1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月十日(土曜日)午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 北村徳太郎君
理事 細田忠治郎君 理事 山田善三君
理事 九鬼紋十郎君
井田友平君 小澤國治君
加藤一雄君 村島喜代君
山田悟六君 金子益太郎君
竹内克巳君 木下榮君
河野金昇君 赤澤正道君
若林義孝君
出席政府委員
文部事務官 日高第四郎君
商工政務次官 小林かなえ君
商工事務官 吉田悌二郎君
商工事務官 鈴木重郎君
特許標準局長官 久保敬二郎君
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本日の會議に付した議案
商工經濟會法を廢止する法律案(政府提出)
工業所有權法戰時特例を廢止する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=0
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001・北村徳太郎
○北村委員長 會議を開きます、引續き質疑に入ります——加藤一夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=1
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002・加藤一雄
○加藤(一)委員 昨日に引續きまして、私はあと十七點持つて居りますが、時間の關係上それを三點に要約して質問致します、先づ第一に技術水準の全般的向上と云ふことであります、優秀なる技術は速かに普及せられまして、社會全般の福祉の爲に役立たしめることが必要なことは申すまでもありませぬ、併しながら之を可能ならしめる爲には、一定の條件を充足することが肝要と考へて居ります、即ち第一に發明、考案者の利益を保護する、第二には技術的功績に對する國家的報奬の關係、第三には、技術獨占の開放を可能ならしめる爲に法的處置を講じまして、技術者の資本家に對する隷屬的關係を解放すると云ふこと、此の諸點が最も現下日本の産業復興開發に對しては必要と考へますので、此の點に關しまして政府の御意見を伺ふと同時に、昨日も申上げました通り、鑛業所有權法の改正等に當りまして十分に此の點を御斟酌の上で法案上御上せ戴きたい、斯う考へて居ります、取別け今日私が重要視して居るのは、技術者の資本家に對する隷屬關係の解放と云ふことがあります、是は新憲法の所有權の關係から規定して、法制局長官の御話に依れば所有權の中に工業所有權も含む、我々と致しましては是等の權利は別の條文まで設けると云ふ動議を出したのでありますが、一應所有權の中に含まれると云ふ解釋を以て進んで居ります、さう云ふことを勘案せられまして、十分なる御答辯を戴きまして、國民に政府の御考へがはつきり分るやうにして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=2
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003・久保敬二郎
○久保政府委員 先づ水準の全般的昂揚と云ふことに付きましては、只今三つの點を御列擧になりましたが、私共も此の點に付きまして十分の考慮を拂つて居るのでありますが、まだ現はれます所十分でありませぬので、甚だ申譯ないと存じて居りますが、發明考案者の利益を保護すると云ふことは、發明の奬勵を致しますのに最も重要なことと存じますので、其の意味に於きまして工業所有權と云ふものが實は出來て居る次第でございますけれども、其の運用の點に付きましては甚だ遺憾の點が多いのであります、大體此の權利を侵害されましても、それを完全に防ぐことが出來ないと云ふのが日本の現状のやうでありますけれども、斯う云ふことでは決して發明家が大いに力を振つて發明に努力すると云ふ譯には參りませぬので、此の點に付きましては、今度の工業所有權法の改正に當りまして、司法當局とも十分打合せを致しまして、今度は遺憾のないやうにやつて見たいと云ふ工合に考へて居ります、實は只今司法省とも其の點に付きまして打合せを始めて居る次第でございまして、今度の工業所有權法の改正に當りましては、是非とも此の點をはつきりと、有效な效果の現はれるやうに致したいと存じて居ります
それから特許制度だけでは發明が完全に保護出來ないのではないかと云ふことは常々考へられて居りまして、「ソヴィエト」などに於きましては、特許制度を用ひて居りますけれども、寧ろ報奬制度と云ふことに非常に重點を置きまして、其の報奬も單に名目的のものでございませぬので、或は其の發明の種類に依つて、一年間鐵道の「パス」を與へるとか、其の他極めて有效な報奬を拂つて居るやうであります、さう云ふやうな實質的方面を加味した報奬と云ふことも今後大いに考慮して行かなければならぬと考へて居る次第であります、又發明の特許になりましたものを、此の點は昨日も一寸申上げましたやうに、特許の保護を完全に致しますと同時に、どうしても特許の法的公開と云ふことも十分致して參りませぬと、一方に特許權が獨善排他權であります關係上、單に保護して居りましただけではどうしても國家の要請に應じ切れないと云ふ憂ひが一方に大きく現はれて來るものでありますから、公益上必要なものは何人と雖も其の適當な補償を拂つて、それが實施出來ると云ふ部面を大いに強化して行かなければいけないと考へて居ります、此の點も現行の工業所有權法に付きましては甚だ不十分でありますので、此の次の改正に當りまして是非とも考慮致したいと存じて居ります
又發明家が資本家に隷屬して居ると云ふ點は、現行法規に於きましても特許法の第十四條に被傭者の發明はそれを使用人が隨意に使へないと云ふやうな規定はあるのでございますけれども、此の點はやはり甚だ不十分な點でございまして、此の次の工業所有權法の改正に當りましては修正をしなければならぬと考へて居ります、「ドイツ」等に於きましては斯う云ふ點の發明は勞働法で保護して居るやうでございまして、工業所有權法にないやうでございます、或は之を工業所有權法に入れるべきか、勞働法に入れるべきかと云ふ問題も殘りますけれども、私共の考へではやはり工業所有權法にそれを入れまして、更に之を十分強化しなければならぬと考へます、實は此の點に付きましては「オーストリヤ」の工業所有權法の所に中々詳しく規定して居りまするので、さう云ふ點も參照致しますし、又目下會社に於て特に工業所有權の方に關係して居られるお方々に御集まりを願つて居りまして、さう云ふ方面に於て特に會社側の立場から、其の發明者と資本家との關係をどうしたら兩立出來るか、逆に發明家の方が強くなつて全然資本家を無視すると云ふことになつても工業が成立たない次第でございますから、何か中庸を取つた案がないかと云ふ譯で、さう云ふ會社方面の方にも目下御依頼して居る次第でございます、改正の時には此の點十分注意を致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=3
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004・加藤一雄
○加藤(一)委員 只今の御話で十分諒承致しました、私も勞働組合法等に特許の關係を入れるよりも、工業所有權法の中に一括されることをより良き制度と考へて居ります
次に御伺ひ致したいことは規格の統一でありまして、産業再編成の問題に當りまして、最も基本になる規格統一が私は現下に於て一番必要と考へます、從來日本に於きまして斯う云ふことが叫ばれまして思ふやうに指示が出來なかつた歴史を持つて居ります、一昨日の商務局長に對する私の質問の中にございましたが、只今其の要點だけを繰返してもう一度再確認致したいのであります、高橋是清先生が昭和十二年の地震内閣の後で大藏大臣をして居られました時に、日本の建築關係の問題に付きまして、大變に不便を感ぜられた歴史を持つて居ります、それは關西の疊を東京に持つて參りますと合ひませぬ、それで切り刻んであの當時「バラック」に嵌めた歴史がございます、其の當時高橋是清翁は是では大變な無駄がある、そこで當時統計局の柳澤保惠伯爵を招致になりまして、お前は一生を通じて建築統計の整備に取掛れと云ふ御下命に相成つて居る同伯爵は鋭意之に沒頭せられましたが、不幸にして、病歿せられまして、其の後誰も之をやつて居りませぬ、私が考へまするに、若し日支事變から大東亞戰爭に移行致しました當時の戰爭下に於きまして、此の建築統計と云ふものが完全に其の下に根を下ろして居りましたら、其の昔商工省が一生懸命にやりましても、機械一臺造りまするに二年、三年を要したのでありますが、斯う云ふぶざまはなかつたと思ひます、そこで我々と致しましては、今日只今規格の統一を致すことは勿論、消費統計を完全に確立致しまして、今度戰爭を抛棄致しましたが、國民生活の安定、世界經濟に伍しまして日本の商品を安價に賣ります爲にも、斯う云ふことが最も痛切に感ぜられる譯であります、地味な施策でありまするが、縁の下の力持の氣持を以ちまして、速かに此の施策をやつて戴く御考へはあるかどうか、併せて商務局長にも其の御意思の點を重ねて伺つて置くことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=4
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005・久保敬二郎
○久保政府委員 規格統一の問題に付きましては、非常に日本は後れて居るのであります、世界各國を見ますと、「ドイツ」、米國の如きは極めて大きな組織を以ちまして、完全な規格の統一を行つて居るやうでございまするが、日本でも戰爭中兵器其の他に於て、其の互換性と申しますか、取替へる性質がなくて非常に困りましたので、戰爭中規格と云ふことが甚だ必要を感ぜられて參りまして、戰時規格として相當規格と云ふものを設け始めたのでございますが、又今日斯う云ふ状態になつてしまひまして、一樣に規格と云ふものは解消するやうなことになつて來ると考へるのでございますけれども、總てのものが破壞せられました今日、新しく物を造つて參るのでございますから、此の際規格を統一して行くと云ふことは最も適當の時期でないかと考へるのであります、殊に日本の工業は、大工業が今後成立ちませぬので、中小工業と云ふ點に主力を置いて參らなければならないと考へまするけれども、中小工業に於きましては厖大なる研究機關を作るとか、さう云ふことが非常に惠まれませぬ關係上、どうしても規格と云ふやうなものを早く制定致しまして、之に依りまして工業の規定の合理化、或は經營の合理化を圖らなければならないと考へる次第でございます、規格と云ふものは工業の一種の指針になつて行くと云ふやうな位になりましたならば、非常に進歩して參るだらうと考へます、最近當局に於きまして、工業品の規格に付きまして工業標準調査會と云ふものを設置せられまして、此の點努めて各方面の學識經驗者を選びまして、又製造業者及び需要者の隔意ない意見が十分參酌されるやうに企圖致しまして、尚ほ其の外に規格協會と云ふやうな民間の機關に依頼すると云ふやうな方法を講じまして、成べく自主的の成案を得るやうに進めて居るのでございます、さう致しまして、最も民間の製造業者の立派な意見も盛込まれました規格と云ふものを制定致しまして、それを實施して貰ふやうに致したいと考へます、唯規格に付きましては、今強制力がありませぬので、此の點に付きましては規格の普及と云ふことを十分考慮致しまして、出來る限り規格と云ふものを自發的に使つた方が有利だと云ふことを理解して戴きます爲に、さう云ふ方面の理解を深めたいと云ふ意味で、其の方面にも努力を致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=5
