均衡を取つて措置して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=71
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072・太田秋之助
○太田(秋)委員 只今の御説明は了承致しましたが、唯今日まで政府の投資して居る日本發送電會社などの株は、政府出資の株式でありましたならば、是は無論配當するのであるか、或は政府だからさう云ふ民間の株の配當はされないのであるか、さう云ふものに對してはどう云ふ方針を執る積りか、それは株券を處理して、投資其のものは自然に委して置くのでありますか、從來行つた投資に對しての御處置を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=72
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073・野田卯一
○野田政府委員 御答へ致します、既に今まで政府が出資して居るもの、現在株主になつて居ると云ふものに對してはどうする考へかと云ふ點でありますが、是は政府の方と致しまして、今後さう云ふ株の出資を持ち續けて行く必要があると認められるものは、直ちに之を處分することも考へて居らないのでありますが、色々な關係に於きまして、政府が必ずしも持つ必要がないと云ふものに付きましては、漸次處分をすると云ふことも考へられるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=73
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074・太田秋之助
○太田(秋)委員 分りました、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=74
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075・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 午前中の銀行局長の御答辯を御願ひ致します、それは現在の新圓の分布状況如何、政治資金の封鎖率如何、さう云ふ二つの問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=75
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076・江澤省三
○江澤政府委員 御答へ致します、新圓の分布状況如何と云ふことに付きましては、別の機會にも申上げたやうなことでございますが、尚ほ繰返して申上げますると、試みに全國銀行の封鎖預金からの自由支拂、之を内譯て見ますると、五月中五十二億二千九百萬圓、此の中生計費に充當するものが十三億八千九百萬圓、二六%、賃金に相當するものが二十七億二千七百萬圓、五二%、事業費に相當するもの、是は賃金以外のもの、それが四億九千八百萬圓、約一〇%、其の他已むを得ざる出費、是が六千萬圓、一%、其の以外雜と云ふ部類に屬しますものが五億五千三百萬圓、是が一〇%、此のやうな徑路を以て新圓は出て居る譯でありますが、此の新圓がどう云ふ方面に大體滯溜して居るか、是は中々推定困難なことでありますが、一應日本銀行の調べました數字を基礎にしまして、極く概略の所を申上げますると、農村漁村、此の方面に約半分行つて居ると云ふことになつて居ります、數字に付て申上げますると、五月末現在の日銀券發行高三百六十三億、此の中金融機關の手許に滯溜して居りますものが二十五億、農村漁村に滯溜して居りますものが百七十五億、配給機關に滯溜して居りますもの四十一億、生産機關に滯溜して居りますものが六十四億、一般消費者に滯溜して居りますものが五十八億、斯う云ふ數字に一應は見て居ります、勿論色々の推定が非常に多く入つて居りますので、必ずしも此の儘と云ふ譯には行かぬと思ひますが、一應の徑路として御報告を致します、今の數字を更に詳しく申上げますると、滯溜の最も多い部面を順序に申上げますと、第一が農村漁村、特に都市の周邊の蔬菜、果樹、斯う云ふものを栽培して居る農村竝に漁村、勿論農家の中には相當新圓の窮屈な向もあると思ひますが、概して言へば都市周邊の農村漁村、斯う云ふ方面に付ては現金は入るし、支出は大體物交で間に合ふと云ふやうなことで、相當な現金が滯溜されて居ります、二番目に多いと見られますのが物品販賣業、配給機關其の他各種統制組合、斯う云ふ方面に相當多く行つて居るのであります、第三に多いと見られますのが各種興行會社、映畫館とか其の他芝居とか、斯う云ふやうなもの及び飮食店、斯う云ふ方面に相當新圓が集まつて居るのであります、高級の料理屋では五十萬圓の現金を手に擁して營業用の物資を仕入れる資金にして居るやうな話も聞くやうに存じて居ります、第四番目に多いと見られますのが電鐵會社、「ガス」會社、電氣事業、運送業、土建業、主として電鐵會社、特に百貨店を兼營して居る電鐵會社等に至つては、相當に新圓が集まつて居ると見られて居ります、それから第五に闇「ブローカー」、是は一般には非常に新圓の手持が多いのではないかと云ふやうに言はれて居るのでありますが、結局生計費とか賃金の支拂ひとか、斯う云ふやうなものが新圓流出の大部分を占めて居るのでありまして、是が生計資金、生活物資を買ふ爲に農村へ奔流して居る、一部はそれが中間の販賣機關或は統制機關に止まつて居り、生産の基礎産業と云ふやうな方面には中々遡つて來ないと云ふのが實情であらうと思ひます、それから内國人、外人、此の區別に依つてどうか、斯う云ふやうな御質問もあつたやうに聞いて居りまするが、是は今の所調査した資料がありませぬ、又調査上非常に困難を伴ふ場合もあると考へますので、又別の機會に御報告申上げたいと思ひます、それから政治資金として新圓の交付を認めて欲しいと云ふやうな御話でありますが、各黨に對する黨費と致しましては相當程度新圓を認めて居りますので、其の中から政治資金と云ふやうなものは賄つて戴くやうにしたいと、斯う存じて居ります、尚ほ御質問がありましたならば……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=76
