1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月五日(金曜日)午前十時十七分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 岩本信行君 理事 坂本實君
理事 森幸太郎君 理事 馬越晃君
理事 松岡運君 理事 須永好君
理事 細野三千雄君
大井直之助君 廣川弘禪君
淵田長一郎君 本多花子君
神戸眞君 苫米地義三君
保利茂君 堀川恭平君
氏原一郎君 叶凸君
清澤俊英君 田中健吉君
堂森芳夫君 北政清君
林興一郎君 的場金右衞門君
柏原義則君 山木武夫君
井出一太郎君 野本品吉君
出席政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 三堀參郎君
農林事務官 坂田英一君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
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本日の會議に付した議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します、農林大臣は午前中は司令部の關係でこちらへ參られぬさうでありますから御諒承願ひます、それで大臣に對する質問は後廻しに願ひます、それから質問は色々と重複する場合もあるやうに思はれますから、若し重複した場合に於ては委員長に於て御注意を申上げますから、其の點御含み願ひたい、さうして委員會には毎日御缺席のないやうに出席して戴いて、重複しないやうに御願ひしたいと思ひます、それでは前日に引續きまして會議を開きます――森君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=1
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002・森幸太郎
○森(幸)委員 昨日農林大臣に承つたのでありますが、農林大臣も御急ぎであつたのでありまして、一括質問致しましたが爲に御答辯が要領を得ない點がありましたので、重ねて御尋ね致したいと思ふのであります、
今日本の國民は食糧の前途に非常な不安を抱いて居るのでありまして、一日も早く此の國民の食糧不安の氣持を除くと云ふことが、最も必要と考へるのであります、所で政府は、昨日農林大臣は五千萬石を要望して居る、斯う云ふ御話でありましたが、此の五千萬石の數字の中には生産者に對して還元すると云ふやうなものは含まれて居らない數字だと確信するのであります
〔委員長退席、馬越委員長代理著席〕
さうすると此の五千萬石はどうしても斯うしても、今日の我が國としては確保しなければならぬと云ふ數字でありますが、政府當局は此の五千萬石を確保するの確信を持つて居られるか、又どう云ふやうな方途に依つて此の五千萬石を確保せんとせられるのであるか、又未利用資源の利用に付きましては、昨日も意見を少し加へまして、左程に利用價値のないことを申上げたのでありますが、五千萬石の確保の中には未利用資源と云ふことも考へて居られるのであるか、此の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=2
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003・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、食糧の問題に付て國民に不安なからしめるやうに致して參りますことが、食糧政策の觀點から申しまして最も重要でありますことは、只今森さんから御話になりました通りであります、そこで此の五千萬石の數字でありますが、御承知のやうに例へば一昨年の米の供出實績は、米だけで三千九百萬石でございました、又昨年の米の供出量は三千七百萬石でございました、斯う云ふ風に不良の作柄で、又此の作柄を得まする爲には、之に伴つた肥料の問題の解決等が根本的になつて參るのであります、例へば今申しますやうに三千九百萬石も米で得られると云ふことになりますと、殘りの千百萬石、千萬石程度のものを麥なり甘藷、馬鈴薯で確保すると云ふことになりますと、事柄は左程難かしいことでない譯であります、併し現在の肥料事情等から申しますと、結局此の三千九百萬石を得ると云ふこと自體に於て、相當の困難のあることは御承知の通りでございます、隨て此の五千萬石を得まする爲には、今後それ等の方面に付ても相當の努力を致さなければならぬと考へるのであります、尤も此の五千萬石と昨日も大臣が申上げましたのは、大體現在のやうな食糧事情の下に於ての話でありますので、それでは一般の國民が現在の配給状況て以て滿足して居るかどうかと云ふことになりますと、此の五千萬石と云ふものは、或る程度今後殖やされることを希望せざるを得ないのであります、併しながら少くとも現在の状況に於きましては、先づ此の五千萬石を確保する、其の爲に努力すると云ふことが根本の問題にならうと思ふのであります、隨て今申上げましたやうに、色色の方面に於て努力を續けて居るやうな次第であります、併しどうしてもさう云ふことで得ませぬければ、是は萬已むを得ず外國食糧の援助を仰がざるを得ない、斯う云ふ風になると思ふのであります、尤も是も森さん能く御承知の通りでありますが、戰前に於きましても大體千萬石から千二、三百萬石程度のものは輸入を仰いで居つたのであります、一面國内の人口も殖えて參ることでありますから、國内に於てはやはり相當の努力を致さなければなりませぬが、其の不足分と云ふものは、どうしても近くの國から仰がざるを得ない、斯う云ふことである譯であります
それから未利用資源の問題に付ての御尋ねでございましたが、本來未利用資源は、例へば甘藷の莖葉に致しましても、從來耕地に注込んで居つた肥料、鷄或は家畜の飼料として其の方面に廻して居りましたものを、已むを得ざるの措置として食糧の計畫に入れて居るやうな状能であります、是は緊急已むを得ざる状態である譯でありまして、本來ならば元々さう云ふ方面の需要に充當すべきものと考へるのでありますが、どうしても食糧事情から見て償へない穴を、何とかして埋めなければならぬと云ふ事態になつて參りますと、緊急の措置としては、さう云う方面に俟ざるを得ないと云ふやうな關係になつて居るのであります、此の點も能く御承知のことと思ふのでありますが、御諒承を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=3
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004・森幸太郎
○森(幸)委員 先程申上げました五千萬石と云ふものは、生産者の食べるものは含まれてないのでありますか、其の點を一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=4
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005・楠見義男
○楠見政府委員 生産者の方は含まずに考慮致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=5
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006・森幸太郎
○森(幸)委員 能く諒解致しましたが、固より御話の通り從來も臺灣、朝鮮より移入、又は其の他より輸入を致して行かなければ廻らなかつたのでありまするから、如何に科學的に増産を奬勵致しましても、土地に限度があり、收穫に限度がありますから、格別なる關係方面の援助を御願ひしなければならぬ次第でありまするが、それに對してもつと簡單に、五千萬石に近き食糧を政府の手に收める方法があるやうに我々は考へるのであります、それは色々の條件も無論ありまするが、極く掻摘んで申しますると、今日の供出状態は米を作れば米を出す、二毛作をすれば其の二毛作の麥を出す、馬鈴薯を作れば馬鈴薯を出すと云ふやうな、其の作付の段別を調べ、其の作付の状況を調べて之を供出割當の基礎と致して居られるのであります、さう云ふ状態でありますから、生産者は出れば打たれる、出れば打たれると云ふやうな氣持で、非常に生産意欲が向上して來ない、是が百姓を致して居る者に樂みのない、所謂働きのないやうな氣分を持たせることになると考へるのであります、大雜把に掴みまして、我が國の國土は六百萬町歩ある、此の六百萬町歩の土地から一反歩平均二俵、八斗の米を出さす、さうしますれば四千八百萬石と云ふものは茲に大掴みに出來る、固より水田の少い乾田地方もありまするから、此の四千八百萬石は米として見るのでありますが、其の半分は或は雜穀に依つて、大麥、裸麥、豆類或は甘藷、馬鈴薯に依つて供出すると云ふことにして、米に換算して兎に角四千八百萬石と云ふものはそこに掴み得られる、之を掴むのは何でもない、豐凶と云ふことを考へず、作柄と云ふことを考へずに、一反歩々々々に今まで年貢と云ふものがそれぞれあつたことは御承知の通りである、此の年貢が今は物納から金納にされて、生産者は現物を地主に出さなくても宜い、期う云ふことになるのでありますから、此の一反歩平均二俵と云ふ此のものを、自分の田を自分が作らうが、人の田を小作しやうが、さう云ふことは別として、此の田には是だけの義務供出すべき米があると云ふことに決めてしまふ、さうすれば極端なる風水害、天災等を被れば別でありますけれども、さうでない以上は、毎年々々一反歩二俵平均の四千八百萬石の米として考へらるべきものは政府へ供出される、斯う云ふことになる、さうすると安心して政府は此の基礎を以て配給の計畫を立てる、どうしても足らぬだけは何としても見返り物資を生産して、海外から輸入して貰ふ、斯う云ふ風にすれば、私は食糧問題は簡單に解決するのぢやないかと考へる、さうしますと百姓を致して居りますと、例へば三人の家族が一生懸命になつて、一町五反の田を耕作して、茲に百五十俵の米を穫つた、けれども一町五反に對して所謂義務供出量と云ふものは、一反平均二俵としますと、三十俵納めれば宜い、三十俵納めると、あとの百二十俵と云ふものは、其の耕作者三人の一家に於ける自由になるべき所の米となる、其の米の中、自分達の食糧とすべきものは殘し、さうして餘つたものは之を自由に販賣さす、所謂供出米と云ふものと、生産者が自由に賣ると云ふものと二段になりますけれども、さうすれば氣張つて働けば働く程自分の自由にし得る所の食糧が出來て來るから、茲に農事生産に樂しみがある、今の供出制度でありますと、お前の田は良く出來たから一反七俵はある筈だ、さうすると一町五反では百何十俵穫れる、お前の所は三人家族だから、是だけしか保有出來ないぞ、それだからあとは全部供出しければならぬ、其の家族の人數に依つて保有を許すと云ふことになりますと、働いて餘計穫れば穫る程すつかり出してしまふ、一方惰農があつて、家族が多い場合は、自分の所は田を作つたが御覽の通り出來が惡い、是だけしか穫れませぬから、私の家族の食べるのを引くと是だけしか出せませぬと言つて、自家保有米を引いて僅かしか供出しない、斯う云ふ横著な者を見ますと、氣張つて働けば働く程餘計供出で取られてしまふ、斯う云ふ氣持が、今囘の生産意欲を非常に阻止し、又供出の隘路となつて居るやうに私は考へる、ですから私の先程申しましたやうに、一反平均八俵なら八俵と云ふものを基準として、是は義務的に供出するのだと云ふことにしますと、裏作もやる、間作もやる、幾らでも餘計働いて此の土地の生産力を上げて行く、斯う云ふやうになつて來ると思ふ、お前の所は馬鈴薯を一畝作つたから二貫目出せ、お前の所は麥を作つた、此の成績なら是だけ出せ、昔のやうな檢見をやつて立會審査をやつて、取上げて行くと、洵に樂しみがない、斯樣に考へるのですが、政府も作付の結果を見てからの割當は到底出來ないし、早期割當をすれば實績と合はないし、又之を修正しなければならぬ、どうしてもそこに無理があり、所謂實際にぴつたり合はぬ政策を執らなければならぬ、私の申上げましたやうにしますれば、年々安心して或る量の食糧が確保される、斯樣に考へるのでありますが、政府當局はどう御考へになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=6
