1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月四日(木曜日)午前十時二十六分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 鈴木仙八君 理事 細田忠治郎君
理事 白木一平君 理事 河野密君
小野眞次君 片岡伊三郎君
寺尾豐君 苫米地英俊君
村上勇君 金光義邦君
白井秀吉君 津島文治君
武藤常介君 上田清次郎君
海野三朗君 金子益太郎君
川島金次君 東隆君
二階堂進君 喜多楢治郎君
原藤右門君
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏參與官 柴田兵一郎君
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 櫛田光男君
大藏事務官 江澤省三君
大藏事務官 阪田泰二君
大藏事務官 窪谷直光君
大藏事務官 正示啓次郎君
商工事務官 長谷川輝彦君
運輸政務次官 松田正一君
運輸事務官 加賀山之雄君
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本日の會議に付した議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政政職負の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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001・竹田儀一
○竹田委員長 それでは開會致します、御申込の順位に依りまして質疑を許可致します——川島金治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=1
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002・川島金次
○川島委員 私は先日の本會議に於きまして、主として大藏大臣に、勤勞大集の生活を中心とした五百圓の問題に付ての御質問を申上げたのであります、其の席上に於きまして大臣は、今日の國民生活の枠を五百圓に限定すると云ふことは非常な矛盾と無理がある、是は軈て引外さなければならないと、斯う御答辯がありました、それに依れば、大藏大臣は既に今の國民生活の最低保障と云ふものは、五百圓では支持出來ないと云ふ御觀點に、今日では立つて居られると云ふことに私は御想像を申上げたのであります、さう云ふことになりますと、手近かな政府の今日の職員竝に現場に於きまする各省の從業員の人達の、現在の本俸竝に諸手當を引括めました一箇月間の全收入と云ふものは、平均一體どの位になつて居るか、先般も申上げたやうに、厚生省の給與課の調査に依りましても、六大都市竝に五萬以上十萬の都市の勤勞生活大衆の標準生活を見ますと、大體平均八百圓を超えなければ、生活が成立つて居らないと云ふ調査結果が判明しまして、それを世間へも公表して居りますことは、大臣も御承知の通りであります、隨て私は此の機會に御尋ねをして置きたいのは、大藏省を初めとしまして遞信省、運輸省或は文部省、或は内務省の警察官等に至るまでの、所謂下級從業員の今日の一箇月の收入と云ふものは、平均どの位であらうか、斯う云ふことを先づ質問の順序として御伺ひを申上げたいのであります、是と同時に先般大藏大臣は、勤勞所得税の撤廢は今日の所出來ない、私がせめても五百圓と申上げましたのは、原則と致しましては、我々は飽までも勤勞所得税を撤廢しろと云ふ建前に立つて居ります、併しながら今日までの所、多くの勤勞階級の生活の現状をひしひしと私は見聞をして居りまする時に、五百圓以下を以て一箇月の全收入とする所の勤勞大衆に、百分の十八の假に基礎控除があらうと致しましても、是は今日の生活の上に洵に大きな壓迫を加へて居るのではないか、斯う云ふことに私は考へて居りますので、せめても五百圓の免税點を私は主張したのでありまするが、此の機會に、然らば政府關係筋だけにでも宜しいですが、或は全面的にでもお分りでありましたならば、五百圓所得の全收入に對しまして、今課税されて居る所の各省關係の從業員の數竝に其の所得税の總額、尚ほ次には五百圓以上千圓までの、同じく數竝に所得税を徴收して居る所の總額、更に千圓以上のものが分りますれば、それを一應御聽かせを願ひたいと思ひます、それに依つて私の質問を進めたいと、斯樣に考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=2
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003・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問に御答へ致します、私が所謂五百圓の枠を置くことは不自然だ、是は成べく早い機會に外したいと言ひましたことと、それから國民の最低生活費が五百圓であるかどうかと云ふこととは別問題であります、所謂五百圓の枠を外すか外さないかと云ふことは、資金の流通と申しますか、金融上の措置でありまして、兎に角舊圓と新圓がある、それから個人其の他の收入の一部分の五百圓だけは現金で拂はれる、あとの部分が封鎖されて行くと云ふやうなことは不自然なことでありますから、さう云ふことは外したい、斯う考へて居る譯であります、併しそれ故に私が國民最低生活費が五百圓であると、斯う申上げた譯ではないのであります、此の最低生活費の問題は又別に檢討を要することでありまして、是は都會或は地方其の他に依つて相當相違があることだと私は考へて居ります、唯御話のやうに、現在或る地方の、さうして家族を持つた勤勞大衆、或は政府の職員等の生活が、五百圓だけでは中々困難であると云ふことは、是は常識として認める譯であります、但し此の間も申上げたやうに、家族が假に自分を合せて五人あるとすれば、さうして其の人が五百圓以上の收入があるとすれば、現金で拂はれる五百圓と、それに加へて一人當り百圓づつ、即ち千圓だけの生活は出來る譯でありますから、今の枠を付けて置くと云ふことが多少の面倒があり、又不自然であることは事實でありますけれども、それ故に國民の生活を五百圓に限定してしまつたと云ふ意味はなして居らぬと私は考へて居ります
それから政府職員中の下級の人達が、現在どれ程の收入があるかと云ふことに付ては、只今此處に數字を持つて居りませぬから、後程調査致しまして、分る限りの資料は提出致します
それから勤勞所得税の問題が大分近頃論ぜられて、御質問の中にもあるのでありますが、此の勤勞所得税ど云ふ名前が、或は勤勞と付けたのが惡かつたのかどうか知りませぬが、税は、最低生活費が幾らであるからと、斯う申しましても、其の最低生活費の收入に對しても税を課けてはならぬ、斯う云ふものではないと私は思ふのであります、詰り税を拂ふことも生活費の一部分になる譯でありまして、殊に源泉課税に依る勤勞所得税、所謂分類所得税と云ふものは、税としましては、是は日本ばかりではございませぬが、非常に伸縮性のある最も良い税であります、此の分類所得税を廢めると云ふことは、少くとも今日の税法の全體の考へ方を變へなければ出來ないことであります、それから分類所得税をやるとすれば、個人の收入——其の個人の收入と云ふものは、大體に於て資産收入もありますけれども、さうでなく、大部分の國民の收入は勤勞に依るものでありますから、其の勤勞所得に對して相當税を課けると云ふことは已むを得ないことであるし、又理論的に正しいことだと私は思つて居ります、ですから、勤勞所得税と申しますと、名前の關係から何か勤勞者に特別の負擔を掛けるやうに考へられたり、或は生活の下の方の、收入の少い人達にも或る程度課かりますから、それで色々な議論も起る譯でありますが、是は收入の少い人には負擔を成べく輕減すると云ふ意昧で、免税點も出來て居るやうな譯であります、租税の建前から申しましても、又現在當面する日本の財政の状況から申しましても、所謂勤勞所得税と云ふものを今日廢めることは適當でない、斯う云ふ風に私は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=3
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004・川島金次
