1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月六日(土曜日)午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 竹田儀一君
理事 細田忠治郎君 理事 白木一平君
理事 河野密君
青木孝義君 小野眞次君
片岡伊三郎君 寺尾豊君
村上勇君 金光義邦君
津島文治君 佃良一君
武藤常介君 上田清次郎君
金子益太郎君 川島金次君
東隆君 二階堂進君
伊藤幸太郎君
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏參與官 柴田兵一郎君
大藏事務官 野田卯一君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 櫛田光男君
大藏事務官 江澤省三君
委員長の許可を得た出席者
若林義孝君
本日の會議に付した議案
金融緊急措置令(承諾を求める件)
日本銀行券預入令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第九十號(日本銀行券預入令の特例の件)(承諾を求める件)
臨時財産調査令(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十八號(所得税法中改正等の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百十一號(通信事業特別會計又は帝國鐵道會計に於ける昭和二十年度の追加經費支辨の爲の借入金に關する件)(承語を求める件)
昭和二十一年勅令第百二十七號(復員に關する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百五十九號(生鮮食料品、石炭、鐵及び電氣銅に關する價格調整補給金等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百七十九號(政府職員の給與改善に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第百八十號(通信事業特別會計業務勘定又は帝國鐵道會計收益勘定に於ける昭和二十年度の追加經費支辨又は歳入不足補填の爲の追加借入金及び帝國鐵道會計用品資金補足の爲の公債發行に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十一號(昭和二十一年度に於ける大藏省證券及び借入金の最高額に關する件)(承諾を求める件)
昭和二十一年勅令第二百四十二號(外地等職員の歸還に伴ひ要する經費等支出の件)(承諾を求める件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=0
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001・竹田儀一
○竹田委員長 開會致します、引續き質疑を許可致します――川島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=1
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002・川島金次
○川島委員 保留になつて居りまする問題に付て、一寸同時に併せて二、三、説明を成べく拔きにして條項的に此の際御尋ねを申上げたいと思ひます、先日給與局の方から官廳職員の現員現給調査表を戴いたのでありますが、之に依りますと、國鐵、遞信、學校教職員竝に一般會計及び内務省、司法省、此の關係を綜合しますと、本俸に於て比較的多數を擁する判任、雇、傭人、是だけを見ましても、判任官の現給は平均致しまして大體八十四、五圓であります、雇に於きましては僅かに本俸が五十二、三圓、傭人は大體に於て六十五圓内外、是は概算でありますが、さう云ふことになつて居る、それを係りの方の説明に依りますと、七月からは之に對して約六倍の收入に該當することになるだらう、斯う云ふことの説明でありますが、それに依りましても判任官級で平均五百圓、雇が三百圓、傭人が四百圓、大雜把な計算でありますが此の状態であります、斯う云ふ状態で、一方に於きましては御承知の通り諸物價の昂騰、食糧の不足、さう云つた關係で一般勤勞階級と云ふものの生活が非常に窮屈になり、非常な窮迫を告げて居ると云ふことは御當局も恐らく認める所であらうと思ひます、大藏大臣が赤字を出してもと意氣込んで、是等勤勞者の給與の改善をやられると云ふ御言明があつたのでありまするが、それをやつて見ても尚且つ大多數を占める雇が三百圓、判任官が五百圓、傭員にして四百圓と云ふ程度で果して妥當か、給與の改善になつたと確信を以て言ひ得るのでございませうか、而も前半私が質問した通り、是等の階級の人達に對する勤勞所得税をも掛けて行く譯です、其の勤勞所得税が是等の人達に如何に生活上に大きな壓迫になつて居るかと云ふことは、是は私が申上げるまでもない事柄であります、殊に一般民間に於ける所の勤勞者と違ひまして、官廳事業に携つて居る勤勞階級と云ふものは、概ね公共の性質を帶びたものでありますから、同じ形に於きまして、勞働爭議と云ふものが徹底的に出來ない、例へば國鐵に於ても「ストライキ」が出來ない、遞信事業に於ても然り、殊に學校教員に於ては然り、況や警察官等に於ては是は絶對にして貰ひたくない、出來ない状態であります、さう云ふやうな状態にある人達に對して、政府は徹底的な給與の改善をやられようとして居りませぬ
〔委員長退席、細田委員長代理著席〕
それでなくても現在御承知のやうに、國鐵、遞信等には、引續き半年にも亙るやうな爭議が實際に於ては續行されて居る關係にある、而もそれは、第一には給與の改善であり、第二番に掲げるものは異口同音に勤勞所得税の撤廢を叫んで鬪つて居ると云ふやうな有樣である、官業に携るやうな人達が自分の生活の防衞をする爲に此の爭議を續行して居ることは、洵に同情すべきであり、一面に於て當然ではないかとさへ我々は考へて居る、斯う云ふ状態が長く續きますることは官業の必然的な能率の低下ともなるのではないか、又相當な數の人が而も有能な人が其の爭議の爲に沒頭しなければならぬと云ふやうな状態で行きますことは、私は官業の現状に鑑み洵に遺憾千萬なことではないかと思ふ、そこで最後に私は御尋ね申上げるのでありますが、是等の官業從事員に對する所の給與の改善、七月にやる改善で果して政府は是で宜いのだと云ふ確信を持てるか、さうして此のことに依つて官業方面に於て目下續行されつつあります所の勞働爭議が相當に緩和されると云ふ確信を御持ちであるか、更にもう一遍念を押しますが、勤勞所得税の徹廢の御意思がどうしてもないのか、此の點に付ての第一に御伺ひを申上げます
第二は財産税の問題であります、聞く所に依りますと財産税、殊に財産税加税に付きましては、最初第一種、第二種と、二種類の階級を分けまして、二重的な徴税をすると云ふ形であるやうに承つて居つたのでありましたが、最近それを撤廢して一本にすると云ふやうなことが傳へられて居るのであります、果してどのやうな形で一本にすると云ふ御方針であるか、之を御尋ねを致します、同時に又殊に不動産に關する財産税徴收の場合の評價を一體どうして決定するか、一説には賃貸價格で決定するのだと云ふことを聞いて居りますが、其の評價の基礎を何處に置くか、又基礎に依つてどう云ふやうな計算で此の税の總額を決定するかと云ふことと、更に財産税を徴税する場合に當りまして、政府は之に對する評價委員會と云ふやうなものを作るべきだと私は思ふのであります、殊に此の委員會を作る場合に、單に徴税をされる側、即ち不動産等を持つて居る側だけの中から委員を選ばず致しまして、其の財産に關係のない一般勤勞大衆の中からも委員を選出するような仕組にする必要があると私は考へるのでありますが、それに對する當局の御見解はどう云ふことになつて居るか、それを御尋ね申上げるのであります
