1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出)
復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出)
自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出)
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昭和二十一年十月四日(金曜日)午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 本多市郎君
理事 石原圓吉君 理事 菊池長右エ門君
理事 森曉君 理事 舟崎由之君
理事 武藤嘉一君 理事 稻村順三君
理事 西村榮一君 理事 木下榮君
理事 岡田勢一君
江藤夏雄君 大内一郎君
大塚甚之助君 近藤鶴代君
坂本實君 田中重弥君
河原田巖君 大石ヨシエ君
天野久君 金光義邦君
北村徳太郎君 中野四郎君
小池新太郎君 鈴木明良君
寺田榮吉君 武藤常介君
上田清次郎君 奧村又十郎君
川島金次君 澁谷昇次君
田村定一君 中崎敏君
森三樹二君 藤井正男君
秋田大助君 駒井藤平君
大橋喜美君 笹森順造君
穗積七郎君
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十月四日委員久保猛夫君辭任に付其の補闕として岡田勢一君を議長に於て選定した
十月四日理事久保猛夫君の補闕として岡田勢一君が理事に當選した
出席國務大臣
農林大臣 和田博雄君
遞信大臣 一松定吉君
厚生大臣 河合良成君
運輸大臣 平塚常次郎君
大藏大臣 石橋湛山君
國務大臣 膳桂之助君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 池田勇人君
大藏事務官 石原周夫君
大藏事務官 渡邊喜久造君
厚生政務次官 服部岩吉君
農林事務官 山添利作君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案(政府提出)
復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案(政府提出)
自作農創設特別措置特別會計法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=0
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001・本多市郎
○本多委員長 會議を開きます、此の際御諮り致すことがあります、理事久保猛夫君が委員を辭任せられました、就ては其の補闕として理事を委員長に於て指名するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=1
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002・本多市郎
○本多委員長 御異議なしと認めます、それでは岡田勢一君を理事に指名致します、是より質疑を進めます──石原圓吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=2
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003・石原圓吉
○石原(圓)委員 此の澤山の案が提案された本會議に於きまして、總理大臣より此の諸案の成立に依つて國民は安定する、財界も朗かになると、非常に樂觀的な御演説があつたのでありますが、此のことは單にあの本會議に於ける所の一つの儀禮に止まるものであつてはどうも國民全體を安心せしめる譯には行かないと思ふのであります、それで總理大臣のあの言明があつたに付きましては、閣僚諸公を初め、殊に大藏大臣、膳國務大臣に於かれましては、總理大臣をしてあの言明をさせた根據は兩大臣より御提供若くは御進言なさつたものと思ふのでありまして、固より石橋大藏大臣、膳國務大臣に於きましては、國民を安定し、國家の經濟を鞏固にすると云ふ意味から、茲に至つたことは察することは出來るのでありますが、其の具體的な内容を此處で御話し下されまして、本當に國民を納得せしめ得るやうな御説明を以て此の委員會を通じて國民に知らしめたいのであります、嘗て斯かることは我が國に於てはなかつたことでありまして、斯かる未曾有の、殆ど空前と言ひ、今後絶無と言うて宜い此の處置でありまするから、それに對する所の國民に本當に安心を與へるやうな御説明を兩大臣より御願ひを致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=3
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004・石橋湛山
○石橋國務大臣 總理大臣の過日の演説は無論總理大臣の考へで述べられたことでありますが、同時に我々も御相談を受けまして、全幅の贊意を表したことは申すまでもありませぬ、唯あの聲明の中には、今後の日本の途は相當に困難である、而して之を國民諸君の滿幅の協力に依つて、完全に是等の諸法案が實行される曉に於ては、我が經濟は十分整理され、前途は非常に朗らかになる、斯う云ふ意味に言はれたのでありまして、唯手離しに樂觀したと云ふ譯ではございませぬ、今後此の諸法案を實行するに當りましては、隨分の困難があると云ふことは總理大臣初め政府悉く諒解して居る點でありまして、其の點は先日來當委員會に於ても屡屡委員諸君から御話があり、我々が御答へした通りであります、併しながら之を完全に實行して、補償問題の如き未解決の問題がすつかり解決し、企業及び金融機關が新勘定に依つて整理されて參りますと、屡屡申上げますやうに、大藏省所管で申しましても、新圓舊圓の區別でありますとか云ふやうなことが解決されることに相成ると信じて居ります、左樣な譯で、日本の經濟が大體非常時體制から常態に戻り得る、斯樣な譯で、隨て各國民が經濟的に働くのに種々なる束縛から──無論計畫はなければならぬ譯でありますが、不自然な束縛から解かれ、各自の「イニシアティーヴ」で十分な働きが出來る、斯樣なことになる、又さうしなければならぬ、斯樣な覺悟で居る譯であります、生産の方面に於きましては、又是は別でありますが、是は石炭等を初め非常な努力を只今拂つて居る譯であります、兩々相俟つて總理の聲明された状況を實現し得る、斯樣に確信して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=4
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005・膳桂之助
○膳國務大臣 只今の問題に付きましては、もう數次繰返して述べてありますので、是れ以上只時間を取るのは恐縮でありますが、日本經濟の再建には前途横たはる問題は非常な苦難の途であります、材料、原料の入手難、又さう云ふ點から考へましても、今生産が非常に衰へて居ると申しますか、減退して居る、之を常態に囘復する、それすら中々困難の問題でありますが、何を申しましても、さう云ふ困難のことを囘復する第一前提としましては、企業の健全性、國家財政の健全性を得ると云ふことが何よりの前提なのでありまして、之を切拔けますには、單に政府だけの努力では如何ともなし難いことでありますが、國民の協力を得て前途に光明の道が開くには、一度は此の苦難の道を切開き、苦難の道を通る、是れより外に途はない、さう云ふ意味に於きまして總理大臣が強く強調せられました、其の事は私共全く同感なのでありまして、斯樣な意味に於て一たび荊棘の道を開いて、光明の道に邁進する、總理大臣の仰せられたやうに、此の途が開ければ、丁度颱風が一過したやうな氣持で、新しい建設に立直る、左樣に私共は確信致して居りますので、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=5
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006・石原圓吉
○石原(圓)委員 兩大臣の御説明に依りまして、其の一部分を知り、且つ御苦心のある所は十分に察知することが出來るのであります、又斯かる事態の中に此の案を御提案なされるまでの言ふに言はれぬ所の御苦心、又某當局との折衝に當られての御奮鬪、不退轉の御決心で御折衝された、さう云ふやうなことを我々は漏れ承ることもありまして、特に兩大臣に感謝の意を持つて居るのであります、それで個人的にはお氣の毒な御立場に立たれて國難に善處する御苦心に對して敬意を表するのであります、併し此の案が議會に提案されて、議會に移つて可決した場合は、全然議會の責任となります、其の議會の責任となる我々議會人が或る程度の、一般人に知られぬ所の内容を知りたいと云ふことは、是は責任上當然であると私は思ふのであります、故に私は進駐軍との折衝の内容であるとか、今後の動向であるとか云ふやうなことは、政府當局より進んで我々委員だけの祕密會に對してでも、外部に洩らされぬやうな事柄の中の其の樞要なる點を御洩らしを願つたならば、審議の上にも非常なる便宜を得て、又我々議員としてもそこに閣僚と同等の責任を感じ、義務を感じ、又是が遂行に努力する決意も付き易いと思ふのでありまして、それ等の點に付て何か御考へがないでせうか、一應御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=6
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007・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸速記を止めて下さい
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=7
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008・本多市郎
○本多委員長 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=8
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009・石原圓吉
○石原(圓)委員 私が斯う申しまするのは、實は新聞に依りますると、十萬圓程度に對する課税でいけなかつたならば、更に又五萬圓にまで及ぼすと云ふやうな話、それからそれに類する所の政府の方針に對して變化があることに對して國民は不安と疑惑を持つて居る者が多數あるのであります、小さい問題では鹽の補助金の打切り、さう云ふやうな色々國民に不安を與へるやうな事柄がありまして、昨日でありましたか大臣より、寧ろ議員の側からさう云ふことがないと云ふことを國民に證明をせよと云ふやうな御言葉もあつたのですが、是は執行機關と議決機關との差別と云ふやうなことにも及ぼすのでありまして、要するに政府が聲明したことは變らない、やつたことには錯誤はないと云ふことでなければならぬ、國民に安心させ、納得させて、さうして此の案が制定された以後に於ける執行の方面に何等の問題を起さないやうにしなければならぬ、斯う云ふ點から私共は先刻の御尋ねを申すことになつた次第であります、要するにやらなければならないことであるからやらなければならぬが、それに對しては言行の伴ふ、實行と聲明とが伴ふ、同時に國民もそれに協力してやつて行くと云ふ建前にするのが政治の要諦であつて、是は進駐軍等の關係で、敗戰國の悲しさに、國の政府が立てる通りにやつて行けないから起る問題であると云ふことははつきり分るのでありますけれども、其の事柄を國民全體に周知せしめ、納得せしめてやる所の手段、方法に缺くる所があり、寧ろ拙劣な點があるかのやうに私共は感ずるのでありまして、さう云ふやうな點に對する今後の御心構へ、御方針等も一應此の際承つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=9
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010・石橋湛山
○石橋國務大臣 御趣意能く分りました、過去の補償問題もさうでございますが、尚ほ今御擧げになりました鹽の問題の如きも、實は戰時中及び終戰直後の非常な混亂期などに行はれました所の色々の制度又は政府の約束、之を最近に至りまして、此の内閣になりまして色々變更を致して居ります、是は過去に特別の事情に依つて生じたことでありまして、それでも政府が一旦約束したことを破ると云ふことは決して好ましいことではありませぬが、實際に於ては已むを得ない、特別の事情の下に起つたことであるから、之を現在の事情に合はして修正することは無論已むを得ない、隨てそれを修正する場合に、或る點に於て過去の政府が約束したことが守られないと云ふことが起つて居りますことは甚だ遺憾であります、併しながら現在政府が茲に法案其の他で以て出しましたことは、是は政府の責任として何處までも守ります、之を更に變更すると云ふやうなことは斷じてございませぬ、是だけは茲に申上げて少しも差支へないと存じます、それだけ御答へして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=10
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011・石原圓吉
○石原(圓)委員 御言葉もありまするが、既に報奬金の一部が關係の方面より支出されて、それが預金になつて居る、預金となつて居るものはもう個人の完全な所有である、さう云ふものまでも取る、それから鹽の如き政府が奬勵して出すと云ふことを確約した、寧ろ強要して生産設備をさせた方面へ豫定の補助をやらない、斯う云ふやうなことは國家が國民を僞ることであつて、斯う云ふことをやらなければならぬが實行が出來ないと云ふのならば、それに對して納得さすべき手段方法がなければならぬのでありまして、唯已むを得ない、已むを得ないと申しますけれども、それだけでは利害關係者は納得が出來ない、收まりが付かないと云ふ實情が茲にあるのでありまして、私は是等の問題は他の方法で、國民一般から更に重税を取つても國民を僞らない手段方法に依るのが本當の政治の、所謂善政ではないかと思ふのであります、今からでも改められるものは改めて戴きたいと云ふ強い希望を持つて居る次第であります、是が此の通りに實行しなければならぬのならば、何かそれに代る方法に付きましての御考へがないでありませうか、此の點をもう一應御伺ひを致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=11
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012・石橋湛山
○石橋國務大臣 今囘の諸法案を作成し御審議を願ふまでには無論色々の案を檢討致したのでありますが、何れに致しましても、利害得失が相錯綜して居りまして、どの案を取りましても總て完全であり、總ての人に公正であると云ふ譯には參りませぬでした、と云ふのが、要するに日本の状況が昨年八月、さもなければ聯合軍の上陸を受けて、我々は竹槍を取つて國民悉く戰死すると云ふ位までに行く状況であつたものが、辛うじて陛下の思召で終戰になつた、斯う云ふ事實に結局基いて居るのだと私は思ひます、でありますから過去に於ける戰爭中或は終戰直後に於ける種々なる當時の政府の約束と云ふものが實は守れないやうな國情にある、其の國情からして自ら來る譯でありまして、隨て種々なる方策を執りましても、どれにも是にも缺點が多い、それで今囘の法案は種々なる考への中最も適切であると云ふものを選んで、尚且つ此の状態である、斯樣な次第でありますので、其の點どうぞ御諒承を願ひたい、是は決して或る者から強ひられたと云ふ意味ではございませぬ、無論聯合國の占領治下にあるのでありますから、其の關係上聯合國の司令部とも十分の打合はせを致し、聯合國側の意見或は忠告も聽いて作成したものであります、併しながら決して聯合國から強ひられたものではないので、是はどうしてもここに落付くことが一番適切である、斯樣に政府の責任を以て考へてやつたことであります、隨てここに出されて居るものに對しては政府が飽くまでも責任を持つて實行して行くと云ふ決意を持つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=12
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013・石原圓吉
○石原(圓)委員 各案の綜合した此の案全體を實は讀む暇もないのでありまして、研究する暇は無論ないのであります、政府に於ては財産税等に依つて收入を圖つて、政府の財政を安定することには十分重きを置いて居るやうでありまするが、引續き來たるべき平和産業の生産増強竝に國民に對する生産意欲を象徴すべき所の勞働階級に對する對策であるとか、産業方面に對する對策であるとか云ふものを殆ど私は認めにくいのでありまするが、國民から取るだけは取るが、後の生産竝に生産意欲と云ふものには──無論御考慮を拂はれて居るのでありませうけれども、私共の見る所ではそれが分らないのであります、其の點に付て一應御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=13
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014・石橋湛山
○石橋國務大臣 産業政策等に付きましては私の主管ではありませぬ、今囘の法案は大藏省關係のものが割合に多いのでありますが、金融でありますとか、或は財政と云ふやうなものは、斯樣な法案となつて皆さんの御審議を受けなければ實行の出來ないものが多いものでありますから、隨て斯樣な法案になつて議會に現はれ、人の眼にはつきり付く、併し産業政策の方は法案の必要なものもありませうが、必ずしも法律に依らず實際の施設として行はれて參りますので、自然議會の御協贊を經ることの數も比較的少い、斯樣なことで目立たないのではないかと私は考へて居ります、政府としては是は全體の經濟政策の半面に過ぎないのでありまして、他の大いなる半面として産業政策に非常な努力をし、著々其の方面にも手を打つて居る積りであります、併し其の方面は私の直接の主管でございませぬから、唯私の全體の感想として今の御質問に對して其のことだけを御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=14
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015・膳桂之助
○膳國務大臣 産業關係の方面に付き又勞務對策、勞働意欲の向上等に付まきして、實は此の數日間御質問に對して縷々御答へ申上げたのでありますが、各方面に對しましても政府は決して怠つて居る譯ではなく、やつて居ります、それを又一々繰返しますと數時間を要しますので、繰返すことは御許しを願ひたいと思ひますが、只今大藏大臣の言はれたやうに、法案の形に現はれて居りますものは、復興金融金庫でありますとか、設備營團の新しい構想であるとか云ふやうなものが二三出て居るだけでありますが、實際問題と致しましては、政府部内を擧げまして、今後の産業の振興再建と云ふことに付きまして努力して居るのだと云ふことは御諒承願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=15
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016・石原圓吉
○石原(圓)委員 私は斯かる案が成立する時には、それと同時に國民に絶對安心感、安全感を與へる方策が最も必要であると思ふのでありまして、それは何であるかと申しますと、米主食三合を配給すると云ふ問題であると思ふのであります、其のことが此の案の成立と同時に發表されることを切望して居るのであります、昨日豫算總會に於きまして農林大臣は十一月一日より幾らか増配すると云ふことを申されたのでありまするが、此の幾らかは私は絶對三合を希望するものであります、又國家の動向より見て主食を殖やし、生産意欲、勤勞意欲を十分強調しなければならぬ時でありますから、十一月一日には絶對三合配給の發表が望ましいのであります、それに付きまして此の案の成立するまでに、かなり深刻な進駐軍との御折衝があつたと思ふのであります、こちらも忍ぶべからざる所を忍んだ所も多々あるだらうと思ふのであります、さう云ふ機會を捉へまして、此の三合配給にすることの同意を得て、不足だけを先づ差當り輸入に仰ぐと云ふことに對して、御折衝があつたでせうか、なかつたでせうか、其の邊の經緯を御聽かせ願ひたいと思ふのであります、米は既に豐作を傳へられ、藷も豐作を傳へられ、私の見る所では餘り多くの外米等の援助を仰がなくとも三合配給は出來ると私は斷然確信して居るのであります、それを實行することは政府の勇氣にあるのであつて、政府がやらうと思へば必ず配給は出來得ると思ふのであります、萬一の備へとして、此の際外米の援助を仰ぐと云ふことの折衝があつたかなかつたか、なければ今後早急に御交渉をされて、ここに國民が本當に滿腹感に依つて、生産意欲を復活する、蘇生の思ひをされると云ふことが今後の生産に重大なる關係があると思ひますので、一應御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=16
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017・石橋湛山
○石橋國務大臣 先づ以て申上げた方が宜いと思ひますが、聯合軍は日本を占領して居りますが、其の目的は聯合軍若くは聯合國の利益の爲に占領して居るのではなくして、世界平和の維持、又狹く申せば、日本を良き平和日本に仕立て上げようと云ふ目的で居るのでありますから、如何なる交渉に於きましても昔の外交取引の如きものは今日はございませぬ、即ち或ることを聯合國側に利益を與へるから、其の交換にこつちも斯うして呉れと云ふやうな交渉の餘地はございませぬ、是は聯合國の占領目的が自分の爲にやつて居るのではなく、自分は非常な犧牲を拂つて日本の爲にやつて居るのだ、斯う云ふことを先づ我々は理解して掛らなければならぬと思ひます、併しながら日本の状況から致しますと、日本の利益の爲に色々のことを考へて斯う云ふ法案もやるのでありますが、それにしても食糧事情等の關係から實行が非常に困難である、或は危險があると云ふことがあれば、我々としては躊躇なく聯合國司令部の諒解を求めて居りまして、是は此の法案を作るまでの間にも屡屡強く依頼を致した次第であります、併し其の結果が御承知のやうに相當多量の食糧を放出せられることになつた譯であります
それから三合配給の問題は、是は私から御答へするのはどうかと思ひますが、私の知つて居る限り申上げて政府としての御答へとしたいと思ふのですが、是も全く聯合國側の援助を受けずに日本の食糧問題が今後解決出來ると云ふことが確實でありますれば、是は無論聯合國も喜んで三合でも何合でも之に同意することは明かだと思ふのですが、遺憾ながら色々の觀測はございますが、未だ聯合國側の援助を全然受けぬでも宜いと云ふことは言ひ切れない状況にあると當局は見て居ります、而して又斯う云ふことだけははつきり申しても宜いと思ふのですが、日本に進駐して居られる司令部は、日本の事情が能く分つて色々の食糧に付ても實際感謝すべき程心配をして居て呉れるのですが、食糧の問題は司令部だけの自由にならない問題でありまして、「アメリカ」本國は言ふまでもなく、彼處にあります聯合國側の全體の食糧政策を決定する所で以て決定するのでありまして、日本に居る司令部も亦本國若くは各聯合國の意向に對して色々考慮をされなければならない、斯う云ふ苦心が存するのであります、隨て日本だけで考へると、御言葉のやうに三合配給で何とかやると云ふことが政策的には非常に好いかとも思ふのでありますが、只今の所では左樣な譯に參りませぬ、隨て目標としては出來るだけ多數の配給をする、殊に同じ三合とか二合幾らとか申しましても、其の中に未利用資源まで入つて三合にするか、入らない三合にするかでは隨分違ふのであります、今までの二合一勺は未利用資源まで入れての二合一勺であります、でありますから今後幾らになるか未だ申上げ兼ねますけれども、例へば世間で云ふやうに二合五勺になつても其の二合五勺の實質にも依るのであります、それ等の點は政府に於ては十分考慮して出來るだけのことを致したいと考へて居る次第でありますから御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=17
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018・本多市郎
○本多委員長 一寸石原君に申上げます、本日は質問全部を終る申合せに基いて進行して居りますので、各人の質問の時間に制約を受けることは免れないのであります、申合せでは三十分程度と云ふことになつて居りますが、時間も切迫して居りますので、出來るだけ殘餘の質問は簡單に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=18
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019・石原圓吉
○石原(圓)委員 進駐軍の日本に對する物價政策は所謂低物價統制に依つて物價を引下げると云ふ方針のやうに考へまするが、さう解釋して宜しいのでせうか、それとそれに關聯して貿易廳が莫大なる缺損が生じた場合には是は何れの負擔になるのでせうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=19
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020・石橋湛山
○石橋國務大臣 私の知つて居る限りに於きましては、聯合國の物價政策は決して左樣に固まつたものではないと承知して居ります、統制であるとか、或は低物價だとかさう云ふことではなく、もつと彈力性のあるものと考へて居ります、それから貿易廳の問題でありますが、是は大いなる損失が生ずることはないのであります、是は御承知のやうに總て貿易廳を通して輸出する、又それを通して輸入する、其の間に又司令部が入つて居ります、「ドル」の計算は「ドル」で建てる、圓の計算は圓で建てる、斯う云ふことになつて居ります、そこでそれが今「スタート」した譯でありますが、是は其の勘定が「バランス」するやうに今後處理して行く積りであり、又さうなると考へて居りますから時の喰違ひの爲め或る年度には幾らか輸入超過になる、或る年度には輸出超過になると云ふこともありますが、全體としては「バランス」するやうに致して行くものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=20
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021・石原圓吉
○石原(圓)委員 低物價政策のみでないと云ふことを承つて安心するのでありますが、若し「アメリカ」の低物價政策に盲從すると云ふやうなことがあつたならば、輸出對象物、所謂今後日本より輸出すべきものの單價に悉く影響する、其の損害は夥しいと思ふのでありまして、其の點はどうか今後の適當なる對策を希望する次第であります、尚ほ通貨の信用の維持に付て大藏大臣は如何なる御考へを持つて居られるのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=21
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022・石橋湛山
○石橋國務大臣 屡屡申上げますやうに、幸ひに本年三月頃からの物價は色色の批判もありますけれども、全體としては安定して居るやうに私は見て居ります、隨て通貨に對する信用はあります、それはもう一つは通貨が非常に澤山出て居りますが、それは其の中の非常に多くの部分が退藏されて居る、通貨で持つて居れば宜しいと云ふ考へを國民がまだ持つて居る、唯々なぜあんなに通貨が出るかと云へば、それは預金をしては危ない、斯う云ふことの爲に預金がされない、通貨で持つて居りますから今日洵に幸ひなことでありますが、今日の通貨は國民の間に十分信用があります、隨て之を維持して行くと云ふことは實は容易であると考へて居る譯でありまして、此處で御審議願つて居るやうな諸案を通して整理するものは整理する、金融機關も整理する、さうして今後は預金をしてもそれが再び封鎖されると云ふやうな懸念はないと云ふことを實際の上に示せば通貨價値の維持は十分出來る、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=22
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023・石原圓吉
○石原(圓)委員 膳國務大臣に御尋ね致しますが、經濟安定本部が成立前後の國民の期待は非常に大きかつたのでありまして、經濟安定本部に於て日本の經濟は全部敏速に的確にどんどん實行されて行くものと期待して居つたのであります、隨て其の反面には各省の大臣が、どうも經濟安定本部を作つてやつて貰はなければいけないやうな無能な大臣のみである、さう云ふやうな考へ方や意見もあつたのでありまして、日本の國政をやつて行くのに大臣以上のものがある、大臣がやれないから、其の上に安定本部と云ふものが出來て、膳國務相は非常に偉い人であつて、殊に又經濟方面の事柄は總てとんとん拍手に國民が期待して居る以上にやつて行けるやうに考へて居つたのであります、所が實際今日になつて見ますると少しも振はない、斯う云ふ噂があるのでありまして、例へば物價の問題でありましても、米の問題で行詰つたやうな、行詰らぬやうな、どうなるのか分らぬやうな状態であつて、我々早場米等の各縣へ行つて話を聞いて見ますと、米の値段を決めずに、米だけ寄越せと云ふことはどう云ふ譯か、どうして決められたのかと云ふことで、其の方の聲が喧しいので、進行が停頓したと云ふやうな譯であります、さう云ふ工合に物價だけでも、一つの物價を決めなければ次が決められない、昨日か一昨日か物價廳の次長さんに直接魚の値段の是正と云ふ問題で長時間話をしたのでありますが、どうもお米のことが片付かないから次に移れないと云ふことを次長自らが仰しやるのであります、是は何たることかと私共は失望落膽したのであります、少くも安定本部と云ふ限りは、何も彼も起つて來た問題は同時に解決をする所の段階を以て進まなければならぬと思ふのであります、米の問題で半月若しくは一月掛る、其の次でなければ魚の問題が決められない、野菜の問題が決められない、日用雜貨の問題が決められない、斯う云ふことになると、安定本部は一年が存立期間のやうに聞いて居りますが、私は何も出來ない不安定機關になるだらうと思ふのであります、之に對する國務大臣の所見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=23
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024・膳桂之助
○膳國務大臣 斯う云ふ日本の三千年來の歴史を搖るやうな大きな事件、又國内の資源を殆ど消耗し盡して參つたやうな此の經濟界、之を一安定本部と云ふ役所が出來て、半月、一月の間に起死囘生の妙藥を用ひるやうな妙策はありませぬ、要するに國内の情勢及び内外の情勢に鑑みまして、而も今囘打ちます補償打切りと云ふやうな大きな手、是は先程御質問のありましたやうに、前古未曾有の荒療治であります、又之に伴ひます日本の産業を、どう持つて行くかと云ふこと、此の前提として未決の問題が澤山あります、資材、天然資源不足をどうして補ふか、是は輸入に俟つより外仕樣がありませぬ、國内の生産設備の主要なるものは賠償として撤去されます、是もまだ確定致して居りませぬ、幾つかの前提條件として同樣な問題がある、而も此の無理な十年間の戰爭に依りまして消耗し盡された此の國力を以て、日本に累積する澤山の案件を一夜にして解決するであらうとは誰も考へて居らない所であります、況や我が國は聯合軍の占領治下にあります、我が國政府のみにては解決出來ない問題は多々あります、兎に角懸命の努力はして居りまするけれども、それがさう右から左に片付くと云ふことは情勢が許しませぬ、併しながら日本の政治は安定本部のみが致して居るのではありませぬ、日本の政府各部面が協力致しまして、色々な方面の政策の打開に努めて居るのであります、漸次其の方面に順當に進行して居るのだと云ふことを申上げて置きます、或る形は或る時期が來ますと、準備の出來たことが段々と形になつて現れます、此の事だけを御答へ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=24
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025・石原圓吉
○石原(圓)委員 私の質問は可なり長いのでありますから、進行の順序として實は御遠慮申して居つたのでありまして、中々盡きないのでありますが、自分の黨の關係もあつて、此の程度に止めたいと思ふのであります、唯私が可なり憎まれ口を申しますのも、此の案を無事に通過せしめると同時に、實行に當つて國民の思想に動搖をせしめず、産業の振興、國民の生活安定を欲するが故に申上げるのでありまして、其の點はどうぞ御諒承願ひたいのであります、斯かる時期に閣僚となられた以上は、所謂西郷隆盛の、國の爲めならば腹を切ると云ふ御覺悟を固く御持ちを願ひたいと思ふのであります
次に小さな問題でありますけれども、恩給法のことでありますが、私の聞取つた所に依りますと、中尉、下士官、兵の恩給法に依る金額は、中尉が八百四十圓、それ相當の文官は五千四百六十圓、下士官は六百三十圓、文官は四千五百五圓、兵は五百六十圓、其の相當官は四千九十五圓となつて居ると云ふことであります、是は私直接調べたのではないのでありますけれども、是が事實とすれば、非常なる懸隔があるやうに思ふのであります、中尉、下士官、兵、是も決して自ら戰爭がしたいからした人々でないのでありまして、已むを得ず國家の方針に從うて、今日では追放者同樣になつて、全部の收入を失つて呻吟して居る人が多いと思ふのであります、それとそれ相當の文官との差額が餘りにも懸隔があると思ふのでありまして、此の點はどう云ふ御考へでありませうか、一應承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=25
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026・石橋湛山
○石橋國務大臣 只今數字を持ちませぬが、御尋ねのやうな左樣な差額はある筈はないと思ひます、且又現在は軍人の恩給は全部停止されてしまひましたので、是は他に何等かの方法を講じなければならぬと云ふことで、今厚生省等で苦心をして居る譯であります、恩給に付て、それは曾ての數字でありますが、隨て現在は左樣な差額と云ふものも、全部なくなつてしまひましたので、ない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=26
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027・石原圓吉
○石原(圓)委員 是はどうか斯かる間に均衡を保つやうな處置を執つて戴くことを希望致します、尚ほ軍人に對する御意見は非常に御同感であります、是れ又何等かの方法を與へて戴くやうに希望を申上げて置きます、私の質問は是で一應打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=27
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028・本多市郎
○本多委員長 此の際昨日併託せられました三法案に付て分離して特に議事を進めるやうにと云ふ政府からの希望もありますので、暫時休憩を致しまして、其の進行方法に付て相談を致したいと思ひます、暫時休憩致します
午前十一時四十分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=28
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029・会議録情報2
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午後零時十三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=29
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030・本多市郎
