1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
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昭和二十一年八月三日(土曜日)午前十時二十一分開議
出席委員
委員長代理 理事 齊藤行藏君
理事 小柳冨太郎君 理事 原捨思君
理事 長谷川保君
小池改恩君 田中重彌君
竹内茂代君 冨田ふさ君
山口好一君 大島定吉君
坪川信三君 中山たま君
有馬英二君 奧村又十郎君
澤田ひさ君 永井勝次郎君
松尾トシ君 平川篤雄君
松谷天光光君 東井三代次君
田中たつ君 川野芳滿君
同日吉川兼光君理事辭任に付其の補闕として長谷川保君が理事に當選した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
厚生大臣 河合良成君
出席政府委員
大藏事務官 福田赳夫君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 勝俣稔君
厚生事務官 葛西嘉資君
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本日の會議に付した議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=0
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001・齊藤行藏
○齊藤委員長代理 本日は委員長が已む得ない御用で缺席致されましたので、代つて私が委員長の代理を務めさして戴きます、それでは是より會議を開きます、川野君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=1
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002・川野芳滿
○川野委員 私は大藏省竝に商工省に對しまして質疑を致したいと思ひます、大藏大臣は直ぐおいでのやうでございますが、只今開會が宣せられましたので、ぼちぼち質問を始めて行きたいと思ひます、數日來各委員の方々より適切なる御質疑がございましたので、私は重ねて重複の御尋ねを申上げることは御迷惑と考へますので、努めて質問のなかつた點に付いて御尋ね申上げて見たいと思ふ次第であります
先般私が上野公園に參つて見ますと、澤山な孤兒が眞つ裸で、垢に塗みれた身體を公園に横たへて居るのを多數見受けたのであります、私は此の慘澹たる姿を見まして、顏を背けた次第でありまするが、終戰後一年に垂んとする今日に、我が日本政府の所在地である所の此の東京で、斯の如き多數の孤兒をどうして放置してあるのであるかと云ふことに付て私は非常に遺憾に思つた次第であります、去る三十日に板橋の養老院に收容致したと云ふことを新聞で拜見致したのでありまするが、私は此の際明治維新の石井十次先生を思ひ出して見たいと思ふのであります、石井十次先生は明治二十年、二十三歳の時に前原偵一なる一孤兒を助けたのをきつかけと致しまして、孤兒院事業に乘出した方であります、併し此の孤兒院事業を完全にやるには、どうしても都會ではいけないと云ふので、明治二十七年には日向の茶臼原に孤兒院を造られまして、此の茶臼原を中心と致しまして孤兒院事業を營まれたことは皆樣御承知の通りであります、而して石井十次先生は或は精米事業、或は理髮事業、或は鍬を入れまして農産事業等を傍らに經營されまして、さうして小さい子は小さい子供ながら、或は少年は少年ながらの此の手傳ひをさせまして、事業意欲を興振させまして、孤兒の養育に努められたのであります、其の結果非常に成績が擧つたと云ふことを私などは承つて居るのでありまするが、此の際政府に於かせられましては、僻遠の地域は又島に國立の孤兒院を御造りになつて、是等の可哀相なる孤兒に對しまして、片方には事業意欲或は勤勞意欲を起させるやうな、孤兒教育を施される所の御考へはないかと云ふことを承つて見たいのであります、現在都會の孤兒院等に於きましては、相次いで逃亡者があると云ふことを承つて居りますので、少くとも私は島か或は相當距離のある僻遠の地に孤兒院を開設すべきであると云ふ考へを持つて居るのであります、此の點に付て御尋ね申上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=2
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003・服部岩吉
○服部政府委員 御答へ申上げます、御質問の御趣旨に極めて同感の意を表する次第であります、此の戰爭が凡ゆる面に悲慘な状況を招來致して參りましたが、特に戰爭の爲に父を失ひ、或は母を失ひ、或は同胞を失つた此の孤兒を如何にして今後育てて行くべきか、身寄りのない孤兒を何とか救濟して、さうして完全なる一人前の人間に育てて行きます爲には、獨り各個人の經營の慈善的な育兒院の如きも必要でありまするが、政府に於きましても、積極的に乘出して是等の孤兒を救濟し、之を教育する施設が必要であると御説の通り考へて居ります、政府に於きましては、此の點を十分調査致しまして、御趣旨に副ふやうに致して參りたいと存じて居ります、どうか左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=3
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004・川野芳滿
○川野委員 有難い御返答を賜はりまして感謝致す次第であります、併し今日は實行と云ふ點に付きましては一日を爭ふ問題でございますので、速かに御調査戴きまして御實施賜はらんことを切望致す次第であります
次に御尋ね申上げたいことは、刑を終りまして釋放された所の釋放者の問題であります、其の數字を調べますと、昭和十八年度には滿期者が二萬二百三十二人、假釋放者が四千六百二十三人で、計二萬四千八百五十五人となつて居ります、十九年度には滿期者が一萬八千五百二十五人、假釋放者が八千三百六十六人、計二萬六千八百九十一人と云ふ、状態になつて居ります、昨年度の統計はまだ出來て居りませぬが、非常に多數であると云ふことであります、此の多數の釋放者は現在では二百三十幾らの司法保護團體に依つて、或は收容保護され、或は一時保護され、或は監察保護されて居る所の現状であります、併し其の保護團體の内容に立入つて見ますと、政府の助成金は薄く、保護施設を作ると致しましても、寄附金を以てせねば其の施設が出來ないと云ふ現状であります、故に斯かる人を保護致します司法保護の施設に對しましても、本法案を適用致しまして、其の半額を國庫補助に致して貰つたならば、非常に便利だと考へます、此の點に付て御當局の御所信を承つて見たいと思ひます
尚ほ此の釋放者の中で或る程度の人は直ちに職に就くことが出來るのでありまするが、大多數の人は職に就くことが難かしい實情であります、戰時中でありましたならば直ちに職に就くことが出來たのでありますが、現今の如き失業者が群をなして居る時代に於きまして、釋放者は遺憾ながら雇ひ手がないと云ふ實情であります、是等の方々を一般人と同樣に保護致すと云ふことは當然でありまするが、併し收容所に於きましては、是等の人と一緒に保護を受けることを好まないのが現下の實情であります、それで斯う云ふ人達は現在の司法保護團體に依つて保護を受けて居るのでありまするが、其の費用がないと云ふ實情でございますので、其の費用の點に付ては此の生活保護法案の規定に則つて、こちらより委託と云ふやうな制度に致しまして、本法案に依つて此の費用を御出しになる考へはないかと云ふ點を御尋ね申上げて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=4
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005・葛西嘉資
○葛西政府委員 釋放者の保護の關係は御承知のやうに司法省の所管でございますので、私から責任を以て御答へを申上げることは出來ないのでございますが、私の方の關係の生活保護法案の方の費用を此の方に出さないかと云ふやうな點だけに付て御答へを申上げることに致したいと思ひます
