1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
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昭和二十一年十月一日(火曜日)午前十時五十五分開議
出席委員
委員長 本多市郎君
理事 石原圓吉君 理事 菊池長右ェ門君
理事 森曉君 理事 舟崎由之君
理事 武藤嘉一君 理事 上田清次郎君
理事 奧村又十郎君 理事 木下榮君
理事 久保猛夫君
江藤夏雄君 大塚甚之助君
近藤鶴代君 坂本實君
高橋英吉君 河原田巖君
平岡良藏君 廣川弘禪君
天野久君 金光義邦君
喜多樽治郎君 北村徳太郎君
九鬼紋十郎君 小池新太郎君
鈴木明良君 寺田榮吉君
苫米地義三君 澁谷昇次君
田村定一君 中崎敏君
森三樹二君 赤澤正道君
秋田大助君 駒井藤平君
伊東岩男君 笹森順造君
穗積七郎君
十月一日委員苫米地義三君、九鬼紋十郎君及び高橋英吉君辭任に付其の補闕として武藤常介君、中野四郎君及び河原田巖君を議長に於て選定した
出席國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
商工大臣 星島二郎君
運輸大臣 平塚常次郎君
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
内閣事務官 平田敬一郎君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 櫛田光男君
大藏事務官 河野通一君
大藏事務官 愛知揆一君
司法事務官 奧野健一君
農林事務官 三堀參郎君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=0
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001・本多市郎
○本多委員長 是より會議を開きます、質疑に入る前に申上げて置きますが、御承知の通り會期も切迫して居ります、併しながら審議の盡すべき點は十分盡したいと存じますので、質疑は成べく簡單に要點に付て行ひ、且つ重複を避ける爲め委員及び政府側各位共努めて御出席を希望致します、尚ほ餘りに冗漫に亙る場合には御注意申上げるやうなことがあるかも知れませぬから、御含み置きを願ひます
それでは是より戰時補償特別措置法案外八件を一括議題として質疑に入ります、質疑は順次之を許します──苫米地義三君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=1
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002・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私は今囘提案されました諸法案に對しまして、實は軍需補償打切り問題と云ふものは非常な大きな影響を及ぼすことで、其の一聯をなす諸法案に對しましては十分に質疑も致し、又意見をも具申したいと考へて居つたのでありますが、先般懇談會に於きまして大藏大臣及び膳國務大臣の御話を拜聽致しましてから、それ等の點に付きまして十分な質疑を行ふことさへ躊躇せざるを得ないやうな氣分になつたのでありまして、私は今囘の質疑に對しましても、唯若干の點だけに止めて置きたいと思ふのであります、唯此の大きな國民の一人々々に影響を及ぼすやうな政策を短時間に審議をし、又十分に之を練ることは頗る困難でないかと思ふのでありまして、國民の一人々々が恐らく滿足するかどうかと云ふことは、甚だ懸念に堪へないのであります、只今委員長の御話のやうに、短時間ではありまするが、出來るだけ要點を摘んで十分なる質疑を行ふことが妥當だと思ひますので、私は是から極く簡單に若干の點に付きまして質疑を行ひたいと思ひます
第一點は補償打切りの問題でございますが、此の問題を租税の形式に依つたと云ふ點に付て伺ひたいのです、租税の形式を取りました爲に、手續が非常に煩瑣になるやうであります、而も此の法案は請求權を消滅させれば宜いのでありまして、何も廻り諄い手數を掛ける必要もないやうに思ふのであります、第六十五條にありますやうに、「金錢の給付以外の給付」に係る戰時補償の請求權は、此の法律施行を以て一切消滅すると云ふことだけでも宜いのではないか、其の方が手續が非常に簡單に濟むのではないかと思ふのでありますが、特に租税の形式を執つた理由がございませうか、其の點に付て伺ひたいと思ひます、同時に若し租税と云ふことになりますれば、一應國庫の收入になると思ふのであります、隨て國庫の豫算の上から言ふと、收入があり、支出があると云ふ形式にならうかと思ひますから、軍需補償は打切つたのでなくして、實行したと云ふ形式をなすのではないかと思ふのでありますが、其の點に對しまして一應御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=2
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003・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尋ねの問題は、二つ理由があります、一つは苫米地さんが後で御話になりましたやうに、戰時補償は一應行つた、詰り與へるものは與へ、取るものは取ると云ふ原則上の問題であります、やはり其の筋を立てて置く方が宜しいと思ひますので、實質は打切りでありますけれども、政府は兎に角拂ふ、さうしてそれに課税をする、斯う云ふ形式と言へば形式でありますが、左樣な原則上のものであります、第二に、それよりもつと重要なことは、實行上の便宜であります、御話のやうにすつぽり何も彼も消してしまふなら、單に此の法律に依つて總べてのものが消えると言つても宜いかも知れませぬが、それにしても消えるものが何々であると云ふことをはつきり現はさなければなりませぬから、補償打切りの範圍と云ふことは非常に面倒なものでありましたが、全部打消すことにしても、やはり何か掲げなければならない、同時に又火災保險或は學校其の他の公共團體のものをどうするとか、其の外細かい個人及び小企業者等に對する救濟規程が若干ある譯であります、さう云ふ控除等を致しますのにもやはり租税の形でやるのが一番便宜で、外の形で中々難かしいと云ふ此の原則上の考へと、實行上の考への二つから起つたのであります
それから國庫の歳入になるかと云ふ御話でありますが、是は歳入に相成ります、一應國庫の歳入になり、さうして差引くものは差引くと云ふことに相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=3
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004・苫米地義三
○苫米地(義)委員 さうすると、此の豫算は追加豫算と云ふ形式に於て取計らふのでありませうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます
尚ほ本案の趣旨は、過日來の御説明に依りまして二つの面がある、一つの面は、財政經濟の再建の方の意味であり、一つは戰爭に起因した總ての請求權の抛棄であると云ふことでございましたが、若しさう云ふ二點の意味から致しまするならば、戰時公債──國債の關係に於ては此の兩方の面に適合したものだと思ふのでありますが、政府は將來此の國債に對する何等かの措置を御考へになりませうか、又さう云ふ事態が生じて參りませうか、是はやはり國民の大きな關心を持つて居る點でございますから、其の點に對して御意見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=4
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005・石橋湛山
○石橋國務大臣 豫算の點は御審議を願ふことになつて居ります大藏省所管の財産税等收入金特別會計に出て參る譯であります
それから國債の問題は、廣い意味で如何にも戰時公債は戰時中の政府に對する「クレーム」でありますけれども、同じ「クレーム」と云ひましても、性質を異にして居りますので、之には手を着けませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=5
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006・苫米地義三
○苫米地(義)委員 國債其のものには手を觸れないと云ふことでありませうが、國家財政の關係から申しますれば、此の利息は非常に重大な部分を占めて居るのでありますが、利息位のことであれば、他の均衡上國民も納得するのではないかと云ふやうにも考へられますので、此の國債に關する關係は元本及び利息をも其の儘にして置く、又それが妥當だと云ふことでございませうか、或る時期になれば他の振合上せめて利息位は打切る、或は年限に依つて、三箇年間なり、五箇年間なりは利息を打切ると云ふやうなことでも御考へになるのか、重ねて御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=6
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007・石橋湛山
○石橋國務大臣 國債には元本も利息も手を着けない方針であります、是は毎々申上げましたやうに、日本に於ける國債の所有者なるものは九十何「パーセント」まで金融機關であり、言換へれば預金者である、或は生命保險の被保險者である、斯う云ふ關係から、特に日本に於ては國債に手を着けることが困難であります、今度の補償打切り、所謂特別課税案に依りまして、相當預金に影響があるのでありますが、其の上に更に國債に手を着ければ、更に其の上に預金に損害が及ぶと云ふことになりますから、是は何處までも手を着けずに他の方法に依つて處理致して行く考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=7
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008・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私の御尋ねしたい第二點は、特別經理會社と云ふものがあるが、其の中には隨分極端な整理を必要とするものもあり、其の株主が減資をするやうな場合、此の原案に依りますと、段々に損害を負擔して參つて、或る段階に於ては株の十分の九を一律に減資する、更にいけなかつたならば又全部をすると云ふことになる、さうすると、株を澤山持つて居る人も、極く小さい株主も一樣の率に於て此の負擔をすることになります、現在の株主の中には小さい株主が隨分澤山ございます、是は多年粒々辛苦した貯蓄の塊りであつて、其の小株主が同じやうな割合に損害を負擔すると云ふことになる、法全體の精神から言へば、小額の請求權を持つた人は割合に保護されると云ふ形でありますけれども、其の影響を受ける株主の關係からすると、小さいものも大きいものも同率になると云ふことで、法の精神が一貫して居らぬやうに思ひます、此の小株主に對して何等か特別な考慮が拂はれるでありませうか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=8
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009・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は先般懇談會で膳國務大臣からも申上げましたやうに、小額と申しますか、資産家或は小所得者の方面には出來るだけの保護を致す所存で立法は致しましたが、併しそれが隅々まで何處までも届くと云ふことが非常に複雜であるだけに行かなかつたことは甚だ遺憾でありますが、是は洵に已むを得ないことであると考へて居ります、御質問の如く、株主に付ては、大株主であるから、小株主であるからと云ふ區別は付け得ませぬでした、隨て只今の所小株主に對して特別の保護をすると云ふことは實行上不可能であると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=9
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010・苫米地義三
○苫米地(義)委員 是は法の精神から申しまして、小額の株主に對しては何等か保護を加へてやることが「バランス」の上から言つても必要だと思ひますが、今後どう云ふ方法か適當なものが見付かるやうでありましたならば、其の點に對して忘れずに御考へ置きを願ひたいと思ふのであります
第三點は企業再建に當りまして、特別經理會社は資産の評價替へをすることになつて居ります、此の資産の評價替へを致すと云ふことは、評價益を認めまして、そして或る程度の資産を充實させると云ふことでございますが、此の資産評價益と云ふものは「インフレーション」の影響に依つて大體起つた事柄であると私は思ひます、「インフレーション」と云ふものは國民全部の犧牲に於て起つて居るのでありますが、之を極端に認めますと云ふと、「インフレーション」の利益を或る一部の人にのみ許すと云ふことになつて、社會全體の公平感から申しますれば如何かと思ふのであります、此の評價益の程度に付きまして、現在當局が考へて居られます程度のことを一應伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=10
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011・石橋湛山
○石橋國務大臣 評價替への問題は非常に難かしい事柄なのでありまして、之を極度に──無論非常に高く評價致しますれば、或は現在の株主が助かると云ふこともありますし、それから債權者が債權に及ぶ損害が少くなりますから銀行預金者等を利益する、斯う云ふことがあります、それから是は餘り辛く堅く致しますれば、其の爲に例へば其の會社が株式を全部飛ばしてしまはなければならぬと云ふやうなことになりますと、現在の株主と云ふものは損をする、同時に債權者に損害が多く掛りますから銀行の預金者等が損をする、斯う云ふことになりまして兩方共極端に其のことは非常に不公平になると思ひます、それから「インフレーション」に依つてと云ふ御話でありますが、如何にもさうでありますが、全體の物價と云ふものが或る程度に上つて居る、隨て全體の國民の資産と云ふものが敢て特別經理會社に限らず、全體の資産が評價替へが既に出來て居る、事實上出來て居るのでありますから、其の事實上出來て居る公正な評價と云ふものに、特別經理會社が評價を致すのが合理的だと考へて居ります、是は抽象的な原則であります、唯併しながら現在の物價其の儘で行く、斯う云ふことも又問題が起りまして、今後果して物價がどうなるか、殊に世界的の生産過剩と云ふやうなことも何時か起らぬとも限らないと云ふことを考へますと、其の場合に日本の産業が世界の市場に立つて頼る力を持たなければならない、是等の甚だ複雜な考慮を要する次第でありまして、隨て原則的には左樣なことを考へられて居るのでありますけれども、之を如何に具體化するかと云ふことは實は目下細かい點は研究中であります、大體の考へ方は左樣な所で最も公正な點に落着けるやうに致したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=11
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012・苫米地義三
○苫米地(義)委員 御話の通り非常に難かしいことで之を餘り低くしてもいけず、餘り高くしてもいけないと云ふことでありますから、相當是は考へなければならぬことでありまして、恐らく委員會で具體的に決まると思ひますが、政府の略略狙つて居る原案と云ふものがございませうと思ひますが、若し御話しが出來ますならばそれを伺ひたいと思ひます、と云ふのは、戰爭前即ち昭和十二年位の資産に比較しまして、どれ位の高度を目標にして居るのでありますか、それだけ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=12
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013・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の點は實は早く決めて御質問に御答へしたいと思つて焦つた次第でありますが、まだ色々關係方面とも研究中でありまして、具體的に一寸茲で申上げ兼ねるのでありますが、先程申上げましたやうな原則に從つて公正妥當な所に落着けたい、斯う考へて今折角やつて居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=13
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014・苫米地義三
○苫米地(義)委員 此の評價益を認めて企業の再建を許すと云ふことでありますれば、先程申しましたやうな「インフレーション」の利益を一部の人が得るのだと云ふやうな考へ方が一般に起ると思ふのですが、其の場合さう云ふ擬制した企業會社に何か利益の拘束をするとか、或は配當の制限をするとか云ふやうなことで其の點を矯正して行くと云ふ御考へがございませうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=14
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015・石橋湛山
○石橋國務大臣 所謂「インフレーション」の利益を一部の者が受けると云ふことは、詰り非常に固定資産等を低く評價しますと、其の會社の現在の株主に寧ろ不當の利益を與へることにならうと思ふのであります、さう云ふ場合には若しさう云ふことが起ると致しますれば、特に只今配當制限とか云ふやうなことは考へて居りませぬが、併し資産が低く評價される、そして實際の今後の物價はそれに比較して高いものが續くと致しますと、其の會社は利益が非常に出て來る譯であります、隨て將來所得税で相當課税をされる、斯う云ふことになると考へて居ります、現在の所では無論此の新會社或は第二會社を作る場合には、色々主務大臣の認可、其の他に依つて制限等は致しますが、直接に配當制限などと云ふことは只今考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=15
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016・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私の申上げるのは此の資産を評價することに依りまして、其の會社の製品が高く付く、それは高い資本に對する利息を見なければならぬ、さうしますと評價益に對しましても利息を見る、其の利息を加算して出來ました生産品は高く付く、其の高く付いた物を國民一般が受ける、斯う云ふことになりますから其の評價益を極端に大きく見る場合には、國民が其の物價の面に於て非常に之を負擔する譯です、今大藏大臣が仰しやつた利益が莫大に出ると云ふことは、擬制資本を一擲した健全會社であれば起りますが、それは利益を餘計得させないやうに、即ち生産費を安くして物價を低めると云ふことに、擬制資本を整理させると云ふ目的があるのでありまして、利益がそれに依つて莫大になるとは私は思ひませぬ、それは一方に評價益を増すやうな、或は現在の物價に於て設備をする會社と比較すれば、それを土臺とすれば利益が多くなると云ふことでありまして、擬制資本を整理させると云ふ意味は、物價を低い方へ持つて行くと云ふ目的がなければならぬと思ひます、隨ひまして此の評價益に依る物價高は、どうしても國民全部が負擔すると云ふことになる、之を何か是正する考へ方があつて然るべきだと私は思ふのです、もう一度其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=16
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017・石橋湛山
○石橋國務大臣 資産を非常に高く評價致しまして、隨て其の會社の製品が高くなる、「コスト」が高くなる、それは「コスト」が高い儘で賣れれば、日本全體の物價が其の場合に高くなつて居ると云ふことを示すのであります、それならば其の前に高く評價したと云ふことが、實は日本の物價の「レベル」に丁度適應するやうに評價されたと云ふことを意味するのぢやないかと思ふのです、若しさうでなく、日本の今後の物價或は今後さう遠くない將來に、世界市場に日本が參加することになりませうが、其の場合に若しも今日特別經理會社が資産を不當に高く評價して居つたとしますれば、競爭力を失ふ譯であります、即ち其の會社の利益は減ずるものと思ふのです、寧ろ「インフレーション」の利益を不當に得せしめると云ふことが、今度の評價の場合にあり得るとすれば、それは逆に資産を不當に低く評價した場合に、却て其の利益が一部の者に獲得されるのではないか、私は左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=17
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018・苫米地義三
○苫米地(義)委員 一寸意見が相違するやうでありますが、一體此の企業再建に對しまして、擬制資本を一擲させる、此の思想は、健全なる會社及び資産も出來るだけ上げない程度に於て會社を整理させると云ふことが、眼目であらうと思ふ、さうしますと其の基盤に於ける生産費が、其の時の物價を構成させる所の大きな目的を指して居るのではないかと思ふ、若し現在の物價が已むを得ないものだと言ふならば、敢て擬制資本を抛擲させる必要はないと私は思ふ、寧ろ今の値段に悉く評價を均一にして、さうして同一の「レベル」に於て物價を構成させると云ふ方が、もつと容易い整理方法だと思ふのです、其の點は大藏大臣と一寸考へ方が違ふのでありますが、是れ以上申上げても意見の相違になりますから、此の點は私は質問致しませぬ、唯評價益を民間に許すことに依りまして、本年度の豫算には價格差益納付金を、十五億二千七百萬圓計上致して居ります、此の豫算に現はれました收入は、今度の評價益を認めることに依りまして、どう云ふことになりませうか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=18
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019・膳桂之助
○膳國務大臣 此の價格差は、物價統制令に依りまして、色々な場合に物價の標準の變りました際の價格差の益金は、組入れ收納することになつて居りますが、今度の評價替への場合に於きましても、其の原則は適用致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=19
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020・苫米地義三
○苫米地(義)委員 さう致しますと、是は會社の企業再建整備法案等に依りまして、此の評價益は一應認めて勘定すると云ふ風にございますけれども、其の點何かそこに間違ひでもないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=20
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021・膳桂之助
○膳國務大臣 其の點は企業整備法の八條に規定がありまして、さう云ふ問題は命令を以て之を定めることに相成つて居ります、何れ命令で其の點は明確に定めることに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=21
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022・苫米地義三
○苫米地(義)委員 國庫の豫算から申しますれば、十五億と云ふ金は相當大きい金でありますが、今度の法案前に豫算が編成されたものでありますから、移動があつても私は已むを得ないと思ひます──私の申上げるのは、價格差益納付金と云ふのが豫算に計上されて居ります、是は手持の流動財産が製品になつて、さうして評價されて行けば、それだけのものの利益をこつちへ納めさせる、斯う云ふことになつて居ります、今度此の企業整備に依りまして會社の整理をしなければならぬ、其の時には積立金をやる、固定資産でさへ評價益を出すのでありますから、手持の原材料は丸公に評價替へする、斯う云ふことになつて居ります、隨て其の差益を、政府が豫想して居つたものが、其の會社の整理資金になると思ふ、之をどう御扱ひになるか、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=22
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023・石橋湛山
○石橋國務大臣 前の豫算に出て居ります價格差のものは、大部分統制會のものでありまして、一般の民間の企業から取つたものではございませぬ、御承知の通り統制會は特殊のものでありまして、統制會が其の統制品を手に入れて、「ストック」にして居る間に、公定價格を變更します、さうすると統制會に、そこで公定價格の變更の爲に、不當利得が出て來ますから、それを政府が吸收して居るので、今度の企業整備に於ては關係のない豫算でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=23
