1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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本委員は昭和二十一年七月二日(火曜日)議長の指名で次の通り選定された
青木孝義君 小野眞次君
片岡伊三郎君 鈴木仙八君
竹田儀一君 寺尾豊君
苫米地英俊君 村上勇君
細田忠治郎君 金光義邦君
白井秀吉君 白木一平君
津島文治君 佃良一君
武藤常介君 上田清次郎君
海野三朗君 金子益太郎君
川島金次君 河野密君
林虎雄君 東隆君
二階堂進君 喜多楢治郎君
原藤右門君 伊藤幸太郎君
池村平太郎君
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同月三日(水曜日)午前十時二十九分委員長理事互選の爲め次の委員が參集した
小野眞次君 片岡伊三郎君
鈴木仙八君 竹田儀一君
寺尾豊君 苫米地英俊君
細田忠治郎君 白木一平君
武藤常介君 金子益太郎君
川島金次君 林虎雄君
東隆君 二階堂進君
喜多楢治郎君 原藤右門君
伊藤幸太郎君
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〔年長者細田忠治郎君投票管理者となる〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=0
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001・細田忠治郎
○細田投票管理者 それでは先例に依りまして、私が年長の故を以て投票管理者となります、是から委員長及び理事の互選を行ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=1
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002・小野眞次
○小野(眞)委員 委員長の互選は、投票を用ひず、竹田儀一君を委員長に推薦致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=2
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003・細田忠治郎
○細田投票管理者 小野君の御意見に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=3
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004・細田忠治郎
○細田投票管理者 異議なしと認めまして、それでは竹田儀一君が委員長に御當選になりました、竹田儀一君に本席を御讓り致します
〔竹田儀一君委員長席に著く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=4
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005・竹田儀一
○竹田委員長 只今御推薦に依りまして不肖私が委員長の職を汚すことに相成りました、洵に不敏ではありますが、諸君の御援助と御指導に依つて大過なく其の職務を盡したいと思ひます、どうぞ宜しく御願ひ致します、引續き理事の互選を致したいと思ひます、如何致しますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=5
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006・小野眞次
○小野(眞)委員 理事は其の數を四名としまして、委員長に於て御指名あらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=6
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007・竹田儀一
○竹田委員長 小野君の御意見に御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=7
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008・竹田儀一
○竹田委員長 御異議なきものと認めます、それでは指名致します
鈴木仙八君 細田忠治郎君
白木一平君 河野密君
