1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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本委員は昭和二十一年九月十日(火曜日)議長の指名で次の通り選定された
磯崎貞序君 小川原政信君
上林山榮吉君 木島義夫君
北れい吉君 古賀太郎君
田邊讓君 中野武雄君
葉梨新五郎君 森幸太郎君
森田豐壽君 八重樫利康君
藥師神岩太郎君 山口好一君
青木清左ヱ門君 飯島祐之君
江川爲信君 小笹耕作君
太田秋之助君 白木一平君
寺島隆太郎君 保利茂君
山口光一郎君 吉澤仁太郎君
井伊誠一君 大澤喜代一君
棚橋小虎君 玉井潤次君
堂森芳夫君 富吉榮二君
中原健次君 平野市太郎君
松澤一君 麻生正藏君
橋本二郎君 藤本虎喜君
松本六太郎君 井出一太郎君
鈴木憲一君 豐澤豐雄君
増井慶太郎君 北政清君
布利秋君 山木武夫君
九月十一日委員須永好君死去に付其の闕補として細野三千雄君を議長に於て選定した
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九月十一日(水曜日)午前十時十七分委員長理事互選の爲次の委員が參集した
磯崎貞序君 上林山榮吉君
古賀太郎君 田邊讓君
中野武雄君 葉梨新五郎君
森田豐壽君 八重樫利康君
藥師神岩太郎君 山口好一君
青木清左ヱ門君 飯島祐之君
江川爲信君 小笹耕作君
太田秋之助君 保利茂君
山口光一郎君 吉澤仁太郎君
大澤喜代一君 棚橋小虎君
玉井潤次君 中原健次君
平野市太郎君 松澤一君
麻生正藏君 橋本二郎君
藤本虎喜君 松本六太郎君
鈴木憲一君 豐澤豐雄君
北政清君 布利秋君
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〔年長者太田秋之助君投票管理者となる〕
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昭和二十一年九月十一日(火曜日)午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 上林山榮吉君 理事 飯島祐之君
理事 山口光一郎君 理事 藤本虎喜君
理事 布利秋君
磯崎貞序君 古賀太郎君
田邊讓君 中野武雄君
森田豐壽君 八重樫利康君
藥師神岩太郎君 山口好一君
青木清左ヱ門君 江川爲信君
小笹耕作君 太田秋之助君
保利茂君 吉澤仁太郎君
大澤喜代一君 棚橋小虎君
玉井潤次君 中原健次君
平野市太郎君 松澤一君
麻生正藏君 橋本二郎君
松本六太郎君 鈴木憲一君
豐澤豐雄君 北政清君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
出席政府委員
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=0
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001・太田秋之助
○太田投票管理者 先例に依りまして、私が年長の故を以て投票管理者となり、是より委員長の互選を行ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=1
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002・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 投票を用ひず葉梨新五郎君を委員長に推薦致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=2
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003・太田秋之助
○太田投票管理者 御諮り致します、只今の青木君の意見に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=3
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004・太田秋之助
○太田投票管理者 御異議ないと認めます、仍て葉梨新五郎君が委員長に當選に相成りました、委員長葉梨新五郎君に本席を讓ります
〔葉梨新五郎君委員長席に著く〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=4
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005・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御推擧に依りまして委員長の職務に就かして戴きます、本案は御承知の通り憲法に次ぎまする大法案でありまして、私の如き行届かぬ者が此の席を汚して、果して皆さんの御付託に副ひ得るか否かは分りませぬが、併し御推擧を蒙りました以上は、皆さんの御指示に依りましてどうか無事に職責を果したいと思ひます、就任に當りまして皆樣に此のことを御願ひ申上げる次第であります──それでは引續き理事の互選を行ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=5
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006・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 理事は其の數を十名と致しまして、委員長に於て御指名あらんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=6
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007・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木君の御發議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=7
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008・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御異議ないものと認めます、それでは御指名申上げます
小川原政信君 上林山榮吉君
森幸太郎君 飯島祐之君
山口光一郎君 細野三千雄君
富吉榮二君 藤本虎喜君
井出一太郎君 布利秋君
以上十君を理事に御指名申上げます、暫時休憩致します
午前十時十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=8
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009・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは休憩前に引續きまして會議を開きます、政府の説明を願ひます──農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=9
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010・和田博雄
○和田國務大臣 本案提出の趣旨に付きましては、既に本會議に於きまして詳細御説明致しましたので、此の委員會に於きましては、其の内容に付きまして御説明を申上げたいと存じます
先づ自作農の創設特別措置法案から申上げますが、第一に自作農の創設に付きましては、之を二年間と云ふ短期間に、急速廣汎に且つ公正に行ふ必要がありまするので、從來は地主、小作人の間の相互の話合ひに致して居つたのでありまするが、今囘は地主、小作人間の相對賣買は認めないことに致しまして、其の間に國が入りまして、自作農創設に必要な農地は、國家に於きまして、直接土地の所有者から強制的に買收致しまして、之を小作人に賣渡すと云ふことに致したのでございます、而して此の改革が完了致しますれば、全國の小作地二百六十萬町歩の中約二百萬町歩、即ち凡そ八割が自作地となることに相成つて居ります
第二番目に買收の對象となりまする農地でございますが、不在地主が所有して居りまする小作地は、從來通り全部が買收の對象となります、在村地主の所有しまする小作地に付きましては、前囘の改革案に於きましては、全國平均五町歩まで地主に保有を認めて居つたのでございますが、今囘は、内地に於きましては概ね一町歩、北海道に於きましては四町歩に引下げまして、之を超えまする小作地全部を買收の對象と致しました、又自作地と小作地と合せまして、北海道では十二町歩、内地では平均三町歩以上を所有する場合に於きましては、之を超えまする部分の小作地は買收することに致したのでございます、又農地以外に於きましても、自作農の創設の爲に必要でありまする場合に於きましては、採草地でありますとか、或は宅地でありますとか云つたやうな、農業用地、其の他農業用の施設なども買收することと致しました
而して以上の買收の實施に當りましては、第一に自作地に付きましては、從來通り原則として買收を致さないこととしまして、農業經營を制限するやうな取扱は致さないことにして居るのであります、尤も自作地の中に於きましても、其の耕作の業務が甚だ不適正でありまして、國民經濟の見地から見まして生産力等の點に於て甚だ不適正なものがありまするやうな場合に於きましては、それは三町歩を超えまする部分を買收することが出來ると云ふことに致して居ります、併しながら原則としましては、自作地に付ては買收を致さずに、農業經營と云ふものの制限は致さないと云ふことに致しまして、將來日本に於きまする技術の發達、其の他の點に依りまして、日本の農業經營と云ふものが色々の裕りを持つと云ふ發展の餘地を殘すと云ふやうに致して居る次第であります、第二、に以上述べました農地の範圍を定めまする場合には、從前のやうに個人單位に依りますることは、農村の實情から見まして其の必要も認められませぬので、今囘は世帶と云ふものを單位と致すことに致しました、第三に、隣接市町村にありまする農地は、今までは一律に在村地主の農地として之を取扱つたのでございますが、今囘は隣接市町村の中でも、社會的な、又自然的な點から考へまして、其の市町村の區域に含めますることが妥當であると認められまする農地に付きましてのみ、之を在村地主の農地として認めるやうに致したいのでございます、第四番目に、買收すべき農地に該當するかどうかと云ふ決定に付きましては、買收の時期を基準とするのが原則ではございまするが、假裝賣買でありますとか、其の他小作地の不當な取上等、不當な土地移動のあつた場合に於きましては、過去に遡つて適用し得ることと致しまして、自作農にならうとする善良な小作人の公正な利益を保護することと致して居るのでございます
次に農地の買收價格は、是は現行通りでございまして、田に於きましては賃貸價額の四十倍であり、畑に於きましては四十八倍の範圍内と致したのでありますが、報償金に付きましては、買收を受けました土地所有者に對しましては、内地に於ては平均三町歩、北海道に於きましては十二町歩を限度と致しまして、現行通り田は平均二百二十圓、畑は平均百三十圓の報償金を交付することと致して居るのであります、唯買收しました農地の代金の支拂でございますが、是は「インフレーション」の促進となりますことを避けまする意味で、農地證券の交付と云ふ方法に依ることに致して居るのであります、又農地を買受けました農民に對しましては、可能な限度で一時拂を勸奬致しまして、其の殘額を年利三分二厘、期間三十年以内の年賦償還をなし得る途を設けて居る次第でございます、更に年賦償還に付きましては、將來農産物價格がどんなに下落致しましても、小作農の年賦償還と云ふ負擔が、小作農に取りまして過重になりませぬやうに、農地の平年收穫物の價格の一定の割合を超えないやうに致しまして、此のやうな場合に付て償還金の減免等の措置を講ずることに致して居る次第であります
次に、國の買收と賣渡の手續の問題でありますが、此の點に關しましては、市町村農地委員會の樹立しました農地の買收と賣渡の計晝に依つて行はれるのであります、併し固より不當な又は違法な計畫に對しましては、地主も小作人も異議の申立が出來るやうになつて居ります、又訴願の途も開いて居りまして、兩者の救濟に其の途を講じて居る次第でございます、農地委員會の作成致しました買收又は賣渡の計畫は、都道府縣農地委員會の承認を受けると云ふことに致しまして、都道府縣農地委員會の承認があつた場合に是が確定すると云ふことに致して居るのであります、計畫が確定致しますると、地方長官は之に基きまして農地を強制的に買收致しまして、之を小作人に賣渡すと云ふことになつて居る譯であります、農地の賣渡に付きましでは、健全な自作農を創設することを目途と致して居るのでありまして、徒らに惰農を自作農たらしめると云ふことを考へて居るのではありませぬ、而して買收しました農地の現在の小作農に賣渡すと云ふことを原則と致しますが、今囘の農地改革に當りましては、此の際出來るだけ多くの小作人に土地購入の機會を公正に致しますると共に、出來るだけ耕地の集團化を圖りまする趣旨を以ちまして、買收計畫に於て是等の點に十分考慮を拂ひまするのは勿論、必要がありますれば農地の交換分合等を強制的に行ひ得る途を開いて居る次第でございます
