1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月八日(木曜日)午前十時十四分
出席委員
委員長 苫米地義三君
理事 殿田孝次君 理事 中野武雄君
理事 深津玉一郎君 理事 八木佐太治君
理事 宮澤才吉君 理事 松永義雄君
理事 今井耕君
小川原政信君 坂本實君
田中實司君 寺尾豐君
平岡良藏君 江川爲信君
加藤高藏君 松岡運君
奧村又十郎君 川島金次君
榊原千代君 玉井潤次君
米山久君 太田鐵太郎君
原尻東君 増井慶太郎君
山下ツ子君 喜多楢治郎君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 荻田保君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 前尾繁三郎君
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本日の會議に付した議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=0
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001・苫米地義三
○苫米地委員長 是より開會致します、質疑を續行致します——田中實司君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=1
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002・田中實司
○田中(實)委員 私は同僚諸君が色々な角度から御質問になりまして尚ほ御質疑になる方々が澤山におありになるやうに承知致して居りますので、極めて簡單に數種の點に付きまして御質し致したいと存じます、簡單率直な御意見を承りたいと存じます
第一に御尋ね致したいと存じますのは、昨日來主税局長から一應の御説明もあつたのでありますが、尚ほ私承服し得ぬ點がありますので、重ねて御所見を承りたいと存ずるのであります、それは所得調査委員の問題に付てであります、此の所得調査委員と云ふのは此の税制の根本的な改革と共に當然本質的な研究を致しまして、全く官との協力に依つて正しい徴税の出來るやうな本當の機關に改められなければならぬと思ふのであります、現在の所得調査委員會に於きましては幾多の缺陷があるのでありますが、併しながら此の所得調査委員會を廢止すると云ふことに付きましては、何れの點から考へましても、私は之に對して賛意を表することが出來ぬのでありまするが、最近私の承知致しまする所に依りますと、來るべき機會に於て所得調査委員會をなくする、斯う云ふやうな御意見が當局にあるやうに聞いて居るのであります、殊にさうなりました上に於ては所得は專ら納税者の申告に重點を置きまして、之に對して税務當局の見込みを加へて課税をすると云ふことに相成るのだと云ふやうな噂を聞いて居りますが、若しそれが事實と致しますならば、私は非常に間違つた考へ方であると思ふのであります、之に對してどう云ふ風に御考へになつて居るかと云ふことの御答へを得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=2
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003・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得調査委員會の職能に付きまして、其の必要さは我々も十分存じて居るのであります、唯今の儘の組織で十分所期の目的が達し得られるどうかと云ふ問題に付きましては私は今の儘の機構ではいけない、置くとすればもつと擴充強化し、さうして本當の意味に於ての徴税官吏の「アドバイザー」として、十分働き得るやうな制度に致さなければならぬと思つて居ります、唯色々な考へ方で、民主的な税制として所得調査委員會より外にはないかと申しますと、今「アメリカ」でやつて居りますやうに納税者の申告を主題とし、之に税務官廳の調査を當嵌めて、申告と調査が合つて居るのは其の儘で通します、合つて居ない場合に付きましては税務官廳の、認める所で決定し、別に調査委員會に代るべき租税裁判所と云ふものを設けて行く手もないことはない、其の何れに據るかと云ふことは餘程國情其の他から考へて決めるべき問題だと、斯う只今の所思つて居るのでございます、何れに致しましてもどちらに據るかは今後研究すべき重要な問題と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=3
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004・田中實司
○田中(實)委員 私の御尋ね致さんと致しました所は、大體税務當局に於かれましては來年度の税制の改正と共に、此の所得調査委員會と云ふものを廢止すると云ふ御意見が確立して居るやうに承つて居るのでありますが、左樣な域には達して居らない、まだ色々な角度から只今御述べになりましたやうな研究の時代である、斯樣に承知致して宜いのか、何れが正しいのか其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=4
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005・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今所得調査委員會制度を擴充強化して存續すべきや、又別に租税裁判所のやうな制度を之に代へて行くべきやの點は研究中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=5
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006・田中實司
○田中(實)委員 次に私が御伺ひ致したいと思ひますのは、所謂戰時中に申して居りました所の新興所得階級に關する當局の御意見であります、先日主税局長の御説明に依りますと、今囘の改正等に於きまして、法人に對する課税は、終戰以後法人が非常に不利な立場になつて、其の所得も甚しく減退して居るので、此の見積に於ては相當の減額を見込んで居る、斯樣な御説明を致されたやうに承知致して居るのでありますが、私は戰時中の正しい意味の新興所得階級と云ふものに付きましては左樣な考へ方を持つことが出來るのでありますが、此の終戰後の所謂經濟的な混亂に乘じまして色々な方面に頭を擡げて來ました所の新しい階級があることを見逃してはならぬと思ふのであります、今日私共の考へ方に依りますると、二十萬圓以下の所謂商事會社等に於きましては、終戰の混亂に乘じて相當多額の收益を得て居る面が多いと私は考へて居るのであります、而も此の多額の收益を得て居る終戰に依る所の便乘的な小さな會社が實際に於て納税の對象としては極めて小さく見られて居る、斯う云ふやうな點は、徴收、技術の點等に於きましても相當困難な面があるだらうと思ひますけれども、徹底的に之を徴税するやうは措置を講ぜられなければ、單り租税の點から考へるばかりでなく、國民の人心に大きな惡影響を與へるやうな點から考へましても、是は十分に御研究になり、又是が萬違算なき徴税を見るやうな御措置を御執りにならなければならぬと思ひますのに、私は法人の所得が本年度に於て著しく減退するが如き御言葉を承りましたことに對して承服し難いのでありますが、此の點を一つ御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=6
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007・池田勇人
○池田(勇)政府委員 終戰後に於ける所謂法人の利益状況は、私の見ます所では非常に惡化致して居ります、是は全體的の觀察でありまして、個々の法人に付きましては必ずしもさうでない例外的のものもあると思ひます、御話の二十五萬圓以下程度の小法人に付きましては、法人税全體と致しましての税額或は利益金額は非常に微々たるものでございます、法人の税額の七割以上は五百萬圓以上の會社が納めて居る、斯う云ふ状況でございまして、二十萬圓程度以下の法人は、數こそ法人數の七、八割を占めて居りまするが、利益金額税額に至つては微々たるものでございまして、法人税の收入を左右する程度には相成つて居りませぬ、隨て法人税全體と致しましては、終戰後利益状況が下つて居りますので、税收は非常に減收を見込んで居ります、二十萬圓以下の法人の利益状況はどうかと云ふ問題になると、是は大體個人と同じやうな經過を辿るものでありまして、中には非常なぼろ儲けをして居る會社もあると思つて居ります、從來小法人には法人税をどう云ふ風な方法で課税して居つたかと申しますと、經營の實體が大體個人と似て居るものでありまするから、個人の課税状況を勘案致しまして、法人にもさう云ふ方法で例へば業種別に法人を分けまして、さうして個人を決めるやうな頭で法人税を決めて居る次第であります、隨ひまして、御話の如く小法人なるが故に個人より特別に課税が安くなると云ふことは絶對にないやうに努力致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=7
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008・田中實司
○田中(實)委員 御説明一應了承致しましたが、私は聊か見解を異にとる者であります、勿論御示しになりましたやうに、法人税の大部分は五百萬圓以上の大資本を擁するものを對象として取る額の方が多いと云ふことは私共も事實であらうと思ひます、併し私はそれに對しまして承服し難い點と申しますのは、微々たる徴税である所の二十萬圓以下の小會社が、終戰後脱税其の他の不法なる行爲を逞しうせんとするが爲に雨後の筍の如く出來上つて居るのでありまして、而も是等の會社に付きましては、私共の承知して居る範圍内に於きましてら、五百萬圓乃至は一千萬圓の資本を持つて居る大會社以上の收益を得て、税の面に於ては相當逋脱をして居ると云ふやうな點が相當濃厚である、左樣に考へまするが故に、斯う云ふやうな點に付て當局は御承知になつて居るか、又若し御承知になつて居るならば、之を何處まで追及して税の衡平を御圖りになる御所存であるかと云ふことを承りたいと思ひます、若しそれ二十萬圓以下のものには左樣な事實がないと云ふことを御認めになりまするならば、私は證據を示して御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=8
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009・池田勇人