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077・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうすると黨費と申しますのは、要するに政事結社であれば地方結社でも宜い譯なのですか、個人の政治資金と云ふものはない譯なのですが、葉書一枚出しても今度は十五錢、封書が三十錢となつて居る、我々政治家はどんなに少くも、やはり何千と云ふ枚數を出す、隨て印刷費と云ふものは高くなる、隨てそれ等の出費がなければ自分の趣旨の徹底と云ふことが行はれぬのであるが、政府はそれを認めたのであるか、もう一度伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=77
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078・江澤省三
○江澤政府委員 色々御不自由な點はあらうと思ひますが、今の状態では中中個人の政治資金まで認めると云ふことは、一寸不可能ではないかと思はれます、必要な向は黨に對する新圓の供給を若干なり殖すと云ふことで、其の方面から適當に流通をして使つて戴きたいと云ふ風に思つて居ります、地方結社に付きましても、勿論一つの政事結社として運營されて居る場合には、或る程度事業費と云ふやうな意味で御認めして宜いのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=78
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079・太田秋之助
○太田(秋)委員 今の黨費の問題で、關聯して居りますから一言伺はせて戴きたい、私此の間進歩黨の黨費を納めます爲に、封鎖預金引出の證明を貰つたのです、納めた金額は其の證明に依りまして封鎖預金から出せと云ふので、私の郷里は福島ですが、福島の或る取引銀行に持つて行つて話した所が、是は困ると云ふので、幸ひ日本銀行の支店がありますから、日本銀行の支居の方にも伺つて見た、所がどうもそれは封鎖預金から出せない、是は仙臺の財務監督局に伺つてからにして呉れと云ふことで今日まで來て居るのであります、段々行くと、まだ仙臺から返事が來ないと云ふことであります、唯銀行方面からの通知に依りますと、政黨への金額は宜しい、封鎖の額内でやつて宜いと云ふことでありますが、實際上の銀行の取扱から行くと、早速に呉れない爲に非常に私共は困難して、支拂もやつて行けない状態になつて居るのでありますが、斯う云ふ點に付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=79
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080・江澤省三
○江澤政府委員 今の黨費の御話でありますが、是は寄附金と云ふやうな名目と同一に扱ひまして、現在一件五千圓未滿のもの、總額三萬圓と云ふものに付きましては、地方の財務局に全部許可の權限を任せてある譯であります、事實上は日銀の各支店で處理出來る範圍になつて居ります、迅速にさう云ふものは處理して居ると私共は存じて居ります、尚ほ其の邊は徹底するやうに努力致したいと思ひます、それから今後の方策と致しましては、さう云ふ金額の制限を設けず、相當大幅に地方財務局に金融措置令關係の認許權を任して行く、特に各省との關聯のあるものとか、或は渉外關係のもの、或は特に公益に要するものと云ふ特殊なものだけを本省の方に持たすと云ふやうな方針でやりたいと存じて、今手續を進めて居ります、成べく措置令關係に付ても迅速に、且つ實情に應じた運用をしたいと思ひます、御承諒を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=80
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081・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是も午前中の續きでありますが、生命保險の打切りの問題に付て御答辯があつたのです、政府としては打切りのことは考へて居らないと云ふやうな大體の御説明に伺ひました、政府としては今簡易生命保險其の他に付て打切りの考へはない、是は御尤もです、併しながら各保險會社に於て、其の經營がどうしても至難であると云ふやうな申合せに依つて打切る、大體に於て現在の生命保險會社は、各社共同で申合せたら、人民の迷惑位構はぬと云ふやうな方面に、僕は流れて居るのぢやないかと云ふ疑ひを或る程度持つのであります、隨て、斯うした新聞記事も、さうした保險會社の重役連中が、自己の保身の爲に出した一つの手段ではないかと私は考へるのでありますが、各保險會社が申合せて斯う云ふことを政府當局に申出た場合、政府當局は如何なる措置を執られるか、是は重大なる關心事と存ずるのでありまして、午前中の御答辯で宜いと思ひますが、能く考へて見ると、相當根をほじつて聽いて見なければならぬと思ひますので、もう一應御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=81
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082・江澤省三
