1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月七日(水曜日)午前十時十八分開議
出席委員
委員長 苫米地義三君
理事 殿田孝次君 理事 中野武雄君
理事 深津玉一郎君 理事 八木佐太治君
理事 宮澤才吉君 理事 松永義雄君
理事 今井耕君
田中實司君 平岡良藏君
飯島祐之君 江川爲信君
松岡運君 奧村又十郎君
榊原千代君 玉井潤次君
林田哲雄君 米山久君
原尻束君 鈴木憲一君
増井慶太郎君 喜多楢治郎君
同日委員飯田義茂君辭任に付其の補闕として太田鐵太郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務政務次官 世耕弘一君
内務事務官 荻田保君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 前尾繁三郎君
農林政務次官 大石倫治君
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本日の會議に付した議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=0
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001・苫米地義三
○苫米地委員長 是から會議を開きます、政府に對する質疑の續行を致します――奧村又十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=1
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002・奧村又十郎
○奧村委員 私は主として大藏大臣に「インフレ」と税收入の問題に付て御伺ひしたいのでありまするが、外に酒其の他の問題に付て主税局長に御尋ね致したいと思ひますので、先づ主税局長に御伺ひ致したいと思ひます、昨日の委員會で主税局長は、今年度酒を作ると云ふことを言はれましたが、今年の七月に於て、政府の非常時宣言に伴つて酒類釀造の禁止を發表せられましたが、それはどうなつたのですか、それで大藏省として酒を造ると云ふ方針を御立てになつたと云ふことと、政府の方針とどう云ふ關係になつて居りますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=2
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003・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の通り食糧非常時對策の一環と致しまして、六月、七月に於きまして、米、麥、切干等食糧に向け得る原材料は酒類製造場に配給を受けないことは勿論、製造場にありまする是等の原料も供出致しまして、食糧緩和に貢献するべく六月、七月の酒造を其の程度に於て禁止致して居つたのであります、尚ほ只今の所或る程度の緩和は見ましたけれども、やはり此の政策は八月、九月の二箇月間だけ續けることに致して居ります、併し供出致しました以外の食糧に向け得られない雜原料では、依然として製造を奬勵致して居るのであります、十月からになりまして、大體食糧の目鼻が付きます場合に於きましては、昨日申上げましたやうに、前年程度の原料の配給を受けまして、出來るだけ増産に努めたいと云ふ考へを持つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=3
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004・奧村又十郎
○奧村委員 前年程度と御話になりましたが、今回の豫算は前年程度の釀造と云ふことで御作りになつたのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=4
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005・池田勇人
○池田(勇)政府委員 大體さう云ふ方針で作つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=5
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006・奧村又十郎
○奧村委員 是も昨日の質問があつた譯でありまするが、一部に於て、濁酒の製造、即ち密造が非常に行はれて居るやうであります、是は豫想外にひどいと私共思うて居りまするが、御當局の方では濁酒の方に流れる米はどの程度のものであると御認めになつて居られるでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=6
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007・池田勇人
○池田(勇)政府委員 酒類の製造が累年減少致しました爲に、地方に於きまして濁酒の製造が頻々と行はれつつあることは、我々も遺憾ながら認めざるを得ないのであります、如何なる程度の米を濁酒に潰して居るかと云ふことに付きましては、正確な統計は持合せて居りませぬ、酒類密造の嫌疑を受けて檢擧致し處罰致しました件數は、昨年度は大體九千件程度に相成つて居ります、之を税務官吏をもう少し増員しもう少し檢査を徹底したならば、是の數倍、或は數十倍が出て來るのではないかと思ふのでありますが、遺憾ながら其處まで及んで居ないと云ふことは洵に申譯ないと思つて居ります、併し我々としては、人員の許す限り極力密造防止に邁進すべく一致協力致して居る次第でございます、濁酒等の密造に使はれる米はどの位に上るかと云ふことは、是は正確な數字を持つて居りませぬ、或る人は二、三十萬石と言ひ、又或る人は百數十萬石と唱へる人もあるのでありまするが、我我として幾らの石數に上つて居るかと云ふことを申上げ兼ねるのでございます、大體五、六十萬石位が使はれて居るのではないかと云ふことを想像は致して居りまするが、是も漠然たる數字でございまして、何も根據のある數字でないと云ふことを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=7
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008・奧村又十郎
○奧村委員 只今大體の密造の方に流れる米が五、六十萬石かと云ふ御話でありまするが、私共の豫想では昨日は二百萬石と云ふ御話がありましたが、私は百萬石は堅いと見て居ります、是は諄々と申上げるまでもなく、國民の保健衛生、或は思想、及び税がそれる、凡ゆる面から見て非常に惡いことであります、之を如何にして止めるか、之に付てはどうしても必要な酒を成べく安く廻はすと云ふことが根本對策であらうと思ひます、そこで現在酒が一級酒、二級酒と云ふ風に分かれて居りまするけれども、之をもつと段階を分けて、農村、漁村、或は勞働方面には現在の半額、料理飮食方面に於ては恐らく百圓位の程度にして、必要な段階を付けて酒の配給をしたら、濁酒密造に對して相當の効果があらうかと考へます、此の密造に對する根本的な對策と云ふ面から此の點如何に考へて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=8
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009・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通り、酒類の密造が米の供出を阻碍し、又保健衞生方面から考へましても、又政府の財政收入から考へましても、之を徹底的に防止すると云ふことは非常な必要なことと考へて居るのであります、隨ひまして我々も取締をレイ行し、又半面官民から成りまする間接國税反則者防止協議會を開きまして極力努めて居るのでありますが、如何せんか及ばず先程申上げたやうな状況に相成つて居るのであります、是が根本的對策と致しましては、やはり御説の通り出來るだけ酒を多く造ると云ふことが必要であることは勿論でありますが、食糧事情から考へまして餘り多きを望むことは出來ないと思ふのであります、御話に依りますと、酒の値が高いから密造する、隨て密造する方面には安い酒を配給してはどうかと云ふ御話でございます、併し此の配給先に依りまして値段を變へると云ふことは税の徴收から申しまして非常に困難な點があるのであります、我々と致しまして研究は致しましたが、酒に段階を付ける、而も酒自體に品質から申しまして三段階も四段階も付けると云ふことは非常に困難でございます、又假令無理をして付けたに致しましても、相當横流れと申しますか、安い酒が高い酒を配給すべき方面に行つたりなんか致しまして、非常に取締又配給に付きまして不便を感じ、却て徴税が困難になるのではないかと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=9
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010・奧村又十郎
○奧村委員 酒の價格に段階を付けることが非常に困難であり、取締が困難であると云ふ御話であります、併し何も品質に依つて價格を決めるのでなく、消費者の層に依つて價格を決めるのでありますから、必ずしも價格が違ふから品質が違ふと云ふことにはならないと思ひます、そこで此の點に付ては、恐らく從來も問題になりましたが、酒の專賣制と云ふことが最も適當になるのぢやないのかと思ひます、專賣制に付てはまだ他にも理由があらうと思ひます、例へば酒は加水が出來ます、さうすると、如何に取締られてもそこに脱税と云ふことが相當行はれるやうに思ひます、是等の問題を解決し、又今日の國家財政の状態から考へますると、もう一度新たな觀點から酒の專賣を採上げるべきものであると思ひますが、當局としては如何に御考へになつて居られるか、若し專賣をおやりにならぬとすれば、其の專賣の出來ない理由は何處にあるか、御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=10
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011・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の第一點の、品質に依つて分けなくても、消費者層に依つて價格を分ければ宜いではないかと云ふ御話でございますが、如何なる方面に安い酒を出し、如何なる階層に高く賣るかと云ふことは非常に困難な問題だと思ひます、又或は料理屋方面にだけ高い酒を出したらどうか、斯う云ふ説をなす人もありますが、料理屋方面にだけ特に高い酒を出すと申しましても、是は單なる机上の議論でございまして、中々實際面に於きましては困難でございます、今回廢止致しました砂糖特別消費税、是は砂糖に付きまして、業務用の砂糖にだけ税率を加算して徴收すると云ふ制度であつたのでありまするが、此の點に付きましても中々徴收其の他非常な困難を加へたのであります、殊に酒に付きましては業務用に向くべき酒が非常に多いのでございます、中々巧く我々の庶幾する目的は擧げ得られない、我々はさう云ふ自信を只今の所は持つて居ない状況でございます
次に酒の專賣制を布いてはどうかと云ふ御話でございまするが、是はずつと以前から一部に唱へられて居るのであります、又「ビール」だけでも專賣としてはどうかと云ふ説は、相當有力に唱へられまして、政府に於きましても三年程前に、其の點に付きまして相當突込んだ研究を致したのでありまするが、酒の性質が御話の通りに加水と云ふこともございまするし、又製造中にも、亦販賣網に入つてからでも、腐敗其の他の點がございまして、中々困難でございます、殊に運送或は梱包、其の他の點に非常な隘路がございまして、三年前にもどうも專賣制はいけないと云ふ結論に到達致しました、其の惡條件は今も尚ほ加重されこそすれ、緩和されて居りませぬので、只今の所酒の專賣は考へて居りませぬ、唯幸ひに酒に付きましては、非常な強力な統制を致しまして、生産に付きましては勿論配給に付きましても、大日本酒類販賣會社等を起しまして、殆ど專賣に近い強力な生産竝に配給の統制を致して居りますので、此の際其の方面からも專賣制は執らないと云ふことを申上げて宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=11
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012・奧村又十郎
○奧村委員 專賣制を執らない理由として、運搬或は梱包或は腐敗の虞と云ふことを擧げられましたが、それ等に付ては現在の業者がやつて居つても同じことでないか、專賣と申しましても釀造から總てを專賣元なく、一部を受入制にし、販賣の面に於て專賣をすれば、是等の困難も解決出來るかと思ひまするが、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=12
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013・池田勇人
○池田(勇)政府委員 現在の機構が先程申上げましたやうに、殆ど專賣に近いやうな統制でやつて居りますので、今更役人が酒の配給にまで乘出す必要はない、却て斯う云ふことは餅屋は餅屋で、業者の方にやつて戴いた方が實際に副ふのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=13
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014・奧村又十郎
○奧村委員 それでは最近料理屋業務方面に配給のない筈の酒「ビール」が相當に廻つて居るのでありまするが、是はどう云ふ譯で其の品物が流れて行つて居るか、如何に御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=14
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015・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の通り料理屋に於きまして、配給以上の酒が消費せられて居ることは、我我も認めざるを得ないのであります、然らば其の酒は如何なる方面からどう云ふ經路を以て流れ込むかと云ふ問題でありまするが、是は酒の配給が實際に酒を飮まない家庭に付きましても、所謂人頭割的に配給致して居ります關係上、さう云ふ酒が相當部分消費しない人が消費する人に横流し致しまして、其の方が料理屋に持つて行く、さう云ふ酒が一番多いのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=15
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016・奧村又十郎
○奧村委員 次に外の問題に移りまして、本年度の現在審議して居る所得税、此の税額だけを今年三月三日に調べた預金から差引いて、殘りの金に財産税を掛けるのであるか、それとも所得税と財産税とを共に課けるのでありまするか、御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=16
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017・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昭和二十一年度分の所得税に付きましては、三月三日財産價格から控除致しまして財産税を計算致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=17
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018・奧村又十郎
○奧村委員 次に昨日の質問に依りまして、新圓の所得に付ては所得税其の他の方法で税を取ると云ふことを言はれましたが、私は財産税の調査或は所得税の調査に於て、新圓所得者に付てはどうしても税の捕足が出來ぬと考へます、なぜかなれば、今年三月のあの臨時財産調査令に依りまして、個人の資産の調査に於て、特に命令を以て定める事業に付てのみ動産を調べて居ります、併し其の特に命令を以て定めると云ふのは、大體營業を行ふ所の商人である、商品以外のものは御調査になつて居らぬ、昨年の財産税發表以來、御承知の新聞にも出て居りましたやうに、非常に換物思想が擴つて、所謂脱税の爲に物を買込んで居ります、是は瀝然たる事實、それが爲に物價が何層倍に上つて居りまするが、是等のものは商品として買入れて居りませぬ、此の品物が調査以後に於て新圓に依つて闇で賣買されて居る、此の新圓が捕足されない、所得税を以て調べると言はれます二十一年度の所得は、昨年の所得の實績に依つて御調べになる筈であります、此の三月以後に於て買占めた物を賣つた新圓に付ては、調べやうがないと思ひますが、其の點具體的にどう調べるか御返事を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=18
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019・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新圓の所得者と申しまするか、言葉は惡うございますが、新圓の所得者に二通りあると思ひます、今御話の通りに、三月三日以後の行爲に依りまして所謂生産とか色々の行爲に依りまして新圓を澤山取得した方、又御話の通りに、財産税發表後物資を買込んで三月三日以後に於て新圓で賣つた人、斯う二通りあると思ひます、三月三日以後の生産或は取引等に依りまして新圓を非常に獲得した方に付きましては、昭和二十二年分の所得として課税致します、さうして財産税發表後、昨年の暮から三月までに非常に物を買込んで、其の後に賣つて新圓を獲得せられた方に付きましては、出來得る限り其の人に付て調査致します、又斯う云ふ方は投書或は調査に依りまして可なり調べ得るのでございます、さう云ふ方を調べましたら、其の方の終戰前後からの預金の出入りを見まして、生活費以上に預金が引出されて居る場合には、其の預金の行方を調べる方法があるのであります、私は財産税草案發表の場合に、政府發表としてさう云ふ點も發表致したかつたのでありますが、餘りに行き過ぎると云ふ考へ方もありましたので、發表は致しませぬでした、税務當局と致しましては、隱匿物資で新圓を稼いだやうな人に付きましては、預金の出入り等を十分調査し、其のものに付きましては財産税の課税標準に入れますから、さしたる脱税は行はれないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=19
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020・奧村又十郎
○奧村委員 只今の御答辯には不滿足であります、もつと眞實に向つて率直に御答辯を願ひたいと思ひます、なぜかならば財産税に於て銀行、或は郵便局、或は現金其の他總ての預金或は證券になつた分は、十圓までの金は全部御調べになつた筈であります、是は完全に調べられて居る、所が物に依つて買占められて居るもの、後に新圓で以て賣買したものに付ては、是は調べが付かぬ、そこで其の物を後程新圓に依つて賣つたと云ふ者に付ては、昭和二十二年度の所得税で御取りになると云ふことでありますが、財産税と所得税とは別ものであります、財産税としては、やはり物に於ても、金に於ても一應御取りになるべきであります、昭和二十二年度の所得と云ふものは、一旦金錢に於て財産税を課けられたものに對しましても、昭和二十二年度に再び課かる筈であります、即ち財産税だけは、換物でやられた人だけが財産税を脱れると云ふことは、是は紛れもないことであらうと思ひます、其の點多少御答辯に缺けた所がないではないかと思ひます、もう一つ銀行其の他の預金を御調べになつて、とくに金の引出しが多過ぎるとか、入りが多過ぎるとか云ふことに依つて、其の人の所得を御調べになると云ふ御話でありまするが、是が一人々々の場合に於て事實おやりになれるかなれないかと云ふことは、是は常識判斷出來る、それは一應の御答辯であらうと思ひます、第一さう云ふ銀行、郵便局などへ預ける人は、幾口も分けて預けるとか、或は銀行、郵便局へ預けて居らずして、新圓で持つて居るではありませぬか、さう云ふ者に對してどう御調べになるか、其の點に付てもつと率直なる御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=20
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021・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得税と財産税の課税の對象の問題でございまするが、初め申上げました三月三日以後、或は又其の直前から生産又は商取引行爲に依りました所得に付きましては、昭和二十二年分から所得税を課税するのであります、今年の所得に對しましては二十二年に課税するのでございます、二十一年分としては課税になりませぬ、別の問題の昨年から舊圓で物を買占めて置いて、さうして新圓時代に其の買占めた物を御賣りになつた場合に、其の方が營業者であれば、勿論所得税も營業税も課税しますが、單に其の人が營業者でも何でもない、金があるから物を買つて置かう、さうして賣らう、斯う云ふ一時的の行爲に付きましては、所得税は課税出來ませぬ、さうして問題は三月三日の財産税の脱税になるのでありまするから、さう云ふ物を買占めた人に付きましては、極力買占めた事實を調べなければなりませぬ、買占めた事實は、色々な方面からでも分りますが、さう云ふ材料を以ちまして的確に調べるのには、預金の出入りが一番便利ぢやないかと考へて居ります、是は實際問題として、それなら税務官吏がそこまで出來るかと云ふことになりますが、我々はそれを努めてやりたい、隨て財産税法案が通過致しましたら、優良な素質の良い民間の方々を出來るだけ澤山税務官廳に入れまして、さう云ふ調査を致したいと思ふのであります、財産税の調査は御承知の通り金錢的債權等に付きましては三月三日殆ど根こそぎ致して居ります、さうして殘るものは土地、建物、機械、設備、商品でございます、之に付きましても、土地、建物は税務署に臺帳がございます、設備に付きましては有形のものでありますから、其の調査が出來ますが、商品が難かしうございます、隨て商品に付きましては、三月三日現在で申告を求めて居ります、でありまするから大體の網を張りまして捕まへて居るのでありますが、捕まへにくいのは、今御話のやうに、舊圓時代に物を買込みまして、さうして預金としては申告の漏れて居るものをどうするかと云ふ問題であると思ふのでありますが、それに付きましては先程申上げましたやうに、極力銀行其の他凡ゆる手を通して調べる積りで居ります、現在も相當調べて居ります、偶に行過ぎまして何處かの委員會で問題になりましたが、營業者以外の人にさう云ふことの調査を始めたので、物議を釀した例もあるのでありまするから、我々としまして、さう云ふ方面に相當の精力を使つて、所謂財産税の課税標準に過誤のないやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=21
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022・奧村又十郎
○奧村委員 局長の御丁寧な御答辯にも拘らず、どうしても此の財産税に於て、物を持つて居つた一部の人々の財産税脱税の不安を去ることは、どうしても私は出來ぬと思ひます、局長は只今商品としては全部御調べになつたと云ふことでありまするま、是は總額五千圓以上の物は御調べになつた筈であります、所が其の總額五千圓と云ふのは、是は丸公であるか、闇であるか、丸公として五千圓の品物と云へば、是は相當の財産であります、又其の後も物價が上つて居る、其の五千圓以下の物に付ては是は何等御調べがない筈であります、それから商品でない物は今申上げるやうに勿論御調べがない、それが其の後隱匿物資摘發に依つて慌て、賣つて居ります、さうして新圓を持つて居ります、新圓は恐らく八割までは手に持つて居ります、預けて居らず、それ等に付て極力御調べになると云ふ御言葉は結構であります、併し事實の面に於て、是は調べることが出來ぬ、調べることが出來ぬのなら、出來ぬと素直に是は御認めになつて戴きたい、それで結局新圓をもう一度何とかして調べる工夫はないかと云ふことを、我々は考へて見たいと思ひます、此處で御當局を責めると云ふ譯ではありませぬが、我々として如何にも金で持つて居れば總て税金が課かる、物を持つて居れば總てが有利になると云ふ國民の此の思想に對して、我々は鬪つて行かなければならぬと思ふのであります、之に對して當局として飽くまでも物を持つて居つた財産に付て十分調べて財産税が課けられると云ふ自信がおありになるかどうか御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=22