○池田(勇)政府委員 二十萬圓程度以下の小法人に對しましての課税はどう云ふ風にやつて居るか、斯う云ふ御質問でございますが、實は昭和十年頃から個人に對する調査が相當徹底しますと、それに連れまして個人が相當法人に組織變更致します、税務署は、法人に組織變更する場合に、個人とは計算の方法が違ひますので、法人になつたが爲に負擔が安くなると云ふやうなことではいけないと云ふので、法人になつた個人には特に注目致しまして調査を嚴重に致して參つて、居るのであります、其の後會社經理統制令等の關係で、二十萬圓未滿の會社が非常に續出致しました、そこで從來の方針をもつと強化致しますると共に、個人と同樣に、先程申上げましたやうに、業種別に分け、さうして大體の標準率を作り、其の上に又特にぼろ儲けしたやうな會社に付きましては特に嚴査する、斯う云ふ方法で出來るだけの努力は致して居ります、一時さう云ふ風な調査方法をやりましたので東京、大阪方面で可なりの問題を起したのでありますが、斯くすることが個人小法人間の負擔の均衡に適合すると云ふので、今も尚ほ其の方法で行つて居ると思ふのであります、勿論個人に於きましても非常な多額の利益を上げて居られる人があると同樣に、小法人に付きましても莫大の利益を上げて居る會社が相當あると思ひます、是等に付きましては及ぶ限りの調査を致しまして課税の充實に努めて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=9
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010・田中實司
○田中(實)委員 私の御尋ね致さうとする所と少し角度が違ふやうに考へるのであります、私は其の點はよく諒承致したのでありますが、もう少し具體的に申上げますると、終戰後に於きまして、軍の放出其の他の物資を個人が拂下げ其の他の處置に依つて取得して居りますものを、個人の營業の儘に於ては是が非常に課税の對象となつて重い税を負はなければならぬと云ふ關係から、商事會社等を所在に拵へまして、さうして合法的に是等の商事會社の運營の面に取入れまして、それから生ずる所の利益を免れて居ると云ふやうな例が全國に相當澤山にあるのであります、是が延いては今日非常に社會に喧しい問題になつて居ります所の隱退藏物資等とも關聯が多いのであります、斯樣な點から、一方に於ては國民が物資の不足に依つて生活に非常に喘いで居ります面から考へましても、斯樣な物資を正常な「ルート」に流さなければならぬと云ふことは當然でありますが、此の面のみならず、一面租税の面に於きまして、斯樣な多額の收益を得て居る者が免れて居る面が非常に多い、之に對して税務當局の手がどこまで伸びて居るか、又將來に亙つてさう云ふやうなものを徹底的に調べ上げて課税の對象として十全を期して行かれると云ふことに對しての當局の御心構へ等を承りたいと思つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=10
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011・池田勇人
○池田(勇)政府委員 課税の充實を期します爲に調査の徹底を期しますろとは小法人或は個人、大法人皆同じことでございます、終戰後に於きまして、經濟界が非常に混亂に陷つた時にぼろ儲けをする人の相當あることは、是は歴史の示す所でございまして、我々と致しましては十分意を盡しまして課税の衡平を期したいと思つて居るのであります、而して個人組織が法人組織になりましたからと云つて、税の負擔が輕くなるやうには今の税制は出來て居ないのであります、御話の所謂軍の物資等に依つてぼろ儲けしたものに限らず、今でも色々な請負事業で相當の儲けをしつつある方面があるのでございますから、十分手配は致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=11
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012・苫米地義三
○苫米地委員長 田中君に御相談致します、大臣が外に御出になるやうですから、大臣に對する御質問を先に…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=12
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013・田中實司
○田中(實)委員 それでは主税局長に御尋ね致したいことがまだ數點ございますが、大臣に對する御尋ねを先に致して、後程又主税局長から色々承りたいと思ひます、實は私は本日御質疑を申上げたいと思ひまするのは、只今御尋ね申上げましたものの外に、或は綜合課税の問題であるとか、甲種勤勞所得の問題であるとか、又今日非常に大きな問題となつて居りまする所の遊興飮食税の問題、斯う云ふやうな問題に付きまして、社會では色々と喧しく申して居るのでありまするが、結局之を綜合致して考へますると、是等の税が、今日我が國が民主國家として立直らうとする上に於て、多額の増税になつて居るけれども、今日立直る上に於ては已むを得ざるものとして、國民は恐らく此の増税に對して齒を食縛つてでも忍ぶであらうと思ふのでありまするが、唯此の問題の論議の中心となつて居りまするのは、兎に角色々な税の面に於きまして、其の税の本來の目的を達して居らぬ、即ち税法の權威を甚しく失墜して居るやうな事態が隨處に起つて居る、言葉を換へて申しますならば、此の徴税が均分化され、公正化されて居らぬと云ふ所に私は色々な論議が起つて來るのだらうと思ふのであります、昨日か一昨日か、主税局長からも御話になりましたやうに、租税の公正と云ふことは、是は租税の生命であると、斯樣に仰せになつて居るのでありますが、私は其の通りだと思つて居ります、此の生命である所の公正が期せられて居らぬと云ふ所に其の税制に付きましての論議があるのであります、一つの例を擧げましても、甲種勤勞所得に對しまして色々な議論がありまするが、勤勞は決して國民の義務として納税を免れようと致すものではありませぬ、勤勞はやはり國民の義務として、國家が起上る上に、國家財政の上に寄與貢獻したいと云ふ熱意は十分に持つて居るのでありまするが、此の勤勞者の義務に對し、其の他の事業所得等が甚しく均分を缺いて居ると云ふことは、税率の上に於ては均分を缺いて居らぬと仰せになるか分りませぬが、其の徴税の末端の技術の面に於て非常に均分を缺いて居る、譬へて申しますならば、事業所得に於きましては、是は免れ若しくは缺くる點が非常に多いのであります、併し勤勞所得は明々白々鏡に掛けたるが如く其の所得に對しては百「パーセント」課税されて居るのでありまするが、其の他の租税に於きましては、今日の所謂徴税技術を以てしては、決して全きを期するやうな徴税は出來ないと私共は考へて居るのでありますが、茲に甚しく勤勞者と一般の事業所得者との不均衡がある、私は之に對して、勤勞所得階級は全面的に反對を致すであらうと考へたのであります、然らずして唯勤勞者なるが故に此の税を減免されたいと云ふことは、私は國民は決して考へて居ないと思ふのであります、斯樣な意味から考へます時に、私は何と致しましても、租税の生命である所の公正、適正を期する上から致しまして、今囘の大増税の點は暫く措きましても、將來に亙つて確乎不拔の税制の根本的な改革を行はれて、而もそれは民主的な方向に向はなければならぬ、官も民も渾然一つになつて、本當に國の財政を賄つて行くと云ふ氣持で渾然一體にならなければならぬと云ふことは申すまでもないことでありまするが、之に對しましては今日の税制を以てしては、到底所期の目的を達することは出來ぬと思ふのであります、隨ひまして私は、此の際大藏大臣は少くとも今日の豫算に於て、今日の税制改革に於て、直ちにそれを實施することは出來なくても、將來に固い約束を國民に向つてされなければ、國民は安心して此の納税の負擔を負ふことは出來ないのでありまして、前途に大きな不安を持つであらうと云ふことは、是れ亦當然であらうと私は考へるのであります、左樣な意味合ひから過日同僚上林山君から大藏大臣に向つて此の點を御質しになつたのでありますが、私は遺憾ながら大臣の御言葉に對して承服することは出來なかつたのであります、私は少くとも國民が本當に苦しい中から起ち上つて、此の政府を支持して、さうして打つて一丸となつて、國を建直さうとする大切な時に、財政の切盛の責任に立つて居る大藏大臣の、過日の御言葉を藉りますと、此の根本改正に付ては委員會其の他に於て愼重に審議して、新しき税制の根本的改革を行ふと云ふやうな御言葉でありまするが、私は是では相成らぬと思ひます、大藏大臣は大藏大臣自らの確乎不拔の經綸と、さうして抱負を御持ちになつて居らなければならぬと思ひます、此の抱負經綸は何ものにも制約されないものでなければならぬと思ふのであります、此の信念にして若し容れられずんば、潔く其の職を去ると云ふだけの御決心を以て、此の大切なる税制の根本的改革を行つて戴かなければならぬとひ思ますのに、甚だ微温的な御答へを得まして、私は聊か失望を致して居るのであります、隨て私は此の席上に於きまして、大藏大臣はどう云ふ自分の抱負を持ち、どう云ふ目途に向つて此の根本的な税制の改革を行はれるかと云ふことに付て、率直なる御意見を承りたいと思ひます、私はなぜ左樣なことを申すかと申しますと、此の根本的な大臣の御意見が決まりませぬと、今回の増税案に對しましても國民は非常な不安を懷いて居るのでありますから、更に將來に向つて一層の不安を擴充致しまして、是が軈て我が國再建の爲に大きな弊害となると云ふやうなことを私は憂ふるのであります、殊に今日までの政策は、私は昨日來御話を承つて居りまするけれども、形の上に於ては世界の水準以上の理想的な税制であると云ふやうな御言葉を承つて居ります、私は左樣だと信じて居ります、併しながら其の實際の形を整へただけで實質的な税の徴收に當つて、又納税者も本當に心から協力して納税をすると云ふやうな本當の税の目的の本質の點に至りましては、私は遺憾ながら世界の水準以下だと思つて居ります、私は其の理由を何處に求めるかと申しますと、永い間の傳統と、徴税の末端に於ける技術の混亂である、更に又言葉を改めて申しまするならば、税務の方面に於ては甚だしく非民主的であつて、今日も尚ほ其の弊風は去らない、警察當局は民主主義的な本當の行き方に脱皮して、營々として今日色々な方面に御努力になつて居るやうに私は聞いて居ります、是は洵に結構だと思ひますが、單り此の税務の關係に於きましては依然として舊態依然たる、所謂人を見たら泥棒と思へ、納税者を見たら脱税者と思へと云ふやうな考へ方に依つて、所謂苛歛誅求を行はれて居る面が相當に多いのであります、斯かる場合に於きましてはやはり人情と致して、何とかして少しでも免れたいと云ふやうな氣持を起す、又税を課する方面に於きましては少しでも多く之を徴りたいと云ふやうな、雙方の意欲の混亂に依りまして、國家が目的として居るやうな所には少しも進んで行かないと云ふのが、今日までの歴史と傳統であると私は考へます、斯樣な歴史と傳統を少くともかなぐり捨てて、本當の民主的な税制の確立を致さうとする時には、前段私が申上げましたやうなことに付て異常の御決心を御披瀝に相成りまして、それで其の方途に勇敢に御進み願ふと云ふことが最も大切なことだと私は存じますが故に此の點に付きまして甚だ失禮でありますけれども、大臣の率直なる御意見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=13
