1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
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昭和二十一年七月八日(月曜日)午後一時二十八分開議
出席委員
委員長 成島勇君
理事 坂本實君 理事 森幸太郎君
理事 馬越晃君 理事 細野三千雄君
板倉治作君 大井直之助君
坂田道太君 淵田長一郎君
森田豐壽君 神戸眞君
苫米地義三君 保利茂君
堀川恭平君 氏原一郎君
叶凸君 清澤俊英君
堂森芳夫君 北政清君
的場金右衞門君 井上東治郎君
山木武夫君 野本品吉君
志賀義雄君
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
商工大臣 星島二郎君
出席政府委員
大藏事務官 池田勇人君
農林次官 楠見義男君
農林事務官 佐野憲次君
農林事務官 坂田英一君
食糧管理局長官 片柳眞吉君
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本日の會議に付した議案
食糧緊急措置令(承諾を求める件)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=0
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001・成島勇
○成島委員長 開會致します――叶君に申上げますが、商工大臣が見えて居りますから商工大臣に御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=1
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002・叶凸
○叶委員 商工大臣と農林大臣に御質問致します、現在米を中心とする農産物の所謂丸公價格と、實際農村に配給される肥料、農機具、農業用資材とは、我々の見解と致しましては大分「バランス」が缺けて居るやうに考へます、現在麥其の他の主食物に類するものの供出の面から考へて見ましても、價格の「バランス」を取ることが、供出を促進ずる所以でもあると云ふ風に考へますが、さう云ふ農家の必要とする肥料其の他の資材と、端的に申しまするならば米の價格、斯う云ふこととに付きまして商工大臣竝に農林大臣の御考へを一つ聽かして戴きたいと存ずる次第であります
時間の關係もありますので引續いて第二の質問でありますが、それは肥料國營に關しまして農林當局と商工當局の御考へを一つ聽かして貰ひたい、斯樣に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=2
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003・和田博雄
○和田國務大臣 農産物の價格と其の農産物を生産するに必要な資材の價格との均衡の問題でありますが、現在の實情に於きましては、大きく言へば物價體系其のものが謂はば非常に混亂して居る時期でありますので、其の間の不均衡と云ふことはあると思ふのでありまして、此の點に付きましてはやはり物價體系全體として均衡を取つて行くと云ふ根本的の考へ方から是正して行くのが宜いのではないか、斯樣に考へて居ります
それから肥料の国營に付きましては、私本會議で御答へ致しましたやうに、私と致しまては前々申しましたやうに、「イデオロギー」としては國營は宜いと思ひますし、一つの考へ方と思つて居ります、併し政策其のものを考へまする時は、やはり現實の實情を十分考慮する必要があるのでありまして、私は本會議に於て申述べましたやうに、現段階に於きましては國營と云ふよりも、もつと他の方策の方が差當つての増産に役立ち、宜いのではないか、斯樣に考へて居ることは本會議で御答へ致した通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=3
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004・星島二郎
○星島國務大臣 價格の問題に付きましては今農林大臣から御答へになたつやうな譯でありまして、元來が商工省の方は生産を受持つ、農器具に致しましても、肥料に致しましても、成るべく一つ之を低廉に生産したい、斯樣な考へで參つて居つた譯であります、偶偶機構の問題に付て本會議に於きましても色々意見が出たやうな譯でありますが、元來、今の内閣は謂はば自由、進歩兩黨聯立の上に他の方からも參加されて出來て居る一種の聯立内閣であります、一黨の組織する内閣でも、黨内で色々な議論がありますことは當然の話であります、それが纏まつて一つになつて行く譯でありますが、今のやうな内閣に於きましてはそれぞれ個人の意見があられることは當然でありまして、それを纒めて總意の下に一丸となつて政策が現はれて來る譯でありますから、個人の意見と致しましては、物價問題に致しましても、「インフレ」對策に致しましても、或は肥料問題に致しましても、それぞれの御意見があらうと思ひます、農林大臣仰せの如く、「イデオロギー」としては考へられる點もある、斯樣に仰しやるのでありますが、内閣と致しましてはまだ之に對して國營を致すべしとの議は何等出來て居らぬのであります、私一個と致しましては、自由黨の黨員として、自由黨の政務調査會等に於きましては、肥料國營問題等が社會黨から話があつたことがあります、さう云ふ場合に於きましては國營も考へられぬことはないが、今の場合は一「トン」でも多く生産すると云ふことを主眼として行くことが妥當であつて、さう云ふ機構等の如きはゆつくり研究の上で善處しよう、斯樣なことであつたやうな譯でありまして、今日肥料國營をしなければならぬと云ふ場面に立至つて居ない、まだ熟して居ない、或は經濟安定本部等に於きましてさう云ふことが檢討されるかも知れぬ、研究題目と致しましては十分研究して貰ひたいと思ひますが、それよりも商工當局と致しましては一「トン」でも増産をしたいと云ふ念願の下に凡ゆる施策をして行きたい、斯樣に考へて居る譯でありますが、私一個竝に自由黨の政務調査會に於きましても、寧ろ國營は、現在の國營さへも外して少し自由にして行きたいと云ふやうな、意見を持つて居ります、併し兩方とも今日の此の非常時局に扱ふべきものでない、考へられぬことであります、「イデオロギー」と致しましては寧ろ國營反對、斯樣な考へを持つて居ります、現内閣と致しましては之を國營とすべしとか國營とすべからずとか云ふやうなことは暫らく研究題目として扱ふべき問題と考へて居るやうな次第であります、左樣御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=4
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005・叶凸
○叶委員 時間の關係で肥料問題に付ては近く何等かの機會に於て色々意見も申上げたいと思ふのでありますが、唯商工大臣に御希望申上げますることは、是は意見になりまするけれども、事業家が採算が合はない、斯う云ふやうな面からして、農村に必要缺くべからざる所の肥料がもつともつと増産され入手される機會があるに拘らず、さう云ふ點が十分に行かない、斯う云ふやうな點に付きまして尚ほ深く實際に亙りまして御研究の程を願ひたいのであります
次いで農林大臣、商工大臣に御願ひするのでありますが、私が申すまでもなく、日本の歴史を考へましても、やはり明治開化になるまでにあの日本の資本主義の發達の總ての準備が徳川封建時代の進歩的なる諸君に依つて其の芽が哺まれて居つたと云ふことは歴史が如實に示す所であります、是は私の主觀になるかも知れませぬが、將來現れます所の日本の民主主義政權、國民を基礎にする所の新しき憲法に於ける所の新しき政權、此の政權が少くとも樹立されると同時に仕事をする爲には其の前にさう云ふ風な社會主義的な色色な研究題目と云ふものが總てが事細かに準備される機關が良心的なる日本人に於てなされなくては、我々敗戰の今日から直ぐさま起上るだけの餘力をさう云ふ方面に向けて呉れる人がなければ、直ちに起上ると云ふことは實際上不可能なこととなりはしないかと思ふのであります、さう云ふ譯で此の肥料の國營の研究時期であると云ふことも是れ亦相互の考へ方の相違に依ると思ひますが、現實の食糧の増産と云ふ面から考へまするならば、是れ以上追究致しませぬが、農林當局に依りまして早急に成案を得、出來得ればどの内閣も善い事はやれば宜い譯でありますから、國營の内容と云ふことに付きましては、從來所謂國營々々と言ひまするが、色々な型も考へられるし、又國營の方法と云ふことも是も我々が色々研究すれば宜いことでありまして、さう云ふ點に付きましても民營を壓迫すると云ふやうな面からのみ考へずして、やはり國家百年の大計の爲に十分一つ成案を得て戴きたいと思ふのであります、黨の意見に付きましては、今後何等かの形に於て肥料を專門的に研究して居る者から意見の開陳をしたいと存ずる次第であります
次いで農林大臣に御尋ねしたいと思ふのでありますが、是は農民的な御尋ねでありますけれども、當局は米石三百圓は安過ぎると考へて居られないかどうかと云ふことを一寸御尋ねして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=5
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006・和田博雄
○和田國務大臣 米が三百圓と決まりましたのは五百圓の新圓生活との關係に於きまして決まつたのでありまして、凡そ物價と云ふものは個別的なものだけを取りまして高いか安いかと云ふことを言ふべきではないのでありまして、やはり他のものとの比較と云ふことで高いか安いかと云ふ觀點があると思ふのでありまして、私と致しましては、三百圓と云ふものに付きましては現在の物價體系上色々研究すべき點があるとは思ふのでございまするが、高い安いと云ふことは私としては現在は申上げ得ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=6
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007・叶凸
○叶委員 是は質問を兼ねての御願ひと云ふことになりまするが、農林省と商工省に關係することになりまするけれども、當局は肥料其の他の農業經營上必要物資及び農家日用必需品を農家に配給する場合、其の品目數量と入手月日を公表する、詰り其の不正配給、横流れを監視し、末端に屆くまで責任を以て貰ひたい、斯う云ふことであります、是まで商工省の直接の係りの方に御會ひ致しますると、相當やはり當局の中央部に於きましては、色々な衣類でありますとか、其の他の日用必需品に付きましては色々の配慮があつたと云ふことを、我々一應足る足らぬは別として了解の出來るやうな御報告に接した譯でありまするけれども、實際の農民に屆くと云ふことに付きましては、色々具體的な實例も持つて來ますならば際限もないことになる譯でありまするが、十分ではない譯であります、それで當局の方で上の方から配給されました場合に、其の數量と、それから府縣に對してはどの位行く、それから凡そ何日頃に農民諸君の手に入るであらうと云ふ、其の月日とか、其の數量と云ふものが十分に農民の手に行屆くまで――知事に任したからと云ふやうなことでなしに、今後監視をして戴かないとそこに凡ゆる誤解が出來まするし、農民の方でも本當に當局を信頼すると云ふ譯には參らぬと云ふやうな感情に支配され勝ちであります、さう云ふことに付きまして幸ひ今日は商工大臣も御見えになつて居りますので、農林當局と商工當局がさう云ふ點に付きましては一つ責任を持つて貰ひたい、責任を持つと云ふことを此處に言明して戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=7
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008・星島二郎
○星島國務大臣 叶君の御希望は御尤もな次第でありまして、今囘も食糧の交換物資と致しまして、商工當局に於きまして用意した物の如きは末端まで本當に渡ると云ふことに對しては、今までの行き方を變へなければいかぬと云ふので、或は切符制度のことを考へたり、色々なことを考へて居る譯でありますが、併しともすれば官僚統制は非難され、又官僚統制であつてはならぬ譯でありますし、それから盛返つて民主的なる氣持で行くことを思ひますれば、結局國民各位、詰り各組合團體等が本當に道義に立還つて正しく眞心を持つて總てが行はれると云ふ所へ持つて行くべきだらうと思ひます、根本は國民の全體の精神が立還らなければ私は末端まで旨く行かぬだらうと思ひます、それを疑つて初めから監督付きでやるやうにすれば、結局官僚統制と云ふ非難を受ける、又さうなつて來る譯であります、併しさう云ふ點は兩々相俟つて行かなければならぬと思ひますから、叶君の御注意は御尤もな譯でありまして、今後とも色々分別致しまして末端まで正しく行くやうに一つ考へて行きたいと考へます、併し物が不足して居るからさうなるのでありまして、物さへ澤山出來て來ますれば結局は圓滿に行くと思ふのでありますけれども、不足の間は非常に其の邊は注意して行きたいと思ひます、尚ほ先程の御質問なり御希望の點に付きましても、何處までも民主的なものは早急にやらなければならぬ、唯社會主義とか資本主義とか云ふやうなことに捉はれないで、本當に如何にすれば民主的に旨く行くかと云ふことは、決して舊來の陋習に囚はれないで一つやつて行きたい、斯樣に思うて居りますから、どうぞ一つ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=8
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009・北政清
○北(政)委員 一寸關聯して……、今農村への物資の末端配給に付ての御意見がありましたが、私は從來農民が多年要望して居ります農業者自身に配給を扱はして貰ひたいのであります、現在供出は一生懸命に進めて居りますが、過般食糧對策委員會に於て纖維局長さんから御話がありましたのに依りますと、昨年の八月以來實に莫大な反物共の他が出されて居る、併し農村には殆ど行渡つて居ない、そこでどう云ふ譯で行かぬのかと聽いて見ますと、逆に私共の想像して居る以外に、農業者の團體に扱はして居る、斯う云ふ風に言つて居られるが事實はさうではない、私は全農の方からも調べましたし、我々町村の方からも調べて居るのでありますが、斯樣なことをやつて居られない、だから今日農民が米を出せと言ひましても、石油一升買ふにも絲一把買ふにも米を持つて行かなければ一つも手に入らないと云ふ状態にある、是が出荷を鈍らして居る主な原因である、だから是は農民が金に換へて、金で物が手に入るやうにしてやらなければならない、それで供出が出來ないと、それを出さぬからと云つて懲役五年以下と云ふやうな措置令を出すと云ふことはどうかと思ふ、それにはどうしても農民が安心の出來るやうな方法にして行く、詰り農民自らの團體で配給を取扱はせるやうにしなければいけない、總ての品物がさうであるが、現在都會に澤山の闇商人が居り實に莫大なものが出て居る、是は一體何處から行つて居るか、一體釘をどうして闇商人に配給なさつたのか、絲がどうして行つて居るのでせう、木綿反物がどうして行つて居るのでせう、田舍では米さへ持つて行けば何でもあります、是は昔から營利業者の手に依つてのみ配給させることに努力せられた結果である、之を何とかして考へ直して貰ひたい、過般首相に對する質問の際にも、北勝太郎代議士から質問しまして、商工、農林兩大臣から返事をすると云ふことでありましたが、まだ其の返事をなさらぬのですが、今日は叶さんの御質問もありますので、はつやりと一つ御答へをして貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=9
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010・和田博雄
○和田國務大臣 私から御答へ致します、後で商工大臣からも御答へがあると思ひます、叶さんに一言御答へを致して置きますが、農家に出す物資に付て、それが農家の末端まで行渡るやうな方法を講じて貰ひたいと云ふことは私も非常に贊成であります、是は非常に苦心して居る點でありまして、例へば農家の末端まで行くにはどう云ふ方法が宜いか、例へば「ラジオ」で知らせるとか、地方の新聞に書くとか、或は地方の事情を知つた團體の人が働いて呉れて地方の末端まで部落會其の他を通じて知らせる、さう云ふ方法が具體的に執られて行かなければならぬのでありまして、今度肥料などに付きましても、生産數量と出荷數量を一月二度づつ發表するとか、さう云ふやうな形で出來るだけ能く一般の方々に事柄が公表されまして、それで無用の誤解を避ける方法は、我々としましても是非講じたいと思ひます、其の他商人の道義の點に付きましては、是は商工大臣が仰しやつたのと私も全く同感であります
んれから今の北さんの御質問でありますが、是は農村に向けて出しまする物資に付きましての「ルート」は從來通りの「ルート」で出して居るやうでありますが、要はやはり農業の團體の方に於きましても、それから商人の方に於きましても、そこに中間の業者として持つべき高い道義心をやはり持つて戴きませぬと、唯配給の「ルート」をどちらかに決めたと云ふだけでは問題はやはり解決しないのだと思つて居るのでありまして、それ等の點に付きましては從來の「ルート」がきちんと決まつて居る譯でありまして、農業會に行くべきものは農業會に行き、商人を通ずるべきものは商人を通ずると云ふことで行きたいと私は斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=10
