1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
生活保護法案(政府提出)
—————————————————————
昭和二十一年八月十五日(木曜日)午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 庄司一郎君
理事 小柳冨太郎君 理事 齊藤行藏君
理事 有馬英二君 理事 長谷川保君
今井はつ君 山口好一君
大島定吉君 坪川信三君
山下春江君 原捨思君
菅原エン君 山崎道子君
川越博君 平川篤雄君
木村チヨ君 松谷天光光君
同日委員田中たつ君辭任に付其の補闕として木村チヨ君を議長に於て選定した
出席政府委員
厚生政務次官 服部岩吉君
厚生事務官 葛西嘉資君
厚生事務官 加藤精一君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に付した議案
生活保護法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=0
-
001・庄司一郎
○庄司委員長 それでは是から開會致します、大藏大臣は只今貴族院に居られ、豫算總會の方もございますので、どうしても遺憾千萬でございますが見えられませぬ、甚だ遺憾の意を表する次第でございまするが、餘儀ないことでございます、御諒解を御願ひ申上げまして、是より討論竝に採決に入ります、其の前に委員各位の御諒解を戴けますならば、昨日各黨各派より頂戴を致しました附帶決議の希望要項を昨夕理事各位竝に各派の總代の方々と御審議の上、二十五、六ございました御希望要項を六項目に壓縮綜合整備させて戴いたのであります、若し委員各位の御許しがございますならば、委員長に於て一應茲に御報告旁旁朗讀させて戴きまして附帶決議の第一項より第七項まで改めて御賛成を戴きたいと思ふのでございます、如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=1
-
002・庄司一郎
○庄司委員長 滿場の御賛成を戴きました
附帶決議
一、民生委員の國家待遇を厚くし、其の手當を相當額に増額すべし、尚ほ其の任期は二箇年とすべし
二、民生對策上、中央、地方に效果的なる委員會を設け、本法運營上の萬全を期せられたし
三、民生委員の選衡方法を努めて民主化し、町内會長、部落會長、引揚同胞總代、社會事業關係者、要保護者中よりも選拔せられたし
四、都道府縣の民生委員の選衡委員會には多分に地方議員を參加せしめられたし
五、本法を中心に社會事業法、司法保護事業法等の調整を圖られ、且つ國民保險組合の改善、失業保險の創設等に邁進すべし
六、生業扶助一人當りの扶助額を増額すると共に、造營物施設に付ても相當増額せられたし
七、國立病院、結核療養所等の收容者等に對しても本法に依る生活保護の愛の手を伸べられたし
以上の七項目を附帶決議に付けたいと考へて居るのであります、其の他只今の分に包容されて居りませぬ部分は、委員長本會議に於ける報告書の中に努めて委員各位の御熱心なる希望要項を盛り上げまして、政府に強く要請する方針でございます、其の點正しく良心的に努力したいと考へて居りますので、委員長に對して御信頼を戴きたうございます、以上の通りでございますが、附帶決議の方は此の程度で宜しうございませうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=2
-
003・庄司一郎
○庄司委員長 滿場御異議はございませぬ、附帶決議の點は皆樣の御賛同を戴きました、是より生活保護法案を議題とし討論に付します、討論は逐次之を許します──小柳富太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=3
-
004・小柳冨太郎
○小柳委員 私は日本自由黨を代表致しまして、本法案に對する態度を表明致します、本案に對しては是まで十餘回に亘る審議を重ねられ、今日までに於ける質問應答に依つて政府が本案を制定された趣旨と其の精神を大體了承し得たのであります、我が自由黨の今日まで政府に於て示された趣旨精神が其の運營面に遺憾なく發揮されるやう希望する意味に於きまして、只今委員長より附帶決議の御發表がありましたが、更に之を具體的に申述べまして、本案に賛成せんとするものであります