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014・石橋湛山
○石橋國務大臣 租税が如何なる原則に依つて課せらるべきかと云ふことは御承知の通り既に略略内外を通じて決定した原則がある譯でありまして、簡單に申せば國民總てが其の能力に應じて國家の費用を出す所謂應能主義であります、隨て不勞所得は先づ理想的に申せば全部之を國家に囘收すると云ふことから行かなければならぬと思ふのであります、唯併しながら是は理論は租税と云ふものは比較的簡單なものでありますが一面に於て非常に技術を要する問題でありまして、御質問の點も大體それの側面かと考へられます、御示しの如く日本の今日の税制は税制としては相當完備して居りますが、其の實行に當つて目的通りに行かないと云ふ弊があることは十分私も認めて居りまして、之を何とか改善致さなければならぬと存ずる譯であります、それ等の點も是はやはり非常に難かしい技術に關することでありますから、政府に於ては政府の色々の今までの經驗に依りまして考へもそれぞれ持つて居る譯でありますけれども、尚ほ之を民主化する爲には各方面から委員になつて裁きまして、篤とそれ等の點を考究する必要があると考へて居る譯でありまして、隨て私は此の前調査會を設けてそれ等の根本的問題を解決したいと申上げた次第であります、御質問の要點は税務官吏が非民主的であつて、納税者が之に反撥をして納税を好まないやうになると云ふ御話であります、是は如何にも御尤もでありましてさう云ふ點があると存じます、併し同時に是はやはり國民全般の納税觀念の改善も要することと私は考へて居るのであります、所謂所得税の如きは良心課税と言はれるやうなものでありまして、實際に如何なる細密な調査機關を持つて居りましても、各人の本當の所得を外から掴むと云ふことは中々困難な仕事でありまして、隨て脱税をしようと云ふ意思がある場合には、どうしても其の脱税は、如何にやりましても隅から隅まで之を防止すると云ふことは出來ないやうなことになります、でありますから税務行政に付ては大改善を施すと同時に、國民全般の納税觀念に付ての考へ方を漸次改善致すやうな方向への一つの精神運動思想運動も要するものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=14
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015・田中實司
○田中(實)委員 まだ私は分りませぬが、併し角度を變へて端的に御尋ね致したいと思ひますが、大臣は斯う云ふことを御考へになつて居りませぬから、今までの納税は上から、所得官僚であるとか、軍であるとか云ふ一連の繋りを以て上から押付けた税である、一つの法規の下に上から押付けた税である、是からの日本が平和國家として立上る、而も此の國を國民が全部で盛立てて行かうと云ふ氣持の上からの納税は、國民が下から、自分自ら税を收めるのだと云ふやうな氣持にならなければいかぬ、是は申すまでもないことだと思ひます、大臣の御言葉も其の點にあつたと思ひますが、さう云ふやうな方向に導きますには、獨り是は教育ばかりではいけないと思ひます、現在の法規を根本的に考へ直さなければならぬ、所得税制を考へ直さなければならぬ、さう云ふやうな意味から此の税制を改革される場合には、官も民も一緒に此の納税の實を擧げさせるやうな極めて幅の廣い民主主義的な御改革を行はれる御意思があるかないか、之を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=15
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016・石橋湛山
○石橋國務大臣 具體的にはどう云ふことを御考へになつて居られるかはつきり承り得ないのでありますが、無論今の御言葉のやうな意味の改革と云ふものは之を行はなければならぬものと考へて居ります、唯今までの税でも、上から押付けたと云ふ御趣意もどう云ふことか七分具體的に分らないのでありますが、租税は議會の御審議を經なければどうにもならない、隨て此の場合に此の民衆の代表である議會に十分の御審議を煩はす、無論其の原案は便宜上政府から提出する譯でありますが、左樣な譯でありますから、從來でも事實憲法とか何とか云ふものは、專制政府であつたと云ふやうな點は別と致しまして、少くとも形の上に於ては民主的に行はれて居つた又今後に於ては憲法も改まり、又憲法の改まらない今日に於きましても、今囘の議會と云ふものは民主的立場に立つての議會でありまして、其處に税法が掛けられる譯であります、御話のやうに單に上から押付けた税とは言へないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=16
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017・田中實司
○田中(實)委員 私が押付けたと申上げましたのは、法規とか規則に依つて押付けたと云ふ意味ではありませぬ、決して一人の獨裁的な者が無理矢理に押付けたと云ふ意味ではないのでありますから、御諒承を願ひたいと思ひます
それからもう一つ御尋ね申上げたいと思ひますのは、先程一寸御質問致しました所得調査委員と云ふやうなものも、民主的に而も實情に即した改革をしなければならぬと云ふことを御話になりました、御尤もであると思ひますが、私はもう一つ所得調査委員と云ふやうな制度を實質的に飛躍したやうな制度に於て、一般の民を納税の實際の仕組みの中に取入れ、さうして國民も納得して納税が出來る、又官も安心して正しい納税なりと認めるやうな、所謂官民合體の一つの法制を御立てになると云ふことが是からの民主主義的な最も望ましい一つの制度であると思ひますが、其の點どう云ふ風に御考へでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=17
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018・石橋湛山
○石橋國務大臣 是も何等か具體案があり、それが實行可能であれば結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=18
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019・田中實司
○田中(實)委員 時間もありませぬので、今の問題に付ては又他日機會を得て御尋ね致したい點がありますが、此の點は打切りましてもう一つ御尋ね致したいと思ひます、それは遊興飮食税の點でありますが、遊興飮食税は御示しになつて居ります此の税制改正に依る増收見込額の中に五億一千六百萬圓と御算定になつて居りますが、此の御算定の基礎を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=19
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020・池田勇人
○池田(勇)政府委員 遊興飮食税見積りは、他の租税と同じやうに最近の課税状況、又政府の施策等を勘案致しまして見込んで居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=20
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021・田中實司
○田中(實)委員 數字的基礎を発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=21
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022・池田勇人
○池田(勇)政府委員 五億一千六百萬圓の内譯は、大體花代、又は其の他の花代、是が合計で一億七千萬圓程度になつて居ります、それから飮食料、是は花代を伴ふ飮食料も入つて居りますが、是が三億一千萬圓、旅館の宿泊等に對し課税致しますものが三千六百萬圓、合計五億一千六百萬圓であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=22
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023・田中實司
○田中(實)委員 此の點に付きまして一つ大藏大臣に御伺ひ致したいと思ふことなら、私は結論を端的に申上げまするが、遊興飮食税と云ふものは惡税である、又其の沿革等に付きまして今日の實情と甚だしく副はないと云ふ點に付きましては、同僚諸君から完膚なきまでそれぞれ御意見もあり、御質問もあつたのでありますので、其の點には觸れたくないと思ひます、唯今日の實情に於きましては、遊興税と云ふ點に付きましては、尚ほ私も一應考慮すべき點が相當あるのではないか、斯樣に考へて居りますが、少くとも今日の食糧事情下に於きまして、飮食店が一般の食糧緩和の爲に盡して居る所の、所謂貢獻して居る所の役割は相當に多いのであります、此の國民大衆に非常に大きな影響を持つて居る所の飮食税と云ふやうなものは、少くとも私は此の機會に撤廢をして戴きたい、斯う云ふことを私は御願ひするのであります、さう云ふ私の意見を申上げました時に、恐らく之に對しましては、税の收入に大きな缺陷を生ずると云ふことを御指摘になるだらうと思ふのでありますが、私は此の遊興飮食税の見積額に對しましても非常に、杜撰と申上げますと失禮でありますけれども、自信のない數字を御示しになつて居るやうに考へられるのであります、私は税に關することに付きましては全くの素人でありますので、却て御叱りを受けるやうなことに相成るかも分りませぬけれども、今日全國に於きまして、飮食業者と稱する者は四十萬乃至五十萬あると云ふことを申されて居ります、果して四十萬乃至五十萬の業者が眞實にあるかないかと云ふことに付ては、私は的確な數字を把握致して居らないのでありますが、常識的に左樣なことを申して居ります、併しさうでなくとも、此の參考資料の中で御示しになつて居ります昭和十九年度の三月現在に於ける是等の業者は、十六萬一千幾らになつて居りますが、當時十六萬數千の業者があつたと云ふことでありますならば、終戰後の状況に於きましては、是が四十萬になり、五十萬になると云ふことは、是は常識的に考へても當然だらうと思ふのであります、此の澤山の業者が、而も免税點が十圓以上のものを取扱ふと云ふ者は、殆ど其の大部分だらうと思ふのでありますに、此の計算から致しますれば私共素人の大掴みな計算から致しましても、恐らく嚴正公平に課税が徴收出來ましたならば、私は五億、十億位の豫算を御組みになると云ふことは、聊か其の實情と去る所が遠いのではないかと思ふのであります、斯樣な觀點から考へます時に、やはり政府自らも此の遊興飮食税と云ふものが實際に徴税が不可能である、實際に其の技術上に於て非常に困難が伴ふ、故に是は極めて内輪に見積らなければならぬと云ふやうな御考への下に見積つて居られるのではないかと云ふことを私共は疑はれるのであります、若し左樣なことが私の考へて居りますやうでありましたならば、私は茲に飮食税を御撤廢になりましても、嚴正公平なる遊興税の徴收に依りまして、此の財源の補填は出來ると考へて居るのであります、是は前段申して居りますやうに、私素人でありますので、誤つて居りましたならば御教へを戴きたいと思ふのでありますが、左樣な考へ方から見まして、此の法の威信に拘はるやうな、實際に於て官に於かれましても、末端まで遺憾なく其の公正なる適用を見ることが出來ないと云ふやうな御考へを御持ちになつて居るやうな法律を、何時までも殘して置くと云ふことは、私は國の威信にも拘はると思ひます、又納税に對する國民の義務心を少くする、又納税に對する信頼を少くすると云ふやうな、幾多の影響があるのでありますので、此の際大臣は最も勇敢に飮食税を御撤廢になると云ふ御意思はないかあるかと云ふことに付て御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 