1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十七日(土曜日)午前十時二十八分開議
出席委員
委員長 庄司一郎君
理事 小柳冨太郎君 理事 齊藤行藏君
理事 原捨思君 理事 吉川兼光君
小池政恩君 田中重彌君
竹内茂代君 冨田ふさ君
山口好一君 大島定吉君
坪川信三君 中山たま君
日比野民平君 有馬英二君
奥村又十郎君 澤田ひさ君
永井勝次郎君 長谷川保君
松尾トシ君 松谷天光光君
川越博君 平川篤雄君
久保猛夫君 川野芳滿君
出席國務大臣
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
内務政務次官 世耕弘一君
内務事務官 谷川昇君
大藏政務次官 上塚司君
文部事務官 日高第四郎君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生參與官 佐藤久雄君
厚生事務官 勝俣稔君
厚生事務官 葛西嘉資君
厚生事務官 吉田忠一君
引揚援護院次長 伊藤謹二君
農林事務官 坂田英一君
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本日の會議に付したる議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=0
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001・庄司一郎
○庄司委員長 それでは是から開會致します、前回に引續いて長谷川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=1
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002・長谷川保
○長谷川委員 本日は私は保護機關及び保護施設の費用のことに付て、最初に主として御伺ひ致したいと思ひます、保護施設の設備に付きましては、本法第三十一條に依りまして、此の府縣市町村の保護施設、公立の保護施設の設置費には、二分の一程度補助されると云ふことになつて居りますが、地方財政の窮乏を考へ、且又過去に於きまする所の救護法及び結核豫防法等に依る所の公立の施設二分の一の補助等を考へて、其の實績から推して見ますと、私は恐らく是は大した期待を掛けることは出來ないであらうと云ふことを思ふのであります、どうしても是は私設の保護施設、殊に收容保護事業に至りましては、私設のものを中心に致しまして考へなければ駄目だと考へるのであります、所が私設の社會事業は、御承知のやうに從來其の費用は基本金の利子や、或は寄附金や賛助金、助成團體の助成金、御下賜金、補助金等々で賄つて參つたのでありますが、多くの事業が「インフレ」の惡化、或は預金封鎖、或は戰災、經濟不安等々の事情から、さう云ふやうな方面に財源を求むることが出來なくなつた、さう云ふ方面の財源は絶望状態にあります、本法の第二十六條に依りますと、此の私設社會事業の保護施設に對しましては四分の三の補助が縣からあるやうになつて居りますが、是は私大いに有難いことだと思ふのであります、併し今申したやうな情勢下にありますから、殘りの四分の一を得る途がない、是が非常に困難だと云ふことを、私は實情から致しまして申上げざるを得ないのであります、其の四分の一をどうやつて調達するか、此のことに付きましては、今までの助成團體であります所の恩賜財團の慶福會、或は三井報恩會、或は原田積善會とか、それ等の團體の持つて居りまする外社債或は國債等が非常に財源を出すのに困難な實情にありますが、兎も角是等のものを統合致しましてさうして社會事業中央金庫と云ふやうなものを作つて、それから出す樣に、詰り本法若しくは社會事業法に依つて認可されます所の社會事業に對しましてはさう云ふ方面から殘りの四分の一を出して自分が何も調達せぬでもやつて行けるやうな風にしたらどうか又事實是等の事業は國家のやるべき事業を代行するのでありますから、それ位のことをするのは當然だと私は思ひます、さう云ふやうに致しまして、私設社會保護施設の急速な回復、復興、發達を促してはどうか、此の點に付て厚生大臣の御意見を伺ひたいと思ひます
又本法第十八、十九、二十條等に依つて保護に要する費用は國庫十分の八、都道府縣十分の一、市町村十分の一を負擔することになつて居ります、所が過日厚生大臣は、地方の負擔分は地方分與税分與金に依つて、實際は全部國庫負擔となると言はれましたが、是は私は非常に大事な點だと思ふ、是は事業の成否を決する所の大問題であると考へるのであります、先づ第一に補助金を交付する期日でありますが、今まで我々は補助金を交付されますのに、大概年度が更つてから受けた、會計の締切りに困つた譯であります、先般の緊急生活保護要綱に依る給付金に付きましても、數箇月遲れて受けて居るのであります、それから序でありますが、健康保險法に依る給付金でもさうであります、そんなことでは私は駄目だと思ひます、幾ら立派な法律を作つた所で、其のやうなことでは駄目だ、前渡金を渡されると云ふ御話を過日承りましたが、實際に渡すのかどうか渡すとすれば、第二十五條の繰替支辨との關係は一體どうなるのであるか、又前渡金は市町村にまで渡すのか、それとも更に其の先端であります所の私設社會事業にまで前渡金を渡すか、又本法の對象は、實に八百萬人と云ふ尨大な同胞を對象として居りますが、前渡金を渡すとすれば、實に莫大な額を渡さなければならないと思ひます、大體どれ位を渡さうとするのであるか、此の點を承りたいのであります
又、會の分與金のことでありますが、一體使途を指定しない所の分與金を、財政の窮乏した市町村が果して此の保護法の爲に使ふかどうか、私は此の點非常に疑問だと思ふのであります、事實市町村は自分の村の人を救ふ收容施設が出來ることは喜びますけれども、大きな收容施設が出來て、それに他の市町村、殊に今度は引揚民が相當に對象になりますが、多數の引揚民が、入つて來ますことに付きましては餘り賛成しない、大體唯さへ足らない所の食糧が不足する、其の他の配給物資が足らなくなる、又野荒し其の他の社會不安が當然ある、斯う云ふやうな事情から致しまして、決して喜ばない寧ろ現在でもさう云ふ施設の事業を邪魔して居る事實がある、是は事實を申せと言はれれば申します、私は幾らでも事實を知つて居る、是は市町村のみならず、縣でもさうであります、私は過日縣知事に會つて話をしたのでありますが、困る、あなた方がさう云ふ施設を作つて呉れるのは宜いけれども、それで引揚民がどんどん入つて來られてはどうにも困る、だから其の點は能く考へて呉れないと困る、理窟は分つて居る、道理は分つて居るけれども、併し現實の問題は現在の縣民を食はせることが出來ないに、どうしようもないぢやないかと云ふことを言はれて居るのであります、一面私はそれももつともだと思ふのであります斯う云ふやうな事情下にありますから、この使途を決めない所の分與金を以て十分の一を拂はせると云ふことは、實際問題として、さう云ふやうな方法で行くならば、私はこれは立派な活動は出來ないと云ふことを確信するのであります隨て私はこれは金額國庫負擔にしろそれを本法の中に書けと云ふことを主張するのであります、金額國庫負擔とすることに依つて濫救の弊に陷るのではないかと云ふことが考へられるのでありますが、是は私は縣及び市町村に民主的な──縣に保護官と云ふやうなものを置くでありませうから、保護官を入れまして、官民の兩方から適當な人を選んで民主的な委員會を作つて、それに依つて査察し、又民生委員會を作りますならば、民生委員會の運用に依つて是は防ぐことが出來ると思ふ
次に事務費の問題であります、本法の第二十四條に依つて事務費を出すと云ふのでありますが、一件に付き一圓三十三錢出すと云ふ話を聞きましたが、さうでありませうか、施設の大小に依つて此の率を變へなければいけないのではないか、小さな事業施設事業主に付て私は實際に聽いて見たのでありますが、大體三圓位呉れなければやれないと申して居ります、其の點考へ直す必要がありはせぬか御伺ひ致します
