1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
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昭和二十一年八月六日(火曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 庄司一郎君
理事 小柳富太郎君 理事 原捨思君
理事 長谷川保君
小池政恩君 冨田ふさ君
中山たま君 竹内歌子君
有馬英二君 奧村又十郎君
澤田ひさ君 川越博君
松谷天光光君 東井三代次君
田中たつ君 川野芳滿君
出席政府委員
内務事務官 岩澤忠恭君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 櫛田光男君
文部事務官 日高第四郎君
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 勝俣稔君
厚生事務官 葛西嘉資君
醫療局長官 鹽田廣重君
厚生技官 阿部敏雄君
厚生事務官 加藤精一君
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本日の會議に付した議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=0
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001・庄司一郎
○庄司委員長 それでは是から會議を開きます、最初内務省の國土局長岩澤政府委員より御答辯がございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=1
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002・岩澤忠恭
○岩澤政府委員 先般國土計畫審議會に付ての御尋ねでありましたから、一應私共が現在抱いて居る腹案に付て御答へを致したいと思ひます
國土計畫審議會の官制は只今法制局と協議中でありますが、腹案と致しましては、國土計畫は國家建設の基本を成すものでありますから、之を綜合的に審議して、又強力に推進する爲に、此の審議會を内閣に設置することにして居ります、併し其の實務は、從來國土計畫の計畫作成に當つて居りました内務省に於て之を強力に推進して行きたいと考へて居るのであります、尚ほ同審議會には、委員と致しまして關係各省の十分なる協力を期待すると共に、議會關係竝に民間學識經驗者を委員に御願ひ致しまして、其の總意を十分に活力して、此の審議會を運用して行きたいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=2
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003・小池政恩
○小池(政)委員 只今の國土局長の御説明を承りましたが、もう少し内容を御話し願ひたいと思ひますが、現在の状態は其の程度でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=3
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004・岩澤忠恭
○岩澤政府委員 其の程度であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=4
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005・庄司一郎
○庄司委員長 小池さんには其の程度に御諒承願ひまして、次は澤田さん発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=5
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006・澤田ひさ
○澤田委員 傷痍軍人の手當の問題でございますが、此の生活保護法に依りまして、都會では一日一人三圓六十錢、即ち月百八圓と云ふ救護の手を伸ばされて居るのでございますが、傷痍軍人の手當の額を一寸眺めて見ますと、今までは脚を片方切斷された方は一年に千八百十八圓の手當を戴いて居りましたのに、今年の二月から九百圓となつてしまつたと云ふことでございます、さうしますと月割にすると七十何圓となりまして先づ身體は別にどうと云ふことはない、唯失業したとか、或は生活に窮したと云ふ方には月百八圓の救護をしながら、此の肝腎の戰爭でと云ふと、今日はどうかと思ひますけれども、兎にも角にも國家の爲に片脚を取られ不具者となつて暮される方に、此の生活保護法よりも下の扶助料で行かれると云ふことは、私はどうも不公平だと思ふのでございます、是は此の生活保護法に依つて何とかならないものでございませうか、一寸御伺ひをする次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=6
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007・葛西嘉資
○葛西政府委員 傷痍軍人の方々に對しまして扶助料が引下げられまして、生活困難になると云ふやうな場合に於きましては、生活の必要な限度まで生活保護法に依つて經費を支出することは出來るのでございます、隨ひまして今御述べになりましたやうに、生活困窮者の生活保護法の對象と傷痍軍人と比べまして、傷痍軍人の方が低いと云ふやうなことはないのでございます、具體的に申しますと、必要な額から戴きまする扶助料は差引きますけれども、必要な額だけは、扶助料で足りませぬ部分は生活保護法の方で支出を致しまして、言葉を換へて申しますれば、現に生活に困難な一般國民同樣に傷痍軍人の方も保護を受けられると云ふことになる譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=7
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008・澤田ひさ
○澤田委員 只今の御説明で能く分りましたが、それでは脊髓を病んで自分の身體が不自由で、獨り身の自由の利かない者は、世話人が要るのでございますが、此の點も此の生活保護法に依つて政府は保護されるのでございますか、もう一度其の點を御伺ひ申します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=8
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009・葛西嘉資
○葛西政府委員 非常に重度の傷痍軍人でありまして、どうしても世話をする人が必要だと云ふ風なことでありますれば、保護法の方で或る程度支出が出來るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=9
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010・澤田ひさ
○澤田委員 能く分りましてございます、次の問題に付て伺ひます、私考へますると云ふと、日本の婦人の問題でございますが、どうも日本の女と申しますものは、諸外國の婦人に比べますと、一寸年を取りますと迚も體格が衰へまして五十、五十五となりますと、身體はまめでありましても、其の體力と云ふものに抵抗がございませぬので、是と云ふ十分な働きが出來ないと云ふのが、現在の日本の中年の婦人の状態でございます、是は何が原因かと私調べて見ました時に、勿論諸外國と比べますと、氣候、風土或は食物、衣服の問題に依つて體格が劣る點もございますけれども、第一番に其の身體を弱らせます原因と云ふものは、日本の中産階級以下の婦人は産前産後が餘りに不養生過ぎた關係上、斯樣になつたのではないかと考へるのでございます、あなた方男の方は御存じないでせうけれども、此の中産階級以下の女の人は二人三人とお産をしますと、手がございませぬので、無理であると云ふことは承知しながらも、お産を致しまして一週間經ちますと、輕い仕事位はしまして、二週間經ちますならば殆ど一人前になつたやうな氣になりまして、家事のことを切廻すのでございます、此の産後の不食生と云ふことは、實際婦人の身體を削るやうなものでございまして、其の當時一日働きましたことが、最後は一年、二年と身體を早目に弱らす所の原因になるのでごいます、斯う云ふ階級の人々は其の當時から非常に身體が弱りまして、一寸四十の坂を越えますと先づ血の道、婦人病と申しましてあちらが痛い、こちらが痛い、常に人さんに分らない苦痛を味はつて居りまして、此の暑いのに灸を据えたり、膏藥を貽つたり、懷爐を入れたり致しまして、痛い所の急場凌ぎをしながらも、まだ是と云ふ徹底した養生をせず致しまして、家事の爲に非常に努力して居ると云ふのが、現在の中産階級以下の中年の婦人なのでございます、斯うなりました婦人を直さうとしても、是はもう出來ないのでございますが、今後若い主婦を私達位の年になりまして斯樣な苦しい所の立場にならせたくないと考へますので、何とか厚生事業の方法をあの母子保護法の名に於てもう少し手を伸ばして戴きたいと考へるのでございます、之に付きまして「ドイツ」には有名な「ムッター・ハウス」、母の家と云ふものがございます、是は産前一箇月の間勞働婦人或は職業婦人、中産階級以下の女を悉く收容致しまして、さうして産後の三箇月間此處に樂々と養生させます、其の母の家の事業としましては、牧場を經營致しまして、山羊の乳を與へるとか或は牛乳などを與へまして、お産をしない前よりもお産をして養生した後の方がぐつと丈夫になつて我が家に歸り、元の仕事に就かれると云ふのが、「ドイツ」の状態でございます、「ドイツ」は完全な敗戰に痛めつけられましても、是れ程の母子を保護する所の施設が出來て居ります、日本も斯う云ふ風に、婦人と申しまするものは母でありますと同時に、子供の教育者でございますので、完全なる體格の母が其の子女を教育致しますならば、必ずや現在よりも日本の教育の結果が現はれはしないかと考へますが、斯樣な母子を保護せられる所の施設をされる厚生事業を行ふ御意見はありますか否かと云ふことを、一度御尋ね致したいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=10
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011・服部岩吉
○服部政府委員 澤田さんの御尋ねに對しまして御答へ致します、只今婦人の産前産後の保養の問題でありますが、御説の通り中産階級と申しますか、大體一般の日本婦人は早老であり、老衰の缺陷が割合に多いことは全く御説の通りでありまして、此の原因が、主として産後或は産前の養生の不十分、保養の不十分から來て居ることは疑ひのない所だと思ひます、殊に中産以下の、例へば農村の婦人でありますとか、或は又職場に働いて居られる所の婦人であるとか云ふ方々が、其の家庭の作業の關係上十分に産前産後の養生をする時間を持たないことは、我が國の産業の状態が斯くあらしめたものである、斯樣に考へて居ります、殊に農村の如きに於きましては、農繁期にお産をなされる方は、少々養生が足りなくても、其の作業の關係上野原へ出て仕事をなさるのであります、農村に於きましては御承知のやうに産後一週間も經ちますればもう平生の如くに田圃に出掛けて働いて居られる方もありますし、又三日も經てば、家庭の食事の如きも自分のもの位はやつて行くと云ふやうな關係にありまして、其の保養が足りない爲に、それが度重つて參りますと、遂に體が老衰致して早老になると云ふことは御説の通りであります、「ドイツ」の「ムッター・ハウス」のやうな施設は全く理想的なものでありまして、我が國に於ても左樣な理想的な施設がありたいものだと考へて居りますが、假に「ムッター・ハウス」の如きものを設けましても、一方家庭に於ける所の仕事の調節或は方法と云ふものを、多少睨み合せてやらなければ十分の效果がない、殊にさう云ふ施設を設けましても、農村の婦人と云ふものはさう云ふ所で保養する所の機會が中々得られないと私は思ふのであります、今後斯う云ふ理想的な施設を望んで居る譯でありますが、今直ちに政府に於てさう云ふ施設を設けて、一般の婦人を保養せしめると云ふことは中中難かしいのでありますが、成べく斯う云ふものは一般的に奬勵致しまして、其の地方々々毎にさう云ふやうな施設を、或は市域は町村と云ふやうな機關を通じて設けさせることに奬勵して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=11
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012・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今政務次官から、一般的な妊産婦の産前産後の保護に付て御話がありましたが、生活保護法の方に於ても、只今政務次官が御話になりましたやうに妊産婦の保護の期間を一應考へて居るのでございます、隨て妊産婦が働かなければ生計が成立たないと云ふ風なことのないやうに、一應の標準としましては、産前七日産後二十一日位な所を働かなくても宜しい、妊産婦の保護の期間と云ふものを設けまして、此の法律に依つて生活の保護をすると云ふことになつて居ります、又色々お産の都合等でもう少し長く休養を要すると云ふ者に付ては、醫師、産婆等の指導に依つて其の期間を必要があれば長くすると云ふことも出來るやうに相成つて居ります、只今政務次官が御述べになりましたやうに、習慣があつたりなど致しまして、制度があつても中々利用されないと云ふ風なこともありますので、其の邊の所も今後さう云ふやうな制度を利用して、能く産前産後の母體を大事にして行くやうに、うんと指導して行かなければならぬではないかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=12
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013・澤田ひさ
○澤田委員 只今の御説明で、婦人の身體の爲に男の方でございますのに、政府の厚生行政の立場から御心掛け下さることに對しては、全婦人に代つて御禮を申上げる次第であります、それで此の法律案の第十一條の保護の種類の中に助産と云ふことがございますが、私は此の保護法の委員會の初めに風邪を引いて居りまして、一寸其の折に出席出來ませぬで説明を承りませぬでしたが、最初承るのには助産の費用が四十圓と思つて居りますが、少々後の方で上つたかと思ひますけれども、別に此の額が八十圓なり百圓になつたと云ふことを聞いて居りませぬ、今までの保護費から比較對照致しまして、六十圓ばかりになさつたのではないかと推定して居るのでありますけれども、此の物價の高いのに助産費が四十圓、六十圓でどうしてやつて行けませう、私此の點はもう少し厚生省として眼を開いて戴きまして、せめて保護を受けられる方々でも、お産をされます期間だけは、どうか普通の人のやうに或る程度までの養生もし、滋養物も攝れるやうに、現在は隨分高い物價でございますので、二百圓、三百圓の金で是が徹底出來るとは思はれませぬけれども、妊婦が何とか榮養の攝れるやうに、もう少し此の金を増して戴きたいと云ふことを希望するのでありますが、如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=13
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014・葛西嘉資
○葛西政府委員 一應助産だけの費用と致しましては、御指摘になりましたやうに、四十圓と云ふことで豫算を組んで居りますが、此の四十圓は國民健康保險の例に準じて定めたものでありまして、是は他の色々な豫算の單價と同じやうに、一應の基準でございます、隨ひまして必要已むを得ない場合には、之を超えることは毫も差支へないことになつて居ります
それから後段に御述べになりました、お産をしました後で色々生計が成立たない、或は滋養を攝らなければならぬと云ふ場合には、其の助産の費用の外に生計扶助なり、或は醫療が必要であれば醫療扶助なり、それ等を併給致しまして、立派にお産が完了して貰へるやうに、建前としてはなつて居ります、さう云ふ風に指導して參りたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=14
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015・澤田ひさ
○澤田委員 それでは只今の御説明に依つて、大體妊婦も生活保護法に依つて保護して戴けるものなりと、私保護を受けられまする階級の方々に代つて御禮申上げる次第でございます、それでは次の問題を早速御尋ね致すことに致します
是は大分重複致しまして、皆さんも仰しやつたことでございませうが、序に私ももう一度聽いて見たいと思ふのであります、それは戰災孤兒の問題でございます、戰災孤兒と云ふことに付きまして、東京都とか、或は神奈川縣とか皆さん仰しやいますけれども、或る方面の方の仰しやいますのには、全國の戰災孤兒又は浮浪兒と云ふものを、日本から一人もないやうに、政府或は其の土地の機關が之を保護せなければならない、此の人々の現在の動きを見ますると、實に末恐ろしいやうな人間がどれだけ居るか分らないのでございますので、先づ餘程指導の任に當る人は、子供と云ふことを中心に、愛の手とさうして締め手と、此の二つの手に依つて此の子供を保護せなければならないと某方面の方が仰しやつたのでございますが、聞く所に依りますと、東京都内、或は横濱市内に居りまする所の戰災孤兒は、政府或は市から注意をしようと思つて寄せ集めて見ますと、お風呂に一遍入つて、着物を着さして戴くと、皆逃げ出すと云ふ話でございますが、實際自由奔放と申しませうか、自分一人で子供ながらの勝手な世界に暮して居りましたものが、規律ある所へ入りますと、窮屈なので逃げ出すのも、是は當然だと考へますけれども、もう一つ之を實の母であるとか、或は實の父であるとか云ふ心持を以て此の子供を收容し、さうして外觀から見ました時に、實に放つたらかしである、汚い國であると諸外國の人間に思はれないやう、又内面的には、此の人々も日本の國民でございますので、大きくなりましたならば、再建日本の爲め挺身せられる純情なる青年に私は進めたいと考へるのでございますが、政府は此の方面に對して今後どう云ふ風な處置を御執りになるか、御説明を承りたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=15
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016・庄司一郎
○庄司委員長 澤田委員に申上げますが、只今のあなたの御質問のことは、二、三既に御質問もあり政府委員より御答辯もあられたやうであります、即ち重複になつて居るやうですから政府には此の際簡單に御答辯を願つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=16
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017・葛西嘉資