○川島委員 大臣が勤勞所得税を此の際廢めることは適當でない、斯う仰しやつて居りますことは先般から分つて居る、前囘も申上げようと思つて申上げ落したのでありますが、大臣が五月十一日の「東洋經濟」に、今日の物價状況に照して所得税も或る程度免税點を引上げる必要が生じた、斯うはつきり書かれて居ることを私記憶して居ります、今日は其の書いたものを持つて參りませぬでしたが、私にははつきりした記憶がある、其の意味から行きましても、せめても石橋大藏大臣は、勤勞大衆の生活に對して非常に理解と熱意がある、斯う云ふ私は御期待を申上げまして、大臣の就任に對して或る程度心強い感じで居りました、是は勤勞者の立場で、黨の立場ではございませぬ、然るに大臣になられましてから——今日では大臣になられる前以上に、物價の状況と云ふものは事實上上つて來て居ります、一方に於て、政府に於かれましては一般勞働者或は職員、現業從業員、さう云ふ人達の給與の改善、若しくは調整に最近非常な努力をされて居りますものの、それと勤勞所得の問題に關する大臣の在野時代の御主張と、今日就任から後の御意見が變つてしまつたと云ふことに對して、洵に失望を禁じ得ない譯であります、どう云ふ理由で——心境の變化でありますか、或は別な根據に立たれまして、さう云ふことを言はざるを得ないことになりましたか、それを御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=4
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005・石橋湛山
○石橋國務大臣 あの五月十一日の雜誌に出て居りました意見は、あれはいつ述べたものか、述べた時期を記憶しないのでありますが、確かに現状に於ては——勤勞所得税と言つたかどうか忘れましたが、分類所得税の免税點を考へなければならぬと云ふことは述べて居ります、私は今でもさう考へて居る譯であります、今度の事後承諾案の中にもありますやうに、實は三月から免税點は引上げたのです、今まで五十圓であつたのを二百圓にしたのであります、其の計算で行きますと——私は何も就職前の意見と今日變へなくても實際は非常に引上げられて居る、斯う云ふことです、ですから、色々相當細かい計算もして居るのであります、相當下の方の收入の少い人達に對しては、私の希望して居るやうなことが、十分とは言へないかも知れませぬが、相當程度に盛られて居る、斯う云ふ風に私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=5
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006・川島金次
○川島委員 それは大臣にしましては、私一寸詭辯ではないかと思ひます、其の意見を發表しました五月十一日と云ふものは、其の以前にもう既に今の所得税の基礎控除の免税點の引上はあつた、あつた後の大臣の御所見である、にも拘らず最初五十圓のやつが二百圓になつたから——それは大臣が御就任と云ふよりは、「東洋經濟」で發表する以前のことなんです、其の後に發生した現象に對して、大臣はさう云ふ御見解を發表したのではないかと思ふ、是は日取りの上から云つて事實であります、今の御話を聽きますと、大變私には納得出來ない見解なんです、其の點如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=6
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007・石橋湛山
○石橋國務大臣 甚だ深刻な質問であります、あれは今申上げたやうに、雜誌には五月十日に慥か出た、ですから其の時期から見るとさう云ふ風な誤解が起りますが、それを言うたのは何時でしたか、ずつと前なんです、隨て無論此の免税點を引上げると云ふやうな問題も起つて居る時ですから、其の中に含まれて、それは時期の違ひで詭辯になると言はれても致し方がないのでありますが、五月十日に言つたのでない、其のことだけはどうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=7
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008・川島金次
○川島委員 それでは問題は十一日に紙上に發表したが、言つたことは先なんで、出したのは編輯者の責任だ、斯う御逃げ遊ばす譯になる、併し私が眞劍に御聽き申したいのは、先程大臣からも御話がありました如く、五百圓の生活費の枠を外さうと言ふのは別の見解に立つて居る、それは一般國民の金融の上でさうしたいのだと大臣は仰しやつて居る、今の食糧事情、今の物價状況に照して、五百圓で月々足りないものを貯金に依り、預金に依つて引下げて生活出來る人達はまだ宜いのであります、出來ない人が國民大衆の中には大多數居るのであります、殊に戰爭後相當に預金、貯金を持つて居つたが、此の物價状況、此の食糧事情に追込められまして、殆ど今日では其の預金、貯金を拂戻して食ひ盡してしまつた、斯う云ふ事情に今日なつて來たと云ふことは、恐らく大臣も能く御分りだと私は思ふのであります、そこで私は先程先づ手取り早い所が、政府の御膝元である各省の、大多數を占める現場の從業員の收入はどの位になつて居るか、其の現場の從業員の人達の生活の實體と云ふものは、中には有力な故郷があり、或は有資産家の子弟もあるでせうが、それは言ふに足りない、政府の仕事に携つて、それで生活をして居る所の現場の從業員の大多數と云ふものは、もう預金もない、貯金もない、それで已むを得ないから爭議を起して當局に迫つて居る、迫つて來て居るが中々それを實現することが困難である、成程政府に於きましては、此の七月から相當な大幅の賃金の調整をやると云ふことは聞いて居りますが、是は私の想像で、後で御發表願へれば結構でありますが、其の大幅の調整を致しましても、尚且つ厚生省あたりで綿密に責任を以て調査致しました、勤勞大衆生活費の八百圓と云ふ最低には、中中及ばない現状にあるのではないかと私は想像して居ります、大幅の調整をしても、尚且つそこまで達するには遼遠なる幅がある、斯う云ふ状態に放置して置いて、果して政府の此の時局に處しまして、一切の末端までの行政事業、それを最高の能率を擧げて、此の日本の再建の爲にあなた方の使つて居る所の多くの勤勞生活者大衆に、最善、最大の能力を發揮して貰ふと云ふことが妥當なのか、無理なのか、是は私が最早申上げるまでもない事柄であらう、そこで私の中心の問題は、五百圓では食へない、是はもう言ふまでもない、然らば一體どの程度まで——政府は此の七月に政府職員竝に一般現場に於ける所の從業員の生活を保障しやうとするのであるが、私は今日の一勤勞大衆の生活に對し、昔のやうに唯賃金をやれば宜いのだと云ふ程度ではいかぬ、少くとも憲法でも問題になつて居ります國民全體の生活を保障せよ、是こそが日本再建當面の非常に重大な課題であり、政府はそれをなさねばならぬ、大藏大臣は何時でしたか、政府職員、從業員の給與は洵に好くない、政府は赤字を出してでも此の問題は解決せなければならぬと、洵に心強いことをつい十四五日前に言つて居るのであります、それは新聞記者が誤り傳へたのだかどうか知れませぬが、其の記事は私は今持つて居る、洵に心強いことを仰せられたのでありますが、どうもさう云ふことが本當に實現しさうもないと私は心配をして居る譯なのです、そこを私は論じて居ります、其の點を一つ、昨日私は其の資料を提供して戴きたいと云ふことを、豫め關係の筋の方に御願ひしたが、それが今以て出て居りませぬが、洵に殘念なのであります、問題はそこにある、そこで更に私は一言加へますが、「マッカーサー」司令部に於て四月の占領報告書の中に斯う云ふことがありました、日本に於ける賃金の絶えざる調整にも拘らず、一般勞務者の所得は生活費の半ばを補ふに足らぬ、斯う云ふことが日本占領報告の中に「マ」司令部から報告されて居る有樣であります、私はせめても政府の事務、政府の事業に携つて居る、國鐵で申上げますれば五十萬、遞信で申上げますれば凡そ二十萬、或は又全國の學校教員の數から言ひますれば、是も三十萬を優に超える方が居ります、更に警察官などを加へましたならば是れ亦相當な數、是等の人達が目下最低の生活を保障されない、それで此の多端なる仕事に、身を挺して精勵せよと要求することは無理であり、又今日の日本の現状では精勵して貰はなければならないのであります、偶には買出しに行つても宜しい、内職をしても宜しい、それでは日本の再建は出來ない、然らばそれ等の人達に對するせめても最低の生活だけでも——是は大藏大臣の仰しやつたやうに、政府は赤字を出してでもと云ふ、此の御熱意と理解に基いて保障すべきものではないかと私は思ふのであります、其の點を一つ御尋ね申上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=8
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009・石橋湛山