に理事を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=8
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009・会議録情報2
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昭和二十一年七月三日(水曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 鈴木仙八君 理事 細田忠治郎君
理事 白木一平君
小野眞次君 片岡伊三郎君
寺尾豊君 苫米地英俊君
武藤常介君 金子益太郎君
川島金次君 林虎雄君
東隆君 二階堂進君
喜多楢治郎君 原藤右門君
伊藤幸太郎君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 江澤省三君
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本日の會議に付した議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=9
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010・竹田儀一
○竹田委員長 引續いて會議を行ひます、茲で一寸申上げて置きたいと思ひますが、質問の順序は、大體御申込の順に從つて之を行ひたいと思ひます、尚ほ本年度の改訂豫算が出ますと、豫算委員會等で相當大藏省政府委員の方が御忙しいと思ひます、又諸君の中にも豫算委員と御兼任の方があるやにも聞いて居ります、豫算案の出ます前に、暑い時分で御苦勞ではございますが、成べく時間を嚴守致しまして、又質問も成べく重複しないやうに致しまして、御答辯も簡潔に願ひ、進行致す方が議事進行上宜しいかと考へますので、御協力を御願ひ致したいと思ひます、では提案理由の御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=10
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011・上塚司
○上塚政府委員 石橋大藏大臣は只今樞密院に出席致して居りますので、代りまして只今議題になりました金融緊急措置令外十一緊急勅令事後承諾案に付て其の提案の理由を説明致します
初めに金融緊急措置令、日本銀行券預入令及び日本銀行券預入令の特例の件に付きまして御説明申します、昨年の終戰後、我が國の紙幣發行高は急激に膨脹致しまして、其の儘に放置するならば、所謂惡性「インフレーション」に突入する危險が憂へられましたのであります、即ち日本銀行券は、終戰當日は三百二億餘萬圓でありましたのが、昨年末には五百五十四億餘萬圓、金融緊急措置令公布當日は六百十四億餘萬圓を示して居るのであります、而して同時に物價の著しき昂騰を現はしました、斯かる終戰後の通貨の急膨脹は、終戰直後に於ては政府資金の急激なる放出に依つたのでありまするが、其の後左樣な放出が止まりました後に於ても、戰時中銀行預金等の形を以て累積致しましたる莫大なる購買力が引出されて使用致され、且又是が紙幣の形を以て相當退藏致されたと認められるのであります、是に於きましてか、當時政府は、一面に於て緊急食糧對策を中心とする民生安定の爲の一連の緊急諸政策を實施すると共に、金融面に於きましては、既存の過剩購買力の主要源泉である過剩現金及び預金等を一時封鎖致しまして、新たな基盤の上に資金使用の適正な調整を行ふことが喫緊の要事と考へまして、憲法第八條第二項の規定に基いて、金融緊急措置令、日本銀行券預入令及び日本銀行券預入令の特例の件の三緊急勅令を制定實施致した次第であります
次に臨時財産調査令に付きまして説明申上げます、終戰後政府は、戰時利得の排除、富の再分配、國民經濟の安定、戰後財政の確立等、財政經濟の再建に資する爲め、財産税等の新税を創設することと致しまして、其の準備を進めて參つたのであります、而して是等の法律案は、聯合國最高司令部の承諾を得た上、本年の最初に開會せられる帝國議會に提案することになつて居たのであります、然るに議會の開會が豫定よりも相當遲れるの已むなき事情に立至りました爲に、其の間財産税等の課税氣構へに依る民間に於ける預金の引出や換物等の傾向が相當旺盛に見受けられましたのと、他面生産活動の意欲は兎角停滯し勝ちの状態を現はしまして、是が所謂「インフレーション」の亢進を刺戟するの弊の存したことは見逃すことが出來なかつたのであります、隨て財産税等の新税の調査時點を速かに確定して