1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月五日(月曜日)午前十時二十一分開議
出席委員
委員長 苫米地義三君
理事 殿田孝次君 理事 中野武雄君
理事 深津玉一郎君 理事 飯島祐之君
理事 宮澤才吉君 理事 松永義雄君
理事 今井耕君
小川原政信君 河原田巖君
片岡伊三郎君 上林山榮吉君
坂本實君 田中實司君
平岡良藏君 江川爲信君
松岡運君 八木佐太治君
奧村又十郎君 川島金次君
榊原千代君 玉井潤次君
飯田義茂君 原尻束君
鈴木憲一君 増井慶太郎君
山下ツ子君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 荻田保君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
專賣局長官 杉山昌作君
大藏事務官 前尾繁三郎君
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本日の會議に付したる議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=0
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001・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは是れから會議を開きます、本日より政府に對する質疑、御發言を願ひます、一昨日理事會で打合せましたが、質疑發言の順序を大體自由黨、進歩黨、社會黨、協同民主黨、新政會、無所屬と、斯う一順やりまして、又發言の順序を斯う云ふ風に繰返して行くと云ふことを一應打合せをして置きましたから、特別な場合を除きましては斯樣な順序でやりたいと思ひます、御諒承を願ひます、それでは上林山榮吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=1
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002・上林山榮吉
○上林山委員 大藏大臣が時間の關係で御出席がないので内務大臣に對しまして私は質問致したいと思ふのであります、言ふまでもなく地方自治運營を充分民主的に權威あらしめる爲に、地方財政を之に併行致しまして確立するものでなければ、地方自治確立の美名の下に、單に地方民の注意を知事公選に集中するだけで、實質は何等變化がないと私は考へるのであります、殊に官僚的色彩の清算されて居ない所の地方制度改正案と、地方財政改正案とを比較して檢討致しまする時に、特に其の感を深くするものでありまするが、之に對しまして内務當局は如何なる感想を以て居られるものでありませうか、先づ之を伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=2
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003・大村清一
○大村國務大臣 今日憲法改正草案が議會で御審議に相成りますと同時に、地方の政治も民主化することが國政の民主化の基礎にもなることでありますので、地方自治行政の民主化に付ての相當積極的なる案を提出致しまして、御審議を仰ぐことに相成つたのでありますが、只今上林山委員の仰せの如く、制度だけ民主化されましても是が裏打となる財政上の民主化、自主化を圖らなけけば、名實相伴はない次第でありますので、今回地方税制、財政制度の改正案を樹てまして、茲に御審議を仰ぐことになつたのであります、併し御承知の如く、敗戰後我が國の經濟財政状況は洵に行詰つて居ります、隨て地方行政の制度の改革の裏打となる税制の改革に於きまして、十分其の目的を達することは所詮困難なやうな事情にあるのであります、現下の情勢で出來得る限りの地方税制、財政の自主化、民主化に努めた積りで居ります、尚ほ申し添へて置きたいと思ひますことは、最近の經濟財政状況は逼迫して居りますのなみならず、是が將來の見透しに付きましても、色色な條件に制約されまして、はつきりと致し兼ねるものがありますので、今回提案して居りますものも應急的の域を脱して居ないと思ふのであります、是が拔本的な恒久的な問題に付きましては、國の財政税制と相俟ちまして、今後に讓ると云ふ外はなかつた點を特に御諒解を仰いで置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=3
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004・上林山榮吉
○上林山委員 内務當局が現在の困難の事情の中に地方財政の改正案を應急の策として斷行せられた其の間の事情は、我々も諒と出來るのでありますが、併しそれでは餘りにも疲弊困憊して居る所の地方財政の確立而も、此の確立がなければ御説の通り地方制度を改革しても、是が完全なる運營が出來ないと云ふことになるのでありますから、私は一歩更に其の困難を克服する努力を政府に要望して已まないものがあります、從來我が國地方財政の特色と致しまして、當然國費を地方財政で負擔して居た部分が相當多かつたのでありますが、更に事變以來は時局關係費が大半地方負擔となつて居たし、其の傾向は益益今日も著しくなつて來て居るのであります、それにも拘らず政府案に依りますと、假令物價騰貴に基く已むを得ない増加、或は戰災に基く收入減などと云ふことを考慮に入れて見ましても、此の案を見ますと地方民の負擔が急激に増加して居ることがあるのであります、其の顯著なるものは、言ふまでもなく府縣民税の新設と市町村民税の大幅引上げでありますが、府縣民税と市町村民税とで合計改正案では一人當り平均百圓乃至百五十圓となつて居るのでありまして、從來の六圓乃至十二圓に比較致します時には、著しい増加でありまして、是は往年の戸數割制度へ逆轉するのではなからうかと云ふ程、地方民に對しましては其の負擔上重視しなければならぬ現象であると私は考へるのでありますが、之に對しまして當局の見解を質して見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=4
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005・大村清一
○大村國務大臣 地方團體が國政事務の委任を受けて居る其の費用を國と地方團體との間に如何に分擔をするかと云ふ問題は、國費地方費負擔區分の問題として始終論議されて居る所でありまするが、國政事務の種類に依りましては地方團體の利害に關係する所に非常に濃厚なものと然らざるものとがございまして、それ等の實状に依つてそこに適當なる分擔を決めると云ふことが必要であらうと思ひます、此の點に付きましては今回の税制財政改革の際に於きまして或る程度の是正は致されたのであります、例へば警察費の分擔に於きましては、從來地方に依つて或は五分の一、或は十分の六と云ふやうなものでありましたが、今回一律に國が十分の六、地方が十分の四負擔をすると云ふやうなことに是正されましたのも、其の一例でありまして、其の外にも何がしか是正をされて居るのでありまするが、其のやうな方途は今回之を講じたのであります、尚又地方財政の自主性、自主性を増加致します爲には、何としても地方團體に獨立財源を與へる、獨立税を認めると云ふことが非常に必要だと思ふのであります、併し是が爲に、無暗に地方民の負擔を増加致しますことは、是は愼しまなければならぬことは申す迄もないことであります、唯御承知の如く、敗戰後の我國の状態と致しまして、地方財政の要求する所を悉く國庫で支辨をすると云ふことは、假に理論上又それが正當だと云ふやうな場合に致しましても、國庫財政は極めて窮屈に相成つて居りますので之を悉く國庫に求めることは實際問題として不可能であります、然るに先程來申上げますやうに、今回地方行政の自主性、自立性を強化しようと云ふことになりますれば、獨立財源、獨立税源を附與する必要がありますると同時に、又それ等の仕事は地方關係住民の利害に關係ある點が多いと致しまするならば、そこに地方民が負擔を分任すると云ふことも當然のことであります、それ等の點を考慮致しまして、茲に提案して居るやうな程度の案を定めたのであります、而して是は結局只今申上げますやうに、地方團體の自主性、自立性を強化回復致します上に於て適當と認められます限度の増税等を致しまして、さうして他方地方團體の所要する財政上の需要と云ふものを差引致しまして、さうして不足する部分は已むを得ず之を全額國庫の配付税に依つて辻褄を合はして居りますやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=5
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006・上林山榮吉
