1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月九日(金曜日)午前十時十七分開議
出席委員
委員長 苫米地義三君
理事 殿田孝次君 理事 中野武雄君
理事 八木佐太治君 理事 松永義雄君
理事 山崎常吉君 理事 今井耕君
小川原政信君 片岡伊三郎君
上林山榮吉君 田中實司君
平岡良藏君 飯島祐之君
加藤高藏君 松岡運君
川島金次君 榊原千代君
玉井潤次君 林田哲雄君
米山久君 太田鐵太郎君
原尻束君 増井慶太郎君
山下ツ子君 喜多楢治郎君
同日委員喜多楢治郎君辭任に付其の補闕として中野四郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 荻田保君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
專賣局長官 杉山昌作君
大藏事務官 前尾繁三郎君
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本日の會議に付した議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=0
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001・苫米地義三
○苫米地委員長 是より開會致します――川島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=1
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002・川島金次
○川島委員 私は最初内務大臣に一言と、續いて大藏大臣に一言、質問の豫定があるのですが、それは保留しまして、他のことを先に御尋ねを申上げたいと思ひます、先般來勤勞所得税の問題に付きましては、同僚先輩の各位から繰返し各觀點に立つての質問がありまして、それに對する當局の答辯があつたのでありますが、私は此の機會に、繰返すやうでありますが一言御尋ねを申上げたいと思ふのであります、先般當局は勤勞所得税に關する私の質問に對する御答辯の中で、日本の勤勞層に對する課税は無理ではない、其の例として英米の數字的な例を擧げて居るのであります、一體其の英米の數字的な比較から見ますると、一應表面的には勤勞所得税と云ふものが日本に於ける問題に關する限り無理ではないやうな印象をば與へる譯でありますが、御承知の如く英米の勞働條件、英米の經濟組織、英米の勞働者に對する各般の社會的文化的な諸施設が、自ら日本とは非常な違ひがあるのであります、それだけで日本の所得税と英米の所得税との數字的な比較をすると云ふことは妥當でないし、其の比較だけでは私は納得が出來兼ねるのであります、殊に他國の例を引くならば、「ソヴイエト」では殆ど勤勞所得税を取つて居らぬ、假に取つて居つたとしてもそれは非常な僅少なものである、更に當局は先般「イギリス」の例も擧げられましたが、私が數日前見ました情報に依りますと、英國の大藏大臣の本年度の豫算説明の中に、勤勞所得税に對する大幅な免税點の引上げを斷行して居る、其の爲に英國内の勤勞階級約三百萬の人員をして、此の所得税から解放したと云ふ確實な情執も入つて居る、私は敢て他國の例を此處で引かうとは思はぬのでありますが、當局が頻りに他國の例を引くのでありますから、此の一言を申上げるのであります、一體今度の増税と勤勞階級の生活に及ぼす影響、さう云ふ問題に付て大藏當局はどのやうな考慮を拂つて居るか、其の點に付て前提として御尋ねを申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=2
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003・池田勇人
○池田(勇)政府委員 甲種勤勞所得の問題に付きまして他國の例を引いたが、併しそれは其の國々の状況に依つて決まるべき問題であつて、一概に正確な比較にならない、斯う云ふ御話でございます、洵に其の點は尤もでございまするが、租税負擔と云ふ點になりますと、やはり租税だけで諸外國と我が國との比較を見るのが、一つの方法だと思ふのであります、我が國に於きましては先般來申上げますやうに、各種の所得の性質に應じまして、出來るだけ其の所得に合つたやうな課税を致すべく、非常に努めて居るのであります、其の點は私は外國の税制と比較致しまして、日本は最も忠實に勤勞所得に對する課税を輕減すべく努めて居ると云ふことを申上げて、差支へないと思ふのであります、「ロシヤ」の税はどうか、斯う云ふ御話でございます、「ロシヤ」には、税制と名づくべきものは、一般の觀念上私はないと思つて居ります、なぜかと申しますると、歳入の八十「パーセント」位は所謂租税收入にはなつて居りますが、是は所謂官營事業からの收入であります、而もそれは所謂賣上税でございまして、官營事業の品物を賣つた場合の賣上税でございます、こちらで申しますと物品税に相當するものであります、さうして殘りの十五「パーセント」は官營事業の收益に對する課税でございまして、何も是は直接に國民の負擔になる租税ではございませぬ、隨て租税全體から申しますと五、六「パーセント」が所謂外國流の一般の租税でございます、斯う云ふ歳入の五、六「パーセント」を占める場合の租税制度は殆ど比較にならない、「ロシヤ」に於ける國民の負擔は所謂間接税で殆ど取られて居る、流通税で殆ど徴收せられて居る、斯う云ふ建前になつて居りますので、「ロシヤ」の所得税に付ては言及致さなかつた譯でございます、隨て「ロシヤ」に於ける勞働者、勤勞階級がどれだけ所謂日常の生活必需品に依つて税を負擔して居るかと云ふことになりますと、他の國よりも相當勤勞階級は實際的に負擔をして居るのではないかと考へて居る次第でございます、「イギリス」の本年に於ける税制改正で、勤勞所得者三百萬人が課税から免れると云ふことを、大藏大臣が聲明したさうでございますが、私は寡聞にしてまだ聞いて居りませぬ又さう云ふ事實は私は想像に難くないと思ひます、併し是は戰勝國でありまして、戰費がそれだけ少くなり、租税の輕減に向つて進むのは「イギリス」としては當然だと思ふのでありますが、遺憾ながら我が國ではさう云ふ課税の輕減と云ふ程度にまで至つて居りませぬ、輕減どころか、或る程度増徴を圖らなければならぬと云ふ状況は、洵に遺憾でありますが、已むを得ないことと思ひます、「イギリス」に於きまして勤勞階級三百萬人が租税外に置かれるに致しましても、尚ほ人口に對します所得税の納税者の割合は、我が國とは比較にならぬ程、所謂一般國民が廣く租税を納めて居ると、私は信じて居るのでございます
最後に勤勞所得者の生活状況を如何に見て居るか、私は最近の物價事情等に鑑みまして、所謂三月九日の緊急勅令の御制定を仰ぎまして、勤勞所得者には現下の事情を十分考へて基礎控除を四倍に引上げ、扶養家族の控除を引上げまして、出來るだけ負擔の輕減に努め、今回程度の税負擔は、大體已むを得ないものと考へて居るのでございます、隨ひまして繰返して申上げますやうに、昭和二十年の所謂五千圓の所得者と、昭和二十一年の五千圓の所得者とは、其の負擔税額に於て、非常に減つて居るのであります、又偶偶三月九日以後の輕減した場合と、今度の百分の二「パーセント」引上げた場合とを比べましても、五千圓の所得者は月六圓、一萬圓の所得者は月十二圓の負擔増に相成るのでありまして、此の程度の負擔増は已むを得ないものと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=3
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004・苫米地義三
○苫米地委員長 川島君、内務大臣が見えましたが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=4
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005・川島金次
○川島委員 それでは内務大臣に一言御尋ねを申上げたいと思ひます、先般來、是は此の案に直接關係はないのでございますが、地方制度の改正委員會に於きまして、引續いて此の委員會の問題の焦點となつて居りますのは、公選知事を公吏に扱ふか、官吏に扱ふかと云ふことであります、之に對して委員會の經過竝に各派の兩三日來の情勢に依りますれば、地方制度の改革を機會として地方民權の伸暢、自治の自主的な發展等を根據と致しまして、公選知事は絶對公吏とすべきだと云ふ意見が、大勢を支配して參つたやうであります、之に對して當局は種々なる理由から知事の公吏制には反對であるかの如く御聲明をされて居るのでありますが、萬一議會の大勢が、公選知事を以て公吏と爲すと云ふ結論に到着し、修正意見が本會議に於て通るやうなことになりました場合、御當局は之に對する御對處の用意がありますかどうか、此の一點と、もう一つ續いて御尋ねを致しますが、昨今の國内の治安は極めて惡化しつつあります、果して今日の地方警察の人員を以て致しまして、其の治安の確保に萬遺憾なき御確信がありますかどうか、さうして今日の警察官の人員を以て十分であるとの御所見を持つて居られるか、此の二點を御伺ひ申上げたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=5
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006・大村清一
○大村國務大臣 第一點でありますが、地方制度に付きましては衆議院で只今審議が進行中でありまして、どう云ふ結果になりますか、多大の關心を以て私は之を見て居るのであります、併し只今御尋ねになりましたやうなことになりました場合に於きましては、どうするかと云ふ問題に付きましては、是は其の場合になりまして――私一存でも處置致し兼ねることでありまして、閣議の決定を經て提案を致した案でありますので、其の修正が萬一ありました場合にどう扱ふかと云ふ點は、能く閣議に於ても熟議致しました上で、態度を決定さるべきものであらうと云ふやうに考へて居る次第でありますそれから第二點でありますが、現在の警察力で以て現下の社會情勢に對處して、治安の維持が十分に出來るかと云ふ御尋ねでありますが、此の點に付きましては、曾て現在の警察力では十分でないから、之を増員増強したいと云ふ希望を持つて居つたのでありますが、此の點に付ては關係方面との諒解を得るに至つて居りませぬ、故に現在の警察勢力を以て、政府は萬全を期して治安の確保に當ると云ふ決心で、凡ゆる努力を致して居るのであります、固より我が日本の治安の維持は、今日に於きましては專ら日本警察に依つて維持しなければならぬことは、申すまでもないのであります、此の點に付きましては、進駐軍側に於きましても、此の見解の下に始終鞭撻を受けて居る所であります、さうして此の信念の下に日本警察は凡ゆる努力を致して、今まで其の治安の維持には大體に於て成功して居ると信ずるのであります、今後に於きましても其の信念の下に極力努力を致す積りであります、尚ほ日本社會の治安は日本警察の責任ではございますが、若し日本の治安が紊れて、聯合國の占領目的に反すると云ふやうな事態が起りました場合に於ては、聯合國側に於ても默つて居らぬと云ふことは、想像に難くないのでありまするが、其のやうなことのないやうに、今後日本警察として十分努力する積りであります、尚ほ聯合國の態度は只今申上げますやうな次第でありまして、日本警察が其の職能を完全に果すべく、常に注意を致し監督を致す、乃至は出過ぎない限度に於ける協力と云ふことは、陰ながら常にされて居る所でありまして、私共は此の點に對しましては常に深甚の感謝を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=6
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007・川島金次
○川島委員 内務大臣は今の警察官の員數を以て治安の確保に遺憾なきを期して居ると同時に、大體に於て今滿足の状態であると斯う仰しやられて居るやうでありますが、先般日本の司法警察制度を視察されました「アメリカ」の「オスカー・オーランダー」と云ふ方が、「アメリカ」に歸りまして發表致しましたものを見ますると、日本の警察官は二萬八千で十分だ、現在の警察官は私確實な數字は知りませぬが、大體推算致しましても數萬の警察官を配して居るのではないかと思ふ、それに對して二萬八千で十分なりと云ふ發表をされて居るのであります、若し此の二萬八千で今後の國内治安を維持しなければならぬと云ふ事情に立至つた場合、其の場合に於ける所の御當局の御見解を私は此の機會に於て承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=7
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008・大村清一
○大村國務大臣 只今御引用になりました「オーランダー」氏の意見でありますが、是は私共も新聞紙に載つて居りました以外に、特に詳しい資料をまだ入手するに至つて居りませぬ、併しあの新聞に報導されました記事を能く檢討して見ますと、結局二萬八千の警察力で十分だと云ふことには大きな前提があるのであります、それは人口五萬以上の市の警察は別に市警察として打立てることになつて居ります、さうして人口五萬以下の市及び町村の警察は、現在に於けるが如く内務省及び府縣で管理致します所の警察力で、維持することが適當であらう、其の部分の警察力は二萬數千、凡そ三萬と云ふ數字になつて居るやうに私はあの記事を見たのであります、果して其の通りであると致しますと、現在警察力は東京、大阪、其の他五萬以上の市に非常に集中して居るのでありまして、五萬以下の市及び一般町村の警察力二萬八千と云ふ數字は、大體現在の警察官のそれ等の方面に配置して居るものと數字は大差ないのでありまして、結局現在の警察力で以て、日本の治安は維持したら宜からうと云ふ聯合國側の見解と、大なる相違はないと考へて居るのであります、序でに申上げて置きますが、現在全國に配置して居ります警察官は、概數九萬五千が定員になつて居ります、併し實際問題と致しまして缺員があり勝ちでありまして、時に増減はありますが、通じて凡そ一萬人を上下する程度の缺員があるのが今日の状態であります、隨て現在の日本の警察力は實員八萬五千前後と云ふやうに御諒承を願ひたいと思ひます、此の數字には消防官は入つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=8
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009・川島金次
○川島委員 さうすると現在の所では日本に於ける警察官の人員、所謂定員に致しまして九萬五千だけは、當分の間承認をされて居ると云ふ形になつて居る譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=9
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010・大村清一
○大村國務大臣 現在の所左樣であります、所で此の點に付きましては先にも申上げましたやうに、警察力はもう少し充實をすることを私共は希望して居るのでありますが、此の點に付きまして關係筋の諒解を得られると思ひます點に付きましては、或は鐵道大臣の管理下にある列車警察を作るとか、乃至は密輸入を取締ると云ふやうな意味に於きまして、大藏大臣の管理下にある税關警察を作るとか云ふやうなことの面に於きましては、更に増強し得る餘地があるやうに考へまして、只今是等の點に付きましては關係筋とも打合せ中であります、尤も今例示致しました中で現實に打合せをして居りますのは鐵道警察の方であります、さう云ふ風な内務省、地方廳の指揮下にない警察の増員に付ては可能な餘地があるやうに考へまして、只今打合せ中のものもありますし、今後必要に依りまして打合せを致して見たいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=10
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011・川島金次
○川島委員 では前の質問に戻りますが、知事の公吏制と云ふ問題が、院議で大多數で以て決定した場合に、政府としては此の院議を絶對に尊重する御意思を以て臨む考へであるかどうか、之を此の際一寸御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=11
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012・大村清一
○大村國務大臣 此の點に付きましては、先に御答へ申上げました通りでありまして、今後の審議の模樣を能く拜見致しまして、政府と致しましてもそれに對して如何に對處するかと云ふことは能く相談を致したいと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=12
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013・川島金次
○川島委員 能く御相談をして見たいと云ふ御心持は能く分るのでありますが、議會に於て此の地方制度改革に關する知事の問題を絶對に公吏でなければならぬのだと云ふ決定をした場合に、政府當局として其の院議を絶對に尊重して臨むことが私は民主主義であらうと思ふ、其の場合にでも尚且つ色色研究しなければならぬと云ふ御言葉はどう云ふ意味を言はれて居りますか、一寸了解に苦しむのでありますが、御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=13
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014・大村清一
○大村國務大臣 此の點に付きましては、度々申上げますやうに、御審議の模樣も能く拜見致しまして善處したいと思ひます、尚ほ少し言葉が適當でないかも知れませぬが、假定的のことに付きまして直ちに政府の見解――是は色々の條件があることでありますから、斯う云ふ工合になつたと云ふやうな場合に付きましても、なりました經過、理由もあることでありまして、將來のことを豫想致しまして、直ちに確定的見解を此處で述べることは其の時期でないと云ふ風に私は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=14
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015・川島金次
○川島委員 其の問題は是れ以上申上げませぬが、大臣が居られる間のことですからもう一言御伺ひ致します、今度の市町村民税竝に新たに設置されまする所の府縣民税、是は市町村民税は大體に於て四十圓、府縣民税が六十圓と記憶して居りますが、殊に府縣民税の如きは新しき税制でありまして、相當な影響が各方面にあるのではないかと憂ふるものであります、殊に勤勞階級は院外に於ける運動としても殆ど絶叫に等しい叫びを上げて、勤勞所得税の撤廢を叫んで居るのであります、然るに政府は其の院外に於ける所の大衆の聲を無視して、寧ろ百分の十八から百分の二十に増税を斷行すると云ふ案を我々に提出されて居るのであります、而も其の上に勤勞大衆に取つては其の市町村に歸れば更に新たに從來十二圓、九圓、六圓であつたものが一躍四十圓に増大され、更に搗てて加へて府縣民税としては平均百圓の新税が課せられると云ふことになる譯であります、勤勞大衆の立場から、是は同じ國民として同一ではありませうが、殊に勤勞大衆の立場から見ますると、三重の大増税を茲に蒙ることになるのであります、我々勤勞大衆の仲間と致しましても、敢て此の敗戦國家再建の爲に、分に應じ、生活力に應じての納税と云ふものの精神を忘れて居る譯ではないのであるます、併しながら今日の勤勞大衆の生活の實情は、過般大藏當局からも御話がありました如く、勤勞所得の平均の收入を見ましても、一箇年僅かに五百五十圓と云ふ御話であります、隨て一箇月四百圓乃至四百五十圓の收入が勤勞大衆の一般的な而も壓倒的な生活の實情であらねばならぬ、其の勤勞大衆に更に勤勞所得税は百分の十八から百分の二十に増率され、其の上に市町村に歸れば六圓或は九圓から一躍平均四十圓、府縣民として更に平均の百圓、六十圓、斯う云ふことを私共は考へますと、而も其の上に、御當局も略略御想像と思ひますが、今まで勤勞所得を納めて居る所の所謂中堅階級の上に、此の新たなる市町村民税竝に府縣民税が増加されて參る譯であります、それでなくても今日の勤勞大衆の生活が收入と「アンバランス」になつて全く文字通りの家計失調を起し、家庭生活を根本から破壞されるやうな脅威に曝されて居るのみならず、政府の過般來の軍需補償の打切り問題を契機と致しまして、新たに今眞面目に正しく勞力を奉仕して居ります所の勞働階級の中に多數の失業者を出さうとして居る、隨て今勤勞所得税を納めて居る中にも失業の脅威に曝されて居る者が相當な數に及ぶのではないかと考へるのであります、斯う云ふやうなことを考へました場合に、内務大臣に於かれましては、勤勞階級に課せられる所の府縣民税、市町村民税、更に一方に於ては勤勞所得税の過重、此の三増税に依つてどんな影響があるかと云ふことに對して綿密な檢討をされたことがあるか、同時にどんな御考へを今日持たれて居りませうか、それを御伺ひを申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=15
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016・大村清一
