1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年九月二十三日(月曜日)午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 葉梨新五郎君
理事 小川原政信君 理事 上林山榮吉君
理事 山口光一郎君 理事 細野三千雄君
理事 富吉榮二君 理事 藤本虎喜君
磯崎貞序君 古賀太郎君
田邊讓君 三浦寅之助君
松浦薫君 山口好一君
青木清左ヱ門君 江川爲信君
小笹耕作君 太田秋之助君
寺島隆太郎君 佐伯忠義君
吉澤仁太郎君 井伊誠一君
大澤喜代一君 高倉輝君
堂森芳夫君 平野市太郎君
棚橋小虎君 麻生正藏君
北政清君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
厚生大臣 河合良成君
運輸大臣 平塚常次郎君
出席政府委員
司法事務官 奧野健一君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生參與官 佐藤久雄君
農林事務官 三堀參郎君
農林事務官 笹山茂太郎君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
委員長の許可を得た出席者
内務事務官 八島三郎君
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本日の會議に付した議案
自作農創設特別措置法案(政府提出)
農地調整法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=0
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001・葉梨新五郎
○葉梨委員長 是より會議を開きます、前會に引續き質疑を續行致します──三浦寅之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=1
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002・三浦寅之助
○三浦委員 第一に私は配給の問題に付きまして、政府に於きましては、此の際思ひ切つて此の十一月頃からなり三合配給すると云ふ所の、斷乎たる英斷を望みたいのでありますが、此の點に對する御意見を御伺ひしたいのであります、本年の收穫の豫想は新聞等に於ても色々發表して居ります、勿論實際の此の豐作に依る收穫量は、其の調査に依つて幾分相違はあるやうでありますが、今年は例年にない所の大豐作であると云ふことは事實であります、又甘藷の大收穫もあるのでありますし、のみならず人間が實際生活する場合に於て、どうした所で三合の食糧がなければ明日の活動は出來ないのであります、現在までに色々な國内の食糧事情に依つて、配給は二合一勺或は缺配までになつて居るのでありますけれども、實際に於ては、其の結果闇が横行し、闇に依つて生活して居ると云ふことは事實であります、現在配給だけに依つて生活出來得ないと云ふことが明らかでありまする以上、闇に依つて生活をすることも已むを得ないのであります、併しながら現在法規の建前から云ふならば、闇に依つて主食を買つた場合に於ては直ちに處罰される、例へば米にしても五升でも一斗でも闇で買つたと云ふことになれば、現在に於きましては、占領目的に反すると云ふやうな嚴重な處分もあつて、是が直ちに起訴されなければならないと云ふ現状にあると云ふことならば、其の結果を考へて見ますると、國民生活の不安と云ふものは免れ得ないのであります、國民生活の不安が惹いては官民離間ともなり、政府を信頼しない所の結果ともなると云ふことは已むを得ないのであります、政府に信頼しない所の政治では、斷じて眞の政治が行はれて居ないことは明らかでありまして、私は斯う云ふ際に於て三合配給することは、先づ明朗なる所の生活をせしむると同時に、闇を撲滅せしむる所の結果になると思ふのであります、勿論食糧事情から云つて、殊に日本の食糧事情が輸入を仰がなければならないと云ふ建前に於てあることは、是は申すまでもありませぬし、又假令本年が豐作でありましても、明年度の食糧事情に於て聯合軍の諒解の下に輸入を仰がなければならぬと云ふことも當然だと思ふのであります、併しながら私は此の輸入の問題も、今日日本があの帝國憲法の審議を了して、戰爭を抛棄致しまして、殊に侵略國家たる所の印象疑惑を一掃致しまして、從來の軍閥は退陣し、官僚もやはり退陣して、立派なる民主主義的の政治が行はれると云ふ所の此の情勢下に於ては、十分に國際的の信用も囘復することが出來得ることと思ひまするし、又國際的の信用が囘復するならば、十分に聯合國の理解を得ることが出來ると思ふのでありまして、さう云ふやうな聯合國の十分なる諒解も出來得るならば、私は三合配給と云ふことは當然だと思ふのであります、理窟を言ふと長くなりますから餘り言ひませぬけれども、完全な食糧生活の保障なくして犯罪を罰すると云ふことは、孟子が鳥網を張つて鳥を捕ふるものであると云ふやうなことを言つて居つたことを、昔讀んだことがありまするけれども、今日國民生活の最低の保障なくして嚴重に處分すると云ふことは、其の結果は却て眞の日本の平和文化國家の基礎を破壞するものであると云ふことを考へました際に於きまして、私は三合配給の斷行を政府に要望するものでありまするが、此の點に對する農林大臣の御意嚮を承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 新食糧年度からの増配に付きましては、出來るだけ努力を致し、又やる積りでありまするが、數字の點に付きましては、屡屡申述べましたやうに申上げることは出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=3
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004・三浦寅之助
○三浦委員 屡屡御話のあつたことは分つて居りますが、其の數字を申すことの出來ない事情を、若し差支へなかつたならば、御話し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=4
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005・和田博雄
○和田國務大臣 是は豫算總會に於て井上さんの御質問に對して御答へ致した通りであります、速記録を以て御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=5
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006・三浦寅之助
○三浦委員 それから地主の問題でありますが、私は決して地主を擁護するものでも何でもありませぬ、唯從來の論議を聽いて居りますと、地主が如何にも惡徳の如く、或は一切の地主に對し非難攻撃があるやうでありますけれども、私は地主中に於ても、地方的に農村の爲に働いて居る立派な地主もあると思ひます、殊に地主層に於ても、現在働くことの出來得ない遺族の地主もありまするし、或は年を取つて働けない所の地主もあります、さう云ふやうな地主の人々が一町歩の保有に依つて金納の小作料となり、或は不在地主の場合に於ては全然此の土地がなくなるのでありますが、さう云ふ氣の毒な地主に對する何等かの救濟、と言つて語弊があるならば、さう云ふ氣の毒なる地主に對する特別の何かの御考へがありましたならば、此の際承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=6
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007・和田博雄
○和田國務大臣 色々の地主さんの中にはさう云ふ氣の毒な方もあると思ふのでありますが、それは一面から言ひますと、或る程度の負擔を御忍びを願ふと云ふことでありますが、さう云ふ人達に對しましては、やはり土地の代金其の他囘收します資金の利用方法でありますとか、或は村々に於きまして實際上其處の組合なり何なりに依つてそれぞれの方の更生の途を別途に考へて行くとか、さう云つたやうなことを結局やることになるだらう、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=7
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008・三浦寅之助
○三浦委員 それから小作の問題でありますが、私は第一次改革當時に於ける小作料と云ふもの、又小作人と云ふものが永久不變だとは考へられないのであります、小作人には此の法規の建前に於て相當の耕作權も認められて居りますが、此の小作人も二年經ち、三年、五年、十年經つ中には、色々な家庭の條件に依つて小作の出來得ないやうな場合も生ずるだらうと思ひまするし、又法規に依つて耕作權が確立して居りまする關係から見るならば、一種の小作權利も發生致します、斯う云ふことを考へて見ますと、殊に色々な農村の人口の過剩、或は失業等も關係があり、或は小作を希望すると云ふやうな人も出るのでありますが、一方に於ては耕作を繼續出來ない、一方に於ては小作を希望すると云ふやうな場合に於ては、茲に一種の小作の權利とか云ふやうなものが發生するやうにも考へるのでありますが、さう云ふやうに、小作人が小作を繼續することの出來得ないと云ふやうな事情に立つた場合に於て、其の耕作權を第三者に讓渡し得るかどうか、即ち此の耕作權と云ふものの讓渡を認めるかどうか、或は其の際に於ては地主の承諾が必要であるかどうか、斯う云ふやうな耕作權の讓渡に對する所の處置を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=8
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009・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、又小作關係は、小作整理の上から言つて出來るだけ避けなければならないのでありまして、小作人が地主の知らない内にどんどん貸して行つて、そこに又小作が出來て來ると云ふこと、謂はば中間の地主が澤山出來て來ると云ふことは出來るだけ避くべきことでありまして、將來の問題としては、耕作權が確立して、そこに小作權が出て來ますれば、それは組合なり何なりに依つて共同に管理しまして、さう云つた又小作の發生は適當に之を管理して行く必要があらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=9
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010・三浦寅之助
○三浦委員 實は私は漁業關係のことは餘り分らないのですが、個人が漁業權を持つて居る場合、其の漁業權を借受けて漁業に從事して居る、所が其の漁業權を持つて居る人が他にそれを賣却して、さうして新しく漁業權を持つやうになつた人が、從來其の漁業權を借りて使つて居つた人からそれを取上げることが出來るかどうか、若しさう云ふ場合、其の漁業に從事して居る人が、漁業權者の變更に依つて漁業が出來なくなると云ふことであると、實際の漁業の生産に對し非常に大きな影響を來す、斯う云ふ例は澤山あるさうですが、斯う云ふ際に於ける漁業權の賃借者を保護することに付ての御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=10
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011・和田博雄
○和田國務大臣 私只今漁業法上其の點がどうなつて居るか知りませぬが、農地の方は地主が變つても、現に占有して居る小作權が保護されることになつて居るので、其の點は若しもさう云ふ弊害がありますれば何とか考へたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=11
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012・三浦寅之助
○三浦委員 それから農業の生産力を發展せしめて、農村に於ける民主的傾向を促進すると云ふ此の主眼から考へて見るならば、其の根本を考へて見ますと、是は農民を保護すると云ふことも勿論基礎であり、或は自作農の創設も勿論其の基礎になるのでありますが、其の半面に於て從來農民を輕蔑する思想が非常に多いのであります、殊に又一方に於ては都會人或は農業に從事しない人が、農民を非常に輕蔑する、甚だしきに至つては、私共子供の時代によく聞いた言葉に、百姓野郎と云ふやうな一つの輕蔑された言葉を屡屡聞いたのであります、所が又農民自身から申しますと、農業に從事して居ながら自ら農業に對する誇りを持たず、百姓は詰らないものだと云ふやうな考へを持つて居る農民か非常に多いのであります、私は根本的に斯う云ふ思想を一掃するにあらざれば、眞の農民の民主化は出來得ないと考へて居ります、私の子供の項に聞いた話で記憶に殘つて居るのでありますが、私の村に非常な篤農家があつて、子供が四人ばかりあつた、其の人が、自分の財産、土地をどんなに使つても宜いから、子供の中の一人でも洋服を著た生活をせしめたいと云ふのが私の一生の念願であると云ふことを申して居つたと云ふのであります、私は斯う云ふやうな考へを一掃して、寧ろ農業こそ眞の國の大本であり、農業の發展こそ國家の生成發展の基礎であると云ふ此の誇りと思想を徹底せしめてこそ、所謂よく言はれて居る所の官尊民卑の弊風なども之を一掃することが出來ると思ふ、立てる農夫は坐せる紳士より尊しと云ふやうなことを私は農業の本で讀んだことがあるが、斯う云ふやうな思想を徹底せしめることが私は根本的に必要だと考へるのでありますが、此の點に關する農林大臣の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=12
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013・和田博雄
○和田國務大臣 全く同感であります、職業に依つて區別することなく、それぞれの人格が尊重され、又自分でもそれだけの自信を持つて行くことが民主主義の徹底でありますので、私は御意見は全く同感に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=13
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014・三浦寅之助
○三浦委員 自作農を創設した場合に於ける農地の權利の移轉、設定其の他に付ての制限でありますが、唯問題は、自作農が自己の經營が出來なくなつた場合に於て、金貸から金を借りるとか、或は肥料代を支拂ふことが出來なくなつたと云ふやうな場合に於て、金を借りて肥料を買つたが、凶作或は農産物價の下落等に依つて金を拂ふことが出來ないと云ふやうなことが生じた場合に、金を貸した者が其の農地に對して所謂強制執行をすることが出來るかどうか、之を禁止する所の根據がないやうでありますが、若し強制執行をすることに依つて、事實上に於て競賣に依つて農地の所有者の變動が出來るとも考へるのでありますが、此の強制執行に對する處置をどう云ふ工合に御考へになつて居るか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=14
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015・和田博雄
○和田國務大臣 それは第一擔保に入れるのには既に地方長官の許可を要することになつて居ります、それから強制執行をやります場合に於ても、それを誰に落すかと云ふことに付ても、やはり地方長官が許可なり認可なりをして、さう云ふことを抑へて行くことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=15
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016・三浦寅之助
○三浦委員 それは一寸、農林大臣大丈夫ですか、強制執行の場合に於て、地方長官は恐らく干渉出來ないのではないかと思ふ、法的の根據があれば別ですが、私一寸調べて見たが、法的根據は見當らない、禁止しなければいけないと云ふ趣旨は分るけれども、根據が分らないから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=16
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017・和田博雄
○和田國務大臣 自作農を創定された農地、其のものに付ての處分は、全然地方長官の許可がなければ出來ないことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=17
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018・三浦寅之助
○三浦委員 普通は出來ないが、強制競賣まで止められるか、止められれば宜いが、御調べ願つて後でも…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=18
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019・葉梨新五郎
○葉梨委員長 政府に於て後刻研究の結果御答辯申上げるとのことであります、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=19
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020・三浦寅之助
○三浦委員 是もはつきりさせて置いた方が宜いと思ふのでありますが、今度は農地法の第二次改革であります、既に第一次改革の、法律が御承知の通り昨年の十二月二十八日の法律第六十四號、勅令が二十一年十一月二十五日、さうして四月一日からと、或は大部分が二月一日から施行になつた譯であります、さうして此の第一次の議會を通過した法案が實施された譯でありますが、實際に於て第一次の法案の中に色々不備な點もあり、是は關係方面との色々な事情もあることは推察致しますけれども、其の法律が實際に於て實施されて居らなかつた部分が非常に多い、例へば實例を擧げれば、農地委員の選擧も當然改正されることを豫想してのことと思ふのでありますが、苟くも法律が出來て施行されて居るのでありますが、若しそれを實施しないとするならば其のしない理由を國民の前にはつきり分るやうにさせて置かないと、今後の法律の運用の問題に於て疑問を生ずると思ふのでありますが、其の理由を此の際に於てはつきりさせて貰つて置いた方が宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=20
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021・和田博雄
○和田國務大臣 一寸速記を止めて貰つた方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=21
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022・葉梨新五郎
○葉梨委員長 一寸速記を止めて…
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=22
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023・葉梨新五郎
○葉梨委員長 速記を始めて…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=23
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024・三浦寅之助
○三浦委員 農林大臣の氣持は能く分るのでありますが、唯其のことを國民にはつきりしないと云ふと、實際に於て政府が獨斷的に折角實施された法律を實施しないのだと云ふことになると、何だか議會を輕視したやうな感じを抱かれるか、或は法律其のものを無視したやうな感じも抱けば抱かれるやうな氣がするのでさう云ふ點に觸れた譯であります
それから是は私申上げにくいのでありますけれども、此の機會に農林大臣に一應意見を聽いて置きたいと思ふのであります、一昨日の委員會に於ける農林大臣の答辯に於きまして、委員長が此の委員會の全部の空氣を代表して、食糧營團廢止の問題に對する農林大臣の意見を聽いた場合に於て、農林大臣は直ちにそれを否定し、出來ないと云ふことの御答辯であつた、それは實際に於ては已むを得ないのかも知れませぬけれども、あの答辯の仕方から見ると、何だか議會を輕視したが如き印象を私は受けるのであります、又他の委員から意見を聽いてもさう云ふ意見が多いのであります、私はさう云ふことは甚だ面白くないのでありまして、農林大臣は決して議會を輕視する意思はないと考へるのでありますが、唯あの時の印象はさう云ふやうに受けられるのであります、此の機會に何等か釋明を聽いて置いた方が宜いと思ふのでありますが、御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=24
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025・和田博雄
○和田國務大臣 私は議會を輕視する意思は毛頭ありませぬ、若しもさう云ふ印象を與へましたとしますと、是は私の不徳の致す所でありまして、さう云ふ意思でないと云ふことを一つ御諒承を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=25
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026・三浦寅之助
○三浦委員 それから農地委員會の問題でありますが、農地改革の基本的な問題を取扱ふ農地委員會が働くかどうかと云ふことが、其の根本であると云ふことは申すまでもないのであります、さう云ふやうに必要なる基本的な問題を取上げる此の農地委員會に於て實際の運用の場合、相當の小作人對地主との對立も出來ませうし、又非常に困難な場合が起ると思ふのであります、それよりも問題は、此の委員會の會長を委員會に於て互選すると云ふことになつて居りますが、互選することに於ても相當難かしくなると思ふのであります、併し又互選の出來なかつた場合に於ては、地方長官が之を選任することになつて居りますが、問題は是なのです、結局は農地委員會の決議と云ふものは、さう云ふ工合に地主側と小作人側との間に非常に對立し、自作人が地主に付いた場合に於ては五對五、さう云ふやうな場合に於ては、結論は地方長官の選任しました會長が之を決定することになる譯であります、さうすると結局は一切の運用の實權、事實上の權利が地方長官の任命した所の、現在の時局柄官僚的色彩を持つた會長に依つて握られ、最後の採決を受けると云ふやうなことになると、其の委員會の運用が如何にも官僚的色彩を帶びるが如き印衆を受けるのでありますが、此の地方長官に會長選任の權利を與へた理由を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 是は只今三浦さんの御意見の中にありましたやうに、結局兩方で會長を選ぶと云ふやうに、同意して會長を選ばれればそれで宜いのでありますが、選ばれませぬ時には──勿論さう云ふ者を選ぶに付ては總員の同意を要するのでありますが──結局是等の色々の行政事務の監督の長と云ひますか、運營に與つて居る地方長官に其の選任の權限を與へた譯でありまして、之に依つて必ずしも官僚的な者が選ばれると云ふことには私は考へて居ないのでありまして、さう云ふ者を第一選ぶか選ばぬかと云ふことに付ても、是は選ぶ人達の總同意を要するのでございまするので、それ等の總同意と云ふものを尊重してやると云ふことで、一應地方長官と云ふやうになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=27
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028・葉梨新五郎
○葉梨委員長 三浦君に申上げますが、只今水産局長が見えて居りますが、先程の大臣の答辯で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=28
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029・三浦寅之助
○三浦委員 宜しうございます、それから農地委員會の委員の選擧は一人一票となつて居ります、それから第三條の色々なる適用の問題に於ては世帶を單位として居ります、此の間の問題でありますが、此の第三には一切の計畫が世帶單位とされて居り、農地委員の選擧の場合に於ては、世帶を單位としないで、一人一票に依つて此の選擧が行はれると云ふことになるのであります、少し實際問題として世帶主の解釋が少しはつきりしないので御聽きするのでありますが、世帶主が假に一町なら一町を耕作して居る、所が其の世帶主の家に、土地を持つて居るとか或は耕作して居るとかと云つて庇つて三人なら三人居ると云ふことになると、一つの世帶に於て三人の投票權があると云ふことになるのですが、其の間世帶主單位として總ての計畫をするなら、投票も世帶單位にしてやつたらどうか、農地委員の選擧の場合に於て一人一票なら計畫も一人一票にしないと、實際の運營の場合に於て非常に困難な場合があるやうにも考へられるのでありますが、それは差支へないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=29
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030・和田博雄
○和田國務大臣 そこの所は初めの農地調整法の時には一寸矛盾があつたのです、個人でやつたものですから、親父は地主の範疇に入り、或は子供は小作の範疇に入ると云ふやうな場合があり得た、今度は世帶として考へて、其の世帶が自作なら自作と云ふことであれば、是は皆自作として個々の人が一票づつ持つと云ふことに致しまして、内部的な分裂の起ることを避けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=30
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031・三浦寅之助
○三浦委員 それから實際に政府が買收して、それを計畫する場合に──斯う云ふことは實際にないかも知れませぬが、私の知つて居る中にさう云ふやうなことが豫想されるのでありますが、土地買受の希望のなかつたやうな場合、結局政府が自作農を創設する爲に計畫をしても、實際に買受ける農家のなかつた場合には、其の土地はどう云ふ工合に管理するのであるか、其の管理の方法を御聽きして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=31
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032・和田博雄
○和田國務大臣 其の點御答へ致しましたやうに、小作人がどうしても買はなかつた土地は、其の村の實行組合或は農業會に、それ等のものが自作農創定を將來やる時の土地として賣渡して置く、併しさうでない場合は、最後の手として之を農地委員會に管理さすことになります、隨て農地委員會の管理の下に從來の小作人が耕して行く、斯う云ふことになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=32
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033・三浦寅之助
○三浦委員 もう一つ御伺ひ致します、小作人が自作農になる爲に土地を買ふと云ふことになるから、結局其の買受代金の支出に依つて、實際自作農にはなつたけれども、土地改良の代金とか農具、肥料或は家畜に投資する資金が缺乏する結果、農業經營に付て資金の面に於ても支障を來すやうなことがあるやうに考へるのでありますが、斯う云ふ資金の面に對する融資の方法に付ての御考へがあれば承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=33
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034・和田博雄
○和田國務大臣 今度の農地改革で土地を買ふ爲に經營資金がなくなつて困ると云ふやうなことは避けなければなりませぬ、今度の土地の賣渡に付ては、或る部分は小作人が現金を以て買取る計畫を立てて居ります、其の買取代金の大體三割程度は現金で拂ふと云ふことになつて居ります、其の程度でありますれば、我々が部落に付て調査した所に依りましても、經營資金にさう困難を來すことはないと思ひます、併し經營資金に付ては、農業會とか其の他の組合の金融に依つて融通するのみならず、場合に依つては國家が將來の經營に付て相當の補助を致したい、國家資本を導入せしめたい、斯う云ふことでなければならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=34