其の一、本法をして現實に即し效果あらしめ運用の圓滑を期する爲に、左の推進機關を設けること、一、民生對策中央委員會、國會議員、社會事業其の他の國體代表二十名内外を以て構成、二、民生對策地方委員會、地方議會、區及び郡市民生委員會代表、引揚者其の他適當な團體の代表等二十名内外を以て構成、前二項の委員會の權能其の他に關する細則は別に之を定む、以上の規定に基いて本法の效果的な運營を圖られたいとするものであります、厚生大臣の答辯の中に、中央に於て中央社會事業委員會を活用する旨の御表明がありましたが、我が黨が此の委員會設置を條件と致しまする趣旨は、即ち本法案が單に救貧的な保護事業と云ふよりも、失業救濟的な生業助成の積極的な推進をなすべき性格の發揚に依り、今後政府に於て計畫されるべき失業對策との關聯を必然ならしめる意味に於て、多分に政治的な運營を必要とするからであります、即ち生活保護は飽くまで最後の一線に止めるべき性質を持ち、一面暫定的の生活扶助は次の段階として生業助成に切替へ、更に生産企業の助成指導に突き進むことが、日本の再建と國民福祉を圖る要諦でなければならない、以上地方中央を通じて是等の處置に付て綜合的計畫性を持つた運營を要請されまするが故に、強力な政治力を有する所の委員會制度を必要とするのであります
其の二、失業扶助に對する總豫算を増額し、一人當り扶助額も相當額引上げることであります、政府は生業扶助に對する見込總額を本年度に於て僅かに四千五百萬圓と發表せられましたが、左樣なことでは國民の生業意欲を抑制するに等しいのでありまして、生業助成の指導宜しきを得たならば、一面生活扶助の國家負擔を輕減し、國民生活安定を促進するものでありまして、それこそ國家國民の希求して已まざる所であり、政府は是が爲にも地方委員會の活動に適當な彈力性を與へて、大いに國民の勞働意欲、就業意欲を振起せしめることに努むべきだと考へます
其の三、厚生當局は大藏省と折衝し、本法に關する施設費を相當額増加の件に付て承認せしめる爲に努力して戴きたいのであります
其の四、民生委員手當を相當額引上げること、民生委員令に依る民生委員の任期を二年とする
以上の五項目に亙る決議に對して政府は其の實現を期せらるべきことを要望致しまして、本案に賛成を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=4
-
005・庄司一郎
○庄司委員長 有馬英二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=5
-
006・有馬英二
○有馬委員 我が黨と致まししては、本法の總精神を重んじて各條項に付きましては、色々詳細な點に付きまして多少の異論はないでもありませぬけれども、大體に於て之を修正することなく承認したい考へを持つて居りますが、只今委員長から御發表になりました所の此の七箇の附帶條件に付きましては、大體に於て之に賛成致しまして、尚ほ此の際の附帶條項を今後十分に發揮されることを希望致しまして賛成することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=6
-
007・庄司一郎
○庄司委員長 長谷川保君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=7
-
008・長谷川保
○長谷川委員 本法案は三十億圓の國庫補助、五億圓の地方分與金、計三十五億圓の巨費を投じ生活に困難する同胞八百萬人の生活を維持せんとするものでありまして、從來の此の種立法たる救護法、母子保護法等に比較して格段の進歩したものであることは之を認むるに吝かでありませぬ、此の點厚生當局の勞を多とするものであります、併しながら之を仔細に點檢して、重要なる點に於て最少限度一箇所の修正を要すると思ふのであります
本法案の最も重要な點は四つあります、第一は本法案の根本精神を明記する第一條であり、第二は本法を實際に運營する民生委員に關する第五條であります、第三は、第十條及び第十一條の保護の種類及び程度に關する條項であり、第四は、第二十四條乃至第三十一條に於ける保護費用の補助の條項であります、此の中第二、第三、第四の點に付ては、我が黨は與ふ限り他黨と協調して附帶決議を付することに致しまして、賛成することに致したいと思ふのでありますが、第一の點、即ち第一條に付きましては條正を行はんとするものであります、即ち第一條は「この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、社會の福祉を増進することを目的とする。」と云ふのでありますが、我が黨は「平等に保護して」の次に「その最低生活を保障し」の字句の挿入せんことを提案するものであります、河合厚生大臣は本委員會に於て、本法は國民健康保險或は六十億圓を以てする失業救濟公共事業等に於て尚ほ救ひ得ざる人々を救ふのである旨を説明せられて居ります、果して然らば此の法律は保護せられねば生きて行けない國民の生存を守る最後の法律であると言はねばなりませぬ、今後尚ほ幾多の社會立法が作られるでありませうが、而もそれ等幾多の社會立法に依つての救ひに漏るる國民を最後に救ふ網は、又實に本法であるのであります、即ち本法案こそは國民の最後の生存權を守る法律と言はねばならないのです