○葛西政府委員 御尤もな御話でございまして、委員の方々が非常に御心配になつて居りますことを大變有難く存ずる次第であります、簡單にと云ふことでございますから申上げますが、東京と横濱だけでなく、全國の浮浪兒の保護状況は、最近五月分のものが纒まりましたが、一應數字の上では、全國に浮浪兒と云ふものが約三千人ばかり居ると云ふことになつて居ります、是の約半數、千七百名ばかりのものを保護施設に收容して保護して居ると云ふ數字がございます、併し先日も申上げましたやうに、浮浪兒は、其の名の示すやうに數がはつきりしないのが浮浪兒の特性だとも思ふのでありまして、事實は是よりも多いのではないかと云ふやうに想像致して居ります、是が對策と致しましては、先づ浮浪兒を發見すると申しますか、見付けることが必要であるのであります、是には警察官或は社會事業家、方面委員の方々に御願ひします、さうして見付けて戴く譯であります、之を見付けますと、一定の所に集めまして、散髮をしてやるとか、或は風呂に入れてやるとか、着物を着せてやるとか致しまして、一時收容所に連れて行くやうな風に致して居ります、さうして一時收容所に參りますと、此の少年教護院の方へ行くことが適當な少年である、或は親があれば親許にやる方が適當である、或は又親がないと云ふことが分れば、それぞれの保護所へ入れることが必要であると云ふ風に、其處で仕分けを致しまして、それぞれ送致を致すのでございます、東京にも是等の保護施設が大分出來て居ります、東京だけでも浮浪兒の收容施設約三十一ばかりございます、此處にそれぞれ分けて收容を致すのでございます、唯何に致しましても、收容施設が全國的に見ますれば不足でありますので、本年度の三十億の豫算の中に、約六百萬圓ばかりの收容所擴充の經費を要求致してあるやうな次第でございます、收容所が出來ましても、御指摘のやうにどうも逃げ出したり何かする、其の原因は何處にあるかと申しますと、或は食糧が不足して居る、或は取扱者の一寸した不親切とでも指摘出來るやうな點から居れなくなる、或は環境が相應しくないと云ふやうなことが原因であらうかと思ふのであります、そこらの所を皆注意を致しまして、能く親切に取扱つて、食糧等も努力を致すことに依つて、或る程度まで擴充致しますれば立派にやつて行けるのではないか、併し尚ほ是からも此の浮浪兒の問題に付きましては、私共の方も十分改善致しまして、是は大事なことでありますので、十分やつて行きたいと思つて居ります
此の機會に一寸申上げたいと思ひますことは、關係方面からの注意もありまして、東京、横濱を中心にして、此の浮浪兒の問題に付て東京都廳、警視廳、神奈川縣廳を中心にして委員會のやうなものでも作つて、今申しましたやうな經過を辿つて保護して行くやうにしたらどうかと云ふ風な示唆がありまして、今關係方面と折衝して居ります、若干の豫算等も要るのではないかと思ひますが、さう云ふことが成立つて參りますれば、東京、横濱の浮浪兒と云ふやうなものが一應保護施設に收容されて、御心配のやうな點が段々なくなつて行くのではないか、之を全國の浮浪兒の多いやうな所にも推し擴めて參りたいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=17
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018・澤田ひさ
○澤田委員 浮浪兒のことに隨分政府として御苦勞戴きますことは感謝致す次第でございます、次にまだ大藏省の方はおいでになりませぬでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=18
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019・庄司一郎
○庄司委員長 只今呼びに行つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=19
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020・澤田ひさ
○澤田委員 それでは何時かの機會に御返事戴きますやうに、序でに茲で述べさせて戴きます、私或る經濟の權威者から承つたのでございますが、政府が軍需補償を打切りますと共に、罹災者の災害保險が特別預金となつて只今澤山据置いてございますが、是も一萬圓以上は凍結になるか、或は又相當の税金に依つて之を殆ど無にしてしまふと云ふことを、或る經濟通の方に伺つたのでございます、私は之を聽きまして、百二十萬の多數の罹災者が、今まで自分が努力して拵へました家から或は家財から悉くを燒いてしまひました其の後に、僅かに政府の此の災害保險に依つて五千圓の保證をして戴きましたが、御承知の通り物價は實際只今までの何十倍、何百倍となつて居るものがございまして、五千圓や六千圓の金では實際何一つ買ふことが出來なくなつたので、殆どの罹災者がまだ「バラック」の住宅すらも建てて居らないのでございます、さうして此の罹災者が一縷の望みと思つて喜んで居られますのは、少くとも三年か五年後に、此の災害保險で戴いた特殊預金が自由になりましたならば、細々なからも商賣の元手にしよう或は住宅復興の爲に使はうと、左樣に考へて居られましたのに、然るに厚生省の方に於ては、一番詰らない所の罹災者に對して、此の生活保護法の名に依つて救ふ愛の手を伸ばして置いて洵に喜んで居りますと云ふと、其の實行もまだ出來ない先に、今度は左の手に於て、罹災者が唯一の頼みと致しまする所の災害保險の特殊預金の頼みの綱を切つてしまふと云ふことが、同じ政府の手に依つて行はれると致しますならば、所謂現在の政府のやり方は、羊頭を掲げて狗肉を賣るの政策を行はれるのではないかと考へるのでございます、此の點災害特別預金を本當に無にしてしまふのかどうかと云ふことを、責任持つて大藏省の方々に御答辯が願ひたいのでございますけれども、只今御出席でございませぬのでどうぞ委員長から私の申上げたことを御告げ下さいまして、いらつしやつた其の御序の機會に此の御答辯が願ひたいのでございます、續いてもう一つ、厚生省の方々に御尋ねしたいことは何であるかと申しますと未亡人の問題なのでございます、未亡人の一番やれない階級の方々は、此の生活保護法の手を差伸べられて、先づ先づ細々ながらの生活をせられるでございませうけれども、此の生活保護を受けない所の未亡人で、而も生活に困られる階級が澤山あるのでございます、此の人々には何かの職業を與へてやつて戴きたい、只今まで御承知の未亡人になつた方々の中、手の空いた所の婦人は、學校の先生になるとか、或は「ミシン」の職業を教へるとか云つて、色々政府の囑託で補導せられたことでございますが、敗戰となりまして其の後は、ちつとも斯う云ふ方面の未亡人の方々に對する職業の手引とか、さう云ふやうな愛の手が伸べられて居りませぬので、救護を受けなくても宜いけれども、生活其のものは實に苦しい、何とかして相當な收入のある手内職でも出來ないかと考へて居られる未亡人が幾らあるか分らないのでございます、先づ東京での御話でございますけれども、倉永部隊長の未亡人が澤山の未亡人を寄せまして、さうして錢儲けがない、生活に困る、是ぢや仕方がないと云ふので、ここ四十日程前でございますが、澁谷の方で店を開かれるやうな相談を致されまして、今まで何も重い物を持たなかつた所の未亡人が、重たい荷物を持運び致されまして、露店を開業せられましたのを、私は聽きまして、實際涙なくして一同婦人の者は其の話は聽けなかつたと申したのでございますが、今まで相當高等な家庭生活をし、又中流以上の生活をして居られました方々も、此の終戰後の非常な物價の暴騰と持つて居りました所の錢の値打ちを對照致しますと、救護を受ける譯ではないけれども、之をなくしたらどうしよう、何とかして相當の收入が得たいと考へる未亡人が澤山ございますので、それに對して相當な職業の手引をして戴きたいと云ふことを私政府の方に要求する次第なのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=20
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021・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今未亡人の援護のことに付きまして御話がございましたが、勿論未亡人でありましても、生活困窮を致して居りまする者は、本法に依つて保護を致すのであります、併し今御指摘になりましたやうに、本法に依つて生活の保護を受けない未亡人の方でも、本法に依つて保護することがあり得るのでございます、それは此の法律の第六條でございまするが、「この法律による保護を受ける者の援護のために必要な施設」と云ふのはさう云ふ譯であります、と申しますのは、例へば今御指摘になりましたやうに、授産所等に通ふ婦人であつて、生計の方はどうにか自分でやつて居るが、住居がないと云ふやうなものに付きましては、此の援護施設と云ふやうな名目に於て、母子「ホーム」に收容することも出來る譯でございます、斯樣に致しまして、援護施設の母子「ホーム」を御承知のやうに今各府縣で大分造つて戴いて居ります、さうしてそれに、今御述べになりましたやうに、保育所を附設致しますとか、或は授産所或は簡易な内職等をするやうに致して居ります、中々手が廻らないので十分であると云ふことには、數が多いので行き兼ねて居りますけれども、出來るだけやつて參る積りでございます、尚ほ私の方の省でも、勤務局の方の關係に於きまして、共同作業場或は又別途の授産所と云ふやうな施設を、別の方面から地方の方に設置を補助金等を以て勸奬致して居るのであります、是等と、それからこつちの方の色々な母子「ホーム」に附設する施設と云ふやうなもので、相當數は地方に普及出來るのではないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=21
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022・澤田ひさ
○澤田委員 もつと色々御尋ねしたいことがございますけれども、あとの質問者の關係もございますので、私は是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=22
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023・庄司一郎
○庄司委員長 小柳委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=23
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024・小柳冨太郎
○小柳委員 私は厚生大臣と大藏省の理財局長の御出席を求めて居つたのでございますが、大藏省の……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=24
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025・庄司一郎
○庄司委員長 大藏省の理財局長が只今來ると云ふことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=25
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026・小柳冨太郎
○小柳委員 それで其の前に大臣に御尋ねを申上げたいことがあるのでございますが、本法の實際の運營其のものは、主として葛西局長が其の責任の御立場にあると考へますので、其の責任を持つた御立場で御答へを戴ければそれで滿足致します
私は本案の審議に參畫し得ましたことを非常に仕合せとし、且つ責任の重大を感じて居る一人でございます、本法案は是が施行されますと同時に、直ちに八百萬の要保護者大衆の台所まで直結すると云ふ意味から、他の法案とは違つた性格を持つものであり、又國民感情の上から申しますと、憲法改正案に並んでの重大法案である、私は斯樣な考へ方を持つて居るのであります、それで法案の起案から運營の面に至るまで一貫して流れる所の眞實性がなければなりませぬ、提案者たる當局に於かれても、又審議に當る我々も、眞に困つて居る者の更生の手引をしてやると云ふやうな愛情を以て此の法案の審議をやらなければならないのでありまして、特に厚生當局に於かれましては、今期議會中の最高重點案件として此の法案に對して格段の熱情を持たれまして、國民大衆の要望に副ひ、且つ其の成功を期せられんことを切望するものであります、先づ之に付きまして當局の御信念が御伺ひしたいのであります
次にもう一つ質問致して置きたいのは、大體是までの質問應答に依りまして、政府が本案を立案された其の趣旨、精神は略略了解致しましたが、私は果して今日の日本の社會情勢、今後豫想せられる所の社會情勢に對して國家の財政と睨み合はして見まする時に、完全に其の理想を達成し得られるかどうか、之を危惧するものであります、即ち本法案に對して本年度に於て三十二億圓と云ふ厖大なる豫算を計上されてありまするが、河合厚生大臣の言はれる、又政府當局に於て言明されて居られます所では、直接要保護者のみの數を六百五十萬人と豫定して居ると云ふやうな御話でございましたが、大體國民大衆は、是までの政府の發表に依りまして、此の六百五十萬人の人間は所謂生活扶助を受け得る者だ、斯う云ふ考へ方をして居ると思ふ、又今までの御答辯に依りましても、我々が感じますことは、六百五十萬人の者は生活扶助を受けるのだ、さうしますと一人當り一箇月に四十圓の生活扶助を致しますと、三十二億圓の金は此の生活扶助に全部使つてしまつて一文も殘らない、斯う云ふ計算になるのであります、さうしますと施設費、維持費、事務費と云ふものは一つも浮いて來ない、尤も御提示になりました書類を拜見致しますと、辻褄は合つて居りまするが、そこに國民大衆が解釋して居ることと隨分相違がありはしないか、斯う云ふことを考へるのであります、更に私の考へますることは、來年、再來年には、更に此の法案に依る所の豫算を増大豫想せなければならない社會情勢の變遷があらうと想像されるのでありますが、働くにも働けざる者、即ち傷痍者とか老人とか孤兒、即ち働く能力のない者を扶けると云ふ、其の消極面の豫算の支出は已むを得ないことでありまするが、葛西局長の御説明にもありましたやうに、働く能力があつて働く場所がない、斯う云つた者も、暫定的に本法を適用して救濟するのである、斯う云つたやうな御説でございましたが、さう云つた點から考へまして、國家の豫算と云ふものが益益増大するであらうと云ふことを私大變心配するものであります、さう云つた意味に於きましては、例へば大藏大臣の仰しやつた所謂生活扶助の基準と云ふものを、三十歳の未亡人が三人の幼兒を抱へ、更に六十歳の老人を抱へて居る者と見、之を基準にして居る、斯う云ふやうな御意嚮でございましたが、此の三十歳の未亡人にも六十歳の老人にも更に仕事を與へようと云ふ氣持で行つたならば、相當與へる方法がある、所謂生活扶助と云ふ面は、所謂最後の一線に食止めて、更に生業の方面に重點を置いて進むべきである、斯樣に考へるのであります、所が此の生業の面になりますると、度度御説明になりました所謂四百圓、四百圓と云ふ金は帶にも短かし襷にも短かし、四百圓の金を戴いて、果して之を生業資金として活用することが出來るかと云ふことを考へまする時に、此の四百圓の金は生活の足しに──我々をして言はしむるならば、所謂當座凌ぎの小遣ひに與へると云ふやうなことになつてしまふのぢやないか、さうしますると、自分の手で自分の咽喉を締めるやうな形になりまして、其の四百圓と云ふ金が國民の各階層に放出されると云ふことになりますと、其の金は結局不生産的な、所謂「インフレ」の助長を來すと云ふことになり、其の因を作ることになると考へるのであります、それで此の所謂生業資金と云ふ面に付ては、是はもう少し考慮を拂ふ必要があるのぢやないか、單に民生委員が申告を致しまして、それに四百圓の生業資金を與へると云ふやうなことになりますと、俺も我もと云ふやうなことになるのぢやないか、それからあの庶民金庫の三千圓の借入と此の生業資金との關係はどうなるのか、兩方合せて貫へるものかどうかと云ふことに付て御伺ひしたいのであります、言ひ換へますと、所謂生活を最後の一線で食止めると云ふ此の消極面に付ては、私は異議はございませぬ、併しながら生業資金と云ふものの出し方に付て一段の考慮を要するのぢやないか、同時に又其の額に於て、更に又今の庶民金庫から貸出される所の三千圓の貸金との關係、所謂二重に之を貰ふことが出來るかどうか、以上の點に付て葛西局長の御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=26
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027・服部岩吉
○服部政府委員 御尋ねの一部に付て私より御答辯致しまして、他の部分は葛西局長から答辯致します
生活保護法を設けましたことに付ての、政府の所信と申しますか信念でありますが、御承知の通り、敗戰後の日本と云ふものは、凡ゆる經濟方面に一大「シヨック」を來しまして是が爲に生活の困難に陷る者が必然的に多數に上つて參つたのであります、是等の人達の生活を國家が保障しないで、どうして日本の再建をなし遂げることが出來やう、働くに仕事がなく働かんとしても或は戰場に於て傷つき、或は又職場に於て負傷し、或は夫に死に別れた所の遺家族、或は戰災を被つて非常な災害を受けた所の人達、是等は自分が働かうとしても仕事がなく、働かうとしても働けない者が續出して居りますことは御承知の通りであります、是等の人達を國家が其の生活を保障せずに斷じて居られないのであります、即ち國の責任に於て是等の生活の困難な人を保障し、或は生業にありつかしめる所の基礎を作り、以て日本民族の發展と日本を再建する爲に本法を制定致したものであります、其の性質は消極的でありますが、一面他に於きまして積極的に生産の資金を貸付け、或は生業を扶助し、以て積極的に是等の人達の生活を根柢から復興したい、此の信念の下に此の法案を提出致したものでありますことを茲に強く申上げて置きたいと思ふのであります、他の點に付きましては葛西局長より答辯申上げることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=27
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028・庄司一郎
○庄司委員長 只今小柳さんから國の財政或は將來の計畫等に付て力強い御鞭撻を戴き、殊に唯徒らに生活を保護するだけでは足りない、それぞれ力に應じて仕事をして行く、不生産的ではいけないのではないか、自立自營さすやうに指導をして行かなければいかぬのではないかと云ふやうな、力強い御話を伺つたのでありますが、全く私共も其の通りに考へて居る次第でございます、過日來申上げましたやうに法律の規定の中にも斯樣な趣旨も二、三ある譯でありますし、又法律だけではありませぬで、此の法律を運用して參る時には、只今御述べになりましたやうな其の精神が必要であることは申すまでもないと思ひます、先日此の委員會で大臣からも、勤勞の精神と云ふ風な點に付て御話がありましたが、私共も此の大臣の御精神を體しまして、此の法律の運用には、今御述べになりましたやうに、唯徒食するのではないのだ、生産的に、而も仕事を與へて行くのだと云ふ風にやつて行くのだと云ふ風にやつて參りたいと心に固く覺悟して居る次第でございます
尚ほ從來の斯う云ふ風な生活の保護の關係の法令と今囘の此の制度とが大いに違ひます點は、前の色々な法令は殆ど活動力のない人が大部分對象であつたのであります、併し今度の法令になりますと、引揚者であるとか、或は復員の軍人であるとか云ふやうな譯で、働き得る人が非常に澤山對象になる譯であります、そこで此の人を働かすと云ふことなくしては此の法案は全く御話の通り死んでしまふと云ふ風に考へて居る次第でございます、私共も御説のやうな譯で、從來の社會事業を切換へなければいかぬのではないか、寧ろ之を假に申せば生産社會事業と云ふ風に申したらどうかと思つて、社會事業家の會合等に於きましては、生産社會事業と云ふやうなことを申して居る譯であります、生産と結び付かない社會事業と云ふものはもういかぬと云ふ風にまで考へて居る次第でございます、又今御話になりましたやうに、老人に致しましても、子供に致しましても、其の力に應じて僅かなことでも働くと云ふことをさせなければいかぬのではないかと云ふことを申して居りまして、地方廳或は私設の社會事業の方々にも御會ひしますと、局長が言はれますあの生産社會事業をやつて居りますよと云ふ御話を聽いて、實は大變喜んで居るやうな次第であります