○本多委員長 休憩前に引續いて會議を開きます、川島金次君より緊急質問の通告がありますので之を許します──川島金次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=30
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031・川島金次
○川島委員 此の際私は農林大臣に簡單に一言御尋ねを申上げ、大臣より之に對して確乎たる言明を御願ひしたいのであります、其の事柄の内容は、大臣も既に此の問題に付きましては各方面から質疑も受け、或は情報も受取つて居りまして、定めし種々なる措置を講じつつあらうと思ふのでありますが、未だにそれが徹底して居らない、其の内容と申しますのは、農地調整法の改正を繞りまして全國農村に於ける所の地主の不當なる耕作權の取上げであります、此の耕作地の取上げの問題に付きましては、農林省が本春以來屡屡通牒等を以て各府縣に示達して居ることは私も承知して居るのでありますが、殊に本春當時に於きましては五町歩の地主の保有面積があると云ふことを繞りまして、御承知の如く五町歩程度の地主が頻りと小農方面に對する所謂小作地の取上げを、威喝を以て、或は老獪なる手段を以て、或は其の他の方法を以てなし、塗炭の苦しみに泣く泣く泣寢入して居ると云ふやうな小作人が極めて著しい數に上つて居るのであります、此の問題に對しまして農林省當局に於きましては文書其の他に於ては洵に確乎たる方針を以ちまして示達其の他の努力をされて居るやうでありますが、未だに農村全體に於てはそれが徹底して居りませぬ、隨て今囘の農地調整法の改正案を繞つて、今度は一般地主の保有面積が三町歩になつたので、三町歩と云ふやうな程度の小地主が更に小作人に對して頻りと其の小作地の取上げをやつて居ると云ふことは現實の問題である、隨て其の爲に、幾多の小作人が明春より耕すべき土地を奪はれ、或は縮小せしめられて明年の耕作に非常なる昏迷と不安に泣いて居る小作人が著しい數に上りつつあることは事實の問題であるのであります、是等に對して農林當局は刑罰を以て將來は處置すると云ふやうな事柄も傳へられて居るのでありますが、其の處置に付きましては一向に具體化して居りませぬ、其の取上げを受けました所の小作人は或は農業會、或は農地委員會或は府縣地方事務所若しくは縣農務課等に陳情致しましても、其の陳情を聽くだけであつて、當該機關は何等其の小作人に對して適當な措置に積極的に出ようと云ふ態度が極めて稀薄なのであります、此のやうな事柄に付きまして農林當局は果して斷乎たる處置に出ると云ふ御考へがあるのか、それに付きまして此の席から全國の此の泣ける弱い立場にあります小作人に對し或は不當なる地主に對して斷乎たる所信の聲明をして戴きたい、斯樣に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=31
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032・和田博雄
○和田國務大臣 御答へ致します、第一次の農地改革以後土地引上げが相當に行はれたのは事實であります、今囘の農地調整法に於きます改正及び自作農の特別の措置法に於きましてはそれ等の點も十分勘案致しまして、不當な土地取上げが行はれて居りますやうな場合には農地委員會が是は相當だと認める時には、昨年の十一月二十三日現在まで遡りまして、其の現在の状態に依つて買收計畫を立てると云ふことが出來るやうに致しまして、從來不當に取上げられましたやうなものに付きましては一つには其の方法に依りまして、是は農地委員會の働きに依りまして救濟すると云ふ手段を講じたのであります、それから今後此の法律の施行後は特例で、或る期間を經ます間、と申しますのは、此の自作農創設の仕事が進行致します間は、是は土地のさう云つた取上げと云ふことが不當に起りませぬやうに、農地の契約の解除なり更新の拒絶と云つたやうなものに付きましては、從來市町村の農地委員會の承認を得ることになつて居りましたのを、地方長官の許可を要することと致して土地の移動と云ふものを制限致しまして、さう云ふ事態が不當に發生致しますることを防いで居る譯であります、それから御話の中にありました點一寸誤解があるといけませぬから御説明申上げて置きまするが、今度は地主の保有面積は三町歩ではないのでありまして、一町歩であります、自作地主が三町歩と云ふことになつて居ります、我々と致しましては是は是非今囘の土地の改正をやりますのに付きましては、さう云つたやうな事柄を十分考へまして、從來末端に於きましても其の趣旨が兎角徹底しにくかつた譯でありますが、今囘は地方に於きましても亦十分趣旨が徹底致しますやうに、又此の實際の仕事をやりますに付ては農地管理局から下まで一貫した一つの組織を以ちまして、是非公正に此の農地の改革が行はれますやうに努力致したい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=32
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033・川島金次
○川島委員 さう云ふ風になりますと昨年の十一月二十三日の現状を基準として其の以後に徒らに移動されました所謂小作地の問題に對しましては、專ら農地委員會の裁定に任すと云ふことであつて、政府はそれに對しては何等關與しないと云ふ事柄になる譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=33
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034・和田博雄
○和田國務大臣 十一月二十三日まで遡りましてそれ以後に行はれました──尤もそれは正當に行はれました土地の返還に付ては、言換へますれば、第九條に依りまして適法に行はれましたものに付ては如何とも致すことは出來ないのでありますし、又さうすることが却て不當でありますが、其の間不當に行はれました土地の返還の問題に付きましては、是は農地委員會に於て十一月二十三日まで遡りまして、そこの状態に於て買收計畫を立てる、斯う云ふことに致して自作農創定と云ふことの趣旨を徹底させる、斯う云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=34
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035・川島金次
○川島委員 もう一言續いて御伺ひします、さう云ふことになりますと十一月二十三日以後に於て、地主が小作人に對して不當に耕地を取上げる、さう云ふ問題に對しましては農地委員會が其の不當なりと認めた場合には、斷じて其の小作地を囘收せしめると云ふ責任を持たせることになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=35
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036・和田博雄
○和田國務大臣 左樣でありまして、農地委員會が是は不當に行はれた土地の返還であると云ふやうに認めた場合に於ては、是は十一月二十三日の状態に於て、其處の現状を捉へて買收計畫を立てる、斯う云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=36
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037・川島金次
○川島委員 更にもう一つ伺ひます、さうした場合に今度は取上げた地主が他に闇價格を以て其の小作地を轉賣してしまふ、さう云つた事柄が判明した時には、其の轉賣した所の價格の如何に拘らず、政府の買上價格で其の土地を買上げると云ふことになる、詰り言換へれば不當に土地を取上げて、それを闇價格で轉賣した結果に於ける所の損失は地主が之を負擔すると云ふことに當然ならなければならぬのでありますが、さう云ふ事柄がないのだと言つて吹聽して居る農家の人達もあります、さう云ふことは出來ないのだと云ふことを、盛んに言つて土地を取上げて居る者もあります、それに對しては當然政府の公定價格の買上の地代だけを其の地主に拂ふのであつて、闇價格で轉賣した地主は、其の闇價格に依る不當な利得だけは必然的に元の買受けた所の地主の方に返すべき義務が生じて來るのではないか、さう云ふことになるのだと私は思ふのでありますが、其の關係はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=37
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038・和田博雄
○和田國務大臣 それは當り前のことでありまして、不當に土地を取上げて闇で外へ賣つたと言ひましても、それが本當に不當に取上げたものであつて、農地委員會が十一月二十三日に遡りまして買收價格を立てる時には、此の買收は今囘定めた國家の公定價格でやる譯でありますから、それは地主がお互ひに損をすると云ふことになるのであつて、民事問題になるだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=38
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039・川島金次
○川島委員 それは私は知つて居るのでありますが、さうでないと云ふ流布をして盛んにやつて居る農家があるのであります、極めて事情に暗い所の小作人が非常に迷つて居る、さう云ふ事情があるものですから、此の際大臣の御言質を得て置きたい、斯う考へたので御願ひを申上げた次第であります、大臣に對する御伺ひは是で止めたいと思ひます
次に運輸大臣に御伺ひを申上げます、私は昨日も此の席上に於きまして、當局で内定致しました運賃の値上問題が、當初當局では十月一日を以て實施すると云ふ案で進んだに拘はらず、遂に今以ていつ其の値上が實施されるか分らないと云ふやうな状態に今日なつて參りました、恐らく私の想像でありますが、假にあの貨物運賃の三十割、旅客運賃の二・五割の値上の案がありますが、あれが最終的に決定致しましても、相當時期が延長され、其の上に値上の率が低くなつて現はれて來るのではないか、それは國民大衆の立場から言へば固より我々としては喜ぶべき事柄でありますが、一方に於て此の事が當局の決定した通りに實現しない場合には、運輸省の收入の大激減を來すことになる譯であります、さらぬだに運輸省自體に於ては莫大なる赤字を背負ひ込んで居る、而も其の赤字の補填の爲に今度の運賃値上案を決定したのだが、それが旨く行かないと云ふ結果になりますならば、莫大な赤字の上に更に大きな赤字を加へると云ふ實際の状態になるのではないかと云ふやうに私共は考へて居るのであります、そこで偶偶前囘の國鐵の「ゼネスト」問題を中心として、其の當時極めて著實なる立場に立つて居りました國鐵從業員の一部方面から、運輸省が輸賃の値上の實現が出來なかつたり、或は延長されたり、或は率の低下を餘儀なくされるやうなことになれば、必然的に赤字が増大される、増大されると云ふことになれば、當局が最初に「ゼネスト」問題の當初に於て強硬な態度に出て居りました、所謂經營の合理化と稱する所の從業員の大量馘首が、又もや蒸返されて強硬に現はれて來るのではないかと云ふ心配を、早くも各方面でして居る從業員が居るのであります、私共は最初から此の大量馘首に對しましては反對的な立場を執つて參つたのでありますが、此の心配に對しまして運輸大臣はあの國鐵「ゼネスト」の妥結の當時に聲明されました如く、經營の合理化は如何なる事情があらうとも、所謂從業員の大量馘首を前提とするのではないと云ふ考へ方を、今後も御堅持されて臨みますかどうか、此の際此の一點を御伺ひをして置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=39
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040・平塚常次郎
○平塚國務大臣 運賃の値上が起つて居ることは事實であります、併し是は目下經濟安定本部を通じまして解決を急いで居りますから、さう長く掛るものではないだらうと思つて居ります、併しながら豫算に於きましては十月から上げると云ふことであつたのでありまして、そこで増收が自然減りますから、當然國有鐵道としては赤字が殖えるのであります、殖えた赤字に對してどう處理するかと云ふことは、大藏當局と相談して結末を付ける覺悟であります、さう云ふ赤字が出たから再び大量馘首をする虞があると云ふやうなこととは關係が違ひます、先般の「ゼネスト」の解決は、御承知の通り經營の合理化を行ふが、馘首を前提としないと云ふのでありまして、其の組合との協定は何等の變更を見るものではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=40
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041・川島金次
○川島委員 それでは最後にもう一點御伺ひしますが、鐵道運賃の値上の問題に對する御見透しがありましたならば、御教へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=41
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042・平塚常次郎
○平塚國務大臣 一寸もう一遍仰しやつて戴きたいのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=42
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043・川島金次
○川島委員 貨物運賃の三十割、旅客運賃の二割五分の値上案の實施に付て見透しがありましたならば、御明示を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=43
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044・平塚常次郎
○平塚國務大臣 是は最初値上をする時には關係方面との諒解が大體付いて居つたのでありますが、其の後經濟安定本部が發足することになりましたので、是は一應經濟問題であるのだから、經濟安定本部が取扱ふと云ふことになつた爲に、私の方の計畫通りに參らなかつたのでありまして、現在の交渉は先般鐵道會議で決定を見、又閣議で決定を見た貨物三十割、旅客二割五分上げると云ふことに何らの變更も加つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=44
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045・川島金次
○川島委員 さうではなく、時期に付ての見透しがあるかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=45
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046・平塚常次郎
○平塚國務大臣 是は今交渉中でありまして、而も其の交渉は一日を爭つて居るのでありますから、決定致しましたら直ちに發表して、是は一箇月前に公告すると云ふことになつて居りますから、今日決まれば今日から一箇月後に行ふと云ふことに相成るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=46
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047・川島金次
○川島委員 實は私昨日此の席上で膳國務相に此の運賃問題に付て經濟安定本部に係はりがあるのではないかと云ふ質問をした、所が膳國務大臣は經濟安定本部に係はりはないと云ふ答辯をされたやうにはつきり私は記憶して居るのであります、今の大臣の御言葉に依ると本省で決めた案が經濟安定本部の出現に從つて經濟安定本部の問題になつて來たと仰しやるのであります、さうすると國務大臣の御話と大臣の御話とは食違ひが出て參るのであります、其の間の經緯はどう云ふ事柄でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=47
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048・平塚常次郎
○平塚國務大臣 食違ひの起きて居る筈がないのでありまして、私共の方はやはり事務的には關係方面と交渉して居りますけれども、一應經濟に關係あるものは經濟安定本部が取扱ふことになつて居るのでありますから、私共と經濟安定本部長と話合をして交渉して居るのでありまして、食違ひはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=48
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049・川島金次
○川島委員 もう一言御尋ねしますが、運賃の値上の案に對しまして變更が、あるやうな心配が運輸大臣の立場から申せばあるのですか、それともあの原案が近く實施される段取に入ると云ふ確信を持たれて居りますか、其の點を重ねて御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=49
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050・平塚常次郎
○平塚國務大臣 先程申上げましたやうに、私の方はあれを變更する意思がありませぬ、併しながら變更せざるを得なくなつた場合には、是は其の時に考へなければならぬと思つて居ります現在では變更する意思を持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=50
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051・川島金次
○川島委員 是は私共の想像でありますが、或はあの運賃の値上案に對して變更せざるを得ない状態になるのではないかと私共想像して居りますが、さう云ふ心配はないと承知して宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=51
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052・平塚常次郎
○平塚國務大臣 現在は私は變更する必要はないと考へて居ります
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=52
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053・本多市郎
○本多委員長 此の際御諮り致しますが、帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案、自作農創設特別措置特別會計法案、此の三法案は特に急がれて居りますので、以上三案に付ての殘餘の質問を打切り、討論を省略し採決に入りたいと存じますが、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=53
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054・本多市郎
○本多委員長 それでは帝國鐵道會計又は通信事業特別會計における昭和二十一年度の經費支辨のための借入金等に關する法律案、復興金融金庫及び産業復興營團出資拂込金支辨のための公債發行に關する法律案、自作農創設特別措置特別會計法案、以上三法案に付て採決致します、以上の三案に付て之を原案通り決するに贊成の諸君は起立を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=54
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055・稻村順三
○稻村委員 唯之に對して我々としては意見もある所でありますけれども、非常に急いで居られるやうでもあります、そこで此の三法案に對しまして産業復興金庫及び産業復興營團、此の二つの組織が、從來動もすると斯う云ふ組織になると官僚的になつて、而も其の所期の目的を達しないと云ふやうな状態が間々あつたのでありますので、我々と致しましては非常な不滿足ではありますけれども、此の案を通すと云ふ意味に於きまして、是等二つの金庫と營團を作る場合には、相當民主的な機構を採用すると云ふことを附帶條件と致しまして社會黨としては贊成する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=55
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056・本多市郎
○本多委員長 社會黨から贊成の討論がありましたが、最前宣告致しました通り、原案通り決するに贊成の諸君は御起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=56
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057・本多市郎
○本多委員長 起立總員、仍て本案は原案通り可決致すべきものと決しました、それでは殘餘の法案に付き質疑を進めるのでありますが、是にて一時半まで休憩致します
午後零時三十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=57
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058・会議録情報3
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午後二時五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=58
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059・本多市郎
○本多委員長 休憩前に引續き會議を開きます、質疑を繼續致します──秋田大助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=59
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060・秋田大助
○秋田委員 先日此の委員會の席上、大藏大臣は金融機關の再建整備の爲に、國家から百億圓を限度として補償金を支出する御意思のあることを明示せられたのでありますが、私が仄聞致します所に依りますと、農林中央金庫は比の百億圓の分け前の恩惠に與かり得ないのではないかと云ふやうな噂を耳に致したのでありますが、政府御當局はさう云ふ御措置を御執りになる御考へであるかどうか伺ひたい、若しそれが事實であると致しますと、全農業會延いては日本の全農家に對する影響は重大なるものがあると考へられるのでありまして、主食物の供出成績にも影響致しますし、日本が是から起ち上らうとする經濟再建の基盤を根本的に破壊すると云ふ結果にもなりはしないかと云ふことを惧れるのであります、一般の少額預金、第一封鎖預金を保護すると云ふ精神から考へて見ましても、又企業の再建整備の根本方針から考へましても、當然此の農林中央金庫の保護が考慮せらるべきものでありまして、農林中央金庫も例の百億圓の恩惠に一應與かるべきものではないかと考へるのでありますが、此の點大藏大臣の御考へを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=60
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061・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは何かの間違ひでありまして、無論總ての金融が百億圓の恩惠に與かる譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=61
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062・秋田大助
○秋田委員 曾て行はれました中小工業者の企業整備に依る交付金、是は國民更生金庫の特殊預金となつて凍結されて居ります、之に對してどう云ふ御處置を執るか、是は是非凍結しないで日本再建の中核體となる中小工業者更生の爲に特別の御配慮を願ひたいと思ひます、此の點如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=62
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063・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問の此の戰時補償特別措置のものは政府が債務者と云ひますか、拂ふものですから、若し御話のものが政府の關係でなく、例へば業者同士の何か關係と云ふものならば、是は戰時補償特別措置の中に入りませぬから差支へない譯であります、唯政府の支拂はなければならぬものに付きましては、此の法律に依つて處理される、斯樣に御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=63
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064・秋田大助
○秋田委員 其の點は中小工業者更生の爲に格別の處置として御配慮を願ふことが出來ないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=64
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065・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の格別が十分ではありませぬが、格別の處置として五萬圓まで認めると云ふ譯でありまして、五萬圓位で格別とも申せないかも知れませぬが、さう云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=65
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066・秋田大助
○秋田委員 戰時補償特別措置法の第十條に依りますと、竝に補則との關係から照し合せて見ますと、沖繩縣下に於ける資産を目的とする戰時保險契約に基づく請求權は、他の外地外國に存在する財産を目的とする請求權と同じく、法人、個人共に請求權毎に一萬圓を戰時補償課税より控除されることになると思ひますが、それで間違ひがありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=66
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067・池田勇人
○池田(勇)政府委員 沖繩縣下竝に南洋群島に於けるものに付きましては内地と異なりまして、一萬圓の制限を受ける譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=67
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068・秋田大助
○秋田委員 そこで私は次に申上げますやうな理由に依りまして、沖繩縣の特殊事情を是非御考慮願ひまして、此の際寧ろ全面的な課税免除の措置を講ぜられんことを切望する者でありますが、若しそれがどうしても難かしいと御考へになられるならば、少くとも内地に於けると同等の取扱、即ち法人一萬圓、個人五萬圓を課税より控除せられるやうな御取扱ひを願ひたいと思ふ、其の理由と致します所は第一に沖繩縣下特に沖繩本島に於ける今次戰爭の戰禍は御承知の通り實に筆舌に絶するものがあり所在の家屋の殆ど全部が戰災に罹つて、本件保險金の支拂の有無は沖繩の復興に極めて重大なる影響を及ぼすものであることは申すまでもないと思ふのであります、第二點に元來外地及び外國所在の財産は直接或は間接に經濟侵略の所産と言はれるのも亦已むを得ない所があるかと思はれまするが、沖繩縣下は本土各府縣と全く同一の事情にあるものでありまして、保險の目的物は沖繩縣人本來の生活の本據をなすものでありまして、經濟侵略とは全然關係がなく、是等の外地及び外國所在の財産とは全く本質を異にするものではないかと云ふのが第二點、第三點は戰時下沖繩縣に於ける物價は全然本土各府縣と同一の條件の下にあつた、隨て貨幣價値を異にする外地又は外國に所在する財産を目的とするものとは異なりまして、保險契約の金錢的價値は全然内地所在の財産を保險の目的とする場合と同樣になりはしないかと云ふことであります、第四點には本法案の意圖する「インフレ」防止の點から見ましても、沖繩縣の保險契約總額は、聞く所に依ると僅かに一億圓程度に過ぎないやうなことを聽いて居りますが、沖繩縣の特殊事情を諒として全面的免除の措置を講ぜられましても、「インフレ」に對する影響は極めて微弱ではないか、全體的に考へて其の「ファクター」は極めて微弱ではないかと思はれる、内地同樣に五萬圓を控除せられる場合に於ても、原案の個人一萬圓控除の場合に比較して見れば僅かに二千萬圓の増加に過ぎないと思はれる、そこで原案の通り個人控除額一萬圓とすれば、總額三千萬圓となりまして、内地と同樣に個人控除額五萬圓とすれば總額五千萬圓になる、此の僅小の差額四萬圓は、我が國現在の「インフレ」にさしたる影響はない──勿論ないとは言ひませぬが、比較的微弱ではないか、さう云ふことを考へ合せます時に我が國内地府縣と同一事情にあり、他の植民地とは事情を異にして居る此の沖繩縣、特に戰禍の爲に非常な困難をされ、貧困のどん底に喘ぐ所の沖繩縣民の生活竝に同縣の復興と云ふことに鑑みまして、我々同胞に對して取扱を異にすると云ふのは洵に遺憾に思はれるのでありますが、此の點政府の御所見を御伺ひすると共に、特に此の點は厚案を修正して戴く所の涙ある御取計ひをされることが出來ないかどうか、政府の御所見を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=68
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069・池田勇人
○池田(勇)政府委員 本法案の第十條第十二項に在外財産に付きましては、控除の規定を適用しないと云ふことに相成つて居るのでありまするが、御話の如き點も考へられますので、南洋群島、沖繩縣に於きまする戰爭保險金に付きましては、一萬圓の控除を特に認めた次第でございまして、此の程度で宜いのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=69
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070・秋田大助
○秋田委員 是れ以上押問答を致しましても、議事進行の關係がありまするから、討論の際に讓りたいと思ひますので、次に進みます、昨日喜多委員からでありましたか、中小工業者の保護が今日の日本の經濟復興再建の爲に重大であるが、財産税の徴收に當つてどう云ふ風に此の點を考へるかと云ふ質問に對しまして、大藏大臣から、個人の中小工業者が財産税を納める場合には金融の便を特に考へるやうにすると云ふ御話もありまして、洵に機宜に適した措置と思つて喜んで、感謝して伺つて居りましたが、此の前どなたか別の委員の御質問に對しても、主税局長から金融の便を考へると云ふやうな御答へもありましたが、斯うなりますと是等の關係の融資資金と云ふものが相當逼迫しはしないか、現在に於ても非常に融資の逼迫に惱まされて、預金吸收、貯蓄増強の爲に當局が頭痛鉢卷になつて居る際、實際に融資をする餘力が金融界に殘されて居るかどうか、何か特別の途を考へて居られるであらうか、融資の實行が可能であらうかと云ふ點を一つ御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=70
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071・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は財産税を、税を納める爲に融資をすると云ふことが非常に變態的な取扱ひ方でありまして、之に依つてどれ程の融資が行はれるに至るかと云ふことは、實はまだ研究して居らないのであります、けれども今申しますやうに、限りなく融資をすると云ふことは、色々の點から見て弊害が多いものであります、假令融資の途を開くとしましても、相當の制限をしなければならぬ、斯う考へて居ります、ですから或る程度のことならば、特別の機關を設けずともやれるのぢやないか、尚ほ物納等で入ります物、それから在來からの國有財産もさうでありますが、之に付ては別個に處理の方策を立てたいと思つて居りますから、さう云ふやうな機關からも、不動産に對しては何等かの處置が執られるのぢやないかと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=71
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072・本多市郎
○本多委員長 秋田君、もう少し高聲に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=72
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073・秋田大助
○秋田委員 財産税法第五十六條に依りますると、物納を已むなくしなければならないと云ふ時には、特に申請をするやうになつて居り、さうして又之に關する詳細のことは命令で決められるやうになつて居りまするが、新圓偏在の今日、商人の階級を除いては、大部分の方は、現金とか現金に代り得べき預金の所有高と云ふものは極く僅かであらうと思ふのであります、そこで財産税を納める場合に、少くとも預金は此の額までは殘して置いてやつて宜しいと云ふやうな額を明示して置くのが親切ぢやないかと思ひます、現金、預貯金、其の他の動産、不動産の割合に應じて、物納の許される範圍は此の程度であると云ふやうな比率、さう云ふものを寧ろ此の財産税法の中に成文化して置く方が宜くはないかと思ふのでありますが、斯う云ふ點に付ては大體どう云ふ風に取扱ふと云ふことを大臣は御考へになつて居るかどうか、御考へになつて居るとすれば、寧ろ此の財産税法の中にそれを成文化すると云ふ御意思はないだらうか、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=73
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074・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物納をなします場合は、五十六條に規定致して居ります如く、金錢で納付することを困難とする金額に付て物納を認めるのでございます、而して只今のやうな状態でございまするから、其の人の納めまする税額と、又其の納税義務者の持つて居られる第一封鎖預金の總額、又現金の總額、斯う云ふものと睨み合せて、個々に決めなければならない問題だと思ひます、例へば金融緊急措置令で、第一封鎖預金、第二封鎖預金の制度のないやうな場合に於きましては、而して又調査、申告を致してから直ちに決定すると云ふ風な、前の財産税法のやうでございますると、現金の何割までは先づ納めろ、斯う云ふ規定も置けるのでありますが、調査時期から非常に離れ、又色々な措置が講じられました現況に於きましては、幾何の預貯金があるか、幾何の現金があるかと云ふことは中々困難でありまして、割合で決めると云ふことは却て實態に副はぬやわなことが起ると思ひます、隨て個々の場合に幾ら幾ら現金、幾ら幾ら物納と、斯う云ふ風に決めて行つた方が適當だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=74
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075・秋田大助
○秋田委員 其の點了承致しました