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007・楠見義男
○楠見政府委員 供出の問題と農家の生産意欲の問題に付ての只今の御話でありますが、此の問題に付きましては、同時に供出と生産意欲の問題、竝に割當の是正、公平の問題、斯う云ふ問題を綜合的に考へまして、從來色々各方面からも御意見があり、又建設的な御意見等もあつたのであります、實は政府に於きましても御承知のやうに、食糧對策審議會を設けまして、特に此の供出の問題に付て御審議を煩はして居つたのであります、只今森さんから御話になりましたやうな意向の點に付ても、種々議論が交されて居ります、問題は、割當と云ふものを土地にどの程度結付けるかと云ふことが一つと、もう一つはそれに依つてあとの、例へば只今御話になりましたやうに百五十俵なら百五十俵穫れる人が三十俵で足りる、殘りの百二十俵をどう云ふ風にして行くかと云ふ、此の二つの問題が中心でございます、併し一面に於きましては事柄を簡明に致しまする爲に、土地と結付けた所謂反別割、只今の森さんの御言葉で言へば、從來は小作料を物納で拂つて居つたのであるが、之を地主に拂ふ代りに國家に供出する、斯う云ふやうなことで變形して之を國の所要量として取つてはどうか、斯う云ふことも實は今申しました審議會でも、色々論議の對象となつたのであります、一面從來の割當に於て、所謂反別割としての弊害が起り、又割當の不公正と申しますか、斯う云ふやうなことで問題の對象になつたことも御承知の通りであります、そこで兩方の觀點から此の問題を突合せて、而も生産意欲を損じないやうな風に、寧ろ出來得れば生産意欲を昂揚する方に持つて行つたらどうか、煎じ詰めて申しますと、一部は土地に結付け、他の一部は農家の供出能力、家族構成其の他を見まして、それに應じての供出をやつて行く、其の場合に、作れば作るだけ取られると云ふのを、どう云ふ方法で以て生産意欲を損せず、又場合に依つてはそれを寧ろ昂揚する觀點から取扱つて行くかと云ふことが、現在最も難かしい問題になつて居るのであります、まだ結論を得て居らないのでありますが、併し少くとも此の場合に於て、現在のやうに食糧事情が窮迫をして居り、又二合一勺では到底不十分である、出來得れば之を二合三勺に復元をしたい、併しそれには絶對數量が足りない、斯う云ふやうな食糧事情の下に於きまして、之を自由販賣にさせた場合に一體どう云ふ結果が起るだらうか、又どう云ふ方面に此の米が流れるであらうか、又總ての經濟の苦しみが食糧であり、特に其の中心が米である譯でありますから、之を自由販賣に致しました場合の影響と云ふやうなことを考へますと、此の自由販賣と云ふ問題はさう簡單には參らないのではないかと思ふのであります、結局是は正常の「ルート」に乘せて、そして公平に一般に配給をして行く、唯其の場合正常の「ルート」に乘せる場合に於きましても、生産者に報いる途を講ぜなければならぬ譯であります、此のことが生産意欲の向上と、極めて密接不可離の關係がある譯であります、此の點に付て政府と致しましても十分考慮しなければならぬと考へて居る譯でありますが、斯う云ふやうな状況になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=7
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008・森幸太郎
○森(幸)委員 私は政府當局に十分の御研究を煩はしたい、我々は色々此の供出問題に付きまして研究致しましたけれども、それより外途がないと云ふことに、我々は結論付けて居るのであります、此の自由販賣に對しては、其の米が何處へ行くと云ふ御心配があるやうでありますが、一面我が日本の經濟の推移を今考へますると、容易に豫測を許されないやうな危機に突入するのではないかと思はれるのでありまして、昔のやうな金がだぶ付いて、自由販賣をすれば、幾らでも物が高く其の力に依つて買集められると云ふやうな經濟情勢は、恐らくここ暫くは出來ないのではないかと云ふことも考へられます、明日を測ることの出來ない日本の經濟情勢でもありますから、私は結局政府が安心して或る一定量を確保すると云ふことは、此の途より外ない、斯樣に考へるのでありますが、どうか一つ政府當局に於かれましても、十分虚心坦懷に研究をして戴きたいことを希望する次第であります
それから今忽ち農村として心配致して居るのは、米價の前途であります、是は相當もう既に植付も終つて居るやうな時でありますし、農村の人としては、今年の米が一體幾らで賣れるのだと云ふことを非常に考へて居ります、外のものはどんどん上つて行くし、馬鈴薯或は大麥の値段は發表されましたけれども、到底生産者の滿足するやうな價格になつて居りませぬ、米價に對しても非常に前途不安に思つて居るのでありまするから、政府は早き時期に於て成べく速かに、本年の米は斯う云ふ風なことに依つて決める、又米を決めるに付ては他の物資と斯う云ふ風な釣合で決めるのだと云ふことを發表して戴きたいことを希望して置く譯であります
次の御尋ねでありまするが、七月が本年の肥料の末期になつて居りますが、肥料の必要量が豫定されましたやうに生産が出來たであらうかどうか、是も何時も空手形になりまして三十萬「トン」拵へる、四十萬「トン」拵へると豫定はされましても、實際にはそれが出來ない、又それが出來ましても生産者の農家の手許へ配給されることが遲れる、今年は割方に、政府の御努力に依つて生産者の手許に早く廻つて居りますが、七月中に於て豫定通りの肥料が生産されましたかどうか、又生産される見透しが付いて居るか、此の豫定だ此の計畫だと云ふだけでは、生産者は安心出來ませぬ、確かに是だけは造り得ると云ふことを一つ御聽かせを願ひたいのであります、殊に長い間戰爭で、我々は希望して居りながら、手に入れることが出來なかつた過燐酸石灰に付きまして、原礦石に對しても、關係方面の配慮に依つて入手の途が開けたやうでありまするが、日本の土地と致しましては、土質の關係から申しましても、過燐酸石灰と云ふものは非常に收量を高める上に於て必要な肥科でありまして、今まで過燐酸石灰がない爲に、どれだけ生産力を減じて居つたかと云ふことも想像されるのでありますが、過燐酸石灰をどう云ふ程度に本年度は確實なる生産が出來る御見透しがあるか、併せて御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=8
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009・楠見義男
○楠見政府委員 供出の問題竝に米價の問題に付ての御希望の點は、私共も全く同樣の考へを持つて居るのであります、特に供出問題に付きましては、能く各方面の御意向も伺つて、適當な所に落著けて參りたいと考へて居ります、又米價の問題に付きましても、一般の農民の聲を我々と致しましては能く承知を致して居るのであります、此の問題は寧ろ米價が凡ゆる物の中心でありまするから、出來得れば私共と致しましては、他の物を抑へても、米價を中心にしてやつて行きたいと云ふことで、色々さう云ふ方面に努力も致して居りますが、今日の經濟事情、物價事情の本に於きましては、どうしても此の問題は考慮しなければならぬものと考へて居るのであります、唯一般の物價體系の下に於て、之をどう云ふ風に取扱つて行くかと云ふことは、極めて重大な問題でありますので、愼重に考慮致して居る次第でありますが、今御希望のございましたやうに、出來得る限り早く此の問題は解決を致したいと存じて居るのであります
それから御尋ねの肥科の問題でありますが、七月に付きましてはまだ分らないのであります、從來の肥科状況は一應計畫を立てて參りましたが、結局色々の資材關係、特に石灰の關係其の他の關係で、大體一と月位計畫がずれて居るやうであります、即ち例へば四月、五月、六月と云ふ風に、漸次逐月復舊も進捗致しまして、生産量も殖えて參る、斯う云ふことで參つて居りましたが、大體一と月位遲れて、此の計畫に近い數字が出て居るやうであります、中にはまだ豫定通りの復舊の出來て居らない所もありますが、併し肥料工場の中には、未だ曾てない生産量を擧げて居るやうな所もあるのであります、例へば富山の速星の工場の如きは、未だ曾て擧げて居らない成績を四月は擧げた、斯う云ふやうなことでありまして、逐次肥料工場は立直りを致して居るやうな情勢であります、隨て今後是も御承知のやうに、石炭「コークス」斯う云ふものは超重點的に肥料に廻して居るのでありますから、一般の肥料工場の生産意欲の向上、又政府側に於きまする之に對する指導監督と云ふことに依りまして、此の増産は逐次期待出來得るものと考へて居るのであります、特に各肥料工場に於きまして工場毎に復舊計畫、又生産計畫と云ふものを、從來のやうな天降り的な、又「ペーパー・プラン」の計畫ではなくして、具體的に工場に就いて生産計畫を立てて、之に對して各方面から協力し、又推進をして行くと云ふ方法になつて居るやうな情勢であります、それから過燐酸肥料の御話でありますが、是は今御話になりましたやうに、聯合軍としましても食糧と肥料は全く同一の重要性を以て、例へば「アメリカ」にありまする合同食糧委員會と云ふものは、是は食糧の割當に關する委員會でありますが、此の委員會に於きましても、特に日本に對する肥料の問題に付ては、全く食糧と同等の關心を持つて色々努力をして呉れて居るのであります、隨て燐礦石に付きましても、從來の「ラサ」大東島と云ふやうな所だけでなく、或は佛印或は「アフリカ」其の他の各方面からの輸入に付きましても、色々政府としては考慮をして戴いて居るやうであります、具體的に今後どれだけの數量が入つて來るかと云ふことは申上げられませぬが、併し根本の考へとしては今申しますやうに、肥料と食糧は同等であると云ふことから致しまして、隨分努力をして呉れて居るやうでありまするし、私共も亦其の觀點に立つて、色々助力を懇請を致して居るやうな情勢であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=9
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010・森幸太郎
○森(幸)委員 どの位出來ます御見込でせう、過燐酸石灰、硫酸「アンモニア」、石灰窒素は今造つて貰ひましても今年の間には合ひませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=10
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011・楠見義男
○楠見政府委員 過燐酸石灰の數量に付きましては、私只今正確な數字を覺えて居りませぬので、後程御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=11