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035・葉梨新五郎
○葉梨委員長 三浦君、殘餘の質疑は逐條審議の際に御讓り願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=35
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036・三浦寅之助
○三浦委員 それでは是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=36
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037・葉梨新五郎
○葉梨委員長 小笹君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=37
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038・小笹耕作
○小笹委員 出來るだけ簡單に御尋ねを致したいと思ひます、今囘の土地制度の改革は洵に劃期的内容を持つものであるだけに、農村に於きましては、重大なる問題として一大「センセーション」を惹き起して居るのであります、隨て中小地主に取つても極めて重大で、死活の問題であり、又小作農家に取りましても實に容易ならぬものがあるのであります、該法案は、實質的に最早單なる農地調整法の再改正ではなく、一種の農村に於ける革命的性格を持つものであると思ふのであります、要するに、農村に於ける封建的支配階級と目せられて居る地主の土地を取上げで、其の支配力を追放して農村の民主化を圖らんとするものであるのであります、固より民主主義的新日本を建設せんが爲には、封建的機構を改廢して民主主義的に改革せんとすることは、絶對に必要であり、又當然とする所であるのでありまして、農村に於ける機構制度も革新を要することは、今日に於て誰も否定する者はないのであります、併し冷靜に考へまする時に、人は口を開けば農村は軍國主義、全體主義の基盤であり且つ温床であつて、其の由つて來る所は封建制度の根源をなす土地制度にあるとして、土地制度の改革の斷行に依つて農民を舊い封建的束縛から救ふことが、民主義日本建設途上缺くべからざる重要なる過程と致して居るのであります、勿論民主主義農村の建設には、土地制度の改革も大いに必要であることは申すまでもない所であります、我々も双手を擧げて贊成するものでありますが、農村の民主化には土地制度の改革が唯一の方法であると考へることは、非常に危險であると考へるのであります、農村の青壯年は、何れも其の性質が非常に諄朴でありますし、又眞面目で、而も身體も強健なるが故に、戰爭に於きましては完膚なきまでに騙使せられたのでありまして、苦難の體驗を嘗めて歸り、又敗戰の事實を沁々身に味はつて歸つて來て居るのであります、無暴なる戰爭に驅り立てた軍部、財閥、官僚等に對しては言ひ知れぬ憤怒と憎惡の念を持つて居るのでありますが、祖國の再建に對しましては非常に根強い所の熱意を持つて居るのであります、是等の青壯年を適正に指導善導することは、民主主義農村建設の根本の問題と考へるのであります、彼等は平和農村を愛し、文化を望み、健全なる娯樂を熱望して居るのであります、彼等に教養を與へ、農村文化を指導し、先進農業國の經營方法を教へまして、一面又彼等に健全なる農村の娯樂を與へることが、農村の封建的殘滓を一掃するに最も善い所の方法であると信ずるのであります、若し政府にして彼等を指導する熱意がなく、單に土地制度の革命的改革に依つてのみ民主主義的農村の建設を圖らんとするならば、却て農村に暗鬪を起さしめ、一大混亂を來さしめて、逆效果を齎す結果となるのであります、然るに政府に於きましては、其の點に於て熱意の缺くるものがあると考へるのであります、先般文部大臣の御答辯に依りましても、實に頼りないことを痛感致したのであります、農村の民主化は土地制度の改革と伴ひまして、是等の若い青壯年の善導指導如何に依ることと考へるのであります、此の點に付きまして農村問題に造詣の深い農林大臣の御意見を、簡單で宜しいから御伺ひして置きたいと思ひます
次に御尋ね致したいのは、農林大臣へ、今囘の農地調整法の改正は、地主の土地を買收して小作農を自作農とするのであつて、適正農家の創設を意圖せぬと云ふやうな御答辯を承つたのであります、今囘の改正は、實質上農村に於ける革命的性格を十分持つて居るものでありまして、從來我が國の農業經營の規模が過小で、一たび不況になりまするならば、直ちに貧農の域を脱し得ぬものであります、昭和四、五年の農村の不況に際して如何に農村が悲慘であつたかを、今日顧みる必要があると思ふのであります、今囘の農地制度の改革に當りまして、所謂適正農家の創設を期して、其の經營規模の擴大を圖るべき絶好の時期と信ずるのであります、此の劃期的事業を敢て行はんとする農林大臣は、何故に更に一歩を進めまして、勇斷を以て適正農家の創設まで進まれなかつたか、此の點の理由を御伺ひ致したいのであります、先づ以上の二點に付て農林大臣の御考へを御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=38
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039・和田博雄
○和田國務大臣 第一點に付きましては、私も御同樣に唯農地の改革だけで農村の民主化が出來るとは考へて居りませぬ、唯農地の改革は其の必要な大きな條件であり、基本的なものだと考へて居るのであります、結局それは農村に於ける青少年の教育の問題に打突かつて來るのでありまして、それ等の點に付きまして農林省としましては、今後農村の青年の指導と云ひますか、教育と云ふ點に付ては凡ゆることをやつて行きたいと思つて居ります、只今でも農林關係の團體を通じましては、各地に實際上の講習會、而も農業と云ふものを中心にしての講習會を開きまして、相互の研鑽を致して居る譯であります、唯斯う云ふ面だけでなしに、或は農村に於ける公民館と云ひますか、さう云ふ思想をもつと活かして、例へば共同作業場と云ふものが農村にはありますので、さう云ふ共同作業場を或は一種の圖書館みたいなものにして行くことも一つの考へでありませうし、或は是は私の本當の私見でありまして、まだ熟して居りませぬが、出來れば實業學校、農業學校と云つたやうなものは、農林省の方でもう少し力を入れてやることが出來るやうに致しまして、農家の子弟が十分な教養を得られることか出來るやうに致して行きたいと考へて居ります、農村教育の點に付ては私も今後大きな問題として、是非具體的なことを色々やつて行きたい考へであります
第二點の適正規模農家の問題でありますが、今度の改正に於きましては適正規模農家の設定と云ふことを考へから捨ててしまつた譯ではないのであります、出來ますれば適正規模農家を設定することが理想でありますが、之を急速に致すことは相當の困難が伴ひますので、農地の改革を致しました後、協同組合の組織なり、或は耕地の改良又は集團化と云ふことをやる時にさう云ふことをやつたらどうか、斯う考へて居るのであります、勿論今度の場合でも、適正規模農家の設定の出來ますやうな、自作農の創定が出來ます場合には、勿論是はやる考へでありますが、併しそれだけを中心にしては居ないと云ふことを申上げだので、適正規模農家の設定を抛棄したと云ふことでは全然ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=39
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040・小笹耕作
○小笹委員 御意圖の程は了承致しましたが、第二點の、適正農家の創設の點に付きまして政府の執られやうとして居ります所は、單に所有權の移轉のみを主眼點に置いて、徒らに過小貧農の域を脱せぬ自作農を作らうとするやうに見受けられるのであります、是は近代農業經營の改善に將來一大禍根を貽すものと心配するものであります、私は問題は自作農か、小作農かの土地所有の形體にあらずして、適正經營か否かにあると思ふのであります(「ヒヤヒヤ」)小作農家の經濟的性格は、單に他人の耕作地を借りて農家經營をやると云ふのではなくて、是等の持つ性格が極めて小規模で不安定經營なるが故に、食糧増産の意欲なり手段にも乏しく、一たび不況に際會致しましたならば直ちに貧農の域に轉落してしまふのであります、農地制度の改革は、之に觸れて初めて將來の食糧問題なり農村問題解決の意義を持つものと考へるのであります、之を離れての土地制度の改革は、單に所有權の移轉、形體の變更に過ぎずして、農村問題の解決の意義を持たないと考へるのであります、私は自作農創設は適正農家の創設でなければならぬと信ずるのであります、今囘の改正は、近代農業經營の改善上、將來大なる禍根を貽すものと思ふのでありまして、重ねて農林大臣の御所見を伺ひたいと思ふのであります
又最近御發表になりましたやうに、農業綜合研究所が計畫せられて居るやうでございます、洵に結構と存じまするが、此の研究所の構想を御尋ね致したいのであります、是は從來の農業技術の指導を主眼とせられますか、此の農地の改革を好機と致しまして、近代的な、新しい農業經營の指導を主とせられるか、此の點を御伺ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=40
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041・和田博雄
○和田國務大臣 今囘の農地改革は經營の面には觸れてないではないかと仰しやいますが、やはり經營の面に觸れて居るのであります、方針としても、耕地の集團化、或は耕地の交換分合と云ふことが同時に行はれるやうに致しまして、出來るだけ適正規模と云ふやうな觀念に即してやつて行く、斯う云ふ考へは十分採入れて居るのであります、唯適正規模の問題は、農地の改革だけでは實に解決しないのであります、日本の今のやうな現状でありますと、過小農と云ふものがどうしても殘ります、其の殘つた過小農をどうして行くか、斯う云ふ問題と絡み合せまして、例へばそれは農村加工業であるとか其の他工業方面の發展に依つて、そつちの方へ持つて行くか、又は協同組合に依つてそれ等のものを處理して行くとか、開墾と結付けるか、色々な策に依つて初めてそこに適正規模農家と云ふものが同時に出來得ると考へて居るのでありまして、土地改革と云ふものは、同時に經營を近代化することを一つの大きな目的としてやつて行くのでございます
それから農業綜合研究所は、從來のやうな、唯技術の指導ばかりでないのであります、今のやうに經營の面の研究をせしめ、將來の大きな指導の機關として行きたい、斯う云ふ考へで居るのでありまして、出來るだけ現在の日本の實情其の他色々の條件を考慮しまして、農業の近代化と云ふことを圖つて行く、さう云ふことを主として研究させて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=41
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042・小笹耕作
○小笹委員 其の次の點を御尋ね致したいと思ひます、地主の土地を買收して、一部は小作人が現金で拂ひ、其の殘りの金を證券で以て御支拂ひになると思ふのですが、措置法の第二十六條に依りまして、其の土地の代金は二十四箇年の年賦償還の方法で小作者が拂ふことに相成るのであります、不況の對策と致しましては、第二十七條に年賦金額と當該農地の公租公課の金額の合計額が當該農地の通常收穫物の價格の三分の一を超ゆる場合、年賦金の支拂に付ては減免、支拂猶豫、輕減の措置を規定してありますが、最も望しいことは、土地代金を出來るだけ一時に支拂はせることであると思ふのであります、今日農村の大部分、勿論全部ではありませぬが、大部分は相當の餘裕金を死藏、退藏致して居るのであります、農村に金が入り込んだと云ふことは歴史始まつてないことと考へるのであります、農村は永年不況に喘いで居りました關係上、此の現金に對しましては非常に執著を持つて居るのであります、金を持つて居りましても、政府が貸付けてやらうと云ふことになりまするならば、直ちに之を借りるだらうと考へるのであります、併し將來不況が來た場合に於きまして、假令年賦金でありましても、借金を殘して置くことは極めて危險であると考へるのであります、隨ひまして出來るだけ金を支拂はすことが宜い方法ではなからうかと思ふのであります、勿論金のない者に對しましては、出來るだけ借り易い方法で貸して行かなければならぬと思ふのであります、斯くして農村の死藏、退藏せる通貨を出來るだけ引揚げまして、又證券の發行も少くすることが、今日の「インフレ」の現在に於きまして留意すべきことと考へるのでありますが、此の點政府の方針を御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=42
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043・和田博雄
○和田國務大臣 全く御同感でありまして、今囘の措置に於きましても繰上償還の途を開いて居るのでありまして、農家に餘裕がありますれば、是は幾らでも早く繰上償還をすることに致して、出來るだけ早く農家が此の年賦償還から免れて、自分のものに完全にし得る途を開いて居るのであります、又「インフレ」の對策から致しましても、農家にありまする餘裕の金を都市の方に充てると云ふことが必要であります、出來るだけさう云ふことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=43
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044・小笹耕作
○小笹委員 更に二、三點御尋ね致したいと思ひます、中小地主、殊に小地主にありましては、自作地の外に一町歩の小作地を所有することが出來ると相成つて居りまするが、其の所有し得る限度の小作地を幾分減少しても自作地を増加したい者に對しては、私は之を許すべきものと考へるのであります、例へば現在五段歩しか作つて居らないのでありますが、五段歩の農業經營は半端な農業經營で、事實農業經營に相成らぬのであります、それで一町歩の小作地を持ち得るのでありますが、其の中五段歩を減少しても宣しいから、自作地に其の五段歩を加へて自作を一町にしたいと云ふ者に對しては、適正農家の關係もありますし、是は認むべきものであると考へるのであります、小作人の耕作權も認めると同時に、左樣な零細な地主の是から專心農業經營に努力をしようと云ふ者に對しては、之を確保して、それ等に自作さすべきものと考へるのでありますが、それは出來得るものですか、一つ御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=44
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045・和田博雄
○和田國務大臣 簡單にさうは參らぬのでありまして、結局現状で一應押へて居る譯であります、例へば今現に地主が五段歩しか耕して居ないと云ふのは、現状五段歩と云ふことで其の人は耕作を營んで居るのであります、それを此の法律化せられる際に、自作を殖やして一町歩にすることは簡單に認める譯には行きませぬ、さう云ふ問題は結局耕作權との關係になつて來る譯でありまして、地主の自作と小何人の耕作とが打突かる譯であります、是は今の所第九條で處理して居ります、簡單に今地主の自作して居る面積を擴げることを認めて行くと云ふ風には一寸參らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=45
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046・小笹耕作
○小笹委員 其の持ち得る一町歩を幾分減らしてでも、其の減らしただけ自作を殖やして行くと云ふことで、勿論勞働力其の他から見まして適當なりと農地委員會に於ても認めた場合に於て出來得るか否かと云ふことを御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=46
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047・和田博雄
○和田國務大臣 それは片方で小作人が土地を取上げられることになりますので、第九條の解釋は非常に嚴格に致して居ります、唯地主が自作を殖やすと云ふのでなくて、實際上國民經濟の立場から見て、どちらで作つた方がより多く生産が上るか、斯う云ふ點から行つて居りまするから、唯農地委員會が簡單に認める、斯う云ふ譯には參り兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=47
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048・小笹耕作
○小笹委員 此の位に致して置きまして、次に此の特別措置法の第三條に依りますると、土地の所有限度は概ね一町歩或は概ね三町歩と相成つて居りますが、此の意味は平均と云ふ意味ですか、或は又他の意味があるか、又府縣別に依つて制限面積が違ふのでありますか、之を一つ御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=48
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049・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します平均の意味であります、それは中央農地委員會で各府縣別に決めることになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=49
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050・小笹耕作
○小笹委員 以上で私の質問を終ることに致しまして、他は逐條審議の折に致すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=50
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051・葉梨新五郎
○葉梨委員長 一寸此の際農林大臣に伺つて置きたいのですが、先程の小笹君に對する御答辯中、委員長の聽き違ひかも知れませぬが、實業教育の面に對して、農林省は之を所管して改善をして農村教育に進んで行きたいと云ふやうな意向の御答辯のやうに聽きましたが、其の點は間違ひでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=51
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052・和田博雄
○和田國務大臣 是は私見として、私の希望を言はせれば、さう云ふことも今後の政府として考へられるのではないか、斯う云ふ譯でありまして、今それをどうすると云ふのではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=52
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053・葉梨新五郎
○葉梨委員長 所管替を御計畫と云ふ意味の御意見の發表ではないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=53
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054・和田博雄
○和田國務大臣 さうではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=54
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055・江川爲信
○江川委員 關聯して一言簡單に伺ひます、先程の小笹君の質問の、地主が幾らか小作地から割いて自作をしようと云ふことに付て、農林大臣は、それは中々簡單に行かないと言はれた、簡單に行かないことは承知して居りますが、小作人との間に話合ひが出來、農地委員會で承認された場合は差支へないと思ひまするが、之に對して如何なる御見解を持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=55
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056・和田博雄
○和田國務大臣 それは法の第九條に依つて結局處理されるのでありまして、小作人の自由な意思と地主の自由な意思がお互ひに十分納得づくで話合ひの付いたものは當然であります、併し茲に相當考へなければなりませぬのは、此の法律が出來ました時に、地主の自耕と云ふ形で其の土地を取上げ面積を擴げると云ふことが非常に多くなつて居る譯であります、そこでさう云ふ面に之を惡用される、と言ふと語弊がありますが、さう云ふことは法の運用で避けて行かなければならぬと思ひますので、是は先程言ひましたやうに、地主が面積を擴げるからさう云ふものを許したらどうかと云ふことに付ては、簡單に「イエス」と言ひ得ない、それは小作人との話合ひが付けば、公の立場から見て、片方は惰農であり、片方は非常に勞力もあつて立派な經營が出來る、小作人としても土地を返すことに付て納得した、斯う云ふやうな時に於ては、是は第九條の適用上農地委員會に諮つて許されるであらう、斯う申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=56
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057・江川爲信
○江川委員 話は能く分りました、さう云ふことでなくてはならぬと存じて居ります、併しながらそれが難かしいのだと云ふやうな御話になると、私共は能く承知致して居りまするけれども、又それを口實に致しまして、必要以上に強化しまして、地方で色々の話合ひと申しまするか、寧ろそれが爭議の種になると云ふ場合があるのであります、地主の關係ばかりを惡く言ふ人もありまするけれども、隨分と小作人にも惡い人がある私の方で斯う云ふ事實があるのであります、此の法律で行きましても、或は應召等から歸つて來た者は田を返して貰へると云ふことになつて居る、所が應召から歸つて來て、話合ひが付いて、先づ馬鈴薯一作は地主の方で作つた、所が此の法律案が出まして、色々な話が色々の方面から出て來る、所謂迷ひを起さしめるやうな方面の方が動いて參る、さうしてあの田圃、あの畑は返して貰ひたい、あれは十一月の幾日に遡つて效力を發生するのだから返して貰ひたい、斯う云ふやうなことを…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=57
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058・葉梨新五郎
○葉梨委員長 江川君、其の點は逐條審議の折に當然觸れる問題でありますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=58
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059・江川爲信
○江川委員 一寸簡單でありますから…それで爭ひになつて返さなかつた、所が地主は其處へ大根を蒔いた、大根を蒔いた所が、折角大根が芽が出たにも拘らず、後から行つて、五、六名の人がそれをすつかり耕してしまつた、それが裁判沙汰になつて居る、それはやはり小作の行爲であつて、地主の行爲でないと云ふやうな色々のことがありますに依つて、所謂地主ばかりが惡いのではなく、小作の方にも惡いことがあるから、斯う云ふことはやはり公平な話をして戴くと、それが地方にも公平に映つて、此の事業が巧く圓滿に行くだらうと思ひますから、一言申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=59
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060・葉梨新五郎
○葉梨委員長 農林大臣御答辯ありますか、今のは御感想だらうと思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=60
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061・江川爲信
○江川委員 答辯は要りませぬ、公平にやつて戴けば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=61
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062・葉梨新五郎
○葉梨委員長 富吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=62
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063・冨吉榮二
○冨吉委員 既に同僚諸君から蘊蓄を傾けて色々御審議になりまして、私共十分明確になりましたので、極めて簡單に重點に付て疑義のある所を御尋ね致したいと思ふのであります
今囘明治維新でも改革の出來なかつた土地問題に手を觸れられるに至つたのでありますが、是は洵に時勢の然らしむる所かと思ふのであります、何に致しましても、此の土地を買上げて小作人に賣渡すと云ふことは極めて大事業であり、先程も色々仰せられたる通り革命的な法案であると思ふ、私共勤勞農民に取りましては洵に一種の天來の福音として歡迎致して居るのでありますが、之に對して快からず思ふ方面も相當ありまするので、此の法案が二箇年内に完全なる實施を終るかどうかと云ふことは相當な疑問があると思ふのであります、就中疑問が起りまする原因には、所謂町村の指導的の立場にあられる人が大體此の法案に對しては餘り快く思はないと云ふことが一つ、それから官廳の側に於きましても、農林省の案に對して、どうも他の省が所管外の事項として餘り協力しない、一例を擧げまするならば、此の農地調整法の昨年の臨時議會に於ける改正以後に於きまして、土地取上等が非常に起つた、是は決して土地取上等が起らないやうにと云ふ念願の下に法律が改正されたにも拘らず、逆の結果を來した、そにこ於て、私共は地方に於て色々是等の問題に打突つて居るのでありますが、縣廳などへ參りましても、縣の當局は小作官を除く以外は、殆ど農地調整法が改正されたと云ふことを知らない、殊に内務省系統の警察官など、所謂不當なるものに對しては相當の處置をすると云ふ法律にも拘らず、大澤君が指摘致しましたやうに、二十五萬件あるのに、殆ど何等の法的處置が講ぜられて居らぬ、私は法的處置を講ずるのが善い惡いの議論をして居るのではないのであつて、各省共此の農地改革に對して極めて冷淡である、此の事實から致しまして、農林當局は餘程思切つた、徹底した方策を御執りにならぬと、自由黨や進歩黨から頻りに御指摘になつたやうに、實行が出來ないやうな結果を見るのではなからうか、所期の目的を貫徹し得られないと云ふ非常な心配が私にはあるのであります、此の點に付ては、重ねて、農林大臣に此の際斷乎として之を二箇年内にやつてのけると云ふ御言明が願はしいと思ふのでありますが、此の點に對する御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 是は既に政府の方でも二箇年に實行すると云ふことが決定して居るのでありまして、我々と致しましては、是非二箇年にやりまするやうに、今から覺悟の上でやる積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=64
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065・冨吉榮二
○冨吉委員 それで了承致しましたが、實際地方縣廳などに於ける相當の地位に就いて居ります者の中でも、農村では所謂不在地主の側に屬して居たり、或は其の家族が殘つて居ると云ふやうな關係で、理想としては色々民主主義を唱へても、實際上自分が地主である場合には、中々さう參らないと云ふのが洵に悲しむべき人情の弱點でありまするので、大方法案の精神其のものに對しては──議會に於きましては、民主主義を推進しなければならぬ立場にある指導的な方々でありまするから、法案それ自體の精神には反對はないと思ひまするけれども、それが結局自分の所有地をなくしたり、無論地主的な特權と言うてはをかしいですが、何か思を施したり、旦那組であつたものが、其の地位から辷り落ちると云ふことは、容易ならざる苦悶があると思ふのであります、其の苦悶を尚且つ敢て斯うしなければならぬ此の情勢に向つては、凡そ其の局に當る者が誠心誠意眞に徹底したる氣分を以てやらなければいけませぬので、一段の御努力を御願ひする次第であります