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006・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 規格統一の問題は只今加藤さんの御話の通りでございます、又他の政府委員から申上げました通り私も考へて居ります、特に中小商工業が今後の我が國の産業の重點を賄つて參ります立場から致しますと、どうしても規格が一本にならぬと我が國の商品と云ふものが大量に賄へぬと云ふことになると思ふのであります、輸出品等の場合を考へますと、殊更さう云ふことになりますので、どうしても是は國の力を以て標準化の運動を起さなければならぬ、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=6
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007・加藤一雄
○加藤(一)委員 そこで商務局の方では、度量衡の統一をなさる御意思はございますかございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=7
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008・久保敬二郎
○久保政府委員 度量衡に付きましては、未だ其の十分な研究は致して居らないのでございますが、是は結局標準とか規格の其の又基になるものでありますので、當然度量衡の統一と云ふことをやらなければならぬと考へて居りますけれども、未だそこまで著手致して居りませぬ、それから先程一寸御答へを落したのでございますけれども、住宅の建設の規格と云ふやうな問題に付きまして、戰災都市の簡易住宅を短期間に大量に建てる必要がありますし、又現下の情勢に鑑みまして、出來得る限り物資及び勞務の節約を圖る要があります爲に、規格の統一をすると云ふことの必要を痛切に感じまして、新しく戰災復興院で建てます簡易住宅と云ふやうなものに付きましては、規格を既に決定致して居るのでございます、尚ほ其の外疊、建具のやうなものに付きましては、目下審議を開始致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=8
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009・加藤一雄
○加藤(一)委員 今の御話で略略分りましたが、規格の統一には度量衡の統一が一番大事でありますので、先づ以て之を早急に計畫されんことを切望して置きます
最後に一點御伺ひ致しまして質問を終了することに致します、従來日本の官廳に於きましては、事務系統の關係者は非常に尊重せられまするが、技術系統の關係は非常に輕視せられる風がございます、何處の官廳に參りましても技術家と云ふものは非常に不遇であります、今日技術が最も重要視せられる時代に相成りましたので——以前からもさうでありましたが、取別け今日左樣なことが見られるのであります、斯う云ふ弊風は官廳に於きまして率先して一掃せられまして、範を民間に御垂れになりまして、技術の實に必要なる所以を身を以て御實行願ひたいと考へます、左樣に致しまして、最後に技術者の自覺を喚起するの方策を政府は速かに執つて戴く、それには政府と致しまして、只今一寸局長と御挨拶致しました時に申上げたのでありますが、官廳と致しましては、技術の重要性に鑑みまして、民間又は學者の有力者を網羅せられまする一つの委員會を御作りになることも必要と考へます、又中華民國主席の蒋介石將軍は其の著「中國の命題」の中に、中國の青年は須く志を立て技術家となれ、斯う云ふことを絶叫致して居ります、「モロトフ」氏は昨年第二十八囘革命記念日の演説に於きまして、經濟計畫に於て技術水準の向上の問題及び優秀なる技術幹部の養成に第一義的注意を向けなければならぬと、斯様に「ロシヤ」の國民に向つて啓蒙を致して居ります、「H・G・ウェルズ」氏は其の著書の中に於きまして、二十世紀は組織者と技術者の時代であると説いて居ります、私は此の三人の著述は、最も日本の現下の情勢に鑑みまして重要なる施策と心得て居ります、私は經濟學と技術の結合の上に來るべき世界、隨て日本の輝かしい將來を約束せられる所以を科學者は身を以て體得致しまして、國家民生の爲に起ち上るだけの覺悟と自覺を政府は御示し願ひたい、身を以てやつて戴きたい、之を以ちまして私の質問を終りまするが、政府の御所見を承つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=9
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010・小林かなえ
○小林政府委員 只今御示しのことは洵に同感であります、第一の技術者を是から重用するやうにして行けと云ふことであります、洵にさうしなければならぬと思ひます、特に官界に於ける技術者の優遇と云ふことを叫ばれたのでありますが、從來所謂法科萬能と云ふことを言はれまして、官廳の重要な位置に就く人は多くは法科出身で、技術者が重んぜられなかつたと云ふことは御説の通りであります、併し是は從來我が國の教育の上には相當の缺陷があるのでありまして、技術者は技術者としてのみの教育に專念したが爲に、成程技術者として立派な人は出たのでありますけれども、やはり指導的地位に立つ人は、一方に於て技術のみならず、人間としての所謂指導統制の人格が必要であります、又法科を出た人でも技術方面に一般的知識を持つて、國民の技術方面の知識の水準が高まることは將來望ましいことであります、法科、文科出身の者でも相當進んだ機械の知識を持つて居ることは、是からは必要であらうと思ひます、是から先技術者を十分重んじて加藤君の言はれるやうに、是れまでのやうな遺憾のないやうにしたいと思ひます、此處に居られる特許標準局長官は技術者出身の方であります、商工省に於ても斯う云ふ輿論を尊重して最近更迭の時に立派な長官を得た譯であります、其の一つの事例として御承知を願ひたいと思ひます、又技術者の溌剌たる元氣を鼓吹して、技術者が從來のやうな觀念でなく、大きな觀念の下にお互ひに技を練り合つて、科學技術の振興を圖るやうな意氣を持つやうに、鼓舞激勵して參ることは洵に服膺すべきことであります、前に私が申上げましたやうに將來日本の立つて行く途は、技術の高度化に依つて貿易の伸張を圖つて、文化日本建設の基礎とするより外に途がないだらうと云ふ意味に於きまして、加藤君の是れまでの質問の中にありました幾多の尊重すべき御注意は、洵に是から先我々が服膺して參らなければならぬことと考へます、十分一つ政府部内に於ても斯う云ふ方面に力を盡すやうにやつて參りたいと考へて居ります、どうぞ御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=10
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011・北村徳太郎
○北村委員長 河野金昇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=11
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012・河野金昇
○河野(金)委員 戰爭中に商工省、或は一時名前が變つて軍需省となりましたが、商工省竝に軍需省が指導してと云ふか、法律を作つて國策會社、營團、統制會、斯う云ふものを一體幾つ位御作りになつたのでありますか、其の主なるものを御示し願ひたいと思ひます、それと同時に其の國策會社、統制會、營團等の中で、商工省なり軍需省の當時の現役の役人、或は古手官僚と言はれる、役人をお辭めになつて居られたやうな人達が、關係しなかつた統制會社なり國策會社があつたならば、其の名前を御示し願ひたい思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=12
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013・北村徳太郎
○北村委員長 若し御準備がなければ後に書面で御知らせ願ふやうにされたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=13
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014・河野金昇
○河野(金)委員 それではさう御願ひ致します、私逹が戰時中憂へたことは、戰爭に勝つ爲めと稱して色々な統制をおやりになつた、特に商工省、農林省が多かつたけれども、色々な法案を作成し色々な國策會社、營團等を御作りになつた、戰爭に勝つ爲めだからと言つて商賣を止めさしたりなんかして御作りになつた官製の會社等に對して、役人諸君が天降りに入つて行かれた、斯う云ふことが私は日本の生産力を減退させた一つの大きな原因だと思つて居ります、それと同時に國民に對して犧牲を要求して置きながら、役人諸君は自分のお手盛りで作つた會社の中に入つて、失禮ながら年俸三千圓なり四千圓取つて居つた人が、さう云ふお手盛りの會社の中に入つて行つた場合に、十倍二十倍と云ふ箆棒な年俸を御取りになつた方が多かつた、犧牲を國民に強ひつつ自分達だけが特權を利用して良い地位に就かれた、斯う云ふやうなことが私は戰爭に敗れた一つの原因であると思ひます、「マッカーサー」司令部に依つて統制會は解散を命ぜられることになつたのでありますが、戰時中に御拵へになつた統制會社、國策會社、營團を今後どうする積りであるか、其の大體の方向を御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=14
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015・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 統制會に付きましては、只今御話のやうに、昨日の新聞にありましたG・H・Qの命令で、九十日以内にやれと云ふことであります、それに從つて政府は解散を命ずることと存じます、統制會社に付きましては是れ亦統制會社令と云ふのが現在施行せられて居りますが、是も九月末日を以て終焉致します、隨ひまして其の日までに統制會も解散しなければならない、恐らく統制の必要のあるものに付きましては普通の株式會社として其の事業を經營されることと考へて居ります、營團等に付きましては、其の設立の趣旨が色々ありまして一々申上げられませぬが、例へば商工省所管でありますと、交易營團と云ふやうなものがございます、是もG・H・Qの方の指令もございまして解散手續を進めて居ります、若干の仕事は殘つて居りますが、交易に關する仕事は清算に入つて居ります、産業設備營團と云ふのが商工省所管では殘つて居りますが、是れ亦近く解散されることになると存じます、從來の戰時中のやうな仕事は全部停止せられるものと考へて居ります、新しいものとして考へ直す積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=15