○上林山委員 地方負擔の性質に依つては地方が之を自ら自主的に賄ふと云ふことは當然である譯でありますが、政府の案は先程申しましたやうに、國費で負擔すべき性質のものを幾らかは是正致しましたけれども、依然として地方負擔に之を任して居ると私は申上げた譯でありますが、此の點から致しまして政府の御説明に依りますと、地方民負擔の著しい増加は、地方財政收入が戰災の爲に約九億六千萬圓減少して居ると云ふこと、或は地方の學校教職員、警察官、地方吏員の待遇改善に要する豫算が約二十五億圓、更に生活保護法案實施に伴ふ所の費用其の他が六億圓何がし、合計四十億五千八百萬圓になるのであつて、之を調達する必要から此の改正案を出したのである、斯う云ふことになつて居るのでありまするが、併し謂ふ所の警察費或は教育費、是は言ふまでもなく、本來國費で賄ふべき建前のものでありますから、國税を増徴する以上は、先づ第一に出來るだけ地方負擔を輕減する爲に、國費負擔額を増加することにならなければならないと私は考へるのであります、然るに政府案では警察費の連帶支辨金は元來三割五分のものを約六割に、それから教育費は三分の一であつたものを二分の一に引上げようとして居られるのでありますが、今御説明になりました配付税の額を見ましても僅か二十億圓であります、さう云ふやうな財政でありまするが、之を以て地方財政に充てて、殘額は全部中央財政に之を振向けんとせられるものであると私は考へるのであります、即ち本改正案に依りますると、結局學校の教職員、警察官等の待遇改善費は、大部分を府縣民税と市町村税の増加で賄へ、斯う云ふことになるのでありまして、結局は中央財政偏重主義が今日に於ても相當量殘されて居ると云ふことは遺憾であると私は考へるのでありますが、此の教育費或は警察官の連帶支辨金等に對しまして、内務當局は如何なる積極的な考へを持つて居られるか、此の點を伺つて見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=6
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007・大村清一
○大村國務大臣 警察費或は教育費を國と地方との間に如何に分擔を定めるかと云ふ點は、度々論議をされて居る問題でございまするが、併し是等の費用は全額を國庫に負擔させると云ふやうにすべきもののやうには政府は考へて居ないのであります、警察と謂ひ、又教育と謂ひ、地方民の利害にも大いに關係して居ることであります、尚ほ一面に於きましては國家の治安又國民の教養水準を昂めると云ふ意味に於きまして、國家的利益も確かにあることでありまするから、是は國と地方との間に適當な所で分擔ふすべきものだと云ふやうに考へて居るのであります、而して今後の地方行政の民主化の傾向を望見致しますると、警察の如きも是は國家警察から相當大きな部分が地方警察に委讓せらるべき傾向にあると思ひます、又教育に於きましても、中央集權的な教育制度から地方分權的なものになりまして、教育行政の「ウエート」を地方に移行せしめると云ふことも、當然是は民主化の過程に於てやらなければならぬことと思ふのであります、さう云ふやうな點から考へますると、やはり從來執つて居りました教育費、警察費を國と地方との間に適當な分擔をする、斯う云ふことにするのが至當であらうと考へて居るのであります、而してそれ等の點を考慮致しました結果、警察費は只今の御説の如く國で六割、地方で四割と云ふことに改めるのが至當である、教育費に付きましても、是は内容に依つて違ひますが、義務教育費に付きましては、國五、地方五と云ふやうに、兩者の分擔割合を確定した次第であります、さうして國の政治であるから之を悉く國費で持たなければならぬと云ふやうには、實は考へて居ない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=7
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008・上林山榮吉
○上林山委員 内務大臣は警察も教育も地方が利益を受けるのであるから、民主化の今日當然地方が之を負擔すべきである、國家も幾らか之を負擔しなければならないのであるけれども、さう云ふ風に自分は思ふのだと云ふ御説明でありますが、私は國税をするのも、府縣税をするのも、市町村税をやるのも、總て歸する所は一元化されて國民に基礎があるのであります、でありますから、必ずしも地方が利益を受けるから地方が負擔をしなければならないと云ふことは、今日の地方財政の貧困の時代には、言ふべくして行はれない、問題は地方の經濟が鞏固であるか、或は地方の經濟が貧困であるかないかと云ふことに起因するのでありまして、今日の實情から申上げまして、地方は其の負擔の能力がない、でありますから、國家的性質を多分に持つて居る所の是等は見解の相違と言へば相違でありまするが、如何に民主的な時代になつても、負擔の如何に依つて是が國家事業であり、是が地方の事業であると云ふやうには私共は考へない、少くとも其の事業本來の性質に鑑みまして、是は國家的事業である、或は部分的地方の事業であると云ふ風に其の性質から考へて行くべきものである、斯う云ふ風に考へるのであります、でありますから地方警察官にしましても、教職員の待遇改善に致しましても、強力なる國家の財政の力でなければ之を補つて行くことは出來ない、斯う云ふ風に考へるのでありますが、當局は此の間の事情を能く勘案されまして、更に教育費、殊に青年學校費の國庫負擔の増加、或は警察官の國庫負擔の増加と云ふものに付て、更に一歩御研究が願ひたい、斯う云ふやうに考へるのでありますが、今日に於ては、將來に於ても此の儘で宜しいと云ふやうな、所謂其の場限りの御考へを持つて居られるのでありませうか、もつと肚の底を御尋ね致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=8
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009・大村清一
○大村國務大臣 地方財政の賄ひ方に付きましての理想的な形は斯う云ふものではないかと思ふのであります、それは地方團體の負擔をすべき經費に付きましては、只今申上げますやうに、國費と地方費との負擔區分を最も適當に致しまして、さうしてそこに地方團體で必要とする經費が確定を致すと云ふことになりますると、理想論から申しますれば、それだけの經費を地方團體の自力に依りまして、地方團體の課税に依るとか、或は收益事業の益金に依るとか、其の他地方團體の自力に依つて調達出來るやうに地方の税制及び財政を打立てる、さうして餘り他人の懷ろに頼らずして、財政上に於きましても全額を自分の自主的措置に依りまして調達が出来ると云ふことが地方財政上の一つの理想だと思ふのであります、今回の改正に當りましても、其のやうなことが出來れば是非試みたいのでありまするが、先程來申上げますやうに、敗戰後の地方財政の實情と致しまして中々其のやうに思ふやうになりませぬ、又地方税制を地方財政上必要とする所まで擴充致しまして、地方税で十分な金を擧げさせると云ふことも、是は現在の段階に於きましては經濟上の關係が十分見透しも付きませぬので、其處までも行き兼ねたのであります、そこで其の理想に成べく近寄るやうに地方税制及び財政を取扱つたのでありまするが、其の辻褄の合はない分は已むを得ず之を國庫からの配付税の増額に依つて措置をすると云ふことに致したのであります、而して此の配付税は、前年度に比べますと實は二倍半に激増するやうな結果に相成つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=9
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010・上林山榮吉
○上林山委員 私は只今の御答辯には滿足しないのでありますが、更に角度を變へまして、先程大臣も説明されたやうに、地方の財政強化に對する獨立税或は其の他に關する所の具體的な私の意見も述べまして所見を伺ひたいのであります、先づ第一に敗戰の結果都市の大半が非常に潰滅致しまして社會經濟の状況は茲に一變したのであります、其の結果地方財政の事情も御承知のやうに急變致しまして、歳入不足を非常に生じたのでありますが、政府は之に對して昨年度は總額約五億五千萬圓の赤字起債を許して居るのでありますが、今後戰災復興に要する公債の發行に對する方針、或は其の計畫がありますならば之を承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=10
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011・大村清一