それから第三に、四百圓と云ふ風な生業扶助では、帶に短かし襷に長しではないかと云ふ風な點を御指摘に相成りましたが、是は實は一應の基準であるのでありまして、實情に即しまして之を超過し、或はそんなに要らないと云ふ場合には減らすと云ふことでも宜しいと云ふ風な建前で、地方廳にも指示を致して居ります、又物價の騰貴等で此の金額が御説のやうに過小であると云ふ場合には、尚ほ私共としましても十分考へなければならぬ、研究を要するものであると云ふ風に考へて居ります、兎に角斯樣な生業の金は、一つに致しますと或は四百圓、或は三千圓と云ふ風なことでありますけれども、共同に之を一つ使つて貰ひたいと云ふことを地方廳にも指示を致して居ります、殊に引揚者の方々のやうに、地方等に於て向ふに居つた關係で可なり團結をして居られる方には、此の共同事業と云ふものは相當成功するのではないかと云ふ風に思つて居ります、又引揚者の方々からも左樣な御話を何遍も承つて居ります、それで一つ共同事業でやつて行かうと云ふ風に話をして居る譯でございます、それから三千圓と四百圓は併給可能であるかと云ふ御話でございましたが、表面から申しますと、是はそれぞれ別の立場でありますけれども、等しく生業扶助の金でありますから、併給は致さないと云ふ風に考へて居ります、併し三千圓の方は、御承知のやうに一世帶三千圓貸付けるやうになつて居ります、それから四百圓の生業扶助の方は、働き得る者一人と云ふことでありますから、世帶主が三千圓貰つて、其の家に働き得る者がもう一人居るやうな場合に於きましては、三千四百圓の支給をすると云ふ風なことは可能でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=28
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029・庄司一郎
○庄司委員長 小柳君に申上げますが、大藏省の理材局長が御都合で來られませぬで、銀行局長の福田政府委員が參られて居ります、尚ほ細かいことに關しましては説明員として藤本説明員が來られて居りますので、以上御紹介申上げて置きます、尚ほ此の際小柳委員に御諒解を御願ひして置きますが、先程澤田委員から、戰災保險關係特殊預金等一萬圓以上を戰災者の場合に於ても凍結する、同じ吉田内閣の下に於て、一方に於ては本法に依つて愛の保護の手を伸べる法律を提案され、一方に於ては氣の毒な戰災者諸君の特殊預金等を凍結される、斯樣なことは望ましくないことであると云ふやうな、強い意味に於ての御質問がございました、それに對して此の際大藏省當局より御答辯を煩はしたいと思ひますから、暫時御諒解を御願ひ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=29
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030・小柳冨太郎
○小柳委員 どうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=30
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031・福田赳夫
○福田政府委員 只今委員長より御話のありました點に付て御答辯申上げます、戰災者の特殊預金の問題に付てでございますが、此の特殊預金の中、大部分のものは保險金から出た特殊預金であります、保險金の支拂は、終戰直後までずつと約款に從つてやつて來たのでありますが、十月二十四日でありましたか、聯合軍から財政再建に關する指令と云ふものが出まして、此の際一切さう云ふ種類の支拂は取止めると云ふことに相成つた次第でございます、併しながら其の後特に此の戰災者關係に付きましては、さう云ふ措置が極めて不適當であると云ふ見解の下に關係方面と打合せを續けて居つたのでありますが、漸く一部の點に付きまして諒承を得たのであります、それで大體六月から戰災者が戰災家屋の復興を致すと云ふ場合及び民生安定の爲の資金と云ふ目的の爲ならば、一萬圓を限度として是が解除は差支へないと云ふ所まで諒承を得まして、今日それを實行致して居る次第であります、今回御話の凍結と云ふやうな問題もあるのでありまするが、是は國家財政産業總ての面に亙りまして、戰後の再建を致すと云ふ非常の措置であります、是は其の筋から立案されて居る問題でありまするが、其の立案の際に於きまして、戰災者の只今の一萬圓の制限等の撤廢に付ては十分考慮致したいと考へて居ります、一面に於きましては救助の手を伸べ、一面に於て打切りをすると云ふことは、反すると云ふやうな御話もありますが、國家財政、産業其の他各般の國家體制の建直しと云ふ面に應じまして執る手段の一環として、戰災者にも相當の負擔が掛ると云ふことは已むを得ない所と現在では考へられて居るのでありまするが、其の一面に於て體系的に系統的の組織立つた救ひの手と云ふものは、是は別途其の觀點から考へられなければならぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=31
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032・澤田ひさ
○澤田委員 只今の御答辯に關しまして伺ひたいのでございますが、戰災者の特殊預金は、御承知の通り全部保險金からなつた特殊預金でございますが、あの當時各罹災者は五千圓づつ現金で受取つたのでございますが、さうしますると、あと殘つて居るものは五千圓です、其の一萬圓が罹災者の費用になるのですから、あとは五千圓しか自由にならないと云ふことになるのでございますが、色々の事情で一萬圓以上引出した罹災者も多數あるのでございますが、それは或る方面から致しますると、一萬圓以上取つて居りまするものは返さなければならないと云ふことを私は聞いたのでございますが、それは本當でございますか、どうなのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=32
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033・福田赳夫
○福田政府委員 御答へ致します、其の一萬圓と申されます凍結の限度、是は只今私から申上ぐる譯には行かないのでありまするが、左樣に低い金額ではないのであります、それよりは相當多い金額で、凍結と云ひますか、打切と云ひますか、何でありますか、一萬圓程度の人は少しも御心配は要らぬ、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=33
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034・小柳冨太郎
○小柳委員 先程の御説明に依りまして、本法案が單に所謂最低生活の最後の線を食止めるのみでなく、非常に積極的な政策をやるのだ、斯う云つたやうな御意向を承りまして非常に心強く感じた譯でありますが、過日松谷委員から、本法案の訂正の必要はないか、斯う云つたやうな御話がありました時に、葛西局長だつたと思ひますが、其の必要を認めないと云ふ御話があつたのであります、冒頭に私申述べましたやうに、此の法案の運用と云ふものに付ては、政府と國民の代表であります我々と、本當に結合された精神が末端まで運營面に發揮されなければ出來ないと云ふ意味から、當局の方で考へて居ないと仰しやつても、我々の方で是非斯うして戴きたい、斯う云ふ點に付ては相當肚を打割つて考慮して戴きたい、さう云つた意味から、私は更に此の運營に付て御伺ひして見たいと思ひますことは、所謂生業扶助と云ふものと失業救濟と云ふものと、是は不離一體のものになつて來るのではないか、半面政府の公共事業と云ふ名目で六十億の厖大な豫算を組んで居るのですが、是は主として失業救濟が目的になつて居ると考へる譯なのであります、それと所謂生業扶助の豫算の運用と云ふものと關聯して研究して見る必要があるのではないか、其の前に一寸御伺ひして置きたいことは、生業扶助に關する豫算は大體どの位を御見込みになつて居られますか、相當厖大な額だと考へられまするが、此の生業扶助の意味で、更に失業救濟の意味も含めた所の積極的な一大社會政策の經綸本法案に集中せしめる、斯う云つたやうな大英斷を實は私熱望して居る次第であります、申上ぐるまでもなく敗戰の結果とは云ひながら、今日日本の世相洵に混沌紊亂、其の極點に達せんとして居るのでありますが、それは所謂國民經濟の痲痺状態から來る所の現象でありまして、何としても國民の生産意欲、就業意欲を振ひ起し、さうして之に付する施策を確立すると云ふことが刻下の急務であります、さう云つた意味から私は民生の振興と云ふやうな、所謂末端運營機關が民生委員と云ふことになつて居りますので、生活保護と云ふことは其の中の消極面を擔當するものであつて、民生振興に關する方面として之を運用して戴く、斯う云つたことが希望されるのであります、今日の社會行政面と云ふものは餘りに複雜多岐に亙りまして、所謂國民一人々々と云ふものは、自己の處世策に付きまして、相談する、所謂信頼して頼むべき相談相手を見付け出すに苦しむ、さうして終ひには匙を投げて居ると云ふやうな恰好であります、所謂失業對策と關聯した運用と云ふものは、不可缺な要件として私は取上げたいのであります、大臣も本會議でも述べられたやうに、所謂民生對策と失業對策と云ふものは、どうも中に線を引くことは困難である、斯う言つて居られた位でありまして、私は寧ろ此の法案の起案の出發點に於きまして、もつと積極的な、所謂一大社會政策的な構想に基いて、例の六十億の豫算の公共事業に運用される所の大部分は、本法に持つて來て、本法の所謂運營に之を包含する、更に今引揚援護局の事業の如きも、一院を設置してやつて居られる仕事としては極めて不徹底である、斯う云つた關係にも相當本法を適用する、更に引揚者、戰災者等に對する物資の配給の如きも、もつと一貫性を持たせて、政府が折角親心を示した以上は、是が末端まで普遍的に行くやうにしなければいけないのであります、今日の状態では、所謂聯合軍がやつて居る、更に民間諸團體も、戰災者團體とか或は引揚者團體とか云ふやうな──先日私商工省に御尋ね致しましたが、七十五萬人に對する厖大な政府の援護物資と云ふものを放出されて居られるのでありますが、是が一向末端まで行屆いて居ない、斯う云つたことも本法の幅を積極的に擴大して、其の事業内容に包含する、更に引揚者、戰災者などに對しまして、重勞働に堪へ得ざる者、さう云つた者に對して、漁業、室内工業手内職、美術工藝其の他輕勞働方面を指導し、斡旋する、或は企畫すると云ふやうなことも包含する、色々愚見を申述べますると際限がありませぬか、要するに、民生保護は失業救濟對策なり、斯う云つた理念に立つて此の法案をもつと積極化する、寧ろ今の大藏大臣が本會議で、所謂社會政策的な豫算と云ふものは二百億近くに上る、斯う云ふやうなことを言つて居られましたが、此の二百億近くの豫算の大半を、所謂民生振興と云ふ方面で強力な附帶機關を拵へて運營すると云ふやうなことが、大乘的な見地から見まする時に、是は國家の要請である斯樣に私は考へて居るものでありまするが、之に對する葛西局長の御所信を御伺ひしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=34
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035・庄司一郎
○庄司委員長 小柳さん、大藏省に對する御質問は此の際ございませぬですか、大藏省の政府委員はどうしても本省へ歸られなければならないさうでありますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=35
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036・小柳冨太郎
○小柳委員 それでは午後御伺ひすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=36
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037・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今小柳さんから失業救濟と本法にある生業扶助とは極めて密接なる關聯がある、寧ろ一つと見た方が適當ではないか、一つとして見て行くべきものではないかと云ふ意味の御意見であつたやうに拜聽したのであります、是は先般大臣も一つの線と云ふやうな言葉で御表現になりましたやうに、實は極めて關聯深いものであると云ふことを私共承知致して居る次第であります、失業者の中にも、御承知のやうに六十億の失業救濟に依つて救濟されるものもありますし、又そちらの方に入らない、どうしてもそちらの方で支へ切れない、而も生活に困ると云ふものがあります、其の失業者に付きましては、本法の生業扶助で行かなければならないことになる譯であります、私共地方に於きましても常に勤勞局の方面とは連絡を致して居ります
〔委員長退席、長谷川委員長代理着席〕
又第一線に於きましても、方面委員が民生委員と云ふことになりますか、其の民生委員は當然第一線の勤勞署に於て働いて居ります職業紹介連絡委員を兼ねる民生委員である以上は、當然職業紹介連絡委員になるのだと云ふやうな制度を打立てまして、是は地方廳に通牒致して居ります、又中央に於ても、地方に於ても、そんな風に密接に連絡をしてやつて參る積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=37
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038・小柳冨太郎
○小柳委員 其の職業紹介、失業救濟と云ふことが、私は今の厖大な政府の豫算を、單にどう云ふ構想に於て此の失業救濟をなさるかと云ふことを考へ合せまして、從來の例から見ますると、道路工事とか、或は最近の状態から考へますれば、清掃或は緑地工事、戰災復興の事業の一部分に當る所の土木事業などに依つて失業救濟をやると云ふやうなことも、相當政府の方では考へて居られるやうに見受ける、所が一部の土木事業に依つて救はれるものは、殆ど專門的な自由勞働者のみである、それで今日所謂引揚者、復員者等の中の大部分は、從來の概念に囚はれた失業對策と云ふものでは決して救はれない、要するに此の厖大な失業對策豫算と云ふものが本當に活きて來なければいけない、結局其の金が不生産的な支出に終ると云ふことになりますと、「インフレ」の助長を來すやうなことになりますので、此の失業對策と云ふ面に付ては、企業の援助と云ふ面を相當考へて戴かなければ出來ぬ、企業の指導斡旋と云ふやうなことになりますと、今局長が仰しやいました所の、民生委員が勤勞署と連絡を取つて失業對策の援助をする、さう云つたやうなものではいけないのでありまして、實際政府が支出する豫算を本當に合理的に活かすと云ふことになりますれば、失業者の代表者を集めて、さうして本當に盛上る民意に基いて、國家の將來と睨み合せた企業對策をやつて行くと云つたやうな點に着眼して戴きたいと考へるのであります、それで私案を申上げますと、中央と地方に民生對策中央委員會、地方委員會と云つたやうな強力な委員會を作り、其の中に生活保護部、失業對策部、金融部、物資部或は企業審査部と云ふやうなものを設けるのであります、さうして民間の、先程局長が仰しやいましたやうに、五百圓づつ生業資金を出しても、十人では五千圓、百人では五萬圓になる、それだけの豫算を以て何か團結した力で企業をやらせると云ふやうなことまで考へて居られるとするならば、此の委員會を活用して、政府は更に失業對策公共事業と云ふやうな意味で出さうとして居る此の豫算を大半此の方面に運用せしめる、さうして企業審査部などに於て、日本の對外貿易とか、或は日本の再建に合致した企業を一一取上げて、民間のさう云つたやうな團體の持つ資力が足らなければ其の方面に援助してやる、さうして民間の失業者を相當之に吸收せしめる、斯う云つたやうな實質的な政策を行ふ必要があると考へるのであります、是は末端的な問題のやうでありますが、時間がないやうでありますから、此の點に付て御意見を承りたいと同時に、民生委員のことに付て一寸一言御尋ね致したい、民生委員は此の場合大體十萬人と豫定して居られる、併しながら或はもつと要るぢやないか、二十萬人も要るぢやないか、斯う云ふやうな御話をなさつて居られましたが、私は正反對であります、民生委員はそんなに多く置く必要はない、現在日本の警官が全體で十萬程度であつて、此の間「アメリカ」の司令部の發表では、二萬八千人あつたら日本の治安維持には十分である、斯う云ふことを發表して居る、それから警官の仕事と此の民生委員の仕事と云ふものは、或る程度共通して居るのでありまして、所謂其の民生關係の專屬的な其の方面に「タッチ」すると云ふことになりますれば、私は此の警官の數程度で宜いのぢやないか、まあ全體で五萬人程度で宜いのぢやないか、斯う云ふやうに考へて居ります、それで手當の問題ですが、是は此の前どなたか御尋ねになりました時に、葛西局長は、從來の所謂名譽職としての立場を保持する、さう云つた觀念を保たしめると云ふ意味に於て、まあ其の位が妥當だと思ふと云ふことを言はれましたが、今日靴一足修繕致しましても百圓位取られるのであります、結局其の二百圓の手當では、實際動くにも動けないと云ふやうなことになるのぢやないか、結局所謂民生委員と云ふものを本當に働かせると云ふ意味に於て、人數は減らしても手當を増す、私の考へでは、どうしても年に五百圓の手當は當然出すべきだ、斯樣に考へて居りますが、是は是非實現して戴きたい、是非一つ政府の方でも考慮して戴きたい
それから茲に出て居ります此の民生委員令の案文なのですが、私が之に對して多少意見を持つて居りますことは、從來の方面委員は原則として民生委員になると云ふやうなことなのですが、私はさう云ふことは、地方々々の所謂推薦銓衡委員會なんかの慣例としてはそれで宜いかも知れませぬが、案としてそれを原則的に取扱ふと云ふことはどうかと思ふ、やはり新たな見地に立つて、最近では引揚者だけでも約一千萬人の人間が歸つて來て居る、それから又從來方面委員と云ふものは、三年も五年も既に方面委員をやつて居る者であつて、新しく海外から引揚げて來た人などの心情に付ては疎い點もあるし、又氣分的にも一致しない點もあると思ひますから、此の原則を撤廢して戴きたいと考へて居ります、さうしてやはり新たな見地に立つて選ぶ、選ぶと云ふことになれば、要するに此の銓衡委員で選ばせるに致しましても、私が申上げるやうに、やはり引揚者とか、或は復員者などの中からも選ぶやうになると思ひます、それから任期の三年、此の移り變りの速い今の時勢に同じ人が三年の任期と云ふのは長過ぎる、精々二年と、斯樣に考へて居ります、以上の點に付て當局の御所感を拜聽したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=38
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039・服部岩吉