次に今囘の財産税法に依りまして、物納がありました時には、政府は之を公賣に付して現金に換へられる譯でありますが、此の際税金に比較しましての損得は何れも政府の損得になると云ふ旨の御答辯は、大藏大臣から過日豫算の質疑の際本會議の席上に於ても御答辯があつたと記憶致して居るのでありますが、國税徴收法中の規定の建前と申しますか、其の精神から考へて見ますと、公賣に依つて換價された場合、税金超過額は納税者に返してやるのが至當ぢやないかと考へられますが、如何でありませうか、之に對しては恐らく、政府の方ではどう云ふ風に御考へになつて居るか知りませぬが、考へられますことは、一般の租税は金納が建前であるから國税徴收法に依つて公賣に付して、換價した場合に、税金超過額は返すと云ふことになるが、本財産税法案では、初めから物納の場合を認めて居るのだからして、それでもう納税者の義務は完了して居るのだ、そこでそれ以後の責任は全部政府にあるのだ、法理上から云つても是で何等差支へがない、税金超過額は返す必要がない、斯う云ふ御意見かも知れないのでありますが、私は尚ほ細かに其の根本に遡つて見ますと、誰も恐らく大體の場合物納はしたくない、金さへあれば金で税金を納めたいのだが、已むなく物で納めるのだと云ふことになりはしないか、殊に財産税などを取る場合には、學者の意見でも、成べく經濟界の状態の安定した時と云ふのが定論だと思ふのでありますが、特に「インフレ」昂進の豫想せられる此の状況下に於て取られるのであります、而も其の課税と云ふものは相當「ドラスティツク」なものである、斯う云ふことを考へ併せて見ますと、成程理窟は立つかも知れませぬ、又國務はそれが爲に非常に煩瑣になるかも知れませぬけれども、此の際はさう云ふ「インフレ」に依つて國家が損をされる場合は兎も角として、得をすると云ふことも洵に面白くないのである、と考へられます、國民の納得の行かない點も起つて來はしないかと思はれますので、超過額は返すと云ふ風に御考へ直しを戴くことは出來ないでせうかどうか、政府の御所見を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=75
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076・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物納の制度は國税徴收法に依つて滯納處分で徴收する場合とは根本的に其の趣旨を異に致して居ります、御話の如く物納財産を換貨致しました場合に、税額より超過した場合には返すと云ふ制度は考へられないことはございませぬが、然らば物納財産を處分してそれまでに達しなかつたと云ふ場合には當然納税者の方に又二度行かなければならないことになります、さう云ふことは實際計算に切りを付ける所以でもございませぬし、又非常な手數でもございますので、其の方法は採らないことに致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=76
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077・秋田大助
○秋田委員 次に昨日是も喜多委員からでありましたか、財産税納入の爲め他人の第一封鎖預金から借入れをして拂ふと云ふことはどうかと云ふ御質問に對しまして、主税局長から、生活資金を取出してそれの流用は、是は差支へないけれども、明かに他人の財産税支拂の爲に引出すんだと云ふ名目では引出しを許さないと云ふ旨の御答辯がありました、恐らく是は潛在通貨の顯現化を恐れるからでのことではないかと思ふのでございますけれども、他方に於て成べく流通して居る新圓を吸收したいと云ふ御意圖に出づるものではないかと想像致すのでありますけれども、併し片方にやはりそれを許して置きますと、物納に依る色々な煩瑣な手數が省けはしないかと云ふ美點も考へられる譯であります、結局現状の儘では第一封鎖預金と云ふものは遲かれ早かれ現金化されるものであると云ふことも考へ併せて見ますと、此の「インフレ」昂進の虞のある現状に於て、成べく早く財産税を徴收してしまふと云ふ趣旨から考へ併せて見ましても、第一封鎖預金から他人の財産税を拂はしてやつても宜しいぢやないかと思はれるのでありますが、此の點御再考の餘地はないか、是は大藏大臣に御考へを御尋ねしたいと思ひます
それからもう一つ之に關聯しまして、今度は他人の第一封鎖預金でなしに、他人が一つ不動産を財産税の代りに物納すると云ふ場合も實際上の必要上起きはしないかと思ひますが、是は御認めになりますかどうか、併せて御考へを御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=77
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078・石橋湛山
○石橋國務大臣 他人から借金をして財産税を拂ふことは差支ない譯でありますから、其の借りる金が自由預金なら無論是は問題ありませぬ、第一封鎖でも宜い譯かと思ひますが、實際問題として第一封鎖は餘りない筈になつて居りますから、まあ實際問題としてどうなりますか、尚ほ一つ其の點は考究して見ます
それから他人の不動産で納税すると云ふことは、さう云ふ場合が或は弊害がなくさう云ふことにやれる場合もあるかも知れませぬが、結局物納を殖やすと云ふことに相成る懸念が甚だ多いのであります、其の點は如何かと思ひます、左樣な場合を今の所で實は想像をして居らないのであります、尚ほ御話の如き點、即ちどうして納税者に出來るだけ苦痛を與へず納税させ得るか、それから又財産税の目的も達し得るかと云ふことは、技術的に尚ほ相當研究致すべきものでありますから、十分研究致しまして善處したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=78
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079・秋田大助
○秋田委員 只今の政府側の御答辯を了承致しました
次に物納物件を政府が公賣に付せられる場合に、是が結局如何なる階級の手に入つて行くかと云ふ問題を考へて見たいのであります、今日無體財産なり其の他無體財産權を賣出した時に、之を買ひ得る者は新圓を多數持つて居る一部少數の新興成金、それは戰後の變態な社會情勢下に肥えた所の謂はば好ましからざる一部の少數の新圓所有階級ではないかと云ふ點が考へられる、是が相當重大な社會問題であり政治問題ではないかと思ふのであります、財産税徴收の目的は富の再分配と云ふことも政府は特筆大書されて謳つて居るのであります、所が「インフレーション」の昂進の現情勢下に於きましては、財産家は相當手酷く財産を取られて、一時は苦痛であるかも知れませぬが、「インフレ」昂進の爲に殘つた財産は値上りをする、それで損失──損失と言つては語幣がありますが、前の痛苦は「カバー」出來て餘りあるものが出來て來ると云ふ結果になりはしないか、又一時は富の再分配になり得るが、結局財産税の徴收に依つて國家に入つた金の支出は、今日の經濟界の現状に於きましては結局闇商人や一部の有力なる生産業者の手に偏在することになりはしないか、少し時間が經つて見れば富の再分配の實效を收め得ないことになりはしないか、此の點大藏大臣はどう云ふ風に御考へになつて居るかと云ふことを御尋ねすると同時に、此の新圓所有者には、今日の情勢では社會正義の觀點から考へては好ましくない人が多いのであつて、是等の人々が財産税の物納物件乃至は財産税納入の爲の處分物件を結局に於て多く偏在して持つと云ふ結果が豫想される、是は私は好ましくないと思ふ、日本の有體財産乃至は無體財産權、即ち擬制的でない所の眞正なる資本と云ふものが偏在して一部の人々の手に掌握せられると云ふことが、社會的に、政治的に、又或る場合には國際的に甚だ好ましからぬ、又憂慮すべき事態を惹起しはしないか、氣が付いた時にはあつと驚いて見ても最早取返しが付かないと云ふことになりはしないか、此の邊當局は十分留意せられなければならないと思ひますが、政府は此の事態を、さして起らないと考へて居らるるかどうか、又此の邊に付て何か格別の御用意と御考へがあるかないか、あつて然るべしと思ふのでありますが、御所見の程を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=79
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080・石橋湛山
○石橋國務大臣 財産税等で政府が收納します有價證券或は不動産等の處分に付きましては、前にも申上げたと思ひますが、之をいきなり短時間の間に賣拂ふと云ふことは、是は不可能でもありませうが、又致しませぬ、別途に機關を設けまして、其の收納した物件が適當な價格で、而も日本の全體の經濟の爲に寄與するが如き方法で處分を致したいと考へて居ります、隨て是は或る程度處分には時間が掛るかも知れませぬ、さう云ふ風に考へて居ります、隨て御心配があるやうな、餘り好ましからざる部面にそれ等の資産が入つて行くと云ふことは、廻り廻つて入つて行くと云ふことは是は防ぎ得ないかも知れませぬが、政府から直接左樣な處分の方法は致さぬ積りであります、殊に有價證券の如きは、一人で以て或る會社の株を澤山持つと云ふことは、聯合國の方針に於ても禁ぜられて居るのでありますから、例へば從業者に若し出來るならば之を適當に處分すると云ふやうな方法でやつて行きたいと考へて居ります、それから所謂新圓と云ふものが或る部分の人達に大分澤山入つて居ると云ふことは、是は事實でありますが、私は之をさう過大に見ることはどうかと考へて居ります、殊に日本に國籍を持たないやうな向きに或る程度さう云ふ新圓と云ふものが入つて來ることは事實のやうでありまするが、是等の人が果して之をどう利用するかと云ふことを見ましても、さしてさう心配をする程のことがないのぢやないか、色々注意は致して居りますし、殊に政府に入りました資産を處分すると云ふやうな場合には、十分其の點を考慮して、又財閥の株でありますとか、其の他の閉鎖機關の株を處分すると云ふ場合も同樣でありまして、注意は常に致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=80
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081・秋田大助
○秋田委員 是非御注意を願ひたいと思ひます、廻り廻つて好ましからざる人の手に入る場合は、是は已むを得ないではないかと云ふやうな御考へも持たれて居るやうでありますが、隨てさう云ふ點から考へましても、もつと根本的理由から考へましても、言へるのでありますが、今日新圓を何とかして貰ひたいと云ふことは、社會正義の觀念に基く一般大衆の聲にもなつて居ると云ふことは、大藏大臣も御承知だらうと思ひますし、色々の點からも考へ併せて見て、金融の面から新圓に對して手を著けることは面白くないと云ふ藏相の御考へは一應それとして諒とされるのでありますが、私は根本的にはやはりもう一つ奧深く考へて見て、今申上げました國民の輿論に聽くことが政治への信頼を囘復する根本であつて、それが通貨の安定を囘復する所の根本的な基礎條件になりはしないかと云ふことを考へて居るものでありますが、此の點に關しては度度大藏大臣から言明があつたので、敢て御考へを御伺ひしようとも思ひませぬし、又私は茲に提案されて居ります一聯の經濟再建に關する案の成功を期する爲には、其の基礎條件として擬制資本を徹底的に破棄しなければならぬと云ふことは明瞭であると考へて居りますから、政府が實益はないと申されますけれども、個人、法人を通じまして戰時利得税を全面的に沒收したが宜しい、又戰時公債にしても何等かの措置を講ずべきではないか、必ず其の必要に迫られる時期があると私は感じて居るものであります、而して道徳的見地から申しまして、又經濟的な實際的な理由からも私は主張したいのでありますが、是等の諸點に付きましても政府の御見解は最早明瞭でありまして、結局見解の相違と云ふことに歸著することにもなると思はれまするから、議事進行上のことも考慮致しまして、此の點に對する討議を避けたいと思ひますが、唯一つ、結局國内的にはどうしても宜しいが、海外的の場合を考へた時に此の點を一つ、御承知のことではありますけれども、特に御考慮を願ひたいことを私は強調を致して置きたいと思ふのであります、「インフレ」防止、經濟再建の爲には、通貨面ばかりをいぢくり廻して見てもどうにもならないのでありまして、生産増強の面をより以上重點を置いて考慮しなければならないと云ふのは、是は言ふまでもございませぬ、そこで生産増強の面に思ひを致します時に、色々途中の議論の過程は之を省略致しまして、どどの詰り、昨日小坂委員からも申されました通り、擴大再生産の爲の生産財貨の生産に重點を置かれなければならない、是が爲には何と申しましても重要原料に付きまして聯合國の好意と援助とに依りまして、一日も早く國際經濟に參加を許され、其の輸入に俟たなければならないのでありまして、此の點を度外視致しましては、日本の經濟を再建整備することは遺憾ながら覺束ないと考へられます、此の點は識者も意見を同じうせらるる所であらうと考へるのでありますが、そこで今日の我が國の企業竝に金融機關の整備と云ふことに對しましては、此の線に沿ひまして、日本が遠からず國際經濟への本格的にして且つ自由なる參加を許された時には、外國商品に對抗して日本商品が太刀打が出來得るやうに、日本の企業竝に金融を再建整備して置かなければならない、そこで例の固定資産の評價が問題になつて來る譯でありますが、是が相當嚴重でなければならないと思ふのであります、藏相は先日來企業の固定資産の評價は勿論闇價格ではいけないけれども、帳簿價格でも無理ではないか、他の物價も相當吊上つて居るから、それとの均衡も相當考慮してやる必要があるだらう、勿論海外の物價との關係も考慮して適當な所へ考へたいと思ふと云ふことを口では仰しやつて居られるのでありますが、どうも一般は未だ此の點釋然たらざるものがあるのでありまして、評價が甘くなりはしないかと云ふ疑惑も解けないのであります、結局軍需補償打切りの打撃を價格の値上りに依つて「カバー」せしめる意向が濃厚ではないかと云ふやうな印象が強いと思はれますが、國際貿易開始の日に日本の經濟を再再建しなければならない、もう一度整備し直さなければならないと云ふ事態が來ないやうに、嚴重なる評價委員に依つて企業を整備し、金融機關を整備して置くと云ふことに關する藏相の力強い御考へ、御話を此の際御聽き致して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=81
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082・石橋湛山
○石橋國務大臣 前段の好ましからざる向に金が入ると云ふのは、簡單に申上げますと、結局それは好ましい向の活動を抑制するが如き状態が現はれて居ると云ふことに根本の禍因があるのでありますから、それを解除すると云ふことが一番必要でありまして、其の他の方法に依つては一時は效力がありましても結局效力がないと思ひます、其の好ましい人が好ましい活動の出來るやうな社會状態を作ることが必要だと考へて、及ばずながら其の方向に向つて努力して居る積りであります
それから第二段の評價問題でありますが、御質問の中に甘くなりはしないかと云ふ心配をされて居り、或る一部の人がさう云ふ心配をされて居ることも知つて居りますけれども、寧ろ私は逆に辛くなり過ぎはしないかと云ふ心配をして居るのであります、結局是は此の間から申しましたやうに辛いのも甘いのも實はいけないのでありまして、飽くまで日本經濟再建と云ふことを眼目に置きまして其の上に公正な評價をする、斯樣なことで行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=82
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083・秋田大助
○秋田委員 最後に、是で私の質問を打切りますが、此の財産税を中心と致しまして一聯の經濟再建案の實施に當りましては大藏當局竝に末端税務官吏諸君の責任は洵に重大なものがあると思ひます、兎角從來末端の税務官吏の方々が國民一般大衆に對して不親切であつたと云ふ聲が強いのであります、此の際特に此の點に付て監督の立場にある大藏大臣に於きましては、格別の御注意が願ひたいと思ふのと同時に、此の財産税の徴收實施に當りましては末端の税務官吏其の他に對しまして誘惑の手は少なからざるものが豫想せられるのであります、何卒不祥事件の惹起致しませぬやうに財務當局の理解と、又藏相の此の點に關しまする是れ亦格別の御用意と御覺悟の程を御尋ね致しまして、私の質問は是で議事進行上の關係もありますから打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=83
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084・石橋湛山
○石橋國務大臣 税務機關が今まで甚だ十分でなかつたことは恐縮でありますが、是は今議會に於て屡屡他の委員會でも申上げましたやうに、目下其の充實改善を期して居りまして、既に各縣廳のあります所に相當の機關を設けると云ふやうなこともやつて居ります、財産税徴收に當りましては萬遺憾なきを期したいと考へて居ります、又其の誘惑等の問題に付きましても、財産税は申告税であります、又所謂第三者通告制度等もありますし、色々さう云ふ點でも間違ひは防ぎ得ると思つて居ります、尚ほ十分御注意の點は事務末端にまで申しまして萬全を期したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=84
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085・本多市郎
○本多委員長 穗積七郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=85
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086・穗積七郎
○穗積委員 簡單に御尋ね致したいと思ひます、從來の自由經濟の常識から云ひますと此の度の措置は破天荒の措置でありますが、敗戰日本經濟を反省致しますれば當然の措置であり、又再建の爲には喜ぶべきことであると思つて居ります、それに致しましても此の重要な措置をなされまする場合に二つの點に付て私は問題を集中致したいと思ひますが、一つは此の措置をなさいます過程に於ける公平の問題であり、もう一つは此の二つの課税の行はれました後、穴の明いた日本經濟に對します後の處置の問題であります、此の二點に大體限りまして極く簡單に御尋ね致したいと思ひます、尚ほ甚だ恐縮でありますが、委員長に御願して置きますが、私一寸他用の爲め今朝程席を外しましたので、前の質問者と同じ問題で、同じ趣旨で、同じ答辯を繰返へして戴くやうなことがあると恐縮でありますので、其の場合には適當に御注意を戴きまして省略致したいと思ひます
先づ公平の問題に付て御尋ね致したいと思ひますのは補償打切りに依ります損失の負擔を「プール」計算に於て共同の負擔にする、特に企業間、更に問題になりますのは金融機關の損失補填の問題でありますが、是は多數の預金者を持つて居ります、庶民階級の間の公平に影響する所が大きいので、當然「プール」計算に依る損失負擔と云ふことが考へらるべきであると思ひますが、是は前どなたか委員の質問に對しまして藏相は結論だけ申されて其の途中で二つのことが考へられたが、個別負擔にしたと云ふ御話でありましたが、私がここで改めて御尋ね致したいのは其の御答辯になりました御結論に至る理由に付て御尋ね致して置きたいと思ひます、何が故に「プール」計算を避けられたのか、其の理由を簡潔に御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=86
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087・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は何と申しますか「プール」計算の方法で處理する、それから個々の金融機關に影響を及ぼすと云ふ二つの行き方がありまして、色々研究し、討議したのでありますが、結局「プール」計算と云ふことになりますと、例へば餘り軍需融資に關係の薄かつた地方銀行とか云ふやうなものの預金者にも相當大きな損害を掛ける、さうして軍需融資の多かつた銀行等の預金者はそれに依つて救はれると云ふことになります、是は考へ方に依つては其の方が公平だとも思はれますが、同時に又今度實際にやつて見ました結果でも分ることでありますが、案外軍需融資をして居る所の銀行の預金は大額預金が多くて、第二封鎖が多い、地方銀行の方は第二封鎖が少い、殊にひどいのは郵便貯金なのでありまして、五百何十億の總額の預金があるのでありますが、其の中で第二封鎖に入るのは六億圓程度、然るに補償打切りで受ける損害は大きい、斯う云ふやうなことになります、之に反して大銀行あたりは第二封鎖が多いものですから、大額預金者の負擔に依つて補償打切りの結末を付けることが出來ます、さうでないと細かい預金者にも相當に迷惑を及ぼすことになります、斯う云ふやうな利害兩面ありまして、どつちとも中々判斷しにくい譯でありますが、今私が最後に申上げました理由に依りまして今日のやり方を實際上採用して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=87
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088・穗積七郎
○穗積委員 今の問題に付きましては、私は國民の經濟常識は反對であるやうに思ふことを御傳へ致して置きたいと思ひます、のみならず大銀行に大額の預金者が多いと云ふことでありますが、固より全部の預金者を平均致しまして、共同負擔と云ふことでなしに、相當額に區劃を附しまして、それ以上のものが共同負擔をすると云ふことに致しまして、地方銀行に預金を致して居りまする小額預金者の利益を、中央の大額預金者の負擔を轉嫁して、害すると云ふことは避け得られると思ひますので、其の點を重ねて考慮して戴きたいと云ふことを御願ひ致しまして先に進みたいと思ひます
次に今度の二つの課税に付きまして、公平を期する爲には、言ふまでもなく評價の問題が中心であらうと思ひます、評價基準の問題に付きましては度々質疑應答があつたと思ひますので、私は唯それに補足して問題に致して置きたいと思ひますのは、其の評價に付きましての評價委員會、調査委員會等々、或は打切りになりました會社の再建の委員會等、多數委員會制度が公平を期する爲の機關として設けられて居ります、隨て評價の公平を期する一つの實效を現はすか、現はさないかと云ふことは、是等委員の選任、構成、運營如何に大きく懸つて居ると思ひます、實は今までの官僚の税務機關では到底之を正確に捕捉することは不可能であると私は考へます、例へば現在のやうな非常に「ダイナミツク」の經濟状態の場合に於て、而も此の度は財産税の如きは十萬圓以上の國民全部でありますので、全國に及ぶ譯でありますが、それを税務機關だけで捕捉すると云ふことは殆ど不可能であります、從來の所得税を一つ取つて見ましても、今年度の所得税の如きは所得税調査委員會の參加を求めましても、非常に各地に問題があつた程であります、課税に對して納得をせしむるものは、一に公平を期することであると思ひますが、さう云ふ意味で此の各種委員會の選任方法竝に構成、運營と云ふものが此の成否を決します一つの要點ではないかと思ひます、之を今申しました從來の所得税調査委員會に例を取つて見ましても、名目としてはありましたが、是は税務機關の官僚的な心得違ひと、他方所得税調査委員となつて居ります者の不熱心或は未訓練或は無能力等に依りまして、あつてなきが如き状態であつたと云つて差支へないと思ひます、そこで此の各種委員會の民主化と云ふことが今度の法案の中に於て徹底的に企畫され、謳はれなければならないと存じます、それが此の度は却て官選に依り、而も諮問に依ると云ふことで、寧ろ大勢と致しましては遂行して居るやうな感じを受けるのでありますが、それに對しまする御所見竝に私が今申上げました缺陷を補つて、同じ部落、隣の部落、或は會社工場等産業別に依りまして評價の不公平、差等が出來るものを十分補ひ得る、是正し得る御自信は、一體どう云ふ方法に依つて御持ちになつて居られるのか、もう少し責任のある御答辯を煩はしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=88
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089・池田勇人
○池田(勇)政府委員 評價の問題に付きまして企業再建の場合は私から御答へ致しませぬ、調査委員會の制度に依ります財産税の賦課に對しまする公平問題でございますが、從來の所得調査委員會に於きましては、御話のやうな點も遺憾ながらないことはございませぬ、今囘は從來の所得調査委員會の制度を改めまして、調査委員會に諮問して税務署長が決定すると云ふ立場を根本的に變へました、納税者が自分の財産價格を申告して、自分で計算して財産税を納める、斯う云ふ立場なのでございます、隨ひまして今租税の民主化と云ふ御話がございましたが、「アメリカ」、「イギリス」等の所謂民主主義國家に於きましては、税制に對しまして諮問の委員會がございませぬ、關係方面では財産税調査委員會、所得税調査委員會は無用の長物である、斯う云ふ強い意見があつたのでありますが、我々と致しましてはやはり納税者が申告なすつても、税務署の意見と違ふ時には、税務署長が決めると云ふ風にした方が國情に合ふ、又其の判斷を致しますのは税務署長一人でなしに、他の民間の各界の代表者に御相談した方が宜い、斯う云ふ考への下に昔の制度とは違つた意味の委員會を設けることに致しまして、其の申告が不相當であつた場合、又申告がない場合に限つてのみ、さう云ふ委員會を利用すると云ふことが、前よりも進んだ民主的なやり方だと考へまして、さう云ふ方法を採らんとして居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=89
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090・穗積七郎
○穗積委員 民主的の方法に付きましては固より各國に依つて違ひます、私は一律に選擧に依つて委員會 構成するから民主的である、さうでないものは民主的ではないと云ふのではないのでありまして、國民の訓練されたる状況に依つて違ふと思ひます、恐らく私推測致しますのに、今局長から御話がありました米英に於きましては、納税に對しまする國民の義務の自覺と云ふものが、日本よりは高くはないと云ふ風に思ふのであります、或は又徴税機關の制度組織、或は官僚の心得が日本より遙かに民主的に出來て居るからこそ、官民協力の自覺の下に其の目的が達し得られるのであつて、形の上だけで之を論ずることは如何かと思ひます、私は何も觀念だけで言ふのではなしに、眼前にもう既に今年度に於きまする所得税の課税の實情に即しまして、其のことを強く御反省を願ひたいと思つて申上げて居るのであります、例へば茲に第三者の通報制と云ふものがございますが、是は言ふまでもなく、本人の申告制に對しまする或る程度の自信のなさを現はして居るのでありまして、同時に斯う云ふ制度を設けますよりは、從來の所得税の調査委員會の實情に即して申しますれば、一つの税務署單位に委員會が設けられました時に、其の町村單位に選出されました其の村、其の町の人々が納得の行く調査委員が各町村から而も公選に依つて出て居ると云ふことが必要ではないかと思ひます、今仰せのありました通りに虚僞の申告をし、或はしなかつた者があつた時には、評價委員會に於て識者を集めてと云ひますが、評價基準を決定致しまする委員會でありましたならば、是は識者であることが必要でありますが、又それで足りると思ひまするけれども、各申告の正否を査定致しまする場合に於きましては、如何に學識經驗がありましても、東京の委員會が九州の或る町村の資産家の實情を調査することは不可能だらうと思ひます、是は言ふまでもなく、其の村、其の町に居りまする納得の行く調査委員が、町村別に税務署單位に參加して居ると云ふことが最も必要なことであると思ひますので、私は押問答は致しませぬが、今局長の御話になりましたのと、私の言はんとする所とは、其の達せんとする目的は同じでありますが、税務機關と國民の現状に對する認識が違ひ、方法が違ひますから、重ねて其のことを主張致しまして先に進みたいと存じます
第三に公平の問題に付て一寸御尋ね致して置きたいと思ひますのは、新圓の捕捉でございます、是は現在、預金に對しまして信頼がない、或は經濟的變動等の爲に、特に平常の經濟状態よりは新圓が預金となつて居る場合が少いと思ひますが、而も是が申告制であり、御承知の通りお互ひ御恥かしいことでありますが、現在の日本國民乃至は第三國人の經濟意識の程度でありますので、是は申告漏れになる場合が相當豫想されるのでありますが、此の捕捉に付ては一體どう云ふ御方法を考へて居られるか、其の點御伺ひして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=90
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091・石橋湛山
○石橋國務大臣 此の財産税は、左樣な金錢等に關しましては三月二日に調査がしてあります、それに依つて課税するのでありますから、現在各人がどれだけの金を持つて居るかと云ふことは問はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=91
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092・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税調査委員會は、御話の通りに、全國に三百七十幾つの税務署がこざいますが、其の税務署毎に置くことに相成つて居りまするので、地方の實情が十分分ることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=92
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093・穗積七郎
○穗積委員 其の委員會の委員の選出は町村別から出ると云ふやうになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=93
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094・池田勇人
○池田(勇)政府委員 各町村から一人づづ出て戴く程度には相成らないと思ひます、何分にも納税者が五十一萬人でこざいまして、所得税等の十分の一程度の納税人員になつて居ります、でありますから、一人もない村も相當あると思ひますので、各村からは出て戴く譯には參らぬと思つて居りますが、只今各税務署にあります所得調査委員の數よりは出來るだけ多くしたい、斯う云ふ氣持を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=94
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095・穗積七郎
○穗積委員 先程の新圓の問題は私一寸思ひ違ひをして居りました、それから戰災者、引揚者の問題であります、それと、極端な例を申上げますれば、戰時利得者或は闇行爲に依ります過當な新圓利得者との公平の問題でありますが、戰災者引揚者の控除額が、家庭内に於ける日常使用品或は什器と云ふことで、それを勘案されまして戰災者、引揚者の控除額を御決定になつたかと思ひますが、其の基準を一つ御尋ね致したいと思ひます、私は現在の物價状況から致しまして、此の控除額では戰災者、引揚者に對しましてまだ過小に過ぎはしないかと云ふ公平觀に立つ譯でありますが、其の點併せて御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=95
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096・池田勇人
○池田(勇)政府委員 戰災者の控除に付きましては色々な議論がございます、又實際問題と致しまして戰災の程度に餘程輕重がございます、當初は大體一家族一萬圓と云ふ考へを持つて居りましたが、其の後の物價事情等を考へまして、一人五千圓、此の程度ならば宜いのではないか、斯う云ふ氣持を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=96
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097・穗積七郎
○穗積委員 財産税法案の附則の所でございますが、是は山林、立木のことを特にここで規定して居られるやうでありますが、之を讓渡し或は之を物納に充てた場合の控除額でございます、申換へますならば、立木、山林に依ります納税者の所得税の問題だと思ひますが、是は所得税の全額免除にはなつて居ないやうに思ひます、例へば百萬圓の現金を持つた資産家と百萬圓の山林を持つた資産家の納税義務者を考へました場合に、此の計算でやりますと山林所有者の方が不利になつて居るやうに思はれますが、其の點はどう云ふことでございませうか、一寸御伺ひ致して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=97
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098・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税の課税價格の中に物納になりました立木があります時には、財産額と物納致しました立木の價格との割合を山林の所得に乘じまして計算することに致して居るのでございます、財産の種類に依りまして、出來るだけ公正を期する氣持で此の規定を設けたのでございます、是は丁度今議會に提案致しまして御承認を得ました立木を以て相續税の物納に充てた場合と同じ方法で行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=98
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099・穗積七郎
○穗積委員 次に今度の處理の問題でありますが、處理の問題に付きましては、失業問題、生産復興問題、「インフレ」の問題等があると思ひますが、失業乃至は生産の問題に對しましては省略致しまして、一つ御尋ね致して置きたいと思ひますのは、物納に依ります場合に、例へば今の山林の例を取りますと、山林所有者が財産税を納めます場合に、之を賣却致しまして賣却代金で納める場合と物納で納める場合と出て來る譯だと思ひます、所が山林等に付きましては、先程御話のありました通りに、之を買ひ向ふ者は極く特定の者しか考へられない、特に十萬圓以上の資産を持つ者は國中全部が納税義務者となりまして賣りに出る譯であります、さう云ふ場合に是は特に管理能力のない者に移轉することが考へられるのであります、戰時中に濫伐致しました爲に、今日の治水或は灌漑其の他電力等に付きまして非常に山林濫伐に依る惡結果が出て居るやうに思ひますが、之を、納税義務者の勝手な賣買にさせないで、寧ろ或る程度の國家で管理する方向に向ふべきではないかと思はれる點が一點でございます、それから、同時に、物納に依りました是等の山林、工場等生産的物件等の相當技術的而も善意の管理を要しまする物件の管理に付て、先程も一寸御觸れになつたやうでありますが、どう云ふ態勢、どう云ふ運營の方針を御立てになるのか、特に先程の御答辯の中にもあつたやうに、物納物件は直ちに賣却しない、相當期間國家で管理すると云ふことが考へられる譯でありますが、其の管理方法如何に依りましては、是は後の日本經濟への影響と云ふものが非常に大きいやうに思ひますので、此の點も、どう云ふ機構で、どう云ふ方法で、是等の財産を御管理になる積りであるか、其の點をもう少し明かにして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=99
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100・石橋湛山
