1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月十日(土曜日)午前十時十六分開議
出席委員
委員長 苫米地義三君
理事 殿田孝次君 理事 中野武雄君
理事 深津玉一郎君 理事 八木佐太治君
理事 松永義雄君 理事 山崎常吉君
理事 今井耕君
小川原政信君 坂本實君
田中實司君 寺尾豐君
江川爲信君 川島金次君
榊原千代君 玉井潤次君
米山久君 太田鐵太郎君
橋本二郎君 原尻束君
増井慶太郎君 布利秋君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
國務大臣 植原悦二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 荻田保君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 池田勇人君
專賣局長官 杉山昌作君
大藏事務官 前尾繁三郎君
農林事務官 坂田英一君
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本日の會議に付した議案
所得税法の一部を改正する等の法律案(政府提出)
臨時租税措置法を改正する法律案(政府提出)
地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=0
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001・苫米地義三
○苫米地委員長 開會致します、質疑を續行致しまして、八木佐太治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=1
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002・八木佐太治
○八木委員 政府委員に第一點として御尋ねしたいことは、今日通貨が五百億以上既に六百億近く流出して居ると云ふことになつて居りまするが、先づ此の通貨が何處に偏在して居るかと云ふことを御尋ねしたいのであります、今日我々が政府から制限されて居る家庭の生活費と云ふものは、世帶主三百圓、あと百圓で、假りに五人家族と致しますと、七百圓に於て一箇月の生活を經營しなければならぬことになつて居ります、さう致しますと、日本の國民全般の金がどれ位になつて居るかと云ふと、假に日本の總人口を七千萬として、五人を一家族と致しますならば千四百萬戸になるのであります、此の千四百萬戸に七百圓を掛けますと九十八億圓、約百億圓の家庭生活費と云ふことになるのでありますが、此の六百億圓に近い通貨が何れの方面に偏在して居るかと云ふことを先づ第一點に御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=2
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003・池田勇人
○池田(勇)政府委員 通貨は三月の新圓引換以後毎月増加の趨勢を辿りまして、御話の通り八月一日には五百億を突破する状況になりました、此の五百億の新通貨が何れの方面に滯留して居るかと云ふことは、只今日本銀行等をして調査致させて居りますが、確とした數字は分りませぬ、大體農村漁村方面に相當行つて居るのではないかと云ふ想像は付くのでございますが、はつきりした數字は持合はせて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=3
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004・八木佐太治
○八木委員 私は此の點を御尋ねしたいのでありますが、眞面目な國民は七百圓の金で窮屈な經濟を保つて行き、一方新圓を多く獲得したる人は自由な立場に於て贅澤なる暮しをして居る、さうすると眞面目な者は家の財産を賣り飛ばしてでも食つて行かなければならぬ非常な苦痛な立場に置かれ、場合に依つては此の新圓を此の儘にして置くと云ふと、茲に財産税に依つて、豫て度々の御答辯の通り、若し税務署に於て競買すると云ふ場合に於ては、眞面目な者は物納に於て財産税を取られ、又惡徳と言ふと口廣いやうでありますけれども、新圓を獲得して居る者は之に依つて競買に附したものを買取ると云つたやうにして、眞面目な者と惡い者とが丁度交代になると云ふやうなことになるのであります、仍て私は此の際に其の新圓を何とかして財産税を賦課する前に囘收する方法はないか、さうして置かなければ今五百億以上の金が偏在して居るのがどう云ふ風に流れるかと云ふことになりますと、私は茲に惡いことが起きはしないかと思ふのであります、仍て國民には須らく平等の生活を與へるやうに政府は之を行はねばならぬ、今日のやうなことをして此の儘にして置くと云ふことは、國民の生活の不平等を其の儘に見て置くと云ふやうなことになるのであります、政府は國民の生活を平等化させると云ふことが第一の要點ではなからうかと思ふのでありますが、此の點に付て先づ新圓を囘收するのに如何なる方法を御持ちになつて居るか御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=4
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005・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今の制度では封鎖預金の引出しは一人百圓に制限致して居ります、隨ひまして五人家族の人は五百圓引出し得られます、併し俸給生活者等に於きましては、俸給の五百圓までは新圓で出すことに相成つて居りますから、家族五人の俸給生活者は千圓の新圓を得ることになります、又一面農業或は物品販賣業等營業者に付きましては封鎖預金の引出しを認めて居りませぬ、是は五月一日からさう云ふ風に改めまして、新圓の入つて來る方面には生活資金としての引出しは認めませぬ、隨ひまして建前としては、國民が一定額以下の新圓で生活する建前を取つて居ります、唯問題は、農業其の他商業の方々は商品を賣りまして、所謂俸給生活者の制限以上に新圓が入つて來る場合があるのであります、其の制限以上の新圓が滯留して居ると思ふのでございます、而して之を一戸當りに致しますと、新圓は大したものではない、唯一戸當りではなしに、特殊の人が非常に澤山の新圓を持つて居ると云ふことは考へ得られます、隨ひまして財産税施行後、物納になりました資産を政府が競賣致しました場合に、特殊の新圓を澤山持つて居る方が競落する、買受けると云ふことは、事實上あり得るかも分りませぬが、政府と致しましては、斯かる場合に新圓の出所を探求するとか、又さう云ふ新圓を澤山得られた人には昭和二十二年分の所得税を十分賦課し得ると思ひまするから、御懸念のやうな弊害は餘り起らないではないかと考へて居ります、又さう云ふ場合に、面白からざる方面に財産の移り變ると云ふことは、政府と致しましても相當注意しなければ相成らぬと考へて居ります最後に新圓の吸收策如何と云ふ問題でございますが、政府は此の點に付きまして苦慮致して居ります、併し何と申しましても、通貨の信用、國民經濟が本當に確固たる信用經濟の上に立たなければ、中々新圓の吸收と云ふものは、言ふべくして實效が擧りませぬ、隨ひまして政府は出來るだけ早い機會に、財界整理等諸般の信用恢復、通貨の安定に向つて凡ゆる施策を致すべく、今計畫を致して居るのでございます、此の計畫が實施されましたならは、新圓の吸收も案外圓滑に行くのでないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=5
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006・八木佐太治
○八木委員 色々新圓の囘收に付て御考慮になつて居ることを承りまして先づ私は諒解するのでありまするが、私の思ひまするのに、斯くも六百億圓に近い通貨が流出して居ると云ふことは、此の治安の不安の折に總てが銀行預金をしないで、自己の家に之を持つて居ると云ふことは、即ち銀行に預けたならば再び封鎖されないかと云ふ懸念を持つて預金をしない人も相當にあるやうに思ふのであります、それからもう一つは言葉尻を拾つて言ふのではありませぬけれども、四人の人には四百圓と、それから世帶主に三百圓、此の金を貰つて七百圓の合計を持つと云ふことを申上げました所が、俸給生活者である場合には千圓幾らと云ふことになつて居りまするが、戰災者に於て家が燒かれ、地代が入らず、家賃は入らずしてからに、何等得る所のない、唯七百圓のみで暮すと云ふやうな點が相當あるのであります、さう云ふ點を、だから收入があるからと云つたやうなことで御安心なさらないで、さう云ふ人も往々あると云ふことを御考へになつて御考慮願ひたいと思ふのであります、それと今申上げましたやうに、新圓を囘收するには、先づ第一に銀行に預けて置くならば、自由貯金は再び封鎖をしないと云ふことを政府が明かにして戴くならば、自由貯金を治安不安の上からも預ける人が多いのではないかと思ふのであります、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=6
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007・池田勇人
○池田(勇)政府委員 政府は新圓を再び封鎖することは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=7
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008・八木佐太治
○八木委員 次に家屋税の問題でありますが、家屋税を二・五のものを三・五に引上げられたと云ふ點に於きましては、今日の家屋を幾らに賃貸價格を御見になつて居るかと云ふことが第一點に御聽きしたい、是は物價が非常に騰貴して居りまして、過去の建築費とは相當に價格が上つて居るのであります、それに對して隨て賃貸價格も上げなければならぬのでありますが、賃貸價格を上げるに付ては、先づ家賃を上げてやる、家賃を上げるならば、それに依つて即ち税率が變つて來るのであります、現在の儘の釘付けの家賃に於て二・五を三・五に引上げるよりも、寧ろ基本の家賃を上げることにしてやつたならば、税率の一の増加よりも收入が殖えるのぢやないかと思ふのでありますが、現在の家屋の賃貸價格を何れに御見になるのか、又戰災に依つて、又疎開に依つて失つた日本全國の家屋がどれ程にあつて、一の増加に依つてどれ位に家屋税が上るものか、唯率を上げただけでは、私は減つた家屋に對して補ひが付かないと思ふのでありますが、其の點を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=8
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009・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家屋税は昭和十五年七月一日現在の家屋に付きまして賃貸價格を調査致しまして、十七年一月一日現在の賃貸價格と致しまして、其の賃貸價格に所定の税率を乘じて家屋税を納税することに相成つて居ります、此の家屋の賃貸價格は五年毎に一囘改めることに致して居るのでありまして、其の改めますまでは其の公定の賃貸價格に基いて徴收することに相成つて居ります、現今の家屋拂底状況から申しまして、家屋税はもう少し引上げる餘地があるのではないかと云ふ御意見でありますが、公定の賃貸價格に所定の税率を乘ずることに相成つて居りますので、此の賃貸價格を改めざる限り増徴は難かしいのであります、隨ひまして今囘の税率の引上方は地租、營業税よりももつと多く致しまして、咋年までは賃貸價格に付きまして附加税を添へて百分の十に相成つて居りますが、今回の税率引上竝に附加税の引上に依りまして百分の二十一に相成つて居るのでございます、即ち昨年よりも本年は倍以上の負擔の増加に相成つて居る、併し是はここ三、四年の中に新たに賃貸價格を調査致しまして、適正の課税が出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=9
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010・八木佐太治
○八木委員 經營者から申しますと、現在の家賃に於て税率は今言はれた如くに負擔は多くなる、さうして家賃は其の儘に釘付けにされて居ると云ふことは、戰災に遭つて家を失ひ僅かばかり殘つて居る其の人等が、其の家賃に於て生活困難の状態も多數にあるのでありますし、それはほんの一部分でありますけれども、今日の物價情勢から見ましても、今新築しつつある家から見ましても、現在の燒殘つた家と申しませうか、古い家に對しては相當家賃の値上をしてやる必要がありはしないかと思ふのであります、之を今以て釘付けになつた家賃を固持して居ると云ふことは、實に家主經營に對して氣の毒に思ふのでありますが、家賃の値上をすることに付て御意思があるや否やを御尋ねします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=10
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011・池田勇人
○池田(勇)政府委員 適正な家賃を定めるべく物價局は先般から家賃の限界價格を研究致して居りまして、まだ發表は致して居ないと私考へて居りますが、何れ適正家賃に付きましても政府の認める所を發表することと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=11
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012・八木佐太治
○八木委員 税の方の問題は是で止めて置きまして、今度は地方局長に御尋ねしたいと思ひます、地方局長に御尋ねせんとする所は、五大都市が特別市制を要望して、曾ては陳情に來、尚ほ今度は建議案を出すことになつて居りますが、此の都市が獨立された時に於きまして其の殘存した所の經濟、又は特別市制實施に於ての其の地歩と云ふやうな點に付て御知らせ願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=12
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013・郡祐一
○郡政府委員 五大都市の特別市制は從來から問題になつて居りましたが、終戰後所謂五大都市の模樣が可なり變化致して參つて居ります、それから一方に於きまして此の度の地方制度の改正で、監督權の整備を可なりに行ひましたので、所謂二重監督と云ふ見地から五大都市が特に著しく不便、不利な状況にあるとは必ずしも申せないかも知れませぬが、併しそれ以上に五大都市のやうな規模を持ちました所に付きましては、制度上一般市制と別箇の制度があることはより望ましいと申します點に付きましては、是は十分檢討致さなければならぬと存ずるのであります、隨ひまして議會も直ちに考へて居ります地方制度調査會に於きまして大都市部會の特別部門を設けまして、此處で檢討致さなければならぬと思ふのでありますが、其の場合の最も論點となり難點と相成ります部分は、殘存部分を如何に經理致すかと云ふことでございます、此の敗政的な問題或は財産問題、是等の問題に付きまして非常な混雜を此の際起すと云ふやうなことでありましては、終戰後の事態に即しない部分もあるのであります、隨ひまして五大都市の特別市政を考へます際の殘存部分の處理に付きましては、各市毎の實情に應じまして當該府縣、當該市の實情に應じまして、事柄を考へて參りたいと思ひます、卒然と五大都市の都市部を除きました殘りが何れの府縣に於ても殘存部分として獨立の縣をなす力があるか、或はそれが適當であるかと云ふ點には疑念の存する點が多分にあるのでございます、各都市別に實態に付きまして檢討を加へて參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=13
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014・八木佐太治
○八木委員 合併獨立に付ては色色政府の方に於ても善後に對する御研究、御注意をなさることを私は喜ぶ者であります、唯茲に一點御尋ねして置きたいことは、兵庫縣の揖保郡に於きましては相生市と龍野町との附近町村が合併をするのでありますが、先づ揖保郡の一部を網干、姫路に合併し、更に他の一部を今度相生市に合併されるのでありますが、さう致しますと、南北に長い揖保郡は龍野に於て中斷されまして、其の揖保郡が二つに分れ、南部の方に於ては姫路市に合併されて、又一つの御津村と云ふ所が離れ島の如くになつて居るのであります、部落々々が揖保郡に連絡する場合には姫路市を通つて連絡し、尚又北部に連絡せんとする場合には相生市を踏切らなければ是が北部に連絡出來ないと云ふやうな地形になつて居るのであります、左樣な地形を持つて居る所を合併されるに付きましては御考慮になつたのであらうか、なからうか、又合併に付ては色々異論がありまして、全會一致と云ふ點にはなつて居らぬのであります、私は此の合併に付ては何等の意見を持つ者ではないのでありますが、殘存の郡民が郡に連絡を執るのに、今は地方事務所があるのでありますが、總てが不便になるのであります、殊に龍野町が相生市になりますと揖保郡の揖西、地方事務所と云ふものは何處に置かれるのかと云ふ點に付て郡内の人も相當に疑問を起して居るのであります、由つて左樣なことを御考慮になつて相生市、龍野近村部落の合併を御承認になつたのでありませうか、或は又御承認になるのか、餘所から一寸聞きますのには、此の合併に地方局長なり、内務大臣は諒解をされて居ると云ふやうなことを聞きましたので、此の際一寸御尋ねして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=14
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015・郡祐一
○郡政府委員 市域擴張に伴ひまして郡外に飛地が出來て居りまする現象は全國所々に見受けられるのであります、郡が御承知の通り現在地理的名稱としてのみ存して居る、而も市域擴張と云ふものは頻繁に行はれますが爲に舊郡に付て見ますと洵に繋りの惡い状態が所々に起つて居るのであります、御指摘の相生市の隣接町村の合併の場合に於きましても、當該の關係市町村會の御意見に付ては十分之を内務省と致しましても尊重致さなければならない立場にあるのでありますが、同時に縣の所見を十分に徴しまして、而して市域を擴張致しました後に町村の連絡が能く付きますやうに、隨て郡の地理的名稱と云ふものは今日變更する途もないのであります、地方事務所等に付ては最も便利な場所に之を置き、適當な整理を致さなければ町村に非常に御不便を掛けることになります、市域の擴張と同時にそれ等の點に付ても十分檢討を致さなければ相成らぬと存じて居ります、縣の所見を急速に徴しまして、相談を致す豫定に致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=15
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016・八木佐太治
○八木委員 地方の合併問題に付ては今地方局長からの御話で能く了解したのでありますが、どうかさう云ふ風に部落が千切れ千切れになると云ふことを、十分に御考慮になつて戴きたいのであります、此の點を御願ひして置きまして、次にもう一つ殘つて居りました飮食税の問題でありますが、色々申されましたから私は重ねて之を申すのではないのであります、今日飮食税全廢と云ふ發言の方もあつたのでございますが、私は之を全廢とまでは申すのではないのであります、けれども今日の物價情勢から見まして、飮食税の單位をもう少し上げてやつたらどうかと思ふのであります、結局是は私が仲介の勞を取ると云ふ意味になるのでありますけれども、取らうと云ふ、其の計畫と、全廢論との中間に於きまして、單位を三十圓位な所に引上げてやる意思がないかあるかを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=16
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017・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先般大藏省物價部に依つて配布致しました飮食料金の最高價格は、三十圓に相成つて居ります、然る所飮食税の飮食料金の免税點を三十圓に致しますと、飮食に對します遊興飮食税を撤廢したと同樣の結果に相成ります、三十圓の飮食料金が最高であるならば、只今の十圓の免税點は適當であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=17
