1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案(審査終了のものを除く)
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
—————————————————————
昭和二十一年十月五日(土曜日)午後二時二十七分開議
出席委員
委員長 本多市郎君
理事 石原圓吉君 理事 菊池長右エ門
理事 森曉君 理事 舟崎由之君
理事 武藤嘉一君 理事 稻村順三君
理事 西村榮一君 理事 木下榮君
理事 岡田勢一君
江藤夏雄君 大塚甚之助君
花月純誠君 近藤鶴代君
坂本實君 田中重彌君
河原田巖君 平岡良藏君
大石ヨシエ君 松永佛骨君
天野久君 金光義邦君
九鬼紋十郎君 北村徳太郎君
中野四郎君 小池新太郎君
小坂善太郎君 鈴木明良君
寺田榮吉君 武藤常介君
上田清次郎君 奧村又十郎君
川島金次君 中崎敏君
藤井正男君 秋田大助君
駒井藤平君 大橋喜美君
笹森順造君 穗積七郎君
十月五日委員喜多楢治郎君辭任に付其の補闕として九鬼紋十郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
内閣總理大臣兼外務大臣 吉田茂君
商 工 大 臣 星島二郎君
大 藏 大 臣 石橋湛山君
國 務 大 臣 膳桂之助君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 池田勇人君
司法事務官 奧野健一君
商工事務官 三木秋義君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に付した議案
戰時補償特別措置法案(政府提出)
金融機關再建整備法案(政府提出)
特別和議法案(政府提出)
大藏省預金部等損失特別處理法案(政府提出)
厚生年金保險法及び船員保險法特例案(政府提出)
企業再建整備法案(政府提出)
財産税法案(政府提出)
財産税等收入金特別會計法案(政府提出)
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=0
-
001・本多市郎
○本多委員長 是より會議を開きます、此の際委員長より内閣總理大臣の所見を質して置きたいことがございます、内閣總理大臣に御伺ひを致しますが、今囘の戰時補償打切りに關する財産税を含む一聯の施策は、敗戰後の國民經濟に重大なる犧牲と影響を及ぼすものでありまするが、是等に對する總理大臣の御所見を此の際開陳願ひたいと思ふのであります──内閣總理大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=1
-
002・吉田茂
○吉田國務大臣 補償打切り、財産税賦課等の問題に付ては、當局大臣から屡屡説明があつたことと思ひますが、政府としても補償は打切りたくない爲に色々考へたのでありますが、是は已むを得さる處置で打切らざるを得ない事情も既に御諒承と思ひます、又財産税に付ても此の賦課に付ては既に色々議論がある所であつて、是も成べくは避けたいと考へたのでありますが、已むを得さる現下の事情から見て之を賦課することになり、又隨て之に依つて日本の經濟の再出發を期待して居るのであります、打切るものは打切り、さうして徴收しなければならぬものは徴收し、さうして日本の經濟を一應建直すことに依つて日本の經濟の再出發を期待して、已むを得さるに出て此の處置を決定した譯であります、此の段御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=2
-
003・本多市郎
○本多委員長 次に御伺ひを致しますが、經濟安定本部の性格と權限に付てでありますが、安定本部と各省との間に所管の分野、責任の所在等に付て不明確の感があるのでありますが、此の際此の點を明かにせられたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=3
-
004・吉田茂
○吉田國務大臣 政府と致しましては、其の間の權限に於て不明確と考へられることは實は毛頭ないと考へて居るのであります、何となれば、安定本部と云ふものは、方針、政策の基本を決定する所であり、又各省に於ては安定本部が政策の決定、財政政策、經濟政策の安定に資する各種の材料を提供して、之に依つて安定本部が方針を決定する、決定した方針を關係省が實行に移す、其の間に何等の矛盾なり權限の爭ひがあらうとは私は相像致さないのであります、假にあつたと云ふ場合には、内閣と致しまして、或は總理大臣として、其の間に然るべく按配を保つと云ふ考へで居つて、政府と致しては何等其の間に疑問を挿んで居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=4
-
005・本多市郎
○本多委員長 尚ほ經濟安定本部は其の存續期間が一年となつて居るのでありますが、果して一年を以て我が國經濟を正常なる經濟状態に安定せしめ得る確信ありや否や、其の存續期間に付て總理大臣の見解を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=5
-
006・吉田茂
○吉田國務大臣 其の存續期間に付ては、私としては一年と期限を限つたこともなければ、又必要であれば數年に亙つて存續も致しませうし、經濟が安定すれば一年内と雖も打切つて宜いのであつて、無用の官省を置く考へは毛頭ないのであります、左樣御承知を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=6
