1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月十九日(木曜日)午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 森幸太郎君
理事 飯島祐之君 理事 山口光一郎君
理事 細野三千雄君 理事 富吉榮二君
理事 藤本虎喜君 理事 菊池豐君
磯崎貞序君 古質太郎君
田邊讓君 三浦寅之助君
森田豐壽君 藥師神岩太郎君
山口好一君 江川爲信君
小笹耕作君 太田秋之助君
白木一平君 寺島隆太郎君
佐伯忠義君 井伊誠一君
大澤喜代一君 中原健次君
平野市太郎君 松澤一君
麻生正藏君 松本六太郎君
増井慶太郎君 北政清君
山木武夫君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
物價廳次長 工藤昭四郎君
農林事務官 山添利作君
農林事務官 笹山茂太郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前會に引續き質疑を續行致します──北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=1
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002・北政清
○北(政)委員 農林大臣に御伺ひ致しますが、本法は第一條に於ける、勞働の成果を公正に享受させる、農業生産力を發展させる、民主的傾向を促進させる、此の三つが法の主眼點である、斯う考へて居るものでありますが、更に本法總體から見まして、後の爲に伺つて置くのでありますが、農林大臣は、新憲法と申しますか、今度の將に議決されんとする改正憲法の趣旨に副うて行かれる積りであるか、舊憲法の儘で行かれる肚であるか、「マッカーサー」司令部の十二月九日の指令を尊重される肚であるかどうか、是だけを先づ前提として承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 それは勿論新しい憲法の線に沿ひ、「マッカーサー」司令部の十二月九日の「ディレクティヴ」の趣旨は、之を尊重すると云ふことは當然であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=3
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004・北政清
○北(政)委員 勿論の御答辯と思ふのでありますが、勞働の成果を公正に享受させる、是は十二月九日の「マッカーサー」司令部の指令にも同樣な意味のことがあるのでありますが、是は地主小作關係、所謂小作料のみが不公正だと考へて居るのかどうか、小作料は、私から言ひますならば、二割五分なり三割に致しましても、あとの七割と云ふものは他のものであります、此の小作料の中には、土地資本利子と云ふものはどうなる、是は公正の分の方に入るのか入らぬのか、其の土地資本利子を除きますと極めて微々たるものではないか、之を以て農民の勞働の成果を公正に享受させると云ふことには餘りにも僅かなものである、今一つは、此の間から本會議に於ての御説明でも、之を以て農村を民主化するのだ、民主化するのだと言はれるが、一割か五分にしか當らない所を公正にするのであつて、民主化と云ふ意味に付ては、どうも農林大臣の考へて居られるのは、地主と小作だけの關係が解決すれば農村は民主化する、又農民の總體から申しまして約三分の一若しくは三割程度の土地が自作農化することに依りまして農村が民主化するのだ、私共が今考へて居りまするのは、地主、小作關係などよりも、民主化する線は、官吏と農民との差である、是が最も大きいものである、此の線には何等觸れず、僅かに末端の小作料を減ずるとか、或は自作農にすると云ふことだけで、是が民主化と云ふのであるか、どうも民主化の線が違ひはしないか、私共から率直に申しますならば、私はお上手が下手だから率直に言ひますが、今の日本は、官の爲に、所謂官僚專制の方の農村に及ぼす所の影響が最も大きいのだ、農民は生産物一つも動かすことが出來ぬ、價格も官僚の勝手氣儘である、此の大きなものを解くことを考へないで、是で農民解放と言ひ得るか、此の點に對して、此の自作農創設だけを以て民主化が出來る、斯う考へて居られるのは非常な間違ひである、農林省の色々の法令などを見ますと、極く末端のことだけは民主化する、今度の生産物の供出問題に致しましても、末端の町村で分けるだけは民主化してやる、あとの總生産が幾らか、五千七百萬石が本當か、六千萬石が本當か、幾ら割當てられるか知らぬが、それは上の方で勝手に御決めになつて、一番末端の町村に行つて、其の村に割當てただけを民主化せよと言ふ、それまでは官僚が勝手にやるのではないか、此の現状から見ましても、私は農村の民主化は是からのことであつて、之を不必要だと申すのではない、是が非常に必要だと云ふことは肯定致して居るのでありますが、農林大臣の農村の民主化と云ふのは、こんなことばかりで出來ると云ふ肚で居られるのかどうか、之を一つ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=4
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005・和田博雄
○和田國務大臣 私は、農村の民主化と云ふものが此の土地改革だけで完全に出來る、斯う申したことはないのであります、併し土地改革は、農村を民主化する爲にどうしてもやらなければならない不可缺な條件の最大の一つであると云ふことを常に申して居るのであります、御話のやうな、官僚機構と云ふものと農民との關係に付ては、改善さるべきものは多々あると私は思つて居ります、是は官吏の制度及び地方自治制度其の他の改善に依つて、それ等の民主化と云ふものに依つて、所期出來る事柄であつて、農地制度改革の範圍外に屬することであります、それから統制に付ての御話がありますが、統制を必要とするやうな今のやうな經濟事情に於ては、全般的な計畫を立て、統制の枠を定め、さう云ふことをやりますには、是はどうしても國家がやらなければならないのであります、個々の農民がそれをやることは實際出來ない事柄なのであつて、さう云ふ「パブリック」な事柄に付てこそ初めて國家と云ふものがそこに介入して、それがやつて行くと云ふことになるのは當然のことであるのであります、御話のやうに、農民が或る程度經濟的に自由を束縛されて云ると云ふことは、現在が統制の經濟の時であると云ふことから來ます結果なのでありまして、唯あなたの仰しやるやうな、官吏制度其の他の行政制度其のものの民主化問題、是は別途に實現さるべき事柄だと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=5
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006・北政清
○北(政)委員 其の問題に付ては更に後で本格的に承つて見たいと思ひます
第二には、耕作權の確立の問題であります、一體耕作權をどの程度に確立される肚か、要するに、契約を履行するせぬと云ふ場合に於ても、耕作權は認めるか認めぬか、是は政府が今土地を御買上げになる上に非常な關係を持ちますので、耕作權をどの程度に認めるか、單に契約致しましても、農業は御承知の通り原始生産業であります、例へば本年は半作だと言ふ、政府の方は或は八分作だ、斯う言ふ、此の見方の差がある、契約に於ては、三十箇年賦なら三十箇年賦で均等に拂ふと云ふ約策になつて居る、政府の見方は、何ぼ陳情しても、是は八分作だ、だからそれは負けられないと言ふ、地主と小作の今までの關係は主に是であります、地主は三俵だと見る、小作は二俵だと言ふ、斯う言つて權利の爭が主なる爭議になる、之を契約を楯に行きますならば、今までの惡地主以上のものになる、本當の所をどうして調べるか、そこで耕作權と云ふものをどの程度まで認めるか、又十年、二十年契約して小作して居る、小作料も眞面目に納めて居る、さうやつて居つても地主が、契約の期限だから出て行けと言ふ、是は現在澤山あるでありませう、併しながら私共は大審院の判決例を見ましても、耕作期限の滿了と云ふことは、土地を返すと云ふことの意味ではなくて、小作料の改訂時である、是は大審院の判決に幾らもあると思ふのであります、是等を契約を楯にして、契約を守らなければ追出す、斯う云ふことまで行くのか、どの邊が耕作權の確立をする目標になつて居りますか、此の法令の中には耕作權確立に付て遺憾ながらはつきりしたものがない、もつと徹底したものがなければ大變だと思ふ、政府が御買上げになる、恐らく私が申上げたやうに、小作人が引合はぬ、それなら出て行け、斯う云ふことになつたら飛んでもないことになる、そこで耕作權があるのかないのか、政府から買つても、耕作の權利が確保出來るか出來ぬか、之に對して明快なる御返事を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 農地調整法の第九條の規定に依りまして、此の限度に於ては小作人の耕作權は確保されて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=7
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008・北政清
○北(政)委員 私は第九條に依つては少しも確立して居らぬと思ひます、要するに今申上げたやうに、二俵の收穫か、三俵の收穫か、五俵の收穫か、之を認定する所の確立したものがない、然らば之を理由に、契約があるからお前は不納だ、契約を履行せぬと言つて、小作人追出しの手に使はれはせぬかと思ひますが、其の點如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=8
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009・和田博雄
○和田國務大臣 第九條を能く御覽になりますと、さう云ふ無法なことは出來ないことであつて、「農地の賃貸人は賃借人が宥恕すべき事情なきに拘らず小作料を滯納する等信義に反したる行爲なき限り」とあるのでありまして、小作人に信義に反した行爲がない限りは、假令國が地主になつた場合を考へても、國家はそれを追出すと云ふことは出來ないのでありまして、其の點に付ては第九條に依つてはつきりと規定を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=9
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010・北政清
○北(政)委員 極めてはつきりしたやうに見えて、實行に當つては頗るはつきりせぬ、無法と云ふのは、どの邊が無法か、三俵と見ることが無法か、五俵と見ることが無法か、問題はそこです、其の限界がはつきりせぬ、是で明瞭でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=10
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011・和田博雄
○和田國務大臣 さう云ふやうな作つて居る人が三俵と見、一般的には五俵と見る場合は、誰か適當な第三者が坪刈をやつて見れば直ぐ分ることで、個々的な認定に當つては、些した困難はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=11
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012・北政清
○北(政)委員 坪刈をやつて見れば分ると云ふのは、机の上の話で、さう云ふやうな稻を刈つて見れば分ると云ふ時には、皆稻を刈つてしました後です、是はもう是れ以上尋ねても御返事出來まいと思ふから、其の次に移ります
次に一町歩の保留問題、是は隨分論議されて居りますが、私は異なつた方面から、非常に重大だと考へるので御尋ねしたい、一體今度の農地改革は、第一條にあるやうに「農業生産力の維持増進」、是が重要な眼目であります、さう致しますと、日本の今の土地の配分で一番農業生産力の邪魔になつて居るものは何かと申しますと、小さな土地が散在して居ることであります、彼處に二段、此處に三段とあるから、排水溝とか暗渠排水をやらうにも實際出來ませぬ、又共同の耕作若くは共同の農具を入れようと云ふ場合に於きましても、散在したものが中途にある爲に出來ないと云ふのが、今日日本の農業の大きな缺陷になつて居るのであります、此の農地改革をやらうと云ふ際に、分合交換を完全に邪魔するものは此の一町歩の保留であります、將來小作人に小作させることも考へられるので、一町歩を置くと云ふことであるけれども、此の法は二年間でやつてしまふ、一應ここで片付けてしまふ、斯う云ふ場合に一つ思切つて、一町歩以下と雖も耕作せざる者は土地を持つべからず、大體斯う云ふ建前にしなければならぬと思ふ、是は「マッカーサー」司令部も恐らく喜んで贊成して呉れると思ふ、大臣が面倒なら私はお手傳ひに行つて上げる、そこで私は斯う云ふ時でなければ土地の分合は出來ない、洵に絶好の「チャンス」だと思ふ、此の一町歩以下を殘されることに依つて、折角の農地改革の本當の目的は崩されてしまふ、實に痛はしい、佛作つて魂入れずである、それで一町歩以下と云ふのは、祖先傳來の土地を幾らかでも殘したいと云ふ愛著心を踏み蹂るやうで洵に氣の毒ですが、國家の爲に一つ思切つて貰つて、地主と云ふ名義だけ持つて居つてもどうするかと云ふ考へから、致しまして、一つ農林大臣は思切つて私共の見る所に──社會黨の人も、自由黨の人も皆言つて居られますので、是非それはやりたいものだと云ふ御答へを得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 一町歩を殘すと云ふ點に付きましては、此の前の私の御説明で御諒承願ひたいと思ひます、唯北さんの觸れられた、一町歩を殘したが爲の交換分合の困難さに付ては、私も非常に大きい點だと考へて居ります、其の點今度政府の買ひましたものに付きましては、交換分合等を強制的にやれるやうに致して居りますし、又殘りましたものに付きましては、賃借權なり其の他の耕地の上にある權利に付て交換其の他のものをやり得るやうに致して居るのであります、併し將來の問題として、交換分合のみならず、耕地整理其の他一般の集團化をやりますことは、此の土地改革をやりまして協同組合と云ふものを作ります時に、私は其の問題を是非入れて行きたいと思つて居るのでありまして、あなたの其の點に對する御質問は相當「ポイント」に當つたものだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=13
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014・北政清
○北(政)委員 農地委員其の他から勸誘してでも努めて之をやる場合には、希望者として取扱ふことが出來るだらうと思ひます、もう一つは、今農林省が御提出になりました資料から見ても、五段以下の耕作者の平均段別は僅かに二段歩である、さうして見ると、五段は僅かしかなくて、あとは一段、二段、三段歩である、是は小作地の上に重大なる關係があると證ひますから私は若しここでどうしても出來ぬなら、一つ極力それを勸奬すると云ふ手段に出られたいと思ふ、本當に農地改革をやるのなら、あとで農業協同組合法が出來たらなどと言ふものではない、其の點に付て一應御返事を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=14
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015・和田博雄
○和田國務大臣 個々のものに付ても、農地の集團化、交換分合をやることは心懸けて居り、又是非やる意思でありまして、それは法規の上で第二十三條に規定して居るのであります、一町歩殘しましたそれ等のものに付ての耕地を引括めての耕地整理其の他の交換分合に付ては、やはり耕作者の協同組合が出來ますので、それに依つてやつて行くやうな何か方途を講ずる方が實は宜いのではないかと思つて居るのでありまして、其の點に付きましては一町歩と云ふものの存在を認めました限りに於ては、私は今左樣なことを考へて、之を實行するやうに致したい、斯う思つて居るのであります、協同組合法案はさう云ふやうな事柄をも考へて、實は大體の案を作つて居る譯でありまして、何れ是は次の議會でありますか、是非御審議を御願ひ致したい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=15
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016・北政清
○北(政)委員 一町歩以下を殘す爲に約六十萬町歩、斯う云ふ御説明でありますが、今度は隣接町村のものも、之を見ると含まれて居る、さうすると、決して六十萬町歩ではない、村内地主よりは、他の區域、隣接町村に居る所の地主の持つて居る量が殆ど之に匹敵しはしないか、是は自分の想像でありまして推算でありますが、多くの場合都市に居る商人が金を貸してある、其の金の抵當で取る、是が多い、殊に一町歩以下のものになると、其の手が最も多いのであります、或は親戚縁者が居る、極く遠い所の見も知らぬ東京の人が北海道に持つと云ふやうな場合は、非常に少いのでありまして、隣接町村が非常に多い、事實は一町歩以下と云ふものは六十萬町歩ではない、斯う考へます時に於て、私は其の一町歩が非常な邪魔になると云ふ見方をして居るのであります、尚ほ若し特別な事情があるならば、是は此の法令で除かれて居るやうであります、主なる勞働者を失つたとか、或は應召、徴用、斯う云ふ爲に貸付けたと云ふものには、一町歩でなくても、普通耕作者としての面積を保有させるものと私は解釋して居るのであります、然らば私は公職の爲に出る、是も其の中に入れるのか、是は徴用と同じではないかと考へる、殊に今度は町村長も皆一般選擧になります、恐らく今までの小作の人達でも村長に出る人が澤山ある、此の場合に村長に出ましたならば、此の土地は小作地として取上げられる、斯うなりますならば誰もなり手がない、事實上小作人が町村長になると云ふことは出來ぬことである、又自作農の一町歩内外の者がなると云つても、事實出來ぬのだ、やはり昔の勢力、舊勢力で、餘つたぶらぶらして居る人が町村長になる、是より仕樣がないのだ、誰もなり手がない、斯う云ふことになりはせぬかと云ふ懸念を持つのでありまして、是は法規に何もないやうでありますが、御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=16
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017・山添利作
○山添政府委員 さう云ふ已むを得ない場合、又公益的な理由で以て自作の面積を縮小する、隨て一時其の土地を他に賃貸して居ると云ふ場合には、其の儘認めて行つた方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=17
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018・北政清
○北(政)委員 今の局長さんからの御説明で、其の儘此の法令で認められますかどうか、是が一寸明らかでない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=18
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019・和田博雄
○和田國務大臣 法律にちやんと書いてあるのでありまして、第五條の第一項の六號に、「自作農が疾病その他命令で定める事由に因つて」云々、斯う云ふことになる譯であります、此の六號で行く譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=19
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020・北政清
○北(政)委員 斯う云ふことはもつと明瞭にして戴きませすと、農地委員會が認める場合でなければ出來ぬと思ふのであります、私も其の條項を見ない譯ではありませぬ、併しながら假に共産黨の人が村長に當選する、自由黨の人が農地委員會の主なる勢力になると云ふ場合に、それを認めぬと言ふかも知れぬ、だから是は法文上には明らかにして置く方が宜いと思ふ、御答辯がはつきりせぬ、それをやり得るのだと言ふが、農地委員會が認めなければ出來ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 併し是は已むを得ないのであつて、市町村の農地委員會と云ふ自主的な機關が、それを適當と認めると云ふことでないといけないのでありまして、此の點は私はやはり原案のやうに致したいのであります、是は農村に於ける色々な政治的な勢力關係の變化と云ふものは、是は今後に於ける日本に於ては已むを得ないことなのであつて、それまでを法律で縛ると云ふ譯には到底參らないのであります、併し市町村農地委員會は飽くまで其の村に於ける農地の實際上の實施機關でありまするので、公正な選擧に依つて地主なり小作なりの代表者が出て構成すると云ふことに致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=21
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022・北政清
○北(政)委員 然らば茲で私は農地委員會の構成に付て御伺ひ致したいのでありますが、農地委員會の構成は、從來の小作調停を主眼とした選出の方法と非常に似て居る、私は、今度自作農及び地主と小作人を同數にされましたことは結構なことだと思ふのであります、尚ほ是は私は斯う云ふことが必要だと思ふ、地主と申しましても、或る村に大地主がなく、其の人は村外に居る、是が委員となるかも知れないが、實は其の村に一人しかない、二人出せと言つてもない、斯う云ふのだから、自作兼小作の人でも之を認めるべきではないか、それから自作農に付ては貸しても居らず、借りても居らぬ人と云ふことの條件を必要としませぬか、それではまだ單なる調停的な性格でありまして、此の法令から見ますると、農地委員會は農地の計畫をやる重大任務を行ふのであります、之に對しては單なる地主、小作と云ふ問題ではいかぬのであります、其の村の將來に付て十分な考へある人を出すと云ふことが非常に必要ではないか、さうでなしに、地主、小作だけ集まつて、今度は之をやるのだと云つて申請さへすれば宜しいかと云ふと、決してさう云ふものでない、斯う考へますので、それの外に更に第三者で、又其の計畫者ともなるべき性格を持つ人、其の選出方法の一番公平なものとして町村會に銓衡させると云ふことが、今のところどつちへ行つても旨く行かないので、先づ是れ位が落ちではないか、之を官廳側からだけ任命するのでは、他の委員は承服すまい、又町村民もそれでは承服せぬと思ひますので、一般選擧で出た町村會に、──又之にも一般選擧と云ふことは非常に手數ですから──それ等に銓衡させるならば、寧ろ誤りのない、立派な人物が出るのではないか、今までの農地調整委員などは、町村長が内緒にそつと上の官廳に言つたら、そこから何時か知らぬ間に辭令が來た、斯う云ふのですけれども、今度はそれをはつきりさせて行く農地委員會が必要ではないか、斯う考へて居りますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=22
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023・和田博雄
○和田國務大臣 農地委員會の構成に付きましては、實は農地調整法の第十五條の二に詳しく規定を致して居るのでありまして、自作、小作、地主と云ふものをそれぞれの範疇に分けまして、それで選擧を致しまして、唯小作、自作及び地主に該當する範疇の者が同數になると云ふことに致して居るのであります、御話のやうに、中間の公平なる立場に立ち得る人と云ふものの選任も必要でありますので、それ等の人は大體三人を限りまして、さう云ふ人を選任することが出來るやうになつて居るのであります、勿論之を選任致します時には、初めの十人として選擧されました其の人達の總委員の同意を必要とすることになつて居るのでございまして、そこには從來のやうな、此の農地調整法改正以前のやうな事柄はないやうに致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=23
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024・北政清
