1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月五日(金曜日)午前十時三十分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 白木一平君 理事 河野密君
青木孝義君 小野眞次君
片岡伊三郎君 寺尾豐君
苫米地英俊君 村上勇君
金光義邦君 白井秀吉君
津島文治君 佃良一君
武藤常介君 上田清次郎君
海野三朗君 金子益太郎君
川島金次君 奧村又十郎君
東隆君 二階堂進君
喜多楢治郎君 伊藤幸太郎君
池村平太郎君
同日委員林虎雄君辭任に付其の補闕として奧村又十郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏參與官 柴田兵一郎君
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 江澤省三君
大藏事務官 河野一之君
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本日の會議に付した議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 開會致します、引續き質疑を續行して戴きます、簡單に願ひます——川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=1
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002・川島金次
○川島委員 昨日の大藏大臣の答辯の中に極めて重大な關聯事項がありますので、結論的に一言だけ申上げて置きたいと思ひます、それは昨日私の財産税に關する質問に對しまして、大藏大臣は財産税の徴收は前内閣では經濟界を現状の儘にして産業を再建する爲に行ふ方針であつたが、私は經濟界の整理と見合はせて徴收する考へである、斯う云ふ御答辯があつたのであります、私の御尋ね申上げたいのは、其の中の經濟界の整理と云ふことであります、最近大藏大臣に於かれましては此の言葉は數日來各處で屡屡言明されて居る點のやうに思つて居りますが、果して經濟界の整理とは如何なる内容を持つて居るものでありますか、一體それをどう云ふ形に於て實施するか、此のことに付きまして出來るだけ具體的に一つ御聽かせを願ひたい、斯樣に思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=2
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003・石橋湛山
○石橋國務大臣 御答へ申上げます、此の問題は中々影響する所が大きいものでありますから、確たる案が出來ました上でないと詳細のことを實は申上げることが困難でありますが、結論的に申せば、屡屡世間で問題になつて居りますやうに、平和産業復興の爲に第二會社を作りますとか、或は又同じやうな考へ方の色々な方法が他にもあらうと思ひますが、現在補償問題、其の他に依つて經理上種々なる支障があつて十分の活動が出來兼ねると云ふ企業に付ては、十分の活動が出來るやうに其の經理上の整理をさせる、又設備の上から申しましても、現在は十分に活動が出來ない設備が澤山に企業にありまして、さうして其の能率が低いのみならず、經理面に於てもそれが大きな負擔になつて居ると云ふやうな事業が中々多いのであります、さう云ふことを補償問題其の他と見合せまして、整理の方針をはつきり立てて參りたい、さうしますと此の財産税を取る上にも色々計算が變つて參りまして、其の變つた計算の上に財産税を取る、斯う云ふ行き方に致したい、さうして整理を行ひまして、それから財産税を取る、其の一聯の政策が一應行はれましたらば、後は經濟界全體が明朗になつて、確乎たる立場で以て起上る、斯う云ふことに致したいと云ふことであります、甚だ抽象的の御答へでありますが、先程申上げましたやうに、更にそれを詳細に申上げる段階にまだなつて居りませぬ、暫く此の邊の御答へだけで、甚だ御不滿だらうとは思ひますが御容赦を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=3
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004・川島金次
○川島委員 洵に抽象的で能く分り兼ねる點があるのでありますが、もう少し出來ましたならば「アウトライン」を御聽かせ願へないものでありませうか、もう少し突込んだ所を御聽かせを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=4
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005・竹田儀一
○竹田委員長 どうですか此の邊で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=5
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006・川島金次
○川島委員 序でに御尋ねしますが、此の經濟界の整理と云ひましても、單に經濟界の整理だけでは、是は中々困難ぢやないかと思ふ、政府自身の財政の整理と云ふものとも相當緊密な連絡を持つた事柄だと思ひます、自然さうしますと國債の問題、或は補償の問題と云つたことも當然關聯して來る事柄になる譯であります、さう云ふ方面とも關聯してもう一寸で宜しうございますから、もう少し具體的な話を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=6
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007・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話のやうに無論政府の財政にも關聯致します、併し是は近い時機に改定豫算案が御審議願へると思ひますが、之に一應直ちには關聯致しませぬ、唯若し關聯すると致しますれば、左樣に經濟界の整理が行はれれば自然甚だ困つたことでありますが失業者も現はれると云ふことは是は豫期せざるを得ないと思ふ、さふ云ふものに對しては今度の豫算にも相當の金額が色々な形で盛られます、それから尚ほそれをどう云ふ風に施行して所謂失業者受入態勢を作るかと云ふやうなことに付ては、厚生省方面にも強力に要求して、今立案をして貰つて居るやうな次第であります、さう云ふことの財政上から申しますと財政の全體の整理と云ふこともありますが、第一になさねばならぬことは經濟界全般の整理の爲に現はれるであらう失業者をどう云ふ風に受入れ、且つ其の勞力を生産の爲に能く利用するか、斯う云ふやうなことでありまして、さう云ふことに今考慮を向けて居る次第であります、それ以上のことは暫く御容赦を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=7
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008・武藤常介
○武藤(常)委員 私は金融緊急措置令、臨時財産調査令、價格調整補給金等に關しまして質問致したいと思ひます、政府の財政金融政策に付きまして、軍需補償の打切りと云ふ問題が擡頭致しましてから、國民が非常に不安に感じて居るやうでございます、政府は之に對しまして經濟安定本部が出來てからと云ふやうなことで、色々と明答を避けて居るやうに存じます、私は議會が一箇月も延びて開會されたことであるし、彼此れしますので、政府としては是等に對する所の方針は既に決定致して居るのではないか、然るにも拘らず此の明答を避けて居ると云ふことは、何かそこに事情があるのではないか、斯う云ふ風に考へるのでありますが、寧ろ之に關しまして率直に一つ我々に御示しを願つた方が宜しいのではないか、斯う云ふ考へを持つて居るのでございますが、之に關しましてどうぞ今日は一つ率直な所を御聽かせを願ひたい、斯う云ふ風に存ずるのであります
第一番に御伺ひ致しますことは、此の軍需補償を全然打切るのか、それとも或る程度は之を支給するのか、斯う云ふ風な問題であります、それでそれが或る程度支給するとするならば、其の内譯はどう云ふ方面にはどの程度の支給をする、斯う云ふことを漏して戴きたいと存ずるのであります
次に之に關聯致しますことは、封鎖預金の問題であります、何と申しましても軍需補償と封鎖預金の問題は密接不離な關係にあると思ふのでありますが、之に關しましては如何なる方針を御執りになられるか、先般來の御話に依りますると、生活費の問題で、或る程度生活費の方は増額すると云ふやうな話もありましたが、さうした小さな問題でなく、封鎖預金の根本の問題をどう云ふ風に御考へになつて居るか、斯う云ふことを私は伺ひたいのであります
