1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月九日(金曜日)午前十時三十九分開議
出席委員
委員長 北村徳太郎君
理事 細田忠治郎君 理事 山田善三君
理事 九鬼紋十郎君 理事 海野三朗君
井田友平君 小澤國治君
加藤一雄君 村島喜代君
山田悟六君 金子益太郎君
河野金昇君 赤澤正道君
八月八日委員馬越晃君辭任に付其の補闕として九鬼紋十郎君を議長に於て選定した
八月九日理事馬越晃君の補闕として九鬼紋十郎君が理事に當選した
出席政府委員
厚生參與官 佐藤久雄君
農林事務官 笹山茂太郎君
商工政務次官 小林かなえ君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 岡村武君
特許標準局長官 久保敬二郎君
委員長の許可を得た出席者
商工事務官 大原久之君
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本日の會議に付した議案
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=0
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001・北村徳太郎
○北村委員長 會議を開きます、此の際委員長より御諮り致したいことがございます、理事馬越晃君が昨日理事を辭任致されました、仍て理事の補闕選擧を行ひたいと思ひます、委員長指名に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=1
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002・北村徳太郎
○北村委員長 御異議なしと認めます、それでは九鬼紋十郎君を理事に指名致します――是より質疑に入ります、一應委員長より希望を申上げたいのでありますが、政府當局から既に御答辯になりました事柄に付ては重複しないやうに、成べく委員會の能率を上げたい、さう云ふことに願ひたいと思ひます――山田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=2
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003・山田悟六
○山田(悟)委員 此の商工經濟會廢止の法案に付きまして同僚各位から熱心なる質疑がありまして、私共も大體其の要點を摘み、此の事柄は將來社團法人の組織に依りまして各都市に民主的な、變つた、從來よりも宜しいやうなものが出來ると云ふことに對しまして、大體に於ては贊意を表するものでありますが、特に此の問題を繞りまして全國の商工業者と云ふものは前途に對して現在色々と不安を持つて居るやうな事柄から、私共の居所等にも色々な問題を尋ねに來る商工業者が澤山居りますが故に、之に關聯を致します質疑の御許しを少しく願ひたいと思ふのであります
第一番には、私共は商工行政に當りまして商工省の意圖と云ふものが府縣の商工課に移られる、併し能く政治の機構を見まする時に、例へば農業方面の事柄でもさうでありますが、結局知事が内務省の監督下にあられると云ふやうなことから、一番國の再建に必要である商業或は殊に工業、斯う云つたやうな問題、農業と云ふやうなものが、内務省所管にあられる知事の下にある關係から、個人の意圖に依つて多分に是が阻碍せられて居ると云ふやうな事柄が事實であるのであります、私共は此の際特に大臣と云ふよりは、商工省、農林省或は各省の、多分に實權的に所謂力を御持ちになつて居る各局長、部長、斯う云ふ方々の意見を承りたいのでありますが、縣廳に商工省の出張所と云ふやうなものを作る意思があるかどうか、此の點を第一に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=3
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004・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商工行政は只今御話もありましたやうに、今日の日本と致しましては非常に重要な行政の一つであります、のみならず此の行政は段々專門的になつて參りまして、一般的の知識だけでは理解し難いやうなことを、隨分急に實施することもございます、最近に於きます補償打切りの問題等も非常に專門技術的のことを含んで居るのであります、さう云ふやうな重要な案件が今後も色々商工行政の上に起ることと思ひます、隨ひまして商工業者の方々を御指導致します所の地方第一線官廳の立場にあられる方々は、やはり專門的な知識を十分御持合せにならぬと御指導が困ると思ひます、勿論中央としては色々全國の會議を招集したり通牒等も出して居るが、何に致せ相當交通も不便でございますし、時間も掛かります、又通信も迅速に參りませぬ、隨て商工行政に對して十分理解ある方が行つて、第一線に居られますと、色々な事件が起ります度に商工業者の方の御指導を致しますのに間違ひなく意見が述べられると思ひます、隨ひまして、さう云ふ意味で先づ第一に商工省は從來の行政協議會の地區毎に商工當局と云ふものを作りまして、是が中間の連絡機關と致しまして、日々變ります所の商工行政の内容を各地方廳に正確に傳へることと致して居ります、其の機構を十分に今後活用して行くことを一つ考へて行きたいと思ひます
次に府縣廳自身に對してどうするかと云ふ問題でありますが、府縣廳に商工省の出張所と云ふやうなものを併置したらどうかと云ふ御意見でございますが、やはり縣廳と致しましては一つの綜合行政をやつて居るのでありますから、寧ろ縣廳の中の商工課長と云ふやうな所へ、商工省で色々な經驗を持つて居ります者を出しまして實質的に商工行政の圓滑なる徹底と云ふことに致したいと思ひます、近く内務省とも御相談を致しまして取敢ず重要府縣、八つ乃至十程考へて居りますが、商工課長を商工省の事務官の中から出したい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=4
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005・山田悟六
○山田(悟)委員 商工經濟會の事柄は先程も雜談の時に出ましたが、結局會頭とか理事に人を得ると云ふことが、要するに地方なり中央なりの商工業を發達せしめる唯一の原因でありまして、學問的にはやはり利益代表團體と致しましては、全體の利益促進と云ふやうなものは商工會議所、尚ほ經濟利益を直接致します營利團體と云ふものは、結局會社と云ふやうな事柄になりますので、さう云つた關係から會社の發達、大會社が出來得られると云ふやうな事柄で、勿論大會社の人達が非常に他のものを誘導する考へのある方があれば別問題でありますが、現在の事情のやうなことになりますと、非常に大きな會社と云ふものは一つの都市の商工會議所の機能以上に、自分の會社で色々の研究なり或は利益の擁護なり福祉の増進なり、色々の事柄が出來ると云ふやうなことで、内面的に茲に非常に矛盾が來るのではないか、斯う云つたやうな事柄を考へて、私共は大きな事業者と云ふものが結局商工會議所と云ふものに表面は非常に贊成はして居るが、實體面に參りますとやはりそこに餘り贊意を表しない事態と云ふ事柄があるのではないか、私共の地方で戰時中商工經濟會と一つの會社が對立をして色々研究等をやりましたが、どうしても全縣が寄つても一つの會社に、研究機關に於きましても、何の方面に於ても、遙かに足らぬと云ふ事柄が、經濟會を不振にした、斯う云ふ意味合もありますので、例へば理事の方方に致しましても會社の研究機關で雇つて居る者と或は商工經濟會が雇つて居る者と基礎條件に於きましても非常な差異がある、斯う云つたやうな事柄があるのでありますが、結局任意團體と云ふやうな事柄であるが、非常に大きな會社がある所の地方の都市に對して、費用から申すと相當に負擔をする會社、斯う云ふ特例なものに對して政府としては何とか特別な考慮を拂つて居るかどうか、此の點を一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=5
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006・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 新しく出來ます商工會議所の組織に於きまして、兎角大きな會社と云ふものは自分で色々なことが賄へます爲に、會議所の方に疎くなると云ふ傾向がある、從來さう云ふ例があつたことも承つて居ります、併しながら今後の商工業の實情は何と申しましても民主的にやつて行くと云ふことに重點がございますし、其の土地土地の要求に付て其の商工會議所を通じて政府が色々な意見を聽いて參ると云ふことになりますれば、實質的に此の會議所を通じてでなければ、色々な商工業界の意見は纒まつて來ぬものと考へますし、さう致しますとどうしても此の會議所に關係を致さなければ、其の工業なり、企業なりの運營が非常に工合が惡いことになつて來るだらうと思ひますし、さう云ふやうに會議所が發達して參らなければ、本當の經濟民主化は出來ないことだと思ひます、格別法規を持つて居りませぬ新しい商工會議所でありますから、法的に之をどう斯うする或は強制力を以てどう斯うする譯には參りませぬけれども、今後少くとも大きな企業として殘されました方は、他の中小工業の方を率ゐて其の土地の指導的な事業として御臨みになることが望ましいと思ひます、政府は又さう云ふ方に特に御依頼を致す積りであります、それ等のことは今後政府が商工會議所をどう云ふ風に見て行くかと云ふことに依つて大分違ふかと思ひます、私共は豫て繰返して申上げますやうに、經濟上の實情を色々承りますのは、先づ商工會議所の意見で動きたいと思つて居りますので、さう云ふ點は實際上は相當緩和されると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=6
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007・山田悟六
○山田(悟)委員 私共は商工經濟會法を繞りまして、商業よりは生産に關係を致して居ります、工業對策の基調と云ふ事柄はもう議會全體の方々が幾度も質問され、或は大臣皆答辯をされて居るのでありますが、併し私共が承つた所、又速記録等を見ましても、少しも實體に觸れてないのであります、國民は特に工業對策の基調と云ふ事柄に對して非常に關心を持ち、私共が家庭へ歸りましても是等の方向をどう云ふ風にやつたら宜いであらうか、即ち此の大工業に斯う云ふやうな事柄は色々戰時中の關係からどうしても出來ないのであるだらう、或は中小工業のどの程度位までは許されるのであるだらうか、或は家庭工業に對して非常に力を入れられるものであるか、例へば機械工業と云ふやうな事柄になるとどの程度までが結局取上げられて、どの程度がやれる事柄でありますとか、或は手工業の關係だとか、斯う云ふやうな實際問題が本當に國民が聽かんとする所でありまして、是等に對して難かしい問題でもありませうが、結局大臣の答辯と云ふ大きな線でなく、具體的に一つ國民の問はんとする方向、此の方向が結局多くの國民達の事業に對して所謂進路を一つ誤りますと――工業でも商業でも一且「スタート」を誤りますと、中々追ひ付くのは容易でないと云ふやうなことで、七轉び八起きと云ふことがありますが、實際問題には「スタート」と云ふものが事業に對しては一番肝腎なことでありますが故に、此の點は幾度も聽かれたことで、委員各位等も聽き飽きた事柄でありませうが、實際問題として社會に對しましては是が本當に能く徹底して居りませぬ、此の點に對して成べく詳細に國民の指向を誤らぬやうな程度に於ける御説明を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=7
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008・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今後の我が國の工業政策の見透しに付きましての御質問でございますが、是は非常に難かしい問題でございます、大體の線は度々御答辯申上げましたが、我が國の工業の規模と云ふものは賠償の線に依つて一つの制約を受けて居ります、即ち軍需生産的な色彩を我が國から拂拭してしまひまして、今後平和産業を持つ國家として我が國が發達して行くと云ふことが、大きな眼目として決定せられて居るのであります、隨ひまして從來の重工業と云ふものも相當程度制限をせられまして、從來とは若干少い程度の所で生産額等は切られて居る案が、只今發表せられて居るのでございます、只今申します「ポーレー」大使の發表と云ふものが大體其の線を確定致して居る譯でございます、隨ひまして重工業に付きましてはさう云ふ線以上に取敢へずの所は我が國が發達すると云ふことは不可能かと思ひます、併しながら一面我が國は農業だけで國民の生活を維持することが出來ぬことは當然でございます、非常に澤山の人が此の狹い領土に集まつた譯でございますから、どうしても是等の人の生活に必要なだけの仕事と云ふものは國内に於て賄はなければならぬのであります、それが爲には我が國と致しまして相當の輸出と云ふものも考へなければいけませぬ、又さう云ふものに必要な原材料と云ふものも相當確保する必要がございますが、其の問題は、まだ別に我が國が只今自由な貿易を致す餘力がございませぬので、將來の問題として殘るのでありますが、取敢ず一體どう云ふ産業を我が國の工業者と云ふものが考へて宜いかと云ふことを考へますと、是も「ポツダム」宣言に平和産業と云ふことがはつきり書いてあるのであります、其の第一の王座となるものはやはり從來我が國に發達して居りました所の纎維産業であると考へます、我が國の纎維産業は戰前世界第一の水準まで達したと言うて過言でなかつたと思ひますが、此の輕工業部門と云ふものは當然我が國の今後の産業の中心となるものと考へます、大きな紡績業を初めと致しまして布帛品とか細かい加工品と云ふ末に至るまで、我が國の産業の廣い範圍に發達して參るべきものと考へます、それから其の外に我が國の國民性と致しまして、非常に手先の器用な國民でございますから、手先を使つて精緻なる加工をして行く事業、工藝品等は勿論之に入ります、其の他細かい機械、通信機械等も一つでございませうが、時計でありますとか、さう云ふ細かい手作業を致しまする、而も加工の度合が高くて相當多額の工料が入りますもの、さう云ふ産業――人手を澤山要して而も少い資材で出來る産業、斯う云ふものが我が國と致しましては、今後廣く振興せらるべきものと考へます、さう云ふ立場から考へますと、さう云ふ仕事は所謂大工業でなくて宜しいのであります、所謂中小工業、或は物に依りましては家内工業で相當出來るのでございます、寧ろそれが從來日本としては中心でございました、今後もさう云ふ形で行きますることが極めて宜しからうと考へるのでありまして、さう云ふ意味で、我が國の所謂農村で食へない人口を、さう云ふ手先を使ひまする中小或は家庭工業のやうな形に於きまして、相當澤山の人口を收容し得る形に於て事業が營まれる、斯う考へるのでございます、尚ほ附加へて申しますが、基礎的な産業の線は、先程申しましたやうに「ポーレー」大使の示しました線でございませうが、實際の賠償を撤去されますに當りまして、現實にどれだけのものを持つて行かれるかと云ふことは賠償が濟まぬと分らぬ譯でございます、隨てあの線も若干動くことが豫想されまするし、又現實の問題と致しましては、あの設備は取られましても、今後の原材料を或る程度海外から輸入致しませぬと、凡ゆる設備を動かすことは困難でございますので、それ等の時期等も今後の凡ゆる情勢に依つて決定されまするが、取敢ずと致しましては、只今申しましたやうに、中小工業に依りまする仕事は逐次復活して參ることと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=8
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009・山田悟六
○山田(悟)委員 只今商工當局の政府委員の説明に依りますと、農業の餘剩人口を商業、工業で補ふと云ふ答辯をせられたと思ひますが、私共は絶對に日本は農業では立行けない、工業立國でなければ當然立行けないと考へるものであります、此の點に對する御所見を今一應はつきり承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=9
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010・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 少し説明の言葉が惡うございましたが、今度狹くなつた領土下に於て、我が國の人口を如何にして收容して行くかと云ふ問題を申上げたのでございます、勿論今日の人口、又將來の發展性と云ふことを考へまする場合に於ては、工業に依る外ないものと考へます、さう云ふ意味で、先程申上げた言葉は惡かつたのでありますが、工業に依りまして我が國の此の過剩な人口を必ず收容して行く、斯う云ふ方針に行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=10
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011・山田悟六
○山田(悟)委員 外郭の説明はあつたのでありまするが、我々がもつと突込んで御伺ひ致したい事柄は、まだ調査が不備で非常に困難ではありませうが、併し工業に對する、纖維を凡そ何「パーセント」にするとか、或は瀬戸物を何「パーセント」にするとか、斯う云ふ基調がなければ、工業政策は出來ないと思ひまするが、大體の工業に對する「パーセンテージ」を一つ御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=11
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012・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今日に於きまする原料資材の生産の減少致して居りますること、それから輸入の見透しが確定致して居りませぬこと等に依りまして、さう云ふ計畫が立ちにくいのでございます、只今立てますならば少いものしか豫定出來ないのであります、之に付きましては今後聯合國にも大いに懇請致しまして、是等の問題の解決に大いに努力致して居る譯であります、さう云ふ僅かしかございませぬので、全貎の計畫と云ふものは中々立ちにくいのでございます、此の點は御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=12
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013・山田悟六