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012・森幸太郎
○森(幸)委員 私は此の戰爭中、殆ど手の著けやうもなかつた畜産、水産、蠶絲、此の方面に付ての今後の御方針を承りたいのでありまするが、餘り時間を取りまするから、是は他の機會に譲りたいと思ふのでありまするが、一寸蠶絲對策に付て御尋ね致したいと思ふのでありますが、蠶絲局長御見えになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=12
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013・馬越晃
○馬越委員長代理 御見えになつて居ないやうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=13
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014・森幸太郎
○森(幸)委員 それでは又の機會に致します、水産對策に付て御尋ね致したいと思ふのでありまするが、今日戰爭の爲に水産業者が、非常に色々の努力を拂はされたのでありますが、殊に漁船の徴發であります、此の漁船の徴發は、終戰後民間に拂下げたものもあるやうでありますが、到底今までのやうに之を活用することは出來得ないのであります、相當漁船の製造に付ては御骨折になつて居られることと思ひますが、併し此の資材、機械等の値上りから、其の價格の點も、戰前に對して十二、三倍も向上して居るやうに聞いて居ります、併し物價の昂騰は總ての物が上つて來るのですから、上つたものは仕方がないのでありますが、上つても船が出來得る相當の途が開いて居るかと云ふことに付ての内容を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=14
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015・三堀參郎
○三堀政府委員 只今仰せの通り、今後の水産對策の非常に大きな目標は漁船の問題なのでありまして、此の前本會議で大臣からも申されました通り、漁船の減り方は特に優秀漁船に於て著しいので、それを急速に補ふ意味に於て、昨年末閣議決定で復興計畫を立てて今著々進んで居る譯なのであります、只今の造船上の隘路と申しますものは、御指摘の通りに資材面、其の他にも勿論ありますけれども、問題は專ら船價に繋つて居るやうであります、幸か不幸か他の造船關係が、客船、貨物船殆ど總て「ストツプ」の状態になつて居りまして、有力な各造船業者が、殆ど全部漁船の建造に掛つて居るのであります、さう云ふ意味に於きましては、漁船の建造は非常に順調に進んで居る譯であります、唯問題は御指摘の通りに、船價が十倍以上にもなつて居るのでありまして、是は此の先殆ど見透しが付き兼ねて居る状態なのでありまして、隨て漁船に對する資金の手當が、漁業者に取りまして非常な痛手となつて居ります、我々簡單に概算致しましても、三十三萬「トン」の計畫を遂行致しますのに、大體五十數億の金を要するのではないかと思ひます、勿論其の中若干のものは手持資金等がありますが、金融機關の融通を受けなければならないものが、大體三十五、六億程度になるのではないかと云ふので、非常に心配を致しまして、農林中央金庫、勸銀、興銀等中央に於きまして、從來から漁船關係の金融に當つて居りました各金融機關に對しましては、極力事情を話しまして、金融の途を仰いで居る譯なのでありまして、今までの所大體に於きまして、順調に進んで居るやうに、私共としましては考へて居るのであります、此の船價を適當な所に落付けると云ふことは、非常に必要だと思ひますけれども、申上げるまでもなく、造船業は綜合産業なのでありまして、簡單に船價を一定の所に釘付けすると云ふことが出來兼ねる状態なのでありまして、公定價格を決めることは勿論是はさう難かしいことではないと思ひますけれども、公定價格を決めたが爲に、却つて今の所順調に進んで居る此の漁船建造を、船價を決めたが爲に「ストップ」させると云ふことになりましても、角を矯めて牛を殺すと云ふことになりますので、此の所運輸省の方とも緊密な連絡を取りながら、專ら内面的に漁船の建造に當る造船關係の者と、漁業者との間の内輪の話合で、出來る限り適當な所に收めるやむに致したいと思つて努力して居るのであります、それには今御話申上げましたやうな、殆ど現在の船の注文主は漁業者なのでありますから、漁業者の間に於て不當に自己の船のみを早く造りたいと云ふ利己的な心が動かなければ、さう無暗に造れないと云ふことはない譯でありますから、さう云ふ面をも考へまして、今色々と折衝致して居るのであります、隨ひまして漁船の建造は現在の所――先行きは勿論鐵鋼の關係其の他非常に種々困難があらうかと思ひますけれども、現在の所、さう非常な困難は感じて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=15
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016・森幸太郎
○森(幸)委員 御答辯洵に有難うございましたが、此の漁船が非常に値上りして來た、是は仕方がないと思ひますが、此の漁船を造るに付ての資金であります、此の資金に付ては、一時に十二、三倍も上つた船を造ることは、個人と致しましては中々困難であります、どうしても金融機關の援助を仰がなければならぬのでありますが、今日金融機關が此の船價に對して、金を出して呉れるか呉れぬかと云ふ問題であります、それは私の考へでは、漁船に對する保險制度が確立致しまして、相當の保險が附けられると云ふことになれば、金融機關は喜んで――喜んでと云ふことはありませぬけれども、兎に角金融を考へて呉れるのではあるまいかと思ふのであります、今日の金融制度と云ふものは洵に貧弱でありまして、あの制度に於きましては、船を造るに付て金融機關が力を貸すと云ふことは、一寸首を傾けて應じないのではないか、斯樣に考へるのでありますが、此の漁船に對する保險制度に付ての御考へを承りたい、又茲に關係方面より農業に對する保險制度を設けよと云ふ指令もありまして、色々農林省としては御研究になつて居るやうでありますが、家畜に對する保險、或は農耕作物に對する保險、又養蠶に對して繭の生産に對してまでも保險をするやうに政府は御考へになつて居るやうでありますが、此の農業保險、又併せて漁船保險の内容に付ての御方針を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=16
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017・三堀參郎
○三堀政府委員 漁船保險の點に付ての御尋ねであつたのでありますが、御話の通りに船價が非常に昂騰致しまして、從來のやうな保險金の關係では、漁業者と致しましては、折角保險金は貰つても、新しい船の建造には殆んど益する所はないと云ふことになりますので、此の保險金の最高額の大幅引上げに付きましては、既に手配を致しまして、各漁船組合とも準備を進めて居るのであります、唯問題はそれのみでは勿論片付かないのでありまして、最高保險金額を大幅に引上げると云ふことになりますと、漁船組合と致しましては、其の負擔が非常に大きくなる譯でありまして、隨て從來政府のやつて居ります再保險に付きましても、亦之を大幅に引上げなければならないことが、當然次の問題として起つて來る譯なんであります、現在百分の七十でありますけれども、業界の要望と致しましては、之を百分の九十位まで引上げて貰ひたいと云ふ希望がある譯であります、其の希望は尤もだと思はれるのでありますけれども、それに付きましては勿論財政的な國の負擔が考へられる譯でありますから、我々と致しましては關係方面とも折衝致しまして、財政方面の解決を得ると同時に、是は又勅令の改正も要するのでさう云ふ法規的な準備も講じたいと思つて、折角今色々と調査を致して居るの所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=17
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018・楠見義男
○楠見政府委員 農業保險の關係は、一般の耕地の問題、養蠶の問題、それから只今御話のございました水産の保險の問題、總て農業、水産業の經營の上に於きまして、極めて重大な密接な關係を持つて居る次第であります、從來も御承知のやうに農業關係に於きましては或る程度整備をした保險制度を持つて參りましたが、尚ほ今日の情勢に於きましては、再檢討を加へなければならぬ點があらうと考へるのであります、隨て例へば農業保險に付きましては、根本的に此の問題を再檢討を致しまする爲に、農林省と致しましても相當是から此の方面に力を入れて調査を致し、出來るだけ早く此の成案を得たいと努力して居るやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=18
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019・森幸太郎
○森(幸)委員 尚ほ資料を要求致してございますので、資料を戴いて又色々御尋ね致したいと思ひますが、他の機會に譲りまして、私の質問は此の程度で終りたいと思ふのであります、要するに政府が自分のやり損ひを自分の力で抑へて行かう、所謂自分の食糧に對する今までの政策が十分でなかつた、其の結果を自分の力で收めて行かうと云ふ、其う云ふやり方は洵にいけないのであります、どうか一つ此の食糧問題に付きましては、飽くまでも強權發動と云ふやうなことを考へずに、本當に生産者の立場を考慮し、消費者の立場を考慮して、さうして適當なる施策を以て進められんことを希望して私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=19
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020・馬越晃
○馬越委員長代理 苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=20
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021・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私も農林當局に向ひまして、以下五項目に付て御尋ねを致したいと思ふのであります、只今大臣がおいでになりませぬから、直接大臣から伺ひたいこともございますが、其の點は適當な機會に大臣から御答辯を願ひたいと思ひます、又時間も皆さんに御迷惑を掛けては相濟みませぬから、成べく簡單に要綱だけを申上げまして御答辯を戴きたいと思ひます
