1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出)
復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出)
自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出)
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昭和二十一年十月三日(木曜日)午前十時二十九分開議
出席委員
委員長 本多市郎君
理事 石原圓吉君 理事 菊池長右エ門君
理事 森曉君 理事 舟崎由之君
理事 武藤嘉一君 理事 稻村順三君
理事 西村榮一君 理事 久保猛夫君
江藤夏雄君 大内一郎君
大塚甚之助君 近藤鶴代君
坂本實君 田中重彌君
河原田巖君 平岡良藏君
大石ヨシエ君 松永佛骨君
天野久君 金光義邦君
喜多楢治郎君 北村徳太郎君
中野四郎君 小池新太郎君
小坂善太郎君 鈴木明良君
武藤常介君 上田清次郎君
奧村又十郎君 川島金次君
澁谷昇次君 中崎敏君
水谷長三郎君 森三樹二君
藤井正男君 秋田大助君
駒井藤平君 大橋喜美君
笹森順造君
十月三日委員鈴木茂三郎君、前田榮之助君及び伊東岩男君辭任に付其の補闕として稻村順三君、西村榮一君及び大橋喜美君を議長に於て選定した
同日上田清次郎君及び奧村又十郎君理事辭任に付其の補闕として稻村順三君及び西村榮一君が理事に當選した
十月三日帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出)、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出)及び自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出)の審査を本委員に付託された
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 河野通一君
大藏事務官 渡邊喜久造君
司法事務官 奧野健一君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辯のための借入金等に關する法律案(政府提出)
復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出)
自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=0
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001・本多市郎
○本多委員長 是より會議を開きます、本日は是非大體の質疑を終了致したいと存じますので、何卒各委員共其の點御諒承の上質疑をなされるやうに御願ひ致したいと思ひます、尚ほ質疑の時間に付ては大體三十分程度位に要點を質問せられることに願ひたいと存じます、隨て答辯も成べく質問の要旨に對應する簡潔なる御答辯を希望する次第でありまして、答辯が質問の時間以上に亙るやうなことのないやうに、政府側の方に於かれましても御考慮願ひたいと存じます──河原田巖君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=1
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002・河原田巖
○河原田委員 只今時間の制限を受けましたので要點だけ御伺ひ致すことに致しまして、委員會が濟みましてからも關聯事項は引續き何かの機會に之を檢討することを御許し願ひたいと思つて居ります、今囘の財産税徴收に當りまして新圓に課税しないと云ふことは、是は不公平だと思つて居るのでありますが、之に付て大藏大臣はどう御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=2
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003・石橋湛山
○石橋國務大臣 私の考へではあの三月の調査時期の財産に課税するのが一番公平で、其の後の變化は見ないと云ふのが此の際一番公平だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=3
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004・河原田巖
○河原田委員 新圓に付きましては特殊のものだけでも二百億も行つて居るのではないかと云ふことが世間で言はる位、非常に偏在して居ります、是が三月以降の問題であるから課税しないと云ふことであれば、是は又別に考へなければならぬと思ふのでありますが、然らば戰時補償の打切と云ひますか、戰災保險等の整理は、金に換へた者と換へない者を昨年八月十五日に遡ると云ふことはどう云ふ理由であるか、殊に三月三日に皆財産の申告を致して居りますから、それに依つて財産税を課けるとすれば、八月十五日に遡ると云ふことなく、總てを三月三日にされるのが至當であると考へるのでありますが、大藏大臣の御所見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=4
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005・石橋湛山
○石橋國務大臣 補償の方は戰爭が終つた終戰と云ふ時期を限つたのでありまして、財産税と同じやうに三月云々とすることは却て時期の組み方に不合理な點が出來る、斯う云ふことで特に八月十五日と致した譯であります、是が戰時補償特別措置としては一番妥當だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=5
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006・河原田巖
○河原田委員 さう致しますと、八月十五日までに戰爭保險等を取つて現金に換へてしまつたと云ふ者が其の儘認められ、それ以前に借金を持つて居て、其の引當になつて居る保險金が其の後に於て銀行に總て取上げられてしまつて個人に渡さない、斯うなりました時に、此の決濟は如何なされるものでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=6
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007・池田勇人
○池田(勇)政府委員 戰時補償特別税が課せられました場合には、其の戰時補償特別税は財産税から控除することに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=7
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008・河原田巖
○河原田委員 然らば次には今度の財産税の徴收方法に於きまして、十萬圓以上のものは累進的に高率に課けて行くと云ふことになつて居りますが、此の率が非常に高率である、殊に一千五百萬圓と云ふやうな程度になりますと、九〇%も取ると云ふやうなことであるが、是は今囘限りで、國家は再び斯くの如きことはやらないで濟むと云ふ場合であれば、どの程度まで取つても宜いと思ひます、併し今後に於きまして、又何等かの事情に依つて普通の税金では國家の財政が賄へないと云ふ見透しがありました時に、財産を持つて居る者から根こそぎ取つてしまう、殆ど九〇%までも取つてしまうと云ふことになりますと、日本の再建、個人の事業の再建と云ふことは望めないことになるのではないか、是は能く當局として御考へ願はなければならぬ點であると思ふのであります、一例を申上げますと、林の中の育ち盛りの五尺、八尺の木を、其の儘蕊を止めないで置きましたならばどんどん伸びます、併し若し大木でも五間、七間の一本も枝のない所で切られたならば殘つて居つても枯れるのであります、斯うした點は財産と違ふかも知れませぬが、十分御考慮願ひたい、餘り高率の税金は決して好い結果は生まない、取りたくも或る程度の加減をして潰さずに置いてこそ、再び取ることが出來、又其の後の努力に依つて其のものが伸びることになります、餘り苛酷な取り方は考へなければならぬ、殊に「アメリカ」の占領政策に於ても、私は此處で公言致しますが、日本を極端に壓迫致しましたならば、日本は何時かの時に、何千年かの後に又「アメリカ」に對して反撥すると思ひます、「アメリカ」が現在の如く非常に親切に、我々が有難くて涙の出るやうな温情を以てやつて呉れる、是が此の儘行けば日本は「アメリカ」に對して將來とも戰はない、どうしても「アメリカ」に追隨しなければならぬと云ふことになる、是と同じやうに、餘り極端に財産を取つてしまふことは考へて戴かなければならぬと思ひますが、大藏大臣の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=8
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009・石橋湛山
○石橋國務大臣 如何にも高額の資産に對しては相當強い税率でありますが、併し日本の經濟を再建する爲には、各個人の資産は成程相當大資産は減りますけれども、他の又金融其の他の措置を講じます、隨て其の人自身が日本再建の爲に働ける方なら、無論再び再興し得る途が拓かれて居る譯であります、何と言つても敗戰後の財政經濟を處理する譯でありますから、色々負擔の重い點の起ることは是は已むを得ない、之に依つて御話のやうに日本の經濟の再興の芽が摘まれると云ふことは斷じてないし、又左樣に相成つてはならぬのでありますから、今後とも政府に於ても、又民間に於ても左樣に努力致したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=9
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010・河原田巖
○河原田委員 時間が長くなりますから細かな議論は後に致しまして、先づ現在の政府の財政政策は、私は此の儘、行きましたならば、來年、再來年になりますと行詰りを生ずる、勿論當面の問題ではないと思ひますが、近く新圓の發行高も六百億とか千億とかで止らずに、二千億、或はそれ以上と云ふやうな時代が來るのではないかと心配致して居ります、一面に於て貯蓄云々と云ふことも言つて居るやうでありますが、是が成功すれば六百億でも止まるかも知れませぬが、是も餘程の方法を講じなければ不可能だと思つて居ります、本年さへ切拔ければ宜い、或は吉田内閣さへ切拔ければ宜いと云ふのでなく、日本の經濟再建は將來に殘つて居る、内閣が變らうが、大臣が變らうが、如何なることがあつても日本經濟の破綻に導かない、どちらの方面から見ても來年も再來年も安全だと云ふ財政政策でなければならぬと思ふのでありますが、私は遺憾ながら此の點不安に堪へないのであります、一口で宜いから、それは安全であるか、或は困難であるか、出來さうにないか、此の三つの中の何れかの御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=10
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011・石橋湛山
○石橋國務大臣 御答へとしては安全なりと申上げます、それは如何にも昨日申上げましたやうに、困難な點があることは仰せの通りであります、併しながら是は必ず突破して行ける、又日本國としては突破せざるを得ない、若し本當に突破出來ない點があるとすれば、日本が占領下にあると云ふ點でありますが、此の點も昨日申上げましたやうに、私は聯合國の占領政策は日本を潰す爲めでないと云ふことを信じて居りますから、十分突破して行けると確信して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=11
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012・河原田巖
○河原田委員 答辯は非常に心強い答辯でありますが、實際は大臣の顏を見て居りましても、私は安全なりと答辯して居るけれども、終ひには泣顏になつての答辯と聽きました、日本經濟は今大臣の顏が變つて來る如き状態であると心配致して居ります、茲に於きましてどうしても我々議員としては政黨政派を超越して、財政の將來に對して動かざる所の方針を立てなければならない、一大藏大臣の考へばかりでなく、全政府も全政黨も擧つて將來の經濟の安定方策を立てなければならぬ、之にはどうしても貯蓄の救國運動──是は極端かも知れませぬが、凡ゆる方法を講じて、此の前の大臣の答辯の如きものでなく、如何なる政黨が政權を握つても、先程の新圓は不公平であつても税金を課けないのだと云ふ御答辯があつたことを何處までも實行する、各黨派擧つて將來に向つて貯蓄運動を展開するなり、何等かの方法をしなければ是は切拔けられない、私は大藏大臣ばかりでなく總理大臣にも出席を願つて置きますが、今御願ひ出來れば結構であるし、それが出來なかつたならば今の速記を見て戴いて總理大臣の御所見を承りたい、それから重ねて大藏大臣竝に安定本部の長官に此處で言明願ひたいのでありますが、此處で色々現内閣が良いとか、現内閣が斯うであるとか、又石橋財政がどうであるとか、云ふことでなく、日本の將來の經濟を何とか建直す爲に政黨政派を超越した所の貯蓄運動を、是は國策として絶對に動かせないものである、一旦一定の決まつた銀行に貯蓄をした者、或は郵便貯金をした者は再び政府の責任に於て何處までも守つてやるのだと云ふ所をはつきり御示し下さつて、是は如何に政府が送りましても其の方針は變らず進むと云ふ所まで行かなければ、日本の財界の建直しは出來ない、斯う考へて居るのでありますが大藏大臣の御所見を伺ひ、又安定本部長官、總理大臣にも來て戴いて御答辯を願ひたい、此の點は殊に重大でありますが、若しやるとすれば自由黨、進歩黨、與黨、野黨などと云ふことでは日本の經濟は乘切れませぬから、社會黨とか小會派にも呼掛けて、政黨政派を超越した所の大運動を展開して、之を實行しなければ日本は立たない、斯う考へるのでありますが大藏大臣の御所見は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=12
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013・石橋湛山
○石橋國務大臣 全く同感であります、其の運動は政府としても起す所存で只今準備して居ります、是非各政黨政派の諸君に御贊同を切に御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=13
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014・河原田巖
○河原田委員 安定本部長官と總理大臣はおいでになつて居りませぬから後で答辯して戴くことに致します、其の場合には運動の實行方法なども具體的に示して戴かなければ出來ないのでありますから、是は後の時間に讓ります
次は大藏當局と安定本部との問題でありますが、日本の經濟を切盛りするのは安定本部にあるか、或は大藏省にあるか、斯う云ふ問題でありますが、兩方にあると云ふことは兩方にないと云ふことになる、御互ひに責任のなすり合ひになる、又安定本部なるものが非常な力を持つて居りまして、大藏大臣以下大藏省をぎゆつと睨むだけの力がありましたならば是は簡單であると思ひます、然るに現在の安定本部は私の見る所では到底大藏省を抑へるだけの能力がないと思ひます、是は五十燭光の安定本部が百燭光の石橋大藏大臣を抑へることが出來ないのは仕樣がない、是は本部長官の問題でなくして總體の編成がここにあると思つて居ります、現在の安定本部が大藏省ばかりでなく各省即ち財政なら財政關係の各省、商工省も農林省もぎゆつと抑へるだけの力がない、此の力のないものの計畫に依りまして、指揮命令に依つて各省が動くのは是は私實に不安に堪へないのであります、此の點大藏大臣はどう御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=14
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015・石橋湛山
○石橋國務大臣 經濟安定本部は非常に大切な役目を持つて居るのであります、無論經濟安定本部だけの力で十分のことは出來ないと思ひますが、私共殊に是ははつきり申上げますが、大藏省としては全力を擧げて經濟安定本部に協力を致す、そして經濟安定本部を中心にして政府全體の政策はあそこで定めて行く、斯樣な方針を堅く執つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=15
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016・河原田巖
○河原田委員 只今の御答辯の如く正しく其の通りだと思つて居ります、如何にも大藏省の持つて居る所のものは非常に大きい、人的資源に於ても大きいからそれで以て安定本部を援けて、何とかして安定本部を落ちないやうに拾上げてやつて同じやうに持つて行かなければならぬと云ふのが大藏省の現在ではないかと思ふ、各省に於てもさうである、さうしますと安定本部と云ふものは其の程度が各省を握る程度のものに、今なつて居ない、是は實に遺憾であります、併し日本で現在やらざるを得ないとすれば、是は已むを得ないから存續するより外に方法はないのでありませうが、今後の日本の經濟に於きまして安定本部と云ふものは昔の企畫院、審議會其の他の程度のものなりと考へられて──名目上は各省の上にあるかも知れませぬが、各省に於てはそれに頼らず飽くまで自主的に各省は各省として案を作つて進められて、餘り安定本部に依存されることのないやうににしなければならぬ、若し萬一安定本部が立派に出來、人的資源に於ても凡ゆるものに於ても各省を凌ぐことが出來たならば別でありますが、是は到底見込がありませぬから、此の點は將來の經濟に付て大藏大臣ばかりでなく外の省に於ても其の考へが、それは安定本部でやつたんだから私の省では分りませぬと云ふやうなことのないやうに責任を持つてやつて戴かなければならぬのでありますが、其の點能く大藏大臣ばかりでなく、他の大臣にも其の結果を御傳へを願つてやつて戴きたいと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=16
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017・石橋湛山
○石橋國務大臣 政府全體の政策は飽くまでも安定本部でやらなければいけないと私は存じて居ります、それで安定本部には勿論各省大臣殊に經濟關係の大臣は總て參畫する譯でありますから、そこで政策を決めると云ふ譯でありまして、御言葉のやうに安定本部が非常に弱いと云ふやうなことは、現在は謂はば開店勿々でありますから、色々の點でまだ整はない所があることは認めざるを得ませぬが、私は御言葉のやうに安定本部が、ひ弱いものに將來なると云ふことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=17
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018・河原田巖
○河原田委員 安定本部に付きましては是は一箇年と云ふことになつて居ります、是には色々あると思つて居りますが、「アメリカ」の御話を聞きますと、來年の六月には自由經濟になると云ふことを言つて居るやうであります、日本の安定本部が一箇年と定められましたことは、一箇年の間に安定本部に於て日本の經濟を自由經濟に、自由販賣をなし得る程度に導くのが、其の仕事ではないかと思つて居るのでありますが、動もすると其の反對の方向に導く、一度其の職に就きますと、一年後も尚ほ之を繼續したい考へを起されるのが、役人の通弊でありますが、私は此の際嚴重に是は警告を致して置きますが、一年以後尚ほ安定本部を引摺ることなく、一年後には必ず日本財政を自由經濟、自由販賣と云ふことの方に導くと云ふ御考への下に、凡ゆる仕事をして戴きたい、又やつて戴かなければならぬのでありますが、是は安定本部の長官がおいでになりましたならば、出來る御考へであるか、或は反對の方向に導かれる方針であるか、之を御伺ひ致します、是は速記録を見て答辯をして戴きたい、此の點の大藏大臣の答辯はもう分りましたから宜しうございます
次に賠償工場の問題でありますが、賠償工場が昨日も問題になりましが、五百もある、此の五百もある所の賠償工場は、どう云ふ結果になるか知れませぬが、此の賠償工場は一方に於きましては軍需關係のものが多い、又一方に於て戰災に遭つたものは戰災保險を持つて居つても五萬圓で打切りになつて居る、所が今度の賠償と云ふことになりますと、是はそれと違ふ、國家が之に對して今の時價に依つて補償すると云ふことになりましたならば日本の經濟政策が立ち難くなり、一般國民の負擔が餘り多くなる、茲に於て全く是等のものに出さないと云ふことも出來ないことになるのでありますが、昨日の商工大臣の御話では之に幾らか出したいやうな風でもあり、そこが危ふやになつて居りますが、是は一方五萬圓なら五萬圓で打切ると云ふことをはつきりして置きまして、それを持つて行きましても尚ほ建物が殘るとか色々なものが殘る、そこでどうしてもそれが立ち行かないものに對して、今度は其の荷造りであるとか運搬であるとかと云ふ問題が茲に起るのでありますから、斯うした仕事を其の會社に行はしめて、其の間に何とか立ち行く方法を立てると云ふ位のことに整理方法をはつきりして戴きたいと思つて居ります、是は將來になりまして何十億何百億、或は何百億を超えるかも知れませぬが、之を補償しなければならぬと云ふことになると國家の經濟は立たないと云ふことになりますので、此の點はどう御考へになつて居りますか、大藏大臣の御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=18
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019・石橋湛山
○石橋國務大臣 屡屡申上げますやうに賠償關係の補償に付ては未だ何等確定して居りませぬ、併し御意見は非常に我々として參考になる點がありますので、承つて置きまして十分善處致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=19
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020・河原田巖
○河原田委員 次は細かな問題になりますが、今度預金の第一封鎖、第二封鎖と云ふ問題がありましたが、其の他斯うした僅かの問題はどう云ふ風に取扱はれる御考へでありますか、預金として取扱ふことの出來ない法人が假受金として色々將來の、まだ支拂の計算が濟まないと云ふ點で是の整理が付いて居ない、假受金になつて居ると云ふ程度は、今の新圓云々のやうな大きな問題でなく僅かの問題でありますが、新圓あたりの取扱と同じやうに御考へになるかどうか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=20
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021・福田赳夫
○福田政府委員 只今御尋ねの點がはつきり呑込めないのでありますが、假受金と致しましてそれを銀行の預金にして居る場合に於きまして、それは其の假受金を受取つた所の會社の預金として扱ふのか、假受金を渡した所の人の預金として扱ふのかと云ふ御質問でありますれば、それは假受金を受けて居る所の者の預金として扱ふ、斯樣に考へて居ります、若し銀行が假受金として受取つて居り、それを預金として扱ふのかどうかと云ふ點でありますれば、それは銀行の預金として扱ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=21
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022・河原田巖
○河原田委員 只今の問題は色々の取引の關係で何萬圓かのものが假受金として會社へ入つて居る、會社では皆それを使つてあとで品物か製品が出來た時に其の品物で支拂をしようと云ふので、假受金として會社にはありますけれども實際の金はないから、預金も何もして居ないと云ふ場合を御伺ひするのであつて、其の會社は更に預金を引受ける所の性質の會社でない、全然さうした會社でない事業會社に幾らかのもの、何萬圓かのものが茲に假受金として入つて居ると云ふ場合を御伺ひした譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=22
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023・福田赳夫
○福田政府委員 左樣な場合には第一封鎖預金、第二封鎖預金と云ふやうな關係は起りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=23
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024・河原田巖
○河原田委員 次には財産税法の第二條の極く細かな事務關係のことでありますが、字の間違ひがあるのであります、斯うした點は委員が修正すると云ふことになりますと、どうも一箇所修正すると他の所まで修正したくなるやうな氣になる、此の點はどう云ふ風に取扱はれるか、是は活字の間違ひではなく、修正云々でなく、どうされる方針であるかを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=24
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025・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税法第二條の末の「このを課さない。」は「これを課さない。」で、是は既に正誤表で直すと云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=25
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026・河原田巖
○河原田委員 正誤表は出て居ないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=26
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027・池田勇人
○池田(勇)政府委員 内閣の方に手續中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=27
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028・本多市郎
○本多委員長 河原田君に申上げますが、申合せの時間がもう切迫して居ります、此の際膳國務大臣がおいでになりましたので、先程の膳國務大臣に對する御質問を御伺ひになつたらどうかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=28
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029・河原田巖
○河原田委員 只今の誤りは今のやうになつて出て居るものとして認めることに致します、さうでないとあとで修正問題が起りますから……
次には膳國務大臣がおいでになりましたので、現在の國家の經濟に於て、來年、來々年今後の日本經濟を安全ならしめる爲にどうしてもここで各政黨政派を超越した所の大貯蓄運動を展開しなかつたならば日本の經濟は救はれない、斯う本員は考へるものであります、理由は色々ありませうが、是は略します、大藏大臣の御答辯は伺ひましたが、膳國務大臣は如何樣に考へられて居るか、若し之を實行されるとするならば其の實行方法を御伺ひしたい