そこで此の一町歩殘されると云ふ問題に付きましては、自由黨、進歩黨の間からもちよいちよい御意見がありましたし、分けて社會黨の大澤及び松澤の兩君が指摘致しまして、大體農林省の御意見は分つたのでありますけれども、どうしても私共之に納得出來ないのであります、それは今も御話になりましたやうに一町歩殘して置くと、やはりそこに未練が殘る、農林大臣は之に對して、一町歩殘して置くことは、小作制度に幅を持たせるのだ、彈力性を與へるのだと云ふやうな意味の御答辯であつたと思ひまするが、私はそれはどうも極めて薄弱ではないかと思ふのであります、一町歩殘して置いても、どうせ地主が勝手に取上げることは出來ない、さうすると、小作料として取るとしますると、水田にして最高一段歩一石の小作料と致しまして、大體十石の小作料しか得られない、之を見積りの七十五圓に致しますと、七百五十圓の收入を貰つたのでは、地主も是から公租公課を引いたり、色々な内容を考慮しますと、一町歩殘されたのは有難迷惑であると思ふ、蛇の生殺しとは洵に此のことだと思ふ、地主の爲に一町歩が邪魔をする、或は又もうそれだけの小作料を取るよりも、何とか自作したいと云ふ欲求も亦そこに起つて來る、併し今まで作つて居ない地主が自作をして見た所で、是は駄目なのです、よく世間では作らうと云ふ熱意に燃えてなどと仰しやるけれども、地方に於て旦那組である人、或は燒け出されて歸つて來た人などが、うつかり農耕地と取組んでやつて見た所が、生産が上るものではありませぬ、是は實際斯く言ふ私自身も百姓の倅でありますけれども、若い時分書生など致して居りまして、農業をやつて居らなかつた、農村運動を始めて農業をやつて見たのです、下男、下女も置いて農業を經營して見たが、中々十八歳になる下男に續かないのです、是はやはり子守りをし、牛馬の飼葉を切つて育つた者でなければ、農業と云ふものはさう簡單に行きませぬ、一寸見た所では洵に呑氣で、一幅の畫で、詩の題材になりませうけれども、實際自分がやつて見ると、さう云ふ譯のものではありませぬ、今食糧が足りないから一生懸命土地を取りたいと云ふ氣持が起つて來るのです、大體滿腹感を與へる三合配給と云ふものが確實になつて、米の飯に不足しないと云ふことになれば、決して土地など作らうと云ふ馬鹿な地主は居りませぬ、一町歩殘して置いた爲に、是が將來禍ひをなす、是は當分爭議の種です、餘剩勞力を變へて、自分では作らずに賃勞働に出さう、さうして自分が米を取つて食はう、或は甚だしきは、闇にしよう、斯う云つた風で、第一には地主は有難迷惑である、第二には爭議が起る、それともう一つは、人が折角農奴から解放され、小作人かを解放されて、近所隣は皆土地が買へるのに、殘つた小作の身を考へて御覽なさい、それは小作料が安くなれば經濟的には却てこつちの方が宜い、風が吹けば負けて貰へるから宜いと云ふ理窟はさうである、併し農民と土地と云ふものは離るべからざるものである、近所が自作農になるのに、五人の中に必ず二人か三人か取殘されるのです、取殘されて土地が持てない小作の落膽を一體農林大臣はどう處理して行かうと云ふのであるか、是等の人に、尚且つ農民としての自覺に燃えて八千萬同胞を養つて行く所の原動力、増産意慾を要請し得る勇氣がありや、農林大臣が一町歩殘されたが故に、六十萬町歩乃至七十萬町歩の熟田が殘る、其の七十萬町歩の土地が殘つた爲に、一町歩平均に致しまして七十萬戸、五段歩平均に致しまするならば百四十萬戸、五人平均に致しますれば七十萬戸で三百五十萬人、さう云ふ多くの人々が此の法案からも亦篩ひ落される、此の歎きと云ふものを一體どう解決せられる御自信がありますか、私は其の點が最も重大であると思ふ、人情と云ふものは妙なもので、實際の所冠婚葬禮、呼ばれなければ宜いがと思つて居ても、近所隣が皆呼ばれたのに一軒だけ殘されると腹が立つて仕樣がないと云ふのが人情です、別けて土地に對する愛著、永年の間苦勞を續けて來た農民が、近所隣り合壁が皆土地を持たれるのに、自分だけが持たれないと、此の人々が歎く、之をどうして農林大臣は救つてやるか、此の點に付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=65
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066・和田博雄
○和田國務大臣 小作地面積二百六十萬町歩中今度は二百町歩を對象に致して居るのであります、所が純小作は二百萬戸ないと存じます、精精百四十萬戸位だと思ひます、あとは自作兼小作でありますが、多少とも自分の土地を持つて居るものであります、それから小作人と云ふ中に付ても相當に分折して見なければならぬと思ふのであります、本當に農業に精進して、先祖代々小作人と云ふ者もありませうし、此の食糧飢饉の爲に多少土地を借りて、所謂飯米農家として、本當は農業に腰を据ヱてやると云ふのでなくやつて居る小作人も相當あると思ふのであります、そこで今度の農地の改革に於ては、原則としてはやはり耕して居る小作人に土地を解放するのであまりすが、實際上農業に精進する見込のある者と云ふことでやることに致して居るのであります、それは一町歩殘しました結果六十萬町歩の小作地が殘る譯でありますが、只今の御心配は、私は具體的な問題としては誤りないやうに處理出來るのではないかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=66
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067・冨吉榮二
○冨吉委員 それは農林大臣、實情が御分りになりませぬ、それは成程現在の食糧事情から飯米農家として少しづつ作つて居るやうな者もあります、併しそれは多く經濟的諸條件に惠まれた人々なので、實は農民として甚だ不適格であるけれども、經濟的條件だけは惠まれた人達なのです、疎開者若しくは燒け出されて歸つた人、經濟的條件は可なり惠まれて居りながら、米を食ひたいばかりに作つて居る、さう云ふ人人の爲に、在來の農民達が長い間土地に居りながら土地を取上げられて、次第に過小農に陷つて行くと云ふ現象になつて行く之を何と見らるるか、だから半分副業的にやつて居るなどと云ふのは、そう云ふ部面からやらざるを得ない状態に追込まれて、半分は賃勞へ行くと云つたやうな状態に農村の小作人と云つものは陷つて行くのです、作る土地が十分にあれば決して傍ら賃勞働をやるなどと云ふ者は出て來ないのです、土地が持てなかつたからさう云ふやうになつて來る、併し都會から燒け出され、外地から引揚げて來る者に、お前達は必要がないから農村から出て行けと言ふ譯には行かないから、さう云ふ者も養つて行かなければならぬけれども、私の言ふのは、さう云ふ人々の問題ではなくて、實際問題として取殘される所の小作農民と云ふものは相當にある、是は事實です、私共百姓と共に生活し、農村のさう云ふ實情を見て居るのでありますから、一町歩御殘しになるのは、私忖度申上げて甚だ失禮でありますが、議會方面の摩擦も相當あらうか、反對もあらうかと云ふ政治的な考慮で一町歩殘して、所有權を全部移すのではないと云つたやうな考へから來て居るのではないか、若しさうなりとすれば、さう云ふ確信のない妥協的な氣持で作られる案は、凡そ成り行が大した成功を收めぬのではなからうか、斯う云ふことを心配する、是はまあ私の心配でありますから、どうぞさうでないことを御願ひするが、政府は一町歩殘すと云ふことに絶對的な信念を御持ちになつて居るのでありますか、重ねて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=67
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068・和田博雄
○和田國務大臣 一町歩殘すことに付きましては、是はもう從來私が説明したやうな考へで、私はやはり一町歩を殘すのが、今の所では必要だと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=68
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069・冨吉榮二
○冨吉委員 是以上の追究は時間を浪費するばかりでありますから先へ進みます…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=69
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070・葉梨新五郎
○葉梨委員長 厚生大臣が出席致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=70
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071・冨吉榮二
○冨吉委員 それでは厚生大臣に御伺ひ致します、是は別にひどく研究した譯ではないのですが、今までは生めよ、殖やせよ、地に滿てよと云ふ譯で、頻りに子供を生まして奬勵をして參りましたが、食糧事情も斯うなりまするし、又日本は憲法にも戰爭抛棄を謳つて居りまするし、平和國家、文化國家と云ふことになり、工業の組織も中小工業に移つて、大工業は殆ど望めない、農業も開墾は出來ない、斯うなつて參りますと、私は人口問題と云ふものは相當考慮しなければならぬ問題ではないか、從來の一部の學者の間では色々議論されて居るけれども、政治上の課題にそれが上つて居ない、唯人間増産の一途にあつた、若し日本の將來を考へるならば、もう農村人口ばかりでなくして、日本國家全體としての一つの人口の調節と云ふ問題が、どの方面から見ても、食糧の面から見ても、又經濟機構の方面から見ても、將來の平和國家を建設して行く上から見ても、是は相當重大な問題ではないかと思ふのであります、一體澤山生まして、さうしてそれを養つて行く、現在の農村の生産状況をどう變へて行つても、どうしても主食は一千萬石輸入しなければならないと云ふことを言はれて居る、さうして又外國に對して關税障壁は設けられないから、外國品が頻りに入つて來る、さう云ふ場合に於て農業恐慌が來ると云ふことまで言つて居る、一生懸命擴げて見ても善し惡し、擴げなかつたら尚ほ足りないと云ふので、非常に矛盾に陷つて居ると思ふ、之を緩和する爲には、相當人口の調節と云ふ問題が取上げられなければならない、政治上の課題に上つて來なければならないと思ふのでありますが、厚生大臣はどう御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=71
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072・河合良成
○河合國務大臣 御尤もな問題だと思ひます、日本の耕地面積が非常に狹いものですから、八千萬人なりと假定して一「キロ」平方に對して千三百人臺です、「オランダ」「ベルギー」あたりの一番世界で一番多いのが八百人と云ふことで、是は非常に「シリアス」な問題になつて居ると思ひますが、唯人口調整と云ふのは、今から受胎調節をやりましても、先づ六千萬臺と云ふ人口にする爲には、細かい算盤は取れないが、五、六十年掛る、それで人口調整と云ふ問題は非常に長い問題です、それで勿論政府でも考へて居ますけれども、是はやはり、講和條約などがはつきりしませぬと、一體日本の民族と云ふものは此の島だけにどうしても居らなくてはならぬのか、世界にはまだ平和的に働く餘地が多いのですから、さう云ふやうな問題も少し目途がはつきりしませぬと、一寸此の受胎調節と云ふ問題は中々外にも影響を及ぼすと云ふやうな問題がありまして、困難な問題ですから、もう少し樣子が決まつて、さう云ふ問題に對してはつきりしたことを一般の輿論にも聽き、さうしてやるべきではなからうか、只今の所では積極的に必要を認めない、それから各國の事例を見ましても、積極的に政府が受胎調節をやつて居る例は殆どない、先づ民間にやらして居ると云ふ位の所が餘程進んだ所です、大體先進國の例を見ましても、此の問題には餘り深く入つて居りませぬ、さう云ふやうな實情です、それ位の所で御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=72
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073・冨吉榮二
○冨吉委員 列國でさう云ふことをやつて居ないと云ふことは、何も日本でやらなくても宜いと云ふことにはならない、こんな日本のやうな、軍國主義から一轉して戰爭抛棄などと云ふ、もう百八十度どころではない、三百六十度の展開をやつた國は、世界に殆ど例がないのでありますし、又こんなにうようよ人口の多い國も先程仰しやつたやうにないのでありますから、日本は特殊な民族ですから、日本が文化國家として眞に文化の香りの高い國民性を作る上等を睨み合せて、相當問題とすべきだと思ふのであります、併しもう是れ以上申上げましても──私もそれに付ての一つの意見を持つて居りますが、今日は之を止めることに致します
それから農村工業と云ふことが頻りに言はれて居り、此の農村工業に付ては色々御意見も承りましたが、私は斯う云ふことを考へて居るのですが、農林大臣は如何でせうか、製絲業を思切つた制度として一貫作業として農村でやらせる、今製絲工場と云ふものが資本家の手に依つて色々出來て居りまして、出來て居るのをどうすると云ふのではないのですが、其の製絲工場の一番重要な方面は私は勞力だと思ひます、其の勞力は結局農閑期とか色々な方面から、農村の勞力で之を賄つて居るのであります、之を農民自體の家内工業、或は町村單位で機械を購入し心配してやらせるならば、あんな原始的な工業は農民で立派に出來る、さうしますと、あの蛹の問題も解決致しますし、屑絲も出て參りますと、それに附帶的な工業も出て來る、從來の土地が廣過ぎて、勞力が少かつた戰爭中のやうな時代ならば、是は全然問題になりませぬが、今相當「インテリ」の地主の息子とか、或は半農的な連中、相當知識もあるし、さう云ふ連中が農村に還元されて居りますから、さう云ふ方面を働かすには是は最も宜いこととなる、所謂製絲業の一貫作業を農村に於てやる、此の心構へを御持ちになることが宜いのではないかと思ふのでありますが、それに對しての御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=73
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074・和田博雄
○和田國務大臣 それは私も或る程度贊成なのであります、例へば昔は組合製絲と云ふものがあつた譯で、之には成功したものもあり、或は失敗したものもあつた譯ですが、此の組合製絲と云ふやうなものは、今後は多少考へ直して見て、新しい視角から檢討すべきものではないか、斯樣に思つて居ります、只今でも從來組合製絲をやつたものが他の資本と一緒になつて新しい形態で製絲をやつて行かう、斯う云ふ機運もあるのであります、組合製絲其のものはもう一度企業形態として考へて見る必要があるのではないか、私は斯う思つて居ります、從來の組合製絲は繭の非常に安い時にさつと持つ來て、高い時に他へ賣つてやると云ふやうな形で、中々旨く成立つて行かなかつた點がある譯でありますが、技術其のものが他の技術と違ひまして、間に合ふと云へば間に合ふのでありまして、そこに精巧な技術を要することも少いのであります、是は農村の一つの工業上の形として十分考へるべきことではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=74
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075・冨吉榮二
○冨吉委員 其の點是非一つ進めて戴きたい、實際出來る所からおやり下さいますならば、是は見返物資として、將來──現在もですが──非常に大きな問題ですが、色々農村工業などと云ふやうなことを考へて見ましても、種種の點で高級の技術を要するものはいけない、麥稈眞田等色々ありませうが、是も製品と消費との關係の釣合ひと云ふ問題もありますし、時計などもありますけれども、あんなものをやつても、時計は三つも四つも持つて居なければならぬことはない、是も輸出向にはさうならないと云ふことになりますると、行詰りが來るのです、將來は生絲、茶と云ふものが見返品として有望なものでありますから、其の點に付て極力御注意を御願ひ致します
それからもう一點、開拓方針に付て、所は言ひませぬが、或る開拓團を見て居ります、細かいことは申上げませぬが、方針を一つ集約的な農業にすると云ふことに御變へ願ひたいと思ふのであります、それは今の開拓のやり方を見ますると、大體一町五段か二町と云ふやうな土地を見込んでおやりになつて居るやうでありまするが、其の入植者の要員の「メンバー」、構成は、要するに主として復員軍人だとか、或は海外引揚同胞でありまするとか、或は商業者からの轉落者でありまするとか云ふやうな、割合に農業の經驗を持たない人か開拓團の方にやつて參るやうであります、是は又さうしなければならぬと思ひますが、是等の人々に廣い農耕地を充がつて、農耕地が開拓されるまでは「トラクター」を入れ、或は其の他の助成金で宜しうございますが、將來營農としては、斯う云ふ大きな段別を持たして果して其の勞に耐へ得るや否や、私は斯う思ふのです、大體文化人は二、三「コーヒー」を飯まぬと、どうも何か物足らない、朝新聞を見なければいけない、「ラジオ」は全部聽かなければいけない、そんなことでは、とても開拓された農耕地を完全に移持して行くことは出來ないのであります、先程も申上げました通り、農業と云ふものは如何なる方法に依ると雖も、眞に大地と取組むものである、成程一日や二日は宜しうございますが、毎日明けても暮れても單調な、さうして一年に二作か一作しか出來ないやうなものと取組んで居たのでは、とても長續きはしませぬ、だからやつて居ると、初めの中は宜いのだが、一年經てば半分に減つてしまふ、二年經てば三分の一になつてしまふと云ふやなことで、大抵失敗に終るのではないかと思ふのです、食糧事情が何とかなり、社會の經濟が少し立直つて行くと云ふことになると、又そつちの方に魅力があつて、會社勤めでもした方が宜いと云ふことになつて來る、是はもう人情であります、ですから私はさう云ふ人々に對しては、出來るだけ狹い土地で、集約的に、例へば「トマト」とか、西瓜、「メロン」、さう云ふ方面をやらす、或は養鷄をやらす、豚を飼はすと云ふやうな風で、勞力を常に次から次へ違つた勢力に轉換して行くと同時に、比較的收入も得られるし、さうして未熟な腕でも立派に出來るやうな仕事をやらす、あの開拓團を見ても、熟農の方には殆ど草一本でも生やさないのに、開拓團の方は草茫々と生やして居る、もうさうなつて來ると、水田は宜しうございますが、殊に畑地の問題ですと、少し草に蔽はれますと、もう仕事をする氣にはなつて來ないのです、だから其の點に於て出來るだけ耕地を廣くしないと經濟が成り立たないと云ふやうな公式的な考へ方でなしに、小さい面積で、婦人も子供も「トマト」の芯を摘むとか、間引をするとか、さう云ふ仕事は誰でも興味を持つてやれる、さう云ふ風な集約的な農業をやらせる、此の人達は相當文化程度が高くて、頭が優れて居るのでありますから、さう云ふ方面に創意工夫を凝らすと云ふ風にやると、私は從來の熟農がやるよりも却て成績が上ると考へるのであります、それは勿論北海道の端であるとか、ひどい山間僻地に開拓團を入植させると云ふやうな場合は、集約農業をする色々な條件も整ひますまいが、さうでない、例へば飛行場の跡、軍用地の跡をやつて居る開拓團でも、一方の熟農が一町歩平均を持つて居ないのに、開拓團は二町歩持たして、草を生やかして居る、熟農の採草地もなくするやうなやかましい制限を設けて置いて、一方は草を生やかして居ると云ふやうな矛盾に陷る、是は餘程御考へになつて、御方針を御變へにならぬと失敗する、斯うまあ見て居るのですが、當局の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=75
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076・和田博雄
○和田國務大臣 御話御尤もな所があると思ひます、やはり開拓地の事情、距離でありますとか、其の地帶の經營の要素等で違ふと思ひますが、其の點は一つ考へまして、營農上土地、勞力の無駄のないやうにしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=76
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077・冨吉榮二
○冨吉委員 色々ございますけれども、私は此の程度にして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=77
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078・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それでは田邊君、先日保留になつて居ります厚生大臣に對する質疑をおやりになつたら如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=78
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079・田邊讓
○田邊委員 それでは時間になりましたから簡單に御質問致したいと思ひます、厚生大臣に御質疑致しますが、農村の生活に於きまして、固より慰安とか娯樂とかの問題は色々おやりになられて居りますが、私はもつと重要な、緊急なこととして、農村から結核患者を撲滅すると云ふことであります、是は先般貴族院に於ても質疑が行はれてたやうでありまして、厚生大臣から御答辯になつて居りますが、此の速記録を讀んで見ましたと、唯厚生大臣は、結核に對する劃期的な政策を執りたいと準備して居ると云ふ御答辯であつたやうに思ひます、私は農村の結核に付きましては、實際に色々と體驗をして居ります、私が町長をして居りまして、村の徴兵檢査をやつた時にも、隨分農村に結核患者が多いと云ふので、軍醫から隨分やかましく言はれたことがありました、是は戰爭中に於て殊にそれが多かつたと云ふのでございますが、今日終戰となりまして、戰地へ行つた人、或は工場に於て戰爭中働いて居つた人が、あの實に不潔な中で晝夜働いて、非常に疲れて居るにも拘らず、生産を上げる爲には之も忍んでやらなければならぬと云ふやうなことの爲に、隨分結核患者が多くなつた、由來農村は健康の源泉地であると言はれて居りましたが、今日ではそれが却て都會よりも結核の爲の死亡率が多くなつたと云ふことは、厚生大臣も御諒承のことと思ひます、それは此の保菌者が段々農村に歸つて來て、さうして此の菌をばら撒いて、是が爲に赤十字社とか或は縣の方に於ても對策を講じて居りますけれども、何しろ費用が掛るものでありますから、「ベッド」の數も少いと云ふことで、又農村から斯う云ふ赤十字社の療養所へ行くとか、縣の療養所へ行くとか云ふことになりますと、費用も中々要ります、それが自分の村で療養すると云ふことになれば、無醫村の所も段々あると云ふやうなことで、お醫者まで行くと云ふことになれば、相當の距離があるのに乘物もない、それでは自宅療養をやると云ふことになれば、やはり今日の家庭の經濟から申しまして、又色々の點から中々難かしいと云ふやうなことでございまして、其の爲に段々病氣は殖える一方で、之を撲滅する所の手はない、放置してあると云ふやうな現状であります、之に對して厚生大臣はどう云ふやうな御考へを持つておいでになるか、實際斯うして農村から病人がどんどん出て來ると云ふことになれば、幾ら今度農地改革をやつて農民が本當に燃え上る意氣を以て農村を明朗にし、而も生産力を擧げて農民の地位を安定して行かうと思つても、病氣には敵はない、是がどんどん蔓延して來ると幾ら良い政策を作つても、それをやるのは人間でありますから、先づ以て健康で明朗闊達でなければならない、今のやうに何か知らそこに一沫の陰鬱な所であると云ふのは、此の病氣が多いからである、私は現に自分の村でそれを體驗して居りますが、恐らく全國的にさう云ふことは言ひ得ると私は思ひます、之に付て大臣の御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=79
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080・河合良成
○河合國務大臣 只今農村の結核對策に付て御質問でございましたが、勿論農村も中々結核患者が多いやうですけれども、都市の問題もありますので、是は全國を綜合的に考へて、實は思ひ切つた對策を執りたいと今立案して居る所であります、やはり一番の重點は、豫防の點に置きたいと思つて居ります、それで御承知の通りB・C・G注射の如きは中々效能がありまして罹病率を二分の一、死亡率を八分の一に減じて居ると云ふやうな成績になつて居ります、聯合國側にも此の成績は非常に能く認めて貰つて居るやうな次第であります、それで兎に角之を注射して宜しい人には全部やりたいと云ふことが先づ第一だと思ひます、此の追加豫算に約六百萬圓位提案して居りますが、それで先づ十九歳までの陰性の者全部に其の費用でやれることになつて居ります、あと三十一歳までの者は來年度でやりたい、大體三十一歳までの「ツベルクリン」反應の陰性の者は全部やつてしまはうと云ふことが一番先の問題だと思ふ、私共はなぜ今日までそれがやられなかつたかと云ふことを不思議に思ふ位で、是は來年度豫算では全部やることになつて居ります、尚ほ陰性から陽性に轉化する者に對しては特に特別な注意をしたい、それから其の他一切の豫防に對する細かい色々な施策がありますが、それを竝行してやる、現に石川縣などに於きましては餘程積極的な政策を執つて來た結果、死亡率が餘程減つたと云ふやうな實績も擧つて居ります、石川、富山等北陸地方は濕氣の關係がありまして、中々結核患者が多い方でありますが、中々好い結果を得て居りますので、思ひ切つてやれば相當減ずると云ふ見込を持つて居ります、戰時中色々な問題でさう云ふ點に實は十分手が行届かなかつたのでありますが、今度は健康で文化的な最低生活を政府は保障しなくてはならぬやうなことに憲法でもなつて居りますので、斯う云ふ點には餘程思ひ切つて重點を置いて差支へないと考へて居ります、併し國費、豫算の關係もありますから、何處まで行きますか、是からの問題になると思ひます、尚ほ極めて初期の者或は開放性の結核患者に對する病院の隔離療法と云ふ面に付きましては、日本醫療團を四、五年前設けました時に、約十萬の「ベッド」を目標にしてやりました所が、僅か三萬位しか出來ませぬで、成績が餘り進まないのでありますが、幸ひと申しまするか、國立の陸海軍の病院が今度非常に餘つて參りました、只今は主に引揚者、復員者の方で使つて居るのでありますが、此の方が大體片付きますと、順次結核患者の方にも相當當てられる、只今其の「ベッド」の數は約三萬ありますから、合せて約六萬と云ふものが使用出來るのであります、十萬と云ふ計畫に對して六萬でありますから、まだ不十分ではありますけれども、相當の増加を致します、之に對する病院の施設、日本醫療團の施設は御承知の通り巧く行つて居りませぬ、只今は非常に病院が空いて居ります、是は甚だ殘念なことで、經營上の點もありますし、資金もなくて困つて居ると云ふ點もあつて、是も豫算に二千萬圓ばかりの助成金を提案する積りになつて居りますが、是が巧く行かなかつた原因は、食糧の問題が殆ど大部分でありました、御承知の通りの食糧事情だつたものですから、最も榮養を必要とする患者には中々届きませぬので、此の點は段々食糧問題が樂になつて參りますと同時に解決したい、私は斯う云ふやうな社會的に最も缺けて居ると申しますか、最も榮養を要する人には餘計行くのが本當だと思ふ、言葉を換へると、私は一つの最低生活に達するのが目的でありますから、餘程缺陷の多い方へは餘計入れなければ此處へは達せぬと云ふやうな考へも持つて居ります、兎も角特別に弱つて居る人、特別に保護を要する人には特別に保護しなければいかぬのではないかと云ふ考へを持つて居ります、何處まで斯う云ふ點に重點を置けるか、兎に角今後は食糧問題の解決と共に、さう云ふ食糧難から病人が病院に入れぬと云ふことは、何とかしなければならぬと思ひます、さうして日本醫療團に對しても相當改革を致し、十分結核患者を收容出來る方途に進みたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=80
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081・田邊讓
○田邊委員 只今是非とも「ベット」の數を増して貰ふことと、榮養の足らないことに付ての御答辯がありまして滿足致します、是非やつて戴きたいと思ひます
もう一つ御尋ね致したいのは、只今農村が困つて居るのは青年の處置であります、是はどう云ふことかと申しますと、是まで前線に居つた人達が段々還つて來まして、何かやりたい、何かやらなければならぬが、何もやれないと云ふので毎日ぶらぶらして居ると云ふことが、詰り下等下劣な演藝會をやつて寄附金の強要をやつたり、又尖鋭過激の考へで政治運動に携はつて見たり、又不良團に入つて警察に擧げられる人があります、斯う云ふことで私は日本の將來を負ふ中堅青年を此の儘にして置いてはいけない、之に付ては厚生省としては就職に付て是非とも手を打つて貰はなければならぬと思ふ、是が幾ら農業をやるからと云つて、農村に歸りましても今は農地がない、殊に斯う云ふやうに農地制度の改革を行ひますと、土地が欲しいと云つても自由勝手に作る譯に行かない、農家にはもう相當手があります、と云ふのは、此の前疎開でどんどん地方に來た人あたりが、來て見れば百姓をすると云ふことは生易しいものではない、最初は生活に困るから食糧を作らうと云ふのでやつて見るが、到頭やれ切れないで逃出す人が居る、唯農業と云へば簡單のやうですが、そんな生易しいものではない、況や疎開して來た人などには出來ないし、又農村の人であつても、青年などは百姓をしようとは思はない、何か會社にでも使つて貰ひたいと云ふ人が多い、私の所にも段々さう云ふ人が相談に來まして、隨分炭礦あたりに心配してやつたが、多くは坑内に入らないで、事務員を希望する、炭礦では坑内に入る稼働者を要求して居るのだが、學校を出て居る者はそれを嫌ふと云ふ譯で、中々心配が行届かない、隨分私の村でも困つた事情がある、是等は戰時中動員署あたりが徴用工を世話されたやうに、やはり政府が青年に職を與へてやらなければ、何と云つても人間は食はざればどうしても思想が惡くなる、働かしてやれば、やはり人間は思想が良くなつて來ると云ふことは理の當然であります、之に付て厚生大臣の本當の御信念を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=81