今や慘憺たる敗戰の結果、杖とも柱とも頼む一人息子を失ひ、戰死の報を受けつつも、諦め兼ねて日毎南の空を想ふ絶望の老人達、再び生きては還らずと教へられつつも、夜毎に雨戸を叩く風の音に、若しやと父の歸り、夫の歸りを戀ひ慕うて枕を濡らす寄る邊なき孤兒や其の母達、戰災に家も財産も一切を失うて路頭に迷ふ人人、手足を失ひ、目を失ひ、生れも付かぬ不具者となつた病み傷つける人々、乞食の如く垢塗れになつて、無一物で海外から歸つて來る人々、彼等は今「インフレ」の重壓の下に貯へも使ひ果して、行く先きを如何にせんか、今日の糊口を如何にして過さんかと悲しみ憂ひ拔いて居るのです、更に今や軍需補償の全面的打切り其の他今後不可避的に續いて打たるべき我が國財政經濟の根本的建直しの大手術の結果出るべき五百萬人の失業者等、今や凡ゆる手を盡すも尚ほ生存の最後の線に追込まるる者八百萬人を豫想せざるを得ないと云ふのであります、是等の氣の毒なる人々が自らの責任に於て此の不幸なる境遇に落ちたものでないことは言ふまでもありませぬ、是等の人々は戰爭の犧牲者であります、國策の犧牲者であります、隨て是等の人々の最後の生存權を保障することは國家の責任であります、本委員會に於て、國民の最低生活を絶對に保障するかとの質問に對して厚生大臣は、絶對に保障すると云ふ譯には行かぬと答へられ、それでは或る程度保護して、後は見殺しにするのかとの重ねての質問に、いや見殺しにすると云ふのではない、出來るだけ力を盡して保護すると答へられて居ます、併しながら事は生死の關頭に關する問題であります、「イエス」か「ノー」か、明確に答へられなければなりませぬ、八百萬人の要保護者は生死の關頭に立つて、生活保護法は自分達を生かさしめるのか、それとも或る程度の援助の後は見捨てるのかと必死に問ひ詰めて居るのです、是等の人々に取つて曖昧は許されませぬ、生か死か、其の中間は事實にはないのです、新憲法に於て人間の基本的人權を尊重し、之を保障すると云ふ、併しながら生存を保障せずして何の基本人權の尊重ぞやであります、生存即ち國民の最低生活の保障こそは民生國家最大の目的でなければなりませぬ、曩にも申しました如く、他の法律で救ふも尚ほ救ひに漏れる同胞八百萬人を本法で救ふと云ふのであります、此の法律で最低生活の保障をせずして、一體何處に基本人權の具體的又根本的保障をなさんとするのでありますか、本法に最低生活の保障を書くのは當然ではありませぬか、聞く所に依れば、關係方面に於ても、本法は慈善的又は恩恵的なものであつてはならぬ所要の經費に付ては「リミット」を設けてはならぬとの御指示があつたとのことであります、然り國家は國民の最低生活を保障する責任があり、國民は之を要求する權利があります、國家が國民の生存を保障し得ず、政府が國民の最低生活を守り得ずして、國民が餓死するとするならば、國家に何の權威がありませう、政府はないに等しいので、此の故に國家が國民の最低生活を保障するのは當然であり、更に進んで是等餓死線上にある人々の生活を絶えず向上させることを努力しなければなりませぬ、今後の激しかるべき勞働爭議に於ける勤勞者の要求は、窮極する所又此の最低生活の保障を要求する悲痛なる血の叫びであります、而も大いなる悲劇は、多くの企業自體が今や採算割れに立至つて居る現實であります、是れ故に國家が本法に於て國民の最低生活を保障し、國民をして最惡の場合に於ける保障を、得せしめ安んじて國家再建の爲に後顧の憂なく全力を盡して凡ゆる方途を策せしむるは又喫緊のことであります、國民の最低生活は斷乎保障されなければなりませぬ、最も微力なる國民の生活が安全に確保せられて、そこに初めて眞の民主國家があるのです、此の理由を以て我が社會黨は第一條を「この法律は、生活の保護を要する状態にある者の生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、その最低生活を保障し社會の福祉を増進することを目的とする。」と修正せられんことを提案するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=8
-
009・庄司一郎