○大村國務大臣 今回地方税の改正、又國税の改正に依りまして國民の負擔が非常に増加すると云ふことは、是は擔税者に取りまして私共洵に同情に堪へざる所であります、併しながら是は終戰後の我が國の事態と致しまして、此の困難を突破致しまして平和日本を建設する上に於きましては、全國民が齊しく堪へ難きに堪へて立直る外はない次第でありまして、此の點に付きましては國民各位の十分なる御諒解と御協力とを御願ひせざるを得ないのであります、而して此の財政上の要求と云ふものは國に於ても巨大なものがありますし、又地方團體に於きましても甚だ痛切なものがあるのであります、殊に戰災を受けました地方團體等に於きましては、一層其の程度が強いのであります、所で之を凌ぐ方法と致しましては、地方團體が團體民の負擔に依つて凌ぐか、或は之を國庫の援助に俟つかと云ふ二つの方法しか大體に於てないと思ふのであります、然るに國庫の援助と云ふことに付きましては、國庫財政の窮迫状態から致しまして、無限に國庫に仰ぐ譯には行かないのであります、堪へ難いことではありまするが、堪へ得る最高限度に於きましては各地方團體民の負擔の分任に俟つ外はないと思ふのであります、而して一面に於きましては地方制度を民衆化するに伴ひまして、それの裏付けをなします所の財政の自主性、自律性と云ふことは必ず伴はなけれはならぬことと信ずるのでありまして、其のやうな見解から府縣民税及び市町村民税と云ふやうな負擔分任の趣旨に適する所謂人税を創設し、若しくは之を大幅に増額すると云ふことに致したのであります、併し是が實際の負擔問題に付きましては、各地方團體の自主、自律性に依りまして、市町村民の間に負擔の不均衡のないやうな取り方を私共は期待致して居る次第であります、尚ほ是は單に期待するのみならず、能く此の市町村民の負擔の均衡を圖るに付て注意すべき點は、具體的に數字的に之を明かに致しまして、各地方團體に於て實際上の賦課に際しましては、それ等の正確なる基礎資料に基いて誤りなきを致すやうに、十分、こちらの方と致しましては協力をし、勸告をする積りで居ります、さうして又只今御話のありましたやうな勤勞階級の増負擔に付きましても、實は敗戰後の今日と致しまして、財産課税と云ふやうな點に於きましては、終戰後の實情と致しまして多くを期待することは出來ない、今後日本の經濟の中心は御話の通る勞働階級或は農業階級と云ふやうな中産階級に移行する傾向にあるのでありまして、是等の方々が國家の重きに任じて、分に應じた負擔を御願ひをすると云ふことは、新事態の上に於きまして洵に已むを得ざる所であります、又それだけの元氣を出して戴かなければならぬことでもあります、併し勤勞所得及び資産所得の間の均衡に付きましても、各地方團體に於きましては、人税の課税上に於て十分なる考慮を加へられることを期待致して居るのであります、尚ほ又それ等の點に付きましても必要る資料を提供し、注意を喚起し、又地方團體に出來るだけ行き屆いたる勸告を致す積りで居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=16
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017・川島金次
○川島委員 續いて此の問題に付て大藏當局に御伺ひしますが、最近官公吏の給與改善が實施されまして、其の結果大體四、五割程度の收入の改善が得られたのであります、私が多少關係して居りまする勞働組合の或る個人を取りまして調査を致したのでありますが、國鐵に奉職致しまして既に三十二年、今度の給與改善に依りまして大體月收八百圓になるのであります、從來は五百圓乃至五百五十圓それが八百圓に月收が引上げられたと云ふことになつて居るのであります、既に老年のことでありますから、子供達が三人居る、其の一人の子供はやはり或る方面に就職致しまして、是れ亦給與改善に遭遇致しまして漸く月收引包めまして三百圓、もう一人の子供も三百圓、其の家庭では遊んで居る者は細君ともう一人小さな子供、斯う云ふ親子五人家族の生活であります、此の父親の八百圓と子供の三百圓平均二人分六百圓、併せて一千四百圓の收入があるのでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=17
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018・苫米地義三
○苫米地委員長 もう内務大臣への質問は宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=18
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019・川島金次
○川島委員 宜しうございます――之に對して今度の過酷な増税に依りますと、普通の税に於きまして年額千七百五十六圓、之に綜合所得税が二千三百八十圓になります、それに依つて實際納める年額の税金は實に四千百三十六圓と云ふ莫大な數字になつて參る、親子三人が、而も國鐵に奉職すること三十有餘年、孜々營々として其の子弟を養ひ、辛うじて自分が老後の樂しみとして居る子供二人の勤勞で得られる月收が三百圓づつの六百圓、さうして父親は今度の行政整理、或は來るべき整理に依つて失業のどん底に突落されなければならないと云ふ老齡になつて居る譯であります、さう云ふ家庭に於てすらも、實收に於ては、本來でありますならば月一千四百圓でありますから相當な年收になるのでありますが、所得税竝に綜合所得税を加へまして四千百三十六圓と云ふ相當な數の額を取られるのでありまして、實收額は遂に一萬一千六百六十四圓になります、斯う云ふ勘定をしますと親の一箇年の收入と子供二人毎月六百圓づつ餘計働いて居つても、尚且親一人の全收入に餘りに劣らないと云ふ結果になつて參るのであります、斯う云ふ實情が何處にもあるのであります、今の勤勞階級の生活と云ふものは、大體に於て一人の勤勞收入に於ては生活は成立たぬのであります、從來勤勞に依りまして勤儉貯蓄を致しました預貯金は既に使ひ果し、中には箪笥の底を拂つて居る者も實際にはあるのであります、而もさう云ふ生活の實況を續けて居る勤勞大衆に、尚且斯の如き高率な税を徴收し、其の上に只今申上げましたやうに新たに府縣民税も課つて來る、更に市町村民税に對しましても大幅な空前の引上げであります、此の三方攻めと申しませうか、斯樣な状況に於て果して勤勞者の勤勞意欲と云ふものがより一層旺盛になるかどうかと云ふことを私は綜合的に心配をする一人であります、先程申上げたのでありますが、全國に膨湃として勤勞階級からは所得税の撤廢が叫ばれて居ります、而も是が矢先に於て政府當局は其の聲に應へずして、逆に逆櫓的に寧ろ増税を斷行する、更に厚生省の方面に於きましては勞働者の團結權、團結權と同時に併せて唯一の武器である爭議權をも、公共機關の事業に携はる勞働者に對しては殆ど禁止的な法令を今提案中であります、私は之を見ますと、一體勞働者の所謂民主體制を政府は助成育成すると云ふやうな、言葉では美しく、如何にも勞働者に理解ある、如何にも勞働者に深い愛情を示して居るやうな御言葉が屡屡當局から繰返されて居るのでありますが、其の實に於ては只今申上げましたやうに、一方に於ては増税を斷行して勞働者に取つての外濠を埋め、又更に一方に於ては禁止に等しい勞働關係調整法を提出して、之を實施することは、勞働階級人に取つて今度は内濠を埋められる、斯樣な感じが私はひしひしとするのであります、殊に大藏大臣に於かれましては、軍需補償の打切に伴ひ敗戰日本の再建を圖る爲には、先づ勤勞階級の旺盛なる勤勞意欲を湧出させて貰はなければならぬ、其の爲には國家は凡ゆる努力を惜まないとの御決意を屡屡繰返へして述べられて居りますが、實際から申上げまするならば、私は寧ろ今日の政府當局の御施策と云ふものは、勤勞階級の萠え出んとする所の旺盛なる勤勞意欲なるものに對して一沫の冷水を浴びせるやうな施策をやつて居るではないか、それが軈ては敗戰日本の再建に必要である所の經濟の再建の重點であり基礎であり基盤である所の勤勞意欲と云ふものに重大な阻碍を來す、斯う云ふことを考へて見ました時に、私は此の勞働者の絶叫に對し、勤勞階級の叫びに對して一體政府當局は本當に何處まで考へて居られるのでありますか、それを私は此の機會に大藏大臣から一言御伺ひを申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=19
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020・石橋湛山
○石橋國務大臣 税が戰時中既に相當多額になつて居りました所に、更に終戰後今回の増税を致す譯でありますが、其の負擔が容易でないと云ふことは御話の通りであります、併しそれに對して先程内務大臣から屡屡事情を申述べられましたが、私も内務大臣がさつき申述べられたと同じやうに考へて居る譯であります、是は所謂勤勞階級ばかりではなく、同じやうな叫びは、是は成程大衆運動の形はして居りませぬでせうけれども、企業家の方面にも今回行はんとする財産税、或は又今度の増税に於きましても事業所得、或は資産所得と云ふものは非常に重課されるのでありますから、やはり同じやうにこんなにやられたのでは俺達の働く希望はなくなつてしまふ、是は戰時中から左樣な叫びがあつた譯でありますが、それは一面洵に尤もなことでありますけれども、併しながら全體の日本の經濟を考へれば、先程内務大臣からも御話がありましたやうに、要するに是だけの非常な損害を受けて生産は減り、詰り國民の生活水準と云ふものが全體に下らざるを得ない状況に陷つて居る譯であります、でありまするから此の場合に於て勤勞階級と言はず、總ての職域に於ける國民が何れも其の生活程度を下げる、即ちそこへ持つて行く爲には、其の乏しい所得の中から苦しいながらも税を出さなければならぬと云ふことは、洵に已むを得ないことであると考へるのであります、此の際それにも拘らず勤勞者は勤勞意欲を燃やし、企業家は企業意欲を燃やして、全國民が打つて一丸となつて増産に努め、早く此の窮境から脱する以外に途はないと私は考へて居ります、勤勞所得税撤廢と云ふ叫びは能く存じて居りますが、併し是は累次申上げますやうに、税制としては只今勤勞所得税を撤廢すると云ふことは實際不可能であります
それから増税に付ては只今申上げましたやうな理由で、苦しいけれども勤勞所得者も此の國家危急の場合に應分の負擔をして戴く外はない、斯樣な譯でありまして、要は國家の經濟を早く建直して、勤勞所得税の如きは例へば税制に於て之を止められないと致しましても、其の税率の如きはどんどん下げられると云ふ状況に、早くお互ひが努力して持つて行くと云ふ以外にはないのでありまして、屡屡申上げますやうに勤勞所得税の増税を止めると云ふことでありますれば、それだけやはり歳入の缺陷を生じ、それを何で「カバー」するかと云ふと、川島君も御心配になり、私も心配して居るやうに、結局通貨の増發に依つて之を賄はなければならぬと云ふことになるのであります、それでは却て復興を妨げることになる譯であります、現在生活して居る國民が出來るだけの負擔を致しまして此の復興を圖ると云ふことが、國民の總ての階級の今日の義務だ、又是が國家に盡す途である、斯樣に是非一つ御考へ下さいまして、苦しい事は能く分ります、凡ゆる者が皆苦しいのであります、それに依つて此の危局を乘切るやうに一つ是非御盡力を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=20
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021・川島金次
○川島委員 先般大藏大臣は今の税制と云ふものは全面的にもう改革を必要として居ることを痛感して居る、其の場合に税制の根本的な大改革を實施したい、其の改革に付ては政府は白紙で臨み、凡ゆる方面の階層を代表した總智慧を集めて税制の根本的な改革を實施したい、洵に其の御所信は了とするのでありますが、其の場合に其の審議機關に於て勤勞所得税の大幅の改廢意見と云ふものが多數であつた場合、それに對して今からさう云ふことを御尋ねすることは愚見ではありまするが、豫め私共承知して置きたいのでありますが、さう云つた場合に大藏當局はどんな考へ方を以て對處する積りであるか、若し新たに税制刷新委員會が出來まして、其の委員會に於て大勢が所得税の撤廢に近い結論に達した場合、大藏當局は素直にそれを承認されて、其の意見を取入れると云ふ御考へを將來持つて貰へるかどうか、之をも併せて御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=21
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022・石橋湛山
○石橋國務大臣 調査した結果新しい何等かの税制の立案が出來まして、其の案なるものが單に政治的、或は感情的と云ふものではなく、本當に合理的な税制であるならば、無論大藏大臣としては之を採擇するに吝かではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=22
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023・川島金次
○川島委員 序でに御伺ひしますが、軍需補償打切に伴つての企業再建、經濟再建が當面重大な問題になつて居るのでありますが、此の再建を圖る中小工業の工場に對する資金と云ふものは銀行に頼らなければならない、要するに工場の生殺與奪の權は專ら銀行の窓口に掌握されて居ると云ふ形になる、今後も引續きそれが相當な強い形で續行されるのではないかと思ふのであります、其の場合に一體銀行と云ふよりは寧ろ大藏當局は、事業の當面の利益性に付て重點を置いて融資をするのであるか、それとも事業其のものの本質、即ち産業の性質如何に依つて、それを重點に置いて融資を活溌にやらうと云ふ御方針であるか、さう云ふことに付て若し地方の銀行に最近御指示があつたとしますれば、其の指示の内容を此處で御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=23
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024・石橋湛山
○石橋國務大臣 一般の金融機關が融資を致します場合は、無論其の金融機關の責任で融資をしなければならぬのでありますから、其の融資が還つて來ない、元利の損失を來すと云ふ場合には、是は融資が出來ないのは當然であります、又それで宜いと私は考へて居ります、隨てそれは今の川島君の言葉で言へば或は利益を中心として融資すると云ふことになりませう、一應はそれで宜いのでありますが、斯樣な變動の場合にはそれだけではいけませぬので、詰り國家全體の經済の上から考へて、此の産業は殘さなければならぬ、併しながら現状に於ては赤字であるから普通の金融機關では是は危險で融資が出來ないと云ふ聲が起りますので、それを救ふ爲に現在興業銀行でやらせる、是は近い中に正式な機關として出發致さうとして居ります所の復興金融が之を取扱ふ譯であります、此の復興金融には貴衆兩院の議員等から編成される所の委員會が出來まして、普通の金融機關では融資の出來ない、詰り其の方で拒絶されたものそれを此の委員會で審査致しまして、復興金融で融資をする、斯う云ふ大體の仕組に致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=24
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025・川島金次
○川島委員 さうすると、其の場合に主として産業別に重點を置いて融資の方法を考へる、斯う云ふことになるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=25
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026・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸今御言葉がはつきりしませぬが、要するに各産業に於て此の企業は是非とも必要だと云ふ判斷の下に融資をする譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=26
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027・川島金次
○川島委員 其の必要なりと云ふ判斷に基いて融資をするのは分つて居ますが、其の必要だと云ふ企業と云ふもの自體、今日既に計畫になければならぬと私は思ふのであります、銀行に唯融資を放任し、さう云ふ委員會にのみ諮られるだけと云ふことでは、是は國家的な計畫と云ふものがそこに織込まれないのではないか、寧ろ私は此の際企業の再編成をするには飽くまで國家的な意味の強い計畫と云ふものがなければならぬ、産業別、業種別に其の計畫に基いて金融機關に活溌なる融資をさせて、工揚の再開の一日も早く實現し、産業復興を一日も早めると云ふ根本的な計畫に副つて融資をやらなければならないのではないか、今のやうな状態で居ると唯目先の、此の仕事は儲かりさうだと云ふことなら融資をする、併し此の仕事は國家的に非常に必要な仕事であり、捨てて置けないが、其の工場の状態に顧みて拒絶すると云ふことでは本當の産業再建と云ふものは出來ない、と云ふよりも寧ろ困難な實情になつて來るのではないか、さう云ふばらばらな状態に置くことは經濟の再建を妨げるだけで本當の再建は成立たない、斯う云ふ風に考へて居りますが、若し大藏當局、或は政府に其の再建の具體的な計畫がおありでありましたならば教へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=27
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028・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の御尋ねは重要産業に付ては既に其の計畫がある譯であります、唯細かい雜貨であるとか一々さう云ふものに付てどれがどうと云ふ細かい所までは及んで居ないと思ひます、併しそれは又實際に於ては中央に於て細かい末までの計畫を立てて行くと云ふことは恐らく困難であります、ですから重要な産業に付ては御承知のやうに日本に殘される平和産業と云ふものがどれだけのものであるかと云ふことは大體枠が決つて居ります、今まで各統制會其の他の機關で補償問題など研究も致し、其の間に商工省等に於ては決つて居ります、其の枠と申しますか、其の計畫の下に於て、肥料は斯うする、製鐵は斯うする、石炭は斯うすると云ふ風に決つて行く譯でありますから御心配になることはない、其の他地方に於ける中小企業等に至りますと、物に依つては無論重要な、例へば自轉車とか何とか云ふものに付ては或る程度の計畫があると考へて居りますが、末々までの何も彼もと云ふ譯にはなつて居りませぬ、是はそれぞれの地方其の場合の判斷に依つて必要なものを助成して行く、斯う云ふことになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=28
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029・川島金次
○川島委員 大藏大臣は此の間から、中小工業と云ふものは産業再建の基盤だと云ふやうに言はれ、我々も御意見に同感の意を表したのですが、今の御言葉では、「エー・クラス」と云ふ樣な企業に付ては新聞紙上其の他政府當局の御言葉に依つて全國的に分つて來た、所が、私の言葉が當つて居るかどうか分をぬが、「ビー・クラス」「シー・クラス」と云ふものがあるとすれば、是等の「クラス」に屬する方面の企業と云ふものをどうすれば宜いか、それは企業家の創意に任せれば宜いではないかと云ふのでありませうが、私はそれではいかぬと思ふ、寧ろ重要産業に附隨する「ビー・クラス」「シー・クラス」にも或る程度の計畫的な基本を政府が親切に示してやつて、それに今迷つて居る中小工業の勞力、設備、技術を總動員すると云ふことにならなければ私は本當の産業再建にはならないと考へるのであります、今までの御言葉に依りますと、「エー・クラス」程度のことは分つて居るが「ビー」或は「シー」と云ふ方面に付ては殆ど政府當局も何も言つて居らぬ、新聞や「ラヂオ」等でも何も言つて居りませぬから、中小工業の者は如何に處すべきかと云ふことに今日非常に迷つて居る譯であります、其の點に付て一日も早く其の方面に對する具體的な計畫的なものを立てられて、金融と睨み合はせて其の再建を助長すると云ふことが絶對に必要であると思ひますが、其の御用意があるかどうか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=29
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030・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は主として商工省がやることでございますから細かいことは申上げ兼ねますが、御話の所謂「エー・クラス」の企業と云ふものに付て一つの計畫が立てば、自らそれに附隨する「ビー・クラス」と云ふやうなものの計畫が出て來ることは當然であると思ひます、私が先程申上げたのは、例へば製鐵業、機械工業、自轉車業、斯う云ふもの以外に日本には非常に細かい種々の産業があります、或は是から興さなければならぬ色々の事業がある、さう云ふものに付ての中小企業をどうするかと云ふことは、是は私から斷言は出來ませぬが、恐らくまだそこまで計畫が立つて居ないのぢやないかと思ひますので、それはそれぞれの場面に當つて金融機關としては適當に處置を講ずる、無論其の場合他の産業との釣合等を考へて行くと云ふ處置を私としては執らうと云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=30
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031・川島金次