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018・八木佐太治
○八木委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=18
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019・苫米地義三
○苫米地委員長 榊原千代君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=19
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020・榊原千代
○榊原委員 煙草や鹽の收入はどの位でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=20
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021・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私の所管外でありますので、はつきりした數字は申上げられませぬが、專賣益金として入りますものは、本年度六十五億圓を見込んで居ります、而して鹽の專賣に依りましては、相當の赤字が出るのでございまして、大體六億圓餘りの赤字を豫想せられますので、煙草の收入と致しましては、七十一億圓程度と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=21
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022・榊原千代
○榊原委員 國鐵の税金の收入はどの位でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=22
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023・池田勇人
○池田(勇)政府委員 國有鐵道からは税金を徴收致して居りませぬ、唯通行税と致しまして、國鐵が乘客から徴ります税金は、二億數千萬圓と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=23
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024・榊原千代
○榊原委員 財産税の免税點はどう云ふことに根據を置いて、御決めにならうとしていらつしやいますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=24
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025・池田勇人
○池田(勇)政府委員 富の分布状況竝に國の收入等を考へまして、適當に決めたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=25
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026・榊原千代
○榊原委員 國民の財産がどれ程ございませうか、三月三日の臨時財産調査に依つてで宜しうございますがそれも只今でなくても宜しうございますから、一萬圓は何%、二萬圓、三萬圓、四萬圓、十萬圓まで其の「パーセンテージ」を知らせて戴きたいと思ひます、それ以上は十五萬圓、二十萬圓、三十萬圓、五十萬圓と云ふ風に「パーセンテージ」を知らせて戴きたいと思ひます、是は參考になると思ひますから御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=26
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027・池田勇人
○池田(勇)政府委員 國民の財産の分布状態は、三月三日の申告は預貯金、國債、株式等の有價證券、又金錢信託、保險契約等の契約金額の申告でございますので、國民の全財産の申告には相成つて居りませぬ、是れ以外に不動産、動産、商品等がございますので、財産税法が通過致しまして、各國民からの申告が出ないと、政府の方には分らない譯でございます、我々の見積りでは、大體國民の富は五千八百億圓程度に見込んで居ります、其の中法人の所有致して居りますのが、千數百億圓あると考へて居ります、併し此の問題は軍需補償打切の問題、又各不動産、動産の評價の問題と、表裏一體をなすことでございますから、如何なる基準で財産を評價すると云ふことが決まらないと、はつきりした金額は申上げ兼ねるのでございます、只今申上げました金額は、今年の三月頃大藏省で、達觀で決めました一應の金額でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=27
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028・榊原千代
○榊原委員 財産税、補償の打切などに依つて、今年度の赤字を補填されるやうに伺ひましたが、來年度はどうなる御積りでございませうか、其の見透しを御伺ひ致したいと思ひます、所得税などもまだ徴收の餘地があると主税局長は再三仰しやいますが、又所得税を御上げになる積りでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=28
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029・池田勇人
○池田(勇)政府委員 來年度の歳入歳出の状況は、財界整理の進行状況に依りまして、餘程違つて參ると思ひます、又進駐軍費等の費用を考へますと、昭和二十二年度の財政状況は申上げ兼ねるのでございます、又所得税等も増收の餘地があると私が申しましたのは、是は間接税、直接税、斯う云ふ方面から増收を圖るとすれば、何れの方に増收の餘地があるか、斯う云ふ問題でございまして、今後税制改正の時に何れを中心にして行くかと云ふことになりますと、直接税の方に向つて行かなければならない、而して直接税の中、所得税に付きましては相當彈力性のある税でございますから、まだ徴收しても増徴し得るのではないか、間接税の方に付きましては非常に高い税率でありますので、是れ以上の増徴は出來ない、斯う云ふ意味で申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=29
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030・榊原千代
○榊原委員 私は來年度の豫算が減るものとは思はれませぬ、なぜかと申しますと、戰災の國民學校を建てましたり、又進駐軍が歸りましても、夥しい失業者も出るであらうと思ひます、さうしますと今年のやうに補償から來るお金や、又は財産税と云ふやうなものがございませぬから、其のことを考へますと又是れ以上の税を徴收されると云ふ不安が國民にあると思ひますので、もう少しはつきりしたことを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=30
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031・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私は昭和二十二年度の歳出は昭和二十一年度の歳出よりは減るものと考へて居ります、又減らさなければなりませぬ、若し殖えるとすれば、それは生産増強の爲に必要なものが非常に澤山になつた時には殖えるかも分りませぬが、普通の状態で行つたならば減るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=31
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032・榊原千代
○榊原委員 主税局長は税の體系を簡易化したいと仰しやいましたが、實際日本の税金は私共今度初めて税のことを致しまして、八幡の八幡知らず、五里霧中で、何が何だかさつぱり分りませぬので、其の間に大藏省の方々などは御存じないかも知れませぬけれども、此のやうな複雜なる税金を取つて、國民の疑惑を本當に深めて居るのでございます、どんないんちきがされて居るか分らないやうな疑ひを持ち、又實際税務官吏などの中に收賄をするやうなことがひどいと云ふやうな噂があるのでございます、そして又税の體系が極めて複雜なものでございますから、税務官吏などの退職者はよく會社などに雇はれまして、脱税の相談を受けて居ると云ふやうなことも聞いて居りますから、此の税の體系を簡易化すると云ふことは、今即刻して戴けないものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=32
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033・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の通り、我が國の租税制度は相當緻密に出來て居ります、是は負擔の公正を期する爲め、又經濟諸政策に適應する爲め、非常に複雜に相成つて居るのでありまするが、是は今囘の改正に依りまして餘程簡素になりました、又今後の情勢に依りまして今以上に簡素に致したいと考へて居るのでございます、併し餘り簡素過ぎて、負擔の公正が期し得られぬと云ふことになりますと、租税の生命をなく致しますので、其の點は非常に難かしい問題だと思ひます、租税制度が難かしいから脱税、收賄事件が起るとか、或は又税務代言のやうなものが蔓延するとか、斯う云ふ問題は私は直接に關係はないと思ひます、勿論出來るだけ租税を國民に分り易いやうにする、所謂國民の租税であると云ふ風な方面に走らなければならぬと思ふのでありまするが、税制を如何に簡素に致しましても、脱税其の他に付きましては相當やはり起るのでありまして、別個の方面から取締を嚴重にしなければならぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=33
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034・榊原千代
○榊原委員 私は税制が簡素になりますと、脱税は可なり困難になるだらうと思ふのであります、そして殊に私共主婦にまで分る程の簡單なものになつて參りますと、それに對して妥當かどうかと云ふやうな批判が出來、又妥當であれば、所謂納得した税の納め方が出來ると信じるのでございますから、是は早急に税の簡單化と云ふことをして戴きますと、それに依つて事務の簡捷化と云ふことになつて、そして其の色々な餘力と云ふものは、脱税防止に全力を注がれて、正直な國民を護ると云ふやうなことにもなると思ふのであります、私は所得税などにしても、分類所得税だとか、源泉課税だとか、色々にしないで、綜合所得税一本位で行つた方が宜いのではないか、又物品税にしても、品物に依つて一々違ふと云ふやうなことでなしに、一律な税金を課ける、さうして唯非常に少い物で、金持だけしか手の屆かないやうな物に對してだけ、高率な奢侈税を課けると云ふ程度にし、分與税の如きも廢止しまして、さうして地方府縣民税、又市町村民税だけで澤山ではないかと云ふやうに感じるので、それまでに簡單化しないまでも、何とか此の點を考へて、早急に之を實現して戴きたいと思ふのでございます、そして此の點に付て税制の委員會と云ふものを御持ちになるさうでございますが、其の顏觸はどう云ふ風な人を豫想していらつしやるのでありますか、主婦竝に婦人の代表者を入れる御考へはございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=34
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035・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税制は、租税が應能負擔の原則に適應します範圍内に於て、出來るだけ簡素にする必要があると思ふのであります、隨ひまして、今囘も其の簡素に致します第一歩を踏出したのであります、將た來税制の簡素化に付きまして十分意を用ひいと考へて居ります、御話の如く、綜合所得税にしたならば非常に簡素であるではないか、勿論それは分類所得税と綜合所得税の二本建よりも簡素でございます、併し是は昭和十五年まで我が國に置いて居つた制度でございますが、此の綜合所得税一本で、本當に所得税の負擔の公正は期し得られないと思ひます、負擔の公正はやはり分類、綜合の建前が宜いと思ひます、隨ひまして各國とも此の制度を採用して居る状況でございます、併し國民の租税に對する觀念がそこまで進んで居ない、少々負擔の公正は期し得られなくても、分りのよい方が宜いと云ふことになりますれば、御話の通り綜合所得税一本が宜いかとも考へます、此の點は先程申上げますやうに、應能負擔、課税の簡素化の兼ね合の問題で決まるべきものと思ひます、又物品税に付きましても、小賣課税、製造課税、斯う云ふやうな制度は今囘改めまして、製造課税に致しました、是で餘程簡素に相成つたと思ふのでございます、御話の甲乙丙丁、斯う云ふ風に分類致しまして、其の甲類に屬するもの、乙類に屬するもの、皆税率が異つて居り、非常に厄介ではないか、是は御話の通りでありまして、物品税に付きましては將來十分檢討致したいと考へて居ります、唯戰時中非常に税收を焦りました爲に、奢侈品のみに對して課税致します當初の物品税の目的が、段々擴張されまして、生活必需品に近い程度のものまでも課税するやうに相成りました關係上、其の生活必需品に近い物品と、本當の奢侈品との間には擔税力に相當の違ひがありますので、斯く四階段に分けて、奢侈品には高く、又生活必需品に極く近いものには低い、斯う風にやつて居る次第でございます、是は財政收入を出來るだけ多くする爲にやりました戰時中の遺物でございまして、平和日本の爲には斯う云ふ點は改めて行きたいと考へて居ります、分與税に付きましても、是は中央、地方を通じての所謂國、地方團體の歳入をどう云ふ風にするか、斯う云ふ大きい問題でございまして、今後行はるべき租税制度の改正に付きましては、十分檢討しなければならない大きい問題だと考へて居ります、尚ほ其の際に、租税制度の委員會に如何なる委員を選ぶかと云ふ問題に付きましては、是は先般大藏大臣も言はれましたやうに、民間の各方面の方々に參加を願ひまして、役人の意見で決まると云ふ從來のやうな委員會でなしに、本當に民間から盛り上がる所謂意見を土台にしてやつて行きたいと考へて居ります、隨ひまして、さう云ふ場合には、租税が家庭生活に重要なる役割を演じます關係上、婦人の方にも勿論出て戴くやうに相成ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=35
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036・苫米地義三
○苫米地委員長 豫算委員會で重大な説明を大藏大臣がなさるさうでありますから、多分傍聽したいと云ふ方が多いと思ひますので、ここで一旦休憩を致したいと存じます、午後一時より再開することに致します
午前十時五十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=36
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037・会議録情報2
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午後一時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=37
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038・苫米地義三
○苫米地委員長 是より開會致します、前會の川島委員に對する農林省食品局長の答辯がございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=38
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039・坂田英一
○坂田政府委員 味噌、醤油に對する鹽と味噌の配給の關聯に付ての御質問であつたと承つたのでありますが、味噌に付ては一人當り一月平均百七十五匁を基礎にして行つて居ります、又醤油は全國平均二合八勺程度を基礎にして鹽の配給が割當てられて居る譯であります、併し是は全國平均でありまして、實は味噌に付ても醤油に付ても三區域位に分けて、味噌の多い所は鹽が少い、醤油の多い所は味噌が少いと云ふ配合になつて居ります、是は食習慣其の他の關係から來て居る譯であります、隨て醤油は二合の所と二合七勺の所と三合七勺の所とある譯であります、味噌に致しますと其の少い所を大きく埋める譯でありますが、二百四十匁の所、百八十匁の所、百二十匁の所、斯う云ふ風に區分けされて居ります、尚ほ是は醤油にありましては普通醤油を基準に致して居りますので、濃厚醤油を配給する所に於ては是れの八掛位にならうかと思つて居ります、左樣なことでやつて居る譯でありまして、之に依つて鹽の割當が四半期毎に分れて居ります、併し實際の鹽の配給に付ては、醤油味噌の供出量に「リンク」致しまして鹽を實際配給すると云ふ形になつて居ります、是は横流し等を防止する意味からも、又供出を確保すると云ふ意味からも「リンク」制に依つて行つて居ります、現在の實情から申しますと割當に對しにて醤油の方は六月までの實績でありますが、鹽の割當にして醤油の方は八五%、味噌の方は約六〇%と云ふ配給の實績に相成つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=39
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040・川島金次
○川島委員 今の説明に依りますと其の所々に依つて多少違ひがある、斯う申されました、而も現在味噌醤油の配給が政府で豫定して居る基準通りに國民の手に流れて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=40
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041・坂田英一
○坂田政府委員 味噌醤油に關しましては國民生活上極めて重要でありますので、此の配給を的確に實行すべく努力は致して居ります、唯茲に非常に大きな問題として味噌醤油共に其の主原料である大豆が九五%まで滿洲大豆に依存して居つた譯であります、此の九五%が輸入されないと云ふ實情にありますので、生産の方からは非常に困難な情勢に遭遇して居ります、併し是は國民生活の確保上どうしても確保して行きたいと云ふことから味噌に付きましても例へば最近馬鈴薯が出來ますと、之に依つて増量して參り、又甘藷をそれに増量することに致したい、尚ほ僅かでありますが、内地産の大豆等にしても出來得る限り味噌方面に注いで行きたいと云ふことに依つて之を確保したいと考へて居ります、又醤油に付ても同樣な状況にありますが、是も出來得る限り確保を圖りたいと云ふことから、現に麥の麸を全面的に活用したいと云ふことで計畫を進めて居ります、之に依つて配給量の確保を致したい、斯樣に努めて居ります、唯味噌に致しましても例へば馬鈴薯を混入致して配給すると云ふことになりましても、元種が切れますと配給が合理的に行きませぬから、七月は已むを得ず相當遲配の状況が見えて居る譯であります、醤油に致しますと六月までは基準通り行つて居りますが、七月以後稍稍遲配を見て居ります、出來得る限り是が缺配のないやうに、重要な生活資料として確保すべく努力は致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=41
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042・川島金次
○川島委員 出來るだけ確保と云ふことでありますが、今の基準量を將來に於て割ると云ふ虞れがありますか、それとも基準量は、左樣な代用を使用して國民の重大な生活資料である現状の味噌醤油を心配のないやうに致される御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=42
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043・坂田英一
○坂田政府委員 基準量に付ては是等の配給制度を確立致しましてから已むを得ず一囘だけ基準量を下げたことがあります、現在の所此の基準量を確保して行きたいと云ふので、凡ゆる努力を拂つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=43