先づ第一に、此の措置令と供出未完納の分に付ての關係であります、大體本勅令は發布當時から非常に惡評でありまして、世間には如何にも惡法を公布したと云ふ感じを抱かしたのでございます、昨年斯樣な法律がございませぬ爲に、正直な者は馬鹿を見たと云ふやうなことがございましたので、何かしら之に對する對策を講じて貰ひたいと云ふ、眞面目な生産者及び地方の供出の監督に當る方々が希望を持つて居つたのでございます、所が割當を致しました際には、何等さう云ふことがございませぬので、又しても自分等は馬鹿を見るのぢやなからうかと云ふやうな氣分が、其の當時生産者にあつたと思ふのであります、隨ひまして昨年の不作に大きな原因がありましても、其の他に前年の左樣な經驗から致しまして、供出が可なり不成績だつたと云ふことは、是はどうも免れない心理状態であつたらうと思ふのであります、其の結果と致しまして一月の末に、是が對策として本措置令を御出しになることになり、二月十七日に發布されたことと思ふのであります、當時總選擧が間近にありました爲に、可なり選擧對策に利用されたやうな氣分も見えるのでございまして、それと又米價が非常に安かつたと云ふやうな關係から致しまして、供出が頗る振はなかつたと私は思ふのであります、なぜ一體割當を致しました時に、政府は之を出さなかつたのであらうか、どうしてこんなに遲れた事情があつたでありませうか、其の間に約四箇月もありますから、相當に横流しがあつたんぢやないかと私は思ふのであります、そこでさう云ふ結果から致しまして、本法を適用したのでございませうが、是は此の間本會議に於きまして幣原國務相が傳家の寶刀だ、斯う云ふ風に言はれましたけれども、此の調査に依りますと、四箇月間に千百八十九件も強權の發動の致して居ります、可なり澤山な強權の發動を致したと私は思ふのであります、是で尚ほ傳家の寶刀だと云ふ程度でありますれば、本當に適用すれば可なり多くの惡質の人が居るのだと云ふことは豫想に難くないと思ひます、其の結果と致しまして、今尚ほ二割五分の未供出のものがございますが、是は一體今後供出さるべきものでありませうか、若し全部が供出されませぬでも、何程か供出されませうか、其の點に付ての政府の御見解を伺ひたいと思ひます、又供出するに付きましても、還元配給と云ふことを條件としてやらせるやうな場合があるやうでありますが、是は無駄な手數でございまして、本當に消費者へ向けるやうな供出が、今の二割五分の未供出の範圍から一體どれ位供出されますか、其の點に付て先づ第一に御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=21
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022・楠見義男
○楠見政府委員 緊急措置令が、割當當時になぜ一緒に公布せられなかつたかと云ふ點でありますが、此の點に付きましては前日の本會議に於きましても、種々應答がございましたやうに、終戰後の色々な社會的な混亂から、又は經濟的な混亂、斯う云ふ事態に於きまして結局食糧問題は、先行極めて不安の状態が藏されて居りました、隨ひまして例へば千石農林大臣が納得づくの供出を要望し、又松村農林大臣が同胞愛に依る供出を要望せられたのであります、此の納得づくの供出と云ひ、又同胞愛に依る供出と申しますのも、總て此の食糧事情を切拔ける爲には、十分農家の方々の協力を得て萬全を期して行きたい、例へば納得づくの供出と申しますのも、出せる者だけ一つ出さうと云ふやうな、出す餘力のある者が出さう、斯う云ふ意味の納得づくではなくして、辛からうが、國の食糧事情は斯うなのである、隨て自分の飯米を割いてでも一つ全體の爲に出して貰ひたい、さう云ふことを能く農家に納得して戴きまして、さうして出して戴かう、斯う云ふのが納得づくの供出を要望された所以であつたのであります、又同胞愛に依る供出に致しましても同樣の趣旨であつたのでありますが、併し最初に申上げましたやうに、一般の風潮と申しますか、雰圍氣はさう云ふこととは凡そ反對の方向に參り、是は御手許に參考資料として差上げてありまする政府買入米の旬別進捗状況を御覽願ひましても分りますやうに、一月の下旬を境と致しまして、供出の進捗は漸次下り坂になつて參るやうな情勢であつたのであります、隨て此の状態ではどうしても食糧輸入の食ひ繋ぎまでは持たない、そこでどうしても已むを得ざる處置として、此の措置を講じたのであります、尚ほ傳家の寶刀としての役割の問題でありますが、此の點も昨日農林大臣から申上げました通りでありまして、實際の件數は千百數十件、石數は二千數百石に過ぎないのでありますが、是も政府買入米の旬別進捗状況に依りまして御覽願ひますと分りますやうに、二月の上旬から漸次下り坂に、例へば政府買入米が二月上旬で百十萬石のものが中旬には九十二萬、下旬に七十七萬、それが六十五萬、斯う云ふ風に漸次下りつつあつたものが、強權發動に於ける事前の行爲でありまする警告状を發することに依りまして、それだけで三月中旬には前旬の六十五萬のものが八十六萬になり、又下旬には百四十五萬になり、斯う云ふ風に、此の警告だけで是だけの成績を擧げて居るのでありまして、極端な言葉で申せば、傳家の寶刀的の役割は二千石、現實の收量は二千石であるけれども、間接の效果は百萬石以上のものが期待出來る、斯う云ふ風に實は私共考へて居るのであります
それから未完納の處置の問題でありますが、現實に現在の状況に於きまして、實際に持つて居る者、又既に横流し等を致した者、或は又食込みを致した者、それぞれ其の地方の事情に依つて違ふと思ふのでありますが、是は出來るだけ個人的な理由に基きまして、未完納なものに付きましては、是も御承知のやうに馬鈴薯及び麥の割當に際しましては、さう云ふものと睨み合せを致しまして、綜合供出制度を執つて居るのであります、此の點は從來のやり方とは違ひまして、市町村の食糧調整委員會、即ち村内でそれぞれの各農家の事情を一番能く知つて居る食糧調整委員會で十分に調査をして戴き、又調整をして戴きまして、今後の割當制度をやつて行きたい、此のことに依つて解決を致したいと考へて居るのであります、それから還元米の問題でありますが、是は概括的のことを申上げれば、還元米をしなければならぬやうな農家から供出を仰ぐ、供出を得ると云ふことは、是は實は變な話である譯でありますが、併し是も御承知のやうに時間的の繋がり、例へば半年先にはどうしても還元しなければならぬ、併し此の半年の間を生産者も消費者も繋いで行かなければならぬと云ふやうな場合には、どうしても時間的の繋がりをつける爲に、萬已むを得ざるの處置として斯う云ふやうなことをやつて居るのであります、戰爭中も實は此の食糧年度の後半期には、滿洲の糧穀類で繋ぐ、それまでの繋ぎとして還元米をしなければならぬやうな農家からも供出をして食繋いだやうな状況であります、本年も同樣に輸入食糧で後半は食繋いで行く、其の食繋ぎの爲に、どうしてもさう云ふやうな農家からも供出を得なければならぬやうな状況であつたのであります、此の事情は苫米地さんも能く御承知の通りであります、尚ほ全體の需給の問題に付ては今申上げました通りでありますが、地方的に見ましても、一つの縣で都市が既に食糧がない、併し農家には尚ほ三月、四月の分があると云ふ場合には、どうしても國全體に於ける操作と同時に、縣自體に於きましてもさう云ふやうな操作を講じて貰はなければならぬ場合も起るかと存じて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=22
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023・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今御話の還元米の配給でございますが、是が各地方に於きまして重大な問題を惹起して居るのであります、還元をしてやるから出して呉れと云ふことで、相當無理をして皆出した、其の分は村へ保有して置いて、さうして必要の場合には村民に配給すると云ふにも拘らず、それが一向實行されぬ、さうして寧ろ其の村の保有米を他の地方へ移動すると云ふやうな場合がございまして、非常な大きな問題を地方で喚び起して居る状態でございます、是は一面に於きましては、唯苦痛であるばかりではなしに、政府に對する信用を非常に害して居ると云ふやうなことで、農民が政府に離反すると云ふやうなこともさう云ふやうな所から起ると思ふのであります、それならば其の最初の割當が非常に無理であつたかどうか、斯う云ふことでございますが、是は押付割當と云ふので、上の方からどんどん下部へ割當てて參りますが、併し最端下部では其の生産の實收を能く檢しまして、さうして大體可能だと云ふ數量を個人に割當てて居る筈であります、現に其の審査に當つた方の話に依りますと、此の程度ならば出し得る、斯う云ふ風に私共は聞いて居るのであります、さうすると云ふと、二割五分の未完納と云ふものが果してどうなつたであらうかと云ふことが疑問になるのであります、若し割當が本當に無理であつたと云ふことでありますれば、之を全部取上げると云ふことは無理だと私は思ふのであります、けれども檢査した方の側から申しまして可能だと云ふ數量であつたとしますれば、何處にでも是は供出をして貰はなければならぬものだと思ふのであります、若し供出すべきものが横流れをした爲にそれが出來なかつたと云ふことでありますれば、悉く是は惡質のものでなければならぬと思ふのであります、其の點に對して此の措置令が出ない前でありました前年度に於ては、是は其の儘打切られて結構だと思ひますが、措置令が現に存する限り、さう云ふ場合にはどんな解釋をして、どう云ふ處置を執らるるのでありませうか、もう一度御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=23
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024・楠見義男
○楠見政府委員 只今御述べになりましたやうな場合に付ては、先程申上げましたやうに、食糧調整委員會に於きましてさう云ふものを保有量として見て――保有量と申しますか、殘存量と見まして、麥なり馬鈴薯なりの割當を致して居るのであります、結局其のものは出して貰ふと云ふ頭で以て、供出割當を致して居るのであります、結局是はどうしても現在の状況の下に於きましては、農家からは出して戴きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=24
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025・苫米地義三
○苫米地(義)委員 それでは其の點は能く分りました、唯割當が非常に無理であつたと云ふ點は、確かに事實だと思ふ、其の無理な割當を無理に取上げると云ふことは、政治の面から言つて少し無理ぢやないかと私は思ふ、此の點は今囘の割當を他の品物に依つて取上げると云ふことに致しましても、十分に御考慮が必要であらうかと思ひます