○石橋國務大臣 山林の場合は、是は今の御話の中にもありましたやうに、中々簡單な財産でないと思ひます、將來の日本に對して非常な重要な關係を持ちますから、且又山林關係の方々からの陳情などもありまして、其の中には御尤もな點もありますので、是は、山林に依つて納税される場合、又山林が物納になつて其の後如何なる管理をするか、どう云ふ處分をするかと云ふことに付ては、尚ほ十分研究して適當にやりたいと思ひます、それから、一般的に申しますと、其の他の有價證券でありますとか、或は處分して宜い財産に付きましては、單に政府の役人がやると云ふことばかりでなく、日本にも信託會社其の他の色々な財産管理及び財産處分に付ての訓練を經た人達が相當多數にあるのでありますから、それ等の人をも何等かの方法で動員をして、さうして此の處分或は管理をやつて行く、斯樣な考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=100
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101・穗積七郎
○穗積委員 其の具體的な御構想はまだ出來て居ないのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=101
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102・石橋湛山
○石橋國務大臣 實はまだ具體的には決まつて居りませぬ、目下それ等の專門家などとどう云ふ方法でやつたら宜いか、又それを政府機構とどう云ふ風に結び付けたら宜いかと云ふことを研究して居る段階であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=102
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103・穗積七郎
○穗積委員 それに付きましても先程御尋ね致しました不動産に付て、さう云ふやうな善意の管理を要し、特に今後の日本經濟に重要な關係を持ちました物件でありますが、さう云ふやうなものが單なる新圓所得者が財産を保持する物に、或は管理能力のない者が之に食繋ぎをすると云ふ形で、不動産物件の管理に當る場合が相當あると考へられると思ひます、又納税者の方も若しここに闇賣と云ふことがあると致しますならば、それを賣りまして、評價價格よりは遙かに高い價格で賣ることに有利さを感じて、さう云ふ重要なものが國家目的に副はない人々の手に移る場合がありますから、さう云ふ場合に於きましては之を制限する必要があると思ふのでありますが、其の點に付ての御用意を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=103
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104・石橋湛山
○石橋國務大臣 納税者が自分で財産を處分する爲に、其の結果が國家經濟全體の目的に好ましくないことになるのをどうして防ぐかと云ふことに付ては、特にさう云ふ機關と云ふものを考へて居りませぬ、併し是は先程から説明がありましたやうに、申告課税であり、又相當納税者に取つても難かしい税であります、さうして之を何で納めるかと云ふことは、物納の場合に於きましては納税者が勝手に物納にすると云ふ譯には行かないのでありまして、税務署等と相談をしまして納税の方法を決める譯であります、其の場合に實際の處理と致しまして、今御質問になりましたやうな心配の點は實際問題として處理が出來るのであります、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=104
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105・穗積七郎
○穗積委員 最後に御尋ね致して置きたいと思ひます、是は財政全般の問題に付てでありますが、此の度の財産税は當初は額に於きましても一千萬圓を見込まれ、其の使途に付きましては戰爭債券の償却と云ふことに主力を置いたやうに思はれますが、是が今度は變つた譯で、隨て此の度の税收は全部一般會計に使はれることになると思ひます、而も恐らく納税額の七〇%前後と云ふものが物納に依る、さうなりますと大藏證券に依りまして新圓を發行すると云ふことにならうと思ひますが、さうなつた時に擬制資本の方は打切ることが出來ますが、豫算の面に於ける擬制的な中心であります戰債は飽くまでも殘り、今年度の會計年度に於きましても、追加豫算等恐らくは赤字公債が累積せざるを得ないと云ふことになつて、而も本年度の此の度の財産税は臨時財産税と云ふことでありますので、是が恒久的な税制の中に含まれて居らぬやうに思ひます、さうなりますと此の二つの課税を實行致しました後の日本經濟の生産性の昂揚竝に逆の面の「インフレ」の面でありますが、それへの影響は、寧ろ逆行する結果になりはしないか、單に財産税を富の再分配と云ふだけに局部的に考へますれば、それで一應の目的は達し得られると思ひますが、今日のやうな場合に於きましては、一切の施策の全體に對する影響に於て考へなければならぬと思ひますが、さうして見ますと、此の使途の問題は大きな一つの穴として、後に財政の編成の上に殘るやうに思はれます、而も今申しました通りに、償却されざる戰債は殘り、今年度の豫算に於きましても更に赤字公債が累積され、さうしてそれを或る程度で「カバー」する財産税が、七〇%と云ふものが大藏證券として少くとも今年度新圓として發行されると云ふことになつて參りますと、益益「インフレ」の面が助長される、さうなると、來年度の日本の財政豫算はどう云ふものを財源にして生れるのか、全く暗澹たる状況しか豫想されないやうに思はれます、而も來年度に於きましては、さうして考へますると、一方に於ては戰債を初めとする公債の處理の問題と、一方に於ては所得税或は營業收益税等の「インカム」から之を取立てて行く税制と云ふものを考へて行かなければならぬと思ひますが、それも來年度から歳出の面は極力節減節約致しましても、尚且つ之を補ふだけの所得税を中心とする税源を上げるだけの生産復興と云ふことは考へられない、さうなりますると、或る程度の財源と致しましては、もう大衆的の流通課税しか考へられないやうに思はれます、さうなりますと、新たに特に二つの財産税問題は、本年度の豫算の面を睨み合すだけでなしに、もう少し「ダイナミック」に眺めまして、日本經濟の將來特に來年度からの財源と致しまして、或る程度の方針を立てて置かぬと、洵に無責任なことを、他から強制されて行く結果になる謗りを免れぬやうに思ひますが、それ等の點に付きまして、一つ來年度の豫算の編成をどうしてやるかと云ふこと、其の細かいことは別として、經濟全體として見て、其の點に付ての御所信を特に大藏大臣から率直な責任ある御答辯を御洩らし戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=105
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106・石橋湛山
○石橋國務大臣 本年度の財政は相當巨額の支出になりまして、而も普通歳入は三百億圓を若干超えると云ふ程度であります、此の歳出は一體それならば減らすことが出來た歳出であらうかと檢討致しますると、實際に於ては復員費或は進駐軍費等の如きものでありまして、如何にしても減らすことの出來ないものである、そこで若し財産税がなければ是は當然赤字公債で賄ふ外ない、是より外に行き途がない、斯う云ふ追詰められた財政である、そこで御話のやうに、財産税と云ふものは、是は私の意見でありますが、是は外の政黨等には色々の意見もあつた譯でありますが、私は大體國家の債務を一應返還するのが常道だと考へて居ります、併しながら今申したやうな財政の状態でありますので、赤字公債を發行すると致しますれば、是は財産税を使用する方が弊害は遙かに少い、そこで本年度の財政は已むを得ないから財産税を取る、斯う云ふ結果になつたのであります、來年度からどうするかと云ふことは、今申上げますやうに、普通歳入は三百億圓、是はまだ殖えると思ひますが、兎に角税制の改正も調査會等を設けて致したいと考へて居りますが、假に三百億圓と致しますと、今年度の數字は忘れましたが、本年度限りの歳出と一應見られるものを除きますと、まあ三百億圓竝びで以て略略間に合ふ恰好になるのであります、唯明年度に於て又今年度に於ける一年度限りと見られるものに何々があるか、茲に惱みがありまして、それに付ての財源は目下色々考へて居ります、是は日本政府だけではいけない問題でありますが、結局財政の上から日本の「インフレ」を起すと云ふことは聯合軍の占領目的にも反するのであります、其の方面にも尚ほ話をする餘地がある、斯樣に考へて居る次第であります、是は戰後の何處の財政でもさうでありますが、危險點は結局賠償及びそれと同種類の歳出にある、其の問題が解決されれば日本の財政に於ても大體危險はない、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=106
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107・穗積七郎
○穗積委員 續きまして一寸御尋ね致すことがありますが、戰債の打切りに付てはしないと云ふ方針である、是は承つて居る譯でありますが、我々は又問題が出て來ることは必然だと思ひますが、それはそれとして一方財産税に付きまして、今後もつと輕率なものを恒久化して行く、臨時財産税でなしにさう云ふことにして行くか御所見を伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=107
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108・石橋湛山
○石橋國務大臣 恒久的のものになりますと、是は財産税と云ふ言葉ですが、所謂「キャピタル・レビューン」の財産税でありますが、是は恒久化し得ない、是は一度限りのものであります、恒久化するとなると何等かの形で所得税的なものになる、假に財産を一つの所得の課税の標準にすると云ふことは有り得ると思ひますが、やはり所得税的のものになり得ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=108
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109・穗積七郎
○穗積委員 未だ御尋ね致したいと思ひますが、御答への如くであればある程、來年以後の財政編成が益益問題となり、新圓階級の捕捉と共に、税制の生産的合理的大改革を今後の問題として殘して居る、割當の時間が來ましたので是れで終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=109
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110・本多市郎
○本多委員長 鈴木明良君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=110
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111・鈴木明良
○鈴木(明)委員 最後に私は厚生大臣にも質問したいと思ひますが、御出席を御願ひ出來れば結構であります、財産税は三月三日を基準として決定するとしても、其の時に物を澤山持つて居つたのを、最近になつて新圓に全部換へて居る、そこで大藏大臣は新圓に對しては手を著けないとすれば、新圓にした是等の人に對しては申告制を採用しても私は意味がないと思ふ、是等に對してはどんな風に處置する積りか、御尋ね致したいと思ひます、又國民に貯蓄運動を起しても誰も私は現在の状態では貯蓄する人はないと思ひます、物の裏付けのない新圓の放出はどう考へても「インフレ」の對象となる、而も惡性「インフレ」となる虞が十分に私はあると思ひます、そこで貯蓄運動が假に成功したとしても、其の金は眠つて居る金を金融機關を通じて流通過程に抛り込むことになる、それでは「インレフ」の最大の原因となると思ひます、此の點大藏大臣はどう考へて居られますか、尚ほ貯蓄は一般市中銀行には金は現在ないと思ふ、其の救濟策をやる考へではないのか、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=111
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112・石橋湛山
○石橋國務大臣 第一點は三月三日現在の金を持つて居つたものがある、其の後其の金で物を買つた、それに財産税が課かる場合の御尋ねでありましたが、それは財産税としては其の時の現在で課けますから、やはり金に課けます、物を買つて居やうとも、買つて居なくても、それは政府の方では……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=112
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113・鈴木明良
○鈴木(明)委員 其の逆です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=113
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114・石橋湛山
○石橋國務大臣 物を換へたのでありますか、それはやはりものに課ける譯であります、併しながら其の人は既に物がない、物にも依るのでありますが、物がない、例へば田畑、山林と云ふものが假にあつたとして賣つてしまつた、こちらは、其の時の物を調査して課ける譯であります、だからして納税者は物がなければ金で拂ふと云ふことになる、それから第二點であります、是は御意見でありますが、屡屡申上げますやうに、現在に於ては幸ひにして通價價値は此の春から稍稍安定を致して居ります、さうして通貨と云ふものを持つて居れば何かになると云ふ信念で退藏されて居るものと思ひますから、金融機關に金を預けても安心だと云ふことであれば私は預金は必ず殖えると考へて居ります現に日本銀行が新圓に對しての懸念はないと云ふことを多少なり宣傳して呉れました結果などを見ましても、其の效果があるやうに考へて居ります
第三點は、實は一寸質問がはつきりしなかつたのですが、もう一度仰しやつて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=114
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115・鈴木明良
○鈴木(明)委員 第一點も私が御尋ねしたのと趣旨が一寸違ふやうでありますから繰返します、三月三日を基準として財産税を徴る、其の時に色々の動産や物を持つて居つて、其の後其の物を全部新圓に換へてしまつた場合に、新圓に手を著けないとすれば、申告制を採つても、物が新圓に變つたのですから、不合理ではないか、其の點の處置はどうするかと云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=115
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116・池田勇人
○池田政府委員 三月三日の財産を基準として課税致しますので、三月三日に物を持つて居れば、其の物を評價して課税を決定致します、而して其の場合に、物がなくなつて居れば、金に變つて居るのでありますから、新圓で財産税を納めて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=116
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117・鈴木明良
○鈴木(明)委員 それは表向き出來るやうでありますが、私は絶對不可能であると思ひます、尚ほ十分に御檢討願ひたいと思ひます、それから最後に御尋ねした點は、貯蓄運動が假に成功したとしても、退藏されて居る金を金融機關を通じて結局流通過程に抛り込まれることになる、それでは結局「インフレ」の最大原因になると思ふ、此の點大藏大臣はどう考へて居られるかと云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=117
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118・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尋ねの點は或る意味に於てはさうなります、それは退藏されて居れば全く眠つてしまつて居るのでありますが、それが銀行に預ければ、銀行は之を運用しなければなりませぬから、其の意味に於ては御質問のやうな結果になります、併し其の代りにさう云ふ風に囘轉して來れば、今現にやつて居るやうに今度は新しく資金を貸出しをしてやらなければならぬことになりますから、結局資金關係で産業を起さなければならぬことになれば、退藏された通貨が廻つて來て流通するか、或は流通が遮斷されて居れば、別に新しく通貨を供給してやらなければならぬと云ふことになりますから、問題はそこにあるのではなくて、全體の産業が果してどれ程起し得るかと云ふ所に結局問題があると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=118
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119・鈴木明良
○鈴木(明)委員 生産再建の爲に主務大臣は、物資の讓渡、引渡、設備の讓渡と云ふやうな場合、其の損失を補償すると臨時物資需給調整法では明記して居ります、そこで特別經理會社等は此の度の戰時補償を打切られて、右會社に前述のやうな命令があつた場合は損失を補償するのであるから、戰時補償を打切つても、損失を補償すれば、打切らないやうな結果になるのではないかと思ふのですが、其の點に對する技術的な處置は如何樣にする考へでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=119
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120・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸伺ひ損つたのですが、損失を補償すると云ふ點はどう云ふことでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=120
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121・鈴木明良
○鈴木(明)委員 物資の讓渡、引渡、或は設備の讓渡と云ふやうな、生産再開の爲に主務大臣が命令を出せるのだと云ふ風に臨時物資需給調整法で明記して居ります、さう云つた命令が出た場合には、此の會社に對して損失を補償すると云ふことが明記されて居ります、其の損失を補償すれば、結局戰時補償を打切られても損失補償がありますから、此の會社に對しては何等影響がないやうに私は思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=121
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122・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは全く問題が違ふやうに思ひます、臨時物資のあれでやりますのは、臨時物資の命令を受けた爲に、それに依つて何等か損失があつた場合には、其の損失に限つて補償をすると云ふのでありますから、ここで言ふ補償課税の場合の補償とは全然違ひますから、御懸念のやうなことはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=122
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123・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に戰時補償の對象となる戰災保險とか、特殊預金等を擔保として、政府指定の公共團體とか或は銀行から金を借りた、既に其の金は借りて使つて居つたと云ふ場合に、其の借入れ機關との間に於て、相當複雜な問題が起きると思ふのですが、それ等に對してはどんな風に處置をする積りでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=123
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124・池田勇人
○池田(勇)政府委員 昭和二十年八月十五日後金融機關に特殊預金證書等を持つて參りまして、さうして債務の決濟に充てたり、或は現金に相成つた場合に於きましては、一應銀行は代位納付義務者となりまして納税を致します、さうして銀行は其の相手方の人に求償權があることになりますので、銀行へ讓渡した人に求償を求めて、其の間を決濟する、斯う云ふことに相成ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=124
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125・鈴木明良
○鈴木(明)委員 其の次には補償打切りの預金財の影響を考慮して第一封鎖及び自由預金を全額支拂ふことが出來るやうに、金融機關に對して百億圓を限度として政府が補償することになつて居ります、それ以上の分に對してはどうするか、即ち新勘定の第一封鎖預金に付ては、一般國民は政府の補償があるものと考へて居るが、金融機關再建整備法の第三十三條に依ると必ずしも補償を受けるとは限つて居ないのであります、同僚議員の質問に對しては補償すると言つて居られるが、其の數字的根據を御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=125
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126・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尤もな御質問であります、是は法律の文面から申しますと、御言葉のやうな疑念が生ずる譯でございます、理窟はさうなんです、併し是は唯政府の、詰り國家の負擔する金額がどれ程まででも上つてしまふと云ふやうな、隨て第二封鎖等の取扱を「ルーズ」にすると云ふ危險を防ぐ爲に、一應天井を作つた譯であります、只今當局の計算或は日本銀行等で調べさした所に依りますと、百億圓あれば新勘定の方は十分賄ひ得る、斯う云ふ見込でありまして、其の天井を作つてそれ以上に上すことは出來ない、ですから理窟から申せば新勘定の方にも穴が明く場合がないとも限らぬ、斯う云ふことになる譯でありますが、事實は左樣なことを起さない範圍に於て左樣に決めたものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=126
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127・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に經濟再建整備委員會の外不動産評價委員會と云ふやうなものは、定めし民主的に編成されると思ふのでありますが、其の構成員は學識經驗者と云ふやうなことが、書いてありますがどう云ふ程度で構成されるか、それから斯う云つた構成員と經濟安定本部との關係はどんな風に運用して行くものでありますか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=127
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128・石橋湛山
○石橋國務大臣 まだ構成員のことは法律も通過して居りませぬので、具體的に定めて居りませぬが、中央に設けられるが如きものは、最近の方針に依りまして、成るべく議會の諸君等に一つ御加入を願ふやうな方針を執りたいと思ひます、尚ほ安定本部とは直接の關係を持ちませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=128
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129・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に是は同僚議員からも出たと思ふのですが、政府は財産税の納入に物納を認めると云ふが、物納した財産は先程御答辯がありましたやうに、或る期間を經て處分すると云ふのでありまするが、例へば信託會社と云ふやうなものに信託する場合もあるでせう、それから行き場所も色々異なると思ふのでありますが、其の物納の基準及び其の範圍を一寸伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=129
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130・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物納は、財産税を納めます前に物納の申請を致します、さうして税務署と協議に相成ります、納期までに物納が確定致しませぬで、納期が過ぎましても税務署と話をして居る間には、所謂延納の利子は取らない、斯う云ふことに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=130
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131・鈴木明良
○鈴木(明)委員 例へば斯う云ふ場合があるのです、二十萬圓以下の會社であつて、八割までは殆ど自己資金でやつて居る、そこで其の株主は、殆ど個人同樣の會社になつて居るのですが、名義だけは澤山竝べて居ると云ふやうな時に、十萬圓以上を結局分割して取る、さう云つた會社になつて居ると云ふやうな場合には、どんな風に考慮されるか、結局考慮の餘地は私はないと思ふのですが、さう云つた細かい點、それから朝鮮人とか支那人とか、さう云つた者に對しては、第三國人として財産税を取ることが出來ないの 、若し取るとすればどんな風にして實行するのか、其の點も一寸御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=131
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132・池田勇人
○池田(勇)政府委員 會社の株主が其の財産税の納入に充つる爲に、所有株式を納めるべく物納を申出ました時には、個々の場合に付きまして適切なる處置を講じたいと思ひます、其の株が市場性の全然ないものであるならば、税務署長は他の財産から物納するやうに要求致しますでせう、又それが相當市場性のあるものなら勿論喜んで物納を認めます、第二の問題の朝鮮人竝に支那人に對し、財産税が課税になるかと云ふ問題でごいますが、朝鮮人には所謂制限納税義務者としての課税が行はれます、併し支那人に付きましては之に規定致して居りますやうに、所謂世界聯合に加入して居る國の國民には、財産税を課税しないことを掲げて居ります、即ち第二條に「財産税は、命令で定める外國人には、これを課さない。」此の「命令で定める外國人」とは、世界聯合に加入して居る國の國籍を有するものになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=132
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133・鈴木明良
○鈴木(明)委員 此の程度にして私の質疑を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=133
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134・本多市郎
○本多委員長 稻村順造君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=134
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135・稻村順三
○稻村委員 此の度の補償打切りに關する諸法案は非常に厖大でありまして、僅かな期間に之を檢討しますと云ふことは非常に困難な状態であります、是は手續上の問題でありますけれども、殆ど斯樣な僅かな時間で以て、是だけのものを全部檢討しろと云ふやうなことは、或る程度から申しますれば議會の審議權を無視した方法であると私は思ひますけれども、先づ第一に之に對する所の大藏大臣の御意見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=135
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136・石橋湛山
○石橋國務大臣 政府は決して議會の審議權を無視するなんと云ふことは飛んでもないことで、そんなことは少しも考へて居りませぬ、唯先般懇談會でも申上げましたやうな事情でありまして、政府としては種々の内外の情勢から、御無理でありませうが是非一つ至急の御審議を願はなければならぬ事情にあると云ふ次第で、其の點の御諒解を得た譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=136
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137・稻村順三
○稻村委員 それで私としましても、全般に亙つて之をはつきりと調べて見たいのでありますけれども、唯さう云ふ所の時間的餘裕もありませぬので、此の諸法案の持つて居ります、一番重要だと思はれる點二、三に付て質問して見たいと思ひます
先づ第一に我々が重要だと思はれるのは、財産税の課税對象としての不動産の評價の基準と云ふものが明確になつて居らないと云ふこと、それから企業再建の爲の資産評價の點も、同僚議員からも幾度か之に對して押問答がありましたが、其の點に付てはつきりした政府の答辯が得られて居らないのでありますが、私は重ねて此の二つの問題に付て御答辯を煩したいと思つて居ります、先づ第一に財産税の課税の對象としての不動産の評價の基準でありますが、此の點に付きまして昨日は賃貸價格に對する倍率と云ふやうなことで以て、其の倍率は幾らになるか、一定倍率と云ふことではつきりして居らないと云ふやうな話になつて居つたのでありますが、私は斯う云ふ不動産價格と云ふものは、大體賃貸價格と云ふものがはつきり決まつて居ります、さうして而も是が一定の市場價格を持ち、其の市場價格と云ふものは大體に於て其の倍率とも云ふべき所の平均利潤とか、或は平均利子率とか云ふ風の社會一般に通用して居る、現實は一つの基準が存在して居るのだらうと私は考へて居ります、そこから即ち斯う云ふ風な市場價格と云ふものが生まれて來るのであつて、此の點昨日川島委員の方から再三質問したことであらうと思ふのでありますけれども、此の平均利子率、殊に不動産の場合には平均利子率が私は此の倍率を意味して來るものであらうと思ひますが、此の點に關しては大藏大臣の御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=137
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138・石橋湛山
○石橋國務大臣 昨日主税局長から詳しく申上げましたやうに、賃貸價格は是はそれぞれ租税の關係上決つて居ります、何年に一遍でありましたか調査をして決定をするもので、是は一應新しい調査が出來るまでは動かない數字として政府では税の上に採用して居るものであります、所が實際の價格は今御話のやうに時價或は市場價格と云ふものがある譯でございまするから、財産税は其の時價とか市場價格とか云ふものを見當に致すべきものでありませう、併しながら一筆々々に此の土地は幾ら、あの筆は幾らと一々評價すると云ふことは實際上實行困難で、或は却て不公平を生ずるものでありますから、そこで或る地域に於て其處の標準的時價と云ふものを一つ調べて、さうしてそれと、それから既に決つて居る所の賃貸價格と云ふものとを比較して見まして、其の賃貸價格の何倍にそれが當るかと云ふ數字を出しまして、さうして其の地域の倍數にする、斯樣な評價をして行くより外には實際の實行の方法はない、斯う思ふのでありまして、其のことを昨日主税局長は申した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=138
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139・稻村順三
○稻村委員 それは已むなくさうやつたと云ふことでありますが、やはり經濟の原則と致しましては、私は大體に於て調査と云ふものは、此の賃貸價格は「インカム」が基準になつてなされた問題であらうと思ひます、そこで結局私は「インカム」が中心で賃貸價格が中心であるとすれば、それとそれから大體の一定の期間に私達は平均利子率、是は金融の面であるならば必ず平均利子率と云ふものが茲に存在すると云ふことだけは、是は金融の存する限り經濟の法則として儼として存在するものだらうと思ひます、さうするならば市場價格と云ふものは大體に於て斯樣な「インカム」と、それから今度は平均利子率と云ふものとの關係に於て、初めて此の市場價格と云ふのが一般的には成立するのが經濟の原則だと私は思つて居ります、さうしますれば、其の他に色々な條件がありまして、個々の場合は、例へば需要供給其の他の關係に依りまして不同があるのでありますから、我々が若しも一定の資産を評價すると云ふやうな場合になりますれば、此の經濟の原則に從ふのが私は一番公平であり妥當である方法であると、さう考へて居るのでありまして、そこにはもう聊かの私情を挾む餘地を殘さない、斯う云ふ計算方法を採るのが妥當である、殊に財産税と云ふやうな重要な税金を課す所の對象の資産調べでありますから、さう云ふ經濟の原則の下にはつきりと私情を挾まないやうな算定方法が決定されることが最も正しいのではないかと云ふ私の質問なんであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=139
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140・池田勇人
○池田(勇)政府委員 理論的に申しますると御説の通りであります、併し御承知の如く土地の賃貸價格は昭和十一年に調査したものでございます、其の後に於きまして相當各宅地の間に價格の變動を來して居ります、さうして又山林等に於きましては、山林は山林としての賃貸價格を見て居ります、隨ひまして例を以て申しますると、蘆屋或は兵庫縣の海岸地帶の山林は、山として評價せられて居るのでございます、隨てよく木の生える山も、或は又蘆屋邊の禿山も大體の賃貸價格は似て居るのであります、どちらかと言へば禿山ですから山としての價値がございませぬので、低く付いて居る所もあります、斯かる場合に賃貸價格に對して全國一律に見ることは、財産税の課税の對象としては非常に不公平になるのであります、併しさう云ふ場合に宅地に付きましても、山林或は家屋に付きましてもある譯でございます、全國一律の倍數に依りますと、今の時價に合はないと云ふことが起つて參りますので、先程大臣が申されたやうな方法で行くのが一番適正だ、實際に合ふのだと云ふ考への下に、税法二十五條、二十六條のやうに規定致したのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=140
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141・稻村順三
○稻村委員 其の點に付てはもう餘り深く追究致しませぬが、唯私は其の場合に標準價格と云ふ、其の標準的な價格を調べると云ふことが中々困難ではないかと云ふ風に考へて居ります、一體どれを標準にするか、此の點になりますとやはり困難は同じなのであります、それから今度は、山林價格の問題であります、先刻宅地、山林の問題がありましたけれども、是は私は東京都の中でも、今まで既に立派に十年位は宅地として使用して居るものが、登録の上では是が畑地として現はれて居る、斯う云ふ問題がうんとあるのであります、併し私は宅地なら宅地として、此處ならば一體普通賃貸價格がどれ位の土地であるかと云ふことを是から算定した所で、さう困難な問題でないと思つて居ります、ですから私は斯う云ふ算定は經濟の原則に從つて致しませぬと不公平が生れて來るし、又そこに色々なからくりや情實が挟まつて來る、斯樣に考へて居ります、もう此の點は其の位にして次の問題に移りたいと思ひます