○石橋國務大臣 御答へ申上げます、無論政府の職員の生活は、政府に働いて貰つて居る限り之を保障しなければなりませぬ、場合に依つては赤字を出してもやらなければならぬと云ふことは言うても居りますし、さう考へて居ります、現に今年度は其の爲に相當赤字が出る筈であります、其の結果どれ程の待遇になるかと云ふことは、昨日御要求があつたやうでありますが、まだ出なかつたことは相濟みませぬが、明日頃極く大體の數字だけはお目に掛け得ると考へて居ります、併し其の結果が、今私の記憶する所では、大雜把に申しまして今までの全收入、詰り本俸、家族手當、臨時手當と非常に複雜でありますが、全收入に對して大體五割程度の増額に平均してなるかと思つて居ります、其の結果或る程度の改善が出來ると私は考へて居りますが、併しそれで十分かどうかと云ふことになりますと、尚ほ檢討を要するのであります、此の問題は、實は今の給與制度も非常に不完全でありまして、戰時中物價が騰貴した爲に、それからそれへ繼ぎはぎになつて居りまして、本俸が少い、それに家族手當とか物價手當とか云ふやうなことで複雜になつて居り、又或る部分に於ては、所謂能率賃金の趣意に反することになつて居りますので、是は是非根本的に制度を改めねばならぬと思つて居ります、此の間本會議であつたかと思ひますが、其の場合に申上げたやうに、大藏省内に新しく給與局を設け、それを中心と致しまして政府職員の給與に付ては根本的の調査をして、至急に此の給與制度を改革したいと思つて居ります、それには尚ほ「アメリカ」邊りの知識も參考にする必要がありますので、先方に頼みまして、「アメリカ」から其の方の專門家にも、來て貰へるならば來て貰ひたいと云ふやうな要求もして居ります、此の制度を根本的に變へまして、同時に現在の物價も御承知のやうに、色々情勢の變化がありまして、是も根本的に尚ほ考へ直さなければならぬ時期になつて居りますから、それ等と兩々相俟ちまして、尚ほ給與の金額に付ても、制度を變へると同時に其の際に改めて考へたいと思つて居ります、今行はうとする政府の給與の増額は、大體政府職員組合からの要求に略略一致した程度の増額になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=9
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010・竹田儀一
○竹田委員長 川島君、遞信省の政府委員が見えて居りますが、ここで御答辯願ひますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=10
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011・川島金次
○川島委員 後に一括して材料を出して貰ひたいと思ひます——只今私が御質問申上げましても、昨日から御願ひ申上げて居りまする資料が出ませぬと、具體的な御尋ねが出來ませぬので、一應大臣の御答辯を聽き置くと云ふことで保留致します、後刻資料が出ましてから、改めて御尋ね申上げたいと思ひます
次は資金封鎖に關しまして、戰災者、疎開者、引揚者、之に對する自由支拂が從來五千圓の所一萬圓に引上げた、洵に一應適切な御處置であらうと思ふのですが、是は戰災者、疎開者、引揚者の建物の修繕、建築に限つての問題でありますが、五千圓が一萬圓になる、一體大藏省では今日の状況に照して、一萬圓で人間が住めるやうな建物が出來るか、どう云ふ御見解で斯う云う金額を限定されたのですか、それとも戰災者、疎開者、引揚者の住むに家なき者に對しましては、其の一萬圓の限度内で、政府は全力を盡して人間の住めるやうな家を作る爲の一切の資材を斡旋しよう、援助しよう、協力しよう、それに依つて氣の毒な戰災者、強制疎開者、而も此の強制疎開者の中には、實に話にもならぬ、地方廳の役人などは豫算が殘つて居るからと稱して、豫算の爲に終戰の二日前に強制疎開をさせたと云ふやうなこともないではない、其上に海外引揚同胞は、今や著のみ著の儘で、妻を抱へ、子供を抱へて陸續と歸つて來て、而も住むに家のない同胞が澤山居る、假に是等の人達が自分等の手で家を建てる目安が付いても、折角の建築資金と云ふものは最高が一萬圓、是では鷄小屋も建たない、之を何とか當局はもう一層考へ直す餘地はないか、又考へ直してやるべきだと私は思ひます
それからもう一つは醫療費の支拂ひ、是は耳障りの人もあるかも知れませぬが、此の醫療費の封鎖拂ひと云ふものは、實際開業醫は喜んで居りませぬ、開業醫に言はせれば、總て藥も材料も配給だけでは足らぬから闇で買つて居る、公定の五倍、十倍、中には二十倍もするものを仕入れて醫療に從事して居る、其場合に封鎖拂ひだけではとても醫療がやつて行かれない、隨て現金を患者から要求すると云ふのが恐らく例外のない程の實況であります、而も其の上に醫療費と云ふものは、直接費と、御承知の通り間接費と云ふものが掛る、今日の状況では醫者に拂ふ直接の醫療費よりも、其の病人を治す間接の費用、例へば榮養費とか或は看護費とか、或は又其の他の雜費が非常に莫大に掛る、是はやはり醫療用の一部の品物に對しては配給もありますが、それは實際に於てはないと同斷でありますから、一切是れ亦闇で買つて病人を治さなければならぬ、其の場合の支拂ひを要求すれば、醫者の方の證明は大體に於て實費であります、隨て三倍五倍と云ふ間接費は出所がない折角二十日間で治るやうな患者が一箇月、二箇月掛る、三月で治る患者が半年も掛ると云ふやうな實例が相當にある、そこで此の醫療費の直接費竝に間接費を引括めた、患者、醫療者に、而も全快せしめるに足るだけの費用と云ふものは、當局が認めて、封鎖の中から支拂が出來るやうに、之を一つ御考へ願ひたいと私は思ふ、是は非常に各地に於て困つて居る、今後恐らく此の時節で傳染病も非常に蔓延するでありませうし、人間の體も弱つて居りますから、色々な病氣が續出する傾向にある時に、一家の中に一番不幸なる病人が出來た、看護の爲め醫療の爲の間接費の爲に惱んで居る、之を何とか御心配をしてやつて戴く、それで何とか滿足に看護が出來るやうな費用の入手が出來る措置を一日も早く講じてやつて戴きたいと思ふのであります、御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=11
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012・石橋湛山
○石橋國務大臣 戰災者等に對する特殊預金の件でありますが、是は實は餘り渉外關係のことを申すことは好まないのでありますが、其の方の關係から種々面倒な制限がありまして、實は我我にも今專ら苦心をして居る次第であります、同時に資材關係もあるものでありますから、關係方面で言ふことも一概に排斥も出來ないやうな状況もないではありませぬ、併し私も戰災者の一人でありますが、戰災者が非常に住宅其の他に困つて居ると云ふことは、十分政府としても認めて居る譯であります、是は單に特殊預金の關係ばかりでない、是は私の方の直接の所管ではありませぬけれども、何等か是等の問題に付ては大きな手を政府としては打たねばならないのではないか、斯う云ふやうに考へて、内部では話合つて居る次第であります
それから醫療費を封鎖預金で拂ふと云ふことは醫者が好まない、又好まない理由があると云ふことも、御説の通り十分私も認めて居ります、要するに是は何時も申上げるやうに、封鎖預金と自由預金と云ふやうなもののあることが根本的の缺點でありまして、早く左樣な區別を取除くと云ふことに邁進致したいと思つて居る次第であります、併し尚ほ醫療費に付ては特に重要な事柄でありますから、十分御説を考へまして、出來るだけの處置を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=12
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013・川島金次
○川島委員 大體生活問題は終へまして、財産税に關する問題を一寸伺ひたいと思ひます、愈愈財産税も徴收する時期に達したのでありますが、一體是は何時徴收する段取に入るのでありますか、其の時期に付ては大分國民全體の懸念して居る所であり、關心を持つて居る所でありますので、近い將來と云ふやうな曖昧なことでなしに、出來れば此の際其の時期を御發表願ひたいと思ひます、それから是も亦大藏大臣の書いたものにぶら下るやうな形になりますが、此の間本會議で御質問申上げました時にも、財産税の所謂基礎控除額の引上の問題に付ては、是亦明快な御答辯が得られなかつたのでありますが、之に對しても大臣は五月十一日の「東洋經濟」に於て、財産税の免税に付ても相當に考慮する必要があると、斯うはつきり御述べになつて居るにも拘らず、どうも未だに明快な御答辯が此の議場で、委員會で得られない有樣であります、一體假に大臣が「東洋經濟」誌上に掲げられた意見に今も御變りがないとするならば、どの位まで免税點を引上げられる積りで今準備して居るのであるか、之をはつきりして戴きたい、一説には三萬圓までと云ふ話を聞いて居りますが、是が決定事項でありますか、それともそれ以上のことを御考へになつて居りますか、更に第三點と致しましては財産税の徴收に當りまして、今度は税率の改正、或は法人財産増加税の徴收を撤廢すると云ふことになりましたので、相當に財産税總額の收入と云ふものが減額になる、是は固よりであります、其の減額を、初め幣原内閣當時には其の總體の額を一千億とせられたが、今囘の措置に依りましてどの位見込んで居りますか、其のはつきりした見透しを御教へ願ひます、同時に其の徴收致しました財産税の總額を、どう云ふ方面に、何時御使ひになるか之を一つ數字的に、明快に御教へを願ひたいと思ひます、同時にもう一つは、財産税の徴收に當りまして、「A」級「B」級「C」級の三「クラス」でやることになつたやうであります、「A」級が五十萬圓以上、「B」級が十萬圓以上、「C」級が三萬圓以上と出て居る、之に依ると免税點は三萬圓に決定したかの如くにも思はれるのでありますが、此の「A」「B」「C」の三「クラス」に付て、最早大藏當局は各地方の財務局に向ひまして、それぞれ内調査を進めつつあるのだと私は思ふ、又さうあるべきだと私は思ふ、先達て名古屋の財務局の調査に依りますと、A「クラス」と云ふものは殆どなくなつてしまつた、Bも三十%かそこらで、壓倒的にC「クラス」が多い、斯う云ふ報告を兼ねた發表が新聞紙に出て居りましたことを私記憶して居りますが、若しこんなやうな状況で行きますと、財産税の徴收を實際にやつても、我々が最初から期待し、政府も大いに期待して居つたのだと思ひますが、所謂大金持の方面からの税收總額と云ふものは、何時の間にかどう云ふ加減であるか分りませぬが、減つて來て、此の財産税に依つて一番正直に、根こそぎに取られて行く側はC「クラス」である、私の見解を以て致しますならば、是は恐らく大藏大臣も御同感と思ひますが、今日の物價状況、今日の食糧事情、今日の社會状況に照して、一體假に二萬圓、三萬圓の現金があると致しましても、それはもう財産でない、私は財産と云ふものは——私は素人でありますから、財産の講議をするのではないが、財産と云ふものは多少持續性を持つものでなければ、財産でない、來月に使つてしまつて、再來月にはなくなるやうな現在の所有金と云ふものは、私は財産でないと思ふ、恐らく生活上の——此の逼迫した生活の補給金に過ぎない、其の補給金に過ぎない三萬圓や五萬圓の財産に相當な税を課ける、斯う云ふことが果して今日の社會情勢に照して妥當であるかどうか、食糧は固より困難であり、物價も騰つて居る此の實情に照して、政府が國家財政の都合上税金を取ることも、何も私は反對をして居るのではないのですが、少くとも此の現段階に於ける所の、國民の大多數の生活を脅かすやうな政策をやると云ふことには、私は反對をしたいと思ふ、そこで先程の話に戻るのでありますが、一體財産税の免税點を何處まで具體的に引上げてやるお積りなのかと云ふことを御尋ねをする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=13
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014・石橋湛山
○石橋國務大臣 御答へ申上げます、實は此の財産税の件は前内閣で之を計畫しました時には、日本の經濟状態を現在の儘に置いて、さうして財産税を執行すると云ふ考へであつたのであります、然るに其の後色々の情勢の變化もありますし、又私の考へでは、日本の經濟界を此の儘に置いて、唯其の上で財産税を取ると云ふことは、必ずしも適當でないと考へますので、經濟界の全體の整理と見合つて財産税を決めたい、斯う云ふ風に思うて居ります爲に、現在其の財産税の再檢討を致して居る次第であります、隨つて財産税を何時取るかと云ふことも、成べく早くと云ふことだけは明白でありますけれども、十分御滿足が行くやうに何月になると云ふことは、まだ御答へが出來得ない關係にありますので、御容赦を願ひたい
それから免税點も同樣でありまして、まだ幾ら幾らと云ふことを申上ぐる時期に殘念ながらなつて居りませぬ、唯此の位のことは宜いかと居ひますのは、三萬圓以下なんてものは課けない積りであると云ふことであります
それから其の使ひ途に付てでございますが、財産税を取りまして、是は理論的或は實際的に種々なる使ひ途は考へられる譯であります、若し財政に十分の餘裕がある場合ならば、理論としては財産税の歳入は國家の負債の償却に充てるのが正當だと私は考へて居りまするが、併しながら今日の財政の状態から申しますると、さうは參りませぬので、やはり是は當面の財政支辨に使つて行かなければならぬと考へて居ります
それからA、B、Cの區別でありますが、是も御説のやうに今日の經濟界の状況、又今後の状況の變化を見ますると元來少かつた大資産家が段々影を沒しまして、所謂A「クラス」と云ふものが少くなると云ふことは事實であります、隨てA「クラス」より取るのが當初の豫想よりも減り、B「クラス」も同樣に減りC「クラス」へ或る程度課かつて行かなければならぬと云ふことになりませうと思ひますけれども、併し免税點の點で以て餘りに小資産の人に此の税が課かつて來ることは避けたいと考へて居るのであります、又A、B、C、是は調査は無論して居りますけれども、まだA、B、Cからの徴税額が幾らになるかと云ふことのはつきりした數字を申上げることは出來ない状態にあるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=14
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015・川島金次
○川島委員 只今の大臣の御説明に依りますと、財産税の總額は今の所は分らないと言ひますが新聞などの報道する所に依りますと大體一千億と云ふのが六百億限度で止まるのではないか、即ち當初からの見込とは四百億からの減額を來すのであります、而も是はA・B、Cの全體的の調査を見ないと分りませぬが、減額した上に、而も其の數字の結果は、恐らく大部分を此のC「クラス」が背負込むと云ふ形にならなければ宜いと私は心配して居ります、一體財産税の目的は何處にあるか、戰爭中相當な事業をやり、其の他のことで大いに金を儲け、財産を作つた、戰爭は金儲けにならぬものだと云ふことを先づ知らしめる意味ではなかつたでせうか、相當戰爭で儲けた其の財産を此の敗戰國家再建の爲に一つ貢獻して貰ひたい、協力して貰ひたい、そこに私は少くとも狙ひがあるのではないか、然るに法人財産増加税を撤廢し、一面に於ては税率を改正するが、下の方に薄いと大臣は申されました、是は統計が出て居ないから分りませぬが、私の想像ですが、總額は減つた上に、當初の目的たる所の、本當に戰爭中にうまくやつて金を儲けた連中からは根こそぎ取れないやうな状況になつてしまつた、幾度か此の議場でも出て居るが、戰爭中眞面目くさつて「ブローカー」もせず、闇もせず、戰爭の爲に政府の言ふことに協力し、眞劍になつて、それこそ滅私奉公で汗水垂らして働いた金の三萬圓、五萬圓を正直者の方面から根こそぎ取つてしまふ、中以上の者からの徴收と云ふものは、洵に當初の豫想よりも意の如くならない、斯う云ふ結果になることは、私は少くとも國民全體に及ぼす心理的影響と云ふものは大きいのではないか、私は本會議で質問を致しましたが、緊急措置令と、それに財産税の發表の期間が三月もあつたことは、其の間に大金持と云ふものは大體に於て換物して居る者が、私の見聞した所に依りますと、可なりあるやうに想像して居る、金のある階級と云ふものは政府の施策に協力しない、實態的には何時も大衆に屬するものがそれを負擔しなければならぬと云ふ結果に陷ることは政治ではないと思ふ、殊に日本は敗戰の此の現状を一つ再建しよう、それこそ上も下も眞つ裸になつて此の日本を民主化し、一日も早く日本をして國際的の地位に伍すると云ふ所まで、お互ひに血みどろな姿になることこそが、私は日本の眞の今の建前ではないか、所が政府のやる所に依りますと、私は故意か偶然か知りませぬが、動もすれば大金持、大資産家階級の爲に、結果に於ては圖つたやうな印象を國民の中に強く植付けて行くやうなやり方をして居る、それで此の敗戰日本國民全體大衆の協力がなくして、此の日本が建直りませうか、工場のことに於きましても、僅か五十や百の大資産家の工場が再開し、生産が旺盛になつたからと云つて日本の産業は確立出來ませぬし、再建も出來ませぬ、比較的眞面目に、眞劍になり得るやうな條件にある中小工業なども、共に携はるやうな態勢を整へてやらなければ、日本の産業の確立などと云ふものは私は思ひも及ばないと思ふ、と同時に、一體政府は國民生活の保障と口では言ふが、其の保障がお膝元の役人の保障すら出來ない、さうして一方に於ては具體的な經濟政策の上に於て、繰返して申上げますが、動もすれば勤勞大衆の生活と云ふものを犧牲にしさうな考へ方ではないでせうか、結果に於てさう云ふ形になつて居る、私はさう云ふ政治をやつて居つたのでは、日本の一億の國民が裸になつて協力して、此の苦難を乘切らうぢやないかと云ふ熱意と云ふか、氣魄が出て來ないのぢやないか、寧ろあべこべに政府の威信を失墜し何時まで經つても政府を信頼するに足らずと云ふ大衆の考へ方が、從來もありますが、さう云ふことで一層之に拍車を掛けるやうなことになることは、是は獨り國民大衆の問題ではない、私は日本全體の再建の問題に懸る根本的重大な事柄ではないかと考へて居る、其の點に付ての大藏大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=15