次に民生委員の手當のことであります、先般私は二百圓出すと云ふ話を何處ぞで聽いたのでありますが、二百圓ばかりでは私は絶對駄目だと思ふ、民生委員の手當は私は宜しく固定給と更に會議を開きます度に出す手當と、實費辨償、此の三つを以て十分に活動を致しまする民生委員に對しましては、それだけで生活が出來るやうにしなければ十分な活動は出來るものでない、其の爲には、先般も全國に二十萬人位民生委員を作ると云ふ御話でありましたが、豫算の都合上工合が惡ければ委員の數は縱し減らしても、十分な手當を與へて、それに依つて活動の出來るやうにしなければ駄目だと云ふことを主張するものであります、又政府は民生委員のみならず、保健婦或は女の警察官等を斯う云ふやうな事業にも使つてはどうか、今農村に於ては保健婦は官廳に出す事務の報告を專門にやつて居つたりお茶を出す給仕をやつて居りますが、そんなことをさせないで、本來の職務に專門に使ふ民生委員若しくは市町村長の補助として十分活躍させることが宜しいと思ふのであります、以上の點に付きまして關係當局の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=2
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003・服部岩吉
○服部政府委員 御尋ねの國庫負擔を全額にしたらどうかと云ふ問題でありますが、既に御承知のやうに、既設の施設に對しましては四分の三の補助を出すことに致して居ります、町村の施設に對しましては國が二分の一、府縣が四分の一、町村は四分の一と云ふことになつて居ります、斯う云ふ制度を設けましたのは、過日の大臣の御話の中にありましたやうに、一つは濫用される虞を防止すると同時に末端の機關であります町村に對しましても、其の責任を負はせることが適切であらう、斯樣に考へたからであります、尤も其の府縣竝に町村の財源に付きましては分與税を以て充てるやうにして居るのでありますが、それは當てにならぬと云ふ御話であります、併し分與税を配付致します時に、主務省と折衝致しまして指令を出すやうにして居りますからして、府縣なり町村に於きましてもそれを他の方面に流用すると云ふことは萬々なからうと存じて居ります
それから事務費の問題でありますが、是は二百圓と云ふことに決定して居る譯ではありませぬ、事務費の限度は施設者の實情に應じまして適當に其の額を支給して行きたい、斯樣に考へて居ります
それから保健婦の活用の問題でありますが、現在主として保健婦と云ふものは御承知の通り各市町村の國民健康保險組合に殆ど常設して、組合員の保健に日常活動致して居るのであります、無論現在不振の組合に於きましては十分な活動も致して居らぬと思ひますが、今後は是等生活保護法が實施されると共に、國民健康保險組合の施設と相俟つて之を十分に活用して行くやうに致したい、斯樣に考へて居る譯であります、其の他の點は他の政府委員より答辯致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=3
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004・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今政務次官より御答辯を申上げました殘つた部分に付て申上げます、第一は助成金を交付して居るやうであるが、是が非常に遲れて間に合はぬではないかと云ふ御話、是は補助を致します爲の事務的の色々の資料、整へます關係上、實は遺憾ながら遲れて居る事情でございまして、此の點長谷川さんも能く御承知であらうと思ひますが、成べく速かに出し、さうして與へた助成の金が行渡るやうに私共十分注意を致したい、斯樣に考へて居ります
第二點の前渡金の問題でございます、繰替支辨をどうすると云ふ御話でございますが、法律案の第二十五條に依りますと、府縣が出さなければならない金に付て市町村が繰替支辨をすると云ふ譯でございます、市町村が當然負擔すべきものは市町村が負擔致します、此の第二十五條を設けました趣旨は、縣が負擔しなければならぬ金に付て縣の金を待つて居ると、兎角救護を敏速に缺くる所があると云ふやうなことから、一時市町村に繰替支辨をして戴きまして、後で縣費を以て支給する、事務を早く取扱ひたいと云ふやうな趣旨でございます
それから前渡金を渡すのであるが、それは縣だけに渡して置くのか、或は市町村だけに渡して置くのか、殊に金額が澤山になりますと、中々市町村の今の財政では難かしいではないかと云ふ風な御意見に拜聽致したのであります、此の點に付きましては洵に御尤もだと思ひまして、實は懇談會の際にも委員各位に申上げましたやうに第一次には全體として一億一千百萬圓の金を地方に配當致しまするし、又第二次は今月の上旬と記憶致しますが、其の時に先般議會の協賛を得ました四億二千八百萬圓の金を、第二次に地方に既に配付を致して居ります、又八月分の豫算が近日議會の協賛を得るやうに提案に相成りましたが、是も決まれば直ちに地方に現金を配付致したいと云ふ風に考へて居ります、斯樣に致しますと、一億一千百萬圓竝に四億二千八百萬圓ばかりでございますので、合計致しますと五億三千餘萬圓の金が地方に行くことになります、此の金は縣で一應補助費として流しますが、それを更に市町村等に概算渡を致して置きまして、當座の金に使つて戴く、それから尚ほ年度末等に清算を致しましてきつちりさせる現在は一億一千百萬圓或は四億二千八百萬圓、是は梗概の金であります、全額國費でございますので法律施行になりますれば、斯樣に致して概算渡をしたものは、法律に決められました補助の限度に依つて金が動いて清算をすると云ふやうなことに相成る譯であります、それから使途を定めない分與金を分ちても、こつちの方に使はれないのぢやないかと云ふやうな御心配に付きましては、先刻政務次官から御答辯があつたかと思ひますので略します
それから民生委員の手當のことに付きまして、年手當二百圓を出すと云ふのであるが、それでは不十分ではないか、それならば或は會議の都度何か實費の辨償をする考へはないか、更に進んで專門家を置く意思はないかと云ふやうな御意見のやうに拜聽致したのでありますが、御承知のやうに、方面委員が今度民生委員となる譯でありますが、民生委員は名譽職であると云ふ所に、非常に民生委員としての好さがあるのではないかと云ふ風に考へる譯であります、隨て之に固定給を與へまして、役人のやうに致して參りますと、方面委員の好さが或る程度消えて參ると云ふのが、私共としては非常に殘念な所でございます、隨て實は現在までの所に於きましては、極く僅かの金しか方面委員の方には御渡ししてないのでございます、それを今般二百圓と云ふと非常に少いやうでありますけれども、大奮發を致しまして、是れ位のほんの實費辨償的な御金を差上げることに致しましてさうして十分活躍を願ふ、而も名譽職たる地位は變更しないと云ふ風にして參りたいと考へて居ります、尚ほ會議等がございまして、實際の旅費等が必要でありますやうな場合には、御手許に配付致しました資料の中にもあるのでありますが、民生安定施設諸費の豫算の中に、方面事業費補助と云ふのがございますが、それ等の方からも若干のものならば支出が出來るのではないかと云ふ風にも考へて居ります、尚ほ民生委員を廢めてしまつて專門の職員を置くかどうかと云ふやうな問題に付きましては、是は中々重要な問題でありまして、現在の所に於きましては、やはり方面委員の好さを活かしまして、第一線機關である市町村長を補助致します、民生委員にやつて戴くと云ふ風に考へて居ります、併し大都市等に於きましては、民生委員の方だけでは中々澤山の人の事務の處理等が面倒であると云ふやうなことを考へまして、御承知のやうに方面館と云ふものがございますが、さう云ふ風なものを此の際擴充致しまして、或る程度方面委員の方々の御世話を致します費用等も若干ありまするから、主要な縣等に付きましては、方面委員の御世話をします專任の職員の方を置くと云ふやうなことに致したいと云ふ風に考へて居ります、さうなれば民生委員の方々の御世話を御願ひ致しますので、方面委員の好さも發揮出來ますし、又事務が遲れる、或る適當な指導を申上げると云ふやうな點に付ても寄與する所が多いのでないか、斯樣に考へて居る次第であります