次は未墾地の取得と處分に付てでございますが、是は既墾地に準じまして必要な措置を講ずることと致して居ります、其の趣旨は、私が本會議に於て御説明申上げました通り、國土を出來るだけ集約的に利用致しまして、國民に生業の基盤を與へ、又終戰後に増加致しました農村人口を處理致しまして、農業の發展を期する上に於きまして強力に開拓事業を遂行して參ることが絶對に必要だからであります、立體的に日本の農業を切開いて行きますると共に、一面外延的な開拓等に依りまして、そこに日本の耕地を殖やし、さうすることに依りまして既墾地に於きまする農地改革の效果を補完する、言換へればそれを以て農地改革を完全ならしめると云ふ方向を取ることが必要と考へたからでございます、農地の開發、就中開墾用地の取得に付きましては、從來は農地開發法又は農地調整法の中に規定があるのでございまするが、取得の主體でありますとか方法に付きまして、迅速公正且つ計畫的な取得を期すると云ふ點から言ひますと、現在の制度は極めて不備でございますので、以上の諸點に稽へまして、今囘は國が直接之を公正迅速に買收し又取得得致す方法を講じた次第であります
而して未墾地の買收と賣渡は農地の場合と異なりまして、都道府縣農地委員會が定めまする計畫に依りまして行ふのを原則と致して居るのであります、是はなぜかと云ひますと、やはり出來るだけ廣い高い見地に立ちまして之をやる必要があると思ひましたので、開拓と云ふ點に付きましては、都道府縣農地委員會の定める計畫に依つて之を行ふと云ふことに致したのであります、併しながら是は既耕地に於きます土地制度の改革と照應致す必要がございますので、それ等の點に付ては實際の運用上十分なる調整を執ることと致して居るのであります、唯小面積のものに付きましては、未墾地に付きましても賣渡の相手方は其の地區の農業者が多い譯でありますから、農地の買收と賣渡計畫との間に必然的に非常に密接な關聯が出て來ますので、市町村の農地委員會をして地元の實情に應じました處置を致さしめることと致して居ります、何れの場合に於きましても、未墾地の買收の對象は、農地の開發上必要な未墾地と云ふものを主と致して居るのでありまして、所要の立木等に付ても勿論之を買收し得ることとは致して居ります、是は未墾地に於きましては、其の未墾地に入りまして營農を致します上に於きましては、どうしても採草地でありますとか、又家を建てるに付ては立木等も必要となりますので、それ等の部分に付きましても農地開發をやるに必要な限度に於ては、さう云ふものを買ひ得ると云ふことに致して居ります、而して買收しました未墾地は、之を開發致しまして農家として精進し得る見込のある者に賣渡しまして、そこに自作農を創定すると云ふことを原則と致して居るのでありまして、此の手続に付きましては農地の場合と別段の相違はございませぬ
次に農地調整法の改正に付て其の主なる内容を御説明致しますると、是は自作農創設の特別措置と照應致しまして、實際上今囘の農地改革を行ふ自作農創設事業を實施する衝に當ります農地委員會と云ふものを、今までよりももう少しく民主的に改組致しまして、從來は地主、小作、自作、各各の層から五人づつを選んで之を構成致し、徳望經驗ある者三人を之に加へまして、十八人を以て農地委員會を構成致すと云ふやうに致して居つたのでございまするが、今囘は小作人が五人、地主が三人、自作人が二人と云ふことに致しまして、小作人と所謂土地所有者とを同數と致しまして、之を組織することに致したのでございます
次に將來に亙りまして農地の兼併を防止致しまして、何處までも自作農の形態を維持致しますると共に、農地利用の適正を圖りまする爲に、農地の移動でありまするとか、又潰廢に關しまする統制、其の他小作地取上の制限を一層強化することと致しましたが、又當面の自作農創設事業の圓滑な實施を期しまする必要上、是等の制限は當分の間は原則として地方長官の許可を受けることを要することに致した次第でございます
次に今まで申上げました自作農創設の措置と相俟ちまして、今囘の改正に依りましては、まだあとに小作地が約六十萬町歩位殘る譯でございます、隨ひまして殘存しまする小作關係と云ふものを適正に致しまして、耕作者の權利を保護致し、之を鞏固なるものに致しますることが必要であり、小作關係全般に亙つて之を適切公正ならしめる必要がございますので、是等の點に付きましても、又小作料の點に付き、或は小作契約を文書を以て諦結するやうにせしめる等適當な措置を講じて居るのであります、小作料に付きましては既に先般の農地調整法の改正に依りまして金納制となつたのでございまするが、將來何等かの事情で經濟事情が激變を來しますやうな場合に、若し此の小作料が平年收穫物の價額の一定割合を超えるやうなことがありますれば、小作料引下の請求權を認めることと致すと云つたやうな各種の措置を講じまして、片方では自作農と云ふものを農地制度の本流として突き進めて行きますが、そこに殘ります小作制度に付きましては、之を最も近代的に合理化し、兩々相俟ちまして日本の農地制度の基礎を固めることに致した次第でございます
以上が大體二つの法案の主要なる所の内容でございます、何卒愼重に御審議の上に速かに御可決あらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=10
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011・葉梨新五郎
○葉梨委員長 次に政府委員より兩案の各條に付ての説明を便宜上聽取したいと思ひますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=11
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012・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それではさう云ふことに致します──山添政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=12
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013・山添利作
○山添政府委員 それでは自作農創設特別措置法案の方から極く簡單に御説明を致します、只今大臣から説明がございました提案理由の内容にございました事柄を唯法文にしただけでありまして、別に込入つたことはございませぬのでありまするが、條文の順序に從ひまして極く簡單に御説明を致したいと思ひます
第一條は目的を書いたのでございまして、別に御説明することもございませぬ
第二條は定義であります、「この法律において農地とは、耕作の目的に供される土地をいふ。」農地の定義を掲げて居りまするが、是は農地調整法に於ける定義と同樣であります、現に耕作されて居る、若しくは今耕作されて居なくても、直ちに耕作され得る状態にあると云ふのであります、客觀的に申して、あるものを言ふのであります、隨て是は土地臺帳等の上に於ける地種、地目と云ふやうなものとは關係ございませぬ、專ら現状に付ての意味であります
それから第二項に書いて居りますのは、自作地及び小作地の定義でございますが、自作地の定義とは、普通我々が考へて居りますことと何等變つたことはございませぬ、小作地の定義は、結局所有權以外の權原に基いて耕作の業務に供して居る農地と云ふのでありまして、小作料は別に拂つて居ない、謂はば只でありましても是は小作地、即ち此處に書いてあります「使用貸借による權利」と云ふものに基いて耕作をして居る、即ち小作地に入るのであります
それから此の自作地とか小作地とか言ひますのに、一體元の土地に關する權原を誰が持つて居るか、是等のことの定義は總て世帶を單位として決めると云ふのであります、是が、難かしく書いてはございますが、第三項に書いてある事柄でありまして、戸主であるお父さんが土地の所有者である、併し息子が專ら耕作に從事して居る、是は普通に考へましても自作地でございまするが、此の法律の第三項の規定に依りまして、さう云ふものが自作地であると云ふことをはつきりせしめたのであります、是は賃貸借契約が親であつて、實際耕作の業務に從事して居るのは息子であると云ふ小作地の場合も同樣であります、即ち世帶の種類に依つて自作地とか、小作地とか云ふことも考へて行くと云ふのでございます
其の次に自作農、小作農の定義が書いてございます、是も別に御説明を申上げることはございませぬ
第三條は、どう云ふ土地を政府が買收するかと云ふことでございまして、第一項に掲げてございますのが例外──例外と言ふとをかしいですが、規則的に國が買收をしてしまふ農地であります、第一號は不在地主、此の不在地主の範圍に付きましては、只今大臣の方から説明がございましたやうに、前囘は在村地主として認めますものは、住所又は居所のあります市町村、若しくは其の隣接市町村の區域内と云ふことでございましたが、今度は、前の農地調整法の時から見ますと、居所と云ふ字が取れ、隣接市町村が削られまして、社會的、自然的に同一環境にあると云ふ場合に、隣村の部落程度までを其の住所のある市町村の區域と云ふ觀念に含ませて行かうと云ふやうに、狹く致したのであります、此の居所と云ふ字を削りましたのは、意味が非常に曖昧であります爲めでございまするが、同時に又さう云ふやうな事柄を救ひます爲には、總てを世帶單位に考へると云ふ所に於きまして、支障のないやうに此の法案に於ても取扱を致して居ります、それから隣接市町村の區域内で、其の當該市町村の區域に準ずるものとして指定するのは、誰が指定するかと言ひますと、其の所有者の住所のある土地の農地委員會が指定を致すのであります、さう云ふやうに住所主義に依ると云ふことを、農地のあり場所の市町村農地委員會が指定をすると云ふ意味ではございませぬ
第二番目は、北海道に於て四町歩、それから都府縣に於ては概ね一町歩と云ふ小作地の保有面積を認めて、それ以外の小作地は全部國が買收すると云ふことでございます、此の北海道に於て四町歩、又は都府縣別面積に於て一町歩と云ひますのは、平均四町歩、平均一町歩と云ふ意味でありまして、北海道に於きましても地方別に適宜面積を定める、さうして其の平均が概ね四町歩になるやうにする、都府縣別の面積も同樣でありまして、東北地方が若干多く、關西地方が若干低い、斯う云ふやうに定められるものと考へて居ります
第三番目は「農地の所有者がその住所のある市町村の區域内において」云々と云ふので、是は誤解の生じ易いことでございますが、結局原則的に一町歩までの小作地の保有を認める、併しながら其の人が自作地も持つて居り、小作地も持つて居ると云ふやうな場合に於きましては、保有し得る小作地が一町歩以下になることがある、斯う云ふことでありまして、例へば二町五段自作をして居り、小作地を一町歩持つて居ると云ふ場合には、三町歩と云ふ一つの基準がございまして、それを超えます部分の小作地、印ち五段歩と云ふものが強制買收の對象になる、斯う云ふ意味のことであります、第二項は只今申しました
第三項は、北海道に於ける四町歩であるとか、或は都府縣の一町歩であるとか、或は又北海道に於ける十二町歩、都府縣に於ける三町歩、斯う云ふやうなことが、地方の状況に依つて特別の必要がございますれば、都府縣内でも區域を分つて適宜決めることが出來る、斯う云ふ規定であります、併しながら都府縣内に於きまして、状況に依つて地域毎に別の面積を定めると申しましても、之を細かく決めて行くと云ふやうなことは、實際にも適しませぬので、さう云ふやり方を採る積りはございませぬ、大體山嶽地帶と、さうでない所と、分けるに致しましてもさう云ふやうな見當であらうと思つて居ります
それから第一項にございますのは、規則的に國が買收する農地でございますが、次に書いてございますのは、判斷に依つて買收すると云ふ農地、即ち「自作農でその者の營む耕作の業務が適正でないもの」斯う云ふ場合に買收するのであります、何が「自作農でその者の營む耕作の業務が適正でない」かと云ふことに付きましては、結局生産力が低いと云ふことであり、又其の事柄は別の面から見ますると、日本の農業は、御承知のやうに家族勞力を基幹とする譯でございますが、それに比して非常に大きな面積を經營致して居る、其の爲に業績が上らない、斯う云ふのが普通であると思ひますが、さう云ふ場合を指すのでございます、と申しましても、固より自家勞力一點張りと云ふ譯ではありませぬ、そこに統一もあり、新しい技術を持つた立派な經營がございますれば、それは其の儘認める譯でございますけれども、原則論と致しまして、勞力等の比例が取れて居なくて、自然粗放になつて居る、隨て又能率も上つて居ない、斯う云ふやうなものは、之をより能率的に經營出來ると期待される小作地に變へて行く譯であります