-
007・本多市郎
○本多委員長 總理大臣に對する質問は是で終了致しました、此の際委員長より質疑を補足して置きたいことがございます、漁船の價格の決定に關する基準を此の際政府に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=7
-
008・池田勇人
○池田(勇)政府委員 漁船の價格に付きましては、其の漁船の年齡或は登録價格等を參酌致しますることは勿論でございまするが、水産關係官省、其の他水産關係の精通者と篤と相談致しまして適正な價格を見出したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=8
-
009・本多市郎
○本多委員長 次に不動産評價の基準に付て委員會に於て屡屡問題になつたのでありますが、此の不動産評價の基準に付きまして資料の要求があつたのでありますが、此の資料と提出が未だにありませぬ、此の資料の要求に對して政府はどう處置されるのであるか、此の際出せるものであつたならば直ちに出して戴きたいと思ひますが、御意見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=9
-
010・池田勇人
○池田(勇)政府委員 全國各地の不動産、即ち土地建物に付きまして財産税收入の見込を立てます爲に、全體的の評價は或る程度致して居るのでございますが、各地の各種の不動産に付きまして何倍の倍率を適用致しますかは、只今折角各税務署財務局で調査中でございまして、最近の機會に各財務局の擔當の者が本省に集まりまして、其の資料を皆で檢討し、不動産評價委員會に提出致しまする原案を作成する見込でございます、隨ひまして只今の所各土地に付きましての倍數の資料は遺憾ながら持つて居ない状態でございまして、御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=10
-
011・本多市郎
○本多委員長 是にて質疑は終りました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=11
-
012・本多市郎
○本多委員長 それでは次いで戰時補償特別措置法案外八件を一括議題とし討論に入ります──菊池長右エ門君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=12
-
013・菊池長右ェ門
○菊池委員 私は自由黨を代表致しまして本委員會に付託になつて居りまする戰時補償特別措置法案竝に財産税法案等に付て贊成の意見を申述べます、先づ企業整備資金措置法を廢止する等の法律案に付て各派共同の修正案を申上げます、即ち
企業整備資金措置法を廢止する等の法律案の一部を次のやうに修正する。
第二條の臨時資金調整法の一部を改正する規定を次のやうに改める。
第十條の二 削除
第十條の十二第一項の次に次の一項を加へる。
都道府縣は戰災復興其の他の公共事業の資金を調達する爲必要あるときは命令の定むる所に依り政府の認可を受け命令の定むる法人をして前項に規定する證票を發賣せしむることを得
同條第二項中「前項に規定する」を「第一項の規定に依り同項に規定する」に改め「前項の」を削り、同項の次に次の一項を加へる。
第二項の規定に依り第一項に規定する證票を發賣する法人は命令の定むる所に依り賣得金より當籤金及命令の定むる經費竝に賣得金に命令の定むる割合を乘じて得たる金額に相當する金額を控除したる殘額に相當する金額を當該都道府縣に納付し賣得金に命令の定むる割合を乘じて得たる金額に相當する金額を政府に納付すべし
同條第三項中「第一項に規定する」を「第一項又は第二項の規定に依り第一項に規定する」に、「、營業税法及臨時利得税法」を「及營業税法」に、「、營業税及臨時利得税」を「及營業税」に、「營業税法に依る純益及臨時利得税法に依る利益」を「及營業税法に依る純益」に、「第一項の」を「第三項又は前項の」に、「當籤金竝に前項の」を「當籤金、」に改め、同條第四項中「第一項」を「第三項又は第四項」に改め、同條第五項中「政府」の下に「又は都道府縣」を加へる。
第十八條第二號を次のやうに改める。
二 削除
同條第五號中「第五項」を「第七項」に改める。
第十八條の二中「第五項」を「第七項」に改める。
只今朗讀致しましたやうに、企業整備資金措置法を廢止する等の法律案中各派の提案に依りまして修正案を提出する次第であります、其の他財産税法案、戰時補償特別措置法案、企業再建整備法案、産業復興營團法案、財産税等收入金特別會計法案、特別和議法案、厚生年金保險法及び船員保險法特例案、大藏省預金部等損失特別處理法案、金融機關再建整備法案、恩給法臨時特例案、以上の案件に對しましては、財政税法案に對し附帶決議を附して原案を承認したいと思ふのであります、即ち附帶決議は
一、本法實施に伴ふ國民の犧牲に鑑み、政府は速に我が國經濟再建の根本的方途を講ずること
一、財産税の基準となるべき評價に付ては、飽くまで適正公平を期し生産に必要なる物權は特に考慮を拂ひ、之が減退を生ずるが如き課税を爲さざること
一、各種委員會は民主的に構成し、全國的均衡を失せざる樣、緊密なる連絡協調を保ち、委員會に其の責任を負荷せしめ、之が運營を期すべきこと
