1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
改定豫算に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月三十日(火曜日)午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 坂東幸太郎君
理事 青木孝義君
瀧清麻吉君 江部順治君
太田秋之助君 北村徳太郎君
新妻イト君 松本七郎君
松本瀧藏君 竹谷源太郎君
伊藤恭一君
同月二十七日委員吉川兼光君辭任に付其の補闕として林虎雄君を議長に於て選定した
同日委員高津正道君辭任に付其の補闕として島田晋作君を議長に於て選定した
同月三十日理事高津正道君の補闕として島田晋作君が理事に當選した
出席政府委員
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 河野一之君
大藏事務官 石原周夫君
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本日の會議に付した議案
改定豫算に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=0
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001・坂東幸太郎
○坂東委員長 是より會計法戰時特例廢止等に關する法律案委員會を開きます、本日の日程は併託されました改定豫算に關する法律案であります、直ちに全部を議題に供します、所で一寸御報告がございます、それは委員高津正道君が二十九日辭任されまして、其の補闕として島田晋作君が當選されました、それで高津君は理事でありますから、高津君の代りに理事に島田晋作君を指名するに御異議はございませぬか
「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=1
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002・坂東幸太郎
○坂東委員長 御異議なしと認めます、仍て理事に島田晋作君が當選されました、直ちに質疑に移ります──瀧清麻吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=2
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003・瀧清麻吉
○瀧清委員 私は不躾に此の改定豫算に關する法律案の内容に付て御質問申上げたいと思ふのであります、現在の情勢から見ますると、豫算を改定するの已むを得ざるものあることは是は認むるのであります、隨ひまして、之に伴ひまする改定豫算に關する法律案も亦當然な處置と存ずるのでありますが、其の内容に於て、豫備費に關し二、三納得の出來難い點に對して御尋ねを申上げたいと思ひます、私は豫算竝に會計に關する知識も乏しく、又政府の豫算案が我々にはまだ配付されて居ない關係から、唯此の本案に對する要點だけを簡單に質問して置きたいと思ひます
其の一つは、改定豫算には「豫備金の外に、豫備費として經濟安定費を設けることができる」と規定されて居りまするが、茲に言ふ經濟安定費とは全く固定しない浮動性のものと思ふが、然りとすれば本費用は豫備金と同樣の性格を持つものかどうか、此の點を御伺ひ致したい
第二點は更に「經濟安定費は、經濟安定に關する豫算の不足を補ひ又は豫算外に生じた經濟安定に關する費用に充てる」とありまするが、本費用は大藏當局の説明を承りますと、大藏省所管に五十五億と云ふ相當厖大な豫算が計上されて居ります、之を見ると決して豫算外の支出とか、或は豫算不足の爲の豫算とは受取れないのでありますが、一體此の經濟安定に關する豫算の本家本元は何れにあるのか、御尋ね致したい
第三番目には、本案から見ると、あの前觸れのやかましい經濟本部なるものは、要するに相當額の豫算を握つて經濟安定に關する計畫を樹立され、其の計畫に基いて手持ち豫算を各省に按分して仕事をさせて行かうと云ふやうな仕組みのやうに思はれるが、さう云ふ解釋をして宜しいか
第四番目には、本案は政府側としては大變都合の好い、而も豫算技術には巧妙を極めた、至極融通性に富んだ立て方であると思ふが、斯くの如きは豫算の形體をなさないものだと思ふ、全く言葉は惡いが、胡麻化し的な豫算であり、變則的な豫算であると思ふが、政府は適法と御考へになつて居るかどうか
第五番目には、是は大臣が居られれば大臣に御聽きしたいのであるが、政府は經濟安定本部の設立は、既に數箇月前より計畫されて、著々と準備を進められて居たのであるから、何故經濟安定に關する費用として、堂々と細目に亙る豫算を計上されて、本議會に協贊を求められなかつたか、此の點を私大いに疑問とするのであります、詳細に御説明を願ひたい、以上に付て御尋ね致しまして、御答辯願ひまして質問を續行したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=3
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004・野田卯一