○庄司委員長 川越博君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=9
-
010・川越博
○川越委員 私は只今議題となつて居りまする生活保護法案に對して協同民主黨を代表致しまして賛意を表するものであります、以下簡略に申上げます
民生委員令に依ります所の民生委員の任期は、原案に依りますと三年と云ふことになつて居りますけれども、是は長きに失するから二年に致したいのであります、尚ほ民生委員の處遇に關しましては相當額を引上げる、即ち現在の見込では年二百圓でありまするが、之を五百圓程度に引上げて貰ひたいことを希望するものであります、此の點は委員長が附帶決議の中に既に織込まれて居られるやうでございますから、どうか此の點を當局に於ても篤と御考慮の程を切望するものであります
それから本法案と社會事業法との關係でありますけれども、社會事業法と云ふものは今日の生活保護法を豫想して出來て居るものではなくして、其の間兩法の間には重複の點が多々ございまするから、政府に於きましては社會事業法に對し、本法との關聯に於て根本的な改革を講ぜられ、次期の議會なり、成べく速かに之を提出されんことを希望するものであります
それから本法の運用の重大性に鑑みまして、政府は民生委員の銓衡と云ふことに付ては、格段の注意を拂つて戴きたいのであります、民生委員の銓衡に付きましては、どうしても保護を受ける所の者の代表者、さう云ふものも是非とも織込み、それを參加せしむるやうにして戴きたいのであります、例へば戰災者であるとか、或は引揚者であるとか、或は又遺家族、復員者、斯う云つた所の保護を受けるやうな状態の立場にある所の人々より此の代表と云ふものを──必ず入るものとは思ひますけれども、其の點に手拔かりのないやうに、本法の重大使命を扼する所の此の委員の銓衡には注意をされて戴きたい、それと同時に本法の運用と云ふことが實際は民生委員の活動如何にあります、併しながら現行の方面委員到度に依りますと、或る箇所に於ては非常に活動が活溌であるけれども、或る箇所に於ては殆ど振はない、非常に斑があると云ふやうな状況でありますから、名譽職がある所の今度の民生委員に對して査察制度を設けると云ふことは如何かと存じますけれども、此の活動促進に關して適當なる所の考慮を拂ひ、萬遺憾なきを期して戴きたい、此のことを切望するものであります
次には現在の國民健康保險制度、之に付きましては地方に於て種々なる異議があるのであります、本法の立法の精神と云ふものは非常に歪曲されて居るのであります、此の國民健康保險と云ふものを地域的に職域的に立法化して貰ひたいとか、或は國家補償金の増額、さう云つたやうなことが要望されて居りますけれども、此の國民健康保險制度に付ても、或は今後當然考慮さるべき所の失業保險制度に付ても、政府は社會保險制度調査會に於て之を審議されると云ふことでありますけれども、單なる審議にあらずして、どうか是が社會政策全般として、先程社會黨の長谷川委員が熱烈に最低生活の保障と云ふことに向つて意見を述べられましたけれども、此のやうな社會保險、社會立法、さう云つたものに付て綜合的に社會政策を行つて、さうして國民の最低生活保障に向つて政府は邁進をされて戴きたいのであります、當然に失業對策の事業、さう云つたやうな全般の政府の施策にも依りますけれども、本法を中心と致しまして、國民の最低生活の保障に向つて政府は勇往前進されんことを希望するものであります
協同民主黨に於きましては、本法の第一條に於て社會黨が先程述べられた所の最低生活保障云々の問題に付きましては、非常なる所の賛成の意見もあり、或は本法だけに依つて挿入出來ないからと云ふ色々の議論もありましたけれども、協同民主黨と致しましては、原案の修正は致しませぬけれども、其の精神に於て、政府ははつきりと──昨日の此の委員會に於きましても、吉田總理大臣は、國民の最低生活保護には特に意を用ひて居ると云ふことを申されて居りまするけれども、其の言葉と云ふものを單なる言葉ではなくして、實際に於て實行されんことを要望するものであります
それから國立病院結核療養所の收容者などの生活保護に關しましては、直接的に本法の適用を受けないことになつて居りまするけれども、此の患者の生活保護に關しても愛護の手を差伸べて戴きたいのであります