それから此の際私は御願ひを寧ろ申上げたい、一體今の日本の國税の體系と云ふものは、戰爭中に於て非常に強化され、非常に戰前よりは無理な形を執つて來て居る面があるのではないかと思ひます、其の説明は拔きますが、此の際社會情勢、經濟情勢、一切の情勢が變つて來た時に當りまして、政府は國税の根本的改革をすべき時に到來して居るのぢやないかと私は考へるのでありますが、それに對する政府の御方針があるかどうか、それも御伺ひ致します、一遍に質問致しますが、更に事業資金の再封鎖の事柄でありますが、一體工場と云ふものは先達ても申しました如く一切銀行の融資に依つて運營をして行かなければならない、隨て銀行に預金があつたり、或は銀行の窓口と特殊な關係があつたり、或は又銀行の當事者から見て儲かりさうな事業、さう云ふ方面になると融資もされるであらうと思ひますが、銀行の窓口と雖も經濟殊に産業の實體に明るい人ばかりは居らない、其の場合に銀行からも、唯時の算盤勘定、或は中にはあると思ひますが、感情だけの金融と云ふやうなことをやられたのでは、洵に私は産業經濟再建の上から行きましても遺憾なことであり、工場に取りましては迷惑千萬な事柄にもなるのぢやないかと思ふのであります、殊に銀行と云ふものは言ふまでもなく利息勘定、利益本位を事として居るものでありますから、自己資金を預けて居る工場に對しては、其の自己資金の預金代だけは色々の意味に於て寧ろ資金の貸出を抑制する、所が利息は餘計取る譯だと云ふことで、自己資金を持つた勘定、或は資金内の範圍に於て、どんどん寧ろ積極的に色々な便宜を構へて貸さうとする氣持が出て來るのではないか、是は銀行屋が營利本位の建前であるから、當然さう云ふ勘定になるのではないかと思ふ、然るに一方さうでない方面に於ては大藏大臣は中小企業等にも相當積極的に貸出をすると仰しやつて居りますが、中々實態と云ふものは、政府當局の考へて居るやうな譯に行かないのではないかと云ふ大きい心配を私は持つて居ります、そんな關係で若し國家の爲に必要な事業であり、それを生産することに依つて大いに日本の經濟再建の爲に役立つものであると云ふことになつて居りましても、今言ふやうな銀行の建前上さう云ふ方面に事業資金が廻らないと云ふことになりますと、結局事業家と云ふものは運轉が窮屈になるだけならいざ知らず、最後には其の工場が閉鎖される、或は倒壞する、それに依つて失業者は續出する、斯う云ふ考へ方を持ちますと、今後の單なる銀行の窓口の人の考へ方如何に依つて、普く日本の中小産業と云ふものは生殺與奪の權を銀行屋自身が握ると云ふことになる、是は洵に危險千萬なことであると思ふ、そこでさう云ふ貸出しの問題に付きましても、何等か民主的な、銀行が公正に國家の再建に役立つやうな事業資金には積極的に思ひ切つて、政府が考へて居らるる通りの貸出が出來るやうな機構を此の際作る必要があるのではないか、斯樣に私は思ふのであります、其の弊害の及ぼす所、只今申上げました如く勞働者の新たなる失業群の續出になるのではないかと云ふ心配を持つて居ります、工場自體の問題ではなくして、工場に働く勞働者の是は大きな問題として繋つて來るのではないか、其の爲に勞働者には今日は消費組合がある、其の組合の運動の及ぼす所は銀行の窓口にも殺到すると云ふやうな事態が或は來るのではないかと云ふ見透しを持つて居る、そこで私は此の問題に對して當局がどのやうな方法でさう云ふ事柄に付て心配をするのか具體的に一つ此の際御示しを願ひたい、それは全國に普く目下各地に作られて居る中小工場は一齊に當局の其の方針に付ては注目をし期待して居る所であります、同時にそれは工場主だけでなく其處に働く勞働者階級が相當今日注目をし始めて居る譯であります、隨て其の點に付きましても明確な御見解を御披瀝願ひたいと思ふのであります
それから其の次に引揚者の生業資金援護の問題であります、聞く所に依りますと海外引揚同胞に對して三千圓の生業資金と言ひますか、援護資金を庶民金庫から出すと云ふことであります、所がそれに對して當初は無擔保でそれを貸出してやる、斯う云ふ御話も聞いて居つたのですが、最近兩三日來聞き及ぶ所に依ると、それは保證人を必要とする、或は擔保を必要とする、擔保を必要とすると云ふと引揚者には擔保がある譯はないのでありますが、假に保證人を必要とすると云ふことに受取りましても、保證人を付けると云ふことは中々容易でない人が非常に多いのではないか、さう云ふ海外引揚同胞に對して保證人を付けなければ生業資金、援護資金が出ないと云ふことであれば、眞の援護の形、さうして海外同胞の引揚者に對して新しい職場を見付け出すことに協力する建前にはならないではないか、斯樣に私は考へる、そこで此の海外引揚同胞に對する所の今の金融方法、貸出の方法はどの程度に決定して居りますか、御伺ひ致したい
〔細田(忠)委員長代理退席、委員長著席〕
最後に私の私見として申上げたいのでありますが、勤勞階級の生活を側面から何等かの形で協力し得るやうな、例へば勤勞階級と云ふものは其の俸給では今日は食へない、日々に赤字を出して生活をして居る状態で、其の上に若し自分の子弟を教育するなら教育費、或は不時の疾病に罹つた時の醫療費、或は心掛けの良い人で中には多少の資金の應援があれば自分の假小屋でも建ることが出來るのだと云ふやうな面もあるのではないか、さう云ふ事柄を睨み合はせて、私は此の際勤勞階級の生活と將來の希望を持たせる意味に於て國立の勞働銀行、或は勞農銀行と云ふやうな機關を此の際設置してはどうか、それに依つて勤勞階級の生活に對して側面援助をすると云ふ御考へはないかどうか、其の點に付て御伺ひを申上げる、成程今日庶民金庫と云ふものがありまして一般の庶民者には融通をすると言つて居りますが、此の庶民金庫と云ふものに對しては今の勤勞階級の立場から言ひますと、中々貸しても呉れないし、さう云ふ庶民金庫に勤勞階級は餘り親しみを今日持つて居りませぬ、そこで思ひ切つて國立でさう云ふ方面の銀行を作られて、さうして低利で長い期間に返せば宜いと云ふやうな方式で、勤勞階級の生活の側面的な援助を思ひ切つてやるやうなことが必要ではないか、斯樣に思ふのでありますが、其の點に付て御見解を聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=2
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003・石橋湛山
○石橋國務大臣 川島君の御質問に御答へ致します、第一に政府職員の給與の問題でありますが、是は結論から申しますと、七月から實行致さうとして居ります現在の計畫が實現致しますれば相當に滿足を與へ得る、さうして今日の勞働爭議も之を終熄し得ると私は信じて居ります、此の間川島君から御要求もありまして、まだ數字が整つて居りませぬので、甚だ不完全な數字を差上げまして――現在もまだ各省別の計算と云ふものが十分出來て居りませぬが、此處で一寸私の心覺えに作りましたものがありますから御參考に申上げます、是は獨身者の雇傭人の場合でありますが、六大都市に於きまして――是は獨身者でありますから扶養家族がない若い人でありますが、今までの給與は本俸四十圓、物價手當が五十圓、臨時手當が九十圓、合計百八十圓になり、それに賞與の月額が三十圓、合計二百十圓程の收入であります、そこで組合側の要求は家族一人百圓出せと云ふのでありますから、此の獨身者の場合は、假に二百十圓と致しますと、それに百圓加へて三百十圓と云ふのが組合側の要求と見られるのであります、之に對して六月から實行致しました臨時の處置はどうなつたかと申しますると、本俸は變らずに四十圓、物價手當が五十圓、臨時手當が百八十圓、それで二百七十圓ですが、それに賞與の月割が三十圓で、三百圓と云ふことに相成つた譯であります、それから七月から實行致さうとして今計畫し、恐らく近い中に實行致す手筈になるだらうと想像致して居りますのは、稍稍根本的に給與の額を變へまして、本俸が二百七十三圓、勤務地手當――是は名前は假稱でありますが、それが三十圓で、三百三圓になる、斯う云ふ譯で、組合側の要求から見ますと七圓一寸違ふのでありますが、大體近い所に行つて居ります、それから判任官又は判任官待遇者の可なり年數を經た人で、例へば勤續二十年位の人、扶養家族四人として計算を立てますと、是は今までの給與でありますと、本俸が百十圓、是は六大都市であります、それから勤續手當が三十五圓、物價手當が六十六圓、それから家族手當が八十圓、臨時手當が二百六十四圓、合計五百五十五圓、それから賞與の月額が九十八圓、更に合計致しまして六百五十三圓、組合側の要求は家族一人に付て百圓を其の外に支給せよと云ふのでありますから、それに本人を加へて五人でありますから、五百圓加はり、大體千百五十三圓になる勘定であります、之に對して六月の臨時の手當に依りまして、本俸は變りませぬで百十圓、それから勤續手當、是がやはり變らずに三十五圓、物價手當が六十六圓、是も變りませぬ、それから家族手當が八十圓も變りませぬ、唯臨時手當が五百五十四圓になり、其の小計が八百四十五圓、賞與の月額が九十八圓、合計九百四十三圓になります、更に七月からの改革に依りますと、本俸が七百一圓、家族手當が四百圓、其の他の手當が六十圓、合計千百六十一圓でありますから、此の四人家族の者になりますと、七月からの計算では組合からの話よりも少し高くなる、斯う云ふ譯で、是は實は組合側からの要求は家族に付て百圓づつ與へろ、斯う云ふことでありましたが、どうもそれですと可なり不合理な點がありますので、實は私共が其の計算に依つて政府の増加します金額を全部計算して見た、さうして其の金額に當るものを本俸を變へる、斯う云ふ建前で以て上に比較的輕く、下に厚くと云ふ意味でやりましたから、一人々々の場合を計算しますと、只今申上げましたやうに厚薄が要求より少し違つて來ますけれども、先づ大體滿足の行く所へ行くのぢやないか、斯う云ふ風に考へて居ります、此の後は此の間も申上げましたやうに――是は兎に角七月からやりますが、今後の問題は更にもつと根本的に研究致しまして、給與全體の考へ方も改めて行きたい、斯う云ふことでありますから御諒承願ひたい、どうぞ一つ斯う云ふことで、川島君の御盡力で爭議が早く片附くやうに御願ひ致します