次は企業再建の爲の資産評價の基準の問題であります、是は今まで大藏大臣或は膳國務相の答辯を聽いて居りますと、大體に於て最初の時は時價で評價すると云ふ風な話でありました、所が其の後、同僚から突込んだ質問の行はれた結果、是が安定價格としての時價であると云ふ風に、表現が變つて來たやうに私は聽いて居ります、併し安定價格とは一體何であるかと云ふことに關しては、膳國務大臣は是は米價である、米價を基準として──現在の米價かどうか知りませぬが──價格の「バランス」を取らしめて、それを以て安定價格だと、斯う云ふ風に答へられたと思ふのでありますが、さう解釋しても宜しいかどうか、御返答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=141
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142・石橋湛山
○石橋國務大臣 一寸御質問の要點がはつきりしないのでありますが、先日も申上げたやうに、今後安定本部として所謂物價水準をどう云ふ風に決めるかと云ふ場合に、實際の計算の方法は色々ありませうが、是は三月にもやつた方法でありますが、大體米を基準にして物價の水準を計算して見る、是は一つの技術上の行き方であります、それに依つて基準を作り、それで「スタート」すれば、後は又米が物價水準に影響されて動いて來るでありませうが、斯う云ふ風に計算技術の一つの方法として安定本部ではやらうとして今試みて居る譯であります、それに依つて安定物價水準を決めると云ふ膳國務相の答辯は其の通りと思ひます、それから資産の評價の問題に付きましては屡屡申上げますやうに、細かい所は未だ實は決つて居ない、決め得ないのでありますが、産業再建を目途にして、今後の安定物價水準と云ふものとも睨み合せまして、債權者なり債務者にも甚だしき不公平を生じないやうに、斯う云ふ大體の方針だけは決めてありまして、それに依つて如何なる基準を作るかと云ふことは今實は檢討中であります、斯う云ふことで、其の點は具體的に決つて居らないものですから申上げ兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=142
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143・稻村順三
○稻村委員 物に關する資産の評價をする場合に、例へば機械なら機械、其の他色々なものを評價する場合に、其の評價の基準を安定した一つの物價水準を基準にして評價する、さう解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=143
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144・石橋湛山
○石橋國務大臣 是も先般から屡屡御答へしたと思ひますが、物と申しますが、物のも大雜把に分けますと固定資本、固定資産に屬するものと、それから流動資産に屬するものと、やはり評價の方法が異なると思ひます、問題は固定資産であります、流動資産の方は時價で評價しても差支へないと思ひます、是は右から左に賣れるものである、固定資産の場合でも、之を解體して處分する場合、其の事業を其の儘殘して今後活動させると違ひます、解體しても「モーター」は「モーター」、旋盤は旋盤として賣れる、旋盤の値段、「モーター」の値段は大體時價の標準として評價して宜い、唯一つの物として評價する場合には簡單に行かないので、それは今後の日本、或は世界の事情も考へなければならぬが、十分立行くと云ふ觀點から考慮しなければならぬ、斯樣に考へて居ります、だから一概に安定物價とか、何とか云ふことだけでありますと、少し單純過ぎることになりまして事實と合はなくなると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=144
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145・稻村順三
○稻村委員 實は私達は其の固定資本と云ふやうなものも、流動資本の一應結合されたものとして解釋しなければ、資本の評價と云ふやうなことは殆ど不可能にならうと存ずる次第であります、流動資本或は固定資本と云ふやうなものは、一つの會社を作られる場合には、其の合計の資本額は結局する所を言へば、是等の個々の商品の結合したものとしての額が、結局物的な所謂資本として現はれて來るのだらうと思ひますから、此の立場を捨ててしまふと、私は資本の評價は殆ど不可能になると思ふのでありますが、それは如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=145
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146・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は多分あなたの經濟學から來られることでありまして、其の點は一寸私には直ぐ分り兼ねるのであります、一寸さうでありますとも、さうでないとも申上げ兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=146
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147・稻村順三
○稻村委員 それではもう一つ、さつき大臣の言はれたやうに、固定資本と云ふものと、流動資本、更に賃金に投下された所謂我々が言ふ所の貨幣資本、是等のものの間に非常に算定の仕方が違つて來る、と申しましても私は固定資本を除いて考へて居ります、例へばそこに色々な物があると假定致します、其の場合にでも、それを評價すると云ふやうな場合には、今日のやうに「インフレーション」が非常に進昂して來る、殊に財政が膨脹するに從つて「インフレーション」の進昂は避けられない、他面是は「デフレ」の傾向もあると云ふ風に大藏大臣は仰しやつて居りますけれども、併し是は金融の一つの面に付てさう云ふ傾向があるに致しましても、他面全體的な傾向を見ますと、私は「インフレーション」の傾向が非常に強まつて來て居ると思ふのでありまして、さうしますと、名目價格と申しますか、今日の日本の價格が、「インフレーション」の進行と共に名目價格が非常に上つて來て居ります、さうしますと、評價する場合に、今日の此の「インフレーション」に依つて非常に名目價格の上つて居る貨幣で之を算定すると云ふことは、極めて難かしい問題になつて來て居はせぬか、昔であれば金がありましたし、又外國爲替と云ふものがありましたので、そこに「リンク」する所の基礎がありました、併し今日に於ては日本は外國貿易から封鎖されて居り、又我が國に金準備がない、斯う云ふ風な紙幣で以て測られた所の名目價格と云ふやうなものを基礎として、此の資産を評價すると云ふことになれば、非常にそれ自身に付て浮動性と不安定性が起つて來て、之に依つて測られた所の評價と云ふものは、決して今後經濟再建ふする爲めの資産評價が適當に行はれると云ふ風には考へられないのでありますが、其の點大藏大臣の意見はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=147
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148・石橋湛山
○石橋國務大臣 あなたの御話は、結局通貨價値が不安定だからと云ふ一言に盡きるのだらうと思ひます、だから日本の經濟が若し通貨價値が今後も非常に不安定であるとするならば御話の通りである、例へば通貨價値がどんどん下るとすれば、今日の通貨價値と云ふものは將來に於ては非常に浮動なものになる、併しながら通貨價値をさう云ふやうに不安にしたのでは整理が出來ないのでありまして、結局此の整理と云ふものは、通貨價値の不安を除く、通貨價値を安定させる目的がある譯です、そこで其の安定を何處でするかと云ふと、先程の御話の安定物價水準と云ふのが宜い言葉かどうか知りませぬが、何等かの形で一つの物價水準を見透して、其の邊を目途としてやる、無論物價水準と申しましても、一定不變のものは出來るものではありませぬ、或る程度の安定と云ふものを見て行く、左樣な考へで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=148
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149・稻村順三
○稻村委員 さうしますと、一定の安定物價水準と云ふものを我々考へて見ますと、此の安定物價水準の目安を一體何處に置き、又安定物價水準と思はれる其の基礎を何處に置くやうにするのでありますか、例へばそれが外國爲替に「リンク」するとか、或は金と「リンク」するとか、何か知らぬが、今日の如き所謂貨幣其のものが不安な状態に於ては、此の不安な貨幣自體から離れた所の、其の基礎たるべき所のものをそこに我々が求めなければならないと思ふのでありますが、其の基礎を一體何處に置くか、それをもう一度御返答願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=149
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150・石橋湛山
○石橋國務大臣 是も多分あなたの貨幣論から來る所でありまして、詰り一種の「メタリスト」の考へであると思ひます、さう云ふ意味では今日は金の基礎もありませぬ、それから又爲替にも「リンク」致して居りませぬから、「メタリスト」的考へをして來れば非常に不安定に考へられる、併し日本の一つの物價水準と云ふものを、物資との關係に於て通貨の價値と云ふものは定め得る、と我々は考へて居る、詰り「メタリスト」でない立場を取つて行く譯であります、其の「メタリスト」でない立場を取れば、やはり金などを準備にせずとも、それを基準にせずとも、通貨價値は安定出來る、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=150
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151・稻村順三
○稻村委員 私も決して「メタリスト」ではないのでありまして、私の言つたことを今大臣が私を「メタリスト」の如く感じた其の一番根本的な原因は何處かと云ふと、恐らく私が其の生産される物と云ふものが金に依つて代表されて居ると云ふことを前提としたやうに取られたからであらうと私は思ふのであります、併しながら日本の現状から見ますと、今日の貨幣制度と云ふやうなものを安定せしめ金に代つて裏付をする所の生産は極めて貧弱である、今日の生産のやうな状態で以て、今日の如く貨幣が多額に今後も財政膨脹に依つて發行されると云ふ風になるならば、其の金に依つて代表されて居る所の商品、其の商品量の生産と云ふものも甚だ貧弱なものになる、茲に私は今日の所謂生産されて居る所の商品量に依つては、貨幣と云ふものの目安を置くことが出來ない状態が、現状ではないかと云ふ風に考へられるのであります、其の點大藏大臣は今日の生産量を以てしても、尚ほ貨幣制度に對しては一應安定せしめる目安が立つと仰しやるのかどうか、其の點を一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=151
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152・石橋湛山
○石橋國務大臣 御尋ねは言換へれば、今後尚ほ「インフレーション」が大いに進むかどうかと云ふことだらうと思ひます、それは屡屡申上げました通り、私は今後「インフレーション」は進まない、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=152
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153・稻村順三
○稻村委員 大臣の「インフレーション」は進まないと云ふのは、日本の今後の商品──今後と云ふよりも、急場の商品生産と云ひますか、物資の生産と云ふやうなものが、相當迅速に増産が出來ると云ふことを前提としての話でありますか、それとも今日の生産状態にして、財政がどんどんと膨脹致しまして貨幣量が殖えても、尚ほ「インフレーション」は起らないと云ふことなのか、其の點をはつきり御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=153
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154・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點も屡屡申上げたと思ひますが、詰り財政を生産に結付けずに、財政を手離しにどんどん膨脹させれば、それは「インフレーション」になるに決まつて居るのであります、だから財政は隨分御承知のやうに色々な點で困難な財政でありますが、是は本年度の財政を支出する場合に於ても嚴重に査定をして、「インフレーション」を起さない、言換へれば、生産に之を出來るだけ結付けるやうにして行く、明年度以後の財政も同樣に處理をして行く、斯樣な立場を執つて居るのであります、生産の方面は御言葉のやうに中々思ふやうには進みませぬけれども、是は全力を注いで今やつて居るし、又政府ばかりではありませぬ、民間に於ても、又議會の各政黨に於ても、石炭の問題の如き、米の問題の如き、非常な御協力を願つて居る譯であります、此の協力の結果で私は生産は進むと思ひます、もどかしく思ふから中々進まないと云ふ譯でありますけれども、是は徐々に進みつつあり、又今後必ず進むと、私は斯う考へて居りますから、旁旁「インフレーション」は防止し得る、斯う考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=154
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155・稻村順三
○稻村委員 其の點も私と見解が餘程變つて來まして、私は左樣な大藏大臣の見解とは餘程異なりまして、今後「インフレーション」が進行するかしないかと云ふことは、結局財政の膨脹が一面に於て不可避であると共に、生産の増強と云ふものも不可避であると思ふのであります、それが財政膨脹の「テンポ」と生産増強の「テンポ」との其の比率がどう云ふ風になつて行くかと云ふことを、冷靜に考へなければならないのではないかと云ふ風に考へられるのであります、私は色々な現状を調査して見ますと、財政膨脹の比は非常に急速に今發展して居る、迫りつつあるのであります、而もそれの必要だけで、生産は増強されて居ない、現實に於て又それをすることが極めて困難である、大藏大臣は初め此の三箇月の間に相當の決意を以て生産増強をしなければならぬと云ふ風な氣持で財政に當てられたのでありませうけれども、併し六月から今日に至る此の期間に於ける所の生産の有樣と云ふものは、極めて悲觀的な樣相を呈して居るのではないかと云ふ風に考へられるのであります、そこで私達は茲に考へられることは、何か所謂今日の名目價格で安定水準を探さうとしても、是は實を言ふと殆ど目を瞑つて、盲で以て安定水準を探すと云ふやうな結果になりはしないか、茲に今日の價格と云ふものが「リンク」すべき所の基礎を發見してしまへば、是が發見されて、凡ゆる物價がそこに「リンク」して行く、さうすれば私は名目價格が如何に高くなりましても、貨幣制度は或る程度の安定性を得るものだと云ふ風に考へるのでありますが、そこで今日の名目價格以外に何か物價と云ふものが「リンク」する基礎と云ふものを茲に發見する必要があるのではないかと云ふことに付て、大藏大臣はどう云ふ御所見か、御意見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=155
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156・石橋湛山
○石橋國務大臣 もう少し伺はないと御質問の趣意が一寸分らないのですが、私は今「リンク」するものを──多分御話は斯う云ふ意味だらうと思ひます、此の間も御話が出ましたが、例へば米に通貨を結付けると云ふやうな説を出した人も日本にあります、さう云ふやうなことは考へて居りませぬ、それで又之に結付けて見た所が、それに依つて若しも御話のやうに生産が進まぬ──詰り問題は生産の進むのと通貨の膨脹する其の率の問題でありますが、それが御話のやうな、非常な非觀的なものであると致しますれば、何に結付けましても通貨價値の維持は出來ないのであります、結局駄目になる、斯う云ふことでありますから、只今の所では何かに「リンク」すると云ふやうなことは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=156
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157・稻村順三
○稻村委員 私は併しながら斯う云ふ風な、例へば今度の企業再建の爲の資産を評價する場合に、私何時も大臣其の他の御意見を伺つて感ずることは、米價に「リンク」すると云ふやうな意味ぢやありませぬが、米價を基準として、是で物價を一應安定せしめる、斯う云ふことは、私は結局安定物價の目安を米價を基準にして置くと云ふやうな結論になつてしまふのではないかと云ふ風に考へて居りますから、そこで私は斯樣に述べた譯なのであります、併しながら私は今大臣が仰しやつた通りに、米價自體が非常に今日不安定であつて、之を以て基準とした所で、決して安定價格の目安は出來ないのではないかと云ふ風に考へられるのであります、私は斯樣な意味で、企業再建と云ふやうなものを本當に考へて行くのならば、物價水準と云ふものの安定の目安と云ふものを、物々交換と言ふか、所謂貨幣以前の状態に立返つて、一應我々が其處から基準を發見しなければならない事態になつて居る、斯樣に解して、大臣に色々なことを質問した次第なのであります、而も其の基準は何處に求めるかと申しますれば、私達はやはり是は一切の生産物が社會的勞働の生産物であると云ふことを基準と致しまして、さうして一切のものを個々に勞働量を基準とした所の基準を、貨幣以前の状態に戻つて、一應之を是認して、それを又米價を基準とするよりも、寧ろ此の場合には勞働力の價格と云ふやうなものを基準と致しまして、さうして其處を中心として各商品間の交換比例と云ふやうなものを發見して行く、さうして之を基準として考へるならば、名目價格が如何に高くなりましても、名目價格が高くなつたからと云つて貨幣が安定しないと云ふことは當然言へないのではないかと云ふ風に考へて居る次第なのであります、併し此の點、恐らく私の此の説に對しては、經濟的な立場が私と大臣とは違ふと云ふ建前から、大臣はそれを一笑に付しなさるだらうと云ふことは明かなのでありますが、併し私は最後に大臣に對して御質問致したいことは、今度の評價の場合に於きまして、帳簿の上に載つて居る財産、此の場合に實際帳簿に載つて居る所の財産と、それから生産を増強する、之を百「パーセント」に運用することに依つて十分に生産を上げる可能性、所謂稼働財産と云ふものとの間には、餘程違つて居るものがあるのではないか、此の評價に關して所謂帳簿の上で評價するのと、實際の上の稼働財産の評價と云ふものとの間に差異が出て來るのではないか、是は一體どちらの方を基準として資産評價をするのか、其の點も大臣に御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=157
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158・石橋湛山
○石橋國務大臣 資産表としますれば、勿論企業に殘つて居る資産の中には舊勘定に入るものもありますし、新勘定に入るものもありますし、新勘定に入るものが稼働をする資産であります、ですから舊勘定に屬するものは、若しそれを新勘定に今後移し得ないと云ふやうな性質のものであれば、是は先程申しましたやうに個々ばらばらにして處分してしまひますのですけれども、其の立場から評價する、それから新勘定に屬するものは、今後之を稼働させるのでありますから、其の立場から評價をする、斯樣なことになりまして、御話のやうに確かに帳簿と稼働の面とは、評價及び物も違つて參ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=158
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159・稻村順三
○稻村委員 現實の問題と致しまして、帳簿に載つて居る、殊に固定資産のやうな場合は、或る産業に至つては帳簿に載つて居るものの中には、相當是は役に立たないで、先程から申した通りばらばらに評價しなければならぬと云ふやうな問題が澤山あると思ひます、所がもう一つは、從來戰爭中に相當休んで居つた所の工場あたりでは、今之を引出せば相當働かせ得ると云ふ、さう云ふ設備を持つて居ると云ふものもあると思ふのであります、所が今度の企業の所謂整備がなされる時に當りまして、動とも致しますと、昔働いて居つて今働かないで居ると云ふやうなものは餘り問題にならぬのでありますが、昔働いて居つて何時の間にやら古くなつて居て、實際帳簿の上に於ては十分に現はれて居ないやうなものが、是が運轉されずに横流しされる、所謂賣却されてしまふと云ふやうな、斯樣な傾向が方々に實際あるのであります、此の點に對して政府は早く斯う云ふ風な財産、凡ゆる施設と云ふものを百「パーセント」に之を運轉するやうな方策を講じないと云ふと、此の企業整備のどさくさに紛れて、全部生産面から斯樣な遊んで居る「インポテント」な設備と云ふものが闇から闇に崩れて行くやうな傾向があるのではないか、此の點に關する所の對策は十分に御持ちかどうかと云ふことを御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=159
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160・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは企業經理應急措置法等、それから又其の他商工省等に於て、御話のやうな懸念のないやうにやつて居るのであります、御質問は多分此のごでごでに紛れて色々な價値のある設備等が何處かへ分散するのでありますが、其の點は防止致すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=160
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161・稻村順三
○稻村委員 併しながら帳簿に載つて居るものならば──一應資産表に載つて居るものならば宜いのでありますけれども、或る程度資産表に載らないと云ふもので、動ともすると小さなもので相當重要なものが流れると云ふやうなことがあるのでありますが、之に對する一應の取締の方策と云ふものは出來て居るかどうか、斯樣なことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=161
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162・三木秋義
○三木政府委員 御質問の點は實は我我の方でも最も心配して居る點でありまして、先月の下旬であつたと思ひますが、それに關する法令を發令致しまして、只今それが施行になつて居りますので、其の方面に於きまして大いに取締を強化して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=162
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163・稻村順三
○稻村委員 それから最後に企業整備の一つの方針であるのでありますが、今度の企業整備或は賠償施設の撤去と云ふやうなことから致しまして、多くの失業者が出るのでありますが、是は厚生大臣も、又大藏大臣も、完全雇傭と云ふやうなことが今度の一番大事なことであると云ふ風なことを屡屡御伺ひしたのでありますが、今度の企業整備の場合に色々な軍需補償の打切を中心として銀行或は又企業それ自身の關係からして會社が潰れるやうな問題が澤山起つて來る、是は政府が潰さないやうに致しまして、色々會社經理の關係上どうしても會社の經理が立行かぬと云ふやうな問題が澤山出來て來るだらうと思ひます、私は併しながら其の場合に考へることは、會社と云ふものがなくとも設備と勞力とがあれば生産が續行されるのである、其の場合に其の設備と勞働者を完全雇傭の建前から、此の勞働者を利用して潰した會社でも尚ほ生産を續けて行く所の方策を政府は御持ちかどうか、斯樣なことに付きまして一應御返答を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=163
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164・石橋湛山
○石橋國務大臣 設備と勞働力の外にやはり「オルガニゼーション」を必要とする譯であります、それは今囘の施設に於きましても、例へば株式が全部飛んでしまふと云ふ企業は一應潰れる譯でありますけれども、其の場合もそれが日本の經濟にも必要であるならば、之を第二會社其の他の方法に依りまして「オルガニゼーション」を與へて存續せしめる、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=164
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165・稻村順三
○稻村委員 其の場合若しも會社が中中出來ないと云ふやうな場合にはどう云ふ風に致すのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=165
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166・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは其の爲に今度の産業復興營團、さう云ふものを利用致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=166
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167・稻村順三
○稻村委員 今のは産業復興營團と云ふのですが色々な金融金庫が金融したり、營團が資材を提供すると云ふことだけではなく、それ自體の經營主體、さう云ふ風になつた會社の經營主體は一體どう云ふ風なものがなるのか、其の時は産業復興營團が直營にすると云ふ意味なのか、それとも政府管理の下に會社を興してやると云ふのか、其の點をはつきり発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=167
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168・石橋湛山
○石橋國務大臣 營團では直營は致しませぬ、併しながらそれは成程抽象的に申せば、設備が立派に動けるものが株式會社の株式が飛んでしまつたから誰も經營者がないと云ふことも理論的にはあり得る譯でありますが、實際には左樣なことは起らないと考へて居ります、殊に最も極端な場合でも株式を一割は大體殘す、又十萬圓か二十萬圓かの小さな會社に於ては五萬圓なりは殘すと云ふことになつて居りますから、御懸念の如き「ケース」が若しありとしても非常に稀な場合でありまして、左樣な時は又其の時で適當に處理が出來ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=168
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169・稻村順三
○稻村委員 終戰後に於て屡屡斯う云ふ現象が事實既に起つて居ります、例へば肥料を生産するのに、肥料を生産したならば會社の經理上引合はない、斯う云ふやうな問題が起きたのであります、是は原因は違ひます、併し斯う云ふ風に會社は廢めたい、事業を縮小したい、大半の勞働者を首馘つてしまひたい、斯う云ふ風な問題が起きることが屡屡あるのであります、私は新潟縣の者でありますが、新潟縣では既に東洋合成と云ふ工場では既にさう云ふ問題が起つて居りまして、約半年間の間、此の場合爭議の形を取りまして、勞働組合が生産管理の形で以て生産を續行したのであります、さうして更にそれが此の間爭議が解決致しまして、會社の經營に戻つた譯でありますが、斯樣な場合、此のやうな條件と條件は違ひましても、之に似たやうなものが澤山方々に起つて來ると云ふことはないと言ふけれども、あることは明かであらうと思ふのであります、斯う云ふ在來の經營者が生産を續行するだけの意欲が全然ない場合に、完全雇傭の建前から勞働者を中心として之を動かさなければならぬ、此の場合に經營主體は一體何處に置くべきか、斯樣な意見なのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=169
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170・石橋湛山
○石橋國務大臣 いや分りました、それは詰り經營主體がなくなつたのではなくてあるけれども、其の株式なり經營者なりが、何かの事情で生産をやらぬと云ふ場合のやうでありますが、さう云ふ場合には先般の物資需給調整法でありますか、あれに依つて斯かる生産も出來るものと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=170
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171・稻村順三
○稻村委員 それでは此の資産評價の場合に一應勞働者と云ふやうな者が相當澤山入つて居るとするならば、此の勞働者と云ふやうな者の持つて居る勞働力も、一箇の資産として評價さるべきものであるかどうか、それも御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=171
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172・石橋湛山
○石橋國務大臣 是も經濟學上の問題のやうでありますが、今の所は勞働力を資産として評價する考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=172
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173・稻村順三
○稻村委員 さうしますと、私達は茲で又一つの問題が提示されるのでありますけれども、若しも勞働力が資産として評價されないものであるとするならば、資産評價の場合に所謂完全雇傭の主張と云ふものが、私は十分に發揮出來ないではないか、貫徹出來ないではないかと云ふ風に考へるのであります、私は或る點から申しますれば、或る程度勞働力に茲に存在すると云ふことから、逆に是がどれだけの生産をなす所の設備があるかと云つて、所謂不變資本、固定資本に對する所の評價の或る程度の基準が發見されるのではないかと云ふ風な考へすら持つて居るのでありまして、若しも私達が斯樣な現在存して居る所の所謂勞働力を會社の資産の中に評價しないと云ふのであるならば、絶對に完全雇傭の建前と云ふものは貫徹されないのではないかと云ふ風に考へられるのでありますけれども、之に對する所の大藏大臣の御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=173
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174・石橋湛山
○石橋國務大臣 日本の國民經濟全體を觀察すると云ふやうな場合に於きましては、さう云ふ言葉が宜いかどうかと云ふことは問題があるのでありますが、戰時中も人の力を人的資源と云つたやうな言葉で現はしましたやうに、やはり勞働力と云ふものが一つの大なる「フアンクション」になつて居ると云ふことは、是は申すまでもありませぬ、ですから御言葉の完全雇傭と云ふのはどう云ふ意味か、此の節完全雇傭と云ふ言葉は隨分濫用されて居りますからはつきり致しませぬが、兎に角正しい意味に於ての完全雇傭を實現すると云ふ場合には、勿論此の勞働力と云ふものが一つの目當になります、それが「フル」に動かされ、設備が「フル」に動かされると云ふことが、完全雇傭でありますから、勞働力が日本に是だけあるとすれば、之を「フル」に動かすと云ふことを目標にして、經濟政策を立てなければならぬと思ひます、其の意味に於ては御言葉の通りと思ひますが、唯個々の會社の資産を評價する場合に、そこの勞働者の力と云ふものを資産に評價すると云ふことは、是は出來ないことだらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=174
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175・稻村順三
○稻村委員 尚ほ其の他澤山私質問をしたいと思ひますけれども、時間が非常に急いで居られるやうでありますから、私の質問は是れ位にして置きますが、唯私達先程の最後の、所謂勞働力をどうやつて資産に評價するかと云ふやうな問題は、結局日本の今日の状態から言ひますと、固定資本と云ふものとそれに附隨する所の勞働力に投下する所の其の資本と云ふものとの間の「バランス」と云ふことが、非常に資本構成の下に大きな役割を演ずるのではないか、所謂勞働力の存在と云ふやうなものを前提とせずして、さうして若しも茲に資産評價と云ふものがなされるならば、結局失業者と云ふものが出て來る、是は私は當然避けることの出來ない所の問題ではないかと思ふ、そこで私は一定の勞働力と云ふものが存在して居ると云ふことを前提として、それに一定の比率を持つた固定資本と云ふやうなものを考へて行くことに依つて、本當の意味での完全な企業再建をし得る所の資産の評價と云ふものが可能になつて來るのではないか、斯樣な意見でありますけれども、併し此の點に關して大臣と此處で論爭致しましても更に深入りした論爭をするだけに止まるだらうと思ひますから、私の質問は是れ位に打切つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=175
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176・本多市郎
○本多委員長 天野久君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=176
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177・天野久
○天野委員 時間が限られて居りますので、極く簡單に二、三御伺ひ致したいと思ひます、今囘の戰爭に於きまして、我が國は國民齊しく未だ曾て味つたことのない敗戰と云ふ慘めな状態に遭遇致しました、私は社會の情勢を率直に見ますのに、今後行くべき方針に確たる信念があるや否やと云ふことを往々見受けるのであります、而して敗戰國の行く途は二つありまして、一つは國民が敗戰を契機と致しまして一層團結して、奮鬪協力して、敗戰以前に優る國家を造ると云ふことと、一つは敗戰の衝撃に打たれまして氣力を失ひ、唯惰民となつて他國の支配を受けて行く國民とに分れるのであります、而してそこに國民がしつかり團結して行くかどうかと云ふことは、是は政府の施策指導に依るものと私は深く信ずるのであります、而して政府は今後我我國民の爲にしつかりと指導方針を立つて戴くことが非常に宜いことではないかと思ふ、そこで此の際御伺ひ致したいことは、先づ第一に其の財産税に於きまする十一章補則の第八十二條、皇室財産に對する課税を政府は今囘決められて居ると聞いて居りますが、是は我々議員の立場から見ますと、現憲法に對して違反ではないかと思ふ、現憲法から申すならば、皇室の財産には課し得ないと存じますが、此の點に對して大藏大臣の御所見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=177