右以上三つの附帶決議を附しまして財産税法案は原案通り承認致すのであります、其の他の法案に付きましても、我が國が敗戰と云ふ事實に直面して、日本の財政竝に經濟は之に依りまして一大轉換をなさなければならぬ時期に到來して居るのでありまして、財政の建直し産業經濟の再建を圖る意圖の下に、政府が空前絶後とも申すべき戰事補償の打切り竝に財産税法案を本議會に提出致しましたことは、我々は斯かる根本的な──人體で申しますれば非常に荒療治をする法律案であるのでありまするが、成べく斯くの如き荒療治はやりたくない、併し之をやらなければ其の生命が危ふいと云ふやうな場合には涙を揮つて之に贊成しなければならぬと思ふのであります、斯かる意味に於きまして、我々は納税者の苦衷も察し、又日本の財政竝に經濟の再建に勇往邁進する爲に涙を呑んで此の大法案を通過させようと思ふのであります、何卒政府に於かれましては今後の國民生活の安定を考慮せられ、此の税の施行に當りましては民意のある所を能く忖度せられて最も公平嚴正に施行せられんことを一言附加へまして、先刻申しました通り企業整備資金措置法を廢止する等の法律案の修正案を提議し、各案は原案通り承認することに贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=13
-
014・本多市郎
○本多委員長 武藤嘉一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=14
-
015・武藤嘉一
○武藤(嘉)委員 私は日本進歩黨を代表致しまして、此の今日上程されて居りまする戰時補償特別措置法案、金融機關再建整備法案、企業再建整備法案其の他の法案に付きまして贊成を致すものであります、併しながら此の財産税其の他の問題は、國民生活に非常に甚大なる影響を及ぼすものでありまするが故に、今少しく之に對する私見を述べたいと思ふのであります
財産税は今日では世界各國とも名實共に既に税法として不適當であるとして葬り去られんとして居ると「セリグマン」教授は言うて居ります、隨て若し財産と云ふものが泥棒に依つて得たるものでないならば──是は「クールノー」が申して居る通りであるのでありますが、若し泥棒に依つて得たものでないならば、今日の如き過重なる課税は是は「タックス」ではなくて、「コンフィスエーション」であります、言換へれば、即ち租税ではなくして、沒收、徴發であると私は言ひたいのであります、殊に此の缺陷は、四百三十五億の中で國家永遠の策に貢獻する所の國債の償還に充てられる金は僅か百二十餘億圓でありまして、其の他は今年の一般歳入の不足に補填充當せられると云ふのでありまするから、納税者としては洵に諦め切れないものがあらうと思ふのであります、さうして又一方に於きましては、此の財産税を取る場合に於きまして、永年營々として蓄財に努めて參りました、或は又勤勞の結果であります所の財産、一方戰後に於きまして、闇取引其の他不正なる行爲に依りまして多大の財産物資を持つて居りまする所の階級、人々が、同じやうな一率の課税を受けると云ふことは、租税の衡平と云ふ點に於て甚だ缺けるのではないかと私は思ふのであります、又此の財産税は、政府は之を一年きりしか取らない、もう永久に今後に付ては取らないと言明されて居りまするが、若しさうであれば結構であります、又さうあらしめたいと思ふのでありまするが、若し此の財産税が今後若し殘つて、尚ほ何時か後日に於て再び財産税が課せられるやうなことを考へましても、時既に遲いと思ふのであります、何となれば、今囘の財産税徴收に依りまして、日本の持つて居りまする税源の主なるものは涸渇してしまふのであります、隨て今後此の財産税と云ふものが二度でも三度でもあると云ふやうなことになりまするならば、最早是は「セリグマン」が指摘して居りまする通りに、日本の國の、例へば山林は禿山になつてしまひ、又天然資源は涸渇してしまふと云ふことになるであらうと思ふのでありまして、是等に付ても政府には十分なる御考慮を御願ひしたいと思ふのであります
次に軍需補償の打切りの問題でありまするが、軍需補償ばかりではありませぬ、所謂戰時補償一般の打切りに依りまして、國家が從來持つて居りました所の信用と云ふものは、自分で自分から破棄することになるのではないか、能く世界の情勢を知つて居りまする所の人々に於ては、左樣なことは萬萬ないと思ひまするけれども、之を全國の僻村に居りまする所の寡婦、老幼の持つて居りまする所の是等の債券、是が無效となることに依りまして、國家の信用を低下するに違ひないのであります、又一方に於きまして外地に資産を有して居りました所の引揚者の如き、今日何等政府からは考慮を拂はれず、何等具體的な施策が明示されて居らないのでありまして、此の人々の心中は洵に同情に値するものがあります、又企業整備に依る所の資金、強制疎開に依る所の特殊預金、又戰爭保險に依りまする所の損害の如きも、一口五萬圓の限度は於きましては、今日物價騰貴の際、家屋は一坪或は三千圓と言ひ、或は五千圓建築費が要ると言うて居るのでありまするから、是等五萬圓は、十年前の物價ならいざ知らず、今日此の「インフレ」時代に於きましては、洵に僅かの金にしかならないのであります、又此の打切りに依りまして最も悲慘なることになりまするのは、日本の各種文化團體であります、或は病院の如き慈善團體であります、是等は此の補償打切りに依りまして非常なる經營困難を來すものと思ひますので、政府は特に法案の中に、是等の場合に於きましては、是等の補償打切りを削減する、或は大いに免税すると言うて居るのでありまするが、是非とも私立大學或は私立中等學校、其の他の學校及び病院の如きに對しましては、十分なる考慮が拂はれたいと思ふのであります、又遞信省關係の預金部の第年二封鎖に依る所のものが七億圓、又年金が一億二千萬圓、大凡八億二千萬圓と云ふものは、是は第二封鎖に依つて、今果して拂はれるか拂はれないか分らないのでありまするが、是等郵便貯金或は年金の如きものは、國家が國家の名前に於て預かつた所のものでありまするが故に、日本國の存在する限り國家は永久に債務者であります、隨て特別に考慮を拂はれることが必要ではないかと思ふものであります