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023・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昨年來の我が國の經濟界の状況から致しますれば、物を持つて居られた方が或る程度か相當程度か得だと云ふことは是は免れない事實と思ひます、併し物を持つて居る人が不當に得をなさることのないやうに、我々とししては極力調べなければなりませぬ、極力調べてそれを十分摘發する自信がありやと聽かれますれば、我々は自信を持ちたい、出來るだけ調べます、さうして自信あると申上げても差支へないと思ひます、併し徴税のことたるや中々何處までの自信がある、何處までの調査が出來て居る、何處までが不完全と云ふ區別が付け得られない、我々としては何處までも調査致しまして課税の適正に對する自信は持つて居ります、此の適正な課税の結果として適正な負擔をするかどうかと云ふことは、我々の努力ばかりでは足りませぬ、國民が一致協力して此の劃期的の税の執行に御援助御協力を願ふより外ないのであります、三月三日の五千圓と云ふものの標準が如何なるものであるか、丸公なりや否やと云ふことであります、是は三月三日に限界價格を發表致しました、それに據ることに致して居るのであります、限界價格のないものは實際の取引價格と云ふことに致なて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=23
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024・奧村又十郎
○奧村委員 此の問題は又後に關係があると思ひますので、此の程度で打切りまして、今回の此の補償打切に對する色んな整理及び財産税の徴收と云ふ二つの事柄に依つて、新圓はどれだけ吸收出來ると御見込みになつて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=24
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025・池田勇人
○池田(勇)政府委員 補償打切の方法又財産税の徴收に付きましの具體案は只今政府が發表致して居りませぬ、隨ひましてさう云ふ二つの命題の下に新圓がどれだけ徴收きれるかと云ふことは御答へし兼ねるのであります、補償打切、財産税の内容が發表になりましても、新圓をどれだけ財産税として徴收出來るかと云ふことは相當困難な問題だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=25
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026・奧村又十郎
○奧村委員 併し此の問題に付きましては、先般大藏大臣が補償打切及び財産税の徴收に依つて相當通貨の收縮が出來ると云ふことを言はれましたので、それに關聯して御尋ねしたのでありますが、それでは此の問題は大藏大臣が御越しになりましてから大臣に御伺ひ致したいと思ひます
それでは今年度の財政が非常に膨脹し而も赤字財政でありますから、一方貯蓄と云ふことに付ては餘程の努力が要ると思ひます、特に農村漁村に於ける貯蓄と云ふことが非常に大切な問題であります、それに付て申上げたいと思ひまするが、今までの貯蓄方法は全然駄目であります、何故と申しますれば、一般國民の通貨に對する觀念が根本から變つて來た、是は今年の三月三日のあの措置に依つて變つた、私共田舍の純朴な百姓や漁夫は臍繰金を縁の下の蛸壺の中へ入れてちまちまと溜めて所謂爪で火を燈して來たものであります、所がさう云ふ何十年の苦勞の結晶を全部銀行へ預けさした、預けぬ以上は此の金は通らぬと云ふことにした、而も農漁村に於ては殆ど引出しを禁じて居ります、隨てそれだけの苦勞した金を全部國家に取上げたと同樣の處置になつて居る、而も今日通貨の價値が下落して物を買はうにも買ふことが出來ない、斯う云ふことでありますから、金を溜めようと云ふ思想はもう根本から崩れて居る、生半可な奬勵策では通貨の貯蓄は出來ぬと思ひますが、之に對して大藏當局は如何なる對策を持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=26
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027・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通りでありまして、從來の貯蓄増強政策は尚ほ今後續けてやつて行く點もあると私は思ひまするが、やはり貯蓄の増強は御話の通りに通貨の信用、經濟組織の確立、是より外には良い手はないと考へて居ります、政府と致しましても出來るだけ通貨の信用を早く恢復すると云ふことが一番の策と考へて居る次第でございます、尚ほ補償打切り、財産税等の進行に依つて新圓の吸收がどれだけ出來るかと云ふ御話に付きまして附加へて申しまするが、是は財産税の徴收に依つて新圓が入つて來る方面と、財産税が物納された場合に、政府は其の物納財産を新圓所持者に賣りまして新圓の吸收をする場合と二通りあると思ひます、私は後者の方が相當期待出來るのではないか、何故かと申しますると、財産税の課税對象となる方には餘り新圓がないのぢやないかと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=27
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028・奧村又十郎
○奧村委員 貯蓄の方策に對しては局長は通貨の價値の安定、經濟の安定以外には根本策はないと言はれる、併し私共としては現在の「インフレ」の傾向が激化して行く限り貯蓄は見込がない、又此の「インフレ」の状態は根本に於て通貨を吸收し、減す以外には經濟の安定は出來ぬと思ひます、さうなるとしますると茲に經濟政策の根本が堂々廻りをする、局長は經濟が安定しなければ通貨が吸收出來ぬ、貯蓄が出來ぬと云ふ、併し此の通貨を吸收しなければ經濟は安定出來ぬのでありますから決定的な貯蓄はないと我々は解釋致します、特に農漁村に於ては金を貰つて米なり魚なりを供出し、野菜を出さなければならぬ、其の物を出さなければならぬ所に又金がだぶついて居る、茲に此の經濟のやりにくい問題があるのであります、それでは今年度の貯蓄の目標と云ふものは全然立つて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=28
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029・池田勇人
○池田(勇)政府委員 「インフレ」状態を克服するのに御話では通貨の減少を第一要件とする、斯う云ふ御話でありまするが、私の私見ではさうは考へて居りませぬ、通貨の減少だけではありませぬ、物の増産で經濟界の安定と云ふことでございます、經濟界の安定が期し得るならば、通貨の或る程度の増加は致し方ない、斯う云ふ考へを持つて居ります、貯蓄増加の目標は只今の所大藏省としては作つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=29
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030・奧村又十郎
○奧村委員 それでは昭和二十一年度の貯蓄に於て新圓がどれだけ徴收せられ、舊圓がどれだけ徴收せられると云ふ御見込でありまするか、昭和二十一年度の税に於て、特に所得税に於ては大體昭和二十年度の實績を以て御調べになつて居り、又生活費以外には引出しを認めて居られぬのでありまするから、是等の所得税は大體殆ど全部舊圓で徴收せらるべきものであると思ふ、又其の他の税に於ても色々な面に於て舊圓で徴收せられる所があるやうに思ひまするが、總額に於て大體の御見込――新圓で以て昭和二十一年度の租税はどの位入るか、御見込を御知らせ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=30
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031・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税の徴收に付きまして大體の分け方は、間接税等に於きましては新圓で租税を徴收致して居ります、酒税とか入場税、遊興飮食税は殆ど全部新圓でございます、直接税の方は、御話の通りに前年の實績課税に相成つて居りますので、實績課税になつて居ります賦課課税の所得税、竝に綜合所得税、法人税、法人臨時利得税、個人臨時利得税は、概ね封鎖預金からの支拂ひを認めて居ります、隨て之を強ひて言へば舊圓と言ひ得るかと思ひまするが、封鎖預金からの納税を認めて居ります、又所得税等に於きまする源泉課税のものに付きましては、新所得から支拂ふことに致して居ります、是は新圓と申上げて宜いのか、舊圓と申上げて宜いのか、所得の源泉で徴收致しますから、新しい所得から取ることに致して居ります、隨ひまして今新圓の徴收がどれだけになるか、舊圓の徴收がどれだけになるかと云ふことは正確な數字は申上げられませぬけれども、專賣益金勘定を入れました國税の二百二十八億圓の中、間接税が其の半分でございます、四七%餘りを占めて居りまするが、是は新圓で入つて來ると言はれませう、さうして賦課課税のものは舊封鎖預金から出し得られますから、此の金額は綜合所得税で十億圓、農業其の他營業所得の分類所得で二十億圓、地租家屋税等の國税で四億圓、是は舊封鎖預金から支拂はれませう、其の他のものは新しい所得から源泉で徴收することに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=31
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032・奧村又十郎
○奧村委員 それで大體總額に於て合計新圓での收入はどの程度になりますか、半分位は入りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=32
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033・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新所得から入る税も新圓に計算して宜しうございますか、只今申上げましたやうに、二百二十八億の專賣益金を入れました國税の中で、約四八%程度は間接税でありまするから新圓で入ります、さう致しますと百億圓餘りでございます、それから舊封鎖預金から支拂はれる綜合所得税、竝に賦課課税の所得、甲種、乙種の事業所得、不動産所得、是は合せまして二十五億、綜合所得税の十億、其の他諸種の税を入れまして四十億程度は舊封鎖預金から拂はれます、其の他は新所得に對して源泉で課税致しますから、是は新圓で取ると申しまするか、兎に角舊封鎖預金から拂はせませぬ、新圓に入れるとすれば二百二十八億から四十億ばかり引いたもので、新圓で入ると云ふことに相成ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=33
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034・奧村又十郎
○奧村委員 それでは大體今年度の財政支出は五百六十億、其の外に又追加の支出があります、大體見込んで七百億位が今年度の財政支出と思ひまするが、それに間違ひありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=34
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035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 當初の豫算は五百六十億でありまするが、追加豫算が出て居ります、又追加豫算は今議會で尚ほ出ないとは申上げられませぬ、又議會が閉會になりましても今年度臨時議會があるかも分りませぬ、私は今から今年度の歳出額を一般會計で幾らと云ふことは申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=35
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036・奧村又十郎
○奧村委員 我々としては今回の此の税制に付ては如何にして國民の購買力を税で以て吸收する力と云ふことに一番關心を持たなければならぬと思ふ譯であります、それでそれ等のことに付ては、御當局の立場で率直な御答辯も出來ないのも御無理はないと思ひます、併し又我々は此の「インフレ」對策に對しても、相當此の財政が深い決定的な要因となると思ひますから、もう一つ御尋ねを申したいと思ひます、それでは本年度の財政總支出は幾らになるか分らぬ、私は七百億と押へなければならぬと思ひまするが、其の内舊圓封鎖で支拂はれるものはないやうに思ひまするが、全部新圓で是等の財政支出が行はれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=36
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037・池田勇人
○池田(勇)政府委員 全部新圓で行はれると見て宜しうございます、尚ほ御話の健全財政に移る爲に購買力の吸收の方法としての政府の收入を出來るだけ多くすると云ふ御考へは私も同感でありまして、我々も出來るだけ歳入の増加に日夜腐心致して居る状況でありまするが、何と申しましても、敗戰後の我が國の經濟界は昏迷の域を脱して居りませぬ、斬う云ふ場合には税の方でもやはり或る程度手控へすべきではないかと云ふ考へを持つて居りまするが、併し其の昏迷の間でも出來得る限りの歳入の増加に付きまして意を用ひたのが今回の増税案であるのであります、我が國の租税負擔は是は一概に外國と比較にはなりませぬが、我々の見る所ではまだ徴收し得るのではないかと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=37
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038・奧村又十郎
○奧村委員 財政支出に於ては、全部新圓で支拂はれると云ふ御話でありまするから、國民經濟に對して大體七百億程度の新圓が今年度一年間に出される、それぢや是の吸收の面に於てはどうであらうか、今年度の租税に於て舊圓で吸收するのもあるし、新圓で吸收するのもある、はつきりした數字は捉へられませぬが、大體半額と見ても百五十億程度の新圓が吸收されるが、後は舊圓で吸收されるものと考へます、此の點は五十億位は違ふかも分りませぬ、それから財産税の徴收に於て、是はどの程度新圓が入ると云ふ御見込であるか、財産税のことに付ては分らぬと云ふ御言葉でありまするが、此の七百億の財政支出に對して、どれだけの新圓が吸收されるか、又其の中どれだけが貯蓄になるか、どれだけが赤字になるかと云ふことに付て、大體の御見込が立つて居らなければ、國民として到底此の財政に對して安心がならぬと思ひまするが、其の御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=38
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039・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本年の歳出總額幾らになるかと云ふことは、只今はつきり申上げ兼ねると言つたのでありまして、私としてもどれだけになるか今から豫測は付きませぬ、併し只今の所では財産税收入等に依りまして、赤字公債を出さずに濟んで居るのであります、第二の政府の歳出が新圓であれば、其の歳出に相當する額を租税收入で取れるかと云ふ御話でございます、勿論一般會計の歳入租税收入だけでは足りませぬ、外に政府の歳入方法は森林等色んな歳入科目があるのであります、それが統計で三百六億に相成つて居りまするが、其の他のものに付きましては所謂財産税收入から賄つて行くのであります、而して財産税收入は只今幾らになるかと云ふことは申上げられませぬ、實は此の頃毎日其の點で關係方面と折衝致して居るのであります、免税點に於きましても五萬圓と新聞に言はれ、或は十萬圓と言はれて居ります、實際私自身がまだどちらに決めようかと決め兼ねて居る状態でありますので、隨て財産税收入幾らと云ふことを申上げることは出來ないのでございます、唯思ふに財産税は相當の收入があります、免税點の問題でなしに第二封鎖預金を財産税から如何に取るかに依りまして、相當變つて來るのであります、而も又第二封鎖預金がどう云ふ風に殘つて來るかと云ふことは中々豫想が付き兼ねます、隨て正確な財産税の收入は只今申上げられませぬが、二百五十億か三百億の赤字は財産税で賄へることは確かでございます、而して其の財産税の收入が新圓で入つて呉れば問題はありませぬ、政府の新圓歳出を全部吸收し得ます、併し御承知の通りに、財産税收入は相當物納を覺悟致さなければなりませぬ、隨て物納致されました物は、さつき申しましたやうに極力新圓所有者に買つて戴く、さうして新圓を吸收する、尚それが今年度内に出來ない場合には、大藏省證劵で泳いで行くより外にないと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=39
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040・奧村又十郎
○奧村委員 財産税の徴收に付きまして納入の手段であります、封鎖預金、新圓、不動産、斯う云ふ風になると思ひまするが、新圓の所持と云ふことは、是は個人の手持を調べることは出來ぬのでありますから、封鎖や、公債で支拂ふと云ふことになれば、之を止めることは出來ぬと思ひます、隨て物納は別として、金錢で支拂ふ場合には殆ど新圓は見込めずに舊圓で以て、封鎖で以て財産税徴收が行はれると思ひますが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=40
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041・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税を課せられた方の資産内容に依つて違ふと思ひます、財産税を課せられた人は、其の財産税に相當する金額を第一封鎖預金ばかりで持つて居られるとのみ限りませぬ、先程御話のやうに非常に舊圓時代に物を買つて、さうして其の物を摘發されて、三月三日の財産税に依つて財産に加算された方が、偶偶それを御賣りになつて、新圓を持つて居られる場合には、新圓で財産税は入つて來ますでせう、各人各樣でありますので、一概には申上げ兼ねますが、財産税の徴收は第一封鎖預金から納めて戴きます、國債でも納めて戴きます、新圓で納めて下されば最も喜ばしい現象だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=41
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042・奧村又十郎
○奧村委員 實は私は是等の問題からどう推算して行つても、今年度年末に於て通貨千億を突破すると云ふ不安を持つて居ります、之を率直に明快な當局の御答辯があれば恐らくここまで行けると思ひまするが、どうも財産税も、判らぬとか、あれも判らぬと云ふ御答辯でそこまで行きませぬ、併し御願ひ申上げることは、大藏當局に於ても恐らく此の財政が安心なものであると御考へになつて居られぬだらうと思ひます、私共も當局と共に此の不安な財政を共に心配し、共に相談すると云ふ意味に於て、もう少し率直に御話願ひたいと思ひます、是は希望と致しまして、次に移らせて戴きます
斯う云ふ非常な困難な財政になって居るにも拘らず、我々は今税率や條文を審議するよりも、今日の經濟の激變して居る状態、特に「インフレ」の昂進して居る状態に於て、今の税制の實際と云ふものは果して適切に税金を取つて居るか、又「インフレ」に對して置去りを食つて居らぬかと云ふことを非常に心配して居ります、此の點に付て闇の問題、それから脱税の問題、此の二つを御伺ひしたいと思ひます、大藏大臣は物價に丸公と闇を入れてあると云ふことを言はれた、是は大臣御認めになつて居られます、税務御當局に於ては一體丸公と闇、どちらを基準とし、どちらに税金を取つて居られるか、大體國民の實收に對して税を課けると云ふ御方針でありまするか、闇にも税を御取りになると云ふ御話に伺つて居りまするが、御當局としては丸公に依る物の流れと、闇に依る物の流れと、大體どの程度の比率になつて居るか、又之に對して實際どう云ふやうな徴税の御方針を立てて居られるか、果して闇を逃さずに捕捉出來るか、此の點御説明願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=42
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043・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御質問に對しまして、あれも判らない、是も判らないと申上げて居るのでございませぬ、私は自分の知つて居ることは全部申上げて居ります、唯財産税の内容に付きましては、實際まだ決まつて居りませぬので申上げ兼ねる、斯う云ふのであります、斯う云ふ判らない状態を續けて居るのは能くございませぬので、實は毎日のやうに暇を見ては關係方面に行つて居る次第であります、判りましたら早速公表致しまして御質問に應ずることに致します
次に今の經濟状態では財政から考へても安心出來ないぢやないか、洵に其の通りでございまして、我々も安心出來ない、非常に危險な状態だと考へて居りまして、出來るだけ危險防止に力を盡して居る次第でございます、「インフレ」の状態に於ける税制の問題、是は只今の税制が果して「インフレ」の状態に副うて居るかどうかと云ふ問題に付きましては、相當議論があると思ひます、少くとも前年の實績で所得税、營業税等を課税することは「インフレ」状熊に副うて居ないと云ふ議論の方が強うございます、我々もそちらに味方致したいのでありますが、然らば前年實績課税を豫算課税に改めた時に、「インフレ」時に於ける税制として實際效果を擧げ得るかどうかと申しますると、中々效果は擧げられませぬ、「インフレ」に勝つ税制は殆ど出來ないのであります、唯強ひて言へば、今のやうに實績課税よりも豫算課税にして置いた方が或る程度副へると云ふ状態でございます、隨ひまして今後直接税、殊に所得税の問題に於きましては、實績課税を豫算課税に改めるかどうかと云ふことは研究すべき重要な問題だと思ひます、唯申上げますが、「インフレ」が續いて行くから豫算課税に改める、斯う云ふ意味でありませぬ、豫算課税の方が實際に副ふのではないかと云ふことは研究すべき題目だと考へて居るのであります
次に闇脱税に付てどう云ふ方法を執つて居るか、斯う云ふ御話でございます、丸公に依つて課税標準を決定するか、闇も課税標準に入れるか、斯う云ふ御質問でございまするが、闇を課税標準に入れると云ふことは申上げられませぬ、又闇と云ふことが判かれば課税標準に入れべきではありませぬ、是は法律上取締るべき行爲でありまして、斯う云ふものを課税標準に入れると云ふことは不適當と思ひます、唯我々は實際の闇か丸公かどうか判からない、兎に角總收入金より必要な經費を控除した實際の所得に課税して居るのであります、隨て結果と致しましては、實體が闇であるやうなものが課税の對象になつて居ることは事實でせう、併し其の闇が課税の對象になつたことが司法裁判所の判決に依りまして、是だけ闇をしたと云ふ時には課税標準から引きます、是は私は闇に課税しない政府の方針を堅持して居りますので、闇であるかないか判らないものに付きましては實收入主義に依つて居るのでありますから税務署は之に課税致して居ります、而して闇と公定價格との課税の比率如何と云ふことでありまするが、只今までの御話で御判りになるやうに、闇をなすつて居ない方に付きましては公定價格ばかりに依つて居ります、闇に類した行爲をやつて居られる方があれば、其の闇に類した行爲が多ければそれが課税標準になつて居る方もありませう、個人々々の商行爲、其の他の取引の實情に依つて決めなければ御答へ出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=43
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044・奧村又十郎
