1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月十八日(水曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 飯島祐之君 理事 山口光一郎君
理事 細野三千雄君 理事 富吉榮二君
理事 藤本虎喜君 理事 菊池豐君
磯崎貞序君 田邊讓君
三浦寅之助君 森田豐壽君
杉田一郎君 藥師神岩太郎君
江川爲信君 小笹耕作君
白木一平君 寺島隆太郎君
井伊誠一君 大澤喜代一君
堂森芳夫君 麻生正藏君
松本六太郎君 鈴木憲一君
増井慶太郎君 北政清君
山木武夫君
出席國務大臣
文部大臣 田中耕太郎君
農林大臣 和田博雄君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
物價廳次長 工藤昭四郎君
内務政務次官 世耕弘一君
農林事務官 笹山茂太郎君
商工事務官 鈴木重郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前日に引續きまして質疑を行ひます──藤本虎喜君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=1
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002・藤本虎喜
○藤本委員 本法案は、耕作者の地位を安定し、其の勞働の成果を公正に享受させると共に、一面農業生産力の發展と農村に於ける民主主義的傾向の促進を圖る爲には、確かに進歩的且つ效果的なものでありまして、贊意を表する次第であります、併しながら昔から鹿を追ふ獵師は山を見ずと言ふ、動もすれば地主と小作、或は小作相互の間に於て、有利な土地に付ては爭奪戰が起ります、併しながら條件の惡い土地には、希望者が少くて、農民の紛議が起る嫌ひが多分にあると思ふのであります、然るに一方、世界的の動向と致しまして、自由民主主義は近頃勞働民主主義に變じつつありますが、我が國の農村と致しましては、飽くまでも隣保相助の精神を維持育成することが大切であらうと思ふのであります、今一例を擧げて申しますれば、一農家を經營するに、主體たる勞力から見てみまするに、茲に青年がありまして二十五歳位で結婚を致しまして分家を致します、所が其の夫婦は勞力的に見ますれば一人八分位の勞力であります、併しながら數年經たずして子供が出來ますと、其の家の勞力はぐつと低下致します、尚ほ子供が段々増加致しますと、其の家の勞力は非常に低下致しまして、家計費は勢ひ増加するやうになつて來るのであります、斯くの如くして其の家が段々年を經まして、長子が農業的の手傳ひをするやうになりますと勞力は段々大きくなつて來まして、收入も増加するのであります、斯くの如くして長子が二十五歳位になつて結婚前になりますと、益益勞力は増加致しまして、其の結婚當時が最も多くの勞力が出て來るやうになります、其の家に孫が生れますと、今度は逆に段々勞力が減つて來て、弟、妹の結婚或は分家に依りまして、其の家の勞力は非常に減退し、主人主婦は初老に入つて來るのであります、斯くの如く勞力的に一家を眺めて見ますと、一農家に非常に盛衰があつて、それが波状をなすのであります、其の波長の長短は色々でありますが、各戸皆さう云ふことになるのであります、斯くの如く農家が一人立ちで農業を經營することは中々困難でありますから、數戸が共同一致の形で、隣保相助の精神でやつて行きましたならば、非常に巧く經營が出來ると思ふのであります、そこで本法案に於て小作地を相當程度に殘すと云ふことは、斯くの如く勞力に盛衰がありますから、是は必要なことと思ふのであります、其の他農村に於きましては、水田の灌排水、病蟲害の防除、或は道路、水路の修繕、又は冠婚葬祭等、共同一致でやらなければ本當の利益が、本當の氣持が出て來ないと云ふやうな弊害が非常に多くあります、斯う云ふ部落の間で相反目するやうな、波亂に花を咲かすやうなことは禁物であります、そこで此の點に十分注意して懇切なる指導を行はなければ、農村の傳統の温情、相愛、美風が害される虞があるのでありまして、有機的協同體の育成にも支障を來すかと思ふのであります、政府の御意見を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、御尤もな御意見でありまして、實は日本のやうな小農、殊に自家勞力を主にした小農國でありまして、又農業經營の面から行きましても、是は將來唯勞力的ではなしに、資本的にも集約的な傾向をどうしても採つて行くことの必要な國に於きまして、家族數の變遷に依つて此の經營の面積が變化して來ると云ふことは、社會が漸次進歩し變化して行くことを考へますと、是はどうしても頭の中に入れて置かなければならない點でありまして、丁度「ロシヤ」の「チャーノフ」が家族勞力の變化と、經營面積の變遷等に付て非常に詳しい學問的な分折を行つたことがあるのでありますが、日本に於てもやはりさう云ふことは當然考へられるのであります、そこで先づ地主の保有面積を一町歩と認めましたのも、さうして土地制度として、將來合理的な内容を持つた小作制度が殘ると云ふことも、私共と致しましては一面さう云ふ經營上の一つの變化を考へて必要だらう、斯う信じて認めた譯であります、勿論農村に於きまする協同の問題は、今後土地改革に依りまして農村を構成致しまするものが變つて參る譯でありまするが、今後は益益是が必要になつて來るのであります、農村の所謂協同社會と云ひますか、協同社會としての農村と云ふものにあつては、凡ゆる面に於ての住民の協同と云ふことの必要なことは申すまでもないのであります、其の點に於ては、私共と致しましては此の農地制度の改革を行ひましたならば、それを基に致しまして、協同組合法案と云ふものを作りまして、どうしてもそこに協同にやつて行き、從來農村に於て殘つて居つた良い傳統と云ひますか、さう云ふものは何處までも活かして行きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=3
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004・藤本虎喜
○藤本委員 本法案の實施後、日本農業の特殊性を助長致しまして、世界的農業に對抗する爲には、どう云ふ風にやれば宜いか、私は日本農業は世界一の集約農業でありまして、單位面積から多く收穫すると云ふことは世界に冠たるものであります、今次戰爭に依りまして領土は益益狹められ、明治維新當時よりも狹くなり、尚ほ其の當時の人口の二倍半となつたと云ふことが言はれるやうになりまして、益益集約農に徹底する必要があると信ずるのであります、其の爲には益益科學技術の指導徹底が必要であらうと思ふのでありますが、政府の御所見を拜聽致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=4
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005・和田博雄
○和田國務大臣 私も左樣に考へて居ります、今後日本の農業は一面どうしても集約化と云ふことが行はれなければならぬのであります、唯其の集約化を行ひまする時に、今までのやうに唯勞力的に集約化して行くことは出來るだけ避けなければならないのであつて、やはりそこには相當の資本を投下して集約化して行くと云ふ方法を採らなければならぬと私は思ふのであります、さうしますと、結局は農業技術の問題、經營の問題に打突つて來るのでありまして、それ等の點に付きましては、何と言ひましても今後日本の農業の生産力を高めて行く上から言つて、是が一番基本的な問題でありますので、例へば農機具の問題、其の他肥料、それから實際上の農業の、色々な栽培又は其の他の技術と云ふものに付きまして、之を一體どうして日本の農民に普及滲透させて行き、農家は實際上の經營に付て、新しい技術を自信を持つて自分の經營に適用してやつて行くかと云ふことに付きましては、只今農事試驗場の人達を總動員致しまして、地方に指導農場を設置し、其處で技術の滲透を行ふと云ふ、あの技術滲透の線に沿ひまして、今後の日本の農業が進むべき技術的な面に付て、色々と檢討を致させて居るのであります、それから經濟的な面に付きましては、今囘幸ひ豫算として認められました農業綜合研究所に於きまして、是は何と致しましても世界の農業との接觸と云ふことは不可避でありますので、さう云ふ海外の情勢及び海外の需要の動向、其の他色々の面に於ける發明發見、さう云つた事柄に付て廣く材料を蒐集致し、大きな流れを見失はないやうにしまして、日本の農村の指導に付て遺憾なきを期したいと思つて、官制はまだ公布に至りませぬが、其の人達を今色々選擇中でありまして、是は是非近い内に發足致したい、さう云ふ準備を今から致して置きたい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=5
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006・藤本虎喜
○藤本委員 只今の技術滲透の方法等、案が立つて居りますれば承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 技術滲透の方法は、五箇町村に一箇所、約三町歩の指導農場を設けまして、其の指導農場に、農事試驗場の技師であるとか、或は農業會の技術員であるとか、町村の實行組合の組合長と云つたやうな人が集まりまして、其の地帶に於ける色々な特殊の事情を十分勘案しまして、そこで其の農業の技術に付て謂はば技術の隣組を作つて、お互ひに實地にそれを檢討し、各各が自信を持つて指導出來るやうな態勢を整へまして、そこで確認されました技術を、村へ歸りましては、實行組合長が謂はば技術の實踐班長となりまして、技術滲透の實踐に當つて行く、大雜把に言へば、斯う云ふ體制であります、それから中央の農事試驗場、又中央の農事試驗場の支所と云ふやうな所に於ては、技術の學問的な研究を主にして行きたいと考へて居るのであります、私は技術のことは餘り詳しくは存じませぬが、大體今の日本の技術と云ふものの、廣く言へば科學と云ふものの各部面に於ける發達は、もう其の部面だけの科學では駄目なのでありまして、やはり各方面の科學の協同を俟つて、初めて新しい境地が拓ける段階になつて來て居るのであります、例へば農業の方でも、農業科學の發達だけでは駄目なのであります、やはり物理學であるとか、化學であるとか、他の學問の協力を得ませぬと、どうしてももう駄目な所まで來て居るのであります、さう云ふやうな意味て、農事試驗場に於てはさう云ふ純粹な、本當の科學的な學問の檢討をやらせて行きたい、斯う考へて居るのでありまして、是は幸ひに此の戰爭中に技術の協同と云ふことが言はれたのでありますが、其の面を今後は強く活かして行つて、科學者が從來のやうな個人的な面だけでなく、個別的に働くと云ふのではなく、之を所謂「ミッター・アルバイト」をやつて行くと云ふ立場に立つて、本當の科學の研究をやつて行くと云ふ形に是非持つて行きたい、斯う考へて、中央に於てはさう云ふ學問的な研究を行ひ、地方に於ては、現在日本が持つて居る農業技術をはつきりと實地に付て確認して其の確認された技術を村の末端へ行つて實際の農業をやつて行く人達が普及して行く、斯う云ふことをやつて行きたい斯う思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=7
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008・藤本虎喜
○藤本委員 今までも農事試驗場の試驗成績其の他研究されたものが出て居るが、第一線に是が滲透して居ないと云ふことが、日本の増産を擧げる上に於て非常に缺陷になつて居るやうに思ひます、そこで其の滲透の方法として、政府は指導農場を作られたと言うて居りますが、其の指導農場を作られました結果、どう云ふ風になつて居るかと云ふと、我々の地方では、其の開設が中々困難であり、進展が中々旨く行かないと云ふやうになつて居るやうであります、是は第一經費が非常に少い、政府は一指導農場に一萬四千圓位の金を組んで居られるやうでありますが、内譯は、場長一人、畜産技手一人、農夫二人と云ふやうなことで、人的經費が非常に少ない、又牛一匹買ふのに五百圓計上して居る、馬一匹買ふのに五百圓、家一坪四十圓、五十圓と云ふやうなことになりまして、迚も開設が出來ないと云ふやうな情勢でありまして、只今の情勢からすると、少くとも十四萬圓位は要ると云ふやうなことになつて居りますので、此の經費を飛躍的に増加せなければ、唯やつたと云ふ、お茶を濁しただけで何等效果はないと思ふのであります、其の經費を増額すること、それからもう一つの缺陷は、指導農場は縣農事試驗場が持つて居る、然るに人間は縣農業會が持つて居ると云ふやうなことで、責任が何處にあるか分らないと云ふやうなことが、一つの缺陷になつて居るやうであります、でありますから、此の指導農場に對しては施設、人事、經營等は一切責任の主體を農業會にやつてしまふと云ふことで、責任を負はしてやつたならは旨く行くのではないか、此の二つの點であります、經費の問題と、責任主體の問題に付て大臣の御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=8
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009・和田博雄
○和田國務大臣 其の點は御尤もであつて、今囘の技術滲透の問題を議する上に於て一番問題になつた二點であります、それで經費の點は、あの豫算を組みました時と今と相當異つて居りますので、是は増額を追加豫算か何かで致さうと思つて計畫致して居ります、それから第二點の、農場の所謂所有と人間との關係でありますが、是は私共は何でも彼でも農業會が全部持たないと協力出來ないとか、技術の指導が出來ないと云ふ考へを實は打破して貰ひたいのです、今まで技術者がお互ひに、私が冒頭に述べましたやうに、相協力と云ふことをやらなかつた點を、今度はさうでなくして、指導農場を中心にして、それが農事試驗場の所有になつても、技術としては農業會の技術者も、農業學校の指導者達も一緒になつてお互ひに協同してやつて行く、斯う云ふやうな氣風に實は向けて行きたいと思つて居るのでありまして、我々の方と致しましては、只今さう云ふ形で、農業會の方にも協力も求め、又青年學校其の他の方面にも協力を求めてやつて行く積りで居るのであります、是はお互ひに同じ方向で、結局農民の爲に此の技術を滲透させて行く譯でありますから、それは方向が全然違ふ譯ではない、やはり同じ方向に向いて居るのでありますから、そこは是非廣い心で協力し合つて行くと云ふことに、日本の技術員と云ふものの考へ方も多少變へて行かなければならぬと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=9
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010・藤本虎喜
○藤本委員 農林省の御考へは稍稍分つたやうでありますが農業會にも弱い所がありまして、最近非常に經費に困つて居る、此の場合其の他の經費が非常に少い、そこで農業會が之を持つて居りますと、非常に澤山金を打ち込んで行かなければならぬ、六十箇所も一囘に作りますと少くとも三十萬圓位の金を注ぎ込まなければならぬと云ふ實情にある、一方農業會では、御承知の通り最近の技術員費と云ふものが待遇改善に依りまして非常に窮境にあると云ふやうな情勢でありますから、此の二つを考へ合せて農業技術員の補助を増額して貰ふと云ふことと、此の指導農業までも入れて、一つ考へて戴かなければ、唯ものを取りたいとかやりたいと云ふ考へではない、責任が何處にあるか分らないと云ふので、餘所のものに一體そんなに力瘤を入れる必要があるかと云ふやうな、理解のない役員、其の他色々なことが出て來て農業會としても中々やれないやうな事情にあるやうであります、それでは國家として甚だ困ることになりますから、農業會のものだからやれと云ふやうなことにすれば、幾らか宜いのではなからうかと云ふ考へからで、何でも彼でも取りたいと云ふ譯ではない、此の點御諒解を御願ひして置きます、要するに、技術員の技術全體の補助の増額と此の技術指導の問題に絡んで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=10
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011・和田博雄
○和田國務大臣 御話の點は私の方としても能く分つて居るのであります、それ等の問題に付ては、農業會自體の色々な改組の問題とも絡んで來ますし、又實際上技術員が本當に技術の指導が出來まするやうに、我々の方としても今後の問題として極力其の點は考へて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=11
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012・藤本虎喜
○藤本委員 次に自作農の維持育成と農産物の價格に付て御伺ひしたいと思ひます、農産物價格は、次の生産を力強く維持し、之を持續する爲には、少くとも生産費を以て、又他物價と睨み合せた所で決めるのが宜いと思ふのでありますが、政府の御所見を拜聽致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 勿論農産物の價格が其の他の物價と均衡が取れますることは望ましいのでありまして、是非さうしなければならぬと思ふのであります、唯一般の物價と言換へれば貨幣の購買力を安定せしめると云ふ問題と、一應貨幣の一般購買力が安定しましても、經濟の流れに於て貨幣の購買力其のものは安定して居つても、個々の商品の價格が其の時々の需給關係其の他に依つて變動することは別個に考へなければならないのでありますが、只今のやうな多くの商品に付て國家が統制的な公定價格の制度を執つて居りまする下に於きましては、それ等のものがやはり一應の均衡の取れたものであると云ふことと、それから其の決められました價格其のものに依つて、それ等の商品の再生産が可能であると云ふ、此の二つの要素を充たす所に決めるべきだ、斯う我々は考へて居る譯であります、農産物の價格に付きましても、勿論生産費と云ふものがどう云ふ「コスト・プロダクション」を取るかと云ふことに付ては、色々の議論があると思ふのでありますが、生産費が是からの農産物を決定致しまする上に於て大きな要素であることは言ふまでもありませぬ、と云ふのは、今の多くの商品に付ては、自由市場が存在せずして、國家が公定價格と云ふ一つの基準の價格を決めて居る譯でありまするから、謂はば日々の自由市場に於ける日々の市價の變動と云ふものは、一應そこでは除外された考へ方を以て行つて居る譯でありますので、それ等のものには寧ろ或る程度長期の觀察をする必要があるのであります、「コスト・プロダクション」と云ふものがそこに於て主要なる要素をなすと云ふことは、是は疑ひないことだと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=13
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014・藤本虎喜
○藤本委員 どうも理論は旨い工合に行つて居るやうでありますけれども、最近の米價問題に致しましても、大幅に引上げれば、他の物價との關係「インフレ」の關係、二重價格の關係で、財政上困るとか、今年は豐作で外國からも入るだらうと云ふやうな、色々なことで、新聞に依りますと、米の價格が不自然に下げられて居るやうに考へるのであります、斯の如くなつて行きますれば、此の農家の生活安定、或は生活の維持向上と云ふ點はどうであらうかと考へられるのでありまして、此の觀點からもう少し研究して行かなければなるまいと思ひます、尚ほ一つ納得の行く御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=14
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015・和田博雄
○和田國務大臣 米價の問題は、我々の立場と致しましては食糧管理法できちんと大體生産費を基礎にして、決めるやうになつて居る譯であります、農林省としては買上價格に付ては生産費を基礎にして決めて行つた譯であります唯消費者の價格の方は、「インフレ」の問題とか、其の他各方面の考慮が拂はれる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=15
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016・藤本虎喜
○藤本委員 生産費の立て方に付ては、政府は色々な方面に委託してやつて居るやうでありますが、委託されて居る人が篤農家で働き上手である爲に、割合生産費が安いと云ふことになつて居ります、去年の如きも二石四斗と云ふ計算であつたが、實際は全國的には一石四斗に當ると云ふことで、政府の考へて居る所と大分開きがあるやうであります、此の點は見方の相違でありますが、我々考へましても、或は全國農業會あたりで計算致したのを見ても、あれは納得行かない點があるのであります、そこで農林省の御調査以外に、他の方も十分採入れられまして研究して戴いて、公正な價格にして戴きたい、それからどうしても農家が納得行く値段が出來ないとすれば、農家と致しましては生産に要する生産資材、或は生活に要る必需品の價格を引下げることを斷行して戴きたい、或は是等の配給を農業會に一元化させて貰ひたい、他の方から配給させれば、米を持つて行かなければ貰へないと云ふ實情にありますから、是非さうして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=16
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017・和田博雄
○和田國務大臣 凡ゆる方面の生産費を參考にすると言はれますが、此の點は米に付ては實は食糧管理法でちやんと決まつて居りますので、二千戸のものに付てやりました生産費の調査を基礎にした譯であります、又御話のやうに、それ等の生産費の調査農家と云ふものは、農家の中でも謂はば良い方の農家だと思ひます、そこでそれ等の農家の生産費に付ては、其の農家程の技術も持たず、又精農でもない者よりも段當收量は多い譯でありますから、全般としては或は安く出て來るのでありますが、個々の農家が納得する價格と云ふものは、是は非常に高い限界の生産費を取らざる限りは事實上ないのでありまして、さう云ふ價格政策と云ふものは私は執り得ない、斯樣に考へて居る次第であります、是は自由經濟の時を御考へ下さればはつきり分るのであつて、自由經濟の時に於ても、實際上さう皆が納得する價格で米價が決まつたかと云へば、さうではない、農民の側から言へば大部分が納得しない價格で決まつた場合が多いのでありまして、其の點は政府としては、やはり農業の維持と云ふ點から生産費を基礎にして米價を決めて、日本農業の維持と云ふものを圖つて行く、斯う云ふ態度を執つて居るのでありまして、是は他のさう云ふ色々の判定を致します場合には、勿論我々としても參考に致すことは、現在でも致して居る譯でありまして、其の點はどうか左樣に御諒承を御願ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=17
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018・藤本虎喜
○藤本委員 今の生産資材と生活必需品の問題に付てもう少し承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=18
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019・和田博雄
○和田國務大臣 生産資材、例へば肥料でありますとか、農機具などに付きましても、是が價格の決定は今までの所は嚴密な原價計算を致しまして、其の原價計算に基いて價格を決定致して居るのであります、唯御承知のやうに、肥料にしましても、農機具に致しましても、非常に生産量が少い譯であります、原料が少い、又は資材の復舊が巧く行かない、さう云つた關係で生産量が非常に少い所へ持つて來て、色々の生産要素が上つて居る、さう云ふ關係で價格が非常に上つて出て來るのでありますが、個々の肥料の價格の決定其のものに付て吟味致しますれば、生産費内容に付ては相當嚴密な審査をして之を決定致して居るやうな次第であります、併し一面表面から見ますると、如何にも其の他の農産物價格と生産資材の價格の間の値上りの工合、其の他に付ての不均衡があると云ふ結果に相成つて居るのでありますが、是等の點に付ては、唯單に價格面だけに於て其の問題を直ぐに直して行くことは、實は中々困難を伴ふのであります、殊に今後日本の財政に於て補給金と云つた制度を止めてしまふ、さうして出來るだけ軌道に乘せて行くと云ふ方向を取りまする以上は、是はどうしても生産費を下げて行く、言換へれば生産量を片方に於てどんどん上げて行く、斯う云ふ方向へ、肥料にしても農機具にしましても向ひませぬ限りは、問題は根本的には中々解決しないと思ひます、併し政府としてはさう云ふ點は十分考へまして、出來るだけ一般物價の安定其の他の點から──是は非常に難かしい仕事でありますが、均衡が取り得るやうに、今度の價格の決定に於ては考慮して行くと云ふことになるだらうと考へて居る譯であります、私共が實際上肥料價格の問題を取扱ひました經驗から言ひましても、一番打突かりますのは、現在の日本の肥料工業にしても其の他の工業にしても、生産復興が農業程行つて居ないで、生産量の點に於て非常に僅かなものであり、又其の他の要素に於ても非常なる價格に當面する譯でありまして、其の點に付ては今後はやはり何等か全體として計畫的な一つの産業機構なら機構、又は農業との關係に於ても何か一つの計畫的な經濟安定の策を立てて、其の上で物價の一つの或る所の水準に於ける安定化と云ふものを目掛けませぬと、個々ばらばらに之を考へて居つたのでは、到底日本の工業の問題は解決出來ず、又今の事態を切拔けて行くことは中々難かしいではないかと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=19