尚ほ其の次は銀行の上から考へて見まして、國債と云ふものを今後政府はどう云ふ風に處理するか、之に對して將來はどう云ふ風な考へを持つて居るか、國債の扱ひ方に付きまして御方針を伺ひたいと存ずるのであります、只今申上げました是等の軍需補償或は封鎖預金或は國債、斯う云つた方面に段段手を觸れて參りますならば、物の形に於て所有して居る所の財産は、是は政府はどう云ふ風に扱ふか、御承知のやうにここ數箇月は相當換物運動が行はれまして、財産が相當物の形に依つて動いて居ります、是等を如何なる取扱に依つて此の均衡を得るやうにするか、是等の問題も伺ひたいと思ふのであります
尚ほ度々問題になつて居ります所の財産税は、軍需補償を支給しないと云ふやうな結果になりますると財産税と云ふものには相當の影響があらうと思ひます、さうした場合には如何程の所から大體課税の可能性があるか、斯う云ふことを伺ひたいものでございます、是等の點に付きまして、重要な問題でありますので、大臣の御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=8
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009・石橋湛山
○石橋國務大臣 御答へ申上げます、軍需補償と申しましても中々色々の廣い意味、狹い意味がありまして、世間で屡屡申しまする軍需補償と云ふのがある、それから又前内閣時代に商工省に委員が出來まして、其の支拂の方法を研究して居りましたのが所謂狹い意味の軍需補償と政府は稱して居るのであります、此の處理方法は委員會でも相當に嚴重に査定致しまして、極く僅か拂へば宜いと云ふ結論になつたやうであります、此の方面は隨て今大體世間の輿論も殆ど所謂打切に近いものになつて居る、其の他火災保險でありますとか色々なものがあるのでありますが、是等は私の考へでは往々に誤つて言はれるやうに、いきなり之を打切ると云ふことの影響は非常に重大でありますから、左樣なことは致したくないと云ふ考へで今處理法案を立てて居ります、此の點は多少關係方面などとも折衝を致さなければならぬ問題がありまして、そんなことでまだ最後案に到達をし得ない事情にあることを一つ御諒察を願ひたいと思ひます
それから封鎖預金のことも屡屡色々の機會に申上げましたが、是は無論或る時期に於て封鎖を解除し新圓一本に致さなければならんのでありますが、其の方針を以て進んで居る積りであります、是も併しながら財産税其の他が實行されました上でないとさう云ふ封鎖を解くと云ふやうな處置が執れませぬので、其の時期を待つて居る次第であります
それから國債の取扱は是亦中々難かしい問題でありまして、世間には國債を破棄しろとか、或は其の利子を下げろとか云ふ議論も色々ございます、財政上の觀點から申しますれば國家の負擔をそれだけ減ずる譯ですから、國債を破棄する、或は利子を下げると云ふことは便利でありますが、是は單に財政の側面からのみは考へられない事柄でありまして、國債の所有者の大部分は金融機關である、金融機關の資本であれば宜しいが、それと見合つたものは預金である、殊に預金部預金の如きは見合ふ資産としては其の大部分が國債であると云ふやうな譯でありますから、此の國債を輕率に取扱ふことは軈て一般大衆の預金に累が及ぶと云ふことになりますので、十分愼重に取扱はなければならぬ次第であります、是等も財産税其の他と見合ひまして考究をして居る譯でありますから、まだ具體的のことを申上げる時期になつて居りませぬことが、何とも遺憾至極であります、方針は只今申上げましたやうな方針で進みつつあると云ふことだけを御諒承願ひたいのであります
それからさう云ふ風な金錢上の資産は假に補償を打切ると云ふやうなことで、金錢上の資産に對して色々の打撃を與へる場合に、物に代つて居るものをどうするかと云ふ御尋ねであります、如何にも御尤もなことであります、是も財産税の徴收の場合に考慮をする積りであります
それから最後に萬一軍需補償打切と云ふやうなことになつたら、財産税は益益窮屈であらう、如何にも左樣でありまして、軍需補償の全面打切と云ふやうなことがありますと、是は國民の資産に非常な影響を及ぼして參りまして、殊に銀行の預金でありますとか、或は會社の株の價値と云ふやうなものに非常な影響を及ぼしますから、其の場合には財産税の收入は相當低くなると云ふことだけは覺悟を致さなければならぬ譯であります、併しさう云ふことでなく、財産税の相當の徴收は出來るやうな方法に行きたいと云ふ考へで案を練り、考究して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=9
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010・武藤常介
○武藤(常)委員 只今大臣の御答辯でありましたが、封鎖預金の問題は將來封鎖を解除すると云ふ風な御話でございました、是は非常に主要な問題でありますが、近き將來に全面的に之を解除すると云ふやうな御見込でございますか、どうですか
それから財産税は、大體の御方針は伺ひましたが、總額的に凡そどれ位の見込が立つかと云ふことを承知することが、國民としては非常に安心の行くことであると考へて居るのであります、もう相當御調査も進んだことと思ひますが、概略的の金額はまだ御分りにならないのでございませうか、之を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=10
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011・石橋湛山
○石橋國務大臣 第一の封鎖預金の解除でありますが、是も何もかも財産税に繋がるのであります、其の財産税を取りました其の取り方に依るのでありますが、御承知のやうに、日本の銀行預金は比較的少額なものが多いのであります、でありますから、財産税、例へば一萬圓の資産から取る、或は三萬圓から取る、五萬圓から取るかと云ふことに依つて預金に及ぼす影響が非常に大きい、下の方から取れば預金に課税が多く課かつて來る、斯う云ふ結果を示す譯であります、ですから財産税が高額の所だけ取つて下の方を取らないと預金が相當に殘ると見なければならぬ、さうしますと現在の封鎖預金と云ふものが大分殘りますから、其の時に實際に當つて見なくては實は分ならい、其の時の一般の經濟状態其の他と見合せなければ豫め豫定は出來ませぬが、寧ろ封鎖預金が非常に澤山に殘ると云ふことになりますと、財産税を取つたからと云つて直ぐに封鎖を解く譯には行かないかも知れない、併し是は私の希望としては解くと云ふ方向に行きたいのでありますが、封鎖預金の殘る工合に依りましては即座にと云ふ譯には行かなくて、尚ほ若干の時間を掛けて日本の經濟がもう少し安定してから解かねばならぬと云ふことになるかも分りませぬ、それから財産税がどの位取れるかと云ふ御尋ねでありますが、是も免税點とか、控除額とか云ふものに依ります、それから今申しましたやうな補償などの取扱ひ方に依りまして財産税は多くも取れるし少くも取れるやうになると云ふ譯でありまして、色々の場合を想像致しまして金額は或る程度計算をして居る譯であります、正確に幾ら幾ら取ると云ふことは全體の問題が固まりませぬと決定が出來ない次第であります、多く見れば始まりの前内閣時代の計畫のやうに九百億圓と云ふやうなことも考へられる、それから場合に依つては非常に少く五、六百億圓程度と云ふやうな範圍になるやうであります、殊に此の財産税の中でも前の計畫では財産税、財産増加税、法人戰時利得税等があつたのでありまするが、それ等に付ても補償問願等の取扱ひ方如何に依つて、例へば法人の方面は取れないとか云ふやうなことも起りますので、根本の問題を一つ片附けませぬと財産税が幾らかと云ふ確たる計算が付かない譯であります、大體の範圍は五、六百億圓から一千億圓足らずの間で動く、斯う云ふ風に御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=11
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012・武藤常介
○武藤(常)委員 只今伺ひましたので、極めて幅の大きい問題ですが、將來に御願ひするとしまして、第二番には價格調整補給金に關して御伺ひ致したいと思ひます、此の價格調整補給金は極めて技術を要する、要するに技術的な方面に亙つて居ると存ずるのでありますが、政府の低物價政策を維持する上に於て斯うした技術的の方法に依つて進みますことは經濟的に行詰りを來し、どうも二進も三進も行かぬと云ふやうなことになつて來るのではないか、斯う云ふやうに私は考へて居るのであります、之に對しまして實は此の價格調整補給金の將來、今後の實施の大體の見透しを伺ひたいと思ふのでありまするが、取敢ず最近麥を愈愈買上げるやうになるやうでありますが、此の麥の價格も新聞紙上に依りますると、生産費が大體公定價格の五倍位掛つて居る、斯う云ふことになつて居りますので、此の買上は先般の聲明に依ると奬勵金と云ふ建前に於て買上げる、斯う云ふことでありますので、其の奬勵金の額たるや相當の額に上るであらうと、斯う考へますが、是等は一體どう云ふ風な部面の經費を以て是等に充當するか、是等は又價格調整補給金とやはり關聯を持つものであるか、斯う云ふ風なことを考へる時に、此の調整補給金と云ふものは、是は實に將來容易でない問題になつて來はしないか、斯う云ふやうなことから之に對する根本方針を一つ御伺ひ致したい、斯う云ふ風に存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=12