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024・苫米地義三
○苫米地(義)委員 それなら分ります、此の納付金は統制會社に限ると云ふことであれば、それで分ります
其の次に私の伺ひたいのは、補償打切りを契機と致しまして、企業會社が擬制資本を一擲し、健全な更生を促進する、さうして生産を増強すると云ふことが、第二次的の大きな問題だと思ふのでありますが、今まで政府の提案されて居る諸法案は、大體今の現状を整理して行くと云ふことに重點があるやうでありまして、生産を本當に殖やすと云ふ積極面に付ての施策が、まだ本當に現はれて居らぬやうに思ふ、是は恐らく全體的に綜合計畫を立てて、さうして纒まつた施策を講ずることに、御準備になつて居ると思ふのでありますけれども、膳國務大臣から其の綜合計畫の大體を、此處で御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=24
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025・膳桂之助
○膳國務大臣 今の御尋ねのことを實行し、又計畫致しますのが、經濟安定本部になつて居る譯でありますが、是は目下物資の需給、將來の物資の輸入、其の他設備の修繕、補充、色々な面から見まして、適切な助長計畫をば作り、折角今之をやつて居る譯であります、是が經濟安定本部の是からの仕事の中心なのであります、直ちに今斯く斯くと云ふやうな、一覽表的に申上げるやうな時期には到達して居りませぬが、經濟安定會議を開き、又其の前に民間の知識を集め、其處で綜合的立案を致すことにしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=25
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026・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今御話のことは、非常に心細いやうな感じが致します、今補償打切りに關する一聯の施策に依りまして、企業界は相當混亂を起すことだと思ふ、そこに手續其の他のことに依りまして、仕事が手に着かぬと云ふやうなことが、或る時期に於てあらうと思ふ、之に對して將來どうしなければならぬと云ふやうな、綜合的計畫を逸早く發表することがなければ、企業界は昏迷の道を辿つて行くのでないか、隨て生産が停滯し、そこに物價の安定を得ないと云ふやうなことも起るのではないかと思ふのでありますが、其の點洵に遺憾の意を表せざるを得ないのであります、どうしても此の生産増強の計畫を立てます前に、少くとも物價の調整と通貨の調整及び勞務の調整と云ふやうな重要なる基本的な施策をしなければならぬと思ふのでありますが、今復興金融金庫及び産業復興營團等の施策がありましても、結局物價が安定しないとそこに健全なる方針が立たぬと思ひます、又一方通貨の收縮安定と云ふことを考へなければ、やはり是も折角投資する其の金が無駄になる、無駄にはなりませぬけれども非常に效力を減らすと云ふやうなことがありませうと思ひまするが、物價の安定と通貨の安定に付きまして政府はどう御考へになつて居りまするか、其の點を重ねて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=26
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027・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尤もな御質問でありますが、一面から申しますと此の處置其のものが通貨の安定、物價の安定を齎らす效果があると考へ、又左樣に致さなければ通貨の安定、物價の安定も出來ない、斯樣に考へて此の處置を執らんとして居る譯であります、併し同時に無論御話のやうに他面色々の施策に依つて通貨、物價の安定を圖らなければなりませぬ、物價に付ては目下安定本部を中心にして其の施策を講じつつあります、それから通貨に付きましては無論金融機關の安定を出來るだけ早く圖ると同時に、強力に貯蓄其の他の奬勵方法を講じやうと目下準備を致して居るのであります、幸ひ豐作等の關係もありまして物價は只今落着いて居る、或は稍稍平均致しますと低落傾向にあるやうにも見受けられますから、此の邊に於て施策を誤まらずに之を安定致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=27
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028・苫米地義三
○苫米地(義)委員 先程大藏大臣の御話の中に、今の物價は必ずしも不當でないやうな風に御話がありましたが、此の企業再建に對しまして復興金融金庫、産業復興營團等が出來まして、是から企業を助成して行く譯であります、所が現在の物價から致しますれば、それに依つて起ります企業と云ふものは相當高く付くのであります、此の高く付く設備や機械を以て舊來の會社と太刀討をすると云ふことは困難であります、隨ひまして先程申上げましたやうな金利其の他を負擔をすれば到底舊い擬制資本を一擲した會社とは競爭が出來ないと云ふことになりまして、折角金を貸さうと云つても企業家は躊躇すると云ふやうなことになり、然らざれば復興營團の金で仕事をして行くと云ふやうになると思ふのであります、是は今後の物價及び生産に對して非常に大きな影響があるのでありますが、此の新舊の會社をどう云ふ風に一體調整されませうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は先程の御質問に對して御答へした中に多少さう云ふ氣持が織込んで居るのでありますが、詰り今囘特別經理會社になる、其の會社の資産を如何に評價するかと云ふこと、それに依つて新しく企業を起すものがあるとすれば、其の新企業との「バランス」がどうなるかと云ふことが、舊會社を評價する場合に一つ念頭に置かなければならぬ問題だと考へて居ります、併しながら同時に大體純然たる新企業と云ふものが起れば──是れ亦起らぬと云ふ譯でありませぬから別でありますが、今までの企業の目ぼしいものは無論の話、殆ど全部が特別經理會社になる、或は特別經理會社たることを免除されるものに於きましては、是は既に其の資産の内容が相當堅實で舊い比較的安い施設を持つて居ると云ふやうなものでありますから、新企業との關係は御話の通り理論的にはむづかしい問題でありますけれども、私共として實際問題としては今度の處置を講じました後に於て、今度の處置え於て適當な評價が特別經理會社に行はれるならば、事實上に於ては御懸念のやうな點はさして起らないのではないか、無論新しく設備を増す場合には舊設備よりも高いものになると云ふことは已むを得ませぬが、それは均して行かれるのではないか、其の邊が日本の將來の物價の「レベル」になるのではないか、さう云ふやうなこと、物價或は緊急のものは、御承知のやうに一定のはつきりした尺度を以て、今の人間の知識では尺度がございませぬものですから、話が抽象的になりますけれども、種々なる觀點から眺めて其の邊を念頭に置いておく必要があるのぢやないか、之を強ひて今の物價を──是は自然に色々な生産が起れば、無論今は例へば工業にしましても施設の三〇%しか動いて居らぬと云ふやうな所で、現在「コスト」が來て居るから、是は無論下るものと思ひますが、併し其の上に強ひて物價を下げると云ふやうな施設を假に執ると致しますならば、實は特別經理會社などの整理の點は、非常に困難であると思ふ、でありますから成べく現在に於て見まして合理的と思はれる物價水準に物價を安定して、それを足場として特別經理會社の整理をする、斯う云ふことを致す外はない、それが一番合理的だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=29
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030・苫米地義三
○苫米地(義)委員 例を以て申上げますれば、肥料の製造工場で、無被害の所がございます、それから相當大きな被害を受けて居る所がございます、それが復興致します爲には、戰前に比較致しまして、二十倍乃至三十倍高く付きます、此の場合に於きまして、大きな損害を受けて居る會社の復興は殆ど新しく設備したと大差ない位に高く付きます、さうして復興金融金庫から貸す金は一錢三厘乃至一錢五厘と云ふことでございます、此の金利を負擔して製造する肥料と云ふものは相當高く付きます、舊い會社ではそれ程でありませぬ、現在の肥料價格の決定は各工場毎に生産費を決めて居りますから、肥料の如き少い種類のものはそれで宜からうと思ひます、併し廣い面に付きましてさう云ふ凸凹がありましたならば、此の高いもので出來た價格を抑へると云ふことになると、先程大藏大臣の仰しやつたやうに、舊い會社は非常に澤山儲かる、是は税金や何か取れば宜いのだと、斯う言へばそれまででありますけれども、それが非常に多い部分と、それが非常に少い部分と、世の中には澤山あります、どちらかに大きな目標を置いて調整して行かなければならぬと思ふのであります、例へば家賃の如きは、舊い家賃は非常に安い、今度是正しましても是は安い、併し現在是から建てて行く家賃と云ふものは箆棒に高いと云ふことになります、是等を一體どう云ふ風にするかと云ふことで、其の新舊の調整と云ふものは、何か大きな方針を決めて、さうして是正をすると云ふ建前を取らなければならぬと思ふのですが、今どう云ふ御考へがありませうか、もう一遍御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の通り家賃などは好い例でありますが、現在の建築費と云ふものが果して合理的なものであるかどうか、と云ふのは合理的と云ふのは現在の賃金其の他物價の關係、それから近き將來を眺めて資材或は其の他のものがどう云ふ風になるかと云ふことから考へまして──無論人間の知識でありますから中々完全な譯には行きませぬが、當分の間、日本の建築「コスト」と云ふものは此の邊よりは下らぬと云ふ見當が付きましたら、それを安定線にする以外には方法がない、過去に於ける建築は、それに比較すれば金錢の計算にすれば無論安くなると云ふ譯でありますが、住宅の如きは舊住宅だけでは足りないのでありますから、どうしても新住宅を造らなければならぬ、さうしますと新住宅の建設費が限界になりまして、そこで家賃と云ふものが結局定まる、さうすると舊住宅は非常に家賃を安くして貸して居るが、結局經濟的には是が新家賃に値合せをされる、さうすると家主は非常に儲かる、そこで國家は之に税を課ける、斯う云ふ段取になるものと思ふのであります、大體此の企業の方に於きましても、御話の肥料が、若しも損害を受けなかつた舊會社の生産に依つて日本の今後の需要を十分充し得るが如きことであるとするならば、新會社は成立の餘地がなくなる、今日は特別の状態でありますけれども、結局成立の餘地がなくなると云ふことで、此の新會社が資産の評價替へをするかどうかしなければならぬと云ふ事情に陷つて居る譯であります、逆に舊會社だけでは生産が間に合はない、どうしても新施設がなければならぬと云ふことになれば、先程申しました家賃と同じに、新會社の「コスト」と云ふものは「マージン」になつて舊會社が非常な利益を受ける、斯う云ふことになると考へるのであります、現在政府と致しましては、さつきも申上げますやうに、是等の物價問題を中心にしましては安定本部が中心になつて研究中でありますから、確たることは申上げ兼ねる次第でありますが、大體私は左樣な方針で落付けて行く以外には途がない、隨て同じことを繰返しますが、特別經理會社の整理に於ても左樣な立場から整理する、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=31
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032・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今例に擧げました家賃の問題なんかも、若し現在建設した家屋の利廻から計算すると云ふことになれば非常に莫大なものになる、之を基準として勤勞者の給料を決めて行かなければならぬと云ふことになりまして、非常に是は大きな關係が起ると思ふのであります、僅かの程度ならば問題が後廻しでも宜いのでありませうが、非常に大きな影響を與へるのでありますから、其の點は政府に於きましても出來るだけ早く然るべき方針を御執りになることが望ましいと思ふのであります、此のことは伺ひたいと思つたのでありますけれども今農林大臣はお見えになりませぬが、農地の價格の面に付ても起ると思ひます、現在政府に於て農地の買上げをやりますが、此の賃貸價格の四十倍或は四十七倍と云ふことは、戰前の場合實際賣買價格に比較致しますとそれ程大きな差がないやうに思ひます、所が開發營團の開發して行きます新しい田畑は、非常に高く付く譯であります、此の高く付くものを誰が一體負擔するか、斯う云ふことになるのでありますが、其の土地を開拓し、其の土地を耕作して居る個人が負擔することになれば、現在政府が買つて居り、而して又之を拂下げる價格との釣合が取れない、どうしても政府が之を助成しなければならぬと私は思ふ、此の農地の價格が戰前の賣買價格に略略接近して居ると云ふやうなことであれば、外の工業の方に對しまする物價の基準も、農地との釣合が取れるやうに安定させるのが日本の國の爲に宜いのぢやないかと思ふのでありますが、此の農地と工業施設の今の御話のやうな差がありますと、そこでも大きな喰違ひが起ると思ふのであります、新舊田畑の差を政府に於てはどう御考へになつて居りませうか、農林大臣でなければ御分りなりますまいか或大は藏大臣で御分りになりませうか、若し分つて居りましたら伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=32
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033・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は農林大臣から答へて戴く方が宜いと思ひますが、御質問で一寸考へましたことは、恐らく是は國家が只今開墾費を出して居ります、是は國家の負擔で開墾費は支出されて居ります、隨て國家が今やつて居ります新しい開墾地を賣却する場合には、舊田畑と同じ價格でやり得るものと考へて居ります、それから舊田畑の今囘の價格は色々の批評があり得ることと思ひますが、是は寧ろ物價と云ふ觀點よりも日本の農業政策をどうするか、農業政策として自作農を創定することが必要である、其の場合に、どうしたならば自作農を國家が必要とするが如く創定し得るやと云ふ觀點から決められたものでありまして、先程申しました純經濟的な觀點から家賃を見るとか或は工業施設を見ると云ふのとは、自ら違ふと思ひます、政策的に決められたものだ、斯う云ふ風に御考へを願ひたいと思ふ、家賃の如きも、先程申上げましたやうに今日の建築費と云ふものが果して合理的であるかどうかと云ふことは別問題である、今日の建築は如何にも御話のやうに馬鹿々々しく高いやうでありますが、是が必ずしも私は合理的とは思つて居りませぬ、やり樣に依つて是はもつと下るものである、隨て先程申しました現在の物價──現在の物價が一應基礎でありますけれども、此の先、例へば石炭に致しましても或は外のものに致しましても、どれだけの生産がある場合には、謂はば近い將來に於ける「ノルマル」の場合にどれだけのものになるかと云ふことを考へなければなりませぬから、今復興院等が作つて居ります住宅に付きましても、是は別途に──今の復興院が出して居る「コスト」で其の儘家を貸して宜いかどうかと云ふことは別途に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=33
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034・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今農地に付ての御話がありましたが、政策的に考へる農地買收と云ふことは、それは能く分りますが、併し物の價値と云ふ面から言へば經濟的に共通でありますから、此の共通點に立ちまして、高く付いたものを政府が助成すると云ふ意味ならば、現在復興等に要します工業の方の復興再建費、之に付ても政府が考へて然るべきではないか、今住宅營團の高く付くのは國で考へると云ふやうなことと同じやうな意味に於て、此の復興金庫は企業再建に對する其の高く付く部分だけは國家が考へると云ふことも考へられるぢやないかと思ふのであります、少くともそれに要する金利は只にするか、或は一歩位にして金庫が取ると云ふことを考へても宜いのぢやないかと思ふのでありますが、此の點に對して御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=34
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035・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の工業方面に於きましても、是は別な委員會に掛つて居る譯でありますが、復興營團の如きはやはり左樣な考へから作る譯でありまして、何も彼もと云ふ譯には參りますまい、是は尚ほ檢討を要して、どれ程のものであるかと云ふことは分りませぬが、例へば肥料の如きは必要があれば復興營團に於て設備を作つて貸す、斯う云ふやうな手段も執らうと考へて居る次第であります、それから金利の點は、是は復興金融金庫の方針でありますが、只今の所では、特に助成的な低金利を復興金融金庫で取ると云ふことは、具體的には考へて居りませぬ、併しながら出來ないことではないのでありまして、今後實際の復興の状況に依つては、左樣なことも考慮し得るだらうと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=35
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036・苫米地義三
○苫米地(義)委員 其の點はそれ位にして置きたいと思ひます、ここで一寸伺ひたいことは、補償打切り其の他に依りまして、隨分中小工業も打撃を受けるのでありまして、例へば企業整備等に依りまして、更生金庫から金を借りて居つたものがやはり整理される、同時に各事業會社が各各の救濟をすると云ふやうな意味で、義務だけは茲に殘ると云ふこともある譯であります、中小工業の例へば機屋の如き、さう云ふものが之に依つて非常な打撃を受けて、事業に影響を及ぼす、或は資金難に陷ると云ふやうな場合がありましたならば、それは適當に御考慮になると云ふ御方針でございませうか、隨分それに付て苦痛を愬へる向がございますが、此の際一應承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=36
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037・石橋湛山
○石橋國務大臣 企業家からは豫ね豫ね色々の事情を承つて居ります、御話の通り是は非常な打撃を受ける向が多いと思ひますが、一つ全く過去を洗ひ去つて立直り、新しく出發すると云ふ意氣でやつて戴きたい、其の場合には少くとも金融上の措置に付きましては、出來るだけのことを致すと云ふことを私は常に御答へして居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=37
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038・苫米地義三
○苫米地(義)委員 其の次には財閥の株及び今度致します整理に依る第二會社の株式等の處分の問題でありますが、是は株を出來るだけ高く賣ると云ふやうなことからしますれば、競賣等のことも考へられるでありませう、所が財閥の株は兎も角としまして、整理更生に依る第二會社の株式、是は相當健全なものが出來て行くと思ひます、所が今の状態でございますから、恐らく配當が五分以上付くと云ふやうなことは社會情勢から言つて許されないのではないか、さうしますと先程御話のあつたやうに、利益が非常に澤山あつても税金其の他に取られますから、配當としては五分以上は私は難かしいと思ふのであります、是は資産が良いし、配當が少くとも、現在の所投資對象物としては最も良いものであらうと思ふ、それでありますから株の希望は誰にでもあると思ひますが、全國民は今資金を封鎖されて居りまして、五百圓生活に拘束されて居りまして、全く投資資金がないと思ひます、其の場合に競賣をするとか或は公募するとか申しましてやりましても、是は本當に終戰後の混亂時期に不當な利益を得た人か、或は闇取引で以て新圓を蓄えて居る所謂新興財閥の手に吸收されると云ふことになる、新興財閥は之を利益に利用すると云ふこともない譯ではないと思ふのでありますが、此の株の處置に付きましては、政府はどう云ふ御考へを持つて居りませうか、一應御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=38
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039・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は色々の形で證券が政府の手に入る、或は政府の手に入らないものでも今の第二會社の株等の問題があります、只今之に付ては何等か特殊な機關を設けまして、若しも直ぐに處分の出來ないもの、政府の手に入るものは言ふまでもありませぬが、其の他のものでも競賣其の他に附すると云ふやうなことのないやうに處置を致さうと只今考へて居ります、何等かの處置をなし得るであらうと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=39
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040・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今の情勢から申しまして、私は特にそれを心配するのでありますが、やり樣に依つては一部の者に吸收されると云ふやうなことが懸念されるのであります、若し何等かの方法があつて、此の企業會社の株が從業員及び其の消費者を中心とする方に分配されるならば、是は非常に望ましい形だと思ふ、丁度土地が若し競賣にすれば、さう云ふ人々に本當に私は歸屬されぬものと思ひますが、幸ひにも自作農にする爲に之を賣渡して行くと云ふ強力な施策が伴ひますから、土地と云ふものは安定するのであります、それと同じやうに企業會社の株も從業員、又は其の品物を消費すると云ふやうなものに重點を置いて、是が手に收めるやうな方針を御執りになることを希望する次第であります、時間が丁度參りましたから、私は大體是で質問を終りたいと思ひますが、最後に今囘の此の法案は國民の一人々々に重大な影響がありまして、長い間此の問題は國民の非常な關心事になつて居るのであります、然るに一番先に申上げましたやうな事情で、政府當局の御苦心にも拘らず斯う云ふ事態になつたことは、洵に御同樣殘念な事柄であると思ひますが、僅かな期間に之を審議すると云ふことに對しましても、國民は恐らく納得が行かないと私は思ひます、そこで此の大きな問題を國民に少くとも或る程度の理解を持つて貰ひ、さうして納得して貰ふに付きましては、政府が誠意ある條理を盡した聲明でも發表致しまして、之に對處すると云ふやうなことが宜いのではないかと考へるのでありますが、其の點に對しまして何か政府に御用意がございませうか、若しございませぬでしたら其の點を御考へ願ひたいと思ふのですが、最後の質問として御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=40
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041・石橋湛山
○石橋國務大臣 實は先般議場で特に此の法案に付て總理から説明をして戴きましたこと等も、是が特に重要であると云ふことを形の上に於ても國民に知つて貰ひたいと云ふ考へから、政府がああ云ふやうな處置を執り、又ああ云ふやうな演説をして戴いたのであります、尚ほ此の法案に付きましては、御審議が終りまして、議會でも通過致しまするか、或は其の途中に於きましてでも、適當な方法で私共から「ラジオ」其の他で十分國民諸君に一つ理解して戴くやうに致したいと考へて居ります、どうか一つ皆さんに於きましても御協力を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=41
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042・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私の質問は終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=42
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043・本多市郎
○本多委員長 午後一時まで休憩致します
午前十一時五十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=43