○奧村委員 只今原則として丸公に對して課税するのであつて、はつきり闇と判れば之に對しては課税をしないと云ふ御話であります、さうしますと是は非常に大きな問題にならうと思ひます、農村に於て最近税務署が二十一年度の所得査定をやつて通知が來て居りますが、殆ど一律に闇をやつたと認められたとしか思へないやうな税金の査定をして、非常に今農村で非難囂々たるものがあります、農村の實情に於ては殆ど丸公で以て供出をやつて居る農家と、闇ばかりやつて居るやうな農家もあります、さう云ふ際に、闇には原則として税金を課けぬと云ふことになると是は大きな問題です、私は地方に於て漁業會の會長を勤めて居ります、漁業會の販賣所へ出た魚に付ては税務署が全部御調査になつて、それの供出者に對し税金を課け、又販賣者に對して税金を課けて居られます、所が販賣所へ水揚げせぬ人に對しては税務署は調べようにも調べが付かぬ、隨て闇の所謂横流れに對しては税金が課かつて居りませぬ、それは如何に課けようとしても是は事實課かりませぬ、さう致しますと販賣所へ供出した者は丸公で魚を揚げて而もそれに對して高率の税金が課かる、闇に對しては丸公の何層倍に賣つて而も税金が課からぬと云ふ状態になつて、それが爲に益益魚も販賣所を避けて闇に流れるやうな事情になつて居ります、又先程御尋ねしたのは、全體の物資の流れに付て、丸公で物資がどれだけ流れるか、闇で物資がどれだけ流れるか、私は主食の米から或は卵、牛肉、野菜、魚、其の他凡ゆる物資を眺めて見ますと、丸公の流れと闇の流れでは恐らく闇の流れの方が多いものと認めます、闇の流れに付てはどの程度あると御認めになつて居られますか、又是等の状態に對して如何なる方針を執つて居られるか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=44
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045・池田勇人
○池田(勇)政府委員 政府が闇に對して課税致しませぬと云ふことは、卑近な例で申しますと掏摸や盜人の所得に對して課税しないことと同じであります、さうして闇をやつたとしか思へないやうな課税をして居ると仰しやいますが、さう云ふ方は闇をやつたと思はれるやうな方でございます、次に正式の「ルート」に入れた者に對しましては高率の課税をするが、其の「ルート」に入らぬで横に流して居る方に課税しないのは不當ではないか、此の點は闇課税の問題ではありませぬ、税務の調査技術の問題でございます、我々は斯かる場合に於きましては出來るだけ調査して課税しなければならぬと思ひます、唯調査がそこまで行つて居ないと云ふことは洵に遺憾な點でございますが、將來はさう云ふ方に對しましても十分所得税或は其の他の税を課するやうに努力致したいと思ひます、又公定價格の取引と闇取引の總體の分量割合、此の點に付きましては私申上げる程の材料を持つて居りませぬ、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=45
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046・奧村又十郎
○奧村委員 併し御當局として今日の此の「インフレ」に對して税で以て國民所得を徴收すると云ふ立場に立つて御考へになつて、丸公と闇がどう云ふ比率になつて居るかと云ふ位の御見當は付けてなければ本當の政治は出來ないものと私は考へます、闇に對しては税金を課けられないと云ふことを堅持せられるとすれば、政府全體としてまだまだ物の配給統制に付ては嚴格な處理をしなければならぬ、今日闇に對しては所謂暴利取締令とか色々な法律があるにも拘らず、殆ど闇放任になつて居ります、大藏省以外の方は闇放任でやつて居るし、大藏省だけが闇行爲に税金を取る、それでは結局税金だけが「インフレ」に對して置去りを食ふことになると思ふ、現實の事態に對して闇に税金を課けぬと云ふことでありますれば、是は餘程糞眞面目な、正直な人のみに税金が課かる、闇をやつて肥つて居る人には税金が課からぬ、事實の問題に於ては是は非常に困つたことが生ずると思ふが、どう御考へでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=46
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047・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私の説明が惡いのか、非常に誤解して居られるやうであります、闇に課税しないと云ふことは法理論的の問題でございますから、御承知願ひたいと思ひます、若しあなたが、政府は闇に課税しないと言つたと公表なさいますと、直ぐ税務署は闇に課税して居るぢやないか、斯う云ふ反問が參ります、そこで、是は裁判所で闇と判決を受けたものは課税から除くと云ふだけの問題であつて、實際的には闇に課税して居るでありませう、又闇に類するものに課税して居ると云ふことは認めて居ります、又斯うしなければ課税の適正が期し得られない、だから其の點は誤解のないやうに、實質上は闇にも課税して居ます、唯政府は法治國の建前として闇に課税するとは言へませぬ、又法律上課税すべきではありませぬ、併し其の方が實際に闇をやつて居られた場合には、我々としてはそれが皆闇なりや否やと云ふことが判りませぬから、總收入金から必要經費を差引いて課税して居る、是が課税の適正、公正を期する所以であります、附加へて申上げますが、政府が闇に課税するから米の供出を阻むぢやないか、政府が闇に課税して居るから闇をやらなければ税金が拂ひ得ぬぢやないか、斯う云ふ論を吐く人がありますが、是は私は間違ひだと思ひます、是は昨年の實績に依つて課税して居るのであります、其の人が闇をやつて相當の利益を擧げて居れば、それに對して課税するのは當然であります、若し之に課税しなかつたならば、それこそ本年度は又闇をやつてうんと儲けて、而も公定で税金を拂ふと云ふことになつてしまふので、私は實際の問題に於ては闇に課税をしなければいかぬと思つて居るのであります、そこを御考へ違ひないやうに呉れ呉れも御願ひしたいと思ひます、某が闇をしたと云ふ判決がありましたら、其の金額だけは所得から差引きます、是は法律上の議論であります、併し實際其の人々が闇と同じ値段で横流しをして居れば、其の所得には課税をしなければ負擔の衡平が取れないのであります、又さう云ふ場合に課税をしなければ、闇を助長するやうなものである、却て公定價格取引を阻碍することに相成りまするから、實際上は闇に課税を致して居るのでございます、其の點誤解のないやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=47
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048・奧村又十郎
○奧村委員 實際上の御方針に付ては能く了承致しました、供し事實の問題として、此の闇取引の收入と云ふことは、非常に捕捉困難であらうと思ひます、漁村に於ても魚の横流しは税務署でも調べが付かぬ、農村でも本當の闇をやつを居るのは之を押へることは出來ぬ、それは外の法律を紊してやつて居るのですから、税務署で調べることの出來ぬことは當然でございます、都會に於ても其の通りであります、是等の闇に付ては、恐らく之に對してどの程度捕捉して課税出來るやと云ふことに付ては、大いに問題があらうと思ひますが、是は此の程度に止めて置きます
大藏大臣が御越しになりましたので、大藏大臣に御尋ね申上げます
大臣は昨年の終戰直後の物價と今日の物價――之には闇も丸公もありまするが、之を平均して一體大掴みに言つて物價は同じであると思はれますか、相當上つて居ると思はれますか、上つて居るとすれば何倍位に上つて居ると御考へになるか、大掴みの所で宣しいから御見込を御話願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=48
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049・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論上つて居ると思ひます、併し何倍に上つて居ると云ふことは、一寸難かしくて今御答へ致し兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=49
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050・奧村又十郎
○奧村委員 之に對して御答の難かしいのは分りまするが、又或る程度大藏當局として、物價問題を御考へになつて居られ、又特に物價の管轄であられる方が全然見當が付かぬと云ふのも少しをかしいと思ひます、藁工品など丸公で以て昨年と今年と一箇年の中に十倍も上つて居ります、肥料の如きは十何倍も上つて居ります、其の他魚も大體十倍上つて居ります、野菜、果物も上つて居ります、平均して五倍以上は上つて居ると思ひますが、大藏大臣は五倍以上は上つて居ると考へて居られるか、五倍以下と思はれるか、其の程度の大掴みな御返事はして戴かなければならないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=50
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051・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸其の御答へを致し兼ねると云ふ理由は、何時も申上げるやうに、今日本當の「マーケット」がないものですから、成程米に付て云へば闇ではどうとか、魚も闇ではどうとか色々ありますから、常識的には五倍とか、十倍位であらうと云ふことは言へますけれども、一寸此處で開き直つて幾らに上つて居るかと云ふことは、「ウエイト」の問題で、米が幾ら、魚が幾ら、麥が幾らと云ふやうに考へなければならぬと云ふことになると、御答へ致し兼ねることになります、實際困つたことでありますけれども、其の點に於てははつきりした數字は分らないのです、唯常識的には御説のやうに、五倍位かな、十倍位かなと、さう云ふことならば、御話のやうな感じは持つて居るのですがな発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=51
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052・奧村又十郎
○奧村委員 大藏大臣は非常に御急ぎのやうですから、物價問題だけ極く簡單に御伺ひ致しますが、それでは丸公だけの平均で行つてどの程度上つて居りますか、此の問題を考へて行きませぬと、此の税の問題の審議は適切には出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=52
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053・石橋湛山
○石橋國務大臣 實は幾らに上つたか私は指數を知らぬのであります、それは事務當局に調べがありますかどうか、其の方から御答へ致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=53
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054・奧村又十郎
○奧村委員 物價の主管廳である所に於て、丸公の平均物價の値上りさへも御答辯して戴けぬと云ふことは非常に殘念であります、特に「インフレ」の昂進して居る際に於て是は困る、昨年の實績に依つて所得税を御徴收になり――租税は大體昨年の實績に依つて行く譯であります、さうして財政の支拂は今年度の物價に對して支拂はれて行く、斯う見て居ります、特に財政支出の大部分は人件費であらうと思ひます、色々名目は變つて居りませうけれども、結局端々に於ては人件費に支拂はれるものと思ひます、所が其の人件費の大部分は今日は生活費であります、生活費は今日食糧の配給が非常に少くなつて居るから、大部分闇で以て賄つて居ると思ひます、其の闇で以て賄つて居る人件費は、膨脹するのは當然であります、是は官廳の職員給料に於ても、昨年度よりも二倍乃至三倍以上上つて居る筈と思ひますが、さうすると、税の方では昨年度の實績で税を取る、支拂の方は何層倍になつて居る物價或は賃金に對して支拂ふ、そこに財政の非常な赤字が出て來る筈でありますが、之に對しては大藏大臣は如何なる方針を執つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=54
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055・石橋湛山
○石橋國務大臣 税の全部が昨年の實績に依つて居る譯ではありませぬ、でありますから、其の全部を昨年のものと見れば御説のやうになりますが、併しさうではないのですから、御話の程ではありませぬが、それは兎に角、物價が漸次上りつつある時には少くとも理論的には御説のやうになる譯であります、隨てそれだけ財政の處理は非常に困難になる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=55
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056・奧村又十郎
○奧村委員 大臣は御急ぎのやうでもありますし、物價の見當が付かぬのに是れ以上議論を致しても仕方がありませぬから、次に局長に御尋ね致します
一番問題になつて居るのは公債の處理の問題でありますが、之に對して大臣は、公債を破棄したならば大衆の預金に迷惑を掛けると云ふ御話であります、併し何も大衆が平等に預金を持つて居る譯ではない、之には相當高額と少額とある筈であります、そこで銀行預金、郵便貯金其の他に於て、例へば預金の中一萬五千圓以下、一萬五千圓以上の預金者と云ふやうに、之を分類してどの程度の金額になつて居るかと云ふことを御調べになつたことがあるかないか、又御調べになる意思があるかないか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=56
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057・池田勇人
○池田(勇)政府委員 公債の利下竝に公債の破棄等に付きましては、本年初め以來大藏省と致しては相當研究致しました、さうして結局先般大臣の言はれたやうに、國債は其の儘で行かうと云ふことに相成つたのであります、其の最も大きい理由は、今後公債政策をどう云ふ風にして行くか、其の場合に舊國債全部を破棄する譯ではございませぬから、舊國債或は預金利子等の金利關係をどう見て行くかと云ふ問題と、公債を破棄した爲に、誰が破棄に依る損失を被るかと云ふ問題とが、最も大きい問題であつたのであります、御話の公債を破棄したならば、預金に響きます、即ち公債の大口所有者は各種金融機關、預金部等であります、さうして預金部の資金の中、殆ど八割餘が國債でありますので、郵便貯金に影響致します、又全公債の中で一般の會社、所謂企業者竝に個人の持つて居ります國債は百億足らず、九十億程度と見られて居ります、隨て預金部竝に金融機關の公債は預金の見返りに相成つて居ります、隨て之を切りますと、銀行の預金が國債を破棄しただけ切られることに相成るのであります、然らば切られる人は誰かと云ふ時に、一千萬圓の預金者も或は一萬圓の豫金者も、「プロット」に切つて行くか、「プリアビリチー」に切つて行くかと云ふ問題でありますが、「プリアビリチー」に切つて行くと云ふことは、中々困難だと思ひます、なぜかと申しますと、銀行の預金は數千萬口ございます、併し數千萬人の異なつた人が預金して居るのでありませぬ、二百萬圓、三百萬圓の預金も、一口五千圓づつ預けて居られる人も相當あるのであります、又ずつと昔からの預金を見ますと、定期預金を一人で三千圓の口を數十口持つて居られる方も、間々あるのであります、隨ひまして只今一口一萬五千圓以上の預金が幾らで、それ未滿の預金が幾らと云ふのは、我々の所管でありませぬが、銀行局でも恐らく調べて居ないと思ひます、最近補償の打切りの問題から、大部苦慮してやつたやうでありますが、中々出來て居りませぬ、殊に先程申上げましたやうに、税の關係から三千圓とか五千圓の口で相當の資産家が非常に澤山持つて居られる状態でありまするから、今どう斯うと云ふ調べは困難であると同時に、又想像から申上げても詮ないことかと思ひます、併し何れに致しましても公債を破棄したならば、預金に非常に迷惑を掛ける、預金を切捨てなければならぬと云ふのが、公債破棄を止めました理由の重要なるものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=57
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058・奧村又十郎
○奧村委員 次に免税の對象になる重要事業と云ふのは、どう云ふものでありますか、又新しい事態に對して、此の重要事業の指定を御變へになる御意思はありませぬか、變へるとすればどう云ふ方面に變へて行かれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=58
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059・池田勇人
○池田(勇)政府委員 日本の租税は他とは違ひまして、税制に各種の經濟政策を盛込んで居ります、是は所謂租税の經濟的原則と申しますか、經濟政策と調和を圖ると云ふので、各種の輕減免除の規定を入れて居るのであります、其の爲に租税が非常に複雜になつて居ります、預金に對しましても輕減免除の規定があります爲に、其の税率が非常に數澤山になつて居ります、我々と致しましては餘り税がそこまで行くのは、行過ぎると常に言つて居つたのでありますが、戰時中のことでありますので、各種の減免規定を置きました、併し今囘は平時税制に變ると云ふので、各種の減免規定を思切つて外しました、御話の重要物産の増産等に付て、どんな輕減規定があるかと云ふ御話でございますが、問題は重要物産製造と致しまして、概ね軍備擴張、其の他戰爭遂行に特に必要なものだけ、色々なものを五十種類擧げて居ります、又別に各種事業法で、例へば製鐵事業法とか、工作機械法とか、自動車製造事業法とか、皆各種の事業法で免税規定を置いて居ります、併し敗戰後、昨年以來關係方面の注意もありまして、各種事業法の免税は取止めました、それから又重要物産製造に對するものも極力止めまして、今後所謂重要物産として租税を輕減する範圍は、只今の所、石炭とか金鑛、或は肥料、硫安とか加里とか、斯う云ふ肥料製造方面への輕減免除のことを考へて居ります、尚ほ此の點は經濟界の整理後の状況に依りまして、是非平和日本再建の爲に必要な、而も重要な事業であるならば、状況を見て附加へて行く、唯氣持は本當に必要なものだけ入れて行く、斯う云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=59
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060・奧村又十郎
○奧村委員 此の重要事業に付ては石炭、肥料其の他鑛山、其の外に今後見返り品の製造に付ては、相當の助成をせねばならぬと思ひまするが、今囘の此の規定に依つて設備新設三箇年間の免税、之に對しては大體今御方針が立つて居るものならば、御聞かせ願へれば非常に結構と思ひますが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=60
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061・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今回臨時租税措置法から、所得税法と法人税法に入れました、設備擴張に依る増産に基く免税に付きましては、只今御話申上げた程度にしか考へて居りませぬ、見返り物資、増産の爲の分が入るか入らぬかと云ふ問題は、其の企業の性質竝に設備に依つて考へたいと思ひます、例へば生絲製造に付きまして、是は見返り物資であるからと云ふので、當然にそれが入るとも決まつて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=61
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062・奧村又十郎
○奧村委員 次に昨日局長は直接税に對しては、まだ増税をする餘地がある、斯う云ふ御話でありましたが、是は私は少し無理ではなからうかと思ひます、例へば十萬圓の所得税者と致しまして、綜合及び分類兩方を入れまして、十萬圓の所得に對して合計七萬圓課かります、さうすると殘る所得が三萬圓になります、是だけ見れば、十萬圓儲けて三萬圓だけが其の所得者の手に入ると云ふことになりまするが、此の外に營業税或は其の他地方税、色々な税がありまするから、是は生活費だけで以て、殆ど殘りがなからうと思ひます、現在資本主義の状態であれば、どうしても利潤を目的として事業を行うて居るのでありまするが、是れ以上の税は事實に於て無理であらうと思ひます、是で文句なしに行つあ居るとすれば、そこに税が逃れて行くとか、色々な問題が必ず伏在して居るものである、實際我々事業をやつて居る者としてはさう見ます、是れ以上行くものならば、寧ろ是は國家で以て事業をやつた方が宜い、企業者の創意工夫と云ふものは見られぬものと思ひます、特に總額に於てはさうでありまするが、又十萬圓を超えた分に對しては、其の分の百分の五十五の綜合所得と分類所得の二十五と、合計八十課かる譯るです、一萬圓儲けて八千圓税金が課かり、あとの二千圓だけが其の人の所得になる譯でありますが、此の状態で行つて事業者が果して事業を熱心にやれるかどうか、假に十萬圓利益が上つたとして、是れ以上の儲けに付ては八割まで税金に取られるのであるから、いつそ税金に取られるなら此の方面に一つ流せと云ふのは、是は人間の實際の性質として悲しい哉行はれるものと思ふのであります、若し之を行はぬとすれば税を逃れると云ふことが行はれて來ると思ふ、是は餘りに剔つた話でありまするが、斯う云ふ問題も一つ考へて行かなければ、實情に即したは税課せられぬものと私は考へるのであります、此の上に尚ほ税率を上げると云ふことは、少し行過ぎではないかと思ひますが、局長は如何に御考へになられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=62
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063・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昨日明年度の財政需要が非常に激増して、増税する場合にはどうするか、間接税の方で行くか直接税の方で行くか、若し強ひて増税するとすれば尚ほ直接税の方に行くべきだ、又餘地も其の方にあるのではないか、斯う申上げたのであります、間接税で行ふか直接税で行くかと云ふことに付きましては租税學上相當議論のある所でありますが、大體に於て文明國は直接税中心で行つて居ります、御話の通り、三十萬圓を超過した場合には、不動産資産所得に付きましては九七%まで超過部分に付て行つて居ります、十萬圓に付きましても事業所得ならさうでありませう、併し此の最高税率は日本は三十萬圓超九七でございますが、「イギリス」は二萬「ポンド」超九七・五になつて居ります、「アメリカ」は二十萬「ドル」以上九四になって居ります、「ドイツ」は六萬「マルク」以上九五になつて居ります、何も敗戰後の日本が三十萬圓超九七になつてもさう無理な負擔ではないのではないか、併し私は最高税率九七を上げると云ふのではございませぬ、まだまだ物價が安定し、經濟の見透しが付けば、二萬、三萬、十萬程度位までは負擔し得ると思ふのでてります、外國の例を申上げるやうでございまするが、爲替相場の掴み方に依つて違ひがありまするが、從來の日本の直接税は一體に二、三萬、四萬どころが少し弛んで居つた嫌ひがあります、それと又極く下の方に緩い嫌ひがあるのであります、是は今後の物價事情、經濟事情から考へなければ今一概には申せませぬが、過去の状況から申しますと、さう云ふ状況でございます、飜つて間接税を見ますと、各國日本のやうに間接税の高い所はございませぬ、是はもう問題にならないのであります、昔「ダイヤモンド」等に十割課税を致しました――密輸入防止の爲に七割課税を致しましたが、其の時の輿論はどうでございますか、本當にびつくり致しました、併し日本には十割課税以上のものが澤山ございます、酒なんかに致しましても何十割、もう百分の百と云ふ税率には日本國民は餘り驚かないやうに麻痺せられて居るのでございまして、私は是非とも、此の間接税は財政の許す限り最も早く引下げなければならぬものと思ひます、「ビール」に致しましても「アメリカ」の二倍位の税率になつて居ります、「ドイツ」もさうでございます、「イギリス」のやうに非常に間接税の高い國でも、尚ほ課税は日本の五分の一であるのであります、入場税に付きましても、物品税等に付きましても、日本の百分の百と云ふのは向ふでは百分の二十、二割程度が間接税の最高になつて居るのであります、斯う云ふことを考へますと、是非とも間接税をもう少し引下げることが一般大衆に宜いのではないか、生活が樂に行くのではないか、私は直接税で取つて間接税で引下げると云ふことが租税政策の極致だと考へて居りますので、個々のやうな點に付きましては相當負擔は重うございますが、十萬圓の方が七萬圓程度の負擔なら此の際我慢して戴かなければならぬ、それから御話に地方税其の他の負擔があると申しますが、營業税等は損金に見て居りますから、所得税だけでは三萬圓殘ることに相成つて居ります、唯問題の今度殖えました市町村民税、創設せられた府縣民税が十萬圓の所得者に如何に課税せられるかと云ふことは非常な問題でありますので、昨日地方局長が申しましたやうに、最高の制限は置かずに、實際場面に割つたやうにして行かう、斯う云ふのでやつて居りますが、所得税以外に課かりますのは市町村民税だけでございます、餘談になりましたが、私は若し増税をしなければならぬと云ふことならば、直接税を増税して間接税は引下ぐべきだと云ふ考へ方を持つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=63