○川島委員 其の問題は私初めから大藏大臣に聽くのは無理だと思ひましたが、企業整備の大本山でありますから御尋ね申上げた次第であります、續いて御尋ね致したいのは、現在地方に所得税の徴税機關と申しますか、公正を期する爲に所得税調査委員會と云ふものが長い間存續して居る、併し是は率直に申上げますれば、當局はどう考へて居るか分りませぬが、有名無實の在存だと私は思つて居ります、殊に斯う云ふ經濟變轉の事情下に於て少しも胡麻化すことの出來ない所得税の調査をする場合、今の有名無實のやうな存在機關を此の儘當局は置いて行つて、あの委員會を運用して行かうと云ふのか、それとも此の際委員會を斷乎廢止して新たに國民全體が、所謂納税者が納得の出來るやうな機關を作つて、其の所得税の徴税の公正を期さうと云ふのか、此の點に付ての御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=31
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032・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の問題は昨日でありましたか、慥か此の委員會で所得税調査委員會を廢すると云ふ説があるが當局はどう考へて居るかと云ふやうな御尋ねがありまして、其の際政府委員から御答へした譯であります、是は目下色々な説があり、今川島君は無用だと云ふ御批判でありますし、又さうでないと云ふ御批判もあるやうであります、色々の説を當局としても聞いて居ります、それから「アメリカ」等の制度に付ても色々の話があるやうであります、所得税調査委員會と云ふ今の制度を其の儘に有效なものにして存續してやるか、それとも又他の制度を考へて行くかと云ふことに付ては目下研究中であります、尚ほ詳しいことは政府委員から述べさしても宜いのでありますが、もう既に昨日か、此處で述べたことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=32
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033・川島金次
○川島委員 又更に繰返して申上げますが、此の勤勞所得税の問題に付て、勞働組合若しくは其の他の諸團體に於て、一つの勞働爭議の方法として滯納の擧に出るやうなことがありましたやうな場合に、大藏當局は法律的或は政治的にどう云ふ方法を以て之に對處することになりませうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=33
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034・石橋湛山
○石橋國務大臣 税法が此の民主主義に基いた議會を通過しました場合に、私は勞働階級が之を滯納すると云ふことはないと信じて居りますから、別段それに對する對策は考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=34
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035・川島金次
○川島委員 現在既に勤勞階級は所得税の撤廢を叫んで居ると云ふことは、繰返して私が申した通りであります、而も勤勞階級が食ふに食はれず、今の賃金値上等の問題もさう云ふやうな生活問題であることも御承知の通りであります、大藏大臣は恐らく御承知でないと思ひますが、今全國的に遲配と缺配です、それに代るに粉と馬鈴薯で一般の國民は全部食つて居るのです、而も其の上に配給された粉と馬鈴薯では輕勞働にさへも耐へられないと云ふやうな實情であります、私はもう既に一箇月間米粒一つも食べて居りませぬ、恐らく全國の勤勞階級、全國の國民も等しく此の苦難を味つて居るのではないか、而も配給された馬鈴薯や粉ではとても勞働すると云ふことには一日や二日は宜いとしまして、三日とは耐へられないと云ふのは私の經驗に徴してはつきりして居ります、そこで國民勤勞階級と云ふものは何等かの方法で之を補填して居ることも事實であります、而も大藏大臣は御承知であるか分りませぬが、米一升に換算すると馬鈴薯は一貫八百匁の配給であります、米一升の値段は二圓五十錢であつて、馬鈴薯が配給された場合には四圓八十錢拂はなければならぬ、而も配給された馬鈴薯だけでは食へない、生活が出來ない、寧ろ今日の配給だけで生活すると云ふことは、私から言ひますならば生物學的な生存を續けて居ると云ふやうな状態ではないかと私は思つて居る、そこで國民の大半と云ふものは遮二無二食糧の補給に狂奔を續けて居ります、先般御承知の通り秋田、北越方面の鐵道列車を調査致しますと、一列車で百俵も米が出て來た、是の中にはそれは「ブローカー」其の他の爲に、利益を目的としてさう云ふ補給をして居る者もありませうが、大體に於て食ふに食はれず、已むに已まれず、さう云ふことを續けて居る人が多い、而も此の頃はもう米などはありませぬで馬鈴薯でありますが、それも配給された馬鈴薯だけではとてもやつて行かれない、生物學的生存を續けるだけです、そこで補給するとすれば馬鈴薯は公定にすれば一貫目四圓八十錢でありますが、今闇で買ふとそれが一貫目三十圓は安くともするのであります、此の一貫目三十圓の馬鈴薯を勤勞階級の家庭では少くとも十貫目や十五貫目の補給をしなければ生活が成り立つて行かぬのです、仕事が出來ない、勤勞意欲が出ない、さう云ふ状態にあると云ふのが一般の國民層の生活の實態なのであります、十五貫の馬鈴薯を買ふと致しますならば四百五十圓、大藏當局は勤勞階級の年平均所得は五千五百圓だ、而も年五千五百圓とすれば月收は僅かに四百五十圓程度です、其の數字に基きまして馬鈴薯十五貫補給致しましてももう既にそれは四百五十圓になつてしまふのです、食ふに食はれず働くに働けないと云ふ土壇場に逐次追込められつつあるのではないかとさへ、私は誇張ではありませぬが痛感をして居るのであります、其の場合に於きまして、國家の財政の必要とは申しながら、一體税金と云ふものは分に應じてでありますが、其の分と云ふものは私は生活力だと思ふ、そして殊に明日の再生産に對する所の勤勞意欲を十分に再び盛り上らせる生活力を勤勞階級に與へると云ふことが、國家再建の基盤であり、それが軈ては國家財政をして鞏固ならしむる所以ではないかとさへ私は考へて居ります、さう云ふ場合に、先づ勞働階級がさう云ふことはないだらうと云ふことを考へて樂觀されると云ふことは、私は寧ろ當局の御心情と云ふものに對して、若干の疑問を持たざるを得ないのであります、寧ろ私は此の際當局は大悟一番此の勤勞階級の本當の生活に徹せられまして、勤勞階級を救ふことは國家全體を救ふことなんだ、茲に私は大悟徹底した勇氣ある果斷な而も愛情に滿ちた所の政治を斷行すると云ふことが、當局の寧ろ國家再建の所謂政治の最高使命ではないかと斯樣にさへ私は確信を申上げ得るのであります、併し幾ら私共が申上げましても當局は財政の都合だと言ふだけで、勤勞階級に對する所の言葉だけの同情、實際には何等の施策を施さうとされない、洵に私は殘念だと思ふのであります、勤勞階級の生産意欲が阻碍され衰へるやうなことがありましたならば、如何に今政府當局が國家の再建を圖る爲に勇敢に鬪つて行かうと云ふ其の事柄も、軈ては私は意味を半減するぢやないか、私はさう云ふ風に確信を持つて居るから只今のやうな御尋ねを申上げる次第であります、此のことに付きましては水掛論に終りますやうでありますから打切ります
そこで今度は池田さんでも宜しいのでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=35
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036・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは大藏大臣は宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=36
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037・川島金次
○川島委員 宜しうございます、勤勞階級の立場から一言最後に御伺ひ致します、大藏省では鹽を扱つて居る譯であります、其の鹽と云ふものは一體我々の家庭では月に一人二百「グラム」掌の上に載せた程度、而も味噌醤油が足りないから鹽と云ふものは二百「グラム」では到底漬物には勿論廻らない、其の日其の日の生活だけで手一ぱいである、鹽を今の二百「グラム」と云ふものを更に近い將來増配をすると云ふ見込があるかどうか、それと併せて主食糧の足りない時に、我々の生活と云ふものは他の調味料、鹽を原料とした所謂味噌醤油であります、此の味噌醤油の如きも、洵に俗の言葉で申しますならば配給量と云ふものは二階から目藥であります、醤油の如きは月に一人濃厚醤油で一合五勺であります、味噌は僅に月一人二百四十匁であります、五人家族では大體に於て一ケ月百圓程度の補給をしなければ調味料も間に合はぬと云ふのが國民の僞りのない實態なんであります、そこで私は勤勞階級の立場から申上げるのでありますが、生活に缺くことの出來ない所謂米鹽の其の鹽、鹽を原料にした醤油味噌、斯う云つた問題に付て今日どんな現状にあるか、そして將來どのやうな方法に依つて増配をすると云ふ計畫があるか、そんなことに付て御調査がありましたら御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=37
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038・池田勇人
○池田(勇)政府委員 鹽は大藏省専賣局の所管でありまして、私は詳しいことは存じて居りませぬ、今年の内地製鹽は計畫通りには行つて居ないやうでございます、氣候其の他の關係があると思ひます、而して外國から取りますと先づ長蘆鹽或は臺灣鹽を相當期待致しまして輸入に努力して居るやうでございます、其の程度のことしか私から申上げられませぬので、後刻專賣局長官から御答へすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=38
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039・川島金次
○川島委員 まだ私も御質問したい重要な事柄が二、三殘つて居るのでありますが、同僚各位の御質問もまだ多分に多つて居ることでございますから、私は他の機會に大藏省關係の問題に付ては質問致すことがあらうと思ひますので、其の時に讓つて、私の質問は一應打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=39
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040・苫米地義三
○苫米地委員長 今井耕君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=40
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041・今井耕
○今井(耕)委員 時間の關係があるやうでありますから、極く簡單に一、二の點に付て大藏省當局に御伺ひ致したいと思ひます、今回の増税は戰時中増税に増税を重ね、其の上の劃期的の増税でありまして、此の増税が生活の安定に重大影響を來すと云ふことが、以前から質問された方から言はれたのでありますが、此の生活の安定と云ふことに付きまして最も大なる影響を致すものは扶養家族の控除と云ふことであります、働く者ばかりの家族であれば是は比較的樂でありますが、扶養家族が多い家庭に於きましては非常に困るのであります、斯う云ふ點から考へまして、今回官公職員、學校教職員などの家族手當が増額されたと云ふことは、是は不十分ながら其の間の調整が取れることで、自分は結構であると思ひますが、同時に是等の方々と同樣或はそれ以下の所得の人で家族手當などを受けない事業者、勤勞者があると云ふことを考へなければならと思ふのであります、現在此の支給される家族手當と云ふものは、是は本人の地位とか待遇とか云ふものに拘はらず、其の扶養家族に對する生活の保障と云ふ意味から、是が經費を國が負擔すると云ふ意味で支給されるのでありまして、是等の人にのみさう云ふ恩典があつて、それ以外の事業者或は勤勞者と云ふものに付て何等恩典がないと云ふことに付て茲に不均衡がある、斯う云ふことが第一であるのであります
それから第二番目に、家族手當などを受けない是等中小農工商業者其の他の勤勞者、斯う云ふ者の相互の間に於きまして之を考へて見たいと思ふのであります、例へば之を農家に例を採りますと、農業所得も一つの事業所得であるけれども、殆ど是は勤勞所得なんです、其の實際を見ますると、子供や年寄の多い家は非常に困つて居る、働き手ばかりの家であれば是は左程困つては居らぬ、それに對して現在の恩典は扶養家族の一人に對する控除月六圓と云ふだけでありまして、一年に付て僅かに七十二圓と云ふことだけであります、實情はどうかと申しますと、扶養家族の多い家は家族手當を貰つても却て所得が減少する、なぜならば子供や年寄が非常に澤山居ると、家の仕事が出來ぬ爲に田畑をさう澤山作れない、さうして作つても十分世話が出來ぬから是は所得が減るのであります、家族手當を貰つて殖えるのと反對に減るんです、さうして之に對する所の扶養費と云ふものは中々澤山掛かる、斯う云ふ點を考へて見ると、茲に何等かの負擔に於て差異を付けて均衡を取ると云ふことが最も必要であると思ふのであります、斯う云ふ點から考へまして是等の所得者に對しましては、其の扶養家族に對する扶養費と云ふものを現在の所得税などの基礎控除以外に、基礎控除として認めると云ふことが私は最も適切であると思ふ、家族手當の支給に依つて國が扶養家族に對する生活を或る程度保障すると云ふ趣旨から見ても外のものに對しても其の扶養家族に對する所の生活費と云ふものを基礎控除として、之を一般控除以外に認めると云ふことは當然のことである、今日まで是が認められて居らぬと云ふことは、非常に負擔の均衡を失するものである、斯う云ふ風に考へるのでありますが、之に對して御考へを伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=41
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042・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家族手當の支給は俸給給與の一部をなして居るのであります、決して物々給與でもなく、俸給を支拂ひます時の一つの方法として家族手當を出して居るのでございます、隨て農工商業者に對しましては給與と云ふものがありませぬから、當然家族手當を出すべき筋合ではないと思ひます、又第二の扶養家族の控除、是は所謂家族の生活費の一部にもと云ふ氣持で扶養家族の控除を附して居るのであります、決して是は基礎控除と同じぢやございませぬ、觀念が全然違つて居るのでありまして、只今の扶養家族の控除の制度で、私は御話の通りに行つて居ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=42
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043・今井耕
○今井(耕)委員 さうすると扶養家族の手當などが出て居らぬ一般の事業者、勤勞者と云ふものは、扶養家族の多い人と少い人とでは非常に扶養經費が違ふのであります、最低の生活は費用に付きましても是は餘程國として考慮されるのが本當であります、それが現在では月七圓だけしか違はぬ、之に付て扶養家族の扶養費と云ふものを、現在の基礎控除以外に基礎控除として認めると云ふことが均衡上必要ではないか、或はそれ以外の方法でも結構です、例へばさう云ふものに限つては家族控除の金額を相當殖やすことも一つの方法、何等かの方法に於て、此の不均衡を是正して、實情に即應せしめると云ふことは最も必要なことだと思ふ、私の申上げたことが面白くないならば他の方法でも宜しい、兎に角負擔の均衡を失することがないやうにすることが絶對必要だと思ひます、之に付きまして御答辯を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=43
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044・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の點は能く分りました、問題は扶養家族の控除年七十二圓、是が少な過ぎるではないか、斯う云ふ問題と考へられます、扶養家族の控除に付きましては當初は年十二圓、それから昭和十七年に年二十四圓、それから去る三月に年七十二圓、斯う致したのでございます、之を所得に換算致しますと、勤勞所得で言へば所得金額から三百六十圓控除する、斯う云ふ恰好に相成るのでございます、隨て所得者側に對しまして、基礎控除二千四百圓とするならば、其の家族に付ても控除三百六十圓だけでは少いではないか、斯う云ふ御議論かと思ひます、此の點に付きましては餘程研究致さなければならぬと思つて居ります、先達ても試算を致しましたが、いま年七十二圓を一人當り控除して居りますが、之を百圓に致しますと七億五千萬圓位所得税が減收致します、餘程此の點も考へなければならぬと思ひます、御話の通りに將來の所得税の問題と致しましては、基礎控除額を引上げるよりも、扶養控除額をうんと引上げる方が妥當ではないかと云ふ考へを持つて居ります、併し今回の税制では今の事情を見ましてやはり此の程度で行かうと思つて居ります、將來考ふべき點は基礎控除よりも扶養家族の方に相當の重點を置くべきではないかと云ふ私見を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=44
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045・今井耕
○今井(耕)委員 大體分りましたが、今の此の問題は一般の中小工業者の生活の安定には非常に緊要な問題でありますから、是は考慮して置かうと云ふ程度でなしに早速實行して貰ひたい、只今もう非常に困つて居る譯であります、一年も二年も研究してからやつて貰ふ時分には、もうさう心配して貰はぬでも宜いやうな風に緩和されるかも知れませぬ、ここ一、二年間が最も困るのでありますが、さう云ふことを早速御考慮願つて實現願ふ、斯う云ふやうな御考へはありませぬか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=45
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046・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今の所は考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=46
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047・太田鐵太郎
○太田(鐵)委員 一寸關聯して一言…、今主税局長の御答辯の中に家族手當は俸給を支拂ふ時に拂ふので俸給の一部だと云ふ御考へのやうに聽取つた譯でありますが、さうすると家族が多い者が多く俸給を得る、俸給の一部である、斯う考へて宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=47
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048・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私は課税上さう云ふ風に考へて居ります、隨ひまして家族手當にも課税をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=48
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049・苫米地義三
○苫米地委員長 一寸御待ち下さい、川島君の御質問になつた前のことで專賣局長官が見えましたから其の方の御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=49
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050・杉山昌作
○杉山政府委員 食鹽の供給の状況に付きまして御質問ださうでしたが、席に居りませぬので、或は御質問の趣旨に多少違ふ點があるかと思ひますが、供給條件に付て申上げます、大體本年度の供給計畫と致しましては食料鹽八十萬「トン」程度を見込んで居ります、併しながら春以來の瀬戸内海方面の鹽田の生産が豫定の半分にも行つて居ない、是は天候の關係でありますが、幸ひ七月からは相當持直して居ります、併しながら全體と致しましては中々計畫通りに行きさうもない、それから輸入に致しましても「マッカーサー」司令部の方の配慮で、色々計畫も出來て居りますが、現状に於きましては船の關係で十分入つて來て居りませぬ、差當り第二四半期と致しましては二十萬「トン」を一寸切るやうな配給計畫を立てて居ります、第三四半期、第四四半期となりますと、鹽の製造の方は減りますが、輸入の方が寧ろ相當希望を持ち得るやうでありますから、大體十七、八萬「トン」から二十萬「トン」位までの供給は各四半期とも出來るのぢやないか、さう致しますと略略八十萬「トン」と云ふやうな全年度の供給も何とかやつて行けさうに考へて居ります、隨ひまして味噌とか醤油とか云ふ方面に使ふ鹽も、やはり其の枠の中で配給致しますが、是は大體現在の醤油なり味噌の配給基準、配給數量を順次補つて行くだけの鹽は、供給すると云ふ計畫を以て、此の第二四半期の計畫も致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=50
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051・川島金次
○川島委員 今の御説明に依りますと、鹽と云ふものは現状よりも多く配給される見込はない譯ですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=51