生活保護法案は色々な他の國家の制度に依つて何とも手の及びやうのない者を、最後の一線で保護して參ると云ふ建前に依つて立案をされて居るのであります、隨ひまして釋放者の關係の方は、御承知のやうに司法省關係の方の法律に基いてやつて居るのでありまして、其の目的は一般の保護と云ふよりも、寧ろ釋放者の再犯防止と申しますか、刑事政策の方面から立案されて居るものでございまして、そちらの方の分野でやつて戴くと云ふことになつて居るのであります、隨ひまして此の部分の費用の足らずまひを此方の費用で出すと云ふやうなことは一寸難かしいのではないかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=5
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006・川野芳滿
○川野委員 私の質問の趣旨を御取違へになつて居るかとも考へるのでありますが、私の申しますのは、實は釋放者の中で生活に困つた人、是は當然民生委員の手に依つて、此の生活保護法に依つて養つて戴かなければならぬ人、斯う云ふ人を一般人を收容する所の保護施設の中に一緒に入れますと、釋放者の方もはにかむ思ひを致します、又一般の人も罪をした犯人と一緒ではどうも困ると云ふやうな現今の風潮がございますので、釋放者と雖も刑を終へた者は、其の罪を憎んで人を憎まずと云ふ建前から致しましても、當然同一種の保護を與へるべきものであると考へるのであります、併し現在に於きましては、只今申しましたやうに一般の人と一緒に救護を受けるのは氣拙い思ひをする、又一般も其の人達と一緒に居ることはどうも好まない、而して保護團體が收容して之を養ふと云ふことになりますと、今日では非常に經費がない、同一政府の下に保護法案に依つて救護された者は優遇されて居るが、司法保護團體に依つて養はれて居る者は虐待を受けて居ると云ふ現下の不公平な實情でございますので、司法生活保護法に依つて養はなければならない難儀な人に限つては、此の生活保護法に依つて委託の方面の關係で司法保護團體に預けて、費用を出して戴けぬだらうかと云ふ質問でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=6
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007・葛西嘉資
○葛西政府委員 私若干御尋ねを感違ひして居つたやうな點もございますので、改めて申上げたいと思ひます、司法保護の收容施設等に於てどうしてもやつて行けないやうな場合に、本法に依つて保護が出來るかと云ふやうな御尋ねと了解して御答へ申上げますが、司法保護の方の金で、どうしても本人或は其の家族と云ふやうな者が、生活に困ると云ふやうな状態に立至りました場合に於きましては、勿論最後の一線に於て本法に保護をなすことは差支へはない譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=7
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008・川野芳滿
○川野委員 次の問題に移りますが、結婚の問題であります、戰時中は産めよ殖やせよの建前から、方面委員が結婚相談委員になりまして、結婚の斡旋をしたことは御承知の通りでありますが、終戰後の今日では、産めよ殖やせの建前から結婚を奬勵すると云ふことは食糧事情等の關係もございまして、如何かとも考へるのであります、併し現在の青年等の荒み切つたる心を和かにするのに、どうしても婦人の愛が必要である、斯う考へるのであります、それで結婚の奬勵と云ふことは、形を變へて又必要な問題ではなからうか、斯う考へますので、此の民生委員に結婚相談委員と申しませうか、さう云ふことを囑託致しまして、結婚の御世話を申上げられたら如何か、斯う考へるのであります、又未亡人の問題でございます、多數の御同情すべき未亡人がおありでありますが、其の未亡人にも、既に終戰後の今日では、結婚をお奬め申上げて、さうして適當なる家庭を持たせると云ふことは、是は必要なことではなからうかと考へますので、斯う云ふ點から申しましても、民生委員に結婚相談委員を頼みまして、結婚奬勵をさせる御意思はないかと云ふ點を御伺ひしたいのであります、尚ほ貧しき人が結婚を致すと云ふことに付きましても、實は費用がないと云ふ實情でございます、物價暴騰の今日に於きましては、簡素なる結婚の式典を擧げるに致しましても、相當なる費用が要りますので、さう云ふ貧しい方には結婚費用の補助をすると云ふことが必要ではなからうかと考へますので、此の第十一條の第五項の葬祭扶助の下に「結婚扶助」と云ふ四つの文字を入れまして、さうして斯う云ふ貧しい方に結婚費用の一部の補助をなされる御意思はないかと云ふ點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=8
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009・葛西嘉資
○葛西政府委員 結婚を民生委員に扱はすことはどうかと云ふ風な御質問だつたと思ひますが、戰爭後未亡人の色々な複雜な事情、或は又青年の好い配偶者を得られないと云ふやうな人達の結婚の問題は、極めて難かしい問題でありますので、斯樣な點に付きましては、將來民生委員が御世話を中に立つてして戴くと云ふ風なことは必要なことではないかと考へて居ります、それで今度改正を致しまする民生委員令に於きましても、斯樣な趣旨の規定を一條民生委員の職務の中に或る程度入れる積りでございます、と申しますのは、必要に應じて生活の指導が出來ると云ふやうな規定を一應入れて見ようかと云ふやうな腹案で居る譯でございます、さう云ふことになりますれば、今御述べになりましたやうなことも、地方の實情等に依りましては民生委員にお働きを願ふと云ふやうなことが自然起つて參るのぢやないかと云ふ風に考へて居る次第でございます、從來に於きましても、方面委員が今御述べになりましたやうな、産めよ殖せよと云つたやうな結婚奬勵の時期に於きまして、地方等で結婚の御相談に應じまして、相當の成績を擧げて居る實例も存じて居るやうな次第でございます、尚ほ法案の第十一條で、結婚に關する費用が足りない爲に困る場合があつたらば、結婚扶助と申しますか、さう云ふことを行つたらどうかと云ふ御意見であつたやうに承つたのであります、葬祭の關係は、現在から申しますと可なり費用も要らうかと思ふのでありますが、結婚と云ふことになりますると、是は簡素にやれば相當簡素にやれる譯でありますから、茲に生活保護の一つの項目、保護の種類としまして結婚扶助と云ふものを擧げる必要はないのぢやないかと云ふやうな考へから、結婚の扶助の費用として出す必要はなからうと云ふので、法律にも之を掲げなかつたやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=9
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010・川野芳滿
○川野委員 過去に於きまして、市町村長が媒酌人になりまして小さやかなる結婚式を擧げて來たのであります、其の小さやかなる結婚式の費用でも、過去に於て百圓位の費用は要つて居つたのであります、物價騰貴の今日に於きましては、少くとも如何に簡素な結婚を行ひましても、四五百圓の費用は要るのではなからうかと私は考へるのであります、此の四、五百圓の金を貧しき方に出せと申しましても、是は到底出來ない相談でございますので、此の點だけは是非一つ總て冠婚葬祭と申しまして、葬式の半面には結婚の式があるのは我が國の從來の習ひであります、それで是非とも一つ貧しい方の結婚の費用には相當の補助をして戴きたい斯う云ふことを考へて居るのでありますが、此の點に付てもう一度承つて見たいと思ふのであります
