1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月十七日(火曜日)午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 山口光一郎君 理事 細野三千雄君
理事 富吉榮二君 理事 藤本虎喜君
磯崎貞序君 木島義夫君
古賀太郎君 田邊讓君
中野武雄君 森田豐壽君
藥師神岩太郎君 青木清左ヱ門君
白木一平君 寺島隆太郎君
佐伯忠義君 井伊誠一君
玉井潤次君 堂森芳夫君
中原健次君 平野市太郎君
松澤一君 麻生正藏君
松本六太郎君 増井慶太郎君
北政清君 山木武夫君
九月十七日委員八重樫利康君辭任に付其の補闕として杉田一郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
司法政務次官 古島義英君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前會に引續きまして質疑に入ります──青木清左ヱ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=1
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002・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 前會に引續きまして質疑を續けたいと思ひます、私は父祖代々二町歩を自ら耕作して居る農民なのであります、隨て私は飽くまでも小作人の味方として此の法案の成立を願つて居るものでありまするけれども、又一面地主の將來と云ふものを案ずる念を拭ひ去ることは出來ないのであります、何時の時代にも、爲政者の搾取の下に泣いて來た我々百姓達を、此の千載一遇の好機會を捉へて、將來萬代に亙つて其の土地を確保し、蛆蟲の如く虐げられて居る我々百姓の萬斛の恨みを晴らしたいと考へて居る譯であります、即ち「ポツダム」宣言を忠實に履行すると云ふことは、日本國民に與へられた任務でありますと同時に、農民の生活水準を高める施策を行ふと云ふことは、今日の政治家に與へられた責任であると考へるのであります、對日理事會に於きまして勸告案を採擇するのは聯合國でありまして、此の勸告案を實行に移すのは日本の政府であります、故に是が實施に當りましては、此の法の及ぼす影響を凡ゆる部面に擬して檢討を加へ、強者弱者の別なく其の利益を飽くまでも擁護しなければなりませぬ、又一つの過誤も犯すことなく、各階層の行く道を現在及び將來に向つて開いて行くべきものであると云ふことを考へて居るのであります、對日理事會に於ける勸告案の討議に於きましては、我が國の農村の適正規模の問題には餘り觸れて居らなかつたやうに考へられるのであります、唯農地の七割を解放すると云ふ點にのみ構成の基礎が置かれて居りまして、此の總體から割出された日本の農村の規模と云ふよりは、寧ろ日本の農村の農家の一軒一軒を基礎として、之を結合した所の將來の農村規模と云ふものに付て、日本の政府は檢討を加へなければならない重大な責任を持つて居ると思ふのであります、我が國の農村の缺陷は、昨日も申しましたやうに、一町歩以内の耕作者が全農家の七割を占めて居ると云ふことでありまして、戰爭の進展に連れて殖えて來た轉落農家の存存と云ふことが一つの癌になつて居るのであります、能く此の本法を通讀して見ますと、耕作權の尊重と云ふことのみ魂を奪はれて、農家の七割を地主より解放すると云ふ點にのみ滿足して、只今申上げました此の缺陷を除去する爲の一石を投ずる絶好の「チャンス」を見逃して居るのではないかと思ふのであります、政府は、農地の交換分合とか、集團農場とか、共同作業と云ふやうな構想を持つて居り、又勞働力の過剩は農村の工業化に振向けると云ふことを豫ね豫ね御答辯に相成つて居るのでありますけれども、私は是のみを以てしてはどうしても現在の農村は救はれないと思ふのであります、耕作農民の質の如何が收穫に及ぼす影響は非常に甚大であるのでありまして、惰農の收穫高は精農の收穫高の半ばにも達しないと云ふことは實情であります、隨て自家消費を差引きまする時に、供出の面に及ぼす影響は想像以上のものがあるのでありまして、惰農は自分の消費すら覺束なく、精農は割當を完遂して尚ほ餘裕綽々たるものがあるのであります、如何に民主的な方法を以てしても、到底眞實の收穫を基礎とした米の供出割當、又供出の實際上の遂行は出來ないと云ふことは、只今申上げた此の精農、惰農の差あるが故である、故に私は、政府は宜しく農村の實情を把握して、此の零細農家を再組織して活用し、惰農をして立たしめ、立たざる惰農と不正農を追放して、耕作權の分合より更に一歩を進めて農村組織の一大整理を斷行する必要があるのではないかと考へるのでありますが、政府は此の點どう云ふ御考へでありますか、御聽きしたいのであります、隨て此の觀點に立つ農地の再配分と云ふことは、非常に難かしい條件となつて來るのでありまして、現在私共の地方の小作人の間には、地主から解放された土地を、唯一律に平等に分けようではないかと云ふやうな話が相當進行して居るのであります、併しながら農地配分の條件とは、何處までも増産を目的とし、最高度の活用を圖らなければならぬと思ふのであります、隨て昨日申上げました所の、主食の平均「パーセント」を超える、所謂食糧増産に挺身する眞面目な農家に對して、地主より解放された土地を獲得する優先權を與へると云ふことが何としても必要であると考へるのであります、強權發動と云ふ寶刀を技きました政府は明かに農村政策の無力を證明して居るのでありまして、供出も亦政治であります、役人が百姓家の一軒々々を訪ね歩いて之を貫徹すると云ふやうなことは末の末でありまして、政府の施策の示す所、令せずして、強制を意識せずして國民齊しく追從するが如き政治を行はなければならないのであります、隨て政府の施策には、常に斯くの如き遠大なる伏線を用意すべきであると考へるのであります、此の觀點に立ちまして昨日に引續いて質問を續けて行きたいと思ふのであります
先づ第一は、政府は此の法案を立案されるに當りまして、土地と耕作とを一體化すると云ふことを基本として御考へになりましたのが、即ち世間に言はれて居る所の封建制の追放と云ふものを目的として本法を立案されたのであるか、又健全農家の育成と云ふものを主として本法を立案されたのであるか、其の何れであるかを先づ第一に御伺ひしたいと思ふのであります、此の如何に依つて昨日から私の質問を續けて居りまする所の土地解放の條件に差異が生じて來るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=2
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003・山添利作
○山添政府委員 只今適正規模或は精農、然らざる農家と云ふことを中心にして御述べになつたのでありまするが、さう云ふことの望ましいと云ふことに付きましては、青木委員の仰しやいますことと又我々の考へて居ることは何れも一致して居る譯でございまするが、偖てさう云ふ事柄を成就し得る状態にあるかどうかと云ふことになれば、御承知のやうに現在の、又今後我が國の置かれて居りまする環境から見まして、廣汎に適正規模の農家を増加して參ると云ふことは到底期待出來ないのであります、結局零細農の問題は──勿論斯う云ふことの處理を要する譯でございまするけれども、是は農業内部だけの問題としてではなく、日本全體の農業と工業との關係、又其の關聯と致しまして將來順次に解決を要する問題であると考へて居ります、又農業經營内部に於きましても比較的狹い土地の上で勞働力の吸收を多くする、即ち經營を多角化して參ると云ふこと、又御述べになりました農村工業の問題、斯う云ふやうな方向に行きまして、さうして小さいながらも農家の經濟、收益の安定と向上を圖つて行くと云ふ方向に向ふべきものと考へて居るのでありますが、何れにしましても此の適正規模の農業者、相當の土地を持つて思ふ存分に高い經營をなす所の精農を中心に農村が構成されると云ふことは、目標としては失ひたくない、又さう云ふ風に全體的の關聯に於きまして行くやうに希望致して居る譯でありまするが、偖て今囘の農地改革には、其の立案に付て小作制度の廣汎に亙る廢止、即ち他の言葉を使ひますれば、封建制の一掃と云ふことに重きを置いたか、或は健全農家の育成と云ふことに重きを置いたかと云ふ御質問でございまするが、是は法律の第一條に其の目的を明かに致して居りまするが如く、農村の民主化と云ふこと、それから農業生産力の發展と云ふことを謳つて居るのでございまして、先づ第一に土地と耕作とを一致せしめると云ふ、觀點、是は言換へて見ると、今の幾多の不合理な部分を含んで居り、又今日では農業の生産性の發展の阻碍をして居る小作問題、之を廢止するに重きを置いて居るのでありまして、さう云ふ結果から生ずる農業の發展と云ふことを又狙つて居るのでございますが、健全農家の育成と御述べになりますものは、恐らく今の適正規模の農業者を相當程度増加して行く、即ち土地の再配分、それも唯小作地を自作地にすると云ふ意味ではなしに、例へば一町持つて居る人に五段歩加へて一町五段の農家にする、斯う云ふ意味に於ける農地の再配分と云ふことを御指しになつて居るものと考へて居るのでありますが、此の問題に付きましては、先程申上げましたやうに、今は其の時の餘裕がない、然らば又零細農なるものを一擧に農業の部面から排除してしまふと云ふことも出來ないのであります、主たる目的は、土地と耕作を一致せしめる、それに依つて又生ずる所の日本農業全體の生産性の向上と云ふことを狙つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=3
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004・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論只今の御答辯にありまするやうに、其の何れにも偏することは出來ない、そこに此の日本の土地改革の惱みがあると思ひます、隨て地主も亦、自分の持つて居る土地であるから、此處に土著して適正規模の範圍内に於て自作をすると云ふやうな慾望も相當棄てなければならぬと思ふ、然るに又一方に於て小作者も自分の作つて居る土地だからやはり保持しなければならぬ、強ちここに拘泥はると云ふことになると、此の二つの途の兩全と云ふものは出來ないと思ふのであります
まだ大臣が御見えにならぬやうでありますから、一つ細かい點に付て局長に御問ひして行きたいと思ふのであります、近く宅地となるべき土地と云ふことがございますが、其の意味はどう云ふ意味であるか、其の近く宅地となると云ふことに付ての所有者の計畫とか、或は近く宅地とする爲に現在色々な事柄を所有者が進行しつつある場合に、それをどの程度御認めになるのか、其の意味を一つ御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=4
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005・山添利作
○山添政府委員 宅地となるべき土地に付きましては、是は現實に家を造る支度をして居ると云ふことは最も明かでありますが、そこまで進んて居ませぬでも、所有者に於て宅地とする意思があり、且つ其のことが客觀的に見まして當然宅地になすべき土地だらう、斯う云ふ事態を指すのでありまして、例へば街の中の家の竝びの中に挾まつて居る畑地、或はそれに直ぐ隣接して居るやうな畑地で、所有者が宅地にしようと考へ、又農地委員會等、客觀的な判斷から見ましても肯けると云ふ場合を指すのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=5
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006・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 今地主が集團的に三段なり四段なりの土地を──實はさう云ふ畑地は我々の所では大體百坪一團として居るのでありますが、それを耕地整理の換地交付の時に、特に地主の意圖を以て幾つかの百坪の畑を一所に集めまして、其の地主に子供があるのでそれを分家させると云ふ意味を以て、其處を宅地にし、十分の餘裕を取つて其處に野菜物でも作ると云ふやうな計畫を以て、集團的に宅地を作る豫定を持つたけれども、それは戰時中耕地の目的を變更することが非常な困難な手續を要する爲に斷念されて居つたと云ふやうなものが、將來宅地となる見込の土地であるかどうか、實際問題として一つ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=6
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007・山添利作
○山添政府委員 是は地目が宅地になつて居るかどうかと云ふこととは、實は關係がない、寧ろ此の法律に於きまして農地と云ひますのは、現状を押へて居る譯でありまして、假に今御述べになりましたやうな計畫でございましても、是は近く現實に宅地になると云ふ見透し、又さう云ふことが客觀的に考へられる場合を宅地となるべき土地と云ふのでありまして、さう云ふ單なる計畫でやつて居ると云ふことは、是は宅地とは見ない、さう云ふ場合には是は一應小作地にして置いた方が宜いと考へるのでありまして、將來又事情が變りまして、自作地になりましたものが又變更されると云ふ場合は勿論ある譯でありますが、此の法律を施行致します場合に於きましては、さう云ふやうな場合は寧ろ農地自體と考へる方が宜いではないかと云ふ風に思ひます、尤も是は其の時土地の状況其の他具體的の事柄に依りまして、農地委員會が判斷する譯でありますが、計畫的にはさう云ふ豫定をしたと云ふ程度でございますれば、それは其の儘宅地となるべきものと判斷すると云ふ所までは行かないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=7
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008・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に二箇村に跨つて二つの大字が入混じつて、家もあれば、耕地もあると云ふものが、我々の所に實例があるのでありますが、曩の農林大臣の説明に依りますと、所屬する村の委員會に於て隣村の土地の處分の問題は決定すると云ふのであるが、兩方に入混じつて居る時にはどちらの村の委員會の權限になるか、勿論是は上級の縣の委員會に意見を述べることになると思ひますけれども、實際問題としてどう云ふ取扱をやりますか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=8
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009・山添利作
○山添政府委員 さう云ふ風に入混じつて居ります時には、それぞれ隣接の其の區域を、或る町村の區域に準ずるものとして指定をする、斯う云ふ場合に、甲の村、其の隣村を乙と致しまして、甲の村の地主が乙の村に土地を持つて居る、其の乙の村にございます土地は、乙村の農地委員會が處理をする譯でありますが、此の場合は結局兩方の農地委員會が甲の村の地主の某なる者の土地の處分に付て協議を要する譯であります、併し之には或る程度原則を立てて置かないと、そこは事を運ぶのに不便であらうと思ひます、隨て是はまだほんの考へでございますが、さう云ふ場合には、其の甲村に居る某なる地主の土地は、原則的には乙の村にある土地を先づ自作にさせて行く、斯う云ふやうな原則を立てて行つたらどうか、尤もきつちりとさう云ふ風に總てやると云ふ譯ではないけれども、原則的にはさう云ふ方針で、甲乙の村で協議をすると云ふことにしたらどうかと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=9
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010・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 中々問題は難かしいと思ふのでありますが、其の次の自作を相當とすると云ふ場合でありますが、之を一つ御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=10
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011・山添利作
○山添政府委員 是は既に通牒も前から出て居るのでありますが、結局現在の小作人の經營状況よりも、自作にした方が社會的に生産力が高い、斯う云ふやうな場合を指すのでありまして、今起つて居りますやうな、單純なる地主の方の經濟上の要求と云ふ意味ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=11
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012・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木君、一寸御相談申上げますが、逐條的におやりになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=12
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013・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 農林大臣が御見えにならぬからやつて居たのですが、併し細かいことは止めませう、それで大體斯う云ふ細かいことは、勿論實際の農地委員會に於ても恐らく取扱上問題となると思ふのでありますが、是は命令と云ふやうな形を以て御出しになるのか、通牒と云ふ形で御出しになるのか、何か其の點御考へになつていらつしやいますか、將來の疑問の註釋と申しますかを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=13
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014・山添利作
○山添政府委員 是は命令を以て細かく一々の場合を規定すると云ふことは出來ませぬ、隨て農地委員會に於きまして、兎に角十人の委員の人が集まりまして討議する譯でありますから、そこは法律の趣旨を能く考へてやつて貰へば間違ひなしに、又其の具體的な事情に合つた判斷が出來ると考へて居ります、尚ほ色々な「ケース」で、どうしたら宜いかと云ふやうなことは、都道府縣農地委員會等で示す場合もございませうし、又本省等に照會がございますれば、それに對して返事をすることがあり、又事重要なる問題でございますれば、中央農地委員會もあることでございますから、さう云ふ所で決めて一種の判例を作ると云ふやうな恰好で參る積りであります、是は規則でごたごたと細かいことを書くことも出來ませぬし、又書く積りもありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=14
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015・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の問題は議會に於ける成行と申しますか、議會の意思と申しますか、さう云ふものが議會中は相當強く要望され、又政府も其の要求に應へる御意思であらうと思ひますけれども、之を實際に行ふ時には、事務當局は自分の事務の便利と云ふことを相當考慮されて、議會の意思と云ふものは往々にして實現されない場合が多いのであります、私はさう云ふやうなことのないやう、何れ今後此の委員會に於ける質疑が續けられて居る中に、議會の意思が恐らく判然として來るであらうと思ふのでありますが、其の點を考慮された運用を、特に細かい點に付て御願ひしたいのであります、細かいことはそれ位にして次に移ります
現在の農村は、相當農村の物資の闇と云ふものに依りまして潤つて居ると云ふことに一般的に見られて居るのでありますが、現在に拘泥することなく、過去及び將來の全體を通じて、農村と云ふものは何が故に疲弊状態が續いたか、百姓は割に合はないかと申しますと、是は勿論搾取と云ふ問題もあります、地主の搾取、中小商工業者の搾取と云ふやうな問題も勿論ありますけれども、恐らくそれは耕作地の不平等と云ふことであつたと私は思ふのであります、此の耕作地の不平等を矯め直す爲に、所謂土地の交換分合と云ふ問題も政府は考へて居られますことと存じますが、實際に於て生産物の供出と云ふことに當面した爲に、私共の地方に於ては、其の大字に於ける全耕地を地主も小作人も全部出し合つて、新たな觀點に立つて再配分を實行した部落があるのであります、過去に於て、非常にすばしこかつた小作人は地主に頼んで良い土地ばかりを掻き集めた、それが現在の小作地になつて居る、又手拔かりのあつた小作人は殆ど惡い土地ばかり集めて居る、其の中には、今までに小作人のやり方が惡くして、地主の反感を買つたと云ふやうなことがありますから、惡い田に追込められて居る者もあるのでありますが、それ等を押しなべて一つの基準を持つた所の、現在の言葉で申しますと、供出が平等に行く、殆ど一筆毎の調査をやらなくても、寧ろ段別割さへやつたならば、大字の供出は平等に行くのだと云ふ點まで土地の再配分をやらうと云ふことを考へ、又實行して居る部落があるのでありますが、政府の土地の交換分合と云ふものは、私は恐らく此の點まで推進めて行くべきものだと考へまするが、現在どう云ふことを政府は考へて居られるか、御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=15
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016・山添利作
○山添政府委員 さう云ふことの出來る所で致しますことは結構だと考へますが、全體的の問題と致しましては、全體に割つてしまへば一町歩にも足らぬと云ふことになりまして、結局今の生産關係を紊し、全體としての生産を落すと云ふ結果にもなり、色々社會的な問題が起ると云ふことは別に致しましても、さう云ふ風になるのではないかと思つて居るのでありまして、此の法案を實行致しますに付ては、直接の經營の關係には觸れないことを原則として居る譯であります、唯斯う云ふ問題は、開墾等に依りまして農地を増加して行く、又自作地でございましても、是が經營を巧くやつて居ないと云ふやうな大經營のものは之を解體致しまして、關係の農業者に分配すると云ふ場合がある譯でありますけれども、それは其の面積が極めて僅かであります、結局耕地の増加と云へば、開墾に俟つことになる、隨て今の經營關係には、全體としては原則的には觸れないと云ふ建前を取つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=16
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017・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 議論に亙ることを避けますので、先に進みます、其の次に生産意欲に燃えて居る者に對して土地の再配分の優先權を與へると云ふことを豫豫御説明になつて居るのでありますが、生産意欲に燃へて居ると云ふことは、どう云ふ方法を以て選定されるか、唯燃えて居る者と言つたつて、そこは中々難かしいのでありますが、どう云ふ方法を以て之を選定されるか御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=17
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018・山添利作
○山添政府委員 今度の政府の土地の賣買を通じて土地を取得する人は非常に多いのであります、問題は生産意欲に燃えて居る人を選定するのでなくて、具體的に申しますと、斯う云ふ人には土地を讓り渡しても無駄であらう、此の目的を達しないであらう、斯う云ふ寧ろ極端に惡いやうな人がございますれば、之に賣ることを止めて、交換分合等の手段に依つて他の人に分ち與へる、斯う云ふのであります、優秀なる人を選ぶのでなくて、非常に惡いと云ふ人があれば、其の人は排除すると云ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=18
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019・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 どうもそれでは非常に不徹底になるのでありまして、前に申したやうに、既に私共の地方で、地主から解放された土地を小作人が平等に貰はうぢやないかと云ふやうな話があるとなれば──結局私はさうなると思ふが、それでは結局生産力の低下でありまして、何等の價値もないと思ひます、やはり零細農家を作ると云ふ方向にのみ恐らく動いて行くと思ふのでありますが、是も亦、是れ以上申上げれば意見の相達になりますから、申上げませぬが、此の點は特に土地の配分の場合に、農林當局に考慮して戴かなければならぬ問題だと思ふのです、それに附帶致しまして、農村に徒食して居る者を閉出さなければならぬ、百姓は非常に忙しくて轉手古舞をして居るにも拘らず、其處にぶらつとして居る人間がある、殊に疎開して來た者とか、或は復員して來た者とか、又都會より農村へ食糧を求めて疎開することを國で奬勵していらつしやる、勿論都市には食糧はない、だから田舍へ追出せ、田舍へ出せば何とか食ふだらうと云ふことで、農村に對して都市の住民を食糧を求めて疎開させると云ふやうな方法などは、斷然止めて貰はなければならぬと思ふ、私は農村に入れる所の人口をどうしても制限しなければならぬと思ふ、都市に歸つて來る人間を制限すると同樣に、農村に入れる人口を制限しなければならぬ、又戸數も或る程度制限して、農民の中に不精農とか、惰農と云ふものがある、之を精農たらしめるべく努力しなければならぬが、どうしても見込のない者は、寧ろ轉業を勸める、さうして開墾地を造る、其の開墾地の規模たるや、勿論普通の農民であつても相當生産力を擧げるが如き、所謂科學的な方法及び電力を利用するとか、其の他の凡ゆる指導方針を立てて、新しい開拓地を造らなければなりませぬ、さう云ふ方面に入れることを私は考へなければならぬと思ふのでありますが、どうも今までの私と農林當局との質問應答の中には、農林當局はそこまで考へていらつしやらぬやうに思ふのであります、是等の點に對してどう云ふ認識を農林當局は持つていらつしやるか、もう一度最後に御聽きしたいと思ふ、隨て私は農村に近接して工業都市を造る、さうして農村に居る所の、是等の成績の擧らない農民を、此の工業力の方へ段々吸收して行く方法を講じなければ、どうも零細農家になつて、百姓を片手間百姓にする者ばかりが現在の農村に殖えて行くと云ふことになると、結局生産意欲の向上を圖る爲に只今の土地解放と云ふものが計畫されても、其の精神は沒却されるのではないかと思ふのでありますが、もう一度最後的に當局のそれに對する見解を述べて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=19