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052・杉山昌作
○杉山政府委員 現在の輸入の見透しでは現状より多少は上廻ることがあるかどうかと云ふ程度にしか考へて居りませぬ、勿論輸入の方の數字は相當大きな計畫を持つて居りますが、實際船が中々思ふやうに入つて參りませぬものですから、一方自給製鹽と云ふやうなことでやつて居りますが、是も資材等の關係で計畫通りに行つて居りませぬ、大體現状より少し良くなる程度かと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=52
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053・川島金次
○川島委員 味噌も醤油も鹽も、大體從來通り國民に對する配給率と云ふものが變りがない、殖える見込みはないと云ふ譯ですね、寧ろ減る心配はあるのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=53
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054・杉山昌作
○杉山政府委員 今の所減る心配は持つて居りませぬが、うんと増加すると云ふ風な希望は一寸持ちにくい状態でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=54
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055・川島金次
○川島委員 今の味噌と醤油の全體的の數量は分つて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=55
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056・杉山昌作
○杉山政府委員 數字を記憶して居りませぬが、後刻申上げませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=56
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057・今井耕
○今井(耕)委員 只今の事業者なり、農業者なりの家族控除金額の引上、是は早速是非實行して貰ふ必要があると思ひますから、至急御研究を願ひ御發表を願ひます
次に所得税の問題に付て御尋ね致しますが、所得税は昨年の實績に依つて本年の所得を決める、例へば有價證券のやうなものを考へて見ますると、昨年相當價値のあつた有價證券が殆ど無價値になり、配當なんかないものが澤山あります、斯う云ふ場合に昨年の所得から決めると云ふことになつて居りませうが、昨年の分は昨年で使つてしまつて、實際は本年の所得から支拂ふ、さう云ふ場合に是等有價證券を相當澤山持つて居つて、それで生活をして居る者が非常に困ると思ひますが、同時に本年の特徴と致しまして、財産税と共に之を納税する、さうしますと、茲に親も子も一緒に納めねばならぬ、斯う云ふことになつて相當困難であります、茲に於て財産税とか其の他の租税に付て延納の場合、來年と云ふことが許されるか、尚ほ此の財産税以外の所得に付ても物納を認められる御考へがあるかないか、それからもう一つは農家の家畜役獸でありますが、是は財産と言ふものの又消耗品のやうな形であります、之に對して財産税を取ることは面白くないと思ふのでありますが御見解を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=57
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058・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家族手當の引上は去る三月二圓を六圓に引上げました關係もありますので、而も是は立法事項でございますので、只今は考へて居りませぬ
次に配當等の所得税、前年配當を受けた額に對して、本年所得税が課税になるのだが、昨年受けた配當は使つてしまつたから納税が出來ない、斯う云ふ御話でございますが、是は非常な不心得者でございまして、課税は前年の實績、前年の所得から翌年納める、斯う云ふ建前になつて居ります、隨ひまして假令税制を豫算課税に致しましても、此の配當所得等はやはり前年の實績に依るより外にございませぬ、昭和十五年以前は豫算課税、實績課税の中間を行つて居りましたが、之を豫算課税に改めましても、配當所得はやはり前年の所得から納めて貰ふやうに相成ると思ひます、最近の状況では株價が非常に下つて、財産税を納め所得税を納めると云ふことになると困る、斯う云ふ御話でございまするが、昨年の所得に對して課税になります、昭和二十一年分即ち今年分の綜合所得税等は財産税の課税價格から引きます、又株價の下つたもので三月三日に下つて居れば、下つたもので課税を致しますので、實際上非常な不合理はないと思ひます、財産税の延納に付きましては特殊の場合に認める積りで居ります、原則と致しまして直ちに金納、物納をして戴くと云ふことが原則であります、それから財産税以外の税に付て物納を認めるか、是は相續税に付てのみ物納の制度を入れて居ります、將來一般の租税に付きまして物納の制度を認める考へはございませぬ、次に農家の家畜、牛馬等の家畜に財産税が掛るかどうか、農家の家畜はやはり農家の財産でございますから、建前としては課税の對象になります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=58
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059・今井耕
○今井(耕)委員 今の農家の家畜に對する課税の問題であります、是は農家の必要品でありまして、其の評價額をどの位に御定めになるかが問題だと思ひます、今日時價で言ふと、一頭が一萬圓ばかりする、馬小屋に繋いで其の日暮しの百姓をして居る者にもそこに財産税が掛つて來る、それが一旦死んでしまふと大變なことになる、若し財産税の對象とせられる場合には、是は極く低いものにして貰はぬと、外のものと違つて非常に支障を來すのであります、其の評價の標準がどの位になつて居るか御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=59
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060・池田勇人
○池田(勇)政府委員 農家と致しましては牛馬は必需品でございませう、農家の必需品とは認めますが、財産税で只今考へて居るのは、通常の生活に必要なる各什器等が課税外でございまして、營業事業に假令それが必要であつても財産的價値があれば當然課税の對象になるのでございます、農家に於ける牛馬が必要である如く、又商賣人に於ける所謂家財道具或は營業上の設備が必需品であるが如く、皆同じでございます、皆理論的には課税の對象になります、牛一頭一萬圓、或は一萬五千圓の取引があることは我々も聞いて居りますが、之を一萬圓或は一萬五千圓で課税することには相成らぬと思ひます、やはり公定價格たる實際に課税し得る價格、斯う云ふ積りで居ります、財産税の課税標準は決して闇に依つて課税しようと云ふ氣持は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=60
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061・今井耕
○今井(耕)委員 是は相當喧しい問題になつて居るのであります、理論的にはさうでありませうが、實情は相當異なるものがあるのであります、農家等では今回の増税は相當無理の出る點があると思ひます、之を法律一點張り、規則一點張りでどんどん強化して行くと非常に困るやうな場合が實際出て來る、斯う云ふ點に付て相當情状酌量しなければ本當に實際生活に困る點が出來て來る、此の點に付て當局からどの位の程度か承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=61
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062・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産の評價が財産税の中心問題であります、隨て其の評價とか免税點とか、色色重大問題が出て來るのでございます、只今財産税の免税點はまだ決まつて居りませぬ、唯今の牛に對して課税することが酷ではないかと申しまするが、それならば三月三日までに牛を賣つて之を預金なさつて居る農家には課税せざるを得ない、預金を引出して一萬五千圓で牛を買つた人は課税から逃れる、牛う云ふことは公平なる觀念から許せませぬ、だから課税の對象にはなりますが評價に付きましては免税點等と睨み合せまして實際に運用出來る評價に致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=62
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063・苫米地義三
○苫米地委員長 是で休憩致しまして午後一時再開致します
午前十一時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=63
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064・会議録情報2
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午後一時十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=64
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065・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは是から開會致します、質疑を續行致します――増井慶太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=65
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066・増井慶太郎
○増井委員 私は此の税法の改正に付きまして、色々意見もありましたけれども、既に各委員が色々と御述べになりまして、御質疑に對しそれぞれ又當局からの御説明がありまして、私の申上げんとする所も重複する點がありまするから、其の點に付きましては止めまして、唯茲に非常なる所の大きな税を課せられて、さうして今後我が國民が此の税金に對して唯本年一年ばかりでなく、今後此の大きな税金を數年間に亙つて徴税されなければならぬことになりまするが、果して現在の状態であつて、國民が此の徴税に堪へ得られるや否やと云ふことに付きまして、私は憂ふる者であります、今後に於ての御見透しは大藏省に於てはどんな御考へか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=66
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067・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今年度の歳出は進駐軍費、又復員費等、敗戰後當然の相當巨額の歳出がございますので、已むなく増税を致したのでございまするが、是は明年度、或は其の次の年度にはなくなる費用も相當ありますので、歳出は相當程度減少するものと思ふのであります、而して又財界の整理其の他が出來まして、我が國の經濟が安定し、産業が興つて參りますならば、相當程度の租税收入も確保し得るものと考へて居るのであります、只今の租税負擔は我々と致しましても相當重いと考へて居ります、隨ひまして歳出の減少に伴ひ、出來るだけ早く、又出來るだけ多くの減税を致して行きたい、斯う考へて居るのでございます、今年の歳入は先般も申上げましたやうに、百六十三億は十分確保出來ると考へて居ります、明年度の歳入がどうなりますか、財界の整理、安定と睨み合はせて相當程度の收入も確保し得るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=67
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068・増井慶太郎
○増井委員 尚ほ一つ勤勞所得のことに付きまして、殆ど各委員からの御意見でございましたが、私もこの勤勞所得に付きまして御伺ひしたいと存じますが、勤勞所得税が非常に重課されて參りまして一般勤勞者は非常に御困りのことと存じます、併し是も亦目下の情勢として已むを得ないと致しましても、非常に是が不公平になりはしなかと思ひます、何となれば謂はば唯一般に勤勞所得として或る賦課率を以て課せられましても、特に戰災地の者と災害を受けない所の人達とは非常に差がある、今日戰災を受けた所の勤勞者は、一般に家もなく着る物もなく、其の他家財、什器も何もない、此の人達は元の地位に還ることが出來得なくとも、先づ其の半ばに達するまでには相當なる年月が掛かることでございます、でありますから唯單に一般勤勞として徴税された場合に於きましては、燒けない人との差が非常に出來ますことであります、之に對しまして政府は昨年度は此の人達に對して税を課けませぬが、本年度から斯う云ふ風に課かつて參りますことは、唯一般と同じでは甚だ不公平である、之に對しては何等か茲に免税點があつて、さうしてやらなければならぬ、本年ばかりではない、將來に亙つて何年と云ふものは戰災者に對しては減免税をしなけれべならぬ、之に對して政府の御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=68
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069・池田勇人
○池田(勇)政府委員 戰災者に對しまする租税の輕減免除に付きましては、昨年施行致して居つたのでございます、此の戰災者の控除の規定は、元々前年の所得に對して課税致しまする所謂賦課課税の所得、營業所得に輕減免除の規定を置く趣旨であつたのでありますが、所謂事業所得者等に對して輕減免除の規定を置いた場合には、勤勞者に付ても尚ほ置いた方が妥當ではないかと云ふので、實は附けたりに勤勞所得者の輕減免除を置いたのであります、是は如何にも勤勞者にきつく聞えるやうでございますが、所得税は新たなる所得に對しましては輕減免除しないのが原則でございます、賦課課税の所得者は前年の所得に課税する、其の間に罹災を受けたと云ふことになりますと、前年の所得で拂ふのに困難だ、斯う云ふ趣旨から輕減免税を致して居つたのであります、今回は本則に還りまして、もう既に一年やつたのであるから本則に還つて新しい所得者に對しては輕減免除の規定はしない、斯う云ふ原則に還つて輕減免除の規定を廢止致しましたのでございます、罹災者が非常に御困りのことは我々も十分存じて居ります、併し税と云ふものは負擔力があれば課税する、所得があれば課税する、斯う云ふのが建前であります、罹災者に對しての保護其の他に付きましては別途に講ずるのが本筋ではないか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=69
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070・増井慶太郎
○増井委員 所得税は所得に對して徴るのが正當だ、是は御尤もであります、併し勤勞所得は御承知の通りはつきりと分つたものでありますから、例へば一萬圓取れば一萬圓とはつきり分つて居ることでありますから、之に對して何等駈引もありませぬ、若し他の一般所得でありましたならば、現在でも多少の手心と云ふことは出來得ると思ふ、是は昨年の戰災者である、斯うした時に於きましては多少之に對する手心は付くのでありまするからして、そこ等が融通性があります、此の勤勞者に對してのみ税の建前だから斯うだと言つて徴ることは果してどうか、是は大藏當局に於ても建前はさうである、其の建前の方法を戰災者に對してのみ、特に數年間と云ふものは斯う云ふ風にすると云ふことにならぬか、あなた方にしましても、家を燒かれ財物を燒かれ何にもないと云ふ人が假に年に二萬圓なら二萬圓の所得があつても、今年は冬服を買ふ、或は子供の着物を買ふと云ふ人と、何にも燒かぬ人とはえらい差があります、之に對しては別の方法がありませうけれども、直接分る所の所得税に付きましてはつきりと國が斯う云ふ風なことをすると云ふやうなことをした方が、今勤勞所得者が税金で以て云々と云ふやうな聲の多い時に、特に私は御考慮をして戴く方が宜いと考へますけれども、是等に付て尚ほ御考慮の餘地はないか、さう云ふ風に私共考へます、どんなものですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=70
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071・池田勇人
○池田(勇)政府委員 罹災の程度が事業所得者、勤勞所得者に差は私はないと思ひます、御氣の毒な點は勤勞所得者も、又其の他の所得者も同樣であらうと考へるのであります、又同じ戰災者と申しましても、又其の間に非常に實情が違つて居るのであります、荷物を全部疎開して單身下宿住ひをして居つても戰災者になります、又何にも疎開せずに酷く家財道具をやられたのも同じやうに戰災者であります、又戰災者でなくても自分の家財道具を運搬する時に失くした方は戰災者の中に入つて居りませぬ、其の間に同じ名前の下でありましても、實情は非常に違つて居るのであります、隨て私はさう云ふ難かしい所に税が入り込むと云ふことは少し行過ぎではないかと考へまして、戰災者に對する所得税の取扱は止めまして、他の方面から行つて戴くのが至當ではないかと云ふ風に考へて居るのでございます、勤勞所得者は所得が全部分る、他の所得者は即ち營業とか農業は所得がすつかり分らない、捉へられない、此の點勤勞所得者は非常に過重の負擔になるのではないか、斯う云ふ御話の點もあつたやうでありまするが、是は税率の問題とは別でございまして、此の點を補ふ爲に、昔は六千圓以下の勤勞所得者には二割、或は一萬二千圓以下の者に付ては一割と云ふ控除で其の點を認めて居りましたが、只今はさう云ふことをしなくても基礎控除とか或は税率で十分に勤勞所得者の優遇は圖つて居る考へでございます、只今の御話の戰災者に對しまする税法上の取扱は致さない考へで進んで居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=71
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072・増井慶太郎
○増井委員 併し實際問題とすると、勤勞所得者の所得と云ふものは假に或る官吏の方があつたとして初めから出て其の終りに至るまで算盤で以て勘定すると、一代の收入が先づ茲に現はれて來る譯であります、此の收入に對して要するに順々に毎月課けられて、恐らく相當の官吏となつた人も、まあ何か惡いことをしなかつたら倉が建つと云ふことは一寸困難だと思ひます、併し從來見ますると、他の所得者は若し本當に全部の所得の税が斯うであると云ふやうなことになりましたならば、殆ど税金を徴られたら大して殘ることはなからう、斯う云ふやうに考へますけれども、政府が税をぼちぼち取つて居る爲に殘つて居る財産と云ふものは殆ど税金の塊りが殘つたやうな形になつて居るやうにも考へられます、さう云ふ風に總てが違ひますから、政府は勤勞所得者に對しては總て能く御考へ下さいまして、率其の他に付ても御檢討願つてやつて貰ひたいと存じます
次に徴税方法に付て御伺ひ致します、私は現在まで二十五箇年ばかり所得調査委員をやつて居ります、其の間に於て調査致しますものは前にはよく殆ど三十日間ぶつ通しやつたものであります、近頃は税が毎年々々色々の形で非常に變つて來ます爲に、總ての資料を出すのが非常に遲れて來て、本年の如きもやはり實質に於ては調査委員は看板みたいになつて居る、斯う云ふことになり勝ちになつて來るのであります、是等に對しまして税法は此處では唯單に斯う云ふことになると言はれましても、税務署に於きましては、一々之を書いて行くには根本的に總てが難かしくなつて、複雜になつて參りますから手數が掛つて、調査の期日までには其の資料を出し得ないと云ふやうな實情になつて居ります、今後是等に付てはもつと人員を殖やすとか、調査機關を完備すると云ふことにしないと、調査委員も全くあつてなきが如しと云ふことになるから、此の點に付ても十分御考慮願ひたいと存じますが人員を殖やすとか或は又優良な職員を御置きになると云ふやうに御願ひしたいと思ひます、政府はどんな風に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=72
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073・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得と事業所得の場合に、事業所得はえてして十分の課税がされて居ない、所謂所得の課税標準の計算が内輪であり勝ちだと云ふ御話でございます、私も事實上其の點は或る程度認めざるを得ませぬ、併し我々と致しましては事業所得等の課税標準が十分に行つて居ない、隨て勤勞所得の方もそれに應じて考へると云ふ御話でございますが、我々としましては、十分行つて居ない事業所得の方に主力を注いで課税標準の計算の全きを期したいと思つて居るのでございます