○大村國務大臣 戰災を被りました都市が多額の財源を喪失して苦しんで居ります、又反面に於きましては戰災復興、或は罹災者の救助、援護と云ふやうな點に於きまして、莫大な經費を必要として居る洵に同情すべさ状態に相成つて居るのでありますが、此の點に對しましては、今回の地方税制及び財政の改正に當りまして、出來得る限りの考慮を之に加へて居るのであります、即ち戰災に依る地方税の減收の半分位は此の配付税に依りまして補填をすると云ふやうなことも考慮致して居ります、尚又從來は配付の標準に於きまして大體人口に割當て配當をして居つたのであります、所が大都市に於ける財政需要が非常に餘分に要りますので、それに順應させる爲に特に今度の改正に於きましては、大都市に於きましては現實人口を三倍する、それから普通都市に於きまして二倍、一般町村に於て一倍と云ふやうな、割増人口を特に人口集中都市に高くすると云ふやうな方送を講じまして、出來るだけ現實の財政需要に照應させることを試みて居るのであります、併し是等の外に於きまして、御話の如く戰災を復興すると云ふやうな臨時に巨額の費用を要しまするものは、起債に依つて始末をしなければならぬと云ふことになるのは當然でございまするが、併し此の起債に付きましては、私から申上げますまでもなく國の財政、經濟政策の上にも多大の關係のあることでもございますし、又一面に於きまして聯合國側から國債及び地方債に對する嚴重なる制約を受けて居りますやうな事情もありまして、此の起債を取扱ふのは實は非常に扱ひにくい實情になつて居るのであります、此の地方債の額に付きましては、現在戰災關係で申請額が十五億になつて居るのであります、其の中で緊急已むを得ずどうしても許可をみなければならぬと云ふので、既に許可致しましたものが約二億七干萬圓に達して居るのであります、是は地方債許可總額の五億の中二億七千萬圓でありますが、大半が戰災關係のものであります、さうして今後尚ほどうしても許可をしなければならぬものが六億位はあるのではなからうかと云ふやうに豫想致して居ります、併し此の取扱に付きましては、先に申上げますやうな國の財政、經濟の方針の上からします制約、又聯合國の管理方針に根據を置きました方の制約がございまして、其の兩者の制約の中で措置を致すのであります事實是は已むを得ないことでありまして、そこに出來るだけ公正を得まして、地方の實情に合ふやうに處理を致して行く積りで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=11
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012・上林山榮吉
○上林山委員 戰災復興の公債が種々の制約を受けて居ると云ふことは分つて居るのでありまするがも更に必要なる分に付ては急速な解決をすべく努力をば願ひたいと考へるのであります
次に、只今御話になりました戰災都市に對する配付税の率を多くして居ると云ふ内務大臣の御説明でありまするが、私は燒けた都市と燒けなかつた都市は財政の面から考へて、細かく數字に當つて見ませぬが、五十年の開きが財政上に於てあると云ふことを考へるのであります、でありますから少くともここ十年間位は、今改正案を示されて居る程度の配付税の率ではなしに、もつと積極的な率を戰災都市に配付すると云ふやうな考へを一つ御持ちにならないかどうか、此の點が一つ
更に財源の枯渇して居る地方の財政を強化する一つとして、是は内務當局だけでは出來ないので、大藏當局の積極的な諒解が必要であると思ひますが、地租とか或は家屋税、斯う云ふやうなものを地方に委讓すると云ふやうな考へを今日持つて居ないかどうか、此の點を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=12
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013・大村清一
○大村國務大臣 戰災都市の受けて居ります財政的打撃は御話のやうに相當深刻なものがあることは事實であります、併し今回の地方分與税の法律を改正するに當りまして、府縣市町村の各個のものに付きまして仔細に研究を致しました結果、配付税の總額を戰災都市にのみ集中致しますと、一般市町村が立行かないと云ふやうな面もあることであります、それ等の點とも睨み合はせまして研究しました結果、此處に御審議を仰ぐやうな案が適當であらうと云ふ所で提案を致した次第であります、併し戰災都市に於きまして現下最も多額の財源を要するのでありますが、是等は前に御話のありましたやうに、起債等の方法に依つて措置を致しまして、今後改正分與税法に依りまして年々相當收入が増額致すことでありますから、其の起債をそれ等の増收に依つて、なし崩しに償却すると云ふやうな方途もそこに交へて凌いで行くと云ふことも亦已むを得ないと云ふやうに考へて居る次第であります、尚又地租、家屋税、營業税等の所謂三國税は、本税も結局は各團體に還付されて居ることでありまして、地方財政の立場からのみ致しますと、三國税はそつくり其の儘各地方團體が國庫から交付を受けて居る譯であります、直接課税を致しますと同じ結果に相成つて居るのであります、唯之を各地方團體毎に銘銘に課税を致します方が宜しいか、乃至は現在の如く國で一定の全國共通の基準に依つて課税した方が宜しいか、と云ふやうな點に付きましては、今後税制改正に際しまして内務省と致しましても能く研究を致したいと考へて居ります、又大藏當局に對しましても能く御相談を申上げたいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=13
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014・上林山榮吉
○上林山委員 私は此の際地方財政の強化、殊に戰災都市の復興に對する財政の強化と云ふやうな意味から、大藏大臣にも兼ねて御尋ね致したいのでありますが、一面是は地方財政の負擔の輕減ばかりでなく、申上げます如く戰災復興の爲に間に合ふと思ひますし、更に又、「インフレ」の一つの對策にもなるのではないかと考へられるのでありますが、各戰災都市に對しまして復興の富籖を全面的に許可する意思はないかどうか、此の點であります、大藏大臣竝に内務大臣の御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=14
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015・石橋湛山
○石橋國務大臣 寶籖は、私は出來るだけ一つ地方にやつて貰ひたい、是が寶籖の性質上宜いと思つて居りますが、唯全面的に勝手にと云ふことでありますと、是れ亦弊害も生ずると思ひますから、相當全國的に見渡しまして、何と申しますか、中央で大藏省として統制をする積りであります、さう云ふ氣持で考へて居ると云ふことに御承知願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=15
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016・大村清一
○大村國務大臣 内務省と致しましては、今大藏大臣の御答辯と同じやうに考へて居ります、尚ほ只今の所各府縣市町村各團體に之を認めると云ふことも少し行過ぎのやうに考へて居ります、只今の所府縣に之を認めると云ふ程度が適當ではないかと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=16
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017・上林山榮吉
○上林山委員 私は戰災都市を中心にしてと云ふやうな意味で申上げたのでありまして、是非さう云ふ方面に積極的な御諒解を願つて、富籖の發賣を許して戴きたいと考へる譯であります、更に此の際伺つて置きたいのは、地方税の最も有力な獨立財源でありまする所の三收益税の附加税、是等の負擔を公平にする意味に於きまして、土地家屋の賃貸價格をば現状に即して改訂する御意思はないか、是も勿論大藏當局の御意見を伺はなくてはならぬ問題でありますが、此の點を伺つて置きたいのであります
更に戰災者が建てて居ります所の簡易住宅、斯う云ふものにまで課税をする意思ありや否や、私は簡易住宅乃至は「バラック」程度の小住宅に對しては、ここ一、二年は税金を取らない方が適切であると云ふ考へを含めて御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=17
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018・池田勇人
○池田(勇)政府委員 地租、家屋税の賃貸價格は、御承知の通り毎年改訂するのでありませぬ、只今の地租は昭和十一年四月一日現在で調査を致したのであります、隨つて本年調査することに相成つて居るのでありますが、税務署に於きまする事務が非常に輻湊致して居る關係上、此の賃貸價格は來年から始めることに致して居ります、家屋の賃貸價格に付ても五年毎に改正することに相成つて居りますので昭和二十三年から調査を致すことに致して居ります、隨ひまして來年度から地租又其の翌々年から家屋の賃貸價格を再調査致しますので、其の際に於きましては十分に實情に即した調査が出來ることと考へて居ります、尚ほ戰災地に於ける簡易住宅に對しては、家屋税を免除してはどうか、斯う云ふ御意見でございますが、極く粗末な敷石も何もない本當に「トタン」葺の家に付ても勿論課税は致して居りませぬ、併し簡易住宅でございましても、相當程度のものに付きましては、やはり課税することが負擔力に副ふ所以でありますので、其の點は十分考慮の上、家屋と認められるものに付きましては、家屋の賃貸價格を設定して居るのであります、勿論此の際一坪當りの建築費が非常に高いからと云つて、それを一定利廻で逆算すると云ふやうなことではなしに、現在の賃貸價格と大體權衡の取れるやうな賃貸價格を付して居るやうな現状であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=18
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019・上林山榮吉