尚ほ次に御尋ね申上げますことは、企業整備に依つて廢めさせた方の問題であります、企業整備は御承知のやうに資材の缺乏と人の不足の問題で、政府が強制的と申しませうか、命令的に企業整備を斷行させたのであります、其の數は、國民厚生金庫の利用者等から考へて見ますと、百四十七萬一千八百六十一人と相成つて居ります、併し組合自身の手に依つて企業整備をやつた人もございますので、是等の人を合せますると、少くとも二百萬に垂んとする所の多數の人であります、斯う云ふ方々は、祖先傳來の自分の職業を國家の要請に從つて棄てて、さうして炭坑に參り地下數千尺の坑の中で石炭増産に勵しみ、或は又軍需工場で軍需生産に勵しんだものであります、併し是等の方々は、或は地下數千尺の坑の中でも、或は工場の中でも、又いつかは元の職業に歸られる時が來るであらうと云ふことを樂しみに致しまして、孜孜營々として國策に順應致して來た方々でありますが、悲しい哉、現今に於きましては二百萬に垂んとする所の、斯の如く國家の命令に從ひ、さうして祖先傳來の職業を失つた所の同情すべき方々に對する同情の聲がない、此の方々は少くとも戰災者或は引揚者と同樣に哀れな状態に置かれて居る人々であると私は信ずるのでありますが、斯う云ふ方々に對して如何なる救助の政策が執られるか、又企業整備に當つては、涙金或は暖簾代と稱せられまして、幾許かの金が交付されたのでありますが、是等の金も、生活資金の一千圓を除いた外の金は、全部特殊預金として預けさせられたのであります、其の特殊預金も現在では拘束されつつある所の實情でございます、承る所に依りますると、是等の特殊預金も、一般補償の中に含まれて打切られるかの如き風説を聞くのでありますが、此の點に對する御當局の御對策を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=10
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011・服部岩吉
○服部政府委員 結婚の費用を何とか生活保護法に規定せぬかと云ふ重ねての御尋ねであります、此の生活保護法は、お互ひの生活の最低を保障する所の法案でありまして、結婚の費用等に參りますと、其の生活の保護を受ける立場の人は、自然其の人の生活の内面に於て此の保護を受けることになりますので、結婚式其のものの費用に對しては、特に生活保護法に屬する費用の一部を持つて參りまして之に充てると云ふことは、只今の所ではどうも御意に副ひ兼ねる次第であります、唯結婚式と云ふものを、市或は町村其の他の社會事業的な團體が行ふ場合に於きましては、斯う云ふ費用からも一部事務的の費用を補助し得られるやうなことが出來るのぢやないかと思ひます、殊に社會施設の團體が斯う云ふ面に於て世話をせられる場合には、當然其の團體に對して、事務的な補助の内容の中に織込まれて、是が與へられるやうになつて行くのぢやないか、斯樣に考へて居りますから御諒承を願ひたいと思ひます
尚ほ企業整備に伴ひまする對策でございまするが、既に戰爭も終りました今日に於きまして、戰爭遂行に因ります爲の企業整備に因る犧牲者に對しましては、御趣旨の點洵に御同感に堪へないのであります、併し其の具體的な策に至りましては、是は商工省、大藏省の所管になりますので、其の方の面から御答辯をして戴くことに致しまぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=11
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012・福田赳夫
○福田政府委員 企業整備の特殊預金になつて居りますものの措置に付きまして申上げます、現在企業整備の關係の特殊預金は、總額三、四十億と記憶して居ります、是は御承知の通り昨年十一月二十四日に聯合軍から指令がありまして、他の一般の特殊預金と同樣に一切其の支拂ひを差止められた譯であります、然るに其の後關係方面と打合せを致しまして、其の結果六月中旬に至りまして、其の中一萬圓以内の額を限りまして、民生安定竝に戰災家屋復舊と云ふ限度に於きまして、是が解除を認められることになつたのでございます、さうして其の一萬圓以内の金額はどう致しますかと云ふと、一般の封鎖預金の中に拂込まれる、さうして一般の封鎖預金の中に拂込まれました封鎖預金を、封鎖預金の所有者が只今申上げました民生安定又は戰災家屋の復舊に充當すると云ふ個々具體の場合に於きまして、其の封鎖を解除すると云ふ措置に相成つて居る譯であります、今後色々預金等の措置があるのでありますが、其の際に於きまは、此の特殊預金の問題に付きましても格段の措置を關係方面と打合せたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=12
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013・川野芳滿
○川野委員 企業整備者が國策に順應致しまして、國家の命令の儘に祖先傳來の家業を抛つて、國が命ずる方面に働いたことは、只今私が申した通りでありまして、斯かる方々の唯一の命の綱は、此の特殊預金であるのであります、只今の御説明に依りますと、一萬圓までは特殊預金の支拂が出來るやうな便法も出來たと云ふ御説明でありましたが、併し元の職業に歸るのに、一萬圓位の金では歸られないと云ふことは、是は私が申上げるまでもないことであるのであります、是非此の企業整備者に限つては特別の便法を講ぜられまして、さうして少くとも戰災者同樣なる程度の御取扱を願ひたいと考へるのであります、此の點に付きましては、關係方面との折衝に一段の御努力を御願ひする次第であります
次に最後に御尋ね申上げますことは、國民をして如何にして正業に就かしむるかと云ふ問題でございます、今日我が國の状態を眺めて見ますと、樂な商賣を見付けよう、樂をして暮さう、樂をして金を儲けようと云ふ、此の思想に國民の大多數は襲はれつつある状態であると私は思ふのであります、闇市場に參つて見ましても、殆ど闇商人は若い方々であります、勞働の出來る方々であります、從來はお婆さん、お爺さんがやつて居られるやうな仕事を、總て現在では若い者がやつて居ると云ふ實情でございます、又先般委員會に於て問題になりました闇の女にしましても、色々な事情もございませうが、半數が女學校卒業生以上である、さうして無職であると云ふやうな状態から考へますると、是れ亦樂な仕事をして金を儲けようと云ふ、腐つた思想の反映ではなからうかと私は思ふのであります又先般東京都が三十萬の失業者を豫想致しまして、八十萬戸の調査を行ひました所、就職希望者は僅か一萬四千人であつたと云ふことであります、其の一萬四千人の半分は知識層でございまして、所謂事務的な仕事を御希望に相成つたと云ふことを、新聞紙上で拜見致したのであります、斯う云ふ點から考へましても、現在の國民と云ふものは、樂な仕事をしよう、樂をして暮さうと云ふ氣運が漲つて居ると私は思ふのであります、兎も角も生活保護法案は劃期的な法案と致しまして、私などは滿腔の賛意を持つて居るのでありまするが、唯濫救の點が惰眠者を拵へはしないかと云ふことに、私は非常な心配を持つて居るものであります、然るに現在の我が國の状態はどうでありまするか、數百萬の陸海空の軍隊は既に解消され、幕末以來百餘年に構築し來つた所の防備も完全に撤去され、四大財閥初め十數の大軍需工場も、或は解體或は凍結の運命に遇つて居ります又多くの軍需會社は、戰災の爲に燒かれ、殘る僅かの工場は平和産業の工場として殘されつつあり、多くの工場は支那或は海外に撤去されんと致して居ります、又近くは財産税の徴收もあり、さう云ふ點から考へますると、今後我が國は如何なる状態に置かれるでありませう、半町乃至一、二反の土地を持つて居る所の貧乏な農家と、或は中小業者と、勤勞者が殘る我が國に相成るかと考へます、貧乏人同士の日本に相成るかと私は考へます、斯う云ふ日本に勤勞精神がなくて、果して再建日本が出來るかどうかと云ふことを考へますと、私は慄然たらざるを得ないのであります、官廳方面を見ましても斯かる時に半どん制の實施がある、農民は朝早くから夜遲くまで畠で働いて居るのに、官廳が半どん制を實施して居ると云ふやうな實情は、何たる悲しいことでありませうか、私は今後の日本と云ふものは勤勞なくしては再建出來ない、勤勞意欲を全國民に滲透させると云ふことが、今日我が國に取つて最も緊急な問題ではなからうかと私は考へるのでありますが故に、宜しく政府は音頭を取られまして、勤勞意欲向上を目的とする所の一大精神運動を起させる用意はないかと云ふ點を御伺ひ致したいのであります、尚ほ勤勞意欲向上目的の爲め、中堅青年の指導者を養成する爲に、國立の訓練所を作つて指導者を養成致しまして、全國民に勤勞意欲の精神を植付けられる御意思はないかと云ふ點を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=13