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011・星島二郎
○星島國務大臣 農林大臣の言はれる通り、私も左樣に考へます、此の間も實は相當の數量が出て居るのに全然知らないで濟んだと云ふやうな感じを實は私は在野時代に持つて居りました、數字を見ては不思議に思ふやうなことがあります、所が如何に需要の方が非常に多いかと云ふことを想像出來ますことは、纒めて見れば供給も相當の數量なんですけれども、需要の方から言ひますれば極めて僅かなんで、やはり村々を調べれば相當な數が行つて居るのに、僅かしかないと云ふやうな感じを與へて居る所もあると思ひます、併し今後一層さう云ふ點は氣を付けて行きたいと存じますが、所謂官僚的な臭を去らうと思へば、自然さう云ふことが旨く行かぬ、又是はと云ふので積極的に色々に指導者的にやりますと、それに非難が出て來る譯であります、結局お互ひに民主的に總てのことを打明けてやつて行くと云ふ精神が本だと私は考へて居ります、凡ゆる機會に於きましてさう云ふことを一貫して行きたい、斯樣に思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=11
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012・叶凸
○叶委員 一寸今商工大臣に御參考までに申上げたいと思ふのでありますが、是は私が實際に河内で農家から直接調べて來たことであります、肥料の硫安でありまするが、一俵十貫目入が丸公でありますと百十一圓餘りのものが、闇では約千圓位します
〔委員長退席、馬越委員長代理著席〕
それから米ですと一斗一升、之に運賃が三圓掛るのであります、一斗一升と云ふ一升はどう云ふものかと申しますと、是は運ちやんの「サービス」と云ふことになるのであります、斯う云ふ譯で農村の必要とするのは實際に増産をやることなんだ、目標は増産をやることなんだと商工大臣は申されて居りまするが、洵に其の通りであります、總ての價格に於きましても實際一つの部分から追究する譯には行かない譯でありますが、斯う云ふやうなことが即ち供出を如何にするかと云ふことに對しまして農家の一つの大きな心配の種になつて居るのであります、主税局長が來られましたならば、農林大臣の御意見も聽いて、税金の問題にも觸れたいと思ふのであります、商工大臣と致しましては兎に角實際に末端まで行屆くやうに、増産を一つ大いにやつて戴きたいと云ふことを御願ひして、委員長の屡屡の御注意もありまするので、私の質問を進行して行きたいと思ひます、商工大臣に對する質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=12
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013・北政清
○北(政)委員 唯今農林大臣から、商工省と打合はして正規の「ルート」で流して居ると云ふ御答辯でありましたが、六月八日に纖維局長が各府縣知事に對しまして出した通牒に依りますと、從來農林、商工兩當局が御相談してやつて居られたのでありますが、それが今度はそれなしに今までの配給の系統機關で統一してやると云ふやうな通牒が出て居る、大變話が違ふのでありますが、それだけ御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=13
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014・星島二郎
○星島國務大臣 それは私當時事實を知りませぬで、後から其の御聲を聽いたので調べました所、やはり違つて居ないのです、詰り一般配給をなくしてまで今囘食糧對策として出す分は、一應各府縣の地配の從來の「ルート」を通して、そこから農業會の方に廻す、從來一般配給に廻す方、商人の方に廻す方を割いてまで、全部利潤を取つてしまつて農業會の方に廻すのは少し妥當でないので、詰り地配等を通して、正當「ルート」を通して農業會の方に廻す、斯う云ふのですから、結局は變りないことです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=14
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015・北政清
○北(政)委員 さう致しますと、末端配給までの商工業者の「ルート」を通して其の經費はやつて、さうして農民へは無料で配付する、斯う云ふことになるのです、例へば現在此の都市で行はれて居ることですが、私の今泊つて居る所の附近では此の間から喧嘩して居る、それはどう云ふのかと云ふと、隣組が煙草を配給して居るが、分けて見た所が目方が足りない、それで行渡らぬけれども、小賣業者からは持つて來た其の儘を配給した譯で、部落會がそれを負擔する譯ですから、町内會が闇取引をしなければならぬ、斯う云ふ結果になつて來る、さうでなければ其の扱ひ者自身が自腹を切る、それでは到底隣保班長は勤まらぬ、斯う云ふので町内が揉めて居る、斯う云ふことから見ましても、小賣價格と云ふものは全部最終末端の小賣商人が取つて、其の後を農業會で分けよと言はれても、それは色々事故が起りますとどうにもならぬと云ふ點がある、さう云ふ點はどうにかならぬものだらうか、或はどの程度からは農業會にやるか、それをはつきりして置かぬと何時でも揉めることになる、品物が旨く渡らない、今の御説明を聽きますとどうもそこがはつきりしない、そこは農林當局とどう御話合ひになつたか、其の御話の筋を御聽かせ願ひたい、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=15
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016・星島二郎
○星島國務大臣 或は末端の所がどう云ふ風になつたか、或は間違ひで、或る府縣、或る團體では之を穿違へて、今あなたの御心配になつて居るやうな調子になつて居るやうな所があるかも知れませぬが、是は一つ調べて、間違ひないやうにしたいと思ひます、要するに從來の農業會を通したものは農業會を通す、さうして今囘商業屋さんを通して行く方の分を割いて農業會の方に廻すのですから、其の分に限つてあなたの御心配になるやうなことはないものと考へて居りますが、是は尚ほ間違ひがあつたらいけませぬから、能く調べまして、さう云ふ誤解があつたら解くやうにしたいと思ひます、根本はさうなつて居りますから、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=16
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017・叶凸
○叶委員 主税局長が見えましたから主税局長に對する質問を繼續致します、土曜日の私の質問で新潟縣中頸城郡の三月分以降の供出分の米の課税に付て御質問申上げたのであります、私は調査方を御願ひして居つたのでありまするが、どう云ふ風に調査をして下さいましたでせうか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=17
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018・池田勇人
○池田政府委員 一昨日御話を承りまして、早速東京財務局に調査するやうに命じて置きました、或る財務局員の話に依りますと、御話の通りに三月以後の供出に付て、供出しなかつた場合と同樣な計算で行つて居ると云ふことを、是は公式ではございませぬが聽きました、隨ひまして其の後の樣子、又當初からの詳しい樣子を大藏省に申報するやう命じて置きました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=18
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019・叶凸
○叶委員 是は皮肉でも何でもないのでありますが、司法大臣などは田万君の問題の時なんかは電報を打たれまして、さうして直ぐさま調査を完了したと云ふ風な迅速果敢なる所の調査を取られた譯です、遺憾なことは我々日本人が死ぬか生きるかと云ふ問題の根據と云ふものは、是はどうしても作つて居る所の農民諸君から供出をして貰はなければいかぬ譯です、其の根本の障碍をなして居るのは誰かと申しまするならば、本年の麥とか馬鈴薯なんかの供出を最も阻碍したのは、此處に居られまする大藏省の陛下の官吏諸君であります、それの調査を御願ひして居りまするのに、直接地方の税務署の人に電報も打つて居られず、自分を取り卷く下僚の人に、部下の人に命じて置いたとは、そも何事かと私は申上げたいのであります、何故かと申しまするならば、是は食糧緊急措置令にも直接影響することでありますから、私は申上げたいと思ふのでありまするが、私も念の爲に東京都下の農民諸君の實際の所得額に對する査定が、どう云う査定を受けて居るかと云ふことを調べても見たし、本日議會の控室にも大體此の方面からの代表者が來て居る譯であります、日本農民組合の東京都支部の幹部の人達でありますが、南多摩郡としましては、恩方村の磯崎正男君外三名、元八王子村の熊澤兼吉君外三名、川口村、金子爲一君外二名、加住村から、吉野正美君外一名、由井村から塚本定吉君外一名、堺村、小島甚七君外一名、町田町の櫻田常久君外一名、南村の細野信政君外一名、鶴川村の井上浪治君外六名、稻城村の田多野作造君外九名、多麿村の伊野庄左衞門君外一名、七生村、石坂喜代次郎君外一名、日野町の田中重藏君外三名、八王子市、神崎喜助君外三名、北多摩郡、久留米村、西川正富君外三名、清瀬村、増田一郎君外三名、三鷹町、吉田賢次郎君外二名、拜島村、小山滿久君外三名、昭和町、清水徳次郎君外三名、村山村、植野伊佐美君外八名、大和村、元川彌五郎外一名、東村山町、川村達三君外二名、調布町、新井新太郎君外二名、神代村、田中孫一君外一名、西多摩郡東秋留村、森田庫吉君外二名、西多摩村、林部俊治君外二名、世田ケ谷區廻澤町、田子茂雄君外三名、葛飾區高砂町、梅澤莊作君外五名、板橋區志村蓮沼町、板橋英雄君外五名、是だけの農民諸君が參りまして、税金の問題に付て色々と實情を聽いたのでありまするが、社會黨の私達が之を調査しただけでは、單なる一黨の僻みではないかと御考へになつたらいけませぬので、是は七月七日の毎日新聞にも「方針通りに行かぬ農業所得の査定、闇以上の税金、善農も惡農の道連れ、一町歩の收入三萬圓、査定實例」と致しまして、是は主に府下と靜岡の方の調査が上げられて居ります、それから是は共産黨の「アカハタ」でありまするが、共産黨の「アカハタ」に於きましても、「都民に闇賣で査定した所得税、三段、十二人の小作から二千五百圓、裸供出させて、此の惡税」と云ふ見出しで、大分實例が、是でもか是でもかと書いてあります、私は私の質問を續行する前に、定めし税金なんかのことは、社會人心に與へる影響が實に大きい譯でございまするし、殊に食糧問題と關聯致しまして、農家に課ける税金が如何に難かしいものと申しまするか、良心的に考へまするならば、其の正鵠を得ることに付きましては、相當の苦心がなければならぬと思ふのでありまするが、全國から集つて參りまする所の唯今の私の手許にあるだけを見ましても、實にどう云ふ點に眼目を置かれて、やはり一つの現在の吉田内閣の重要なる所の一構成分子として、大藏大臣を初めと致しまして、直接税務を擔當なさつて居る今日の政府委員の方々も、どう云う考へ方を以てやつて居られるのであるか、實はあなた方の考へ方の見當がどうしても我々に分らぬのであります、何故かと申しますると、此の吉田内閣の使命と致しましては、先づ第一に憲法を通過さすこと、第二と致しましては、食糧問題を解決するのである、斯う云ふ大體の眼目を以つて内閣を組閣されたと云ふ風に我々は聞いて居りまするが、其の肝腎の食糧の問題、食糧の問題と申しましても、繰返す譯ではありませぬが、先づ供出を農民諸君にして貰はなければならぬ、此の食糧緊急措置令なるものは、農林大臣式の表現を用ひますれば、傳家の寶刀ださうでありまして、之を以て惡農に強權を發動するのだと申す譯であります、大藏省當局が農民に税金を課けて居ります其の基礎をなす所の農民の所得總額の査定と云ふものは、決め方と云ふものは、農民全部が闇をして居る其の實收入を中心として居ると云ふ譯なのでありますから、此の實收入をどう云ふやうに査定して居るかと云ふことを私共が見てみますと、農民諸君が敢て闇をして居る、斯う云ふ風な査定振りであります、そこで此の食糧緊急措置令を、さう云ふやうな考へを持つ此の内閣に持たして置きますならば、折角凡ゆる障碍を克服して、増産に進んで居られる所の農民諸君を、和田農林大臣が言ひます所の傳家の寶刀を以て全部叩き斬らなければならぬ結果になるのではありませぬか、其の點に付きまして私は土曜日に、局長に、私はさう大きな聲をせずに申上げたのでありますけれども、一昨日、昨日、今日と三日目でありますが、唯それ位のことで恬然として居られると云ふことに付きましては、私は聊かもつともつと御質問しなくちやならぬ、斯う思ふのであります、なぜもつと――新聞なんかを必ず御覽になつて居ると思ふのでありますが、兎に角麥を一日も早く供出をして貰ひまして、都會の飢えた人々に食べさせなければならぬと云ふ時に、少くとも責任のある内閣の人達が、さう云ふ供出を阻害するやうな、さう云ふ出鱈目な――私は激昂して申す譯でわありませぬ、私が實際に交渉に行つて、二萬圓餘りの税金をたつた一囘話をしたら、一萬圓足らずにぽかつと負けてしまつたことがあるのであります、私は布施なんかでも税務署の本當の事務を執つて居る所の人人に友達が澤山ありますが、餘り掛値が多過ぎるのであります、さう云ふやうな點に付きまして、大歳當局の人々は、一體どう云ふ風な御考へを持つて居られるのですか、農林大臣は強權發動と此の緊急措置令――私は是は惡法だと思つて居りますが、此の惡法を和田農林大臣は傳家の寶刀として腰に手挾み、勇みに勇み、大藏省の方々は農民は全郡闇をして居ると云うので、其の貯金までも調べ上げて出鱈目な査定をして、此の農民の金を捲上げようと掛る、是では先程申上げましたやうに、高い金を出さなければ肥料は來ない、さう云ふ惡條件と鬪つて居ります農民が、どうして氣持好く供出が出來ませうか、是は大變大きな問題であります、税金に付きまして即刻に實情の再調査を命じて貰ひたいと思ふのであります、それから全部に亙つて訂正をして貰ひたいと思ふのであります、なぜ私が斯樣な大きな聲を出して申すかと云ふと、左樣なことをして呉れましては、實際農民の人に供出せいと言うて居るのか、皆の持つて居る馬鈴薯を全部闇で賣拂つてしまうて、其の金で税金を納めよと言うて居るのか分らない、大體現在の政府もさうでありまするが、過去の戰時中の政府もさうでありました、大藏省は大藏省だけのことしか考へて居ない、農林省の諸君は、農林省のことしか考へて居ない、商工省の人は商工省のことばかり考へて居る、さうして強權發動的なものを持つて來るのは必ず勞働者が對象であり、この農民が對象である、現在もさうであります、肥料に強權發動が行はれて居ないに拘らず、供出に關しては、此の法案が通過されまして、和田農林大臣は、巡査でも「サーベル」を取去つて棒を持つて居る世の中に、傳家の寶刀と稱して刀を持つて居らうとする(笑聲)私共は從來和田農政局長時代に、相當和田さんは進歩的な人であると考へて居つたのでありまするが、全然さうでない(笑聲)色々材料を持つて來て居るのでありまするが、大體政府の答辯と云ふものに付ても私は大きな疑惑を持つて居るのです、左樣な我々同志の中では流行らないことが恬然としてなされて居る、是は「エコノミスト」の六月十五日發行のものであります、是は毎日新聞社であります、毎日新聞と云へばさう嘘ばかりは書かぬと思ふのです、だから私は申上げます、此の中に農林大臣の言つて居られる言葉が書いてあるのです、是は私の同志の大西君が和田農政其のものとして論文を書いて居るのでありますが、和田農林大臣が直接言つて居ることを引用されて居る文章です、「條件の熟すのを待つ時ではない、今與へられた條件の下で、出來るだけのことをして此の難局を救ひ、事態を救はなければならぬと、過渡期の捨石となることを力説したのであつた」是は他の人とは違ふ、和田さんが力説したのですよ、さう云ふやうに書いてある、何處かであなたは言はれたのに違ひない、此の捨石と云ふ風な氣持で和田さんがやられるのであれば、我々も考へることは多々あるのであります、所が實際にやつて居られる所を私が見て居りますると、實際靴の上から掻いて居るやうなことばかりであります、直接には今の税金の話でありますが、斯う云うやうな農民が全部闇をして居るのぢやないか、はつきり言うたらさう云ふ風になる税金の課け方をして、善農と惡農と分けまして、惡農の方に對して此の措置令でやるのだ、傳家の寶刀を振廻すのだ、何處に其の辻褄が合ふのだ、お二人其處で話合つて見て下さい、本當ですよ、直接此の麥や馬鈴薯の供出に影響します、それに付て色々具體的の實例も擧げたいと思ふのでありますが、擧げますると委員長の方から注意がありますので、御必要であれば幾らでもありまするが、私の申上げたいのは、各税務署に對して即刻直ちに此の農民の所得額に對する所の再調査を命じて、もう一遍調査し直す、即ち農業會、實行組合の戰爭中から農村に於ては割合惠まれたる人達、もつと露骨に申しますると、大いなる所の腐敗分子も中には居るだらうと思ひます、斯樣な農業會とか實行組合の人々の臺帳にのみ頼らずに、本當の農民の人達が實際どの位の收入があり、どの位の支出があつて差引きどの位の利益になると云ふことを調べられて、農民に對する根據ある税金の課け方をして貰ひたいと思ふのでありますが、此の各税務署に對して即刻再調査の指令を出して貰ひたいと思ふ、斯う云ふやうな税金の取り方をやりますると、一昨日の内相の言葉では少々落付きましたと云ふて喜んで居る、私も喜んだ譯でありますけれども、如何に良心的の方法を用ひましても片つ端から供出を――兎に角傳家の寶刀を振廻し税金を取立てると云ふことになりましたら、實際我々は歎くべき社會状況になると思ふのであります、其の點に付きましてしつかりした所の今日唯今やつて貰へることを話して貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=19