○北(政)委員 今のそこに妙な點がある、地主、自作農、小作人から出した人の總意に依ると言ふが、一致しない場合にはどうするか、地主は地主側贔負の者を推す、小作人側は小作人側贔負の者を推す、それは今の調停とか、價格の決定と云ふことのみが主眼となつて居る、どう云ふ土地を今度は買上をさせなければならぬだらうか、是は未開地であるが、やらねばならぬだらうか、斯う云ふやうな意見が──今農林大臣の言はれて居る肚は、調停若しくは價格の取引上に於ける考へ方である、農村計畫を立てる人ではない、其の性質の人が出て來ない、だから私は其の委員の人が、厭であらうとどうであらうと、最も公正な立場から選任すべきものではないかと思ふ、地主と小作、それぞれ立場が違ふ其の場合之を皆一致するやうに選ぶと云ふことは、現實に於て出來ないと云ふ見方をして居るのであります、或は農村の協同組合長とか、町村長とか云ふことに、或る程度の規格を決めて置くことも宜いが、それよりも町村會あたりに選任させる方が公平に行きはしないかと思ふのであります、其の點に付て更に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=24
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025・和田博雄
○和田國務大臣 私は必ずしもさうはならぬと思ふのでありまして、結局農地委員會と云ふものは、地方々々に於ける農地關係の處理機關であつて、單なる調停機關でないことは其の通りであります、此の處理機關を、農地に付て最も利害を持つて居る小作、自作及び地主と云ふそれぞれの層から代表された者に依つて自主的に構成して行くと云ふ所に狙ひがあるのであつて、何處までも是は自主的な農地に關する處理機關であると云ふ思想を貫いて居るのであります、併し地方長官が必要と認めます時には、此の選擧された委員の外に三人を限つて、而も選擧された總委員の同意を得て別の人を選任することが出來ることに致して居るのでありまして、其の點自主的な處理機關と云ふことから考へますると、やはり公正な選擧制度に依つてやつて行くことの方が宜いやうに思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=25
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026・北政清
○北(政)委員 其の點は幾ら伺つても其の程度と思ひますから、先に進みます、是は實は昨日一寸大藏大臣にも御話致したのです、併しそれは關聯事項としての御尋ねで、十分申述べられませぬでしたので、多少「ダブル」點があるかも知れませぬが、農林大臣から承りたいと思ひます
それは地主からの買上價格でありますが、之には昭和十四年か、十五年頃に決まつた公定價格がある譯であります、それが今度は全部四十倍になります、所が是が或る所では三十八倍、或る所では四十倍だと言ふ、勿論人間だから多少不公平なことはあるでせうが、一體賃貸價格と云ふものは公平に決まつて居るべき筈のものである、それがどうも理窟に合はぬ、今度にしても、四十倍と四十八倍と云ふのはどう云ふ算盤から出るのか、私共の地方では其の當時五十倍であつたのが、今度は四十倍で値下になる、今の日本の金の分量から見て、値下をする理由はない、是が安いか高いか、今果して幾らが妥當かと云ふことは、又別に考へなければならぬ、唯之を四十倍とか四十八倍に決めたのであるが、之を一體値下をされる理由が何處にあつたらうか、昭和十四年なり、十五年なりに決まつたものが、今尚ほ他の物價に比して同樣であることはないであらう、唯恆久性の農地證券で拂ひ、均等償還でやるのであるから、此の程度でも宜いのではないか、或はそれよりもつと高くないかと云ふ感じもするのであります、昨日大藏大臣は安くて氣の毒だと云はれた、變な話で、あれが正しいと思つて農林大臣が出して居るのに、それに對して大藏大臣は、あれは安くて氣の毒だと云はれるから、私は其のことを言つて取消を命ぜられたが、高い安いは別問題として、今の計算の基礎を知りたいのであります
尚ほ更に伺ひたいことは、地主の小作料の米は七十五圓、是は絶對に動かぬと此の間も仰しやつたが、一體五十五圓を七十五圓に上げられる所の理由があつたか、或は七十五圓の米も三十圓に落さなければならぬと云ふ時もあるでせう、是は動かすのだと農林大臣は頑張つて居られるが、それは其の時の何かの錯覺ではないかと思ふ、場合に依れば動くのではないか、此の七十五圓と云ふ算盤、五十五圓と云ふ算盤は、米の價値から見たものでなく、別なものがあるのではないか、一寸人に聽かれても説明出來ないので、一般價格と地主價格との違ひ、同じ米であるが、米の價格が違ふと云ふ理由を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 地主米價と云ふものは──供出制度が出て來ました時に、小作料は物納であつた譯であります、そこで物納である小作料に付ては地主米價と云ふ制度を認めまして、それを此の間までは石五十五圓と云ふことに致して居つたのであります、それで米價の三百圓との差額の二百幾らと云ふものは、耕作する小作人に生産獎勵金と云ふ形で渡して居つた譯であります、地主でありますれば三百圓と云ふものが手取りになる譯であります、それが本當の價格なのでありますが、それを地主と小作とに分けたやうな形になつて居るのであります、所が此の前の農地調整法の改正を致しまする時に、物納小作料を金納と致したのであります、さう致しますると、此の金納への換算率と云ふものが問題になつて來る譯であります、それが其の儘で行きますれば、地主は五十五圓と云ふものを實質的に金納として小作人から貰つて居つた譯でありますから、五十五圓と云ふものを當然其の換算の事柄とする譯なのでありますが、其の時の議會の何に依りまして、二十圓上つた七十五圓と云ふものを、物納小作料を金納小作料とする一つの換算の標準と致したのであります、隨て其の限りに於ては、地主の方の換算が二十圓上つたと云ふことになつて居ります、それを、此の前の農地調整法の改正法律に依りまして、農林大臣は告示することになつて居るのであります、隨てそれを換算率として、米に於ては、金納小作料に換へる場合には玄米一石七十五圓で換算する、麥に付ては幾らであると云ふことを告示致して居る譯であります、隨てそれを其の儘今囘も踏襲致して居りまするので、是は變へる積りはないと云ふことを申上げたのであります、唯將來の金納小作料と云ふものが上るか下るかと云ふことは、是は又別の問題であります、其の點は一つ誤解のないやうに御願ひ致したいのであります
それから土地の價格でありますが、是は此の前の農地調整法の改正に依りまして、自作農創定の時の標準價格として算定致しましたものを其の儘踏襲致して居るのであります、それは其の當時に於ける農業經營から出て來る所の純收益──自作が自分で土地を一段歩耕した場合に出て來まする所の純收益、所謂純地代と云ふものを出しまして、それを其の當時行はれて居りまする一定の率で換算致しますると、そこに收益價格と云ふものが出て來る譯であります、其の一つの收益價格と云ふものを──現在もさうでありますが、之を其の當時に於ける標準賃貸價格──全國の標準點と云ふものがございます、其の標準點の賃貸價格が田に於ては十九圓幾らと云ふことになる譯であります、それを以て標準の自作收益價格として出て來ましたものを割りますと、丁度四十倍ばかりになる譯であります、隨て是は農地の價格統制をやる上に付ての率を出す一つの手續と御考へ下さつて宜しいのでありますが、それが丁度四十倍になる譯であります、そこで賃貸價格の四十倍と云ふものを以て、農地の價格と云ふものを田に於ては統制する斯う云ふ方式を執つた譯であります、此の前は、去年やります以前は別の方式を執つて居りまして、平均三十三倍位になつて居ると思ひますが、其の點に於ては多少上つて居ることにはなつて居るのであります、唯北海道などに付きましては、是は標準小作料と云ふものが大體決まつて居るやうなことになつて居りましたので、それ等の點に付て慥か農地の公定價格と云ふものを決めて行つたことになつて居るかと考へて居ります
それからもう一つは、賃貸價格と云ふものは御承知のやうに十年毎に政府が改訂を行ひます、前には慥か昭和十四年に行はれた、今度は二十四年に行はれることになる譯でありますが、其の賃貸價格を標準にして、田に於てはそれの四十倍、畑に於ては四十八倍と云ふことで、農地の價格と云ふものを一應統制は致したのであります、又それを今囘の基礎に取つたのでありまするが、唯其の方式にのみ依り得ない所があるのであります、例へば賃貸價格が非常に低いとか、賃貸價格がないものであるとか、或は賃貸價格に依つてやるのが非常に不當であるとか云ふやうな場合がある譯でありますから、それ等に付ては農地委員會なり何なりを以て地方長官が之を決定することが出來ると云ふ規定を設けまして、出來るだけ實際上の收益價格に近付くやうな方途を執つて居る次第でありまして、それを今囘に於ても其の儘踏襲致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=27
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028・北政清
○北(政)委員 只今大變御丁寧な御答辯を戴いて滿足であります、次に今囘財産税を課せられるに當りましては、其の評價は時價と云ふことになつて居るらしい、さう致しますと、やはり今の賃貸價格の四十倍と云ふものを時價とされるものであらうかどうかと云ふことを御伺ひして置きたいのであります、又それが爲に、此の財産税を金で納められない者に付ては物納で行く、其の結果土地が相當大藏省に入る、是は何處が管理されるか知らぬが、私共はどうせ金はないから土地で取つて貰はうと思つて居ります、さう云ふものがやはり此の農地法に依つて假に──大藏省だつて政府だが、是はやはり地主として買上を命ぜられるやうになるかならぬか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 財産税の關係に於て土地價格をどう評價するか、是は慥か本會議に於て大藏大臣が御答辯になりまして、此の農地の方でやつて行ける、斯う云ふことを御答へになつたと記憶致して居ります、それから只今の物納とされました農地でありますが、是は一應大藏省の所管になりますが、農林省の方に所管の轉換をして貰ひまして、それを其の土地がありまする市町村に一應管理させまして、此の計畫の中に入れて行く、斯う云ふことに致す考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=29
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030・北政清
○北(政)委員 國が取つた場合、寧ろ國が買ひました場合に、直ぐ小作人がそれを買へば宜しいが、或る期間は兎に角政府の所有になつて居る、さう致しますと、其の間に於ける町村税及び土功組合費──是は今まで國の財産には課税が出來ないのでございますが、其の結果は、町村の財政が非常に困らぬか、土功組合の如きはやつて行けないだらう、私の見込では──是は實は後で申上げますが、農林大臣は皆小作人が買ふと思つていらつしやるかも知れませぬが、私は恐らく買ふまいと云ふ見方であります、そこで此の心配が非常にある譯であります、町村財政若しくは水利組合、土功組合と云ふものが經營難になりはせぬか、其の時には國が拂ふか拂はぬか、此の點を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=30
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031・山添利作
○山添政府委員 さう云ふ假に澤山殘るやうな場合がございますれば、税に付きましては、例へば國有林等に付きまして現在でも地元に交付金を出して居りますが、あれに似たやうな制度を考へて行く必要があると思ひます、今の所はさう云ふ事態を豫想して居りませぬから考へて居りませぬけれども、さう云ふことになれば、當然ああ云ふ風に考へて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=31
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032・北政清
○北(政)委員 土地買上に際しまして、小作人の土地改良若しくは土地に對する整理其の他に對しての權利價格は御買上げになりますかなりませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=32
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033・山添利作
○山添政府委員 權利と云ふものは買上げませぬ、唯所謂永小作權及び作株の發生して居ります、通常の意味に於ける小作權でなく本當に強く出來て居る特別の意味に於ける小作權、それに付ては補償すると云ふことが法律の中に規定してございます、勿論此の場合に於きましては、それは公定價格に依る所の土地の價格が地主に拂はれる部分と、それから永小作權者に拂はれる部分と分割されまして、永小作權者に拂はれるものが即ち補償、斯う云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=33
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034・北政清
○北(政)委員 是は非常に重大な問題で、實は其の土地の耕作に適せざる者が之を讓らぬ場合、農地委員會が適しないと言ふやうな場合、其の場合に於て小作人が多年努力して土地改良をし、其の爲にどうなり斯うなり生活して行つて居る、是は又生活して行つて居るから今まであるのだと思ふが、今此の者に、お前は適しないから出て行けと言ふ場合は、之を沒收する、是では小作權を認めるどころの話ではない、實に重大な話だ、我々北海道に於ては──府縣でもさうだらうと思ふが──相當の大地主の所で永小作などの契約は致して居りませぬ、併しながら其の小作人が他に轉居すると云ふ時には之を賣つて行きます、所謂小作權利と言つて居ります、是は土地に依りましては地價と同額位になつて居ります、私は府縣でもさうだと思ふ、山梨縣の如き、小作料の下りました場合に於て小作權利株が高くなつて居る、そこで債權者が之を責め立てて、之を他に賣れば金が返せるではないかと言つて、之を取つてしまつて、小作人は此の計畫のお蔭で農村追放になつて居る、私共が自作農創設に苦勞したのは實はここです、小作人は小作權利を拂つて居る、それを地主が土地の價格だけを取つてしまへば、小作人と云ふものは今まで入れた金だけ、權利株に二百圓拂はうと、三百圓拂はうと、全くふいになつて、非常に高いものになる、そこに惱みがある、そこで地主に無理を言つて、非常に安くしてやつて呉れと言つて話合ひを付けて自作農を創設したのでありますが、今度は政府は薄情にもそれを認めない、永小作權にならない、さう云ふ無茶なやり方はないではないか、それでは全く小作人追放です、後の處分は與へた、さう云ふことはやる積りであるかないか、私が一番最初に新憲法を承認されるかされぬかと言つて居るのはそこです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=34
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035・和田博雄
○和田國務大臣 そこは多少意思が通じなかつたのではないかと思ひますが、さう云ふ意味で追放すると云ふことにはならないのであつて、原則としては、何處までも現在耕して居る小作人に政府としては土地を渡すのであります、そこで仰しやるやうに、さう云つた點に付ての小作人が土地から離れると云ふことはないのでありまして、唯耕作權と云ふものをどの範圍に認めて行くかと云ふ問題は、是はあるのであります、例へば現に小作人が耕して居るから、既にそこに耕作權があるのだ、それを政府が買ふ時に一々補償して行く、斯う云ふことには一寸ならないのであります、併し或る程度の耕作權が認められて居りまする所に於ては、是は統制價格の範圍内に於て、地主と小作人の兩方に分けて行く、其の價格を分ける、斯う云ふ手段を取るのでありまして、何處までも片方に偏ると云ふことは致さない積りで居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=35
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036・北政清
○北(政)委員 それは實際今の小作が其處に入りますのには、皆相當の權利金を拂つてやつて居ります、其の代りそれに附隨した「サイロ」だとか家なども其の價格の一部分に入つて居ります、之を今の四十倍を地主にやつてしまつて、小作人には只だと云ふならば、小作人は實際に於ては四十倍以上となつて、其の上に百圓、二百圓と云ふやうな金が掛つて居ることになるのであります、それをお前は永小作權で設定して居ると言つても、日本で永小作權などと云ふものを認めたのはどれだけの面積か、寥々したるもので、永年地主に口約束で來て居る、或は契約書を書いて居るものも、それが順調に行はれて來て居る、それで次の小作、次の小作と變つて來て居ります、それを認めないと云ふなら、小作權を認めないどころではない、實際に現物を拂つて居るものを取つてしまふことになる、小作人は非常に高い土地を賣付けられることになる、それを認められぬと云ふ手はなからうと思ふが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=36
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037・和田博雄
○和田國務大臣 例へば小作契約をやる、地主と直接小作契約をやる時に、小作料以外に別に何かを拂つてやる、斯う云ふのですか、さうではなくて耕作權と云ふものを、小作人が耕作を廢めて、又他の小作に渡す時に、其の小作人に或る程度の物を貰ふ、斯う云ふ關係だらうと思ひます、それは大體に於て小作權と云ふものがはつきりと確立されて居る所だと思ふのであります、慣行に於て確立されて居るか、それとも其の後の社會の態勢に於て確立されて居るかであつて、我々としては何處までもそれは小作人其のものに土地を賣渡すと云ふことになります、假に其の小作權と云ふものがそれだけの價値があるならば、例へば十圓なら十圓、二十圓なら二十圓の價値があるものであるならば、それは統制價格の範圍に於て、十圓なり二十圓なり小作人に渡すと云ふことになつて、地主の取り分は減つて來る、斯う云ふことになるのであつて、そこの所は我々としてはちつとも…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=37
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038・北政清
○北(政)委員 それは大變なことで、農村の實際を御存じないことだ、そこで困るのです、實際の状況を申しますと、多くは斯う云ふことなのです、例へば私が小作して居ります、併しどうしても已むを得ぬ事情で東京へ住居を定める、そこで私の田畑を買つて呉れぬか、それならお前の所を幾らで買はうと云ふ話で賣買されて居るのが普通なのです、そこで此の金額は中々大きいので、我々の方ですと、土地價格の五割位が普通であります、それだけのものは既に金を取られてしまつて居る、拂つて居るのです、でありますから代つた地主、詰り地主に代つた政府は、之に對して補償してやる當然の義務がありはせぬか、それでやつて居らぬ人とは大した不公平があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=38
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039・山添利作
○山添政府委員 さう云ふ場合が相當あるかと思ひます、一々國がさう云ふことを補償すると云ふことは筋合からしてもすべきでないと思ひますが、結局御説のやうな事態で、本當にさう云ふ風な意味に於ける耕作權と云ひますか、一種の作株に似たものが慣行で發生して居ると云ふことであれば、結局地主に拂ひます部分は、公定價格の中の何割位を地主に拂ふか、即ち其の時、其の事態に於ける地價なるものを如何に評價するかと云ふ問題でありまして、公定價格と云ひましても、公定價格以内で土地價格は決める譯でありますから、御話のやうな事情を斟酌して適當なる地價を決定し、其の地價なるものを地主に拂ふ、斯う云ふことで處置して行く譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=39
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040・北政清
○北(政)委員 それは地主は自分の決まつた小作料でやつて居りますので、それに干渉して居らない、唯非常に惡い小作で、其の人間が惡いなら駄目だ、是が普通なのです、是は全國的に見れば相當な小作の權利金だと思ふのであります、それを認めないでもぎ取る、そんな薄情なことをすべきでない、惡地主だつてそんなことはないです、もう一囘申上げますけれども、小作と小作とが取引をして決めて居る、前小作と新たに入る小作とが取引して決めて居る、一反二百圓から、景氣の惡い時には七十圓位して居りましたが、それでやつて居る、それを地主から取ると云ふことも變です、ですから是は當然國が代つた地主になる以上、認めてやらなければならぬと考へる、更に農家は土地改良をやるに付て地主に幾ら呉れと要求して、地主が好意で補助してやつて居る所もあります、北海道の客土の補助の如きは政府が補助して居りますが、其の以外のものは皆小作人が申請して、小作人が其の補助費を貰つて居ります、是は全部小作人の勞力であるあの客土の如きは土地を買ふよりもうんと高く付く、今年一段、來年一段と云ふことでやつて行くから、此の改良した費用と云ふものも小作の權利株の金額の中に見積られて來る譯であります、それら政府が知らぬ顏をすると云ふ手は私はないと思ひますが、さう云ふやり方でありますか、若しそれなら全國の小作人は憤然として奮起するだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=40
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041・和田博雄
○和田國務大臣 どうもあなたは話を極端に持つて行かれて居るやうな感じがするのです、例へば今度の自作農の創定に於ては、總て原則として現在耕して居る小作人に土地を渡す譯であります、隨て其の限りに於て只今の作株の問題は一應解消してしまふことになります、唯問題はあなたの仰しやるやうに、地主の知らぬ内に小作人が自分は小作を廢める、而も他から小作が入つて來る、其の場合小作人同志で權利金を授受して居る、それが作株と云ふ形できちんと認められ得る程度のものであれば、それは政府としては何處までも統制價格の範圍内に於て地主の取り分を減らして補償して行く、斯う申して居るのであります、唯さう云ふものは現在の法律に於ては全然認められて居ない地帶があるのであります、是ははつきりあるのであります、それは唯小作人が謂はば闇でやつて居ると云ふ取引であつて、社會的には全然認められて居ない地帶がやはり全國にはあるのであります、さう云ふものに付ては一々政府としては見て行けない、假令小作に入つた時にそれだけのものを拂つても見て行けない、斯う云ふことを申して居るのであつて、其の點に付ては、どうも現在の體制がさうなつて居るのでありますから、致し方ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=41
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042・北政清