遊興飮食税の色色御話の内容に付きましては、尚ほ事務當局から申上げる機會があらうと思ひますが、無論此の税が餘り好もしい税でないと云ふことは私も能く承知して居ります、何れ整理に移さなければならぬものでありまするが、唯本年度は其の他に物品税等の關係がありまして單り遊興飮食税だけを動かすと云ふことは、他の税との關係上却て不釣合を生ずる懸念がある、斯う云ふことで今年度は此の税を存續した譯であります、併しながら是は成べく早い機會に整理致すべきものでありまして、屡屡申上げますやうに、今後税制の改革を調査し、明年度から實行する場合に於ては、是等に付ては根本的な改革が行はれるべきものと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=24
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025・田中實司
○田中(實)委員 率直な御意見でありまするが、既に大臣が左樣に此の税制其のものに對し惡税である、或は又今日の實情に副はないものであると云ふことを御認識になりました以上は、私は須く其の收入の缺陷に甚だしき影響のない限りは、少くとも飮食税だけは御撤廢になると云ふことが國民の信頼を博する所以だらうと私は考へて居りまするので、重ねて私は御願ひを申上げまするが、それ等の點に付て能く御調査の上、之を御撤廢になるやうに御運びに相成りたいと云ふことを、重ねて御願ひ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=25
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026・苫米地義三
○苫米地委員 大藏大臣はもう宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=26
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027・田中實司
○田中(實)委員 宜しうございます——只今の大藏大臣に御尋ね致しましたことに付きまして、局長の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=27
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028・池田勇人
○池田(勇)政府委員 遊興飮食税の存廢或は改正に付きましての私の意見は大臣と同樣でございます、唯御述べになりました御説には、我々の考へて居るのと餘程食違つた點がありますので、其の點を申上げたいと思ひます、遊興飮食税の納税者十六萬一千と云ふのは前の數字でございまして、最近の調査に依りますと、昭和十九年九月末に於きましては十九萬軒ございましたのが、昭和二十年十一月一日は、即ち昨年の十一月一日には九萬三千軒になつて居ります、今年の四月一日は十萬五千軒に殖えて居りまするが、昔の常數よりは餘程減つて居るやうでございます、脱税の問題に付きまして御説のやうに或る程度の脱税は我我も知つて居ります、調査致しますると、大體調査致しました中で七、八「パーセント」の脱税者を認める状況でございます、今問題になつて居りまする脱税は、内地本邦人でなしに、それ以外の國人の經營する飮食店に於ける税金が納まつて居ないと云ふことが主たる問題だと思ふのであります、邦人の營業者に付きましては、營業者が納税團體を組織致しまして、各人が團體員の税額を知り合ひ、お互ひに脱税のないやうに努力致し、又牽制し合つて居りますので、全體的に見ましてさうひどい脱税はないと考へて居ります、さうして五億一千六百萬圓は非常に見込を内輪にして居るのではないか、脱税を考へて内輪にして居るのではないか、斯う云ふ御話でございまするが、決してさうではございませぬ、遊興飮食税等の問題は、政府の施策に依りまして餘程變つて來るのであります、高級料理店の廢止とか或は藝者が料理屋に入ることは禁止するとか又色々な價格の點から申しまして、非常に見込みが難しいのでございます、今年の二月に於きまする遊興飮食税は、一箇月で一億圓餘りも徴收した、併し三月になりますと是が四千萬圓位に減つた、斯う云ふ状況がございまして、見込みは相當困難でございまするが、政府當局として脱税を豫想して見込み額を減すと云ふことは絶對に致して居りませぬ、どうぞ其の點は御諒承願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=28
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029・田中實司
○田中(實)委員 今數字的の御示しを戴きました、私の考へて居りますことは、素人考へで誤つて居るかも分りませぬが、先程申しましたやうに過般是等の業者の全國大會が東京で開かれたことは御承知の通りでございますが、之に代表として參加致しました者だけでも約二萬と云ふことでありますれば、是は常識的に考へましても全國的に九萬や十萬の業者ぢやないと考へられるのであります、若しそれが正規の手續を以て税務署其の他に屆出た業者でありますれば、それは御示しの通りであると私は考へますが、それにあらざる所の所謂業者は、恐らく十萬や二十萬ではないと私は考へて居るのであります、若し實際に於て當局の御調べになりました數字が正しいと云ふことで、此の數字に依つて豫算を御組立になると云ふことでありますならば、私は少くとも當局は現實に眼を掩うて居られるのだと申上げても過言ではないと思ふのでありまして、一歩私共が家を出ますれば最近の状況は今仰せになりました色々な施策に依りまして、一時的な現象はありますけれども、今までに於きましては凡ゆる方面に於て此の飮食業者は實に夥しく數を増して居るのであります、斯樣な現状から考へまする時に、私は相當之に對して公正な而も技術的にそれが出來得るやうな方法に依つて徴税を致されまするならば、今日御見込みの如き額は極めて其の一部分だと云ふやうなことさへ考へて居るのであります、此の點は當局と私との見解の相違かも分りませぬけれども此の點に付ては尚ほ一歩能く御研究に相成つて然るべき重要な問題であらうと思ふのであります、是等の問題が遊興飮食税に對する世間の非難を解消し、之を急速に撤廢することが出來るか出來ないかと云ふことを決定する大きな鍵であらうと思ふのであります、只今御示しになりました數字は、常識的に考へて、私はどうしても承服することが出來ない、此の點に付て重ねて承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=29
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030・池田勇人
○池田(勇)政府委員 遊興飮食税を課すべき業者が三十萬、四十萬居ると云ふ御意見には私は承服致し兼ねます、只今の調査は税務署で十分調査致しました資料を集めたものでございます、何分にも都市が非常に戰災其の他で荒廢致して居りますので、最も料理店の多い市制施行地の數が非常に減そて參りましたから、私は只今申上げた數字が確かなものだと考へて居るのであります、又遊興飮食税五億一千六百萬圓が過少だと云ふ考へがあるかも分りませぬが、是は一昨年の税收入七億數千萬圓に比べまして、今の場合としては決して税率の下つた過少な見積りではないと思ひます、唯問題は先程申上げましたやうに政府の施策等に依りまして動くものでございます、計算がどうしても此の通りになるのだと云ふことは申上げ兼ねます、唯其の點で故意に税額を過少に見積つたと云ふことは私は承服出來ない、斯う考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=30
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031・田中實司
○田中(實)委員 局長の御意見と私の考へることとは明かに見解の相違でありますから、是れ以上追究することは止めたいと思ひます、最後に一つ承つて置きたいと思ひまするが、臨時利得税が今囘廢止になると云ふことに付て案を御示しになつて居るのであります、此の場合に於きまして個人の臨時利得税は本年度は課税すると云ふことに相成つて居るやうに承知して居るのであります、私共の諒承致して居ります一つの例を擧げましても、所得の總收入以上の税を出さなければならぬと云ふやうな人がやるやに私は聞いて居りますが、是は洵に穩やかでない、現實に百萬圓より收益がないものが百萬圓以上の税金を納めなければならぬと云ふやうなことは、法人に對する臨時利得税の撤廢と考へ併せまして少くとも私は不公平ではないか、斯樣に考へますが、此の點どう云ふ風に御考へになつて居りますか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=31
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032・池田勇人
○池田(勇)政府委員 臨時利得税は御承知の通り昭和十年から事變に依る特に利得の増加した法人、個人に課税する税で今までやつて參つたのでありますが、戰爭が終了致しました今日、此の税は意味を成さなくなつたので個人に付ては昭和二十二年から廢止することに致したのであります、個人の臨時利得税が實際の所得から申しまして臨時利得税、所得税等を控除しきれない程、即ち所得よりも臨時利得税の方が高く掛ると云ふ風なことは私はないと考へて居ります、若しございますれば實例を示して戴きたい、唯其の時に御注意願はなければならぬことは、營業税を損金と見た場合の計算を私は申上げて居るのでございます、決して所得よりも税金が多くなると云ふ税率は含んでは居りませぬ、どうぞさう云ふ風に御諒承を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=32
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033・田中實司