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014・河合良成
○河合國務大臣 只今の川野さんの御質問に御答へ致します、丁度私今途中で入つて參りましたので、十分御質問の御要旨を拜聽出來なかつたことを遺憾と致しますけれども、大體の御質問の要旨は只今關係の者から聽きましたから、それに基いて御答へ致します、申すまでもなく日本民族は非常に働く國民でありまして、此の馬の背中のやうな日本の國に、建國以來何千年斯うやつて一生懸命にやつて居ります、例へば農耕地にしましても、只今六百萬町歩の農耕地の中の百何十萬町歩と云ふものは、明治維新の初め以來やつと耕やされたものであつて、五百萬町歩と云ふものは元の古い時代からずつと耕やして居る地面であります、其の位日本民族は昔から狹くて條件の惡い所で一生懸命やつて、此の大きな人口を抱擁して居る民族であります、其の特質は皆さんも御承知の通りであります、唯不幸にして此の終戰と申しますか敗戰と申しますか、是はもう日本歴史にもない初めてのことでありまして、殊に色々な産業上の變革が起り、又社會上の變革が起り、さうしてそこに食糧不足のやうな非常な難問題が併發しましたので、國民は或る程度まで途方に迷つた、惡く言ひますれば虚脱状態になつたと云ふ状態が起きて居るのではないか、是は物の本體ではありませぬ、暫定的に進む一つの經過時代だと私共は見て居ります、是は追々變つて來ます、又變らなくちやならぬ、御承知の通り、日支事變前には非常な低賃金を以て世界の市場へ進出した、所謂「ソシヤル・ダンピング」のやうな問題も起しまして、世界の注目と或る程度の批判を集中したやうなことさへある、此の「ソシヤル・ダンピング」の是非は問ひませぬ、問ひませぬが、勞働者擧つて非常に勤勉にやつた、日本國擧げて勤勞を一生懸命やつて居つたと云ふことは顯著な事實であります、どうしても日本民族本來の勤勉性に戻さなくてはならぬ、今御話の勤勞意欲向上の精神運動、是はどうしても起さなくてはならぬ、斯う云ふ線に沿うて大きな國策を打樹てなければならぬ點は固よりのことであります、先程から私外國の新聞記者と今まで對談をして參つたのですが、其の時にも私は申した、日本には蛸配當と云ふ言葉がある、蛸と云ふものは飢えれば自分の足を喰ふ、今日の日本の産業の状態に於て蛸配當をさしてはいかぬ、日本は言ふまでもなく今は物が足らぬのだ、物をどうしても充足させなくてはならぬ、日本にある少い物を蛸が手足を食ふやうに食つてはいかぬのだ、どうしても「ウエージ・バンド」と申しますか、勤勞者に分ける、又國民全體が生活をする本自體を殖さなければいかぬ、古い經濟學説に「ウエージ・バンド・セオリー」と云ふものがある、日本の現状に於て、兎も角も國に物を殖さなければならぬ、物の生産を殖さなければならぬ、又國の物資を殖さなければならぬ、是が正しく我々の目標である、總て國民は此の點に向つてやつて欲しい、さうすれば自然皆に分ける分量が非常に多くなる、勿論分配の問題は重大です、今までの勞働問題などの趨勢を見ますると、此の半箇年間の勞働問題は多くは物の分配にある、殊に物價の昂騰に賃金が伴はなかつた、是は「インフレーション」の増進其の他食糧不足と云ふことで、已むを得ぬことでありますが、それに向つて賃金の平均がそれに追付くと云ふことが、今まで約六箇月間を見渡しました勞働問題の重點でありました、是は已むを得ぬ、併しながらどうやら物價も安定したやうな形であります、食糧問題も段々落付いて來るとなると、勞働問題の性格も自ら異なつて來る、是からは失業問題が中心になる、勞働調整法其の他に對する勞働者の議論もありますけれども、是は實質的には私はないと思ひます、是は主として誤解です、ああ云ふ問題に付て勞働爭議が根本的に起る程の問題の内容を持ちませぬ、實質的には、一面勞働者壓迫も資本家擁護もそんな重要な問題ではない、勞働者其の他の代表の民間から組立てた法案でありまして、決してあれは政府が作つた案ではないと云ふやうなことで、是は誤解であらうが、併しながら失業問題を前に控へて居る此の「アン・エンプロイメント」の問題が非常に重大である、退職手當或は失業の機會を生むと云ふことに對する勞働問題の見透しは持つて居ります、併しながら兎も角も賃金が遲れたから及ぶと云ふ問題は大體一巡した形でありまして、今は其の點に於ては大體の均衡を得た、勿論是で生活は十分だと云ふのではない、元々日本には物が足らぬのです、是は此の間も申した如く、一枚の蒲團を引張り合つて着て居るやうな状態でありますから、是で滿足だと云ふことは言へませぬが、社會全體の賃金問題は安定の域に達した、併し足らぬと云ふのは、何と言つても一枚の蒲團を引張り合つて着て居ると云ふやうなことから、どうしても「ウエージ・バンド」と云ふ問題が中心になる、それには御承知の通り全く生産意欲と云ふことが中心であります、政府も勿論其の線に沿うて行きまするし、又生活保護法にしましても、失業對策にしましても、總て其の點を重點に考へて行きます、生活保護法に依つて三十億と云ふ金を出します、其の中の三億の如きは、先日も申上げて居る通りに、之を十億の金に轉換して、庶民金融金庫を通じて生業資金として生業扶助に出すと云ふやうな點も、全く生業扶助を中心にしまして働くと云ふことを重點に考へます、其の他生活保護を致しますにしましても、補導所なり或は授産場なり或は共同作業場なり、或は動的の公共事業體制を整へまして、公共事業に從事するなり、或は本筋の公共事業としまして、治水とか農耕土木の方面に向けるなり、凡ゆる方法を以て生産意欲向上の面に向つてやつて行くことは疑ひのないことであります、唯問題をざつと並べて考へますれば、失業對策の方の面は、それが即ち直ちに生産向上と云ふ面に、結び付きは餘程直接になつて居りまするが、生活保護と云ふ觀點は、是は或る線以下で生活が維持出來ぬ人を拾ひ上げると云ふことが趣旨になつて居りますので、其の目標の置き方は違ひまするが、何れも一線上にある問題で、何と言ひますか、同じ己れの月を眺むると云ふ風に、結局總て生産と云ふ面に集中さして行くと云ふ考へで居りまするから、御論旨のやうなことに對しては全く同感であり、總て其の線に沿うてやりたいと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=14
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015・川野芳滿
○川野委員 勤勞意欲を目的とする所の國立訓練所を設置する意向はないかと云ふことを御尋ね致したのですが、其の御答辯がないやうでありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=15
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016・服部岩吉
○服部政府委員 御尋ねの如く、現在敗戰の現實と云ふものの中に、一般の國民が前途に希望を失つて居ると云ふことも大きな問題であると思ひます、隨て國民に、日本の再建、日本民族の再建と云ふことに對しまして一つの大きな希望を持たせると云ふことが、根本的な問題であらうと考へるのであります、どうも敗戰直後の今日に於ける、或は産業界、或は教育界、或は思想界、總ての點に於きましてまだ日本の再建、日本民族の發展と云ふ上に於ける大きな一つの理想と云ふものが樹立されて居ない、確立されて居ない、而して敗戰の此の苦しい現實の中に彷徨致して居るのでありますから、此の失神の状態にあり、虚脱されて居る所の國民を舊に復すると云ふ點に於きましては、先づ直接の問題と致しましては、只今大臣から御話になりましたやうに、食糧の問題、或は住の問題、或は衣の問題と云ふものを解決しなければならぬことは申すまでもないのでありますが、併し茲で日本の再建の大理想と云ふものを確立して、之を國民に滲透させる、或は國民教育の上に於き、或は中等學校、專門學校、大學の教育の上に、或は社會教育の上に於て、之を徹底的に民族再建の爲に教育をすると云ふことが根本問題であらうと思ふのであります、隨て此の中堅の層を成す者に付て特に國立青年訓練所と云ふものを設けて行つた方が宜いかどうかと云ふことは、尚ほ今後是等の問題に付きまして相當研究しなければならぬ問題であらうと思ひます、今日まで戰時中に色々訓練所を設けて戰爭完遂の爲に指導をされて來たのでありまするが、是等の問題が悉く成功したとも考へられない面がありますので、今後は其の行き方に相當衆智を集めて研究致しまして、さうして日本の特に青年、中堅層の者を國家再建の前途に役立たせると云ふことに付きましては、衆智を集めて一つ研究して、斯う云ふものを拵へて行く必要があると云ふことを痛感致して居りますが、今直ちに國立青年訓練所と云ふものを作つて、指導者を直ぐに今作ると云ふことは考へて居りませぬ、極めて重要なる問題でありまするが故に、御意見の程を十分に體して、各省とも相談し、又一般の人達の意見も聽いて、それ等の方針を確立して行くことが至當なことではないか、又それが極めて重要なことではないかと思ひますので、所信の一端を披瀝致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=16