○上林山委員 小住宅程度のものも私は此の際一、二年は免税して貰はなければならぬと云ふ考へを持つて居るのでありますが、更に是は別の機會に御相談申上げることに致しまして、此の際直ちに家屋税の賃貸價格を改正する考へはないか、近くやる積りであるけれども、それが出來ない、斯う云ふ話でありますが、私はもつと先で大藏當局に纒めて御尋ねしたいのでありますけれども、家屋の問題が出ましたので、此處で家屋の問題だけに付て併せて御尋ね致します、私はもう少しく社會政策的意味を之に加味せられまして、簡易住宅程度のものに免税をするが、假に五十坪以上の相當の邸宅、大家屋等に對しましては現在取つて居られる程度の二倍以上の家屋税を徴收しても宜いのだ、斯う云ふやうな考へを持つて居るのでありますが、之に對しまして當局はどう云ふ風に考へて居られるか、此の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=19
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020・池田勇人
○池田(勇)政府委員 現在の家屋の賃貸價格は御承知の通り昭和十七年四月一日現在のに據つて居ります、それ以前は地方で個々に賃貸價格を附けて居りましので、政村が全國統一的に調査致しますのは——其の時は十七年が最初でありましたので、地方の不均衡を是正するのに用ひた關係上、個々の家屋の負擔力に付て調査が十分でなかつた點もあるやに聞いて居ります、併し只今の家屋の状況から考へますならば、今後の賃貸價格の調査決定に當りまして十分御意見の存する所を尊重致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=20
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021・上林山榮吉
○上林山委員 是は大藏大臣に御尋ね致しかつたのでありますが、順序の都合上、内務省にも關係がありますので、兩大臣に併せて御尋ね致したいと思ひます、内務大臣の御説明に依りますと、二億一千六百萬圓の中には使用料の増徴と行政整理費を含んで居るのである、斯う云ふ説明があつたのでありますが、此處に謂ふ所の行政整理費と云ふのはどう云ふ意味を含んで居るものであるか、其の構想を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=21
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022・大村清一
○大村國務大臣 本年三月頃までの間に、政府職員に對しまもて、相當の行政整理が行はれたのでありますが、それと歩調を一にしまもて、地方公共團體に於ても人員の整理をやつたのであります、其の三月までにやりました行政整理の結果、大體本年度に於きまして五千萬圓の餘裕を生ずることになりましたので、之を計上致したのであります、殘りの一億六千五百萬圓は使用料、手數料等の増徴を今年度に於て見積つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=22
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023・上林山榮吉
○上林山委員 私は此の際行政整理を今後斷行する意思が政府にあるかどうかと云ふことに付て、大藏大臣の御所見を伺ひたいのでありますが、現に私共見まするに、政府の機關に於ても、或は仕事の都合上から、職員に對しては過剩を生じて居ると云ふことを考へるのでありますが、此の政府の機關、或は過剩職員に對する所の行政整理を政府は斷行する意思があるかどうか、御尋ねしたいのであります、今日私共が官廳事務を見て居りますに、優秀なる職員をうんと待遇を致しまして、之に能率を上げさすべく仕事を整理することが當然だと考へるのであります國民の側が總て負擔して居るのでありますから政府は色々な困難な事情もありませうけれども、茲に刻下の現状に即した行政整理を斷行すべきである、今日官廳の事務を見て居りますと、所に依つては規定上の半どんを當然のことにして實施して居る所もある、實に私は悠長なる態度であると考へるのであります、又鐵道に致しましても、國民が委託して送つた荷物が屆かない、中身の拔取りがある、或は「サービス」に至つては是はもう言語道斷である、遞信省にしても然り、爲替の拔取りがある、或は小荷物の中身を拔取ると云ふやうな風に、私は現在の官廳事務と云ふものは能率が上らないばかりでなく、責任體制と云ふものが實に確立されて居ない、斯う云ふ現状から致しますならば、不必要なる仕事をば廢め、或は色々な團體に委讓をして、仕事の量を現在に即して少くして、私は茲に政府部内の行政整理を斷行する必要がある、あれも作らなければならぬ、是も殖やさなければならぬと云ふやうな風に私は今日見て居ない、之に對しまして大掴みに大藏大臣の御意見を私は伺ひたい、更に内務大臣と致しましても、私共地方に於きまして地方事務所の仕事は裏も表も能く知つて居る、或は地方行政協議會の仕事も能く知つて居りますが、是等は中間の色々な機關でありまして、決して國民と直結した大事な仕事をして居る機關とは私共は思はない、斯う云ふやうな點から致しまして、是等の中間機關も進んで整理をしなければ、單に官僚の組織を茲に色々な理窟を付けて温存をすることになる、斯う云ふやうな氣持を特に感ずるのであります、是等に對する所の所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 總括的に御答へ申上げますれば、無論行政整理は思ひ切つて致さなければならぬと、斯う考へて居ります、現にそれをやらうと既に掛つて居る部面もある譯であります、併し唯私は意見として斯う思ふのでありまして、此の前大分行政整理をやり、人員の數を減したのでありますが、是は何時頃でありましたか、機械的に墮したと云ふことでは本當の行政整理は出來ない、それから又さう云ふ風に減しまして、何處へ其の仕事を持つて行くか、是は政府ぢやありませぬが、隣組とか町會へ其の仕事を押付けて、さうして役所の仕事を減らす、是では本當の整理になりませす、唯人員を減らすと云ふ觀點からだけでなく、もつと役所の仕事其のものを一つ見直して掛る必要があると考へて居る譯であります、さうなりますと是は簡單に各省を一割減らすとか、二割減すとか云ふやうな簡單なことではないのでありまして、相當の研究を要しなければならぬ問題だと考へて居ります、左樣な考へを持ちつつ、無論出來る所から所謂行政整理と云ふことは強力に行はれなければならぬと、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=24
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025・大村清一
○大村國務大臣 地方事務所、地方行政事務局の制度の問題でありますが、此の兩者に付きましては、現下の國情から見まして今直ちに之を廢止致しましては、統制經濟の運行上に於きまして非常な支障が起ると云ふことが明かであります、此の際是は廢止する譯に參らぬと考へて居るのであります、唯其の將來に付きましては、今後我が國の經濟統制其の他の經濟情勢がどう云ふ工合になつて參りますか、其の歸趨とも睨み合はせて、能く研究して見たいと考へて居ります、尚ほ地方行政が今回の地方制度の改正に依つて非常に民主化されると云ふことになりますと、例へば公選知事の下に於ける地方事務所のあり方と云ふものに付きましては、そこに民主的なる改善をされる機會が遠からず參ると思ふのであります、それ等の點から考へまして、若し將來に於きまして、地方事務所を存置する必要があると云ふことになりましても、其の所長の人選等に付きましては、餘程今より改善されることと思ふのであります、併し其の時機に至るまでを俟たず、我々と致しましては地方行政事務局及び地方事務所の人の任用方乃至は事務のやり方に付きましては、出來るだけの改善を致す積りであります
尚ほ序でに申上げて置きたいと思ひまするが、今後地方團體の税負擔は非常に重くなるのでありまして、それ等の團體に於きまして、若しも冗員を擁して居ると云ふやうなことがありましたならば、地方團體の自主性、自立性に依りまして、それ等は一つ思ひ切つた整理をして貰ひたいと思ひます、從來政府が一割整理をするから、地方團體も其のお附合ひをすると云ふやうな形式的なことを一擲致しまして、各地方自治團體の實情に立脚して十分能率の上るやうに、團體の職員の給與を良くします反面に於きましては、剩員は思ひ切つて整理をする、此の邊に一つ地方團體の自治制の特質を大いに發揮して戴きたいと私共考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=25
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026・上林山榮吉