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044・川島金次
○川島委員 凡ゆる努力でなく、何とか茲に明確に國民の臺所が納得の出來るやうな具體案が得られませぬか、是は非常に重要なことであつて、勤勞生活者の現状から見て、米、主食糧を中心としての調味料は、我々の生活に重大な關係を持つて居り、それに對して將來此の基準量を割つてしまふのか、或は絶對にさう云ふことはせぬと云ふ御見込を御持ちであるかどうか、はつきり御明示を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=44
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045・坂田英一
○坂田政府委員 詰り此の基準量を下ぐない爲に、先程申しましたやうに、味噌に付ては色々の増量材に依つて確保して行き、尚ほ内地産の大豆等に付ては、優先的にそれに向けて行くと云ふ方針を確立して居る譯であります、之に依つて基準量を割らないやうにして行く、割らないやうにして行くが、何としても九五%の主原料がなくなつて居るのでありますので、此の大豆の輸入と云ふ問題を懇請致して居るのでありますが、此の實現に努力して、基準量を缺かないやうに努めて參りたい、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=45
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046・川島金次
○川島委員 大豆の輸入の問題に付て、相當苦慮して居ると云ふ御話でありますが、其の折衝の經過、内容などに付てもう少し御話が出來ればして戴きたい、そして今後味噌、醤油の點に付て、餘り國民が心配ないやうな實情にあるかどうか、それを一つ出來れば此の際御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=46
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047・坂田英一
○坂田政府委員 輸入の懇請の問題に付きましては非常に努力を致して居りまするし、又我々のみならず民間の方も、又議員の方々も、特に「マッカーサー」司令部へ御見えになりまして、非常に強い、又切實な要請をされると云ふやうなことでありまして、相當聯合國側と致しましても熱意を持つて居られると云ふことを拜承致して居る譯であります、又我々の方と致しましても、出來得る限り之を即急に實現したいと云ふので目下努力中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=47
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048・川島金次
○川島委員 さうすると輸入の問題が旨く行かなければ是は必然的に今の基準量大幅をに割ると云ふことになつてしまふ譯ですか、さう云ふ御見込は一面に織込まなければならぬのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=48
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049・坂田英一
○坂田政府委員 例へば醤油に致しますと我々の方で一面に於ては大豆がない場合に於て、如何なる原料に依つて醤油を生産するかと云つた方面も研究致して居ります、それは麥の製粉歩留りを稍稍下げました其の麸に依つて醤油を生産する、斯う云ふ方向に進む途も講じつつあります、併し之を大量的にやりまする場合に於ては、主食との關聯が起つて參りますので、具體的にどの程度の數量で行くかと云ふことを今檢討中であります、左樣な色々の工面した方法と輸入懇請と二つ併せまして、是はどうしても基準量を切らずして、此の重要な國民生活の必要な配給量を確保して行きたいと云ふことで目下努力中でありまして、是れ以上のことはどうしても申上げる域に達して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=49
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050・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは前會に引續きまして榊原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=50
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051・榊原千代
○榊原委員 日本の税の體系が餘り複雜でございますから、參考までに税務署に働いて居る人員の數を御伺ひさせて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=51
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052・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務署に於きましては、最近は税務署ばかりでなしに、他の大藏省關係の仕事を致して居ります、隨ひまして税の仕事ばかりの税務署員竝に税務局員の數は、判仕官――只今は事務官でございますが、事務官で大體一萬人でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=52
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053・榊原千代
○榊原委員 私は主税局長は優秀な人を將來税務吏員にするやうに御盡力下さると言つて居りますけれども、今の所他の官吏に比べて待遇が惡いので、税務吏員は學問も教養も低い人が多くなつて居ると云ふことで、是が又色々な問題を起して居ると思ふのです、色々收賄の如き宜からぬ噂を撒いて居ると思ひますから、此の爲にはどうしても待遇改善と云ふことも考慮して下さいまして、優秀な人材を税務吏員として擴充しなければならないと思ふのでございます、さうして税の體系を簡易化することに依つて事務を簡捷化し、それに依つて人員と云ふものは可なりの程度整理されると思ひますから、それを是非他の吏員に振向けて待遇を一段と善くして戴きたいと云ふことを御願ひ致します、それから併せて今度の財産税やなんかの徴税に要する費用の豫算と云ふものを御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=53
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054・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税務職員の待遇は決して他の職員より惡くはなつて居りませぬ、又能力の點に至りましても他の官廳の職員より決して劣つては居りませぬ、今までの状況から申しますと、税務署の職員は辭めましても非常に餘所からの要求が多うございます、此の仕事は地道でございまして、非常に專門的になり、經濟界の事情に能く通ずるやうになりますので、税務職員に付きましては大體一般から實は引張凧のやうな状況でございます、私は此の點に於て今の税務官吏の能力は他の役人より劣つて居るとは考へませぬ、どちらかと言へば、優つて居る位に思つて居るのでございます、唯仕事の性質が國民の利害休戚に非常に影響がありますし、又金の問題でありますので、遺憾ながら時々收賄の事件が起るのでございますが、斯う云ふことは極力防止するやうに努めて居ります、財産税等新税が施行されますので税務官吏は相當殖やす積りで居ります、而も増員致します對象は專門學校以上の立派な能力を持ち、又相當高潔な人格の人を選ぶ積りで居ります、税制を簡素化にしたならば今少しく職員の數を少くしても宜いし、又其の代りに待遇を善くしても宜い、斯う云ふ御話でありまするが、今の日本の税務の仕事に對しまする職員の數竝に徴税費は非常に少いのでございます、百六十億圓の歳入を擧げますのに非常に少い金額になつて居ります、大體百圓の税收入に對しまして三十錢程度に相成つて居ると思ひます、之に市町村交付金、即ち市町村で徴つて戴きます爲めの交付金を入れましても百圓當り六十錢か七十錢位になつて居ります、「アメリカ」に於きましては大體百圓當り二圓五十錢程度の徴税費を使つて居ると云ふことを聞きました、關係方面に於きましても、日本の徴税機構はあまりに貧弱過ぎる、もう少し立派な人を澤山入れて、さうして徴税の萬全を期せなければならぬと云ふことを非常に言つて居るのでございまして、我々も租税が國民經濟竝に國民個々の人の利害休戚に非常な關係がありますことを痛感致しますので、今後税務機構は十分擴充致しまして、職員の素質も全般的に向上せしめるやう努力致したいと思つて居ります、財産税の徴收費は大體一億三千萬圓程度を計上致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=54
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055・榊原千代
○榊原委員 私は是から今度の税の問題、國民生活が之に依つて潰れるかどうかと云ふやうな重大な税の問題に付きまして、此の際是非斯うした方が宜いと云ふやうなことに付きまして大藏大臣から御答辯を伺ひたいと思ひますので、私の質問は大臣が御見えになるまで保留致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=55
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056・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは大臣が見えるまで質問を保留して、小川君に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=56
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057・小川原政信
○小川原委員 内務大臣お見えになりますか、又總理大臣はどうなりましたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=57
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058・苫米地義三
○苫米地委員長 今交渉して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=58
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059・小川原政信
○小川原委員 私のは少し根本問題なんですが、内務大臣が直ぐお見えになるやうでしたらお待ち致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=59
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060・苫米地義三
○苫米地委員長 それまで政府委員に對する御質問か何かありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=60
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061・小川原政信
○小川原委員 それでは政府委員の方に御質問したいと思ひます、少し問題が細かいので恐縮致します、併し分らぬ所がありますので御尋ね申上げたいと思ふのであります、實は私所得と云ふことは通念的には戰爭が終るまでは分つて居りました、戰爭が終つてしまつてから、一體所得と云ふものがどう云ふものか、技術的に言ふならば法學通論的なことが考へられなくなつた、それは何であるかと申しますと斯う云ふ場面は一體課税の對象としてどうなるのかと思ふ、是は私の知識の足らぬ點であるから御諒承を願つて置きます、米一俵を公定相場で買ふのなら宜しい、所が之を闇買ひをすることにして、千圓の金と錦紗の着物一枚を添へる、此の場合に錦紗を幾らに見積るかと云ふと、千二百圓に見積つて居る、此の時の課税對象はどうなるのでせうか、それからもう一つ、例へば二歳駒を買ひます、其の時には四千圓なら四千圓として立派に課税對象になつて居るから、それを牛馬商が買つて、馬一頭と米一俵と取換へた、此の課税對象はどこにあるのでせうか、斯う云ふことに對し課税技術としてどう御課税になるか御尋ねをして置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=61
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062・池田勇人
○池田(勇)政府委員 税法上に於きまする所得の見方には二通りございます、資産の増加した場合の其の増加額を所得とする場合、それが一つでございます、法人に對する課税は、斯かる觀點から法人の所得を見て居ります、個人の所得に付きましては資産の増加額は所得とは見て居りませぬ、個々の行爲から生ずる所得と見て居ります、例へば勤勞から出て來る所得、營業から出て來る所得、不動産等から出て來る所得、斯う云ふ風に分けて居ります、隨つて個人の今の所得に付きましては資産所得、事業所得、勤勞所得、退職所得又は清算取引所得或は今囘設けました讓渡所得、斯う云ふ風な所得に課税することにして居ります、今の金千圓と錦紗の着物一枚で米を賣つた場合にしても、それは一時的の所得ですから税法上課税しないことにして居ります、呉服屋で又米を賣買することを商賣にして居られる方は事業所得として課税致して居りますが、事業をして居ない所得には如何にそこに營業をして居りましても、所得として課税しないことになつて居ります、馬を賣つて米を買はれた場合も同樣でありまして、それが博勞であり、さうして又米の商賣をして居られますならば課税を致します、さう云ふ建前になつて居るのであります、原則として一時の所得には個人の所得税けませぬが、最近に至りまして清算取引所得、例へば取引所に於て清算取引をやつた、其の所得は假令一囘やつたとしても是は課税する、それから又土地の「ブローカー」でない方が、昔から持つて居た土地を高く賣られた、之に付ての所得でありますが、是は讓渡所得として課税致して居ります、原則と致しまして常業でやつて居る所得に對しては課税して居りますが、一時の所得に付ては課税しない、さう云ふ場合には特に名義を設けて課税することを認めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=62
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063・小川原政信
○小川原委員 内務大臣がお見えになつたやうでありますから、又後で御尋ねすることにして、先づ内務大臣に御尋ね致します、内務大臣が私共に御配りになりました説明書を拜見致して見ますると、自治の發達、自治の強化、自治の民主化を強調せられて居ります、是は地方自治の爲に私共有難く感謝をして居るものであります、さうして地方の財源の擴充と、地方財改の自主性の強化竝に地方財源調整の適正化、此の三點を擧げられて居りますが、是は自治の爲には御尤ものことと存ずるのであります、此の三つの目標を遺憾なく達成せしめる爲には、自治の本質と致しまして、自治體それ自身で自由に賄はれる所の税源があつて、初めて此の三つの目標が實行出來ると思ふのでありますが、大臣の御所見は如何でありませうか、之を一つ御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=63
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064・大村清一
○大村國務大臣 今囘地方制度を改正致し、又地方税制にも手を入れまして民主主義の線に沿うた地方自治團體の税務の圓滑なる運營を庶幾致して居るのであります、それに付きましては現在の色々の事情に依りまして、未だ以て十分だと云ふ所までの改正には至り兼ねて居る點があると思ふのであります、殊に經濟財政事情は戰後大變窮屈でありますので、財政面に於きましては其の感が特に深いと思ふのであります、併し大筋だけは此の際打立てることが出來たと思ふのであります、御話の如く地方團體の場合に於ては出來ることならば其の全部を地方自治團體獨自の手で集めることの出來るもの、即ち使用料でありますとか、手數料でありますとか、或は市町村でございますならば市町村民税或は其の他の市で町村で自主的に徴ることの出來る税金で賄ふと云ふことが理想であります、唯そこに考慮を加へなければなりませぬことは、各地方團體は丁度個人に於ける場合と同樣に、財政上の實力が團體に依つて違ふのであります、個人に依りまして金持と貧乏人のありますのと同じに、地方團體に於きましても村々又は町々に依りまして財政力に逕庭がございます、其のやうな所に於て悉く自前で經費を賄へと云ふことになりますと、貧乏な團體に於きましては非常に負擔が重くなる、それかの裕福な團體に於きましては相當の仕事をやりましても尚ほ負擔は非常に輕い、同じ國民の間に於きまして、そこに著しい逕庭の出來ますことは決して好ましいことではございませぬので、或る程度の各團體間の財政調整をやると云ふことは、實際問題として必要であらうと思ひます、但し現在の如く國庫からの補給金の割合が多いとか其の儘で宜しいかどうかと云ふことは、更に檢討しなければなりませぬが、併し或る程度の財政調整作用を狙ひました國からの交付金と云ふことは、是は存置すべきであらうと思ひまするが、それ以外のことは團體の自力で自前で賄つて行けると云ふことにするのが理想であると考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=64
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065・小川原政信
○小川原委員 今の御話では各市町村に甲乙があるから、其の富の程度に依つて按配をしなければならぬと言ふ、御尤ものことであります、地方分與税を一體御與へになると云ふことは、是は天降り的な財源であります、其の天降り的な財源で自治を賄へと云ふことは、地方自治の本質から最も離れた非常に程遠い所の問題であります、茲に今御示しになつた言葉と只今の御話になつた言葉とは全く離れて居るのであります、何故かと申しますると、分與税を頂戴致しましたことは、之を例へて見ますと、自分の子供が自分で活動してさうして食べると云ふことが出來ないで、母親から乳を貰つて生長して行かう、斯う云ふことに相成るのであります、さう云ふことが自治の民主化ではないと私は考へるのであります、自治を發達さしてさうして強化されて行く、斯う大臣は仰しやいますが、理想は徴つた所の税で賄ふことが理想だと仰しやいますけれども、其の政府のなされます所は全く矛盾撞著して居るので、自治と云ふものが非常に逆進した封建制度の如く還つてしまつたのではないかと云ふまでに私は疑ふのであります、此の點は如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=65
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066・大村清一
○大村國務大臣 地方團體の財政の上から申しまして理想とする所は、先程私は大體申上げた次第でありますが、然らば今日提案して居りますものが其の理想に非常に近付いて居るかと申しますと、必ずしもさうでないと思ひます、それは現下の情勢から致しまして、經濟政状況が前途に付きまして十分なる見透しも付かぬ時であります、又國の方の財政の點に付きましても其の點は同樣なことがありますが、もう少し事態が安定致しまして、見透しの付きます時期に於きましては、必ず是は國及び地方團體を通じまして根本的な改組を致しまして、さうして國の必要にも適するやうに税制等が改正せられますと同時に、地方の財政の上にも適切な改革を加へることが必要だと思ひます、是は近き將來に殘されて居ります所の大きな一つの問題であると思ふのであります、恐らく是は早急に私共としても研究調査を始めなければならぬのであります、例へば町村に於きまして十萬圓の經費が要ると云ふやうな場合に於きまして、三萬圓とか四萬圓とか云ふ程度は、是は先に申上げましたやうな地方財政を調整すると云ふやうな意味に於きましての分與税の如きものを存置することが適當でございませうが、六萬圓とか七萬圓とか云ふやうな主要部分は町村が自前で財源を調達が出來ると云ふやうな工合に考へて行くべきものだと思ふのであります、それに付きましては或は國税の或る部分を地方税に委讓してしまふ、乃至は更に地方團體に對しまして新しい課税權を附與する、色々の工夫を致しまして其の理想に近寄るやうな改善はしなければならぬと思ひます、本年の提案に付きましては大體其のやうな點を目標と致しまして、今日の現状に於て出來得る限りの獨立財源を地方に附與すると云ふことに努めたのでありまして、今日の點を以ちまして理想點に達して居るとは考へて居てい次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=66