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017・川野芳滿
○川野委員 まだ御聽きしたいこともありますが、與へられた時間が參りましたので、是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=17
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018・齊藤行藏
○齊藤委員長代理 では小池君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=18
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019・小池政恩
○小池(政)委員 時間の節約を圖りまして、數項目を前半と後半の二つに分けて御質問申上げたいと存じます
第一に、既に五月でありましたか、「マ」司令部の指令に基いて、社會救濟事業は政府自らの機關に依り直接之を行ひ、而して民間社會事業を助成し、或は補助金等を與へることが禁止せられて居るのであり、又憲法草案第八十五條に依り、宗教團體に公金の支出を禁止すると同時に、慈善博愛の事業の爲に公金の支出を禁じ、社會事業助成の途を絶つことになるのであります、隨て今後の社會事業は政府の強力なる施策に俟つのみとなりますが、斯業の前途に對する政府の御所見を伺ひたいのでございます
第二、現在の民間社會事業の施設は、所謂適格なるものは政府機關として認め、依託の形式を採つて運營せしめ、爾餘のものは禁止せず、放任せられることになるから、民間社會事業が政府機關として適格性を持たない限り、「パス」せざる殘存物となるが、之に對する政府の御所見を承はりたいのであります
第三、本法に依つて生活苦の人人を保護することは國の義務と責任であつて、保護を受ける者は生存の權利なりとし、其の關係を法律的に權利義務の觀念に依つて解釋することも首肯されますが、道徳的に隣保相助の精神、特に民生主義の精神、國民の共生共存共榮にあるのであるから、此の共生共存體制の上に立脚したる理念に基くものなることを強調することを適當と信じますが、政府の御所見は如何でございますか
第四、我が國に於て漏救、濫救の事例を立法の中に見出すならば、明治七年に施行せられたる恤救規則が漏救の代表的のものであり、昭和四年に施行せられたる救護法が濫救の弊害著しいものと言はれて居るのは御承知の通りであります、恤救規則は頗る制限的緊縮主義的なもので、最も多く救助したと云ふ時で、即ち救護法の施行せられる前で、人數に於て一萬數千人、金額で五、六十萬圓に過ぎなかつたのでありますから、漏救の多かつたことも了解せられるのであります、それで漏救者の中から飢餓に瀕する者、犯罪を敢てする者、自暴自棄に陷る者、自殺する者、日本より外に、外國に其の事例を見ない悲しむべき親子心中をする者などが出るのでありまして、漏救の弊害眞に恐るべきものがあるのであります、又「イギリス」の救貧法は世界の代表的なもので、且つ又御承知の如く最も古く、今から三百四十六年前に起したのでありますが、濫救の方面でも亦代表的のものであります、其の結果惰民助長と窮民化を招いたのであります、怠けて居つても救ひは得られると云ふ惰民助長と、貧乏人に見て貰ひたいと云ふ窮民化の弊害であります、其の氣分は即ち國民の頽廢を意味するもので、甚だ憂慮すべき事柄であります、特に我が國の現状を見る時、國民精神の弛緩を思ふ時、濫救の懸念大なるものがあるのであります、本法の運用を誤らんか、其の影響するところ頗る甚大でありますので、重ねて當局の御決意を御伺ひしたいと思ふのであります
第五、法案第四條の保護の種類五項目の外に、更に學費扶助の一項を加へられんことを希望するものでありますが、それは前日政府委員の御説明で不可能なることを諒承したのでありますが、現在生活の扶助を受ける家庭にあつても、今までの家の品格の上からと申上げれば御分りと思ひますが、子女を中等以上の上級學校に進めたい、又進めねばならぬが、學費がないと云ふ陳情に接するのでありますが、該當する家庭は甚だ多いと思ふのであります、此の點に付て政府は別に適當な處置、例へば貸費制と云ふやうな方法を御執りになる意思がありますか否やを御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=19
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020・河合良成
○河合國務大臣 只今の小池君からの御質問に御答へ致しますが、民間社會事業の前途に對しましては、憲法第八十五條で補助金を或る程度まで制限されまして、政府の監督下にあるものでなくては補助をしてはならぬと云ふことになりました、是はやはり國費を用ひる場合に、社會事業の補助等に名を籍りて、それを濫用すると云ふことがあつては困る、そこでどうしても是は政府が責任を以て監督して居る範圍位に止めなくてはいかぬのだと云ふ趣旨でありまして、政府の行動を憲法に於て制限して居ると云ふ風に解すべきものだと思ひます、隨て此の規定は、決して民間社會事業全體の發達を止めるやうな意圖は一つも持ちませぬ、却て民間社會事業と云ふものは、政府のやりまする社會事業と相竝んで行かなくてはならぬ性質のものであります、事柄は、例へば生活保護とか或は失業救濟とか云ふやうな大きな面に付きましては、是は政府自らの責任に於て、政府自らの手に於てやることが適當であります、所謂駄目を詰めて行くと云ふやうな意味に於ける所の社會事業は、どうしても是は民間でやつて貰ひたい、官の力と民の力と相俟つて、盛り上る民意を其の中に織込んで、社會救濟の目的を達して行かなければならぬことは言ふまでもないことであります、在來の民間社會事業に對する政府の政策は、熱意は持つて居りましたけれども、豫算其の他の面に於て不十分の點があつたと云ふことを私は認めて居るものであります、今後は斯う云ふ面に付きまして、積極的に何等かの方法を考へたいと云ふことを、實は自分で考へて居ります、御承知の通り、私共はまだ就任僅かのことでありまして、其の面までに手が廻らなかつたと云ふことを御諒承願ひたいと思ひます、それと日本の斯う云ふ變革期にも際したものでありますから、最も大きな、最も激しい問題に處する方法を先づ執つて居る次第であります、此の議會を過ぎますれば、大體一落着き落着きます、さう云ふ時に能く考へまして、斯う云ふ面に對する積極的方法を執りたいと考へて居る次第であります
尚ほもう一つの點は、此の生活保護法其の他は、憲法及び此の法律に基く政府の義務である、國民の權利である、權利義務關係と云ふことは、端的に言へば少し堅過ぎはせぬか、もう少し共生共存、或は共榮と云ふ面から、或は相互扶助と云ふ面から、斯う云ふ問題を考へるべきではないかと云ふやうな意味の御質問でありました、私は是は一つの物の表と裏と考へて居ります、それはどうしてもお互ひに生きて行かなければならぬ、又國家に一人の飢民あらしめてはならぬと云ふ一つの理想は、是は言ふまでもなく人道主義に基いたものであります、人道主義は社會生活であります、社會生活は共存共榮であります、其の爲にお互ひの我儘ばかりやつてはいかぬ、お互ひに權利を主張すると同時に、やはり自分の義務、責任を自覺して行く、自分の權利を主張すると同時に、他人の權利は、尊重して行くと云ふやうな所に、社會相互的の基礎があります、是は共存共榮であり、又共生共存であると云ふ風に私は見て居ります、之を法律的に申せば、是は國家の義務である、國民の權利でもある、之を實質的に申せば、人道主義的の共存共榮になる、是は物の表と裏とであります、一つのものであると私は考へて居ります、今まで日本國民には、お互ひに相互扶助的な考へは相當發達して居ります、御承知の通りに相當是はやつて來て居る、今日の戰後の状態に於きましても、色々の議論はあるにししても、兎も角も日本人のお互ひに他を助け合つて行くと云ふ考へは、やはり日本民族の特長としては推奬して宜い所である、現に國が此のやうな状態に於て秩序を保つて、此の苦難に拘らずやつて行くと云ふことは、其の爲であると私は考へて居ります、法律的に申せば、「デモクラシー」的のものが法律的に認められることは薄かつた、それをはつきりと法律的に認めて、國家存在の理由と云ふものを發揮しなければならぬと云ふ點が、今日法律となつて現はれて來たのであります、兩々相俟つてやつて行きたいと云ふ風に考へて居ります、其の他の點に付きましては政府委員から御答辯を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=20