○田中(實)委員 それでは其の實例を一つ御示し致しますが、本年度の所得額が百五十五萬圓に決定致したものが、政府當局に御算定を願ひました時に、二百二十五萬圓の税金を納めなければならぬと云ふ税務署の通牒を受けて居るのであります、是は明かに其の所得を超えること實に夥しいものがあると思ふのであります、是はどう云ふ算定の方法になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=33
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034・池田勇人
○池田(勇)政府委員 具體的の問題でございますから、其の方の營業利得なり讓渡利得なり之を見ました上でこちらで計算致します、決してさう云ふことはない筈であります、若しあれば何かの間違ひだと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=34
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035・田中實司
○田中(實)委員 私の質問は是で終りたいと思ひます、大臣も非常に御忙しいので御歸りになりましたが、最後に次官竝に局長に特に御願ひ申上げたい、先程大臣に向つて私が御願ひ申上げましたこと竝に私の意見として開陳致しましたことに付きましては極めて今日必要であると云ふことを強く信じて申上げたことで、之に對しては或る程度大臣の御賛成を得て居る點もありますから、是等に付ては省内に於て適當に御協議願つて、成べく私共の考へて居るやうな方向に向ふやうに御盡力戴きたいと云ふことを御願ひ申上げまして私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=35
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036・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは次に江川爲信君より質疑を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=36
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037・江川爲信
○江川委員 私は主として地方税制に付て御尋ね致したいと存じますが、先般來内務大臣は本會議に或は當委員會に於て、地方財政の自主性を強調されて居るのでありますが、全く私共も之に同感でありまして、此の際に於ては飛躍的に地方財政に自主性を持たし、地方財政を中央の手から解放致す、具體的に申しますならば、有力な財源を中央から地方に委讓致しまして、地方財政に彈力性を持たせると共に、自主性を強化する、斯う云ふやうにしなくては地方自治の民主化の實は到底上らないと存ずるのであります、斯樣にすることに依つて地方の自治が民主化され、其の機能を發揮されまして、今囘の知事公選制度と云ふものも初めて生きて來ると存ずるのであります、然るに今囘御提案になりました地方税制の一部の改正案は全く舊態を改める所がない、依然として有力な財源は中央に於て之を掌握し、還付税或は配付税の名に於て之を地方に分與して居る、全く地方財政の自主性と云ふものを蹂躪して居ります、思ふに是は依然として、官僚の支配慾と云ふものが地方自治の上に強く働いて行かうと云ふやうにも想像されるのであります、内務大臣は此の地方財政の自主性を強化すると云ふことに付きまして、或は府縣住民税と云ふものを新設する、或は町村住民税の限度を引上げる、更に地方の獨立税を許可する途を開いた、是が即ち地方財政の自主性を強化したのであると云ふ工合に説明されて居るのでありますが、併しながら之に依りまして、非常に庶民階級が重税の爲に苦しむのであります、有力な財源を中央に於て握つて置いて、或は獨立税を許した、或は府縣民税を新設したと云ふことは、丁度底引網で根こそぎ浚つて置いて、あとは自由にお前等網を下して魚を獲りなさいと云ふ形である、でありますから、そこで魚を獲らうとするならば、其の底引網の網の目から逃げた小さな魚を狙ふより外はない、即ちそれは庶民階級なり勤勞階級なり農民である、さう云ふものを對象として、新しき税金を課すより外ない結果になるのでありまして、今囘の地方税制の改正は、其の地方財政の自主性を決して強化しなかつたと云ふこと、庶民階級に對して重税を課すると云ふこと、此の二つの缺陷を持つて居ると存じまするが、之に對しての御意見を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=37
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038・郡祐一
○郡政府委員 地方財政の自主性を強化致しますること、地方財源を強化致しますること、是等に付て深き御考へを戴いて居ることは洵に感謝に堪へないことであります、他の地方制度がそれ自體に於きまして指導性を持つと申しまするか、啓發性を持つと申しまするか、制度自身として相當先行し得る性格を持つて居るのに比べまして、地方税制なり地方財政に付きましては、何處までも實情に即して參らなければならぬ、又地方税が國税との關聯を常に考慮して參らなければ相成らぬ、左樣な状態から考へますると、終戰後の状況と云ふものが、茲に根本的な改革を加へまするには、他の財政經濟との關聯の問題及び現在極めて變動期にありまする地方財政の現況是等の状態から成べく速かに根本的の改善を講じたいとは考へて居りまするけれども、現在の段階に於てなし得ることを可急的に致すと、此の限度に止らざるを得ないのであります、左樣な見地から致しまするならば、現に地方團體に於きまする負擔の均衡を圖つて參ります又財源配分の適正を圖つて參ります、是等の爲にはやはり還付税制なり配付税制なり、それの根本に付ての論もあり得るのでありまするが、是等の制度と云ふものには、尚ほ相當地方財政として依存して參らなければならぬ部分もあるのであります、隨ひまして前提に於て急激なる改革を下さずに、其の限度に於て、一方には歳入に於て有力な財源を創設し、一方に於ては急増致しまする需要を滿たしまする爲には、此の度のやうな還付税、配付税の増額、或は府縣民税の創設、市町村民税の増税と云ふものを致さなければならなかつたのであります、併し之に依りまして仰せの如く、非常に庶民階級と申しますか、それ等の階層に著しく負擔を掛けて居る、是は一方に於ては名目的なと申しますか、國民の收入所得は相當の増加を致して居ることは認めて宜しいことと思ふのであります、隨ひまして賦課方法に付きましては十分愼重なる考慮を要するのでありますけれども、是等の府縣民税の創設や市町村民税の増税と云ふものは現在の程度に於きまして、是が著しく或る階層に對しまして重課に相成ると云ふやうな結果になることも避けて參ることが出來ようと思ふのであります、唯國税、地方税を通じまして、相當一人當りの負擔が増して參ります、是は認めざるを得ぬこととは思ひまするが、是等の負擔の配分と云ふものは、是は適正に行ふことが出來ると思ふのであります、是等の財源を新しく得ますることと合はせまして可及的に國の財政と調和し得まする限度に於きまして、負擔區分を是正致しましたり、一方財源を擴充することに依りまして、自主性の強化に付ても一歩を進める、併し仰せの如く、更に根本的な改革と云ふものは時機を見て是非致したい、斯樣な工合に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=38
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039・江川爲信
○江川委員 庶民階級に對する重税に對しましては、後程申上げたいと存じまするが、先づ以て只今の御話では、現在の段階に於て急激なる變動を行ふことを避けたと云ふやうな御話でありましたが、併しながら敢へて急激な變動を避けなくとも、地方財政の自主性と云ふものを、假令收入の點に於て變らなくとも、其の名の下に於て心持の上に於て、立派に自主性を持たせると云ふ税金があるのであります、即ち還付税でありまするが、此の還付税は國に於て徴收致しましてさうしてそれを其の儘地方に還付する、斯う云ふ所の税金であります、此の還付税の中でも家屋税であるとか、或は地租であるとか斯う云ふやうな税金——營業税は是は數府縣に關聯する税金でありまするからして、是は其の儘府縣に委讓すると云ふことも出來ないことはありませぬ、出來ないことはありませぬけれども、即刻やるには、此の地租竝に家屋税を其の儘地方に委讓する、さうすることに依つて却て此の徴税上の手數も省ける、又交付金等の如きものを地方に交付しなくとも濟む即ち國家の經費の上に於ても大なる節約をなし得る、恐らく地方交付金は三百萬圓以上であらうと思ひまするが、さう云ふやうな經費だけでも五、六百萬圓、人件費を加へまするならば、一千萬圓以上、斯う云ふものが國に於て節約し得られるものと存じます、即ち此の還付税の中で、地租と家屋税を地方に委讓する所の御意思がないかどうか、私は是は全く議論の餘地がないと存じますが、其の儘還付致しましても決して急激なる變動にはならないと存ずるのであります、殊に地租委讓と云ふやうな問題はもう三十年前からの問題である、又家屋税は曾ては地方税であつたのであります、でありますからして、實質から申しましても、歴史から申しましても、斯う云ふものは全く地方税となすべきものである、又地租に付きましては、私聞いて居りまするのに、政府部内に於ても、曾ては是は地方に委讓すべきものであると云ふ議論が相當に有力であつた、所が時の總理大臣は、如何なる僻陬の地と雖も是は王土である、王土ならざるは莫し、であるからして是は名義だけは一つ國税として殘して置かうぢやないか、斯う云ふやうな話であつたと云ふことを聞いて居ります、併しながら今日は憲法も改正されんとして主權在民と云ふ所の方向に向つて進んで居ります、土地に對する所の觀念も其の當時の觀念と違つて參つて居らなければいかぬ、さう致しますならば、觀念論から申しましても、實質から申しましても、此の二つの税金は是非地方に委讓すべきもの、さうして是は直ちに斷行致しまして一向に急激なる變化なきものと信じまするが、之に對する御意見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=39
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040・郡祐一
○郡政府委員 地方財政の自主性を強化致しまする見地から致しまするならば、御指摘の兩税の如きは完全な地方の獨立税とした方が宜いのぢやないかと云ふ論は、世上可なりに要望致されて居りますことでありまするし、事柄自體としては私も望ましいことだと考へて居ります、唯還付税制度を設けました時にも、是等の税負擔の地域的な均衡を圖つて參るとか、又是は理由が稍稍間接的になるかも知れませぬが、是等の還付税になつて居りまする三税を配分の基準に用ひて配付税を分與致す、隨ひまして配付税分與の公正を期する點からも國税として置く方が望ましいのではないだらうか、斯う云ふやうな見地から還付税と云ふ課徴形態を執つて居ることと存ずるのであります、唯是等の課税の地域的な均衡を圖ると云ふやうなことも、若し課税標準の決定等を國自ら、國が直接行ひまするか、或は國の指導に依つて行ふかの方法を執りますれば、是も解決致し得る所であります、それ等の點に付ては方法に依りまして解決し得ることと存ずるのでありますが、併し何と申しましてもそれ等の課税標準の決定を如何にすべきかと云ふこと、更に根本的に兩税を委讓するかどうかに付きましては、今少し技術的な檢討を致したいと思ひまするし、關係方面との折衝も今少し重ねて見たい状態にありますので、私の考へを申上げますれば、完全な地方の獨立税とすることが好ましい、其の方向に向つて研究を進めて見たい、斯う云ふ工合に申上げたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=40
