1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
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昭和二十一年十月二日(水曜日)午前十時四十一分開議
出席委員
委員長 本多市郎君
理事 石原圓吉君 理事 菊池長右ェ門君
理事 森曉君 理事 舟崎由之君
理事 武藤嘉一君 理事 上田清次郎君
理事 奥村又十郎君 理事 木下榮君
理事 久保猛夫君
江藤夏雄君 大内一郎君
大塚甚之助君 近藤鶴代君
坂本實君 田中重弥君
河原田巖君 平岡良藏君
廣川弘禪君 天野久君
金光義邦君 喜多楢治郎君
北村徳太郎君 中野四郎君
小池新太郎君 小坂善太郎君
鈴木明良君 寺田榮吉君
武藤常介君 川島金次君
田村定一君 中崎敏君
水谷長三郎君 森三樹二君
赤澤正道君 秋田大助君
駒井藤平君 伊東岩男君
笹森順造君 穗積七郎君
十月二日委員廣川弘禪君及び赤澤正道君辭任に付其の補闕として大石ヨシエ君及び藤井正男君を議長に於て選定した
出席國務大臣
遞信大臣 一松定吉君
商工大臣 星島二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
内閣事務官 平田敬一郎君
内閣事務官 橋本龍伍君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 河野通一君
司法事務官 奧野健一君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=0
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001・本多市郎
○本多委員長 會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=1
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002・北村徳太郎
○北村委員 議事進行に付て──本委員會に付託せられて居ります事項は非常に重大でありまして、是が若し審議を盡しますならば相當長い時日を要すると思ふのでありますけれども、成べく短時間に之を濟ませたいと云ふ政府の御希望もあるし、我々も亦さう云ふ方向に副つて行きたいと存じまするが、昨日委員長は時間をレイ行すると云ふことの宣言がありまして、本日定時に參りましたけれども誰も見えて居りませぬ、斯う云ふだらしのないことでは、迚も是だけの重要な法案を控へて、審議を全うすることは困難ぢやないかと思ふのであります、それでどうか約束の通り時間をレイ行して戴きたい、本日速記者が此處に著席せられたのは三十分遲れて居ります、其の他大臣も非常に遲れて居る、色々御都合もありませうけれども、どうか時間をレイ行するならば、はつきりとレイ行して戴きたい、それからもう一つは政府側より既に答辯があつた事項に付ては、委員長に於て適當に處理して戴きたい、それは政府委員から同一事項に付て既に答辯があつたと云ふことをはつきりされると、議事の進行上非常に都合が好い、此の點を委員長に於て御取計ひを願ひたいと思ひます、此の點を一つ希望として申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=2
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003・本多市郎
○本多委員長 只今北村君から御話のありましたことは洵に御同感でありまして、どうか一つ政府側も、又委員側に於かれましても時間を守つて戴いて、定時から始めることの出來るやうに御努力を御願ひ致します、又努めて重複の質問を避ける爲には、質問される人が、全質問者の時間に出席をされて居ると云ふことが必要でありまして、其の點から努めて出席すると云ふことに付ても御努力を御願ひ致します、それでは質疑を繼續致します──平岡良藏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=3
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004・平岡良藏
○平岡委員 凡そ爲政者と致しましては、非常な難局に當つて沈著冷靜でなければならぬと思ふのであります、と申して我々現在の政府が冷靜を缺くとは考へて居らぬ、今の時局を講和條約締結後、數年後になつて之を囘顧致して見ましたならば、現在に於ては多少落著いた感じがありましても、後年囘顧すれば未だ混亂の時期にあると云ふやうに考へられるのであります、此の非常な混亂、困難な時期に於きまして、此の法案が提出に相成つたのであります、此の戰時補償特別措置法案を眺めて見まして、どうも私共非常に險しい感じ、率直に申しますならば、粗暴な無軌道な沒道義的な感じを受けてならぬ、勿論ああした大戰爭の跡始末をする時でありますから、思ひ切つた荒療治が必要であることは申すまでもないのであります、病人の手術を致しますに當つて、患部の手術が完了致しまして、其の病人の一命に關はる、或は病氣の囘復が捗々しくないと云ふやうな事態が生じましては、手術の目的にそぐはないと思ふのであります、此の法案を強行されました場合──敢て強行と私は申しますが、さうした場合、果して今の經濟界の状態はどうなるのか、此の點に付きまして、所謂政府の根本基調である所の道義が頽れるのではないか、併せて其の爲に復興が遲れると云ふやうな事態が生ずるのではないかと云ふやうなことが懸念されてならぬのであります、そこで何が故にさう云つたことが懸念されるかと云ふことを考へて見ますと、色々例を擧げますれば際限がないのでありますが、先づ私は此の課税の形に於て補償を打切る、其の場合に百「パーセント」の課税をする、是が最も私共の肯き得ない點であります、税金と云ふものの從來の觀念から言つて、百「パーセント」の課税と云ふものは、私は過去に其の例を聞かないのであります、或は諸外國等に於てはどうか知りませぬが、税金と云ふ觀念から言ひまして、百「パーセント」を課税すると云ふことは洵に將來に禍根を殘し、國民の納税に對する觀念に非常な惡影響を及ぼすのではないかと云ふやうに考へられるのであります、殊に一度支拂つたものの取返しと云ふやうな場合に於て、此の百「パーセント」課税が非常に困難でもあり惡影響がある、是は後に又申したいと思ひますが、要は此の法案の百「パーセント」課税と云ふものは非常に不合理ではないかと云ふ點であります
次は此の課税を繞つて所謂補償を打切られた場合に、被課税者の多くは資産が「マイナス」になる、此の點であります、色々他の救濟措置等も附帶法案として出て居りますが、現實の問題として破産の状態に陷るものが非常に多いであらうと云ふやうに考へるのであります、さう云つた場合、人としての感じから言つて、此の法案の遂行に對して果して衷心から協力するものであるかどうか、此の點が懸念の第二であります
次は前申した既に支拂濟の分の徴收、徴税に對する懸念であります、是はどう云ふ觀點から之を調査し捕捉するか知りませぬが、先づ一度支拂つたものは相當徴收が困難なものである、此の困難さを考へた結果、非常な不公平を承知の上で私は所謂補償打切りと云ふ手を政府は考へた、一應補償を拂うて財産税を賦課すると云ふ考へ方を一擲したのではないかと云ふやうに考へて居ります、それ等の三つの點から行きまして、此の法案に考へて居りまする今日の深刻性と共に、非常に何と申しますか適當でない處置であると云ふやうに思ふのであります、既に支拂はれたものに對しましては、善意であると惡意であるとを問はず、何れも一應は自分の金として投資に向けまするとか或は企業體の解散に際して、それぞれ從業員等にも論功行賞的の方途に依つて之を消費して居る、殊に此の點に付ては當局に於ても退職手當等も基本的の條件を示して居る、さう云つたことに從つてそれぞれ處置をし、處分が濟んで居る、さう云つた金を此の際百「パーセント」囘收すると云ふことは、根本的に私は無理があるのではないかと云ふやうに考へるのであります、是は何とか此の方法を改善し、もう少し納税者自體の協力を得られる方途を考へられなければ、如何に斯う云つた苛烈な、又深刻な課税方法を考へましても、目的は必ず達せられぬと云ふことを考へるのであります
次に同樣な意味に於て企業整備の特殊預金の問題であります、是は度々從來私も御尋ねを致して居つたのでありますが、如何にも心理的に、此の際打切りをされると云ふことは、あの企業を整備せられた當時の在り方を考へた場合、我々として忍びないのであります、殊に最も私共の肯き得ない點は、あの企業整備に當つて、工場或は機械を、或は工場敷地を民間人同士で賣買をしたのであります、一方は軍事産業家、一方は平和産業家と云ふやうな場合に、民間人同士で賣買をしまして、其の代金の授受も民間人同士でやつて居つた、それを其の措置令に依つて特殊預金として預入をせしめられて居つた、謂はば政府は此の場合完全に表面上からは第三者である、其の第三者が慫慂して當事者同士の賣買の金を卷上げて預かつて、それを此の際税金として支拂つて行く、斯う云ふことは日本の道義の上から私は絶對に許されない問題であらうと思ふ、恰も賣買の仲介に立つた人が横から其の賣買代金を横領したと同樣の結果になつて居ると思ふのであります、是等に付て政府はどう云つた考へを持つて居られるか、私の以上述べましたことは、色々我々の考へを率直に申したのみでありまするが、要は敗戰國民として、どうしても斯うした不合理であり、不公平なものを甘受しなければならぬと云ふことであれば、之を徹底的に國民に知悉させまして、さうして其の已むを得さる所以を諒承させると云ふ點に、更に一段の努力をしなければならぬと思ふ、併しながら以上申したやうな此の百「パーセント」の課税、或は支拂濟の徴税、或は企業整備の民間人間の賣買金の卷上げと云ふやうな問題は、何とか之を改善致しまして、此の對象となる人達の或は法人達の協力を得をれるやうな方向にして參らなければならぬと思ふのであります、一應控除額は決定して居りますが、個人五萬圓、法人一萬圓と云ふやうな控除は、是れ亦非常に不公平なことであると思ふ、例へば五萬圓を特殊預金を持つ人は一錢も負擔せず、十萬圓の預金を持つ人は五萬圓の負擔をする、是は洵に從來の納税の觀念から行きまして、亂暴な無計畫な行き方であると云ふやうに考へて居るのであります、以上の點に付きまして、大藏大臣及び膳國務大臣に御尋ねを致して見たいのでありますが、大藏大臣は御見えにならぬやうでありますから、膳國務大臣から御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 軍需補償の打切りを課税の方法に依りました理由、又何故に百「パーセント」課税になりましたかに付きましては、既に昨日も度々申上げましたので御諒承を願ひたいのでありますが、今擧げられました色々の點、殊に個人の支拂能力が果してありや否や、又支拂濟のものまでも取ると云ふことは殘酷であると云ふやうなこと、殊に企業整備の補償金までも打切らなければならぬと云ふやうなことに付きましては、洵に其の個人々々を考へますると同情を禁じ得ない所であります、昨日も申しました通り、國民がなすべからざる戰爭をなした其の後、辛い一つの──何と申しますか、整備の段階を經なければならないことなのでありまして、此の點は政府も洵に忍びざる點でありますけれども、一方昨日も申上げました通り、國家財政の再建、企業の再建の上に洵に已むを得ざる處置であります、尚ほ此の打撃を蒙りました者の再起に付きましては、殊に中小企業と云ふやうな方面に付ましては、出來る限り政府は其の再起に必要な助力を致したいと思ふ次第であります、其の邊はどうぞ一つ御諒承を願ひたいと存じます、尚ほ税金の關係に付きましては大藏省の政府委員から説明をして戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=5
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006・平岡良藏
○平岡委員 次に第一條に擧げて居りまする「政府に對する請求權及び特定機關」と云ふ、此の特定機關とは如何なる機關でありますか、御示しを願ひます、それから其の次の「政府の財政的保障」と云ふのですが、財政的保障の關係のないものは、是等の機關のものでも支拂ふ、同時に通常の業務に關しては支拂ふと云ふやうな、詰り二色の支拂ふべきものがあるのでありますか、此の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=6
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007・橋本龍伍
○橋本政府委員 私から御答辯致します、特定機關と申しますのは、此の法律に、政府の施策に協力する機關と書いてございますが、要するに戰爭保險の仕事に關しまする損害保險中央會であるとか、或は時局に緊要なる産業設備を作る爲めの産業設備營團、斯う云つたやうな國の施策に協力すると申しますか、代行すると申しますか、一種の準政府的な機能を持つて居る機關のことであります、それから御尋ねの第二點の財政的保障のある範圍内に限ると書いてありますのは、詰り此の補償打切りの問題は國の財政負擔の問題でありますから、例へば産業設備營團にしても損害保險中央會と云つたやうな機關にしても、仕事の中のどう云ふ部分だけを政府が尻を見るかと云ふことの範圍が決まつて居る譯であります、例へば一般的な通常の業務をやりますのに非常に人を澤山抱へて人件費の赤が出たとか、或は非常に贅澤 用度を整へたとか云ふものは、損が出ても政府は財政的に面倒を見ませぬ、産業設備を作ることに付て損が出たとか、或は損害保險中央會で申しますれば、戰爭保險の收入保險料に比して支拂保險金が超過した場合に其の差額と云ふ風に限定されて居る譯で、其の範圍のものだけに付て此の補償打切りの問題を生ずる、斯う云ふ譯であります、それからもう一つ通常業務と云ふ問題は斯う云ふ譯であります、是は昨日も御説明があつたかと思ひますが、要するに今囘の補償打切りの問題は、凡そ一切の戰爭に關係した請求權は皆打切ると云ふ建前で出來て居ります爲に、定義の仕方としまして第一條にありますやうに、戰爭に關係した請求權と云ふ言葉を使ひませぬで、凡そ一切の政府等に對する請求權と云ふのを冒頭に掲げまして、それから順次戰爭に關係のないやうなものを引いて行つて、殘りが結局全部戰爭に關係のあるものとして打切りの對象になると云ふ建前を執りました爲に、政府等に對する請求權の中から通常業務關係のものを除く、斯う云ふ風になつて居る譯であります、其の通常業務と申しますのは大體斯う云ふ風に考へて居ります、陸軍、海軍、航空兵器總局關係に付きましては、人件費だけが通常業務の範圍に入ります、それから其の以外の官廳の關係の支出に付きましては、國家總動員法に基く補償であるとか、軍需會社法に基く補償であるとか云ふやうな別表に上つて居りますやうな關係の支出を除きましては、あとは全部通常業務である、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=7
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008・平岡良藏
○平岡委員 そこで前の問題を蒸し返すやうでありますが、先日申上げた企業整備に依る民間人個々の間に於ける賣買、即ち軍需會社が乙平和會社の資産を茲に百萬圓で買つたと假定します、さうしますると甲軍需會社は其の百萬圓の資金の調達に付て、政府から保障を受けて居る金融機關等から借入をしまして、之を乙平和會社に支拂つたと云ふことに相成ると思ひます、さうすると政府は其の甲軍需會社に對する百萬圓の補償を打切れば目的は完全に達成せられて居るのであります、其の受取つた乙平和會社の百萬圓を特殊預金せしめて、更に之を沒收すると云ふことは我々はどうも肯けない點があるのであります、之をはつきり法律的に御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=8
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009・橋本龍伍
○橋本政府委員 御答へ致します、企業整備の關係で打切りの對象になりますのは、やはり國の財政負擔に問題を生じて來ると云ふ意味に於きまして、國民更生金庫と産業設備營團、帝國鑛發株式會社、日本石炭株式會社がそれぞれの業務範圍に於て政府の意圖を受けてやつた企業整備の關係だけであります、それでやはり企業整備の關係で個人から個人へ賣却したやうな場合に、其の代金を企業整備資金處置法で封鎖を命じたものはございますが、此の方は打切の對象には入りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=9
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010・平岡良藏
○平岡委員 個人から個人へ個人の小切手或は其の他の方法に依つて決濟した場合、是が今政府の説明に依ると、特殊預金の形で銀行其の他に封鎖にしてある、之に對しては打切りの對象にならぬと云ふ風に承知致して宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=10
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011・橋本龍伍
○橋本政府委員 左樣であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=11
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012・平岡良藏
○平岡委員 次は第六十條であります、第六十條に「國、地方公共團體若しくは特定機關に對して土地若しくは建物」云々と云ふ點がありますが、是等のものを國其の他の團體に賣つて、それが現存して居る場合は買戻しをし得ると云ふ措置のやうに思ふのですが、假令多少の形の變化はありましても、それ等自體を現在所有をして居ると云ふ場合に、此の買戻しが出來るものと承知して宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=12
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013・橋本龍伍
○橋本政府委員 只今の御質問に對して御答へを致します、此處に規定してございますやうに、返還の出來ますものは土地と建物と是等の定著物、それから鑛業權、砂鑛權に限つて居りますので、御質問は多分其の範圍のものであらうと思ひますので、其の積りで御答へを致します、要するに建物や土地等が變形をして居る場合は色々ございますが、それを特に元の状態に直して返すことは致しませぬ、現在の状態の儘で其の所有權を返還致す譯であります、勿論其の場合に色々後又政府が使用する場合に、例へば賃借料としては變形されて居る場合にはどう云ふ形で取るかと云ふやうな問題はありますが、さう云ふ細目の點は今後尚ほ決めて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=13
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014・平岡良藏
○平岡委員 御答へで私の御尋ねしたいことははつきり分りましたが、此の中で「特定機關」と云ふのは産業設備營團も含まれて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=14
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015・橋本龍伍
○橋本政府委員 含まれて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=15
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016・平岡良藏
○平岡委員 所謂「國、地方公共團體若しくは特定機關」の問題ですが、先刻御尋ねしまして御囘答を願つた個人間の賣買に付て、此の特殊預金を課税しないと云ふことになりますると、其の物件に對する返還其の他の處置は法律的には別段規定はして居りませぬかどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=16
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017・橋本龍伍
○橋本政府委員 全然觸れて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=17
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018・平岡良藏
○平岡委員 大藏大臣がおいでにならぬので此の質問は適當でないかも知れませぬが、現下の日本の經濟状態を仔細に眺めて居りますると、何時も大藏大臣は物の生産を上げて「インフレ」が克服出來るやうな意見を洩らして居られるのでありますが、實情は必ずしもさう云つた方向に向つて居らぬやうに考へるのであります、即ち基礎物資の相當な種類のものが現在消費材として生産に廻されて居る状態は、是は一つの流れでなくて、溜り水を使つて居るやうな恰好になつて居るのであります、戰時中に於ける軍其の他の留保して居つたものとか、其の他色々の事情に依つて、過去に存在せる重要な基礎物資を、現在奪ひ合ひの状態で、之を消費財に生産しつつあるやうな實情が多分に見られるのであります、此の儘行きますと、大體に於て是等のものも本年一杯位で消費し盡されるやうに考へられる、其の後に於て消費財の生産が急激に低減する、さうして「インフレ」が招來するのぢやないかと云ふやうな危惧が持たれるのであります、之を一片の杞憂に終らせるやうな當局に何か確乎たる御考がありますか、要するに是れ是れの物資は斯う云つた方法に依つて輸入に仰ぐとか、聯合軍の援助に仰ぐとか、さう云つた若し具體的な計畫がありましたら、御知らせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=18
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019・膳桂之助
○膳國務大臣 目下の生産物資の需給状態は、御尋ねのやうな點が、大いに憂慮すべき眞相であらうと思ひます、尚ほ此の「インフレ」防止の爲には生産の増強、之を持つて行く、是は既に大藏大臣の述べられました通りでございますが、政府に於きましては、先づ石炭の増産を手初めに各種の産業に付きまして、積極的に増産計畫を立て、之を督勵し、之を援助して、物資の増産に努めて參る譯であります、尚ほ不足のものに付きましては、是も御尋ねの中にありました通り、聯合軍側に日本の生産囘復に必要な物資の輸入援助方をば懇請して居るのでありますが、其の品目及び數量等に付きましては、色色こちらから懇請して居りまする都合もありますので、此の際數量、種類をば明確に申上げることが出來ないのは大變殘念でありますが、其の面に向ひまして政府は各省を擧げて努力をして居ると云ふことを御諒承願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=19
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020・平岡良藏
○平岡委員 諒承致しました、次に私は非常に問題が重大でありますから、更に政府委員からはつきり御答へ願ひたいのですが、先刻來の企業整備の補償の問題であります、此の補償が打切りの對象になるものとならざるものとの區別を此の際はつきり御明示を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=20
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021・三木秋義
○三木政府委員 便宜上私から御囘答申上げます、先程橋本政府委員からも御説明申上げましたやうに、企業整備關係に付きましては、其の請求權の相手方と致しまして、國民更生金庫、産業設備營團、帝國鑛業開發株式會社及び日本石炭株式會社、是だけのものが其の對象になる譯であります、企業整備關係で此の對象に對して請求權を持つて居る場合に、是が一應打切りの對象として考慮される、斯う云ふことに相成ります、之を數字的に申上げますならば、是等のものに全體に付きまして戰時中企業整備の關係として支拂を致しました金額が、總計四十億九千二百五十四萬九千圓と云ふことに相成つて居ります、此の中、現金其の他に於て戰時中に支拂はれたものは當然除外されますので、さう云ふものを除きますと、實際今囘の措置に依りまして戰時補償請求權として課税の對象になります金額は、總計十九億八千五百八十七萬九千圓と云ふことになります、此の中、尚ほ一件、一人當り五萬圓まで控除されると云ふことになつて居りますので、此の控除を差引きますと、總額其の控除額が十二億五千七百三十一萬七千圓と云ふことになります、結局此の課税の對象になる請求權から控除額を差引きました所のものが課税額となる譯であります、其の金額が七億二千八百五十六萬二千圓と云ふことになります、總額四十億の全支拂に對して七億二千が實際上課税されると云ふことに相成る譯であります、結局課税にならない金額が差引三十二億九千三百九十八萬七千圓と云ふことに相成る譯であります、此の中、一般民衆に最も深刻な影響を與へますのは、固より國民更生金庫の關係のものであらうと存じます、此の分に付きましてもう少し詳細に御説明申上げたいと思ひます
戰時中に於きまして國民更生金庫に於きまして支拂ひました所の企業整備關係の支拂總額が、件數に致しまして百十萬五千八百十八件、其の金額が二十六億三千四百五十八萬二千圓と云ふことになつて居ります、此の中、終戰前に於て現金に於て支拂はられたもの等がございますので、さう云ふものを差引きました所の戰時補償の請求權として課税の對象になりますものは、總計六十八萬九千九百八十五件、其の金額が十一億一千三百十八萬八千圓と云ふことになります、尚ほ之に對しまする所の控除額と致しましては、既に決濟濟みのものが、件數にして六十二萬九千六百十四件、金額に致しまして九億一千四百四十九萬三千圓、尚ほ請求權の形に於て控除されますものが、件數が六萬三百七十一件、金額が六千五百十一萬三千圓と云ふことに相成る譯であります、隨ひまして實際課税されますのは、總計金額に於きまして一億三千三百五十八萬二千圓、其の内譯と致しましては、決濟濟みのものが一億二千四百七十萬四千圓、請求權の形のものが八千八百八十七萬八千圓と云ふことに相成る譯であります、隨ひまして實際課税を免れます所のものが總計二十五億百萬圓、内決濟濟みのものが二十四億二千百七十九萬三千圓、請求權の形のものが七千九百二十萬七千圓と云ふことに相成る譯であります、全體を通じまして、總計に於きましては四十億圓のものに對し、支拂の中、實際課税されますものは七億幾らであります、又特に一般民衆に深刻な影響があると考へられます國民更生金庫の關係に於きましては、二十六億餘の支拂の中、實際課税されますのは一億三千萬圓と云ふことになる譯であります、隨ひまして一般に中小の方々に對する影響と云ふものは相當之に依つて緩和されて居るのではないかと考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=21