それから安定本部がここに出來て居りますが、此の安定本部は、是は「アメリカ」の現在を見ますと來年六月から自由經濟になると言はれて居る、日本の安定本部も一箇年と制限されて居ります、此の一箇年の間に日本經濟を自由經濟、自由販賣に必ず導かれる確信を持つてやられるか、動ともすると一度官職に就くとどうかして一日でも大臣を長く勤めたかつたり、理窟をこぢ付けて之を引伸ばしたいと云ふ日本の國民性の惡い所があるのでありますが、此の點を膳國務大臣は如何に導かれるか、さうしてどうしても一箇年と云ふ後には必ず其の點に乘つた、それが出來なかつたならばそこで責任を執ると云ふことでなければならぬと考へるのであります、之を膳國務大臣はどう云ふ御考へでやつて居られるか、或は又飽くまで統制經濟、今まで自由經濟にならうとした所と逆に導きたいのか、そこをはつきり向ひたい、一年以後でも其の椅子に又何とか名を付けて縋り付きたい考へなのかどうかと云ふことを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=29
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030・膳桂之助
○膳國務大臣 先づ第一の點でありますが、是からの經濟の建直しに國民的の貯蓄運動の展開されることは非常に好ましいことであります、斯樣なことに依つて初めて此の非常措置の完成が出來るのだと考へて居ります、出來るだけさう云ふ運動の展開されることは希望致す次第であります、又次に安定本部が一年經つてまだ續くかどうかと云ふやうなこと、安定本部の仕事も一年の中に完成致したいと努力致して居ります、勿論統制の爲の統制を致す意味ではありませぬ、勿論自由な經濟社會の出來ますことは好ましく、統制も必要がなくなりますれば、一つ一つ外して行くのが私共の務めと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=30
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031・河原田巖
○河原田委員 極く簡單に申上げますから、もう一寸時間を御許し願ひたい、もう既に經過して居るかと思つて居ります、今の國務大臣の御答辯には了承し兼ねる點があるのであります、貯蓄運動に致しましても、具體的にどう云ふ風にやらうと云ふやうな所まで、まだ行つて居ないと云ふ程、此の經濟を自由經濟に導くことに付きましても、成行に任して行くやうな御答辯であり、それを能く噛みしめて聽きますと、どうも何とか愈愈となつて見たら一年間でやると云ふことだつたが、もう少しくつ付いて居たいと云ふやうなことが、奧齒にあるのでないかと云ふ御答辯に聽きます、さう云ふことでなく、一年間に自由經濟に導くことが出來なかつたならば、一年間の使命を持つて發足した安定本部だから、清く自分の一年間の使命に職を賭す積りでやると云ふ考へで、日本再建に御努力願ひたいのであります、重ねて御願ひ致しますが、さう云ふ考へになられませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=31
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032・膳桂之助
○膳國務大臣 御意見として拜承致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=32
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033・河原田巖
○河原田委員 斯うなりましたから重ねて一言だけ……、一體現在統制經濟をやつて居りまして、如何でありませう、東京都内には食糧がないと言つて、配給をしなくて居る、色々の「ルート」を通つて居る爲に、あの茨城縣だけに見ましても、何萬貫と云ふ甘藷が、此の雨の爲に毎日腐つて居るのであります、之を供出しようとしましても、受取れない、先の配給が詰つて居る、是が現在の統制經濟であります、是が何とかした方法に依りまして、東京都民に一人一俵でも持つて宜しいと云ふことになりましたならば、自由にやらせましたならば、是は幾日も經たない間にあの藷が腐らず食糧となるのであります、昨年あの食糧不足に、茨城縣に於きましては、申上げたくないのでありますが、五百萬貫の甘藷が途中で腐つて居ります、尚ほ農家で腐つて居るものがまだあるのであります、斯くの如き統制經濟をやりまして、國民を食糧まで塗炭の苦しみに陷れると云ふことは、見るに忍びないのであります、若しも萬一之に方法ありと致しましたならば、御聽かせ願ひたいし、あの腐つて居る甘藷を腐らないと云ふならば、おいでを願つて見て戴きます、そこで獲得をしたいと云ふのが、私の要求する所でありますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=33
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034・膳桂之助
○膳國務大臣 甘藷の搬出及び配給に付きましては、さう云ふ遺憾のないやうに運輸、農林當局と安定本部が中心になりまして、折角今までも方法を講じ、尚ほ是からも講じつつある譯であります、さう云ふことの出來ないやうに萬全の策を講じたいと存じます、又今の御話のやうなことが起きて居るとしますれば、それは誤つた統制の仕方をして居るのでありまして、物の配給の「ルート」、又配給の方法等も、是正して參るべきものが多々あると存じます、さう云ふ點は是から十分に注意して參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=34
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035・河原田巖
○河原田委員 餘り頼りない所の答辯でありまして、是れ以上時間を此處で費しますことは、他の議員の關係と、時間を委員長から強く今朝注意致されましたから、此處で打切りたいと思ひますが、各委員の方々に於かれましても、只今申上げた如き統制經濟の状態になつて居りますので、皆さんの協力を得まして、斯くの如き弱い所の政府を、何とか此の委員會の外に於きましても鞭撻して、さうして弱い大臣を援けて、自由經濟に是非共導かなければならない、大臣の所信は餘りにも薄弱であります、頼りないと思ひます、腐つて居るものを、食はせない、其の方法が惡い、折角やる、現在腐つて居るぢやありませぬか、斯う云ふのでは我々議員としては國民に對して申譯がない、そこで各議員に於かれましては、何とか御贊同願ひたい、さうして日本經濟を自由經濟の方向に導く、尚ほ一面に於きましてああした腐つたものを利用させる、東京都民の如き即刻一人一俵づつを保管して戴く、幾らでも戴く、あるのです、斯う云ふ方向にしたいと思ひます、委員諸君の御贊成を願ひたい、當局は餘り頼りない點もありますので、此處で強く責めましても仕樣がありませぬから、打切ることに致します、後で總理大臣の答辯だけ御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=35
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036・本多市郎
○本多委員長 川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=36
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037・川島金次
○川島委員 洵に卑近なことを申上げるやうでありますが、凡そ政治と云ふものは、殊に敗戰の現在の日本の政治と云ふものは、國民の凡そ擧げて全體の人々が、非常なる虚脱の状態にあるのみならず、大部分は極めて其の希望を失つて居る人もある、又一面には經濟の諸條件等に包圍されまして、所謂意氣が沮喪して居る面も少しとしないであらう、更に又國民の行くべき道に付て、將來我々國民は政治的にも、經濟的にも、何處へ行くべきであらうかと云ふ事柄などに付て、迷つて居る國民も、是亦極めて少くないのではないかと思ふのであります、政治の本道と申しますか、政治家の使命と申しますか、さう云ふ事柄は、凡そ迷つた國民に對して、其の國民にはつきりとした道知るべを與へること、希望を失つた國民に希望を與へ、明日への光を與へることでなければならないと思ふ、意氣を沮喪して居りまする國民の大衆には、勇氣を與へるに足るだけの確乎たる政治政策を闡明すると云ふことでなければ、本當の政治ではないのだ斯樣に考へて居ります、然るに現内閣竝に前内閣以來の政治の方法を私共が靜觀して居りますると、我々の政治に對する觀點に立脚して見ますると、寧ろ迷つた國民に對して一層に迷はしめ、沮喪した意氣の國民に對して、一層に其の意氣を沮喪せしめるやうな事柄、希望を失つた國民に對して一層希望を失はしめるやうな事柄が、間々起つて居ると云ふことを、私は痛感を致して居ります、其の一つの卑近な例を申上げますると、今日問題になつて居りまする戰時補償の打切の問題、之に伴ふ企業の再建と云ふ問題は、昨年末以來國民の間に、心ある人々から強く論究され、論議され、或は要望されて參つた事柄であることは、御當局も御承知のことと思ひます、然るに其の事柄が決定を見たのは漸く今日であつて、其の間に既に凡そ十箇月にもなつて、初めて、案が具體化して來たと云ふ有樣であります、財産税の如きに於きましても、是れ亦本年の初頭に於て、非公式でありますけれども、政府が聲明したにも拘らず、其の財産税が具體的になつたのは是れ亦十箇月も後に於ける今日になつたと云ふ始末である、政治と云ふものは、一日も早く國民の行くべき道を明確に具體的に闡明して、其の政策に對して國民全體の精力と物質の力を結集することにあるのではないかと私は思ふ、然るに只今申上げましたやうに、國民の輿論が其處に向いて居りながら、政府の決定する施策と云ふものは何時も半年後であり十箇月後であると云ふ其の事柄は、其の間如何に心ある國民も心なき國民も併せて惑はしめ、併せて失望せしめ、併せて折角の意氣盛んならんとする國民をして寧ろ意氣を沮喪せしめると云ふ結果になつて來たか知れないと思ふ、更に又もう一つの卑近な例を申上げますならば、今既に全國農村から供出を實現しつつあるに拘らず、農村の方面から供出されて居る所の新米穀年度の飯米の供出に當つても、未だに政府は此の米穀の價格と云ふものを決定されて居らない、既に農村から陸續と愛國の精神の發露と致しまして新米が政府の手許に買上げられて居る、而も農村は都會地の人達の窮乏と缺乏に對して深甚なる理解と同情に基いて率先供出に協力して居ると云ふ方面が少くはないのに拘らず、先頃來政府に於ては、米價は本年度に於ては六百圓にするであらうと云ふことが新聞紙上に傳へられて居る、之に對して經濟安定本部から所謂横槍が入つて、それは罷りならぬ、併し三百圓は拂ふが、あとのことは決定して居らないのだから、一應供出だけはして貰ひたいと政府は農村に向つて供出を懇請して居る、一體物の取引に於て、如何に政府が物を買上げる側に立つと雖も、物の値段を決めないで其の供出を懇請し、或は強制に近い供出の態度を執ると云ふことは、正常なる取引の觀念から言つても私は妥當ではない事柄であると思ふ、其の事柄に依つて農村の大衆に米穀の供出に對する相當な影響が及んで居るのではないかと思ふ面が數々少くないのであります、更に、政府が企業再建の事柄に付て極めて熱心であることは私共は諒とするのでありますが、此の企業の再建に當つても、其の一環を成す基礎的な問題である所謂運賃の問題の如きも、既に一、二箇月前運輸省に於て、荷物運賃は三十割、旅客運賃は二割五分の値上を内定して居ると傳へられて居る、而も其の實施の時期は今月の一日であると新聞紙上傳へられ、又政府筋も非公式に聲明されて居る、それが一日になりましても運賃の値上は如何になるのか、未だに決定の時期に達して居らないと云ふことを私共は承つて居る、一體此のやうな政治であつては、國民を納得させ、國民を安心させ、所謂敗戰日本の再建に總力を結集するやうなことに持つて行くことが簡單であると私共は考へられない、之に對して先づ膳國務相から只今私が申上げました事柄に付ての御所見を一應承つて見たいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=37
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038・膳桂之助
○膳國務大臣 政治の要諦が、國民の氣持の機微を掴んで、之を意氣の沮喪することなく善導して參る、是は戰後の國策を指導する上に必要であること御説の通りであると思ひます、唯、悲しいかな日本はまだ敗戰の結果聯合軍の占領治下にありまして、色々政治を動かす上に付きまして日本政府のみで決定し得ない問題も多々あるのであります、政府は萬全の努力を拂ひまして政治の運行の早からんことに努めて居るのでありますけれども、やはり已むを得ない部分もあるのであります、尚ほ我々は其の點の難局の打開に付きましては全力を擧げて居るのであります、其のことに付ての御諒解が得たいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=38
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039・川島金次
○川島委員 私の只今の後段の方の質問に對して御答へがないのでもう一遍繰返しますが、總體的には御答へがあつたやうでありますが、具體的な問題の米價の事柄、是は本日の毎日新聞紙上に依りますと、昨日の午後零時半から閣議を開いた結果、米價は五百五十圓に内定致したと云ふことが報道されて居ります、私は、此の米價の決定の如何と、更に延いては主食糧の配給の増配されるかどうかと云ふ事柄は、延いて日本再建の企業の上にも重大密接な關係があると考へて居ります、其の立場から御尋ねを致すのでありますが、昨日の閣議で協議の結果米價は新聞紙上報道された通り五百五十圓に内定致したものでありませうかどうか、それを改めて御伺ひ申上げたいと思ひます、而も其の五百五十圓の米價に對して消費者價格は大體石當り四百五十圓と内定した、斯う云ふ事柄も報道されて居るのでありますが、それに對しての御意見を承り、併せて、只今申上げました産業再建の上にも是亦重大な關係を持つて居りまする運賃の値上問題、當初十月一日に實施すると云ふことは殆んど確定的であつた譯でありますが、それが一體何時實施されるのであるか、それともあの値上實施案と云ふのは一應中止をすることになつたのか、是は非常に關係が大きく且つ廣い問題でありますので、改めて御伺ひを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=39
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040・膳桂之助
○膳國務大臣 米價の問題に付きましても、鐵道運賃の問題に付きましても、政府部内で色々研究はして居るのであります、既により早く決定さるべきであることは當然であつたのでありますが、是も色々な問題に關聯を持ちますので、各方面との協議を要しますので、まだ確定發表する時期に達して居らぬのは甚だ私も遺憾千萬に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=40
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041・本多市郎
○本多委員長 川島君に申上げますが、時間もありませぬし、委員會のことでありますから、成べく付託せられて居る法案に直接關係のある質問に入つて戴くやうに希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=41
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042・川島金次
○川島委員 折角委員長の御注意でありますが、是は此の問題と關聯して極めて重大であると私は確信をして居ります、そこで御尋ねを申上げて居る譯でありますから、御諒承を願ひたいのであります、只今國務相は發表の域に達して居らないと云ふ御話のやうであります、傳へる所に依りますと、運輸省の値上實施案と云ふものに對しても、同時に米價の問題に對しても、其の筋と云ふよりは寧ろ經濟安定本部の考へ方に當該當局との相違點がある、そこに此の決定の正式な發表を見ることにならないと云ふ重大な原因がある、斯う云ふことを我々は一應耳にして居るのであります、そこで併せて其の事柄と同時に、經濟安定本部に於きましては、曩に農林當局が原案として持出しました米價の六百圓説、それから運輸省に於ける貨物運賃の三十割、旅客運賃の二割五分の値上、安定本部は此の値上を適當と認めてるのか、それとも此の米價案に對して、或は運賃値上案に對しては不當であるので、それをもつと引下げることが必要だと云ふ見解に基いて居らるるのであるか、其の點を一つ此の際答へることが出來ましたならばはつきりして戴きたい、斯樣に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=42
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043・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の御質問の中に、米價を農林省で決めた、或は鐵道運賃を運輸省で決めたと云ふ風に仰せられて、何か安定本部の横槍であるかのやうな御氣持の御尋ねでありますが、元元米價も鐵道運賃も、是は物價廳で定める權限を持つて居ります、物價廳では色々の物價の點と睨み合せて考へ、尚ほ先程申します通り、手續又研究の進まぬこともあります、遠からず發表することが出來ようかと思ひます、農林省或は運輸省でどう云ふ研究があつたと云ふやうなことに付て申上げることも出來ませぬが、是は參考には致しますけれども、必ずしも物價廳が同一の考へを持つかどうかと云ふことは別問題であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=43
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044・川島金次
○川島委員 折角の御尋ねでありますが、御答へが出來ないと致しますれば已むを得ませぬので、此の點は打切つて置きます、そこで私は大藏大臣に御伺ひを申上げたいことがあります、大藏大臣は先般來軍需補償の打切、企業の再建を圖つて、軈て新圓一本の經濟を確立致したい、而もそれは極めて急速の期間に於て實施を致したいと云ふ洵に確信のある心強い御話が屡屡洩れて居ります、大藏大臣の考へて居りまする如く戰時補償の打切、企業の急速の再建を圖つて、將來新圓一本の經濟に落付かせると致しましても、一體其の時期と云ふものはどの程度の所で我我は考へて置いて宜いのか、是は財界又一般民間の企業界に於ける人々の非常に懸念をして居る所であります、同時に一般國民大衆の中に於ても、此の問題は非常に懸念の中心となつて居ります、恐らく具體的に大藏大臣が其の時期を明確に御示しになられると云ふことは、注文をする私共の方が無理と思ひますが、大體當局としてさう云ふ意思がある以上は、其の意思を實行に移す大體の見透しと大體の落付先と云ふものを持たれて居るのではないかと私共は御期待を申上げるのでありますが、其の點を御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=44
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045・石橋湛山
○石橋國務大臣 私が今御話のやうな考へを抱き、其の方針で施策を進めて居ることは事實であります、但し時期のことは、御質問の中にもありましたやうに、中々是ははつきり今の段階では申上げ兼ねます、唯其の區別の撤廢は一時にどかつと必ずしもやる必要はない、逐次やると云ふ方法もあります、それ等のことは今實際の經濟界の動きと見合せて始終數字的にも研究を致して居りまして、成べく早い時期に逐次其の區別を撤廢して、色々の弊害或は不便を除きたいと考へて居ります、之を全部撤廢が出來る時期はいつかと言はれますと、一寸申上げ兼ねる、兎に角只今補償の打切或は企業の整備或は金融界の整備の状況を見つつ其の時期を定めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=45
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046・川島金次
○川島委員 大臣の御答辯に依りますと洵に抽象的で、隨ひまして國民の側に立ちましては、聊か納得のし兼ねる點が多いのであります、其の時期に付てはつきり申上げられぬと云ふことでありますれば、是れ亦已むを得ないのであります、そこで私はもう一言大臣に之に關聯して御伺ひ致したい、それは新圓一本の經濟にすると云ふ御方針の下に戰時補償の打切、それに關聯する企業の再開、其の再開後に於ける財界の事情等を含めて其の御方針を研究しながら適當な時期に實施したい、斯う云ふ事柄だと私は承知を致したのでありますが、さうなつて來ると、私共の見解を以て致しますれば、新圓一本の經濟を確立すると云ふことは、國民が希望して居るやうな急速な時期に於ては到底實現が不可能ではないかと私は想像する點があるのであります、さうすると其の一面に於ては、我々國民は今以て所謂五百圓生活の管理生活を餘儀なくされて居る譯であります、然るに一方に於ては、大藏大臣の屡屡言明せられました如くに、通過の膨脹と云ふことは餘り心配になるものではない、生産再開の目的が達成されればさう云ふ問題は心配にならない、成程大藏大臣の言はれるやうな見解に立つてではさうでありませうが、一方に於て國民の側から申上げますならば、只今私が御尋ねをしたのでありますが、一番重要な米價も三百圓でないことだけは確實であらうと私は思ふ、六百圓になるのか五百圓になるのかは別でありますが、米價を適當に吊上げる政策を行はなければならぬと云ふ主觀的な、客觀的な情勢がもう既に熟して居ると私は見て居りますので、米價の或る程度の大幅の値上は晩かれ早かれ實現を致すものであらうと考へます、一方更に鐵道運賃の如きも、是れ亦晩かれ早かれの問題である、政府が屡屡言明された通り、日本經濟再建の基礎と云ふものは米價を中心として、又石炭の價格を中心として物價の安定點を求めたい、斯う云ふ風に我々は承知致して居るのでありますが、さうなつて參りますと米價、運賃等の値上に伴つて、他の物價の値上りも亦一方通貨の増發に伴つて必然の勢ひとして現はれるのではないかと私は思ふ、其の場合に、從來政府の行つて參りました通り、將來も現在同樣に國民大衆の生活を五百圓の枠で嵌めて置いて、それが適當な政治であるとは私は思へないのであります、一方只今申上げました如く、新圓一本の經濟の實現を圖る爲には將來相當の時期を要する、其の時期の間に五百圓の生活の枠を嵌められて、其の中で更に一般の物價の値上りに遭遇しながら生活をして行かなければならぬと云ふ國民大衆がある、其の場合私は新圓一本の經濟の確立が相當の時期を要すると云ふ建前の下に於て、大藏大臣は其の期間の暫定措置として只今實施して居ります所の五百圓の枠を──曾ても私は御尋ねを申上げたのでありますが、それを或る程度緩和をしてやると云ふ考へ方を持つて居られないのか、それを先づ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=46
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047・石橋湛山
○石橋國務大臣 時間を節約する爲め、結論だけ申上げますが、其の御質問の最後の點も考究致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=47
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048・川島金次
○川島委員 考究と言はれるのでありますが、一體そこが國民の要求であり、知りたい所なのであります、折角政府は其のやうな研究をされ、考へを持たれて居るのでありますならば、出來れば具體的に大體の時期の見透しと云ふものを發表されることが、私は政治を行ふ上から言つても非常に必要なことであり、大切なことであると思ふのでありますが、何だかそれに對して具體的に大藏大臣は御話を致して戴けるやうな考へはないのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=48
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049・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今の所は一寸未だ其の時期等に付て、又どうかするかと云ふことも具體的に申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=49
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050・川島金次
○川島委員 私の質問に對して、初めから抽象的で、此の程度では國民の恐らく納得し出來兼ねる事柄になつてしまふのであります、御答辯が出來ないと仰しやいますならば是れ亦已むを得ませぬので、後日に機會を得たいと思ふのであります
そこで更に財産税の問題に移りまして、一言御伺ひを申上げたいと思ふのであります、今度の財産税は大體十萬圓を免税點として、總額に於て四百三十五億圓の税を徴收することになつた譯であります、此の財産税の抑抑の初めの計畫では、政府としては凡そ一千億圓の税を徴收して國債の償還に當てると云ふことが前内閣以來、恐らく只今の大藏大臣に於かれましても、就任の當初に於かれましては左樣なことを考へに置かれて居つたのではないかと想像を申上げるのであります、然るに財産税の問題が表面化して、茲に十箇月後に於きまして、遂に財産税は國債の償還に當てることを變更されまして、所謂政府の赤字補填財源と云ふことに決定的になつたやうであります、そこで政府は最初に一千億を豫想し、一千億の税額を徴集する際には免税點を二萬圓にして、それ以上の財産を對象として財産税を徴る、其の徴る方法と致しましては、言ふまでもなく財産税竝に法人を引括めた財産増加税をも加へた方法に依つて税を徴收することに當初はなつて居つたやうに私は承知して居つたのであります、然るにそれが幾度か變轉を致しまして、遂に法人に關する限り是は見合せ、個人の財産税のみを以て税の對象とすることに何時の間にか變更されて參つた、其の場合に免税點を十萬圓に致したと云ふ事柄の論議は別と致しまして、先日大藏大臣が議會で、何處の委員會か覺えて居りませぬが、明言された所に依りますと、此の四百三十五億圓の財産税を徴收するには、十萬圓以上の財産を對象として大體に於て入ると思つて居るが、萬一豫定の收入がない場合には、十萬圓以下五萬圓以上の財産所有者を對象とするやも知れない、斯う云ふことを言明されたやうであります、一體此のやうな重大な税を徴收する場合に於て、政府が基準として決定したことが完全に遂行されると云ふ確乎たる基礎見透しの下に於て斯う云ふ事柄は行はなければならないと考へるのであります、然るに大臣の言葉に依りますと、只今申上げました如く四百三十五億圓が入らなければ、十萬圓以下五萬圓以上の財産を對象にするかも知れないと言はれた、私は斯う云ふ事柄を國民の一般が聞いた場合に、一體國民はどのやうな感じを以て此の言葉を聽くであらうかと云ふことを私は想像して餘りあるのであります、果して大臣の御言葉の通り、一體十萬圓以上の財産を對象としたのでは現在四百三十五億の税を徴收することが困難であると云ふ見透しを既に確實に持つて居られるのであるか、其の點に付て御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=50
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051・石橋湛山
○石橋國務大臣 何故に私があのやうな聲明を致したかと云ふことの理由に付きましては、曾て相當詳細に申上げたことがありますから之を繰返しませぬ、見透しと致しましては萬一四百三十億圓程度の財産税の收入がない場合には、十萬圓以下のものにも財産税を課けなければならないことが起るかも知れぬと云ふだけのことでありまして、見透しと致しましては左樣なことは絶對に起らない考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=51
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052・川島金次