民心の安定を圖るの必要が認められましたので、政府は日本銀行券の引換及び預金の封鎖等金融緊急措置の實行に即應し、食糧、通貨、金融等の綜合經濟緊急對策の一環として、財産税等の調査時點を確定すると共に、直ちに調査して置くのでなければ後日財産状態の確認が殆ど不可能となるやうな財産關係の移動の頻繁な財産等を一先づ調査確認して置き、新税の創設及び確保に資することとし、是が爲め憲法第八條第一項の規定に依りまして本勅令の制定を見るに至つた次第であります、本勅令に於きましては、先づ調査時期を本年三月三日午前零時と定めることと致したのであります、此の日は日本銀行券の舊圓が強制通用力を失つた日の翌日に當る譯であります、財産税は此の調査時期に於て有する個人及び法人の財産を對象と致しまして課税することを豫定したものであることは勿論であります、次に本勅令は調査すべき事項を定めて居ります、其の一は、預金、貯金又は有價證券等を預貯金者又は所有者より申告させ、生命保險、信託又は無盡等の契約關係を契約者等より申告致させ、又特別の場合に於きましては、日本銀行券の舊圓の所持高を其の所有者より申告させることに致したのでありまして、以上は個人及び法人に通じて申告せしめることに致したのであります、其の二は、一般の法人に、調査時期を現在として打切り決算を行はせ、財産目録其の他の書類を作成して政府に提出させることに致したのであります、其の三は、物品販賣業、製造業等特定の事業を行ふ個人に、調査時期現在で有する特定の動産等を申告せしむることと致したのであります、次に本勅令は申告に關する特別の手續を定めて居るのであります、即ち預貯金、有價證券、各種契約等に關する申告の場合に於きましては、郵便局、銀行其の他の金融機關で申告を受理させ、申告者は申告書と共に預金通帳、預金證書、國債證券、株券、其の他申告書に記載されて居る有價證券、其の他財産又は契約を證する書類を金融機關に持參することに致したのであります、金融機關に於きましては、申告書と通帳、證券等を對照し、申告書の記載事項が正當であることを確認した時は、大藏省で發行した申告濟證紙を通帳、證券等に貼付け、之に金融機關等の印章で契印して返還することに致したのであります、又預金者其の他の財産權者の住所、氏名等の正確なることを期する爲め、申告に際しましては米穀通帳等を持參せしめることに致したのであります、若し其の申告が行はれない場合に於きましては、預貯金の拂戻、公社債の償還、株式の配當等を停止し、追つて別な法律を制定し、其の定めたる所に依り、是等申告漏れの財産其の他財産上の權利を國庫に歸屬せしめることとし、申告が的確に正當に行はれることを期したのであります、此の外調査の萬全を期し、且つ不正を防止する爲め、法人の打切り決算に關する提出書類、又は個人の動産等に關する申告の内容に付て、其の當否を確認する爲め、必要がある時は、税務署長又は其の代理官に質問及び檢査の權能を與へ、又各種の違反行爲に付きましては相當嚴重な罰則を設けて居るのであります
次に昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)に付きまして説明申上げます、去る三月三日政府は終戰後に於ける事態に對處して物價の安定を確保し、社會經濟秩序の維持と國民生活の安定とを圖る目的を以て物價統制令を實施したのであります、之に依りまして、此の際新しい價格體系を設定し、賃金、給與及び各種物資の價格に亙り廣く改訂を行ふことになつたのでありますが、當時施行されて居た租税制度中、特に基礎控除、免税點及び一部の税率等は從前の價格及び賃金等を基礎として定められて居りましたので、之を其の儘に放置するならば、新物價體系の設定を見る曉に於きましては、課税は重きに失し、國民負擔は適正を缺くのみでなく、新物價體系の確立、食糧、通貨、金融等の諸政策の遂行に亦支障を來すものと認められたのであります、而も其の決定は急を要し、議會の開會を待つことが出來ない事情にありましたので、所得税、營業税、遊興飮食税、入場税、特別入場税及び特別行爲税に付きまして、基礎控除額、免税點及び扶養家族控除額を引上げ、又著しく高率に失する税率の引下を行ひまして、負擔の適正及び國民生活の安定に資することとし、憲法第八條第一項の規定に依りまして、本勅令の制定を見るに至つたのであります、先づ所得税に付きましては、其の基礎控除額及び免税點を二倍乃至四倍程度に引上げ、例へば、甲種の勤勞所得に對する基礎控除額六百圓を二千四百圓に、甲種及び乙種の事業所得に對する基礎控除額四百圓を千二百圓に引上げたのであります、又扶養家族控除額年額二