次に徴税方法の問題に付きまして、御話の通りに最近は税務官吏の素質も劣り、又課税物體が非常に多くなつたにも拘らず、調査委員の數が少い等の爲め、調査會に於ける調査も十分でないと云ふ御話でございます、私も其の事實は認めざるを得ないのでございますが、今後に於きましては今までの調査委員會制度の機構を出來ればもつと擴充強化致しまして、各方面の多數の人の御力を得まして、調査會に於ける調査の萬全を期しますると共に、調査會に提案致します調査書に付きましても、税務職員の増員を圖り又職員の質に於きましても向上を圖つて、此の租税調査機構の擴充強化に努めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=73
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074・苫米地義三
○苫米地委員長 先程川島君の御質問に對して專賣局長官から數字上の御答辯がある筈になつて居ります、只今參つて居りますから答辯をして戴きます――杉山政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=74
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075・杉山昌作
○杉山政府委員 先程申殘しました數字を申上げますが、本年度に於きましては大體八十五萬「トン」位全體で配給をしたいと考へて居りましたが、春以來の生産不振、輸入不圓滑等の關係で此の上半期、第一四半期と第二四半期、合計三十萬一千「トン」の配給を致して居ります、其の中醤油の方は五萬「トン」味噌の方が四萬六千「トン」斯う云ふことになつて居ります、序でに外の方を申上げますならば、家庭配給が九萬九千「トン」それから漬物の方が三萬「トン」水産物の鹽藏用として三萬「トン」其の他四萬六千「トン」斯う云ふやうな數字になつて居ります、それで醤油と味噌の割當の數量でありますが、之に依りますと大體醤油は現在配給數量一人一箇月二合八勺、農家では自家用をやつて居りますが、其の方は二合八勺の三割増の數量と云ふことを標準にしまして計算が出來て居ります、味噌の方は一人一箇月當りの配給量百七十五匁、それに要する鹽の量と云ふやうなことで計算を致してあります、大體此の味噌醤油の數量は現在の配給の數量でありますから、味噌醤油とも現在配給數量を維持する程度の鹽は出して居ると云ふやうなことになつて居ります、それで九月以降下半期に於きましては秋の漬物用として今まで以上に鹽が要ります、醤油の方は今申上げましたのは大體精製用の鹽でありまして、仕込用の方は非常に切つてあります、ですから之を長く續けますと諸味がなくなつて遂に醤油が出來ないと云ふことになるので、それを救ふ爲に第三四半期に於きましては今の數量を増しまして、諸味を釀造する方の鹽も附加へて出したいと云ふ風なことを考へて居りますので、結局上半期の三十萬「トン」よりも相當増加して今年度大體を通じて七十萬「トン」位には是非漕着けたいと云ふことで努力致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=75
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076・川島金次
○川島委員 今の説明に依ると醤油の配給は二合八勺と云ふことですが、實際は一合五勺、是はどう云ふ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=76
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077・杉山昌作
○杉山政府委員 實際の面は農林省の方の關係になるのです、數字ははつきり致しませぬが、鹽の配給をする時に二合八勺と云ふことを標準にしてそれに所要の鹽は幾らと云ふことでやつて居ります
それから四月以來は味噌も醤油も鹽と配給を「リンク」致しまして、醤油なり味噌なりの製造業者は自分の製品を供出しなければ、鹽の配給券をやらないと云ふことでやつて居りますから、今の御話の一合五勺と云ふのは實際どう云ふ風になつて居るか分りませぬが、醤油なり味噌の配給を確保する爲に「リンク」制を執つて居るのでございます、數字の關係の詳細は一寸專賣局だけでは分り兼ねる點があります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=77
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078・川島金次
○川島委員 一合五勺と二合八勺とでは、既に一合三勺もえらい開きが出來て居りますが、それは農林省と連絡して調査をして貰ひたい、國民に實際配給されて居るのは一合五勺、大藏省の方の鹽の割當は二合八勺是は大變な相違になります、其の差額は一體何處に行つて居るのでありますか、其の點洵に疑問を持つのでありますが、御調査願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=78
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079・苫米地義三
○苫米地委員長 もう宜しいですか――それでは増井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=79
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080・増井慶太郎
○増井委員 此の徴税に付きまして、尚ほ地方の税務署と云ふものが署長初め係官が非常に頻繁に代ることが多い、それが爲に納税者と密接な話合が出來なくて、過去に於きましては餘り長く居ると云ふとそれに對して色々な問題が起つて來ると云ふ關係があつた爲に
〔委員長退席、八木委員長代理著席〕
頻々と御代りになつたことと存じます、昨今に於きましては、さうしたやうな税務官は私は殆どないのぢやないか、斯う信じます、でありますから今後少くとも三年間位そこに居らぬと云ふと、能く分らぬ爲に、往々にして其の徴税方法が間違ふ、十萬圓課けて宜い人の所に五萬圓、五萬圓の人に十萬圓課けて見たりすると云ふことになりまして、色々非難もありますから、それに付きまして今後成べく其の土地に於きまして三年間位、總てのことが分るやうにおいで願つたらどうか斯う考へますが、其のことに付きまして御方針を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=80
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081・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通りでございまして、非常に難かしい税務行政を致しますには、其の土地に出來るだけ長く居り、土地の事情を十分知ることが必要であると考へます、最近に於きましては、他面子弟の教育とか、或は交通の關係がございますので、出來るだけ轉勤を見合はすやうに致して居ります、御尤もな御考へで、大體三年程度位は居ます方針で行きたいと思つて居ります、唯人事關係と云ふものは一概に行きませぬので、特別の事情の場合には是は一、二年でも迭らすと云ふことが例外的にはございますが、原則と致しましては御話の通りに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=81
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082・増井慶太郎
○増井委員 只今三年間位と云ふ御話でしたが、昨今は色色な關係から特にさう云ふやうになつたのでございませうが、大體官廳と云ふものは一所に於て下から署長になつたと云ふ人はなくて、ぐるぐる方々を廻らないと結局偉い人になれないと云ふことになつて居ります、今後は一所に居つても下から出て署長になつて差支へないのですから、成べくさう云ふ手段で以て、良い人があつたらそこに長くおいでを願ふことがお互ひ官吏となつて居る人も宜いし又地方の人も宜いのですから、成べくさう云ふ風に御考慮を願ひたいと思ひます
次に私共國民としては過去に於て日本の國力の發展の爲には喜んで納税をして來たのであります、支那事變以來、大東亞戰爭になる時まで要するに政府に瞞されて喜んで納税をして來たのであります、當時は我々は勝たんが爲にと云ふ氣持で其の方法を執り、尚ほ金ばかりでなく自分の子弟の命までも喜んで、萬歳と共に國家に捧げた、斯う云ふ氣持であります、既に敗戰の今日になりまして、其の氣持が非常に變つて居りまして、尚且其の家も燒かれ、總てが敗戰の今日になりまして状態が變つた爲に、非常に納税の點に付きましても考へ方が變つて居ります、之に付きましてもどうしても再建日本の爲には多くの税を收めなければならぬ、國の發展の爲に出す税ならば、喜んで出しますけれども、泥溝へ棄てるやうな税金だつたら出すことはお互ひに厭なのです、大藏省當局に於きましては其の徴つた所の税金を昨今見ます所のやはり税の「インフレ」で、何だ五萬や十萬、百萬や二百萬どつちにやつても宜いと云ふやうな氣持が自然ありはせぬかと我我は考へます、我々が血と汗と涙と共に出す税金でありますから、此の税の使途其の他に付きましては十分御考慮には入れてあらうかも知れませぬけれども、天文數字のやうな今日何百億と云ふ税金でありますから、往々にして間違つたことがあるのぢやないか、斯う云ふやうにも一般に推測されます、此の納税に付きましては税務署では税を徴ると云ふことよりも、税を納めて貰ふと云ふやうな氣持に政府が指導することが一番宜いのぢやないか、税務署は税を徴ると云ふのと、納めて呉れと云ふのは、そこに非常に氣持が違ふのでありますから、我々は税を喜んで納めると云ふやうなことに導く、是はやはり學校教育から始まつてさう云ふことにならなければならぬ、私の知つて居る人で一人斯う云ふ人があります、私もそれを非常に參考として各方面で能く話をして居りますが、子供の時に親が寢物語に、俺の所では去年は三圓出來たが、今年は四圓納税が出來た、非常に有難いことだと話をして居つた、それを其の子供が聞いて、税が歳々殖えると云ふことは自分の家の爲めだ、斯う云ふ風に考へた、さうして親の代から段々と成功して、今日に至るまで税を納める時には必ず神棚に上げて、今年は斯う云ふ税になりましたと言うて、税の殖えることを喜んで今日まで相當成功して來たと云ふことを聞きまして、私も能く其の話を致します、私も亦自分の税金は年々歳々殖えることが宜いと考へまして今日までやつて參りましたが、國民全體に付ても自分の發展と共に喜んで税金を出すと云ふ氣持を植ゑ付けるやうなことに、何か大藏省に於て御考へがありますかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=82
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083・池田勇人
○池田(勇)政府委員 租税は國民の汗であり血である、之を使ひますのに厘毛も疎かにしてはならないことは御説の通りであります、我々は常にさう云ふ氣持を以ちまして租税徴收の任に當りますと同時に、歳出に付きましても及ぶ限り斯う云ふ趣旨を體しまして無駄の金が出ないやうに注意致して居る次第でございます、國民の納税觀念に付きまして、只今は洵に結構な實例を聽かして戴きまして、身に泌みた次第でございます、御話の通りに税務官吏が得てして税を徴る、斯う申しまするが、是は不用意な言葉でございまして、税と云ふものは實際國民から納めて貰ひ、又國民は進んで納めるべき筋合のものであると思ひます、之を單なる義務の觀念で説明することは全體を盡して居ない、納税も一つの權利である、斯う云ふ觀念が十分國民に行渡るやうに我々は今後とも努めて行きたいと考へて居る次第であります、租税は所謂國民の租税である、と云ふことを國民が本當に腹から御考へ下さいますやうに我々税務關係職員としては今後一層力を盡して行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=83
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084・増井慶太郎
○増井委員 最後に遊興飮食税のことに付きましては皆さん能く御反對ですけれども、私も亦さうであります、今の飮食税の如きは大衆課税になり掛つて居りますが、是ではいかぬと思ひます、尚且つ税金の徴收方法が極めて複雜と云ふか色々拙い點があります、何か外に之を變へて、外の税で以て補填して、之を御止めになつたらどうかと私は考へます、尚ほ現在外國人の經營して居る飮食店は税金を徴らぬことになつて居るのですか、實は數日前にさう云ふ風な所へ行きましたが、税を徴つて居りませぬやうに見受けましたが、是はどんな風に税を――或は其の中へ税が入つて居るのか知りませぬが、だうも徴つて居ないやうでありました、是は胡麻化して居るのか、本當ならば或る金額に對して税金幾ら、それで全體が幾らと云ふことになるべきだと思ひますが、其の點一寸伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=84
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085・池田勇人
○池田(勇)政府委員 遊興飮食税のことに付きましては相當議論のある所であります、遊興飮食税は大衆課税なりと云ふ説があつたとすれば、今日本で行つて居る課税は相當大部分大衆課税に相成つて居ります、私は今の國情から申して大衆課税は已むを得ない、又税と云ふものは一般國民所得大衆が分に應じて納むべきが民主主義的な税であると考へて居るのであります、遊興飮食税は大衆課税と申しましても、遊興飮食をする人はまだそこに相當擔税力があると私は考へて居ります、唯飮食税が惡税であると云ふことは、徴收に非常に困難がある、斯う云ふ意味から惡税であると言ひ得ると思ふのでありますが、遊興飮食税の課税が絶對に惡いと云ふことは只今の所考へて居りませぬ、外國人經營の飮食店は遊興飮食税を納めて居るか、又それは納税義務があるかと云ふ問題でありまするが、外國人經營の飮食店に付きましても勿論納税義務はございます、又先般聯合軍司令部に於きましても、外國人經營の料理屋等は一般日本國民と同樣の納税義務に服す、斯う云ふことを明かに言つて居ります、隨て今後は警祭官署、又は進んでは聯合軍司令部の「エム・ピー」の協力を得まして、徹底的に外國人經營の飮食店に付きましても脱税のないやうに努めたい、斯う云ふ考への下に進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=85
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086・増井慶太郎
○増井委員 さう致しますと是から其の外國人の方は徴る積りでございますか、今までは宜かつたのですか、是からと云ふことですと何時からさうなるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=86
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087・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今までも當然我が國の租税法規に服從すべき筋合のものでございます、併し如何せん税務官廳其の他の實力が足りませぬ爲に徴税が事實上出來なかつた、法制的には徴税すべき筋合のものであつたのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=87
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088・増井慶太郎
○増井委員 以上を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=88
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089・八木佐太治
○八木委員長代理 次は片岡君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=89
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090・片岡伊三郎
○片岡委員 大體出盡したやうでありますが、二、三點御尋ね致したいと思ひます、先づ、大藏省は大藏大臣の御話に依りますと、近く審査會等を制定して我が國の税制に對して一大刷新を圖ると云ふ御意圖のやうに承りましたが、其の時期は何時でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=90
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091・池田勇人
○池田(勇)政府委員 租税制度の改正に付きましては我々は税務關係當局は常に研究を致して居ります、而して租税制度は其の國の産業、經濟組織が大體目鼻が付かなければ完全な、立派な税制は打立てられませぬ、隨ひまして財界整理等、諸般の今囘の施策が其の緒に就きまして、大體我が國産業經濟界の安定が見透される頃に審議會を開くべきであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=91
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092・片岡伊三郎
○片岡委員 さうしますと相當の時間が掛ることになると考へて宜しうございますが、其の結果、又提案されて居る此の改訂税法と云ふものは暫定的のものになる、斯う考へて宜しいものでありますか、尚ほ地方税制も同樣でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=92
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093・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先程も申上げましたやうに、財界の整理又財産税の徴收等に依りまして日本の經濟組織は可なり變つて來ると考へて居ります、さう云ふ風になりますと、やはり當然税制もそれに應じて改正して行かなければならぬと考へて居ります、又地方税制に於きましても中央の税制と一體を成すものでございますから、中央税制を考へます時當然地方税制も考慮に入れて改正を加へなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=93
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094・片岡伊三郎
○片岡委員 先頃來此の委員會に於て相當質疑應答が繰返へされて居りますが、各委員から提案された意見に對して、政府當局に於きましては、相當研究された原案でありませうが、どうも御賛成が得られないのであります、私は先づ豫算に先立つて税法を制定して、さうして初めて豫算を作るのが順序であると思ひますが、假定的に豫算を編成した關係上、此の出た所の數字を改めますと、手續上の困難を來す、斯う云ふ點から各委員の改訂案が容れられないではなからうかと愚考するのであります、若しさう云ふことでありますれば、此の委員會なるものは、我々が此の暑い中で審議しても何の效果も齎らさないで、政府の御所見を質すのみに終つて、翼賛委員會に終る嫌ひがあるではなからうかと思はれますが、どう云ふ觀點で我々の意見が容れられないのでありませうか、先づ承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=94
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095・池田勇人
○池田(勇)政府委員 皆樣方の御意見に對しまして政府の考へて居る所を申上げるだけの問題でありまして、政府の原案を如何樣に御取扱ひにならうとも皆樣方の御自由でございます、唯私が申上げることは、色々な方に色々な意見がございまして、或る方は其の一事に付てのみ議論を進めて參られます、我々は色々な税を全體的に見まして、又此の税が經濟界に如何なる影響を及ぼすか、又歳入歳出にどう云ふ風な關係を持つか、色色な點を全體的に考へて居るものでございますから、皆樣の意見と十分一致しない點があるのでございます、是は政府當局の意見だけでございますから、此の政府の提出法律案に付きまして如何樣になさるるとも、是は皆樣方の御自由だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=95
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096・片岡伊三郎
○片岡委員 税制改定の目的が茲に示されて居る通り、税の國民負擔の公正、地方税の簡素化を圖る、斯う云ふ御趣旨であります以上、此の原案に示された以内に於て、徴税法等に付きまして、其の方法を大幅に變へる所の意見に對する採用の御用意がおありになりませうか、御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=96
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097・池田勇人
○池田(勇)政府委員 徴税の簡素化を圖る爲に、税法を大幅に變へるに付ての意見ありや否や、斯う云ふ御質問でございまするが、どう云ふ風に御變へになる御意向か分りませぬので、何とも申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=97
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098・片岡伊三郎