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020・山添利作
○山添政府委員 農村に工業都市、若しくは農村に近接した地方の中小都市に工業を興しまして、其處に人口を吸收して零細農と云ふやうな人達を移す、若しくは更に惡化する状況をさう云ふ所に吸收すると云ふ問題であります、私共も實は其の通りに考へて居るのであります、其の問題が農業と工業と綜合的に國全體として人口を扶養する方法であり、又農業自身を維持し、生産力を高める所の方法である、斯樣に考へて居りまして、今後特にさう云ふ點に、政府と致しましても、又國全體と致しましても、力を盡して行くべきものであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=20
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021・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に圓滿裡に小作人と地主との間に土地の受渡が出來る方法を私は或る程度考へて居るのでありますが、一つ御聽きしたいのは、小作地を手離したくないと云ふ小作人の心理と、所有する土地へ歸農したいと云ふ地主の希望との調和策をどう云ふ程度に御考へになつていらつしやるか、御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=21
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022・山添利作
○山添政府委員 それは現在の農村に於ける一番深刻なる問題でございまするが、之を巧く調和する名案と云ふやうなものは私は考へ付かないのであります、結局農地調整法の第九條の精神に依つて此の問題は解決をして行く、それを、積極的に何か良い案があつてどうなると云ふ風に此の問題は解決が付け得ないものである、飽くまでも第九條の精神で、兎も角原則的に土地取上げと云ふことはいけないのだ、斯う云ふ思想を徹底致しまして、さうして問題の發生を防いで行くと云ふことが宜い、それより外に方法がないのだと考へて居りますが、若し何等かそこに手段でもあると云ふやうなことであれば、寧ろ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=22
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023・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私の所へは小作人諸君からも色々な要求が參つて居ります、又地主の方からも色々な要求が參つて居るのでありますが、本法を見ると、大體に於て小作人の立場は或る程度擁護されて居ると私は思ふ、唯地主の立場を擁護する──と云ふ言葉は非常に語弊がありますが、小作人の立場を犧牲にせずして、尚ほ地主の爲に其の希望する途を開くことが出來ないかと云ふことを私は考へて居りまする爲に、私の質問を續けて行きたいと思ふのであります、農林大臣は、地主の土地は粒々辛苦の結晶であると云ふことを申された、是は私も同感なのでありまするが、それならば、小作人の子弟に小作權繼承の權利があると共に、今度は逆に地主の子弟に自作農となる權利があると云ふことを御認めになるかどうか、之を一つ御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=23
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024・山添利作
○山添政府委員 地主の子弟に自作農となる權利があると云ふ風には考へて居りませぬ、唯農地調整法の認める範圍に於きまして、農業を自作でやつた方が宜いと云ふ場合には、さう云ふ風なこともございませうが、一般論と致しまして、地主の子弟が又農業者になつて行く權利があると云ふ風には考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=24
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025・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に私は土地の賣買と云ふよりは、寧ろ永小作權を認めまして──是は又後から特に適正規模の問題に付て取上げて見たいと思ふのでありますが、永小作權を認めて、家族に消長がある時、又著しく小作の耕作を不當とするやうな場合に、地主に此の土地を返還せしめると云ふ意味から、地主に土著を認め、保有小作地を殘す必要があるのではないかと思ふ、又小作人を土地取上より救ふ爲に、又無用の摩擦を避ける爲に、一町歩と云ふやうな小さな範圍でなく、適正耕作の規模の範圍にまで此の一町歩の小作地の保有を更に擴げて行つた方が宜いのではないかと云ふことも、一面考へて見るのでありまするが、之に對してどう云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=25
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026・山添利作
○山添政府委員 御質問の趣旨は能く分らないのでありまするが、小作地一町歩を限度として殘す、之をもつと擴げたならば、今の其の間の關係が巧く行くのではないか、斯う云ふ意味であると致しますれば、是はやはり原則論に戻つて、小作地を自作地にして行くと云ふことを廣く考へて行つた方が宜い、隨て此の一町歩を殖やすと云ふことは不適當であると云ふやうに考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=26
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027・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に此の間も申上げましたやうに、土地の解放と云ふものは小作人も納得しなければならぬが、地主も納得しなければならぬと云ふことを建前として考へて見る時に、地主は、自分の土地を處分する爲には、どんな小作人にでも自分の土地を與へると云ふのではなくして、祖先以來自分の家に忠實に盡して呉れた小作人に自分の土地を與へたいと云ふ希望を持つて居る、法に依つて土地が解放されることを宜いことにして、地主に楯突くが如き小作人に對しては、地主は自分の愛する土地を手放したくないと云ふ感情を持つて居るのでありますが、此の地主が祖先傳來の土地を手放す場合に、私は地主の地位、地主の發言權と云ふものを相當認めて戴かなければならぬと思ふのでありますが、此の點に對して農林大臣はどう云ふ御考へを持つて居りますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=27
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028・和田博雄
○和田國務大臣 土地の買收と賣渡計畫は農地委員會で實は立てる譯であります、農地委員會は、先般來御説明致して居りますやうに、地主と小作人の兩方から代表者が出ると云ふことになつて居るのであります、それから我々の指導の原則としましては、現在小作をやつて居る人に土地を持たせると云ふ建前を執つて居る譯でありまして、現在の日本の小作人と云ふものは、さう毎年々々變るやうな状態ではありませぬ、日本の小作人は長い間一つの地主から借りて居ると云ふのが大部分であります、そこで仰しやるやうな事柄に付きましては、農地委員會に於て買收計畫なり賣渡計畫を立てられる時に、十分採入れられて計畫が實行されると思ふのであります、唯個々の地主のさう云ふ意思を一々採入れて行くと云ふことは、政府の建前上出來にくいと思ひます、農地委員會に於て兩者の選んだ、此の人ならと云ふ選ばれ人達がそこで買收なり賣渡の計畫を立てる譯でありますし、又其のやり方に付ては、法律で一定の條件を勘案してやるやうになつて居りまするので、それ等の點に付ては、農地委員會なり、又政府の指導に依りまして、十分圓滑に行くであらうと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=28
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029・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 只今の農地委員會の構成の問題は、恐らく此の委員會に於けるやまの一つであると私は思ふのであります、此の案に於ける農地委員會の構成に付て考へて見ますと、どうも二つの見方があると思ふ、小作人が五、自作人が二、地主が三と云ふ此の振合ひは、地主的な觀察から見ると、どうも自作農と云ふものは小作の味方であると云ふやうに考へられる、それは現實の問題として、各地方へ參りますと、耕作組合とか小作人組合と云ふものが結成されて居る、一段歩でも地主から小作して居る者は、此の小作人組合の中に入つて、小作と常に行動を共にし、寧ろ斯う云ふ階級の者は一般小作人の意思に反した行動は絶對に執れない立場に縛られて居る、して見ると、此の比率は、小作七に對して地主三の比率と云ふことに考へられる、又先日の社會黨のどなたかの御説を聽きますと、今度は小作の方の見方から言ふと、自作農と云ふものは地主の味方であるから、其の形勢が逆轉すると云ふ風な二つの見方に相成るのであります、だから是は一歩を進めて、斯うした厄介な代物は、此の農地委員會の構成の中から除外したら宜いではないか、寧ろどちらにも偏しない所の、學識經驗ある者が別途加へられるのでありますから、斯う云ふ土地の解放に關係のない「クラス」を排除致しまして、土地を解放する者から五名、土地の解放を受けるものから五名と云ふやうな割振りを致しますならば、對日理事會に於ける英國の勸告案の五のD項には、地主、小作の兩勢力は折半すべし、斯う云ふ要望があります、此の點から考へて至當であると思ふのでありますが、農林大臣はどう云ふ御考へを持つていらつしやいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=29
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030・和田博雄
○和田國務大臣 是は御話の通りに色色な見方があり得ると思ふのでありますが、唯自作農必ずしも土地の解放に關係がないとは言へないのであります、例へば自作地主で二町五段作つて居る、而も其の地主がまだあと二町も四町も持つて居ると云ふやうなものであれば、是は當然解放すべき土地がそこに出て來る譯であります、そこで土地所有と云ふものを引括めまして五人、土地の小作者と云ふものを引括めまして五人、斯う致した譯でありまして、我々としては此の觀點から行きましてやはり兩方が對等の立場に立つて行くことだらう、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=30
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031・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 議論を致さないと云ふ立場から先へ急ぎますが、私は此の意見を抛擲したのではないのでありますから、左樣御承知願ひます
次に供出の問題であります、此の供出の問題は前囘も觸れたのでありますが、是は今後の農村の規模に大きな響きを持ち、又土地の價格、米の價格に非常に大きな問題を投げ掛けて居ると思ひますので、やはり此の問題に觸れて見たいと思ひます、今年の計畫に依りますと、農家に對して保有米を先づ認めて居ると云ふ點は、農民も非常に農林當局を徳として居ると思ふのであります、此の一點だけで恐らく供出は圓滿に行くかの如く考へられるのでありますが、此の間申しましたやうに、精農の米を一筆毎に調査して取上げると云ふやうなことをやつて、又實際の問題と致しまして、農林當局が考へて居られるが如く、細かい調査を致す時に、そこに人的要素が不足すると云ふやうな問題から、恐らく農民が雙手を擧げて歡迎する立場が非常に弱められて來ると云ふことを考へて居るのであります、隨て此の第一の一筆毎調査の問題に付ては、農林大臣は前囘、是は調査の手段であつて、實際供出の點に付てはそこまでは、何と言ひましたか、行きたくないと云ふやうな御意見でありまして、どうしても是は事實に示して戴かなければならぬと思ふのであります、又調査の問題も、九月に御調査になると云ふことも非常に結構でありますが、九月に、早稻は調査出來るが、中稻、晩稻と云ふやうな點にまで細かく調査は行屆かぬと思ふのであります、隨な是は適當な機會に、九月の調査と云ふものを補正して戴かなければならぬ、勿論補正の途も講ぜられて居ると思ひますが、殊に茲に考へなければならぬことは、補正する時には、補正であるから殖やす減らすと云ふ二つの問題があるが、恐らく殖やしてはならぬ、減じなければならぬ、あとから調べて、此の間の調査は小さかつたから増すと云ふことになると、農民心理と云ふものは非常に惡く動く、又實際問題として、米がないと云ふやうなことに相成るのでありまして、此の點私は特に農林當局の一考を煩はしたいと思ふのであります、今申上げましたやうな事實を以てして、百姓は農林當局に對して非常に感謝はして居るけれども、そこに非常な不滿を持つて居ると云ふことが、恐らく今年の供出にも大きく響いて來ると私は思ふのであります、特に毎年々々の食込みと云ふことが非常に大きいのであります、又豐作の爲に氣を許して百姓も食ひ、町の者も買出して食ふ、此の豐作に氣を許したのは農民ばかりでなく、町の者ばかりでなく、農林當局自身も、どうも豐作と云ふものに氣を許して居るのではないか、此の儘にして置けば恐らく來年の端境期に行つても、今年の如き程度に至らなくても、米不足と云ふものが必ず循つて來るのではないかと思ふのであります、殊に粉食の問題が現在餘り取上げられて居らないと思ふのであります、もう日本の國民は粉食には或る程度慣れて來たのであります、米飯を食はなければ生きて行かれないと云ふ觀念を捨てて、粉食で十分やつて行けると云ふ自信が國民の間に付いたのでありますから、此の際政府當局は粉食の問題に付て相當突込んだ政策を樹てて戴きたいと云ふことを期待して居る、隨て現在は藷の供出の最盛期でありますが、此の藷なども、どうも藷が穫れて而も豐年萬作だが、輸送は出來ない、此の間の新聞を見ましても、私は大宮に居るのでありますが、埼玉縣の新聞を見ると、輸送が出來ないから、埼玉縣の方でうんと縣内消費しななればいけないぢやないかと云ふやうな記事が出て居りますが、さう云ふ風に氣を許して食べてしまふのではなく、そこに藷の粉食とか藷の葉の粉食と云ふやうな問題を此の際取上げて戴かなければならぬ、其の爲には粉食の工場を各地に點在されると云ふことも必要であります、又都市の人間を集團的に農村へ出張らせて、此の粉食の材料を集めさすと云ふことも必要であるやうに思ふのであります、百姓に對して、此の猫の手でも借りたい刈入れ、穫入れの時に、藷の葉も乾かせ、又蕎麥穀も乾かせと言つたのでは、とても百姓はそこまで手が付かない、隨て腐る儘に委せる、藷の葉とか、或は藷それ自體とか、或は蕎麥穀と云ふやうなものが、粉食の材料としては恰好なものであるから、斯う云ふ材料は百姓の手にのみ委せないで、何等かの方法を以て粉食の問題を解決する途に付て政府當局は一つ大きな手を打たなければならぬと思つて居るのであるが、どう云ふ方針を持つて居るか聽きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=31
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032・和田博雄
○和田國務大臣 調査の問題は先般私御答へ致した所に依つて御諒解を御願ひ致したいと思ひます
粉食の問題でありますが、私は今年は粉食で、例へば藷の葉であるとか、莖であるとか、從來寧ろ家畜の餌や肥料になつて居りましたものは、さう云ふ方へ返さうと思つて居るのであります、唯今年は甘藷が相當豐作でありますので、御話のやうに、腐らさない爲には、相當澱粉として置く必要があると思ひます、澱粉工場は、今までの所、大體建てて行渡つて居る状態にありますので、さう云ふ方面に付ては今後是非腐らすことのないやうに澱粉と致す、斯う云ふやうに考へて居ります、唯未利用資源を去年のやうに何でも彼でも食ふと云ふことは、是はどうも食糧の面から言ひましても、又榮養の方から言つても、それから農業經濟の方から言つても、やはり多少そこに無駄があるかと思ふのであります、本年度はそれは返すべき所へ返して行きたい、實は斯う考へて、色々と施設を講じて居る次第であります、左樣に御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=32
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033・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に、米を輸入せずして肥料を輸入すべしと云ふことは、私の持論でありまして、他の委員會に於ても實は大臣の御贊成を得たのでありますが、當面の問題でなくて、明年度の問題として、米を輸入せずして肥料を輸入する爲には、今どう云ふ手を農林當局が打つていらつしやるか、即ち米一俵輸入するよりは、肥料一叺輸入する方が、結局米五俵を來年に於て生産するのであつて、一が五の子を産む重大問題であると思ふ、殊に我が日本の國内に於て、肥料に對して打つ手は、勿論政府當局が打つて居られることと思ひますが、日本の肥料工場と云ふものは戰災を受けて居るのであります、外國の肥料工場は戰災を受けて居らぬ、故に戰災を受けて居らない外國の肥料工場に對して日本政府が何らかの手を打つて、外國から肥料の輸入を圖ると云ふ問題を、私は是非取上げて戴かなければならぬと思ふのでありますが、此の點どう云ふ風に進行して居りますか、御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=33
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034・和田博雄
○和田國務大臣 日本は豐作でありますが、來食糧年度はやはり食糧を輸入しなければなりませぬ、それ等の點に付きましては、只今關係方面と色々折衝を致して居るのであります、それと同時に、是は日本の再建の上から言ひまして、何と云ひましても、肥料工業は、現在の日本の工業を見渡した所、恐らく一番早く復興して居る工業だらうと思ふのであります、それにも拘らず是は需要量には及ばないのであります、そこでやはり日本の經濟が復興致します途上に於きましては、是は何としても、さう云ふ肥料と云つたやうなものを輸入が出來ますれば之に越したことはないのであります、輸入した肥料と日本の生産した肥料とを合せて、農家が十分使ひ得るだけの肥料が渡つて行く、斯う云ふことになりまして初めて農業の生産が非常に確固たる基礎に置かれて來る譯でありますので、實は硫安に付きましては復興の方を急ぎますと同時に、下半期に付ても輸入の懇請を致した譯でありまして、政府から正式に書類は出した譯でありますが、是は「アメリカ」其の他の事情に依りまして、今年は駄目でありました、併し來年度と雖も、日本の肥料工業が我々が要求して居るやうに二百二十七萬「トン」と云つたやうなことには直ぐには達しない譯でありますので、是は出來ますならば、是非肥料を適當な數量輸入致しまして、肥料の不足に惱んで居ります──殊に來年度は、今年非常に豐作でありますので、それだけ土地に對する肥料の供給が必要だと思ひますので、肥料に付ての輸入を致すやうに努力致したい、斯う考へて進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=34
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035・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 非常に結構であります、次に、農村に米があるかと云ふ問題であります、私はあると云ふ結論を下す、其のあると云ふのは、餘分にあるのではなくて、百姓の食べる米があると云ふ意味であります、所が百姓が今考へて居りますのは──私の所は田を主とする所であるから斯う云ふ問題が起るのかも分りませぬが──米を食ふのは勿體ないと云ふ氣持は、百姓の中には十分あるのであります、所が所謂雜穀、粉食の原料と云ふものは農家には少い、田圃が主であるから、隨て麥の收穫も少い、麥は又供出させられてしまふと云ふ關係で、粉食の材料が欲しいと云ふことを豫ね豫ね農民は考へて居るのであります、隨て斯う云ふ端境期に於ては、こちらの方に出て參りまして、都市の人達が常に粉食をやつて居られる、米の飯を食べないで粉食をやつて居られると云ふことに對して、私は非常に同情するのであります、隨て此の粉を逆に農村に與へて、それだけの米を交換的に出させると云ふ方法をおやりになつて、都市の方に粉食ばかりではなく、米の顏を見せてやるだけの親切さが欲しい。又我々農民は之を希望するのであるが、斯う云ふ點に付て當局はおやりになる御氣持がありまするか、一つ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=35
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036・和田博雄
○和田國務大臣 それ等の點は實は色色考へて居る譯であります、例へば輸入の罐詰なども農村の方へ廻はして、代りに米を出して貰ふとか、色々考へて居る譯でありますが、色々の要求のありますのは、例へば甘藷地帶から甘藷を掘つて、米作地帶へ持つて行つて、其の代りに米を持つて來たらどうかと云ふ御話もある譯であります、大消費都市に付てはさう云ふ旨いことは出來ないのでありまするが、さう云ふ點に付きましては、甘藷なり米なりの供出の度を促進致しますると共に、やはりさう云つたやうなことが旨く出來まするならば、是は政府の一つの計畫としてやつて行くと云ふやうなことに致せばどうかと思つて居ります、それ等の問題は色々考へて居りますが、部分的な問題でもありますので、實行上色々の點に付て多少研究もしなければならぬ點もあると思ひますが、問題は我々としても十分研究して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=36
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037・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 どうも細かい點を申上げて恐入ります、今度は一つ根本問題に觸れて見たいと思ふのであります、私は豫ね豫ね米の供出と自由販賣とを織混ぜた機構を作らなければならぬと云ふことを主張して居り、又本議院に於きましてもさう云ふ問題は豫算總會等に於て觸れた方があるのでありますが、私は之を實行する機會が到來したと考へる、隨て其の程度をどうするかと云ふと、供出はもう八割で宜しい、曩の一筆毎調査の問題に關聯するのでありますが、一筆毎に調査して實際の收穫量と云ふものが分つたら其の八割と云ふものを強制的に供出さして、あとの二割は統制機關を通じての自由販賣にすれば宜いのではないかと云ふことを考へて居るのであります、是がやはり米の補給金の問題にも影響して來ると思ふ、隨てどんな大金持でありましても──まだ米價は決定して居りませぬが、四百五十圓と六百圓の差の百五十圓は國家から補助を受けると云ふやうなことは矛盾であります、隨て是だけ食はなければ死んでしまふと云ふ、或る基準量だけは政府の助成を持つた所の米價で與へる、即ち收穫の八割だけを先づ強制供出させて後の二割は、闇を放逐する意味からも、少くとも一俵一千圓位の價格にして、千圓の米が食へなければ食はなくとも宜しい、八割で食つて、あとの二割だけは特に必要な部面へ操作用として廻はすと云ふ方法を、此の際御執りになる時期が到來して居ると思ふのでありますが、此の點に付て農林大臣はどう云ふ御考へでありますか、一つ御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=37
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038・和田博雄
○和田國務大臣 供出割當數量の八割を供出し、あとの二割を自由販賣にしろ、さう云ふことは絶對に出來ませぬ、と申しまするのは、供出の割當量其のものが既に、國民の富める者にも貧しい者にも──現在では二合一勺でありまするが、之を多少殖やして、兎に角食生活を安定せしめる所に於て等しくお米を配給する、是は其の上に必要な計畫の數量なのであります、隨ひましては農家からもどうしても百「パーセント」に供出して貰はなければならぬのであります、其の代り農家には、自家の保有米と致しまして、農業生産に必要な限度に於てははつきりと認めて居るのであります、併し一面に於ては、やはり今の食糧政策は一定の計畫に基いて計畫的にやつて居りますので、割當てました數量其のものはやはり百「パーセント」に供出して貰ふ、それに依つて初めて都會の人も、又一般の人も安定するのでありまして、其の八〇%供出して、あと二〇%を自由販賣にする、其の百「パーセント」を供出して、殘りのものはやはり統制其の他の「ルート」に乘せて、特別な措置を講じて尚ほ一屑潤ほして行く、斯う云ふやうに致したいと考へて居るのでありまして、是は先般本院に於ける食糧對策委員會に於て、供出の割當方法を政府と一緒になつて御決め願つて、それに依つて我々としては致して居るのでありまして、自由販賣と云ふものは、到底今の如き時に於ては出來ないと云ふことを、どうか一つ御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=38