○川島委員 大變確實な御話でありますが、私の見解では洵に心配な點がない譯ではありませぬ、一例を擧げて見ましても農地の財産の問題に付ては、大體農地調整法に基く價格が決められて居りますので、之に對する徴税は極めて簡單ではないかと思ひます、農地以外の山林、原野、宅地、建物、斯う云つた問題に關しましては、未だに倍率が決つて居ない、賃貸價格の何倍と云ふことだけは言はれて居るやうでありますが、其の倍率を何處に求めるか、都會に於ては此の倍率、小都市には此の倍率、或は建物の形式樣式に依つて色々區別を設けられると云ふことになるのでありませうが、さう云ふ事柄に付て此の財産税法案が上程せられたに拘らず、一番大切である所の賃貸價格に對する倍率が未だに決つて居ない、さう云ふことで總額四百二十五億圓が果して何處から出たものであらうと云ふことすらも私共は疑ひたくなるのであります、さう云ふ事柄に付てまだ決つて居らないのでありますか、大體概要でも宜しいから其の案がありましたならば此の際示して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=52
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053・石橋湛山
○石橋國務大臣 無論政府は隨分長いこと色々研究して居りますから、此の四百三十億圓は──十萬圓以上の財産に對して今囘の法律に依る税率で課する場合には是だけの歳入があると云ふことは十分研究致して間違ひのない算盤を取つて居ります、隨て今の評價の問題なども見當は付けて居ります、併しながら是は法律にありますやうに、委員會に掛けて間違ひがないやうに、民主的である爲に委員會に掛けて此の倍率などは決めることになつて居りますから、そこに政府として見る所の案を出して御審議を願ふ、斯樣に致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=53
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054・川島金次
○川島委員 只今の御話では、委員會に其の評價の問題が當然提示されるのだと云ふ御話でありますが、然らばもう委員會に提示なさる所の大體の基礎案と言ひますか、概括的な案と云ふものは御持ちではないかと私は想像されるのでありますが、御持ちでありましたならば一つ參考の爲に御示し願ひたい、斯樣に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=54
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055・石橋湛山
○石橋國務大臣 それはどうも遺憾ながら、やはり正式に委員會が成立した時でないと、此處で發表することは出來ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=55
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056・川島金次
○川島委員 どうも大臣の御言葉とも思へないのでありますが、委員會ならば其の基礎案が發表出來るが、國民全體の府であるべき議會に於てそれは發表を見合せなければならぬと云ふ事柄は、私共には納得出來ない、寧ろ私は此の議會、國民の注視となつて居ります所の、關心を持つて居ります所の議會に、さう云ふ案があれば潔よく提示すべきが私は政治ではないかと思ふ、議會には提示されない、委員會には提示される、斯う云ふことがあれば、私は前後矛盾の感があるのではないかと思ひますが、御考へ方を一つ直して戴いて、此の議會で御發表が出來れば願ひたい、斯樣に思ふのでありますが如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=56
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057・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税收入の四百三十五億圓を見込みます場合には、主税當局としては大體の見當は付けて居ります、併し是は非常に國民の關心の的でありまするから、議會で發表する程度にまだ至つて居りませぬ、單に主税局の收入見積りの大體の標準程度でございますから、只今發表しない方が却て宜いのではないかと思ひます、今少し時間を借りまして其の基準を固めたいと云ふ氣持がございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=57
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058・川島金次
○川島委員 どうも折角の國民の代表の府である議會に於て、斯う云ふ重大な問題が發表出來ないと云ふことは、洵に斯う云ふ重大な法案の審議に當つて、我々は非常な別な考へ方を持たなければならぬと云ふ感じを深く致すのであります、當局の考へ方が我々の考へ方と違つて居るやうでありますから、私は敢て此處で追究を致しませぬ、但し又他の機會がありますれば重ねて御尋ねを申上げたいと思ふのでありますが、それは是れ位に止めて置きたいと思ひます
次に大藏大臣に御伺ひを申上げますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=58
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059・本多市郎
○本多委員長 川島君に申上ますが、政府側で答辯を追加したいと云ふ申込がありますから、此の際大藏大臣に發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=59
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060・石橋湛山
○石橋國務大臣 川島君の言はれるのは御尤でありますが、今主税局長から申しましたやうに、事務的に今色々の數字を集めてやつて居るのであります、是は委員會に掛けて討議しないと確定しないものでありますから不確定のものを此處で申上げることは却て色色の惑ひを起し弊害がある、斯う思ひますから、其の點は一つ御諒承を願ひます、なにも此處で發表するのを政府が吝んで居る譯ではありませぬが、非常に「デリケート」の問題だけに、確定したものにしないといかぬ、斯う云ふ考へでありますから御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=60
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061・川島金次
○川島委員 折角の御答辯でありますが、どうもさう御答辯がありますともう一言申上げたくなるのでありますが、一體議會が要求しない問題でも米價等の如き問題、或は運賃の値上げの問題等は頻りと議會が要求される前に既に新聞に傳へられ閣僚の談話なども發表されて居る、然るに其の問題は少くとも私は本日我々が審議して居る法案の骨子である、魂であるとさへ言へる基礎である、其の基礎の事柄に付て議會が要求しても教へることが出來ないと云ふ考へ方は、どうも我々の考へ方とは一致出來ない感じであります、唯大藏大臣の御苦心の程は人間的に御想像は申上げますが、政治的に考へてさう云ふことは私共は一致した見解になり得ないのであります、まだ今日午後もあるでありませうから、御考への上發表が出來ることでありましたならば重ねて發表して戴きたいことを私は希望致しまして其の問題は打切ります
次に軍需補償の打切に伴ひ企業の再建を圖ることは、即ち政府の言ふ經營の合理化と云ふものを必然的に實施しなければ眞の健全なる、而も活溌なる生産の再開は望めないと云ふことは言ふまでもない事柄であるのであります、そこで政府、殊に經濟安定本部若くは厚生省等から傳へられる所に依りますと、此の經營の合理化が即ち勞働者の馘首と云ふことに繋つて居るやうな印象を愈愈濃くして居ることだけは事實であります、併しながら勞働者のみの犧牲に於て企業の活溌健全なる再開を圖ると云ふことでは、折角の此の國を擧げてと申しても過言でない此の戰時補償の打切をやり、企業の整備をやり、金融機關の整備等をもやらねばならぬ程の重大の所謂犧牲を斷行して遂行しなければならぬ此の生産、企業の再開問題、それを單に經營の合理化と云ふ美名の下に隱れて動もすればそれは一に懸つて勞働者の馘首、即ち勞働者の犧牲に於て行はれると云ふやうな結果を見ることを我々は非常に心外に堪へないのであります、傳へ聞く所に依りますと、事實の有無は分りませぬが、大體の有力な工場に於きましての今度の戰時補償の打切、企業の再建の計畫に於ても、出來るだけ甘い考へ方の下に於て、損害を輕減する、さう云ふことに相當努力し相當惡智慧を絞つて居る方面もないではないやうに私は聞き及んで居る、若しも其のやうなことになつたのでは、私は此の戰時補償打切も企業の再建問題も佛を作つて魂を入れない結果になるのではないかと心配する一人であるのであります、隨て其の企業の整備に關する所の監督と云ふことは國民と共に、政府と共に嚴重に是はしなければならないと云ふ感じが強いのであります、其の際に於て政府は單に認可制と云ふやうなことで之を遂行するやうな考へ方のやうでありまするが、私は國民の力の協力を得てさう云つた企業の整備再建に關する所の監督と云ひますか、其の實施に對する所の嚴重なる、嚴正なる實施の出來るやうな有力な具體的な一つ機關を設ける必要があるのではないか、斯樣に思ふのであります、さうでないと、折角企業再建を圖つた形にはなつたが依然として水膨れ資本が殘つて來た、水膨れ資本を抱へて居つたのでは其の工場の生産價格と云ふものは依然として安からう筈はないのであります、一面に於ては勞働者の優遇等と相俟ちまして、愈愈政府の考へて居るやうな生産物價と云ふ點には嵌まり込んで來ないのではないかと云ふ虞は多分に私は有して居るのであります、そこで此のやうなことを心配するのでありますが、當局は之に對してどのやうな對策を御持ちであるか、之を御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=61
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062・石橋湛山
○石橋國務大臣 企業整備は現在終戰後の實際の實態資産若しくは企業の實際の活動と云つても宜いかも知れませぬが、それに合せて經理面を整理する、詰り理論的に申せば今度のは經理の整理でありますが、此の整理に依つて失業者が餘計に現はれる、勤勞者の負擔に依つて整理をすると云ふことはない筈なのです、實際は若し勤勞者に失業者が現はれるとすれば、それはもう整理があるなしに拘らずやらなければならなかつたことなのです、それは唯偶偶今までそれをずるずるに合理化をして居ないものが、今度の經理の整理を機會としてやると云ふことにに過ぎないものと私は信じて居ります、併しながら御話のやうに無論此の經理の整理と云ふことは甚だ重大なことでありますから、そこで評價基準と云ふやうなものを決めます場合には、政府が勝手に決めると云ふことをせずに、然るべき機關を作つて公正に定める、さう云ふ手段を執つて居る譯であります、唯非常に澤山な企業が一々其の認可を受けて來る場合に、之を審査すると云ふことは是は一つの基準に基く事務的の仕事になりますので、やはり是は政府がやるより外にやりやうがない、斯樣な譯で認可制度に致して居る譯であります、御言葉の通り經理形態の整理が如何なる方法で行はれるかと云ふことは、非常に重大でありますから、政府も決して無暗に水膨れにすると云ふことはさせませぬ、同時に又それかと云つて無暗に資産の評價を辛くすれば或る面に不當に損害を與へると云ふことになりますから、兩者を十分に考慮致した上で基準を作つてやる、それから其の基準に依つての認可の場合に於ても左樣な觀點から嚴重にやつて行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=62
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063・川島金次
○川島委員 只今大臣の御言葉では企業整備が必然的に失業者と云ふ問題に來て居るのでなく、斯う云ふ事態にならぬでも當然失業者が出るのだ、斯う云ふ御考へ方のやうでありました、其の事柄に付ても私は多少論議の餘地も持つて居るのでありますが、それは別の機會に讓つて、問題は企業の再建が假に帳面の上と形の上で出來たと致しまして、私は其の經理關係と形の上だけの整備だけでは、是は當然活發なる産業再建と云ふものは不可能であることは言ふまでもないことであらう、そこで一體さう云つた帳簿上或は形式上の整備を經濟界になして、一體政府は其の後に必要なる整備された企業體の必要なる所の有力な資材等、或は勞働者の配置轉換等の問題、或は又副資材の設備の囘收等の問題に付て相當な御見込を立てて居られるのではないかと思ふのであります、固より經濟の民主化に於ては經濟界自體が創意と工夫と努力に依つて、經濟企業の再建に當らなければならぬと云ふことは言ふまでもありませぬが、政府に於ても聊か其の點に付て確信と指導力がありませぬと、形式上の整備が濟んでも直ちに經濟の活溌な動きと云ふものは私は望めないのではないかと思ふ、そこで主として專ら資材的に例へば石炭或は又電力、鐵鋼、其の他それに伴ふ所の所謂工場生産に必要なる資材等の問題に付て確實な配分計畫を今より立てて置くべきではないかと思ふ、又恐らく是は政府に於ても立ててあるのではないかと御想像を申上げるのでありますが、其の點を一つ御考へがありましたならば此の際具體的に御知らせを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=63
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064・膳桂之助
○膳國務大臣 御尋ねの點は政府の最も苦心致して居ります點であります、各各の企業をどう云ふ風に再建するか、是は政府でああしろ、斯うしろと云つて一々手引をするよりも、寧ろ企業自體の一つの盛上がる計畫、是から參るものだらうと思ひますが、此の點は中々一つ一つの企業でも困難な點もあります、やはり其の當業者が集まつて全體として日本の將來の産業に、例へば製鐵なら製鐵と云ふものが、どれだけの「ウエート」を持つてどう云ふ現状の關係になつて居るかと云ふことの研究、又棉業なら棉業に付ても、さう云ふ色々の計畫が現にもう商工省指導の下に行はれて居ります、政府全體としましてはさう云ふやうな計畫が段々自主的に出て來る、其の總ての計畫を見合ひました上で、どうせ足りない資材でありますから、各各の産業の部門に悉く滿足の行くやうな原料材料を供給することは實際上出來ませぬが、併しながら國内にある物、是から製造される物、更に不足分に付きましては聯合國等に懇請して、今色々輸入の計畫は致して居りますが、斯う云ふやうな諸資材をば、各各の産業の間にどう云ふ風に配分するか、是は現に今計畫を立てつつあります、併しながら是もやはり足りないものでありますから、資金等、經濟の再建の基礎的なものから、又一方には國民生活の必需と云ふやうな點から、又輸出物資の調達と云ふやうな點から見まして、重點的に是は配分する必要があるのであります、幸ひ總動員法はなくなりましたけれども、臨時物資需給調整法の制定がありますので、此の法の運用の下に、今御尋ねのやうな點は、折角立案し既に第三四半期の分に付きましては、さう云ふやうなものも私共安定本部の手許でやつて居ります、其の點に付ては最も力を入れて研究しつつある點で、既に實行しつつあると云ふことは今申上げた通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=64
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065・川島金次
○川島委員 そこでそれに關聯しまして大藏大臣に御伺ひしますのは企業に對する資金の問題であります、成程政府に於ては復興金融金庫を設けまして、事業の再開に相當な熱意を示して居るやうな感じではありますが、一體政府で只今考へて居られるやうな程度の資金の用意では整備されました全日本に於ける中小工場の全き再開は、此の資金の額では不可能ではないかと思ふのであります、更に又銀行の實際の窓口に於きましても、色々の具體的な事情を聽いて見ますと、中々現在の中小工業に對してさへも貸澁る嫌ひが相當事實に於てあるのであります、大臣は何時も其の方面の資金の放出に付ては、大膽率直に勇氣を出してやらせると云ふことを言つて居られますが、銀行に於ける實際の窓口の状態では、其の言明の寧ろ反對の形を取るものさへも往々にしてあるのであります、而も今日の中小工業の現状と云ふものは、有力な擔保等は寧ろ皆無に近いものが多いのではないかとさへ想像されるが、銀行が安んじて金を出すのには有力な擔保が欲しいと云ふことは當然の事柄でありますけれども、何と言つても日本の企業の再建を速かに活溌に圖らうと云ふのには、何はともあれ思ひ切つた資金の融通と云ふことは當然やらなければならない、然るに只今申上げましたやうに、大藏大臣の屡屡言明されたことと實體とは相違して居る點が、各銀行の窓口に多い現象であるのであります、之に對して大臣は其の關係銀行に對して十分な注意を喚起して、速かに簡易な方法に依つて或る程度の資金が圓滑に融通される所の對策を立てて置くべきではないか、斯樣に思ふのでありますが、御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=65
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066・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は屡屡申上げましたやうに、無論生産再興の爲には十分の資金を供給致します、復興金融金庫は現在の百億圓で、足りなければ更に又豫算に於て御追加を願ふことになる、又さうなることを希望します、唯問題は實際に金を借りる者と貸す方とは何時もさう云ふ苦情がある譯でありますが、事實を調べて見ますと復興金融金庫の今までの暫定措置の場合などに於きましても、借りる方は實際に復興の力がないとか或は計算が粗雜である、斯う云ふ場合が中々多いのであります、無論普通の金融機關では現在の資金状態でありますから貸し澁ると云ふ傾向があることは認めますが、資金を借りに行く人の苦情を其の儘に受取るだけでもならない場合が中々ある、斯う云ふ譯でありますから今後もやはり苦情は或はあるかも知れませぬが、併し復興金融金庫に關する限りは現在に於ても相當よくやつて居りますし、それから今後本式に是が發達致しますれば私は眞實の意味に於ての産業資金の供給に本當の意味の苦情があるやうなことは絶對に起らない、斯樣に信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=66
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067・川島金次
○川島委員 更に御伺ひ致しますが、其の場合に當局は復興金融金庫に對して、融資すべき對象となる工業の業種別等を豫め内示して居りますか、或は業種の序列等に付て内示でもして居るのでありますか、具體的に申せばどの産業に對しては特に取計らへと云ふやうな序列を設けて、それを復興金融金庫に對して内示でもあるのであるか、それを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=67
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068・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今の所まだ左樣なことは致して居りませぬ、唯大體の方針として中小企業の方面に付ては特に力を注ぐやうに機構を作ると云ふことで、近く復興金融金庫の色々の人的機構を作らうと思つて居ります、尚ほ御承知のやうにあれには有力な委員會が附きまして、議會からも「エキスパート」として若干の方に御參加を願ふことになつて居りますが、左樣な方針或は今御話のやうな若しも産業に付て序列を設けると云ふやうな必要があるとするならば、其の委員會等に於て研究して、さうして萬全を期したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=68
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069・本多市郎
○本多委員長 川島君に申上げます、大分豫定の時間を超過して居りますが、成べく殘餘の質問は簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=69
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070・川島金次
○川島委員 議事進行に付て一寸申上げます、此の委員會に上程されて居ります法案は國家再建の基礎ともなるべき重大な案件であり、そこで委員長は頻りと今日中に此の論議を終りたいと云ふ御希望のやうであり、委員會の一部の人もそれを諒承されて居るやうであります、私共の方ではまだ委員長からさうした具體的な御話がありませぬので、更に私以外に社會黨からは二、三の質問を通告されて居る方もあらうと思ひます、其のやうな立場で此の重大な法案に對しては委員長の御趣旨には背くやうで宜しくないのでありますが、論議を出來るだけ盡したいと云ふのが私共の考へ方になつて居るのであります、隨て出來れば私竝に私以外の我我仲間の質問者に對して或る程度の時間を與へられんことを希望するのであります、委員長の御話を承つてから更に私の質問を進めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=70
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071・本多市郎
○本多委員長 今のあなたの御話のやうな心組で進行して居ります、唯併し委員會として議會の會期がありまして、それを目標として進んで居りますから、只今の所では貴族院の審議期間等も徳義上考慮しなければなりませぬし、努めてさう云ふ方面に支障のないやうに進行したいと思つて居りますが、盡すべきは盡すと云ふ點に於ては全然同感であります、でありますから成べく多くの人に、時日は短くても質問をして戴くと云ふ見地から、一人々々質問される時間を成べく短く御願ひしたいと云ふことを御相談して居るのでありまして、此の質問は其の仕方に依つて相當簡略に要點を突いて出來ようと思ひますので、さう云ふ點に付て一つ十分御研究願ひたいと云ふ意味であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=71
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072・川島金次
○川島委員 更に話を轉じまして膳國務大臣に御伺ひしたい、既に日本の國内には相當莫大なる數に達した失業者が存在して居ります、更に又御話の如き今囘の軍需補償打切、企業再建等に伴つて是からも相當數量の失業者が出ることは確實のやうであります、其の一面に於ては今秋若くは來春に卒業致します所の學生生徒の就職問題か漸く世の視聽を集めて、是れ亦重要な問題として採上げなければならない情勢になつて參りましたことと、一面に於ては殘りました勞働者の問題に對しては近く政府が決定して居ると聞いて居ります所の勞働基準法等の實施が豫定されて居るやうに聞いて居りますが、是等の事柄を考へました時に私は現前の失業問題竝に將來の一般青少年の就業の問題竝に又更に現前の勞働者の賃金其の他文化的の諸問題に至るまでを含めました勞働階級の事柄に付ては、重要なる問題が次から次へと派生して參るのではないかと思ふのであります、それ等の勞働行政に對して政府は茲に思切つて有力なる對策を立つべき機關を作る必要が私は大いにあるのではないかと考へます、政府は曩に勞働省の設置の如きも其の意思があるやうに新聞紙上は傳へて居つたのでありますが、それも何時の間にか立消への有樣になつて居るのであります、私は現在及び將來の日本の企業再建と相俟つて勞働問題の重要性に鑑み、政府は此の際勞働省を設置して、勞働行政の完璧を期すると云ふことは最も必要な事柄であり、其の時期が既に到來したのではないかと云ふ考へ方を我々は持つて居るのでありますが、膳國務相は之に對して閣僚の一人として如何なる御考へを持つて居りますか、此の際御尋ねをして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=72
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073・膳桂之助
○膳國務大臣 此の企業再建に伴ひます離職者の茲に出來ること、それに對する應急措置の問題に付きましては、もう數次私からも厚生大臣からも色々な機會に申上げましたから、茲に繰返しませぬが、全般の將來の日本の人口を如何なる職業に嵌め込むかと云ふやうな問題は、是は兎に角此の狹い所に八千萬の人間が何かの仕事にあり付かなくちやならぬ譯であります、是は非常に重大な問題で、斯う云ふやうな職業と人口の問題に付きましては、唯思ひ著きでは到底成ることでありませぬ、是は經濟安定會議でも其の研究の大きな題目の一つに豫定して居ります
尚ほ又勞働省の問題に付てどうかと云ふ御尋ねがありましたが、是は内閣全般としての問題であり、私が個人の意見を申上げても仕方がないと存じますが、私自身の考へを率直に申上げますれば、其の必要なることに付きましては、別に何も疑念を懷いて居らぬ一人であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=73
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074・本多市郎
○本多委員長 晝食の爲め休憩をして、後繼續願ひたいと思ひます、午後一時まで休憩致します
午後零時十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=74
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075・会議録情報2
――――◇―――――
午後二時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=75
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076・本多市郎
○本多委員長 會議を開きます、此の際御諮り致したいことがございます、理事上田清次郎君及び理事奧村又十郎君より理事辭件の申出がありますので之を許可し、理事を委員長に於て指名するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=76
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077・本多市郎
○本多委員長 御異議なしと認めます、それでは稻村順藏君及び西村榮一君を指名致します、引續き質疑を進めます──川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=77
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078・中崎敏
○中崎委員 議事進行に付て發言致したいと思ひますが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=78
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079・本多市郎
○本多委員長 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=79
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080・中崎敏
○中崎委員 先程川島委員からの質問に對しまして、大藏當局に説明を願ひたいと云ふ風な言葉がありましたが、此の財産税法案の中で、不動産に對する價格の標準に付て、倍數に付ての數字を御示し願ひたいと云ふことでございまするが、此の點に付きましては、先程大藏大臣も言はれましたやうに、大體財産税收入四百三十五億圓を見込んで居る、其の中でそれは略略確實な見込であると云ふ風なことを言はれました、是が爲には此の財産税收入の中で不動産の收入と有價證券の收入とが一番大きな部分を占めるのでありまして、之に對する倍數は大體に於て大藏省に於てもはつきりと見透しが付いて居るものと思ひます、此の重要なる問題を倍數さへも示さないで審議を進めると云ふことは、我々として最も責任を感ずる立場から、是非共是は明にして貰ひたいと思ふ譯であります、例へば各地區別に於て多少の倍率の變更をすると云ふことは、是は當然でございまするが、此の點に付て細かく説明は求めませぬが、少くとも此の財産税法案と云ふものの第二十五條に於ける所の不動産に對する倍數だけは茲に明にして置いて戴きたい、それに對する所の見積が凡そ幾らであるかと云ふことに付ては、政府に於て忌憚なく茲に明にして貰ひたいと思ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=80