○片岡委員 若し政府にそれを受け入れる所の御意圖がおありになるならば、私は自分としての意見を御述べしたいと存ずるのであります、此の間の大臣の御話では、徴税法等に對して諸外國に於ては最も簡易なる方法があると聞いて居る、さう云ふことを伺つたのであります、尚ほ又一面に於ては我が國の税制は決して世界の各國に比較して劣るものでもないと云ふことを聞いて居ります、劣るものではありますまいが、若し現在の我が國の徴税法以上に、其の税制の上から徴税法が他に優れたる方法があるとするならば、我々は進んで此の際其の方法に依らねばならぬ、斯う考へるのであります、一説には、「ドイツ」等に於きましては、全く此の税法が簡易化されて、例へば物品の販賣に致しましても、一つの標紙を以て總ての賣買が成立し、其の集計に依つて一年間の總賣上の累計を以て計算し、之に課税をすると云ふことを聞いて居ります、若しも其の標紙を、受取を發行しない場合に於ては、買取者は買代金を支拂はなくても宜いと云ふやうな、強力な統制力を附加して居ると云ふことを聞いたことがあるのであります、それ等に比較して我が國の仕方を見ますと、全く事業所得の方面に於きましは、私も商人でありますが、相當に胡麻化しが行はれて居るのであります、之に關聯しまして當然税務調査會と云ふやうなものも起つて來る、税の公正を期する爲に、凡ゆる機關が必要になつて居るのであります、若しもそれ等の徴税法が所謂英國或は「ドイツ」等でなされて居る所の最も簡單であり、公正に、且亦嚴肅に行はれると云ふ方法が見出されるならば、是等の不正行爲も、又煩はしい所の凡ゆる諸機關も必要がなくなるではなからうか、斯う考へるのであります、毎年々々來る所のあの賣上税の決定、是等は洵に見るに忍びない實情であります、其の結果色々の忌はしい所の行爲も相當に行はれて居ることは事實であります、再建日本の「スタート」に當りまして、國の憲法までも改革して、さうして新しい意味に於て月本が而も民主的に、文化的に再建するに當りまして、最も國の動脈を成す所の税收と云ふものに對する一大改革は、私は憲法と竝行して行はれねばならぬと、斯う思ふのであります、是等に付て今當局の御説明は、經濟の安定の見透しが付いてからおやりになると云ふ御説明でありましたが、私は再建日本を強力く、而も正しく、民主主義的に作り上げるには、憲法と同樣に、此の日本經濟界の中樞を成す所の税法を何を措いても即時斷行しなければ、此の再建が遲れるではなからうかと考へるのでありますが、政府に於て速かに此の方法を御採りになる御所見がありや否や、重ねて御伺ひする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=98
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099・池田勇人
○池田(勇)政府委員 外國では非常に徴税の方法が簡單であると云ふ御話でございますが、必ずしもさうではございませぬ、それは賣上税を商品に「クーポ 」を貼つてやつて居る「スペイン」なんかもございますが、是は我が國では中々實際に行はれにくいのであります、又「ドイツ」の多分賣上税と思ひますが、是は何も印紙を貼つてやつては居りませぬ、日本で賣上税とも申すべき今の物品税は今度製造課税に改めましたから、徴税はこちらの方が簡單になると思ふのでございます、此の徴税方法はやはり國民の納税思想と非常に關聯のあるものでございまして、如何に立派な制度が出來ましても、國民が之を受入れない場合には何にもならないのでございます、能く國民の納税思想、又經濟機構等と睨合せて、徴税の仕方も考へなければならぬと思ふのであります、一例を引いて申しますと、「イギリス」なんかでは家賃を拂ひます時に、借家人が税金を差引いて、さうして借家人が税金を銀行に納めるやうになつて居ります、併し日本なんかでは斯う云ふ制度は中々行はれませぬ、隨て其の時、其の國情に依つて出來るだけ簡素化に努むべきではございますが、税收の確保出來ないやうな簡素化も是亦角を矯めて牛を殺すの類でございますので、其の邊中々一概には行かぬのでございます、又民主主義日本建設の爲に憲法を改正したではないか、租税制度も是と同樣に直ちに改正に着手すべし、斯う云ふ御意見でございますが、租税法規は憲法のやうに國の根本法とは違ひます、殊に税と云ふものは所謂經濟機構が出來上つて、それについて行くものでございますので、租税制度あつてそれで經濟機構を引張つて行かう、斯う云ふことは逆のものと私は考へて居るのであります、税制はやはり經濟機構、國民の經濟生活の状況、是から割出して考ふべきものだと思つて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=99
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100・片岡伊三郎
○片岡委員 先刻來勤勞所得のことが相當出盡して居りますが、此の勤勞所得は先程も御話がありましたが、扶養家族の控除額を引上げる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=100
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101・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得の扶養家族の控除は引上げる考へはございませぬ、是は本年三月緊急勅令の御制定を仰ぎまして、所謂新物價體系に應じた税制を考へた場合に、基礎控除を四倍に引上げ、扶養家族の控除は三倍に引上げたのでございます、其の際勤勞所得や外の所得の税率も引上ぐべきであつたのでございますが、御承知の通り税率の引上等は緊急勅令でやることは遠慮すべきだ、斯う云ふので税率の今回の引上を頭に入れながら基礎控除竝に扶養家族の控除を引上げたのでございます、隨て今回は扶養家族の控除に付きまして引上げる考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=101
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102・片岡伊三郎
○片岡委員 山林所得に對する税率の相當の引上が茲に盛られて居りますが、御説明申上げるまでもなく、莫大なる戰災都市の復興に當りまして、此の木材の需要は夥しいものがあるのであります、一面又森林を造ると云ふことは並大抵のことでは出來ないのであります、剩へ今回戰爭の結果と致しまして、森林所有者は悉く濫伐されて居ります、先祖代々長年慘膽して育て上げたる所の子供よりも可愛く思はれる位の、我が子に等しい所の木材を、御國の爲めとは申しながら、全く無統制に濫伐されて、其の被害は相當なものであります、若しも此の儘にして置いたならば、先頃も森林法案が上程されたのでありますが、此の森林の育成と云ふことに非常なる支障を來すではなからうか、それの及ぼす影響は全く豫想以外の結果が現はれて來ることは多言を要しませぬ、さう云ふ觀點からしまして、森林の造營と云ふものは非常に長い期間を要する、且つ又非常なる努力を要するのであります、現在の森林所有者は、先程申上げた通り、非常なる慘苦を嘗めて居ります、國の經濟が困難になつて當然之を徴税に俟たねばならぬのでありますが、假に之に代るべき税收があるならば、此の際山林所得に對する税率と云ふものを出來るだけ輕減さしてやりたいと思ふのでありますが、御當局の御考へは如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=102
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103・池田勇人
○池田(勇)政府委員 山林の所得に付きましては其の所得の性質に鑑みまして、從來は所得を五分致しまして、それに一般の税率を適用し、其の税額を五倍して算出することに致して居ります、昭和十九年から之を改めまして五分五乘したと同じやうな負擔に相成りますやうな負擔に相成りますやうに分類所得税だけ、税率を盛つて居るのでございます、今回も他の所得が増徴せられますので、それと均衡を取りながら或る程度の増徴を致したのでございます、而も又時局柄山林の伐採は必要でございますので増伐致しました山林所得に付ては特に輕減の規定を置いて居るのでございます、決して山林所得は他の所得よりも今回多く上げた譯でもございませぬし、山林所得は其の性質から考へましても負擔がきついとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=103
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104・片岡伊三郎
○片岡委員 次は鑛區税のことでございます、御承知の通り戰爭目的完遂の爲に、政府は擧げて國内資源を増強に強度の強要をした結果、國内にある所の有りと凡ゆる鑛區は此の目的の爲に全力を擧げて目的完遂に進んだのであります、一度終戰となつた今日としてはそれ等の鑛區は或る一部の石炭或は石油等を除いて他の部面の鑛區は、殆ど休止状態になつて居ります、是は私が御説明申上げるまでもなく、全く慘憺たる状態に暴されて居るのであります、搗てて加へて承ります所に依ると、軍需補償の打切りが傳へられるのであります、殘つた所の此の殘骸の鑛區に對して、今回相當の増税が行はれて千坪に對して六十錢と云ふものが二圓に増額されて居るのであります、是等は全く私は無殘なる仕打と思ふのであります、幸ひにして平和會議が結成され、我が國の産業が再び蘇生して來た場合は是は又別でありますが、現在の實情に於きましては全く殘骸を暴して居るのであります、而も鑛區と云ふものは非常に廣汎なる面積を所有して居ります、さう云ふ觀點から私は此の鑛區税の引上げに對して出來得る限り御考慮を願ひたいのであります、收入があれば是は別でありますが、全く休止状態、休止状態どころではありませぬ、殘骸を暴して居るのであります、其の廣大なる地域千坪に對して現行では六十錢、改正法案は之を二圓に増額されるのであります、是等は打つたり蹴たりの處置ではなからうかと思はれるのであります之に對する御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=104
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105・池田勇人
○池田(勇)政府委員 鑛區税を今回約三倍に増加致しましたが、實は鑛區税の千坪三十錢或は六十錢と云ふのは明治三十八年で決めた税率なのでございます、其の後登録税、地租は相當上がつたのでございますが、事變中或は戰時中と云ふので、是は遠慮致して居つた次第でございます、明治三十八年の税率に比べまして、只今三倍になつたからと云つて、鑛區税が非常に他の税と比べて重い税とも考へられませぬ、敗戰後租税收入の増加を圖りますが爲に、實は斯う云ふ方面にも此の程度の増税をしなければ相成らぬ、さう考へまして、三倍の増税を致した次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=105
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106・片岡伊三郎
○片岡委員 次は入場税であります、私が毎日市内を通つて登院する際に目に付くのは、朝まだきから映畫館等に列をなして入場を待つて居る人々であります、是等を見るに付けましても、一方に於ては減配、缺配が叫ばれ、此の救助策に對して「アメリカ」の袖を乞つて、今日の糊口をいで居るにも拘らず、或る一部の人士は、朝早々から開館を待つ爲に、道路上長蛇の列をなして居る次第であります、是等を見るに付けましても、生産者諸君、勤勞者諸君が之を見た場合に、どう云ふ考へが起るであらうか、私は毎日さう思ひながら登院して居ります、朝張切つて自分の職業に對して精一ぱい働かうと決心した勤勞者其の他の方々が、あの情景を見た途端、どんな考へが起るでありませう、一方に於ては食の袖乞ひをして居る、私は到底考へ切れないのであります、今回税法の改正に依つて、此の入場税の引上が提案されて居りますが、此の入場税に對しましては、ああ云ふ觀覽入場税に對して餘程の考慮を拂はなければならぬと思はれるのであります、私の意見としましては、公然の休日、或は夜間等の入場税は安くしてやる、其の他の只今申上げたやうな洵に思はしからぬ所の時間或は時日に對する入場税等に對しては、大幅の引上を課してやる必要があると思ふ、是は技術上相當の困難があるかも知れませぬが、思想上其の位の處置は忍ばねばならぬと思ひますが、御當局の意見を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=106
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107・池田勇人
○池田(勇)政府委員 入場税に付きましては、三月の緊急勅令で税率を輕減致しますと共に、税率適用區分を改正致しまして、相當の輕減を圖つたのであります、今回の税制改正に付きましては、入場税の税率の引上等は致して居りませぬ、唯最近舞踏場が出來ましたので、其の舞踏場の入場者に對して、入場税を、課税する處置を執つただけでございます、御話の朝から映畫を見に行く者に、特に入場税を高くするやうにしてはどうか、是は中々徴税技術上至難と考へます、前日非常に疲れ、さうして翌日午前中休みの方も、中にはおありと思ふのでございます、一一さう云ふ映畫を見る人の事由を聽く譯に行きませぬので、税率の區分は難かしからうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=107
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108・片岡伊三郎
○片岡委員 次は遊興飮食税でございます、是はもう論議し盡されて居るやうでありますが、遊興飮食税は先程も御説明がありましたが、考へやうに依つては大衆税でもあり、又是は奢侈税でもあるのであります、見解の相違でありまして、どう云ふ風にも見ることが出來ると思ひます、そこで大衆税に課する部面、言換へれば價格の割合に低くて、さうして大衆に必要なる部面と云ふものに對しては、私は此の際政府が惡税だ惡税だと言ひながら課せざるを得ぬ、財政上の補填の爲に惡税と承知しつつ課せざるを得ぬ、斯う云ふ御説明でありますから、是は諒としまして、其の中でも大衆的のものに對しては、此の際勇敢に免税した方が宜いと思はれる、あべこべに贅澤税、奢侈税に類する部面に對しては、もつと大幅に引上げても差支へないと思ふ、此の觀點に對する御所見を承ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=108
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109・池田勇人
○池田(勇)政府委員 飮食の方の課税を輕減するか、或は全廢してはどうかと云ふ御意見のやうでございますが、飮食の免税點は先般一圓五十錢を十圓に引上げたのでございます、私は所謂大衆課税の中に十圓の免税が入るか入らないか、相當議論の余地があると思ふのであります、飮食税の課かる所で飮食なさる方は、私は相當擔税力があると認めます、一般の大衆が飮食税をどれだけ納めて居るかと云ふことを考へます時に、私は御話の通り必ずしも非常に惡い大衆課税とは思つて居りませぬ、又別の贅澤の方面にはうんと課税したらどうかと云ふ御話でございますが、今でも花代に對しましては百分の百五十、世界に其の例を見ない程の税率でございます、先般百分の三百から百分の百五十に下げたのでございまして、今又花代の税率を上げる考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=109
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110・片岡伊三郎
○片岡委員 次は印紙税の問題であります、原案に依りましては戰時中暫く廢止になつて居つた所の此の印紙税が、突如として浮び上つて來たのであります、御承知の通り此の印紙税と云ふものは全く厄介なものであります、政府の方では印紙を能率的に印刷して販賣すれば、相當の額が徴れるのであります、此の豫算に依りましては三億七千八百萬圓、斯う云ふ税收が茲に加算されて居りますが、其の經費は僅かなものです、所が之を納める方は非常に煩はしいのであります、是は私が御説明を喋々と申上げるまでもなく、尚又脱法も行はれて居るのであります、さう云ふ觀點から此の徴税或は税制に對する簡素化、此の改定案の骨子である所の目的に對して、出來得るならば三億七千八百萬圓位の目腐れ金を、他の點で取入れる方法がなからうかと思ふのであります、洵に是は面倒であります、それが非常に區分されて、受取るにしましても茲に示されて居りますやうに、何圓以下は何錢の切手を貼れよ、洵にややこしいことが飛び出したと私は慨歡して居るのであります、是が三百億とか澤山な税收があるならいざ知らず、此の總豫算から見ましては僅か三億七千八百萬圓、政府の小遣ひにも足らない金です、之に對する國民の負擔と云ふものは、莫大なものであります、又之を扱ふ事務の煩雜さは、容易ならぬものがあると思ひます、さう云ふ觀點からして、私は此の税法は何かの方法に振替が出來ないか、斯う御願する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=110
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111・池田勇人
○池田(勇)政府委員 印紙税は他の税收入の非常に少い税と共に昨年八月、戰時緊急措置令に依りまして一時停止致して居りました、今回即ち其の停止致しました數種の税の中でも此の印紙税は最も收入が多い税でありますので、復活致した次第であります、御話の印紙收入三億數千萬圓は、是は印紙税ばかりでなく、登録税等も入つて居ります、印紙税は其の中六千百萬圓であります、六千百萬圓と云ふと、片岡さんは、益益少い金ぢやないか、斯う仰しやるかも分りませぬが、六千百萬圓も尚且政府としては疎かに出來ない税であります、又是は税の沿革から申しましても、建前から申しましても非常に良い税であります、國民が非常に馴れて居ります、さうして又税と云ふものは斯う云ふ流通税物の取引或は財産權の移轉、消滅を證明すべき書類の作成斯う云ふ場合に取るのが非常に樂な税で知らず識らず入つて來る税であります、印紙税は收入が少くとも、各國共昔からやつて居る税であります、さう云ふ税を何故昨年廢めたかと申しますと、非常に物資が不足致しまして、印紙の印刷にも事缺いたやうな状況であつたので、已むを得ず廢めたのであります、私は此の印紙税は將來益益擴充して行かなければならぬ税だと思ふのであります、先般、御話の取引税、斯う云ふものと税の性質が同じでありまして、非常に有望な良い税だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=111
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112・片岡伊三郎
○片岡委員 まだ訊きたいことが澤山ありますが、内務省關係に入ります、地方分與税及び配付税でありますが、是は前質問者から質問があつたかと存じますが、此の民主主義下に於て、大臣の説明に依れば、地方自治體の強化竝に財源の強化と云ふことが叫ばれて居るのでありますが、洵に結構と存じます、其の觀點からして、今回茲に提出された地方税なるものは已むを得ないと思ひます、併しながら此の經濟界の變動に依りまして非常な偏重があります、富の偏在が非常に激しいのでございます、さう云ふ觀點から見まして、政府は交付金に對しまして人口比を以て按配されるやうに示されて居りますが、果して是だけで所期の目的が達し得られるや否や、私は非常に疑問を持つて居るのであります、通俗的にはやはり人口比に依る外はないと思ひますが、若し是れ以外に方法がないとするならば、何か之を補填すべき他の機關を設置する御用意があるか否やを御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=112
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113・郡祐一
○郡政府委員 分與税の配分に付ての御話でございましたが、配付税を人口に依つて、按分すると云ふ點を御指摘かと存ずるのでありますが、財政事情を標準と致します配付税の分與に當りましては、大都市、都市、町村に依りまして、其の人口の標準を大都市に於ては總人口の三倍、都市に付ては二倍、町村に付ては一倍と云ふ工合に割増人口を定めまして、財政事情に即應致させることにして居ります、更に終戰後の状況を勘案致しまして、府縣に於きましては第三種配付税、市町村に於きましては、特別配付税是等のものの操作に當りましては能ふ限り各般の標準を斟酌致しまして、例へば災害應急の爲めの負債なんかどうであらう、公有地の面積はどうであらう、官業の規模がどうであらう、人口の増加はどうであらう、人口の密度はどうであらう、或は税額が大きいか少いか、是等の各般の事情を斟酌致しまして、第三種配付税と特別配付税を按分致しまして、さうして可及的實情に即したいと思ひます、申さば一方に於ては分與税は或る程度機械的の標準に依りまして、配分を致しますものの地位に依り配分して參ると云ふ理想を保ちつつ、現在の段階に於きましては斟酌配分を相當加味致しまして、實情に副はせたいと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=113
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114・片岡伊三郎
○片岡委員 御趣旨は能く分りました、且又それでも戰後の全國の各市町村と云ふものは相當に特異性もあるし、又他の一面から見ましても格差が相當付いて居ると存じます、それ等に對する實際に即した所の調査機關の用意ありや、之を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=114
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115・郡祐一