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021・葛西嘉資
○葛西政府委員 學資の補助に付て、家の品格等から中等學校以上の學校へやらなければならぬ場合、其の費用を本法に依つて支出するのが適當ではないかと云ふ風な御意見と承つたのでありますが、本法と致しましては、國民生活の最低を保障すると云ふやうな考へ方から致しまして、義務教育であります國民學校程度の費用だけは本法に依つて支出するのでありますけれども、それ以上の中等學校以上の方へ出ます者に付きましては、御承知のやうに文部省所管に於きまする大日本育英會と云ふ風な制度があるのでございますが、是も範圍は御承知のやうに非常に狹うございます、極めて優秀な者と云ふやうなものでなければ該當しないやうになつて居るのでありますが、是れ以外に現在の日本と致しまして、家の品格から中等學校以上に出すのを公費を以て出すと云ふ風なことには、中々參らないのぢやないかと云ふ風に考へて居ります、本法に於きましては、國氏學校の關係だけは生活扶助の限度の中に含められて支出をする、それ以上は御承知のやうに本法では難かしいと云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=21
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022・小池政恩
○小池(政)委員 第六、地方に於ける要保護者の希望の一つに、耕作地の件があります、多くの子供を擁しながら、一坪の耕地を所有しないと云ふことは同情に値ひします、政府は軍關係の跡地又は官有地等を是等の人々に開放するの意思なきや、又農地制度の改革に當つて、耕地の再分割を行ひ、是等の人々にも配分するやう考慮せられたいと思ふが、御所見は如何でありますか
第七、民生委員の適任者を得る爲に、小區劃擔任地區別に、其の住民の選擧に委ねては如何でありますか、又民生委員は救助者を精神的に指導し、教化するの力あり、又友誼的誘導、自助的保護をなし得る資格あることを條件として人選すべきであると思ふが、如何でありますか、此の條件は、戰前「ドイツ」の「エルバヘルド」救貧制度が漏救、濫救共に矯正に成功したる原因であつたことを思ひますれば、是非徹底を期すべきであると思ふが、御所見は如何でありますか
第八、次に兒童の保護及び教導に付て御伺ひ致したい、曾て日本の法醫學の一權威者は、幾人かの殺人強盜と云ふが如き狂暴なる犯罪者の性情を調査した結果、彼等の多くが幼少の頃から家畜を虐待したり、無益の殺生に興味を持つたりするものであることを知つて、幼時に於ける家庭の躾が、宗教的情操の育成に重きを置き、慈悲仁愛の性情を馴致することを力説して居るのであります、又終戰後一外人は、日本人は子供を能く叱る、それは恰も敵に對するやうな激しいものである、外國人は子供を叱るが、打擲はせない、併し日本人がそれをやるのは、日本人の性情の殘虐性を示すものではないかと云ふやうな意味のことを言つて居るのを聞いたことがありまするが、是は生活苦の家庭に於てより多く子供の折檻等もあり得ると思ふのでありますが、徳性竝に宗教的情操を幼少の頃から育成して、眞の平和國民たらしめることは、世界に對する我が國の義務として尊重せなければならぬと思ふのであります、之に付て貧困の家庭及び兒童の保護教導に付て、政府の御對策を承りたいのであります
最後に、我が國再建の大計、國土計畫に付ては、政府は審議會を設置せられるとのことでありますが、御腹案が既におありのことと思ふが、あれば其の概要を承りたいのであります、將來の日本は、平和的、文化的方面に於てのみ斷えざる研鑽が行はれて行かねばならぬのでありまります、隨て國土計畫も、此の線に沿つてのみ可能であることは申すまでもありませぬ、而して我が國が幾つかの特色ある觀光區に分れて、其の全般が有機的に關聯して行く文化的な特色ある新觀光企業の如きは重要なる部門となることは疑ひのないことであると思ふのであります、是は我が國將來の經濟上、政治上、文化的、厚生的に重要なる意義を持つものであるから、此の際政府の御所見を御伺ひ致したいのであります、文化的平和日本建設の國是に合致し、民主主義の良き温床となる斯かる事業は、諸外國の對日感情を緩和せしめる良結果となり、又我が國を世界に紹介し、國の信用を伸張する要因ともなり、延いて外國資本の流入、特に米國へ援助と投資が期待されると思ふのであります、此の企業の性質から、設營及び經營共に失業の救濟、特に女子及び年少の良き働き場所ともなり、社會的福利厚生に役立つこととなると思ひます、此の點に關し政府の御所見を承りたいのであります、又此の種事業は當然國の企業、即ち國業として扱ふべきものと思ふが如何でありますか、尚ほ米國資本家等より此の種の件に關し非公式にても既に申入れありたるや否や、ありましたならば御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=22
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023・葛西嘉資
○葛西政府委員 私の方の所管の關係だけに付て一應申上げます、民生委員の選任に關しまして、小區域に分かちまして、擔當區域別に選擧を以てすることはどうであらうかと云ふ風な御意見でございましたか、實は民生委員の取扱ふ仕事の上から考へまして、民主的なやり方を致したいと云ふ譯で、色々考へたのでございます、今直ちに選擧と云ふことに致しますのも、事柄の性質上如何かと云ふ風に考へまして、先刻來申上げて居りますやうに、一應市町村區域に推薦委員會と云ふものを作りまして、此處で衆望の歸する人々を選んで戴くと云ふ風なことが、現在の段階に於ては一番民生委員として相應しい方が得られる方法ではないかと云ふやうに考へまして、一應斯樣に考へて居る次第でございます、今選擧に直ちに致すと云ふことは何如かと云ふ風に考へて居る次第でございます
尚ほ貧困者の家庭或は兒童保護などに付きまして、徳性竝に宗教的情操を養成するやうに考へて行くことは極めて必要であると云ふ風な御意見でございました、私共全く同感に考へて居ります、社會施設或は民生委員の方々が實際の取扱をする場合等に於きましては、御述べになりましたやうな御趣旨に基いてやつて參りたいと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=23
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024・河合良成
○河合國務大臣 只今耕地分與の問題に付て御尋ねがありました、是は今度の自作農の奬勵、其の他例の土地分割の問題に付きましては、政府でも最近法律案を出しましてやつて行く積りですが、是は只今の生活保護法とは直接の關係は持ちませぬ、丁度農林大臣がおいでですから、農林大臣から御説明があると思ひます、それで結局是は他の目的からやるのでありまして、生活保護法の面からと云ふ風に行きませぬので、やはり一定の金を出し、年賦でそれを償還してやつて行きますから、そこに勞力と、他に其の人が力を持たなくちやならぬ問題でありますから、此の面とは無關係であります、併しながら實質はそれで御趣旨のやうなことが相當助かつて行くと云ふことはあると私は思つて居ります