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081・本多市郎
○本多委員長 委員長から政府委員に申上げます、少くとも不動産の倍數に付て位は御發表が願へなければ議事の進行が出來ないと云ふ意見が出て居るのでありますが、政府側の之に對する御考へは如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=81
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082・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御答へ申上げます、不動産の評價に付きましては賃貸價格に倍數を乘じて計算することに相成つて居ります、而して其の倍數は不動産の取引價格に對する賃貸價格の割合、言換へますと賃貸價格に對しまして、不動産の取引價格が何倍になるかと云ふ其の倍數を乘じて計算することに相成つて居る次第であります、而して其の倍數は財産税法案に依りますと、不動産評價委員會に附議して決めることに相成つて居りますから、私から其の倍數をどう斯うと云ふことは法律的に申上げ兼ねると思ふのであります、唯四百三十五億の財産税收入はどう云ふ方法で見積つたかと云ふ御質問なら御答へ申上げますが、倍數を如何に見るかと云ふことに付きましては一寸申上げ兼ねるのであります、隨て御要求の四百三十五億圓の數字はどう云ふ所から出たかと申しますと、色々な法律に基きます評價方法を私の所で大體目安を付けて申上げますと、國民全體の財産は法人個人を合せまして四千九百五十四億圓と見積つて居ります、而して此の中非課税になるものは除かれるのでありまして、通常の生活に必要な家具、什器は純然たる非課税でありますから計算に入れませぬ、又所謂少額預貯金、墳墓其の他の非課税財産も除きまして、實際に課税になりますのは個人に於きまして四千三十二億圓と見積つて居ります、法人を御參考に申上げますと約八百億圓、個人の課税財産は四千三十二億圓と計算致して居ります、而して此の四千三十二億圓の中に、土地は個人の財産價格に於て六百三億圓と見積り、建物に付ては七百六十二億圓を計算致して居ります、而して此の倍數は田畑に於きましては、自作農創設維持特別措置法に規定致して居る田に付きましては四十倍、畑に付きましては四十八倍に準じて決めたいと思ひますが、報奬金を貰つた方の土地に付ては其の報奬金を加へることに致して居ります、又賃貸價格のないもの、又耕地整理其の他に依つて賃貸價格が非常に減ぜられて居ります場合には、特別の倍數を見ることに致して居ります、而して土地に對する倍數は土地の種類に依つて餘程違つて居りまして、例へば鑛泉地の湯元をどうするか、或は山林の措置をどう見るか、所に依りましては百倍の所もありませうし、又二千倍、三千倍と云ふ倍數を使ふ所もあります、隨て田畑以外の宅地其の他の土地に付きましては倍數を申上げることは差控へたいと思ふのであります、唯茲に例へば東京都内の何區の土地はどの位に見積るか、或は新市域の何區に付ては最高、中庸、最低をどの位に見積るかと云ふことになりますと、其の調査は財務局で持つて居ります、是は不動産評價委員會に附議致します場合の原案でございまして、如何に變るかと云ふことは問題だと思ひます、家屋に付きましても賃貸價格が定められて居りまして、各都市に依り倍數は最高、中庸、最低を決めて行きたいと思ひます、賃貸價格は平時の時に決めた賃貸價格であります、隨て家屋の需要は戰災地其の他に依つて可なり違つて居ると見なければなりませぬ、だから同じ市制地でありましても、戰災地と戰災地でない所では餘程倍數が變つて來ると思ふのであります、今家屋に付きましての倍數は此所で申上げますと、可なり變なものになつて來ると思ふのであります、例へば東京の一坪の住宅は、只今の取引價格は聞く所に依りますと四千圓或は五千圓と唱へられて居ります、而して東京都内の家屋の平均賃貸價格は十六圓三十六錢であります、隨て私が若し二百倍と申しますると、四千圓、五千圓の取引がある家屋を三千圓に評價するやうな原案を政府が持つて居ると云ふことになります、四千圓、五千圓の家屋を如何に評價するかと云ふことに付ては、財産税徴收に非常に重要なる影響を齎しますので、私は此處に主税局長として申上げない方が宜いと云ふ考へを以て申上げなかつたのであります、隨て今後も東京都内の倍數を如何にするかと云ふことに付ては申上げない方が宜いと思ひます、而して六大都市に付ては平均十二圓數十錢でありますが、是は何倍になるかと云ふと、六大都平均して五十倍、或は百倍にもなりませう、此の程度しか申上げられませぬ、村に於きまして、或は町に於きまして、市に於きましてどの位に見るかと申しますと、私の腹案では、村では大體全國平均して坪當り百六十圓程度、町制地では二百三十圓程度、市制施行地に於ては三百四五十圓程度に相成るのではないかと思つて居ります、市制施行地と言ひましてもぴんからきりまでありまして、是も全國平均してでありますが、市制施行地に於ても非常に立派な家のある所もありませうし、又「バラック」の所もございませう、ここは自ら倍數を違へて行かなければならぬと思つて居ります、隨て今此處で家屋の時價をどう云ふ風に見積るかと云ふことを申上げますと、少し行過ぎの點が起りますので、全體の財産税見積りに付てどう云ふ評價をしたかと云ふと、先程申上げました點を綜合致しまして、全體の家屋の評價を七百六十二億圓と見積つて居る譯であります、立木に付きましても又鑛業權、船舶或は機械設備、家道具、家畜類、是等に付きましても一々關係各省と相談致しまして或る程度の目安は置いてありますが、何と申しましても斯う云ふ評價の根本的考へ方は、昨日申上げましたやうに貴衆兩院の方、或は民間の學識經驗者に御諮り致しまして、適正な所を決めて行かなければならぬと思ふのであります、我々は財産税收入見積りに付ては肚では或る程度の計算は致して居りますが、實際徴收に於きましては、我々の考へよりも餘程變つて來ることを想像しなければならぬと思ふのであります、併し全體と致しましては四百三十五億圓の收入は確實に取れると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=82
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083・本多市郎
○本多委員長 川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=83
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084・川島金次
○川島委員 少しく内容に觸れて來たやうでありますが、今の主税局長の御話に依りますと、課税對象の總額は分つて居る、税率、倍率の問題は各財務局に於て押へて居るのだから、本省では分らぬと云ふやうに私共は承つたのでありますが、財務局で既に大體の腹案があつて、財産税の課税對象の總額がはつきりして居る、斯う云ふことになれば倍率を此處で發表しても私は大した影響がないのではないかと思へる、既に先程某委員から私見せて戴いたのでありますが、大阪方面の新聞紙上でははつきりと大阪の動産賃貸に對する倍率を公表して居るのもある位であります、さう云ふ事情であります、而も此の倍率は非常に此の財産税法案の核心を成すものである、其の核心の問題に付て我々が納得出來ないと云ふことになりますと、議案の審議の上にも色々支障が起るのではないかと考へる一人である、一體四百三十五億圓の課税は間違ひないと言ふからには、一切の具體的な案と云ふものがなければならない、其のなければならない案が議會に於て發表出來ないと云ふことは、少くとも議會に對する尊重の意思と云ふやうな氣持までも私は當局を疑ひたくなることになる、出來れば此の際概括的にで宜しいのですから、其の倍率の標準と云ふものを一つ思ひ切つて發表して戴きたい、斯う云ふことを私は重ねて希望するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=84
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085・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税法案第二十五條に於きましては「土地又家は屋の價格は、その賃貸價格に一定の倍數を乘じて算出した金額による」斯う規定致して居ります、さうして其の一定の倍數は二十六條に「前條第一項の一定の倍數は、命令で定める區域ごとに、その區域内において標準となるべき土地又は家屋について、取引價額を參酌して、政府において算定する價額の、その調査時期における賃貸價格に對する倍率に比準して、これを定める。」斯う相成つて居ります關係上、是は取引價額を如何に見るかと云ふ問題が決まれば倍數は此の法律から當然出て來るものであります、而して此の取引價額を如何にするかと云ふことは、法律的には不動産評價委員會に諮りまして決めることに相成つて居るのであります、而して大藏當局で考へて居る倍數はどう云ふ風に決めるかと申しますと、是は取引價額をどう見るかと云ふ問題であります、全國一億二千萬筆或は八百萬棟の家に付きまして一々申上げることは是は中々出來ませぬ、而して又今後の調査にも係ることであります、隨て四百三十五億圓の財産税收入に付きましては只今申上げましたやうに家屋は大體總額此の位或は土地に付きましては總額此の位と踏んだ次第であります、而して家屋を七百六十二億圓に見積りました場合の腹氣持は市、町、村を只今申上げましたやうな價格に一應見まして計算した譯であります、土地とか家屋の總體が出ますとそれを十萬圓以上の人は幾ら、十萬圓未滿の人が幾ら、斯う分けまして、さうして階級毎に、税區分毎に其の納税未財産價格を區分致しまして、法案にありまする税率を適用致しまして四百三十五億圓を計算したのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=85
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086・川島金次
○川島委員 それでは續いて御尋ねしますが、一體只今の主税局長からの御話に依りますと、課税對象の總額が個人が四千三十二億圓、法人が八百億圓、斯う云ふ大掴みの數字が出たと云ふことは、既に倍率に關する基準があればこそ此の總體の額が出たのではないかと私は考へられるのでありますが、さう云ふ倍率を基準として此の總額を出したのではないか、それとも他の方法で是が出たのでありますか、それを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=86
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087・池田勇人
○池田(勇)政府委員 是は今の取引價額の見方でございますが、全國平均的に家屋は市町村別に大體是れ位だらう、斯う云ふ所から計算したのもありますし、又實際に調査致しまして、此の分は何倍位だと云ふ調査をやつた財務局もあります、併しさう云ふ色々に報告を蒐集致しまして我々の所で總體七百六十二億圓程度に見やう、斯う云ふことに相成つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=87
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088・川島金次
○川島委員 さうすると其の倍率の問題は擧げて地區々々の委員會で決定するものとして、政府に大體の基準があることとすればそこへ持つて行く努力をするのでありませうし、さう云ふ形になり得る場合もある、併しながらさうでなく地區々々の評價委員會で倍率を決定すると云ふことになれば四百三十五億の税總額の基準が私は出て來ないではないか、四百三十五億の基準總額と云ふものは架空な想像に依つて此の總額を出したのではないかと云ふやうな感じが非常にするのでありますが、其點を一つ御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=88
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089・池田勇人
○池田(勇)政府委員 架空の數字ではございませぬ、各税務署各財務局に指令致しまして其の土地々々で中庸となるべき場所を選び、其の地區に付ては入念に調査致しました、基準となるべき所を調査致して、それは状況の類似して居る所は類推を加へまして、大體此の數字は誤りないものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=89
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090・川島金次
○川島委員 さう云ふことになると評價委員會の倍率の決定の右を左かに依つて必然的に總體四百三十五億と云ふものに影響が起るのではないか、さう云ふことを承知して居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=90
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091・池田勇人
○池田(勇)政府委員 或る程度の影響は參りますが、私の見る所では殖えるとも減ることはないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=91
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092・川島金次
○川島委員 當局は絶對に此の四百三十五億に喰違ひないと云ふ結果になるのだと云ふ確信があれば差支へないと思ひますが、恐らくさう云ふ今のやうな御話で推察致しますと、各地區の倍率を決定した其の事態に依つては非常な影響が來る虞が相當あるものと私は考へて居る、其の場合の駄目を押して、十萬圓以下五萬圓以上の財産にも課税することがあるやも知れずと云ふことを當局は言つて居るが、其の言つて居ること自體は今の事柄を基礎として或はさう云ふことを言明して居るのではないかと私は想像するのであります、さう云ふ心配は絶對にないと云ふ確信を御持ちでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=92
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093・池田勇人
○池田(勇)政府委員 四百三十五億圓は確實に取れると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=93
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094・川島金次
○川島委員 此問題は此の程度で打切ります、改めて私は此の財産税の問題に付て御伺ひ致します、一體政府は此の財産税徴税と云ふものの目標と云ふものは「インフレ」の防止と云ふことに重點を置いてそれを目的としたものか、それとも富の再分配、敗戰後に於ける所の國民の富の再分配と云ふものを目途として此の財産税と云ふものを徴税することになつたのか、又單に財政上の補強の爲の所謂赤字補填のみを目的として此の財産税を課すると云ふことになつたのか、其の根本的の方針を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=94
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095・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本法案提案の理由書にも載つて居りますやうに、終戰處理、戰後復興等を圖る爲め緊要な國庫收入を確保すると共に、即ち國家收入の確保、さうして富の均衡化に依り經濟の民主化に資する、此の二つの目的で此の法案を提出した次第であります、唯斯く致しまして財産税を徴收致しますことは第二段として「インフレ」の防止にも相當役立つことを期待して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=95
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096・川島金次
○川島委員 只今の御話は所謂富の再分配の上に於きましても相當な考へを持つての御話でありましたが、然らば一體最初の大藏省の案と致しましては財産税と云ふものと財産増加税と云ふものを課けると云ふことの方針であつた、隨て其の増加税と云ふものを中止致しまして、財産税一本槍に致しまする場合には、恐らく戰爭中に所謂戰時利得を致した方面の財産の課税と云ふものを見逃がす虞れが多いのではないかと思ふ、同時にそれは軈て財産税の課税の均衡を失することになるのではないかと思ふのでありますが、一體増加税と云ふものを廢止した理由、さうして其の財産税に依る所の國民負擔の均衡を失することの虞れがあると云ふことに付て、當局は考へて居られますかどうか、其の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=96
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097・池田勇人
○池田(勇)政府委員 當初前内閣で財産税等を考慮致しました時には、戰爭利得の徹底的排除、財政の再建、斯う云ふ二大目標で關係方面と話を致しました、關係方面の「アプルーヴァル」もありました、其の意味に於きまして、一月發表致しました如く、法人戰時利得税、個人財産増加税、又法人の財産税を含みます廣い意味の財産税、此の三法案を計畫致したのでございまするが、是は飽くまで軍需補償と云ふことに付きましての考へ方が、只今とは違つた場合の財産税法案等のあり方でございます、軍需補償に付きまして今囘提案になつて居りますやうなことを致しますと、大體に於て財産税だけでも、戰爭利得は排除出來るのではないか、斯う考へて當初の目的の戰時利得は、此の補償打切、或は財産税で所期の目的を達し得ると考へて居ります、而して又、尚ほそれでも足りないやうな場合があることを慮りまして、財産税の税率に於きましては相當強く戰爭利得の排除と云ふことを頭に入れまして税率を盛つて居ります、又財産増加税等を止めました理由は、今のやうな經濟事情では中々始期財産と終期財産との比較が困難であります、税金の徴收の簡素化等を考へまして、止めたのも一つの理由であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=97
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098・川島金次
○川島委員 戰時利得者に對する課税を止めて、他の方法で均衡を圖られるのだと云ふ御話でありますが、例へば戰時利得者が此の財産税施行前に、既に其の財産の一部を生活用具以外の、所謂動産的なものを買溜めて換物致した場合、其の換物されたものの把握と云ふものが非常に困難な事情が起るのではないか、可なりさう云ふ面が戰時利得者の中にはあるのぢやないか、さう云ふ戰時利得者が換物をして其の物を持つて居る場合、それに對する課税の方法と云ふものは、どう云ふ形ぢやらうと云ふのか、其の點を一つ御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=98
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099・池田勇人
○池田(勇)政府委員 其の點に付きましては、先だつて社會黨の奧村さんからの御質問に答へて置きましたが、個個の場合色々な方法があると思ひます、銀行預金の出入りを調べまして探求するのも一つの方法でございませう、又今囘の法律には通報制度と云ふものを設けまして、他から誠實な脱漏の通報も期待致して居ります、又税務職員の素質の向上と、人員の増加を圖りまして、個々に付きまして徹底的に調べることも出來ます、前の時とは違ひまして、納税者も五十一萬人程度に減つて參つて居ります、さうして營業者の方は臨時財産調査令で調べて居ります、あの手此の手を使へば御期待に副ふやうな十分な調査が出來るものと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=99
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100・川島金次
○川島委員 さう云ふ隱匿的な財産に對しては徴税官の調査或は通報制を以て各種の面から徹底的に把捉すると云ふ御話でありますが、此の機會に其の通報制のことに付て一言御伺ひを致したいのであります、通報に關しては大體記名式を以てする通報を原則として採用し、それに依つて調査を更めて開始すると云ふことになるのだと思ひますが、斯う云ふ場合が起り得るのではないか、無記名で通報をした場合、其の無記名の通報を如何なる態度で扱つて行くか、無記名は全然參考にしないの 、記名式の通報だけを採用して無記名のものは全然採用しないのか、或は又無記名式のものと雖もそれを參考にして調査の資料にするのか、さう云つたことを御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=100
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101・池田勇人
○池田(勇)政府委員 無記名のものも參考に致しまして、其の場合場合に於て調査の度を粗密に致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=101
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102・川島金次
○川島委員 只今の話では、無記名式のものでも相當に參考にすると云ふ御話でありますが、無記名式を參考にすると云ふ建前を執りますと、相當私は混亂の事態が起り易いのではないかと思ふのですが、さう云ふ心配は當局は持つて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=102
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103・池田勇人
○池田(勇)政府委員 どの程度に參考にするかと云ふことは、其の場に當つた當該官吏の判斷だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=103
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104・川島金次
○川島委員 然らば無記名の通報に對して、其の無記名の通報を基礎として調査した結果、税收が非常に殖える結果となつた場合、而も一方、初め無記名で通報した本人が後で判明した場合、其の本人に對して例の褒賞を出すか、さう云ふことをも御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=104
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105・池田勇人
○池田(勇)政府委員 斯かる場合には報償金はやることを考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=105
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106・川島金次
○川島委員 更に續いて、此の財産税を徴收致しました後に於て、一體今後の政府の税收の上に影響があるかないか、私は相當今後の税收の上に影響があると想像するものであります、是は蛇足でありますが、一九二五年でしたか、英國の例の「ドールトン」案の財産税の問題の時も、財産税を僅かに二十五億「ポンド」を徴收致しました場合、其の反面に於て翌年の所得税の税收に約そ二千五百萬「ポンド」の減收が立證されてしまつたと云ふことで、此の財産税法案と云ふものが一時保留となつたと云ふやうな事柄もないではない、今度の我が國の財産税に付きましても、さう云ふやうな、明年に於ける所の財産税以外の一般税收の上に相當の影響があるのではないか、斯樣に考へられるものでありますが、當局はそれに付てどのやうな御考へを持つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=106
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107・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御説の如く、「イギリス」に於きまして財産税法を止めました一つの理由には、御話の如き理由があつたと思ふのであります、今囘の財産税法を施行致しまして後の租税收入がどうなるか、斯う云ふ問題に付きましては或る程度の影響は豫想しなければなりませぬ、併し此の財産税が昭和二十一年度に於て使用せられますと云ふと、其の國庫支出の増加に依りましての收入も考へ得るのであります、唯問題は、非常な高率の累進税でありますので、綜合所得税の減少は相當考へなければならぬと思ふのであります、唯此の綜合所得税は、今の租税收入百六十三億中、綜合所得税は全部で十一億圓でございます、既に昭和二十一年分に付きましても、大所得者は昔とは非常に趣きを異に致しまして、既に昭和二十一年で綜合所得税中非常な累進税率を付けられる人は少くなつて居りますので、此の點を考へましても、餘り大した影響はないのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=107
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108・川島金次
○川島委員 更に企業整備の問題に關して膳國務相に御伺ひ致したいと思ひます、今度の企業整備案に付きましては、資本家側の方面のみを重點として立案をされ、考へられて居る、然るに一方政府の累次の聲明に依りますれば、此の戰時補償の打切と共に、企業再建に伴つて必然的に、先程私も申上げましたが、失業者が出る、其の失業者の問題に對しては何等考慮に置かれて居ない感が深いのであります、政府に於ては、斯う云ふ重大な問題を取扱ふ場合に、當初から其の失業者に對しての十分なる對策を持つて然るべきではなかつたかと私は思ふのでありますが、其の點はどのやうに御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=108
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109・膳桂之助
○膳國務大臣 其の點に付ては初めから深い考慮を拂つて居ります、一方に擬制資本がありまして、相當實質に伴はない資本が水膨れになつて居ります、之をすつきりしたものに直します、同時に實は今までの雇傭方面を見ますると、終戰後も實は相當事業が始まるだらうと云ふ豫測もあつたには違ひありませぬけれども、其の豫測が中中思ふやうに運びませぬ、唯一方には相當の手持の資材などもあります、言はば多くの事業は本當に事業をやらずに賣食ひをやつて一時を糊塗して、言葉は餘り適當な言葉と思ひませぬけれども、そこに擬制的な雇傭關係 相當あります譯で、此の整理が今度の企業整備の中心では決してありませぬ、併しながら自然と企業の不健全なる經理方面を整理しますと、やはりさう云ふ實質以上の雇傭關係もありますので、是はやはり同時に其の面も整備致しませぬと、折角の整備が無駄になる、此の整備に付きましては國民各層が非常な苦痛と犠牲を拂ふのでありますが、どうもさう云ふ點に於て、整理せんが爲に人の整理をするのではありませぬけれども、結果に於てさう云ふものがあると云ふ事實は否み得ないのであります、併しながら政府は唯さう云ふ人を其の儘にして置くと云ふことは、勿論是は非常に由々しい社會の大事でもあります、根本の問題としましては、累次此處で申上げますやうに、どうせ日本の食糧と人口の間に食違ひがあるのでありますから、是は調整しなければなりませぬ、差當り應急の問題としては企業整備に基き離職した人達が一時困窮することのないやうに、退職手當等に付きましても政府は最後には數億の補償をすることあるべきことを豫想しまして、今囘發表致しましたやうな退職手當の保護、若し其の退職手當を出す途のないものには國家が之の補給をすると云ふ途まで考へまして、一時の困ることのないやうに、又是が爲には六十億の豫算を費しまして公共事業をば營みまして、此の公共事業に收容出來る人數は、多分此の席上で申上げたと思ひますが、三百萬人を收容する力があります、殊に工業勞働關係方面に吸收する力も約七十萬人に及ぶ收容力があるのでありまして、一時斯う云ふ方面に斯う云ふ人達の轉換を御世話する、尚ほ其の中に企業が段々と整備再建されまして、健全なる雇傭──私は敢て之を健全雇傭と申したいのでありますけれども、健全なる雇傭状態の下に段々雇傭が進んで來る、斯う云けやうな状態を一時も早く齎す爲に努力したいと思ふのでありまして、此の收容する離職者の問題に付きましては相當考慮を拂つた積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=109