其の次に、供出制度合理化の問題ですが、大體總ての問題は供出の方法が不合理であると云ふ所から出發して居ると思ふのであります、之に對しては、先程森委員からの質問もあり、御答へもあつたやうであります、まだ政府ではつきりした方針が立たぬと云ふことでございますけれども、もうそろそろ收穫の時期にもなつて參りますし、何か不安な状態が農村にもございますから、是は出來るだけ早く農村の安心の行くやうな方法を案出致しまして、早く知らせる必要があるのぢやないかと思ふのであります、其の要點は、實際の生産はどれ位あるかと云ふことをはつきりと掴むことが一番の前提だと思ひますが、今までの割當制度は何だか簡單な方法を採るやうなことになりまして、最後の末端に參りますと、やはり段別割當か何かのやうに致してしまふ、土地の生産力であるとか、或は環境の差異であるとか云ふやうなことを一切拔きにしまして、簡單に耕作面積に割當てると云ふことが通例であるやうに思ひます、而も其の耕作面積と云ふものは非常に不正確であります、此の不正確な面積を捉へまして割當てますから、農民の幸不幸と云ふものがそこに生れて來ると思ふのでありますが、之をどうしてはつきりさせるかと云ふことが、我々の前提條件になると思ひます、徹底した方法に依りますれば、共同脱穀と云ふやうなことが一番正確に現はれるのでありますが、斯う云ふ點に對しまして、政府は積極的に共同脱穀をやらせると云ふやうな御意思でもございませうか、其の點を伺ひたいと思ひます、是は私共の經驗なのですが、實際多年農村に歸つて居りますと、卵の供出があると言ひますと、鷄を置かぬ家でも置いてある家でも、一樣に或る程度の供出をして呉れ、野菜の供出を言つて來ましても、各戸何貴目出して呉れと云ふやうなことを言つて來るのです、弱い者、おとなしい者は皆それで泣寢入りをして居るのでありますが、末端の割當制度と云ふものはさう云ふことさへあるのでありますから、中々容易でないことではありますけれども、是は合理性を缺けば、いつまで經つても不平は起ると思ふのでありす、それでありますから、特に割當に對する合理性を以て行くと云ふ御方針にならなければいかぬと思ひます、先程森委員から一つの案が出されましたが、私も一つの私案を御參考までに申上げたいと思ひます、土地の生産力を基準としなければどうしてもいかぬと思ひます、隨て昔から刈分制度即ち折半供出制度、之を一方に押へたらどうかと思ひます、さうしますと全國六千萬石生産致しますれば、三千萬石が入つて來るのであります、さうして同時に一町歩以上の耕作者に對しましては、一町歩以上の分に段當二俵なら二俵を各町村で操作米として保有させる、さうして其の外は一切自由にすると云ふことに致しましてはどうかと云ふ點と、畑作に對しては定額供出量、是は其の地方の生産歩合がございますから、凡そ檢見すれば分るので段當幾ら供出をせいと云ふやうな、先程森委員から言はれたやうな供出方法に依りまして、此の二本建制度に依つて供出をさせれば、餘り大した混雜がなくて、さうして農民も從來から慣例になつて居る小作刈分制度の慣習がございますから、さう無理な感じを持たずに、相當の實收が擧るのぢやないかと私は思ふのであります、此のことは一方から申しますれば、土地の利用が國家的に役立つと云ふ認識を得るのと、農業それ自身も國家に奉公して居ると云ふ氣持を出すのと、又其の土地を自分が信託を受けて農業をやつて居ると云ふやうな感じも、自ら出て來るのぢやないかと私は思ふ、私は工場の經營に對しても信託經營と云ふことを實行致しまして、事業は社會から信託を受けて、資本は民衆から信託を受けると云ふやうな氣持で、從業員全部が信託協働體として働かうぢやないかと云ふことを「モットー」として、現在實行して居りますが、可なり好い成績を擧げて居ります、隨ひまして土地所有の問題に付きましても、農民は土地と云ふものは自分の所有ではあるが、國家の土地を預つて居るのだ、農業自身も自己の利益ばかりでなしに、社會に對する一つの義務を背負つて居るのだと云ふやうな道義觀念を以て、農業を實踐すると云ふことになれば、そこに日本の道義國家の再建と云ふことも亦一面から現はすことが出來ると思ふのであります、是は一擧兩得の案ぢやないかと私は思ふのでありますが、左樣な點に對しまして、御所感がありますれば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=25
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026・楠見義男
○楠見政府委員 供出の問題に關聯しまして、特に其の公正を期する爲には、生産量を正確に掴むことが最も重要であります、是は只今御述べになりました通りでありまして、隨て私共も本年の麥に付きましては相當馬力を掛けまして、各方面を總動員して、麥の段別竝に生産量を正確に掴むやうに努力を致したのでございますが、米に付きましても此の麥で得ました經驗を基礎と致しまして、特に此の點は十分努力をして參りたいと思ふのであります、それに關聯しまして共同籾摺調製等の問題に付ての御意見でありますが、實は私共も斯う云ふことに依つて、最も正確に生産量を掴み得るのではないか、斯樣に考へまして、昨年はさう云ふことで以て進めたのであります、實は省令も改正を致し、通牒も出したのでありますが、結局全體の空氣がそれに對してそつぽを向いて居るやうな状態でありましたので、所期の效果を得られず、又中間の指導者の方々も、それに付て寧ろ政府側に對して反對の意向で、農民諸君に接せられまする爲に、總ての問題が思ふやうに參らなかつたのであります、此のことは他の事柄に付ても同樣でありますが、色々生産量其の他のことを正確に掴みます場合に、斯う云ふ案が宜いのぢやないか、又さう云ふ案を政府として取上げて、いざ實行になりますると、色々足を引張られ手を引張られ、效果を擧げられないと云ふやうなことがありますので、是等のことに付ては中間の指導者の方々の協力、又趣旨の徹底、啓蒙と云ふやうなことに特に協力を得まして、努力をして參りたいと考へて居るのであります、末端の割當の公正の問題に付きましては、先程來色々申上げました通りでありまして、結局是は民主的な食糧調整委員會に、政府と致しましては期待する所極めて大なるものがある譯でありまして、是が適正なる運營を政府と致しましては非常に期待して居るやうな状態であります
それから割當に付ての一つの試案として、苦米地さんから御話を承つたのでありますが、自由販賣の問題に付きましては、先程森さんの御質問に對して御答へ致しました通りでございますが、併し此の試案として御考へになつて居りますことに付きましては、十分私共も參考として今後の供出割當の案を作ります場合に、其の他の色々の案とも一緒に檢討をし、又參考に致して參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=26
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027・苫米地義三
○苫米地(義)委員 第三點でございますが、農産物の價格の問題、是は先程森委員からの御質問に依りまして御答もございましたが、供出の不結果の原因は、米價の安いと云ふことに重大な理由があると思ふのであります、其の他の農作物に付きましても、非常に釣合が破れて居ると云ふことを知るのでございます、茲に御提出になりました主要食糧價格の指數がございますが、之を農産物の肥料關係と對照致しますと、昭和十二年に對する現在の値段の指數は、玄米は九六八%、最も高くなつて居りますものは裸麥の一二九三%でございます、所が之に對しまして硫安の現在の値段は二七四〇%でございます、石灰窒素は三五四八%、過燐酸は二五六〇%、鍬は二五〇〇%、「プラウ」は二五〇〇%、水田の除草機が四〇〇〇%、藥劑の銅製劑は二〇〇〇%、砒酸石灰が二一〇〇%、夥しき差が茲に起つて居るのでありまして、農産物價格の安いと云ふことは一目瞭然でございます、無論米價を基準として總ての物價を調整すると云ふ大きな方針に對しましては、當然考へなければならぬのでありますが、此の高くなつた、而も官廳で認めました此の値段を引下げると云ふことは、私は容易ではないと思ひます、隨て低いものを高い方へ寄せて行くと云ふ以外には私は手がないと思ふ、此の農産物の價格の跛行状態が、何時も遲れて行くと云ふ所に農村の困難性が伏在して居るのでございまして、他の物價と釣合を同時に取つて行くと云ふことでなければいかぬと思ふのであります、此の前硫安の價格を決定致しました際にも、米價を決めると同時に、或は決める前に御決めになつてはどうかと云ふことを御注意申上げたのでありますが、是もやはり米價が先に決まり、さうして肥料が後に、而も非常に澤山値上りをしたと云ふ情勢でありまして、假令此の肥料を使ひまして出來た生産物は値段が上るに致しましても、農村としては安い三百圓の米を賣つて、高い肥料を買付けなければならぬと云ふやうなそこに矛盾が出來るのであります、是等に對しては此の價格を是正すると同時に、肥料價格其の他の決定の際には、農産物の價格と併行して調整して行く必要があるではないかと思ふのでありまして、此の點に對する政府の今後の御考へに對して一應御伺ひしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=27
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028・楠見義男
○楠見政府委員 先程價格の問題に付て申上げましたことは、結局農産物が凡ゆる物の中心になつて居りますので、隨て出來るだけ惡循環は避けなければならないではないかと云ふことを申上げたのであります、併し現實の問題に付きましては、只今御述べになりましたやうに相當不均衡が出て參つて居るのであります、尤も今御例示になりましたやうな指數の變化に付きましても、單純に此の指數の變化で以て變更すべきではないのでありまして、是は農林大臣が本會議でも申上げましたやうに、それが農産物の價格構成の上に於きまして決める割合と云ふものを見なければならぬことは、是は苫米地さん御承知の通りなのであります、併し何と申しましても現實の問題は不均衡な點が出て居ると思ふのでありまして、是は速急に我々としましても考慮をしなければならぬことと考へて居ります、同時に大きな要素の變更と云ふやうなものが起つて參りました場合には、それと同時に或は少くともさう云ふ事柄だけは、同時に生産方面にも知らせると云ふことは是非今後はやつて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=28
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029・苫米地義三
○苫米地(義)委員 先般農林大臣が本會議に於て御話になりました馬鈴薯及び麥の値段を調整する爲に補償金を出す、其の數は大體今の倍であるかの如き印象を受けたのでありますが、若し米價も完全に其の線に沿つて倍にして六百圓に致すとしても、それは非常に低過ぎるのではないか、又六百圓の構想で御進みになつて他の物價は段々上つて來るやうになりますと、又後を追掛けて供出が十分に行かない、農民は不滿を抱くと云ふことになるであらうと思ひます、そこで先般農村の方々に聽いて見ますと、三千圓位でなければ思ふやうに出ないであらうと云ふやうな話もある位でございます、是は併し他の物價との比例を破らない限りに於て、餘り米だからと云つて特に抑へると云ふことはいかぬと思ひますから、其の點を十分御考慮を願ひたいと思ひます、それから結局食糧問題は國内の増産問題でございますから、國内で以て食糧の自給政策を執る、さう云ふ農業政策を是から執つて行くかどうかと云ふことが基本問題だと思ふ、從來日本の食糧は國内の自給が出來ないと云ふことが大きな前提で、農業政策が行はれたやうに思ひます、又國民も土地が狹く、人が多いからどうしても食糧の自給は出來ないのだと云ふ常識にもなつて居るやうでございますが、此の食糧自給不可能と云ふ前提が、日本の農業政策をして外地に伸ばす、又滿州に伸ばさした原因だと思ふ、此の大きな意味の農業政策が侵略主義者の乘ずる所となつて、段々に今日の状態にまで推し進んで行つたやうな感じもするのであります、そこで條件の惡い東北地方、或は北海道地方の開拓、或は農業の生産力の増加等に對しまして十分なる努力を拂はれずに、環境の好い外地及び滿洲に伸びたと云ふ所に私は缺點があると思ふのであります、今後我々は國内で以て食糧の自給はするんだ、必ずするんだと云ふ前提を以て、農業政策を立てるのが本當だと思ふ、此の點に對して農林當局は、現在此の日本の環境に對してどう云ふ風に御考へになつて居りませうか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=29