○服部政府委員 只今御尋ねの失業對策事業と生活保護の關係でありますが、此の仕事は現在の生活樣相の上から見まして、其の内容に付ては一つの聯關を持つて居りますけれども、大臣が説明致して居られますやうに、茲には生活保護に依る生活費の給與と失業對策とは一つの線を引かれて居ります、隨ひまして本年度の失業救濟事業費六十億、是等の事業は大體經濟安定本部で、或は内務省關係、或は農林省關係、或は商工省關係、それぞれ各省に割當てられまして、食糧、衣料、住宅、石炭、或は交通等の生産増強方面の事業を行ふと同時に、それが失業者の救濟になつて行くやうに仕組を致されて居るのであります、所で各省に斯の如く分配を致しまして、さうして生産を促進させる所の事業を行ひ、此の事業に依つて今日の失業者が果して就職し、失業者を救濟し得られるかと云ふ點になりますと、洵に深憂に堪へないものがあります、是は御説の通りであります、主として斯う云ふ事業を行ひます場合に、失業者でない者が其の仕事に携はりまして、失業者である人が其の方面に就職の機會が極めて少いのぢやないか、折角の失業者を就職せしめようとする所の失業對策事業が其の目途を外れるやうなことがありましては洵にいかぬと思ふのであります、之に付きましては厚生省と致しましては、各省と十二分の連絡を取り、さうして其の事業に失業者をして就職せしめるやうな方途を構じて參りたい、私の只今の考へと致しましては、今日各府縣に設けられてありまする勤勞署でありますが、此の勤勞署の機構と云ふものが私は今の所まだ不十分であると思ひます、殊に斯うした大きな失業救濟事業を行ふ上に於きまして、現在の勤勞署の機構ではいけませぬ、もつと此の機構を擴充強化し、之に一つの機動性を持たせまして、さうして常に失業者其ものと能く連絡を取らしめる、是が一つの方法と、只今御説のやうな民生委員と云ふものを、或は地方で作り、或は中央で作りまして、是等民生委員會と其の勤勞署等々と連絡を取つて常に失業者の状態を「リスト」致して置きまして、其の「リスト」に依つて其の地方に起された事集に就職せしめるやうに、是等の勤勞署民生委員會と云ふものが常に連絡を取つて努力して行く、之に付きましては民生委員と云ふものに對しまして、もつと積極的な強い所の所謂委員を作り上げて行くと云ふことも考へて居る譯であります、斯樣に致しまして、續出します所の失業者を此の事業の中で就職救濟すると云ふ面に向つて行きたいと思ひます、只今の所に於きましては、經濟安定本部に依つてそれぞれ各省で生産に伴つて促進される事業を以て行はうと致して居る計畫でありますから、此の線と睨み合せて今日の失業者を就職せしめるやうに致して行きたい、斯樣に考へて居ります、其の他の點は他の政府委員より説明致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=39
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040・葛西嘉資
○葛西政府委員 民生委員のことに付て御尋ねがございましたので、其の點を御答へ申上げます、民生委員の數の點に付て、小柳さんは、寧ろ五萬人位に減らして、良いものを選んだら宜いと云ふ御意見のやうに拜聽致したのでありますが、私共と致しましては、對象を大雜把に八百萬と見まして、民生委員の取扱件數と云ふ問題でございますが、中々込入つた御世話をしなくちやならぬ、それから時々家へ行つて樣子を見てやらなければいかぬと云ふやうなことから、要援護者の家庭を民生委員が擔任致します場合には、餘り數が多くなりますと行渡らないと云ふ實は困つた點があるのであります、それで大體の民生委員の取扱の件數に付きましては、十五世帶乃至二十世帶を持つて戴くのが宜いのではないかと云ふ風に考へて居ります、さうなりますと八百萬を一應世帶に致しますれば、四人で割りますと約二百萬世帶で、一人で二十世帶を持つて戴くとすれば約十萬人と云ふことで、十萬人と云ふ數を一應の見當として出した次第でございます、二十萬と云ふことを申上げましたのは、大體町内會、部落會に一人位居つて戴く方が宜いではないかと云ふことになりますと約二十萬で、それで十萬乃至二十萬と云ふ所を押へた譯であります、現在は御承知のやうに七萬乃至八萬の方面委員でありますから、急に良い人が得られないのではないかと云ふ所で、一番下を押へて一應十萬と云ふことで豫算を組んだ譯でございます、唯出來れば私共は、區域を持たない民生委員も今度は置く豫定でありますから、もう少し良い人があれば増したいと云ふ希望を持つて居るやうな状態で、今申上げましたやうな意味で、數の點に付ては若干意見が違ふと申しますか、さう云ふ風に考へて居る譯であります
次に手當の問題でありますが、御承知のやうに、民生委員は名譽職と云ふことを本體と致しまして、是が有給の吏員と云ふことであると、兎角事務的になり、惡い意味の官僚的と申しますか、さう云ふやうな取扱になつて、斯う云ふ「カード」者の生活の御世話をするのには如何かと云ふ所で、今まで長い經驗を持つて居る民生委員に期待して居る譯であります、さうなりますと、是はどうしても名譽職と云ふことで、有給の吏員で行くのはいかぬのではないかと云ふやうに考へて居ります、唯小柳委員の御指摘のやうに、大都市等に於きましては、或は民生委員だけでは中々廻り切れぬと云ふ實情もあらうかと思ひまして、是も本委員會に於て申上げた所でありますが、大都市等では若干民生委員の御世話をする有給の職員を常置すると云ふやうなこともやりたいと考へて居る譯であります、併し民生委員は飽くまでも民間の有志からなつて戴きまして、さうして名譽職と云ふ建前でやる、併し御述べになりましたやうに、實費の辨償の點は、實は現在の所では約三十圓位しか出て居らぬのであります、それを今回平均二百圓と云ふことに致したのでありますが、小柳委員は年五百圓位の實費辨償をしたらどうかと云ふ御意見でありました、是は私共と致しましては、先程申上げましたやうに、實費辨償として、成べく民生委員に御迷惑を掛けるやうな風にはしたくないのでありますが、併し町村等に於きまする有給吏員との關係等も照し合せまして、飽くまでも名譽職と云ふことに反しない限度に於てやつて參りたい、平均でありますので、實際施行します場合には、そこに若干の「バラエテー」を持つてやつて行きたいと云ふ風に考へて居ります
第三に御指摘になりました點は勅令施行當時、切替への時に方面委員の職にある者を其の儘民生委員にすると云ふことは、寧ろいけないのではないかと云ふ、強い御意見であつたやうに拜聽致したのてあります、申すまでもなく方面委員を根本的に改めまして、民生委員にする譯でございますが、其の趣旨は御手許の民生委員令の要旨に書いてある通りでございます、隨て小柳委員の仰せになりましたやうに、是は此の際全部改選すると云ふのが本旨であることは申すまでもないことだと思ふのであります、併し方面委員は現在何百萬と云ふ要保護者を抱へて居る人であります、一刻も其の間に間隙があると、保護に遺憾の點がありはしないかと云ふことが非常に心配される譯であります、又最近では大都市關係に於きましては、大體方面委員を民生委員に變へると云ふやうな點から若干改選をしたと云ふやうな所もございます、それや是やを考へまして、一應法令の建前としては、原則としては其の儘民生委員になると云ふやうに致して居る譯でありますが、勿論原則でありますから、地方廳等に於て最近改選もないので、此の際やりたい、本旨に悖つて居るがやりたいと云ふやうなことになりました場合に於きましては、勿論改選をして戴くことは差支へない譯であります、現に地方廳とも打合せをして居りますと、例外の方で、一つ私の方は改選をしますからと云ふことを申して參つて居る府縣もある次第でございます
第四點は、民生委員の任期を三年とするのは少し長過ぎる、寧ろ二年にした方が宜しくないかと云ふ御意見であつたやうであります、民生委員には御承知のやうに生活上の細部に亘りまして、而もごちやごちやしたやうな仕事を色々やつて戴きますので、或る程度慣れて戴くと云ふことも又必須の要件であるのであります、訓練と申しますか、指導と申しますか、講習會も若干やるのでありますが、そんなにしてやつて居りますと、餘り年限が短くなりますと、是れ亦漸く仕事に慣れて戴いたやうな頃に又迭ると云ふやうなことになつてはいかぬからと云ふ心配もある譯であります、現在の方面委員令に於きましては、任期は四年と云ふことになつて居りますが、小柳委員御指摘のやうに、四年では長過ぎると云ふやうなことで、先般官民合せました方面委員制度改善協議會と云ふやうなものに諮りまして御相談を致した所が、先づ三年位が宜いのぢやないか、どうしても良い人は重任をして戴くと云ふやうなことであるから、三年位が宜いのではないかと云ふ御意見でありまして、今の所では一應三年と云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=40
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041・小柳冨太郎
○小柳委員 只今の葛西局長の御答辯に依りますと、私の考へて居ることと逆でありまして
〔長谷川委員長代理退席、委員長着席〕
手當の問題、二百圓と云ふことは、どうしても今日の物價高から考へまして餘り氣の毒だと云ふ考へを持つて居ります、それから數の問題に付ては、要するに隣組長が一隣組の世話をすると云ふ程度であれば、手當も自然從來の例に傚つても差支へない、私の考へ方は、積極的に働かせる意味に於て數を少くする、斯う云ふ考へ方であります、數が多くなればお座なりになつてしまふが、積極的に働かせると云ふ意味で、手當を思ひ切り出して人數を減らす方が宜いのではないか、斯う云つた考へ方で私は申上げた譯なのですが、尚ほ之に對しては一つ御研究を御願ひ致したいと考へて居ります
それから先程御尋ね致しました生業扶助費の大體の見込高と云ふものが分つて居りましたならば教へて戴きたいと考へます、それから六十億の公共事業費のことに付て政務次官から懇切な御意見を承りましたが、經濟安定本部の方で豫算の運用をやる、さうして或は内務省、或は農林省とかに適宜な豫算の分割をやる、斯う云ふ御意向のやうに拜承致しましたが、厚生省其のものは、讀んで字の如く日本の困つて居る者の親である、失業者、或は引揚者、或は貧困者、さう云つた困つて居る者の頼り所は厚生省であります、それで厚生省は失業者の爲に、豫算の運用、或は物資配給と云ふことに付ては、他省とは或る程度の摩擦を起しても、或る程度鬪爭をしても國民全體のさう云ふ困窮者の爲に鬪つて戴きたい、此の豫算の運用に付ても、少くとも厚生省は相當な發言權を握つて、合理的な運用をやると云ふことに極力努力して戴きたい、之に對しては格段の迫力と押しの一手で進んで戴きたい私は斯樣に考へる譯でありますが之に對する政務次官の御信念を更に伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=41
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042・服部岩吉
○服部政府委員 先刻御答へ申しましたやうに、六十億の失業救濟費が安定本部からそれぞれ各省に割當てられるのでありますが、各省が行ふ事業に依つて今日の失業者が眞に救はれるかどうかと云ふことは、私は非常に心配を致して居ります、隨て厚生省は、各省に渡された所の豫算が失業救濟をしようとして執行される場合に於て、各省の事業に對しまして、失業者を救濟せしめる上に極めて強き發言權を持つて指導權を握ると云ふ所まで進んで行くと云ふことの確信を茲に言明を致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=42
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043・小柳冨太郎
○小柳委員 まだ色々ございますが、何れ此の法案の仕上げには懇談會でも開いて戴き、赤裸々に打合せようと云ふ機會を拵へて戴くやうに、御當局竝に委員長に御願ひを致しまして、厚生省に對する質問は是で打切りたいと思ひます、更に又委員長竝に同僚諸君に御願ひ致して置きたいことは、大藏省に對して、海外引揚者其の他の立場から、二、三點に付て是非とも御尋ねを申上げて置きたいと思つて居ることがございますので、午後の時間を三十分程御戴きが出來れば仕合せだと考へて居ります、之を以て私の質問を終了致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=43
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044・奧村又十郎
○奧村委員 午後の質問に付て一寸御願ひがあるのですが──私の午後の質問は、主として生鮮食料品の配給に付て農林大臣及び厚生大臣に御伺ひしたいと思ひます、之に付きましては、此の法案が本會議に出ました時に、紅露みつさんも非常に御熱心に御主張になられました、尚ほ又此の委員會に於ても、松谷天光光君が此の問題を強調せられましたが、其の御答辯は責任がはつきりして居らぬ、それでは我々も今後に於て安心が出來ないと云ふことを感じて居りますので、特に御尋ねしたいと思ひます、それは河合厚生大臣は生鮮食料品の統制撤廢の時の農林次官であられたが、丸公撤廢の當時に比べて現在の状態は何等改善せられて居らぬ、寧ろ尚ほ惡くなつて行くやうな状況にあると思ひますので、此の際徹底した政府の施策がなければならぬ、それでなければ生活保護法案を我々が如何に審議して見ても何にもならぬ、是は少し言ひ過ぎでありまするが、生活保護法に依つて保護せらるべき立場の人、お金のない人、或は引揚者の方々、或は戰災者の方々、斯う云ふ人々は闇で物を買ふことが出來ない、配給がなければ本當に困る人々であります、そこで此の食料品の配給統制と云ふことに付て、はつきりした政府の方針を質さなければ、此の保護法案の審議が出來ないと思ひます、さう云ふ意味で農林大臣及び厚生大臣の御出席を求めてありますので、其のやうに御取計らひを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=44
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045・庄司一郎
○庄司委員長 只今の奧村君の御要望もありますので、努めて午後は厚生大臣竝に農林大臣、或はそれ等の最も適當なる代理者等の來場を請ひまして、十二分に皆さんに依つて御檢討を進めて戴きたいと思ひます、それでは小柳君の質問は保留致しまして、午前は是で休憩致し、午後一時半より再開することに致します
午後零時九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=45
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046・会議録情報2
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午後一時四十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=46
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047・庄司一郎
○庄司委員長 それでは午前に引續きまして是より再開致します、適當な政府委員がまだ御見えになりませぬので、小柳委員竝に奧村委員の御順序でございまするが、御諒解を得まして多少順序を變更致します、即ち此の際富田委員の御發言を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=47
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048・冨田ふさ
○冨田委員 本法案は生活の保護を要する者を平等に保護されると云ふことでありまして、民主主義上洵に慶賀に堪へない所でございます、以下順次質問に移ります
第一に民生委員に付て、質問致したいのでございますが、前委員の方が大體仰しやつて戴きましたので、私が申上げます所は、本當に簡單に、特に人格の崇高にして温か味のある、而も働き惜しみのないと云ふ方を選定して戴きたい、斯う思ふのでございます、米國の所謂「ケース・ワーカー」と云ふのがあちらの民生委員ださうでございますが、此の立派な方々を選定されまして、曩の法案に名譽聽と書いてございましたが、名譽職であつても相當の報酬を御與へになるべき御意圖があるかと云ふことを御伺ひ致したいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=48
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049・葛西嘉資
○葛西政府委員 富田さんの御尋ねに對して御答へ致します、民生委員に今御述べになりましたやうな立派な方を擧げたいと云ふことは、私共も此の法案の實施が巧く行きますか行かないかと云ふ所は、非常に重要な「ポイント」でありますから、今仰せになりましたやうな重要な人を擧げたいと云ふやうな譯であります、御手許に差上げて居りますやうな資料に依つて良い人を擧げたいと思ふのであります
それから費用辨償の點でありますが、先刻も小柳さんからも御尋ねがありましたやうに、私共としては名譽職の範圍を超えない程度に於きまして、成べく實費辨償の趣旨で多額の御禮は差上げるやうにしたいと云ふことで、今後とも努力したいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=49
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050・冨田ふさ
○冨田委員 第二に引揚者の醫療方面に付て質問をさせて戴きたいのであります、引揚者中花柳病に罹つて居ります者が洵に多數を算へます、而も所謂第四性病と申しまして、容易に治療に赴かぬ場合が私共醫者及び國民を惱まして居る現状でございます、是が對策に付きましては、完全に引揚所に於で檢査を受けさせまして、病氣を發見した曉には必ず強制的に病院に收容し、全治までは歸郷を見合はすと云ふやうに致さなければ、著しい勢ひを以で病氣は蔓延しまして收拾すべからざる状態に陷り、家庭爭議を展開して居る現状を呈するに至るのでございます、幸ひに滿蒙及び北鮮からまだ歸還せられない方が相當ございますから、今日までの結果に對しまして何卒失敗のない對策を講ぜられんことを希望致す次第でございますが、御當局の御所見を伺ひたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=50
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051・服部岩吉
○服部政府委員 滿蒙なり北鮮方面から引揚げて來まする所の者で傳染病や或は花柳病に侵されて居る者が少くないやうに窺はれるのであります、之に對しましては國の方で檢疫をやつて居りますが、どうも婦人の方は檢疫を受けるのを相當忌避される向きが少くない、之に對しましては出來るだけ努めて檢疫をするやうに致して居りますので、其の邊は非常に難かしい問題がありますからして、出來るだけ御趣旨に副ふやうな方法を今後講じて參りたいと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=51
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052・庄司一郎
○庄司委員長 此の際一寸政府に御注文申上げますが、富田委員の御質問の意味の中には、多分に政務次官からだけの御答辯でなく、鹽田醫療局長官の御專門の御答辯のあらま欲しく御期待されて居る如く委員長としては察知されますが、何か御答辯戴くことがございませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=52
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053・阿部敏雄