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110・川島金次
○川島委員 畢竟失業者自體に於て、企業上退職手當支給の不可能のやうな状態に入つた場合は、政府は之に對して積極的に面倒を見ると云ふ御話でありますが、其の場合に於て政府は其の離職者に對してどの程度の基準を置いて、退職手當を支給すると云ふやうなことに付て、具體的に定まつて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=110
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111・膳桂之助
○膳國務大臣 定まつて居ります、此の企業整備の方法に於きましては、先づ第一番 舊勘定に於きまして、整備される人に對する手當金をば總ての他の債權に優先して、退職手當を支給すると云ふことをば考へて居ります、其の標準は舊勘定と新勘定との分離の時に於きまして、規定してありまする所の退職手當の規定に基いて計算されましたる金額、若しさう云ふ退職手當の規定がありませぬ場合には、最近の三箇月の平均の賃金の一箇月分、更にそれに就職年數に半箇月分を乘じました金額、若し退職手當の規定がありましても、其の計算しましたものが、本人一人當り五百圓、家族百圓に及びませぬものは、其の程度まで引上げた金額、是は總ての債權に優先して先取特權を以て支給されるものであります、但し銀行等に對する預金の第一封鎖預金との關係もあります、其の最高限は一萬五千圓までと法律の保護は致して居ります、併しそれで打切ると云ふ意味でありませぬで、其の以上に退職手當の規定に依つて債權のあります場合には、他の債權と同じに、舊勘定に於て剩餘があります際には、無論退職手當の支給は受けられる譯であります、尚ほそれに該當しますものは新勘定に於ては立替分でありますが、新勘定に於て立替へます時に、資金のない場合には一定の條件の下に復興金融金庫等から融通することに相成つて居ります、愈愈融通することの出來ない場合には、一人當り離職者に對して國家が千圓まで補償致しまして、若し是が其の會社が支拂ふことの出來ませぬ場合には、國家が是に補給することになるのでありまして、一方には企業整備其の他に於きまして、相當國家として之に課税の方法を以て、何と申しますか、或る場合には隨分お氣の毒な方面もある位に感ずるのでありますけれども、雇傭の問題に付きましては一方からは税金で取りますけれども、離職者に對しまして最後の部面に於きましては國庫が進んで出資をし補給金を支給致しまして、離職者のお氣の毒な状態を出來るだけ緩和をするやうに致します次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=111
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112・本多市郎
○本多委員長 此の際御諮り致します、それは議事に付てでありまするが、本日「帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辯のため借入金等に關する法律案、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案及び自作農創設特別措置特別會計法案」の三法案が新たに本委員會に付託せられましたので、之を一括議題に加へます、此の際政府側の説明を求めたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=112
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113・北村徳太郎
○北村委員 議事進行に付て──質問の通告が可なり多いと云ふことを聞いて居りますが、法案が非常に重大だし、一方政府では成べく時間を短縮したいと云ふやうなことで、兎に角無理な註文だと思ふのでありますけれども、色々討議をせられ、理事會など御開きになつて、凡そ時間などの見當が付いて居る筈であります、委員長は其のことを守つて議事進行に當つて戴きたい、それから今只さへ非常に重大な案件が加はつて居る所へ、又併託せられたのでありますが、是は後廻しにした方が宜いと思ふのであります、先づ現在上程せられて居る事柄を急いで審議を致しまして、後に廻した方が宜いぢやないかと思ひます、それから此の際時間の勵行のことでありますが、昨日希望して置いたことが殆ど實行されて居らぬ、是では會期をどれだけ延長しても此の委員會だけでもどれだけ時間が掛るか分らない、もう少してきぱきとやつて戴きたい、又同じ質問に付ては既に政府から答辯があつたことは、それは答辯濟みであると答へて足ると思ふのであります、さう云ふ風にもう少し進行を鮮明にやつて戴くことが非常に願はしいと思ふのであります、それから政府當局の御答辯も、昨日も其の事を感じたのでありますが、質問以外のことに觸れて啓蒙的な言葉を御使ひになる、それは時間が掛つて仕樣がないのであります、私共は此處で啓蒙されようと思つて居ない、もつと簡潔に質問の要旨だけを御答へ願ふと云ふことにされたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=113
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114・本多市郎
○本多委員長 折角私は御諮りをしたのでありますけれども、北村委員からの御意見もありますので、質問を繼續することが適當と思ひます、就きましては私が不慣れの爲にてきぱきと進行が出來ないで洵に恐縮に存じますが、北村委員の只今の御話の通り質問者も政府側の御答辯も、どうか成べく進行が出來まするやうに御協力を願ひます、それでは川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=114
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115・西村榮一
○西村委員 議事進行に付て──私はさう本案の審議を急ぐ必要はないと思ひます、十分に後世に惡例を貽さないやうに、議員としての良心と誠意に從つて十分に審議すべきだ、さう簡潔簡潔と簡潔のみに行くべきではないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=115
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116・本多市郎
○本多委員長 川島君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=116
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117・川島金次
○川島委員 先程私の質問に對して膳國務相と相次いで上塚政府委員の御答辯が得られるやうな樣子でありましたが、御答辯がありましたら御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=117
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118・上塚司
○上塚政府委員 私は川島君の御質問に對する答辯をする積りではなかつたのであります、唯政府は先程本會議に於きまして帝國鐵道會計又は通信事業特別會計に於ける法律案外二件を提案致しまして、其の説明を終へたのであります、此の法律案は既に提出されて居りまする所の豫算案と同時に貴族院に送らるべきものである、然るに其の豫算案は今日採決を致しまして、明日の本會議に於て貴族院に送られるのでありまするが、此の點は一時も早く御審議を願はなくてはそれと同時に向ふに進むことが出來ませぬので、其のことを委員長に對して御願ひする積りで發言を求めたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=118
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119・奧村又十郎
○奧村委員 議事進行に付て──只今政府委員から今日又新たに併託された法案のことを御話になりましたが、御話を伺へば、今日既に上程になつた議案と共に貴族院に其の法案を送られなければならぬと云ふことであります、すると是から本委員會に其の法案を掛けて、今日中に仕上げなくてはならぬやうな御言葉のやうに承りますが、今日我々は今十幾つの重大な案件を審議して居るのでありまして、其の外に今法案を持込んで來て、今日中に審議して返事しなければならぬ、さう云ふやうなことでどうして審議が出來ると思ひますか、今日持込まれた併託の案は今日までに審議中のものを一旦終了後にやるべきであると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=119
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120・本多市郎
○本多委員長 議案を取扱ひ方に付ては改めて理事會等で協議したいと思ひます、川島君の質問を御繼續願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=120
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121・川島金次
○川島委員 大分時間が經つて居りますから、急いでやります、續いて膳國務相に御尋ねを申上げたいと思ひます、日本の賠償施設の撤去に關して政府は撤去の費用、或は梱包、輸送等に付て相當高額なる豫算を必要とすることになると思はれます、何れかの機會に政府は之に對する總額の點に付て御説明があつたと思ふのですが、私失念をして居りますので、此處で一寸御聽かせを願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=121
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122・膳桂之助
○膳國務大臣 賠償施設の撤去に付きましては今折角其の施設の指定其の他の問題に付て聯合軍側と折衝中でありまして、まだ費用其の他の問題に付きまして的確に御報告申上げる時期に到達して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=122
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123・川島金次
○川島委員 まだ其の總額に付ては發表する時期に達して居らないと云ふことでありますが、此の賠償施設の撤去の費用、梱包或は輸送、之に付て承る所に依りますと、政府は非常に有力な一財閥方面に其の撤去方を請負はせると云ふやうなことを考へて居るかに承つて居るのであります、私共の見解を以て致しますならば、此の賠償施設の撤去、梱包、輸送等は想像致しただけでも相當の豫算に達するのではないかと思はれるのでありまして、此の厖大なる豫算を伴ふ事業を有力なる一財閥と申しますか、之に類するやうな方面に專ら請負はせると云ふやうな事柄は、同時にそれが全國的に行はれることにもなりまして、其の請負ひました財閥が中間に於て相當な搾取を行ふと云ふ經過を辿るのではないかと云ふことを懸念致すものであります、隨て私共の見解から致しますと、其のやうな事業を逐行する爲には、出來るならば地區別に當該地域の實際に事業を行つて居るものに請負はせると云ふことになれば搾取の問題もなくなりますし、其の賠償施設の撤去、梱包、輸送等にも非常に便利なことになるのではないかと考へられるのでありますが、それに對して膳國務相はどのやうなな御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=123
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124・膳桂之助
○膳國務大臣 只今のやうな賠償の撤去すべきものの梱包其の他を一つの企業に請負はせると云ふことは、私共曾て夢にも思つたこともありませぬし、又噂のあつたことも聞いたことはありませぬ、全くそれは過傳でありまして、さう云ふ過傳が言觸らされると云ふことがあれば、それは非常に國家を毒するものと私は考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=124
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125・川島金次
○川島委員 私はさう云ふ場合の假説を言つたのでありますが、さうでなくて其の事業に實際に著手致します場合に、さう云ふ方法を執ることはあるまいと思ふのでありますが、唯事業に著手する場合には、地區別に其の地區の當該業者にさう云ふ仕事をさせる方針はないかと云ふことを附加へて御伺ひしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=125
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126・膳桂之助
○膳國務大臣 其の問題に付きましては愼重に考慮したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=126
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127・川島金次
○川島委員 更に續いて御伺ひを致します、日本の産業の再開の基盤をなすものは、何と言ひましても私は米であり、石炭であり、鐵鋼に重點があるのだと、斯樣に考へるのであります、然る所日本現状の石炭問題は必ずしも政府の計畫通りに増炭が實現致しませぬで、非常に樂觀を許さない状態に今日未だにあるのではないかと考へて居るのであります、然るに一方に於ては戰時中種々の事情に依りまして一時採炭を禁止されました礦區が相當あるのであります、而も其の礦區は極めて炭質も優秀であり、政府の措置如何に依つては直ちに採炭の再開を實現するやうな實情にある礦區が各所にある譯であります、そこで私は此の機會に戰時中の措置を取止めまして、日本石炭の増産の爲に、延いては企業再建の活溌なる再開の爲にも、是等の炭礦區を再び開放して、其の採炭の事業を逐行せしむると云ふ方針を持つべきではないかと思ふのでありますが、之に對して當局の御意思を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=127
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128・膳桂之助
○膳國務大臣 全く御同感であります、石炭の問題に付きましては、非常に憂慮すべき状態にありますので、政府としても腐心を致して居る次第であります、尚ほ今仰せのやうな未發掘の有望なる炭礦に付きましては、何とか政府の手で之を開發したいと云ふことで、目下研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=128
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129・川島金次
○川島委員 それに關聯してもう一言御伺ひ致したいと思ひます、其の炭礦の問題でありますが、炭礦の新しい振興開發の場合には、慥か是は當局の御方針だと思ひますが、三年間は其の開發炭礦に對しては所得税を免除すると云ふ措置が講ぜられて居つたと私は記憶致すのであります、所が其の炭礦の事業の上に於て、例へば請負掘とか、或は金先掘とか云ふ言葉があるやうでありますが、さう云つた方面に對しては其の所得税免除の方針を實際に於ては執つて居らない、私の見解を以て致しますれば、さう云ふ開發炭礦に對する助成が主眼でありますので、經營の状態が主眼でないと私は思ふのであります、そこで大藏當局はさう云つた所得税免除の除外例を以て臨んで居る方面に付ても、改めて此の際所得税免除の方針を執るべきでないかと思ふのでありますが、之に關する御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=129
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130・池田勇人
○池田(勇)政府委員 石炭礦業等の重要なる産業に付きましては、從來臨時租税措置法で所謂増設免税の規定を置きまして、經營の免税を致して居りました、今囘臨時租税措置法を廢止致しました機會に、其の増設免税を所得税法竝に法人、税法に押入致しまして、石炭礦業の場合の設備増設に依る所得の増加に付きましては適當の措置を執つて居ります、唯御話の所謂請負掘、斥先掘が税法に言つて居る石炭礦業に當嵌まるかどうかと云ふ問題に付きましては相當疑問があるのであります、只今の取扱に付きましては一寸失念致して居りますから、もう少し調べたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=130
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131・川島金次
○川島委員 私は只今申上げましたやうに、請負掘、斥先掘等に對しましても、所謂開發助成の精神に於ては何等對象として變りがないのだ、隨ひまして他の助成と同樣な措置を講ずることが極めて適切であり、妥當なる事柄であると考へて居りますので、若し御調査の結果さうでない措置を執つて居りましたならば、さうあるやうな措置を執つて欲しいと云ふことを希望して此の質問を終ります
續いて更に最後にもう一言御伺ひ致します、私が此の委員會に於きまして午前中最初に觸れた問題でありますが、それに關聯しての質問でありますので、是は膳國務相から御答辯を御伺ひ致したいと思ふのであります、大體政府は此の財産税と云ふものを、最初は所謂國債の補填に當てると云ふ計畫があつた譯であります、それが色々の事情で今日違つた方面に落著きを見せたことになるのでありますが、一體私は日本の現在の財界の健全化を圖ると云ふことは、一切の民間企業に於ける擬制資本を切捨てるだけでは斷じて政府自體に於ける財政の確立も出來ない、隨て軈てそれが日本の經濟界の癌をなすものでないかと、斯樣に我々は考へて居るのであります、殊に政府自身の擬制資本とも申して差支へない所の軍需公債の問題に付ても、大藏大臣は其の利拂ひを承認して貰つて、今後も續ける、而も其の總額に於きましては利拂ひだけでも數十億以上に上つて居る、元金は凡そ千四百億圓と我々は承知致して居るのであります、民間に於ける擬制資本だけを切捨てまして、政府自體に於ける所の財政の癌である擬制資本とも申上ぐべき國債の處置に對して何等手を打たないで、此の儘抱へ込むことは私は所謂政府の財政の逐行の上に一大障碍になるのではないかと考へるのであります、大藏大臣はさう云ふことは少しもないと云ふやうなことを屡屡言明されて居るのでありますが、我々の立場から申上げますならば、此の軍需公債に對しても政府は勇敢なる處置に出るべきであるとふ云ことを確信を申上げて居るのでありまするが、此の問題に付きまして膳國務相は如何樣に御考へになつて居りますか、それを御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=131
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132・膳桂之助
○膳國務大臣 其の問題に付きましては大藏大臣の申上げましたことと全く同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=132
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133・川島金次
○川島委員 大藏大臣と同感であると申されますが、一體七十億圓にも上らうとする所の利拂ひを今後續ける、更に元金は千四百億圓を抱へて日本の財政の切盛りをして行かなければならぬ、斯樣な形を考へて見まするし、一方に於ては財産税徴收後に於ける所の國の税收と云ふものが非常に危ぶまれる状態になつて居る、而も一面に於きましては大藏大臣は戰後處理費の如きものは明年度はなくなる、財政の膨脹は餘り心配にならないと云ふけれども、私はさうではないと思ふ、戰後處理の問題に付きましても今後は相當に明年度の豫算の上に於ても殘つて來るのではないかと思ふ、左樣なことを考へますると、國債の問題を此の機會に於て徹底的な手段に依つて處置を講ずると云ふ勇斷が、實は日本の國の財政の確立の上に於ても、又民間に於ける企業再建、國民生活の安定等の上から行つても、私共は絶對必要なりと云ふ考へ方を持つて居るのでありまするが、膳國務相の御考へ方を此の際御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=133
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134・膳桂之助
○膳國務大臣 私の考へは今申上げた通りでありますが、只今の御意見は篤と拜承して參考と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=134
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135・川島金次
○川島委員 膳國務相の答辯は如何に議事進行上簡略とは申しながら、極めて簡略過ぎます、もう少し責任ある大臣としての御所見を承はりたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=135
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136・膳桂之助
○膳國務大臣 日本の財政の將來に付きましては是も經濟安定本部が綜合國策を定めます大きな課題の一つとしまして、根本的に考へなければならない問題だと思ひます、併しながら國債に關しまして執ります政府の政策と致しましては、大藏大臣の述べられましたやうな單に國債は只今は政府の擬制資本と云ふやうに御考へのやうでありましたが、是は政府の負債に屬するもので、多くは金融機關の持つて居りまするもの、是も實を申しますると多く郵便貯金其の他の預金者の預金の身代りでありまして、之を打切ると云ふことは又非常に大きな國民生活の不安を來すことでありまして、さう云ふ途に依らずして國家財政の建直しを考へるのが宜しい、私個人としては斯う云ふ意見を持つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=136
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137・川島金次
○川島委員 まだ私の質問は山積して居りますが、色々の都合上之を以て打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=137
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138・本多市郎
○本多委員長 小坂君に申上げます、次に御質問 願ひたいのでありますが、總理大臣は連絡中でありますけれども、直ちに御出席は出來ないやうですから、先に膳國務大臣に對する御質問がありましたら其の方から初めて戴きたいと思ひます──小坂善太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=138
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139・小坂善太郎
○小坂委員 實は此の法案には只今川島委員も非常に苦心して居られたやうに、内容が非常に廣汎に亙りますから、勢ひ時間も掛かるやうになりますが、私と致しましては出來るだけ御約束を守りまして所定の時間内に打切る方針であります、それに付きまして各論的のことは既に出た問題もありますので、成たけ根本的の問題即ち戰時補償の特別措置と企業の再建整備に關する問題に付て、是は總理大臣にも聽いて戴いて御考へを伺ひたいと思つたのでありますが、御出席がないやうでありますから、膳國務大臣に對して御質問を申上げます
今囘の擬制資本の打切りに依りまして、此の問題に關する政府の措置は一段落のやうでありますが、是と同時に考へなければならないのは生産再開の問題であります、今終戰後一箇年を經まして、豐作の見透しと云ふやうなことに依つて、食糧危機突破に、聯合國の好意と相俟つて稍稍明るい希望を持たせるに至つて居ります、又棉花其の他一部原料の輸入の出來ることに依りまして、一應物價が再編成されて安定するのではないかと云ふやうな希望的の觀測も行はれて居るのでありますが、日本の經濟の前途と云ふものは、決して其のやうな樂觀的な觀測を許さないのではないかと私は考へて居るのであります、何故かと申しますと、現在我々が見て、例へば銀座の街頭で見ますと、其處に出來て行くのは總て飮食店であります、又我々が店頭に見ます物は、鍋釜等の生必物資、消費資材であります、併しながら目を轉じて經濟の全般を見ますると、基本的な物資の生産と云ふものが極めて不振であります、例へば石炭、鐵鋼「セメント」等は、終戰後一時其の生産が上向いたやうに見えたのでありますが、此の五、六月頃から再び停頓の状態になつて參りました、現在の生産量は平時經濟の需要に比べますと、大體鋼材は六%に過ぎない、「セメント」が二〇%、石炭が三〇%強にしか達して居らないのであります、斯う云ふ状況の下に於て丈夫な我々の手に入り、口に入る物で、一應樂觀の見透しを持つと云ふことは、是は非常に實は危險なことであると考へるのであります、所謂斯う云ふ生産資材が出來ないことに依りまして、我々が豐作の喜びに浸つて居る間に段々「ストツク」を食潰して行く、我々は假に今肥料の増産が他の物資の生産に較べて稍稍良いと云ふやうなことを言つて喜んで居りますが、其の原料として居ります所の「コークス」は戰時中には人造石油をやつて居つたが、今は止めた、或は鐵鋼は北海道に於ける輸西とか瀧川とかああ云つた所に於きまする鐵工所が、終戰後は以前持つて居た「ストツク」を原料として生産して居る状態であります、今後の生産の原料と云ふものは今の「コークス」の生産状況を見れば分る、是は結局石炭の生産状況から歸納されることでありますが、非常に不足して居ります、斯う云ふやうな状態でやつて居つては、日本の經濟の破局が來ることが考へられるではないか、一遍に此の惡い條件が出盡すのは私は來春頃ではないか、斯う考へるのであります、一方今囘の經理的の措置に依つて會社が相當に打撃を受ける、斯う云ふ會社が打撃を受ける事態が現實に現はれて來る時期がやはり來春あたりではないか、會社が一方に於て經理面に於て惡條件が現はれ、一方生産方面に於ても原料の涸渇に依つて惡條件が表面に出て來る、此の二つの時期が一緒になる時、日本の産業をどうするか、先般來完全雇傭と云ふことに付て色々と同僚から質問が出て居つたのでありますが、斯う云ふことに付てもつと根本的に此の問題を考へなければ、其の時に一體完全雇傭を口にして見てもどうしてそれをやつて行けるのか、斯う云ふことを先づ疑問に思ふのでありますが、此の點に關して膳國務大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=139