○山田(悟)委員 資材の關係からはつきり「パーセンテージ」を作ることは至難な事柄も私共も認めるのでありますが、特に機械工業部面に對しては鐵鋼關係の資材面が一番重大であります、昨日大臣から詳細承つたのでありますが、私共が平素研究して居りまする事柄と少しく一致しないと云ふ程度ではないのでありませうが、細部に亙りましてどうかと思ふ點もあります關係から、鐵鋼の專門の方がおいでになりますから此の鐵鋼關係に關する基本的な詳細なる説明を今一度御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=13
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014・大原久之
○大原説明員 鐵鋼の現状に付きまして御説明申上げます、先づ鐵鋼の需要でございますが、終戰後の需要調査に依りまして出ました數字が、四百二十五萬「トン」と云ふ民間の需要でございます、其の後賠償關係とも色々關係致しまして、其の數字をずつと壓縮致しまして、日本の最低需要が三百萬「トン」になると云ふ大體の數字を得たのでございます、所が現状から申しまして、此の三百萬「トン」の復興材を供給することは非常に困難でございます、それで實施面と關聯して、今年の第一四半期の需要を進駐軍其の他の色々な關係を織込みまして五十三萬四千「トン」、只今第二四半期の需要を五十四萬一千「トン」と云ふやうに査定を致して居る次第でございます、それに對して供給の方でございますが、生産は極度に少うございまして、是は一に懸つて石炭事情でございます、そこで第一四半期の五十三萬四千「トン」の需要に對して、生産は普通鋼材僅かに七萬四千百九十四「トン」でございまして、僅かに需要の一四%にしか達して居ない次第でございます、其の外特殊物件或は在庫品等を合せまして供給に乘せましたのが十一萬二千「トン」でございまして僅かに二一%と云ふ數字でございまして、斯う云ふやうに最低需要に對して僅かに十數「パーセント」或は二一%と云つたやうな非常に少い數字でございまして、斯う云ふことが今後も續きますならば、日本の基礎産業であります鐵鋼部門は勿論のこと、それを資材として使ひます機械産業其の他の重要な産業部門に壞滅的な打撃が來るのでないかと非常に心配を致して居る次第でございます、是が對策と致しましては一に懸つて燃料でございますが、其の石炭事情の逼迫して居りますことは御承知の通りでございまして、本年等の石炭需要から考へまして、大體鐵鋼方面に廻ります石炭の豫想は百六十萬「トン」程度と考へて居る次第でございます、其の石炭を基礎にして生産を考へますると、銑鐵約二十萬「トン」鋼材約三十萬「トン」と云ふ生産でございまして、是れ亦甚だ僅少な數字でございます、斯う云ふ風に二百萬「トン」或は二百萬「トン」以上の局限された需要がありますに拘らず、新規の生産が三十萬「トン」程度と云ふことになりますと、どうしても是は思ひ切つた對策を講じなければならぬと思ひまして、非常に心配致して居る次第でございます、そこで是が對策として考へ得られまするのは、外地から優秀な石炭を輸入し、又重油等を輸入すると云ふやうなことを、今色々懇請致して居ることは、勿論でございますが、内地の石炭をもつと増産するやうに應援すると云ふことも、鐵鋼の方の部門から非常に力強く應援を致して居るのでございまして、鐵鋼關係の勞務者が、石炭飢饉の昨年の暮の如きは、鐵鋼班を組織致しまして、日本鋼管であるとか、日本製鐵であるとか、さう云ふ中堅勞働者が數百名、北海道であるとか、九州の炭坑であるとか、さう云ふ方面へ應援を致したやうな次第でございます、非常に涙ぐましい應援を致しまして、其の結果或る工場の班長の如きは炭坑の災害に罹りまして遂に斃れた、其の爲に商工大臣は非常に其の點、御留意なさいまして、感謝表彰状を出されたと云ふ次第でございます、さう云ふ風に非常に手を打つて居るのでごさいまするが、今の需要から申しまして非常に情ない状態でございまして、何とかして此の難局を切拔けたいと思ひまして、其の増産對策と致しましては、石炭に起因するものは勿論のこと、電力を用ひまして、それに依つて石炭を使はずに鐵鋼を増産する、其の他石炭を最も有效に利用します方法と致しましては、例へば日鐵に於きましては八幡に集中生産をやる等、凡ゆる方法を講じまして、増産を努力して居る次第でございます、然らば日本にどれだけの鋼材があれば此の難局を切拔けるぎりぎりの數字であるかと云ふことを檢討する必要があるのではないかと思ひます、即ち二百萬「トン」と云ふやうな數字は、迚も現在の生産状況からは追つけない、さうかと云つて僅かに三十萬「トン」や四十萬「トン」の鋼材を供給して居るのでは、日本の産業界は壞滅することははつきりして居るのであります、例へば只今鋼材が非常に少い爲に、鐵道の如きは軌條が非常に摩滅致しました、軌條は一「メートル」の重さで大きさを計るのでございますが、一「メートル」の大きさを例へば五十「キロ」に致しますと、それが使つて居る間に段々磨り減りまして、四十「キロ」位になりますと危險であるから取替へなければならぬ規定になつて居る、所が取替へるには資材がないと云ふので、それが三十七「キロ」と云ふ程磨り減つても尚且つ取替へることが出來ない状態であります、又最近故障でございまするが、資材不足其の他に依りまして、平時の故障の約三百倍の故障を只今やつて居ると聞いて居ります、又石炭の方の増産を盛んに叫ばれて居りますけれども、鋼材の足りない爲に、炭車が足りない、或は電車が動かないと云ふやうなことで、増産したくても増産が出來ない、資材の不足の爲に折角上りつつある日本の基礎産業が頭を打つて居ると云ふことでございます、何とかして最低限度の鋼材を支給しなければならないと云ふことを非常に我々責任を感じて居るのであります、然らば其の最低限度の鋼材の量と云ふものの判定は非常に難かしいのでありますが、色々な方面から研究を致して居るのでありまして、大體一案と致しまして、百十萬「トン」程度の鋼材がどうしても要るのだと云ふ研究結果が出て居ります、假に百十萬「トン」程度のものがどうしてでも要ると云ふことになりますと、是だけは是が非でも供給しなければ日本の産業は壞滅状態になつてしまふ、其のぎりぎりの數字だと云ふことになりますと、それだけはどうしても供給しなければならない、特殊物件、左庫品其の他大きなものが相當ありますし、どうしてもいけないものは或る程度輸入しなければならぬと考へて居ります、さう云ふことを色々考慮致しますと六十數萬「トン」の鋼材はどうしても新規に生産しなければ、責任を以て此の難局を切拔けることが出來ない、何とかして差當りの六十數萬「トン」の鋼材を造りたい、それには現在の配炭事情ではとてもいけない、それに對して凡ゆる手を盡さなければならぬと考へまして、色々考慮を致して居る次第でございます
それから色々生産の障碍になつて居る問題の一つと致しまして、現在の状況では勞務者に對して、生産は非常に上らない、賃金はどんどん殖えて來ると云ふやうなことでありまして、大體勞務者一人當り月九百圓或はそれ以上の程度になる、斯う云ふ状態で、而も生産は非常に上らない、昭和十五、六年當時に比べて、一人當りの生産が僅かに二〇%、特殊鋼の如きは一〇%以下と云ふことでございます、さうしますと生産費が非常に高く付くのでありまして、生産された鋼材を全部賣拂つて、丁度勞務者に拂ふ金にやつと充當されて居るやうな状態にありまして、何處の工場も赤字々々で大變な状況でございます、さう云ふ點から申しますと、大體生産が年間百萬「トン」程度にならなければ勞務者に拂ふ金ととんとんにならない、大體生産費の二五%乃至三〇%が勞務費でございますが、さう云ふ點から考へましても百萬「トン」程度はどうしても造らなければ、經理上からも中々困難である、百萬「トン」今直ぐ上げると云ふことは中々困難でありまして、價格の問題等も考慮しなければならぬと思つて色々研究して居る次第でございます、さう云ふ現状でありまして、鐵の將來は何とか茲に思ひ切つた手を打たなければならぬと考へて、今色々苦慮して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=14
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015・山田悟六
○山田(悟)委員 工業の再建に對してはどうしても一定量の鐵が要るのでありまして、是は或は石炭政策の方と矛盾致すかとは存じますが、どうしても或る程度の石炭は急速に――近い滿洲にもあると云ふやうなことから、之に對する――まだ平和會議も出來ない内にさう云ふこともどうかと思ひますが、鐵に關聯して石炭の輸入對策に付て商工省はどう云ふ風に御考へになつて居るか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=15
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016・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 我が國の製鐵事業を興します爲には、どうしても石炭の輸入に俟たねばならぬのでございます、國内に於ける増産も勿論必要でございますが、或る數字以上を造らうと致しますならば、どうしても輸入に俟たねばならぬのでありまして、過去に於ても近い大陸の炭は我が國の製鐵業の中心をなして居つたと申しても過言でないのであります、併しながら滿洲其の他の事情ははつきりして居りませぬが、噂に依りますと、まだ我が國に供給する程の所には行つて居らぬやうでございます、生産が實際向ふに於てさうないやうにも見て居ります、例へば開らん炭の如きも、生産が非常に落ちまして、他に供給する程の餘力がないやうに伺つて居ります、滿洲等の事情は殆ど不明でございます、尚ほ昨日も他の委員から樺太の炭の御話がございました、私共と致しましては希望致したい炭でございますけれども、是も同じく「ソ」聯の占領下になつて居りまして、我が國に供給し得る見込と云ふものは只今非常に望み薄の状況でござます、隨ひまして我が國と致しましては、取敢ずの問題と致しましては、重油を以て或る程度置き換へることも考へて居ります、又他の所謂原料炭でない炭を入れまして、我が國の原料炭の他に廻して居りますものを鐵の方に廻すと云つたやうな操作を考へて見たいと云ふやうな譯で、石炭に付ても輸入懇請を致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=16
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017・山田悟六
○山田(悟)委員 先般鐵鋼の生産に對して、八幡に集中生産と云ふやうな事柄を承つて、我々需要者から考へれば非常に當然のことと思ひますが、將來の動向と致しますると、工場を何處と何處を殘すとか、或は何「パーセント」位を殘して、あとは廢めなくてはならぬとか云ふやうな、之に對する見透しを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=17
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018・大原久之
○大原説明員 是は賠償問題と關聯があるのでございまして、只今極東委員會で決まりましたのは、鋼塊三百五十萬「トン」以上の裝置は撤去する、銑鐵で申しますと二百萬「トン」以上の能力は撤去する、斯う云ふ風に決まつて居るのでありまして、將來決まりますのは其の線以下の數量で決まると思ひます、而も其の工場がどの工場をどう云ふ風に持つて行かれるかと云ふことは、全然決まつて居らぬのでありまして、それに依つて殘る工場がどう云ふ風に合理的な作業をするかと云ふことをはつきり決めて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=18
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019・山田悟六
○山田(悟)委員 次に、私は從來商業を營んで居つた者を、企業再建と云ふやうな事柄に對して優先をさせることが當然であると思ふし、之に對する所見を伺ひたいのでありますが、結局今の闇商人と云ふやうな事柄が出來ますものは、從來の商人でなかつた者が、誰でもが商人をやれると云ふやうなことで、詰り、商業道徳と云ふものを把握してない者がやることを許すと云ふ事柄が一番の根本ではないか、從來の商人と云ふものは、一面利潤を追求したと云ふやうなことで非難も受けませうが、併し暖簾と云ふやうな事柄を非常に尊重して居りまして、そこには非常に良い結果もある、一つの富を成すのにもやはり永年の年月が掛る、今の事態と云ふものは、商業觀念と云ふものに缺けて居る者に許すと云ふやうな事柄が非常に起因をして居りはしないか、工業に對しましても、やはり工場の信用と云ふやうな事柄が、其の工場で造つた物ならばもう何も檢査もせずに受入れると云ふことであつたのが、今信用の状態と云ふものが結局非常に廢れて居るのでありますが、此の商人を許すのに對して、從來の實績ある者に對して政府が特段に考慮をして居るかどうか、或は商業に對して從來經驗を持たない者に對しては幾分制約をしたらばどうか、之に對する所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=19
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020・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商業と云ふものはやはり消費者に良い物を安く供給すると云ふ點に重點を置くべきものと考へます、それに反するやうな者はやはり排除さるべきものと考へます、さう云ふ意味で從來の古くから商業を營んで居られた方は、やはり或る程度自由競爭の下にさう云ふ仕事をやつて居られたのでありまして、商業道徳と申しますか、其の間に既に出來た商業道徳に依つて規律された行動を執つて居られたものと考へます、隨ひまして只今闇商人の話がございましたが、今後消費者に對して消費物資を、良い物を安く的確に配給すると云ふ上から申しますると、やはりさう云ふ經驗を持つた方に出て戴くことが最も必要だと考へます、都會等に於きまして、今後建全な商人と云ふものを私共は選つて、さう云ふ方に配給を御願ひする譯でございますが、さう云ふ際には、例へば「マーケット」等を新しく作ると云ふやうな場合は、さう云ふ實績のある方に優先をして行くと云ふことに標準を置いて參りたいと思ひます、唯一般の營業を自由の原則から致しまして、特別に公益に反する以外のものに付きましての商業參加を排除すると云ふ問題は、是れ亦一方に於て民主化の問題等も考へまして、若干考慮を要する點はございますが、今日の如く消費者が非常に困つて居る場合には、最も優良なる商人を利用すると云ふ意味に於きまして、過去に於てさう云ふ經驗を持つた方に優先して行くと云ふことが最も必要なことであると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=20
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021・北村徳太郎
○北村委員長 一寸山田君に申上げますが、厚生關係の御質問があるやうに聞いたのですが、今佐藤參與官が御見えになつて居りますから、委員會が非常に方々で開かれて居りますので、政府委員も御困りのやうでありますから、宜しければ今厚生關係の御質問を願ひます、それから段々時間が制約されつつありますから、上程されて居る主題から餘り多く逸脱しない御質問を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=21
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022・山田悟六
○山田(悟)委員 厚生關係の事柄でありますが、是も此の事態と少しく關係があるにはあるので、工業全般の事柄でありますが、併し從來も商工省關係に對することを御許しになつたと云ふやうなことから、是は國民の聽かんと欲する事柄でありますから暫く御我慢を願ひたいと思ひます、特に工場の勞働關係と云ふやうな事柄で、或は私の御尋ねする點は結局保護法に屬する問題になるかと存じますが、其の事態と云ふものは、世界の例もありますし、内地に於ても非常に生産と云ふものが上らず、各工場は非常に困つて居る、それで色々の競爭にも堪へられない、薄弱な企業は廢めなくてはならぬ、斯う云つたやうな事柄で、所請請負制と申しませうか、結局工場の中に居る人達が、技術の劣惡な人達であるとか、或は色々な要件に缺けて居るやうな者を、勞働者の仲間で以て、表面には言はぬが精神的に非常に壓迫をして居ると云ふ事實が各處の工場で現在出來て居るのであります、斯う云つたやうな問題に對して厚生省の御所見を承はりたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=22
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023・佐藤久雄
○佐藤(久)政府委員 さうした面は中中難かしい面でありまするが、從來は所謂出來高拂でありますとか、小間割でありますとか、さう云ふ部面で、能く働く者には多く拂ふ、賃金制から言ふならば能く働く者は多く取る、缺陷のある者はさうした面で抑制する、さう云ふことで今日まで來て居ると思ふのであります、尚ほ精神的に抑壓するとか何とか云ふ問題は、是は免れない面でございませうが、結局さうしたことが逆に導かれまするならば自然とさうした境遇が出來るのではなからうかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=23
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024・山田悟六
○山田(悟)委員 工場に於ける勞働爭議の根本と云ふものは、色々基本的條件は幾つもありますが、待遇の問題と云ふやうなこともあります、其の勞務員に對する感情の縺れと云ふやうな事柄が多分に原因して居るのでありまして、例へば此の幹部に附隨をする方の一派と、次の課長に付く者の一派と云ふやうな事柄で、結局感情と云ふやうな派生的な問題が多分に爭議の原因を成して居る問題でありますが、此の感情問題のある事柄と云ふやうなものに對して、結局口に言へない勞働爭議があるのでありまして、之に對するやはり厚生省の御所見をはつきり承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=24
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025・佐藤久雄