○北(政)委員 此の問題は何れゆつくり御話をせぬと分らぬかと思ひますが、ここで餘り時間を費しては皆樣に御迷惑でありますから、此の程度にして置きます、そこで先刻申した、今度の小作人への賣渡價格及び三十箇年の年賦償還の問題でありますが、私は何も當てなしに小作料より高くなると申して居るのではありませぬ、農林省から戴きました調査資料の上から申上げて居るのであります、又五十何圓と云ふのも政府からの御調べの算盤ですが、私は高等數學を知らぬのでさう云ふ平均は出ないのですが、五十何圓と云ふものは間違ひない、そこで此の小作料調と云ふものを御覽下さいますと、一毛作田で物納の場合米が契約小作料一石一合、實納小作料が九斗一升八合であります、代金納にしまして契約の基礎となる現物が九斗五升二合、實納小作料が三十九圓四十七錢、金納になりまして契約小作料が三十一圓九錢、實納小作料が三十圓三十五錢、之を改正の農地調整法に依る金納化せる小作料は七十五圓八錢でありますから、今の物納の最高とも認められます、實納小作料から考へますならば、實に問題にならぬ程高い、年賦金だけでも高くなるのであります、其の上に諸税──今囘の地方税に於きましても、住民税と云ふものが今まで零であつたのが今度六十圓まで課かることになり、町村住民税が六圓であつたものが四十圓課かることになる、其の他寺の寄附とか學校の寄附とか云ふことで、やはり地主になりますと、ずつと殖えて來るのであります、實に莫大なことになりまするので、私は此の上から見まして、何も基礎なしに、唯惡口を言はうと思つて言うて居るのでは決してない、何も感情で言うて居るのでもない、此の算盤を知つたならば、恐らく小作人は全部買ふまい、全部とは言はぬ、偶に買ふ人はあるかも知れませぬが、恐らく知るならば買はぬことになります、其の場合に先程の水利組合の費用でも、町村税でも心配になる、又小作の權利をどうするかと云ふこと、茲に重大な考へ方がある、私はどう考へても今の價格で、之を三十箇年賦にされた場合に於きましては、現在の小作料ですら高い、更に將來農産物價格と云ふものは世界市場と鬪つて行かなければならぬ、此の狹小な面積で十分努力改善はするけれども、相當安値にされる、今此の高い時には政府の手で安くされて居る、斯樣な立場から見まして、どうして拂つて行けるか、小作人ならば、まだ今の小作なら、一寸地主に、お前そんなことを言つたつて拂へぬぢやないか、待つて呉れと言へるが、政府にはそんな譯には行かぬ、私はさうなると、持てるか持てぬか、假に皆が正直に受けて持つたとしましても、全部が破産になる、だから私は昨日大藏大臣に言つたのは、百億圓出さぬか、二百萬町歩として、千圓の平均として二百億だから、其の半分持つたとしても百億、前の金本位時代に於ける金額近くに行くならば、是なら拂つて行けるかも知れぬ、それを今の安い間は一段百二十圓、百五十圓と云ふ賣買でやられる、之を實際に於ては米が四十圓と云ふ時は、十七圓と云ふやうな査定の仕方で決まつたのであります、此の場合に於きまして今の賃貸價格の四十倍の價格では、之を今出された資料から割出して見ましても、どうも今の小作料からさへ高くなる、七十五圓では納まりは付きませぬ、而も是は契約小作料である實納ではない、實納になるならば恐らく五十圓程度に下らなければならぬ、どんな土地でも年に五段や三段の疵物は出來る、是は必ずあるのであります、私は長い間農場を管理しまして知つて居りますが、何か事がなしに治まると云ふことはない、契約小作料とか何とかでけちが付くものである、之をやるならば惡地主などは問題にならぬから、實際損害を見て行かなければならぬ、やはり水害があるとか、灌漑溝が切れて泥水が入つて來るとか、色々な障碍があるものであります、だから實納小作料と云ふものはずつと下るものである、だから七十五圓と申しましてすら、現在の千圓の土地として、年賦償還に致しますならば必ず高い、其の高いものを今小作人に負擔させて、地主に解放させる、是は國家と云ふ別な大きな地主が出來ることであると、此の間言うた人がありましたが全く同感である、而も今度は金額も、唯物納を金に替へたのではない、日本の政府は幾ら印刷して餘計金を出しても宜いが、今度は幾らでも收縮出來る、第二封鎖、第三封鎖もやるかも知れぬ、斯うなつて通貨がうんと減つた時には、何で拂ひますか、まるきり拂へぬことになる、それなら百億圓位出しても宜いではないか、一千億圓以上の豫算を使ふと云ふ、日本の食糧政策が重大な生産の鍵になつて居る時に、大藏大臣は拂へぬと言ふが、農林大臣は何とか拂へると言うて貰ひたい、私は是は實現出來ると思ふ、私は「マッカーサー」司令部の指令通り、何とか實現させたいと思ひまするが故に、之を御伺ひするのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=42
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043・和田博雄
○和田國務大臣 此の資料に付ての見方でありますが、金納實納小作料三十圓三十五錢とありまするのは、此の物納制が行はれて居る時の金納小作料、其の時の金納小作料はこんなに安いのであります、七十五圓八錢とありまするのは、此の時の物納小作料でありまして、其の契約小作料一石〇〇一を七十五圓で金納した場合に是であります、隨て三十圓三十五錢と七十五圓八錢とを比べる場合には、物納小作料はこんなに高いのだと云ふことになるのであります、そこで年賦償還金と比較する爲には、此の七十五圓と云ふ物納小作料を金納小作料化した場合と、年賦償還金と其の他公租公課を加へたものが、どうなるかと云ふことでなければならぬ、其の時に段當の平均の水田價格を七百五十圓に假に取ります、標準價格がさうでありますから、さうした時に小作料が假に一石であれば七十五圓になるのであります、償還金が其の場合に四十五圓八十五錢になるのであります、公租公課が我々の計算では十一圓七十八錢、隨て五十七圓六十三錢、一段の水田に付ても年賦償還金は小作料よりも安いと云ふことになるのであります、所が七十五圓の契約小作料では高いから、之をもう少し負けて見ても、やはり年賦償還金と公租公課を加へたものの方が安くなる、斯う云ふ計算になつて居るのでありまして、此の點に付ては、我々としてはどうしても自作農創定と云ふものは此の基礎に依つて可能であり、又やらねばならぬ、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=43
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044・北政清
○北(政)委員 私は今の三十圓に比較して高い安いとは申して居りませぬ、今の物納の一石一合、是で七十五圓八錢であります、是は先づ全國の平均として、あなた方が御示しになつた實納小作料は九斗一升八合である、少くとも是から算盤を出さなければならぬ、斯く致しますれば、決してあなたの言はれるやうな安い小作料ではありませぬ、絶對に左樣なことはない、農村に於ける諸負擔と云ふものは、地主になつたのと小作に居りますのとでは、如何に差があるか、先づ税金よりも多いものがお寺の寄附です、さう言ふとお寺さんは怒るかも知れませぬが、さうである、神社の寄附、學校の寄附、さう云ふものは實に莫大な金である、それは土地を持つた者には餘計に掛けられて來ます、今の住民税にしても、土地を持つて居る者と持つて居らぬ者と、一體何を對象にして課税をするか、やはり財産を澤山持つて居る者に課ける、是では安いものでも何でもない、之を安いと仰しやることに非常に違ひがある、だから私は思ひ切つて今の金額に於て下げるべきあでる、此の物價は必ず下らなければならぬ、大藏大臣は何と言はうが下る、下げてもやれますか、どうして此の紙幣で外國貿易が出來ますか、是は私は膳國務大臣が來られましたら、はつきりして貰ひたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=44
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045・葉梨新五郎
○葉梨委員長 物價廳次長が出席して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=45
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046・北政清
○北(政)委員 本當は膳さんでないと、能く肚が分らぬのですが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=46
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047・葉梨新五郎
○葉梨委員長 膳國務大臣は本日は出席不可能の旨通知があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=47
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048・北政清
○北(政)委員 それでは物價廳次長さんから御伺ひして置きますが、恐らく日本が普通の貿易をやるのに、今の紙幣の儘で行けるか、行けないだらうと思ふ、私は斯う見て居ります、どうしても下らざるを得ない、殊に世界市場と鬪ひます以上、相當の「ダンピング」其の他も考へなければなりませぬ、此の上に於きましても、此の儘の物價で行けるなどと云ふ考へ方は非常な違ひである、私は斯う思つて居るのでありますが、其の點から見ましたならば、是は三十年の長きに亙るものである、あなた方は今直ぐ大臣を辭められれば宜いが、百姓は止められぬのですから、そこを長い間に付て肚を割つて御考へを願ひたい、斯う云ふことで御伺ひして見たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=48
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049・工藤昭四郎
○工藤政府委員 只今の北さんの御話の通り、現在貧弱な資源しか持つて居ない狹い所に追込められて居りますから、國民が將來食つて行く爲には、やはり世界經濟に依存しなければなりませぬ、隨て物價が非常に高い状態にあると云ふことは、其の點に於て非常に不利でありますが、差當りの問題としましては、先づ物價を安定させて、それに依つて總ての經濟活動を起して行くと云ふことが、先づやらなければならぬことであらうと思ひます、之に依つて、一應安定し、生産活動がどんどん起つて參りますと、それに從つて自然に物價は下向きになつて行く、通貨に對する信用も其の時に段々囘復して來る、斯う云ふ考へ方で施策を進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=49
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050・北政清
○北(政)委員 今の次長さんの御脱は、私の考へ方の通りの御答辯を戴いて居るのであります、將來に於ては必ず今の御話の通りである、昨日の大藏大臣の御話は、今のことである、今經濟を安定させようと思つて居られる、將來に於て此の通貨でいけないことは、誰が見ても萬人が認めて居る、さうすると小作人が拂ふのは、此の金額に依つて拂はなければならぬ、然らば其の時でも七十何圓と云ふ年賦は變りない、年賦金はそれに應じて常に變へるか、若しさうすることが公平だと云ふなら、國の貨幣價値がさうなつたのだから、それに平衡させることが公平である、併しそれでは今の取引にならぬ、だからそれを大體考へますと、戰前若しくは戰爭になつた當時位の所に持つて來るのが穩當ではないか、國が思ひ切つて茲に二百萬町歩からの土地の改革をやらうとすれば、百億やそこらの金は何でもないではないか、失業救濟で仕事をしたくなくて遊んで居る者までに六十億も使ふ、今の米の補助にしても、米を一升六圓にすると一圓五十錢の補助が出る、大金持の人でも一圓五十錢の補助を貰ふ、私等は歳費を澤山貰ひましてもまだ一圓五十錢の米の補助を貰ふ、貧乏で自活の出來ない者だけではない、斯く致しますならば、どうして將來に亙るものに今百億やそこらの支出が出來ないのか、是で順調にやつて──「アメリカ」側の指令にも二箇年でやれと云ふのだから、それでやつたら農村もそれで行ける、此の手をなぜ打たれないのか、其の肚はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=50
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051・和田博雄
○和田國務大臣 其の肚はありませぬ、あなたの先程の御議論でありますが、一寸をかしい點が多少あると私は思ふのは、あなたは標準の賃貸價格を二十五圓と慥か見て居られるだらうと思ひます、さうしますと價格は千圓になる譯だと思ひますが、其の時の小作料が一體幾らかと云ふことが一寸なかつたのでありまして、其の時の小作料が、やはり恐らく標準の七百六十圓の田よりも賃貸價格が高い譯でありますから、普通の經濟觀念から行けば、物納小作料に於ては高からざるを得ない、さうすると、其の高い小作料を七十五圓で換算し、それと年賦償還金と公租公課を加へたものを比較すると、やはり年賦償還金と公租公課を加へたものの方が安くなるのでありまして、其の時の小作料が幾らと云ふ答へが出ませぬので、一寸比較しにくいのであります、隨て私の方としましては、賃貸價格は十九圓幾ら、それから隨て標準の段當價格を七百六十圓と云ふ此の標準のものを取つて茲にありまする計算を致しますと、只今申上げたやうな風になるのでありまして、實納小作料を取りましても是は約六十九圓ばかりになるのでありますから、それよりも五十七圓六十三錢と云ふものの方は小さい譯であります、隨て年賦償還は十分拂へる、斯う思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=51
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052・北政清
○北(政)委員 昨日私は面倒だから千圓と云ふ標準で御話したのでありますが、只今大臣の言はれる通り、之を七百八十圓に致しましても、實納小作料と云ふものから割出しますとあなたの考へのやうになりませぬ、又、私共は、是は凶作時を見て居るのではない、恐らく此の一石一合と云ふものは普通の時を見て居られるのではないか、斯う考へて居るのであります、北海道の如き、水田ですと、十年に一囘はまる凶作がある、それから五年に一囘は半作、此の程度の被害がある、之を見ますと、どうなるか、決してそんなものではないのであります、我々農民が一番苦しむ時は、凶作或は價格の暴落、此の二つの時に苦しむ、昭和五年には今までにない大豐作でありまして、米はたつた十三圓五十錢で、前の不作の年よりは苦しい目に遭ひました、又昭和八年にはあの時分には米を投げる爲にどうしたかと云ふと、私は東京へ直接來て、四十萬石政府に納入する爲に、北海道からわざわざ船に積んで來て投げた、斯樣な場合に於て小作者はどうして立つか、此の年賦金を拂つて行けるか、其の時に土地を取られたら、今度は何處へ行つて土地を買ふことが出來るのだ、私は現在の小作者を眞に農民として生かすと云ふ場合には、こんな高い價格では駄目だと思ふのであります、それでも今まだ七百八十圓にすれば算盤になると言はれるが、農民として生活する上に於てどう云ふ經費が掛るのかと云ふことを御考へ下さいますと、あなた方實に思ひ半ばに過るものがあると思ふ、何處の標準で十四圓幾らと云ふ算盤を御出しになつたか是は分りませぬ、或はそれで恐らく引合ふこともありませう、何處を平均されたか知りませぬが、唯平均額のみでは論ぜられないのであります、又、土地の價格は平均七百八十圓になると言はれますが、日本の小作面積が、一段、二段のものも皆加へて平均一町歩、斯う云ふものの算盤では駄目だ、少くとも五段以下では農民の中に入らぬ、五段以上の普通のもので平均されなければならぬ、又一人や二人のたまに百町歩自作して居ると云ふやうな、そんなものを加へる必要はありませぬ、平均生産額を取るにしても、最凶最豐を引いた其のあとの五年で平均を取るのが普通だ、小理窟を言ふやうだが、實際問題として行けるか行けぬかと云ふ問題である、農林大臣の考へて居るやうにすらすらと行ければ宜いが、私は恐らく行けないと思ふ、勘定が合はない、一段歩水害があつたらそれを其の年引いて、又雹が降つたら半段歩引いてやると云ふやうなことは出來ぬ、貸借關係だ、借金主だ、高利貸だ──國家が高利貸になる譯である、斯く致しましたなら、此の年賦償還金をどうして拂ふか、其の時になつてどうせ損しなければならぬのなら、今百億圓出せばすらすら出來る、是は必ず早く實現する、是は二年間で出來る、馬力を掛ければ一年でも此の通りやりましたと云つて「アメリカ」に御目に掛けることが出來る、今日の金なら百億位大した苦しい場合ではない、先程申上げたやうに、大金持の買ふ米にまで補助金を出す、是が一圓五十錢にして、四千萬石政府の手に入つても六十億補助金が要る、此の場合百億位何でもない、我々は議員諸君と共に農林大臣と一緒になつて大藏大臣に談判して貰はなければならぬと思ふ、それをどうしてもやれないと頑張るのか、本當の所を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=52
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053・和田博雄
○和田國務大臣 どうも私は納得が行かないのですが、さう云ふ意思はないのであります、平均なのではなくて標準なのでありますから、それを、誤解のないやうに御願ひ致したい、それから賃貸價格と云ふものは、縣々に依つて違ひ、土地の良い惡いに依つて違ふのであります、隨て其の土地の價格と云ふものも、賃貸價格が違ふと同じやうに、倍率は同じでありますけれども、違つて來るのであります、そこを一つ御諒解を御願ひ致したいと云ふのであります、今厖大な金を出して補助すると云ふことは、結局押詰めて行くと土地の價格をもつと上げろと云ふことになつて來るのでありまして、それはどうかと私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=53
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054・北政清
○北(政)委員 私は更に方面を變へて話を進めて參りますが、一體農民の經濟と云ふものは何から出るか、農民の勤勞の成果である生産物から起ります、是が第一であります、今の小作料なんかを、前申しますやうに假に二割五分とすると七割五分、三割の高い小作料を出しても七割は自分のものであります、而も土地經濟と云ふものは當然成り立つて行く、さうすると其の搾取と云ふものは實は僅かであります、斯樣な譯で、生産物の價格こそ農民が本當にやつて行けるか行けぬかの鍵を握る、我々は金さへ取れば宜い積りでああ云ふことを言ふと惡口を言はぬで貰ひたい、其の中でも、此の價格の中に立つて一番消費者も生産者も苦しめられて居るものは何か、中間利潤の搾取ではないか、例へば肥料に致しましても、昭和十四年ですか、あの九・一八價格の決まりました時に、鰮粕が北海道の産地で千七、八百圓した、それを公定價格が翌年の五月に決まりまして、消費者の公定價格が五千四百圓になりました、今幾らになつて居るか、私此の頃關係しませぬので能く知りませぬ、さうして魚粕の生産者は三千八百圓、中で取るもの千六百圓と云ふものは、日本肥料會社を初めとしまして、日本油脂其の他で取る、あとの配給の方には蚤の涙のやうな極く僅かづつやつてやる、斯樣な譯でありまして、甘藷、馬鈴薯會社に致しましても、食糧緊急措置令委員會に於きましても、中央金庫の委員會に於きましても、農林大臣は之を解消すると言明された、然るに此の頃になりまして、甘藷、馬鈴薯の會社は公社と云ふことになつた、一體會社と會社と名前だけ變へて、是が解消であるかないか、而も職員の最低給料三千圓、其のあと利益が出れば山分けすると云ふ、會社を公社としたからと云つて、何處に違ひがありますか、何が爲にこんな中間搾取機關を置いておくのか不思議でならない、又私は現在の農産物價格に對しまして、例へば南瓜一貫目が九圓、是は公定價格である、米が一升三圓、是は何から割出されたものであるか、又安い安いと言はれて居る甘藷に致しましても一貫目四圓八十錢、米が一升三圓、是はどう云ふ所から勘定したものであるか、同じ食糧に配給すべきもの、同じ榮養價値があるものなら、せめて價格だけは凡そ似た程度に持つて行くべきものではないかと思ふ、今の南瓜一貫目九圓え對して米一升三圓が安いか高いか、物價次長はどう云ふ所から算盤を出されたか聽かせて貰ひたい、又私はここで米の價格を相當に引上げても、三合配給を確實に實行されるならば、今の消費者に對しては決して負擔にならない、物價も上りはしない、却て安くなる、生活の總てがそれに依つて安定する、經濟も是でなければ安定がない、經濟安定本部を拵へるより、米の三合配給をすることだと思ふ、米がないかと云へば、此の間又一千萬石も「アメリカ」へ要請した、一體去年は四千二百萬石、「アメリカ」から輸入されたものが幾らかと云ふと、最初に六十六萬「トン」其の次に「フーヴァー」特使が來られて八十七萬「トン」と云ふ案を立てられた、其の後聞く所に依ると百萬「トン」になつたと云ふ、私の聽違ひであつたら訂正します、百萬「トン」と云へば、石に換算して六百萬石である、四千二百萬石「プラス」六百萬石、是で今年はやつて居る、然るに本年の米作は六千萬石以上穫れると私共は思つて居りますけれども、今政府の發表に依ると五千七百萬石と云ふことである、之を其の儘承認してもまだ九百萬石多いと云ふことになる、是は米だけだ、此の外に甘藷、馬鈴薯はどうだ、甘藷は大體豐作で、十六億萬貫は見込んで宜しい、馬鈴薯も、餘り豐作ではないと言ふが、十億萬貫は確かだ、斯うなると三合配給は穀物だけで樂に出來ると思ふが、なぜ之をおやりにならぬか、それには政府の手にすらすら流れて來るやうにしなければならぬ、それには適正な價格にしなければならぬ、さうすれば全體が安定する、私此の間隣りの奧さんに聽いて見た、此の奧さんは非常な理財家で、菜つ葉一つ葉でも細かく計算する、自分の家で作つた物まで是は幾らと勘定して記帳して居る、それに依ると、三人家族で七百五十圓どうしても掛る、一人當り月に二百五十圓、是が米三合配給になりますならば半分で宜い、米一升うんと高くして十五圓と勘定しても百三十五圓ではありませぬか、さうなれば野菜物だつて買漁らぬから馬鹿値にならぬ、茲に産業も興つて來る、總ての基礎が成立つ、そこで私は經濟安定の面から見ましても、今日農村の生産者が本當に働く氣になつて、本當に増産して、國民が安心して生活が出來ると云ふことの努力を惜しまなくなると思ふのであります、ここで一つ思切つたやり方をやつて戴きたい、私は斯樣な點からも農産物價格と云ふものはもう少し適正にやつて戴きたい、時間がありませぬから、あとから引括めて簡單に質問致します
今度は北海道の問題です、北海道で地主の所有面積四町歩となつて居る、私は北海道は全部と言つても宜い位に是までは五町歩計畫になつて居る、三百間、三百間で行政區劃を割つてあるのであります、さうすると百間に百五十間と云ふことになる、是は殆ど大部分と申しても宜いのであります、其の中四町歩殘されて、あとの一町歩は誰が作りますか、誰がそんな所を作り手がありませうか、どうせ其の中の惡い所だけが手放される、そんなものは地主は放したい、是は放した方が宜い、あと惡い所は皆放つて居る、四町歩に決められた理由が分らぬ、決めるなら五町歩に決めて置かなければ駄目でせう、さうでなければ眞半分の二町五段、それならば割りやうがある、隨て十二町歩と云ふのも、唯是の三倍、府縣の程度の四倍、「マッカーサー」司令部に日本の本當の農村の状態を説明して呉れて居らぬ、それだから斯う云ふやうな案になる、本當の農村を一つも調べてない、全部平均すると一町歩其の三倍が此海道、斯う云ふ子供の仕事みたいで、實際に於てやれますか、斯う致しますれば生産力は非常に減ります、生産力を殖やさうと云ふのに、逆に減るから心配なのです、府縣は總體で決めるが、北海道だけは一つの枠で決められて居ります、十二町歩になりますと、空知あたりは兎も角、十勝、北見、釧路に行きますと、十二町歩では生活して行けませぬ、だから根釧原野、あの莫大な、今まで何千億と金を掛けた北海道拓殖、是が皆おじやんになつて、荒れるだらうと我々は考へます、又今農地開發營團がやつて居ります、是も邊鄙な所、惡い所だけやつて居るが、無暗に金だけは掛けて居ります、先づ面積の點に於て、二階級までは宜しい、二階級以上──法律にありますと言はれるが、私は見て居らぬで言ふのではない、法律は見て居る、二階級以上、三階級、さう云ふものではない、總體平均して十二町歩になれば宜しいのか、府縣にしても、總體平均して二町八段なり、三町歩になれば宜しいのか、唯機械的に分けると云ふことは出來ない、假に九州はあんな良い所だが、あの阿蘇の高原地帶に於て三町歩でやつて行けますか、又如何に良い所でも、濕地帶で段當りの生産の少いものは出來ない、是等を考へました時に、畫一的に二階級以上にしても──以上と云ふのは何ぼでも宜いのかさうでなしに、總體平均で十二町歩、平均して四町歩、是で宜いのかと云ふことを承りたい
もう一つ、北海道の一番大切な、あの寒地農業をやる上に於ては、どうしても牧畜と混同農業をやつて行かなければならぬ、要するに有畜農業は絶對必要條件です、此の有畜農業をやります上に於て、十二町歩でやれるかどうか、水田專門にやる人は十二町歩要りませぬ、けれども有畜農業をやるには、どんなことをしても牧草畑の三町や五町持たぬとやれませぬ、こんな牧草地は耕地と見るのか、耕地と見ないのか、是がはつきりして居らぬ、私は此法文だけでは、牧草地は當然畑地ではなからうと思ひます、以上固めて御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=54
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055・和田博雄
○和田國務大臣 あとの面積の點は政府委員から答辯して戴くことにしまして、價格と配給量の點でありますが、是は配給量を増しますことが、經濟の再建を圖ります上から言ひましても、國民の生活を安定します上から言ひましても、根本問題であると云ふことは全く御同感であります、隨ひまして其の點に付ては只今司令部の方と色々相談を致して居りまして、極めて微妙な關係にありますので、私は私の行ひました答辯をもう一遍繰返さうとは思はないのでありますが、出來るだけ是は早い機會に促進致したい、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=55