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067・小川原政信
○小川原委員 是は大事な問題でありますからもう少し繰返して問はして戴きます、七十年餘りで漸く地方長官が公選されると云ふことになりました、住民は今度こそは我々は本當の自治の本領が具現化するものだ、斯う云ふやうに地方自治民は非常な喜びと誇りを持つて居ります、此の地方長官と云ふものを公選して、此の燃えて居る熱意、丁度選ばれて出ました所の地方長官は官吏であるのかどうか、改正案を見ますると官吏だと云ふ、それから自治を非常に強化してやるのだと仰しやつたが、理想的にはさうで、現實としてはさうは行かないのであります、さうでありまするからして國家の税源と云ふ税目に對しては委讓せぬのだ、斯う云ふことになりますと、狐に瞞されたやうなもので、公選だと言つた地方長官が公吏でなく官吏である、地方の自治體を發達させなければならぬ、斯う云つて居つて闇に燈火を得たかと思ふと、さうではなくてそれは委讓せぬのだ、それが理想なんだ、さう行きたいんだが、それは待て、さうなりますと此の地方制度一部改正も、今度此處に現はれまして今審議して居りますことも、全部何が何だか私には判斷が出來なくて、自治の民主化でない、斯う云ふ感じが致すのであります、さうして私は斯樣に思つて居ります、分與税と云ふものは戰爭中に便宜主義で出來た所の税であつて、一體あれは變態税であると思ひます、さうして地方の町村は財源がありませぬから、財源の一部を親心として分與税と云ふもので呉れる、さうして之を還元配給を致す、其の上には國政と云ふものがありまして町村に對しまして強壓的に國務を遂行した、所が戰爭が濟んで是が解かれて、民主主義な平和な新しい日本建設と云ふ時に、さうして一部税制の改革と言はれますけれども、一部と云ふ名前の下に何十億と云ふ増税になつて居ります、此のことは後から御尋ね致しますが、此の便宜主義な變態的な税目を改廢致しまして、全く明朗な自治權を行使せしめることが今日の我が日本國民に對する所の政府の有難い態度でなければならぬと私は考へるのであります、それでも尚ほ政府は今仰しやつたやうに固執をして行かれるのでありますか、もう一つ此處で私は申述べさして戴きたいと思ひます、内務大臣は理論的には税源と財源と云ふものを區別して仰しやられて居りますが、併し實行の上に於ては税源と財源を混用されて居ります、此の點が私は第一了解に苦しむのであります、地方住民と云ふものは分與税と云ふ單なる財源、即ち言葉を換へて言ふならば、單に金錢を以て貰つたからと云つて自治住民としては滿足致さないのであります、殊に日本人と云ふものはさう云ふ性質を持つて居るのであります、私は多年の體驗、自治に二十有餘年關係しまして、眞に住民として考へました時に、困から金を貰つて滿足致しませぬ、其の自治の本質である所の税源をなぜ與へないか、税源を貰つて自治體を自分で切盛りする所に自治の本領があり、住民の自治的活動があり、自治の有難さがここにある、茲に於て自治の發達も強化も遂げられるのであります、それを何故に分與税でなければならぬと言ふのか、斯う私は考へるのであります、某の分與税をもう一つ考へて見ますと、分與税で地方に呉れます所の税額も、どれかの國の税目を地方に委讓する所の税額も、歳入となつて現はれる所の金額は大體差異の起らぬものであります、是は腰溜めでやつて居ります、是は大體差異の起らぬものであります、それなのに分與税でなければならぬと云ふ所には、政府が分與税と云ふ天下り的な一つの税を呉れて置いて、さうして自治の内容に深く喰入つて政治的の干渉をしようと云ふ一手段ではないかと云ふことも、考へれば考へ得られると思ふのであります、所が曩の御話に依りまして地方の富に依つて違ふ、成程御尤もでありますが、私は斯樣に考へます、それなら地租であつても或は家屋税であらうが或は營業税であらうが、是は町村自治に委せて宜いと思ひます、今の私の觀點を是なりとして其の價格が同じであるとするならば、之を委讓して宜しい、それなら移讓すると富みたる縣は非常に豐であるけれども富まない縣はどうか、此の場合國家は附加税を課ければ宜い、さうすると逆のやうでありますが、逆ではないのであります、之を國家が取上げて使ふ所の金であつたならば是は本税である、所が富の程度に依つて分けると云ふならば附助すると云ふことは、税制の本體でありますから、附加税を取つて、さうして甲の縣、乙の縣に分與してやる、斯うであるならば何も税目を委讓したからと云つて國家の歳入には何にも變つて來ない、そこで國民は喜んで本當に自治の爲に働く、斯う云ふことなら喜んで國家の爲に國民の一人とし、住民の一人として活動致しますが、之をおやりにならぬ所に私は非常に不思議を持つて居るのであります、是はどう云ふのでありますか、其の御見解を聽かねばならぬと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=67
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068・大村清一
○大村國務大臣 土地、家屋、營業と云ふやうなものの税金は是は多年我が國に於ても論議されて居りますやうに、地方團體の税にした方が理論上宜しいと云ふやうなことが略略定説に相成つて居るのであります、而して其のことは實際問題としては解決されて居るのであります、御承知のやうに課税標準は全國的に統一を取ると云ふやうな必要から國税の形に於て徴つて居りますけれども、所謂還付税と致しとして各地方團體は自分で課けたと同じ同一の課税收入を確保することが出來て居るのであります、併し此の點に付きましては今後税制改正に當りまして、名目上は國税として實質は地方還付して居るのでありますから、さう云ふやうな迴りくどいことは致しませぬで、直接地方團體に土地、家屋、營業に課税をさせると云ふやうに改めることも今後の税制改革の場合に於ける一つの大きな考究點であらうと思ひます、併し地方の財政の上から申しますと、實質上は私は三税が地方に委讓されたと同じことになつて居ると思ふのであります、尚ほ今囘の改正に於きましては、住民負擔は増加致しまするが、相當大幅に町村民税を増税する、府縣民税を創設すると云ふやうなことで、地方團體に相當多額の獨立財源を財政の面から申しますと附與し得たのでありますが、併し何に致せ、地方團體の財政需要が非常に尨大なものでありますから、それを始末し得るだけの新規獨立財源を與へる工夫がございませぬので、已むを得ず是は大藏省に御縋りして、そこで不足分は分與税の増額と云ふことで本年は辻褄を合はしたのであります、御承知のやうに前年に比べますと分與税は二倍半位に殖えて居るのであります、併し是は地方財政の上から申しまして決して理想的の形ではないと思ひます、分與税の如きは地方財政を調整する最小限度のものとして存置することと致しまして、其の他は地方が自前で始末の出來る税源其の他の財源を付與するのが望ましいと思ふのであります、尚又分與税の點に付きましても、是は政府が分與税を當がひ扶持にして、さうしてそこに干渉監督の足掛りを求めて居るのではないかと云ふやうな疑も一應起り得るのでありますが、分與税の配分に付きましては御承知のやうに客觀的の標準を設けまして、内務省の手加減で増減の出來ないやうに十分の考慮を拂つて居る譯であります、御承知のやうに分與税額總額の百分の五は別に取置きまして、見立割式のことを致して居りますが、殘る百分の九十五と云ふものは客觀的の標準に依りまして彈き出し、内務省の手加減で増減をすることが出來ないやうになつて居るのであります、尚又百分の五の見立割と云ふやうな部分に付きましても、出來るだけ客觀的標準を取りまして、役人の恣意に依つてそれを増減すると云ふやうな點を極力制限すると云ふことになつて居りますので、分與税を各市町村團體に配付することに依りまして、そこに行政官の我が儘が働いて干渉乃至監督の手掛りにすると云ふやうな點はない仕組になつて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=68
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069・小川原政信
○小川原委員 もう一點御伺ひ致したいと思ひます、是は理想論と實行論の行違ひがあるので、果てしがない話でありますが、大體内務大臣の御誠意のある點も段々分つて參りましたが、私はまだ腑に落ちない點がありますので、一、二點伺つて置きたいのであります
さう致しますと一面に於きましては委員會に於て地方制度の改革をやつて居りますが、公選せられました知事は公吏として御取扱になりますが、税の方は仕方がない、税の方は仕方がないから状況を睨み合はして行かう、併し自治の本質の上から考へると、一方で地方長官と云ふものは公選すれば直ちに公吏であると云ふことになります
もう一點、そこに理想論を持出しまして御心配になつて居る點は十分承知を致しましたが、是は大臣と致しまして何時頃此の三税を委讓されまする御考へでありますか、此の二點を御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=69
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070・大村清一
○大村國務大臣 三税の委讓問題其の他地方税の改正は當然に國税に至大の影響がございますので、國庫財政と云ふやうな點と相竝行して研究しなければならぬ問題であります、さうして國の財政の問題に付きましては大藏大臣も度々御話になつて居りますやうに、近い將來に於きまして其の御計畫があるのでありまして、地方財政を主管して居りまする内務省と致しましても、近い將來に於きまして、國税、地方税を通じまして十分に研究調査を遂げて、新しい經濟財政事情に即應するやうな改正を出來るだけ早くやりたいと云ふやうに考へて居る次第であります
次に公選知事を官吏とする點に付ての御尋ねでありますが、是は別の委員會に於きまして只今御審議中でありまするが、政府の見る所では現行憲法下に於きまして知事公選を取上げる、而して現行憲法下に於ける府縣行政の運營の實際は官吏たる知事に依つて運營されると云ふ建前になつて居りますので、是等の建前を併せて改正して行きますまでの間は、暫定的の措置と致しまして公選知事に官吏と云ふ身分を與へまして、さうして官吏が府縣行政を取扱つて居ると云ふ現實に調和させると云ふ應急の措置に依りまして、現行憲法下尚ほ終戰後必要とする地方行政の民主化を圖つて行きたいと云ふ趣旨でございますので、此の點に付きましては度々本會議及び委員會に於きましても、政府の意のある所を申述べまして、關係議員各位の御審議を仰いで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=70
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071・小川原政信
○小川原委員 是れ以上御尋ねしても致し方ありませぬので、私は畫に描いた牡丹餠を見て欣ぶと云ふより外に方法がないものとして、もう質問を續けることが無駄であると考へますから、其の點は是で以て打切りまして、次に御尋ね致したいことがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=71
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072・苫米地義三
○苫米地委員長 小川原君に一寸御相談致しますが、内務大臣はそれで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=72
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073・小川原政信
○小川原委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=73
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074・玉井潤次
○玉井委員 私内務大臣に御聽きしたいことがあるのですが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=74
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075・苫米地義三
○苫米地委員長 簡單なら御許し致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=75
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076・玉井潤次
○玉井委員 昨日同僚の川島君からの治安維持の問題に關する質問に對して、大臣から御答へになつたのであります、それに依ると、現在の日本の警察力に依つて日本の治安は完全に保たれる、而して進駐軍の指導或は援助を受けてやれると云ふやうな御答辯の趣旨であつたと思ひます、而して警察官の數が全體に於て九萬何千人ある、其の中一萬人は現在缺員になつて居ると云ふやうな御説明であつたと私記憶して居るのでありますが、そこで私は内務大臣が數と云ふことに依つて御答へになつた所に、非常に不滿を感ずるのであります、終戰後日本の思想界の混亂、「インフレーション」の結果起きて居る所の非常に澤山の犯罪があることは、是は内務大臣は御承知のことだと思ひます、現に私は自分の周圍から見まして、現在現はれて居る犯罪は殆んど強盜窃盜と云ふものが頻々としてあるのであります、而して其の中本當に檢擧され、而して犯罪として確實に取上げられたものは、恐らくは其の中の幾「パーセント」に過ぎないと思ふのであります、隨て治安が維持されて居ると仰しやる大臣の御言葉は、私共にして惡口を言はしめるならば、一つの「ドン・キホーテ」式の御考へではないか、寧ろ治安は徹底的に紊れて居るのであります、成程其の紊れる原因は、今申上げるやうに終戰後我々國民が目標を失ひ、而して道徳心が破壞され、醇風美俗が毀れたと云ふことが大きな原因でありませう、隨て之を直ちに今どうしようと云ふことは出來ないのでありませうが、兎も角も一方に於て取締が嚴重であり、或は一つの犯罪が出來た時に於て、其の犯罪が檢擧されるならば――分らぬと云ふことが一番惡いのであるから、私は罰すると云ふ意味で言つて居るのではないのでありますが、本當に犯罪が檢擧されるならば、犯罪と云ふものは或る程度減るものと思ひます、所が今申上げるやうな事情から見ると、日本の治安と云ふものは徹底的に紊れて居るのであります、而してそれが唯僅かに今日は進駐軍の御指導と御援助に依つて、所謂M・Pの力に依つて日本の治安の一部が保たれて居ると云ふことは爭はれない事實である内務大臣もそれを御認めになつて居ると思ひます、併しさう云ふことは我々が苟も獨立人として立つ上には決して立派な道ではない、私は寧ろ警察官の數が全體で九萬人で、其の中一萬人の缺員があると云ふ唯頭の數に於てさう云ふことを御考へになつて居るから、面白くないと云ふ理由はそこにあるのであります、結局は要するに如何に大勢の警察官が居ても、それが無能の者であつたならば如何なることが出來るでありませうか、恐らくは今日の時代のやうに警察官の素質の變つて居ることはなかつたでありませう、外はいざ知らず、我々の知つて居る範圍に於ても恐らくは高等小學卒業程度の者が警察官に何時でも採用せられて居る、それが果して、單純なことを云ふならば道路の交通整理も完全に出來るかどうかと思ふやうな怪しげな警察官が澤山居る時代に、今申上げたやうに内務大臣は治安の維持は大丈夫だと云ふやうなことを仰しやるは、甚だ私は遺憾だと思ふ、それで是は勿論豫算とも關係があります、隨て此の税制にも關係があるから、私は申上げるのでありますが、現在一萬人の人間がまだ採用されて居ないとするならば、其の者に對する採用を如何に御考へなさるか、私は率直に簡單に申上げると、是は大臣の御意見を聽かぬで、私の意見を述べることは失禮ですが、簡單に申せば、昨日の朝の新聞に出て居るやうに、大學を卒業したけれども職がないと云ふやうな人があつた場合に、それを警察官として採用する意志ありや否やと云ふことであります、私は本當に能く知つて居るのではありませぬが、私の聞いた所に依りますと、「アメリカ」には警察官の採用には一つのやかましい規定があるさうであります、それは先づ以て大學の卒業生で身の丈何尺、目方は幾らと云ふことが警察官の採用の一つの規定になつて居るのであります、さう云ふ警察官であるならば、勿論學問のある者が必ずしも正しいと云ふのではありませぬが、少くとも普通教育以上の教育を受けて居る、而して體格は立派であると云ふやうな警察官が採用されたならば、本當に警察の自治化と云ふことが私は出來やうと思ふ、今の警察は、永い間の私の經驗から申上げるのでありますが、是は民主の警察では絶對にない、官僚が自分の權力を振ふ爲めの警察であります、さう云ふやな警察が今後民主化の警察になると云ふことは、私が今申上げたやうに、優秀な警察官を採用すると云ふやうなことに於て初めて私は行はれると信ずる者であります、私は數が何萬あるが故に日本の治安は保てるのだと云ふやうな「ドン・キホーテ」式の考へ方は此の際捨てて戴きたい、今後幸ひに御試案になつて居る所の一萬人の警察官と云ふものは、最も優秀なる所の國民から選び、而してそれを本當に教育をし、日本の警察の民主化を圖つて戴きたい、是は私の希望なんでありますが、それに對する内務大臣の御意見を一つ御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=76
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077・大村清一
○大村國務大臣 先日當委員會で私御答へ申上げましたのは、小川原氏の日本の警察官は二萬八千人で宜からうと云ふやうな點を中心にしての御尋ねでございましたので、主として警察官の現在員の事情を御説明申上げた次第であります、併し只今の十萬人足らずの警察力を以ちまして日本の治安を完全に維持すると云ふことは中々難かしいことであります、唯之を必要の程度にまでに數を増加することは色々の關係がありまして、今日それが出來ない事情にありますので、限られた警察力を以てしまして、今日警察の對象となる仕事は非常に殖えて居りますし、又其の質が非常に惡くなつて居るものでありまして、治安維持に付きましては中々困難な點がございますが、今のやうな制約下に於きましても、全警察力を動員致しまして治安維持に萬全を期さなければならぬと云ふ決意の程を申上げました次第であります、國民の大多數、九割五分と云ふやうな人が悉く遵法の精神に徹して、三分とか五分とか云ふやうな少數の人に不心得な者がある、さう云ふ所に警察が働くと云ふことに依りまして治安の維持に初めて確保されるのでありますが、我が國の社會状態は遺憾ながら其のやうな所まで行つて居りませぬ、是は國民の自覺或は教育の遵法心の作興、色々の方面から進んで參りまして解決しなければならぬ、將來に殘された大きな課題であると思ふのであります
尚ほ今日の警察官が其の素質に於きましても、御説の如く十分なるものとは考へて居りませぬ、採用に當りましても、もう少し立派な素質を持つた者を採用致し、又採用後の訓練に於きましてももう少し完璧を期する、只今試案として發表致して居りますものは、採用致した警察官を最初に教育訓練を致しますのみならず、專門學校程度とも言ふべき一つの警察の再教育所を作り、更に警察大學とも言ふべき最高の教養機關も作つて見たらどうか、と云ふやうな試案も發表致して居る次第であります、教養に付きましても今後一層力を盡したいと思ふのであります、唯採用をするに當りまして、立派な人を得ると云ふ上に於きましては、待遇上の考慮を致さなければ中々實行難だと思ふのであります、又警察に對しまして、青少年が警察界に入ることに魅力を感ずると云ふやうな所まで警察の風格が良くなると云ふことも非常に必要なことであらうと思ひます、而して警察官の待遇に付きましては、一般官吏の待遇を物價騰貴に鑑みて相當改善すると云ふ線に沿ひまして、警察官の待遇も相當改善をされます、其の上に輿論と申しますか、一般の同情に依りまして、警察官には一般官吏並以上の優遇もしてやるべきだと云ふ議論、意見が多いのでございまして、其の輿論の力が反映致しまして、餘り十分ではございませぬが、全警察官――是は消防官も加へてでありますが、年額一千五百萬圓だけ餘分の優遇も致すと云ふことが只今御審議中の豫算にも計上されて居ることでありまして、此の程度で十分であるとは申上げ兼ねますが、併し或る程度の優遇の方途は立つ譯であります、而して此のやうな優遇が講ぜられますならば、今後の警察官は少くとも中等學校を卒業した者から採用する、從來は中等學校以下の、國民學校だけの教養の者も段々採用して居つたのでありますが、原則として中等學校卒業者を採用すると云ふ所までは待遇の向上が出來たのであります、さうして今後出來るだけ素質の宜しい者を採用致し、之に出來るだけ行屆いた教養訓練を施して參りまして、國民の信頼し得る警察官に造り上げると云ふことに全力を盡さなければならぬと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=77