○佐藤(久)政府委員 成程さうした面のあることは事實でありませう、併し考へまするのに、やはり能く働く者には澤山の賃金を與へる、餘り働かない者には餘り賃金を與へないと云ふ斯うした何と申しまするか、賃金の屈伸性と申しまするか、さうした方面を能く實行致しますることに於て、さうした面は大部分解決して行くのではないかと思ふのであります、屈伸性と申しまするか、斯う云ふ面は大切な問題でございまして、今の所までははつきりとした法律もございませぬが、先程申しました出來高拂でありますとか、小間割とか云ふもので自ら調節されて居りまするのと、今後はさうした意味に於きまして、御案内の通り來議會には多分上程されるでありませう所の勞働基準法と申しまするか、斯うしたものに十分さうした意見を採り入れて行きたい、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=25
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026・北村徳太郎
○北村委員長 御發言中ですが、山田君に申上げます、まだ御質問が相當長いですか、時間はありますけれども、後の關係がありますから …発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=26
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027・山田悟六
○山田(悟)委員 十二時までで打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=27
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028・北村徳太郎
○北村委員長 それからもう一つ希望を委員長から申上げるのですが、私は成べく質問者の言論の自由を尊重致しますけれども、併し上程されて居る主題から餘り逸脱して、非常に細かいことに亙ると、時間が隨分掛る譯です、まだ後に大分通告をなさつて居る方もありまして、是は今日晝の休みの時も理事會を開いて御協議したいと思ふのでありますが、工業所有權の特例廢止の法律案も上程しなければなりませぬし、少し急がなければいかぬのぢやないかと思ひますので、どうかさう云ふ風な所を含んで御質疑を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=28
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029・山田悟六
○山田(悟)委員 委員長の申入もありますし、私も議事進行に對して非常な注意を拂つて居ります關係から、勞働關係に對する問題も澤山ありますが、此の問題は打切ります、唯今一つ肝腎なことは、今の工場の再建と云ふやうなことで、第二會社の中堅になる人達を把握すると云ふ事柄が一番の根本問題であるのであります、工業の人的要素を作ると云ふやうなことに付て考へても、人的要素を作ると云ふことになると文部省所管と云ふ風に直ぐやつてしまひますが、私共は是は非常に誤つて居ることであると思ふ、工業の人物を作るのはやはり其の局になければ、眞の人間と云ふものは出來るものでない、それに關聯を致しまして、結局今の第二會社と云ふやうなものを作る場合に、人を得ると云ふ事柄が事業の將來を左右するのでありますが、之に對しては從來の順序と云ふことから、課長の鰻上りとか、或は副社長が送るとか、專務が急に上るとか、斯う云ふ人事では中々出來ないのでありますが、實際から行くと、第二會社に對しては其の責任者になる人を得ると云ふ事柄が一番肝腎なのであります、之に對して民主的と申しますか、之に對する人事の問題に對して、やはり政府は色々の關聯がありますので、人を探つて守り上げて行く機關を地方とか、或は經濟會とかに作り、或は指導する意思があるかどうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=29
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030・佐藤久雄
○佐藤(久)政府委員 今後の見透しに付きましては、御説は御尤もでございます、其の點に付きましては他の省と多分の關聯性があるのであります、厚生省と致しましては、厚生勞働と申しまするか、さうしたものの民主化を圖りまして、萬全を期したいと申上げるより外ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=30
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031・山田悟六
○山田(悟)委員 厚生省の御答辯、洵に有難うございました、次に私は第二會社を作るに付て、高級幹部の、謂はば擔當者と云ふやうな事柄に對して、所謂商工會議所が中心になつて、其の地方の第二會社とか、大きな會社の擔當者の人選をするやうにしてはどうか、此の人選と云ふ事柄が一番重大であり、是が事業を左右するのでありますが、さう云ふ風に民主的に人を選ぶ機關を作る意思があるかどうか、此の點を御尋ねして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=31
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032・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今後會社の整理の際に、第二會社を運營する幹部に最も其の人を得なければいかぬと云ふことは勿論で、御説の通りでございます、其の適當な人を選びます爲に、適當な機關を設けるかどうかと云ふ御質問でございますが、第二會社を作りますことは恐らく非常に廣い範圍で行はれることでございませうし、其の一々の内容を檢討致しますることは、是れ又相當澤山な、大仕事でございまして、非常に困難なことであらうかと思ひます、隨ひまして私共は特別な機關と云ふものを今考へては居りませぬ、唯一般的に申しまして、商工會議所等に於かれまして、さう云ふ場合には斯う云ふ人が適當だ――最も優秀な人ばかりの御指導を得ると云ふことは最も望ましいことであります、整理を致しますに付きましては、其の會社の役員の方は勿論、債權者の方も入つてさう云ふ整理の實行になる譯でありますから、今後起るべき會社に付ては、さう云ふ方の意見を十分に斟酌して行きたいと思ひますが、最も優秀な者が之に當ると云ふことに付きましては、民間のさう云ふ商工會議所に於きまして、適當な方策を御考へ願ひ、又適當な御指導を願ふと云ふことが最も願はしいと考へて居ります、唯公の機關としては只今考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=32
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033・山田悟六
○山田(悟)委員 商工經濟會が民主的な方向で將來出來ると思ひますが、それのやはり指導面に對して、工業家は何を申しましても多角經營でなければ、今の此の困難な時代にやつて行くことはどうしても出來ない、斯う云つた方向で、結局法が許す範圍に於きまして、多角經營をやりたいと云ふ風に考へることは當然でありますが、此の多角經營の範圍と云ふ事柄は、所謂今の色々な關係から制約せられて、商工經濟會等が將來發生する場合に、斯う云つた問題を結局指導して行かなくちやならぬ、之に關聯をして多角經營の範圍を御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=33
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034・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 どう云ふ意味でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=34
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035・山田悟六
○山田(悟)委員 例へば鐵工業が製鹽をやつて宜いとか、或は木材業をやつて宜いとか、或は食糧確保の面をやつて行くとか、斯う云つたやうな、結局範圍と云ふやうなもの発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=35
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036・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今日のやうな生産の状況でございますと、どうしても工業家と致しましては、其の製品を多角的に廣く經營をすることが必要であることは、仰せの通りでございます、唯其の範圍に付きましては、資材面等に於ての配給統制等のあるものに付きましては、是は已むを得ませぬけれども、一應企業許可の方針等は撤廢されて居るのでありまして、さう云ふ資材面等の解決さへ付きまするならば、如何なる事業をせられましても差支へないのでございます、商工會議所等に於かれまして其の範圍を決定されますことは、寧ろ斯う云ふ意味で有效であらうと思ふのです、斯う云ふ事業には斯う云ふ事業を兼營されることが經營上望ましいと云ふものを、御選定を願ふと云ふやうなことが適當なことではなからうかと思ふのであります、法的に之を制限すると云ふ制度は、只今考へて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=36
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037・北村徳太郎
○北村委員長 山田君に申上げますが、農林省の開拓局長が御見えになつて居りますから、農林省關係の御質問があれば――是は亦他の委員會に御急ぎになると思ひますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=37
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038・山田悟六
○山田(悟)委員 農林省の關係は、工場の多角經營とか或は工場經營と云つたやうなことで、是も本問題と少しく關係が薄いと思ふのでありますが、工場經營に對しては重大な問題で、特に御許しを願ひたいと思ふのであります、結局工場に食糧危機と云ふやうな事柄から菜園と云ふやうなものがある場合に、之を御許し下さるかどうかと云ふ點と、尚且つ發電關係と云ふやうな事柄で、農業水利と云ふやうな事柄と――從來は農業水利を構はずに發電關係が優先してあつたのでありますが、今は農業水利の事柄に關係するのは、發電關係の法規と云ふものが從來の通りであれば農業水利に重點を置くか、此の點に對して御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=38
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039・加藤一雄
○加藤(一)委員 どうも質問を聽いて居りますると、本案と關係が非常に薄うございまして、委員長の御注意がありました通り、先を急ぐ關係もあり、又商工省方面では新しい法案も出來るやうに聞いて居ります、是非御斟酌を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=39
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040・北村徳太郎
○北村委員長 加藤君の御發言は委員長も同感でございまして、あとに大分法案が多いやうですから、成べく簡潔にして、其の主題から離れぬやうに御願ひしたいと思ひます、それから政府當局も簡潔に御答へを願ひたい、非常に御懇切な御答へのやうで、啓蒙的な要素まで可なり入つて居るやうでありますが、それを拔いて簡潔に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=40
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041・笹山茂太郎
○笹山政府委員 只今の御質問の工場菜園を許すかどうかの問題でございますが、是は工業が其の府縣に對しまして引受けることが出來るやうな見地から、從來採られて居る所の菜園に付ては今後も繼續して行くだらうと考へて居ります、尚ほ農業水利と發電水利との分配に關する問題で、どちらを優先にするかと云ふ問題でありますが、是は灌漑用にありましては發電用との調整をしまして、政府としては從來から内務省、農林省、商工省の三省の間で河水の調整に付きまして色々調査を致して居るのであります、隨ひまして此の調査から水の分配利用に付きまして調整を今後とも致して參りたいと考へて居ります、どちらを優先にするかと云ふことは原則的には決まりませぬで、何れに致しましても兩者が調整を取つて合理的な水の利用をする、斯う云ふ見地から水利をして行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=41
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042・山田悟六
○山田(悟)委員 質問したいことは澤山ありますが、議事の進行上から此の點だけで止めたいと思ひます、協同組合と云ふやうな事柄が商業上に法案として出ますが、是は原則的に商業を否定して居ると云ふ原理で是と矛盾を致しはせぬか、之を一つ商工當局に御尋ねして、私の質問を終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=42
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043・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 特に小賣商あたりの商業協同組合の御話かと思ひますが、是はそれぞれの店舖を別にして商業を營みまして、唯仕入等を協同に致しますやうなことを豫想して居る、是は典型的な形でございますので、さう云ふものは格別各自の商業の獨立性を否定して居るものではないと考へます、唯個々の小さい小賣商でありますと非常に取引範圍も狹くなりますので、あちらこちらの商品を集めることの力が弱うございます、隨ひまして協同の力を以ちまして、或は數箇の問屋と結び付いて小賣商をすると云ふやうなことを致したい考へて居るやうな次第でありまして、それ自體小賣商の獨立性を否定して居るものではないと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=43
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044・山田悟六
○山田(悟)委員 將來の技術的な商工經濟會の工業の販賣政策であるとか、或は生産障碍に對する施策であるとか、或は工業の保險制度、斯う云つたやうな多々質問したい點はあるのでありますが、色々同僚からの申出もありますので、以上を以て質問を終りたいと存じます、色々御説明を感謝致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=44
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045・加藤一雄
○加藤(一)委員 今の商工省當局の御説明の中で、多角經營を許しても宜いと云ふやうな御話でございましたが、司令部の方では三井、三菱方面の解體まで命ぜられて居るやうな譯でございますが、多角經營と云ふことになりますれば、再び財閥を作るやうなことになりまして、一寸今の政策と懸け離れるやうな感じになりますが、平和産業の多角經營は御許しになる御方針に間違ひございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=45
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046・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今日の生産の状況から見まして、一つの品物だけではやつていけない、例へば原料が少いとか、色々な状況がございまして、色々な物を造つて居られるのが現状でございます、又一つの物を造らうと思ふと、何が足らぬ、彼が足らぬと云ふやうなことで、或る程度の自給を致して居るやうな場合もございます、鹽の例など其の例でございますが、さう云ふ色色な點で、一つの製品を造る爲に、從來は他の工場でやつて居るやうなことを一つの工場でやると云つたやうなことが隨分行はれて居ります、さう云ふ意味の多角經營は已むを得ぬことと考へて居ります、唯是は財閥解體と關聯しての御質問とは違ふものと了解致しまして、私は御答辯致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=46
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047・加藤一雄
○加藤(一)委員 今の點は私は將來の問題として重要と考へますので、もう一遍だけ念を押して置きます、原料に於きまするさう云ふ關係は、御説の通りであると思ひますが、若し此の御説明が議事録に載りまして、將來も左樣なことで大資本家が凡ゆる部面に手を出すやうなことになりますれば、再び資本の集中になりまして、思はざる所に不測の障碍が起つて來ないとは保し難いと思ひます、現状は已むを得ないが將來は、と云ふやうに御答へ戴いた方が便宜だらうと思ひますが、是だけ老婆心までに、今の御答辯に對しまして私の意見を申述べて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=47
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048・北村徳太郎
○北村委員長 午前は是にて休憩致します、午後一時から開會致しますから、時間を御レイ行願ひたいと思ひます
午前十一時五十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=48
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049・会議録情報2
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午後一時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=49
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050・北村徳太郎
○北村委員長 休憩前に引續き會議を開きます、鑛業所有權法戰時特例を廢止する法律案をも併せて議題に供します、質疑に入ります、尚ほ委員長として希望を申上げますが、先刻理事會を開きまして協議致しました結果、質問は甚だお氣の毒でありますが、あとの關係で三十分と云ふことに限定を致しましたので、どうか御諒承を願ひたいと思ひます――井田友平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=50