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022・平岡良藏
○平岡委員 打切りの對象として、國民更生金庫其の他を只今擧げられたのでありまするが、企業整備當時に於きまして、日が經つて居りますので、私ははつきり記憶して居りませぬが、更生金庫で評價し補償しました金を他の銀行に所謂特殊預金として預入してある場合が大分あると思ふのであります、斯うした場合はどう云ふ處置をせられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=22
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023・福田赳夫
○福田政府委員 只今御尋ねの點は、補償打切りに關係のない特殊預金に付ては今後どう云ふ措置をするか、斯樣な點であらうかと思ふのでありまするが、特殊預金に付きましては八月十一日現在の預金と同樣に見まして、今後第一封鎖、第二封鎖に分けまして、然る上に於て特殊預金の制度を撤廢する、斯樣な方針で只今準備をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=23
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024・平岡良藏
○平岡委員 私の尋ねるのはさう云つた意味ではないのでありまして、詰り企業整備に當つて機械其の他の附屬品を更生金庫が引取つたのであります、さうして其の代金が特殊預金となる場合、當然普通だと勸業銀行等の預金になるかと思ひますが、それを他の銀行を選んで預金して居る、即ち最初は更生金庫から出て居る、併し今の預入先は他の民間銀行である、斯う云ふ場合に於て、只今御答辯にありましたやうな對象として更生金庫と云ふやうな御考へと何か關聯がありますかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=24
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025・橋本龍伍
○橋本政府委員 私から御答へを致します、具體的な事例が分りませぬから間違ひがあるといけませぬけれども、只今の御尋ねに對して斯う申上げたら宜しいと思ひます、要するに國民更生金庫が引取りまして、支拂の債務が國民更生金庫になつて居るものならば打切りの對象になります、例へば國民更生金庫が債務になつて居るものを、さう云ふ特殊預金を受取つた人の方で讓渡したと云ふやうな場合は、請求權者は變つて居るかも知れませぬけれども、債務自體は何時までも國民更生金庫になつて居る筈であります、斯う云ふものがあれば打切りの對象になります、併し何か國民更生金庫が債務者にならないものが或は評價等に關與するやうなことがありましても、是は廻り廻つて國民更生金庫の損が政府の損になると云ふこともない譯でありますから、打切りの對象にはなりませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=25
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026・平岡良藏
○平岡委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=26
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027・本多市郎
○本多委員長 中崎敏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=27
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028・中崎敏
○中崎委員 私の質問は膳國務大臣、大藏大臣、商工大臣に對して致したいと思ひますが、本日は膳國務大臣だけ居られますので、取敢ず其の範圍に於て質問したいと思ひます、殘りは留保して置きたいと思ひます
先づ膳國務大臣に御尋ね致しますが、今囘戰時補償打切りに關する一聯の法律案と財産税法案とを一括して此の委員會に廻された譯でございますが、期間が極めて短くございまして、僅か三日間程度で此の委員會を上げるやうにと云ふやうな希望があるやうにも聞いて居ります、斯くの如き重要法案は愼重審議之を行はなければならぬと云ふ我々は義務を感じて居る譯でございまして、政府の意圖する所に對しましては、之に協力して行くと云ふ氣持には何等變りはございませぬが、何處までも我々は尋ねる所は尋ねると云ふ氣持に於て此の審議を進めて行くべきものと考へて居ります、就きましては、斯くの如き重大法案が今日まで提案されなかつた理由は何處にあるのか、殊に財産税法案の如きは昨年の十月頃から既に之を取ると云ふことが聲明されて居つたのでございますが、漸く今日になつて此の法案の形となつて現はれて來て居ると云ふやうなこと、もう一つは、政府は本案を審議する結果に於て、今の來月七日までの會期に於て間に合はないと云ふ場合に於ては、更に會期を延長するだけの用意を持つて居るかどうかと云ふ點に付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=28
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029・膳桂之助
○膳國務大臣 此の一聯の法律案の提出が遲れました理由は、非常に重要な問題でもあり、將來經濟の再建に付きましては各内外の協力を得なければなりませぬので、各方面との交渉が相當長引いて居りました爲に、今日までに相成りました次第であります、又財産税は既に昨年からも問題になつたのでありますけれども、補償打切りに伴ひます措置が如何樣に相成るかと云ふことに依つて財産税の當初の對象が變つて參りましたので、是と一緒に審議せられまする結果茲に提出が遲延致しました次第であります、尚ほ此の審議を願ひまする期間を非常に短く御願ひして居りますることは、何とも恐縮に存じて居ります次第でありまするが、各般の事情もありますので、どうぞ出來るだけ短い期間に御審議を願ひたい、斯樣に考へて居りますので、目下の所政府に於きましては、此の上會期延長と云ふことに付きましては如何するかと云ふことに付てまだ何も決定致して居りませぬ、此の會期の中に是非とも兩院の御審議を終了願ひまして御協贊を得たいと云ふことを念じて居りますばかりであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=29
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030・中崎敏
○中崎委員 只今の膳國務大臣の答辯に對しましては、會期延長に關する問題でございまするが、是は初めから斯う云ふ重要な法案であると云ふことは政府に於ても既に分つて居る、而も此の委員會に一括上程されました案は極めて廣汎なものでございまして、二日か三日かの審議と云ふことは鵜呑みにするのでなければ到底出來ないことと思ひます、而も從前の如く天降り的に政府の意向を以て我々議員の上に押付けられると云ふやうな感じを濃厚に受ける譯でございまするが、此の點に付きましては審議の經過に依つて更に會期を延長すると云ふ氣持があるかどうかと云ふことをはつきりと答辯して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=30
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031・膳桂之助
○膳國務大臣 會期の延長に付きましては只今申上げました通り、延長なしに御審議を御願ひしたい、斯樣に考へて居ります譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=31
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032・中崎敏
○中崎委員 此の點に付きましては一應承つて置きますが、我々は自分の信念に從つて何處までも尋ねることは尋ねる、質すべきことは質すと云ふ方針を以て進みたいと思つて居ります
次に補償打切りに關する石橋大藏大臣と膳國務大臣の信念に付て御伺ひしたいと思ひまするが、大藏大臣は今居られませぬので、後の機會にすることと致しまして、膳國務大臣から御答辯を願ひたいと思ひます、膳國務大臣は在野時代に於かれまして、補償打切りは財界に大なる影響を及ぼすものなるが故に反對であると云ふことを主張して居られた一人であると承つて居るのでございます、然るに拘らず其の職に就かれるや否や、恬然としてとは申しませぬが、其の方針を變へられまして、是非とも此の補償打切りを斷行しなければならぬと云ふことに變つて來て居られる譯でございまするが、其の心境の變化と申しますか、情勢の變化と申しますか、此の點に付きまして答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=32
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033・膳桂之助
○膳國務大臣 一私人として色々のことに付きまして私が申上げたことに付て辯解することは甚だ屑しとしないのでありますが、私實は今まで明瞭に此の問題に付て世間に自分の意見を發表した機會もございませぬでしたが、併し御尋ねの中にありまするやうに、私の從來の考へ方と致しましては、補償打切りと云ふやうな形でなく政府の財政の整理又擬制資本の切捨と云ふやうなことも行はれ得る途があるのではないか、假に打切るに致しましても其の範圍は本當の軍需會社等直接戰爭に影響を持つて居つたものに限つて考へても宜いのではないかと云ふ風な考へを持つた時代もあつた譯でありまするが、併しながら政府の一員に入つて見まして、内外の情景を考へて見ますると、是も提案理由に申述べてありまする通り、色々整理の仕方に付ては拂ふべきものは拂つて、更に財産税及び戰時利得税等の方法に依つて之を整理して行くと云ふ途も考へられ、又今囘のやうな途も考へられ、色々研究の途があつたのでありまするが、政府の方針が斯樣な途に行くのが内外の情景に鑑みまして最善であると云ふやうな結論を得ましたので、私は現在に於きましては是は最善の途であると考へて參つて居りまする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=33
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034・中崎敏
○中崎委員 どうもはつきり致しませぬが、主として内外の情勢から厭や厭やながらさう云ふ風にせざるを得なくなつたのであるかどうかを改めて御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=34
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035・膳桂之助
○膳國務大臣 個人の意見は公の政策の定まる前には問題が自ら別であらうと存じます、日本の政府と致しましては厭や厭やながらではありませぬ、是がなさなければならないと云ふ強い確信の下に、又之をやつて初めて財政の安固經濟の再建が圖り得るのだと云ふ確信の下に致します譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=35
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036・中崎敏
○中崎委員 擧足を取るやうでございますが、個人の意見は云々と言つて居られますが、膳さんが國務大臣となられたからには、個人の意見と云ふものが相當に重要視されて初めてここに國務大臣として立たれたのではないかと思ひます、此の意味に於て個人の意見と云ふことは一つの信念として發露して來た所に初めて其の人の價値が買はれるのではないかと思ふ譯でありまして、我々國民も膳國務大臣は斯う云ふ氣持を持つて斯う云ふ立場から國務大臣に立たれたのだ、さう云ふ立場に於て了解して居るのであります、それが政府に出て來て見て、政府としての政策が變つたと云ふことに對しましては二つの見方があるのではないか、自分の信念を以て何處までも押通して行く、さうして自分の意見と合はぬ時には自分の最後の態度を決定することが一つである、それから内外の情勢に依つて、是は已むを得ず自分の考へではないが、厭や厭やながら斯う云ふやうになつたのだと云ふ二つの考へ方があるのではないかと思ふ譯であります、此の點に於きまして厭や厭やながら自分は資本家の代辯の立場であるけれども、今日の情勢に於て厭や厭やながらやつたのだと云ふことになれば、膳さんの信念は資本家の代表としての立場であると云ふ風に考へられるのであります、是が今後此の保償打切りに關する問題の全體の考へ方を決定する上に於きまする大きな影響がありますので、此の點に付て改めて其の何れであるかと云ふことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=36
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037・膳桂之助
○膳國務大臣 もう申上げる必要もないと思ひますけれども、私の信念に依りますると、國政に參與する時のものの見方と、又或る一部分の狹い視野の中に於きます時と考への變りがあるのは當然であります、又一私人の見を以て國政の上に反映すると云ふことは、是は定まるべきものに依つて定まつた場合に初めて實行せられます、私は大分今の御見解と根本的に信念を異にして居ります、個人の意見又公の機關としての國政を執る上の方策、此の間に違ひがありましても、何等矛盾がないものと確信して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=37
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038・中崎敏
○中崎委員 此の問題に付きましては此の程度に止めて置きます、けれども決して今膳さんの御答へが滿足であると云ふ意味ではありませぬ、次に補償打切り關係法案の性格に付て御尋ね致しまするが、擬制資本の整理をすると云ふのが本法案提出の一つの目的であると云ふことは政府側から説明されて居ります、次に之に依りて生ずる所の企業及び金融機關の損失を調整し、日本經濟の圓滿な發展を圖ると云ふことが第二の目的と云ふことになつて居るやうでありまするが、果して然らば此の補償打切りの施策と云ふものは其の限度に於て止まるべきものであつて、此の補償打切りの結果生じた所の企業竝に金融機關の損失の範圍に止めるべきであつて、それ以外の事情に依つて生じたもの、詳しく申しますと、其の會社が戰爭中に於ても缺損の状態であつた、さう云ふものまで穴埋めして、さうして一般の債權者を害すると云ふ風な整理の方法は好ましくないではないかと考へて居る譯であります、更に細かく申しますと、今日「バランス」の面に於きましては、企業は赤字である場合がありまするけれども、資材の適當な評價換へなんかの方法に依つて此の整理がなし得る場合もありまするし、更に又終戰後に於ける營業繼續中に於て生じた所の損失も相當あると思ひまするが、さう云ふ部面までも此の法案に依つて救濟しなければならぬと云ふことに付て御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=38
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039・膳桂之助
○膳國務大臣 御尋ねのやうに企業に赤字を出します際には、單に此の戰時補償打切りに依つて出來ました損害に基くものと、自身の從來からの經營が惡かつたと云ふ點に基きますもののあることは確かであります、斯るが故に一方には拂込金を其の事情に依つては全額未拂込を取ると云ふやうな問題もあり、資本の切捨もある譯でありまするが、併しながら之を直ちに雙方に分けて計算すると云ふことは事實上出來ませぬので、やはり二つの機關に分け或は一方のものを一方の損失として未整理の儘にして置くと云ふことは、結局企業の再建と云ふことが出來ませぬ、此の際企業の根本的の整理をやると云ふやうな意味合に於きまして、全部の資産に付ての整理を行はせる、斯樣に致しました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=39
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040・中崎敏
○中崎委員 先程膳國務大臣の言はれましたやうに、二つのものが區別出來ないと言はれまするが、是は私の力を以てすれば極めて容易に出來ると云ふことを申上げます、謂はば技術上の問題である、技術上の問題は或る所に一つの線を引くことに依つて出來るのであつて、是は經理上一つの複雜さを持つて居りますが、出來ることは容易に出來ると云ふことを申上げます
それから企業の健全なる發達と云ふことは結構なことであります、是は私も望む所でありますが、此の軍需補償に關聯してやる所の問題は一般に生ずる所の企業の不振とか企業の損失とか云ふ問題とは切放して考ふべきものであると思ひますので、此の點に付て膳國務大臣と見解を異にする者であります、之に付ては更に又先に進んで資産の評價替へとか云ふ問題に付ても申上げますので、取敢ず此の程度にして置きます
次に戰時補償の打切りは法律不遡及の原則に反するものではないかどうかと云ふことを御尋ね致します、元來我我は過去の事實に遡つて新しく出來る法律に依つて色々な制限を受けることは出來ないものであると云ふ觀念を持つて居るが、國民も其の過去の事實に遡つて或は處罰を受け、或は資産上の損害を受けると云ふやうな施策を行はれることは、一日も安閑として居られない一つの不安感がある、之に付ては先程も言はれましたやうに、國民思想の上に於ても大なる影響を及ぼすものと思ひます、此の法の不遡及の原則の立場から、政府は補償打切りをどう云ふ風に考へて居られるがと云ふことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=40
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041・膳桂之助
○膳國務大臣 色々考へ方もございますけれども、實質的に考へまして斯くの如き措置を執る外途がない、又是が將來に向つて日本の再建を圖る上に最善と信じまして、又法律上の見解には色々見方もあらうと思ひますけれども、政府は之を適切なりと信じた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=41
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042・中崎敏
○中崎委員 法不遡及の原則に反すると云ふことの説明になつて居りませぬが、是は今日の國家情勢に於て已むを得ず執つた所の應急措置であると云ふ意味だと解釋致しまして、此の問題に付ては此の程度にして追求を致しませぬ
次に政府は負擔の公正を期する爲に如何なる考慮を拂はれたか、言換へれば補償打切りに依りまして凡ゆる部面に東風當りが生ずる、さうして場合に依れば不當に財産の侵害を受けると云ふやうな結果にもなるし、或は事業に於て大きな打撃を受ける結果にもなる、所が是が公平公正になされたものであるとすれば已むを得ない處置でありますが、此の點に付て如何なる處置を執られるか、先づ此の見地から第一に今囘政府の行はれんとする所の打切り方法は決して策の得たるものでない、先づ打切りは打切る、企業の再建は再建、皆の負擔は皆の負擔と云ふ風な形に於てやるのが一つの方法だと思ふ譯でありますが、此の點に付て第一に御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=42
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043・膳桂之助
○膳國務大臣 度々申上げますやうに、此の戰時補償の整理の問題に付きましては色々の考へ方がございます、今御述べになられましたやうな途で行くのも一つの途と存ずるのでありますが、是も度々申上げます通り、色々の案を政府に於て比較研究をしました結果、今囘執ります途に依るのが最も合目的であると云ふことの結論を得ましたが故に、斯樣な途を執らうと云ふ譯でありまして、考へ方としては色々あつたことは今までも度々説明申上げた所で御諒承が願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=43
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044・中崎敏
○中崎委員 第二の點に付て御尋ねします、此の打切りに依る損失を全體「プール」として考へて見られたでせうか、言換へれば企業の中にも、中には打切りの結果利益の生ずる所もある、中には相當赤字の出る所もあるのであります、是は企業全體として考へて見る必要があるのではないか、金融機關に付ても同じことが言へるのであります、甲の銀行は偶偶軍需會社に對して澤山の金を出して居つた爲に、預金者に思はざる所の餘分の損害を掛ける虞がある、所が他の金融機關に於ては戰爭に於て何等協力しなかつたでもありませぬが、色々な事情から金の貸出が少かつたが爲に、此の打切りに依る打撃が少かつた、斯う云ふ場合が考へられる譯でありますが、之を金融機關全體として或は又企業全體として、一つの「プール」として考へて見たならば、割に公平なと言ひますか、大衆に迷惑を掛けないでも濟むのぢやないかと云ふやうにも考へられますが、此の點に付ての御見解を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=44
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045・膳桂之助
○膳國務大臣 御説のやうな「プール」をして、全體の負擔を公平にして行くと云ふことが宜いのではないかと云ふことも、政府が此の結論に到達しましたが、論議せられ、又研究されました一つの問題でございます、併し是も實際問題になりますと中々困難の點がありますので、結局一時研究の題目にはなりましたが、左樣な案は採らずに、此のやうな方法を採るやうに相成りました次第であります、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=45
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046・中崎敏
○中崎委員 第三に御尋ねしますが、企業再建整備法案の第三條に依りますと、第二封鎖預金額が支拂を超えることが出來ぬやうになつた場合に生ずる所の損失は、補償されることになつて居りますが、中小企業が何等の保護を受けぬと云ふ結果になるので、中小企業と云ふものに對する國家の保護が薄いのではないかと云ふやうに考へられるのでございますが、此の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=46
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047・膳桂之助
○膳國務大臣 此の措置が中小企業に及ぼす影響に付きましては、政府は最も關心を拂つた點でありまして、例へば控除金額、度々是も説明申上げますが、火災保險又企業整備其の他に付きましても、五萬圓までの控除は認めて行かうと云ふやうな點、又拂込資本金が五十萬圓以下の會社に付きまして、株主の第一次に株金から切捨てらるべき損失の割合をば、大會社よりも相當中小企業保護の爲に、殘す率を高めたと云ふやうな點、それ等に付きまして、特に中小企業に付きましては、一般の大會社と違つた取扱を取れるやうに措置致した積りでありますが、特に此の法律で中小企業が、御説のやうに特別に惡い待遇を受けると云ふやうな結果になりますやうな措置は執つてない積りでありますが、何か其の邊に誤解でもありはせぬかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=47
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048・中崎敏
○中崎委員 第二封鎖預金でございますが、是が此の法案に依りますと一應資産の中の見返りの對象となつて是が生きて來るが如き感があるのでありますが、此の法案の適用を受けない所の中小企業は第二封鎖預金は依然として縛られて居ると云ふやうな結果になりはしないかと思ひますが、其の點に付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=48
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049・福田赳夫
○福田政府委員 只今御尋ねの點でありまするが、第二封鎖預金が特別經理會社の自由になると云ふ場合に於きましても、第二封鎖預金に付て特別の措置を致す、斯樣なことはありませぬ、隨ひまして特別經理會社にならないもの、即ち仰しやる通り中小工業と云ふものと均衡を失すると云ふやうなことは絶對にありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=49
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050・中崎敏
○中崎委員 次に擬制資本の整理の問題に付て御尋ね致しますが、商工大臣は是は企業のみが此の打切に依る所の損失を負擔すべきものではないと云ふ風に言うて居られますが、或る一面に於てはさう云ふことも考へられまするが、元來此の損失補償の打切りに依る所の企業は今囘の如き打切りの問題が起つたのは直接軍の生産に携はり、自ら場合に依れば待合政策をやり、或は場合に依れば自分で大賭博をやつたと考へられる、言換へれば自分で一つ時局に便乘して自分の事業を運轉してさうして旨く儲けてやらうと云ふ風な氣持から此の事業と云ふものが發展して行つて、さうして大きな政府からの命令に、或は特別の補償に依る所の恩惠を受けると云ふことに依つて、今日までやつて來た譯でございますので、斯う云ふ方面の事業と云ふものは當然に其の責任は其の事業自體にあるのだ、更に又其の重役とか或は此の事務に携つて居る所の幹部級の人々は、政府から出された所の金を奇貨としまして、設備とか其の外のものに金を注込んだ如くに裝うて、さうして多く裏から自分の懷ろへ捩込んで居つたと云ふやうなことが多々ある譯でございますが、斯くの如きものに對しては如何なる處置を執られるか、言換へればこんな會社は當然に赤字を生じて居る、其の赤字を埋めるのに一般の債權者に對して、其の債權者の負擔に於て、犧牲に於て、之を處理されると云ふのが本法案の趣旨でございまするが、斯くの如く一面に於ては自分達が不當なことをやつて、さうして其の赤字の缺を一般の債權者にまで及ぼすと云ふ風なことになるのは、極めて今日の觀念から言うて不正不當なものだと考へて居りますが、之に對する所の一つの責任追究の方法を講じらるべきものではないか、財産税法案に依りますと、第三者の通報制と云ふものを認められて居る譯でありますが、此の法案に付てもやはり現在までにさう云ふことがあつたもの、或は此の法案に基く所の整備計畫に反すると云ふ風なことに依つて、或は品物を不當に賣出す或は又其の特殊の者に利益を得せしめて、自分は裏から「ポケット」へ入れる、斯う云ふ風な者が多々あると考へる譯であります、或は又子會社が違反をして居ると云ふやうに責任を子會社に轉稼しながら涼しい顏をして元會社が利益を受けて居ると云ふ風な例も多々ある譯でありますが、斯くの如きものに對しては第三者の通報制と、更に又此の經理に付て特別に過去に遡つて嚴重な審査をすることに依つて之を是正すると云ふ風な用意が政府にあるかどうかを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=50