十四圓を七十二圓に引上げると共に、綜合所得税の課税最低限三千圓を一萬圓に引上げたのであります、次に營業税に付きましては、個人に於ける免税點四百圓を千二百圓に引上げたのであります、次に遊興飮食税に付きましては、課税最低限を四倍乃至六倍程度引上げると共に、税率を相當程度引下げたのであります、次に入場税及び特別入場税に付きましては、税率區分の金額を三倍程度に引上げると共に、税率を相當程度低くしたのであります、又特別行爲税に付きましては、免税點を六倍程度引上げたのであります、以上の改正に依りまして、當時の状況の下に於きましては、昭和二十一年度に於て、所得税五千七百餘萬圓、營業税七百餘萬圓、遊興飮食税七千四百餘萬圓、入場税及び特別入場税七千五百餘萬圓、特別行爲税四百餘萬圓の國庫收入の減少となる見込でありました
次に通信事業特別會計及び帝國鐵道會計に於ける借入金等に關する昭和二十一年勅令第百十一號及び同勅令第百八十號に付て説明申上げます、右の兩特別會計の昭和二十年度に於ける事業經營用品費の増加、從業員に對する諸給與の増加等に基く追加經費の支辨財源に付きましては、兩特別會計の歳入が、戰時中及び終戰後に於ける各種の事情の爲め著しく減少致して居る實情に顧み、之を借入金に求めるより外に途がなかつたのであります、隨ひまして、政府は已むを得ず昭和二十一年勅令第百十一號の御制定を仰ぎ、通信事業特別會計業務勘定に於て一億八千九百四十萬圓、帝國鐵道會計收益勘定に於て七億四千五百萬圓を限度とする借入金をなし得る權限を得た次第であります、然る所其の後新物價體系の實施等に伴ひまして、政府職員の給與に付ても暫定的措置として、新たに臨時手當等支給の措置を講ずることと相成りました關係上、兩會計に於きましても其の所屬職員に對し是等の諸給與を支給します等の爲め、新たに通信事業特別會計に於て一億千七百餘萬圓、帝國鐵道會計に於て二億六千二百餘萬圓の追加經費を必要とするに至つたのであります、尚ほ右の外、帝國鐵道會計に於きましては、金融緊急措置令の施行、定期乘車券の料金引上計畫の改訂等に依りまして、運輸收入が減少するに至りましたのと、諸物價の値上り及び戰災に依る損害等に基きまして、用品資金所屬の用品が著しく減少致しました等の關係上、用品資金を資本勘定から補足してやる必要が生じて參つたのであります、而して是等の諸經費は兩會計の歳入の状況から致しまして、其の財源を借入金或は公債金に求めるより外に途がありませぬので、更に又昭和二十一年勅令第百八十號の御制定を仰ぎまして、通信事業特別會計業務勘定に於て九千八百十萬圓、帝國鐵道會計收益勘定に於て四億五千萬圓を限り借入金をなし得る權能を得ると共に、帝國鐵道會計資本勘定に於て一億七千六百萬圓を限度として公債を發行し又は借入金をなし得る權能を得たのであります、以上申述べました諸經費は、何れも公共の安全を保持する爲の緊急の需用に基くものでありまして、總選擧後に召集せられる帝國議會の開會を待つことが出來ませぬので、政府は豫備金外支出を餘儀なくせられたのであつて、隨ひまして其の財源調達に關しましても、憲法第八條及び第七十條の規定に基き、兩勅令が制定公布せられた次第であります
次に昭和二十年度及び同二十一年度の一般會計に於ける緊急缺くべからざる經費の支出に關する昭和二十一年勅令第百二十七號、同勅令第百五十九號、同勅令第百七十九號及び同勅令第二百四十二號に付て申上げます、昭和二十年度及び同二十一年度の一般會計に於きましては、終戰後の事態に即應する等の爲め、緊急なる各種の經費の支出を必要と致したのでありまするが、衆議院が解散されて居り、且つ第二豫備金等も拂切りの状況にありました關係上、政府は已むを得ず右の諸勅令の御制定を仰ぎまして、之に基き右の緊急經費の支出を致したのであります、而して是等の勅令に依り、支出の權能を得ました經費は、昭和二十一年度分としては、(イ)昭和二十一年勅令第百二十七號に依るものとしては、一、航空機工場等の管理及び保全に關する經費 二、引揚民對策に關する經費 三、船舶運營會の昭和十九年度に於ける損失を補填するに要する經費 四、復員に關する經費の四件で、其の金額合計十二億二百九十八萬圓、(ロ)昭和二十一年勅令第百五十九號に依るものとしては、一、行政整理に伴ふ退官退職給與に要する經費 二、外地勤務職員の給與に要する經費 三、地方職員の給與改善に伴ひ地方公共團體に對し補助するに要する經費 四、風水害緊急復舊に關する經費 五、聯合國軍より返還を受けたる元陸海軍所屬資材等の處理に要する經費 六、緊急開拓事業施行に要する經費 七、土地改良事業施行に關する經費 