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013・石橋湛山
○石橋國務大臣 價格調整補給金は、斯う云ふものに依りまして價格を調整して、さうして物價を、表面上消費者價格を安くすると云ふ行き方は現在の所では已むを得ない處置でありますけれども、無論不自然なやり方であります、關聯する所が非常に廣く、農産物から工業製品、非常に多いものでありますから、急に價格調整補給金を廢めると云ふやうなことは今の所では出來ませぬけれども、漸次是は廢止して自然の價格の調整に任せると云ふ方向へ行きたいと云ふのが大體只今の我々の考へ方であります、無論例へば肥料でありますとか云ふやうな、特に國家として重要なものに付きまして特別な價格政策を行ふ、或は生産に對して何等かの處置を行ふと云ふことは、是は以前から、所謂純然たる自由經濟時代に於ても行つたことでありますが、さう云ふ風な處置は今後も政府として執らなければならぬと思ひますけれども、大體の方針は價格調整補給金は漸次廢止して行かう、期う云ふ意向であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=13
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014・武藤常介
○武藤委員 價格調整補給金の點に付きましては大體御方針を伺ひましたが、次に伺ひたいのは政府の「インフレ」防止の所謂低物價政策と云ふものは、どの程度に之を防止すると云ふ考へであるか、斯う云ふことに付て實は御伺ひ致したいのでありまするが、最近郵税の増額、或は煙草の價格の引上げ、それから鐵道の運賃等も上るやうに承知致して居りますが、殊に煙草の如きものは大體三倍以上になると云ふのでありまして、煙草専賣法が始まりまして以來未だ曾てない所の急激なる暴騰であります、斯樣なことを行ひますことは、政府が眞に低物價政策を堅持すると云ふ建前から見ますると、一般大衆は非常な誤解を以て、政府の方針としては寧ろ「インフレ」的に行くのではないか、斯う云ふ風なことに考へられ勝ちでありますけれども、要するに斯うした嗜好品であるとか、或は郵税であるとか云ふやうなものは、是は額にしては少額でありますけれども、要するに物價の「バロメーター」のやうなものでありまして、是が諸物價に及ぼす所の影響と云ふものは蓋し甚大なるものがあると私は考へるのであります、斯樣な點から、何が故にああした方面に特別の處置を執つたのであるか、是が爲に最近生活費の五百圓の問題も非常に一般大衆は脅威を感じて居る、斯う云ふ風な状態でありますので、此の根本方針に付きまして御伺ひ致したいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=14
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015・石橋湛山
○石橋國務大臣 今日の物價、是は公定價格、それから所謂闇價格、さう云ふものが全體として、實際に我々の生活に現れて居る物價水準と云ふものが何處にあるかと云ふことは、實は公定價格があり、闇價格があり、本當の「マーケット・プライス」と云ふものがはつきりしないものですから確實にすることが出來ないのであります、併し現在の實際の物價の状況が限界價格とか或は公定價格に現はれて居るものが本當の物價でもないし、所謂闇物價に現はれて居るものが本當の物價でもない、其の中間にありますか、何處か其の邊の兩方の間に日本の實際の物價水準と云ふものはあると私は考へて居ります、今後それを下げるかどうかと云ふ問題でありますが、私は是は必ずしも下げることは必要でもないし、又下げることが必ずしも宜くないですから、現在の物價水準に於て之を安定すると云ふことに行きたいと斯う思ふのであります、所謂低物價政策を採れないと云ふことは、是は必ずしも高物價政策を採ると云ふ意味ではありませぬ、どんどん上げて宜いと云ふ譯ではありませぬけれども、之を下げると云ふ方針は今のところ採れないと考へて居ります、そこで物價を安定させると云ふ方向で種々の所作を行つて行きたい、無論近く經濟安定本部が出來、物價廳が出來ますれば物價問題の決定は此の方面でやらなければならぬのでありますけれども、私共各省の豫算を擔任する者としては尚ほ安定本部等とも將來話合をする積りで居ります
そこで煙草の値上げに付ての御尋ねでありますが、是は各方面の意見を徴したのであります、無論直接の目的は國庫の歳入を殖やしたいと云ふことでありまして、前内閣時代からも計畫して居つたことでありますが、之を尚ほ私參りましてから再檢討を致しました、各方面の意見も徴しました、現在の物價水準は先程申上げますやうにはつきり致しませぬけれども、大體の見る所から申して今囘の煙草の値上げは現在の物價水準から見て不當のものではない、斯う云ふ風な結論に到達しました、さうして値上げを致した次第であります、煙草を値上げしたから今後物價がどんどん上る、上げると云ふ意味ではなく、寧ろ煙草の値段を現在の物價水準に近付けた、斯う云ふ意味で値上げをした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=15
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016・武藤常介
○武藤(常)委員 此の煙草の値上げ、其の他の値上げに付きましては大臣の御考へも我々と一致する點も相當ありまするが、兎に角一般大衆が今五百圓生活に惱んで居る時に官製品を率先して上げると云ふことには私は相當の疑問があるのであります、尚ほ餘り長く一問一答致しましても、あとの方の質問も大分あるやうでありますから、私の質問は一應是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=16
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017・竹田儀一
○竹田委員長 それでは喜多君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=17
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018・喜多楢治郎
○喜多委員 私は大藏大臣に御尋ね致したいのであります、先づ第一は遊興飮食税撤廢の御意思なきや否や、併せて中華人、朝鮮人經營飮食店舖の遊興飮食税徴收状況を御尋ね致したいと思ひます、遊興飮食税課税の始祖は申すまでもなく贅澤な飮食に對する懲罰的意義を多分に含んで居たのではないかと思ひますが、食糧不足の現下贅澤な飮食は求めて得られず、最早此の意義は完全に消滅し去つたのであります、一昨日政府が金融緊急措置令外十一件の承諾を求められた際の説明の中にも、從來の遊興飮食税の高率を大幅に引下げられ、竝に複雜なる三階級徴收を改められまして、單一減額の斷行を決せられましたことは此の邊の實情を勘案せられた策と思考致しまして滿腔の敬意を以て贊成する者であります、併し私は政府が更に一歩進んで飮食税の全面的撤廢を採擇されんことを切に強調する者であります、一般民衆の食生活は極度に逼迫し、飮食を外に求めまする傾向は急速度に上昇しつつある現今、飮食税の撤廢に依つて民衆の生活負擔を輕からしめることは最も時宜を得た措置と確信するものであります、又一方税徴收上の事務的煩雜を極めて居ります税務當局の業務處理上竝に飮食店業者の事務的煩雜をも省略し得る效能も亦甚大であります
尚ほ近時勃興致して居ります自由市場飮食店及び中華人、朝鮮人の經營する飮食店の飮食税徴收の不徹底と、惡徳業者の馴合ひ脱税と、税著腹行爲は全面的に浸透しつつあると思ふのであります、現下斯かる不正業者と正直業者との精神的物質的不均衡及び一部の第三國人の專斷横行的自由營業に依りまして、善良なる日本産業の蒙むる影響等を考慮致しまする時、百尺竿頭直ちに遊興飮食税の撤廢を斷行することは當然採られねばならぬ策と私は思考するのであります、此の點に關し大藏大臣の御所見を承りたいのであります