更に私設の社會事業が非常に經營が難かしい、殊に最近斯う云ふ風な情勢になつて居りますので、それの助成團體等を統合して金庫のやうなものを作る意思はないかと云ふ御質問でありますが、只今の所に於ては之を統合してやると云ふ風な意思は持つて居りませぬ、唯御述べになりましたやうに、民間の助成團體から資金を得ると云ふ風な方法が、私設の社會事業を振興する上に於て極めて必要なことは、私共十分認めて居るのでありまして、慶福會、原田積善會或は三井報恩會等と連絡を取りまして、十分助成の金が行くやうに運用をして參りたいと思つて居りますが、只今の所に於ては、それを統合して金庫のやうなものを作ると云ふやうなことは考へて居りませぬ、唯憲法八十五條等との關係から、或は將來さう云ふことを考へなければならぬやうなことになりますれば、御趣旨洵に御尤もでありますので、將來研究を致して行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=4
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005・長谷川保
○長谷川委員 民生委員のことに付ても更に伺ひたいのでありますが、時間を制限されて居ります關係上先へ進みます、保護施設を作りますのに材料があるか、新設、増設の材料があるか、先般戰災復興院の係官の御話では、進駐軍の住宅等も造らなければならないし、本當に心細いと言つて居られましたが、材料があるのか、又兵舍等を使ふ意向であると云ふ話も伺ひましたが、實際に兵舍と部隊の敷地等で、現在我々の方に使はして貰ふやうなものがあるかどうか、全國のさう云ふもの殆ど全部は、實は既に顏役だとか或は追放軍人だとか、追放役人だとか云ふやうな人々に依つて借受けられ、若しくは既に拂下げられ、或は拂下げの契約が出來て居つて、實際には殆どないと思ふのであります、でありますから、若しさう云ふものを使ふとするならば、其の實情を調べて欲しいと思ふのであります、厚生省にはそれが調べてあるかどうか、それを伺ひたいのでありますが、實際に於てはさう云ふやうな顏役共が取りまして、事實は使つて居らないで、放つてあるものが多分にある、さう云ふものをもう一度調べて、取上げて、それを我々の方の此の施設の爲に廻すやうにしたらどうか、さう云ふやうな御意思を厚生省は持つて居らないか、又さう云ふことが出來るか出來ないか御伺ひしたいと思ひます、それから軍需會社の寮等で、賠償關係がはつきりしないから使はせないと云ふものが相當ありますが、斯う云ふ軍需會社の寮等まで賠償に持つて行くのか、其の點はつきりしないものが相當あるから、はつきりさせて戴きたい、更に十五坪以上のものでも建てさせるかどうか、勿論建てさせることと思ひますが、明かにする爲に念を押して置きたいと思ひます、更に先般日本の社會事業援助の爲に來朝中の「バツト」氏に御會ひしたのでありますが、同氏の話に依ると「アメリカ」「カナダ」には日本の社會事業に對する莫大な量の金品が集められてあると云ふこでありますが、其のことに付て厚生大臣に詳細が御分りかどうか、御分りでありますならば、それをどう云ふやうに分配しようと云ふ御計畫であるか、更に又先般伺つた所に依りますと「マッカーサー」司令部の御厚意で一千萬臺の「トラック」や「トレーラー」が一臺約一千「ドル」で拂下げられると云ふことでありますが、斯う云ふものを社會事業の方面に拂下げられぬものであるかどうか、其の點も承つて置きたいのであります、今官公私立を問はず全國の社會事業は授産事業を除きましては「インフレ」と食糧、衣料、其の他の不足に依りまして殆ど經營が困難になつて居ります、試みに社會事業として全國の結核療養所を調査なさいますならば、恐らく其の三分の一以上の空床があります、最近有樂町の驛前に設けられて居ります所の隈部博士などの結核豫防所の「レントゲン」檢査に依りますならば、通行人の中の一割が結核患者であると云ふことが分つて居ります、是れ程に結核が蔓莚して居りますにも拘らず、結核療養所の「ベツド」が空いて居るのであります、「インフレ」の惡化、食糧不足等々に依りまして、官公立のものは食糧に縛られ、私設のものは財源を失ひ、經營困難になりまして、患者は一度入院しても空腹に耐へられないで間もなく退院するのである、出て行く當てのない氣の毒な貧しい方々は、榮養不良になつてばたばた死んで行つて居るのであります、彼等は病死ではなくして、本當は榮養失調に依つての餓死である、今も是等の人人がばたばたと餓死して居ると私は思ひますが、厚生大臣は此の際全國の此の種の療養所の死亡者數に付て調べる必要があると思ふのであります、又中には此の種の療養所にありまして非常に成績の好い療養所があると思ひますが、是は能く實情を御調べになりますならば、此の種療養所は配給を受けるのに實際の收容患者數に依るのではなくて、收容力の二倍もある所の收容の定員數に依つて、謂はば幽靈配給を受けて居るのであります、斯う云ふ事實を私は厚生省の管轄下にもあることを知つて居りますけれども、併し之を責める氣にはなれない、若し之を責めるならば、其の中に收容されて居る人達は餓死せざるを得ないのであります、どうしても此の點から考へまして、先般ぎりぎり一ぱいの生活費等を給與すると云ふことが葛西局長の話として新聞に載つて居りましたけれども、それでは駄目である、宜しく此の收容施設事業等にあります者に對して、ぎりぎり一ぱいの生活費ではなくて、たつぷり十分な補助を與へて欲しい、是でなければ其の中で今日も今も餓死する人々があるのだと云ふことを御考へを戴きたいのであります、其の點に付て十分なる配慮が戴けるかどうか、今日も此處に結核療養所の入院患者から全委員に當てて嘆願書が參つて居りますけれども、どうかそれ等のことを御考へを戴きたい、結核療養所のみではない、實にあの戰災の痛ましい犧牲者達、子供達が、收容してもしても其の收容所から浮浪兒として出て行く姿、其の根本原因は全く腹ぺこである、どうか此の點を御考へになつて戴きたい、茲に私は東京育正園の松島君が其の他の兒童の收容保護施設とも打合せまして自分達の實情を書いた資料を茲に提出して來て居りますが、本法に依つて政府の決めて居ります所の補助、生活の保護費等で經營して參りますならば、其の職員達が、收容され、保護されて居る人々よりも更に程度の低い下級の生活に甘じて居つても、五十人を收容致します兒童收容事業に於きまして、一年間に實に十三萬三千圓の損害を、施設の長は負擔しなければならないのであります、是は後に委員諸君にも此の資料を提供致しますが、是等國家の爲に奮鬪をして居る社會事業家に尚ほ是だけの犧牲を拂はさなければならぬ、厚生大臣は一昨日私の質問に對して、社會事業家はそれぞれ精神的に報いられる所があるからと云ふ御話があつた、それは私は社會事業に挺身してやつて居る人々が言ふべきことであつて、厚生大臣からそれ等の言葉を聽かうとは遺憾であります、全國の社會事業家に之を報告しますならば、社會事業家は憤慨すると思ふ、自ら進んで其の犧牲は善んで受けますけれども、厚生省當局に於かれましては、さう云ふやうな犧牲を社會事業の經營者に強ひると云ふことは何事であるか、私は厚生大臣の答辯を要求するものであります、以上の點に付きまして當局の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=5
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006・河合良成
○河合國務大臣 只今の長谷川君の御質問に御答へ致します、前囘の時に御述べの、社會事業家諸君は非常に献身的に犧牲的におやりになつて下さることに對する感謝の氣持、其の氣持は私も全く能く分ります、其の犧牲と云ふものは洵に尊いものであると云ふことを私も感じて居る一人であります、其の氣持を申上げたのでありまして、厚生省としまして、それを以て強ひるとか、それで宜いのだとか、さう云ふ氣持は斷じてありませぬ、それと全く反對の氣持であります、さう云ふ立派な御心情なるが故に、政府としても出來るだけのことをして行かなくちやならぬ、是は政府の責任である、さう云ふ意味に於て私は寧ろ御氣持を察して、それを稱へる氣持で申して居るのでありまして、其の點は重々誤解のないやうに御願ひ致します