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044・会議録情報2
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午後一時四十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=44
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045・本多市郎
○本多委員長 會議を開きます、休憩前に引續き質疑を進めます──奧村又十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=45
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046・奧村又十郎
○奧村委員 大藏大臣がまだお見えになりませぬので、大藏省の係の方から御答へ願ひたいと思ひます、命令に依る指定債務と云ふのはどう云ふものを指すのでありまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=46
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047・福田赳夫
○福田政府委員 命令に依ります指定債務と申しますると、先づ公租公課、斯樣なもの、それから新勘定からの借入金、それから管理費用、斯う云ふものは一般の債務よりは優先して拂ふと云ふ意味で指定債務と云ふものが一般の整理債務よりは先に拂はれる、斯樣な恰好になつて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=47
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048・奧村又十郎
○奧村委員 其の公租公課と云ふのは、金融機關の公租公課ですか、それとも政府に對して舊勘定で税金を支拂つた場合、其の納付された税金を政府が當該金融機關に預けてある場合、それも公租公課と見られるのですか、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=48
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049・河野通一
○河野(通)政府委員 御答へ致します、此の問題は、政府が財産税等に依りまして徴收致しました第二封鎖預金を整理債務に入れますか、指定債務として取扱ふかに付きましては、まだ實は決定致して居りませぬ、もう少し研究した上でやつて行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=49
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050・奧村又十郎
○奧村委員 是は只今意外な御言葉を戴きました、第二封鎖預金、大體概算四百十六億と云ふ御發表が八月にあつたさうですが、其の中財産税で以て大體七十五、六億、是は新聞の發表を讀んだのでありまするが、七十五、六億、外に昭和二十一年度の所得税、是も所得税其の他の租税で私は百億と見て居りまするが、百七十億前後の第二封鎖預金が政府の預金として金融機關に預けられることになる譯でありますが、之を指定債務として見るか見ないかと云ふことがまだ決定して居らぬと云ふことは少し腑に落ちぬと思ひます、此の點はつきりしなければ困ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=50
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051・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の指定債務と云ふのは銀行局長から答へました通りに、租税其の他の優先的のものを指すのでございます、租税其の他の公課と申しますのは只今の所昭和二十一年分の所得税、營業税、或は法人税等の租税を言つて居るのでございます、他の政府委員から答へました財産税を納める爲の租税公課を所得税と同じやうに取扱ふかどうかと云ふことに付きましては只今檢討中でございます、尚ほ所得税等二十一年分の公課は御話の通りに百億圓にはなりませぬ、私の考へでは大體二十億圓前後が指定債務として指定されるのではないかと想像致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=51
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052・奧村又十郎
○奧村委員 昭和二十一年度の所得税は大體賦課課税で以て七八十億になると思ひます、それ等の點は大部分第二封鎖から支拂はれると思ひまするが、只今二十億と言はれますと非常に見解が違ふやうに思ひますが、其の二十億と御示しになつた基準を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=52
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053・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昭和二十一年度の所得税收入は御話の通りに九十億圓程度と見込んで居ります、其の中源泉課税になる配當利子所得、或は勤勞所得等がそれの半分以上を占めて居ります、賦課課税に依ります所得税は二十數億圓でございまして、其の中農家、漁業家等は第二封鎖預金で税を支拂ふよりも第一封鎖預金或は現金で相當支拂はれるものと見込んで居ります、隨ひまして賦課課税二十五億圓の中半分以上は私は現金或は第一封鎖ではないかと考へて居ります、而して又法人税に付ては全體で十四、五億圓でありますから、是は相當部分が第二封鎖から納まることになりませう、斯く致しますと租税收入百六十億の中、間接税は主として現金で入ります、直接税は今言つたやうに其の大宗でありますものが源泉課税の現金である關係上、而して又賦課課税の中でも相當部分現金又は第一封鎖から拂込まれる關係上二十億圓内外と見込んだ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=53
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054・奧村又十郎
○奧村委員 それでは財産税を第二封鎖預金で納入した場合、此の納入が政府の指定債務になるかならぬかと云ふことは決定して居らぬのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=54
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055・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今決定致して居りませぬ、唯第二封鎖預金に課税になる財産税は第二封鎖預金から納付を認めて居ります、其の納付されたものが指定債務になるかどうかは研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=55
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056・奧村又十郎
○奧村委員 第二封鎖預金から財産税が納付せられた場合、其の第二封鎖預金が今囘の處置に依つて相當打切られる場合は、財産税もそれだけ政府の收入が影響を受けると云ふことになる譯ですか、決定して居らぬと云ふことならば茲に論議する根據がなくなる譯ですが、さう云ふことは成べくはつきりして置いて戴きませぬと審議上困ると思ひます
大藏大臣がお見えになりましたから、大藏大臣竝に膳國務大臣に御尋ね致します、午前中苫米地委員から懇談會に於て色々な事情の御報告がありましたので、我々としては根本的な論議は差控へると云ふ御話でありましたが、我々日本社會黨の立場としては是は反對であります、何となれば懇談會に於て御示しになつた色々な交渉の結果と云ふものは一應了承致しますが、是は政府の立場、政府の政策に依つて御交渉になつたのでありまして、一應其の交渉に於ける政府の責任と云ふものがある筈であります、又若し現在の政府以外の立場の政府が内閣を取つて居つた場合、斯う云ふ案を出すか出さぬかと云ふことは、或は相當變つたものが出るだらうとも思ひますから、其の考へから行つて、我々十分に審議を致したいと思ふ次第であります、本會議に於て質問致したかつたのでありますが、それが取止めになつたことは我我非常に遺憾に思ひます、隨て此の委員會に於て本會議に於て質問したかつたことを御尋ね致したいと思ひます、どうか率直に明快に御答辯を願ひたいと思ひます、先づ一月十日に於て政府が財産税を發表致しました時には、戰時利得税、法人、個人財産税及び財産増加税と云ふものを發表したのでありますが、之を發表した經緯に付ては司令部との間に相當交渉があり、諒解があつて發表したものであると考へて居ります、所が今囘の財産税に付ては非常に變つたものとなつて出て來て居ります、此の今囘の財産税が變つたと云ふことに付ては、若し是は祕密會が必要であれば祕密會に於て御願ひしたいと思ひますが、司令部との關係に於て、前内閣が司令部と十分諒解の上發表して居りながら、今囘根本的に變つたものを出して來たと云ふのは、現在の政府の政策が違つたのであるか、司令部の方から一旦發表して置きながら變つたものを出して出たのであるかと云ふことを先づ私は知りたいのであります、是は微妙な問題でありますから、若し御差支へがあるならば別の何とかの方法で明かにして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=56
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057・石橋湛山
○石橋國務大臣 前内閣が發表した三新税案が當時如何なる經緯で作られたものであるか、それは私は知りませぬ、それから前内閣が發表した所謂財産税と今囘出しました財産税とが違つて居りますのは、是は現内閣の責任で出したものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=57
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058・奧村又十郎
○奧村委員 それでは前内閣の發表は全部現内閣は責任を持たれぬと云ふことになる譯であります、それでは現内閣の方針に付て御伺ひ致しますが、戰時利得を根こそぎ徴ると云ふことはどうしても必要であると考へるのであります、又司令部の方に於ても之に付ては度々戰爭は儲からないものだと云ふことを言つて、それに對して政府の方に施策を迫つて居るやうに考へますが、今囘軍需補償打切りに依つて、軍需會社に於ては戰時利得が多少税の形で徴られるやうに考へますが、全體として戰時利得は大部分國内に殘つて居ると考へます、今囘の財産税を見ますと個人だけであります、法人に於ける戰時利得がまだ殘つて居る、直接戰爭に關係しなかつた會社が間接に戰時中利益を擧げた、其の利益は例へば財産の帳簿價格を低く見るとか所謂含み財産を作るとか云ふことで利益が相當殘つて居る、之に對して前内閣は法人税で以て所謂含み財産に相當の重税を課する豫定で居つたのでありますが、今囘の政府に於てはそれに對して何等の方策を立てて居らぬのであります、戰時利得は今後如何にして取るか取らないかと云ふことに付て御方針を申して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=58
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059・石橋湛山
○石橋國務大臣 抽象的に申せば、戰時利得税を廢めたのですから、戰時利得に課税されないやうな形に見えますが、戰時補償特別税の新設に依りまして、事實上に於ては日本の法人が殆ど此の戰時補償特別税の範圍に入ります、隨て之に依つて法人に於ける戰時利得は殆ど悉く徴收されることになります、無論殘る企業も多少なりではありますまいが、是は特に別に一つの税を設けて徴税する程のものでなくなつてしまつて居りますから、そこで法人に對する戰時利得税は廢めた譯であります、それから個人は十萬圓以上の資産のあるものは御覽の如き非常な高率な課税がされる譯でありまして、事實に於て戰時利得も何も根こそぎ取られる、殊に高額の資産家に於ては左樣な形になつて居ります、それから十萬圓以下のものにも理論的に見れば戰時利得がある譯でありますが、是は國内の輿論が十萬圓以下位の資産を持つて居るものは免税するが然るべきだと云ふ輿論も強くありまして、政府に於てもそれが然るべき處置だと考へて免税した譯であります、左樣な譯でありますから、事實に於ては戰時利得と云ふものは今囘の補償特別税、それから財産税に依つて全部國家に吸收されるもの、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=59
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060・奧村又十郎
○奧村委員 大藏大臣は戰時補償打切りで戰時利得は事實に於て大體なくなると云ふことを御話になりましたが、之をもつと突込んで行けば結局水掛論になると思ひます、それはなぜかと申しますると、結局現在の法人の會社内容、特に資産の評價と云ふことにあると思ひます、此の評價の仕樣に依つて寧ろ今囘の軍需補償打切り以上の利得が殘ると私は考へるのであります、なぜなれば此の九月に主税局長が貴族院の委員會で御話になつたのですが、前内閣が財産税を計畫した時は國民の總財産は四千九百億、それが最近に於ては物價が上つて五千七百億になつて居ると云ふことで、既に財産税を計畫せられた時と今日とで總財産が九百億値上りして居るのであります、さう云ふ際に於て補償打切りをする、補償の打切りは政府が支拂ふべきものを支拂はぬと云ふことであるが、今の主税局長の所謂國民の總財産は現在會社にあるもの、國民にあるものであります、それが「インフレ」に依つて既に九百億も値上りして居るやうな状態でありまするから、戰時補償の打切りをしたからと云つて、それで戰時利得が解消したものとは毛頭考へられぬと思ひます、即ち「インフレ」に依つて貨幣價値が下落して居るから、補償打切りに依つて戰時利得は解消しないと云ふことを考へるのであります、大藏大臣は如何に考へるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=60
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061・石橋湛山
○石橋國務大臣 主税局長がどう云ふ數字を申上げたか、それは主税局長から申上げても宜しいが、結局現在の法人までも入れての財産と云ふものは今までの計算では、殊に前内閣が財産税を作らうとした時分の計算では政府が拂ふ補償はやはり財産の中に算へられて居る譯であります、それを拂つて其の上に財産税を課さう、斯う云ふ譯でありますから、前内閣の時の方針に依れば無論法人に對して課税をするのが當然であります、今囘の場合は補償打切りに依つて、財産税を課ける代りに資産に立つて居るものを政府が拂はないと云ふことで、それをすぽつと切つてしまふのでありますから、それだけ財産に穴が明いて來る、所が補償を拂つて財産税を課ければ拂つた補償の何割かを取ることになるのであります、今度は其の補償の殆ど百「パーセント」を取る、斯う云ふ譯でありますから、實は非常に強いのであります、唯多少幸不幸がある、さつき御話のやうに戰時補償を受けない會社で而も損害がないと云ふやうな會社も稀にはありますが、さう云ふものに對して多少財産税を課ける場合と違ふ形が生じますが、それは別個に法人財産税を作る程のものでない、軈て是は整理しました後で所得税其の他の形で、先程も申上げたやうに、是は徴税する途もあるのでありますから、此の際は法人に對して特別の戰時利得税を作らない方が適當だ、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=61
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062・本多市郎
○本多委員長 奧村君に御諮り致しますが、大藏大臣は豫算委員會の方に是非出席しなければならぬさうでありまして、まだ質問はあるやうでありますが、豫算委員會の方が濟んでからに御願ひ出來ませぬか、さうして質問を繼續願ひますれば、他の國務大臣竝に政府委員から答辯があると思ひますから、特に大藏大臣に對する御質問は向ふが濟んでからに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=62
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063・奧村又十郎
○奧村委員 實はまだ大藏大臣に御伺ひしたいことがありますので、御歸りになつてから大臣に對する質問を續けて致したいと思ひます
水産局長が御見えになりましたから、漁業權のことに付て質問致します、今囘財産税の對象として漁業權も擧げられて居るのでありますが、大體漁業權は原則として漁業會に共有せられることになつて居ると考へるのであります、併し慣行に依つてまだ個人の漁業權が多少あるやうに考へられます、併し從來政府の方針として個人共有の漁業權と云ふものは成べく認めないやうにしよう、大體五箇年毎に漁業權の免許の更新をやつて居る筈でありまして、地先の漁業會が承諾しなかつたならば免許の更新も出來ぬと云ふ所まで行つて居る筈であります、最近神奈川縣に於ては免許の更新をしないと云ふ問題まで起つて居る筈であります、所が今度の財産税は此の個人の漁業權に對する財産税でありまするが、結局最長五箇年までの漁業權であり、而も地元の漁業會が諒解しなければ其の漁業權の行使が出來ない、斯う云つたものに財産税を課けると云ふのは少しむづかしいことと思ひまするが、併し是も例へば一種の年金のやうなものと思へば課けて課けられぬこともないと思ひますが、之に對する評價の方法は如何にせらるるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=63
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064・三堀參郎
○三堀政府委員 漁業權の問題は今も御話の通り、大體さう云ふ方針でやつて居ります、唯御存じの通りに漁業權は地先の專用漁業權だけではなくて、區劃漁業權、定置漁業權色々ある譯でありまして、さう云ふものに付きましては、尚ほ現在も個人所有の漁業權が或る程度ある譯であります、さう云ふものに付きましては、特に漁業權のみに付て財産税を排除すると云ふ理窟も中中立ちにくいのではないかと考へて、一般の方針に從つて居る譯であります、さうして此の漁業權の評價の問題でありますが、是は具體的に大藏省の方と能く相談を致しまして取決めたいと存じて居るのでありまして、まだ其の方面に付ての細かな御話を申上げる程度になつて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=64
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065・奧村又十郎
○奧村委員 大體漁業權は區劃漁業權及び定置漁業權が主となると思ひますが、定置網の漁業權の財産税に於ける評價と云ふことは非常に難かしからうと考へる、之に對する御方針が未だ決まつて居らぬと云ふことになれば審議が非常にむづかしいと思ひます、併し決まつて居らぬものを今此處で引出せと云ふことを言つても致し方がないのでありますが、それを聽きたくて御願ひした譯であります、成べく早く決めて、出來れば此の委員會の開催中に御示しを願ひたいと思ひます、私の質問は之を以て一時中止致しまして、大藏大臣に對する質問は留保致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=65
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066・本多市郎
○本多委員長 菊池長右エ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=66
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067・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 此の財産税竝に戰時補償特別税を二つ合せると約一千億圓以上の金額になるのでありまするが、是が一旦施行せられる場合には、國民生活に及ぼす影響が非常に甚大であらうと思ふのであります、又此の法律案を我々が審議するに當りましても、國民生活に重大な關係のある重要法案を、會期餘す所幾らもない場合に審議致しまするには、我々委員は全力を盡して審議は致しますけれども、果して會期中に審議が出來るかどうか、非常に苦心して居るのであります、此の點に付て政府はどう云ふやうな考へを持つて居られるか、御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=67
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068・膳桂之助
○膳國務大臣 財産税竝に戰時補償特別措置法に依ります國民の負擔、國民の生活に及ぼしまする影響の非常に大きいことは、御説の通りであります、併し是は提案の理由にも數次述べられましたやうに、一つには我が國の政府の財政を堅實にする、又同時に企業面に於きまする擬制資本をば綺麗にしまして、本當の堅實な基礎の上に企業を再建すると云ふやうな必要と、もう一つはやはり戰爭に關係して、國民にやはり一度は決算すべき時機が參るのでありまして、ちびちびと色々な手術をやるよりも謂はば、拔本塞源的に、一つの大手術を行つて、國民の生活上の影響はありますが、之を耐へ忍んで國家生活の新天地を開くと云ふことが、どうしても戰後の日本に一度は必ず來なければならないことでありまして、國民各位と一緒に踏切つて此の荊束の途を拓いて行きたいと云ふ精神に外ならないのであります、唯會期非常に過ぎまして僅かの期間の延長内に此の御審議を煩はすと云ふことは、甚だ無理な御願ひではありまするけれども、此の法案を出す必要性、それ等の前後内外の状況等に鑑みまして何分とも御審議が願ひたい次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=68
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069・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 政府の意圖する所は大體了解出來るのでありまするが、此の二つの税に依つて建直し、經濟界の安定を圖ると云ふ御考へならば、さつき苫米地君の質問にも大臣はまだ此の經濟安定の基礎的な方策が決まつて居らぬと云ふやうな非常に心細い御答へがあつたのでありますが、斯う云ふやうな拔本的な大手術を行ふには、其の後に來るものを必ず豫期せられて斯う云ふ法案を提出なされなければならぬと思ふのでありますが、時間等の關係で、さう云つたやうなものがまだ出來ないと云ふのは甚だ遺憾に思ひます、唯具體的なものが假に持合せがまだないと致しましても、假に抽象的なことを申上げるならば、現下の「インフレ」と申しますか通貨の膨脹の面を見ますると、政府の新圓に對する施策を國民が思惑して居る、それからもう一つは金融機關に對して國民が非常に不安を感じ、信を置けないと云ふやうな關係から通貨が出放しになつて殆ど預金となつて還らぬ、さう云ふやうなことが非常に原因して居るであらうと思ふのであります、さう考へます時に今度二つの税を施行したならば、直ちに金融機關の整備を圖つて、さうして現在行はれて居る所の金融に對する統制は全面的に之を撤廢し、或は企業整備其の他のことに依つて職を失つた者の企業に對しては優先的に之を認め、或は金融の途を講ずると云ふやうな方策の一端でも示されるやうなことがあれば、非常に國民は力強く感ずるであらうと思ふのであります、此の點に關して大臣は如何なる御所見でありまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=69
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070・膳桂之助