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051・膳桂之助
○膳國務大臣 今の御説のやうな事例は或はあるかも知れませぬ、さう云ふやうな場合には、或は横領であるとか背任であるとか自ら之を摘發處罰すべき途は外にありますから、此の戰時補償の打切りの問題に付て、さう云ふ一つの何か犯罪云々と云ふやうなことを織込んで、同時に裁判をしつつ整理をさせると云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=51
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052・中崎敏
○中崎委員 政府の斯くの如き觀念が遂に國民道義を今日の如き頽廢に至らしめたものだと考へて居ります、苟くも國民に實に言ふに堪へない所の多大の負擔を掛ける所の此の法案を整備する上に於て、斯くの如く一面に於て惡虐無道なる者も其の儘に放任すると云ふやうな此の政府の方針が、今日國民思想を頽廢せしめた所の大きな原因だと考へて居る譯でありますが、此の點に付きましては是れ以上追究することは止めます
次に此の法案に依つて補償打切りをされる所の企業は、經理の内容を整理します場合に於て、此の損失補填てんに充てる物件の順位を御尋ね致します、言換へますと先づ第一に預金なら預金を以てする、次には債權を以て之に充てるとか云ふやうな順位に付て一通り御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=52
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053・三木秋義
○三木政府委員 特別損失を如何なる順位に於てするかと云ふ問題でありますが、是は專ら整備計畫の内容の問題になつて參りますので、具體的に各個の會社の實體に從つてそれぞれ處理さるべき問題であらうと思ひます、唯一番最初に積立金が先づ處理されなければならない、其の次には資産の評價基準に從つて評價益を出すと云ふことに相成る譯でありますが、其の資産の評價益を出します場合に、如何なる面からどれだけの評價を出すかと云ふやうなことも、是れ亦整備計畫の内容として決めらるべきものであらうと思ひますけれども、我々の一應の考へ方としては、先づ棚卸資産等の丸公の決まつて居るやうなものから出して貰ひたいと云ふ希望を持つて居ります、尚ほ固定資産の處理の問題に付きましても、舊勘定に屬します所の不要設備などは、先づ第一に整理して貰いたいと云ふやうな感じを持つて居りますが、唯具體的な問題と致しましては、それぞれの經理の状況或は事業の實體に副ひましてそれぞれ企業者の整備計畫の内容として詳細に規定して戴きたい、それを主務官廳に於て能く見まして、それぞれ具體的な妥當性を持つたものに仕上げて行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=53
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054・中崎敏
○中崎委員 債權は如何なる順位で處理されるのかまだ分りませぬか、言換へれば其の企業の債務を如何に之に充當するかと云ふ、其の充當の順位がまだ分りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=54
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055・三木秋義
○三木政府委員 御尋ねの趣旨がはつきり分り兼ねるのでありますが、法案の中には特別損失の切り方の順位は明瞭に書いてございますが、さう云ふ意味ではございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=55
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056・中崎敏
○中崎委員 先程政府委員から言はれましたやうに、大體に於て積立金、繰越金それから資産の評價替へと云ふことになる譯です、其の次に今度は一般の債權を七割なり切捨てると云ふ風な場合には、どう云ふ順位に入つて來るかと云ふことを御尋ねするのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=56
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057・三木秋義
○三木政府委員 債權の切り方の問題でありますが、其の點は總て平等に依つて、例へば擔保權が付いて居つても居なくても、總て平等に切捨てられると云ふことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=57
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058・中崎敏
○中崎委員 債權の内容の順位ではないのです、言換へれば他の物權との比較に於て、どんな順位で其の債權全體が切捨てを食ふか、斯う云ふ問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=58
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059・三木秋義
○三木政府委員 債權の切り方の順位と云ふものはありませぬ、總て割合に從つて一割なり二割なり切つて參ると云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=59
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060・中崎敏
○中崎委員 どうもはつきりしませぬが、言換へれば其の事業には、先づ第一に百萬圓の企業の損失がある、それに付ては先づ繰越金と、それから積立金を以て、之を十萬圓あつたとすれば十萬圓切る、第二に其の資産の評價、替へに依つて、假に五十萬圓あつたとすれば六十萬圓は是で切る、殘りの四十萬圓は債券を以て切る、或は株式を以て切ると云ふやうな形になるのでせうが、其の場合の順位を聽きたいと云ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=60
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061・三木秋義
○三木政府委員 法案の第七條には特別損失の切り方の順位に付きましてそれぞれ明確なる規定がされて居ります、一應曩の補償打切りに伴ひまする所の損失全體を計算致しまして、それに對して繰越の益金、積立金等の更に評價益を切りまして、殘りましたものが特別損失になる譯でありますが、特別損失の負擔の填補のやり方と致しましては、屡屡御説明申上げましたやうに、先づ第一に資本金の九割まで切る、其の次に債券の七割までを切る、それで尚ほ及ばない時には曩の資本金九割まで切つてありますから、資本金は一割になる譯ですが、其の一割を今度は切る、それに依つて會社は全資本金をなくしてしまふ譯です、尚ほそれで足りない場合は債券が三割殘つて居りますから其の三割を又切つてしまふ、左樣なことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=61
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062・中崎敏
○中崎委員 次に未拂込の徴收は其の次の順序になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=62
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063・三木秋義
○三木政府委員 未拂込を徴收致しますかどうかはそれぞれ整備計畫の中で決まつて參る譯でありますが、其の場合に資本金の九割まで切るのでありますから、其の時に若し未拂込がありましたならば、是は整備計畫の關係になつて參りますけれども、實際の問題と致しましては未拂込を徴收せざるを得ないだらうと思ひます、若し未拂込を徴收せずして其の損失を填補しようと思へば、繰越缺損の形を取らざるを得ないと思ふのでありますが、政府の一應の認可の方針と致しましては、成べく繰越缺損と云ふのは認めない、出來るだけ茲で缺損を切捨てて參りたい、斯樣に考へて居りますので、繰越缺損を認めざる以上は當然拂込を取る、拂込を取られたものは更に打切る、斯樣なことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=63
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064・中崎敏
○中崎委員 今の第一囘の株式の九割までを打切ることになりまするか、或は次に最後に全部打切ると云ふことになるかと云ふことになりますが、それに對する所の未拂込金は、第一囘に打切つた場合に於ては、既に其の九割と云ふものに付ては、未拂込があつても是を徴收しないのかどうか、或は第二囘に付てもやはり同じやうに全部今度は切捨ててしまふのですけれども、其の場合に於ても未拂込を取らないで置いて取るかどうか、或は前に遡つてやるのかどうかと云ふことに付て、是は重大な關係がありますのではつきりと御聽きして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=64
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065・三木秋義
○三木政府委員 曩に申上げましたやうに、缺損を繰越さざる以上は未拂込を徴收せざるを得ないのであります、是は「バランス・シート」の構成から言つて當然の結果になるのであります、「バランス・シート」の構成から言つて當然資産の分に計上してあるのであります、隨て此の未拂込で以て損失を填補しようと思ひまするならば、當然拂込を取る、其の拂込を取つただけでは損失金が填補にならないのであります、取つたものも更に打切ると云ふことに依つて初めて損失が填補される譯であります、隨ひまして資本金を切ります場合には、拂込が若し殘つて居りますならばそれを取らざるを得ないと云ふ結果になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=65
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066・中崎敏
○中崎委員 さうしますと云ふと、第一囘に資本金の九割を切りまして、次にそれで足りない場合には今度は九割切つた時には未拂込を其の時に取つて置けば申分ないのですが、其の時に取らなければ、今度は債權を以て又殘りの債權を埋めて、さうして最後に最後の一割の拂込を取ることになりますので、最初の九割切られた時に拂込を取らなければ取れないのか、或は其の分に對しては打切り後に於ても尚ほ拂込を取るのか其の點をはつきりして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=66
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067・三木秋義
○三木政府委員 拂込を取るかどうか、或は特別損失を全體如何なる方法に依つて填補するかと云ふことは、專ら整備計畫の中に明瞭にした譯であります、整理に當りましては先づ當然整理計畫を立てまするから、其の時にどれだけ特別損失が出來た、それを如何なる方法に依つて填補するかと云ふことは豫め分る譯であります、而も整理計畫を立てます時には、既にどれだけの拂込を取らなければならぬか、どれだけを切らなければならぬかと云ふことが全部分つて居ると思ひますから、二度の手間は要らない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=67
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068・中崎敏
○中崎委員 整備計畫の内容に付ては個々の色々な場合があるかと思ひまするから、それは問はぬとしまして、整備計畫を立てるまでの一つの常則、所謂根本の原則と云ふものは、法律に於て豫め明記する必要があるかと思ひますが、今のやうな場合は、整備計畫の中に於て任すと云ふことに付ては餘りに問題が重大であると考へます、でありまするから、第一囘の資本金を九割捨てた時に未拂込のある分はそれを取るのか、或はそれは其の儘にして置いて更に殘りのものを以て當てて、更に足らぬ場合には一割切捨てるのですが、其の切捨てた時に、最後に今度は改めて過去に遡つて取るかどうかと云ふ問題に付てはつきりして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=68
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069・三木秋義
○三木政府委員 切りまする場合に於て當然拂込を取られると云ふことが洵に明瞭になつて居る譯であります、又如何なる方法でやるかと云ふことが整備計畫で決まつて居る譯であります、其の整備計畫を定めますまでの順序は主務官廳にそれぞれ内容等を改めまして、適切なる施設をやつて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=69
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070・中崎敏
○中崎委員 どうも其の點はつきりしませぬが、何れ御調査を願つた上ではつきりと御答辯して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=70
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071・本多市郎
○本多委員長 此の際中崎君に御諮り致しますが、質問中ですが休憩をして午後に引續き御願ひ出來ないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=71
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072・中崎敏
○中崎委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=72
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073・本多市郎
○本多委員長 それでは午後一時まで休憩致します
午後零時九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=73
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074・会議録情報2
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午後一時三十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=74
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075・本多市郎
○本多委員長 會議を開きます、休憩前に引續き質疑を進めるのでありますが、昨日の北村委員の質問に對し政府側より答辯が殘つて居りますので、此の際答辯を求めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=75
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076・奧野健一
○奧野政府委員 私から便宜昨日の北村委員の御質疑に對して御答辯申したいと思ひます、御質問の御趣旨は、連帶債務者の一人が企業再建整備法に依つて債權の消滅があつた場合に、他の連帶債務者の債權にどう云ふやうに影響するかと云ふ問題と考へます、同種の問題は、保證人があつた場合に保證債務にどう云ふ影響を及ぼすか、或は又連帶保證人があつた場合に、其の連帶保證人の債務にどう云ふ影響を及ぼすか、及び連帶債務者がある場合に連帶債務者の債務にどう云ふ影響を及ぼすか、此の三つの場合が同樣の事柄であるやうに考へます、そこで先づ保證人の場合に付きまして、保證債務は主たる債務の從たる性質を持つて居ります關係上、其の主たる債務が本法に依りまして其の債務の一部等が消滅することになりますと、從たる保證人の債務も其の限度に消滅することになると思ひます、又連帶保證に於きましては、連帶と云ふ言葉は使ひますが、本質は一種の保證でありまするが故に、從屬性の關係から致しまして、主たる債權が打切りになりますと、其の限度内に於きまして從たる連帶保證債務も當然其の限度に於て縮小消滅することになると考へます
而して最後の單純なる連帶債務の場合はどうなるかと云ふ問題でありますが、連帶債務は御承知のやうに、數人が各各金額の債務の履行に當ると云ふ、各人獨立の金額履行の債務でありまして、其の間に主從の關係がありませぬ、保證債務のやうに從たる關係とか主たる關係と云ふものがなくて、謂はば各人が主たる關係にありまする關係上、民法の原則に依りますと、民法四百四十條に依りますと、一人の債務者の債務に生じた事柄は、原則として他の債務者の債務に影響しないと云ふことになつて居ります、そこで此の場合に於きまして一人の債務者の債務が消滅致しましても、他の連帶債務者の債務は影響がないと云ふ風に考へます、唯ここで御注意を致して置かなければならない事柄は、普通に連帶債務と言ひましても、實は連帶保證と非常に混同されて使用されて居りますので、此の連帶と云ふ文字があつたからと言うて、單純なる連帶債務であるとは斷定され得ないのでありまして、此の場合でも連帶保證である場合が多いのであります、此の點に付きましては大審院に於きましても、單に連帶とあるからと言つて直ちに連帶債務であると云ふ風に見るべきではなく、其の關係を十分釋明して、本當に單純な連帶債務であるか、連帶保證であるかを判定しなければならないと云ふ風な判例もあるやうな譯でありまして、それが連帶保證でありますと、主たる債務がなくなりますと、連帶保證債務も其の限度に於て消滅すると云ふことになると考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=76
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077・北村徳太郎
○北村委員 今の御答辯は能く分りましたが、連帶債務竝に連帶保證人に關することは私の質問外であります、御尋ねしたのは連帶債務其のものに付てであります、御尋ね致しましたのは、企業再建整備法案の第十九條は、連帶債務の者にも此の法に依つて全部に打切りが效果を發生すると云ふことを法は期待して居るのではないか、若しそれならば何か表現に不備があるのではないか、斯う云ふ點を質問致したのでありまして、只今の法の解釋に依りますると、此の第十九條の規定は、規定其のものに何等かの修正を加へる必要があるのぢやないか、斯樣に考へる譯であります、其の點に付て尚ほ御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=77
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078・奧野健一
○奧野政府委員 立案の當時に於きまして、其の問題が非常に問題となりまして、一時は保證債務とか、或は連帶債務に付ての事柄を色々規定しようとした段階もあつたのでありまするけれども、結局實質に於きまして保證債務或は連帶保證債務は、其の限度に於て消滅せしむるが相當であるが、本當の意味の連帶債務はそれだけ之に依つて債權者の方が強く保護せらるべき性質のものであると云ふことで、單純なる連帶債務の時には連帶債務者の債務には影響しないことにする積りで、何等其の點の規定を結局設けないことになつた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=78
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079・北村徳太郎
○北村委員 了承しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=79
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080・本多市郎
○本多委員長 次に、昨日金光委員の質問に對する答辯が殘つて居る分がありますので、此の際政府の答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=80
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081・福田赳夫
○福田政府委員 私から金融機關再建整備法に引用して居りまする所の勅令施行竝に命令施行の概要を御説明申上げます、實は此の企業竝に税の關係にありましては、御手許に書類を配付出來たのでありまするが、金融機關の關係に付きましては、關係方面と尚ほ幾多折衝を要する點がありますので、御配りすることが出來ないことを洵に殘念に思ひます、併しながら私共が只今考へて居りまする所のことを率直に此處で申上げて見たい、斯樣に思ふのであります
先づ第四條でありますが、第四條の「勅令で定めるものは」とあります、此の勅令に於きましては、債權が金融機關に於てはつきりと分つて居ると云ふ性質のものを特掲致しまして、是は調査の必要がない、申告の必要がないと云ふことを決める譯であります、それから「勅令で定めるものは、命令の定めるところにより、」と云ふ其の命令は、手續樣式を定める、それから「主務大臣の指定する日」とありますのは、十一月末であります、十一月末までに此の調査を致しまして金融機關に申出でなければならない、斯樣なことになる譯であります
それから第五條に行きまして、三行目に「金融機關は、命令で定める金額を、假に其の負債の確定金額として、舊勘定の整理を行はなければならない。」ありまするが、是は命令で定める金額と申しまするのは、疑義等がありまする場合に於きましては、その一番大きな額に依る──多額の大きな額に依つて整理を致す、斯樣なことを規定して居る譯であります、左樣に致しまして調査の安全性を保つて居ると云ふ譯であります
それから第六條に參りまして、「金融機關は、命令の定めるところにより、」とありまするが、此の命令は、主務大臣に提出する書類の樣式とか、さう云ふ形式的な調査要領を決めるものであります、それから六條の「主務大臣の指定する日までに、」とありまするが、是は十二月末と云ふことを一應考へて居ります、十二月末までに其の調査を完了すると云ふ風に考へて居るのであります
それから第七條に參りまして、「金融機關の舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債のうち、命令で定める以外のものについては、評價基準が設けられる。」と云ふのでありまして、此の命令に於きましては、現金だとか、それから金錢信託とか、それ以外の信託だとか、或は「インターバンク」の貸借であるとか、斯樣なものに付きましては評價基準を設ける必要がないのでありまして、左樣なものは評價基準から除外されると云ふことが規定せられるのでございます
それから第八條に參りまして、第八條の「金融機關は、主務大臣の指定する時において、その時における舊勘定の資産及び負債竝びに指定時における新勘定の資産及び負債について、命令の定めるところにより、」と云ふ命令がありまするが、是は暫定評價基準を定めます其の時期までに暫定評價基準が決まつた財産だけに付て暫定評價すれば宜しい、評價基準が其の時までに決まらなかつたものに付きましては評價をする必要がないと云ふことを書いて居る譯であります、更に第二項に參りまして、「命令の定めるところにより、同項に掲げる資産及び負債について、」とあります其の命令は、手續であります、それから最後の行にあります「主務大臣の指定する日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。」とあるのは、是は二月十五日であります、此の二月十五日と云ふことを豫定して居るのでありまするが、之に依りまして金融機關の暫定評價と云ふものは二月十五日までに完了する、斯樣なことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=81
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082・本多市郎
○本多委員長 一寸福田政府委員に御伺ひ致しますが、相當時間を要しますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=82
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083・福田赳夫
○福田政府委員 あと二十分位はあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=83
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084・本多市郎
○本多委員長 洵に恐縮ですが、大藏大臣が御見えになりましたので、繼續中の質問に移つた方が宜くはないかと思ひますので、途中ですけれども一寸保留して戴きます──中崎敏君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=84
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085・中崎敏