それから結核の問題に付て色々御尋ねでありました、是は洵に遺憾なことであります、今日の結核對策は弛んで居ります、是は何故かと言ひますと、御承知の通りに、國情の變化、戰爭と云ふ非常な事態を通つて來て、終戰後御存じの食糧危機と云ふ問題に直面しまして、其の間に於て心ならずも結核の部面に對して十分親切な手が届かなかつたと云ふのが物の實態的な觀察であると思ひます、段々世情も落着いて參りますし、食糧問題解決の曙光も段々出て參りました、勿論此の結核對策に付ては出來るだけの努力を致す積りで居りますが、此の點に付ては又何等かの機會に具體的のことも申上げたい積りで居ります、尚ほ日本醫療團などの關係に付きましても、其の線に沿うた方法を講ずる積りで居ります、其の他のことは政府委員から答辯致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=6
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007・服部岩吉
○服部政府委員 第一問の保護施設の新設又は増設に對する資材の見透しはどうかと云ふ點でありますが、御承知の通りさうした施設の資材は、現在非常に逼迫して居りまして、中々確保することは至難な問題だと考へて居るのであります、そこで先づ當分と致しましては、保護施設の爲には現在の施設其の儘を活かして行くと云ふことと、今一つは出來るだけ元の軍用の建物であるとか、或は軍需工場の寮であるとか、それ等の買收し得られるもの、又移築、借上等の方法が出來るものを十分に利用して行きたい、斯う云ふ方針で、今新しく總ての施設をやつて行かうと云ふ考へは持つて居らない次第でありますから、左樣御承知願ひたいと思ひます
自動車の問題が出ましたが、今囘政府が進駐軍の方から一萬臺の「トラック」を割愛されましたことは既に御承知と思ひますが、是等は現在生産増強方面にそれぞれ各府縣に配付されて、さうしてそれを各都道府縣からそれぞれの必要な團體或は個人に配付されたやうに私は承つて居りますので、さうした只今の自動車を私設團體の方に廻してやると云ふ餘裕はまだありませぬが、今後尚ほ斯うした割愛をされるものがあると思ひますし、さう云ふ場合に於きましては、出來るだけ地方長官に指示致しまして、希望者にはさう云ふものを振向けるやうに努めて行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=7
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008・葛西嘉資
○葛西政府委員 委員長に御願ひ致したいと思ひますが、只今長谷川さんから御話がございました救援物資の點に付ては、若し御許しを戴きますれば速記を止めて戴いて申上げさせて戴きたいと思ふのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=8
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009・庄司一郎
○庄司委員長 只今御聽きの通り米國の救援物資關係等に付ては、公けな本院の速記録に、現在の情勢に於て殘すことがどうかと云ふやうな御懸念の上から御交渉がありました、其の問題に關する限りの御回答に於て速記を中止致します
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=9
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010・長谷川保
○長谷川委員 尚ほ聽きたいことが澤山ありますけれども、既に與へられた時間も過ぎましたので、若し出來ますならば、全委員の質問が終了した最後に、又質問を御許しあらんことを委員長に希望致しまして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=10
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011・庄司一郎
○庄司委員長 川越君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=11
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012・川越博
○川越委員 私は本法案の審議に當りまして、次の諸點に付て厚生大臣並に關係御當局に對して質疑を致したいと思ふのであります、質問の第一點は將來の社會政策の見透し或は計畫に付てであります、第二點は引揚者援護の問題に付てであります、第三點は沖縄人援護の問題に付てであります
〔庄司委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
第四點は社會保險制度の問題、第五點は本法の運用と、民生委員の問題に付てであります
先づ第一點の、今後の社會政策の見透しに付てでありますが、本法案は生活保護法と云ふ所の名前にも示されて居りまする通りに、消極的な救濟立法に過ぎないのであります、河合厚生大臣は本會議の席上に於きまして、本法は惠與的な慈善事業ではないと申されましたが、社會立法全體と本法と如何なる調和を持つのであるか、又是と關聯を致しまして、將來の社會政策の全般の見透し、大體の計畫、それに付て御伺ひしたいと思ふのであります、先づ其の點に付て御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=12
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013・河合良成
○河合國務大臣 社會政策の面に付きましては、色々の問題があると思ひますけれども、此の法律は今御指摘の通りに、消極的性質の持つて居ります、大體社會保障と云ふ線は、結局國民生活を確保しよう、兎も角も維持して行かうと云ふ點が眼目になつて居りまするから、どうしても此の面に於ける社會政策的施設は消極性を免れぬものだと私は存じて居ります、併なしがら消極性だからと言うて、國家の責任でないと云ふことではないのでございます、消極性でありながら、がつちりと國家が責任を持つて、此處で受止めたと云ふ形でありまするから、先づ上杉謙信でなく、武田信玄であると云ふやうな氣持で、此の問題を御考へ下されば宜いのではないかと思つて居ります、それで他の立法との關係及び此の保護法の現在の状態でありまするが、他の立法との關係及び現在の状態に付て、多々不滿の點はあります、どうしても立法關係としましては、完全なる社會保障法と云ふものに一元化しまして、一つに纒めて、さうして全般の社會保障がそれに入つて行くと云ふ「イギリス」流のやり方と申しますか、さう云ふ點にやはり目標を置いて居りまして、其の點に向つて進んで行くことは勿論でありまするが、御承知の通りのやうな終戰後の國情でありまして、今一朝にして其の理想に達すると云ふことは無理であります、又隨て社會保障の程度と云ふ問題も、百「パーセント」十分とは行かぬと云ふことは承知して居ります、併しながら一方此の問題は、失業救濟の問題と非常な重大な關聯性を持つて居りまして、失業救濟と云ふ問題と社會保護と云ふ問題、生活保護と云ふ問題とは、謂はば一つの線だと思ひます、さうしてそれを何處で切つて行くか、役所では二つの局に分けて切つて居りますが、是は假の相であります、實相と云ふものはさう云ふものでなく、此の點は丁度夕暮のやうにぼけて參ることは已むを得ぬことでありまして、それは役所でも其の間に協調を保つて、衝突ないやうにそれを處理して參る積りで居ります、失業救濟となりますると、是は生活出來る、出來ぬと云ふ問題とは一寸觀點が離れまして、失業者の中には生活の維持が出來る人もある、生活が維持出來ない人もある、維持出來ない人は失業者であり、社會保護の對象になる部類に入ります、生活の出來る人は所謂完全雇傭の理想に向つて進むと云ふことで、是は言葉を換へますると、日本の只今の失業の特質、本質と云ふものが、今まで世界が體驗しました本質と違つて、物の不足と云ふことが重點になり、又物の生産増加と云ふことに依つて日本の國が再建すると云ふ立場にありまするから、此の失業と云ふ問題は、さう云ふ意味に於て社會保障的よりも積極的意味を以て、之をどうしても「フル・エンプロイメント」を目的としてやつて行かなければならぬと云ふことになりますので、失業救濟になりますと、社會保護などから見ますと、半面に於て積極性質を持つて居るものだと云ふ風に言へると思ひます、其の他の社會政策の分野になると、是は色々でありまして、勿論全く純慈善的のものもあり得ると思ひまするし、社會改良的の分子を持つたものもあり得る、又文化なり、或は教育と云ふ、人間の魂の社會的向上を充すやうな部類もあると思ひます、さう云ふ風に色々錯雜して居りますが、其の分野に於て、生活保護と云ふものがどう云ふ形にあるかと云ふことを御諒察願へば、全體の關係か分ると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=13