○膳國務大臣 問題は非常に多岐に亙りまするから、一々此處に申上げることも出來ませぬが、此の一聯の法律の施行に依りまして經濟産業の再建をする、其の後どう云ふ風に國民を導いて鼓舞して經濟を再建して行くか、又一方には國民の生活安定をどう云ふ風にして圖るか、斯う云ふことでありますが、何を申しましても現在經濟の再建が行はれない、國民に不安がある、多々理由はありませうけれども、假に産業の方面から見ますと、或は國内では資材の不足であるとか、或は勞働の不安とか、資金の不足であるとか色々の面もありまするし、又將來の日本の經濟がどう云ふ風に建直されるか、國際間に於ける日本經濟の位置如何、資材の輸入問題はどうだと云ふやうに、日本ばかりで解決出來ない問題が多々ありまして、同時に企業の再建には、考慮を煩はさなければならない問題が隨分あります、是等に付きましては、政府は各省でそれぞれ分擔の下に最善を盡して居る譯でありますが、何を申しましても企業それ自身が弱體であつては相成りませぬ、之を健全の形に取戻すのが、先づ第一番に手を盡さなければならぬことであります、之をやつて居ります間に、政府は色々の方面から其の建直りを助長することは當然であります、併し何を申しましても企業それ自身が、自分の力で立ち直ることを致さなければなりませぬ、此の際に總てを政府に縋つてやると云ふのでは、やはり企業の健全なる再建が望めないのであります、政府のなすべきことは、或は資金の方面、或は資材の方面から、民間の企業者それ自身がなし得ないことを助けてやる、それが爲には此の議會に提出されました復興金融金庫の問題、又今提案されて御審議願つて居ります産業復興設備營團のやうなもの、斯う云ふやうな企業の再建を援助すべき方面の手は色々盡して居る譯であります、又是からの企業の再建を圖りますのに、どうせ不足の資材、不足の資金でやるのでありますから、やはりどう云ふ産業の囘復に重點を置いて、之を助けて行くかと云ふことも考へて行かなければなりませぬ、差當りの問題としては、日本の復興に大事なのは石炭問題であり、又國民生活の安定を圖る上に於ては肥料の増産問題である、又外からの輸入を促進する上に必要なのは、綿業其の他の輸出品の工業であります、又日本の工業の建直しには鐵鋼或は「セメント」、各種の事業がありますが、政府は是からの助長は重點を置くべき産業をば先づ授けて行くと云ふ所に力を注いで行く外已むを得ないと思つて居ります、尚ほ是が爲には相當外からの物資の輸入を俟たなくちやなりませぬ、是は政府各方面を擧げて聯合軍側の好意を懇請して居りまして、其の目途も段々付いて參ります譯であります、大工業の部類は大工業の方面で自力で更生を圖つて貰ふと云ふことが第一であり、之に政府が重點的に援助して行くことが考へられて居るのでありますが、唯何を申しましても中々力の及ばない部面は中小工業の部面であらうと思ひます、之に付きましては中々獨力でも行きにくいし、又相談すべき所も分らぬと云ふやうな事情もあります、政府は遠からず假に中小工業助成とでも申しませうか、中小工業の本當の相談相手になるやうな部局を考へまして、之を中央、地方に置きまして、一方には資金、資材、設備其の他の御世話をする、又一方には技術的指導をすると云ふことで之を授けて行きたいと考へて居ります、兎に角此の經濟の變轉極まりなき際でありますから、確乎たる一つの筋があつて、之に依れば萬能藥であると云ふやうな方策は考へられませぬ、併しながら各省各各の方面に努力して、施策を熱心に研究もし實行もして居るのであります、斯う云ふ一聯の政策が相集まりまして、日本の工業の再建を圖つて行く譯であります、又民間の預金等に對する不安も、要するに斯う云ふやうな施策に依つて金融機關の整備が出來、又政府が將來新圓に對しましても是れ以上の手を打つのではないと云ふ安心感が出來て、經濟が漸次安定して參りますれば、やはり人心も安定して自然と貯蓄心も出來て參りませう、唯人工的に一時の現象を追つてああだ斯うだとするべきでなく、根本を建直して行くことが必要であらうと思ふのであります、斯樣な根本の建直しの下に、先づ第一番に企業及び金融機關の建直しを策する、是が何よりの急務と考へました譯でありまして、是が本案を御審議願つて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=70
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071・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 根本の建直しを主眼とすると云ふことは尤もでありまするが、それと同時に前途に光明を與へると云ふことも亦非常に重大であらうと思ひます、大臣の御意見に依りますれば、國民は政府の力に頼らずに、自力を以て更生することが最も望ましい、勿論國民はさう云つた心構へで色々努力しつつあるのですけれども、今日の諸情勢から考へまするに、假に中小工業者の側から言ひますれば、色々な企業、色々な仕事をしようとしても、凡ゆる統制に打突かつて思ふやうな仕事が出來ぬ、それと同時に金融方面に於ても殆ど金融の途が講じられないと云ふやうな點が非常に禍ひして居る、此の案に依つて根本的な建直しが出來るならば、それを施行すると同時に、前途に光明を與へられるやうな方策を發表せられることが非常に宜いのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=71
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072・膳桂之助
○膳國務大臣 御意見の通りと存じます、現在も只今申します通り政府の力を盡して方策を講じ、決定しましたものは發表も致し、御協贊を仰ぐやうに致して居るのでありますが、尚ほ此の企業再建が數箇月を要するとしまして、其の間にも策成るに從つて國民の御期待に背かぬやうに努力したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=72
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073・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 此の二つの案に依りまして大體一千億圓以上の税が徴收せられるのでありまするが、當局に於ては此の一千億の中現金で收入出來る分と、封鎖預金等に依つて收入を見る分が大體どの程度に御考へか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=73
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074・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税竝に戰時補償特別税の課税の對象になりますのは、御話の通り一千百億餘圓でございますが、此の中財産税が四百三十五億圓、殘りの六百六十九億圓が戰時補償特別税の對象になります、併し此の中には金融機關と保險會社との間に於ける相殺關係で二百十六億圓落ちて參ります、又未だ特殊決濟になつて居ない所謂政府に對する請求權が二百四十億圓ございます、斯く致しますると本當に歳入になりますのは百六十九億圓が政府の歳入に相成るのでございます、而して百六十九億圓の内九十四億圓は政府特殊借入金でありますから、偶偶財産税等の特別會計に入りましても、直ちに國債整理基金の方に參ります、隨ひまして戰時補償特別税から實際に金なり物なりで入つて來ますのは相當少い、七十億圓程度に相成るのであります、是は終戰後支拂ひました完納品代金などを遡つて取上げるのでありますが、果して政府が支出しただけの金錢が徴收出來るかどうかと云ふことは、相當疑問な點があるのであります、隨ひましてさう云ふ點に付きましては、達觀して大體の徴收減を見た次第でございまして、先程申上げました七十億圓と云ふのは、大體金なり物なりで政府に入つて來る、其の外に九十四億圓の政府特殊借入金が入る勘定に致して居ります、隨ひまして戰時補償特別税の税收入とは申上げませぬ、是は課税の對象になるものと申上げた次第でございます
次に財産税の四百三十五億圓は實際に入つて參ります税收入でございます、其の中、現金で幾ら入るか、或は預金で幾ら入るか、又第二封鎖或は國債、社債、株式、不動産等の仕譯に付きましては、中々見方が困難でございまして、財産税等の特別會計には一應の目安で數字を擧げて居りまするが、此は單なる見込で、はつきり是だけ入ると云ふ自信はありませぬ、併し四百三十五億圓が預金なり物納なり現金なりで入つて來ると云ふことは確信を持つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=74
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075・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 さうすれば是等に依つて封鎖預金を全部解消せしめると云ふやうなことには參らないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=75
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076・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税の收入、竝に戰時補償特別税の措置を致しましたから、直ちに預金に對しまする舊勘定新勘定を廢めると云ふことは出て來ないと思ひます、是は別途の觀點に立ちまして考へなければならぬ別の問題と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=76
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077・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 現在新圓と封鎖預金の二本建になつて居ると云ふことが、非常に經濟界を混亂させる因ではないかと思ひます、大藏大臣も成べく早い機會に於て、封鎖預金を始末すると云ふことを言明されて居るのでありますが、さうすれば外に又何かさう云つたやうな方策を行はれるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=77
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078・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今度の政府補償打切り、又は財産税等一聯の施策に依りまして、我々は日本の經濟界は落着くものと考へて居ります、又落着かせなければならないものと願つて居るのでありまするが、斯かる一聯の施策を執りまして、それが旨く行き經濟界が安定しますれば、我々として出來るだけ早い機會に新勘定、舊勘定の區別、新圓舊圓の區別をなくしたいと云ふことを念願致しまして努力致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=78
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079・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 先刻苫米地委員に對する御答辯の中に評價益を出しまして、新しく資産評價をやつた場合に、非常に生産「コスト」が高くなる、是は當然のことでありまするが、將來日本が貿易を行ふやうになりまする場合に、關税とかさう云つたやうなものを考慮に入れずに世界の市場に雄飛致しまするには、物價水準と云ふものをどの邊に目安を置いて居られるか、國務大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=79
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080・膳桂之助
○膳國務大臣 物價水準の問題は、理論的に申しますと一口に申せますが、實際の問題となりますと、斯う云ふ風な色んな原因で物價の凸凹が非常に混雜して居ります際には、甚だ見透しを付けることが危險でもあり、又困難でもあるのでありますが、今朝大藏大臣の御答へにもありましたやうに、兎に角物價は一應頭を打つたと云ふやうな感は、是は國民一般にもあらうと思ひますが、其の通りであらうと思ひます、併しながらまだ物價を決定する中心であります、生産費が一時的の理由等に依つて不當に或る部分が高い爲に、所謂正當な生産費の見透しを此の際付けましても、それに持つて行くと云ふことが今直ちに履行し難いやうな事情もあります、併し一言にして申しますれば、物價を強ひて押下げることは出來ませぬが、もう既に現在あります物價を一つの見合ひと致しまして、此處に安定を求めて行くと云ふ風に、是は理論は如何樣にあらうとも、自然とさう云ふ風にやらざるを得なくなつて來る譯で、又左樣にするのが最も適當であると思ふのであります、偖て現在のやうな一言に申すと生産費の高い時に、是で國際通商が行はれまして、非常に安い外貨が入つて來ました時に、此の間の混亂、是は農産物でも工業製品でも總てに起らうと思ひます、之をどう云ふ風に調整するかと云ふ問題、此の外國から入つて來る物の價格を目安にして、今國内の生産品の物價を定めると云ふことは殆ど出來ませぬ、然らば其の間の調和をどうするかと云ふ問題は、漸次──と申しますのはやはり日本が現在は聯合軍の厚意に依る特別の許可に依りまして、通常の輸出入のやうなことでなく、特別の物資が入つて居ります譯で、當分斯う云ふ状態は續くと思ふのでありますが、日本が世界の貿易に參加し得る日がいつ參りますか、兎に角講和條約が結ばれた後でなくてはならぬかと思ふのでありますが、さう云ふ際には特殊の考慮が要ると思ひます、例へて見ますれば、或る商品に付きましては安く入ります國外の物と生産費の高い國内生産品との間に一つの「プール」計算をして參るとか、其の他色々の考へもあらうと思ひます、之を關税を以て云々と云ふことは是からは考ふべきものではなく、自然に其の間の調整を保つて行かなくてはならぬことであつて、是は中中一言にして今申上げることは困難であらうと思ひます、それ等は是からの經濟の再建をしつつ、生産費物價の安定を見つつ、それ等を睨み合せて來るべき貿易再開の日までに困難がなく經過が出來まするやうに方法を講ずる、斯う申上げるより外はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=80
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081・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 今度の二つの税金の徴收に依つて、殆ど操業不可能になるやうな事業も相當あるであらうと思ひます、それに依つて出來る所の失業者等に關しては如何なる御見解でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=81
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082・膳桂之助
○膳國務大臣 會社を整理致しまする際に、どう云ふ風に將來の事業を整理するかと云ふことは、整理計畫に自主的に考へさせまして、それを認可する方法に依つて實現させようと云ふのでありますが、事業が或は休止をしなければならぬ、或は縮小しなければならぬと云ふものも出來るのは已むを得ない、隨て茲に相當の離職者の出來ると云ふことも、是も亦已むを得ないことであります、併しながら此の整理計畫を見ます際に、政府の先づ考ふべきことは、第一段には新勘定に移し或は第二會社に移してやつて行くべき仕事に適正な從業員と云ふものはやはり置かなくてはならぬ、又近い將來に擴張さるべき見込のありますものに付ては、其の要員を置くと云ふことも必要であり、又長い就業時間を定めてありますやうな場合には企業の勞働條件を適正化する、斯う云ふ觀點も見なければなりませぬ、又舊勘定に殘して置きます施設の保存上必要な人員を殘さなければならぬと云ふやうなこともありますし、其の上に昨年終戰後直ちに相當大幅の從業員の整理が行はれた後のことでありますから、私共は初めは相當大量の離職者が出來るのではないかと云ふやうな懸念もありましたが、最近段段事情が判明しますと、當初憂へた程の大量の離職者は或は出ないのではないかと云ふやうな感を抱かせる理由もあるのであります、併しながら何を申しましてもやはり離職者の出來ることは確かであります、それでは斯う云ふやうな人達をどう云ふ方面に導いて行くか、之には根本的には斯う云ふことを考へなくてはならぬかと思ひます、兎に角日本全國の企業、殊に工業は設備も非常に破壞されたものもありまするし、色々な關係からしまして日本の各産業が縮小される、或は昭和五年頃及び昭和十二年頃の所謂滿洲事變の頃か、或は日支事變の初まりと申しますか、さう云ふやうな時と比較して二分の一、三分の一と云ふやうに縮小して行くことは已むを得ないと思ふのであります、隨て工業に從前のやうな多くの勞働者を收容すると云ふことは、是はどう考へても困難であります、隨てやはり國民全體の職業の配置轉換と申しますか、就業の方面が合理的に適當に構成されなければならぬことが一つあります、それからさう云ふ問題を離れましても、どう云ふ風にして離職した人に又仕事を與へるかと云ふことは、中小工業も、又大きな工業も一度は整理されましたが、是はどうしても伸ばして行かなくてはなりませぬので、是から再建されます企業の方面に自然と吸收して行かなければならぬのであります、偖て其の間の繋ぎでありますが、此の繋ぎに付きましては、今度企業整備の計畫の中に退職金の保護の規定も設けてあります、若し會社に適當な退職金の規定のありませぬ所は、或る一定の率で退職金をば優先的に出させます、又是が會社の經營に於て出せない場合には、政府は之に對して一定の範圍内で金融をして、一時退職して直ぐ困ることのないやうな退職金の支給を確保したいと考へて居ります、尚ほ過日も發表したのでありますが、本年度の豫算に御協贊を經まして實行します公共事業に要します人數が三百萬人と計算されて居ります、其の中の約七十萬人は都會及び都會に從事して居た工業勞働者のやうな方々であります、所が從來仕事がありましても、不思議の現象には、職業紹介所あたりで職業紹介の實績を見ますと、求職者よりも求人者の方が多いと云ふやうな不思議な現象が呈せられて居るのでありまして、都會に居つて從來のやうなことをして居りたいと云ふ念願はありましても、中々動くことを好まない者もあるのであります、けれども斯う云ふやうな非常の際にはさう云ふやうなことばかりも言つて居られませぬ、一時斯う云ふやうな公共事業に收容して置きまして、漸次仕事の始まる方面に之を斡旋收容せしめる、斯う云ふ方策を執らうと思つて居るのでありまして、其の爲に著々準備を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=82
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083・本多市郎
○本多委員長 御答辯は質問の要點に向つて、要點を簡潔に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=83
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084・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 今後の産業再建の爲には、株主或は債權者等々が非常に多大な犧牲を拂ふことは火を賭るよりも炳かなのであります、而して又さう云つたやうな整理の途上に於て或る工場等に經營の合理化と申しまするか、人員を或る程度整理し、或は待遇を引下げる等々に依つて相當に事業の進捗を見るやうな場合に於て、必ずさう云つた方策を執られたならば「ストライキ」が起るであらうと思ひます、さう云うやうな場合に日本の産業を再建すると云ふ重大な使命を帶びて共に働かふとする時に、さう云ふ事態の起ることは非常に憂慮に堪へぬのでありますが、膳國務大臣は豫ねて勞資の休戰を年來主張して居られる方でありますので、さう云ふ今後の日本に取つて非常に重大な時期に當つて、政府としては其のやうな施策を強硬に行はれる御考へはないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=84
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085・膳桂之助
○膳國務大臣 今御尋ねのやうなことを強行することは中々困難であり、却て又如何かと思ひますが、出來るだけ工場に於きまする整理計畫を實行します際には、勞資の間の協議に移し、尚ほ其の協議が出來ない場合には、適當なる調停制度其の他で圓滿に、相談の上で、是が實行出來るやうに指導して參りたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=85
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086・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 大藏省の方に御伺ひしたいのでありますが、此の財産税の法案を見ますと、財産税の對象になる鑛區或は漁業權等々のことが書いてあるのでありますが、要するに、財産權と稱するものの範圍をどう云ふ風に御考へになつて此處に上げられたのであるか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=86
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087・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産的の價値のあるものを課税の對象に致す考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=87
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088・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 さう致しますれば、水利權とか或は權利ではないかも知れませぬけれども、自動車の「バス」或は「トラック」の認可を受けて居る路線とか、さう云つたやうなものは財産權に見られないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=88
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089・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産的價値があるものと認めました場合には、無體財産權等に付きましても課税の對象と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=89
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090・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 漁業權のことに付て伺ひたいと思ひますが、農林省の方おいでになりませぬか──それでは漁業權のことは保留致します、今度の税金に依りまして、非常に不公平な面が相當現はれると思ふのであります、例へば企業整備に依つて父祖傳來の業を失ひ、其の補償金が特殊預金になつて居る、さう云つた人は殆ど根こそぎ取られる、其の反面に戰爭中に非常に莫大な利益を得た者があらうと思ひます、例へば今まで非常に不況な事業であつても、戰爭中の統制に依つて莫大な利益を收めたと云ふやうな法人も、戰爭には直接關係がなくてもさう云つた法人も相當あるだらうと思ふのであります、又統制に依つて殆ど獨占的な事業になつて、例へば一例を申上げますれば、日本通運の如きは統制に依つて全國の運送店を買收して、國内に於ての一つの運送業の業者になつた、或は地方に於ては色々あるでありませうが、酒を造る酒造家も統制會社に依つて非常に利益を受けた、或は先日も申した自動車業者と云ふやうな面と、それに依つて非常に損害を蒙つた面が出て來ると思ふのであります、斯う云ふことは戰後の經濟を再建するには或る程度の考慮を拂ふべきものでないかと思ふのでありますが、此の點に關してどう云ふやうな御考へを持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=90
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091・膳桂之助
○膳國務大臣 戰時補償打切の結果と云ふか、此の方法に依ります際に、非常に公平を失するやうな場面の出來るのは甚だ遺憾でありますが、是は萬已むを得ませぬ、唯是から企業再建、又中小工業の再建を援助して參ります際に、氣の毒な部面に付きましては、出來る限り一つ優先的に助成を考へて行く、斯う云ふ風に考へるより外已むを得ないのではないかと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=91
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092・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 財産税の場合の財産の評價でありますが、まあ有價證券或は不動産でも殊に山林の評價と云ふことが、非常に技術的に面倒であらうと思ふのであります、此の點に付て、殊に山林に付ての評價の基準を御示し願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=92
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093・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産の評價の問題は、財産税の中心を成すものでございまして、我々としては今までは勿論、今後も財産税を實際施行致し徴收するまでには十分想を練りたいと考へて居ります、只今の御話の立木に對しましては、其の立木の樹種或は樹齡を考へることは勿論でございますが、其の山林の地理的條件又地味的條件、土質等も考へる、さうして各般の事情を考へまして適正なる評價に致したいと、森林組合竝に農林省の方と打合はせて只今研究中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=93