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078・苫米地義三
○苫米地委員長 小川原君に申上げますが、總理大臣の御出席を御要求になつて居りますけれども、御差支へがあつてどうしても出られませぬ、植原國務大臣が見えて居りますから御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=78
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079・小川原政信
○小川原委員 それでは植原國務大臣に御尋ね致したいと思ひます、政府は地方制度の改革の名の下に、それから又此處に議案を御出しになりました所得税一部改正と云ふ洵に平凡な言葉を以て綴られてありますが、其の言葉の蔭に隱れて國税も地方税も市町村税も一律に大増税の斷行であります、國税が二十數億、地方費のそれが三十數億、約六十億に近い所のものを斷行せんとすることは、是は國民として最も注意を喚起して宜い點であると私は考へるのであります、名目は何に變らうが――國税に變らうが、地方税に變らうが、出す所のものは國民の懷一つであります、此の外に何にもないのであります、其の上に町内會費、部落會費、隣組費、衞生費或は學校費、寄附金、其の他一切を集めると洵に尨大な支出になりまして、一面から見ますると苛斂誅求の謗があると思ふのであります、茲に於て政府は出ずる木を制する行政整理の斷行を圖らうと云ふ御意思があるかないかと云ふことを御聽きしたいと思ふのであります、私の考へる所に依ると、敗戰に依りまして財界は全く混亂致して參りました、産業は萎縮致して取るべき國民の收入は枯渇致しまして、徴税數は非常に衰へて、其の上國民の思想が弛緩して働くだけの勇氣がなくなつて來て、何處かの屬國に居ると云ふやうな氣持を持つて居るのであります、此の時に大増税を斷行しようと云ふからには、一面に於ては政府としても行政整理もし、眞劍に國を再建するのだ、それで此の増税案も八千萬國民の爲に出て來たのだ、是ならば國家再建に關して我々國民も協力しようと云ふので、全國民が感奮興起して納税の義務を完了しようと云ふ氣持になると思ふのであります、政府は政府として納税技術を以て、是は何「パーセント」徴れば國民の懷ろがどうなる、ここの所は率が低いからここへ持つて、是だけのもの持つて來て調整すると總額は何千萬圓であるからどうだ、そんなことは末の末のことであります、そんなことに國家が多額の金を出す必要は何もない、之を斷行して行くのが政治の眼でなければならぬと思ふ、さう云ふ小刀細工をして税金が納められないとそれに對して差押を致します、差押へたからと云つて、病人が泣いて居るのに夜具まで剥いで之を競賣に付する、子供のやうなことをして國家が得々として居る、こんなことで國家の再建が出來るものかどうか、大増税でも宜しい、國民が我々八千萬が居なければ日本の再建は出來ないと云ふ眞の叫びでなければ、日本の國家の將來は非常に心配だと思ふのであります、寧ろ今日考へると云ふと、科學文化、教育文化、學問文化色々な文化が採入れのれました、明治維新のやうな氣概が藥に煎じて飮みたいと思つても何處にもない、人の前にぺこぺこ頭を下げるから或る人は言つた、日本人は人の前に來ると頭を下げて機嫌を取るものだ、斯う云ふことが外國に言觸らされて居るのですが、是は遺憾であります、私はどうしても財政整理を斷行して行くには、一つ思切つて國民の肯ける所の斷行をやつて貰ひたいと思ふ、其の私の考へる案は何であるかと申しますと、今までのやうにちびちびとやつて居たのでは、財政整理をしたのか何であつたのか分らないのであります、例へば五人馘つて其の蔭で十人入れて見たり、何のことだ、さう云ふことではいけませぬから、内閣總理大臣の下に直屬した各省百般に亙つた行政機構の整理、行政事務の簡捷敏速、行政官の整置、行政費の整理其の他色々ありますが、是等を一括致しまして行政整理廳と云ふものを新設致して、さうして審議會を設けて貰ふ、其の委員には民間からも簡拔せられて敏速に實行せられる意思があるかないかを伺ひたい、斯う云ふ行政整理を斷行して、先づ國民負擔の輕減を圖つて、國民に適正な納税の義務を完遂せしむることが喫緊事である、私は斯樣に信ずるのでありますが、直屬の行政整理廳と云ふものを御設けになるかどうか、其の御意思を御伺ひ致したい次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=79
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080・植原悦二郎
○植原國務大臣 小川原君に御答へ致します、現在内閣審議會なるものがありまして各省の連絡を圖つたり又統一を圖つたり出來るだけ改革を致すやうに努めて居りますが、御説の如く現在に於て至る處に缺陷のあることは事實であります、私先刻からの質疑應答を能く伺つて居りましたが、今の御質問に對して事を明確に致します爲に先刻來の地方自治に對する質疑應答の間に行はれて居ることをもう一歩進めて御答へして置いた方が宜からうと思ひます、知事のことに關してでありますが、具體的に言へば一縣下の選擧民が民選で選んだ知事を役人にして置くと云ふことは何としても論議一貫致しませぬ、又趣意も徹底致して居りませぬ、是は全く御説の通りであります、併し現在の状態に於ては此の内閣が成立して間もないことであります、又終戰後漸く一年を經過した位であります、其の間の内閣の更迭や政治の激變、色々の國内情勢の急變革等に付ても十分御承知のことと思ひます、さう云ふ状態に於て憲法は改正され――改正と申しましても現在の憲法は新しい憲法だと思はれる性質を持つて居ります、此の憲法も只今議會で審議して當然三分の二以上の貴衆兩院の御賛成を得て通過致すものと確信致します、又さうあらねばならないと存ずるのであります、其の憲法を本としての地方自治の改正であります、現在の基礎たる所の憲法すらまだ成立の過程にあるのでありますが、是が成立實行される時のことを豫想しますならば、實は急いで地方自治も改正して置かなければならぬ、若し小川原君の理想を申すならば本當に憲政の健全なる發達を圖り、之を完成しようとするならば、自治制度の方が一歩先に行くべきである、實は是が遲れて居るのであります、故に之を憲法の改正と共に歩調を合はせて行くには、どうしても茲で自治制度の改革をやらなければならぬ、それと共に自治制度の總ての官制を改正すると云ふことは不可能である、それ故に知事は公選にする、其の下には今までの組織に居る所の官吏が居る、其の官吏と民選の知事と歩調を合はせる場合に於て直ちに知事を公吏にしたならば或はそこに支障を來したり行政の運用上全からないやうな事情が多くないかと云ふことは政治をやる者の懸念することであります、是は小川原君十分地方自治のことに御關係があつて御承知であらうと思ひます、それで現在の地方自治は過渡的のものでありますが故に、已むを得ず民選の議員を、一時的過渡的のものとして行政事務の遲滯を生ぜしめないやうに管理致す、斯う云ふ譯であります、それから又現在の分與税のことも御説の通りだと思ひます、是は戰爭中に殆ど日本の憲政を破壞して中央集權にする爲に作られた所の地方分與税であります、總て中央から津々浦々まで管理をしようと云ふことで作つて、殆ど地方の財源する取上げてしまつて政府の手に集めて之を分つことにしたのが現在の分與税の形であります、是は御説の通りであります、何としても自治を許さした以上は地方に財源を與へて、地方が其の状態々々に應じてそこの財源に依つて其の自治をやる、若し其の間に不均一があつたならば、是は中央の政治で之を矯めるだけだと云ふ方式を執るべきだと思ひます、さう云ふ状態に進んで行かなければ本當の地方の自治の完成は出來ぬと思ひます、現在やつて居りますことは總て戰後の非常な混沌たる移り變りの激しい状態、民主主義の平和國家を建設しなければならない過渡的のこととして御諒承願はなければならない、理想を申せば小川原君の申される通りであります、行政整理に付きましても丁度只今申述べた理論を能く御諒解下されば分ると思ひます、何としても今までの如き日本の官廳の組織や行政の組織では、本當に徹底的の民主主義平和國家の建設は不可能だと思ひます、そこで新しい憲法も出來て實行されるやうに相成りますと、御承知の通り議會中心の政治が出來ます、議會中心の政治と云ふのは國民に依つて選ばれた所の議員の多數が議會に於て可とする所のものを以て總理大臣にする、同時に議員多數の承認するものを以て國務大臣とする、故に來るべき憲法の下に於きましては、中央政府の行政機構を始め本當に議會を中心とした、立法府を中心としたものが出來るのであります、其の時には凡ゆる方面に於て改革を致さなければならないと思ひます、現状の行政を出來得るだけ整理致したり、行政機構が統一されたり、過剩の役人はないやうにして出來得るだけ政府の費用も節約して行き、國民の負擔も輕く致さなければならないことは御説の通りでありますけれども、何を致せ此の過渡的の状態、内閣が出來て洵に間もない、是も敢て口實にする譯でもありませぬけれども、次に來るものはどうかと言ひますれば、次に來るものはもう半歳か八、九箇月の間に議會を中心とした内閣に依つて日本が支配されるやうになる、其の場合には一切の行政機構も其の趣意に依つて本當に一新されなければならないと思ひます、それまでには政府と致しましては、それに成べく歩調があつて移り變れるやうに出來るだけ行政も改めなければなりますまい、過剩な役人を淘汰もし、經費も節減しなければならない、又税制に對しましても、是は御同樣に今までの豫算のやうな、國民が見て分らないやうな豫算の編成は當然改めなければならないし、國民を基礎とする内閣が出來れば、必ず一目瞭然、總てがはつきりするやうに豫算の編成は根本的に改められるものと私は信じて居ります、又税制も、成程日本は殘念ながら負けました、實に今日何れの方面を見ても國民の大多數は虚脱状態、道義は頽廢して居る、何處にも緊張味のない、唯負けたと云ふやうな状態でありまするけれども、此の状態ではどうしても日本の立直りはならない、活を入れて國民を生返らせなければならない、それが最近に於て大藏省などで心配して居る所の軍需補償の打切りや色々の問題で、是は隨分強い方法でありますけれども、私の言葉は總ての政府の閣僚の言葉に適するか適せぬか知りませぬけれども、私は自身此の問題を斯樣にさへ解釋して居る、慢性的に此の儘で行けば腹下しか胃病でどんなになるか分らない、ここで一つ蓖麻子油を掛けて、さうして根本治療をやつて、生きるものを成べく生かして、さうしてそれに活を入れて、總ての産業經濟の再建を圖らうとするのが目下政府の考へて居る行き方だと思ひます、さう云ふものを前に致して居りまするが故に、あなたの御希望のやうな財政の根本整理を致したくもまだ其の立場に行かないのであります、御説は洵に御尤もでありまして、假令斯樣な状態に於ても出來るだけ節約するものは節約して、國民の負擔を輕くすると共に、行政を成べく統一して無駄のないやうに、過剩の役人は整理致し、さうして今までのやうな官僚式の「セクショナリズム」のやうなものを廢して、成べく統一したものをやらしたいと思つて、内閣に審議會のやうなものを作つて居ります、是も全部滿足のものとは申されませぬけれども、私共の願つて居る所は本當に議會中心の政治が行はれるやうになつて、さうして國民の意思が徹底するやうになることで、それまでに旨く其の繋ぎが出來まするやうにと云ふことを考へて、一切の處置をして居ることを御諒承下さいましたならば、政府の立場も十分御諒解下さるものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=80
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081・小川原政信
○小川原委員 御親切に御話になりまして、能く分りましたが、私は近き將來に斯う云ふ整理が斷行されるものであると云ふことを承知致しまして、それで宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=81
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082・植原悦二郎
○植原國務大臣 只今申上げる通り新憲法が行はれるやうになりましたならば、議會の多數の主張することは凡ゆる方面に於て必ず實現されると思ひます、さう云ふ時期がありますのに、只今のやうな状態で直ぐ行政も財政も根本的に整理致しましても、それと又ばつが合ふか合はないかと云ふことを考へることも大切なことだと思ひます、目標は御説の如き所に置かなければならないが、新憲法の行はれるまでにあなたの言ふやうなことが現在の政府に於て、其の趣意では進みまするけれども、實現されると云ふことは一寸申上げにくい、目標はさう云ふ理想に置いて進みたいと思つて居ります、斯う御諒解を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=82
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083・小川原政信
○小川原委員 それで大臣に對する質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=83
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084・苫米地義三
○苫米地委員長 小川原君に一寸御諮り申しますが、太田君から總理大臣の出席を求められて居ります、やはり植原國務大臣に質疑をたつた一點ださうですから御許し致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=84
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085・太田鐵太郎
○太田(鐵)委員 唯一點だけ極く簡單に御質問申上げます、植原國務大臣は我々の大々先輩として政治に參畫すること二十數年、我々は此の大々先輩たる所の植原國務大臣から非常に大きな御教へを戴いて非常に感謝致して居ります、唯茲に國務大臣として、一つの省に執著して居るものではなく、國務大臣として國務全般に亙つて居られるのであるから、囚はれない立場に於て植原國務大臣の御考へ、御心持を伺はして戴くならばそれで宜しいと思ふのであります、今を去る大正年間に於ける米騷動の起つた頃から、或は米相場が安くなつて遂に海外に「ダンピング」をやつて、甚しきに至つては減反をする、或は瀬戸内海へ持つて行つて米を流すと云ふやうな大きな歴史を經て今日になつたことは既に御承知の通りで、國務大臣の所屬して居ります所の政黨に於ても此の問題に深く深く關心を持たれ檢討をされたことを記憶致して居るのであります、所が幣原内閣の當時食糧問題に對しまして米の不足の爲に各方面から色々悲鳴が上り、消費者方面から悲鳴が上つた時に專賣を考へて居ると云ふやうなことが新聞に見上たのであります、其の根が張つて居るのかどうか分りませぬけれども、丁度今月四日の毎日新聞に現はれて居る所を見ますと正に米の專賣制を布かんとする準備行爲に相當するものでないか、であるから今日は國務大臣に對して私の御聽きしたいのは米を專賣にすると云ふやうな御考へが内閣にありやなしやを御尋ね申上げる、此の米の專賣に付ては私から申すまでもなく、此の新聞で見ますと現在三萬四千の食糧檢査員、其の他補助檢査員十九萬、二十幾萬の檢査員を殖やす、さうして農家個々の名簿を拵へ、さうして一筆、一枚毎に反別、種類、稻の分蘗、其の高さ、粒までを調べると云ふやうなことが書いてあつた、是は農林省から出て居ることには違ひない、幣原内閣の時に其のことが出ただけでも農民はどうであつたか、本當に増産と云ふものは減退する、眞に増産の心持が起つて來ない、幣原内閣が倒れて現内閣になりまして、專賣と云ふやうなことも餘りに宣傳されなくなつたので、農民も稍稍安堵の傾向にあります、さうして植原國務大臣の能く御承知の、又親しいと思ひますが、東武先生に私は二十四年間も仕へて色々農村問題の研究もし、話も聽いて居たのでありますが、專賣制と云ふ問題は中々容易なことでないと云ふことを能く聽いて居つたのであります、農民の生産意欲の減退が今日の日本の食糧を斯くも困難に陷れた原因になつて居るのであります、何れの土地でも戰時中は出來ないことをあれやれ、是もやれと政府の云ふ言葉を聽いた所謂模範農家、精農家と云ふものは今日悉く貧に窮して耕作も出來ない事情にある、今度主税局長の御話を聽きますと、農家の守護神たる本當の農具、足の爪を一寸切つても働くことの出來ない、或は屠殺しなければならないやうな馬までも財産に見積つて、財産税を課税すると云ふことでありますが、飮食店の皿や丼なら少し位缺けても用をなします、一體馬と云ふものは、一寸怪我をしても働くことが出來なくなつてしまふ、年に一度若馬で買つて行くのならば財産にも見積られませうけれども、是が年でも取つたのならば年一年と價格が下つて終ひには屠殺しても買手がなくなる、さう云ふやうなものまで財産に見積つて税を課けると云ふやうなことは非常に農民の神經を尖らせるのであります、政府の施策は斯くの如きものであらうか、供出制度にしてもさうである、私の所は北海道の山奧でありますが、青年が供出と云ふやうな戰時中に用ひられた言葉を其の儘使つて居る、斯樣な言葉は農民の解放にあらずして飽くまでも農民を奴隷扱ひにして居る言葉であると云ふ聲が澎湃として起つて居るのであります、其の爲に神經が非常に尖つて居る、且つ青年は左樣に考へるものであります、此の時に於て一體稻の穗に幾粒著いて居るか、大きなものは二百粒或は三百粒著いて居る、其の三百の中にも大きいのあり小さいのあり、或は中には全然實のないものもある、又何本分蘗したかまで調べる爲に二十數萬の食檢の檢査員を殖やして、百姓に毎日々々あの調査、此の調査と云つて行かれたならば、丁度普通の家の箪笥の中から毎日物を出して調べられるのと同じである、其處まで行つたならば絶對に増産と云ふことは期し得られない、益益隱さう隱さうと云ふ氣分になる、さうして多く作つた者には其の主食糧だけ殘してあとは出す、隨て供出の割當も違つて來ると云ふことを聞いて居ります、私は北海道に行つて農地を開拓すること四十七年、此の通りの手になつて働いて居りますが、百姓は惡い惡いと言はれましても、又如何に苦勞をしてもまだ何とも言へない人の良い所がある、雨が降つた、お祭りが來た、正月が來た、吹雪が來たと云ふ場合には、蕎麥だ饂飩だ、餠だ、赤飯だ、斯う云ふものを作つて一家團欒し、隣り家までやり取りして樂む、是が農村の唯一の樂みであります、其の樂みまで全部取つてしまふことは如何なものでありますか、農民にはまだまだ純情があり美徳があります、此の時に餘所から人が來たならばお前も食べろと出す、さうして成るべく人に喜んで貰ふことが本當の百姓の氣持である、今日商工省は色々限界價格を設けて價格を上げて居る、此の頃北海道は米が足りないので新潟縣に行きましたが、新潟は金物の産地であるから聽いて見た所が、鎌が一挺二十五圓、ちよつと良いのは三十五圓です、此の鎌が如何ですか、元は米一俵に對して七、八十乃至百挺買へたのであります、所が今日五挺で百二十五圓です、限界價格か何か分らぬけれども、さう云ふものを使つて百二十圓の米を出さなければならぬ、甚しきに至つては此の頃農林大臣は五百圓生活を考へて此の相場を決めたと云ふ、斯樣なことは正に失言であり本當に許すべからざる點である、まるで國民を瞞著して居る、さうして又二十萬の檢査員を殖やすと云ふ、今や農村は自治的檢査に乘出さうとして居る、所が之を更に逆に殖やさうと云ふことをやつて居る、斯樣なことをやつても減産にこそなれ増産には絶對ならない、植原國務大臣は本當に我々の大先輩として農村問題、或は一般社會問題を十分御承知のことであり、政治の動向は如何なるものであるかと云ふことを十分御承知でありますが、農村としては今度米が專賣になるのではないかと云ふことを皆考へて居る、無論專賣をやるとすれば米から先でありませう、米其の他の出荷に對しては本當に良心的に、官僚的割當でなく壓迫迫害を加へない所の總ての制度に置き換へ、さうして農民が良心的に自治的に之を出し得るやうな方法を講じてやる、是は大先輩に對して洵に失禮でございますけれども、馬を使ひまするのに朝馬小屋に行つて馬の轡で顏の一つも毆つてごらんなさい、決して其の日は田圃に出ても馬は能く動かない、馬車を挽かせる時も、出掛けに馬を怒らせたら決して、其の日は言ふことを肯かない、況や我々人間が頭からこなし付けられ、拘束され、此の澤山の法律の爲に殆ど全身を縛られて、穫つたものは其の儘供出、或は強權の發動、斯う云ふことでどうして巧く行きますか、此の頃農林省の行動を見ますと、今までより更に役人を殖やし、官僚の強化を圖らうとして居る傾向が十分に見えるのでありますが、是等の點に對して國務大臣の御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=85