○中崎委員 午前中に政府委員に對しまして、未拂込金の徴收に關する質問をした譯でありますが、此の點に付てもう一度改めて御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=85
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086・三木秋義
○三木政府委員 午前中の中崎委員の御質問に對しまして御答へを致します、特別經理株式會社は其の特別損失を負擔する場合に於きまして、其の資本金の全部、即ち拂込資本と未拂込資本の區別なく、其の全額を負擔しなければならぬやうになつて居ります、法文の第七條第一號及び第三號に資本金額の十分の九、又は十分の一と規定してありますのは、斯樣な意味に於て、未拂込をも含めた全資本の十分の九又は十分の一と云ふ意味であります、尚ほ序ででございますから、企業再建整備法に關係の命令事項は別に印刷に致して居りますので、間もなく御手許に配付致したいと存じます、唯其の内容と致しまして、五條第一項關係の整備計畫の立案が、整備計畫を何時までに主務大臣に出すかと云ふやうな點、或は八條關係の再評價の「命令を以て定める」云々と云ふやうな事項に付きましては、尚ほ關係方面とも協議を致したいと思ひます、未解決でございますので、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=86
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087・中崎敏
○中崎委員 只今の問題、未拂込の徴收に關することは廣く企業に對する一般株主に關する重要な問題でありまするので、未拂込の徴收に依つて、其の會社の資本を整備すると云ふことを法文の上に於て明記する必要があるのではないかと云ふ意見を持つて居る譯でありますが、其の點に付きましては、唯私の意見として述べた譯であります
次に企業資産の評價の問題に付て御尋ね致したいと思ひます、過般商工省が企業整備計畫案なるものを發表したのでありまするが、補償打切りに依る企業整備計畫案、之に依ると、企業の資産は時價を以て評價すると云ふことを發表して參つたのでありますが、今囘此の補償打切法案全般に關する部面に於ては、此の問題は何等表向きに現はれて居らない譯でありますが、此の點に付てどう云ふ風になるのかと云ふことを御伺ひしたいと思ひます、私の考へでは、總て企業を整備するには、此の資産の評價と云ふことが一番大きな問題であると考へて居ります、此の資産の評價を餘り低く見積ると云ふことは、之に對する債權者の利益を害すると云ふ重大な結果になりまするし、それかと云つて餘り又水膨れの資産を認めてやつたのでは、將來の日本經濟再建の上に於て、大きなる支障があることが考へられる譯であります、然らば此の評價を如何なる點に求めるかと云ふことになると、極めて困難な難かしい問題ではありまするが、何れにしても決定しなければならぬ重要問題であるのであります、私の考へる所では、寧ろ、今後政府に於て決定されると豫定されて居る或る安定物價と云ふものに基準を置いて、それに依つて資産の再評價をなさるべきものだと考へて居りまするが、唯口で安定水準に基く物價と申しましても、さう簡單に出來る譯ではないと思ひまするが、膳國務大臣の言明に依りましても、大體米價を基準にして、それ等の物價水準を決めると云ふ風な目標を立てて居られるやうでありまするので、此の物價水準と云ふものが如何なる見透しの下に何時頃、どう云ふ形に於て現はれるのかを此の資産の評價問題と關聯して、大藏大臣から御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=87
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088・石橋湛山
○石橋國務大臣 評價の問題、それから物價の問題に付きましては、昨日も他の委員の方から御質問があつて、大體只今我々の考へて居り、又御答辯申上げ得る範圍内に於ては一應申上げた積りであります、御言葉の通り、評價は非常に難かしい問題でありますが、實際の處理としては、それぞれの企業に付て特別管理人が之を決定して認可を受けることになるのであります、併しそれに大體の基準がありませぬと、管理人が評價するのに困難であり、又間違ひが起る懸念がありますので、目下其の基準を具體的に作成して、色々關係方面とも折衝して居るのであります、隨て其の結果に付ては申上げ兼ねますが、見當は御話の通り將來の産業の再建に支障がないと云ふことを一番の主眼にしまして、其の上に於て債權者及び債務者雙方に公平な評價をする、斯う云ふ考へであります、隨てそこに物價の問題が出て來る譯であります、此の物價の問題も昨日申しましたやうに、米價其の他に基準を取るとか、是は具體的には色々のやり方があると思ひますが、見當は現在の物價水準と云ふものを一つの基準にし、尚ほ將來の生産の豫想と云ふもの等を加へて、一つの理想的の物價水準を作るものと考へて居ります、甚だ抽象的でありますが、只今の所では左樣な抽象的なこと以上に一寸御答へし得ない段階であります、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=88
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089・三木秋義
○三木政府委員 只今商工省から企業整備の資産評價換への基準に付て發表したが如き御言葉がございましたが、商工省側と致しましては、公式にさう云ふ案を發表したことがございませぬ、何かの間違ひではないかと存じます、其の點を御含み願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=89
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090・中崎敏
○中崎委員 只今大藏大臣の答辯に依りますと、評價の問題は企業の再建を土臺として、言換へれば企業の健全性を失はしめない状態に於て評價するのが主眼であると云ふやうに言はれて居りますが、此の點に付ては私も強ち反對するものではありませぬが、資産の評價と云ふことの如何に依つて、企業が不當に利益すると云ふことにも考へられるのであります、即ち一面に於て資産の評價を低くすると、其の企業が隱れたる資産の含みを持つことになりまして、それの不足を債權者に轉嫁する、其の穴埋めをさせることに依つて、企業だけが利益を受けると云ふことになるのであります、現在の物價が假に此の状態に於て安定するものとすれば、其の時價で見積つて何等差支へないものだと思ふのであります、將來に於ける所の一つの物價安定基準を妥當に認められるならば、それに依ることが一番でありまして、それ以上企業の利益になるやうな、言換へれば企業に不當の含みを持たすやうな資産の評價に付ては、到底我々國民としては之を是認し得るものではないと云ふことを申上げたのでありますが、其の點に付て大藏大臣の御答辯をもう一度はつきり御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=90
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091・石橋湛山
○石橋國務大臣 勿論企業に不當に利益を與へると云ふことを申上げるのではありませぬので、其の點は昨日どなたかの御質問に對して私が御答へした中にもはつきり申上げて置いた積りであります、併し此の一聯の法案は目的は何處にあるかと云ふと、債權者債務者に公平な分配をするとか損害を公平に與へるとか云ふことよりも、目標は日本の産業をどうして再建するかと云ふことにある譯でありますから、此の點は忘れられない、唯普段偶然に或る企業が損失を生じて清算をすると云ふのと大變趣きが違ひまして、さう云ふ場合には企業全體のことを別に心配する必要はないから、專ら債權者及び債務者の利害の觀點に立つて整理が出來ますが、今度の場合は國策として日本の産業を建直す、斯う云ふことでありますから、そこにやはり中心を置くべきである、斯樣に只今政府は考へて居る譯であります、併しながら其のことは不當に企業に利益を與へる、斯う云ふ意味ではございませぬので、詰り評價に於きましても若し時價と云ふならば、一體其の時價なるものは何處にあるかと云ふと、隨分高くも考へられる譯でありますが、其處まで評價することが果して日本の産業の再建に宜いかどうか、斯う云ふ廣い觀點から觀察致したいと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=91
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092・中崎敏
○中崎委員 今の大藏大臣の説明に對しましては根本的に理念が違つて居ると云ふことを申上げます、と申しますのは、今囘の補償打切りに關する取扱と云ふものは、經濟の再建を目的としたものであると云ふことでありますが、私は寧ろそれよりも戰時に於ける所の所謂水膨れに對して政府に過大の負擔がある、之を如何にして打切るかと云ふことが第一の眼目であつて、其の線に沿うて初めて本法案が出て來たものと思ふのであります、言換へますと企業を再建整備する所の方法は、斯くの如き曖昧模糊な、又不公平な施策ではなくして、適當に之を處置する所の方法があります、例へば金融の面に於て適當な方法を講ずるとか、或は特に重要な産業である、是は必ず再建しなければならぬと云ふやうな産業に對しましては、別個の措置を講ずることに依つて是が出來るのでありまして、謂はば戰時補償を今まで政府が責任を持つて實行すべきものを、國家の財政上の都合に於て是が實行出來なかつた、それが爲に生ずる所の企業の損害を如何に處置するかと云ふことが此の法の目的でありまして、企業の再建整備、將來の企業をどうするかと云ふことは、それから生じた所の從たる目的であると考へるのであります、斯う云ふ意味に於きまして大藏大臣との間に大きな意見の相違がある譯でございますが、此の點に付てもう一度大藏大臣の御意見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=92
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093・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は御言葉の中にもありましたやうに、意見の相違になりますから論爭になる懸念があるのでありますが、今囘の法案は如何にも直接の目的は財政の負擔を減少する、謂はば財産税の代りに今度の戰時特別課税を致す譯でありますが、併しながらそれも是も一番の根本は何處にあるかと申せば、やはり日本の經濟を建直すと云ふことにある譯で、財政の整理と雖もやはり之を離れては出來ないのであります、唯財政の整理をしさへすれば宜い、國家の負擔を減じさへすれば宜いと云つても、それで經濟を萬一破壊してしまふと云ふことになれば、却て財政の方にも結局損害を與へることになるのであります、私の申上げる趣意は、さつきも申しましたやうに、全體の經濟界は別段大した問題はない、其の間に唯偶然或る會社、或る銀行が損失を來して之を清算しなければならぬと云ふ場合のやり方と、今囘のやり方とは、やはり目の著け所が多少違はなければならぬだらう、隨て債權、債務者の利害關係からだけ申せば、甚だ簡單に事が片付く譯でございますが、さうでなく、其の企業もやはり生かして行き、日本全體の經濟を生かして行くと云ふ建前がある爲に、實は評價問題も非常に面倒になると云ふことを申上げた譯であります、繰返して申しますが、それ故に不當に債權者に損害を掛けるとか、不當に債務者の利益を擁護する、斯樣なことでは決してないのであります、其の點を御諒承を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=93
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094・中崎敏
○中崎委員 資産評價の問題は本法案を通じて一番肝腎な問題であり、是が眼目であると私は考へて居る譯でありますが、此の肝腎な國民大衆と云ひますか、國民一般債權者、銀行預金者は勿論、凡ゆる是等に關係ある所の債權者に非常な犧牲と負擔とを強ゆることに依つて、初めて本法の目的として居る所の施策が行はれる譯でございます、斯くの如き重大なる影響を齎す所の評價に關する問題に付きまして、之を法律の面に於てはつきりと規定される必要があるのではないか、只今の大藏大臣の答辯に依りますと、關係方面との諒解がまだ付いて居ないと申されますけれども、此の問題が政府側に取上げられましてから相當の期間が經過して居りますし、此の法案として出來て居る今日に於て、大體に於ける所の交渉は既に濟んで居るものだと私は考へて居ります、所謂袞龍の袖に隱れて我々が今日まで軍閥財閥に酷い目に遭はされたことは、未だに我々の頭にまざまざと殘つて居る所でありますが、其の氣持を又關係方面關係方面と云つて此の袖に隱れられると云ふことでは、我々國民は非常に迷惑をするのであります、殊に財産税に關する評價基準は、大體に於て此の財産税法に取入れられて居る譯でありますが、一番重要な關係を持つ所の企業整備、補償打切りに關する一聯の法案に付て、何等是が明記されて居ないと云ふことは、政府に何か意圖する所があるのではないか、言換へれば評價の基準を各企業に勝手に作らすことに依つて、企業の温存を不當にやらうとするのではないかと云ふ懸念を濃厚に持つのでありまして、此の點に付きまして大藏大臣の御答辯を要求するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=94
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095・石橋湛山
○石橋國務大臣 甚だ遺憾な御質問を受けた譯でございますが、私は、又政府は左樣な或る事柄に依つて所謂袞龍の袖に隱れると云ふやうなことは毛頭ございませぬから、其の邊はどうぞ御諒承を願ひます、實際に此の問題は非常に難かしいのでありまして、早くから色々檢討もし、種々な案も立てて居るのでありますが、まだ具體的な結論に到達しないと云ふのが事實でございます、それから財産税法案の中に入つて居る程度の評價の問題は無論解決されて居るのでありまして、それは問題はないのであります、唯固定資本をどう評價するか、此の固定資本の問題であります、流動資産の直ぐ賣れるもの、或は企業であつてもどうせ潰れるもの、潰し値段で賣つてしまふと云ふものは、時價で行くと云ふことで何も問題はありませぬ、併し日本の經濟の爲に今後どうしても繼續してやらなければならぬと云ふ企業の固定資本をどう評價するか、是は平生でも非常に難かしい問題でありますが、そこに引掛りがありますので、まだ決定しない、而もそれが重要な問題であつて、今尚ほ決定しないと云ふのでありますから、全體を御披露申上げることが出來ない、斯う云ふ事情にあることを御諒承願ひたいと思ひます、政府としては決して不當なことをやると云ふことは毛頭ございませぬから、其の邊は御諒承願ひます、尚ほ是は法律の上には書きませぬが、やはり民主的な建前を採つて委員會を作つて、評價基準は其の委員會の評議に掛けて致すことになつて居りまして、政府が勝手に致す譯ではございませぬから、其の邊は御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=95
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096・中崎敏
○中崎委員 評價基準の問題に付きまして、財産税程度のことは分つて居るから問題はないと云ふ御話でございますが、其の範圍に於ても、先づ此の企業に即して一應此の際御説明が願ひたい、更に設備の問題は先程大藏大臣も言はれましたやうに、實際に複雜な困難な問題でありまするが、曾て設備評價の一つの方法として、複成式評價方法と云ふものが採り上げられたことが政府に於てあると云ふ實例も知つて居ります、今後に於て此の複成式の方法に依つて行くべきかどうかと云ふことは、やはり將來の物價の「レベル」にも關係して參りますので極めて困難な問題でありますが、何れにしても沿うて行くべき線は、安定した所の物價水準に目安を置いて行くと云ふことで行かれなければ、妥當な解決は付かないのではないかと考へて居る譯でありますが、先程の問題と今の問題と關聯して大藏大臣から御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=96
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097・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税の評價と申しますのは、土地建物などの評價に付ては御説明申上げた通りであります、殘つて居りますのは株式の價格、是は企業整備の方の標準が決まりませぬと、株式の價格も決まらない譯であります、隨て財産税に於ても重要な點に於て一つ殘つて居る譯であります、あとは今まで申上げたやうな譯であります、企業整備の方の評價基準を今作りつつある譯であります、大體が出來ましたら委員會の議に掛けて御決定を願つて、それに依つてやつて行きたい、斯樣な譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=97
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098・中崎敏
○中崎委員 財産税の評價の問題に付きましては、大藏大臣から御説明がありましたやうに、不動産とそれから有價證券、株式が主でございますが、此の株式に付きましては、取引價格に一應の基準を置くと云ふ風に書いてあります、其の外色々參酌される事情もあるやうでありますが、企業の場合に於ても、企業自體の株式の取引と云ふやうなものも、一應上場取引されるものもあるし、或は又此の取引價格と云ふものが、取引所に於ける上場株の價格であるのか、或は又唯單に個人の間に取引される價格であるのか、どうも是は明瞭に法規の上に書いてありませぬけれども、何れにしても一つの取引價格を基準にしてやると云ふことは茲にはつきりと書いてあります それから次に動産とか其の他のものに付きましては、時價に依ると云ふ風に書いてあるのでありまして、唯其の中に公定價格のあるものは、公定價格を標準として行くのでありますが、大體に於て時價主義に依つて行くと云ふことになつて居りますが、一面財産税に於て時價主義を採る、又此の同じ理由が企業の經理の問題にも考へられるのではないか、唯先程申しましたやうに、企業に付ては、殊に産業の前途性と云ふやうな問題に付ても一應考へられますので、必ずしも時價が適當であると云ふことは、先程申しましたやうに一概には申されませぬが、少くとも、例へば工場に於ける所の原料、材料、製品に付ては公定價格のあるものはそれに依るとか云ふやうな、一つの事業に付ても、企業に付ても、一應の目安を御説明願ひたいと思ふ譯であります、統制價格のあるものは一應統制價格に依るのか、統制價格のないものに付ては是は時價に依るのか、或は又どう云ふやうな方法に依つて決定するのか、さう云ふやうなものに付ても一應御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=98
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099・石橋湛山
○石橋國務大臣 先程申上げましたやうに、動産、詰り原料とか資材とか云ふやうな種類のものは、無論公定價格、或は其の外の時價と申して宜しいでありませうけれども、さう云ふものに依ることは略略決まつて居ります、繰返して申上げますが、實は償却があつたりなかつたり色々複雜な關係を持つて居る設備の評價と云ふものに付て、どう云ふ風にするかと云ふことが主なる問題であります、其の點に於て具體的な標準をどう決めるかと云ふことで今研究して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=99
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100・中崎敏
○中崎委員 設備の評價の問題に關しまして、財界方面の一部では帳簿價格に倍數を掛けたものを以て基準とすると云ふ風に言つて居る筋もある譯でありまするが、是は極めて不適當な方法である、一番簡單に容易に其の計算の方法は出まするけれども、企業の内容に依りましては、年々より以上な償却をして居る所もあります、償却の非常に不十分な所もあります、或は又内面償却と申しまするか、利益を以て何等帳簿に計上しない所の設備を實際にやつて居る所もある譯であります、又此の設備の能率と云ふやうな點も、唯帳簿價格と云ふもののみでは到底評價出來ぬと云ふ風な關係もありまして、帳簿價格を基準とすると云ふ點に付ては、如何なる面から見ても是は贊成出來ない、唯企業を不當に温存する立場からのみ是が是認される譯でありますが、大藏大臣も此の點に付ては全然さう云ふ考へはないと云ふことを言つて居られますので、帳簿價格と云ふものには全然根據を置くべきものでないと云ふ風な考へに付て、どう云ふ風に考へて居られるかを御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=100
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101・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論唯帳簿價格に依つて最後の評價をすると云ふことは不當と思ひます
それから財界の方面などでは色々の意見もありまして、今御話のやうに、年數に依つて或る倍數を掛けると云ふやうなことも言うて居ります、是等も參考にすべき一つの意見と思ひますが、それに依ると云ふことは致して居りませぬ、唯併し基準でありますから、此の評價は各管理人が具體的に其の企業に付てやりまして、さうしてそれを認可する譯であります、そこで其の具體的に評價をする場合に、何か多少の標準がなければ、非常に高く評價する所もあり、低くしてもいけませぬし、又認可をする場合に、是が適當であるかどうかと云ふことも、何かの基準がありませぬと認可不認可を決める時に差支が起りますから、可なり「ラフ」なものであつても宜いから、一つの基準を作りたい、斯う云ふ譯で、經濟界で發表されて居る年數に依る云々と云ふものも、そんな觀點から一つの「ラフ」な基準として提案されて居るものと思ひます、でありますから、繰返して申上げますが、基準は大體の一つの尺度でありまして、それを基準としてそこに本當に評價する、斯う云ふことになつて居る譯でありますから、其の點は御含み置きを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=101
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102・中崎敏
○中崎委員 先程申しましたやうに、此の基準が一番重要な問題でありますので、今の大藏大臣の後の御話では、何だか非常に軟かいやうな風に考へられますが、此の基準がぐらぐらして標準にならぬやうなものでは何にもなりませぬので、此の點に付て私の望む所は、寧ろ本法にはつきりと之を明かにして貰ひたいと思ふ譯であります、が今申しましたやうに、評價が複雜な爲に間に合はなかつたと云ふやうな點に付きましては、是は一應事情を諒とするものでありますが、今言うたやうに、唯簡單だから、尺はどう云ふ尺でも宜いのだ、實際に於ては其の基準に依つて好きなやうに計るのだ、斯う云ふ考へを持つて居られたのでは國民としては堪らないと云ふことを重ねて申上げる次第であります、それから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=102
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103・本多市郎
○本多委員長 中崎君に御諮り致しますが、大藏大臣が實は豫算委員會の方に、最後の質問の殘つて居るのを仕上げる爲に是非出席しなければならぬと云ふのですが、まだ大藏大臣に對する御質問はありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=103
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104・中崎敏
○中崎委員 まだ澤山あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=104
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105・本多市郎
○本多委員長 澤山あるやうでしたら、向ふではさう時間は掛らないやうですから、大藏大臣に一つ向ふに出席して戴く外はなからうと思ひます、其の後で又繼續して貰つたらどうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=105
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106・中崎敏
○中崎委員 結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=106
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107・本多市郎
○本多委員長 さうしましたならば、どうぞ大藏大臣は向ふにおいで下さい──それでは直接大臣でなくても宜い事柄に付てありましたならば、繼續して戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=107
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108・中崎敏
○中崎委員 私の質問は大藏大臣に御願ひしたいので、どうせ後やるのでありますから、大藏大臣が御出席になつてから引續いて御願ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=108
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109・本多市郎
○本多委員長 それではここで休憩を致しまして、一つ今後の進行に付て理事會を開いて相談をしたいと思ひます、休憩致します
午後二時二十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=109
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110・会議録情報3
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午後三時三十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=110