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094・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 さう云ふやうな御考へは當然であらうと思ふのでありますが、實際問題としては殆どそれが不可能であらうと思ふ、例へば里山は是は誰が見ても評價のみやうもありますが、深山幽谷は臺帳面積に於ても、昔から目分量となつて居ります、殊に東北地方の山林に於きましては、臺帳面積十町歩でも千町歩もあると云ふやうな實情になつて居るのでありますが、さう云つたやうな點から考へても、實際の評價をする場合、最も山林が困難であらうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=94
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095・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の通りでありまして、田畑に付きましても御案内の通り、各府縣に依りまして縄延び關係が違つて居ります、殊に山林に付きましては、本當の目分量で行つて居る關係上、相當評價が他の財産に比べまして困難であると云ふことは考へて居ります、隨ひまして山林に付きましては、大きい山林に付きましては森林組合の意見、或は精通者の意見を十分取入れまして決定致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=95
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096・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 それから生活に要する動産は云々とあるのでありますが、之を査定致しまする場合に、一律に生活に要する動産と云ふものを査定するのでありますか、それとも其の人の生活樣式に依つて差等が付くか、其の邊を御伺ひして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=96
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097・池田勇人
○池田(勇)政府委員 其の方の日頃の生活状況の差異に依りまして、差等を設けることは致しませぬ、法律に規定してありますやうに、通常の生活に必要なる家具、什器等と致して居ります、隨ひまして通常の生活に必要なものが非課税でありまして、其の程度を超えますものは、是は課税の對象になることに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=97
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098・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 通常の生活の「レベル」はどの邊に置かれて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=98
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099・池田勇人
○池田(勇)政府委員 其の「レベル」の問題でございますが、我々と致しましては只今研究中でございます、財産税の課税の對象になる人のみを考へて行くか、或はもう少し下の人を考へて行くか、或は國民全體の者を考へて行くか、是は考へやうが三通りあると思ひます、其の點に付きましては今後十分研究して、適切を期したい、斯う思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=99
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100・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 どうも面倒な所に參りますれば研究中と云ふやうな御答辯では、此の重要な法案を審議するに當りまして一寸困るのでありますが、研究の時期と云ふのはどれ位お掛かりになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=100
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101・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先程も申上げましたやうに、評價の問題が財産税の中心を成すものでございまして、今の非課税財産をどの位に見て行くか、大體の私の腹案は持つて居りますが、今此處で申上げることは差控へたいと思ひます、唯主税局長一個の考へでどうだと言はれれば申上げます、財産税の中心を成す評價は、私は大藏省に財産税審議會と云ふものを設けまして、貴衆兩院の方或は民間の知識、經驗のある方の御意見を聽いた上で最後の決定を致したい、斯う云ふ考へで居るのであります、隨ひまして通常の生活に必要なる家具、什器は金額にしたらどれだけかと言はれても、只今の所一寸申上げ兼ねます、併し私見を以てすれば、全國的に各種類の人、例へば農業者、自由職業者、或は營業者と云ふ風に區別致しまして、大體家族一人に付き箪笥が一本とか、或は衣服では浴衣のやうなものは除きますが、洋服を込め二十枚、帶が何本と云ふ風に色々な計算をして調べて見まして、さうして是は何百人かが違つた目で調べたのでありますから、さう致しますと大體の結論として、只今まで集まつて居る數字は、家庭用動産を除いて二十萬圓の人は生活に通常必要な限度を超えた家庭用財産が一萬圓、三十萬圓の人は大體一萬五千圓、即ち家庭用動産を除いた財産額に對して大體五%餘の平均が出て居るのであります、隨て納税者が申告をなさる場合に、非課税財産をどの程度に見たら宜いかと云ふことに非常に御困りだらうと思ひまして、今囘は其の際に於ては五十萬圓から十萬圓の方は一應家庭用動産を除いた財産額の五%が課税になる、家庭用動産として申告して戴く、斯う云ふことに考へて居る譯であります、唯家庭用動産と云ふものは各自生活樣式に依つて餘程違つて居りますから、其の家庭用動産以外の財産に五%を乘じて算出した課税額よりも、尚ほ一萬圓を超える、斯う云ふ場合に於ては是は五%の課税の對象でなく、又改めて調査する、斯う云ふ建前を執るやうに只今の所考へて居ります、財産額に對して五%と云ふ數字は、今までの數百件集めた統計でございまして、之に依つて行くかどうかはまだもう少し考へなければ相成らぬと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=101
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102・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 財産税法案の第十三條の所にある債權に付てでありますが、登記に依り抵當權の設定された債權は當然之に依つて認められて居るのでありますけれども、個人の信用貸借はどう云ふ風になるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=102
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103・池田勇人
○池田(勇)政府委員 誤解があつてはいけませぬから申上げて置きますが、此の第十三條は本法施行地に住所を有し又は一年以上居所を有しない、而も日本の國籍を有しない者の内地に於ける財産の計算でございます、隨て無制限納税義務者たる内地に住所を或は一年以上の居所を持つて居ります日本人の債權債務の關係は、三月三日午前零時現在に於ける現況に依つて課税致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=103
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104・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 さうすれば當然信用貸借に依る債權も認められるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=104
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105・池田勇人
○池田(勇)政府委員 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=105
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106・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員 大體是で私の質問は打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=106
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107・本多市郎
○本多委員長 北村徳太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=107
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108・北村徳太郎
○北村委員 簡單に質疑を致したいと思ひます、大體個人でも、事業會社でも整理をする場合には必ず貸借對照表を作る、然るに國家として「バランス・シート」を持つて居ない、此のことは重大なる缺點ではないかと思ふのであります、戰爭に基因する總債務がどれだけあるか、國富を評價して、それが一體幾らあるかと云ふことから、差引「マイナス」幾らあるから、是だけのものを打切ると云ふことでなければならぬ、補償打切りは部分であつて全體でない、先づ全體を押へて、此の全體から補償の打切りをやると云ふのなら國民も納得が行くが、次から次へ段々深刻な問題が出て來て居る、此の點に付て國民が非常に不安を持つて居る、此のことは私は彼此れ答辯を煩はす譯でありませぬが、國家が整理をするのに、早く「バランス・シート」を作らなければならぬのではないか、而も是は消極的面でありますが、積極的には是と共に生産再建の綜合的な一つの設計を早くやらなければならぬ、此のことは前の本會議の際に少し觸れたのでありますが、當時膳國務大臣は一年を待つて、斯う云ふ御話でありましたが、今の日本の状態で一年掛つたのでは病人は死ぬのではないかと考へるのであります、さう云ふ見地から補償打切りは私は何處までも大きな整理の中の部分である、一體補償打切りは何を目的とするかと云ふことから考へなければならぬと思ふのであります、例へば財産税に致しましても、當時一番初めの頃は「インフレ」防止の爲めだと傳へられ、それが後に富の再分配だと云ふやうに傳へられた、さうなると自らやり方が變つて來る、それは別の話でありますが、今囘の此の補償打切りは、一體財政負擔の輕減を主目的とするのか、或は所謂擬制資本を切捨てて、企業の再建態勢と云ふことに重點を置くのか、其の考へ方に依つて問題も變り、質疑の内容も變つて來る、隨て此の點に付て政府の答辯を煩はしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=108
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109・膳桂之助
○膳國務大臣 御尋ねの點に付きましては本會議に於ても、當委員會に於ても提案理由説明の際に申上げたやうに、戰爭に基因する國家財政の不健全性をば、是で全部とは申しませぬけれども切捨てて、國家財政の健全を圖ると云ふことが其の一つの目的であり、又同時に企業内に於ける擬制資本を切捨てまして、そこに一つの企業の健全なる再建を圖つて行かう、此の兩者が目的であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=109
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110・北村徳太郎
○北村委員 企業の再建が少くとも今囘の打切をやつた目的の一つであると致しますと、企業再建の阻害をなして居るものは尚ほ幾つかある、それに對して出來れば或は思切つて同時に手を付けるべきではないか、賠償撤去の問題、之に關聯する相當色々な問題が含まれると思ふのであります、或は在外資産の問題、是がどうも暗雲低迷で、此の生産再建の一つの非常に大きな障碍をなして居る、隨て無論政府の財政輕減が一つの目的であり、健全財政の復歸が一つの目的であると仰しやつたのですが、それは結果としては勿論でありますが、一面に於て是はやはり經濟再建、企業再建の一つの大きな目標を持つて居る、其の目標の爲に邪魔をなして居るものは思ひ切つて一刀兩斷の處置を講ずべきではないか、公債の問題もあります、在外資産の問題もあります、賠償撤去に對してどう之を取扱ふかと云ふ風なことの方向が決まらぬと云ふと、此の次には一體何が出るのか、國民の側から言ふと堪つたものではありませぬ、此の點に付てもう少し詳しく御話が願へるなら願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=110
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111・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御問ひになりました公債の問題、在外資産の問題、賠償施設の撤去の問題でありますが、公債の問題に付きましては度々大藏大臣から御説明があつたと思ひますから私は申上げませぬ、在外資産の打切の問題、それから今の賠償設備の撤廢の問題、是はもう仰せになるまでもなく、此の企業再建の整備計畫中にも之をどうにか考へなければ再建の出來ない問題であります、實は是等の問題に付きましては率直に申しますと勿論斯う云ふやうな法案を提案します前には問題を解決して出したかつたのでありますけれども、賠償設備の撤廢に付きましては、どの設備をと云ふ具體的の問題が決まり掛けて居りまするけれども、全部もう完全に確定した譯でもございませぬ、又在外資産の問題等に付きましてはやはり是は政府部内でも色々議を練つて居りますけれども、やはり相談すべき向きへの相談もありまして、今日まで決まらぬで居ると云ふことは甚だ殘念でありますけれども、愈愈其の整備計畫が實施されます時には是等の問題も出來るだけ徹底したい、斯樣な考へで進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=111
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112・北村徳太郎
○北村委員 賠償に依る工場其の他の設備撤去の問題でありまするが、是は成べく國内に對して惡い影響を少くさせると云ふやうなことの處理は當然であると思ひます、さう云ふ觀點から考へますると、先づ官有のものを撤去する、次に官有に近いものを撤去する、或は官有を混じたものを其の次に撤去する、財閥關係のものをやる、さうして最後に一般の者に及ぶと云ふやうな施策を執らなければならぬ、是はどうせやらなければならぬものでございますけれども、國内に成べく惡影響を少くすると云ふ點に於て是は當然考慮すべきことであると思ふのでありますが、それ等の點に付て若し御考へになつて居る點があれば伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=112
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113・膳桂之助
○膳國務大臣 我が國のみで決定せられない問題なのでありまして、此の席から申すことは御容赦願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=113
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114・北村徳太郎
○北村委員 是は勿論我が國だけで決まることでないことは私も十分心得て御質問致したのでありまするが、少くとも政府としてはさうあらしめるやうな御努力が必要ぢやないか、是はどうも相手方のあることで、仕方がないのだと言はれたのでは、國民の方も堪つたものではないのであります、それで私の申上げたやうな方向に少くとも致さしめると云ふやうな御努力を願ひたいし、又御信念の程を伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=114
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115・膳桂之助
○膳國務大臣 我が國の義務として行はなければならない賠償でありますが、併し是が今御話のやうに出來るだけ國民生活の上に影響が少くなるやうに、色々其の方法、順序等に付きましても折角考へて居りますが、必ずしも御期待に副ふやうな方面に其の通り行くかどうかと云ふことは勿論分りませぬ、併し御趣旨は十分了承して政府内で努力して居ることを御諒承願ひたう存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=115
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116・北村徳太郎
○北村委員 次に伺ひたいと思ふのでありますが、平時の衡平議論と云ふものは此の際一應捨てなければならぬことは政府當局も十分に御説明になりまして了承するのでありますが、併し是は衡平を求めてはならぬと云ふのではない、可能な範圍に於て出來る限り衡平であり、又可能な範圍に於て出來るだけ誠意を追究しなければならぬと云ふことは勿論であると思ふのであります、斯う云ふ觀點から致しまして、今囘の打切に付ては國家に對する請求權を全部消滅させると云ふことは分るのでありますけれども、國家の施設であつて必ずしも直接の國家自體ではない、營團其の他のものが或る時には民間の一つの施設のやうな恰好をする、斯う云ふ場合には國家自身と同樣のものとなりまして、例へば戰時金融金庫と云ふものがございます、是が貸金に付ては債權を何處までも追求する、併し若し未拂込があるとするならば政府は拂込をしない、産業設備營團、それに付ても尚ほ未拂込が殘つて居る筈であります、政府が出資すべきものが殘つて居る筈であります、政府の債務である、是は勿論國家に對する請求權を消滅させると云ふ觀點から言へば、一切衡平論を拔きにして是は打切るのだと言つてしまへばそれまででありますけれども、一面に於て政府が出資すべきものが殘つて居るけれども、それは出資しない、其の出資しないことに依つて民間は相當迷惑を蒙るが、それでも尚ほ一般の株主には未拂込を徴收する、此處にどうも割切れぬものがある、それは所謂法に謳はれて居る國家竝に國家に準じて考へらるべきものへの請求權は全部消滅させるのが目的だと一言にして言つてしまへばそれまでなんでありますけれども、此處に國民はどうしても納得し兼ねるものがあるのではないかと思ふのであります、それ等の點に付て率直なる御答辯を煩はしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=116
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117・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點に付きましても午前中大藏大臣からも御答辯があつたと存じますが、出來るだけ政府は負擔の衡平を圖つた積りなのであります、併しながら或る一つの標準が設けられまして、それに依つて參ります際、總て衡平を求めると云ふことも洵に困難な場合もありますので、仰せのやうな點に付て衡平を缺くの感のあることは私も率直に認めるのでありまするけれども、やはり茲に國家の再建、國家財政の再建、企業の整備再建と云ふやうな、一つの大きな戰爭の後に一線を劃する際には涙を呑んで馬を斬る、さう云ふことも已むを得ないのでありまして、國民各位も其の點の御諒承を是非とも願ひたいと思ひまする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=117
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118・北村徳太郎
○北村委員 先づ斬捨御免と云ふやうな感じがするのでありますけれども、是はもう追究を止めたいと思ひます
次に財閥の解體、それから賠償設備の撤去、それから今囘の打切り等々に依りまして相當に株主の移動が行はれると云ふことは必然であると思ふのであります、而も財産税の徴收に當りましても有價證券が納税に使はれると云ふことも起り得るのでありまして、此の際株式の問題と云ふものは相當微妙な問題である、一部に於てはやはり未拂込を徴收する、是は特別和議法などに依つて或る制限を受け、或る保護を受けることになるのでありますけれども、是は何處まで株主の拂込義務を追求するのであるか、之に關して特別の措置を要しないのであるか、商法の規定に基いて特別和議法がありますけれども、何處まで是は遡るのであるか、株式の名義書替へが盛んに行はれて居るが、之に對して政府は何か具體的に御考へになつて居るかどうか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=118
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119・膳桂之助
○膳國務大臣 御同感であります、政府も其の必要があると存じまして、今具體的に考へて居ります、通常の商法の手續に依りまして段々と拂込のなかつた場合に舊所有者に遡つて行く、是では整理が出來ませぬ、之を簡易に迅速に通常の商法の規定に例外を作りまして、簡易な方法で之を整理して參りたい、其の問題に付きましてもまだ茲に具體的に申上げるまでになつて居りませぬが、併し是は何れ此の整理に付きましては委員會も出來ますので、さう云ふ委員會に付議して決定したいと存じて居ります、それから又如何樣に致しましても拂込不能の爲に茲に手放される株式が相當あらうと存じます、是が思はしくないやうな方面に流れて行くと云ふことも、大變是は宜しいことでありませぬので、是等をどう云ふ風な手段で保留して置いて、適當な時期に適當な方法で處分をし得るか、是も今未拂込の問題が折角案が纒まりつつありますが、是と同時に研究を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=119
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120・北村徳太郎
○北村委員 第二に私の御尋ねしたい點は、只今膳國務大臣より御答辯を得ましたる、即ち株式が非常に思はしからざる方面に大量に流れて行く危險があると云ふ點、二百億圓と唱へられる新圓の多くの部分が或る極めて片寄つた社會層にある、さう云ふ人達が從來事業經營等に經驗のない人達で、放資等に付ては無經驗の人達が急に今囘の機會にどんどん株式が放出されて、さう云ふものを獲得すると云ふことになり、市場の面に或る權利を持つと云ふことになれば、是は我が國の企業再建途上に於て容易ならざる問題であると思ふ、隨ひまして只今一寸片鱗を伺つたのであるけれども、何とかさう云ふ株式を適當に保留して、適當な方面へ之を分散させると云ふやうな機關の必要であることは極めて明瞭であると思ふのであります、只今さう云ふやうなことに付て政府に於ても何か御考へがあると云ふことでありますが、是は成べく迅速に具體的に對策を講じて戴きたい、さうしなければ企業の前途は極めて不安である、斯樣に考へるのであります
それからもう一つ、私の質疑は大體其の程度で止めたいのでありますが、企業再建整備法案の第十九條にございまする舊債權云々と云ふ言葉が、是が連帶債務の場合に、果して連帶債務の一方の債權全體が消滅させることが出來るかどうかは法律的に疑義があると思ひます、此の點に付て若し法文の表現が不備であると致しますならば、適當に修正する必要があると思ひますが、連帶債務の場合に此の表現で確實に政府の意圖せられる通りになるかどうか、其の點念の爲に伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=120
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121・本多市郎
○本多委員長 それでは只今の御質問に對する答辯は後刻政府委員より答辯を戴くことに致します──次に坂本實君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=121
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122・坂本實