竝に申加へたいことは、此の措置に依りまする税の減少を如何にして補填するかと云ふ問題でありますが、飮食店に配給しまする酒類の公價の引上げに依つて、税は寸毫も脱せらるることはなく、中華人、朝鮮人飮食店からも完全に徴税し得、更に酒飮みに税の轉嫁の實を擧げる一石二鳥の得策であります、尚ほ此の際特に參考の資料と致しまして、現在中華人、朝鮮人經營飮食店の徴税状況を詳細に承りたいのであります、以上の質問に對しまして大藏大臣の御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=18
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019・石橋湛山
○石橋國務大臣 遊興飮食税の課税状況等に付ては後で政府委員から御答へ申上げますが、御説は洵に御尤もであります、我々も此の税に付ては考へて居ります、唯本年度に於てはまだ税制を全般的に改正する時期でないと我々は考へて居ります、是はもう少し状況が安定しましたら、來年に於きまして税制の根本的の考へ直しをして見たい、今年は種々なる點で不滿足でありますが、さう云ふ意味で遊興飮食税も他の物品税等との關聯上、或る程度は殘さなければならないかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=19
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020・池田勇人
○池田政府委員 遊興歓食税の徴收竝に殊に中華人等に對しまする課税徴收の状況に付て御答へ申上げます、遊興飮食税に付ては脱税が相當行はれると云ふことはよく聞き、又自分としても或る程度さう云ふことがあることは考へて居ります、只今では脱税を防止する爲に、組合等を利用致しまして極力防止に努めて居ります、中華民國人或は朝鮮人、臺灣人に對しまして、遊興飮食税は洵に遺憾ながら不徴收に陷る場合が多いのであります、此の點は聯合國司令部にも交渉を致しまして、適正に徴收すべく目下努力を續けて居ります、中華民國人其の他の第三國人が納税義務があるかないかと云ふ點に付きましては、聯合國軍司令部の「スポークスマン」が二囘に亙つて言明されて居るやうに、向ふの軍人或は其の麾下の者でない限り一般の商人は目本人と同樣に課税せられることは當然のことであるのであります、此の當然のことが十分に行はれないことは我々として洵に遺憾でございますが、今後努力致しまして徴收するやうに致したいと考へて居ります
尚ほ遊興飮食税の撤廢の代りに政府の財源として業務酒の價格を引上げて減收を補つてはどうかと云ふ御意見のやうであります、一應御尤ものやうでありますが、業務酒は將來相當減ぜられることと思ひます、又今料理店其の他に行つて居る部分は必ずしも配給の酒だけに限つて居りませぬ、隨て御意見の點は相當考究を要するのではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=20
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021・喜多楢治郎
○喜多委員 質問に對しましての御答辯は大體諒承致しました、飮食税問題に對しましては、將來に對して大いに大藏大臣も考究すると云ふやうな御言葉でありましたから、之に依りまして第一段の質問は打切りたいと思ひます
第二は併せて税制問題でありますが、特別行爲税撤廢と物品税課税對象の統一の御意思ありや否やを御伺ひ致したいと思ひます、戰爭中不均衡に吊上げられました特別行爲税の如きは民衆日常生活に影響多く、且つ脱税の弊害も伴ひ易きに觀察せられまして、施行無意義と考へられる譯であります、此の際一擧に撤廢を斷行し、民衆生活安定の一助とされたいのであります
次いで物品課税對象の統一であります、物品税が品物に依つて生産者課税とし或は小賣業者課税と區々でありますことは、是れ亦非常に徴收手續の上に於きましても弊害が多いのではなからうかと思ふのであります、徒らに業者竝に税事務取扱者の税處理を煩雜に致して居るのみでありまして、是は速急に小賣業者課税を撤去し、生産者課税一本に統一することが最も當を得た措置ではないかと思ふのであります、特別行爲税撤廢と物品税課税對象の統一等に對する大藏大臣の御所見を承りたいと思ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=21
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022・石橋湛山
○石橋國務大臣 特別行爲税及び物品課税に付ては私も喜多さんと大體同意見でありまして、さう云ふ方針で今研究をやつて居りますから御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=22
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023・喜多楢治郎
○喜多委員 第二の質問を打切りまして、第三の御質問をさせて戴きたいと思ひます、事業資金の封鎖引出證明を事業團體責任者になさしむるやうな御意思なきや否やであります、金融緊急措置令施行に依りまして、中小商工業者は持たざる者と持てる者、正しからざる者と正しき者との跋行に依つて經濟的に動搖困憊にあるのでなからうかと思ふのであります
〔委員長退席、河野委員長代理著席〕
新日本建設の曙光は中小商工業の確固たる發展に依つて明け染めらるべき事實に照しまして、事業資金の不圓滑は速急に除去し、正しき中小商工業者を救ふべきではないかと思ふのであります、去る二日の本會議席上で大藏大臣は金融措置令に對する御答辯中、中小商工業者は資金に困つて居ないのではなからうかと云ふやうな御答辯がありましたが、是は實状の認識を缺いた偏見であると私は思ふのであります、措置令發令當時相當の「ストック」品の手持業者は藏相の御觀察通り困つて居らないやうな次第で、寧ろ偏在して居るのでなからうかと思ふのでありますが、是は過渡期に於ける部分的現象でありまして、之を以て中小商工業者全體を律することは當を得ないと思ふのであります、例を東京の酒類販賣業者に取りますならば、酒類配給登録世帶數を多數持ち、尚ほ別に副業的經營を致して居ります業者は別と致しましても、地域に依り配給登録世帶百未滿の僅少の業者も居ります、是等は極度の資金難に陷つて居るやうな現状である、又大阪の酒類販賣業者の例に依りましても約三千の業者中、酒類販賣業の兼業者は千二百ありまして、專業者は千八百であり、其の大半が酒類專賣者でありますが故に、一箇月平均一世帶三、四合程度の酒類配給利潤に依存して、零細な生計を立てて居ります實状、是等業者は營業資金竝に生活資金に窮し果てて居る譯であります、一歩過てば不正配給、闇賣行爲を犯さんとする、四苦八苦將に瀕死の重態に喘ぎつつあるのであります
〔河野委員長代理退席、委員長著席〕
尚且つ良心的營業の繼續に敢然と踏止つて居るやうな實情であります、此の跋行的傾向は恐らく他業界中小商工業者類似の問題であると私は觀察致して居るものであります、此の窮状を救ひ再建日本の原動力たる中小商工業の發展を助長する爲には、事業資金封鎖解除の合理的緩和を策する以外途なしと斷ぜざるを得ないのであります、此の絶對施策は現行金融緊急措置令施行規則第六條の二第一項事業資金の封鎖預金引出證明書發行者市町村長とあるのを事業團體責任者の證明と改め大藏省又は日本銀行本支店の承認書を要せずと變更を斷行することであります、但し此の場合の事業團體は本省又は監督官廳公認のものに限定する必要があると思ふのであります、此の施策實施に依りまして從來市區町村長に於て把握し得なかつた個々の營業の實體を正確に掴み、事業資金必要の眞僞を確實に認定し得られ、不正申告は完全に摘發可能となり、斯くして有效資金の明朗圓滑運轉が期待出來るのではなからうかと思ふのであります、此の點に對しまして大藏大臣の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 中小商工業者の金融に付きましては、政府としましても、實際に其の仕事をやられる生産に活動される向に對して資金の困難を來さないやうに、十分の注意を致して居る積りであります、併し個々の場合に於て、末端の金融機關等の處置が適當でなく、困難を與へて居ると云ふ向がありますれば、それは其の個々の場合に付て適當の處理を致したいと考へて居ります、唯今の御質問の御趣意を伺ひますと、酒類配給業者等の例に依つての御話を伺ふと、一寸斯う云ふ風の感じが致すのであります、それは詰り營業の縮小をして、さうして生活が困難になつて居られる、資金の廻ることが足りない、詰り營業が盛んであつて其の資金が足りないと云ふのではなくて、營業が縮小して、さうして生活が困難になつて居られる、それが資金の圓滑を缺いて居ると云ふことと一緒になつて居るやうに思はれます、私の相像が間違つて居れば訂正致しますが、若しも私の一寸伺つた感じのやうに、營業が縮小して其の爲に實は困難をされて居ると云ふならば、是は日本全體の中小商工業の爲に、資金難だけぢやない、もつと根本的に問題を考へ直して、政府としましても當業者の團體、其の他に於きましても此の中小商工業者が本當に生きて行く途を探さなければならぬのではないか、斯う云ふ風に存ずるのであります、本當に生きて行く場合に、中小商工業者が生産配給等に必要な資金は、是は出來るだけの便宜を與へたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=24