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030・楠見義男
○楠見政府委員 食糧の問題に付きましては、特に自給力の點に關しましては、私共は最大限度に此の自給力を上げる、出來得れば自給可能にまで持つて行くと云ふ方向に向つて努力を致すべきは當然でありまして、隨て例へば只今御述べになりましたやうに、尚ほ土地の開發或は改良の點に於て改善を要すべき方面に付きましては、特に是から力を入れて行かなければならぬことは當然であります、唯問題は是からの日本の産業なり、經濟の在り方を、一體どう云ふ風に考へて行くか、例へば總ての者が農業に從事する、是は極端な話でありますが、さう云ふやうなことで行くべきであるか、或は又一面工業國として、平和裡に貿易關係に於て輸出をし、又其の見返りとして適地適作地帶から食糧を得ると云ふやうなことも、國全體の大きな觀點から考へなければならぬ問題であらうと存ずるのであります、唯最初に申上げましたやうに、我々と致しましては、特に生産面を預かつて居ります農林省と致しましては、最大限度にまで此の自給力を上げる爲に努力して行かなければならぬと云ふやうに考へ、又現にさう云ふ方法で以て努力致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=30
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031・苫米地義三
○苫米地(義)委員 日本の産業は「ポツダム」宣言に依りまして制限を受けました、隨て貿易を積極的にやるやうな産業は撤去される、又制限を受けると云ふことでありまして、外部に輸出産業を大いに振興して、其の資金を以て必要な食糧其の他の輸入を圖ると云ふことは、當分の間望みがないと私は思ひます、それ故に日本で出來得べきものは多少費用が掛りましても、自給政策を執るのが本當ではないかと私は斯う思ひます、若しさうでなく、自由貿易の立場になりまして、日本の農村、或は農産物を一般の市場の線に曝されましたならば、私は日本の農産物の生産價格が到底堪へ得られない所まで行くと思ひます、隨て日本の農業は萎靡衰退すると云ふことは、論を俟たないと思ふ、どうしても日本では國内自給を圖ると云ふ前提の下に、凡ゆる施策をそれに集中して、さうして土地の生産力を昂め經營には科學性を與へ、さうして出來得る限りの量の増加、價格の低下を來すべき方策に出なければならぬと私は思ひます、併し一面から言ふと、食糧は自由に安い物を海外から持つて來てさうして産業を工業的に振興すべきだ、斯う云ふ議論もあるやうであります、私は此處に「パンフレット」を持つて居りますが、石橋藏相が述べた本でございまして、
〔馬越委員長代理退席、委員長著席〕
是は食糧自給政策抛棄の必要、斯う云ふことを述べて居ります、我國は總ての食糧を國内に自給すべきかと云ふと、是も宿論でありますが、私は自給すべからずと主張致します、――閣僚内には斯う云ふ持論のある方が居りまして、日本の食糧自給と云ふことの農業政策は、或はそれに依つて阻まれるやうなことがありはせぬかと私は憂へるのであります、併し私はどうしても食糧の自給のない國家は獨立性を缺くとさへ感ずるのでありますから、農林當局は飽くまでも環境の惡い所をも克服して、食糧増産に當つて戴きたいと私は思ふ、それに對しましては東北、北海道にまだ開拓の餘地は澤山あるのであります、是等は環境が惡い故を以て、今までは閑却されて居つたと云ふやうな事情でございます、此の邊に對する積極的な施策を政府は講ずべきだと私は思ひます、のみならず産業道路、河川の修理、農道の増設、是等に依りまして物の生産と云ふものは遙かに増進されるのでございます、私は之に對して莫大な費用が掛ると思ひますが、幸にも今囘財産税の徴收がございます、富の國家還元でございませう、此の財産税は國家の富を再生産すると云ふ方面に活用すべきでありまして、新聞で傳へられるやうな國の歳出に之を使ふとか、過去の負債に充當するとか云ふやうなことでなしに、國の富を増すと云ふ方に使つて行くのが本當ではないか、さう致しますと其の事業の爲に勞力が要りますから、失業救濟の爲に六十億を使ふと云ふことでなしに、國家が必要な富の施設をすると云ふことから勞力を必要とする意味に於て、今の失業問題も自を解消すると思ふのであります、斯う云ふ點に對する農林當局の御考へはどうでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=31
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032・楠見義男
○楠見政府委員 食糧の自給の點に付きましては、先程も申上げましたやうに、最大可能限度まで之を引上げて行くと云ふことに付きましては、申上げました通りであります、唯此の問題は今申上げましたやうに、全體の調和と云ふことを考へて參らなければならぬのでありまして、議論が動も致しますと極端になりまして、例へば桑は要らぬぢやないか、寧ろ桑を全部引つこ拔いて食糧に轉換しろ、斯う云ふやうな極端な議論まで實は出て來るやうな状態でありまして、是等の點は特に調和、又將來と云ふことを十分愼重に考慮しなければならぬ問題であると存ずるのであります、唯苫米地さんも仰せになりました如く、最大可能限度まで是は上げて行く、特に其の場合に、是も先程申上げましたのでありますが、從來取殘された地帶、特に北海道のやうな所は、是は私が申上げるまでもなく、明治初年に開拓使まで出來まして、大々的に國家の事業として之を採上げたのでありますが、それが途中に於きまして、臺灣、朝鮮或は滿州に目が向き、或は現在に於きましては南方に目が向きました爲に、結局折角明治初年に最初に採上げた此の開拓關係が今日まで殘された、併し是は又考へ樣に依りましては、今日此の事態に於て、其の未墾の所が殘つて居つたと云ふことは、或る意味に於ては是は幸であるとも言へるのでありまして、斯う云ふ方面に付ては今後特に力を入れて行かなければならぬと云ふ風に存ずるのであります
財産税の問題に付きましては私詳細に存じませぬが、假に之を國家の支出に充當すると云ふ場合になりましても、此の國家の支出は現在の情勢の下に於きましては、再生産に向けられる支出が多いのであります、結局國家再建の爲の再生産的の支出に向けられるのでありますから、當然さう云ふ場合には今のやうな方向に行くものと思ふのであります、特に失業救濟的の豫算、大きな六十億の豫算も實は大部分と云ふものが再生産事業であり、更に其の主要なる部分は農業關係に向けられる、斯う云ふやうな情勢になつて居ることは御承知の通りであります、私共としましては十分是等の點は主張致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=32
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033・苫米地義三
○苫米地(義)委員 食糧自給政策を農業政策の基本にするかどうかと云ふことは、重大なる問題と私は考へますので、是は農林大臣から適當な機會に御答へを願ひたいと思ひます
もう一つは食糧の自給の爲には、日本人の食生活を改革する必要があると私は思ひます、今までのやうに白米を常用致しますれば、水田は最早是れ以上擴張することは出來ませぬから、結局日本では食糧自給不可能と云ふことに陷るのでありますが、若し日本人の食生活を改革致しまして、一囘は「パン」食にするとか、或は白米に雜穀を加へるのが榮養的にも宜いし、又日本人常食として味のあると云ふやうな、科學的な研究を致しまして、さうしてさう云ふ食糧を日本人の基本食だと云ふ風に致しますれば、其處から農業生産の大きな方針が生れて來ると思ふのでありまして、將來畑作の開拓餘地が非常に澤山でございますのと相呼應して、食糧自給の政策には貢獻するだらうと思ひます、それ故に之を唯放任せずに、政府は適當なる食生活の改善委員會と云ふやうな種類のものでも作つて、さうして我が國民の食生活に對する基本的な研究をなされる御意思はございませぬか、此の點を一つ御伺ひ致つます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=33
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034・楠見義男
○楠見政府委員 御答へ申上げます、今後の食糧需給状況、特に只今御話になりましたやうな自給力を最大限度まで上げて行くと云ふやうな觀點から申しますと、結局從來の食生活に付ては相當改善をし、場合に依りましては改革と云ふやうな言葉を使はなければならぬ程、終局に於ては變へた形にならざるを得ないと思ふのであります、此のことは又一面から申しますと、是からの農業生産の上に於ける適地適作と云ふやうなことから申しましても、當然である譯であります、結局此の食生活は澱粉、蛋白、脂肪、斯う云ふやうな三要素を取混ぜた榮養的な觀點、又「カロリー」的な觀點から改善をして行かなければならぬと存ずるのであります、隨て只今御質問になりましたやうな點に付きましては、政府と致しましても十分考慮をして參りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=34
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035・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私は最後の問題と致しまして肥料問題に付て伺ひたいのであります、總ての問題は食糧の増産にある、食糧増産は肥料の供給にあり、肥料なければ農業なしと云ふ諺がございますが、我が國情では全く其の通りでありまして、本當に總ての農産物は肥料の變形だと云つて私は差支へないと思ふのであります、昨年のやうな大凶作の時でありましても、若し肥料があつたとすればどれ位穫れたか、私は青森縣の農事試驗場に依頼をして、昨年の配給肥料と、それから肥料が十分にあつた時の耕作法とを併行して試驗したのでありますが、米に於ては二五%、麥に於て二一%、馬鈴薯に於て四三%の差が起るのであります、肥料さへあれば是だけ増加致すのでありまして、先般農林大臣が本會議で説明されましたやうに、去年の米作は二割七分減少したと云ふことでございますけれども、若し肥料さへあれば、是等の増産に依りまして大體解決することが出來たやうにも思ふのであります、所が昨年の肥料配給量と云ふものは昭和十三年に比較致しますと、自給肥料を除きまして、所謂販賣肥料が六百萬「トン」ありましたのが、昨年度は僅かに六十九萬「トン」即ち一割一分五厘しか供給されなかつたのであります、之を窒素肥料に計算致しますと、所謂豆粕とか魚肥と云ふやうな種類のものを加へましても、僅かに二一・四%、硫酸肥料の如きは四・二%、加里肥料は五・三%、斯う云ふ状態に陷つて居るのでありますから、如何に政府が希望的な割當を致し増産を希望致し、又農民に涙が出る程働いて貰つても、到底是は實現する譯がないのであります、此の肥料の増産に對して政府は一日も早く全力を盡して是が解決に當るべきであつたと思ひます、又一面に於きましては自給肥料が非常に大事なものでございますが、地方へ參りまして一般の事情を見ますと、廐肥でも堆肥でも、堆肥盤がある所がない、堆肥小屋のある所が少いと云ふことで、是だけ大事な肥料が空しく失はれつつあると云ふ現状が見られるのであります、是は農家に科學性がない、肥料常識がないと言へばそれまででありますが、政府が之を此の儘見送つて居ると云ふ手は私はないと思ふのであります、又東北、北海道方面に於きましては折角立派な廐肥がありますのに、雪の上に澤山積んで置く、春先になれば道路が不便でありますから、雪の上を橇で以て田の上に運んで行く、さうして折角の肥料分を水に流してしまつて、粕だけを田に注ぎ込むと云ふ状態でございます、是等は農業技術の面から申しましても、國家の經濟の面から申しましても、どうしても此の儘放置してはならぬと私は思ふのでありまして、之に對して政府は何か御考へになつて居りませうか、從來僅かばかりの補助金を出して居りますが、そんな程度ではいかぬと思ひます、どうしても積極的に必ず各農家に堆肥小屋と灰小屋は作らせると云ふ所まで施設を進めて行かなければならぬと思ふのであります、此の點に對して今御考へになつて居る點がございませうか、一應此の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=35