次に財産税の徴收及び企業再建及び金融再建の法案に關しまして、特に御願ひをしたいと思ふ點があるのであります、それは此の法案に依りまして、企業の再建が行はれ、多數の株主は財産税を取られ、補償打切りになりまして、非常に資力が減退して居ります、隨て全國に見まして其の數字を私明瞭に致しませぬが、百二十億とかある此の未拂込株券は到底之を支拂はうと致しましても實際上に於て支拂ふことが出來ない、現在の商法の規定の如く最後まで舊株主を追究致しました所が、實際に於て是は棄權されてしまふのでありまして、事實出來なからうと思ふのであります、又實際之を人情として考へましても、破産してしまつた會社に未拂込を取らうと致しました所が果して取れるものであるかどうか、最後の最後まで未拂込金を有する所の株主は逃げるに違ひないのであります、是等に對しましても、若し出來るならば拂込濟みの株券を發行すると云ふ特例も必要でありませうが、兎に角此の未拂込株券の問題に付ては十分に特例を御設けになりまして、是等の株主を保護して戴くことが必要ではないかと思ふのであります、殊に我が黨の苫米地議員から御願ひ致しましたやうに、株主も大株主はいざ知らず、小株主、小額の投資をなして居ります所の株主の場合に於きましては、特に何とか此の際御考慮を願ひたいと思ふのであります
次に財産税を徴收し、又企業再建をやりますることに依つて、未拂込株券が出て來ることも當然であります、又財産税の納入に依りまして、凡そ七割は現金にあらざる所の物納であると聞いて居るのでありまするが、此の場合澤山の株式が氾濫するのであります、そこで之を全部政府は物納として一端收納されるのでありますが、此の處置を十分に御考慮願はなければならないと思ふのであります、即ち此の株式未拂込及び財産税として納入致しましたる株式の保有機關、保有會社を設立致されることが一番必要であると思ふのであります、若しさう致しませぬでは、之に何等かの手を講じなかつたならば、全國の株式の價額、又物納に依つて入つて參ります所の不動産の價額は著しく低下致しまして、是が爲に日本の國の經濟は根柢に於て破壊されることと思ひます、政府に於かれましては特に此の證券保有會社及び土地の不動産の保有に關しましては十分の御考慮を御願ひしたいのであります、又其の場合に於きまして例へば市場性のない、融通性の少いやうな株式に付きましては、私は其の事業會社の從業員或は關係者、それ等の人々に出來るだけ持たせる、それ等の人々を新しく株主にすると云ふやうな方法を是非講じて戴きたいと思ふのであります、一般の資本金一千萬圓以上の大會社の場合に於きましても、此の場合に其の株式を出來るだけ公募したり、或は競賣にしたりすると云ふやうな方法に依らないで、出來るだけ此の株式を其の會社の從業員、勞務者に之を分ちまして、さうして株式の社會化、所謂株式の分散に依る所の勞資の眞の協力、株式の分散に依る所謂利益分配制度と云ふものを茲に實行し、さうして資本と經營とを合せ得た所の經營方針を執つて行つて戴きたいと思ふのであります、何れ出て來まする四百三十何億の財産税、或は證券、企業再建と金融再建に依りまする莫大なる株式の處置と致しましては、出來るだけ之を從業員に分散所有させて戴きたいと思ふものであります
次に全く方向は違つて居りまするが、今日問題になつて居りまする事柄は、緊急措置令に依りまして誰も一萬五千圓を一口と致しまして、それ以上は第二封鎖になつて居るのでありますが、此の場合早耳である所謂善良なる預金者でない、何れかと言へば惡辣なる預金者に於きましては、聞く所に依りますると色々の銀行或は金融機關に之を預けまして、さうして澤山の口數を持つて居る、一萬五千圓の限度を超えまして、是が幾口もある所の惡質なる預金者があるやうでありまするが、是等に對しましては何か手を打つて戴きまして、例へば一口の場合は一萬五千圓である、二口の場合になれば「スライディング・スケール」で段々之を低下致しまして、三萬圓を三萬圓以下にする、三口の場合は四萬五千圓が四萬五千圓でなくして、それ以下にする、段々其の金額が上つて行きましたならば、累進致しまして、善良なる所の預金者の爲に正義の觀念に立脚致しまして、是等不良なる預金者を矯正し、掣肘する方法を設けて戴きたいと思ふものであります
次に申上げますることは、是等の法案の運用に付きましては大藏省、商工省其の他に委員會が設けられます、又地方財務局にも委員會が設けられます、是等の委員會の機構に付きましては、從來は動もすると官僚的な政府の指圖に依つて委員會構成の人選が行はれて居るのであります、或はさうでなければ餘りにも金融機關或は資本家的な所の人々に依つて委員會が構成せられて居るのが過去の大藏省關係、商工省關係の委員會の實情ではなかつたかと思ふのでありまするが、今後は此の委員會に付きましては出來るだけ民主的な人々を以て組織構成されたいことを御願ひする次第であります、さうして只今の所に於きましては、御承知のやうに財産税、企業整備、金融機關再建、企業再建に依つて出て參りまする株式が何處へ行くかまだ分りませぬ、併しながら此の株式を──好ましからざる所の第三國人と私は敢て申しまするが、好ましからざる第三國人、或は又闇取引其の他戰爭終末前後に於ける所の戰時成金、斯う云ふやうな階級に是等の株式が流れて行くことに付きましては、政府に對しまして甚大なる注意を喚起したいと思ふのであります、即ち是等の株式有價證券が全く不正なる手段、或は又僥倖的なことに依つて得て居りまする階級、人々の手へ流れ出て行つて、其の結果企業の經營權其の他が從來の眞面目なる經營者の手から移つて行くと云ふことに對しましても十分なる御考慮を御願ひしたいと思ふのであります