○郡政府委員 全般的に地方制度竝に地方財政に關しまして、地方制度調査會を、議會が終了致しました後には即刻設けたい考へを持つて居る譯です、其の地方制度調査會に於きましての一つの題目と致しまして、民主主義政治の行はれます現在に、最も適當な方法で、何と申しまするか、官に於きまして凡ゆる材料を集めて致しましても尚且つ足りない所の部分を補ひまする爲に、各方面の意見を十分斟酌致しまして、さうして實情を調査して適當なる判斷を致しまするやうな機關と云ふか、或は制度の方面に於きまして、或は税の方面に於きまして設けることを考へて見たい、斯う云ふ段取りにはなつて居ります、如何なる機構を此の際直ちに設けるかに付ては、只今の所まだ纒まつた考へはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=115
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116・片岡伊三郎
○片岡委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=116
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117・八木佐太治
○八木委員長代理 次は松永君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=117
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118・松永義雄
○松永(義)委員 大藏省に御尋ね致したいと思ひます、國債と税との關係に付て御伺ひしたいと思ひます、本年度の改定豫算に依りますと、收入は税其の他に依つて居られて、執行豫算を別にしまして、改定豫算に於きましては公債に依る收入に依つて居られないやうでありますが、來年度に於きましても果して此のやうな方針で行かれる積りでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=118
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119・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今年は只今の所一般經常收入よりも歳出が非常に多いのでありますが、偶偶財産税の收入が本年度相當豫定せられまするので、國債を發行せずに賄ひが付くと考へられるのでございます、併し來年度に於てどうなるかと云ふことになりますと、來年度の歳出ははつきり致しませぬ、なぜかと申しますと今年は進駐軍費の二百數億圓、復員費の數十億圓、斯う云ふ殆ど一年限りと思ふやうな經費が相當ございますので、來年度どの程度の赤字公債を發行しなければならないかと云ふことも只今申上げることは出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=119
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120・松永義雄
○松永(義)委員 只今の主税局長の御答辯に依りますと、本年度の支出は財産税の一時限りの收入に依つて賄ふ程度に於て支出せられて今年は間に合ふけれども、來年のことははつきり分らぬと云ふやうな御答辯のやうに聽き取つたのであります、併し來年になりますと恐らくは産業の再開とか、色々の必要なる經費が生れて來るのではないかと思ふのであります、本年度の一時限りの收入を除いて、經常の收入に依つて來年が果して賄つて行かれ得るかどうか、又それだけで日本の建直しと云ふものが出來るかと云ふ點に付て御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=120
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121・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本年度は臨時に財産税が入りますので、赤字を出すことはないだらうと想像し得る程度でございます、追加豫算がどれだけ出ますか、又如何なる事情に依りまして臨時議會が開かれて歳出の御協賛を仰がなければならぬと云ふ事態が發生するかも分りませぬ、隨ひまして本年度に於て財産税の收入で如何なる事態が發生しても賄ひ得るかと云ふ點に對して、私は賄ひ得るとは申上げられぬのでございます、來年度に於きまして、御話の通りに産業再開其の他國費も相當出なければならぬ、又出ることを覺悟しなければならぬと思つて居ります、進駐軍費の二百數億圓は名目は本年度限りでございますが、他の名目で占領軍關係の費用を負擔しなければならぬかも分りませぬので、さう云ふことを考へますと來年度は赤字公債を出さずに賄ふと云ふことは中々難かしいのではないか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=121
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122・松永義雄
○松永(義)委員 只今主税局長の御答辯に依りますと、本年度も事に依ると赤字になるかも知れない、來年度は恐らく赤字になるだらうと云ふことを豫想されるやうな御答辯でありましたが、然らば本年さうでなくても非常に物價が騰貴して、公債の重壓の爲に非常に困難なる際に、更にそれに加へて公債を發行されて、政府資金を放出されるやうなことになりますれば、益益惡性「インフレ」を増勢するやうなことになりはしないかと云ふことが心配されますが、政府の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=122
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123・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本年度に於て赤字公債を出すかも分らない、又來年度は出すやうになるだらう、斯う云ふことは私見でございまして、只今丁度あなたが其の點をはつきりなさらないと同樣に、私もはつきり致して居ないのでございます多分財産税で賄ひ得るとは思ひますが、斯う云ふ状態でございまするから、如何なる事態が發生するか逆睹し得られぬから、財産税で今年度は十分賄ひ得るとは申上げ兼ねると云ふ意味に於て申上げたのでございます、而して又今の物價情勢であると相當物價が騰貴する、然らば色々な政府の歳出も殖えて來るだらう、隨て國債を相當出さざるを得ない、斯う云ふ御説でございまするが、今以上に物價騰貴があり、「インフレ」の状態になつて來ると云ふ前提ならば御話の通りと思ひます、我々は併し物價も此の邊で止まり、又「インフレ」も支へ得ると云ふことを前提にして考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=123
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124・松永義雄
○松永(義)委員 其の點の質問は其の程度に致して置きまして、次に勤勞所得税のことに付きまして、或は他の人が同樣のことを質問されて政府の御答辯があつたかと思ふのであります、重復して御質問致すことになるかも知れませぬで恐縮ですが、重ねて御答辯を御願ひ致したいと存ずるのであります、勤勞所得税は源泉課税に於て現金を以て支拂ひ、其の他の所得税に付きましては封鎖拂でも宜い、斯う云ふやうな御話であつたやうでありますが、分類所得税の中、如何なる種類の所得税が封鎖拂でやつて行かれるのか、其の種類に付て御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=124
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125・池田勇人
○池田(勇)政府委員 舊圓と申しますか、封鎖支拂の出來ます税は原則として直接税でございまして、綜合所得税、事業所得税、不動産所得税、斯う云ふ前年の實績に依つて課税致します本年分の所得に限りたいと思つて居ります、又相續税に付きましては只今研究中でございまするが、過去に課税關係の發生致したものでございまするから、是も封鎖支拂を認めざるを得ないのではないかと考へて居ります、間接税等に付きましては原則として新圓に依つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=125
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126・松永義雄
○松永(義)委員 そこで御尋ね致したいのですが、事實上に於て事業所得は封鎖拂に依ることが出來る、然るに勤勞所得の方は新圓拂をさせられ、其の結果此の所得税を納める兩者の間に生活の上に大きな差が生じて來ることはないかと思ふのであります、一方は新圓拂に依つて多少なりともそこに性惡「インフレ」の防止の用具となるのでありますが、他方に事業所得の場合に於ては既に睡眠して居る封鎖預金を再び喚び覺まして、さうして政府の資金となつて流通過程に入りますれば、折角勤勞所得税に依つて惡性「インフレ」の防止と云ふことになつたものを、事業所得の税金に依つて助長されるやうな結果に陷りはしないか、同じ所得税であつても、勤勞所得の方は現在の段階に於ては國家に非常な利益を致すことになつて居りますけれども、事業所得の方に於きましては、眠つて居る封鎖拂ひを呼び覺まして、再び其の金を政府資金を通じて流通過程に入ると云ふことは、逆に「インフレ」を促進するやうなことになりはしないか、政府の御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=126
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127・池田勇人
○池田(勇)政府委員 是は實績課税と豫算課税――と言つては言葉が惡うございますが、事業所得其の他綜合所得税は、前年の實績に對して課税する建前を取つて居ります關係上、致し方ないと思ひます、さうして源泉課税と致しますのは勤勞所得税に限らず、配當所得税も源泉課税を致して居るので、やはり新圓から徴收することに相成つて居ります、是は今の税制がさう云ふ風な建前になつて居るから、或る程度の新圓舊圓の不公平はあると思ひまするが、實際問題と致しまして相當の納税者が昨年の所得を納税資金として積立てた、それが封鎖に相成つたのでございますから、其の封鎖支拂を認めないと云ふことになりますと納税が困難になる、滯納とか或は缺損處分をしなければならぬと云ふ状態も起り得ないとも限らないのでございます、是は賦課課税制度から當然に來る結果と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=127
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128・松永義雄
○松永(義)委員 只今政府の答辯を伺つて居りますと、一應形式的に成立つやうには思はれますが、實質上に於て現在何が故に税を徴收し、又何が故に本年度の豫算に於て、税收入を以てだけ賄つて行かうかと云ふ其の精神と云ふものが死んでしまふのではないか、即ち出來るだけ總ての税金と云ふものは新圓で以て徴收して行くのが最も適當ではないか、殊に現在五百億圓の通貨が發行され、新圓と舊圓との切換の其の六百億圓にも、今や近付かんと致しつつある際でありますので、物價騰貴が惧れられ、國民生活の安定が非常に脅威を感じて居る際に、今日納税と云ふ本來の目的に向つて、惡性インフレ防止の方に重點を求めて行かれると云ふやうな御考へはないでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=128
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129・池田勇人
○池田(勇)政府委員 納税は此の際新圓が最も望ましいのでございます、隨ひまして租税收入の中でも、大半は新圓で徴收することに相成つて居ります、唯制度と致しまして綜合所得税或は事業所得税に付きましては、是は總額で四十億圓程度でございまするが、建前としましては前年の實績に對して課税するので、所謂封鎖預金でも認めざるを得ないことになつて居ります、納税者が進んで新圓で納税して下されば、是は非常に有難いことでございます、政府は新圓を取つてさうして「インフレ」防止に充てる、所謂通貨の縮少に充てる、斯う云ふことも考へまするが、政府の歳出を賄ふと云ふことも、租税を徴收致しまする重大な理由でございますので、其の一部分が特別の事情、即ち課税の建前から言つて或る程度封鎖預金から支拂はれましても、過渡的のこととして已むを得ざるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=129
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130・松永義雄
○松永(義)委員 尚ほ一點勤勞所得と事業所得に付きまして質したいのでありますが、勤勞所得の場合に於きまして、例へば今日盛んに陳情して參ります學校の先生の給料を捉へて見れば直ちに分ることでありますが、學校の先生の給料を假に其の他の收入を加へて一萬圓と假定し、五人の扶養家族が存在すると假定致しまして、其の先生の收入がどう云ふ風になつて行くかと云ふことに付きまして、大藏省が數字の上で既に御存じのことを此處で喋々するのは止めたいと思ひますけれども、唯其の數字から見ます時には、勤勞所得税及び綜合所得税を加へて、更に又府縣民税或は市町村民税等相次いで起る所の税拂ひを考へますと、其の先生の收入と云ふものは恐らく一家五人の家族を抱へて生活をして行くのには、非常に骨が折れるのではないか、其の收入額と云ふものでは非常に骨が折れるものであると私は考へるのであります、そこで第一に御尋ね致したいことは、勤勞所得の方に於きましてはさうした僅かな收入でありながら、税金は新圓を以て支拂ふことになつて居る、然るに事業所得の方に於きましては屡屡此處で御質問がありましたやうに、同じ税を納めるものでも給料取りの方はもう駈引きなく其の儘取られてしまふ、所が事業所得を拂ふもの、例へば營業者とか或は色々な事業を行ふものには相當の融通が付けられて居る、然るにそれ等の人は封鎖拂ひと云ふことになりますと、それだけ生活の上に事業所得者は餘裕が出て居る、さうした勤勞所得者に對して源泉課税に依り現金の納税と云ふことは、俸給生活者に對して非常な生活の脅威を與へる、同じく所得者でありながら昨年の所得であるからと云ふだけで、封鎖拂ひも已むを得ないと云ふ風に仰しやられますが、併し其の結果として勤勞所得者は非常に生活が苦しい、事業所得者の方は樂な生活がなし得られると云ふ建前になつて居ることは非常に税の上から不公平ではないか、昨日でしたか税の精神に付て御話がありましたやうに、税の公正と云ふ精神に反するのではないか、此の點に付て御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=130
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131・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の家族五人の教員の方が年一萬圓の收入がありますれば、是は全部新圓の收入に相成ります、さうして其の中から税を御出しになるのは當然と思ひます、事業所得者の方に付きましては
〔八木委員長代理退席、委員長着席〕
概ね封鎖預金の支拂を認めて居りませぬ、其の點が事業所得者は金融上に於きまして相當の負擔をして居る譯でございます、今假に御話の如く、殊に事業所得者にも新圓で納税させよう、又綜合所得納税者にも新圓で納税させようと申しましても、是は例へば十萬の配當所得があつた、今年は配當停止で配當がない、斯う云ふ方に付ては納めさせやうがないのであります、是は制度がさう云ふ風になつて居るので致し方ないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=131
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132・松永義雄
○松永(義)委員 更に私の心配致しますることは勤勞所得税を納める人達に付てでありますが、既に源泉課税を差引いて其の後に殘つた收入だけで生活をやつて行きたくても相當骨が折れる、其の上に更に綜合所得を取られると云ふやうなことになります時には、或はどんなことがあつてか其の俸給生活者と云ふものは恐らく税金を拂ひたくても拂へないやうなことになる虞があるのではないか、出來るだけ今日の物價高に對しても國民は宜しく辛抱して窮乏生活に耐へて行かなければならぬと云ふ風に或は仰せれるかも知れませぬが、既に今日五百圓生活と云ふものが、事實上どんなに理窟を仰しやつても困難な時節になつて居るのでありまして、さうした困難な生活をやつて行かなければならぬ時に、色々家庭の經費とか其の他の費用が嵩まつて來て、どんな間違ひがあつてか、此の所得税が納められないやうな結果に陷りはしないか、今日の俸給生活者の收入と云ふものと今日の物價、或は家庭經費其の他の經費と見合はせて、此の綜合所得税と云ふものが果して徴收し得られるかどうか、此の點の御自信を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=132
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133・池田勇人
○池田(勇)政府委員 綜合所得税の免税點は松永さん御承知の通り三千圓でございまして新物價體系の確立の時に之を一萬圓に引上げたのでございます、あの頃でも綜合所得税一萬圓に付きましては相當考慮の餘地があつたのでございます、併し今年適用を受けます者は、今年激増致しました俸給所得者には綜合所得税は適用になりませぬで、前年の所謂ここまで物價騰貴がなかつた事業所得者等に對しまする所得に適用になるのでございます、最近非常に俸給が上りまして、年一萬圓以上になる人が來年綜合所得税を納めることになるのでございます、今の情勢を考へましたならば、來年の綜合所得税の免税點は大いに考慮しなければならぬと思ひます、併し今年一萬圓に致しましたのは、非常な物價騰貴以前即ち去年の所得に對して綜合所得税を課税するかしないかの問題であつたので、一應一萬圓と決めた次第でございます、隨て來年の綜合所得税の徴税に當つては免税點に付て十分考慮しなけばならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=133
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134・松永義雄
○松永(義)委員 そこで最後に御尋ね致したいことは、税の徴收技術のことであります、本年増税になつて果して増税通りに徴收が出來るかどうか、豫定通りに税額が上るかどうかと云ふことに付て非常に心配されて居るのであります、昭和十五年の時でありましたか、税制の改革の時か或は昭和十七年でありましたか、其の時に果して是だけの税金が圓滑に上げられるかどうかと云ふ點が非常に問題になつたことがあります、それと同じことが現在私は問題になるのではないかと云ふ風に考へて居るのであります、其の理由は、現在のやうな極めて亂れた世の中に於て、果して國民の納税精神と云ふものが正しく實行されて行くかどうかと云ふことが非常に危ぶまれるのであります、先程も御話があつたやうに、例へば事業所得税を納める人が色々な關係で金が要ると云ふことを言はれますが、併し事業資金の貸出が封鎖預金から利用されると云ふことに付て止められた其の理由の一つの中に、相當濫用せられた形があるのであります、或は又現在供出の面に於ても色々問題を起して居る、中には正直な者程馬鹿を見ると云ふやうな農民もありますけれども、又中には惡農と言はれ、横流しをやつて居るやうなお百姓さんもないとも言へないのであります、現在の世の中を見ますると、大體に於て惡性「インフレ」に依り國民の考へが變つて、犯罪が非常に澤山出て來るとか、色々な方面に於て國民道義が幾らか低下して居るのではないかと考へられるのであります、而してそれが延いては納税の上に考へられて來ると云ふことが、今日茲に提案になつて居る税金が決定されて、偖てそれの徴税と云ふことになつた時に色々な問題を起す一つの大きな理由になつて居るのではないか、尚ほもう一つは、是は只今申上げたやうに、世の中には正直な者程馬鹿を見ると云ふ譯で、最近農家に於て所得税の決定に對して非常に騷いで居ります、是は既に大藏省に於ては能く御承知の通りであります、其の農民の中には米や麥を横流しをして多額な所得を得て居る者もありますけれども、政府の方針に從つて眞面目に正直に供出して、さうして端境期には食ふや食はずの境ひに追はれ、さうして平時に於ても既に飯米を買はなければならぬと同じやうな境遇にある者は、是に至つて非常に高い米なり麥なりを買つて其の生活を支へて行かなければならぬやうな事情に陷つて居る者も相當あるのであります、固より政府は配給米でやつたら宜いではないかと仰しやるかも分りませぬが、中には斯うした眞面目な供出を行ひ、さうして食ふや食はずの境ひに陷つて居る者があるのであります、そこで我々はさうした人達に對する所得税の決定に對しては、其の決定を税務署に行つて直して貰ふと云ふことも一つの方法でもありませう、又他方にさうした決定を受けてしまつてどうにも斯うにもならないやうになつて居る所の納税者に對し、其の納税の方法なり時期などに付て考慮してやると云ふことも一つの方法であると考へるのであります、それで何時でも問題になることは、所得税の調査委員會であります、所得税の調査委員會と云ふものは誰が見ても殆ど無用の長物であります、之を改めて行つて、さうしてもつと民主化して、今日税金を納めて居る所の耕作者、或は勤勞階級、勤勞所得税を納めるやうな人を入れて、所得税の決定に對して大いに考てへ行かなければならぬと云ふことは當然のことであります、併しながら現在の所得税の調査委員の構成と云ふものは、或は私の言葉が言ひ過ぎかも知れませぬが、所得税の調査委員と云ふものは屡屡裁判所へ持つて行かれるやうな事件を起し、さうして一部或は自分の知合ひの人の爲に運動をして唯税金を負けてさへやれば宜いと云ふやうなことをやつて居つたと言つても過言ではないと思ふ、先づ以て私共は此の所得税の調査委員會と云ふものに、眞に税金を納める、又痛切に税金を納めることに對して關係を持つ勤勞階級の人を入れて、そして税金の決定に對して十分に審査する必要があると思ふのであります、其の點に關して先づ以て御尋ね致したいと思ふのであります