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014・川越博
○川越委員 第二點の引揚者の問題に付きまして、終戰當時の在外同胞の數は、復員者を含めて大體六百五十餘萬のものがあつたのでありますが、「ソ」聯管理の地域を除いた外は、聯合軍の好意と當局の努力とに依つて、既に三百數十萬の歸還者を算して居るのであります、是等を引揚者に應へる所の受入態勢に付きましては、引揚者を温かく迎へませう、さう云つたやうな「ポスター」が街に貼られては居りますけれども、實際の朝野の状況は決してさうではないと思ひます、去る六月十二日の對日理事會で「マッカーサー」司令部の「クラークソン」少將は、日本政府には引揚者の國民生活復歸を援助する計畫がない、さう云ふ風に指摘をされて居りまするけれども、引揚者に對しまして政府が無爲無策であるとは申しませぬけれども、現状の儘で行きましたならば、非常な物價高と食糧不足、或は住むに家がない、さう云つた社會状況の下に於て、多數の人々が「カード」階級に突落されると云ふことは、火を睹るよりも明かであります、是等の同胞を「カード」階級に突落してから之を救ふと云ふことは、日本の復興再建の爲にも極めて遺憾でありまするが、此の引揚援護の強化と云ふことは、口では盛んに言はれるのでありますけれども、政府が今後打たるべき具體的な方策に付て、此の際はつきりと伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=14
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015・河合良成
○河合國務大臣 引揚者の問題は非常に重大であり、又最も深刻な問題でありまして、只今の日本の社會全體を見渡しまして、此の點が最も憂慮すべき状態にあると云ふことを、政府も實は考へて居る譯であります、それで此の引揚の受入と申しますか、窓口、故郷へ還すまでの點に付きましては、どうやら一通り形を整へまして、實は良いことを申しますと、昨日も「アメリカ」へ歸る、名は忘れましたが、「アメリカ」の或る少將と大佐二、三名の方が浦賀の状況を見て、あの「コレラ」などに對して非常に宜くやつて呉れた、それで私から其の關係の者に特別な謝意を表して呉れと云ふ懇切な手紙を昨日も二通ばかり受取つたと云ふやうな状況で、現地の引揚者に對しての受入に付ては、浦賀などは非常に宜く參つて居ります、全國は廣いことでありますから、十分本當の温情の行届かぬ所もあらうかとは私も考へますが、兎も角も受入態勢に付ては一通り整ひました、それで之を定着致しまして──地方へ本當に植付けると云ふ點に付て、實はまだ遺憾な點が甚だ多いのであります、遺憾な點が甚だ多いと言ひますよりは、まだ十分旨く行かぬのです、言ふまでもなく、引揚げた御方は郷里の縁故も大分遠くなつて居りませうしそれに全く裸一貫で御歸りになつて、其の上一面に於ては海外で仕事をして來た人だから、企業力も活動力も中々旺盛で、是はどうしても日本再建の爲に働いて貰はなければならぬ積極的な意氣を持つ御方が非常に多いのであります、其の點に政府は御着眼せられまして、先づ庶民金融金庫を中心と致しまして、例の三千圓貸付をすると云ふ問題がありまして、是は前政府の時からさう云ふやうな方針になつて居るやうですけれども、實際は旨く行つて居りませぬ、併し今度の受入れまする方針としては、引揚者と云ふやうな縱の線に付て深く入ると云ふ問題に付きまして、引揚者なり、或は戰災者なり、或は軍事扶助なりと云ふ線に付ては余り深く入らないで、横に線を引いて、さうしてそこから起ち上らなければならぬと云ふ人に起ち上れと云ふ方針になつて居りますので、其の方針の線に沿ひまして引揚者ばかりではありませぬ、軍人遺族でも生業をやつて起ち上るならば大いにやれるのだと云ふ人に對して、どうしても庶民金融金庫其の他を通じまして相當資金を先づ出さなくてはならぬと云ふことを具體的に考へて居りまして、略略それは決定したと申して宜い状態になつて居りますので、其の點を一應申上げる次第であります、併しながら是は引揚者だけでありませぬ、全體に付ての問題であることを重々御諒察を願ひたいと思ひます
それから其の他引揚者の定着、引揚者の援護に付きまして特別に民需品──鍋、釜、衣類其の他家財道具のやうなものを配給することは目下進行しつつありまして、是も出來るだけ近い機會に配給したいと思つて居ります、其の他尚ほ失業問題と關聯しまして、勿論引揚者は失業問題の最も重點的な面になると思ひますから、是は失業問題として取扱ひ、又特別に保護を要する人に付ては、此の生活保護法の對象として行くと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=15
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016・川越博
○川越委員 引揚者問題の第二項としまして、引揚者の團體が非常に多いと云ふことが最近言はれて居るのであります、此の濫立傾向に對しまして、政府と致しましては之を整理統合する意思はないかどうか、現在東京都だけでも五、六十の引揚者の團體があると言はれて居るのであります、地方に於きましても、一つの縣で二十位も團體があると云ふことでありますから、之を全國的に見ましたならば、相當な數に上るものと思はれます、其の間此の團體相互の間に縄張り根性的な競爭が行はれ、或は又團體の指導者と團體會員との間に民主的な連絡を缺いて居るとか、是は又援護の衝に當る所の當局と團體が多いが爲に、引揚者の問題に付て緊密な連絡が取れないと云ふやうな事情もあるやうであります、勿論引揚者の團體が濫立を致して居ると云ふことは、引揚者自身が自ら起ち上らうとする所の勇氣の現はれでありまして、それは又當然と云ふことも言へますけれども、引揚が開始されて以來今日まで、其の間政府としては是等の團體の處置に關しては手を拱いて傍觀して居つた、今日は民主主義の世の中でありますから、自分の方から前にお節介は致したくないと云ふやうな氣持からして、之を育てると云ふやうな指導性に缺ける點があつたのではないか、さう云ふことを感ずる譯であります、此の多數の團體の中には極めて如何はしい團體が少くありませぬ、一例を取つて申しますと、新橋や銀座で引揚のお婆さんや子供をだしに使つて、慈善鍋を出して引揚者の事業を起すのであるからと言つて、世の同情金を集めては着服する、さう云つたやうなことが警察沙汰になつたことも聞いて居ります、是などは引揚者の弱い氣持に食込んで、又一方世間の引揚者に對する同情を利用した所の惡質なる詐欺行爲でありまして、憎みても餘りあるものだと思ひます、又引揚者の家族の方の中には終戰前の所謂一旗組と云ふやうな動きがあつて、起業家、野心家の跳梁に任かせて居つたと云ふやうなこともあります、斯くの如く此の純眞なるべき所の引揚者援護の假面を被つて、實は引揚者を食ひ物にして居る所の幹部、或は配給品の胡麻化しをやつて居ると云つたやうな輩、さう云ふ團體にはさう云つた者が居るのでありますが、之に付ては政府は解散を命ずるなり、鐵槌を下して戴きたい、其のやうに思ふのであります、政府關係の引揚團體に付きましては、外務省關係の在外同胞援護會、厚生省關係の恩賜財團同胞援護會があります、是は大きな團體でありますが、之を一本に纒める意思はないかどうか、さう云ふ點に付ても御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=16
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017・服部岩吉