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111・本多市郎
○本多委員長 休憩前に引續きまして會議を開きます、中崎君の質問中休憩致したのでありますが、大藏大臣の見えられるまでと云ふ豫定で、最前中絶致しました福田政府委員の金光委員に對する御答辯を此の際御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=111
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112・福田赳夫
○福田政府委員 引續きまして命令事項を御説明致します、先程は第八條まで申上げたのでありまするが、第十二條第二項に於きまして、「前項の整理債務とは、舊勘定に屬する債務のうち、主務大臣の指定する債務以外のものをいふ。」とあるのでありまして、此の「主務大臣の指定する債務」と云ふのが、先般申上げて居りまする所の指定債務と相成るのであります、指定債務と云ふのは、只今どう云ふことを考へて居るかと云ふと、先般一寸申上げた公租公課、是は此の銀行の納める公租公課と、財産税等として納付に相成りまする所の公租公課と云ふものがあるのであります、昨日の答辯に於きまして財産税の公租公課は一體どうなるか、指定債務となるのか、整理債務となるのかと云ふ御話であるのに對しまして、まだ決まつて居らぬと云ふ風に御答辯申上げたのでありますが、政府の大體の意向は、整理債務の方にすると云ふ意向であります、即ち優先的な取扱を致さない、指定債務と見ないと云ふことであります、それから公租公課の外に指定債務に相成りまするものは、管理保全の費用、それから最終處理に要する費用、新勘定に對しまする所の債務、斯う云ふものを只今の所は指定債務として優先的に取扱を受けると云ふ風に考へて居ります
次に第十三條「金融機關は、第八條第一項の評價が行はれる前においても、第一號の金額が第二號の金額を超え、且つ、その超過額の整理債務の金額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるときは、命令の定めるところにより、書面を以て」云々、此の「主務大臣の指定する割合」と云ふのは、只今の所二割と云ふことを考へて居ります、「命令の定めるところにより」とありますが、是は後で資産の欠缺に對しまして負債の切捨を致すのでありますが、其の切捨の順序を逆に行つて居る譯であります、其の順序を逆に行くと云ふことを此の命令で決めようと云ふ譯であります、次に參りまして、第一號、第二號、一、二と書いた所がありますが、「主務大臣の指定する舊勘定の資産」とあります、是は不良資産又は不確定資産──例へば裁判になつて其の債權が取れるかどうか分らぬと云ふやうな不確定な資産であります、之を主務大臣と致まして指定することを考へて居ります、次の項目に參りまして、「前項の規定による主務大臣の認可があつたときは、その指定する時において、」とありますが、是は認可の時の條件として、適宜何時までと云ふ時期を決める譯であります、最後の項に參りまして、「金融機關は、第一項の規定による主務大臣の認可があつたときは、命令の定めるところにより、」云云とありますが、是は單に手續を規定する譯であります
第十四條の二行目に、「主務大臣の指定する割合」とありますが、是は二割と云ふことを考へて居る譯であります、それから第一號の後の方に「主務大臣の指定する割合を乘じた金額」とありますが、是は八割と云ふことを考へて居る譯であります
それから第十五條の「主務大臣の指定する割合を超えるときは、」と云ふのは、十三條の場合と同樣二割であります、第二項に移りまして、「前項の場合においては、舊金融機關は、命令の定めるところにより、新金融機關に移した整理債務の金額に相當する金額の債務を新金融機關に對して負擔する。」とありまして、此の場合「命令の定めるところにより、」と云ふのは、此の新金融機關に對して債務を負擔する場合の條件を定めるのであります、其の條件の中一番重要なのは利息でありまして、是は一錢一厘と云ふ風に決める豫定であります
次に第十六條は金融機關の舊勘定に屬します資産を新勘定に移し變へる場合の規定でありますが、此の冒頭にあります所の、「命令の定めるところにより、その借の金額の範圍内において、舊勘定の資産のうち、」云々とあります、此の「命令の定めるところにより、」と申しますのは、新銀行と致しまして業務繼續上必要のない財産は除外すると云ふことを規定せんとするものであります、それから第二項の「前項の規定により、確定評價基準に依り評價した資産で命令で定めるものを舊勘定から新勘定に移す場合においては、金融機關は、主務大臣の承認を受けなければならない。」是は登記又は登録のある財産に付きましては、主務大臣の承認を受けることに依りまして、登記又は登録と同樣の效果を發生せしめたいと云ふ規定を此の命令で決めたいと存じて居るのであります
第十七條の「命令の定めるところにより、これを新金融機關に對する」云云と云ふのは毎月末に此の處置をしなければならぬと云ふことを規定せんとするものであります
第十八條第一號「第八條第一項の評價を行つた結果、同項の規定により主務大臣の指定する」とある此の「指定」は一月一日であります、「指定する時の現在により、左のイに掲げる金額がロに掲げる金額を超える場合において、その超過額の舊勘定の資産の總額に對する割合が主務大臣の指定する割合を超えるとき」とある此の「指定」は只今の所は二割と云ふ風に考へて居ります
第二號の「命令で定めるものについて、」とあるのは、大部分の資産竝に負債と云ふ風な規定を置かうと思つて居ります
第十九條の「命令の定めるところにより、」と云ふのは、手續を定めるものであります
第二十條の「前二項の規定により暫定損の全額を填補したときは、金融機關は、命令の定めるところにより、」と云ふのは是れ亦手續規定であります
第二十一條の「命令の定めるところにより、」云々とあるのは、是れ亦手續、樣式等を決めるものであります
第二十二條の「命令の定めるところにより、」とあるのは、是れ亦樣式を定めんとするものであります
第二十三條の「第二十一條に規定する月の月末において、左の各號の一に該當する場合においては、金融機關は、命令の定めるところにより、」とある「命令」は是れ亦樣式を定めんとするものであります
第二十四條第四號の「新勘定又は新金融機關に移した分を含み、命令で定める分を除く。」とあるのは、他の法令で第二封鎖預金から支拂つても宜しいと云ふ風に認めたものを此の「命令」で指定する譯であります
第十號の「前號によるもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額に對し、指定債務(命令で定めるものを除く。)」とある此の「命令」は、新銀行又は新勘定に對する債務を除外して居る譯であります、此の債務だけは飛ばす譯には行かぬと云ふことに相成る譯であります、尚ほ續いて「の全額まで、指定債務の債權者において、命令で定める順序により、確定損を負擔するものとする。」とある此の「命令で定める順序」と云ふのは、指定債務の中に於きましても色々順序を定めるのでありまして、是は政府で所有して居る所の第二封鎖、例へば税金と云ふやうなものを特に指定債務の中に於ても優先させようと云ふ考へなのであります
第二十五條第三號に「前條第一項第三號乃至第八號の場合においては、資本に未拂込金があるときは、勅令の定めるところにより拂込をなさしめた後、」とありまして、此の點は勅令に於きましては少くとも株主が負擔すべき額までは拂込を取ると云ふ原則を是で決めんとするものであります、即ち此の拂込徴收の問題は、企業と金融機關とは違ふのであります、企業に於きましては未拂込を取るかどうかと云ふ問題は整備計畫に於て決定すると云ふことになつて居りますが、金融機關に於きましては初めから未拂込を徴收すると云ふ建前を採るのであります、左樣な違ひが此の勅令に於て出て來る譯であります
同じく第二十五條の末項の「第一項第三號の規定による拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、勅令で特別の定をなすことができる。」とあるのは、未拂込を取る場合に於きまして只今申上げました通り金融機關は未拂込を取ると云ふ原則を採ると云ふ關係があるのでありますが、其の取り方に付きまして、例へば商法の原則通り二年先まで遡及するとか、或は失權手續と云ふやうなことを認めるとか、さう云ふやうな事項を此の規定に於て決定せんとするものでありますが、只今具體的な内容に付きましては申上げる段階に立至つて居りませぬ
第二十六條第二項の「前項の場合においては、金融機關は、同項の措置をなした後、主務大臣の指定する日までに、」と云ふのは、認可のあつた後半年位と云ふ風に考へて居ります
同條第三項の「金融機關は、前項の讓渡又は移轉について對價を取得した場合においては(第三十三條第一項の規定による政府の補償があつたときは、先づ、その額まで、これを政府に納付し、なほ殘額があるときは)、命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。」とある此の「命令の定めるところにより、」と云ふのは、例へば暖簾代が後で入つて來たと云ふやうな場合には、命令の定める所に依つて之を處分する、此の命令は債務の切捨を受けた所の債權者に遡及して逐次返してやると云ふことを此の規定に於て定めんとするものであります
同條第六項の「前項に定めるものを除く外、第四項の規定による解散の場合に關し必要な事項は、他の法令にかかはらず、命令でこれを定める。」と云ふのは、一般商法の原則に依る所の清算ではなくて、若干の特例を認めたいと云ふ趣旨でありますが、是れ亦現在の所決まつて居りませぬ
同條第七項の「命令の定めるところにより、先づ、舊勘定の資産をその債務の辨濟に充てなければならない。」とある此の「命令の定めるところにより、」と云ふのは、場合に依りましたならば、舊勘定に於きましては財産の換價處分が出來ると云ふことを規定致し、それから代物を以て辨濟をする場合に於きまして確定評價基準がある場合には、其の評價基準を下つてはならないと云ふことを定めんとするものであります
第二十七條の「金融機關の取締役又はこれに準ずる者(以下理事機關といふ。)は、第二十四條第一項に規定する場合においては、命令の定めるところにより、」云々とあるのは手續規定であります
第三十一條第三項の「第一項の資本の減少については、資本の減少の日から命令で定める日までの間を限り、」と云ふのは、只今の所は一年間と云ふことを考へて居ります
同條第四項の「前三項に定めるものを除く外、第一項の資本の減少に關し必要な事項については、他の法令又は定款にかかはらず、命令で特別の定をなすことができる。」とあるのは、減資の方法、效力の發生の時期、株券の引換の方法即ち株券を換へる場合に於きまして「スタンプ」を捺して減資と云ふことに致すと云ふやうなことを此の命令で書く譯であります
第三十三條は金融機關の新勘定が舊勘定に對して持つ損を政府に於て補償する規定であります、此の補償條項に是きまして、「第二十四條第一項の規定により、確定損の整理負擔額を計算するもなほ確定損の殘額があるときは、その殘額は、命令の定めるところにより、政府において、これを補償する。」此の命令と云ふのは新舊間の賃借でありますが、新勘定が舊勘定に對して貸を持つて居る、其の貸に對して利息が付くのであります、是は一錢一厘付けるのでありますが、其の利息だけは補償しないのであつて、其の利息を差引いた額を以て補償すると云ふことを此の命令に於て定めんとするものであります、其の次に「但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。」と書いてありますが、此の勅令は稍稍重大な規定でありまして、此の勅令に於きましては新勘定の第一封鎖預金──第一封鎖預金と云ふのは只今一萬五千圓乃至三萬二千圓と云ふやうに計算して計上してあるのでありますが、それをもう一度やり換へて見て、一口一萬五千圓としたならば此の第一封鎖預金は幾らになるかを計算して見まして、左樣に計算致しました時に若し第一封鎖預金の額が只今設定してありまする所の第一封鎖預金の額より下である場合に於きましては、其の下の額の限度しか補償致さぬことを規定せんとするものであります
第三十七條は最終處理を致しました後に於きまして評價増が出たならば、之を如何が處理するかと云ふことを規定したものでありまするが、其の三行目に「命令で定めるもののうち、」云々とある、此の命令に於きましては、特別經理會社の株式とか、或は特別經理會社に對する貸付金、在外資産等を規定せんとするものであります、又此の一項の最後に「命令の定めるところにより、これを處分しなければならない。」とありまするが、二十四條で負債を取崩す順序を決めてありますが、其の順序に依つてやると云ふことを此の命令に依つて決めんとするものであります、最後の一の所に「命令で定める金額に對する」云々とありますが、此の第五條は不確定債權のことであります、其の債權が不確定債權である場合に於ては最も多い額に依ると云ふことを此の命令で規定せんとするものであります
第三十九條の二行目の命令は樣式を規定せんとするものであります、第二項の「主務大臣の指定する日までに、」と云ふのは、此の整備計畫の認可があつてから半年と云ふことを只今は考へて居ります
第四十條「金融機關は、指定時における新勘定の資産及び負債のうち命令で定めるもの」是は大部分の資産及び負債と云ふ風に重要なもの大部分と云ふ風なことを規定せんとするものであります
第四十二條の二項の「第四十條第一項又は前條第一項の場合において、舊金融機關に舊勘定の新勘定に對する借があるときは、命令の定めるところにより、」と云ふのは、債務負擔の條件を決めんとするものでありまして、其の中最も重要なのは利率であります、一錢一厘と云ふことを只今の所は豫定して居ります、四十二條の一番末に「前三項に定めるものを除く外、第四十條第一項又は前條第一項若しくは第二項の場合において必要な事項は、命令でこれを定める。」とありますが、是は此の命令に依りまして事業を讓渡致した場合の手續を成べく簡素にする簡易手續をここで決めんとするものであります
第四十三條に「命令の定めるところにより、事業費の支出その他經理に關し必要な事項を命ずることができる。」此の命令は事業費總額の制限、事業費の支出方法等を此の命令で規定して是で規正せんとするものであります
第四十四條第二項に「命令の定めるところによる。」とありますのは、新勘定及び舊勘定に付きまして別々に賃借對照表を作るのでありますが、例へば税金を取る場合の如きに付きましては、之を合併して作る必要があるのであります、其の合併等を致す場合を此の命令に於て規定せんとするものであります
第四十六條第一項の最後に「その事業年度に續く事業年度は、命令で定める日で終了するものとする。」此の命令は此の區分の消滅した次の年の三月末と云ふことを只今の所は考へて居る譯であります
第四十八條の末項に、「監査委員の職務及び權限は、第二十七條第二項及び前二項に規定するものを除く外、勅令でこれを定める。」勅令に於きましては監査委員の承認等を要すべき事項を規定せんとするものでありまして、大體重要なる事項は之に網羅して行かうと云ふ考へを持つて居ります、後に若干手續規定の命令事項がありますが、以上を以ちまして大體重要なる命令事項を御説明致したのであります
それで只今日取りを大體申上げたのでありまするが、暫定評價の日取りが一月一日であると云ふことを申上げ、又暫定評價に依る所の計算が二月十五日になると云ふことも申上げたのでありますが、是は場合に依りましたならば相當繰上になるかも知れませぬ、さう云ふことを御含み置き願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=112
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113・金光義邦
○金光委員 只今の御説明に對する質疑を御許し戴けますか、極く簡單なことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=113
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114・本多市郎
○本多委員長 簡單でありますならばどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=114
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115・金光義邦
○金光委員 昨日の私の質問に對しまして只今書面竝に口頭を以て御答辯戴いたのでありますが、其の中に第三十三條、二十八頁の二行目に「但し、その補償の金額は、勅令で定める金額を限度とする。」斯う云ふことになつて居りますが、只今の御説明に依りますと、第一封鎖預金であつても、必ずしも全額受取れない場合があるやうに思ひますが、さう云ふ場合が生じませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=115
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116・福田赳夫
○福田政府委員 只今申上げました通り、此の勅令では新勘定に屬しまする所の第一封鎖預金を現在に於きまして一萬五千圓乃至三萬二千圓で計算してある、其の第一封鎖預金を一口一萬五千圓と云ふ風に銀行毎に計算して見ます、さうして其の差額が出まして、若し新しく計算して見た所の一萬五千圓の額が只今設定してある第一封鎖預金よりは少いと云ふ場合に於ては、其の少い額を補償金額より差引く、斯う云ふ建前です、併しながら是は法律問題でありませぬが、實際問題と致しまして、第一封鎖預金となつて居る額を一口毎に計算する、一口一萬五千圓で計算すると言へば現在設定してあります第一封鎖預金よりは遙かに上廻ると云ふ風に考へられますので、實際問題と致しましては、此の適用があると云ふ事例はなからうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=116
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117・金光義邦
○金光委員 尚ほ更に御伺ひ致したい點が或はあるかとも存じますので、此の部分に關する質問を留保させて戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=117
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118・本多市郎
○本多委員長 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=118
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119・中崎敏
○中崎委員 時間が制限されて居りますので、簡單に質問したいと思ひます、引續きまして大藏大臣に御尋ね致します
「インフレ」問題に關しまして極く簡單に御尋ねしたいと思ひます、今年暮あたりの「インフレ」の状態と言ひますか、物價の状態はどう云ふ風になるかと云ふ見透しを一寸御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=119
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120・石橋湛山
○石橋國務大臣 將來の實際のことはさう中々豫見出來るものではありませぬが、只今の私の見透しでは、今後物價は、殊に食糧關係に於きまして、今政府が豫定して居るが如き配給等が行はれると致しますれば、少くも安定して行くと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=120
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121・中崎敏
○中崎委員 食糧問題に付ては大體大藏大臣の見透しのやうでございまするが、其の他の一般の見透しに付て御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=121
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122・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今申しましたのは、食糧問題が左樣に安定すると致せば、他の物價も、無論ものに依りまして凸凹はありますけれども、全體として物價の水準は安定をして行く、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=122
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123・中崎敏
○中崎委員 今後紙幣が尚ほ増發されると云ふ見込にもなつて居りまするし、暮の「ボーナス」或は賠償撤去、本法に依り整備に依りまして、一時退職手當と云ふやうなものも相當出されるやうに考へられまするが、此の整備に依る所の人々の一時的所得が物に換へられると云ふやうなこと、殊に暮になりますると、例年の例でありまするが、一般に物を買ひたがると云ふやうな傾向もあります、金の動きも隨て多くなると云ふ見透しでありまするが、此の通貨の流通の速度の早いと云ふことと、暮の特殊の現象と云ふことを噛み合せて見た時に、現在の状態よりも相當「インフレ」の面に於ては不安な點があるのではないかと考へられまするが、斯う云ふ點に付てどう云ふ策を以て之を喰止める用意があるかと云ふことに付て、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=123
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124・石橋湛山
○石橋國務大臣 通貨の流通速度は只今非常に鈍いのであります、六百億圓を超える、數量は非常に出て居りますが、流通速度は非常に鈍くなつて居りますので、物價は比較的安定をして居る譯であります、即ち通貨は大部分退藏されて居る、是は決して農山漁村と云ふやうなものだけぢやありませぬ、各家庭に必ずしも退藏と云ふ程の氣持でなく置かれて居る通貨と云ふものは甚だ多いのであります、左樣な譯で、流通速度は必常に減つて居ります、季節的變化、即ち暮には元來物を買ふ、隨て多少なり物債が上ると云ふ傾向を普通の場合には持つのであります、本年に於ても無論季節的變動はあるものと考へて居ります
それから退職資金其の他は成程或る程度出ます、私はそれに依つて、それを濫費すると云ふやうなことが果して起るかどうかと云ふと、是は起らないと思ひます、一方に於て企業の整備が行はれる、世間で喧しく言はれて居るやうに、失業者が殖える、斯う云ふ状況が漸次深刻化する譯でありますから、私は退職資金が出た、それが直ちに購買力に廻つて來ると云ふやうな懸念は甚だ少い、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=124
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125・中崎敏
○中崎委員 此の問題に付きましては、餘り追究しないことにしまして、次に新圓に對することです、國際貿易が將來復活される、其の場合に於て日本の物價と云ふものが相當の高いものになる、是が爲に考へなければならぬのは、圓價の引上と云ふやうな問題が一つ考へられます、更に新圓を次に又額面の少い、例へば十圓なら十圓のものを、一圓なら一圓の紙幣と引換へられると云ふやうな、二つの方法がありはしないかと思ひます、或は圓價の引下と申しますと、金一匁五圓であつたものが今日は公定七十何圓と云ふやうなことになりますが、更に之を現在の實際の物價の水準に合せて見て、或は百五十圓なら百五十圓と云ふやうな單位に引上げると云ふ形に於てなされることも考へられます、是は「デフレ」のやうな形を取りますが、新圓を更にそれよりも額面の低い新圓と引換へることに依つて、國際的物價水準は「マッチ」させて行く方法が考へられますが、是等の點に付ては大藏大臣はどう云ふ風に考へられて居りますか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=125
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126・石橋湛山
○石橋國務大臣 それ等の問題に付ては、今も他の委員會で、やはり社會黨の諸君から御質問を受けて御答へしたのでありますが、將來──さう遠くない將來であることを希望する譯でありますが、國際經濟に日本が自由な形で參加すると云ふことになりますと、其の時には當然爲替相場を定めねばなりませぬ、其の時期に於て是はどうして定まるかと言へば、理論的に申しますれば、所謂購買力平價、其の時の日本の物價の「レベル」と、其の時の「アメリカ」なり何なりの、海外に於ける標準的な物價の「レベル」と云ふものとの比較に依つて、「ドル」と圓との交換率は決まつて來る譯であります、是は理論的でありますから、實際の數字はそれぢやどう云ふものを使ふかと申せば、昨日も申上げたやうに、物價指數と云ふものが、そんなに完全無缺な物價指數はどこにもありませぬから、實際は相當腰だめを以てやらなければならぬが、まあ理論的には左樣な所に定まる、隨て今日の日本の操作としては、それまでに日本の物價を安定すると云ふことであります、同時に「アメリカ」等の物價が又非常に變動して居つたら爲替相場が決まらない譯であります、向ふは安定するものと想像し、日本は今まだ多少不安定な状況にありますから、之を安定する、斯う云ふことで行けば自ら爲替相場は定まります、それで宜しいのでありまして、其の時に今御話のやうに、日本の國内の物價を引下げて爲替相場を定める方法、それから日本の國内の物價は其の儘にして置いて、比較的低い所で爲替相場を定める方法と、大體二つあります、もつとありますけれども、日本の物價を更に高くしてと云ふことは、是は事實上今考へられませぬから、日本の其の時の安定して居る物價を其の儘にして爲替相場を定める、もう一つは日本の物價を引下げて定める、此の引下げて定める方は「デフレーション」政策で、是は私は採らない方が宜しいと考へて居りますし、恐らく何人もそれはやりますまいと思ひます、隨て其の時の安定した物價で爲替相場を定める、それが幾らになるかと云ふことは、其の時の日本の物價の「レベル」と、向ふの物價の「レベル」で定まることでありますから、豫めは申上げ兼ねる譯であります、之を幾らと定めなくても一向差支へない譯であります、それを一「ドル」何圓でなければならぬと云ふことはない譯であります、左樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=126
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127・中崎敏