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140・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の問題は實際心配な問題であります、此の經理面に於きまする企業の一應の整理が出來ましても、御説のやうな點に付きましては國民各方面の御努力を願ひたい、實は此の豐年に依りまして、又聯合軍の好意に依つて食生活に於ては御説の通り稍稍小康を得たのでありますけれども、工業の食糧である石炭事業を考へて見ますと、今御説の中にありますやうに大いに懸念すべき状態が既に感じられつつある譯であります、此の點は政府も商工省等に於きまして懸命の努力を致して居りますけれども、斯う云ふ資材は段々今までの手持品も盡されて居りますし、新規の政策は今御説のやうに思ふやうは行つて居ります、是から大いに輸入に仰ぐ計畫は持つて居りますけれども、要するに石炭増産を初めと致しまして、基礎原料資材の生産の増強に大いに國民的に御協力を願つて、努力して戴かなければなりませぬ、どう云ふ方面にそれを持つて行くかと云ふことは、折角政府各部内で關聯性のある一つの指導的の立場に立つて持つて行きたいやうに考へて居る譯で、漸次それ等の問題は實際の施策として現はれて參ると思ふのでありますが、併し是は御説の通りに全く樂觀して居られない問題だと云ふことは私も全く御同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=140
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141・小坂善太郎
○小坂委員 非常に御心配になつて居られるやうな樣子が見えて心強く思ひますが、要するに基本資材が縮小再生産の傾向を辿つて居る、之を少くとも正常再生産の状態にまでどうしても持つて行かなければならないと思ひます、私は先般來豫算總會等で色々申上げて居つたのですが、日本經濟再建の骨組を確りと示されることが一番大事ではないか、石炭の増産が先づ先行すべきだと仰しやいましたが、是は勿論其の通りであります、併し石炭の増産にはやはり鐵鋼を要し、「セメント」を要するのであります、斯う云ふ状態に持つて行くにはやはり立派な鳥瞰圖を作つて──是は私は屡屡申上げましたが此の鳥瞰圖を作ると云ふことには何も具體的なものを提示されなかつたのであります、之を早く作られることが一番大事である、斯うすることが大事であると云ふ意味は、斯う云ふことを科學的な數字の上から立證することに依つて、只今御話の中にもあつた聯合國に對して、基本物資の輸入と云ふことを懇請する強力な手掛りになると私は思ふのであります、私は今膳國務大臣から輸入と云ふ御話があつたので非常に心強く思つた譯でありますが、此の問題以外に今日本經濟の行く途はない、斯う考へて居るのでありますが、此の點に付て膳國務大臣の御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=141
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142・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御指摘になりましたやうな線に沿つて今折角全體の計畫を立案中であります、力強く發足したいと思ひまして、科學的に今此の數字を集め色々の調査を始め折角練つて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=142
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143・小坂善太郎
○小坂委員 今立案中であると云ふ御話ですが、私の意見を申上げれば、兎に角鐵鋼、重油、出來れば木材、又北支からの粘結炭、鹽、「ニツケル」、「ゴム」斯う云つたものは
〔委員長退席、菊池(長)委員長代理著席〕
日本の經濟の最も根幹を成すものでありますから、斯う云ふもの、小さいもので言へば尚ほ硅素鋼板と云ふやうなものも必要でありませう、是等をどう云ふ程度に考へて居るか、此の點を一つ御發表願へませぬか、私の今言つて居ることは、要するに此の時期が早ければ早い程輸入量が少くて濟むと云ふこと、大都會で以て食料店がどんどん復興して喜んで居ると云ふことは丁度日本は今肺病患者のやうな經濟状態にある、肺病患者が白粉や紅を買つて來て付けて、肝腎の榮養を攝ることを忘れて居ると云ふ状態にあるやうに私には思へる、斯う云ふことは成べく早くやられて、早く發表し、さうして國民全體の輿論を持つて行くと云ふことが非常に必要になつて居ると考へるから申上げるのであります、此の點に付て明確な御答辯を戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=143
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144・膳桂之助
○膳國務大臣 只今御指摘になりましたやうな物資に付ては本年の下半期の所要數量、是が今御話のやうな呼び水になる資材の分に付て政府は精細な調査を遂げまして今其の輸入に付て聯合國側に懇請中であります、是はまだ色色其の交渉の間にありますので、數量等内譯を一々御報告申上げるのは差控へたいと存じますが、今御尋ねのやうな點は政府としては既に其の手を打つて居るのだと云ふことを御諒承願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=144
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145・小坂善太郎
○小坂委員 膳國務大臣の御話に依りまして全力を擧げてやつて戴いて居るのだと云ふことに了承して置きます、次に觀點を變へて申上げますが、是は大藏大臣に對して御伺ひしたい、大藏大臣の、此の間から屡屡新圓の再封鎖を行はないと云ふことを申されて居ります、非常に其のことは大事なことではありますが、一般の國民が其の言明に依つて非常に通貨に對する信用を増すと云ふ風には中々了解しにくいのであります、と申しますことは、通貨が一千億にも上つた場合、又更に二千億にも上るだらうと思はれる場合には、どうしても一片の御言明に依つては一般が之を納得し得ないのであります、寧ろ本能的には之を否定し去るのではないかと云ふことを惧れるのであります、「インフレ」阻止の方法に特に奇手妙手があるのではないと云ふことを大藏大臣は先般の豫算總會に於ても言はれましたが、要するに眞面目に石炭増産から始めて生産の再開をやつて行く以外にないと云ふことを申されたのでありますが、茲に大藏大臣に是非一つ採上げて貰ひたい問題がある、それは金貨公債、金貨と「リンク」した公債を出して見る御考へはないかと云ふことを伺ひたいのであります、勿論現在直ちに金貨公債を出すと云ことは中々「インフレ」の進行中である現在に於ては困難でありますから、之を十年後に於て支拂ふと云ふ約束の下に之を出すと云ふことを提唱したいと思ふのであります、此の點に付て大藏大臣の御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=145
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146・石橋湛山
○石橋國務大臣 大變興味ある御意見でありますが、問題は左樣なものを出し得る時期もあらうかと思ひますが、左樣なことが實行出來るのは何時のことか、要するに「ゴールド・クローズ」の附いた公債を出すと云ふことでありますが、今日大藏大臣の新圓を封鎖しないと云ふことが中々信ぜられないとするならば、十年後に金で支拂ふ公債を出すと云ふことも、或は信ぜられないかも知れぬ、併し御考案は非常に結構と思ひますから、或る時期を見まして、左樣なことも實行の出來ることがあらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=146
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147・小坂善太郎
○小坂委員 十年後のことを約束しても信じないだらうと云ふことを仰しやいましたが、それでは大藏大臣が「インフレ」を阻止しようと云ふことを仰しやつて居られるのは根本的に信ぜられないと云ふことになる、何處でも「インフレ」と云ふものは大體五、六年しか續かない、「インフレ」は必ず破局に至つて「ノルマル」な經濟状態になる、是は語弊がありますが、「ノルマル」と云ふ意味は一應「デフレ」になる、さうして金と「リンク」した健全な經濟状態になる、是は世の通説であります、十年間掛つても尚ほ貨幣状態が安定しないと云ふことを大藏大臣は考へて居られることになるのでありますが、それはどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=147
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148・石橋湛山
○石橋國務大臣 私は左樣なことは信じて居ないと云ふことを申すのではございませぬ、現在左樣なものは出し得るとは思ひますが、併し其の出す時期は相當選ぶ必要がある、御考案は大變結構でありますから、十分參考に致しまして、今後の施策に寄與したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=148
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149・小坂善太郎
○小坂委員 提案を御推賞になりましたことは有難いのでありますが、尚ほ私の注文を申上げて置きます、私は兎に角十年後のことは分らぬと云ふやうなことは言はぬで戴きたい、十年後になれば必ず「ドル」との一つの「レーシヨン」が出來ることは明瞭でありますから、其の時に幾ら拂ふと云ふことではなくて、金何匁を拂ふと云ふことを明示されることを希望する、さうして現在それでは金をどの位の「レーシヨン」にするかと云ふことは、專門家が居られるでせうから、私の意見もありますが、ゆつくり御相談出來る機會があればと考へるのであります、尚ほ是は成たけ少額のものにして、誰でも買ひ得るやうな所謂貨幣的な流通手段にするやうにして戴いたらどうかと思ふのであります、丁度「ドイツ」の「インフレ」の安定する時期に「レンテン・マルク」が出ましたやうに、私は此の金で支拂ふと云ふことが、現在の日本の置かれて居る特殊な條件の下に非常に意味があるのぢやないか、斯樣に考へて居るのであります、さう云ふ少額公債を出すと云ふことに付て、十年後に金に「リンク」すると云ふことを宜いと御考へになるかどうか、其の點を御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=149
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150・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今まだ其のことを考へて居りませぬが、是は考へ得ることだと云ふことだけ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=150
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151・小坂善太郎
○小坂委員 餘りいきなり言ひ出して、之に付てどう云ふ構想を持つかと云ふことを伺ふのも非常に失禮だと思ひますので、此の邊にしまして、ゆつくり又構想を練つて戴きたいと思ふのです、と言ふのは、私は何か一つの完全なと云ひますか、人を納得させ得る基礎がなければ、生産再開も覺束ないし、又殊に日本の政治状態が此のやうな特殊な状態にある際には、政府の言明とか、或は特殊な技術的な操作と云ふやうなことでは駄目だと思ふので、是非今の私の申上げました金貨公債と云ふものを出されまして、一つの安定通貨の端緒を作つて貰ひたい、斯樣に考へて居る譯であります私は輸入基本物資「ピユーア・ロウ・マテリアルズ」を急速に輸入する一つの強力な運動を起すと云ふことと、金貨公債を發行する御用意はないか、此の二つの根本的な提案をして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=151
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152・菊池長右ェ門
○菊池(長)委員長代理 森三樹二君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=152
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153・森三樹二
○森(三)委員 私は大藏大臣に御尋ねしたいと思ひます、此の財産税の目的が國家財政の確立保持の爲にある、斯樣に言明されたことを度々聞くのでありますが、併し富の再分配と云ふことも多分に否定出來ない所の税法である、私は斯樣に考へて居ります、それに付きまして、此の戰爭に因つて空襲を受けた人、それから外地に居つて外地の財産を何等持つことが出來なくて本國に歸つて來た人、斯うした人々と、此の戰爭に因つて相當の利潤を得、又相當の財産を保有することが出來た人々との間には、莫大な富の差が付いてしまつた、之に對する所の地均しと云ひますか、平均化をすると云ひますか、やはりさうした政策的なものも多分に含んで考へなければならぬのではないか、斯樣に私はどうしても思つて居るのでありますが、其の點に付て大臣の御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=153
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154・石橋湛山
○石橋國務大臣 外地で事業をして居つた方などに對してはどうするかと云ふことは、屡屡申上げますやうに、外地の資産なるものの性質がまだ決定を致さないと云ふこともありまして、政府としては確たる定ましたものがございませぬ、併し御話のやうな點は、やはり十分考慮を致さなければならぬと云ふことだけは考へて、始終考案は致して居る次第であります、富の再分配と云ふやうな言葉を使ふのが宜いかどうかと云ふことは問題でありますが、兎に角外地に居られた方々だけに特別の負擔が掛つて居るやうな形になつて居りますが、是は何等かの形で多少輕減する方法を講じなければならぬ、是だけのことを考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=154
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155・森三樹二
○森(三)委員 私は要するに財産税と云ふものが國家財政の確立のみを目的としたものではない、即ち之に依つて國民の富の均分化を圖るのだ、それを大藏大臣は御認めになつて居るのかどうかと云ふことも併せて御尋ねして居つたのであります、それで尚ほ外地の人々の問題ばかりでなく、内地に於きましても要するに空襲に依つて燒け殘つた者と燒けてしまつた者との間には、實に大きな差異が付いて居る、私は此の意味に於て此の財産税の税率等を考へて見ますと、一方には相當の財産が殘つて高率の財産税を取られると云つて、明けても暮れても財産税を氣にして居るものがあり、他方には財産税を取られる心配どころか、自分の生活にも困る、詰り財産の零の者もそこに存在して居る、さう云ふ状態にありまして、一方の者は財産税を取られる心配が毛頭なくて、殆ど財産税に對する關心さへも持つ必要がない者と、一方に於きましては、此處にも書いてありますやうに、千五百萬圓を超える金額は税率が百分の九十である、斯う云ふ大きな差異が此の戰爭に因つて起きたのである、尤も戰爭前から相當の財産を持つて居つた人もありますけれども、此の戰爭を契機としてなくなつた者も非常に殖えて居るのであります、私は其の意味に於きまして此の財産税に依つて取上げられた所の財産を、財産かなくなつた人々に對して、例へば生活保護法の如きは豫算か三十億でありますが、迚も都市に於きまして一人當り三圓六十錢、五人家族で約二百五、六十圓の給付額でありますが、それでは實際今日五百圓の枠にも達しない、生活が出來ない、斯樣な状態にある、私はさうした根本的な富の非常に大きな懸隔があるばかりでなく、一方には生活も出來ない者があるのだから、此の財産税に對する所の税率に付きましても、大藏大臣はもつと累進課税を徹底的にする御考へがなかつたのかどうか、又之を變更せられる所の考へはないのかどうか、此の點を御尋ねしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=155
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156・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話御尤もの點がありますが、税を取ると云ふことは實際は是が流動した金ででも皆持つて居つて下さるものでありますれば技術上取ることも容易でありますが、何時も是も議會の問題になりますやうに、物納で戴かなければならぬ、斯う云ふやうな譯でありますから、唯税率を高く盛つたからと云つて税は取れるものではない、我々の考へる所では、今度の財産税の税率と云ふものは主税局長が能く知つて居るのですが、恐らく世界に類のない高率のものだらうと思ふ
〔菊池委員長代理退席委員長著席〕
是れ以上の税率を盛つて果して實行可能かどうかと云ふ點から申しますと、私はここらが行止りでありまして、是れ以上の税率を盛ると云ふことは、紙の上では盛れますけれども、實行に於ては困難だらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=156
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157・森三樹二
○森(三)委員 大藏大臣は只今其のやうに仰しやいます、併しながら戰爭保險に依つて例へば百萬圓の特殊預金を持つた、其の特殊預金を持つた者も五萬圓或は十萬圓の限度に於て、それ以上は百分の百の税率を以て課税されて居る、さうしますとやはり一方に家屋が燒失し、或は工場が燒けてしまつて、其の反對給付として特殊預金を貰つて居るもの、其の家屋なら家屋、工場なら工場が燒けないで存在して居るものは百分の八十にしても或は百分の七十にしても幾らか殘るものがある、然るに戰爭保險の特殊預金で貰つたものは或る一定以上は百分の百で殆ど切られてしまつて居る、そこに大きな矛盾がありはしないかと思ふ、其の點大藏大臣は如何なる御所見を持つて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=157
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158・石橋湛山
○石橋國務大臣 特別課税の方は御話のやうであります、是は特殊預金と云ふやうなものでありますので、詰り技術的に申しましても、課税をすれば其の儘消えてしまふと云ふ譯でありますから、技術上から申すと、幾らでも税率が盛れる譯でありますが、先程から申上げますやうに、實際の財産税の方に於ては中々左樣な税率は盛り得ない、百「パーセント」の税率を盛ると云ふことを致しましても徴集することが不可能、斯樣なことになりまして、衡平、不衡平と云ふことを細かく申しますと、色々の點が無論起りますが、一方に於ては實行可能なりや否やと云ふことも考へなければならぬ、詰り實行可能と云ふ觀點から見て最高限の税率が盛られて居るのでありまして、實際の資産を持つて居る人に取つては隨分きつい税だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=158
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159・森三樹二
○森(三)委員 第一封鎖、第二封鎖の關係に於きましても、例へば茲に千五百萬圓の金を持つて居た人が居る、或は又五百萬圓以上の預金を持つて居た人がある、さうした者は一人に付て一萬五千圓或は家族一人に付て四千圓と云ふ所で以て、あとは第二封鎖に入れられてしまつて居る、第二封鎖と云ふものも或る税金の對象とはなり得るけれども、所謂棚上となつて之を自己の財産として繼續して行くと云ふことは出來ない、一方動産、不動産で持つて居る所の財産と、粒々辛苦して蓄積した所の現金で持つて居る所の財産、それ等の間に、非常に不均衡な結果を生ずると思ふのでありますが、それ等に對して大藏大臣は如何なる御考へを御持ちですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=159
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160・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の通りであります、大體に於て今囘の措置は、金錢の形となつて居りますものに色々の負擔が強く、物的財産になつて居るものに比較的負擔が輕い、斯う云ふ弊は確かにあります、是は先程申しましたやうに、實行上どうしても已むを得ない弊害である、若し總ての動産、不動産に對しても金錢と同じやうな税率を盛り得れば宜いのでありますけれども、盛つても實行は出來ない、斯う云ふことでありますと却て不都合を生ずる、斯樣な次第で兩者に或る程度の相違が起つて居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=160
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161・森三樹二
○森(三)委員 過日來も引揚者の問題で本會議でもありました、引揚者或は内地で戰災を蒙つた者が生活が出來ないと言つて非常に其の處遇に對して要求して居りますが、例の引揚者に對して三千圓の融資をしてやる、所がそれを申込んでも、借りる手續が難かしい爲に其の金すらも借りてないと云ふ人があるのぢやなからうか、然るに拘らず斯うした所の財産の税を取る、多額の財産を持つて居る人が是等の税率を盛つてまだ財産が殘つて居るぢやないか、多數の四百五十萬の引揚者が泣いて居ると云ふことです、財産税として取上げたものがそれ等の人々に引當てて生活が充實されないと云ふやうなことでは私は財産税を取る目的にも非常に副はない點があるのぢやないかと思つて居るのですが、此の點に付て大藏大臣は如何なる見解を持つて居られませうか、財産税と引揚者の處遇の問題、之に付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=161
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162・石橋湛山
○石橋國務大臣 引揚者に對しては屡屡申しましたやうに別途に之を考慮しなければなりませぬ、只今庶民金庫の話がありましたが、あれには前内閣以來色々な食違ひもあつたやうであります、最近に於きましても過渡的の處置として極く少額の金が萬世倶樂部ですか、或は援護院ですか、供給されて、それに依つて庶民金庫が金融をした、是は非常に少額でありましたので却て貸出が少いと云ふことで苦情があつたやうですが、最近政府が行ひつつありますものは、もう既に相當地方に對しても活動を始めて居り、是は相當強力に行はれるものと考へます、引揚者に對してのことは、屡屡引揚者諸君からの陳情も承つて、其の度に色々申して居るのでありますが、色々の關係で十分のことが出來兼ねて居ることは洵に遺憾と存じます、併しながら政府としては出來るだけのことは致したいと專ら努力して居る譯です、財産税と直接の關聯を持たせることは困難だと存じますが、それはそれで別途に出來るだけのことを致す、斯樣な考へで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=162
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163・森三樹二
○森(三)委員 私は此の財産税に付きましては、自分と致しましては、徹底的に此の法律の性格を發揮せしめて、政府は萬遺憾なきを期して行かなければならぬ、それと同時に、財産税を拂ひたくても拂ふことの出來ない者、即ち財産の何もない者、財産が實際なくて生活に困つて居る者に對する政府の方策を緊急に一つ立案せられまして、只今大藏大臣が言はれたやうな庶民金庫なんかも僅か三千圓位でなく、少くとも一萬圓位の金額に引上げて、さうしてそれ等の財産の何にもない者に對して政府が獻身的な處置を御執り下さらんことを希望して已まないのであります
次ぎまして私は和議法に付て御尋ねしたいと思ひます、和議法に付きまして私の見解から申すならば、從來破産法、或は和議法と云ふものがありまして、債權債務に付て特別法として十分の規定がしてあるのであります、然るに今囘屋上屋を架する、と言ひますと語弊があるかも知れませぬが、特別和議法と言つて、和議法の上に特別の字を付けた法律を出すと云ふことは、債務者に名を籍りて財産を隱匿せんとする所の、さうした惡辣な者、是等の者に對して非常に保護すると云ふやうな結果を生じないかと云ふやうなことも實は惧れるのです、と云ふのは、戰爭の最中、非常に不徳義な一部の者は、儲けるのは此の際だ、借金は出來るだけした方が得だと言つて、銀行から或は又個人から相當莫大な借金をして居る者がある、さうして自分達は相當贅澤な生活をして工場を經營し、又は利潤を收めて居る、然るに帳面づらは借金が相當澤山になつて居ります、ですから表面から見ると相當な借金が出來て居るやうに見えるのであるけれども、併し相當の利潤を追求して居る、又利潤も餘程蓄積された、然るに表面負債が澤山ある、戰爭が濟んでしまつた今日、相當莫大な負債があると云ふことを理由にして支拂をしないと云ふことは、我々が今日多々見聞して居る所です、そこに持つて來て斯うした特別和議法が出來て、裁判所にさへ頼めば、裁判所は積極的に、適當と認めるものに相當の強制力を以て勸解をすることが出來ると云ふやうな、破産法、和議法の特別法までも作つて保護する必要があるかどうかと云ふことを私は非常に疑つて居るのです、此の點に付て御見解を御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=163
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164・奧野健一
○奧野政府委員 御説のやうに現在破産法、和議法の法律がありまして、之に依つて破産或は破産防止の爲の多くの働きをなして居りますが、今囘のやうに補償打切に依るさう云ふ緊急の原因に依つて各方面に破綻者を生ぜしむると云ふことは、寧ろ之を避けなければならない、現在の和議法に於きましては、其の債務者保護の點に付きまして十分でないと思はれる點が非常にありますので、今囘の特別和議法を制定致したのでありますが、此の特別和議法に於きましても、原則としては現在の和議法の準用があることに致して居りまして、現在の和議法に依りまして故意に破産囘避の爲に之を濫用的に申立てたやうな場合に於ては却下が出來ると云ふ規定がありますが、それ等の規定はやはり特別和議法に於きましても準用されて居りますので、御説のやうな濫用の場合はやはり十分防止出來る積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=164
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165・森三樹二
○森(三)委員 軍需補償の打切がありました時に、自分達は軍需補償を打切られてしまつた、其の爲に支拂すべきものも支拂ひ得なくなつたのであると云ふことを債務者が理由にして借金を踏み倒さうと掛つて居ることを、我々は巷間非常に聞いて居る譯です、併しながら實際の所を見ると、軍需補償は打切られましたけれども、四、五年前、或は七、八年前に工場を買入れましたり、或は又建設したりした其の時の價格と現在の家屋の闇價格とは非常に價格の差異がある譯です、隨てそれを處分すれば、新圓で家が十萬圓である、或は二十萬圓であると云つて賣れて居る譯です、借金を拂つて尚且つ餘裕が出ると云ふ状態である譯です、然るに一方軍需補償を打切つた爲に、債務者が債權者に對する支拂を猶豫して呉れとか、或は負けて呉れとか云ふ口實を與へる結果となり、搗てて加へて斯うした特別和議法が出ると云ふことが新聞に發表されますと、是は良いことが出た、之を一つ利用して成べく借金を踏み倒さうと云ふことが、我々に非常に鋭敏に響いて來て居る譯であります、だから軍需補償を一方に打切つたからと云つて、さうした債權者、債務者間の立場を公平に取扱つてやらうと云つて、斯うした和議法を御作りになつたのが、實際私等に言はすと非常に皮相な、斯う申しては甚だ失禮かも知れませぬが、本當に形式的に事務を處理すると云ふやうな方面からのみ立案されたやうな氣がして仕方がないのであります、斯う云ふ特別和議法と云ふものでも作られるならば、私が先程申しますやうに其の財産の──例へば家屋であるとか、工場の建物であるとか云ふものの價格に付ても、特別の調査をするとか云ふやうな規定を此の中にでも入れて置かないと、非常に私は不公平な結果を生ずるのではないかと思ふ、もつと分り易く言ふならば、唯斯うした所の形式的な特別和議法だけでは實際物の價格の決定であるとか、評價であるとか云ふことに付て非常に缺陷があるのではなからうかと──、私は斯樣に考へて居るのでありますが、御所見は如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=165