それから第二の問題の、國土計畫と國立公園との關係に付ての御質問でありますが、此の點に付きましても農林大臣から御説明があると思ひますが、大體に於ては兩方共協調してやつて行くと云ふ趣旨でやつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=24
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025・服部岩吉
○服部政府委員 國土計畫に對して御尋ねの問題は、大體斯う云ふ御趣旨ぢやないかと考へられるのです、國立公園と云ふものを一つの所謂國の企業として、外國なんかの資本も取入れて、それを國際觀光的に、日本の所謂樣相と云ふものを平和文化的事業として海外に紹介して、以て之を國際平和寄與の爲の一助としたらどうかと云ふやうな御趣旨のやうに考へて居りますが、更に厚生省と致しましては、國立公園に對しましては、只今の所國際觀光と云ふものと睨み合せまして、「タイアップ」して國立公園を全面的に擴げて、以て之を國際的に平和文化的に役立たせるやうにして行きたい、斯う云ふことを考へて居りますので、此の點を、御質問の趣旨に副ふかどうか分らぬのですが、御答へ申上げて置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=25
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026・和田博雄
○和田國務大臣 小池さん御質問に御答へ致します、開墾地に付きまして、それに復員者でありますとか、其の他失業者、生活の援護を必要とする者にそれ等の開墾地を與へまして、そこに營農をさせて行く、斯う云ふ意思はないか、斯う云ふことでございますが、開墾に付きましては、大體私共の方としては、是はやはり二本建に考へて行かなければならぬと思つて居ります、一つは今仰せになりましたやうに、事實上失業對策として考へます開墾でありますが、併しさう云ふことに付て我々の方として今色々計畫して居りますことは、何と言ひましても、さう云ふ方々は農業に事實餘り經驗もない人もあるでありませうし、それから經營上の資金がやはり要るのであります、開墾しまして直ぐ收穫が上つて來るばかりでもありませぬので、やはりそれには經營上の相當の資金を要りますし、又營農に付ての色々の指導なり何なりが旨く行きませぬと、入られた方は農業として今後立つて行きたいと云ふ固い決心を持つて入られましても、どうも實を結ばないと云ふことがありましては、折角やりました事柄が何にもならぬことになりますので、それ等の點を我々と致しましては考へまして、經營資金の點に付ても今大藏省と折衝致して居る譯でありますが、或る程度の經營資金が出せますやうに措置致しますと共に、やはり開拓地に入つてやられることに付ては、農業として經營なり何なりの指導が十分出來ますやうなことを考へで、開墾の事業をやつて行かうと致して居る譯であります、殊に軍關係の跡地の問題は、是は必ずしも先づ生活の援護を要する人々にと云ふ譯には參らないのであります、と申しますのは、さう云ふことも勿論考へますが、所に依りましては軍の跡地と云ふものは、戰爭中軍が部落の實際耕作して居る人達から取上げまして、それで軍有地になつたものが相當ある譯でありますから、やはり部落民の意向を十分尊重致しまして、さう云ふ人達に出來れば優先的に與へて行くと云ふことも考へて行かなければなりませぬので、一概に生活の援護を要する人達を優先すると云ふ譯には參り兼ねる事情があるのを御諒承を願ひたいと思ひます
それから農地制度の改革で可なり土地の均分化を行ひますが、是はやはり原則として、現在小作をして居る人に土地を與へて行く、而も其の小作は將來自作農となつて十分適正な經營を行つて行く資格もある人達と云ふことに考へて居りますので、今度の既耕地の再分割に當りまして、今現に耕作してない人達に土地の開放を行ふと云ふことは出來にくいと思ひます、さう云ふ方々は新たな耕地を作る開墾の方に行つて戴く、斯う云ふやうに農林省としては考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=26
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027・小池政恩
○小池(政)委員 只今の政府御當局の御説明で了承致しました、私の質問は之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=27
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028・齊藤行藏
○齊藤委員長代理 大島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=28
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029・大島定吉
○大島(定)委員 時間がありませぬので極く簡單に要點だけを申上げて御答へを得たいと思ひます、軍閥の犧牲となつた氣の毒な遺家族の方々が今恩給も扶助も停止となつて居ります今日、又我が國發展の先覺者として、遠く海外に於きまして粒々辛苦されて築き上げた富を、敗戰に依つて聯合國に沒收されて、本當に着のみ着の儘で歸つた方々に付きましては、過般各委員から御質問があつたやうでありますが、厚生大臣は、之に對しまして相當考慮を拂ひ、決して見殺しにはしない、斯樣な御答へがあつたやうに拜承したのでありますが、私は此の時此の際具體的に何か救濟の方法を御示しが戴けないか、譬へて言ひますならば、集團的に生業施設を設置すると云ふやうなこと、竝に住宅の斡旋、邸宅の開放、孤兒收容施設の整備とか、生業資金貸付、緊急生活給與金貸付の簡易化、特に私の御願ひしたいことは、生活補助は、民生委員を信頼致しまして、委員に於て急速に必要ありと認めたる場合は、即座に交付し得られるやうな劃期的方途を開いて戴きたいと御願ひするものでありますが、此の一點に付きまして厚生大臣の御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=29
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030・河合良成
○河合國務大臣 軍人の遺家族の扶助に付きまして司令部からの命令に依りまして停止しましたことは甚だ遺憾な次第であります、其の後此の點に付て數回色々の折衝も重ねましたが、是は只今の所では望みがありませぬ、甚だ殘念な次第であります、それから引揚者の問題に付きましては、只今御指摘の通り、敗戰の爲とは言ひながら何とも申上げやうのない遺憾なことでありまして、殊に海外で色色やつておいでになつた、お方は、非常に勤勞意欲もあるし、又實際の力もある、所が一方日本に於ける故郷などとの關係も絶えて居るお方が多いので、日本の社會に於ける各種の問題の中で是は最も弱點である、どうしても之に最も力を注いで救護の實を擧げなくちやならぬと云ふことは、政府も深く考へて居る次第であります、私共も時々「リユクサック」を擔いで子供などを御連れになつて居る有樣を見まして、如何にも同情に堪へぬ次第であります、此の問題に付きまして第一番にはやはり生活保護法でやつて參ります、是は先日も申しました通り、三億圓の金を庶民金庫に融通しまして、庶民金庫では之を十億に回轉する、さうして三十三萬所帶に之を貸付ける手筈を決めまして──勿論是は引揚者だけではありませぬ、戰災者も一般の失業で困つたお方も、廣く一般の生活保護を要するお方に出すのではありまするけれども、事實問題としまして引揚者が最も多からうと云ふことは、もう社會事實として疑ひないことであります、引揚者の總數を先づ四人家族と見まして八十萬所帶、それに全部行きますれば三十三萬世帶でありまするけれども、他へも參りまするから其處までは行きませぬが、兎も角も其の中の三割とか四割とか云ふ所は是で一應の救濟が出來るのぢやないか、併し是は生活資金ではありませぬ、先程も申します通りに、日本はどうしても増産と云ふ面に於て、又生産意欲向上と云ふ面に於て集中して行かなければなりませぬから、是は生業資金であります、何人かのお方が之に依つて共同にでもおやりになれば何とか出來はせぬか、勿論十分ではありませぬが、國力も考へなければならぬから此の程度に於て先づやつて行く積りで居ります、其の他の點に付きましては、一般生活保護法を適用しまして色々保護の實を擧げたいと云ふことを考へて居ります