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056・北政清
○北(政)委員 増配されることに御努力されて居るとは思ふのですが、唯斯う云ふことを考へて戴きたい、是は二合五勺では駄目です、もう五勺のことで皆買出に行くから、出なくなる、やるなら三合やらなければ旨く行かない、そこで三合になるやうに一つ御努力を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=56
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057・山添利作
○山添政府委員 北海道四町歩と決めたのは、實情に即さないと云ふことでごさいましたが、四町歩と致しましても、北海道のやうな地域に付きましては當然平均四町歩、斯う云ふ風に考へて居るのでありまして、現在に於ても北海道は十地區に分けて決めて居るさうであります、さう云ふことに致しますと、五町歩と云ふ所もあらうし、或は二町歩位の所もあらうし、それは適宜状況に應じて決めると云ふことで運用出來ると考へて居ります
それから牧草地は農地であるかどうかと云ふことでございますが、肥培管理をやつてちやんと作つて居ると云ふことでございますれば、是は農地になりますし、さうでなくて、草原と云ふことであれば、是は農地に入らない、事實の判斷であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=57
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058・北政清
○北(政)委員 其の牧草の肥培管理をやつて居ればと云ふ解釋、そこが變です、さうすると、成べく肥培管理をやらぬで置けば有畜農業の維持が出來るが、例へば牛を飼つて、牛の糞尿をやれば、それは農地として御取上げになる、北海道のやうな有畜農業として牧草地が絶對必要なものは、是だけ認めて貰つて、今の採草地と云ふ解釋で宜いですな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=58
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059・山添利作
○山添政府委員 此の點に付きましては屡屡大臣から、今囘の改革に於ては經營が優秀なものは壞さないと云ふことを言はれて居るのでありまして、隨て今の採草地をどう決めるかと云ふことは、私が今申しましたやうでございますけれども、之をどう決めようが、現にやつて居ります經營が優秀であれば、それは廣いものは廣い儘に認めて行くと云ふ趣旨でありますから、御諒解願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=59
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060・北政清
○北(政)委員 洵に有難い御返事で、其の通りに解釋して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=60
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061・工藤昭四郎
○工藤政府委員 農産品の價格の間に均衡が取れて居りませぬことは、御質問の通りでありまして、私共も非常に遺憾に存じて居ります、併し此の點に付きましては、戰爭中御承知のやうに食糧増産と云ふことが非常に重要問題になりまして、米には生産の限界がある、隨て麥とか、芋とか、斯う云ふものをじやんじやん作れ、斯う云ふことで、此の促進の爲に價格を上げて來たのであります、隨て事變前のやうな一定の均衡状態が破れて居ります、此の状態は成べく早い機會に是正して行かなければ、米に對しましては、御承知のやうに勞力も非常に要るし、生産手段の消耗も非常に多い、而も産收が少い、斯う云ふことに置いておきましたら、米の生産は段々減つて來ると居ふことも當然のことでありまして、是は私共としても農林當局と能く御相談申上げまして、成べくさう云ふ不均衡を是正して行きたいと思つて居ります、又先程御話になりました南瓜等野菜に付きましては、是は現在の經濟事情が斯う云ふ風に非常にひん曲つた状態になつて居りますから、差當りの供出を良くし、集荷を良くして、さうして巧みに配給しなければならないと云ふやうな状態で、是も米に比較しまして相當高い價格になつて居ります、併し今後物價が安定しまして若干下り氣味になつて參りました場合には、先づさう云ふものから段々下げて貰つて、米との比率をちやんと付けるやうにやつて行きたい、斯う存じて居ります
第二の御質問の、農村勞銀十圓の問題でありますが、是は時の問題と關係して參ります、本年の二月、三月の時に、私共が一應將來の物價の基準の爲に米の價格を算定致しました時には十圓を採つたのであります、現在はさう云ふ考へを持つて居りませぬ
第三の御質問は、米價を適正な所に置かなければならぬ是は全然同感でありまして、私共も適正妥當の所で、米の價格を決めたいと現在一生懸命にやつて居る譯であります、唯其の際に農村の勞賃が都市の女給仕と同じやうなことでは困る、斯う云ふ御話がありましたが、此の點に付きましては、前にも御質問がありました時に御話し申上げましたやうに、農村勞力と都市のさう云ふ勤務とは一寸種類が違ふのでありまして、比較しにくいのであります、例へば農村に於きましても、北さんのやうに農村問題を御熱心にやつて居られる方もありますし、又お百姓の中には怠け者もあるでありませう、又女事務員の中にも、速記に堪能な者、或は「タイプ」に堪能な者、さう云ふ技術を有した者もあります、是は一概に比較にならぬと思ひます、さう云ふ女の給仕と云ふものは、國の統計に現はれて參ります勞賃の中では數が非常に少いのであります、重い比重をなして居りませぬ、私共の取上げて居りますのは、内閣統計或は厚生省の統計に依つて居るのでありまして、今北さんが御心配になりましたやうな御懸念はないと思ひます、米の適正價格に付きましては、今關係筋と折衝を致して居りまして、昨日も江川委員から御話になりましたやうに、是は一刻も早く決定しなければならぬ問題であります、殆ど毎日のやうに折衝を續けて居りますが、併し此の問題も先刻御質問がありましたやうに、現状に於きましては公正妥當な價格であれば宜いのでありますが、それを超えるやうな價格の要求がありますと、是は物價の水準全面に對して重大な影響を持つて參ります、現状に於きましてもやはり國際經濟には相當な繋がりを持つて居るのでありますから、其の點から申しましても、是は是非とも公正妥當な所に持つて行かなければならぬと私は存じて居ります、尚ほ若し不公正な價格が出來上りまして、其の爲に一般物價水準が激騰すると云ふやうなことになりますと、是は經濟の安定にならぬばかりではなく、農村自體に對しましても利益にならないと思ひます、現在はさう云ふ考へでありますから、どうぞ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=61
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062・北政清
○北(政)委員 只今の適正と云ふ考へ方が、新聞や風評や大方の話を聽くと、私共大した懸念があるやうであります、其の開きがありはせぬかと思ふのであります、又一體米の價格を決めて、それから諸物價を決める、斯う膳經濟安定本部長官は言うて居られるが、現在は勞銀が先に上つてしまつたから、勞銀から逆算して決めるべきだと思ふ、其の勞銀を下げ得るか、鐵道が剩つて居る人間を一寸首を馘らうとすると、あの通りの騷ぎだ、此の賃金を下げられる經濟安定長官は居ない、總理大臣でも出來ない、誰が出ても出來まい、さうすれば、之に米の價格を合はせて行くことが當然だと考へる、そこで女給仕が少いと言ふが、役所の中でやつて居るのを御覽なさい、一日十圓と決つて居ない、其の他に賞與がある、而も休んだ日も與へる、女給仕などは頭も何も使ひませぬ、本當の技術屋で硫安を拵へる、今度化學的に斯うやると一遍に出來る、斯う云ふ者にはなんぼ拂つても宜い、それと農民と比較すれば宜い、普通判任官程度で幾ら位になるか、實際に拂はれる政府の豫算と云ふものは、私が中を見ると中々駈引がある、商工省の技師何名、さうして其の實際の人數を入れて居ない、是はいんちきです、一つ本當に肚を据ヱてやつて戴きたい、いんちきと言ふと語弊があつて、又取消などと言はれるかも知らないが、實際にはさうである、賞與が出て居るが、あの賞與と云ふ豫算は出て居らぬ、それを出して居る、實際の表向になる所は八百圓と幾らだと言ひますが、實際に於きましてはそんなどころではない、そんなどころでは默つて居りはしない、斯樣な意味合に於きましても、是と農民と同じ立場に置くことは絶對公平でないと云ふことがはつきりしたならば、是は完全にやつて貰はなければならぬ、又「マッカーサー」司令部より、農民を經濟的均等の立場に置けと云ふ指令が來て居る、其の考へ方が根本的に違ふ
尚ほ最後に申上げて置きますが、ここで考へ直して貰ふ必要がある、次長さんと私とは能く話して居るから、是れ以上聽かぬでも宜いが、私が先程申しました農村の中間機關の排除──是は實に莫大な數がある、それから農村が今後此の面積でやつて行かうと致しますならば、色々な農村副業、農村工業、之を興さなければならぬ、此の間からどうも農村を工村化しようと云ふやうな風が農林大臣の説には見えます、農業の工業化をする、農村を工村化すると云ふ、それでは農村の基礎を壞しますよ、農業の基礎を壞しますよ、斯う申したいのであります、私は各種の工業に致しましても、今のやうな工業組合、あの儘の統制權力の下では絶對にやれない、農民をふん縛つて居る、お前は農村工業をやれと口で言ふだけである、手足は縛つて居る、肥料は現實にない、是ではやれない、だから完全に農業者の組織するものでやらして貰はなければならぬ、配給機構に付ても當然である、あの配給機關の中間で如何に搾取されて居るか、よく財閥々々と言ふが、其の中間の搾取階級が最も多い、都會の消費者階級は隨分引掛る、親父さんは役所へ來て居る、奧さんは色々されて居るから分らぬ、是は農村人でない人には分らぬ、斯樣な譯でありまして、是は農村經濟を實際に本當に社會全般的に迷惑を掛けない限りに於て向上せしむることに最大の努力をせぬと、如何に自作農を拵へても何にもならぬ、やつて行けない、更に昨日申しましたが、農機具の如きは、是は完全に農林省に移すべきである、商工省の人があれを見て分るか、いんちきばかりだ、あれは一つも鋼の入つて居るものがない、「プラウ」は現在どうなつて居るか、ある資材をないやうに作る、ある資材を役立つやうにしない、それで兎に角政府は最高値を決めてやりさへすれば宜いから、それで皆やつて居る、之を農民自身がやれば、自分の使ふ物だからどんなにしてもさう云ふものにならない、是は農林省が一つがつちりと交渉して貰ひたい、商工省と意見を對立せよと云ふのではない、商工省へ行つて能く聽かして貰ひたい、和田さんから星島さんに能く説教して戴きたい、斯くせぬ以上農村は絶對に立つて行けませぬ、さうでなければ闇をやるより外はない、闇をやらぬで行ける奇麗な農村にどうかさして戴きたい、以上で私の質問を終り、逐條審議の場合がありますれば又其の時に申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=62
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063・葉梨新五郎
○葉梨委員長 農林大臣から只今の質疑の肥料、芋、其の他中間搾取機關の處理に付ての御答辯はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 中間機關の搾取問題は私屡屡御答辯申しましたが、只今藷會社に付て公社を作ると云ふことを仰しやいましたが、さう云ふことは何も決まつた譯ではない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=64
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065・北政清
○北(政)委員 なければ結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=65
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066・和田博雄
○和田國務大臣 どうか一つ誤解のないやうに御願ひ致したい、此の點に付ては只今我々の方としても考へて居るのでありまして、どうかさう云ふことは風評でありまするので一つ御理解を御願ひ致したいのであります
それから農機具其の他の點に付きましては、全く農村の立場に立つて居りまする者と致しましては同感でありまして、さう云ふ點に付きましては今後とも十分努力して、是非農家に本當に良い農具が行きますやうに、肥料に付きましても、國全體の立場に立つて増産が捗つて行きまするやうに、我々としては是非やつて行きたいと思つて居ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=66
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067・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午後一時から理事會を開き、一時半から委員會を開會することに致しまして、是で午前中は休憩致します
午後零時十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=67
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068・会議録情報2
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午後二時一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=68
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069・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より午前に引續き會議き開きます、質問に入るに先だちまして諸君に御諮り致すことがございます、午後一時から各派理事諸君の御參集を願ひまして御協議を願ひました結果、本日の午前を以ちまして一亙り各派の代表質問が終りました次第でございます、是からは重複を避け、且つ審議を急ぐ意味に於て各派各各一名づつ一時間、其の他の諸君は三十分と云ふことで逐條審議に入る前の審議を進めたいと云ふ理事會の意向でございます、此の決定通り進行するに御異議ありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=69
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070・大澤喜代一
○大澤委員 異議があります、實は先程理事から其の模樣を聽いたのですが、大體案の出たのが相當遲れて居ります、而も當時委員長は、是は大化の改新以來の土地改革の問題だから、愼重に檢討しなければならぬと云ふので、非常な太つ腹な所を見せられて、今までの先輩、同僚議員も長時間熱心に討議されて居られたやうであります、又私達も其の積りで居りましたので、只今委員長の御話でありますけれども、實は私の黨も誰を代表に出して纏めて質問しようと云ふ所まで行つて居りませぬ、一應發言が全部終つてからはつきりした態度を執らうと云ふことになつて居りますから、重複を避けると云ふ意味で、必要なことは出來るだけやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=70
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071・葉梨新五郎
○葉梨委員長 理事會では各派から一人一時間、其の他の方は三十分づつと云ふ話だつたのでございますが、大澤君は其の意を含んで、特に左樣に限らずに、短い方は十分で濟む方もあると云ふやうな意味もある、だらうと思ひますが、大澤君の御發議の點如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=71
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072・古賀太郎
○古賀委員 折衷案として、一時間半と一時間位にしたらどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=72
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073・葉梨新五郎
○葉梨委員長 如何でせう、大體原則として各派より一人一時間、其の他の方は三十分づつとして、尚ほ便宜諸君と御相談の上進行して行くことにしては…
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=73
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074・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは藥師神岩太郎君から順次御質疑を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=74
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075・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それでは和田農林大臣に御尋ねを致したいのでありますが、其の前提として一言申上げたいことは、今も問題になりましたが、出來るだけ重複を避けたいと思ひます、併し此の農地制度改革案の中心をなすものは、要約すれば二、三點にあると思ひます、此の問題に付ては自ら各人の質疑の内容が觸れると思ひます、唯問題は、それをどう云ふ角度から見て居るかと云ふ問題の違ひでありますから、其の點を御諒承願ひたいと思ひます
尚ほ此の前提として一言觸れて置きたいことは、政府が今次議會に提案致されまして現在審議中である所の農地制度改革案は、我が國に於ては實に劃期的なものでありまして、此處に到達した、詰り換言すれば、此の案を提出するに至らしめた原因、及び過程を考察して見ますると、今次の敗戰に依り澎湃として卷起つた民主主義的思潮の流れに依り、過去の封建的な制度や組織を一擧に拂拭せねば已まぬと云ふ、所謂時代思潮の齎らした所産である、斯樣に私は思ふのであります、而も一面に於ては、我が農地制度改革に對する「マッカーサー」司令部の覺書があり、又一方には世界各國に於ける農地制度改革の示唆と刺戟とがある、更に又對日理事會に於ける各代表の意見があるのであります、以上の諸點を綜合して考へて見ますと、農地問題は早晩斷行しなければならぬ必然性を持つて居るものと私は考へるのであります、隨て私は該改革案の大綱に付ては之を肯定するに吝かではないのであります、併しながら其の個々の内容に付きましては、之を萬全なるものとして直ちに鵜呑みにすると云ふ譯には參らぬのであります、即ち此の農地問題は、世界各國共にそれぞれ事情を異にして居るのみでなく、一國内に於ても其の地域に依つて、非常に違つた、所謂特異性を持つて居るのであります、今之を具體的に言へば、緯度の相異、或は農地面積と人口比、或は地勢、地味、更に耕種など異なるのでありまして、以上の諸點は營農の規模形態と不可分性を有するものと私は信じて居ります、隨て此の農地制度改革案を組成するに當つても、之を他國の例に模倣したり、或は範を取り得ると云ふ場合は、殆ど例外的のものと私は考へて居ります、若し此の範を取り得るものがありとすれば、それは極めて一小部分にしか過ぎないのであると私は信じて居るのであります、果して然らば、政府は今次の改革案を提案するに至りますまでに、我が國農業の世界に殆ど類似のない所謂特異性を基礎として案を練つたのであるか、農林大臣の先程の御答辯では、さう云ふ意味があつたのでありまするが、それとも或は大部分は他國の改革案を取つたのであるか、斯う云ふ問題であります、言葉の上ではどう云ふ御答へでも出來ると思ひますが、前議會に於て此の問題が取上げられた當時と今日とは、非常に此の案の内容が變つて居ります、此の案を見ますると、一面から言へば、對日理事會に於ける所の英國の代表の意見も相當強く出て居るやうに考へられます、又一面から見れば「ソ」聯の、理事會に於ける主張も相當此の上には影響を齎して居るやうにも考へられるのであります、殊に農林大臣は、聞く所に依ると、「ソ」聯の「コルホーズ」或は「サフホーズ」の問題は非常に造詣を持つて居られると云ふことでありますが、それが此の改革案の上にどう居ふ示唆を與へて居るか、又此の案其のものは單に日本の特異性、日本の特別な農地制度を本にしての改革案と云ふ御意見ではありまするけれども、私は今言つたやうな感じが強いのでありますが、若し他國に範を幾らかでも取つて居るとすれば、どの點を目標或は範にされて居るのか、其の點を前以て一寸御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=75
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076・和田博雄
○和田國務大臣 是はやはり日本の農業と云ふものの現實に即して我々としては考へたのでありまして、勿論之を考へまする時には、それぞれの國に於きまする色々な農地改革のやり方其の他のことは參照に致し、又凡ゆる特別の人達、專門家と話合ひは致しましたが、併し何處までも日本の現状に即してそれに立脚してやつた、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=76
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077・藥師神岩太郎
○藥師神委員 次に御尋ねしたいことは、今次の農地制度改革の目的とは此の條章に明かになつて居りますが、農地を小作人に再分配して、適正規模の營農をやらすことは、或は一面地主の搾取を排して、所謂農奴を解放して、農民の生活の安定を圖り、延いては農業生産の増強に役立たしむると云ふのが目的のやうでありますが、政府の意圖し、又期待する效果に付ては、後に御尋ねすると致しまするが、先づ農地を政府の一方的意思に依つて強制買上すると云ふことは、改正憲法の趣旨、所謂精神に牴觸しはしないか、斯う云ふ問題でありますが、それに付て御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=77
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078・和田博雄
○和田國務大臣 其の點は牴觸しないと解釋致して居るのであります、沒收するのではないのでありまして、正當な補償を拂ひ一定の手續を以て之を買上げるのでありまして、憲法の精神に牴觸するとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=78
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079・藥師神岩太郎
○藥師神委員 詰り公益、公共と云ふ概念と云ふものは、過去に於て國家又は公益團體、斯う云ふものの用に供される場合を規定して居つた、恐らく概念の上に於ても私はさうであつたらうと思ふのであります、所が今度は農林大臣の辯明にもあるやうに、單に政府は手段として仲介的立場に立つて農地を買上げ、再び之を小作人に分配する、一面から言へば、仲介業の立場に立つのであります、併し之を遂行することは、大きな國策の遂行であり、國家目的を達成することでありますから、公益と言ふことも出來ると思ひますが、唯此の改正憲法第二十七條の第三項には「私有財産は、正當な補償の下にこれを公共のために用ひることができる。」斯うありますが、正當の補償と云ふ此の問題であります、正當の補償と云ふ問題は各派の委員に依つて色色意見はありましたが、是は賃貸價格に對する倍率計算に於て、政府の一方的意思に依つて強制する、所謂強制買上と云ふことは正當の補償と言ひ得るか、此の論據を私は承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=79
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080・和田博雄