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016・河野金昇
○河野(金)委員 統制會が九十日以内に解散させられることは、新聞を見て知つた譯なのですが、例へば一例でありまするが、纖維統制會と云ふものがありました、是が終戰後逸早く纖維協會と名前を變へて、實は内容は同じもので、同じ人が同じやうなことをやつて居るのでありますが、此の纖維協會に對して統制會解散と同樣な趣旨で解散を御命じになりますか、それとも協會と名前が變つて居るから、此の儘事業を繼續させられる積りでありますか、御答辯願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=16
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017・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 纖維のみならず他の産業に於きましても、統制を繼續して行く必要のありますものに付きましては、統制會を解散致しまして、其の代りに代るべき團體が大分出來て居るのであります、之に付きましてはそれぞれ今日の情勢から致しまして、其の統制の仕事をやる爲の別な協定を作つた譯でございますので、今後之を如何にして行くかと云ふことは、是は別に需給調整法案を提出致す積りでありますが、其の際にさう云ふ統制の仕事をやらせます團體を主務大臣が選定を致しまして、それに統制をやらせる譯であります、其の際の選定標準と致しまして、民主的に組織せられると云ふことを要件として統制團體の内容を審査致す豫定でございます、其の際に其の審査の線に沿うて居るかどうかと云ふことで、之を決定すべきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=17
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018・河野金昇
○河野(金)委員 纖維協會も其の御考への下に新たに又御審査なさる譯でありますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=18
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019・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 需給調整法が議會の協贊を經まして施行されるやうになりますれば、纖維に關する統制團體と云ふものも亦當然需給調整法に依つて指定をして行くことになると思ひます、其の際指定の要件と致しまして、法律の第二條に書いてございますが、審査を致しまして其の儘指定致しますか、或は之に相當の改革を命じて指定致しますか、其の際に決定致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=19
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020・河野金昇
○河野(金)委員 需給調整法は經濟安定本部の長官と云ひますか、其の命令指示に依つて色々な物資需給の調整をすると云ふやうに調整法に出て居るのでありますが、一體物資需給調整法を作つて置いて、其の前提となるべき、其の本となるべき經濟安定本部が、實は長官だけ決まつてまだ機構其のものが出來ないが、是は主客顛倒のものではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=20
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021・北村徳太郎
○北村委員長 一寸問題外になると思ひますが、需給調整法は此處で議題になつて居りませぬから、其の點は發言を暫く止めて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=21
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022・河野金昇
○河野(金)委員 それでは少し問題が細かくなりますが、私は愛知縣出身なのですが、あの邊の毛織物業者が戰時中政府の政策に協力をして、色々な織物の機械とか何かを供出したのであります、其の供出の代金が實は先月漸く封鎖預金で來た譯なのでありますが、來たにも拘らず今度急にあれを又やらなくなつたからと言つて、一度渡したものを又取上げたのであります、一體戰時中供出したものの代金に對して政府の方は御拂ひになる積りか、それとも一遍出したものを又取上げられてしまつたのだから、全然拂はれない積りでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=22
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023・北村徳太郎
○北村委員長 それは昨日も政府委員から答辯があつたものですから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=23
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024・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 只今の問題は只今折衝致して居る問題でありまして、確定致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=24
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025・河野金昇
○河野(金)委員 昨日私途中で一寸拔けましたから失禮致しました、日本再建の基礎的産業は農業と中小商工業であると云ふことは承つて居りますが、中小商工業の中で第一に考へなければならぬのは纖維工業だ、斯う云ふことは前囘來商工大臣初め當局からの辯明で分つて居るのでありますが、其の纖維工業が復興する爲に一つの癌となつて居るのは、紡績工場のやうな大きな工場に對しては加配米なんかがあるやうでありますけれども、小さな工場には加配米がない、斯う云ふことが今日の食糧事情から、纖維工業再建の爲の一つの癌となつて居るのであります、例へば郷里のことを申上げて申譯ありませぬが、愛知縣の纖維工業の如きは、纖維工業を第一と考へれば當然是は重大に考へて戴かなければなりませぬが、毛織物等に於きまして五百名以上と云ふ工場は極く少いのであります、寧ろ百名以下の工場が大部分であります、さう云ふものが食糧事情の爲に再建を遲らして居るやうな事實がありますが、斯う云ふ小さい工場に對して加配米の御考慮が願へますか、それとも願へないものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=25
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026・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 今日工業生産の基礎をなすものは、やはり食糧問題が相當大きな問題であると私は考へて居ります、隨ひまして重要な産業に付きましては、加配米を農林省に御願ひ致しまして、色々御無理を願つて居る譯であります、併し例へば紡績等の大きな所に加配米が來て、小さい所に來て居ないと云ふことは、さうなつて居ると思ひます、今日の紡績業等は輸出する爲にやつて居つて、非常に時間を急がれた仕事をやつて居りますので、第一にさう云ふ點に線を引いて加配米が決められて居るものと考へます、是は食糧事情の非常に逼迫して居る折柄、或る程度已むを得ないことだと考へて居りますが、將來加配米を出し得る餘地が出來ますれば、さう云ふ工業の方にも廻して戴くやうに努力致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=26
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027・北村徳太郎
○北村委員長 河野さんに一寸御相談申上げます、あなたの御發言は非常に重要な御發言でありますが、只今の主題は商工經濟會法を廢止する法律案、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案でありますから、其の主題から餘り逸脱しないやうに願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=27
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028・河野金昇
○河野(金)委員 商工經濟會法が廢止されて商工會議所的なものが出來ることは能く承知して居りますが、此の中小商工業者が起ち上る爲に考へて戴かなければならぬのは、新圓と舊圓の問題も重大な問題だと思ふのであります、六百億を突破して所謂緊急勅令を出されたのでありますが、今日既に五百億を突破しつつあり、今年の暮には九百億なり一千億位になると思ひます、而もそれが中小商工業者の方には殆ど廻つて居らずに、農村なり漁村なり或は第三國人の手にあつて、中々中小商工業を復興させようとしても出來ないのが現状であります、舊圓に對してはまだ正式の發表ではありませぬけれども、大體一萬五千圓程度でそれ以上は凍結するやうなことでありますが、さうすると新圓を持つて居らない中小商工業者の起ち上りと云ふものは非常に困難になりまして、此の新圓と云ふものに對してもう一度何等かの手を打たなければならないと思ひますけれども、大藏大臣は新圓に對しては絶對封鎖せぬとか言つて居られますが、封鎖せずに此の儘やつて置いて果して中小商工業の再建が出來ると御思ひでありませうか、是は商工省の局長さんに聽くよりも、主として政治的の意味も含まれて居りますから、小林次官に政治的の考慮の下に、偏つて居る所の新圓に對する御意見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=28
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029・小林かなえ