それから第二に「自作地で當該自作地に、就いての自作農以外の者が請負その他の契約に基き耕作の業務の目的に供してゐるもの」と云ふものは、結局脱法的な事柄を抑へる意味でございまして、假令どう云ふ名目でありませうとも、其の實質の内容に於て小作地である、而もそれは脱法的に、請負契約であらうと、或は共同耕作と云ふやうな形を取つて居りませうと、是は國が全部買收する、斯う云ふ規定でございます
第三番目は「法人その他の團體でその營む耕作の業務が適正でないものの所有する自作地」、個人の場合でございますと、平均三町歩までは保有を認められたのでございますが、法人の場合は其の面積の制限なくして、不適正なるものは國に依つて買收される、是も結局法人の經營が能率が上つて居ないと云ふことでありまして、其の主なるものと致しましては、戰爭中農民から工場敷地其の他の理由に依りまして土地の買收をした、それが現在は自給農園と云ふやうな形で耕作されて居ると云ふ場合、勿論之を一律的に扱ふ譯ではございませぬけれども、原則と致しまして左樣な自給農園に付きましては、之を國が買收し、さうして小作地に變へて行くと云ふ考へ方を致して居ります、尤も具體的の場合々々に付きまして判斷を要することは勿論でございます
それから「法人其の他の團體の所有する小作地」、是は状況に依りまして、農地委員會の判斷に依つて國が買收して自作地にして行く
それから第五番目には「農地で所有權その他の權原に基きこれを耕作することのできる者が現に耕作の目的に供してゐないもの」と云ふのは、農地でありながら、現に耕作されて居ないと云ふのは不耕作地であります、斯う云ふものは、北海道等に於きましては、戰爭中勞力不足で耕作が出來なかつた、それが現に若干殘つて居ると云ふことでございますので、掲げて置きました
第六番目は、地主の方から政府に買つて呉れと云ふ申込があれば、政府は買ふと云ふことを規定致したのであります
此の第一項と、只今説明申しました事柄との間に「第五條第七號に規定する農地で命令で定めるものの面積は、第一項第二號又は第三號に規定する小作地又は自作地の面積にこれを算入しない。」と云ふ規定が突然入つて居るのでありますが、是は後に出て參るのでありますが、甚だしく價値のない土地さう云ふものは各町歩とか、三町歩とか云ふものには加算をしないと云ふ意味合であります、燒畑、切替畑と云ふやうな、農地には違ひないけれども、普通の農地竝に勘定することが不適當であると云ふ價値のないものは別口である、斯う云ふ意味であります
第四條は、此の農地の關係で、一町歩でありますとか、三町歩でありますとか云ふやうな問題に付きましては、世帶單位に計算する、斯う云ふことを書いたのであります、世帶と申しますれば、結局生計を同じくする同居の家族、斯う云ふ風に解釋を致して居ります、併しながら場合に依りましては同居と云ふことの條件に外れて居りましても、之を同居して居るものと看做した方が適當であると云ふやうな場合がございます、例へば學生が東京に臨時に出て居り、土地が其の學生の名前になつて居ると云ふやうな場合に、是は同一の世帶に屬して居るものだと云ふやうに看做した方が適切だと考へられますので、さう云ふやうな事情のあります場合、本來は其の家族に屬し、其の家に同居して居る筈であるが、已むを得ない特別の事情で一時家を離れて居る者は、其の家に同居して居るものと看做すと云ふ取扱ひをする、さう云ふ事柄を含めての世帶と云ふのが第四條第一項に書いてあるのであります、文句は難かしうございまするが、さう云ふやうに御諒解を願ひます
第二項は、只今例に引きました東京に出て居る學生と云ふやうな場合に、其の住所は世帶のある所にあるものと看做しまして、不在地主になると云ふやうな不合理性を排除すると云ふのであります
それから第五條は、政府が買收をしない土地が掲げてございます、第一は試驗場の如きものであります
第二は、本來團體、若しくは農地開發營團が自作農創設の目的で以て所有して居る農地、是は當然自作農地になるのでありまするから、本法に依つて國が買入れると云ふ手數を掛ける必要はございませぬ、又共同耕作、共同收益地と云ふやうなものも、それは其の儘の形で殘すことに却て意味がございますので、敢て自作地とする爲に國が買收することをしない
それから第三番目の「試驗研究又は農事指導の目的に供してゐる農地で地方長官の指定したもの」斯樣な公益的な意味のございますもので、同一の土地が澤山の人に渡ることを防ぎます爲に、地方長官が指定したものは自作地としない
四番目のは、現行の農地調整法に於きまする場合と同樣でありまするが、都市計畫法第十二條第一項の規定に依る土地區劃整理を施行する土地、其の中宅地としての利用を増進して行かうと云ふ地域がございます、さう云ふ地域を地方長官が指定致しました場合に其の土地は買收しない、又土地區劃整理を施行しない地域でございましても、都市計畫の爲に必要な河川敷、其の他公共施設を致します土地に付きましては買收しないと云ふことであります、是は現行法の農地調整法と變りはございませぬ
五番目は「近く土地使用の目的を變更することを相當とする農地で市町村農地委員會が都道府縣農地委員會の承認を得て指定したもの」、是は要綱の當時、近く宅地にすると云ふことで表現してございましたが、主たるものは宅地でございますけれども、工場敷地になりますとか、兎に角使用目的を變更することを相當とする農地でございまして、尤も是は濫りにさう云ふやうに認定をして自作農地になることを免れると云ふやうなことがございましては、此の法律の目的を達成致しませぬので、市町村農地委員會、都道府縣農地委員會の承認を受けて、其の監督の下に、嚴格なる意味に於てさう云ふ農地を認定する、斯う云ふことに致したのでございます
第六番目は「自作農が疾病その他命令で定める事由に因つて」、疾病とございますけれども、主たる場合は出征を致して居りまして、歸還を致して參つた、前相當耕作を致して居りましたが、出征の爲に自分の家で耕作が出來ませぬので、之を一時他に貸して居つた、斯う云ふ場合であります、之を小作地一町歩と云ふ制限に引掛けてしまひますことは、如何にも適しませぬので、從前其の人が自作を致して居りました範圍までは、之を元のやうに自作農にして行かうと云ふ趣旨の規定でございます、此の事柄は大體前の農地調整法にも、其の自作農が近く自作するものと認めてと云ふ字を使つて居りましたが、同樣な事柄を市町村農地委員會の認定に依つて認めて行く、併しながら茲に御斷りをして置きたい事柄は、元自作をして居りました範圍まで小作として保有することを認め、又それが近く自作地になることを期待するのでありますが、其の場合に自作地になるだらう土地の外に、小作地一町歩を持つと云ふ意味ではないのでありまして、持つて居ります小作地一町歩に合せて、それを含めまして元自作を致して居りました面積までが認められる、斯う云を意味合でございます、是は謂はば例外的の場合でございますから、さう云ふ風に取扱はれますことは已むを得ないと考へて居ります
第七番目は新開墾地、燒畑、切替畑と云ふやうな收穫の著しく不定の農地、即ち斯くの如きものは自作農地に致しましても安定性を缺くと云ふのでございますから、是は國が態態買つて自作地にすると云ふことはしない、新開墾地と云ふ點に付きましては、抑抑開墾地自體が數年經ちませぬければ熟地になりませぬと云ふことと同時に、現在開拓事業を強力に進めなければならぬと云ふ時機に於きまして、開墾の奬勵をすると云ふやうな意味合をも含めまして、茲に「新開墾地」と云ふのを擧げたのでございまして、一面は開墾の奬勵、一面は又新しい開墾地にいきなり自作農を創設すると云ふことは、自作農になる人から見ましても前途の經營に十分なる安定性、見極めが付かないと云ふ二つの理由から之を入れたのであります、「その他命令で定める農地」とございますのは、例へば炭坑附近の土地で陷沒の危險のある土地であるとか云ふやうなものを考へて居ります
それから第六條の第一項は市町村農地委員會が買收計畫を立てると云ふことであります
第三項には如何なる價格に依るかと云ふことが書いてございます、此の國の買收します價格は、現在の農地調整法に依ります公定價格と同樣でありまして、それ以下の價格に依つて買收價格を決めると云ふのであります
それから第六條の第四項に、此の農地買收計畫を定めるのに付きましての市町村農地委員會の指導方針と云ふべきものが書いてあります、第一は「自作農をなすべき者の農地を買ひ受ける機會を公正にすること。」即ち土地を買ひたいと希望する人は非常に澤山ある譯でございます、之を公正に、或る一人の人にのみ限ると云ふやうなことのないやうに、總ての人に公正に其の土地買入の機會を與へる、固より健全なる自作農になる見込がなく、當然排斥されると云ふやうな人は別でありますけれども、さうでない人に付きましては、出來得る限り多數の人に土地購入の機會を與へると云ふ趣旨であります、此の事柄は結局國が農地を買ひまして、其の農地の上に小作をして居る人に賣る譯でありまして、既に買收する時に、買收土地の選定と云ふことに付て斯う云ふことを考慮して置かなければならぬと云ふ譯であります
第二號として「自作農となるべき者の耕作する農地を集團化し、且つ當該地方の状況に應じて當該農地につき田畑の割合を適正にすること。」結局耕地の集團化を圖る、此の事柄も、買收計畫の時に於きまして出來得る限り耕地の集團化が出來ますやうに、又買受けました自作農になります人が、適當なる其の地方々々の割合で田畑と云ふやうなものを持ち得るやうなことも考慮して買收計畫を立てなければならぬ、斯う云ふ意味であります
そこで斯樣な意味合を以て立てる買收計畫に付きましては、實行問題と致しまして、事前に土地所有者及び小作者の側から、土地に關する状況とそれに付ての希望、政府に賣りたいとか、或は小作者の方から致しますれば、其の土地を買ひたいと云つたやうな申出を取りまして、それを斟酌致しまして農地委員會が計畫を立てる譯でありますが、法的に申しまして、土地所有者が國家に賣渡す農地の選擇權ありやと云ふことであれば、それは選擇權はない、農地委員會が此處に書いてありますやうな方針に準據して、最も公正適正なる立場に於て自作農創設の目的を達するやうに其の買收土地を決定して行くと云ふ觀念でございます
それから第六條第五項に依つて、斯樣にして立てられました買收計畫は、遲滯なく其の旨を公告し、且つ關係者に書類を縦覽に供する
さう云ふ風に致しまして、第七條で、其の農地委員會の立てました買收計畫に異議がある土地の所有者は、先づ市町村農地委員會に異議を申立てることが出來る、其の異議に對して農地委員會が決定を下します、それに對して不服があれば、都道府縣農地委員會に訴願をすることが出來る、斯う云ふ風に致してございます、是は前の農地調整法當時と比べて見ますると、本來やり方が違つて來て居るのでありますから、其の間市町村農地委員會が異議を受付けて裁定をすると云ふのではないことは當然でございますが、行政訴訟と云ふことは今囘は省いてございます、併し市町村農地委員會に對する異議の申立を認め、又それに對する農地委員會の決定に不服がある場合は、都道府縣農地委員會に訴願をする、斯う云ふ二審の制度を認めて居る、又事が價格に關する問題でございますれば、是は通常裁判所に何時でも出訴して宜しい、斯う云ふことになつて居ります
第八條は、斯樣にして總ての計畫及び其の計畫に對する異議が落著を致しますれば、市町村農地の委員會は之を都道府縣農地の委員會の承認を受ける、斯う云ふことであります
それから第九條には、其の承認がございましたら、買收令書と云ふものを所有者に交付致しまして買收をすると云ふ、買收の手續規定を書いて居ります、尚ほ又此の場合に於きまして、其の土地の上に抵當權と云ふやうな擔保權を持つて居る者がございますれば、其の利害關係者に對しましては、國が買收をすると云ふことを通知しなければならぬ、而して擔保權者に對しましては、斯う云ふ通知を致しますと同時に、第十三條に依つて其の人の請求がございますれば、對價は供託をすると云ふことに致して居ります
第十條は土地の面積であります、此の面積は、土地臺帳に登録してある當該農地の地積に依る、土地臺帳に記載してあります地積は、實測の結果と違つて居ることは皆さん御承知の通りでありますが、其の違つて居ることが明治以來ずつと通用致して居ると云ふことも亦御承知の通りであります、其の臺帳面積に依つて賣買されて居ると云ふのが普通の事實でございますので、それに依ることにする、併しながら特別の事情がございまして、土地臺帳面積に依ることが著しく不都合であり、不合理であると云ふ場合に於きましては、市町村農地委員會が適當な面積を定める、結局實測を致しまして、其の地方に於ける土地臺帳面積と實測面積との違ひと云ふやうなことを斟酌して面積を定めることに致したいと考へて居るのであります、斯樣な場合は、山林の一部が開墾されて今畑になつて居る、其の面積をどうするかと云ふやうな場合に必要になつて來るのであります
それから第十一條は別に申上げることもございませぬ
次に第十二條、是も難かしいことが書いてありますけれども、事柄は簡單なのでありまして、結局國が買收令書を交付致しますと、當該農地の所有權は政府が之を取得する、其の時に一切の權利は消滅する、是は一應原始取得と云ふ法律觀念に依りまして總ての權利が消滅する、併し小作權其の他其の土地に付いて居ります權利は、消滅と同時に新しく又そこで設定されたものと看做す、斯う云ふ風に書いてあるのでありまして、是は法律觀念の上から斯う面倒に書いてございますが、結局所有權が國に移り、其の土地の上にありました從前の抵當權は消滅致しますが、小作權と云ふやうなものは當然暫く國が處分するまで殘つて居る、斯う云ふことが書いてあるのであります