○阿部政府委員 滿鮮引揚の婦女子の性病、男子の性病と二つに分けて申上げます、婦女子の性病に付きましては、特に其の上陸豫定地、是は現在地理的關係から四箇所を豫定して居ります、佐世保、博多、仙崎、舞鶴、此の四箇所に特に相談所を設けて、其處で色々御相談を申上げて、其の結果治療て要すると云ふことを發見しました場合に於きましては、それを其の附近の特別に設備しました國立病院又は國立療養所に收容しまして、徹底的に治療を行つて國に御歸しすると云ふのを原則として居ります、現在では國立病院として五つ、國立療養所として一つ、其處に約六千四百の「ベッド」を用意して居ります、現在までの成績を申上げますと、最初部分的の脱出者の噂を想像しました時には非常に花柳病が多い、時に依つては三〇%、四〇%の罹病患者があると云ふやうなことも噂されましたので、最初の用意は、其の程度の患者が來ても差支へないやうに設備したのでございます、併し實際上つて來た今日までの統計に依りますと、案外に少ないと云ふことで、我々非常に安心した次第でございます、今まで分りました概略の數を申上げましても大體今日までに相談しました數が五萬千六百ばかりでございまして、其の中で花柳病患者は約二%、即ち千五十六名でございまして、其の中九百二名を此の國立病院へ送つて居ります、大部分の方が國立病院へ入られたと言つて差支へないと思ひます、併し町では、其の相談所を「フリーパス」しまして、國へ歸つてから花柳病のことが云々されたと云ふ方も噂に聞いて居るのでございますが、果して其の數がどれだけ澤山あるか、さう云ふことが絶無とは申上げられませぬけれさも、案外少いのではないかと思はれる點があるのであります、是は多少專門的に亘りますけれども、或る機會に極く少數の部分に付きまして尿を調べることが出來た機會もあります、又血液の檢査が出來た機會もございましたが、さう云ふ成績から推定致しましても、大體是は其の數に近いのではないか、斯う云ふことが想像出來るのであります、それから又同じ港で今の檢尿、血液檢査をやりました場合にも、其の船に依つて非常に「パーセント」が違ふ、同じ技術で調べまして、或る船は〇・何%と云ふ場合もあれば、或る船は八%位に上つたものもあります、非常に違ふと云ふことは、結局向ふを出發された時の環境の相違だらう、非常に惡い所と大變良い所とあります、良い所は徹底的に擁護されまして何等心配したことがない、隨ひまして實は強制的の檢診と云ふことも問題になつたのでありますが、是だけの少數のものに強制的の檢診をやらなくても、今の程度で大部分を救へるのではないかと云ふ感じが致して居りますので、私共は此の上陸地の特別相談所の働き掛け方を一層工夫致しまして取敢ず進めて行きたい、斯う考へて居るのであります
それからもう一つ、男の方の復員軍人の花柳病と云ふことに付て色々心配があるのでありますが、是は原則と致しまして、出港前の集結地で徹底的の治療を致しまして、全快した者を還すと云ふ建前になつて居ります、それから又終戰後集結して、向ふの收容の期間が非常に長いのでありますから、新しく感染すると云ふ機會は極めて少い、結局殘つて居る花柳病の患者は、終戰前漫性的になつて居る患者が多いのでございます、隨ひまして今申上げましたやうに、原則としては集結地で治療を加へて還して居るのでありますが、併し最後の船ではどうしても花柳病患者も還して來なければならぬと云ふので、花柳病患者も或る程度歸つて來て居るのであります、此の歸つて參りました花柳病患者は、全部之を國立病院に入れまして治療を加へると云ふ方法を執つて居ります、現在までに其の數がどれ位になつたかと申しますと、援護院が出來ましてからの三月以降の統計は、六月までで全部で約千四百五十名ばかりになつて居ります、此の中には少數の一般市民の方も混じつて居りますが大體千四百五十名ばかりの方が慢性疾患全癒に至らずして歸つて參りまして、國立病院で治療を加へて居ります、一般の市民の引揚者の男の方に對しましては、今の所檢査の方法がございませぬので其の儘手を加へずに居ります、大體斯樣な現状であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=53
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054・冨田ふさ
○冨田委員 日本の現状で申しますと、青年を實際的に健康診斷致します徴兵檢査が今年からございませぬので、此の引揚の際に特に檢査を嚴重にして戴くことが必要ぢやないかと考へて居るのであります、能く歸つた方々に聽きますと、どうも唯病氣ぢやないかと御尋ねになるだけで、こちらが申上げなければ御檢査がないと云ふことを申して居ります、それで斯く澤山の蔓延を來したのではないかと考へて居りますので、花柳病は自分が自覺がないのが大變多くございますから、必ず其の地に於て血液檢査、尿の檢査を御實行戴くことを希望する次第であります
次に引揚者の教育方針に付て御伺ひ致したいのでございますが、引揚者の中には、内地に子供を早く歸國させまして、中等學校又はそれ以上の學校に通はせて居られた家族が相當ございます、親達は終戰と同時に辛うじて無一物になつて逃げて歸られまして、本法の保護を受けて九死に一生を得られるに致しましても、せめて此の子供達の學校だけは──子供達が苦學するやうな場合には、中途で廢めさす必要はないと思ひますが、過日他の委員の方の質問に對しまして、國民學校へ通ふことは認めるが、中等學校又は專門學校へ通學することは認めぬと云ふ御意思でございました、是は尤もでございますが、專門學校や中等學校の學資を出して戴くのでなければ、獨學の場合に於ては御認めになられるのが當然だと思ふのでございますが、念の爲に文部當局に御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=54
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055・庄司一郎
○庄司委員長 富田委員に申上げますが、只今突然文部省當局の答辯の御要望のやうでございますので、今事務員を派遣したのですが今に見えると思ひますから、只今の御答辯は少し御待ち願つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=55
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056・冨田ふさ
○冨田委員 次に結核患者の保護に付て御尋ね致したいと思ひます、結核患者には榮養品を特別に澤山配給を御願ひしたいのでございます、私は實地醫家と致しまして、榮養不足の爲に日々痩せ衰へて行く患者を見るに忍び難いのであります、然るに官立の病院に於ては、榮養品の配給が優先的であり、且又量に於ても多いのに比しまして、民間の病院に於ては、洵に之に反して居る場合が多々ございます、是等は絶對に平等にして戴きたいのでございます
尚ほ一つ例を擧げて質問致したいことがございます、今茲に四百圓の收入のある家庭があると致しましたならば、此の家庭は保護の對象とは當然なりませぬが、家庭に長期療養を要する結核患者が發生しました場合に、之を放置する時は、直ちに「カード」階級に轉落することは火を睹るよりも明かでございます、政府當局に於かれましては、斯う云ふ場合保護の對象とされる御意思でございませうか、一寸御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=56
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057・葛西嘉資
○葛西政府委員 結核患者の前段の御質問に付ては後程他の政府委員から御答へ申上げますが、今御觸れになりました四百圓の收入のある家庭で、直接には生活援護は受けないが、長い間療養を要する結核患者を出した場合はどうかと云ふ御尋ねでしたが、結核の醫療に付ては多額の經費を要します、隨て四百圓の收入のある家は、生活援護は御話のやうに受けませぬけれども、醫療關係に於て家庭より支出し得たものを差引いた殘りの部分に付ては、生活保護を醫療費の方から支出することは可能でございます、尚又結核に付ては他に厚生省の施設として國立の病院等もあります、そこに入りますれば、生活保護法に據らずして、國立病院の施設として療養を受けられる途もございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=57
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058・勝俣稔
○勝俣政府委員 只今食糧其の他藥品等の配給が國立と非常に違ふ、それに付てどうかと云ふ御話がございましたが、十分此の點に付ては御趣旨に副ふやうに致したいと考へます、尚ほ國立病院には多少前の「ストック」があつた爲にさう云ふことがあつたのぢやなからうかと思ひますが、我々の方と致しましても、何處の病院でありませうが、患者の居る所は出來るだけ平等に配給しなければならぬと思つて居ります、但し御承知のやうに物資が不足の時でございますから、十分と云ふやうなことは出來ませぬが、公平を期して配給するやうに致したい、どうぞ御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=58
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059・冨田ふさ
○冨田委員 第五に御伺ひ致したいことは、社會事業團體に付てでございます、保護團體及び社會事業團體は、今日の物價高と新圓制度の爲に資金の融通が大變困難となつて居ります、而も政府が保護費などを御支出になりますのは、殆ど半年も遲れることになりまして洵に御氣の毒な状態でございます、而も運營が大變不活溌になりまして、折角今日まで苦心して經營された社會事業家が、今や正に中絶の已むなき状態にあるのでございます、政府に於きましては庶民金庫などの保證をされて、而も事務費を簡便敏速に御出しになるやうに社會事業家を御救ひになる御意向がございませうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=59
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060・葛西嘉資
○葛西政府委員 只今御述べになりました社會事業施設が資金難の爲に非常に御困りになつて居ると云ふ御話でございまして、庶民金庫等を活用して、之から政府が保證でもして出したらどうかと云ふ御話ですが、庶民金庫の方は御承知のやうに設立の目的が直ちに社會事業施設に金融すると云ふ風に相成つて居らぬかと思ひますので、御指摘の點はどうかと思ひますが、本法に依る保護施設と云ふことになれば、大部分生活要保護者を收容致します、大部分の社會施設の方は、此の生活保護法の保護施設或は援護施設と云ふことになるかと思ひますが、斯樣になれば、御承知のやうに委託費或は施設事務費と云ふものが支出出來ることになります、是も遲れて非常に困ると云ふ御話でございしたが、委託費の支拂は成べく一箇月位の前渡をする豫定でございます、隨ひまして御困りになる金融の途もさう云ふ所から開けて來るのぢやなからうか、金融等の方法を講じなくても、そちらの方で若干のことは出來るのぢやないだらうかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=60
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061・冨田ふさ
○冨田委員 尚ほ此の施設のことに付てでございますが、今度新たに設けられました保護法案に關係する施設は、許可をし直して御願ひするのでございますか、それを伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=61
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062・葛西嘉資
○葛西政府委員 御答へ致します、從來社會事業法に據りました施設は、御承知のやうに地方長官に届出ることに依つて、社會事業法の施設と云ふことに相成つて居りますが、本法に基きます施設は國の責任に於てやる、仕事を委託すると云ふことになりますから、其の人的な施設、物的な施設に相當監督を加へる必要があらうと云ふやうな事柄から、第七條でありますが、もう一遍認可を受け直して戴くことになる、唯御承知のやうに經過規定にもありますやうに、此の法が施行になりまして認可をし直す其の間の經過的な所があるものですから、第四十五條に於きまして、二箇月間を限り何等の意思表示がない限りは認可を受けたものと看做し、二箇月經ちますと、そこから新しいものが「スタート」して來ると云ふことになる仕組に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=62
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063・冨田ふさ
○冨田委員 施設費に對しても又新たに認可致すのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=63
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064・葛西嘉資
○葛西政府委員 施設費の方は、認可施設と云ふことになりますれば、もう機械的に出て行く譯で、是は請求すれば出ることになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=64
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065・冨田ふさ
○冨田委員 最後に醫療團に付て二、三質問させて戴きます、醫療團に付ては種々なる意見のあることは承つて居りますが、私と致しましては、醫療團は戰爭遂行の目的で作つたものでございますから、現在では其の存在の理由がないと存ずるのでございます、社會事業的方面又は生活保護、司法保護の患者の醫療に當られるのが建前であると存じますが、どうも内容を見ますと、時々營利的色彩の濃厚であると云ふ感じが致しまして、其の點洵に腑に落ちない所がございます、又醫療團の病院は、結核とか精神病、癩病などの醫療に付て專念するのが主點だと信じて居りますが、目下市内、殊に中心部に居りまして開業醫の生活を脅かすやうな診療をして居られることは洵に遺憾に堪へない次第でございます、政府は醫療國策の前提として、之を官僚的醫療團として助長される御意思でありませうか、又醫療團を含む國民醫療法を將來改正される御意思がありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=65
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066・勝俣稔
○勝俣政府委員 醫療團は戰爭遂行の爲に作つたものでは決してございませぬ、さうして醫療團本來の目的は、醫療網を整備して行きたいと云ふ點、もう一つは結核療養所の擴充をしたいと云ふ考へなのでございます、尚ほ現在に於て一番大きな問題は、戰災地に於ける所の醫療施設の復興と云ふ問題があるのでございまして、それと今一つは、無醫地域に於ける所の醫療普及と云ふ、此の二つの大きて使命を醫療團は持つて居ることと思ひます、尚ほ前者の罹災地に於ける所の醫療復舊に付きましては、一つなり、二つなり適當なる大きな病院を作りまして、さうして其の半數位は開業醫の方々に開放して、開業醫の方々が、病院が燃えて復興しようと思つても、中中さう云ふことは難かしい、非常な投資を要する、斯う云ふやうな場合には、本當に簡單な所で治療をなさつて、そこの病院を御使用になる、斯う云ふやうな方面に進みたいと考へて居る次第でございます、普通開業醫の方々が、燃えた所に今までのやうな病院を作ると云ふことは、非常な投資を必要とします、投資を必要とした結果、何處に其の負擔が行くかと云へばやはり一般大衆の所へ負擔が行くと云ふことになりはしないか、醫療團は決して營利を目的にするやうなことは、政府はさせないやうに監督したいと思つて居ります、又無醫村の問題に付きましては、それぞれ公的の診療所を作つて戴きますが、尚ほ醫療團に於きましても、此の方面には力を盡して──今まで無醫村の診療所に云きまして政府は失敗をして來て居ります、と云ふのは、御承知のやうに三菱が無醫村診療所の爲に百萬圓の寄附をしたことがあります、それに依つて無醫村診療所の建設を致しました、そこで政府は之に對して一定の經常費の補助を致しました、併し其處にはお醫者さんが居着きませぬ、或る程度經ちますと、子供の教育の問題とか色々ら問題で、さう云ふ所を引揚げて行く、結局其の診療所は何になるかと言ひますと、集會所のやうになつて來る、集會所になるならまだ宜しうございますが、あばら屋のやうになる、斯う云ふやうな觀點から、どうしても一つ地方の中央病院のやうなものを置きまして、其處と連絡を執つて、入れ代りすると云ふやうに持つて行くのが、無醫村解決の方法ではないかと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=66
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067・庄司一郎
○庄司委員長 富田さん、此の際御相談申上げたいのですが、先程の富田委員の第三問でございますが、引揚者の子弟の教育の問題に關しまして、御答の役割にあられる文部省教育局長日高政府委員が參つて居られます、仍て先程のあなたの御質問を、今一度簡單に集約されて御問ひを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=67
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068・冨田ふさ
○冨田委員 引揚者の教育方面に云ての質問でございます、引揚者の方で、内地に子供を早く歸しまして、專門學校又は大學に入學させて居つたやうな家庭が、終戰と同時に兩親は無一物となつて引揚げて參りましたやうな場合、其の家族は保護の對象になると思ひますが、其の子供は、此の間の委員會での御話では、國民學校ならば入學は認めるけれども、專門學校、大學は、學校を廢めてしまつて──第三者が見ても、大學や專門學校に入れて置く程の家庭を保護する必要はないではないかと云ふやうな見地がございますけれども、是は國の責任に於て財を失つたやうな場合でありますから、子供が苦學してでも學校へ行きたいと云ふやうな場合には、學校を廢めさす必要はないのではないかと考へるのでありますが、文部當局ではどんな御意見でございますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=68
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069・日高第四郎