次に一つ申上げて見たいことは、委員會の構成の民主化と共に、大藏當局、各地方税務官吏の倫理化、道徳化の問題であります、從來大藏省の役人各位は他の省よりも實に恪勤であり、精勵であり、人格的にも甚だ優秀であつた人が多かつたのであります、然るに最近此の物價騰貴其の他に依りまして收税官吏の各位は道徳も稍稍低下した感があるのであります、隨て今後は此の厖大なる所の徴税に當りましては、大藏官吏の官吏道を振興して戴きたいと思ふものであります、以上申上げましたことに依つて私の申上げることは大體濟んだのであります
最後に申上げて見たいことは、此の各種法案は平常ならば絶對に中々容易に私共の贊成を致し得ない所でありまするが、事外國の占領下にあります、又國家財政は將に破産に瀕して居ります、即ち我々はなすべからざる所の侵略戰爭をなしました結果、斯樣な災害を自ら招いたものでありまするが故に、私は之を天譴、天罰とも考へ、或は一つの戰爭をやつたことに依る所の一つの「ペナルテイ」、刑罰であるとも考へまして、茲に國民各位と共に涙を呑んで本案に贊成するものであります、隨て政府當局に於かれましては、此の法案の實行に當つては、財政經濟の健全なる發展を圖り、又國民生活の安定を圖ると仰せられて居る所の是等法案の提出理由に基きまして、是非とも其の最初の目的の通り、十分に滿腔の誠意と努力を以て之を實現すべく、政府當局に於かれましては格段の御努力あらんことを切望致しまして、私は本案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=15
-
016・本多市郎
○本多委員長 奧村又十郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=16
-
017・奧村又十郎
○奧村委員 私は日本社會黨を代表致しまして、本委員會に付託された各法案を一括して反對の態度を表明し、其の理由を述べことと致します
第一の理由を申上げます、是等法案の目的は戰爭に因つて生じた國家の凡ゆる債務に依つて形成せられた、所謂名目的擬制資本を切捨てて戰後の經濟再建をなすことであります、經濟の再建は一面から申上げれば、現在底なしに進昂しつつある「インフレ」を抑制することなのであります、隨て是等法案は飽くまでも「インフレ」對策と云ふ觀點から考究されなければならないと考へられます、此の「インフレ」抑制が是等の處置に依つて若し實現されないものとするならば、寧ろ是等の法案の目的が無價値になり、目的が達成されないばかりでなく、非常なる惡影響を來すものと考へるのであります、即ち各法案の最も核心の問題である資産の評價を如何に適正に行ひましても、「インフレ」が將來どんどん進昂致しますならば、評價の根據を失ひ、結局物を持つ會社、或は財産家は紙幣は納めるが財産は失はないこととなり、物のない大衆に犧牲が課せられる結果となるのであります、所が我々は今日までの短い審議時間ではありましたが、此の點に關し種々の質疑を行つた結果、是等の法案の實施に依つて「インフレ」が抑制される根據は何等示されないばかりか、「インフレ」益益昂進の不安を濃く致したのであります、即ち我が黨の稻村委員の質問に依つて、財政支出其の他に依る急激なる通貨膨脹の「テンポ」と生産の「テンポ」と大きな開きに依つて、益益「インフレ」が増勢して行くのであります、之を如何にして避けるかと云ふことが現下の「インフレ」對策の根本課題でなければならぬのであります、此の對策として財政經濟の徹底的な整理が必要なのでありまするが、それには我々は補償打切りと公債の棒引を同時に行はなければならぬと考へるのであります、然るに今囘の處置に依つて補償等一部の政府債務は解決致しまするが、今一つもつと大きな戰爭に因る國家の債務である軍事公債は、元利共政府は之に手を付けないと言明して居るのであります、此の軍事公債を整理せずして根本的經濟再建は絶對に我々は行はれないと考へて居るのであります、又年七十億に達するであらう公債の利子を此の上今後の赤字財政の上に負擔するならば「インフレ」の激化は洵に測り知るべからざるものがあると考へるのであります、財産税に於ても税收僅かに四百三十五億であつて、而もそれ等は今年度の財政に全部使用されてしまふ運命にあるのであります、以上の如く深刻な我が國「インフレ」抑制の爲に、徹底的な大手術が加へらるべきでありますのに、是等各法案は甚だ不徹底極まるものであります、不徹底な中途半端な手術は、將來又再び手術を要するものとなり、時間の經過の爲に遂には日本經濟を救ふべからざるものに陷れるものであると考へるのであります、政府は今日まで重なる不徹底なる政策の爲に、戰後經濟を今日の状態に陷れたのであります、再び又斯かる中途半端なる法案を提出致されたのでありまするが、我々は之には斷じて反對を致すのであります