更に續いて御質問を致したいと思ふことは、今年の決定に依りまして、既にもう決定になつて納めなければならぬことになつて居る者に對して、既に其の決定が其の個々の家庭の生活に依りまして、非常な差異を生じ、生活の面に於て苦しい結果に陷る人もないとも限らないのでありまして、殊に最近は御承知の通りに勤勞所得税に付ても色々な議論がある、或は農業所得税に付きましても農民から非常な議論がある際でありまして、斯うした人達をして眞に税の本質を理解せしめ、そして是は本當に納めなければならぬものであると云ふことを一面考へさせると同時に、他方に又實際に氣の毒な人に對して、其の納税の時期なり或は納税の方法に付きまして考へて戴けるやうな徴税に關する委員會を御作りになるやうな考へはないか、即ち税金を税務署が取上ぐる時に、一面協力して、一面税務署に警告し、そして眞に納税者が喜んで納税し得るやうに、徴税委員會と申しますか、民主化した委員會を構成し、税金の取立てに對して圓滑の途を圖つて行く方が適當だと思ふのであります、御考へは如何でございませうか、其の二點に付きまして御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=134
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135・池田勇人
○池田(勇)政府委員 所得調査委員會の機構に付きましては、將來御意見のある所を容れまして考慮致したいと思ひます、それから本年の決定が過當であつたと云ふ場合には、異議の申出あり次第に早速訂正致しますやうに特に注意を致して居りまして、一時全國數箇所に於きまして農業所得が過當であると云ふので物議を釀した例もございましたが、只今は殆ど解決致しました、今後の納税にさしたる支障はないと考へて居ります、尚ほ其の後の經濟状況に依りまして納税が困難になつたと云ふ場合に於きましては、所得税法第七十五條の規定もございまして、輕減免除の處置を執り得ることになつて居ります、又輕減免除に付きまして御話のやうな調査機關を特に設けると云ふことの必要はないかと思ひます、所得の決定等は非常に難かしいことでございますから、皆樣の御意見を聽かなければ全きを期する譯には行きませぬが、個々の人に對しましての輕減免除は税務署長が考へれば相當出來ると思つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=135
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136・松永義雄
○松永(義)委員 大藏大臣が來られましたので、早速御質問致したいと思ひます、是は委員會に於ても屡屡大藏大臣が御話しになつて居りますけれども、國債の整理の問題であります、大藏大臣の御答辯に依りますと、實際に付ては觸れたくないとか、或は極めて消極的な御答辯に終つて居るのであります、けれども私の考へる所に依りますと、恐らく大藏大臣は、それは言ひ過ぎかも知れませぬが、口ではさう仰しやつて居られるものの、やはり心の中では心配して居られるのではないか、或はさう申上げますことは私の考へて居ることを別の言葉で申上げて居ることになるのかも知れませぬが、現在の國債は一體どう云ふ風にやつて行かれる積りか、昭和五年に於きまして國債は色々のものを入れまして約六十二億圓位になつて居るのであります、さうして其の時の國民所得が百六億圓になつて居るのであります、現在の國債は昨年の終戰時に於きまして千二百億圓、其の中戰時公債が九百何十億圓であります、國民所得はどれ位になつて居るかと云ふ計算でありますが、二百五十億乃至四百億と云ふ數字が調査して出て居るのであります、昭和五年に於きましては公債の額が國民所得に對して約六割であります、所が昨年の終戰時に於きましては二百五十億乃至四百億の國民所得に對して一千二百億と云ふことになりますれば、約三倍乃至五倍と云ふ大きな額になつて居るのであります、而して我々は我々の年輩の者には能く分るのでありますが、昭和五年に於ける所の生活と、今日の生活との間にはどれ位の大きな差があるかと云ふことは數字は示さずともはつきり致して居るのであります、然らば昭和五年に於て六割の國債の元利を支拂つて行き、さうしてあれだけの生活をして居る、所が昨年終戰時に於ては三倍乃至五倍の公債が出て居る、其の元利拂ひを國民が是から背負つて行かなければならぬと云ふことになります時には、國民の生活と云ふものがどうなつて行くかと云ふことは、それだけでもはつきり分ると思ふのであります、それで大藏大臣に御尋ね致したいことは、斯うした重壓を與へて居る所の國債を此の儘にして、觸れたくないとか、或は又是はそつとして置くんだと云ふやうな御考へでいつまでもいらつしやるかどうか、それとも亦是は何とかしなければならぬものであるから整理をして行きたい、或は又順次道を履んで整理の途を考へて行きたい、其の何れの場合であるか、大藏大臣は現在千四百億とかになつて居ると言はれる多額の公債に對して、どう云ふ風にやつて行かれんとするのか、此の點に付きまして御伺ひを致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=136
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137・石橋湛山
○石橋國務大臣 大變親切な眞面目な御尋ねでありますが、一寸御話の中の數字に間違ひがあるんではないかと思ひますのは、最近の國民所得と云ふものは、實は色々の關係ではつきりした計算が出來ませぬが、まさか二百億圓や四百億圓ではないのであります、やはり二千億とか何とか云ふ風に考へられると思ひます、でありますから現在の日本の國の國債が少いとは申し兼ねますけれども、問題は今後の經濟がどうなるかと云ふことにあるのであります、若しも是が今の七、八千萬の國民の中から純然たる失業者を出す、其の中の大部分の働ける者が遊ばなければならぬにも拘らず、進駐軍費でありますとか、或は賠償の關係でありますとか云ふやうなことから、今後の財政はやはり赤字が續くと云ふことでありますと、是は現在の國債の負擔が出來ないどころぢやない、是は非常なことに相成ります、併しここ一年になり半年なりは、非常に苦しい財政状態でありますが、幸ひに國民の協力に依つて此の危機を切拔けて、少しでも増産に向つて行く、さうして七、八千萬人の國民の中で、働き得る者が兎にも角にも何等かの生産に從事が出來得る状況に取付き得るならば、私は現在の國債位は容易に負擔して行けると思ひます、と云ふのは物價の關係から申しましても、昭和の初め頃に比較すれば、今は何倍にも上つて居ります、今數字を覺えて居りませぬが、物價は相當上つて居る、最近の状況でありましても、終戰前位と比較しても公定價格で五倍位に上つて居る、是は元來戰爭中の公定價格が低過ぎたと云ふやうな譯でありますから、假に戰前の物價の十倍と云ふことが、現在の物價の「レベル」である、さうして、それに依つて物價の安定をし、賃金、俸給其の他との凸凹を訂正して、均衡を保ち、そこに經濟の立直しをして行くとしますれば、千五百億ある國債は、以前の實質から申せば百五十億圓、斯う云ふ譯でありますから、數字は非常に多く上つて居りますけれども、冷靜に考へれば驚く程の金額ではないのであります、問題は是から増産が出來るかどうか、實に是に掛つて居ります、増産が出來ると云ふことであれば、繰返して申しますやうに、さして心配することはない、増産が出來ないと云ふことであれば、是は國債どころの問題ではない、もつと心配しなければならぬ事態が來る、斯う云ふことだと私は考へて居る、無論此の國債と云ふものも、やり方に依つては整理することも出來るのであります、併し何時も申上げますやうに、國債は決して金持などが持つて居るのではない、個人が持つて居りますのは、全體の國債の慥か一、二「パーセント」でありまして、是は御話にならない、九十何「パーセント」と云ふものは金融機關、其の中でも郵便貯金或は地方の農業關係のものと云ふ所に非常に多いのであります、詰り小さな預金者、一人々々とすると零細の預金者のある所に、割合に國債が多い、斯う云ふ現状になつて居ります、ですから國債を飛ばすと云ふことは結局、預金、殊に郵便貯金などを飛ばさなければならぬと云ふことになる、是も出來ない限りではないのでありますが、何しろ今度の補償の整理に依りまして、相當色々の波瀾を生じる、それから預金者、被保險者等にも或る程度の迷惑、小さな方には及ぼさない積りでありますが、相當な迷惑が及ぶ、其の上に更に國債をやると云ふことになりますと、折角保護しようとして居る小さな預金者に又損害が及ぶ、斯う云ふことになりまして、其の點も甚だ思はしくありませぬし、それから動搖を何處までもやつて行くと云ふことは、結局増産、經濟界の建直しと云ふ上に有形無形の損失があると致しますと、是は直接には所謂勤勞階級には損害は與へませぬでも、やはり有形無形に經濟界の波瀾を促すと云ふことは、隨て失業者等を多く作ると云ふことでありますから、國家全體としても非常に不幸でありますし、又直接其の失業をしなければならぬ諸君の困難は言ふまでもありませぬ、斯う云ふ色々の觀點を考へまして、近く其の全貌の御審議を煩はすことになりますが、經濟界の措置と考へ合はせて、國債はやはり整理しないが宜しいと云ふ結論になると同時に、將來のことを考へますと、前申しましたやうに是は今回の整理に依つて建直りが緒に付いて參れば、國債だけを背負つて行くことは、困難なことではない、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=137
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138・松永義雄
○松永(義)委員 私の申上げました國民所得の額でありますが、二百億乃至四百億と云ふのは、昨年の八月十五日の國民所得調査別表に其の數字が出て居るのであります、併し大體の數字ですから、それはそれで宜いとして、今二十億の國民所得がある、是は色々な批評が出て居りますやうに、今の國民所得が果してそれだけ生産物が殖ゑて居るものであるのか、それとも名目的だけの金が上つての國民所得であるのかと云ふ問題になれば、即ち今の「インフレ」の原因で上つて居るのではないか、そこで二千億の國民所得があるのだから、其の中から税金を取立ててさうして國債を返して行けば宜いのぢやないかと云ふことになりますれば、是は極端な言葉かも知れませぬが、金は今の内に借りて置く、其の内に反古紙になるから、反古紙になつた時に、札が多くなつた時に、借金を返せば宜いのだ、即ち惡性インフレに乘つて、國債の償還をして行かうと云ふ考へであつて、極めて不健全な考へであるやうに私は思ふのでありますが、大藏大臣はどう御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=138
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139・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論實質的に昭和の初まり頃に國民所得が幾らでありましたか、百億圓を切つて居りました、それが現在は正確ではありませぬけれども、二千億圓とか何とか言はれて居るのは、必ずしも昭和の初まり頃のものの實質的に二十倍になつた譯ではなくて、大部分が貨幣價値の低落、即ち物價騰貴でさう云ふことになつた、同時に國債もさう云ふことになつて居る、國債も昭和の初まり頃は實質を持つて居つたけれども、今日は名目的に千何百億とか、斯う云ふ譯でありますから、それは貨幣價値で勘定した場合は同樣であります
それから後の御尋ねのそれは「インフレ」に依つてと云ふことでありますが、現在までの状況は確かに「インフレ」に依つて整理されて居る譯であります、國債は「インフレ」に依つて名目的の數字が殖えて居るのであります、國民所得も名目的數字が殖えて居る、それで計算されて居る譯であります、併し後のことを考へると、私の言ふのは今の御話とは逆でありまして、詰りもう既に「インフレ」は此處で大體終つて、あとは今後の手術に依つて、經濟界が立直りに向つて、生産が漸次殖えて行けば、負擔が出來る、斯う云ふ譯でありまして、決して此の倭どんどん「インフレ」を續けると云ふ意味ではないのであります、國債の整理は言ふまでもなく、さう云ふ風に増産をやつて行くと云ふことで、段々貨幣價値を上げる、詰り貨幣の實際價値を上げると云ふことでありますから、是は國債の所有者に取つては非常な利益である、言換へれば預金者に取つて利益であると云ふことになります、此の後に「インフレ」を續けて、第一次世界大戰の「ドイツ」の場合のやうに、貨幣價値を下落されて、國債はあつてもなくても同じやうなものにすると云ふことも、國債整理の一つの方法でありますが、さうすれば是は國債の所有者或は銀行の預金者等には非常な損害を掛ける譯であります、樂なのは後の「ドイツ」のやつたやうになることが、實際は樂でありますが、それでは一回に於て非常な弊害を生じますから、私のみならず、今の日本の全體の輿論が第一次世界大戰後の「ドイツ」の如きやり方には全部反對な譯であります、是から苦しいながらも増産をし、貨幣の實質價値を段々と高めつつ整理をしよう、斯う云ふ譯でありますから、御話とは逆な考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=139
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140・松永義雄
○松永(義)委員 そこで先程主税局長に御伺ひしたことに後戻りするのでありますが、本年度の豫算を見ますと、税收入其の他公債に依つて賄つて居られるやうでありますが、而して支出の面に於ては補助金其の他相當生産の方へ支出をせられて居るやうでありますが、本年度の豫算の生産方面に對する政府の支出だけで以て果して此の「インフレ」なり、大きな目で見れば國債の市價を維持して行かれるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=140
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141・石橋湛山
○石橋國務大臣 私の考へでは今回の豫算――そのうちに若干追加豫算が出ますが、其の支出に依つて現在の資材等の關係から見ますと大體あれだけの仕事を十分にやつて行けば相當の成功だと思ひますけれども、若し足らなければ無論又追加豫算を秋なり冬なりの議會に出して御協賛を仰いで宜いのであります、若しそれだけの仕事が出來ると云ふことになれば是は寧ろ豫期以上の成功ではないかと考へて居る譯であります、今の惱みは右から左に資材が十分ありませぬから、隨て失業などをして來る諸君に直ぐに仕事をやつて貰ふと云ふ場合に、澤山な資材を要するものなどの仕事に當れない、隨て理想的に申せば生産に寄與するやうな、發電工事とか云ふやうなことをやることも非常に好ましいのでありますが、さう云う方面には多くの仕事が出來ないぢやないか、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=141
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142・松永義雄
○松永(義)委員 そこで箇條書きに聽いて行きたいと思ひますが、本年度の生産増加の目標の爲に追加豫算を假に出されるとしまして、其の財源は何處に求められますか、財産税に求められるのでありまするか、それとも又公債のやうなものを發行されるのでありますか、どう云ふ風になさいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=142
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143・石橋湛山
○石橋國務大臣 先般も御説明申上げましたやうに本年度に於ては財産税を使ふことになつて居りますが、若しもそれでも足りない、それで是が生産を伸ばす方法になると云ふ場合には公債を發行して差支へないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=143
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144・八木佐太治
○八木委員 私が大藏大臣に御尋ねせんとする所は、今囘の税制の法案なるものは、第一に徴税の簡素化と云ふことがありまするが、能く見てみますと、其の内容は特別行爲税が廢止されて、尚ほ臨時利得税が衣を替へて出て來て、而も國民の負擔は大きくなつて居るのであります、併しながら私は、今囘の國民負擔の増税に對して兎や角言ふのではないのでありますが、此の税制の法案を根本的に變へることは出來ないか否やと云ふことを大藏大臣に一言御尋ねしたいのであります
地方分與税は昭和十五年の議會に提出されまして、我々も神戸市の市會議員をして居りました時に、此の分與税なるものは地方税に對する非常なる脅かしをするものであると云ふ意味から、都市聯合して之に反對したものでありますが、遺憾ながら是が通過致しまして、今地方分與税なるものに依つて地方はやつて居りますが、此の地方の分與税なるものを、逆の方向に、政府は税法の徴收と云ふことを地方に委して、地方から政府に納付をさすと云ふやうなことにして、本税、附加税或は云々と云ふ三本建ての税法を一本建てにして、而して此の税法を簡素化したらどうかと云ふことを申上げたいのであります、現在地方で家屋税を徴つて居つたのが本税となつて中央に委讓して、而して市の方に又必要な額を分與されるのでありますが、政府は地方に於て是までに徴收して居つた額は、其の比例等は政府に於て略略定めて、地方に合算して定めて、徴收法を地方に委したならば、此の徴收の方法なり税法の決定が一本建てになつて非常に簡素になるのではないかと御尋ねする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=144
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145・石橋湛山
○石橋國務大臣 分與税等の問題は御審議中の地方税制などの問題と絡み合ひまして、段々地方の自治と云ふものを本格的に高めて發展さして行くと云ふ場合には、自然其の地方に獨立の財源もなければいけないと云ふことになりますので、それ等の問題と相見合ひまして今後此の地方税の問題は十分研究しなければならぬと思つて居ります、でありますから、私も以前家屋税が各地方毎に取られて居る頃のことも知つて居りますが、あれにも中々面白味のあつた事と考へて居ります、併しあの分與税制度の出來る時に其の弊害を見て今日の制度の樣に改めたいともの思つて居ります、今日の制度亦必ずしも萬全とは言へないのであります、國税に付ても研究すべき點が多々ありますが、就中地方税制に付ては十分今後檢討して行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=145
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146・八木佐太治
○八木委員 私の申上げたことは大藏大臣には大體御諒解されたので、税法に對しては考へると云ふことでございますが、要は私が之を簡素化せよと言ふことは先づ大藏大臣が大藏省の方に於て人件費を減して、さうして他の省に範を示すと云ふやうにやつて戴きたいと思ふのであります、何となれば今日此の増税をせなければならないと云ふことは、一面に待遇改善に於て非常に人件費が高まつて居るのであります、是は量よりも質でせなければならぬのにもがらず、今日の政府のやり方は質よりも量と云つたやうな、人さへあれば何事も出來ると云ふやうな觀念を持たれて居る、洵に私は遺憾に存じて居る次第であります、仍て量よりも質と云ふ意味に於て、質の良い人には十分な待遇をして、さうして此の際に人事の行政をやる、又各省の整理をしてやるに付ては、先づ大藏省から機構の改革をして、さうして大藏省は是までは是だけの人でやつて居つたのだが、事務の機構を改革して簡素にした爲に斯う云ふ風に人件費が減つたぞと云ふことをば、豫算の上に於ても各省に範を示されて今後其の意味に於て總てに研究されんことを願ひまして、私は此の問題は打切る次第であります、私はまだあとありますけれども、時間がありませぬから明日やらせて、戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=146
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147・苫米地義三
○苫米地委員長 一寸御報告申上げることがございます、委員の異動がございました、喜多楢治郎君が辭任されまして、其の補闕として、中野四郎君が議長に依つて指名されました、此の段御報告申上げます、本日は之を以て散會致します、明日は午前十時より開會致します
午後三時四十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00619460809&spkNum=147
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