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064・奧村又十郎
○奧村委員 御丁寧な御説明で能く分りました、併し我々が今日最も注意しなければならぬのは、机の上の議論、所謂「ペーパー・プラン」と實際とが果して旨く行くか行かぬか、それを能く考へなければならぬ、特に今日闇が行はれ、或は物々交換が行はれ、經濟が紊れて來た時に於て、一方表面に現はれた利益に對しては極端な税を取り、一方闇には課税が事實上行はれぬ、調べることも出來ぬと云ふ風なことでは、是は「ペーパー・プラン」に終る可能性が多いと思ふ、私は事實今日まで色々な事業の關係上、税を受けて居ります、又或る場合に於ては脱税も致しました、脱税と言つてもさう惡いことではなく、所得を申告せなかつたこともあります、併し此の點は申上げますが、所得を申告せない場合に於て、是は罪にならぬのでてります、それで例へば十萬圓以上の所得者が一萬圓に對して八千圓までも取られると云ふことになれば、人情の機微として、つい所得の申告も成べく之を減らさうと云ふ氣持になります、恐らく是は打明て言へば或る程度皆税を逃れて居るからこそ此の増税にも我慢して居るので、其の實際面を見て戴いて、是れ以上の増税は事實徴税困難である、是れ以上やられるなら税制の根本を變へて行くべきである、是は御參考までに申上げて置きます、それに付て御尋ね致したいのは、所得税法第八十八條に、「詐僞其の他不正の行爲に依り所得税を逋脱したる者は」としてありますが、闇取引の場合は之に該當致しますか、只今の御説明に依ると、闇は税を逃れる爲に闇をやつたのでなく、外の方で逃れたのであつて、税法の方の不正な行爲と云ふやうなことに該當せぬやうに私は解釋を致しますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=64
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065・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得税法八十八條の「詐僞其の他不正の行爲に依り所得税を逋脱したる者」此の規定は闇行爲をしたと云ふことでは適用に相成りませぬ、御説の通りであります、それから實情を十分税務署は把握して居るか、又把握して居ないから斯う云ふ高い税率でも我慢出來る、斯う云ふ問題でございます、實は實情を把握しなければならぬ立場にあるのでありますが、中々困難でございます、一人の税務官吏が二千人或は千五百人を分擔致して居るのでありまして又税務官吏は最近素質が低下致しまして國民の十分な御期待に副ひ得ない状態でありますので、今後は立派な税務官吏を相當増員致しまして、實情の把握に萬全を期したいと思ひます、唯實情の把握に萬全を期しますのには、如何に税務官吏を殖やしても中々困難でございまして、所謂下の方から盛り上る力、斯う云ふ力の御援助を戴かなければならぬ、さう云ふ方面に付きまして新しい制度を今考へて居ります、所得の申告に付きましても日本は詐欺其の他不正の行爲とか色々な罰則規定を置いて居りまするが、之を適用したことは殆どございませぬ、私二十年間税務官吏をやりまして一回も其の例を聞きませぬ、唯歴史には明治四十年代にやつたことがあると云ふことだけでございます、適用したことはございませぬが、今後は此の罰則を勵行して、さうして脱税を少くするやうに致したいと思ひます、茲で例を擧げますと「アメリカ」の方では豫算課税になつて居りまして、一應今年の豫算を申告を致します、さうして實際がそれよりも殖えた場合には殖えましたと云ふことを申告します、若しそれが殖えたことを申告しなかつたら直ぐ罰則が適用になる、斯う云ふことになつて居りまして、民主主義の「アメリカ」と云ひながら、税に對しまする罰則は非常にきつく、又勵行致して居ります、さうして又密告者があつた場合には、其の密告者には賞金を出して居る、斯う云ふ風な方法で租税の脱税防止に努めて居るのであります、併し此の制度は日本に直ちに適用になるとは思はれませぬけれども、以て他山の石とすべきものと考へて居るのでございます、此の際所得税等の脱税防止に付きましては、機構其の他を十分擴充致しまして脱税のないやうに努めたいと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=65
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066・苫米地義三
○苫米地委員長 奧村君、まだ相當時間ありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=66
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067・奧村又十郎
○奧村委員 もう最後でございます、それでは此の現在の所得税法で行きますと、所得に對して惡意がなかつた、我は詐欺でなかつた、不正でなかつたならば、所得を申告しなかつた場合にも是は罪にならぬと云ふことになつて居りまするが、是で以ては税の適正が行はれないと思ひます、今回憲法に於て納税の義を務はつきり明記されるやうな審議も行はれて居りますが、此の際に於て之に對して惡意、不正の事實がなくても自分の所得を正直に申告しなかつた場合罪になると云ふことは當然一條入れて置くべきであると思ひますが、如何御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=67
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068・池田勇人
○池田(勇)政府委員 租税の罰則に付きましては、其の國其の國の國民の納税思想或は納税觀念に依つて決めなければ、如何に罰則を強く致しましても所期の目的は達し得られぬと思ひます、我が國に於きましては今まで租税に罰則は名目的に置いて居るだけ――間接税は別でございまするが、直接税には先程申上げましたやうに殆ど名目的に置いてあつて、空文に等しいやうな實情であつたのでございます、併し御話の通り今後税收入を確保する場合には、是非とも罰則の適用なんかを考へなければなりませぬ、隨ひまして罰則の適用を設けると同時に、國民の納税觀念、納税思想の普及徹底に努めなければならぬと思ふのであります、私は納税思想の普及と同時に、それに沿ひました罰則を兩方面から規定して行きたいと思ひます、御話の通り只今の所、所得を申告しなかつたからと云つて罪にはなりませぬ、唯昔は申告をしない場合は扶養家族の控除を認めなかつたのでありまするが、申告しない場合にも相當理由があつたら後で申告しても控除を認めるやうに變へるやうな状況でありまして、御話とは日本は今まで實は逆に進んで居つた状況でございます、今後はさう云ふ方向を換へて、脱税防止には本當に下から盛り上つて納税すると云ふ氣持になつて戴くやうに制度を變へて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=68
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069・奧村又十郎
○奧村委員 色々な御答辯を戴きましたが、殘念ながら此の通貨の非常な膨脹に對して貯蓄の確たる方針もなく、又國家の租税收入に於ても闇或は脱税其の他の問題に於て相當國民の購買力を吸收すると云ふことに付て的確な力もないやうに思ひます、此の點もう少し御聽きしたいと思ひますが、殘念ながら大臣も御忙しいことでありまして、次の機會に讓ることに致します、是を以て質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=69
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070・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは是で一時休憩致しまして、午後一時半から再開致したいと思ひます
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=70
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071・会議録情報2
――――◇―――――
午後一時四十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=71
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072・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは會議を開きます、質疑を續行致します――原尻束君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=72
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073・原尻束
○原尻委員 既に質問は出盡した感がございますので、極く細かい點に付きまして大藏當局に御伺ひを致したいのであります、財産税の目標である所の財産の増加に當りまして、田畑、山林、原野其の他の評價の具體的の方法及び標準を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=73
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074・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税に於きまして、只今御話の田畑、山林、原野の評價竝に其の他の財産の評價が非常に重要な問題であるのであります、只今の所御話の田畑に付きましては大體賃貸價格の倍數に依つて時價を算定致したいと考へて居ります、併し賃貸價格の倍數と時價との關係は各地方に依つて餘程違つて居ります、又土地の中でも宅地、田畑等は各其の種類に依りまして賃貸價格と時價との倍數が變つて居ります、隨ひまして、田畑に付きましては全國を状況類似した各地區に分けまして、さうして其の地區内の時價と賃貸價格の標準となるべき土地の倍數を決めまして、其の倍數に依つて其の地區内の田畑の時價を算定致したいと考へて居ります、山林に付きましても、其の素地に付きましては斯く致したいのでございまするが、御話の山林の評價と云ふのは立木の評價ではないかと思つて居ります、立木の評價は土地より尚ほ一層困難の度を増すのでありまして、立木に付きましては第一に樹種、樹齡を見て行きたい、さうして又運搬等の關係があり、運搬費等が非常に影響しますので、地理的條件も考へて行きたい、又山林の素地の良い惡いに依りまして立木の評價が非常に違つて參りますので、さう云ふ地理的の關係も考慮して決めて行きたいと思つて居ります、特に山林に付きましては、森林組合等の意見を十分參酌致しまして決めたいと考へて居るのでございます、原野に付きましては、是も一律に決め得られませぬので、原野の實情を見まして、是は個々的に決めなければならぬと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=74
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075・原尻束
○原尻委員 賃貸價格の倍數で現在大體公定價格が決つたやうでありますが、公定價格との比例はどの程度になるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=75
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076・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來田畑の公定價格と云ふものがございまして、取引の標準と致しましては、大體賃貸價格の三十倍から、高い地方に於きましては六十倍位を決めて居るやうな状況でございます、今回農地調整法が新たに改正せられまして、田畑に付きまして一定の倍數に一定の報償金を附加へたもので取引を認めることに相成つて居りますが、此の農地調整法で決められます價格と財産税の課税標準たる價格とが概ね一致することが適當であると考へますので、大體農地調整法の價格に依つて決めて行きたいと思つて居ります、併し是はまだ政府の方針としては確定した議ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=76
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077・原尻束
○原尻委員 所得税法第十二條の所得の計算に當りまして必要經費を控除するやうになつて居りますが、此の必要經費の中に負債の利子は引くと云ふことになつて居りますけれども、税務署では中々之を認めないのであります、不動産を買入れる爲に出來た所の負債は、此の所得を得る爲に必要なる經費と考へるのでありますけれども、餘程しつかりした所の材料がない限りは之を認めないのでありますが、之に對する御所見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=77
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078・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得は收入金より必要經費を控除して定められることに相成つて居ります、其の必要經費とは何ぞやと申しますと、其の收入を得るに直接必要なる經費でございます、收入を得るに直接必要でない經費は認めて居りませぬ、隨ひまして例へば配當所得のやうに、金を借りて株を買つたと云ふ場合には、證明がつく限り必要經費に認めて居ります、勿論所得を得るに付きまして色々な仕入れ其の他で借金をした場合に於きましては、是は直接收入を得るに必要なる經費でございますので、當然控除して居る筈であります、併しながら我が國の所得税は御承知の通り源泉主義に擔つて居りますから、本當に其の所得を得るに必要な經費であつたか、或は他の經費の爲に借りた借金利子が分らないと云ふやうな、不明な場合には概ね引かないことに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=78
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079・原尻束
○原尻委員 仕事をして居る間に病氣をして、其の病氣を治して其の爲に仕事が出來て所得があると云ふ場合には、其の病氣を治すのもやはり其の所得を得る爲の必要經費と存ずるのでありますが、全體に於て之を必要經費と認めて居ないのであります、それを認めると云ふことには出來ないものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=79
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080・池田勇人
○池田(勇)政府委員 療養費を所得の必要經費と見て控除しないか、斯う云ふ御話でございますが、我が國の所得税は源泉主義で掴まへて居りますので、一般の直接必要でない經費は控除致さないことに致して居ります、之を若し會社等法人に對するやうに、資産が増加した場合に増加した資産を所得なりとして計算する場合には凡ゆる經費を控除するのが適當だと思ひます、併し個人の所得税は甲と云ふ所得があり、乙と云ふ所得があり、丙と云ふ所得がある、此の甲乙丙の所得それ自體を掴まへて行くのでありますから、其の所得に直接必要な經費でないと引かない建前になつて居ります、隨て若し療養費とか結婚其の他の色色な費用が要つた場合に、其の費用から其の年の所得から引くと云ふ建前を採りますならば、個人の所得でも物の値上りとか色々な原因に依る財産の増加に對して其の増加分を所得として課税すると云ふ建前を採らざるを得ぬと思ひます、隨て所得の計算をどう云ふやうにして行くか、法人のやうに財産増加主義で行くか、所得の源泉に依るか、此の建前から自ら定まるものと思ひますが、只今の所それでは個人に付ても財産増加を所得と見て課税してはどうかと云ふことに相成つて來ると思ひますが、實際課税の問題としては個人の財産増加分を所得として課税することは只今の所我々も考へて居りませぬ、隨て其の所得を得るに直接必要な經費以外のものは引かないと云ふ建前を採らざるを得ぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=80
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081・原尻束
○原尻委員 是は農林省との關係もありますが、公正なる所の供出の割當をした場合に、供出の完納をしない者に對しては闇をしたるものと看做して闇相場で以て之に課税すると云ふことは租税の性質には反するかも知れませぬが、之に依つて食糧緊急措置令を廢することが出來れば其の方が宜いのではないかと思ひますが、大藏省の御考へはどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=81
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082・池田勇人
○池田(勇)政府委員 午前中にも議論がございましたが、闇をしたるものと看做して我々は課税致して居るのではございませぬ、建前としては闇値は課税しない方針を採つて居るのでございます、唯闇をしたるものと看做すのでなしに是だけの所得があつたものと看做して課税して居る状態でございます、隨て其の方が公定價格以上に高く物を賣られて所得があつたと云ふ場合には當然税法も課税すべきものとして課税致して居るのでございます、第二に所得があつたものとして十分にそれに課税すれば食糧緊急措置令は要らないぢやないかと云ふ御質問でございますが、私は課税ばかりで十分供出をし得るものでもないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=82
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083・原尻束
○原尻委員 税を納める者の態度の面から區別致しますと不平で納める税、納得して納める税、喜んで納める税と云ふことに分れるのでありますが、少なくとも納得して納める税にすることが必要ではないかと考へます、此の點から所得税の調査の問題を御伺ひ致します、現在所得税調査委員と云ふのがあります、是は有名無實の存在であつて、税務署の責任遁れの具に過ぎないと考へます、實情の分つて居る者に調査させると云ふ意味から各村に一名位の調査委員を置き、別に職業別の調査委員を其の程度に置く必要があります、若しそれをしなければ、適切な調査は出來ないと考へますが、當局の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=83
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084・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通り租税は不平で納めるのであつてはならないのでありまして、喜んで納めるのでありたいと考へて居ります、隨ひまして納税者に其の所得の賦課が適正であると云ふことを納得して貰ひ又喜んで納める程度になつて戴く爲には、民間の實際知識のおありの方に、決定に對して十分御參與を願ひたいと思ひまして、只今所得調査委員の制度を置いて居ります、此の所得調査委員の制度は一税務署大體五人から十三人程度になつて居ります、市制施行地では別に郡部にも設けた所もありますが、それにしても大體四、五人から十一、二人になつて居ります、我々としては此の調査委員は納税者から選擧された方、出來るだけ納税者の實情を知つた方を澤山出して戴きたいと云ふ希望を持つて居りますが、中々各村一人と申しますと、税務署に依つては七、八十人も選出されると云ふことになりまして、今の税務署の機構等から申しまして中々煩に堪へないのでありますが、御説の通り出來るだけ澤山選出して戴くやうに考へて居ります、又別に職業別に職能代表制と云ふことを考へて見たいと思つて居ります、所得調査委員の制度は餘程今後考へ方を變へて強化しなければならぬと云ふ氣持を持つて居ります、唯茲で御參考までに申上げますが「アメリカ」には所得調査委員制度はありませぬ、關係方面から聽きますと、所得調査委員制度を置くことは、調査委員の關係方面の減税になるだけで、負擔の公正は期し得ないと云ふ考へ方があるやうであります、それは國内から盛んにさう云ふ陳情が行つて居るのであります、私は出來るだけ内地の事情を説明して居りますが、「アメリカ」式に考へると、所得調査委員は要らない、「アメリカ」は之を止めて居る、それよりも本當に納税者が是だけの所得があると云ふことを申告させれば宜い、若し申告が誤つて居れば之を脱税者として處罰せよ、是が「アメリカ」式の民主主義なりと云ふ強い主張を持つて居られるやうであります、其の説を容れるか容れないかは別問題として、自分としては御説のやうな方法に進みたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=84
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085・原尻束
○原尻委員 「アメリカ」はどうか知りませぬが、日本の役人と「アメリカ」の役人は非常に質が違ふのでありまして、日本の役人は納税者から異議を申立てましても非常に威壓的で罪人扱ひにする、それでは到底納税者の意思を傳へることは出來ないと考へます、又所得税調査員は、實際現在の調査員は自分の所得額の調査をするだけであります、それは又其の制度が然らしむるのであります、何故かならば税務署は標準率を所得調査員に示さないのであります、唯所得額を計算して其の帳簿を全部所得調査員に提出するだけで、何等の調査の材料を提供しない、だからして材料がなければ調査員も調査する方法はない、唯材料を持つて居るのは自分の方のものだけである、だから自分の方を調査する仕組になつて居るからさうなるのであります、是は少くとも此の調査員に標準率を示す必要があると考へるのでありますが、示す所の御意思があるかないか、それと調査員を殖やさるると云ふが、其の具體案を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=85
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086・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得調査委員が各納税者の所得審議に當りまして、所得標準率の必要であることは御説の通りであります
〔委員長退席、宮澤委員長代理着席〕
隨ひまして税務署では大體のことは説明致して居ると考へて居ります、私も昔署長を致して居ります時に標準率等に付きましては要求がありますれば御話申上げて居ります、大體やつて居るものと考へて居ります、若し標準率等を秘密に致しまして調査會に於ても尚ほ説明しないと云ふやうなことがありましたならば、十分改めさせます、それから所得調査委員會の今後の機構法制をどう考へるかと云ふ御話でございますが、是は私が今自分の意見を申上げてもそれが實現するかしないか中々分らない状況でございます、私の氣持としては職能代表制を入れ、又出來るだけ人員を多くし、又或る程度官選的に――役人でなしに民間の人を官選したらどうか、斯う云ふやうな氣持を持つて居ります、併し中々私の思ふ通りには參りませぬ、附加へて申上げまするが「アメリカ」には所得調査委員會制度はない、さうして之に代つて租税裁判所が各地に設けてあります、税務署の決定に對しまして不服があつたならば税務署には參りませぬ、租税裁判所へ直ぐ參ります、税務署は其の租税裁判所の判決に依りまして、誤謬があれば訂正致します、又追徴すべきものがあれば追徴すると云ふ制度に相成つて居るのであります、御參考に附加へて申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=86