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020・藤本虎喜
○藤本委員 今の生産資材其の他の點でありますが、私の御聽きして居る點は、如何にして農家の需要を充たすやうに生産して貰ふかと云ふことと、品質を向上して價格を引下げて貰ふと云ふことと、それから配給を農業會に一元化でもして貰はなければ非常に手に入れにくい、或は物を要求せられることが非常に困るのであります、特に最近農機具は、形は鍬の形をして居ても、實際は使へない、ああ云ふものを賣つて貰つては困る、農機具の統制を廢めて呉れと云ふ手紙が非常に多い、さう云ふ點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 御尤もなことでありまして、私も其の點に付ては、今後是非最善の努力を致したいと思ふのであります、農機具の點に付ては全くさう云ふものがありまして非常に相濟まぬと思つて居るのでありますが、是は實は戰後農機具工場に轉換した工場が相當あるのでありまして、それ等の轉換工場が實際上は農機器具に付ての技術を持つて居ないのであります、良い技術を持つて居るものも中にはあるのでありますが、大部分のものはさう云ふ技術を持つて居ない、そこへ持つて來て、農機具は御承知のやうに地方々々にそれぞれの特色があり、同じ鍬にしても、山形、秋田の方の鍬と關西方面のものとは違ふと云ふやうなことがありますので、それ等の點に付ての指導は、實は農林省としては商工省と相談して中央工場を指定した時には、唯單にそれが資材を持つて居るとか何とか云ふことではなくて、其の工場での生産能力又はそれ等の技術の點に付て相當の吟味を致し、又技術の點に付ては專門家を派してそれぞれ指導はして居るのでありますが、御話のやうな點がよく出て參りますので、其の點に付では今後とも十分需要者の側からの指導を是非して行きたいと思ひます、又配給の點は、屡屡御答へ致しましたやうに、報奬用の物資に付ては、末端の市町村農業會に於ては、原則として一元化して居る譯でありますが、其の他の必需品に付ては、只今の所從來の通り二元の行政になつて居るのであります、是等の點に付ては、上の方に於て各各の「ルート」に從つて末端へ流し、其の末端で是が一元的に巧く配給出來るやうに致しますれば、問題は大半解決致すのでありまして、それ等の點に付ては今後十分商工當局と──今も連絡を取つて話して居る譯でありますが──話合ひをして、是非問題を解決して行きたいと思ひます、それから肥料其の他の復興の點に付ては、今までと雖も金融其の他資材の優先的なる配給等に付て政府としても相當の努力をして居り、又業者の中に復興委員會を作らせまして、其の專門の技術者をしてそれぞれの工場を實際上見て廻らせ、復興の具體的な計畫を立てさせて居る次第でありまするが、是は工場に依つて相當の程度に進んで居ります、例へば昭和電工はもう第一期計畫は終りまして、今度は第二期計畫に移つて居ると云ふやうな形で、可なりの復興は致して居るのでまりますが、問題は何處まで行きましてもやはり石炭と鐵鋼の問題になつて來るのであります、石炭が掘れまして、良質の石炭が出ますと出ませぬとでは、現實に肥料の生産量に影響して來るのであります、それから復興の點に於きましても、鋼材其の他のものが窮窟でありますれば、それだけ遲れて來る譯でありまして、是等の點に付きましては政府としましては今後とも十分努力を致す必要があると私は考へて居ります、問題は實は何と言つても基礎的な、本當に基礎的な物資である石炭と鐵鋼の問題に、日本の産業囘復は懸つて居るのであります、其の點に今後とも色々の點で力を注ぐことが絶對に必要であると私は信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=21
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022・藤本虎喜
○藤本委員 諄いやうでありますが、今の價格の問題と、生産資材の問題に付て、どうも農家の方では非常に納得が行かない、總ての點から見て價格がどうも安過ぎる、それに加へて生産資材──肥料はさういんちきなものはないやうでありますが、一般に農機具の如きは、轉換工場が新圓を稼ぐ爲に何か農具の形をしたものを出すと云ふやうなことで、非常に農家は迷惑をする、斯う云ふやうなことではとても農家はやつて行けぬから、一つ品質の向上と云ふことにはうんと力を入れて、而も使ふ分位のものは出して貰ひたい、値段をもう少し下げて貰ひたい、さうすれば、米價は希望通り行かぬでも、次の生産が旨く行くと云ふやうなことになるから、さう云ふ點を徹底して貰ひたいと云ふ希望が非常に多いやうでございますから、其の點を政府の方では十分考慮して一つ善處されんことを希望するのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付きましては十分今後努力致したいと思ひます、殊に農機具に付ては如何に作りましても、御話のやうに役に立たぬ農機具を作られたのでは何にもならないのでありまして、是は農機具工場の監督を致して居る方の責任でありますのみならず、我々の方の需要者としての方面の責任でもありますので、それ等の點に付て今後十分に何等かの方法でさう云ふ非難がありませぬやうに致したいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=23
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024・葉梨新五郎
○葉梨委員長 商工省の工務局長が出席されました、農機具の製造工場の機能、又先程からあなたの御指摘なさつて居る、不適格な農機具を製作して居ることに付ては、農林省の技術的の指導も固より問題でありますが、商工省の指導が徹底しなければ是正されないことと思ひます、幸ひ工務局長が出席されましたから、此際工務局長に此の點を十分に納得の行かれるまで御質疑なさつたら如何かと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=24
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025・藤本虎喜
○藤本委員 それでは商工省の方に御聽き致しますが、農機具の生産に、轉換工場、遊休工場が新圓稼ぎの爲に色色なものを作つて出して居ると云ふやうなことがありますが、是が經驗がないと云ふか、或は兎に角新圓を掴めば宜いと云ふやうな氣持か知らないが、使へない農機具が非常に多いと云ふやうなことを農村に於て言つて居るのでありますが、其の監督や指導の方法、或は御意見等を拜聽したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=25
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026・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 御答へ申上げます、今御話のございましたやうに、農機具は特に需要が増大して居りまするので、此の厖大な需要を充足する爲に色々の工場を動員致しまして農機具の生産に當つて居るのでございまするが、御承知の通り農機具を作る指導監督の方法と致しまして、特に全國的に販路を持ち、又其の需要方面の小範圍の地區でなしに、全國的に配給を要するやうな所謂中以上の大きい工場に付きましては、農機具工業組合を結成致しまして、中央に於てそれぞれ工場別、品種別の生産計畫を立てまして、其の生産指示に從つて、工業組合が一手に之を收買致しまして、之を全國農業會を經由して各地方に配給を致して居るのであります、大體此の中央の統制組合の統制下にありまする主要な農機具「メーカー」は約二百程あるのでありますが、其の中特に重要な機種を作つて居るやうな工場に付きましては、之を重要工場と指定を致し、又工場に於きまする資材の入手状況、或は製品の生産の推進に當るやうな爲に協力官と云ふものを配置致しまして、十分に指導監督を致して居るのであります、唯何分にも資材其の他の入手が不十分であります爲に、所定の計畫に對しましては尚ほ不十分な點があるのでございまして、之に付ては原材料或は燃料の獲得に色々と協力致して居るやうな状況でございます、今御話の通り、此の中央の農機具組合所屬の工場に付きましては、從來も相當の經驗を持ち、今申上げましたやうな指導監督も致して居りまするので、是等の重要工場指定を受けて居りまするやうな工場の製品には、さう云つた特に非難を受けるやうな製品も出て居ないと存ずるのであります、又工業組合と致しましても、全國農業會に納入致して居りまするので、さう云つた弊害も相當に制限を受けて居るやうになつて居るのでございます、今御話のございましたやうに、終戰後軍需工場等が一時轉換を致しました工場に付きましては、今御話のやうにやはり經驗も不十分であり、又其の需要が大きい餘りに急いで粗製濫造と申しますか、さう云つたやうな弊に陷るやうな所もございまして、此の點に付きましては、工業組合を中心に致しまして、特に指導強化に努めて居るのであります、尚ほ一部には此の工業組合の傘下に入りませぬで、全國農業會と直結致しました轉換工場も二、三あるのでありますが、是等に付きましても農業會方面とも御連絡を致しまして、今のやうな粗製濫造の起きないやうに、各地方の需要に「マッチ」したやうな機種のものを生産するやうに努力中でございまして、何分轉換勿々の際には、今御話のやうな實際に使へない農機具が出來たと云ふことに對しましては、十分責任を痛感致して居るのでありまして、今後是の技術上の改善、製作上の指導に付きましては萬遺憾なきを期したい、斯う云ふやうに考へて居る次第でまります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=26
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027・葉梨新五郎
○葉梨委員長 此の際委員諸君に御諮り致したいと思ひます、先日來商工當局の出席を希望された質疑者が多數あつたのでありますが、種々の事情の關係もあらうと思ひますが、御出席がなくて今日初めて主管工務局長が出られたと云ふやうな状況であります、農機具、肥料等に關する關係は最も重大關係を持つて居るに拘りませず斯樣な状況になつたことは、勿論委員長の手落ちでもありますが、甚だ遺憾とする所であります、幸ひに本日工務局長が出席されたのであります、藤本君の農機具、肥料に關する質問に關聯しまして、此の際委員諸君から關聯質問として此の問題の御討議を願つたら如何かと思ひます、御贊成であれば藤本君の質疑を中心に關聯質問を許可致したいと思ひます
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=27
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028・藤本虎喜
○藤本委員 農機具の問題は、調製農機具は大體餘り變らないが、耕作農機具は地方毎に變つて行く、同じ縣内に於きましても鍬の形や幅と云ふやうなものが非常に變る、私は熊本縣の選出でありますが、熊本縣の鍬に付きましては特殊の肥後鍬と云ふものがあります、一部には肥後鍬以外のものを使つて居りますが──同じ肥後鍬でありましても、地方に依りまして、土壤の粘重な所には幅の狹い穗の長いやうなものを使ふ、土壤が非常に輕鬆な所では幅の廣い穗の短かいやうなものを使ふと云ふやうなことで、同じ熊本縣の内でも、同じ名前の肥後鍬に付きましても非常に地方に依つて變る、それを如何にして其の農家の希望を充たすやうな鍬が出來るかと云ふやうなことに付きましては、農業會や或は農林省あたりと緊密な連絡を取つて貰はなければ、質は良くとも使ひつけない爲に、或は其の地方の土壤に適しない爲に是が使へぬと云ふやうなことにもならうかと思ふ、でありまするから、あなた方の指導監督と云ふ點は、もう少し微に入り細を穿つてやつて貰はなければ、本當の増産に寄與することは出來ないと思ひます、其の點をもう少し採入れて貰ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=28
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029・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 只今御話の點は洵に御尤もでございまして、我々も實際各地方々々の農業の實情に即應した農機具の生産をすることが眼目であることは勿論でございまして、唯是の生産のやり方と致しましては、今御話のやうに、各地方の府縣農業會、府縣農業會傘下の市町村農業會等の實際の現場現場に於ける實情を、それ等の農業會系統を通じまして全國農業會に其の需要の機種、或は今御話のやうなそれぞれの地方別の需要を御提出願ひまして、之に對しまして農林省に於てどう云ふ風な種類の農機具を、どの程度生産するかと云ふ風なことの、生産計畫と申しますか、需要量と申しますか、十分商工省とも御連絡の上、此の需要量を決定して戴く、其の需要量に從ひまして各「メーカー」別に生産指示をする、斯う云ふ風に相成つて居りますので、其の點に付ては尚ほ特に需要方面たる農林當局とも十分御連絡を申上げまして、今のやうな地方別の實需に即應するやうに努力したいと思つて居ります、尚ほ一般的には、中央に於て生産統制を致して居りまする農機具の外に、御承知の通り、各府縣別の農機具の工業組合がございまして、それぞれ地元に於ける地方的の農機具に付きましては、今の御話のやうな各府縣別の需要は、其の府縣の農機具工業組合で取纒めまして、其の府縣毎に於て製造致しましたものも相常地元に出て居る譯でありまして、業者の數から申しますれば、是等の各府縣別の地力にありまする農機具「メーカー」が生産して、それ等を地元に配給を致して居るものが相當多數あるのであります、業者と致しましては全國では約二萬程度の業者がある譯でございます、是はそれぞれ地元の實情に應じた地方的の農具を作ると云ふ建前に於きまして各都道府縣別農機具工業組合が其のやうな任務に當るやうに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=29
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030・藤本虎喜
○藤本委員 次に肥料の問題に付て少し御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=30
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031・葉梨新五郎
○葉梨委員長 一寸御相談申上げますが、農機具關係を一通り濟まして肥料に御入り願つたら如何かと思ひます、あなたの農機具に關する御質疑は此の程度で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=31
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032・藤本虎喜
○藤本委員 大體其の程度です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=32
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033・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは他の委員諸君で農機具に關する御質疑のある方は關聯してどうぞ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=33
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034・田邊讓
○田邊委員 只今一應の御話もございましたが、私山口縣でありますが、地方に於て非常に鋤やなんかの種類が多い、私も農業會に關係がありますが、之に付きまして縣の知事あたりも、どうしても統制する必要があると言つて居りますが、差當り九十種もある、是では農家は有無相通ずることが出來ないと云ふ關係もありまして、非常に農家も困つて居る、而もそれが百三十圓も四十圓もすると云ふことて、非常に農村が困ると云ふ問題が起りまして、どうしても修理工場を作らなければならぬと云ふので、今山口縣では修理工場を農業會が指導して作つて居りますが、資材がない、野鍛冶を集めて作らして居りますが、先刻御話があつたやうに、軍需工場なんかに居つた技術屋は何れも是まで機械を作つて居つたので、農機具と云ふことに付ては、鍬でも鎌でも、作つても切れない、ともすれば粗製濫造であつて、一度使ふと鎌でも切れなくなる、鍬が割れると云ふ有樣でございまして、非常に農家は困つた、戰爭中はそれでもまあ辛抱してやつて居りましたが、斯う云ふ風に終戰になりますと、本當に農業をやらうと云ふことになれば、農機具はどうしても生命であるから、農業會の指導の下に修理工場を澤山作る方が宜い、郡で一箇所と云ふ風にして居りますけれどもそれでは距離の遠い所は、其の修理品を持つて行くのにも、今日は交通が不便な爲に持つて行けないのでありますから、どうしても町村で一箇所位持たなければならぬと云ふやうにして、それも農業會と交渉が濟んでやつて居ります、所が資材がない、折角工場が出來ても資材がない、酸素もないと云ふことでございまして、非常に困つて居る、是等は是非とも當局に於て資材を圓滑に廻して貰ふと云ふことにしましたならば、野鍛冶も澤山居りますし、又機械工場に働いて居つた人も──是等は農具は餘りやつて居りませぬ、酸素でやるとか云ふやうな農具は至つて脆弱であります、本當に堅固な農具は腕で以て是まで本當に暖簾を持つて居ると云ふやうな野鍛冶も居りますから、さう云ふものに任してやれと云ふことになりませぬと、どうしても農具は出來ないと云ふのでございますから、どうか是等に適當の資材を豐富に廻して貰ふと云ふことが望ましいのであります、方々で見たり聞いたりしますと、相當資材はあるのでありますが、どう云ふ風にそれが廻つて居るのか私共甚だ不可解でありますから、其の邊も篤と御調べになりまして、縣の農業會を通じて資材を豐富に廻して貰ふと云すことを私は此の際希望も致し、尚ほそれに付ての局長の御所見を伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=34
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035・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 今御話の通り、新しい農機具の生産も不十分でございますし、又農家經濟の觀點から申しましても、成べく修理工場で此の不足を補ふと云ふことは御尤でございます、それが爲に修理工場等の普及を御圖り願つて居ると云ふことは、洵に結構なことと存じます、唯今も一寸申しましたやうに、全國には是等の農機具關係者も從來の者が約二萬から各地方に散在して居ります、成べく斯う云つた從來の經驗者を御利用願ふやうに特に御願ひ致したいと考へます、是等の野鍛冶業者に付きましては、やはり各府縣別に野鍛冶の工業組合を結成致しまして、此の系統を通じて資材の配當を致して居るのであります、隨て今後資材の入手等の關係もございまするし、假に今後新しく整備されて參りまする修理工場或は野鍛冶業者と云ふやうな方方は此の組織に參加して戴きまして、其の配給の系統に從つて資材の入手の出來るやうに御取計らひを願ひたいと存じます、唯問題は、今も御話がございましたやうに、何分是等の修理用資材を潤澤に配給すると云ふやうなことも出來ませぬので、やはり戰災等に依つて出て參りましたやうな屑鐵等の中から、其の修理用に使へるやうなものを選擇致しまして修理用に配當する、或は銑鐵も是等の古銑を配給すると云ふやうなことに依つて今賄つて居るのでありますが、之に付きましても尚ほ不十分でございまして、中央から各府縣に別に配當致しまする新しい物動計畫上の配當資材は極めて少量でございまして、此の點尚ほ多數の地元市町村の方には不十分であらうと存じます、之に付きましても漸次資材の入手確保に努力致して居ります、特に食糧増産と云ふ關係からも、農機具には資材配當上も特に考慮を拂はれて居るのでありますが、御承知のやうに現在は新しい生産は殆どないと云ふに近いやうな生産状況でございまするので、新規資材の配當が少いことは御指摘の通りであると存じます、尚ほ民間其の他にありまする資材の流れ方が必ずしも適正でないと云ふことでございますが、是等も先般來實施して居りまするやうな隱退藏物資の供出等に依りまして出て參りましたやうなもの、或は軍の所有して居りましたやうな特殊物件等も特に此の農機具方面には割當をして戴いて居るのでありますが、尚ほ不十分であることは我々も全く同感でありまして、是等の資材或は修理用に必要である硼酸であるとか硼砂であるとか云つたやうなものの配給に付きましても、今後一層努力を致したい、斯う思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=35
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036・和田博雄
○和田國務大臣 修理の點ですが、是は御話のやうに、只今は此の農機具の元の資材が、物動から廻つて來る資材が非常に少いのです、それで農機具の生産状況は、今まで農家が持つて居つたもの、消耗して居つたものを補填して行くと云ふ程度に過ぎないのでありまして、隨て修理と云ふことが非常に大きな必要になつて來るので、之は巡囘の修理班を作りまして、農林省としては地方廳と連絡を取つてやつて居る譯でありますが、只今の御話のやうな、各農業會が例へば修理工場を造ると云ふのも結構でありまするが、何かやはり巡囘の修理班みたいなものを作つて、簡單に修理出來るものはこつちから出て行つて修理をしてやつて行く、斯う云ふやうなことでもやつて戴けると非常に宜いのではないか、斯う思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=36
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037・麻生正藏
○麻生委員 今の農機具に關して關聯質問を致したいと思ひますが、具體的な問題で御意見を伺ひたいと思ひます、私は富山縣でありますが、富山縣では、此の農機具に付きまして戰爭中から生産も少いし、又修理等に付きまして非常に不便でありました爲に、當業者と農業會とで共同出資を致しまして工場を造つた、所が資金の面竝に工場擴張等に付て不便でありましたが爲に、當業者の出資を買收して農業會直營の工場にした、所が資材の配給を受けることになつて、地方の方へ統制組合の方から受けるやうに致しました所が、農業會の直營工場では資材の配給は出來ない、何等か有限會社かさう云ふ組織でなければいかぬと云ふやうなことで、折角直營工場に致して農村に向く組織にしようと云ふことにしましたが、それを又有限會社に戻さなければならぬと云ふやうな事情があつたのですが、斯うしたことは製造業者の繩張爭ひと申しますか、商權擁護と申しますか、さう云ふ風なことから起るのではないかと思ふのですが、商工省としてそれに對する御考へはどんなことになつて居りますか、商工省としての御方針はそんな御方針でなくても、事實の面に於て、先程仰しやいました農機具統制工業組合等に於て、内實の面に於て、さう云ふ直營工場などをやるものに對しては資材をやらない、何とか彼とか言つて其の方にはやらないで、さうした工場の興ることを防いで居ると云つたやうな面があるのではないでせうか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=37
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038・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 今御話の、農業會直營の工場は農機具工業組合に加入させないとか、資材を配給しないとか云ふやうなことはないと存じますが、資材配給の「ルート」から申しますと、系統的に各都道府縣の農機具工業組合を經由して配給して居りますので、さう云ふ意味に於て偶偶一工場が農業會直結と云ふことで組合の「メンバー」になつて居られなかつたと云ふやうなことが原因ではなからうかと存じますが、私は農業會其のものが工業組合の「メンバー」になり得ないと云ふことは考へて居りませぬ、具體的に尚ほ聽きまして、それが富山縣の工業組合に加入して居られるかどうか、其の點に付きましては調査致しまして、善處致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=38
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039・麻生正藏