それから勤勞所得税の問題は此の間も申上げましたが、是は税の根本思想にも關係するのでありまして、私の考へは、是は勤勞所得税も分類所得税でありますが、分類所得税は良い税だと現在考へて居ります、是は國家歳入の上で最も伸縮性の多いものであります、是は財政が困難になれば税率を上げる、それから財政が樂になるに從つて税率を下げる、年々歳々上げたり下げたりすることも出來ると云ふものでありまして、是は或は私の租税觀念が間違つて居るかも知れませぬが、私は現状に於てはどうしてもやらなければならぬ税だと考へて居ります、唯今日はおひ互に生活が困難な所へ財政も困難でありますから、比較的能率が高いと云ふ所に惱みがありますけれども、是は軈て財政の整理等が行はれれば税が下げられることになるのであります、さうして此の分類所得税を課するとしますと、大所得者だけではいけないのでありまして、やはり出來るだけ輕い税で全國民に拂つて戴くと云ふことに致したいのであります、是は後で政府委員から申上げても宜しいのでありますが、一體日本の所得税の納付者と云ふものは外國に比較して少な過ぎる、もつともつと數が多くならなければならないと考へて居ります、さう云ふ譯で少くとも現状に於きましては御話のやうに勤勞所得税を止める譯には行きませぬ、財政上の關係からも行きませぬ、其の點も一つ御諒承願ひたいと思ひます
財産税の不動産の評價などに付きましては、技術的のことでありますから後で政府委員から御答へ申上げます、評價委員會を作ることは勿論であります、それから國税の體系に付ては、今分類所得税のことに付て申上げたのでありますが、無論戰時中に色々の税がありまして、ごちやごちやして全體の體系が亂れて居ることは御説の通りであります、唯分類所得税は是は戰時中の税ではございませぬ、あれは所得税の根本的改正をしようと云ふ計畫でやつたので、必ずしも戰時だから分類所得税をやつた譯ではありませぬ、其の外の物品税、行爲税、さう云ふものには戰時的の色々な申さば惡税を課けた、斯う云ふものは無論整理を致したいので、本年度に於ても或る程度の整理を致す積りでありますが、徹底的には參りませぬので、是は改めて一つ政府も研究し、又必要であれば然るべき委員會等も設けて、税制に付ては十分に研究を致したいと考へて居ります
それから事業資金を原則として新しい貸出しに依ると云ふことが少くとも過渡的に或る部面に不便を與へて居ないかと云ふことは、斷えず私の心配して居る所であります、そこで左樣なことはないやうにと常に申して居るのでありますが、若しも中小工業等に於て不便を感じて居ると云ふ向がありましたならば、其の實際に付て御示しを願ひますとそれぞれ手を打たうと思ひます
それから全設的の御話として、銀行の窓口に行つたのでは其の銀行との特殊關係がある者に便宜が圖られ或は銀行から有利な者に便宜が圖られると云ふ御説でありますが、それは其の通りであります、是は又或る意味に於ては必要なことであつて、常に銀行の窓口と接解して居つて、金融機關に其の人の業態がはつきりして居ると云ふことは、是非さうあつて貰ひたいと思ふのであります、さう云ふ風でないと私は本當の金融は出來ないと考へて居りますから、特殊關係に依つて御贔屓をすると云ふことは宜しくないことであるが、やはり特殊關係と云ふか、普段金融機關と懇意にして置いて貰ひたいと云ふことは私の希望であります、銀行から見て有利なものにだけ貸す、是は銀行の判斷に依るものでありまして、大體銀行から見て有利なものに貸すと云ふ判斷で私は宜しいと思ふ、そこで私は是は餘計なことでありますけれども、銀行國營と云ふことに疑問を懷く、幾つかの銀行があつて、さうして甲の銀行を不利と見、乙の銀行を有利と見る、斯う云ふことで事業が助かる場合がある、私は幾度か財界の恐慌を見まして、其の結果實例に接しまして、單一の銀行は宜くないと云ふことを痛感した次第であります、でありますから成べく其の銀行と普段事業者が接觸を保つて、銀行に能く内輪が分るやうにして置いて下されば、私は其の事業が堅實な生産事業である限り、金融に詰ることはない筈だと考へて居ります、併しながらそれでも無論まだ救へないものもあります、現状に於ては今更そんな説教をした所が、銀行と急に懇意になることは出來ないのでありますから、さう云ふものに對しては、今後近い中に復興金融機關も設けます、又復興金融機關が設けられない前も、興業銀行或は勸業銀行等に於てさう云ふ國家に必要である堅實である中小工業などに對する、さうして普通の金融機關では關係がない爲に金融が得られないものに對しては興銀、勸銀等に依つて、是で現状は金融出來る仕組になつて居りますし、今後も其の積りで居ります、それから尚ほ全體の資金計畫と云ふものは是は無論必要な譯でありまして、どんな事業にどれ程の資金をどう云ふ風な「ルート」を通して供給するかと云ふやうなことは、今までも若干さう云ふ計畫もあつたのでありますが、更に今後の――今は非時に困難な時期でありますから、中々資金計畫と云ふものも十分な計畫は立たない譯でありまして、一應整理等も濟みましたならば、改めて國家資金計畫と云ふやうなものを十分立てて指導して行かなければならぬと思つて居ります、それから斯樣に金融が詰つて來ると、中小工業等の方から失業者が現はれ、それが軈て大きな勞働問題にもなると云ふ御説も、御尤もとして拜聽する譯であります、之に對しては私共としては一方に於ては事業を整理して貰はなければならぬ、是が失業を恐れて、さうして今のやうに御承知でありませうけれども、大きな會社等に於ても終戰後の借金と云ふものは非常なものでありまして、補償問題とか色々ありますけれども、今日の有樣では補償問題どころではない、もつとそれ以上に現状が赤字で以てさうして借金が殖えて行き、是で事業家が參つてしまふ現状でありますから、是はどうしても早く整理をしないと事業は立直れない、隨てさうなると失業者が現はれると云ふことも甚だ困つたことでありますけれども、覺悟しなければならぬのであります、隨て此の失業者の受入態勢を國家として強力に作つて行くことが必要であります、近く提出します改定豫算の中にも其の費用が盛つてあります、又昨日かも申しましたやうに其の實際の實行手段としては厚生省等と連絡して萬違算なきやうにして參りたいと申合つて居る次第であります
其の次に引揚者の問題でありますが、是は洵にお氣の毒でありまして、何とかして上げなければならぬと、是は私のみでなく政府全體が考へ、又努力して居る次第でありますが、如何せん色々の關係で以て引揚者諸君に對して十分のことが出來ないことは甚だ殘念であります、併し今までやつて居りましたやうな、歸つて來られた人に千圓づつ支給すると云ふことは中々困難であつたのでありますが、今度の豫算に計上致しまして、今許される範圍に於ては政府の援助を續けることになつて居ります、それから庶民金庫のことでありますが、是は前内閣時代に、實は後で聞きますと、本當にまだ打合せが出來て居ない中に、誤つて發表されて、それで引揚者には三千圓の資金を貸すと云ふことが非常に大きく傳はつた爲に、そこに行違ひが生じた譯です、併しながら是はさう云ふ行違ひがあつたかどうかは別問題として、庶民金庫から本當に生業資金に付ては出來るだけ貸さう、庶民金庫にも左樣に特に指令を出して置きましたが、併しながら庶民金庫も救濟機關ではございませぬし、どうしても生業資金であり、それは長年に亙つても必ず將來漸次返却の出來ると云ふものでなければ、庶民金庫と雖も貸すことが出來ないのであります、でありますから擔保を要求するとか、或は保證人を要求するとか云ふことになるのでありませうが、擔保を要求することは困難で、保證人程度でなければならぬ、是は引揚者の方の團體の諸君にも御目に掛る度に御願ひして居る、大分縣の如きは團體に依つて事業を起しまして、庶民金庫から相當の金額が既に出て居ります、さう云ふやうに引揚者の諸君で然るべき團體を作つて、其の團體の信用に依つて必要な資金を庶民金庫から借り出すと云ふことにして欲しいと申上げて居る譯であります、尚ほそれ以外に政府としても庶民金庫に出來れば若干の補償をして、さうして餘り嚴格でない程度の生業資金も出したいと思つて居ります、是は實は政府がさう考へて居るだけで、色々やつて居りますが、まだ其の實現の時期に至らないで甚だ殘念であります、尚ほ私共は諦めずに、其のことをやらうと考へて居る次第であります