第十三條は對價の支拂に關する事柄でございますが、先程申しましたやうに、其の土地の上に先取特權、質權又は抵當權がございました場合には、
それ等の權利者の請求に依つて其の對價を供託すると云ふことを書いてあるのであります
それから第十三條の終りの方には報償金が書いてございます、此の報償金は先程大臣の説明にもございましたやうに、平均三町歩と云ふものを限度として交付をする、其の趣旨は、中小地主の状況に對して交付すると云ふ趣旨から出發を致して居ります、此の取扱と致しましては、田に付ては賃貸價格の十一倍、畑に付ては十四倍、さう云ふ規則的な額を交付をすると云ふことに扱ひたいと考へて居ります、第十四條は先程申しました
第十五條は、農地以外のものであつて、完全なる自作農を創設致しまする場合に、是れ是れのものは國が買收して小作者に賣つた方が宜しい、斯う云ふものでございまして、第一は、第三條の規定に依り買收する農地の利用上必要な農業用施設とか水利施設とか云ふものであります、第二は採草地の問題、又宅地及び建物、此の建物の中には、農業用建物、住宅を含んで居りまするが、是等のものを自作農を創設するに當りまして、一括してやることが適當であると云ふ場合に於きましては、當事者の申請に依り市町村委員會の認定に依りまして、國が買取つて、さうして賣渡すと云ふことに致して居るのであります、此の宅地でございますとか住居等の建物と云ふやうなものを自作農創設としてやりますことに付きましては、そこに自ら適當なる範圍がある譯でありまして、之を市街地等の場合に適用して行くと云ふやうな考へは全然持つて居りませぬ、農山村の状況に應じて實施して參りたいと考へて居ります、それから此の場合に、値段の問題でございまするが、採草地の値段は、農地でございますから公定價格はございませぬ、隨て此の値段を決めますに付きましては、近傍類似の農地の價絡を標準に取りまして、それとの比較に於て其の何掛とか云ふやうな算定方法を決めたい、さう云ふことに依つて決めて貰ふ積りでございます、此の算定方法の如きことは中央農地委員會の審議に依つて決定致したいと考へて居るのであります、ここに「農地の時價」と書いてありますのは、農地の公定價格と云ふ意味であります、それから採草地以外に付きましては、即ち建物とか農業用施設に付きましては、時價を參酌して定める、固より時價と云ふものを睨みますると同時に、是は自作農を創設すると云ふことが目的でございますから、それに相應はしいやうな考へ方を致して行くべきが當然でございまして、具體的にはさう云ふ状況を考慮して決めなければならぬものと考へて居るのであります
第十六條は誰に賣るかと云ふことを書いたのでありまして、元來自作農創設の事業でございますから、「自作農として農業に精進する見込のあるもの」と云ふ範圍であることは當然でございますけれども、事實問題と致しましては、現に其の農地の上に耕作を營んで居る小作農に賣渡すのが原則でございます、其の他の場合と致しましては、此の法律の附則に昨年十一月二十三日現在に依ると云ふやうな場合のことも書いてございますが、さう云ふやうな場合に於きまして、現在の小作農よりも其の前の小作農に賣ると云ふやうな場合があるとすれば、さう云ふ場合、或は又自作農地でありましても、不適正として之を分割するやうな場合に於きましては、其の耕地に付て農業勞働に從事して居つた人、斯う云ふやうな關係者の範圍を命令で定める積りであります、尚ほ「自作農として農業に精進する見込のあるもの」と云ふ範圍に付きましては、勿論此の法律と致しましては、極端な小農を作ると云ふことを目的に致して居る譯でないことは申すまでもございませぬが、さればと云ひまして、完全に農業だけでやつて行ける所の專業農家と云ふものだけを目當てに致して居る譯ではございませぬ、兼業農家に付きましても、「自作農として農業に精進する見込のあるもの」の中に包含を致して居ると云ふことは御承知置きを願ひたいと思ひます
それから國が買ひました農地は、之を直ぐさま耕作者に賣渡す譯でございますけれども、特別の事情がある場合、即ち耕作者の方で之を買受けないと云ふやうな何等かの理由のある場合、或は又國と致しましても其の耕作者に賣渡すことが不適當であると云ふやうな場合、此の場合に於きましては、國が其の農地を持つて居るか、或は市町村農業會等の團體に肩代りをするかと云ふことでございますが、無論大面積と云ふやうな場合でございますれば、當然國が保有をして居ることになると思ひますが、團體の希望もあり、又小面積のものでもあると云ふやうな場合でございますれば、之を市町村の農業會等に肩代りを致しまして、時を掛けて適正なる自作農創設事業を行つて行く、さう云ふ意味合に於て團體に賣渡すことが出來る、斯う云ふやうに規定が設けてある譯であります
第十七條は別に申上げることもありませぬ
第十八條には賣渡計畫のことが書いてございます、是等のことも殆ど説明する必要はないと思ひます、唯賣渡計畫のことに付きましては、第十九條に農地賣渡計畫に付て買受の申込をした人が異議ある時には、市町村農地委員會に對して異議を申立てることが出來る、斯う云ふ規定を置きまして耕作者の正當なる買受の機會と云ふやうなものを保護を致して居る譯であります、それから第二十條及び第二十一條も別に説明を致すことはございませぬ
次に第二十二條に於きましては、國が農地を賣渡しました場合に、賣渡の相手方以外の者が其の農地に付て權利を持つて居つたと云ふ場合に、其の權利は當然消滅する、其の消滅した權利に對しては政府が通常生ずる所の損矢を補償すると云ふ規定でございます、是はどう云ふ場合にさう云ふことが起るかと申しますと、永小作權若しくは永小作權と同じやうな關係にあります株小作が發生して居る、さう云ふやうな場合に於きまして永小作權者若しくは其の株小作權を持つて居る人が第三者に其の土地を又使はして居る、斯う云ふ場合に起る譯でありまして、其の場合には現實に耕作を致して居る人に土地が賣られます、而して中間にございました永小作權者や又小作權者は其の權利が消滅を致します、此の場合に於きまして國は其の損失を補償をする、是は當然でございます、此の場合だけを考へて居るのでありまして、其の他に國が補償をする場合はないと思つて居ります
然らば此の場合土地の價格と政府が拂ひます補償金との關係はどうなるかと申しますれば、原則論と致しまして、此の補償金は當然又通常の場合に於ける地價と云ふものの中に含まれて居る譯でございまするから、極端に申しますれば──極端に申すと云ふとをかしいのでありますが、茲に七百五十圓なら七百五十圓の地價がある、それを元の土地の所有者、それから中間地主と申すべき永小作權者との間に適當なる比率で分けて貰ふ、一方地主に拂ふものが是れ土地の代價であり、永小作權者に支拂ひます補償金が、永小作權の價格、斯う云ふことになる譯でありまして、此の際さう云ふものも此の第二十二條に依つて扱つて參ると云ふことに御承知を願ひたいと思ひます
それから第二十三條は交換分合に關する規定であります、此の土地の集團化を圖りますとか、或は又農地の買受の機會を公正にすると云ふ必要から見まして、交換分合を出來得る限りにと申しますか、事情の許す限り強力に行つて行く必要がございまするが、此の第二十三條には、政府が買受けました土地と政府が買收をしなかつた小作地との間の交換分合のことを書いたのであります、市町村農地委員會が其の指示を致しますれば、其の小作地の所有者は農地委員會と協議して、さうして交換分合の條件を決める、若し農地委員會との間に協議が調はない場合に於きましては、都道府縣農地委員會が裁定をする、此の裁定に依りまして強制的に、茲に國が買ひました農地、さうでない小作地との間に交換分合が行はれる譯であります
それから第二十五條は耕作權同志の交換分合の場合を規定して居ります、「市町村農地委員會は、政府の賣り渡すべき農地につき賃借權又は永小作權を有する者及び地目、面積、等位等が當該農地と近似する農地で政府の買收しないものにつき賃借權又は永小作權を有する者」、即ち政府が買ひました土地の上に於ける耕作者と、さうでない小作地に於ける耕作者との間の交換分合、之に付ての指示をする、是は協議が調へば其の通りで宜いのでありますけれども、當事者間に協議が調はない場合に於きましては、市町村農地委員會が裁定をする、其の裁定に依つて強制的に耕作權の交換分合が行はれる、此の土地の交換分合と耕作權の交換分合と云ふ場合、是は何れを採つても宜しいのでありますが、大體土地の交換分合の方が簡單に行くだらうと思はれます、併しながらそれだけに場合を限定して置きますると、是れ亦實施をするに付て都合が惡いと云ふこともございますので、廣く耕作權同志の交換分合と云ふことも認めたと申しまするか、實施をすることに致したのであります
それから第二十六條は代金支拂の方法でございます、此處に「支拂期間三十年以内、年利三分二厘」とありますが、是は現在の自作農創定の方法が二十四年で三分二厘と云ふことに致して居ります、そこで法制上三十年と書いてございますけれども、實行と致しましては、成るべく二十四年以内三分二厘の利子と云ふことでやつて行きたいと考へて居ります
それから第二十七條は土地を買ひました人の保護に關する規定でございます、結局農産物の價格が非常なる下落をした場合とか、或は土地が流出埋沒したと云ふ場合に、土地を買ひました人に過重な負擔とならないやうな措置を講ずると云ふ規定でございます
それから第二十八條は、此の施設に依つて自作農になりました人は、當然自作農として業務を續けて行く義務を負つて居る譯合でございまするが、之を何等かの事情で自作を廢めようと云ふやうな場合に於きましては、政府が其の土地を轉賣を致しまして、さうして之を次の自作農たらんとする人に賣渡して行く、即ち政府が仲介を致しまして、已むを得ず自作農が自作を廢めると云ふ場合に、次の自作農を創設して行くと云ふ規定であります、價格は此處に書いてありますやうに「第六條第三項の規定を準用する」。當面現在の公定價格に依る譯であります、之を遠い將來どうするかと云ふことになればそれは又自ら考へ方を變へて行かなければならぬ場合があると存じますが、當面の所と致しましては現在の賣渡値段で又買戻をする、斯う云ふことになつて居ります、第二十九條は別に申上げることはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=13
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014・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午後續行することと致しまして休憩致します、午後は一時から再開致すことに致します
午後零時一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=14
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015・会議録情報2
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午後一時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=15
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016・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは午前に引續きまして會議を續行致します、此の際遲れて御出席された方もあるやうでございますから、午前中の懇談會で決定致しました事項を、もう一度申上げて置きます、審議に當りますに付きまして、本會議の開會のない日が多少續くやうな模樣もありまするが、本委員會の使命に鑑みまして、出來得る限り本委員會は議事を進めて參りたいと思ひます、本會議がある日は午前中だけ本會議がない日は午前午後續行すると云ふことと、それから發言順位は慣例に依りまして按分率に致しまして決定をし、申込順位に依りまして決定を致すことにしたいと思ひます、どうぞ御諒承を願ひます、それでは午前に引續きまして農林當局の條文に付ての説明を求めます──山添農政局長発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=16
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017・山添利作
○山添政府委員 自作農創設特別措置法案の第三十條から御説明を致します、此の第三十條から第四十一條までは未墾地の買收及び賣渡に關する規定でございます、政府は未墾地を開發し之を利用する爲に、土地ばかりでなく、立木、又干拓等を致します場合に於ける漁業權、或は水の使用に關する權利、又土地の上にございます建物、其の他の工作物等を買收し、又は使用することが出來る旨が規定致してあるのでございます