○中崎委員 次に新圓に對する所得に對しては、どう云ふ風にして源泉を突止めて課税されるのか、現在大藏大臣が言はれるやうに、多額の退藏と言ひますか、個人なり、或は特殊の人々なり、特殊の組織なりに持たれて居る所の多額の新圓が急に「ノルマル」な状態に歸つて、金融機關に還つて來るとも考へられませぬが、來年度に於てもやはり、斯う云ふやうな所得に對して課税されると云ふこと、而も是は相當大きく課税される所の源泉を見付けなければならぬ譯でありますが、終戰後に於ても闇取引其の他の不當な──と言ひますか、其の他の方法に依つて澤山な金が或る特殊の人々、或は特殊の方面に──と云ふのは農村とか漁村とか云ふものもありますが──斯う云ふ方面に多數退藏されて居るのでありますが、富の均衡と云ふ點に於ても、或は衡平な負擔をする上に於ても、是は當然考へなければならぬ大きな問題だと思ひますが、之に對して一番適切な方法は、第一次に執られたやうに、金融緊急措置令と云ふやうな方法に依つて、もう一度此の新圓を銀行へ預入れをさすと云ふ風な手を執ることが、一番良く分つて宜いのではないか、斯う云ふ風に考へます、今まで政府に於ては、新圓は再凍結しないのだと云ふことを言はれて居りますが、租税的見地から、國家の財政的見地から斯う云ふやうなことを考へられるかどうかと云ふことに付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=127
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128・石橋湛山
○石橋國務大臣 單に財政的見地から考へますと、何でも構はぬから税を取りさへすれば助かる譯でありますが、さうは參らないのでありまして、それが爲に經濟を攪亂するとか色々なことが起りますれば、却て財政的にも惡影響を生ずるのであります、新圓とは詰り今出て居る紙幣を意味すると思ひますが、現在發行されて退藏等をされて居る紙幣に對しまして特別税を課けることは致しませぬ、今は通貨に信用を持つて居て呉れるから退藏して居て下さるので弊害が少いのであります、先般或る所で申したのでありますが、行李に一ぱい百圓札を溜めてそれを藏つて置く所に苦心して居る向が大分あるさうでありますが、どうか暫くの間さうやつて藏つて置いて戴きたい、之を藏はずに置いて無暗に使はれては大變でありますから、それを藏つて置いて下さるやうに今の所はしなければいけない、持つて居る紙幣を何かするだらうと云ふことで威かしますと、紙幣を持つて居つても大變だと云ふので、それこそ換物運動が起り收拾すべからざることになるから、紙幣に付て特別の處置は斷じて致しませぬ、其の爲に先般本會議で總理大臣からも其の聲明をして貰つた譯でありまして、是は單に政府の思ひ付きだけではない、是はどうしてもさうせざるを得ないと云ふ確乎たる政策であります、それを囘收致しますのは左樣な強權を以て致すべきではない、是は先程他の委員會でも申したのでありますが、今成程紙幣の交換でもして強制的に預金でもさせて封鎖でも致せば、此の二月に起つたやうに百五十億圓位に減らすことは出來ますけれども、半年も經てば又元へ戻る、さうすると先程申しましたやうに通貨の信用さへもなくなると云ふ譯であります、是はやはり預金をしても安心だ、又樂に預金が出來ると云ふ状況を政府の責任として早く作り上げて國民に提供する、さうして強制せずとも自ら出た紙幣は囘收されて來る、今退藏して居ることも實は中々皆さん難儀であります、決して樂ではない譯でありますから、適當な金融機關が安心して預かると云ふことになりますれば、私は必ず囘收されるものと信じて居る譯であります、其の他特に又それ等を囘收する爲には、昨日も申上げたかと思ひますが、種々なる預貯金を勸誘する方法は強力に近く開始致したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=128
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129・中崎敏
○中崎委員 新圓に對して別に課税しないと云ふことならば、寧ろ政府はどう云ふ場合に於ても此の新圓に對しては課税せないと云ふことをはつきりする、言換へれば假に新圓を預金に持つて行つても其の預金には課税しないと云ふことをはつきり言明された方が、現在退藏して居る状態に於て課税しないと云ふよりも、貨幣の信用を維持する上に於て、更に又より以上實際の經濟を圓滑にする上に於て大なる效果があると思ひまするが、此の點に對しては大藏大臣の御考へは如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=129
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130・石橋湛山
○石橋國務大臣 勿論新圓の預金に對して特別の課税をするなどと云ふことは致しませぬ、此のことは今まで相當政府としては口では申して居りますが、今囘の補償に關する措置、即ち金融機關の再建整備に致しましても、新圓預金と云ふものは、何と言ひますか特に保護をして居る譯であります、問題なしに之を新勘定に移す、斯樣な處置を執りました所が、實行の上に於て現在の政府は新圓に對して、特に何處までも「フリー」圓は「フリー」圓だと云ふことで、之を又束縛するが如きことはしないと云ふ實際の事實に於て、之を示したものと私は信じて居ります、それを見て下されば左樣な疑ひは生じない譯でありますが、是れ亦先程他の委員會でも申上げたのですが、一つは是は非常に心理的な問題であります、成程石橋大藏大臣がやつて居る内はやらぬかも知れぬが、外の人がやつたらやるかも知れない、まあ其の爲に石橋が辭めるとか辭めぬとか云ふやうな噂も出たさうであります、だからどうか議會に於きましても、各政黨擧つて新圓なんと云ふものは手を著けちやならぬと云ふ考へを以て聲明をして戴くならば、大藏大臣や總理大臣が聲明するよりは遙かに有力であらうと思ふのであります、どの黨が内閣を取りましても、そんなことは出來るものぢやない、しないと云ふことを明かにして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=130
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131・中崎敏
○中崎委員 私の申します意味は今大藏大臣から御答辯願つたよりも少し廣い意味に考へて居ります、と申しますのは、新圓を預金にした其の状態を單に課税するとか封鎖すると云ふ非常措置を執ると云ふ意味でなしに、言換へれば此の人は銀行へ今度十萬圓の預金を持つて來た、此の人は今度は所得税とか其の他の場合に於て、是だけの所得が本年度に於てあつたのだ、斯う云ふことがはつきりする爲に銀行に預けないと云ふことが起るのぢやないか、それに課税するかしないかと云ふことを御尋ね致すのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=131
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132・石橋湛山
○石橋國務大臣 大藏省と致しましては、何時も申上げるやうに、其の人に所得があれば課税する、それが闇で取引されたものかどうかと云ふことは問題に致しませぬ、所得があれば課税をすると云ふ建前でありますから、若し其の預金が所得であるとするならば課税しないと云ふことは申上げられませぬ、併しながら預金の祕密性と云ふものは一つの問題でありまして、現在それは考へて居ります、詰り政府の方から申すならば、預金を調べるのが一番簡單でありますから、税務から申せば預金の祕密性は保てない、併しながら金融經濟の上から言ふと、何と言ふても遺憾ながらまだ人間がやはり祕密性を必要とするものでありますから、預金の祕密性と云ふものが必要です、此處に矛盾がございます、其の矛盾をどうして解くかと云ふことは、小さいやうで非常に大きな問題でありまして、只今十分考へて居ります、預金をしたから其の爲に税を取られると云ふやうな觀念を抱かないやうな方法を講じたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=132
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133・中崎敏
○中崎委員 今囘の政府の執られました財産税法に付きましても、同じやうなことが言へる譯であります、各個人の財産を根こそぎ申告させて、總浚ひをやられたと云ふやうな結果が、斯う云ふ風に一つは政府の政策に信頼出來ぬばかりでなく、通貨其のものが退藏されると云ふやうな、謂はば變態的な状態になつたと云ふのは事實だと思ひます、さう云ふ意味に於きまして、今まで我々の知つて居つた範圍に於ては相當に銀行に對する預金なり資金と云ふものは祕密を保たれたと云ふやうな状態であつたのでありますが、今囘の非常措置に依つて此の祕密が何等隱す所なくすつかり明るみへ出たと云ふことが通貨の上に於ける所の大きな變態的な状態を齎らしたものと考へますので、此の點に付て只今大藏大臣からの説明に依りまして、一面に於て租税的な見地から、一面又金融經濟を順調に一つの途へ持つて行くと云ふやうな見地からと綜合して、最も適當な方法を考へて貰ふやうに希望する譯であります
次に今のやうな方法が一つの最も適當な新圓吸收の方法だと思ひまするが、更に新圓を金融機關に還す方法としては、官有財産の拂下と云ふやうなことが一つ考へられます、社會黨は企業の國有化と云ふ風なことを考へて居りまするが、さう云ふ風な意味に於ける官有財産の拂下ではありませぬで、戰爭中に於て軍に關係して、現在政府の手にある所のもの、斯う云ふ風な財産を主として意味する譯でありますが、斯う云ふ類のものを適正な價格を以て拂下をする、現在政府財産の拂下は競爭入札の方法に依つてやつて居ることになつて居りまするが、實際に於きましては、色々民間の人々とも妥協と言ひますか、談合と言ひますか、まあ餘り好ましいことではありませぬが、前以て値段を申合せをして、官吏の者が其の間に挟まつて旨くやると云ふ實例もありまするし、更に又値段を指定して不當に安くして拂下げされると云ふ實例が多々ある譯でありますが、今後に於ては、最低の値段を先づ付けて置かれまして、其の上に競爭入札に依つて拂下げられる、殊に其の價格が現在の經濟状態に即した所の價格に於て之を拂下げられると云ふ必要があるのではないかと思ひまするが、此の點に付て大藏大臣の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=133
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134・石橋湛山
○石橋國務大臣 官業を除きました官有財産は、數字の上では相當ありまして、是の處分を早くしたら宜いぢやないかと云ふことは、我々も民間に居る時から隨分論じて居たものでありますが、實際調べて見ますと、右から左に賣れるやうな財産もさう多くはないやうでありますが、兎に角是は今度財産税でも又物納に依つて相當のものが入りませうから、此の處置は今までと變つてもつと「ビジネスライク」にやれるやうに、又御話のやうに今まで不當な價格でやつたと云ふ例が事實どれだけあるか知りませぬが、國庫の收入も殖え、出來れば公益と云ふやうな方面のことも考へまして、適當な處理をするやうな手段を新たに講じたいと思つて目下其の考案を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=134
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135・中崎敏
○中崎委員 通貨收縮の一つの方法として、信用制度を復活させる、言換へれば、小切手、手形の如きものを流通させると云ふ必要があるのではないか、殊に以前に「スタンプ」手形と云ふものが市場に出て來た例もある譯でありますが、此の「スタンプ」手形に限らず、總て一般的に小切手、手形の流通を盛にする所の方策を執つて戴きたいと思ひます、此の問題に關係しまして更に封鎖預金の解除の問題を考へなければならぬ譯でありますが、是はやはり一面封鎖預金の制度がある以上は、小切手の流通の上に於ても、手形の流通の上に於ても、色々支障があるものと思ふ譯でありますが、預金の封鎖を何時どう云ふ風な方法に於て解除されるか、又小切手、手形の制度を盛にする爲には、どう云ふ風な施策を考へて居られるかを御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=135
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136・石橋湛山
○石橋國務大臣 例へば日本銀行の割引の對象となるが如き「スタンプ」手形の利用と云ふやうなことは現在やつて居ります、段々それは廣く行はれるものと思ひますが、一般の小切手などの流通は御話の通り結局封鎖預金の問題が妨げでありまして、此の封鎖預金と云ふやうな不自然なものがなくならないと、實は小切手などの流通は旨く行きませぬので、出來るだけ早い機會に斯樣なものは廢めたいのです、今の所其の時期を何時と云ふことは申上げ兼ねるのでありますが、今囘の處置を執り、財産税の實行も出來ますれば、其の時期が近付き得るのではないか、斯樣に考へて居る次第であります、私としては出來るだけ早くさう云ふ時期を齎したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=136
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137・鈴木明良
○鈴木(明)委員 議事の進行に付て發言があります、發言の通告をする人が大分ありますので、最初に申合せました時間を守つて戴くやうに御取計らひ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=137
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138・本多市郎
○本多委員長 只今鈴木君から御話の通りに、中崎君の質問は大體申合せの時間より少し超過して參りましたので、殘餘の質問がありましたならば、極めて簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=138
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139・中崎敏
○中崎委員 御趣旨に從ひまして大體其の線に沿つて簡單に殘餘の質問を致したいと思ひます、本法案と關聯致しまして、興銀の如き、預金の極めて少くて、債券の如きものを發行することに依つて戰爭に付て努力を拂つて居つたと云ふ風なものの痛手は大きいものだと考へて居ります、この興銀の善後處置に付ては、どう云ふ風に考へて居られるか、更に此の興銀を、第二興銀と云ふやうなものを作られると云ふことも聞いて居りますが、もう少し別の意味に於て、例へば中小商工金融に關聯した所の、商工中金のやうなものを一緒にするとか、或は市街地信用組合と云ふやうなものも一つの系統に持つて來て、一元化した所の金融機關に變更して行かれる御考へはないか、今までは大體に於て重工業其の他の大工業が主體となつて興銀から金を借りて居たのですが、現在の状態に於ては此の大工業と云ふやうなものの觀念も大分變つて來て居ります、ですから斯う云ふ風なものも一元化してやつて行かれる必要がないか、殊に中小商工金融は設定以來既に十箇年も經過して居りますが、其の預金たるや三千萬圓程度である、其の貸金たるや三億餘り程度の貧弱な状態にある譯でありますが、斯くの如き機關をより以上に活用することに依つて、日本の中小工業の再建を圖ると同時に、興銀と一元的にやつて行かれるのが一つの案ではないかと云ふ風に考へて居りますが、此の點に付て承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=139
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140・石橋湛山
○石橋國務大臣 日本興銀銀行の整理に付きましては、目下色々檢討研究致して居ります、整理は可能と考へて居ります、之を第二興銀にするかどう云ふ風にするかと云ふことは未だ決定して居りませぬが、併し興銀と云ふものは興銀で一つの今までの「スタッフ」或は經驗と云ふものはやはり活かして行かなければならぬと思ひますから、如何なる形に致しましても、興銀が長年積みましたあの經驗は活かして行きたいと考へて居ります、それに、御話のやうに色々の別のものを入れるか入れないかと云ふことは、近く成立致します金融制度調査會で御檢討を願ひ、其の上で決めたい、是は金融機關の整理と云ふものは中々難かしいものでありますから、十分檢討致しましてから善處したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=140
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141・中崎敏
○中崎委員 まだ澤山ありますけれども、大藏大臣に對する質問は此の程度にして置きまして、次に商工大臣に伺ひます、賠償工場が何れ決まることと思ひますが、其の賠償工場の撤去に依つて日本の産業は相當の打撃を受けると云ふことは申すまでもないことでありますが、其の範圍が凡そどの程度のものであるか、それから其の損害と云ふものは國家に於て補償されるのか、補償されるとすればどう云ふ風な方法に依つて、どの程度に於て補償されるのかと云ふ風な問題を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=141
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142・星島二郎
○星島國務大臣 先般新聞でも發表された如く、一應の線は引かれたのでありますが、併しあれは最後の確定ではないのでありまして、假に一つの例を以て見ますと、火力發電所の如き、九州、中國方面にあのやうな表でやられては大變なことになるのでありまして、今商工省に於きましては、是れ是れの線は非常に困るから是非々々是は止めて貰ひたい、我々は此の設備がどうしても必要と云ふならば、是は變へて貰ひたいと云ふ譯で非常に調査研究を致しまして、目下關係當局に懇請中でありまして、相當日本の將來平和産業として最小限度なくちやならないものは懇請致しまして善處を願ひたい、若干先般の引かれた線よりも撤去が解除される向きもあるかと考へて居ります、目下關係筋に懇請中でありますが、今是々の線で、最後は是だけの損害が出ると云ふことの大體の調査は出來て居りますけれども、色々業界のこともありまして、今茲に明瞭に發表申上げることは或はどうかと思ふのであります、兎に角一箇所でも少いことは望む所なんでありますから、併し先づ先般の線が引かれたので凡そ皆んなの覺悟が付いた譯であります、若しあれを全部やられるとすれば、是だけの損失があると云ふことは、もう既に新聞にも若干其の數字が出て居る譯であります、出來るだけ一つ少くありたい、そこで最後の線が決まりました所で、是は戰災と同じやうに、戰爭が敗けたことに依つて、「ポツタム」宣言受諾の爲に起つたことでありますから、締めてしまへば、例の請求權の五萬圓、一萬圓でも宜い譯でありますが、併し圓滑に撤去事務を完了する爲には現在業界の其の人の協力を仰がなければならない、先づ戰爭が濟んでの話でありますから、是も一般の他の補償打切りと同じやうに見るのは餘りに殘酷であらうと思ひますから、何とか商工省の側から言ひますと相當補償して貰ひたいと實は念願をして居るのですが、中々大藏當局は高くてさうやつて呉れると云ふ工合に參つて居りませぬ、併しながら是は少くとも帳簿價格位は出して貰はなければ困ると言つて居る譯であります、在外の資産をどうするかと云ふことになると、又して大きな問題が起つて來るので、迚も大きなことは望みませぬけれども、撤去の事務、撤去の費用、それは勿論國家が出して貰はなければならない、撤去されたものに對しては何「パーセント」か兎に角若干のものは是非出して貰ひたい、それはもう安い利子でも、公債でも宜いから兎に角出して貰ひたいと云ふことを只管相談して居る譯であります、何とか少しは減るだらうと思ひます、今はまだ明瞭に申上げる時期ではないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=142
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143・中崎敏
○中崎委員 此の問題に對しましては大藏大臣にも色々御質問したいのでございますが、時間がございませぬので此の問題は打切りまして、更に商工大臣に對する質問はまだ大分ありますが此の程度にしまして、最後に一つだけ御尋ねしたいことがあります、政府の今までの答辯に依りますと、此の補償打切りに關する所の全般的な見透し、更に日本再建の上に於てはつきりした見透しがないと云ふやうな現在の状態にあると云ふことを感ずる譯でありますが、斯くの如き重要な事項に對し、又國民一般の上に權利消長の上に大なる關係と影響を齎らす所の此の一聯法案の施行に當つては、極めて愼重に而も凡ゆる角度から考へて適正な施策を講ずる必要があるのではないかと思ひまするが、此の點に付て先づ一番我々が問題にして居る所の經濟再建整理委員會、之に依つて或る程度の運用が諮問されると云ふ風に考へられる譯であります、此の人的構成に付て、昨日他の委員の質問に對して貴衆兩院議員、學識經驗のある者、それから官界方面と云ふ風なことを言はれましたが、此の人的構成に於て例へば衆議院からどの程度取る、全體の人間の豫定は幾ら幾ら、其の中でどの範圍をどの程度取るか、國民の代表たる議會を尊重する建前から、而も議員と共に是等の處置に當ると云ふ見地からどの程度に人員の割振りをされる考へか、之に付て御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=143
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144・三木秋義
○三木政府委員 昨日經濟再建整理委員會の構成其の他に付きまして、極く概要を申上げて置いたのでありますが、只今御尋ねの委員の人數がどうなるか、又其の割振りがどうなるかと云ふやうな詳細なことに付きましては、只今關係方面其の他と種々協議中でございまして、まだそこまで確定して居りませぬ、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=144
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145・中崎敏
○中崎委員 只今の答辯には私は不滿足であります、經濟再建整理委員會と云ふものは極めて重要なものであると云ふことは申すまでもありませぬが、此の前の例に鑑みましても、臨時物資需給調整法の場合に於きましても、大臣から率直にどの程度の範圍をやる用意を持つて居ると云ふ言明を得まして、我々は或る程度其の法案の審議の上に誠意を盡して參つたのであります、只今の政府委員の答辯に依りますと、關係方面との連絡があると言はれますが、人員に關する點まで一々御指圖を仰がなければならぬのかどうか、此の點に付て膳國務大臣或は商工大臣からの御答辯を御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=145
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146・膳桂之助
○膳國務大臣 今度色々委員會が出來ますけれども、此の構成に付ては、其の委員會の取扱ふものに依つて色々顏觸れも變へて行かなくてはならぬと存じます、御問ひになりました委員會は、此の各種の委員會の中の中堅とも申しますか中樞を成す大事な所でありまして、之に付ては只今政府委員から御答へしました通り、各方面と今打合せ中でありまして、殘念ながらまだどの位の人數でどう云ふ方面の人をどの割合でと云ふことを御答へ申上げるまでに至つて居りませぬ、どうぞ其の邊は御諒承願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=146
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147・中崎敏
○中崎委員 では私の質問は是で打切りに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=147
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148・本多市郎
○本多委員長 木下榮君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=148
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149・木下榮
○木下委員 端的に御伺ひしますが、政府は戰時補償法案に依つて其の負債はなくなるのでありますが、他の一面に於て戰時金融金庫の事業會社に對する債權はどう云ふ風に扱はれるか、即ち戰時中普通の金融機關が融通するのが都合が惡い場合に戰時金融金庫に依つて融通せられた債權はどう云ふ風に御扱ひになるか、一般の債權者と同じやうに之を其の儘存續して取立てるとなると、其の事業會社の不利益は勿論でありますが、他の債權者にも影響することと思ひます、其の邊の取扱方を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=149
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150・福田赳夫
○福田政府委員 戰時金融金庫は只今清算中でありまして、別個の整理を要するのでありますが 大體の建前と致しましては、一般の金融機關同樣の扱ひを致すことになる譯であります、そこで戰時金融金庫が貸出しをして居る、其の貸出しを如何に處理するかと云ふ問題は、是は只今の所は御話の點もありますが、一般の債權債務處理と云ふ方式に準じて考へたい、唯之に付きましては多少の例外がありますので、實情に應じまして若干の特例は設けますが、大體の行き方と致しましては、他の一般の債權債務處理の原則に依ると云ふ風に御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=150
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151・木下榮
○木下委員 負債の方は棒引にして置いて、債權だけは取立てる、斯う云ふ風なことになりますが、現在に於て戰時金融金庫が持つて居る債權の總額、又有價證券を澤山持つて居る筈ですが、是等の額が分れば參考の爲に、御即答には及びませぬが拜承したいと思ひます、それから此の際第三條の外國資産に付ての損害とありまするが、此の外國資産の損害と云ふのは外國にあるものは全部缺損として宜いのだらうと思ひますが、それに對しての政府の御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=151