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082・河合良成
○河合國務大臣 農村方面のさう云ふ失業者に對しましては、農林省を中心にして色々な積極的施設、或は公共事業などもやりますし、それから一般の産業の面としては、石炭の増産其の他政府で積極的に實は考へて居ります、尚ほ其の他餘つた人員に付きましては、厚生省補導所、共同作業所其の他に收容して、出來るだけさう云ふ人に職を與へ、積極的に日本の再建に資して貰はうと云ふことを根本的に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=82
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083・三浦寅之助
○三浦委員 關聯して人口問題に付て伺ひたい、御承知の通り、敗戰後問題になつて居る若い女の中には、商賣人の女ばかりでなく、良家の子女も相當ありまして、最近に於ては身の振り方に非常に困つて居る女が多い、斯う云ふことは從來の墮胎と云ふことになると、母體を保護すると云ふ觀點からのみ行はれて、絶對に禁止されて居つたけれども、敗戰後の特殊事情として、さう云ふ若い女の將來の身の振り方、或は今後の日本の人口問題等、色々な點から考へて、女子の妊娠の問題に對して、當然何等かの處置──墮胎の方法を講じなければならぬ情勢下にあると思ふのであります、多くは説明しませぬ、御分りだと思ひますが、之に對する處置に付て厚生大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=83
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084・河合良成
○河合國務大臣 私も多くは申上げませぬが、適當な方法、適當なことでやりつつあると云ふことを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=84
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085・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午後は一時半から再開することと致しまして休憩致します
午後零時二十四分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=85
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086・会議録情報2
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午後一時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=86
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087・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午前に引續き會議を開きます、質疑を續行致します──松本六太郎君──缺席──豐澤豐雄君──缺席──山本武夫君──缺席──それでは御缺席の諸君は一應棄權されたものと認めて、他の機會に於て適當に取計らふことに致したいと思ひます──それでは山口好一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=87
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088・山口好一
○山口(好)委員 本法に付きましては、今までの質問者から諸問題に付て質疑がなされまして、大分盡したやうでありまするが、尚ほ私が疑問と致しまする點を御伺ひ致したいと思ひます
第一に、今までの質疑者からも、本法が憲法違反になりはしないかと云ふやうな質疑があり、之に對して農林大臣は簡單に御答へなされたやうでありますが、是は中々さう輕率には行かないのではないかと思ふのであります、併し私は本法の終局の目的に付ては大體に於て贊成を致して居るのであります、否寧ろ此の法律が將來完全に行はれるやうに希望致して居るものでありまするが、我々の所屬する自由黨内に於きましても、殊に今度の憲法改正に委員長として携はりました芦田氏なども、此の點に付て心配を致して居るのであります、現在としてよりも、寧ろ將來に於て憲法違反と云ふ問題が起きはしないか、此の法律が憲法違反ではないかと云ふやうなことが將來に於て起つて爭ひの種になつたならば、宜したないことであると云ふので、心配をして居る向もありますので、此の點を私も篤と伺ひまして、尚ほ十分御研究を願ひ、御考慮を願ひたいと思つて居る次第であります、成程現行憲法に依りますれば、第二十七條に「日本臣民は其の所有權を侵さるることなし、公益の爲必要なる處分は法律の定むる所に依る」と、唯斯うしてありまして、公益の爲め必要なる處分は、法律を以て定むれば是が出來るのであると云ふやうな解釋にもなるのでありますが、やはりそこには條件がありまして、「公益の爲必要なる處分」と云ふ風になつて居ります、さうしますれば、今度の此の農地調整法に於ける改正は劃期的なものでありまして、斯樣なる人の財産權を政府の一方的な行爲に依りまして、定めに依りまして、處分する法律は日本に未だ曾てないのであります、買上價格の點に付ても、政府の今度の案と致しましては、一方的に定めた價格で強制的に之を買上げるやうになつて居るのであります、更に其の目的は、成程大きく見ますれば、農村に於ける民主化と云ふ大目的に向つて居ると云ふ意味に於きまして、公益の爲と云ふことが言へるかも知れませぬが、政府が之を買上げまして、更に個人に賣渡すと云ふことに相成りまするので、必ずしも是は公益の爲と率直に、直接的には言へないことになるのではないかと思ふのであります、斯く申すと思想が古いと云ふやうに言はれるかも知れませぬが、我々は進んで此の社會情勢を考へると同時に、又退いて斯くの如き制度に付きましては、よくよく保守的と云ふやうな意味ではなしに、能くじつくりと又退いて考へる必要がある、左樣な意味に於て此の問題を取上げて能く考へなければならないと思ふのであります、而して此の民主主義的な所有權に對する、財産權に對する最も進んだ考へ方と致しましては、今度の改正憲法の條章に之を見ることが出來ると思ふのでありまして、今度の改正憲法の第二十七條に依りますれば、「財産權は、これを侵してはならない、財産權の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」、更に第三項に「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることが出來る」、斯う云ふ規定でありまして、現在竝に將來と致しまして、憲法上我々が私有財産を考へる場合には、今度の修正憲法にありまするやうな考へ方を以て行かなければならないと思ふのであります、さうしますると、今度の憲法の第二十七條の──修正の箇條では第二十九條になつて居りまするが、其の第三項に「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることが出來る」と云ふやうになつて居るのであります、先づ以て「公共のため」と云ふ其の目的を示し、更に之を公共用に用ひる爲には、そこに私有財産の所有者に對して正當なる補償がなされなければならない、斯う云ふやうに相成つて居る次第であります、此の憲法の財産權不可侵に對する精神から見まして、私は本法は端的に公用に供するものである、公共の爲に之を用ひるものであると云ふ點に於て疑點があると同時に、「正當な補償の下に」と云ふ、此の買上價格の點に付ても疑問なき能はないのであります、此の「正當な補償」と云ふ言葉の中には、やはり其の時代に即し、其の時に於て所謂時價に見積られたる所の價格、所有者が其の時に於て正當なりと思料せられ、又一般が此の價格を以て先づ現在に於ては正當であるとする、此の財産の所有者竝に一般の輿論に於きまして、やはり正當な補償であると云ふ風な實質的なものを持たなければならないのではないかと思ふのであります、今日農村を見ますのに、成程小作人の人々は安く土地が買へると云ふので喜んで居る向もありますが、實際の氣持を聞きますのに、是では餘り地主さんにも可哀想だ、酷いと云ふことは、一般小作人も之を認めて居る所であります、法の根據を繹ねますのに、元來があの賃貸價格なるものは、租税法に基きまして、税務署の役人が各土地に付て實際の精密なる調査をして定めたるものではなく、寧ろ杜撰なるものなのであります、遠くの方から遙か彼方を眺めまして、あの土地は少し濕つて居るから賃貸價格が低い、こちらは少し高いと云ふやうなことで、大體の所謂見當を以て古く定めたるものであるのであります、此の賃貸價格を基礎に致しまして、田は四十倍、畑に付ては四十八倍と云ふやうなことで買上を致さんと致すのでありまして、是は何處に其の正當なる補償と云ふ根據を見出し得るか、どう云ふ御氣持で農林大臣は此の價格を正當なりと致さるるのか、此の點がはつきり致しませぬと、將來に向ひましても、此の強制買上は適法でない、憲法に違反するものではないかと云ふやうな議論が生じて來るのではないかと私は思ひます、時間もないので、細かい具體的な價格の問題は申上げませぬが、我々が一般觀念として、常識と致しましも、低いと云ふことは分るのでありまして、實際に行はれまする田畑の賣買に於きましては、一段歩に付て安くても千圓或は二千圓と云ふ賣買價格を以て實際は取引されて居るのでありまして、是が一町歩に付て奬勵金も加へまして約千圓位であると云ふやうなことに相成るのでありましては、一般社會通念から申しまして、是は到底正當な補償と云ふ風には言へないと思ふのであります、斯くの如く公共の目的と云ふ點と正當な補償と云ふ點に於きまして、大いに此の法律は憲法上から見て疑義があると思ひますので、此の點に付ての農林大臣の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=88
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089・和田博雄
○和田國務大臣 憲法の問題に付きましては、慥か貴族院で同樣の御質疑に對しまして主務大臣から御答へがあつた譯であります、是は此の前農地調整法を出しました時も、憲法違反ではないかと云ふことがあつたのであります、其の時に慥か松本國務相が、是は憲法違反ではない、公益事業と云ふものの中には自作農創設事業と云ふものは入るのだ、斯う云ふ解釋をして居るのだと云ふことを述べられたのであつて、今囘も土地を買取ると云ふのは、何も土地を買上げて政府が儲けると云ふやうなことでなく、是は自作農創設事業と云ふ公共の用に供する爲に之を買ふのでありまして、其の點に付ては新憲法に於きましても憲法違反にはならないと考へるのであります
それから價格の點でありまするが、是は正當な補償と言ひます時の價格が唯時價に副ふかどうかと云ふことでは判定出來ないのでありまして、其の土地の價格が土地の生産力と云ふものを正當に反映して居るかどうかと云ふ見地から見なければならぬと思ふのであります、隨て只今の所に於きましては、是は土地の生産力と云ふものを正確に表はす標準になるものは賃貸價格であります、勿論其の賃貸價格だけに依りまして之を決めますことは、或は賃貸價格が非常に低いとか、又其の他の事情で賃貸價格のないもの等もありますので、それ等を考慮致しまして、土地の標準價格が實情の生産力に合ふやうに、それを補正出來るやうに、例へば地方長官の認可であるとか、又は農地委員會の申請に依る認可を認めて居るのでありまして、是は價格其のものに付てはやはり正當な補償をなして居る、斯う云ふことが言へるのではないか、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=89
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090・山口好一
○山口(好)委員 是は結局見解の相違になりますので長引くと思ひます、左樣な御考へ方からで憲法違反にならない、斯う云ふ風な御考へのやうでありますが、尚ほ其の點は十分御研究を願ひたいと思ひます、尚ほ他の方からも此の點に付ては後に御質問があるやうでありますから、私は唯しつかりと御研究を願ひたいと云ふことに致しまして此の點は打切ります
それでは問題が變りますが、今般の農地制度改革は、農民の心理にも所謂百八十度の轉囘を示唆するものであつて、必ずや農村民主化に役立つものであることを私も確信を致します、所が元來農村の人々は民主主義と云ふことには最も遠い人々であります、其の最も遠い農村に第一に民主主義の理想の實現を圖らんとする此の立法が行はれることになつたのでありまして、それだけに此の實施に付きましては幾多の困難が存在することを、我々としても深く考へなければならないと思ひます、唯今日農村を廻つて觀察致しまするのに、大體地主は此の法律に對しましては一種の諦めを以て之を眺めて居りますが、更に進んだ人々は之に率先協力を致さうとする傾向も見えるのでありまして、結局農村に於きましてのそれ等の地主階級と云ふものは、やはり農村に於ては大事な理解者であり指導者であると云ふことを、我々は看取しなければならないのであります、彼等は從來の地位、特に先祖傳來の土地を、現在の貨幣價値から申しますれば殆ど算盤に合はない價格を以て提供する犧牲を敢て忍んで致さんとして居るのであります、而も中には進んで之に協力し、之を指導せんと云ふ心意氣を示して居る人もあります、此の大きな犧牲に對しまして我々竝に政府當局は、今後此の法律の實施に當りましては、其の目指す農村の民主化を最高度に實現し得るやうに、指導を誤らざるやう十分の努力を致さなければならないと深く考へるものであります、換言致しますれば、少くとも農村の人々の生活を町の人々の生活「レベル」にまで高めまして、其の生活の中に科學と文化を採入れ、社會的な知識に於きましても、其の他の思想的な部面に於きましても、大いに進歩を致させなければならないと思ふのでありまして、要は昔の如く朝に星を戴き夕に月を踏んで粒々辛苦、精根盡して働けども困窮を免れ得なかつた所のあの農村の状態を再來せしめてはならないと思ふのであります、今日農村の人々は此の法律に對しましては或る程度の心構へが出來たと思ひます、唯茲に農村で非常に不安に思つて居りますのは、只今申しました通り、折角自作農を確立して我我が一生懸命働いても、其の結果として我々の受くべきものは又元の如き虐げられた農村の生活ではないだらうか、即ち食糧事情が好くなつて、或は平和條約が結ばれ、或は其の前に食糧の輸入と云ふやうなことが正式に致されるやうになつて、此の食糧品の價格も安くなつたと云ふやうな場合、我々の頭、我々の知識としては、やはりあの元の悲慘な境遇に陷らなければならないのではないかと云ふのが、農村の人々の頭に此の法律よりも更に重く覆び被つて居る問題であるのであります、故に私は此の點に付て、今日此のやうな犧牲を拂ふことになり、又過去に於ても苦心慘憺致しまして働いて來て居ります此の農民に對して、農林大臣から斯樣な約束の言葉を全部に對して與へて戴きましたならば、現在の農民の心に如何ばかり安堵を與へることが出來るかと思ふのであります、即ち農民に向ひまして、君等が勤勉に働き且つ今次の農地制度の改革に協力をする限り、過去の如き不遇なる境遇に諸君を陷れることはない、我々としては其處に向つて十分な努力を拂ふと云ふことを、農村民に向つて宣言致して戴きたいと思ふのであります、此の點に付ての農相の御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=90
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091・和田博雄
○和田國務大臣 私も是非農地の改革に凡ゆる面から協力して戴きまして、實際の農村の生活が向上致します爲に各種の施設と云ふものがそれを基礎にして行はれると云ふことに付ては、今後是非とも最善の努力を致したいと思ふ次第であります、何と言ひましても農村が良くなります爲にも、農村に本當の力が出て來ないとどうしてもいけないのでありまして、それで農業にはやはり生産力を高め、農村に力を持たせて行くことが第一と考へますので、是非其の點に付ては色々な施設を今後ともやつて行きたい、と斯う考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=91
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092・山口好一
○山口(好)委員 次に農村の今後の荒廢を防ぐ爲に農村の工業化が提唱されて居りますが、此の點に付て具體的な農林大臣の御方策がありましたならば、茲で御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=92
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093・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付ては今まで屡屡御答へ致した譯でありまして、各種の工業が考へられる譯でありますが、急激にさう云ふものを方々に持つて行くことは、資材其の他の點で出來ませぬが、今の條件で許します範圍に於ては、例へば製品にしましても、農村方面に於きます色々の電化事業にしましても、之をやつて行く考へで準備を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=93
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094・山口好一
○山口(好)委員 次に是は農村民ばかりでなしに、一般に取つて最大な關心事でありまして、今までも總理大臣などに對して質問がありましたが、今度憲法も改正致されまして、是が公布實施致されましたならば、必ずや平和條約が締結に向つて一歩を進めることになりますので、此の平和條約の締結に付ては、日本全國民が非常なる關心を持つて居りますが、是は又農村とも非常な深い關係があると思ひますので、現状から見まして、農林大臣の御考へとしてで結構でありますが、此の平和條約は何時頃結ばれるであらうか、其の豫想が見られましたならば、御示しを願ひたいのであります、又もう一つとして、平和條約が結ばれる前に於ての國内の食糧事情の眞の解決の爲には、食糧の正式な輸入を得ることが必要であると思ひますので、平和條約の締結前に於ても、之に拘らず食糧輸入の問題を正式に締結する御計畫がありますか、又さう云ふ努力をなされて居りますか、其の點御答へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=94
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095・和田博雄
○和田國務大臣 講和條約が何時出來ますか私よう申上げることは出來ませぬが、出來るだけ早い機會に結ばれることを私も望んで居る次第であります、それから輸入食糧に付ては、目下其の話を各方面と致して居る次第でありまして、析角努力中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=95
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096・山口好一
○山口(好)委員 或は重複するかも知れませぬが、現行法は小作料の金納を原則として、其の但書に於て、物納も時に依つては認めると云ふ風になつて居るやうでありますが、物納と金納と半々に、之を二本建にして認めて行くと云ふやうな御考へはありませぬでせうか、農村を廻つて色々と意見を聽きますのに、物納と金納と半々に致すことが出來たならば、小作人にも地主にも非常に便利であり、公平であると云ふことが言はれ、且つ實際状況から申しまして左樣であると思ひます、法律の原則的建前として、物納及び金納の二本建にすると云ふことは御考へになつて居りませぬでせうか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=96
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097・和田博雄
○和田國務大臣 只今の所、其の點に付きましてはやはり現行法通り、原則として金納と云ふことに致す考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=97
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098・山口好一
○山口(好)委員 それでは物納の點は、當事者、小作人及び地主が合意の上で物納にすると云ふのは差支へありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=98
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099・和田博雄
○和田國務大臣 當事者が合意で物納にすることは出來ませぬ、小作料は金納と云ふことでありまして、唯辨濟期に於きまして、小作人が物納をすると云ふことを申出まして、地主が承諾した場合に初めて、物納になるのであります、當事者が合意を以て物納にすると云ふことは出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=99
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100・山口好一
○山口(好)委員 小作人が物納を申出て、地主が之を承諾すれば出來る、一般的ではなしに、個々と云ふ場合、斯う云ふ譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=100
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101・和田博雄
○和田國務大臣 一般的にはなし得ないのでありまして、而も辨濟期以前に於てさう云ふ豫約をすることは出來ないのであります、小作料を拂はなければならない時期が來ました時に、小作人が物納を以て拂ふ、それを地主が承諾する、斯う云ふ場合でありまして、物納を原則的に一般に許して居る譯ではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=101
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102・山口好一
○山口(好)委員 次に農地調整法と土地の交換分合の問題であります、措置法の中には交換分合の規定がありますが、實際農村を廻つて見まして、農民は此の際として是非交換分合もやり、完全な、本當に便利の宜い、能率の上る耕地を持ちたいと云ふのが其の要請であります、此の點に付ては、此の際でなければ出來ないのだと云ふ認識を農民も持つて居りますので、此の規定を見ますと、勿論不十分な點もありますが、農林大臣に於かれては農村の要求に應へまして、彼等の要求する面に向つて、十分それを擴大強化して行く御考はないのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=102
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103・和田博雄
○和田國務大臣 交換分合の點に付きましては、御話のやうに今日は非常に好い機會でありますので、是等の規定を十分活用致して極力やりますと同時に、將來の問題としても、協同組合其の他の力に依りまして、交換分合と云つた事柄に依る經營面の改善と云ふことは是非圖つて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=103
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104・山口好一
○山口(好)委員 それから各土地を廻つて見ますのに、耕地が少く、却て山林が多いと云ふやうな地方もありますが、今度の農地調整法に依つて非常に惠まれる、即ち大地主がそこにあつて、今までの小作人が非常に惠まれると云ふ土地もあります、又耕地の狹小な地方に於ては必ず其の反對に、山林などが多いのでありまして此の山林に付て農林大臣としては耕地問題と同樣に、一部の人が澤山の山林を持つて居ると云ふことではなしに、之を分割して、平均に持たしめると云ふやうな御考へはございませぬでせうが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=104
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105・和田博雄
○和田國務大臣 山林其のものを農地と同じやうに均分すると云ふ考へは、今の所私持つて居りませぬ、唯今囘の農地調整法及び自作農創設措置法に於きまして、市町村の農地委員會が開墾適地として未墾地を認定致しました場合には、國家が之を買上げて、それを結局地元の人達の開墾の用に供すると云ふことも出來るやうに致しまして、さう云ふ面から耕地が非常に少くて、而も山林がある、其の山林が開墾に適すると云ふやうな所は、之を耕地に致したいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=105
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106・葉梨新五郎
○葉梨委員長 山口君、時間が經過致して居りますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=106
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107・山口好一
○山口(好)委員 それでは最後に司法省の方の質問を簡單にさせて戴きたいと思ひます
農地調整法に依つて整理された土地に付て、更に相續問題などに依つて土地細分と云ふ結果を招來して、結局生産を阻碍し、農民を農奴化すると云ふやうな弊害を生ずることになると思ひます、此の點に付ては司法大臣から本會議に於て答辯もあつたやうでありまするが、現在に於てどう云ふ法律を以て之を規定せんとして居るか、それを御伺ひ致したい
それから此の農地調整法施行の結果、登記所の仕事が非常に増大すると思ひまするが、どのやうにして之を簡素化して行くか、其の點を伺ふと同時に、私は登記所を始終見て居りまするが、登記所の職員が所謂縁の下の力持で孜々默々として、複雜且つ正確な記録を要しまする極く細緻な仕事を致して居ります、此の登記所職員に付ては待遇其の他が惠まれないものがあるのであります、民主主義に於ては、斯くの如く默々として國家の爲に働いて居る人を一層引上げてやる必要があるのではないかと思ひます、其の仕事も非常に重要なのであります、聞く所に依りますると、此の登記所の書記と云ふものは、通常の場合には監督書記になれないと云ふやうな内規があるさうであります、即ち事件の立會をやつた書記でなければ監督書記には致さないと云ふ内規があるさうでありまするが、左樣なことでは甚だ以て宜しくないことと存じまするので、是等に付ても待遇を改善し、又樞要な地位に就き得るやうな途を開いてやることが必要であると思ひまするが、民事局長の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=107
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108・奧野健一