○上林山委員 行政整理を政府が斷行する用意があると云ふことを承りまして、私共國民が其の負擔の過重を受けて居る今日、是は當然のことであると考へて居るのでありますが、尚ほ補償打切に依りまして民間側に失業者が續出するし、之に對しましては六十億の公共事業、或は生活保護法の三十億、其の他の用意が一應されてありまするが、之を以てしては、私は激増する失業者の對策としては十分でない、斯う云ふ風に考へるのでありまして、何と致しましても、茲に綜合的な私は産業の再配置と云ふことを要望するものであります、即ち土地は狹小であるし、資源は少い所の日本としては之を先づ第一に政府が確立する必要がある、其の確立があつて初めて私は行政部内に於ても、所謂政府部内に於ても思ひ切つた所の行政整理と云ふものが出來るのだ、斯う云ふ風に考へるのでありますが、此の産業の再配置と云ふものに對しまして大藏大臣はどう云ふやうに御考へになつて居るか、是は寧ろ經濟安定本部の仕事になるのでありますが、大藏大臣の立場から一應之を私は承つて、行政整理と竝行して如何にやらなければならぬかと云ふ意味に於て、御尋ねして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=26
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027・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の如く是は大藏省だけの問題ではございませぬが、大體只今の政府の考へ方の方向を申上げますと、今までの主要なる産業、石炭でありますとか、肥料でありますとか、鐵でありますとか云ふものは、大體賠償其の他の關係で枠が決まつて居るやうであります、其の範圍に於て適當に配置する、斯う云ふことは殆ど決まつたやうなものであります、其の外に於ては成べく地方に産業を分散したい、例へば工業の如きでも、農村工業と云ふやうなものに、出來るだけさう云ふ方向へ持つて行くと云ふことで參る、それから自然中小工業と云ふやうなものも、現在ありまするものは、それぞれ育成して行かなければならぬ、地方に之を分散して行くと云ふことが出來れば、出來るだけ分散をする、斯う云ふやうな方向で只今差詰めの方策を研究して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=27
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028・上林山榮吉
○上林山委員 此の問題は非常に重大な問題でありまするから、私は具體的にもう少しく御尋ね致しかつたのでありますが、大藏大臣が時間の都合もあられるさうでありまするから、此の程度で措きますけれども、一つ大藏大臣としても積極的に之に「タッチ」して戴きたいと云ふ希望を申上げて置きます
次に私が最も聽きたいのは、大藏大臣が本會議竝に豫算總會に於きまして、税制の根本的な改革を考慮して居ると云ふ風に發表せられたのでありまするが、此の根本的な税制の改革に對する構想、或は方向と云ふやうなものに付て、此の際大掴みに承つて置きたいのであります、尚ほ之に對しまして、是は事務當局の考へて居られることであるのでありますが、日本の税制は非常に進歩的で、完全であつて、世界の何處の税制にも比較して遜色がないと云ふやうな御意向を持つて居られるやに承るのでありまするが、さう云ふ考へがあるかどうか、それと大藏大臣の本會議や、豫算總會に於ける言明とは何等矛盾しないか、此の點に付て私承つて、今後の税制の審議の參考に致したいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 私は此の税制の問題、其の外にもありますが、税制の問題に付きましては、各方面の御意見を容れる爲に、委員會を作つて、其の調査を進めたいと考へて居ります、所が今までの政府の委員會と云ふものは、大概政府と言ふより事務當局が原案を作りまして、それを出して審議をし、それに對して多少の意見を出して貰ふと云ふ程度に止まつて居るものでありまして、私なども政府の委員會に可成り多く關係致しまして、何時も不滿を感じて居つたのであります、さうでなく、今度は一つ政府の原案と云ふものなしに、本當に其の委員會から創意を出して欲しい、斯う云ふ風に考へて居りますから、政府の方から政府の原案を押付けると云ふやうなことは致さない積りであります、隨て其の調査會でどんな案が作られるかは、豫め政府には分らぬ譯であります、同時に其の案が出來ましても、それが其の儘政府に於て實行出來るかどうか、是は行政上の責任でありますから、或は其の案は實行出來ないと云ふことになるかも分らぬ、さう云ふ風な構想で、一つ各方面からの創意を出して戴きたいと考へて居ります、現在の税制に對しては、實は私は税の方の專門家でありませぬから、餘り大きなことは言へないのでありますが、所得税を中心にした日本の此の税制は、建前としては惡くないと考へて居ります、唯稍稍複雜で、所得税なども少し複雜過ぎるのではないかと云ふ感じを持つて居りますが、税制の骨格に於ては、どんな考案を立てましても、所得税中心で行く以外には方法はない、唯戰時中色々の收入を上げる等の關係から、物品税でありますとか、今度行爲税は廢めることになりますが、其の行爲税であるとか、色々さう云ふものが出來ました成立に於ても無理なものが相當に現はれて居ります、斯う云ふものは、是はもう出來るだけ早い機會に改正をしなければならぬ、隨て所謂根本的改革と云ふものが何處まで、どんな新工夫が現はれますか分りませぬが、少くも戰時中に色々のことをやつて來ました結果、寧ろ日本の税制の良い所を惡くして居るやうな關係がありますから、さう云ふ所はすつかり改めたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=29
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030・上林山榮吉
○上林山委員 事務的な改正に對する藏相の方針は分つたのでありますが、内容的な意味に於ける方向と云ふことを詳しく根本的に御伺ひ出來ないことを遺憾に思ふのでありますが、之に對する御方針が承れるならば承りたい
尚ほ是は政府の全官廳にも通ずることでありますがそれは行政事務に政治が先行しなければならぬと云ふことであります、今まで官僚に色々と慣らされて來て居る點から、事務が主であつて政治が從であると云ふやうな觀念を私共は特に持つのであります、此の税制と云ふものに付ては殊に其の感が深いのでありまして只今藏相が廣汎なる委員會を設置すると云ふことに對しては贊意を表する者でありますが、殊に第一線の仕事をやつて居ります所の地方の税務署關係の調査員其の他に付ても、私はもう少し積極的な、效果的な、所謂民間團體の意思を採り入れて、此の税はお互ひが政府と國民と共に協力してやつて居るんだと云ふやうな態勢を強く滲透せしむる必要がある、斯う云ふやうに考へるのでありますが、之に對する内容的な所謂税制の改革の方向と言ひますか、さう云ふ點に付て併せて御伺ひ致して置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 先程申上げました通り、私は税に付ては素人でありますから、寧ろ素人の考への範圍を出ないのでありますが、やはり私の考へる限りに於ては、所得税中心の税制と云ふものが適當であると云ふことだけは私の信ずる所であります、但し其の所得税をどう云ふ風にやるか、日本の現在の所得税は可なり緻密に出來て居ると思ひます、其の代り少し複雑であります、英國あたりの所得税は、最近のことは知りませぬが、非常に簡單のやうであります、出來れば簡單なやり方が實は宜いのではないか、斯う云ふ風に考へて居りますので、若し政府が税制の改革案を立てると致しますれば、左様な觀點から成べく税制は簡單化して、而も負擔の公平を期し得られると同時に、財政の情況に依つて伸縮性のある——是はもう一番所得税が伸縮性があると思ひますが、財政の情況が宜ければ直ちに——英國あたりは我々は能く分りませぬが、今年は一「ポンド」に付て幾ら、是だけ言へば英國の其の年の税の關係が分ると云ふ風な所まで行くと非常に宜いのではないかと考へて居る譯であります
それから税務署の關係に、只今主税局などとも相談して居るのでありますが、大分知識階級の人達で業を失ふ人もあり、失はんとして居る譯でありますから、此の際優秀な税務官吏を育成したいと云ふ風に考へて、税務署の内部の人的要素も良いものにしたいと、段段考へて居ります、次に民間の意見を入れると云ふことは、是はやはり私外國の例を餘り存じませぬですが、「アメリカ」あたりには所得調査委員と云ふやうなものもないのださうでありますが、寧ろああ云ふものがあつて、是がどう云ふ風に運營されて居るかと云ふことは、箇々の場合で非常に良いものもありませうし、或は惡いものもありませうけれども、兎に角民間の意見を容れると云ふ制度は「アメリカ」にはない、あんなものは餘計なものぢやないかと云ふ説も、「アメリカ」などにはあるやうです、併しながら是は日本の實情としてああ云ふものが是非あつて、のみならずああ云ふ機關をもつと充實したものにする必要があるのではないかと私共は考へて居るやうな次第であります、尚それ等の點の細かい技術的な點に付ては主税局長から申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=31
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032・上林山榮吉