○江澤委員 今の御質問に對して御答へ致します、新聞に色々意見だか何だか載つて居るやうでありまして、それに付て色々御心配があるやうに拜察するのでありますが、現在打切とか何とか云ふ問題は、政府としては生命保險に付ては考へて居りませぬ、それで何時かも何遍となく申上げたと思ひますが、軍需補償其の他の關係で、非常に困難な状態に立到りました場合に於きましても、少額の保險者に付きましては絶對に安全を期するやうに努力したい、斯う存じて居る次第であります、色々の流説がありますことは、非常に政府としては迷惑に存じて居ります、此の機會に御説明申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=82
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083・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是は斯う云ふ原因ではないかと思ひます、各生命保險會社が支拂をした場合に、其の會計状態が危胎になる、さうすると、政府がそれに對する補償を今まではやると云ふやうなことになつて居るのぢやないか、所が政府の補償がなくなるから、隨て生命保險の支拂が出來ないと云ふ結論になるのぢやないかと思ふのですが、是は私の考へが誤つて居るのか、もう一應御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=83
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084・江澤省三
○江澤政府委員 其の邊は色々御想像が出來る譯ですが、政府としましては、進んで打切れとか、或は打切りたいと云ふことに付て相談を受けたこともありませぬし、其の邊のことは、唯意見として新聞紙に現はれて居ると云ふ程度に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=84
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085・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 財務關係に於きましては、自然に新圓問題に觸れるのであります、新圓問題は是は本院に於きましても、又貴族院に於きましても、各場合々々に依つて取上げられて居る問題である、併し日時が推移すると同時に、社會情勢も變つて行き、新圓に對する國民の關心、經濟界の關心と云ふものも、其の時其の時の状態に應じて深まつて行き、又隨て新しい觀點より質疑しなければならぬと云ふことになるのでありまして、再三の質問であつて、非常に恐れ入るのでありますけれども、現在の社會不安の状態から考へて、一般に想像せらるることは新圓の再封鎖であります、此の間大藏大臣は私の質問に對して、再封鎖と云ふことは絶對にやらないと云ふ御説明でありますけれども、現在の社會情勢から見て、殊に新圓が──是は噂かも知れませぬが、現在六百幾億の新圓の中、百六十億圓が或る者の手に握られて居る、又それは百六十億圓ではなく三百億圓であると云ふやうな流説が行はれて居るのでありますが、其の眞相果して如何、又現在の新圓の分布状況に付ての銀行局長の御説明に依りますと、是はさして案ずるに足らない、それは新圓の大部分が農漁村にある、最も堅實なるべき農漁村にあると云ふことなら結構であります、併し恐らく私は一應農漁村に納まつた新圓と云ふものは、農漁村民が元々非常におとなしい純情的な者でありますから、都會の闇商人、「ブローカー」の手に依つて色々欲しい物を見せびらかされて、新圓は疾うに闇商人の手に大部分が移つて居るのぢやないかと思ふ、それ等が流れ流れて今或る者が新圓の大部分を掌握すると云ふやうな現在の状態に立到つたのではないか、是は憶測であるかも知れませぬが、一般にさう考へられて居る、是は事實考へられて居るのだから致し方ありませぬ、して見ると、そこに政府が新しい手を打たなければならぬと云ふ結論に到達する、或る者が新圓の取扱に付きまして色々な物資を賣ることは自由である、勿論闇の「ブローカー」をやると云ふことは法に違反するのであるが、併し正當なる取引に依つて新圓を得ることは當然であります、併しながら是等の手に新圓の大部分が握られると、日本の經濟機構の將來の實權が誰に握られるかと云ふやうな重大な問題に立到る、隨て此の新圓の偏在に對する政府の新しい打つ手と云ふことが問題になつて、隨て新圓の再封鎖と云ふことが一般的概念として、必然に來るものが來ると云ふことの豫感を現在持つて居る、さうして非常に不安がある、又特殊預金の分に付ても、此の間大藏大臣は一萬圓や一萬五千圓の方には御迷惑を掛けぬと云ふやうな御話でありました、現在もう既に特殊預金を半分なら兩替する所が出來て居る、若し御存じでないなら、私は其處へ御案内しても宜しい、是はどう云ふ人がやつて居るか、是も公開の席上では對外關係を考へて私は發表を差控へますが、さう云ふことをやつて居る、特殊預金は半額で替へる、封鎖預金は七割で替へる、是は公然の祕密である、其の由つて來る原因如何と云ふ問題がある、其の原因を考へて、それに對して政府の打つ手が當然私は考へられなければならぬと思ふ、隨て是等の事柄が行はれて居ると云ふことは、日本國民の心理状態が、特殊預金は半分でも宜しいと云ふことに落著いて居るのぢやないか、又封鎖預金は七割で宜しいと云ふことに落著いて居るのぢやないか、若しさう云ふ方面に國民の意思が落著いて居るとするならば、私はあつさりと特殊預金半額、封鎖預金七割と云ふことを、實際に政府が施策の上に斷行されてはどうか、斯う云ふ社會不安と云ふものは、一日も忽せにすることは出來ない、直ちにやらなければならぬ、各般の情勢から當然歸納さるべき結論であると私は思ふのでありますが、此の新圓問題に付ての御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=85