そこで第三十條に於きましては買收の對象になるものを書いてございまするが、第一號は「農地以外の土地で農地の開發に供しようとするもの」、結局未墾地と云ふ意味であります、即ち農地開發の爲の土地を買收すると云ふのであります
それから第二號は「政府の所有に屬する土地で農地の開發に供しようとするものに關する所有權及び擔保權以外の權利」、例へば、國有林等にも斯う云ふ權利があると存じまするが、民間の方が其の土地の上に、官地に民の木を持つて居ると云ふやうな官地民木林と云ふやうな場合もあるのでありますが、結局さう云ふやうな權利を同じく買收をするのであります
それから第三號は、第一號の土地が開發の本體でございまするが、其の土地と合せまして開發する必要のある土地、結局其の附近にございます農地を未墾地と一括した計畫に依つて開拓地を仕上げて行かう、斯う云ふ場合に於ける農地であります、即ち未墾地と附近にございます農地とを一つの綜合計畫に依つて開發して行く必要があると云ふ場合に於ける、其の附近に於ける農地であります
又第三號の第一號又は第二號の土地の上にある立木又は建物、工作物、是は先程第二號で申しましたものであります
第五號の漁業權と云ふのは干拓等の場合でありますし、第六號は水に關する權利であります
それから第七號でございますが、此の第六號までは、開發地を作るまでの其の直接對象となります土地其の他でございますが、此の開發地を巧く利用して行きます爲には、其の開發地の上に移住する人の宅地と云ふやうなものも必要でございますし、又道路のやうなものも勿論なければなりませぬので、其の開發地を利用する爲に關聯して必要な土地其の他のものを買收出來ると云ふことが規定致してある譯であります
それから第三十一條は、是等の買收又は使用をするには、都道府縣農地委員會が命令の定める所に依つて定める未墾地買收計畫に依ると云ふことが書いてあります、それ等のやり方と致しましては、普通の農地に付ての場合と特に變つた點はございませぬ、唯此の開墾と云ふことでございますと、特別な專門知識等も必要でございますので、上級の都道府縣農地委員會が自ら其の計畫を立てる、勿論此の場合に於きましても、開拓に關する團體に於きまして豫め實地踏査に依つて、其の未墾地が果して開拓に適するや否やと云ふことは專門的な見地から調査を致します、又都道府縣農地委員會が此の計畫を定めますに付きましても、府縣にございます開拓委員會に其の意見を聽くと云ふやうな手續も執りまして、實質上に於きましては開拓專門家若しくは開拓の爲に設けられて居ります委員會と云ふやうなものの意見を十分採り入れて、さうして都道府縣農地委員會が決定致して行くと云ふ風に運用をして參る方針でございます
それから此の未墾地の價格の問題、之に付きましては、午前中に採草地の價格に付て御説明を致しましたが、それと同樣な扱ひに依つて參る、即ち公定價格がございませぬから、近傍類似の農地の統制價格、基準に致しまして、其の何掛と云ふやうな算定方法を以て買收價格を定めて行く、其の具體的な割合であるとか、或は其の評價の基準と云ひますか、さう云ふ事柄は中央農地委員會に於きまして地方の事情をも參酌して決定して參りたいと考へて居ります
尚ほ茲で申上げて置きたいことは、未墾地の買收は都道府縣農地委員會が當るのでございますけれども、小面積のもの、即ち平均十町歩程度のもの、北海道に於きましては其の四倍の四十町歩程度の未墾地でございますれば、是は市町村農地委員會が計畫を定めると云ふことに致す筈になつて居ります、是は小面積の未墾地でございますれば、事務上もさう云ふ方が便利でございますし、又其の處分も結局地元の人に其の儘配分すると云ふことになるかと思ひますので、地元關係から致しましても、是等に關する計畫は市町村農地委員會に當らせると云ふ風に考へて居る譯であります
第三十二條は、未墾地買收計畫を立てる爲の測量、檢査及び障害物の移轉又は除却に關する事柄を書いて居るのであります、是等の事柄は如何にも同じやうな事柄がございますが、是は土地收用法でございますとか、耕地整理法と云ふやうな關係の法律にございますやうなことと同じことが書いてあるのでありまして、唯準用條文が前の既墾地の所の條文を其の儘引いて居りますので、一寸見ますと何が書いてあるか分らないのでありますけれども、其の内容に於きましては既墾地の取扱と變つたこともなく、又規定と申しましても、結局從來あります土地收用法、耕地整理法と云ふやうなものと同樣の趣旨が書いてあると云ふやうに御諒解が願ひたいと思ひます
第三十三條は、政府が土地開發をすると云ふやうな場合、尤も是は政府に限りませぬが、其の買收若くは使用します土地の上にある物件等を除却させることが出來る、斯う云ふ規定でございます、只今例に擧げました法律等に何れもある規定であります、勿論第三十二條第三十三條に於て政府としては權限を持ちますけれども、それに依つて生じたる損害はそれぞれ補償する、此の事柄は申上げるまでもありませぬ
次に第三十五條は、政府が土地の上にある使用權を取得する場合に、又開發等をする場合に、其の妨げになる權利が停止されると云ふことを規定致したのであります
第三十六條は、斯う云ふやうに色々制限を蒙りますと、所有者に取つて、或は土地に付て權利を持つて居つた人に取つて本來の目的の用に供されない、斯う云ふやうな場合に、本來の權利等を一つ政府に買收して貰ひたい、或は物を買收して貰ひたい、斯う云ふ規定でありまして、之は通常の損失補償では「カバー」し切れない、隨て全部政府に買つて貰ひたい、斯う云ふ所有者若しくは權利者の保護に關する規定であります、同樣の規定は御承知のやうに耕地整理法等にもある譯でございます
第三十七條は、政府が或る土地を買收する、詰り土地開發の爲に買收を致しますけれども、其の土地の上に於て、それを唯一の頼りにして生計を立てて居ると云ふやうな人が、其の爲に非常に困ると云ふ場合がございます、そこで其の人の生活を保護すると云ふことが必要でございまして、其の場合に其の人に政府の買收の對象になりました土地に代るべきものを賣渡す、其の必要に應じて換地の買收が出來る、斯う云ふことを規定致したのであります、結局已むを得ずさう云ふ人の土地を買收致しますけれども、それに依つて非常に困る人の生活を保護致します爲に、他の換地を其の人に與へる、其の換地を得る爲に、政府は此の法律に依つて換地たるべきものを買收することが出來る、斯う云ふ意味であります
第三十八條は先程も申したのでありますが、小面積、即ち内地に於ける平均十町歩と云ふやうな未墾地の買收計畫は、市町村農地委員會が之を定めると云ふことを規定致して居るのであります
第三十九條は損失補償に關することを規定致して居ります
それから第四十條の關係でございますが、是は政府が未墾地を買收致しまして、之を開發する場合に、他の法律に依つて色々な開墾制限の場合がございます、例へば國立公園法の中に於きましてもあるし、或は保安林と云ふやうな關係にもございますし、或は河川法と云うやうなことにも關係がございますが、色々な法律に土地開拓と云ふやうなことに付て制限禁止を致して居る規定がございます、政府が開發の目的で買收致しました土地に付ては、さう云ふ規定を排除して開墾することが出來る、勿論此の實行問題と致しましては、抑抑買收の時と開墾適地として買收し、又其の買收したものを一定の專門的計畫に基いて開發する次第でありますから、さう云ふ制限禁止を致して居ります法律の精神と矛盾したやうな措置を執ることは、事實問題としては絶對にございませぬけれども、規定の上に於きまして、さう云ふ制限禁止の規定を排除する、他の關係官廳と協義を致して居つたのでは徒らに事業を遲らせるばかりでございますので、當然是は開拓し得ると云ふ規定を置いたのであります
それから第四十一條の關係は、買ひましたものの賣渡に關する規定でございます、是は大體後に又機會を見まして、此の開拓のやり方に付きまして開拓局長から詳細なる御説明があると存じまするが、政府が斯樣に未墾地として買ひましたものに付きましては、政府が之を農地開發營團其の他のものをして政府の委託事業として國營開墾を致さす、さうして適宜之を定著の見込あります自作農たらんとする移住者、或は他の村から耕地を擴張して、其の耕地擴張の爲に其の開拓地で耕作をする所の自作農者に賣渡すのであります、さう云ふ場合の外に、小面積の方でありますと、之をいきなり自作農として農業に精進し得る見込のある者に賣渡す譯であります、併しながら此の第四十一條は、法文には「自作農として農業に精進し得る見込のある者」と書いてございますが、實體の場合は「其の他命令で定める者」、斯う云ふやうなことになる場合が多からうと存じます、結局當分は小面積のものに於きましては、直ちに處分を致しますけれども、大面積のものは之を國營に依つて開墾をして、落著いた所で入植致して居る人に處分をする、斯う云ふ取扱になる譯であります
それから第四十二條でございますが、此の第四十二條以降は既墾地と未墾地との共通的な規定が設けられてございます、政府が買收すると云ふやうな公告を致しました後に於きましては、權利者と申しますか、所有者其の他の關係權利を持つて居る人は、其の土地の形質を變更したり、又農業用施設、工作物若しくは立木の現状を壊したり、持去つたりすることは出來ない、即ち現状維持と云ふことを規定致して居るのであります、是は公告を致しまして計畫が確定を致しまてから更に状況が變ると云ふことでありますと、非常に混亂を來すことになりますので、是は是非其の現状を維持して貰ふ、斯くの如き規定は先程申しましたやうな他の法令にも皆ある譯でございます
それから第四十三條でございまするが、是は農地竝に未墾地の買收代金、それから色々な場合に支拂ひます損失補償金及び報償金を何で拂ふかと云ふ規定でございます、是は農地證券を以て支拂ふと云ふ風に致す積りであります、此の農地證券は、結局農地證券と云ふ名前を付けましても公債でございますが、原則と致しましては三十年以内に償還すべき證券でございまするが、二十四年間に均等償還をする所の、一種のさう云ふ種類の公債と致したいと考へて居ります、其の利率は三分六厘五毛、即ち普通の公債の利廻を以て計畫する、其のことに依つて額面千圓、又交付價格千圓、即ち「パー」で行く譯でありまして、其の額面と交付價格と「パー」で行きますことを利率の點に於て今の利廻三分六厘五毛と云ふことで合せて參ります、此の二十四箇年で大體さう云ふ三分何厘と云ふことで行きますると、年々の均等償還に當ります部分は凡そ六%と云ふことになります、隨て千圓の額面でございますれば約六十圓を年々受取る、二十四年間六十圓の年金を貰ふと云ふ形になる譯であります、是は尚ほ細かい點は大藏省と今後折衝すべき點もあると思ひまするが、大體千圓未滿のものは──今千圓を最低の額面にすると云ふやうな考へ方を致して居ります、それから土地代金は、土地を買受けます方から大體平均三割は一時に支拂ふものと云ふ風に豫定を致して居りまするし、又特別の事情がない限り、土地購入者からは三割以上を一時拂にして貰ふ積りに致して居りますので、それに相當する部分は、土地を政府に賣りました人、即ち農地を政府に賣りました人には其の限度を見合ひまして一時拂をする、現金拂をする豫定に致して居ります、概ね四千圓と云ふやうな所を限度として一時拂を致しまして、其の殘額が農地證券になる譯であります
第四十四條は登記に關する規定であります、是は非常に多數の件數になりますので、到底普通の登記に依ることは出來ませぬ、隨て是は特別手段を執つて貰ふことになつて居ります、司法省で目下研究を致して貰つて居るのであります
それから第四十五條は報告に關する規定、それから第四十六條は政府が買ひました農地、未墾地或は立木と云ふやうなものの管理に關する規定であります、是が政府の所有に屬して居ります期間管理をするのに付きまして、普通の農地でございますと、市町村或は市町村農地委員會等に其の管理を委任する、未墾地等で之を農地開發營團等が開墾致しますものでございますれば、農地開發營團等が其の管理に任ずる、さう云ふ事柄に付ては特別の管理規則と云ふやうなものを制定する見込でございます
それから第四十七條は下級の農地委員會のやる仕事を上級の農地委員會に、若しくは地方長官等が代行をすると云ふ規定を設けたのであります、例へば普通農地の買收でございますと、市町村農地委員會が計畫を立てる、餘計なことでありますけれども、若し市町村農地委員會が「サボタージュ」をしてしまつた、是では動かぬと云ふことが理窟の上である譯でありますが、さう云ふ場合には、上級の都道府縣農地委員會が市町村農地委員會のやる仕事を代行する、さうして全體の此の法律の動きを支障なからしめる、未墾地に付きまして、結局都道府縣農地委員會に萬一さう云ふやうなことがあると假定すれば、之を地方長官が自ら問題を處理するとか云ふやうなことも豫想し得る譯であります、是は上級者の監督若しくは代執行と云ふやうなことを念の爲に設けてある規定でございます