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041・江川爲信
○江川委員 大藏當局の之に對する御意見を承りたいと存じます
〔委員長退席、殿田委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=41
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042・池田勇人
○池田(勇)政府委員 地租、家屋税の收入自體は、還付税制度に依りまして全部徴收せらるべき市町村に還つて居りますので、財源に付ては問題はないと思ふのであります、唯昔からの非常な議論のある税でございまするから、之を實質はもう既にやつて居るのでありまするが、形式的に地方税にしてしまふかどうかと云ふ問題はやはり今後の税制の立て方と關聯して考へるべき問題と思つて居ります、御意見の存する所、我々も十分以前より研究致して居るのでございまして、次に行ふべき税制改正案に付きましては、重要な問題として研究致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=42
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043・江川爲信
○江川委員 次に御伺ひ致したいことは配付税の中で入場税と遊興飮食税、此の二つの税金の總收入見積りは何程になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=43
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044・荻田保
○荻田政府委員 二十一年度に於きまして入場税が五億二千七百餘萬圓、遊興飮食税五億一千六百餘萬圓になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=44
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045・江川爲信
○江川委員 私は此の配付税の中で、只今も申上げました入場税と遊興飮食税を地方に委讓する御考へがないかと云ふことを御尋ね致したいのであります、此の二つの税金は是れ亦何れも地方の創意に依つて創始せられたる所の、地方財源となつて居つた税金であります、それを國に於て取上げて、今日は國税となつて居るのでありますから、是は其の税の性質から申しましても、度々申上げる所の地方財政を強化すると云ふ上から申しましても、地方に委讓すると云ふことが是は本筋ではなからうか、殊に入場税は民衆の娯樂に對する所の税金でありまして、遊興飮食税と云ひ入場税と云ひ、中々徴税上、何と申しまするか、面倒な、曖昧な税金であります、場合に依つては、と言ふよりも、もう殆ど營業者の懷ろを肥やして居ると云ふ税金である、是は全く徴税上非常な面倒が伴ふ關係であります、のみならず此の徴税上色々な弊害も實は承つて居るのであります、やはり是は本當に徴税の上から申しましても、府縣の税金とするならば、府縣に於て徴税上の監督或は補脱税に關する所の取締等も十分に行屆くことが出來ませうし、又此の税金に付きましては、惡税であるとか色々な問題もあります、事實此の免税點を十圓にする、斯う云ふやうなことは全く大衆に對する所の大きな負擔である、でありますからして、地方の實情に應じまして免税點を設けしめると云ふやうな點から申しましても、徴税の關係は只今申上げました通り、斯樣な次第でありますから、之を地方に委讓する、唯茲に斯う云ふやうな税金を地方に委讓することに依つて、地方の財政を調整すると云ふ點に遺憾の點がないか、斯う云ふ問題は同時に起つて參るものと存じます、先程承る所に依りますと云ふと、此の二つの税金を合はせまして約十億、さうして今日配付税として地方に交付されて居る税額は二十四億何がしと云ふことを昨日承つたかと存じます、さう致しますと尚ほ十四億ばかりのものが地方に於て不足を生じて參ります、是は別な方法に依つて、所得税其の他の收入に依つて別途に御考へ下さつて、さうして地方の町村の財政事情等を勘案しまして、さうして調整の途を圖る、是は幾らも途があるのであります、でありますから、此の二つの税金は是非とも地方に委讓すると云ふことを主張するのでありますが、之に對する所の御考へはどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=45
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046・郡祐一
○郡政府委員 理論と申しまするか、地方税の性格と申しまするか、地方税と申しまするものが地方團體の施設と關聯の深いものが好ましいと致しましたならば、地方團體と申しまするものが地方の公共施設を維持經營致し、地方住民の福祉を増進致す、左樣なものが地方團體でありまするから、さう致しますると、是等の御指摘の税と云ふものは、地方團體の施設との關聯は非常に深いものであります、さう云ふ點では之を地方の獨立税に返すと云ふことも考へらるるのでありますが、假りに地方の獨立税として見ますると、課率に致しましても累進の程度に致しましても、之を相當引下げて參らないと、地方税としては適當でない、又此の兩税と云ふものは、收入の普遍性とか、安定性とか云ふ點に付ては稍稍缺けて居るものであります、或は戰災後の地方團體間の財政状況と云ふものには著しい不均衡の状態が起つて居る、是等の現状下に於きまして、地方に取入れまして、さうして配付税の有力な財源を、付與額を減ずると云ふやうなことが適當であらうかどうであらうか、之に付て餘程考へて見なければならぬ點があると思ふのであります、徴税上の弊害の點なども仰せになりましたが、又地方税に致しました時のそれ等の弊害の點も考へらるることであります、之に付ては餘程能く今後の地方財政の動向とも睨み合せて研究致すべきものと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=46
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047・江川爲信
○江川委員 此の税金を地方に委讓する趣旨には反對ないやうでありまするが、唯其の内容に於て色色の面倒がある、殊に戰災等の爲にそれを地方に其の儘委讓すると云ふことになると、地方の調整の上に於て甚だ缺くる點が出來やしないかと云ふことを御心配のやうでありまするが、私は他の税は別と致しまして、入場税であるとか或は遊興飮食税、此の二つの税金は、是は戰災に依つては大した影響がないのぢやないか、戰災地に於ける所の今日の状態から見まして、遊興飮食者が戰災の爲に非常に減つて來たとか、或は入場税に對する所の關係が、戰災の爲に非常に減つて來ると云ふやうなことでなくして、寧ろ今日の實情から申しますると云ふと、此の二つの税金は愈愈以て殖えて行くんぢやないか、斯う云ふ工合に實情から見て豫想されます、唯此の二つの税金を地方に委讓することに依つて得る所のものは、即ち都市若しくは都市に近い所の町である、でありまするから、農山漁村は其の恩惠に與かる所が極めて薄い、仍て農山漁村に對する所の財政の調整と云ふことを別途に考へて戴けば宜い、それはもう此の二つの税金を地方に委讓致しますることに依つて戰災關係に深い關聯があると見らるるのは、是は私只今の御答辯とは見解を異に致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=47
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048・郡祐一
○郡政府委員 恐らく此の兩税を取入れます場合に、最も考へなければなりませぬ點は、現在此の兩税の課率は相當高いものになつて居ります、地方税と致しまして其の儘取入れることは不可能に近いと思ひます、左樣に致します場合に、一體地方財政全般の上で果して適當な措置であらうか、又國の財政經濟の現状竝に今後の見透し、之に付ては御所見もあつたのでありますが、それ等の點に付ての見透しに付てもう少しはつきりした状況を達觀しましてから、何れの態度を執るべきかに付て内務省としては考へたいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=48
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049・江川爲信
○江川委員 專ら今後の調査研究に俟つと云ふことでありますから、どうか十分に御研究を願ひます、兎に角今日としては地方の財政に對しまして十分其の自主性を強化するやうな途を講じて戴きたいと存ずるのであります
次に附加税の關係であります、地租と營業税との附加税の比較でありまするが、色々聞いて居りますと地租の税金、營業税の税金が重いとか輕いとか色々に議論がありますが、地方税制に示された點から見ますと、地租は本税、附加税を加へまして百分の二十四、營業税は百分の十五となつて居ります、さう致しますとどうも地租に重くて營業税に輕いのぢやないか斯ふ云ふ感じを持つ次第であります、今囘此の率を上げられた點から見ましても地租は二倍に上つて居ります、營業税は一・八七であります、今囘の増率だけでもやはり地租の方が重い、又税の性質から申しまして、是は先程御話がありましたが、比較は地租と營業税ではありませぬでしたが、兎に角地租の對象ははつきりして居りまして一分僞ることも出來ない極めて明瞭な税金であります、然るに營業税は比較的明瞭を缺いて居る、本當は甚だ明瞭を缺いて居ると申上げたいが、上手に申しまして比較的と申します、比較的明瞭を缺いて居りまして伸縮性を持つて居る、でありますから此の課税標準の極めて明瞭な、隱すことの出來ない地租に對しまして重い課率を致し、さうして伸縮性を持つて居る所の營業税に對しまして其の課率が低いと云ふことは、ここでもやはり逆な比率になつて居るのではないか、固より決定されました賃貸價格の歴史に遡つて色々御議論もあるかも知れませぬが、併しながら地租に對しましては現在賃貸價格の除率三十八乃至四十と云ふやうな工合に抑へられて居る、でありまするからさう云ふ點は餘り有力な理由にならないのぢやないか、率直に率と云ふものを比較檢討すればそれで宜いのぢやないかと私は考へます、之を比較致しました場合に於て地租は營業税に比べまして餘りに重い附加率を取られて居るのではないかと云ふ感じを持つたのでありますが、是はどうでありますか、兎に角今日は都市と農村と云ふものは可なり心持の上に於ても色々なことになつて居る、租税の上に於ても左樣な御取扱ひになると云ふことになりますと、甚だ好ましくないことと存じまするに依つて、斯う云ふ觀點からも、此の兩税の比較に付ての御見解を御聽き致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=49