最後に國立勞働銀行を作つたらどうかと云ふ御説であります、是はもう少し後で時間がありました時に、川島君からゆつくり此の内容の御考案を伺つて、十分研究をして見たいと思ひます、只今の所では少くとも名前に於て國立勞働銀行と云ふものを作る考へを持つて居りませぬが、併しながら其の内容如何に依つては、今後の金融制度の全般的改革もやらなければならぬ譯でありますから十分其の場合に繰入れ得る餘地はあるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=3
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004・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得税撤廢の問題に付ての御意見がございましたが、私から勤勞所得税の只今の課税状況を申上げて見たいと思ひます、年に依つて餘程納税人員が變ります、又月に依りまして餘程變つて居るのでありまするが、昭和二十一年度に於きましては大體勤勞階級の方々から徴税致しますものを三十數億圓と見込んで居ります、納税人員を七百二十萬人程度に考へて居ります、之に分類所得税の二課税分の納税人員四百萬人を加へますと、大體所得納税者は我が國に於きましては千百萬人程度になります、之を「アメリカ」及び「イギリス」に較べますと、「イギリス」に於きましては四千八百萬人の者の中から千四百八十萬人の所得税納税者がございます大體三割でございます、「アメリカ」は一億三千八百萬人中大體五千萬人の所得税納税者があるのであります、三割六分に相當致して居ります、我が國は國民所得の状況、國富の點が變つて居りまするから、一律に此の納税割合を求めることは出來ませぬけれども、大體少くとも一割五、六分程度の納税人員があつて、初めて所得税が租税の中心であり、又國民の國民税である意味を發揮出來るのではないかと思ふのであります、然らば勤勞所得者は他の事業所得者とどう云ふ風な負擔關係になつて居るか、五千圓の勤勞所得者、妻及び子三人、即ち扶養家族が四人ありました場合は、年額五千圓の所得税は百八十圓の所得税でございます、之を農業所得者に見ますと、五千圓の農業所得者は五百三十五圓の地租を加へました負擔になります、若し是が營業者であつたならば、營業税を加へますと、五千圓の所得者は九百十圓の課税になります、又之を不動産所得で申上げますと、不動産所得五千圓の人は所得税だけで八百六十二圓、地租を加へますと千四十九圓、同じ五千圓の所得者で勤勞階級と事業者階級と資産階級とは斯樣に負擔税額が違つて參るのでございます、隨て私は此の程度の差があれば勤勞所得者には物價高でお氣の毒ではございますが、此の際負擔をして戴くのが適當ではないかと云ふ私見を持つて居るのでございます
次に財産税に付きまして、財産増加税は前内閣の政府原案では、第一種及び第二種の二つの税から成立ちまして、第一種は御承知の如く實質的の財産増加に高率の課税をし、第二種は名目的の財産増加に低率の課税をする、斯う云ふ二段構へに相成つて居つたのでありますが、徴税手續其の他の關係、又財界の整理に付てどう云ふ風な手が打たれるか、斯う云ふ問題と絡みまして、只今の所今の所どちらとも決まつて居りませぬ、唯關係方面の意見がありますので、二段構へは一段構へになるのではないかと云ふ風な方向に向つて研究を續けて居ります、不動産の増加に付きまして如何にするか、是は財産税の中心問題でございます、不動産に付きましても、土地の評價、家屋の評價、各各特殊の事情がこざいまして、中々困難でございます、勿論原則と致しましては、法定の賃貸價格の倍數に依つて決めたいと思ひますが、其の倍數は全國各地種々違つた倍數を設けなければ適當な評價は出來ないと思ひます、又倍數に依るに致しましても、御承知の通り農地調整法の價格と云ふものとやはり考へ合せを致さなければなりませぬ、非常な厄介な問題でありますので、此の評價に關しまする根本對策は、大藏省に相當廣範圍の委員より成る委員會で決めて行く、又地方の事情に依りましては、各財務局に不動産評價委員會を設置致しまして、是れ亦民間各方面の方々の御意見を聞いて評價に當つて行きたいと思つて居るのであります、徴收に當る評價委員を各方面より選べと云ふ御意見でありますが、洵に御尤もで、我々も此の方向に向つて努力を進めて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=4
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005・川島金次
○川島委員 只今の御説明は大變御功妙な説明でありまして、是れ以上私が御質問申上げたい所はあるのですが、他の方も居りますので、洵に全面的に滿足する程の御答辯は得られなかつたことを遺憾に存じますが、私の質問は是で打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=5
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006・竹田儀一
○竹田委員長 金子君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=6
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007・金子益太郎
○金子委員 此の間大臣に御願ひして置いたのでありますけれども、資金再封鎖に依つて中小工業者が非常に行詰りを生じて居る、中にも進駐軍關係、或は食糧増産、或は復興事業に對しましての行詰りが相當あるのであります、之を打開する爲に、一つ貸出金の中の何割かを現金で貸出して戴きたい斯う云ふ御願ひをして置いたのでありまするが、是は其の後私地方に歸りまして中小工業者と御會ひしたのでありますけれども、さう云ふ場合にも是が要望されて居ります、是は實際の所を言ひますと生産者、事業者ばかりではありませぬ、其の事業者と一體になつて働いて居る勞働組合の方々も、若しさうして戴くならばどれ位仕事がやり易く、而もどれ位能率がうんと擧るかも知れない、是非やつて戴きたい、斯う云ふことを要望されて居るのであります、私は大臣は酸いも辛いも能く御存じのことと思ひますから細かいことは決して申しませぬ、唯事業主も從業員も共に持つて居る所の生活上の本能、又人間の本能を十二分に活用出來るやうに、斯うした現實的な政策を直ちに行つて戴きたいのです、さうすることに依つて、通貨の面から來る「インフレーション」を生産の飛躍的増産に依つて見事克服出來ると私は信じて疑ひませぬ、而も又事業主諸君も從業員諸君もさうして戴くなれば飛躍的な生産増強に依つて必ず政府に御應へして見せる、斯う云ふ意氣込みを現實に持つて居るのであります、でありますから、此の問題だけは大臣は一つ大膽に早急に、貸出の場合何割かを現金で貸出して戴くやうに金融機關を通じて實行させて戴きたいのであります、是は實際の所早急に御願ひしたいと思ひます、勿論封鎖の問題なんかと云ふものは、過日大臣の御答辯にありましたやうに、財産税の徴收後に於て全面的に、或は又全面的でなくとも解除すると申して居りますけれども、事業主又從業員と云ふものは現在直ちに其の問題に打突かつて居るのでありますから、どうか此の問題だけは是非とも實現出來るやうに御願ひして置きます、さうすることに依つて全國の中小工業者、又勞働組合の方々が、勇み立つて政府の御期待に反しない生産の増強に邁進することが出來ますから、此の點一つ御願ひをして置きたいのであります