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152・福田赳夫
○福田政府委員 戰時金融金庫の詳細な「バランス」は只今手許に持つて居りませぬで御説明出來ませぬが、戰時金融金庫になりまして大體の資産構成を申上げますると、約九十億と云ふものが負債であります、それに對しまして、資産は六十億、約三十億圓の「アンバランス」を生じて居る譯であります、それだけを申上げて置きます、尚ほ必要がありますれば 明日でも數字を申上げても宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=152
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153・三木秋義
○三木政府委員 在外資産に付きましては、一應此の計算では注文にありますやうに「マイナス」の方に「ゼロ」として立てて行くと云ふやうに相成つて居りますが、只今の大體の内外の情勢、其の他を考へまして、在外資産に付ての補償と云ふことは、甚だ困難であらうと云ふことが見透されますので、其の見透しに基きまして、確實を期しまする爲に一應茲には「ゼロ」に立てて戴くと云ふことになつて居る譯であります、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=153
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154・木下榮
○木下委員 賠償の打切りに依りまして、普通の銀行と云ふものが非常に弱體になりまして、融通力が減少します、それに從ひまして復興金融金庫が非常な機能を發揮することになりますが、復興金融金庫の貸出は、何か其の内規と云ふやうなものがありますか、或は條件と云ふやうなものがありますか、現在取扱つて居る所を聞きますと、相談會に掛けるとか何とか非常に煩雜なやうに聞いて居りますが、之をもう少し簡單にして、そして金融金庫をもつと完全にやつて行くやうな工合にされる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=154
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155・福田赳夫
○福田政府委員 復興金融金庫が出來ます場合までの過渡的な手段と致しまして、只今興行銀行に特別勘定を設けまして、そこでやつて居る其の御話だと思ひますが、此の復興金融を致す場合は産業復興に必要なる資金でありまして、一般の金融機關に於ては融通し難き場合と云ふ風な制約があるのであります、此の制約と申しますか、左樣な標準に從ひますことは中々難かしい問題でありまして、此の調整が旨く行かないと、總て復興金融金庫に來て、普通銀行からの供給と云ふことがなくなると云ふこともあるので、此の間の舵と云ふことが非常に難かしいのであります、只今其の舵を取る機關として日本銀行を中へ立てて居ります、日本銀行が中に立ちまして、日本銀行に商工省、大藏省等が集まりまして、是は一體普通銀行から融資せしむべきものであるか、復興金融で行くべきものであるかと云ふことを判斷するのでありますが、若し多少軌道が出來まして、さうして是は初めから復興金融金庫で宜いと云ふことが分るものはそちらの方へどんどん行くと云ふやうな態勢になれば、此のややこしい行き方と云ふものは非常に簡素化して參りたいと思つて居りますが、先づ罰則一條で左樣な判定が中々手間取ることは、只今の段階としては已むを得ないではないかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=155
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156・木下榮
○木下委員 膳國務大臣に御伺ひしたいのですが、産業復興の一番困難なる問題は勞力の過剩と云ふ問題でありますが、此の問題に付ては昨日他の委員から質問されて、膳國務大臣は詳細に亙つて御話があつたから私も能く承知して居りますが、其の御話に依ると、勞資が經營協議會などで決めて、若し紛擾が起れば勞働調整法でやる、又過剩勞力は代理會社か何かに努めて振當てる、其の後で失業對策或は退職資金の問題を考へるのでありますが、私は此の問題は勞資に任せて、又一片の勞働調整法で勞働委員會などで解決は出來ない、若し政府が其の儘それに慢然として任せて行くならば、是は「ゼネスト」とか色々な問題が起つて、産業の復興は到底覺束ない、是は近くは國鐵の例に見ても、海員組合の例に見ても、現在我々の目の前に展開して居る所の讀賣新聞の例に見ても、必ず勞働者の問題は此の儘放つて置いたならば唯混亂を來すのみだ、斯う私は思ふのであります、此の戰時補償打切り、斯う云ふ問題は理論的から言ふと固より不合理であらうし、不公平である、併しながら是は國家の爲に已むを得ぬから非常手段として斷行されると思ひます、さう云ふ場合に勞力の問題に付ても或る特殊の準則を立てるとか、方法を政府が指示するとか云ふやうなことをやつて行くのが普通だと思ひますが、其の邊に對して膳國務大臣はどんな考へを持つて居られるか、昨日の御答辯のやうな勞資兩方の協議會でやつて行くとか、委員會が何とかするとか、調整法でやるとか、そんなことでは絶對に出來ないと私は信ずるのであります、それに對して強力な指示とか、一つの準則とか云ふ風なものを設けられる意思はないか、それを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=156
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157・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御問ひの問題は私も、企業の再建が果して所期の目的通り行ひ得るや否やと云ふことに非常に重點があると思ひます、是は御説のやうに單に企業會社に任して置くと云ふことで解決出來ないことは勿論であります、之に付きましては色々政府に於ても考へて居る點が多々あるのであります、それ等の點に付ては重ねて申上げる機會も得たいと存じて居りますが、政府に於きまして適當な指導を執る必要のあることを感じ、又其の方面の構想を練つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=157
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158・木下榮
○木下委員 大體に於て私の質問は濟みましたが、今一つ質問は少し筋道が違ふかも知れませぬが、企業再建上事業界に影響するものでありますから御尋ねするのであります、最近「マッカーサー」司令部の所謂追放令に財界の人達が該當すると云ふ噂があるのであります、特に財閥の關係の會社の重役、さう云ふやうな人は之に該當するのぢやないかと云ふ報道や噂がありますが、此の新しい第二會社とか産業復興の爲の人達に對しては非常に影響があると思ひます、若し差支へがなければさう云ふことに付て、眞相なり何なり御伺ひしたいと思ふのですが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=158
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159・膳桂之助
○膳國務大臣 政治、經濟の方面から思はしからざる者を追放すると云ふやうなことに付ての問題は、尚ほ政府に於きましても色々考究中の問題もありまするけれども、まだ考究中の問題に付きまして御話を申上げる時機に到達して居りませぬ、殘念ながら此の際御答辯が申兼ねます、どうぞ御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=159
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160・木下榮
○木下委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=160
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161・本多市郎
○本多委員長 久保猛夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=161
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162・久保猛夫
○久保委員 私は主として財産税法案に付きまして、法案が富の再分配に依る經濟民主の目的徹底と云ふ立場に立ちまして、之を實施致しました後の經濟方針に付て、主として大藏大臣に御尋ねしたいと思ふのであります、歴史的に見ましても、富の再分配と云ふことは我が國に於きまして度々あつたと思ふのであります、明治維新の時のあの大小名の領土返還と云ふことを實施致しました時に、歐米人は之を國家社會主義の實行だとして驚いた向きもあつたと聞いて居るのであります、遠くは足利時代或は鎌倉時代に或る期間を限つて賣買、賃借、質入等の權利義務を一切抛棄したと云ふ所謂徳政の如きもそれであると思ふのであります、近く例を徳川時代に取りましても、例へば御用金令の如きものを出して武士階級が其の階級維持に努め、或は貧富の調節を圖るなど、土地問題にしましても永代賣買禁令を出して、或は分地制限令とかさう云ふものを出して居るのでありまして、斯う云ふ土地問題に付きましては、今日の農村に於ける貧富の懸隔を調整して居ります農地法の精神に通ずるものがあると思ふのであります
そこで先づ御尋ね致したいことは、斯うした歴史的な事實に考へて見まして、此の財産法案を實施致しまして、一應政府は富の再分配と云ふ線に沿つて目的を達したとする、其の將來に於てどう云ふ經濟方針を立ててやつて行かうとするのであるか、或はもう少し詳しく申しますと、此の後に自由主義經濟に依りまして、新たに新興資産者の發生することを放任しようと云ふのであるか、或は又社會主義經濟の精神に依りましてそれを取入れまして、富める者を抑へ貧しい者を引上げて行くと云ふ方策に依つて進まうとされるのであるか、若しさうだとするならば、どう云ふ方法に依るのか、少し具體的に御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=162
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163・石橋湛山
○石橋國務大臣 將來の問題、相當複雜でありますが、是は現在の考へ方としましては、課税と云ふことが、今日も所得税等で行つて居りますやうに、所謂政府が超過累進税と云ふことで行きますことは、詰り多くの所得のある者にそれだけの負擔を掛ける、さう云ふ方式で貧富の懸隔を成るべく少くする、超過累進税にも其の意味が入つて居りますが、不勞所得に付ての課税、是は主として地代の問題でありますが、日本に於ては現在農業關係の地代の問題は全く忘れられて居りますが、更に是は將來取上ぐべき問題であらうと思ひます、社會主義と申しますか、大體課税の方式に依つて主として所得の平均化をする、或は不勞所得を抑制する、斯樣な方式で行きますれば、先づ今囘の財産税を取つた後の社會の公正なる富の分配と云ふことが大體所期出來るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=163
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164・久保猛夫
○久保委員 それだけでは餘り能く掴めぬと思ふのでありますが、是は一應其の儘として置きまして、然らば相續税の如きものは今の御話の課税率を非常に高くすると云ふやうになると思ひますが、さうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=164
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165・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は日本には特に家族制度がありまして、外國の習慣と違ひ、純然たる個人主義でありませぬから、日本には特に相續税に付て外國にない考慮が拂はれて居るかと思ひますが、大體に於て相續税が高まるべきであります、又現に相當高いのであります、御話の通り相續税と云ふものは、是は大資産家がなくなりますから、事實に於ては相續税を取られる資産家はさうない譯でありますが、概して多額の資産には高率の相續税が課かつて行く、斯う云ふ建前で居るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=165
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166・久保猛夫
○久保委員 此の二十三條の課税價格を等級に分けてあるのがありますが、此の税率を見ますると、千五百萬圓を超える金額を百分の九十として、それ以上を規定してないのでありますが、私は此の二千萬圓を超える金額に該當するものがどれ位あるか能く存じませぬが、今資料を求めて居る所でありますが、更に二千萬圓、三千萬圓、或は四千萬圓、五千萬圓と云ふものがあつたとしますと、百分の九十と云ふので、是れ以上税率を高くしないと云ふことは、果して本來の精神に副ふかどうか疑問に思つて居るのでありまして、例へばもつと九十五「パーセント」位までの税率を課する必要があるのでないかと思ふのでありますが、此の點に付てどうして千五百萬圓で打切られて、それ以上は全部百分の九十と云ふ一率になされたか、一つ御意見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=166
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167・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税率の問題は、前の内閣の原案では七〇%以上、之を八〇にするか、九〇にするか、或は御話の九五にするか、斯う云ふ問題がございまして、最高税率はやはり九〇に押へたが適當であらう、斯う考へた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=167
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168・久保猛夫
○久保委員 二千萬圓を超えると云ふのがどれ位ありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=168
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169・池田勇人
○池田(勇)政府委員 二千萬圓を越える階級は只今調査致して居りませぬが、千五百萬圓を超える納税義務者は大體百人程度を見込んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=169
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170・久保猛夫
○久保委員 若し數が少くあつても、例へば三千萬圓を越すと云ふやうなものに對しては、九〇%を越す所の税率を課すと云ふことが本來の趣旨に合ふのではないかと私は思ふのですが、もう一應當局の御答辯を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=170
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171・池田勇人
○池田(勇)政府委員 千五百萬圓超過の方は先程申上げましたやうに、極く少い人數になつて居ります、五百萬圓から千五百萬圓、斯う云ふ階級に致しますと、此の次はどうしても三千萬圓か五千萬圓と云ふ階級に相成ると思ひます、然る場合に三千萬圓を超える方が何人居るか、斯う云ふ問題になりますと、百人中極小部分だと考へます、二、三十人の方に特に高い九五と云ふ税率を盛ることは、税率として如何なものかと考へますので、大體千五百萬圓超過は先程申上げた程度の人員でございますから、最高税率を九〇と盛つて行くのが適當と考へた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=171
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172・久保猛夫
○久保委員 是は考へ樣に依つて、又人に依つて違ふことだと思ひますので、私は是れ以上申上げたくはないと思ひますが、其の該當する人が少いからと云ふので、例へば一億圓と云ふ者が居るとする、それもやはり百分の九十とすることは、富の再分配に依る經濟民主化と云ふ精神に私は悖ると思ふのであります、併し是れ以上申上げても仕方がないことでありますので、次に移りたいと思ひます
物納に依る場合、例へば國寶の如き物或は國寶に準ずるやうな、國家として一定の方法に依つて是が散逸を防ぐ必要がある、さう云ふものに對しては特別の考慮が拂はれて居るかどうか、此の點に付て御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=172
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173・池田勇人
○池田(勇)政府委員 國寶、重要美術品に對しましては、特別に考慮致して居りませぬ、先づ考ふべき問題は評價に付てどうするかと云ふ問題がございまするが日本が將來文化國家として立ちます上に於きまして、國寶、重要美術品は飽くまで尊重しなければならぬと思ひます、隨ひまして是が國家以外の他人の手に渡ると云ふことは、出來るだけ防止したい、斯う云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=173
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174・久保猛夫
○久保委員 皇室財産に對する課税は、大體此の法案で、之に準じて行ふやうに規定がなつて居るのであります、例へば税率の如きものも全く同樣なものであるか、何か特別な皇室財産に對する課税の考慮を拂はれて居る點があるか、其の點を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=174
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175・池田勇人
○池田(勇)政府委員 皇室財産に對しましては、別に考慮を拂つて居りませぬ、此の法律に準じまして、皇室令で其の適用が定められることに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=175
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176・久保猛夫
○久保委員 是は農林大臣に御尋ねしたいと思つて居つたのでありますが、必ずしも農林大臣でなくても大藏大臣で御答辯出來得る部分に付て御尋ねしたいと思ふのであります、尚ほ私は文部大臣に一言御尋ねしたいことがあるのでありますが、若し明日こちらにおいでになることがあつたら、其の機會に一つ質問を保留させて戴きたいと思ひます、私は例を農村に取つて御尋ねして見たいと思ふのでありますが、財産税に依つて一應全國民の貧富の差が非常に減少する、是は農村の場合に於きまして、更に土地の再分配が行はれまして、農地法に依つて是が又均霑することになつて居る、憲法に於きましては、家族制度の改革が當然或る程度行はれることになつて居ると私は思ふのであります、即ち我が日本の戸主中心の家族制度と云ふものが、或る程度──根本的にと言つても宜いかも知れませぬが、個人中心の家族云とふ風に變つて、斯うした總てのものが、國民の上では、例へば私の上では全部それに影響を受けるのであります、そこで今國民は、今後是等の色々な法案に依つて社會事情なり經濟事情なりと云ふものが、將來どう云ふ状態に置かれるのであるかと云ふことの見透しに付て、非常な不安を持つて居ると思ふのであります、農村の場合を例に取つて見ますと、政府と致しましては是等の法案を綜合的に考へられまして、農村の經濟事情なり或は社會事情、さう云ふものをどう云ふ風に持つて行かうとして居られるか、其の見透しに付てどんなに考へて、どう云ふ社會像を描いて、斯う云ふものを決定して居られるのであるか、例へば是は好い例にはならないと思ふのでありますが、手取り早く言へば農村を徳川時代の農村に還さうと思つて居られるのであるか、或は又明治初期の農村の姿に似た所のものとしようとして居られるのであるか、さう云ふことに付て具體的に出來るだけ國民に分る程度に承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=176
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177・石橋湛山
○石橋國務大臣 農村の問題に付ては農林大臣が答へるのが然るべきでありませうが、大藏大臣にと云ふことでありますから申上げます、無論徳川時代の農村だの、明治初期の農村などを考へて居る者はないと思ひます、今度の自作農創設などに依つて貧富の懸隔がなくなると云ふ一面には、非常に小さな資産の人達が多くなる、謂はば小粒になると云ふ譯でありますから、自ら文化方面に於てもそれに應じた變化があると思ふのであります、併し大體我々の考へて居ることは、さう云ふ立場から農村の中に工業を取入れる、所謂農村工業──農村工業にも二色あると思ひますけれども、農村工業を取入れる、左樣なことで新しい農村を作つて行く、左樣な形で新しい農村と云ふものを頭に描いて今行きつつある譯であります、單に資産を小さくして元へ戻る、斯う云ふ意味ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=177
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178・久保猛夫
○久保委員 其の他のことは重複致しますので、是で私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=178
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179・本多市郎
○本多委員長 河原田巖君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=179
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180・河原田巖
○河原田委員 大分細かな點にまで付きまして、質問應答されまたしので、大體了承致したのでありますが、二、三の點に付てだけ御伺ひ致します、今度の財産税徴收の目的に付て、どうも色々答辯の時期に依りまして、變つて居るやうに聽いて居るのでありますが、財産税徴收の目的を簡單に御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=180
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181・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税徴收の目的は、前内閣時代色々言はれて居るやうであります、併し現在現内閣が計畫致しまして、御審義を願つて居りますのは、先般財産税法案の説明の時にも申上げましたやうに、一つは本年度の財政の財源を得ること、是は普通の國民の經常所得に課税しただけでは、本年度の財政が遺憾ながら賄へないから、其の代りとして、理想的ではないけれども、財産税に此の財源を求める、斯う云ふことであります、もう一つは戰時補償特別税と合せまして、是が一つの税の形を成しまして、さうして此の戰後の財政の再建を圖る、斯う云ふ意味に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=181
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182・河原田巖
○河原田委員 只今の答辯に依りますと、二つの目的のやうに思はれます、本年度の豫算が不足を生じたから、之を補ふ爲に財産税を取る、もう一つの目的と二つありますが、此の目的に依りまして、自ら使ひ途が變らなければならない、今までの質問應答に依りますと、富の均衡を圖るとか、色々の言葉を使つて居られるのでありますが、是が問題であります、本年度の豫算に不足を生じたから、斯くも大きい所の財産税を取つて、さうして本年間に合せると云ふことになりますと、明年度若し萬一多額の費用を要する場合は如何なる方法に依つて税金を取つて行かれるか、尚ほ今囘の提案されて居ります所の財産税等收入金特別會計法案、是は昭和二十六年までと云ふやうにもなつて居るやうでありますが、斯うした點と睨み合せまして、收入しました所の此の財産税を如何なる方向に使はれるか、先づ以て大藏大臣としましては、本年度の豫算は組んで、さうして審議して居るのであるが、將來のものは、まだ豫算は出來てないと云ふことで、逃げられたいだらうと考へますが、是は少くとも大藏大臣と致しましては、將來の日本の經濟と云ふことに對しまして、來年度は、斯くも大きい豫算を取つたらどう云ふ風にしよう、其の次にはどう云ふ風にしようと云ふやうな、少しく先のことまで無論御考へになつて居ることと思ひますし、それは茲に豫算が出來ないのであるから、豫算として説明出來なくとも、其の點を國民の安心するやうに御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=182
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183・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は昨日かも申上げましたやうに、日本政府としてだけの考へでありますと、明年度の豫算を編成することは簡單だと考へて居ります、無論「バランス」が出來ます、併しながら他に不安定の要素が多少ある、其のことを考慮致しませぬと、絶對の歳出が幾らになるかと云ふことは、實は決定が出來ない状況にあるのであります、隨て其の歳出如何に依つては、歳入にも別途の考慮を致さなければならぬと考へて居る所であります、現在の所では明年度の豫算に付てまだ左樣な數字が固まりませぬ、御答へ致し兼ねる譯でありますが、數字は別に致しまして、昨日申上げたやうに、日本に財政上から「インフレーション」が起るが如き豫算は明年度に於て組まれる憂へはない、斯樣に私は信じて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=183