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051・井田友平
○井田委員 私は餘り長い御質問を申上げる積りはなく、極く簡單に御質問申上げますが、三十分と申されますけれども成べく省いて申上げますから多少の所は御容赦願ひます、本案が議會に提案せられまして其の提案趣旨の説明に於きまして、戰爭目的の爲に出來た法律案であるから、現在の戰爭が終了して民主化と云ふ時代には之を廢棄すると云ふ説明でありまして、大體商工省の關係の案は、甚だ斯う云つた案は少いのでありますが、少くともさう云つた趣旨に於て私は此の案に對しては衷心から全面的に贊成する所以でございますが、此の機會に於きまして二、三御尋ねして見たいことがあるのでございます
其の一つはやはり統制法規と云ひますか、統制會、統制會社、統制組合と云ふやうな、戰時に全面的に、戰爭目的に凡ゆる物資を集中して、民間の民需と云ふ方面は極力壓迫した所の所謂戰爭法規でございます、又其の法規、其の統制を終戰後一箇年間の今日に於きまして少しも變らず之をやつて居る、先程から局長さんが經濟界の民主化と云ふやうなことを非常に高調されて居るのでありますが、事實は要するにまだ民主化の第一歩も踏出して居らぬ、成程物資が非常に少くて困つて居る時代ですから、無條件に此の統制を撤廢すると、頗る混亂を來すと云ふことは、是はどなたが考へても同じでありますが、自ら戰爭の終へた曉には最低の品物を統制しなければならぬと云ふことはあるべきもので、戰爭時代の、要するに岸行政の時のやうに何も彼も全部統制の枠に嵌め込んで、さうして之を遂行する、完全に遂行が出來れば結構でしたが、あの強力な東條權力を以てさへも是は遂行が出來なかつた、到る處破綻續出して小さな原因であるかも知れないが、是が敗戰の原因の一つとなつて居ると云ふことはもう事實であります、そこでさう云つた神樣でなければ出來ないやうな統制を終戰後一箇年の今日になつても、まだ商工省の官僚は戀々としてそれに携はつて居る、それを何等かの方法に依つて此の時代に合つた方法に統制するか、或は見込があれば勿論全面的に解除して、自由經濟にして貰ひたいと云ふことは國民齊しく望んで居りますが、併し責任ある方々の眼から見て、是が解除が出來ないと云ふならば、何等かそこに全面的でなく、是と是と云ふものは強力に統制して行かなくてはならぬ、併し其の他の政府の力でも巧く行かないやうなものは、解除して民間に之を移讓するとか、何とか、そこに時代に即應した所の政策が生れて來なければならぬ、所がまだ其の片鱗を我々は伺つて居ないのですが、之に對して商工當局はどんな御考へを持つて居りますか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=51
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052・小林かなえ
○小林政府委員 只今の御質問に對して簡單に御答へ申上げます、只今井田委員の申されます如く、戰時中には色色の必要から統制が嚴重に行はれまして、さうして可なり無理なことまでが強ひられたのであります、先づ第一に輸出入品等に關する臨時措置法、次いで國家總動員法と云ふやうな非常に統制の力の強い法律が出來上りまして、それに依つて殆ど全面的に窮屈な枠の中に嵌められたのであります、戰後に於て斯う云ふ窮屈な枠を一日も早く取去つて參りたいと云ふことは、固より洵に同感の至りであります、併しながら終戰後に於ける生産は御承知の如くに極めて増強が圖られませぬ、物資は益益不足して居る状態でありまして、茲に非常なる困難があります爲に、自由に此の枠を外すと云ふことが中々出來にくいことになつて居るのであります、既に一年經ちますけれども、さう云ふ状態にあることは洵に遺憾であります、併しながら政府と致しましては、一日も早くさう云ふ極端なる統制の枠を取りたいと云ふ考への下に進んで參つたのでありまして、御承知の如く此の前の議會でありましたか、國家總動員法の廢止が決定せられました、但し其の後に於て六箇月間まだ效力があると云ふことで、今年の九月になると國家總動員法が全然效力を失ひまして、其の儘に置けば無統制の状態になるのであります、併しながら此の儘ではまだ立行きませぬので、或る程度の統制は已むを得ない、併しそれを出來得るだけ狹い範圍に於て最小限度に統制をして參りたいと云ふ點から、近く臨時物資需給調整法案が提出されますが、是が若し御協贊に依りまして成立致しますれば、あの法律の趣旨に依りまして、經濟安定本部に於て色々調査研究の結果、各各重要物資に付てどう云ふ風に調整をしたら宜からうか、或は枠を外して宜からうかと云ふやうなことを愼重審議の上に決定をされまして、其の決定されたものが各主務大臣に依つて、此の物資調整法で或る程度の調整がなし得ると云ふことになるのであります、其の趣旨は統制をして參るが爲に置かれるのではなくして、出來るだけ統制の範圍を狹めようと云ふことの爲に置かれる法律であると云ふことに趣旨を御觀察下すつても私は結構だと思ひます、斯う云ふやうな状況でありまして、洵に御説の通りでありますけれども、併しながら全然枠を取ればまだ思ふやうな結果を得られない、洵に遺憾の状況にありまするが、出來るだけ緩和する意味に於て、斯う云ふ措置を執つて參りたいと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=52
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053・井田友平
○井田委員 調整法と云ふものが近く提案せられると云ふ御話でございまするが、さう云つたやうな案が出て、其の後、要するに統制を全面的に外すことは出來ぬと云ふ現況から云へば、統制の整理とでも申しませうか、國家が之を統制しなければ、國の經濟界が混亂すると云ふやうな種目に限り統制をして行くか、或は又所謂全面的にそれを當嵌めて行くか、斯う云ふ疑ひが我我にあるのですが、其の點は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=53
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054・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 臨時物資調整法の運用に付きましては、何れ法案上程の際に詳しく申上げる筈でありますが、大體の考へ方は、やはり經濟安定本部が中心になりまして、統制をやるべき重要な物資と云ふものを決めまして、それに付ての統制をやる、隨て何でも彼でも統制をやると云ふ趣旨ではございませぬ、今後我が國の産業を再建する上に於て必要と思はれる重要物資に付ての統制をやる、斯う云ふ建前になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=54
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055・井田友平
○井田委員 さうしますと今第一線の働きをして居る所の統制會であるとか、或は統制會社、統制組合と云ふやうな團體は、其の調整法に依るとどう云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=55
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056・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是も詳細は其の調整法の御審議の際に申上げる積りでございますが、大體の考へ方を申しますと、從來の統制會、是は本日の新聞に依りますと、聯合軍から解散せよと云ふ命令が出て居るやうでありますが、總てさう云ふ從來の統制會、或は統制會社と云ふものを此の際解散を致しまして、新しく民主的に組織された統制團體に移り變つて行く、さう云ふ風に民主的に組織された産業團體を主務大臣が指定致しまして、物資の統制、物資の割當等に付ての權限を附與して行く、斯う云ふ建前になつて行くと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=56
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057・井田友平
○井田委員 さうすると今の中小商工業の第一線機關である所の統制組合と云ひますか、あれも同じ運命で改組しなければならぬ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=57
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058・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是も商工協同組合法案を只今提出準備中でございまして其の中に明かにされて居りますが、統制組合と云ふものは今度新しい協同組合法に依つて全部廢止されます、だから經過的に此の施行を三箇月間を限り存續致しまして、其の後一齊に解散をする運命になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=58
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059・井田友平
○井田委員 それでは統制の問題に對する質疑、自分の意見と云ふやうなものは、他の機會に、又其の案の出た時に讓りまして、もう一つ御尋ね致したいのは、物價の政策でございまするが、今物價の問題に付ては、大體大藏省の物價部が最後の決定權を持つて居るやうでございまするが、併し商工省が全然之に關聯しないと云ふのではないやうに聞いて居るのですが、此の物價政策の全貌を御説明願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=59
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060・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 物價の決定に付きましては、仰せの通り大藏省の物價部が最後の決定權を持つて居る形になつて居るのでございます、併しながら各省、例へば農林省、商工省と云ふやうな物資を扱ひまする省に於きましても、是が協議をする建前になつて居りまして、隨て商工省と致しましても、商工省關係の物價の決定をする際に付きましては、大藏省に意見を出しまして、最後的には大藏省の物價部が之を決定する、斯う云ふ建前になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=60
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061・井田友平
○井田委員 私は先程局長に個人的に一寸御話申したのですが、何と申しますか、經濟界の民主化を圖るのには中中困難がある、政治の民主化よりは更に困難がある、斯う云ふ實情を申したので、實は大臣が來たら此の點を大臣に少し申上げて見たいと思ふのですが、過日大臣は本會議に於きまして、商工當局よりは民間の方が民主化を嫌ふ傾向があると云ふやうな趣旨の説明があつたのでありまするが、成程考へて見ますと、戰爭中法規と權力に依つて此の經濟界を支配した、斯う云つた人達に取りましては、經濟民主化と云ふことは非常な痛手でございます、又苦手でございます、是は物を統べるのに、假令一時的にしろ法律と權力に依つて此の團體を率ゐて行くことは非常に樂であつた、其の樂な仕事を五、六年間續けて來た、斯う云ふ關係上經濟民主化と云ふことに於ては現在ある所の凡ゆる團體の主腦部は之に對して危惧の念を持つ、少くも頭では經濟民主化と云ふことは分つて居つても、いざ實行となると、非常な危惧の念を持つのぢやないか、斯う私は考へるのであります、併し日本の經濟界を民主化すると云ふ大局から言つたらば、さう云ふ人達が縱しんば商工當局に色々な陳情をなすつても、之に耳を藉すやうな商工當局なり、大臣なりであつたならば恐らく此の日本の經濟民主化は一歩も踏出すことは出來ない、私は斯う信じて居りますので、此の際特に商工當局の賢察を促して置く次第であります
それから次に私は現下の非常に重大な問題である所の見返り品のことに付て少し御尋ね致したいのでございまするが、貿易の再開は何時になるか、昨日あたり總理大臣が豫算總會でまだ中中見透しが付かないと云ふやうな話がありまして、是は案外早いのではないかと云ふ見方もあり、併し何時からと云ふことは分らないと云ふやうなことになつて居りますから、其の貿易の再開と云ふことを待たずして所謂貿易の實際の仕事をして行くのが見返品の輸出ぢやないか、斯う考へられるので、貿易再開に備へましても、此の見返品物資の政策と云ふものは非常に大事なものぢやないか、斯う考へられるのでありまするが、それに付きまして今見返品の物資の數量、品目、金額と云ふやうなことが御分りになつて居りましたならばそれを御尋ねしたいと思ひます、それから生絲とか、茶とかと云ふやうな農産物の方面のものは、是は又天然を相手とするのでございますから別ですが、商工省關係の工業に關する部分は、其の見返品物資を製作するのにどう云ふ方法を以て原材料を供給するか、或は又出來た品物を如何なる方法で見返品の貿易と申しますか、見返品を海外へ持つて行くやうな方法手段を執るか、斯う云ふ點を御尋ね致したいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=61
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062・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是は貿易部の專門の方が參りますから、參られましたら直ぐ御答へをするやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=62
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063・井田友平
○井田委員 それから是は卑近な例ですが、戰災地の闇市場が非常な彈厭を食つてやつて居るのですが、是は終戰後の非常な物資の少い時代に、國民生活に對して非常に重大な役割をした、併しそれが非常に弊害があつて、それを彈壓したと云ふやうなことになつて居るのでありまするが、之を將來旨く指導して一つの役割を果させる積りか、或は又之を彈壓して綺麗になくしてしまふ積りか、斯う云ふ點を一つ御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=63
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064・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 所謂闇市場の閉鎖の問題でございますが、終戰直後、戰災が非常に酷うございまして、一般の消費者から申しますと、生活必需品等を得る方法と致しまして、店舖等が燒失致しまして、此の配給の方法がなかつたのでありまして、斯う云ふやうな所謂青空市場が出來まして或る程度のものを流すことに效果のあつたことは是は認めざるを得ぬのでありますが、一方仰せの通り非常な弊害が出來まして、殊に物價の騰貴等にも是が相當影響致したことと考へられますので、最近は一應閉鎖の運命に立至つて居ります、併しながら國民に對しましては、飽くまで配給と云ふことは適正を期して行かなければならぬのでありまして、之に代るべき何等かの方法を考へなければならぬと思ふのであります、其の具體的内客は只今各省寄りまして相談致して居ります、近く成案を得ることと思ひます、併し商工省の大體の方針と致しましては、やはり是は健全な市場、「マーケット」と云つたやうなものに盛立てまして、そこへ成べくならば從來商業道徳を能く承知して居る方々を收容致しまして、此の配給の衝に當らせたい、斯う云ふ考へを以て今立案を致して居ります、併し是は取締其の他の關係で各省との關係もございます、農産物に付きましては農林省とも關係がございます、各省で今至急成案を得べく研究中でございますので、成案を得たら發表せられることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=64
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065・井田友平
○井田委員 大體今の「マーケット」のやうな方法で許可してやらせたいと云ふ商工省の御意見のやうでございますが、それは至極良い方法で、それ以外に方法はないと我々も考へて居るのですが、唯其の方法に付きまして、結局今までは大體「マーケット」とか市場とか云ふものを作る場合に、官とか地方團體で之を監督し、或は施設と云ふやうなものにまで干渉してやつたのですが、今の現況から見まして、官とか地方團體がやつた日には、是は中々手取早くも行かぬし、非常な困難に遭ふことと思ふのですが、さう云ふ施設の面に於きましても、是は一切役所で以て關與せずに、斯う云ふ範圍のものならばやつて宜しいと云ふ程度にして、さうして之を全部民間でやらせる、餘りやかましく法規なしでやらせれば、忽ち是が復興するのではないかと思ふのです、甚だ老婆心ですが、民間の皆さんの聲を聽いて見ますと、役所の今の住宅のやうなものでも掛聲だけで絶對に出來ないのですから、況して斯う云ふやうな施設をやるとすれば、民間に一切委任させてやつて戴きたいと云ふことを一言申上げて置く次第であります
それから先程の山田委員の質問に一寸關聯して居るのでございまするが、日本の將來の産業がどの程度まで許されて行くか、又どの程度でやつて行くのが一番宜いかと云ふやうな御所見を承りたいのですが、山田委員のは甚だ全面的でありまして、重工業であるとか、賠償物資の對象になるやうなものは、それが濟んでからでなくてははつきりしない、斯う云ふ御答辯でございましたが、私の御伺ひ致したいのは、さう云つた對象物にならないもので、要するに平和産業と云ふか、輕工業、其の中でも中小工業をどの程度まで伸ばして行くか、是は大變標準の付け方が現在に於ては難かしいかも知れませぬが、是は「パーセント」でも結構です、又當局の見込ですから、是が違つて居つても別に敢て問題でないのですが、「パーセント」でも結構です、それから又昭和十年とか五年とか、滿洲事變、支那事變の前年を基準とした「パーセント」を出すとか、又昭和元年頃の日本の輕工業――言葉はどうだか知りませぬが、其の當時まで壓縮してやつて行くとか、何かそこに一つの御考へなり目途がなくて、唯漫然と、賠償物資の整理が付くまでは我々の方でも案が立たない、斯う云つたやうなことでは、どうも日本の産業界の爲に甚だ心細い次第で、成程付かないものは致し方がない、付かないものは付けなくても宜いが、付くものだけでも、斯う云ふものは賠償の方に關係はない、斯う云ふ産業は先方の援助を得なくても日本の國力で發展して行く、さう云つたやうなものに付てだけでも、何か見透しとか、政策とかと云ふものがないことはないと思ふのですが、此の點を一つ、第一日本の平和産業は、先程申した滿洲事變の前年、日支事變の前年あたりを基準として、此の線まで行けさうだとか、或は持つて行くとか、それが出來なかつたならば、もつと先の線までしか行けないと云ふやうな見透しがありましたらば、一つ御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=65