○和田國務大臣 是は買上價格が正當であると云ふことでありまするならば、さう言へると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=80
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081・藥師神岩太郎
○藥師神委員 どう云ふことですか、もう一遍今の點をはつきりと伺ひたい、一方的意思に依つて政府が強制買上することが正當の補償と言ひ得るかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=81
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082・和田博雄
○和田國務大臣 それは言ひ得ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=82
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083・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私はさうは言へないと思ふのです、是は總體的問題でありまして、私は何も地主の味方をしようとも思はないし、小作人の味方をしようとも思つて居りませぬ、もつと高い立場に立つて此の問題を檢討して我々は批判し、さうして協贊すれば足りると思ふのであります、又殊に土地と云ふものの買上價格が安いと致しましても、私は之を反對に言へば小作人に賣付けるのが安過ぎると云ふ意味でもありませぬ、先程北君の意見の中にもありましたが、若し現在の買上價格が地主に無理があるとすれば、それは國家が補償すれば足りるのであります、之に付ては、農林大臣はさう云ふ御意思のないことを先程述べられて居るのでありますが、如何樣なる見方も成立ちます、併し同じ不動産に於ても、今日宅地、山林、建物、斯う云ふものは昭和十四年の九月十八日、所謂九・一八の「ストップ」令以後に賣買されたものは自ら別でありますけれども、それ以前のものは現在處女價格と云つて、恐らく事變前の何百倍もの値段で自由に取引が行はれて居るのであります、然るに此の農地のみを斯う云ふ風に一つの公定價格を設けて抑へて來たと云ふ理由、何が故に之を抑へて來たか、又それを基準として政府は買收するのか、他の物價を全然顧みないで、此の農地と云ふものを斯う云ふ風にするのか、斯う云ふ大改革をやるに當つて、地主に對する幾らかの報償金はありますけれども、此の大きな仕事の上から見れば、殆ど政府は何も使はないで、大きな國家目的を、達しようと云ふ、一つの蟲のよい案だと私は見るのであります、恐らく是は今度出て居る法案の中でも最大のものだと私は認めるのでありますが、政府は格別犧牲を拂はないで好い顏にならう、一寸言葉の言ひ廻しが惡いかも知れませぬが、さう云ふやうな一つの狡さが見えるのでありますが、其の點に對する御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=83
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084・和田博雄
○和田國務大臣 農地の價格を統制致しましたのは、農業の生産手段に一番必要な農地が、投機其の他の事柄に依つて高く賣買されると云ふことになりますれば、是は農民に取つて極めて不利なことになりますし、又農業の生産を高める上から言ひましても不當と思ひましたので、農地に付ては統制を致して居るのであります、其の點に付ては他の價格統制をやつた趣旨とちつとも變つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=84
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085・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それでは一寸茲に挾んで承りますが、第六囘の對日理事會に於ける英國代表の提案「不耕作地主所有小作地を最大限一町歩とせば云々、私の提案の一町歩は平均して日本の家族に生計を保證するに足るものである」と云ふ、此の意味はどう云ふ意味と解して宜いか、又農林大臣はど解う釋されて居るか、其の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=85
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086・和田博雄
○和田國務大臣 一町歩の點は英國代表がどう云ふ意味で言つたか、私能く分りませぬが、恐らく其の文字通りに、一町歩あれば生計を維持出來るだらう、斯う云ふやうな意味だらうと思ひます、私は其の點に於て、農業經營に付て現在十分やつて居るものに付ては制限すべきものではない、斯う云ふ意見を取つて居るのでありまして、今囘の農地制度の改革の點に付ても、自作農の經營に付ては制限を致さないと云ふ原則を貫いたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=86
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087・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それは私には變に聞えるのであります、今度の農地制度改革案の中に盛られて居る、地主に最高一町歩を殘すと云ふのと、英國の代表の言つて居る、私の提案一町歩は平均して日本の家族の生計を保證するに足ると思ふと云ふことは、其の考へ方は自ら別と致しましても、一町歩と云ふ點は英國の代表の言つて居ることと符節を合して居るのであります、私は總ての土地の問題或は價格の問題に入るのに、前提として之を聽いて居るのでありますが、恐らく農林大臣が此の問題を等閑にされて居る筈はないと思ひます、英國代表の言ふ、所謂不耕作地主に一町殘して置けば平均して日本の農家家族は此の一町歩で生活を保障し得るものと認むると云ふ意見を、農林大臣はどう云ふ考へで見て居られるか、是がなければ一町歩殘すと云ふ理由がはつきりしないと思ひます、是は、不耕作地主が將來自作農に立つた場合に於て、一町歩を作れば食へると云ふ意味なのか、或は一町歩殘して持つて居れば、それで生計が出來ると云ふ意味なのか、此の點に付て私ははつきり農林大臣の意見を聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=87
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088・和田博雄
○和田國務大臣 其の意味は明瞭でないのであります、一町歩を小作人が買ふ時に、一町歩のものが買へれば、家族勞働を主にすればそれを以て生計が維持される、斯うも解釋出來るし、又土地保有として一町歩持つて居ればとも解釋出來るのでありますが、此の點に付て土地一町歩を殘しました私の考へは、度々説明したやうな譯で、何も地主が手作りして一町歩作れば、それで殘すと云ふ意味で一町歩を殘したのではなくして、前に述べましたやうな、經營の變動とに對する幅を持たすと云ふ意味で、一町歩殘すのが適當であらう、私は斯う解釋して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=88
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089・藥師神岩太郎
○藥師神委員 米價の問題、是は農林大臣のみで困るのでありますけれども、先づ大體六百圓位に引上げられるものと見て宜しいですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=89
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090・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付ては只今關係方面と交渉中でありまして、何とも實は私としては申されないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=90
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091・藥師神岩太郎
○藥師神委員 此の委員會の色々の説を聽いて居りますると、今の政府が計畫して居りますると、今の政府が計畫して居る値段で小作人に買はすと云ふことは實に殘酷だ恐らく政府の企畫して居るやうに此の土地は早急に消化が出來ぬだらう、斯う云ふ意見も澤山出て居りますが、私達はさう云ふ見方はして居らないのであります、現在賃貸價格の倍率で手に入るとすれば、私は大多數の小作人は喜んて居る、斯樣に思つて居ります、私は自分自身が農村に生れて、而も大部分小作を實踐して來た男でありしまするが、現在耕作權が確立すれば、土地を持つよりもそれの方が非常に得だ、それで土地を買ふなと云ふ一派の者の宣傳が非常に農村に行はれて居ります、是は事實であります、私は之を反對に逆算して、一つ茲に御意見を伺つて見たいと思ふのであります、詰り小作料の問題でありますが、地主の方へは金納制度を認めましたから、一石七十五圓と云ふ價格で支拂ふと云ふことで、之を逆に計算して見るとどう云ふ結果になるかと申しますると、先づ當代が十代、一段歩二俵半で小作させて居ると致して見ますると、一町歩の地主は詰り作徳米が物納ならば二十五俵入つて來る譯であります、凶作等の場合は自ら別でありますけれども、普通ならば二十五俵入つて來るのです、之を石當り七十五圓の金納にすると七百五十圓であります、若し今度米の買入價格を──耕作地主の米を六百圓で買上けると假に致して見ますると、是が妥當な値段であるかどうかと云ふことは別に論評すると致しまして、假に六百圓で買上げるとして是から逆算して見ますると、一石二斗五升に該當するのであります、六百圓の米ならば、一町歩の土地を持つて居る地主は一石二斗五升米を受取つたと同じ結果になるのであります、約三俵であります、物納ならば二十五俵入つて來る所へ、六百圓の米にすれば約三俵、斯う云ふ結果になるのであります、それから今度地主が買ふ配給米は二重價格にして四百五十圓位と致しますと、其の七百五十圓で一石六斗五升の米、約四俵の配給が受けられることになるのであります、詰り之を反對に考へて見ると、小作料は金納制を採用した爲に八分の一に下落して居ると云ふことが言ひ得ると思ふのでありますが、之に對して農林大臣の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=91
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092・和田博雄
○和田國務大臣 米の價格が上つた、其の上つた價格で計算して、小作料を今あなたのやうな計算を致しますれば、それは割合は減るのは當然であります、併し私は其の點に於て比較すべきものは、さう云ふ割合ではなくして、やはり小作人の實際に得る所の勞賃收入と云ひますか、純所得と云ひますか、さう云ふ純所得と小作料を本當は比較すべきだと思ふのであります、あなたの仰しやいますやうに、値上りした米價で收穫物を換算し、小作料を今の計算で行きますれば、片方は上り、片方は下つて行くと云ふのは、是は當然だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=92
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093・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私は實に不可解なことを聽くのでありますが、私達の意見は、地主にも或る程度の滿足、得心の行くだけのことをしてやり、小作人にも亦滿足し得るやうにするのが、私は政治の要諦ではないかと思ふのであります、如何に此の時代思想の背景があつたにした所で、一方を犧牲にすると云ふ方法は私はいけないと思ふ、唯口を開けば、地主と言ふ、極端な意見で言へば、此の間も鷄一羽、酒一升で強奪したやうな土地もあると云ふこともありましたが、成程さう云ふのもありませうけれども、是が報復的の措直でやる法案ならば、是は私の批評の外であります、一國の政治としてやつて行く以上はそんなものではないと思ふ、得心の行くやうに之をやらなくてはならないと私は思つて居る、其の場合に於ては、先程北君の言つたやうに、政府が、是は小作人の犧牲に於てはいけないと思へば、或は一方に於ては地主を或る程度滿足せしむる爲には、政府は或る程度の犧牲を拂はなくてはやれない筈であります、恐らく土地の賣買は、農林大臣御存じか知れませぬけれども、大體昔から一段歩の土地の賣買と云ふものは、米に換算して見ると、地方々々で多少の違ひはあるけれども、大體一段歩の土地の賣買は其の時々の米の値段に依つて違ひまするけれども、少くとも米五、六十俵に匹敵するものであります、米が一俵十圓の時ならば六十俵で、一段歩が六百圓であります、高いのは百俵の所もありますけれども、大體五、六十俵のものであります、是は何處までもさう云ふ農民の一つの經濟常識と申しまするか、斯う云ふものは──大臣はお笑ひになつて居るけれども、あなたが笑はれるのは、農林大臣御存じないからであります、何處でも調べて見られたら分ります、それは成程、地主の中には殆ど高利貸的の手段に依つて掠奪したやうな土地もあるでありませう、又舊藩主の如き、一つの苛斂誅求に依つて昔から傳はつて居るやうな土地も中にはありませう、けれども三町や五町持つて居る所の小さな地主、所謂自分が作つて作り切れない部分を人に貸して居るやうな地主と云ふものは、是までは實際血みどろになつて働いて來て、村を形成して來た、村を保つて來た中堅をなして居るものであります、如何に是等が粒々辛苦をしたか、今日のやうに國家の力で買つて分けてやるのではない、其の當時、小作人から拔出る爲に、田を一枚、畑を一枚買ふと云ふことは、一體どれ位の努力が拂はれて居るかと云ふことを十二分に考へてやる必要があるではないか、斯樣に思つて居る、私はどう云ふ所から算定なさつて居るか知りませぬけれども、一つの田が今の賃貸價額の四十倍を公定價格と假に致します、私は此の賃貸價額其のものに大きな矛盾を持つて居ると思ふのでありますが、此の公定價額から算定すれば石七十五圓の米であつても、それは二分五厘から三分、公債の利率位には匹敵するでありませう、けれども其の本に大きな違ひがあるのでありますから、私はさう云ふ計算は成立たぬと思ふのであります、此の點に付きまして、實際の問題としても私は來る前に調べて見たのでありますが、我々の地方で、或る村長が大きな地主の土地を、儲ける爲に買入れて、賣買内契約をして、それを小作人に今の公定價格の二倍に賣つて居る事實があつて、私の所へ相談に來たのであります、今日の小作人は、地方に依つて多少の違ひはありますけれども、私の方の實情から考へて見ますと、先程問題になりました永小作權の問題であつても、大體永小作權の附いて居る所は、假に一段歩の土地が二千圓に賣れれば、我々の地方では大體地主が半分位取つて、半分位は小作人の收入になつて居ります、之に付ては私は先程の農林大臣の御答辯で、さう云ふ點は了解することが出來ます、出來ますが、小作人の小作權の賣買だけでも、今日我々の愛媛縣では五百圓や七百圓では絶對に行はれて居りませぬ、それは詰り耕作權を確立すれば土地は買ふ必要はない、地主に持たして置いてやつて行けば、それで小作人は都合が好いことは分つて居りますから、絶對に買ふな、斯う云ふ宣傳をして居る所もあります、私も知つて居ります、知つて居りますけれども、凡ゆる角度から見ました時に於て、我々の地方では小作權が今日賣買されて居るのが五百圓や八百圓ではありませぬ、是は明かに申上げます、社會黨の林田君の足下の方でありますから、是は御聽きになれば、現實の問題がはつきりすると私は思ひます
時間を急ぎますから甚だ飛び飛びになりますが、昨日の藤本委員に對する農林大臣の答辯中に、米價は自由經濟の時には寧ろ納得出來ないやうな價格に度々なつて居ると云ふ意味の御答辯があつたのでありますが、是はどう云ふ意味であるか、何處を根據として斯う云ふ御答辯をなさつたのであるか、其の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=93
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094・和田博雄
○和田國務大臣 私が昨日申しましたのは、農民の納得する米價と云ふことを盛んに言はれるものでありますから、農民と云ふものは澤山ある、五百五十萬からある、其の一々の農民が納得する價格と云ふものは、ありやうがないのだ、最高の限界價格を採れば別でありますが、併し自由價格の時には、農民の力の及ばない自由市場の價格に於て米價は決定されて行くのであつて、其の場合には生産費の高く掛つたものがあつても、其の價格で賣らざるを得ないと云ふので、農民の常に滿足する價格にすることは出來ない、斯う云ふことを申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=94
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095・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私は自由經濟時代には、寧ろ納得の出來ないやうな價格が度々あつたではないかと云ふ意味に解したのであります、此の問題に付て、私の考へて居る立場から意見を申上げて農林大臣の意見を聽けば、恐らく此の問題だけでも三十分や一時間で盡きないと思ひますが、此の自由經濟時代の米の問題、詰り農民の納得出來ない價格と云ふものは成程間違ひなくある、昭和初期から支那事變に至るまでの約十二年の間は、米穀過剩時代でありまして、是は立法的に見ても細承知の通りであります、米穀管理法、籾共同貯藏助成法、或は公定米價の設定、更に昭和七年から三箇年に跨がる農村匡救の土木事業、此の一般のものを綜合して見ても、是は農村の恐慌時代であります、即ち米穀を中心とする農産物價の大暴落を來した當時でありまして、此の當時の状態を見れば、成程農民の希望しない、農民の破綻に瀕するやうな恐慌時代が起きて居るのであります、そこで何故に斯う云ふ結果が起つたかと云ふ原因を、本當に檢討して見なければならぬと私は思ひます、數字は持つて居るが、時間の都合で省略します、一口に言へば、朝鮮、臺灣の米の増植、灌漑或は治水、全面的な干拓事業の奬勵、品種の改良、内地からの優秀な技術の導入、斯う云ふものに依つて増加して行つた數字は、農林省の統計で分つて居ることと思ひます、又大正元年には臺灣から七十幾萬石と朝鮮から僅か二十幾萬石しか入らなかつた米が、日本の人口増加に依る所の自然消費増よりも數倍のものが可速度的に此の朝鮮、臺灣から内地に移入されたと云ふことが大きな原因を成して居る、是は政府の政治のやり方であります、朝鮮に米を植えるか棉を植えるか、或は牧畜地帶にするかと云ふことは、伊藤公の統監時代に二つに分れた大きな問題であつたのであります、併しそれが遂に日本の人口増加の將來を考へて、米作地にする方が勝つたのであります、是は痛し痒しであつて、朝鮮、臺灣の米は可速度的に増加されて、大正年間には百萬石にも足らなかつたものが、昭和九年には一千五百萬石を突破して居る、人口増加に依る米穀の自然消費増に付ては、私二十五年に亙つて調べたが、僅か一%に過ぎない、他の内地に流入した朝鮮、臺灣の米の爲に、昭和の初期から支那事變に至るまでの米穀を中心とする農産物の大暴落が起き、それに因つて農村は收拾べからざる状態に立ち至つたのでありまして、之も政府の施策の結果であると思ふのであります、農民は斯う云ふ時代を決して喜んで居るのではありませぬ、自由價格と云つても、斯う云ふ時代を望んで居るのではありませぬ、斯う云ふことのなからん爲に、政府は萬全の凡ゆる施策を講じなければならぬと思ふのでありまして、此の農林大臣の御意見には、今統制をして居つても本當に適正な米價さへ作れぬではないか、それでは消費者の方でも、生産者の方でも、又地主でも小作人の方に於ても皆大不滿があるのであります、斯う云ふ譯の分らない價格設定をやつて居る農林大臣の斯う云ふ御意見は、對蹠的に御述べになつたものと思ふが、自由價格と云ふ問題は徹底的に調べて見なければ、今例を擧げたやうに輕々に口にすべからざる重大なる遠因或は近因を持つて居ると思ふのであります、此の點どう思はれますか、農林大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=95
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096・和田博雄
○和田國務大臣 自由經濟の時代と統制經濟の時代とは、價格形成の「メカニズム」がまるで違ふのであります、そこで自由經濟の場合には、自由な競爭品が來れば、需要供給の關係に依つて價格が上り或は下つて適當な所に落著く、統制經濟時代には或る一定の標準があつて、米價に付て言へば、生産費其の他を基礎にして國家が之を決定するのであつて、價格形成の構想が違ふ譯でありますから、其の點は御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=96
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097・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私大綱に於ては其の意味を了承することが出來るのであります、何も此處で自由經濟の特徴と統制經濟の特徴を論議しようとは思つて居りませぬが、言葉尻を捕へるのでなくて、私は非常に變に聞えたから此の問題を御尋ねして見たのであります
それから細かいやうでありますが、病氣等其の他特別の事由ある場合云々と云ふ項目がありますが、此の特別の事由ある場合と云ふのはどう云ふ場合か、其の點を承りたいと思ひます
もう一つは誰かの質問に對する農政局長の御答辯の中に、賃貸價格倍率は最高價格の基準を示して居るのであつて、安く買へる土地もあるからと云ふ御意見があつたが、それはどう云ふ意味か承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=97
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098・和田博雄
○和田國務大臣 特別の事由と云ひますのは、例へば家を擧げて外へ出て行くとか、其の他公職で外へ出で行くと云ふやうなことを意味して居るのであります
それから第二點は、統制價格の範圍内で買ふことになつて居りますので、事實上統制價格よりも安い地帶がある譯であります、さう云ふ所は何も統制價格まで引上げて買ふ必要はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=98
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099・藥師神岩太郎
○藥師神委員 統制價格まで引上げて買ふ必要はないと云ふ御返事は、どうも私には受取れぬのであります、それはどう云ふ譯かと云ふと、賃貸價格其のものが土地の價格を決めて居ると思ふ、此の賃貸價格其のものが總て公正に出來て居るとは私は考へませぬが、少くとも賃貸價格に依るより外に、土地の價値を決定することは此の際出來ぬのではないか、唯そこに幾らか賃貸價格設定當時と、今日の事情が變つて居ることは、一筆毎にあるでありませうが、之を萬全にやらうとすれば、全國的に賃貸價格を盛り變へなくてはならぬのであります、それで田に於て四十倍、畑に於て四十八倍と云ふのは、是は上田に持つて行かうが、下田に持つて行かうが、上畑に持つて行かうが、下畑に持つて行かうが、此の率に於ては特別のものを除く以外は同率であるべきものと信じて居る、曾て好い例がありますから申上げて見ますと、私の縣の警察部で、旅館の宿料を決めた時に、既に印刷を拵へて居つたのでありますが、一等旅館は一泊十圓、二等は三圓、田舍の端の方へ行けば十圓、五圓、三圓と云ふ風に決める、所が之に附隨した「サービス」料に又等差を附けて居る、こんな詰らないことはないではないか、既に「サービス」料の基準になる所の宿料に等差が付いて居るではないか、斯う言つたら、成程是は惡かつた、是は具體的に言へば、十圓の宿料に二割の「サービス」料なら二圓になる、けれども三圓の宿料に對して一割取つたら三十錢しか入つて來ない、斯う云ふ風に一寸何でもない所に氣が付かないで大笑ひもし警察部長が惡かつたと申したのでありましたが、私はさう云ふ頭を持つて居られるのではないかと思ふ、此の倍率計算で行けば、土地の價値を決定するには、上田、中田、下田と賃貸價格で既に決まつて居る、其の倍率を掛けて行けば、良い土地は高くなるし、惡い土地は必然的に安くなるのであつて、そこに公定價格より安くなると云ふ土地が出て來ることは、特別の場合でなくてはならぬと思ひますが、此の點に對してはつきりと御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=99