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036・楠見義男
○楠見政府委員 食糧増産の觀點から見ました肥料の重要性に付きましては、全く苫米地さんの御話になりました通りであります、特に化學肥料に付きましては、政府と致しましては最大の努力を之に傾注致して參つて居ることは御承知の通りであります、自給肥料の點に付きましては、是も御承知のやうに從來數千萬圓の金を此の所毎年出して居るのでありますが、最近に於きましても同樣、自給肥料の増産は、一面化學肥料の不足を補ひます爲にはどうしても必要でありますので、從來と同樣の數千萬圓の金額を此の方面に注ぎ込んで參りたいと存じて居るのであります、唯此の自給肥料の増産の中で、例へば堆肥盤と云ふやうなものになつて參りますると、「セメント」を多量に要しまするが、御承知のやうな「セメント」事情でありますので、結局是は出來ないこと、又無理なことを奬勵方策として採上げましても、實效を擧げ得ず、却て非難を受けるばかりでありますので、さう云ふことでない方法を以て自給肥料の増産を奬勵して參りたい、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=36
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037・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の御答の中で「セメント」が窮屈だから出來ないと云ふ風にも伺はれますけれども、是は日本の國で一番原料があつて、一番出來易いものはやはり「セメント」だと思ひます、石灰の隘路はありますけれども、肥料が重點的に絶對に必要だとなれば、其の點は間に合はせることが出來ると思ひます、それ故に、唯金をやつて各農村でやれと言つても中々出來ませぬから、あんなものは掘立小屋でも出來ることでもありますから、各農家の設備を農業會なり、或は適當なる請負者に任せて、さうして之を積極的にやると言へば實現が可能だと思ひます、左樣な點に付きまして御考慮置きを願ひたいと思ひます、何と申しましても肥料の問題は、滿州から從來多量の大豆粕を輸入して居りましたのが止りますし、魚肥は鰮の不漁に依りまして大量の期待は出來ませぬし、結局は化學肥料の増産供給に依る外はないと思ふのであります、隨て化學肥料工業の復興促進と云ふことが、現在の問題として最も急務であり、最も重大な問題だと私は思ひます、先刻も肥料全體に對しては申上げましたが、今の生産の状態は、之を昭和十三年に比べますと、斯う云ふ風になつて居ります、硫安の生産高は十三年度に於きましては百十五萬五千「トン」、それが昨年度は僅かに三十萬三千「トン」、本年の現状としましては、五月の製造は四萬一千九百二十七「トン」、ここまでは囘復して居りますが、昨年度はさう云ふ少い數字であります、石灰窒素は十三年度が十四萬八千「トン」、二十年度は八萬五千「トン」、現在即ち五月は一萬四千七百八十三「トン」、過燐酸石灰の如きは、十三年度は百十四萬五千「トン」、然るに二十年度は僅かに四萬八千「トン」、五月は九千四百三十四「トン」、斯う云ふ状態でございます、此の中の硫安の激減致しましたのは、戰災に依りまして硫安工場が非常な被害を受けて居る爲であることは御承知の通りであります、現に昨年の終戰當時、即ち八月の生産の如きは、僅かに全國總計で、四千七百五十「トン」と云ふ僅少な量でございまして、而も其の上日産化學の富山工場が三千五百「トン」造つて居りますから、他の全工場で僅かに千二百五十「トン」しか造つて居らなかつた、是は全く全減に瀕したことを物語るものでございます、幸に政府當局の御盡力もあり、當業者の努力もありまして、漸く本月は五萬「トン」程度にまで囘復致したのでありますが、是はどうしても昭和十三年の百十五萬五千「トン」と云ふ數量までは、一日も早く囘復する必要があるのであります、即ち現在五萬「トン」でありますから、之を少くとも早く倍にすると云ふことでなければならぬと思ふ、のみならず先程申上げました油粕類が、昭和十三年が百七十二萬三千「トン」ありましたのに、昨年は二十四萬五千「トン」しかない、此の有機質肥料は先刻申上げましたやうに供給が困難だと云ふ以上は、硫安、石灰窒素の數量をもっと殖やして、此の減少を「カバー」させなければならぬと云ふ状態でございます、それならば五萬「トン」以上の囘復は一體何時までに囘復するのかと云ふことが問題であらうと思ふ、農村は一日も早きことを望んで居る、此の一日も早く少くとも元へ返すと云ふことに對する政府の努力は多と致しますが、私はまだ遺憾ながら其の積極性に於て足りないものでありはしないかと思ふ、私の工場でも既に増産計畫を立てて居りますが、資材の面でも、資金の面でも、既に半年遲れて居る、此の遲れる理由はそれぢや何處にあるかと云ふことを考へて見ますと、一つは、資材がない、銘々の努力に依つては得られない、物動で割當を受けるのは少いと云ふことになつて居りますが、若し農林大臣が本會議に於て聲明されたやうに、肥料問題に對しては國家管理を斷行するのだと云ふ御話でありましたが、一日も早く之を斷行して、さうして銘々の會社では出來得ないことを、政府の力を以て強力に之を推進すると云ふことに依つて、私は促進することが可能だと思ふ、なぜならば、現在政府の所管になつて居る陸海軍の燃料厰、及び産業設備營團の所管する遊休工場、其の他民間に於きましても、色色な工場へ持つて行つて、其の儘利用の出來る機械器具及び資材があるのであります、自由に得ることは出來ませぬけれども、政府の力を以てすれば、左樣な機械は一方から一方へ移すと云ふことは、左程困難ではないのであります、隨て私は資材の問題で溢路があると云ふことを、高く言ふことは問違ひぢやないかと思ひます
其の次は資金の問題であります、現在物價が非常に高くなつて居りまして、昨年私共が計畫を致しました其の單價の三倍位になって居ります、隨て一日遲れれば遲れる程高くなると、現在食糧に於きましては新圓の制限を受けて居りまして、注文するのにも受手がないと云ふやうな状態で、是もやはり資金面の制限から遲れて居る事情でございます、なぜ此の必要な肥料の資金に對して、金の融通がそんなに一體長引くのかと云ふことは、是は事實問題として御考へを願ひたいと思ひます、一つの面は斯う云ふことであります、銀行の「シンジケート」が出來て社債に依つて融通する、斯う申します、併し先程申上げましたやうに、物價が非常に暴騰致して居りますから、巨額の資金が要ります、それ故に從來の拂込資本に對する二倍の社債では到底賄ひ切れない、せめて五倍の社債が出來得るやうな處置を執つて戴かなければ、實際問題として是は出來ないのです、又社債の發行限度に於て不可能な状態でありますれば、一時資金を貸付けても宜しいと思ふのであります、所が銀行の面から申しますれば、普通の市中銀行では、最近の金融の状態から申しますと、預金が餘りない、預金が餘りないからそれ程大きな巨額の融資と云ふものは出來にくいと云ふ點が一つ、それからそんな巨額の投資をしまして肥料價格と云ふものは、それに依つて多額なる値段を維持されるであらうかどうか、囘收されるであらうかどうかと云ふやうな企業的な疑惧を持つて居るのであります、當業者と致しましても、やはり同樣な氣持がございまして、一方は一種の企業「サボ」になり、一方は金融面から金融「サボ」になると云ふやうなことが、現實の上に於てあるのであります、それでは金のあるのは一體どこにあるのかと申しますれば、農林中央金庫にある、之には相當の金があると云ふことでありますが、工業に長期の貸付をするとか、投資をするとかと云ふことは、あの法律に依つては從來出來なかつた、今囘提案されて居ります改正法案が通過致しますれば、可能でございませうが、今まではそれは出來なかつた、而してそれに代るやうな處置を當局が執らなかつたと云ふことが、私は肥料復興増産に對する非常に大きな溢路であり、當局の責任であると私は思ひます、どうしても是は國家管理を斷行して、從來同業者の製造業組合の自治的統制の私は行詰りと思ひますから、國家管理に依つて之を打開して、能率の擧らない工場に對してはどうする、或は組合外にある機械、資材は之をどこに持つて來ると云ふやうなことを、政府の力に依つてやりますれば、必ずや増産は促進されると私は思ふのであります、之を斷行して戴きたいと思ふし、又早く斷行する御意思があるかどうか、一度御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=37
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038・楠見義男
○楠見政府委員 肥料工業の復興竝に今後の増産の點に付きまして、段々と御話を承つたのでありますが、實は私共も豫て今御述べになりましたやうな點に付きましては、關係の各方面から聞かされて居りますし、又鞭撻も受けて參つたのであります、そこで御尋ねの肥料の國家管理の問題でありますが、農林省と致しましては、一應一つの私案を作りまして、此の私案を基礎に致しまして、關係の各方面と現在色色御相談をして居るやうな状態でございます、出來るだけ速かに此の問題の解決に努めたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=38
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039・成島勇
○成島委員長 苦米地君一寸御聽きしますが、質問はまだ長いですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=39
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040・苫米地義三
○苫米地(義)委員 いや是でお終ひです、只今の御答へは少し滿足し兼ねるのでありますが、肥料の今の需要は其の程度ぢやないと私は思ふのであります、やるならば直ぐやらなければいかぬと思ふ、當業者と致しましても、私が現に計畫を持つて自分でやつて居りますが、齒痒くて仕樣がない、どうして是で農村に對して我々は面を向けることが出來るのだ、不可能なことなら兎も角でありますが、可能なんです、政府は一つ勇氣を奮つて肚を持つてやれば、私は可能だと思ふ、此の點を一つ御考へ下さいまして、是から研究するとか調査するとか云ふことでなしに、直ちに斷行して戴くことを私は希望するのであります