○麻生委員 私の希望したいのは、若しも現在さう云ふやうな統制組合の規則なり何なりの場面に不都合の點がありましたならば、さう云ふ不都合な點を打開して、農業會あたりが直接生産をやる場合、それが圓滿に出來るやうに御圖りを願ひたいと思ひます、兎角統制組合等の規則の上に於ては、從來のものを餘りに保護する立場から、其の弊害を除去することが出來ないと云つた風な殼の中に閉籠つて居ると云ふやうなことの爲に不都合が生じて居るのを、我々は實際の面に於て屡屡見るのであります、尚ほそれに關聯して電動機の修理、是等は戰爭中から今日に至りましても、特に小型電動機の修理に付て、之を常に其の修理の專門工場に持つて行くと云ふことになると、先程から屡屡御話が出て居りますやうに、米を付けて持つて行く、金の點に於きましても非常な闇價格で高いものを持つて行かなければならぬ、そこで農民は泣き泣き仕方がないから、泣き泣きそこらの實行組合で集めて、或は五合づつ一升づつ集めると云ふ風なことが事實あるのでございます、それ等のことを矯正するのには、どうしてもやはり農業會あたりが直接に修理工場を持つてやらなければならぬ譯であるが、いざ修理の職工を入れて機械を備へてやらうと云ふことになると、資材の面に於て從來の系統以外には流さないと云ふやうなことで抑へられて居る、そこで厭や厭やながら仕方がない、泣きの涙で元の所に持つて來ると云ふやうなことが到る處ある、是等の點は、古資材を流す「ルート」に於きましても商工省としては餘程御考へになつて、さうして圓滑に生産者なら生産者が、所謂生産農家が困らないやうな考へ方でおやりにならないと、如何に商權擁護とか、從來の業者を守ると云ふやうな立場だけで考へて戴きますと非常に困るのみならず、斯うしたことが今日米價を決める上に於きましても非常な禍ひをなして旨く行かず、延いては供出が旨く行かぬと云ふことになつて居る、今日の米價六百圓或は五百圓が高いとか安いとか云ふことの問題は、農機具が圓滑に正當の工場より手に入るやうになれば、農民は何も餘計に高いものを要求するものではありませぬ、さう云ふ點は十分御考慮になつて、而して米の値段を餘り上げられないやうな國の事情であるとすれば、さうした部面を成べく生産者が困らないやうに、生産の衝に當る者をして生産の仕事に直接當らせるやうに、餘程誠意を以て御考へにならないと、商工省の方では能く行つて居ると思はれて居ることも、實際の面に付ては今私の申上げるやうなことで非常に故障が多い、それが又非常に農民の感情を害して居ると云ふ點が非常に多いのでありますから、其の點を裏の裏まで見拔いておやりになることを御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=39
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040・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 仰せ御尤もでありまして、商工省と致しましても、別に既存業者の權益擁護とか、新しい業者の進出を阻止すると云ふ意圖は全然持つて居りませぬ、具體的に言へば、農機具の修理工場に付ても同樣であります、併し只今御指摘にもございましたやうに、工場の資材其の他の配給が不足勝ちである關係から、十分從來のやうに簡單に需要を充足して貰ふ所がない、又一面經濟上の問題、今御話の價格の問題なり其の他色々の事情から、そこに自給體制と云ひますか、自ら調達すると云ふ傾向が一部にある譯であります、例へば紡績工場が自分の所で機械を造ると云ふ考へ方、或は印刷機械工場が製紙工場の關係を持つとか、或は「セメント」工場を經營したいと云ふ風に、自給自足體制に移行しつつある傾向が多少見受けられます、唯私共の一般的な考へ方としては、從來の專門的な是等の業者の持つ設備、經驗、技術を綜合的に活用して、其の方面の技能を活かすことに依つて必要なる需要を充たすと云ふ觀點から、是等の生産業者なり配給業者の組織化を圖り、それと同時に此の組織を通じて其の業界が本當に需要面に「マッチ」した公正な運營が出來るやうに努力は致して居るのでありますが、只今御指摘にもあまりしたやうに、末端に至りますと中中其の趣旨が徹底せぬ嫌ひのあるのは免れない次第であります、其の爲に價格にしましても、場當り的な要求をすると云ふ弊害は十分に認められるのであります、さう云ふ意味に於て、今後は資材入手の確保を圖ると同時に、適正な價格を守り、又需要面の必要に應じて適正なる活動の出來るやうな指導監督に努めたいと思つて居るのであります、併し現在の資材状況、或は設備状況から言ふと、部分的には、需要面に迷惑を掛け、其の結果需要者が自ら調達する爲に色々施設を講じ、資金を投ずると云ふ傾向が見受けられる譯であります、尚ほ地方的に需要を充たし得る工場がない爲に、農業會に於て電動機其の他の修理工場を設けられると云ふことは、既得權或は既存業者の權益擁護と云ふ意味から之を阻止する意圖は全然ございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=40
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041・北政清
○北(政)委員 私は、今尚ほ工業組合を戰時統制時代の儘統制される考へであるかどうか、伺ひたいのであります、其の理由は、只今麻生さんが言はれたやうに、工業組合は營利業者の集團であります、何處までも營利追求を目的とした人の集まりでありますから、採算の取れないものはやりませぬ、各農具は土地々々で殆んど違つて居りますが、戰時中之を一つの規格に當嵌めようとした、だから何處へ持つて行つても實情に合はないやうになつて居る、而も營利業者はそれを強制して賣ることが出來ます、左樣な形で何處までも行きますと農業の生産力を増すことは出來ない、是は實際に農民の必要とする品物を造つてやる必要がある、それには農業者自體の組織する團體が起つて行くことは當然である、是は營利を目的としてやるものではない、本當に使ふ爲必要なものを造らせることが必要である、過般長野縣へ行きました二萬挺の鍬も、殆んど鋼の入つてないものをやつて居る、私は、農機具は完全に商工省から離して、農林省でやるやうにすべきであると思ふ、之を商工省が握つて居ると云ふことは間違ひである、さうして其の必要とする資材に付ては、あるだけのものを廻してやるのが當然である、今農業會が工業組合の一員となつても、發言權もなければ、極めて微力でありますから、自分達の既得權を何處までも守つて行かうと云ふ業者とは一緒にやれない、農民の注文した必要なだけの品物は必ず量に於てやる、それで出來なければ按分しても立派に出來る、けれども今尚ほ工業組合の繩張りの儘で、商工省がやつて行かうと云ふのなら、是は大きな間違ひである、此の工業組合を根本的に解體する考へはないか、今度商工協同組合が出來るが、あれに依つてやる意思はないか、商工省は今尚ほ資本主義の牙城に立籠つて、農民を搾取の對象にすると云ふ手はない、殊に農機具の價格は滅茶々々である、我々は何故米の値が安いと言ふかと云ふと、鎌一挺何十圓です、肥料にしても硫安を一躍二十五倍に引上げた、こんなことでどうして農家がやつて行けますか、總てが營利本位、資本主義的である、是が今日農家を非常に困らして居る、其の結果は集荷も出來なければ、配給も出來ない、何處までも買出しでやつて行かなければならぬ、是が社會を困らせる大元である、之を根本的に改める意思はないかどうか、本當に日本の現状を考へて貰ひたい、之に付て當局の御所見を先づ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=41
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042・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 一般的の方針と致しまして、日本に今日行はれて居ります經濟運營の基本から申上げますと、今御話のやうに缺損するものを生産させることは不可能だと思ひます、併しながら今御指摘にございましたやうに、所謂營利本位、營利の觀點からのみ是等の組合が其の牙城に立籠つて獨占する、斯う云ふ意味の指導は全然して居りませぬ、勿論是等の工業も缺損を目的として居るのではない、其の製品は今御話の農機具に付て見ても、國家的見地から極めて重要な産業でありますので、其の國家的に重要な工業でどんなものを造つて行くかと云ふ爲の組織化でありまして、決して營利追求の爲の、不當な利益を求めて此の組合が活動して居るとは私共は考へて居りませぬ、唯是等の弊害に付ては十分其の是正を致したいと思ふのであります、尚ほ今後に於ても是等の工業組合が今後の資材、製品の配給面に於ける統制に付てどうやつて行くかと云ふ御話でありますが、それ等のものに付ては今後出來て來る協同組合も利用したいと考へて居ります、唯協同組合は御承知の通り、飽くまで業者の自治的な共同施設を目的とする組織でありまして、是はやはり業界の經營の合理化なり、或は技術の向上なりに依つて出來るだけ優秀な製品を安く造つて行くやうな、協同化の力に依つてそこに持つて行かうと云ふのが狙ひでありまして、唯利益を他の協同組合に依つて多くして行かうと云ふ狙ひではありませぬ、其の意味に於ても農機具に付て協同組合の設立されることを豫想致して居ります、尚ほ價格の面に付きましても、無論或る面から御覽になりますれば極めて高いと云ふやうな感じもあるかと存じまするが、之に依つて必ずしも農民を搾取すると云ふことではなくして、やはり之を生産するに必要な工員、多數の從業員、或は原材料、又それに必要な資金と云ふやうなことを考へ、それぞれ關係方面と御相談を致しまして、適正なりと云ふ結論の下に決定を致して居るのでありまして、單にそれの生産業者が利潤を儲ける、多い程宜い、高くして行かうと云ふ意味で決定を致して居る譯ではございませぬ、又其の結果は、農産物生産價格にも無論多大の影響がございまするが、必要なものはやはり生産して確保すると云ふ爲には、其の生産に必要な多くの從業員或は工費、原材料と云ふものの關係もございまするので、さう云ふ意味で決定致して居るのでありまして、決して業者の利益追求の爲に農民搾取の結果になるやうな意味で價格を決定致した譯ではございませぬが、色色な事情から極めて物價が高くなつて居ることは御話の通り同感でございまして、出來得る限り一般の經濟界の安定、其の他の情勢の變化に從ひまして、極力生産費の引下を圖り、又出來るだけ優秀なものを安くして、農村の農業生産に協力し得るやうに致したい、斯う云ふ心掛けで居ることだけを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=42
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043・北政清
○北(政)委員 私が只今申上げましたやうに、農村人のみが使ふ所の農具であります、其の使ふ人間の是れ是れを拵へて呉れと云ふ注文がありまするならば、營利業者であらうと、農業者の團體であらうと、同等の格に於て渡すべきであると思ひます、それを營利業者でなければやらぬ、あなたの今のは御説明に過ぎない、實際は利益の追求を圖つて、生馬の眼でも引拔きたい連中の集まりなのですよ、だからあなた方の所に持つて行く算盤は幾らでも上手に胡麻化せる、經費が幾ら掛る、人夫が幾ら掛る、是は子供を騙すやうなものです、實際に於て是でやられてしまつて居る、だから農業者自體が組織してやりまするならば、是は高ければ高くて宜い、それは自分等が背負ふのですから──そこに何等の營利追求がない、それをしないから農具の質が、どうですか、是でどうして農村の振興が出來ますか、如何に平坦地に使ふ農具でも、算盤に合はなければ絶對にやらない、是が營利業者である、其の形に於て今尚ほ終始しようとされるならば、商工省は大きな考へ違ひだと思ふ、何故に消費者に其の必要なものを造ることをやらして惡いか、又それなら工業組合に入れと言ふが、いざ入つて御覽なさい、何で資材を寄越しませうか、何のかんのと言つて寄越すものではありませぬ、小さな農具などは、こちらが先だとか何とか言つてやられる、私は農業行政と云ふものは完全に商工省から離れてしまはなければいかぬと思ふ、資本主義の牙城である營利主義で何處までも閉籠つて行かうと云ふのですから、農林省の所管に移して戴かなければならぬ、今のは御説明だけはさうであるが、肥料でも、何と言つたつて實際に於ては駄目である、御説明の通り價格に於ても役所の人は之を知らぬのです、今の肥料でも直ぐ分るのです、硫安の價格を二十六倍に上げなければならぬと言ふ、二十六倍に上げなければならぬのならば、どうして今まで事業を經營して來られたか、そんなものは早く消えてしまつて居なければならぬ、倍と云ふやうな話ならまだしも、一遍に、二十六倍と云ふやうな、こんなことを役所が認めて居ります、而も米なんかはどうです、たつた六百圓だの、三百圓だの、之を二足三文で以て買はうとして居る、まるで強盜なのです──強奪であります、斯樣なことをして一方營利業者に對しては何處までも忠實にやつて居られる、私達農民として斷じて斯う云ふやうなことは許さぬ、本當にあなたは農民に適當な農具をやると云ふことを眞劍に考へて御覽なさい、一言にして言へば、何の爲に營利業者を介在させなければならないのか、實に酷いものである、是等に皆やられてしまつて居る、それを今尚ほ守らうとして居る、今までの工業組合の儘、戰時統制の儘行かうと云ふことは大きな間違ひである、實に怪しからぬ、「マッカーサー」司令部から命令されて居るでせう、あなた方は「マッカーサー」元帥に對して何處までも反抗してやられる積りでありますか、どうぞ一つ其の御考へで根本的に研究し直して戴きたいと思ひます、是非御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=43
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044・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 色々御意見もございまして、辯明を致す譯でもございませぬが、唯商工省でやつて居る所は、農機具に付てのみ資本主義の牙城であり、其の他のものは資本主義ではないと云ふ譯でもないのでありまして、全般の問題と致しまして、今御話のやうに、先程も一寸御答へ致しましたが、農機具に付て地方の實需に副ふやうなものを造ると云ふことは、大眼目であることに異論のあるべき筈はありませぬ、隨ひまして唯是等の業者にどう云ふ事情があるのか、之を誰が造るかと云ふ其の組織化に付きましては、先程も申上げましたやうに、從來ある設備なり、經驗なり、技術と云ふものをやはり合理的に活用すると云ふことが、經濟運營の綜合的な觀點から見ても適當である、斯う云ふ觀點から農機具の專門工場もありまするので、之を商工省が主管致して居る譯であります、唯商工省と致しましては、此の農機具を造るのに、先程も農業會なり農業團體が造れば宜いではないかと云ふ御話がありましたが、結局はそこにそれぞれの設備なり、技術なり、資金なりと云ふものを必要とするのでありまして、個々の經營主體が農業會の名に於てやれば宜いか、或は農機具工業者の名に於てやれば宜いかと云ふ點に關する御意見のやうに承るのでありますが私共の考へと致しましては、今申上げたやうな、やはり從來の專門業者の技能、經驗、設備を合理的に動かすことに依つて、只今御話のやうな需要の充足は出來得る、又さう云ふ方へ持つて行くことが國家的な全體の運營の上から適當である、斯う云ふ意味で申上げて居るのであります、固よりそれぞれ需要者方面に於て、成べく必要なものは自給しようと云ふ一つの傾向があることは事實でありまするが、此の自給的な考へ、即ち物を生産するに必要な原料或は道具を總て一貫的に自己の手に掌握しなければ生産が出來ないかと云ふ、斯う云ふ考へ方になると存じますが、此の點は全體の國の經濟運行の綜合的な觀點から、必ずしも總て一業種に專屬する、所謂一貫的な專屬經營をせなければ其の目的が達せられぬものとは考へて居りませぬが、唯御趣旨の點は十分體しまして、是等の實需と生産の「マッチ」するやうに、之に必要な資材に付きましても、今御話がありましたやうに、特に必要なものに資材を充當して行くと云ふやうに致したいと考へるのであります、勿論材料も原料も少い關係から、今御話のやうに其の希望するものが總て充足すると云ふことは、今日の所まだ不可能でございますが、特に重要なものを先づ充足して行くやうに、重點主義の按配を致したいと考へて居るのであります、又工業組合の改組、今後の協同組合の運營に付きましても御話がございましたが、商工省としては、戰時統制と同じやうな思想を以て是等の統制機構の運營をして行かう、斯う云ふ考へを持つて居りませぬことは御諒解を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=44
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045・北政清
○北(政)委員 只今の御答辯は不思議です、今の工業組合の統制の儘で行つて戰時通りの考へでないと云ふのは話が合はぬ、又先程申上げました硫安でも、農民に一番重要な肥料が、一遍に二十六倍も引上げられました、斯う云ふ工業と云ふものは二十六倍も引上げなければ經營の出來ぬものだとすれば、是は疾くに潰滅して居りませう、何故に二十六倍にしなければならぬか、石炭の價格は倍にはなつて居るが、二十六倍にはなつて居ない、硫酸の價格にしても倍か三倍である、二十六倍になつた原料と云ふものは一つもない、勞銀にしても二十六倍になつたのは一つもない、斯くして硫安を二十六倍にした理由はどんな所から來るか、是は營利主義にあらずして何ぞ、利潤追求にあらずして何ぞ、而も昨年配給すべきものを今年に渡して、其の價格も二十六倍にして遡つて取つたでせう、斯う云ふやうなことをやらして、どうして大切な此の日本が起ち上れますか、あなた方がさうでないないと言はれるけれども、現實さう來て居る、二十六倍にしなければ其の工業が成り立たない理由を一つ言つて貰ひたい、どんな經營者がどんな算盤を取つたつて、一遍に二十六倍に値上をしなければならぬやうな工業が成り立つ譯はない、分り切つて居る、どうぞ其の點、どんな譯で二十六倍になるか、言つて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=45
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046・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 肥料價格の決定に付きましては、農林大臣が御決定になりましたので、私の方と致しましては是等の決定に付きまして色々と御相談は致して居りますが、決定の理由、公定價格形成の内容に付ては農林當局から御説明願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=46
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047・北政清
○北(政)委員 それは後で農林當局に能く聽きますが、あなたの方でもそれで適當なりとして同意されたのか、そんな馬鹿なことはないと反對されたのか、それだけ聽けば宜い、幾らの生産費が掛ると云ふ工業の内容は、農林當局よりあなたの方が能く知つて居られると思ふ、それを御認めになる時商工省は劃然反對したが、農林大臣が勝手にやつたと云ふことなら宜しいが、贊成したか反對したか、どつちか、其の點を御聽かせ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=47
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048・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 無論商工省も贊成を致して居りますが、農林當局、大藏省と御相談の上御決定願つたのでありまして、形式的に今農林當局に御答辯願ひたいと申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=48
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049・北政清
○北(政)委員 然らば御贊成になつたのだから、あなたの方の肚を聽かせて下さい、二十六倍も一度に上げなければならぬ工業が日本中何處にありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=49
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050・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 私今其の價格形成の時の詳細な資料を持つて居りませぬので、どう云ふ理由であるかと云ふことは一寸申上げ兼ねますが、一番大きい點は、先程も御話がありました石炭の値上りの問題、或は設備費の昂騰、人件費の値上りと云ふこともございますが、最も大きな理由は、御承知の通り肥料に付ては價格調整補給金の交付に依つて販賣價格は非常に低かつたのでありますが、今般此の價格調整補給金の交付を廢止致しましたので、是が加算されて居ることだと思ひます、細かい内容に付ては、御必要がございましたら追つて資料に依つて檢討して御説明致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=50
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051・小川原政信
○小川原委員 私は北海道の農機具事情に付て御尋ね致したいと思ひます、北海道の農業形體は、私説明するまでもなく、其の形體が甚だ違つて居ります、隨て農機具の製造も亦違つた行き方をしなければならぬ、斯樣に考へるのでありますが、農林省は新たに北海道に七十萬町歩の開拓を要望されて居りますが、之には「トラクター」を使はなければならぬと考へて居る、其の「トラクター」は一體農林省なり商工省に於てはどのやうな方法でやらせようと云はれるか、或は第三國から持つて來ようと云ふのであるか、之を製造してやらせようと云ふのであるか、其の點一つ御答へ願ひたいと考へます、それから北海道の農業は十八萬戸と押へて──多少數は違ひますが、大體の數を申上げて置きます──、「プラウ」に付ても「ハロウ」に付ても大體二十七萬挺と云ふのが至當であらうと思ひます、是は人に依つて違ひますが、大體左樣な考へ方であります、是等の修理の方法はどうするか、斯う云ふことです、今度は水田に使用する所の採草機、是も全く内地と違つて、北海道特有の馬力に依つてやる、此の採草機は大體將來に於ては九萬臺位を要するものであるが、本年度あたりは何臺位をやらうと云ふのでありますか、それから牧場に要する針金です、一體商工省は北海道に對して牧場の針金をどの位造つて居られるか、是は農林省と關係がありますので、農林省からあなたの方にどの位造れと云ふやうな示唆があつたのでありませうか、之と同時に釘が要るが、此の釘がどう云ふやうな實情になつて居るか、それから馬草刈機は大體二十萬挺要ると思ひますが、それが戰爭に依つて殆ど役に立たぬやうな状態であります、是等に對する所の修理の状況であります、鍬、「スコップ」も其の通り、さう云ふ細かいものが各各ございますが、あとは申さないでも大體の常識に依つて御判斷を願ひまして、是等の修理或は製造に付ては特段の方法を講じなければならぬが、其の方法はどう云ふ風にやつて居られるか、聞く所に依ると、室蘭の製鋼所に於ては是等の農機具の修理をやつて居つたが、石炭が出ぬので是が全くやれないと云ふことになつて居る、それ等に對する所の資材はどう云ふ風にして集めて居るか、又之をやらせるならば、農機具でも所に依つて出來ないものがあるから、之をどう云ふ風にしてやらせるか、工業組合ならば、何處と何處の工業組合が之をやつて居るか、斯う云ふ點を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=51
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052・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 今後の開拓計畫に伴ひます開拓用機械、「トラクター」、「トレーラー」と云ふやうな大型の開拓用機具に付きましては、農林當局の開拓計畫と、それに必要な「トラクター」の需要量を睨み合せて生産計畫を立てて居ります、開拓用機具機械に付ては、色々從來の軍需工場或は戰車工場と云ふやうなものの轉換を致しまして、現に其の生産に當つて居るのでありまして、特に又開拓用の斯う云ふ大型機械に付ては、それぞれ從來の技術を用ひる上に於て、特別の一つの組合とまでは行かないかも知れませぬが、關係の團體の一つの組織を作りまして、各工場の實力に應じ、又今まで經驗のあるものを造つて戴くやうに、組織化を致して、農林省の注文の開拓用の機器に付きまして生産に當つて居ります、其の他の「プラウ」、「ハロウ」或は馬草刈機、或は採草機と云ふたやうな一般のものに付ては、開拓用のものも合せまして、先程來申上げて居る農機具の生産計畫の一部と致して織込んで居るのであります、尚ほ中央計畫其の他に一部織込んで居ない特別のものに付きましては、開拓用機器と合せまして其の生産に當つて居ります、組合の擔當は、「トラクター」に付ては開拓用機器組合と申しますか、實は是は最近出來たので、名前もはつきり致して居りませぬが、斯う云ふ團體が擔當致して居ります、其の他の農機具に付ては、やはり中央で發注統制を致して居りますものは、農機具工業組合が關係を致して居ります、尚ほ個々の細かい地方的なものは、例へば北海道なら北海道の農機具工業組合が其の生産を擔當致して居ります、それから釘、針金に付てどの位北海道開拓用として農林當局から要求があつたか、之に對する生産はどう云ふ風にして居るかと云ふことでありますが、之に付きましては私釘、針金の方は直接の擔當でございませぬので、詳細は知りませぬが、やはり斯う云ふた鐵鋼民製品と申しますか、釘、針金等に付ては農林當局から食糧關係と云ふやうな一般的なものと致しまして、其の中に北海道の開拓用に引當てられるものも包含して御要求が出て居るであらうと存じます、是はさう云ふ食糧増産關係なり、或は山林關係、水産關係と云ふやうな需要別に農林當局から商工省に要求がありまして、之を物資需給計畫に組入れて配當致して居る、斯う云ふやり方でございます、今後斯う云ふたものは食糧増産なり開拓用の問題としてはどれだけの資材をどう云ふ風に配給したら宜いかと云ふことは、恐らく今後經濟安定本部に於て方針を御決定になる、斯う云ふことにならうかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=52