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184・河原田巖
○河原田委員 明年度の豫算は編成が出來てないから數字的に説明が出來ない、斯う云ふ答辯でありましたが、本年度の今囘の財産税は、大藏大臣の説明にもありましたやうに一千百億と云ふやうな大きい金額になるやうにも説明されて居ります、斯くの如き大きい收入を本年度の豫算に使ふと云ふやうなことになりますと──無論全部は使はれないと思ひますが、其の中相當大幅に使はれる、丁度入つて來たから此の際使ふのだと云ふやうな放慢的政策を執られては、將來困ることになる、此の財産税の如きは他の一般收入と違ひますので、戰後何年かの間に之を復興して行かなければならない、賠償もしなければならない、斯う考へました時に、先づ以て茲に丁度豫算が作られましたのが、財産税等收入金特別會計法案が二十六年までとなつて居りますが、此の二十六年まで六箇年の間に先づ以て初年度はどの程度、其の次はどの程度、二十六年度にはどの程度、是で日本の敗戰後の經濟を財産税に依つて賄ふ、其の殘りの何とも已むを得ない所は増税其の他の方法を執るのであつて、成べくは之を利用したい、之を有效に使ひたい、あるから直ぐ使つてしまつても宜いんだと云ふやうな放慢的政策でなくやつて戴きたいのが希望でありますが、只今の大藏大臣の説明に依りますと、餘りにも頼りないやうな氣がするのであります、來年度はまだ出來て居ない、本年度の收入が少いから、それに當てる、どの程度當てられるのか、斯う云ふ考へも起る、然らば本年度は幾ら使はれる考へであるか、之を御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=184
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185・石橋湛山
○石橋國務大臣 本年度の財産税を使ひます金額は豫算に出て居る譯であります、改定本豫算に計上したものが二百五十五億、それから追加豫算第一號、第二號に計上した分を合せて三百十億になります、其の外は本年度豫算には使はないことになつて居ります、實は本年度の豫算は、率直に申しますと、終戰直後のものであり、御承知のやうな國内の政治状態であります、吉田内閣の出來たのは既に議會が始つて居る途中であると云ふやうな譯でありましたので、財政計畫と云ふものが日本の國情から言ふとどうしても明年度の財政から本當の財政になる、ですから明年度の財政に付て聯合國の意向を十分に打合せました上でないと確實なことが申されない、是は占領されて居るのでありますから──先の見透しが付かない、怪しからぬ、洵に困つたことでありますけれども、聯合國軍の占領下にあると云ふことでありますから、占領下にあるだけどうしてもこちらだけで決められない、斯う云ふ状態であります、でありますから昭和二十二年度の財政に至つて初めてはつきりした目標が立つ、只今其の目標を立てつつある所でありますから、其のやうに御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=185
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186・河原田巖
○河原田委員 千百億の税收入の中三百十億位で本年度は賄ひが付くと云ふ所の御答辯を御伺ひ致しまして、非常に安心致しました、場合に依りましてはもう五十億なり、八十億なり來年三月までの間に使用されるやうなことが起りはしないかと云ふことを心配して居りましたが、流石に石橋大藏大臣の御計畫は國民の輿望に副ひまして間違ひなくやられたことを喜びと致しますが、八百九十億ばかりの殘りの收入であります、之を如何なる用に使ふかが未だ分らない、斯う云ふことであります、例へば懷ろにあるお金であつても、大體の目標を立てずに使つて行きましたならば、旅行先でも歸れないと云ふことにもなる、一國の經濟を掌つて居ります所の財政當局が、其の後の八百九十億の使途が全く見込みが付かない、占領下だから見込みが付かないと云ふやうな、餘りにも頼りないことでは困るのでありますが、此の點に付きましては茲に疑問の點がありますので、後程其の責任の所在は御伺ひ致しますが、安定本部からもお出でになつて居りますので、膳國務大臣は今の大藏大臣の御説明に引續きまして、やはり安定本部も明年度以降の計畫は全然御持ちにならないか、お見込みがないか、是は進駐軍の命令だけに依つて豫算を組まれるのか、其の點を膳國務大臣に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=186
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187・石橋湛山
○石橋國務大臣 補足して申上げて置きます、此の財産税等收入金特別會計と云ふものが御承知の通り出來まして、其の豫算が御審議を願つて居る譯でありますが、それに付て申しますと、本年度即ち昭和二十一年度の歳入豫定額が四百三十五億圓、斯う云ふことになつて居ります、一般會計への繰入は先程申しましたやうに三百十一億、それから百二十三億程が國債償還、其の他細い經費などがありますが、そんな風になつて居ります、左樣な譯でありますから財産税等の收入に付て見當が付かないことはない、もう既に今年度分としては豫算に出て居る譯であります、それから此の中には戰時補償特別税も入つて居ります、所が戰時補償特別税と云ふ中には、實は預金との相殺とか、請求權が自ら消滅する、それも入つて居るのでありまして、課税額は六百六十九億圓になつて居りますが、實際此の差引の歳入となりました金額は、百六十四億圓ございます、左樣に御諒承願ひます、後は相殺等に依つて入つて來るが、唯帳簿上入つて來るだけで政府の債務との差引になつてします、左樣に御承知置き願ひます、百六十四億圓が差引國庫に入る歳入になる、それだけでありまして、政府の負債が減ることは六百六十九億から百六十四億其の他を差引いて殘りの四百五十億圓程が政府の債務の減少になります、でありますからやはり課税をしてそれだけの利益はあつた譯でありますから、直接の歳入は百六十四億であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=187
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188・膳桂之助
○膳國務大臣 私に對しましても何か安定本部に於て明年度以降の財政計畫に付て腹案を持つて居るかと云ふ御尋ねでありますが、只今政府の中に別に二つの計畫を立てて居る譯ではありませぬ、大藏大臣の御説明申上げた以外に別に變つた考へを差當り持合せて居りませぬ、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=188
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189・河原田巖
○河原田委員 さうしますと大藏大臣の此の前の説明に一千百億圓の收入がある、税金を徴るのだ、税金と兩方になりませうが、それだけの收入があると御説明になりましたことは嘘であつた──嘘でなくても相殺になるから實收入ではないと云ふことになる譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=189
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190・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは課税は一千億圓を超えます、詰りそれが國債を返還するのと同じ形になる譯であります、それが帳簿上で差引きますから、課税すればそれは政府の債務が直ぐ銀行の勘定の上で相殺になりますから、國庫に直接入つて來る金は百六十四億圓になる、斯う云ふ勘定になる、課税はする譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=190
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191・河原田巖
○河原田委員 そこで今まで政府當局の御説明が時折變つて來たのは、そこに原因があると云ふことになる譯であります、さうすると例へば今年度の豫算に不足を生じたから財産税を取る、富の均衡を圖る爲に取ると云ふやうに政府の説明が變つて參りましたことは、實際に於ては公債の鎖却であるとか其の他に引充てる分が含んで來ましたので、政府の答辯が時折變つて來た、斯う御伺ひして宜しいでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=191
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192・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸御質問の趣意が分りませぬが、前内閣が公式に何か言つて居つたか居らぬか私實は能く知らぬのでありますが、一般の財産税が何か「インフレ」の防止とか色々の説明はされたやうであります、併しながら其の後若しさう云ふことに變つたとすれば、詰り收入した財産税は全部公債の償還にするか、それとも或る政黨の主張して居るやうに、是は公債の償還をしてはならない、寧ろ救濟事業等に使ふべきものか、斯う云ふ論爭もあつた譯であります、政府の態度は必ずしも實現すると決まつて居つた譯ではありませぬ、結局事實に於ては本年度の財政が御承知のやうな状態であつて、其の中には復員費其の他の救濟事業が隨分あるし、又進駐軍の爲の終戰處理費と云ふものが二百億圓を超える、斯う云ふ譯でありますから、そこで財産税で入つて來るものをどうしても財政上繰替使用しなければならぬ状態にあるから、全部之を公債に廻して償却すると云ふのとそこに變化を生じた譯です、一部分の財産税を財政支出の財源に充てる、さうして殘つた分を公債其の他の國家の債務の償還に充てる、そこでもう一つ變つて來たことは、前には補償は大體に於て全部之を拂う、其の代りに財産税を多額に徴收する、前内閣時代には斯う云ふ考へであつたやうでありますが、それが變化して補償は戰時特別税の形で之を打切る、其の代りに財産税は法人或は又個人戰時所得に關するものは止めて、個人財産税一本にした、茲に變化が生じた譯です、けれども戰時補償特別税と財産税とを加へて考へれば結局課税は千億圓を超える、さうしてそれに依つて國家の債務は消えて來る、それから一部分が歳入になつて、さうして其の歳入の或る部分が今年の財政に使はるる、斯う云ふことになる譯であります、結局本年の春あたり或は昨年の暮あたり前内閣が所謂骨骼豫算なるものを作つて居ました頃には、進駐軍費とか云ふものは今まで見て居らなかつた財政でありますが、それ等の事情の變化に依つて財産税の一部分が本年度の財政に使はれる、是だけが實質に於ては變つた譯で、其の他には實は變りない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=192
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193・河原田巖
○河原田委員 さうしますと、本年度の豫算に使ひ、公債の鎖却に使つた其の殘り、本年度中にまだ徴收の濟まない分もありませうが、之を合せまして本年度使つた殘り、來年度以降に廻せる金額は概算幾ら位になる御豫定でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=193
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194・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税收入が四百三十五億ございます、さうして補償特別税の方の收入が百六十四億ございます、其の百六十四億の中に政府特殊借入金が九十四億加はつて居りますから、純收入は七十億と云ふことになりまして、合計五百億が財産税竝に戰時補償特別税で「ネット」に入つて來る收入でございます、別に豫算には政府借入金の收入を立てまして、直ちに又國債整理基金特別會計の方へ別に九十四億入れて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=194
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195・河原田巖
○河原田委員 さう致しますと、全部では實際に國庫に入つて來る收入と云ふのは總額で五百億と承つたのでありますが、間違ひないのでありませうか、さう致しますと、若し本年度三百十億使ひますと、殘りは百九十億しかないと云ふことになるのでございませうか、此の點をもう一囘御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=195
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196・池田勇人
○池田(勇)政府委員 左樣でございます、大體五百億圓の純收入がございます、唯其の中に舊勘定預金から納まるべき財産税が七十五億圓ございます、此の七十五億圓が銀行の整理に依りまして、どれだけの數字になるか其の點が疑問だけでありまして、あとそれを除きますれば五百億の純收入と考へて宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=196
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197・河原田巖
○河原田委員 さう致しますと、是だけ國家の各層、財界の引繰返る程の騷ぎを致しましても、實際の問題としては、本年度の豫算の赤字に補填をした殘りは、今の百九十億と七十五億の分がどれだけ來るか、若し是が完全に來ましても二百六十五億しか來年度に殘らないと云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=197
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198・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税等の特別會計收入は四百三十五億の財産税と、此の百六十四億の戰時補償特別税の收入を見込んで居ります、併し其の中には政府特殊借入金の九十四億が──是は實際入つて來る金ではございませぬ、政府が拂ふべきものであつたのでございますから實際入つて來るのではございませぬので、大體實際入つて來る金は五百億圓と見積られます、唯其の五百億圓の中に財産税で舊勘定預金から拂込まれると認められる七十五億圓と云ふのがございますから、是が半分切られると云ふことになりますと、五百億圓が四百六十五億圓に相成るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=198
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199・河原田巖
○河原田委員 四百六十五億圓となりますと、三百十億圓と云ふものを差引きますと百五十五億圓ばかりしか來年度に殘らないと云ふことになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=199
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200・池田勇人
○池田(勇)政府委員 舊勘定預金から拂込まれた財産税、舊勘定預金から拂込んだ金額が、銀行の整理に依りまして平均半分切られたとすると、御話の通りになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=200
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201・河原田巖
○河原田委員 そこで本年度の豫算に於ては三百十億圓使つた、結局來年度進駐軍關係其の他がございましても、之に對して全額之に振向けましても、もう之に振向ける分と云ふのは極く僅かしかない、斯う云ふことになりますと、又明年度の豫算に於きましても不足を生じまして、財産税と同樣な税金でも取らなければやれないか、或は此の厖大な財産税を取つて、明年直ぐさま今度は赤字公債でも發行しなければならないやうになるのぢやないか、斯うした點を考へますと實に不健全財政であつて、健全財政とは到底考へられない、是程大きい收入があつても健全財政にならない、而して斯くも犧牲を拂つた所の此の税金の約半分以上が公債の消化に當てられると云ふやうなことは、是は餘程考慮の餘地があるのぢやないかと思ふのでありますが、之を以て政府は是だけの苦心をして、是だけの犧牲を拂はして取つたものを、公債の支拂に引當てる、是で宜いと考へて居られるかどうか、重ねて御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=201
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202・石橋湛山
○石橋國務大臣 實は私としては公債の鎖却に當てる部分の少いことを甚だ遺憾にして居るのでありまして、もつと實は財産税は公債の鎖却に當てられる方が宜かつたと斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=202
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203・河原田巖
○河原田委員 殊に本年度に於きましては財産税の問題が起りましたから、何とか結末が付くことになります、若し萬一此の財産税の取立てが明年度の三月以降と云ふやうなことにでもなりましたならば、是は本年度は如何とも方法がなかつたと考へて居ります、又明年度以降の豫算に於て左程心配されて居らぬやうでありますが、實際は本年よりも進駐軍關係に致しましても、其の他に付きましても、明年度は本年度以上の此の豫算の編成に苦勞があるのぢやないかと思つて居ります、斯くの如き場合に於きましては公債の償還も宜いでありませうが、先づ以て古い公債よりも、それを蓄へて置きまして、明年度之を使つて豫算を組んで行くと云ふ方法に變更された方が宜いのでないかと思つて居ります、一面に於きましては公債の利拂の問題も、拂ふと云ふことには決まつたやうでありますが、相當議論もあつたのであります、決められたことは結構でありませうが、今後の殘って居るものは、之を公債の鎖却に當てないで、返濟に當てないで、殘して置いて、明年度以降此の戰後の大體の復興の濟むまで、之に依つて復興される、或は賠償等の問題に付きましても、之を引當てると云ふやうな政策は執つて戴けないものでありませうか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=203
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204・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは實は財産税で入りますものは御承知のやうに物納がある、或は國債で入るものもある、でありますから是は計算の立て方でありますが國債で入るものはそれを一旦國債で償還をしてしまふ、入つた國債をそれで償還してしまふ、若し財産税を見返りに財政の支出に當てるならば、新たに國債を發行する斯う云ふやり方があり、それから入つて來た國債を其の儘にして、之を又日本銀行なり何なりに賣却して、其の代り金を財政に使ふ、斯う云ふ行き方もある譯であります、で先程申しましたやうに、國債で入つたものは一旦國債の償還に充てると致しますと、相當の國債を償還し得る譯になります、ですから御話のやうに若し財産税を來年度に於ても亦使ふことが適當であると、斯う認められる場合には、其の國債を償還せずに置いて其の儘使ふ、或は一旦償還しまして、財産税特別會計から新たに國債を發行して使ふ、斯樣に致し得る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=204
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205・河原田巖
○河原田委員 殊に心配致して居りますのは──本年度は是で濟みましたし、追加豫算も出まして、只今大藏大臣が國民の安心するやうな御答辯がありましたので、今後の追加豫算等は何とか切盛りされるものと安心して居りますが、先程の質問にもありましたやうに、賠償物件の移動と云ふやうな問題でも起りますと、本年度以上の豫算が要るではないかと思ふ、それに對しまして本年度の財産税の殘りがないと云ふことになりますと、明年度の豫算編成に當りまして非常に困難するでないか、斯う思ふのであります、其の點は國民の心配のないやうにやつて戴ける御見込があるかどうか、重ねて此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=205
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206・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論此の敗戰後の財政は非常に困難であります、來年度も尋常一樣の覺悟を以てしては、是が突破は出來ないと云ふことだけは、政府は無論でありますが、國民諸君も覺悟をして居て貰はなければならぬと思ひます、併しながら之に依つて破綻を生ずるが如きことは、日本の國家が存續して行く限りは出來ないことでありますから、其の處理は出來るものと私は信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=206
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207・河原田巖
○河原田委員 そこで、今まで何囘も財産税は一囘限りであると云ふことを答辯されて居るやうでありますし、今後も其の方針には變りがないだらうと思つて居りますが、重ねて其の點を御伺ひ致します、と同時に此の財産税徴收後の産業の再建、生産の増強と云ふことが非常に重要な問題となるのでありますが、此の財産税を取りました結果は、明年度の生産と云ふものは非常に少くなると云ふやうな心配を持つて居るのであります、此の點に對しまして如何なる處置を執られる方針であるか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=207
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208・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税を取ります結果は、比較的資産の多い者がなくなりますから、新投資と云ふやうなものには餘程注意を致しませぬと不便を生ずると思ひます、併しながら現在に於ける生産に直接影響があるとは考へませぬ、是は企業再建整備の方で、此の企業再建整備が順調に參りますれば、生産は無論維持せられ、又發展の基礎も出來る譯でありまして、財産税が直接に此の産業の生産に惡影響を及ぼすと云ふことはないと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=208
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209・河原田巖
○河原田委員 財産税を徴收した結果の此の産業の再建と云ふものに對する所の融資の方法と云ふものは、別段に御考へになって居らないことになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=209
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210・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税は個人に課けるのでありまして、法人財産税はない譯であります、法人が此の財産税に關係するのは、法人の株價をどう評價するか、それに依つて個人の財産税が變ると云ふ所に、法人との繋がりがあるのでありまして、直接に法人に財産税は課かりませぬ、併しながら財産税が課かる課からぬに拘らず、企業の經營と續いて其の發展を圖る爲には、無論金融を致さなければならぬ、それが即ち復興金融金庫であります、其の方面から金融措置は致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=210
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211・河原田巖
○河原田委員 此の前の答辯の時に、復興金融金庫と云ふ御話が出ましたが、是は其の當時は財産税を取つてさうして事業の再建が出來ない、或は生産の増強が出來ないと云ふものに對しまして、此の復興金融金庫から金を融資すると云ふやうな話はなかつたのでありますが、兩方とも兼ねておやりになられるのか、大藏大臣は國家の産業と云ふものは株式會社に依つて──法人に依つてのみ大部分が産業の再建、又生産の増強と云ふことをやられる、出來るのだと、斯かる御考へを持つて居るのかどうか、是は決して法人のみに依つて産業の再建とか或は生産の増強とか云ふことを言つて居るべきものではなくして、一般國民の個人の事業に對しても考へなければならないことであると考へるのでありますが、此の點は如何に考へて居られるのか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=211
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212・石橋湛山
○石橋國務大臣 個人が經營して居ります中小産業に付ても十分考へて居ります、復興金融金庫は財産税と云ふものと直接に關係はございませぬが、それ等の中小企業が必要とする資金は、累次私が申上げて居る通り、復興金融金庫は特に其の方面に力を注ぐ建前で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=212
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213・本多市郎
○本多委員長 河原田君に御諮り致しますが、まだ大分質問もあるやうですが、餘り時間が後れますので、明日に御繼續を願ふことにしたら如何ですか──それでは本日は此の程度で散會を致します、次會は明三日午前十時より開會致します
午後五時五十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00319461002&spkNum=213
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