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066・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 第一の、市場に收容する商人の範圍の選定方法であります、是は御言葉にもありましたやうに、役所だけで選定致しますことは、從來の經驗から致しまして、兎角成功するものとは考へて居りませぬ、隨ひまして商人の方の組合とか、さう云ふ代表者の方々の意見に依つて決めたいと考へて居ります、唯役所も法規等を持つて居りませぬから、今度はどうしてもさう云ふ形で其の土地其の土地に於ける同業者の方の團體、若し團體がなければ、さう云ふ方々の御意見に依つて其の範圍を決めるより外仕方がないかと考へて居ります
第二に、中小工業がどれ位の部分を持ち得るかと云ふ御質問でございますが、是は正確な數字は忘れましたけれども、戰前に於きましての中小工業と大工業の金額的な比率は、大體半々位、或は四分六分ではなかつたかと考へて居りますが、今後其の比率がどうなるかと云ふ問題は、是は實は私共の方にもまだ正確な數字は掴めて居らぬのであります、度々繰返して申上げて恐縮でございますが、結局は賠償の問題と、もう一つは海外からの原料の輸入の問題に絡んで居る譯であります、結局我が國が貿易に付てどれ位の範圍を許容されるかと云ふ問題に是が絡んで居るものでありますから、終極的の中小工業の占める地位と云ふものがどれ位になるかと云ふことを豫想することは、私共だけの弱い力では困難かと思ひます、どうしても聯合國の協力を得まして此の範圍を決定して行くと云ふことでございまして、今後の我が國の人口から致しまして、どうしても此の程度の産業は必要であると云ふ線を引きまして、之に依つて聯合國との協力に依つて其の範圍を決めて行く、斯う云ふことになるのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=66
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067・井田友平
○井田委員 成程今日自分だけが方策を立てて見ても、向ふで許可しなければ實現しないのだから、あなたの御答辯は其の通りなのですが、商工當局としたら斯う云つた方法で、今の平和産業は此の程度にしなければ、八千萬の國民は養つて行けぬのだから、或は其の案を立てて、結局聯合國なりに打突からなければならぬ、さう云ふやうなことをして行くのが當然だと我々は考へて居るのですが、あなたの言ふやうな、業界の意見を徴して策を立てるなんと云ふことになると、商工省には日本の今までの總ての統計資料が蒐集してあるのですから、戰爭が終へた曉には、國内用の民需物資をどの位生産しなければならぬ、それから許されればそれを養つて行くのに一年にどれ位貿易をやらなければならぬと云ふやうなことは、自らあなた方が立てべきが本當でないかと思ふ、今の局長の答辯では甚だ心細い次第なんですが、終戰後どうも商工省は影が薄くなつて、結局物價の面は大藏省に取られるとか、取締の面で内務省にこづき廻されるとか、或は肥料の生産は農林省によこせと云つたやうに、色々の方面で商工省はどうも權限が段々少くなつて來るやうに思ふので、我々としては甚だ心細いのですが、大臣とか政務次官は同じ資格を持つて、何處に行つても同じに見られるかも知れませぬが、其の内容がどうも大變商工省の存在が薄くなるやうな氣がするのですが、どうも今局長の言ふ通り、總てが國際間の問題とか賠償物資とか或はさう云ふものに藉口して案が立つて居らぬやうですが、是は甚だ心細いので、さう云ふものはさう云ふもので、あることは間違ひないのだから、さう云ふものを除いた外に何とか之を打開する方法の案を立てて進んで貰はなくちや非常に困る、斯う僕等は考へて居るのですが、どうもまあ責任ある當局としては餘り細かい、斯うするのだと云ふことは言へないかも知れませぬが、併し一寸其の片鱗位は、斯う云ふ建前で出來得るか出來得ないか知らないが、今後は進んで行くのだと云ふ位な御言葉は聽かれることと、斯う思つて居るが、甚だ殘念です、どうも全部向ふの司令部に任せてしまつて、それでは商工省はあつてもなくてもいい、斯う云ふことになつてしまふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=67
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068・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 それでは大體の考へ方を申上げさして戴きます、國内に現在ありますものに付きましては、勿論其の儘で出來るものと思ふのです、其の一番代表的なものは、工藝品とか裝飾工業とか云ふものであります、是は過去に於ける一番盛んな所まで行つて差支ないと考へて居ります、其の次に纎維産業、是は先程も申上げましたが、我が國の從來の一番大きな産業でございます、同時に世界に於ても恐らく最大な製絲地の一つであると考へて居ります、さうして我が國の工業人口の殆ど半數以上にも亙るやうなものを此の産業で賄つて居つたものと思ひます、紡績の段階から織布の段階から致しまして、之を加工する、或は他の工藝品まで進める、斯う云ふ三段階、それに染織加工、色々な段階がありまして、非常に澤山の人口が此の爲に仕事をして居つた譯であります、さう云ふものは大體私は復活して來るものと考へて居ります、唯さう云ふ風に考へまする所以は、我が國の纖維産業の輸出市場と云ふものは大體東亞の地域に局限されて居ります、若干「アメリカ」とか「イギリス」とかに向いた物もございますけれども、それ等のものは今後恐らく輸出は困難かと思ひますが、東亞の市場に供給致して居りましたものに付ては、我が國の輸出は將來成べく少しづつ伸ばして行きたいと云ふ希望を持つて居ります、大體そこら邊までは何とか從來に近いものに囘復することを希望致して居る譯でございます、それから機械工業、是も飛行機の生産に關聯して隨分戰時中多かつたものでございますが、是は中々、「アメリカ」其の他の國が進んで居りまして、之を普通の工業と致しまして、競爭致します場合に於きましては、我が國は相當難かしい立場に臨むものと考へて居ります、隨ひまして從來の戰時中のやうな盛んな操業と云ふものは困難かと思ひます、化學工業等に於きましては、是は又領土を喪失致して居りまする今日から申しますると、寧ろ此の化學工業に依つて新しい資源を作り出すと云ふことに重點を置かなければならないのでありますが、是は一面非常に我が國の學問の振興とも關係致しまして、今後の努力如何に掛ることと思ひます、是等の將來に付きましては成べく戰前に近い所まで囘復したいと思ひまするけれども、それ等化學の振興と共に是は解決せらるべき問題と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=68
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069・井田友平
○井田委員 大體商工省の御氣持も分つたのですが、平和産業は戰前の線まで、やつて行きたいと努力して居る、斯う云ふ御話ですから、大體其の線は分つたのですが、私はまだ二、三御尋ねしたい細かいことはありますが、丁度もう時間が過ぎたやうでありますし――まだ貿易廳は參りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=69
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070・北村徳太郎
○北村委員長 井田君、貿易廳の方が見えましたら御質問願ふことにして、次に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=70
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071・井田友平
○井田委員 見えなければ、見えてから時間を與へて戴けば結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=71
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072・北村徳太郎
○北村委員長 大體今の所三十分を過ぎて居ますから御承知を願ひます、それでは金子益太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=72
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073・金子益太郎
○金子委員 私は極く簡單に商工省關係のことに付て御伺ひ致します、今度商工經濟會が廢止になりました場合に、例へば一つの例を以て申上げますると、私は現在栃木縣の栃木市に住んで居りますが、從來栃木縣には宇都宮、栃木、足利とありました、さう云ふ場合、商工經濟會の方に移つて居つたさうしたものが廢止後、今度商工會議所が出來ますね、それに大體建物とか或は財産とかが引繼がれるやうに今度の廢止法案に依つてはなつて居るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=73
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074・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商工經濟會が今度解消せられますと、どう云ふ商工會議所が續いて起つて來るかと云ふ問題でございますが、是は大體やはり其の都市の状況に依りまして決定さるべき問題と思ひます、唯從來の商工會議所なるものは――是は經濟會の出來る前の商工會議所でございますが、さう云ふものは大體さう云ふ商工會議所を作る必要があつて作られたものであらうと考へられますので、恐らく今後に於ても大體其の都市單位に商工會議所と云ふものが出來て來るのぢやないかと豫想せられます、隨ひまして、御示しの例の如く、栃木縣に於きましては、宇都宮と桐生と云ふものが從來別々であつて、それを經濟會で一緒になつたと云ふ状況が、今度解散される譯でございますから、恐らく宇都宮市にも、又桐生市にも新しく商工會議所と云ふものが立案されるものと考へます、さう云ふ場合には現在の商工經濟會の持つて居りまする所の、さう云ふ不動産等は將來新しく出來まする所のそれぞれの會議所の方へ御返しをすることになると思ひます、さう云ふ場合に、此の商工經濟會の廢止法案の附則に於きましては、さう云ふ不動産等が移轉する場合には、主務大臣の許可を得ますると登録税の減税をし得ると云ふ規定が載つて居ります、普通は千分の二十三でございますが、其の額を千分の四まで低下すると云ふ規定がございます、此の認可の際にさう云ふ實情を見まして、主務大臣が認可をして上げると云ふことで、新しい會議所に御移りになる場合の御斡旋をしたいと云ふ風に考へて思ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=74
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075・金子益太郎
○金子委員 それでは大體從來あつた所はそれを御返しをすると云ふのが根本方針ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=75
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076・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 さう云ふ原則で參る積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=76
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077・金子益太郎
○金子委員 それからもう一つ御聽きしたいことは、賦課金の處分方法の問題です、商工經濟會が皆賦課金を取りましたね、此の賦課金の處分方法で相當問題を起して居る所も實はあるのです、此の賦課金の處分方法に付ては一體どんな風に當局は御考へになつて居られるでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=77
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078・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商工經濟會が斯う云ふ工合に急に廢止をせられることになりました爲に、從來取つて居りました賦課金、一年分まるまるもう既に納めて居られる方もありませうし、中にはまだ納めて居られぬ方もあると思ひます、或は一部納めて居る方もあることと思ひますが、此の處分方法はそれぞれの經濟會に依つて多少状況は違ひますので、それぞれて於て處分方法を御立案願ひたいと思ひます、原則と致しましては大體期間に應じまして割戻しするのが宜からうと思ひますけれども、唯經濟會の財政の状況から致しまして返せないものもあると思ひます、さう云ふものは状況に依つて善後措置を御考へ願ふより致し方がないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=78
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079・金子益太郎
○金子(益)委員 そこで前に御聽きした建物や不動産、何かの問題と絡み、賦課金の問題も絡んで、相當紛爭を起して居る所が事實に於てあるのです、私の所へ手紙が來て居りますけれども、是は一つ後日當局の方に其の紛爭の具體的な事實を持つて御相談に上りたいと思ふのですけれども、さう云ふ際に商工當局と致しましては、極力それが圓滿解決に御斡旋して下さる熱意を持つておいでになるかどうか、一つ御聽かせ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=79
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080・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 是は今日新しい商工會議所を作りまする前提條件でございます、さう云ふ點が解決致しませぬと、新しい會議所の誕生は困難かと思ひます、隨ひまして新しい會議所の創立に付きましては、商工省と致しまして十分御斡旋する意思を持つて居りまするので、其の前提條件でありまするさう云ふ經理關係の御斡旋に付きましても、同樣に御斡旋を致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=80
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081・金子益太郎
○金子委員 最後にもう一つ御伺ひしたいことがあります、近く金融措置令の改正がありまして、特殊預金の問題が今非常に神經を尖らして居るのでありますけれども、是れ亦具體的に申上げますれば、例へば栃木縣、群馬縣に於きまする桐生、伊勢崎、足利、佐野の方面の相當の企業家が、あの時の企業整備に依りまして機械は持出され、それから毀されまして、而も營業權もなくなりまして、其の結果が特殊預金となつて最近漸く業者の手許に入つたやうな譯であります、それが特殊預金になつて入ると云ふことも分つて居りましたから、さうしたことを前提と致しまして、各企業家は銀行から金を借り、且又他からも金を借りまして、新しい別途の生きる途を講じて來たのでありますけれども、戰爭中に於ける企業整備に依る機械の搬出、機械を出してしまつて、又出した機械は毀されてしまつた、さうした機械の代金が特殊預金になつて居る場合もございませうし、且又荷造代も特殊預金になつて居る場合もございませうし、又營業權と云ふものも評價されて特殊預金になつて居る場合もございませう、更に又建物關係に於きましてもそれがやはり加算されまして、特殊預金になつて居る場合があると思ひます、今度特殊預金の打切りと云ふか或は封鎖と云ふか、さう云ふ場合に機械の買上代金と云ふものに對しましては、一體商工省は大藏省とどう云ふ風な御話合が付いて居られるものでせうか、一律一體に之を、例へば、五萬圓なら五萬圓、三萬圓なら三萬圓にしてしまふのか、或は又機械の代金と云ふ現物の動産を政府が買上げた、其の買上代金に對してはどうするのかと云ふことを、一つ御聽かせ願ひたいと思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=81
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082・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今の特殊預金の問題は、只今折衝中でございますが、まだ最後的に確定致して居りませぬ、御話の點は洵にお氣の毒な點があると思ひますので折衝致して居りますが、まだ最後的には決定して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=82
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083・金子益太郎
○金子委員 折衝中で内容が御分りにならないと云ふことでありますから、是れ以上御聽き致しませぬけれども、實際に整理された事業家が機械は毀されてしまひ家は毀されてしまつた、其の上に搗てて加へて荷造代を取られる、荷造代と云ふのは人夫賃でありますが、さうした立替へて居つたものが今度は目茶苦茶になつてしまふと云ふことになれば、それを目當てに金を借りてやつて居ります中小工業者が、非常な苦境に陷ると云ふことは明白な事實であります、さう云ふ點に付きまして商工當局は大藏當局とも十分折衝になつて、中小工業者擁護の爲に機械の買上代、荷造代と云ふやうな人夫賃に對しては、十分な辨償がせられるやうに御努力願ひたいと思ひます、以上を以て私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=83
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084・北村徳太郎