八、戰爭再保險金支拂の爲にする漁船保險特別會計繰入金 九、生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金 十、船舶運營會の昭和二十年度に於ける事業費に對し補助するに要する經費の十件で、其の金額合計二十六億六千四十四萬圓、次に(ハ)昭和二十一年勅令第百七十九號に依るものとしては、一、政府職員の給與改善に伴ひ要する經費 二、地方職員の給與改善に伴ひ地方公共團體に對し補助するに要する經費 三、地方職員の整理に伴ふ退職給與に要する經費に付き、地方公共團體に對し補するに要する經費 四、地方公共團體の疎開事業費に對し補助するに要する經費 五、日本發送電株式會社の經費に對し補助するに要する經費の五件で、其の金額合計五億千二百四十一萬七千圓で、通計しまして十九件、其の金額は總計四十三億七千五百八十三萬七千圓と相成つて居ります
次に昭和二十一年度分としては、同勅令第二百四十二號に依るものでありまして、其の内譯は、一、外地等職員の歸還に伴ひ要する經費 二、復員に關する經費 三、終戰處理に要する經費 四、石炭價格調整補給金 五、船舶運營會補助に要する經費 六、歸還輸送に要する經費の六件で、其の金額合計二十一億二千三百萬圓であります、右の諸經費は、何れも終戰後の事態に即應し、公共の安全を保持する爲の緊急の需用に基くものであり、且つ總選擧後召集せられる帝國議會の開會を待つことが出來ないものでありました爲め、憲法第七十條第一項に依り右の諸勅令の御制定を仰ぎ處理した次第であります
最後に、昭和二十一年勅令第二百四十一號、即ち昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件に付て申上げます、昭和二十一年度一般會計の四月乃至六月の收支の状況は、年度當初の豫想としましては、普通歳入は約二十六億七千餘萬圓でありまして、例年と大差ない状況でありましたが、歳出の面に於きましては、施行豫算に依る經費の支出の外に、終戰に伴ひまして、外地等職員の歸還に伴ひ要する經費、復員に關する經費、終戰處理に要する經費、其の他第二豫備金支出又は前述の昭和二十一年勅令第二百四十二號に依る支出を必要とする緊急缺くべからざる諸經費が巨額に上り、其の所要額は約六十一億五千餘萬圓に上る状況でありました、隨て此の經費を支辨致しますには、普通歳入に依る外に、更に約三十四億八千餘萬圓の國庫金を調達しなければならないことと相成つたのであります、而して是が國庫金の調達方法としては、其の時期が年度の初めでありまするのみならず、今後の増税等に依る歳入増加も考へられましたので、會計法第六條の規定に依り、大藏省證券の發行又は日本銀行よりの借入金に依り一時支辨し置くのが最も適當な方法と考へたのであります、併し大藏省證券及び借入金の最高額は、施行豫算に於ては五億圓と定められて居りましたので、其の最高額を三十五億圓に増額する必要があつたのであります、而して大藏省證券及び借入金の最高額を増額致しますには、會計法第六條の規定に依り、帝國議會の協贊を要することになつて居りますが、其の速かなる開會を期し得ない状況にありましたので、憲法第七十條第一項に基きまして、本件勅令の御制定を仰ぎ之を増額した次第であります
何卒御審議の上速かに御承諾あらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=11
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012・竹田儀一
○竹田委員長 御諮り致します、大藏大臣は十一時半頃になれば御出席になるさうでありますが、本日は御提案の理由を聽く程度に止めまして明日から質疑を續行致したいと思ひます
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=12
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013・竹田儀一
○竹田委員長 それでは左樣に取計らひます、明日は十時かつきりから始めたいと思ひます、尚ほ委員の方に全部御殘りを願つて大藏當局の御希望もありますから、質問の順序、運營に付て御相談致したいと思ひます、是にて散會致します
午前十時五十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00119460703&spkNum=13
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