1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月十二日(金曜日)午前十時三十六分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 本多市郎君
理事 本間俊一君 理事 中村高一君
理事 永江一夫君 理事 大原博夫君
理事 竹谷源太郎君 理事 丸山修一郎君
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 大久保留次郎君
高橋英吉君 細田忠治郎君
松永佛骨君 水口周平君
綿貫佐民君 小野瀬忠兵衞君
小池新太郎君 佐伯忠義君
鈴木明良君 坪川信三君
八坂善一郎君 大矢省三君
岡田春夫君 堤隆君
細田綱吉君 宮村又八君
矢尾喜三郎君 稻田健治君
駒井藤平君 伊藤實雄君
中野四郎君 中田榮太郎君
細迫兼光君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 是より開會致します、本委員會に審査を付託されました議案は、東京都の一部を改正する法律案、市制の一部を改正する法律案、町村制の一部を改正する法律案、府縣制の一部を改正する法律案、衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案以上五件であります是より會議を開きます、内務大臣に提案理由の御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=1
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002・大村清一
○大村國務大臣 東京都制、市制、町村制及び府縣制の四つの法律案の改正の趣旨に付きましては本會議に於きまして御説明を申上げたのでありまするが、茲に再度主要なる事項のあらましを御説明申上げます、政府は「ポツダム」宣言受諾の精神に則りまして、政治、經濟、文化其の他凡ゆる部面に於きまして、鋭意民主主義化の努力を進めて參つて居るのでありまして其の總ての活動の根幹をなし、國政運營の基本となるべき新憲法草案は既に審議が進められて居るのでありますが、是と相竝行致しまして現行地方制度の民主主義化を圖りますことは、特に現下の情勢に照應して考へて見まする時、新日本建設の基盤をなす最も重大なる事項であると存じます、即ち新しき平和日本の建設には何よりも先づ國民各自の自覺と責任觀に基く能力の最大限の發揮が必要でありますが、是が爲には國民の自發的熱意と、積極的協力とをも最端的に且つ合理的に結集し、反映せしめ得るが如き機構と其の運營方法が、制度それ自體の上にも採用せられることが肝要であると存じます、殊に地方自治は、國民に最も緊密な、而して直接的な關係にある地方團體の政治でありまして、隨て地方自治の本旨に則り地方自治を民主主義化致しますことは、新しい民主主義的政治確立の第一の捷徑であり、地方自治民主化の確立に依りまして、健全なる國政民主化の確乎たる地歩を築き得るものであると考へるのであります、斯くして地方自治が眞に地方住民の意思に基き、地方の實情に應じて運營せられ、地方自治團體をして自主的にして堅實なる發達を遂げしむることを得まするならば、自らにして國民全般の巧まざる協力的態勢が整備せられ、現下の危局の打開及び國力の速かなる囘復に裨益する所少からざるものがあると信ずるのであります
以上のやうな見地に基きまして、地方自治制度に大改正を加へますることは、一日の遷延を許さざる刻下の急務であると信じまして、新憲法草案の精神を採入れ、茲に東京都制、市制、町村制及び府縣制竝に北海道會法及び北海道地方費法等、現行地方自治制度全般に亙りまして、全面的な改正を行ふことと致した次第であります
次に地方制度改正の根本方針に付きまして少しく申上げたいと思ひます、第一には地方自治團體の自主性乃至自律性の強化と云ふことであります、地方自治と申せば、地方自治團體が自らの公の事務を、自らの機關に依つて處理することでありまするが、國家の大局的立場に背かない限り地方自治團體をして出來得る限り自由に活動せしむること、即ち其の自主性を強化致しますることは、正しく自治の本旨に適合する所以であると考へられるのであります、仍て先づ地方自治團體の固有の權能を更に擴張することに致したのであります、地方自治團體の種類と性格とに依りまして、其の取扱ふ所のものは異つて居ることは申すまでもないのでありますが、所謂不完全自治體たる府縣に、府縣住民の制度を新たに設け、府縣住民は府縣の財産、營造物を共用する權利を有すると共に、其の負擔を分任する義務を負ふものとし、或は東京都の區に對しまして、新たに自治立法權及び財政自主權を認めることと致しましたのは、此の趣旨に即應するものであります、又完全自治體と稱せられて居ります所の市町村に於きましても、將來國政事務と自治事務との間に、適當な調整が行はれるに從ひまして、自治事務の範圍が漸次擴充せられ、市町村の自治權の内容が一段と實質的に豐富なものとなることが期待されるのであります
次には地方自治團體に本來認められて居りまする自治權の發動に對する制限拘束を大幅に整理することと致したのであります、自治團體に固有の權能が認められて居りましても、其の權能を實際に行使するに當りまして、煩雜な國家的干渉が纒綿致しまするならば、勢ひ地方自治團體の自主的活動は萎縮することに相成るのであります、今囘の改正に當りまして、監督官廳に依る市長の選任、町村長の認可に關する手續を改め、或は市町村の許可、認可事項を大幅に整理致しましたが如きは、地方自治團體の自律性を尊重し、其の自主的活動を活溌ならしめんとする趣旨に外ならないのであります
第二には地方自治團體に於ける自治行政の運營方法に付きまして、住民が參與する部面を増大し、住民に依る地方自治の本姿を顯現せしむることであります、地方行政の溌剌とした運營を圖ります爲には、地方住民をして地方の行政を自分の行政であるとする觀念に徹せしむる必要があります、是が爲には住民の意思を行政の各部門に亙りまして反映せしむる措置を講じなければなりませぬ、斯くすることに依りまして地方行政は、初めて衆民政治の本義に立脚することとなりますと共に、住民自身に自覺と責任とを喚起せしむることとなると存ぜらるるのであります、公民權及び名譽職制度を廢止しまして、曩の衆議院議員の選擧權の擴充に即應致しまして、地方議會の議員の選擧權及び被選擧權を擴張し、遍く其の住民に之を享有せしめ、女子に對しましても亦男子と同等の權利を與へることとし、或は其の首長たる府縣知事、市町村長等を住民の直接選擧と致しまする外、進んで是等の者の罷免及び地方議會の解散等を請求する權利を認め、所謂直接參政の途を開くことと致しましたのは此の趣旨に依るものであります
次に議決機關たる地方議會の權限の擴張であります、住民の直接參政を基盤として運營される地方行政の中心機關は、申すまでもなく執行機關であります所の府縣知事、市町村長等と、意思機關である所の地方議會とであります、民主主義的要求は民意を背景として選出されました執行機關が強力なものであることを要請致しますと共に、執行の基礎となるべき地方自治團體の意思の決定と其の決定の方法に付きましては、議決機關自らの責任に於て自由に之を決定せしめる建前とすることが至當であると信ずるのであります、議決機關たる地方議會の權限を擴張し、更に其の積極的活動を促します爲に、地方議會の定例的な活動を規定致しましたのは、此の趣旨に出づるものに外ならないのであります
第三には、地方行政事務執行の公正を確保することであります、地方自治團體の活動の範圍が擴張せらるるに從ひまして、其の行政事務の執行は飽くまでも公正を確保せしめ、苟くも專恣に流るるが如きことなからしむることが必要であります、此の意味に於きまして本改正案は新たに二種の制度を採用せんとして居るのであります、其の一つは、將來選擧の重要性は益益加重せられるものと想像されるのでありますが、之に伴ひまして選擧の公正を確保致しますることは地方政治の基本的要件と考へられるのでありまして、選擧事務の執行に遺憾なからしめ、且つ之に客觀性あらしむる爲に、選擧事務全般の管理に當る選擧管理委員會を設置することとしたのであります
次に地方團體の住民又は地方議會は、執行機關の行政事務の執行を常に監視する權限を與へられて居るのでありますが、何分にも地方自治團體の執行する行政事務は複雜多岐に亙つて居るのであり、其の執行の適否は、住民の權威と、專門的知識とを兼ね備へた常置機關の精密な監査に依らなければ、正確なる判定を下すことは困難であります、此の趣旨に於きまして監査委員を設置し、地方自治團體の行政事務全般の監査に當らしめることと致したのであります
以上は地方自治制度改正の根本方針でありますが、以下其の改正の主要なる事項に付きまして説明を申上げたいと思ひます、第一には、地方議會の議員の選擧權及び被選擧權の擴充に關することであります、即ち曩の衆議院議員選擧法の政正に即應致しまして、廣く地方の住民に對しまして地方自治團體の選擧に參與する途を開く爲に、議員の選擧權の年齡を二十年、被選擧權の年齡を二十五年にそれぞれ引下げますると共に、破産者にして復權を得ざる者、貧困に因り生活の爲め公私の救助を受け又は扶助を受くる者等にも選擧權を與へ、又女子にも男子と同等の選擧權及び被選擧權を認めることと致したのであります
第二には、地方住民に對し、地方團體の首長たる都長官、道長官、府縣知事、又は市町村長を直接選擧する權利の外、各種の直接參政の權利を認めたことであります、即ち地方團體の首長を選擧するばかりでなく更に進んで地方團體の首長竝に地方議會の議員、選擧管理委員及監査委員の罷免を要求し、或は地方議會の解散、條例、規則の制定及び地方自治團體の事務に關し、監査委員の監査を請求する權利を認め、地方住民と地方政治とを直結せしむる措置を講じたのであります
今是等の直接參政權の中で、地方長官の罷免請求權に付て之を見まするに、東京都にあつては二十萬以上、府縣にあつては五分の一、其の數十萬を超過する時は十萬に制限致します、府縣にありましては五分の一に當る選擧人が連署して、其の代表者が内務大臣に對して理由を具して解職を請求した場合、内務大臣は關係者の出頭を求めまして之を審査し、解職の請求が理由ありと認められた時は、官吏免官の手續に從ひ解職の措置を講ずることとなる譯であります
又條例、規則の制定を請求する權利に付て之を見まするに、各地方自治團體に於ける選擧人の五十分の一に當るものが、連署を以て其の代表者から條例、又は地方議會の議決を經るべき規則の制定を地方自治團體の首長に對して請求致しました時は、府縣知事等は地方議會を招集しまして之に原案を付議することを要するのであります
第三には、選擧管理委員會の設置であります、申すまでもなく、選擧手續は選擧人名簿の調製から當選者の決定に至るまで、總て地方自治團體の執行機關に於て處理して參つたのであります、併し選擧事務執行の公正を擔保し、選擧人の信頼を確保する爲には、何等か客觀的な獨立の機關をして之が處理に當らしめる必要がありますのと、他面地方自治團體の首長が此の度選擧人の直接選擧に依ることとなつた爲め、現任首長が現職の儘立候補する場合も考へられるのでありまして、此のやうな場合に於きまして、現任の首長が選擧事務掌理の任に當りますことは不合理であると申さなければなりませぬ、故に東京都を初め、府縣及び市町村毎に選擧管理委員會を設けまして、此の管理委員會をして選擧事務掌理の任に當らせることに致したのであります、選擧管理委員會は、各地方議會の議員の選擧權を有する者の中から、地方議會に於て選擧された選擧管理委員四人又は六人を以て構成され、選擧に關する方針の決定に當るのであります、併し其の方針に從つて實際の事務を執行し、或は投票管理、開票管理等の衝に當りますものは別に之を定めることと相成つて居るのであります、即ち投票管理者、開票管理者及び選擧長竝に各種の立會人は、それぞれ管理委員會が選任した者が之に當りますると共に、名簿調製、投票事務、開票事務等の實際の事務は、地方自治團體所屬の官吏、吏員を委員會の書記と致しまして之を處理せしめ、選擧事務執行の公正を圖ります一方、之が圓滿なる運營に遺憾のない措置を講じた次第であります