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087・原尻束
○原尻委員 今思ふ通りに實行されないと云ふ御話でありますが、それはどう云ふ意味でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=87
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088・池田勇人
○池田(勇)政府委員 一寸速記を止めて下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=88
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089・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 速記を止めて…
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=89
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090・原尻束
○原尻委員 先程闇には課税をしないと云ふ御話でありますが、既に闇をしなければ出ない所の標準率を作つて居られるやうに見受けられるのであります、現に一反當り二千圓と云ふやうな收入を見て居るやに納税者から聞いて居るのであります、其の標準率を大體各個人の農家の收入に付て別の標準率を用ふる場合はなからうと思ふのでありますが、非常に多數であります、さうすれば、當然さう云ふやうになつて來るのでありますが、此の標準率を幾つも幾つも作つて居るのかどうか、さうして其の標準率を拜見致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=90
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091・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先程來度々申上げたのでありまするが、法制的に闇には課税して居ないと云ふことを申上げるので、實質的には闇と同じやうな收入があれば其の收入に對して課税して居るのであります、一般國民はよく間違ひ易いのでありますが、闇には課税しないと云ふのは、法制的に申上げて居ることでございますから御諒承を願つて置きます、勿論標準率は原則として一本で行くべきだと思ひます、併し實際の標準率は大體範圍率になつて居ります、何圓から何圓まで、さうして税務署長が其の範圍内に於て個々の人に適用して行くことに相成つて居りまして、東京都内の方の畑の一反の所得に致しましても、麥を主作とするやうな畑に付きましては餘程低く、又麥を植付けない一般蔬菜の畑に付きましては相當一反當りが高くなつて居ります、斯く致しまして植付毎に標準率を變へる、而も標準率は概ね範圍率になつて居ります、税務署長が適當に其の個々の人に適用することに致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=91
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092・原尻束
○原尻委員 例へば麥だけ植ゑる畑の標準率は東京では幾らでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=92
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093・池田勇人
○池田(勇)政府委員 東京都の平均率はどうなつて居りますか只今記憶はございませぬ、全國の畑の一反の平均率は百九十九圓だつたかと考へて居ります、併し此の百九十九圓の平均率は各財務局が其の管内を平均致しまして、其の平均を反別割にやつたのでございます、算術平均に致して居ります、其の財務局の算術平均を大藏省で更に平均にしたのが百九十九圓でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=93
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094・原尻束
○原尻委員 反當平均では當てにならないと考へるのであります、それで大體中等程度の畑地と水田との標準率を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=94
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095・池田勇人
○池田(勇)政府委員 畑の全國平均の標準率は百九十九圓に相成つて居ります、併し東京都内では先程申上げましたやうに一反二千圓位に本年の所得を決めたのもあります、又一反二千五六百圓から三千圓位のもございます、又蜜柑畑に付きましては一反六千圓位で決めたのもあると思ひます、林檎畑、葡萄畑、各作付の種類等に依りまして、實情に副ふたやうに標準率を決めて居る次第でございます、田に付きましては、一反三百十四圓の全國平均と相成つて居ります、田の方は米を主に致しまして、二毛作を致しましても、其の收穫物は芋か麥でございまして、大したことはございませぬ、隨て田に付きましては、全國的の幅が少いのでございますが、畑に付きましては作物に依りまし餘程違ひます、平均は百九十九圓でありますが、實際に當ると非常に高低がある状態に相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=95
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096・原尻束
○原尻委員 稻作の土地の中等程度の標準率は幾らですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=96
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097・池田勇人
○池田(勇)政府委員 大體三百二、三十圓位に相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=97
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098・原尻束
○原尻委員 平均率ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=98
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099・池田勇人
○池田(勇)政府委員 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=99
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100・原尻束
○原尻委員 私の御伺ひ致して居りますのは平均ではなくして中等程度の水田の標準です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=100
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101・池田勇人
○池田(勇)政府委員 田の中等程度の標準率はどうなつて居るかと云ふ御話でございますが、どの程度のものを中等と見たら宜しいか、小作料が一反で八斗乃至九斗位を中等程度と見ますならば、大體三百二、三十圓程度に相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=101
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102・原尻束
○原尻委員 今の問題はどうも徹底しない感じが致しますけれども、昭和二十一年度は賃貸價格の改訂の時期になつて居りますし、金納になりましたので、今まで通りのやうな方法で賃貸價格を御決定になるのかどうか御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=102
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103・池田勇人
○池田(勇)政府委員 來年から行ふ豫定の土地の賃貸價格の調査は如何にして決めるかと云ふ御質問でございますが、只今の賃貸價格は昭和十一年から調査を始めまして、さうして昭和十一年前五箇年間の米價の平均二十圓五十錢に根據を置いて決めて居ります、田に付きましは、全國的に申しますれば殆ど米納で全納は、一二割と考へて居ります、畑に付きましては六、七割が金納でございまして、物納は三、四割と考へて居ります、而して農地調整法が實施せられ、又財産税を施行致しまして、大地主の土地が政府のものになるか、或は小作人の手に歸しました時に、土地に對する所謂賃貸價格に依る課税が實情に合ふかどうかと云ふことは疑問であると思ふのであります、大正十五年から行ひました賃貸價格に依るか、或は明治初年から大正十五年まで行はれました地價制度に依るか、或は其の折衷で行くかと云ふことは、土地が如何に利用せられるかと云ふことを能く見概めて考ふべき重大な問題だと思つて居ります、今後一、二年後の土地所有者の變遷状況、利用状況から篤と研究して決めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=103
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104・原尻束
○原尻委員 酒税に付て御伺ひしますが、一級酒と二級酒との増税の割合を比較して見ますと、一級酒は約二倍に増税になり、二級酒は約三倍の増税でありますが、是は寧ろ逆に、一級酒の方を増税率を多くし、二級酒の方を低くした方が、適當ではないかと考へるのでありますが、之を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=104
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105・池田勇人
○池田(勇)政府委員 一級酒の引上方と二級酒の引上方とが非常に違ふ、二級酒の方の引上方を少くして、一級酒の方の引上方を多くすべきではないかと云ふ御議論でありますが、私はそれには賛成致し兼ねます、一級酒と二級酒との比較の差は極く少いのであります、「アルコール」分が一級酒は十六度、二級酒は十五度であります、原「エキス」に至りましても一級酒は三十度、二級酒は二十七度半、品質に於ては殆ど差がないのであります、それが現在二十三圓と十五圓の差でございます、而して之を御説の通りに若し一級酒を三倍にし二級酒を二倍にしたと致しますれば、二級酒は三十圓、一級酒は七十圓にも相成ることとなるのであります、而して又斯く致しましても一級酒と二級酒との配給は飮む人の好みに應じて配給してない現在の状況でありまするから、私はやはり其の差は小賣價格四十圓、三十圓位の差に持つて行くのが適當であるかと考へて居ります、此の思想は酒ばかりに限らず、砂糖に致しましても、清涼飮料に致しましても、今の實情から今の價格から割出して税率を決める、斯う云ふことに今後の税制改正は行つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=105
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106・原尻束
○原尻委員 農家が米を作りましてやつと食ふだけを自家保有米として殘して後は供出しますが、其の供出した米に依つて作つた酒でありますが、其の酒屋の自家保有量と云ふものは相當あるやうに考へますが、どの程度に酒屋の自家保有量があるのか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=106
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107・池田勇人
○池田(勇)政府委員 酒の販賣を統制致しまして、酒造家に對しまする自家用酒の限度を出來るだけ少く決め、又其の後の状況から申しましても段々減石されて居りますので、可なり窮窟に決めて居ります、今正確な數字は覺えて居りませぬが、大體造石高百石に對しまして四五%かと思ひます、而もそれは一番低い所でございまして、五百石とか千石、或は大きい所は二千石五千石作つて居りますが、其の百分の四或は五は造石高の多くなるに從つて率をうんと低減致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=107
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108・原尻束
○原尻委員 農家の作りました米の保有量は、消費者の消費する米との比較に於て大して違ひはないのでありますが、此の酒造家の自家消費の酒は非常に多いやうであります、百石造れば五石の保有量がある、幾ら酒屋の親方でも一日にさう一斗も飮むやうなことはないだらうと考へるのでありますが、もう少し此の農家の保有米と消費者の配給量との差額の程度まで引下げる御意思はないか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=108
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109・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今申上げました百石に付きまして四、五「パーセント」、是は私の記憶でございまして後から正確に調べます、四、五年前決めた時には其の程度であつたと思ひます、今の現状から申しますと酒屋は非常に是では少い、何とか殖やして貰ひたいと云ふ陳情を能く聞くのであります、此の酒は勿論酒類製造家の主人が飮むばかりではございませぬ、昔から酒を造つて居る工場内に於きましては、藏人が相當使用することを常として居りますので、藏人の飮む酒に相當廻つて行くと思ふのであります、而して之を餘り嚴格に致しますとそこに又拔ける所がありますので、是はやはり其の度を餘程考へなくてはいけないと思つて居ります、是は多過ぎては困るが、又一面少な過ぎても困ると云ふことで、酒の少くなるに連れまして段々引締めて居ると云ふ状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=109
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110・原尻束
○原尻委員 農家の作ります米に對しては保有米を差引いた殘りの供出に強權發動をして居るのでありますが、酒の量に對しても或る程度以上のものに對しては強權發動程度のことをされては如何かと考へますが、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=110
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111・池田勇人
○池田(勇)政府委員 酒類製造に對しましては強權の發動をなさなくても常に監督を致して居ります、隨ひまして自家用酒の分量が不適當であると云ふ場合には、特別に法令を制定致さなくても、只今の酒造税法で十分制限し得る建前に相成つて居ります、只今の所私は酒類製造家の自家保有酒はさう不適當ではないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=111
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112・原尻束
○原尻委員 それは大藏省内だけの考へでありまして、農林省との睨み合せをして戴きたいと思ひます
次に府縣町村の住民税は非日本人にも課して居られるかどうか、是は内務省關係と思ひますが御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=112
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113・荻田保
○荻田政府委員 此の間國税と一緒に聯合軍の方より非日本人に對しましても地方税を取つて差支へないと云ふ指令が來て居りますから、今後此の方針に依りまして實行致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=113
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114・原尻束
○原尻委員 遊興飮食税でありますが、十圓まで無税と云ふのを免税點を五十圓位に引上げる御意思はないか、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=114
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115・池田勇人
○池田(勇)政府委員 政府委員八月一日のあの規定に依りまして、飮食は三十圓を限度に決められました、只今の所免税點十圓と云ふのを引上げる考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=115
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116・原尻束
○原尻委員 所得税の問題に戻りますが、貸金營業税の場合に抵當權を抹消したものは課税しないのが當然でありますが、此の抹消したと云ふことを證明する所の登記簿の抄本を持つて行かなければ之を認めない、唯申告だけでは認めないのでありますが、税務署では登記所に行つて貸付けた方の調査はするのでありますから、此の時に抹消の方の調査もされてはいけないのでありますか、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=116
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117・池田勇人
○池田(勇)政府委員 貸金營業者の場合に付きまして抵當權を抹消したならば概ね其の債權は抹消したと考へられます、隨ひまして税務署に此の分は抵當權を抹消し債權はなくなつたのだと御申出でになれば、税務署としてはそれを認めるべきだと思ひます、唯それを確認する方法として抹消の書類を出せと云ふ税務署があるかも分りませぬ、併し是は確認の問題でございまして、我々と致しましては如何なる場合にも抵當權抹消の口頭の申出でがあつた時には課税すべからずと云ふことは言へない譯でありまして、個々の場合に付きましては餘りに納税者に手數の掛からないやうにしろと云ふ指令は致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=117
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118・原尻束
○原尻委員 次に印紙税法に付て御伺ひしますが、印紙税法は只今中止になつて居るやうであります、是は中止になつた理由にもあります通り、非常に手數の掛かる割合に收入が少い、でありますから此の際之を廢止することが國民の爲にも非常に便利であると考へますし、政府としても大した收入がないならば廢止されては如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=118
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119・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の如く昨年八月戰時緊急措置令に依りまして印紙税法其の他は法律を停止致したのでございますが、其の中でも印紙税と云ふのは最も税收入の多い税であつたのであります、然らばさう云ふものをなぜ停止したかと申しますと、あの當時は印紙の印刷が非常に困難になりまして、印紙税法を施行致しましても貼る印紙がない、斯う云ふ状況でありましたので、戰時中でもあり止めたやうな次第であります、併しながら是は戰後第一に復活すべきものと考へまして、今回復活の法案を提出致して居る次第でございます、收入も大體印紙税は六千萬圓位になつて居ると記憶して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=119
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120・原尻束
○原尻委員 次に登録税でありますが、現在土地を持つて居る人は祖父、曾祖父の代の土地が其の儘になつて居りまして、納税令書を書きますのにも非常に手數が掛かるのであります、之を速かに相續登記をさせる爲に一定の年限を限つて、五年位に限りまして、五年以内に相續の登記をしない者に對しては、一年を増す毎に現在千分の五を千分の十にし、それを千分の二十にすると云ふ風に累加するやうな方法を執つたらどうか、之をやりますと窮して居る此の際一時に約五、六千萬圓の登録税の收入が臨時にあると考へられるのであります、尚ほ一面に於きまして國税徴收交付金が此の令書一枚に付て何ぼと云ふ風にされて居ります、此の國税徴收金の支出歳出も減る譯でありますし、又町村役場の事務もそれだけ簡單になりまして一擧兩得と考へますが、御當局の意見を御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=120
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121・池田勇人
○池田(勇)政府委員 登録税は先程問題になりました印紙税と同じやうに財産權の得喪變更を生ずる書面とか、財産權の變更消滅を登録する場合に課税致します流通税でございます、隨て相續のあつた場合には御説の通りに千分の五の課税を致して居ります、飽くまでも是は相續があつたと云ふことを登記簿に載せることに依つて課税する税であります、隨て相續のあつたことを登記簿に載せない行爲に對して課税すると云ふことは登録税の趣旨でございませぬ、然らば其の儘に放つて置いてはお祖父さんの名前の土地、お父さんの名前の土地が澤山ある、非常に徴税にも困るから何とかしろ、斯う云ふ御考へは御尤もだと思ひまするが、併し是は登録税の改正とは別の問題でございまして、別個の方面から考へなければならぬと思つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=121
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122・原尻束
○原尻委員 内務省の方に御伺ひしますが、配付税を拵へました爲に、自治體の財政の彈力性が非常に少くなつて居るのであります、之に彈力性を付ける爲には附加税の制限をもう少し緩めたらどうかと思ひますが、此の點を御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=122
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123・荻田保
○荻田政府委員 地方團體の財政に對して彈力性を持たせる爲に、附加税の制限率を緩めたらと云ふ御意見でございまするが、主として三國税附加税に付て申上げますると、今回提案致して居りまするやうに、許可の標準率を百分の百、道府縣も市町村も引上げて居るのでありまして、それ以上附加致しますことは、其の二割に相當する部分は法定の費目、例へば學校の建築費であるとか、災害復舊に要する費用、斯う云ふものに對しましては其の法定の標準率の二割だけは許可がなくて取れる譯でありまして、それ以上のものは内務省、大藏省の許可さへあれば、幾らでも取れると云ふ法制上の建前になつて居りますので、彈力性の爲に、附加税の制限率を緩めると云ふことは既に實現されて居るものだと我々は考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=123
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124・原尻束
○原尻委員 私の質問は是れで打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=124