○奧野政府委員 只今土地細分化と云ふことに付てどう云ふ方策を持つて居るかと云ふ御尋ねであまりすが、一般的に農地の細分化を防止する方法に付きましては、農業政策の關係から特別法のやうなものを制定することが最も適當であらうかと考へまして、其の點は農林當局とも能く協議を致して研究致したいと考へて居ります、尚ほ民法改正の結果、相續に依る土地の細分化、即ち相續の均分化に依つて農地が細分される虞があると云ふことに付てでありますが、此の點に付ては、目下民法改正の基礎をやつて居りますので、十分考慮致したいと考へます、即ち相續に依りまして遺産が相續人の間に分割されると云ふことに相成ります場合に於きましても、是は必ずしも現物それ自體を分けると云ふのではありませぬので、所謂分割と申しましても、色々な分け方がある譯であります、例へば相續人の中の一人に其の事業の經營等をやらせまして、他の者は其の事業の收益から配當に預かると云ふやうな約束にして置く、斯う云ふやうなことも出來まするし、又民法改正案に於きましては、裁判所は、特別の事情がある時には、一定の期間は遺産の全部又は一部に付て分割を禁止することが出來ることも考慮して居ります、又更に遺言を以て被相續人は分割を一定の期間禁止することも出來るやうに致したいと考へて居ります、要するに遺産の分割と云ふことは、其のもの又は其の相續財産の權利の種類、性質、或は又相續人の職業、其の他一切の事情を斟酌して分割すると云ふことに相成りまするので、必ずしも現實に其の土地を細分すると云ふことのみを分割と云ふ風には考へて居らない譯でありまして、色々の方法に依つて農業の經營に付て支障のないやうな途を考へたいと思つて居ります、併しながら最も適當な方法としては、農業政策の建前から民法とは別個に或る特別法を作られることが最も適當かと考へる譯であります
次に本法の施行に依りまして登記事務が激増するが、それに對してどう云ふ風に處理するか、又登記所の職員の待遇等に付て改善の方策如何と云ふ御尋ねであります、御説のやうに、本法施行の曉は、農地に關する登記事件は相當な數に上ることが豫想されますので、司法當局としては之に對處する爲に、本法に依る權利の移動に關する登記に付きましては、特例を設けまして、登記事務を出來るだけ迅速に處理出來るやうな案を只今練りつつある譯であります、即ち登記の申請に付きましては──或る一定の同種類の登記の申請事項に付きましては、一擧に集團的に處理し、出來るだけ迅速に登記事務の捗るやうに致したいと考へて居る譯であります、尚ほ之に對應しまして、登記事務の増加に基いて登記官吏の増員と云ふことは是非圖りたいと考へて居ります、尚ほ登記官吏が仰せのやうに、所謂縁の下の力持的な事務に追はれて居りますので、若しそれ等の人々の待遇が他の職員に比して惡いと云ふことでは、是は甚だ宜しくないのでありまして、此の點に付きましては仰せの御趣旨に副ひますやうに、出來るだけ其の待遇の改善と云ふことに付て我々當局と致しましては努力致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=108
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109・山口好一
○山口(好)委員 以上で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=109
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110・葉梨新五郎
○葉梨委員長 午前中保留になつて居りまする、耕地に對する強制執行權の問題に付て、政府の御見解が若し一定して居るのであれば、此の際御答辯願つたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=110
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111・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、今朝程三浦さんから御質問のありました、自作地に對する競賣の點でありますが、競賣はやはり出來る譯であります、さうして競賣に依つて競落人に落ちる譯でありますが、其の點に付ては、やはり所有權の移動問題となるので、現在の法律で行きますと、第五條に依つて地方長官又は市町村長の認可を要する、斯う云ふことになつて居ります、其の點に付ては司法省と打合せまして、さう云ふ通牒を慥か出して居る筈であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=111
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112・三浦寅之助
○三浦委員 私の質問した問題が出ましたので、此の際緊急な質問を御許し願ひたいと思ひます、それは實際問題としまして、岐阜縣の六八練兵場の耕地の問題でありますが、此の耕地が終戰後岐阜縣在住の遺家族、傷痍軍人、或は職業軍人の一部の約四十名現在八十名になつて居るのでありますが、是等の人々が地方世話部、即ち元聯隊區司令部の補導會の斡旋で、縣の農務課と地元農業會、此の三者が協議の結果、此の六八練兵場の耕地を地元農民に半分、殘りの半分を遺家族、傷痍軍人、職業軍人に貸下をすると云ふことになりまして、是等の人失が貸下を受けまして、十二月から現實に農耕を始め、六月農地實行組合を組織して耕作して居つたのであります、所が最近になりまして地元の農業會が、現に耕作して居る土地を地元農民に再分配しろと云ふやうなことで、土地取上を協議し、さうして次の麥作をする時から之を取上げようと云ふ所の協議をして居るのであります、之に對しまして岐阜縣當局が是は國家の方針に反しない限り干渉はしない、其の爲には現に耕作して居る所の此の氣の毒なる遺家族や傷痍軍人、復員軍人の人人が餓死するも仕方がないと云ふやうな、非常な冷淡な態度を取つて居る爲に、現に權利を持つて耕作して居る是等の氣の毒なる人々が非常に困つて、少し騷いで居るやうな次第であります、それで御聽きしたのでありますが、斯う云ふやうに、現に貸下をして使用して居るやうな場合には、是等の現に使用して居る所の土地を、即ち遺家族や傷痍軍人、職業軍人等から直ちに取上げると云ふことが出來るかどうか、又斯う云ふやうな方針を御執りになつて居るかどうかと云ふことに付て、當局の御答辯を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=112
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113・和田博雄
○和田國務大臣 岐阜縣の問題は私まだ伺つて居りませぬが、舊軍用地で農耕に適しますものに付ては、前々御説明致しましたやうに、營團或は農業會を事業主體として開發させて居る次第でありまして、それ等の土地の將來自作農として入植致す者は、地方長官が資格を十分審査し、地元のそれぞれの事情を考慮して入植させて居る譯であります、御話のやうに、既に地方長官が地元の農業會なり何なりと話合つて入れましたものに付ては、さうして又現に耕作中だと云ふものに付ては、さう簡單に其の方針を其の後重大なる變化があれば別でありますけれども、さう云ふ變化がないのに、さう云ふことをやることは私は適當でないと思つて居ります、隨てさう云ふやうにやれと云ふことをこちらから指示したことは、恐らくないと思ひます、開墾地は御承知の通り非常に土地が劣惡であり、其處に入ります人は、復員者なり或は餘り農業に熟練でない人もある譯であります、又さう云つた人に職を持たせると云ふ意味から言つても、開墾は必要でありますが、さう云ふ人が入つた場合には、現在能力がないからと云つてどう斯うすると云ふことはどうかと思ふのでありまして、やはりそれに對しては相當の指導をし、相當の土地を貸して、將來營農者として立つて行けるやうな方針を國としては講じたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=113
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114・三浦寅之助
○三浦委員 それに關聯するのでありますが、さう云ふやうな軍用地の分配を地元の農業會に一切一任すると云ふ譯ではないと了承して差支へありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=114
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115・和田博雄
○和田國務大臣 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=115
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116・三浦寅之助
○三浦委員 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=116
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117・上林山榮吉
○上林山委員 山口君の質問に關聯があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=117
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118・葉梨新五郎
○葉梨委員長 上林山君はどう云ふ點が關聯するのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=118
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119・上林山榮吉
○上林山委員 憲法の問題で、今の大臣の答辯が腑に落ちない點と、やはり憲法問題に關聯するのでありますが、買收令書を出し得る法的根據であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=119
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120・葉梨新五郎
○葉梨委員長 上林山君に御相談致しますが、逐條審議の折に法律的に專門の政府委員の出席を得てやられた方が、目的を達成する上からも宜からうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=120
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121・上林山榮吉
○上林山委員 どちらでも宜しいのですが、關聯して居りましたから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=121
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122・葉梨新五郎
○葉梨委員長 それなら其の機會に願ひます、政府委員が貴族院との都合もあつて中々手が足らないやうでありますから、大臣の答辯された點だけに付て簡單に一つ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=122
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123・上林山榮吉
○上林山委員 私は此の前から申しますやうに、勿論此の法案が政治的な意味に於て一、二のものを除いては議論の餘地がないものであると云ふやうに了解し、寧ろ進んで之を支持したいと云ふ考へを持つて居るのであります、併し之を法律的に見ますと、多くの疑問が介在するのであります、此の問題に付て掘下げてもう少しく伺つて見たかつたのでありますけれども、時間の關係或は山口君の御話などもありましたので簡潔に申上げますが、農林大臣は、松本國務大臣より議會に於て、是は公共の用と云ふ意味に於て自作農も含むのだ、斯う云ふ答辯があつたから、決して憲法違反ではない、斯う云ふ風に答辯されたやうであるが、それでは何等立法理由にもならないし、私共ははつきりと憲法違反ではないと云ふ意味を掴めないのであります、法律所管の大臣ではないと致しましても、此の法案は最も重大な法案でありますし、私は憲法實施後或は本案實施後に必ず訴訟が起ると云ふことを考へて居る一人でありますので、此の點を出來るだけ無難に終らしむる爲に、もつと正確なる憲法違反でないと云ふ根據を御示し願ひたい、所謂法律上の意味に於ても疑問がある、之を質して置きたいと私は考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=123
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124・和田博雄
○和田國務大臣 其の點に付ては何れ司法省なりから詳しく御説明致しますが、私は、自作農創定と云ふ事業は公共の事業である、斯う考へて居りまするし、又明示して居ります、隨ひまして新憲法に於きましても、それから只今の憲法に於きましても、憲法違反ではない、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=124
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125・上林山榮吉
○上林山委員 勿論今まで執られた意味に於ける自作農創設であつたならば、私は決して憲法違反ではないと考へる、それは公共の用であるなしに拘らず、さう云ふ風に理解するのでありますが、今囘のものを見ますると、國家が強制的に之を買收すると云ふ點から言ひまして、而もそれは個人の用に供して居る、斯う云ふ意味に於て公共の用とは必ずしもならない、斯う云ふ風に考へるのでありますが、もう少し率直にどう云ふ風に御考へになつて居りますか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=125
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126・和田博雄
○和田國務大臣 土地は自作農創定事業と云ふ公共の用に供するものであつて、其の土地が個人に渡るのであります、事業其のものに付ての公共性と云ふものは、此の前の自作農と雖も同じで、結局は個人に渡る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=126
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127・上林山榮吉
○上林山委員 是は何れ改めてもう少し掘下げて質問したいと思ひますから、其の際發言を御許し願ひたいと思ひます、之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=127
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128・吉澤仁太郎
○吉澤委員 民事局長が折角御出席でありますから、曩に御質問のあつた立入禁止の問題に付て局長の御意見を承りたいと思ひます、一昨日の本委員會に於ける民事局長の立入禁止の問題に關する御答辯は私了解しにくい點がありますから簡單に御伺ひしたいと思ひます、數度の御答辯中に、所有權は絶對的のものでない、耕作權と竝行して行かなければならぬ、詰り立入禁止は、耕作者が耕作權を侵害される場合に於てはなされるが、所有權の場合立入禁止は、不當であるかの如き御答辯があつたやうに承りましたが、私はやはり普通の場合ならば、所有權必ずしも絶對的のものでない、現在の土地に對する耕作權は、或る程度認めなければならぬ、是はやはり竝行的に進むべきものであると思ふが、例へば或る年に凶作に見舞はれた、其の場合に減免問題が必ず生じます、さう云ふ時に小作者と地主の間に協定が出來れば別でありますが、若し不當の要求と認められる程度の要求があつた場合に、地主は之に應じなかつた、つい繋爭が起きて、それが爲に地主は土地取上を請求したと云ふ場合には、次年度の耕作者に對する立入禁止をすると云ふこともあり得ると思ひます、又今後農地法が制定されまして、大體耕作權が非常に重く見られると云ふことになると、やはり其の間に乘じまして、或は小作料の滯納、若しくは耕作權の確立と云ふ非常に惠まれたる位置を利用して、土地に對する耕作の熱心さを失ふ、斯う云つた場合は、或る程度小作者と話合つても分らない、結局耕地の返還を求める、或は之を他に轉作せしめると云ふ場合があつても、小作者が應じない場合には立入禁止をすると云ふこともあり得ると思ひますが、民事局長の御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=128
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129・奧野健一
○奧野政府委員 御答へ致します、此の前私が申上げましたやうに、所有者と雖も小作權が現存して居る場合にありましては、其の耕作地は小作人の占有にある譯でありますから、地主と雖も濫りに其の占有にある小作地に立入る權限はないと考へます、さう云ふ場合に於きましては、小作權擁護と云ひますか、さう云ふ意味で地主が小作地に立入ることを禁止する所の假處分を求めると云ふ事案が相當にあるやうに考へます、それと同事に、小作人の方で債務不履行なり色々なことに依りまして、既に小作權が消滅してしまつて居る場合には、小作人の方では其の耕地を占有し、或は耕地で收益する權限がない譯でありますから、さう云ふ場合に於きましては、地主の方で小作人が其の耕作地に立入ることを禁止することを求めると云ふ、立入禁止の假處分もある譯でありまして、要するに、小作人の方から地主の立入禁止を求める場合もありまするし、地主の方から小作人の立入禁止を求める場合もある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=129
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130・吉澤仁太郎
○吉澤委員 今の局長の御答辯に依りますと、小作權消滅の場合と云ふ御言葉がありましたが、私の伺はんとする所は、小作權が消滅すれば、何も地主が立入禁止をしなくても別に問題は起らぬと思ひます、唯所謂地代の滯納であるとか、或は減免問題に於ける撃爭中の場合で、とても度し難い小作人が假にあるとすれば、結局地主も自衞上又自分の所有權の擁護上、立入禁止の假處分を申請すると云ふこともあり得ると思ひますから、其の點に付てもう一囘御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=130
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131・奧野健一
○奧野政府委員 小作人が正當な事由がありませぬで、債務不履行であるとか、或は賃料の滯納と云ふやうなことがありまして、法律上適法に其の賃貸借等が解除されますならば、隨て小作權は其の解除に依つて消滅する譯でありまして、斯う云ふ場合に於きましては、先程申しましたやうに小作權は解除に依つて消滅する譯でありまして、既に小作權なき場合に於きまして更に小作人が何等の權限なくして立入つて參ると云ふ場合に於ては、立入禁止の假處分を地主の方から申請し得ると云ふ風に申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=131
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132・葉梨新五郎
○葉梨委員長 吉澤君、再々申上げて居ります通りでありますから、あとは逐條審議の際に御讓り願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=132
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133・吉澤仁太郎
○吉澤委員 逐條審議の際でも宜しいのですが、民事局長の御臨席を得ることは困難だと思ひましたので…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=133
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134・葉梨新五郎
○葉梨委員長 左樣なことはありませぬから次囘に願ひます──太田秋之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=134
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135・太田秋之助
○太田(秋)委員 質問の時間を何分間許して下さるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=135
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136・葉梨新五郎
○葉梨委員長 三十分間と云ふ協定でありますから、出來得る限り簡潔に御進行願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=136
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137・太田秋之助
○太田(秋)委員 私の質問せんと考へて居つたことは大體同僚議員各位に依つて盡されて居りますから、私は唯簡單に保有限度の問題に付て、四、五伺つて見たいのであります
第一は、本法第三條の三の自作農地の制限であります、北海道は十二町歩其の他の都府縣は平均面積概ね三町歩と云ふことに相成つて居るのであります、是に於て我々の東北地方の如き、御承知の通り寒氣と積雪期間が極めて長いのであります、隨て二毛作は不可能でございます、殊に周期的に襲來する塞冷の爲に一毛作も完全に收穫が覺東ない土地も時にあるのであります、御承知の如く東北は食糧の寶庫とされて居りますが、又養蠶葉煙草、果樹類の適地として相當量の生産を負荷されて居るのであります、是等の關係上、北海道に準じて農業經營には相當の面積を必要とする現状でございます、是等は中央農地委員會が都府縣別に定めることに相成つて居る本法でございますが、此の委員會に御出しになる案は即ち政府から御提出になることと思ふのであります、是に於きまして私は、政府は東北地方の特異性に鑑みまして、彼の氣候に惠まれて居る温暖地方の農業收入と比較して勘案すべきであると思ふが、東北地方が、殊に太平洋沿岸は是れ亦初夏の頃まで塞流に禍ひされまして頗る低温なのであります、隨て農作物は日本海岸に比較しまして非常に遲れて居る、又土地に依つては是が爲に減收になるのであります、是等は過去に於ける凶作地帶と申しますと、大體太平洋沿岸が多いのでございます、斯う云ふ點も綿密に勘案されて此の農地改革案を定められて、今後再び此の改革案がどうなるか分りませぬが、當分改革案は出來ないことと思ひますから、此の機會に斯う云ふことを能く御調査を願つた上に決定されて戴きたい、斯う云ふことに付きまして政府はどう云ふやうな御考へを持つて居りますか、此の點を一應伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=137
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138・和田博雄
○和田國務大臣 自作農の經營面積でありますが、三町歩と云ひまするのは、勿論地方々々に於きまして、十分各種の地帶の實情を考へまして、是は保有面積と同じやうに決定致さうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=138
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139・太田秋之助
○太田(秋)委員 今の問題は大體是で了承致しました、次は小作地の返還を繞つて紛爭がぼつぼつ起きて居ります、此の解決方法に付てでありますが、是は本法の第五條第六號に該當する事情の爲に、一時自作地を他人に耕作せしめたのであります、所が今囘復員に依りまして勞務は元に復したのであります、隨て小作地の返還を求めまして、明年度より元の通り自分で自作したいと云ふことの爲に返還を申出た、所が耕作者は今囘の農地制度の改革案の發表を見まして、自分は一年なり二年なり耕作すれば既に耕作權と云ふものがあるのである、ですから自作農地として優先的に政府から買受け出來るのだと云ふことを豫想致しまして、此の返還に應じないと云ふことになつて居るのであります、此の種の一時的の小作地の増加した原因は、政府も御承知の通り、戰爭中農業勞務が非常に拂底を致して、其の際に不耕作地の防止對策として、それぞれ各市町村農業會は耕作を慫慂して、手のある人には作付をして戴いたのであります、勿論國を擧げて食糧生産に集中した時代でありますから、又作る方の方でも農業には經驗がなくても、多分手が空いて居るから何とか出來ようと云ふので飯米小作農になつたのであります、斯う云ふ方は今尚ほ食糧事情の不安定の爲に見透しが付かないから、尚ほ耕作の續行の希望を持つて居るのでございます、是が解決の暫定方法と致しまして、私共種々相談を受けて居るのでございますけれども、自作と小作地を合計しまして三町歩以内の所有者であつたならば、是は本法第三條第三項の制限を受けませぬ、將來に及ぼす影響はないのであります、でありますから、一町歩までの小作をして二町歩を自作する、其の一町歩を食糧安定の付く間留守中を守つて耕作した者に貸せと云ふことも言ひ得るのでありますけれども、三町歩以上の所有者は此の法の制限を受けることになりますから、勞務も復したのであるから、どうしても此の際元通り返して貰つて作りたいと云ふことも眞劍な主張であります、でありますから、茲に返さない者と自分の留守中貸して居つたのだから、今度は返せと言ふ者との對立が生じて來て居るのでございます、是に於て市町村の農地委員會に於きましても、之を如何に裁定するかと云ふことになるのでありますけれども、然らば三町歩以内の地主が一、二年の間で日本の食糧も安定するだらうから、其の間貸すと云ふ決心になつたのであるから、三町歩以上の人もさう云ふ風にして、今俄かに取上げないやうにしたらどうかと云ふやうな裁定案も試みたのでありますけれども、此の裁定案に依りますと、やはり第三條第三號の小作地に當嵌まると云ふ結果になるのでございます、斯樣な關係から、地主は釋然として承諾を與へないのでありますが、是等を飽くまでも返還を要求することになると、中々此の問題も容易に片付かない、さりとて是は一時的のものであつて、法に於ても許されて居る關係もあるから、是等に付きまして暫定措置として、先づ一年なり二年なり食糧安定の時間を見計らうまで小作を繼續した場合には、第三條第三號の適用を除外することにしたらどうか、此のことは果して政府は御認めになるかどうか、斯う云ふ點も此の機會に承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=139
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140・和田博雄
○和田國務大臣 第五條の六號は第三條の規定に依る買收をしない農地なのでありますから、自作農が例へば其の家族が應召した、そこで一時的に貸して置くと云ふやうなものは農地委員會で適當と認めれば第一買收をしない、國が買はない譯ですから、あなたの仰しやるやうな場合は起つて來ないのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=140
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141・太田秋之助
○太田(秋)委員 其の點は私共能く承知して居つたのであります、一時的に貸して居つた土地であるし、是は法的にも貸して戴くと云ふ明文があるから、今度返して貰へばそれで何も言ふことはないのであります、併し今返せと言つても今までの耕作者が返さぬ場合は、更に改めて二年なり三年なり貸した場合は、所謂小作地となつて第三條第三號に該當する、所謂三町歩を超過する面積になるのでありますから、其の場合に於ても私共除外例を望むのでありまして、之に對しての御所見がはつきり承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=141
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142・和田博雄
○和田國務大臣 結局それは一時賃貸の場合は宜い譯ですけれども、一時賃貸でなくなれば是はどうかと思ひます、一應買收の對象から省かれて居る譯ですから、それに付きましては、食糧事情などが緩和すると云ふ時には、何時でも返して貰へると云ふ條件の下に貸して居ることになつて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=142
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143・太田秋之助
○太田(秋)委員 了解しました、次に御伺ひしますことは開發營團の問題でありますが、開發營團の計畫に依つて開拓された農地の自作農創設に際しまして、其の開發に必要なる所の素地、山林とか原野、さう云ふやうな素地を提供した當該町村の地主、所謂所有者が、自分はさう澤山の田畑を所有して居らぬが、ここに山林、原野を持つて居る、是は今度開發營團で開墾するのだと云ふので、開發營團に其の素地を提供した、それで開墾が完成した場合に、其の素地を出した者が分與の申込をした際に、此の土地を農地委員會に於ても自作可能と認め、又面積も本法の第三條第三號の範圍内であると云ふ場合には優先的に賣渡す御考へはないか、此の點を伺ふと同時に、斯樣にして戴くならば、私は此の素地の講入と云ふ交渉は容易に纒まると考へますので、此の點を一應伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=143