第四には、地方議會の權限の擴充と其の地位の強化であります、即ち地方自治團體の意思機關であります所の地方議會の活動を更に積極的ならしめますことは、地方自治の發展に缺くべからざる要件をなすものであると認められますので、此の際地方議會の權限を出來得る限り擴張し、其の地位の自主性と獨立性とを強化することと致したのであります、先づ議決事件の擴張を圖り、所謂列擧事項以外に條例を以て地方議會の議決すべきものを定め得る權限を認めることに致しました、更に都議會又は府縣會に對しても、都又は府縣の事務に關する書類等を檢閲し、又は議決の執行及び出納等を檢査する權限を付與し、其の他財務等に關し理事機關が異議の決定をなします場合は、參事會又は町村會に諮ることと致しました、更に、地方議會は定例的に毎年四囘乃至六囘招集することを要するものとすると同時に、會期及び其の延長竝びに開閉に關する事項は、地方議會自らの決定に委ねることとして、其の自主性の確立を圖つたのであります、又參事會の議長及び副議長は、總べて參事會員の中から之を、選擧するものとし、又町村會にも原則として議長及び副議長を置き、町村會議員の中から之を選擧するものとしたことも、地方議會の自主性を尊重せんとする所以に外ならないのであります
第五は都長官、府縣知事及び市町村長等地方自治團體の首長に關する事項であります、新憲法草案第八十九條第二項には、「地方公共團體の長……は其の地方公共團體の住民が直接これを選擧する」と規定せられて居りまして、地方公共團體の首長の直接公選の原則を明かに致して居るのであります、地方公共團體の長、特に府縣知事等の公選は、獨り地方行政の民主化を實現致します上に付ての最も重要な鍵でありますのみならず、行政運營の全般に付いて其の影響を及ぼす所は蓋し甚大のものがあると存じます、府縣知事等の公選に依りまして、從來の地方行政に於ける過度の中央集權と官治の弊を是正し、且つは任期を定めることに依つて、其の頻々たる更迭に依る弊害を除去して地方政治を安定し、地方自治團體の明朗にして濶達なる自主的發展を圖ることが可能となり、之に依つて始めて全體の協力的態勢が整備せられるものと考へるのであります、而して公選の方法には、選擧人をして選擧委員を選擧せしめ、此の選擧委員をして府縣知事等を選擧せしめる方法、地方議會をして選擧せしめる方法、或は地方議會の議員其の他地方に於ける各種團體の代表者を以て選擧母體を構成せしめて選擧せしめる方法等、種々考慮せられるのでありますが、公選知事をして住民の眞の公僕たらしめ、民意を背景として強力な施策の遂行を可能ならしめる爲には、民意を直接に表現せしめる直接選擧に依ることが適切でありまして、此の理は市町村長の選擧に付いても異なる所はないのであります、併しながら、此の結果として特に所謂府縣割據の弊を助長し、食糧政策其の他現下緊要なる國家諸施策の遂行に支障を來すが如きことなからしめる必要があり、又現行の國家諸機構との間に調和を保たしめることも必要でありますので、府縣知事の身分は之を官吏とし以て國家的要請と地方的要求との間に、適當なる調和あらしめることと致さんとするのであります、府縣知事又は市町村長等の選擧は、供託金の額及び法定得票數等に若干の特例ある以外は、概ね地方議會の議員選擧に關する手續に準じて之を執行することと致して居り、是が管理には地方議會の議員の選擧管理委員會が當ることとして居るのであります、即ち府縣知事の選擧權は帝國臣民にして三十年以上の者、市町村長の被選擧權は帝國臣民にして二十五年以上の者に之を認めることとし、特に住居要件を求めることとしなかつたのでありますが、是は苟くも民意の存する以上、地方自治團體の首長たるものは一地方に住居を有する者に限定せず、廣く適材を天下に求めることを得せしめるのが適當であると考へたからに外ならないのであります、又市町村長候補者が立候補せんとする時は、町村の實情に即應し供託金の制度を採用せず、選擧人三十人以上の連署を要求することとし、所謂人的保障制を採ることと致しましたが、更に府縣知事等の選擧に當つては其の區域が廣大でありますのと、其の選擧の性格上激甚なる競爭が行はれ、選擧運動費用も亦從つて増嵩することを豫想せられますので、運動費用の節減を圖り、併せて選擧執行の公正を期する爲め、選擧公營を行ふこととし、選擧公報の發行及び演説會場の施設の公營を實施することとしたのであります、斯くして選任せられた地方自治團體の長は民意を基盤とし、強力なる首長として地方の行政を強力に推進することを得る譯でありますが、他方其の活動をして節度あらしめ行過ぎを是正する爲に、常に其の行動を監視し、必要ある場合に於ては之を控制する方途を講じて置くことが民主主義政治運營上の必要條件であると思ふのであります、本改正案に於きましては、選擧人に對しては解職請求權を認めると共に、地方議會に對しては首長不信任の決議をなす權限を認めることとしたのであります、之に依り地方議會が府縣知事等の不信任の決議をなしました時は、府縣知事等は内務大臣に對して地方議會の解散を請求することを得るのであり、而も解散後の地方議會に於て更に不信任の決議をなされた時は、既に一般住民の信任なきものとして府縣知事等は退職することを要するのであります
第六は監査委員の設置であります、地方自治團體特に都道府縣及び大都市の處理する事務が廣汎繁多となるに從ひまして、其の事務事業の執行の状況を審査して非違を正し、地方の住民及び議會に常に公共事務の内容の實際に付いての資料を提供せしめることは、地方自治團體の事務執行の公正と、能率の向上とを圖る上に缺くべからざることであるのみならず、地方の住民及び議會に對して、自治に對する責任と自覺とを喚起する上にも必要と考へられるのであります、監査委員は斯かる目的の爲に設置されるものであり、地方自治團體の首長が地方議會の同意を得て、地方議會の議員又は學識經驗ある者の中から各各一人乃至三人宛選任するのであります、監査委員は地方自治團體の經營に係る事業の管理、其の出納、其の他地方自治團體の事務の執行を監査する一般的權限を有して居り、毎會計年度少くとも一囘の定期監査、或は監督官廳の命令又は地方議會の要求其の他臨時の必要ある場合の臨時監査、或は一定數の選擧人から請求があつた事項に關する監査等を行ふものであります
以上は東京都制、府縣制、市制及び町村制の改正法律案中其の全般に共通する重要事項の概略を申述べたのでありますが、次に是等の改正法律案中、特殊事項の主なるものに付きまして申述べたいと存じます、先づ選擧區に關する事項でありますが、先般の衆議院議員選擧法の改正に依りまして、市區町村の區域が原則として選擧區とせらるることとなつたのでありますが、之に即應して、東京都議會議員及び府縣會議員の選擧に際しても、原則として市區町村の地域を以て開票區とすることとして、開票の迅速を期することと致しますと共に、戰災等に依る人口異動の激甚なるに對處致し、餘りにも人口の少い選擧區の發生を防止する爲め、東京都及び府縣竝に市制第六條及び第八十二條の市に於ては、數選擧區を合せて一選擧區を設け得ることとしたのであります
次に地方自治團體に對する監督規定を整理致しますことは、其の自主的なる活動を促す所以であると考へまして、市町村に對する監督規定を相當大幅に縮減することと致しましたが、其の結果、例へば基本財産の處分、分擔金の新設又は變更等は、地方長官の許可を受くることなく、市町村獨自の判斷に依つて之を處理し得ることと相成つたのであります
次に北海道は從來府縣とは別個の取扱をなして參つて居るのでありますが、其の近年の發達の状況を見まするに、自治體としての面に於きましては、最早一般府縣と異る取扱をする理由は消滅して居るものと考へられますし、現に法律上も北海道會法及び北海道地方費法施行以來、數次の改正に依つて、府縣の場合と實質的に差異がなくなつて參つて居りますので、此の際北海道會法及び北海道地方費法は之を廢止することとし、府縣制を道府縣制に改め、北海道にも新しき府縣の制度を其の儘適用することと致しました、尚ほ公民制度の廢止等に伴ひまして、北海道に特有の指定町村の制度も廢止することと致したのであります
最後に東京都の區に付きましては、都の一體性を害しない限りに於きまして、之に最大限度の自治權を與へ、其の自治的發達を促進致しますことは、延ては都政全般の進展に寄與するものと考へまして所要の改正を行つたのであります、即ち區に付きましても區住民の制度を認めて、區の營造物を共用する權利を有し、區の負擔を分任する義務を負ふものとする外、區民の參政權、自治立法權、財政自主權其の他各般の自治的權能に付きまして、町村に準じて適當なる擴張を圖つた次第であります
以上を以て都制外三法案の大體の説明を申上げた次第でありまするが、次に昨日當委員會に付託せられた衆議院議員選擧人名簿の臨時特例に關する法律案の提案の理由竝に其の内容の大綱に付きまして、此の際重ねて御説明申上げます
御承知の如く府縣會議員の任期は八月三十一日、市町村會議員の任期は九月二十日を以て滿了することと相成つて居るのでありますが、是が爲に使用致します名簿と致しましては、昨年九月十五日現在で調製せられ、其の後數次に亙つて補完せられました現在の衆議院議員選擧人名簿を用ひることに相成つて居るのであります、然るに是等の地方議會の議員の選擧權に付きましても、今囘曩に説明致しました地方制度の改正法律案に依りまして、選擧權の大擴張が行はれることに相成つて居るのみならず、住居期間も二年より六月に短縮せらるることになつて居りますので、現在の儘の衆議院議員選擧人名簿を利用することは困難でありますが、又此の名簿自體に付きましても、所謂脱漏問題と云ふ遺憾な問題を惹起して居るのでありまして、加ふるに調製期日が數囘に亙つて居りまして、殊に昨年の九月十五日現在で作つた基本の部分は、其の後の住居異動等の爲め甚だしく實情に副はなくなつて居る憾みもあるのであります、此のやうな次第でありますので、此の際寧ろ姑息的な補正手段を棄てて、出來得る限り速かに新たに一つの選擧人名簿を調製して、選擧人を正確且つ漏れなく把握すると共に、名簿自體を簡明ならしめ、秋の地方議會の議員の總選擧其の他の選擧に備へることが適當であると考へまして、本案を立案致した次第であります
本法に於て規定せんとする要點の第一は、本年九月十五日の通常選擧人名簿の調製期を繰上げまして調製致すこと、第二は名簿調製義務者を、今次の地方制度の改正に依り設置することになつて居りまする選擧管理委員會とすること、第三は六月の住居期間の要件を原則として復活することであります、第一の選擧人名簿の繰上調製に付きましては、本年九月十五日現在で調製することとなつて居る所の衆議院議員選擧人名簿及び東京都制、市制、町村制其の他の規定に依つて調製する選擧人名簿は、之を出來得る限り繰上げて速かに調製する、八月十五日とか八月二十日と云ふやうに出來るだけ繰上げまして調製することと致し、以て主として、秋の地方議會の議員の選擧に備へる、其の爲に調製なり縱覽等に關する期日や期間の定めも命令を以て定め得ることに致した次第であります
第二の選擧管理委員會でありますが、衆議院議員の選擧事務も此の種の機關をして處理せしめることが適當であると考へられるのであります、併し衆議院議員選擧法の改正は他に尚ほ重要な問題があるのでありまして、根本的解決は擧げて今後の研究に俟たなければならない所でありますけれども、今秋の地方議會の議員の選擧を當面の目標として今囘臨時に調製せんとする衆議院議員の選擧人名簿には、先づ以て選擧管理委員會をして之に當らしめると云ふことが適當であると認められますので、特に之に付て規定を設けようとするのであります
第三の、六月の住居要件の復活でありますが、昨年九月緊急勅令を以ちまして衆議院議員選擧法第十二條の特例を設け、昭和二十一年十二月十九日までに施行せられる衆議院議員の選擧に用ふる選擧人名簿に登録せられます爲には、六月の住居要件を要しないことと規定せられたのであります、是は一に當時の特殊事情に依るのであります、即ち疎開者又は戰災に依る避難者に對して、出來得る限り國政參與の機會を與へさせようとするものであつたのであります、併しながら終戰後既に相當の日時を經過致しました今日に於ては、其の間の事情は一變致したばかりでなく、更に住居要件の撤廢其のものが、實は名簿脱漏の主たる原因の一つであつたことにも鑑みまして、本法に依つて調製せんとする選擧人名簿には其の特例を適用せず、名簿に登録せられます爲には、原則として六月の住居要件を具備することを必要とすることに改めんとするのであります、何卒御審議の上御協贊あらんことを御願ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=2