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050・池田勇人
○池田(勇)政府委員 地租と營業税との負擔割合に付ての御質問でございますが、我々の信ずる所では此の程度で適當と考へて居ります、其の理由は御話にもありましたやうに、土地賃貸價格と云ふ地租の課税標準は、昭和十一年の状況に依つて決めたのでございます、隨ひまして其の時の標準になります米價は全國平均二十圓五十錢に相成つて居ります、最近の農産物の昂騰、殊に米價の昂騰から考へますると、地租は殊に田に對しまする地租はまだまだ上げ得るのではないか、唯御承知の通りに米價は上つたけれども、貸付の土地、宅地等に付きまして、一概に昔の契約金額よりも上つて居るとも言へませぬので、斯う云ふ點を勘案致しまして、今の税率に致して居るのであります、營業税ははつきり課税標準を捕へて居ないのではないか、斯う云ふ議論になりますと、税率の問題ではございませぬ、我々として實際に近いものを捕へて居りますし、又捕へやうと努力致して居るのでございます、此の點は一應措きまして、營業税は前年の實績に依つて率を課税するのでありますから、決して營業税の税率が低過ぎるとは考へて居りませぬ、此の程度で地租と營業税との負擔は附加税を加へまして適當であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=50
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051・江川爲信
○江川委員 昨日の御話であつたと思ひまするが、法律上の闇には課税しないが、闇に依る所の收入それは收入として課税をすると云ふ御話であつたのであります、さうして營業税に對しましては必要な經費は差引くことになつて居る、然らば今日農業の生産の上に於て肥料であるとか、其の他の資材、肥料は配給は極めて少い、それ以外の資材は殆ど想像も付かざる所の闇を以て買つて居る、又さう云ふ具合にしなくては生産が出來ない、是れ即ち生産の必要な條件であります、でありまするならば闇は收入として課税を致して居るのでありまするが、支出の方は果して闇を闇として之を差引くことになつて居るかどうかと云ふことを御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=51
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052・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得の決定は實際の收入から實際の支出を引いたものでございますから、其の方が公定價格よりも高い肥料を御買ひになり、又資材も相當高く御買ひになれば勿論必要經費として引くべき筋合のものでございます、又引いて居ると私は信じて居ります
〔殿田委員長代理退席、委員長著席)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=52
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053・江川爲信
○江川委員 時間が餘りないので私は斯う云ふことに付て水掛論は止めます、併しながらそこまでまだ税務署の方は話が分つて居りませぬ、併しながら此の程度で止めます
次に府縣民税でありまするが、府縣民税及び町村住民税、是は御承知の通りに曾ての戸數割と云ふやうな税金に極めて類似致して居る、此の二つの税金は府縣竝に町村に於ける有力な財源となつて居る、でありまするが、曾ての戸數割は、或は庶民階級を壓迫する所の惡税であるとか、又政爭に惡用される税金であると云ふ工合に非難されて參つた税金であつたのでありまするが、本税も亦斯樣な昔の非難を復活することはないかと云ふ心配を持つて居ります、之に對する御考へはどうでありまするか、それに付きましては、私は此の税金には豫め賦課方針を示して置かれる方が宜いのぢやないか、示す用意があるかどうか、又本税の課税の方針と致しましては、是は何處までも擔税力に依る所の、即ち應能主義に依るのであるか、又公民と致しましての應益主義に依るのか、斯う云ふ點を伺つて置きたいのであります、若し此の應益主義に依ると云ふことでありますならば、凡そ何割位は應益主義に依り、さうして其の他は應能主義、擔税力に應じて課税するのだ、餘りに應能主義が強く働いては政爭の具に供せられる虞がある、應益主義が強く働いては庶民階級、勤勞無産階級が非常な重税を課せられるやうな結果になる虞がある次第でありまするから、此の點をはつきりして戴いた方が宜しいのぢやないか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=53
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054・郡祐一
○郡政府委員 先づ應能を原則とするか、應益を原則とするか、此の點に付て一言で申上げますならば、應能を原則として、それに應益を加味して行くことが、地方團體の本質から考へましても適當であらう、此のやうに考へるものであります、府縣民税なり市町村民税なりが其の性格から考へまして、成べく多數の住民が相當程度の負擔を分任する體制にありますることが、何と言つても望ましいことと思ひます、隨ひまして相當程度のものは均等割の課税を致すと云ふ方針を執り、且つ一方に於きまして所得税と競合致しまするが爲に、著しい負擔の過重が起りませぬやうに、所得との關聯も能く見て參りたいと思ふのであります、それから御話の中にございました戸數割の再現となるのではないかと云ふ御疑問であります、曾ての戸數割と申しまするものは、專ら財政收入を目的と致して居りました、是は戸數割の最後の時分のことを御考へになりましても、昭和十四年度頃は多分町村税收入の六割を超えるやうな状況にあつたのではないかと思ふのであります、而も當時に於きましては、戸數割と致しましては平均賦課額の制限等もございませぬで、有力な財源を持たない貧弱な團體程戸數割負擔が重い、斯う云ふやうな状況に相成つたのであります、隨ひまして御指摘のやうな戸數割の再現のやうなことになり、左樣な事態が起りましては、是は由々しき問題なのでありまするが、今日に於きましては一方に地方分與税制の實施もありまして、課税力の低い團體にはそれだけ多額に配付税が分與致され、而も此の度の住民税に付きましては、其の課税に付て一人當りの平均賦課額と云ふものも存在致して居りまするし、府縣民税、市町村民税を合せまして、尚ほ地方税收入の三割程度に止まると考へられるのであります、其の總額の地方税收入に於きまする割合から申しましても、又分與税制と組合せまして操作致しまする點から申しましても、戸數割のやうな負擔過重に陷ることもなければ、又戸數割のやうな、地域的の不均衡を生ずることも避けて參ることが出來ると存ずるのであります、而して是等の税の賦課の方法、殊に府縣民税は新しく創設致しましたので、是等のそれぞれの條例等を以て規定致さるべき基準に付きましては、相當詳細に之を指示致して運用に誤りなきを期して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=54
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055・江川爲信
○江川委員 只今の御答への中で戸數割は制限はなかつた、今度は制限があるからして其の心配はない、斯う云ふ御話でございますが、當時無制限な戸數割のそれよりも、今度の制限は遙かに大きいのであります、當時の無制限の時代に課せられた所の戸數割と云ふものは、先づ一戸平均三十圓も課したならば非常な重いものである、非常に重い町村であると言はれたのであります、然るに今囘は既に四十圓、六十圓、合せて百圓、斯う云ふやうな譯でありまするからして、それだけ制限が付してあるから心配はないと云ふやうな御議論は私はどうかと思ひまするが、此の點も決して此の上更にお互ひが彼此れ申上げ合ひをしようとは考へませぬ
次に御尋ね致したいのは、制限外の課税でありまするが、住民税を國税三税に對しては五〇%までは制限外課税をすることが許されるのでありまするが、所得税であるとか、入場税であるとか遊興飮食税と云ふ税金は是は配付税と致しまして、國の方で握つて居ります爲に、之に對しましては制限外課税が出來ない、是は比較が甚だどうも妙なものを比較すると云ふ工合に御取りになるかも知れませぬけれども、併しながら所得税の如きは是は曾ては國税三税と致しまして國税三税と申しますると所得税、營業税、地租斯う云ふものであつたのを今日は變つて參つたのでありまするが、曾ての國税三税のやうな税金の有樣から申しましても、どうも所得税が制限外課税の圈外に逃れて居ると云ふことが何だかどうも私共頭にぴつたり來ない、尤も是は租税の規則の上に於ては、附加税を禁ずると云ふことになつて居りまするから、法規の建前から申しまして、附加税を取ることは出來ないことは承知して居ります、併しながら私は斯う云ふやうな點の均衡から申しましても、是は入場税や遊興飮食税は、是は地方に委讓致しまして、さうして所得税に對しましては本税を輕減致しまして、さうして地方に對して附加税を認める、斯う云ふ方法を開かれて、さうして制限外課税の必要があるならば營業税に對し制限外課税をすると同時に、所得税に對しましても制限外課税をすると云ふ途を開いて、さうして地方財政に彈力性を持たせると云ふことに御努めを願ひたいと存ずるのでありまするが、さう云ふ意思がないかどうかと云ふやうなことを聽くと云ふのは野暮な話で、さう云ふことになつて居ないので、さう云ふ意思はないと仰しやることは決まつて居りまするが、將來の税制の改正に於きまして、斯う云ふ點は十分に御考へを願へるかどうかと云ふことを御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=55
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056・郡祐一