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020・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御答へ申上げます、新潟縣の中頸城郡の調査を財務局の者に調査するやう指令したことは手拔りではないか、餘り遲過ぎはしないか、斯う云ふ第一の質問であります、大藏省は所得の決定其の他に付きまして日頃から兎や斯う指示は餘り致しませぬ、今年は色々な經濟界の變動がありますから、所得の調査に付きましては十分に注意して苛察に亙らざるやう努めよ、斯う云ふ指令は出してあります、農業所得の問題で、五月でございましたか、世田谷、杉並區の農民の方方が主税局長室に參られました、或る代議士がお連れになつて二十人程おいでになりましたので、農業所得に對しまする私の氣持は申上げて置きました、丁度其の際東京財務局長も居られましたので、一緒に財務の方針を話し、大藏省の考へ方をば申上げて置きました、其の際も財務局長に、農業所得の決定に付きましては特に今年は十分注意して戴きたいと云ふことを話して置きました、最近に於きまして、三多摩、新潟或は東京財務局、關東八州竝に信越地方に於きましては以上の二箇所以外にまだ一、二ございます、林檎畑の所得の決定、葡萄畑の所得の決定に付きまして相當異議のあることを聞き及んで居ります、先達て東京財務局の其の衝に當つた人を特に呼びまして、東京財務局管内のさう云ふ異議のある所に付きまして一つ一つ檢討致しました、其の時に御話のやうな點が新潟縣にあるやうに聞き及びましたから、更に調査し、直すべきものは速かに訂正しろ、斯う云ふことを申しましたら、其の後新潟縣下四税務署長が集つて、實情に副ふやう會議を開き、直ちに訂正に入ると云ふ電報が來て居ります、斯う言つて居ります、其の直後あなたから聽きましたので、又斯う云ふ話があつたから再調査しろ、私が大藏省から直接に税務署に言ひますよりも、財務局から税務署の方が非常に連絡が執り宜いのでございます、是は一般の内務省と府縣との關係が丁度大藏省と財務局の關係でございまして、財務局に付て事實を話しました方が調査も迅速に正確に行くものでありますから、さう云ふ手配を執つたのでございます、御話の通りに課税に依つて國策が枉げられるやうなことがあつたら、是は大變です、税を取るのは手段であつて、それ自體が目的ではない、課税に依つて國策が枉げられるやうなことがあつたら、それは非常に惡いことであると常に考へて居ります、隨て課税に依つて供出が若し阻まれるやうなことがあつたならば、私は課税に付て相當考へなければならぬと思つて居ります、併しながら今年の農業所得に付きましては先程來申上げましたやうに、昨年來非常な注意を拂つて居りまして、御承知の如く昭和十七年の東京都下に於きまする營業税の決定、甲種事業所得の決定に付きまして相當物議が起りました、當時賀屋大藏大臣は、自ら各税務署を巡られまして、さうして税務署に來て居られる納税者と直接に御話になりました、「ラジオ」其の他で誤つたものは直ぐ訂正すると云ふことを數囘申しました、さうして訂正を致したのでございまするが、實際から申しますと、其の當時營業税或は甲種事業所得は數倍、或は十數倍に上つた人もおありになつたと思ひますが、其の中で東京都内でうんと兎に角速く訂正することに致しました、殆ど訂正することは少かつたやうな状態でございます、全體から見ますれば、個々の人に付ては相當誤りがあつたでございませう、今年度の農業所得に付きましては、此の課税と云ふものは實際に副つた課税が宜いのであります、之を農家の方が一切横にはやらないで全部供出されたに付きましては、闇などを毛頭見るべき筋合のものではないと思ひます、唯實際の收穫があつたに拘らず、供出が十分でなかつた所に付きましては、斯う云ふ農家は相當の收入があつたのではないか、税務では實際の收入から其の所得に必要なる經費を控除したものを所得額として計算するのであります、隨て其の方が結果から申上げまして、實際の所得があるとすれば、それに課税して行くことは、税務官吏の職務でございます、だから我々は闇だらうが何だらうが、本當の所得を捕へて行つてそれに課税をすると云ふことを務めと考へて居ります、若し假に公定價格以上にお賣りになつた農家がありまして、さうして所得が出たならば、我々はそれを捕へる外に、それを課税の對象とするより外にございませぬ、如何に其の方が所得がありませうとも、一段にどれだけ擧げて、公定價格で斯う云ふことで課税したならば、全國的に不均衡の場合が非常に起つて參ります、最近にも一昨々日ですか、北、東村山町の方が數名おいでになりました、私は能く事情を承り、又能く事情を御話致しまして、自分としては納得して戴いたと思ふのであります、併し御話の點がありますので、新潟縣或は其の他の地方は勿論、秋田縣に付きましても陳情がございます、さう云ふ點に付きましては十分調査を續けまして、過つた所は即座に直したいと思ひます、幸ひに明日は全國の財務局長會議、又直税部長會議等を開きますので、其の席上でも能く事情を聽き、さうして直ちに過つた所は直すやう指令致す積りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=20
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021・叶凸
○叶委員 私は大藏省の意向は私の方でも能く分つて居ります、大藏省がどう云ふ點に重點を置いて課税をしようとして居るんだと云ふことは、あなたの方の主觀的な其の立場は能く分るのでありますが、其の點に付て御質問申上げたいと思ふのでありまするが、闇と云ふ言葉が私は嫌ひなのでありますが、厚生大臣が或る所で旨いことを言つて居られますが、丸公を官價と稱し、それから此の闇を民價と稱して居る、民價の標準を大體農家に調べて貰つたのでありますが、是なんかに付きまして、農家に入りまする所の一切の收入を此の民價なりに換算致しまして、大體どの位になるであらうと云ふことの推定も御研究に餘程自信のおありになるやうな口振でありますが、然らば農家が買はなくちやならない所の民價の方にも然るべき御調査があつたであらうか、其の賣つたものを拵へる爲め農家が色々な肥料でありますとか、或は一切のものを買つて居る譯でありますから、さう云ふ農家の、それに對する民價にどの位の御研究をなさつて居るのであるか、甚だ細かい質問になる譯でありますが、此の地下足袋が二、三年來の相場と現在の相場がどの位になつて居るか、聽かせて貰ひたい、調べて居られるのですか、さうでなければ、農村のあとに殘つたお金と云ふものは判る筈がないのです、それを御質問申上げます、知つたことだけ言つて貰つたら宜いのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=21
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022・池田勇人
○池田(勇)政府委員 肥料竝に地下足袋の所謂民價に付きまして、税務署がどう云ふ風な評價をしてやつて居るか、私は存じて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=22
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023・叶凸
○叶委員 では私が申上げます、是は大體東京の相場らしいのです、私は生きた實際は斯う云ふ所にあると思つて居るのです、如何に寒心すべき實情でも、其の實情は實情として認識せなければ正しい所に見透しは生れて來ないと云ふのが私の信念でありますから……、地下足袋が六十五圓位であつたものが今二百圓位になつて居る、それから是は主税局長も和田農林大臣も肥料株式會社の一個の社長でありますから、其の社長が毎日製造なさつて居る所の下肥の價格を申上げます、それが二斗入の一本が約十二圓から二十圓して居るのです、自動車一ぱいが千五百圓位する、それを米でよこせと要求される時になんぼ位要求して來るかと申しますと、二斗なんです、實際我々は皆配給を受けて居らぬ譯でありますから、多少なり民價の米を食つて居る譯です、さうすると一升七十五圓位の相場です、比の値で下肥を衞生屋さんから農民は手に入れなくちやならぬのです、一々枚擧すれば限りがない譯でありまして、少くとも實際農家が此の位入るであらうと云ふ所の見込を立てられるならば、農家が一切の斯う云ふ所の惡絛件――商工大臣の御話にもありましたけれども、増産をしなければならないんだ、洵に其の通りであります、其の反面増産がなつて居ないやうな實情下に置かれて、どうしても供出もしなければならぬと云ふことで、凡ゆる所の隘路を突破して農家がやつて居る譯でありますから、農家の入ることばかり目掛けて居つて出るものを一つも知らぬと云ふことでは、是は税金をなんぼ課けて行つた所で揉め事が起るばかりであると私は信じて疑はないのであります、大體是は立川附近の農民の話でありますが、後で是は見せまするけれども、税金の課け方なんかでも、税務署の人達はちやんと標準を置いてやつて居るのです、水稻が段當り百五十九圓八十八錢、陸稻が七十二圓十一錢、それを税務署の人達は闇の場合は大體十倍から、それから第二種としては五倍、都會の近郊なんかでは一段歩に付ては二毛作三分位は作るだらうと云ふやうな、何囘穫れると云ふ所まで微細に亙つて研究をして税金の追求に見えて居る譯であります、でありますから、さう云ふ點に付てもつともつと農民の得心するやうなことを一つやつて戴きたいと思ふのです、農民も今日は來て申して居りました、實際君はそれだつたら、お役人さんの方から是だけお前の所はあるんだと言はれて來て、實際お前はなんぼ位だ、それは少くとも三分の一位にして貰はなければ實際それを納める譯には行きませぬ、それをしなければ供出せずしてそれを他に賣らなければならぬと斯う云ふことを老農は申して居ります、現在の税務はお互ひに得心づくで行きたいと思ふ、お互ひに得心せぬ所に色々な人間の感情と云ふものが生れて來る譯でございます、色々資料もございますけれども、大藏當局は言うて來た所だけまけてやる、言うて來ぬ奴は取つてしまふ、斯う云ふことで、全部言うて來ると云ふことになりましたならば大藏省は立直さなければならぬと云ふことになる、其の點に付てやはり指令一本で四國の果てでも大藏省は調査されたら宜からう、少くとも民衆が政府を好きになるか、嫌ひになるかと云ふことは、此の惡税と云ふことが最も影響する、是は古今東西の歴史を通じて明かなのであります、現在の農民はさう云う意味に於て非常に險惡な實情に落込んで來つつあると云ふ風に私は見て居ります、私は和田さんの先驅的な氣持を買ふ譯でありますが、相當やはり毎日褌の紐を締直して農林大臣の椅子に坐らなければ由々しき責任問題が起るやうなことになる、本當に眞面目に考へてやらなければ國家百年の大計を誤る時期が來ると私は思ふ、此の税金に付きましては直接麥、馬鈴薯に影響しますから、全部に亙つて再調査して、農民が來ても、あなたが斯うだと云ふやうに得心出來るだけの根據の上に立たなければ、自分の家でなんぼなんぼで野菜を買つて居るからなんぼなんぼと簡單なものでない、それならば其の野菜をどの位で原價計算をやつて居るか、そこまで御研究なさつて、やはり得心づくで、納得づくで行く、農民は全然税金を出さないと云ふやうなことを言うて居る譯でごさいませぬ、さう云ふ點に付きまして一つ全部に亙つて再調査を是非して貰ひたいと思ふ、そこで如何でありませうか、念を押して置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=23
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024・池田勇人
○池田(勇)政府委員 收入は分るが、其の收入を得るのに必要な經費に付て、所謂闇價でございますが、闇價の見方、勿論實際の所得を調べるのでございますから、調査に當る者も實際の支出額を見て居ると思ひます、又見るべきだと考へて居ります、それから得心づくで税金を取るべきではないか、御尤もな御話でございます、是は税務の奧義は納税者の協力得心を得るにあると思ひます、實は餘談に亙りますが、得心づくと云ふことの實例ですが、本年の農業所得に付て申上げます、東京都内の或る税務署で最近署長が迭りました爲に其の管内の事情を知りませぬ、隨ひまして御話の通りの或る一定の標準目安と云ふものを作つて居ります、それで賦課しようとして農事實行組合長、農業會長に聽きました所が、それは大變だと斯う云ふので、税務署長が個々の農家に付て調査を始めました、さうして農家に一堂に御集まりを願ひまして、昨年の一定日の預金と今年の一定日の預金に依り、一年でどれだけ預金がお殖えになりましたか、さうして一年間にどれだけお金を御使ひになりましたか、家事に關係して生活費其の他でどれ位御使ひになりましたかと云ふ調べを出して戴きました、さうして其の個々の農家の實際の作付段別と作付種類で算盤を彈きました所、税務署の初めの見込と全體に於て――例へば麥畑はどうか、蔬菜畑はどうかと云ふことに付きまして平均は大差がなかつたと聞及んで居ります、隨ひましてさう云ふ初めの標準でやつたのと實際の農家からの申告に依つてやつたのと一段當りの所得の標準が違つて居りませぬ、此の事で實際納める全體の額は同じでございますが、さう云ふ農家の協力、得心を得まして、其の税務署では農民の方から殆ど異義の申出がないさうでございます、併し其の隣りの税務署では事前にさう云ふ風な手配が足らなかつた爲に相當の問題があると聞及んで居ります、是は東京都内の或る税務署でございます、斯く致しまして、其の税務に携はつて居る者が先づ以て納税者の懷ろに飛込み、又納税者も税務署の方針を能く聽いてやつて行つたならば得心づくの税務行政が收められ、圓滿に課税が進んで行くと思ふのであります、隨ひまして税務署は御話の通りに或る程度の目安を決めなければなりませぬ、例へば各税務署に依つて取扱が違つてもいけませぬから大體の考へ方は決めます、併し大體の考へ方は飽くまで平均的なものでございまして、個々の農家には一々ぴたつと當つて居りませぬ、例へば一段の野菜畑を作つて居る人と一町の野菜畑の人とでは、實際の所得は家族員數と作付けの段別に依つて違つて來る譯でございます、さう云ふ點はやはり個々の人に當つて見ないといけないのです、税務署の調査が不十分だと云ふことですが、それは洵に不十分な點もございませう、實は敗戰後税務官吏の年齡素質も昔程ではございませぬ、それが一人で千數百人或は二千人以上を決定しなければならぬ實情でございます、隨ひまして個々の人に付て相談すると云ふことは實際問題としては中々困難でございます、隨て今のやうな大體の目安を付けて、さうして事前に其の衝に當る農事實行組合長、農業會長或は町村長とか、或は最近は課税囑託員と云ふやうなものを置きまして實情に副ふやうにやつて居るのであります、我々と致しましては御話の得心づくで税金を取ることに十分の努力を致して居る積りでございます、至らぬ所がございますれば尚ほ今後共努力を續けたいと思ひます
尚ほ第三番目に、全國的再調査をしろと云ふ指令を出せと云ふ話でございます、勿論税務決定と云ふ行政處分は常に誤りなきを覺悟しなければなりませぬ、併し色々な仕事が輻湊致しますのに、今全面的に再調査と云ふことは中々困難と思ひます、そこで私は農業所得に付きまして農民の申告――申告と申しますと言葉が極端でございますが、お氣に入らない點があると思はれるやうな地方に付きまして、再調査をしろと云ふ指令は出して宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=24
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025・馬越晃
○馬越委員長代理 叶君、まだあと通告が十四名程ございますので、成べく簡單に御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=25
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026・叶凸