○小林(かなえ)政府委員 只今の河野君の御質問は、御質問の通りに新圓がどうも圓滿に流通して居らないで一部に偏つて、或る點にだぶつき或る點に涸渇して居る、丁度身體で言へば一方が貧血で一方が充血して居ると云ふやうな状態にあると云ふことは洵に御説の通りであります、併し斯うなつて來たと云ふことは一般的情勢であります、商工業者の一つの作用に依つてさうなつたと云ふ譯ではないので、一般金融財政に關する問題でありますから、大藏大臣が豫算總會や本會議に述べられて居る通りであります、成程之を此の儘にして置くと云ふことは、何だか今まで預金をしたものは或る點で打切られると云ふ説もありますが、新圓だけがどうも第三國の人の手許に澤山だぶついて居る、或は一部の漁村や農村などに一部の者の手にあると云ふやうなことは、洵に不公平には考へられますけれども、やはり是は大藏大臣、大藏當局の述べられるやうに、新圓と云ふものを、更に又新紙幣を發行して行くと云ふやうなことは、通貨に對する國民の信用と云ふものを非常に減却し、將來に於ける通貨に對する信念がぐらつくやうなことになり、非常に又影響があることでありますので、是は大藏當局か色々考へて處置して參ることであらうと思ひます、さう云ふ爲に中小商工業者の金融の上に色々の問題が起つて參ると云ふやうな場合には、商工省としては出來るだけの金融機關の働きに依りまして、中小商工業者が再建し得るやうに色々心配もし、援護もして行くと云ふやうに努めて參りたいと考へて居ります、私としては此の程度の御答辯しか出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=29
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030・河野金昇
○河野(金)委員 責任ある立場としては已むを得ないかも知れませぬけれども、國民の常識では此の儘放つて置くことは不公平だ特に舊圓だからと云つて一萬五千圓以上を殆ど取上に等しいことをして置いてさうして特にあの切替以後闇やなんかでだぶついた新圓を其の儘にして置くと云ふことが、假令大藏、商工當局なんかが金融機關なんかを督勵して民主化してやつて行くと言つても、それは公の方が言はれることであつて、之を利用する側から言ふと、中々役所關係の金融機關と云ふものはさう此處であつさり御答辯願ふやうに巧く行かぬのが實情でありますが、特に此の議會開會中の政府當局の答辯と云ふものは非常に懇切丁寧であつて、もう何でも實は出來るやうに見えますけれども、一旦議會が終つて實際之を運用する人は、決して小林さんなり商工省の御役人方でなしに、銀行なり地方の人がやるのでありますから、言葉の上では民主化とは言つて居りますが、實際はちつとも民主化されずに寧ろ銀行や其の他の機關が官僚化しつつあるのが今日の現状でありますから、一つさう云ふ答辯の言葉に終らせずに、之を本當に民主化されて、中小商工業者が固苦しい思ひをして虐められなくても、本當に金融の途が付くやうに御考慮願ひたいのであります
もう一つ御伺ひしたいのは、確かに終戰後軍閥はなくなり、我々の先輩の政治家も戰爭責任と云ふのか何か知らぬけれども、追放されて居なくなつたが、依然としてお役所は大體其の儘と言つても宜いのであります、さうして戰に負けたせいからでもありませうけれども、第三國人——朝鮮人なり支那人、斯う云ふ者に對する所の取締が實にないと言つて宜いのでありまして、反對に取締當局は其の連中を取締れぬから、却つて日本人を餘計いぢめて居るやうな傾向があります、内務大臣なんかの答辯を聽きますと、同じやうに取締ると言つて居られながら、依然として町を歩いて見ると、支那人の料理屋だけが「ビール」でも酒でも賣つて居る、支那人の名前の所だけが依然として禁制品を堂々と賣りつつある、斯う云ふやうなことを此の儘やらして置くならば、曾て南方諸地域が華僑の實權下に置かれたと同じやうに、日本は所謂經濟的の植民地化する虞がありはしないかと思ひます、是も商工大臣なり大藏大臣から斷片的には御答辯になつて居りまするけれども、一體第三國人は取締れるのか取締れないのか、取締るならば唯言葉の上の取締りではなくて、町を一遍歩いて見て、さう云ふ物を賣つて居るのを同じやうに取締らなければ、日本の商人は自滅してしまふと思ふのであります、斯う云ふものに對して一體當局はどう云ふやうに考へて居られるか、單なる此の場逃れ、言葉だけでなしに本當に此の日本人の商人を護つて行く立場から、どうするのだと云ふ温か味のある氣持で御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=30
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031・小林かなえ
○小林政府委員 只今の御質問に對しては内務省關係の事柄でありまして、私から御答へするのは或は適切でないかも知れませぬが、河野委員の御説きのやうに終戰後警察が非常に信念を失ひまして、さうして從來隨分苛酷だとすら非難された警察が、特に第三國人——朝鮮人、臺灣人、中華民國人等に對する態度が、處置の方法が非常に時機を失し、時には無警察と云ふやうな状態になつたのは實際であります、それも敗戰日本の警察官として日本人ならざる外國の人々に對する處置をどの程度までやつて宜いかと云ふやうなことも、隨分其の地位にあれば迷つたであらうと思ひます、併しながら隨分我々自身でも憤慨に堪へないやうな事柄が非常にあつたのであります、所が近來は色々と折衝の結果臺灣人、朝鮮人に對する取締、或は犯罪檢擧に付ては内地人と同樣に、内地の警察官に於て之を處置することが出來る、即ち犯罪があれば之を逮捕し檢擧し、裁判に掛けることも出來ると云ふことになつたのであります、中華民國人の斯う云ふ事犯に對しては、之を「アメリカ」の進駐軍に引渡しM・Pの管轄内に之を渡すと云ふことになつたのでありまして、是から追々河野委員の心配されるやうなことが段々と減つて行くであらうと思ひます、内務大臣もさう云ふことを議會に於て述べて居られるのでありまして、河野委員の言はれるやうに、隨分中小商工業者など此の爲に苦しんで居る者が相當あるだらうと思ひます、我々が汽車に乘つたり電車に乘つたりしては朝鮮人に侮辱されて居るやうなことを見たり聞いたりして、隨分憤慨に堪へなかつたのでありますが、斯う云ふことも追々となくなつて參るだらうと思ひます、殊に汽車の中などは、是からは「ピストル」を所持して、相當に力を加へた所の警察官を乘せるやうになつたと聞いて居りますから、追々さう云ふこともなくなるであらうと考へて居ります、又最初に申されましたやうに、銀行の人などが隨分威張つて居ると云ふ御話でありました、是も私は自分に經驗して居る所でありまして、隨分不親切であります、金融方面の便宜を圖ると言ひましても、要するに支店とか、支所とか或は代理店と云ふやうな細かい所まで金融機關が延びて居つて、さうして簡單に手近にそれが運ぶと云ふことでなければ、幾ら政府が立派なことを言つて居つても實際の效果はないものである、さう云ふ方面では商工省の關する範圍内に於て出來るだけ「サービス」の立派に行くやうに指導し、監督して參りたいと考へて居ります、どうぞ御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=31
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032・河野金昇
○河野(金)委員 是はやはり内務大臣に聽くべきであつて、小林次官に聽いては見當違ひかも分りませぬけれども、まあ大きな意味の政治的に解釋して聽いて戴きたいと思ひます、追々第三國人も區別なしに取締る、斯う言はれるが、追々と云ふのは一體何時のことであるか、澁谷の驛前なんか見てみると、同じやうに「バラック」を建てた所で支那人の名前の出て居る所だけ殘して、日本人の名前の店は折角作つた家まで半分引つくり返したり、叩き壞したりして居るのでありますが、例へば九月三十日なら九月三十日以後は同じやうに取締るとか何とか、次官會議か何かではつきりした話は出なかつたのでありますか、追々と言ひつつも結局此の儘放つて置くならば、惡い日本人は支那人の名前を使つてやるのでありますが、家まで壞されたりして居る現實を見ると、やはり其の人達の爲に同情せざるを得ないのであります、一體さう云ふ話は出なかつたのでありますか、追々取締ると云ふのでなしに、本當に取締るのか取締らないのか、取締りたい御氣持は分ります、併し取締れないなら已むを得ないのでありますけれども、取締れるなら同じやうに何時頃から取締られるか、聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=32
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033・小林かなえ
○小林政府委員 追々取締ると云ふ私の言葉に少し言ひ足りない所がありましたが、勿論内務省としては既に取締をなしつつあります、併し非常に少い警察官に依つてやるのでありますから、色々聽いて見ますと、闇市場の檢擧などには、上野の闇店を檢擧し、同時に新橋、澁谷をやると云ふやうな譯には中々行かぬさうでありますから、さう云ふ意味に於て追々に實現されて行くと云ふことを申上げたのであります
〔委員長退席、細田委員長代理著席〕
それから只今日本の商人の小屋はどんどん壞されるが、中華民國人のは其の儘になつて居ると云ふ意味の御話があつたやうに思ひます、是は先程申上げましたやうに、日本人のさう云ふものは日本の警察に於て處置が出來ますが、中華民國人の店と云ふものはやはり外國人の所有に屬するのでありまして、日本の警察が直ぐ之を壞すと云ふことは出來ないのであらうと思ひます、さう云ふ意味に於て是は一見非常に不公平があるやうに御觀察になることもあらうと思ひますが、そこに色々内務省としても困難な事情があるであらうと思ひます、内務省としては最近さう云ふ方針が決定されまして著々としてそれを實行して居るやうに私は聞いて居ります、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=33
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034・細田忠治郎
○細田委員長代理 あなたの時間が來て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=34
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035・河野金昇
○河野(金)委員 それでは是で止めます——色々承りまして了承したこともあれば、何だかあやふやな自信のない御言葉もあつたやうであります、私の先輩である今は亡き政治家が斯う云ふことを言つたことがあります、國は經濟に依つて滅びず、敗戰に依りてすら滅びず、指導者が自信を失ひ、國民が歸趨に迷つた時國が滅びると言つたのでありますが、戰ひは既に敗れたけれども、日本は再建しなければならぬと云ふ絶對使命が我々にはあります、戰爭に負けて、今まで總てを統制したり、何かしたから、其の反動として何も彼も民主化、それは唯言葉に於て民主化とか何とか云ふことはあるけれども、日本の實質はまだ民主化にも何にもなつて居りませぬ、唯言葉だけでなしに、敗戰後の今日の日本は、國は小さくなり、資源は乏しくなつたので、統制しなければならぬ面も多々あると思ふから、當局は自信を持つて統制すべきものに對しては統制して、國民に對してはつきりした方向を與へられることが日本を救ふ一つの途であると思ひます、我々自身としても其の方向に努力したいと思ひますが、政府當局に於ても自ら自信を持たれると同時に、國民に對して日本再建の方向は斯うだと云ふ自信のある行動を執つて戴きたいことを御願ひ致しまして、時間が來ましたから私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=35