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100・和田博雄
○和田國務大臣 農地價格の統制は、やはり最高價格と云ふものを置いておく譯なんであります、倍率は丁度賃貸價格の四十倍、四十八倍と云ふ倍率に依りまして、農地の最高價格を決めて居る譯であります、隨てそれが農地の最高價格であつて、其の範圍内に於て農地の買收を行つて行く譯であります、それ以下のものが事實上ありますれば、事實上新潟などでは最高價格まで行つて居る土地がある譯であります、さう云ふ場合にはそれで行く、此の農地價格が最高價格を決めて居る、さう云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=100
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101・藥師神岩太郎
○藥師神委員 其の意味は斯う云ふ風に取つて宜いのでありますか、一筆毎に土地の價格を計算して、田ならば、是は最高四十倍に買へ、是は三十八倍だ、是は三十倍だと云ふ風に認めると云ふ意味でありますか、どうも私は其の點に合點が行かぬのでありますが、最高價格と言はれることは、繰返して言へば、賃貸價格が公正に盛られて居るものならば、是が土地の價値を決定する唯一の基準になつて居るのだから、それに倍率を掛ければ、惡い土地は安くなつて來るし、高い土地はそれだけ高くなつて來る、是で私は宜いものだと思つて居るのですが、あなたの言はれる意味は、もつと安く買へる地方ではそれより以下でも買ふ、高い所は最高まで高く出すと云ふ意味ですか、どう解釋したら宜いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=101
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102・和田博雄
○和田國務大臣 其の通りであります、安く買へる所は安く買ふ、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=102
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103・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私はどうも、國家の農林大臣が──商業をやられるのならば其の論法で宜いと思ふのでありますが、苟くも一國の農林大臣として公正なる政治をなさつて行く上に於ては、安く買へる所は安く買ふ、高い所は最高限度まで出すと云ふやうなことが、公明な政治とは斷じて言へないと思ふのであります、土地の價と云ふものは、其の地域に依つて大變違ふのでありまして、非常に土地の狹い所ではどうしても地價は高くなつて來る、人口に比較して土地の廣い所はどうしても安くなつて來る、一つの郡内に於ても其の村が富んで居つて、比較的耕地の少い所は、隣りの村よりも一倍半にも二倍にも高くなつて來て居るのが實情であります、此の點に付て、安く買へる所は賃貸價格の三十倍でも買ふ、買へない所は今言つたやうに最高で買ふと云ふ意味が、私には絶對呑み込めぬのであります、是は農林大臣がさう云ふ御考へを持つて居られるならば、我我は考へ直さなくてはならぬと思ひます、此の問題に付ては是れ以上御尋ねを致しませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=103
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104・和田博雄
○和田國務大臣 誤解のないやうに一つ御願ひ致したいのでありますが、農地の統制價格と云ふものは賃貸價格の倍率に依つて統制せられて居るのであります、賃貸價格其のものは地方々々に依つて違ひます、隨て賃貸價格が違ひますから、農地の具體的價格と云ふものは、それに倍率を掛けたものに依つて違つて來るのであります、上田はより良い價格になりませうし、中田はそれ以下の價格になる譯であります、併し地方に依つて實際統制價格以下のものがあるとすれば、自作農創定をする場合にはわざわざ賃貸價格の倍率を掛けた所まで引上げて買ふのではなくて、現實面でやつて行くのであります、是は農地統制と云ふことをやつて居りまする以上、最高限を決めましてそれ以上のものは買はないと云ふことは、當然さう云ふ統制から來る結果なのでありまして、それぞれの生産力に依つて農地價格が違つて居ると云ふことは、あなたの御話のやうに我々もさう考へて居るのであつて、其の爲に賃貸價格を基準にして倍率を掛けて行く、斯う云ふ方式を執つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=104
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105・藥師神岩太郎
○藥師神委員 どうも私の頭が惡い爲か、私は呑込めぬのであります、それは或程度農地の中には荒蕪地とか、或は風水害を受けて免税の土地もありませう、又特殊な所もないではないと思ひます、けれども、沼地で殆ど米作が一毛作さへも完全に穫れぬ所でも、それ相當の賃貸價格が設定してあると思ふ、良い所にはそれは高い賃貸價格が盛つてあるのでありまして、之に今の田が四十倍、畑が四十八倍と云ふ所の倍率が適正なものであるかどうかと云ふ問題は自ら別の議論であります、唯それを適正なものと假定致しましても、どうもそれを最高限度を決めて居るのであるから、最高で買ふものもあれば、安く買ふものもあると云ふのが、私には呑込めない、安く買ふと云ふ意味は、それは自然に高いのや安いのが出て來るのは、同じ倍率を基準として高い安いは、當然説明を聽くまでもなく分つて居る、唯中に安い土地が出來るからと云ふ意味が私には呑込めない、其の點をはつきりもう一度御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=105
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106・和田博雄
○和田國務大臣 どうも私の説明が惡いのかどうか知りませぬが、賃貸價格に倍率を掛けて大體標準價格を決めて居る譯であります、併し地方に依つては、是は地方長官の裁定其の他に依つて倍率を變へると云ふ途を開いて居るのであります、其の途と同時に、賃貸價格の決まつて居る倍率の範圍内で國家としても買へる、斯う云ふことに致して居るのでありまして、別段私としてはそこに矛盾を感じないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=106
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107・藥師神岩太郎
○藥師神委員 さうしたら斯う解釋して宜いのですか、今新潟縣下の御話がありましたが、今公定價格よりも安く買へると云ふ所は、地方長官の裁定乃至は農地委員會の決定に依つて、今の田で言へば最高の四十倍ではない、所に依つては三十倍の所も出るし、最高の所も出ると云ふ意味に解釋して宜いのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=107
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108・和田博雄
○和田國務大臣 其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=108
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109・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私はそれならば大變な問題になると思ひます、私は是れ以上此の問題に付ては質疑を止めますが、是は農林大臣もう少し御考へ直しになる必要があると思ひます、さう云ふ問題になれば大變な問題になつて來ます、是は收拾すべからざる問題になつて來ると思ひます、私は恐らく農林大臣の思違ひではないか、斯樣に思つて居ります
次に御尋ねしたいのは、耕種の問題でありますが、日本に過小農の澤山生れて來たことには各種の原因があります、之を擧げれば數限りもないのでありますが、私は其の中で最も注目しなければならぬものは、水田經營であると思ふのであります、水田經營其のものは、畑の耕作と違つて五寸の落差も許しませぬ、灌漑、排水、斯う云ふ點から見て一枚の田が大體一段歩位のものを基準として居りますが、之に機械力の應用の出來ないと云ふ問題は詰り水田であります、畑作ならば少々凸凹があつても問題ありませぬが、そこに日本の農業の制約される大きな癌が濳んで居ると私は思つて居ります、成程日本には濕地帶が多く、幾ら用排水をやつて見ても、どうしても米作地でなければならない所が澤山あります、一方では、米を殆ど止めて甘藷を植ヱれば日本の食糧問題は解決すると云ふやうな議論をする人もあります、併し甘藷に向く部分も確かにあるが、大體甘藷と云ふものは暖い所の段々畑の排水の良い所が一番適するのであります、さう云ふ點から見、或は地勢上から見ても、どうしても水田に適當な所がありますが、併し日本の農業の大きな癌は、水田經營にあると私は思ふのであります、是は日本人の食糧に付ての改善と云ふか、食糧の革命と對照的に檢討さるべき重要な問題ではないかと思ひます、又過小農の出て來る原因も各種あるが、是も大きな原因であると思ひます、此の點に對する大臣の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=109
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110・和田博雄
○和田國務大臣 私も殘念でありますから、一寸一言補足させて戴きます、只今の價格の點に付てはどうも意思が疎通致しませぬので、何れ後でゆつくり御話致して、さうして御理解を願つた方が宜いと思ひます、私は今の説明で十分納得出來ることと思ふのでありますが、どうも分らないと仰しやられると何ですから──是は法律にちやんとありますやうに、田に於ては賃貸價格の四十倍、畑に於ては四十八倍の範圍内に於て之を定めるとあつて、是が最高價格なのであります、隨てそれ以下に於て定まる場合も事實ありますが、安く買入れた所は倍率を變へるなり、又其の範圍内に於て決定してやつて行くことになるのでありまして、此の點は法律にさう決めてある譯でありまして、御理解を願ひたいと思ふのであります
それから米作と云ふものが過小農を生ずる一つの原因になるのではないかと云ふ御話でありますが、或る意味から言へば、さう云ふことが言へると思ひます、米作に付ては、それから出て來る所の段當收量と云ふものが他のものに比して良い譯でありまして、より多くの人口を吸收し得ると云ふことは言ひ得ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=110
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111・葉梨新五郎
○葉梨委員長 農林大臣に御尋ね致しますが、只今の御答辯の中に、價格の點に付ては諒解を得られないやうな點があるのは遺憾とするから、他の機會に於て之を明かにすると云ふやうな意味の御言葉でありましたが、それは如何なる機會を御指しになつての御話でございますか、委員長心得の爲に伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=111
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112・和田博雄
○和田國務大臣 他の機會と言つたのではないのでありまして、もつと詳しく御話致しても宜いのでありますが、是は法律で決めてあることでありまして、此の規定に付て一體どう云ふ所が御理解が行かないのか、そこが私にも一寸納得行かなかつたものでありますし、此の點は非常に大事な點でありますので、私と致しましても十分御質問を戴いて納得の行きまやすうに、又其の論點に付てはつきり致して置きたいと思つた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=112
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113・藥師神岩太郎
○藥師神委員 私は此の問題に付てはもう言はないと言つたのでありまするけれども、益益分らなくなつたので、尚ほ一言觸れて置きますが、農林大臣の仰しやるやうに、それは最高價格であるから、實際に於てはそれ以下で安く買へる所は買ふと言はれることが益益私には分らなくなるのです、机上の理論としては、最高價格があれば最低價格もあつて、安い價格で買へさうであるが、之を實際問題として見た場合、私はさう云ふことはあり得ないと思ふのであります、一方の縣はどうも一般の土地が隣接縣よりも安いから三十八倍になつた、一方は四十倍になつたと云ふやうなことはあり得ないと思ひます、さうでなかつた場合に於ては、私は此の問題と云ふものは根本的に崩れてしまふと思つて居るのであります、是は私の思ひ違ひではなくして、恐らく農林大臣の思ひ違ひではないかと思ふのであります、政治と云ふものは、さう云ふやうに安く買へる所は安く買ふ、高い所は最高まで買ふと云ふやうな、そんな胡麻化し見たやうな政治はあるべきものではないと思ふのであります、唯田の四十倍が適正であるか、畑の四十八倍が適正であるかと云ふことの議論は自ら別であります、此の問題は他の面から檢討さるべき問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=113
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114・和田博雄
○和田國務大臣 一寸法律を讀んで戴きたいのであります、法律の第六條の三項でありますが、「前項の對價は、當該農地につき地租法による賃貸價格があるときは、田にあつては當該賃貸價格に四十、畑にあつては當該賃貸價格に四十八を乘じて得た額の範圍内においてこれを定め、當該農地につき地租法による賃貸價格がないときは、市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて定めた額による。但し、特別の事情に因つて市町村農地委員會が地方長官の認可を受けて當該農地につき額を定めたときは、その額による。」斯う云ふことになつて居るのであります、そこで四十八倍の率の範圍内に於て之を定めると云ふことを申して居るのであつて、四十八倍と云ふ率にある場合もあれば、四十八倍以内に於てある場合もあると云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=114
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115・藥師神岩太郎
○藥師神委員 それは私も讀んで居りますが、今日賃貸價格を持つて居ない土地と云ふものは、それはもう特別のものであります、さうして單に現在の公定價格に依らない場合のあることも、今度の農地改革の制度を俟たずして、是までもそれはあつた、地目は田であり、畑であつても、立派な工場地帶として活用の出來得るやうな所に對しては、地方長官の權限に於て特別の考慮を拂ふことが是までも出來て居ると私は思ふ、それは寧ろ安く買ふのではない、是までの情勢から云へば、賃貸價格と云ふものの倍率で起して居る公定價格と云ふものが實情に副はないから、道府縣が或は學校とか其の他の營造物を建てる場合に於て土地を買收しても、實際に於て買へないから、作物の補償と云ふやうな名に依つて、さうして公定價格の二倍にも、三倍にも府縣自體が買うて居るではないか、斯う云ふ場合の方が多いのであつて、是までの公定價格の範圍に於ては、自由販賣が認められて居る、法律々々とよく言はれる、成程最高價格は能く分つて居る、最高價格の倍率と云ふものには儼とした一つの劃線を描いては居るけれども、私は其の線から下へも下らぬ、上へも上らぬと云ふものでなくてはならないと思ふ、今仰しやつたやうに、安く買へる所もある、最高の所もあると云ふやうな御考へで此の問題に對せられたならば──是れ以上私は議論しませぬが、是は大變な問題になります、是だけを私は申上げて置きたいと思ひます、此の問題に付ては合點の行かない委員さんも多いと思ひますので、尚ほ他の方に依つて徹底するまで究明して貰ひたいと思つて居ります
次に、先日此の委員會に於て八重樫君であつたと思ひますが、國鐵の「デモ」の問題を例に擧げて、今日統制の枠でがんじがらめに縛られて居る此の農民が政府に愬へる一つの手段と云ふものは、供出を阻んで拮抗するより他に方法がないのではないか、斯う云ふ意見に對して農林大臣は、是は一般の組織勞働などと違つて居つて、農民は一つの經營體だからいけない、斯う云ふやうな御意見であつたのであります、成程農業は經營體でありませう、併し今日のやうに總ての農産價格を政府の力に依つて統制して居る、そこに不自然のある場合に於て、それを何等かの方法に持つて行つて、是が合理的に──合理的にと言つては語弊がありますが、陳情や其の他では解決の付かない場合に於て、私は農民の之を愬へる方法を農林大臣に聽きたいと思ふのであります、此の間の御意見では、ないやうでありますが、農業と云ふものは企業體と農林大臣は本當に御認めになつて居るかどうかと云ふ問題も併せて承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=115
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116・和田博雄
○和田國務大臣 私は農業は何と云つても企業體だと思つて居ります、農民が供出に付て愬へる時には、供出のやり方其の他の點に付て十分市町村の食糧調整委員會で檢討をして戴けば宜いのでありまして、左樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=116
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117・藥師神岩太郎
○藥師神委員 併し農業其のものが經營體であり、所謂企業體であつたならば、今日のやうに農業と云ふものを放置して、さうして唯一つの枠で強制的に一方的意思に依つてかんぢ搦めに縛り上げてしまふと云ふことは、私は大きな矛盾があると思ひます、肥料を買ふのにさへも資金がない、況や今日の配給肥料では足らない、農耕資材の面に於ても其の通り、闇の物を調達しなければならない、そこに生産資金と云ふものも殆ど出して居られぬと思ひます、是が企業體であるならば、十分に生産資金も與へてやる必要があるのではないか、農村大臣から言へば、自分の子にも等しい所の農民に資金を簡單に融通してやる所の責任がある、さうして企業であるならば、そこに一つの生産利潤と云ふものも十分に認めてやる必要があるのではないか、是は見方の相違に依つて違ふとか違はぬとか云ふ問題ではないのでありまして、今日農業勞働の勞銀が、一體十圓とか二十圓とか──今度の米價六百圓にすれば二十圓とか云ふことが新聞に出て居りましたが、是は今日農業利潤を決定する、或は農産物價を決定する大きな基準であります、「コスト」を計算する基準でありますが、此の二十圓などと云ふものは──組織勞働では、人員が餘れば八時間勞働を七時間にしても要らない人まで養へと言はれて居りますけれども、農業の勞働時間と云ふものは、今日十時間や八時間の勞働でやつて、居るのではないのであります、私は日本の農業にもう少し規律的な生活の出來る、一週一日位は一家團欒して休めるやうな一つの制度を作つてやりたい、それだけの裕りのある農業組織にしたいと云ふ希望を我々は持つて居りますけれども、悲しいことには、今日の状態では是は出來ぬと思ふ、多角經營的農業のことが色々此の間も出ましたけれども、農業は多角經營的にすればするだけ過勞することになります、我々は日本でも有數の生絲の産地の中心に居りまして、養蠶地帶に生れたのでありますが、實際に於て農業が多角經營的になればなる程、農民は過勞するのであります、私は、生産資金の問題も、生産利潤の問題も、さう云ふ問題は全然今日考へられて居ないとは申上げませぬけれども實際に即して居ないと思ふのでありますが、此の點に對して大臣の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=117
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118・和田博雄
○和田國務大臣 農業金融機關としては、農業會或は中金と云つた農民の自治體的な國體が既にある譯であります、政府としましても、各種の色々の事業に付て從來は預金部の資金を低利資金として出して居つたのであります、それは各事業々々に付て御覽を戴くより外ないのであります、それから此の企業利潤の點でありますが、米價を決定致します場合には、當然農業から生ずる企業の利潤と云ふものは生産費の中に計算して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=118
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119・藥師神岩太郎
○藥師神委員 厚生大臣に一つ御伺ひ致します、只今申しました農業勞働の問題でありますが、此の點は非常に大きな問題でありまして、一般の組織勞働の問題に付ては非常に今日問題になつて、厚生大臣も御心配になつて居りますが、農業の方面は實際問題として中中難かしいのであります、是は今の御意見に關聯するのでありますが、農業を企業體と認めて、農業にも相當なる利潤を與へ得ることになれば、不規則な生活のやうではありますけれども、今のやうに朝は暗い中に起きて行つて、晩には月を戴いて年がら年中牛馬のやうに働き通すと云ふやうな非能率的な、過勞に陷る農業方法と云ふものは、もう少し改善出來ると思ふのであります、又今申しました如く、一週に一日位は家族が團欒し得る位な施設は、やらうと思へば此の問題は出來ると思ひますが、是は農村の今の生産利潤の問題と不可分性を持つて居るのであります、唯此の問題に付て厚生大臣の何か御考へがありますか、承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=119
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120・河合良成
○河合國務大臣 利潤の問題も尤もですが、やはり簡易な機械化の問題、農村電化の問題、斯う云ふやうな問題に依つて勞力を成べく「セーヴ」して行くと云ふやうなやり方などが中心問題になりはしないかと思ひます、例へば「トラクター」にしましてもああ云ふ大きなものでなく、一寸簡單に、一人の人が歩いてそれを「リード」して行くやうな「トラクター」なども考へられつつあること、さう云ふやうな面に於て段段文化的、科學的にして行くと云ふ風な所に行く道があると、私は常々考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=120
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121・藥師神岩太郎
○藥師神委員 是は厚生大臣の御答辯では一寸無理かも知れませぬが、さう云ふ「トラクター」とか機械化と云ふ問題は、もつと深刻に研究して居ります、日本の水田經營は大體今言つた通り水を溜めなければならぬ、それには落差があつてはいけない、又肥培管理をする上にも、排水する時にも直ぐ水が排水出來なければ水田經營は出來ない、そこに日本農業の大きな缺陷がある、機械化し得ない一つの困難な問題が濳んで居る、殊に一方畑地に於ては、傾斜地の段々畑が多い、斯う云ふ所に「トラクター」も簡易耕機も持つて行くことは出來ぬのであります、將來科學者も考へて、密柑の摘取りも、蠶を飼ふことも、機械でやれるやうな時代が來れば、それは結構でありますが、日本の農業形態から見る場合に於ては、さう云ふ問題に付ては改善すべき點は、出來るだけ努力を拂はなければならぬことは申上げるまでもありませぬ、けれども今日の農業勞働、或は農民の保健の上から言つて、過勞に失しつつある、又不規律な、非能率的な此の農耕方法の、勞働と云ふものに對して、それは農村の工業化もありませう、或は北海道の如く、十分に機械力を應用し得る所謂中農程度に組織出來る處もありませうが、是までの内地の方面に於てはさう云ふ問題は餘地が殘されて居ないのであります、それだからと云つて、其の實情に即して之を考へて見まする場合に於て、放つて置かれるべき問題でないと私は思ひます、恐らく今日の時代思潮の建前から言つても、組織勞働が九時間になり、八時間になり、七時間になる、賃金の値上もどんどんして、政府當局が頭を捻る位で、官廳の内部に行つてさへ、勞調法に反對する貼紙がまるで廊下にも何處にもべたべた貼つてありますが、農民だけがどんなに抑へられても、どんなにくびられても何處にも、之に反抗する──と言つては語弊があるが、之を愬へる手段がない、私は是が非常に片手落ちな施策の現はれだと思ふのであります、私は今の厚生大臣の御答辯で大體でも分りましたけれども、此の點はどうか農民諸君とも能く御協議を願ひまして、最善の方途を講じて貰ひたい、斯樣に希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=121