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003・中島守利
○中島委員長 午後一時まで休憩致します
午前十一時二十三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=3
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004・会議録情報2
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午後一時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=4
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005・中島守利
○中島委員長 休憩前に引續き是より會議を開きます、通告順に依りまして質疑を許します──岩本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=5
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006・岩本信行
○岩本委員 私は先日の本會議に於きまして御尋ね申上げました點に付て、御答辯の中洵に不滿足なる點及び疑義のあります點に付て、二、三御尋ね致しますことと、及び新たな問題に付て一つだけ御尋ねをしたいと存ずるのであります、先づ此の間の本會議の提案理由の説明の中に内務大臣は、憲法草案と竝行して現行地方自治制度の徹底的民主化を圖りますことは、特に現下の情勢に照應して考へます時、新日本建設の基盤をなす最も重大な事柄であると存じます、と斯樣に申されて居るのでありまして、徹底的民主化と云ふ所へ非常な力を入れられたのであります、そこで此の間の本會議を全部通觀致して居りますと、色々の問題に誰しもが思ひ思ひで觸れられたのでありますが、殆ど共通的に強く觸れられました問題は、所謂大臣の提案理由の説明にあります所の、徹底的民主化と云ふ此の御言葉に對應するものでありまして、結局今囘の知事を公吏にするか、官吏にするか、斯う云ふ問題だけは殆ど異口同音に取上げられたと思ふのであります、そこで此の問題がなぜ取上げられるかと云ふことになりますと、甚だ遺憾なことではありますが、日本のものとすると、何百年と云ふよりは寧ろ何千年に亙りまして官尊民卑の傾向があり、傾向だけでなく實質的にもさう云ふ行爲があつたのでありまして、それが本當に徹底して横暴を極めましたのが戰時中であります、取り分けても知事の行爲として私共が實情を眺めまして洵に大變なことだと思ひましたのは、要するに配給の權利と云ふものを持つて居りました爲に、其の配給權を濫用致しまして偏愛偏見、自分の好いた所へは無性に出す、自分の嫌つた所へは會社、工場等に對して、資材にしても或は其の他砂糖とか醤油とか、さう云ふ物資の配給の面に於きましても、其の配給の權限と云ふものを利用致しまして非常な無理をして居る、是等の實情を眺めさせられまして、今囘地方制度が民主化する上に於きましては、どうしても此の知事を公吏にしなければ駄目だと云ふことは、實情と照し合はし、而して又長年の感情も激發致しまして、茲に此の叫びが上つたのだと私は考へて居るのであります、そこで政府の説明が私共に能く分らないのでありますが、成程所謂徹底的民主化でありますから、公吏の方が宜いだらう、併し日本の現状は警察官が官吏である、「アメリカ」では警察官まで公吏ださうでありますが、兎に角其の他の縣廳都廳の役人が官吏である、さう云ふのを公吏が使つて行くと云ふやうなことが、色々の面に於て支障を來す、所謂此の問題は過渡的に考へて將來は公吏制を用ひるのだが、今の所はさう云ふ事情と照應して取敢ず官吏にしたのだ、斯う云ふ御意見であるかどうか、或は徹底的に今當局の御考へとしては官吏制度で、日本とすれば飽くまでそれで行くのが宜いのだ、斯う云ふことで御考へになつて居るのかどうか、此のことを先づ御尋ね申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=6
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007・大村清一
○大村國務大臣 只今私の提案説明を御引用になりましての御尋ねでございました、一寸辯解をするやうでありますが、實は御手許の方に刷り物を御廻はしして居りまして、説明を致します場合に其の刷り物を一應準備して居つたのでありまするが、尚ほ能く考慮致しまして、言葉の過ぎて居るやうな點は、實際の説明に當りましては相當補正を致しまして御説明を申上げた積りであります、只今御指摘の點の徹底的民主化を圖ると云ふのは、私は言葉が少し過ぎると思ひまして、速記録には徹底的と云ふ文字は省略して申上げて居る筈であります、尚ほ其の他印刷物の中には其のやうな補正を相當に加へて居ります、其の私の述べざる所の印刷物が御參考に廻つて居りますのは、私の頗る遺憾とする所でありますから、是は一つ後で事務の方で直して貰ふ積りで居ります、其の點を一つ御斷り申上げます、此の樣なことを申上げますのは、丁度御尋ねの所に御答へする前提として極めて必要だと思ふのであります、と申しまするのは此の際新憲法の精神に遵ひ、又日本民主化の要求に應じまして、地方制度を民主主義化するに付きましても、やはり日本の國情又從來の沿革と云ふやうなことから、一足飛びに理想の彼方に飛んで行くと云ふことは、政治の實際として適當でないと云ふ考慮を加へる場合が相當に必要であらうと思ふのであります、只今御尋ねになりました府縣知事を公選致しまして、それを特に官吏とすると云ふやうな措置を執りました所以のものも、我が國の行政制度及び官吏制度の全般との調和に於きまして、又我が國の現状が府縣を完全なる自治體にしてしまふと云ふことが、食糧政策、經濟政策、或は治安の問題と云ふやうな面から檢討致しまして、御尋ねの如く時期尚早と言はなければならぬ部分もありますので、それ等の全體を睨合せまして、今日地方制度を民主化するに當りましては、提案致して居ります程度を以て最も適切なりとし、他の言葉で申しまするならば、一應滿足し、今後日本の民主化が各方面に亙つて徹底するに從ひましては、更に地方制度に於きましても民主化の躍進を策すると云ふ時期があるものと私は信じて居る次第であります、大體でありますが一應其のやうに御答へ致しまして、尚又御尋ねに依りまして更に御答へ申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=7
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008・岩本信行
○岩本委員 徹底的と云ふ言葉を御取りになつたやうでありますが、さうするとまあ唯民主化、少しばかり民主化、斯う云ふ御考へで居りますことは非常に私共不滿とする所であります、一體知事を公吏にするか、官吏にするかと云ふ問題は、先程前提に申上げましたやうな趣旨から割り出すのでありまして、是はもう國民の輿論でなくて、恐らく總意だと思ふのであります、今の閣僚を除いた以外の總意だと思ふ、さう云ふ風になつて居りますから、此の「徹底」の言葉を削られた意味と對照しまして、非常に不滿足の意を表します、之に對する態度は追つて我々の方でも決まると思ひますが、今少し御考へ直しになることが、必要だと云ふことだけ此處で申上げて置きます
それから戰災地の財政問題でありますが、府縣廳へ相談して見ましても、此の儘ではどう仕樣もないのであります、結局此の間も本會議で申上げましたが、所謂府縣の收入の戰爭に因る災害に依つて響きました分は、所謂國税附加税が極端に減つてしまつた、地租の附加税家屋税の附加税、營業税附加税、是が減つた、それから分與税の中の還付税が當然として減つて來た、それから獨立税の、所謂課税對象を失つてしまつた、斯う云ふことでありまして、之を補ふ上に於ては、たつた一つ分與税中にあります所の配付税、是れほかないのでありますが、此の配付税に付きましても、是れ亦此の間申しましたやうに、今までの内務省の御考へ方では、大體に於て人口を標準にする、其の人口は悲しい哉亦此の戰災地は減つてしまつた、斯う云ふことで、之をどうするかと云ふことを此の間御尋ねしたのでありますが、滿足な答辯を得られなかつたのであります、所謂戰災地が成り立つて行くと云ふことでなくちやならぬのであります、之に對して此の間の御答辯に依ると、新しく府縣民税と云ふものを設けた、市町村には市町村民税と云ふものを設けた、斯う云ふことでありますが、其の府縣民税、市町民税、是は別に今まで以上貰ふのではなくして、戰災で苦しんで居ります者が、新たに負擔をするんだ、少しもお蔭がなくして、自分等の苦しい中から新たに負擔するんだ、斯う云ふ新税でありますから、是は戰災地の財政を緩和しようとする上には何の役にも立たぬ、唯取る方法を許してやるんだ、斯う云ふことだけになる譯であります、所謂今までの行き方の國税附加税、分與税、下渡金、獨立税斯う云ふ方法でなく、新しく何かで之を補ふと云ふ御考へがあるのかどうか、其の點を一つ御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=8
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009・大村清一
○大村國務大臣 地方財政の現況に即應致しますやうな措置を執ります點に付きましては、近く政府の豫算が提出せられます機會に、地方財政及び税制に關する諸案も提出する運びになつて居ります、是は關係筋との連絡が濟み次第、恐らくここ數日中には提案の運びに至ると思ひます其の機會に於きまして具體的に御説明を申上げた方が適切だらうと思ひますが、併し大體内容は今日もう決まつて居りますから、私から極く概觀的なことを御説明申上げまして、尚ほ要しますれば詳細な點は他の政府委員から御説明を申上げます