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086・植原悦二郎
○植原國務大臣 閣内に居りまして私の承知して居る範圍に於ては、米穀の國營などと云ふことを考へて居ることを何處からも承知致して居りませぬ、新聞にどう云ふ記事がありましたか存じませぬが、内閣に於ては未ださう云ふ問題が話題に上つたこともなし、又誰の口から出たこともありませぬ、だから其のことは只今まで絶對にないことと御承知を願つて宜しいかと思ひます、それから農民の心理のことを色々御話戴きましたが、私自身農家に生れた人間でありますから、可なり農業のことも承知して居りますし、農家の心理状態も知つて居ります、只今馬の話もあつたけれども、私の郷里長野縣あたりでは馬を皆軍馬に連れて行かれてしまつて、今では農家に於て馬もないやうな憐れな實情であります、肥料もなく、馬もない、堆肥を作りたくても肝腎の馬が居らぬと云ふやうな状態であります、何れにしても日本の國内で産する所の主要食物では今日日本の國を賄ふことが出來ない、そこでどうしても全農家の方に本當に時局を理解して快く働いて戴いて、將來に希望を持つて行動致して、協力して戴かなければならない、左樣に致してこそ初めて日本の國民に絶對に必要なだけは聯合國の同情を得て輸入をすることが出來ると思ひます、聯合國の御同情と御援助がなければ、絶對量は不足な状能でありますから、なんとしてもいけないのでありますから、それを得るに致しましても出來得る限り日本の國民が總て快く出して、それを凸凹のないやうに配給して、さうして農民の方は希望を持つてやつて行く、今の御説など洵に其の通りだと思ひます、祭があり祝がある時には近所の者にも自分の作つた物を振舞ふ、親戚が來た時には喜んでそれを食べさせると云ふのが農家の本當の樂しみの一つだと思ひます、それ等のことも十分考慮して供出して戴き、將來に希望を持つて、さうして國民が共に力を合はせて行く、もう一番難かしいのは今年、來年だと思ひます、それを起えれば又樂になもると思ひますから、敗戰後の一、二年、此の危局は何とかして皆心を合はせて、不足勝ちでありますけれども、國民が精一杯協力して出す物を出して、さうして公平に分配すれば、聯合國に於てもより以上の御同情を下さつて御援け下さることと私は信じて居ります、一にそれはこちらの態度であります、そこらのことはどうか皆樣方精々此の時局を御諒解下さつて、殊に農民の中に居る方は木當に農民と共に心を合はせて此の窮局を御援け下さらんことを切に御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=86
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087・太田鐵太郎
○太田(鐵)委員 さうしますと、現内閣内に於ては米を專賣にしよつうと云ふやうなことは今まではない譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=87
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088・植原悦二郎
○植原國務大臣 左樣なことをちつとも聞いて居りませぬ、寧ろ閣内に於ては左樣なことは今までは絶對に聞いて居りませぬ、左樣に御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=88
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089・苫米地義三
○苫米地委員長 大藏大臣が見えましたが、最初保留されて居りました榊原君がございますから――榊原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=89
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090・榊原千代
○榊原委員 主税局長は今度の税制は劃期的な税制であつて、國民は是非協力して呉れと云ふやうな御話でございましたが、私から見ますと今度の税制劃期的な惡税ではないかと思ふのでございます、憲法が劃期的に善く改正されまして、國民は本當に明るくなつたのでございます、そして憲法に從つて刑法、民法なども劃期的に善いものにならうとして居りまして、やつと明朗な、感じになりました所、此の税制に依つて又一度にぺしやんこにされまして、何となし不安に怯えて居るのであります、先日來勤勞所得税がひどい、此の儘ではとても生活して行かれない、苛斂誅求と云ふやうな言葉さへも同僚の議員の方達が皆んな言つていらつしやるのでありますけれども、之に對する主税局長の御答へは、何時も是より仕方がないと云ふやうな譯で、どうにも歩み寄ることが出來ないのでありますけれど、私は憲法が劃期的に善いものであつたやうに、此の税制も劃期的に良いものであつて、國民を本當にほつとさせ、更生させて戴きたいと思ふのであります、例へばをかしな例ですけれども、戰時中の重税に、丁度滿員電車に押込められてやつて來た者が、停車場で降りてほつとするやうな生き返つた氣持にさせて戴きたいのでありまして、それには何としてももつと免税點を引上げ、そして一人當りの控除額をもう少し引上げて戴きたいと思ふのであります、巷には此の税に對する怨嗟の聲が滿ちて居ります、若しも其の聲を無視して、そして之を強行致しますならば、どのやうな事態が起つて來るかと甚だ憂慮されると思ふのであります、例へばもうどうしても納められないで氣の小さい人ならば神經衰弱になるやうな所へ持つ來られるでありませうし、又勞働組合などの方面では滯納同盟とか、不納同盟とかを作らうとして居るやうな氣配さへある、是では財界は混亂しますし、國民生活の秩序は破壞されると云ふやうなことになつてしまひますので、何とかして此のことを、民の聲を御聽き下さつて、考慮して戴けないものでありませうか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=90
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091・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の問題は今御言葉の中にもありましたやうに、再三再四御尋ねがありまして、其の都度私共の考へを申上げて居る譯であります、甚だ素氣ない返事のやうに聞こえますが、結論から申上げますと、理論的にも、實際的にも何ともならない、是は一つは勤勞所得税と云ふものに對する、税制に對する誤解が手傳つて居ると思ふのであります、生活の困難と云ふことは、是は又別問題であります、是は賃金俸給、物價其の他の間に均衡を缺くものがございまして、そこで種々なる生活上の不安を生じて居る、同時に又根本的には日本全體の生産が減り、資材が減つて居る、即ち國民の生活水準が殘念ながら總て低下しなければならぬと云ふ基本的事實の上に、更に物價、賃金其の他の今までの制度の關係上、戰時以來の關係上、平衡を得ない點がございまして、それ等が國民の生活を特に壓迫して居るものと私は考へるのであります、是は一面に於て出來るだけの増産をし、同時に種々なる價格の間の不均衡を訂正することをやらなければならぬと考へて居ります、さう致しますれば今の困難と云ふものは無論切拔け得る譯であります税の問題はそれとは又別箇でありまして、無論税を出せば、それだけ出す人が負擔になることは言ふまでもありませぬけれども、併し是は此の場合國民の成べく廣い範圍の人達が、何がしかの税を負擔すると云ふことでありまして實は此の税其のものの理想から申しますれば、免税點を餘り上に切上げると云ふことは好ましくないのであります、是は税を徴ると云ふ意味ではなく、皆が直接税を負擔すると云ふ意味から好ましくない、殊に日本のやうに上の方の納税者と云ふものが非常に少く、即ち「ピラミット」型のひどい日本の經濟状態に於きましては、成べく多數の人に、其の代り出來るだけ税率を低くして負擔をして貰ふと云ふことが、是が正しい行き方と、此の前も申上げましたやうに、考へる譯であります、若しも是が源泉課税の所得税と云ふものが、勤勞所得だの、事業所得だの、資産所得だのと云ふ寧ろ入組んだ、又親切に過ぎた制度でなく、一本の源泉課税であれば却て問題が起きなかつたではないかと思ふ位であるのであります、現在の税制と致しましてはどうしても勤勞所得税を廢めると云ふことが出來ない、又此の免税點を此の春五十圓から二百圓に切上げた、其の上に之を更に切上げると云ふこともまだ時期でない、斯う云ふ風に考へる譯であります、尚ほ一部の勞働組合方面等に納税を忌避する運動があると云ふことでありますが、是は非常に遺憾至極のことであります、どうか此の税の本質及び今の日本の經濟界の惱みの本質を諒解されて、左樣な運動が起らぬやうに願ひたいのであります、尚ほ併し分類所得税は源泉課税でありますから、實は技術的にも納税を阻むと云ふことは困難ではないかとも考へて居ります、同時に是から企業整理に因つて、非常に殘念なことでありますが、失業者が現れる、是は是で何等かの手を加へなければならないので、之に苦心を致して居る次第でありますが、其の場合に幸にして職場に其の儘殘つて居る勤勞者諸君が若干の所得税に依つての負擔をせられると云ふことも亦至當ではないかと云ふ風にも考へる次第であります、どうかそれ等の點の疑惑或は誤解――私はさう考へるのですが、誤解を一掃されるやうに御努力を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=91
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092・榊原千代
○榊原委員 大藏大臣の御答へは只今承りましたが、實際今日は税金に收入の大部分を持つて行かれるやうな現状であります、政府は此の際何處までも税金に依つてのみ財政を賄はうとしていらつしやいますが、それに依つて賄へますか、來年は補償の打切りと云ふこともなし、財産税も入らないと云ふことになりますが、それで財産税のみに頼つて此の財政をやつて行ける御確信がありますかどうか御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=92
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093・石橋湛山
○石橋國務大臣 本年度の豫算は御覽になりました通り、殘念ながら租税だけでは賄ふことが出來ませぬ、廣い意味の專賣收入などを入れましても賄ふことが出來ませぬで、財産税を繰入れなければならない、財産税を繰入れると云ふことは、言換へれば赤字公債を出すのと經濟的には大部分違はないと云ふことは、本會議で私から率直に申上げた通りであります、來年度の財政は歳出の整理を致したいと考へます、是は出來るだらうと思つて居ります、同時に税制の改革も行ひたい、斯樣に考へて居りまして、此の歳出に付ての研究も、又税制に付ての研究も、貴衆兩院就中衆議院の諸君の御協力を得て一大調査會を起して何等かの立案を致したい、斯樣に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=93
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094・榊原千代
○榊原委員 私は來年度の豫算が本年度より少くなると云ふやうな樂觀は出來ないと思ひます、是に於て政府は税金にのみ頼ることなく、何等か國民の爲になる事業を御起しになる御考へはないか、それに依つて官業失業者などをそちらへ持つて行くと云ふやうなことも出來るであらうと思ひます、例へば「ロシヤ」の例で、是は當嵌まらないかも知れませぬが、曾ては高い「ウイスキー」を國に於て發賣したり、又は飮食店を國家が經營したやうなこともございますが、其のやうな例は兎に角と致しまして、此の際何等か税金以外に財源を求めて、何とかして税金の負擔を輕くして戴きたいと思ふのであります、國民は決して税金を負擔することを厭やだとは言つて居りませぬけれども、もう少し何とかして貰ひたいと云ふ希望があるのであります、例へば此の際私鐵等を國營に移すやうな御考へはありませぬか、國鐵が赤字であると云ふことに付ては私は納得出來ないのであります、それは只今運輸大臣がいらつしやいませぬから、一應國鐵が赤字であると致しましても、地方の私鐵と云ふものは只今ぼろい儲けをして居るのであります、それで鐵道の如き國民皆に依つて利益の上るものは、其の利益は國民に還元されるべきでありますして、是が國營に移されるならば、それが出來るのであります、又私は此の際戰災重要都市を國家が買上ぐるべきではないかと思ふのであります、勿論道路其の他公共的建築物、或は緑地などの民有地を買上げようとすれば莫大な費用が要るのでありますから、例へば東京都三十五區等を買上げましたならば、都市計畫をする上に於ても自由濶達に出來ると思ひますし、それに依つて現に燒けないで住んで居る建築物からは地代が入つて來ると思ふのであります、此の際であれば皆何等かの形に於て國民は犧牲を拂つて居るのでありますから、地主も納得するであらうと思ふのであります、補償の打切とか、又は引揚者、復員者、戰災者等、色々な意味に於て皆等しく犧牲を拂つて居るのであります、それで政府に於きましては特別公債の如きものを發行致しまして、さうしてそれに依つて地代を取り、或る意味では通貨を吸收することが出來るのであります、斯くて大衆課税である物品税の如きを百分の百とか、百分の二百とか云ふ非常識な課税の仕方を止めて、百分の二十とする、さうすれば只今十圓のものに對してそれが税金に依つて二十圓になつて居るのを、百分の二十とするならば十二圓と云ふ風に、それが「インフレ」をも大きな程度に於て抑へられるのではないかと思ふのであります、又肥料の如きに致しましても、農家にだぶ付いて居るお金を吸收する策と致しましても、農民に半分出資させ、又政府が半分出資して、さうして肥料會社を政府が經營すると云ふことになりますると、是も「インフレ」を抑へる一つの途となる、又それに依つて農作物等も良くなるであらうと思ひます、更に電力なども中々儲かる事業だと云ひますから、産業を興すと云ふ政府の建前からも電力、石炭の如きものは是非國營に移して戴きたい、さうして又銀行の如きも本當は補償打切の際に之を國營に移すのでなければ意味がないと思ふのであります、私は或る意味では第二封鎖などと云ふのは多くの國民の犧牲に依つて金融機關を保護するものであるとさへ思ふのであります、さうしてさう云ふ金融機關は更に産業資本と結付きまして、其の産業資本を保護するやうなことになる、是が今の政府の欺瞞に滿ちたやり方のやうにさへ思はれるのであります、銀行を私有にして置きますことは必ずしも國民の爲にならない、國家の爲にもならない、唯私腹を肥やすやうな産業資本と結付くと云ふ憂ひがなくはないのであります、只今も同僚委員の方が、米が專賣になりはしないかと云つて心配していらつしやいましたが、今まで國民は末梢的な、法律的な、形式的な統制に縛られて二進も三進も動くことが出來なかつたのでありますけれども、斯う云ふ重要産業の如きものを國營に移し、其の大きな重要な點に於てしつかりと實質的に統制して置きまして、あとは自由奔放に、民主的に任せたならば、國民はもつともつと明朗に活動することが出來るのではないかと思ふのでありますが、此のやうな點に付て大藏大臣の御所見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=94
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095・石橋湛山
○石橋國務大臣 色々御意見を澤山伺ひまして大變參考になりましたが、今御述べになりました一々に付て此處で御答へすることは困難だと思ひます、要するに炭礦とか、銀行などを國營にしたらどうか、それから「ウヰスキー」のやうなものを非常に高く賣つて、それの收入に依つて一面に於て、減税をしたらどうかと云ふ御意見のやうでありますが、所得税の減税が出來る程に色々なものを高く賣ると云ふことになりますと、やはり一方に於ては大衆課税にもなりませうし、まあ纔かに酒とか煙草とか嗜好品に付て高く賣る、是は現に日本に於ても、今年度も煙草の如きは非常に高い税金を課して居るやうな譯であります、無論さう云ふやうにやられるものはやつて宜しいのでありますが、それに依つて所得税を減税すると云ふやうな所までは中々參らないと存じます、それから電車の公營とか、炭礦の公營とか云ふやうなことも此の委員會であつたか、他の委員會であつたか申上げましたやうに、例へば道路がずつと大昔は私有物であつたのが公有になつたと云ふやうな譯で、社會公共の廣い福利に關係致す所のものは、段々公營、國營になると云ふ傾向を持つて居ることは明白であります、だから日本に於ても鐵道の如きは、歴史を申せば色々の關係がありますが、兎に角國營に依つて營まれて居る、電氣の如きも公營等に依つて營まれて結構だらうと思ひます、併し差詰はどうかと申しますと、國有鐵道は赤字である、是はもう間違ひなく赤字であります、是は大整理をしなければ此の赤字を克服することが出來ない、地方の鐵道の如きも、儲かつて居るものもあるかも知れませぬ、全部は分りませぬが、併しながら最近の勞賃の値上り、それから色々な資材等の入手難と云ふやうなことから、大體に於て交通機關は皆經營困難のやうであります、さう云ふ譯でありますから、差詰の問題と致しましては、是等を國有にしたからと云つて國家の歳入が増すと云ふことは一寸望みがないのであります、其の他色々御意見は有難く承つて置きますが、左樣な譯で直ぐに御意見のやうなことを實行すれば、今の財政が處理出來るとは私は考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=95
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096・榊原千代
○榊原委員 私が「ドイツ」の例やそれから「ロシヤ」の例を示したことは、ほんの一例でございまして、もつと何か國民の爲になつて、而も國民が喜ぶやうな方法に依つて、財源を求めることを御考へにならなければ、どうしても駄目だと私は思つたのであります、私鐵の利益の程度其の他に付ては、私は之を管轄である運輸大臣から後刻書面に於てでも伺ひたいと思ひますが、唯鹽と煙草の專賣に於てでさへも六十九億力の收益があるのでありますから、若し私鐵の利益などがあるものを買收致しましたならば、可なりの程度國民の税の負擔を輕くすることが出來るものではないかと思ひますし、殊に産業の振興と云ふやうなことから考へますと、どうしても斯う云ふ重要産業とか銀行とか云ふものは國營に移すべきだと云ふことを思ふのであります、先程國務大臣の植原さんが、今蓖麻子油を服ませてさうして元氣を囘復させなくてはならないと云ふやうなことを仰しやいましたが、斯う云ふ點に於てこそ一大決心を以て斷行なさらなければ、百年の大計が立たないのではないかと思ふのであります、殊に重要戰災都市の土地を買上げると云ふことは、此の際でなければ二度と決して行ふことは出來ないと思ふのであります、又私は地代などに於ても燒け殘つた所からは相當入つて來るのではないかと思ひます、それが必ずしも税の負擔を輕くすることが出來る程多いとは大藏大臣は仰しやらないかも知れませぬが、可なり控除することが出來ると思ふのであります、御所見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=96
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097・石橋湛山
○石橋國務大臣 土地國有論と云ふものは昔からありまして、殊にそれの有力な主張者は「ヘンリー・ジョージ」でありまして、土地を國有して其の經濟上の地代と云ふものを全部國家に囘收すれば、總ての税を止めることが出來ると云ふ非常に有名な議論は、昔「アメリカ」で立てられた、是は或る意味に於て其の通りでありまして、日本に於ては寧ろ地代を忘れて居る、農村あたりの問題でも地代を忘れて居るのが、私は就中日本の社會主義の缺點だと思つて居ります、だから土地の國有をなし、さうしてそれ等の地代を悉く國家に收得すると云ふことは、私は理論としては正しい御主張だと思ひますが、それではそれが今直ちに實行が出來るかと云ふと、土地國有と云ふことは中々大問題であります、之をどう云ふ形で買收するかと云ふやうなことは、今度の農地法の僅かなああ云ふ自作農を作ると云ふことでさへも、中々容易ではないのでありますから、私は理論としては賛成でありますが、實際の政治として今右から左に出來るとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=97