それから復興の工場と轉換の工場とございます、戰災を受けて可なり大きな被害を受けて居る工場が澤山ございますが、比較的此の儘でも使ひ得られるやうな轉換工場が、是れ亦相當ございます、所が轉換工場は後廻しにして、復興工場に全力を注ぐと云ふことの爲に、復興工場の方は遲れるのに、或は轉換工場が早く出來るのに、單純に唯復興工場を優先すると云ふ意味からしまして、此の一日も爭ふ増産の状態を、さう云ふ順位に依つて狂はされて居るやうな事情もあるかのやうに思ひます、是は「マッカーサー」司令部の方の關係もございませうが、早く供給すると云ふことが眼目でありますれば、轉換工場でも容易に生産が出來ると云ふものを交渉致しまして、其の實現を期して戴くのが本當だと思ふのであります、所が是もやはり、どうも惡口になるかも知れませぬが、轉換工場或は復興工場の調査等に對しまして、商工省は商工省の方々が行つて御調べになる、農林省は農林省の特別な機構を以て又御調べになると云ふことで、統一を缺いて居る、さうして迷惑をする者は當業者ばかり、時間が掛る、さうしてさう云ふ雙方の機構の手を通らなければ、資材も資金も入らないと云ふ仕組でございますから、洵に困る、何とか是は行政方面も一元的に強化して、さう云ふ二樣の手續や調査をせずに、一本にして早くして増産の可能であるやうにして戴きたいと思ふのであります、肥料行政の一元化と云ふことは、近來非常に叫ばれて居るのでありますが、是も何時までも時を許さないと私は思ひます、是等に對する商工省との間に、何か御話合ひでも進行して居りませうか、どうでせうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=40
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041・楠見義男
○楠見政府委員 肥料行政一元化の問題も含みまして、肥料の國家管理の問題に付きましては、先程私が申上げました點が、或は言葉が足りなかつたかも分りませぬが、私の申上げましたのは、お叱りを受けましたやうなことでありますが、調査をするとか何とか云ふのでなくて、現に一つの案を作りまして、それを御承知のやうに、肥料の問題に付きましては色々各方面に折衝をしなければならぬ問題がありますので、之を農林省としては此の度出して居るのであります、申上げるまでもなく肥料問題に付きましては最も關心を持ち、又最も此の點に付て熱意を有して居ります、是は農民の觀點に立つて居る農林省でありますので、隨て農林省と致しましては、此の觀點から從來も肥料の問題に付ては努力をして居つたのであります、轉換工場に付ての御話は尤もなことでございまして、結局資材なり、其の他の生産復興の場合に、最も效果的に之を使つて行けと云ふことは、是は申上げるまでもないことでありますので、只今御述べになりました轉換工場の順位の問題に付ては、十分御趣旨は承つて置きたいと存ずるのであります、尚ほ資金の問題に付ても、先程御話がございましたやうに、社債限度の問題其の他は、此の國家管理の案の中に於て處理したいと考へて居るのでありますが、差當りの繋ぎ資金の問題は、資金法を現在改正法律として提出致しまして、貴族院で本日可決を見、衆議院の方に追って廻る譯であります、隨て此の委員會に於て出來るだけ早く御可決を願ひまして、資金が動くやうに御盡力を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=41
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042・苫米地義三
○苫米地(義)委員 是非御願ひしたいと思ひます、當局の熱意は非常にあると思ひますが、唯實行が遲いのです、唯實行の伴ふやうな熱意を以て大いに奮起して戴きたいと思ひます
それから過燐酸肥料でございますが、先程森委員から御話のありましたやうに、燐酸肥料の缺乏は實際極端になつて居ります、そこで、關東以北地帶「クロボク」地帶は、特に此の燐酸が必要でありまして、遺憾ながら日本には其の原料がございませぬ、悉く是は聯合國側から輸入を仰がなければならぬのでございますが、此の點に對しては政府御當局にも熱心に御盡力を戴きたいと思ひます、今まで入つて來ましたものは僅か二萬「トン」しかありませぬ、而も其の二萬「トン」の六割は北大東島の燐酸でありまして、燐礦石と稱するものではない、是は同じ輸送を致し、同じ金を拂ふのでありますから、どうか本當の燐礦石――此の頃新聞で見ますと、「ガフサ」燐礦が來るやうでありますが、ああ云ふ風なもの、或は「フロリダ」であるとか、大洋島方面にございますやうな優良なる燐礦石を、少くとも八十萬「トン」程度のものは入れることを特に懇請して貰はなければならぬと思ひますが、之に對して何か今まで執つて居る御方針、及び聯合國側の之に對する態度を伺ひたいと思ひます
次は加里肥料でありますが、是も芋類とか、果樹の肥料としては絶對必要なものであつて、芋の増産を圖るならば加里肥料がなければいかぬ、從來二十萬「トン」乃至二十五萬「トン」の輸入を致して居つたのでありますが、是も亦日本の國内では餘り出ませぬから、何としても或る程度の輸入を仰がなければならぬと思ふのであります、唯私は此處に政府御當局に御研究を願ひたいと思ひますことは、加里を含んで居ります加里長石或は海緑石と云ふやうな資源が、相當豐富に日本國内にございます、まだ經濟的に利用の域には達して居りませぬが、斯う云ふものこそ本當に國の力を擧げて研究することが必要でないかと私は思ひます、差向は二十萬「トン」以上輸入して居るものでありますけれども、少くとも是も十萬「トン」位は輸入に仰がなければ、日本の農産物の生産にならぬと私は思ひます、燐礦石と同じやうに此の點に付ての政府の御盡力を願ひたいと思ひます、兎に角斯う云ふ風になりましたが、政府の方針が化學肥料に重點を置く限り、一體今後どれ位の目標に考へて居りませうか、日本の國内生産をどの程度にすれば宜いかと云ふ御方針がありませうか、其の點も伺ひたいと思ひます、兎も角煎じ詰めて參りますれば、供出の問題或は強權で犯罪者を出すと云ふやうな問題も、總て食糧の増産であります、食糧の増産は肥料の増産にあるのでありますから、どうか先刻來申上げましたやうに、一日も早く強權を發動して、それこそ適當なる施策を講じて戴きたいと思ふのであります、今の化學肥料の全體の目標數量等に付きまして御答へを願へれば、私の質問の要旨は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=42
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043・楠見義男
○楠見政府委員 化學肥料の生産の見透しでありますが、大體戰前に於きまする肥料消費量までは、何としても持つて參りたい、尤も戰前に於きましては、或は一部からは、少し日本は肥料を使ひ過ぎると云ふやうな議論もあつたこともあるのでありますが、兎に角戰前の數量まで持つて行く、さうしますと、窒素肥料に付ては私よりも苦米地さんの方が餘程詳しいのでありますが、大體窒素肥料は二百萬「トン」、此の二百萬「トン」の中には是も御述べになりましたやうに、大豆粕でありますとか、魚粕と云ふやうな有機質も入つて居つたのでありますが、兎に角之を今後の食糧事情等からの見透しから申しましても、出來るだけ此の化學肥料で以てやつて行く、そこで生産目標と致しましては、從來の既耕地に付ては二百萬「トン」それから開拓地が殖えて參りますので、さう云ふものを合せまして、二百二十七萬「トン」、斯う云ふことを目標に致して居るのであります、差當りの明肥料年度、即ち本年の八月から來年の七月までの肥料年度に於きましては、是も具體的に各工場で御立ちを願ひます生産計畫で申しますると、現在司令部から許可を受けて居ります工場だけで申しますれば、窒素、硫安と石灰窒素、合計致しまして百萬「トン」餘に過ぎないのであります、結局明々肥料年度に於て是が目標の達成に努める、斯う云ふことにならうかと思ふのでありますが、同時に此の許可工場のみでは必ずしも十分でないので、轉換工場に付て未許可のものが相當尚ほ殘つて居るのでありますが、是等の未許可の工場の轉換に付ては、特に實情を詳しく司令部にも申上げまして、一日も速かに是が許可を受け得ますやうに努力致したいと考へて居るのであります、過燐酸の問題に付きましては、是も御述べになりましたやうに、常初から八十萬「トン」の燐礦石の輸入を申請して居りました、是で參りますと大體倍の過燐酸石灰が出來る譯でありますから、此の消費量を以て致しますれば、戰前の通りの需要を賄ひ得る譯であります、唯燐礦石の輸入先に付きましては、是も御述べになりましたやうに「ラサ」とか、北大東島と云ふやうな所だけでは勿論不十分でありまして、佛印、「アフリカ」「フロリダ」と云ふやうな所からの輸入も仰ぎたいと存じて居るのであります、事柄が輸入關係でありますので只今正確なことは申上げられないのでありますが、唯申上げられることは、先程森さんの御質問に對しまして御答へ申上げましたやうに、聯合軍としては食糧と同樣に、場合に依りましてはそれ以上に肥料の問題に付ては極めて重大な關心を持ち又厚意を持つて考慮して戴いて居ると云ふことだけを申上げて置きたいと思ふのであります、加里肥料に付きましても、御質問の點は全く同感でありまして、政府と致しましては十分他の肥料と同樣に、此の問題に付ては努力をして參りたいと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=43
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044・成島勇
○成島委員長 是で休憩しまして、午後は一時半から再開致します
午後零時三十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=44
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045・会議録情報2
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午後一時三十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=45
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046・成島勇
○成島委員長 開會致します、本日午後は本會議竝に食糧危機突破に關する會合がありますから、都合上本日は是で散會致します
午後一時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=46
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047・会議録情報3
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〔參照〕
廣川委員要求資料
一、主食を原料とする味噌製造家の手持原料竝に今後配給可能量及既製仕込量
一、醤油醸造家の手持原料、仕込量及今後配給見込量
一、農村に於ける自家製造の味噌醤油貯藏量発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00319460705&spkNum=47
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