次に、資金の再封鎖に依りまして、貸出を受けますと御存じの通り利息を取られて參ります、是も大きな負擔でありますけれども、其の上に戰時中の中小工業者が持つて居られる所の戰時債務に對して又利息を取られて居る譯であります、二重の負擔が茲に課せられて居る譯でありますけれども、中小工業者が持つて居られる所の戰時債務の棚上げをして戴くやうな御方針に政府は向つて行くことは出來ないでせうか、一遍資金の再封鎖に依りまして貸出を受ければ、自分の預金を擔保に致しましても利息を拂つて行く、其の上又戰時中の戰時債務に依る所の利息を拂つて行く、是は大きな負擔でありますので此の中小工業者が持つて居る所の戰時中に於ける債務の棚上げを、或は全面的に出來なければ、例へば利息を低利にして戴くやうな方法に行かないでありませうか、一つ御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=7
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008・石橋湛山
○石橋國務大臣 最初の方の貸出の何割かを新圓にして貰ひたいと云ふ御希望は十分伺つて置きまして善處することに致します、第二の中小工業者の戰時債務の棚上けと云ふことは、どうも其の債務者がどう云ふ性質であるか、やはり債務者の方でも整理を何とかして戴かないと、恐らく棚上げとか整理とか民間の企業の債務を國家が棚上げさせると云ふことは難かしいかと思ひます、尚ほ能く研究させて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=8
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009・金子益太郎
○金子委員 例へば實際の實情を申しますと、五十人、百人の從業員を使つて働いて貰つて居つた所の工場が疎開をした、其の場合に、御承知の通り其の中小工業者は一生懸命になつて疎開したのであります、家を壞し又家を建て、機械を運び二、三箇月間は休んで一生懸命やつた、其の間仕事を休んで居りますので、金は入らないが、其の給料や又は疎開の費用と云ふものは悉く銀行から借りてやつて居る、それが非常に小さい工場と雖も大きい金額に上つて居りまして、現在も殘つて居る、併し其の借金を背負ひながらも生産増強の爲に起上つて一生懸命やつて居る、そこへ今申しましたやうに資金の再封鎖に依つて、貸出しを受けると又利息を拂ふ、以前の國家に協力する爲めの疎開に依つて蒙つた大きな損害も利息を拂はなければならぬ、是は現在の中小工業者に取つて大きな負擔である、此の點は是非とも御考慮願ひまして、何等かの方法に依つてやつて戴ければ、中小工業者を今日又將來育成して行く上に於て大きな力になるではないかと信じて居りますので、申上げて居るのであります、此の點も御留意なさつて、今日の中小工業者を育成充實せしむる方法を執つて戴きたいと思つて御願ひする譯であります
序でにもう一つ御伺ひして置きたいことは、皇室財産がいま十五億餘でありますか、是が凍結されて居ると云ふ話でありますが、此の凍結されて居る皇室財産の中、何割が世襲財産として御殘りになり、何割が國家の收入となつて來る財産になるのでございませうか、其の割合と云ふものはどの位の割合になつて居るか、若し大體の豫想が付きますならば伺つて置きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=9
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010・石橋湛山
○石橋國務大臣 皇室財産のことは今まだ分りませぬ、まだ決つて居ないさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=10
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011・金子益太郎
○金子委員 今決つて居らなくても、是は當然近い中に御決まりになるだらうと思つて居ります、其の點に付きまして私共は大臣に一つ御留意なさつて戴きたいことは、今日一番氣の毒な方は、此の戰爭に依つて一家の御主人又其の收入に依つて食べて居つた所の息子、さうした人が戰死をされまして、全く生計の道を失つた遺家族の方であります、同時に其の遺家族でありながら戰災者の方々、更に又戰災者にして復員者――復員をして來たが、家は燒かれて居る、と云ふ方であります、私の所に手紙が澤山來て居るのでありまするけれども、もう切々たる愬へをして居ります、斯うした一家の主人を失つて路頭に迷つて居る方々、又復員者にして戰災者の方々、斯うした人達が今どんな状態になつて居るかと申しますと、實例を申しますと、是は所と名前は申上げませぬけれども、私或る地方の警察署に行きました、其の時に食糧に關する犯罪の點を御聽きに上つたのでありますけれども、あの地方に於きましては、食糧に關する犯罪の五割五分と云ふものは、遺家族の人と復員軍人にして而も戰災を受けた者に依つて占められて居ります、食へなくて人樣の物に手を着ける、而も其の署長が實際調べて見るなれば、お氣の毒で堪らないけれども、出來たことに對しましては手を着けない譯には行かないから、手を着け、之を檢事局に送附して居る、併し之に對しては、實際の所、政府はもつともつと何とか手を打つてやらなければ氣の毒であると云ふことを、警察署長が申して居るのであります、私は斯うした陛下の爲に、國の爲に一家の支柱を失つた遺家族の者が、人樣の物に手を著けなければ生きて行けないと云ふやうな状況に放つて置く、而も手を著けないものは、其の未亡人が貞操を賣る、其の娘さんが貞操を賣らなければ、其の一家の生計が成立つて行かないと云ふやうな状況に放つて置くことは、洵に政府としては無責任極はまるものではないかと考へて居るのであります、而もさうした陛下の爲め、國の爲めと言つて、夫を失ひ子供を失つた者が路頭に迷ひ、罪を犯して牢獄に繋がれる、又自分の身を賣らなければ食べて行かれないと云ふやうな状態に放置することが、陸下を御恨みし、且つ反政府的な矯激なる行動に出でる者を多く出して居るのであります、私は日本の國柄と言ひ、日本將來國家の立場から考へまして、若し皇室の財産が世襲財産として、或る何割かを陛下の方に御渡しになり、其の大部分が國家の收入となる、國家の財産となりますなれば、それを一刻も早く政府は「マツカーサー」司令部に御願ひして、其の凍結を解いて戴いて、其の解いて戴いた皇室財産を以て、此の支柱を失つた遺家族、戰災者、復員軍人にして而も戰災を被つた者に對しまして、急速なる救濟を講ずることが、絶對に私は必要ではないかと考へて居るのであります、どうか大臣に於かせられましても、此の世襲財産に殘される皇室財産、又國家の收入となる皇室の財産と云ふものが判別致しましたなれば、直ちに「マッカーサー」司令部に此の凍結を解いて戴くやうに御盡力を願ひたいと思ふのでありますが、此の點に對しまして大臣の御所見を御伺ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=11
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012・石橋湛山
○石橋國務大臣 御説は何れも御尤もでありまして、我々も遺家族及び戰災者の或る部分の方の生活の困難と云ふことに付て、決して目を瞑つて居る譯ではございませぬ、唯今までの状況は、特に遺家族、或は海外から歸つて來られた人も同樣でありますが、之に對する特別な救護をすると云ふことが困難な状況にあります、今囘近い内に法案として出る筈でありますが、生活保護法と云ふやうなものが出まして、それに依つて總ての生活に困る方々に、或る程度の救護の手を延べると云ふことに致し、其の豫算も計上して居る譯であります、尚ほ皇室財産のことに付きましては、尚ほ其の處分される場合に御話のやうなことを傳へまして、出來るだけ善處したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=12
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013・竹田儀一
○竹田委員長 金光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=13
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014・金光義邦