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098・榊原千代
○榊原委員 私は「ヘンリー・ジョージ」の「シングル・タックス」と云ふ、さう云ふ問題で土地國有論を唱へて居るのではありませぬ、斯う云ふ時期でありますから、此の際にこそ東京とかさう云ふ重要戰災都市は買上げて、さうして立派な都市計畫をする上からも是が大切ではないか、さうしてそれが一面には恒久的な、有力な堅實な財源になると云ふことを申上げて居るのであります、私の質問は、もう政府の方でさう云ふやうなことをなさらうとする御誠意がないやうに思ひますし、先程國務大臣も暫定的な政府であるかの如き御答辯をなさいまして、本腰を入れてなさらうと云ふやうな誠意のある所が見られませぬので、殘念でございますが此の邊で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=98
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099・玉井潤次
○玉井委員 私の質問は或は議論になると仰しやるかも知れませぬが、併し重要な問題であるから大藏大臣に是非御聽きしたいのであります、それは大藏大臣は私共と違つて經濟學者であります、隨て殊に御聽きしたいのでありますが、税と云ふものは轉嫁と歸著と云ふ問題があることは御承知の通りであります、そこで私が考へますのは、其の歸著と云ふものは一體何處へ歸著するのだと云ふことに付て政府當局は如何に考へて居るか、私に言はせますと税の轉嫁及び歸著して行く形式を見まして、最後の歸著點は何處へ行くかと云ふならば恐らくは勤勞階級に歸著するのではないかと考へる、是が或は此處で私共と政府當局の意見の相違が出る因であるかも知れませぬ、併し此の點がはつきりしなければ、私は税と云ふものは根本から誤りを生じて來るのではないかと思ふ、私に言はせるならば、今日の税の大部分と云ふものは皆此の轉嫁及び歸著の理論から言うて大衆税になつて居る、結局は勤勞大衆が負擔することになる、一例を擧げるならば地租でありますが、地租は是は地主、土地所有者が直接納める税であります、併しながら其の地租と云ふものは小作料として小作人から取上げるのであります、さうすると唯地主が出して居るのは一時の立替に過ぎない、さうすると農民は地租は納めて居ないが、小作料として納めて居る、隨て轉嫁と歸著の關係になるのでありまして、色々の税が全部さうであります、之に付て私は一々申上げませぬ、大藏大臣は勿論聽かなくても分ると仰しやるであらうから、申上げませぬが、さう云ふ風に考へた場合に、私共は先に申上げるやうに或は勤勞所得税が高いとか何とか云ふことは寧ろ今の理論の基礎から考へた方が宜いのではないか、之を假に一八%を二〇%にした、だから二%高くなつた、だから勤勞所得税はどうだと云ふことを言うても、それは大藏大臣の仰しやる通り或は政府委員の方が仰しやる通り、今日の時代に於ては恐らくは勤勞所得税全部を廢止すると云ふことは出來ないでありませう、だからせめて此の二割の増率をすると云ふことは止めたらどうかと云ふやうな議論の建前は、私が今申上げる通り、所謂轉嫁の理論に依ると、色々な税金が上つて居るが故に、其の結果は全部今の勤勞大衆に課かるのだと云ふことを私は申上げて見たいのであります、是は私が申上げたのは一つの農民の例を言うたのでありますが、所が今までの委員會に於ける政府當局の答辯の大體を申しますと、私は所謂胡麻化しであると思ふ、其の胡麻化しは税の問題と生活の問題は自ら違ふ問題である、斯う云ふことを仰しやる、一應さうも言はれませう、併し要するに生活をすると云ふ問題になると、そこに勞働賃金の問題が出て來ます、勞働賃金は何かと云へば勞働力を維持し、而して勞働力を増強することに依つて拂はれる所の報酬なのであります、賣るべきものは勞働力のみであります、さう云ふやうな報酬であります、隨て其の報酬から一つの税を取立てる、其の時には要するに皆さんは勤勞意欲がなくなるのではないかと云ふことを仰しやるのでありますが、私は如何に勤勞意欲があつたとしても、今申上げるやうに勞働力を維持し増強して行く所の收入が入らぬとすれば、如何に勤勞意欲があるとしても勤勞は不可能になるのではないか、だからして税と云ふものは其の意味に於て考へなければならぬのではないか、然らば税を取れば食へない、食へなければ勞働爭議を起してやれば宜いぢやないかと仰しやるならば、私はそれは暴論であると思ふ、而して今日の色々の法制の下に於て、經濟組織の下に於て、さう濫りに勞働爭議は出來ないでありませう、それを一つ御考へ願ひたい、それからもう一つ御聽きしたいのであります、さう云ふことを私が申上げて考へた場合に、今の轉嫁及び歸著理論と云ふものをはつきり伺ひたい、是が違つて居るならば私の議論は成立たない、併し私はそれに間違ひないと思ふから、之に對する學者として、或は政府當局としての大臣の御説明を聽きたいのであります、それに依つて私の理論が立てられる、今日は色々のことを聽かうと思つて居りましたが、時間がありませぬから御聽き致しませぬ、此の點だけ一つ是非聽かして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=99
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100・石橋湛山
○石橋國務大臣 税の轉嫁の問題は、私も實は專門家ではないので能く分らないのですが、併し是は御承知のやうに昔から中々議論の多いことでありまして、果してそれが勤勞階級に全部集まると云ふことが言へるかどうか、私は疑問を持つて居るのであります、併しながら兎に角税は私などの素人論から考へましても、其の時の謂はば状況に依りまして轉嫁が變つて來るのでありまして、物の生産者に課税をする、其の生産者が果して負擔してしまふか、それとも其の生産者がそれを被して消費者に之を轉嫁するかと云ふことは、其の時の物の需給の状況にあるものと考へて居ります、即ち通俗で申せば物を高くしても賣れる時には税は物に被さつて消費者に轉嫁される、そして其の時の状況が高くしたのでは物が賣れないと云ふ時には其の税は轉嫁されない、それと同樣に勤勞所得税などの問題も、若し勤勞者が増税を受けて所得税を拂はなければならぬ、其の時の勞働市場の状況が他に轉嫁し得る場合ならば、それが雇主に轉嫁される、現に或る時期に於ては雇主に明白に、轉嫁された時期もあるのであります、今後の状況はどうなるかと云ふことは、それは今後の勞働市場と申しますか、事情に依る問題であります、さう云ふ譯で私は一概に全部のものが勤勞階級に集まつて行くとは言へないのではないか、併し是は問題が中々複雜で、色々其の轉嫁があつちこつちに行きますから、中々難かしい問題で、それを嚴格に突止めると云ふことはもう少しゆつくり考へて申上げて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=100
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101・玉井潤次
○玉井委員 併しながら其の理論の根據はどうでありますか、轉嫁と云ふものの歸著點はどう云ふ所に行くか、其の時の經濟状態に於て違ふと云ふ御意見でありませうか、さう云ふことは御考へにならないでせうか、今も仰しやるのでありますが、其の議論で、轉嫁出來るのだ、歸著することが出來るのだと言はれたとしても、現在の状態では一體税はどう云ふ風に轉嫁されて、どう云ふ風に歸著するのであるか、考へて戴きたい、それからもう一つ、今言はれた所で私は甚だ呑込めないのは、結局は物の價格と云ふものは税を加へた價格なんだと云ふ一つの御考への根據のやうでありますが、勿論其の點はさうに違ひない、さう云ふことになると、要するに需要供給の關係に依つて物の價格と云ふものは違つて來るのだ、物の價格が違つて來るのだから、時と場合に依つては違ふのだと云ふ御説明になるのだと私は思ふのでありますが、さう云ふことは私は言へないと思ふ、少くとも、物の價格と云ふものは――利潤のない所に生産がないことは是は間違ひないことであります、さうすると利潤があると云ふことを基礎として御考へになれば、恐らくは税と云ふものは必ず物の價格に含まれて居るのであります、利潤がない時には生産が止まるのであります、生産の止まつた状況が今日の状況なのであります、所謂物が不足して斯う云ふ形が出來上つたのが今日の状況なのでありますが、さう考へて來ると必ず税は轉嫁されるのであります、成程仰しやつたやうに、昔から色々言はれる難かしい理論だから、俺とお前ぢや仕樣がないと仰しやればそれきりでありますが、少くとも現在の社會状態ではさう考へられるのではないか、さうするならば色々の税が上げられた今日に於て、此の勤勞大衆及び農民の負擔する税が相當に上つて居るのだと云ふことを私共が考へた場合には、少くともさつきも一寸申上げたやうに、今の勤勞所得に對する税率と云ふものは上げる必要はないではないか、斯う云ふことを私は申上げて見たいのであります、所がさう云ふことを言ふと、今の財政の状態に於ては是は如何とも仕方がない、斯う簡單に仰しやるでありませうが、然らば現在あなた方が御組みになつた豫算から見て、税を徴る場所が他にあるのではないかと云ふことを私は指摘して見たいのであります、私は率直簡單に申上げるのでありますが、其の場所は相續税の關係にあると思ふのであります、成程相續税に於ては家督相續税と遺産相續税の二つに分けて居る、今日の時代に於て一體相續税を二つに分ける必要があるかどうかと云ふ問題であります、唯、遺産相續に於ける税率は高くなつて居るが、家督相續の税率は安くなつて居り、而して家督相續の場合に於ては最高税率が違つて居る、兎も角さう云ふ違ひがあるが、一體何處にさう云ふものを分ける必要があるか、今日の民主主義社會に於て新しい憲法が制定されると云ふ場合に於て、日本の家族制度と云ふものをそれ程支持する必要があるかどうか、要するに家族制度は封建制度の遺制として殘つて居る、それが爲に此の家督相續税と遺産税とが分れた原因になつて居ると思ふのであります、そんなものは廢めてしまへば宜いぢやないか、之を廢めて唯一本にして、遺産相續税と同樣にせよ、併し家督相續税の一つの特徴として、我我の生活に或る一定の根據と云ふものを此の相續に依つて保ちたいと云ふやうな考へがありとするならば、其の免税點は多少上げると云ふことをやつたら宜いぢやないか、だから所謂民主主義が徹底したならば、家督相續制度と云ふものは寧ろ廢止した方が宜い、さうして遺産相續税に全部持つて行つた方が宜いぢやないか、それでこそ本當に民主主義に徹底するものと私共は解釋するのであります、税の計算もしないで私がさう云ふことを申上げるのは失禮でありますが、さうすればそこに相當の税が出て來るのではないか、而して又一方に於て遺産相續税は一千萬圓以上を超過する金額に於ては慥か千分の七百と云ふのが最低になつて居ると思ひますが、之を二千萬圓の税率にまで持つて行くのも宜いし、或は又全部の税率を上げて、最終に於ては要するに九〇%までも徴るだけの税率に持つて行つたら宜いぢやないか、さうすれば濫りに大きな金持は出來ますまい、金持が出來ないと云ふことは再び戰爭をしないと云ふことであります、一方に於て資産家が出來ると云ふことは、一方に於ては貧乏人が出來ると云ふことを意味するのでありますから、斯う云ふ改革時に於てはさう云ふことも考へる必要があるのではないか、さうして今申上げたやうに、其の税を取ることに於て一方に於ては勤勞所得税を輕減することが出來るのでてります、もう一つは例のやかましい問題になつて居ります所の公債の利率であります、是は一體何が故に三分五厘と云ふ利息を今日まで維持して居られるのか、公債の利子を取る人は一體誰か、公債を所有して居るものは大部分は金融機關であります、而して我々大衆と云ふものには殆ど公債の所有者はありはしない、唯我々は税金を拂ふ役目をして居るに過ぎない、所謂利息を拂ふ所の役目をして居るに過ぎない、併しさう云ふものに對する利息を全部棒引をしては困ると云ふならば、利率を下げると云ふやうなことに於て勤勞所得税を輕減することが出來るのではないか、然るにさう云ふやうな點まで御考へにならぬと云ふことは、今私が申上げたやうな轉嫁、歸著の問題に對する經濟學的の基礎を誤つて居るのではないかと云ふ氣持がするのであります、隨て私の質問を簡單にしますならば、要するに家督相續税は遺産相續税と同率に上げる、而して最後の免税點はもう少し上げても宜いのでありますが、額を殖やす、さうして最後の額に於ては九割位までも取つたら宜いぢやないかと云ふやうなことに對する御當局の御意見、もう一つは公債に對する利息の打切、是が行はれることが出來ないだらうか、それが出來るならば私は勤勞所得は當然引下げることが出來るだらうと云ふことを確信するものだから御意見を伺ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=101
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102・石橋湛山
○石橋國務大臣 租税轉嫁の問題に付ては私の申したことが足りない點がありますが是は措きまして、只今の御質問の相續税の問題であります、是は二つのものを一つに合はせると云ふことは尚ほ租税を考へる場合に色々御評議を願つて結構でありますが、併しそれにしましても之を幾ら取りましてもそれで今の勤勞所得税を「カバー」すると云ふやうなことは到底出來ない、今年度の豫算が一億四千六百萬圓であります、さう云ふ譯で日本では殘念ながら大財産家が居りませぬので相續税と云ふものは殆ど徴れない、今の税率を幾ら高くしても殆ど適用することがない、ですから御話のやうに九〇%にしても一〇〇%にしても實は適用者がないと云ふ實情であります、況んや今後財産税等が課されますれば、是が更に少くなる譯でありまして、相續税の問題は今後の日本に於ては到底問題になりませぬ
それから公債の話でありますが、是は先般から各所の委員會其の他で御答へして居るのでありますが、若しあなたが預金を持つていらつしやると致しますれば、公債の利子はやはりあなたの手にも入つて居る譯です、詰り金融機關に九〇%以上國債はあります、殊に郵便貯金に割合に多いのであります、個人の手に入つて居りますのは、法人個人を通じまして一割には上らない、本當の個人は極く僅かで、大部分が皆郵便貯金其の他の金融機關、地方の農業會と云ふやうなものに入つて居る、それは何に依つて公債を持つて居るかと云ふと、預金に依つて其の公債を買つて居る譯です、言換へれば預金の見返りになつて居る、其の公債の收入に依つて預金の利子を拂つて居る、無論公債ばかりではありませぬ、外に貸付金の利子があります、此の二つのものに依つて預金の利子を拂つて居る譯であります、今年度は三分五厘の公債を一分に下げたらどうかと云ふ話がありまして、是も研究しました、年の半ばからやりましても郵便貯金の利子は半分に下げねばならぬ、普通の銀行の預金利子も三、四厘に下げねばならぬと云ふ結果になります、斯う云ふ譯で預金者が公債を持つて居ると云ふ風に御聽取を願ひたい、隨て公債を打切ると云ふことは金融機關の貸出の方が打切られまして其の爲に金融機關の預金者も相當の迷惑を被る譯でありりすが、唯少額預金者に迷惑を被らしては此の際困りますから、そこで先程豫算總會で申上げましたやうに、大體一萬五千圓程度以下の預金は之を保護すると云ふことに建前を執つて居ります、此の上に國債を若し打切るとか、或は利子を拂はないと云ふことになりますれば、保護を致さうとする一萬五千圓以下の預金者にも亦利拂ひをしない、或は其の預金を打切ると云ふ處置を講じなければならぬ譯であります、隨てさう致しますと、折角勤勞所得税を廢めましても、他方に於て勤勞者に預貯金に依つて損害を與へる、之を救はうとすれば、公債を打切りながら新しい公債を出さねばならぬ、斯う云ふ矛盾に陷る譯であります、是は屡屡申述べましたことでありますが、重ねて申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=102
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103・玉井潤次
○玉井委員 私は其の點が議論があると思ふのであります、公債を打切ることが、少額預金者の迷惑になると云ふ御話でありますが、それは迷惑にならぬと思ふのであります、例へば今の御話のやうに、公債の大部分と云ふものは金融機關が持つて居るのだ、隨てお前達の貯金が皆倒れるぞと言はれるかも知れませぬが、如何せん我我は倒れて迷惑な程の預金を持つて居ないのであります、預金の大部分を持つて居る人は、公債を持つて居る人は持つて居るか知れぬ、或は又銀行から金を借りて居る人は持つて居るか知れぬが、大衆は持つて居らないのであります、是は私が申上げるよりも寧ろ當局の方では能く調査が出來て居るでせうが、現在の預金總額約二千億萬圓の中所謂勤勞大衆の預金額は一體幾らあるでせうか、私共が一箇年五十何億と云ふ利息を拂つて行つて、それが三十年經つならば元金全部拂はれるのであります、我々の預金が捨てられても一向構はぬ、郵便貯金に金を預けるのに、一分何厘かの利息を考へて預ける人は恐らくない、大藏大臣は財政家であるから十錢の物でも勘定なさるかも知れませぬけれども、併し我々はそんなものは考へて居らない、利息が來なくても魂げもしないし、今申上げる約千何百億と云ふ厖大な公債が殘つて居るならば、一箇年に五十何億と云ふ金を取られる、是は明瞭である、それを前に御話のやうに一分何厘に下げると仰しやるならば我我喜ぶのでありますが、下げないで置かれる爲に今申上げたやうに色々税金が上る、成程相續税は一億何千萬圓に過ぎない、そんなものは九牛の一毛だと仰しやるかも知れぬけれども、如何に安くても一億何千萬圓は少くしても、正しからざる税を正しくしてやると云ふやうな考へ方に於ては私は宜いと思ふ、今申上げる公債の利息が其の通りであります、唯倒されて困る者は金持でありませう、決して預金者が困るのぢやない、是はもう本會議以來今の大藏大臣の言はれることでありますが、もう一歩進んで考へて貰ひたい、是は實に重大問題である、それがいかぬと云ふことになれば所謂勤勞者の要求して居る勤勞所得税の撤廢と云ふことは出來ないとしても私の申上げることは出來ようと思ふ、隨て其の點に對する御意見は今御聽きしたのでありますから御聽きする必要ありませぬが、唯私はさう云ふ意見を持つて居ります、又さう云ふ意見は私のみでなく巷に恐らく澤山あると思ひますから能く御參考までに御聽きになつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=103
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104・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは十分間の御約束でしたから布君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=104
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105・布利秋
○布委員 もう殆ど質疑も最後でありまして、私は大きいことと小さいことと混ぜ混ぜして大藏大臣に十分間ですから我慢して戴きたいと思ひます、私の建前としては税に依つて此の敗戰の日本を擔つて行くことは已むを得ざるものであると觀念して居ります、唯其の間に公平なる負擔が欲しいと言ふのです、だから公平なる負擔に付てのことを理論を離れて、實際問題で澤山空間がありますから、此の空間を少しばかり申上げる、此の空間の中には御承知のものもありませうが、或は大藏省關係で御承知のない方もあるかも知れませぬ、理論的に言ひますれば、私は所得税一本建の論者です、是はもう正しいものである、けれども今是が通用しませぬ、だから所得税一本と申上げるのでない、國家を救ふと云ふ意味に於てまだ空間があります、それは細かいことと大きいこととがあります、又實行の出來ることと出來ぬことも混ざつて居りますが、戰爭をやりますと十二年の事變以來國庫が相當ものを買つて居る、一例を擧げますならば、一つの石炭山を買ふにしても、石炭の出ない山を北海道あたりで四十何坑掘つて居る、殆ど一千萬圓近いものをずぼつと興發に出してしまふ、さうしてそれは出はせぬのです、さうして興發の責任者と賣手と中へ入つた者とが卍巴になつて金を儲けて居る、斯う云ふものが方々に無駄になつて居る、それだから無駄の金が金のある者の手にそつくり入つてしまつて居る、其の金を絞り出す方法を一つ研究して貰ひたい、私は積極的に言ひたい、出すものは出したら宜い、餘計儲けた奴からは餘計徴るべきだ、さう云ふ不正は一つや二つではありませぬ、例が幾つもある、だから私は遡て多少斯う云ふ風に御徴りになをことが本當ではないか、私は「フランス」の敗戰の時にも居りましたけれども、それは逆累算で以てずつと徴つてしまつて居る、それは儲けた奴だから徴るべきものである、さうすると現在のみに拘泥はらないで、昭和十二年以來に遡つて不徳な儲けをした者、國庫の金を出した者は調べが付くと思ふ、斯う云ふ者を頭に入れて戴いて、所得税を擴大して貰ひたい、さうしてそれが擴大さるるならば他の無理の當つた方面は安くして行く、是は常識だ、之を一つ申上げる