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039・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は斯う云ふ問題から之を考へて居るのであります即ち是は私一人の意見でなくして、農民全體は斯う云ふことを常に要望して居るのであります、前の問題に戻るのでありますが、一筆毎の調査をして、それを全部取られてしまふのだと云ふ農民の心理状態、是が今後の農村の經營の上に非常に大きく響いて來ると思ふのでありますが、之に對する農民の考へ方を緩和する手段に付て、何か當局は考へていらつしやるか、重ねて御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=39
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040・和田博雄
○和田國務大臣 どうも其の心理を多少何されて居ると思ふのでありますが、私達が調査致しますのは、生産高を出來るだけ、正確に把握したい、其の正確な生産高に基いて供出なり何なりをやつて行きたい、斯う云ふのであります、御承知のやうに、農家の心理としましては、長い間の習慣として、米に付てはどうも低目に、是は平生の自由競爭の場合でもさう云ふやうに言ふ心理が働いて居る、繭に付ては、逆に、穫れなくても多く言ふやうな心理が働いて居るのであります、併しさう云ふ心理には餘りこだはらずに、正確に調査しまして、其の調査には勿論村の達眼者の協力を得る譯でありまして、是は村に行きますれば、立見をやつて殆ど一段に付て二合なり三合なりしか違はぬ程の具眼の士が居る譯でありますから、やはり正確にそこを調べると云ふことに致しませぬと、供出制度と云ふ一つの計畫的に統制をやつて居ります基礎が崩れるのであります、今まで色々供出其のものに付て非難があり、又巧く行かなかつた根本は、やはりそこの所がどうも科學的のものがなかつた點にあるのでありまして、是は農民の方にも納得して戴く必要があると思ふ、殊に今囘は農家の必要な數量ははつきりと認めて居ります、政府は斯う云ふ時期でありますので、農家の人と雖も、やはり日本の國全體が安定します爲には、正確な基礎に立つて政府が行ひますことに付ての協力を是非御願ひ致したい、斯う思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=40
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041・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木君に申しますが、あなたの御要求に依つて膳經濟安定本部長官が出席して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=41
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042・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是等の問題は、要するに農民の心理状態を、相當考慮して農政をやつて戴きたいと思ふので申して居るのでありまして、此の程度で打切りまして、次に農村の將來の見透しの問題に付て御伺ひしたいと思ふのであります、農民は價値の少い農地を希望しないのである、又對外貿易が再開されまして、素足、素裸で椰子の實を食べて生産する南方のお米の價格がどうであると云ふことを考へ、是等が日本の内地に入つて來る時の日本の農村の混亂、と云ふものを或る程度考へて見るのであります、斯う云ふことになつて、所謂農地の經濟價値と云ふものが消滅して來ますと、必然的に農地證券の切捨と云ふことが實行されるのではないかと云ふことを私は考へるのであります、即ち華族を即時廢止するとか、貴族院を參議院に移行させると云ふやうな、明治維新の觀念を持つた政治を拂拭して、又軍需補償を打切るとか、或は軍需公債を切捨て、軍國思想に終止符を打つと云ふやうな現代の時流から見まして、土地の價格が低下するに從つて農地證券の價格が必ず將來に於て下る、それは二十四年間に年賦償還されると言ひますけれども、其の最終を待たずしてさうした問題が起きて、茲に現在の犧牲となる所の地主に對して大きな危惧の念を抱かせるのではないかと考へて來るのであります、小作人は爭うて農村から離脱して工場に集まり、安い外米を食ふやうになる、是は他の委員の方から御話もありました通りに、政府の手持農地は段々殖えて來て、好むと好まざるとに拘らず農地の國有と云ふ問題──今日大臣の御説明に依ると、それは國家の意思ではないと言はれるけれども、結局そこまで參ると思ふのであります、隨て地味の向上に挺身した過去の民間地主に代つて、日本國と云ふ官製の不在地主が耕されない農地を抱へて生れて來るだらうと私は思ふが、斯う云ふことは夢であつて欲しい、我々日本國民の魂は斯く願つて居るのであります、又此の農地の國有化方面に進まずして、農地の私有化と云ふ方面に農政を進めて行きますならば、其の財産權と云ふものは、之を或る程度擁護し、努力の報酬として將來篤農家は土地購入の機會が與へられる、是も一町歩の範圍内で與へられるのでありまするが、私はやはり適正規模の範圍内に於て土地購入の機會が與へられなければならぬと考へて居る、隨て祖先が子孫の爲に購つて來た美田の中で、投資性のあるものは速かに提供せしめて、耕作に備へたるものは寧ろ世襲せしむべきであると考へるのであります、少くとも適正規模の範圍内に於きましては農地賣買の自由を認めて、惰農、精農を新陳代謝せしめなければならぬ、所有權の固定と云ふものは、必然的に其の價値を否定し、地主も小作も一坪の田をも所有する必要はなくなる、斯う云ふやうなことに將來なりはせぬかと思ふのであります、又祖先が命を懸けて守り續けて來た此の土地は、所謂耕作者に取つても亦所有者に取つても錦の田圃でありまして、お金に依つては評價することの出來ない程の貴さと愛著とを持つて居るのであります、此の貴さの持主となることを唯一つの希望として、人類最低位の勞働を樂しみ、此の愛著が土地の改良と地味の向上の土臺となつて居るのだと考へるのでありますが、農林當局は此の點に付てどう云ふ御考へを持つていらつしやるか、御聽きしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=42
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043・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の土地制度の改革に依りまして、農村に於きましては大體に於て中小の自作農民とが其の主流になつて來る譯であります、それ等の人達は、自分の土地を耕作し、經營することに依つて農を營んで行くと云ふことになると思ふのであります、隨てそれ等の人達が一方に於て色々の經濟の變動に順應して行くと云ふことになるだらうと思ひます、其の經濟變動は外國から來るものもありませうし、國内それ自身の經濟變動もあると思ふのでありますが、其の際に考へられますことは、何と致しましても、一つは協同の力に依りまして自主的に此の問題に對處して行くことが必要だと思ふのであります、小農の多い「デンマーク」でありますとか其の他の國々が、それぞれ世界經濟の中にありながら、やはり耕作者の協同の組織に依つて相當の利益の増進を圖つて居るのでありまして、是は日本に於ても當然將來採らるべき形であると思ふのであります、又實際上耕す人が農地に對して、青木さんの言はれるやうな愛著を持ち、又自らが生きる其の地盤であることを十分に自覺致して居りますならば、農地を勝手に抛棄して出て行くと云ふことは中々考へられない點であり、又さう云ふことが何處の歴史を見ましてもそんなに起つたとは考へられませぬ、殊に日本では日本米と云ひますか、さう云ふ謂はば從來は特殊の一つの商品を作つて居つた、其の農業に於て、今度の戰爭に依つて或る程度の需要の方向は變りましたが、非常に大きな國内需要を持つて居る、其の消費に付て、それ程の問題がさう急激に起るとも考へられないのでありまして、要は今囘の土地改革を一つの出發點にしまして、經營の改善であるとか、日本の國全體としての農業の多角化と云ふことを圖つて、日本の農民自體が生きて行くと云ふことを一面に於てはやりますし、又政府と致しましても、それを助長出來ますやうな方策を具體的に講じて行くと云ふことより外あるまいと思ひます、此の將來に對する條件は、唯單に想定されるだけであつて、具體的にはまだ色々の形を持つて來て居ないのであります、唯我々としてはさう云ふ場合を考へて、今から其の場合に於ける必要な施設の基礎を作つて行くと云ふことを考へるより外方法がないと考へて居るのでありまして、將來農地證券が非常に下ると云ふやうなことを、今から斷定することは中々困難であらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=43
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044・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは經濟安定本部の關係になりますが、對外貿易の面に於ける將來の米の輸入の見透し、乃至若しそれが不當に安いものであるならば、之に對して關税を設定することは、此の被占領國日本の政策として許されることであるかどうか、此の點に付て伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=44
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045・膳桂之助
○膳國務大臣 日本が國際貿易に加入をどう云ふ形で、どう云ふ範圍で許されるのかと云ふことがまだ將來の問題であります時に、其の御答へは洵に困難であります、大體農産物は世界的に豐作と言はれて居り、下向きの傾向にあることは否むべからざることであり、供給が世界的に増加して來つつあることも否むべからざることでありますが、日本が食糧の輸入を現在必要とする状況であると云ふことも申上げるまでもないことでありますが、將來どう云ふ風に米の輸入と云ふことが問題になりますか、假に國外から日本國内に澤山の輸入が希望されるやうな時になりましても、結局日本としてはまだ是から經濟建設の爲に他に輸入すべき必要な物も多々ありますので、一方に國内で食糧の供給が相當あるものを、其の上に國外から輸入して、其の爲に莫大な輸入資金を賄ふと云ふことは事實上出來ないことでありまして、自然、現在に於きましても貿易は聯合國の管理の下にありますが、近い將來に於ても或る形の自然的制約と云ふものが置かれますので、特に輸入關税とか何とか云ふことを考へなくても、日本が輸出し得る物資の量と、輸入しなければならない他の必需物資との見合ひに於きまして、將來輸入されます食糧物資に依つて國内に非常な農業恐慌が起きて來るだらうと云ふことは、當分豫想されないのではないか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=45
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046・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それでは引續いて長官に御聽きしたいと思ひますが、農村物價と他の物價との均衡を圖ると云ふことが、農民から非常に要望されて居ります、それは農産物の價格を農民が自主的に決定したいと云ふ要望なのであります、又農村の必需物資に對して、價格を決定する場合には、農民の代表をそれに參加させて欲しいと云ふ希望があるのでありますが、此の希望をどう云ふ風に採入れる御見込でありますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=46
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047・膳桂之助
○膳國務大臣 御答へ致します、是は安定本部長官と申しますよりも、私個人として御答へした方が宜いだらうと思ひますが、米價をどう云うやうに考へるかと云ふことに付ては、豫てから、私共の研究に於きましては、米價が諸物價の根源なのだ、結局國民の生活費を定めるものは、米價が如何樣に定まるかと云ふことに依つて定まる、詰り米價が中心で、それに見合つて食料品其の他の日用品價格が定まり又賃金、俸給も定まる、更に又之を見合つて工業諸原料の價格及び工業諸製品の價格が定まる、併し是は一つの構想で、必ずしもさう云ふ譯ではないのでありますが、一つの價格形成の構想と致しましては、米が諸々の物價に依つて動くと云ふこともあり得ることであります、けれども根本は、結局米の價格が總ての物價水準を定めると云ふ風にありたいと思つて居る次第であります、隨て米の値が高くなれば諸物價が高くなる、そこに或は、或る輕度の「インフレ」式な一つの恰好が現はれるかも知れませぬ、結局一時的には、米價が假に上つて、其の爲に非常に收入が多いやうに思はれましても是は私何時も譬へて申すことでありますが、丁度今砂糖が欲しい、さう云ふ時に砂糖の代りに「サッカリン」を貰ふやうなもので、結局米價が總ての物價の中心を形作るものだと私は思つて居ります、さう云ふ一つの矜恃を持つた米價を定めたいと思つて居ります、尤も是は構想でありますから、事實はさう參りませぬ、やはり現實には米價の生産費と云ふものが重大に考へられるのであります、偖て然らば米價を決めます時に、農民と云ひますか、米作者の希望する價格を一方的にそちらで決めろと言つても、是は出來ないことで、物資の需要供給に過不足がありまして、物資の統制が必要な際にはやはり生産者或は消費者と云ふやうな一方的な希望價格で物が定まると云ふことは許さるべきでありませぬ、やはり公正に定まるべきものと考へるのであります、將來米價を定めます際に、米作者或は農民と云ひますか、それ等の意嚮を十分に反映する形にしたいと云ふ御意見は、全く同感でありまして、現在までの機構に於て左樣になつて居らぬ點もあらうとは思ひますが、將來の問題としては、左樣な方向に參りたいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=47
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048・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 農民の不平に思つて居りますことは、物價が下る前に米の値が下り、米の値が上る前に先づ物價が上る、斯う云ふことを非常に不平に思つて居るのであります、少くとも米の値が上ると同時に物價が上る、米の値が下ると同時に物價が下る、斯う云ふやうな、謂はば物價と平衡を持つた米の値段の上り下りが欲しいと云ふことを希望して居るのでありまして、今後物價計畫を御立てになる場合に、特に此の點を御留意願ひたいと思ふのであります
次に御伺ひ致したいのは、米の消費者價格と生産者價格との差であります、斯う言ふと、消費者の方から叱られるかも知れないのでありますが、米の配給が確實に保證されるならば、寧ろ米價は石六百圓であつても、消費者側としては何等痛痒を感じないのではないかと云ふ聲は相當あるのであります、即ち闇の米を買はなくも濟むなら、實際の米の價格は或る程度高くても差支へないと云ふ聲を、相當消費者の方々から私は聽いて居るのでありますが、今年の米作の状況から見、又米の輸入の前途を見透して恐らく米の配給は二合五勺どころか、二合八勺位の配給は必ず政府の打つ手さへ宜かつたら確保されるのではないか、さうなれば此の價格差は要らない、此の點に付ては後程色々農林大臣に御質疑申上げたいと思ひますが、一石に付て百五十圓の補給金を出すとして、一段歩から二石穫れるなら三百圓になる、私は小作人諸君が高い金を出して田圃をお買ひになることに付て同意をすることが出來ない、唯此の機會に御尋ねして見たいことは、小作人と地主との間に、土地の賣買價格に付て色々な問題がある、即ち農地委員會の構成の問題と、保有面積の問題と、買收價格の問題と此の三つの問題が恐らく今度の土地解放法案を繞る大きな問題だと思ふのでありますが、食べたらなくなる米に對して一石百五十圓もの補給金を出すなら、現在の「インフレ」に際會してどうしてもやつて行けない地主、是等の地主に對して、一本建になるまで毎年生活助成の爲に補給金を御支給になるだけの御親切があるかどうか御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=48
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049・膳桂之助
○膳國務大臣 土地の問題に付ては、私の所管でありませぬから、農林大臣に御聽き願ひたいのであります、唯只今米の生産者に對する買上値段と消費者に對する販賣値段との價格差に對する補給の問題でありますが、實はまだ米の買上値段も、配給値段と申しますか、消費者に對する値段も確定した譯ではありませぬから、はつきりしましたことを申上げる譯には參りませぬが、實は此の間に補給金を出すと云ふことは非常に不自然なことで、是は通常の場合にやるべきことと考へて居りませぬ、唯本年の來るべき米穀年度の場合に於きましては、食糧の供給を相當増量したいと云ふ希望もありまするけれども、それがどの程度まで參りますか、希望はありましても、果してさう消費者の滿足する程度まで行くかどうか、さう云ふ問題も一方にはありまするし、それから又斯う云ふ經濟上の異常な状態から、非常に物價の均衡の取れないと云ふやうな際、又主食品ばかりでなく、副食物の價格もまだ正當な價格と認められる程度まで行つて居るとも存ぜられませぬ、斯樣な色々な状態を考へ、已むを得ざる處置として、本年度は或る程度の補給金を出さなければならないのではないかと考へて居る譯でありますが、是は非常に不自然なことでもあり、又財政上もさう長く許さるべきことでありませぬので、私共は本年限りで、來年からは補助の中には中々置いて貰ふ譯に行かぬ問題と考へて居ります、唯今直ちに、假に農民に對する買上價格を以て消費者の價格とすると云ふことに付きましては、他の物價水準との關係もありませぬので、其の點本年は已むを得ずそこに若干の補給金を置いて、所謂一般の物價の水準となるべき米の消費者價格に付ては、或る經過的な措置を執ることが必要と考へて居る譯であります、尚ほ其の他の問題に付きましては、私一寸何とも御返事を申上げ兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=49
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050・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 膳國務大臣に對する質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=50
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051・和田博雄
○和田國務大臣 土地價格に付て、補給金を長く地主にやる意思はないかと云ふ御質問でありますが、それはさう云ふ考へはございませぬで、今囘は小作人の買ひまする土地價格と地主の採算價格との間の金額に付て補償金を出すと云ふ建前を執つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=51
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052・葉梨新五郎
○葉梨委員長 休憩致しまして、午後は一時から再開致します
午後零時三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=52
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053・会議録情報2
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午後一時二十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=53
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054・葉梨新五郎
○葉梨委員長 開會致します──青木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=54
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055・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 將來の農村の占める地位に於きまして、多角型農業の指導策とか、農村工業化の具體策、或は其の農村工業として最も我々の期待する所の纖維工業の採入れの方法、農産品加工と消費者との結付きと云ふやうな問題に付ては、非常に事が細かくなりますので、他日に讓ることと致しまして、私は農村を搾取した者は誰かと云ふことに付て、先づ質して見たいと思ふのであります、農村を搾取した者が一概に地主であると考へるのは、私は早計であると思ふのであります、其の一つは、米價等が不當に安かつた時代がある、即ち政府の政策が惡かつたと居ふことも一つの原因であり、次は中間商人の搾取と云ふものがあつた、殊に加工業者、配給業者の搾取と云ふやうな問題に付ては、色々な實例があるのでありまして、又米穀商とか肥料商とか云ふやうな者が、秋米を擔保として百姓に對して肥料を貸し、或は金を貸して居ると云ふやうな過去の色々な事件が、農村の搾取の道程と相成つて居るものと考へるのでありまするが、どうも終戰後此の過去の形態が農村の中へ漸次に侵入して來るのではないかと思ふのであります、之を防止する爲に、農業協同組合と云ふやうなものの必要が起るのでありまするが、唯農業協同組合と云ふ法を設けるだけを以て、斯う云ふ社會的な趨勢を取止めることは恐らく出來ないと思ふのであります、近き例に、もう既に木炭の問題に付きまして林燃會社と云ふものが府縣に於ては出來ました、是は全國的な問題ではないやうでありますが、府縣に依つてはさう云ふものが出來て、さうして木炭の配給部面に取入らうとして居るのであります、斯う云ふ中間商人の搾取を排除するが爲に、さう云ふ特殊會社と云ふやうなものを農村に採入れて行く地方廳の方針を私共は否定するものでありますが、之に對して政府としてどう云ふ指令を御出しになる御見込でありますか、御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=55
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056・和田博雄
○和田國務大臣 一寸木炭の問題はどう云ふことですか私には分りませぬが、唯農村の搾取の問題で、中間の利潤を商人が取るのを、出來るだけ農民の手に返して行くと云ふ問題は、現在のやうな統制經濟の下に於ても存在しますと同時に、將來に於ては恐らく其の問題が又再び出て來ると思ふのでありますけれども、やはりそれは結局農民なら農民が自治的な協同組合を作つてやりますことに依つて、それに對抗して行くことが出來ることだと思ふのであります、其の場合には自治的な協同組合と云ふものに依つて、農民が商人のやる其の機能を、商人がやるよりももつと合理的にやつて行く、斯う云ふ機能上の優越と云ふものがありませぬと、是は中々實效を收め難いのではないか、斯う思ふのであります、結局今の制度を前提にして居る限りは、誰かが其の「ファンクション」と云ふものはやらざるを得ない、そこでそれをやるのには、出來るだけ農家が自治的な組合に依つて其の機能を果して行くことが望ましいのであり、又是非さうなければならぬと思ふのであります、其の際に農業者の協同組合だからと云ふ、唯それだけで以て問題は現實的には解決しないのであつて、其の團體が他のものがやるよりももつと能く其の機能を果して行く、斯う云ふ工夫がそこになければならないのでありまして、現在に於ける農業會にしても其の他の農業團體にしましても、結局そこに歸著して來るのだらうと思ふのであります、將來と雖も、勿論現在の農業會とは違つた、一つの耕作者を中心とした協同組合が中間商人の機能を擔當することになる譯でありますが、其の場合には、さう云ふことを十分組合側に於てやり得るやうに、内部の者が訓練もされ、又實際的に努力して行かないと、却て經濟的に言へば「ロス」が大きくなると云ふことになるのであります、是非協同組合の力に依つてさう云ふことを排除して行く、斯う云ふ方向にやはり根本的には進んで來るのだらう、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=56
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057・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に政府の手持の農地が殖えて來ると云ふ問題になるのでありますが、之に付ては私は多くの缺陷があると思ふ、政府の御言明に於て、政府自身が土地を持つ意思はなく、農業會、耕作者の團體等に經營管理させると云ふ御意思は承つたのでありますが、それにしても殆ど土地國有と同樣の結果になるのでありまして、現在の官廳の勞務者がどう云ふ状態であるか、郵便に於て、鐵道に於て、煙草專賣等に於てどう云ふ不手際をやつて居るかと云ふことを考へる時に、洵に思ひ半ばに過ぎるものがあるのであります、私は斯う云ふ點から考へて、寧ろ斯うした、小作が買入を欲しない將來不耕作地となるやうな見込の土地は、前にどなたか、自由黨の方でありましたか、地主に返還したらどうかと云ふ御考へもあつたのでありますが、一概にそれを地主に返還すると云ふことよりは──結果に於ては同樣でありましても、其の道程と致しまして、之を操作用として殘して置く、地主が一旦土地を提供するのであるが、農地耕作の範圍の面積は、家族員の消長に依つて色々變動して行くのであります、隨て現在の地主が今規定に從つて土地を解放する、殊に一律に三町歩とか、或は五町歩の範圍内に於て地主が土地を持てると云ふのではなく、實際に耕作して居る土地の外に一町歩しか持てないと云ふ現在の此の案でありますれば、斯う云ふ土地は、將來地主が色々な關係から耕作の範圍を擴げる必要があると云ふ時に、寧ろ優先的に之を地主に持たせる方が、所謂耕作者の團體とか、或は政府で持つて居るよりは有意義に之を消化することが出來るのではないか、其の方が却て地味の向上とか──殊に斯う云ふ小作人が買入を欲しない所は何處かに缺陷がある土地であるが、何處かに缺陷があるならば、是はさう云ふやうな現在の状態に於て見ても、官業と云ふものは振はない、文化施設は十分であるけれども、實際の經營の面に於ては色々な議論を持つて居ると云ふ現在からしては、寧ろ是は過去に於ける經驗等に鑑みて、唯一概に地主に渡すと云ふ意味でなくして、土地を手放した地主が適正耕作規模の範圍内に於て自分の耕作の範圍を擴めようと云ふ希望があつた時に、之を還付すると云ふ方法を御執りになる方が宜いのではないかと思ふのであります、此の點御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=57