○服部政府委員 川越君の御尋ねに御答辯致します、御説のやうに引援者の團體と云ふものが、東京だけにも既に六十以上を算へると云ふやうな状態である、隨て各府縣には相當の團體が出來て居りますことは事實でございますが、此の多く出來たと云ふ原因は、其の地區毎の引揚者がそれぞれ時期が違つて歸つて參つたと云ふこと、數多の者が纒まつて引揚げて參ると直ぐそこに團體が出來る、或は北平から歸つて來れば、先に北平から歸つて來た者が先づ團體を作る、それから漸次其の後引揚げて歸つて來た者を其の團體に入れる或は南朝鮮方面から歸つた者は歸つた者で又團體を作る、或は天津から歸つた者、各方面から歸つた者がそれぞれ地區的な團體を作つて居るやうな始末でありまして、是等の團體の主なる目的は、お互ひが援け合つて、國家再建の爲に働かう、更にもう一つは在外資産さう云ふものの今後の處置に付て其の地區毎に居つた者を綜合して調べ合つて、さうして外務省なり政府の方の交渉に當つて行かうと云ふやうな目的を以て團體を組織して居りまするし、又さう云ふ團體を設けて、自分達が自活をする爲に何か事業を興して行かうとするやうな團體もある、併し目的は洵に立派なものを持つて居りまするが、實際の内容に至りますと、御説のやうなものもあり、又内地の者がさう云ふ引揚者の援護と云ふことに名を藉つた團體もあつて遺憾な點もあるやに私も聞いて居ります、そこで之を何か統合する方針はないか、斯う云ふ御意見でありますが、實は私個人と致しまして最初考へた時には、何か統合して之を中央に一つ拵へ、更に道府縣のものを一つに固めて、厚生省が中心となつて是等を指導或は監督をして行つた方が宜いではないか、斯樣に考へて見たことがありましたけれども、其の後段々と其の内容を調べて見ますと、今直ぐにさう云ふ團體を統合することが中々難かしい事情にありますので、先づ此の儘暫く其の推移を見て行かなければならぬのではないか、實は斯樣に考へて居りまして、今之を同胞援護會と一緒にするとか云ふやうなことは考へて居りませぬ、又同胞援護會と在外同胞後援會とを一元化することの方針は是は決まつて居りまするけれども、其の他の國内に於ける引揚者の色々な團體を今一つに纒めて行かうと云ふことは當分考へて居らないのであります、左樣に一つ御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=17
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018・川越博
○川越委員 それから本問題の第三番としまして、引揚援護に對する政府機構の問題に付てであります、引揚者問題に付ては外務省、厚生省、色々な方面に關係がありますが、其の間に仕事上の連絡が旨く付かぬ、さう云つたやうな仕事の分擔をもつと旨くやつてはどうかと云ふやうな點も窺はれるやうな氣が致すのであります、或は戰災者、軍人遺家族、一般困窮者の援護或は保護、さう云つたことを引括め、現在の厚生省の引揚援護院、之を包含して内閣直屬の援護院とも稱すべき機關を作る意思はないかどうか、又厚生省内に本法の適用範圍内に於ける生活保護院、さう云つたものを作る意思はないかどうか御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=18
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019・河合良成
○河合國務大臣 只今の所では此の儘でやつて行く積りで、別にさう云ふ別特の機關を作る考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=19
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020・川越博
○川越委員 それから先刻大臣から申されました生活資金の問題でありますが、引揚者の問題に付きましては生活資金三千圓、生業資金一萬圓を庶民金庫から貸出すと云ふ口實だけで、それが實際問題としては、其の回收の見込がないとか、或は其の運用資金の問題で實際上は中々巧く進捗致して居ない、之に對しまして先般の引揚者の全國大會では、生活質金の五千圓、生業資金の二萬圓、之を何とか融通して貰ひたいと云ふことを要望決議した譯であります、此の點に關しましては、政府當局に於て今御考慮なさつて居ると云ふことを先程承つたのでありますけれども、此の點に付てもう少しはつきりと──大藏當局とも關係がございますが、大藏省から若しおいででありますならば、其の點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=20
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021・河合良成
○河合國務大臣 只今の點に付て一言御答辯致しますが、私の先刻申しましたのは、結局生業扶助としての三千圓を前の庶民金庫を通じて貸付けると云ふことになつて實際それは巧く行つて居りませぬ、其の問題であります、さうだから三千圓と云ふのは生活資金ではありませぬ、生業扶助の仕事の方の意味であります、さうして一萬圓と云ふ問題は、實は色々陳情の際などに承つて居りまして、各各自分の持つて居る財産などの中からさう云ふ意味の立替を願へぬかなどと云ふ御陳情は受けて居りますけれども、其の點に付て政府の方針は何も決まつて居る譯でありませぬ、三千圓の問題に付て略略決定したと云ふ状態と御考へ下さつて結構だと云ふことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=21
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022・川越博
○川越委員 時間もありませぬから急いでやりますが、引揚者の問題は其の位にして打切りたいと思ひます
第三點は沖縄縣人の歸還問題であります、沖縄縣人が今次戰爭に拂つた犧牲と云ふものは非常に深刻なものがある、戰史未曾有の激戰場と化した沖縄本島のみならず、南方の諸地域に於て、或は太平洋の諸島に於て、沖縄縣人としては非常な犧牲を拂つた譯でありますが、現在内地に居りまする沖縄縣人は、三月十八日の調査に依りますと、二十萬九百四十三名と云ふことであります、其の内歸還の希望者が十四萬一千三百七十七名居ると云ふことであります、是は外務省あたりとの關係がございますが、いつ頃送還出來る見込であるか、或は若しそれがまだはつきりとしないならば、速かなる實現に關して「マッカーサー」司令部に對して政府は折衝を致して貰ひたい、一説に依りますと八月中旬から送還が開始され、年内に大部分終了すると云ふ話もありますけれども、事情の許す限りに於て、はつきり御答辯を願へれば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=22
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023・伊藤謹二
○伊藤(謹)政府委員 只今の沖縄縣民送還の問題に付ての御質問でありますが、數日前に最高司令部から指令が參りまして、愈愈來月の十五日に送還を開始致しまして本年一杯で完了する、斯う云ふ豫定でありまして、目下輸送計畫其の他具體的の案を立案して居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=23
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024・河合良成