それから生業扶助の増額の件に關しまして、自由黨の代表からも述べられましたけれども、此の増額をやつて戴きたいことを希望するのであります、今日復員軍人であるとか、或は引揚者であるとか、さう云つた人々の生活は闇をやらねば生活が出來ないやうな状態であります、闇をやらなければ生活は出來ない、即ち生活の爲に闇をやるのでありまするからして、斯う云つた人々は困窮の状態に陷つて居る、或は陷らんとして居る、斯う云ふ時に當りまして、速かに此の生業扶助と云ふことに又重點を置いて、此の豫算を増額をして戴きたい、さう云ふことを希望するのであります、之を要しまするのに、本法と云ふものは實際の運用が大切でありまするから、此の委員會に於て政府當局竝に我々委員の間に質疑應答がありました所の精神が實際の運用に於て遺憾なく適用されるやうに、此の點政府は格段の注意をして戴きたい、此のことを委員長は附帶決議に織り込まれ、或は附帶決議の中に織り込まれない點は、委員長の報告に於て參酌されんことを念願致しまして、本員は本案に賛成するものであります、以上を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=10
-
011・庄司一郎
○庄司委員長 木村チヨ君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=11
-
012・木村チヨ
○木村(チ)委員 大體私が申上げようと思つて居りましたことは、各議員から細目に亘つて申されましたので、私から申上げることは避けて賛成するものであります、併し只今各議員の申されましたやうに、民生委員の銓衡に付きまして少し御願ひしたいと思つて居ります、民生委員の俸給の問題が出ましたが、私も現在民生委員でありますけれども、二百圓の月給と申しますか、手當と申しますか、さう云ふものは本當に私達自分の手で使はずに、全部それを出してしまふのであります、餘計に戴けば戴くだけ民生委員其のものは、自分の懷ろに使ふと云ふことも全然ないのでございますから、切上げて年に千圓位の手當がして戴きたいと云ふことを思つて居ります、それから民生委員の銓衡に付きましては、婦人を多數に選んで戴きたいと思ひます、さうした補助を受ける方々の接觸に致しましても、婦人は非常に和やかで、さうして當りが非常に好いと思ふのでございます、今まで私の所で男子の方から──民生委員でない、前に方面委員と言つて居りました場合に、色々御尋ねがありましても、本當に受けなければならないと云ふ事情の方がありましても男の方がいらつしやると、見榮と申しますか何と申しますか、私はそんなものは受けなくても宜いと仰しやいますけれども、女の方が後ろに廻つて御話になると、非常に喜んで受けられると云ふ例があります、さう云ふ意味に於きまして、今度の民生委員の銓衡に對しましても、婦人を半數以上採用して戴くと云ふことに骨を折つて戴きたいと思ひます、之を以ちまして私は全面的に賛成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=12
-
013・庄司一郎
○庄司委員長 松谷天光光君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=13
-
014・松谷天光光
○松谷委員 私は無所屬と致しまして本法案に對する意見を申上げます、本法案は新憲法第二十三條を具現致します所の現在唯一の法律であり、又秩序紊れ道義が地に墜ちた現状に於きまして、戰爭の犧牲に依り生きることに喘いで居りまする者に取りまして、命の綱と頼つて居る法律でございます、本法案が一たび實施されまして十分に運營され、又其の運營に當りまして國家は責任を以て、一人の國民も殺しはしないぞと云ふ其の温かい親心が現はされました時に於て、初めて今まで不安のどん底に運命を呪つて居りました人々も、明日に生きる喜びを見出し希望を見出し、一方又社會には秩序と道義が確立されまして、「ポツダム」宣言の完全遂行をなし得る一動力になると信ずるのでございます、此の大きな意義を持ちます重要な本案に於きまして、私は先づ本法の根本精神を現はして居ります所の第一條を、今少し完全を期した條文に修正して戴きたいと云ふことを希望するものでございます、先程長谷川委員から縷縷御説明がありましたと同じやうに、此の條文の中に「最低生活の保障」と云ふ字句を是非挿入して戴きたい、十數回に亙りました討議に依きまして、厚生大臣の御答辯に依りましても、精神は其の所にある、熱意はそこにあると云ふことをはつきりと申されて居られるのでございます、又昨日の葛西政府委員との懇談の中に於きましても、精神は同じく、意味は同じことを言つて居るのだと云ふ御言葉でありますから、同じ意味でございますならばどうかはつきりとそれを明示して戴きたいのであります、第一條に「最低生活の保障」と云ふ字句を挿入致されまして、國家は其の責任に於て一人の國民も殺しはしないぞと云ふことを、どうかはつきりとして戴きたい、今日生きることに迷つて居ります──生きて宜いのか或は死ななければならないのか、生死の岐路に迷つて居ります國民、而も戰爭の犧牲に依つて其の迷路に追ひ込まれて居ります國民に、どうか生きる喜びを與へて戴きたい、其の爲には此の第一條の修正を心から念ずるものでございます、尚ほ先程委員長が御讀上げになりました附帶決議に付きましては、どうか是の運營上に當りまして、此の附帶決議を十二分に御活用戴きたいと念ずるものでございます、尚ほ今日八月十五日、此の歴史的なる日、昨年の今日私共は玉音を聽いて泣き伏したものであります、此の意義ある日に於きまして、此の意義ある生活保護法案が、只今委員會に依つて決議されようとして居るのでございます、私共は昨年の此の日を再び想ひ起こしまして、昨年敗れたことに泣いた私共は、今此の最低生活を保障しようとする──迷つて居る國民を救ひ上げ、七千萬同胞が倶に手をがつちりと組み合ひながら、再び再起に燃えんとして居る今日に於きまして、意義ある此の日十二分に私共此の詮議に當りました者は、今一度胸に手を置き、尚ほ此の法案がより善く活用されるやうに御配慮願ひたいと云ふことを望みまして、私の意見を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=14
-
015・庄司一郎
○庄司委員長 討論は是にて終局致しました、是より採決を致します、先づ社會黨長谷川委員の御提出の修正案、即ち本法第一條に「平等に保護して」の次に「その最低生活を保障し」との文字を挿入するの修正動議に付き只今無所屬松谷委員の御賛成がございました、即ち茲に合法的に修正動議が成立を致したのであります、此の際此の第一條の修正動議に付き、修正を望まるる所の社會黨竝に無所屬の「最低生活を保障し」云々の文字を挿入する方に賛成の諸君の御起立を求めます
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=15
-
016・庄司一郎
○庄司委員長 起立少數、仍て此の修正動議は否決せられました──次に原案第一條に付き賛成の諸君の御起立を求めます
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=16
-
017・庄司一郎
○庄司委員長 起立大多數、仍て原案通り可決致しました──是より第二條以下第四十七條まで一括繼續議題と致しまして、第二條以下第四十七條まで原案其の儘御賛成の各位の御起立を求めます
〔賛成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=17
-
018・庄司一郎
○庄司委員長 起立總員、第二條以下第四十七條まで原案其の儘可決確定せられました
本院より付託されましたる本法の委員會は、茲に十有三回の委回會竝に懇談會を開會致しまして、本日此の記念すべき「ポツダム」宣言受諾と共に、今上陛下の終戰に關する御詔勅を賜はりましたる滿一箇年の記念日に當り、生活保護法が茲に第一條より第四十七條に至るまで原案絶對多數、第二條以下滿場一致を以て御審議を戴き原案通り可決致しましたことは、洵に將來に記念すべきことであると思ふのであります、將來何人か、平和日本の社會事業史を編纂する人あるならば此の委員會の熱烈なる委員各位、竝に本日此の原案に賛成を戴いた委員各位より、社會事業史の何頁かを飾り得る所の記念すべき、此の法案に對する御審議を戴きまして、不肖愚鈍にして淺學短才、御覽の通りの者でございまするが、幸にも理事各位及び各派の總代各位、全員各位の御指導御鞭撻の下に、茲に恙なく本委員會の終局を告ぐることが出來得ましたることは、洵に感謝と感激に堪へざる所でございます、茲に本委員會の終局を結ぶに當り、厚く各位の深厚なる御理解と御支援とを感謝すると共に、此の後本法施行の場合に於て、各各御縁があつて本法の委員の職を御務め下さいました各位に於かれましては、各都道府縣、選擧區其の他に於て、本法の施行上十二分に萬全を期させることが出來得るやうな監視監督と共に、御指導御誘掖を賜はるやうなことがあるならば、錦上更に花を添ふる所以であると考へるのであります、洵に足らざる私、茲に十有三回の委員會の閉會を宣するに當り、改めて厚く各位の御同情を感謝致します、之を以て散會致します(拍手)
午前十一時二十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009011905X01319460815&spkNum=18
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。