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025・喜多楢治郎
○喜多委員 懇篤な御答辯で有難うございますが、私の御尋ね申上げたいことは、勿論酒類販賣業者にありましては事業資金竝に生活資金の兩面に亙りますが、凡ゆる事業部面に於てさう云ふことがあります、唯封鎖預金の引出しの場合に於ての證明のやり方が實態を掴んで居ない、之を市區町村とか銀行とか云ふものの代りに、其の業に關係ある事業團體に證明を取らしめ、尚ほ愼重を要するならば 其の上に銀行でやらせる、此の證明書の發行個所を、最も實態を掴み得る事業資金と生活資金との兩面に精通して居ります事業團體の方面から證明を取らしめると云ふ方法にして貰つたらどうか、斯う云ふことを御尋ねして居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=25
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026・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は尚ほ能く研究致しまして、然るべく取計らひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=26
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027・喜多楢治郎
○喜多委員 どうぞ御研究を願ひます、では大體明快となりましたから、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=27
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028・竹田儀一
○竹田委員長 小野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=28
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029・小野眞次
○小野(眞)委員 大體私の質問致したいと思ふことが前の方から質問を濟まされましたので、殘された問題に付きましては簡單に、大藏大臣でなくとも結構でございます、他の方から御答辯を戴きたいと思ひます、昨日の御答辯の中にもございましたやうに、戰災者及び復員者の家の修復、及び建築の爲に五千圓と決めて居つたのを一萬圓にした、それは何時から實行されて居るのでありますか、或は又事業資金を在來の方法から變更して、金融業者の貸出に依ると云ふことに變更した、それは何時から實行されることになつて居りますか、先づ其の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=29
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030・江澤省三
○江澤政府委員 今御話のありました封鎖預金一萬圓の戰災者の引出し及び事業資金の預金引出しを融通に依つてする、是は六月の二十一日から實施して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=30
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031・小野眞次
○小野(眞)委員 金融緊急措置令と云ふのは憲法第八條に依りまして、議會が閉會中で國民の意思が聽けない時、即ち議會のない時に已むを得ざる手段として行ふ方法で、是はまあ釋迦に説法ですが、其の時に行ふ方法であるとしますならば、其の内容に重大な變更を來す場合に、それを議會の開會中議會に諮らずに行はれると云ふことは果して違法ではございませぬでせうか、是は私全然知識がないのですが、それに對する政府御當局の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=31
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032・石橋湛山
○石橋國務大臣 私も質問者と同樣に餘り法律のことは知りませぬが、緊急措置令と云ふものが現在ありまして、其の取扱ひ方法の改正でありましたから、そこで大藏省だけの告示で行つた譯であります、其の内容は御承知のやうに一番大きなものは、事業資金は新貸出に依る、是は原則として左樣に致す、是は先般或る場合に申しましたやうに、色々の事業資金が最も必要な方面に、生産活動の最も能く行はれる方面に流れて行くやうに、單に預金があるからと云つて、それだけで以て實際は餘り生産が行はれて居ないに拘らず、そこに資金が注ぎ込まれると云ふことの弊を成べく除去致したい、斯う云ふ考へ方で取扱ひ方を變へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=32
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033・小野眞次
○小野(眞)委員 内容それ自體は私改善であると思ひます、國民の要望に應へた改善であつて、内容自體に不服を持ちませぬ、唯併し改められると云ふこと自體が必ずしも適法であるかどうかと云ふことに付ては、私疑問を持つて居るのであります、例へば五千圓の封鎖引出しを一萬圓に改訂したと云ふことは、之を極端に、もう少し範圍を擴げて封鎖預金を全然なくすると云ふことにしたらどうなるか、新圓まで封鎖するのだと云ふことになると、金額の擴張から性質の變更にもなります、金額を極度に擴張した場合には、性質の變更になるのだと云ふことを考へます時に、どの範圍までが大藏當局の裁斷に任し得られるのか、そこに疑問を持たれるのですが、其の線をどの邊に引かれるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=33
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034・江澤省三
○江澤政府委員 今御話がありましたのは、法令の精神に反しないと云ふ限度に於て任される、斯う解釋して宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=34
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035・小野眞次
○小野(眞)委員 法令に反しないと云ふことを判定する者が誰であるかと云ふことが問題であります、大藏當局が法令の精神に反しないと云つて大藏當局の獨斷を以てやると云ふ所に總ての問題の禍根がある、大藏當局が單に之を法律の精神に反しないと云ふことに依つて、其の獨斷に依つてのみ一切のものを賄はれ得ると云ふことになりますならば、何時もそこに色々の事件が發生すると思ふが、それは一體誰が判定をしたのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=35
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036・江澤省三
○江澤政府委員 此の點は甚だ御尤もと思ひますが、社會通念に照らしまして、此の程度は内容として認められると云ふことを標準に致しましてやつて參りました、色々の解釋があらうと存じますが、私は左樣に信じて致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=36
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037・小野眞次
○小野(眞)委員 社會通念の問題ですが、大藏當局の社會通念と考へるもの必ずしも國民の意思と相一致するものでないと私は思ひます、併し是れ以上は水掛論でございまして、私質問を續けようと致しませぬが、然らば今日更に議會開會中に、此の勅令の内容をもつと大藏當局に於て修正されることが出來得るかどうかと云ふことを御聽かせ願ひたいと思ひます、例へば此の間中委員の諸君の意見を聽きますと、五百圓生活は物價騰貴に依つて絶對に出來ないのだと云ふことが多數のやうでありますが、是は此の勅令を生かして置いた儘で、五百圓生活の條件が撤廢出來得るかどうかと云ふことに關する御當局の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=37
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038・江澤省三