○郡政府委員 地方統制に有力な人税を投入致すと云ふこと、是は地方財源を強化するのだと云ふことは、論じられも致しまするし、それ自體も相當理由のあることだと存ずるのであります、唯所得税は現行は御覽の通り源泉課税に依つて居りますものが多いのであります、之に付て附加税制を採りますと云ふことは事柄自體が困難であるかのやうに存ずるのであります、既に所得税附加税を廢止致しました時も一方に於ては勿論國税の體系を確立すると云ふ一つの方針があつた譯でありまするが、同時に又地域的に偏在を致し、又徴税技術の點から申しましても、地方税として必ずしも適當だと云ふ工合にも思はれませぬ爲に當時に於きましても、一部の團體に於ては、之に依つて税收入が減少致し、彈力性を喪失したと云ふものもあつたのでありまして、事の事柄自體は當時も相當檢討致したのでありまするが、局部的な現象として是は已むを得ぬことと云ふ工合に考へて現在のやうな制度に致したのであります、それで只今の現行の税制の下に於きまして、附加税制が困難でありまする上に、自治の基本である擔分任と云ふやうな意味合での人税は、之を税制の上に顯現する爲には、寧ろ住民税の方がより廣い範團でさう云ふ目的を達することが出來るのではなかつたか、斯樣に考へまして、此の度の住民税の引上創設と言ひますものは、人税的な彈力を地方税制に加へたものと考へることが出來るのでありまして、是も確かに世上論ぜられも致し、又檢討致さなければならない問題でありますけれども、中央、地方の租税體系自身に重要な或る根本的な變更を齎す問題でもありますし、遽かに著手することは相當困難がある問題かのやうに存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=56
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057・江川爲信
○江川委員 建築税、廣告税、特別行爲税と云ふやうな税金が今囘廢止になるやうですが、是はどう云ふ理由で廢止になるか、其の廢止の理由を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=57
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058・池田勇人
○池田(勇)政府委員 建築税、廣告税、特別行爲税廢止の理由は、先づ建築税に付て申上げますと、御案内の通り建築税は燒失家屋の再建に付ては課税しないことに致して居ります、今新たに建築するやうな場合は殆どさう云ふ場合であることを考へまして廢止致します、廣告税は御承知の通り可なりの手數を要するものでございます、誰が此の税を負擔するかと云ふことに付ても疑義があります、又收入の點から申しましても、非常に微細なものでございますので、出來るだけ租税と云ふものは數を少くしたい、所謂税制の簡素化と云ふ意味から廢止致したのであります、又特別行爲税に付きましては、其の課税對象が美容とか、染色仕立は或は寫眞或は書畫の表裝、斯う云う雜多なものが入つて居りまして、又徴税技術上から申しましても、相當の面倒さがあるものでございますから、此の際手數を緩和し又税制もそれだけ簡素に相成りますので、收入の點等を考へまして廢止致しました次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=58
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059・江川爲信
○江川委員 是は地方に於て獨立税として創設を致さうとする場合は許可になる御方針であるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=59
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060・郡祐一
○郡政府委員 御指摘の税の中で建築税は不動産取得税と重複して參ると思ふのでありますが、其の他の税に付きましては當該地域の擔税者の状況並に當該團體の財政状況を檢討致しまして、適當であり、特別の支障がなければ許可をして參ると云ふ方針を採りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=60
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061・江川爲信
○江川委員 織物消費税の中で綿織物と「ステーブル・フアイバー」に對して新たに課税されましたのはどう云ふ理由でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=61
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062・池田勇人
○池田(勇)政府委員 綿織物又、「ステーブル・ファイバー」のみを以て組成した織物に付きましても、他の織物が相當の税率で織物消費税が課税されることと考へ合はせまして、斯う云ふ品物にも、百分の十程度の安い税率なら課税して然るべきだと考へた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=62
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063・江川爲信
○江川委員 昨日來酒の配給の話がありましたが、米を完納致しました町村に對し、部落毎位に取纒めまして、さうして委託釀造させると云ふやうなことを御認めになるかどうか、是は即ち米を完納する所の一つの奬勵方法にもなりまするし、又濁酒が非常に衞生上惡いと云ふ話でありまするから、此の衞生上の關係も解消されますし、國の方に於きましては税收入を得られる、此の三つの利益、三得があるのでありまするが、之を御認めになるかどうかと云ふことを御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=63
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064・池田勇人
○池田(勇)政府委員 供出米を完納した部落に對しまして、部落を單位として委託釀造を認めるか、斯う云ふ御質問でございますが、米の供出が非常に旨く行きまして、さう云ふ制度を認めても米の隱匿がないと云ふことを前提に致しますれば、相當考慮して宜い問題と思ひます、唯農家のみが他の職業者よりも非常に貴重な酒を澤山手に入れ得ると云ふ非難も亦あると思ひます、併し供出方法が萬人の認めるやうな巧い方法で行きさうして農家に對する委託釀造の限度も或る程度致してやつて行くことになれば、所謂農村の不足の酒を或る程度緩和し、密造防止にもなり、又他面供出促進にも役立つやうになれば、斯う云ふ問題は本年の米の割當等と考へ合はせまして、將來研究致して見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=64
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065・江川爲信
○江川委員 私は最後に結論と云ふか、申上げたいのでありまするが、地方の財政は申上ぐるまでもなく、最近非常に大きな膨脹であります、先般の職員の優遇だけでも三倍の殖え方である、又目下審議中の生活保護法が愈愈實施に相成るならば、之に依る所の府縣竝に町村の負擔と云ふものも可なり大きなものである、斯う云ふ點、其の外或は戰災の復興であるとか、失業對策であるとか、色々な點も亦地方は地方なりでそれ相當の施設をしなければならぬと存ずるのであります、斯う致しまするならば、是等の地方財政と云ふものは實にどうも大きなものである、隨て此の財源の關係に於ても實にもう曾て想像もしなかつた程に大きな膨脹を示し、大きな事業を要すると私は信じます、さう致しまするならば、どうしても制限外課税と云ふ所に持つて行かなければ、到底賄ひが付かないと想像致します、斯樣に制限外課税を致して、さうして庶民階級に至るまで一律に課する所の、或は府縣民税或は町村に對する住民税、一方に於ては先程承つた通り、今日まで農山漁村の爲に一つの恩惠に依つて免れて居つた所の綿織物に對してまでも課税をする、それに依つて作業衣等は今後相當に高くなると云ふやうな關係もある、即ち課税は重くなる、又生活關係のものは高くなる、生産に要する所の條件は愈愈益益經費が膨脹する、唯國税だけを見て居ると、大して大きなものでないかも知れないが、之に對する地方の或は用水費或は町内會費、部落の萬雜割、近來頻々として要求される所の寄附金、教員の待遇が惡いと云ふので之に對する寄附金等も可なり大きなものである、斯う云ふやうなことを一々見ますると、府縣住民の負擔は實に大きなものである、でありますから、量は今後の生活の上に於て非常に大きな重壓になつて行く、今囘の租税は恐らく生活の上に大きな脅威となつて參ると存ずるのであります、でありますから、各府縣に於て今後新設せんとする所の此の新税、是は府縣の賄ひをする上に於て、制限外課税で賄ひ切れなければ、何としても血眼になつて新税を漁る、今まで免れて居つた所の車馬税或は縣税營業税、遊興税、甚だしきは御許しになるかならぬかは知りませぬが、國税から免れて居る所の特別所得税まで一應考へて見なければならないと云ふ程に、新税に對しては漁り益するやうになりはしないか、さうすることが軈て庶民階級、勤勞無産階級の生活の上に大きな壓迫となつて來る、斯う云ふ次第でありますから、將來に於ては十分此の課税の上に於て御斟酌を御願ひすると同時に、今後各府縣に於て創設せんとする所の新税に對しても、何處までも庶民階級を壓迫しないやうに、壓迫することなきや否やと云ふ點に十分の御考慮を願つて、さうして許可の方針を決定されんことを要望する次第であります、私は是で質問を打切りますが、之に對する當局の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=65
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066・郡祐一
○郡政府委員 此の度の税制の改革に於きましては、戰災に依りまする減收、豫想致されまする財政需要の増加に付ては之に對處する財源の附與を一應制限率を以ちまして充足致し得るやうに按配致してあるのであります、隨ひまして例へば職員の待遇改善の如き、年度の途中に於て新たに増加致して參りますものに付ては、國庫補助等に依つて此の財源を與へまするやうに努力は致して居るのであります、唯併しながら、何と申しましても國も地方も財政が非常に逼迫致して居りまする爲に、經理は仰せの通り極めて容易ならぬものがあると思ふのであります、隨ひまして地方が色々な工夫を致して財源、税源を得んとすることも考へられることでありまして、是等の場合に能く均衡の取れました又御話にありました庶民階級の重課にならぬやうに、是は一つの重要なる根本方針と致しまして、今後地方財政の指導に當つて參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=66
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067・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは本日は是で散會致します、明日は午前十時から開會致します
午後零時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00519460808&spkNum=67
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