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016・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税の問題が起りましてから、或る一部の人達が之を逃れる爲に換物運動を行つたと云ふことは、的確な事實を私は掴へて居る譯ではありませぬが、世間の噂に當時あつたやうに——あつたでありませう、併しそれがどう云ふ人達に依つて行はれたかと云ふことも相當問題でありますが、併し、それは本會議でも申上げましたやうに、前内閣時代に特に財産税を早く行ふ筈であつたのが行へなくなつたと云ふ手違ひから生じた爲に、三月財産の調査令を出してそこで區切りをしまして、隨て其の後は所謂換物運動が起らなかつた、財産税を逃れる爲に換物運動は起り得なかつたものと私は考へて居ります
尚ほ財産税が上に輕く下に重くなるのではないかと云ふ御懸念でありますが、是は何れ之に關する法案を御審議願ひます際に十分に御批判、御檢討を煩はさなければならぬのでありますが、私が今考へて居ります所のものは、川島君の言はれて居る所と全然違ふ、詰り可成り上の方がひどいものである、きついものであると云ふ風に御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=16
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017・川島金次
○川島委員 具體的な數字が出て來ませぬからどうも水掛論になりますが、一日も早く、昨日要求したのでありますが、此の財産税の審議に極めて重要な關係のある資料でありますから全員に一つ御示し願ひたいのであります
只今大臣は上の方に相當な辛い者が出來るだらう、それはあるでせう、あつてもそれは今日の數字の實態に於て辛い者が出來るのであつて、實はそれ以前に適當なことをやつて居る面もあるのではないかと私は思ひます、尚ほ今日目一ぱい取られたやうな形にあるが、實際にはさうでなかつた、斯う云ふ面が出來ないとは保し難い實際の状況ではないかと私は思ひます、それで只今申上げましたやうに、一面に於ては正直な下層の僅か三萬、五萬の財産を持つて居る連中が規則通り根こそぎ持つて行かれる、是はもう事實嘘も隱しもないと云ふ状態になるのではないかと私は心配すると云ふことを申上げたのであります、どうも繰返して申しまするやうで諄いやうですが、もう少し政府は大衆と云ふものに重大の關心を持つて經濟政策、財政政策をやつて戴きたい、一方に於ては勤勞大衆の生活を保障することが出來ない状態に放任して置きながら、勤勞大衆生活の負擔となる如き煙草を、六十錢そこらのものを一躍一圓五十錢に上げる、さうかと思ふと河合厚生大臣は、是は最近ではないですが、煙草は平均一圓七・八十錢に引上げるのが妥當である、序でに酒も此の際一升五十圓位に上げてしまへ、斯う言つて居る、さうして國民に安い煙草と安い酒を飮ませることは癖になる、斯う言つて居る、一體さう云ふ氣持を以て政治をされることは勤勞大衆の協力なくして其の再建が出來ない今日、苟且にも有力な日本の人と言はれて居る人が、斯う云つた言葉を發すると云ふことは、私は國民に對する思想的、感情的な影響が甚大ではないかと思ふ、大藏大臣にされましても、東洋經濟で御就任の直前にはさう言つて居りながら、就任されたら、それは出來ない、河合さんは河合さんで、酒は上げる、安い煙草を吸はせることは癖になると言つて居る、一體酒と煙草は誰が飮む、大地主と大金持だけが酒を飮み煙草を飮んでいらつしやるならば私は何をか言はんや、勤勞大衆の一日の苦勞の樂しみは今何です、飮める人は酒です、飮める人は煙草です、酒も煙草も飮めない人は何か甘い物を欲しいと言つて居る、それを安い酒や安い煙草を飮ますことは癖になる、之をどんどん上げて國家の財政の有力な財源にして行く方が國の爲になるのだ、成程數字的にはさうでせうが、さう云ふ考へを持たれたのでは私は勤勞大衆の國家に對する協力、昔の言葉で言へば忠誠の心、是が沸き上る所か却つて逆な效果になつてしまふのぢやないか、私は大いに心配するのであります、此の機會に一寸御尋ねするのですが、先達て大藏大臣は酒、煙草の値上げを決定致しました、あれは閣議で決定するのか、大藏大臣が決定するのか知れませぬが、閣議の席上で河合厚生大臣から何か酒の問題でも出たのか、私は此の機會に聽いて置きたい、而も酒の問題が出たから私は言ふのでありますが、今日本の現状から言ひまして、酒を飮んで居る階級と云ふものは勤勞大衆ではありませぬ、洒飮み階級と云ふものは大概財産税で言へばA「クラス」階級、B「クラス」階級に屬する者が飮んで居る、一般に混合ふ電車で今にも死ぬのではないか、心臟が止るのではないかと云ふやうな揉みくしやの電車に乘って、朝早く通つて來て、又退廳する多くの人達、其の人達は酒は飮んで居らないし、又飮めない、「ビール」一本闇では三十圓、酒一升二百五十圓も出さなければ手に入らないと云ふ今日、而も金があれば酒が何處からでも手に入ると云ふ現状はどう云ふ譯だ、働く勤勞大衆には慰安となる酒が一滴も手に入らずして、大きな料理店或は別の方面に金さへあれば其の酒が入つて來ると云ふ此の現實の有樣、成程斯う云ふ形にして酒は一般の國民にも配給されて居りますと仰しやるでありませうが、事實は絶對に反對の現象であります、働く者の手には酒は入つて居りませぬ、働かざる、裕福な、閑のある、金のある——新圓は本當ならば手に入らないが、現實は何時でも新圓の入る階級があるやうになつて居る、さう云ふ連中が酒が飮める、一體酒と云ふものはどの位造つてどう云ふ風に配給されて居るのですか、私は此の機會に御尋ねを申上げて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=17
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018・池田勇人
○池田(勇)政府委員 酒の製造高竝に消費の状況に付ての御質問でございまするが、それに付きまして御答へ申上げます、酒は今年度清酒に付て申しますと、米を六十五萬石釀造致しまして、大體九十萬石の清酒が出來て居ります、甘藷其の他の雜原料から合成清酒或は燒酎を製造致しまして、本年度大體三十萬石を目標として居ります、「ビール」に付きましても二十餘萬石の麥の配給を受けまして、六十萬石程度の「ビール」の製造を見込んで居りました、併し御承知の通り藷其の他の雜原料は、七月一日から製造場にあるものまでも食糧に供出することになりましたので、合成酒或は燒酎は見込み程迚も造れぬと思ひます、「ビール」に付きましては是れ亦手持の麥を供出致しました、隨て昨年來持つて居ります麥芽を使ひまして、來年の今頃位までは製造が出來るかと思ひます、隨ひまして之を基準數量と申しますか、「アルコール」分に換算致しますと、百七八十萬石の配給數量に相成ります
之を如何に配給するか、戰時中は軍需産業其の他の特別産業用に相當出して居りましたが、敗戰後は主なる産業用としては農産物供出用に三十萬石特別に取つて居ります、それから又戰後に於きましても、輸送關係域は鑛山關係其の他戰後必要な特別産業には、戰時中と同樣な方法で配給を致して居ります、其の次は家庭用でございまするが、大體月に四合程度を見込んで家庭配給致して居ります、業務用に付きましては一年間十三萬石程度でございまして、全體の一割にも足りない状況でございます、戰爭開始當時の業務用の酒に比べますと、殆ど比較にならない程少い量を業務用に廻して居るに過ぎませぬ、以上のやうな状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=18
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019・川島金次
○川島委員 酒の問題に付て、細かくなりましたが、今の御話に依ると、月に四合づつ配給することになつて居ります、それは農村關係だけですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=19
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020・池田勇人
○池田(勇)政府委員 大體全國平均でございます、農村には別に三十萬石程度の供出用の特配を致して居ります、尚又田植、稻刈と云ふものには三十萬石以外に又出して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=20