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053・小川原政信
○小川原委員 此の數量に付ては御示しを願へないのでせうか、數量を聽くことが第一と、是から相談してと云ふことでありますならば間に合ひませぬ、さう云ふ生緩いことでなく、常識的に、それならば斯う云ふことにして此の仕事が斯う云ふ風に出來るのだと云ふのでなければ、餘り抽象的でありまして役に立たぬと云ふことであります、今直ぐに農業をやらうと云ふのに、是から相談して資材を集め、鍛冶屋をやらうと云ふのでは、農業と云ふものはやることは出來ないのでありまして、直ぐ手取早くやつて行けるのが農業者の常識でなければならぬ、さう云ふ「ペーパー・プラン」を私は聽いて居るのではないのでありまして、其の數量は、先刻も申しました通り、どの組合がどう云ふ風にしてやつて居るか、配給なら配給でどう云ふ「ルート」を通つて行くか、なぜさう云ふことを御尋ねするかと云ふことは一々申上げなくても常識で分つて居ると思ふ、針金を呉れと云ふのに、三年も五年も經つてまだ來ないから御尋ねする、釘を下さいと言つても、三本か五本の釘を持つて來て、是で牧場をやれと言ふ、是が一體常識でありませうか、こんなことを聽くのは馬鹿らしいから言はなかつたのであります、そこに隘路があると信ずるが、あなたは御考へがあらうと私は考へたのでさう云ふことは申上げなかつた、ここに申上げたことは此の裏面を能く御察し下さらないといけないのであつて、私も子供ではないし、あなたも子供ではないのですから、物の通りの良いやうに、分りよく話されないといけない、此の點を御注意下さつて、もう一度私の申したことに對して御囘答を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=53
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054・葉梨新五郎
○葉梨委員長 丁度時刻でありますから休憩致しまして、午後は一時半から再開することにしたいと思ひます、尚ほ政府當局に於きましても、只今の資材に關係する問題、肥料に關係する問題は、農林、商工兩當局に於て能く御連絡の上御明確に各委員の御質疑に御答へ出來得るやうに、それまでに御準備願つて、午後一時半から此の問題を續行することに致します
午後零時三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=54
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055・会議録情報2
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午後一時五十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=55
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056・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午前に引續き會議を開きます午前中農機具の關係に付きまして農林、商工兩當局の揃つた所で結末を付けると云ふことに委員會はなつて居りますが、まだ商工當局の出席がございませぬ、幸ひ大藏大臣が出席して居られますから、大藏當局の方を先に願ひまして、後で商工當局が出席し次第、農機具の問題及び肥料の問題に入ることに致しまして、大藏當局關係から御質疑を御續行願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=56
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057・北政清
○北(政)委員 一寸議事進行で──實は私も大藏大臣に質問があります、極く簡單なので、藤本さんの大藏大臣關係が濟みましたら序でに御願ひしたいと思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=57
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058・葉梨新五郎
○葉梨委員長 簡單であれば左樣なことに致します──藤本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=58
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059・藤本虎喜
○藤本委員 我が國の農業は、地理的、氣象的關係で、年々歳々非常な災害を受けるのであります、其の災害を受ける量は、大體二二「パーセント」と云ふことに見られて居るのでありますが、從來自作農が小作農に轉落した原因は、此の災害に依つて非常に「スピード」を加へられて居つたやうであります、そこで此の際此の災害から農民を保護すると云ふ施設に相當の力を入れて戴きたいと思ふのであります、若しそれが十分出來なかつたならば、今度の自作農の創設も、丁度水の上或は糊の上に數字を書くやうなもので、後は消えてしまふと云ふやうなことになりはせぬかと思ふのであります、十分其の點を考へてやつて戴きたい、所で現在農業保險と云ふものがあるのでありますが、其の保險が米は一段歩に對して四十五圓、麥は二十五圓、桑は三十五圓、牛馬は三百圓、斯う云ふやうな程度になつて居るのでありますが、此の保險は、大體一段歩の生産量の八割から七割位を見て行かなければ、再生産に差支へがあるのではなからうかと考へるのであります、隨て米に對しましては四十五圓を九百圓程度に引上げて貰ひたい、それから麥に對してはそれに大體率を求めた程度にし、桑もさう云ふ風な程度にして、馬は少くとも只今一萬五千圓位しますから一萬二千圓位に上げて貰はなければならぬ、牛は今一萬圓位の程度であるから八千圓位の程度に引上げると云ふやうなことに致しまして、政府と致しましては附加保險料竝に再々保險料に對して斯う云ふやうな率で金を出して戴かなければいかぬと思ふのでありまして、尚ほ之を完全に行ひますのには、町村の共濟組合の事務費或は保險組合の事務費に或は燃料組合の事務費と云ふやうなものも、此の時局に相應しいものにしなければならぬと思ふのであります、其の點に付きまして農林省竝に大藏省の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=59
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060・和田博雄
○和田國務大臣 農業保險に付きましては、先般も御説明致しましたやうに、現在の農業保險は、例へば災害事故の範圍の問題、其の他其の保險金等に付て、相當現在の實情に合はないやうなことになつて居りますので、是が改正に付ては農林省の方で研究中でありまして、出來るだけ早い機會に是非具體案を得て實行に移したいと思つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=60
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061・石橋湛山
○石橋國務大臣 大藏省へも御尋ねでありますが、只今農林大臣が答へられたやうな譯で、何れ農林省の方と打合せまして、大藏省として處置すべきものと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=61
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062・藤本虎喜
○藤本委員 只今大藏、農林兩相から御答辯を得て非常に力強く考へて居りますが、偖て其の改正の時期は何時になりますか、尚ほ保險料の負擔は、生産者のみがやるか、或は全國民の負擔と云ふ建前でやるのか、或は改正案の根本理念が國營になるか、民營になるか、斯う云ふ點を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=62
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063・和田博雄
○和田國務大臣 是はまだ具體的に明瞭になつて居りませぬ、研究中でありますので明確な御答へは出來兼ねるのでありますが、只今御指摘のやうな點が結局問題になると思つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=63
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064・藤本虎喜
○藤本委員 尚ほ自作農が小作農に轉落する原因の一つとして、其の家に禍が來る、病氣をすると云ふやうなことが非常に原因になつて居るやうであります、でありますから國民健康保險と云ふものをもう少し力強くやらなければいかぬと思ふのでありますが之に付ては此の國民健康保險の補助は今までは非常に少額でありましたから、今までの少くとも三倍以上に引上げて貰ひたいと云ふ希望を持つて居るのであります、其の點大藏省の御意見は如何であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=64
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065・石橋湛山
○石橋國務大臣 國民健康保險組合の補助金は、先般衆議院の本會議にも一寸申上げましたやうに、取敢ず或る増額を致すことに政府としては決定を致して居ります、尚ほ今後の問題は、國民健康保險組合本位に改造する、或は更に一層突き進んで國民健康の維持の爲の慰安施設をすると云ふ必要は政府が痛感して居る譯であります、それ等のことは何れ厚生省を中心にして研究されることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=65
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066・藤本虎喜
○藤本委員 今度の自作農創設に對しましては、未墾地を買上げて之に自作農を創定すると云ふやうなことになつて居るやうでありますが、今まで未墾地の開發に對しましては、動もすれば農業土木的のことをやる、或はそれもやらないで、唯引揚者や失業者或は復員者と云ふやうなものに、此處をやれと言うて追込む位の程度で、そこに入りましても資本が續かない、例へば今年の勤勞は來年の食糧となると云ふやうなことになつて居りますけれども、其の土地が非常に惡い爲に來年出來ない、今年は色々助成があつたり或は同情が集まつたりしまして、どうにか斯うにかやつて居りますが、一、二年する内には到頭逃出してしまはなければならぬと云ふやうなことになるやうでありまして、折角與へた農機具或は其の少い肥料が殆ど無駄になる、却て既墾地の増産の妨げになると云ふやうなことになりまして、此の開墾と云ふことは、大體農業で言へば種を播くと同じではないか、種を播いても後の中耕除草、或は施肥と云ふやうなものが宜くなければ作物は生長致しませぬ、でありますから此の入れた所の自作農に對しまして十分あとの保護育成に力を入れて、文化施設なり、道路なり、學校なり、總てのものに對して十分其の施設をして欲しいと思ふのであります、尚ほ此の開墾に付ては、從來入つた人がやると云ふやうなことになつて居りましたが、是ではどうも結果が惡いやうでありますから、出來れば開墾は國營でやつて貰ひたい、さうして大概殘つた土地は惡いのでありますから、其處に客土をするなり或は酸性土壤であれば石灰を入れて中和をするとか云ふやうな、既墾地と同樣の立派な状態になつた時に、其處に植民をすると云ふやうなことにして、其の間は入つた人は國營開墾に對して賃金を貰つて暮して行くと云ふやうな方法を執らなければ、十分なる結果を見ることが出來ぬのではないかと思ふのであります、此の點に對して農林大臣の御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=66
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067・和田博雄
○和田國務大臣 大體只今農林省でやつて居りますのは、御話のやうな方式でやつて居るのでありまして、唯國が直接やります所の大きな開墾地に付きましては、營團が國營でやるのを代行してやつて居ります、國が直接やる所もありますが、大きな所は營團が代行して行くのであります、將來入るべき人は、開墾地が出來ますまでは勞賃收入を以て其の生計の足しに致して居る、斯う云ふやうな方式で、大體今御話のやうなやり方でやつて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=67
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068・藤本虎喜
○藤本委員 さう云ふ御方針であるかも知れませぬが、實際は、私の地方なんかも營團がやりまして實際其處に入れたのでありますが、作物が出來ないと云ふやうなことで段々段々減つてしまつて、又草の根や竹の根が若返つたやうな形で、あとは草が生えたり稗が生えたり、そんな恰好になつて居ります、折角やられた開墾が物になるやうに一つ後まで見て戴きたいと思ふのであります、御方針はさうかも知れませぬが、現状はさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=68
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069・和田博雄
○和田國務大臣 只今の所農林省としましても、御話のやうに入りました人が長く其處に定著しまして、將來營農を續いてさせます爲に、開墾と云ふことをやつて入れて直ぐ放りつぱなすと云ふのではなく、やはり將來に亙つて十分面倒を見て行く考へで居るのでありまして、唯此の開墾に付きましては、御話のやうに、開墾が出來て入つた年から直ぐ十分な收穫が上り、定著すると云ふものでは決してないのでありまして、殊に開墾地に付きましては、既墾地と同じやうな營農の方針で行き得る所ばかりはないのでありますから、それ等の點に付きましては、農林省としましても十分考へまして、其の指導は怠らないやうに致す積りで居る次第であります、地元の人で農業に經驗のある人が自分の土地を少しづつ開墾し擴げて行くと云ふやうな場合は極めて樂でありますが、さうでなくて、農業に餘り經驗はないが、新しく農業で身を立てて行かう、斯う云ふやうな人達はどうしても營農の點でも技術の點でも劣りますので、其の點に付ては地元の農業會其の他と連絡を執つて指導をして貰ふことに致して居る次第でありまして、私共の方としても御話のやうな工合に、折角耕した土地が又逃出してしまつて駄目になると云ふやうなことのないやうにしたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=69
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070・藤本虎喜
○藤本委員 それでは肥料の問題を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=70
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071・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大藏大臣は宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=71
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072・藤本虎喜
○藤本委員 大體私の質問は宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=72
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073・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは大藏大臣は長く居られないさうでありますから、北君に關聯質問を許可致して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=73
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074・藤本虎喜
○藤本委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=74
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075・北政清
○北(政)委員 私は今度の農地改革は最も適當な時期であり今やらなければならぬ時だ、斯う云ふ考へ方を以ちまして、御提案の趣旨には非常に贊成を致します、併しながら本當にどうしたらやつて行けるかと云ふことに付て十分研究を致したいと思ふのであります、隨て先づ大藏大臣に御伺ひ致したいことは、日本の通貨をどれ位な程度に置かう、將來に於てどうして行かうと云ふ御考へであるかを先づ承りたい、詰り通貨の量と物價と云ふものは竝行する、そこで通貨の量を何處に置く積りであるか、今の通りの形で行ける積りか、此の點を大藏大臣に御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=75
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076・石橋湛山
○石橋國務大臣 通貨の量を幾らに置くかと云ふことではなくして、物價を何處の位置に置くか、斯う云ふ問題だらうと思ひます、通貨は今の所は御承知のやうに、今朝の新聞にも記録破りだと書いてありますが、六百億圓を超えた、それは再々御説明申上げます通り、現在補償の打切りとか色々の不安要素が金融機關にあるからして、金融機關に集まらない、出たものは出放しになつて退藏されて居る爲に、通貨の數字が殖えて居る、經濟界は物價が安定し、それに連れて經濟界の全體が安定するに到れば、通貨の量は自ら調節を保つて、必要なものは出て來る、必要のないものは囘收されると云ふ結果になりますから、通貨を追掛けるのではなくして、物價の方をどう安定させるか、斯う云ふ問題であらうと思ひます、其の物價は正式には、安定本部を中心にして近く物價會議も出來ますから、そこで檢討されることになりますが、若し私だけの今の心構へを申上げるならば、現在の物價で安定させる、之を上げもしない、下げもしない、但し現在の物價は何處が宜いか、是は公定價格であるか、闇價格であるかと云ふ所に問題がございますが、今、日銀が發表したりして居ります所謂卸賣物價指數、詰り公定價格で作つた、物價指數も其の儘では現在の物價とは言へない、又所謂實際物價指數と稱して主として闇價格で作つて居るものも、必ずしも其の儘現在の物價とは言へない、事實あるものはある、唯我々が色々な關係で其の的確な數字を掴み得ないと云ふ關係がある、あることはある、隨て方法を以てすれば、數字的にも亦檢討出來るものと考へます、それを基準にして安定させる、但し例へば石炭と云ふやうなものであつたならば、現在は非常に生産が落ちて居る、主産が落ちて居ると言つても、豫定より左程落ちて居る譯ではありませぬが、兎に角生産が落ちて居る、現在の計畫に於て今後一體何處まで生産出來るのか、其の場合の石炭の「コスト」は、生産が殖えれば現在より下る譯でありますから、無論さう云ふ前途の産業の見透しをも含めて物價は定められるのでありませうが、一應現在の價格を基準にする、斯う云ふことで現在の物價の安定を圖るのが一番適當であらう、今の補償打切りの問題、會社經理の問題に致しましても、或は農業問題でありましても、さう云ふ見地から定めるのが宜い、是は現在の所安定本部が決定をして居りませぬから、政府の方針が定まつたとは申上兼ねますが、私の考へを申上げれば其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=76
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077・北政清
○北(政)委員 私は今の物價を何處に置くかと云ふことを御伺ひしたのではないのであります、實は此の自作農創設と云ふものは三十箇年の長期に亙るものであります、賣る方は現在の價格で賣ります、買ふ者は三十箇年掛つて支拂ふのであります、隨て日本の通貨の目標を何處に置くかと云ふことが聽きたいのです、それに對して今の答辯のことを御伺ひしたと解釋するのであります、日本が三十年間も貿易が再開されずに居る譯ではなし、何時頃貿易が再開されるか、今年だ來年だと云ふことを聽かなくても宜いが、或る期間に於て必ず再開されるであらう、其の際に現在の通貨量、金本位にあらざる通貨、是では取引が出來る筈はないと考へるのであります、又現在の通貨に致しましても、第一封鎖、第二封鎖、更に今度の財産税の徴收、又更にもつと打つ手を大臣は恐らく考へて居られるだらうと思ふ、思ふが、どの邊の所に置かう、今の一「ドル」十五圓若しくは三十圓と云ふ形で將來とも行かれる積りかどうか、之を聽いて居るのであります、本當の見込み三十年間をすつかり言へと云ふのではないが、何處らへ行つたら凡そ標準に行けるものかと云ふ御見込で宜い発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=77
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078・石橋湛山
○石橋國務大臣 先程御答へしたのは、決して見當違ひではないのでありまして、同じことを申して居るのでありますが、詰り御話は通貨の量と仰しやるが、さうではない、通貨の價値なのです、通貨の價値を何處に置くかと云ふ御尋ねと私は理解します、さうでなくてはいかぬと思ひます、通貨の價値は何處で安定するかと申せば、先程申しましたやうに、現在の通貨の價値で安定させると云ふことが目標だと思ふ、但し三十年の間には無論經濟界の波瀾がありますから、波瀾で以て動きもしませう、又御話のやうに、貿易を再開した場合にどうなるかと云ふ問題もありますが、是は何と申しますか、實際の經濟界の波瀾と云ふことの豫言は三十年も何十年も先のことは分りませぬが、政策としては、現在若し今日の通貨價値で經濟界の安定をさして、それで處理をしたとすれば、出來るだけ其の通貨價値は動かさないと云ふことが方針でなければならぬと思ひます、隨て貿易が再開された場合には、是はそれまでに「アメリカ」の方の通貨價値も變りませう、現在とも違ひませう、下るか上るか分りませぬが、變りませう、幾ら國内の貨幣價値が安定すると云つても、釘付けにする譯には行きませぬから、多少の變動はあります、貿易を再開する場合に、「アメリカ」の通貨價値と日本の通貨價値、逆に言へば「アメリカ」の物價と日本の物價との比較で、それが幾「ドル」になるかと云ふことで決まる譯であります、それは十五「ドル」が百「ドル」にも二百「ドル」にもなるのではないかと云ふ色色な説がありますが、假に幾「ドル」に決まりましても、國内の經濟界に波瀾を及ぼさない價値に決めると云うことが私は理想だと思ひます、其の時に萬一、圓と「ドル」との交換比率が、現在一「ドル」十五圓とか何とか云つて居りますが、それが非常な差が生じましても、其の時には爲替だけの問題は國内の經濟に波瀾を及ぼさずに處理する方法がごさいますから、現在我々がやらなければならぬのは、國内の通貨價値を速かに安定し、安定したならば其の安定した通貨價値を成べく動かさないやうに將來の經濟政策を持たう、斯う云う見當で居ります、隨て自作農創設特別措置法案に於けるさう云ふ經濟政策が理想的の經濟政策であり、執るべきものと思つて居りますが、さう云ふことが執り行へれば三十年間の通貨價値にさしたる變化なく、況や土地を買取る方には更に救濟規定もある譯であります、唯賣る方の地主に救濟規定がありませぬから、通貨價値が非常に上れば宜いが、下れば賣つた地主さんは非常に損をする、斯う云ふことになるのであります、さう云ふことの起らないやうに、今後の經濟政策は執つて行かなければならぬ、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=78
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079・北政清