○叶委員 諄いやうでございますけれども、課税に對する農民側の意見と云ふものは單に一部分でなしに、全國的に相當廣汎に此の問題に對して農民が色々意見を持つて居る譯でございますから、之を單に事務的に一、二の問題の處理の如く解決するには餘程愼重にしないと「ピント」が外れはしないか、斯樣に私は考へるのです、其の點に付きまして特に農林當局と致しましては、斯う云ふ課税の方法に依りましては、此の食糧緊急措置令も關聯して來ることでありまするけれども、農民の供出意欲を阻碍するやうに私は考へるのであります、良き農家惡き農家――食糧緊急措置令の對象になります所の農家、所謂惡徳農家と云ふことがよく聞かれる譯でありますけれども、惡徳農家の標準と云ふことが非常に大きな問題になる譯でありますが、税務署の方は大體に於て農民全部を惡徳農家の標準にして居るやうに思ひます、と云ふのは農林當局が是まで惡徳農家とは斯う云ふものを指すのだと云ふことを、農林次官なんかの答辯を通じて私は考へさせられることに付きまして、さう云ふ風な表現をして居る譯でございますけれども、此の税金の賦課と云ふ面から考へますと食糧緊急措置令などは、中々拔くこと相成らぬ傳家の寶刀ださうでありますが、それを始終拔いて振廻して居らなければならぬと云ふやうな結果になりますが、其の點惡徳農家の標準と云ふものを、一つ和田農林大臣から御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=26
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027・和田博雄
○和田國務大臣 此の強權發動でありますが、強權發動は私屡屡述べましたやうに、今度民主的に改組した市町村食糧調整委員會の申請に基いてやると云ふことに致したのであります、と言ひますのは、惡徳農家と云ふものに付て村で作つた委員會の人が見て、あれは惡徳と云ふ、言ひ換へますれば全體の者が見まして、あの人はと云ふものがやはり自然そこに出て來ると思ひます、それで茲にはつきりとした標準を述べなくても、村々に依りまして供出、斯う云ふ事柄をやつて行く上に付て、どうもあの人が一人やらない爲に全體が動かないと云ふ標準は自ら出て來るのでありまして、それを今度の民主的な委員會と云ふものの申請に依つて、強權を發動すると云ふことに致した理由であります、一方的に唯是が惡徳農家だ、斯う云ふ斷定を下すのでなくして、そこに民意を十分反映さして標準を決め、又決定させて行く、又自然にさう云ふものが決まつて來る、斯う云ふことになるのだと私は思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=27
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028・叶凸
○叶委員 それでありますならば農林大臣、是は要りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=28
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029・和田博雄
○和田國務大臣 やはり要るのであります、一方から獨斷的にやるのでなくして、供出を阻碍して居ると云ふ實際上の具體的な色々な行爲がある譯でありますから、そこで村の人がそれを見て是はと云ふものが決まつて來るのであります、自づと其の社會の通念、又は其の政策の本旨と云ふものから自然と決まつて來る譯でございますので、さうだからと云つて此の強權の發動が要らないと云ふことにはならないのであります、強權發動は結局最後はどうしても國家の力に依つて、さう云ふ人をやはり處罰する、處罰すると言へば語弊がありますが、處罰する、斯う云ふことがありまして初めて最後の締め括りが付くのであります、其の強權の發動と云ふものは官僚獨善的にやるのでなくして、そこに村の實際上の民意を反映した、其の基礎の上にやつて行く、斯う云ふ建前なのでございますから、緊急對策の中にありますやうに、強權發動と云ふものはやはり存置するが宜いだらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=29
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030・叶凸
○叶委員 諄いやうでありますけれども緊急勅令に直接に關聯することでありますから、もう少し發言を許して貰ひたいと思ひます、暴力行爲取締處罰法違反と云ふものは、あの法案を制定された時は、暴力團、あれを彈壓するんだ、斯う云ふ建前で出來たのです、所が私も身を以て體驗致して居る譯でありまするが、二十三歳の時に小作爭議で此の暴力行爲取締處罰法違反に引掛つた、是は勞働者、農民の彈壓法に化した譯であります、太政官布告令以後の法律が生きて居る譯でありますから、民衆の指彈に遭つて居るやうな、仲間からも排斥されて居るやうな農民を、國家が糾彈するのに、何も特別の勅令はなくても、凡ゆる法律を全部取つて御覽なさい、適當な法律は必ず三つ四つは出て來ます、何を如き好んで緊急措置令として持たなくてはならないかと云ふことを私は尋ねて居る譯であります、それはなぜかと申しますると、農民が氣持が惡いです、それで非常に「デリケート」な面に觸れて來る譯です、毎日新聞の見出しなんかでも、闇以上の税金、善農も惡農の道連れとある、惡農の道連れになつて居る譯である、惡農の道連れに善農を連れて行く、善農の道連れに又惡農を連れて行く、ややこしいことになる、それよりも綺麗さつぱりと、下からの民主的自主的な供出、上からの官吏の諸君、當局の人達は、是だけは出して貰はなければならぬ、都會の人達を飢えしめてはいかぬ、農林次官は旨い表現を以て言はれました、上と下との噛み合せ、さう云ふ方法を以てやると云ふならば、何も此の一片の緊急措置令に噛り付く必要はないと思ふ、之に對する農林大臣の見解を重ねて聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=30
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031・和田博雄
○和田國務大臣 中々簡單にさうは參らないと思ひます、なぜかと言ひますと、成程仰しやるやうに上からと下からの噛み合せでありますが、下に行つた時に、やはり農民と雖も個々の人間に於てそれぞれの差等があると思ひます、色々な人が居る譯であります、隨ひまして其の農家の中の全部が全部善い人と云ふ斷定は下せないと思ふ、やはり農家の中にも此の政策をやるに付て非協力の態度を執る者がある、それに連れて全體の人が動かなくなると云ふやうなこともあると思ふ、さう云ふ場合にはやはり皆の人があの人はと云ふことになれば、國としては其の總意を反映して、其の人に緊急指置令に依つて強權を發動して、其の人から政府の取るべきものは取つて結末を付ける、又全體の人が本當に動くやうな途を付けると云ふことが必要であると思ふのでありまして、左樣に此の問題を考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=31
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032・叶凸
○叶委員 税金に關する項目に付ては以上を以て打切り、更に私の質問を進めて行きたいと思ひますが、主税局長に對する質問の最後の御質問として、農林大臣の感想、御考へ方を一つ聽かせて貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=32
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033・和田博雄
○和田國務大臣 唯今叶さんと主税局長との間に色々質疑應答があつたのでございますが、主税局長も御答辯せられたやうに、課税が公平であると云ふことは是は非常に必要なことでありまして、又税金が納得づくで本當に不平なくあの人達が國に向つて納められると云ふことが、是が課税の根本原則であると云ふことは御同感であります、殊に本年の農業所得に付ては、大藏當局としても供出に差障りのないやうにと云ふことで、非常に御苦心なさつたらうと云ふことは、今の應答を聽いて拜察したのでありまして、殊に問題になつた點は再調査すると云ふ言明があつた譯であります、我々としても是非さう云ふ調査をやつて戴きまして、本當に不平不滿がなく食糧の供出に付て農家の方々が尚一層協力されるやうにと云ふことを望んで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=33
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034・叶凸
○叶委員 主税局長に對する質問を打切ります、次に農林大居が御見えにならなかつたので、農林次官から私の質問の一、二の箇所に付きまして、大臣から返事を聽いて貰ひたい、斯う云ふことがあつたのであります、それは土地返還の問題であります、政府は八月十五日終戰後の一切の不當土地取上を元の小作人に返し、土地の賣逃げの闇價格の不當價格に依る小作人の損失を地主から吐き出させ、惡「ブローカー」を處罰する意思はないか、それに付きましては大臣が農政局長の時代、四月二十五日、でありますが、懇談會に來て戴きまして、色々最近の土地取上げの情勢に付て、農地法改正案の説明に絡んで統計などを擧げて戴いたのを私は擧げた譯でありますが、實際此の頃の農村と云ふものは、土地改革と云ふことの聲が聞えましてから、さうでなくとも大陸から、南方から兵隊さん、色々な人が歸つて來る、都會に於て燒出された人達が農村に歸つて來る、色々な情勢で、殊に小地主、中地主が自分の年貢が金納になりまする爲の、飯米獲得の爲の土地を返せと云ふことの要求でありますが、さう云ふ要求で農地法と云ふものが、一囘ならず二囘改革になつて、話は迚も良いやうな話に農民には聞えるけれども、實際の農村の實情と云ふものは耕作權其のものの地主と小作人の血みどろの鬪爭を展開して居るのです、殊に小地主と小作人の土地を中心にする鍔競合と云ふものは、日本人としてはどうかと思ふやうな所まで行きつつあるのです、それで大分農村でも小作人が凡ゆる惡條件の下に増産々々とやつて居るのでありますが、其の根本の土地に付て非常に困つて居るのです、それに付て一つ農林大臣は八月の十五日からさう云ふ不當の土地取上げ、それから土地の闇價格に依つて地主が賣つて逃げて居る土地の賣逃げ、其の差額は小作人が損をして居る譯でありますが、其の損失などを地主から吐出させる、斯う云ふやうなことに付きまして一つ明確に大臣の口から聽かせて戴きたいと思ふのです、是は繰返したことになりまするけれども御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=34
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035・和田博雄
○和田國務大臣 土地返還の問題が農地調整法の改正に伴ひまして起りましたことは、是は事實であります、農地調整法は叶さん御承知のやうに一つの體系をなす農地の改革でありますので、自作農の創定と耕作權の確立、金納小作料、それから農地委員會の自治的な強化と云ふことであるのでありますが、やはり日本の特殊の事情からああ云ふ改革をやりますれば、どうしても土地返還と云ふ現象は或る程度起つて來るのであります、是は私共があれをやりまする時にも、當然豫想した事柄でありますけれども、併しさうかと云つて改革其のものをやらなくて宜いと云ふ理窟にはならないのでありまして、どうしてもそれはやらなければならない、それで土地返還に付ては、御承知のやうに農政局長の通牒を逐次出しまして、知事に向つて嚴重な警告を發した譯でありまするが、それにも拘らず色々な原因に依りまして、土地の返還されたものもあるのであります、此の問題は今度は私と致しましては、關係方面との諒解を得次第土地の改革の中に織入れまして、適當に處置致して行きたいと思ひます、唯仰せのやうに八月十五日まで遡るかどうかと云ふことは、私今言明の限りでない、又さう云つたことは可なり困難だと思ひまするが、土地返還に付きましての項目も、當然今度の改革法案の中には含ませまして、準備の出來次第御審議を願ひたいと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=35
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036・叶凸
○叶委員 八月の十五日に遡ると云ふことに付て農林大臣は言明するのはどうかと思ふと云ふことでありまするからして、八月十五日と云ふことをはつきり農林大臣の口から聽きたいと云ふことは、私は保留をして置き、又の機會に又御尋ね致します、唯此の農地調整法と云ふものが施行されながら、農地委員會の構成と云ふものは、從來の農地委員會の人達が實際の話まだやはりやつて居る、此の實情に付ては、大體土地の問題に付て專門家である所の和田さんが知らぬと云ふことはないので、能く御承知な譯でありまするからして、唯今も其の點に對する所の處置も農地調整法の再改正案の中に織込むと云ふのだからして、一つ十分織込んで置いて貰ひたい、農地調整法の改正法案が出ました時に一つ是は讓りたいと思ふのでありまするが、是は中々大事な問題であると云ふことを強調して置きたいと思ふのであります、それから委員長、質問を次に進めて行きますが宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=36
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037・馬越晃
○馬越委員長代理 どうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=37
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038・叶凸
○叶委員 供出の點に又戻つて來る譯でありますが、町村に調整委員會と云ふものを設けると云ふ風に農林大臣が仰しやつて居る譯でありますが、もう少し詳しく其の運營の方針なんかも一つ聽かして置いて戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=38
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039・和田博雄
○和田國務大臣 詳しくは政府委員から御答へ致しまするが、結局市町村の調整委員會と云ふものは、市町村に於ける耕作農民と云ふものを主體と致しまして、それに必要に應じて、例へば檢査員であるとか其の他の者を入れまして作りまして、供出の割當であるとか、村内の消費の是正であるとか、其の他上からの農家に行きまする必需物資の配給であるとか、さう云ふやうな事柄を結局やらして行きたい、斯う考へて居るのであります、隨ひまして上から是だけは國家として必要なんだ、斯う云つて政府から府縣、府縣から市町村、斯う來ました割當に付ても、市町村の調整委員會でそれを受けて、今あなたの仰しやつた下からと上からと噛合はせて、下の町村内の割當其の他消費規正と云ふものを綜合的に考へてやつて行く、斯う云ふことをやらして行きたいと考へて居ります、隨て市町村の調整委員會と云ふものは、今後供出の面に付てのみならず、農家の必需物資の配給面に付きましても、最末端に於ける中心的な機關になる、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=39
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040・片柳眞吉
○片柳政府委員 私から補足して申上げますが、市町村の食糧調整委員會の構成なり運用に付きましては、近い中に詳細なる通牒を出したいと思つて居りますが、大體の考へ方は唯今大臣から御話のありました通りでありまして、結局耕作者を中心とすると云ふことが原則であります、併し更に具體的には其の村の農民組合の代表者、或は部落にありまする實行組合の組合長、それから特に青年層の耕作者の中、やはり青年層からも一つ選んで戴きたい、それから今までの所謂篤農家の階級からも特に選んで戴きたい、斯樣な考へ方で現在はやつて居ります、それから食糧檢査員のやうな相當「エキスパート」が居りますから、是も委員會の意見で食糧檢査員を適當とすれば入れても宜しいと云ふ風に考へて居る譯でありまして、隨て原則として不耕作地主等は勿論入つて參らないと云ふやうに考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=40
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041・叶凸
○叶委員 其の他のことは御互ひに建設的に私は農林省に出向いて色々御話を聽かして貰ひたいと思ひます、時間の關係もありますので質問を進めて行きます