それから第四十八條でございますが、此處に地區委員會と云ふ言葉が出て參ります、是は農地委員會は、大きな六大都市等を除きましては一つの町村に一個でございますけれども、事變中等に於きまして不自然に町村合併をする、其の爲に自然的、經濟的環境からすれば明かにそれぞれ獨立した町村であるべきもの、特に農地等を考へますに當つては、獨立した地域と考ふべきものが、行政區劃としては單一になつて居ると云ふ例が稀ではございますがございます、其のやうな場合に於きましては、町村合併をされる前の状況を基礎と致しまして、それぞれの元の町、元の市と云ふやうなものを一區劃として其處に地區農地委員會を設置する、さうしてそれを獨立の「市町村の區域」とあるが如く取扱つて行く、斯う云ふ意味であります、隨てさう云ふ場合にも不在地主になるかどうかと云ふやうな事柄は、地區農地委員會を設けました場合には、其の地區に依つて之を論ずると云ふ結果になる譯であります
それから第四十九條は町村組合の場合、それから東京、京都、大阪、横濱、名古屋、神戸、是は市の區域に依らないで區に依る、斯う云ふことに致して居ります、勿論東京都の區域の中で、街の眞中にあります區には農地はございませぬ、隨て其處には農地の委員會も作らないと云ふことになるのでございます、斯う云ふ巨大なる市にありましては、區と云ふものを獨立の市町村であるかの如く取扱をする、斯う云ふ規定でございます
それから罰則は省きまして附則でございまするが、附則の第二項は注意を要する規定であります、「第三條第一項の規定による農地の買收については、市町村農地委員會は、相當と認めるときは、命令の定めるところにより、昭和二十年十一月二十三日現在における事實に基いて第六條の規定による農地買收計畫を定めることができる。」、昭和二十年十一月二十三日と云ふのは、結局前囘の第一次農地改革の要綱が閣議に於て決定され、それが發表された日にちに相當致して居るのでありまするが、其の前後及びそれから以後に、御承知のやうに土地取上の問題が頻發をする、又法を免れる目的を以ちまして、脱法的な行爲も行はれたやうに考へられるのでありまして、斯樣な事柄を漫然默過すると云ふこはと出來ないのであります、隨て具體的な事情を判定致しまして、二十年十一月二十三日現在の状況に依つて、政府が買收するか否かと云ふことを決めることが適當だと農地委員會で認めた場合は、其の時の状況に依る、現在は兎も角、其の時小作地であつたものは小作地として見る、其の時に持つて居りました面積は其の面積として、例へば一町歩以上持つて居つた場合には一町以上小作地を持つて居つたと看做す、斯う云ふやうに其の時の事實に基いて計畫を立てることが出來る、斯う云ふ意味でございます、其の時に例へば二町の小作地を持つて居つた、所が現在ではそれが一町歩に減つて居ると云ふことでございますれば、現在の状況に於ては買收の對象になりませぬ、所がそれが不當な、法を逃れる爲の賣渡であつたと云ふやうなことでごさいますれば、其の時の状況に依つて、即ち小作地一町歩は買收の對象になる譯であります、其の場合には此の法を適用される、又假に其の小作地が第三者に賣渡されたものでございますれば、第三者の土地に付ても政府は其の土地を買收することが出來ると云ふことになる譯であります、勿論此の十一月二十三日に依ります事柄は、一面から申せば現に成立して居ります秩序をもう一度壊すことになるのでありまするから、十一月二十三日に依る爲には、依るだけの理由がなければなりませぬ、「命令の定めるところにより、」と云ふのは、それ等の理由とする所を買收計畫に記載をすると云ふやうに定める積りで居ります、勿論此の事柄は、總ての點に於て適法であつたと云ふものに付て、一々遡つた適用を致す譯ではございませぬ、其の間土地取上等に付ても不當な取上であつた、假に農地委員會等の形式的承認は受けて居りましても、其の内容に於て社會的に見まして不當であつたと云ふやうな場合に付きましては、必ずしも其の形式上の適法性に依らず、實質に依つて判斷をして參ると云ふ考へを致して居りまするが、兎に角惡いものは惡いとする、斯う云ふ思想でございます、自作農創設特別措置法案に付きましては以上を以て終ります
次に農地調整法に關する説明を致します、農地調整法の變へました所は、第一條に目的が書いてございます、目的を變へましたのは、前囘の農地調整法の改正の當時にも、なぜ第一條の目的の書換へをしないか、色々議論がございました、今囘はすつきりとした形に此の條文を書き改めたのでございます
其の次の改正は第四條でございます、今までの自作農創設の爲に前囘入れました所の農地の強制調停に關する規定、是は今囘全部削除を致しました、さうして條文の中の順序を整へたのでございますするが、此の第四條「農地の所有權、賃借權、地上權其の他の權利の設定又は移轉は命令の定むる所に依り當事者に於て地方長官の許可又は市町村農地委員會の承認を受くるに非ざれば之を爲すことを得ず前項の許可又は承認には條件を附することを得第一項の許可又は承認を受けずして爲したる行爲は其の效力を生ぜず」斯う云ふ規定を致しましたが、是は前の條文、農地調整法に於きましても大體同樣の規定が設けてあつたのであります、併しながら前の農地調整法に於きましては、農耕を目的とする所の、農地を耕作の目的に供する權利を取得する場合に於ては、此の規定を適用しないと云ふやうな規定をされて居つたのであります、今囘は其の場合に於きましても、全部農地の權利關係の移動は、地方長官又は市町村農地委員會の承認を受けると云ふことに移動統制を強化致したのであります、其の目的と致しまする所は、結局土地の兼併を防ぎ、自作主義を續けて行く、自作農から自作農に行く所の自作主義を續けて行く、農地の配分を適正ならしむる、又只今の状況から申せば、土地の再分割と云ふやうなことも防いで行く、斯う云ふ土地の利用關係を正して行く爲に此の規定を強化致したのであります、此の趣旨と致しまする所は、結局今後多くの自作地が出來、大部分の農地は自作地になりますると共に、五、六十萬町歩の小作地が殘る譯でございまするが、其の小作地の移動、又已むを得ず自作地が移動する場合に、農地の配分の關係、利用の面から見て適當かどうか、又成るべく機會ある毎に自作地を殖やして行く、斯う云ふ趣旨に於きまして此の規定が運用をされて、廣い意味に於ける一種の農地の管理制度と云ふ風にも考へて宜しいかと思ひます、此の所有權の移轉等に付きましては地方長官の許可に依り、又賃借權の移動、即ち小作關係の移動は市町村農地委員會で取扱ふと云ふことにしたいと考へて居ります
其の次は第六條の關係でありまするが、第六條は耕地の潰廢とか用途の變更に關する規定でございます、是は御承知のやうに戰爭中軍需會社等が相當農地を買收致しました、之を又農地に還元すべきものと考へて居りまするが、之を如何に利用するかは相當重要なる問題でありますると共に、一般的に此の自作農創設特別措置法等の施行に伴ひまして問題が起ることも考へられまするので、是等の耕地の潰廢或は用途の變更と云ふやうな事柄は、一應地方長官の許可に掛けた譯でございます、併しながら餘り小さいものを斯う云ふ規定に掛けますことは不便でもあり、實情に即さない點がありますので、命令に依りまして極く小さいものは除外致すことにして居ります、是等の規定は戰爭中の農地管理令にも設けてあつたのでございます
それから次は第九條の關係でございます、第九條は御承知のやうに土地の取上に付て規定して居る條文でございますが、此處に新しく「解除」と云ふ字を加へたのであります、問題は解約と云ふことの制限禁止に依りまして概ね盡きて居るのでございますが、偶偶法律の字句の上から解除、契約の解除と云ふ字が拔けて居ります爲に、其の解除と云ふことが一種のこじつけの場合のやうに考へられまするが、之を利用して不當に小作契約を解除する、それには何等の制限がないのだと云ふ風に用ひられる場合もございまするので、さう云ふ拔穴を塞ぐ意味に於て解除と云ふ文字を入れたのでございまするが、第九條其のものの精神には別段の變更を加へたのはでございませぬ、より一層完全にしたと云ふ意味であります
第九條の規定は、御承知のやうに、解約とか更新拒絶と云ふことの事由其のものに相當の正當なる事由があることと共に、農地委員會の承認を受けなければならぬことになつて居ります、今までの農地委員會の承認を受けなかつたらどうか、其の場合に於ては罰則が付してございます、併し農地委員會の承認を受けなかつたが故に、是は無效であるかどうかと云ふことに付きましては、必ずしも解釋がはつきり致して居らなかつたのであります、そこで今囘は農地委員會の承認を受けずしてなしました小作地の取上げ行爲は、是は無效であると云ふことを明瞭に致しました、勿論農地委員會の承認を受けなければ無效であるし、又其の事柄の内容自體が事由のない場合には、其の取上は無效であることは申すまでもございませぬ
次は第九條の八に關することでありますが、是は最高小作料の規定でございます、申すまでもなく小作料は金納になり、昨年秋の農地調整法施行當時の状況を以て最高價格とするやうに統制をされて居る譯でございますが、之に加へて第九條の八は、將來色々事情が變化する場合の豫想を致しまして、或る最高の小作料と致しまして、此處に書いてございますが如く、田にありましては二割五分、畑にありましては一割五分を最高として、中央農地委員會が決める一定の割合に準據して、都道府縣農地委員會が定める割合を超えてはならぬと云ふ規定を設けてございまして、若し將來非常なる農産物の下落に苦しむことがあつて、現在若しくは其の當時決まつて居ります金納小作料が此の割合を超過すると云ふ事態が生じますれば、小作人は當然に其の額まで小作料の減額請求が出來ると云ふ訂正權を附與致したのであります、是等の運用方法に付きましては色々具體的に研究すべきことがございまするので、今後具體的に研究をして參りたいと考へて居ります、何しろ此の規定は當分具體的に適用になる見込は持つて居りませぬ、是の方法等に付きましては更に具體的に考究を致したいと考へて居ります
第九條の十は小作契約を文書にして其の内容を明瞭ならしめると云ふことであります、之に付きましては、政府の方に於きまして模範的な小作契約の約款を作る積りでございます、勿論是は農地委員會等の審議を經まして適正なる内容を持つた小作約款を作り、それに依つて指導をして行くことに致して居ります
其の次はずつと農地委員會に關する規定でございまするが、農地委員會に付て變りました事柄は條文に付かずに申上げた方が宜しいと思ひます、第一に委員其のものの構成が變りましたことは今朝程農林大臣から説明がございました、即ち小作者の定義は、自分の經營して居ります土地の五割以上が人から借りて居るものだと云ふのが小作者でございます、其の小作者から五名地主が三名、此の地主と申しますのは、全然自分の所有して居る農地に付て耕作の業務を營んで居ないか、又其の持つて居る面積が耕作の業務を營む農地の面積の二倍を超えるものと云ふ規定でございまして、結局半分以上は他に貸して居る、斯う云ふ人のことを言ふのであります、是が三名、自作或は自小作に相當する者が二名、斯う云ふ委員の出し方を致し、合せて十名と云ふことに致して居りますが、部落が非常に澤山ある所に於きましては、此の委員の數を更に十名まで殖やすことが出來ます、唯殖やす場合に於きましては、今の小作者に付て殖やします委員の數と地主及び自小作の人に付て殖やします委員の數とが同數でなければならぬ、斯う云ふ譯で、其の間に土地所有者と云ふものと小作者と云ふものと委員の數の「パリテイ」を取つて居る譯でございます、それから此の前は徳望ある人と云ふ、所謂第三者委員もございましたが、今囘は第三者委員と云ふものは、小作側と土地所有者側の委員がそれぞれ全會一致で斯う云ふ人に頼みたいと云ふ人がございました場合に、地方長官が三名以内を任命すると云ふことになつて居ります、法律の文句から致しますと、地方長官が第三者委員を如何にも任命するが如く書いてございますけれども、其の實質に於きましては、選擧せられました農地委員の方の全員が第三者委員を選び、其の人選に付て意見が一致したと云ふ時に地方長官から任命を致す譯であります、又委員長の選擧、是は兩方の側が對立して何とも「デッドロック」に乘上げた場合は、仕方がございませぬから、地方長官が委員長たるべき第三者委員を任命すると云ふことに致して居るのであります
それから任期の點でございますが、今までは一年でございましたが、今囘此の仕事は二年間に完了する、其の間委員が變りますことは事業遂行上不便を來しますので、二箇年間の任期に致しました、又從來でございますと、小作者から自小作になると云ふやうに、色々資格變更に依つて委員の資格の失ふことになつて居りましたが、今囘は二箇年は其の點は問はないことに致しました、さう云ふ風に致しますると同時に、所謂「リコール」性を採用致しました、是は後の方に「第十五條の二第三項各號の區分の一に屬し」云々と云ふことで八頁の初めの方に書いてございます
次に選擧權及び被選擧權でございますが、それぞれの小作、地主或は自小作と云ふ「カテゴリー」に從つて選擧を致すことは申すまでもございませぬが、今囘は前囘と違ひまして成年以上の男子は悉く選擧權及び被選擧權を有することに致しました、謂はば普通選擧と申しまするか、選擧權、被選擧權の範圍をずつと擴げたのでございます、さう云ふやうに致しまして若い人達等の意思を十分に反映せしむるやうな措置を執つたのであります、尚ほ選擧權及び被選擧權の資格は、從來は一反歩以上と云ふことに致して居りましたが、今囘は命令を以ちまして──是は命令事項でございますが、三段歩以上を經營して居る若しくは土地を持つて居る者に付て選擧權、被選擧權を認めて參る、又それ等の事柄は總て自作農特別措置法案と同樣に世帶單位と云ふ考へ方を適用して居る、さう云ふ世帶に屬する成年以上の人であれば全部選擧權を有する、假に其の選擧權を有する人が農耕には從事して居なくても、其の世帶に屬すると云ふことに依つて選擧權を有すると云ふことに致してございます