○北(政)委員 今大臣は賣る人が將來に於て非常に捐をするだらうと言はれた、併しながら私は此の通貨の儘ではいけないと思ふ、財産税を徴收しても物價は相當高くなる、それは闇物價であるか、公定價格であるか、そこは別問題にします、先程大臣の言はれた通り然らば現在の此の儘の形としまして、今農林省の提案して居ります三分二厘で三十箇年賦で拂はれると致しますと、小作料よりは年賦金及び之に加はる所の税金の方が高くなる、言換へますならば、國家と云ふ大地主が今までの小作料より増徴するのであります、是では恐らく小作人は買ふまい、斯くして物價が下りますと、小作人は更に隣りの土地の生産物まで持つて行つても足らぬことになる、恐らく私は是では小作人は買ふまいと思ふ、此の土地の大半は八十級、八十五級、賃貸價格が二十圓乃至三十圓と云ふ所で、百八十萬町歩位になる、さうすると平均して二十五圓と云ふことになる、二十五圓ですと四十倍にして千圓である、さうすると千圓で三十箇年の年賦償還にしまして、三分二厘で五十二圓三十四錢掛かる、之に「プラス」──此處に御調べを願ひましたのでは十四圓と出て居りますが、北海道邊りでは灌漑工費だけでも十四圓以上のものが相當あるのであります、こんな十四圓などと云ふことはない、何を御調べになつたか分らぬ、又實行組合にしても二圓や三圓は掛ります、又農業會にしてもさうであります、總てのもので言ひますと、十四圓やそこらと云ふことは、段別割にしても或は地租にしても絶對にない、斯樣な金額から見まして、私は十四圓と云ふ出し方はをかしいが、十四圓にしましても六十六圓であります、現在米の價格を七十五圓としまして、一石以上の小作料と云ふものは割合に少い、而も今度は小作料でなくて、年賦金、借金の支拂であります、此の支拂の時に於きまして、若し物價が下り、或は凶作になるならば二割五分で宜しい、斯う云ふ規定がある、一體現在の小作料が二割五分まで行つて居らぬではないか、又二割五分としますと一段十俵穫れる所が半作になつて五俵、それならまだ二割五分は拂へるか知らぬが、六俵の所が半作になつて三俵、さうすれば此の二割五分は拂ふことも何も出來ないことになる、是は其の時に於て負けてしまふか、負けないのか、延期になるのか、どつちになるのか、延期になりますならば、更に負擔が將來に重く掛りますから、小作人が負擔して行けない、斯樣なことになります、そこで私が大藏大臣に聽きたいことは、地主から買ふ價格は是と致しましても、小作人に對しては半分やそこらは當然負擔してやらなければ持つて行けぬではないか、是は小作人いぢめで、決して小作人贔屓ではない、而も自作農創定に依りますと、恐らく擔保にもさせないでせう、三十年間は移轉も容易に認めないでありませう、一度災害が起つたら、農民は何を對象にして金融を受けるのでありませうか、全然金融の受けやうもない、是では小作人は恐らく買はぬと思ふ、どんな鳴物入りで宣傳するか知れないが、此の數字が分つた以上小作人は買はぬ、本當に小作人が買ふやうにしてやらなければならぬ、假に二百萬町歩で一段千圓平均と致しましても、二百億だから、半分の百億位は思ひ切つて大藏大臣は出す肚がないかどうか、今米の價格に、百萬長者が一升買ふにも補助をなさるのはどうだらうか、土地に百億位は御出しになるかならぬか、其の肚があるかないか、承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=79
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080・石橋湛山
○石橋國務大臣 小作料等との關係は、專門的のものですから、農林省の方から御答へ願ふこととして、最後に大藏大臣の肚があるかないか、それはありませぬ、百億圓出せませぬから、左樣に御承知願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=80
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081・北政清
○北(政)委員 是は若し今其の肚がなければ、將來負擔しなければならぬ、斯う云ふ御考へですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=81
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082・和田博雄
○和田國務大臣 年賦償還の關係と小作料の關係でありますが、是は御話の點に誤解があるといけませぬから私から説明致したいと思ひます、今度の自作農の創定と云ふものは、小作人が從來拂つて居つた小作料よりは高いものを拂はずに自作人になれるのだと云ふ趣旨であるのでありまして、此の年賦償還の關係は、御話のやうに其の方が高くなると云ふことになつて居りませぬ、それから農産物の價格の下落の場合には、其の土地から穫れる、田に於ては米、又畑に於ては主たる作物の價格に對して、年賦償還金及び公租公課を加へたものが其の三分の一を超える場合には、其處まで減額することが出來るやうになつて居りまして、小作人の負擔の過大は避け得られるやうになつて居るのであります、それから收穫が皆無であるとか、或は土地が流失してしまつて收穫が皆無であると云ふ場合には當然償還の猶豫をするとか或は免除をすると云ふことになつて居るのでありまして、其の御心配はないのであります、それから御參考までに申上げますが、從來の自作農創定、今度のやうに土地價格に付ての一般的な統制も何もない時代に於ける自作農創定の成績を見ましても、あの農業恐慌の、不況な時でさへ、自作農創定の爲に買つた土地の年賦償還金に付ての延納とか滯納と云ふものは極く僅かであつたのであります、然るに今度の場合に於ては、今述べましたやうな法律の規定を置き、且つ土地の價格其の他の點に付て適當なる統制を加へた上での自作農の創定でありまするので、私共は農民の土地所有に對する意欲其の他の點から考へまして、小作人は能く話が分れば必ず買ふと思ふのでありまして、北さんの御心配の點はないのではないか、私は斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=82
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083・北政清
○北(政)委員 只今大藏大臣は金は出す肚はない、農林大臣は負けてやる積りだと言はれる、どつちが本當なのか、大藏大臣は、今百億出すと云ふ肚はないが、あとはぼつぼつ拂はなくても宜しいと云ふ肚であるか、今農林大臣は減免してやると云ふ御話であるが、長期に亙つてそれを繰返すのでなくて、免ずるなら負けてしまふことになる、さうすれば囘收は出來ぬ譯であります、其の金は御出しになる肚か、之を大藏大臣に聽いて置きたい、それから農林大臣は今までの自作農創設を言はれる、私も數千町歩の自作農創設をさせて居ります、農地委員などはどんな者を選ぶか知らぬが、私の村には小作農なんか一人もなくした、それで土地は持つて居ります、決して流して居りませぬ、年賦金もきちんと拂つて居る、今支拂つて居りますものは水田で一段百二十圓位の單價で決めて居ります、それで拂へるのでありますが、今度賃貸價格の四十倍になりますならば──一昨年あたりでは、土地の公定價格なんか誰が決めたか、こんな高い値では駄目だと云ふやうな話である、去年あたりから非常に暴騰して居る點もありますが、今度の賃貸價格の割合にしますと、先程申すやうに年賦金だけで既に五十二圓ありませう、それに政府の出された十四圓を入れると六十何圓、さうすれば小作料は幾らでありますか、決して高くならぬ、小作料より安いと云ふやうなことはない、元金を上げないと云ふやうな勘定をして居られる、私等は喜んでやらせるやうにして、地主も讓歩出來るやうにして、少しの爭ひもなく數千町歩やつて居ります、今立派な自作農になつて居りますが、今度は時期が惡い、今だから其の半分は政府が負擔してやるのでなければ成り立たぬのではないかと考へる、五十二圓と云ふのはあなたの方の出された表だから、私の作つたものではないが、農林大臣算盤違ひをして居るのではないか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=83
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084・和田博雄
○和田國務大臣 是は算盤違ひして居るのではないので、其の時の前提がある、土地の價格、小作料其の他の前提があつて五十圓と云ふものが出て居るので、是は思ひ違ひではないのであります、それから誤解されると困るのですが、減免をすると云ふのは、何でも彼でも減免をすると云ふのではないのでありまして、法律にちやんと規定があるのであります、法律の規定の條件が起つた時に減免をする、年賦償還金の支拂の猶豫をなし、或は場合に依つてはそれを免ずると云ふことに致すのでありまして、大藏大臣が今百億圓出す意思はないと言はれたのと私の言つて居るのとはちつとも違ひのないことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=84
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085・北政清
○北(政)委員 大藏大臣の返事を戴きませぬが、どうでせう、減免の規定が正しくあり、其の減じられる點は今負けられぬと云ふ、さうしますと、農民は、物價が下つて、屡屡「ダンビング」があつたらどうする、經濟界の波瀾があつたらどうする、食糧は自給自足せぬでも宜しい、自給度を高める位だと農林大臣は常に言うて居られる位だから、物價が上つて居るから是で拂へるのだと云ふ理論は一つも立たぬ、さうすると將來拂へないことが多分に出來る、其の場合大藏大臣は之を拂はぬでも宜しいと云ふ肚があるかないかと云ふことを御伺ひして居る、なければないで宜しい、「ノー」か「イエス」かだけ聽けば宜しい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=85
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086・石橋湛山
○石橋國務大臣 今農林大臣から言はれたうに、此の法律の規定に依つて減免をしなければならぬ時には無論減免を致します、其のことを法律にはちやんと書いてあるのでありますから、其のことは無論大藏大臣も此の規定を承認して居るのでありますから、致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=86
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087・北政清
○北(政)委員 然らば大藏大臣だけの方の問題に付て伺ひます、大藏大臣は豫算委員會に於て、昨年の米價が二石四斗の計算で割出された、併しながら實收は一石四斗であつて間違ひであつたと云ふことは、麻生さんの御質問に對してはつきり答へられた、又事實さうであることも承認するのでありますが、唯ここで間違つた價格で農家の生産物、即ち勤勞の成果を取つた場合には、是は公正な報償ではなかつたと云ふことを御認めになるかならぬか、間違つた計算で出したのだ、一石四斗と二石四斗との違ひでありますから大した違ひである、是で三百圓と云ふ價格が出て居る、是は公正な價格と認めるのか、認めないのか、間違ひと云ふものは公正か公正でないかと云ふことを聽きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=87
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088・石橋湛山
○石橋國務大臣 あの時の委員會で、御質問の中に數字を擧げられまして、昨年の實收はあの計算とは違ぶ、斯う云ふ御話でありました、だから、若し其の數字が其の通り正しく、御話の數字がさう云ふものであるならば、是は間違つたものである、斯う申上げたのであります、それは、實は私は此の前の價格を定める時には當事者ではありませぬから詳細のことは存じなかつたのであります、所が其の後實は私も不思議に思ひましたから調べて見ました、所があれもやはり當時の當局者としては理窟がありまして、實は書類を暫く持つて居りましたが、長いことでありますから今持つて居りませぬけれども、成程數字から言ふと三百圓は安過ぎる、併しながらあの米の生産をした時の勞賃とか何とか他のものの計算から言ふと、あれで宜いのだと云ふことで、決して、一應ああ云ふ數字が出たから、それで事實とは違ふけれども、其の儘無理にやつてしまつたと云ふのではなく、あの數字の計算は、農林省の方が詳しい譯でせうが、何か法律にある數字に依つて計算をしたものださうであります、規定があるさうであります、其の計算に依つた三百圓と云ふ金額、それから事實あの米の生産された時の賃金其の他を考へるとそれで宜しい、斯う云ふことで決めたいと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=88
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089・北政清
○北(政)委員 以上で大藏大臣に對する質疑を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=89
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090・藤本虎喜
○藤本委員 午前中に一寸質問を致しました農業技術の滲透の問題、大藏大臣居られませぬでしたので、農林大臣からだけ御答辯を戴いたのでありますが、もう一遍伺ひたい、日本の農業が、御承知の通り單位面積から澤山の收益を上げて居る、而も今度の敗戰に依つて益益澤山の收益を上げなければならぬ、それに付てはどうしても技術滲透を徹底することが必要である、其の方式と致しまして、農林省は指導農場を各地に設置するやうにしたいと云ふのでありますが、其の指導農場の經費が非常に貧弱である、一農場に對して一萬四千圓位を計上されて居る、其の内容は、牛一頭買ふのに五百圓、馬二頭買ふのに五百圓、場長の人件費として千八百圓乃至三千圓、それから畜産技手八十五圓、農夫が五十圓、而も畜舍に對しては一坪五十圓、斯う云ふことで一萬四千圓が見積られて居るのであります、現在は左樣な貧弱な經費では迚も旨く行かない、又設置も出來ないと云ふやうな情勢にあるのであります、此の際、今までの各地方の數字に依りますと、一農場で十四萬から二十萬位掛るやうでありますが、其の點を考慮されまして、大藏省としてはそれだけの經費を計上して戴きたいと思ふのであります、大藏大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=90
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091・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の問題は農林省の方で何れ計畫を立てられることと私考へて居ります、御話のやうに、若し是非ともさう云ふものが必要だと云ふならば、大藏省も其の線に沿うて尚ほ農林省と相談をしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=91
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092・藤本虎喜
○藤本委員 それでは問題を變へまして、肥料の問題で伺ひたい、日本の農業が肥料を澤山使ふと云ふことは御承知の通りであります、而も其の肥料に對しましては、集約經營の關係上飼料作物が出來ない、隨て自給肥料の資源が少いと云ふことと、今度の戰爭に依りまして、漁肥は漁海面が少くなり、又船や或は漁具、油等の關係で漁獲高も非常に少くなつて來たから、漁肥の量が非常に減つて來る、而も滿洲から來ました所の大豆粕や、或は「インド」から來た油粕と云ふやうなものも其の援助がないと云ふことで、有機質肥料も非常に減つて參りましたから、化學肥料に依存するより外に方法がない現状であります、然るに此の肥料の中で、窒素肥料と云ふものが、硫安或は石灰窒素の工場が此の戰爭に依りまして戰災を蒙つて、其の後の復活が出來ない爲に非常に減つて參つて居るのでありますから、之に對しては速かに復舊を圖つて増産をして戴きたい、若し増産が間に合はなければ、「マ」司令部に懇請して、外國の硫安なり、「チリー」硝石なりを入れて戴きたいと思ふのであります、次に憐酸肥料でありますが、燐酸肥料は燐鑛石を輸入して自給致して居りましたが、是も御承知の通り輸入が出來ないで、非常に不足致して居ります、此の燐酸は、地方に依りましては窒素以上の效果を現はす所もあるのでありますから、之に對して十分燐鑛石を入れて早く造つて戴きたい、尚ほ低度の燐鑛石は内地でも埋藏する所がないとも限らないのでありますから、十分調査をして戴きたいと思ひます、次は加里肥料であります、加里肥料は殆ど「ドイツ」から入つて居りましたが、今後是は困難でありませう、九州では加里鑛石を粉末にして之を施しますと相當成績が出ると云ふことになつて居る、日本では加里肥料がないと言はれて居りましたが、國内の加里資源を活用することに一層の力を入れて戴きたいと思ひます
それから肥料工場の經營に付きまして最近國營論が出て居ります、是は一部の業者に任せて置くと利潤追求をやるから高くなる、國營にすれば利潤追求がないから安くなると云ふ考へ方でありますが、國營になるとどうも經營に彈力性がない、日進月歩の科學的技術を採入れて臨機に轉換すると云ふやうな態勢が執れない、或は觀念的で、機構や規則に縛られて、其の結果「コスト」が高くなると云ふことで、消費者としては納得出來ない事情にあるのであります、斯う云ふ點から、私は此の二案の何れにも不贊成でありまして、少くとも將來此の工場に對しましては、農村の汗の結晶である資金を工場に導入致しまして、農村と提携して、成べく協同組合式に依つて、尚ほ勞働者もそれに對して出資を致しまして、自分のものとして働くやうなことにしたならば旨く行くのではなからうかと考へて居るのであります
尚ほ肥料配給機構の問題でありますが、肥料の配給も此の際生産者より消費者へと云ふ原則を確立致しまして、中間の日本肥料の存在を拒否して戴きたい、さうして農業團體をして全面的に之を配給せしむるやうにしたら、價格の上に於て、或は適期施肥の上に於て效果的であらうと思ふのであります
尚ほ肥料行政の一元化でありますが、肥料行政は、從來生産は商工省、配給は農林省と云ふことになつて居りまして、一貫したものがない、消費者たる農民の立場から考へますれば、肥料の生産、配給に對して、成べく農民の意思を反映せしむるやうに、肥料行政を一元化する、隨て此の生産の面を指導致して居る農林省として、肥料自給に付て、農林省に肥料の外局、詰り肥料廳と云ふやうなものを作り、肥料の生産に對しましては肥料委員會でも作つて、消費者の意思を此の方面に反映せしむるやうにして戴きたいと存ずるのであります、之に付て農林省竝に商工省の御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=92
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093・和田博雄
○和田國務大臣 肥料の輸入の點に付きましては、屡屡御説明致しましたやうに、硫安其の他のものに付ても極力懇請致して居る譯であります、燐礦石に付ては、只今までの所約十萬「トン」ばかり入つて來て居りまして、今それを製品にして出すべく生産を致して居るのであります、加里肥料は御話のやうに中々難かしいのであります、只今のやうな内地の加里資源の開發に付きましては、將來尚ほ十分努力してやつて行きたいと考へて居ります
それから肥料の配給の問題でありまするが、それと同時に肥料の經營方式の問題であります、肥料國營の問題等に付きましては、何れ調査會でも作りまして之を調査審議致したいと思つて、其の準備を進めて居る次第であります
それから配給は日本肥料を廢したらどうかと云ふことでありますが、結局配給面だけを切離して考へる譯には一寸行かないので、やはり生産から配給までずつと一貫して、肥料に對してどう云ふ方策を執つて行くか、例へば増産を第一にしても、やはり國家の或る程度の管理的な案を採るかどうかと云ふことと一貫して考へる必要があるのでありまして、それ等の點に付きましても、肥料行政一元化の問題と同時に解決致したいと存じて居る次第であります農林當局としては一應の試案を作つて居る譯でありますが、まだ色々の關係方面との折衝もありまして、實現の運びに至つて居りませぬ
それから肥料行政一元化の問題は、御話のやうに農林省に一元化すると云ふのも一つの案でありますし、それ等の點に付ては何れ經濟安定本部なり、何なりで十分審議して、是非決定致したいと思つて居る次第であります
それから肥料の政策に付て農民、消費者の代表を參加させたらどうかと云ふことでありますが、是は私は贊成でありまして、肥料の大きな政策を決める場合に於て消費者の代表が入つて行く、例へば一つの審議會なら審議會へさう云ふ代表が入つて行つて、そこで生産者の方と一緒になつて政策を決めると云ふ方式は、是は是非採りたいと思ふのであります、唯農業會が自分で工場を持つて生産すると云ふことが宜いのではないかと云ふ點に付ては、私は多少疑問を持つて居るのであります、なぜなら、只今生産された肥料と云ふものは、例へば新潟縣なら新潟縣にある工場で造つたからそれが新潟縣に配給されると云ふのではないのであつて、是はやはり全國的に日本肥料が買ひまして、一定の割當計畫に從つて配分致して行くのでありまして、唯地方的にさう云ふ問題を考へて企業を興す譯には參らないのであります、それと同時に、肥料の生産は成程現在に於ては需要量に迚も足りませぬが、肥料の工業と云ふものはどうしても基礎の鞏固なものを今から育てて行くと云ふ形で行きませぬと、斯う云ふ時期に肥料工場の脆弱な、而も小さなものが方々に出來て來るとそれは當座の間には合ふかも知れないが、暫くすれば是が經營困難にも陷つてしまふ、さう云ふことになりましては、是は本當の意味でも農民の爲にもならぬと思ひますので、それ等の點に付ては、農業會が方々に工場を持つてやると云ふことに付ては、それ程積極的にさうだとは私考へないのであります、唯工場其のものの基礎が鞏固であり、旨い話合ひが付いて、優秀な技術を持つて居る所がありますれば、それは勿論構はぬのでありますが、さう云ふ點に付ては寧ろ餘程愼重を期したいと思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=93
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094・藤本虎喜
○藤本委員 肥料の問題に付ては、要するに量を澤山に、早く安く手に入る、此の三點を解決して戴ければ宜いので、それがなければ十分の増産は出來ないと思ふのです、其の意味で要らない配給機關は絶對に排除して戴きたい、其の機關があれば、早く肥料が行くとか、安く肥料が出來ると云ふものならば、結構でありますが、それがある爲に高くなつたり、遲れたりするのでは、増産には害があることになります、十分其の點を御考慮戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=94
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095・和田博雄
○和田國務大臣 それ等の點に付きましては今後十分注意を致して行く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=95
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096・藤本虎喜
○藤本委員 私の今まで申上げました質問は、要するに、是から増産するには自給肥料を徹底すること、自作農の維持育成に付て、農産物の價格が農家生産費を償つて樂に生産が出來るやうにして戴きたいこと、自作農の維持育成上、災害から農民を保護して貰ひたいこと、或は自作農の維持育成上肥料の問題を解決して戴きたいこと、開墾地の問題を巧くやつて、自作農の維持育成に效果あるやうにして戴きたいこと、斯う云ふ所に主眼を置いて、之を徹底しなければ、折角急速に作り上げたものが、又急速になくなるのではなからうかと云ふことを憂へるのであります、どうぞ其の點を考慮し、善處して戴きたいと思ひます、是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=96
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097・和田博雄
○和田國務大臣 全く其の點は御同感であります、自作農を作りました後の問題としては、御指摘のやうな點が一番問題になるのでありまして、それ等の點に付ては、個々に十分なる施策を致して、自作農の生産力を上げ、それが維持出來るやうな方途に是非導いて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=97
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098・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは農林、商工、内務三當局が揃はれましたから、午前中からの持越しになつて居ります農機具關係の殘つた質疑を此の際濟ませて戴きたいと思ひます、小川原君から北海道關係に付ての農機具の質問がありましたが、是は内務省所管でありまして、午前中内務當局が出席して居りませぬでしたが、今内務當局が見えましたから、此の際それから先に解決を願つて行きたいと思ひます、小川原君、先程の質疑を簡單に内務當局に對して願ひます──小川原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=98
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099・小川原政信