○上林山委員 大きな項目だけを大藏大臣に承つて置きたいのでありますが、私は今度の中央、地方を通ずる此の税制の改正案は、單なる改正案ではなくして、大増税案であると云ふ風に考へて居るのであります、政府が複雜な國際的な環境の裡に、或は疲弊し切つて居る所の國家財政の中に、産業の再開と云ふことを念頭に置き、或は社會政策的な要素を加味して、改正せられたと云ふことは、私共常識的に意見の一致する所でありますけれども、先程から申上げますやうに、殊に社會政策的な考へ方を、もう一歩も二歩も進んで考へて戴かなければならぬではなかい、斯う云ふ風に私は強く考へる者であります、殊に税金は俗に云はれて居りますやうに、上に厚く下に薄く課税體制を確立しなければなりませぬし、殊に不勞所得に對しましては重く課税すると同時に、勤勞所得には之を輕く課税すると云ふことが、最も公平妥當な所のやり方であつて、負擔をする國民の側も、能く納得することが出來ると私は考へるのであります、併しながら今申上げますやうに、國民の義務である所の此の納税が、政府の方から無理矢理に官僚的に形式的に税金を掛けようとするし、國民の側では出來るだけ脱税をして、税金を少くしようとする者も相當あるのでありまして、是は一つの鬪爭的な觀を呈して居る嫌ひがあるのでありまして、洵に遺憾に考へて居るのでありますが、改正憲法草案の中にも自由黨其の他の他の同意に依りまして、是が國民の義務として納税の義務が採入れられることになつたのでありまするが、さう云ふやうに憲法に單に規定を致したと云ふだけではなしに、私は茲に進んで新たな所の税制の改正を確立する一つの示唆として政府に進言申上げたいのは、先程申上げまするやうに、政府の方では無理に取らう、國民の方は出來るだけ脱税しよう、此の風潮は平和的に起ち上らなければならぬ、此の疲弊困憊して居る日本としては、洵に殘念なことであると私は考へます、或は私の言ふことが單なる痴人の夢であるかも知れませぬけれども、そこに私は單なる規則、今までのやり方に囚はれるだけではなしに、一つの新らしい方向を國民に與へる必要があるのではないか、それは假に自分の税金が思つたよりも安かつた、さう云ふやうな場合には、國民は自ら進んで國家に税金をする、其の自分の胸算用に依つた其の差額を國家に納める、名を付けますならば良心税とでも云ふやうな名目、或は此のどん底から起ち上らなければならぬ日本再建の時に、所謂平和國家建設税と云ふやうな意味に、茲に國民の一人でも宜しい、さう云ふやうな税金を納めることの一つの門戸を國家的に開放して置くと云ふことが、一つの徴税上の反省の資料になるのではないか、斯う云ふやうなことを私は考へるのでありますが、大藏大臣はどう云ふ考へを持つて居られるか、一つ承つて見たいのであります、或は是れ以外に何等か、斯う云ふ面に向つて新たな方向を具體的に持つて居られれば、一つでも宜いのでありまするが、其の例を御示しを願ひたいと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=32
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033・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今の説は非常に興味のある考究を要する問題で、私もそれが果して具體的にどう云ふやうに税として作り得るや否や、さう云ふ技術的のことは分り兼ねまするが、考へ方としては非常に結構だと存じて居ります、隨てそれは眞面目にさう云ふことを研究して見ようと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=33
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034・上林山榮吉
○上林山委員 次に私は勤勞所得税に付て御尋ねを致したいと思ふのであります、先程申上げましたやうな線に沿ひまして、働く者がお互ひ國家國民の爲に分に應じて税金をすると云ふことは、私は一種の誇りであると云ふ氣持を持ちたいものだと考へるのであります、故に餘りに階級的な意識に強く捉はれまして、大衆に媚びて居る人々が一部説をなして居るやうに、勤勞所得税を全面的に廢止せよと云ふことに對しましては、私は遽かに之に賛成をする者ではないのであります、殊に所得税中の主要なる部分を成して居る所の勤勞所得税のことを考へます時に、是は言ふべくして、行ふことの出來ない日本の現状である、斯う云ふ風に考へるのでありますが、勿論是は言ふまでもなく、併しながら大衆的な課税である、或は不勞所得でなくして、勤勞の所得であると云ふやうな性格に鑑みまして、政府に於かれましても更に一歩進んで、社會政策的な意味を含んで免税點の引上を此の際斷行する、是が私は最も適切なる改正の方向ではないか、斯う云ふ風に考へるのであります、其の基準を示しますならば、今日五百圓生活も難かしいのでありますが、先づ五百圓を基準に致しまして、年六千圓だけは免税をする、それ以上一萬圓を超過したものに對しましては、現在の案よりも一歩も二歩も進めまして、之を百分の三十と云ふ位に引上げて課税をすると云ふやうな考へ方ではどうか、斯う云ふ風に私は考へて居るのでありますが、之に對する所の政府當局の御意見を伺ひたいのであります、あれも出來ない、是も出來ないと云ふのは、私は餘り思ひやりの足らない考へではないかと云ふ風に考へますので、誠意のある所を一つ御示しを願ひたい、殊に此の問題は前の大藏大臣であつた澁澤さんが議會に於て、政府としては將來勤勞所得税を引上げる考へはない、遽かに廢止へ出來ないが、少くとも之を引上げる考へはない、斯う云ふやうな答辯をして居られるやうでありますが、さう云ふやうな意味から致しまして、連帶的責任のある政府と致しまして、何が故に茲に僅かながらでも此の税率を引上げたか、其の間の事情を一つ御説明を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=34
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035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 日本の租税制度が外國のそれに比べて事務當局は宜いと云ふ自信があるやうであると云ふ風な御話でございましたが、現在までの我が國の社會經濟上から申上げますると、我々は各國の租税制度に比較致しまして決して劣つて居ないと云ふ信念を主税當局は持つて居つたのでございます、問題の勤勞所得税に付て御話がございましたが、勤勞所得税に付て英米獨と比べまして、殊に「ドイツ」は敗戰後の税制から申しまして、日本程勤勞所得者に對して課税上の優遇をしたのは外にないのでございます、日本の税制は勿論緻密複雜であります、併し是は社會正義の原則に沿ふやうに、出來るだけ「マッチ」するやうに建てた爲に斯く複雜に相成つたのであります、「イギリス」に於きましては勤勞所得に對して一割の控除を致すことに致して居りまするが、是は百五十「ポンド」以下の勤勞所得である、而も亦其の特典は事業所得等の他の所得税にも與へて居ります關係で、英國に於きましては勤勞所得者に對する課税上の優遇は致して居りませぬ、又「アメリカ」に於きましても、以前は勤勞所得に對する一割控除を致して居りましたが、一九四三年から勤勞所得に對する一割控除を全廢致しました、「ドイツ」の敗戰後の租税制度に於きましては、相當程度の勤勞所得者に對する優遇を規定致して居りますが、今回の我が國の如く優遇致して居る國はないのであります、只今月五百圓以下の者には所得税を課税しないやうにしたらどうか、斯う云ふ御話でございます、我々としても十分檢討致しましたが、私の今見る所では、勤勞所得者の平均は年五千五百圓と推算して居るのであります、之を昨年或は一昨年に比べますと、三倍或は四倍以上の收入を見込んで居ります、斯く見込みまして、之を五百圓控除に致しましたならば、本年度増税後に於ける三十四億圓餘りの收入は殆ど四分の一、或は五分の一位になるかも分らないのであります、之を二百圓を三百圓の基礎控除に致しますると、即ち百圓控除を上げることに依つて税額は十四億圓餘減ることになるのであります、財政收入から申しましても、又今の實際の俸給の状況から申しましても、此の程度は已むを得ないのではないかと考へて居ります、又一萬圓以上の勤勞所得者には尚ほ此の上増徴してはどうか、三十「パーセント」位の課税をしても宜いではないか、斯う云ふ御意見でございまするが、只今の税法でも勤勞所得者の一萬圓以上の金額には三十五%の税率で徴收することに相成つて居ります、分類所得税二十%、綜合所得税三十五%、相當きつい税に相成つて居りますので、どうしても我が國の國情、國民所得の状況、即ち所得の配分状況から申しますと、此の程度で致し方ないのではないかと思つて居るのであります
尚ほ最後に、澁澤前藏相が議會で勤勞所得に付きましては出來るだけ上げないやうに考へる、斯う云ふ御話があつたと承りまやるが、私の想像では多分昨年暮の議會であつたと思ひます、而して今回の増税を致しましても、尚ほ昭和二十年分の國民の勤勞所得に對する負擔と、昭和二十一年分の、即ち増税後の勤勞所得者の負擔を比べますと、去る三月九日、緊急勅令で基礎控除五十圓を月二百圓に上げました關係上、又今回の税率が百分の二の引上に止まりました關係上、二萬圓以下の勤勞所得者は、昭和二十年に負擔した金額よりも昭和二十一年の方が少く相成ることになつて居るのでございます、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=35
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036・上林山榮吉