概ね以上のやうなことでございますが、尚ほ農地の移動統制、特に小作地の取上と云ふやうな問題に付きましては、當分の間之を全部地方長官に於て處理することに附則で以て規定を致しました、是は前囘の法律改正を繞つて生じましたやうな弊害を防止すると共に、此の自作農創設事業を進めます爲に、土地の權利關係等が頻繁に移動を致すと云ふことでは事業遂行上支障を生じますので、當分此の自作農創設維持事業を進めます間、又農地委員會が確實にやつて行くと云ふことの確信を得ますまでの間、是等の農地に關する權利關係の移動或は小作地の返還と云ふやうな問題は地方長官に於て處理することに致したのであります、概ね之を以ちまして逐條の説明を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=17
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018・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは質疑に入ることに致したいと思ひます──古賀委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=18
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019・古賀太郎
○古賀委員 私の質問は兩案に對しまして一々區別せず、混同的になると思ひますが、此の點前以て御諒解を御願ひ致します
現在の小作農が今囘の政府の施策に依りまして新たに農地を獲得し、一躍自作農になることは一見非常に喜ばしい氣分の轉換となつて、さぞかし滿足感を與へるやうに見えますが、事實は必ずしも左樣ではないと思ひます、即ち與へられたる其の土地の代償として、切角ここ數年間蓄積した手持金や預貯金を手放すことが如何に苦痛であるかを窺ひ知ることが出來ます、一方小作料さへ支拂へば何等の課税も受けなかつた者が、一躍地主となつたばかりに税金其の他寄附金等の倍加することは火を睹るより明かであるからであります、此の觀點から、無理をして小地主たらんよりは、消極的に現状に近い半小作を希望する者が相當多いことが窺はれます、從來の小作人が苦痛として居りました所は、小作人なるが爲の苦痛ではなく、小作料が餘り過重であつたと云ふことが中心問題であつた故に、小作人は小作料を適正に修正して貰ひ、其の生活が保障せらるるならば、敢て自作農となつて豫想に難からぬ諸般の負擔を避けた方が却て樂と思つて居るやうであります、それは恰も借家人が其の居住する家を政府から相當の價格で買取れと言はれても、特別の者を除いては、大多數の借家人は寧ろ其の家を買受けずとも、適正の家賃で住んで居た方が經濟的であり、且つ安全感が多い、一定の料金さへ支拂へば家の修繕も、税金も支拂ふ必要はない、一切の苦勞が薄いからであります、是と同樣に、小作農の時は、例へば三箇年位に必ず一度位は暴風、水害に見舞はれる、其の損害に當つては、其の都度地主に相談して小作料の減免が出來るのに對し、自作農の場合は、現在の農業保險位の救濟では何等の役にも立たぬ、故に多分の苦痛を愬へるに至つて、或は數年ならずして折角與へられた土地を手放すの外なきに至り、加ふるに現在に於ける農家は、食糧事情逼迫の折柄豫想外の收入を得たる一部の農家があつて、今では好景氣の極に見えますが、一たび講和條約等が締結せられた曉には、最も合理的なる大農法に依つて收獲された食糧輸入に依つて、原始的日本農法が壓迫されることは當然の歸結であつて、此の期に於ける自作農の喜びも瓦解に瀕することはないか、斯かる不安に對しては政府は如何なる御所信であるか
又現在の在村の地主が其の土地を得る過程には、實に粒々辛苦、言語に絶する眞劍な勤勞の結果であつて、祖先代々より數十、數百年に亙つて築き上げたものであつて、決して不眞面な所謂放蕩三昧の輩ではありませぬ、此の精魂を打込んで守り續けて來た土地を、如何に政策なしとは云へ、國家が在村地主に對して只の一町歩のみを本人に與へ、他は全部取上げると云ふことがあつては、如何なる代償を支拂ふとも、是は洵に惧るべき共産主義的行爲であつて、國民の思想上に及ぼす惡影響も相當のものであります、不幸にして是等の地主が轉落して生活上の苦痛を愬へるやうな状態となれば、又斯くの如き制度の再斷行を迫るが如き結果を促し、反復斯くした状態であれば勤勞意欲を減殺するに至る虞があると思ひます、尚ほ現在の地主は、支那事變以來十箇年間の變遷は一通りではありませぬ、即ち家庭に依つては、二人或は三人の戰歿者を出した爲に、自作農どころか、破滅の憂目を見、未亡人や老いたる兩親は幼き相續人の生長を樂しみ、昔の自作農の再興を念願して居る、洵に同情に値すべき家庭が餘りにも多きことに政府は如何なる考慮を拂つて居るか、此の點農林大臣に伺ひます、元來前の政府の時の出來事とは云へ、五町歩より三町歩、更に半年後の今日一町歩しか認めぬとは、餘りにも急激の變化でありまして、如何に民主的とは云へ、人心動搖の激しき此の過渡期には無理な事柄でないかと存じます、聞く所に依れば、「マ」司令部に於ては、此の案は絶對的のものではなく、政府が案を提出して諒解を求めたに過ぎずとの噂もあります、大體以上の觀點より、少くとも在村地主に二町歩位を認むることは、多年農事に盡瘁した國實的三町百性を保存する意味に於て、原案を訂正せらるる御意思なきや
次に價格の點でありますが、此の法案に基きますれば、田畑共に過去十年前に於ける賃貸價格を標準として居りますが、此の賃貸價格は地方々々に依る不確實なる形式的賣買登記金額數箇年の統計に依り決定せられたものであつて、其の當時より非常なる不公平があり、又十箇年間に於ける土地の改良、食糧情勢に依る作物の適否等に依り現在の時價とは相當の差があり、之を一率にすることは不公平となるのであります、尚ほ畑は田地に比し數割安く見積つてあるが、現在は集約的農作物の關係上、却て畑の方が高價を以て賣買されて居るのが實情であります、政府は從來時價標準を以て課税對象にせられつつある、此の實情を無視して此の法案に依つて買收せらるる意思であるか、御答辯を御伺ひ致します
次に都市附近の耕地、殊に都市計畫に包含する田畑の時價は數倍に値すると思ひますが、政府は無條件で自作農對象物件として買收し、小作人に賣却せらるるや否や、尚ほ從來の政府は施策として都市中央集權に重きを置き、村制より町制、町制より都市と、無謀にも都市計畫を奬勵し純朴なる農村を都會化せしめ、多くの良田をして都市計畫に消費せしめ、食糧増産を阻碍せしめた罪は洵に大であります、農村の男女青年をして都市に憧れしめ、農村を不況に陷れ、其の半面徒らに都市を繁榮助長し、今囘の戰災に當りましては全國百三十の都市を壊滅せしめたる如きは、先見の明なき政府當局の罪、洵に許すべからざることであります、宜しく現政府は都市中心主義を改め、農村に重きを置き、文化的科學的、更に將來の不況を考慮して農工調整を即時斷行する決意ありや、此の點の御所見を伺ひます
次に農作物が不可抗力に依る、即ち天災に依る被害に對し、政府は現在の農業保險の改革をする御意志ありや否や、元來農作者が一番苦痛として居るのは、此の點であります、抑抑人間の生活上何よりも大切な農作物が折角の農民の努力にも拘らず、一夜にして大損害を被る如き際、國家が之に對し補償することは當然と思ひます、是なくしては、如何に小作人が自作に轉じても、生活安定や福利増進は不可能と思料致します、此の點に對しましても農林大臣の御答辯を伺ひたいと思ひます
次に農家に對し自家保有米を認むることは政府も御認めのやうでありますが、是は當然と思ひます、如何に供出の關係とは云へ、汗水流して作り出した米麥等を食ふなと言ふことが無理であつて、又必ず食ひますから、却て之を認め、朗かなる氣分に依つて供出に協力せしむることが賢明の策と思ひます、出來得れば、地主に於ても農家同樣優先配給を認むることは、近き將來の優良自作農養成の意味に於て、御當局は宜しく人間味ある善政を施されんことを要望致します
次に政府の買受けた土地の中、比較的惡い耕地が賣れ殘り、其の額の大なることを覺悟しなければなりませぬ、從來の地主は、惡い耕地は小作者少き爲め、荒らす譯に行かず、自ら之を作り、良い耕地を小作せしめて居りました實情でしたが、此の法案の實施の曉は、是が反對に良い耕地だけを自作し、不良の耕地は政府に賣渡す、然るに斯樣な不良な耕地は小作人も希望せず、隨て食糧増産上大なる支障を生ずると信じます、政府は斯かる土地は極く安に賣るか、團體若しくは農業會に強制的に買取らしむる意思ありや否や、其の方法に付てはつきり御説明を願ひます
次に自作農創設に直接關聯することと思ひますが、本年三月「マッカーサー」司令部より、今後の見返り物資用として桑園の栽培と「ヒ」島に生産致しました「マニラ」麻輸入不能に依る代用品たる「マオラン」麻の増産倍加の指令がありましたが、斯樣な作物は永年作物であり、現在會社や個人的に數町若しくは數十町歩の小作關係や自作園等が相當ありますが、此の土地に對しては特別の考慮を拂はるることが國家の産業上必要ではないかと思ひますが、御當局の所見如何でありますか
最後に、本法案は昨年の十一月二十三日現在にて實施せらるることになつて居りますが、其の當時より今日まで復員者や引揚同胞の移動に依つて、相當の移動を生じて居ると存じます故に、現在の状態に基いて法案を施行することが適當ではないかと思ひます
尚ほ本法案に依り政府が買收するとせば、全國的に時價の半値位と思ひます、此の點を參酌せられて、地主よりの買受高二萬圓以下は半額位は封鎖不用、即ち自由貯金に該當する金を御支拂になり、小作者の年賦買受分に對しては免税をさるるの御意思なきや、御伺ひ致します、以上御質問申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=19
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020・山添利作
○山添政府委員 農林大臣に對する御質問でございましたが、居りませぬので、私から御答へを致しまして、尚又大臣からも御答へをする機會があらうかと思ひます
第一番目に、大體小作者の方で土地を買ふ氣分が少いのではないか、其の理由として、代金を相當程度支拂はなければならない、或は税金が課かる、或は從來であると小作料の減免と云ふことをやつて貰つたが、自作になるとさう云ふこともなくなつてしまふ、斯う云ふ點を擧げられました、其の中代金の支拂と云ふ點に付きましては、先程御説明致しましたやうに、全體を均しまして三割以上の程度のものは小作者の方から拂つて貰ふ計畫を政府と致しては立てて居ります、又其の事柄は、現在の耕作者の預金の状況から見まして、決して無理ではございませぬ、併しながら此の農業資金に對して非常に無理をさせてまで此の土地代金を拂へと云ふことは考へて居ないのでありまして、無論是は耕作者の現在の資力に應じまして、無理のない、相當と認める所で一時拂をしたら宜しい、又それを勸めて行くと云ふ建前を取つて居るのでありまして、現在の状況から見まして、是が農家の經營資金まで土地を買ふ爲に壓迫をすると云ふ風にはならないと考へて居ります
それから税金の點でございますが、此の點もよく言はれる所であります、成程今までの資料等を見ますると、大體地主の支拂つて居りまする税金に對して、小作の方でございますると、其の二割か、まあそんな見當、若しくはそれ以下と云ふやうなのが實情でありました、併しながら此の點に付きましても非常に考へ直さなければならぬことになるのではないかと思ひますのは、大體土地に關する租税負擔と云ふものは、金納小作料になり、又小作料が統制されて居る此の状況及びそれが繼續される將來の事情に於きましては、それ程負擔を更に増して行くと云ふ餘裕は非常に乏しい譯であります、農業に關する税金と申しましても、今後は土地と云ふよりも、寧ろ農業所得と云ふ面の税金に變つて來るであらうと云ふ風に考へて居るのでありまして、即ち税制と云ふ意味に於ても、小作料の金納化或は統制と云ふことに依つてそこに状況が非常に變つて來る、隨て耕作する者に所得があり、又其の所得を源泉として税が支拂はれると云ふことに形が變つて來るものと思ひます、同時に此の税の問題に致しましても、土地を買ひました人が毎年支拂ふ年賦償還金は通常收穫物の價格の三分の一以内で、農地委員會の決める一定割合を超えないと云ふ保證がしてありますが、それは年賦金「プラス」公租公課を含めたものでございまして、一面又小作料の最高限度が田は二割五分と云ふ風に決まつて居ります、土地を買つた場合と小作料の場合と比較して、極端な場合を考へて見ると、二割五分と三割三分との相違、そこで八分見當のものが結局土地の元本の償還、斯う云ふことになるのでありまして、其の間の状況を考へて見ましても、土地を買つた人に假に相當税金が課かつて來た、併しそれが税金を含めて年賦償還が過重負擔になるかどうかと云ふことは、そこに保護されて居る關係になつて居りまするので、御説のやうな心配を爾くする必要はないではないか、其の邊の將來に關する事情の變化と云ふものは、土地を買ふ人にも十分理解して貰ふ必要があると考へて居ります