二十一年度の地方團體の財政を通觀致しますると、御話の如く多數の地方團體に於ては非常に大きな戰災を被りまして、一面に於きましては財政收入に大缺陷が起ると云ふことになつて居りますのみならず、他面に於きましては戰災復興の爲に莫大な歳出の要求がある、此の二重の負擔が財政上に加はつて居ります、それから他の面と致しまして、物價騰貴に伴ひまして地方團體で賄つて居ります所の人件費の著しき増額を要すると云ふことになつて居りまして、餘程徹底的な對策を講じなければ、收支の均衡を得ることは到底困難であります、そこで是が對策と致しましては、政府の力に俟つと云ふことが先づ考へられることでありますが、國家財政に於きましても、地方財政に讓らない非常な窮迫状態でありまして、國庫の援助に俟つてのみ之を解決すると云ふことは、到底不可能な實情であります、そこで地方財政の面に於きましても出來るだけの増收策を講ずることが先決であると云ふことになりまして、全國的に考へますならば、地方農村等に於きましては相當に擔税力も増したと思はれるやうな面もございますので、市町村民税を相當大幅に増徴する、尚ほ府縣財政の財源を得させる爲に府縣民税を新設する、大體府縣民税は一戸平均六十圓、市町村民税は一戸平均四十圓と云ふ見當で、増徴及び新徴をしたら宜からうと云ふやうに考へて居る次第であります、尚ほ國税に於きましても、所謂三國税に於て増率を致して居りますが、其の上に地方税に於きましても附加税の増徴が出來ると云ふことに致して居ります、それから尚ほ更に現在地方團體で所謂獨立税を起しますのは市町村に限つて居りますが、府縣に於きましても法定外の獨立税を起すことを認めると云ふやうな方法に依りまして、地方民の負擔力と睨合せまして、出來るだけの増し負擔も忍んで貰ふ外はないと云ふので、地方財政の上に於きましては其のやうな増收策を講じたのであります、それから一面に於きましては、政府に對しまして、國庫から地方での負擔に堪へざる所に對しては、出來るだけの負擔の増額を要請致しまして、地方財政の總計算に於きましては、大體地方の租税其の他の増收に依つて賄へない部分は、國庫の負擔に於て「バランス」を取ると云ふことに一應成功して居るのであります、又其の「バランス」に於きましても、本年三月決定しました地方職員の優遇方針の筋は盛り込んで居るのであります、最近の物價情勢から、近く何がしかの又待遇改善費を更に要すると云ふやうな事態が起るやうに想像せられるのであります、此の分の解決は新しい問題でありますので、今後に俟たなければならぬと云ふことに相成つて居る次第であります、さうして其のやうに一應の「バランス」を取つて居りまするが、何に致せ極めて窮屈なる施策でありまして、到底之に依りまして、地方に自由なる新規財源をたんまり與へると云ふやうな工合には參つて居りませぬ、非常に窮屈なものであると云ふことは是認せざるを得ないのであります、さうして只今の御質問の中に、戰災地に於て或は府縣民税を認める、或は三國税の附加税を増率すると致しても、それは戰災地其のものに付きましては擔税力がないことでありますから、御説の通り其のやうな方法に依つては解決しない面が確かにございます、唯縣の如き大きい自治團體に於きましては、戰災地からは其のやうな收入は期待が出來ませぬが、戰災を被らざる地方農村に於きましては、新しい縣民税を取ると云ふことも可能であります、併しそれ等の可能な財源を盡しましても、戰災地團體に付きましては到底始末が付かないことでありますから、全國の總「バランス」を取りました上に、交付致します所の國庫支出の配分に付きましては、配付税の法律を改正致しまして、從來の如き人口基準と云ふやうな點を改めまして、例へば戰災市に付きましては、實在人口の三倍を以て配付基準の人口にすると云ふやうな新しい方法を取りまして、大體戰災地の地方團體の財政需要に向くやうな配付税の改正を、提案することに相成つて居ります、其のやうな方法に依りまして、各地方團體とも細々ながら「バランス」の採れる財政が、やつて行けると云ふ見込で居る譯であります、併しそれは制限内の課税に於きましての計算でありまして、團體に依りまして制限外課税をやつても、それだけの負擔力があると云ふ團體に於きましては、制限外課税に依つて新規財源を發見すると云ふことも、不可能ではない相當數の團體も起ると思ひます、尚又團體に依りましては、制限外課税をやることに依つて、初めて絶對必要の費用が、細々ながら收支の均衡を得ると云ふやうなものもあらうと思ひます、是は各個の團體の實情に依りまして、それぞれの相違は起る譯であります、之を痛感致しましての結論と致しましては、兎も角もどうにか地方財政は二十一年度廻つて行くことが出來ると云ふ案を整へまして、近く御審議を仰ぐと云ふ段取りになつて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=9
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010・岩本信行
○岩本委員 獨立税の對象となるどう云ふものが許されると云ふ大凡目安がございませうか、其の種類を聽きたいこと、及び此の間申上げて置きました國庫下渡金の中の補助金、補給金と云ふやうなものが餘りに數が多過ぎる、私の縣で調べたので昨年度で百二種類ありましたが、さう云ふことをせずに、勿論一本にはなりませぬけれども、大體に於て之を大きく括つて一括して補給し、一括して補助する、さうして其の府縣の特異性に應じて、其の府縣が仕事が出來るやうな方法を執る、斯う云ふことを強く要望するのでありますが、此の點に對する御考へを承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=10
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011・郡祐一
○郡政府委員 獨立税として地方に新しく付與致します有力な財源があるだらうかどうだらうか、此の問題になりますと、非常に普遍的に有力な財源があるとは斷定出來ないのであります、但し是も國税の改正に關聯するのでありますが、國税の改正に於きまして恐らく廣告税でありますとか、特別行爲税でありますとか、電氣瓦斯税でありますとか、是等は國税で廢止されるやうな運びに相成るのではなからうかと思つて居ります、左樣でありますれば、左樣なものを新しい獨立財源として、地方に於て徴收しても差支へないと云ふことになるのではなからうかと思つて居ります、此の點は大臣からも御説明のありましたやうに、地方税法の御審議の際には、更に正確に申上げることが出來ようかと思つて居ります
それから補助金の整理の問題であります、是は仰せになります點は洵に御尤もでありまして、此の度の地方財政の改正に於きましても、地方的色彩の濃い事務に對します補助金と申しますか、代り財源として一般財源を強化する方が──適當なる補助金に付きましては、是が整理を行ひまして、寧ろ積極的に補助金を廢止致したものもございます、青年學校教育費補助であるとか、町村費の助成補助であるとか、生活物資の切符制であるとか、或る程度の補助金は整理致しますと同時に、是が代り財源を一般財源を以て交付致し、此の種の補助金を集めまして、それに當る金額を補助金として出しますことは、地方財政の面から致しますと、餘り自主性を持たしめた所以ではないと思ひます、どの分がそれに當つて居ると云ふ譯ではございませぬが、大臣から説明がありましたやうに、各種の財源脅威、一般的財源脅威に依りまして、此の個別的な財源に手を著ける、又國費地方費の負擔にしても、從來の警察費連帶支辨金を三割五分を六割に上げますとか、或は國民學校義務教育費の關係に於きまして、職員の旅費に付て國庫負擔の率を改めますとか、府縣道の改良費に付きまして補助金を引上げますとか、負擔區分の改正をも併せて行ふことに依りまして、理想的な形になつたとは國庫財政の關係から申して申上げませぬが、御述べになりました趣旨には一歩近付いて居ることかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=11
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012・岩本信行
○岩本委員 一つ新しい問題で御尋ねを申上げます、是は實は此の委員會で、他の同僚各位からも御話があることと信ずるのでありますが、今囘提案になりましたのは東京都制と市制と町村制と云ふことでありまして、長年の懸案であり而して又其の關係者が再應内務當局に陳情をして居ると聞いて居るのであります、所謂市制を三萬の市と二百萬の市と、それを同一に扱つての市制と云ふものが、是が實際の運行の上に於て非常な支障を來して居る、此のことは東京都制が出來たと云ふこと一事で、實は萬事が解決して居るのであります、少くとも英米先進國に於きましては、殆ど之を各段に分けまして、さうして五十萬は五十萬らしく、三萬は三萬らしく、百萬は百萬らしくと云ふことで、それに向く所の制度を立てて居る、斯う云ふやうに聞かされて居るのでありますけれども、少くともさうした國々の例そつくりでないまでも、是はもう長年の問題でありますから、昔からよく言ひました所の五大都市、斯う云ふものを今の市制の中へ一本でぶつ込んで置くと云ふことは、總ての面に於て不自由が多いと思ふのであります、隨ひまして其の該當地は、自治の進行上非常な不便を來して居ると思ふのであります、大阪のやうな大きな市でもやはり知事の認可を經て、手蔓を經て、又更に内務大臣の認可を受けると云ふやうな、さう云ふことでありまして、非常に是は自治振興上まづい、是は多年の話であるのであります、それが今囘の提案に見られないと云ふことは、さう云ふ御考へはないか、或は又手續の關係、色々の調査の關係、さう云ふ手違ひから出されないのか、出す氣がないのか、其の點を先づ一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=12
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013・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねになりました所謂特別市制の問題は、我が國多年の懸案でありまして、政府と致しましても之に多大の關心を拂つて居るのでございますが、此の問題は、今後地方行政の單位を何處に置くべきかと云ふ、最も基本的な問題と直接關係のある問題でありまして、此の面から十分問題を檢討して見なければならぬものと思ふのであります、即ち特別市の範圍をどのやうにするか、又特別市と殘存郡部との關係を如何に調整するか等の基礎的部面の外、復興計畫、財政對策、食糧對策等の現實的部面がございまして、是等の關係を篤と吟味考量を致しました上、其の内容と實施の時期とを決定すべきものであらうと考へて居るのであります、尚ほ今囘地方制度の民主主義化の線に沿ひまして、地方制度を大幅に改正することに相成つたのであります、其の結果府縣の性格の如きも從來と一變すると思ふのであります、故に地方制度の今度の改正の成果とも睨み合せて、此の問題を更に掘下げて考究して見なければならぬ面も殘つて居るのであります、其のやうな次第で、只今の所確信のある成案を得るに至つて居りませぬ、又戰後の状況と致しまして、假に成案を得て居りましても、是の際此のやうな大改革を行ふことは、其の時期であるまいと云ふやうに考へて居る次第であります
尚ほ御尋ねの中に、大阪其の他の大都市が他の小都市と同じやうに府縣知事、内務大臣の監督に服して居ると云ふ點に色々不都合の點があると云ふことは、政府としても之を認めて居る次第でありまして、今度の地方制度の改正に於きましては、それらの認可、許可事項等を大幅に整理することに致して居りますので、其の缺點は從來に比して相當之を除くことが出來るのではないかと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=13
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014・岩本信行
○岩本委員 一應私の質問を打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=14
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015・中島守利
○中島委員長 坪川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=15
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016・坪川信三
○坪川委員 先般來の本會議に於きまして、先輩、同僚議員から質疑されました論點の中心は、最大の問題はやはり參政權の問題と、それから知事公選の問題にあつたのではないかと私は思ふのであります、今本委員會に於きまして、此の問題に付きまして重複を避けたいのでありますが、重大なる問題と私は考へますので、敢て内務大臣に本問題に對する御所信をば再度御伺ひ致したいのであります
第一に、地方住民に對して直接參政權を與へられましたことに依りまして、所謂地方議會との關係なのであります、改正案に於きましては、成程若干の點に於て地方議會の權限が擴張され、さうして自律性及び其の自治性が強化されて居るのでありますが、他方劃期的とも稱すべき此の一般住民の直接參政權の結果、地方議會の地位が相對的に低下しはしないかと云ふ問題であります、凡そ代議政治の本義は、一般國民の多數意思に依り、秩序ある自由意思に依つて選擧せられたる代議員を政治に參與せしむる點にあると考へるのでありますが、そこに議會の意義と、隨て責任がある譯であります、一方に於て地方議會の權限の擴充を唱へながら、又他方に於きましては住民の直接的な政治參與を認めると云ふことは、地方議會の職能、權限と云ふものを、所謂民意を聞くに十分でないと云ふやうな、即ち議會の不信、議會を輕視するやうな思想が根柢にあるやうに──其の疑ひを生ずるやうな氣持がするのであります、此の點に關しまして内務大臣のはつきりとしたる御所信を御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=16