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125・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 通告の順序に依りまして次は鈴木憲一君に發言を許します――鈴木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=125
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126・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私は主として勤勞所得税に付て御伺ひしたいと思ひます、非常に税が重くなりまするので、國民は相當の決心を持つて居るのでありますが、此の勤勞所得税の改正に付きまして仔細に檢討して見ますると、官公吏、學校教職員、或は警察官其の他一般の俸給生活者が生活の崩壞を來す虞が十分にあるのぢやないかと私は考へるので、此の點を御伺ひしたいと思ふのであります、政府の今度出されました所の所謂政府七月案に依りまして檢討をして見たのでありまするが、此の勤勞俸給生活者の中堅層は殆ど大半が綜合所得税を重課せられることになる譯であります、是が爲に是等の俸給生活者は非常に生活の維持が困難となりまして、生活の崩壞を來す虞が十分私はあると思ふのであります、政府は果して此の中堅以上の勤勞俸給生活者から徴税が出來得るかどうか、出來る見透しがあるかどうかと云ふことを一應私は御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=126
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127・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得者に對する増税が非常に今議會の問題に相成つて居るのでありますが、我々と致しまして勤勞所得者の生活状況は十分とは申上げられませぬが、此の程度なら勤勞所得者も堪へ得るだらう、又堪へて戴きたい、斯う云う氣持で立案致した次第でございます、税額が或る程度高くなりましても同じ金額の昨年の勤勞所得に比べますと度々申上げますやうに、百圓あたりは勿論減つて居るのであります、勤勞所得者も昭和二十年に比べますと二十一年の俸給は相當殖えて居るのであります、物價の上昇工合程は殖えて居ないかも知れませぬが、今回の増税に依つて勤務所得者の生活が差向き崩壞するとは私は考へて居りませぬ、又崩壞しない程度にしか増税して居ないのでございます、御話の如く今勤勞所得者は非常に所得が殖えて來た、是で行けば綜合所得税が掛かるだらう、斯う云ふ御話でございまするが、綜合所得税は咋年の實績に依つて、本年課税致して居るのでございますから、昨年一萬圓以上の俸給所得のある人は、本年に於きましても當然課税して然るべきだと思ひます、然らば本年増額になつた勤勞所得が、來年になつたら一萬圓より超える部分があるから、其の人は來年になつて崩壞しやしないか、斯う云ふ問題になるかも知れませぬが、私は今の國情から致しまして一萬圓以上の勤勞所得者は一萬圓を超ゆる金額に對しまして三十五「パーセント」程度の負擔は適當ではないかと思ひます、併し今後の状況に依つて非常な物價騰貴を來し而も尚ほ一萬圓ちよつと超える位の人に綜合所得税を課税することはどうかと云ふ問題になりますと、是は來年の税制改革で考ふべき點だと思ふのであります、勤勞所得に對する綜合所得税は前年の實績でございますから、昨年一萬圓を超ゆる勤勞所得がある方に付て、今年一萬圓超える金額に百分の三十五程度を課税するのは當然だと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=127
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128・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私は今は豫算總會でやつて居る豫算が通りまして七月案が實施されますと、兎に角中堅層の家族が相當殖えて來た者に付ては由々しい問題が起るものと考へられます、本年度のことは別と致しまして、今後の政府が大いに俸給を上げてやるぞと云つて喜ばされて居る連中が、果して自分達の生活を立てて、立派に見透しを立て得るかどうかと云ふことに疑問を持つのであります、其の一例を申上げますと年收一萬圓の者、月收八百三十圓でありますが、其の者に家族が四人居りますと結局此の人の毎月の收入は千二百三十圓になる、分類所得税を引きますと千四十八圓になります、綜合所得税を更に引きますと九百八圓になり、一人當りが百八十一圓になつてしまふ、それで我々の生活は現在配給物を買ふだけでも都市に於ては一人二百圓から二百五十圓掛ると云ふことを統計で放送局が放送して居ります、地方に於きましても百圓、百五十圓位は配給の食糧を買ふだけで掛かると云ふことになります、五人家族の家では百八十一圓が一人分になるのでありまして、果して是で生活が成立つかどうか心配するのであります、それで勿論御存知のやうに配給物を買ふだけで生活が出來ると云ふものではありませぬ、其の外に生活一般に相當のものが要るのでありまして、少くとも五人家族だつたら一人百八十一圓では暮して行けない、七人の家族になると一人前が百三十圓になつてしまふ、斯う云ふ状況では折角政府が俸給生活者に大いに俸給を引上げてやる、斯う云ふ言明をされて、其の線に沿つて着々實施されようとして居るのでありますが、此の税が實施されて來年頃に至ると非常に困るのではないかと云ふ風に考へるものでありますが、此の點如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=128
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129・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物價が騰貴致しまして各勤勞生活者の生活は相當困難を來して居ります、御話の如く數字的には出ますが、然らば若し此の勤勞所得税を全廢したならば、あとは樂に勤勞生活者が食つて行けるかと云ふ問題を先づ考察しなければならぬと思ふのであります、而して又國家財政から申しまして、只今の日本の富の状況、生産の状況、所謂所得配分の状況から申しまして、勤勞所得税を全廢した場合國家財政が立行くか、又事業所得者、所謂營業者、農業者との權衡をどう考へて行くかと云ふ負擔の權衡の問題からも考へて行かなければならぬと思ふのであります、私は此の二點から考へまして、此の程度の負擔ならば勤勞所得者も我慢して戴きたいと申上げるより外ありませぬ、御話のやうに是れ以上どんどん物價が上る、さうして俸給が此の程度で抑へられて來年どうするか、是は私は勤勞所得税の問題を通り越して居るのではないかと考へて居ります、他に適當な策を講じなければならぬのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=129
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130・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私も勿論勤勞所得税は當然納めるべきものだと云ふことは十分考へて居ります、又勤勞者も必ずさう思つて居ると思ふのであります、併し其の場合問題になるのは家族手當と云ふのは、斯樣に生活が困難になつて來たから特に家族の生活を維持する爲に政府が支給されて居るものでありますから、家族手當を綜合所得税の課税對象にしない、而もそれも一律にさうではなしに、適當な控除だけでもさうして戴けるならば俸給生活者は一縷の光明を認めることになるのではないかと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=130
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131・池田勇人
○池田(勇)政府委員 現状の家族手當の制度に付きましては今でも相當考慮すべき問題であります、又俸給令の改正を行はんとして居る政府でも、此の百圓の家族手當と云ふことは相當問題であらうかと思ふのであります、現に民間方面に於きましては此家族手當は就職其の他に付きまして相當の癌を成して居ると云ふことを聞いて居るのであります、私は適正な賃金と云ふ場合、只今の一人當り百圓と云ふ家族手當は相當考慮すべき問題だと思ひます、而して此の家族手當を課税標準にしない方が宜いぢやないかと云ふことは、私は所得税の建前から言へば、是は理論的でないと思ひます、それより家族の多い方に付きましては扶養家族の控除額を多くすると云ふことが實際に副ふのではないかと考へます、家族手當は必ずしも皆一樣ではございませぬ、隨ひまして租税の處置と致しましては扶養家族の控除額の引上が適當ではないかと考へます、然らばなぜ今回扶養家族の控除額を引上げなかつたかと云ふ議論があると思ひますが、只今は扶養家族一人に付て年七十二圓月六圓でございます、三月九日までは月二圓でありましたのが月六圓に致して居ります、斯う致しますと扶養家族の爲に控除する税額は十七億圓ばかりになつて居ります、此の扶養家族に手を着けますと税收入には非常な影響があるのでありまして、餘程收入の點から考へなければならぬと思ふのでありますが、問題の家族手當を課税標準に入れないと云ふことは逆でございまして、若し家族者の多いのに税法上の措置を如何にするかと云つたら、扶養家族の控除を増加する、是が理論的だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=131
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132・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 私が此の統計を得たのは、大藏省の給與局から計算方法を承つてやつたもので間違ひないと信じて居るのですが、之に依ると、家族手當を百圓貰つても、一萬圓の收入のある人は實は五十一圓しか貰はぬ、一萬五千圓の方は實は四十六圓しか取れないと云ふやうな状況になつて居る、政府は七月案に依つて勤勞生活者は大いに優遇するぞ、それだから官公吏は爭議權も廢めろと云ふやうなことで勞調法案まで出て居るやうな譯ですが、實際に檢討して見ると、是では到底生活が出來ないやうに考へられますので、何とか此の勤勞所得者より家族の控除額を増して貰ふやうな方法を此の際再考願ひたい、私は痛切にそれを感じて居る者なのであります
其の方法に付ては色々あると思はれますが、當局に於て詳細に此の勤勞生活者の生活を御檢討下さいまして、増俸になることを糠喜びに終らせないやうにして戴きたいと思ふのであります、若し是が十分與へるぞと云つて根こそぎ取られてしまふことになると、勤勞生活者の思想上にも重大な影響を來しませうし、遂には生活保護法に望みを持つと云ふやうな面にまで追込まれるのではないか、是は極端な話ではありますが、左樣にも考へるのであります、教育者等に依つて一人々々調査して見ても、現在百圓を一寸超えるやうな者は、今度の七月案に依ると、家族二、三人で幼い子供を持つて夫婦で暮して行く都市の生活者達は、生活が困難になつて行つてしまふと云ふやうにどうしても考へられるのであります、是は單に俸給生活者のみではありませぬ、先日或る新聞が表を出して居る所に依りますと、一人の文筆業者が原稿料生活をして行くに付ても、筆を以て志を述べることは出來ても、筆を以て生活することは困難であると云ふ結論を出して居ります通りに、此の勤勞所得税は俸給生活者に取つて容易ならぬ問題であると思ふのであります、特に官公吏、教職員、警察官等は一錢一厘も隱す所がない、そこに非常な苦しさがあるのであります、税を脱税すると云ふことは宜しくないのでありますが、兎に角日々生業を營む者が正しく勤めて居つて、さうして生活が益益困難に追ひやられる、所が一方に於ては正しからざる生活をするが故に益益榮えて行くと云ふやうな風が起つたならば、是は由々しい問題と私は思ふのであります、さう云ふ面から見て、何とかして此の俸給生活者の勤勞所得税に對しては、此の増税を此の儘實行されないで、或る部面に於て餘裕を持たせられると云ふことを御考へ願ひたいと思ふのであります、それで一番の中心はやはり家族手當、把養家族の控除と云ふ所に私は重點を置いて考へて訂正をして貰つたならば、何とか切拔けて行けるのではないか、どんな苦しいことがあつても切拔けようと云ふことは國民齊しく思つて居る所でありますから、是非其の邊に對して考慮の餘地を殘して戴きたいと思ふのでありますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=132
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133・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の通り一萬圓以上の勤勞所得者は、一萬圓を超えて家族一人に付きまして百圓家族手當を貰つたならば、分類所得税が二十、綜合所得税が三十五、合計五五%の税に相成りますので、手取は四十五圓にしかなりませぬ、一萬五千圓の勤勞所得のある人が家族一人殖えたと云ふので一萬五千百圓に相成りましたならば、百圓に付きましての手取は四十圓しかありませぬ、是が綜合所得税並に所得税全體の妙味であります、所得の少い人の百圓よりも、所得の多い人の百圓の方が擔税力ありとして澤山の税を取るのが所得税の本質であるのであります、私は今囘の官吏の七月の増俸は此の税法を頭に入れ、計算に入れて増俸額を考へて居ります、只今の税法に依る勤勞所得の税率を加味致しまして、税引所得がどうなるかに依つて一級事務官、二級事務官、三級事務官、雇等の俸級を決めて居るのであります、隨て今の税法で申しましても、御話の如く程の爲に勤勞所得者の生活が破滅に陷ると云ふことは考へて居りませぬ、さうして今のやうな税制では生活保護法に皆入つて行くであらうと言はれるのでありますが、生活保護法に依る給與金は一人に對して五十圓でございます、五人家族で二百五十圓を豫算に見積つて居るだけでありまして、勤勞所得が今程度であるからと云つて、國民が皆生活保護法の適用を受ける方面に走るとは考へて居りませぬし、又さう云ふ風になることはいけないことであつて、さう云ふ風にならないやうに税に付ても考慮致して居るのであります
それから扶養家族の控除の問題でありますが、扶養家族の控除は勤勞所得者のみに特別扱ひをすべき筋合ではない、俸給生活者の子供でも、農家の子供でも、營業者の子供でも同樣に税としては考へなければならぬと思ふのであります、隨て勤勞所得者の扶養家族の控除だけを此の際増加すると云ふ氣持はございませぬ、然らば全體に付て扶養家族の控除を、今の年七十二圓を百圓にしたらどうかと云ふやうなことが問題になると思ひます、若し之を百圓にすると、今七十二圓であつても十七億五千萬圓の税額控除に相成つて居ります、百圓に致しますともう七億五千萬圓位殖えます、さうしますと事業所得と勤勞所得に對しまして増税した今回の増加が、扶養家族の控除七十二圓を年百圓にしますと吹つ飛んでしまふ、斯う云ふ状況でありますので、扶養家族の控除を今引上げると云ふことは今度の税法の改正に於ては考へ得られない、却て減收に相成ると云ふ次第であるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=133
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134・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 政府では是等生活者の一人の生活費を最低凡そどの位に見積りになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=134
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135・池田勇人
○池田(勇)政府委員 各人々々の生活費を幾らと云ふことは私から申上げ兼ねます、人に依つて餘程違つて居ると思ひます、私は今度の七月の増俸で大體勤勞所得者はやつて行ける、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=135
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136・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 最低生活權を憲法でも保障される譯でありますが、最低生活がどの邊であるか、一人の生活費と云ふものが個人個人に依つて違ふと言はれるのでありますが、併しながら大凡の見當と云ふものはあるものであると思ふのであります、どの位ならば最低生活が出來得る、今の配給面等から考へましても、それに依つて私は考へますと、都市に於てはどんなことをしても一人が最低二百圓、是では果して生き終はせるかどうかと云ふことを考へるのでありますが、若しここに夫婦と子供三人の家がありまして一萬圓の俸給を取つて居る人がありますれば、此の人は明かに一人が百五十九圓であり、税を徴られて百五十九圓では生活が出來ないと云ふやうにはつきりと思はれるのであります、之に對してどう云ふ御見解を持つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=136
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137・池田勇人
○池田(勇)政府委員 夫婦子供三人で五人の家庭では一萬圓の俸給があるとしますれば、大體やつて行けると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=137
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138・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 さう云ふ空然とした御話では洵に困るのでありまして、お互ひ俸給生活者が眞劍に考へて居る所なのでありまして、年收一萬圓で家旅五人暮しでありますと、月收は千三百三十圓、それで分類所得税、綜合所得税を徴られてしまへば一人當りの生活費が百五十九圓、此の百五十九圓で都市に於て生活が出來得るや否やと云ふことは是は私がここで喋々と申さなくても天下周知のことだとは思ふのであります、さう云ふ面に立つてどうか政府では今度の勤勞所得税法の一部に於て改正の面を訂正して戴きたいと云ふ念願を強く持つ者であります、次に今度の綜合所得税の税率でありますが、此の税率を見ますと、上に行く程改正したものは安くなつて居る、十二萬圓位まで大體同じでありますが、二十萬圓を超えますと今度の新しい税率は舊税率よりずつと安くなつて居る、是はどう云ふ譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=138
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139・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得百圓當りの負擔税率が、所得の多い方が其の多い割合に應じて澤山負擔する、斯う云ふ建前で出來て居ります、御話の階級區分に依る間差が一萬圓を超えるものは百分の三十五、一萬五千圓を超えるものは百分の四十、斯うなりまして間差は上の方に行くと四間差、三間差になつて居る、斯う云ふことを御示ししてあると思ふのであります、此の點は綜合所得税の負擔の「カーブ」の見方でございます、從來の所得税に於きましても下の方は八間差、中頃は七間差、上の方は六間差、斯う云ふ風に相成つて居るのであります、決して所得金額の多い人の百圓當り負擔が低くなるやうには致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=139
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140・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 次は物品税に付て御伺ひ致したいと思ひます、物品税の品目の並べ方でありますが、第一種甲類の一番初め及び二、三、四、五番目等は私は是は丙類の方に改むべきではないかと考へるのであります、或は斯う云ふ國歩艱難な時でなければ免税にさるきべものではないか、一番政府が重税を徴らうとするものをなぜさう言ふかと申しますと、其の理由は我が國の國策の今後の行くべき向きが全然從來と反對になつて來たと云ふ立場から私は考へるのであります、詰り我が國の究極の目的と云ふものが文化國家の建設であると云ふことになりますれば、國民の文化向上の開拓面に對して、政府は國民に少しづつでも將來への我が國の向き方への希望を持たせなければならないと思ふのであります、所が税法は非常に民主的にすると云ふやうなことを聲明して居りながら、内容に於ては、此の品目の並べ方等に付ては依然として戰爭當時と同じなのであります、軍國主義的な、國家主義的な立場から見て居つた税の課し方と同じであつて、私は斯ふ云ふ風に國家が革命期に面し、尚ほ文化國家を建設しようと云ふやうな時に民主主義的な見方に物品の意味を持たせなければならぬと思ふのであります、さう云ふ點から見ますと此の物品の並べ方と云ふものを變へなければならぬのではないかと思ふのであります、此の見方は從來其の儘のものが今でも殘つて居るのであつて、非常に遺憾であると思ふのであります、殊に映寫機とか、樂器とかすふやうなものはひからびた農村の文化面に非常に必要なものである、所が到底此の儘で行つては入手することも困難である、社會の教育文化活動の源泉の一助として斯く云つたやうなものをずつと下に持つて行つて、斯う云ふ忍苦の生活の中にも一縷の文化への望みと云ふものを持ちたい、斯う思ひますが、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=140
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141・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物品税の改正に付きましては、提案理由の説明にも申上げましたやうに出來るだけ今回は簡素にしたい、さうして又非常に高い税率は此の際引下げる、斯う云ふ程度に止めて居つたのであります、御話の通り物品税、遊興飮食税等は事變或は戰爭中の産物でございまして、經濟機構が安定し國民生活の安定が期し得られて大體落着いたならば、相當程度改變致さなければ相成らぬと思ふのであります、唯税と云ふものは一寸社會が變革したからと云つて直ちに之に手を付けてやると云ふことは危險でございまして、大體見透しが付きましてから一般的の改正をすべきものだと考へて居るのであります、勿論平和日本建設には文化事業の發達と云ふことは非常に必要なことでございます、現在に於きましても寫眞機或は「フィルム」等に付きましては、學校で使ふものに對しましては免税を致して居ります、文化の發達には出來る限り税法の許す範圍で努めて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=141
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142・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 次は内務省の方に御願ひします、地方分與税に關係あることであります、地方税制を大分改革されようと云ふ意思を今度の税制には持たせられて居るのでありますが、是は地方税政の制度の改正と共に非常に其の自主性を強化する面からも賛意を表する者であります、唯一つ私は其の中で實際問題に當りまして非常に心配なものを持つて居るのであります、それは從來國庫補助に依つて支給されて居つた青年學校教職員の俸給であります、是が私の考へる所に依れば、斯う云ふ經濟の變革朝でもあり、國家が非常時に直面して居る時であるから經濟界が安定するまで、地方の税政も見透しが付くまで、青年學校教育者の俸給の如きものは國民學校の教育者と同じく國庫負擔法に依るべきものだと思ひます、それが今度は分與税の中に入れられた譯であります、そこで私の心配は分與税が地方へ配分された時に教育者に當るべきものが他に利用され或は一時流用される虞が非常にあるのです、此の點に對して内務當局はどう云ふ手を御打ちになる積りでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=142
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143・荻田保
○荻田政府委員 今回青年學校教育費に對する國庫補助金を廢止したのは文部當局、大藏當局と内務省と相談した結果でございます、此の趣旨は青年學校は御承知のやうに戰爭中は、實業教育と、もう一つ大きな使命は軍事教育であつた譯であります、隨ひまして之も義務制になり、國庫負擔法で大體俸給の二分の一を國庫が負擔することになつて居つたのであります、然るに敗戰後此の目的の中の一つの大きな軍事教育と云ふことは勿論なくなつたのですから、今後青年學校を如何にするかと云ふことは、文部當局に於ても御考へ中のことと思ひますが、差當りの措置として一應地方の實情に即した國民學校卒業者に對する實業的な教育に主力を注ぐと云ふことになります、然る時はそれはどうしても地方の實情に即した教育にならなければならぬのてありましあ、昔のやうな國家的色彩の強い教育ではなくなる譯であります、隨て青年教育の運營と云ふことも地方の自主性を持たして行はねばならぬのであります、それで寧ろ之に要する經費も全額地方負擔と致しまして、其の地方の實情、殊に經濟状態、産業状態等と「マッチ」した教育が出來るやうにする、即ち費用は全額地方の負擔とし、唯其の財源を税の形に於て與へる方が宜いと考へた次第でてります、さうなります結果、只今御述べになつたやうな御懸念があると思ひますが、青年學校教員の給與に付きましては、國の方に於て俸給令の制度もございますし、平均給とか或は初任給とか、或は昇給と云ふやうなことに付て文部當局の方から指令も出て居りますし、今度殊に七月以降根本改正が行はれますと相當統制的な規定も出來ますので、其の監督の方に依りまして青年學校の國庫補助金を廢止した代りに折角支へた財源が他に流用されないやうに努めたいと思ひます、殊に是は全然新しく俸給を出すと云ふのではありませぬで、從來やつて居りました俸給費の財源を唯振替へただけでありますから、此の振替へに依りまして直ちに待遇が惡くなると云ふことは我々としまして起らないものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=143
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144・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 青年學校の先生の待遇が惡くなると云ふことは、私は全然考へて居りませぬ、非常に好くなるのだと云ふ風に考へて居るのでありますが、唯地方農山村に於て國民學校の先生は國庫負擔法に依つて決められて來るので問題はないのでありますが、同じ町村に生活をして居ります青年學校の先生は其の地方から貰ふ、それは今御話の如く今後教育が地方分權的になればなる程町村の負擔の負ふばきものであることは確かであるのでありますが、併しながら此の過渡期に於きましては、從來あつた例でありますし、殊に教育者は非常に弱かつたと云ふやうな立場からここで弱いものにされるのぢやないか、村の所謂顏役或は村會議員等にお辭儀をしなければ俸給が支拂日から延びたり、或は村の財政がお前達の知つて居る通りこんなに窮乏なんだから一時他に廻すからと云ふことが往々起り易い地方財政の困難な過渡期だと思ふのであります、さう云ふ場合に強かるべき教育者が非常に弱腰になると云ふことは村の青年教育に非常に大きな影響を持つものでありますしするので、何とかもう少しはつきりした名目を此の費用に付けられないものでありませうか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=144
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145・荻田保
○荻田政府委員 青年學校の教員に對しまする俸給の負擔者は市町村でございませぬので、道府縣でございます、隨ひまして國民學校の先生と同樣に道府縣が負擔するのでございますから、道府縣が此の俸給を決めます際に、負擔法に依ります國民學校教員に對しまする俸給とさう不均衡を取つて特に惡くすると云ふことは勿論ないと思ひます、少くとも國民學校程度のことは實際問題として實施して居るものと思ひます、隨ひまして御懸念のやうなことは先づ起らないものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=145
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146・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 聞く所に依りますと、大藏省、内務省、文部省でそれぞれ査察官等を派して、隨時是が監査を行ふと云ふことでありますが、さう云ふ手段を實施される考へはないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=146
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147・荻田保
○荻田政府委員 具體的にまだ聞いて居りませぬが、今回七月から官吏一般に對しまする俸給令の改正がございまするが、此の改正の結果、やり方に付きまして、それぞれ本省の方から監察員を出して監査する、斯う云ふ話が進行して居りますので、其のことでないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=147
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148・鈴木憲一
○鈴木(憲)委員 其の點に付きましては十分政府に於て御研究を願ひたいと思ふものであります、以上を以て私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=148
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149・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 次は喜多楢治郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=149
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150・喜多楢治郎
○喜多委員 私は大藏省並に内務省に對しまして御質問致したいのでありまするが、先づ最初は大藏省に對して御伺ひを致します、中小商工業者の復興促進に付て、租税面より見たる政府の對策に付て御伺ひを致したいのであります、民主日本の建設は經濟的基盤を安定せしめなくてはならないのであります、民主經濟の確立は、平和業業の助成と、中小商工業者の維持育成を圖ることが肝要であります、之には資本主義的税制を改革し、特に平和産業中小商工業者に對する租税の合法的減免等を行ふことが、最も好影響を與へるものと思考するのであります、然るに今回の増税は之に反しまして、中小商工業者に壓迫を與へ、隨て生産の意欲と企業の活動を減退せしめ、一方一般消費者大衆の生活を脅威する結果になつて居ると思ふのでありますが、之に關し大藏御當局の抱懷する租税政策を承りたいものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=150
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151・池田勇人
○池田(勇)政府委員 租税が經濟諸原則に適合しなければならないと云ふことは、古來から言はれて居る租税原則の一つでございます、併し其の意味は經濟活動を阻碍してはいかぬ、資本或は營業所得の元本に食入つてはいかぬ、斯う云ふ意味でありまして、租税が積極的に是れ是れの仕事を助けて行くやうな役割をしなければならぬと云ふことは、租税原則の埒外であると考へて居るのであります、隨て只今の租税制度が、中小商工業者に對して非常に酷に的つて居ると云ふ點があつたならば、是は改めなければなりませぬ、併し租税制度で中小商工業者を如何に優遇して居るかと云ふ場面は租税制度にはございませぬ、隨ひまして私の關する限りに於きましては、只今の租税制度が中小商工業者に非常に邪魔にならぬやうにどう云ふ風な方策を取つて居るかと云ふことを申上げますと、今の制度では、中小商工業者の所得の減少した場合には、假令實績課税に依るのであるけれども、特例と致しまして營業に對する所得税の輕減をするとか、或は法人組織でも中小の法人に付きましては、大企業の法人よりも特別の輕減税率を使ふと云ふやうな方法を取つて居ります、又今回改めます個人の臨時利得税の廢止、是は中小商工業者の保護と申しまするか、或は大營業者の保護と申しまするか、少くとも中間の方の營業者には相當の特典だと考へて居るのであります、今回の増税に於きましても、資産所得よりはやはり營業所得等に於ては負擔力が少い、斯う云ふ觀點の下に、資産所得を百分の七上げる場合に、營業所得に付きましては百分の四の引上方に止め、即ち勤勞所得の百分の二に近く致して居るのであります、又營業税の引上に付きましても、地方税の財源たる三收益税に於て、地租に於て百分の一、家屋に付きまして百分の一上げて居りまするが、營業税に付きましては百分の〇・五に止め、中小商工業者に苛酷に當らないやうに今回の税制でも努めた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=151
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152・喜多楢治郎
○喜多委員 只今主税局長は、中小商工業者に對しては優遇はして居らないが、苛酷なる取扱ひはして居らないと云ふ御答辯でありましたが、私は今回の増税案に見ます事業所得に對しましての引上げ方に付きまして意見がある譯であります、何となれば、勤勞所得税並に事業所得と云ふものは、大體に於きまして世界各國同率を以て施行せられて居る所が多い譯であります、併し日本に於きましては從來勤勞所得に於きましては十八、事業所得に於きましては二十二、懸隔の付いて居るのは異存はありませぬが、今回の引上に付きまして、勤勞所得の倍額の四にせられましたる點、並に控除額に於て勤勞所得の面に於て六百圓のものを四倍上げまして二千四百圓となり、事業所得に對しては從來の控除額四百圓に對して三倍であると云ふ點に對しまして、中小商工業者、將來の國運を伸展せしむべき最も重要なる地位にある商業者に對して斯の如く世界各國同率の勤勞所得税に比較致しまして倍額、控除額に非常なる等差を付けられました點に付きまして、商工業者に對し酷なる増税でなからうかと思つて、此の點主税局長の明快なる御答辯を御願ひ申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=152
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153・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得の種類に依り、負擔力を見て課税致しまする我が國の税制は英米等に比べまして私は進んだものと考へて居ります、隨ひまして喜多委員の言はれるやうに英米では勤勞所得、事業所得に差を設けないに拘らず、我が國に於て差を設けて居るのは中小商工業者に酷に當るのではないか、斯う云ふ御議論でありまするが、私の見る所ではやはり事業所得者は勤勞所得者に對しまして相當の多い負擔をするのが國情に合ひ、實際に副うて居る課税だと思ふのであります、隨ひまして、勤勞所得の負擔と事業所得の負擔とは、今年度に於きましては百分の二十と百分の二十五程度で適當ではないかと考へて居ります、基礎控除の引上げに付きまして、三月に勤勞所得は月五十圓を二百圓、事業所得は年四百圓を千二百圓、即ち勤勞は四倍にし、事業は三倍にした、片手落ちではないか、斯う云ふ御話でありますが、不動産所得に付きましては免税點百五十圓を三百圓に、倍にしか致して居りませぬ、勤勞所得は四倍、事業所得は三倍、資産所得は二倍に、斯う云ふ風な考へ方で各倍數を掛けるのが適當であると信じて居るのであります、殊に營業所得に對しましては、前年の實績でございます、勤勞所得は本年の所得に課税するのであります、其の點も考慮に入れまして、勤勞所得の方の引上げ倍數を多くするのが適當と考へて、斯く致して居るのであります、勤勞所得と事業所得とが、單に所得税のみならず、所謂三收益税、營業税までを加へて適當な負擔なりや、其の間の調節が能く出來て居るかどうかと云ふことは、議論の分れる所であります、我が國に於きましては資産所得と勤勞所得と事業所得に付きましては畫然と區別をしてやつて居るのでありますが、勤勞所得者方面の聲は、勤勞が重税だと言はれるし、又中小商工業關係の方は、中小商工業に酷に當るのではないかと、色々な議論があると思ふのでありまするが、私は只今の日本の税制竝に今回の増税の致し方は、大體現在の國情に副つて居るのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=153
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154・喜多楢治郎
○喜多委員 只今の主税局長の答辯に依りまして、私は勤勞所得と事業所得に付て異論を申上げて居るのではありませぬ、唯今回の増税に對しまして、倍額は比較的に多いのではなからうかと云ふことを申上げた譯であります、只今の答辯に依りまして或る程度了承致しまするが、之に對しまして尚ほ御尋ね申上げたいことは、然らば中小商工業者の取扱ひ、商品の價格形成に付て、此の増税に對する負擔増に對しまして、中間「マージン」にどの程度の考へを持つて居られるかと云ふことを御尋ね申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=154
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155・池田勇人
○池田(勇)政府委員 中小商工業者の取扱はれる商品の所謂「マージン」と云ふものは、取引の状況、又各商品に依つてそれぞれ違はなければならぬと思ふのであります、直接税、所謂所得税等が、増税になつたから所得が殖えなければならぬ、或は營業純益が殖えなければならないと云ふ議論は立ちませぬ、私は今の國情から申しまして、所得は同じであつても、國民が出來るだけ生活を切詰めて行つて、此の税状を乘り越えると云ふ考へ方でなければならぬと思ふのであります、税が殊に直接税が殖えたから、各營業者、各勤勞所得者の所得が殖えるやうにしなければならぬと云ふことは、間接税と直接税との違ひでございまして、直接税に於きましては、重税になつたからと云つて、必ずしも所得額を殖やさなければならぬと云ふことはないのでございます、是が「インフレ」の防止等に間接税よりも直接税が役立つと言はれる所以でありまして、私は此の點は篤と御諒承願ひたいと思ふのであります、税が高くなつたから所得を殖やせ、是は惡循環の因であります、御話の中小商工業者の商品の「マージン」をどう見るかと云ふことは、個々の取引、個々の商品に付て決めべき問題であります、而して又所得税が多くなつたから其の「マージン」を殖やさなければやつて行けないと云ふことは、私は考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=155
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156・喜多楢治郎
○喜多委員 然らば資本の適正蓄積に關する施策に對して御伺ひを致したいのであります、民主日本を再建するには、資本の民主的蓄積が肝要であると思ふのであります、所が今日の増税案では、國民の所得があら方租税に吸收せられ、又近く決定されまする財産税に依りまして、更に資本の涸渇する虞が多分にあると思ふのであります、資本の適正なる蓄積に付きまして、如何なる考へを持つて居られるかと云ふことを、御伺ひを致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=156
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157・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得の蓄積は國民經濟の發達から申しまして、洵に望ましいことでございます、併し遺憾ながら只今の状況と致しましては、所得の蓄積を望みましても、中々得られませぬ、所得の蓄積を望むどころか、國家全體から申しますと、過去の蓄積をも消費しなければ相成らぬ状況となつて居るのであります、私は増税が所得の蓄積を阻碍すると云ふことは能く判つて居りますが、今の状況と致しましては、増税をしなければ中々やつて行けない、蓄積どころか、今までの蓄積を消耗して行つて居るやうな状況であるのであります、出來るだけ早く減税をし、資本の蓄積を益益多からしめ、國家經濟の再建に資したいと云ふことは、やまやま念願して居る所でございますが、遺憾ながら只今の所資本の適正な蓄積に對しましての方法は今少し時を藉りまして、平靜になつてから考へて行かなければならぬ問題で、只今の所、私共としては方法を持合せて居ない状態でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=157
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158・喜多楢治郎
○喜多委員 尚ほ主税局長に御尋ねを申上げたいと思ふことは、最近封鎖預金の方法に付きまして、第一封鎖竝に第二封鎖に封鎖預金を分離せられるやうに承つて居りますが、此の第二封鎖より財産税或は各種租税の支拂ひを承認せられる御意思か否やと云ふことを、參考に承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=158
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159・池田勇人
○池田(勇)政府委員 補償の打切等財界の整理に因りまして、其の結果が銀行預金に影響を及ぼすことは、承知致して居ります、併し其の結果が銀行預金に及んだ場合に、如何に取扱ふかと云ふことに付きましては、私は遺憾ながら此處に御話申上げる自由を持つて居りませぬ、併し何れに致しましても、課税の對象となりました封鎖豫金に付きましては、課税の對象になつた限度に於て、其の封鎖預金から納税を認めることが當然であると思ふのであります、御話の如く假定で申上げまするならば、第一封鎖預金と云ふものが、全額課税の對象になりますれば、さうしてそれが實のある預金ならば、第一封鎖預金で勿論財産税、或は本年の所得税等の納税を認めなければなりませぬ、而して又御話の如く凍結された第二封鎖預金と云ふものが若しあつたと致しました場合に、前年の所得に對しまする本年の課税、即ち綜合所得税や或は營業税に付きましては、前年の所得に對する課税でありまするから、其の預金が如何に封鎖せられやうとも、それから納税を認めることは當然だと思ふのであります、又財産税の問題に付て、さう云ふ強度に封鎖せられた預金が課税の對象になるかならぬかと云ふことが問題でございますが、若し課税の對象になつたならば、其の對象になつた限度に於て其の預金から財産税の納付を認めるのは當然であると思ひます、随て繰返して申しますが、假令或る預金が強度の封鎖を致されましても、其の預金が財産税課税の對象になるならば、對象になつた限度の税額を其の預金から納税することは當然認むべきものと考へて居ります、何分にも預金が如何なる恰好で封鎖されるかが分りませぬし、さう云ふ射鎖預金に對して財産税を課するか課しないかと云ふことも申上げられませぬが、對象となつた限度で、對象物から納税に充てることは理論上當然と考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=159
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160・喜多楢治郎
○喜多委員 先程池田主税局長より財産税の土地田畑に對する評價基準に付て説明がありましたが、都市竝に農村方面に對する家屋の評價基準に付て方針が決つて居りましたら先に伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=160
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161・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家屋の評價は土地とは違ひまして餘程困難と思ふのであります、殊に最近家屋が色々の關係で騰貴致しましたが、此の騰貴の事實をどう見るかは餘程困難な問題と思ひます、東京に於て一般の住宅は、十年位前までは坪百圓と云へば相當立派な住宅でございます、それが今日我々の調査に依りますと、咋年八月十五日以前、詰り終戰前六箇月の平均に依りますと、東京都内の或る區の家屋の賣買の實例では、坪當り八百二十圓になつて居ります、最近聞く所に依りますと殆ど「バラック」式の家を建てるのにも坪四、五千圓も掛かると聞き及んで居るのであります、三月四日の東京都内に於ける家屋を如何に評價するかは、財産税の評價に於て最も困難な問題の一つであります、終戰前の賣買實例を最も強く考へ、又終戰後殊に三月五日後の状況をどの程度に加味するかの問題は、是は我々一存では決め得られませぬので、財産税法が通過致したならば、大藏省の財産税審議會と云ふ民間竝に貴衆兩院からの有力者、學識經驗者のお集りの會で篤と相談して決めたいと思つて居ります、農村に於ける家屋も相當程度騰貴致して居ります、殊に市制施行地或は普通の市街地に於ける家屋も相當程度騰貴して居りますが、此の家屋の評價と云ふことは財産税の評價の中心と相成ると思ひますので、今後篤と研究して行きたいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=161
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162・喜多楢治郎
○喜多委員 農林省の大石政務次官がお見えになつて居りますので御伺ひ致したいと思ひます、酒類の必要性に付て農林省側の濁酒密造に關する御見解を承はりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=162
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163・大石倫治
○大石政府委員 只今喜多さんの御質問は御本職の御質問で、素人の私答辯甚だ不十分かも知れませぬが、今民間に於ける密造に對しての農林省の處置及び態度に對して御質問であらうと存じます、農林省と致しましては主食糧の逼迫して居る、殊に米の非常に缺乏して居る今日、密造は絶對に好ましからざることと存じて居るのであります、勿論是等の防止取締りは大藏省が主たる責任の立場にございますので、必ずや相當の取締りをし、其の防止、絶滅を講ぜられつつあることと存ずるのであります、從來事變中公然釀造を認められて居りました清酒、濁酒が、漸次釀造石數を減らされまして、事變前に於ける釀造高の殆ど今日は七、八分の一に過ぎない状態であります、所が「アルコール」成分に對する國民の要求は之に反して決して減退せず、配給に於ても不十分である、窮屈であると云ふことは是は何人も認めざるを得ないのであります、斯う云ふやうに釀造方面が非常なの屈になりますと同時に、益益「アルコール」に對する國民の要求が盛んになりまして、遂に密造等が行はれることになつて居るのではないかと思ふのであります、是が中々法律や尋常一樣の手段を以て防止、絶滅することの困難であることは喜多委員の能く御存じの通りであります、それで若し出來得るならば食糧問題さへ許せば、大いに公然の釀造業を増加致しまして、密造と云ふことは致さなくても間に合ふと云ふことに導くことが國策として必要なのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=163
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164・喜多楢治郎
○喜多委員 さう致しますと、農林省として酒類の絶對必要性に付ては十分御認めを願つて、主食糧の許す範圍内に於て清酒を造らしめなければならぬと云ふ考へを固くお持ちになつて居ると信じて宜しいでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=164
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165・大石倫治
○大石政府委員 私は政務次官の責任に於て將來之を確保すると云ふことは一寸申上げ難いのでありますが、私個人の考へ方に於きまして、又國策上さうすべきものなりと云ふ固き考へは今日に始まつたことではございませぬ、「アメリカ」の禁酒の實例に徴しましても、「ロシア」に於ける實績に鑑みましても、亦釀造量の漸減致して居ります今日の國状に照らしましても、是は唯一箇の嗜好物であるからと云ふやうな輕々しい考へ方を以て解決することは出來ないものである、もつと國策的に重要視すべきものであると云ふ考へ方を持つて居ります、唯それよりももつと重要な國民の主食が不足致して居ります以上、之を釀造に廻すと云ふことは困難でありまするから、本年の食糧事情が許しまするならば私は斯う云ふものは農林省と致しましても抑へないで、密造と云ふやうなものの間接的防止に助力すべきものであると云ふことを堅く考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=165