○江澤政府委員 是は省令告示の改正で、勅令の内容に違反しないと云ふやうなものに付きましては、當然出來得るものではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=38
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039・小野眞次
○小野(眞)委員 抽象的な御答へでなしに、五百圓生活の撤廢と云ふことがあなた方の權限内で出來るかどうかと云ふことを御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=39
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040・江澤省三
○江澤政府委員 是は甚だ抽象的になりますが、法制上は是は撤廢も出來ると思ひます、併し具體的の問題として屡屡大臣も申上げましたやうに、現在急にどう斯うと云ふことは出來ないのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=40
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041・小野眞次
○小野(眞)委員 私の御質問申上げたのは法制上の問題であつたのでございますが、法制上それが出來ると云ふことでありますならば、私は其の次の御質問を申上げたいと思ひます、私は此の金融緊急措置令と云ふものは、是は只今質問の形で申上げることは甚だ不適當でございまして、次に申上げたいと存じたのでございますが、委員長の御注意を戴きまして此の際質問の形を用ひた訳であります、併し本當を言へば、結論から申上げますならば、私は此の五百圓生活の撤廢を主張する、其の撤廢を主張する一つの方法と致しまして承認を御斷り申上げたいと云ふ意見を持つて居ります、それに依つて更に新たに政府の方で適當な再出發を御願ひしたいと云ふことを考へて居るものであります、無論私は二月に此の金融措置令が生れた時には、是は當然やらなければならぬ緊急措置であつたと考へます、色々の議論はございました、而もあの時に此の措置令に依つて事業の伸展を阻碍したものも多々あつたと思ふのでございますが、それにも拘らずあの時の經濟状態を考へて、若しあの措置令が出なかつた時の混亂状態を考へますならば、それは非常なことであつたらうと思ふのでありまして、あの措置令を出されたことに對して、私達心から感謝の意を表するに吝かならぬものであります、隨て其の當時出されたと云ふこと自體に、反對の意見は持たないのでありますが、其の後今日まで五箇月、六箇月、此の事情の變轉を考へますと、今日に於ては其の内容に於て全く不適當な状態になつて居る、それは私が申上げるまでもなく、昨日からの質問の悉くが、此の措置令の内容が、今日の經濟情勢に照して如何に不適當であるかと云ふことのみを御當局に迫つて居るやうであります、たつた一つの例でございますが、例へば私は機帆船事業をやつて居ります、御承知のやうに日本の船舶は百「トン」以上の船は聯合軍の方から色々の監督を受けまして、百「トン」未滿の船に依つて日本の沿岸の、例へば石炭であるとか、食糧品であるとか、木材であるとか、石灰石であるとか云つたやうな重要物資一切を運んで居るのでございますが、其の重要物資を運ぶ機帆船が、事業資金の貸出し一切を停止されて居る爲に全く動かない其の爲に此の金融措置令の出た當時から今日まで洵に苦しい事業を續けて居るのでございまして、殆ど動いて居ない状態に置かれて居るのでございます、是は私の關係して居る事業だけで、大藏大臣の方へは別に願書を差出して居ると思ひますが斯う云ふものが澤山ございます、此の爲に増産の爲に當然考へなければならない澤山の事業が、停滯を餘儀なくされて居ると云ふことの事實は、是は大藏大臣初め御當局が能く御承認下さつて居ることであると思ひます、今日までは經濟界の混亂を防ぐ爲に多少生産の隘路をなすことがあつても、それは已むを得ざることとして認めて居つたのでございますが、今日では此の緊急措置令を置くと云ふことは、どの點から考へても大した利益がない、寧ろ生産を阻碍し、其の他國民生活に害を與へる、其の功罪を比較した時に、今日では害の方が大きくなつたのでないかと思ふのでございます、國民生活の面を考へましても先程どなたか質問されましたやうに、煙草は値上げされる、郵便の料金は値上げされる、近く鐵道の運賃も價上げされる、又政府が公許する例へば藥の如きものは非常な公定價格の引上げをやつて居る、昨日か一昨日かの新聞を見ると齒醫者に參りますと白金一本が五百圓、金冠が三百圓、燒物でも何百圓か取られると云ふことである、それは封鎖で行けると云ふのは官廳の話でございまして、實はお醫者さんは封鎖では取つて呉れない、我々が旅行する時に、六大都市の旅行は一日四十圓だと大藏當局は決定されて居る、それは承る所に依りますと、大藏當局が實際に旅行された所が四十圓で十分だつたと云ふことを聞いて居りますが、若し果してさうであるとしますならば、實に其の實情を知らざるの甚だしいものでございまして、今日四十圓 五十圓、八十圓で一日旅行の出來得るのはどの社會にもない、ありとすれば唯大藏當局のみだと私思ふのでございます、日本人には他にはございませぬ、さう云ふ状態でございまして、もう五百圓と限定されたならば國民生活は絶對に出來ないと云ふことになつて居る、今日までは五百圓と限定されましても、或は賣食ひをするとか、色々の方法で免れて來られた、此の間私大阪か何處かの官廳の組合の要求を見ますと、一箇月一人の給與が千百四十圓貰はなければ今日生活が出來ないと云ふことを要求して居る、是は大阪市の職員組合であつたと思ひますが、當局も、此の要求は尤もだと思ふ、それだけなければ生活出來ないと思ふが、大阪市の財政が如何とも出來ないから要求に應じられないと云ふことを言つて居る、言ひ換へますならば、大阪市の財政さへ許すならば、今日の大阪市の職員の生活はそれだけ要ると云ふことを大阪市の當局すら認めて居る、五百圓で生活出來ると云ふことは一體何處から出て來る、私は此の五百圓と云ふ限度を拵へた爲に、國民の生活を出來るだけ節約せしめて、以て「インフレーション」の進行を阻止し得ると云ふ程度の時には是は必要だつたと思ふ、所がもう五百圓の限度では絶對に生活出來ない、「インフレーション」と云ふやうなことを考へる餘地がない、色々の惡いことをして生活をしなければならない、而も其の惡いことにも限度があるんだと云ふことになりますならば、それは政治でないと私は思ふのであります、次に來るものは何であるか、私は恐ろしい結果が來るのではないかと思ふのであります、此の間中大藏大臣の御答辯を承りますると、是は適當な機會に封鎖を切るんだ、五百圓生活を廢めるんだと云つたやうな御答辯でございますが、私は此の適當な機會は今日只今だと思ふのであります、其の適當な機會に付ての色々の御意見、大臣は專門家としての立場から、色々難かしいことを考へられる、他の面の知識があり過ぎて、其の知識が御邪魔をされて居ると思ふ、國民生活は正に其の時機に達して居る、之を一日延ばせば茲に國民生活の大破綻を來すと云ふ憂ひがあると思ふのであります、今日勞働者、特に勞働組合が要求して居るあの金額を見ても、五百圓で如何にして生活され得るのであるか、もつと遠慮なく申上げますならば、御列びなされて居る大藏大臣初めと致しまして、皆樣の中で一人と雖も五百圓で生活されて居る人があるかどうかと云ふことを私御尋ね申上げたい、さう云ふ意味に於きまして、私は今日只今こそ此の制度の撤廢を御願ひしたいと思ひます、是は質問の形を取るのでございますが、併し先程の御答辯に依りますると、それは私は憲法第八條の規定に依つて此の承認を御願ひする以外にさう云ふ方法がないと考へたのでございます、議會開會中はそれ以外の方法がないと考へたのでございますが、先程の御答辯に依りますと、議會開會中と雖もそれは法制的に御當局の獨斷を以てなし得ると云ふことでございますので、然らば私共は之を承認すると云ふことに致しましても、さう云ふことを直ちにやつて戴きたいと存ずるのでありますが、それに對する御當局の御答辯を御願ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=41
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042・石橋湛山