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058・和田博雄
○和田國務大臣 是は國が買ひまして小作人に渡す譯でありますから、どうしても賣れ殘つたと云ふ土地に付きましては、之を不耕作の地主に渡すと云ふのではなくして、其の儘村の實行組合とか或は農業會とか云ふ團體に先づ賣渡さう、斯う思つて居るのであります、さうしますれば結局其の村々で耕して居る人が作つて居る團體が、將來自作農を創定致します爲にそれを買つて居る譯でありますから、其の買ひました後は、それ等の組合なり、或は農業會等の團體なりが其の土地に付て適當な耕作をやつて行く、斯う云ふことになる譯でございますが、現在耕作して居ない地主に又もう一遍それを賣返すと云ふことは、今囘の農地改革の趣旨から云ひましても執り得ないことでございますので、我々としては何處までも出來るだけ今言ひましたやうな農業者の團體に賣渡す、斯う云ふやうに致したいと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=58
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059・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私の言ふのは、現在耕作して居ない地主に之を渡せと云ふのではないのであります、土地の耕作と云ふものは、世紀から世紀に傳へて行く非常に長い期間を持つて居るものでありまして、或る時には二町歩作り、或る時は一町歩になる、或る時には三町歩と云ふやうに各各變化して來るものであります、是は小作に於ても同樣であり、地主に於ても同樣であります、現在小作人は、自分の子供が小さいとか色々な條件を以ちまして、小作人同士一時預けと云ふものをやつて居るのであります、所が小作に對して一時預けを認めて、地主に對して一時預けを認めないと云ふことは、私は恐らく片手落ちだと思ふ、斯う云ふ意味に於きまして、地主として相當の耕作能力を持つて居るけれども、家族の消長に依つて或る時代には僅かに二段歩となる、或る時代には一町歩となる、或る時代には最高の二町歩、三町歩になると云ふやうに、耕作の範圍に廣狹大小の差と云ふものは、地主に限らず、小作に於ても出て來ると思ひます、之を操作する意味に於て、曩に農林大臣は一町歩と認めたのであると云ふやうに、私は解釋して居るのでありますが、此の操作用として一町歩と云ふのは餘りに少いではないか、寧ろ一町歩のやうな、小さい範圍のものを操作用として殘すが故に、そこに地主の土地取上と云ふ問題が起るのでありまして、過去に於て地主にあつても、小作人にあつても、作り得るだけの範圍と申しますのは、大體二町歩乃至三町歩の範圍になると思ふのでありますが、作り得る範圍だけは土地の保有を認めまして、勿論私の土地の保有を認めると云ふことは、小作權を取上げると云ふ意味ではないのであります、そこに永小作權を設定するのも宜いのであります、併し如何に永小作權を設定してやつても、小作人が要らない時に、他の小作人に又下ろしをさせるのではなくして、それを地主に返すだけの餘地をそこに殘して置かなければならぬ、其の意味で僅かに一町歩では、そこに土地取上と云ふやうな色々な問題が起るのであつて、寧ろ是は、地主の土地保有が三町歩を最高として居るのでありますから、其の最高の範圍内に於て認めて、そこで操作をやると云ふことになれば、恐らく土地取上と云ふやうな問題も起らぬと私は思ふ、隨て是は地主だけの問題ではなくして、小作人自身に取つても、此の保有面積と云ふものは非常に問題になると思ふのでありますが、此の點に付てどう云ふ考へで居るか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=59
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060・和田博雄
○和田國務大臣 どうも御質問の趣旨がはつきりしないのでありますが、例へば今自作して居る、それと同時に地主である、それで是は自作に於て假に二町歩あるが、土地の所有はあと三町歩持つて居る、さうするとあと一町歩しか小作に出せない、二町歩は賣渡さなければならぬ、假に斯う云ふやうな自作兼地主がここに存在する、さうすると、今賣拂はなければならない、二町歩が賣れなかつた場合には、其の地主の家族勞働が多くなつて行く時に優先的に買戻せるやうにしろ、斯う云ふ御話でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=60
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061・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=61
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062・和田博雄
○和田國務大臣 それは私優先的にと云ふことは、言ひ兼ねると思ふのでありまして、やはり村全體として考へなければならないのであります、其の村には、さう云つた地主の外に、やはり小作人なり或は他の自作人に於て將來土地を買ひたい、而も相當の耕作能力があると云ふ者も出て來る譯であります、そこは必ずしも優先的と云ふことは言ひ兼ねると思ふのであります、さう云ふ土地に付ては、其の村の實行組合であるとか、市町村農業會等の團體に自作農創設を行ふ目的を以て先づ賣渡して置く、そこで自作農創設の爲に、農業會とか實行組合が其の土地を適當に處分して行く、斯う云ふことになるのでありまして、必らずしも、さう云ふ地主だから優先的にやつて行くと云ふことは、此の法律からも、今度の改正からも參らぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=62
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063・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は斯う云ふ問題を採上げて居る譯であります、一旦地主から小作人に土地を賣渡しまして、今囘の自作農創定と云ふことをやりましても、今度は其の小作人に身分上の變動が起つて、土地を耕作出來ないことになる、子供が小さいとか、色々な問題があるのです、さうすると、それを恐らく、今囘創定された所謂新しい地主は、他の小作人に今度は下ろすことになると思ふのです、勿論其の土地の變動に付ては、地方長官の許可を受けるとか、農地委員會の指圖を受けることになるのでありませうが、現在の創定された自作農が今度は地主に轉換されて行くのであります、是は私は矛盾だと言ふのです、だから其の時には元の三町保有しなければならなかつた地主が、色々な事情から僅かに自作の二段歩と小作に下ろす一町と、要するに一町二段の地主にしかならなかつたと云ふことはお氣の毒であるから、此の地主が耕作力を復活して來た時に、新たに出來た自作農から他の小作に廻さなければならない土地を、地主に返還すれば宜いではないかと云ふことを申上げて居るのでありまして、非常に言廻しがむづかしいかも知れませぬが、其のことを申上げて居る、要は僅かに一町歩と云ふやうな小さい點に釘付けしなくて、耕作の範圍の限度に於て──二町歩なり三町歩と云ふことが最高であるから、其の三町歩の範圍内に於て操作をやる方が、一町歩で操作をやるよりも、窮屈な點も起らなければ、土地取上のやうな問題も起らないと云ふことを申上げて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 どうも論點が少しはつきりしないのでありますが、論を進めて行くと結局保有限度を三町歩にすると云ふことになるのでありまして、私はさうは參らないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=64
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065・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論是は提案者としての大臣の意見とは食違ふものと存ずる譯なのであります
次に、勿論小作人の耕作の自由は奪つてはならないのでありますが、三町歩を操作用として殘すと、どう云ふ結果になるかと云ふことを私算盤して見るのでありますが、三町歩を操作用として殘す爲に、小作地の五六%が地主の手に殘ることになるのであります、けれども現在でも純然たる小作は農家の二八・七%に過ぎないと云ふことは、御示しの調査表に依つて明かなのでありまして、十九年度の自作地が二百九十五萬六千町歩、三町歩を操作用として殘した新解放地が百二十三萬町歩、合計四百十八萬六千町歩と云ふことになりますと、全耕作地が五百五十一萬三千町歩でありますから、その「パーセンテージ」を出して見ると全農地の七割六分が自作地としての建全性を持つことになるのでありまして、あとの二割四分が小作地と云ふ算盤に相成ると私は思ふのであります、又此の開拓地百十萬町歩とか、或は現在の開墾可能地百五十五萬町歩、之を自作地として、午前中に質問申上げましたやうに、農民の中の或る種のものを入植させることになりますれば、總體的から見て八割一歩の自作農と云ふものが完成すると思ふ、斯うなると、農村の現在の不健全性と云ふものは必ずなくなると云ふ結論を私は見出して居るのであります、是等に付ても、勿論農林大臣はそこまで詳しく算盤を入れて居られることと存じまして、是れ以上の質問をしたくないのでありますが、私は何處までも、三町歩を保有することに依つと何等土地の民主性は失はれないものであると云ふ結論を持つて居るのであります、第一次の農地改革案に付て、聯合國の方の思ひ違ひが多分にある、隨て交渉しなければならぬと云ふやうなことが去年の議事録にも見えて居るのでありますが、是等に付てやはり此の間農林大臣に御質問申上げましたが、其の點が私はまだはつきりしないのであります、どう云ふ譯で三町歩が五町歩になつたり、或は一町歩になつたり、僅か半年の間に變動したか、是が非常に疑問として殘るのであります、もつと突込んで其の間の事情を御説明願へませぬか、是は農民全部が非常に聽きたいと思つて居ることであります、之をはつきりしなければ、恐らく地主は納得しないのではないかと思ふのでありますが、此の點もう一應御質問申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=65
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066・和田博雄
○和田國務大臣 先般御説明申上げた譯でありますが、結局聯合軍司令部としまして、日本政府の五町歩案、それから三月十五日の報告に於て、之に付ては面積をはつきり明示は出來ませぬでしたが、保有面積を縮小する案に付て色々檢討した結果、是では不滿足だ、結局は出來るだけ多くの土地を農民に解放して、さうして日本の農村の民主化を行ふ必要がある、斯う云ふことで是は對日理事會等の議題となりまして、其の結果兎に角一町歩と云ふことになつたのであります、一町歩と言ひますと、丁度八〇%、北海道を合せますと八二%ばかりのものが自作農創設の對象となる譯でありまして、全小作地の八二%が解放され、小作地として殘るものが極く僅かであると云ふことになりますならば、是は自作農を中心にした一つの農地制度としては、相當基礎のしつかりした制度である、斯う云ふことに相成るのでありまして、先般私が説明致した以外に別に申上げる所はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=66
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067・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 一般に斯う云ふことが言はれて居るのであります、私は斯かる議論をする人のあることを非常に殘念に思ふのであります、世界の外交關係と云ふものは非常に複雜である、隨て其の複雜な外交關係に左右されて、此の農地改革案も非常な影響を及ぽして居るのではないだらうか、斯う云ふことで日本の農村の將來が左右されてはいけないのではないかと云ふ聲があるのであります、私は此の誤解を或る程度解かなければ──斯う云ふ問題に對して不服があれば結局裏道を探すことになる、だから其の點を或る程度はつきりさせなければならぬと思ふ、第二次農地改革と云ふものは、日本の中堅である農村を破壞し、其の中心になる地主を無産化して、日本を再び起つ能はざらしめるものであると云ふやうな説をなす者があるのは、洵に事實に反した解釋であつて、私は非常に遺憾に思ふのでありますが、之に對して農林大臣としては、如何なる囘答を用意されて居るか、此の誤られたる觀念打破の爲に、此の席に於て政府の所信を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=67
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068・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地改革に、依つて農村の中心になる地主がなくなるので、日本の農村は破壞されると言ひますが、是は私左樣には考へられないのでありまして、繰返へし申しましたやうに、日本の農村に於て、成程不耕作の地主はなくなりませうが、其の代り其處に耕作して居る者が安定した地位を得ることになりますので、其の點一つの社會層としてのずれはあるかも知れませぬが、之に依つて日本の農村自體が破壞されることにはならないと考へて居ります、聯合軍司令部の側に於ても、日本の農村を破壞するやうなこと毛頭考へて居ないのであつて、是は寧ろ日本の農村を健全な地盤に置かうと云ふ考へであることは變りはないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=68
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069・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に私は農村の建設と云ふ意味から、農村指導の中心に付て御質疑申上げて見たいと思ひます、今後の農村の中核體と、其の指導の面を何處に置くかと云ふことは、非常に大きな問題となるのでありまして、中小地主が過去の農村に於ける指導層として、殊に精農として、他の自作、小作を率ヰて農村開發の爲に努力した功績とは私は大きく買つてやらなければならぬと思ふ、偶偶財閥と軍閥とが書卸した脚本を、民間政治家の沒落を機會に、自己の地位向上を圖らんとした人々が農民の純潔さを利用して、之を戰爭支持の一環として農村に於ける下部組織を踊らしたと云ふことが、如何にも農村それ自體が戰爭の温床なるが如き錯覺を與へて居るのだと思ひます、民主教育が徹底致しますならば、寧ろ是等は健全なる發展の基礎となるものと私は考へて居るのであります、此の精農が行つて來た過去の指導の面を、今後何者に依つて代らせんとする御考へであるか、之を先づ私は聽きたいのであります、私が考へて見る所、今後の農村の中心となるものは、第一は、舊地主階級であると思ひます、土地を失ひましても、從來の地主の名譽と地位は失はないのであります、土地の光は消え失せましても、本人自身の光が新しい農村を照らすことは勿論であります、第二は、小作人から輩出する新指導階級でありまして、是は飽くまでも民主教育が徹底されまして、農民の凡ゆる階級に付て其の向上を念願するものでなければさらぬと思ふのであります、第三は、商才を持つた半農であり、工場經營に主力を注ぐの飯米百姓、本當に農村に根を下さない者が此の指導層の中に入つて來るのではないかと思ひますが、此の三つの中堅階級をどう云ふ風に指導し、按配して行く御考へであるか、又更に農村の中心を何處に求めるか、又其の根本に遡りまして、やはり過去の農村と同樣、形は變りまするけれども、將來の農村にも中産階級と云ふものの必要を政府は御認めになるかどうか、此の點を先づ御聽きしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=69
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070・和田博雄
○和田國務大臣 將來の、農地改革をやりました後の農村の指導者の問題でありますが、是は農林省に於て農地改革を行ひませぬ前に、實は十九年でありましたか二十年でありましたか、農事實行組合の組合長なるものの調査を致したことがあるのであります、それに依りますと、結局農村に於て農事實行組合と云ふものを作り、本當の耕作者の指導と云ひますか、中心に立つてやつて居ります人達、是が一體どう云ふ層であるかと云ふことを見ました時に、私の記憶に依りますれば、是は主として自作であり、自作兼小作であつたやうであります、地主と純小作人とは極めて僅かな數であつたと思ひます、さうして其の時の調査に依りますと、大體資産は一萬圓から一萬五千圓位を持つて居る人達、學校は高等小學校を出て居る方々であつたと記憶致して居ります、今後農村に於きまして土地改革が行はれましても、協同體としての農村と云ふものは、そこに存在致して居るのでありまして、又今後それぞれの工業の或は地方分散、又は地方に於きまする文化の滲潤等に依りまして、農村に於て實際徳望があり實力があり、又知性を備へて居る人がありますならば、其の職業如何に拘らず、それ等の人々が自治的に農村に於て指導の役割を果すと云ふことは考へられると思ふのであります、併し今後農業方面に於て、茲に一つの職業と云ふ點から考へて、職業團體と云ふものとして農民の集まりと云ふものを考へて見ますれば、將來に於きまする指導層は、今囘の農地改革に依りまして、やはり耕作致します自作人、或は自作兼小作、さう云ふ人達の中から出て來るのではないかと思ひます、殊に今囘に於きましては、實際上の經營面積其のものは、自作である限り制限を致して居りませぬ、そこで農村に於ける中堅階級は、今度の農地改革に依りましても消失するものではないのであつて、寧ろそこには新しい中堅階級が出て來るのではないかと考へて居る次第でありまして、結局唯單に土地を持つて居ると云ふ層から、土地を持つて居る者が自分で耕して居ると云ふ層へ指導の實權が移つて來る、斯う云ふことになるのではないかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=70
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071・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうなりますと、結局私は斯う云ふことを考へるのであります、耕作の範圍と云ふものが、零細農家が殖えて行く爲に小さくなり、そこに多角型農業と云ふものをやらなければならぬので、今後の農村の經營とか農村に於ける生活と云ふものは、恐らく非常に複雜化して來ると思ふ、又地主と云ふものもなくなりまして、そこに生活上の餘裕が過去よりは非常に縮められて來ると思ふ、さうすると、農村の子弟の教育は果して其の親達に於て完全に行ふことが出來るかどうか、隨て英才教育と云ふやうな、一つの國家的機關の中へやはり入れて行かなければならぬと思ふのであります、其の子弟の教育と云ふことも亦非常な重大問題であり又農村に留まつて指導をやる階級なども、唯百姓の耕作の部面に於ての篤農家、精農家としての指導はお互ひに出來得るかも知れぬが、更にそれより一歩高く、農村全體の指導の問題に首を突込む者は恐らく農村と云ふものより懸け離れた別の世界の者がやつて來て、そこに指導をやりはせぬか、斯うなると、農村に根を下した所の土地への愛著を持たぬ人々に依つて指導が行はれて來るのであつて、茲に農村の物質が失はれはしないかと考へるのでありますが、此の點どう云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=71
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072・和田博雄
○和田國務大臣 私は從來の地主の層でありますとか、さう云ふ人達だけが、子弟に教育を授ける餘裕があつた、假に此の立論をさうだと假定して考へて見ましても、結局は其の人達が單に土地の所有者であると云ふことであつて、他に何も所得の源泉がない、斯う云ふ人々であるとすれば、それは小作人が支拂つて居つた小作料を基礎にして結局さう云ふ餘裕があつたと云ふことになる譯であります所が今度は大きな地主がなくなりまして、皆が兎に角自作人になつて行く、さう云ふことになりますれば、耕作者が耕作をした經營の結果として、そこに裕りが出て來る、斯う云ふものでありまするならば、其の範圍に於ての教養と言ひますか、教育と言ひますか、さう云ふ方面への餘剩はやはり出て來る譯であります、そこで將來の日本の農村に於ては、自分が耕して得た其の結果からさう云つた餘剩を生んで、經營を改善するのみならず、やはり子弟の教育をもなし得るやうな農家にして行くと云ふことになつて來るのであります、唯單に經營が零細化して行くと云ふ面だけを見ることは出來ないのでありまして、是は現在に於ても相當の規模の農家があるのでありまして、それ等の農家に於ては、政府の施策其の他と相俟ち農業面自體の改善に力を揮ひまするならば、十分そこに教養を高める餘地もあるのであつて、又將來の日本としては是非さうやつて行かなければならないのであつて、教育が唯單に非常な富裕者にのみ限られた教育であると云ふことは、民主的な國家として喜ぶべき現象ではないのであります、唯御話のやうに農業面だけの教育と云ふことに限定さるべきではないのでありまして、やはり農民も國民としての教養を同時に身に著けて行くと云ふことは、是非やらなければならぬと思ふのであります、我々としては差當り、例へば四國なら四國地方にそれぞれ模範的な試驗農場を作りまして、それと同時にやはり研修所と云ふやうなものを併置して、そこで農家の子弟が、農業上の教養のみならず、一般の教養をも受けるやうな形で、是非農村に於ける教育と云ふものは實際上の完備を圖つて行きたい、斯う思つて居る次第であります、從來は農村に色々な大きな仕事がなかつた爲に、農村での教育を受けた者は、寧ろ却て皆農業を嫌つて、他の月給取などの方面に就いて行つた傾向があつた譯で、寧ろ都會の文化に偏重して居つたと云ふことさへ言へるのでありまして、それ等の點は農村の基盤が變つたと共に、教育の方に於ても何等かそこに同時に施設をして行きたいと、只今は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=72
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073・青木清左ヱ門
○青木(清)政府委員 私の言ふのは、過去の地主と云ふものを殘して、其の地主と云ふ基盤に立つて自己の子弟を教育する階級を殘せと云ふ意味ではないのでありまして、今後の農村の中心となる教育を行ふ時に於て、缺階が生ぜぬかを憂へる爲に此の質問をして居る譯なのであります、隨て是等の要求を充す爲に、大體戰災を受けた專門學校と云ふやうなものを都市の郊外に移すと云ふ現在の計畫でありますが、是は都市の郊外と云ふやうな意味ではなく、都市集中を避けて、文化的な施設の地方分散と云ふことを突込んで考へるのであります、文部當局が居られないので非常に殘念でありまするが、農林當局としても勿論此の點に御協力願へるものと思ふのでありますが、どうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=73
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074・和田博雄
○和田國務大臣 私も大體さう云ふ思想は贊成であります、農村に從來本當の意味での文化と云ふものが根を生やさなかつたのは、一つには、一般の農村の住民である大部分の農家は、それだけの經濟的な餘裕がなかつた點と、それから日本が何としても寧ろ都市集中に過ぎた點があると思ふのでありますが、今後やはり地方にさう云ふ分散的な教育施設が設けられますことは、私非常に贊成でありまして、地方々々にそれぞれの特色を生かした教育施設が設けられますことは望ましいことであり、今後の日本として是非やらなければならないことだと思つて居るのであります、本當の意昧での日本の郷土の文化が生れ、地方の良き文化が育てられますことは、私は切に望むものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=74
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075・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に御伺ひ致したいのは、政府は、農村自體の生活水準を高める爲に、本法の成功のみを以て事足れりと考へて居るか、それとも別個の政策も用意して居るかと云ふ點であります、過去の農村の中で一番割りの合はぬ立場にあつたものは、恐らく中小地主であつたのでありまして、本法は農民に土地を與へて、農民悉く此の割りに合はなかつた小地主たらしめんとする所に第二の缺陷を藏して居るものと考へるのであります、小作人のみならず、自作農のお神さん達が赤ん坊を負んぶして野良に出て働く姿、是は洵に涙ぐましく尊いものであります、併し此の尊さの中に尚ほ、「働けど働けど我が暮し樂にならざりけり」と云ふやうな歎きが秘められて居ると思ふのでありまして、農民に土地を與へることは、形式上の農民の解放ではあるが、農民苦よりの解放には相成らぬと思ふのであります、即ち農民に土地を與へると共に起ち上る力を與へなければならぬ、生活に必要な物を購ふ機會を與へなければならぬと私は思ふのであります、其の一つは、先に經濟安定本部長官に御等ねしましたが、農産物價格と農村必需物資との價格の平衡を圖ると云ふことであります、兎に角農民の生活向上への機會均等と文化生活を行ふ爲に設備を利用する、其の對象が農産物價格を中心として決定されなければならぬと云ふことが必須要件になると思ふのであります、一般勞務者は家計主一人の僅かに八時間勞働でありまして、一般農民は年寄りから國民學校の生徒に至るまで、一家族全體を擧げての、是は寧ろ十八時間勞働であると云ふ點が、農民の生活を人類の最低位に置く所以であると私は考へるのでありますが、之に付て拔本的な對策としてどう云ふ問題を御考へになつて居るか、御聽きしたいのであります、只今申上げた點は、單なる一つの例題にしか過ぎないのでありまして、此の一點に付てのみの御答辯でなく、農民苦の解放の爲に如何なる遠大なる構想を政府は抱いて居るか、其の全貌を御示し願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=75