○河合國務大臣 沖縄縣人のことに付きまして一言私から此の機會に申述べて置きますが、申すまでもなく沖縄の御方はもう非常にお氣の毒な状態で、殊に強制疎開でおいでになつた方が四萬三千人もあります、そこで日本には縁故は極めて少いし、所持品も少いと云ふことで、勿論是は日本の一般の國民の困つた御方と同一に扱へと云ふ方針で來て居つたのでありますが、それが、同一に扱ふと云ふことが其の儘に正しく理解されれば間違ひないのですけれども、末端へ參りますと、同一に扱ふと云ふことになりますと、沖縄縣の御方は直ぐ歸るであらうから雇傭關係はどうだとか何とか云ふ問題が色々起きまして、同一と云ふことは、其の事情に應じて、非常に困つた人にはさう云ふ非常に困つた對策をしなければならぬと云ふ意味であるのであつて、それを何か一寸末端に於てさう云ふ風に取違へられて居ると云ふ懸念もあつたやに考へられましたので、最近地方廳に向つて極めて詳細に指示を致しまして、さうして集團としての御方は集團として特別に善處せい、それから尚ほ今度引揚民の入港地の二つばかりが空きますので、そこへ沖縄縣の人を集團的に集める、さう云ふ風にして實情に即した意味の同一待遇であると云ふ意味を能く理解させまして、色々細かい點まで氣を付けて方法を執つて居ります、其の點を御報告致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=24
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025・川越博
○川越委員 今厚生大臣から、日本人としての待遇で以て出來るだけやつて行くと云ふ、其の誤解のない點に付て地方廳に指令を發せられたと云ふことでありますが、非常に結構なことだと思ひます、非日本人と云ふことで以て一般の冷遇を受けて、色々就職の拒否などの問題もあると云ふ風に聞いて居りますけれども、兒童の集團疎開、之に付て現在は九州の熊本、宮崎、大分、此の三縣に約六千餘名の兒童の集團疎開があるのでありますが、此の補助額が四月來は兒童一人當り六十餘圓と云ふことになつて居りまして、現在の經濟状況からして、それが増額を希望して居ると云ふ風に聞いて居りますが、此の點に關しては、文部省とも關係がある譯でありますから、此の増額は出來るのか出來ないのか、此の點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=25
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026・日高第四郎
○日高政府委員 御話のやうに文部省で取調べました所では、現在熊本、宮崎、大分に分散して居ります沖縄の兒童が約五千百五十九人と云ふことになつて居ります、多少の移動はあるかと思ひますがそれ等の者に對して昨年度までは食費が月に、初めには二十三圓でございまして、其の後十二月以降五十三圓まで認めても宜いと云ふことになり、四月からは六十三圓と云ふことに認めまして、さうして世話をして參つたやうであります、世話をして居りますのは、沖縄の師範の男子部長の中村精行君がやつて居て下さるさうであります、經費が足りないと云ふ色々の御連絡もありましたので、本年度の豫算としては、沖縄縣の學童の爲に約五千人と見積りまして、月七十圓と、年に被服費一人當り三十圓と云ふことで要求してございます、尚ほそれでも十分でないことは文部省も承知致して居りますのですが、國費多端の折柄それが十分に出來ないことは殘念でございますが、出來るだけ其の邊の事情は考慮しまして應援致したいと思つて居ります、其の他に食費を補ふ意味で、農場の生産費等を年に若干圓づつ補ひまして、自分達で作つたもので食費を補ふと云ふやうな方法を講じて居ります、今調べました所では、沖縄の内務部長の北條さんと云ふ方が、沖縄縣の學童援護會と云つたやうなものを御作りになつて、福岡で非常に骨を折つて居て下さるさうであります、それ等の方とも十分連絡を取りまして、文部省として出來る應援は吝しまずに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=26
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027・川越博
○川越委員 次に北緯三十度以南の琉球諸島は、去る一月二日附を以て聯合軍總司令部から、日本の範圍外にある地域として日本政府の政治權力下から除外をされると云ふことになつて居りますけれども、現在内務省關係では、政府側と致しましては福岡に沖縄縣廳の事務所があり、大分、宮崎、熊本に又事務所があるのでありますが是等の處置を一體今後内務省としてはどうなさる積りであるか、更に此の機關がなくなつた後に於ては、内務省としては其の仕事をどうして行かれる積りであるか、其の點を内務省の方がおいでになつて居れば承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=27
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028・世耕弘一
○世耕政府委員 御答へ致します目下の状況に於きましては、從來引揚の沖縄縣民は、九州の各縣に於てそれぞれ援護事業に當つて居る次第であります、尤も佐賀、長崎邊は此の點は除外を致して居ります、尚ほ事務所の關係でございますが、此の點は特に臨時沖縄縣民の事務所をば置きまして此の援護事業に當り、各關係の十分な連絡を取るやうに期して居る次第であります
〔齋藤委員長代理退席委員長着席〕
其の他尚ほ沖縄縣民としての風俗習慣等もありまして、地方人と習慣を異にするやうな場合に、感情問題等の起り得ないやうに、出來れば温かい氣持で接すると云ふ建前から、此の沖縄縣事務所の關係に於て、状に沖縄縣の縣人會の方方に協力して戴いて萬全を期したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=28
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029・川越博
○川越委員 次に米軍政下にありながら、「ソ」聯地域と同じやうに終戰後一年に垂んとする今日尚ほ其の父母妻子の消息さへも分らない、それが爲に沖縄縣の人達は非常な不安焦慮に驅られて居る現状であります、隨ひまして一日も早く沖縄との通信連絡の自由が回復されるやうに、機微な問題もあると存じますが、出來るだけのことを政府に於てはやつて戴きたい、又此の際それに付ての御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=29
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030・伊藤謹二
○伊藤(謹)政府委員 只今の御質問は洵に御尤もな御質問でありまして、私共と致しましては、沖縄縣の殘留者と本土に居ります人達との間の通信連絡の途が開けますことを熱望して、居るやうな譯であります、此のことは終戰連絡事務局を通じまして、今日でも聯合軍司令部に對して懇請致して居るやうな次第であります、目下の所何時頃開かれると云ふやうなことは申上げ兼ねますが、政府としても極力努力して居ると云ふことを御諒承額ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=30
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031・川越博
○川越委員 社會保險の問題に付きまして、就中國民健康保險の問題に付きましては、組合員の負擔のみでは經營が極めて困難であるさう云つた實情に鑑みまして、保險給付金の金額の國庫補助をして貰ひたいと云ふ要望が市町村長の間に全國的にあるのであります、或は又現在額は一人當り年に一圓四十五錢で非常に少いから何とかして之を増額して貰ひたい、さう云つたやうな希望があるのであります、斯う云ふ點に關して政府の見解を御伺ひ致したいと思ふのであります、又現在の健康保險と云ふものの實際の運用に當つては中中巧く行つて居ないやうな状況であります、縣でも市町村でも、或は健康保險組合も、二進も三進も行かぬと云ふ悲鳴を擧げて居るやうな状況でありまして、此の立法の當初の精神はどうなつてしまつたのかと云ふことが考へられるのであります、之に付ては色々な障碍の理由もありませうけれども、何とかして之を立派に育てて行つて貰ひたい、或は又進んでばらばらの社會保險を強化して一本のものにして戴きたい、それから此の實際の運用に當つて、醫療團の方では治療代の現金給付を實現させて戴きたい、さう云つた要望もあるやうでありますが、之に對する御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=31