○日高政府委員 只今の御質問に對して、確實な數字は只今持合せて居りませぬけれども、相當多數の困つて居る青年が引揚げて來て居ると思ひます、就學の便宜は出來るだけ取計らひたいと思をて居りますが、其の生活上の保護までは、只今の所手が届き兼ねて居る次第でありまして、御趣旨のやうに、個人の責任で引揚げて來るのではなくて、國策の挫折から非常な不幸な目に遭つて歸つて來て居るのでありますから、今仰しやつたやうな御趣旨は賛成でございますけれども、他に不幸な、急を要するやうな状態が澤山ありますので、年齡の少い子供達に對しては、義務教育を受ける者を先づ先にやつて、其のあとの者に云ては後廻しにする以外に途がない、甚だ遺憾でありますけれども、そこまで手が届き兼ねて居ります、併は尚ほ出來るだけの努力は致したいと思ひます、就學のことに付きましては、元の滿洲國竝に外地の學校か閉鎖されまして、内地に歸つて來る者が約三百人位あるかと思ひます、それ等を收容するだけの施設は現在の學校にはございませぬので、已むなく追加豫算を以て特別に臨時の増員を各學校に割當てまして、其の方に成べく便宜收容して貰ふやうに頼みまして、近々第三囘目の入學考査を行ふことになつて居りますが、今後も出來るだけさう云ふ方針でやつて行きたいと思つて居ります、新しく學校を設置すると云ふことも、色色の點で障碍がありまして思ふやうに參りませぬが、出來るだけ收容して勉學を續けさせたいと思つて居ります、もう一つは、相當成績の良い者に對しては、大日本育英會の方で出來るだけの援助を致したいと思つて居ります、大日本育英會の趣旨は、御承知でございませうけれども、法律に依つて定めをれた育英會でありまして、經濟上勉學を續け難い者にして而も優秀な者に對して補助をすると云ふ建前になつて居るのでありますが、唯優秀と云ふことをどう云ふ點に見るかと云ふことに、其の時代に依つて多少の伸び縮みがあつて然るべきだと存じて居ります、澤山の小學校の生徒の中から、中等學校へ行き、高等學校に行けば、それ等の例へば專門學校や高等學校に行つた者は、澤山の者の中から出たと云ふ意味から言へば、それだけで優秀とも言へますけれども、又高等學校なり、專門學校の中から言ふと、必ずしも總てが優秀とは言へませぬ、それは相對的な區別關係を考へなければなりませぬ、但し今日の場合は國民全體が非常な被害を蒙り、不幸な目に遭つて居る時でありますから、社會政策的な意味に於て、其の優秀と云ふ概念を少し擴げて解釋することが、現實に即する所以ではないかと云ふやうに考へます、大日本育英會當事者とも話をしまして、さう云ふ方面で出來るだけ援助をすることに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=69
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070・冨田ふさ
○冨田委員 さう致しますと、親が生活の保護を受けて居りますと、優秀でなかつた場合には、是非子供は大學、中學校を廢めてしまつて、他へ働きに行かなければならぬのでありますか、自分が獨力で自活した場合も駄目でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=70
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071・日高第四郎
○日高政府委員 それ等の點は相當考慮は必要かと思ひますが、實情を申しますと、現在の學生で是は見當でございましてはつきり分りませぬが約四割か四割五分位の者は學資に困つて居ります、それは必ずしも引揚者に限りませぬ、もう少し状態が進めばぼろぼろ落ちて行く、さう云ふ状況も考へられると思ひます、全般が經濟的な難關に立つて就學の見込がないと云ふやうなことが段々起るかと思ひますが、是は全般の問題として考へなければなりませぬので、引揚者であるから特に考慮は必要だとは思ひまするけれども、引揚者でない者も就學の望みが段々なくなるやうな虞が十分あるのではないかと思ひます、それ等の點も今考究中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=71
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072・庄司一郎
○庄司委員長 此の際文部省に伺ひますが、大日本育英金庫、あの方の資金等に依つて救濟の方法がございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=72
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073・日高第四郎
○日高政府委員 先程御話しましたやうに、大日本育英會の方は、其の目的が優秀な學徒であつて、經濟的理由に依つて就學困難な者を救濟すると云ふことになつてをります、それ等のものに對して、優秀と云ふことの概念を廣くして、經濟的に困難だと云ふことを十分考慮して選擇の範圍を廣めて今申しましたやうに、引揚などで困難して居る者にも押廣めたいと云ふ意向を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=73
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074・冨田ふさ
○冨田委員 最後に御尋ね致したいと思ひますことは、先程の醫療團のことでございますが、醫療國營を前提として各醫療團の病院を澤山御作りになるのでございますか、それを一つ伺はせて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=74
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075・勝俣稔
○勝俣政府委員 決して國營などと云ふ大それた考へは持つて居りませぬ、開業醫、即ち自由選擇の良さは何處までも持つて行きたい、最小限度の醫療網をやつて行く、斯う云ふことでございます、決して開業醫の非常な壓迫になるやうなことは毛頭考へて居らないのでございます、但し私も醫人でございますが、御承知のやうに、兎に角醫療費の非常な昂騰と云ふことは、國民大衆に非常に苦痛があるのでございます、醫療團は營利を目的としないやうにして進みたい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=75
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076・冨田ふさ
○冨田委員 御懇篤な御説明を戴きまして有難うございました、私の質問は是で終る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=76
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077・庄司一郎
○庄司委員長 有馬委員に此の際御相談申上げますが、大藏省の理財局長が只今見えて居りますので、大藏省に關する御質問限りに於て此の際御進め願へれば、議事の進行上都合好いと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=77
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078・有馬英二
○有馬委員 宜しうございます、今度の保護法案制定の趣旨が、此處に書いてあるやうに非常に擴張せられまして、其の扶助は、生業扶助、生活扶助の外に、醫療と助産が加へられて居る、生活扶助、生業扶助に付きましては、今まで多數の委員から詳しい御質問があつて、それに對して政府からそれぞれ御答辯があつたやうであります、併し醫療に付きましては、まだ餘り詳しい御質問がなかつたやうに私は思ひます、御承知のやうに、近頃のやうな物價高、殊に生活必需品が入手困難であり、其の價格の高い爲に、決して一般の國民とは申しませぬけれども、我々中産階級より下の者は殆どもう生活に總ての資金を投出して、漸く今日生きて居ると云ふやうな状態であると私は思ふのであります、公定價格で生きて行かれれば勿論宜いのでありますけれども、殆ど公定價格では私共は生活が出來ないやうな窮境に追詰められて居る、今日は殆ど闇の物を買はない人はないと云つても過言ではないと思ふ、さう云ふやうなことであつて、若し一旦我々は健康状態が破壊されるやうな時に當りますと、其の醫療に要する費用の出所がない、是は最近の各地の病院の情勢を御覽になれば一見非常に明かであります、何處の病院も──今まで數十、數百と云ふやうに收寄して居つた大きな病院は殆どがら空きと言つて宜しい、先達ても頻々とさう云ふやうなことが新聞にも出て居ることを御覽になつたことと思ふのであります、日本醫療團の如きも、其の利用率は約二〇%に過ぎない、でありますから、大部分の病床はがら空きであります、遊休病床であると云ふやうな状態であります、斯樣なことでありますが爲に、是から先の國民の、或は大衆の醫療と云ふことが非常に至難になつて來る、此のことは私共洵に憂慮に堪へない所であります、然るに此の生活保護法には醫療の點に付て色々な點が餘り明確にされて居ないやうに私は思ふのであります、例へば生活が出來ない者には一日幾らと云ふことが書いてあるが、醫療を要する者には一體幾ら醫療費が充がはれて居るかと云ふことも何處を探してもはつきりしない、此の點に付て政府當局は一體どう云ふ工合に考へて居られるか、どう云ふ見透しを持つて居られるか、此の點を先づ御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=78
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079・葛西嘉資
○葛西政府委員 御答へ申上げます、醫療の點に付きましては、大體開業醫なり、或は市町村長の指定するお醫者さん、或は施設と云ふやうに、市町村長が指定致しまして、それに掛つて入れることになる譯であります、それから病人等で入院を要するやうな患者がありますれば、入院と云ふやうなことも市町村長の指圖に依つてやることに相成ります、此の場合の醫療費の支拂でありますが、是は國民健康保險と同じやうに、點數制を採る考へで居ります、さうして點數に依つて支拂つて行く、大體醫療關係、助産關係は國民健康保險と同じやうに生活保護法を運用して參ると云ふやうな積りで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=79
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080・庄司一郎
○庄司委員長 有馬委員に少々御相談したいのでありますが、此際御發言を許したのは、專ら大藏省政府委員に質問されるやう御願ひし、其の御承諾を得た心持ちで居りましたが、願はくは左樣に御願ひ申上げたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=80
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081・有馬英二
○有馬委員 段々さう云ふ工合に入つて行きます、御承知を願ひます、只今の御答辯は一人々々が病氣になつた時に、國民保險の方法と同じやうな方法で一點幾らと點數を以て行くと云ふやうな御答辯であつたが、私はもつと大きな豫算面に現はれた數を聽くので、例へば六十億救濟費がある、其の中一體醫療費は何處にあるかと云ふことを私は大藏當局に伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=81
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082・葛西嘉資
○葛西政府委員 醫療費の點は…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=82
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083・有馬英二
○有馬委員 委員長に伺ひます、大藏省の方は御返答にならないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=83
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084・服部岩吉
○服部政府委員 此の生活保護費の豫算は、大藏省が當然されるべきものではないのであります、内面的なものは厚生省の所管であつて、厚生省の方から御答へ甲上げることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=84
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085・有馬英二
○有馬委員 分りました、それでは厚生省に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=85
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086・葛西嘉資
○葛西政府委員 醫療費の方は、地方費竝に國庫の方の關係を合せまして、生活扶助と一緒にやる醫療と、それから生活扶助をやらないで、醫療だけ單獨に受けるものを合せまして、二億八千七百餘萬圓と云ふやうなことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=86
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087・庄司一郎
○庄司委員長 此の際有馬委員に御相談甲上げます、あなたの御質問が直接大藏省に觸れられないやうな御質問でありましたならば、一時御休みを願ひまして、直接質問者で理財局長を呼んで居られる小柳委員の發言に御讓り願ひたいと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=87
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088・有馬英二
○有馬委員 承知しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=88
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089・庄司一郎
○庄司委員長 午前中に保留されたる小柳委員、大藏省關係の質問に御發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=89
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090・小柳冨太郎
○小柳委員 私は引揚者の立場から、大藏省理財局長に御質問致したいと思ひます、私も引揚者の一人でありまして、引揚者の諸對策に付ては、力足らずと雖も捨身に努力をして居る一人でございますが、今日引揚者と云ふものは、御承知の通り裸一貫で歸つて參りまして、唯命の綱と頼んで居るものは持歸り資産であります、此の持歸り資産に付て、當局に於ては如何なる御調査をなさつて居られるか、在外地の状態がそれぞれ違ひますので、終戰前所謂國際法上認められました臺灣、朝鮮、樺太、さう云つた地域、更に南方、中華民國、滿蒙、それぞれの地域に分割致しまして、さうしてそれぞれの地域から引揚げました所の人達が、種々雜多な所謂資産を持歸つて居ります、それに付て如何なる調査をなさつて居られるか、又調査の結果が如何樣になつて居るか、御説明が御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=90
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091・櫛田光男
○櫛田政府委員 外地から又外國から非常に御氣の毒な状況で御歸りになりました方々が、色々御持ち歸りになりました物に付きましては、昨年の九月二十三日附の指令に依りまして、色々な制限を已むを得ず加へて居るやうな状況でありますが、只今御話のございました朝鮮、臺灣或は其の他の各地から御歸りになりました方々がどれだけ御持ち歸りになりまして、それがどうなつて居りますかと云ふことに付きましては、昨年以來御持ち歸りになりました在外財産の報告を戴いて居る譯であります、其の御持ち歸りになりました在外財産の報告は、只今日本銀行の手許に集めまして集計中なのでありますが、之を各地域別、其の他に分けまして只今數字を甲上げまするまでは、まだ非常に──何と言ひますか、報告が大變なものになりまして、全體から言ひましても、大きな藏、三つか四つかに入る位になつて居るのでありまして、晝夜兼行で以つて之を整理致して居ります、逐次出來て居りますが、其の全部がまだ出來上つて居りませぬので、只今其の數字を各地域別に分けまして甲上げる段階には到達致して居りませぬ、のみならず色々な御報告に付きまして、例へば外地で御持ちになつて居りましたやうな財産に付きまして、一應現地の通貨等を基準に致しましての報告等がございますので、それ等を集計致しますにも困難を感じて居りますので、遠からず出來上ることと思ひますが、只今此の場では甲上げ兼ねるのを非常に殘念に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=91
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092・小柳冨太郎
○小柳委員 是は餘程複雜を極めて困難なことであると私も想像して居ります、併しながら今日引揚者に對する所の救濟對策と云ふものが、各方面に御伺ひをして見ますけれども、一向結論は掴むことが出來ない、此の議會が開會されまして、全國から引揚者が陳情に參りました其の數と云ふものは夥しいものがある、總ての者が此の食糧難、交通難の折から東京までやつて來て、さうして無爲徒勞に終つて引揚げて行つて居ると云ふやうな状態であります、昨年以來外地資産の届出制度の指令を受けまして、皆届出て居りまするが、其の中で所謂在外資産外地に持つて居る所謂存置資産と云ふものは届出を致しましても之に對する期待は我々は大して掛けて居ないのであります、是は將來賠償に振替はるものであるから、是非とも必要であると云ふやうなことで、盛んに慫慂されて非常な煩瑣な手續を通して皆申告を致しました、所が靜かに考へまする時に、外地に假に資産があると致しましても、是がはつきり占領軍なり、或は當該政府の方で接收を致しまして、之を公認したものであるならば、成程將來是がものを言ふ時機があるかも知れませぬけれども、滿洲、北鮮の如き所謂占領軍の方で接收し、占領したものが、届出をしたかと云つて、是か補償を受けると云ふやうなことは到底困難な問題だと云ふことを私は想像するのであります、併しながら引揚げた者の一番關心を持つて居りますことは、所謂外地で日本の政府機關であります所の郵便局に預けて居る郵便局貯金、それから更に外地に出張所を設けて居ります所の所謂日本の銀行に預金した所の預金、更に又其の間に於て所謂政府の出先機關であります大使館などの許可を受けて送金をしました其の送金小切手を持つて來たもの、其の小切手の中でも、中華方面は非常に貨幣價値の問題で、所謂十倍送金だとか、或は最後には七十倍送金、向ふで七萬圓の金を入れて、こちらで千圓の金を取る、所謂七十倍送金と云ふものを當時大使館で認めてやつて來た、更に今度はこちらに引揚げて來ました者が海運局に預金帳を預けて居ります、公債、債券と云ふやうな證券を預けて居ります、さう云つた種種雜多なものがあるのでありまして、之に對して日本の政府の方で、此の引揚者のさう云つた持ち歸り預貯金に對して、何とか具體的に一つ支拂ひの方法を講じてやらうと云ふやうな温かい思ひやりが非常に缺けて居る、斯う私は考へるのでありますそれで大體生活保護法と云ふものは、所謂引揚者、戰災者、復員者と縱に線を引くことが困難であるから、横に線を引くのだ、是は厚生大臣も述べられて居られる通り、其の筋との關係がありまして、特に引揚者だけを特別な扱ひが出來ない、斯う云ふ意味に於て横に線を引かれたものである、斯樣に私は考へるのでありますが、更に最近の金融措置は縱に線を引く、引揚者と云ふものは全然含まないで、内地に預金を持つて居つた人だけに特典を與へる、是れだけの考へでやつて居ると云ふ風に私は考へるのであります、最近の新聞に現はれて居りまする報道に依りますると、所謂戰災保險を五萬圓まで認める、斯う云ふことになつて居りますが、其の五萬圓の戰災保險を認められて、更に第一種封鎖預金、第二種封鎖預金と云ふやうなことに分類を致しまして、第一種封鎖預金は一萬五千圓まで拂出を認める、所が外地から引揚げて來た人は何にも此の處置に與つて居ない、斯う云ふことになるのであります、さうすると外地から引揚げて來る人は、既に親子二代三代、或は四十年、五十年の長きに亙つて、日本の所謂國策の最前線に立つてさうして日本の人口問題、食糧問題に今日まで貢獻して來た人達だ、其の人達が土地を奪はれ、家を奪はれ、家財道具を總て抛つて、僅かに預金帳だけ、或は小切手だけを持つて來て居る、是れ程大きな戰爭の打撃、所謂戰災者は私はないと考へるのであります、其の大きな戰災者と云ふものは、既に此處まで歸つて來る過程に於て、内地の戰災者以上の大打撃を蒙つて居る、然らば此の持つて來た所の預貯金と云ふものは、從來日本の政府が認めた所の機關に粒々辛苦して蓄積したものでありまするが故に、之に對しては内地の在住者と同樣な措置を執られることが當然なことである、而も是は尚ほ公平を缺いて居ると云ふことまで私は考へるのであります、それで内地の戰災保險を五萬圓まで認めるならば、妥當公平と云ふ點から申しまするならば、引揚者の人達は十萬圓まで認めると云ふ位に持つて行くのが當然のことである、而も之に對してはまだ何等の意思表示もないし、何等の對策も立ててないと云ふやうなことになりますると、是は由々しい問題であります、假に今の三千圓の庶民金庫の貸付金に致しましても、是は引揚者だけに限定されたものでないと私は諒承して居るのでありますが、要するに、貧困者にして特に企業を目論まうと云ふやうな人達には一率に三千圓を認める、而も其の第二段の横の線は、所謂第一封鎖預金に於て一萬五千圓、戰災保險金に於て五萬圓まで認めると云ふこと、此の現在新聞に報道されて居ることが事實であるとするならば、同樣に第二の線も引揚者も茲に含んだ所の線を引いて、引揚者を救濟する所の途を講じて戴くのが、是が政府の親心である、又八百萬の引揚者と云ふものは、之を唯一髮の毛よりも細い所の生命の綱として頼つて居るのでありまして、昨日も全國の代表者が此の議會に陳情に參りまして、涙を流して愬へて居るのでありまするが之に對する理財局長の御所感、御抱負を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=92