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178・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は現行憲法に於きましては、天皇及び皇族のことは總て皇室典範及び皇室令の系統の法令で定められることになつて居りまして、隨て本法に依りまして其の補則で皇室財産に對する課税のことを皇室令に委任したと云ふことは、現行憲法に違反しない爲めでありまして、此の點に於ては憲法上疑義がないことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=178
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179・天野久
○天野委員 只今大臣の御答へは、皇室令に委任して之を取る、斯う云ふことに承つたのでありますが、今の皇室令に於て是が取り得るかどうか、又今議會に於て今後決め得る豫定の皇室令に準據して財産税を取り得るかどうか、斯う云ふことに疑義がありますが、之に付きましては相當政府と致しましても御苦心の跡が見受けられるのでありますが、我々議員と致しましては、今の大臣の御答辯のみに於ては承服が出來兼ねるのでありますが、幸ひに大藏當局が御見えになつて居りますので、出來得ますならば記録を止めても宜しうございますが、もつと詳細に我々議員に納得の行くやうな御説明が願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=179
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180・池田勇人
○池田(勇)政府委員 速記を止めて戴きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=180
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181・本多市郎
○本多委員長 速記を止めて……
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=181
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182・本多市郎
○本多委員長 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=182
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183・天野久
○天野委員 本件に付きましては、政府委員の御答辯に依りまして御苦心の程を御察しして了承致します、續いて伺ひたいことは、金融機關再建整備法の第三十三條に、預金部等損失特別處理法に依る補償金、合計金額百億圓が限度であると云ふことになつて居りますが、此の百億圓を預金部の補償金として支出する限度に付きまして、如何なる算定の下に此の百億圓が算出されたかに付きまして御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=183
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184・石橋湛山
○石橋國務大臣 御話の金額は預金部だけではございませぬので、全體の金融機關に對する政府から行ふ補償を其の限度で止める、斯う云ふ意味であります、隨て是は正確な計算は一々まだ會社の方から金融機關に及ぶ影響等も決まりませぬので、正確なことは決まりませぬが、大體種々なる計算をして見まして、先程申しましたやうに全金融機關に對する補償は此の程度で出來る、斯う云ふ見込であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=184
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185・天野久
○天野委員 先般「ラジオ」の放送に依りますと、遞信省に關する第二封鎖は支拂不能になる、斯う云ふやうなことが放送されて居ります、尚ほ新聞等の報道に依りますると、遞信省關係に對する補償が三十六億四千九百萬圓、それから銀行、組合等に關する補償が大體六、七十億と聞いて居りますが、此の額を以て致しますと、遞信省關係に預金部第二封鎖預金は全然支拂へないことに勘定がなると考へますが、其の點に付きましては政府當局としてはどう云ふ御考へを持たれて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=185
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186・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は郵便貯金等をどう取扱ふかと云ふことは初めから大分問題でありましたが、結局全國を一銀行と看做して計算をする、斯う云ふことにしました結果、郵便貯金等にも第二封鎖が出來ることになりました、所が其の第二封鎖の金額は、先程申しますやうに全體の預金額は非常に大きいものがあるに拘らず、少額預金が多數でありますから、第二封鎖になるものは比較的僅かで六億圓位の程度であります、所が預金部にはやはり在外資産其の他で以て相當の損失がある譯でございますから、其の建前から申しますと第二封鎖になるものは僅か六億圓、故に全部第二封鎖は拂はれないと云ふことに一應なる譯であります、併し是は我々の計算では百億圓の限度に依つて、普通の金融機關の第一封鎖に對しては補償を行ひ、尚ほ若干の剩餘の出來る見込みであります、それが出來ます場合には、優先的に郵便貯金或は郵便年金の第二封鎖を支拂ふ、斯う云ふやうな建前を取つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=186
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187・天野久
○天野委員 今大臣の御話を承ると大體第一封鎖預金に引當てるのであつて、それが餘裕が出來れば拂ふと云ふやうな洵に心許ない話でありますが、先般申上げる通り、政府が國民の信頼を失つて居るが爲に、今日の現状は中中社會が思はしく行かないと云ふやうな状態であります、而して尚ほ「インフレ」等に付きましても非常に苦心して居るが、私は是は政府に信頼が──しつかりと金融機關に金を納め、さうして平常の金の運行が付くならば大した心配はないと思ひます、而して戰時中に於きましても零細な金を國家の爲に、戰爭の爲に貯金させて置いて、其の政府が直接預つた金に對して、第二封鎖預金に對する薄弱な支拂豫定である、一方銀行、會社、組合等に於きましては、是は舊勘定の整理の結果、田舍の銀行、組合等に於きましては全額支拂豫定のものもあります、又普通の銀行に於きましても、相當な額を支拂ひ得る豫定が完全にあるのでありまして、斯樣な状態の時に於きまして、遞信省其のものが預つた、所謂國が預つた其の預金が、第二封鎖の支拂豫定が確立して居らぬ、斯う云ふことは甚だ國民の今後の思想上に及ぼす影響が重大であると考へます、固より遞信省の預金だけが全部支拂を受けようとは國民も考へぬと思ひますが、他の金融機關に優るとも劣らざる支拂を致すべきが當然ではないかと思ふ、之に對して大藏當局としては如何なる御考へを持たれるか承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=187
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188・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は只今申上げますやうに、建前上一應どうしても郵便貯金等も斯樣な計算を致さざるを得なかつたのであります、第二封鎖と云ふものを郵便貯金だけは全く別にして、茲に第二封鎖と云ふ勘定を出さないと云ふ譯には内外の關係上行かなかつた、内部に於ても問題があつた譯です、是は郵便貯金を丸々助けると云ふことになると、又今の御議論とは反對の御議論が現はれて來ることも豫想出來る譯です、左樣な情勢からどうしても一種の公平觀から郵便貯金等も一應普通の金融機關と同じに取扱はなければならぬ、其の取扱つた結果が、是が若し第二封鎖が非常に大きな額でありますと、言換れば郵便貯金と云ふものがもつと大口の預金が多いのでありますれば、第二封鎖が殖え、隨て第二封鎖の中にも助かるものが出來る、斯う云ふ勘定になる譯であります、所が郵便貯金と云ふものは少額預金者が多い、斯う云ふ關係から結局事實に於ては非常に大部分の預金者が悉く第一封鎖になる、五百何十億の中僅かに六億しか第二封鎖に入らない、所が一方資産の損害の方は相當にあるものでありますから、其の結果第二封鎖が全部飛んでしまふと云ふ結論になるものですから、郵便貯金だけが第二封鎖が飛ぶとは何事か、他の金融機關は第二封鎖でも拂はれる部分があるではないか、斯う云ふことになるんですが、逆に言ふと第二封鎖が非常に多かつた大銀行の如きは、結り損害がそれだけ多かつたと云ふことになる譯であります、さう云ふ譯で一應はさう云ふ勘定にならざるを得ないので、さうなつたのであります、併し先程申上げますやうに、百億圓に依つて普通の金融機關詰り郵便貯金から始めて金融機關の新勘定に對しての補償を行ひ、それで剩餘がある場合には直ちに振替へて郵便貯金の第二封鎖の支拂に充てると云ふことに致して置きました、さう云ふ譯でありますから、是は不確實と言はれれば不確實でありますが、其の剩餘金を出し得る見込みで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=188
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189・天野久
○天野委員 只今大臣の御話は郵便貯金の第二封鎖に廻る額は極めて僅少であるが爲に特にさうした、斯う云ふ御話でありますが、私は額の如何を問ふ譯でなく又遞信省預金なるが故に優先的に全額支拂を受けなければならぬ、斯う云ふことでもないのであります、要は國家が預かつた金、而も郵便貯金は大部分に於て零細な預金である、さうして其の額が多いか少いか、斯う云ふことに對しては私は問題外だと思ひます、假に他の銀行に致しましても、若し一萬五千圓以下、或は三千圓以下の預金を預つて居りましたならば、是は全部第一封鎖になるのでありまして、其の零細なる預り金をして居る銀行なるが故に第二封鎖は其の儘で宜いかと云ふことになりますと、さうは參りませぬのであります、かるが故に私は今大臣の言はれたやうな、整備をして行けば支拂が出來るではないかと云ふやうな薄弱なものでなくて、之に對して何等かの確たる支拂の方途を講じて戴くことが、今後國民が政府を信頼する唯一の動機となると考へて居ります、此の點に付きまして何か今少し確たる茲に方途を御示し願ひたいと考へますが、御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=189
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190・石橋湛山
○石橋國務大臣 私は郵便貯金等の第二封鎖の額が少いからと云ふことを申上げたのではありませぬ、是は建前として郵便貯金等も他の金融機關と同じやうに取扱はざるを得なかつた、是は内外の情勢上さう取扱ふことが當然だと主張した譯であります、考へとしては郵便貯金等は政府の關係のものだから別のものにして、今度の處理から離してしまはうと云ふ考へもないではなかつたのでありますが、それでは全體として不公平になる、やはり是も一つの金融機關なのだから一般の銀行と同じやうに取扱はなければならぬ、斯う云ふ建前を執りました結果郵便貯金にも第二封鎖が現はれた、然るに其の第二封鎖と云ふものは全體の預金額が非常に大きなものであるに拘らずちよつぴりである、是は大きな預金でありますから隨て是が見返りの資産も大きい、見返りの資産が大きいから其の資産に穴が相當明いた、所が第二封鎖になるものは極くちよつぴりであるから其の結果第二封鎖の僅かの金額が全部第一次の整理に於て飛んでしまふ、斯う云ふことになつたのであります、是が全部飛んでしまふと云ふので又非常に不公平なやうな感じを與へて居る譯でありますが、實はどうしてさう云ふことになつたかと申しますと、只今申上げたやうな結果であつて、非常に厖大な預金額の中に極く僅かの第二封鎖預金しか出來なかつたと云ふことから起るのであります、併し何れにしましても政府關係の斯う云ふ預金に對して損害を掛けると云ふことは、實は政府としては苦慮致す所であります、殊に遞信大臣等に於て非常に御心配があつた譯であります、併し初まりの建前から理論的に申せば、如何に政府關係と雖も金融機關は金融機關として取扱はざるを得ない、斯う云ふことでありますので斯樣な結果になりましたが、併し繰返して申上げますやうに、百億圓の限度に於て金融機關の第一封鎖の損失を「カバー」致しますが、只今の計算に於ては、是も少し不公平な取扱でありますけれども、剩餘があれば直ちに郵便貯金の第二封鎖を優先的に支拂ふ、斯樣な方法を執つて、それ以上には只今の所はやれない、それが只今政府が考へました最大限であると云ふことを御諒承願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=190
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191・天野久
○天野委員 今の大臣の御話は詰り金融機關と國家の預かつた金と同じ意味であるから同じやうに扱ふと言はれて居りましたが、一方金融機關の方には舊勘定の整理の後にそこに支拂が出來得る見返りがある、一方遞信省の方にはもう是は切り放しで出來ない、斯う云ふ形になるのでありまして、是は同じ扱にされたのではなかつたと私は考へますが、併し是は別問題として其の論爭は取止めることに致しまして、私は遞信省の預かる第二封鎖が八億二千七百萬圓と聞いて居りますが、之に對して餘つたらやらうでなくて、斯く斯くの方法を以て兎に角一般民營業者の金融機關が支拂ふと同等な額位までには達しよう、斯う云ふ何か御考へ、方法を聽かして戴きたいと考へて居りますが、其の點如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=191
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192・石橋湛山
○石橋國務大臣 非常に色々の點がありますが、もう一遍繰返しますが、一體金融機關の百億圓の補償を要すると云ふのはどう云う時に起るかと云ふと、それは例へば銀行に於て、普通の銀行に於きましても第二封鎖は全部取らなければ此の補償は起らない、ですから百億補償を要すると云ふことは一番先郵便局であります、郵便局は四十億ばかりになると思ひますが、郵便貯金は之に補償してやらなければならぬ、それで尚ほ六億の第二封鎖は全部飛ぶから第一封鎖へ四十億掛つて來るのを先づ「カバー」しなければならぬ、其の上に金が要ると云ふのは、他の銀行或は生命保險、それ等の第二封鎖なら第二封鎖の飛んだ銀行、第二封鎖の飛んだ生命保險でなければ補償は行はないのであります、ですから唯郵便貯金だけでなく、詰り百億圓に當る程の損失を「カバー」してやらなければ、百億圓は、第一封鎖の「カバー」では、其の時は銀行、生命保險、郵便貯金が第二封鎖は全部飛んで居る、でありますから、單に郵便貯金だけでなく、一般金融機關の中には第二封鎖が飛ぶものが或る程度あると云ふことであります、ですから決して郵便貯金だけ別扱ひをして特に不利益な立場に立たした譯ではないのでありまして、全く同じ立場に立たせた結果が斯う云ふことになつたのであります、其の點又御質問の中にありましたので申上げて置きます
第二の何か他に良い方法はないかと仰しやいますが、それは出來るだけのことは致したいのでありますが、只今の所では今申上げた以上の處置を致すことが出來ないと云ふ立場になつて居りますので御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=192
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193・天野久
○天野委員 今の御説明で大臣は別に第一封鎖の支拂が多いからと云ふ意味で第二封鎖の豫備を取つて置かなかつた、それで詰り其の理由で斯うだと云ふ御話でありますが、是はどうしても私は納得が行きませぬ、曩に申上げました通り、田舍の小さい銀行、小さい組合で三千圓以下或は一家族一人一萬五千圓或は三萬二千圓以下の金を全部預かつて居たとしても、其の銀行、其の組合は全部は第一封鎖になつて居る、それと同じで遞信省の預金は零細な預金を集めたものでありまして、それが第一封鎖に全部ならうとも關係したことでありませぬが、其の性質、理論に於ては少くとも多くともそれは同じことだと考へますが、其の點は繰返してどうも御問もするやうで申譯がないが、大臣の御意見と私の考へとは違つて居ると思ひますが、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=193
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194・石橋湛山
○石橋國務大臣 私にはあなたの御話一寸分らないのですが、全く他の金融機關と郵便局と同じ取扱をして居るだけです、同じ取扱をしてそれで計算をして見ると五百何十億圓の預金の中大部分が第一封鎖になり、さうして六億圓ばかりが第二封鎖になる、是だけのことなのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=194
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195・天野久
○天野委員 今一度申上げますが、其の普通の一般金融機關と遞信省の郵便貯金と同じに扱つたと言はれるが、先の大臣の御答辯では兎に角全體の額から第二封鎖に廻る額が少いから斯う云ふ結果になつたと言はれるが、私の考へで近い例を申上げますと、私の村などは山間の僻村でありまして、産業組合などは零細な金を預かつて居る、其の零細な金を預かつて居る組合の預金は三千圓以下、或は一萬五千圓以下でありまして、全部第一封鎖に廻つてしまふ、それでは其の組合の預金は別に扱ふかと云ふとさうではない、隨て遞信省の預金と云ふものは元々零細な金を預かつてあるのだから、第一封鎖に廻はるべき金が多いことは當然の歸結である、隨て第一封鎖に多くの金が廻はるから、第二封鎖のそれに對する支拂豫定がなくても宜いのだ、總體から言へば同じやうな譯ぢやないか、斯う云ふことでは私はどうしても理論が合はないと思ふ、斯う云ふことなんです、であるから詰り第二封鎖が少くても、一方の民間銀行に於ては舊勘定を整理すれば相當第二封鎖に支拂はれる引當がある、遞信省に於ては如何に整理しても、第二封鎖に廻はつた八億二千七百萬圓に對しては支拂豫定の確たるものが今ない、それは不公平ではないか此の八億二千七百萬圓に對して全額を拂へと云ふことは、申上げぬが、一般民間の營業者の平均額位の金を支拂ふだけの豫定はして置くべきではないか、其の豫定を置いて戴くことが、軈ては國民が政府を信頼し、又政府を信頼する所に國民が生きて行き、日本再建の一助となる、之に對して御考慮を願ひたい、斯う云ふことなのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=195
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196・福田赳夫
○福田政府委員 只今大臣の答辯されたことを一寸補足して申上げたいと思ひますが、銀行其の他の金融機關の場合にありましては、補償を要すると云ふのは第二封鎖の金が全部飛んだ後の話であります、隨ひまして其の同じ筆法で行きますと、郵便貯金は預金部の方に相當大きな穴が明きますから、其の穴を埋めると云ふことに依つて郵便貯金の支拂が初めて可能なのであります、只今新勘定、舊勘定と云ふ區別はして居りませぬが、第一封鎖、第二封鎖と云ふ區別はして居る、第一封鎖預金を銀行並に補償致しますと云ふ際には、第二封鎖になつたものは總て是が飛んだと云ふ後でなければ、銀行並に行けば補償を受けられないと云ふ筋合なのであります、然るに仰しやる通り銀行等と違ひまして、郵便貯金は非常に零細なものである、それから又國に對する預金であると云ふやうな特殊な性質があります、そこで銀行とは違ひまして非常な特殊な厚い取扱をして居るのであります、其の第一點は、百億と云ふ制限がありますが、其の制限を超えて普通の銀行の第一封鎖は補償されることは出來ないのでありますが、郵便貯金にあつては、先づ百億圓の中他の銀行が第一封鎖の保護を受け得ないと云ふ場合に於きましても優先して保護されるのであります、それから尚ほもう一つの特典と申しますか、厚い取扱としては、他の銀行が補償して郵便貯金の方と合はせて百億圓には餘りがあると云ふ際には、第二封鎖までも補償しようと云ふことになるのであります、其の二點に於て非常に厚い扱ひをして居る、それから實際の見透しとしては、銀行、郵便貯金を合はせまして百億と申しますと相當餘裕があらうかと思ふのであります、實際の見透しとしては郵便貯金は殆ど全部第二封鎖も確保されて居る、斯樣なことになりますと、是は他の銀行には例を見られない厚い扱ひを受ける、斯う云ふことになりますので、先づ政府として此の扱ひは出來る限りの扱ひをした、斯樣に御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=196
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197・天野久
○天野委員 大體今の御話は分りましたが、そこで一つ伺つて置きたいことは金融機關に對する財産の見積り、是はどう云ふ所を基準に不動産、詰り建物、器具、土地などに關しては計算されるのでありませうか、其の點を承つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=197
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198・福田赳夫
○福田政府委員 只今の御尋ねは金融機關自體の建物の評價のことと承知したのでありますが、金融機關自體の建物の評價に付きましては、是は企業の場合、それから財産税徴收の場合と大體歩調を取りまして健實なる評價をする、斯樣な方針であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=198
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199・天野久
○天野委員 さうしますと、其の見積りは時價に依る譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=199
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200・福田赳夫
○福田政府委員 是は先程大臣から段々と御答へ申上げて居る所でありますが、一般の評價基準──色々物に依りまして場合がありますが、建物等にありましては時價と申しましても、成べく時價よりは低目な評價を致したいと云ふ風に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=200
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201・天野久
○天野委員 それでは最後の希望と致しまして、兎に角一般の預金者は預金を損をする、それから又國を信頼して我々としましては戰爭中勝つ爲として零細な金を、食べる物を食べずに預けさした、斯う云ふ建前になつて居ります、それから今大臣の答辯に依りますと、之を整理して殘るものは郵便貯金に廻はす、斯う云ふことでありましたが、其の業者の財産の見積り價格が良ければ良いだけ其の方へ廻はると考へて居ります、どうか其の點に手心を加へて、一つ國の信頼を傷つけないやうに御支拂を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=201
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202・一松定吉
○一松國務大臣 只今の天野委員の御質問は遞信省に關係するのでありますから、遞信當局と致しまして、私からも所信の一端を茲に明かに致しまして、國民の誤解のないやうに致したいと思ふのであります、百億の金を以ちまして金融機關の補償の總額に充てる、其の中で、此の法に規定致してありますやうに、郵便貯金、郵便年金の第一封鎖の不足に之を充てる、さうして其の總額が百億圓に達すれば、もうそれで郵便貯金竝に年金の第二封鎖の方には充當出來ない、でありますから、天野委員の御心配に相成りますやうに、所謂郵便貯金及び年金の第二封鎖の八億何千萬圓と云ふ金は是は飛んでしまふのであります、それを天野委員は御心配になつて居るのでありませうが、大藏當局の非常に考慮を拂はれて居りまする點は、郵便年金竝に郵便貯金の第一封鎖を一番に支拂つて、殘りの金、例へば郵便貯金竝に年金の補償するものが四十億圓あると假定致します、さうすると百億の中から四十億引くとあと六十億殘る、其の六十億の金を以て銀行若しくは組合、農業會等の第一封鎖を假に五十億だけ支拂へば、それで第一封鎖の補填が出來たと假定致します、さうするとそこに十億と云ふ金が殘るから、其の十億の金は所謂郵便年金竝に郵便貯金の八億幾らと云ふものに充當して第二封鎖の金を全部拂つてしまふ、尚ほ殘りが二億あれば其の二億は今度は銀行竝に農業會、組合等の第二封鎖の方に入る、斯う云ふことになります、若し百億の中で今例に取りました郵便貯金竝に年金が四十億あつて、六十億殘つて居る、其の六十億圓の金が銀行竝に農業會、組合等の第一封鎖の不足に充當する時に假に五十八億だけ要つた、さうすると二億殘る、其の二億は郵便貯金竝に郵便年金の第二封鎖に充當される、さうすると八億あつた中に二億入つたから、六億だけ飛んだと云ふことになります、さう致しますると、問題は銀行及び組合、農業會等に支拂ふ所の第一封鎖の金が、百億の金から成たけ少く補填の出來るやうな工作を執れば、澤山金が餘る、金が餘れば郵便局の第二封鎖の方に持つて行けるから、如何にすれば金が餘るかと云ふ此の工作が大變必要なのです、さうすると所謂銀行及び農業會とか組合とか云ふやうなものの資産の評價、之を帳簿面で評價すると云ふことになると安い、ですから資産が少くなれば、國の補償する百億の金が澤山そこに食はれる、資産が多くなれば、百億の金で四十億拂つた殘りの六十億の金で支拂ふ分が少くなります、即ち第一封鎖で拂ふ金が大分餘るから、郵便貯金及び年金の方に廻はる、斯う云ふことになる、ですから資産の評價の仕方と云ふものが非常に重大な影響を持つのです、其のことは今大藏當局の御説明に相成りましたるやうに、成たけ公平に堅實に、是ならば餘り無理はない、と云ふやうな、公正な立場に於て其の資産の評價をする、さうすれば幾ら殘るか知らないが、郵便年金及び預金の方に廻はると云ふことになる、ですから私共遞信當局としては、此の資産の評價に付て餘程考慮しなければならぬ、之を滅茶苦茶に安く評價をして銀行や何かの方に澤山食はれれば、郵便年金及び郵便貯金と云ふものの第二封鎖は拂へぬと云ふことになる、其の點が此の運用の上に於て餘程注意しなければならぬものであらう、斯樣に私は考へて居ります、さう致しまして、今天野委員の仰せになりましたやうに、大日本帝國の存在する限りは、我々の預金は必ず支拂はれるものだと思うて、預金した其の預金者若しくは年金契約をした人が、拂へないのだ、約束が違ふのだと云ふことになれば、あなたの仰しやるやうに、確かに日本帝國に對して國民は信用せぬと云ふことになり、政府に對して信用を置かぬと云ふことになる、さうすると將來の遞信省の郵便年金若しくは郵便貯金と云ふものは、もうあれに預けたつて駄目だと云ふことになると大變ですから、其の邊は遞信大臣として餘程關心を持つて大藏當局と善處すべく努力致して居りますし、又努力する考へでありますから、其の點はどうぞ御安心下さいまするやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=202
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203・天野久
○天野委員 只今遞信大臣の御話を聽きまして、色々と事情が分り肯かれました、此の際一つ大藏當局に尚ほ一應伺ひたいのでありますが、今申上げます通り、資産の評價如何が懸つて郵便貯金、年金等の支拂に關係がある、斯う云ふことでありました、是れ亦郵便貯金及び年金等が或る程度國民に肯けるまでに支拂へると云ふことが國家の信用を増す所以であり、又新しき日本を建設する上に於きまして、政府への信頼を保持すると云ふことが一番の重大要件である、斯う云ふ點から考へまして、其の點に付きまして相當御考慮を拂へるか否かと云ふことを一應御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=203
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204・福田赳夫
○福田政府委員 御趣旨の點は能く分りましたから、成べく左樣なことになるやうに努力致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=204
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205・天野久
○天野委員 次に恩給法に付て簡單に厚生省の方に伺ひたいと思ひます、先程來同僚委員から御質問がありましたが、恩給法の第八條には「昭和二十一年勅令第六十八號第五號に規定するものを除く」とありまして、今囘恩給法が改正されて、他のものは三十五割に相當する額が支拂はれると云ふことになつて居ります、併しながら聞く所に依りますると、二十一年勅令第六十八號第五號と云ふものは、我が國民が國家の爲に戰場に働き、而して手をなくし、足をなくし、或は耳を失ひ、眼を失ひ、自力を以て働き得ない傷痍軍人であると承つて居りますが、此の人達の恩給が文官の恩給に比較して、非常に低い額になつて居る、是は聯合國或は某國の指圖に依りますと、軍人なるが故と云ふことも聞いて居りますが、併しもう戰ふことが出來ない、生きて行くのに氣息奄々たる者は、假令交戰中でありましても、之を赤十字が救つて、敵たりとも之を看護してやる、斯う云ふ人道上の情義もあるのであります、然るに終戰後平和になりまして、戰鬪力がなくなつた、而も國の爲に手を失ひ足を失つた其の人達が、此の法令があるが爲に、文官に比較して洵に氣の毒な状態にある恩給を支給される、斯う云ふことは今後思想上にも由々しい問題であると考へます、そこで私は率直に厚生省に伺ひたいのでありますが、此の軍人に對して安い恩給で置かなければならない事態は、厚生年金があるので、之に基準を取つて算定致した、斯樣になつたと云ふことを聞いて居りますが、果して然りとしますならば、此の厚生年金を改正して、此の恩給を上げる意思があるかないか、又厚生年金と致しましても昭和十七年に制定致したものでありまして、今日其の額が其の儘であると云ふことならば、厚生年金の額も今日の時代に副はないものであると考へますが、此の點に付きまして厚生省の御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=205
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206・服部岩吉
○服部政府委員 厚生年金法の給與の内容を上げると云ふことに關しましては、其の必要を實は認めて居りまして目下考慮を致して居りますが、具體的に其の金額等をどれ位の程度に決定したら宜いかと云ふことに付きまして、目下社會保險制度調査會も出來て居りまして、此處で研究を致して居りますので、此の答申を待ちまして處置を致して參りたい、斯樣に考へて居るのであります、重ねて申上げますが、恩給法の給與の内容を上げると云ふことに付きましては、厚生省と致しまして十分に考慮致して居りますことを御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=206
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207・天野久
○天野委員 只今厚生省の方から御説明を戴きまして大變に有難いことでありますが、どうか一つ早急に御決定を願ひたいと思ひます、而して此の厚生年金は昭和十七年に制定致したもので、是は實際に利用するのは三十二年頃から始まると考へて居りますが、どうか其の厚生年金が取られる時期を待たずに、此の氣の毒な國の爲に不具となつて喘いで居る人の氣持を御察し願つて、早急に御取極めを願ひたい、而して文官其の他に或る程度まで匹敵する、納得が出來る額に御引上を願ふことを希望致します
次に今一つ極く簡單に大藏省に御伺ひしたいのであります、今囘財産税徴收に付きまして不動産に對する見積價格でありますが、其の不動産に於きましても所謂現在働いて居る不動産と、而して遊休、詰り働かない不動産との二通りあるのでありますが、此の不動産の價格の見積りに付ては如何樣な見解を以て居られるか御伺ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=207
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208・池田勇人
○池田(勇)政府委員 働いて居ない不動産と云ふ御話は多分建物、機械等の設備だと思ひまするが、さう云ふものに付きましては、實際働いて居ない場合には適當に評價を下すやうなことを考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=208
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209・天野久
○天野委員 私の質問は是で終りと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=209
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210・本多市郎
○本多委員長 中野四郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=210
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211・中野四郎
○中野(四)委員 私は七項目に亙つて專ら財産税の問題に付て政府の御所見を伺つて見たいと考へて少しの間時間を拜借したいと思ひます、今度の財産税の税率が世界無比高いと云ふことは、此の間石橋大藏大臣も此處で認めて居られるのであります、曾て此の財政税を世界中で「フランス」で取つたと云ふことを聞いて居りますが、それも本當に一割か二割、一寸忘れましたが極めて少いもので、日本のやうなこんな滅茶滅茶に等しいやうな税率の高い課税をしたことはないと思ふのであります、此の税率の根據が何處から出て來て居るかと云ふことを一つ聽きたいのであります、承る所に依れば戰災の幸不幸を平均化するとか乃至は富の偏在の調整又は戰時利得の徴收と云ふやうな點で可なり喧傳されて居りますが、最初の財産税を取る時の案を考へて見ますと、戰時利得と財産税の二本建のやうに私は思つて居るのであります、所が今度は特に單一で非常に高い税率で取られると云ふ譯が一寸私には分らないのですが、廣義に解釋をして戰時成金を征伐してやらうと云ふのならば、日本の財閥は大體日清事變以來戰爭ばかりやつてやる度に太つて來たのだから、斯う云ふ意味で斯う云ふ戰爭成金を此の機會にやつてやれと云ふ政府の考へならば又別の意味だと私は思ふのです、兎に角税率の根據がどうも私には了解致し兼ねるのであります、此の機會に一つ明解に是非御指示を願つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=211