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086・江澤省三
○江澤政府委員 新圓の分布に付きまして國外の者、外國人が相當持つて居るのぢやないか、斯う云ふやうな噂があると云ふ御話でありましたが、是は一般に色々な風説はありまするが、それ程のものではないと云ふ風に私共の方では見て居りますさう云ふやうな事情に關聯しまして、新圓の再封鎖如何、斯う云ふやうな御話があつたやうでありますが、之に付きましては大藏大臣から再三言明致しましたやうに、新圓の再封鎖と云ふことは更に再封鎖を呼び、又再封鎖をやると云ふやうな非常な惡い結果を及ぼす虞がありまして、さう云ふことでは此の難かしい時局は中々救へぬ、寧ろ封鎖されて居るものを解除して、新圓一本の經濟にすると云ふ方向で施策を講じて行かなければならぬと云ふ點に付て、各方面とも政府部内に於ては意見が一致して居ると思ふのであります、茲に改めて新圓の再封鎖の如きことは、斷じて行ふ必要もない、又行ふ意思もないと云ふことを、當局として申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=86
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087・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは新圓一本に行く時期が何時來るか、其の時期の問題を御尋ねしたい、尚ほ今の御答辯の中に漏れて居ると思ふのでありますが、其の新圓の偏在を防ぐ方策如何、之に對して御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=87
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088・江澤省三
○江澤政府委員 新圓の偏在を防ぐ、或は之を吸收する策に付きましては、是も大藏大臣から度々申上げたことを復誦するやうなことになりますが、結局政府の信任を囘復すると云ふこと、それから偏在して居る方面、例へば農漁村の必要とするやうな物資を都市に於て生産さして、之を偏在して居ると稱せられる農村方面に送つて新圓を吸收すると云ふこと、更に具體的に申上げますれば、地方の富籤、斯う云ふやうなものを用ひて、各地方々々で其の努力に依つて新圓を吸收し、其の府縣の戰災の復興に充てると云ふ方法も一案ではないかと考へられる次第であります、尚ほ極く最近の機會に新しい貯蓄制度と云ふやうなものも考へて居ります、是も近く實施の運びに至るであらうと思ひます、斯う云ふやうな方法を以て、漸次新圓を必要な方面に廻して行くやうなことを考へて居ります
それから新圓一本で行く時期は何時かと云ふ御尋ねでありますが、是も度度大藏大臣から申上げたことを又復誦するやうなことになるのでありますが、軍需補償其の他經濟界全般の整理の問題と關聯して參ることであります、財産税其の他今懸案になつて居ります大きな問題が處理せられました曉に於きましては、はつきりした時期に於て新圓一本の經濟の實現されるであらうことを期待して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=88
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089・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 非常に長い間私の質問が繼續された譯でありますが、各省に亙つての私の本日の質疑の内容は、それを一貫する所戰爭直後の混亂と、尚ほ其の混亂が現在にまでも及んで居る社會不安、而も此の社會不安が決して忽せに出來ない、一日も早く之を解消すべきであると云ふ觀點に立つた質問でありまして、只今の新圓一本にすると云ふ問題などに付ても、勿論各般の情勢を見極めてやらなければならぬことは當然であります、併しながら凡ゆる施策と相俟つて、勿論それは大藏省だけの問題ではなくて、各省に亙つた政治の振肅に依つて政府の信用を囘復し、然る後に社會不安と云ふものが解消するものと私は思ふ、是が一日も早からんことを切望するのであつて、政府當局としても、此の問題は決して忽せにしてはならない重大問題であると云ふことは、是は勿論認識されて居るでありませうが、どうも政府のやり方は日を延ばすことばかりやつて居る、勿論關係筋の方々との諒解事項と云ふことも必要でありませう、併しながら是は一日も早く打たなければならない、一日遲ければ一日遲いだけ日本の大きな損失であると云ふことを申上げまして、私の質疑を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=89
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090・坂東幸太郎
○坂東委員長 皆さんに御相談しますが、もう質疑の通告はないので、大體明日で質疑は打切りになるやうに思ひます、さうしますれば、明日は本筋の質疑を具體的にして戴いて、出來るならば明日質疑を終りたいと思ひますが、如何ですか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=90
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091・坂東幸太郎
○坂東委員長 それでは明日は午前十時から開會致します、本日は之を以て散會致します
午後三時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X00819460724&spkNum=91
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