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093・櫛田光男
○櫛田政府委員 御答へ申上げます、只今縷縷御話がございました通り、私共と致しまして、外地、外國から千辛萬苦の結果御歸りになりました人達が折角苦勞して御持ち歸りになりました預金通帳なり郵便貯金の通帳なりが、昨年の九月二十三日以來に於きましては、關係方面の指令に基きまして、原則として其の拂戻等が出來ないやうな状況に相成つて居るのであります、それ等に付きましては、先程御話しのありましたやうに、内地に居りました方々と少くとも同じ「レベル」、それ以上に──實は私個人の考へを茲に率直に申上げますならば、仰しやいます通りに、御歸りになつた方々は御氣の毒な中でも最も御氣の毒な方方が殆んど大部分を占めて居ると存じますので、出來る限りのことをして上げたいと存じて居ります色々百方手を盡して參つたのでありましたが、甚だ不束かでありまして、今に至るまで、十分な結論と申しますか、十分な解決策が講ぜられずに至つて居りますことを非常に恥かしく存じて居ります、只今までの所は、一般の方は持歸り金の千圓の交換、或は朝鮮、臺灣等から御歸りになりました方の内地預金として内地に御送りなさいました銀行預金等に付きましては大體月千圓、合計一萬圓までと云つたやうな制限、或は郵便貯金通帳に付きましては、九月までに向ふで御拂込になりました分に付きましては月五百圓と云つたやうな所までが、せいぜい何と申しますか露骨に申しまして打開いて來た途であつたのであります、私共と致しましては、全く仰しやる通りのことでありますから、今後とも出來る限りの努力を惜しま積りでありますが、色々な關係がございまして未だ十分に御滿足の行くまでの結論が出て來ませぬことを重ねて申上げますが、殘念に存じ御詫び申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=93
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094・小柳冨太郎
○小柳委員 今御説明を承りました點に付ては大體私も了承して居るのであります、是は私責任を持つて申上げられる話ではありませぬが、聯合軍の一將官の方に或る引揚者の有力者が車中で御話申上げて、其の御所見を承つたことでありますが、引揚者と内地在住者との取扱は、引揚者に付ては實に逆遇して居る、戰爭が犯罪戰爭であつたならば、是は國民全體、外地にあつた者も内地にあつた者も同樣に敗戰の責を負ふべきである決して外地に居つた者だけが所謂侵略者扱ひをされると云ふ根據は成立たないと考へるのでありますさう云つた意味に於きましての所感を承つた所に依りますと、さう云つた政府の處置と云ふものは誤りも甚だしい、當然國民として外地から歸つて來た者に對しては、内地の國民以上に優遇すべきであると云ふやうな意向を洩らされたと云ふことを私は承つて居ります、遺憾ながら其の御名前も私は拜聽して居りませぬが、所謂物には道理と云ふものがありまして、正義人道を尊ぶ所の聯合軍に對して、現在我々が政府筋から承つて居る所の處置と云ふものはどうもまだ了解點に達するまでの御努力が多少そこに行違ひを生じて居るのではないかと云ふ僻みを持つ譯であります、それで同じ日本國民として、政府としては引揚者に與へる所の處置の犧牲を多少とも内地在住者の方に振向けると云ふ覺悟を示されて、さうして平等な取扱をすると云ふ此の道理には何も刃向ふ者はない、必ず是は通るべきものだ、通して呉れるだらうと云ふ所まで私等は考へる譯であります、幸ひ議員團の方と致しましても、同胞救援議員聯盟と云ふものが明日から發足することに相成つて居りますので、極力さう云つた點に付て、一つ一つの問題に付て聯合軍の御諒解を得る爲に、議員の方も努力しなければいけないと云ふことで張切つて居る譯であります、政府の當局に於かれましても、更に又此の引揚者の唯一の頼り場所である厚生當局に於かれましても、それは成程さう云つた金融關係に付ては大藏省の關係であるかも知れませぬが、引揚者自體は大藏省或は農林省と、斯う云つたやうな陳情、諒解運動と云ふものは中々困難でありますので、此の引揚者の唯一の所謂相談相手となつて戴きまして、厚生當局に於かれましても此の一つ一つの問題に付て格段の熱意ある御努力を御願ひ致す次第であります
それから先程の所謂郵便貯金の九月後のものに對して之を認めない、是も非常に不合理であります、と申しますのは、終戰後金が要るだらうと云ふ譯で皆引出した、引出したものを稍稍落着いたので之を日本の郵便局に預けたと云ふものが相當あると思ふのであります、それで十月一日以後に預けたものは之を認めないと云ふやうなことも是も多分其の筋の或はまだ諒解を得る點に立至つて居ない、斯う云ふことかも知れませぬが、そこにまだ多少交渉の綾が殘つて居る、まだ努力の餘地が十分あると云ふ考へを私は持つのであります、十分さう云ふ點に付ては御努力の餘地があると思ふのであります、更に終戰前に外地から引揚げました者の所謂引揚資金、是が特別措置になつて居ります、是も其の間國策に協力する意味に於て銀行に眠らした儘、所謂戰爭に協力したと云ふことになつて居ると思ふのでありますが、先日御話を承りますと、此の特別措置の預金も全體で三億乃至四億程度だと云ふことを承つて居りますが、是も所謂現在の内地に於ける封鎖預金と同樣の取扱をなさることが當然だ、斯樣に考へます、それからもう一つ特に御願ひして置きたいことは送金小切手を持つて來て居れば、内地で千圓戴けた、所がそれを海運局で預つた、それが爲に證明はあるが、小切手がない爲に千圓の金が貰へない、斯う云ふものが澤山あるのであります、是も末梢的の問題でありますけれども所謂今日銀で集めて居る倉庫に二つも三つもある厖大なものでなく、最近引揚げたもので海運局などで保管したものと、それから引揚地に於ける所の大使館或は領事館等に保管を致しました所の所謂持歸り財産と云ふものだけを取上げて、之を一つ一つに區分けをなさつて、是は所謂凍結をする、是は此の程度で處置してやると云ふのが合理的である、是は當然許さるべきことであると云ふやうな點を勘案致されまして、誠心誠意一つ聯合軍の方に當つて居いて、さうしてもう一歩進んだ所の解決點に到達致して戴くやうに格段の努力を御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=94
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095・櫛田光男
○櫛田政府委員 只今色々御話がありましたが、郵便貯金の問題に付て少し説明を敷衍させて戴きたいと思ひます、全く仰しやる通りなのでありますが、唯所に依りましては十月一日以降に於きましては、何と申しますか、向ふに御預けになりました資金が結局現地に於て、或は向ふの軍政當局に於て、或は中華民國の政府に於て之を管理されて居る、斯う云ふ状況にあるものでありますから、隨て十月以降に預入れた分に付ては、内地では拂つてはいけないのではないかと云ふやうな話合ひなのであります、是も先程仰しやいましたやうに、御歸りになつた方が一應内地の郵便局と同じやうに現地の郵便局に御預けになつたものでありますから、其の日付の如何を問はずこちらで拂出が出來るやうな措置を一樣に講じられれば全くそれに越したことはないのでありますが、實情はさう云ふやうに内面的なことになつて居りますので、只今の所は御拂ひが出來ないと云ふやうな形に相成つて居る譯であります、それから特別措置預金の問題でありますが、是は過去に於きまして色々な經緯があつたのであります、此の點に付きましては最近やつと色々な諒解が付きさうであります、私と致しましては、極く最近の機會に、此の特別措置預金が内地の普通の預金と同じやうに扱はれると云ふ風に、確かになるであらうと云ふことを只今確信致して居ります、それから小切手の點でございますが、是も先程申上げましたやうに、一千圓を御拂ひ申上げて居りまする小切手は、九月二十三日までに内地に御持込みになつた分なのでございます、それで海運局で御預り申上げましたのは、慥か十月以降だと思はれます、それ以後海運局では一應御持歸りになりました小切手等に付きまして、已むを得ず御預りして居るやうな譯であります、即ち一千圓の支拂の對象とはならない小切手の部類に屬して居ると存ずるのでありますが、是等に付きましても、私共色々やつて居りますが、勿論不十分でもあり、色々また折衝の餘地はございませうと存じます、先程御話がございましたやうに、十分諒解を遂げない點が多からうと存じますので、私共もやりますが、皆揃つて當る所には當ると云ふ風なことを出來るだけ協定致しまして、私共も出來る限りの勉強を致す積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=95
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096・小柳冨太郎
○小柳委員 諄いやうでございまするが、例へば華中方面の貨幣價値と云ふものは、當時非常に内地と違つて居つた、それで私が自分の考へ方から申上げますと、當時七十倍送金だと云ふことで、所謂三千五百萬圓入れて五十萬圓の小切手を持つて來て居る、さう云ふ友人なども居りますが、是はもつと切下げて、二百分の一にしても三百分の一にしても宜しい、要するに持歸り資産に對しての査定をやる、是は政府の方で適當に決めて宜しい、華北方面は此の程度で一つ認めよう、それは成程擬制資本でありまするが、内地の國民が持つて居る資産も、在留民が持つて居る資産も同樣のものなのでございまして、國家財政の上から之を切下げなければいかぬと云ふことであれば、内地のものも切下げて、さう云つた内地の資本に對しての財産權を一應認める、是が大事だと思ふ、假に五十萬圓持つて來たものを五萬圓の價値として認めよう、之を大藏省で一應基準を定めて戴く必要があるのではないか、さうしてそれ等のものに對して、假に一億圓の金を持つて居つても、所謂内地の財産確認と同一の振合上、一應十萬圓の財産を認める、それに對して一萬圓なら一萬圓の補償をしてやると云ふ一つの形が必要でありまして、今の所洵に放任されて居る形であります、それで全國の引揚民はとつおいつ、思案投首の状態であります、それに對して一つ一つの問題に付ては、又爾後に御願ひを致します、時間を戴ければ一つ一つの問題の取扱ひ方に付て更に御願ひをし、又御答へを戴きたい、併し御答へを戴くに致しましても、國民を喜ばせるやうな御答へを戴く段階にまだ達して居ませぬ、それでそれ等の一つ一つの問題に對して最善の努力をして戴くことに致しまして、引揚者の財産に對する所の質問は打切ります
序でですから御尋ねを致しまするが、現在の新聞報道に現はれた金融處置の封鎖勘定の所謂分離の問題なのですが、第一封鎖預金として一萬五千圓まで認める、其の他は第二封鎖預金として之を凍結する、是は大體何時の期限を施行日となさるのであるか、要するに三月二日に遡るものであるか、來るべき一定の期限を付して公布されるものであるか、其の點に付て御答へを戴けたならばと存じます
更に財産税に對する課税の標準でありますが、是は何を以て財産税課税の標準とされるか、三月二日に申告を致しました當時に遡つて課税をなさるのであるか、或は今後適當なるそれに對する何等かの方法を講ぜられるのであるか、此の點を御伺ひ致します
更に又最近新圓太りの人が澤山ありますが、此の新圓に對して課税をなさらないと云ふやうなことになると、是は大きな問題なのですが、新圓に對して如何なる方法で課税をなさらうとなさるか、所謂新圓に對する財産税の課税方法に付て御所見が承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=96
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097・櫛田光男
○櫛田政府委員 御答へ申上げます、第一の點でございますが、是は實は此處ではつきりとまだ申上げます段階には到達致して居りませぬので、詳しくまだ申上げられませぬのは殘念でございますが、大體或は新舊勘定分離と云つたやうなことが起きますと致しますればと云ふ假定の下に御話し致しますと、恐らく御協賛を願ひまする提案を致しまする日、其の日現在と云ふやうなことになるのが一等筋が合つて居るのではないかと思ひます
それから第二番目の財産税の評價の問題でありますが、是は私、主管當局ではありませぬので、主税局の主管に相成る譯でございますが、大體三月三日午前零時を以て財産調査の方の御申告をして戴いた譯でありますが、それが基礎に相成るものと聞及んで居ります
それから新圓の問題でありますが、是も主税當局から御答へ申上げるのが筋かと思ひますが、大體最近に於きましての新圓に依る色色な關係の方は、詰り一般の税金と申しますか、所得税なり其の他の方面で以て十分に之を捕捉する豫定である、又それで出來ると云ふ風に私又聞及んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=97
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098・小柳冨太郎
○小柳委員 要領を得ない點もありまして、尚ほ突込んで納得の行くまで御尋ねを致したいのでありますが、是は爾後に讓りまして、今日は大切な時間を頂戴して質問をさせて戴いて居りますので、私の質問は一應是で打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=98
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099・庄司一郎
○庄司委員長 有馬君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=99
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100・有馬英二
○有馬委員 先程醫療費の二億八千萬圓と云ふことがありましたが是はどう云ふやうな方面に向けられるのでありませうか、内容を一應伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=100
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101・葛西嘉資
○葛西政府委員 是は要保護者の病氣に罹つた者の醫療費として支拂ふのが大部分でございます、其の他に或は入院を致しますれば入院の費用、それから患者等に附添人が是非必要でありますれば、其の附添人の費用、或は患者の移送を要しますれば患者の移送の費用、さう云ふ風なものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=101
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102・有馬英二
○有馬委員 私は此の費用を甚だ少額である、確かな規定で以てさう云ふやうな額が算定されたかと云ふことを伺ひたいのでありますが、假に失業者の救濟しなければならないのが、政府は八百萬人と云ふやうな御想定であつた、其の中六百萬人が生活保護を要するものであると云ふやうな御考へであつたと私は記憶して居ります、假に其の中に醫療を要する者がどの位ありませうか、今我々が知つて居るだけでも、國内の結核患者は凡そ三百萬人、其の中の何分の一が醫療を要するか知りませぬが、其の他の慢性の病氣を加へますと莫大な數にならうと私は考へる、假に六百萬人の中二百萬人が醫療を要する者と考へますと、それが一年に百圓づつ要すると假定すると既に二億になる、こんな少い金で、而も是から生活が緊迫する時に、それ位な少額で多數の人の醫療が充たされるかどうかと云ふことを私は疑ふ、此の點に付て御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=102
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103・葛西嘉資
○葛西政府委員 此の醫療費の見積りに付ての御質問でありまするが、從來此の點に付きましては私共が基礎と致しましたものは、國民健康保險の大體の醫療關係でございます、色々醫療費が掛りますが、大體單價と致しましては五十圓と見まして、六百萬人の人の罹病率等を勘案致しまして、其の他に國立病院等で療養を受けます者を差引きまして、今申上げましたやうな二億八千餘萬圓で先づ十分ではないかと云ふ風に見積つてある次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=103
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104・有馬英二
○有馬委員 基本の取り方に或は違ひがある爲に、今の御答へのやうな金額で十分だと御考へになるのかも知れませぬが、只今私が申上げましたやうに、洵に少額である、而も醫療費は非常に高くなつて居る、私共最近調べました所に依ると、大體民間の醫療費は、十倍から二十倍、或は三十倍に達して居る所の醫藥品が澤山ある、又醫藥品の生産者から聽きますと、從來の醫藥品、殊に統制品の醫藥品でありますが、それだけでも約九倍に當つて居ると云ふことであります、然るに今の御答辯であると一人當り五十圓である、一年間五十圓の醫療費で到底滿足な醫療を加へられるとは私は考へない、若し是が不足な場合には、政府は十分にそれに對して御増額になる御見込があるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=104