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212・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税法案の税率は財産税の目的から出て來るものでございます、税率の沿革から申しますると、財産税の最高税率は一九二〇年頃の「ドイツ」の國難犧牲税であります、是は百分の六十五と云ふ税率を使つて居ります、當初の現内閣の案では百分の七十と云ふことに相成つて居ります、此の百分の七十は英米の相續税の最高税率が大體七十五或は七十七を使つて居りますので、七十程度で日本では宜いではないか、別に財産増加税が百分の百「パーセント」と云ふのがあるからと云ふので、それと兩方併せまして七十と云ふ案に當初はなつて居つたのでありますが、今御話にもありましたやうに財産増加税を止めましたのと又其の後の財政需要等を考へまして、百分の九十が千五百萬圓を超過する部分に對しての税率として適當だと云ふので出來た譯でございます、今囘の戰爭後に於きまして「フランス」の用ひました税率は是よりも餘程安うございます、「ベルギー」の税率も、是は分類財産税でございますが、百分の五程度に相成つて居ります、日本の此の税率は未だ曾てない高い税率に相成つて居ります、是は今の財政事情、戰後の状況から此の程度が適當であると考へた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=212
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213・中野四郎
○中野(四)委員 どうも事務的な御説明だけでは私は滿足出來ませぬけれども、此處で議論を鬪はさうとは思ひませぬが、「ベルギー」の率は私は知りませぬが、「フランス」の財産税は戰後に於ける敗戰の所謂國民連帶税と云ふやうな意味で徴收したことがあると私は思ふのですけれども、今言はれるやうな「アメリカ」の税率を參酌して、さうして日本の此の税率の根據としたと云ふやうなことは日本の財政とは到底比較して肯かれないことだと私は思ふ、私の伺つて居るのはもう少し意味が何處にあるかと云ふことが伺ひたかつたのでありますが、此の點は一番最後に御聽きすることに致しまして、もう一つ免税點十萬圓の根據を御聽きして置きたいと思ひます
〔委員長退席、菊池委員長代理著席〕
最初二萬圓から取ると云ふやうなことが大分取沙汰されて居つたのですけれども、それが一躍十萬圓になつてしまつた、まあ是は其の後物價騰貴などの關係で當初財産税を考慮せられた時の二萬圓は今日の十萬圓に相當すると云ふのか、又二萬圓程度の財産に對して課税すると云ふことは餘り苛酷だと云ふ意味なのか、どうもここの所は一寸私には分らぬけれども、石橋藏相談として新聞紙の傳ふる所に依りますれば、十萬圓で不足の場合には更に免税點を引下げて五萬圓まで取る、斯う云ふやうなことを言つて居るのですけれども、若しさう云ふやうな十萬圓でいけなければ五萬圓まで引下げると云ふやうなことを言へば根據が非常に薄弱で、勝手に上げたり下げたりされるやうな氣がする、一體免税點の如きは物價の程度や生活費、ざつくばらんに言へば國民生活と睨み合せて愼重に私は決定されるものだと信じて居ります、不足の場合と言ふが、何がどう不足するのか知らないけれども、私は免税點を五萬圓程度に引下げてそれから生ずる税額を以て戰災者や復員軍人或は引揚者と云ふ方面の生活の保障──社會黨の中崎君が言つて居られたが、さう云ふ方面にばら撒かれると云ふやうな血もあり涙もあるやうな所謂政治のあり方を狙つて居る免税點の引下ならば兎も角と致しまして、唯端的に二萬圓の税率を十萬圓にぽんと引上げたと云ふことの根據が私等には分らない、是も後程總括的に伺はなければならぬ方面の大事な問題でありますから、税率の根據と共に免税點を十萬圓に引上げた根據を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=213
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214・池田勇人
○池田(勇)政府委員 當初の財産税法案の免税點は御話の通りに二萬圓でございました、是は其の當時の物價事情又財産税の目的からさう云ふ風に決めて居つたのでありまするが、社會經濟事情が餘程違つて參りまして補償打切りと相共に出て參りまする財産税に於きましては、此の提案理由に書いてありますやうに、戰後復興の爲の緊要な國庫收入を確保すると云ふことと、富の均衡化に依る經濟の民主化と云ふ二點から考慮を運らしますと、十萬圓が適當であると云ふ結論に到達したのであります、是は今囘の戰爭後に於きまして各國で行つて居ります財産税を見ましても、其の國情或は其の目的に依りまして餘程違つて居ります、「フランス」は二十五萬「フラン」を免税點に致しました、「ベルギー」は個々の分類財産税でありますので、相當低い免税點を使つて居ります、只今我が國の此の現状から以てすれば、徴税技術の點も考慮致さなければなりませぬのて、各般の事情を考慮致しまして、十萬圓が適當であると云ふことに致したのでございます、又大臣の提案理申の説明に、所定の收入が擧げ得ない時には五萬圓以上の方にも將來改めて財産税を取るやうになるかも分らぬと言はれたことは、是は將來の税收入が非常に減つた場合の措置でございます、此の法案から當然出て來るのではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=214
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215・中野四郎
○中野(四)委員 それでは主税局長の御答へは斯う取つて宜しうございますか、十萬圓の免税點で一應取つて、所定の額が取れない場合に於ては、更に何等かの機會に於て五萬圓まで免税點を引上げて取るやうな場合が想像されると云ふやうに取つて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=215
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216・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の財産税法案からはさう云ふことは出て參りませぬ、若し將來五萬圓以上の方に對しまして別に財産税を取るとすれば、別個の法案で御審議を願ふことになるのでございます、只今の所は私は四百三十五億圓の豫定の税收は確保し得ると考へて居りますから、實際問題として五萬圓から十萬圓までの方から改めて取ると云ふことはないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=216
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217・中野四郎
○中野(四)委員 取れるか取れぬかは狸の皮算用で取つて見なければ分らぬと私は思ふけれども、先づ其の取り方に色々あるだらうと思ひます、そこで徴税の順位と云ふものを此の際一つ承つて置きたいと思ひます、曾て主税局長の談と致しまして、大體此の議會では再々聽いても居りましたが、第一に現金、それから預金、公債其の次は不動産と云ふことになつて居りますから、斯う云ふ風に數へて行きますれば次に來るものは當然動産、株式公債、骨董、書畫なんと云ふ方面に行くのだらうと私は思ふのであります、斯う云ふ場合に不動産を取ると云ふやり方はどうも政府は中々旨いやり方です、第一番に現金を取つて、それから預金を取つて、公債を取つて、其の次に不動産と云ふのであります、不動産と云ふのは大體住宅ですから、誰でも不動産を出したくない、之を出したくないとなると結局自分の持つて居る株とか家財なんかを賣つて、不動産を助けると云ふやうな結果になるのぢやなからうかと思ひますが、斯う云ふ意味で行けば政府は非常に賢明な策を執つたに違ひありませぬけれども、取られる側に取つては此の位迷惑な話はないと思ひます、そこで此の順位に對してどうでせうか、株券又は家財をば不動産等物納の場合に任意に納めさせると云ふやうなことを政府當局は考へて居られるかどうか、一つ御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=217
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218・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物納の順位は國債社債其の次に不動産、株式最後に動産を考へて居ります、株式と不動産とどちらを先にするかと云ふ問題に付きましては、政府は個々の場合でないと決められないと思ひます、市場性のある株ならば不動産よりも先順位に致したいと思ひます、又市場性のない同族會社の株ならばやはり不動産を先順位にして、市場性のない株を後順位に致したいと思ひます、最後に動産でございますが、動産を政府が取入れることは餘り好みませぬ、隨ひまして最後の列に致して居ります、唯動産は納税者が個々に御賣りになつても現金化し易いのでありますから、納税者の方で先づ現金化して戴きたいと思ひます、現金化が困難である場合、而も不動産竝に株式を全部出してしまつたと云ふ場合に、最後の順位として動産に行くことに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=218
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219・中野四郎
○中野(四)委員 若しさう云ふやうな状態で株券を以て納める、株券を賣つて不動産を助けようとすると、結局諸方から株券を賣ると云ふことがひどくなるから株價は自然下がる、特に大資本家などの納税の物納は大體株券だらうと思ひます、政府では大いにさう云ふ株券物納を認めて居りますが、斯う云ふ場合には政府は營業權、企業權に「タツチ」せざる所の大株主になるかも知れませぬが、結局政府も株ががた落になつたら、收入がぐつと減つて來るから、勢ひ株を賣る、賣つて一般の迷惑になるやうなことを考へずに、此の不動産の場合に家財道具のことは別としても、株券と不動産とを物納の場合に同等に考へると云ふ考へはありませぬか
〔菊池委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=219
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220・池田勇人
○池田(勇)政府委員 説明が惡い爲に誤解があつたと思ふのでありますが、不動産と株式は同一順位で物納を認めます、唯株式で市場性のあるものは不動産よりも先にする、市場性のない株式は政府の勝手かも分りませぬが、不動産より後にしたい、斯う云ふのでございまして、原則と致しましては株式と不動産とは同じ順位で持つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=220
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221・中野四郎
○中野(四)委員 そこで一つ承つて置きたいのですが、現金、預金などを御取りになる順位ですが、是は一體どの位殘して置く豫定なのですか、最初は八割取つて二割殘存さして行くと云ふ話でしたが、今でも其の通りですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=221
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222・池田勇人
○池田(勇)政府委員 ずつと以前第一封鎖と第二封鎖のない場合、即ち三月頃までは現金、預金の八割を先づ納めて貰ふと云ふ考へを持つて居りましたが、今の現状では第一封鎖預金と云ふものは餘程少いと認めて居ります、隨ひまして法律でも金錢で納付することの困難なる場合と決めまして、個々の場合に決めて行きたいと思つて居ります、第一封鎖預金を各銀行に相當持つて居られると云ふ場合で、而も税額が非常に少いと云ふ時には、預金を全部現金で納めて貰ふ場合もございませう、併し税額が非常に多くて第一封鎖預金が少い場合には、其の第一封鎖預金は生活費に廻はさなければなりませぬから、預金で納めて貰ふ金額は皆無か或は極く少いと云ふ場合もあると思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=222
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223・中野四郎
○中野(四)委員 個々の場合を十二分に參酌するのですか、さうしますと、それは誰が參酌するのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=223
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224・池田勇人
○池田(勇)政府委員 個々の場合を十分參酌致します、さうして誰が參酌するかと申しますと、徴税の衝に當つて居ります税務署長が、納税者の事情を聽きまして、決定することに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=224
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225・中野四郎
○中野(四)委員 次に戰災控除のことで伺つて置きたいのですが、先の財産税法案では、戰災控除は一家が大體一萬圓で、明かに家族單位であつたのだが、今度の法案では第十九條に戰災者、引揚者に付ては一人に付き五千圓の控除が規定されて居りますが、是は政府が新憲法の精神に基いて個人單位に改めたのだらうと私は思ふのですけれども、一人五千圓を控除すると言つて居ります、此の前のは一家一萬圓と言つて居ります、世帶單位から個人單位に變更したと云ふことは、新憲法の精神に即してなすつたのだらうと私は思ふのですけれども、第二十二條の第二項に於て、同居家族に付ては課税價格を合算して、其の總額に付て前項の規定を適用するとあつて、此處では課税價格の算定をば家族單位にして居ると云ふのはどう云ふ譯でありませうか、此の點戰災控除の場合と矛盾しないかと思ふのでありますが、御答辯願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=225
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226・池田勇人
○池田(勇)政府委員 總て租税に付きましては、所得税に於きましても規定して居ります如く、家族單位で、同居家族を合算致しまして、税率を適用するのが公平を期し得るので、税率の適用は總て家族單位に致してあります、さうして前の御質問の戰災者竝に引揚者に對しまする控除は、ずつと以前の案では一世帶一萬圓と云ふことに致して居りましたが、戰災者の數に依つて損害も變つて居ると云ふ事情を考慮致しまして、一人五千圓と致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=226
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227・中野四郎
○中野(四)委員 次に伺ひたいことは、農村、漁村などの徴税の件でありますが、一體町方或は都會にあります中小商業と云ふやうなものは大體に於て近年企業體に小さいながらも株式と云ふやうなものになつて、企業體を編成して居るのですが、斯う云ふやうな方の課税は、其の株券に課税をさしても企業體には何等の變革を及ぼさないのですが、一體日本の農村、漁村と云ふやうなものの特異性から考へまして、農村の家屋、或は農村に於ける家畜、或は漁村に於ける漁船、漁網と云ふやうなものに税金が課けられまする結果に於ては、直接其の企業體に影響を及ぼす感が深いのであります、御承知のやうに農家の家と云ふものは、大體に於て、都會の住宅と違つて、其處が蠶を飼ふ場所でもあれば、乃至は農機具を置く所の一つの納屋でもある、斯う云ふやうなものに對して、今度の財産税課税に當つて、住宅と云ふやうな見地から課税をするかどうかと云ふことを一つ伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=227
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228・池田勇人
○池田(勇)政府委員 農家竝に漁業家の所謂農業の爲の資産或は漁業の爲の資産も一應課税の對象になります、併し免税點が十萬圓になりましたので、實際に課税になります場合は少いと考へて居ります、又農家の蠶室其の他の納屋に付きましては、是は賃貸價格がそれ相應に低く付いて居りますので、やはり倍數を適用しても苛酷に失すると云ふことはないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=228
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229・中野四郎
○中野(四)委員 私の御尋ねしたのは、住宅として取扱ふか、或は特別な考慮をして居るかどうかと云ふことを伺つた譯で、其の課税が課かるか課からぬかは是から御尋ねして行かうと思ふのですから、其の點を一つ主税局長から伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=229
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230・池田勇人
○池田(勇)政府委員 財産税は、住宅である、納屋である、家屋であると云ふことは區別致しませぬ、家屋として課税致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=230
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231・中野四郎
○中野(四)委員 是は私は洵に容易ならぬ問題だと思ふのです、主税局長も何處で御生れになつたか知らぬが、私は農村で生れて來て、貧乏な百姓家に住んで居ります、此處においでの方も大體農家の方に關係の深い方ばかりです、併しながら農家の大きさと云ふものは都會の住宅とは全く趣きを異にして居ります、さうしてあなたの今仰せのやうな觀點から見ますれば、現在の十萬圓の免税點ならば課からぬと云ふやうな考へ方を持つて居られるやうだが、先程私が先づ十萬圓の免税點の根據を伺つた時の御答へのやうに、將來に於て何等かの形に於て免税點を引上げて五萬圓或は三萬圓の免税點を以て之を律すると云ふやうな場合には、當然全國の農家は之に該當するものであります、其の該當すべき所の農家の構造たるや實に都會の住宅とは趣きを異にして居ると云ふことは私が申すまでもない譯です、假に農家の問題を一應餘所にしまして、漁網或は漁船の問題に觸れて見たいと思ひます、今日漁船を造るにしても、漁網を買ふに致しましても、それ相當の闇價格です、其の闇價格も中々容易ならぬもので、漁網などにしましても、ひしこ網と云ふあの食糧増産の爲に大いに奬勵されて居る網を一竿買ふにしても現在は百萬圓或は百四、五十萬圓出さなければ買へぬと云ふ状態です、公定にしても實に三十萬圓或は三十五萬圓と云ふ莫大な金です、船一艘買ひましても忽ち數十萬圓を要するやうな現状です、さうして船と云ひ網と云ひ是は皆食糧増産の一種の消耗品なんです、是等のものは一年經ち或は二年經てばそれぞれ消耗して行つてしまふやうな、農家或は漁家に取つては相當大きな影響を持つものなんです、斯う云ふものに對してあなた方が特別な考へを持つて居られるか居られぬかと云ふことを私は聽いて居るのでありますが、もう一度主税局長から農家或は漁家に對する所の特別な考慮を拂はれるかどうかと云ふ點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=231
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232・池田勇人
○池田(勇)政府委員 動産、不動産に付きましても、闇價格に依りませぬ、出來るだけ公定價格に依りたいと思つて居ります、又農家の家の問題でございますが、六大都市の家のやうな評價は致しませぬ、現在に於きましても農家の家屋の賃貸價格は一坪一圓前後に相成つて居ります、東京の家屋は平均十六圓になつて居りますので、實際の倍數を適用して評價した場合には餘程一坪當りの價格が違つて來るのでありますから、御心配の點はないと思ひます、漁船或は漁網に致しましても、公定價格のあるものは公定價格に依つて評價して行きたいと云ふ考へを持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=232
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233・中野四郎
○中野(四)委員 私は寧ろあなたの仰しやるやうな觀點でおやりになるならば、食糧増産の見地から言つても、農村なんかにあります農家或は農機具、農耕用家畜と云ふやうなものには課税をしないと云ふやうな行き方で行つた方が、政治的にも相當の效果があるのぢやないかと思ふのです、漁村の場合は自ら別だらうと思ひますが、闇價格でやられては堪りませぬが、公定値で云つても、現在の漁船、漁網なんかに課かる税金は相當大きなものでありますから、勢ひの赴く所是等の漁師、漁業組合の如きものが、必然的に生産意欲を減退し、職場を抛棄すると云ふやうな、言葉は惡いかも知れませぬけれども、相當にそこに惡い現象が現はれて來はせぬかと私は思ふのであります、寧ろ斯う云ふやうな農村に對する所のあなたの方の見解で行けば、政治的に之を抛棄したらどうですか、税金を課けないことにしたらどうですか、農村などの農耕用機具とか、農耕用家畜とか、或は農家の家屋なんかには、今の觀點から言つて税金を課けないでも宜いと云ふやうな行き方をしたら如何ですか、斯う云ふやうな氣持が、勿論ないと仰しやるかも知れませぬが、あるかどうか、一つ念の爲に承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=233
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234・池田勇人
○池田(勇)政府委員 特殊の財産を財産税の課税對象から除くと云ふことは理論的に筋が立ちませぬ、さう云ふ御話のやうな問題は免税點等で考へるべきが筋道だと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=234
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235・中野四郎
○中野(四)委員 之を抛棄することが出來ぬと云ふなら、特別に何か食糧増産の見地から漁村の漁船、漁網なんかに對して考慮を拂ふ意思があるかないかを一つ伺つて見たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=235
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236・池田勇人
○池田(勇)政府委員 免税點を十萬圓に致しましたので、それ以上の漁船、漁網を持つて居られる方は此の際此の程度の負擔をして戴くのが適當だと考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=236
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237・中野四郎
○中野(四)委員 水掛論はしたくないけれども、一體漁船を持つて居る者、漁網を持つて居る者で、税金の課からぬ者があると思召しますか、漁船、漁網の御調査は勿論濟んで居ると思ひますけれども、漁師で少くとも漁船、漁網を持つて居る者に税金の課からぬ者があると思召しますか、主税局長の見解を承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=237
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238・池田勇人
○池田(勇)政府委員 漁船の大きさ、漁網の量に依りまして課かる人も相當あるかと思ひますが、課かる場合に付きましては、私は財産税を納めて戴くのが相當だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=238
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239・中野四郎
○中野(四)委員 そつちで思へば仕方がないことで、こつちで何と思つても已むを得ぬと思ひますけれども、大體日本の當面の重要問題は何かと言へば食糧危機です、之を突破することが今議會の重大な使命であつた筈なんです、唯偶偶天候に大いに惠まれて一時小康を得たりと雖も、此の食糧増産たるや刻下の重大問題です、此の焦眉の問題を解決し得る所の農村、漁村の生産意欲を減退せしむるやうな所謂財産税の取り方と云ふものは賢明な政治のやり方ではないと思ふ、斯う云ふ觀點に立つて、特別な考慮を拂つて、生産意欲を旺盛ならしめると云ふことが政治の旨味だと思つて居ります、併しながら、是れ以上あなたに要求しても、恐らく主税局長はどうも斯うもなるまいと思ひますから、此の質問は是で打切ります、次に私は、新しく近頃出來た新圓成金──と言ふと語幣があるかも知れませぬが、新興財閥と言ふのですか、近頃變な名前が大分流布されて居るのでありますが、斯う云ふものをどう處理するかと云ふことに付て一つ聽いて見たいと思ふのですが、今度の財産税は初め一千億を徴收して、一千四百億の國債を大部分償却すると云ふのが目的であつたと思ふのです、それを、僅かに四百三十五億取つて、其の中三百五十億を今年度の赤字補填に使用すると云ふのだから、初めの財産税が革命税であると云ふやうな性格は全く失はれてしまつたと思ふのであります、政府は今後免税點を更に引上げをして革命税としての當初の性格を復活させる意思はないかどうか、特に三月三日以後の新圓成金層と云ひますか、新興財産家と云ふやうなものに對して、何か手を打つ用意があるかないか、之を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=239
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240・石橋湛山
○石橋國務大臣 新圓の問題は屡屡御質問を多くの方から受けたのですが、先程から局長と御問答がございました十萬圓以下の課税の問題もさうでありますが、只今の所我々は此の財産税を以て處理が出來る、さうして希望の歳入が之に依つて得られると考へて居りますので、十萬圓から五萬圓の間に對して財産税を課する積りはありませぬ、併し先程局長が申しましたやうに、若しも之を課すとすれば、此の法律に依るのではなく新しいものに依るのであつて、其の場合には調査期日も變つて來ますから、若しさう云ふやうなことがあるとすれば自ら御話の新圓階級には新しい財産税が課かると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=240
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241・中野四郎
○中野(四)委員 大藏大臣からそれだけ承つて置けば、もう別な構想を聽くだけ野暮なことはせぬ方が宜いと思ひます、私の約束の時間はもうあと僅か二、三分しかないやうですが、最後に不動産評價のことに付て一應聽いて置きたいと思ふのであります、是は本法案中の一番の山です、何と申しても評價を出せ、評價がない、ある、ないと云ふやうなことで、大いに此處で議論數刻鬪はされたものであります、中々主税局長も能く鬪はれたと思ふけれども、兎に角評價の基準がなければ四百三十五億圓が出て來ないと云ふことは誰も肯かれることなんです、ある筈です、あるかないかと云ふことは、主税局長は總括的のものだけれども、區々に於てはあると斯う云ふことを言つて居られるのですから、私は區々で結構だと思ひます、全國の區々別に於ける所の基準に對して、本日此の委員會に資料として御提出を要求致します、更に現在政府が持つて居る地區別基準の妥當性は、我々は嚴密に檢討しなければならない、又それが當然の必要ある問題だと私は思つて居るのであります、其の理由は今日の物價は渾沌として居る、何處に準據すべきやは全國の齊しく迷つて居る所であります、御承知の通り物價には丸公もありますし丸協もある、今あるかどうか知りませぬ、私は丸公、丸協の方より私は闇の方が能く分るのですが、丸協もあり或は闇もある、其の闇にも大闇あり小闇ありと云ふやうなことで、其の準據する所の價格に依つて非常に大きな差額を生じて來ます、政府がどのやうな基準を以て行くかと云ふことは全國民齊しく知りたい所であるのであります、政府としては本議會を通じて此の基準を算定した根據は公表することは、民主主義に忠實なる所以であると私は信じて居ります、本條項を鵜呑みにすると言ふと言葉が拙いか知りませぬが、有耶無耶に葬つてしまふと云ふことは、結局不動産評價委員に對して或は政府に對して非常に大幅の決定權を任せる結果になるのであります、それではどうも民主政治の本旨に悖ると思ふ、例へば家屋が一坪千圓が時價とも言へる、二千圓も時價と言へる或は三千圓でも時價だと言へるし四千圓が時價だと言はれても決して不當でない場合もあると思ひます、其の評價如何に依つては納税者の負擔に非常な差異が起つて來ることは自明の理であります、是が又工場だとか或は事務所だとか云ふやうな營利を目的とした職場なんかであれば、物價の變動に伴ふ使用料はそれに順應して參りますから大體大きな開きはないと云ふことが言ひ得るかも知れませぬが、本税の對象となるやうな不動産は大體住宅だから物價の變化に順應して融通性を缺いて參ります、却つて近頃の物價騰貴に依つて其の所有者達は其の負擔が加重されることに依つて非常に苦しんで居ると云ふ實情であります、斯う云ふ大切な不動産の評價に付ては、其の根本基準は飽くまで民意の象徴たる本院に於て徹底的に檢討詮議した上決定するのが當然だと思ひます、不動産評價の基準は税率に付て言へば税率以上に重大な問題だと私は思ひます、斯う云ふやうな問題に對しては政府は飽くまでも明白な答辯を此の議會に與へられるのが當然だと私は思ふのでありますから、此の不動産評價の所謂區々に於ける所の基準を資料として御提出になると同時に、此の基準を算定した根據をば此の際一つ大藏大臣から伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=241
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242・池田勇人
○池田(勇)政府委員 不動産の評價に付きましてははつきり此の法案に載つて居るのであります、取引價格と賃貸價格とを見て決める、而して賃貸價格は決まつて居ります、取引價格は其の土地に依りまして、餘程違つて居りますから、取引價格の一定倍數を賃貸價格に掛けまして、取引價格が出て來るのでありますから、其の計算で各地區毎に倍數を決める、此の命令に定むる地區と申しますのは、區の制度の布いてある所は、即ち東京のやうな所は區で見ます、市制施行地は市單位、町村は郡單位で見て行きたい、斯う云ふのでございます、さうして或る郡の宅地或は家屋をどう見るかと云ふことは其の郡の經濟事情等に依りまして判斷するより外にはございませぬ、隨ひまして個々の家屋、個々の宅地に付きましては、私は其の資料を持つて居りませぬが、昨日申上げましたやうに、例へば全國の家屋は村に於ては平均どの位する、町ではどうだ、斯う云ふ達觀を加へまして、全體の家屋の價格を七百六十二億圓と評定して四百三十五億圓出したのでございます、評價は賃貸價格と取引價格、斯う云ふものを見て實際に沿ふやうに各財務局で地方の人から御意見を聽いて決めるのが適當だと考へまして斯樣に法律には規定致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=242
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243・中野四郎
○中野(四)委員 私の言うたのはさうぢやない、言ひ方が拙かつたら訂正致しますが、私は評價の根據を聽くと同時に評價の基準をどう算定したかと云ふことを聽いて居るのです、唯端的に一定の倍數を乘ずると云ふやうな、法文に依つて不動産評價委員會や或は政府に任すと云ふやうなことは小さい問題ぢやない、全大衆の重大な問題であるが故に私は伺つて居るのです、あなたは一定の倍數を乘ずると仰しやるけれども、まだ評價の額は出て居りませぬ、私は要求はして居りますが、出て居りませぬからそれに根據して言ふ譯には行きませぬ、一例を擧げれば東京の何處其處はどう云ふやうな基準に依つて算定したと云ふ風に御示しを願つても一向差支へない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=243
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244・池田勇人
○池田(勇)政府委員 東京の家屋は幾らに見たかと申されましても、東京の各區に依つて違ひます、又各家に依つて違ひますから、其の家屋は幾らに見るかと仰しやれば、是は此の程度に評價したら宜いのぢやないかと思つて、それを基準に四百三十五億圓を出したと申上げましたが、東京の家屋を何ぼに見たかと申されますと、家は個々に決まつて居りませぬ、良いも惡いもあります、又利用價値の良いのと惡いのがございます、隨て個々の家に付て幾らに評價するかと云ふことは言へませぬが、併し住宅は平均どの位に見るかと云ふ御問ひだらうと思ひます、是は中々難かしい問題でございます、私の調査に依りますと終戰前の半年間に於ける東京の目黒區に於ける家の賣買の平均は八百二十圓になつて居ります、併し今の目黒區に於ける住宅の賣買は其の五倍も六倍もして居る所もございませう、或は三倍位の所もありませう、隨て東京の住宅を平均幾らで見るかと云ふことに付ては餘程考慮しなければならぬ、併し財産税の見積りと致しましては何も東京の家の平均の時價がどれだけであるかを個々に見なくても、全國的に大體此の位のものだと云ふことで收入見積りは作り得る譯なのでございます、隨ひまして今東京の或る區の家屋を幾らに見るかと云ふ御質問がございましても今の程度より外には御答へ出來ないのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=244
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245・中野四郎
○中野(四)委員 どうも私の言ひ方が拙いのでありませうか、一例は假に今言はれた目黒區なら目黒區でも結構ですが、どの程度のものはどう云ふやうな價格で行く、其の算定率は斯うだと云ふ具體的の御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=245
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246・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の程度の家はどう云ふ風に評價するかと申しましても、其の程度の家を私は見て居りませぬから、幾ら幾らに評價すると云ふことは申上げられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=246
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247・中野四郎
○中野(四)委員 是は言ひ方が惡いのだと思ひますが、農村に於ては大體どの位の査定基準で行くか、都會に於てはどう行くかと云ふ質問をした方が御答へがし宜いと思ひます、斯う云ふことで一つ御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=247
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248・池田勇人
○池田(勇)政府委員 農村の家屋の評價に付きましては各財務局税務署を使ひまして、實際の最近に取引されました家屋、此の取引は餘程少うございますが、全國的に集めると或る程度ございます、隨ひましてそれを平均致しましたのが農村に於きまして一坪百六十圓程度、町制施行地に付きましては二百三、四十圓、市制施行地は是は二、三十萬の市もございます、又三、四萬の小さい市もございますが、平均して三百五、六十圓に相成つて居ります、六大都市に付きましても、是は東京、大阪、神戸は相當高うございますが、名古屋、横濱は可なり安い、斯う云ふことで一概には言ひ得られませぬ、又其の平均も私は申上げない方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=248