○坂本委員 補償の打切に伴ひまして諸般の處理が行はれんと致して居るのでありますが、其の目標を何處に置くかと云ふことは、實に重大な問題であるのであります、一體經濟再建は敗戰後の日本の經濟をどの程度に落付かせようとするのか、更に又水膨れの資本をどの程度に打切らんとする趣旨であるのかと云ふのが大きな問題であるのでありますが、先刻より政府當局から御答辯がありましたが、更に愼重に考慮すべき問題であると思ふのであります、補償打切りに依りまして財政上切捨て得る金額及び財産税と此の打切りに伴ひまして新たに支出を要するに至りました資金即ち復興金融の二百億圓、或は失業對策其の他に支出されたものと睨み合せますと、果して今囘の補償打切りが我が國財政上どの程度の整理をなし得るのか、果して是で整理になるのかと云ふことが考へられるのでありますが、此の點に對する政府の御所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=122
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123・膳桂之助
○膳國務大臣 數字で申上げることは私一寸數字を持つて居りませぬので、大藏大臣がお出でになりましたならば御答辯を願つて宜いと思ひますが、兎に角此の補償打切りの目的は、先程から繰返して申上げるやうな次第でありまして、是は勿論之に依つて國家の財政上負擔を著しく輕減すると云ふ見込の上にやるのでありますが、それよりも先づ第一番に考へなければならぬことは、勿論それはそれでありますけれども、是も繰返して申しますが、戰敗後の日本が一度總決算しなければならない其の一つの決算である、斯う云ふ意味に於きまして國の財政上にも又企業の上にも數字に表はし切れない一つの大きな精神的の清算が茲に起るのだらうと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=123
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124・坂本實
○坂本委員 次に先刻苫米地議員からも質疑があつたと存じますが、補償請求權を税の形式に於て切捨てると云ふことになりました爲に、百「パーセント」の課税率を適用することになるのでありますが、是は果して税の建前上許されることかどうか、政府は今少しく國民の納得の行く方法をやらるべきではないか、此の點に付て國民の疑惑を解く爲に十分の御用意を願ひたいと存ずるのであります、重ねて御所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=124
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125・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點も今朝大藏大臣から屡屡御述べになりましたから、私餘り繰返して申上げる必要はないかと思ひますが、色々軍需補償打切りに付ては實は案があつたことは本會議でも此の委員會の當初にも私からも申上げました、政府は色々の案に付て研究したのでありますけれども、先づ第一番には徹底して行へると云ふこと、又迅速に是が處理の出來ること、多少茲に衡平を缺くと云ふやうな憾みの殘る場合もありますけれども、それから内外の情勢に鑑みまして色々考へがあるのでありますが、やはり是が一番適當だと信じて行ひましたやうな譯でありまして、是も税の形でやるのかどうかと云ふことに付ては色々議論もございませうけれども、是が最も妥當とするんだと云ふ觀念で出來ました譯でありまして、どうぞ其の邊は一つ大藏大臣の御答辯と併せて御聽き下さつて御諒承が願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=125
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126・坂本實
○坂本委員 財産税の徴收を圓滑にし十分ならしめて其の實際の效果を擧げる爲には、次のやうな點を考慮する必要があるのではないかと存ずるのであります、即ち不動産が代納せられまする場合に於きまして、政府としては之を換價する必要があるのであります、而も多額の不動産を完全且つ短時間に換價することは大變な困難なことでございます、隨て此の換價の方法と致しましては、不動産の所有者は財産税の納付の爲に勸銀の如き機關から、例へば二十年、三十年、年賦位で不動産を擔保として納税資金を借入れる途を開いて、之を次て納税せしむることの考へ方、又政府は勸銀に對しましては此の貸出を容易にする適當なる措置を講ずること、斯樣な考へ方が望ましいと思ふのであります、尚ほ又財産税の代納と致しまして有價證券、殊に株式を提供する場合に於きましても、適當なる證券機關を設けまして、曩に申しましたと同樣の趣旨で取扱ひをすると云ふことが必要ではないかと存ずるのであります、之に對しまする政府の御考へを承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=126
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127・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の如く物納になりました各種の財産に付きましては、之を出來るだけ早い機會に換價するやうに考へて居るのでございます、各種の物納になりました財産に付きましては、一つの機關に依らずに、例へば六大都市の家屋とか或は宅地と云ふやうなものは、勸銀のみならず信託機關を使ふことが適當ではないか、又有價證券に付きましても、特別の一つの機關を置いて早く換價するやう努めたが宜いのではないか、斯う云ふ方向で考へて居ります、唯不動産を擔保にして納税資金を貸すと云ふことは、財産税の建前から必ずしも贊成出來ませぬ、唯問題は其の人の全體の財産の構成、さうして財産税の税額、其の人の所謂事業、色々な點を考へて個々に決めなければならぬ問題だと思ふのであります、御話の不動産擔保に依る貸付金も事情に依つては認めて行きたいと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=127
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128・坂本實
○坂本委員 次に企業再建整備法案及び金融機關再建整備法案を見まするのに、前者に於きましては、其の第三章に於きまして、整備計畫の立案を樹立せしめて利害關係者の意向をも酌み處理せしむることが定めてあるのでありますが、後者に於きましては斯かる規定がないのでありまして、利害關係者の意向を酌む機關の乏しい憾みがあるのでありまするが、何故兩法に於きまして斯る差異を認めて居るのか、此の點に付きまして御所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=128
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129・福田赳夫
○福田政府委員 此の兩法案に於きまして若干の違ひがあると云ふことは、金融機關の特異性と申しますか、金融機關は一般企業に比べますと、相當公的色彩が濃厚なものでありまして、之を普通銀行にありましては普通銀行法に依つて監督し、又特殊の銀行に付きましてはそれぞれ特殊の銀行法がありまして、之を監督して居ると云ふ見地から企業の側に於きましては、整備計畫等を作りまして利害關係人の意見を斟酌すると云ふことがありますが、多分に此の問題は金融機關の側に於きましては政府の監督の系統で行くと云ふ建前を執つて居るのであります、只今御質問の點は或は特別管理人と云ふものが企業の方にあつて、金融機關の方には特別管理人制度と云ふものがない、斯樣なことかとも思ふのでありますが、其の點でありますると、やはり同樣の趣旨に依りまして、企業の側に於ては必ず特別管理人と云ふものを置くのであります、それから金融機關の側に於きましては是は必ずしも特別管理人のやうなものを置きませぬが、其の代りに監査委員と云ふものを考へて居ります、監査委員と云ふものは是は經濟再建整備委員會に於きまして、此の銀行には監査委員を置いた方が宜からうと云ふ場合には監査委員と云ふものを置きます、それから又主務大臣が此の銀行の整理には監査委員を置いた方が宜からうと云ふ風に認めた場合には一應再建整備委員會に對しまして、主務大臣から左樣な命令をする、監査委員を置くことを命ずる、斯樣なことであります、それから特別管理人と監査委員との權限の問題でありますが、權限に於きましても、銀行の側に於きましては、是は銀行法で能く監督をして居ると云ふ見地から、權限が特別管理人に比べますと縮小されて居る譯であります、それで金融機關と一般企業との關係から色々と左樣な違ひが出て來て居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=129
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130・坂本實
○坂本委員 只今の御説明を承つたのでありますが、更に私は此の二つの法を見まする場合に、肝腎の點を命令に讓る所が非常に多いのであります、殊に資産の評價方法、株式未拂込の徴収其の他とを何れも命令に讓つて居るのであります、是は非常に疑惑を招く所でございまして、大體の要綱なりとも此の際明かにせられたいのでございます、併しながら此の點明確に致し難い御事情もあるかと存じますが、唯此の際申上げたいことは、實際界の意見を十分取入れられまして、實際と能く照合して實情に適するやう成べく煩雜なる手續を簡便にせられたい、斯樣な希望を持つて居るのでありますが、之に對しまする御當局の御用意は如何か、御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=130
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131・三木秋義
○三木政府委員 只今御尋ねの資産の評價の問題、未拂込の徴收の問題、何れも重要な點でありまして、本法の施行に付きまして、此の點が如何に處理されるかと云ふことが、本法の趣旨が達成するかどうかと云ふ問題にも關聯して來る大きな問題でございます、只今政府部内に於きましても此の點に付きまして愼重研究中でありますが、斯かる問題を政府部内のみの問題でなしに、各方面の實際意見も聽いて決めて參りたいと考へて居りまするので、經濟再建整備委員會が成立致しましたならば、其の委員會に付議致しました上で、最後的な決定をして參りたいと考へて居ります、唯一應の考へ方と致しましては、先程も大藏大臣からも御説明がありましたやうに、資産の評價に付きましては、債權者側にも餘り多くの迷惑を掛けない、又今後の日本の經濟の再建にも支障を來さしめない、企業を弱體化せしめないやうな建前に於て、公正な建前でやつて行かなければならぬ、斯樣に考へて居ります、又未拂込の問題に付きましても、商法では現在相當煩雜なる手續になつて居りますので、ああ云う手續にそれぞれ依ると云ふことは恐らく實際上不可能であらうと考へまするので、例へば讓渡人に對する責任の追究であるとか、さう云ふ面に於きまして相當除外例を設けまして、必要なる措置を執らなければならないのではないかと考へて居ります、只今各方面の意見も聽き、情勢をも察知致しまして、研究して參りたい、近く委員會が成立と同時に斯う云ふものを付議致しまして決定して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=131
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132・坂本實
○坂本委員 以上で私の質疑を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=132
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133・本多市郎
○本多委員長 奧村君の質問の繼續を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=133
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134・奧村又十郎
○奧村委員 本委員會に提案の各法案の本會議に於ける提案劈頭に於て、吉田總理大臣が特に説明せられましたが、其の際に於て、經濟再建の非常措置は大體是で一應出盡した、隨て新圓の再封鎖或は今後新措置は行はぬと云ふことを言明して居られます、是は相當政府に於かれましても、此の言明に依つて、國民の通貨の不安を除かう、預貯金の不安を除かうと云ふことに力點を置いて居られることと思ひます、併し通貨不安、預貯金不安を除かうとして如何に聲明せられましても、其の聲明の裏付になる政府の強力な政策があり、用意があり、又國民にそれが徹底して居らなければならないと思ふのであります、然らずんば、例へば七月の非常時宣言のやうに、大邸宅を開放するとか何とか言うて居りましても、結局空念佛に終つて居るのであります、特に此の經濟問題に付て、國民が納得が行かぬ、國民が不安を持つて居ると云ふ場合に於て、唯總理大臣、大藏大臣が如何に言明せられてもそれは效果がない、寧ろ却て政府の不信を高めるものであると考へるのであります、隨て私は、此の國民の通貨不安を除くと云ふことに關して必要な二、三の問題に付て、主として大藏大臣及び膳國務大臣に御尋ね申上げたいと思ひます、國民の通貨不安を除かうと云ふことに付ては二つの大きな問題があると思ひます、それは「インフレーション」に對する政府の方針政策と云ふものがはつきりして居らないと云ふこと、もう一つ、國家の財政の見透しと云ふものが殆ど立つて居らぬと云ふこと、隨て通貨が今後どれだけ發行されるかと云ふことも見透しが付かぬ、是等のはつきりしないと云ふことが結局國民の通貨不安となつて居るのでありますから、此の點が或る程度はつきりしなければ、吉田總理大臣の重なる言明も效果がないと思ふのであります、併し是等の問題は中々今日占領下に於て難かしい問題でありますが、さればと云つて政府も投げやりで置いて貰つては困ると思ひますので、出來るだけ私は政府の方針をはつきり承りたいと思ふのであります、政府の此の「インフレーション」に對する政策、方針がはつきりしないと云ふことに付て、是は石橋大藏大臣の今日まで在野中及び大藏大臣になられてからを通じましての「インフレーション」に對する大臣の言説が社會の一般の輿論と相當相違して居り、而も度々言説が變つて居る、斯う云ふことが非常な原因であると思ひます、此の點、少し擧足取りのやうに思はれるかも知れませぬが、併し大藏大臣の此の「イレフレ」に對する見方に依り、政策に依つて、政府の凡ゆる政策が變つて來るのでありますから、私は此の際はつきり致して置きたいと思ふのであります、即ち大藏大臣は、大臣就任前には、大體國内の輿論として、「インフレ」必至であるとして非常に戰後の「インフレ」を不安に考へて居つた國民の大體の空氣にも拘らず、大藏大臣は當時敢然として「デフレ」が來ると云ふことを言うて居られた筈であります、所が、本議會が始まつて財政演説の際に於ては、大藏大臣は、日本の現在は所謂普通の意味の「インフレ」ではない、寧ろ金融恐慌である、尚ほ重ねて、生産が出來れば赤字財政も寧ろ健全財政と言つて宜いと云ふ風に言はれて居るのであります、所が昨日の貿易資金の本會議に於ての御答辯に依りますと、今度ははつきり「インフレ」であると云ふことを言つて居られるのであります、大臣としては其の間例へば豫算委員會に於て水谷委員の質問に答へて色々其の點言譯をして居られるやうでありますが、國民に對してさう云ふ誤解を生ぜしめるやうなことでは非常に困ると思ふのであります、私は茲に、大藏大臣が大臣に御就任前に、大藏省の「財政」と云ふ雜誌に於て、當時の國民の與論が「インフレ」來ると云ふことを非常に心配して居る場合に於て、斷じて「デフレーション」を強調せられたと云ふことに付て少し質して見たいと思ひます、茲に「財政」の雜誌を持つて來て居りますが、一部申上げます、「然らばどうして私と世論とは我が經濟の方向に付て斯く觀測を異にするか、何よりも先づ第一に私が前途を「デフレ」と觀る理由は、國家の財政の終戰に依る必然の收縮である、政府が今秋の議會に發表した數字に依れば」是は昨年の議會のことを意味します、「昭和二十年度の財政資金は六百五十五億圓で、十九年度のそれは四百七十五億圓である、其の外に産業資金、昭和二十年度に百三十億圓、十九年度に六十億圓あつた、併し近年の我が經濟界は斯かる巨額の財政及び産業支出に依つて賄はれ、戰時の要請に應ずる活動を維持して來たのである、勿論其の間に激しい「インフレ」を發生した、併し其の「インフレ」も亦經濟界が右の活動を維持するのには巳むを得ない必然であると考へる、然るに年額五百五十億圓に達する臨時軍事費が全部其の要なきに至ることは明かである、民間の産業資金支出は假に戰時中の儘に續くとするも、右の財政の收縮がどうして「デフレ」を起さずと言ふことが出來やう」財政雜誌に載つて居る大藏大臣の「デフレーション」の意見は、唯此の政府財政の收縮と云ふことを根據として「デフレーション」を言うて居られるのであります、所が案に相違致しまして、寧ろ昨年度の財政よりも今年度の財政がより以上膨張して居ると云ふことは、既に大藏大臣が今議會に於て御提出になつた通りであります、大體大藏大臣の御意見に依れば、「インフレーション」は國家財政から起ると言うて居られる、國家財政が收縮するから「デフレーション」であると云ふことを在野中に言うて居られたのであります、隨て今囘財政が膨張したのであれば、赤字財政であるからして、はつきり「インフレーション」となると云ふことを言はなければならぬと思ふのであります、此の點昨日の本會議に於ては「インフレーション」であると云ふことを言はれたのでありまするが、それまでの間に於て度々金融恐慌と言ひ、或は眞の意味の「インフレーション」でないと云ふ風なことを言はれたり、眞に健全財政を作つて行かうと云ふ大臣の御信念を承ることが出來なかつたやうに思ふのであります、此の大藏大臣の「インフレーション」に對する信念をはつきりと國民に徹底させることが此の通貨不安を取除く爲の一番大事なことであらうと思ひます、此の際もう一度はつきり仰しやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=134
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135・石橋湛山
○石橋國務大臣 私の意見は大藏省に入る以前と今日と少しも違つて居りませぬ、財政の點は一つの文章になれば皆書く譯に行きませぬから、或る部分しか書いて居りませぬから、或る部分を讀まれると變な所も起るかも知れませぬが、日本に「インフレ」が起るとすれば財政だ、是は過去に於ても今日終戰以來ずつとそれを通して考へて居る、然らば財政に於て日本が「インフレ」を起すが如き財政は何で起るかと云ふと、是は今日の言葉で言へば終戰處理費乃至賠償だ、斯う考へて居る、今日も左樣に考へて居ります、併しながら終戰處理費及び賠償と云ふものは、是は先程御質問の中にもありましたやうに、今日政府の態度にはつきりしない點があるとすれば、それは日本が占領下にあると云ふ點に於てはつきりしない、それだけです、外の點は全部はつきりして居ります、唯占領下にあるが故に日本政府の考へる通りに行けない部分がある、それは豫め我々が言明出來ない、是だけです、それ以外には何も不明な點はありませぬ、今の終戰處理費及び賠償問題も同樣でありまして、是は我々が何とも出來ないことであるが、唯私は斯樣に信じて居る、それは聯合國が日本を占領する目的は日本を潰す積りぢやないのだ、日本に「インフレ」を起す積りぢやないのだ、私は就任前から聯合國の其の方面の人と多少接觸がありますが、私の知る限りに於ては日本に「インフレ」を起すことを最も惧れて居るのは占領軍である、寧ろ日本人が惧れて居るのよりも惧れて居る位に考へて居ります、兎に角今度の財政は財政税で賄うことに依つて、普通歳入で支辨の出來ない大きな財政を提出した、是は占領軍もそれを認めて居る、さうして成程是は非常に「ヘビー」だ、併し今年に於ては必ずしも「アンベアラブル」ぢやない、斯う云ふ立場を以て聯合國は承認して居る、明年度の財政に付ては先程申したやうに、日本政府自身の態度ははつきりして、是は何人が見ても間違ひないと思ひますけれども、唯はつきりしないことは明年度の進駐軍費等がどうなるか、併し私は只今申上げた私の信念に依つて、其の方から日本に「インフレ」が起るやうな財政を聯合國占領軍が認める筈はないと思つて居る譯であります、其の他の點に於きましては、言葉は其の度々に色々の角度から申しますから違ふかも知れませぬけれども、私が終戰後の日本で心配すべきことは「デフレーション」だ、現に今まで戰爭中及び終戰直後の状況から「インフレ」が起つて居る、是は私は初めから認めて居る、併しそれが激しくなるかならぬかと云ふことが問題である、私はそれは激しくならぬ、寧ろ危險なのは「デフレ」である、現に他の處理の一面に於て「デフレ」的現象を生ずるのであります、之を旨く切拔ける、そして生産を立てたいと云ふことが今日の日本の財政經濟に於て最も必要だ、私は斯樣に過去に於て考へ、今日も考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=135
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136・本多市郎
○本多委員長 御質問は付託せられて居る諸法案に成べく關係のある限度に御願ひ致したいと思ひます──奧村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=136
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137・奧村又十郎
○奧村委員 委員長に言葉を返すやうでありますが、私は此の委員會に併託された諸法案の總理大臣の言明に對してもう少し裏打をはつきりしたいと思ひ、政府の方針を承りたいと思つて質問したのでありますが、それでは是等のことは成べく簡潔に致します
大藏大臣の只今の御話に付きましては私も今日まで相當大臣の言説を調べて居ります、それで唯雜誌の一節を讀んでと言はれるが、之に對して私は非常に不滿であります、併し斯う云ふことを今言うて居る時間はないと思ひますから、是は止めます、大臣が只今後段で御述べになりました占領軍當局として日本に「インフレーション」が起ることを好まないだらうと大臣が推察して居られることを承りまして、此の點洵に結構と存じます、就きまして、「インフレーション」の抑制の問題に付ては、外資の輸入と申しますか、利用と申しますか、是が最も重大な「ポイント」であると思ひまするが、之に對して何等かの大臣の御意見を承れば、國民として非常に將來の見透しに對して安心を得るものであると思ひまするが、如何なものでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=137
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138・石橋湛山
○石橋國務大臣 小さな意味に於て外資は──現在に於きましても食糧、其の他の輸入を必要とする、こちらからの見返り物資が或る場合にはそれに足りないと云ふこともありますから、物資で入れるものに付きましては、或る程度暫くの間貸して呉れると云ふものが今までもありますし、將來に於ても相當多くなることもあらうと思ひますから、其の程度の外資と云ふことであるならば、差當りに於ても或る程度望みがあると思ひます、併しながら世間で言ふ相當に大きな外資、例へば大正年代に日本に水力電氣の開發の爲に入つて來たやうな會社の社債でありますとか、或は明治時代に屡屡ありました國債を海外で募る、斯樣な意味に於ける外資ならば、私はまだ當分望みがないと思ひます、無論是はあれば望ましいことではあると思ひまするけれども、それは我々が左樣な「ウィツシュフル・シンキング」に依つて計畫は出來ない、是は何處までも獨力でやつて行く、斯う云ふ建前でやつて行かなければならぬ、獨力でやつて行く建前を執りまして、初めて講和條約を結ぶ時期も早くなり、隨て又希望される外資の輸入の時期も早くなる、斯樣に私は考へて居るのでありまして、外資輸入を先に考へて、それを基礎にして制策を立てると云ふことは、私はやつて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=138
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139・奧村又十郎
○奧村委員 それでは財政の面に付て御質問致します、大體今年度の改定豫算は出來、又追加豫算も出されて居り、今年度の見透しとしては、大體當局の方で付いて居られるでありませうから、今年度末の通貨は大體どの位になると御見透しを付けて居られますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=139
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140・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は寧ろ日本銀行などが能く知つて居るかも知れませぬが、幾ら幾らと云ふ數字は、今はつきりしたことは申上げられませぬ、併し斯う云ふことだけは事實でありませう、兎に角今度の整理、此の補償關係の種々な一聯の政策と云ふものが實行されまして、只今政府が考へて居るやうに整理が相當に進捗すると云ふことになります、それから同時に金融機關に貯金を集めると云ふ只今の政府の考へ方が或る程度緒に就けば、漸次發行通貨は「レギュレート」されると思ひますが、今の有樣ではまだ暫く通貨は増加するでありませう、ですから年末に幾ら幾らと云ふことは申上げられませぬけれども、現在よりも殖えるでありませう、左樣なことだけは豫想して置かなければならないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=140