○小川原委員 午前中に申上げました内容は、或はもう御聽きになつたことと思ひますが、私の申上げましたことを極く簡略に申上げますならば、現在の北海道の農家は十八萬戸であると云ふことを數の基準と致しまして、或は「プラウ」であるとか、「ハロウ」であるとか、色々な農機具が二十七萬箇要ることに相成るのであります、それから馬に掛けます除草機に致しましても、十八萬箇の半分を除草機として九萬臺要ると云ふ厖大な數字になるのであります、それから農林省が現在七十萬町歩の開發をすると云ふことに付ては、非常に大きな農業經營を致さなければならぬのでありまして、それには「トラクター」が要るのであります、此の「トラクター」の製造はどう云ふ行き道を辿つて居るか、拔根機も要るのでありますが、此の拔根機は火藥を使用しなければならぬ品物でありまして、相當の數量がなければ此の農業を經營して行くことは出來ぬのであります、斯う云ふものも如何樣にして行くか、或は「スコップ」を使ふと致しましても、數十萬挺の「スコップ」が要る、斯う云ふことになりますし、それから牧場に付きましても戰爭中に針金も皆軍に寄贈致しましたので、馬が奔失して居るやうな實情であります、三年も五年も針金が一つも來ない、それに釘の配給と言ひましても、一牧場に付て五寸釘の五十本や七十本呉れて、是で勘辨せよと云ふやうな實情であります、是は後から農林省當局に御話を申上げたいと思ひますが、私の計算に依りますと、將來馬を五十何萬頭も餘計作らなければならぬと云ふのに、さう云ふ實情であつては、北海道の農業のみならず、日本の農業を復興して行くことは不可能である、斯う考へて居るのでありまして、是等に對する所の資材はどう云ふ状態になつて居るのか、なぜさう云ふことを御尋ねするかと云ふと、當局に聽くと、いやもう直き來るのだ、農林省の方では斯うで、商工省は斯うでと云ふ御話で、それを實際農民は信じ切つて居るのでありますが、ちつとも實際が充たされないと云ふ實情にありますので、まだ少しも手に掛けて居らぬなら、手に掛けて居らぬと、斯う仰しやつて下されば宜しいのです、まだ其の問題は手に掛けて居らぬのだ、併し此のことだけは斯うやつて居るのだ、斯う實情を御話して戴きたい、或は統制組合にやらせるなら、今斯う云ふ統制組合にやらせて居るのだ、此の資材は斯うやらうと思ふが、資材がないので出來ないのだ、斯う云ふやうにはつきり御話を願へば農民も諒承致しますし、私共代表して居る者が、中央へ行つて何をして居るのか、斯う云ふことは何年も繰返すことでありますから、此の點も能く御話を願ひたい、それで尚ほ一つ附加へて置きたいのでありますが、室蘭の製鋼所が、石炭の割當に依りましてさう云ふ農機具を製造しようと云ふことになつて居つたのでありますけれども、石炭の割當がないと云ふのでそれが不可能のことである、斯う云ふ危機に瀕して居りますので、是は商工大臣に特に御願ひ致しまして、特別の割當方法を戴きたいと云ふ所まで話が進みましたが、其の時に丁度賠償問題に依りまして、色色整理をされなければならぬと云ふやうな結論に達してしまつたので、是が實に不安の状態にあるのであります、それで實は御尋ねをしたやうな次第でありますが、極く簡略に申上げたので意は通じないかも知れませぬが、其の點一つ御答辯を願ひたい、斯樣に考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=99
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100・世耕弘一
○世耕政府委員 只今御説明を承つて實情を能く承知致しました、遺憾ながら只今私の手許に調査書類がございませぬので、幸ひ商工省の方から政府委員が見えて居りますから、一應商工省の政府委員から御説明を承つて戴きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=100
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101・鈴木重郎
○鈴木(重)政府委員 一般の開拓用の機器類に付て御質疑でございましたが、尚ほ其の際併せて御質問のありましたやうな「スコップ」「シヤベル」、或は釘、針金等の問題は後に致しまして、現在農林、内務關係と打合せを致しまして、現在開拓用の機器と致しまして生産計畫を立て進行中のものの概要を申上げたいと存じますが、是は特に「トラクター」と、今御話の「プラウ」「ハロウ」でございます、之に付きましても相當今後の長期計畫がある譯でありますが、當面の問題と致しましては、本年の春頃御相談を戴きまして、取敢ず此の十月までの生産計畫を決定致して居るのでございます、此の計畫に依りまして大體を申上げますと、三「トン」級の「トラクター」の豫定は、七月から十月までの四箇月間に四百三十二臺、是は各工場別に出來て居るのでありますが、其の中北海道に參りますものが百九臺でございます、それから五「トン」乃至十「トン」級の「トラクター」に付きましては、此の四箇月間に總計三百三十一臺の計畫でございますが、此の中北海道に參りますものが二百三十一臺でございます、それから「プラウ」の計畫でございますが、是は全體と致しまして千六百十五臺の豫定であります、其の中北海道に參りますものは二百三十臺でございます、「ハロウ」に付きましては四百三十五臺の計畫でありまして、此の中北海道廳に參りまするものが百臺でございます、是の七月、八月まての實績で申しますと、工場に依りましては完全に其の豫定通り各社別の生産計畫に從つて出來て居る所もありますが、其の全體の實績を見ますと、大體七月が約八割程度の生産であります、八月も全體を通じますとやはり八割位の實産の成績を示して居ります、之に付きまして「トラクター」の如きものは、或る所では多少出來たものも輸送の關係で出荷出來てないと云ふやうな状況であります、今までの全體の出荷の實績を申上げますと、三「トン」級「トラクター」に付きましては、七月は五十二臺の計畫に對して三十九臺、八月は九十五臺の計畫に對して三十二臺の出荷でございます、それから五「トン」以上のものに付きましては、七十六臺の計畫に對して五十八臺、八月も七十九臺に對して五十八臺でございます、「プラウ」に付きましては、三百五臺の計畫に對して二百五十臺、八月は成績稍稍不良でありまして、五百臺の計畫に對して二百七十八臺でございます、「ハロウ」は三百五臺に對して二百五十二臺、八月は三百七十五臺に對して二百八十八臺、斯う云つたやうな出荷の實績を示して居ります、尚ほ今申上げましたのは、特に北海道關係は北海道廳との契約に基くものでありますが、例へば三「トン」級「トラクター」の如きは、極く一部に付きましては農林省の開拓局の計畫と一緒になつて居るものもあるやに承つて居ります大體斯う云ふ状況でございます、其の他の農機具に付きましては、午前中に申上げましたやうな中央發注のものに付ては、全體の農機具工業組合の發注に從ひまして、全部農業會を通して北海道のものに配給される、斯う云ふ實情であります、其の他の釘、針金或は「スコップ」「シヤベル」と云ふやうなものに付きましては、御承知のやうな資材關係、燃料事情から、最近の所は極めて困難だと存じます、唯是等の資材の確保に付きましても、別途鐵鋼増産なり、石炭増産の爲の基礎資材の輸入方を關係方面にも懇請して居りまして、まだ最後的決定を見て居りませぬが、斯う云つた基礎物資の生産をやり、それに依つて先づ鐵鋼の生産をやる、斯う云つたやうな廻りくどいやうなこともやらざるを得ないやうな事情でありまして、現在直ちには此の釘或は針金が牧場用等に相當大量に期待されると云ふことは困難であらうと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=101
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102・小川原政信
○小川原委員 大體了承致しました、尚ほ御一段の御努力を御願ひ しますが、此の最後の針金と云ふものが實は困るのでありまして、是こそは是非やつて戴かないと、針金と云ふものは非常に農業から遠ざかつて居るのであります、尚ほもう一度極く簡單に申上げますが、農業電化に於きましても針金がない、結局電化をやると云ふ其の「テーブル・プラン」を御立てになる時に實際に疎いのであるからして、農業者には針金は要らぬのだと云ふ御考へでありますか、或は御氣付がないのであるか知りませぬが、兎に角針金が度外視されて居ることは、農家に取つて非常に能率が違ふのであります、電氣を利用して脱穀をする、或は澱粉を作る、總て電化作業をして行くのでありますから針金が今日は非常に大きな役割をして居ると云ふ所に御心を配られまして、現在出來て居らぬのは仕方がありませぬが、即刻手配を御願ひしたい、尚ほ重ねて此の點を農林大臣に御願ひ致します、農林大臣は專門家でありますから、十分に御承知と思ひますが、農家の實情を見ますると非常に針金に窮して居る、是非此の點特段の御配慮を願ひまして、關係官廳と御相談の上早く御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=102
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103・葉梨新五郎
○葉梨委員長 農機具關係と申しますか、一般生産資材關係に對する質疑は此の程度で宜しうございますか──それでは先程進歩黨の江川爲信君から米價問題に關する緊急問題の要求があつたのでありまするが、之を許可するに御異議ございませぬか
「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=103
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104・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは江川爲信君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=104
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105・江川爲信
○江川委員 私は米の値段のことを申上げるのではなくして、此の食糧難を愬へて居る時に、米の洪水が起つて居ると云ふ珍しい事實を申上げまして、之に對しまして農林大臣の御所見を承りたいと存ずるのであります、それは要するに、米の値段がまだ決定されないことに原因を發して居ることは、既に農林大臣御承知のこととは存じます、私は石川縣でありまして、先般郷里へ參つたのでありまするが、石川縣は全國での早場でありまして、目下出荷の最盛期であります、農家の方からは農業倉庫に對して續々と出荷を致します、所が之に對しまして、農業會に於ては米の値段が決まらないので金を拂ふことが出來ませぬ、又食糧事務所に於きましては、米の値段が決まらないので之を引取つて處理することが出來ませぬ、隨て農業倉庫には米が山をなして居る、食糧事務所では之を引取ることが出來ない、斯う云ふ状態であります、又私農業會長も致して居るのでありますが、農業會に於きましても資金の調整を受けて居りますので、支拂ふ金はありませぬ、假りの金を拂はうと致しましても、支拂ふだけの金はありませぬ、今院内の食糧對策委員の諸君が石川縣へ參りまして供出督勵を致して居るかと存じますが、寧ろ此の事實に對して隨分いぢめられて居るのではないか、此のやうに供出を致して居るが、之を何として呉れるのだと云つて愬へられて居るのではないかと存じます、でありますから一日も早く米價を決定して戴くやうに取運んで戴きたい、何故米價の決定が遲れて居るかと云ふ事情も想像を致して居ります、併しながら今日農家が一生懸命に供出致して居る事態に對しまして、相當の措置を講ずることも必要ではないか、唯決定しないからと云つて漠然と捨てて置くと云ふことは、甚だ怪しからぬではないか、斯う云ふことを感ずるのであります、決定しないならば決定しないで、暫定的に何等かの措置を講ずることが必要ではないか、之に對して農林大臣は如何なる考へを持ち、又暫定的に取急いで如何なる處置を講ぜんとするか、其の點に付て伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=105
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106・和田博雄
○和田國務大臣 御尤もであつて、是は餘り長く延びますれば、私としては暫定的の措置を講じて、例へば若干の假拂をするとか何とか致したいと思ひます、價格の點に付きましては關係方面との折衝を只今物價廳が中心になつてやつて居るのであります、安定本部だけしか向ふは相手にせずにやつて居る、併し私共は側面から係官其の他に斯う云ふ事情になつて居るのだからと十分愬へて、君達が延ばせば延ばすだけ日本の食糧事情に付ては困つて來るのだと云ふことを話しまして、促進を致して居るのであります、尚ほ今後私共の方としましても側面から促進は致しますが、是は物價廳の諸君を十分に鞭撻して、殆ど毎日のやうに、今日も私催促を致して居るのでありますが、御話のやうに早場米は今年は早い譯でありますから、放つて置く譯に參りませぬ、至急に暫定的措置を取るやうに通牒か何か出したいと思つて打合せ致して居るのでありますから、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=106
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107・江川爲信
○江川委員 能く分りました、通牒を發せられると同時に、金の方も大藏省と打合せまして十分に御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=107
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108・和田博雄
○和田國務大臣 承知致しました、何等か措置を至急に取りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=108
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109・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは鈴木憲一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=109
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110・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私は先づ第一に農村の人口が非常に過剩になつて來ますし、それに對應して日本の將來の農業は機械化或は合理化と云ふことを大いに考へて行かなければならぬ、斯う云ふ場合に過剩人口との問題に付きまして農林大臣は農村の近代化、工業化の面からどう云ふやうに御考へになつて居るか、此の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=110
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111・和田博雄
○和田國務大臣 過剩人口と言ひますか、「フル・エンプロイメント」の問題は、産業全體の問題として一應考へて見る必要がある譯でありますが、農業としましても、農業面に於きまする所の所謂過剩人口と云ふものに付きましては、農業内部に於て日本の過剩人口と云ふものを全部引受けることは到底出來ないことであり、又さう云ふやうな經濟に相成つてはならぬのでありますが、我々が考へて居りまするのは、一つは農業の經營の面に於きまして、之を出來るだけ協同組合其の他の力に依りまして、協同の力に依つて近代化を圖つて行く面と、個々の農家其のものに於ても、或る程度資本的に集約な方向へ持つて行きまして、農業それ自身の養ひ得る人口を多くして行くと云ふことと、又一つには開拓其の他の土地を平面的にと言ひますか、立體的にと言ひますか、兩方に擴げることに依りまして、そこに農村の人口を吸收して行くと云ふことと、今一つは農業だけで過小の農家を生活せしめると云ふことを考へますることはやはり限度がありまするので、日本の農業と云ふものは、或は山と結付き、或は漁業と結付き、其の他の産業と結付いて居りまするので、それ等の點を十分考へまして、農業外の所得を殖やす方法に於て、或る程度の緩和を致して見たらどうかと考へて居るのであります、どうも從來の考へ方が、日本は何かと言ふと直ぐ農業へ總ての負擔を持つて來る傾向があるのでありまして、是は私をして言はしめれば、國としては極めて危險な方向であるのであつて、寧ろ農業外の工業其の他の復興を一日も早く圖つて、其の方面への吸收と云ふことを十分重點的に考へる、勿論農業は今に於ては殘存して居る非常に大きな産業でありますので、差當つて此の方面への吸收も勿論考へなければなりませぬが、農業だけを過剩人口の吸收對象にして行くと云ふことでは相成らぬと私は思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=111
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112・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 只今御話のやうに、從來動もすると農村へいつも負擔を加重せしめると云ふやうな傾向が非常に多くありましたので、今後此の面を農林省としては非常に警戒をして戴かないと、我が國の農村は非常な困る運命に陷るだらうと云ふことは想像されるのであります、明治以來非常に農村の人口が減少をして來まして、稍稍耕地面積の所有なども廣くなつて來た傾向がある所へ、今度は何倍かの恐ろしい人口を包容して行かなければならない、是は農村ばかりではない、勿論都市もさうで、一貫して考へなければならないと思ふのでありますが、其の場合、土地の所有權を移動せしめると云ふ今度の案を骨子として、農村には全面的な改革が行はれなければならぬ、又それを農民も待望し、政府も之を企圖し、我々もそれを大いに企圖して行かなければならぬと思ふのでありますが、どう考へて見ましても、農村に溢れる人口の始末を、聰明な方法に依つて近代化し合理化し、或は其の經營法を極度に集約化し多角化すると云ふやうな方法を考へないといけないと思ふのであります、併しそれは考へれば考へられるのでありますが、事實に於て如何に之を著手せしめるかと云ふことに付て、具體策を早く農民の前に示さなければならないと私は考へるのであります、何か一點でも宜しいから、此の際具體的なものを示して、此の線に沿つてと云ふやうな誘導的な面とか、計畫とか、或はそれに對する資本は斯う云ふ風にするとか、或は金融は斯う云ふ風にやるとか云ふやうな問題を何か考へておいでになるかどうかと云ふことを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=112
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113・和田博雄
○和田國務大臣 全般の問題と個々の農家の指導の問題とは、やはり分けて考へて戴かないと困るのでありまして、我々が其の點に付て一應考へて居るのは、今朝も問題になりましたやうな、經營面に於ての技術指導の問題としてそれを取上げて居るのであります、只今の所は、御承知のやうに凡ゆる農業の生産資材が非常に窮屈な時期なのでありまして、農機具にしましても、家畜にしましても、日本は戰爭に依つて經濟が破壞されてしまつて居りますので、それを常道に直して、而も或る一定の理想を到達して行かうと云ふのでありますから、そこにやはり何等かの時を藉して戴かないと、是はやれば直ぐと云ふ譯には中々參らないのであります、唯私は今後の問題としましては、技術の指導にしましても、早く言へば協同組合と云ふものを作りまして、耕作者なら耕作者の協同組合と云ふものを中心にして、そこで農機具の問題でありますとか、或は耕地の改良、又は用排水の管理、或は家畜の共同利用と云つたやうな形で、農業の協同化に依る近代化と言ひますか、さう云つたものを圖つて行く考へで居る譯でありまして、個々の農家其のものに技術が滲透致しますと云ふ其の行き方は、私が今朝説明致しましたやうな方式で一應突き進んで行つたらどうかと考へて居る次第であります、勿論農業金融等は、只今の中金に依りまする協同組合金融と云ふものを、農村金融としては何處までも主として考へて行かなければならぬと思ふのであります、殊に政府の預金部の資金の運用が非常に制約されて居ります現在及び今後に於きましては、是はどうしても農民自身の蓄積したものを系統的に流して行く、お互ひに融通し合つて行く、斯う云ふ風でなければならぬと思ふのでありまして、其の點でやはり中金の運用と云ふことに付て今囘中金法の改正を致したのでありますが、尚ほそれ等の點に付ての根本的な問題に付ては今後是非改革を致して、より民主化したものにしたいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=113
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114・葉梨新五郎
○葉梨委員長 鈴木君に御相談申上げます、出來得る限り御質疑の重複を避けて戴きたいと思ひます、只今の御質疑も數囘繰返された點であります、どうか重複を出來得るだけ御避け願ふやうに願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=114
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115・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 農村に工業を誘導して行く農工調整の問題は既に言はれたことでありませうけれども、私の考へます面から過去に於ける我が國の産業の面を見ますと、都市に於て商業と工業とが非常に調和の道を發見して其の中に發達した、農村は何時も其の場合に商工の面から搾られて居つたと云ふやうな状況があつたのだと云ふ風に考へるのでありまして、今後の農村に性格付けらるべき正しい行き方としての農村の工業化、農工の一體化と云ふやうな問題から考へますと、資本主義的な立場に於ける工業でなしに、農工の本當の合流の中に立つ産業生産の發達でなければならぬ、さう云ふ問題が農村に今後課せらるべき大きな問題てあると考へるのであります、で之を如何にして實現に誘導して行くかと云ふことは大きな問題でありまして、今後の農村の性格としてさう云ふ面が非常に必要視されます時に、唯其の聲を大きくして居ると云ふばかりでは駄目です、尚又是は民主的に行へば宜しいと云ふことで、農村と工業人と、或は農民と資本家とお互ひに話合つたら宜いとか、或は工場方面に農村人を勸誘するとか云ふやうなことは非常に危險であつて、寧ろ再び農村をして資本家の搾取場にされる虞もあるので、斯う云ふ場合に如何に適當な誘導方法を講ずるかと云ふことが非常な問題であると思ふのであります、現に起りつつある一つの簡單な例で申しますれば、地主が小作人に土地を大急ぎで闇賣りをする、私が知つて居りますのでは、一等田を一萬圓で賣つて居る、さうして買はない場合には、俺は自作するとか、或は他に賣るとか云ふやうな威かしをします、其の金を何にするかと云ふと、得ました金を以て農村企業を企てて居ると云ふやうな資本家、或は地主さん達が見受けられるのです、是などは農工調整の問題、農村に工業を興すと云ふ問題に便乘する所の非常に危險な部面であるのではないかと云ふ風に考へるのでありますが、さう云ふ面に付ての御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=115
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116・和田博雄
○和田國務大臣 農村工業の問題は、實際難かしい問題だと思ふのであります、能く考へて見ると、何だか捉へ所のないやうな問題に歸著する虞が非常にあるのでありまして、農村工業と云ふことから實はをかしいのであつて、或る所では國民工業と云つたやうな名前を使つて居る所もあるのであります、農村工業と言ひますと、從來の農産品の加工と云ふやうな方面にどうも概念的に限定されるやうな傾きがあるのでありますが、實はそれではならないのであつて、御話のやうに、農村の方の立場から行つて總ての工業を農村の方へ誘導して行つたら宜いとは考へて居りませぬ、御話のやうに、唯單に從來のやうな資本家の立場からだけ農村に工業が移される、斯う云ふことであつては御話のやうな搾取の結果が出て來るのでありまして、農村の方の立場から言へば、農村に誘致したい工業と云へば、どうしても其の生産品が直ぐ農家の爲になる、或は農機具の工場と云つたやうなものであるならば、是は立地條件が宜ければ進んで農村の方へ移して行つたら宜いと思ふ、是は勞力の關係からしましても、或は出來上つた生産品から言つても、農工一如としてやり得る餘地が非常に多いのではないかと思ふ、現在でも進んだ農機具工業企業者達の中には、農村と結び付かなければ將來は發展性がないだらうとすら言つて居る人があるのであります、さう云ふ點から餘程吟味する必要があるのではないか、斯う思ふのであります、私も農村工業の問題は色々考へまして、或る程度の素案は頭の中に持つて居るし、書き物にもしてある譯でありますが、如何に具體的に之を豫算化して實質的にやつて行くと云ふことになつて參りますと、さう簡單には參らないのでありまして、色々な産業が實は考へられるのであります、殊に今後は例へば農産食品の工業にしましても、或は其の他の加工業にしても、又農村へ持つて行つても宜いやうな電球を作つたり、或は其の他の簡單な機械器具を作る、或は化學工業の一部を持つて行くと云ふやうな、それぞれのことが考へられるのでありますが、其の經營の形體と云ふものは、私共考へて見ますのに、どうもやはり單に資本だけの立場からでなくして、農工一體の形に依つて、出來ればやはり協同的な經營、協同組織に依つてやつて行くと云ふことが一番宜いと思ふのであります、私は正直に申して、實はまだ個々の工業に付ての技術的の吟味、それから立地的にそれぞれの吟味をし盡して居る譯ではありませぬので、どの工業から著手するかと云ふことに付きましては、まだ決定的の案までには至つて居りませぬ、併し總ての工業に對しまして、さう云ふ線に沿つて出來るだけ早く具體的に豫算化して、實行に移して行きたいと思つて研究させて居る譯であります、唯戰爭中色々の技術が農村に分散されて、殘つて居るものがある譯でありまして、個々のものに付て暫定的と言ひますか、試驗的に指導して居りますのは、農工地方協力會等を通じて實質的に指導なり何なりをやらして居る次第でありまして、勿論是等のものを以て足るのではないのでありまして、農村に工業を分散させて、農村の人口を純粹の勞働者として吸收すると云ふ面からも考へなければならず、農村自體で工業其のものを行つて行くに付て、不可分にそれと結付くことを必要とすると云ふ面からも考へなければなりませぬので、只今の所さう云ふ段階にあるのでありまして、今暫く時を藉して戴きたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=116