次に御尋ねしたいことは休閑地利用、それから軍用地、軍需工場、未建設敷地の問題、此の利用の問題でありまするが、當局が休閑地利用を如何に指導されつつあるか、其の成果と云ふことを一つ御聽きしたいこと、軍用地、軍需工場、未建設敷地の耕作の問題に付て、どう云ふやうな具體的な措置が執られて居るかと云ふことに付て實は御質問申上げたいのであります、なぜ斯樣な質問を唯今するかと申しますと、殊に軍需工場の未建設敷地と云ふものが方々に厖大に殘つて居る、例へて申しますと、或る種の軍需工場、飛行機を造るとか其の他色々直接殆ど強權發動をして、農民の土地を收奪しました所が全部建設せぬ先に、十五萬坪ありまするならば五萬坪位しか建設して居ない、あと十萬坪荒して居つて其の儘終戰になつたと云ふやうなことが隨分方々にある譯であります、それに付きまして大阪の方から私の方に直接――是は青年の人でありまするが、手紙をよこして居りますので、一つ地方の聲として要點だけ讀上げますから、此の質問に關聯して聽いて戴きたいと思ひます、「農地調整法が改正された時に其の中に入れて貰つても宜いし、又は特別の法律を作つて貰つても宜いのですが、戰時中買上げられた敷地で、終戰當時未だ利用されて居ない農地、此の土地に付ては原則として元の農民に返還することにして欲しいのです、行政官廳としては大體此のやうな方向で問題を取扱つて居りますが、やはり明確なる立法がなされないと徹底的に囘復することは不可能なんです、戰時中勝たんが爲に農民は土地を提供したのです、既に目的がなくなつたのに、會社が農地を其の儘所有して自分達だけの食糧の確保を圖ると云ふことは餘りにも蟲が好過ぎる、殊に其の土地の利用度に至つてはお話になりませぬ、色々な面から之を會社に保有させて置くべきものではありませぬ、最近こんな紛糾は方々に見られます」、斯う云ふことを言つて來て居ります、斯う云ふ例は非常に多いのであります、是は大工場の例でありますが、戰時中富山の不二越鐵工が新潟縣の浦佐村へ製鐵所を建設すると稱して廣大なる畑地を買入れたのです、此の手紙は大阪から來たのでありますが、新潟でも斯う云ふ問題が起つて居る譯であります、大阪では始終さう云ふ問題が起つて居る、恐らく全國的に斯う云ふ問題があるのですが、是は大工場のみならず、中小工場でもさう云ふことがあるのです、と云ふのはやはり休閑地の土地利用であると云つて土地を取り上げて、それが其の儘戰爭が濟みまして其の工場が閉鎖されて居るに拘らず、草ぼうぼうにしながらそれを押へて居る、私の村でも農家の戸數が殖えて、百戸位でありました農家の戸數が百三十戸位になつて居る、併し實際供出可能の農家は八十戸に減つて居る、農家が殖えて供出する農家が減つて居ると云ふことは變なことですが、是は今さう云ふ土地の變動が多いのと、直接には斯う云ふ美田が十分利用もしない人達に依つて取上げられて居る爲めであるのであります、是はやはり増産の面から重要なことでありますし、農地法も施行されて來る現在、此の食糧緊急措置令に關聯して來ることでありますからして、此の點に付きまして一つ農林大臣の御答辯を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=41
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042・和田博雄
○和田國務大臣 工場の敷地で現在農地であつて事實餘り耕されて居らず放置されて居る土地に付ては、地主の保有面積以上は持てないことになりますから、自作農創定の強制的な買上が出來て解消になるのです、それは具體的に個々に縣廳にはさう云ふ方針で通牒を出して居りますし、個々の問題として或る程度解決されて居るのではないかと思ひます、其の細かい數字は私は持つて居りませぬが、實際問題として、工場から色々農政局にやつて來るのですが、能く法律の要旨を話して、現に非常に澤山土地を持つて居つて放置されて居るやうなものに對しては、元の農民に返すなり何なりして、自作農創定になるやうに處置しろと云つて居ります、併し工場に依りましては、實際上動いて居る工場で、工員が自耕致しまして、丁度勞働者の住宅に、「ドイツ」でやりました「クライン・ガルテン」のやり方をやつて、坪割當をやつて、實際上能く耕して居る所もある、さう云ふ所はさう云ふ風に實際勞働者に耕さして一面には勞働者の食糧補給をさせ、又産業に勵しんで貰ふのは宜いことでありますから、さう云ふ立派な工場に付ては私は恐らく自作農創定にはなつて居ないと思ひます、併し方針としてはさう云ふ放置されて居る所は總て解放しろと言つて居る譯であります、それから元の軍用地でありますが、從來の用途を廢しました軍用地に付ては、出來るだけ解放すると云ふ方針で、聯合軍からの可及的速かなる開放を受けるやうに處置致しまして、さうして其の開放せられた農地は地方の農業會或は土地開發營團で開發をやる、斯う云ふ方針で進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=42
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043・叶凸
○叶委員 今農林大臣が仰しやつて居りました十分に利用されて居るやうな土地、それは話をするにしても話し宜いと思ひます、恐らく工員に理解を持つて相當土地を活用するやうな人は、又前の農民が話に行つても話がし宜いし、又現状の儘でも全體から見れば有效にそれが利用されて居ることになつて居る、所が私の申上げて居るのは、具體的に申しますと大阪の或る工場――名前は申しませぬが、其の工場が十五萬坪から二十萬坪位の土地を取上げて置いて五萬坪位しか實際建設して居ない、あと十何萬坪と云ふ土地が殘つて居る譯ですが、そこに終戰後農民が入つて來て居る、所が最近まで其の工場に進駐軍が入つて居たのですが、其の跡に農學校を新設すると言つて居る、所が私は其の社長を知つて居るけれども、恐らく農學校の校長としては日本で一番不適當な人でありまして、其の意圖がはつきりして居る、それから不二越製鋼でも、やはり農民が現在作つて居る譯でありますが、是は大體自家用の畑として人夫を雇傭して作らうとして居る、私が實際に當つて解決した軍用地があります、例へて申しますれば、終戰後一番早いのでありますが、盾津の飛行場の問題もあります、斯う云ふ所が全國方々に殘つて居る、出先の行政官廳も相當此の頃は進歩的でありまして、相當農民の利益、立場を考へて、やはり土地を持たうとする一方の意思を抑へようとする人も多いのであります、併し片方の人達は相當の傳手を持つて居つて何とか彼とか言つて來る、其の時に當局のはつきりした方針が地方廳に行つて居なければ其の波を能く喰止め得ない、現場に於ては農民は團結の力を以て對抗する譯でありますが、結果としては色々な摩擦が起ることは自然の理でありまして、やはり政府としては軍用地未建設敷地の耕作問題に付ても、現在の食糧事情と睨み合せて、元の小作權の尊重と云ふことを相當明確にして下すつたならば要らざる摩擦面が少くて濟むのではないかと思ふのですが、其の點に付て簡單で結構ですから農林大臣の御意見を聽かして貰ひたいと思ふのです、農地法は織込むと云ふことを言はれずに、其の前にはつきりした方針を聽かして貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=43
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044・和田博雄
○和田國務大臣 其の方針ははつきりして居るのです、此の前に農地法を作つた時既にはつきり致して居るのでありまして、さう云つた農地で工場敷地として使はれずに居れば、大部分農民が入つて居るだらうと思ひます、さう云ふ人達には十分其の人達の利益を擁護するし、第一に考へて行くと云ふことは、農地法を作つた時からはつきりして居るのであるから、其の趣旨で小作官を指導して居る、唯問題は具體的に個々に付て解決致しませぬと、やはり相當事情がありますので、唯抽象的、一般的に言ふだけでは解決致しませぬ、根本の方針ははつきり致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=44
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045・叶凸
○叶委員 今の農林大臣の御答辯が速記にも載ると思ひますので、私寫して、農民組合としても農地法と讀合はして、さう云ふやうな方針でやると云ふことを誤解のないやうに全國にも進めて行きたいと思ふのであります、ずつと質問を續けて行きたいと思ふのでありますが、是も農林大臣に御尋ねしたいと思ふのであります、青果物の集荷と配給に關することでありますが、政府が昨年の十一月野菜の統制を撤廢し、即ち野菜の自由販賣制でございますが、次いで野菜の廉賣制を實施されましたに付て、其の理由と成果に付て御説明を願ひたいと思ふのであります
次には現今の農村より都市への野菜の入荷状況に付て、八大都市、東京、横濱、名古屋、京都、大阪、神戸、廣島、福岡の統計を以て御話願ひたいと思ふのであります
それから廉賣制停止に依つて正規の「ルート」に乘る青果は、是が問題にならぬ程少量でありますが、是が凡ゆる意味に於て大きな問題になつて居ります、其の應急對策と將來への根本對策方針を一つ御尋ねしたいと思ふのであります、就きましては時間を縮小する意味に於きまして私見を――是は黨の意見ではありませぬ、私見を申述べたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=45
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046・馬越晃
○馬越委員長代理 成べく簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=46
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047・叶凸
○叶委員 成るべく簡單にと思ふのでありますが、是は私の居ります大阪の青果物の集荷に付きまして直接集荷配給の面に携つて居る人達の意見を私聽いて見たのであります、一つは統制會社、統制會社と申しましても是は業者としての單數論者であります、第二は業者――是は複數論者の業者の意見を聽いて見ました、第三に直接監督官廳の人達の意見も一つ聽いて見た譯であります、此の統制會社も單數論者の業者と私は稱します、其の人達が――六月の二十三日に大朝、大毎紙を通じて私は知つたのでありますが、農林、大藏兩省に陳情した、八大都市の青果物統制會社の協議會が要求書を出して居るのです、一寸讀上げて見ます
「一、蔬菜閑散期である七、八、九三箇月間の應急非常措置として四億五百萬圓國家補助を仰ぎ廉賣制を復活する
二、各都市の一元的集荷機關の確立
三、強力な取締の望めない現在丸公は正常「ルート」に依る集荷と配給を阻害買出しを餘儀なくさせる爲め之を撤廢する
四、以上のことが認められなかつたら此の三箇月間各青果會社の自由活動の默認を得る」
青果會社側が斯う云ふ陳情をして居ると云ふことを新聞で知つた譯であります、「このままでは闇屋に敗ける、八大都市の青果物會社起つ」斯う云ふ見出しで是が新聞に依つて報道されて居る譯であります、御參考の爲にずつと讀上げて見ます、是は業者の中でも復數論者の意見でありますが、其の意見を徴して見ました所が、此の統制會社が即ち業者の中の單數論者が出しましたる要求に付て批判的に一應自分の見解を申して來て居りますが、それに依りますと、先づ大朝の記事にある如く既に丸公はあつてなきに等しく、闇市場の燎原の火の如き發展振りは最早や制壓し切れぬものであり、既に眞の自由市場化して現實に配給皆無な所謂正式「ルート」などは、全然市民は當てにせず、又自由市場に依り選擇買の途を得て居る事實問題に付て對策を檢討することが第一で、大毎紙所載の箇條書を茲に批判致します、一の國庫補助は既に春に實施して試驗濟みであります、結論は獨占會社の赤字埋めと云ふより全くの極樂營業に墮し、小賣商關係へ更に霑すだけの問題の外に、更に此の兩業者間に惡用されて奇怪なる弊害さへ生じたのであります、例と致しまして、區域外へ一應配給して再度大阪へ入れ、補償金二重取りの如き惡行爲もありたり、而も需要家には――春の例ですが、十日に一日位假令只で貰つても有難くなく、それが終期になつては薹の立つたやうな劣等品を澤山無理に突き付けられても泣寢入する等、關係會社が救はれ、補償されたやうなものです、生産者も消費者も誰も喜んで居ない、是は再び斯かる甘味を吸ひたいとする獨占會社の極めて唾棄すべき愚案である、假に七、八月等に之を實施すれば、評價されれば三分の一にも四分の一にも値せぬ胡瓜や茄子が大量家庭に押付けられ、眞の價値ある新鮮品は滅多に「ルート」に乘らぬことは必定だ、次に第二の一元化の問題に付て批判をして居りますが、是は斯かる場合にも尚且つ壟斷的舊觀念に墮して、只管自己擁護のみを目標にし、如何にして業界人の總力をそれこそ百「パーセント」有效に總動員して集荷するかを忘れたる利己本位の主張なるが、而も國家補償を一に、次に此の問題を掲げる所、彼等に既に時勢に棹さす資格なきを暴露せるものであると云ふやうな議論であります、第三としまして、丸公の撤廢、是は結論的に之に落付く外なき現状にて、此の本音を今時分出すことが手遲れで、寧ろ之には却つて出荷に何等かの統制か規正を加へること等を條件に出してこそ、當路或は識者の首肯を買ふことと思ふ、即ち統制規則は全然廢止されぬなら形式でも使へるやうに殘す意味の法令として、せめて丸公はないものにすること、但し各縣が「ブロック」に割據して縣外出荷を阻止して居るやうな問題こそ、統制規則を生かして適當數生産地から荷が出る途を開く點を突いた方が餘程氣が利いて居る、即ち四は以上が容れられぬ場合は自由活動を認めよと云ふのであります、即ち結論は自由時代を求めながら尚且つ自己の優先的地位を掴まうと云ふ蟲の好い話だ、要するに第四の問題に來るならば、それこそ獨占的なものでなく廣く開放すれば、事實それが現在の自由市場をも順調なものに落付かす最良の手段でもある、戰時中の統制觀念を根本から拂拭して業者を活かして、大きな枠の統制で官廳が監督的立場にのみあることが、其のあり方と信じます、兎も角此の際單なる統制會社と云ふものに基本を置き且つ依存した考へ方を根本的に一掃して、業者の總力を活用して集荷をさせると云ふことが最有效であり、賢策であります、其の外色々書いてありますが、飛ばします、是が複數論者の人達の意見であるやうです、それから全大阪の生鮮食糧品を扱つて居る官廳方面の人達の直接の意見を私が求めました際の意見でありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=47
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048・馬越晃
○馬越委員長代理 叶さん、どうですか、あなたの御意見として簡單に要約出來ないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=48
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049・叶凸
○叶委員 それでは、さうしませう、それでは項目だけ言つて置きます、「蔬菜について」と色々書いてありますが、では飛ばしませう、是が私の最後の質問でありますが、それでは青果物集荷配給應急對策の私見を申述べたいと思ふのであります、一、一定期間丸公制を停止する、又は地方長官に一定幅の價格操作の權限を與へる、但し一部業者に利用されぬやうに業者の中には統制會社も含めます、生産者と消費者との利害を睨み合はし、適當に行使せしめる、二、荷受機關を複數制とし、相互に荷引に能率を上げ、不正を防ぎ、職責に忠實ならしめる、現在の如く業者の團體を一本の統制會社として獨占的地位に置くことは有害である、考慮を要する、第三として家庭配給の面以外に適當な場所に公設廉賣市場を設け、市民の選擇買を可能とする、自由市場を規制する其の方法でもあると考へる、第四青果物の如き鮮度を重視すべき食糧品は種々の融通性を持つ機動的對策工夫が必要である、斯う云ふのは私の青果物集荷配給に對する應急對策としての私見であります、集荷配給面に付きましては黨と致しましては近く其の根本的な方針、當面の方針に付ても代表的意見が出る譯でありますが、私個人と致しましても現在吉祥寺に宿をして居る譯でありますが、野菜の配給が非常にない譯であります、是は現在主食物との差を付けると云ふやうなことは實際食糧が緊迫致しまして、さう云ふ餘裕のある時代ではない譯でありまして、副食物殊に青果物の面の集荷配給と云ふことに付きまして、それから公設市場などに付て現在の農林當局が御考へになつて居ります所の御方針に付て應急對策を御聽かせ願ひたいと思ふのであります、曩に厚生大臣に公を撤廢されました時の御意向を聽かせて貰つた譯でありますが、是もやはり食糧緊急措置令の中に係はることでございますし、緊急措置令の案其のものの問題でもありますし、是は大きな問題であると思つて居ります、それに對しまして農林大臣の御意見を聽かせて貰ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=49
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050・和田博雄