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017・大村清一
○大村國務大臣 私から申上げまするまでもなく、地方制度の運營を致して行きますに付きましては、二つの大きな柱があると思つて居ります、其の一つは、府縣知事、市町村長等の所謂地方自治團體の執行機關の長であります、それからそれと相竝びまして、もう一つ大きな柱は、地方公共團體の意思決定を致します所の所謂地方議會、此の二つの大きな柱の關係を如何に取扱ふかと云ふ點に付きましては、我が國に於きましては、從來の沿革から申しますると、地方議會に中心を置いて居つたと云ふことは疑ひのないことだと思ふのであります、所が今囘憲法改正に於きましては、地方自治團體の長は、民主主義の精神を取入れまして之を直接選擧にすると云ふ原則が打立てられましたので、其の限度に於きましては、從來の取扱に比較致しますと執行機關の強化が圖られる、強化の圖られた限度に於きまして、地方議會の方が執行機關が強化された程度に於て影響を受けたと云ふことは、是は率直に認めざるを得ない點だと思ひます、其の相違はございますけれども、併し改正地方制度に於きましても、地方行政の運營の中心は執行機關と、意思機關である所の地方議會、此の大きな二大柱に依つて運營されると云ふ點に於ては少しも變りはないと思ふのであります、尚ほ住民に直接參政の機會を與へまして、自治制に對する住民の自覺と責任とを強化しようと云ふ爲に、此の策を執りましたのでありまするが、是等は或は場合に依りまして執行機關乃至は意思機關の專横を抑制する上に於きまして、又或は直接民意を條例、規則の上に反映する上に於きまして、何れも民主政治の上に於きまして適切な方途であらうと思ふのであります、是等の直接參政の途を設けたからと云つて、地方議會の權能が狹められ、殺がれたと云ふやうに考へるには當らないと思ふのであります、要するに改正案に於きましては、執行機關の地位を強化したと云ふ限度に於きましては、地方議會の權限がそれだけ影響を受けたと云ふことを認めるべきであらうと思ふのでありますが、其の他の點に於きましては、地方政治の運營の上に於きまして、執行機關及び意思機關が兩々相俟ちまして、其の二大柱に依つて民主主義的運營が完全に行はれる、それを中心にして行はれると云ふことを確信致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=17
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018・坪川信三
○坪川委員 もう一つ次に所謂直接參政權を認めました結果、所謂社會秩序の問題でございますが、非常に社會秩序が紊亂致しまして、さうして地方の政治が不安定を招來するやうな虞がないかと云ふ點であります、此の直接參政權──四つの參政權を與へました結果、所謂運用に關しましては、殊に現下のやうな食糧事情が逼迫して居るやうな時に於きまして多大の危惧の念を生ずるのであります、或は其の他社會問題、或は食糧問題、一般の社會情勢が非常に混沌として居ります、さうして動搖を續けて居るのであります、斯う云ふやうな際に於きまして、所謂參政權を認めました結果、本會議に於ても再三質問せられた點ではありますが、やはり何か知らないそこに策動政治家、或は策謀家に依りまして好箇の機會を與へられ、或は社會を混亂に導く一つの導火線になりはせぬかと云ふ點、或は策動或は少數派などに武器を與へるやうな恰好になりはせないか、さうして公選せられた知事も、何時解職請求權を要求せられるかも分らないと云ふやうな非常に不安を生じまして、職務に精勵することも出來ない、地方の政情は非常に動搖を續ける、さう云ふやうなことに於きまして公選された知事も動搖し、地方の政治も非常に動搖し、不安状態に陷ると云ふやうなことに付きまして大臣の御所信を承ると共に、是等策謀或は煽動家に對する何等かの所謂法的措置──萬一の場合の所謂法的の措置を、どう云ふ風に御考へになつて居られるかと云ふことを御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=18
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019・大村清一
○大村國務大臣 我が國の今後の政治に付きましては、中央政治と言はず地方政治と言はず、之を民主主義化して行くと云ふことは「ポツダム」宣言を受諾した以上、國民の當然の責任であらうと思つて居ります、さうして民主主義の健全なる發展と云ふものは、よく世間で言はれますやうに、國民が民主政治の完全なる遂行に付ての理解を持ち、又十分に責任を盡すと云ふことを前提としなければなりませぬ、此の意味に於きまして今後教育に於きましても、又政治的訓練に於きましても、朝野大なる努力を必要とされ要請されて居ると思ふのであります、固より制度を改正致します場合に於きましては、それが果して我が國の國情に合して運營に適するかどうかと云ふことも十分に考慮しなければなりませぬが、併し餘り其の方の暗い面のみを考へるに急にして、明るい面を無視することもどうかと思ふのであります、今後我が國が大いに政治の面に於きまして民主化を圖つて行くと云ふ場合に於きましては、相當思ひ切つた態度を執りまして、さうして民主主義の運營に慣れる訓練をして行く、さうして結局は民主政治の大目的、大彼岸に到達すると云ふ理想を持つべきものであらうと私は思ふのであります、併し現實の問題と致しまして直接參政の場合に處しまするに、現在の制度に於きましては其の請求が成立ちました場合に於きましても、之を監督官廳の公正な裁量、裁定に依りまして、其の請求權の採否を決すると云ふやうな、是は謂はば民主主義の理想から申しまするならば、一般投票に依つて決すると云ふの簡明なるに若かないでありませうが、一足飛びに一般投票に依つて決すると云ふことも時期尚早であらうと云ふので、そこに監督官廳の裁量と云ふやうな段階を加へまして、行過ぎを避けると云ふことに致して居る次第であります、何れ今後我が國に於きましては議會政治が發達致し、隨て健全なる政黨が發達して來るに相違ないと思ふのであります、而して中央政黨と又地方自治に於ける關係と云ふやうな面も、漸次適正なる關係が確立して行くに相違ないと思ふのでありまするが、何れに致せ地方政治に於きましても、やはり政黨政治の線に沿うた運營が行はれるに相違ありませぬ、例へば中央政治に於きまして政府を組織致します有力政黨は必ずや地方政治に於きましても、其の大多數の場合に於きましては、知事等の者を自派で收めると云ふことになるであらうと思ひます、中央の政府と地方の自治體の首長と云ふものも、政治上の同一傾向の人が之になると云ふことが、發達して來ると思ふのであります、さう云ふやうな次第でありますので、政治的の作用に依りまして心配をすべきやうな事項が多くは解決される、少數の面に於きましては時に依りまして色色「デリケート」な問題が起つて來ることは絶無ではないでありませうが、大勢としてはそこに政治的な調整作用で大なる支障なく進み得るものと思ふのであります、尚ほ其のやうな點を段々考へて參りますと、場合に依りますれば、極端な場合には收捨すべからざるやうなものが起ると云ふことはないか、其の場合に政府としては何等かそれに對する對策ありや否やと云ふことでございまするが、政治活動、殊に民主主義の線に沿うての政治活動に對しまして、政府が之を權力を以て彈壓をすると云ふやうなことはやるべきことでございませぬ、さう云ふやうな意圖は持つて居りませぬ、是は自然の政治調整作用に依つて、解決されると云ふ所に期待を持ち、又其の期待を確實にする爲には、今後の國民の自覺と、それから政治教育と云ふやうな面に、政府は大いに力を致すと云ふことが必要であらうと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=19
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020・坪川信三
○坪川委員 直接參政權の問題に付きましては、今の大臣の懇切なる御説明に依りまして了承致しましたが、知事の公選の問題であります、知事は所謂地方政治上に於きます所の内閣總理大臣と私は思ふのであります、内閣總理大臣が、今度の憲法に依りまして、所謂國會の指名に依るものとせられる點に於きまして、知事も亦之を地方議會の選擧に依らしむることが、彼我均衡上當然ではないかと考へるのであります、知事を直接公選する時は、自然地方の議會との間に於きまして、對立が激成されることは必然的だと思ふのであります、又更に心配される點は、知事の公選に依りまして、政黨の分野が未だ確定して居ないと云ふやうな日本の現段階に於きまして、候補者の濫立を招き、或は選擧運動が非常に激甚となる、或は金權候補者が跳梁すると云ふやうなことに於きまして、非常に地方の政治が腐敗堕落せないかと云ふ點であります、現在我が國の政治動向、竝に民心の動向と云ふものが、まだ正しい判斷に缺くる所がありはせないかと云ふ現段階に於きまして、此の公選に付きまして大臣は如何なる御考へであるかと云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=20
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021・大村清一
○大村國務大臣 地方團體の長を地方議會で選擧すると云ふ點に付きましては、我が國に於きましては市及び町に於きまして、既に多年の經驗を持つて居ります、さうして此の點に付きましては只今御述べになりましたやうな、確かに捨て難き長所を持つて居るのであります、併し又過去の經驗に於きまして、其の長所は直ちに又一つの短所であると云ふこともあるのであります、一、二申上げて見ますると、地方議會に於て選擧せられました長は、地方議會に對する關係が餘りにも弱い立場にありまして、執行機關として必ずしも適當でないと云ふやうなこともあり得るのであります、又地方議會で選擧致すと致しますると、是は地方議會の議員數が少數であると云ふ所で、選擧上に於きましても時に思はしからぬ事態が發生したこともあるのであります、是は總ての制度に於きましては、長所もあり短所も伴ふと云ふことは已むを得ないことでありまして、其の長短を彼此れ考量致しまして、何れかに決すると云ふことに相成るのでございまするが、今囘地方制度に於きまして直接公選の制を執るに至りましたのは、先にも申上げました如く政府に於きまして、改正憲法草案に於て地方公共團體の長は、直接公選の原則に依ることが明かにせられましたので、其の方針に依つて立案を致した次第であります、尤も只今御審議中の憲法が、其のやうになります過程に於きましては、内務省と致しましても、知事は直接公選の規定の儘で宜しいか、或は之を少くとも間接公選をも認め得るやうな憲法草案にした方が宜しいかと云ふ點に付きましては、當時の三土内務大臣の時に於きましても、愼重に檢討論議を致したのであります、結局改正憲法草案に於きましては、直接公選制を明定すると云ふ結論に達しました、其の結果地方制度に於きましても、其のやうに取計らつた次第であります、尚ほ直接公選に致しました結果、地方議會に對する自治團體の長の地位が非常に強化された點に於きまして、是は改正の一つの眼目であると云ふことを申上げ得ると思ふのであります、併し其の改正致しました眼目は、其の裏に於きましては一つの缺點とも申せる譯であります、それは長と地方議會との間に於ける對立關係が、將來發生するであらうと云ふ心配、之に付きましては長の專横に對しましては地方議會は不信任決議を以て之に對抗することが出來る譯であります、又地方議會の專横に對しましては、地方自治團體の長は是の解散を以て對抗することが出來る、其の間に於ける權勢均衡の理に依りまして、其の急迫したる状態は之を打開し得ると思ふのであります、結局致しまする所、地方自治行政を民主主義化する上に於きまして、此の程度の改正が我が國の現状としては適當であらうと云ふ所で之に決定した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=21