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117・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 御答へのやうに我々も考へて居るのでありますが、今度の土地改革の問題を繞りまして、何か農村に一脈の非常な暗い影を漂はして居ると云ふ風に直觀されると思ふのであります、其の暗い影を持つと云ふことは、やはり溢れて居る人口の問題が大きな原因をなして居るのではないか、尚ほ其の他精神上の問題もありますが、根本に於て農村に溢れる人口を如何にするかと云ふことを考へますと、どうしても工業の問題を農村内に如何に合理化して行くかと云ふ所に相當の問題があると考へられる、それを何とかして都市に放出しよう、其の人口を都市に出さうと云ふことは、今後の日本再建の爲に色々の面から危險であると私は考へるのであります、何とかして農村の中で暫時の間でも宜いから之を吸收して貰はなければならないと云ふ風に暫定的には考へるのであります、其の位に大きい問題ではないかと思ひますので、成べく早く此の點に付て、私案でも宜しいと思ひますから、豫算化して貰ひたいと考へるものであります、さうして將來此の方面は農林省だけでなしに、商工省の方とも共に御考へを願はなければならぬと思ふのでありますが、是非一本の立場で、如何に現在農村を新しい組織の下に新しい形の農村に導くかと云ふ方面に御盡力を願はなければならないと思ひます
尚ほ人口の問題でありまするが、政府としましては、都市、農村共に過剩な此の人口に付て何か特別な──和田農相は其の面に付て非常に御研究でもあるやうでありますので、日本の人口問題に付て、御意見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=117
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118・和田博雄
○和田國務大臣 どうも人口問題と云ふものは、問題の出發點であり、歸結點でありますので、私見を述べることは差控へたいと思ひますので、御勘辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=118
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119・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私の考へますことは、和田農相始め政府各位の御盡力が願へるかどうか、我が國の人口の過剩を、此の儘にして何時までも置いておけば平和な文化國家建設に非常な障碍となる…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=119
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120・葉梨新五郎
○葉梨委員長 御意見の御陳述でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=120
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121・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 いいえ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=121
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122・葉梨新五郎
○葉梨委員長 成べく御質疑に願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=122
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123・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 それで日本人を解放する天地を求める爲に、殊に農村方面を擔當する和田農相は、日本人の解放の爲に、解放と言ひましても抽象的でありますが、過剩人口を若し此の儘置けば、非常な苦しさから生れる所の人間的な諦めとか、或は鬪爭とか反抗とか云ふ問題が起つて來易く、平和國家を建設する面に非常に妨害になる、斯う云ふ立場からしまして、例へば「アメリカ」なら「アメリカ」に交渉をして、新たなる處女地を我が農民の開拓地として提供して貰ふと云ふやうなことを御考へにならないかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=123
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124・和田博雄
○和田國務大臣 人口の問題は、結局は其の人口を養ふ所の國の經濟力に依るのでありまして、一國の經濟力が其の人口を十分養へ得なければ、是は或は失業となり、或は生活水準の低下となつて現はれる譯であります、日本に於ては、御承知のやうに只今賠償の問題でありますとか、或は軍需補償の問題であるとか、日本の經濟の再建に取つて基本的な問題が徐々に解決されて行つて居る譯であります、さうしますと、日本は其の與へられた線から今度は出發して行かなければならないのであつて、さう云ふ縮小した日本の經濟規模に於ては、そこに或る程度の失業者と云ふものも出て來る譯でありますが、それは當面の失業對策として、色々の公共事業に依つてそれを處置すると云ふだけでなくして、將來の問題としては、それ等の産業の發展を圖つて漸次自主的に此の人口問題を解決して行く、斯う云ふことになるのでありますが、御話のやうに移民の問題は、只今の所日本は管理下にあるのでありまして、到底問題にはならないのでありますが、此の點に付ては、將來日本が平和な國家として媾和條約を結ぶと云ふことになりますれば、どう云ふ形であるか分りませぬが、當然問題になつて來ることだらう、斯う考へて居りますが、只今の所は今言つたやうに、是は議論としては、人口問題解決の一つの方策としての理論としては云々され得る譯でありますが、實際の問題としては、只今はそこまで行き得ない實情であることを御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=124
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125・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 次は農村文化方面に付て少し申したいと思ふのであります、此の度の農地改革に依つて、日本の農業に對し、農村自體に對しても、農民の生活に對しても、將來明るさを認めると云ふやうなことを、和田農相は本會議に於て言はれたのでありますが、確かなる明るさを認めさせて居ないと云ふ風に私は考へる、如何なる面から敗戰後の人口の多い農村、而も零細化する農村に將來性、明るさを認め得られるかと云ふ點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=125
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126・和田博雄
○和田國務大臣 私は本會議では、此の農地改革が働く農民に土地を與へ、それに依つて兎に角農業の經營の内部に於て剩餘の價値を生じ、それが再行使される一つの基礎を與へる、條件を與へたと云ふ意味に於て、將來明るい日本の農村の爲の一つの礎石を造つたのだと云ふことを申上げた譯であります、人口問題を抽象的に、唯人口の數量と其の資源との間の關係としてだけ考へることは出來ないのでありまして、靜態的に考へれば、さう云ふ一つの問題が問題として殘る譯でありますが、其の面からだけ考へて行くことはどうかと思ふのであります、是は農村に於てはやはり現實に耕作を致し、實際上生活を致して居る其の主動的な立場を考へて見る必要があるのでありまて、それ等の人達が自分で働いた勞作の結果を公正に享有し得られるやうになり、經營自體の改善の餘地がそこに出來ますならば、其の經濟力の餘裕は延いては文化其の他の面を拓いて行く上の基礎になつて行くことでありまして、是は今後のやりやうに依るのであらう、斯う思つて居る次第でありまして、殊に現在の農村が「インフレーション」の下に於て或る程度從來の不況時代よりは宜くなつて居ると云ふことは言へるのでありまして、此の宜くなつて居る時に、農地の改革に依つて尚ほ一層其の經營の基礎を固めて行くと云ふことになりますれば、農村の基礎は固まる譯でありますので、さう云つた面から私は將來明るい農村を築く基礎をなしたものだらうと考へら居るのでありまして、此の點に付ては將來は是非さう云ふやうに凡ゆる施設を、文化の面に於ても、經濟の面に於てもやつて行きますことが必要でありますと同時に、農民自體がさう云ふことに努力をすると云ふことも亦必要なのでありまして、其の點はどうか兩々相俟つて御考へを御願ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=126
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127・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 從來農村が持つて居りました文化と申しましても、非常に貧困なものでありまして、今後我が農村が豐かな文化を持たないことには、非常に日本の將來に對して暗い翳を殘すのぢやないかと云ふ風に思ふのであります、農民が持つて居りました文化、殊に簡單に言へば、戰爭中指導された農民方面への文化は、物質文化を極度に輕視しまして、精神文化のみを強く農民に對して誇張した、さうして貧しくとも心裕かな生活とやうやうなものを以てのみ、東洋的なり、日本的なりと言ひ觸らして居る、さうして芭蕉の生活のやうなものを憧れさせ、傍ら供出面を強く行はれると云ふやうな傾向が非常に多かつた、所が敗戰後の日本の行き方を見ますと、更にそれよりも強く物資的な文明と云ふものの貧困に惱まされるのではないかと云ふ心配が非常に多い、そこで今後此の物資面の創造に對して盛んな意欲を農民が持たなければ非常に困ると思ふので、斯う云ふ面の指導に付て何か御計畫がございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=127
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128・和田博雄
○和田國務大臣 それは今後の農村の教育の問題に歸著する譯でございますが、我々の方としましては、農村子弟に付て農業上の技術を高めて行くと云ふ點に付ては、地方に於きまする、例へば四國四縣に模範農場を造れば、其の模範農場に研修所を設けて、農民が其處に來て十分科學的な研鑽もやり、一般的な教養を高めるやうなことに致したいと思つて、さう云つた計畫を致して居るのであります、私は是非地方地方に何かさう云つた特殊のものを設けまして、農業だけでなしに、其の他一般の教養をも高めて行く、さうして物事を科學的に考へて行く、又自分が實踐して行くことを學ぶやうに致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=128
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129・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 さう云ふ御考へに對して非常に同感でありまして、殊に文部省が公民館と云ふものを農村に提唱して居ります、所が文部省は洵に無力であつて、之を農村に提唱はして居りますが、一文の金も出さず自主的に之を行へと言つて居る、是が農村に如何に響いて居るかと言ふと、學校とか文化人とかの面にのみ是が響きを持つて居つて、農村全體の指導的な立場、或は農業會、或は何々組合と云ふ方には非常に響きが少いやうであります、併しながらあの公民館の組織計畫を見ますと、今後の農村に非常に明るさを與へて居る根源であると私は考へる、それで農林省では今後公民館の完成に對して凡ゆる面から御盡力を願はなければならぬと思ひます、殊にさう云ふ面に對して具體的なものを早く豫算面に現はして戴きたい、從來文部省がやりますことは農林省が知らない、農林省がやりますことは文部省が知らぬと云ふことでなしに、此の際厚生省或は商工省、農林省、文部省が一體になりまして、農村に公民館を設置致しまして、新しい農村の建設の源泉を此處で養ふと云ふことに大いに盡力を願ひたい、それに付て何か和田農相の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=129
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130・和田博雄
○和田國務大臣 公民館の點に付ては、能く文部省とも相談しまして我々の方としても具體的に色々な施設をやらうと思ひます、結局是は自分の生活と言ひますか、職業を通して一般的な教養も高めて行くと云ふことが一番手取り早いことでありますから、公民館の點に付きましては、御話のやうな點に十分注意しまして、今後具體的なことを致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=130
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131・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 文部大臣の御出席を御願ひして置いたのですがどうでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=131
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132・葉梨新五郎
○葉梨委員長 只今文部省に折衝中でございます、あなたの御質疑は文部大臣の御出席を必要とせられる點が非常に多いと委員長は考はます、文部省當局の御出席がある時におやりになつたら如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=132
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133・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 それでは農林省關係のことだけを御伺ひ致します、畜産の問題でありますが、最近農業會に統合された畜産會の組合の復活を圖らうと云ふ運動が非常に強硬のやうでありますが、それに對する御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=133
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134・和田博雄
○和田國務大臣 私は法制の建前としては、特別な畜産だけの組合を作る考へはありませぬ、併し協同組合法案を作ります時には、特殊農業協同組合を設けまして、特に酪農であるとか、特別に協同組合を作らしめる方が適當だと思ふものに付ては、さう云ふ組織に依つてずつとやつて行きたいと考へて居りまして、別個に法制上畜産なら畜産だけの組合を作る考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=134
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135・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 和田農相の抱かれる農村改革の「イデオロギー」と云ふか、さう云ふ面から行きまして、畜産組合、殊に競馬に關係をしたものが大きく過去の如く出來ることを私は非常に心配して居るのであります、農村が今後協同組織の下に淳朴にやつて行かうと云ふ際に、從來の如くそこに大きな金壺を持つた政治家が依存して付け込まれると云ふやうな點がどうもあるやうに見える、さう云ふ面に付ては十分警戒されて、淳朴な農民自體に依つて農村の復興を圖り、今後の新しい農村の黎明を求めると云ふ立場で十分御考へを願ひたいのであります、若し過去に起つたやうなものが復興されることになれば、農村の政治面に對して非常に影響があるのではないかと思はれます、殊に自作農創設と農地調整法との行き方と矛盾するやうに私は考へるのであります、尚ほ都市近在の農村に於て、最近盛んに起つて居る、例へば疎開した者が少しばかりの農地を買ひまして、それを元にして色々農地の擴大を圖るとか、或は自分が農業者然として或る期間之を確保して適當な時に手放さうと云ふやうな状態が現はれて、現に私の知つて居る農地委員會などでも非常に困つて居るのであります、さう云ふ商人的な根性を持つた者が農村に入り込んで來て、農地改革に便乘する虞がある、之を何とかして除いて戴きたい、此の點に付て御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=135
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136・和田博雄
○和田國務大臣 是は結局農地委員會で農地の買收なり賣渡の計畫をやります時には、十分さう云ふ事情を考へてやることになつて居ります、是は何處までも本當の農業者になつて行く者を主體にして行きたい考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=136
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137・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 兼業農家の今後の増減の見込は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=137
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138・和田博雄
○和田國務大臣 兼業農家は戰爭中非常に殖えた譯でありますが、我々としては寧ろ專業農家の方を殖やして行きたいと考へて居ります、併し全部が全部專業農家にすることは到底出來ませぬ、と云つて今までのやうな形の兼業農家が多くなることは如何かと思ふのでありまして、結局將來の見透しと云ふものは、どうも餘りはつきりは致しませぬが、我々の方向としては、專業農家を主にして行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=138
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139・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 純然たる農村方面へ行けばさうではありませぬが、都市近郊の農家に於きましては、農林省の統計にもありますやうに、兼業農家が非常に多い、尚ほ今農相が言はれるやうに、專業農家を主とすると云ふ聲を強く持ちたいと云ふのは、農民自身の考へでもありまするが、農村近郊に於ては農地の關係上中々出來ない、さう云ふやうな場合に、其の中に居ります純然たる農業者は、政府の意なりとして大いにそれを強く主張する、さうして兼業農家壓迫と云ふやうな聲も大分聞くのでありまするが、是は自ら地域に依つて左右さるべきものであるまいか、殊に我が國の農業は、全國的な統計を見ましても、非常に多くの兼業農家を持たなければならぬやうな状況でありまするが、さう云ふ點に付て如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=139
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140・和田博雄
○和田國務大臣 此の專業農家は最近は寧ろ殖えて居り、戰爭中はずつと兼業農家が殖えて來た譯であります、是は御話のやうに地域に依つて違ひます、私も其の通りだと思ひます、殊に兼業農家と云ふものを一概には排斥しないのであつて、農村工業其の他の將來を考へますと、やはり兼業と云ふ形に於て農家と云ふものが殘存するし、又さう云ふものが相當な重さを持つと云ふことは當然だと思ふのでありますが、出來得べくんば、農家としてはやはり兼業農家の方が專業農家より多いと云つたやうな状態は、私は餘り好ましくないと思ふのでありまして、どうしても農業は農業として成立つて行くそれだけの農家がやはり相當數ありますことが、日本の農村構成の上から言つても必要と考へますので、左樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=140
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141・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 地主は一樣に規定された土地を所有することが出來る譯であります、さう云ふ權利を持たされる譯であります、所が茲に偶偶の例ではありまするが、年取つた婆さんが一人で暮して居つて、それが地主として一町歩の小作地を所有して居る、所が一方には將に成年にならんとするやうな男の子を澤山抱へて、將來有望な農家になりたい、各々農人に仕込みたいとやつて居る時に、それに對して同じやうな規定を以て當嵌められると云ふことになると、そこに非常に差別が付き過ぎるのではないか、さう云ふものの操作をする爲の、何か餘裕とか、操作土地とか云ふやうなものを御考へになりませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=141
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142・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふ家族の構成の偶然から來る結果と云ふものは、今囘の農地制度では考へて居らないのでありますが、御話のやうな點に付ては、例へば或る程度開墾地があれば、開墾の方へ持つて行くとか、さう云つたやうな形で解決して行くより致し方がないのだ、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=142
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143・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 此の農地の所有權に付て家族數を大いに考慮して行くと云ふ立場はどうしても御考へになれませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=143
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144・和田博雄
○和田國務大臣 此の前はさう云ふ個人的なものに依つたのでありますが、それでは寧ろ弊害の方が多かつたので、實は今囘は世帶單位と云ふことに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=144
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145・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 神社又は寺院の別當或は住職等が農地を耕して居ります、戰爭中さう云ふものが非常に殖えたのであります、是は食ふ爲に自分の本來の面目の仕事を棄ててまでも、農業に從事した、所が今度の農地改革案から行きますれば、此の神社寺院に屬する人達の本來の面目を行はせる爲に却て矛盾するやうな結果を起しはしないかと思ふのであります、お寺の坊さんが本來の社會事業等のことは一向やらぬで、一生懸命百姓をやらなければ其の土地を取られてしまふと云ふやうな考へ、さう云ふやうなものに對する特別の措置を御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=145