○石橋國務大臣 五百圓の後の收入を封鎖すると云ふことは、必ずしも五百圓で生活しろと云ふ意味ではなく、家族があれば、非常に足りないでありませうが、一人百圓づつの封鎖預金は出せる訳でありますから五人家族とすれば千圓までは使へると云ふ意味で、問題は果して其の千圓で足りるか足りないかと云ふことであります、尚ほ大藏大臣はやつて居るかと云ふ御尋ねでありますが、私は家族と合はせてやつて居ります、やれるのです、併しそれは無理だと云ふことは明白でありまして、煎じ詰める所、先づ今まで色々な物があつて、着物一枚買ふでなし、靴一足買ふでなし、食ひ物に全部使つて生活して居る訳でありますから、非常に無理だと云ふことは分るのですから、是は非常に早い機會に撤廢したい、併しさうであるから緊急措置令を御承諾願へないと云ふことになりますと直ぐ封鎖が解かれてしまひます、今さうかと云つて封鎖預金を全部解いたら大變なことになりますからやはり御承認だけは御願ひしたいと思ひます、先程局長から申上げましたやうに、私共は此の緊急措置令があつても、此の中で勝手なことを致さうと云ふ意味ではありませぬで、六月二十二日から實施致しますに付きましても隨分研究して、結局私が裁斷したのでありますが、あれだけの處置は必要だ、今後起るべき種々なる政策と睨み合せてあの際にあれをやつて置くことが必要だと思つてやつた最少限の處置でありまして、それを言ふ訳でありますから、一應此の緊急措置令は御承認を願ひまして、さうして今の五百圓問題等に付きましては出來るだけ早い機會に、他に弊害を及ぼさない處置を執りまして撤廢を致したい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=42
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043・竹田儀一
○竹田委員長 奧村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=43
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044・奧村又十郎
○奧村委員 金融緊急措置令其の他現在審議中の法令に付きましては、當時の事情已むを得ないものと私は考へて居ります、但し此の處置に於きましては、唯通貨の面の處置だけでなく、物の面に於ても綜合して緊急措置として行はれたのでありまして、是等物の面の方に於ても全部綜合的に實際の效果を現はしてこそ、已むを得ない、否寧ろ洵に機宜に適した方策であると私は感じて居ります、所が結果に於て、通貨の面に於ては可成り成績が上つて居る、六百億圓以上突破して居つたのが百五十億圓まで通貨が收縮した、非常に宜かつたと思ひまするが、物の面に於ては殘念ながら政府の努力も足りないし、實行に於ては非常に缺けた所があります、隨て通貨の面だけの人爲的な統制に依つて、結果に於て今日に至りますと非常に惡いことが現はれて來て居ると思ひます、此の點大藏大臣はどう云ふ風に御考へになつて居られるかと云ふことを一つ御尋ね申上げ、説明として一つ申上げます、此の措置令に關聯しまして大體一人に月百圓の購買力を認めると云ふ考へに付きましては、是は貧富に拘らず國民全體が一箇月百圓の最低生活で皆が我慢しろと云ふことでありまするから、非常に社會主義的な考へであつて、今日敗戰後の我々としては洵に結構であると思ひます、所が通貨の面だけで百圓と押へられましたけれども、物資に於て、特に食料などに於て、大體月百圓でやつて行けるだけの物の配給が是に從いて來なんだ、隨つて是は實效が伴はないと云ふことになると思ふのであります、私は食料品の方面に關して、是はもつと統計があつて申上げれば結構でありますが、闇の問題に付ては統計がありませぬが、私は地方の漁業會長をやつて居ります、魚のこと或は野菜物のことなどに付ては色々調べて居りますが、食料品に關しては大體丸公の物資よりも丸やの物資の方が多いと思ひます、究極消費者の手許に配給として渡される物資よりも「ルート」に乘らずして闇として入る物資が恐らく多いと思ひます、斯う云ふ状態に於て通貨のみを押へて行くと云ふことに於て非常に惡い結果が現れて來て居ります、一つはお金が人爲的に片廻りして居る、眞面目な生産者の方面に金が廻つて居らぬ、例へば農家に付て私がこちらに來るまでに痛切に聞かされたことがあります、眞面目な精農では米を穫り、麥を穫り藷を穫る、大體此の程度であつて、野菜物は自分の所で食べると云ふ程度のものであります、さうすると此の措置令を執られた當時に於ては米は全部供出して居る、麥はまだ穫らぬ、金は何處からも入らぬ、それでぴしやつと押へられましたから、僅しかの配給の物も通貨を以て買へなかつた、隨て自分の保有米の一升、二升の米でも闇を以て賣らざるを得ない、是だけはどうか大藏大臣に聽いて呉れと云ふ話である、所が一面に於て又供出を怠つて闇で物を流して居る方面には、是は相當の金がだぶついて居る、斯う云ふ不自然なことがあります、又消費者の面に於かれましても眞に五百圓生活をやつて行かうと云ふ人はつつましい生活をして居られる、今日事業資金を生活資金に廻して居られる人は相當あるやに見受けられる、さう云ふ人は非常に贅澤をやる、或は又物の買溜をして居る、思惑をして居つたが爲に、それを今頃賣買して相當潤澤な新圓を持つて居る、斯う云ふ所謂政府の方針に眞面目に從ふ人はとことん困る、それに從はぬ人は非常に得をすると云ふ状態になつて來て居るやうに思ふのであります、隨て眞面目な人が段々なくなつて來ると云ふ現状を持つて來ます、それからもう一つ通貨の觀念が變つて來ました、私共漁村農村に於てはお金と云ふものには特殊な氣持がある、漁村に於ては蛸壺の内へ金を入れて縁の下へ大事に藏つて置く癖があります、さう云ふ人は所謂爪で火を灯すと云ふ氣持でせつせと働いて僅かの物でも始末をして之を金に換へて貯へると云ふ生活をやつて來た、所が古來からの金は全部通らぬから全部差出せと云ふことになつて來ましたから、お金と云ふ觀念が變つて來た、是が非常な大きな問題だと思ふのであります、そこで新圓の預金が最近殖えて來たと云ふ御話がありますけれども、是は皮相の考へであると思ひます、私の漁業會は會員が二百名程あるのであります、預金が封鎖に於て約百五十萬圓程あるのでありますが、此の處置以後に於ては、自由にして置くなら恐らく一圓の新圓も預けには參りませぬ、金其のものの觀念が變つて來て居りますから、是は致方がないと私は見て居る、さう云ふ事情である、隨て相當の金が何かあつたら買はうと云ふ待機の姿勢で持たれて居るのであります、隨て此の處置以前の金と此の處置以後の金と、金の性質が違つて居ると思ひます、此の點能く御考へになつて戴きたい、隨て金を排斥して物と物とを交換しようと云ふ傾向が非常にきつくなつて來て居ります、斯う云ふ點の惡い面が非常に多く見えて參りました、そこで大藏大臣に御尋ね申上げたいのは、私が申上げるやうに通貨の面のみの處置では駄目だ、物の方の面に於て政府の施策がまだ實際に效果を現はして居らなかつたから、今日の此の状態に立至つて居ると云ふことを大藏大臣は素直に御認めになりますかどうかを御尋ね申したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=44
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045・石橋湛山
○石橋國務大臣 大變結構な御話を伺ひました、終りの御質問の趣旨は私も其の通りに認めます、ですから物の方面の増産及び配給の方法に付て十分の處置を講じなければ此の金融問題、「インフレ」問題は片付かぬと云ふことは私共の所信であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=45
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046・奧村又十郎
○奧村委員 有難うございました、次に現在の「インフレ」状態に付て大藏大臣の御所見を御伺ひしたいと思ひます、大臣は現在の「インフレ」に付ては恐れることはないと云ふ風なことを能く仰しやつて居られるやうでありますが、併し國民の實感としまして、現状の儘で行くならば日本の經濟は破滅すると云ふ氣持は國民總て持つて居ると私は思ふ、又元へ戻つて、私福井縣でありますが、福井縣水産業會等の事情を申上げますと、最近漁村が非常に潤うて居る、斯う云ふ話であります、成程潤うて居りますが 