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122・葉梨新五郎
○葉梨委員長 藥師神君、時間が大分經過して居りますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=122
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123・藥師神岩太郎
○藥師神委員 もう一寸であります、それではもう一つ茲に挿んで見ますると、金納制と物納制との問題であります、今は金納制になつて居りますが、此の問題は、今度金納制にすると、今までの地主が飯米を獲得する爲に小作地を取戻して作ると云ふ、所謂取戻しの傾向が非常に顯著になつて來て、地主、小作間の葛藤と云ふものが非常に多いと私は思ひます、現に其の傾向は非常に大きな現はれになつて居りますが、是は當事者の意思に依つて、物納も認めて、金納と二本建てで行けば其の間の摩擦葛藤は相當除去されると思ふのであります、それと同時に、是は理窟を申されても、どう云ふ點から批判して見ても、今日米一升七十五錢、一石七十五圓と云ふやうなものは、安定本部が出來やうが、物價局が出來やうが、日本國中の消費者に聽いて見た所で、今日消費者に中間價格、所謂二重價格でさへも四百五圓十位な米を買はさうと云ふ今日の場合に於て、地主だけには七十五圓しか金を拂はないと云ふやうな、こんな馬鹿なことはありませぬ、消費大衆に聽いて御覽なさい、斯う云ふ馬鹿なことはない、是は兎に角今の土地強制取上の葛藤を防ぐ意味から云つても、又小作制度を全然除けてしまはないで之を置くとすれば、此の地主と小作人との協調を保つ上に於ても、私は二本建てが宜いと思ふ、今は小作人でありますけれども、此の農地改革案が本當に成し遂げられて、今の小作人が今度は自作農になつた場合に於て、其の意向を聽いて御覽なさい、恐らく米の上ることの方を希望するでありませう、昨日まで小作人であつて賣る米のなかつた小作人が、一躍自作農になつてここに一町とか二町とか作つて、餘剩は賣れる立場になつた時には、恐らく今日の米の價格では承知しないであらうと私は思ふのであります
最後にもう一つ、今の二本建ての問題と併せて御意見を承りたいと思ひますことは、農業保護政策の問題であります、是は頗る大きな問題でありまして、此の問題だけでも細論致しますれば時間を要する譯でありますが、兎に角是までの農業保護政策は殆ど「トリック」であつたと思ふのであります、農林省の役人と云ふものはどうしてこんなに暇なのかと思ふ位に、細かい點までも補助、助成と云ふものを分散して、さうして時期遲れに──一年程遲れて、豚小屋を建てれば何ぼ補助をやる、堆肥場を作れば何ぼ補助をやる、我々實際第一線で農業の世話をして居る者は、補助はやると云ふのだから貰つても宜いけれども、植ヱる作物はない、土地が足らぬ、桑を拔いた後へ大豆を植ヱれば桑は拔かしてやるとか、實に末端までも農林省で握つてやらなければならないやうな仕組になつて居ります、さうして相當な金を今政府も放出して居る譯でありますけれども、實に細かく割つて、所謂分散的な補助をして居ります、之を農林大臣はどう云ふ風に御考へになつて居るか分りませぬが、私達は此の補助、助成と云ふものが要らないと言ふのではありませぬけれども、補助を貰はなければ鶏舍一棟も建てない、豚小屋一軒も建てない、斯う云ふやうな方向へ持つて行つた爲に、農民に依存心ばかり植付けて其の自主性を失はせたと云ふことは、農林當局の責任だと考へます、先日も本會議であつたと思ひますが、誰かの意見にありましたやうに、本當に農村の更生を願ひ、農民の生活の安定を願ふのであつたならば、本當に親であつたならば、其處へ轉げて居る子供が自分で起きる力のあるものなら之を起さずに、自分の力に依つて或る程度までは起すことが必要ではないか、大きな意味に於て之を保護してやることが必要であります、親として守つてやることが必要であります、今日の農業保護政策は、一面から見れば痒い所へ手の届いたやうにも見えますが、本當に農民を可愛がるのではなくして、農民を去勢して居る、此の間岸本君が本會議で申しましたやうに、五百萬圓や一千萬圓の補助を道府縣にやるのであつたら、内務省から出て居る地方長官に其の金を任せて、其の道府縣の特異性に應じてそれを有效に使はせる、私は是で澤山だと思ふ、府縣知事は市町村長を信じて、それに任かすだけの雅量がなくては本當の農業の保護は出來ませぬ、私は、將來に於ても日本の農業と云ふものは、今日の規模形態から云つて、此の環境を見ます時に於ては近代工業にはどうしても敵はぬと思ふ、大きな意味に於て國家が保護しなければ、農村は二三年を出でずして大恐慌に見舞はれて、地主と云はず、小作人と云はず、昭和の支那事變に至るまでの悲慘なる歴史を繰返すと私は思ふのであります、斯う云ふ點に對して、拔本塞源的な農業保護政策、唯鶏舍に何ぼ、豚小屋に何ぼ、小麥を作れば何ぼと云ふことをせずに、縣なら縣の大きな「ダム」なり、或は河川なり、纒まつた大きな問題に對して補助をして、農民の負擔を輕くしてやる(「同感々々」と呼ぶ者あり)斯う云ふやうな政策は執れぬものか、私は此の食糧問題に付ても、或は農業政策に付ても、餘りに中央集權の弊が深刻に地方に及んで居ると思ふ、或る程度、道府縣のことは大綱だけを政府が握つて、あとは各地方長官が居るのでありますから、其の道府縣の特異性、自主性と云ふものを基本にしてやらなければ、日本の農業の進展は絶對に望まれぬと信じて居るのでありますが、之に對して農林大臣の御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=123
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124・和田博雄
○和田國務大臣 小作料に付て物納制と金納制とを併用致しませぬのは、今御話の最後にありましたやうに、日本の農民を、地主なり國家なりに依存することの出來るだけ少い農民にしたいと私は思ひますので、金納制の方が其の意味からでも宜しいと思ふのであります、御話のやうに、農民が補助金に非常に依存して居つた、而も細かい所まで農林省が補助金を出し過ぎて居つたと云ふことは、一面考へて見ますと、日本の農民にそれだけの力がなかつたとも言へるのでありまして、農民をさう云ふ状態に何時までも置いてをきますことは、今後の日本の農村として喜ぶべきことではありませぬので、其の點を是正致しますると共に、出來るだけ國家がさう云ふ細かい所に補助金を出すのではなくて、あなたの御話にありましたやうに、生産の條件の中で、個々のものには出來ない大きな所に補助金を出して生産力を高めると云ふやうに、農業政策の補助金政策としては持つて行くべきだと云ふことに付ては、私も左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=124
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125・葉梨新五郎
○葉梨委員長 藥師神君、まだ大分長くなりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=125
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126・藥師神岩太郎
○藥師神委員 是で濟みます、それでは私はまだ盡きないのでありますが、今農林大臣は、ああ云ふやうに助成、補助を細分してやらなくては立つて行けないやうな農業と仰しやそたのでありますけれども、私はさう云ふ意味でなくして、ああ云ふやうなやり方は、農民の自主性を失はすのであつて──それは要らないと言ふのではない、額は何倍に多くても宜いが、それをもつと活きた方法で、實際使へるやうな方向に頭を切替へて貰ひたいと云ふ質問であります、それから尚ほ肥料などの問題も先程出ましたが、斯う云ふ問題も中間搾取の機關は是非除いてやるやうに御願ひ致したいと存じます、私は尚ほ澤山質問したいこともありますけれども、又御答辯の氣に入らない點もありますが、之を再質問する時間もありませぬので、此の程度にして私の質問を終りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=126
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127・葉梨新五郎
○葉梨委員長 江川君に御相談致しますが、厚生大臣は何か司令部に關係の用事があるさうでありますから、厚生大臣に對する質疑から先に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=127
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128・江川爲信
○江川委員 厚生大臣御急ぎのやうですから、極く簡單に御尋ね致します、それは農山漁村、殊に僻陬の地に於きましては無醫村がある、或は無醫村ではない、現在診療所のやうなものを設けてあると云ふやうな所でも、非常に不便な爲に殆ど開店休業のやうな状態になつて居る、そこで或は農業會其の他に於て、さう云ふやうな地方に對して病院であるとか、診療所であるとか云ふものを設置しようとする場合に於きましては、其の地方、即ち府縣の醫師會の承認を得ると云ふことが必要條件となつて居るのであります、所が醫師會に於ては、さう云ふものが出來ますることに依つて、自分の商賣と申しますか、さう云ふものに影響すると云ふので、自衞上餘り好まない、さう云ふ所から診療所或は病院等が設けられないと云ふ場合もあるのであります、でありますから、醫師會の承認を求めると云ふ此の機關を、醫師會も加へた民主的な機關を設けまして、さう云ふ機關の承認を求めると云ふやうに改めて貰ひたい、斯う云ふことを御願ひ致したいのでありますが、之に對して如何なる御考へを持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=128
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129・河合良成
○河合國務大臣 只今の御話のやうに致します
〔委員長退席、小川原委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=129
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130・江川爲信
○江川委員 是から主として農林當局に對しまして御尋ねを致したいと存じます、此の法律案は、先程から色々御話の通りに、我が國の農地問題と致しましては洵に劃期的な前進でありまして、農民に取りましては一種の革命であります、それだけに極めて困難な事業であると存ずるのであります、然るに政府に於かれましては、極めて無雜作に、法律さへ整備すれば直ちに實行し得られる如く期待致されて居るやうにも想像されるのであります、巧遲よりも寧ろ拙速を可と致しまして、二百萬町歩の中本年度内に五十萬町歩創設する計畫になつて居ると云ふやうに承つたのでありますが、斯う云ふ重大な事業を何故さう云ふ風に必要以上に御急ぎなさるのであるか、此の法律案に依りますと、賣るにも買ふにも農地委員會に於て作成致しました所の買收計畫竝に賣渡計畫に依るにあらざれば、賣ることも買ふことも出來ない、而も其の計畫案の中には、土地の集團化であるとか、或は交換分合であるとか云ふやうな點も十分考慮に加へることになつて居ります、のみならず地主と小作人間に於ける所の利害關係も固より伴ふものであると存ずるのであります、でありまするから、是は容易に纒まるものではないと思ふ、計畫案を拵へることそれ自體がさう簡單に出來るものでないのではないか、然るに此の際拙速主義で行くと云ふことになりますならば、營農上必要な所の耕地の集團化或は交換分合、斯う云ふやうな村に於ける所の大切な事柄を犧牲にしなければならぬ、さう云ふ點を犧牲に致しましても敢て此の事業を急がなくてはならぬのであるか、又先程申しました通りに、本年度内に於て五十萬町歩創設される豫定であると云ふことは、一地區内に於て此の計畫が完成致さないでも、未完成でありましても、部分的に買上若しくは賣渡と云ふことをされる考へであるか、と申しますのは、一地區の計畫を完成すると云ふことは、先程申しました通りに、是から農地委員の選擧も致し、或は計畫案を作成致しまして、それぞれの手順を運ぶと云ふことになりますと、本年度内に五十町歩と云ふものは中々創設されないと存ずるのでありますが、五十萬町歩創設すると云ふ豫定は、假令一地區内の計畫が未完成でありましても、部分的に買收、賣渡を致される考へであるかどうか、此の點を御伺ひ致したいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=130
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131・和田博雄
○和田國務大臣 此の土地改革は出來るだけ早い機會にやる必要がありますので、之を早くやる計畫でありますが、御話の通り、例へば一町村で全部の計畫が纒まりませぬ場合は、之を第一期と第二期と分けてやつて行く考へでありまして、我々と致しましては、出來るだけ年度内に五十萬町歩やりたい、斯う思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=131
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132・江川爲信
○江川委員 それは部分的にでも全體的でも、さう云ふことは考慮しないで、全部其の村の計畫が完成しなければ買收に著手しないと云ふことであるか、其の點は如何であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=132
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133・和田博雄
○和田國務大臣 それは必ずしも完成しませぬでも、完成した部分から段々やつて行く、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=133
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134・江川爲信
○江川委員 完成した分と申しまするのは、部落が完成すればと云ふ意味でありますか、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=134
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135・和田博雄
○和田國務大臣 それは村に依つて違ひますが、例へば不在地主のものは直ぐ出來るとか、其の他のものに於きましても手取早く出來ると云ふものがありまするから、さう云ふものは著々やる斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=135
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136・江川爲信
○江川委員 不耕作地主の一町歩保有、此の問題に付ては色々論議もあつたのでありまするが、耕作權が殆ど不動のものになつて確立して來る、さうして小作料は一種の制約を受けまして、此の制約下にある所の金納である、そればかりではない、地主は不勞所得者と云ふ名に於て常に攻撃の對象となるのでありまするからして、現在の地主が土地を放すと云ふことに付ては、祖先傳來の耕作でありますから、多少の執著を持つて居ることは免れないでありませうが、將來は恐らく斯う云ふやうな土地に關しましては、さう一町歩の土地位には未練なく──先程申しましたやうな條件の下にある土地位は未練なく投出すものだと想像されるのであります、又小作側と致しましては、一番の不安なことは、土地を取上げられることである、所が耕作權が確立致しますと、土地を取上げられる所の不安がなくなつて來る、でありまするから、案外政府が期待致されて居る程には、土地に對する熱意がなくなつて來るのではないか、斯う云ふことを私は想像致すのであります、是は一體どう云ふ譯かと申しますると、固より其の根本理由は、小作と致しましては耕作權が確立する、地主と致しましては先程申しましたやうなああ云ふ不利益な條件の下にある土地には、何れもが執著を持たない、さう云ふやうな理由があるのでありまするが、更に今一つの理由は、土地の値打が下る、斯う云ふ所に大きな原因が持たれるのではないか、私は斯樣に思ふのであります、此の農民が土地の所有に對する所の魅力を失ふと云ふことは、私は將來に於て洵に恐るべきことであると思ひます、其の土地に對する所の魅力は、土地が生産に密著すると云ふこと以外に、財産として貴い、財産として値打があると云ふ點にあつたのでありまするが、値打が殆ど從前のやうなものでなくして、段々と下落して來ると云ふことになりますると、それだけ魅力も失はれ、愛著心もなくなつて來る、農民が子々孫々其の村に於て農に生き、農に死して來た所以のものは、即ち此の貴い土地を培ひ、若しくは此の貴い土地を自分のものにしようと云ふ所の熱意にあつたことと私は思ふのであります、然るに其の土地の値打が下落して、只今申したやうなことになりますと、農村の前途は洵に憂慮に堪へざることも想像されるのではないか、政府は本案に依つて土地の値打が下落すると云ふことを想像されましたかどうか、私は此の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=136
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137・和田博雄
○和田國務大臣 土地價格の變動は長い將來に亙つては豫測出來ませぬが、日本が將來經濟的に發展して行くことを考へて見ますれば、さう簡單に土地の値段が下つて行くとも考へられないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=137
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138・江川爲信
○江川委員 此の農地改革が問題となつてから、土地の價格は確かに急落に傾いて居ると私は存じます、是は現實であると思ひます、地主はどんどん土地を投げることに努めて居る、小作も亦其の土地を買ふことに向つて熱意を失つて參つて居ると云ふことは事實であります、是は恐らく私が先程申しました點に大きな原因があるのであらうと思ひますが、政府は只今のやうな見解を持つて居られると云ふことでありますから、全く意見の相違であるとしか存ぜられませぬが、意見は相違致しましても、現實は確かに土地は下落致して居ります、同時に農民は土地に對する所の愛著心もそれだけ薄らいで來るのではないか、是は農村の爲には洵に悲しい現實であらうと私は考へます
次に御伺ひ致したいことは、政府に於かれましては、今囘の土地の買收に當りまして、賣る土地は買ふ、賣れない土地は、成べく買はないと云ふ肚があると云ふやうな説も傳はつて居る、賣れない土地は買はない、と云ふと、語弊がありますけれども、努めて手持ちをしないと云ふ方針で臨んで居られると云ふことを承つて居ります、それが事實であるにしろ、ないにしろ、兎に角政府は何れに致しましても、結局は買はれるのであらうと思ひますが、先程も申したやうな理由の下に、恐らく政府の手持ちの土地は非常に殖えて來るだらう、其の場合に於て、政府は農業會其の他の團體に對して、其の土地の經營等を委託されると云ふことを承つて居ります、所が萬一其の土地に付て、小作料だけで、或は用水費であるとか、或は村の經費であるとか、農業保險其の他の地主として支拂ふべき一切の經費が支拂ひ切れないと云ふ場合に於ては、それは國家に於て負擔されるものと存じまするが、此の點はどうであるか、又小作料の納まらない所は誰の責任に屬するのであるか、委託された所の農業會其の他の團體に於て其の責に任ずるのでありますか、私は此の場合に於ても國家が其の責に任ずべきだと思ふのでありますが、此の點に付て政府の見解を伺つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=138
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139・和田博雄
○和田國務大臣 最後まで賣れ殘つた土地を農地委員會等に管理せしめました場合に於て、小作料でそれ等の管理費を賄つて行く譯でありますが、若しも其の管理費が小作料で賄ひ切れないと云ふことになれば、それは結局國家の負擔になると思ひます、同時に管理して居る小作地から小作料を取るのに、小作料が取れない、不作であるとか云ふやうな關係で、どうしても取れないと云ふ時には、仕方に依つては國家の負擔になる、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=139
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140・江川爲信
○江川委員 さう云ふ土地が澤山に出來ると云ふことは、生産の上に非常な大きな影響があると思ひます、何れ生産に熱意のない人々がさう云ふ生産に當ると云ふやうなことも想像しなければならない、さう云ふ場合が多いと思ふ、又さう云ふ頭になつて來はしないか、政府から受けて居る土地である、何も小作料が納まらうと納まるまいと、大して問題でないではないかと云ふやうな頭になりまして、今までのやうな地主、小作の關係程に、色々の責任の感じやうが薄らいで來る結果として、それが勢ひ生産の上に現はれて來るやうなことになりはしないか、さう致しますと、本案は生産の増強にも大いに狙ひを持つて居られるやうでありますが、却て逆な現象になりはしないかと思ふのでありますが、大臣は之に對して如何なる御考へを御持ちでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=140
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141・和田博雄
○和田國務大臣 私は、さう云つたやうな土地は實は餘りないだらう、斯う云ふ想定を致して居りますし、假にそれ等の土地がありましても、必ずしも其の農地委員會などで管理して居る土地が、御話のやうにそんなに生産が下るとは思ひませぬ、それは管理のやり方に依つて、十分生産を上げ得るやうに指導は出來るのでございます、總ての農民がさう云ふ賣れ殘つた土地に對して、惰農になると云ふことを前提にしますることは、私共としては考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=141
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142・江川爲信
○江川委員 私は必ずしもそれを斷定は致して居りませぬ、併し事實の問題としては、さう云ふことになり勝ちであると云ふことは、私斷定致して宜しいと思ひます
次に御伺ひ致したいことは、現在、都市近郊に於きまして宅地となり得る豫定の下に買受ける土地に對しましては、特別の認可を得て高く賣買出來得ることになつて居りますが、將來に於きましてもさう云ふことが認められるかどうかと云ふことを、是は農林大臣に御伺ひすることが當を得て居るかどうか存じませぬが、一寸御尋ねを致して見ます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=142
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143・和田博雄
○和田國務大臣 都市計畫等に依る將來當然宅地になるやうな所で、地方長官が指定して居る所は、第一自作農創定の對象に致しませぬ、唯あなたが仰しやいますやうに、宅地となるやうな所が宅地として賣買されると云ふ時は、特別の許可制度に依つて行く譯でありまして、それは農地として取扱つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=143
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144・江川爲信