○北村委員長 井田君に申上げます、只今貿易廳の總務局長が參られましたから、御質問を繼續願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=84
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085・井田友平
○井田委員 それではもう一度さつきの質問を敷衍致します、私先程丁度貿易廳のお方が居ない時に申上げたのでありますが、今度の見返品物資の輸入に付きまして、其の數量は一箇年間どの程度の數量で、又品目はどう云ふ品目で、其の金額はどう云ふ金額であるか一つ知りたいこと、それから生糸とか茶とか云ふやうな天然物と違ひまして、商工省關係の工業品でありますが、其の工業品はどう云ふ方法で業者を選定して、又どう云ふ方法で原料を供給して、之をどう云ふ方法で輸出するか、斯う云ふことを一つ御伺ひ致したいのであります、それに依りまして又御質問致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=85
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086・岡村武
○岡村政府委員 只今の御尋ねに對して御答へ申上げます、第一見返物資の品目、數量竝に金額の點でございますが、是は御承知置きかと存じますけれども、現在の日本の貿易は輸出竝に輸入とも、聯合國最高司令部の完全なる管理の下にございます、隨て所謂自主貿易の下に於ける如く、我が國竝に我が國の商社が恣に相手方竝に其の品目等を選定致しまして、引合ひを付けることは問題であります、全然出來ない状態にあると考へます、隨ひまして見返輸出品の數量、品目或は時期等も凡て最高司令部の指示に依りまして、之を行ふと云ふことに相成る譯でございます、斯樣な状態でございまして、今後の見透しに付きまして私共だけの判斷から的確なことを申上げることは、不可能だと存ずるのでございますが、最高司令部で決められます輸出の計畫も、其の基礎になります資料を貿易廳から提出を致しまして、其の資料に依りまして輸出計畫が立てられることと存じますので、今年の下半期の輸出計畫もまだ左樣な意味合ひに於ては決定して居りませぬが、私共が總司令部で決めます輸出「プログラム」の基礎となる資料を提出致しました、其の内容を御話申上げたいと思ふのであります、從來の輸出は有體に申上げますれば、殆ど總司令部の命令乃至指示に依りまして行はれたものでございまして、こちらから之を此處に輸出をしたいと云ふやうな一定の計畫を持つて輸出を行つたものは、現在までは非常に僅少なのでございます、即ち生絲に致しましても、或は石炭、坑木などに致しましても、總司令部の命に依り輸出を致したものでございます、併しながら本年の三月に輸出の詳細な手續が決定致した爲に、今後は計畫的な輸出が行はれるものと私共は期待を致して居るのであります、其の時期は大體今年の下半期から開始されるものと存じます、下半期に當方の輸出要請物資として總司令部に提出を致しましたものは、金額に於ては豫算總會に於て御説明申上げた如く、總計五十五億圓に相成つて居るのでございます、其の品目は極めて多岐複雜に亙つて居り、其の一々を申述べることは困難でございますし、又以上述べた如く、其の通りに此の計畫が進行するとも考へられませぬ、さう云ふ意味合に於て其の悉くを申上げる必要もなからうかと存ずるのでありますが、一、二重要なものを擧げて御答へ申上げたいと存じます、勿論輸出計畫五十五億圓の大宗をなしまするものは、纎維製品であることに付ては異論のない所であらうと存じます、即ち絹織物、人絹交織絹織物、人絹織物、麻織物、麻製品、「メリヤス」、「レース」、非常に細かく相成りまするが、組紐、其の他の綿織物、「テープ」、斯樣な一聯の纎維製品の外に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=86
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087・井田友平
○井田委員 纎維製品とか、お茶とか、大別で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=87
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088・岡村武
○岡村政府委員 それから生絲が此の纎維製品の主なるものでございます、それ以外には機械でございまして、織機であるとか、自轉車或は農機具の如き機械類、電線の如き非鐵金屬製品、醫療機械類、石炭、金屬、是は「フェロアロイ」とか、或は金屬「マンガン」等でございます、紙竝に紙製品、陶磁器、醫藥、賣藥、新藥、硝藥の如き藥類、それから化學製品、雜貨類、農水産物、以上のやうな品物を豫定致して居るのでございます
次に見返輸出品の生産者の選定でありますとか、或は斯樣な生産者に對する原材料の供給方法竝に輸出手續の問題でございまするが、見返輸出品の生産に付ては、現在の生産者を其の儘利用致す積りで居るのでございます、尤も其の中には輸出適品を生産し得る所謂適格者もございまするし、然らざる者もあるかと存ぜられます、併しながら是等の業者の適格の有無を直接貿易廳に於て檢討判斷致しますことは極めて困難でございますので、それ等の選定は貿易廳の下部機構として、輸出の面に付ては約三十の代行機關がございます、此の機關がそれぞれの分擔致して居ります商品の範圍内に於て發註もするし、又集荷をするのでありますから、此の機關に於て其の業者の選定を致す、多數の業者の中で適當なものに對して發註をする、斯樣に相成つて居るのでございます
そこで是等生産者に對する原材料の配給でございますが、是等に付きましては、石炭であるとか或は「コークス」其の他重要なる物資の一、二に付きましては、物資需給計畫上特別に枠を掲げて其の確保を致して居るのでありますが、現在交易營團の解散に伴ふ措置と致しまして、輸出品の原材料竝に包裝用の原材料の現物化入手竝に其の配給に付きまして、之を一元的に所掌する輸出品原材料株式會社の設立準備中でございます、近く其の仕事も發足の運びに相成ると存じますが、此の原材料會社に於きまして、其の實務を擔當致させることに相成つて居るのでございます
次に輸出手續の問題でございますが、是は如上申上げました如く、聯合軍司令部の管理下に於て行はれる貿易でございますので、輸出の手續も總て總司令部で取極めた詳細なるものが決まつて居るのでございます、其の手續を履まなければ現實に輸出は出來ないことに相成つて居るのであります、尚ほ貿易廳が總司令部の覺書に依りまして、貿易を所掌する一元的な專管官廳になつて居ります爲に、貿易廳以外のものは直接輸出なり輸入を致すことは出來ない仕組になつて居ります、輸出をする時には貿易廳から具體的に其の品目に付きましての輸出準備申請、竝に其の許可後に於ける現實の輸出引渡申請、斯樣な二段階の手續を經て最後の手續に對する總司令部の「アプロベート」が參りますと、愈愈それを貿易廳に於て買取つて之を船積みする、斯樣な順序に相成つて居るのであります、是等の一聯の手續は今後に於ては冒頭申上げました如く計畫的な輸出「プログラム」の範圍内に於きまして、個別的に各商品毎に行はれることと存ぜられるのであります、説明の足らぬ所があるかと存じますが、御尋ねに依りまして重ねて御答へを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=88
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089・井田友平
○井田委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=89
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090・北村徳太郎
○北村委員長 他に貿易關係の御質問はありませぬか――それでは質疑を繼續致しますが、只今工業所有權法戰時特例を廢止する法律案も議題に供せられて居りますので、御質疑は其の問題にも御觸れ戴いて宜しうございます――赤澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=90
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091・赤澤正道
○赤澤委員 商工經濟會法を廢止する法律案、之に付きましては私は全面的に贊成を致します、戰爭中國策に協力させる爲の法案が澤山出て居りますが、斯う云つたものは一切廢止致しまして、あべこべに國民の自由なる活動に國家の方で協力すると云ふことが、民主化された日本の正しい姿である、斯樣に存ずるのであります、之を中心に致しまして二、三質問を致したいと思ひます
先程金子委員が御質問になりましたので若干省けて參りましたが、もう實際は地方ではどんどん之を見越して來るべき商工會議所の構想を進めて居ります、各地方で既に色々耳に致して居ることがありますが、其の多くは入會の資格條件等を考へて居るやうであります、之に付て商工省の方では如何に指導されるか、商工會議所は作られる、斯う云ふ風に一應仰せられて居ります、又茲に模範定款と云ふものを御出しになつて居ります、一應此の儘で放つて置かれる御積りだと思ひますが、之に付てどう云ふ御指導をなさる御積りであるか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=91
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092・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 新しい會議所の議員の資格の認定でございますが、之に付きましては目下只今の日本商工經濟會、恐らく今度日本商工會議所になる團體であらうと思ひますが、そこら邊に於きまして全國的にどの程度にして宜しいかと云ふ意見を徴して居ります、隨ひましてそれに依つて私共決定致したいと思つて居りまして、只今まだ成案を持つて居りませぬ、各方面の御意見を徴しまして此の資格を決めたい、斯う思つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=92
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093・赤澤正道
○赤澤委員 さうするとやはり何か資格條件を考へて居らるるやうに承知を致すのであります、私個人の意見としましては、又個人の意見ではありませぬ、多數の人は新しく廣く會員を包容すると云ふ意味で、條件等は付けない方が宜いと云ふ意見が多いやうに存ずるのですが、此の點に付てもう一度御答へを戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=93
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094・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 少し言葉が足りませぬので訂正致します、從來のやうに營業税何圓以上と云ふ資格條件は全然付けない積りで居ります、唯餘り小さい方を御入れするのはどうかと思ひますので、日本商工協同組合と云ふ團體として御入れする、斯う云ふことはやつて行く積りでありますが、制限する意味の資格としては考へて居りませぬ、成べく廣く、商工業に關係のある方は網羅すると云ふ建前であります
〔委員長退席、九鬼委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=94
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095・赤澤正道
○赤澤委員 どうもさう云つた意味でも制限を御付けになると云ふことは私は感心しないのであります、大體此の模範定款を拜見致しましても、第七條にはもう既に、誰でも入れるのでなくして、會員二名の推薦が要るとか、或は其の次には會員委員會が適當と認めなければならぬ、第三段としては常議員會が承認をしなければならぬ、表面的には可なり煩雜になつて居ります、是ですら私は不贊成だと思ふのです、其の點は能く實情を御勘考になるやうに私は希望を致します、尚ほ地方の實情は御承知かと思ひますけれども、今までの商工會議所或は商工經濟會なるものは、殆ど地方の二三の財閥、有力者の勢力爭ひの場所となつて居つたのであります、其の意味に於きまして將來民主化されたる所の斯う云つた會議所等の形態は餘程變つて來なければならぬと私は確信を致すのであります、只今申しますことは今まで申述べましたことにも關聯があるのでありますが、此の定款の第九條に總會の表決權を又段階を付けておいでになるやうです、是は一體どう云ふ意味でありますか、是も一應御説明はあると思ふのですが、何か「アメリカ」其の他に模範でもあつて之をおやりになるのですか、なぜ之を平等にやることが出來ぬのですか、御説明を御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=95
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096・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今の商工會議所の組織の問題に付ての御意見は私として贊成でございます、此の模範定款には制限的な規定が大分入つて居るやうでございますが、是等に付きましては再檢討を致しまして、所謂民主化の徹底した形に於ける組織を作らすやうに指導して參りたいと思つて居ります、隨ひまして議決權等に付きましては是は一人一票と云ふ原則を執つて參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=96
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097・赤澤正道
○赤澤委員 只今の御答辯に私は滿足を致しました、努めて民主的なやり方に改めて戴きたいと思ふのであります、財産關係に付きまして、先程今までの商工經濟會なるものが持つて居つた可なり莫大なる動産、不動産の移轉關係に付ては一應了承を致しました、更に茲に斯う云ふ問題が私は起り得ると思ふのであります、例へば同一地區で二つ以上の團體が各各商工會議所の設立を許可して下さいと願ひ出た場合には其の決定權は誰が持つか、どう云ふ風にして決定するか、是は財産問題に引括めて御囘答戴きたいと思ひます、尚ほ其の地區で商工會議所を作らなかつた場合には、此の財産は何處へ歸屬するかと云ふことも併せて御教示を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=97
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098・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 同じ土地に二つ或はそれ以上の商工會議所が計畫されました場合、其の財産等はどちらに歸屬するか、或はどちらを商工省としては認可をするかと云ふ御質問であります、實際さう云ふ問題は起り得るものと考へます、併し今後作る商工會議所と云ふものは本當に其の土地に於ける商工業者の代表たるべき團體でなければいかぬと考へます、隨ひまして其の實質がそれに沿ふやうな團體を作り上げる、同じ土地の方が色々な勢力關係から致しまして、數派に分れて爭ふと云ふやうな状況の下に於て、商工會議所と云ふものを許すことは面白しくないと考へます、隨てさう云ふ場合には主な商工業者の方の御意思を能く忖度致しまして、一次的には地方長官、二次的には商工大臣が能く御斡旋を致しまして、一つのものに纒め上げるやうに努力致しまして、一つのものとして之を認めると云ふことに致したいと思ひます
〔九鬼委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=98
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099・赤澤正道
○赤澤委員 少し違つた質問になりますが御許しを願ひたいと思ひます、今度商工組合法が廢めになつて、新しい商工協同組合法案が出る、斯う云ふ御話であります、恐らくはあの施設組合と云ふものを御殘しになつて、統制組合の方を御廢めになると云ふ御考へであると私は思ふのであります、是は結構でありまして、ああ云ふ法人會社式のものがどんどんなくなるのは最も望ましい所であります、所が現業の官廳では、統制會社ではありませぬけれども、其の官廳の豫算で以て專屬の仕事をして居る所の會社が尚ほ幾多あるのであります、斯う云つた會社は詰り古い官吏の捨場ともなつて居りますし、又其の半面庇護を受け、色々な便宜を與へられて來て居りまして、色々な弊害も出て來て居るのであります、さう云つたものは何か此の際御處置なさると云ふ御考へはないでせうか、例へば鐵道關係、是は工務局に專屬の會社が戰時中便宜の爲に出來て居ります、又遞信省關係等にも多くあるのであります、斯う云つた官廳の專屬營利會社と申しますか、斯う云ふものをどう云ふ風に御處置なさるか、其の點を伺ひたいと思ひます、是は實際は遞信省、鐵道省關係ですから、工合が惡ければ、別に機會もありますから、御質問を止めても結構です
それからもう一つ、是も直接商工經濟會法に關係がありませぬが、昨日商工大臣に私伺つて、時間がなかつた爲に要領を得なかつたのでありますが、計畫經濟の下にありましては、どうしても生活必需物資の多くは配給機構を通じて流されます、又一方農村は共同組合化されますし、都市には消費組合が發達して參ります、さうすると、小賣商人と云ふものは殆ど介在する餘地がなくなるのではないか、斯樣に思ふのであります、中には現に小賣商人は不用だと云つたやうな議論まであるのであります、小賣商があれば消費者に取つては便利でもありますし、又例へば生鮮食料品等の場合にあつては、其の鮮度も格段に良くなつて參つて居るのであります、併し斯樣な小賣商は現在は多くは闇商人なんでありますが、斯樣な商人に放埓な營業をさせて居たのでは、國民生活に非常に惡い結果を齎すから取締らなければなりませぬけれども、又一方正當な營業は殆ど存立の餘地がない、斯うなつて參りますと、何か別に大きな手を御打ちになる必要があるのではないかと思ひます、軍需補償打切り後の影響等を含めまして失業者は五百萬と豫想されて居ります、其の大部分は恐らく戰爭中に非常な無理な犧牲的轉業を強ひられて、未熟練工として工場に入つた人達、さう云ふ人達が又更に工場を追はれて出て來て居る、斯樣な實情である、私は斯樣に思ふのであります、商工省では樣樣な中小商業と申しますか、更に零細商業の將來に如何なる見透しを付けておいでになるか、非常に漠とした質問を致すやうでありますが、非常に大切なことであると思ひますから、御意見を御伺ひしたいと思ひます