第二の點は、是は申すまでもなく失業救濟の面であります、失業救濟の面に於きまして、只今六十億圓の使途に付て具體的の案を練つて居ります、都市の失業者の方も中々多いのであります、又都市へ引揚げておいでになつた方も中々多いのであります、地方と都市と相俟つて失業救濟の具體的實を擧げて行きたい、其の面に於ても引揚者の方で相當救濟をされる方が多からうと思ひます、住宅面に付きましては御同感でありますが、是は實は戰災復興院の所管になつて居りまして、私からは答辯を差控へることに致します
それから尚ほ生活保護料の交付などに付て、即座に之を渡すやうな便宜の方法を採れと云ふ御話でありましたが、是は御尤もでございまして、今までの役所のやり方に於きましては、色々の補助金の如きは非常に遲れて一年も一年半も掛つて行くやうな實態などもありますが、此のことは民生委員直接に先端に觸れまして、實際に即して居ることであります、さうして實際に市町村が支拂をやつて行くことになりますから、政府のやる仕事としましては、最も敏活に行くものであり、又行くことを期待して居りますが、御注意の點もありまするから、斯う云ふ點に對して、もつと迅速に臨機の方法を執るやうに、特に注意を用ひる積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=30
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031・大島定吉
○大島(定)委員 第二條の一、二號は實際に取扱ひまする民生委員の判斷に苦心が非常に伴ふと思ひますが、別に之を取締規則のやうな要項を示す必要はないでせうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=31
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032・葛西嘉資
○葛西政府委員 第二條の取扱は、實際認定を致しまするものは、第一線機關であります市町村長と云ふことになります、それから之を補助致しまする民生委員の意見が、實際の場合には非常に有力になると思ひます、併し働かせ方に依りますと、非常に御心配のやうな點があるのでありますから、取扱等に付きましては、其の實例等を擧げまして、地方其の他に能く示しまして間違ひのないやうにしたいと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=32
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033・大島定吉
○大島(定)委員 第七條の保護施設設置のことに付きまして、之を積極的に市町村に指導する意思があるかどうか、尚ほ第三十一條に保護施設の設置費用は其の二分の一を補助すると云ふことになつて居りますが、市町村が積極的に仕事を致しまする時は、市町村の負擔が非常に大きくなるのであります、斯う云つたことから致しまして、市町村に餘り金を掛けさせますと、勢ひ消極的に流れる虞があるのでありますが、其の費用の全額を國庫で負擔する御意思があるかどうか、此の二點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=33
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034・葛西嘉資
○葛西政府委員 第七條の施設に付きましては、現在のやうな状態でありますと、中々社會施設が不足して居るものでありまするから、市町村或は其の他の公益法人或は私人でも、やらうと云ふものに對しましては積極的に御援助を戴きたいと云ふ風に考へて居ります、補助の關係でございますが、第三十一條には二分の一と云ふことになつて居りまするが、此の補助の規定は實は大變複雜であるのでございまして、市町村が施設を設置致しました場合には、國が二分の一持ち、縣が四分の一持ち、市町村が四分の一と云ふことに相成ります、四分の一を市町村──、或は私人が設置致します場合にも四分の一を設置者に負擔して戴く、縣が四分の一持ち、國が二分の一補助すると云ふことに相成ります、是は設備の所有權が設置者に屬するやうになりますから、保護費の方は全部公費で出るやうになります、設備に付きましては所有權が其の方に歸屬することになりますから、若干の負擔も已むを得ないのではないかと云ふ風に考へて居る次第でございます、隨ひまして全額補助と云ふことは、只今の所は考へて居らない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=34
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035・大島定吉
○大島(定)委員 一昨日松谷さんからの御質問に、戰災孤兒を收容した其の後の死亡率は四割あると云ふやうな御話を承つて居りますが、帝都に於ける孤兒の數と收容箇所竝に收容後に於ける状況を、簡單で宜しうございますが、御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=35
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036・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今此處に詳しい數字を持つて居りませぬが、浮浪兒と申しますと、浮浪兒と云ふ言葉で分りますやうに、實は數がはつきり致さないのでございます、浮浪兒が何人居るかと申しましても、名前が示して居りますやうに、浮浪兒であるものでありますから、確實に何人居るかと云ふことは一寸申上げにくいと思ふのでありますが、唯時々浮浪兒の一齊調査を致して居りますので、其の調査に掛りました者の數は分つて居ります、隨ひまして其の數は、一つ資料としまして最近のものを御届けすることに致したいと考へて居ります、尚ほ是の保護の状態でございます、大體五月の末であつたと記憶致して居りますが、全國的に調査を致しました所が、浮浪兒が約二千五、六百あつたと思ひます、其の半分を保護施設に收容して居ると云ふ風な報告が參つて居ります、やはり逃出すものでありますから、是等はやはり其の施設が良く、何時かもどなたかの御意見にございましたやうに、親切に子供の住み好いやうな環境にしてやると云ふことが極めて必要だと思ふのであります、浮浪兒等でどれだけ死亡して居るかと云ふやうな統計は、まだ私共の方では實は存じませぬのでありますが、能く調べまして、東京等と限定致しますれば分るかと思ひますから、取調べまして是れ亦御届けすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=36
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037・大島定吉
○大島(定)委員 只今の御回答でもまだはつきりしないやうでありますが、健康状態に付きましては御調査の上御回答を願ひます、尚ほ結核療養所設置の問題は他の委員の方から質問があつたやうに承つて居りますが、是と同時に精神病患者の保護收容所を設置する希望を申上げて置きたいのであります、要は社會平和の生活と致しまして、當局は勿論でありますが、第一線の其の衝に當ります者の熱意と誠意如何に依つて其の效果が擧るものと私は存じますので、此の點に付きまして切に御當局の御考慮を煩はしたいと思ふのであります、時間も過ぎて居りますので、此の點又機會がありましたら質問致したいと思ひますが、是で打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=37
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038・齊藤行藏
○齊藤委員長代理 それでは本日は之を以て散會致します
午後零時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00719460803&spkNum=38
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