第二點を申上げます、今次の戰爭に依つてあたら掛替のない命が數多失はれたのでありますが、財産に於ても先祖からの家、其の他の財産を燒失した戰災者が一千萬人ある、海外で財産を失つて歸國した引揚者が四百五十萬人もある、是等の國民の財産は、戰爭に依つて國家が其の財産權を侵害したものである、一方に戰爭に依つて莫大な利得を得て居る者がある、戰爭に依つて財産權を侵害せられた國民に對し、國家は殆ど何等の補償を致さないのに、一面此の戰爭利得の保有を國家は認めてはならないのであります、斷じて沒收致すべきであります、是は國家が戰後の處理として先づ第一に行ふべき事柄であると考へます、「マッカーサー」司令部も之に付て聲明致して居りますし、前内閣に於ても財産税の最初の發表に於て特に之に付て強調して來たのであります、然るに今囘法案の提出に付ては、政府は此の戰時利得沒收に付ては其の提案の理由に於て、目的に於て取上げて居りませぬ、併し我我は此の法案に依つて戰時利得の沒收が如何に行はれるかと云ふことを愼重に檢討したのであります、なぜかならば、此の法案以外に政府が何等の法案の準備を致して居らないと云ふことが分つて居るのであります、會社法人の資産の中に戰時中税を逃れた所謂戰時利得が隱されて居ると云ふことは紛れもない事實でありまして、是は前内閣も特に認めて、法人財産税に依つて高率の税率を課けんとしたものでありまするが、是は今囘廢止されて居ります、政府は戰時補償の打切りに依つて是等戰時利得の大部分は消滅すると云ふことを申して居りまするが、戰時補償打切りの影響を殆ど受けて居らない會社も隨分多いのであります、又財産税に於きまして、一方に先祖傳來の財産を其の儘守つて來た者に對しても、又戰時利得で一時に得た財産に對しても、同率一體の税を課して居るのでありますが、是では特に戰時利得を沒收したものとは義理にも言へない筈であります、斯うして戰時利得の面から見まして此の各法案は洵に不徹底極まるものであります、我々は戰災に依り、或は引揚に依り未だに人間らしき生活を致して居らないお氣の毒な人々に對して、此の政府の不徹底なる態度に心から憤懣を持つ者であります、是れ反對の第二の理由であります
第三に斯かる劃期的な税法は最も公正をこそ望むものであります、所が寧ろ此の各法案は洵に不公正なる點が多多あるのであります、是は數へ上げれば切りがない、最も大きなことを申上げますれば、企業整備に依つて特殊預金は既に政府に對する預金としてあつて、之をしも政府に對する戰爭に依る請求權として政府が破棄するのならば、戰時公債は政府に對する戰時の請求權としてなぜ破棄しないのであるか、理由は立たないのであります、大藏大臣は戰時公債の打切りは大衆預金の消滅となると云ふことを申して居りまするが、是は大いなる欺瞞であります、先般の金融緊急措置に依る第一封鎖、第二封鎖の處置の場合に於て、一個人が數箇或は數十箇の銀行に對してそれぞれ三萬圓以上の第一封鎖を作つて居るにも拘らず、之に對して政府は口を噤んで居る、斯う云ふ欺瞞と同じやうに、大衆預金であると云ふことは欺瞞の外ないのであります、之に對しては統計を以て申上げることも出來まするが、最近に於て資産家の相當の人人は其の預金を幾口にも分散する傾向になつて居りまするので、是等の點を詳細に調べ上げると云ふことは只今は不可能であります、斯う云ふ風に眞面目に政府に協力して來た企業の轉廢業者、此の廢業者の特殊預金さへも沒收すると云ふ風なことになつて、果して公正と云ふことが言へるであらうか、財産税に於て、又金錢的財産と物的財産に對する調査或は評價等に於て餘りにも公正を缺くことは、既に今日までの質疑に於て現はれて居る通りであります、如何に政府が答辯せられましても、所謂換物者を有利にすると云ふことは蔽へない事實でありまして、若し是等の法案が實施されるならば、是等の不公正が國民の思想に及ぼす影響は、唯さへ政府不信の思想の高まつて居る今日、益益それに拍車を掛けるものと言ふべきであらうと思ひます、政府を信頼して預貯金に一生の生活を託した正直な國民は、今日窮乏のどん底に喘いで居りますが、反面に政府の裏を掻いて投機思惑、買占して居る人々が益益富を積んで行くと云ふ此の不公正が益益甚だしくなるのであります、換物思想は益益盛んとなつて、此の面からも「インフレ」は拍車を掛けられるのであります、是れ反對の第三の理由であります
最後に、政府は此の戰後の窮乏した經濟再建の爲には、徹底的な財産税を課け、軍需補償を打切ると云ふことに依つて、日本の經濟は大きく社會主義國家に一歩足を踏出すのでありますが、此の必然の運命を故らに避けんとする傾向が明かに看取されるのであります、若し徹底的に是等の處置をおやりになるならば、金融機關、或は基礎産業等の國營の方向は必然のものであります、此の必然の方向を故意に避けんとして、是等の戰後再建を決する重大法案を骨拔きとして、産業資本、金融資本を擁護せんとして居るものであります、是が本各法案を不完全、不徹底なるものにならしめた根本原因であると考へるのであります、斯かる不徹底なる政策を續けて行くならば、日本經濟の滅亡は避けられないと考へるのであります、我々は戰後經濟再建に際し、今少し完全なる徹底的な方策を御立てになことを要求し、其の意味に於て、此の不完全なる本案には反對する譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=17
-
018・本多市郎
○本多委員長 秋田大助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=18
-
019・秋田大助
○秋田委員 私は協同民主黨を代表致しまして、此の委員會に付託せられて居りまする戰時補償特別措置法案外八件、但し企業整備資金措置法を廢止する等の法律案に付きましては、各派共同提案の修正案に依るものと致しまして、次の希望意見を附しそれぞれ原案竝に修正案に贊意を表するものであります