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166・喜多楢治郎
○喜多委員 酒と食糧との關聯性に付きましては今更申すまでもない譯で、特に農林省は御專門の立場でいらつしやいますから駄辯を弄する必要はありませぬが、酒に使用せられまする米から致しまして清酒の道程までに於きましては可なり副産物のあると云ふことを十分御認め置きを願ひたいと思ふのであります、玄米一石に對しまして、赤粕、中白粕は約一斗五升、白米が八斗五升から出來ます清酒一石四斗と云ふことになります、其の中酒粕が十二貫取れるのではなからうかと思ふのであります、尚ほそれより燒酎が一斗取れまするし、燒酎粕から肥料、食酢が出來ると云ふやうな見解の下に、食糧問題に對しまする酒の製造は實に食糧のみを使用するものでない、併せて副産物的に相當の食糧の出來ると云ふことを御認識を賜りまして十分農林省、大藏省御協力の下に來二十二酒造年度の釀造石數に對しまして御配慮を要望致しまして、農林省に對しまする質問を打切りたいと思ひます
尚ほ酒の問題が出て居りまする機會に大藏省に對しまして極く簡單に私は酒類の適正配給に付きまして意見を申述べたいと思ふのであります、日本再建の原動力は日本人個々の生活意欲を旺盛ならしむることが第二要件であることは論を俟たないのであります、此の生活意欲に不斷の刺戟を與へるものは何と言つても先づ酒類の飮用であると思ふのであります、私は今更此處で事新しく酒類の絶對必要性を述べることは避けたいのでありまするが、酒類の不足が特に勤勞階級の活動力を極度に低下せしめて居ることは儼たる事實であると思ふのであります、先程農林省の御話の如く戰前四百數十萬石の酒造米を今日六十萬石の酒造米に減少して居りまする點から見まして、如何にも需給の「バランス」の取り得ない現状から、正規の酒の入手難より不良の「メチール」に魅せられまして、あたら貴き生命を喪ふ者が餓死者の數に追隨致して居るのであります、大藏當局に於きまして調査致しました五月の「メチール」に因る死亡數は三十九名、六月は六十名、七月は十日までに二十二名と云ふやうな數字が現はれて居ると云ふやうな點から見まする時、酒は最早絶對の生活必需品だと思ふのであります、此の生活必需酒類を政府は主食確保の名の下に釀造を禁止せられたのでありまするが、之に對しまする答辯は今日主税局長よりありましたが爲に省略致す次第であります、何と致しましても敗戰日本の將來の復興に對しまして國民士氣の昂揚に對する酒類の絶對必要性と云ふものは、只今農林省も御認めになつたやうな見地から見まして少くとも家族の最も慰安物である酒類の月二、三合の配給は、最小限度五合の配給量確保に對しまして大藏御當局が如何なる御見解を持つていらつしやるかを御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=166
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167・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通り清酒に割當てます米が全然無になるのではなくて、どちらかと申しますと、それが形を變へて全部非常な立派なものに、得難いものになることは御説の通りであります、我々と致しましても出來るだけ酒の増産に努めて居りますことは御承知の通りでありまして、農林省とも打合はせ、關係方面の諒解が出來る限度に於て澤山の酒を造りたいと考へて居る次第でございます
配給に付きましても、少い酒を如何に配給するか、是はやはり重要な問題でございます、只今の所約四割餘は所謂特別配給用と致しまして増産――色々な現下必要な石炭或は金其の他各種の増産用に向け、又戰災復興用或は輸送關係、斯う云ふ方面の勞務者に配給致して居ります、此の四割餘の特別配給の中で最も澤山を占めて居るのは農山漁村の所謂増産供出用でございます、農村關係に付きまして大體年に二十數萬石を特配致して、さうして農産物の供出に役立たして居るのであります、全體の四割數分が今の増産用でありまするが、殘りの四割餘が家庭用になりまして、是が一戸當り平均、當初の豫定は四合程度でありましたが、六月、七月或は八月、九月の所謂製造停止に依りまして減つて參りまして、大體三合餘の配給が家庭用に出來るのではないかと思つて居ります、而してそれ等を取りました、全體の一〇%足らずが業務用に行つて居るのであります、業務用に於きましても最近では所謂高級料理店への酒の配給は停止致しまして、專ら國民酒場等一般大衆の出入する飮食店に限つて居るやうな状況であります、酒が今少しく殖えますれば家庭用其の他にも増配を致したいのでありまするが、只今の造石程度では以上申上げましたやうな配給方法を執つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=167
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168・喜多楢治郎
○喜多委員 内務省はおいでになりましたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=168
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169・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=169
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170・喜多楢治郎
○喜多委員 では内務省に先に御伺ひ致したいことは、將來自由市場を御認めになるか否かに付きまして御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=170
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171・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 只今の御質問は警保局關係のやうでありますが左樣ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=171
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172・喜多楢治郎
○喜多委員 さうです、先程から頼んで居りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=172
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173・宮澤才吉
○宮澤委員長代理 それでは警保局長を呼びますから、今の代りに其の續きを御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=173
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174・喜多楢治郎
○喜多委員 それでは大藏省に重ねて御伺ひ致したいことは、物品税に對して今後眞の奢侈品のみに限定する意思があるのかないのかと云ふことを御伺ひ致したいのであります、物品税は今更私が申上げるまでもなく戰爭中に於て創設せられた戰時税と致しまして、其の收入は擧げて戰費に充てられて居りました實情から見まして、今日相當社會生活が變革を致して居りまする場合に、物品税の中には罐詰、「ソース」「バター」等、生活必需品とも申すべきものが課税せられて居るのではなからうかと思ふのでありまするが、此の際其の多種多樣の品目に檢討を加へられまして、眞に奢侈品のみに課税せられると云ふことが、即ち一般消費大衆に對しまして執るべき措置ではなからうかと存ずるものであります、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=174
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175・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通り只今の物品税法は單なる奢侈品のみに限らず、殆ど生活必需品に近い物にも課税致して居る實情でございます、併し是は飽くまで節約し得る品物でございまして、生活必需品に極く近接致して居りまするが、或る程度時局柄節約し得る、斯う云ふ所まで行つて居るのであります、然らば平和日本建設、將來の問題から云つて斯う云ふ純然たる奢侈品以外の生活必需品に近いものは止めてはどうか、斯う云ふ御意見でありまするが、出來るだけ早い機會に斯かる生活必需品に近いやうなものは止めたいと云ふ氣持を持つて居ります、而して罐詰とか「バター」とか「ソース」とか是が生活必需品に極く近くて課税にならない奢侈品でないかと云ふ問題になりますと非常に難かしいのでありまして、奢侈品と、奢侈品に近いものと、生活必需品に近いものと、純然たる生活必需品とが分れまするが、其の四つの間の區別と云ふことは中々困難でございます、併し只今の説明は第二と致しましても物品税に掲げてありまする中で、生活必需品に近いやうなものから先づとつ拂ひたい、課税外に置きたいと云ふ氣持を持つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=175
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176・喜多楢治郎
○喜多委員 物品税問題は詳細な御説明で能く了承出來た譯であります、内務省關係で御尋ね致しますが、是も大藏省關係の關聯事項でございますけれども、自由市場に對する適正課税の用意ありやと云ふことを御尋ね致したいのであります、勿論自由市場に對して今回執つて居られまする内務省の政策如何に依つて喋々すべき筋合であると思ふのでありますけれども、尚ほ其の政策如何に拘らず自由市場と云ふものは或る程度殘存するのではなからうかと云ふ見解の下に意見を申述べたいと思ふのであります
終戰後最も殷賑を極めて參つたのは自由市場であります、巷に堂々と簇出する此の市場の爲に眞面目なる中小商業者は甚大なる壓迫を受けて參つたのであります、而も自由市場商人は任意に移動の出來る建物を所有致し、自由な營業場を選擇致しまして、不當に所得税、營業税、物品税を免れて商賣を繼續致して居るのに對しまして、一般中小商業者は一定の營業法規に自由を束縛せられ、更に増税の重壓に喘いで居るのであります、此の際眞面目なる中小商業者の援護の爲に、自由市場方面に一般中小商業者と均衡の取れた適正課税をなすことは當然の措置であると痛感する者であります、今日までの自由市場に對しまする、課税の徴收状況竝に今後に對しまする課税の方法に付きまして、大藏御當局の御意見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=176
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177・池田勇人
○池田(勇)政府委員 自由市場に對しまする所得税等の課税或は物品税等の課税に付きましては、我々としても非常に苦慮致したのであります、何としても中々捉へにくうございます、所々に依りまして實情に副ふやうに課税致して居ると思ふのでありまするが、東京では財務局の報告に依りますと大體自由市場の業者は甲、乙、丙の三段階に分けまして、甲は日に幾ら、乙、丙は幾ら幾らと云ふ風に、赤、青、黄の切符を出しまして、さうして札元が其の金額を各營業者から毎日取集めまして、さうして其の金額を札元が納める、斯う云ふ制度を各自由市場の幹部其の他業者と協定致しまして徴税して居るやうな状況でありまで、物品税等に付きましても、やはり業者團體と課税標準其の他を協定致しまして、徴税に努めて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=177
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178・喜多楢治郎
○喜多委員 最後に大藏御當局に對し質問致したいことは、税務機能の強化と人材起用の御意思があるかと云ふことであります、政府は國庫の増收を圖る爲の唯一の手段とせられまして、税率の引上を行つて居られるのでありまするが、尚ほ根本的な方法を沒却されて居るやうであります、それは國務を左右致しまする經濟運營たる税務の機能を十分に強化して、脱税を徹底的に調査し、課税漏れを防止することが最も必要なことでなからうかと思ふのであります、それには税官吏の生活を保障し、物質的に優遇の途を講じ、更に有能の人材を起用し、執務能率の増進を圖ることが肝要と思はれるのであります、本問題に付きましては、斷片的に主税局長より御意見が出て居る譯でありまするが、重ねて本問題は財産税の徴收等最も國民と致しまして、公平なる課税に依つて人心の安定を致さなくてはならないと云ふ必要に迫られた今日、具體的の御方策がありや否やと云ふことを御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=178
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179・池田勇人
○池田(勇)政府委員 事變中或は戰爭中屡次の増税を致しましたに拘らず、我が國の税務機構は増税と逆に其の素質人員が低下減少致して來て居るのであります、それは各種の原因がありましたが兎に角事實とし致しましては、増税が行はれ、國民の負擔が非常に重くなると、逆に税務の機構は弱化致して來て居る状況であります、私は只今計畫致して居ります財産税の徴收又今回の増税に於きましても、最も心配して居るのは税務機構を如何にして擴充し、如何にして税務官吏の素質を向上するかと云ふことが私の惱んで居る一番の大事な問題であります、私は税務の民主化と云ふ問題も結局は税務機構を擴充強化し、そこに立派な税務官吏を澤山置くことが税務の民主化に一番貢献することと考へて居るのであります、隨て此の税務機構の強化に付きましては、何と申しましても今最も心配して居るのは素質の低下でありますので、私は今まで税務に經驗があるとないとを問はず、或は經驗のない實際の常識が相當あり、學識あり色々な世間のことに慣れた立派な人を出來るだけ澤山税務官廳に採入れたい、斯う考へて居ります、財産税の提案と前後致しまして、全國的に有能な士を千名或は二千名税務官廳に入れたい、さうして財産税或は今回の増税の實施に當つて戴きたいと云ふ考へを持つて居るのであります
〔宮澤委員長代理退席、委員長着席〕
中々今の状態では直ちに實績を上げると云ふことは困難でありまするが、現在も多年税務に經驗ある相當有能な者も居りますし其の上社會一般の世情に通曉した千人或は二千人の立派な方を入れて來れば、税務機構の擴充強化も出來るのではないかと考へて居るのであります、税務官吏のやり方一つが國民の利害休戚に非常な影響があることは勿論でありまするが、又是が國民經澤に非常な關係を持つことを考慮致します時私は今後税務機構の擴充、税務職員の素質の向上、就きましては税務官吏の待遇改善に全力を注ぎたい決心で居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=179
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180・喜多楢治郎
○喜多委員 大藏御當局に對する質問は是で大體終つた譯でありますが、内務省が御見えになるまでもう一つ大藏省に參考までに、關税對策に付いて御伺ひ致したいのであります、「ポツダム」宣言に依りまして我が國も自由なる貿易の許される日も近い將來にあるのではなからうかと思ふのでありますが、貿易の發達と相互國家の親善を圖る爲に、關税制度の決定に付いては相當愼重を要する問題があると思考するのであります、現在外國より輸入の品に對する關税の課税状況竝に關税の將來と關税自主權に關し御説明を承りたいと思ひます、尚ほ朝鮮臺灣及び樺太等に對する現在の關税上の取扱ひ等も御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=180
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181・池田勇人
○池田(勇)政府委員 關税の問題に付きましては我が國將來の經濟の立て方等と餘程影響を持ちます、又關税は渉外關係が非常にありまして、日本獨自で決め得られない問題でありますので、今より篤と研究致したいと考へて居るのでありますが、唯保護關税、自由關税、斯う云ふ風な問題に相成りますと、やはり自由貿易の方に走らざるを得ないのではないかと考へて居ります
次に朝鮮、臺灣、樺太との貿易の現状はどうかと云ふ問題でありますが、是は大體外國と看做しまして取扱ひを致して居ります、併し關税は徴收して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=181
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182・喜多楢治郎
○喜多委員 内務大臣に御伺ひ致します、自由市場、青空市場を將來御認めになる御意思であるか否かと云ふことに付きまして御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=182
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183・大村清一
○大村國務大臣 今問題になつて居ります露店商をどう云ふやうに取扱つて行くかと云ふ御尋ねと存じます、露店商に付きましては各位も御承知の如く、最近其のやり方が段々と自由奔放に流れる傾向がありまして、是が爲に段々青空市場が闇市場的性格を急速度に濃化して參つて居るのであります、是が爲に或は物價昂騰の原因にもなりますし、或は正常配給の混亂を來しまして、國民生活に至大の影響を及ぼすと云ふやうな次第で、青空市場の動向は現下食糧危機に逢着して居ります國民經濟を破壞に導く虞が多分にあるのであります、又是等の經濟上の問題のみならず、他の半面に於きましては青空市場は凡ゆる犯罪の温床となる傾向が顯著でごりいますので、是は其の儘に放置して置くことが出來ないと云ふ結論に達しまして、今月一日から統制品を取扱ふこと、及び價格違反と云ふ二つの點に嚴重な取締りを致して居るのであります、尚ほ此の取締りに付きましては只今申しますやうな理由がございますので、進駐軍側に於きましても其の取締りを強化することを勸告されて居る次第であります、又所に依りましては現地進駐軍から其の取締り方の指令を出されて居る所もあるのであります、只今は統制品の取扱ひ及び價格の違反を取締つて居るのでありますが、此の取締りを勵行致しますことに依りまして漸次闇市場的色彩は拂拭されるものと思ふのであります、さうして健全正常なる商行爲のみを營むと云ふこと、相成りますならば、是は何處までも壓迫をする必要はないものと考へます、唯一つ考へなければなりませぬことは青空市場は衞生上の見地からも十分に考へなければならぬことのやうに存じて居ります、併し此のやうな斷乎たる措置を執りました場合に、是が一般民衆に與へる影響はどうであるかと云ふ點を考へて見ますと、今日のやうな物資缺乏の時、欲しい物を手に入れることが非常に困難な時期に當りまして、青空市場が殆ど成立たないと云ふことになりますと、需要者側にも少からぬ不便を與へることがありまして、此の點に付て政府としては深甚な手配を致しませぬと、今の所青空市場の取締りは非常に好調に參つて居りまするが、併しそこに適當な手を打ちませぬと實際の必要が再び所謂闇市場を復活させる虞なきを保しないのでありまして、此の點農林、商工等の關係者とも段々打合せを遂げて居る次第であります、即ち出來るだけ正常「ルート」に依つて澤山の商品が正當な商店「デパート」等に出廻るやうになることが必要であらうと思ひます、水産物或は野菜等に付きましても是は出荷を勸奬致しまして、出來るだけ多量の物が正常「ルート」に乘つて商店に出て來る、乃至は商工省の手に依りまして一般民生の必需品が「デパート」其の他正常な商店に出廻ると云ふことに手配を致しませぬと、又實際の必要から闇市の復活することが是れなしとしない情勢にある點は深く認識致しまして、只今關係方面とも此の點に付て協力して全力を盡して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=183
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184・喜多楢治郎
○喜多委員 洵に懇切丁寧な御答辯で重ねて御伺ひする箇所はありませぬが、自由市場に對する對策としての統制品並に價格統制方針と云ふことに付きましては洵に同感致して居るものでありますが、全體四月に於きましても闇市を徹底的に封鎖すると云ふやうに聞いて居りましたが、ずるずると今日に至つたのであります、今回の非常措置も今回は徹底的におやりになると云ふのかどうかと云ふことに付きまして御尋ねを申上げたいと存じて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=184
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185・大村清一
○大村國務大臣 青空市場の取締に付きましては豫ねても色々考へも致し、手も着けて見たのでありますが、中々思ふやうに參らなかつたのでありますが、今回十分なる準備を致しまして、八月一日から全國に亘りまして逐次徹底的取締をすると云ふことも着手致したのでありますが、其の經過は今までの所大變都合好く參つて居るのであります、是は色々の原因があらうと思ひます、今の儘青空市場を放置して置いては大變なことになると云ふやうなことが民間にも、又取締の側に於きましても深く認識されて居りますので、そこに輿論を背景とした部分もあると思ひます、尚又澁谷事件等を契機に致しまして、青空市場が日本の治安を攪亂する禍因になると云ふやうな點を政府も深く認識を致して居ります、又日本の治安に付きまして多大の關心を持つて居りまする進駐軍側に於きましてもそこに注意が集中されたと云ふやうなことも、一つの大きな「バック」であらうと思ふのでありまするが、兎も角も今回の統制品及び價格の取締と云ふ點は、之を率直に申しますと、私共も豫期以上の效果を收めて居るのでありまして、先に申しまするやうに是は政府各省協力致しまして、青空市場の不正を此の際一掃すると云ふ所に強い決心を以ちまして進んで行きたい、又それに付きましては裏打をすると云ふことで推し進めたいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=185
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186・喜多楢治郎
○喜多委員 然らば内務大臣に對しまして重ねて青空市場が舊來の如く復活をしないと云ふ確乎たる御方針の下に進めて居られると云ふ風に解釋して差支へございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=186
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187・大村清一
○大村國務大臣 只今の通りに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=187
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188・喜多楢治郎
○喜多委員 以上を以ちまして私の質問は打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=188
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189・苫米地義三
○苫米地委員長 本日は之を以て質疑を打切ります、茲に御報告を致すことがあります、委員飯田義茂君が辭任されまして其の補闕として太田鉄太郎君が議長より委員に指名されました、此のことを御報告致します、尚ほ明日午前十時から會議を開きますから、左様御承知を願ひます、是にて散會致します
午後四時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00419460807&spkNum=189
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