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022・坪川信三
○坪川委員 次に公選された知事の身分の問題でございますが、公選にも拘らず、先にも同僚から質問された點でありますが、官吏とされたと云ふことであります、此の點は新憲法の精神からも、又自治の本旨から見ても、適當でないやうに思ふのであります、公選されました知事は公吏であつてこそ、初めて一般住民の知事であると云ふ一つの喜びを持ち、又地方の自治體に對して專心職務に邁進することの出來る、一つの根柢になるのぢやないかと思ふのであります、公選は、口に自治權の強化を唱へながら、此の點に關しては甚だ徹底を缺くやうな點がありはしないかと思ふのであります、更に府縣に於きます知事以外の幹部の問題に付きましては、何等變更されて居ないのであります、所謂從來の官吏となつて居るのであります、是は公選の知事に官吏の衣を著せて居つて、さうして中央の強化を圖つて、飽くまでも官僚の牙城を護らうと云ふやうな、一つの方法であると云ふ疑念を懷かせる點が、非常に多いのであります、此の點に關しまして内務大臣は、公選の知事の身分を中央の政府から引離すかどうかと云ふ問題、それから部下の幹部の任免權、此の問題に付て知事に與へるかどうかと云ふ點をば、一つ御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=22
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023・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねになりました點は、各位の最も疑念を持つて居られる問題と思ひますので、暫く時間を戴きまして、私の信ずる所を申し述べさして戴きたいと思ふのであります
我國に於きましては、どう云ふ譯でありますか、ずつと多年の間官吏制度と公吏制度と云ふものがはつきりと區別せられたものが打樹てられて來て居ります、さうしてそこに戰時中の官僚制度と云ふやうな、世間の非難を買ひましたやうなものも胚胎して居つたことと思ふのであります、現實は其のやうになつて居ります、「アメリカ」の各州に於きましては、日本の如く官吏制度、公吏制度と云ふやうなはつきりしたものはないと云ふことであります、隨て「アメリカ」に於きまして公選に依つて自治體の首長を選びましても、それは公務員ではございませうが、官吏であるとか公吏であるとか云ふ制度はございませぬから、それを公吏の部類に入れるか、官吏の部類に入れるかと云ふ問題は起きないと思ひます、「アメリカ」の公選に依つて出て來た首長は、それを官吏と觀念するならばそれでも宜しい、それを公吏と考へるならばそれでも宜しい、さう云ふやうな區別がないのでありますから、一律の公務員と云ふことで、問題が極めて簡單に解決すると思ふのであります、所が我が國に於きましては明治以來の行政の實際と致しまして、官吏制度、公吏制度と云ふものが截然と區別されて發達して來て居ります、而して國政事務は官吏が之に當り、地方自治事務は公吏が之に當ると云ふやうな大體の部分けになつて居つた、さうして從來の府縣廳の如き事務の大部分は國政事務である、一部地方事務があります場合には、多數の重要な事務が國政事務に多いものでありますから、官吏をして併せて府縣自治團體の事務も取扱はせると云ふやうな、變則なる措置を執ると云ふことに相成つて來て居ると思ふのであります、それで此の際地方制度を改正する場合に於きましては、凡そ大きく考へますと、二つの行き方があると思ひます、それは現在府縣のやつて居ります仕事は、今までの觀念で申しますと大きな部分の所に國政事務があります、それから少い部分に於きまして地方事務があります、此の兩國政事務と自治事務との分界をなくしてしまひまして、國政事務を悉く府縣の自治事務に入れてしまふと云ふことが可能でありますれば、問題の解決は極めて簡單であります、即ち府縣が府縣行政の全部又は其の大部分、少くとも主要部分を地方の自治事務に振替へてしまふと云ふことが可能でありますと、それは公選せられました知事を、公吏の儘其の事務を扱はせると云ふことに致して毫も差支へないことでありますから極めて簡單であります、併し我が國の行政事務を府縣の事務に關してのみ、悉く之を從來の官治事務の分を自治事務の方に移してしまふ、さうして他の方は現状の儘で置いておくと云ふことになりますと、殆ど是は運行が出來ぬ位に片輪なものになつてしまふのであります、此のやり方行き方と云ふのは、單に地方自治制度だけを改革する取扱ひをする時に於きましては、到底解決出來ない難關がそこにあるのであります、それならばそれに對處する方法としてもう一つの方法が考へられるのであります、それは現在の府縣廳のやつて居ります事務を、自治事務となし得る部分は出來るだけ廣く自治事務に致します、併しどうしても官治行政の部面に殘さなければならぬものがございましたならば、思ひ切つて是は今日の府縣廳の仕事、事務から取除きまして、何處か外の國家機關でやらせると云ふことに取計らう、さう致しますと殘りました府縣の事務は自治行政事務だけになりますから、公選せられたる知事が公吏としてそれを處理することに何等差支はないのであります、併し府縣廳から取外しました官治行政の面は之をどうしまするかと云ふことになりますと、是は色々の方法があるでありませう、或は各府縣を合はせました地域の行政區劃に對しまして道廳とか州廳と云ふやうなものを設置致しまして、道廳か州廳かで專ら國政事務を扱はせると云ふやうなことも可能でありませう、或は又府縣廳でやつて居ります國政事務は、他の例でございますやうに、或は商工省の場合には地方商工廳を作る、地方農林廳を作る地方警察廳を作ると云ふやうな工合に、各省毎にてんでんばらばらの地方行政官廳を作つて行くと云ふことも一つの方法でございませう、併し此のやうな方策を執りますことは、私は我が國の行政を民主化する面から見ますと、甚だ好ましからぬものと思ふのであります、と申しますのは各省の中央行政廳は、帝國議會の完全なる監督下に於て進んで參ります、でありますから議會の監督權に依りまして、中央官省が極度に官僚化すると云ふことは心配がないと思つて居ります、所が中央官廳の出店が各地方に於きまして無數に出來る、或はさう數は多くありませぬでも、州廳、道廳と云ふやうな、何がしかのものが出來ると致しましても、是は中央にございませぬで、地方に散在して居る、さうして帝國議會は東京にあると云ふやうな關係で、帝國議會の監督には眼が届き兼ねると云ふやうな點に於きまして、地方官廳は餘程官僚化の傾向が強くならざるを得ないのではないか、さうなりますと甚だ好ましからぬ、そこで現在の府縣廳でやつて居りますことは、成べくそつくり其の儘にして置きまして、そこには自治行政事務の方の立場からして知事が公選されて、公選知事の地位に就き、其の人に同時に國政事務も取扱つて貰ふと云ふことに致しますれば、其の公選知事の持つて居ります民主性に依りまして、府縣の取扱ふ官治行政面も官僚化を餘程防げるではないか、此の點は例へば今日府縣會の監視の中にあります所の府縣の警察行政と云ふものと、府縣會の目の届かない特別の地方行政廳と云ふものを作つた場合を考へます時に、警察が民主主義の線に沿うてどちらが良く運營されるかと云ふことを考へますると、思ひ半ばに過ぎるものがあると思ひます、そこで現在の府縣廳事務はそつくり其の儘にして置きまして、さうして公選知事の持つて居る民主性を官治行政面にも活用すると云ふ方策を執ると致しますと、別に此の府縣の公選された知事に、官吏と云ふ名目を與へたからと云つてそれが直ちに官僚化するものでありませぬ、本來民主的に選ばれた知事でございます、是は私は寧ろ感じの問題でありまして、實質のない問題だと思ふのであります、官吏にすると云ふことはない問題であります、唯さう云ふやうな方法を執ると致しましてもう一つ考へられますことは、さう云ふやうな民主的な府縣廳の體系が立ちますならば、私は官治事務の如きものも今後出來るだけ多く府縣に集中致しまして、從來府縣は、明治以來我が國國政の全體的運營に於きましては、一種の綜合機關、統合機關で行政の發達に非常に寄與したものでありまして、其の府縣の性格と云ふものを十分活かしまして、今後國政事務の如きも出來るだけ府縣廳に集中して參り、さうして其の府縣政掌理の任に當る人は公選せられたる知事の民主性に依存致しまして、さうして地方に於ける國家行政の民主化を圖ると云ふことが、實際問題として非常に適切であらうと思ふのであります、さう云ふやうな方法を執ると致しますると、國政事務を掌理致しまするのは、先程來申上げましたやうに、大體我が國の制度から致しまして官吏に之を取扱はせると云ふことになつて居ります、知事にも官吏と云ふ資格を與へる、さうして國政事務を掌理致しまする知事以下の官吏は、先づ現状の儘で參ります、併し現在の府縣知事に於きましては、地方官制に於きまして部下の官吏の進退に付きましては何等の發言權を持つて居りませぬ、唯部下官吏の考課に付て具情權を附與して居るだけでありまするが、地方制度改正と同時に地方官官制を改正致しまして、新たに民選府縣知事たる官吏に、部下の官吏の進退の具情權を附與する、是はなぜ任免權を與へぬかと云ふことに御疑問があるでありませうが、官吏の任免は我が國の今日の官吏制度に於きましては天皇の大權になつて居る譯でありまして、今日の制度に於きましては、官吏の任免權を府縣知事に直接與へることは制度上出來ない譯であります、そこで具情權を與へる、具情權であるから、それならば之を動かして呉れと言つても、中央政府に於て聽かなければそれまでではないかと云ふことになりますが、是は先にも私が一寸申上げましたやうに今後は議會政治なり政黨政治になり、中央地方は自ら同一系統の政權が成立すると云ふことが先づ豫想せられますので、大多數の場合に於きましては、其の知事の進退の具情權と云ふのは十分活用されることが出來ると思ひます、併し時あつて公選知事にも極めて亂暴な、不當な任免を企てると云ふやうな場合に於きましては、それは輿論の力に依りまして具情權が十分に效果を表はさぬと云ふやうなことも、是は例外の場合には想像が出來ると思ひます、併し任免權を持つて居るのと具情權を持つて居るのとに付きましては、何がしかの相違があることは事實でございますので、只今申上げますやうな次第で、知事には此の際進退の具情權を附與する、そのことで官吏たる部下の把握は十分に出來ると存ずるのであります、尚又公選知事が公共團體の吏員を公吏として使ふと云ふ面も相當にありますが、是は公選知事が任免權を持つて制度上一向差支へないことでありますから、是は當然持つことであります、現に市長が市吏員たる公吏を進退して居ることでもありまして、あれと同じことが固より出來る譯であります、其のやうな構想から致しまして公選知事を官吏と致すことに致したのでございますが、尚ほ此の際申上げて置きたいと思ひますことは、終戰後まだ日が淺くありまして、戰災の創痍を癒して、さうして日本の國民生活が安泰になると云ふのには、尚ほ今後相當の期間、國民が非常な努力と忍耐とを持つて之に臨まなければならぬ状態であります、さうして今日の如き物資の不足、殊に食糧の不足、生活難と云ふやうな惡條件が山積して居りますので、當分の間は國家の統制と云ふものを、地方に對しても相當強く掛けなければ切拔けて行けない悲しむべき事態にあるのであります、此のやうな時期に於きまして、地方公共團體を完全に獨立させまして、所謂府縣「ブロック」化とか、地方の孤立化と云ふ點に拍車を掛けますやうなことを今直ちに採りましては、事態容易ならぬ状態を現出することも惧れられることであります、殊に治安面に於きましてはさうであります、さう云ふやうな眼前の事態からも考へ合はせまして、此の際地方自治制度を改革するに當りましては、知事公選の上それに官吏の資格も併せ有せしめまして、府縣の割據の弊と申しますか、孤立性を防止致しまして、府縣知事は一面に於きましては國家的視野に立ちまして、國家行政の地方に滲透すると云ふことに協力すると同時に、一面に於きましては地方自治團體の長として、府縣住民の福祉の増進に精進すると云ふ二重性格を與へますことが、現下の國情からしても必要なことであらうと云ふやうに考へて居る次第であります、若し夫れ將來の問題に相成りましては、是は新憲法も成立致しまして、日本の行政の行き方と云ふものが新憲法の精神に從ひまして、日と共に民主主義的に改まつて參りますに付きましては、官吏制度の如きものも必ずや拔本的な改革を受けるに相違ないのであります、度々申上げて居りますが、公務員法とも云ふものが必ず打樹てられまして、此の民主主義時代に適應するやうな健全なる吏僚制度が打樹てられる、さうして政治家は國なり自治行政の面に於ける政策面を決定する、其の決定せられたる政治家の意思を受けまして──私の所謂健全なる吏僚制度はそれを受けて、多年の專門的知識と訓練とに依りまして、強力に其の政策を實際に實現をして行くと云ふ、此の政黨、吏僚の緊密なる抱き合ひに依る中央及び地方の行政の伸張と云ふことが策せられなければならない、必ずさうなるべきだと云ふやうに私は考へて居る次第であります、私共官僚育ちでありますが、併し官僚と云ふものは考へて見ますると極めて性格のないものであります、謂はば無色透明と云ふやうなものでありまして、時の政府の決定せられたる政策を忠實に實地に實現をすると云ふことに當るのが私は官僚の使命である、今後の吏僚もさうだと思ひます、さう云ふ線に沿うての健全なる吏僚制度を打樹てると云ふことは、健全なる政黨政治、議會政治の發展の上に、是非必要なことだと思ふのであります、私は戰爭時代の官僚の復元を決して望む者ではございませぬ、民主主義時代に適應する所の健全なる吏僚制度が發展すると云ふことを切望して已まざる者であります、其のやうなことで段々と官吏制度と申しますか、吏僚制度に付きましても、今後民主主義化が行はれるものと思ふのであります、其の時期になりますれば、私は公選したる知事を官吏にすると云ふやうな、是は日本に於てのみ考へらるることでありますが、さう云ふやうなことは棄てらるる時期が、早晩來るものと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=23
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024・坪川信三
○坪川委員 大臣の只今の懇切丁寧なる御所見竝に非常に御賢明なる御見透しに付きまして、私は非常に敬意を表する者であります、非常に健全なる地方自治政治の確立を願つて居られます大臣でありましたならば、只今非常に問題になつて居ります此の問題に付きましては、同僚各位からも今後色々と質疑される重點になるのぢやないかと思ふのでありますが、地方事務所の問題であります、此の存續の可否に付きましては贊否相對立致して居りますが、私は其の事由に付きまして今時間もありませぬから申上げませぬが、若し地方事務所を存續される意思があるならば、先程申されましたやうな御考へから、所謂地方事務所長の公選の御意思があるかどうか、先般の本會議に於きまして、警察署長の公選はまだ早いが考へて居ると云ふやうな御意見であると私は承つたのでありますが、地方事務所を存續されるのでありますならば、所謂健全なる吏僚政治、自治政治の確立の爲に、地方事務所長の問題に付きまして如何に御考へになるかと云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=24
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025・大村清一
○大村國務大臣 政治の民主主義化を圖つて行きますに付きましては、將來段々と各種のものが公選をされると云ふやうな傾向には進んで行くかと思ふのでありまするが、現段階に於きましては、先づ地方制度に於きましては、地方公共團體の長だけを公選にして、それ以上のことを策して居ないのであります、御承知の如く改正憲法に於きましては、法律で定めまするならば、長のみならず他の地方公共團體の吏員も公選し得るのでありますが、そこまでは今日の段階に於きましては行過ぎだと考へまして企てて居りませぬ、又地方事務所に付きましては段々御議論がある所でありまして、我々も此の地方事務所を存續すると致しまして、相當の改善方策を執らなければならぬものと考へて居ります、今直ちに地方事務所の長を公選にすると云ふやうには考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=25
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026・坪川信三
○坪川委員 次に市制町村制の第四でございます、破産者及び公私の救助又は扶助を受ける者等に對しても、選擧權及び被選擧權を認めることと云ふやうに改正になる譯でありますが、所謂破産者が貧困に依つて生活の爲め或は公私の救助又は扶助を受ける等、經濟的無能力者に對しまして地方議會の選擧權を認められました理由はどう云ふ所にあるのですか、是は將來選擧法改正に際しても、選擧法に於ても選擧權を認められる考へがあるかどうか、此の問題に付ては大正十四年の選擧法改正に於ても非常に問題になつた點であると聞及んで居りますが、今囘之を改められましたのは何か特別な理由でもおありであるかどうかと云ふ點であります、此の點に付て一つ伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=26
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027・郡祐一
○郡政府委員 只今御述べになりました點は、仰せの通り地方議會の選擧に付て特に選擧權を認めたのでありまして、衆議院議員選擧法に付ては、現在選擧權は與へられて居らぬのでありまするが、是は破産者に致しましても、特に現在の經濟状況等から考へまするならば、個人的の責任に歸せしむべき理由よりも、寧ろ社會的な各般の事情に依りまする場合の方が多うございますし、公私の救助扶助を受けます者も是れ亦戰災、失業其の他色々な事故に依つて起つて居るものが多いのであります、是等の者に付きましては、曾て考へて居りましたよりも、個人的な責任の分子が薄くなりまして、寧ろ餘儀ないものであり、隨て政治的の能力を其の者に付て制限することは適當でないと判斷致しまして、地方制度では改正を致したのであります、將來衆議院議員選擧法の改正が考へられます際には、當然併せて御考へを戴かなければ相成らぬことだと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=27
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028・坪川信三
○坪川委員 最後に、得票同數の場合には當選者の決定は抽籤によるものとす、と云ふやうに改められたのでありますが、之に依りますと、長老に對する日本の所謂醇風美俗と云ひますか、敬老の念と云ふやうな斯樣な日本古來の非常な美俗を害する虞がありはしないかと云ふ點がありますが、之を改められました理由に付て御伺ひ致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=28
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029・郡祐一
○郡政府委員 敬老と申しますることが社會的に尊ばるべきことでありますることは當然でございます、唯選擧等の場合に於きまして年長者主義を採りますることは、年齡と云ふ自然的な動かすべからざる事由に依りまして事柄が決まつてしまふことでありますから、是は選擧の場合に於ては好ましくないことと思ひまして、抽籤に依る方法に改めたものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=29
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030・坪川信三
○坪川委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=30
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031・中島守利
○中島委員長 今度は大矢君の番ですが、内務大臣は今ちよつと用事があつて缺けて居りますから、三時二十分まで休憩致します
午後二時五十分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=31
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032・会議録情報3
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午後三時二十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=32
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033・中島守利
○中島委員長 休憩前に引續き會議を開きます──大矢君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=33
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034・大矢省三
○大矢委員 本案が提出されまして、本會議の大臣の説明、或はそれに對する質疑應答、今又此の委員會で御二方から色々な質疑がありまして、特に問題になつて居るのは知事の官吏を公吏にするかしないか、此のことに付て色色質疑がありまして、岩本議員の如きは、是は殆ど總意であると言はれる、全く其の通りであります、我々亦之を是非とも公吏に願ひたいのでありまするが、併しながら、今までの色々答辯を聽いて居りますると、大臣は一寸其の考へ方を改めさうにもないのです、そこで私は斯う云ふことを尋ねたい、其の答辯の中に、やはり何と云つても官吏でないと國政が滲透しない、一貫しない、飽くまでも命令、監督權を持たなければならぬと云ふ斯う云ふ一流の官僚の考へ方であります、私共は地方の自治と云ふことは國政に協力する、其の地方自治の特徴を活かして協力すると云ふ建前に立つて居るのでありまするが、御承知の通りに市長は、或は町長は皆公吏であります、特に百數十萬を持つて居る所の大都市の市長が公吏でありまするが、今日まで官吏たる知事の命令に服しなかつたり、或はそれに反する者があつたかどうか、是は現實の問題として皆それぞれ協力して居る、それが何が故に官吏でなければならぬか、今まで長い間答辯され、色々の方面から説明されましたけれども、私共之に納得することが出來ない、そこで是れ以上答辯を求めても私は滿足する答辯が得られぬと思ふのでありますから、公吏である市町村の自治體が官吏である今までの府縣制に反した行爲、それが徹底出來なかつたかどうかと云ふ此の事實を、特に大臣は内務省關係で古い經驗者であるのでありますからして、其の經驗を通して御答辯が願ひたい
それから若し總意であると云ふことで、本會議、委員會を通じて全員が之を公吏とすべしと云ふ意見に一致した時に、それを變へる意思があるか、是は此の提案の本旨が特に民主主義政治の確立の爲であります、民意が斯くあつて欲しいと、長い間の經驗を通じて各地方の委員の方々が、それを是非とも公吏にして貰ひたいと云ふ、或は滿場一致か大多數か知りませぬけれども、其の意見の表示があつた場合でも、尚且つ之を固持されるのであるか、是は重要點でありますから、先づ此の點を御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=34