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141・奧村又十郎
○奧村委員 大藏大臣は國民貯蓄に付ては特に強力に進めると言はれましたが、具體的に如何なる方針を持つて居られまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=141
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142・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は今色々具體的の策に付て事務當局等に於ても研究を致して居ります、是は無論奇拔な別段大したものがある譯はないのです、要は金融機關に預金をしても安心だと云ふ觀念を植付けること、それから其の外は、今窓口が非常に惡くて、其の爲に實際預金しようと思つても、うるさくて預金をしないと云ふやうな人もあるのですから、左樣な改善を致すこと、直接には貯蓄の色々な奬勵を致す、是は口でも致せば、或は活動寫眞でも致すと云ふやうな宣傳もありませうが、其の外に現に多少やつて居りますが、割増附の貯蓄でありますとか、さう云ふやうな多少の技術的のことはあらうかと思ひます、さう云ふやうなことを色色其の地方、或は其の時期に適合する處置を執つて行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=142
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143・奧村又十郎
○奧村委員 どうも只今の御答辯に依りますと、國民貯蓄の増強に付て具體的強力な方法がまだ立つて居ないやうに感じられます、是は度々御話にもありましたやうに、國民が國家財政に安心感を懷く、通貨に安心感を懷かなければ、如何に活動寫眞やさう云ふやうなことをやりましても、絶對駄目であります、是は今年の金融緊急措置以後に於て、國民の通貨觀念が變つて居るのでありますから、生半可な貯蓄奬勵では駄目であると思ひます、せめて年度末通貨の見透し位はおつけになり、又是等に對して國民に納得の行くやうな──納得が行くか行かぬか、兎も角政府としてのはつきりした、もう少し財政の見透しに付て國民に徹底さして行かなければ、如何なる奬勵をせられても效果があるまいと思ひます、併し此の點は如何に御尋ね致しましても、どうもはつきり御答辯を願へないので、遺憾ながら又別の機會に讓りたいと思ひます
次に物價の點に付て、是は安定本部長官の方に御尋ねすると宜いのでありますが、一つ伺ひたいと思ひます、是は大藏大臣にも關係があらうと思ひますが、大藏大臣は物價は大體安定しつつあると云ふことを言はれましたが、日本に於て只今物價と云ふ、政府が基準を取るやうなものがあるのでありますか、魚、野菜、果物、薪炭、炭、米、其の他統制物資は統制の値段を以て基準を取つて居られるのでありませうか、又闇の値段を取つて居られるのでありませうか、統制のものにしても、是から寒くなると、薪炭、炭の配給が問題になりますが、恐らく計畫の中の一割か二割しか供出になつて居りませぬ、是は大體凡ゆる方面に伺つた話ですが、斯う云ふものの供出は出來て居りませぬ、又生鮮食料品の統制に依る供出も段々惡くなつて來て居るやうに思ひます、八月、九月までは季節的に増産出來て多少多いやうに見えて居りますが、全體として見て、統制に外れて行く品物が多いやうに思ひます、現在都會に於ける生鮮食料品の配給、或は炭、薪炭の配給を御調べになれば、事實どれ位配給して居るかと云ふことは御分りにならうと思ひます、さう云ふものの値段を取つても、物價の基準にはならぬ、と云つて、闇の物價を取りましても、是は基準にはならぬ、第一自由に販賣して居るものではなくて、闇のものと云ふものは統制を外れて來て居る、統制のやり方に依つて闇のものが多かつたり少なかったりするものであります、ですから物價を何處へ持つて行つて基準を取るかと云ふことは言へない、恐らく大臣も言はれぬだらうと思ひます、其の基準の取れぬものを以て、大臣は物價は安定し掛つて居ると云ふことを言はれるのでありますが、是は洵に我々として奇怪に思ふのであります、大臣の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=143
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144・石橋湛山
○石橋國務大臣 今日の日本の物價が過去に於けるやうな──物價指數と云ふものは過去に於てもそこらで作つて居りますが、それでは物價指數がどう云ふものかと云ふことは理論的に申せば中々議論があるのでありまして、是が確かに日本の物價指數だと言はれるものは一つもないのであります、併しながら其の程度のものさへも今日はない、だから日本の物價の水準が何處にあるかと云ふことは中々見當が付きにくいことは、私が今囘の議會に於て屡屡申上げて居る所でありまして、御所見の通りであります、併しながらそれでは物價指數は全然ないかと申しますと、御話のやうに公定價格を基礎にした物價指數はずつと出來て居ります、其の外に露店の價格の指數も、無論完全なものではありませぬが出來て居ります、それから所謂闇價格指數、或は各家庭で實際に購入したものを調査致しまして、さう云ふものも出來て居ります、要するに今日私が日本の物價が此の位にあるだらうと云ふことは腰だめでありますが、それ等の種々なる物價の調査を見ますと、公定價格の物價指數は日本銀行が一つ發表して居りますが、それは三月以後急騰を致して居ります、是は公定價格が三月以後改められたからであります、併しながら露店價格の指數、或は其の外の闇價格指數は──實は今日は殘念ながら資料を置いて來ましたが、二月の半ばが最高でありまして、又通貨も二月が御承知のやうに最高であつた、三月、四月と下りまして、通貨が其の間減じましたが、但し通貨の數量は二月に比較して四分の一にも減りましたけれども、物價は極く僅かしか下りませぬでした、二月を頭にしまして三月、四月と少し下りました、それから五月、六月、七月、八月と上つたり下つたりして居りましたが──七月あたりから上つたり下つたりして居りましたが、八月以來又下つて居ります、九月の調査は未だ出來て居りませぬ、私まだ見ませぬが、今まで集まつた資料の限りに於ては九月は更に下つて居るやうであります、斯樣な譯で通貨の増減と二月以來の物價は──露店價格や闇物價に見る物價の動きは異なります、三月十八日に百五十億圓臺に通貨が減りまして、それから、更にぐんぐん殖えて、今日六百億圓を越え、二月の最高よりも上つたと云ふやうな譯でありますが、物價は左樣に上つて居りませぬ、左樣な點から全體として觀測致しまして、物價は大體三月以後安定若しくは横這ひ、斯樣な状況であります、四月以來は天候に恵まれた關係も大いにあるのでありますが、幸に所謂下落の傾向がある、斯樣に見て居る譯であります、御話のやうに是が立派な物價指數だと云ふやうなものは今日殘念ながらございませぬが、大體の傾向だけはそれ等の色々のもので察し得ると考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=144
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145・奧村又十郎
○奧村委員 通貨不安の點に付ても少し政府の御信念のある御答辯を戴きたかつたのですが、是は巳むを得ませぬ、時間の關係上財産税の點に付て二件だけ御伺ひ致したいと思ひます、財産税の財産は三月三日を以て御調査になつて居られる、隨て三月三日に調査する爲の臨時財産調査令の調査と云ふことが最も基準にならうと思ひます、所が臨時財産調査令と云ふものが、私色々調べて見ますると洵に不備なやうに思ひます、なぜと申しますと、大體に於て金錢的な財産は御承知の通り全部一旦銀行に預けさして居るのでありますから、相當行届いて調査が出來て居る、所が物的財産に於ては金錢的財産と比べて餘りにも調査が行届いて居らぬ、殆ど調査がなからうと私は思ひます、それで其の點を一つ御伺ひします、なぜと申しますと財産調査令に於ての物的財産の調べに於ては大體三點があると思ひます、特定の人に限られて居ります、物品販賣業、貸付業、製造業、請負業、印刷業、出版業、工業、是等の業者の商品、製品、半製品、機械、而も是等が五千圓以下は除く、五千圓以上の商品、製品、半製品、機械、そして調べる相手も特定の人に限ると云ふことになつて居るのであります、隨て國民全體に對して調べて居らぬ、又品物に依つても大體それ等が營業として取扱つて居るものだけに限られて居る、是等の調査に於て財産税が果して巧く課かるか、なぜ物的財産の調べに於て人を特定にし、商品其の他の營業品に限る、五千圓以下は除いたと云ふ此の理由を御伺ひしたい、是は前内閣の仕事であるならば、斯う云ふ不備なる調査令に依つて財産税は衡平に課かるまいと思ひますが、此の點政府は如何に御考へになつて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=145
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146・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは技術的のことでありますから、必要があれば政府委員から御答へさせますが、それは技術的にそれで宜しいのであります、其の場合にそれだけの調べをして置く、主として金融關係のものを調べて置く、それから物的財産の移動の烈しいものだけを調べて置く、それで他の不動産の如きものは無論其の時に調べなくても三月三日現在のものは分るのであります、あとは愈愈納税をして貰ふ時に各個人から此の法律にありますやうに申告して貰へば、それに誤りがあれば是は調査する方法があるのでありますから、それで技術的に差支へない、詰り一遍に何も彼もあの時調べる必要がなかつたから調べなかつた、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=146
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147・奧村又十郎
○奧村委員 それでは昨年十一月財産税の發表後、非常に澤山の人が銀行預金を引出しまして、そして所謂財産税を逃れる爲に物に換へた、さう云ふ換物はどうなつて居るか、又さうでなくても戰時及び戰後の色々な事情から直接日常必要でなくても色々なものを個人が持つて居ります、斯う云ふものは商品でなければ調べぬと云ふことになつて居りますから、三月三日には殆ど是は調べられて居らぬと云ふことになりますが、それが三月三日後に於て新圓に賣却せられると云ふことになりますると、是はもう何處にも調べる手掛りはない筈でありますが、之に對して如何なる考へを持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=147
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148・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昨年暮財産税案を發表致しましてから後に銀行預金を引出して相當物に換へて居るではないか、斯う云ふ御話でございます、是は營業者でありますれば三月三日の臨時財産調査令で調べ得られます、又それが營業者でない特殊の人ならば、只今私共はさう云ふ風評のある人、さう云ふ疑はしい人の三月三日までの財産に付きましては特に入念に調査致します、又昨年の暮から三月三日までに預金の相當引出しがあつた方面に對しては、金融機關と連絡を取りまして調査したいと考へて居ります、凡ゆる手を使つて脱税のないやうに十分準備を致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=148
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149・奧村又十郎
○奧村委員 銀行預金の引出した金額なり、其の他のことで御調べになると云ふ御答辯でありますが、それで以て換物した人々の財産が調べられると云ふことは、我々には信じられぬことです、そんなことを成程さうですかで聽くやうでしたら、是は餘程どうかして居ると思ひます、換物は全國的に相當執拗に行はれたものと思ひます、併し是は恐らく唯答辯として言はれたのでせうけれども、大藏當局としてもそれで出來るのだと云ふことを考へて居られるかどうか、私は疑問だと思ふ、所が是が國民の感情の問題として、公平を缺くと云ふ點に付て非常に大きな影響を持つて來ると思ひます、大體戰時利得を持つて居る人などに限つて換物をやりたがる、それだけ頭が鋭い譯である、換物した物を手持ちして居つて、それを財産調査後に新圓に賣却して居る、之を如何にして政府が捕捉するか、是は恐らく國民全體が注視して居ると思ふ、私はなぜ三月三日にさう云ふ隱匿物資などを調べぬか、お調べになる積りならなぜ調査令に記入せられぬか、記入せられて居れば、此の法案にも出て居りますが、調査令に依つて税務署なり、當局に於て調査する權利もあり、手段も取れると思ふ、さう云ふ手段、手續をなぜせられぬか、せられずして今になつてから銀行預金を調べる、そんなことでは我々は到底諒承出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=149
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150・池田勇人
○池田(勇)政府委員 三月三日の臨時財産調査令で、所謂金錢的債權と營業者の持つて居る商品に限りましたことは、先程大藏大臣が御答辯になりました通りでありますが、當時は財産税法案が如何なる形體で出て來るか分らなかつたのであります、斯かる場合に一般人の所有動産を調査することは、國民に非常に迷惑を掛けることであり、又あの程度で十分ではなかつたかと考へた次第であります
次に隱匿物資の調査に付て銀行預金の引出しを調べるだけでは不十分だと言はれますが、是は一つの方法なのでありまして、税務署としては凡ゆる手段を盡します、銀行預金の調査と云ふのは一例だけであります、只今までにも税務署には相當資料を捕まへて居ります、又銀行預金を調査致しまして、營業者に付きましては相當の調査を致して居ります、今後に於きましても此の税法が通過致しましたならば、所謂營業者以外の個人に付きまして調査し得ることになりますから、十分の調査をして課税に不公平のないやうに努めて行きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=150
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151・奧村又十郎
○奧村委員 是れ以上御尋ね申上げても御答辯は變らぬだらうと思ひますから、答辯は要求致しませぬが、恐らく預金を主として持つて居る人と、物を持つて居つて金に換物した人の不公平を如何にするかと云ふことに付ては、是非とも十分の御考慮を願ひたい、若し之に失敗すれば國民の思想の上に、非常に大きな影響を及ぼすと思ひます、金を持つて居る人は政府を信頼して居る人だから、さう云ふ人の金に對しては丸々税金を課ける、而も是は最初は金錢的な財産に付ては幾らかを控除する、或は定期預金に對しては三割でしたか控除すると云ふ所まで行つて居りましたのが、今度は全部之を外されると云ふことになるのでありますから、尚ほ換物者に旨いことをやらすことになつては大變だと思ふので、どうか其の點十分愼重に御考へになつて戴きたいと思ひます
次に財産税の株式の評價に付て御伺ひ致します、株式の評價に於ては取引所の價格、或は政府に於て評價する資産負債の状況を見て評價すると云ふことだけしか分つて居りませぬが、一般に取引される株式の價格と、會社の實體から來る價格と相當開きがあると思ひますが、此の點如何に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=151
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152・池田勇人
○池田(勇)政府委員 企業再建整備法等に依りまして會社が相當整理されると思ひます、其の整理の場合の資産の評價基準を如何にするかと云ふことは、只今の所度々政府委員から御話になりましたやうに、決まつて居りませぬ、株式の評價に付ては出來るだけ早い機會に資産の評價基準を決めまして、之に依つて其の會社の資産を洗つて見たいと思ひます、而して又別に取引所が開かれなくとも、所謂取引價格と云ふものがありますれば、其の取引價格も參酌し、又資産を評價基準に依つて洗つて見た場合の一株當りの價格を見まして、政府が株式等評價委員會に諮問致しまして決めることに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=152
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153・奧村又十郎
○奧村委員 政府が評價委員會に掛けて株式を評價する場合に、會社の實體から行けば今日資産状態が「インフレ」に依つて相當高くなつて居りますから、どうしても評價は高くなるだらうと思ひます、併し實際の取引價格は是から株式は相當出廻はるだらうから安いだらうと思ひます、隨て政府の評價が高いと云ふことになれば、株式を以て納税すると云ふことが相當行はれるだらうと思ひます、而も株式は從來の平和産業株、或は軍需株、將來見透しのない株等色々ありますから、此の惡い株を政府の方に押付けて來ると云ふこともあらうと思ひます、所が其の株式を以て財産税を納入された場合、其の株式は政府が將來手持ちをされる積りであるか、それとも大體期間を置かずに賣却するお積りであるか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=153
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154・池田勇人
○池田(勇)政府委員 株式の評價に付きましては、全部の株式を政府で評價致します、隨ひまして安く評價された株を出すとか、高く評價された株を出さないとか云ふことは割に少いのではないかと思ひます、今度の財産税は税率が相當高率でございます、又日本の大資産家は其の資産内容が概ね株式になつて居ります、隨て財産税の物納と致しまして株式を取入れる場合が相當多からうと思ひます、政府が其の株式を如何に處分するかと云ふことは先程も御答へ致しましたやうに、或る特定の機關を設けましてそちらに移し、さうして實際の經濟界の實情を見て賣渡すと云ふことになりませう、併しそれは飽くまでも經濟界の實情と國家の財政、此の二つが兼合になつて來るものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=154
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155・奧村又十郎
○奧村委員 それから家屋の評價の問題でありますが、大體是までに建つて居る家屋は賃貸價格の何倍と云ふことで行きませうが、最近新築して居る家屋も賃貸價格に依るか、それとも賃貸價格に依らずに、是は別に命令に依つて定めると云ふことに條文にも出て居るのでありますが、それで行けば、新築した金額で行くことにするか、大體新築した金額で行くと思ふのでありますが、此の點御伺ひ致します、それから其の家の賃貸價格の何倍と云ふ大體の基準は、現在の統制された家賃から逆算して行く位の金額になるのでありますか、大體其の邊の見透しが御付きになつて居たならば御話を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=155
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156・池田勇人
○池田(勇)政府委員 家屋の評價に付きましては、原則として賃貸價格の倍數に依ります、而して賃貸價格の付いて居ない新築の家に付ては、大體只今賃貸價格を持つて居ります家屋に準じまして想定の賃貸價格を置き、さうして價格を評價して行きたいと思ひます
次に家屋の評價に付て適用すべき倍數はどうかと云ふ御質問でございますが、是は他の一般の財産を評價致します時にどう云ふ考へ方で行くかと云ふ問題で、相當動いて來ると思ひます、只今戰災地に於きましては相當高値を呼んで居ります、此の實際の呼び聲に依つて課税して行くことは執行上難かしいと思ひます、此の點は先程申上げましたやうに、大藏省に色々評價に關する考へ方を決める爲に委員會を設けまして、皆樣方或は學識經驗者の意見を聽きまして、さうして一應の案を拵へたいと思つて居ります、結局は今實際取引されて居る價格程度には行かないのではないか、而して又其の倍數も其の土地々々の事情に依つて違つて參りますので、例へば東京都の何區は何倍から何倍までと云ふ範圍率で決めるより外にはないと思ひます、併しさう致しますと、個人が申告をする場合に、自分の家屋は何倍になるかと云ふことが分りませぬから、申告期限までには市役所、町村役場、或は區役所に此の土地は何倍の倍數を適用すると云ふことを知らせまして、さうして納税者は其處へ行つて見れば、自分の家屋なり、或は宅地なり、田畑は幾らと云ふことが分るやうに準備致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=156
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157・奧村又十郎
○奧村委員 財産税の色々な價格に付て、さう云ふ評價委員會が準備致される譯でありますが、大體其の評價委員會の構想が出來て居りましたら、此處で御發表を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=157
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158・池田勇人
○池田(勇)政府委員 評價委員會で決めますのは、株式等評價委員會と不動産評價委員會の二つに分れます、株式等評價委員會に付きましては、大藏省竝に財務局に置きます、大藏省では大體一千萬圓以上の會社に付て各會社の株價を決めたいと思ひますし、それ以下のものは財務局の評價委員會で致します、それから不動産の評價委員會は各財務局に設置致しまして、大藏省には設置致しませぬ、唯大藏省には株式評價の基準とか、或は不動産の評價の基準、大體の考へ方を決める爲に、法律には規定致して居りませぬが、別に財産評價審議會、斯樣な法律に基かず勅令に基いて別の委員會を設ける考へで居ります、そこで評價に關する根本的な考へ方を決め、さうして其の委員には貴衆兩院の方々竝に各階層の學識經驗のある方においでを願ひ、それから財務局に於ける株式評價委員會、又不動産評價委員會に付きましては、其の地方地方の事情に通じられた方々に御願ひ致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=158
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159・奧村又十郎
○奧村委員 只今評價委員會の説明を伺つたのでありますが、各財務局單位の場合に於ては、最近は地方に於ても相當政治運動が行はれ、政黨組織も段段出來掛つて居りますので、地方に於ても成べく各階層を入れると云ふ意味に於て、衆議院議員でも宣し、或は政黨の代表者等各階層を入れて戴きたいと思ひます、是は希望であります、私の質問は之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=159
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160・本多市郎
○本多委員長 金光義邦君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=160
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161・金光義邦
○金光委員 只今政府委員から色々と委員會に付ての御話があつたのでありますが、一括審議中の法案の中には色色な委員會がありますので、其の構成は大體どう云ふことになるか、御話を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=161
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162・三木秋義