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249・中野四郎
○中野(四)委員 評價の問題は此の法律案を通じて一番大きな問題でありまするから、何れ討論の際に申上げるとして、資料がそれまでに提出されるものと思ひますから、それを拜見し、それに準據して更に語を續けたいと思ひます、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=249
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250・本多市郎
○本多委員長 田中重彌君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=250
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251・田中重彌
○田中(重)委員 大變時間も制限されて居りますので、私は總論的なことは止めまして、專ら財産税の中の條文に付きましてほんの二、三御尋ね致したいと思ひます、第二章の課税價格の第十二條でございまするが、此の中に「調査時期において有してゐた財産の價額から、調査時期において現に存した債務の金額を控除した金額を、課税價格とする。」此の場合の債務の認定は、是が金融機關其の他でありまするならば、非常に證明がし宜いのでありますが、其の他のものに付きましては政府當局ではどう云ふ御認定をなさるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=251
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252・池田勇人
○池田(勇)政府委員 債務者の申出に依りまして其の眞否を調査致します、而して今囘は從來とは違ひまして公證人役場も檢査し得ることに相成つて居ります、各方面の資料を集めまして、果して其の債務が現存して居る場合には課税價格から控除致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=252
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253・田中重彌
○田中(重)委員 さう致しますと所謂申告の時に於きましては、それ等の證據となる物件を提出することになる譯でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=253
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254・池田勇人
○池田(勇)政府委員 申告の場合に書類の提出は求めませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=254
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255・田中重彌
○田中(重)委員 次に第七章の審査の部に於きまして五十一條の「納税義務者は、政府の通知した課税價格又は政府の通知した税額に對して異議があるときは、通知を受けた日から一箇月以内に不服の事由を具し、政府に審査の請求をなすことができる。」之に付きまして、「第一項の請求があつた場合においても、政府は、税金の徴收を猶豫しない。」と斯樣な條項がございますが、此の不服に對しまして所謂政府に對しましての審査を要求致しました其の結果に於きましては、此の條文の中では例へば三箇月後に於ては其の審査の結果を本人に通知する、又は半年後には通知すると斯樣な條項がないやうでありまして、從來間々ありましたる觀點から致しまするならば、斯樣な場合には兎角其の期間が延々になりまして我々國民の方では此の點非常に迷惑するのでございまするが、何とか期限を此の法文の中に明記せられる御用意がございますかどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=255
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256・池田勇人
○池田(勇)政府委員 審査請求がありました場合に、税金の徴收を猶豫しないと云ふことは、所得税、營業税、各税にあるのでございます、而して今囘は所得税等とは違ひまして一應申告納税に相成つて居ります、税務署は其の申告が非常に間違つて居ると云ふやうな場合、或は申告が全然なかつたと云ふ場合にのみ決定或は更正するのでございます、財産税に付て政府の決定があつても税金の徴收を猶豫すると云ふ規定を置くことは如何なものかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=256
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257・田中重彌
○田中(重)委員 重ねて御伺ひ致しますが、第五十二條に「財産審査委員會に諮問して、これを決定し、納税義務者に通知しなければならない。」と斯樣にございますが、只今私の御伺ひ致しましたのは本條文の中に此の審査委員會が申請者に對しまして申請後何箇月に其の通達をすると、此の樣な條文を御挿入願へないかと云ふことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=257
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258・池田勇人
○池田(勇)政府委員 從來所得税等に於きましては審査會は概ね一年一囘と云ふことに相成りまして、納税者に御迷惑を掛けた場合も多からうと思ひます、併し今度の財産税に付きましては、其の税額の點から申しましても相當きついのでございますから、所得税法とは違ひまして度々開きまして、出來るだけ早い機會に最後の審査決定を致すやうに取計らひまして、納税者に御迷惑のないやうにしようと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=258
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259・田中重彌
○田中(重)委員 次に五十七條に於きまして「財産税の物納を困難とする特別の事由があるときは、納税義務者は、物納を困難とする金額を限度として、擔保を提供し、その延納を申請することができる。」其の中に「納期限後一年以内とし、已むを得ないと認められる場合においては、二年以内とすることができる。」とございますが、斯樣な一年、二年の延納を御願ひ出來る場合を豫め豫測出來まする範圍に於きまして御聽かせ願へますれば仕合せに存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=259
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260・池田勇人
○池田(勇)政府委員 物納を困難とする場合に、其の困難とする限度に於て延納を認めるのでございます、是は其の人の資力、又資産の構成、税額等から判斷すべき問題でございまして、抽象的には御答へしにくい點が多々あるのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=260
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261・田中重彌
○田中(重)委員 約束の時間でございますから私は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=261
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262・本多市郎
○本多委員長 寺田榮吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=262
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263・寺田榮吉
○寺田委員 時間を制限されて居りますので、時間の許す範圍に於きまして專ら實際面に於きましての點を二、三御尋ねしたいと思ひます、先づ第一に特別經理會社のことに付てでありますが、現在法案が隨分出ますので、實際面に於きましては、非常に複雜で分りにくいと云ふことが實情であります、此の特別經理會社に決められて居る條件があれば、全部特別經理會社にならなければならぬことになつて居りますが、是の除外申請が出來ると云ふことになつても居るのですが、其の除外申請をした時に其の會社の資産の評價を商法に於て決められて居る、然るに特別經理會社になつた時の資産の評價との差があるのでありますから、どうしても、特別經理會社に多くのものがなつて行く傾向になると思ふのでありますが、此の點に付ては如何に御考へですか、即ち簡單に言ひますと、特別經理會社を除外して貰ふにはどう云ふ條件を備へたら宜いかと云ふことに付て御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=263
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264・三木秋義
○三木政府委員 只今の點でありますが、應急措置法に依りまして商法に許す範圍内の評價益を出して宜しい、それを出しまして、從來からの積立金、從來からの繰越金等合計致しまして、戰時補償特別税の課税に依ります所の損害を「カバー」出來ます場合には、特別經理會社の除外の申請が出來たのでありますが、今囘此の企業再建整備法に依りまして其の點を改正致しまして、それは附則に付けて居りますが、其の商法の許す範圍内の評價益を出してはいかぬと云ふことに相成つたのであります、隨ひまして特別經理會社の除外の申請の出來ますのは、專ら其の期の利益金、繰越金、積立金の合計を以ちまして、今度の課税の損害を「カバー」出來る會社だけである、評價益を出すのは總て特別經理會社の範圍内に入らざるを得ない、斯う云ふことに相成る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=264
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265・寺田榮吉
○寺田委員 只今の政府のさう云ふ御解釋でありましたら、やはり其の條件を備へて居れば必ず特別經理會社にならなければならぬ、是は特別經理會社になりましたら、御承知のやうに生産が非常に減退されるのでありまして、大藏大臣が屡屡言はれる生産増強が第一だと云ふことが非常に阻碍されると云ふことを私は申上げたいのであります、併しさう云ふ御見解でしたら是は已むを得ないと思ひます、さうして特別經理會社になりましたら特別管理人が出來る、此の特別管理人が株式の書換に對して拒否する權利があるかどうかと云ふことを御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=265
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266・三木秋義
○三木政府委員 特別經理會社の株式移動は一應停止されて居りますので、特別管理人は其の移動を禁止する機能を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=266
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267・寺田榮吉
○寺田委員 次に評價の問題でありますが、今囘の此の一聯の法令の一番大きい問題が、評價と未拂の問題であると云ふことになつて居りますが、此の評價に付て少し申上げたいと存じます、資産の評價に付ては種々な議論もありまして、此の議論を今したくはないのでありますが、此の評價に付て評價増をすると云ふことは、勿論將來の物價の形勢に非常な影響がありまして、「インフレーション」を助長するのぢやないかと云ふ虞が非常にあるのであります、併しながら是がどう云ふ風に評價されるかと云ふことは、屡屡御答辯に依つて承つても居るのでありますが、我々としましては出來るだけ據り所を簡單に決めて戴きたい、それともう一つは業種別にやつて戴きたい、唯概括的に「コンクリート」の工場が幾ら、或は機械が幾らと云ふことでなしに、業種別に出來るだけ大體の標準を決めて戴きたい、斯う云ふ風に考へるのであります、それから今一つは評價に付きまして複成式の評價法を採るのか、或は收益還元法を採るのかと云ふことも御尋ねして置きたいのであります、是は勿論業種に依つて違ふと思ひますが、さう云ふ點に付て御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=267
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268・三木秋義
○三木政府委員 評價換の問題に付きましては、大藏大臣或は膳國務大臣からも度々御説明申上げて居りますので、私から更に附言する必要もないと思ひますが、御質問の點に付きましては我々も十分考慮致しまして、適當の措置を講じて參りたいと思ひます、唯業種別に之を算定すると云ふことが果して出來るかどうか非常に問題であらうと思ひますけれども、唯實情と致しまして、例へば鐵鋼などに付きまして他のものと同じやうな評價が果して出來るかどうか、現在の操業率なり、或は今後に於きます國際貿易の關係と云ふことを考へまして、果してさう云ふ他のものと同じやうな取扱をして宜いかどうかと云ふ點もあります、御趣旨の點を十分酌みまして、今後の研究に資したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=268
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269・寺田榮吉
○寺田委員 只今の御答辯で一つ殘つて居りますのは、收益還元法に依るか、或は複成式の評價法に依るか、斯う云ふ點はどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=269
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270・三木秋義
○三木政府委員 收益還元法に依るか或は複成式なものに依るか、或は又操業率を見て行くかと云ふやうな點は、評價基準の最も重要な觀點であらうと思ひます、さう云ふ點に付きましてはまだ政府部内に於て決定して居りませぬ、今後各方面の意見を承り、又特に委員會の議に付きまして、之を決定して參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=270
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271・寺田榮吉
○寺田委員 大體了承致したのでありますが、次に未拂込の徴收の問題であります、之に付ての議論は時間もありませぬので今日は省くことに致しまして、結局良いか惡いかと云ふよりも、其の後の産業の再建に及ぼす影響が最も大切であると考へられるのでありますが、是は實際に於きまして財産税を取つた後の未拂込は徴收されるだらうと云ふことが想像されるのでありますが、さう云ふ場合に果して政府が取るかどうかと云ふことをどう云ふやうに考へて居られるか、又取るとしましたら、財産税徴收の後の未拂込を徴收すると云ふことは、國民にどう云ふ影響を及ぼすかと云ふことに付て御考へを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=271
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272・池田勇人
○池田(勇)政府委員 未拂込の問題は、財産税申告前に決めたいと思つて居ります、評價の問題は未拂込の問題が決まりませぬと、株式の評價が不可能でございますから、申告前に兩者とも決めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=272
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273・寺田榮吉
○寺田委員 財産税は大體本年末位に決まるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=273
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274・池田勇人
○池田(勇)政府委員 只今の所は一月十五日を申告期日に致したいと思つて居ります、併し只今申上げました二つのむづかしい問題が解決致しませぬと、非常に評價が困難でございますから、二つの問題は出來るだけ早く決めて貰ふ、一月十五日を申告期限とし、二月十五日に納税して戴く、斯う云ふ豫定を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=274
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275・寺田榮吉
○寺田委員 さうしますと未拂込の決定されるのは其の以前、大體本年中と云ふことになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=275
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276・池田勇人
○池田(勇)政府委員 我々の方針と致しましてはさう云ふ計畫で進んで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=276
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277・寺田榮吉
○寺田委員 さうしますと現在考へて居られる未拂込は殆ど負債であると云ふ風に我々は考へるのでありますが、我々は現に財産税の申告をした時に、未拂込株券をやはり財産として申告をして居る、是が非た常な矛盾が來るのぢやないか、未拂込株券を持つて居る爲に負債が非常に多くなる、之を税務署が負債として考へられるのか、財産として考へられるのか、此の點に付て御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=277
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278・池田勇人
○池田(勇)政府委員 三月三日の臨時財産調査令に依ります申告は、拂込濟のものも未拂込のものも額面金額で申告して戴いて居ります、隨ひまして今の未拂込の問題は、見込金だけを負債と見るか、債務と見るかと云ふ問題でございますが、是は先程申しましたやうに、債務と見るか或は見ないかと云ふ問題は未拂込全體の問題が決まれば片付くと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=278
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279・寺田榮吉
○寺田委員 過日來財閥解體が行はれて居る、其の大部分の株式が此の持株整理委員會に渡されて居ると云ふことを聞いて居りますが、其の時にも未拂込の株券を除外して居ると云ふことも聞いて居るのでありますが、それは結局未拂込の株券を財産と見て居るかどうかと云ふことにあるのぢやないかと思ふのであります、此の點に付て御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=279
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280・池田勇人
○池田(勇)政府委員 御話の點は未拂込株式の評價を如何にするかと云ふ問題だと思ひます、隨ひまして其の評價は企業再建整備法に基きまして、處置致した状況を見まして決めたいと考へて居ります、で未拂込の大きさにも依る、又會社にも依りまして、未拂込株式を全部財産から除外することは致さない考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=280
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281・寺田榮吉
○寺田委員 此の拂込の問題はそれ位にしまして、今囘の企業整備に依りまして、有價證券の問題が相當大きな問題だと考へられるのでありますが、殊に財閥解體に付ての有價證券の動きが大きいのであります、此の中に戰爭前に日本へ投資されて居つた外國の資本が相當あつたのでありますが、是が戰爭中に不當な處分に依つて各株主に割當ててしまつたと思はれるのでありますが、是が海外に對して相當惡感情を持たして居るのぢやないかと云ふことも言はれると思ふのであります、又各個人が貰つたものを處分して行くと云ふことも外國に對しての影響が今後起りはしないか、又將來日本への外資の導入と云ふことに付ても影響があるのぢやないかと考へるのであります、此の點に付て政府がどう云ふ風に考へて居られますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=281
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282・池田勇人
○池田(勇)政府委員 外國人の所有して居る株式は敵産管理令に依りまして一應處分し、一般の株主に割當したやうでございます、併し其の賣却代金は管理致して居りますので、要求があれば返し得るのではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=282
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283・寺田榮吉
○寺田委員 返すと言ひましても、殆どさう云ふものが軍需株に多かつたと云ふことになつて居りまして、そこに價値の相違が非常に出て來て居ると云ふことが言へるのでありますが、それは各國民の資産としてのものに影響して來るのか來ないのかと云ふ所を一應御返答願つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=283
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284・池田勇人
○池田(勇)政府委員 此の問題に付きましては只今政府としても研究は致して居ないのではないかと思ひます、賣却した金を保管致しまして、其の株を向ふに戻すか、或は設備を渡すのか、斯う云ふ問題であると思ひます、又處分價格と今の價格はどうか、斯う云ふ問題がございまして、是は別途考究しなければならぬ問題だと思つて居りますが、只今の所確定的の御返事を申上げることは遺憾ながら出來ない状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=284
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285・寺田榮吉
○寺田委員 最後に財産税法に付て一點御尋ねしたいのでありますが、第五十三條に、政府の定むる財産の評價に對して不服ある場合には納税義務者の申立てた價格に依つて其の財産を政府が買取ることが出來る、其の代價として國債を以て支拂ふと云ふことになつて居るのであります、將來の國債に付ての政府の御方針竝に將來發行されると云ふ公債に付ての御方針を承り、さうして又是が非常に矛盾をして來ますのは、御承知のやうに現在は市場相場が非常に下つて居ると云ふ時に、之を額面で買はれるのかどうか、國債を以て支拂ふと云ふことが、其の額面に依つて支拂はれるのか、若し額面に依つて支拂はれると云ふことになると、非常に矛盾を來たすと云ふことになるのですが、此の點に付て御伺ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=285
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286・池田勇人
○池田(勇)政府委員 是は額面を以て交付致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=286
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287・寺田榮吉
○寺田委員 其の將來發行する公債の御方針なり現在の方針を聽かして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=287
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288・石橋湛山
○石橋國務大臣 御質問の趣旨は、現在公債が下つて居るからと云ふ御話のやうでありますが、是は現在さう云ふ噂を聞いて居りますが、現在の状況は是は常態ではないと思ひます、無論今後の公債政策の關係もありますが、やはり一應交付公債として渡しまして、今後の公債の價値と云ふものは別に公債政策として致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=288
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289・寺田榮吉
○寺田委員 さうしますると、其の貰つた公債が額面で預かつて呉れるのかどうかと云ふ問題が出て來るのでありますが、之を賣れば半分になると云ふことのやうに思ふのでありますが、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=289
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290・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は個々の場合で違ひませうが、例へば金融機關が之を持つて居つて日本銀行に擔保に入れる場合には、ちやんと發行價格を基準としてやる譯でありますから、政府としては何處までも發行價格を尊重して居る譯です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=290
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291・寺田榮吉
○寺田委員 私は、だから此の規定にあとへ但書等を付ける、交付せられた公債を市中銀行に預入れた場合に、其の交付價格に相當する金額の預金が設定されると云ふことの一條を入れて置かぬと、此の將來の價値が全然分らぬと云ふ時に、さう云ふ公債に依つて國民の財産が全部買取られて行くと云ふことは非常に不合理ぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=291
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292・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は日本銀行の擔保になると云ふ譯でありますから、假に若し金融機關から或る人が金融するのに、其の公債が擔保に入れられる場合には、無論そんなことを規定せずとも、適當な價格で擔保に取られるものと思ひます、尚ほ後のことは、是は貨幣で拂ひましても、若し通貨が價値が下ればどうする、斯う云ふ問題と同じことであります、是は全般の經濟政策として今後の通貨の安定、隨て公債價値の安定と云ふことに一に係るのであります、支拂の方法をここで法律で以て決めますことは、是は或は一種の「ゴールド・クローズ」を付けるやうな恰好になりまして、非常に難かしい問題と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=292
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293・寺田榮吉
○寺田委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=293
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294・本多市郎
○本多委員長 此の際奧村又十郎君より、政府に於て留保して居られますことに付て發言を求められて居りますから、之を許します──奧村又十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=294
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295・奧村又十郎
○奧村委員 もう一度繰返しますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=295
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296・渡邊喜久造
○渡邊(喜)政府委員 漁業權を財産税の對象としてどう扱ふか、其の評價をどうするかと云ふ御質問と思ひますが──漁業權は現在に於きまして漁業法で一應認められ居てりまして權利として確立して居りますし、又一應賣買されて居るやうな實情もございますし、やはり無體財産權として財産税の對象になるべきものと思つて居ります、唯此の評價を如何にすべきかと云ふことに付きましては、中々困難な問題があらうと思つて居ります、現在考へて居ります所は、結局漁業權が財産權として成立し得る所以のものは、其の漁業權に依つて得られます特別利潤と云ひますか、さう云ふものが基礎になる譯でありまして、過去三年なり五年なりに於ける特別利潤、それから漁業權は御承知のやうに存續期間は二十年以内で行政官廳が定めて、之を認可することになつて居りますから、將來の漁業權の存續期間、斯う云ふものを考慮し、且つ賣買實例等が近傍にありますれば、さう云ふものをも考へ合はせまして評價したいと思つて居ります、尚ほ評價に當りましては、農林省水産局のやうな、其の方面の專門の方々の御意見も十分斟酌しまして、評價致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=296
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297・奧村又十郎
○奧村委員 農林當局の方でありませぬので、私の御質問した點に少し觸れて居らぬやうに思ひます、最近漁業權の歸屬と云ふものが業界に於て一番大きな問題になつて居ります、それは要は現在の免許期間だけを以て財産税の評價をして行くが、將來更新の免許は農林省として認めないのかどうかと云ふことを聞いたのでありますが、もう時間もここまで參りましたから、其の點は速記録に殘して戴いて、將來適當に農林省と御相談を御願ひ致したいと思ひます
尚ほ御參考までに御願ひ致したいのは、水産業團體法を改革する、是は將來近い中に問題になる筈でありますが、其の際に於て漁業權は個人には恐らく認められないと云ふ工合になつて居りますので、それで此の問題を特に取立てた譯であります
それから先程御願ひしてありましたので、一點だけ御伺ひ致したいと思ひます、特別經理會社で舊債勘定となる整理の對象の中に、終戰後今年の八月十一日までの會社の損失及び利益、是は舊債權の中に入つて整理の對象になる譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=297
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298・三木秋義
○三木政府委員 當然舊債權は舊勘定の中に入つて整理されると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=298
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299・奧村又十郎
○奧村委員 恐らくは會社内容が提出されて參りますと、終戰後色々な事情から、會社に依つては色々放漫な經營の爲に莫大な缺損を起して居るものがあるだらうと思ひます、此の缺損からして債權者に迷惑を掛けると云ふことになると、是は相當問題であらうと思ひます、此の會社内容の統計があれば尚ほ突込んで御伺ひしたいのでありますが、是は今後に於て相當問題にならうと思ひますので、之を委員會に於て質問して置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=299
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300・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點は私から御答へして置きます、それは今度の建前は、軍需補償の打切りから來るものを整理すると云ふのが無論根本でありますが、それと同時に一切の企業及び金融に於ける勘定を綺麗にして、今後の經濟の建直しをしようと云ふのでありますから、御話のやうな直接軍需補償から來ない、終戰後放漫であるかどうか知れませぬが、終戰後の缺損と云ふものは入つて參ります、而して債權者に被害が來ると云ふことは、是は當然であります、それこそもう債權者に來て一向差支へない損害であります、寧ろ補償打切りで來るのを個々の債權者に掛けると云ふ方が理窟から言ふと妙な點があると思ふ、是は政府の政策から來る損害が個々の人に掛ると云ふことになりますが、今の御話の終戰後の普通の損害の方は、却て個々の債權者に被つて來ても理窟は立つやうに考へて居ります、理窟は兎も角として事實整理は左樣にされる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=300
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301・奧村又十郎
○奧村委員 終戰後に於ける會社内容は、恐らく生産が止つて居りますから、賃金俸給などの値上りの爲に此の一年間に相當赤字が出て居るだらうと思ひます、それで當然債權者に迷惑を掛けても宜いと云ふ今の大藏大臣の御話は、少し納得が行き兼ねると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=301
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302・石橋湛山
○石橋國務大臣 私の申すのは、株主などが無論損害を受けることは、それは全部飛ばしてしまつて、尚ほ損害が殘る場合には、如何なる場合でも債權者に被せる外には被せられない損害でありますから、自然さうなつて參ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=302
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303・奧村又十郎
○奧村委員 さうなりますと、又此の資産評價が問題になると思ひます、株主と申しますけれども、一つは殘つた株主の權利も此の資産に對する權利は同じであります、さうすると結局其の尻拭ひが債權者に來ると云ふやうに感じますが、是は斯う云ふ疑問も記録に殘して戴ければ結構だと思ひます、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=303
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304・本多市郎
○本多委員長 是にて大體の質疑は終了致しました、尚ほ必要があれば補足的な質問は委員長に於てなすことと致しまして、本日は是にて散會致します
次會は明五日午前十時より開會致します
午後六時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00519461004&spkNum=304
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