○野田政府委員 只今の御尋ね五點ございました、順次御説明申上げます、第一點の、此の經濟安定費と云ふものは豫備金的な性質を持つて居る、現在會計法の豫備金と云ふものがあるが、それと性質を同じうするかどうかと云ふことでございましたが、御承知のやうに、現在會計法に於て認められて居ります豫備金は、第一豫備金と第二豫備金で、第一豫備金は豫算の定額を超過した場合にそれに充てる金でございます、第二豫備金は豫算外に生じた經費に充當する性質のものであります、此の改定豫算に於きまする經濟安定費は、此の第一豫備金と第二豫備金との兩方の性格を兼ね備へて居ります、斯う云ふやうに御諒解願ひたいのであります、隨て非常に融通性があつて、非常に彈力的に之を使用し得ると云ふことであります
それから第二點の五十五億圓と云ふ經濟安定費が今年度の改定豫算に盛られて居るのでありますが、此の五十五億の豫算の使用の方法に付きましては、是はまだはつきり決まつて居りませぬ、決まつて居りませぬが、併しながら大體の目途は定まつて居るのであります、具體的に經濟安定本部が出來ましてから、如何なる事業にどれだけの金を費すかと云ふことを決めることになつて居ります、併しながら、御承知の通り經濟安定本部の發足が非常に遲れて居りますので、政府の部内に於きまして、將來經濟安定本部の中心になるべき役所と大藏省とが、常時連絡を執りまして、具體的な計畫を進めて行くのであります、是は後の御質問の點にも觸れるのでありますが、此の五十五億圓の使ひ方に付きまして、本來なれば豫算を出す時にもつと詳しく書いて出すべきであつたのでありますが、御承知のやうに、此の經濟安定費を盛れ、それから斯う云ふ形で出せと云ふことは、司令部の方から指令をして參つたのであります、向ふでは「パブリック・ワーク」と云ふ言葉を使つて居りまして、日本語で我々は公共事業と呼んで居るのでありますが、「パブリック・ワーク」をやれ、其の爲に六十億位の金を使へと云ふことを向ふから言つて參つて居るのであります、初め我々の考へて居りました所では、「パブリック・ワーク」を相當やる必要があると思ひましたが、其の金額は六十億と云ふ程の巨額に上つて居りませぬので、大體三十億を少し超えると云ふ程度であつたのであります、先方はそれを六十億にせよと云ふことを言つて參りました、それと同時に、我々が三十億と云ふものを豫定して居つたのでありますが、其の三十億に付ても再檢討を加へ、もう一遍見直せと云ふことになつたのであります、所がもう既に先方がさう云ふことを言つて參りました時には、仕事が既に始まつて居るのが澤山ある、其の六十億の中で既に事業が著手されて居る、具體的に行はれて居ると云ふ分を差引きまして、五十億だけを一應一本で盛つて置いて、計畫を見直した結果、此の事業をやれ、あの事業を廢めろと云ふやうなことになりまして、それに依つて此の金を使ふ、其の相談は大體安定本部が中心になつてやる、斯う云ふことになつて參つたのであります、只今御尋ねのやうな色々な疑點が起るのでありますが、さう云ふやうな根本的な經緯に基いて居るものであります
第三點に移るのでありますが、經濟安定本部が出來ますと、此の金を經濟安定本部が握つて、それで色々な施策をするかと云ふ問題であります、是は私は必ずしもさう考へない方が宜いと思ふのでありまして、經濟安定本部は日本の目下の經濟安定に關する色々な施策を行ふ所であります、具體的な實施官廳ではありませぬので、寧ろ色々な計畫をして、日本の經濟を如何にして安定させるかと云ふことを圖つて行くのであります、其の計畫、或は其の企畫に基きまして、實際的事務を運行するのは、是は各省が實施すると云ふ風になつて居るのであります、それで經濟安定に關する經費を全部經濟安定本部が持つと云ふことになりますと、御承知の五百六十億の經費の中には廣い意味に於きまして經濟安定に關する費用が殆んど大部分を占めると云つても宜いかと思ひますが、さう云ふ意味に於て此の經濟安定費と云ふものを盛つて居る譯ではございませぬで、先程申しました司令部の令に基きます「パブリック・ワーク」、其の關係の費用を茲に經濟安定費として盛つて居る譯であります、此の金の使ひ方に付ては、特に經濟安定本部がどう云ふ仕事をしたら宜いかと云ふことを政府部内の意見を聽いて決めて、其の決めた所に依つて大藏省が金を各省に割振つて使はせる、金を具體的に使ふのは各省であります、各省は又具體的に割振るのは大藏省で、其の本の計畫を決めるのが安定本部と云ふことになつて居ります、此の五十五億の使ひ方に付ては以上申上げたやうでありますが、現實にやる仕事は非常に廣いのでありまして、此の五十五億圓の割振りだけが經濟安定本部の仕事ではないのでありまして、經濟安定本部は其の外に非常に澤山の仕事を是からすることになるだらうと思ひますが、其の一部として今のやうな公共事業と申しますか、經濟安定費の割振りの仕事もやると云ふ風に御諒解を願つた方が宜いと思ふのであります