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144・笹山茂太郎
○笹山政府委員 御答へ申上げます、農地開發營團の開發した素地に對しまして、將來の分讓に當りまして、素地の元の所有者である地主に對し優先的に取扱ふことが出來るかどうかと云ふ問題でございますが、此の點に付きましては開發營團として將來自作農に精進せんとする者に分讓することを考へて居りますので、元の所有者である地主さんが鍬を揮つて自作農にならうと云ふ場合には十分考へたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=144
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145・太田秋之助
○太田(秋)委員 分りました、次に開發營團の事業計畫に基きまして、幹線事業は開發營團に於て施行した、其の事業區域内の一部分の耕地開墾を關係地主に於て耕地整理組合を組織して施行する場合は、之を許可するや否や、是も伺つて置きたいのであります、例を擧げた方が分り易いと思ひますが、一例を申しますと、福島縣の猪苗代湖より用水を取入れてやる所の新安積疏水と云ふ事業が現在開發營團で著手されて居ります、是が面積約三千五百町歩、此の面積の中には、やはり耕地の開墾は耕地整理組合を組織して完全に自分等でやりたいと云ふ希望を持つて居るものが含まれて居ります、勿論此の希望する地主と云ふものは現在さう澤山の面積を有して居ない、耕作面積が狹隘であると云ふので、今度幸ひに幹線事業を國がやつて呉れて其の恩惠を受けるならば、此の新開地の開墾だけでも自分等が耕地整理組合を組織してやりたい、斯う云ふのであります、其の面積には自ら限りがありませうが、やはり最も本法第三條第三號に該當する以内の面積であつたならば御許しあるかどうか、此の點も併せて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=145
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146・笹山茂太郎
○笹山政府委員 營團の幹線事業に對しまして、地元の關係者が水利組合或は耕地整理組合を設けまして開發或は治水等を考慮することは一向差支へないと思ひます、又それは寧ろ私の方でも望んで居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=146
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147・太田秋之助
○太田(秋)委員 此の場合農林大臣に御伺ひ致しますが、今まで自分の所有して居る自作地と新たに自分共の所有して居る山林原野を開發して──無論此の開發の幹線は國家の施設に依つて出來たのでありますが、其の他の小設備、開墾等に至るまで耕地整理組合でやつて、其の土地の分配を受けた場合に、現在自作して居る土地と今度新たに開發した土地と合せて三町歩以上になつた場合も、本法の適用を受ける政府買上に該當するかどうか、此の點も併せて伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=147
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148・和田博雄
○和田國務大臣 是は第五條の七號で、新開墾地等に付ては、若しも政府が之を買收することを不相當だと認めたものに付ては買收しないのでありますから、合せまして三町歩を超える場合もあると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=148
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149・太田秋之助
○太田(秋)委員 次に政府は、緊急開墾事業に依つて農林大臣の説明された如く相當面積を此の二箇年間に造ると云ふことになつて居るのでございますが、此の新耕地の速かに完成せんことは私共も要望して已まないのであります、併し此の新開地と云ふものは、之を熟地にするまでには多年に亙りましてやはり逐次土地の改良施設、土壤の改良──之に付きましては石灰も必要である、堆肥も必要である、さう云ふやうな施設は十分やらなくてはならぬと思ふのです、斯う云ふ條件の伴ひます是等の開拓地を自作農創設地として賣渡す時には、どう云ふやうな價格で賣るのであるか、引受けた人があと熟田にするまでには相當金が要ると私は思ふのであります、でありますから此の政府の賣渡す時の基本價格の算定方法を此の際承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=149
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150・笹山茂太郎
○笹山政府委員 其の開墾が出來上りまして後の土地の處分でございますが、大體に於きましては、其の土地が相當熟地に近くなつた場合に於きまして處分する方針でございます、隨ひまして私共としましては、其の價格に付きまして、近傍類似の農地の價格を適當に參酌して檢討して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=150
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151・太田秋之助
○太田(秋)委員 只今開拓局長の御説明に依つて私共大變安心致しました、あら地を買上げて、買受けたものを熟地に直すと云ふことは非常に費用も出さなくてはならぬと云ふことを考へた、所が政府の方で大體熟地になつた所で自作農に賣下げて呉れると云ふので、是ならば私も大變安心するのであります
次に此のことは前にも農林大臣に伺つた問題でございますが、今日又町村長が出て來たので伺つて見たいと思ひます、政府の所有に屬する元の軍用地であります、先程岐阜縣の話も出て居りましたが、此の軍用地と云ふものは、軍部に依り本當に一方的な低廉なる價格を以て當時強制的に買收されたのであります、而して家屋敷を引拂つて、耕地を軍部に引渡して、此處に居つた自作者、小作者、皆期間を定められてそれぞれ此處を引掲げたのであります、斯う云ふ同情すべき元の所有者でありますから、此の方々には優先して軍用地解放の場合には還元して、元の自作農創設地に充當して貰ひたい、斯う云ふことを私は農林大臣に豫て要望した所が、農林大臣よりは、極めて同情のある御聲明を承つたのであります、それは考へてやらう、さう云ふ方面は優先に取上げて考へる餘地があると云ふ御話で、此の點秋も非常に安心をすると同時に、大臣の御同情に敬意を表したのであります、然るに之に反する現實の問題と致しまして、一例を擧げますれば、是は私の方の福島縣の雲雀け原の飛行場でございます、終戰直後臨時食糧生産と云ふやうな話を聞いて居りましたが、此の臨料食糧生産の爲に自由開墾開畑をしたのであります、自由に此の軍用地は何處でも起して作れと云ふ許しを受けたいと云ふので、是等の人達が方々から集まつてやつたのであります、然るに此の自由開墾と申しましても、さう完全な開墾ではなく、唯繩張りをして、是だけの土地は開墾して置けば、後で自分等の所有權を得られるのだと云ふやうな縁故を作る爲か、殆ど粗末な開墾で、何を作つても收穫などは一つも出來ない有樣なのであります、斯う云ふ風にして先取的耕作權を戴くが如く主張をして居るのであります、更に又此の土地に對して、最近開發營團が計畫に著手されて居ります、此の自由開墾者に開發營團の──勿論現状調査に行つて居る人達の話でありますからさう深く當てにもなりませぬが、自由開墾者としても此處に入植したのだから、營團で此の仕事を完成した時には、自由入植を先にやることも出來るのだと云ふやうな話もして居られるのでありまして、最近はそれを目的とするか、各所に小屋掛けなんかをしてやつて居るのであります、さうしますと、曩に軍用飛行場になつた所から追はれた八十四戸の自作者或は小作者、之を他に轉ずる場所がないから、村内の或る部落々々に割付けて、さうして僅かの山林原野を開墾し、此處に宅地を移して一戸に付て四、五段位の畑作を營んで、傍を勞働に從事して居るのであります、斯う云ふ元の自作農者は何とかして昔の土地に還りたいと云ふことを念願して已まないのでありましたが、然らば此の連中が自由開墾を許されたと云ふ時に、なぜ早く其處に戻つて開墾に著手をしなかつたか、斯う云ふことになると、福島縣の扱ひは大變な食違ひが出來て居つたのであります、是は私其の當時村長を勤めて居りましたので、能く承知して居りますが縣の方からは、其の土地はやはり舊縁故者に優先して分配すべき性質のものであるから、舊縁故者の内に他に轉業した者はあるけれども、現在其の附近に戻つて居る元の自作者になりたいと云ふものを調査して呉れ、或は其の耕作段別も調査して置けと云ふことを我々町村長に向つて縣の指圖があつたのであります、でありますから縣が速かに關係筋と交渉をして、さうして町村長に指圖した通りの運びにして呉れれば問題はなかつたのでありますが、縣の關係筋への交渉が遲れた爲に、其處に行つた進駐軍の方の手に依つて許可を受けたと云ふ者が現はれて來まして、其の許可を受けた某なるものが多數の急造開墾者を募集して來て、皆繩張りをしてやつたのであります、さうすると町村長の方に依存して居つた者は手後れになつて、其の方の自由開墾の願請は認められなかつたのであります、斯樣な結果に於きまして、如何せん我々町村長としても方法がないから、此の縁故關係を禁絶して、大藏大臣に向つて、國有地に縁故者の自作農創設をして欲しいと云ふ請願は致して置きましたが、是等の國有地を開發營團が事業をして取扱ふ場合には、地元の町村の農地委員會にも相談があるべき筈と私共思つて居るのです、でありますが、此の自由開墾地を繩張りして今良い所だけを起して居りますが、尚ほ殘地も相當あります、是等のものを今後開發營團が全地區の事業計畫を立てた上に、又此の耕地の配分をする時に於きましては、相當に耕作の便、不便も勘案して、十分元の縁故者にも分配されんことを御願ひすると同時に、此の點を強く政府に要望するのであります、此の軍用飛行場から追はれた者は、明治二十年頃に、此の國有地の拂下を受けて開墾をし、非常な苦心慘瞻をして良い畑地にしたのであります、是等は今日まで三代も經つて此の地の利用の仕方、耕作の仕方を十分習得して居るのであります、斯う云ふ者をあの地に置かなければ、他から入つただけの者では到底好い結果を得る譯には行かぬ、私は却て斯う云ふ經驗のあつた者を置いた方が、其の地を利用する上に於て、利用價値があると考へるので、どうしても之を織込んで戴きたいと云ふことを、特に此の際政府に御願ひすると同時に、其の御方針を承つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=151
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152・和田博雄
○和田國務大臣 御尤もでありますので、御趣旨に副ふやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=152
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153・太田秋之助
○太田(秋)委員 最後に御伺ひしたいことは、政府は曩に開墾助成法を制定されまして、開田事業を民間團體に慫慂して開拓させたのであります、此の開拓中にも種々な事業がございますが、私の聞く所、又私共拜見した所に依りますと、干拓事業と云ふものは頗る困難でございます、是は九州方面、中國にはありますけれども、東北にはたんとございませぬ、唯私の縣には三箇所ございます、此の福島縣にある干拓事業が約三箇所で、面積が約七百町歩でございます、此の工事をやつた時に於きましては、太平洋方面は九州方面と違つて、干滿の差は三尺乃至四尺の間を往復して居りますから、餘り干拓には適して居ないのでありますけれども、政府が大正七年の米暴動に鑑みて、大正八年原内閣の時代に開墾助成法を制定して、民間に慫慂してやらせたのであります、是が其の後に至つて工事中幾多の災害を受け、又設計の變更を已むなくし、事業が大變に長期に亙つて居る中に、段々政府の方針が變つて參りまして、減段と云ふ方針になつて來ました、此の減段に依つて開墾助成と云ふものは中途に於て之を打切られたのであります、爾來耕地整理組合は非常なる困難に陷つたけれども、折角途中までやつた事業であるから抛棄する譯には行かない、財源を起債に求めて此の工事を續行した爲に、今日は開田としては立派に成功して居ります、又相當の收穫も上つて居りますが、是れ亦一つの缺點が生れて來たと云ふことは、最近に於きまして各河川とも著しく用水が減少して、末流にある所の干拓地は灌漑用水が全くない、そこで周圍に溜地を造つて見たが、是れ亦流域が不足で十分に一ぱいの水が溜らぬ、でありますから旱天の年には全く用水が缺乏してしまつて、植付は致しましても、此の土壤の中には鹽分がまだ殘存して居る、元鹽田であつたり、或は鹽水の入つた土地でありますから、其の鹽水が出て來て稻を枯らすのであります、此の被害は洵に甚大であります、折角肥料をして植付けて、非常な良い成育をして來た時に、水が涸れると云ふと、土壤から鹽分が流れ出て來て稻を眞赤に枯らしてしまふ、それが爲に一段歩三、四俵、或は五俵位穫れる土地が皆無になる年もございます、之には農事試驗場でも、鹽分の除去と云ふことを色々やつて見ましたが、中々大面積の鹽分を俄かに斷つと云ふことも、まだ科學的に研究は付いて居りませぬ、そこでどうしても淡水を潤澤にして、淡水を掛け流すと云ふことが一番であります、それには現に其の干拓地の中でも苦しくなつて突拔き井戸等を掘つて、六百尺、或は八百尺の地下水を取つて掛けて居るのであります、其の地下水の掛つた所の一町歩位は鹽害を被らない、僅かの細い井戸の水でも、鹽害を防止して居るのであります
〔委員長退席、小川原委員長代理著席〕
斯う云ふ次第でありますが、此の井戸も澤山掘りますと、他の井戸が出なくなる、地下水にはやはり限りがある、そこで私共は此の土地を建直すには、どうしても此の耕地面積に足りるだけの灌漑用水の設備をしたいと云ふことを念願して居るのでありますけれども、何分にも組合が今まで非常に疲れて、資力盡きて中々容易でない、此の容易でないと云ふことは、戰時中斯う云ふやうな不安定な、收入のない土地でありますから、勞務賃の高い時には、小作人は皆他へ離農した、そこで地主が集まつて直營で數十町歩作つた、所が此の直營を致しましても、學童の應援其の他で勞務の獲得をしてやつたのだが、是等も勞務賃が高くて到底引合はない、地主の手取收入と云ふものは──小作の方は御承知の通り五十五圓、或は自作の方は百二十圓でありますけれども、此の百二十圓を生産費に全部掛けても、用水の缺乏の爲に、折角のものが所々枯れてしまふ、總收穫で計算して見ると、生産費が百五十圓或は二百圓も掛ると云ふ状態でありまして、戰爭中四、五年の間に殆ど此の地を不耕作地にしないで我々は守つてやつて來ましたが、此の上とも用水設備をすることは、我々の手では中中容易でないのであります、政府は此の度食糧の生産の目的、或は失業救濟の目的、其の他土地を澤山に與へると云ふことから、緊急開墾を始めたのでありますが、私共の管理して居る干拓地も決して自作農創設にしたくないのではない、今でも自作農にしたい、併し今申上げた通りの土地でありますから、今移住住宅も補助を貰つて入つて三箇所にある、やはり二百戸位の戸數がありますけれども、是等に勸めても容易に引受けない、非常に維持管理費が掛る、排水するのでも、此の頃は排水の動力料が十倍に上つた、此の間も商工大臣に話したけれども、斯う云ふ農業用電力を上げるならば、農林大臣と協議して呉れ、政府の方では、縣の方では、日本の油は船舶に使はなければならぬから、成べく「デイーゼル・エンジン」を使はないで、電化にせよと云ふので、慫慂されて電化した、私共御尤もだと思つて、高い機械を買つて電化した、所が農業電力料が十倍に上つた、斯樣に唯一律に、工業電力と同じやうに農業電價を許可することは商工大臣困るではないかと云ふことを先達て話しましたが、是も後の祭りでどうにもならぬ、職員が經營管理などやつて上げたのであります、我々は此の點に付て、現在までに二萬位であつた動力代が、三箇所で約十七、八萬圓も拂はなければならぬと云ふことになつては、維持管理に掛つて經營が出來ないのであります、之に對して私は今抗議を申込んで、幾分は割引きするやううなことも言つて居りますが、斯云ふことで中々組合の維持が出來ない、私は政府に要望するのは、今斯う云ふ風な一段の策をやれば立派な耕地になつて、收穫も段當四俵位は平均穫れるのでありまして、斯う云ふ土地を一段と直して自作農地にして戴きたい、是等を要望すると共に、是は元々政府の慫慂した開墾助成法に依つて出來た仕事であります、それを中間で離してしまふ、大海の中まで誘き出して櫓も櫂もぶん投げてしまつたやうな状態ですから、どうか現農林大臣に於て之を取上げて戴きたい、斯う云ふことを御願ひすると共に、私の希望を申上げ、之に付て政府の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=153
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154・笹山茂太郎
○笹山政府委員 開墾助成當時實行された事業がまだ完成しない内に、助成が打切られて非常に御困りの御話でありますが、まだ十分な完成を見て居ないと云ふ地區に對しましては、當局と致しまして繼續して事業を完成させたい、斯う云ふ考へであります、隨ひましてそれに伴ふ灌漑用水の設備、其の他に關しまして、若し適當な事業がございまするならば、其の點は十分御連絡を願ひまして、之を完成するやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=154
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155・太田秋之助
○太田(秋)委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=155
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156・小川原政信
○小川原委員長代理 佐伯君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=156
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157・佐伯忠義
○佐伯委員 大分質問も盡きたやうでありますし、私が伺はんと致して居ります要點も、大分御聽かせ願つたのでございますが、殘つた部面に付て二、三點伺ひます
私が一番不審に思つて居りますのは、農地の時價と云ふものをどう云ふ基準の下に御決めになつたのであるか、即ち土地の開墾費が元になつて居るか、或は其の土地から上る農産物の價格を基準にして時價が決定されるものであるか、其の邊に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=157
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158・和田博雄
○和田國務大臣 是は時價ではなく、統制價格でございますが、其の統制價格を出しますのには、小作人が自作人になります時、實際上それを耕して得ました純利益と云ひますか、さう云ふものを出しまして、それを一應基準にして此の土地の率に依つて計算して出す、斯う云ふ形を執つて居る譯でありますが、其の考へ方は、逆に言へば、小作人が自作人になりまして以後、從來拂つて居りました小作料なら小作料以上の負擔を帶びずして自作人になり得る價格、標準價格と云ひますか、さう云ふ點から價格と云ふものを決定致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=158
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159・佐伯忠義
○佐伯委員 餘り土地の價格が安いと云ふことになると、今後原野であるとか、山林の開墾と云ふやうな意欲が減退するのではないかと考へる、現在新たにああ云ふ所を開墾するとしますれば、畑にして少くとも三百圓以上掛るものと考へる、さうすると、一段では三千圓乃至五千圓掛るではないかと思ふ、さう云ふ意欲が減ずると云ふことを非常に心配するものであります、舊來から農村は總て慣例がありまして、上田は米五十俵を大體目標として居りましたし、又牛であれば、上等の牛は米二十俵と云ふ大體の標準があつたのであります、さう云ふ標準があつたと云ふことを御參考までに申上げて置きます
それから此の法案が決定致しまして、是は直ちに實行に移さなければなりませぬが、上の方では大體の方針であるからやりますけれども、細部に亙つて直接衝に當る所の町村の方では中中容易でないと思つて居ります、賃貸價格と云ふものは大體家が標準になつて居ります、家以下一筆々々の賃貸價格と云ふことでは適正でないと考へて居ります、さう云ふことになつて參りますと不公平が生じて來ると思ひます、農村の方は公平と云ふことを非常にやかましく言ふのでございまして、一寸公平を失した場合には取返しが付かない、農村の平和を紊すものでありますので、斯う云ふ所を非常に心配して居ります、就ては其の家の中で上等のもの、惡いものに付て、上等のものに付ては枠を外して高く買上げる御考へはありませぬか、左樣な工合に致しませぬと、同じ家の中でも容易に解決の付かぬやうな實例が今まで澤山あつて、其の時々に非常に困つたことがあるのであります、細かい問題のやうでございますが御伺ひ申上げて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=159
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160・和田博雄
○和田國務大臣 價格に付きましては、賃貸價格の田は四十倍、畑は四十八倍と云ふものを基準に致して、其の範圍内で之を決めることになつて居るのでありますが、それ等の點に付きましては、上田と下田では恐らく賃貸價格が違ふ譯でございますから、自然そこに良い田は良い、惡い田は低くなるのでございます、現在に於ても此の前の農地調整法の規定に依りまして、都道府縣農地委員會の意見を聽いて市町村農地委員會が申請した區域に付ては前の率とは違つた率なり額なりを決めることが出來るやうにして居りまして、それが現實に適應致しますやうな裕りを持たせて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=160
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161・佐伯忠義
○佐伯委員 政府では此の二箇年間に二百萬町歩の土地を買上げて配分すると云ふことでございますが、實際問題として是は可能でございませうか、本年三月十五日でありましたか、G・H・Qの覺書を見て、當時の東畑農政課長は是は實際は不可能だから首を馘つて貰ふと云ふので首を差伸べたと云ふことも私は聞いて居りますが、是は決して容易なことではないと思つて居ります、之を二箇年間に配分すると云ふのは、現在の地方廳の機構では絶對出來ないと思つて居ります、そこで之を實行する爲には、何とか思切つた大機構を御作りにならなければ出來ぬと思ふ、之に付て具體案を御考へになつて居りますかどうか、あると致しますれば、此の席上に於て詳しく國民に御示しを願ひたいと考へます、是は大臣では一寸勿體ないことだと思ひます、殊に是は事務的なことでありまして、却て政府委員の方が能く御存じになつて居ると思ひます、其の方から御説明を願ひたいと考へます
又序でに參考までに御尋ね申上げて置きますが、地方廳に付ては、知事以下の任免權を内務大臣が持つていらつしやる、そこで經濟部長でも農林省の命令は中々きかぬと云ふやうな工合でございます、さうすると内務省の出店ではなくして、農林省の出店を作る必要があると思ひます、譬へて言へば、農産物の生産量の調査でも同じことでありますが、今年の麥の實收調査の如き、知事の報告と食糧管理局の調査では三百五十萬石も相違があります、一割以上違つて居るのではないかと思つて居ります、又二十一年度の今年の産米の豫想調査に致しましても、知事の報告は五千二百萬石となつて居ります、是は大きな相違でございます、こんなことは洵に寒心に堪へませぬ、私は我が國の統計が出鱈目である、其の爲に失政や惡政が繰返されて居つたと云ふことは、先達ての地方制度委員會に於ても内務大臣に苦言を呈して置いたやうな次第であります、殊に農林統計の如きは極めて重大な關係を持つて居りますので、最も適切な手段と方法を講じなければならないのだと思ひます、是は要するに、先程申しましたやうに、機構と人間關係を思ひ切つて整備する要があると思ひます、何卒詳しく御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=161
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162・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、概略私から申しまして、今日は丁度政府委員が參つて居りませぬから、何れ後日詳しく御説明申上げますが、私は農地の關係を三年間やりますのに、一貫した機構がどうしても必要だと思ひまして、それに專門に當つて行くことが出來ればと思つて居ります、隨ひまして本省を合せまして地方に五つばかり農地管理局を作りまして、其の下に農地管理部を各縣に置きまして、市町村には市町村の農地委員會に書記を三人づつ置きまして、上から下までずつと農林省の方に於てそれ等のものは一貫して行く、斯う云ふ體制を整へて實際の仕事をやつて行きたいと思つて居ります、實際の農地の仕事は、農地の方の係と開墾、干拓などを致します者を引括めて府縣の農地委員會を作つて行く、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=162
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163・佐伯忠義
○佐伯委員 折角自作農になつた農家が再び轉落農家、零細農家になりはしないかと云ふことを非常に心配致しますが、之に對して防止策が立ててございますか、又協同組合法は是が一つの防止策であると思ひますけれども、此の度の議會に其の提案がなかつたと云ふことは、私非常に怪訝に堪へぬ、一體其の理由は奈邊にありますか、過日の委員會に於て、金融措置の成行を見て、或は又色々と意見が出たから此の議會には之を出さなかつたと云ふやうな大臣の御説明でございます、此の金融措置の成行を見てからと云ふことに私は非常な心配を持つのであります、どう云ふ爲に此の法案が提出出來なかつたか、其の理由を詳しく御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=163
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164・和田博雄
○和田國務大臣 協同組合法案を提出致すことを止めましたのは、御承知のやうに今度出來ます協同組合は、耕作者を主にした從來の農業會との構成の變つた團體であります、所が現在ある農業會は、其の構成員等に於て、私共が考へて居ります農地制度の改革をやつた後に作る協同組合とは可なり違つた構成のものであります、併し其の金融措置令等に依つて現在の團體は、大小の差はありませうが、相當影響を蒙むるものも出て來る譯であります、それ等の金融面に付ては、それはそれとして、今の團體に、於て適當な處理を致させて置きまして、新しく出來る協同組合に付ては、さう云ふ差支へのないやうなものにしてはつきりしたい、斯う考へたのであります、又實質的に考へましても、之を此の議會から一つ延ばしましても、其の組織結成等に付てはそれ程に遲れることもないと云ふ見極めを付けましたので、一應今囘は延ばしたやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=164
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165・佐伯忠義
○佐伯委員 農村關係の金融部面に付ては、さう云ふ大きな惡影響はないだらうと云ふことのやうでありますが、此の度の軍事補償の打切りに付ては、直接目に見えないやうでありますが、段々と惡影響を及ぼして來ると思つて居ります、又何れは國債の整理と云ふことも考へなければならぬと思ひます、さう云ふことになつて、次ぎ次ぎ金融上の恐慌を招來することになると、協同組合法案を出す時期がないと思ひます、特に今議會は提出にならなかつたのでありますが、恐らく斯うした金融措置の問題が次ぎ次ぎに行はれる今日に於ては、其の時期がないのではないか、左樣に私は考へる、中金或は農業會には相當打撃があると心得て居ります、早く之を救濟しなければならない、私に言はせて戴きますならば、早く此の團體を別々に分割して、速かに生産増強に當らせることが、最善なりと信じます、金融恐慌の爲に内容が非常に惡くなつて居る所へ持つて來て、速かに思切つて積極的に増産をしなければならない部面をくつ付けて行くことは、救國日本を遲らす所以であると私は考へます、出來る限り、譬へて言ひますれば養蠶組合とか畜産組合とか、茶業、酪農などを別口に組合を作つて行けば、此の發展の目的がなし得られることは火を睹るよりも明かである爲に、此の機會に於て早く是が全機能を發揮せしむるやうに御指導を願ひたい、御答辯は要りませぬ