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021・川島金次
○川島委員 月に四合と云ふのは國民全體で、農村關係、鑛山關係は別だと言ふが、實際に於ては我々一般國民に此の四合が渡つて居るかどうか、洵に疑問であります、而も只今申上げましたやうに、金さへあれば酒が手に入る、斯う云ふことに付ても、折角大藏省でなけなしの米、甘藷、馬鈴薯其の他の雜穀を使つて、國民の爲に酒を造つて居られるのでしたならば、其の酒を造る眞の目的を發揮の出來るやうな方面に、重大な關心と注意を一つ御拂ひを願ひたいと思ふ、國民には四合平均月に配給してあると數字では仰しやるでありませうが、實際はさうでなくて、金持が金を出せば酒が飮めるのだと云ふ此の現實の社會現象、さう云ふことに對しては少くとも造つていらつしやる當局が、常に重大な關心を持たれまして、それこそ寡を患へず均しからざるを患へると云ふことになるやうに、今後とも重大な關心と注意を一つ御願ひ申上げたいのであります
それから河合厚生大臣は、酒も序に値上げをしろと云ふやうなことを言つて居るのですが、閣議などの席上でさう言つたことがありましたか
それから細かいことになりますが、煙草と云ふものは是も國民大衆の關心を持つたことでありますから、一應御聽きします、煙草は一體最近月に本數に致しまして何千萬造つて居るのですか、又今後どの位の増産見込を持つて居るか、それとも色々の事情で現状で進むのか、更に増産をすると云ふ設備、又材料資源などの見透しを持つて居られるか、それに依つて將來國民に今の配給量よりも餘分になるであらうと云ふ御見込を特つて居るか、又さう云ふことが國民の前に約束出來るやうな状況になつて居りまするのか、是も念の爲に此の機會に御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=21
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022・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所管が違ひますので、正確な數字は申上げ兼ねますが、私の聞いて居ります所では、大體一年五百億本餘を製造する見込で居ります、隨ひまして毎月四十億本餘と相成ると思つて居ります、將來増産が可能であるかどうかと云ふ問題でございまするが、御承知の通り葉煙草の作付は累年減つて參りまして、本年は昔の五萬町歩が二萬五千町歩に相成つて居ります、隨つて葉煙草の供給の點、又燒けた機械の修理改造の點から考へまして、早急に此の五百億本を殖やし得ないのではないかと云ふことを聞き及んで居ります、尚ほ初めの酒の問題に付て申上げますが、只今四合平均と申上げましたのは一年間の計畫でございまして、先程申上げましたやうに合成酒或は燒酎、「ビール」の原料供出に依りまして、減じた場合に付きましては、是が或る程度減つて來ると思ひます、又配給に付きましては戰時中大藏省のみならず、製造業者或は關係各省と協議會を開いて致して居りましたが、今後は消費者側の方も入れまして、適當な配給をやつて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=22
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023・川島金次
○川島委員 私一人で時間を大分費して、洵に申譯ないので、まだ二、三殘つて居るのですが、それは何れ資料が出て來てから改めて御尋ねをすることに致しまして、最後に一寸重要な事柄がありますので、御尋ねをして置きます、それは最近のことではないのですが、今の閣僚の中の一人の方で、非常に有力な方が、政府の財政の根本的な建直しをする爲に、國鐵、遞信事業等の官營事業を、民營に拂下げることが必要ぢやないか、それに依つて「インフレ」の重大な惡素となつて居る財政上の大壓迫を解放することが宜い、斯う云ふことを言つて居る方が今の閣僚の中に居ります、現在閣僚でさう云ふことを言つて居るかどうかは知りませぬが、在野の時代にそれを非常に強力に、數字を擧げて主張された方が居ります、重大な事柄でありますから、名前は一寸控へますが、一體今の政府當局は、官營事業を政府の財政の逼迫から逃れようと云ふ考へ方だけで、官營事業、即ち國鐵、遞信事業などを民營に拂下げると云ふやうな考へ方、さう云ふ方向に進んで居るかどうか、之を一言御尋ねをして置きたい、同時に又大藏大臣個人の御所見は斯う云ふ問題に付ては一體どう云ふ考へ方を持つて居るか、是も併せて御尋ね致します、私の質問はまだ二つ殘つて居りますが、何れ資料が入りました時に改めて御尋ねすることに致しまして、是だけを最後に御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 先程閣議の中で誰がどう言つたと云ふやうな御話がありましたが、閣議のことは申上げることが出來ませぬが、私は河合厚生大臣から左樣なことを聞いたことはありませぬ、それから國鐵などの官營事業を拂下げて民營にすると云ふやうな話は、未だ我々閣僚の中では公式にも又私的にも話合つたことはありませぬ、それから私自身は今日國鐵などを拂下げて民營にすると云ふことは今考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=24
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025・川島金次
○川島委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=25
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026・竹田儀一
○竹田委員長 金子君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=26
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027・金子益太郎
○金子委員 簡單に申上げます、私は今日問題になつて居る所の中小工業者の問題に對しまして大藏大臣に御尋ねしたいと思ふのであります、今後日本の産業が中小工業を中心にして勃興しなければならぬと云ふことは、最早今日に於きましては常識になつて居ると思ふのであります、そこで今日の此の金融緊急措置令を受けました中小工業者は實際どう云ふ現状に立到つて居るか、それは簡單に申上げますと、現在の封鎖支拂に依る所の事業經營だけでは今日の中小工業者は行詰つて來て居ります、特に先月二十一日に出ました所の金融緊急措置令の改正に依りまして更にそれが拍車を掛けられてしまつた、一つの例を申上げますと、是は私も實はさう云つた中小工業者の一人でありますから能く分るのでありますけれども、例へば今進駐軍の注文を受けて仕事を致します、勿論是は親會社がありまして、子會社に下請に廻つて來るのでありますけれども、此の特に重大なと云ふか最も優先的な仕事である所の進駐軍用の仕事をやりましても、現金は二割でありまして、あとは全部封鎖支拂であります、是は親會社に對する所の支拂でありますから、親會社が下請工場に出します時には、親會社が貰つた二割の中の何割かが現金で下請工場に出て、あとは全部封鎖支拂になつて居ります、御存じのやうに進駐軍の仕事と云ふものは非常に納期を嚴守しなければならないのであります、是は非常にやかましいのであります、例へば、商工省あたりから親會社に出る、それが下請に出る、さうすると、商工省の方では資材を斡旋しますけれども支給しては呉れないのであります、そこで、納期は嚴守しなければならない、資材は斡旋し放しで支給はしない、斯うなりますと、進駐軍の注文でありますから納期までにどうしてもやらなければならないと云ふので、下請工場は必死になつて其の資材の集め方に奔走する、其の奔走する場合に、今日の實際の事情に於きましては封鎖支拂だけでは資材が集まつて來ないのです、而も親會社に與へられた二割の現金の中の何割かを貰ふに過ぎない下請工場と云ふものは、資材を集める爲に必死の努力をしなければならぬ、相當の無理をしなければならぬ、特に緊急を要する所の製品を間に合はせる爲には、全部新圓を持つて行かなければ資材が手に入らないと云ふやうな場合もあるのであります、斯う云つた意味に於きまして、大藏大臣は、進駐軍用の仕事をやる場合に當りまして、此の現金と封鎖預金の割合をもつと増さして戴くやうにすることは出來ないでせうか、例へば之を封鎖が五割、現金が五割と云ふ風に致しますならば、仕事が非常に早く出來まして、進駐軍に叱られないやうに納期に間に合ふのであります、斯う云ふ點に付て是非とも御考慮を願ひたいと考へるのでありますが、どう云ふ風に考へられますか、御所見を伺ひます