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076・和田博雄
○和田國務大臣 是はどうも非常に厖大な問題でありますので、明確な御答へは出來兼ねるかも知れませぬが、御話のやうに農家が一生懸命に働いて居る、殊に日本の農民は極めて勤勉である、併し其の生活が非常に裕かではなかつた、貧困な者が多かつた、殊に負債も相當あつたと云ふ状態、恐慌時代に於て農家の一勞力當りの所得は、其の當時の實際の都會の勞賃に比しても極めて安いものであつて、一日當り一圓にも當らないやうな、「ミゼラブル」な純所得しなかつたやうな時代があつた譯であります、私は今度の土地改革だけで、農村に於ける所謂經濟的な向上が直ぐに出來るとは考へて居りませぬし、又左樣にも申して居ないのであります、唯農村に於きまする今度の土地の改革をやりますことが、今後に於ける農村の生活の向上をやりますに必要な條件、而も基本的な條件であると云ふことを申上げて居るのであつて、其の基礎の上に色々なことが行はれて行くべきだと思ひます、そこで、何としても今後の農村は地主と云ふ小作料に依存するものでなく、自分が土地を耕して生産物を作つて、それを販賣して所得の源泉にする、さう云ふ人達が大部分を占めて來るのであります、そこで、農業に從事して居ります者の所得と都會に於ける他の産業從事者の所得との均衡と云ふことが、恐らく將來の日本の基本的な問題になつて來ると私は思ふのであります、此の均衡が旨く取れるやうな政策をやりませぬ限り、都會に偏つたり、或は農村に偏つたり、妙なことになると思ふのでありまして、それ等の點を如何にしてやるか、又其の均衡を取る標準を一體何處に置くかと云ふ問題は、もつと根本的に研究して見るべき問題であると思ふのでありますが、それ等のものを獲得します方法としては、やはり一つには價格の政策と云ふものがあり得ると私は思ひます、それと同時に、農民の生活を樂にします爲には、何としても現在農村に於て都會と同じやうに、例へば醫療施設一つ取つて見ても、さう云ふ生活面に於ける不合理な點を是正して行きますとか、又農業の經營、言換へれば働き方其のものを變へて行くと云つたやうな方向に色々の施設をやるべきであると思ひます、農業の問題は唯一つの政策だけで解決するものではないのであつて、現在の農村問題と云ふものは、他の工業の方と密接に絡み付いて居る問題でありますので、是等の點に付きましては、各種の農業の生産を營みます條件、所謂外的な條件、或は農業内部の色々な條件を變へることに依つて、今後日本の農村の生活を向上するやうな色々な政策を是非やつて行きたい、斯う思つて居る次第でありまして、例へば農業保險も問題になりませう、或は農村の經營の改善も問題になり得るし、又其の他の、農村に勞働の機會を與へる各種の工業の分散も問題になり得ると思ふのであります、それ等の點に付ては、一聯の方策としてやつて行くことが必要である、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=76
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077・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 成程此の問題は非常に厖大な問題でありまして、此の委員會に於て論議しても迚も盡せるものではないかと思ふのであります、併しながら是がやはり此の農地改革と云ふものを實行すると同時に──、之を後にすると云ふやうな問題でなくして、寧ろ農地改革以前に此の問題に手を付けなければならぬと思ふ、隨て農林當局と致しましても、此の問題は十分御研究になりまして、是等を纒めて、本委員會の進行と共に、是等の全貌を一つ御發表になつて戴きたいと思ふのであります、是が非常に肝腎な問題だと思ふのであります、大藏當局は居りますか、まだですか、居らなければ居らぬで、又別の機會に聽きます
それで問題は農村課税の問題になるのでありますが、是は農林大臣に聽いても宜いのであります、曩に大藏大臣は、農村には多くの新圓が退藏されて居ると云ふことを發表されて居るのでありますが、私は大藏當局には、其の發表の基本が何であつたかと云ふことを聽きたいのでありまして、委員長の御取計らひに依つて適當に、其の調査の基礎に付て御示し願ふ機會を得て置きたいと思ふのであります、そこで農林大臣は、大藏大臣の言はれるやうに、農村に多くの新圓があると御考へになりますか、農林當局としても何か御調査になつた基礎があるのでありますか、御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=77
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078・和田博雄
○和田國務大臣 農林省では、農村の所謂預貯金の問題に付ては、調査を實は部分的には致したのであります、それは各部落々々に人を派しまして、「クエッショナー」を配りまして、一つ一つ書いて貰ふと同時に、其の部落に滯在致しまして綿密に調査を致したのであります、併しそれに依りますると、一般的な調査ではありませぬから、それを以て概括することはどうかと思ふのでありますが、案外手持現金は少いのであります、貯金なり預金なりになつて外にあるものはありましても、手持現金としてありまするものは、其の調査に依つてはさう厖大なものではないのでありまして、例へば、經營面積に依つて相當違ひまするが、慥か貯金なども、せいぜい一萬か一萬五千圓、小作人に於ては二千圓か三千圓から五千圓と云ふやうな所が多かつたやうに記憶致して居るのであります、調査をやりましたのは慥か今年の四月頃ではなかつたかと思つて居りまするが、部分的な調査でありまするので、全國的にそれをどう斯うと云ふ譯には參らぬと思ひまするが、地帶を分けてそれぞれの部落に入つて調査を致しました、それは農政課で調査を致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=78
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079・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 農村の新圓問題のみならず、農村は富裕であると政府當局に於て若し考へて居られるならば、そこに將來の農村政策上大きな影響があると思ふので、此の點を明かにしたいと思つて居る譯なのであります、勿論農村の或る者は相當の金があるかも知れぬ、併しながら米作農家、即ち田を中心としてやつて居る農家では、貯金などは、貯金の封鎖されたものは別でありますけれども、新圓貯金とか新圓と云ふものはもう殆ど色々な物資の交換の爲に出盡して居るのであつて、それ程富裕なものではないと云ふことを考へて居りまする爲に、只今の質問を致したので、大臣の御説明も、まあさう云ふ點に於ては一致して居ることに甚だ私は喜ぶのでありまするが、此の農村の課税問題、是も度々論議されて居るのでありまするから、私は是れ以上申さぬで置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=79
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080・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木君、一寸、御發言中でありますが、大藏省は主計局長が出席を豫定して居つたのださうでありますが、本省に今行つて居るさうであります、あなたの御質問は主税關係になるやうに思ひますが、主税の方に出席を要求致しますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=80
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081・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 いや、此の次の機會に致します、私一人で時間を取つては御氣の毒ですから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=81
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082・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは他の機會に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=82
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083・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それと私は實は大藏大臣が居られたら斯う云ふ點を聽きたいと思つたのです、それは財産税との關係です、此の土地價格は、主觀的に地主としての立場から決定された土地の價格ではないと思ふ、是は客觀的情勢から、所謂地主と云ふものと別個の立場から土地の價格と云ふものを恐らく決められたやうに私は受取るのであります、さうして見ると、課税の對象として地主が持つて居る土地、殊に近く解放されなければならぬ、而も一般的地主の考へから見ると殆ど只取られるやうな値段を以て開放されなければならぬ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=83
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084・葉梨新五郎
○葉梨委員長 青木君に御相談致しますが、それは本案の非常に重要な點であつて、大藏當局に質さなくてはならぬ肝腎な點であると思ひます、あなたは大藏當局の御出席を必要としないやうに言はれますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=84
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085・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は農林大臣に先づ聽いて、それから大藏大臣に聽きたいと思つたのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=85
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086・葉梨新五郎
○葉梨委員長 其の點は課税關係の非常に重要な點で、本案と密接な重要な點だと思ふのでありますが、大藏當局の不在中に御發言になると、あとの機會に御發言が困難になるのではないかと思ひます、それで今本省に呼びに行つて居るさうでありますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=86
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087・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 是は成べく大藏大臣に聽きたいのでありますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=87
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088・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでありますから私は御注意申上げるのであります、農林大臣から幾ら御答辯をあなたが御取りになられても、御判斷の資料にはならぬ、斯樣に考へますから、御相談申上げるのですが、一つそれは他日に保留されて、次を御進め願つたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=88
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089・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それではそれを保留しまして、次に移ります
次に、是はどうしても農林大臣に御聽きしなければならぬと思ふのは、本會議に於て農林大臣は質問に答へて、過去に於て一町歩、二町歩の地主が小作料に依つて食べて居たことは非常に不思議であると云ふ御答辯だつたと、私ははつきり記憶して居るのでありますが、其の御答辯の根據を一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=89
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090・和田博雄
○和田國務大臣 それは小作料が高かつたと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=90
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091・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 一町歩、二町歩の地主が如何に高い小作料であつても、食つて居たと云ふことは、さう云ふ事實は、日本の國の何處かには、廣い國でありますからあつたかも知れないが、併し概念的にさう云ふことは言はれぬと思ふのでありまして、やはり一町の地主と云ふものは、恐らく其の土地の收入以外に他の方面に收入を求めて生きて來て居るのだと云ふことを考へるのでありまして、曩の農林大臣の御答辯に對して私は非常に不服を持つて居るので、此の點此の委員會に於て私は私の立場と農林大臣の立場を一つ明かにしたい、斯う思つて發言して居る次第であります
次に米價の安定の問題に付きましては、曩に膳經濟安定本部長官に御質問申したのでありますが、米價が安過ぎると云ふことは、將來の農村に取つて──是は私現在の一部分を言つて居るのではない、過去に於て、又將來に於て米價が餘りに安過ぎると云ふことは、結局農村の將來に取つては非常に重大な問題になつて來ると思ふ、隨て此の米價を高くする爲に、農民の直接行動とか、農民の團結と云ふことが、問題になると思ひます、憲法草案の第二十五條に「總て國民は健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する」と云ふことがあり、又第二十八條には勤勞者の團結權と云ふものが規定されて居るのであるが、私は恐らく今後農民にも此の團結權と云ふものがあつて、農民一致して、米價引上の滿足なる囘答を得られなければ、米の供出を阻む、或は植付を阻むと云ふ點にまで行かなければ、本當の農民の生活權を守ることは出來ないのではないか、それは非常に過激な手段のやうに考へられまするが、過去に於て常に諸物價が米價より先に高くなる、又米價が下つても物價は下らないと云ふ、是は一つの成行なのであります、又過去の政府は、農民保護の爲の此の點には餘り力を致して居らない、隨て農民本然の要求と致しまして、斯う云ふ團結を行つて、そこに強力なる農村を中心とした政治を農民は恐らく今後に於て要求することに相成るのではないかと思ふのでありますが、斯う云ふことが果して現在の勞働立法と睨み合せて可能であるかどうか、是等の點に付て農林當局の御答辯を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=91
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092・和田博雄
○和田國務大臣 どうもどう云ふことを御聽きになつて居るかはつきり致しませぬが、私は農村が將來色々な點に於て其の地位を向上させて行きまする爲に、耕作する人が協同の組合に依つて色々の事柄をやつて行くと云ふことは、當然考へるべき事柄であり、又それ等の點に付ては、今後共十分なる協同組合の發達は期待すべきことであると思ふのであります、唯單に米價を引上げるとか、さう云ふだけのことであつてはならないのでありまして、是は農村の協同の組合に依つて、自分の生産の面に於ても色々な、例へば水に付ての共同の管理でありますとか、或は土地の改良でありますとか、其の他さう云ふ本當に自分の生産の基礎を固めて行くと云ふやうな點にまで、協同して色色な改善をやることが必要であると考へて居る次第であります、唯米の値段を上げないから供出しないとか、或は耕作しないとか云ふことは私は如何かと思ふのでありまして、殊に農業のやうに國民の食糧を扱つて居りまするものは、又本當に働く意思のある農民でありまするならば、私はさう云ふことで耕作を抛棄することは、恐らく農民の良心自體が許さない事柄であらう、斯う確信して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=92
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093・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 勿論私の意見も農林大臣と同樣でありまして、農民に「ゼネスト」はない、眞に國家を憂ふるものは我々農民であると云ふことの自尊心を持つて現在やつて居ると云ふことは、私も認め、又さうなければならぬと思ふ、併しながらさうした自尊心を持つて居るが爲に、常に正直者は馬鹿を見て居ると云ふことに對して、農民は不服を持つて居る、隨て此の米價の問題などに付ても、只今まだはつきりしないで、石六百圓が何かうろついて居る風でありますが、私は斯う云ふ點に對しては、どうか農林當局に特に一つ頑張つて戴くことを期待して居るのでありまして、是が延いては供出意欲の上にも非常な影響があると私は考へる次第であります
次に中小地主の救濟策と云ふ問題になるのでありますが、「インフレ」の波に揉まれた能力のない小地主の子弟が將來生活保護法の對象となりはしないかと云ふことを憂へて居るのであります、「ソ」聯の勸告案の長所を採りまして、土地の代償の支拂に等差を付ける、さうして國家の大方針の犧牲となる小地主は、國民全體が之を救濟すべきであると云ふやうな見地から、國有財産を處分したものを財源とする國家補償を與へると云ふことなども一つの方法であると思ふ、此の問題に付ては又大藏大臣に質問したいと思ふのでありますが、此の祖先傳來眞面目に働いて呉れた小作人には、一段歩七百六十圓と云ふやうな小さい金で之を賣るよりは、寧ろ無償で現在の耕作地を小作人に與へて過去の相互扶助の恩義に報いたいのであります、私の理想としてはさうであるけれども、やはり自分の子孫と云ふことを考へる時に、其の自分の理想が達成されないことを現在の地主は悲しんで居ると思ふのであります、私の村に五町歩の地生で二町歩自作して居つた所の未亡人がありますが、長男、次男と戰場へ送りまして、女手一つで此の二町歩の田圃を五段歩に減段して作つて行つた、所が昨年の大不作の爲に、小作人から得る所の收入は勿論一家の生計を支ふる資にも足らず、又自己の收穫は一家の食糧にすら足りなかつた、欲しい盛りの女の子三人を抱へて洵に御氣の毒な生活でありましたが、賣る闇も知らぬ代りに買ふ闇も知らぬと云ふ點で、此の一家は非常に有名であつた、幸か不幸か、終戰と共に長男は戰死され、次男が復員して、割に合はぬと云ふやうな意味から小作人から返還されて來た土地、今度は一町二段になりましたが、それを作つてどうやら斯うやら生活を立て、又野菜などを作つて、之を附近の温泉場などに持運んで賣り、さうして生活を續けて居るやうな状態でありますが、此の復員された次男が農林學校の卒業生であると云ふ自覺を呼戻して闇生活を思ひ止まる時に、此の一家の運命はどうなるかと云ふことを私は考へて來るのである、隨て五町歩持つて居るけれども、一町二段を自作する爲に、此の未亡人は二町二段の地主にしかなれない、又此の一方に於て三町歩を受小作して居る小作人がありますならば、是は法の保護に依つて非常に有利な立場となつて、寧ろ小作人の方が過去の小地主よりは生活が上に行くと云ふやうな結果になりはせぬかと云ふことを考へて來るのであります、社會秩序の逆轉と云ふものが文教上に及ぼす影響は非常に大きいのでありまして、足利時代の下剋上を思はせるやうな政策は此の際執るべきではない、地主と云ふものが餘りに沒落することもなく、又小作人を餘りに有利な程度にすることもないのが宜いと思ふのでありますが、此の點どう云ふ御考へでありますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=93
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094・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地制度の改革は、今まで御説明申上げましたやうに、小作地の中の大半を自作地と致します關係上、可成り中小の地主にも觸れて來るのであります、隨ひまして地主としての問題は、或る痛手を蒙りますことは、斯う云ふ大きな、日本が立直ります上から行きまして十分に御理解をして戴きたいと思ふのであります、唯地主と云ふことが耕作する者と云ふことに支點が置かれて來るやうになるのでありまして、是は何處までも土地を持つて居つても一方では自分で耕して居ると云ふ、此の耕す方の面が支點になつて今後の農村が築かれて行くことになるのでございます、それ等の點に付ては、今囘の土地制度の持つて居る將來の日本に取つての重要さと云ふものを十分御諒解願つて、さうして自分で耕作し得る面積を現在今御話のやうに耕して居りまするならば、それを十分耕して生計を立てて行くと云ふやうに行かれることを我々としては望むし、又さう云ふやうな點に付ての十分なる施設をやつて行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=94
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095・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の土地の代金は年賦支拂と云ふことになつて居るのであります、斯うやると地主が賣食ひの結果になりはしないか、二十四年經つと何もなくなるのではないかと云ふことを考へるのでありますが、此の土地を地主から手放させる代りに、地主にはやはり事業資金、轉業資金と云ふものを與へなければならぬ、勿論之を別途貸付けることも宜いと思ふのでありますが、去年の第一次改革は、斯う云ふやうな年賦償還でなくて貯金にして置いて、之を必要な場合に轉業資金の方へ廻すことが出來ると云ふ方法を御執りになつたやうでありますが、此の點今後どうなりますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=95
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096・和田博雄
○和田國務大臣 今度は或る程度は現金で渡し、其の他は農地證券と云ふことになつて居る譯でありますが、是は農地證券を或は擔保にするなり何なりして適當な金融の途を講ずると云つたやうな事柄は、十分研究致して行きたい、斯う考へて居ります、唯茲で中小地主に對しましては、前囘と同じやうにやはり一定の限度のものに付ては報償金を支給すると云ふことに致して居るのでありまして、其の點は御諒解になつて戴けると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=96
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097・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 其の報償金を受けるのは三町以下であつて、三町から五町程度の所謂中地主と言ひますか、小地主としてもも少し大きいのでありますが、それ等の轉業資金と云ふものに對しては、私はやはり年賦償還金以外に相當面倒を見なければならぬと思ふのでありまして、此の點は曩に經濟安定本部長官に、米に對する價格の補給金は寧ろ斯う云ふやうな方面に廻したら宜からうと云ふやうな意味で私は御問ひしたのであります、此の小作人の負擔を定期的に再評價することに付ては、法に於ては相當研究されて居るのでありますが、地主の農地證券と物價指數との關係は定めてないのであります、是は一方的な片手落ちではないかと思ふのでありますが、將來物價が上昇する場合の農地證券の取扱ひ方、又物價が下落する場合の農地證券の處置が、土地を解放せしめる地主の重大な關心事だと思ふのであります、之を成行きに御任せになるかどうか御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=97
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098・和田博雄
○和田國務大臣 年賦償還金を、元の「アイルランド」でやりましたやうに、土地價格を年々評價してやると云ふことは、今度の法案ではどつちにしても採つて居ないのであつて、唯小作人の拂ふ年賦償還金に付ては、小作人の負擔が過大になりませぬやうに、農産物の價格がどんなに下つても、其の年賦償還會と公租公課とを加へたものが平常の收入の三分の一を超えることは出來ないやうに致して居るだけでありまして、其の點に付ては小作人の年賦償還金に付ても、農地證券自體の價格の問題に付ても、同じ取扱をして居るのでありまして、片手落ちにはなつて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=98
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099・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 此の土地の代價の支拂ひ方に付て、所得税とか財産税が累進課税の方法を執つて居ると同樣に、所有する土地の廣狹に依つて小地主程澤山貰ふと云ふ趣旨から、三町歩以下のものに國家補償があると云ふことは結構でありますが、もう少し大きく、大地主、中地主、小地主、此の間に或る種の段階を設けて、大地主の持つて居る土地は一段歩二百圓でも宜しいが其の代り小地主の土地は一段歩一千圓も二千圓もすると云ふ程度に、土地の代金に差等を付するのが宜いと思ふのでありますが、此の點に付て御囘答がなかつたやうでありますが、どう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=99