是は御承知でありませうが、生命保險に入りますのに封鎖預金を取出す、それは一萬や二萬の保險ではありませぬ、大きいのは百萬や二百萬である、さうするとそんな金は動かせぬではないか、さうして保險會社はそんなに高があつては受けることが出來ぬぢやないか、それを方々の保險會社に持つて居る、さうして其の掛金を封鎖預金であつちもこつちも入れてしまふ、私は人を擧げて呉れと仰しやれば人の名前まで出しますが、さうして直ぐに解約です、解約すると今度金が戻つてしまふ、それは新圓だからぱつと預金してしまふ、あつちからもこつちからも若干づつ、さうして自分の預金を大半捌いた人が數多くあります、斯う云ふ者を見逃されて居るのを知りつつか、私は大藏省に申上げるが、其の點が私にも分らぬ、だから見逃されて居る者がある、詰り縛られたやうな感じであり、最も縛つたと思つて居つた者に拔道がある、其の拔道を速かに塞いで掛らなければ、公平なる税金の負擔を明朗にやることは私は出來ぬではないかと思ふ、小さくなりますと家賃です、家賃にしましても、今公定の家賃などと云ふものは、契約が出來て居るから税務署にはそれが通じて居るが、併し實際は四倍、五倍です、私の友達はたつた三部屋借りて百五十圓拂つて居る、それも單獨の家ではありませぬ、是が皆家主に税金の掛らぬ金が入つて居る、それが全國です、一人や二人でない、さうして部屋代にしても小さいやうだけれども、斯うした儲けは税務署が之を詳しく調べることが出來るか、さうして十分に税を掛けることが出來るか、そこらも一つ小さいながらも、考へて見れば大きい計算も出ますから、是等も積極的に建設して戴きたい、それから闇で儲けたと云ふやうなことはどうかして取拔くと云ふことは御考へであらうと思ふから、私は蛇足を加へませぬ、それで、行爲税で胡麻化して居るのは小さい方ですけれども、是なども相當に徴つて戴くことだと思ふ、見込で徴つて載く
自由勞働者が相當儲けて居る、大工が七十圓八十圓は安い方です、高いのは百圓も取る、それは所得税を拂つて居りますか、一體斯う云ふものでも見逃すことはないと私は思ふ、さうして皆が公平に負擔することだと思ふ、唯自分の階級と自分の職業のみを守つて、出さぬことばかり考へるのは國家の再建にはならぬと思ふ、國家再建と云ふならばお互ひが有り餘つた金は、高い金の掛かる贅澤な生活をしないででも、税金を出すのが國民の義務であらうと思ふ
相續税にしても、先程大藏大臣の御話で是は末の末であると言はれる、其の通りです、併し末の末の中に既に早く相續税が風を喰つて居る、長男に相續させ、次男の嫁にも皆分けてしまつて居る者がある、人間の名前を出せと言はれるならば十數名の名前を私は出せます、斯う云ふ風にして皆が逃げ道をどんどん驅足をして居る、之を一つ捕へて貰つて、さうして公平なる税金の負擔に進んで貰ひたい
農家のことも話したいが、先程他の委員から話しましたから申しませぬが、此の都會周邊に居る農民と、田舍の山村に居る農民とは大變收得が違ふと云ふことを考へて、税の建前をして戴きたい、詰り都會の周邊は相當徴つても宜いと私は思ふ、是は色々な見込を以て徴つて宜い
私は公平な負擔に付ての質問とさう云ふことに絡んだ話をしたのでありますが、今度は一つ希望を申さして戴きたい、是は私が所得税一本建論者だからどうしてもそこに行きますが、所得税調査委員が各町々にあります、所が是が一つを役に立たぬ、本當に所得税、税金の分る者は居りはせぬ、それでやはり名譽職として大いにやつて居りますが、併し斯う云ふものに依つて所得税を決めて行かれることは私は危險であると思ふ、だから茲に一つの組織を御願ひしたい、各階級から委員を出して、一町内單位に特務的な所得税の調査をやる、是は「スパイ」的、軍の特務機關的と云ふと惡いかも知れない、どうも言葉に困るのですが、それに依つて人の懷ろのあり方を、十分に實在を掴み得ると云ふ一つの機能を作つて戴く、之が爲には相當の豫算を組んで、多くの眞面目な有能な士を置く、役に立たぬ税務吏を何ぼ御傭ひになつたつて役に立たぬ、だから有能の者を育て上げて、税金だけは公平に行くやうに御願ひしたい、御願ひと質疑と兩方混ぜこぜにして話して是で約十分だと思ふ、私は過ぎたことはやらぬ、もう一人殘つて居るらしいが、それで終りださうですから、御遠慮しまして、大藏大臣は識見があるのだがら、其の高い識見で以て一つ私に參考になるやうに聽かして戴きたい、之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=105
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106・石橋湛山
○石橋國務大臣 色々拔穴があることは常に税務當局が苦心をして捕捉しようと致して居る譯でありますが、實際非常に困難で、是が捕捉の十分に出來ないことは遺憾でありますが、尚ほ一つ色々工夫を致しまして捕捉をし公平を保つやうに致したいと存じます、御指摘の點は十分參考に致しましてやりたいと存じます、それから所得税調査委員のことも、昨日か一昨日か、此處で他の場合に問題になつたのでありますが、是も目下研究を致して居りまして、今までの所得税調査委員を強化して行くか、それとももう少し變つた制度を採るかと云ふことは、色々説がありまして、研究を致して居る次第であります、是等のことは、尚ほ先程も申しました何等かの調査會を設けて、それに依つてもう一度研究して見たいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=106
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107・布利秋
○布委員 洵に有難うございました、それから佛印邊りから「トロール」船のやうなものを盜んだと云ふか、船と云ふものは脚がああ云ふものですから、色々にして南方から持つて來て、それを各縣で巧く許可を得て自分の財産にして居るが、斯う云ふものが財産から拔けて居る、是等の御調査もやはり大藏省の仕事ぢやないかと思ふのです、例を擧げろと仰しやつたら擧げます、人の名前でも擧げますが、私は其處まで突込んで言はぬでも宜からうと思ふ、それから先程申上げた國庫の金を湯水の如く使つて、さうしてそれが出もしないものを出ると稱して、畑、山を實際鑛區として賣つた、さう云ふ者に遡つて追錢を徴ると云ふ御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=107
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108・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は個人であるならば財産税で三月三日現在で調査されて居る譯でありますから、其の財産税に依つて税として取返し得るものと思つて居ります、それから先程御話の船などを外地から持つて來たと云ふのも、同樣財産税に掛つて來るものと考へて居ります、それから財産税に掛らないものが多少あるのでありますが、今度の補償問題などに絡みまして、さう云ふものにも氣が付いて居りますので、さう云ふものは何等か之を取返す方法を致さうと云ふ工夫を今致して居ります、けれども戰時中色々山を賣付けたり何かして儲けたと云ふものは、大體三月三日の財産税の調査の中に入つて來るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=108
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109・布利秋
○布委員 例へば樹を買へば宜いと云ふので、咋年あたりからどんどん樹を買ふ、さう云ふ土地を買つたら財産税が課かると云ふので山を買つた譯であるが、斯う云ふのは御調べが付きますか、是も御尋ねを致したい、斯う云ふことは兎に角役人が皆教へて居る、縣の役人は知るのが早いから、斯うして置けああして置けと知らぬ奴に教へて山をどんどん買はせて居る、それを最後に一つ御尋ねして打切りに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=109
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110・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昨年來山を買つた人がおありならば、措置は勿論立木に付ても財産税は課税致しますから、財産税の輕減にはならないことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=110
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111・布利秋
○布委員 それから大藏大臣が見えて居りますから御尋ね致します、屡屡聞くことがあるが、大藏大臣の口からはまだ聞かないのですが、是は少さい問題で、田舍の牛一匹の問題ですけれども、之を財産として御認めになるのか、農具として御認めになるのか、一つ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=111
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112・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は技術の問題で、私にもよく分らないのですが、是は無論理論上財産であります、併しながら課税する場合にさう云ふものに付ての評價をどうするかと云ふことには、其の牛馬が使はれて居る状況に依つて無論手心は行はれるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=112
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113・布利秋
○布委員 それでは私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=113
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114・苫米地義三
○苫米地委員長 小川原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=114
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115・小川原政信
○小川原委員 もう御尋ねしなくても宜いやうですけれども、一應御尋ねして置きたいと思ひますが、今牛馬の問題が出たのですが、是は財産と見るべきことは至當だと私も考へます、併しながら牛馬を税務署なりあなた方は消耗品と見ますか、何と之を見られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=115
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116・池田勇人
○池田(勇)政府委員 消耗品の一種と考へなければならぬと思ひます、生き物でございますから、何時死ぬかも分りませぬ、又年齡に依りまして價値が非常に低減し或は増加する、斯う云ふやうなことがありますので、普通の固定の動産或は不動産と云ふやうな評價は出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=116
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117・小川原政信
○小川原委員 分りました、それで私は牧場を營んで居る者とか或は牛馬商を營む者は是は課税して宜いと思ふ、課税の對象物である、所が農家に至りましては消耗品と見て戴きたい、例へば斯う云ふことです、馬一頭の成年期は三箇月しかない、たつた三箇月しか置かないで、あとは活動して居る、さう云ふ實情にありました時に、之を財産だと云ふので――財産には違ひありませぬけれども、さう云う苛酷な馬の活動をして居るのに、それを次から次と課税をされると云ふことになりますと是は大したことになつて行く、だから、財産であるから課税をせぬと云ふ譯には行きますまいが、さう云ふ點も一つ税務署は徴税技術として御納得になつて居らないと、唯農家は子供を産めば高い馬にして賣つて居るのだから課税して宜しいと云ふやうな御考へがあるとするならば、此の課税に對しては苛酷であると云ふ謗りだけは免れぬと考へますので、此の點一つ特に御耳に入れて置きたい、それから、勤勞所得のことに付ては澤山仰しやられましたけれども、茲に一つ問題があつて參つて居りますので、是は一つ私茲に讀みますから、能く御聽きになつて戴きたいと思ひます、「現行所得税法に依る勤勞所得税の撤廢要求は國民の大多數を占むる勤勞大衆の切實なる叫びなる事は既に認識せられあるものと被存候得共然も尚ほ再建國家の財政上より勤勞所得税の課税は眞に不得止とするも増税案の根本意圖は負擔の公平にありとせば所謂闇所得階級に對し嚴正にして徹底的なる課税の方途を講ぜざる等は課税技術の拙劣なる事を暴露せるものにして戰時と變らざる源泉課税による賦課徴收の方法を續行せんとし更に今囘の税率引上の如きは官僚の怠慢に外ならず、源泉課税こそ隣組制度の利用或は官廳、學校職員の援護團體の間接利用と共に現下惡政の最上なるものとす、由來我が所得税は明治二十年創設以來其の時代の經濟状況に依りて課税の適正を考慮し、苟も國民生活の最低階級に賦課せられたる如きは空前のことにして、即ち所得課税最低限明治二十年三百圓、大正二年四百圓、大正七年五百圓、大正九年八百圓、大正十五年千二百圓、昭和十四年千圓、戰時中は源泉課税として當初基礎控除額年七百二十圓、次で年六百圓、現在年二千四百圓の基礎控除とす、右之通りにして今や政府の豫想する最低賃金五百圓は事實上飢餓生死の一線にして、戰時中血と汗とを捧げたる無辜の勤勞大衆に對し更に増税を以て報んとする如きは斷じて許すべからざる所なり、當協會は最大讓歩を以て本件基礎控除額を月五百圓に引上せられんこりを請願し、之に對する税の補填は闇所得階級の徹底的課税と國債費の削減に依つて充當せしめられんことを要望仕候」斯う云う書面が來て居るのでありまして、勤勞大衆に對する課税に付ては非常に多勢の方から御話になりまして、御説明もありましたから私も了承は致して居りますが、兎にも角にも勤勞大衆が斯う云ふ考へ方を持つて居ると云ふことに對しましては――國家も今更之を廢める譯に行きますまいし、又廢めて呉れろと云ふのでもありませぬが、そこに餘程政治上の考慮の餘地があると思ふのであります、此の點に付て、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=117
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118・池田勇人
○池田(勇)政府委員 勤勞所得税の百分の二の引上げは、本年三月九日緊急勅令の後裁定を仰ぎまして基礎控除の引上げ、扶養家族、控除の引上げを致しましたのと一環をなして居るのでございます、隨ひまして昨年の勤勞所得者の負擔と本年の勤勞所得者の負擔と比べるのが今日の増税案の百分の二を審議する基本材料となると思ふのでございます、昨年の勤勞所得者と本年の増税後の負擔を比べますと、所得階級に依つて餘程の區別がございまするが、五千圓程度の年收者は半分以下に相成つて居ります、だから非常に他の所得と比べまして輕減に極力努めた次第でございます、又他面勤勞所得者の所得は大體に於て昨年の三倍以上に相成つて居ると思つて居ります、我々役人も七月の俸給改正令に依りますと三、四倍に相成ることと思ふのでございます、斯う云ふ點を考へますと百分の二程度の増率に依つては決して勤勞所得者の負擔は増大して云るとは考へて居りませぬ、他の所得者の引上げ状況を見たならば非常に勤勞所得者は低いのでございます、それから基礎控除を五百圓にと云ふ御話であります、五百圓は何れも最低生活費の問題ではございませぬ、生活の標準設計でございます、金融措置、所謂通貨對策の方から出たものでございまして、私は五百圓生活と申しましても、是は封鎖預金から引出されると云ふこともございますので、各人各樣に相當生活の彈力性があると思ふのでございます、又本委員會で私は勤勞所得三十四億圓の收入は大體一人當り五千五百圓の年收と計算したと申上げました、是は一家族を持つた人のみならず、子供さん或は御孃さんで役所の雇、會社員等になつて居られる方の俸給も入れましての平均でございます、隨つて此の基礎控除の二百圓を五百圓に致しますと、我々は相當擔税力ありと認めて居る、さう云ふから所得税は徴らないことに相成ります、又税收入の方から申しまして、之を五百圓に引上げますと平年度で申しますと四十億圓の勤勞所得税が三十四億圓減つて參ります、平均俸給が五千五百圓の計算でございまするから、五百圓の基礎控除を致しますと、六千圓の控除になります、さうすると勤勞所得税は殆ど徴れないと云ふことに相成りますので、基礎控除五百圓の引上げは財政收入から言つても、又實際の問題から申しましても私は問題にならぬと思ひます、勤勞所得は一萬圓とか或は一萬五千圓とか申して居られますが、實際の勤勞所得の對象となるものは、月三、四百圓位が相當な部分を占めて居ると云ふことを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=118
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119・小川原政信
○小川原委員 御考慮なさる餘地はありませぬか、是は政治的な解決です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=119
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120・池田勇人
○池田(勇)政府委員 私は事務當局で屬僚でございます、主税局長と致しまして増税案を考へました責任者として之を動かすことは他の所得者に非常な不公平に當りますので、動かす氣持は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=120
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121・小川原政信
○小川原委員 増税案の責任者として御考へになる時はさうでありませうけれども、是が國家の大局から見て其の方が大衆の叫びである、大衆の叫びと云ふものは取入れてやらなけれてならぬ、それが民主的な税の行き方であるとしますと、是は別に其の責任者だと云ふ城壁に立籠らなくても、扉を開いて話が出來るやうに私は考へるのでありますが、さう云ふ點餘地はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=121
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122・池田勇人
○池田(勇)政府委員 政府提出の法律案の審議權は議會にあるのでございます、事務當局屬僚が如何に申しましても是は何もならないことで、唯あなた方が審議をなさる御參考に申上げて居る次第でございます、それを取入れる取入れないは議會竝に内閣が御相談なすつたら宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=122
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123・小川原政信
○小川原委員 そこまでの話になれば正面衝突でも何でもせいと云ふことになるので、そんな御答辯を聽かうと思つて此の年寄が話をして居るのではございませぬ、問と答辯とが食違ひのないやうに御願ひします、私は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=123
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124・苫米地義三
○苫米地委員長 それでは之を以て通告のありました質疑は全部終りました、即ち質疑は終局致しました、次會は議案全部に對する討論を行ひ、討論終局の後直ちに議案全部の採決を致します、次會開會日時は公報を以て御通知申上げます、本日は之を以て散會致します
午後四時四十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011573X00719460810&spkNum=124
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