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036・小林かなえ
○小林政府委員 只今河野委員の御示しになりましたやうに、再建日本の實を擧げるや否やと云ふことは一に國民の士氣にあると思ひます、如何にそこに困難があらうとも、或は政治の上に幾多の困難があらうとも、國民が眞に燃えるが如き意氣を以て互ひに手を取合つて進んで行くならば、必ず此の困難なる我が國の現状を救ひ出して、さうして立派な平和文化國家として、世界に特徴ある所の雄大な國家の建設が必ず出來る時が來ると確信致します、本當に今申されましたことは、日本國民全部の人々が心に銘じて互ひに協力してやるべきことであります、我々も洵に不敏でありますが河野委員と同じやうな考へを以てお互ひに協力してやつて參りたいと考へて居ります、どうぞさう云ふ意味に於て出來るだけの御支援と御鞭韃を賜はらんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=36
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037・細田忠治郎
○細田委員長代理 若林義孝君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=37
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038・若林義孝
○若林委員 昨日缺席して居りまして或は重複することがあるかも知れぬと思ひますが、重複しないであらうことだけを二、三御尋ね致したいと思ひます、任意の商工會議所が出來るのでありますが、此の商工會議所に負荷せられるであらうと思ふ目的と申しますか、事業と申しますか、之に對して商工御當局はどの位の程度までの要求をせられるか、此の要求の度合に依つて、商工會議所と云ふものは有名無實の形骸になる虞があると思ふのであります、例へて見ますと、同業組合法が出來ました當時は、此の同業組合と云ふものは其の當時の社會に於て相當役立つたのであります、其の次に統制強化が叫ばれましてから、商工組合が出來まして、商工組合を結成されることに依つて、同業組合法も廢止されず、商工組合法が實施されたが爲に、同業組合と云ふものは、眞面目にやる所はやりますけれども、やらない所は所謂形骸だけが殘つた所が多い、さう云ふ意味で、商工會議所も、任意の社團法人として設立されて、一體法的にどれだけのことを此の商工會議所に要求されるか、斯う云ふ風なことを、あれば一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=38
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039・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 商工會議所法と云ふものは今囘作りませぬが、私共はなぜ作らぬかと申しますと、是は法律を以て規定しなければならぬやうな事項がないから作らないのでありまして、依然として從來あつたやうな商工會議所と云ふやうなものは必要だと考へて居ります、其の土地々々に於きます商工業者の方々の意見を纒め上げるやうな機構、其の輿論を反映するやうな機關、又全部の商工業に共通の施設と云つたやうな問題は、當然其處に於て實施さるべきものであると考へます、同時に、私共は其の他の機關と云ふものを設ける意思はありませぬ、例へば、同業組合法がありながら商工組合法と云ふやうなものを作りましたやうなこととは異なりまして、今後は商工業者の輿論と云ふものは、必ず此の商工會議所を通じて私共伺ひまするし、其の土地々々の輿論と云ふものは此の商工會議所を通じて必ず私共は掴んで行く、又其の土地々々の御意見と云ふものは商工會議所を通じて政府の方へ御達しを願ふ、斯う云ふことにして參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=39
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040・若林義孝
○若林委員 之に對して政府は補助金其の他のやうなことを御考慮になつて居りませうかどうか、特に戰災都市に於ける商工會議所が出來ました場合に、其の活動は平時よりも重要性を持つて活動して貰はなければならぬ、所が是の構成人員と云ふものは戰災に傷めつけられた者であります
〔細田委員長代理退席、委員長著席〕
斯う云ふ風に特に各府縣に於て地域的に任意と云ふことになりますと、大都市の今まで中心になつて居つた商工會議所のある場所の方が酷くやられて居る、小都市の方が完全に殘つて居る、ですから構成人員の力と云ふものから行きますと、第二、第三都市の商工會議所の方が大きい役割を持つて來るやうな虞があると思ひますが、是は私はどうと云ふ意見を之に對しては持たぬのでありますが、政府はさう云ふ殆ど全部戰災でやられて居るやうな都市、而も府縣の中心になつて居るやうな都市の商工會議所に對しての補助金と云ふやうなもの、或は政府自體は御考へにならぬでも宜いと思ひますが、政府としてやらなければ、或は其の土地土地に依つてさう云ふものに對して補助金を與へる、所謂地方自治體が補助金を與へる場合に、さう云ふ法的根據が得られるものかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=40
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041・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 大きな都市程戰災が酷うございまして、隨ひまして商工會議所の建物等も燒けたものも隨分ございませう、又之を組織する方々の事務所なり工場なり店舖なりが隨分戰災を受けて居りまして、洵に御氣の毒であると考へます、併しながら之に補助金を與へると云ふ制度は國と致しまして中々困難であらうかと思ひます、財政上の見地もございますが、一般に戰災と云ふものは非常に廣くございますし、又戰爭後の日本と致しましてさう云ふものを負擔する能力もございませぬ、やはり自分でやつて行くと云ふことに重點を置かれなければならぬかと思ひます、府縣廳等に於て之に補助金等を考へる法的根據は何かないかと云ふ御話でございますが、是も亦同樣でありまして、其の府縣廳に餘力があれば何等かの援助を御願ひすることは、希望は致しますけれども、法律を以て其の支出を義務付けると云ふことは又困難なことではなからうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=41
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042・若林義孝
○若林委員 今度は、極めて零細なと申しますか、小さな商工業者に對しての御配慮と云ふことに付て一寸伺ひたいと思ふのでありますが、特別の金融機關を拵へて融資をすることの御配慮は承つて居るのでありますが、何れ是は銀行と同じやうなものになると思ふのでありますが、此處に小出商政課長も居られるのでありますが、曾て大阪府實業組合聯合會と云ふものが、府の委囑を受けまして、二百万圓だつたと思ふのでありますが、其の金を、極めて小さい、銀行が相手にして呉れぬやうな者に對して融資を致したのであります、小さきは三百圓位の融資から始めて、大きくても、三千圓が最高であつたのでありますが、是が非常に尖鋭化されんとする思想を緩和した實效があつたと思ふのであります、此の制度は其の當時小川商工大臣が非常に激賞をされたと承つて居るのであります、是は民間人の集まりの融資部なのでありますが、其の金自身は府が之に對して相當危險を見ると云ふ行き方でやつたのでありますが、將來斯う云ふやうな制度を各府縣に設けられて、單なる銀行的の金融機關のみを以てするにあらずして、眞に小さい商工業者を育成すると云ふ意味に於て積極的の措置を御執り願ふことが必要なのではないか、特に海外から還つて來た者其の他に對して、直接役所が御當りになるよりも、斯う云ふ大阪にあります融資部の如き制度を御活用願へればと斯う云ふやうな念願に燃えて居る一人であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=42
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043・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 零細な業者の方の金融と云ふものは非常に困難なものでございます、曾て大阪府廳がさう云ふ企てをされましたことは洵に效果のある御處置であつたと思ひます、今囘補償打切りに伴ひまして色々な金融上の困難な問題が出ますので、一應の中小工業の金融と云ふものを考へて居りますが、非常に小さい方に對する金融と云ふものは中々手が屆き兼ねることがあります、併しながら是は大阪府廳のやうに餘力を持つて居ります所は相當な仕事が出來ると思ひますが、地方に依りましては中々さう云ふことも困難でありますので、之を全國的にどう云ふ風に活用致しますかと云ふことに付きましては、今後今姑く時間を拜借致しまして研究させて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=43
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044・若林義孝
○若林委員 此の問題に付ては一つ特に御研究を願ひたいと思ひます
次の問題としまして農村の工業化と云ふことが叫ばれて來ると思ひます、私はどうしても小さい工業者が日本の將來を背負ふ基盤になると考へて居る、と同時に是が都市だけでなく農村の各農家々々が所謂家庭工業化されることで行かなければ、到底日本の工業と云ふものは立行かぬと私は考へて居ります、所謂能率的な機械の施設を持つた「アメリカ」の、或は諸外國の例と、何等さう云ふ設備のないものとが同じ勞働時間を以て對抗して行かうと云ふやうなことでは、急行列車を普通列車で追掛けるやうなものであります、此の時に於て現在農業會と云ふものは農村に於ける所の有力なる指導機關になつて居るのでありますが、此の農業會と別個に今度御提出になりました商工協同組合法との結付きを餘程うまく御考へ願ひませぬと、所謂圓滿なる農村の平和を破る虞があるやうに思ふのであります、どうしても是は一本建で行くやうな傾向に御考へを願はないといかぬのではないか、農村の所謂工業化と云ふことに付て、又其の指導と云ふことに付てはどう云ふやうな御考へを持つて居られますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=44