尚ほ此の轉業者、再失業者でありますが、是は厚生省のみの問題とは申せないと思ひます、先程から色々企業整備に依る方達の取扱に付て、他の委員方からも二三御質問があつたやうであります、斯う云つた方々に對して、又商工省當局として御考へになる問題もあるのではないか、斯樣に思ふのでありますが、御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=99
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100・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 小賣商の將來の問題でありますが、只今御話もありましたやうに、國民生活に必須な此の必需品等に付きましての配給統制と云ふものは、恐らくここ暫くまだ繼續されるものと考へます、さう云ふものに付きましては、やはり非常に強力な配給統制をやる必要があります爲に、或は一例を擧げますれば、米なら米と云ふものは、只今のやうに食糧營團を通じての統合された形に於ける販賣機構が出來て居る譯であります、併しながら漸次物が潤澤になつて參りますれば、從來のやうな自由競爭に依る所の小賣商と云ふものを廣く認めますことが、最も迅速且つ良い物を廣い範圍に配給し得るのでありますから、やはりさう云ふ形に於ては小賣商と云ふものが漸次復活すべきものと考へます、現在は隨分商品の品不足の時代でありますから、今日直ちにと云ふことは中々困難でございますが、逐次石炭が囘復致しまして、又若干の原料等も輸入が認められるやうになりますれば、逐次さう云ふ商品が出廻つて參ります、さう云ふものは成べく小賣商の手を通じて配給する、最初は配給所を通じて配給しても、將來はそれを自由なる販賣が出來るやうな形に導いて行く、是が今日商工省として執るべき政策であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=100
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101・赤澤正道
○赤澤委員 先程模範定款を中心にして二、三の御質問を致しました、局長さんの方でも善處すると仰しやつて、私非常に滿足致しましたが、此の定款は新しく生れるべき商工會議所なるものをもつと民主的なものにする、尚ほ實情を細かくは申しませぬでしたけれども、地方では殆ど小さい財閥共の勢力爭ひの踏臺になつて居ると云つた實情等をも御勘考になりまして、斯う云つた表決權の問題、或は代表權の問題、或は會員資格と云つたやうな問題に對しまして、根本的改革を御加へになることを切望致しまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=101
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102・北村徳太郎
○北村委員長 加藤君、如何ですか――それでは山田悟六君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=102
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103・山田悟六
○山田(悟)委員 簡單に、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案に關聯致しまして御質問を致したいと思ひます、第一は、戰時中我々は戰時の關係から、世界の發明權とか特許權と云ふものを侵害致した事實は、工業界を通じて多々あると存じますが、是が賠償等の關係とか、或は戰時法の廢止から、今後如何なる處置に出られるや、其の見解に對して御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=103
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104・久保敬二郎
○久保政府委員 戰時中は工業所有權の戰時法と云ふものがございまして、それに依りまして聯合國人の特許權、其の外商標權と云ふやうなものを處分致しました、其の工業所有權の戰時法に付きましては、昭和十七年七月十四日に閣議に於て方針の決定がございまして、それに基きまして、戰爭勃發當初、聯合國人が持つて居りました特許權二千七百八十一件、それから實用新案權六百九十八件、使用權五十七件、商標權九千二百九十六件ありました中で、特許權及び商標權の一部に付て取消と云ふやうな特別措置を致しました、先づ特許權に付きましては、工業所有權戰時法の規定に依りまして取消竝に特定の業者に專用の免許を致しまして、昭和十七年八月十七日以來千三百九十三件を取消し、九十二件を專用の免許を致しました、それから商標權に付きましては、五十四件の取消處分を致しました、斯う云ふやうに取消したり致しましたものが、戰時中我が國でどう云ふ工合に使はれたかと云ふことに付きましては、遺憾ながらそれ程實施せられなかつたのであります、專用を免許せられました特許發明九十二件の中、實際に實施致しましたものは二十一件に過ぎませぬ、それから實施に至らずに試作のみに止まりましたものが十六件、それから殘りが全部專用免許致しましたが、實は實施しなかつたものでございます、是等の處分に付きましては、戰爭が斯う云ふ状態に終りましたので、我が國と致しましては、出來得る限り早く其の戰後處理を致しまして、聯合國人の持つて居りました特許權其の他の工業所有權の損害を少くするやうにと云ふ考への下に、其の善後處置を立案して見たのでございますけれども、一應聯合國軍關係では今までさう云ふ工業所有權の關係の專門家が見えて居りませなかつた關係上、先方で之に對する認可とか、さう云ふやうなものが十分に參りませぬで、今日に至つて居る次第でございますが、最近聯合軍の方にも特許專門家がやつて參りまして、先づ日本が戰時中執つて居つた措置に對して、如何なる措置を講ずると云ふことをやる前に、戰爭中に日本が聯合國人の工業所有權を如何に取扱つたかと云ふことを調査する必要があると云ふので、それに付きまして、日本人以外のものが持つて居りました工業所有權が戰時中どうなつて居つたかと云ふことを全部調査して、私共の方から報告をするやうに指令を受けて居ります、全體として約三萬件ございますが、斯う云ふものの報告を出しましたならば、向ふから又何等かの指令があることと考へて居りますが、大體私共の方と致しまして執るべき手段は一應執つて居りまして、あとは聯合軍の指令を待つだけと云ふやうな状態になつて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=104
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105・山田悟六
○山田(悟)委員 是は實は司法大臣の出席を要求してなすべきでありますが、通知を致さなかつた關係から、關係當局から御話を願ひたいのでありますが、日本は工業所有權とか、發明權、特許權、斯う云つた事柄を非常に輕んずる國民と申しませうか、國柄でありまして、例へば私共が意匠權を有して居つた、斯う云つたものの侵害に對して提起を致しましても、殆ど司法當局は採り上げないのであります、發明權と云ふやうなものに對しては、世界各國は非常に尊重して居るやうな譯でありますから、是は關係當局から是非嚴重に御傳達を願ひたいのであります、尚ほ又發明權とか、著作權、斯う云つたやうなものに對しては殆ど顧みない、併し工業所有權と云ふものが公共の爲に必要なものに對しては、やはり所有權者其のものも成べく公開せらるべきものと存じますが、是は從來に戻つただけの規則であるか、之に對して説明を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=105
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106・久保敬二郎
○久保政府委員 最初特許權、工業所有權の尊重と云ふ問題でございますが、是はどう云ふものでございますか、我が國では、斯う云ふ工業所有權、其の外無體財産權と云ふものに對する所謂道徳が低いのではないかと實は考へて居るのでございますが、さう云ふ無體財産權と云ふものを盜ることが、所謂物を盜るのとは全然違ふと云ふやうな考へが或はあるのではないかとさへ考へる位に、さう云ふ方面に對する道徳が低いことを非常に遺憾に存ずるのでありますけれども、外國等では御話のやうに非常に尊重されて居るやうに聞いて居ります、大體特許權の侵害と云ふやうな問題に對しましては、其の保護は司法省の方の裁判保護に屬して居るのが非常に多いのでございまして、特許局だけで如何とも出來ないと云ふやうなことは只今御話の通りで、私共非常に遺憾に存じて居るのでございますけれども、此の點に付きましては何れ工業所有權法を遠からず改正しなければならぬと考へて居りますので、司法省とも連絡を執りまして、出來得る限り其の保護が完全に出來るやうな處置を講じたいと考へて居ります、尚ほ今後の改正憲法草案に依りますと、憲法第七十二條の問題がありまして、特別裁判所を設けることが出來ない、それから又行政機關は、終審として裁判が出來ないと云ふやうな問題もありますので、特許局でやつて居ります仕事は大體に於て行政處分とは考へて居りますけれども、其の點に付きまして一應司法省の構成とも關聯がありますので、目下交渉致して居りますが、是等の點に關係致しましても、工業所有權全體の調整を、更に遠からずしなければならぬと云ふやうなことを考へて居る次第であります、尚ほ特許權の公開と云ふやうな問題でありますけれども、是は今、日本の工業所有權法で許されて居ります範圍の公開は、其の人の自由意思で公開しても宜いし、公開しなくても宜いと云ふやうな面が非常に強いのでありますけれども、將來に於きましては、やはり國家の要請に基いて、其の意思に拘らず公開しなければならぬと云ふやうなことにする必要が、多分にあるのではないかと考へて居ります、一面特許權と云ふものに對する獨占權は、大いに認めて行かなければなりませぬけれども、其の反面、國家的要請に基く方面に對しては、是が自由に使ひ得ると云ふやうな制度にする必要を、多分に感じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=106
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107・山田悟六
○山田(悟)委員 此の工業所有權に對して法文を作る場合には、實際問題に當つて、所有者に對して諒解を得ると云ふ事柄が一番肝腎と思ひますが、只今法文を作る場合に對して、所有者に對して諒解を絶對得なければならぬと云ふやうな諒解事項に對して、非常に重點を入れる御意思があるかどうか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=107
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108・久保敬二郎
○久保政府委員 此の點に付きましては、實はまだ十分な自信を持つて居りませぬ、「ドイツ」のやうな法制に依りますと、公開をして、適當な補償を貰へば直ぐ誰が使つても宜いと云ふことを特許權簿に登録致しますると、特許料金を半減して呉れると云ふやうな規定がありまして、非常に公開と云ふことを奬勵して居る面があるやうでありますが、やはりそれに付きましても諒解を求めると云ふ思想が根柢をなして居ると思ひます、其の點に付きまして大體今までの思想は、諒解を得なければ特許權は實施出來ない、更に諒解なしで實施し得る場合は、國家的要請に基いて政府が收用した場合、さう云ふやうな場合でなければ、諒解なしには實施が出來ないと云ふやうな建前で出來て居るのでございますけれども、戰爭中「アメリカ」等に於きましては、色色軍需動員の方の關係でありますが、さう云ふやうな思想に非常に修正が加へられて參りまして、何人と雖も諒解なしで其の特許權が實施出來る、但し其の際は適當な補償を拂はなければならぬと云ふやうな思想になつて居るやうに、最近聯合軍の方の方と交渉致した時に、薄々感じて居るのであります、さう云ふ思想になりますと――或は私共唯感じました所では、さう云ふ思想の方が寧ろ將來に適するのではないかと云ふやうなことを思つて居りますけれども、まだ之に對しては相當研究をしなければならぬと實は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=108
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109・山田悟六
○山田(悟)委員 此の事柄は工業所有權の所有者が少くて多くの人の利用する面が多分にあると云ふやうな事柄から、非常に社會は誤解をするのであります、特に機械等の場合で全然模倣と云ふ事柄を基本になして居ることがはつきりして居るが、而もそれを逃れる事柄を目途として、所謂眞似る、是は日本の工業を進歩させると云ふやうな意味から參りますと、斯う云つたやうな事柄も容認しなくてはならぬ問題でありますが、世界の工業と云ふやうな事柄に對應することになると、模倣に非常に重點を置いたもので、例へば、此の事柄は凡そ八〇%以上の模倣を含んだものはいけないとか、模倣の程度の「パーセンテージ」と云ふやうな事柄が將來の動向をなすと思ひますが、模倣の限界と云ふやうなことに付て當局の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=109
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110・久保敬二郎
○久保政府委員 大變私共參考になる御意見を伺はして戴いて感謝致します、實は其の點に付きましては、どうも是がやはり工業道徳と云ふやうな問題になりまして、此の點の模倣の限界と云ふやうなものも、道徳が高くなれば模倣と云ふことが非常に嚴重に考へられることになるし、道徳が低くなると、大きな模倣をしても、それが普通だと云ふやうなことになるやうに考へられるのでありまして、一般の科學技術に對する徳義心と云ふものが向上して參りましたならば、是は自ら解決する問題ではないかと考へて居ります、只今御話のやうに模倣の限界を設けたらどうかと云ふ點は、實は私共そこまで考へ及んで居りませぬ所でありまして、大變有益な暗示を戴きましたことに對して、此の點更に研究致して見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=110
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111・山田悟六
○山田(悟)委員 既に時間も參つたやうでありますから、此の程度で私の質問を打切りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=111
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112・加藤一雄
○加藤(一)委員 工業所有權のことに付て御伺ひ致します、只今御話になりましたやうに、工業所有權法の改正を目途とせられて居るやうでありますが、私の質問は主として其の方面に關する建設的意見が相當ございます、終戰に伴ひまして軍需工業が解體致しました、又工業生産の形態、研究の制限乃至は禁止と云ふことの結果、多數の技術者が今日失業致して居ります、一般に技術意欲は低下したやうに自分は見受けるのであります、若し斯樣な状態に於きまして戰争に依る被害の甚大な結果の儘を放任致して置きますると、資源の貧弱なる我が國の復興開發と云ふことは到底庶幾することは出來ぬと自分は確信致します、私は今後の經濟再建に於きましては、技術が其の主體的役割を演ぜなければならない、斯う考へますので、技術の重要度を極力主張致しまして、戰時中に勝る位の御配慮を國家、國民共に持つと云ふことが目下の急務と考へて居ります、そこで日本經濟再建の基本的問題は、之を極言致しまするならば、健全なる經濟の民主化と枝術の高度化に懸つて居ると斷言致しても過言でないと思ふのであります、そこで經濟の民主化なくては技術の高度化もございませぬが、技術の高度化と云ふものがなければ經濟の民主化と云ふことも斷じて庶幾致されぬ、斯う思ふのであります、技術の高度化と經濟の民主化と申しまするものは車の兩輪の如きものであります、どちらが缺けても日本經濟の再建は片手落ちになる、そこで政府と致しましては、如何樣に致しまして終戰後に於きまする技術の昏迷状態を拂拭致しまして、之に活氣を添へまして、之を振興致さるる所存であるか、其の見解をはつきり茲に國民の前に御明言願ひたい、而も我々國民と致しましては、關係方面に於きまする研究の制限、禁止と云ふものがはつきり分つて居りませぬ、是が分つて居らずして技術の振興、研究の造成と云ふことは、斷じて國民に要請せられぬと思ひますが、此の點も今日併せて此の席を通じてはつきり御明示願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=112
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113・小林かなえ
○小林(かなえ)政府委員 只今御述べになりました經濟の民主化と技術の高度化に依つてのみ將來の日本の窮境が救へるのだと云ふ御意見には、洵に全幅の敬意を表する次第であります、終戰後財閥は解體せられ、又賠償などの問題から幾多の立派な技術家が其の職を失つて、非常に元氣を悄沈すると云ふやうなことも實際に起りつつあることであり、又將來是が非常に多くなることであらうと思ひます、又一方勞働力の過剩と云ふことが動もすれば機械化と云ふものを遲らして、技術の高度化と云ふものを妨げる原因ともなつて參ると云ふこともあるのであります、而も一方我が國の如き土地が狹く、資源が少く、人口が多い所に於て將來の新しき經濟の發展を考へようとすれば、加藤さんの言はれる通り、技術の高度化に依つて行くより途がないのでございます、そこで御説の通り此の變轉せる危局に大事な技術家が意氣沮喪して、我が國の技術方面に於ける進展を遲らすと云ふやうなことがあつては、洵に我が國を再建する上に由々しき大事と申さなければならぬと思ひます、將來東亞諸地域に於ける工業も次第に發達して參るだらうと思ひます、さうすれば自然に我が國の工業の「レベル」に追ひ付くのであります、さうなつて來ると、我が國はどうしても技術と云ふものを更に高めて、是等の諸地域の指導に當る、或は技術方面の指導に當つて行く、又一方國内に於て新しき技術の進化に依つて、或は向上に依つて、貿易も發展し、又貿易品を造り上げて行くと云ふやうな方面に向つて參らなければならぬのであります、今日の如き時代に技術家を尊重して行くと云ふことが非常に大事であると思ふのであります、それに出來るだけ技術家を有效に使ふと云ふこと、此の間商工大臣も言はれましたやうに、假に賠償の物資が海外に移されると云ふやうなことがあれば、其の機械に跟いて行つて、さうして我が國より工業力の劣つた所に於て此の機械を動かすことを指導して行くと云ふやうな方面に働いて貰ふ面も、是から隨分起ることであらうと思ひます、何を申しましても技術家が其の腕を磨いて參ると云ふことが最も大事であります、惡い資材に依つて立派なものを造り上げると云ふことも技術に依つて出來るのであります、又新しき發明新らしき發見と云ふやうなものも技術家の力に依つて初めて得られる、「ドイツ」のI・G染料會社が非常に澤山な優秀な技術家を集めまして、さうして其の集團的研究に依つて澤山な藥品を發見して行つたと云ふのは、是は有名な事實であります、斯う云ふことこそ是からの我が國に取つて非常に望ましいことではないか、斯う云ふ發明と云ふものを大いに尊重して、さうして其の發明されたる新しき工夫が一日も早く工業化されると云ふやうな方面にも國家が力を盡して參らなければならぬ、殊に財閥が解體せられて大きな金持がなくなると云ふことになると、中中實業家と云ふものは損を心配して居つて、發明、所謂「パテント」の工業化と云ふやうなことも勇氣を持つてやつて呉れないので、さう云ふ方面の試驗と云ふやうなことも、私は國家がもつと金を使つてやつて、儲かるやうな良い仕事があれば民間の方面にも實際にやらせると云ふやうなことも考へなければならぬ、斯樣なことを申上げると非常に澤山あるのでありますが、要するに加藤さんの仰しやいましたやうに、技術の高度化と云ふことが經濟の民主化に伴つて今日日本の窮境を救ひ得る途である、それには一つ技術家の養成に十分力を入れて、技術を尊んで、技術家が意氣悄沈することなく、切瑳琢磨して新しき技術の高度化を圖られるやうに、國家が出來るだけの力を盡して參ると云ふことが必要だらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=113