○和田國務大臣 細かい點は食品局長から御答へ致すことに致しまして、私からは統制撤廢の理由でありますが、是は當時河合さんが次官でやつて居られましたから、河合さんから御聽き下さればそれで事は足りると思ひますが、結局終戰後の非常に混亂しまして人心もまだ動搖して居る時でありますし、物が非常に出廻りが惡かつた、そこで一應統制を撤廢するならば出るだらうと云ふので、統制を撤廢したのだと思ひますが、私は蔬菜に付きましては統制は撤廢する考へは今の所持つて居りませぬ、と申しまするのは蔬菜の生産事情を考へて見まする時に、非常に生産事情が破壞されましてまだそれが立直つては居ないのであります、殊に全體の食糧經濟が御承知のやうに窮屈な時でありますので、供給は窮屈であり需要は莫大である、而も潛在的な需要が相當あると云ふ時に於きまして統制を撤廢することは――勿論統制のやり方其のものは考へなければなりませぬが、統制を撤廢すると云ふことは、私は經濟を再建する上に於てはやつてはならないことだと考へて居ります、殊に公を最近撤廢しろと云ふ議論が――蔬菜に付ては自由にしろと云ふ議論が相當にあるのでありますが、私と致しましては是は執つてはならない政策であると依然として信じて居ります、其の色々な經濟的な理由は諄くなりますから止めますが、私としては左樣に考へて居ります、「アメリカ」では統制を撤廢して物價が非常に上つた、あの「アメリカ」の經濟を以てすら此の再建の時期に於ては統制撤廢は考へなければならないと云ふのは良い例だと思ひます、殊に日本のやうに窮乏經濟でやつて居ります時には需要の横行を野放圖にすると云ふことは、今の所得の分配から致しましても執るべき策ではないと思ふのであります、今後どうするかと云ふ暫定的な方策、それから又大阪の事情等に付きましては食品局長から御答へ致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=50
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051・坂田英一
○坂田政府委員 先程の廉賣の實績に付て先づ御話を申上げて置きたいと思ひます、此の廉賣の實績を申上げる前に、配給統制と公定價格を廢止した場合に於て結果がどう云ふ風になつたか、所謂廉賣制度の實施に依つてどう云ふ風に響いたかと云ふことを數字を入れて詳細に御説明をと云ふ御話でありますので、後程尚ほ書いたものを差上げたいと思ひますが、十一月下旬から十二月に掛けましては、是は一年の中で蔬菜が一番澤山生産され、又出荷される時期になつて居ります、さう云ふことと、それから又一つは價格公定を廢した、それから自由にしたと云つたやうなことから、一時的には出荷が相當出て參つた、併し是が長續きしたかと申しますと、長續きしなかつた譯であります
〔馬越委員長代理退席、委員長著席〕
値段は非常に上りましたけれども、長續きしない、其の點を申しますると、大體十一月の下旬には一日平均八萬二千貫、是は東京の實例です、十二月上旬には一日平均十二萬八千貫、同中旬には十三萬五千貫、同下旬には十一萬四千貫と云ふ風でありましたが、一月に入りまして、一日平均四萬貫、二月に入りまして三萬九千貫と云ふ風に下つた譯であります、勿論一月以降は蔬菜の端境期でもありまするので、是等に對して毎年惱んで居る時期ではありますけれども、左樣に十二月にはどつと出ましたけれども、一月以降はそれがどつと出るものが長續きしないと云ふ結果になりました、さうして價格の方はどうかと申しますと、價格は非常な暴騰を致した譯であります、其の例を申上げますれば、大體價格の方は大根に例を採つて見ますと、十一月の協定價格に於きましては二圓五十錢と云ふことでありましたが、十一月の下旬には十四圓、十二月下旬になりますと高値が十八圓と云つたやうな關係で、大體に於て五十倍から八十倍、少いものでも三十倍に此の期間に於て暴騰して居る譯であります、是は結局高ければ生産が上ると云ふことであれば宜いのでありますが、御存じの通りに蔬菜の對策として最も考へなければなりませぬ點は、生産が非常に減退すると云ふことで、非常に努力を致して居るにも拘らず減退する其の減退の最も大きな原因は、やはり主食作物の不足と云ふことの爲に蔬菜を非常に作つて居る地帶に於ては、全部主食作物に轉換するのが多い、假に今年の如きも五月頃は富士甘藍を澤山作る時期でありますけれども、靜岡の富士甘藍の産地が殆ど壞滅して居る、一日に百車も入つたこともありますが、最近は殆ど出廻らない産地は潰れて居る、是は主食の關係が一つある、それにもう一つは肥料の關係がある、左樣にして生産が減退する、此の統計もあるのでありますけれども、大體昭和十五、六年に比較致しますと、作付段別生産量と云ふものは三割減退して居る、それ等は特産地に於て特に減退して居る、特産地以外に於ては稍稍増加して居る、都市に於ける空地利用、蔬菜の生産は殖えて居る、然るに特産地に於ける減歩を「カヴアー」することが出來ないと云ふ實體である譯であります、左樣な關係から致しまして、初めは値段が自由になつてどんどん上りますと、其處へどつと入つて參りますけれども、さうしますと全國津々浦々までやはり高く上る、終ひには各都市が互ひに競爭する、値段だけはうんと上つて參るけれども荷物にやはり制限があると見えまして、結論に於ては先程申しましたやうに、十二月はどつと出た、一月、二月にはどつと出たが長續きしないで減少してしまふ、斯う云ふ現象を來した譯であります、左樣な關係から致しまして、御存じの通り、所謂三月の初めから、詳しく申しますれば二月の二十八日からでありますけれども、廉賣制度を實施した、之に依りまして、大體御分りであらうと思ひますけれども、其の當時の値段の大體三分の二程度の所に公定價格を決めたのであります、是は闇相場ではございませぬ、其の當時の自由價格でありますけれども、非常に奔騰致しました價格の大體三分の二と云ふ所に公定價格を大雜把に遽急決定した譯であります、さうして市民には大體平均の所でありますけれども五圓乃至六圓で配給する、其の差額は國庫で助成する、斯う云ふことに致した譯でありますが、更に此の公定價格は暫定的な公定價格でありまして、之を漸次引下げて行つた、廉賣價格の方は元通り持續して行く、さう致しますと其の幅が段々接近すると云ふことになります、左樣に致しまして三囘乃至物に依つては四囘に亙つて、其の幅を縮小して參つたと云ふ段取りになつて居る譯であります、左樣にして參りました結果と致しまして、大體の數字を簡單に申上げますと、一月には一人一日平均十三匁、二月は十一匁であります、是は東京都であります、三月には一人一日十九匁の割合であります、それから四月には二十九匁、五月には十五匁、是は計畫では三月には大體十匁、四月には十五匁、五月には二十匁と云つたやうな計畫で進んだのでありますけれども、計畫よりもずつと荷が上廻つて出た譯であります、其の他横濱、名古屋、京都、大阪、神戸、悉く此の廉賣に依りまして、入荷數量は一人當りの平均に致しまして相當増加致して居ります、斯う云ふ現状であります、さうしてもう一つは自由に致しました結果として、色々の「ルート」が多少毀れて居りました譯でありますが、之に依りまして荷の「ルート」所謂配給「ルート」を確立致しまして、家庭配給に對して大體正規の配給が不滿足ながらも、勿論十分とは言へませぬけれども或る程度の效果を收めた、斯樣に考へられて居るのであります、隨ひまして、此の廉賣制度に依りまして、毀れ掛つて居りました「ルート」が復活したと云ふことが一つであると思ひます、それから價格が非常に箆棒に上つて居りました、結局之に依つて三囘乃至四囘に亙つて或る程度價格を引下げて參つた、斯う云ふこと、而して其の期間に於て冬の端境期を乘越すことが出來たやうに思はれるのであります、不十分ながら乘越したやうに思はれる、間接的には自由に致して居ります場合に於ては、非常に値段が上るけれども、集荷が長く續かない、何處かが上ると其處へどつと出るけれども、外の方も上つて來ると外の方へ流されて、結局値段だけが上つてしまつたと云ふ結果になつて居る譯でありますが、それが比較的是正されて來たと云ふやうに思はれます、それからもう一つは、野菜だけが値段が自由であつて高い、併しながら主食の馬鈴薯でも甘藷でも、闇は別と致しまして、公定價格で行く、さうしますと、米産地等に於てそこに農村間の不公平が出まして、非常に非難の聲を私なども隨分聽いて居つた譯であります、此の公定價格の引締めに依りまして左樣な農村間に於ける不平と云ふものを幾分緩和出來たやうに思はれるのであります、それは間接的でありますが、左樣な實積を擧げたやうに思はれる譯であります
それから現在の入荷状況等に付きましては、後程書いた物に依りまして見て戴きたいと思ふのでありまするが、七月の終りに殊に八月、九月になりますと、一、二、三、四、五月の初め頃までは冬枯れ時期に當る譯でありますが、今度は暑くなりますと夏枯れ時に當る、さう云ふ關係がありまするので、應急の對策と致しましては、勿論統制規則の施行以來、荷受機關其の他出荷機關、出荷地域と云ふやうなものに付ての指定を致して居りまして、現在各府縣とも準備中でありますが、まだ全部出揃つて居る譯ではありませぬ、而して又現在の公定價格は廉賣制に伴つて設けられました所謂暫定的公定價格であります、今囘は是等に付て實情に即應するやうな公定價格を決定して進んで行きたいと思ひます、それが一つであります
もう一つは統制は統制でありますけれども、規則に依る統制と云ふだけでは勿論滿足に行くとは考へて居りませぬので、其の運用を的確になして參りたいと存じます、と同時に最も野菜等の集荷の困難な大都市に於きましては、其の荷物が可及的に正常「ルート」に乘つて集荷出來まするやうな所謂荷を呼びます施設を講じて行きたい、其の施設は公定價格制度に織込んでやつて參りたい、斯う云ふので現在準備中であります、大體七月の中旬頃からそれを竝行して實行して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=51
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052・叶凸
○叶委員 唯一點だけ觸れて、あとは後日に讓りたいと思ふのでありますが、家庭配給の面以外に、適當な場所に公設廉賣市場なんかを設けて市民の選擇買ひを便利にすると云ふやうなことは當局の方は御考へになつて居られないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=52
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053・坂田英一
○坂田政府委員 現在の夏枯れ時期になりますと、やはり差當りは蔬菜の非常に窮迫な時代――唯幸ひにして都市の空宅地利用が多少あります、さう云ふことの出來る地帶に於ては比較的其の苦しみを味はないで濟む部面もありますけれども、非常に夏枯れ時期に遭遇する譯であります、さう云ふ時に自由に買へると云つたやうな地帶を直ちに併置すると云ふことも困難だらうと思ひます、今申しましたやうな統制規則の運行を確保すると云ふことと、先程申しましたやうに、出來る限り荷を呼ぶ所の施設を併せ講じて行く、それに依つて近く發足致したいと思ふのでありまするが、之に依つて困難な野菜の家庭配給を一先づ「ルート」に載せまして、其の確立と同時に先程御話のやうな廉賣的な本市場的なものも考へて參りたい、斯う考へて居るのであります、速急に兎に角非常に窮迫して居るものをやつて行く、其の上で考へて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=53
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054・叶凸
○叶委員 現在主食物が非常な危機にある譯なので、其の間副食物の殊に都市生活に對する重要性と云ふことは、是は申すまでもないのでございまして、此の點に付ては他日農林當局の御意向をもつと聽かして戴きたいと思ふのでありまするが、本日は私の質問は之を以て全部打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=54
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055・成島勇
○成島委員長 馬越、坂本、須永の三君は政府委員の都合に依つて後廻しにしまして――北政清君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=55
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056・北政清
○北(政)委員 私は一番には此の緊急措置令を何時までやるのかと云ふことであります、其の次には割當制度問題、次いで農産物價格の問題、農産物必需物資の配給問題、先程一寸申しましたが、若干それに附加へます、肥料問題、資金封鎖の問題、農機具問題、農地問題、是だけに付て御伺ひ致したいと思ふのであります、極めて要點だけを成べく時間を約めて申上げたいと思ふのであります
農林大臣に御伺ひするのでありまするが、先程も此の法令は必要があると云ふやうな御話でありまするが、もう一つ御考へ直しになる考へはないか、御廢めになりませぬか、端的に言へば今日切り打切ると言はれぬかと云ふ問題であります、一體此の法令は三千萬の農民が全部反對なのであると言うて過言でない、唯偶に一人、二人、惡い奴があつた、狡い奴があつた、だからやらなければならぬと云ふやうな、個人的怨み感情からさう云ふことを言ふ人があるかも知れませぬが、總じて言ひまするならば總てが反對である、其の厭なものを無理にやらしてどうして生産が擧げられますか、一體日本で今必要なのは何か、人を罰することか、食ひ物が欲しいことなのか、如何にして食糧を増産するかと云ふことが大事ぢやないか、此の法令がある爲に著しく生産意欲を阻碍して居ると云ふことが一つであります、次いで私は法令の中を見ますと、是で實行出來るのか、正當な「ルート」に流せない原因は總ては闇から行くのだ、是は確かなのです、然らばどうしたら闇になるのか、其の原因を除かなければならぬ、政府が國民に食糧の不安を與へて置きまするならば、何度強い法律を出しても闇は止まらぬのであります、此の横流れをした大きな原因は何處にあるか、政府が國民總體に食糧の不安の感じを與へて居る、此の法令の第十一條にある「賣渡を爲さざるこをと煽動したる者」と云ふのは、どの邊の境を言ふのか、一番煽動の本家、本元は政府ではないか、是はどうして罰する積りか、三年以下の懲役に皆入れますか、斯う云ふ譯です、私共はお前そんなものを出すなと言つたら監獄に三年入れる、もう少し減らして御覽なさい、此の現在の二合一勺を一合五勺に落して御覽なさい、必らず皆が闇買に出ます、是はもう金に拘らず出ます、之をどうして罰するのか、實際問題としまして三十日四十日缺配して置いて、さうして闇をするなと言つても無理ぢやありませぬか、どうして生きて居るか、三十日も四十日も物を食はずに居れる位ならば食糧問題は要らぬ、それなら仙人と一緒である、私は是は話に聞いたので、事實は能く分らぬから御伺ひするのですが、農林省の職員が食糧休暇を職員組合で要求して大臣が之を許して居られる、聞いて見ると十日間ださうでありますが、十日間も食糧増産で耕作する面積を持つて居る職員は誰一人も居らぬ筈である、是は十日間も大部分が闇買に出て居ると云ふ話である一番本家本元の人が今日は取締り明日は買出しである、一體今日國民の總體が公定値段と闇價格とどつちを餘計覺えて居るでせう、私は闇價格は知つて居るが公定價格は知らぬと云ふ國民が大部分ぢやないかと思ふ、國民の大半が守らぬ法律はそんなものは效果がない、こんな法令を出さなくても、私は供出と云ふことは大嫌ひで、一體農民を侮辱するも甚だしいと思ふのでありますが、農民が喜んで出荷をするやうになぜ出來ませぬか、今日食糧が是れ程までになつて、皆手が著けられぬやうにしてしまつたのは一體何處に原因があるか、適當な時期に適當な手段、價格、方法、之を講ずれば、こんなにしないで政府の手に入つたぢやありませぬか、こんなひどい罰則を設けて、五年以下の懲役――懲役をやられた味は大臣も能く御存じぢやないか、私も暫く行つて經驗して居る、實に門を見るのも厭やである、此のひどいもので農民を威かしてさうして取らうとは何と云ふことであるか、斯う云ふ罰則を拵へて國民全部の感情を惡くして居る、是でもまだ官の力でおやりになると考へて居るなら大きな間違ひである、此の反動で農民の總てが奮起した時にあなた方責任を御持ちになりますか、私は恐らく農民は此の法律の前で默つて居るまいと思ふ、實に險惡な空氣になつて居る、あなた方はまだ官僚政治の頭が去らぬのだ、法律で威かしさへすれば出ると思つて居られる、此の間の御説明では、此の勅令に依つてやつたものは僅かだ、其の前の話合其の他に依つて出せた、斯う言はれた、成程監獄へ入れると言つて威かす、それで幾らか出たでありませう、けれども是が慢性になれば何等の效果はない、之を強ひておやりになると云ふことは――徳川幕府でも是までのことはやらなかつた、「ロシヤ」が曾て一九二一年頃と思ひますが、十日間の懲役をやつてそれも到頭失敗に終つてお廢めになつた、それを日本が今斯う云ふ嚴罰で農民を解放するどころでない、ふん縛る、穫れただけ皆出せと言つて、二束三文の値で取上げる、之を出さなければ監獄へ入れる、こんなひどい法律が何處にあるか、何處が農民解放でございますか、甚しく農民を束縛したものだと考へます、奴隷以下に見て居る、其の點に於て私は斯う云ふ法律を置かれることは國家の爲に絶對宜くないことだと思ふ、生産意欲は甚だ減退して居りますよ、是でもやると云ふならば、一體減らす爲に法律を出すのか、殖やす爲に出すのかと云ふ肚をはつきり大臣に承りたいのであります、尚ほ斯く致しまして農民を惡徳呼ばはりする、無理なことをして置いて、さうして惡徳呼ばはりすると云ふことは甚だ皆の感じを惡くするから、是非とも此の法律は廢めると云ふ風な御返事を承りたいのであります、理窟より廢めるか廢めぬかと云ふことを先に聽きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=56