それから將來世界的な農村恐慌が來ると考へるのであります、其の時に農村救濟を思切つてしなければなりませぬが、其の時の準備を今から考へて置く必要がある、其の時になつて考へたのでは遲きに失すると考へます、聰明な大臣に於かれては今から其の準備のあることを、はつきり御示し願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=165
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166・和田博雄
○和田國務大臣 其の點は屡屡御答へ致した譯でありますが、協同組合も之を何時までも延ばす譯ではないのでありまして、出來るだけ早い機會に出したいと準備致して居る譯であります、恐慌に對する對策を、今から色々其の時を考へまして、農地の經營方面の改善、或は農村の組織化と云つたことに付ての施設を考へて居ります、是は何と言ひましても一般の世界の農業經濟の動向を察知致す必要がありますので、さう云つたやうな事柄は綜合研究所等に於て十分檢討して、今後は農林省の政策と云ふものを實施して行くやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=166
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167・佐伯忠義
○佐伯委員 是は他の委員の方から度度質問になつたことてございますが、先般内務省から公表になつた復興五箇年計畫の農業部面と云ふものは、極めて杜撰千萬なものであつたと思ひます、あれは農林省に御相談に相成つたものでありませうか、御相談にならなかつたのでありませうか、私の推定する所に依りますると、内務省獨自の案であつたのではないかと考へます、又さう聞いて居ります、左樣なことがあつては相成りませぬ、國土の殆どが山林であり、原野であり、或は耕地であつて、大部分が農林省の所管であると思ひます、是等のことを農林省に相談なしに、決定までに行かぬとしても、發表すると云ふことは面白くないと思ふ、何故御相談にならなかつたかと云ふことを御伺ひ致したい、是は國土局長に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=167
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168・小川原政信
○小川原委員長代理 此の際特に内務省國土局計畫課長八島三郎君の發言を許可致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=168
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169・八島三郎
○八島説明員 國土計畫の試案に付きまして、色々と御批判を願つて居ります點に付きましては、起案を致した私共としては洵に有難く存ずる次第であります、只今御話のございました國土計畫の中、あの案全般に付きましては、大臣も色々説明を致して居りますから、實は試案でございまして、我々の研究して居る所を色々な方面から御聽きをしようと云ふ意味で──實は議會の方面に於ても色々國土計畫の御話もございますので、一應私共の考へ方だけでも纒めて見ようと云ふ氣持で作つたものでございます、資料に付ては關係各省から皆戴いて居ります、是は内務省獨自で斯樣な案が出來る筈のものではございませぬ、關係資料に付ては各方面から戴いて居るのでございますが、唯之を取捨致すに付きましては、私の方としては出來るだけ地方の配分計畫と云つたやうな立脚點等を尊重致しまして、集まりました資料を適宜按配致しまして、實はああ云つたやうなものを作つた譯でございます、實は作りました案それ自體に付て關係各省と十分協議は遂けて居りませぬ、此の點に付きましては議會の方面に於ても度々問題が出て居りますので、其の都度委員會の席上等に於て御答へ致したやうな關係もございまするので、此の程度で一應發表して見ようではないかと云ふやうな輕い氣持でやつたのでありますが、御指摘の點等に付ては、關係各省にもう一遍御集まりを願ひ、さうしてしつかりしたものに固めて行きたい、のみならず大臣も此の席上に於て言明して居られまする如くに、内閣に近く國土計畫審議會と云ふ權威あるものを設けて完璧なものを作りたいと云ふやうな意圖を屡屡洩らされて居りますので、之に依つてしつかりした完璧な案を作つて行くやうにしたいと實は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=169
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170・佐伯忠義
○佐伯委員 開墾地の自作農創設は極めて困難なことと思ひます、計畫は出來ても全部やり切れるだけの自信があるか否か、現在開墾の濟んで居る十萬町歩でさへも自作農創設と云ふことは非常に無理があるやうであります、私の縣の如きは、戰時中開發營團が開墾致しました所が再び草茫々として、又原野に還つて居るやうな状態であります、又入植計畫を立てても、家もないし、道具もないし、或は寢具もない、其の上に營農費は殆どないと言つて宜い位である、又其の上既存の近い農家の方からの同情がなく、毛嫌ひをされ、排斥されると云ふやうなことがあつて、大抵の者は入植を失望してしまふと云ふ状態であります、此の開墾地に於ける自作農創設と云ふことが計畫通りに推進出來るものであるか否か、特に營農費の如きは洵に貧弱でありますので、是等の貸付方法或は助成の方法を思ひ切つてやつて戴かなければならぬと思ひますが、之に對する御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=170
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171・和田博雄
○和田國務大臣 御尤もでありまして、開墾地の自作農創設は中々困難を伴ひます、計畫的にやりましたあの滿洲移民の場合に於きましても、同樣の困難があつた譯でありまして、内地に於てもやはりそれ等の困難はあることと思ふのであります、殊に最近のやうに資材の非常に窮屈な時にはそれが加重される譯でありまして、住宅などの點に付ても、今までの所滿足には行つて居ない状態であります、併し今後は住宅などの點に付ても、先づ家を建てるとか云ふやうにして、開拓の計畫が圓滑に行くやうに、工夫し努力して見たいと思ふのであります、又營農資金に付きましては、只今の所色々なものを合せて大體一萬圓位を提供致して居る次第であります、勿論之を以て十分とは言へませぬが、營農上の其の他の指導面に付ても、從來は是が十分であるとは申せませぬが、是からのものに付きましては、計畫を立てる時にがつちり立てまして、さう云つた弊害を出來るだけ少くするやうにやつて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=171
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172・佐伯忠義
○佐伯委員 營農費一萬圓と云ふのは、今日の金額にしては洵に零細なものと考へます、それから九月三日の會議で御決定になつた公共事業費六十億圓の中、農林省關係は二十九億五千萬圓も取つて居られますが、それはどの部面へ使用されるのであるか、大部分は開拓或は干拓關係と想像致しますが、極めて厖大な豫算に上つて居ります、決して豫算を取るだけが能ではない、要するに此の實行を巧みにすると云ふことが結局國家再建、救國の途であると考へます、又開拓地には酪農が必要だと考へます、現在農村では化學肥料を非常に要求して居ります、勿論化學肥料なるものは裏作には必要でありますが、夏作に關しては大體補給の程度で宜いと考へて居ります、昔から言ふやうに、精農は田圃を作る、中農は作物を作ると云ふことになつて居て、眞に農業に精出す者は土地を耕すことに專念する、さうしなければ、安全な作柄が得られないのであります、土地を肥やすに付ては、飽くまでも家畜を利用しなければ其の目的は果されませす、開墾地、開拓地に於ては特に是が必要であります、厩肥、堆肥を以て土地を作つて行くより外にないと思つて居ります、現在の各家畜の數から申しますと、酪農業の本である所の乳牛は二十萬頭を割つて居ると思つて居ります、昭和五年當時より十二、三萬頭位減じて居るのではないかと思つて居ります、又役肉用牛に致しましても、其の當時の百五十萬頭から激減して居ると思つて居ります、此の乳牛を殖やして行くと云ふことは中々容易でありませぬ、速かに此の入植者に家畜を與へると云ふことになると、結局役肉用牛を持つて行かなければ間に合はぬと思つて居ります、隨て此の役肉用牛の改良と云ふことが一番急務でございます、それを乳の出る牛と云ふことに改良して行かなければ、乳牛が殖えて行くと云ふことを待つて居つては、五年先になるか、十年先になるか、二十年先になるか分らぬと思ひます、取敢ず比較的數の多い役肉用牛を改良して、乳を取らせる、さうして土地を肥やして行く、土地を改良して行くと云ふことに仕向けなければ相成らぬと云つて居ります、此の點に付て大臣としては積極的な方法を御考へになつて居るか御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=172
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173・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、御意見御尤もでありまして、實は一番の惱みが、率直に言つてそこにあるのであります、是は何と言つても、只今の所役肉用牛を先づ改良して行くと云ふことが一番手取早いと思ひます、それから家畜を開拓民に殖やさせるには、是は形としてはどうかと思ふ點もありますけれども、開拓民の希望としては、家畜の預託制度と云ひますか、さう云ふものを早く行つて貰ひたいと云ふ希望も相當あるのであります、是等のものはやはり相當考へても宜い制度だと思ひますので、何かさう云つたやうな形で開拓地に一つ計畫的に家畜を殖やして行くことをやつて見たい、斯う思つて居ります、何分御承知のやうに只今非常に數が減つて居りますのと、飼料其の他の關係で相當の困難は伴ふと思ひますが、其の點は開拓を巧くやります上に於ては忽せに出來ない點でありますので、一つ十分御意見の點に付てはやつて見たい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=173
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174・佐伯忠義
○佐伯委員 もう二、三點御伺ひ致します、農業保險と家畜保險とを無理に引付けておやりになると云ふ方針だと云ふことを聞いて居りますが、是は同じ農業保險關係には類しますけれども、農業保險と家畜保險を一緒に併存して行くことは、經理上難かしいではないか、農業保險と云ふものは、天候自然を相手にした相互救濟の途である、家畜保險の性格と云ふものは、左程までも關係致しませぬ、即ち患畜の取扱或は投藥するとか云ふやうなことで、結局共濟事業であつても餘程趣を異にして居りますので、之を一括してやつて行かうと云つても、是は容易ではないと思つて居ります、私が聽き間違ひであるかも知れませぬが、農林省としてはやはり一緒に持つて行く考へでありますか否か、是は畜産局と農政課との兩方に別れて居りますし、下の方もやはり農業保險は農業保險、或は家畜保險は家畜保險として行かなければ、其の目的を達し得ないのではないかと思ひます、此の點も御伺ひ致します
又現在農業藥品と云ふものは非常に拂底して居ります、假に稻熱病が出ましても、之を防ぐ藥品がないのでございます、又家畜藥、例へて言ふと「ヘロール」或は二硫化炭素、腺疫の血清藥などは、日本全國何處を鉦や太鼓で捜してもないのであります、一刻も早く是等の藥品を造つて貰はなければ、如何に片一方で生産増強々々と言つても、其の目的は達せられぬのでありまして、非常に淋しい氣持を持つて居ります、是等の計畫に付てはどの程度御考へになつて居りますか、又どう云ふ道程であるか御示し願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=174
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175・和田博雄
○和田國務大臣 御話のやうに、農業保險と家畜保險とは、會計としては一緒であるが、制度としては別なものと考へて居ります、片方は死亡、疾病の保險で、保險に相應はしいものであるが、農業保險は、保險よりも共濟と云つた方が事實に近いやうなものになるので、別個に政府としては考へて居ります
農藥の點は、御話のやうに基本的な資材が足らないのでありますから、只今の所は其の足らないものを製造工場に割當てまして、それ等の生産を督勵して居る譯でありますが、唯どうしても日本で足らないものは外國から仰ぐと云ふことを考へて居ります、米國に頼みまして輸入を仰いでやつて行く、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=175
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176・佐伯忠義
○佐伯委員 先程太田さんから御質問もありましたが、私の方でも縣營乃至は國營に依つて土地の改良事業を行ひつつある、所が戰爭中臨時處置の爲に打切り、中絶と云ふやうな形になつて居る、今後も其の目的遂行の爲に援助を仰がなければならぬ場合があると思ひますが、今まで地主の方で多額の負擔をして居ります、一段歩百圓なり二百圓の負擔をして居る、それが今度自作農創設と云ふことになりますと、まだ實益が認められて居ない其の地主の負擔金を農地買上價格に加算することが出來るかどうか、是は當然加算しなければならぬ問題であると考へますが、此のことを伺つて置きます、先達て山添局長からは、是等に付ては、或は其の他の、水利費であるとか色々な土地に對する費用に付て、交付金を以て「コントロール」すると云ふやうな御説明であつたやうに思ひますが、是は町村役場に來る交付金と意味が違ひます、是は直接に政府の方から御考へを戴かなければならぬと思ひますから、此のことに付て御伺ひして置きます、相當に水利費が掛ります、一年間一段歩八十圓乃至百五十圓位掛つて居る、斯う云ふものを政府が買上げて、まだ自作農に手渡しが出來ない間政府の方で御負擔願へるかどうかと云ふことも附加へて伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=176
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177・和田博雄
○和田國務大臣 土地改良費の關係は非常に厄介になりますが、從來地主が出して居つた土地改良費と云ふもので、地主が現實に出して、而も其の土地と一體になつて居るものは、是は賃貸價格其の他の點に付て考へますが、後に殘つて居るものが假にあるとすれば、それは當然小作人の負擔になります、是はやはり買收價格からそれを差引くと云ふことに依つて、價格の上で操作する、斯う云ふことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=177
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178・佐伯忠義
○佐伯委員 それは全く困ることであります、此處で論議をしましても盡きない問題でありますから、後で直接御相談申上げますが、是非とも私の意見を通して戴きたいと思ひます
最後に一つ御伺ひ申上げますることは、供出と云ふ言葉でございます、是は至つて非民主的な言葉でありまして、御承知のやうに戰時中農民を叩き付けた言葉である、是からは戰爭を抛棄して平和な政治に、經濟に、總て平和的な氣持に立返らなければ相成りませぬ、供と云ふ字は大體供へると云ふ字でございます、農民に供へさせると云ふ感じに大體取られて居ります、農民だ、或は百姓だと云ふことは、一つの蔑まれた言葉だと云ふやうにぴんと來るのであります、私も百姓の一人であります、農民だ、或は百姓だと言はれると、洵に劣等な國民の一員である、斯樣な感じて持つのであります、今日供出と云ふ言葉を聞いただけでも、身の毛がよだつ位に考へて居ります、成程供出の供の字は、需要供給と云ふ面から言ひますと、一つの術語になつて居りますが、是は決して通用語ではありませぬ、此の言葉を改めて貰ひたい、是は全く惡用語であります、之を共同出荷とか、或は出荷とか云ふ平和的な適用語に改めて貰ひたい、思ひ切つて用語を改めるだけでも、百姓の氣持は非常に明るくなつて參ります、是は早い方が宜いと思ひます、此の席に於てでも供出と云ふ術語は廢めた、是から共同出荷だと云ふことを天下の百姓に御示しを願ひたい、さうしますれば早速に供出は百「パーセント」出來るものと私は信じて居ります、是は非常に惡用語でございますので、一つ御改めの程を希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=178
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179・和田博雄
○和田國務大臣 私も其の點は實は贊成なのであります、供出と云ふ言葉を使はずに何とか旨い言葉があれば、例へば政府の買入とか、さう云ふ經濟關係をはつきり示すやうな言葉にした方が宜いと思つて居ります、適當な言葉がありますれば、用語は何時でも改めるに吝かではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=179
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180・佐伯忠義
○佐伯委員 是はやはり官尊民卑と云ふ氣持が多分に考へられて居るのでありますから、是非とも改正して貰はなければならぬと思つて居ります、私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=180
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181・小川原政信
○小川原委員長代理 高倉輝君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=181
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182・高倉輝
○高倉委員 今度の土地改革が非常に重大な土地改革であることは申すまでもありませぬが、昨年「ポツダム」宣言を受諾しました時に日本は民主化の國際的義務を持つた譯で、民主化する爲には、民主化の最も大きな妨げとなつて居りました農村に於ける封建性を取去らなければならない、封建性を取去る爲には、其の根據である土地問題を根本的に解決しなければならない譯でありますから、實は其の時に此の土地改革を根本的にやらなければいけない義務があつた譯であります、所が政府がそれを怠つたものでありますから、昨年十二月九日の聯合軍司令部の指令となつて現はれて、現行法令が出たのであります、併しそれが非常に不徹底なものであつたが爲に、再び五月の對日理事會の批判となつて、今度の新しい法案を出さなければならないと云ふ運びで此處まで來た譯であります、先達て和田さんは、第三次の農地改革をやる意思はないと仰しやいましたけれども、昨年第一次の農地改革をおやりになつた時にも、第二次農地改革はおやりになる意思はなかつたでありませうが、樣々な情勢から第二次の農地改革をやらざるを得なかつた譯でありますから、やる意思はないと思つて居つても、やらざるを得ないやうな情勢が來ないやうに、我々は今十分に愼重な態度を執つて行かなければならない、さう云ふ意味で此の審議を餘程綿密にやる必要があると思ふのであります、固より今度の農地改革に依りまして、日本の封建性竝に土地問題が根本的に搖ぎ出したと云ふ事實を私共も十分認めまするし、又此の法案の説明竝に答辯に於ける和田さんの熱意のある眞面目な態度にも十分好意を持ちます、併しそれにも拘らず此の土地改革か實際に行はれました結果、果して本當に日本の農村の民主化が實現され、司令部から示されたやうに、又政府が言明して居りますやうに、日本の農村から封建性を完全に取去り、農民を農奴的な生活から解放して、民主化の基礎を置くことが出來るかどうかと云ふ點に對して、非常な心配を抱かざるを得ませぬ、和田さんの御答辯を聽いて居りましても、どうも納得の行かない所がありまして、或は和田さん自身は其の矛盾もちやんと御存じでありながら、斯う云ふ不完全なものを實行せざるを得ないやうな位置に置かれて居つたのではないかと云ふ氣さへ私共はするのでありますが、併しさう云ふ點は別としまして、此の法案の根本的な方針に付て三點御質問を致したいと思ひます──運輸大臣御急ぎになるのではありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=182
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183・小川原政信
○小川原委員長代理 御急ぎださうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=183
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184・高倉輝
○高倉委員 順序として和田さんに御尋ねした後で御聽きする方が宜いのですが、運輸大臣の方から御聽き致します
それは農村の失業者の問題でありまして、失業者が澤山殖えますことは、丁度農民の生活が低いことが都市勞働者の生活を引下げる所の根本的な原因になると同じやうに、都市勞働者の失業者が殖えることは當然農村にも大きな負擔を負はせることになる
〔小川原委員長代理退席、委員長着席〕
今の河合厚生大臣が、何年前でありますか、農村は失業者の吸取紙であると云ふことを言はれたことがありますが、事實上さう云ふ現象になつて居ります、隨ひまして此の失業の問題と農村とを絡み合ひまして、最近の問題に付て平塚さんに御伺ひしたいと思ひます、詰り失業者を作り出す所の根本の原因である首切りに對して、膳安定本部長官の言葉と、今度の「ゼネスト」の結果に現はれた平塚さんの言葉との間に、果して完全なる一致があるかどうか、膳さんの方では、首切りを前提として産業の整備をすると云ふことを言つて居られましたが、今度の「ゼネスト」の協定の時には、あの協定にありまするやうに、首切りをしないと云ふ言明に依つてあの協定が成立して居ります、是は果して矛盾しないかどうか、此の點を先づ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=184
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185・平塚常次郎
○平塚國務大臣 國有鐵道の爭議の解決に當りまして、色々と爭議委員との話合ひの結果、合理的に經營をやる、合理的に經營をやる場合に、首切を前提としないと云ふことで結末を付けたのであります、膳さんの方は、日本産業全體に對しての御意見だらうと考へますが、少くとも私は今囘の解決に於てさう云ふことを言明して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=185
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186・高倉輝
○高倉委員 それで運輸省の態度は能く分りました、併し安定本部は内閣に命令する權限を持つて居りまして、膳さんの言はれたことは、是は日本の産業全體に適用される性質のものであると考へなければいけませぬ、隨て是は國鐵にもやはり適用されるものではありますまいか、さうしますと、運輸大臣の方で馘首をしないと考へておいでになつても、安定本部の方針からそれを命令された時には、やはり實行しなければならないやうなことになるのではないか、此の點を御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=186
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187・平塚常次郎
○平塚國務大臣 膳さんはまだ具體的に言うたことでないと私は思ひます、少くとも國有鐵道に於ては先日の協定外に出る考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=187
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188・葉梨新五郎
○葉梨委員長 高倉君に御注意申上げます、あなたの御質疑は本案と非常に懸隔して居るやうに委員長は伺ひますが、まだ其の調子で御進めになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=188
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189・高倉輝
○高倉委員 是は極く簡單でありまして…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=189
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190・葉梨新五郎
○葉梨委員長 簡單であつても、どうか本案に關係のある質疑に限定されるやう希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=190
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191・高倉輝
○高倉委員 前からの順序を省きまして突然終ひの所に來たので、大變關聯がなくなりましたけれども、もう一言で…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=191
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192・葉梨新五郎
○葉梨委員長 では一言だけ許可致しますが、どうか關聯事項に限定して戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=192
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193・高倉輝
○高倉委員 今の馘首をしないと云ふ説明と安定本部との方向は大體一致して居ると考へて宜しうございませうか、是だけを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=193
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194・平塚常次郎
○平塚國務大臣 重ねて申上げますが、私の方としては協定をしたのでありますから、此の協定の範圍でやつて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=194
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195・高倉輝
○高倉委員 それでは運輸大臣に對する質問は是で終りまして、和田さんに御質問致します、それから尚ほ吉田さんに質問すべき筈のことも、今日はお見えになつて居りませぬから、和田さんに御伺ひしなければならぬ點がございますので、御含み願ひます
現行農地調整法と、今度の農地法案とを比べますと、同じ名前になつては居りますけれども、本質的に大きな違ひがあると思はれます、是は先達て社會黨の大澤君も觸れられましたが、現行農地調整法には「本法は互讓相助の精神に則り農地の所有者及耕作者の地位の安定」云々と云ふ言葉がありましたのが、今度の新しい法案に依りますと「本法は耕作者の地位の安定及農業生産力の維持増進を圖る」云々と變りまして、互讓相助の精神或は農地の所有者と云ふ文句が取去られて居ります、現行農地調整法の方針に依りますと、地主と小作人との讓合ひに依つて、兩方の地位を安定させる方向に依つて、農地問題を解決することになつて居つたと思はれますのが、今度の法案に依りますと、農地の問題を解決するには耕作者が主であるから、働く農民を本體として其の地位を安定させる爲には、或る場合には地主が犧牲を拂つても仕方がないと云ふ工合に取らざるを得ない文句になつて居りますが、是はさう云ふ工合に理解しても宜しうございますうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=195
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196・和田博雄