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166・奧野健一
○奧野政府委員 特別和議法の條文だけからは明かではありませぬが、是は本法に別段の定めのない限りは一般の和議法の規定が準用せられて居るのでありまして、其の和議法に依りますると、必ず整理委員と云ふものが選任せられまして、其の者が債務者の財産を十分調査することになつて居ります、又債務者も和議の申立の場合に於ては、財産の明細書を提出しなければならないことになつて居りまして、是等の明細書、帳簿其の他に依つて財産の實體を十分調査することになつて居ります、隨ひまして調査の結果支拂能力が十分あつて、破産に陷るやうな虞れのないと云ふことが明確になつた場合に於きましては、此の和議の申立は棄却すると云ふ建前になつて居りますから、左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=166
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167・森三樹二
○森(三)委員 私は此の和議法に關しまして、財産評價のことに付きまして只今發言した譯でありますが、實際今日では借金があると言ひましても、小さな十坪、二十坪の家を一つ賣れば四萬圓、五萬圓と云ふ金が新圓で入つて來るのであります、昔借金をして家を買ひ、工場を建てて居る者は、實際借金は澤山あるけれども、其の中の一つを處分すれば、借金なんかは何でもないと云ふやうな實情が出て居る譯であります、今日此の家屋の騰貴と云ふことが國民の住宅不足の折、實に酷い影響を與へて居る、我々も家を買はうと思つても手も足も出ないやうな實情であります、斯うした家屋の騰貴、而も家を借りようと思つても、それにも闇の權利金が付くと云ふやうなことも巷間に能く分つて居るのであります、是等に付て大藏大臣は如何なる御所見を持つて居られるのでせうか、實際家がどんどん高くなつて行く、結局物價政策としては、今年食糧は豐作で良くなる見透しが付いて居るのですが、結局ない物高と言ひますか、品物が足らぬ爲に、或は住宅が足りない爲に、ないものは段々騰貴して行く、結局物價の「バランス」が取れない、併し住宅の如き、實際人間の衣食住に重大な關係を持つ住宅に對して、政府が何等の手を打たないで騰貴して行くのに委せて置くと云ふやうな状態であつては、是は住宅問題から言つても、更に物價問題から言つても、私は實に惡影響を起して居ると思ふのでありますが、之に對して大藏大臣は如何なる御所見を持つて居られませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=167
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168・石橋湛山
○石橋國務大臣 住宅は御承知の通り非常な不足であります、隨て資材其の他の關係から新しい住宅を建てる場合に、相當高價になると云ふことも事實であります、是は戰災復興院を中心として、努めて小住宅を建設することに致して居りますが、今までの所は思ふやうに進んで居りませぬが、是は大いに今度公共事業費、其の他の支辨に依りまして住宅を建設して、價格の調整を致す、斯樣に考へて居ります、要するに供給を出來るだけ殖やすと云ふことが根本でありまして、さう致さなければ價格の調整は困難だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=168
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169・森三樹二
○森(三)委員 さうしますと、住宅を建設しなければならぬと云ふことは是は勿論分つて居るのですが、價格が今日の如く一坪五千圓だ六千圓だ、少し良い土地は一萬圓だと云ふやうに騰貴して居る、物價體系から言つてさうした騰貴して行くのを放任して置いて宜いかどうか、それに對して何等か價格を抑制するとか、或は又法規で以て之を適當な方法で決めるとか、さうした御處置を執ると云ふ御見解はないのでありませうか、其の點を大藏大臣に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=169
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170・石橋湛山
○石橋國務大臣 家賃、地代、それから又家屋の價格に付ても統制はされて居るのです、統制はされて居るのですが、結局闇價格と云ふものが其の間に起る譯であります、それも取締を致して居る譯でありますが、併しながら闇價格と云ふものは、經濟的に申しますと、中々取締だけでさう云ふものが悉く撲滅の出來るものではありませぬから、自然實際には或る程度の闇價格が行はれる、結局是は經濟の原則に從つて或る程度供給を殖やすと云ふ以外に、本當に之を取締る道はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=170
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171・森三樹二
○森(三)委員 しつこいやうでありますが、轉賣してそこに利潤を得る、例へば十萬圓で買つて十五萬圓で賣れば、それは闇價格として處罰の對象になるけれども、例へば今から十年前に一萬圓で建築した家を、今日十萬圓で賣ることは刑罰の對象にならないと私は考へて居る、だからさう云ふものに對して結局抑へなければならぬのぢやないか、例へば家屋と云ふものは一坪千圓以上、或は千五百圓以上に賣買してはいかない、と云ふやうな法規の積極的に作れば、今度は家屋はどんなことをしても千五百圓以上に賣買出來ないと云ふことがぴたつと當嵌るのでありますが、今の所では幾ら家が高くても、十年前、二十年前に建てても、或は又最近買つて轉賣する人も同じやうに、幾ら高くても構はないのだと云ふやうな觀念を持つて居る人が居るのです、此の點に付て大藏大臣の御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=171
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172・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は私今統制法規を記憶して居りませぬが、家の賣買價格にも統制がある筈であります、價格に付て限定がある筈であります、唯それを祕密に逃れて賣買をする者を取締ると云ふことは、取締つて居る筈ですが、事實に於ては中々困難な點がある、それから尚ほ、家の賣買などがありました場合には課税はある譯であります、でありますから、さう云ふ方法で取締るだけ取締ると申しますか、と云ふ以外には實は道はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=172
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173・森三樹二
○森(三)委員 取締る以外に方法がないと仰しやいますが、甚だ心細い御話で、幾ら取締つても、取締れば取締る程益益騰貴して居るやうな譯でありますが、之に對しては拔本的な御處置を講じて戴きたいと思ひます
私は又特別和議法の問題に入りますが、其のやうに家屋なんかは實際どんどん騰つて居る、だから債務者が本當に誠意を以て債務を辨濟して、尚且餘りがあるやうな場合でも、特別和議法と云ふやうなものが出來た爲に、軍需補償の打切、或は此の特別和議法が出來たと云ふことを理由にして債權者を踏倒すと云ふやうなことでありますと、一層今日の經濟界を混亂さす原因になりはせぬかと私は考へて居るのです、隨て此の特別和議法の適用に當りましても、司法省は愼重なる御處置を以て臨まれたい、斯樣に私は考へて居るのでありますが、御所見は如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=173
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174・奧野健一
○奧野政府委員 御説のやうに、十分に支拂の能力のあるにも拘らず特別和議法に藉口して債務を免税或は免れやうと云ふ場合には、勿論先程申しましたやうに、其の申立は棄却すべきものであると云ふ見解を抱いて居るのでありまして、實は關係方面と此の問題に付て折衝の際も、さう云つたやうな話合になつて、さう云ふ方針で行くことに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=174
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175・森三樹二
○森(三)委員 餘り諄く御尋ね致しませぬが、特別和議法は一定の期間と云ひますか、整理が濟みましたら廢止なさる積りでせうか、或は又相當期間存續すべきものでございませうか、私は一定の處理が付いたならば、須く、斯うした屋上屋を架するやうな、特別法の特別法と云ふやうな氣が致します法律は、撤廢なさるのが宜いぢゃないかと思ひますが如何なものでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=175
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176・奧野健一
○奧野政府委員 是は今囘の戰時補償打切に關する特別措置に關聯した特別和議法でありますから、さう云ふことの影響がなくなつた時に於ては此の特別法は廢止して一般法に復歸する積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=176
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177・森三樹二
○森(三)委員 最後にもう一つ御伺ひ致します、時期はさうした處理が濟んだと認定される客觀的な情勢が出來るまで此の法律を置いておくと仰しやる意味でせうか、それとも又今後三年なら三年、或は二年と云ふやうな見透しを以て適當な時期が來たら之を廢止すると云ふやうな意味でございませうか、之を御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=177
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178・奧野健一
○奧野政府委員 現在の所は何年と云ふ確たる考へは持つて居りませぬ、唯補償打切に伴ひまして、例へば企業再建整備法等に依つて其の債權を打切り、それに又關聯して個人の資産關係に影響を及ぼすと云ふやうな爲に此の特別和議法が制定せられるに至つたのでありますから、さう云ふ各金融竝に企業の整備の進行度合ひと云ふやうなものとも非常に關係がありますので、豫め五年とか三年とか云ふ見透しを付けることは稍稍困難ではなからうか、要するに今囘の特別措置に關した事柄が總て安定致しました曉に於ては、成べく早く此の特別法を廢止したいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=178
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179・森三樹二
○森(三)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=179
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180・本多市郎
○本多委員長 喜多樽治郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=180
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181・喜多楢治郎
○喜多委員 私は財産税に付きまして主として大藏大臣に御質問申上げたいと存じます、財産税に依り生産を阻害し産業を萎縮せしめる虞れなきや、現下「インフレ」防止と産業日本再建の第一策は生産の圓滑、振興を急速に實現せしめることにあるのでありますが、今囘の財産税徴收に依りまして生産は著しく阻害せられ、産業全般を萎縮せしめる結果になるのでありまするが、之に對處する政府の施策を御伺ひ致したいのであります、特に私は個人經營の中小商工業者に致しまして、營業諸設備又は營業必需物資を賣つて納税をしなくてはならないやうな立場にある者も相當あるのではなからうかと思ひます、起上らんとする中小商工業者の芽を摘み取ることとなり、政府が議會に於て屡屡言明されて居ります中小商工業者救濟方針を根本的に空手形とし、引いては國民の政府信頼を喪失する虞ありと思惟する者であります、經濟の強靭なる再建の爲め財産税は已むを得ぬ措置なりとすれば、之に依り中小商工業及び産業全般に亙り全體を萎縮せしめずして、併せて中小商工業者と法人經營者との不均衡なる點が多々あると思ふのでありまして、之に十分の考慮を入れたる政府の確乎たる所信を此の際特に國民に明示する要ありと思考する者であります、此の點に對しまして大藏大臣の所見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=181
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182・石橋湛山
○石橋國務大臣 個人經營で仕事をやつて居る人は其の個人の總てが財産になつて居ります、事實財産でありますから財産税を課税せられるのであります、そこで問題は其の財産税を納める爲に折角やつて居る事業を賣つて拂はなければならぬと云ふやうなことが起りますと、其の事業の經營に支障を來す、隨て生産を阻害すると云ふ懸念は確かにあります、そこで政府と致しましては左樣なことが起らないやうに此の財産税の納付の場合に付ては特別の何等かの處置を講ずる積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=182
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183・喜多楢治郎
○喜多委員 特別の處置と云ふことに付きまして具體的説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=183
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184・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は尚ほ具體的に色色考案があらうかと思ひますが、例へば今私が此處で考へて居りますことは例へば金融をする、財産税等に付ての金融はしないと云ふことは前の方針で、それは其の時の財産税の性質上、さうあつたのでありますが、どうもさう云ふ點に於て何等かの途を開く必要があります、是はまだ色々考究して居りまして、何をするかと云ふことは決まつて居りませぬが、まあ一例を申せば左樣なことを致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=184
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185・喜多楢治郎
○喜多委員 時間の關係もありますから、簡單に御伺ひ致します、一寸事務的に……財産税の納付に對しまして、他人の第一封鎖の金を借用することが出來るかどうかと云ふことを御聽き致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=185
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186・池田勇人
○池田(勇)政府委員 他人の第一封鎖の借用が出來ないとは申上げ兼ねます、それは其の方が自分の生活資金としての第一封鎖を引出して、財産税納税義務者に御貸しになるのは自由と思ひます、併し他人の財産税を納める爲に貸すのだと云ふ理由では、第一封鎖を解いて呉れないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=186
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187・喜多楢治郎
○喜多委員 では三月三日以後に於て買入れた公債社債等に依り財産税を納入することが出來ますか、納入することが出來るとすれば、特別の評價を以てせられるのでありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=187
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188・池田勇人
○池田(勇)政府委員 三月三日の所有國債以外の國債では、納付を認めない考へで居ります、唯外の財産を全部物納しても、三月三日以後に取得した國債より外にないと云ふ場合には、別に考へて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=188
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189・喜多楢治郎
○喜多委員 それでは營業用の借地權、特許權等は課税の對照になりますか、若し課税の對照になるならば如何なる評價を以て致しますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=189
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190・池田勇人
○池田(勇)政府委員 凡ゆる財産は課税の對象でございますから、營業權も、或は借地權、色々な無體財産權も課税の對象になると思ひます、唯其の時の評價に付きましては、個々の無體財産權を調査しなければ、どう云ふ標準で行くと云ふことは只今の所申上げ兼ねるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=190
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191・喜多楢治郎
○喜多委員 第四に戰時補償打切に該當せざる特殊預金があるやうでありますが、之に對しましては企業資金措置令の廢止に依りまして解除になる關係上、第一封鎖或は第二封鎖に相成るのでありますか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=191
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192・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 戰時補償特別課税の對象になりませぬ特殊預金は戰時補償特別税の課税の仕事が一段落と言ひますか、一應の目途が付き次第、通常の預金と同じやうに、第一封鎖、第二封鎖がない前の封鎖預金と同じやうに扱ふ、隨ひまして其の方の御持ちになつて居る預金の高に依りまして、例へば外の封鎖預金と併せまして、一萬五千圓以下であれば第一封鎖になる、それ以上であれば第二封鎖になる、さう云ふことにならうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=192
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193・喜多楢治郎
○喜多委員 次に、財産税の申告納税制は不正申告を助長するものと思惟するのでありますが、是の防止に關する政府の所見を御伺ひします、申告納税制は税制の民主化とも見られ、我々の理想ともする所でありますが、之を施行する上に於ては、國民の良心的態度に俟たねばならぬことは勿論だが、此の惡用を圖る惡質者も相當あるものと考へられるのであります、政府は之を法規を以て處斷する方針のやうでありますが、正直者が何時も馬鹿を見る結果とならざるやう嚴重に取締り得る確信があるのでありまするか、又家庭動産等正確なる評價基準を示さなくては不測の問題を惹起する虞があるのではなからうかと存じます、此の點に付きまして政府の用意を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=193
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194・池田勇人
○池田(勇)委員 今囘財産税に新たに申告納税制を採用致しました、是は税の民主主義化の第一歩と私は考へて居ります、隨ひまして從來の取扱ひとは餘程變つて居りますので、初めてのことで不安内の爲に色々な問題が起ると思ふのでありますが、税務當局と致しましては飽くまで誠實な申告を期待致して居る次第でございます、若し其の間に不正の申告がなされるやうな場合には、之に對しまして相當罰則或は税額加算の規程を置きまして、不正申告の防止に努めて居ります、尚ほ非課税に致しまする日常必要な家具什器等に對しましては、特別の考案を設けまして、所謂平均的に一定額を課税の對象とすると云ふ風な規定を置きまして、納税者の申告に便利なやうな方法を採用致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=194
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195・喜多楢治郎
○喜多委員 之に關聯を致しまして第三者の通報制に付て御意見を承りたいと思ひます、他人の脱税を發見致しまして政府に報告した者が相當の報酬を受け得ることになつて居ります、且つ虚僞の報告に對しては又相當の罰則が設けられて居るやうであります、併し之を口實に他人の住宅等を搜索する虞はないかと思ふのであります、隱匿物資の搜索の例に鑑みましても特に考慮を要すべき問題ぢやないかと考へまして、此の點に關しまして政府當局の御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=195
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196・池田勇人
○池田(勇)政府委員 申告書を提出しなかつたとか、或は課税價格に脱漏があつたやうな場合に付きましては、御話の通りに第三者からの通報を認めて居ります、此の際に其の第三者が不法の行爲に依りまして他人の納税者の住宅を荒らすと云ふ風なことがありましたら、一般刑法の處罰を受ける譯でございます、又財産税法に於きましても、不法の行爲に依りまして知つた事實を通報した場合に於きましては報償金は與へないことになつて居ります、又誣告に對しまする處罰も一般刑法よりも重く致し、不當な通報のないやうに努めて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=196
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197・喜多楢治郎
○喜多委員 財産調査委員會の形成方法は、納税者の選擧に依らずして政府の任命する方法になつて居るやうでありまするが、是は民主主義に反する考へぢやないかと存じますので、此の理由を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=197
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198・池田勇人
○池田(勇)委員 從來租税の決定に付きましては、納税者の選擧せられた委員に依つて委員會を構成し、税務當局が之に諮問致しまして決定することに相成つて居るのでありまするが、此の税を査定する場合に、納税者から選んだ人が其の自分達の税を査定すると云ふことはどうも理論的にはぴつたり來ない氣持が致すのであります、隨ひまして、納税者から選出すると云ふ方法を採らずに、一般の方々から適當な人に出て戴きまして、さうしてさう云ふ方々に依つて審議して戴く方がより一層民主的だと考へまして、今囘は納税者から調査委員を選擧せず、政府が適當な方を任命致しまして、さう云ふ方々に御審議を願ふことに致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=198
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199・喜多楢治郎
○喜多委員 時間もありませぬから、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=199
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200・本多市郎
○本多委員長 澁谷昇次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=200
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201・澁谷昇次
○澁谷委員 私の質問は重複するやうですが、政府の方の御答辯が明確でないのでもう一應伺ひたいと思ひますが、明確に言つて戴けば質問は直ぐ簡單に濟みます、戰時利得税や財産増加税を變更した理由はどう云ふ譯でありますか、戰爭中に隨分儲かつた人もあれば、軍と結託して財産の増加が相當あつたものもあります、それに對しては全然課税をしないで之を一括して財産税で取ると云ふことに變更なさつたのは如何なる理由でありますか、先程御答辯がありましたが、此の點がどうも明確でないやうですから、改めて大藏大臣に伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=201
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202・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先程私が其の問題に付きまして答辯致しましたのと、又廢めました理由に技術的の點がありますので、私から御答辯申上げます、財産税が、財産増加税或は法人戰時利得税を考へました時は、軍需補償打切の考へ方を持つて居らなかったのであります、今囘は軍需補償打切と此の財産税の二つで大體戰時利得は排除せられるものと考へますのと、もう一つは、今の經濟社會状態としまして、あれだけの税法を早急に施行致しまして效果を現はすことは非常に至難だ、殆ど困難だ、此の二點から、財産増加税或は法人戰時利得税を廢めた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=202
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203・澁谷昇次
○澁谷委員 それでは、戰爭中に軍と結託して隨分儲かつた財産等に付ては何等手を加へない、斯う云ふ譯でありますか、技術上出來ないから手を加へないと云ふ譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=203
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204・池田勇人
○池田(勇)政府委員 今囘政府から提案致して居ります戰時補償特別税竝に此の財産税に依りまして、戰時中特に儲けられた方の戰時利得は殆ど徴收出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=204