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114・加藤一雄
○加藤(一)委員 大體私は滿足致しますが、まだ詳細なことに付きましては後刻御伺ひ致すことに致します、私は現在日本の當面致して居ります技術の任務を次のやうに考へて居ります、第一點は國土及び資源の徹底的開發を圖ると共に、是等資源、生産物、輸入物資を無駄なく、又値價高く利用する技術でなければならぬ、是が國土荒廢になりました今日、日本を復興致しまする技術の根本と考へます、是が第一、之をもう少し具體的に申しますれば、技術に依る新たなる資源の創造と云ふことが必要と考へます、例へば含水炭素の如きものを研究する段階に立至ることも私は必要と考へます、勿論戰時中に石炭を液化致しまして石油を作る考案も日本に出來て居る、又實際的に是が利用された譯であります、今一歩十分な研究を此の方面に政府、國民共に強行することになりますれば、含水炭素の研究は易々たる段階と私は心得て居ります、次に未利用資源の利用、生産加工の高度化、工場に於ける原材料使用率の節約、製品耐久力の強化、斯う云ふことが第一にやられなければならぬ問題であると私は考へて居ります、第二に技術の高度化に依る輸出貿易の維持發達と云ふことであります、是は商工經濟會法廢止に伴ひまして私が縷縷商工當局に質問致しました此の大部分の所が、將來我が國の貿易の振興に技術が懸つて居ると云ふ論據であります、第三には低簾なる勞働力乃至國民の低生活水準を改良する爲の役割も亦重要である、其の技術の高度化がございませぬと、今までの通り國際的「ダンピング」もしなければならぬ、國民を低水準に追込みまして國民の購買力を制壓致しまして、資本主義と云ふものが行詰つた今日の状况を再現するやうなことのないやうに、今後はやつて行かなければならぬ、それが爲には技術の高度化が必要であると考へます、第四には東亞諸地域に對しまする日本の技術の協力と云ふ問題であります、第五番目に經濟計畫化に對する技術の任務と云ふことが私は非常に重大なる役割であると考へます、そこで私は從來は技術屋は技術屋と云ふことに方針が定つて居るのでありますが、さう云ふことがないやうに、技術家にも綜合力、判斷力と云ふものを附與するが爲には經濟學の知識が私は相當重要と考へます、勿論御案内の通り原子爆彈の一發に依りまして日本の二千六百六年續きました政治も文化も一朝にして壞滅に歸したやうな次第でありますから、經濟原則と云ふものが今日經濟界其の他政治界に大變に重要視される、是が原動力であると云ふことも分り切つたことであります、此の分り切つた道理を技術方面にも將來採り入れて貰ひたい、第六番目には消費生活の合理化と云ふ點に技術が大變に役割を演ずるのであります、例へば食生活の改善、衣生活の改善、住宅の改善、簡素化、それから消費の合理化、何から何までございまして、技術と云ふものの格段の向上がございませぬと、國民生活は段々と奴隷化すると云ふことも私は言ひ得ると思ひます、今後政府は法案等の改廢に當りましては、斯う云ふ所を十分に組込まれまして、どうせ議員はあなた方が「タッチ」せられます法案の作成には與りませぬけれども、此の場合を籍りまして、私は自分達國民の法案を作るのだ斯う云ふ氣持で之を進言致して置きます、十分に此の點を勘案せられまして立派な工業權法を制定せられまして、國民の前に御提案を切望致します、之に對しまする御考へ又御意見がございましたら伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=114
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115・久保敬二郎
○久保政府委員 只今大變有益なる御意見を御聽かせ下さいまして、日頃私共の考へて居る所を端的に御説明を戴いたやうな次第でございまして、私共今後色々な面に於きまする法案作成、さう云ふやうなことに付きましては是非とも御意見のやうな點を御趣旨に副つて之をやつて行かなければならぬと云ふことを痛切に感じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=115
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116・加藤一雄
○加藤(一)委員 次に私の考へ方を申上げまして、御考へを承りたいと思ひます、從來此の日本の技術は軍事的性格が非常に旺盛でございます、それは私が申上げるまでもないことであります、そこで今後の技術は只今申上げた通りの方向に技術が行くと云ふことは勿論でございますが、技術家と云ふものは國家國民の奉仕者になると云ふ覺悟が必要であると考へます、左樣に致しまして國民生活の還境の改善と生活水準の技術的向上に貢獻すると云ふ覺悟を新たに致さなければならぬのであります、そこで模倣本位の性格を拂拭致しまして、自分で日本式の技術をでつち上げると云ふことが最も必要であります、此の方面に格段の私は政府の御推進を戴きたいと考へます、そこで研究題目の選定に當りましては徒らに世界の流行を追ふことを止めまして、自らの研究が如何にして現實に一般國民の生活に貢獻するかと云ふ點を常に念頭に置きまして、創意工夫を疑らすことに國民を御誘導願ひたい、尚ほ今後の日本に生ずる諸條件を考慮致しまするならば、物理學及び化學の應用を中心と致しまする工學的技術の發達と同時に、酵母「バクテリヤ」を中心に致します生物學的技術の向上と云ふことが最も緊要と考へます、斯う云ふ點も併せて今後の法制立案に付きましては、格別の御高配を、國民の代表と致しまして政府に進言致すと共に、政府の御所懷を伺つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=116
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117・久保敬二郎
○久保政府委員 只今の御意見にも全く私共同感致して居る次第でございまして、模倣性を抛棄して自主的にやらなければならぬ、更に又研究題目等も大いに將來を見透して、日本の立地條件から之を割出さなければいかぬ、又或は醗酵化學と云ふやうな將來大いに伸びるべき化學方面に率先力を入れなければならぬと云ふやうな御意見のやうに拜聽致しましたが、私共も全くさう云ふやうな必要を今まで痛感して居ります次第で今後とも御趣旨の方向は十分守つて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=117
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118・加藤一雄
○加藤(一)委員 次に技術研究に關しまして一個の英才の創意力を私は否定するものでありますけれども、大段博士の如き立派な英才を私は待望して已みませぬが、只今も次官から御話がありましたやうに、「ドイツ」のI・G染料株式會社は數千人の技術者を擁しまして、藥品の創造改良に格段の配慮を致しまして、世界的に集團的の組織的の研究方法の一案を投げ掛けて居つたことは、私が申上げるまでもなく政府方面に於きましても之を裏付けられて居る譯であります、私の今日只今聽かんと欲する所は、勘う云ふ構想を以て将來I・G式に日本の技術を培養助長する覺悟はおありになるかないか、之には相當の資本が要ります、此の資本を惜しまずに其の方途に向つて大行進をせらるる意思ありや否や、仰しやることは洵に私も言ひたいことであります、言ふことは何人も言ひ得ますが、それをやつて日本の技術の向上を圖る御意思ありや否や発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=118
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119・小林かなえ
○小林政府委員 御示しの條項洵に尤もであります、我が國のさう云ふ方面に於ける現在の施設を見ますと、まだまだどころではない、洵にお恥かしいもので、商工省などに於きましても、工業試驗所とか、或は機械の試驗所とか、燃料研究所とか、工藝指導所、醗酵研究所、石炭坑爆發豫防試驗所、或は纎維の工業試驗所と云ふものがあるのでありますけれども、洵に規模が小さい、何とかして國家が出來るだけの金を惜しまずに使つて、さうして各方面に於ける科學技術を綜合した研究所を作ると云ふことが非常に肝要ぢやないか、「ドイツ」や「アメリカ」などに於きましても學者の研究と云ふものを實業家が非常に之を巧く使ひまして、常に學者に相當の多額の金を支給して研究を續けさせる、假に新しい發明が出ないでも、之に對して何も厭味を言はず長い間一つの考への起るのを待つて居ると云ふやうな氣永さがあるのであります、日本人の性格は兎角氣短な方でありまして、さう云ふ氣分を缺いて居ります、殊に日本が戰爭を抛棄して是から一文の金も軍備に要らないと云ふことになれば、どうしても加藤さんの言はれるやうに技術方面に力を入れて立派な文化國家を作る基礎を作らなければならぬ、それには一つ政府も各段な考へを其の方面に注いでやつて行くことが本當に急務ではないかと考へて居ります、まだ政府として茲に具體的な案を持つて居る譯ではありませぬが、次第にさう云ふ方に進んで行くことと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=119
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120・山田悟六
○山田(悟)委員 一寸關聯して申上げます、加藤さんの只今の質問、政務次官の應答、私共は洵に傾聽に値するのであります、併し私共工業人と致しまして、「ドイツ」のI・G會社を對象に我々が研究をすると云ふことは此の際どうかと思ふ、「アメリカ」にも或は英國にも我々が採つて以て範とする工場が澤山あるが故に、此の際はさう云つた方向に向くと云ふことは妥當ではないか、、勿論趣旨はさうでないことは能く分つて居りますが、やはり此の事柄は非常に重大でありますし、動も致しますと我々の研究事項と云ふ事柄が多分に制約せられて居る事態でありまして、非常に重大であると云ふ意味合から一寸意見を申上げる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=120
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121・小林かなえ
○小林政府委員 少し意味を御取違へになつて居るかと思ひます、「ドイツ」のI・G染料會社の組織を眞似て行けと云ふ譯ではない、一人々々の立派な技術家が出ることも必要であるが、同時に澤山の技術家が集團的に助け合つて新しく發展努力して行くと云ふことも非常に大事であると云ふことの一例として此の例を擧げたのでありまして、從來我が國の技術が動もすれば「セクショナリズム」に追はれまして、或は一つの親分關係と云ふものがある、互ひに他を排撃して自分のみを高しとするやうな研究方法が行はれた、それは決して國家としての進展を増すものではありませぬ、さう云ふ意味に於て立派な技術が出ることと同時に、澤山の技術家が互ひに綜合して、互ひに助け合つて研究して行くことの一つの例としてI・Gを擧げたのでありまして、決してそれを全部眞似して行くと云ふ譯ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=121
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122・加藤一雄
○加藤(一)委員 私が只今申しましたのも今政務次官の御答辯になりました通りでありまして、日本の技術家は得てして「セクショナリズム」偏狹であります、商工當局其の他日本の全部の技術家に私は此の席を借りまして大言疾呼したい點はそこなんであります、左樣なことでは今後の日本を背負ひ立つことは出來ませぬぞ、互ひに偏狹を捨てまして大道に付て和衷協力、是が必要である、それには經濟學の綜合知識までも加味してやつて戴きたいと斯うまで私は申上げた、其の意味でI・G會社の例も出したのでありますから、誤解がございましたら釋明を致しますが、其の點で次に進まして戴きます
そこで私は今後の技術研究の問題に付きましては、技術研究の實用化と云ふことが一番必要かと考へます、此の實用化なくして技術研究と云ふものは實を結びませぬ、發明研究が現實に生産化されますまでには、幾多の實用化研究と云ふものの段階を經なければならぬのは御存じの通りであります、斯かる實用化試驗が我が國に於きましては大變に缺けて居ります、其の缺けて居る原因を簡單に申上げますと、御存じの通り、日本の資本家、企業家が外國から簡易に此の實用化されました發明研究を輸入することが、從來出來た關係であります、そこで日本には此の實用化試驗が缺如致して居ります、所が此の輸入の關係に於きましては相當の賠償を從來拂つて來て居ります、今後は前に申しました通り日本人は日本人の手に依つて――外國を「ノックアウト」する意味では毛頭ございませぬ、長は外國に採る必要はありまするが、自分の事は自分でする覺悟を振起致しまして發明研究を致すに當りましては其の實用化試驗が最も肝要になつて來ると私は考へます、そこで實用化研究の最も代表的な組織と致しまして中間工業化試驗組織と云ふものを私は政府に投げ掛けて置きます、速かに此の制度を御研究立案せられまして、次の工業所有權法制定に當りましては、他は如何樣になりませうとも此の問題は格段の努力を以て採り入れて戴きたい、勿論此の問題には多額の經費が要ることであります、是も國民は覺悟の前、日本を救ふ技術を向上發達せしめんが爲には、今政務次官の御言葉の通り、軍費なき今日でありまするから、中間工業化試驗制度組織の確立程度の投下資本と云ふものを國民は惜しむものではございませぬから、此の方面に十分な配慮を運らされまして、一日も早く此の組織が出來まして、日本の試驗研究機關が日本に於て芽生えるやうにして戴きたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=122
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123・久保敬二郎
○久保政府委員 技術研究の實用化と云ふ點に付きましては、私共も日頃心を惱まして居る問題でございまして、我々の工業所有權の立場から見て居りますと、從來發明はしても仕放し、それを工業化させると云ふ所に非常に熱意が缺けて居るのであります、此の點に付きまして何等かの措置を講じなければならぬと云ふことを日頃痛切に感じて居る次第であります、今年の三月が「アメリカ」の特許制度が始まつてから丁度三百年になると云ふので、「アメリカ」の各新聞に特許三百年を記念した論説が出て居りましたが、それを見ますと、特許制度は「アメリカ」の進歩の骨を成して居るものであると云ふことを書いて居りまして、其の後に、發明を實用化させることに對して、「アメリカ」の工業家は實に勇敢であると云ふことを非常に賞讚し、「アメリカ」の一般産業工業家が發明を勇敢に積極的に工業化させる、さう云ふ精神が消えない限り「アメリカ」の繁榮は何時までも保障されるであらうと云ふ、極めて適切なる批評を與へて居るのでございまして、私共非常にそれに刺戟された次第でございます、さう云ふ技術研究を實際化させると云ふことに付きましては、政府に於ても今まで發明實施化試驗の補助と云ふやうなものをして居りまして、資金、資材を出して居ります、又帝國發明協會或は民間の研究所に對しましても補助金を出しまして、それを奬勵致して居る次第でございますが、未だ十分なる金額に達して居らないのを遺憾と存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=123
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124・加藤一雄
○加藤(一)委員 御話の模樣で私も安心致しました、將來を期待して待つことに致します、十分御研究の上で此の問題は成案を得られんことを希望して置きます、又今日既に試驗研究費を出して居ると云ふ御話でありますが、あの程度で出して居ると云つて、國民の前に御威張りになることは洵に以て政府として御恥かしいと思ひます、斯う云ふことでは廣言せられることは中々前途遼遠だと考へます、さう云ふことを仰しやらずに、虚心坦懷に、今までのことは今までのこと、將來は將來、明治御一新以上の今日の産業再編成に當りましては、日本は血みどろの鬪爭を續けなければならぬのであります、過去を仰しやらずに、新たなる氣力を持たれて、何億掛からうとも構はないと云ふ考へを持つて、此の問題を制度化せられんことを希望して置きます、此の程度で私は止めますが、尚ほ殘つて居るだけは明日續けさせて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=124
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125・北村徳太郎
○北村委員長 本日は此の程度で散會致したいと思ひます、明日は時間レイ行、十時三十分より會議を開きます
午後三時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00419460809&spkNum=125
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