即ち日本經濟再建整備の基本條件は戰爭に因る擬制資本の全面的償却であります、主として此の全面的償却に依る損失の負擔は普く國民各階層の間に能力に應じて衡平に配分せられなければなりませぬ、此の根本の理念の具體化に付きまして政府當局と我々との間に見解の異なる所少しとしないのであります、例へば本案に依りまする補償打切りと財産税の徴集のみを以て致しましては、戰時利得及び闇行爲に依つて不當の利得を得たる者に對し措置に付き缺くるもの大でありまして、此の點我々の最も遺憾とする所であります、特に財産税法案を初め茲に提案付議せられましたる諸法案の中心を成す資産評價に關する倍率其の他具體的の諸問題が明確にされて居りませぬことは、是等諸法案に通ずる根本的の缺陷でないかと思ふのであります、爲に我々は此の法案のみを以て致しましては、課税物件の價格、或は資産の評價を具體的に明瞭に算出することは不可能であります、事情斯くの如き状態でありまするから、我々は是等諸法案審議の結果、最後の判斷を下すに躊躇せざるを得なかつたのであります、併し我が國が今日置かれて居りまする此の國際情勢に鑑み、内外の諸事情を綜合判斷致しまして、我々としては此の諸法案に對し不滿の點が多々あるのでありまするが、大乘的見地に立ちまして本諸法案の原案竝に修正案にそれぞれ贊成することに決意致したのであります、就きましては我が黨竝に他黨の同僚委員の諸君から指摘せられましたる質疑の諸點に付きましては之を大いに考慮せられまして、本諸法案附屬の諸委員會の構成竝に運營等に付きましては之を民主的にせられると共に、本諸法案實施に付き特に公平を旨とせられ、萬遣漏なきを政府當局に對し十二分の御注意を切望して已まないのであります、尚ほ財産税納入に付き他人の第一封鎖預金借入許可の件に付きましては、之を大いに考慮する旨藏相より答辯があり、又不動産や中小企業者の個人企業物件を擔保としての財産税納入資金の融通に付きましては、之を許可する方針なる旨是れ亦藏相の御答辯がありましたが、是等は是非實行せられるやう特に御願ひ致して置きます、尚又農家或は漁業家の財産評價中、牛馬、農機具及び漁船、漁業用諸具の評價に付きましては、農業及び漁業が國家經濟再建の基盤をなすものであり、且又時局柄食糧對策の見地から見ましても國民經濟上重要な役割を果しつつある點を十二分に御含みあつて、是等のものの課税評價に付きましては不當の處置にならぬやう、又生産増強上不當の障碍を起さぬやう政府當局の格別の御配慮を切に御願ひ致すものであります
次に昨日の質疑に於きまして私から沖繩縣所在の戰災物件に關する保險請求權の控除額に付きましては、内地所在の物件に關するものと同樣の處置取扱をなすべき旨主張致して置きましたが、此の點は關係方面との都合もあることと豫想致されますので、是れ以上の追究は致しませぬが、此の問題は政府當局竝に委員諸君も事情を御諒察下され、將來何等か是が缺陷を補正する方策に出られんことを沖繩同胞の爲め私より念願致すものであります
最後に一言申して置きたいことは、會期餘日餘す所少き爲め我々としては此の重大なる法案審議の徹底を期する上に付て少からぬ不便を感じたのであります、我々の大いに不滿とする所でありましたが、今後斯かる事態の再發を見ざるやう特に政府側の御配慮を切望致し、以上の希望意見を附し我々は本諸法案に付きまして原案竝に修正案にそれぞれ贊成の意を表する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=19
-
020・本多市郎
○本多委員長 穗積七郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=20
-
021・穗積七郎
○穗積委員 私は國民黨を代表致しまして、上程されて居ります諸法案竝に修正意見に對しまして贊成の意を表したいのであります、併しながら此の深刻なる措置が承認されます爲には、之が他から強制されたる已むを得ざる不本意の措置として我々が受取るのではなしに、敗戰後の日本經濟再建の爲には積極的に必要なる措置であると云ふ自信と方策の下に於てのみ是が承認さるべきものであると私は信ずるのであります
其の爲には先づ第一番に希望致して置きたいことは、此の緊急措置が執られます爲に國民經濟の間に於きまする公平を期することでありますが、特に戰爭犧牲者と不當なる戰爭利得者の間に於きまする社會化に依る公平を期すると云ふことに眼目が置かれなければならぬと思ふのであります、其の爲には示されましたる法案或は政府の御答辯の中に於きまして、未だ不十分なる缺陷或は無準備と云ふものを我々は發見するのでありますが、特に評價を基準竝に之を實行致しまする委員會の民主的構成及び運營、最後に之を責任を持つて執行致しまする税務機關の民主化竝に公平なる督勵を嚴重に行ふことを政府に於て特に意を用ひて戴きたいと云ふことを、私は先づ第一に希望意見として申述べて置きたいのであります
次に申述べて置きたいことは、此の重大なる措置が執られました後の我が國の經濟に於ける爾後の處置に付てでありまするが、第一番に希望致しますことは、生産復興に付てであります、補償打切りに伴ひまして、今まで正當なる經濟的な基礎を持ち、或は生産に對する能力を持つ者が、生産を一應打切られると云ふ非常な混亂を來す虞がありますので、之に對しましては、今まで質疑がなされましたる諸點を勘案されまして、爾後に於て積極的、指導的御援助をして戴きたい
第二に御願ひ致したいことは失業問題であります、此の二つの措置が行はれまして後に、我が國の經濟の安定竝に政治の安定を確保するかしないかと云ふことは、一に懸つて失業問題の處理にあると思ふのであります、現在まで此の問題が幾多の委員會其の他の機會に於きまして討議されましたが、政府は三段階に分けまして一應の失業對策意見を申述べられて居りますが、我我は斯の如きお座なりの對策を以て致しましては、今後の深刻なる日本經濟の孕みまする失業問題は、到底「フル・エンプロイメント」に依つて圓滿なる解決はなし難いと存じて居ります、私はどう致しましても、此の失業對策が社會化されましたる生産政策に依つて裏付けられなければならないと信ずるのでありますが、先程申しました補償打切り後に於ける生産の再開の方向は、其の社會化の方向を當然持つべきことを今後とも深刻に御考へになられまして、其の困難或は混亂を是正しつつ責任と率直なる反省を以て鬪つて戴きたいことを希望し、之に對しまして贊成するものであります