それから第四點でありますが、此の經濟安定費の立て方は非常に不公明なやり方である、是では豫算の體をなさぬぢやないかと云ふやうな御質問でありましたが、是は只今申しましたやうな經緯から起つて來て居るのでありまして、實際なれば斯う云ふやり方は變態であつて、豫算當局として執るべきでないと私は考へて居ります、豫算を出す以上は各計畫の内容を能く吟味致しまして、さうして細目に亙つて、是は斯う云ふ計畫である、例へば色々な土木事業其の他の事業を致しますなれば、此處の川を斯う云ふ風にやるんだ、此の道を斯うするんだ、此の森林を斯う云ふ手入れをする、此の戰災地を斯う復舊するんだと云ふやうに、内容を示して議會の御協贊を願ふのが筋途であると思ふのであります、我々としても當然さう云ふものだと思ふ、それを又欲して居るのでありますが、如何んせん今申しましたやうな事情で、經濟安定本部が出來てから、それがどの事業をやるかと云ふことを決める段取りになつて居りますので、斯う云ふ形を執らざるを得なかつたと云ふ實情でございます、是は今囘の豫算に限つたことでありまして、將來は成べく方向としては、議會に御相談する以上は、豫算の内容をもう少し明確にして、色々な角度から御批判を願つて、それでやると云ふことに致したいと思つて居ります、決して議會の協贊を囘避するとかなんとか云ふやうな意味合で、斯う云ふ經濟安定費を盛ると云ふ意圖は持つて居りませぬ、此の事情を能く御諒承願ひたいと思ふのであります
第五點でありますが、經濟安定費の内客に付ては、色々と詳しい計畫が既に出來上つて居るんぢやないか、さうすれば其の細目を示してはどうかと云ふやうな御趣旨であつたのでありますが、經濟安定に關しましては、是は大藏大臣が色々と御答辯なさつて居ります、政府に於てもう既に經濟安定に關して具體的に立てて居る部分もあり、又目下研究中で、各省間、政府部内に於きまして目下審議して居る點も相當にございます、ことを狹く考へまして、此の經濟安定費の五十五億と云ふものだけに付きましても、是は先程申しましたやうに、一應豫算の中には三十數億の金が盛られて居つた、其の中で既に實行に著手した五億圓程度のものを差引きましたあとの二十數億圓と、更に附加された三十億圓と云ふものが加はつて五十五億圓になつて居るのであります、之に付きましても、大體の目途が決まつて居ります、それに經濟安定本部も出來ますので、内閣と大藏省の間に於て略々内容も決まつて居ります、大體の狙ひは其の金の半分程度は食糧關係に行くのではないか、又其の四分の一位は治山、治水の方面に行くのではないか、後の四分の一が戰災地の色色な跡片付、或は燃料の關係、或は輸送、或は公共の建築物、さう云ふ方面に大體向けられるのではないかと云ふことになつて居ります、細目に付きましてはまだ色々な點から打合せ中でございまして、はつきり申上げる段階に達して居ないと云ふ状況でございます、此の點御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=4
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005・瀧清麻吉
○瀧清委員 大體了承致しましたが、經濟安定本部に關する只今の御答辯に依ると、安定本部が漸く其の緒に就いた、併し長官も決定したばかりであり、それのみならず、司令部の指示もあつたから細目に亙る豫算は計上出來なかつたと云ふ御答へでありましたが、此のことは本會議其の他の委員會でも、大臣諸公が口を揃へて御答辯になつて居ることと同一であります、併し苟くも綏濟安定本部と云ふものが内閣の下、總理大臣統率下に發足する以上は、其の活動方針、或は之に伴ふ豫算竝に運營の見透しが付く筈であります、又特に現在の社會はそんな將來のことを考へて居る餘裕がない、即刻總ての計畫を樹てて、實施に移すべき時であることは申すまでもないのであります、故に現内閣は之に對する總ての計畫が樹つ筈であります、萬一豫測ぜざる豫算が伴つた場合には、所謂會計法第九條に依る豫備金の便法がある譯であります、本件に對する政府の處置は餘りにも不用意の感があるやうに思はれる、決して妥當でないと私は考へるのであります、殊に此の厖大豫算を豫備費として取扱はれると云ふことは、只今御話のやうに、政府としては融通自在であり、便利でありませうが、此の反面豫算經理には大變危險を伴ふものであると思ふのであります、例は惡いか知りませぬが、戰爭中に軍事豫算が皆斯う云ふ、筆法で行はれた、其の結果、何れに使はれたかどうも分らぬと云ふやうな經理の仕方が多かつたのであります、併し時代は變つて居りますから、現政府には決して左樣なことはないと私は確信するのでありますが、此の邊の所信をもう一度御伺ひ致しまして、一應私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=5
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006・野田卯一