○金光委員 極めて簡單に、隨て抽象的に御尋ね申上げます、經濟安定本部が仕事を始めるまでには、相當の時期があるやうでありますが、それまでの措置に付て何か御方針がございませうか、國民生活の安定、生産の増強と云ふやうなことの爲の施策は、今日の場合特に急がなければならない、「スピード」が必要であると存じますので、御伺ひ致します
次に大工業及び中小工業に對する金融機關よりの資金の融通に付ては、最近特に窮屈になつたやうに聞及ぶのでありますが、此の點に付て政府は極めて短い期間、言換へれば金融經濟の所謂根本問題が解決するまでの間、金融を引緊めると云ふやうな御方針であるか、御聞かせ願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=14
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015・石橋湛山
○石橋國務大臣 經濟安定本部が出來ませぬでも、御話の國民生活の安定及び生産増強に付ては、どしどし政府として其の方策を進めて居ります、又今後も左樣に致す積りでございます
第二の金融の問題でありますが、最近金融が特に詰つたと云ふことは、是は御説の通りであります、又私としても域る程度詰める必要があると考へて居る譯であります、併しながらそれは生産出來るものに詰めると云ふ意味ではありませぬので、生産が巧く行かないに拘らず、唯資金を無駄に使つて居ると云ふ方面のものは緊めたいと考へて居る次第であります、さう云ふことが自然全般に金融が詰ると云ふ風に傳へられるものと考へます、繰返して申上げまするが、生産に眞に必要なる資金は、絶對に是は引緊めない積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=15
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016・竹田儀一
○竹田委員長 片岡君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=16
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017・片岡伊三郎
○片岡委員 私の聽きたいことは、大體今前の方々から質問がありましたから、一つ二つ御願ひしたいと思ひます、金融業者が貸付に對しまして、兎もすれば非常な特權を與へられたる如き風景が、銀行の窓口等で見受けられるのであります、又さう云ふことを實際に聞及んで居りまが、中小工業者の再建に當りまして最も必要な金融機關が、銀行の貸付係乃至は重役等の持廻りの審議に依りまして、是が時々變へられて行くと云ふことは、實際あり得ることだらうと思ひます、尚又其の反面に於きまして忌はしいやうな事件が發生し得られないとも限らないのであります、曾ては東京の某銀行に於きまして、實際にあつた事實があるのであります、之に對する施策がありますか否や、尚又此の貸付に對しまして、銀行は申上げるまでもなく營利會社でありますから、之を兎や斯う言ふ權利はないのでありますが、今日の金融業者とすれば、國策會社に等しいものと見て居ります、さう云ふ觀點から此の貸付の審査に對しまして、民間團體から或る程度の審査會等を作つて、相當の民間團體から審査員を出して、是は貸して宜いか惡いかと云ふやうな審査を如實に決定するやうな機關を作つて戴けるか、戴けませぬか、其の點を御伺ひしたいと存じます
それから貸付に對する限度であります、政府は此の中小工、別して生産部門或は復興に對する資金貸付に對します限度に對して、内規がありましたか否や、若しくはそれは銀行の意見に任せるのでありますか、どう云ふ限度に貸付けるか、さう云ふことに對する限度を命令したことはありますか否やを御伺ひしたいのであります
それから特殊預金、封鎖預金、是は無論貸付の擔保にならぬとは存じて居りますが、性質上それ等を見返りにして、或る程度の意味を持たして、其の範圍内に於て全額の貸付が願へるか願へないか、是も併せて御伺ひする次第であります
それから自己資本の封鎖された預金に對する金利と、新たに貸付を受ける所の金利の利鞘、是は一度御伺ひしたことがあるかと思ひますが、はつきりしませぬからもう一囘改めて御伺ひしたいと思ひます、此の金利の利鞘の差は如何樣な處置をして平均を取るかと云ふやうなことを繰返して御伺ひしたいと思ひます、以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=17
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018・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の中には政府委員から御答へした方が宜いと思ふ點がありますが、先づ私が申上げます
金融業者が最近の状況に依つて、自分が特權を與へられた如き態度を執ると云ふことは人情の弱點でありまして、さう云ふことも實際あらうかと存じます、産業家が非常に強くて金融業者が其の意思に支配される場合と逆の場合が起る、最近のやうになりますと、金融業者の方が支配する態度を執るだらうと思ひます、併し普通の銀行でありましても、單なる營利會計ではないのでありまして、公益機關としての誇りと義務とを持つて居らなければなりませぬ次第で、眞に銀行家として育て上げられたものならさう云ふ筈である、尚ほ私としても十分銀行家として誤りない態度を執るやうに警告を發する次第であります
それから金融に付て民間の審査機關を設ける意思がないかと云ふ御尋ねであります、現在の民間の銀行等に對して其の貸出を政府の機關、何等かの機關であれ是れと指圖することは如何かと思ひますが、近く作りたいと考へて居ります復興金融機關、或は復興金融機關の前にもう一つ暫定的に即座にやれる方法もやつて行きたいと考へて居ります、さう云ふものには民間の各方面から集められた委員會を作りまして、其の審査に依つて資金の貸出を査定するやうに致したいと考へて居ります
それから最近の新資金の貸出に限度の命令があつたかどうか、是は一般的にはございませぬが、後で政府委員から御答へ致します、全般的にはございませぬ、或る部分に一寸あります
それから特殊預金、封鎖預金を擔保にすることは、是は各金融機關等が之を擔保に取ると云へば無論差支へない譯でありまして、政府として之を擔保に取れと云ふことは只今の所言つて居りませぬ、後は政府委員から御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=18
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019・江澤省三
○江澤政府委員 只今の御質問に對して御答へ致します、貸付限度の問題でありますが、是は個々のものに付きましては貸付限度と云ふものは決定して居りませぬ、現在は三月二十日現在の貸付總額を限度として、不安不急な貸出は中止致しまして、之を緊要な方面に向けさせると云ふ程度の總額制限はして居ります、それも此の六月二十一日の措置以來は五%方擴張致しまして、此の限度で自由に貸出をやらせる、更に最も緊要なもので其の枠ではやれないものに付きましては、日本銀行の本支店を通じて相當大幅に貸出させると云ふ方途も講じて、緊要なる金融資金の供給に付ては何等支障のないやうな方途を講じて居ります
それからもう一つ自分が預金を持つて居つて、而も貸出を仰ぐと云ふ點に付て利鞘をどうするかと云ふ點でありましたが、是は資金の囘收を圖ると云ふ目的から致しますれば、或る程度の鞘を設けるのは已むを得ぬと思ひます、此の邊は餘り過大なことにならぬやうに指導して行きたいと思ひますが、是は貸出の内容如何、貸付先の内容如何に依つて決まることでありまして、一律にどう斯うと云ふことは指圖出來ないことであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=19
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020・片岡伊三郎
○片岡委員 大藏省では金利政策に對しまして金利を引上げるのですか引下げるのですか、或は現状の儘で置きますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=20
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021・石橋湛山