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205・澁谷昇次
○澁谷委員 どう云ふ譯でそれが包括されて取れるかと云ふことを御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=205
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206・池田勇人
○池田(勇)政府委員 戰時中非常な儲けをせられた人は此の戰時補償特別税の課税の對象になる場合が多うございます、又此の財産税の税率は、先般政府が考へて居りましたあの個人財産税の税率よりも餘程強くなつて居ります、それは個人財産増加税の税率をも考へに入れまして今囘の財産税法の税率を盛つた次第でございますから、此の財産税法の税率をもち、又一方に戰時補償特別税が施行されれば、先程申上げましたやうに戰時利得者は徹底的に排除せられると考へて居ります
〔委員長退席、石原委員長代理著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=206
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207・澁谷昇次
○澁谷委員 どうも少し説明が腑に落ちない點があります、或は私の不勉強でさう云ふことになるのかも知れませぬが、兎に角、軍需補償打切に伴つて其の税金で取ると仰しやいますけれども、それ以外に相當まだ殘つて居ると思ひます、きう云ふ人が殆ど今日の新圓稼ぎや闇屋の大體中心になつて居る、問題はそれ等に對する課税がどう云ふやうになるかと云ふことの方針が決まれば、斯う云ふ問題が割合に公平に行くのぢやないか、斯う思ひます、其の點はどうも明確なる御答辯が得られませぬから、もう答へて貰はなくても宜しうございます、それから財産税の目的をどう云ふ譯で此の法文の中に明記しなかつたかと云ふことに付て御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=207
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208・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税法案提案理由書にはつきり謳つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=208
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209・澁谷昇次
○澁谷委員 私の質問したことは、此の理由書に書いてあると云ふことを答辯を求めた譯ぢやないのでありまして、私が質問して居ることを能くあなた聽いてから御答へ願ひたい、法文の中になぜ明記しないかと云ふことを質問したのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=209
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210・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來の法文は概ね其の理由を書いて居ないのを通常と致して居ります、財産税法、特に今囘の戰時補償特別措置法に付きましても、其の他一聯の法律には此の法律を施行する目的を書いた條文はないのを通例と致して居ります、戰時中御話の通りに國家總動員法等に依りまして目的を書いた場合もなきにしもあらずでございますが、ずつと過去から通じて見まして、提案理由書に其の法案の目的を書きまして、條文には入れないのを通常に致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=210
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211・澁谷昇次
○澁谷委員 私は重要な法律だから明文を書いた方が宜くはないか、斯う思つた譯であります、私は更に無形財産に對する評價は如何なる調査委員會で決定するかと云ふことを御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=211
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212・池田勇人
○池田(勇)政府委員 無體財産權に付きましては個々の財産に付きまして評價を考へて行きたいと思ひます、飽まで其の權利の客觀的財産價値を見出したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=212
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213・澁谷昇次
○澁谷委員 先程政府から御説明がありました四百三十五億の財産税を御取りにならうと云ふ基礎の中に、計算の概要の中に、無形の財産權に對する徴收はどの位御見積りになつて居るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=213
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214・池田勇人
○池田(勇)政府委員 個人の無體財産權を一億三千萬圓に見積つて居ります、是は從來相續税に於きまして大體相續財産に入つて居りました無體財産權を全體の相續財産に對しましての割合を求めまして、さうして今囘もさう云ふ方法で一億三千萬圓と見積つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=214
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215・澁谷昇次
○澁谷委員 本法律案では漁業權等にも課税することになつて居るやうでありますが、個人の持つて居る漁業權が約一萬六千位あるぢやないかと思ひますが、それ等に付てどう云ふ方法で課税をなさらうと云ふ御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=215
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216・池田勇人
○池田(勇)政府委員 先般奧村委員からの御質問に對しまして一應答へて置きました、是は其の漁業權が貸付けされて居る場合には、貸付料から其の價値を判斷します、又貸付けて居らずに、自分が其の漁業權を行使致して居ります場合には、其の所得を見まして、通常の生ずべき所得以上であつた場合に、其の超えた部分から其の漁業權を評定致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=216
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217・澁谷昇次
○澁谷委員 財産税法の第二十五條に於て、一定の倍數を乘じて行くと云ふことがありますが、私は大體此の一定の倍數と云ふものは、若し出來て居たら御發表して戴きたいと考へるのであります、更になぜ倍數を發表したら宜いか、斯う言ひますと、大體賃貸價格とか其の他取引價格を參酌して其の基礎は決定する譯であります、其の決定された基礎の上に一定の倍數を掛けるのですが、此の倍數と云ふものだけは決めて發表されて置かないと、其の倍數を増減することに依つて、政府が仰しやる通り成程四百三十五億と云ふものは確實に取り得ると云ふことは當然であると思ひます、要するに此の法案の一番の「インチキ」性と云ふのか、幾らでも取れるからくりと云ふのは、此の一定の倍數と云ふ所にあると私は思ふ
〔石原委員長代理退席、委員長著席〕
隨て評價委員會等で御決めになるものは、其の基礎となるべき價格を決定なされば宜いのであつて、寧ろ法律に於ては、其の倍數と云ふものは一定に明記するのが至當である、それを國民の前に示して戴きたい、隨て一定の倍數と云ふものがあつて、其の掛ける所の基礎を評價委員會で決定する、斯う云ふことにした方がはつきりして宜しいのではないか、さう云ふことに依つて概算的にも徴收さるべき所の見透しが付き得るのではないか、斯う考へるのであります、それに對してもう一度政府の御考へを御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=217
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218・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の點に付きましては、午前午後十分御説明申上げたと思ふのでございまするが、たつての御質問でございまするから簡單に申上げます、是は土地建物の一般取引價格と云ふものは全國非常に區々でございます、而して家屋なり土地なりの賃貸價格は法定で決まつて居ります、隨て取引價格が各土地、各種目毎に違つて居りますので、此の倍數を法律で書く譯には技術的に不可能でございます、隨て一般標準となる土地の取引の價格を見、それと賃貸價格とを比較して、さうして標準となるべき土地が賃貸價格に對して何倍だ、斯う云ふ倍數を求めまして、其の倍數は政府と致しましては、東京都なら區、市、區、郡別に最高、最低、中庸の倍數を決めまして、さうしてそれを官報で公示致します、個々の納税者に付きましては各市町村役場に、何村大字何番地の田は何倍ですと云ふことを公表致します、斯く致しますことが評價に適正を期し、又申告に便利だ、斯う考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=218
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219・澁谷昇次
○澁谷委員 私の御伺ひしようと思ひますことは、さう云ふ説明は先程伺つたので能く分つて居る譯であります、其の評價の基礎となるべきものは、あなたが今仰せのやうに御決めになつて其の倍數と云ふものは一定の標準で決められ得るものと考へるのでございます、隨て其の掛ける方になるものは、それは個々に決定すれば宜いのであつて、倍數と云ふものは一定の基準を持つて居つても宜いのではないかと思ふのですが、此の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=219
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220・池田勇人
○池田(勇)政府委員 取引價格が決まつて倍數が出るのでございます、倍數が出て取引價格が決まるのではございませぬ、隨て取引價格を決め、既に決まつて居る賃貸價格との倍數を見て他の財産の評價の基準にする、斯う云ふ建前でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=220
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221・澁谷昇次
○澁谷委員 財産税を四百三十五億圓徴收すると申しますが、其の時期に付ては大體此の年度内に御取りになる豫定でありますせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=221
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222・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税は昭和二十一年度中に徴收致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=222
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223・澁谷昇次
○澁谷委員 今まで税率に付て政府から御答辯がありましたが、例へば一億の財産を持つて居る者と、十億の財産を持つて居る者とが、同一に千五百萬以上は百分の九十と云ふことでありますが、財産税を取られた後に殘餘財産と云ふものを比較致しますと、例へば十億ある人は一億圓殘り、更に千五百萬圓の者は約一割まで殘る譯で、それの比較は尚ほ大きな所有の差になる譯であります、果してそれ等が富の均衡と云ふ此の法案の目的に合致するかどうか、隨て私はもつとそれ等に對して數字を分けてやらなければいけないと考へます、更に此の税率を十萬圓を超える金額を百分の二十五、十一萬圓を超ゆる金額は百分の三十と何故に此の「パーセンテージ」で決めたかと云ふことの基礎があつたら御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=223
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224・池田勇人
○池田(勇)政府委員 最高税率を千五百萬圓を超ゆる金額に對しまして百分の九十に致しましたのは、千五百萬圓を超ゆる財産家の數其の他財産金額を見まして、此の程度で適當なりと考へた次第でございます、次に十萬圓を超ゆる金額を百分の二十五とし、其の間の差を一萬圓にして、十三萬圓まで行つて居る、從來の所得税等の財産税率とは盛り方が可なり違ふではないか、斯う云ふ御質問と思ひます、實際今までの税率の盛り方とは違ひます、是は十萬圓と云ふものを免税點に抑へまして、而も二十萬圓、三十萬圓、五十萬圓の方に相當の納税をして戴く爲には、斯う云ふ恰好の方が税收を期待し得るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=224
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225・澁谷昇次
○澁谷委員 財産の評價と免税點と云ふものは、常に竝行して行かなければならぬと思ひます、隨て評價委員會に於て財産の評價を時價で可なり上げた場合には、更に免税點を十萬圓からそれ以上に上げると云ふ御考へはございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=225
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226・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の法案が通りましたら財産税法で最も重大なる免税點を政府が兎や斯うすることは出來ませぬ、又御話の如く評價と云ふものは中々評價委員が勝手に出來るものではないと思ひます、やはり公正妥當な評價と云ふものは一つでなければならぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=226
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227・澁谷昇次
○澁谷委員 それならば何故に十萬圓と云ふ免税點を大體原案で決めて、更に徴收不可能ならば五萬圓にするのだと云ふことを御言明になつたか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=227
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228・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の點は大藏大臣が先程御述べになりました通りでございます、我々と致しましては四百三十五億圓の收入は確實と考へて居りますが、併し萬が一にも著しく不足するやうな場合にはさう云ふことを考へることあるべしと云ふのでございまして、此の法案が通りますれば、之に依つてやりまして、五萬圓以上十萬圓以下の方から徴税するやうなことはないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=228
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229・澁谷昇次
○澁谷委員 其の場合には政府は修正案を御出しになる用意がございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=229
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230・池田勇人
○池田(勇)政府委員 新たなる法律を提案致しまして、皆樣方の御審議を願ふことになるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=230
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231・澁谷昇次
○澁谷委員 私は大藏大臣が「チヤーン」案に對しまして勇敢に鬪つたことを聽いて居りますが、大藏大臣は何故に戰爭の爲に裸になつた國民、更に外地に居りました數百萬の人達は丸裸で歸つて來て居るのに對して、國内に財産を所有して居る者を擁護せんが爲に、内閣の生命を賭して鬪はれたと云ふことが、如何にも持てる者に對しては非常に篤い政治をやつて居りながら、斯樣に戰爭の爲に犧牲になつた者、或は戰爭で裸になつた者に對しては左程篤い政治をおやりになつて居らぬと云ふことに對して大藏大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=231
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232・石橋湛山
○石橋國務大臣 あなたの仰しやることは全然誤りですから、之に對して何等の所見はありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=232
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233・澁谷昇次
○澁谷委員 如何に誤りであるか分りませぬが、兎に角持てる者と持たざる者の均衡は今日の日本の状態に於て爲政者の方々が見られる通りでありまして、而も此の税率に於ても、非常に苛酷だと云ふことが言はれて居りますが、敗戰になりました諸國の現状を見まするならば、恐らく公債其の他を破棄同樣に處理して居る國があるのに對して、少くとも所有權が一千五百萬圓とか或は一億とか、さい云ふ人達に對しまして更に徹底した負擔が課されて居ないと云ふ工合に私は考へる譯であります、隨て私の考へることは決して誤りでないと私は考へて居ります、あなたはそれに對して國民に濟まないと云ふことを仰しやつたのでありますが、それならば私の考へて居るのが見當違ひならば濟まないと云ふやうな言は、私は出ない筈だと思ふ、私の念願して居りますのは、もう少し是等の戰爭の犧牲になつた人達のことを主體にして考へて貰ひたいと云ふことなんであります、財産家を擁護せんが爲にとは私は敢て申しませぬが、日本の國の財政を確立して、新しい再建の途を開く爲におやりになつたではありませうけれども、我々の受ける印象と云ふものは、必ずしもさうでないやうに感ぜられるのであります、其の點に付て政府は戰爭で犧牲になつた者の政策に對して、もつと眞劍でなければならぬと考へる譯であります、寧ろ戰爭で犧牲になつた人に對して、政府は生命を投出しても鬪ふべきであると私は考へるのであります、此の點に付て大藏大臣は御答辯を避けて居られるやうでありまするから、私は敢て御答辯を伺はうとは思ひませぬ、裸で外地から歸つた人に對して、國内の多くの人は軍と結託して仕事をして居つたと云ふ印象を我々は深く感ぜられるのであります、之を此の軍需補償打切の諸法案に依つて是正して行かうと云ふ點に付て、我々は是では尚ほ不滿足だと云ふことを委員會に於て表明して、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=233
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234・奧村又十郎
○奧村委員 議事進行に付て──只今の澁谷君の質問の中に漁業權に關する質問がありました、是は一昨日私も質問したのでありますが、其の際農林省政府委員の答辯に於て未確定な部分がありましたので、此の委員會開催中に於てはつきり御答辯を願ふやうに希望してはあるのでありますが、早く其の點を御願ひ致したいと思ひます、特に委員長に御願ひ致したいのは、此の漁業權に付きましては、個人の漁業權に對しては地先の漁業會の諒解を得ると云ふことに原則はなつて居るのであります、最近の傾向は、地先の漁業會は個人の漁業權に對して諒解を與へないと云ふ傾向になつて居るのであります、隨て、現在の免許即ち是は五年毎に更新するのでありますが、現在與へられた免許の範圍内に於て財産税を評價するのであるか、今後又免許更新に於て新しく個人に對して免許を下附するのであるか、是は今後に於ける水産業團體の改革に付て重要な根本の問題になつて居るので農林大臣の方針を伺はなければ、此の問題は解決せぬと思ひます、御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=234
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235・本多市郎
○本多委員長 審議中に答辯があるやうに私から能く申傳へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=235
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236・鈴木明良
○鈴木(明)委員 本日は是にて打切り、殘餘の質疑は明日にされんことを望みます
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=236
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237・本多市郎
○本多委員長 委員長と致しましては、最初に申上げて置きました通り、本日努めて質疑を繼續して貰つて終る豫定で始めて居りますので、折角の動議ですが、是非もう少し御勉強を御願ひ致します
〔「動議に贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=237
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238・本多市郎
○本多委員長 暫時休憩致します
午後四時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=238
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239・会議録情報3
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午後五時二十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=239
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240・本多市郎
○本多委員長 休憩前に引續いて會議を開きます、議事に付て申上げます、「帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辯のための借入金等に關する法律案、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辯のための公債發行に關する法律案、及び自作農創設特別措置特別會計法案」、此の三法案が本日新たに本委員會に併託せられましたので、之を一括して議題に加へます、此の際以上の三法案に付て政府側の説明を願ひます──上塚政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=240
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241・上塚司
○上塚政府委員 本委員會に併託されました「帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案」外二件に付き、其の提案の理由を申上げます
先づ「帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金に關する法律案」提出の理由は、本會議に於て申上げました通りでありまして、政府は兩會計に於ける收支の状況に顧みまして、鐵道運賃の値上げ、通信料金の値上げを行ひ、事業收入の増加を圖る等、兩事業の經營の合理化に努めて居るのでありまして、改定豫算に於きましては、兩會計とも若干の益金を生ずる豫定と相成つて居たのでありますが、其の後事業經營に必要な諸經費は尚ほ増嵩の傾向に在りまして、今囘官廳職員の給與制度の改正に伴ふ追加經費の爲め、帝國鐵道會計收益勘定に於て十億八千三百餘萬圓、通信事業特別會計業務勘定に於て八億二百餘萬圓を追加豫算として提出するに至つたのであります、而して是等追加經費の財源は、本來事業收入を以て之を支辨することを建前とすべきものと存ずるのでありますが、兩會計の現状に於きましては、目下の所是れ以上の増收は望み得ない實情にあります等の關係上、前述の追加經費の一部は借入金財源を以て支辨するの外途なきものと存ずるのでありまして、其の借入金の額は帝國鐵道會計に於ては五千八百萬圓、通信事業特別會計に於ては四億四千萬圓と相成るのであります、而して是等の借入金は帝國鐵道會計に於ては收益勘定の歳入、通信事業特別會計に於ては業務勘定の歳入、當該借入金の償還金及び利子はそれぞれ當該勘定の歳出とすることと致し、又右の各勘定に於て決算上剩餘金を生じました場合、其の剩餘金額を當該勘定の翌年度の歳入に繰り入れることと致すのを適當と存ぜられますので、此の法律案に於て其の旨の規定を設けることと致したのであります、尚ほ兩會計に於きましては、前述の如く昭和二十一年度は益金皆無の状況と相成ります關係上、兩會計の負擔に屬する國債の元金償還資金の國債整理基金特別會計への繰入れは、本年度に限り之を停止するのを適當と認めまして、其の旨の規定を此の法律案に設けることと致したのであります
次に「復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込支辨のための公債發行に關する法律案」に付き説明申上げます、本法案に付きましては、過日帝國議會の協贊を經て成立致しました復興金融金庫法に依つて、政府は、復興金融金庫に對して、其の資本金總額百億圓を出資しなければならないことになつて居り、其の内四十億圓は、同金庫設立の當初に於て拂込むことに相成つて居るのであります、又目下本院に於て御審議中の産業復興營團法案に依りまして、政府は、産業復興營團に對して二億圓を出資拂込むことと相成るのでありまして、此の際政府は、出資拂込の爲め四十二億圓の財源を調達する必要が生じたのでありますが、其の財源は、一般會計收支の現状に顧みまして、之を公債財源に求めるの外途なきものと存ぜられますので、公債發行に關する權能を得る爲め、此の法律案を提出致しました次第であります
次に「自作農創設特別措置特別會計法案」に付き説明申上げます、本法案は目下本院に於て御審議中の自作農創設特別措置法案に基きまして、自作農を急速且つ廣汎に創設する措置を講じます爲め、政府に於て行ひまする土地、權利又は立木、工作物其の他の物件の買收、使用、賣渡、賃貸、交換に關する歳入歳出を一般會計と區分して經理致しまして、自作農創設に關する事業の經理を一括明瞭にすることが必要と存ぜられるのでありますが、此の措置を講じますに付きましては、會計法第三十九條の規定に依り、之に關する法律の制定が必要でありますので、此の法律案を提出致しました次第であります
以上三件に付き、何卒御審議の上、速に御贊成あらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=241
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242・本多市郎
○本多委員長 本日は是にて散會致します、次會は明四日午前十時より開會致します
午後五時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00419461003&spkNum=242
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