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045・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 我が國の農業が非常にまだ原始的な状況を多分に包藏致して居りまして、之を技術化し工業の力を入れて行くことの餘地が澤山あることは仰しやる通りでございます、先般來商工省でも農村電化と云ふことを申しまして、大分電力を農村に應用することを致して居りますことも技術化の一つであらうと考へて居ります、其の他農機具等に付きましてもまだ相當改善の餘地がありまして、人力を省き能率的に耕耘し得る機械も考案せらるの餘地が隨分あると考へます、隨まして農村と工業と云ふものの結付き、特に農村の近くにあります中小工業の團體と農業會と云ふものが緊密な連絡下に置かれなければならぬことは申される通りであります、唯之を法制化すると云ふか、立法致しますことに付きましては今農林省で考へて居られるやうであります、結局實際上に緊密な連繋を執つて行くことが政府として取敢ず狙つて行く所ではなからうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=45
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046・若林義孝
○若林委員 價格査定制度と云ふものはどうなつて居るか、或は檢査制度と云ふものは將來どうなるでせうか、尚ほ規格に付て相當戰時中統制が強化されて居つたのでありますが、品物の規格の枠は全然外されるものなのですか、此の點を御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=46
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047・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 價格を決めます場合に或る程度の規格がないと値段が決めにくいのでございます、又同じ品物の中でも色々と規格に依つて段階を決めませぬと、一番惡い品質の物が一番高い値段で賣られて行くことになりまして、どうしても價格統制と云ふものをやつて居ります中は、或る程度の規格を決めてそれに應じた價格を決めて行くと云ふ建前を取らざるを得ないと考へて居ります、何れに致しましても、或る程度國民生活の安定を期する爲には價格の安定が必要であらうと考へます、やはり各種の商品に付きましては規格を設けまして、それに應じた價格を設定して行かねばならぬと思ひます、さう致しますとやはり査定と云ふことに依りまして、此の品物は第一級に位するものであるとか、第二級の品物であるかと云ふことがどうしても行はれて行かねばならぬと考へます、隨ひまして査定制度と云ふものはやはり今後存續するものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=47
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048・若林義孝
○若林委員 色々御懇切なる御答辯有難うございました、之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=48
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049・山田善三
○山田(善)委員 色々考へて居りましたが、殆ど質問し盡された感があります、併し擧校教育局長がお見えになつて居りますから其の方面を一つ御聽き致したいと思ひます、實業教育の問題でありますが、日本の實業教育は動もすれば概念教育に終りまして、實際の方面に於て非常に疎い感があるのであります、私は將來の日本の實業教育は其の土地の産業としつくりくつ付いて實際に之を行ひ得ると云ふことを絶對條件とする教育でなければならないと、斯樣に考へて居るものであります、之を行ひますのに二つのやり方があるのではないか詰り學校教育の實際化と實際實業の理論化、斯う云ふ二つの面から之を進めて行くべきではないか、其の具體的方法と致しましては工業學校或は商業學校と立つたやうな實業學校に於きましては必ずそこに附設の實習機關を設けまして、商業學校で申上げるならば實際の小賣店を學校が經營する、工業學校ならば其の專門とする生産機關をくつ付けて、そこで其の理論の實際化を完全に圖つて行く、而もそこで自給自足が完全に出來る、經濟的に引合ふやうな實際的な仕事をなし得るやうなことを標準として教へて行くと云ふやうなことをやらなければいけないのではないかと、斯樣に實は考へて居るのであります、之に對して文部省としてさう云ふ具體案を別個に御考へになつて居るかどうかと云ふことが一つであります
其の次に今の實業教育は、工業學校、商業學校と云つたやうなものから更に上級の教育を受ける場合に、高等商業或は高等工業と云つたやうな所に繋がる場合に、實業學校と繋がるよりも中學校と繋がつて居る、だから試驗などを受ける場合には實業學校から實業教育の專門學校に入りますのには非常に困難を感ずるのであります、是等も寧ろ實業學校と實業專門學校とをしつくり繋いで行くと云ふ風にやつた方が、實業の實際化を圖る上に於ても有效ではないかと考へるのであります、さう云ふ點に對する當局の御見解を承りたいのであります
第三には、日本の生産は生産する者の生産良心と云ふものが非常に缺けて居ると思ひます、是が日本の工業生産の一大缺點ではないかと私は痛感致して居るのであります、日本で色々造られる所の生産品は如何にすれば是が餘計に賣れて儲かるかと云ふことが主體をなして居るやうであります、詰り其の物の市場價値を主體として製造される、それよりも寧ろ今造らんとする物の持つて居る目的を、如何に良く發揮させるやうにして造るかと云ふことの方が主體に置かれなければならないぢやないかと、斯樣に實は考へて居るのであります、だから日本の商品は見掛けが良くて飛び付き易い品物であれば、それが其の商品の持つて居る目的を如何に果し得ないでも、賣れる間は盛んにさう云ふものが造られると云ふことで、日本製品と云ふものが外國製品と競爭が出來ないと云ふやうな一つの缺點を持つて居るのではないか、是に於て實業教育に於ては特に生産良心の昂揚と云ふことを圖らなければならないと考へるのであります、此の點に對して當局の具體的施策がおありになれば御伺ひしたいと思ひます
尚又商業道徳の昂揚に付ても、是と同じ意味に於て今少し力瘤を入れなければならぬではないかと考へるのであります、是等に對して別に當局として御策がありますならば御示しを願ひたい、斯樣に考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=49
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050・日高第四郎
○日高政府委員 今の御説一々御尤もであると存じて居ります、第一の實業教育が實際と離れて居ると云ふことに付ては戰爭中からも私聞いて居ります、斯う云ふ所で名前を申上げるのはどうかと思ひますが、今の京都大學の總長の鳥養博土が戰爭の始まつた頃に斯う云ふことを言つて居られる、日本の學問的の研究は相當の「レヴェル」に到達して居る、併し其の研究された成果がちつとも生産面に實現されないのである、斯う云ふ點で今後の研究は實際面と結び付かなければ日本を救ふことが出來ないと云ふことを、或る會合の席上で非常に歎きながら言つて居られたことを聞きましたけれども、其の後皆さんから伺つて居りますと、やはりそれが事實であるやうでありまして、戰爭中學生が働きに行つて居ります工場でも、「ドイツ」の有力な武器を生産するのに、それの寫眞を撮つたり、或はそれの模造をしたりして居るのだ、それを學生が見に行きましても、現在の工場では或る機械の原理を理解しないで、それを奴隷的に模寫して居るのだ、是で日本が戰爭に間に合ふのだらうか、さう云ふことを純眞な心持で愬へて居るのを聞いて居ります、是は顯著な例に過ぎませぬけれども、事實今までの實業教育が實際と離れて、教室だけの學問、机の上だけの修學と云ふやうなことになつて居る爲に、學問をしてもそれは試驗の爲の勉強であつて、學問を現實に應用する能力としてそれを身に著けると云ふやうなことが十分重んぜられて居らなかつたのだと存じますが、是は全般的に見て日本の敗因の一つであつたと云ふ風に感じて居ります、隨て今後實業教育、是は農業にしても、工業にしても、商業にしても、水産にしても、此の方面に於て特別に新しい難かしい研究が出來ないにしても、現在到達せられたものをどう云ふ風にして現實の生産面に應用して、能率的に、さうして良い物を生産出來るかと云ふやうな所に眼目を置いて、教育の方針を建直さなければならないのではないかと云ふことを感じて居ります、まだ御説のやうなことに付てどう云ふ風にしたら宜いかと云ふ具體的な處置を執るまでに至つて居りませぬことは甚だ恥かしいことでございますけれども、併し御説の趣旨は出來るだけ實現するやうに研究も致し、具體的な措置も執つて行きたいと思ひますので御諒承戴きたいと思ひます
第二の實業學校から高等の專門學校へ入るのに連絡が惡いと云ふ御話がありましたけれども、是は私は同感でありまして、總て中等程度の實業學校に學んだ者が必ずしも直ぐに實際生活にのみ入るとは限らないのでありまして、其の中で勉學心が非常に強い者とか、或は能力の非常に優秀な者とかには、是非上の學校へ行けるやうな途を開きたいと存じて居りますが、從來の試驗制度其の他に於ては中學校から來ることを建前にして居るやうな傾向から、實業學校から上の專門學校に行きます時には試驗に於て多少不利な點があつたかと存じますので、それ等の點も考慮致したいと存じて居ります、尤も學校制度の全般のことに付きましては本日新聞に出て居りますやうに、教育刷新委員會で皆樣の御檢討を願ひたい、私個人の願ひとしましては、どの學校にも上に希望の途の開けて居るやうな組織を考へて戴きたいと思つて居ります、併し是も澤山の有能な、さうして經驗のおありになる委員方の御討議を願つた上で決定しなければなりませぬので、私の個人的の願ひが實現出來るかどうか分りませぬけれども、私が職にある間はさう云ふことに骨折りたいと存じて居ります
第三の生産的な良心を持てと云ふ御話、是は總ての場合に於てさうでありまして、單なる儲け主義で以つて日本が復興出來るとは思ひませぬ、各各の人が各各の位置で自分の職責を盡す上に於ける良心的な態度を執ることが、基本的に必要であると存じて居ります、隨つて生産面に於きましても見掛けが良くて内容の惡いやうなものを造るのでなしに、本當に長持ちをして、それを使つて居るものが十分に滿足出來る、隨つて信用を贏ち得るやうな生産をするやうに致したいと思つて居りますので、それ等の點は寧ろ生産事業に携はる學生生徒の人格的な實際生活に於ける指針、方針を確立させることが眼目であると存じますので、それ等の點も十分注意致したいと存じて居ります、是は自ら第四に御指摘になりました商業道徳の點にも當るかと存じます、どうぞ意のある所を御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=50
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051・山田善三