○石橋國務大臣 金利は物價と同樣に、現状に於ては實は日本の金利の水準が何處にあるかと云ふことは分らないのであります、是も事實釘付けの恰好になつて居りますが、併し私の考へでは現状に於ては上るべきもの、上らなければならぬ、引下がることは出來ない、ずつと先のことは別であります、當分の間日本の金利は現在よりももつと高くなる、斯う云ふ風に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=21
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022・村上勇
○村上委員 簡單に御質問申上げます、本會議に於きましても、又此の委員會に於きましても、大藏大臣は度々五百圓生活の不合理を痛感されて、出來る限り速かに此の封鎖の解除を圖りたいと云ふことを話されて居りますが、洵に是は結構であります、併し周圍の事情が中々之を速かに斷行すると云ふことに至つて居ないのは、勿論惡性「インフレ」を恐れて居るからであり、是は言を俟たないのでありますが、是が防止等として財産税を徴收する、其の財産税を徴收した後で解除をする御考へがありますかどうか、尚ほ私の考へでは、此の財産税を取つた後も民間の所謂水膨れ式な金を取上げることが必要でありますが、此の上又財産税とか何とか云ふことに名を籍りて、さうして再度取上げるやうなことがありましては、是は所謂基本人權を蹂躙するものではないかと思ひます、でありますから之を合法的に取らなくてはいけない、合法的に取るのには私の考へでは全國各地の國有林、或は差支へのない國有財産を拂下げる、其の方法は各地區に會社を設ける、さうして資本家の獨占にならないやうに一人當りの持株の最高、最低を決める、斯う云ふ風にして全國的に吸收したならば物價高の今日でありますから、莫大な金が吸收されるのではないか、斯うして經濟の安定を圖つて政府が速かに流通資金を吸收してしまふと云ふやうにして、安心さして貰ひませぬと、懷中にある金以外、銀行に預けたのでは危ないと云ふやうな觀念が國民一般にあるのではないかと思つて居りますが、此の點に付きまして大臣の御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=22
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023・石橋湛山
○石橋國務大臣 全國各地の國有林を拂下げて、それに依つて資金を吸收せよと云ふ御考へは、實はさう云ふ國有林に限らず、此の間此の委員會で川島委員からでありましたか、官業を拂下げると云ふ考へがあるかと云ふやうな御尋ねがありましたが、拂下げると云ふやうなことは現在考へて居りませぬ、併し世間には拂下げなくても官業の一部を證券化し、それで資金を吸收せよと云ふ説がありました、それから國有林の問題も御説の如くに、どなたかからも承りました、此の點は唯資金だけの問題でなく、重大問題でありますから、殊に國有林になると、今後の山林治水に關聯する重大な問題で、一時的な問題でありませぬ、尚ほ十分研究して戴きたいと現在言うて居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=23
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024・竹田儀一
○竹田委員長 是にて質疑は全部終りました、昨日直ちに討論に入り、採決を致すやうに御決定を願つたのでありますが、社會黨の方から色々御協議の都合もあつて暫時休憩を致しまして、一時から討論採決に入りたい、斯う云ふ御申込であります、社會黨から折角の御申込でありますから左樣に取計らひます、それでは嚴格に一時に御集りを願ひたいと思ひます、是にて休憩致します
午前十一時五十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=24
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025・会議録情報2
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午後一時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=25
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026・竹田儀一
○竹田委員長 それでは引續き開會致します、是より金融緊急措置令承諾を求むる件、外十一件に付て討論に入ります――細田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=26
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027・細田忠治郎
○細田委員 今囘提案されました金融緊急措置令外十一件の法律案に付きましては、連日委員會に於て熱心に質疑應答が繰返されましたが、議論はまだまだ盡きませぬ、法令の緊急性に鑑みまして、一先づ質疑を打切つて採決に入りたいことを希望致しますが、唯茲に飽くまでも遺憾の意を表しまするのは、成程關係方面との交渉に手間取りましたが爲に、此の間に於て預金の引出、或は換物が猛烈に流行致しました結果、最も重要でありまする所の生産増強の意欲は殆ど減退致しまして、所謂惡性の「インフレ」が此の隙に乘じましたことは、是はもう隱れない事實でございます、一體從來の習慣に照しましても、世界各國とも經濟情勢程端倪すべからざる微妙なる動きをなすものはございませぬ、過日の證券市場を繞つての新圓獲得の惡性手段が行はれました如きものも其の例でございまするが、法は天則でない限り必ず何處かに拔け道があるに違ひない、此の拔け道を狙つて惡性手段が講ぜられるのでありますならば、爲政者は直ちにそれを封じるだけの、第二の手を拔打に之を施行せねばならぬ、更に網を濳る者があれば第三の手を講じる、軌道に乘せて金融を圓滑に運びまするに付きましては、數囘の拔打も決して厭ふ所ではございませぬ、そこに金融緊急措置令の緊急たる所以が存するのでありまして、でなければ緊急措置令と云ふことは言ひ得ないのでございます、人爲的の法律はどのやうなことを致しましても絶對に完璧と云ふことはあり得ない、成程當今は關係方面との御交渉に付きましては並々ならぬ御若勞の存すると云ふことは重々御察し申上げまするが、是れあるが爲に名をそれに藉りて遷延は許れませぬ、打つべき政治的の手は幾らでもあります、此の邊本當に國家の現状に思ひを致されまして、さうして寧ろ巧遲でなくも拙速可なり、此の方針で此の非常處置に對處して貰ひたいと云ふことが本員の切に念願する所でございます、大藏大臣は民間時代から聞えた練達の士であります、從來の財閥とか官僚の型を破つて新手を打つて貰ひたいと云ふことは國民全體が之を期待致して居る、若し是が平凡なる所の財政政策に陷りますならば敢て石橋藏相を要せぬのであります、此の見地から致しまして大臣多年の造詣を之に傾倒されますならば必ずや此の危急の場面に處しての打つべき手があるに違ひないと私は確信して疑はない、勇敢に而して迅速に此の法律の施行を致されんことを私は切に希望致しまして、飽までも法の緊急性と云ふ所に希望を繋ぎまして一應原案の儘贊成の意を表したいと云ふことを茲に言明するのでごさいます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=27
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028・竹田儀一
○竹田委員長 白木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=28
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029・白木一平
○白木委員 私は此の際日本進歩黨を代奏致しまして本案に對する意見を申述べます、金融緊急措置令外十一件が緊急勅令として公布されたことは、當時の事情に於きましては已むを得ざるものと致しまして之を承認し、總て原案に贊成にするものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=29
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030・竹田儀一