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057・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、此の緊急措置令は供出の制度が續きまする間は私としては存置致す考へであります、茲で御考へ願ひたいのは、我我も決して法律だけが萬能だとは思つて居りませぬ、法律の律する世界と道徳の律する世界とあることを我々は十二分に承知致して居るのであります、併し或る政策を國がやりまする時に、其の政策を基礎付け、其の政策が法令化されまして、其の法律を實行しまする時に、對象となりまするものは總てが聖人ではないのであります、殘念ながら日本の國民は中にはやはり惡い人も居るのであります、隨ひまして公の秩序を維持しまする爲に、法律に依る強制力がどうしても要ることになつて居るのだと私は考へます、そこで道徳が發達しまして法律の要らないやうに皆が善い道徳を持つやうになりますれば、是は理想の社會でありますが、さう云ふ社會は中々來ないのが私は現實だと思ふのであります、此の緊急措置令も仰せのやうに、之に對しまして農家が色々な盛情を抱いて居ると云ふことは私も萬々承知致して居るのであります、併し國と致しまして、今生産が事實需要に「マッチ」せず、戰後の經濟再建が未だ緒に著いたばかりであり、國民の道義も、是は甚だ殘念ながら或る程度私は墜ちたと思ひます、さう云ふ時に、何としましても供出を確保致しまする爲には、已むを得ず斯う云ふ法令を必要としたのが、此の法令が出來ました理由だと思ふのでありまして、斯う云ふ事情が續きます限りは、此の法令と云ふものは私は廢められないのだと思ひます、併し此の法令の運用に付きましては、私は本會議から繰返し申しましたやうに、十分納得の行くやうに、無理がないやうに、寧ろ此の強權發動は發動せずに濟ますやうな方向に、經濟の凡ゆる施策を集中してやつて行きたいと思ふのであります、仰せのやうに日本の國民經濟が段々立直りまして、經濟的な力に依りまして物事が旨く動いて行くやうになりますれば、斯う云ふ強制的な法令と云ふものは、あつても事實運用すべき機會がなくなつて來るのでありまして、さう云ふ方向に食糧政策なり萬般の經濟政策を持つて行きますことが、我々の努力すべき點なのでございます、私は斯樣に考へて色々な事柄をやつて行きたいと思ふのでありますが、此の措置令其のものに付きましては今直ちに之を廢めると云ふことは不適當だと思ひますし、又其のやうな考へはないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=57
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058・北政清
○北(政)委員 其の問題は其の程度にして置きまして、次に割當制問題、是は過般も本會議でも御話になり、先程叶さんの御質問にも御答へがありましたので、努めて簡單にしますが、本當に出せる數量と云ふものを正直に見ると云ふことが大事なんで、唯誰かそこ等で選擧して、お前達は思ふ儘にやれと云ふのでは、是は出鱈目な數字になる、本當に正直な數字はどうしたら出るか、斯う云ふことが大切なのではないか、それに對しましては、私は村の純眞な眞面目な人達、本當に見れる人達が集まらなければならぬのではないか、それを現在役所から指名してやつて居られる、是では駄目だと思ふ、殊に昨年は北海道で實際にやられたのでありますが、先程も食糧檢査員が非常に能く知つて居るからと云ふ御話もありましたが、私共から言へば檢査員の人は一體何を知つて居るのでございませう、特に此の頃國民學校を少し出たばかりで瓜種か亜麻種か分からない人が多い、私共は檢査をやつた經驗上能く分つて居る、本當に農家の檢見をして是が幾らかと見る人は少い、昨年の如きは何ぼだ何ぼだ、それでは足らぬと云つて食糧事務所で散々突込んだのがあの收穫だから、まるで算盤に合はないものが出來る、私は寧ろ斯う云ふ上からの指圖を受け、命令を受け、それを忠實にやらねばならぬ職員を入れると云ふことは全然誤りだと思ふ、斯う考へて居るのでありますが、檢査所の檢査員が是まで喙を容れると云ふことでは却ていかぬ、而もそれでは正當な檢査を將來に於てなし得ないことを懸念する、斯う云ふことを伺つて置きたい
更に農産物の價格の問題、是も屡屡論議されて居りますが、何と云つても政府の決めなさる價格と云ふものは一年前、二年前のものである、總ての物價はどんどん急騰して行く、「インフレ」に「インフレ」で行つて居る、而も政府の拂ひます俸給でも、又勞働運動に依つて解決の付きます勞働賃金でも、總ては正當な公定價格で流れたものでの賃金ではありませぬ、闇値で買ふことを基準にして居る、總て闇になるやうに政府が決めて居るではありませぬか、今日の豫算を見ましても――私は豫算委員でないから分りませぬが、此の豫算も恐らく闇價格を含んだ俸給待遇が要求され、それを容れねばならぬからああ云ふ豫算が出やしないか、斯う思ふ、正しい本當の公定價格だけで行けるならばあんなに待遇なんか直さぬでも宜い筈だと思ふのであります、それから見ましても賃金、給料、是等に比較しても如何に米と云ふものが安いものか、又實際の所謂先程の國民の公定だとか、民價だとか云つた話がありましたが、ああ云ふ價格も自然必要價格で生れて來て居る、其の外に警察に押へられる金も入つて居る、汽車で三日も四日も掛つて取りに行く運質も加はつて居るんぢやないか、斯う云ふやうなことも思はれるのでありますが、私共は此の農産物の價格が外の物價に比べまして甚だ安いと云ふこと、是はもう數字を擧げなくても皆さん御存じだらうと思ふから細かなことは申しませぬが、唯私は米を一年に一囘政府が決める、地方に於ては警察署が風呂賃を勝手に上げる、地方長官限りであれも上げた、是も上げた、皆んな上げて居る、そこで又給料が上つて來る、更に闇の價格が上つて來ると云ふのが現在の状態で、此の儘では何としても收まりが付かぬ價格です、でありますから私共は今他の物價を下げられるかと云つたら下げられぬでせう、それだけの腕前は今の政府には御持ちでなからう、それでは米の價格を他の物價に比較して公平な價格にするならば出來る、私は昨年の十二月頃に今の三百圓の價格にされたならば相當政府の手に流れて來たのだと思ふ、既にもう時期、見當を違へてしまつて居る、昨日馬鈴薯を奬勵される時でも、六月の末になつて馬鈴薯の奬勵の爲だと云つて價格をお上げになつた、そんなことをして一體、何の奬勵になるか、六月になつてから芋を植えて歩く譯に行かぬ、役所のやられることは後廻り後廻りで是で「ブレーキ」を掛けた積りで居られる、もう少し實社會を知つて戴きたい、さうして本當に法令を生かすなら生かすやうに、其の價値があるやうにして戴かねばならぬ、毎月通貸は膨脹して現在は四百五十億も出て居る、而も不換紙幣である、然らべ米の價格がそれに件つて行くことは當然である、今は毎月でも十五日毎でも價格を決めても正しいものと言へぬやうに賣れるのでありませう、此の意味に於きまして農産物の價格の如きは單なる政府のみで決めないで農業者、本當に農民の意思を代表される人も入れて、又消費者も入れて、さうしてせめて月一囘づつ之を決めると云ふ方針を持たれませぬか、斯くするならば、こんな法令を用ひなくても米は出る、穀物は出ます、而も農村に於ては平均販賣主義を採らせる、市場は決して危險にさせませぬ、それに對して其の價格を平均して、一年を通算して平均すれば出る、麥にしても馬鈴薯の問題にしても、馬鈴薯は若干値を上げて、一貫目二十四圓で、奬勵金二十四圓、是でおやりになる、是で出ますか、出ますまい、前にも大臣に私は御伺ひしたことがある、今年中に一番高値に保證してやると言つて御覽なさい、世話なしに相當數量出る、來年の三月までの間の一番高い値を必ず保證してやると言つて御覽なさい、出る、さうでなければ早く出したもの程損だから出ぬ、今現に馬鈴薯は二十四圓の買上價格で、二十四圓が補助、さうして配給を受けまするのは六十圓、さうすると補助を出したのか出さぬのか、二十四圓は補助價格と思つたらさうでない、二十四圓で農民から買つたものを六十圓に賣らせる、何でこんなことをするか、それなら六十圓でなぜ農民から買つてやらぬか、是は公定で配給のものだ、店で賣つて居るものは四十五圓と四十圓の二つであります、何時でも御案内して見ませう、お前の所は薯は幾らだ、四十圓、一貫目ですよ、十貫目ではない、それで警察は何も取締つて居らない、一方店で大ぴらに四十圓、四十五圓で賣つて居る、農民には十貫目四十八圓で出せと言つて居る、十倍違ふ、何故こんなことでやられるか、若し此の措置令で取締りになるならば、此の四十五圓で賣つて居るものを片端から取締らなければならぬ、東京でも莫大な數でせう、是で取締られたら恐らく刑務所が狹過ぎる、斯う思ふだけあると私は斷言して憚らないのであります、私共の方面でもさうですが、こちらに來てもはやり四十圓、四十五圓で賣つて居るさうです、私の行つて調べて見て來たのが四十圓、四十五圓、それから見ましても二十四圓に買上げて二十四圓を補助だと云ふのは本當に補助なのか、一體是は幾らで營團に渡して居るか、私は營團と云ふ存在が不思議でならぬ、政府が二十四圓補助を出してそれを六十圓に配給させると云ふことになると實に莫大なものを取つて居る、營團が一寸そこで商ふだけで農民の三倍程取つて居る、而もそれに依つて價格を混亂させると思ふのでありますが、此の食糧の價格を他の物價及び勞銀と全く同等な立場に置くと云ふ絶對の義務があるのではないか、之をおやりになるかならぬかと云ふことを政府に御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=58
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059・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、檢査員の質の問題でありまするが、是は非常に重要な問題でありまして、我々としましては良い質の檢査員を置くやうに極力獎勵して居るのであります、併し此の村の實際の生産高を正確に把握致しまするには勿論檢査員だけでは足りませぬ、村にはさう云ふ方面の非常に能く分つた農家があるのでありまして、例へば立見をして一段に付てほんの一合も違はぬやうな鋭い眼光を持つた農民がある譯であります、さう云つたやうな人達の勿論協力を得まして正確を期して行く、斯う云ふ風に考へて居ります、生産高を正確に把握すると云ふことは農業政策のやはり根本でありまするので、現在と雖もそれに付きましては政府として努力を怠つて居る譯ではございませぬ、例へば郡を異にし村を異にしてそれぞれ人を派して、又農家の方に立會つて戴いて其の正確を期して居る、又坪刈りをやりましてそれを確めて置くと云つたやうな凡ゆる方法を講じて居るのでありますが、現在の色々な經濟事情から致しまして、兎角統計の正確度が疑はれるのでありますが、私は是は何と致しましても價格的な正確さを持たして行きたいと思つて居ります
それから農物産の價格に付きましては、是は私屡屡御答へした所を以て答辯に代へたいと思ひます、唯價格の問題の考へ方は現在の現象にだけ囚はれて考へてはならないのでありまして、價格と云ふものが――是は少し講議めきますが、全體の經濟の謂はば表面と言ひますか、經濟現象の一時的な現はれでありまして、價格が構成されますには色々な要素がある、長い目を以て價格を見まする時と、ほんの短い「ショート・ラン」に於て價格を觀察する時とは考へ方を變へなければならぬと思つて居ります、殊に政府が政策の基礎として公定價格と云ふものを執つて居ります、其の公定價格は一日々々と變化する所の價格ではありませぬ、さう云ふ考へ方ではないのでありまして、是は或る程度の「ロング・ラン」長期を考へた價格と云ふことにせざるを得ないのであります、さうしますと其の價格の決定に當りましては、其の農産物を生産致しますに必要な各種の生産要素を考慮致しまして、價格を決定致すと云ふことになるのであります、併しそれだけを以てしては餘りに長期になり過ぎますので、やはり物價其の他の經濟事情をと云ふ含みのある言葉を以ちまして、短期的な觀察をそこに採入れまして、價格と云ふものの決定を致して居るのが、實情であります、併し今のやうな物の足らない時に於きましては、政府は中心に於きました價格と云ふものは他の價格と一時均衡が取れて居りましても、經濟は御承知のやうに生き物であります、凡ゆる條件が日々變つて來て居るのであります、隨て其の價格の體系が或る程度破れて來ると云ふことは、是は少くとも進歩して居る社會に於ては認めざるを得ないのであります、其の個々の現象を捉へて價格が不均衡ではないかと斯う仰せられても、それは成程不均衡だと答へざるを得ないのでありまして、我々としましては、農産物其の他の物價の決定に當りましては、生産者の側の立場と消費者の側の立場と、其の他の事情を考慮致しまして妥當なる所に決めて行く、斯う云ふ方針を執らざるを得ないのであります、是は如何なる時期に於ても統制が行はれて居る斯う云ふ窮乏經濟の時期に於ては、さうだと思ふのであります、自由な經濟の機構が旨く恢復しまして、經濟の再生産が圓滿に行はれて行くやうな條件が出ました時には、是は自由價格と云ふ形で價格がそれぞれ各商品に付て決定されて、其の間に自づと均衡が取れて行くのでありますが、現在はさう云ふ事情にないのでありまして、寧ろさう云ふ事情に恢復するやうに日本の經濟全般の再檢討と云ふことを各各それぞれの部門に於てやつて居るのが現状でありまして、價格の問題に付きまして私と致しましては從來御答へ致しましたやうに十分物價との均衡を考慮して、合理的な農産物の價格の體系を作つて行きたい、斯う御答へしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=59
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060・北政清
○北(政)委員 私は價格の御答辯が甚だ不滿足でありますが、又他の機會に讓ります、唯先程申しました今の二十四圓の買上馬鈴薯に對しまして現在配給して居るのは六十圓である、此の差額が餘りに酷いぢやないか、之を四十八圓全部補助金でなくて價格、斯う見ましても、それにしても餘りに其開のきが大きいぢやないか、之に對しての御答辯をあとで宜しいから御伺ひ致します
次いで私は農村の必需物資の配給、是は先程商工大臣の居られる所で申上げて置いたのですが、甚だ上手な曖昧にぬらりくらりと逃げて行く答辯をされたのでありますが、纖維製品の一部に付きましては農林省との約束を守るのだと云ふことははつきり言はれて居るやうであります、其の點は安心して居るのであります、依しながら農村の總ての必需物資はどうしても農民自らの組織して居る團體でなければ隱れることは事實だ、如何な強い法律を持つて行つても出來ないのだ、米だけは此の措置令で發せられるが、釘でも何でも外の物は賣るのも隱すのも御隨意だ、それで米でなければいかぬ、電氣の球一つでもさうであります、私共の方では電氣工夫が電氣一つ付けるのに去年、一昨年の古米を集めて持つて行つた者がある斯樣な譯で生活上已むを得ずどうしても別な途から流すのだと云ふことになりながらもやつて行くと云ふ洵に可哀さうな農民、此の數こそ實に莫大な數なんだ、是が散り散りばらばらになつて集まつて來ない別の動因を成して居る、之にはどうしても一元的な配給をして品物が隱れないやうに、金で買へるやうにする、さうすれば米は金で納めて、其の金で物資を買ふことが出來る、絶對にないものは仕方がないが、今は米さへ持つて行けば何でもないものはない、街頭で直ぐそこに竝べて釘を賣つて居ります、あんな販賣用の釘を何で配給して居るか、何處を目當に配給をして居るかと云ふ問題が出る、農林大臣は恐らく一元配給に反對ではないであらう、絶對贊成して下さるだらうと思ふのでありますが、尚ほ全幅の努力を拂つて貰ひたいと思ふのであります