○江川委員 大臣の所管外のことだから御呑込みにくいかも存じませぬが、事實の問題として申上げるのであります、先日來の委員會に於きまして、恐らく地主は良い土地ばかりを持ちまして、惡い土地を賣るだらう、さう云ふことを非常に問題にして居つた方もありますが、都市近郊の、主に畑地でありまするが、其の宅地となり得る可能性のある所は、現在は耕地でありましても、宅地にすると云ふ一つの條件の下に、相當高い價格を以て、認可さへあれば賣買し得ることになつて居るのであります、さう致しますと、現在乘率四十八倍を以て假に小作人に賣ります、乘率四十八倍のそれは、或は坪當り三圓に當るか、二圓に當るかでありまするが、若しそれを宅地として先程申上げたやうな認可を得て賣買する時には、三十圓、四十圓で賣渡すことが出來る現在の状態であります、さう致しますると、是は中々大きな利害問題でありまするから、一寸御尋ねを致したのでありまするが、同時に非常な矛盾した結果にも相成るのであります、二圓、三圓で買つた畑地が、宅地とする條件の下に賣渡すことに依つて、將來三十圓、四十圓に賣却し得ると云ふことになりますると、是は非常に大きな問題でありまするから、御尋ねを致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=144
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145・和田博雄
○和田國務大臣 農地として一應買つて、而もそれを將來宅地として賣ると云ふことは、簡單には出來ないのであります、農地として自作農の創定をしました土地の處分に付ては、一々政府の認可を得る譯でありますので、さう云ふことは簡單には許されないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=145
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146・江川爲信
○江川委員 簡單には賣れないでせうけれども、現在色々な認可制度と云ふものには、さう云ふことが行はれて居ります、此の法律案の裏には斯樣なこともあると云ふことを私は申上げたに過ぎない
其の次に申上げたいことは、今囘の改革案は、單に所有權の移動に過ぎないと私は思ひます、耕作の實體から申しますと、何等變らない、依然として二段歩、三段歩の過小農があり、其の反面に於きましては三町歩、四町歩、更に五町歩以上の大農があると云ふやうな譯で、何等變りないのであります、でありまするから、此の改革案に依つて農民が經營上の安定を得ると云ふことは、到底望むことは出來ない、耕作權が今後に於きまして此のやうに確立すると云ふことになりますると、今後の農村問題と致しましては、斯う云ふ土地の所有權と云ふやうな問題は、寧ろ從であつて、主ではなからう、主たる所の農村問題は、寧ろ耕作面積ではなからうか、斯う云ふことを思ふのであります、でありまするから政府に於きましては、土地所有權の最高を制限すると云ふことよりも、寧ろ經營面積の最低を確保する、斯う云ふ點に改革を加へることが必要ではなかつたか、私は此の案を見ますると、政府は時勢後れの種を播いて居るやうな感じが致すのであります、それとも此の土地所有權問題以外に、別に只今申しましたやうな耕作權の問題を御考へであるかどうか、此の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=146
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147・和田博雄
○和田國務大臣 經營面積の點に付きましては、屡屡御答へ致しましたやうに、原則としては何等制限を致して居りませぬ、過小な經營面積の農家に付きましては、協同組合其の他に依つて經營上の改善をして行きたい、斯う云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=147
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148・江川爲信
○江川委員 過小農に付きましては經營上に付て別に十分考へて行きたい、斯う云ふやうな御話であります、其の點に付きましては、或は多角型農業であるとか、或は農村の工業化とか、技術の滲透であるとか云ふことは私屡屡伺つたのであります、又救濟施設と致しましては、農業保險制度の問題に付ても承つて居りまするので、私は此の點は成べく重複を避けまして、二、三觸れて見たいと存ずるのであります
農村の工業化は、其の地方、寧ろ其の村の實情であるとか特質であるとか云ふ點にまで入らなければ、到底適切な工業化と云ふことは出來ないのでありまするから、是は甚だ難かしい、是も各委員から屡屡論及されたのでありまするが、今や農村に於きましては恐慌の嵐が眞近に迫つて居ると傳へられて居るのであります、さう致しまするならば、之に對處する所の途、即ち今日の食糧重點主義の農業方針に對しまして何等かの示唆を與へると云ふことが必要ではないか、今日山であるとか海岸であるとか云ふやうな所は、殊ど桑を取つてしまして芋畑になつて居る、斯う云ふ地方は政府に於て速かに桑園化して養蠶化すると云ふ途、是は説くばかりではない、之を直ちに政府の施策の上に極めて強力に現はして行くと云ふ途を講ずる必要がないか、口の先では、或は議會を通しては、色々議論は承つて居りまするが、強方な施策としてまだ地方の方へは下つて參りませぬ、之を一つやつて戴きたい、或は有畜農業に對しましても、今後開墾される所の開拓村に對しましては、或は養蠶を主とし、或は有畜農業を從とすると云ふやうなことに方針を明かに示して、次代の農村をそこに作つて行く、斯う云ふことを事實の上に示して行かれるやうに努めて戴くと云ふことは、極めて大切なことではなからうかと私は存ずるのであります
又、是も問題になつたのでありまするが、技術滲透の問題に致しましても、農林大臣と致しましては指導農場に非常に力瘤を入れて居られます、さうして非常に大きな期待を持つて居られるのでありまするが、あれ程力瘤を入れて居られる所の指導農場に對しまして、中央の方が一度でも地方の實情を見に來られましたか、誰一人として地方の實情を見に來られた人はないではないか、少くとも私の縣には誰も見えませぬ、又隣縣を尋ねましても誰も見えませぬ、實情を知らないで適切なる施設が出來る道理がない、適切な豫算を作れる道理がない、あのやうに雀の涙程の助成金を出されましても、今や地方に於きましては是が一つの大きな癌となつて居る、牛一頭に付て五百圓──今日は念入りの張子の牛でも五百圓はする、斯う云ふ時代に斯う云ふ豫算を拵へて、さうして政府は指導農場に期待して居ると言はれるが、此處がお互ひに意見を鬪はす所で濟むならそれで宜しい、併しながらそれが直ちに國家の政策となつて現はれて行かなければならぬのでありますから、今少しく實際に合つた施設をして戴かなければならぬと思ひまするが、指導農場と云ふものは全く其の實が擧らない、又當局も今日までは全く熱意が失はれて居ります、私は極めて狙ひは宜いと思ひます、狙ひは宜いのでありまするから、斯う云ふ仕事は地方にやらすよりも、寧ろ國營としてやるべきものではないか、之を國營としてやられる所の御考へがないかどうか
又農業保險も問題になりましたが、農業保險に付ては擴大強化をすると云ふことだけは伺ふことが出來ました、併しながらそれ以上は一歩も進んで居りませぬ、そこで先づ農業保險に付ての性格を伺ひたいと思ひます、性格は依然として今日のやうな性格のものであるか、又一種の補償的性格の下に、國營的な性格の下に、現在よりも遙かに前進した所の農業保險であるかどうか、今一つは、保險の對象は、現在では自然の不可抗力と云ふことに限られて居るのでありますが、自然現象に原因を發する所の病蟲害等も其の對象の中に加へられるかどうか、斯う云ふやうな點も實は伺ひたい、其の他保險問題に付ては十分に御伺ひを致したいのでありますが、或は此の問題は多少差障りのある筋合があるのではないかと思ふので、差障りのあるものを無理に御聽きして追究しましても、現在としては無理でありますが、大臣の私見でも宜しいから、一つ御答辯が願ひたいと存ずるのであります、先づ是だけの點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=148
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149・和田博雄
○和田國務大臣 御話の技術滲透の豫算が足りませぬことは、あの豫算を組みました時と只今と、僅かの間ではありますが、非常に情勢が變つて居りますので、此の點に付きましては、之を増額して行かうと思つて具體案を作つて居る次第であります、それから、各府縣には廻りませぬが、是は農産課長以下係官が總て地方へ出まして、各「ブロック」毎に十分相談を致したのであります、併し尚ほ今後十分地方を見させると云ふことに付きましては、私等の方に於きましても是非一層の努力を致したいと思ひます
それから農業保險の點でありますが、是は何も差障りがある譯ではございませぬ、農業保險に付きましては、私は、農地改革をやると同時に非常に必要な施設と思ひまして、農業保險協會等とも一緒になりまして、或る程度の具體案は出來て居るのであります、併し是は御話のやうな、從來の保險事故と云ふ考へよりも、寧ろ共濟と云ふ風な考へに變へて行きたいと思ふのであります、建前は何處までも農業の再生産を確保する、斯う云ふ意味で行きたいと考へて居ります、隨て保險事故等に付ても、單なる從來のやうなものでなしに、今少し廣く取入れて行く、例へば病蟲害なども當然問題になる譯であります、唯斯樣なことに致しますと、相當の國費を要する譯であります、財政的の負擔が相當多くなる譯であります、それで、それ等のものに付て、一體どの程度に農民と國家との間の負擔區分をしたり、どの程度の範圍に共濟方法を決めたら宜いかと云ふやうな點に付きましては、只今のやうな非常な「インフレ」の時期に於きましては、もう少しく愼重を期したが宜いと思ひまして、案を練つて居る譯でありますが、一應の具體案と云ふものは出來て居るのであります
〔小川原委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=149
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150・江川爲信
○江川委員 先程北君から、小作人に對しましては百億圓も出したが宜からうと云ふ御話がありましたが、私は此の保險に付ては、五億圓や十億圓、或は五億、十億で足らなかつたら、二十億、三十億位出しても宜いのではないか、さうして是は今日の此の土地改革と本當に密著した所の大切な問題でありますから、うんと一つ力を入れて戴きたいと存ずるのでありますが、同時に農民をして是れ以上負擔の過重に陷らしめないやうにと云ふことを御願ひ致したいのであります
次に御伺ひ致したいことは、肥料の分配が公平に行つて居るかどうかと云ふことであります、私は肥料の分配が公平に行つて居ないのではないかと思ふ、具體的に申しますと、肥料工場を持つて居る地元の縣に對しては厚く、肥料工場を持たない縣に對しては薄いと云ふ事實がある、さう云をことは洵に殘念なことでありまして、是は現實に私が體驗して居るのでありますから嘘ではありませぬ、さうしますと、是は農民の供出意欲に非常に影響を及ぼして來る、あの縣ではあれだけの肥料を貰つて居る、然るに自分の縣では是だけしか貰はないと云ふので、非常に供出に影響致しまするに依つて、是は甚だ宜くないと存じます、併しながら事情已むを得ないとするならば、肥料工場の設置なき府縣に對しましては、どうか肥料工場を設置するやうに一つ御進めを願ひたいと思ふのであります、此の點伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=150
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151・和田博雄
○和田國務大臣 肥料の分配に付きましては、極力公平を期することに致して居るのでありまして、それ等の點に付て色々の問題がありますれば、我々としては出來るだけ改めまして、肥料の配給に付きましては何處までも公平にやりたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=151
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152・江川爲信
○江川委員 段々時間も遲くなりましたので、之を最後として申上げます、先程申しましたやうに、政府は、法律さへ整備すればどう云ふことでも容易く出來ると云ふやうな考へを持つて居られるのではないか、それよりも、法律案を作成する前に詳かに人情を能く察する、斯う云ふことが非常に大切なことであると思ふ、それで農村と致しまして或は地方と致しまして例を申上げまするならば、僅かばかりの新しい衣料を配給して貰ふよりも、寧ろ襤褸を繕ふに足る所の木綿糸を十分に配給して貰ふ、斯う云ふことを一般に熱望致して居る、是は即ち地方の本當の聲であります、今日農村に於きましては一臺の荷車を買ふに六千圓、七千圓の金を要して居る、或は籾摺機一臺買ふには、五千圓以下では買ふことが出來ない、斯う云ふ實情でありまして、何故に農村に闇があるか、此の實體を掴んで戴くこと、それが即ち政治であると思ふ、農民は今日濁酒を作つて飲んで居る、農民全體がさう云ふことをやつて居る譯ではありませぬが、さう云ふやうな農村の實情であります、是は宜くないことでありますが、斯う云ふ傾向は現在の状態では殖えて行くのではないかと想像されます、併しながら此のやうに勞働時間を超越した過激な重勞働をやる農民が、一杯の濁酒で其の日の勞苦を癒やすと云ふことは、即ち察してやらなくてはならぬと思ひます、私は政治は思ひやりが一番大切であると思ふ、思ひやりのない政治は、實體を掴んだ政治ではない、此の法律案は、果して農村の實體を掴んだ法律案であるかどうか、思ひやりのある法律案であるかどうかと云ふ點に付ても、能く御研究になつた上で御提案に相成つたのであるかどうか、さう云ふ點に付て御尋ねすることは、寧ろ野暮の沙汰である、それに付ては私は答辯は求めませぬが、善き政治をやつて戴く上に於て、本當に農村の實體を掴んで、思ひやりのある政治をやつて戴きたいと云ふことを切望する次第であります、同時に先般税制の委員會に於きまして、只今申しました濁酒の問題で、若し農林當局が承認するならば、供出を完納致した村に對しましては或る制限の下に之を許しても宜からうと云ふ答辯であつたのであります、勿論他國から食糧の救援を仰いで居る今日、完納致したからと云つて別の方面に食糧を使ふと云ふことに付ては、多少考へなければなりませぬけれども、現在濁酒に米が潰されて居る此の現實、さうしてそれは寧ろ減るよりも殖えて行くと云ふ状態でありまするに依つて、此の農村に多少なりとも「アルコール」を供與することに依つて、農村民の明日の活動が一層促進されると云ふことに考慮せられるならば、之に對して當局は好意ある所の取扱をされるかどうか、又先程申しました木綿絲の問題、其の他農村の實情に付ての御考へを最後の問題として承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=152
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153・和田博雄
○和田國務大臣 農村の實情に付きましては、我々と致しましても、凡ゆる方面から出來るだけ實情に應じまするやうに致して居るのでありますが、今後と雖も、地方へ出ます折、又地方の皆樣方の色々の御話を聽くなり致しまして、よくよく實情を把握するやうに努めたいと存じて居ります、尚ほ濁酒の問題は食糧事情の關係もありますので、十分研究致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=153
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154・葉梨新五郎
○葉梨委員長 此の際御諮り致します、菊池豐君より甘藷の供出に付きまして、極く簡單に緊急質問を致したいと云ふ要求があります、之を許可するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=154
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155・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは菊池君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=155
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156・菊池豐
○菊池(豐)委員 自席から申上げます、供出が最盛期に入りました藷の買受操作のことに付きまして、當局の重大な注意を喚起したいと思ひます、私は茨城縣でありますが、茨城、千葉等に於ける實情から簡單に御報告申上げます、甘藷の早期供出は、物と心との奬勵が非常に行き届きまして、相當澤山の物が出過ぎまして、現在茨域縣下竝に栃木縣下の一部に於きましては、甘藷の洪水が氾濫して、何と申しませうか、今正に官僚の統制把握能力の喪失をすら思はせる状態に立至つて居ると私は存じ上げる一人であります、どう云ふ風になつて居るかと申上げますと、生産者が藷を掘つて持つて參りましても、營團は之を引受けませぬ、勞力の管理上非常に生産者は困つてしまひまして、隨處に小さな爭ひを起して居ります、さうして此の爭ひが警察官の手に依つて具申されました實例も少くないのであります、營團の倉庫の中は丁度天井まで藷が行届いてしまひまして、其の下積みの藷は今正に燒酎を作るやうな臭ひが燃え上つて居るのです、一方私共の家庭には、今年の十二月或は來年の一月までの甘藷の配給が行はれて居ります是は遲配とか缺配とかの中に御住ひになつて居る當局の殆ど御想像も付かぬ程だらうと思ひます、私の方は超過配給で困つてしまひまして、辛うじて部屋借りをして住んで居りまするやうな疎開者或は戰災者の人達でなく、若手の藷を作つて居ります人達は、其の配給を拒絶して居ります、配給を斷つて居りまする部面が少くないと思ひます、是等は、拒絶致しましても致しませぬでも、軈て食込みを補填せねばならぬことになるだらうと思ひます、是が相當由々しい問題にならなければ宜いがと、私共は惧れて居ります、委員長の出身地である茨域縣稻敷郡竝に常磐線の一帶、房總線の一帶等は藷が黒山になつて居ります、本當に困つたことだと思ひます、是は一面今年は甘藷の早期供出の奬勵金が相當出たせいではりあますが、さうでなくても毎年の出來事なのです、麥の季節になると、麥ばかりの配給です、藷の季節になれば、生産地方の消費層は藷ばかり食つて居ります、其の爲とも申せませぬが、相當消化不良を來しまして、少くない傳染病も茨城縣などには發生して居りますが、其の若干の原因は之にあるのではないかと思つて居ります、現在切干とか煮干とかにして、之を保存することに非常に苦勞して居りますが、こんな状態が續いて參りますと、結局是は一方に於て闇屋の存在を承認する形となり、それと共に一面に於ては、表面は平等であり、公平な配給に違ひありませぬが、飢餓線上を缺配、遲配に依つて彷徨して居ります人達があると同時に、貪婪なる飽食を奬勵して居ると云つたやうな、識者の非難も亦免れぬではないかと思ふ、どんな風に之をなさる御積りか、當局の御所信を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=156
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157・和田博雄
○和田國務大臣 それは一つ茨城等の事情を能く調べまして、具體的の策を講じます、縣の報告を出させるとか何とか至急に致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=157
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158・菊池豐
○菊池(豐)委員 さう御願ひ致します、重ねて御注意申上げて置くことは、此の十五日までが早期供出の奬勵金が入つた期限なのであります、隨て委員長の實家のあります稻敷郡や土浦地方に於きましては捕まり役、賣込役、所謂薩摩藷の挺身隊が組織されて居ると云ふ所すらもあるのであります、それは警察の前をわざわざ藷を脊負つて行くのです、供出にしますと一貫匁八圓になつて居ります、是が捕まつて買受團體に蔬菜として渡される時には十二圓五十錢なのです、十五日前にはそれでわざわざ警察の前、或は停車場へ大荷物を脊負つて捕まつて居ると云ふものもある(笑聲)其の一方一貰匁や二貫匁を脊負つて東京へ來ようとする者をどんどん停車場で捕まへて居る、私はそこに考へさせられる面があるのではないかと思ふのです、配給と操作の面に於て特に格別の御關心を喚起して戴きたいと御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=158
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159・小川原政信
○小川原委員 それに關聯して、一寸北海道の事情を申上げます、二、三日前に北海道から上京して來た者に實情を聽きますと、今「デント・コーン」の種を配給して食べさせて居ります、之には殆ど困つて居る、是は馬も食べられない固いものである、一方馬鈴薯は非常に作柄が良しい、今年の馬鈴薯は農林省は八億位に押へて居るやうでありますけれども、我々の實際見る所では、十億以上の馬鈴薯があると云ふ腰溜をやつて居ります、さう致しますと、さう云ふ「デント・コーン」を食べさせるよりも、此の馬鈴薯を食べさせたらどうかと思ふのであります、今非常に薯があるのでありますから、それを一つ御調査になりまして、至急おやりにならないと、此の前のやうに馬鈴薯を積ませて、すつかりそれを腐らしてしまふ、さうして腐つた馬鈴薯の調理法と云ふやうな講習會を御開きになつた(笑聲)實に馬鹿々々しい問題があるのであります、それでは折角の増産も何にもならぬのでありますから、一つ此の點に付きまして農林大臣の御考へを御尋ね致しまして、近い内に長官が上京する筈でありますから、長官と御相談下さいまして、至急緩和されるやうに御願ひ致したいと思ふのであります、農林大臣如何に御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=159
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160・和田博雄
○和田國務大臣 地方廳でやり得ることが多分にあるのでありまして、地方長官と能く相談してやりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=160
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161・江川爲信
○江川委員 先程申しましたことで、私は濁酒の認可を得たいと云ふのではなく、完納した村に對しましては、將來濁酒の釀造を許して貰ひたい、斯う云ふのでありますから、此の點先程申しましたことは一寸記憶がありませぬが、其の點を此のやうに訂正をして戴きたいと存じます、又大臣の方でも此の點に付ては考慮をして戴くやうに御願ひを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=161
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162・葉梨新五郎
○葉梨委員長 大澤君に御相談致しますが、五時までやらうかと云ふ、先程のお互ひの御相談でありましたが、如何でございますか、農林大臣に對する御質疑だけでもおやりになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=162
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163・大澤喜代一
○大澤委員 大臣も御疲れのやうですから、明朝ゆつくりやることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=163
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164・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは本日は此の程度に致しまして、明日は午前十時より此の委員室に於て開會致したいと存じます、本日は是にて散會致します
午後四時三十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00619460919&spkNum=164
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