○上林山委員 勤勞所得の免税點の問題に付ては、三百圓、四百圓、五百圓までの所得別表を作つて御示しを願ひたいと思ふのであります
次に御伺ひ致したいのは、不勞所得一つであります所の相續財産に對する所謂相續税の改正税率の問題であります、私は今日の物價指數と事變前の物價指數とを比較して考へて見まして、是は總ての免税點に或は控除額に關聯のある問題でありますが、もう少し免税點を引上げて、其の代り累進賦課の強化を圖る、斯う云ふやうな考へを相續税に付ても持つ者でありますが、之に對する所の當局の御意見を伺ひたいのであります
更に飮食税に付て申上げたいのでありますが、今日遊興飮食税の中で、遊興税は社會的感情から致しまして議論のあることでありますが、飮食税は大衆課税的性質を持つて居る、而も課税の技術から言ひましても是は惡税であつて、政府の懷ろには入らずして、惡徳商人の懷ろに是が入つて行くのである、言換へれば大衆の犧牲に於て一部惡徳商人の懷ろを肥やすと云ふやうな性質の税金であると考へますので、我々は同志議員と相諮りまして、別途に建議案を出して居る譯でありますが、之に對して政府當局は如何なる考へを持つて居るか、我々の考へとしては、どうしても此の税金は廢止をしたいと考へて居るのであります、尚ほ之に關聯して御尋ね致したいのは、現在第三國人に對しては此の種の税金を取つて居ない、さう云ふやうな關係から日本商人は非常なる苦境に立つて居るのであります、之に對しまして今後媾和條約が出來なければ税務當局としては何等の臨時的な措置も出來ないものであるかどうか、此の點は極めて「デリケート」な問題ではありますが、此の際一つ承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=36
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037・池田勇人
○池田(勇)政府委員 相續税の改正に付きましては、財産税徴收後の富の分布状況を考へまして、相當改正する積りであつたのでありますが、差向き物價事情を考へまして、家督相續第一種の免税點五千圓を四倍の二萬圓に引上げ、又遺産相續に付きましても千圓を三千圓に引上げ、さうして少額相續財産に對しましては、扶養家族の控除金額を倍額に引上げまして、負擔の適正を期したのであります、又百萬圓以以上の相續財産價額に付きましては或る程度の増徴を致しまして、例へば五百萬圓超過の從來の最高税率は千分の四百四十でありましたのを、千分の五百五十に引上げる等、大體御意見に副ひますやうに改正致して居るのでございます、唯今家督相續の免税點二萬圓では如何にも少いではないかと云ふ御話でございますが、併し此の家督相續の状況を見ますると、大體不動産が相當の部分を占めて居ります、勿論百萬圓以上の財産家に付きましては株券等の有價證券が相當な部分を占めますが、小資産家に於きましては、我が國の實情は相當不動産の部分が多いのであります、隨ひまして此の不動産の評價は御承知の通り農地調整法等から考へますと、さう評價を引上げる譯には行かない、隨て今二萬圓位に致しますと、大體田畑一町歩程度御持ちの方で、此の程度で已むを得ないのではないかと思ひます、又我々の調査致しました所に依りますと、大體全國の一戸當りの財産額と云ふものは、二萬圓をひどく超過したものとも考へられない状況でありますので、只今の所此の程度の免税點が適當でないかと考へて居ります
次に遊興飮食税でございます、此の遊興飮食税は脱税が多い、又其の摘發が困難だと云ふことと、又一面是は戰爭中の課税である、戰後に於て斯かる無謀な税は廢止すべきだ、斯う云ふ議論があるのであります、我々と致しましても篤と考慮致しましたが、どうも遊興飮食税は物品税、或は入場税と共に支那事變以來設けられたものでございまして、此の遊興飮食税のみ直ちに撤廢すると云ふことは、全體から申しましても行き過ぎではないか、又一面遊興飮食税の課税對象はやはり贅澤品であり、斯かる方面への消費は抑制しなければならないと云ふ思想も見逃し得ない點でありますので、今回は之を殘すことに致したのでございます、唯免税點の從來の一圓五十錢は非常に低く過ぎましたので、三月九日の緊急勅令で十圓に引上げました、尚ほ花代に付ては課税は已むを得ないが、飮食に付ては廢止したらどうかと斯う云ふ御意見であります、併し遊興飮食税は過半は飮食料金に對する課税に相成つて居りますので、收入の關係から申しましても今直ちに撤廢することは出來ないと思つて居ります、又三國人に對して遊興飮食税はどうして居るかとの御質問ですが、税法上は當然三國人も課税に服さなければならないのでございます、其の點は數日前司令部の發表にあります通りに、聯合軍の軍人とか、或は職員以外の者は、日本の税法に從はなければならないと云ふ聲明があります、又色々な觀念から申しまして當然服すべき筋合のものでございます、隨ひまして我々と致しましては極力第三國人の課税に付きましては努力は致して居ります、併し如何せん實力の問題に相成つて居りますので、是が對策に付きましては警察當局等と緊密な聯絡を圖り、今後脱税防止に邁進致したいと考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=37
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038・上林山榮吉
○上林山委員 此の際御尋ねしたいのですが、現在大藏當局の御説明のやうに、都下の飮食業者が一齊に休業をして居る、是は勿論一面此の税金の撤廢の意思も含んで居るのでありますが、それと同時に茲には第三國人と商業上の正當なる競爭が出來ないと云ふやうな意思を含んで居るものと私共は聞いて居るのでありますが、今大藏當局は脱税或は其の他の所謂不法行爲に對しては、相當警察と協力して嚴重なる監督を行ふ、是は又聯合國の支持する所であると斯う云ふやうな意見を承るのでありますが、内務大臣としては之に對して十分な實際上の取締をやつて居られるか、此の點を關聯して御尋ね致したいのであります、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=38
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039・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねの點に付きましては原則論としては今大藏當局から御答へになつた通りでありまして、是が實際の取扱ひに付きましては尚ほ宜く打合はさなければならぬ點がありまして、まだ具體的に如何にするかと云ふ問題に付きましては一寸此處で御答へ申上げる所まで行つて居りませぬ、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=39
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040・上林山榮吉
○上林山委員 其の問題は是れ以上突つ込んで御尋ね致しませぬが、適當に御善處を願ひたいのであります、更に遊興税の方は已むを得ないが飮食税の問題に付ては大藏當局も更に積極的な御研究を願つて、我々の意見を一つ尊重して貰ひたい、斯う云ふ風に考へるものであります
次に大藏大臣にも御伺ひ致しますが、前内閣では財産税の免税點を二萬圓、其の後米國の顧問がこちらに來てからは日本の實情を斟酌して是が三萬圓となつた、所が最近傳ふる所に依りますと是が五萬圓になると云ふ、私は此の點は政府の努力と相俟つて日本の實情を關係方面が非常に理解されつつある點でありまして、國民として洵に諒とするものでありますが、併し戰爭前の物價指數と現在の物價指數を比較しますと餘りにも其の開きが大きいのであります、是は元來自由黨の主張でもございますが、今日の事情から致しまして十萬圓程度に免税點を引上げると云ふやうな積極的な交渉をして居られるかどうか、或はして居ないとするならば、少くとも私はさう云ふ風に善處を願ひたい、其の代り私は百萬圓以上或は五百萬圓以上の超過額に對しましては少くとも九割五分位の思ひ切つた税金を取つても宜しいと云ふやうな考へを持つものでありますが、重ねて此の點を斟酌されまして一つ御答へ願ひたいと思ふのであります、尚ほ又何時頃此の財産税は徴收するのか、餘りに愚圖々々して居るやうであるが、何時之を御取りになるのであるか、其の期日を御示し願ひたい、斯う云ふ風に考へるものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=40
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041・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今財産税は外の問題とも關聯して居りまして、必ずしも向ふが斯う言うたから三萬圓に引上げたとか云ふやうなことは政府としてはない譯であります、現在に於て幾ら以上からどう云ふ風に財産税を取るかと云ふ數字はまだ實は申上げる時期になつて居りませぬ、極めて近い中に決めなければならないのでありまするが、まだ中々細かい點で問題が相當殘つて居りますので、申上げない方が適當と思ひます、成べく御趣旨に添ふやうな方向に向つて行きたい、斯う考へて居る次第であります、税率に付ても同樣であります