○山田(善)委員 文部關係に付ては是で打切ります、有難うございました、他に二、三點今までの質問者と幾らか違つた面に付て御伺ひ致します、是は縷縷今まで御述べになつたやうでありますが、技術を尊重しなければいけないと云ふことは度々前質問者から質問が出たやうであります、之に付て二點程御伺ひしたいと思ひますが、私は何十年來斯う云ふ意見を持つて居ります、理論の面に於て偉大なる發明をなし、偉大なる理論を研究した或る技術の學者がありとすれば、之に工學博士、或は理學博士と云ふやうな榮譽を授けて、之を表明致して居ります、それと同じ意味で技術を尊重すると云ふ側から考へまして、餘人を以て代へることの出來ない特殊の技能を持つて居ると考へられる實際家に對して、何々技術博士と云ふ稱號を授けて之を優待する、斯う云ふことは技術尊重の觀念を一面に與へると同時に、更に技術の奬勵に非常な役割をするのではないかと考へて居つたのであります、此の際當局にさう云ふ目論みが若しおありになるやうだつたら實行して戴くことが出來ないかと云ふことが一つであります
第二は外國に色々な工業技術の研究の爲に學者、或は研究家が留學をして、或は視察をしに行く人が澤山ありますが、職工が外國の技術を本當に身に著けて覺えて來ると云ふ意味に於て、又外國の勞働状況を、勞働體驗を具さに研究して來る意味に於ての職工階級の海外研究留學と云ふやうなことが、今まで餘り行はれて居ないのではないかと云ふ感じを持つて居りますが、若しさうであるとすればさう云ふことは非常に必要なことではないかと思ふのであります、是等に對して御當局の御意見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=51
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052・小林かなえ
○小林政府委員 只今御述べになりました優秀なる技術者に對して技術博士と云ふやうな稱號を與へる意思はないかと云ふ點でありますが、さう云ふ技術の非常に優れた、國家的に尊重すべきだけの資格のある人に對して、何等かの榮譽を與へると云ふことは極めて良いことであると思ふのであります、唯併しどう云ふ技術を持つた人が之に値するかと云ふことになりますと、只今行はれて居る論文を出して博士號を取ると云ふやうな一つの形式だけでは中中決めにくいであらうと云ふやうな點の爲に、今までの政府や色々な人々が御説のやうなことを考へて來たのでありますけれども中々實現されなかつたのであらうと思ひます、併しながらさう云ふやうなことは必要なことでありまして、技術奬勵の上にも、又日本の工業を發展させる上に於ても洵に必要なことであらうと思ひます、どう云ふ稱號を與へる、どう云ふ榮譽を與へると云ふやうなことは、茲にはつきりしたことではありませぬが、政府としてもさう云ふ意味合の優遇をして參りたいと云ふことは色々考へて居るのであります
それから勞働者を海外派遣して色々と各方面の研究をさせ視察をさせる必要があるのではないかと云ふ御言葉も洵に同感であります、將來さう云ふやうなことが許される時期が參りますならば、さう云ふ機會を見付けて實現するやうに努力して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=52
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053・山田善三
○山田(善)委員 次に小賣商の問題に付て二、三承りたいと思ひます、戰前日本の小賣業者は多過ぎると云ふ聲が相當高かつたのであります、其の結果少し世の中が不景氣になると小賣商の問題は相當深刻な問題を生んで居つたのであります、然るに戰爭勃發此の方、統制經濟の強化と共に、只今では小賣業者は四分五裂の状態ではないかと思ひます、一部は轉廢業をさせられ、一部は統制經濟に乘取られて、昨今の状況では小賣商は殆ど其の形態を止めて居らぬやうであります、然るに今度の社團法人で出來る此の組合が假に出來たと致しましても——東京、大阪は別として、地方の小都市に於て大多數之を支援し、又此のお蔭を蒙らなければならないものは小賣商であると思ひます、然るに小賣商が今のやうな状態では、縱し此の社團法人を作りましても、此の經費の負擔すら恐らくなし切れぬではないか、今までの商工經濟會法では強制して經費を徴收して居りましたが、之を任意加入にし任意會員制度に致しますならば、之を支持する商工業者が、今のやうな状態では當分之を支持して行くことは出來ないのではないか、其の小賣商を如何にして建直さうとするか、是は目下の喫緊事だと思ふのであります、更に又困難なことは、將來社會主義經濟が強く行はれることになりますと、此の方面からの壓迫も相當大きなものが小賣商に加へられ、一方消費組合が段々發展して參りますれば、其の方面からの壓力を受けるでありませう、又商品が規格化して、而もそれが計畫經濟で流れることになりますと、商才を活かす範圍が極めて狹くなつて、殆ど商品の配給と云ふものが「ビジネス」化してしまふと云ふやうなことになりまして、小賣商の活躍する範圍と云ふものが極めて狹くなりはせぬか、如何にして之を救濟し整理するかと云ふことは大問題だらうと思ふのであります、殊に今後お作りにならうとする此の經濟團體と密接なる關係を持つのであります、之を指導しようとすれば金がない、金がなくては小賣商の指導も出來ないと云ふことになつて、此の負擔の面で突き當るのではないかと思ひますが、是等に對する御當局の將來に於ける案がおありになるならば御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=53
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054・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 小賣商の將來の問題でございますが、小賣商は今日仰せのやうな状況でございます、戰時中の配給統制の強化の結果、漸次に其の職を追はれまして、洵に四分五裂慘めな状況になつて居ることは御説の通りでございます、今後小賣商はどうなつて行くかと云ふ問題は、やはり今後の政治上の問題、或は經濟上の發達の問題、色々な問題に關聯致しまして、考へて行かなければならぬものと思ひます、仰せの通り或る部面に於きましては消費組合等の發達に依りまして消費者が自ら商品を購入することを考へることも豫想せられるのでございます、併しながら都會等に於きましてはやはり各種の消費資材と云ふものは澤山の種類があるものと考へるのでございます、規格統一と云つたやうな問題も考へられますけれども、是は主として機械とか其の他の方面に重點が置かれることと思ひますので、一般の消費財は相當多種多樣のものがございます、又工藝品と云つたやうなものもございますので、今後是は商品が段々潤澤になるに從ひまして、相當數の方が小賣商として收容されて行くものと考へて居るのであります、唯當分の間物資が潤澤になります間、或る程度の配給統制等が強化せられまして、一つの組織の下に於て小賣商と云ふものが其の事業を經營される、或る統制の下に商賣をやつて行くと云ふ形は取りませうけれども、漸次是は商品の潤澤化に伴ひまして、獨立した自由競爭に依る小賣商時代が來ることと考へて居ります、さう云ふ時代に行きまする間、此の工商會議所と云ふものが小賣商の指導をする建前を執ることは仰せの通りでございます、特に中小都市等に於きまする商工會議所と云ふものの大きな御使命は、此の小賣商の問題に相當の重點が置かれることと思ひます、さう云ふ場合に經費が足らぬではないかと云ふ御話も御尤もでございますが、經費の問題は色々と是は強制徴收の問題が、今囘の新しい商工會議所に於きましては認められて居りませぬ關係上、やはり之を組織する會員の方の御負擔になる譯でございますが、併しながら此の仕事をやつて行く上に於きまする經費と云ふものは、同時に又之を組織する方が會議所を御利用願ふ度合に依つて決まるものと思ひます、相當重い負擔でもそれに依つて相當の便益があると云ふやうなことになれば、相當の御負擔を願ひましても、又御仕事の上には好い影響があるのではなからうか、要するに今後の商工會議所が本當に業者の爲に生きた仕事をすると云ふことにするかどうかと云ふことに懸つて來るものと思ひます、隨ひまして其の經費に付きましては、成べく少い經費で商工會議所が仕事をして行くことが必要であると思ひますると同時に、本當に其の土地の有力なる方が之を支持せられまして、さうしてさう云ふ御仕事が旨く行きますやうに御協力を願ふと云ふことが、會議所の今後の仕事の上に於きまする、成功不成功の岐れ目であると考へて居るのであります、當局と致しましては、さう云ふ風に仕向けるやうに今後各方面の御協力を御願ひする積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=54
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055・山田善三
○山田(善)委員 時間がありませぬので、簡單にあとの三つを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=55
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056・北村徳太郎
○北村委員長 成べく簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=56
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057・山田善三
○山田(善)委員 發明權の保護の問題に付て先程同僚から質問がありましたが、私は此の發明權を國家が買上げる、さうしてそれを工業化した場合に於ける利潤は、國家が適當に發明家に之を與へて、之を保護すると云ふやうなことも一案ではないかと思ふのでありますが、さう云ふ御意思はないかどうか、第二に纖維工業は相當に大きな使命を持つものと思ひますが、傳へらるる所に依りますると、將來米英兩國が中國に相當に立派な機械を備付け、中國人の低賃金を利用致しまして、合理的な纖維工業を起さうとする案があると云ふやうなことも仄聞致して居ります、是等に對して日本の纖維工業が對抗し得る自信と用意があるかどうか、斯う云ふことであります
更に先程御話がありました農村の工業化はどうしても將來免れ得ない所であると思ひますが、茲ではやはり美術工藝の振興が非常に大事ではないか、さう云ふ場合に、之を合理化する爲に、分業主義的な家内工業の「システム」を作上げると云ふことが非常に必要であると思ひますが、是等に對する研究機關を設置すると云ふことは、將來の日本の工業を發達させる上に非常に必要だと思ひますが、さう云ふ御意思があるかどうか、此の三點に付て御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=57
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058・久保敬二郎
○久保政府委員 最初に發明權の保護の問題に付て御答へ申上げたいと思ひますが、發明權を國家で全部買上げると云ふ案は、實は私共考へて居らなかつた問題でありますが、發明を全部買上げると云ふことは非常な資金を要する問題で、實はさう云ふことは不可能ではないかと考へて居ります、唯外國の例を見ますと、發明を一つの「プール」のやうなもので買上げまして、さうしてそれを實施すると云ふやうなことがありますし、或は又發明を實施する營團と云ふやうな形式のものを日本でも作りまして、さう云ふ營團で以て發明を相當買上げまして、さうしてそれで實施すると云ふことをやつたならば宜いかとも考へますが、總てのものを買上げると云ふことは或は不可能かと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=58