○野田政府委員 御答へ致します、只今御指摘になりました點は私全く同感でございます、豫算と云ふものは、大體に於て一款一項の金額が大きくなりますと、從つてそれを取扱ふ人の氣持が大きくなりまして、其の金の使用部面に於て金使ひが荒くなると云ふ缺點があるのであります、それで此の五十五億圓と云ふやうなことになりますと、何となしに氣が大きくなると云ふ傾向になりますので、之に對しては、我々も能く注意致したいと思ふのであります、幸ひに此の豫算を割振る役目は大藏省の所管で、大體の枠は安定本部が決めるのでありますが、大藏省に任されて居るので、今までの色々の經驗もございますし實際に使ふ時には能く内容を吟味して、一厘と雖も濫費しないやう、無駄使ひのないやうにしたいと思つて居ります、尚ほ我々の氣持を申上げますと、例の終戰處理費と云ふ項目がございますが、是が本年の會計年度には百九十億圓あります、此の終戰處理費は金額も大きいし、又進駐軍關係でありますので、之を放任して置くと「ルーズ」になりまして濫費される、或はそれが爲に經濟社會に色々面白からぬ影響を及ぼすと云ふことが憂へられるのであります、隨て其の金の使ひ方に付ても、我々は種々の手段を講じて、無駄使ひのないやうに十分注意を致したいと思ひます、尚ほ今囘憲法が改正されまして、それに基きまして色々會計制度、或は豫算制度、或は豫算の實行の上に於きましても、制度が色々と今までの取扱ひ其の他の點で改められるのであります、其の他に付きましても、豫算の實行──單に豫算の編成のみならず、豫算其のものが適切に實行されるかどうかと云ふ點に付ては、十分監査致しまして、勿論之に付ましては國會、議會の御力が中心になると思ひますが、さう云ふ制度も十分確立致しまして、豫算の主な金が一厘も無駄に、不用意に使はれないやうに注意致して行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=6
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007・坂東幸太郎
○坂東委員長 一寸伺ひますが、只今野田政府委員の御答辯に依ると、今の「パブリック・ワーク」の豫算の使途は、食糧關係竝に治山、治水、戰災復興等に使ふと云ふことでありますが、社會事業とか、失業救濟の方には此の「パブリック・ワーク」の金は使はないことになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=7
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008・野田卯一
○野田政府委員 失業救濟事業の問題でありますが、此の「パブリック・ワーク」即ち公共事業費に使ふ狙ひは、第一には現在日本が非常に困つて居る食糧、それから衣料、或は住宅などと云ふ國民生活に絶對必要なものの供給を増加する、又其の配給を適切にする、それが第一の目標であります、それに伴ひまして、出來るだけ多數の人間に就業の機會を與へると云ふことが第二の狙ひであります、隨ひまして五十五億圓に上る金を使ふ場合に於きましては、一面に於ては絶對不可缺の品物の増産方面に使ふ、他面に於ては出來るだけ多くの者に就業の機會を與へることを狙つて居るのであります、隨て生産的失業對策と云ふことが言ひ得ると思ふのであります、尚ほ御承知と思ひますが、社會救濟の金は豫算が三十億盛られて居ります、此の三十億の豫算の中で、若しこちらの五十五億圓が足りなくなり、生産的失業對策と申しますか、其の方面の金が足りない場合に於きましては、社會救濟、是は消極的救濟になる譯でありまして、こちらの費用を此の部面に廻はして使ふと云ふことが考へられて居るのであります、若しどうしてもこちらが足りない場合には、向ふの金を廻はすと云ふことを考へて居るのであります、それで我々の氣持は何處までも失業對策は、遊んで居る人を食はして行く、遊んで居る人を徒食させると云ふことが趣意でないので、大いに生産を起して、世の中の役に立つものを澤山造つて行くことが目標でありましてそれで救濟されないものを社會制度で救つて行くと云ふことになつて、經費的には其の間に相互に振替へられる性質のものであると云ふことを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=8
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009・坂東幸太郎
○坂東委員長 さうすると積極的建設就職等の事業に之を使ふ、それが足りない場合には別にある三十億圓の中から使ふ、是は共通なものですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=9
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010・野田卯一
○野田政府委員 社會救濟に盛られる三十億の金をこちらの方に廻して使へる、さう云ふ考へで豫算を編成して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=10
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011・坂東幸太郎
○坂東委員長 尚ほ一點御伺ひ致しますが、經濟安定本部は必ずしも各省に向つて君臨しないと云ふことを、石橋大藏大臣が此の間答辯されて居るが、只今主計局長の御話に依ると、經濟安定本部で決めても金のやり振りは大藏省がする、其の點に於て多少大藏省側の掣肘を受けると云ふことであるが、さう解釋して宜い譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=11