○竹田委員長 河野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=30
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031・河野密
○河野(密)委員 私は日本社會黨を代表致しまして、聊か意見を述べて贊成を致すものであります、只今議題となりましたのは金融緊急措置令外十一件でございますが、此の中には種々なるものが含まれて居るのであります、勅令第百二十八號の如きは是は税法の改正案であります、勅令第百二十七號、第百五十九號の如きは是は當然改定豫算の一部をなすべきものであると私は考へるのであります、隨て是等のものを一括して茲に承認を求められると云ふことは、勅令案としては已むを得ざることかも知れませぬが、私は寧ろ是は豫算總會其の他に於て、一應論議すべき筋合のものであらうと存ずるのであります、殊に此の金融緊急措置令は、是は單に、金融緊急措置令一つとして提案を致されたのではなくして、或は食糧に對する緊急措置、或は隱匿物資に關する緊急措置、斯う云ふものと聯關を以て提案を致されたのでありまして、何れも關聯を致して、そこに初めて「インフレーション」防止と云ふ政府の目的を達成する組立になつて居るのであります、それを個々ばらばらに提案なすつて、金融の方は金融の方、或は食糧の方は食糧の方と云ふ風に承認を求められると云ふ行き方自身にも、私は甚だ遺憾の點を感ずる者であります、それで冒頭に申上げましたやうに、是等のものは總て政府の根本的な施策であります、豫算總會の如き綜合的なる委員會に於て審議すべき筋合のものと私は存ずる次第であります、殊に今日改定豫算はまだ提出に相成つて居りませぬ、何時出るかもまだ承つて居らないのであります、改定豫算其の他に付て之を見た上で、我々は「インフレーション」の問題なり從來の政府の施策なりに付て、十分論議をしたいと云ふ意見を持つて居るのでありまして、是で卒然として其の一環をなすものだけの承認を求められると云ふことは、聊か政府の謀略に引罹つたやうな感じが致すのでありますけれども、私達は決して之に贊意を表したからと言つて、政府の施策其のものに對する將來の檢討の意思を放棄するものではないと云ふことだけは申述べて置きたいと思ひます、中心の問題であります、金融緊急措置令に致しましても、本委員會に於て種々論議がありましたやうに、何と申しましても議論は澤山あるのであります、現に手續上の點から申しましても、凍結された封鎖資金あり、單なる封鎖資金あり、新圓預金ありと云ふやうな三本建の行き方が今日に於てどうだらうかと云ふことは、私が申上げるまでもなく、大藏大臣能く御存じのことであらうと存ずるのであります、願はくは此の緊急なる措置でありますから、政府も勇猛果斷に緊急の精神に則つて決すべきものは決し、解決すべきものは解決して、日本の財政經濟の再建の一歩を速かに踏出されんことを私は希望して已まないのであります、私の政黨と致しましては、此の案に付きまして三つの希望意見を附して贊成をしたいと思ふのであります
一、生産増強の爲の事業資金、特に中小工業、生産農家に對する資金融通に付ては格段の留意をなすべきこと
一、個人生活資金の限度に付ては物價高騰の現状に鑑み、新たなる構想をなすべきこと
一、「インフレ」防止に付ては金融面に於ける施策と共に、食糧其の他の綜合施策を強力に推進すべきこと
以上三つの希望意見を附しまして、只今議題となりました各案に對して贊成を致すものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=31
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032・竹田儀一
○竹田委員長 東君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=32
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033・東隆
○東委員 私は原案を承認するものでありますが、それに付て三つ程運營上御留意を願ひたいことがあるのであります、それは第一番に金融措置令の關係でありますが、戰災者、復員者さう云ふものが開拓をやるのであります、斯う云ふやうな方面に使ひまする資金の貸出、或は拂出に對して封鎖をしないやうに、それから國の助成がある筈になつて居ります、斯う云ふやうなものも封鎖拂ひにされては大變なことになりますから御留意を願ひたい
それから第二點は中小産者の協同組織、さう云ふものを通して物を販賣して居ります、所謂農業會のやうな場合に於ける販賣物の代金の支拂を封鎖するのは、却て闇賣を助長したり何かする譯であります、それでさう云ふものは封鎖拂ひにしないで自由拂ひにする方が却て貯金が殖えて行く譯でありますから、さう云ふやうなものに對して十分御考へを願ひたいと思ひます、封鎖拂ひでなく自由拂ひにする方が宜いのではないか、殊に一年一囘しか收入がない、生産がないと云ふものに付ては、特に考へなければならぬのではないかと思ふ譯であります
それから又もう一つは系統組織であります、都道府縣の農業會のやうな場合に、新規の事業資金、さう云ふやうなものは實際に於ては貸出が自由になつて居るのでありますが、事實は制限を受けて居る譯であります、現在現實に制限を受けて居ります、是では中小者の組織であります協同組合關係の仕事が出來ませぬので、之に對して十分に御考へを願ひたい、斯う云ふ三點を申上げまして原案に贊成致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=33
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034・竹田儀一
○竹田委員長 若林君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=34
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035・若林義孝
○若林委員 只今議題になつて居りまする件に關しましては、無所屬倶樂部の意見と致しましては、今まで論議盡されましたことを十分に御勘考の中に入れて戴いて、將來の施策に誤りないやうにされんことを希望致しまして、全面的に贊意を表したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=35
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036・竹田儀一
○竹田委員長 伊藤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=36
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037・伊藤幸太郎
○伊藤(幸)委員 只今の若林さんの意見に贊成でございまして、當時施行されました此の措置令は、事情已むを得ぬものだと思ひます、隨て此の經濟上、生活上の事情が非常に變動した今日に於きましては、此處で盛んに論議せられました要望を考慮せられて、封鎖支拂の點、特殊預金の點、生活費の緩和等、何れも生産意欲昂揚の爲の事業資金の融通に付きましては、一日も早く枠を緩和して戴きたいと云ふことを希望致しまして、承認するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=37
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038・竹田儀一
○竹田委員長 討論は終結致しました、是より採決を致します、各案を一括致しまして、本案を承諾するに御贊成の諸君は御起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=38
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039・竹田儀一
○竹田委員長 起立總員、仍て本案は承諾を與ふることに決しました、是にて散會致します
午後一時四十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009010568X00419460706&spkNum=39
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