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100・和田博雄
○和田國務大臣 それは土地を持つて居る者が小さいものであるか、大きいものであるかに依つて差等を付すると云ふことは致して居りませぬ、さうでなくして、土地の生産力が高いか低いか、良い土地であるか惡い土地であるかと云ふことに依つて、土地の價格に差等を付けるのであつて、それが賃貸價格に依る倍數に依つて地價を統制して居る趣旨なのであります、所有者の大小に依つて地價を變へると云ふことは、どうも致し兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=100
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101・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 それではやはり土地の價格の問題に相成るのでありますが、地主の持つて居る土地は丸公で處分されるのであります、先に申しました客觀的情勢に依る丸公で處分されるのでありますから、地主が土地の代りに他の物を持ちたいと云ふ場合にも、恐らく政府は丸公で之を與へるのが道であると思ふのであります、先祖傳來の粒々辛苦の土地を紙屑同然のお金で清算するのでなくて──是も大藏大臣の所管になるかも分りませぬが、今囘の財産税では物納に或る程度なつて來る、其の物納した物を處分する場合に、此の丸公で處分した土地の代りに、さうした財産に乘換へると云ふ方法を多少執らなければならぬと思ふのでありますが、之に對してどう云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=101
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102・和田博雄
○和田國務大臣 一寸御質問の趣旨を私理解し兼ねるのでありますが、土地を賣つた代金で、其の代りに何か他の物を買ふ時には、それは丸公で取引すべきではないかと云ふことですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=102
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103・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 さうです、所謂財産税を徴收する場合には、恐らく物納の場合が多くなつて來ると思ふ、さうすると、地主は此の際其の持つて居る土地は解放しなければならぬが、其の代り山林を買ふとか、或は國有地の拂下げを受けて、其處で新たに開墾に從事するとか云ふやうな方法を或程度採つて戴きたいと云ふ希望を持つて居る爲に、此の質問をやつて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=103
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104・和田博雄
○和田國務大臣 それは色々の物に付て、結局正當な評價を致すことになる譯でありまして、例へば地主が開墾したいと云ふことであれば、開墾地に付てはちやんと決まつた方式に依る價格に依つて、それを買上げ又は賣渡すと云ふことになるのであります、其の點に付ては一寸も變はる所はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=104
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105・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 どうも其の點ははつきりせぬのでありますが、其の程度にして置きまして、次に土地に投じた資本の囘收の問題でありますが、耕地整理を致しましてまだ換地處分が出來て居らないで、臺帳と實地とに食違ひがある、此の換地處分と云ふものは、さう簡單に二年間に出來るやうな生易しい問題ではないと思ふ、是等に對してどう云ふ處置をおやりになる御見込であるか、又土地の改良の爲め、耕地整理の爲に相當の資金を投じて居る、之を土地の評價價格の外に別途御算定になる御考へであるか、或は又當事者間に御任せになる御意思であるか、又現在土地改良事業をやつて居ります、水利事業の改良の爲に用水「ポンプ」を附けると云ふやうな問題に付ても、相當多額の出費を覺悟して、現在此の工事が進行中のものも相當國内には相當多いものと思ふのでありますが、是等の資本囘收の問題と、耕地整理の未換地の問題、之に對する取扱を御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=105
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106・和田博雄
○和田國務大臣 耕地整理施行中の土地でありますが、耕地整理を施行して居りまして、まだ未換地である、斯う云ふものに付てはやはり極力換地を行はしめてやる譯でありますが、此の換地中のものでも、やはり從來のやうな土地臺帳とか、登記簿に依つて一應處理する方針で居る譯であります、耕地整理のものに付ては大體さう云ふ方針で臨む考へで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=106
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107・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に舊高制の問題でありますが、農村の一部には舊高制と云ふ問題が殘つて居りまして、土地を賣買致しましても之を登記しないで、各大字に備へ附けてある舊高帳に記載することで土地の賣買の目的を達して居るのであります、是等が今囘の土地の解放に當りましては、地主の所有面積に非常な關係を持つて來るのでありますが、斯う云ふ舊慣を御認めになる御考へでありますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=107
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108・和田博雄
○和田國務大臣 それは當然認めることになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=108
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109・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 大體私の質問はもう盡るのでありますが、どうも長く時間を取りまして恐れ入りますが、最後に民主態勢の整備と云ふ問題に付て私は御質疑致したいと思ひます、即ち一にも民主、二にも民主と、封建政治から解放されて、民主機構を押付けられて、鳩が豆鐵砲を食つたやうな状態にあるのが、今日の日本の民衆の状態であると思ふのであります、政府は如何にして之を矯正せんとするか、如何に制度を民主化致しましても、國民全體の民主教育、農民全體の民主教育、私が只今色々質問致しまして半地主的な意味から、或は青木は變なことを言ふと、云ふやうに思はれたかも知れませぬが、私の所に集まつて來る色々な情勢から見まして、私は小作人のことも思ひ、又地主のことも思つて是等の質問をやつて居るのでありますが、此の凡ゆる階級の民主態勢を整へると云ふことが恐らく今囘の農地解放をして意義あらしむるものだと思ふのでありすが、教育上如何に之を推進させようと云ふのか、又民主訓練を如何にして農民の間に徹底させる御考へであるか、此の點一つ御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=109
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110・和田博雄
○和田國務大臣 それは寧ろ文部大臣からの御答辯の方が宜いと思ふのでありますが、是は結局政治の民主化、經濟の民主化をやりましても、それだけで民主化が完成した譯ではないのであつて、やはり其の民主化された政治機構、民主化された經濟の中で、各人が自分の内面の問題として、民主主義の精神を是は、どうしたつて生活の上に體得し、實現して行くことになる譯でありまして、それは一面から言ふと、教育として教へらるべきものではありますが、併し一面から言ふと、教育を受ける其の人達自身が、漸次さう云ふものを理解し、努力して行くと云ふ面がなければいけないので、是は各部面に於て未端の實際教育、或は公民教育、其の他に於て行はれることでありまするが、さう云ふ一つの國家の教育制度自體を離れて、農村に於ては農村の人達が或は協同組合、又實行組合等に依つて、自分の職業を通じてお互ひに練磨し合つて、民主的な精神を漸次體得して行く、斯う云ふことにならなければいけないのであつて、是は外から形と云ふものが假令押付けられても、其の形にまで成長すると云ふ内面的の問題は殘つて居るのでありまして、それ等のものをやることが實際今後に於ける我々の一つの務めであると、斯う思つて居るのであつて、丁度「テニス」や野球で言へば、美しい「フォーム」がありますが、其の「フォーム」を眞似るだけでなくて、其の「フォーム」が同時に立派な選手としての技能を持つと云ふことになるのには、選手自體がそこにそれだけの努力をして行く面がやはりあるのだと云ふことを私としては考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=110
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111・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 文部當局が居られぬ所で此の議論をやつても詰りませぬから、是れ位にして置きますが、總體的から見ては農村の農地の改革と云ふものはやる、併しながらまだ漁村とか山村とか、或は市街地住宅の民主化と云ふやうなものをなぜ放置して居るか、やるならば、農村だけを取扱はないで、凡ゆる方面をやらなければいかぬと云ふ聲があり、農村だけやるのは片手落ちであると云ふことを言つて居るのでありますが、農林大臣は他の方面にも速急に手を御著けになる御氣持でありますか、之を御伺ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=111
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112・和田博雄
○和田國務大臣 漁業方面に於きましては、漁業權其の他色々の問題がありまするので、研究致して居る譯でありまして、是は是非適當な案が出來ますれば實現致したいと思つて、目下研究致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=112
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113・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私の質問は之を以て終るのでありますが、本法の實施に依りまして農民齊しく同じ自作農となり、大化の改新に班田收授の法が失敗して以來、過去の政治家の企て及ばなかつた農地改革が實現致しまして、神代の昔に還つた美しい日本の農村が出來ると云ふことを私共は期待致して居るのであります、地主もなく、小作もなく、利する者も失ふ者もない、明朗な爽かな、只今の初秋の感じの如き日本の農村が出來ると云ふことを期待するのであります、私共は農村の新生の爲に、農民運動と政治鬪爭とを切離さなければならぬと云ふことを考へて居るのでありますが、絶好の「チヤンス」が今來たのであります、私は此の農地改革を實行するに當つては、そこに私の質問を通じて色々な問題が取上げられましたが、要するにそれは各階層に不滿がなく、全部一致して心から納得して此の改革に協力し得る途を見出したいと考へた譯なのであります、どうか農林當局も此の意味に於て今後とも善處されんことを要望致しまして、私の質疑を終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=113
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114・葉梨新五郎
○葉梨委員長 玉井潤次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=114
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115・玉井潤次
○玉井委員 私は同僚が居られることでありますから、簡單に質問したいと思ふのであります、第一に御聽きしたいのは…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=115
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116・葉梨新五郎
○葉梨委員長 玉井君に一寸申上げますが、膳國務大臣は三時には司令部へどうしても行かなければならぬさうでありますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=116
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117・玉井潤次
○玉井委員 膳さんに一番先に御聽きします──それは自作農創設其の他に對して重要な問題でありますから、今の場合に御聽きするのは一寸變でありますが、是非御聽きしたいのは、今まだ御決定にならぬで居るやうでありますが、米價の問題を如何なる根據に依つて何程に定められんとする御方針であるか、それを御聽きしたいのであります、確實に斯う決まつたと云ふことを御聽きするのではありませぬが、今申上げるやうに、大體の方針を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=117
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118・膳桂之助
○膳國務大臣 米價の問題を決めるのは、實は安定本部其のものの仕事ではないのでありまして、物價廳としての仕事であります、物價廳に於きまして米價をどう云ふやうな標準で決めるかと云ふことは、午前中にも申上げましたやうに、物價廳の見解に依りますると、米價を以て總ての物價の根源と致したい、斯う考へて居ります一方には、米價の本を考へますには、勿論生産費を考へなければなりませぬ生産費を考へますに當りましては、やはり是が適正な、理由のある──詰り餘りに總て闇相場で米價を換算するやうな意味でなく、合理的な米價を一つ考へたい、是で一方は考へます、併しながら同時に、適正な米價を作らうとしましても、現在に於きましては色々の物資を適正な價格を以て農家でも購人することが出來ませぬ、そこに現實に、不適正ではあるが已むを得ない支出のある生産費もある譯でありまして、一方は國の各種の物の價格を定めます標準としましては、不純の分子を取除いた適正な、合理的な物價を以て物價の根源と致したい、即ち是が消費の標準になる價格であります、併しながら同時に、今申しますやうに、中々適正の價格を以てしては計算の出來ない、今の物價の不均衡に基きまする、正當ではないが已むを得ない支出もありますので、さう云ふやうなものを考慮します際には、自ら農家に對する一つの、補償價格と言ひますか、買上價格と云ふものが別段に考へられることも已むを得ませぬ、隨て午前中にも申上げましたやうに、本年としましては購入價格と販賣價格との間に已むを得ない、補正の爲の補給金のやうなものも考へられるのでありまして、大體さう云ふやうな標準を以て考へて居ります、農林省で研究した米の生産費、又物價廳で色々研究しました生産費、それ等を勘案致しまして、購入價格及び販賣價格の適正なるものを内定した譯であります、併し是がどうと云ふことはまだ關係筋の諒解を十分に得て居りませぬので、私からは言明出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=118
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119・玉井潤次
○玉井委員 それでは續いて御質問したいのであります、今御話のやうに、生産價格を見て行くと、色々の物資を買ふのにも適正であるのと適正でないのがある、隨て其の點は困難だと仰しやつたのでありますが、それは御尤もだと思ふのであります、さう云ふことになるならば、或る一つの米價を決めて、それを補助する意味に於ての政策を執る御意向があるかないか、昭和二十年までの政府買入米價は御承知の通り五十五圓であります、所がそれに對して生産奬勵金が二百五圓附加されて居ります、それを寄せたものが要するに普通米價と言はれて居つたものでありますが、最近の新聞に依りますと、米價は、安定本部は四百五十圓だと言ひ、或は農林省では六百圓と言ひ、農民組合は七百五十圓、農業會は千二百圓と云ふ風に言はれて居りまして、今私が申上げたやうに、米價と生産奬勵金と云ふやうなけじめが付いて居らぬのであります、さうすると、今仰しやつたやうに、理論的にも米價を直ちに生産費から割出すことは困難であると云ふことになるのでありますから、それを分けて戴くと云ふ御方針はないのでありませうか、是はどう云ふ御考へでありますか、米價と云ふものは政府買上金も補償金もないのだ、唯買入價格が今言ふ通りだと云ふ意味でありますか、如何なものでありませうか、はつきりとして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=119
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120・膳桂之助
○膳國務大臣 現實の問題として或る價格で買上げます、併しながら現在では其の價格を以て消費者の價格、即ち總ての物價の標準とするには少し高過ぎると思ひますので、或る程度そこに國が補給を致しまして販賣價格を定める、是が現實であります、考へやうに依つては、之を補助金とも考へることも出來ませうし、又一つの適正な生産費をば計算しましても、現在の經濟現象に於ては其の適正な生産費では賄ひ切れない部分がありますので、其の部分をば補給金を以て補充した、斯う考へても宜しいかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=120
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121・玉井潤次
○玉井委員 今の私の質問は、私の言ひやうが惡いのか、あなたの御考へ違ひがあるのか知れませぬが、一寸的が外れて居るのであります、私の申上げたのは、買入價格を幾らにするかと云ふ問題なのであります、成程今申上げたやうに、物價は生産費のみに依つて決定出來ませぬ、殊に消費者のあるものに對しては、消費者價格を見なければならぬ、或は諸物價に對する釣合ひを見なければならぬのでありますから、一定には言へない譯であります、隨て消費者に對して四百五十圓として、それに一定の補給金をやると云ふことも考へられるのでありますが、私の申上げるのは、二十一年度も此の形と同じやうな形を取つて御決めになるのであるか、或は又所謂奬勵金を全然廢して買入價格を御決定になるのであるか、率直に言へば此の點なのであります、是は非常に重要な點でありますから、若し何なら農林大臣からでも宜しうございます、御意見が違ふと思ひましたから、別々に聽いて居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=121
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122・和田博雄
○和田國務大臣 一寸誤解なさつていらつしやるのではないかと思ふのでありますが、昭和二十一年度の米價は三百圓であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=122
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123・玉井潤次
○玉井委員 間違ひました、二十年度です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=123
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124・和田博雄
○和田國務大臣 同じく二十年も三百圓になつて居ります、其の中の五十五圓と言ひますのは地主米價であつて、小作料である、所謂地主に對する物納は小作料であつた譯でありますが、其の物納小作料を米價に換算する時に、之を五十五圓と致して居るのであつて、一般の米價は三百圓と云ふことになつて居るのである、其の米價の三百圓の中には奬勵金の關係は入つて居ないのであります、是は買上價格が三百圓、賣渡價格が二百五十圓と云ふことになつて居るのであります、さう云ふのが二十年の米なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=124
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125・玉井潤次
○玉井委員 さう云ふことになると、あなたの方で配付された表には、私が今申上げたやうに書いてある、政府の買入價格は地主價格として五十五圓、生産奬勵金として二百五圓、斯うなつて居るのであります、隨て此の買入價格と云ふものがあなたの仰しやつたやうに三百圓だと假定して、米價が三百圓だと云ふことになると、今仰しやつた地主の生産價格と云ふものはどう云ふ理由に依つて出て來るのか、是は二十三頁にあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=125
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126・和田博雄
○和田國務大臣 是は自作人であれば、此の米價が其の儘直ぐ買上價格になる譯であります、所が小作人の場合は、地主と小作、兩方に分れる譯であります、是で言ふと、此の五十五圓と云ふものを地主に拂ふ譯であります、それで其のあとは實際上生産して居る小作人に生産奬勵金として渡して居ると云ふのであつて、米價其のものは三百圓なら三百圓と云ふことになつて居るのであります、それは地主米價と云ふものがあるので、生産奬勵金と云ふ形で實際上の生産者、小作人に行くものがここに出て來て居るのであつて、地主米價と云ふものがなくなつて、金納になればこんな關係はなくなる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=126
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127・玉井潤次
○玉井委員 あなたの方は今年は幾らを基礎として地主計算をなさる積りでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=127
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128・和田博雄
○和田國務大臣 地主計算は、小作料は石七十五圓と云ふことになつて居ります、地主には小作人が金納として石にすれば七十五圓拂へば宜い譯で、地主は米價の決定には何も關係がない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=128
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129・玉井潤次
○玉井委員 昭和二十一年度石七十五圓の計算で宜い、米價には關係がない、それをはつきりして置けば宜いのです
それからもう一つ御聽きしたいのは、農地調整法第九條の八の規定であります、御承知のやうに、小作料が或る一定の額より多い時には減らすと云ふことになつて居ります、今後土地が全部地主から解放されると云ふのは一部で、一町歩は殘る、あとのものは、今度は國家が地主として小作人が借入れると云ふことが少くとも一時は出來る譯であります、其の場合に於て今までの契約は繼續されると云ふことになる譯であります、所が此の九條の八から見ると、小作料の最高額の決定があるのであります、是れ以上の場合に於てはいかぬと云ふ決定があるのでありますが、之には、今あなたが仰しやつたのとは今度は違つて、小作料の額が通常收穫せられる米の價格の二割五分を超えてはいかぬ、或は又主作物の價額の一割五分を超えてはいかぬ、斯う云ふ風になつて居るのであります、さうすると小作料が今後上ると云ふ理論になるのであるか、或は又絶對に上げないと云ふ御方針の下に此の法律が出來て居るものとするならば、矛盾なことでありますが、是はどう云ふ譯になるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=129
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130・和田博雄
○和田國務大臣 それは結局小作料の最高價格を決めて居る譯で、小作料の額が、田にあつては通常收穫せられる米の價額の一定割合に相當する額を超える時には、是は其の割合に相當するまで小作料の減額を請求することが出來ると云ふのだから、今後は此の割合以上に、非常に高い小作料は出來ないと云ふことになるのでありまして、其の割合は、次の項にありますやうに、都道府縣農地委員會が之を定める、斯う云ふことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=130
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131・玉井潤次