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012・野田卯一
○野田政府委員 只今の御話は、經濟安定本部のやることを、大藏省が金をやり振る場合に掣肘すると云ふ趣旨で申上げたのてはありませぬ、經濟安定本部に於ては計畫を聽取致しまして、此の開墾事業に幾ら使ふ、此の河川の改修に幾ら使ふと云ふことを決める譯でありますが、其の決めた中に於きまして、豫算の細目は非常に詳しくなつて居りますので、其の目的を能く考へまして、適切に金が使はれるやうに、中の内譯的なものを色々と決めて行くと云ふ役目が大藏省にある、隨ひまして、大藏省がそれをやる場合には、飽くまで經濟安定本部が狙つて居る「ライン」を十分に達成させると云ふことが必要だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=12
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013・坂東幸太郎
○坂東委員長 もう一點伺ひます、さう致しますと經濟安定本部が決める場合には、大藏大臣なり、大藏當局は、或る意味に於て、或る機會とか或る方法に依つて經濟安定本部の協議或は研究、調査には參加すると云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=13
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014・野田卯一
○野田政府委員 經濟安定本部の方で色々な案を立てられます場合には、大藏省としては非常に協力致して居るのでありまして、それが出來上る過程に於ては、殆ど兩者合作すると云ふことに事實上は相成ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=14
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015・坂東幸太郎
○坂東委員長 どうぞ各位は御自由に一つ發言の要求をして下さい──松本瀧藏君如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=15
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016・松本瀧藏
○松本(瀧)委員 別に質問の用意はして來て居りませぬが、本會議に於きまして屡屡各位に依つて質問されたのでありますが、例の經濟安定本部の問題であります、是がもう少しはつきり致しますと、只今の論議ももつと能く私共に納得出來るのでありますが、思ひますのに此の經濟安定本部の目的となつて居ることは、先程も色々御話がございましたが、大分進駐軍の方の意向があると云ふことを承つて居るのであります、米國に於ける所の經濟安定本部が、歸納致しまして確かに非常な成功を收めたと云ふことは、私共色々な文獻に依つて知り得た所でありますが、其の理由は確かに三つあると考へさせられるのであります、其の一つは大統領の閣議に對する所の權限が非常に強いものがあること、それから第二は機構の問題であり、第三は人選の問題であります、私咄嗟でありますが、若し出來ましたならば政府側から説明して戴きたいと思ひますことは、屡屡問題になります所の經濟安定本部の機構であります、是がまだどうも漠然として、はつきり把握出來ないのでありますが、此の一點簡單で宜しうございますから、もう少し我々が納得出來るやうな御説明がありましたならば結構であると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=16
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017・野田卯一
○野田政府委員 經濟安定本部が出來ました場合に、どう云ふ機構になるかと云ふことに付きましては、私只今一寸御話申上げ兼ねるのであります、勿論主計當局と致しまして、經濟安定本部が出來ます場合には豫算が伴ふ譯でありますから、是がどう云ふ機構になるかと云ふことは當然我々は知つて居る譯であります、知つて居りまして、それぞれ相談の上適當だと思ふ規模に作られる譯でありますが、それが其の通り行きますか、或は最近の色々な空氣に依つて、我々が作つた案に變改が加へられるか、今の所一寸分り兼ねます、何せ相當の部を作りまして、譬へて見れば工業とか色々な、基礎産業を受持つ部面、或は食糧の方を受持つ面、或は勞務、或は綜合調整を受持つ部面とか、さう云ふことが普通の常識として考へられる譯でありますが、是がどう云ふ風に決められるか、今度膳さんがおいでになられてどう云ふ風にやられるか、或は物價廳との關係でどうなるか、斯う云ふ點は早急に具體的に決められることになるであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=17
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018・松本瀧藏