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032・服部岩吉
○服部政府委員 御答へ致します、現在全國には一萬四百餘りの國民健康保險組合があります、御説のやうに現在に於きましては、此の組合の或る「パーセンテージ」は事業が不振に陷つて居りますが、其の主なる原因は、政府從來の施策が組合の普及に急であつた爲に特に此の戰時中相當の力を以て各市町村に強く要求して拵へた、隨て一時に澤山の組合が出來た爲で個々の組合に對して具體的な指導に付ては多少徹底を缺いたやうな嫌ひがあるのであります、一つは之に依るものと思はれますが、今後此の事業不振の組合に對しましては十分に其の組合が發展、進展するやうに、第一には本制度の趣旨を組合員に徹底させると同時に組合の指導に付いては努めて積極的に活動を致し、其の組合をして積極的に活動させる、今まではどちらかと云ふと、少し無理に要請されて拵へたものでありますから、組合自體も積極的に活動すると云ふ點が少かつた、それからもう一つは、現在に至りまして財政的に非常な窮地に陷つて居るのであります、是は物價の騰貴に伴つて今年の三月當時の醫療費、之を三倍以上にしなければ協力して呉れる醫者がなくなつたと云ふやうら譯で、之を三倍に致す爲に既定の豫算では組合は全く事業が出來ない既に六七月頃になりますと、保險料を相當額増額しなければならぬ、所が一時にそれを増額致しましても中々徴收が出來ないし、又それが爲に組合が壞れてしまふと云ふやうなことで、組合當局者も積極的な保險料の増額をようしないと云ふことで、現在全國の組合の大部分は休業の状態に陷つて居ると思はれるのであります、それが一つの原因になつて居ります、さう云ふ譯でありますから、此の不振に陷つて居る國民健康保險組合を積極的に活動させて、之を所謂醫療の社會化と云ふ面まで強く持つて行く必要があると當局では考へて居るのであります、今日一般大衆の醫療機關として活動して居るのは、私は此の國民健康保險組合を措いて他には殆どないやうに考へるのであります、隨て此の積極的な活動を促す爲に政府に於きましては、一つには今後町村の健康保險組合直營の診療所を設けたいと云ふ方面に付ては、出來るだけ之を奬勵して設けさせたい、又國民健康保險組合が直營することが出來なければ、或は町村と云ふ名の下に診療所を置かせて、それを組合が積極的に利用すると云つたやうな色々な方法を講じ、一方には保健施設と云ふものを完備致しまして、さうして組合員全體の保健の向上に努力する、更に又政府と致しましては、それぞれ各府縣に垂範的な組合がありまするからして、斯う云ふものを益益助成致しまして、斯う云ふ組合を標準に他の組合を推進させて行くと云ふやうな方法も講じて參りたい、斯樣なことを實は考へて居るのでありまして、只今御尋ねの補助の増額の點に付きましても、何とか致したいと考へまして努力中でございます、其の他保險制度の合理化を圖りまして、醫療品の實績配給と云ふやうな面まで持つて行きますならば、相當醫者の協力が強くなつて參りまして、國民健康保健組合は設立當初の趣旨に向つて進んで行くことが出來る、此の點まで我々は政府と致して進んで行きたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=32
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033・庄司一郎
○庄司委員長 川越さん先程御質問の引揚者關係の御答辯として、大藏次官が御見えになつて居りますから、此の場合御答辯を戴いては如何でございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=33
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034・川越博
○川越委員 引揚者の金融問題でありますが生活資金として三千圓、生業資金として一萬圓を庶民金庫の方から貸出す、是がありながら實際には中々回收の見込が立たないと云ふことと、もう一つはそんなに澤山出すと、庶民金庫に金がない、さう云つたやうなことからか、實際には中々貸出して呉れない、此の公約の實現を引揚者として希望して居る譯であります、それから實際の今日の生活難の時に生業資金としては一萬圓と云ふのを二萬圓にして貰ひたい、生活資金を五千圓に引上げて貸出しをして貰ひたい、之に對して大藏當局が積極的にやつて戴きたい、斯う云つたやうな愬へがあるのでありまして、それに對する御所見が伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=34
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035・上塚司
○上塚政府委員 庶民金庫の金融に付きましては、單に引揚同胞ばかりでなく、戰災者其の他一般同胞に對しましても、出來るだけ其の趣旨に副ふやうに給與の途を開きたいと云ふことで、目下厚生省とも具體的の方策に付て協議中であります、何れ此の議會に御説明を申上げる機會があらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=35
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036・川越博
○川越委員 もう時間も十二時過ぎましたし、終りたいと思ひますが、最後に、是は質問と云ふか、希望でもありますけれども、之を以て終ることに致しますが、結局本法と民生委員の問題であります本法は都長官であるとか市町村長斯う云つたものが實施の主體になつて居りますけれども、實際の運用は、民生委員の活動如何にあると思ひます、今日の方面委員の對象と云ふものは、從來の所謂「カード」階級でなくて、戰災者、復員者、引揚者、貧困者、妊産婦、浮浪者、さう云つたやうな種々雜多の、多種多樣の生活困窮者の世話をやつて行くと云ふことになりますれば、是が爲に餘程の時間と努力、それから相當の費用を費すものと思ふのであります、此の際に從來の方面委員がずるずると民生委員になる、さう云つたことではいけないと思ひます、從來の方面委員の仕事だけでも大變でありますけれども、新しい所の民生委員の活動に期待する所が非常に多いのでありますから、此の點に付ては餘程的確なる所の人選と、之に對する所の處分を必要とする譯であります、又此の民生委員に對しては、新しい立法の新精神、之を十分に徹底致しまして、さうして法律は作つて實際は行はれないさう云つたやうなことのないやうに、佛作つて魂入れずと云つたやうな結果にならぬやうに十分の御注意を御願ひしたい、實際の民生委員の人選には、復員の引揚者であるとか、或は社會事業家、さう云つたやうな適切な人事をやつて戴きたい、斯う云ふ希望を述べまして私の意見を終ります、之に付きまして政府の御所見があればそれを承りまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=36
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037・河合良成
○河合國務大臣 只今の民生委員に對する御所見は御尤もでありまして、政府も全然同感であります、其の線に沿うて努力をする積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=37
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038・川越博
○川越委員 是を以て私の質疑を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=38
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039・庄司一郎
○庄司委員長 それでは本日は是にて散會致します
午後零時二十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00419460727&spkNum=39
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