○玉井委員 今の自作農創設にはさうあるのでありますが、契約した元の契約は七十五圓なら七十五圓に計算すると云ふことになつて、小作料契約の内容が變つて居る譯はないと私は思ふ、唯契約にするならば、一段歩に對し一石納入すると云ふ契約があつても、一石は七十五圓と計算するのだと云ふことになるのであります、所が今申上げますやうに、一石だと云ふ契約があるならば、此の條文から言ふとさう云ふことは言へなくなつて來るのであります、だから結局は今までのあなたの仰しやつた七十五圓は動かないのだと云ふことは、命令か勅令か分らぬが、法律にはさうなつて來ると矛盾があるが、如何しなさるか、斯う云ふことを私は考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=131
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132・和田博雄
○和田國務大臣 御質問の趣旨が能く分らぬのであります、結局金納に於て七十五圓と云ふものがここにある、それは此の規定に依つて動くか動かぬか、斯う云ふ御話でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=132
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133・玉井潤次
○玉井委員 さうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=133
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134・和田博雄
○和田國務大臣 是は七十五圓と云ふことになりますれば動く譯はないのでありまして、此の規定とは直接關係がありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=134
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135・玉井潤次
○玉井委員 それははつきりしたと仰しやるならばそれで宜いのであります、併し理窟から言つて、或は法律の建前から言ふならば、さうは言へないと思ひます、それをはつきりして戴きたい、さう云ふ風に言へるならば頗る結構であります、今契約が段七十五圓と云ふのは、小作料の換算の方法を書いたに過ぎない、さうすると茲に此の規定があるならば、今又動いて來る虞があるから私は確めて置くのであります、それをはつきりするならば異議はないのでありますが、私もあなたの仰しやるやうならば結構だと思ひますから、其の點はつきりして戴きたい、七十五圓は動かぬと云ふことは言へますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=135
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136・和田博雄
○和田國務大臣 小作料を換算する時の基準である七十五圓と云ふものは動きませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=136
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137・玉井潤次
○玉井委員 それではもう一つ諄いやうでありますが、御聽きしたいが、其の七十五圓と決まつたのは法律でありますか何でありませう、何に依つて御決めになつたのでありませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=137
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138・和田博雄
○和田國務大臣 是は農林省の農林大臣の告示として告示してある譯であります、此の前の農地調整法の施行に伴ひまして、物納を金納に換算する、其の換算の金額は、米に付ては石七十五圓、麥に付ては幾らと云ふことを、ちやんと農林大臣の告示で致して居る譯であります、それは法律に基いて告示を致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=138
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139・玉井潤次
○玉井委員 さうすると、告示と今の法律の關係になるのでありますが、それは難かしい問題でありますから別にしまして、他の問題を一つ御聽きしたいと思ふのであります、先日農林大臣から御話があつたやうでありますが、政府が土地を買上げてそれを小作人に賣る場合には、買上げた値段で賣ると仰しやつたと私は記憶して居るのであります、所が今度出ました法律に依ると、土地の一定の買上の範圍が決まつて居るやうであります、併し特別の事情があつた場合にはそれを高く買ふことが出來ると云ふ規定があるのであります、それは農地調整法の方にも規定があるやうでありますし、自作農創設の方にも規定があるやうであります、さう云ふやうな規定が一方にあり、今度は小作人に賣る時には必ず買入價格で賣ると云ふことになると、そこに矛盾が來はしないかと思ふのであります、殊に此の前本會議に於て大藏大臣は、財産税か何かの御話の中に、政府は財産税を物に於て取つた場合に、物が高くならうが安くならうが、それは政府の責任だと云ふ御言葉があつたと私は記憶して居るのであります、さう云ふやうに考へました場合に、政府は假に四十倍乃至四十八倍なりが相當なりとして御買ひになつた、或は特別な事情があるからと云ふので高く買つた、所が農民がそれは高いもう少し安くと云ふやうな主張があつた場合に、是は値段が合はぬと言つて拒絶する所の理由が一體何處にあるのでございませうか、それをはつきり御聽きして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=139
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140・山添利作
○山添政府委員 それは買ひました値段で其の儘賣渡すのでありますから、今のやうに例へば四十倍の値段よりも高くなると云ふのは、先程の御話にも出ましたが、耕地整理をやつて居る土地、是は土地改良の爲に費用を投じ當然それだけ土地の價格は増加をして參るのであります、さう云ふ場合に高くすることはある譯でございます、又買つた値段で賣るものに對して、一方買手の方から見れば、それが公正であるかどうかと云ふ點でございますが、無論四十倍とか四十八倍と云ふのは最高價格で、状況に依つてはそれ以下で定める譯であります、隨てそれよりも安い土地もある譯であります、所がさう云ふやうにして買ひました場合に、小作人の方で農地委員會で決定した價格よりも安くなければならぬ、さう云ふ場合にどうするかと云ふ問題でございますが、農地委員其のものが、地主の方の代表もありますが、半數は小作の人も出て居る農地委員會でありますから、其の農地委員會に於て公正妥當な、小作人に於ても買ひ得ると云ふ値段を以て一面買入價格とする譯でありますから、是は當然それで行つて宜い譯であります、尤も個人的に、小作人の方で、主觀的に俺は厭だと云ふことを一々言つても、それは困るのであつて、さう云ふことがないやうに、農地委員會と云ふ制度でそこは公正妥當な値段で取扱つて行く、斯う云ふ趣旨だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=140
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141・玉井潤次
○玉井委員 安くは賣らぬと云ふ御方針だと聽きました、それからもう一つ御聽きしたいのは、今度は、政府が地主から土地を御買上になつた、其の買上げた農地の所有權が直ちに自作農に移轉するならば議論はないのでありますが、其の所有權が移轉しなかつた場合に於ては、一切の權利は消滅する、是は勿論法律上さうでありませう、所がそれに對する權利は又其の儘に認めると云ふ風になつて居るやうであります、隨て小作人は土地を再び耕作する權利を得る、所が其の權利を得た者に對して契約の期間其の他の條件は、總て前の契約と同一にすると云ふ規定があるのであります、さうしますと、國の方では期間をさう決めると云ふやうな御方針があるならば、一定の期間が經過をした場合に於ては、土地を取上げると云ふ意向の下にさう云ふことをやるのであるか、或は又期間と云ふものは、唯單に小作料の決定期間なのだと云ふ風に見て居るのであるか、其の點を一つはつきりして戴きたいのであります、政府の方に於ては、買付けた農地は總て自作地として處分されるであらう、斯う云ふ前提の下に立つて御考へになつて居るかも知れませぬが、私は逆にそれが殘つた場合のことを考へるのであります、それで其の點が相當私共には重要視されるのでありますから、それを御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=141
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142・山添利作
○山添政府委員 專ら殘つた場合に付て御答へを致すのでありますが、殘つた場合に於きまして、次の人に賣る前に期間が切れたと云ふ場合、其の場合に於けるやり方と致しましても、國としてはやはり農地調整法第九條の趣旨に從つて處理すべきでありまして、極く露骨に申しますれば、特別なことがなければさう云ふ場合は餘りないと思ひますが、何かの事由で小作の方で買はなかつた、それを國が持つて居る、それは其の儘ずつと續けて行く、さう云ふことも望ましいと思つて居る譯ではありませぬが、さう云ふ場合があれば、さう云ふ状態でずつと續いて行く、斯う云ふことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=142
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143・玉井潤次
○玉井委員 私が一つ御聽きしたいことは、實は先日來多くの委員から色々な御意見があつたのでありますが、結局は地主に一町歩の土地を殘した、所が其の土地は一體どうなるのだらうと云ふことが、相當皆樣の御心配であり、又御意見のある點であるやうに思はれるのであります、それに對し私の意見を申上げて農林大臣の御意見を聽きたいのであります、私は簡單に結果を申しますれば、一町歩の殘された土地は全部小作人が取上げられるものと私は信ずるのであります、第二には取上げられた結果、折角決めた所の農地の自作農化と云ふ計畫が根本的に崩れるのではないか、隨て私は地主に對して一町歩の土地を殘す必要はないのだ、全部取上げた方が宜いのだと云ふ議論の上に立つて御質問したいのであります、なぜさう云ふことを申すかと云ふと、私は法律上當然さうなると思ふ、例へば第九條の規定には、土地は濫りに取上げられないことになつて居ります、なつては居るが御承知のやうに一般但書が付いて居るし、其の他但書には「目的の變更」と云ふ場合と、「自作を相當とする場合」と、「其の他正當の事由ある場合」と云ふ三つの條件が付いて居るのであります、其の三つの條件は、地主に土地を取らせる準備なのであります、勿論さう云ふことに違ひない、それであるから「自作を相當とする」と云ふやうな場合はどう云ふことを言ふのか、之に付ては、委員諸君からの御質問に對して政府の御囘答も聽いて居つたのでありますが、例へば其の家が一定の農機具を持つて居るとか、或は農業用の設備をした、或は其の家の主人が農業に堪能であると云ふやうな人が出來た場合には、「自作を相當とする」と言ひ得ると思ふのであります、其の次に「其の他正當の事由」と云ふのは、例へば失業したとか、或は又他の理由もありませうが、さう云ふやうな場合も豫定してあります、所が政府はそれに對してどう云ふ御答へをなさるか、紋切型の御答辯は、第九條の末項の規定がある、農地委員會の承諾を得なければ土地は取れないのだ、斯う仰しやつて居るのであります、併しさう云ふやうなことが、言ひ得るであらうかどうかと私は思ふ、實體上第九條の第一項に依つて取上げる所の權利が出來て居るものを、農地委員會が之を拒絶する理由は何處にあるだらう、是は法律としては言へないと思ふ、隨て今後長い間に於ては、必ずや地主が一町歩の土地を全部取返すものであらうと云ふことをはつきり言ひ得ると思ふのであります、それは法律上さうなるのであります、所が次に起る問題で、私が自作農が根本から破壞されるのだと申上げた理由は、斯う考へるのであります、少くとも今度の土地解放に依つて約二百萬町歩の土地が解放される、六十萬町歩の土地は殘る、斯う言はれる、之を比率として見るならば、三割三分位の土地は殘ることになる、其の場合に土地を買上げて、今度は賣渡の計畫を立てる、要するに適正農家を造ると云ふ計畫を立てた場合に於て、買上げた土地だけを基礎としては立てられない譯であります、必ずや小作地をそこに入れたものに依つて計畫を立てて行かなければならぬ、所がそれを立てて行つて、今私が申上げるやうな工合で地主から一町歩の土地が全部取られると云ふことになると、もう創設の問題の基礎が崩れて來るのだ、隨て是が折角拵へた所の計畫が根本から破壞されると云ふ理由にならうと思ふ、今までの當局の御説明のやうな、承諾云々と云ふ規定があるから大丈夫だと云ふやうなことは、私は意味ないと思ふ、一方に於て自作農になると云ふことを奬勵して居る、一方は小作人が──今作つて居る人は小作人なのであります、今度は取るべき地主は自分の土地でありますから、それを取れば自作農になれる、だから理論的に言つても、それを排斥する理由は此の法律の建前に於てはないと思ふ、隨て今申上げたやうに、第九條第一項の規定に依つて取るべき權利があつた場合には、農地委員會がそれを不承認と云ふことは不法なのであります、隨て不承認だと云ふ場合に、假に訴訟でも起されたとするならば、必ず取る方は勝たうと思ふ、それだからさう云ふ生なかな自作農創設と云ふやうなことを考へないで、地主から土地を全部取つてしまふ、今色々の立場の人が色々言つて居られる、或は地主が今全部土地を取られるのは氣の毒だと言つて居られるが、私は一つも氣の毒だとは思はないのであります、何故思はないかと云ふと、是は惡口を言ふ譯ではありませぬが、一町歩位の土地を殘して貰つて、それに依つて生活を立てようと云ふ人があつたならば、それは要するに間違つた人なのであります、貧乏した時には綺麗に捨てた方が宜い、丁度封建時代のあの藩籍奉還の時分に、一萬石の諸侯は殘して置くと云ふやうなことを考へることが出來たでありませうか、私は出來ないと思ふ、要するに、農村の封建性を破壞すると云ふ今の基礎と云ふものは、地主と云ふものが多少でも殘つて居ると、それが政治的に結付きをして、農村を凡ゆる面から搾取壓迫して來るのだと云ふやうな考へ方から、土地解放を行はなければならぬのであります、成程今農林大臣の御説明になつたやうに、地主は七十五圓以上の米價には決して採算が出來ないのだと云ふことになるならば、それはまだ宜いでありませう、併し一町歩にして、彼等が政治的の結付きを得て、それを改正しようと云うた時にはどうなる、結局は地主と云ふものが假令片鱗のものでも殘つて居るならば、是は農村の民主化を根本から破壞するものと私は思ふ、さうして今私が申上げたやうに、一町歩の土地を殘して置いたこと自體が、土地を取上げる原因になり、もう一つに於ては、自作農創設の根本的の基礎を動搖せしめるものだと云ふことに私は信じて居るのであります、隨て私が御質問したいのは、今言ふ通り、一町歩の土地が殘つて居つても、永久に其の土地は小作人の手から離れないのだと云ふ理由があつたら御聽きしたい、それを又農林大臣が本當に責任を持つて言ふことが出來るかどうか(「ヒヤヒヤ」)それをはつきりして貰はぬと、私共としては重大問題であります、それははつきりされない筈なのだ、それは先刻私が申上げたやうに、胡麻化した法律を作らうと思ふから面例なのです、はつきりして置けば雜作ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=143
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144・和田博雄
○和田國務大臣 地主に一町歩の保有を認めました趣旨は、地主は一町歩だけは、現在自ら耕して居ない土地を小作人の手から取つて自作出來る、斯う云ふ趣旨で認めたのではないのでありますから、其の點は一つ御諒承を御願ひしたいのであります、唯此の法律に依りましては、一町歩の地主の保有を認めました結果、やはり小作地と云ふものはそこに殘つて居るのであります、それで土地返還に付ては、只今玉井さんが御指摘になりました第九條に依つて、契約の解除なり、更新を拒む時の規定を此の前よりももつと強化致して居る次第であります、勿論地主が自作を相當とすると云ふ場合には、土地を返せと言ふことが出來ることは、現在の法律に於ても認めて居るのでありますが、唯自作を相當とする場合はどうかと云ふことに付ては、前々から御説明致して居りますやうに、非常に嚴格な解釋を司法省としても農林省としても執つて居るのでございまして、永久に土地を取返さないと云ふことを僕に保證しろと言はれましても、是は出來ないのであります、是は永久のことは分りませぬから、私にも保證は出來ませぬ
それからもう一つ、唯此の點は法律にどんなに強い規定がありましても、そこには耕作する人達の方に於きまする條件も相當必要なのでありまして、此の第九條に於ては、濫りに地主が土地を取返すことは出來ないと云ふことを規定して、耕作權を確保致して居るのでありまして、一町歩が殘りまする結果出て來ます小作制度に付きましては、是は小作料其の他の小作條件に付ての改善と云ふことで、一應は處理致して居るのでございます、是は成程今一町歩殘すと云ふことは、非常に不徹底だと云ふ御意見を持たれる方もあるかも知れませぬが、假に全部一應自作にして見ても、此の經濟として常にさう云つた靜態の状態に於て、是が永久に置かれるかと云ふことになれば、是れ亦保證出來ないと思ふのであります、やはりそこには相當の變化と云ふものをどうしても認めざるを得ないのでありまして、唯是は、現状に於ては一町歩と云ふ事柄に付て、それを保持して居つて、一町歩以上の土地の兼併は何處までも防いで、其の限りに於ては耕作者の地位を安定させて行く、斯う云ふ趣旨でありますので、其の點に付ては十分御諒解を願ひたいのでありまして、經營面から經營を殖やすのには、始終自分が全部の土地を買はなければ經營が殖やせない、斯う云ふことになるのも、是れ亦如何かと云ふ感じがするのであります、例へば現在二町歩自作して居る者が三町にしたいと云ふ時に、常に將來長きに亙つて自分が買はなければ經營を殖やすことが出來ない、面積の擴張が出來ないと云ふことになり、是は農地制度としては固定したものになると思ふ、それよりも或る程度の合理的條件の下に小作制度を許して置いて、少しづつのものを、小作と云ふ形に於て經營を殖やし得る餘地があつた方が宜いと思ふのでありまするが、是は意見の相違と云ふことになるのでありまして、一町歩程度のものを許したことは、唯地主に一町歩の自作を認めるから許したと云ふのではないことは十分御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=144
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145・玉井潤次
○玉井委員 私は農林大臣の意圖する所は、必ずしも地主に一町歩自作させる爲に、と考へられて居ないと云ふことには了解しても宜いのであります、了解しても宜いのでありますが、法律がさうある以上はさうなるではないかと私は言ふのであります、農林大臣はそんなことは必要ないと仰しやつて居りますが、地主の立場から、一町歩どうしても自作をしたいと云ふやうな考へ方をした時は、第九條と云ふものが物を言うて、結局は取上げて來るのであると云ふことを私は申上げて居るのであります、隨て今申上げるやうに、又農林大臣の言はれるやうに、私共は三町歩だとか一町歩だとか、何町歩とか云ふ、そんなことを考へて居るのではありませぬ、さうなると結局は地主と云ふものの殘滓がある、それは要するに封建制度の殘滓があると云ふことであります、さうしますると、日本の民主主義化は出來ないではないか、又土地の取上が行はれ、色々な問題が起きて來るのだからいかぬ、だから此の際全部解放するのが理論上も正しいし、それが宜いのだと、斯う私は言ひたいのであります、殊に又御注意をして置きたいのは、今のG・H・Qの指令の中にも、何も地主に土地を殘せよと云ふことはないと思ふのであります、解放せよと書いてある、さうすると、其の指令には何等牴觸する所はない、併し唯今の御話に依ると、物の移り變りには一定の階段がある、斯う云ふやうに言はれたやうに私は理解したのでありますが、其の階段と云ふものが私には考へられぬのであります、やり得ないことであるならば、階段も已むを得ないでありませう、やり得ることに何を苦しんで階段を付けて居るか、其の階段も非常に危險の階段を付ける必要が何處にあるか、斯う云ふことを私共は考へて居る、詰り先刻私が申上げたやうに、封建制度の諸侯がなくなる時に、一萬石は殘すと言つたらどう云ふ結果になつたらうかと云ふのと同じことであります、詰り階段ではない、階段はやり得ない時階段を付ける、二階まで假に十尺ある、上れないから一段付けるのであります、一尺上るには何も五寸の階段を付ける必要はないのであります、此の際綺麗さつぱりに取つた方が宜いのであります、取られる方もさつぱり致します、憖じつか首を半分繋いで置と言つても繋げない、其の點で、私は今後の農村の民主化と云ふものは、此の一町歩が癌になつて破壞するのではないか、其の點に關して今一遍はつきりした御答辯をして戴きたい、大臣は私の質問が分らぬと言ふし、私は大臣の答辯が分らぬのであります、何だかごたごたしたやうで分らない、私とあなたばかりの話ではないのだから、皆が分るやうに言つて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=145
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146・和田博雄
○和田國務大臣 私は此の一町歩のものが存在して居るからと云つて、日本の民主化が崩れるとは思ひませぬ、それは小作關係、言換へれば土地所有の關係の内容が、從來の自由な土地を持つて居つた時よりは、本質的に變るのでありまして、其の點に關する限りは、私は玉井さんと御意見を異に致します、玉井さんの御提出になりました問題は、寧ろ一町歩を殘すと云ふ問題ではなくして、日本の此の狹い土地と人口全體との間の關係と云ふ問題としてならば、私はそこに意味を認めるのでありまするが、此の農地改革に關する限り、私は一町歩の保有を許したからと云つて、日本の民主化が是から崩れるとは考へて居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=146
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147・玉井潤次
○玉井委員 どうも平行しては困るのです、平行しないやうに、私は交叉點を置きますが、結局斯う云ふのであります、私の言ふのは、一町歩が殘つて居る爲に、今に地主も土地を取りたくなるだらう、唯小作させる爲に一町歩持つた所で意味をなさないのでありますから、今の大臣の御意見のやうに、小作料は限定されて居る、又農村は總ての小作人が自作農になる、隨て政治的な勢力も得ませうし、社會的の勢力も得て來る、さうしますと、地主が一町歩の土地を持つて居ることに於て何等の價値はないのであります、唯それを今後自作することが出來ると云ふことに樂しみを持つて居る、さうすると其の土地を自作することに掛かるのであります、是は人情だと思ふ、それを自作する方法を執つて來た場合に、今申上げるやうに第九條の規定は、自分が行つて自作は出來る、さうするとそこから地主對小作人の問題が起きて來るのでありますから、綺麗さつぱり打捨てることにしたら宜いと思ふ、一體何處に一町歩を殘させる方針があるのか、はつきり聽きたいであります、意見の相違だと言つて居ないで、其の點をはつきり聽きたい、何故一町歩を殘すのか、さうすれば將來どう云ふ風に宜くなるのか、宜くなる所と、一町歩殘してやりたいと云ふ氣持を、率直に聽かして戴ければ宜いのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=147
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148・和田博雄
○和田國務大臣 是は前から私御説明して居ることなのでありまして、それ以外には別段ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=148
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149・玉井潤次
○玉井委員 もう一つ御聽きしたいのは、土地を買受けて國營になさるのでありますか、國營土地に付ては法律から言ふと一寸議論が起るのであります、御承知のやうに、澤山の占用地があります、私共の縣あたりは何百町歩と云ふ占用地がありまして、其の占用地は現在に於ては全部が耕作に使はれて居る、其の占用地に付ては、占用權者と耕作して居る人達の間に複雜な關係が起きて居るものが澤山あります、其の占用地は、見樣に依つては公共の用に供するとも言ひ得るかも知れない、併し見樣に依つては、完全に耕作されて居る土地なのであります、それは一體此の解放する土地に入るのか入らないのか、自作農創設計畫の中に入るのか入らないのか御聽きしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=149
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150・和田博雄
○和田國務大臣 其の占用地と云ふのは、河川敷地の國有地のことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=150
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151・玉井潤次
○玉井委員 さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=151
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152・和田博雄
○和田國務大臣 それは國有地でありますから、それを直接國が買ふと云ふことはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=152
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153・玉井潤次
○玉井委員 買ふ方ではありませぬ、賣る方であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=153
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154・和田博雄