○松本(瀧)委員 さうしますと、機構の問題もまだ具體的に把握出來ないやうな状態でありますので、勿論人選の問題もどう云ふ方針でやられるかと云ふこともはつきりしない譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=18
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019・野田卯一
○野田政府委員 是も一寸私が此の席で申上げ兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=19
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020・松本瀧藏
○松本(瀧)委員 最後に希望と致しまして、從來國民は經濟安定本部の問題に關しまして深い關心を持つて居るのでありまして、更に大きな經濟問題が討議される度毎に、經濟安定本部が出來てからと云ふ答辯が大臣各位から言はれて居るのでありますが、出來ますれば一日も早く其の詳細をはつきりして戴くやうに政府委員から御傳へして戴きたいと云ふことを御願ひ申上げまして、私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=20
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021・坂東幸太郎
○坂東委員長 竹谷君如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=21
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022・竹谷源太郎
○竹谷委員 只今野田政府委員の御話を承ると、大體經濟安定本部で、實施し得べき具體的な數字まで入つた計畫案を作るやうに伺へたのでありますが、左樣になるものでありますか、それとも大綱を經濟安定本部が作つて、それに基いて各省が自分の主管事項に付て實施計畫を樹つて、現實に之を實行するのであるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=22
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023・野田卯一
○野田政府委員 只今の御質問の内容は、此の五十五億圓の經濟安定費の問題と、經濟安定本部自體が是からやつて行きます綜合調整、或は企畫の問題と二つに分けられると思ひますが、經濟安定費の五十五億圓の内容に付きましては、只今の所では可なり具體的に決まりました、勿論之をどうやるとか、あれをどうするかと云ふ、餘り詳しい所まで決めることが宜いかどうか分りませぬが、大體譬へて見れば、食糧關係であれば北海道の開拓をどうするとか、或は内地の開拓をどうするとか、治山治水の關係に付ては森林の關係をどうするとか、或は河川の關係をどうするとか、相當詳しく項目的に決まつて參りまして、それに關する經費も大體どの位になると云ふことが見積られることになると思ひます、それに依りまして、更に細部は大藏省とそれを實行致します各省との間に於て處置すると云ふことになると思ひます、それから經濟安定本部が一般的に色々な國家の重要施策、經濟施策に付て是から中心になつてやつて行かれるのでありますが、其の際にどの程度まで安定本部が細かいことまで出來るかと云ふ問題に付きましては、私は事柄の性質に依つて非常に違ふと思ひますが、今まで戰爭中にも色々安定本部のやうな一種の中心的な機關がありました、綜合調整企畫の機關として前には企畫院があり、其の後も色々變遷して居りますが、さう云ふものの動きを見て居りますと、大體に於て綜合調整をし、又國家の企畫をする役所は、余りに細部に入りますと失敗をすると云ふやうな感じが致すのであります、やはり大綱を統べて、さうして大體の方向をはつきり決めて置く、内外の經濟情勢を深く靜觀致しまして、事の緩急を辨へ、重點と云ふものをはつきり認識して、さうして各省がやる仕事を「リード」して行く、斯う云ふ所に重點が注がれると割合に成績が擧ると思ひますが、是が具體的に一つ一つのものに付て、例へば物動計畫で、一つの物の配分にまでも頭を突込んで行きますと、結局本來の使命が失はれると云ふやうなことが前にもあつたやうに思ふのでありまして、此の點は今後どう云ふ風に運營されるか知りませぬけれども、我々行政の面から致しまして、餘りに安定本部が具體的な實行の細部に觸れ出すと、却て動きにくくなつて、本來の設立の趣旨の達成が困難になる場合が相常起るのではないかと云ふやうに考へるのであります、機構に致しましても、運營に致しましても、二十萬の人員を擁する所の──もつと大きく言ひますれば、百數十萬の人員を擁する各省があるのでありますから、其の百數十萬の人員を擁する各省を如何に活かして行くかと云ふことが私は經濟安定本部の頭腦的な仕事だと思ひますので、只今のやうな考へ方から致しまして申上げた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=23