それから是は我々の仲間では、進駐軍の方は丸進と申して居ります、それから復興の方は丸復、食糧に關しましては丸食と云ふやうな符號を付けて居るのでありますけれども、少くとも丸進、丸復、丸食等、復興事業、食糧問題に關しましては此の封鎖預金は、進駐軍用に於ては二割でありますけれども、復興用、食糧増産用に封しましても何割かの封鎖拂でなく現金で支拂ふ方法を御考へになつて戴けないものであらうか、例へば食糧問題に關係して農家の問題の實際を申上げますと、農家でも實際は金が今ありませぬ、併し一つの實例を申上げますと、一町五反歩から約二町歩位耕す所の農家に於きましては、どうしても一年に最低五挺の鎌が要るのです、此の五挺の鎌が公定でありますと十圓以下で買へますけれども、實際になりますと三十圓から三十五圓出さなければ買へない、所が其の金がありませぬので農家は已むなく之を米を以て取換へる、斯う云ふ現状であります、是は一つの例を取つたのでありますけれども、其の他の農業再生産用の農機具に對しましても、金がない爲に米や麥を以て取換へて行くと云ふのが、實際の今日の農家が農業再生産用機具を取入れる所の一つの方法になつて居るのであります、今日米の問題が非常にやかましくなつて居るけれども、是では米の横流しと云ふものは絶えませぬ、ですから農業再生産用の農機具を買ふ場合に於きましても、農家に對して幾分封鎖の支拂と云ふものを緩和して戴くやうにしてはどうか、斯う考へるのでありますが、大臣の御所見は如何でありますか、其の二點を御伺ひ致します
それから、私共にはどうしても呑込めないのでありますけれども、最近は新圓が五百億を突破して居ると云ふことを聞かされるいでありますが、一體今放出されて居る五百億以上の金と云ふものはどう云ふ方面に廻つて居るのでありませうか、私共中小工業者の立場から參りますと、實際現金と云ふものは持つて居りませぬ、非常に中小工業の發展がなければ、復活がなければ、躍進がなければ、日本は仕方がないと言はれながら、其の中小工業者の懷ろには現金がありませぬ、すると、此の五百億の金と云ふものはどう云ふ方面に廻つて居るのでせうか、例へば生産方面に廻つて居るのか、或は又闇屋さん方面に廻つて居るのか、當局は一體此の金がどちらの方面に廻つて居ると御推定なさるのでありますか、一つそれも御所見を承りたいと存じます
もう一つは今度の豫算に於きまして、是は自分の方のことを言ふので甚だ申譯ないと云ふか、寧ろ氣が引けるやうな感じも致しますけれども、重大な問題でありますから申上げたいと思ひます、今度の豫算に於きまして議員の歳費をどう云ふ風に御考へになつておいでになりますか、現在は御存じのやうに年三千圓でありまして、一箇月に割りますと二百五十圓であります、御存じのやうに今度の憲法に於きまして「國會は、國權の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。」此の立法機關に參畫して居る議員諸公が年に三千圓、月二百五十圓では、本當に調査研究と云ふものは私は出來ないと思ひます、議員にもつと十二分に調査研究をやらせるだけの餘裕を與へ、費用を與へてこそ、今後の議員の素質も亦向上するものではないかと考へて居ります、之に對しまして大藏大臣は今度の豫算に於きまして此の點を御考慮なすつておいでになるか、ならないか、此の點を聽きたいと存じます、以上御答へを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=27
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028・石橋湛山
○石橋國務大臣 中小工業の金融に付きましては御話の如き種々なる當業者に支障を與へて居る、從來支障を與へて居つたと云ふことを私も認めます、そこで先般原則として事業資金は貸出に依ることと致しました狙ひも、實はそこにある譯でありまして、之に依つて成べく事業資金はもう新圓だけ一本にしたいと云ふのが私の考へであります、唯金融のことは御承知のやうに餘り斷層を付けることは好ましくない影響もあると存じましたので、稍稍漸進的に行きたいと考へて居る次第であります、尚ほ併し特に進駐軍の註文の問題と云ふことで、差詰めには支障がありますのは、是は一々の具體的事實に付きまして御申出下されば又何とか處置が付くのではないかと考へて居る次第であります
それから農家の方のことに付ても、大體今中小工業に付て御答へがしたことで御答へになるかと存じますが、是も亦考へて居る次第であります
それから新圓が、詰り日本銀行の紙幣の發行が非常に殖えまして、それが何處にあるかと云ふことは、色々調査は日本銀行或は政府でも致させて居りますが、的確なる統計を取る譯には行きませぬが、兎に角最近の状況は各家庭に幾らかづつの現金、以前から見ますと相當多くの現金を持つて居ると云ふことは中々馬鹿にならない額でありまして、各家庭に滯留して居るものが相當の分ではないかと思ひます、それから特にどの方面と申しますと、例へば漁村などには相當滯留して居るのではないかと言はれる、又商業方面に於ても相當の滯留があるのではないか、斯う云ふ風に考へられて居る次第であります、何れにしましても左樣な滯留が起ると云ふことは健全な現象でないことは前々申上げた通りでありまして、之に付ての適當な處置を考へて居る次第であります
最後の議員歳費の問題は、金額のことは只今一寸色々な關係がありまして申上げ兼ねますが、是は法律の改正を要する譯で、今期議會に政府から提出する積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=28
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029・金子益太郎
○金子委員 さうしますと、今後の見透しとして、銀行よりの貸出しは大體に於て新圓に依つて貸出させると云ふ方針で居られますか、それから只今大藏大臣が申されましたやうに、放資された新圓が大體家庭の中にあるのでないかと云ふ御話がありましたが、假に家庭にありましても或は何處にありましても、是が預金となつて現はれて居ないと云ふ話を聞いて居るのでありますが、預金の方にはどの位新圓が廻つて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=29
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030・江澤省三
○江澤政府委員 今の御質問に御答へ致します、新圓預金は最近に於ては一時よりは大分増勢顯著になつて參りました、勿論十分とは申上げられませぬが、四月中の全國の銀行を例に取つて申上げますと、總額一千三百五十四億の中百三十四億の新圓預金がございます、是が五月に入りましてから總額千三百九十一億の全國銀行預金の中百六十九億の新圓預金になつて居ります、特に前月に於きましては新圓預金の増加は極めて僅かでありましたが、五月に於きましては前月に較べまして預金總額が三十七億増加して居ります中に三十四億の新圓と云ふことになつて居ります、數字上は大變好い結果になつて居ると思はれます、今後の施策如何に依ることでございますが、凡ゆる意味に於て新圓預金の吸收には最善の努力を盡さなければならぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 誤解があつてはいけませぬから今金子君の御質問にもう一つ付加へたいと思ひます、貸出事業資金は原則しとて貸出に依る、それは先程申上げましたやうに、狙ひは事業資金は全部新圓でやつて行くと云ふことにしたいのでありますが、金融措置は斷層的なことはいけませぬから、そこで漸次新圓の部分を弛めて行く、斯う云ふ方針で行きます、どうづ漸進主義だと云ふことは誤解のないやうに願ひます
尚ほ實際の動きを見て、適當な處理をして、産業上差支へないだけの處置はして行きたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=31
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032・金子益太郎
○金子委員 勿論一時にやることは甚だ危險だらうとは私も思ひますけれども、實際の地方に於ける銀行、金融機關に於きましては、只今大藏大臣が申された方向に果して向いて行くかどうか、實除は現金では一錢も貸しませぬ、融通して呉れませぬ、是では困るのであつて、どうか當局の方からさう云ふ重要性を持つ事業に對しては、漸進主義でありますから、今までは一錢も貸さなかつたものから二割乃至三割は現金で貸す、後は封鎖で、斯う云ふ風にやつて戴ければ途が開けて來るのではないかと考へて居ります、特に進駐軍の方は今申上げましたやうに、二割程度でありますけれども之を五割程度位までにやつて戴かなければ緊急の仕事に間に合はないと云ふことも一つ御記憶して戴いて、金融方面に其の趣きを達して戴けば、中小工業者の資材融資に非常な便利になつて參ります、どうか實際を申上げるのでありますから、其の點に適當な御施策を御願ひ致したいと思ひます