最後に後の處理の問題に付きましては「インフレ」の問題竝に税制改革の問題でありまするが、是は此の爲の措置が執られまして、一つは戰後の經濟的なる均衡化を圖ることと、もう一つは經濟の安定の爲でありまするが、現在まで御示しになりました法案、或は政策に依りましては、我々今後の日本の財政の健全なる確立竝に生産の復興に對しまして十分なる安心感を持つことが出來ないのであります、特に擬制資本の打切りに表裏致して居りまする擬制財政、即ち戰時公債の打切りの問題であります、此の度臨時的なる財産税を取られた後に於ける日本の經濟復興は遲遲と致して居りますが故に、所得税を中心とする税制の確立と云ふことは困難にならざるを得ないと思ひますが、さうなると公債の打切りの問題も、現在の時點に於きまする政府の御意思は別と致しまして、此切捨ての問題が必ず合理的に解決されることを我々は現實の見透しとして持ちまして、同時に又税制の根本的なる改革がなされることを確信し、我々も其の責任を分擔すると云ふ自覺に立ちまして、此の法案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=21
-
022・本多市郎
○本多委員長 中野四郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=22
-
023・中野四郎
○中野(四)委員 私は無所屬倶樂部を代表致しまして、本委員會に併託されました法案の中、財産税法案竝に財産税收入金特別會計法案に對しまして反對の意を表明するものであります、其の準據する所は大體社會黨に於て述べられましたが、我が無所屬倶樂部に於て特に此の二點を反對の理由と致しまして其の意思表示をしたいと存じます、それは我が國當面の大問題たる食糧増産に反するが如き財産税法案即ち農村漁村の實情を全然無視せる課税の方法、特に不動産賃貸價格の時價に對する基準を、審議機關たる本委員會の要求に應ぜざるが如き非民主的なる動向のある限りに於て、本員は財産税法案竝に財産税收入金特別會計法案に對しましては反對の意思を表明するものであります、其の他本委員會に併託されましたる所の戰時補償其の法案に對しましては贊意を表するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=23
-
024・本多市郎
○本多委員長 討論は終局致しました、採決致します、先づ企業整備資金措置法を廢止する等の法律案に付て採決致します、本案に對する社會黨を除く各派共同提案の修正に付き採決致します、此の修正に贊成の諸君は起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=24
-
025・本多市郎
○本多委員長 起立多數、仍て共同提案の通り修正に決しました──念の爲め只今議決致しました修正部分を除いた原案に付て決を採ります、修正以外の部分に付ては原案の通り決するに贊成の諸君は起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=25
-
026・本多市郎
○本多委員長 起立多數、仍て修正以外の部分は原案の通り決しました──次に財産税法案及び財産税等收入金、特別會計法案に付て採決致します、本案に付て原案の通り可決するに贊成の諸君は御起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=26
-
027・本多市郎
○本多委員長 起立多數、仍て本案は可決確定致しました──次に戰時補償特別措置法案、金融機關再建整備法案、特別和議法案、大藏省預金部等損失特別處理法案、厚生年金保險法及び船員保險法特例案、企業再建整備法案に付て一括採決致したいと思ひます、以上各案に付て原案の通り決するに贊成の諸君の御起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=27
-
028・本多市郎
○本多委員長 起立多數、仍て各案は可決確定致しました──次に自由黨、進歩黨、協同民主黨及び國民黨各派共同提案に成る財産税法案に附する、附帶決議に付き採決致します、此の附帶決議を附するに贊成の諸君は御起立を願ひます
〔贊成者起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=28
-
029・本多市郎
○本多委員長 起立多數、仍て本附帶決議は之を附するに決しました
此の際一言御挨拶申上げます、此の重要法案の審議に當りましては不慣れなる私が委員長として洵に不行屆き勝ちでありましたに拘らず、大過なく總ての法案を議了することが出來ましたことは、偏に各位の御同情の賜でありまして此の際衷心より御禮を申上げて御挨拶に代へる次第であります(拍手)
之を以て本委員會の議事は全部終了致しました、是にて散會致します
午後三時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012048X00619461005&spkNum=29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。