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059・吉田悌二郎
○吉田(悌)政府委員 英米等が中國に於て纖維工業を大いに認めまして、我が國の輸出を脅かすやうなことはなからうかと云ふ御質問でありますが、是も外國のことで能く分りませぬが、私だけの考へから申しますと、日本の東洋に於ける纖維工業の地位と云ふものは、是は世界各國認めて呉れて居るものであらうと思ひまするし、やはり是は日本の今後の存立の中心の問題であらうと考へます、國際貿易に付て色々な問題があり議論があらうかと思ひますが、少くとも纖維工業に付ては日本と云ふものはやはり東亞に於て相當な地歩を認められるものと考へて居ります、併しながら實際上の問題と致しまして、中國に相當の纖維工業が興りまして、日本の纖維工業との競爭になつた場合に、やはり商品の優秀性と云ふものが勝敗を決する譯でございまするから、さう云ふ場合に於ける我國の技術と云ふものは、特に振興、改良、發達と云ふものを忽せにして置いてはいかぬのでございます、戰爭前までは幸ひに我が國の纖維工業と云ふものは、他の工業とは違つて、相當世界の水準に達し、紡織機等も隨分世界の一流中の一流のものを作つて居つて、寧ろ指導をして居つたやうな形でございます、今後も恐らく此の方面に付きましては、我が國はさう云ふやうな「イニシャチーヴ」を取るやうに早くなりまして、製品の優良化と云ふことを圖つて行つて、東亞に於ける輸出市場を確保すると云ふことに努力せねばいかぬと考へます
次に農村工藝の問題でございますが、是は今後我が國が輸出品を確保致します上から申しましても、どうしても工藝品の輸出と云ふことに重點を置かねばいけませぬ、さう云ふことには、恐らく時期的に繁閑があつて、從來例へば冬の間は閑であると云つたやうな農村の此の手の力を利用致しました工藝と云つたやうなものが、案外輸出の見込が多いものであらうと考へて居ります、隨ひまして其の技術的指導に付きましては商工省に於て只今工藝指導所と云ふものがございますが、是等の機能を十分に活用し、今後其の方面にも大きな力を入れて、事業を進めて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=59
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060・山田善三
○山田(善)委員 それでは是で私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=60
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061・北村徳太郎
○北村委員長 是にて質疑は終りました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=61
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062・北村徳太郎
○北村委員長 是より商工經濟會法を廢止する法律案、工業所有權法戰時特例を廢止する法律案を一括して議題となし討論に付します討論は通告順に依つて之を許します、成べく簡潔に御述べを願ひます——細田忠治郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=62
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063・細田忠治郎
○細田(忠)委員 今囘商工經濟會が廢止せられることに相成りましたことは、本會が戰時中の國内體制強化の線に沿ひました所の、一種の便宜機關でありましたことから、終戰後の今日之を廢止しまして、之に代りまして新たに平和産業再建の使命達成に必要なる所の、時代即應の舊商工會議所と云ふやうなものが、中小商工業者の自主的協同に依つて是が誕生を見んとしつつありますることは、所謂時代の要求でありまして、此の意味に於きまして商工經濟會法廢止の法案には、本員は先づ以て贊意を表する次第でございます、既に戰時中、中小商工業の統制機關でありまする所の二大團體であります其の一つの商工經濟會が廢止されて、他のもう一つは團體であります所の商工組合法は、是れ亦商工協同組合法と改稱されまして、近く提案されんと致して居りまするやうな次第で、我が國産業の急速なる再建を目指して、中小工業の合理化を圖らんと致して居るのであります、是等二大團體はそれぞれ其の名稱は異に致して居りまするが、何れも中小商工業者を相手と致したものと致しまして、此の劃期的時代に於ける、今後の我が國産業經濟の重大なる役割を達成せんと致して居るのでございます、然れば政府は此の種新しく發足せんと致しまする團體に對しては、極めて温情ある維持育成に細心の注意を拂はれんことを切に希望する次第であります、即ち是等の産業團體に對しては、其の鞏固なる基礎を持ちまするまでは、所得税或は法人税其の他の公課を一切免除して、專ら是が保育に全面的に力を注がれんことを御願ひ申しますると共に、他面是が認可許可事項に對しましては、從來の所謂官僚的な形式主義と云ふものを此の際一切拂拭致しまして、一にも二にも民意の伸暢と團體の健全なる發達の爲に、從來の官吏觀念を脱却した眞の親心、即ち公僕精神を十分に發揮せられると共に、今や將に解散せられんと致しまする所の此の舊商工經濟會の既存の權利義務は、是が同一人格を目的と致しまする所の新商工會議所に繼承する場合には、努めて其の手續きを簡易化して、清算規定の如きも法制上設定の必要があると致しまするならば、是は已む得ぬと致しましても、せめて極めて簡易主義に則らしめて、最も迅速果敢に此の邊の處理をせられんことを、此の際にきつく要望致して置く次第であります
次に工業所有權法戰時特例を廢止する法律案に對しましては、本案は工業所有權の戰時中に附與されて居りました所の特例を終戰と共に之を廢止致しまして、本來の軌道に之を復歸せしむるものに外ならぬのでありますが、由來我が國の工業的發見或は發明及び工業技術の振興に基く從來の國家的の措置が、極めて非文明的であつたと云ふ點に付きましては、是は本委員會に於きましても、幾多同僚諸君が此の點に向つて極言されて居りましたが、斯う云ふやうな日本の從來の状態が崇りまして、過去に於きましては幾多の天才も失はれ、旦又多くの學究を失望せしめました所の澤山の實例を持つて居るのでありますから、戰後我が國の産業が極めて狹小な國土に於て、國内にありましては國力の囘復、之を國外に見ましては賠償金を完納致さんと致しまするには、中小工業を主體と致しまする所の工業立國と云ふことは、今や我が國の國是として絶對的に議論の餘地のない所でありまして、御同樣に此の方面に關係を持つて居ります者は、此の無限大の國民的大使命を能く能く自覺致しまして、其の本務遂行に邁進すべきであらうと存ずるのであります、政府は本委員會に於きまする委員諸君の連日に亙る極めて熱心であり、而も該博な研究に基きまする質問と、政府に對する委員諸君の熱狂的な要求を深く省慮せられまして、是が實現に今後格段の御努力あらんことを呉々も要求致しまして、私は以上二案共に原案に贊意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=63
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064・北村徳太郎
○北村委員長 九鬼紋十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=64
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065・九鬼紋十郎
○九鬼委員 兩案に付きまして、私は進歩黨を代表して簡單に意見を申上げて、贊意を表する次第であります、商工經濟會法を廢止する法律案に付きましては、戰時中に於て施行されました所の商工經濟會は、甚だ非民主的組織機構であり、經濟界としては頗る不滿を抱いて居つたのであります、終戰後に於きましては、進んで是が改廢を要望して居つたのでありますが、幸ひ今囘政府より本案の提出を見ましたことは、甚だ欣快と存ずる次第でございます、之に付きましては全幅の贊意を表するものでありますが、今後に於きましては、各地に於て、新しく眞に民意を代表するやうな立派な商工會議所の設立されんことを要望する次第であります、以上を以ちまして私の商工經濟會法を廢止する法律案に贊意を表する次第であります
尚ほ第二の工業所有權法戰時特例を廢止する法律案に付きましては、前案同樣、戰時の特例でありまして、此の際之を廢止することは最も至當なることと考へるのであります、以上の理由を以ちまして、同樣之に贊意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=65
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066・北村徳太郎
○北村委員長 河野金昇君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=66
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067・河野金昇
○河野(金)委員 協同民主黨を代表致しまして、兩案共に贊成を致すものであります、唯往往にして官廳のおやりになることは、一歩退却して二歩前進されることが間々あつたのでありますから、此の委員會に於ける各同僚諸君の意見を參酌されて、本當に經濟民主化の線に沿うて、今後新しく生れて來るものに對しては、さう云つた今までの例に陷らないやうに、本當の民主化の線に沿うて新しく法案を作成されんことを望みまして、今議題となつて居る二案に對しましては、兩案共無條件に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=67
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068・北村徳太郎
○北村委員長 討論は終結致しました、是より採決致します、各案とも原案に贊成の諸君の起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=68
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069・北村徳太郎
○北村委員長 起立總員仍て各案は何れも原案通り可決致しました——本日は之を以て散會致します
午後零時四十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011622X00519460810&spkNum=69
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