最後に戰時中、戰爭が終つたならば優先的に復業さしてやるからと云ふことで、整理された酒の小賣業者が、今澤山失業して居ります、是は私共の縣内に於きましても、各業者が商權の囘復の爲に猛運動を起して居ります、縣當局に於きましても、或は又税務署關係に於きましても、大藏當局が之を容認するならば、元通りにしても宜しいと云ふことを言つて居るのであります、當局の方では其の酒小賣業者の復權の問題に對しまして、どう云ふ御考へを御持ちでありますか、實際から言へば是はもう失業状態であります、戰時中は徴用に取られた者もありませうし、且又徴用でなくとも全然失業状態に陷りまして、今路頭に迷ふやうな者が澤山あります、勿論酒は少いと云ふことは分つて居ります、實際の所を申上げますと、其の殘された業者が、其の特權的な地位を利用して酒に水を割つて、水酒で賣つて暴利を貪つて居る者が澤山ある、是は最近私共の縣内に於きましても、色々殘された業者に對する所の一般消費者の不評がある、斯う云ふ點から考へても、且又失業問題の解決から言つても、其の戰時中に、無理矢理に整理された小賣業者の方々をもう一邊復業さして、さうして少くとも其の職業に對する所の安心感を増されると云ふことが、私は今日の人心に與へる大きな影響もあるのではないかと斯う考へて居ります、此の點に對しまして酒小賣業者の復權に對しまして、當局に於きましてはどう云ふ御考へを御持ちになつて居りますか、復權さして戴く御考へでありますか、又失業の儘で放置して置く御考へでありますか、一つ御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=32
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033・池田勇人
○池田(勇)政府委員 酒の小賣業者に付きましては、御話の通りに戰時中業者團體で相談の上整理を致しました、隨て其の際に實績等も賣却すると云ふ方法を執つて致したのであります、最近は先程御話申上げましたやうに、酒類の配給が非常に減つて參りましたので、今現存して居られる業者でも數が多過ぎるのではないかと云ふ氣持を持つて居るのであります、隨て廢業なさつた小賣業者を今直ちに復活すると云ふことは、只今の所考へて居りませぬ、既存の小賣業者が配給すべき酒を水割りをすると云ふ御話でございますが、若しさう云ふことがありましたならば、酒税法に規定がありますので嚴重取締りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=33
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034・金子益太郎
○金子委員 酒の量が少いから失業して居る方々に對して救ひの手を伸べることが出來ないと云ふことでありますが、併し實際から申上げますと、殘存業者に於きましても心ある人は、寧ろ整理された方々に對して、氣の毒だから、三斗の配給を受ければ自分は一斗にして、二人の人を復權さして、あとの二人が一斗づつ取つても此の生活の苦しみを共に分ち合ひたい、斯う言つて居る所の殘存業者が澤山あります、中には勿論復權すれば自分の賣れ高が減るから反對だと言ふ人もありますけれども、今日同胞愛が叫ばれて居る際に當りまして、殘存業者は其の整理された業者に對しまして非常な同情を持つて、若し當局が許すならば自分の持つて居る三斗を、自分が一斗にしてあと一斗づつ分けて與へて、さうして配給さしてやりたい、斯う云つた氣持で居ることは是は事實であります、此の點に對しましても一つ當局は、唯單に今賣つて居るものが少いから、更にそれを賣る人間を殖やしたのでは、今賣つて居る人間は困るぢやないかと云ふやうな御言葉がありますけれども、是は實際を知らない言葉であつて、實際の状態を知つて居る我々に取つては通用しない言葉だと考へて居ります、それから酒の業者が復權致しますならば、それは酒ばかりでなく昧噌、醤油其の他のものが賣れるのであります、其の爲に生活が辛うじて維持出來ると云ふ現状になつて來るのであります、ですから此の點は一つ十分に御考へなさつて、唯單に今でも少い、其の少いものを又殖やしたのでは殘存業者が困るではないかと云ふやうな、さう云つた考へ方でなくして、實際の状況から御考へになつて戴きたい、例へば殘存業者から、氣の毒だから殖やして戴きたいと云ふやうな陳情書が若し當局に出ましたならば、當局は此の失業して居る方々に對して復權させる意思はないか
それから水酒に付きまして、是は事實あるのでありまして、水酒を賣つて消費者にえらい迷惑を掛けて居るのが澤山ある、斯うした不正を働いた業者に對しましては、酒税法に於ては之を營業停止にするのか、どうするのか、私は酒税法の違反のことは存じませぬが、之に對してはどう云ふ御處置を執られるか、さうしたものは殘して置いて、さうして實際に於て無理やりに——業者と相談の上と言ひますけれども、戰時中に於ける所の整理と云ふものは決して相談の上ではありませぬ、是はもう強制的に其の當時の經濟警察と云ふものが之を廢めさして、縁故關係とか何とか云ふものを殘したと云ふことは事實であります、ですからさうしたことを考へますれば、殘つて居る方方も、氣の毒だ、若し當局が許すならば分ち與へても宜しい、斯う云ふ態度に出て居るのでありますから、此の點は今のやうな御答辯でなく、若し殘つて居る者と整理された者とが氣持好く相互ひにやつて行かうと云ふ氣合が乘るならば、當局は之に反對しないと云ふ態度を執つて戴けるかどうか、それから今申上げました水酒を賣つて二囘も三囘も警察に擧げられて居る者が、依然として殘存業者として酒を賣つて居ることが出來る、之に對して一體當局はどう云ふ御考へを御持ちであるか、廢めさせるべきものであるか、始末書一本か、罰金の二十圓か三十圓で濟まさるべき性質のものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=34
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035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御質問は二點でございますが、殘存業者から轉廢業者の復活を陳情した場合に認めるかどうか、此の點に付きましては酒税の保全、或は酒類の配給、色々な點から考へまして決めるべき問題だと思ひます、唯戰時中は強壓的に廢業させた、斯う云ふ御話でございまするが、各府縣に設けられました企業整備委員會の議を經て轉廢業者を決めて居る次第でございます
第二の水酒を賣つて居る營者があつたらどう云ふ處置を執るか是は規格違反に觸れ、隨て酒税法上はさう云ふことをやつた場合は免許を取消すことになつて居ります、併し一囘水を入れて水酒を賣つた人を直ぐ免許を取消すかと云ふことに付きましては、情状其の他に依つて考へなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=35
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036・石橋湛山
○石橋國務大臣 今の酒の小賣業者をどうするかと云ふ具體的問題は別としまして、是は御承知のやうに戰前に於ても中小商業の——地方に依りますけれども、非常に多過ぎてお互ひに生活が出來ない、是は東京あたりでは委員會が作られて、私なども始終呼出されて居つたが、どうして之を救濟するかと云ふことが絶えざる問題で苦しんだ、さう云ふ觀點から全體日本の經濟産業の建前から、地方の事情に依りませうが、假に今殘つて居る當業者が休んで居る人を氣の毒だと言つて之を救濟せられて、同じ商賣を又やらせると云ふことも餘程檢討して戴かないと容易に決め得ないことです、唯一時のことでなく、其の地方或は全國の産業をどう云ふ風に持つて行くかと云ふことで、政府も研究しなければなりませぬが、各地方に於ても御研究願ひたいと云ふこと、是は御答へと云ふ意味にもなりませぬが、併せて一寸私の意見を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=36
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037・竹田儀一
○竹田委員長 それでは本日の質疑は此の程度に止めまして、明日午前十時から續行致したいと思ひます、本日は是にて散會致します
午後零時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00219460704&spkNum=37
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