それから小作料の減免の問題でありまするが、此の減免の問題は、價格が急激に下落したと云ふやうな特殊な場合は別と致しまして、災害に因ります減免、即ち是が從來の小作料の減免でございまするが、是は農業保險を以て問題の處置を付けて行くのが當然であると思ひます、農業保險其のものに付きまして御質問がございましたが、農業保險は成程昨年の秋からの「インフレーション」の爲に、現在では殆ど其の用をなさないやうな状況になつて居るのでございますが、是は目下具體案を檢討致して居りまして、成案を得ますれば通常議會には改正法律案等も出しまして、新しい状況に應じた保險をやつて行きたいと考へて居るのであります、そこで此の農業保險に依りまして減免と云ふことは措置すべきものでありまして、將來の考へ方と致しましては、小作料の金納化、或は更正と云ふやうなことと關聯致しまして、地主と小作の間で、不作と申しますか、極く僅な收穫の場合に色々論議すると云ふやうなことは避けて參ると云ふ風な取扱に致して行く方が宜いと考へて居るのであります、隨て此の點に付きましては、合理的な農業保險の制度を以て「カバー」をして行くと云ふ風に致したいと考へて居ります、唯其の次に御述べになりました、どうせ日本の農業は世界の農業に伍して競爭的な立場に立つて行かなければならない、食糧も外國から入るであらうし、又外國の凡ゆる機械化された農業との間の競爭關係に立つのであるから、其の間非常に農業恐慌を起して、折角自作農になつたのが、又元の境涯に轉落するのではないか、斯う云ふ心配があると云ふことでございますが、是は本會議に於きまして各質問をされる方々から御質問になり、又農林大臣と致しましてそれに對する考へを色々な方面から申述べた次第でありますが、成程日本と致しましては、今後の途として國際貿易に進んで行かなければならぬ、又さうでなければ此の國土に八千萬の人口を扶義することは出來ない、隨て又さう云ふ態勢であれば、農業に於きましても當然國際的な農業の競合關係の間に立たなければならぬ、是は當然ではございます、併しながら急激な價格上の變化を來するや否やと云ふ點に付きましては、御承知のやうに食糧管理法の生産費を補償する制度もある、又米價問題等は申すまでもなく徳川時代から明治大正を通じての日本の大きな經濟政策であり、又時に依つての最大問題であります、此の問題に付きまして色々御説を伺つて居りますと、今後の日本は關税に付ても全然自主的な制度が執れなくて、まるで裸で嵐の中に立つて居るやうな前提に立つての御議論が多いやうでありまするが、私は必ずしもさう云ふ風に考へる必要もない、日本の米價其の他の重要農産物の價格政策、是は當然其の時勢に即した、適切なる制度を執るべきものと考へて居るのでありまして、飽くまでも急激なる變化を避けますと共に、其の根本問題である所の競爭に耐へる農業、生産費を安くすると云ふ意味に於きましては經營の多角化でありまするとか、或は機械化でありまするとか、或は農村工業の問題でありまするとか、色々な面に於きまして農業を組織し、生産費を安くし、又内容を複雜にして行くと云ふ形に於て根本的な對策を考へて參らなければならぬと考へて居ります、此の事柄は單り此の施設に依りまして自作農になつた人の問題ではございませぬ、今後の日本の農業全體の問題でありまして、又之を自作農業の保護政策としての問題と致しましても、今囘のやうに二百萬町歩が自作農になると云ふことであれば、是れ軈て日本の全體に關する問題でありまするので、一般の農業政策と致しまして今から左樣な見地に立つてなし得る限りの施設を講じて參りたい、勿論まだ一般の工業も囘復せず、肥料、農機具に致しましても不滿足な状況にあり、況や其の他の電化に致しましても、或は農村の工業等に致しましても、資材難等でまだ活溌に動くと云ふ時期には到達致して居りませぬが、其の方向に依つて對處致して行きたいと考へて居るのであります
政府が土地を買收致しますことに付て、地主に如何にも氣の毒である、現在保有を一町歩と制限致して居るが、之を二町歩程度まで認める意思はないかと云ふことでございましたが、是は其の意思はごさいませぬ、一町歩は動かせない原則になつて居るのであります
それから價格の點に付きまして、賃貸價格を基礎にするが、凡そ十年前に決められた賃貸價格と現在は色々事情の違つて居る點があるではないかと云ふことでございました、此の一般的且つ統一的基準と致しましては、賃貸價格に依る外にないと云ふことは、本會議に於きましても農林大臣から御答辯申上げました通りであります、個々の農地に付きまして此の賃貸價格が如何にもをかしいと云ふことがございますれば、是は農地委員會に於きまして地方長官の認可を受けまして倍率なり何なり、農地の價格を修正するのでありまして、耕地整理をやつた其の結果土地の利用價値が非常に増加を致して居る、併し是が免租の關係等で元の賃貸價格が其の儘續いて居ると云ふことでございますれば、其の土地利用價値の増加分は當然認めて參りまして、地價を修正を致して來るのであります、さう云ふ取扱を致します、又畑とそれから田の價格の比較でございまするが、成程畑の利用價値と云ふものは最近に於きまして非常に昔とは比較にならず高まつて參りました、又日本の農業經營と致しましても、今後とも畑地を十分に利用すると云ふことは大きな問題でございまして、其の方向に進むべきであると云ふことは申すまでもございませぬ、併しながら露骨に申しますと、例へば闇の問題、野菜などで畑地が非常なる收益を上げて居ると云ふやうな事實もございます、併しながら一般論と致しましての田畑の價格の比と云ふ點に付ては現在の公定價格、即ち田に付きまして四十倍畑に付きましては賃貸價格の四十八倍を以て公定價格とすると云ふことに付きましては、從來の土地生産力をも反映致して居るのでございますが、適當な價格であると考へて居るのであります、又都市週邊の農地、畑等が實際賣買をする段になれば非常に高い、若しくは高かるべき筈であると云ふことでございます、勿論さう云ふ土地に付きまして普通に賣買されますやうな時には、將來畑地から宅地になると云ふやうな希望を混じへた價格の要素が入りまして賣買取引される、隨て農地相應以上の價格で賣買されたと云ふやうな事例は過去にあることと思ひます、併し之を農地として自作農地にして參ります場合に於きましては、之を買取りました自作農が正常なる經濟の状況の下に於きまして農業を營んで其の生活を安定し、其の經營を安定して行く所の値段でなければならぬことは當然であります、勿論都會地の近傍の農地に付きましては賃貸價格が高うございます、賃貸價格は高うございますが、やはり其の賃貸價格を基準として一定標準の倍數を掛けたものに依つて自作農を創定して參るべきであると云ふ風に考へて居るのであります、尤も都市計畫等を致します區域の中で特に宅地になることが明かであると云ふやうなものに付きましては、地方長官が其の農地を指定致しますれば、是は買收の對象にならない、隨てそれが農地以外の目的に賣られます場合に於きましては、農地に關する價格統制と云ふことは適用がない譯であります、それから農工調整の問題に付きましては厚生大臣に對する御質問でございます
それから今後の供出に於きまして、農家に從來よりも高い基準に於きまして無理のない自家保有米を持たせる、之に關聯して地主にも自家保有米を認めてはどうか、斯う云ふ御意見でございました、御承知のやうに昨年までは物納でございました關係上、地主の人にも自家保有米が認められて居つたのでございますが、愈愈今年から本格的に金納になりまして、地主に對する自家保有米がなくなる譯であります、併し農家に對して自家保有米を認めます理由は、生産者として食糧の再生産に必要なる食糧を認める、斯う云ふ意味でありまして、隨てさう云ふ意味を持たない消費者の地主に自家保有米を認めると云ふことは理窟の上で成立たない、やはり是は一般消費者同樣の地位に扱はれるのが正當であると考へられますので、地主に對して特別に保有米を認めると云ふことは政府として考へて居りませぬ
それから政府が買ひました耕地の中で不良なものの處分を如何にするかと云ふことでございます、是は政府が買ひます農地に付きましては農地委員會に於て買收計畫を立てる、其の買收計畫を立てます時分に、農地委員會は公正なる立場に立ちまして、獨り地主の申出と云ふことに囚はれるのでなく、買手である小作者の方の希望をも參酌致しまして農地の買收計畫を立てる譯でありまするから、そこに不良耕地が集まつて來ると云ふことは全然ございませぬし、又收穫不定と云ふやうな程度の極端な不良耕地は抑抑買上の對象から除くと云ふことに致して居る建前上、さう云ふ不良なるが故に買ふ希望者がないと云ふ耕地があると云ふことは豫想を致して居らないのであります、併し萬一さう云ふものがございました場合に於きましても、之を農業會等に強制して買はせると云ふことは考へて居りませぬ、勿論それは暫く政府に於て保有を致し實情に即したる處分をなすべきであると考へまするが、本來農地委員會はさう云ふやうな耕地は買はないのが建前であります、寧ろさう云ふ不良の耕地よりも、中位の耕地とか、良い耕地とか云ふのを地主の方から提供をして貰ふと云ふのが農地委員會の立てるべき計畫でなければならぬと考へて居ります、それから「マニラ」麻のことは後程調べまして御答へ致します、以上大體具體的の問題に付て御答へした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=20
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021・古賀太郎
○古賀委員 色々詳細に亙つて御懇篤なる御答辯を得まして大體承服致しましたが、私共が腑に落ちぬことは、此の堂々たる民主議會の名に拘らず、一町歩と云ふものは如何とも出來ぬと云ふことは、甚だ我が國の將來に於きまして遺憾な點と思ひますが、是は軈て農林大臣がおいでになりました時に更に質問致したいと思ひます、尚ほ元來政府に於きます色々な計畫は、机上の空論に屬することが多々あると思ひます、私共が實際に農業を體驗致しました所に依れば、私は約四十年の體驗を持つて居りますが、政府に於きまして計畫されました色々な法案は、實際に地方に於きましては、常に實行の出來ないと云ふことが非常にあるのでありますから、斯う云ふ際に於きまして十分委員の述べました意見を尊重されまして、一つどしどし改革して戴きたい、之を此の際僭越ながら希望して置きます、何れ又御質問申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=21
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022・葉梨新五郎
○葉梨委員長 有賀君の御質問の中、厚生大臣に屬する分がありまするが、本日は御出席がありませぬから、厚生大臣御出席の際まで保留されんことを望みます、保利君に御相談しますが、本日はあなたの御要求の農林大臣及び支部大臣兩閣僚とも御出席がございませぬ、仍て明日御質疑願ふことにしたら如何がと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=22
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023・保利茂
○保利委員 それで結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=23
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024・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは本日は此の程度に致しまして、明日は午前十時より開會致します、是にて散會致します
午後三時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=24
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025・会議録情報3
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〔參照〕
自作農創設特別措置法案委員會要求資料
一、昭和十一年以降土地改良事業に對する政府助成の年次額と其の政府竝に府縣及び關係者の負擔歩合表
二、大正九年自作農創設以來今日に至る各年度の土地異動、土地擔保件數及び耕作不要面積別自小作移動調
三、昭和二十年十二月改正以來の改正農地調整法に依る自作農創設數
四、終戰後土地所有移動件數及び土地反別表
五、終戰後本年六月迄の耕作面積別農民移動調(特に五段以下、三段以下、二段以下のものに別つこと)
〔以上〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00119460911&spkNum=25
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