其の潤うて居る筈の漁村に於てどう云ふ實情であるかと云ふことを申上げたい、私共漁業會に於て網をやつて居りますが、是が昨年度共同事業で以て三十萬圓の漁獲を上げて居ります、さうして約十五萬圓の利益を上げて居ります、所が今年度既に百五十萬圓を水揚げして居ります、所が今年度は利益どころか繼續して來年度の網の敷設は覺束ないと私は考へて居る、是は何故であるか、昨年度網の仕込みが十五萬圓まででありまして、來年度の敷設に於きましては恐らく百五十萬圓の金を以てして同じだけの網は敷設出來ぬと私は見て居る、即ち資材原料其の他のものが十倍以上に上つて居るからであります、特に茲に一つの例を申上げますと藁工品でありますが、是は昨年度の仕込みが一貫目一圓五十錢でありました、今年度福井縣で認めて居るのが消費者價格約十三圓から十五圓であります、丸公で約十倍上つて居ります、所が其の丸公で以て取引が出來るかと云ふと出來ぬのであります、其の外に必ず肥料を呉れと云ふのであります、それで只今獲れた鰯なり鯖なりを〆粕にして肥料にして渡して居ります、詰り金の外に肥料を付けて漸く藁工品を入れて居ります、斯う云ふやうな實情であります、漁村に金は廻つて居るやうには見えますが、實際經營となりますと、資材がそれ以上に上つて行きまするから經營困難となると云ふ實情になつて居ります、惠れたと言はれる漁村にして然りでありますから、都會に於ても凡ゆる生産業が賣上代金より此の次に買ふべき原料、資材が高くて仕事が出來ぬ、生産が出來ぬと云ふことは恐らく何處も彼もあらうと思ふのであります、寧ろ物を作る利益よりは思惑して持つて居つて轉賣する利益の方が多い、是は事實であります、斯う云ふ事情を御認めになつて居られましたならば、是は緊急に措置をして戴かなければならぬ、或は農村に於て、漁村に於て働く氣持が薄れて來ました、今までは金を儲ける爲に働いたものです、是ははつきり申上げればさうであります、所が一日五十圓貰うて見た所で——五十圓の日當は何處にもありませぬ、一日二十圓から三十圓であります、五十圓貰うて見た所で「コツプ」一杯の酒を飮めばそれで終ひだと云ふ風な實情でありますから、働く氣持が薄れて來ました、又お互ひの生活が物價高の爲に出來ぬと云ふことになりますから、手間賃を上げると云ふ所謂勞働爭議、是が全國的に起つて來て居ります、斯う云ふ風に申上げれば限りがありませぬが、斯う云ふことを考へると云ふと、田舍に於て經濟情勢に疎い者でも、此の儘の状態では經濟はやつて行けぬと云ふことを皆知つて居る、そこで何とか此の方策を立てて貰はなければならぬ、特に此の新議會に於て何等かの見透しを付けなければならぬと云ふ國民の氣持が湧き上つて居ると思ふ、就きまして、それに付ては大藏大臣は經濟界の整理をすると云ふ御話がありました、私も非常に安心して居るのでありますが、此の「インフレ」解決に付て生易しいことではいかぬ、甘く見られてはいかぬと思ひます、就いては大藏大臣は金融面に於ては色々先程御説明になつたやうな御處置を執られるやうな御話でありまするが、元に戻つて、前の失敗を繰返さないやうに、物の面に於ての統制も行はなければならぬと思ひます、此の物の面に於ての統制も綜合しての計畫を現在御立てになつて居られますかどうかと云ふことを御尋ね申上げたいと思ふのであります、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=46
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047・石橋湛山
○石橋國務大臣 大藏大臣としては物の面と申しましても無論物を直接に取扱ふ所管ではありませぬが、政府としては其の覺悟で今計畫を進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=47
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048・奧村又十郎
○奧村委員 有難うございました、併し先程の元の問題にもありまするやうに、金融面では如何におやりになりましても、物の面が付いて來なかつたならば是は何にもならぬのでありますから、其の點に於ては大藏大臣も通貨の面のみを御考へになつてはいけない、其の意味に於て政府は物も綜合しての計畫を立てて居られるか、此の物の面を突込んで行けば、元々乏しい物でありますから、之をどれだけ生産財に廻し、どれだけ消費財に廻し、又國民全體がどれだけの節約をして行くと云ふ計畫が立てて行かれなければならぬと思ふのであります、元々乏しい物を勝手に放つて置くならば、闇の物を食ふ者だけが豐かになると云ふ状態になるのでありますから、どうしても是は徹底した計畫經濟を以て行かなければならぬと思ひまするが如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=48
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049・石橋湛山
○石橋國務大臣 其のやり方に付きましては徹底した計畫經濟で行くか、其の他の稍稍自由な處置、詰り自由の取引を許す方法で行くかと云ふことは、尚ほ何れに決定して居ると申上げ兼ねますが、御話のやうに所謂徹底したと云ふのは何處まで徹底するかと云ふ問題でありまして、私は統制だけで物資の出廻りと云ふものが圓滑に行くとは考へて居りませぬ、ですから其の點は商工或は農林等の當局者とも十分打合せをして居る訳でありますけれども、徹底した計畫或は統制で行くかと云ふ御尋ねならば、私としては是は恐らく出來ないだらう、さうでなくもう少し他の方法を執らなければならぬだらう、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=49
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050・奧村又十郎
○奧村委員 それで大體分りました、次に大藏大臣は此の經濟整理の政策を近々の中に御執りになると云ふ御話でありまするが、私の考へでは是は本年度總豫算を御提出になります時に同時に此の問題ははつきり御發表になる必要があると思ひまするので、さう云ふ風にやつて居られるかどうかと云ふことを御尋ね申上げます、何故かと申せば現在物價は益益昂騰しつつあります、安定して居りませぬ、隨て一箇年間の總豫算を審議致しまするのに、此の不安定なる儘の經濟状態に於て豫算を審議しても無理であります、我々としてもどうしても物價安定、經濟安定を見透して後初めて豫算の審議が出來る、是は不離一體のものと思ひます、隨て是はどうしても豫算案と共に政府の經濟政策に付て御發表になられる必要があると思ひまするが、大藏大臣は左樣御考へになつて居られまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=50
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051・石橋湛山
○石橋國務大臣 色々の關係で豫算案は近く成べく速く提出を致して御協贊を得たいと思ひます、其の場合に無論物價其の他のことを考慮致さなければなりませぬが、先程から申しました種々なる政策が此の豫算と同時に出せるかどうかと云ふことは未だ少し疑問であります、其の方が後に延びると云ふやうに御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=51
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052・奧村又十郎
○奧村委員 後に延びると云ふことは分りましたが本議會中に御提出になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=52
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053・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論本議會中に財産税等のことは決定しなければなりませぬから、それと關聯致しまして本議會中に御協贊願ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=53
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054・奧村又十郎
○奧村委員 有難うございました、就きまして是は私個人の考へなのでありますが、本議會に於て經濟再建の何等かの方策を見出すと云ふことは政府のみならず帝國議會の國民に對する任務であると思ひます、是非共左樣御取計ひを御願ひ致します、之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=54
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055・竹田儀一
○竹田委員長 御諮り致します、川島君の御留保になつて居る質問、尚ほ金子君から簡單に質問をしたいと云ふ御話があるのであります、此の御兩君の御質問を明日十時から致し、餘り長く掛らぬと思ひますから、そこで質疑を打切りまして、其の時刻までに各派の態度を御決定になつて討論採決に入りたいと思ひます、本日は是にて散會致したいと思ひますが、如何でございませうか
〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=55
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056・竹田儀一
○竹田委員長 御異議がなければ、さう云ふことに決します、散會致します
午後零時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00319460705&spkNum=56
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