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105・葛西嘉資
○葛西政府委員 有馬委員から重ねての御話でございますが、一應從來の健康保險等に於きまする費用よりは多少値上り等も見込みまして、國民健康保險などに比べますとゆとりのある見方をして居るのではないかと思つて居ります、併し尚ほ專門的に御調べになりました結果、更に餘計要ると云ふことでありますれば、豫て大臣が御話になつて居りますやうに、本費途は法律に基く義務費でありますので、第一豫備金、其の他追加豫算等に依つて必要な經費を調達しなければならぬ性質のものでございます、尚ほ又斯樣に至りませぬでも、三十億の此の生活保護費の内譯としましては一應豫算の見積りでありますので、彼此融通等は適當に出來るやうなことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=105
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106・有馬英二
○有馬委員 次に私は先程も一寸述べましたが、生活が逼迫して段々生活困難に陷る結果病人が殖える、尚ほ又戰時中多數の結核患者が殖えた、御承知の通り、政府は戰爭になりましてから多數の傷痍軍人療養所を設けた、是は名前は傷痍であるけれども、實際は悉く結核患者を入院させた、唯特定な病氣に付てのみ、或る特定の療養所を當てたに過ぎないのでありまして、大部分は結核患者を入れて居る、然るに終戰間際に至つて、政府は周章狼狽多數の結核患者を解放して家に歸したのであります其の爲に開放性の菌を持つて居る患者が市井に氾濫したのは云ふまでもないことで、それが其の儘今日まで保たれて來て居ると見て差支へないのであります、斯う云ふやうな状態で今度の政府になつたのでありますが、現政府は一體結核對策に付てどう云ふ御考へを持つて居られるか、將來の見透しを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=106
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107・勝俣稔
○勝俣政府委員 我が國の結核對策に付きましては、先般此の席で厚生大臣から申上げ、又私からもそれに補足したやうな次第でございまして、それに於て一つ御諒承願ひたいと思ひます、尚ほそれに加へさせて戴きたいと思ひますのは、戰前に於きまして結核豫防對策を樹てまして、それに付きまして結核豫防法の改正と云ふやうな問題も考へて立案まで致しましたが、つい戰時下の爲に是が中途に葬られるやうになりましたことは、私共非常に遺憾に思つて居るやうな次第でございます、此の點に付きましては、何れ又色々と有馬委員にも御心配を願はなければならぬ問題が多々あるのではなからうかと思つて居ります、其の當時の問題と致しましては、やはり結核の病床は、少くとも一年の結核患者の死亡數だけは病床を欲しい、それから開放性結核患者は全部届出で、さうしてそれを管理しなければならぬのであります、それから最近申上げましたやうにBCGの徹底、「ツベルクリン」の檢査を致しまして、陰性の者に對しては「ツベルクリン」、BCGの注射を致しまして發病を防止しよう、さうすれば發病の二分の一まで、發病した人も死亡は八分の一まで減る、斯う云ふやうな貴い學術振興會の成績を實際に應用しなくてはならないのではないか、一方に於きまして斯う云ふ考へで居ります、尚ほ結核は早期に發見すれば必ず治るものである、治るものであるにも拘らず、早期に發見が出來ない、しないと云ふことがいけない、早期に發見さへすれば治るのであるから、早期の結核患者を、早期に發見して治療して行かうぢやないか、斯う云ふ方針で從來もやつて居りますし、今後もやりたいと考へて居る次第でございます、尚ほ御承知のやうに、結核は榮養の問題で、現在の食糧事情は實に結核に對する大敵でございます、此の問題を色々な方法で解決出來ますれば、結核問題も餘程好轉するのではなからうか、又勤勞衞生の見地から結核問題を考へなくてはならぬと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=107
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108・有馬英二
○有馬委員 只今大變詳しい御説明がありましたが、重複するかも知れませぬが尚ほ重ねて御伺ひ致します、終戰になりましてから、我が國の軍に屬して居つた病院をそれぞれ軍から厚生省が接收をされた筈であります、即ちそれが只今では國立病院と云ふ名で使用されて居ると私は思ひます、我が國の開放性結核を收容するに足るだけの病床數が今日まで非常に不足であつた、例へば勝俣政府委員が言はれたやうに、政府は年々それが爲に非常な努力をされたにも拘らず、病床數がまだ結核死亡數には遙かに達して居ないと云ふことであります、そこで傷痍軍人療養所を國立療養所と致しまして、それに結核患者を入れても、まだ到底總ての死亡結核患者をさへ收容することが出來ない、そこでどうしても私共は、尚ほそれ以上に病床を増すことが必要であると考へて居るのであります、政府も勿論今までそれに努力されて居つたことは承知して居りますが、此の陸海軍の病院を國立病院として收用した際に、私はそれが結核患者收容の爲に使はれたならば、此の目的完遂の爲に非常に貢獻する所あるものと考へて居る、所が政府は今はそれを普通病院として使はれて居るらしい、勿論其の中には色々差迫つた治療をしなければならぬ患者も多數居りませう、是は出す譯には參りませぬから當然でありますが、なぜ此の病院を結核治療の爲に特に使はれるやう御考へにならないのであるか、或は將來さう云ふ御考へがあるかどうかを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=108
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109・鹽田廣重
○鹽田政府委員 御答へ致します、只今御尋ねになりました、國立病院を少くとも其の何分かを結核療養の爲に使はぬかと云ふ御尋ねでありますが、國立病院になりました陸海軍病院は、元々其の國立病院と云ふ名前に相應しい爲に拵へてあるのではなくて、陸海軍病院を一時國立病院と云ふ名前に改めたのであります、隨て其の中に治療を受けて居る主な人々と云ふものは、傷痍軍人であつたのであります、さうしてそれが其處に收容されて居つた方々だけを治療すれば、それで終ると云ふのであつたならば、そこに餘裕が出來るから、あとは他の目的に使ふことが出來るのでありますけれども、何分にも海外に於ける多數の軍人さんが歸つて來られて、其の中には傷病者も多數ありますし、それから又斯う云ふ病院は軍人にのみ特別に使用させると云ふことはいけない、他の病人さんも皆同じやうに國民として治療すべきであると云ふ命令に基きまして、戰災に遭つた方々の中の怪我をした人や病人さん、或は國で治療を要するやうな人々も入れて治療をして居るのでありまして、殊に其の中でも海外から歸へられる人が非常に澤山である、それがどの位の患者が居られるかと云ふと、凡その推定はありますけれども、きちんとした數が分らぬので病床を空けて今日まで待つて居るやうな次第であります、所が今日になりますと、そろそろ此の病人の爲にどの位病床を空けて置いたら宜いかと云ふことが凡そ分つて來ましたので、近い内に其の國立病院のどのものは結核の病院に使用しどのものは癩の病院に使用し、又或は土地が非常に邊陬な所に澤山同じやうな病院があつたりするのでありますから、其の中の或るものは閉鎖して他の目的に使つて宜いと云ふので、其の邊の按配を今考慮中であります、近い内にそれ等も追追に決まることになり、結核に向つても配分されることになりまするが、併し全部が結核になると云ふ所までは參りませぬ、其の點を御答へ致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=109
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110・有馬英二
○有馬委員 勿論まだ是から相當長いこと要するでありませう、終戰の跡始末と云ふものは中々さう容易に片付くものではないのでありませうから、今御答辯になりましたやうに、早くに見透しが付くとは思ひませぬが、我が國の結核對策と云ふものは決してさう容易いものではない、餘程我々が力を入れてさへも結核は中々少くならないので、私共長年の間結核事業に從事して來た者には、此の傷痍軍人療養所が、國立療養所となつて一般の人に使はれるやうになつたと云ふことが、一つの大きな進歩でありますけれども、それだけでは到底療養の「ベッド」にならないことは明かであります、どうかして他で急速に病床を充實したいと考へて居つた矢先、陸海軍が多數の病床を持つて居る、現在の國立病院之を只今御答辯になりましたやうに、色々の患者に、或は其の他の目的にも御使用になることは刻下の要望に依つて仕方がないのでありまするが、願くは多數の病床を結核療養だけに充てられんことを希望するのであります
次に先程政府委員からBCGの問題が出て居ります、只今結核豫防對策としてBCGの豫防を私共もやつて居るのでありますが、政府から製造費として給與される金は非常に少くて、製造を段々減らさなければならぬと云ふことが心配な位であります、私共長年BCGの研究に從事し、又其の製造を引受けた者に於きまして、結核の豫防にはどうしてもBCGの注射をしなければならぬと固く信じて居る者の一人であります、其の製造が戰前より減退するやうなことがあつては大變であります、そんなことでは到底結核を豫防することは出來ないのであります、此の製造は只今では恩賜財團法人の結核豫防會が引受けてやつて居るのでありますが、昨年度のBCG製造費と今年度とを比べて見ますと、是が又減額されて居る、是は國民體力法の實施が中止された爲に減らされたと云ふことを聞いて居るのでありますが、國民體力法を廢めたのは致し方ありませぬけれども色々の物資が非常に高くなつて居る──餘り細かいことは申上げませぬけれども、お分りになつて居られることと思ふのであります、人件費に致しましても、色色のものが非常に高いのに、それが減額をされたのでは到底やり切れない、さう云ふ亂暴な豫算を組まれたのでは私共は到底承知が出來ないのであります、どうしても此の豫防費は増しで戴きたい、もう豫算が決定されたのでは致し方ありませぬが、さうでなければ追加豫算にでも出して戴きたい、殊に本年度のBCG製造費は少くとも三倍乃至四倍位に上げて戴きませぬと、百萬人、或は今年は少くとも二百萬人分の製造を私共の所で引受けて居るのでありますが、厚生省からの御命令のBCGの製造が到底御希望の通り行はれない、それでは到底豫防接種が完全に行はれないのでありまして、此の點は特に私は御願ひをするのでありますが其の點に付て一つ御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=110
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111・勝俣稔
○勝俣政府委員 今BCGに關し國庫から出す補助の問題に付きまして御質問がございましたが、昨年よりは減つて居ると云ふ問題は多分結核豫防會に對する補助費の問題ではなからうかと思ひますが、BCGの製造費に關しましては、昨年は製造所の建設費と云ふものが見込んでありましたけれども、今年度はそれがない爲に製造費それ自身は寧ろ増して居るのでございます、今申上げましたやうに製造所の創設費が昨年の補助にはありましたが、今年度の補助にはない爲に、結核豫防會に對する補助費は減つて居るやうな次第でございまして、其の補助費に付きましては寧ろ約倍位にはなつ居るやうな次第でございます、併しながら先程有馬委員からの御話のやうに、體力管理を廢めました爲に、集團檢診と云ふことが中々困難である、從ひましてBCGを注射する手段が相當少くなつて來た、斯う云ふやうなので、補助費の限りに於ては倍位になつて居りますが、人數に付きましては昨年より減つて居るやうな次第でございます、併し私共の方と致しまして、現在是ではいけないから、何等か方策を今少し考へようと云ふことになりまして、今研究中でございまするが、二十歳未滿の者で陰性者を全部注射しよう、或は三十歳未滿の者を全部注射しようと云ふことを今考究中でございます、之に付きましては實は大臣からも一つ研究しないか、斯う云ふことになつて居ります、それで三十歳未滿の者と致しますと、約三千萬人の陰性者が出て來ると云ふ數字になりまして、相當な額になりますが、斯う云ふことが果して現在の製造所で可能であるかどうかと云ふやうな、製造所の方の心配も今度はしなくてはならぬと云ふやうな關係になりまして、今二十歳未滿をやつて行くか、三十歳未滿の方だけにやつて行くかと云ふことを考究中でございます、豫算の問題に付きましては、まだ私共の方では手許にはない譯でありますから、何れ大藏當局とも相談して一つやるやうにと云ふ、大臣の我々に對する指示でございます、其のことを附加へて、置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=111
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112・有馬英二
○有馬委員 只今の御答辯で私の研究して來たこと或は資料に何等かの差があるのかも知れませぬから、私は是れ以上は申上げませぬが、兎に角非常に物價が高くなりまして、資材の入手も困難であります、私共非常に努力して居るのでありますが、只今の三千萬人の注射と云ふことも、資材さへあれば容易に出來る、但し其の資材を得るのには、非常に物價が高くなつて居りまして、今までの製造費では到底間に合はないと云ふことを御諒承願ひたいのであります
それからもう一つ御尋ねしたいのは、日本醫療團の結核對策で、先程も富田委員に御答辯になりましたが、醫療團の機構或は運用に付てはまだまだ究究しなければならぬことが多々あると思ふのであります、醫療團は其の目的の一つとして結核豫防をやつて居る、さうして全國八十箇所の醫療團の結核療養所を持つて居り、極く輕い結核患者を收容する爲に強健寮を造つて居ると云ふことを私共承知して居り、病床が約三萬以上に上つて居ると云ふことでありますが、先程も申しましたやうに、醫療團も其の經營が中々困難であつて、今日では治療費が高い爲に、患者が入院し切れなくて段々退所或は退院して居ると云ふ現状であつて、約二割しか患者が入つて居ないと云ふことであります、斯う云ふことでは日本の結核對策に大なる支障を來すと思ふのであります、現在の國庫補助は約五%であると云ふことでありますが、さう云ふことでは到底患者は、負擔し切れるものではないのでありますから、是は何としても政府に於てもつと之を御活用なさるやうに、經濟の方面に付ても御考慮を拂はれて、患者を出來るだけ多く此の病院に收容するやうに御努力を願ひたいと思ふのであります、それに付きましては、どうしても此の醫療團の經營を變へて行かなければならぬ、現在は入院料の約半分が患者の負擔であると云ふことでありますが、それでは到底患者が拂ひ切れないと云ふので、退院するのでありませうから、少くとも醫療團が國費を以て之を經營する、さうして段々に生活苦に陷つて入院料を拂へないと云ふやうな人が多くなつて來て居る、殊に長いこと掛る所の結核患者に於ては尚更でありますから、さう云ふ人を救ふ爲に、少くとも此の生活保護法を適用するやうな、或は適用の範圍をずつと擴めて居るのでありますから、それに合致するやうに、此の機關を十分に活用されんことを希望するのであります、それに付ては今の經濟的方面から、之に十分今までとは違つた、或は今豫定されて居る所とは違つた構想が要ると思ひますが、それに付て御所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=112
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113・勝俣稔
○勝俣政府委員 醫療團の結核療養所に付きましては、今私の方で調べました所に依りますと、四〇%位入つて居るやうに考へて居ります、此の問題は主として食糧問題でございまして、食糧が解決出來ない爲に皆出て行くと云ふやうな關係が大きな問題ではなからうかと思ふのであります、此の問題に付きましては先程有馬委員からも、各病院が、醫療團のみならず、他の病院もからからである、實際其の通りでありますが、是は食糧問題で入院に非常に困つて居る、今の配給だけでは兎に角やり切れませぬから、結局闇の物を買つて患者に與へなければならぬと云ふやうなことになるので、今の醫療費の國庫の補助では、迚も醫療團はやつて行けない、斯う云ふのでございまして、現在は一病床千四百圓と云ふ數字になつて居るのでございますが、一箇年間千四百圓で患者が居られると云ふことは、全く夢のやうな話でございます、之に付きましては目下大藏當局の方へ御願ひをして居るやうな次第でございます、それから醫療團の結核療養所に付きましては、全額國庫で持つ、斯う云ふやうなことでございますが、是が出來れば醫療團としては尚ほ好い話でございますが、實際の所は、有馬委員は二分の一と申されましたが、實は三分の二を國庫で出すと云ふことになつて居ります、併し三分の二と申しましても、先程申上げましたやうに、一病床千四百圓ならば何にもならぬと云ふことになりまして、現在の状態では、患者が入れば入る程、醫療團の結核療養所が赤字になつて來ると云ふやうな次第でございます、此の豫算は是非増額して貰はなければならぬと思ひまして、折角今努力中でございますから、どうぞ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=113
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114・有馬英二
○有馬委員 政府は此の結核問題に付て深甚な考慮を拂つて居られ、今折角研究中であると云ふことでありますから、私は是れ以上質問は致しませぬ、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=114
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115・庄司一郎
○庄司委員長 本日はえらい御勉強を願ひました、之を以て散會したいと思ひますが、明日は諸般の事情で委員會の開會が出來ませぬ、甚だ殘念でございますが、速記の關係、部屋の關係、政府當局の關係等との理由に依つて、遺憾ながら明日はやれませぬ、隨ひまして明後日少々勉強させて戴きまして、九時三十分開會としたいと思ひます、殘餘の質問通告の方々が約七名程ございます、他に柄澤議員の委員外質問の通告も許可されて居るのでございます、殊に又無所屬の三木キヨ子議員より、三十分程度の簡單な質問の熱心なる御希望もあります、是も亦柄澤議員を御承認戴いたと同樣な御趣旨を以て、言論暢達の爲に、其の熱心に報いてやらなければならぬと存じます、是も皆さんの御賛成を頂戴しなければならぬのでありますが、柄澤議員の前例もございますので、特に三十分程度の簡單なと云ふ條件がございますから、御承認を御願ひ申上げたいと存じます、隨て明後日は午前九時三十分開會、午前午後を通じて御勉強を願ひまして大體の質問を終へ、それから豫定としては、委員の懇談會を開催したいと考へて居る次第であります、本日は之を以て散會致します
午後三時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X00819460806&spkNum=115
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