○和田國務大臣 農村の民主化を圖りまして農業の生産力を高め、さうして日本の再建の基礎を確立致し、言換へれば國の爲の力と言ひますか、底力を高めて行きますには、どうしても實際上働く人、耕作者と云ふものの地位の安定が必要であり、又それの力を俟つと云ふことが根源であると思ひますので、今囘は其の點を明瞭に致したのであります、併し勿論さうかと云つて、農村社會に於て、從來實際上日本の傳統として、善きものとして殘つて居つたものをも否定してしまふと云ふ意味では毛頭ありませぬが、趣旨としましては、只今説明致しましたやうに、耕作者の地位の安定と農業生産力の發展を圖つて行く、斯う云ふことをはつきりと明記致したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=196
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197・高倉輝
○高倉委員 此の法案を實行しました上に、果して此處に書いてありますやうな方針に合ふ結果が生まれるかどうかと云ふ點に疑ひを抱きますので、御尋ねを致します、是まで日本の小作料は御承知の通り世界無比の高いものでありまして、穫れ高の大體半分以上が小作料として納められることになつて居りました、隨ひまして働く農民の大部分を占める小作人は、極度の貧困に陷らざるを得ないと云ふ結果になつて居つたのであります、其の結果は、第一に農民は畜力化、機械化、或は土地の集團化等の方法に依つて農業の近代化、合理化を圖る經濟的な餘裕がない爲に、農業の本質的な發展を防ぎ止め、隨て日本の農業が世界的に非常に低位の位置に止まらなければならぬと云ふ結果を生んで居りました、第二は、村政に携はる者は、村の中の一部の地主、富農であつて、働く農民は事實上村政に携はる機會を與へられることが殆どなかつたと云ふ現象が現はれまして、隨て所謂封建的な支配を受ける結果が現はれて居りました、第三は、農民が非常に貧困で、働いても働いても貧困であることは、農村に低賃金の基礎を造りまして、潛在的な産業豫備軍の役目を農民が果す結果となつて居つた、隨ひまして今度の戰爭に現はれたやうに、農民はいつ何時でも都市の勞働者に代る準備をして居る、それが都會の勞働者の賃金を引下げ、生活を引下げる根本の原因になり、隨て此の高い小作料と云ふものは、日本の全勤勞者の生活を引下げる重大な原因になつて居つた譯であります、其の結果は、國内の商品としての市場價値がなくなりまして、隨て新しい超利潤の市場を海外に求めなければならぬと云ふ結果になり、それが侵略戰爭を行はざるを得ない原因となつて居つた譯であります、詰り侵略戰爭の根本原因と云ふものは、日本の土地問題の中に含まれて居た、隨て此の土地問題を根本的に解決しなければ、是まで日本にありました軍國主義の基礎と云ふものは取去ることが出來ない、隨て此の土地問題を好い加減に解決すると云ふこと、根本的に解決しないと云ふことは、將來に戰爭の危險を尚ほ殘すことになる、さう云ふ意味から申しますと、今度の土地問題の解決の中には尚ほ甚だ不完全なものがあるのではないか、第一、一町歩の土地を殘したと云ふこともさうでありますが、此の不完全な土地問題の解決を行ひました結果はどうなつて現はれるかと云ひますと、先づ第一に次のやうな形になつて現はれて來るだらうと思ひます、土地を買へない貧農は今までの儘で殘る、今度最高小作料と云ふものが決定されて、二割五分と云ふ規定が初めて日本の法制の上に現はれましたけれども、是はやはり非常に高い小作料でありまして、戰爭前の「ドイツ」の小作料が世界最高と言はれて居りましたが、是も最高小作料は二割であります、其の最高小作料よりも尚ほ五分高い、隨て日本の小作人の生活が世界的「レベル」に達することは到底出來ない、是が一つ、それから第二は、土地を買つた所の自作農はそれではどうかと云ひますと、是は和田さんが度々御説明になりましたやうに、三十年間今の小作料を拂ひ續けることに依つて自作農に直せるのが今度の法案の目的だ、斯樣に言はれて居ります通り、三十年間今の世界無比に高い所の小作料を納め續けねばならない、さうしますと、農民の位置の安定、生活の安定、隨て農村の民主化と云ふことを言はれますけれども、是が現はれて來るのは事實上、此の儘に行つても三十年後ではないか、と云ふことは、もつと他の言葉で申しますと、世界で最も高い所の野蠻な小作料を三十年間制度化して續ける結果になるのではないか、斯う云ふ状態の下で、どうして農民の位置の安定、生活の向上、隨てそれから來る所の農業技術の本質的な發展と云ふことがあり得るかどうか、其の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=197
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198・和田博雄
○和田國務大臣 小作料の二割五分と云ふのは最高の率なのであります、全部が全部二割五分と云ふ譯ではないのであります、それから小作料を「ドイツ」、又「イギリス」ですか、其の他の外國の小作料と日本の小作料を其の儘直ぐ假定數字で比較するのは、私は如何かと思ふのです、其の國の特殊の事情と云ひますか、其の國の經濟的な事情も色々ある譯でありまして、それ等を勘案する必要があるのではないか、斯う思ひます、要するに、私は日本の農村が經濟的な力を持つて、從來のやうな慢性な失業者が農村に溢れるやうなことにならない限りは、結局農業經營に餘剩が殘るかどうかと云ふ點にあるのでありまして、其の點から言ひますれば、今囘小作料を金納に致しまして、又其の率等も相當下りましたやうな状態に置きますることは、そこに農業の經營に一つの餘剩を生む條件を作つたものと考へて居ります、勿論農地の改革自體から直ちにさう云ふ結論が出るのではないのでありまして、それに加へまして、色々の組織の問題であるとか、經營の技術の問題を同時に今後やることに依つて出來るのでありますが、少くとも土地の所有關係に付て、只今言ひましたやうに、小作料自體に付ても相當の適正化を行つたと云ふことは、農業經營の中に一つの餘剩が生れて來る餘地を與へた、斯う云ふことになりますので、それは今後に於ける、經營技術其の他の浸透に依る生産の發達に俟つと云ふことにならざるを得ない、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=198
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199・高倉輝
○高倉委員 農業經營から來る所の餘剩に依つて、農民の經濟的生活の向上と云ふことを只今も仰せられましたし、是までも度々仰せられましたけれども、結局それは農地問題が完全に今の儘で行きましても、三十年後にならなければ出來て來ない現象でありませう、さうすると、それまではやはり農民の大部分は、今の生活以上に高い生活に上れると云ふことは、實際に於て望めないのではないか、而もそれは今の經濟事情が其の儘進んだ場合に於てもと云ふ意味であります、一兩日前に農林大臣も言はれましたが、技術に對する奬勵資金を豫算に組んだ時と今とは非常に變つた爲に、其の儘適用出來なくなつたと云ふことを言つて居られますが、僅かの間にそれ程變る經濟事情に於て、今の儘で三十年先になつて生活が樂になると云ふ風な考へ方は、是は一つの夢物語ではないか、日本の農村を眞に民主化し、農民の生活を安定ならしめる爲には、直ぐそれが安定ならしめる方法を執らなければならないのではないか、それを斯くの如き方法に依つて三十年後まで延ばしたと云ふことは、結局先程どなたかの言葉にもありましたやうに、或る政治的な勢力に牽制されて、是が農林省或は其の他の農林行政の傳統的な性格でありました地主的な性格から、脱却し得なかつた爲ではないか、さう云ふ工合に考へざるを得ないのであります、それと同時に小作人に於きましても、それから小作から自作に變るのに土地を買ひました農民の場合に於ても、其の生活が非常に目立つて向上されると云ふことがなければ、今の通りやはり低賃金の基礎を將來に貽すことになりまして、是は軈て世界的な不況と相俟つて、國内が植民地化する結果となり、隨て更に外國の商品の市場としての今の日本が、資本主義社會であります限り、新しい市場獲得の軍國主義的な要素が生れざるを得ないのではないか、さうしますと、此の侵略戰爭の根が、軍國主義の根が土地制度であつたと云ふことを認めるならば、此の土地制度を不完全に行ふ、農民の生活を本當に改良しないと云ふことは、將來に及ぼす所の再び此の戰爭の慘禍を貽す、其の根を、貽すと云ふことであつて、戰爭を投棄てると言つて居る憲法の精神、之に反するものではないか、本當に戰爭の根を日本の社會から拔かなくて、どうして戰爭を止めることが出來るか、是は實は總理大臣から御聽きしたいと思ひますが、今日は御見えになりませぬから、已むを得ず農林大臣から御聽きするので、大變御氣の毒でありますが、御考へを御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=199
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200・和田博雄
○和田國務大臣 私は農村の改革をやりますることに依つて、國内市場が擴大すると云ふことは、今度の農地改革に於ける一つの意義として認めて居るのであります、併し此の國内市場の擴大は、農村の部面だけを以ては解決されないと私は思ひます、やはり日本の經濟の他の部面に於ても同樣の問題を解決せざるを得ないと思つて居ります、日本が幸ひにして戰爭を抛棄してしまつた、此の抛棄した經濟に於て、是だけの多くの人口を養つて行くと云ふことに致しまする爲には、是は農村部面だけに於ける國内市場の擴大ではなくして、國全體としての日本の資本と云ひますか、商品と云ふものの市場の擴大をやつて行く必要がある、斯樣に考へるのであります、勿論現在の日本に於きましては、農村の占めまする割合が大きいのでありますが故に、農村に於て國内市場が擴大されますることは、同時に日本が囘復致しまする所の一つの大きな基礎を與へるものと考へますので、私は今囘の農地の改革に依つて、それが或る程度のことは十分達成される、斯樣に考へて居るのであります、其の線に付て、現在のやうな農地の改革であるが故に、日本の軍國主義と云ふものの根がそこに殘つて居るとは、私は考へませぬ、日本の現在の經濟其のものは、之を基礎にしてやはり變化をし、發展をして行くのでありまして、其處にこそ行動をする我々の使命と云ひますか、日本人としての將來の行動の範圍があるのであります、さう云ふ立場から言ひまするならば、憲法に於てはつきりと戰爭を抛棄し、而も農地の改革を行ひ、其の他の工業に於ける再建を行ひまするならば、御話のやうな點に付ては、私は心配はないのだらうと思ふのであります、それ等の途は平和的な途に依つて十分解決し得ることが考へられる、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=200
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201・高倉輝
○高倉委員 此の點は非常に重大な點でありますから、もう一言御質問致します、平和的な方法に依つて戰爭が再び起らないやうに、我々の子孫が戰爭の慘禍に邁はないやうにしなければならぬ、之をするに越したことはありませぬが、併しそれは口だけでは出來ない、實際に戰爭の根を日本の社會から拔かなければならない、少しでも日本の社會に根が殘つて居る限りに於ては、やはり將來に戰爭の危險があつた場合には、子孫は再び斯くの如き慘禍に遭はなければならぬことになりませう、此の前一九一八年に「ドイツ」があのやうな敗戰を遂げました時に、一人として「ドイツ」の國民が二十年の後に又再びそれより更に増す所の慘禍を受けるとは考へなかつたでありませう、けれども實際はあの時の「ドイツ」に於て其の戰爭の根が拔けなかつたものであるから、「ドイツ」民族が今のやうな慘禍を再び繰返さなければならなくなつて居ります、今日我々が考へれば實に心の寒くなる事柄でありますけれども、日本の現状と「ドイツ」の當時の實状とは非常に似た所があります、例へて申しますと、今申しましたやうに、日本の今度の新しい調整法に於きましても、やはり文明國で最も高い所の小作料を制定して居る、此の前「ドイツ」に於ても高い小作料を持つて居つて、それが超利潤の基礎となつた、其の點でも非常に能く似て居ります、更に戰後の事實として非常な「インフレ」が捲起つて、個人的の生活も亦國家的の生活も危險に陷れて居ると云ふ點も餘程能く似て居ります、同時に片方に於ては、最も民主的であると言はれた「ワイマール」憲法が制定されて居つた、是も亦今の日本の状態に非常に能く似た點であります、又共産黨、社會黨を基礎とする所の民主戰線に依つて戰爭の慘禍を防ぐ所の方法が講ぜられて居つたにも拘らず、其の時に是が、成功致しませぬでした其の點も今の日本に非常に能く似た點であります、是等の點を考へ併せるならば、將來日本に戰爭の危險がないと云ふ工合な、極めて暗愚的な考へに我々は陷つてはならない、我々の子孫の幸福の爲に、民族の興隆の爲に、此の點は飽くまで徹底的に考究して置かなければなりますまい、所が今申上げますやうに、今度の土地改革を見ますと、農村に超利潤の基礎と低賃金の基礎が取去られて居ない、是は恐らくは和田さんも御認めになるだらうと思ふ、さうしますと此の超利潤の基礎、低賃金の基礎は、將來に行つてやはり戰爭の危險を非常に深く含んで居るものではないか、其の意味から申しまして、今度の農地調整法が不徹底であると云ふことを今我々は感じて居る、と云ふよりは、將來にもつと恐ろしい結果を生むのではないか、斯う云ふやうに考へざるを得ないのであります、此の點に對してもう一度返答を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=201
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202・和田博雄
○和田國務大臣 農村に於きまする超利潤の基礎が殘つて居ると云ふことは、此の改革されました農地制度の下に於ける小作料が高過ぎるからだ、斯う云ふことを言はれたと思ふのであります、二割五分と云ふことは最高なのでありまして、其の小作料が高いか、安いかと云ふことは、其の國に於きまする事情に依つて決定せられる事柄でありまして、一概に外國との比例だけを以て言ふことはどうかと思ふのであります、殊に私は農村だけで人口比率の問題全部の解決を考へると云ふ事柄は、どうも私としては採り得ないのであります、私は是は日本の經濟全體の問題として考へて行きたいと思ふのであります、殊に大戰後に於ける「ドイツ」と日本の現在置かれました條件とは相常違ふと思ひます、基礎産業と他の産業などに於ける條件、今まで大體の輪郭が決まつた條件を考へましても、相當そこに開きがあるのでありまして、是は一律には斷定することが出來ないやうに私は考へて居るのであります、殊に「ドイツ」に於ける大戰後の土地改革は、御承知のやうに、「ドイツ」は小作と云ふものは實は地域的には餘りないので、どちらかと云へば自作の多い國であります、「プロイセン」などの大地主の所は別でありますが、大部分は自作農であります、隨て「ナチス」政權も、それを基礎にして世襲農業のやうな政治を布いて行つたのであります、是は「ドイツ」に於きまする事情と日本の現在置かれました事情とには、相當そこに歴史的な開きがあると考へて居りますので、是は我々今後子孫の爲に十分各種の民主化の方法を行ひますならば、再び戰爭の慘禍が、あなたの仰しやるやうに今後起るやうには一概には結論付けられないと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=202
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203・葉梨新五郎
○葉梨委員長 高倉君時間が經過致して居りますから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=203
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204・高倉輝
○高倉委員 御承知のやうに重大な問題でありますからもう少し…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=204
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205・葉梨新五郎
○葉梨委員長 簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=205
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206・高倉輝
○高倉委員 尚ほ一言伺ひたいと思ひます、段々急がれますから質問でなく申上げて置きます、今申しました超利潤の基礎低賃金の基礎と申しますのは、二割五分の最高小作料と云ふ點で申上げたのではありませぬ、それも含んで居りますが、三十年間今の小作料を實際に制度化して自作農になつた所の農民が出さなければいけない、低賃金の基礎、超利潤の基礎が此の生活の中にあるのではないかと云ふ工合に私は申したのであります
其の次にそれに關聯致しまして御伺ひしたいと思ひますことは、今度の農地調整法、新しい法案に依ります結果は、一つの例證としまして、先づ農業經營面積の零細化と云ふことが必然的に現はれて來るだけであらうと思ひます、是は是まで農林省の統計に依つても現はれて居ります通り、さうでなくてさへも最近に至りまして耕地面積の零細化と云ふことがはつきり著しく統計の上に現はれて居ります、所が今度の此の土地改革の結果は、それを一層零細化する結果にならざるを得ないのでありませう、それで斯くの如の土地が零細化しましたことは、將來に於きまして農業經營の近代化、集團化、合理化と云ふことに對する大きな妨げとなるに相違ありませぬ、此の前、此の零細化を防ぐ方法として協同組合法案を出す積りだ、其の一つの方法として協同組合法案を出す積りだと云ふ御話がありましたけれども、是は何時かの大臣の説明の中にもありましたが、是まで協同組合と云ふものが成功しなかつた、其の成功しなかつた根本の理由は結局農地制度であります、詰り協同組合が成功しなかつたのは、同じ協同組合の中に入つて居る農民の中に、或る者は地主兼自作であり、或る者は自作であり、或る者は自作兼小作であると云ふ風な分裂がある爲に、是が協同經營、協同作業其の他を困難にして居つた根本の原因であります、協同組合法案に依つて是等を合理化すると仰しやつた所で、此の協同組合へ行く所の大きな原因を、今度の農地改革に依つて今まで通り殘して置きながら、之を合理化すると云ふことは非常に困難なことではないか、本當に日本の農業を近代化し、或は合理化する爲には、やはり土地問題の解決を一番根本の目標としなければならないのではないか、是はどう云ふ工合に御考へになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=206
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207・和田博雄
○和田國務大臣 失禮致しました、自作農になつた者が三十年間に亙つて負擔を受けて居ると云ふ點でありますが、是は成程三十年間に亙つて年賦償還する譯でありますが、やはり繰上償還と云ふ途を設けてある譯でありまして、自作其のものが經營其の他に精進して繰上償還の途が出來た時には、何時でも繰上償還致して宜いのであります、隨て結局は自作農になりました者が拂ひます年賦償還金と云ふものが、自作農に取つて負擔であるかどうかと云ふことに歸著するのではないかと思ふのであります、其の點に付ては、私は先刻御答へしたやうな工合に考へて居ります
それから協同經營の點に絡んでの過小農の問題でありますが、其の點はやはり日本の農業の一つの大きな惱みだと考へて居ります、今囘のやうな土地改革を行ひましても、そこに過小農の問題は殘つて參ります、從來の協同經營が失敗しましたのは、地主、小作との間の協同經營にあつたのでありまして、其の際一番厄介であつたのは、地代の問題と勞力の換算の問題、是は表裏になつて居るのであります、耕作者だけが主になつての一つの協同的なものは餘りなかつたのではないかと思ふのであります、隨ひまして是は今後に於ける日本農村の過小農に對する新しい一つの行き方として、私は今までのやうな産業組合と云ふやうな組織でなしに、生産面にも觸れ得るやうな土地の協同組合でありますならば、さうして耕作者としての共通の面其の他に於て相當の事柄を行ひますならば、多少とも過小農の問題を解決する一つの方法である、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=207
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208・高倉輝
○高倉委員 先頃から農業恐慌の問題が度々問題になつて居りましたが、我我はどうしても農業恐慌に備へて置かなければいけない時が來て居ると思ふ、是は膳さんがお見えになりませぬから、もう一度和田さんに御伺ひ致します、今後の農業恐慌は、是まである所の資本主義生産樣式から來る不景氣と同時に、日本の農業の生産力の低位、詰り國際的競爭力の弱さと云ふ點が重なつて來る所の、是までの日本の農業に未だ曾てない農業恐慌であることには間違ひありますまい、是までの日本の農業は土地に非常に多くの勞力を投下しまして、それに依つて辛うじて或る「レベル」の生産力を擧げて、隨て「コスト」の高い農業でありました、それを守る爲には、關税を設け、輸入制限、輸入禁止等の方法に依つて居りました、所が今度の敗戰に依つてそれ等の方法が全然執れなくなつて參りましたから、遲かれ早かれ我が國の農業生産品は世界的な自由競爭の中に抛り込まなければならない、其の爲に「コスト」の高い日本の農業生産品は生産費の低い原始的生産の南方の米、又極めて生産力の近代化した「アメリカ」「カナダ」の小麥と競爭しなければならなくなる、最近私が計算しました所でも、大體一「ドル」を十五圓と換算しまして、「シヤム」の米一石が百二十圓と云ふ勘定になります、又「カナダ」の小麥一石が百三十一圓五十五錢と云ふ計算になります、此の外國の米、小麥と、日本の今日一石六百圓──六百圓と云ふ買上値段が付けられるかどうか問題になつて居るやうでありますが、それ等の農業生産品とが嫌でも應でも競爭しなければならない、斯くの如き恐ろしい恐慌に堪へる爲には、日本の農業を飽くまでも近代化し集團化して置かなければならない、所が今度の農地調整法に依りますと、嫌でも應でも零細化せざるを得ない状態になつて居る、先程から、早く土地を買上げる方法もあると言はれますけれども、それは極めて少數の農民であつて、農民全體が今買へる譯ではない、結局土地の問題が解決するのは、此の法案にあるやうに三十年後と考へなければならない、所が恐るべき農業恐慌は直ぐ眼の前に迫つて居る、此の時に當つてさう云ふ悠長な考へを以て果して之に對する途が開かれるかどうか、我々は一刻も早く根本的に土地問題を解決し、日本の農業を近代化し、合理化し、隨て「コスト」を低くして世界的な競爭に堪へる所の對策を立てて置かなければならないのではないか、然るにそれに對しては何等の方法も立てず、斯くの如き不徹底な農地改革をなさると云ふことは、結局に於て日本の農業に大きな破綻を來させる原因を作つて居るのではないか、斯う云ふ工合に考へますが、之に對する御意見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=208
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209・和田博雄
○和田國務大臣 世界恐慌がどう云ふ形で來ますかは、今後の問題でありまして、明快な御答へは誰も出來ないと思ひますが、唯、日本の農業が他の國の農業と一つの競爭關係に立つことだけははつきりして居りますが、其の時に、今度の農地改革が自作農になる者は三十年の後になつて初めて自作農になるのだから、非常に堪へる力が弱いのではないか、斯う仰しやいますが、又それと同時に、經營の零細化と云ふことを言はれるのでありますが、經營の零細化に付きましては、日本の農業の自體が全部が全部零細な農家ではない、結局零細な生産力の低い農家と云ふものに對して一番競爭の波が強く當つて來る、私は斯う思ふ、それに付ては、一つの考へ方は、やはり日本の農業を全體として多角化して行く、謂はば適地適作と云ふ事柄を日本全體に於てやつて行くと云ふことと、局所的にはやはり只今言ひましたやうに、協同組合とか其の他の組織の力に依つてそれに堪へて行く、斯う云ふことが農民の側に於てなすべき一つの事柄であると思ふのであります、それから、日本の農業生産力は、成程「アメリカ」等の生産力に比べますれば低位でありますが、東亞の農業地域に比べれば相當高いと思ふのでありまして、其の高い生産力と云ふものは、結局其の「コスト」を今少しく低めることに依つて尚ほ對抗力が出て來る譯でありますので、それ等の點に付ては、今後の問題と致しまして、やはり農民側に於きまする組織化の問題と同時に、政府に於ても經營指導の方法と云ふことに付て十分心をして行くべきだと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=209
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210・高倉輝
○高倉委員 尚ほ最後に一言申上げて置きたいことは、南方の農業と比べて日本の農業生産力は高いではないかと云ふことを仰しやいましたが、是は理由にならないと思ふのです、詰り、南方の農業と比べて日本の農業は確かに進んで居りますが、其の進んで居る原因は、今申しますやうに、耕地面積に非常に澤山の勞働力を投下することに依つて進んだのであつて、隨て其の爲に南方の農業と競爭が出來なくなつて居る、同時にそれであるから「アメリカ」、「カナダ」の農業とも競爭が難かしくなつて居るのである、それだから我々は、此の日本の農業をどちらにも競爭の出來る「コスト」の低い農業にしなければならぬ、其の爲には土地の問題を根本的に解決しなければならないのではないかと質問したのでありまして、まだ完全な御返事を得ませぬが、是等のことに付きましては、更に逐條審議の時に斯う云ふ點に付ても質問を許されると云ふことを御含み願ひまして、一應是で止めることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=210
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211・葉梨新五郎
○葉梨委員長 此の際委員諸君に御諮りしたいことがございます、それは委員外議員の布利秋君から發言を求められて居るのであります、是は實は數日前から求められて居るのであります、通告者の御發言が濟んだ後と思つて、委員長は皆さんに御諮りするのを今日まで延期して居つたのでありますが、本日、時刻はもう定刻になつてしまつて居るのでありますが、皆さんの御意向に依つて、本日之を許可するか、或は逐條審議に入る前に時間を切つて之を許可致しますか、どう致したら宜しうございませうか、諸君の御意見に俟ちたいと思ひます──それではどうですか、布君の立場も、實は皆さん御承知かも知れませぬが、非常にお氣の毒な立場にあつて、無所屬の中の委員を辭任されたり何かして、お氣の毒な立場にありますので、諸君の御諒解を得られれば、僅かの時間でも、逐條審議に入る前に、本日は別と致しましても、諸君の御許しが願へれば、委員長は發言を時間を切つて御許したい氣がして居ります──それでは本日は此の程度で質疑を打切ると同時に散會しまして、次會は明後日午前十時から逐條審議に入りたいと思ひます、本日は是にて散會致します
午後五時二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=211
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212・会議録情報3
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〔參照〕
自作農創設特別措置法案外一件委員會要求參考資料
二十二、戰時に於ける軍使用の工場等の敷地面積及び耕作地軍買上げ面積調
二十三、各府縣別昭和二十一年度田畑作附面積表
二十四、同 米收穫豫想量と平年作との對照表
二十五、同 甘藷收穫豫想量表
二十六、同 馬鈴薯、麥に對し放出せる肥料總數量竝に其の報償歩合調
二十七、同 産米、甘藷に對する肥料放出豫定數量表(貫當り又は俵當り、竝に其の期日)
二十八、同 昭和二十二年度春期麥及び馬鈴薯の收穫豫想量と主要食糧としての供出見込數量表
二十九、同 米穀年度の米、麥、馬鈴薯及び甘藷の供出量と二十一年度との對比表
三十、同 昭和二十一年度産米、甘藷及び昭和二十二年度馬鈴薯、麥の綜合供出割當表及び同米換算表竝に農家の自家用米數量表(米以外のものも各別にし竝に合計米換算)
三十一、昭和二十一年五月より同年九月迄の聯合軍より放出せる主要食糧調(數量は米換算)
以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011383X00919460923&spkNum=212
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