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024・竹谷源太郎
○竹谷委員 さうしますと、經濟安定本部が經濟安定に關する基本的な、綜合的な計畫を樹てる、其の計畫の上に各省が、既にそれぞれ持つて居る豫算なり、事業なりを以て具體的施策を練る、それから五十五億の改定豫算に盛られる經濟安定費の内容に付ては、其の經濟安定本部の作るべき經濟安定に關する計畫の下に、經濟安定本部が相當具體的に突込んで其の實施を各省に命令する、斯う云ふ形式になる譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=24
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025・野田卯一
○野田政府委員 大體の方向はさうであると思ひますが、此の五十五億に付きましては、經濟安定本部は大體の計畫を樹ててさうして其の金額を盛りまして──それは大藏省に事前にも連絡して居るのでありますが、それが決まりますと、今度は大藏省は大藏省で豫算を持つて居りますから、其の豫算から各省に具體的の内容を決めて出してやると云ふことになつて、各省がそれに依つて仕事をすると云ふ段取になるのであります、それから一般的の問題と致しましては、是から安定本部に於きまして、色々な經濟の重要施策の立案があると思ひますが、それに基いて今後各省が行つて行くと云ふことになるのが當然だらうと思ひます、それに從つて現在の豫算との關係でありますが、現在豫算で既に認められて居るもので、經濟安定本部の設立に依つて、それが要らなくなると云ふ部面は割合に少いのではないかと云ふ感じが致します、寧ろ大體の傾向と致しましては、是から色々の施策を立てますと、それに基きまして、それぞれに付て豫算的措置が要るので、金を殖やす、後から追加するやうになるものが相當出て來る可能性の方が多いのではないか、既に改定豫算に盛られて居ります豫算が不用になることは殆ど少くて、是から豫算が繼ぎ足されて行く、是は豫算に盛られて居ないから、或はそれでは足らないから殖やすと云ふやうな方向に、寧ろ向つて行くのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=25
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026・坂東幸太郎
○坂東委員長 一寸伺ひます、經濟安定本部の組織は、是は大きな問題であなたに問ふことは、適當でないかも知れませぬが、從來の企畫院の仕方などは、軍閥が軍國主義を行ふ爲に便宜を圖つた一種の軍閥の機關であつたのでありまして、其の非難が非常に多かつたのであります、今度出來ます經濟安定本部は、膳氏は民間人でありますから、民間の輿論、意見と云ふものを十分尊重するやうに出來ることとは思ひますが、若しも官界から「エキスパート」を採つてやりますと、又軍國主義的になるのではないか──やはり官僚主義に墮する弊害が起るのではないかと思ひます、隨て内部の組織に於ても、議員からも採り、民間からも採つて、さうして實際と理論とが合ふやうな組立にしなければ、效果が擧げられないのではないかと思ふが、野田さんの御考へは如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=26
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027・野田卯一
○野田政府委員 只今の御話は御尤もだと思ひます、役人ばかりでやりますと、どうしても見方が偏りますし、經驗も狹いし、限られて居ると云ふこともございますので、國家の重大なる經濟國策の根幹になる諸問題を決定する安定本部でありますから、廣く知識を集め、人材を登用してやつて行くことが絶對に必要ではないか、さう云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=27
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028・坂東幸太郎
○坂東委員長 如何ですか、御質疑等がございましたら、自由に御發言を願ひます、──それでは皆さんと御相談致しますが、今日は午後に本會議がありまして、午後開會することも一寸困難ではないかと思ひますので、此の程度で散會致したいと思ひますが、如何ですか
〔「散會」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=28
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029・坂東幸太郎
○坂東委員長 それでは本日は是で散會致します、次會の日程は公報で御知らせ致しますが、十分一つ御質疑をなさるやうに御用意を御願ひ致します
午前十一時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010243X01119460730&spkNum=29
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