○三木政府委員 企業再建整備法の中に於ては、經濟再建整備委員會を設けることになつて居ります、此の委員會は單に一般企業のみならず、金融機關の面に付ても同じく之に掛けることになつて居ります、此の構成に付ては、只今安定本部其の他とも協議中でございますが、大體の只今の考へ方としては、中央に中央經濟再建整備委員會、それから各地方に於ては、各地方行政事務局にそれぞれ所屬する所の地方經濟再建整備委員會を設けますし、又都道府縣にそれぞれ別に各都道府縣經濟再建整備委員會を設けたいと考へて居ります、中央に於ける委員會は所管の事項が各省に跨がるので、是は一應内閣に直屬させまして、其の構成と致しましては、一般部會、それから第一審査部會、第二審査部會と云ふことに致したいと考へて居ります、一般部會に於きましては、一般的な方針其の他の事項を付議するのでありますが、第一審査部會に於ては、專ら企業再建の方の關係の一般企業に關する事項を審議し、第二審査部會に於ては、金融機關の部面を審査することに致したいと存じます、此の構成に付きましては、貴衆兩院議員は勿論、言論界、産業界、金融界、文化方面其の他各般の方々の知識經驗者を之に糾合致したいと考へて居りますので、人數も相當多數に上るであらうと存じます、尚ほ各關係官廳の官吏も當然之に參加致しまするが、一般部會は當然經濟安定本部の然るべき方が部會長になり、第一審査部會は恐らく商工次官が部會長になるのではないかと思ひますし、第二部會の方は大藏次官が部會長になるであらうと思ひます、只今の所大體其の程度まで考へて居りますが、先程申しました資産の評價であるとか或は未拂込等の問題も早急に決定致して參らなければなりませぬで、此の審査委員會の構成を取急ぎまして早く作りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=162
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163・金光義邦
○金光委員 只今の委員會の中に勞働組合關係の代表者を御入れになる御考へはございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=163
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164・三木秋義
○三木政府委員 只今の綜合部會の中に勞働關係代表者も差し加へたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=164
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165・金光義邦
○金光委員 其の他不動産評價委員會、或は株式等評價委員會、又財産調査委員會、財産審査委員會其の他色々とございますが、それに付きまして簡單に其の構成を御話戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=165
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166・池田勇人
○池田(勇)政府委員 株式等評價委員會竝に不動産評價委員會に付きましては、只今申上げた通りでございまして、誰が會長になるかと云ふことは決めて居りませぬ、一般民間の人から學識經驗者も取入れることに致して居ります、勿論貴衆兩院の方々に付きましては出來るだけ多數の方に御出でを願ふやうに考へて居ります、又戰時補償特別税の第十二條に規定致して居ります戰時補償特別税審査委員會、斯う云ふのがございますが、是は公益法人或は營利を目的としない法人又は團體に付きまして戰時補償特別税が課かります場合に、或る程度の輕減免除を決める機關でございます、之に付きましては只今設けられて居ります金融緊急措置令の委員會と一緒に致しますか、或は別に大體ああ云ふ風な構成分子で行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=166
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167・金光義邦
○金光委員 只今審議中の法案の中には命令に讓るべき部分が相當あるのでありますが、其の一つ一つに付て今茲で私が御尋ねするよりも、どなたか政府委員の方から適當に此の點に付て御話を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=167
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168・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點はすつかり取纏めまして口頭若しくは書面で御答へを致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=168
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169・金光義邦
○金光委員 財産税法案の八十二條は現在の國家の根本法に照し合せて考へて、茲に規定する必要がないのではないかと云ふ風に私は思ひますが、御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=169
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170・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尋ねの點は色々議論も實は内部にあつたのでありますが、やはり是はある方が適當である、斯樣なことから國民にも亦對外的にもはつきりして置く方が宜しい、斯う云ふ觀點から挿入したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=170
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171・金光義邦
○金光委員 私は此の點に付てはどうかと思ふのでありますが、今の御答辯は承つて置きます
次に今囘の補償打切りに伴ふ治安の問題に付て政府委員の方から御伺ひ致したいと思ひます、主として失業問題竝に密告制の問題に付て御話願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=171
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172・膳桂之助
○膳國務大臣 失業問題に付て申上げますが、先程私は御尋ねの中に、離職者に對しまする手當の問題、又離職者に出來るだけ是が不合理にならないと云ふやうな點、それ等の點に付て御説明申上げ、尚ほ是等失業者の再就職に付ては、企業の再建に伴つてそれぞれ職を得るやうに仕向けて行く、尚ほ公共事業等の授職に依りまして其の間を繋いで行く、斯樣に申上げたのでありますが、御諒承下さつたと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=172
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173・石橋湛山
○石橋國務大臣 密告と云ふ言葉は必ずしも宜しくないのでありまして、第三者が報告をすると云ふことであります、是れ亦色々議論を致しまして可否を檢討致したのでありますが、やはりある方が宜しいと云ふ信念であります、是は先程御質問もありましたが、色々財産を隱匿したとか、何とか疑ひもある、さう云ふ疑ひがあるものなら唯どうもさうださうだと騷がれるよりは、あるなら一つどうか報告して戴きたい、其の途を開く方が却て治安の爲に宜しいと私は判斷致しまして、斯樣な處置をした譯であります、其の代り之を惡用した者は相當嚴罰する、斯樣な考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=173
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174・金光義邦
○金光委員 最近權威のある國際人は、日本民族は崇高な民族かと思つて居つた所が、他人のことを暴露することを好む世界最劣等の民族だと云ふことを酷評したと云ふことであります、併し此の點は別と致しまして、此の密告制の運用に付きましては、政府に於ても餘程愼重な態度を執つて戴きたいと思ひます
次に失業の問題に付きまして、整備計畫から必然的失業者を出すことを政府は認めて居られるかどうか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=174
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175・膳桂之助
○膳國務大臣 整備計畫其のものには舊勘定から新勘定に移す人間が斯うだと云ふことを書いて、認可を受ける事項とは致して居りませぬ、之を實際に書いて認可をすると云ふことの標準を定めることは中々困難であります、是は事實上の問題として取計らはせる積りでありますが、但しどう云ふやうな標準を以て舊勘定から新勘定に移す人間の數にするかと云ふことに付きましては、適當な指導を行ふ積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=175
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176・金光義邦
○金光委員 只今の指導を行ふと云ふ御説でありますが、大體どう云ふ方針に依つて御指導なさいますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=176
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177・膳桂之助
○膳國務大臣 まだ是は有體に申しますと、尚ほ相談中のことでありまして、具體的なものではありませぬ、私の腹案を申上げると云ふ位の程度に御聽取り願ひたいのでありますが、不日是は決定致します、舊勘定から新勘定に移されます從業員の數は、大體新しい勘定に移されます事業設備の稼働見込に必要な數と云ふのが原則でありますが、是も先程一寸申しましたが、尚ほ近い將來に豫想される企業の擴張に必要な從業員は之を留保して保存して置くと云ふこと、勞働時間は或る適當の標準に勞働條件を定めると云ふことの下に適當な人數をば考へると云ふこと、其の一つの腹案としては、勞働時間の長いものは實働八時と云ふ是からの新しい勞働法制、さう云ふやうなものに見合つた所で或る程度の考へを決めて行かせる、又舊勘定に屬する設備の管理に必要な從業員は之を殘して置く、大體斯う云ふことを標準と致しまして、尚ほ是等を實際にやります際には豫め其の事業内の勞働組合其の他勞働者の總意を代表するやうな機關があります場合に、篤とさう云ふものと協議を致しまして、出來るだけ無理のない合理的な一つの事業整備の實際の擧がりますやうにさせる、大體斯う云ふやうなことが骨子になります、尚ほ實際としては各官廳が適當に實際問題を指導して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=177
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178・金光義邦
○金光委員 先程も公共事業の方に三百萬圓云々と云ふ御話がありまして、大變結構なことであると思ふのでありますが、完全雇傭と云ふことはどう云ふことを意味して居るのであるか、屡屡政府の方から御話がありますが、此の際伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=178
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179・膳桂之助
○膳國務大臣 政府の方から別に完全雇傭と云ふことを申したとかさう云ふ聲明もないのでありますが、是は新聞や或は評論的には完全雇傭と云ふことが出て居ります、實は私も不敏にして完全なる完全雇傭の定義を承つて居ないのでありますが、恐らく何と申しますか、總ての企業内に失業者がないやうに、「フル・エンプロイメント」──失業者なからしめると云ふ意味合に言はれて居るやうであります、若し誤つて居れば教へを乞ひますが、尚ほ大藏大臣の方が詳しいさうでありますから…………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=179
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180・石橋湛山
○石橋國務大臣 さう云ふ譯ではありませぬが、思出せば私が財政の演説をします時に完全雇傭と云ふ言葉を使ひました、是は新聞などに出て居るのとは違ひます、私の申すのは經濟學上に於ける完全雇傭であります、即ち働く意思のある者は働けると云ふ風な經濟の状態を齎さなければならぬ、最近使はれて居るのは、膳國務大臣の申されたやうにはつきり致しませぬが、唯ぶらぶら遊んで居ても宜いから、賃金を拂つて、勞働時間を短縮し、仕事を減して表面的に失業者をなくする、斯う云ふ意味でありますならば、それは經濟學で普通謂はれる所の「フル・エンプロイメント」とは全然違ふものであります、其の言葉を濫用して居るものと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=180
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181・金光義邦
○金光委員 私も只今仰せのやうな二つの意味が現在行はれて居ると云ふので、甚だ迷ふことがあるのであります、尚ほ此の際大藏大臣に御伺ひして置きますが、金利政策と云ふものと失業問題と云ふものが何か關聯がありませうか、極く簡單に伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=181
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182・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は理論的に申しますれば「フル・エンプロイメント」に非常な關係あるものであります、併しながら日本の現状に於きましては、遺憾ながら金利がまだ經濟を支配すると云ふ所まで常態化して居らないと存じますから、事實に於ては今は金利に重きを置く必要がないと思ひますが、併し軈て金利が物を言ふ時が來るだらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=182
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183・金光義邦
○金光委員 私も只今の大藏大臣の御説には全く贊成であります、次に求職者より求人者の方が現在の所多いと云ふやうに先程どなたかに御答辯になつたやうに思ひますが、是は場合に依ればさう云ふことがあるかも知れないが、又職業の種類に依つては全然逆ではないかと私は存じます、之に付ては勞働力の陶治の問題が非常に影響するのであらうかと考へます、尚ほ失業の問題に付きましては、今日治安問題と絡みまして色々重要な問題が發生する處があると存じます、どうか政府に於かれても十二分に此の點を御注意あらんことを希望致します
次に在外資産の問題に付て御伺ひ致します、先程から屡屡此の問題に付ては質問が出たのでありますが、財産税を早く取ると云ふことになりますと、勢ひ此の問題にも觸れて來るではないか、或は金融機關の再建整備をすると云ふやうな場合にも此の問題に一部觸れるのではないかと考へますので、此の際一寸大藏大臣に御伺ひして置きます、若し御差支へがあれば宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=183
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184・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の點はまだ研究はして居ります、最近其の調査を致して居りますが、唯引揚者などが個人的に持つて居りました預貯金と云ふやうなものも、何等か速かに之を處理しなければならないのでありまして、是の處理に付て、只今考究して居ります、相當豫想よりも多額の財源を要する譯でありまして、其の財源の調達に付きましても、今苦慮致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=184
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185・本多市郎
○本多委員長 質問の趣旨を成べく分り易くはつきりして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=185
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186・金光義邦
○金光委員 尚ほ一言申落しましたが、失業問題に付て、今度の此の整備計畫に依つて出て來た失業者を救濟すると云ふやうな目的から、失業保險と云ふやうなものを御考へになつては居りませぬか、此の點膳國務大臣に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=186
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187・膳桂之助
○膳國務大臣 此の點は厚生大臣から御答へするのが適當と思ふのでありますが、私の承知して居ります所では、厚生省に設けられました社會保險制度の調査委員會に於て、一應の小委員會の結論を得たと云ふことを承つて居ります、併し失業保險は無論必要性もあり、又實行すべきものとして考へらるべきものと存じますが、要するに是から保險料を取つて、又失業保險に基く給付をやりますのも、茲に適當な機關を設けた後に初めて支給されるので、今囘の整備に之を間に合はせると云ふことは、一寸出來ないことでありまして、今度整備されました後の一つの雇傭關係の安全をば保障するやうな意味合ひの救濟制度には相成らうかと思ひますが、差當りの問題ではない、唯政府でも目下折角委員會に付して研究中である、斯う申上げて宜いのだらうと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=187
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188・金光義邦
○金光委員 話が逆になりますが、先程の在外資産の問題に付きましては、私から色々申上げるまでもなく、十二分に能く御分りのことと存じますので、大藏大臣に於かれてもどうか財源を是非澤山見付けて戴いて、引揚同胞其の他を救濟して戴くやうに御願ひ致して置きます、尚ほ評價の問題でありますが、金融機關再建整備の場合と企業再建整備の場合とで、財産評價の方法が違ふことがありませうか、其の點政府委員の方に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=188
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189・福田赳夫
○福田政府委員 金融機關と企業に於きましては、整理の方法が若干違ひます、と云ふことは金融機關にありましては、成べく早く此の結末を付けまして、中間的な處理を致すのであります、此の中間的な處理と申しますと、先づ大體舊勘定の見透しを付けまして、それで大體拂へると云ふ限度は、成べく早く拂つてやると云ふことを致すのであります、其の爲に企業に於きましては確定評價基準一本でありますが、金融機關に於きましては暫定評價基準と確定評價基準の二つに分れまして、先づ企業の方で評價基準を作りますと、企業の方では舊勘定の大體の計算をしまして、金融機關に通知致します、其の通知に基きまして金融機關の暫定評價基準と云ふものを作りまして、それに依りまして只今申上げました中間處理、即ち中間拂ひを金融機關では致す、左樣な點で兩者の間に若干の違ひがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=189
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190・金光義邦
○金光委員 今度の金融機關再建整備に關しまして、金融機關に大體どの位の打撃があるか、此の御説明が願へたならば仕合せであります、どの位の銀行が倒れる御見込でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=190
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191・福田赳夫
○福田政府委員 それは只今の段階に於きましては、まだ第一封鎖になる金額が幾らであるか、第二封鎖になる金額が幾らであるかと云ふことも、見當が付かない状態でありまして、幾何の金融機關が倒れることになるか、只今御答へ致し難い状況であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=191
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192・金光義邦
○金光委員 今度の補償打切りに對する政府補償は、百億圓と云ふ風に何處かに出て居つたかと思ふのでありますが、是は大體どう云ふ標準で御分けになるか、簡單に御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=192
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193・石橋湛山
○石橋國務大臣 今どれ程の銀行が倒れるかと云ふ御尋ねがありましたが、是は大體一つも金融機關は倒れない、唯場合に依つては株式が全部飛んで、所謂第二銀行を作らなければならぬと云ふ銀行は現はれる、銀行其のものは、第二封鎖が飛ぶと云ふ所で以て、皆食ひ止まるのでありまして、其の意味に於て銀行其のものは倒れない、唯株式が全部飛ぶ、第二封鎖が相當大きな損害を受ける、斯う云ふものが起ります、隨てさう云ふものは第二銀行を作るか、或は他の金融機關に合併して、新勘定を其の方へ移さねばならぬと云ふことは起りますが、普通の恐慌の場合のやうに倒れると云ふ意味で、倒れるものはないと云ふことを御承知願ひます
それから百億圓の問題でありますが、是は第二封鎖が全部飛びまして、それで尚ほ損害がある銀行、第一封鎖に損害が掛つて來る、其の場合に第一封鎖に損害を掛けない、それだけは政府が補償すると云ふ建前を執つて居ります、併し是は無限にさうすると云ふことは、色々の關係で行きませぬので、色々計算を致して見まして、只今の見當では大體百億圓あれば是はやれると云ふ見込みでありまして、一應百億圓と云ふ見當を設けたのであります、第一封鎖を補償するのにはそれで十分だ、斯樣な考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=193
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194・金光義邦
○金光委員 能く分りましたが、百億圓をそれならば銀行に先に補償するか、或は生命保險に先に補償するか、或は郵便貯金に先に補償するかと云ふやうな點に付て、大體の御考へがありますならば伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=194
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195・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は銀行、郵便局と云ふ風に、實は今數字は此處で申上げ兼ねる、詰り確定的な數字と云ふ譯に行きませぬから、色々計算はして居るが、それは申上げ兼ねるので、銀行局長から先程御答へ出來ないと言つたのですが、總額で見ますと第一封鎖預金が飛ぶなんと云ふことは、絶對ないのであります、銀行、金融機關全體を見ると、第二封鎖で豫定される金融機關が蒙る損害を十分「カバー」して、尚ほ非常に多くの餘りがあるけれども、唯其の中に凸凹がありますから、或る特定の銀行とか、特定の生命保險とか云ふものに、或る補償を要するのではないか、さう云ふものを寄合せて、大體百億圓と見て居るのであります、大體郵便貯金は優先的にと云ふことは考へて居りますけれども、實はどれを優先的にと云ふ區別は必要ないのであります、總ての金融機關を調査致しまして、それで結論が出ました場合に補償をして行く、是は殆ど同時に結果が分りますから、どれを先にし、どれを後にすると云ふ必要はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=195
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196・金光義邦
○金光委員 私の質問は大體此の程度に致して置きます、尚ほ先程御願ひ致しました命令に關する部分の御説明を、明日御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=196
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197・本多市郎
○本多委員長 本日は之を以て散會致します、明日は正午前十時より開會致しまして、質疑を繼續致しますが、質疑の重複等を避ける爲に、委員、政府委員側とも、努めて御出席の程を重ねて御願ひ致して置きます
午後五時四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00219461001&spkNum=197
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