次に肥料の問題、規則よりも何よりも一番大事なことは、餘計取ることです、生産が上りさへすれば宜いのだが、其の肥料が圓滑に流れて居らない、餘計生産して居らない上に、更にそれが圓滑に流れて居らないのではないかと思ふことは、農林省は一人一反當り一貫づつの硫安を配給したと言つて居りますが、二貫目來たと云ふ所は非常に珍しい、大部分は來て居らないのが事實であります、之に對しましては先程必需物資と言つた其の中に肥料の問題も入るのでありますが、北海道では肥料高が一つも肥料を扱はないで、農業者の團體が扱つて居る、農業者の團體が扱つて居るけれども、眠り口錢として何も扱はないで口錢を數百萬圓取つて居る譯であります、農民の一番大事な肥料さへ頭を刎ねさせて、生産せい生産せいと言つて尻を鞭打つたつて生産は上らぬ、斯う云ふことはいかぬ、地主が惡い、地主が惡い、惡地主と斯う言はれますが、私は惡商人、惡商人、こんなひどいものはない、財閥よりも何よりも一番惡いのは是等ではないか、少數の是等の人を政府が助けようとして大多數の生産者、消費者を苦しめ拔いて居るのが今の此の世の中であります、肥料の如き農業生産資材として一番重要なものに對してさへまだ眠り口錢を取らして居る、此の配給面に於て完全に農業者にやらせると云ふことが大事じやないか、更に又肥料の増産問題でありますが、此の間苫米地委員からも御話があつたのでありますが、段々聽いて居りますと、資金は今度中金法が改正になつて、肥料が國家管理にされさうなことが新聞にも出て居ります、此の間も現に私は見て來た、大變資本家の人は頭が良い、巧いことを考へるものだと感心しました、生産の資金は肥料製造の資本家に持たして、さうして儲けたいだけ儲けさせる、農業は其の粒々辛苦した資金を中金に持つて行かれて、中金が勝手に資本を使ふ、私は中金などは金貸團體ではないと考へて居る、本當に肥料の増産をするならば、本當に必要な農業者も共に之に入れる方法を執られぬか、本當に株主の中に入れて、發言權を持たせたらどうか、農民自ら責任を負ふやうにする、是なら増産する、資本家は生産「サボ」をやらうにもやれない、否でも應でも必要な肥料は出來る、さうするならば、日本の硫安工場を完全に動かすに三十五億乃至五十億の金があれば宜いと云ふ、それ位の金は出せば出せる、完全に動かすに宜いのであります、今あの人方は社債の限度まで一ぱい行つて居る、工場は壞れて動かぬ、斯うなつて居る、一日も早くやるならば資材をやるとか、資金をやる、資金は唯農民の金だけを使つてやれば宜いんだ、資本家がそれでやれば宜い、今「マツカーサー」司令部は財閥を解體せいと言つて居ります、是は財閥に更に儲けさせいと言はれたものぢやないと思ふ、財閥を解體して努めて小さなこの資本に分けさすことが目的ぢやないか、其の意味にも合致することと考へるのでありまして、之に對する御考へが承りたい、或は國有國營、是は社會黨の方が熱心に言うて居られますけれども、私は今更役人統制に態態持つて行かんならぬことは何處にもないと思ふ、民主主義と言はれる人が何の爲に肥料を國營にして役人にやつて貰はんならぬか、實に是は何だか感違ひがあるやうに思うて居るのであります、能く御話すれば私は諒解して貰へると思ふ、どうしても民有の協同組合營でなければ肥料の完全生産は出來ない、總てのものの國有は努めて廢めるべきだと思ふ、所謂所有權の否認、茲に重大な問題があるのだ、所有權の國家有、是は生産力を著しく減じて行くものだ、責任感をなくします、勤勉思想をなくします、茲に重大な點があるのでありまして、私は肥料の協同組合營に依る生産を期さなければ駄目だと思ふ、資本家も、肥料を使ふ消費者も、其の工場に働く者も皆一緒になつた所の協同組合營を適當なりと信じます、斯う云ふことに對してどう考へて居られるか、更に農民自身でやれるものは努めて之をやらせなければならぬ、更に私は日本で一番大切なものはどうしても斯うしても出來ない所の過燐酸の原礦、燐礦石、是はどうあつても一つ聯合軍側に御願ひして、特急に入れて殖やして貰はなければ何としても生産が出來ぬ、特に北海道の如き寒冷地帶に於ては過燐酸がなければ零敗であります、ここを能く御考へ願ひたいのであります
もう一つは資金の封鎖の問題であります、農民だけ特別な封鎖をして居られるのでありますが、あれは資金對鎖なんですか、生産封鎖なんですか、どつちなんですか、私はあれは生産に對して非常な封鎖になつて居る、斯う斷言して憚らぬ、殊に總ての農民の買はなければならぬ物は闇でおつつけられる、農民は一寸鍬を買ふにも三百圓、七百圓先借をしなければならぬ、鎌一挺三十圓とか五十圓、それが一箇月三十圓、五十圓に封鎖されては買ふことが出來ない、成程都會近傍の蔬菜地は好い値で蔬菜の金が毎月入るかも知れませぬが、水田專門の地帶、而も一毛作の所では一體なんで金が入るか、之を速かに――或る程度の制限は付けても宜いから、實際にやるものにして戴きたいと思ふのであります、以上に對して先づ御答辯を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=60
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061・和田博雄
○和田國務大臣 農業用物資の一元配給の點に付きましては午前中に私御答へ致した所で御諒解を御願ひ致したいのであります、恐らく肥料に付きましては一元配給になつて居るのでございまして、北さんの言はれたのは商人を整理した時の整理資金のことではないかと思ふのでありますが、肥料に付ては一元配給をやつて居るのであります、其の他の點に付きましては午前中に私御答へを致した譯であります、それから肥料に付て協同組合に依る經營、それから中金を通ずる農業資金の肥料工場への投資と云ふものに付ての御意見でありますが、私は農家が蓄積した資本を投資する先と致しましては、やはり農家が不可缺な必要物資の方へ投資するのが最も適當だと實は考へて居ります、隨ひまして今度中金法を改正致しましたのは實に其の考へがあるのでありまして、肥料は御承知のやうに農家に取つては缺くべからざるものであり、又土地は農業を營みます上に付て是れ亦不可缺なものでありますので、自作農の資金に中金の金を使へるやうにし、又肥料工業に中金が投資出來るやうに致したのであります、私はどう考へて見ましても、農業で蓄積された資金はやはり農業に必要なものの方へ還元せられて行く、斯う云ふことを考へられるのが宜いのではないかと思つて居ります、農業會其の他の協同組合が肥料の經營を自らやると云ふことも、それは話合ひが付けば極めて結構だと思ひまするが、肥料の經營其のものは唯農家が入つて經營すると云ふ、さう云ふ考へだけで是認さるべきものではありませぬ、私をして言はしめますれば、やはり肥料工業其のものとして相當基礎の鞏固な經營をやつて行くことが根本だらうと考へます、それに付きましては色々御議論があると思ひまするが、やはり肥料工業に於ちは經營協議會と云つたやうな方式に於て増産を圖つて行くのが一つの良い手ではないかと思ふのであります
それから燐酸に付きましては燐鑛石を約二萬「トン」ばかり今まで輸入が出來まして、是は配給を致して居ります、今後も燐礦石の輸入に付きましては極力努力致して居りまするし、又する考へで居ります
それから金融措置令の爲の封鎖に依りまして、農家の方々が經營を行つて行きまする上に於て相當の困難に逢著したと云ふことは私も存じて居るのでございまして、是等の點に付きましては、農業全般に亙り、大藏省にそれぞれ交渉致しまして、或は今囘執りましたやうに馬鈴薯とか、麥の全額拂ひでありますとか、其の他色々な生産物に付きまして措置を講じて來た譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=61
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062・楠見義男
○楠見政府委員 馬鈴薯の公定價格竝に之に對する獎勵金の問題であります、實は馬鈴薯及び麥に付きまして、出荷獎勵金を出すことに致したのでありますが、麥の方はまだ關係方面と完全な諒解を得て居りませぬので、確定は見て居りませぬが、馬鈴薯の價格を決めまする場合に出荷獎勵金で行くか、或は價格改訂で行くかと云ふ問題が先づ第一段に逢著した問題であつたのであります、併し價格の改訂で行くことになりますと、御承知のやうに農産物の間の價格均衡の問題、其の他全般の五百圓生活をどうするかと云ふやうな根本的な問題があり、又一般に影響する所が極めて大きい爲に、形式と致しましては價格改訂を執らず獎勵金と云ふ形で行つたのであります、而して此の奬勵金は政府と致しましては消費者轉嫁で行く、從來は御承知のやうに、馬鈴薯も、麥も、米も、總て補給金で賄つて居つたのでありますが、最近御承知のやうな關係方面の意向等もありまして、補給金制度は漸次之を縮減することになつて居りまする爲に、結局只今の馬鈴薯の獎勵金は全部消費者に轉嫁することになつたのであります、麥の方はまだ確定は致して居りませぬけれども、假に麥に付てさう云ふやうなことを致すとすれば、結局現在の昭和二十年産米の販賣價格との間に非常に不均衡が出て參りまするので、其の關聯に於きまして出荷獎勵金と云ふものは、若し出せば其の出した額は差當りの問題と致しましては國庫で何とか見ようと云ふことで進んで居るのでありますが、併し是は相當大きな問題であつて、今關係方面とも色々檢討を重ねて居るやうな情勢でございます、併し根本の問題と致しましては、是も農林大臣から豫て御説明申上げました通りでありまして、結局さう云ふやうな姑息な手段ではどうしてもいけないので、物價全體として此の問題は追つて取上げると云ふやうな方向で現在進んで居ることを併せて申上げて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=62
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063・北政清
○北(政)委員 今私の問うて居る問題は馬鈴薯の價格の問題で、二十四圓が補助金でありますならばもつと安く消費者にやらなければならぬ、補助金でなく、今仰しやるやうに、金額加へて賣つて居るなら是は補助ではない、實にいんちきな行き方ではありませぬか、斯樣にして食糧營團が馬鈴薯のみでなく、他のものに對しても同じであります、米に付てもどう云ふやうにして居るかと云ふと、是は相當のことがあるのではないか、果してああ云ふ機關が必要でありますか、例へば都市で配達するには必要であるかも知れませぬ、併しながら農村に於きまして殆ど不用な出張所を出して、何にもやらないのに莫大な給料を出して今までの米「ブローカー」を抱へて居る、斯樣なことの爲に却て消費者に非常な負擔を掛けて居るのであります、若し之を逆に生産者にやれば、生産の獎勵になるのである、斯う思ふのであります
あと極めて簡單に二つの問題で終ることにしますが、農機具問題、大きな農機具より小さな農具が非常に不足をして居ります、此の資材を配給致しませぬと、小さな都市の僅かの菜園をやることも出來ないのが一つ、更に又新たな土地を開墾すると云ふのに全く農具がない、是は萬能鍬とか、さう云ふもので宜いのだが、それをやるものがない、速かに此の増産を圖つて配給を期さなければ中々土地の開墾は如何に政府が唱へましても我々は整はぬと思つて居ります、北海道で既に出來て居つた土地で此の戰爭中二十萬町歩と云ふ土地を荒してしまつた、是などは直ちに解釋出來る、斯樣なことも農具が不足では出來ないのでありまして、之を急速に殖やす方法を執らなければならぬと思ふ
もう一つ最後に農地問題です、何れ農地の委員會があらうと思ふのでありますが、私共は日本の今の生産を何とかして減じたくない、何とかして殖やさなければならぬと云ふ矢先に、過般新聞で見ますと經營面積の制限がありさうなことを聞いて居ります、是は實は大變なことだと思ふ、經營面積が規正されますると、假に六町歩作つて居るものが最高三町歩でなければならぬ、斯うなりますと、あとの三町歩に對しましては其の農具を半分分けられるかと云ふと分けられるものではない、家を二つに分けて家が二軒建てられるかと云ふと建てられるものではない、全然新たなものが入つて來なければならぬ、斯うなりますと其の土地は、中々やりにくい、殊に土地痩薄な所に行きますと、十町が二十町でも經營は出來ませぬ、根室の標津原野あたりがさうです、或は阿蘇山の山麓、九州だからと云うてあの高原地帶は相當な面積がなければならぬ、是が制限されると云ふことは實に一大事である、土地の所有が限られるのは是は別問題にしまして、耕作地の面積が制限されると云ふことは、日本の生産を一遍にがた落ちにする心配を多分に持つ、之に對して政府の御考へがどうかと云ふこと、もう一つは農民が餘りに極端な制限をされまして、如何に働いても生産物は又役所の言ふ通りに取られる、土地は三町歩より持てぬ斯うなつては誰が志ある青年が農村に留まる氣になれませうか、而も此の青年こそ今農村で一番生産力を擧げて居る人間なんである、一番の働き手である、此の働き手が自暴自棄に陷るのは洵に可哀相だ前途に洵に見込のない暗い生活であると云ふことになりますと、各各が食糧増産に如何に馬力を掛けましても、價格政策を上げましても生産は上らない、それまでは何年經つても食糧危機は去らぬ何時までも外國依存で、此の日本の此の面積では人口一億になつても食糧品も工業品も十分成算がある斯う云ふ見積りを持して居る、其の上に於きまして大變重大な問題になるので、此の生産力を直ちに減しては、殊に又不足が甚だしい時でありますから、農林當局はどう云ふ考へを持つて居られるか、是だけで私の質問を終る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=63
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064・和田博雄
○和田國務大臣 農機具ですが、是は仰しやるやうに、實は小農具が一番厄介でありまして、殊に鎌なんかに付きましては是は全力を注いで居るのであります、是は御承知のやうに鐵鋼の割當が非常に減つて居るのです、それで茲に數字がありますから、御參考までに讀んで見ますと、昭和十五年は約三萬一千五百「トン」あつた譯ですが、それを百としますと、昭和二十一年は僅かに五四%しかないのです、それで今年も去年も特殊物件なんかをこちらに廻して貰ひまして、それで割當を受けまして、其の資材でやつて居るのでございます、現状がさう云ふやうに原料が非常に減つて居りますので、どうしても十分なる需要に應へることが出來ないので唯從來あるものを更新して行くのがやつとだと云ふ位の所なのであります、それで二十年産米の供出報償用の農機具に付きましては、是は供出の關係もありますので、鎌、鍬、水田中耕除草器、動力脱穀機の四種を對象と致しまして、それぞれ生産業者に生産割當を致しまして、是が出荷を圖つて居るのでございます、大體の見込は六月末日までには之を完了致しまして、一般配給に移つて行く積りでありますが、其の出荷數量もさう十分に進捗して居るとは言へませぬが、六月末までには大體完了する豫定であります、此の農機具の問題は御承知のやうに中小工業がやつて居る譯でありますので、先づ是が原料たる資材の獲得と、それから中小工業の持つて居ります技術が、本當に地方々々の農民の要求しまするものに適應すると云ふことと、それから優秀なものを作つて行く、斯う云ふことに獎勵して行きたいと思つて居ります、此の點に付ては種種御鞭撻を御願ひ致したいと思ひます
それから土地の問題でありますが、經營を、新聞紙傳ふる所に依ると、「イギリス」案では、經營面積を三町歩に限つて居る、それに付ての農林當局の意向はどうかと云ふことであります、是は今關係方面と色々交渉して大いに努力して居るのでありますが、私としては經營に付ては自由な態度を執りたいのであります、經營を制限すると云ふことは、私としてはどうしても避けて行きたいと思ひます、唯あの案を私が、新聞に依りまして推測致しまするのに、あの考へ方は今日本に於て進行して居りまする此の無血革命に於て、土地をより多くの農民に與へる、斯う云ふ考へ方から恐らく來て居るのだと思ひます、それで三町歩と限られましたのは日本では三町歩以上の經營は、北海道は別でございますが少いのでございます、隨ひまして恐らく三町歩と限つてあるのでございませうが、私は日本の農業の將來は、今後技術が進み、又農機具の改良が行はれ、家畜が増殖され、開拓、開墾が進んで行きますならば、經營面積に於ても制限と云ふことは餘り重要な意味を持つて來ないのでありまして、寧ろ力のある大きな經營が成立ちますることも、日本の農業の將來としましては喜ぶべき現象と考へますので、經營に付ては私自身としては自由な立場を取りたいと、斯樣に考へて居る次第であります、勿論農地調整法のあれを避けまする爲に、自家勞力を基礎としないで、最も拔本的に生産力は非常に低く、唯大きな經營だと云ふ成立ちのものに付きましては、是は私は相當考慮する必要があるのではないかと思ひます、併し自家勞力を基礎とし、家畜に力を入れ、實際現に高い生産力を持ち食糧増産をやつて居ります所は、それを解體することは、私個人としては好ましくない、向ふではどうか知りませぬが、それ等に付ては十分努力致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=64
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065・北政清
○北(政)委員 是で私は終りますが、希望を申上げて置きます、小農具の資材の問題でありますが、隨分燒跡に大した屑鐵がある、誰の所有權か私共知りませぬが、之を農村に廻して、相當活かして使へる、修理には間に合ふ、斯う云ふ考へ方をして居りますが、御考へ置き願ひたい、農産物價格に付ては是れ以上言ふと理論になりますから言ひませぬが、一つ十分考へて戴きたい、斯う思つて居る次第であります、以上を以て私の質問を全部終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=65
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066・成島勇
○成島委員長 本日は是で散會致します、明日午前十時より開會致します
午後四時三十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=66
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067・会議録情報2
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〔參 照〕
苫米地委員要求參考資料
一、府縣別水田耕作者調
一、府縣別主要食糧作付段別調
一、主要農作物の價格形成の根據
米三百圓の生産費内譯及小麥、裸麥、大麥、稗、粟、甘藷、馬鈴薯の價格制定の根據竝に各農作物の一段歩耕作に要する勞働力
一、開拓計畫の概要
一、府縣別耕地段別
一、代表的生鮮食料品及び魚貝類價格の昭和十二年度と現在との比較表
一、都市・農村に於ける昭和十二年と現在との生計費對照表発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011791X00519460708&spkNum=67
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