それから徴税は政府としては出來るだけ早くやりたいのでありますが、是も色々の關係で今日まで遅れて居りますが、只今の所では十一、二月頃に是非徴税が出來るやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=41
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042・上林山榮吉
○上林山委員 財産税の免税點に付て政府が努力せられて居ることを私共諒とするのでありますが、先程申上げます通りに、日本の實情を能く關係方面に認識さして戴きまして、今日の物價指數は勿論のこと、地方の農家、或は町の小市民、斯う云ふやうな人々は此の五萬圓、或は三萬圓では引掛かるのでありまして、少くとも日本の中産階級或はそれ以下の人々の實相が能く分つて居られるとするならば、私は十萬圓が少くとも必要である、斯う云ふやうに考へますので、更に努力を御願ひ致しまして次の問題を質問致したいと考へるのであります
次の問題は、現在外地から引揚げて來た人々が非常に困つて居る、僅かに一千圓の小金を持つて内地に歸つて來たのでありまするが、其の後非常に困つて生活に窮して居るのであります、國家としては色々な意味に於て是等の救濟の方法を講じつつありまするが、中でも是等の人々が強く要望して居りまするのは、預金、貯金に對する所の拂出を政府がやつて貰ひたい、外地に或は臺灣に朝鮮に相當の預金を持つて居つたが内地に歸つても何等之に對して政府が具體的な援助を與へて居ない、是はもう引揚人の總意であります、是等を全面的に政府が補償して拂出すと云ふことは、今日の財政の窮乏な折に迚も出來ないことであると私共も了解するのでありますが、茲に最低限度の基準を示して、何等かの具體的の方法を急速に御立てになる必要があると思ふのでありますが、何等か之に對して對策がおありになるかどうか、其の點を伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=42
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043・石橋湛山
○石橋國務大臣 引揚者の問題に付きましては屡屡御尋ねがある譯であります、日本政府としては此の問題を重大視して、何とか引揚者諸君の生活乃至仕事が成立つやうに、安定するやうに致したいと苦心をして居る譯なのであります、併し是等の諸君の預貯金で、現在まだ外地にありまして、内地に送金されて居らないものは、是はどうしても救濟の途がありませぬ、それから既に内地に送金されて居るものも、御承知の通り對鎖されて殆ど引出が不可能な状況になつて居りまするが、私としてはせめて之を今回の補償等の整理の問題の中へ一緒に入れまして、内地に於ける預金と同じに取扱つて行きたい、斯う考へて努力して居る譯でありますが、是はまだどうなりますか決定を致しませぬ、目下其の方針で計畫をして居ると云ふ譯であります、隨てまあ内地に送金された預金も之を大いに當にする譯には行かなくなる譯でありませう、と云つて又政府の豫算で以て、引揚者諸君に對してだけ何等かの手を打つと云ふことも亦出來ないことであります、で已むを得ませぬから、それ等の方が仕事に就く、其の生業資金と云ふものは、是も特に引揚者だけと云ふ譯ではない、一般的な金融の中に入る譯でありますが、其の金融を出來るだけ行つて、内地で仕事に一刻も早く就く、庶民金庫の貸出と云ふやうなものも中々難かしいのでありますが、色々工夫を致しまして、出來るだけ庶民金庫から貸出をさせるやうな方法に致した譯であります、甚だ微力でありまして、外地に於て多年活動した諸君、そして相當な資金を持たれた諸君が眞裸になつて歸つて來られる、是がどうにもならないと云ふことは甚だ遺憾であるし、又國の爲に決して良い結果ばかり生むものとは思ひませぬが、實情は今申上げるやうな譯であります、政府は出來るだけのことを致し、又將來に於て其の結果が悪影響を生まないやうに工夫し、段々に良い状況の方に持つて行くやうに關係方面とも諒解を付けたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=43
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044・上林山榮吉
○上林山委員 今の引揚人に對する預貯金の問題に對して、政府が具體的に研究を進められて居る點に對して私は了解するのでありますが、恩惠的に國家が生業資金を貸出し、或は其の他の給與の方法を講ずると云ふことも、今日の事態に於ては勿論必要なことでありますが、引揚民の心境になつて考へて見ますと、自分が汗水垂らして働いた金が、敗戰の結果とは言へ内地の人に比較して何等是が貰へないと云ふことは、是は私は同情とか理解とか云ふ言葉では盡し得ない心境であると考へるのであります、でありますから或る程度のものは證明書を持つて居つたならば茲に應急的の措置を政府が講ぜられるやう、少くとも恩惠的に出してやる金があるならば、其の犧牲に於て是等の方に之を轉換して、證明が付くものに付ては、或る一定の標準額は之を拂出してやることが、最も全體的な調和を得た考へ方であると私は思ふのでありますが、此の點に對しては答辯は要りませぬが、極力善處をば要望して已まないのであります
最後に御尋ね致したいのは、特別課税案が近く提出されますので、其の際具體的なことは十分分ると思ふのでありますが、關聯して重大な問題であると考へますので御伺ひ致したいのは、戰爭保險に關する問題であります、戰爭保險は政府は之を名目的に支拂ひまして、之に一〇〇%の課税を行つて、結局實際的には打切ると云ふことになるのでありますが、此の際個人に對しては例外を設けて、五萬圓までは政府の補償に依つて之を支拂をする、或は言ひ換へますと免除する、斯う云ふ風になつて居ると聞いて居るのでありますが、正に其の通りであるかどうか、是は併しながら個人のことであるが、小さな法人に對しては何等是等の免除の方法を講じて居ないのであるか、講じなかつたとするならば、どう云ふ理由に依つて之を講じないのであるか、此の點を承ると同時に、特に國民が要望して居ります所の建物疎開に對する補償の程度或は學校、病院、市町村役場さう云ふやうな所謂公共團體に對する免除の程度はどう云ふ風に考へて居られるか、私は少くとも是等のものは政府が構想して居られる以上に考へてやるべき性質のものである、斯う云ふやうに考へるのであります、幾らかは之に手心を加へると云ふ程度ならば、私はもう一歩進んで免税をして貰ひたい、さう云ふ風に考へるのでありますが、是等の公共的のものに對して全面的に免除が出來ぬかどうか、此の點を伺つて見たいのであります
更に附加へて伺ひたいのは、結局實質的な打切に依つて從來の特殊預金はどうなるかと云ふことであります、五萬圓以下の特殊預金は、結局傳へられる所に依れば一般の封鎖になるのだ、さうして特殊預金は全然なくなると云ふ風に聞いて居りますが、正にさう云ふやうな方向に向つて居るかどうか此の點を最後に伺つて私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=44
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045・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尋ねの色々の點は既に數字の決定をして居る部分もありますが、決定して居ない部分があります、新聞などで色々のことを何處からどうやつて書かれるのか知れませぬが、私共としては實は書かれて甚だ困つて居るのであります、此の際私の口からまだ決定して居らない、法案として出して通らないものの數字を此處で申上げることは避けさせて戴きます、色々の關係から暫く私の口から申上げ兼ねる譯であります、併し御質問の御趣意の方向に向つて極力努力致して居る、殊に其の中にありました地方公共團體、學校、病院と云ふやうなものに付ては極力御趣意に副ふやうな方向に向つて居りますと云ふことだけを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=45
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046・上林山榮吉
○上林山委員 非常に理解ある、と言ひながら憚つた御答辯を更に追求すると云ふのは心苦しいのでありますが、一口希望だけを申上げて置きたいのは、私の希望の線に沿つて居られるとは言はれますが、唯手心を加へると云ふ程度ではなしに、市町村役場或は學校或は其の他の公共團體は、特に學校等に付ては公私立を問はず少くとも全免して戴きたいと云ふ要望を申上げまして、私の質問を終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=46
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047・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは本日は是で散會致します
午後零時十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00219460805&spkNum=47
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