○和田國務大臣 それは例へば河川敷地でありますと、一寸賣拂ふことは出來ませぬ、雜種財産などに組替へられるものでありますれば、是は賣ることが出來ることになると思ひます、現在河川敷地と云ふ名目になつて居るものだと賣拂ふことは出來にくいかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=154
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155・玉井潤次
○玉井委員 さうすると實際問題としては、河川敷地と廢川敷地の區別は、河川の用に供して居なければ河川敷地にならないのです、それですから、今私が申上げた土地は、全部廢川敷地處分にして、政府は之を處分すると云ふやうな方針でありますかどうか、是は農林大臣だけでは一寸御考へ出來ないかも知れないから、他の方の方と御相談の上、他の機會に御聽かせ願ひたいと思ひます
それで、さう云ふやうなことに關聯して最後に御質問したいことがあります、今までの御考へでありますと、自作農を創設することに於て、農民は要するに生活の安定を得るのだと云ふやうな御考へであるやうであります、自作農創設特別措置法の第一條にも其のことはちやんと書いてありますが、私共の考へでは、耕作者の地位の安定は、必ずしも自作農になることではないのではないかと云ふやうな氣持が第一にあるのであります、第二には、勞働の成果を公正に享受すると云ふことである、勞働の成果を公正に享受すると云ふ意味も、要するに先程色々御指摘になつたやうに、資本主義社會に於て都市と農村の對立關係が存在して居る内は、斯う云ふやうなことも自作農創設に依つては免れることは出來ないのではないかと云ふやうな氣持が私はして居るのであります、然らば如何にしたら出來るだらうか、政府の今企てて居られる自作農創設と云ふものが、一體何故行はれるのであるかと云ふならば、先程私が申上げたやうに、農村の封建的色彩を拂拭すると云ふことが本當の目的であらうと思ふ、隨て土地を地主から全部取上げると云ふこと自體が目的でなければならない、だから自作農を創設すると云ふやうなことは、G・H・Qの指令の中にもあるやうでありますが、妙な自作農を創り出したならば、農村の耕作者の生活の安定と云ふやうなことは考へることが出來ない、それに付て色々の理由を申上げて見たいのでありますが、例へばG・H・Qもさう云ふ點を色々心配して居られる、一遍自作農にしたが、其の自作農が再び失敗に終らぬやうに斯く斯くのことをせよと云ふやうな規定が全部あるやうでありますが、其の色色言はれて居る方策と自作農創設と云ふものを同時にやらなければ、私は是は非常な危險に曝されると思ふのであります、例へば今直ちに問題になります協同組合法と云ふやうなものは、まだ出來て居ない、何れ議會に出すと云ふ、所が其の協同組合法の出方と出來方に依つては、農村の自作農が安定するとは言ひ得ないのであります、例へば食糧の配給とか色々な面から見ましても、今言ふやうな制度が行はれて居るならば、私は駄目だと思ふ、一方に於ては農業用の農機具、肥料其のの他ものが今日のやうな配給制度であるならば、農村は成立たないのであります、結局農村に資本主義がある内は、農村と云ふものは成立たないと思ふ、それでは資本主義を廢めて社會主義にすると云ふやうなことは、それこそ先刻農林大臣が言はれたやうに、階段が要るかも知れない、隨てそれはどの程度まで社會主義政策を採入れるかと云ふ點に掛つて居るでありませうが、唯さう云ふ政策が今茲に現はれないで、今までの形に於て土地を買へと云ふやうなことは、農民をして再び苦痛に陷れる大きな原因になると思ふのであります、隨て土地の買收は、地主の一町歩を括めて全部即時御買ひなさい、さう云ふ問題が全部解決出來た時に、初めて自作農を創設した方が宜いのではないかと云ふことを、私は痛感して居るのであります、又實際農民の側から言ひますと、是も色々な人が色々に言はれたのでありますが、土地を餘り買ひたくないのだと云ふやうなことを頻りに言はれて居るのであります、なぜさう云ふことが言はれるかと云ひますと、私の想像でありますが、例へば土地の價格は平均六百何十圓になると云ふ御話です、それの三分二厘の利息でありますから、はつきりした計算は分りませぬが、年賦になりますと一年の割當は約三十五、六圓になると思ひます、さうしてそれに公租公課を見ますと、今までの公租公課は政府から戴いた此の資料の通りだと十五圓幾ら掛つて居るのであります、是で約五十圓であります、所が最近の農地の税金は非常に高くなつて居りますから、此の計算は違つて來るのであります、少くとも一段歩に對して年々納めるべき金は約七十圓位に當然なるのであります、所が一方に於て先に農林大臣が言明されたやうに、七十五圓の一石計算は動かぬのだ、是で行くのだと云ふことになると、假に一石の計算の土地としても七十五圓納めれば宜い譯であります、あとは小作人としてやれば宜い、所が一方に於て今申上げるやうに、土地を買ひますと、七十五圓取られて非常に危險に曝されるのであります、其の危險は何かと云ふと、米價の下落の時が危險、もう一つは、年々今年のやうな豐作であるならば議論はありませぬが、それが不作の場合は一體どうしたものであらうか、成程自作農創設法第二十七條の規定に依つて、米價が非常に下落した場合の救濟規定はありますが、中途半端の場合の救濟規定はない、惡作の場合の免税規定は誰も考へて居ないのであります、又年賦金の支拂でありますが、年賦金は小作契約ではないのでありますから、自ら別の規定でなければ調整法の適用がない、それを一つも考へて居ない、さうするならば、年々二石收穫があるとするならばいざ知らず、それが惡作の場合に於ては、土地を買ふことが寧ろ自作農の沒落の原因になるのであります、それを私は痛感するのであります、だからして私が今申上げるやうに、當局としては、土地を賣ると云ふことは先づ考へぬでも宜いのではないか、買上げることを先づして戴きたい、さうして又是は實際の問題としても、二箇年の内に此の農地を然るべく按配して賣らうと云ふことは非常に困難な問題であらうからして、それを靜かにやつて、其の間に色色法律を作つてやつて戴きたい、と云ふのが私の考へ方なのであります、それに對して大臣の御意見を御聽きしたい、是は非常に重大な問題と私自身は考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=155
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156・和田博雄
○和田國務大臣 自作農を創定しました後、それだけでなくして、他の色々な政策をやるべきだと云ふ點に付ては、今まで色々な方々に御答へを致しましたやうに、私も當然必要だと思ふのであります、殊に協同組合法案に付きましては、農林省としましては一應の成案を得て居る譯であります、其の構想は、從來の産業組合のやうに、單に流通部面に於て協同を致しまするのみならず、今後起つて來まする、例へば村内での水の調整であるとか、或は耕地の整理であるとか、又農機具其の他畜産の共同の所有であるとか、さう云つたやうな生産面に於ても、同時に協同することに依つて生産力を上げて行くことが出來るやうな、協同組合と云ふことに致して居るのでありますが、今囘は金融措置令其の他の金融上の色々な法律が出まして、農村に於ける團體に付ての各種の影響がありまするので、此の點を暫く整理致しました上で協同組合法案を出しました方が、殊に農地制度の改革をやりまする其の基礎の上に致した方が宜しいと思ひまして、同時に準備は致して居つたのでありまするが、今囘は延ばした譯であります、次には是非提出致したいと考へて居る次第でございます
それから小作人で置いておいて、唯國家が土地を買ふだけにして置いて、ゆつくりと自作農の創定をやつたら宜いではないか、斯う云ふ仰せでありまするが、是は我々と致しましては、やはり自作農にするのは二年間にやると云ふことになつて居りまするので、是は國家が買收致しまして、二年間に此の事業を完遂致す考へで居る次第であります、殊に農産物の下落、不作等に對する自作者の保護に付ての御質問でございましたが、それは本法に依りましても、御承知のやうに、農産物價格の下落に付ては年賦償還金、又土地の流失其の他非常なる不作に付ても同樣な規定を設けまして、將來の經濟變動から來まする點に付ては一應の保護を致して居るのであります、私はどうも小作人と云ふ地位に日本の農民を置いておくと云ふことに付ては贊成致し兼ねるのでありまして、やはり適正なる土地を所有する耕作者、自作農と云ふものに小作人の地位を引上げて行きますことが、現在に取りましては必要だと、考へて居る次第でございますので、此の點に付ては是非自作農の創定をやつて行くことが適當だらう、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=156
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157・玉井潤次
○玉井委員 今何か惡作の場合にも保護規定があると仰しやつたのですが、それは自作農創定の所にさう云ふ規定があるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=157
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158・和田博雄
○和田國務大臣 惡作ではありませぬ、土地の流出其の他であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=158
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159・玉井潤次
○玉井委員 それは何條の規定になるのでありますか、第二十七條の規定ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=159
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160・和田博雄
○和田國務大臣 さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=160
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161・玉井潤次
○玉井委員 それにはないのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=161
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162・和田博雄
○和田國務大臣 第二十七條でさう云ふことをやる積りで居るのであります、要綱にははつきりとそれを認めて居るのでありまして、是は第二十七條でやるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=162
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163・玉井潤次
○玉井委員 私も、必ずしも自作農は反對だと云ふことは一つも言はなかつたのであります、結局今申上げるやうに、土地を買つても自作農が却て滅びるのではないか、隨て色々の制度が出來ない内は、土地を賣ることは今少し御考へになつてはどうかと云ふことを言つて居るのであります、それには私が言つた色々の理由があります
それからもう一つ斯う云ふことを申上げて見たいのであります、土地を實際小作人が小作して本當にやり得ない大きな原因は一體何處にあるかと云ふならば、小農經營が其の原因を成して居ると思ふのであります、一方から言ふならば、小農經營であるが故に多角型農業が出來るのだ、隨て農村は立つのだと云ふ考へ方もありませうが、現在のやうな小農經營であると、一切のものは資本には堪へ得ないのであります、要するに、小資本の弱點がそこにはつきり現はれて居る、隨て私共が健全なる農村を作らうと云ふことを考へる場合に、如何にしたならば農村の一番の力になることが出來るだらうと云ふやうなことに頭を惱まされるのであります、所がさう云ふ考へ方から行きますと、今の農付は幾つかの小さな小作人に分けてしまふよりは、之を纒めた一つの形にして農業經營をやることが本當に正しいのではないかと云ふ議論に私は逢著するのであります、所が今度逆に日本の實際の實情を考へ、農民の氣持を考へる時に、又そこに矛盾を實は持つて來るのであります、それが私共の非常な苦痛なのであります、そこで私は唯斯う云ふことは言へやうと思ふ、少くとも農村の本當の生活の安定には、農民諸君の小資本化を防いで、此の資本を合一した所の一つの形にしなければならぬ、隨て經營の面に於ては、協同經營と云ふやうな形が出來得るだけ廣範圍に行はれ、一方に於ては、今度は購買の方に於ては、是も一緒になつた一つの經濟機構に於てやつて行きたいと、斯う云ふやうなことを考へて行きたいのであります、所が今までの農業會であるとか──或は政府がどう云ふ立案をされるか分らぬ中に主張するのはどうか知りませぬが、少くとも協同組合と云ふやうな組織は、要するに働く農民を基礎とした考へ方ではあり得ないと私は思ふのであります、それはなぜあり得ないかと云ふと、それ自體が政府の本質であります、それだからあり得ないと思ふ、隨てそれがあり得ないと云ふことにするならば、今の協同組合法と云ふものを作る前に、寧ろ私共の同僚細野君あたりが提唱して居る小作法と云ふやうなものを作つてやつて、一方に於ては耕作權を確立させ、一方に於ては其の組織に於て、今私共の言ふやうな仕事は勿論出來るのであります、現在我々の方に於ては消費組合運動にまで展開して居るのでありますから、さう云ふ風にした方が寧ろ宜いのではありますまいか、之を強ひて自作農を作れば破壞されるのであります、作らぬで置くことが寧ろ日本の今後に於ては正しいのではないか、殊に來らんとする農業恐慌に對し、之に個々の小作人が對抗しようと云ふことは想像に餘りあるのであります、だからして、私が考へて居ることは正しいと云ふやうなことを申上げたいのでありますが、それに對して政府の御所見を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=163
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164・和田博雄
○和田國務大臣 どうもはつきり致さないのでありますが、小作法などを作つて小作人は小作人の地位に其の儘させて置くと云ふことをしても、それが零細なる經營の小作人であると云ふ現状には變化はないのであります、其の問題は、それが小作人であるからと云つて、小作法を作つて見た所が、零細農から來る不利と云ふことには一寸も變化はない、現在の農地調整法に於て、既に小作法の立法の内容の大部分は包含致されて居ります、是れ以上の小作法を作ると云ふことは、恐らく殘つて居ります問題としては、唯團體協約の問題と、闇小作料をどうするかと云ふ問題が小作立法の内容としては恐らく殘つて居るであらうと思ふのであります、耕作權の安定其のものの問題も可成りの所まで觸れて行つて居るのであります、そこで殘ります問題は、是等が現實に於て自作農になりましても、或る程度殘ります所の零細なる經營の生産力をどうして高めるかと云ふ問題になつて來るだらうと思ひます、其の時に、是は現在のやうな技術、それから農機具其の他の生産の條件から言つて、全面的な協同經營と云ふことは中々行はれないと思ふのであります、さうでなくて、やはりそこにはさう云つたやうなものに付ての適當な協同性を協同組合と云ふ形で持たせて、部分的な協同の産業なり、經營に依つて之を高めて行くと云ふ方向しかないのではないか、斯う考へて居る次第でありまして、玉井さんの仰しやるやうな、協同の力に依つてそれ等のものを引上げて行くと云ふ點に付ては、私も同意見なのでありますが、唯違ふ所は、私はやはり出來るだけ耕作する者には必要なる生産手段である土地を持たすと云ふこと、其の上に協同の組織に依つて協同化して行くことが、寧ろ小作人の状態に於てそれを協同化して行くよりも「ベター」ではないか、實は斯う考へて居る次第でありまして、協同組合法案其のものは、從來のやうな單なる技術面のものだけでなくて、やはり生産面に付ても相當の協同出來る形に致して居るのであります、唯斯う云ふことは考へられるのであります、日本の農村には、今度の土地の解放に依りまして相當の自作農が出來るのでありまするが、其の資本の點に於ては、農業に對してやはり國家が相當の資本を投下致しまして、國家的に是等のものを援助して行くと云ふことは、どうも現在の状態に於ては必要だらうと思ふのであります、勿論我々が考へて居りまする協同組合に付ては、加入脱退は自由なのでありまして、それが農村の農民達が自由に作り得る自主的な團體であると云ふことに付ては異論はない所でありまして、さう云ふものに致したいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=164
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165・玉井潤次
○玉井委員 實は申上げたいことは澤山あるのですが、色々と時間を取つて皆樣御困りだと思ひますから、簡單にもう一點だけを御伺ひ致したいと思ひます、是は何か逐條みたいなことを御聽きして一寸申譯ないのでありますが、自作農創設特別措置法の附則に「昭和二十年十一月二十三日現在における事實に基いて」云々と云ふ規定があるのでありますが、之に基いて疑問を一つ持つことがあるのであります、それは先程も議論が出ましたが、耕地整理の場合なのであります、耕地整理の場合で、假換地が此の時より遲れた場合であります、此の後になつて假換地が出來た場合、さう云ふ場合に於ける耕作權の關係は一體どうなるだらう、さう云ふ場合に於ける所の所有權の關係は一體どうなるかと云ふ點であります、是が實は相當大きな問題として現在の新潟縣に現はれて來たのであります、御承知のやうに、耕地整理組合と云ふものは、耕地整理が目的でなくして、小作人整理が目的で常に行はれて居るのであります、それだから大きな問題が起きて居るのでありますが、それは今の此の規定に依つて一體どう云ふ影響を受けるか、私は此の規定の意味は、昭和二十年十一月二十三日以後に於て色々移動があつたとしても、それは農地買收計畫にはどうでも出來ると云ふに過ぎないと思ふのでありまして、一應の押へをしたに過ぎない、さうすると、今度は實際に於て農地委員會が買收する場合に、それを相當と認めるならば、其の後の買收も法律上の效力を生ずるのではないか、さうしますと今私が申上げたやうに、耕地整理の結果、昭和二十年十一月二十三日以降に假換地が行はれて、それに對して小作人が出來た場合に於ては如何なる取扱をすべきであるか、是が相當ややこしい問題になつて居りますから、一應御聽きして私の考へを決めて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=165
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166・和田博雄
○和田國務大臣 質問の意味が能く分らないのですが、例へば昭和二十年十一月二十三日以前から耕地整理事業をずつとやつて居つた、さうして例へば十二月になつて假換地處分をして其の土地をやつた、其の場合にそれ等の土地に付て買收出來るかどうか、斯う云ふことでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=166
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167・玉井潤次
○玉井委員 さうでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=167
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168・和田博雄
○和田國務大臣 それは勿論買收出來る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=168
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169・玉井潤次
○玉井委員 それは買收しようと思へば出來るかも知れませぬが、假換地は確定的の所有權ではないですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=169
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170・和田博雄
○和田國務大臣 さうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=170
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171・玉井潤次
○玉井委員 唯一時の形式的のものである、さうすると、取るのは別でありますが、農地の移動が行はれて居る譯ですから、其の移動が行はれて居る中に元の農地と云ふものは消滅してしまふ譯です、だから今度は假換地の後に於て所有權が出來てしまふ、斯う云ふものが出來て居る譯であります、さうすると今の問題は相當ややこしい問題が出て來るのでありますが、唯買收するかしないかと云ふことは私も異論はありませぬが、買收するにしても誰を對象にして買收するか、所有權は耕地整理の場合は、どうもあの法律ははつきりして居ない、私にも能く分らないのでありますが、所有權は耕地整理組合へ一應移るのではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=171
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172・和田博雄
○和田國務大臣 假換地處分をやつたものは結局土地臺帳等に依つて處理します、是は出來るだけ換地處分をやらせますけれども、それ等の處分は、假換地中のものに付ては從來の土地臺帳──登記簿ですか、それに依つて處理して行く、斯う云ふ方針を執ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=172
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173・玉井潤次
○玉井委員 それは法律上の根據は何處にあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=173
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174・和田博雄
○和田國務大臣 法律上の根據と云ひますと、結局土地買收は所有者から買ふ、斯う云ふことになつて居ります、自作農の對象になる土地は現所有者から買ふのでありますから、隨てさうなる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=174
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175・玉井潤次
○玉井委員 所が耕地整理法に依つて登記簿は封鎖されるのですよ、封鎖されますから登記はなくなつて居る、御買ひになる方法はない譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=175
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176・和田博雄
○和田國務大臣 登記が封鎖されると云ふのはどう云ふのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=176
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177・玉井潤次
○玉井委員 それは移轉其の他は許されないで、登記簿は封鎖されて居るのですから、耕地整理では…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=177
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178・笹山茂太郎
○笹山政府委員 耕地整理其のものに付きましては、所有權の移動は許されない建前になつて居ります、其の意味に於きましては登記簿は封鎖と云ふことになりますけれども、今度の農地の買收に當りましては、元の所有權者がはつきりして居りますから、其の所有權者に基いて法律に該當する農地は買收する、斯う云ふ風になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=178
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179・玉井潤次
○玉井委員 時間もありませぬから、私は是で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=179
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180・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは明日は午前十時より開會することと致しまして、本日は是にて散會致します
午後四時散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=180
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181・会議録情報3
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〔參照〕
自作農創設特別措置法案委員會要求參考資料
十一、現行農地關係法規(自作維持創設法關係共)
十二、農地開發營團の事業成績(面積、入植、耕地の現状)
十三、最近農地の増減府縣別調査表
十四、農家戸數、耕作別戸數、所有別戸數府縣別表
十五、全國農地賃貸價格段當收量(五箇年平均)及び小作料
十六、最近十箇年間に於ける田畑調
十七、開墾干拓計畫の府縣別内容
十八、本法案該當買上耕地面積府縣
別表
十九、各地方別賃貸價格及び収穫價調査表
二十、關東地方に於ける水田一町歩經營(一段歩米二石収穫、一石六百圓として一萬二千圓收入)五人家族(親二名、子供二名、雇人一名)の農家の一箇年の納税額調
(1) 地租
(2) 所得税
(3) 町村税
(4) 家屋税
(5) 縣税
二十一、昭和十九年及び二十年度主食類(米、麥)生産費算出の基礎調(石當)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00419460917&spkNum=181
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