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146・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふ人は恐らく飯米農家と稱する人達の範疇に入るだらうと思ふのでありまして、斯う云ふ農家は食糧事情が安定して來れば、自然自分で農業をやらなくても宜くなる點もありますので、只今の所は一應さう云ふ人が耕作して居りますれば、是は自作農の範疇に入ると思ひますが、固より其の人達が非常に廣大な土地を自作して居ると云ふことは、農業の發達上餘り好ましくないので、是は或る程度の制限をして貰ふことになつて居るのであります、併し食糧事情其の他の安定と相俟つて、漸次さう云つた問題は具體的に解決して行くのではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=146
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147・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 農相は、今度の改革を日本的に行ふと云ふことを仰しやつて居るのでありますが、私が伺ひますに、日本の農地と云ふものには、外國のものと違つた多くの──どんな小さい土地でありましても、そこに歴史とか因縁とか云ふやうなものを非常に澤山持つて居るだらうと思ふのであります、小作人にしましても、貧乏人或は道樂者とか、強欲者又は狡い奴が此處を取つたのだとか、いいお爺さんが此處を殖やしたのだとか、或は精農の永年の結果だとか、そこに笑ひや、涙や、鬪爭と云ふものが堆高く積つたものを、必ず其の一枚の畑が持つて居る、それが日本の國の農地の特徴であるのではないかと云ふ風に私は考へるのであります、和田農相は、日本的に日本の土地を處理すると言はれますが、此の日本的な農地の持つ面に對して如何なる御考へを御持ちになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=147
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148・和田博雄
○和田國務大臣 是は極めて厄介な問題で、困つたことですが、私が日本的と申しましたのは、何も外國のものを其の儘持つて來たのではなくて、日本の現實、それから將來、又過去と云ふものを十分農地制度の上に考へた上でやつたのだ、斯う云ふことを申上げた譯でありまして、それは一枚の田が色色な人生悲劇なりを背景に致して居ると云ふことは御尤もでありますが、併しそれ等の土地は何も他の人に移るべきものではないのであつて、其の村に住んで居る、其の村に生活して居る人の手に移つて行くのであります、殊に不在地主の土地が村の人の土地に移つて行くと云ふことを考へて見まするならば、村其のものが將來協同的な一つの團體として存在し、又成長して行きます上に於ては、是はどうしても必要であり、又好ましいことと思ふのでありまして、我々が曾ての恐慌に際して自力更生の運動をやつて行きました時にも、不在地主と云ふ問題に打突かつた時には、其の一枚の田圃に歴史的な色色な悲劇はあつたにしても、村の中の者に、殊に耕す人の手に土地があると云ふことが、何としても日本の農村としては最も好ましい姿である、斯う云ふ風に考へて居るのでありまして、其の點に付ては色々な御意見なり御感想はあらうかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=148
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149・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 其の村の内で處分されれば、餘計にさう云ふ心配が後に殘るやうに思ふ、土地に絡まる所の幾多の物語と云ふものが、日本の狹小な農地の中に含まれて居る所の特異な性格だと思ふのでありますが、さう云ふ非常に強い憧れを土地に持つて居る、さう云ふ風な所に對しまして、もつと大幅に民主的に之を解決せしめるやうな方法を御考へになつたらどうか、もう少し、一律的でなく、政府でもつと裕りを持たせ、彈力性を持つて相互ひに其の村の範圍内に於て民主的に行へ──値段と云ふやうなものも、取引と云ふやうなものも、さう云つた面を考へられませぬと、將來特別な問題が農村に殘り、尚ほそこに特殊な思想と云ふものが後世長く殘つたり、或は生活面にも、文化面にも特殊なものを殘し、尚ほ此の際色々の政治的な運動が其の中に介在して行くと云ふやうな危險が非常にあるのではないかと思ふのでありますが、もつと民主的に改革を行はせると云ふ風に御修正の意見はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=149
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150・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地改革は、やはり耕す人に土地を持たせると云ふ建前からやつて居るのであつて、其のやり方は勿論國家が之を買ふのでありますが、其の買收なり賣渡の計畫は、民主的に組織された農地委員會でやると云ふことになつて居るのでありまして、御話のやうな點に付ては、どうも考へる所の餘地はないと申上げる外はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=150
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151・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 文相に御伺ひ致します、現在農村に行はれて居りまする所の、非常に廣汎な面で農村青年等が行つて居ります所の、農村演劇の問題であります、是は農村の文化面を今後強く考へて行かなければならぬ上から見ましても、尚ほ文部大臣が非常に提唱される所の、農村の正義感こそ國家の良心である、或は農村に生れた所の藝術が日本文化の源泉であると云ふやうなこと、斯う云ふ面から眺められて、此の農村に行はれて居る都會的な、非常に淺薄な、官能的な都會文化の模倣のあの演藝會に對して、何か文部省としては、國民運動としてもう少し堅實な面を御考へになるやうな必要はないでせうか、それ等に付て一般的に御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=151
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152・田中耕太郎
○田中國務大臣 御指摘になりましたやうに、終戰後特に農村の青年達が虚脱状態にあつて、青年學校に入學しないとか、或は學校に通つても氣が入らないとか云ふやうな譯で、此の空隙に乘じまして色々卑俗的な、御話のやうな官能的な文化、特に演劇が蔓延つて居ると云ふやうな非難を度々耳に致すのでありまして、是は教育上から考へましても、又農村文化の國家的重要性から考へましても、甚だ寒心に堪へないことでございます、然らば之をどうしたら宜いかと云ふことになりますると、問題は非常に根本的になつて來まして、結局農村の教育全般の振興、或は農村文化の向上と云ふことになつて參ります、此の卑俗的な演劇をどう云ふ風にして淘汰して、立派な演劇を以て代へるかと云ふことは、やはり農村青年なり農村の公衆の趣味、或は娯樂と云ふやうなものの一般的の教養が向上しなければならないのであります、此のことは總ての生活の範圍に付て起り得る問題でございまして、信仰の自由が認められれば、淫詞邪教も蔓延るのではないか、其の淫詞邪教をどうするかと云ふことは、中々困難なことであります、卑俗的な文化、官能的な文化に付てもさうでございまして、兎角惡質が良質を驅逐すると云ふやうな現象が、文化に付ても存在し易いのであります、隨て國の文化政策と致しましても、「デモクラシー」的の世の中に於きましては、是はどうも自由淘汰に委せる外はないのであります、隨て自然淘汰の法則の下に、良いものをどしどし注込んで行きまして、惡いものを驅逐する、それにはやはり國民全體の文化的「レベル」が向上し、批判力が増さなければならないと云ふ譯でございます、然らば良いものをどんどん注入すると申しましても、そこに官僚的の價値判斷が加はつて參りますと、又往年の文化統制の弊害を繰返すと云ふやうなことにもなりますから、そこは實に難かしい所で、やはり民間の關係者、文化團體、宗教團體、言論界と云ふやうな方面の協力を得て、本當に立派な作品が出來、又立派な演出者がそれに協力して呉れると云ふやうなことを、社會教育の方面と致しまして文部省はどしどし力を入れなければならないと云ふ譯でございます、之には豫算が相當に要ることでありますが、今後は文化國家の建設上非常に重要なことと致しまして、文部省も必要なる豫算の要求に付きまして全力を注ぎたいと思つて居る次第でございます、尚ほ細目的のことは御尋ねに應じまして御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=152
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153・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 演劇の例でありますけれども、之には非常に年寄り達、過去の人達からは排斥されて厭がられると云ふやうなものが多いのです、又考へて居る人達からは、何とかならぬものか──所が農村青年達の現状は、今現はれて居る如き現實であつて、如何ともし難い非常な勢ひで全國的に是が蔓延つて居る、私は之を決して惡い傾向であるとばかりは考へない、農村文化の唯一の目覺めではないか、芽生えではないか、之を何とかして巧く誘導すると云ふことに依つて、漸次青年が競ひ立つて來るのではないか、斯う思ひますので、文部省は此の際豫算を組む、組まないは別として、色々の聲明等を出されて、或は新聞社等で何とかさう云ふ競技會を催して呉れとか、現實な面の指導をして呉れとか、或は色色な民間團體等に、さう云つたやうな批評或は批判の面の計畫等を發表させたらどうかと思ふのですが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=153
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154・田中耕太郎
○田中國務大臣 御説のやうに豫算を伴はずとも出來ることは幾らもあります、實は農村青年の教育の問題に付きましては、青年學校關係の方々が非常に熱心で、文部省はどう云ふ風な手を打つか、青年學校制度をどう云ふ風に改革するかと云ふやうなことに付きまして、色々要望も聽きますし、又具體案も承つて居る譯であります、併しながらさう云ふ制度の改革を俟たずしても、本當に教育者がしつかりした見識を持つて居り、又熱意があると云ふことであるならば、明日からでも地方の青年に働き掛けて、其の心を促へることが出來ない譯はないと思ひます、さう云ふ意味で、文部省も豫算を伴はないで出來ることは、如何なることも常に致さうと云ふ風に努力して居ります、又豫算を必要とするものに付ては、豫算の獲得に全力を盡すと云ふ建前で參つて居ります、只今御示唆になりましたやうな、詰り一般的な態度を常に明かにすると云ふこと、又さう云ふ方面に付きまして、言論界なり、藝術界、演劇界或は映畫界と云ふやうな方面の文化人の協力も得て、社會教育の一面、殊に公民館を中心と致しまして、さう云ふ「チャンネル」を通して働き掛けたい、又學校の先生などにしましても、さう云ふ教養を豐富にして、地方文化に貢獻すると云ふことに付きましても、示唆を常に與へて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=154
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155・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 豫算の要らないさう云ふ面を積極的に大いにやつて戴きたいと思ふのでありますが、豫算の要るべきものにも、今少し文部省に御盡力を願はなければならぬ、殊に今言はれました公民館の問題でありますが、あれは非常な豫算が要るものでありまして、之を「プラン」だけを發表して置いて、やれやれと言つても、中々此の線に沿つて動いて來ない、是は文部省が如何に良い案を出されても實際は動いて來ない、殊に文部省の案を支持し、其の線に沿つて大いに農村民主化の根源を作らうと云ふやうな熱意に燃えます者は一部の者でありまして、全體の農村をして起ち上らせる爲には、もう少し農林省或は厚生省、大藏省、商工省等と共同して、新しき農村を建設する爲に、公民館を中心としたあの經營を圖る爲の委員會を御作りになつたらどうかと思ふのであります、此の計畫を出された文部省が、其の「イニシアティーヴ」を取つておやりになつたらどうかと思ふのですが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=155
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156・田中耕太郎
○田中國務大臣 公民館の充實に付きましては、御説のやうに、豫算も甚だ多額を要する譯でございますが、是は色々な規模のものが考へ得られる譯でございます、「スタート」だけは控へ目の小規模なものでありましても、段々さう云ふ名稱の、一つの小さな建物なり、或は獨立の建物でなくとも、青年學校なり國民學校なりの比較的廣い一室でも出來ますと、それが段々擴張して行きまして、多少は有志の寄附も集まるでせうし、又それが或る意味に於て村の誇りになり、隣村との善い意味の競爭上、國が特に補助しなくても、段々自發的に成長を遂げると云ふやうなことも、實は願つて居る譯であります、併しながらそれにしても自然發生的成長と云ふことを俟つだけでは、國として本當の文化國家の使命の遂行上、完全に責任を果したとは申されないのであります、出來るだけさう云ふ點に付きましても今後大いに豫算を要求致しまして、公民館の擴充強化を圖りたいと思つて居ります、實は社會教育と云ふものは、學校教育と竝んで、或はそれ以上今後重要性を持つものであります、其の中の公民館の事業は、世間も大いに期待されて居りますから、文部省と致しましても、力を込めてやりたいと思つて居ることであります、其の方法に付きまして、只今御示唆になりましたやうな關係各省、殊に農林省なり商工省なり厚生省なりに、文部省と致しまして協力を依頼しなければならさいことが多々ございます、斯う云ふ點に付きまして、御示唆になりましたやうな實行方法に付ても、考慮して行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=156
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157・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 此の農村に於ける新しい文化の源泉であるべき公民館の建設は今度農林省の計畫されて居る、試驗場を大いに強化しようと云ふ、其の試驗場の一分場であると云ふ意味も此の中に多分に含ませて、農村の設計をすべきものだ、或は小さいながらも、小さな農民達の研究所を置くべきだと云ふ風に考へるのでありますが、斯う云ふ面で、どうぞ農林、文部兩當局が合流されて、農村の淳厚な美俗の爲に、今後分れずに一つ線で御歩きを願ひたい、今後來るであらう所の「アメリカイズム」の奔流、或は「イギリス」的な階級分化の虞と云ふやうなものが非常にあるのではないか、さう云ふ面からしまして、新たに茲に私は兩省の提携を願つて置きたい、斯う思ふのであります、是て私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=157
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158・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=158
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159・大澤喜代一
○大澤委員 文部大臣は最近學生の思想に付て重大な聲明をしたやうであります、實は農村の民主的な革命とか、土地の解放とか、是等の色々な大きな仕事は、何としても是からの青年に俟たなければならぬ點が澤山あります、殊に地方から出て居る所の澤山の學生、此の學生達のあり方と云ふものが、非常に今後の農村問題に重大な影響があると思ひます、そこで先づ簡單に御尋ねしたいのですか、新聞に依ると、文部大臣は、學生は未完成だから、さう云ふ實際運動をやることは宜しくないと云ふやうな意味のことを言つて居られるやうだが、一體未完成と云ふのは、具體的にどう云ふことを指すか、大きな問題だと思ふ、と云ふのは、人格にしても、學問にしてもさうである、由來東西古今の歴史を見ましても、文部大臣や大學教授が皆人格者で、學生が人格未完成で、そこで國が榮えたと云ふ例は少しもない、寧ろあべこべだと思ふ、例へば日本の戰爭の状態を見ても、あの當時一番戰爭に反對した青年の中に學生が澤山あつた、却て當局の態度を受入れて、帝國主義的戰爭の前衞となり、色々な惡い思想を振廻して國をどん底に陷れた者の大半は大學教授であり、或は大臣であつた、若し我々から言はせれば、過去に於ける日本の青年學徒の政治運動と云ふものをもつともつと伸張させたならば、今度のやうな敗戰日本は或はなかつたかも知れない、さう云ふ點に付て、私は此の機會に大臣から、過去に於ける日本の學生の政治社會化の運動、之に對してどう云ふ考へを持つて居るか、それを一つ聽かして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=159
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160・田中耕太郎
○田中國務大臣 御質問がありましたので、私の眞意を申上げる機會を得て喜んで居る次第であります、未完成と云ふ言葉が大分波紋を起したのでありますが、實は斯う云ふ意味なのです、學生は何か學ぶ爲に學校に入つて居る、若し先生から全然學問上學ぶ所がないならば、學校にわざわざ入る必要はない、然らばさう云ふ學生が政治運動をする場合に於て、どう云ふ態度でなければならぬかと云ふことが問題になります、而も學生は、要するに言論の自由、又政事結社の自由、政治運動の自由等を持つて居りまして、選擧の際には投票權を國民として行使する、それは分つて居ります、隨て學生もやはり政治的の見識を持つて居なければならない譯であります、併し是は學生としての見識を持ち、又投票權を行使する譯でありまして、學びつつある學生が、而も政治に關與する譯であります、隨て政治運動で非常に多忙であつて、學校で以て學ぶと云ふことを全然疎かにするとか、或は大部分の時間をそれに割く、極く僅かしか學ばないと云ふことがあつたならば、學生の本分を完全に盡して居るとは言へないのではないか、學校の中に於て政治運動をすると云ふことと、學外に於ての運動に從事すると云ふことは、是は違ふのでありまして、勿論選擧の際、投票權を行使する、或は演説を聽きに行くとか、同志が集まり、色々政治的な意見をお互ひに交換し合ふと云ふやうなことは、是は無論否定する意味ではありませぬ、併しながら學生は學生として、やはり研究の途上にあるのだ、未完成と云ふのは、何も人格が缺けて居る所があるとかなんとか云ふ意味では決してありませぬ、其の點は誤解のないやうに御願ひ致します、詰り例へば、お醫者さんならお醫者さしを修業して居る者が、お醫者さんと云ふ醫學的の知識なり技術の點に於て、先生と比べてまだ完成の域に達して居ない、先生と雖も勿論一生掛つて修業するのでありますけれども、比較的、相對的の意味に於て、何の爲に學生が學校に入つて勉強して居るかと云ふと、其の專門的の知識に於て完成して居ない、修業しなければならないものである、それが學生の本分だと云ふ意味で申した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=160
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161・大澤喜代一
○大澤委員 今學生が學園に居つて政治運動をすると、結局學生の本分を十分に盡すと云ふことは出來ないからいかぬのだ、例へば今の御話の、醫學なら醫學をやつて居る者が政治運動をやつたりなんかして、醫學を十分學び盡すことが出來ないことになるからいけないのだ、斯う云ふやうな御見解のやうに思ふのですが、假に醫學でも農學でも、或は經濟學でも宜いのですが、若しさう云ふものを學びながら政治運動をやるなら差支へないのかどうか、此の點は重大だと思ふのです、例へば大學で經濟學をやる、是は「マルクス」をやることは當り前だ、「マルクス」をやると云ふと、結局現在の勞働組合なり農民組合なり、社會黨なり共産黨なり、之に對して具體的な議論をしなければならぬし、それはどう云ふものかと云ふことを自ら體驗すると云ふことが、此の人達に取つて大きな學問である、何も學校へ行つて碌でもない教授の學問だけ聽くのが、必ずしも學問を完成させる途だとは、今日誰も考へて居ない、だから、あなたの言ふのは、學問をしつつ政治運動をするのは差支へない、政治ばかりして全然學校へ出ないと云ふならば、是は一應大學當局としても、文部當局としても文句を言ひたい所だと思ふ、あなたの先刻、學生は學生として選擧權を行使するのだと云ふのは、それは間違ひだ、學生として選擧權を行使するのではない、彼は國民の一人として、日本を如何に良くするか、民主化をどうして早く遂行したら宜いかと云ふ角度から、學生は投票し選擧に關係する、さう云ふやうな物の考へ方も私は直して行かなければならぬと思ふ、現に先刻私質問して置いた通り、過去に於ける學生のあの良心的な、情熱的な動きを見ても、若し日本の學生に對するあなた方の思ひやりと云ふもの、國家の本當の考へ方と云ふものが、もう少し大きく正しいものであつたならば、繰返して言ふやうですが、日本帝國主義戰爭は起らなかつた、ああ云ふ微々たる小さな學問をするよりも、彼等は街頭に立つて、さうして戰爭に反對した、是はどんなに國の爲に、又世界文化の爲に大きな役割をしたか分らない、我々は今日大學當局なり文部當局なりが、心を空しくして、過去のさうした學生に對して御詑びしなければならぬと思ふ、あなた方がああ云ふ態度を執らなかつたならば、もつと日本は良くなつて居つた、さう云ふ點から考へても、現在の日本は然らばどうか、やはり此の學生の大きな歴吏的な任務と云ふものを十分評價しなければならぬのではないかと私は考へる、唯一概に、學校へ行つて講義を能く聽いて、學問を注ぎ込むのが、學生の務めだからと云ふ小さい考へでなく、もつと、如何にして日本を良くするかと云ふ點で、學生の政治運動と云ふものを考慮すべきではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=161
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162・葉梨新五郎
○葉梨委員長 關聯質問ではありますが、重大な御質疑のやうでありますから、豫算總會其の他の適當の機會に於てやられるやうに、又文部大臣もどうか簡單に御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=162
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163・田中耕太郎
○田中國務大臣 只今の御質問でございますが、私と雖も決して、唯教場に眠つて柔順な學生として、先生の言ふことを唯筆記して、歸つて諳記して試驗を受けて就職すると云ふことが、學生の本分であると云ふ風に考へて居る譯ではありませぬ、やはり學生も人類愛、又祖國愛、社會的の正義に對する憤り、さう云ふ氣持、一口で言ひますと、眞理の追求愛好の念、さう云ふものに燃えて居つてこそ本當に學問は活きるのでありますから、さう云ふ氣持まで殺してしまへと云ふことを、私は言つて居る譯ではない、それは大いに活かさなければならぬ譯です、隨てさう云ふ情熱は、一票を行使する場合に、當然それが現はれるのであります、さうして學生が見識あり、學問を知れば知る程、其の行使の仕方にもやはりそれが現はれて來る、此のことは御信じ下さつて宜いと思ふのであります、唯併しながら、學生が天下國家のことばかり考へて──ばかり考へるのは宜いけれども、全然自分の專門のことをやらない、「ドイツ」語も英語も讀めない、唯大風呂敷を擴げて居ると云ふのでは、何故に學校に入つて居るか、意味が分らぬのでありますから、やはり學生としては學生の本分を考へてやらなければならぬ、それを言つて居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=163
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164・葉梨新五郎
○葉梨委員長 本日は是にて散會致します、明日は午前十時より開會致します
午後四時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00519460918&spkNum=164
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