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035・大村清一
○大村國務大臣 公選知事を官吏に致しますのは、官吏に致しまして監督權を振廻すと云ふ著想ではないのであります、又現在の市に於きまして公吏であるが爲に著しい支障があつたかどうかと云ふ御趣旨の御尋ねでありますが、大體に於きまして別段支障の廉はなかつたと申上げて宜いと思ひます、此の府縣知事を官吏に致しますと云ふのは、是は府縣の性格から、今日の府縣廳の性格から起つた問題でありまして、府縣廳の性格が二百餘りあります今日の市役所の性格と同一でありましたならば、固より之を公吏とすることに何等の支障がないのでありますが、府縣の今日の性格を維持する限りは、之を官吏とするにあらざれば、行政の運營は出來ないと云ふ考へであります、若し府縣を解體致しまして市役所と同種の性格に府縣廳を改組致しまして、さうして改組から殘りましたものに付ては他の適切なる方途を併せ講ずると云ふやうな方途を講じますれば、觀念上としては府縣知事を市役所と同性格の府縣と云ふ地方團體の公吏とすることは可能だらうと思ふのでありまするが、先にも申上げましたやうな今日の府縣廳の性格を維持しながら之を公吏にして行くと云ふことは、實際問題として私は不可能ではないかと思ふのであります、若し全員の御意見に依りまして現在の府縣廳の儘直ちに府縣知事を公吏としてしまふ、それで日本の行政が進んで行くと云ふやうなことには、私の信ずる所に依りましては、さう云ふことはあり得ないのではなからうかと思ふのであります、併し此の皆さんの御審議に依りまして、斯うなつた場合はどうかと云ふやうな最終的の御答辯を申上げますに付きましては、一寸假定的には何とも申上兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=35
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036・大矢省三
○大矢委員 假定的にはどうも今答辯し兼ねると云ふことでありましたが、本會議其の他委員會の、今日まで其の點に集中されて質問のあつたことは御存じの通りであります、大體豫想が付くのであります、併しながら假定と云ふことでありますからして後日決定を見て其の時に又御尋ねしても遲くはないと思ひますから、私は其の點は餘りそれ以上追及しませぬ、唯今申上げましたやうに、大都市の市長が府縣知事の命令と言ひますか、それと何等聯携の上に差支へないと言はれるのであれば、現知事と雖も地方のさうした聯携の上に、私は公吏としたつて差支へないではないかと思ひます、是は私の意見でもありまするが、今申しましたやうに差支がないと言はれるのでありますからして、私は特に其の點は御考慮が願へるのぢやないか、更に又斯う云ふ場合が起きて來やしないか、先程の答辯の中にもありましたやうに、段段と二大兩政黨が發達して參りますると、幾分事情が違つて來るのでありますが、其の時に中央政府が乙なら、甲の政黨から選ばれた知事は──假に甲の黨からして選出された知事であると云ふことでありまするならば、それは完全に黨を離脱して官吏とならなければ らぬと云ふことになるのでありますか、さうすれば折角選ばれた民意と云ふものは、私はそれには生きて來ないのではないか、斯う云ふことが想像し得るのであります、殊に答辯の中にもあるのでありますからして、さう云ふ場合の矛盾をどう御考へになるかと云ふことを御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=36
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037・大村清一
○大村國務大臣 甲黨の支持を得て當選したる知事が、若し甲黨に屬して居ると云ふやうな場合に於きましても、それは別に離脱をせぬでも官吏となることは差支へないと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=37
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038・大矢省三
○大矢委員 黨は御承知の通りにそれぞれ政策を持つて居る、其の政策の違ふ知事が其の政策を愬へて支持を得た、其の知事が違ふ政黨に依つて組織された内閣の國政に協力すると云ふ矛盾が、そこに出て來やせぬかと云ふことを私は憂ふるのであります、殊に又答辯の中に、是は憲法が改正になれば色々選定法が變つて來るであらう、斯う云ふことを答辯の中に申されたのでありますが、若しそれであるならば、今度の憲法が此の議會を通過して後に此の案を審議しても遲くはない、どうして之をそんなに急ぐのか、殊に私共は此の問題に付て非常に眞劍に重要に考へて居ることは、戰爭中軍が、例へば東京都制の如きも、我々は公選を主張するにも拘らず、官選を遮二無二實行した、或は地方制度の議會の如きも會期を短かくする、或は定員を極度に少くすると云ふことに依つて、地方自治を極度に抑へた其の結果が、私は今日の斯う云ふ結果を生んだ所の大きな原因の一つともなると思ふのでありまするからして、折角出來るのでありまするから、是は實に完全な、出來得るだけ立派なものを私共は拵へて貰ひたいと考へて居りますが故に、憲法が通過した後に之を出して更にそれを審議する御積りであるかどうか、是は答辯の中に私共は其の點を聽取られたのでありますから、其の點も併せて伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=38
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039・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねのありました第一點の、中央政黨が甲黨であり、然るに知事は乙黨の支持を得て當選して知事になつたと云ふ場合に、政策上中央政府と府縣知事との間に矛盾が起ると云ふことは是は已むを得ざることだと思ひます、さう云ふやうなことが現實ありましたならば、それは中央は中央、地方は地方で進むより外ないと思ひます、それから次に憲法を改正せられますれば、それに依つて地方制度が變ると云ふやうな御質問であります、是は私の申上げやうが惡かつたかと思ひますが、憲法が民主主義の線に沿うて、今度の草案のやうに改正をされて參りました曉に於きましては、將來日本の各般の政治の運用が、段々と實際問題として民主化して來ると云ふことは必然の傾向であらうと思ふのであります、さうなりますと現在の段階に於きましては、只今御審議を仰いで居ります程度の民主主義化で十分であり、又現段階に於ては適當だと云ふものも、更に民主主義化を強く致しまして、第二段の改正をして一層の民主化を圖ると云ふことは、是はあり得ることと云ふやうに申上げた積りであります、憲法が改正になれば直ちに只今御審議中の地方制度改正案を改正しなければならぬと云ふやうな必要は起きないものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=39
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040・大矢省三
○大矢委員 それでは先程の質問者の答辯の中に、官吏の任免權は憲法が今日存續して居るからして、是は天皇にあるのだからさう云ふことは出來ないと云ふことを明かに言はれたが、さうなると今度又違つて來るのではないか、其の點を御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=40
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041・大村清一
○大村國務大臣 現在の我が國の制度と致しましては、官吏制度が一定の型を持つて居るものが出來て居りますので、官吏制度の下に地方制度を考へて居ります、併し將來恐らく官吏制度も改正せられまして、多分公務員法と云ふものが議會の御審議を經まして、適當に改正される時期があらうと思ひます、さう云ふ場合に於きましては、其のやうな點に關聯した部分は、必要があれば改正をすると云ふことが起り得ると思ひます、尚ほ例へて見ますれば、現在の地方制度に於きましては行政裁判所と云ふ制度を前提として、此の改正案も行政裁判所に出訴すると云ふことを是認致して居りますけれども、改正憲法に依りますと恐らく行政裁判所と云ふものはなくなりまして、他の代るべき制度が出來ると思ひます、其の場合にはさう云ふやうな局部的な點に於きましては、更に改正を願ふと云ふことが起り得ると思ひます、併し大筋の所に於きましては、憲法改正草案の趣旨と相即應したる考へを致して居りますので、其の邊には新しい改正問題が起ると云ふことは豫想して居ない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=41
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042・大矢省三
○大矢委員 それでは今一つ御尋ね申して置きたいと思ひますが、知事が官吏になつた場合に、實際の地方との「バランス」の上で、或は行政面の上で非常な影響が起きると思ひますから、此の機會に御聽きしたい、知事の俸給を一體どの位にする積りか、其の點を一應御伺ひ致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=42
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043・大村清一
○大村國務大臣 俸給の問題は今此の經濟界の變轉期にありまして、どうなりますか豫想が一寸困難でありますけれども、大體今の知事の俸給の程度で宜いのではないかと一應考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=43
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044・大矢省三
○大矢委員 知事は地方で色々な役を二重、三重に持つて居りますから、外に收入のあることは御承知の通りであります、大阪市の如きは市長は二萬圓乃至三萬圓を取つて居るのでありますが、それと比較すると非常に違ふ、現に七千圓か八千圓の俸給だと思ひますが、さう云ふ均衡と云ふものは知事と市長との間に一體どう云ふ風に取られるか、此の點も併せて御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=44
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045・大村清一
○大村國務大臣 今後官吏の俸給を如何に定めるかと云ふ問題は、確かに新しい問題としても考究をしなければならぬ問題だと思ひますが、現状を以て致しますれば、國務大臣の俸給等とも睨み合さなければならぬ問題でありまして、それ等と睨み合して新しい經濟事情に立脚して決定さるべきものだと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=45
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046・大矢省三
○大矢委員 其の問題は此の程度に致しまして、今度の改正法案の中には自治制の本當の心臟とも云ふべき經濟部面に於ける計畫が盛られて居ない、先程から地方財政の問題に付て戰前に返るかどうかと云ふことの話もあつた、又それと最も重要な關係のある、是が殆ど今度の法案の骨子とも云ふべき、大都市としては警察の委讓の問題、此の警察の委讓の問題もどの程度に委讓するかと云ふ具體的な説明なり或は答辯なりが一つもない、相當大幅か、或は今後相當に行くであらうと云ふことも非常に抽象的でありまして、此の點、若しそこに準備がなければ、文書で以て、財政部面とそれから行政部面でどれとどれをやる、先程岩本さんも申されたやうに、五十萬或は七十萬、百萬の大都市に付ては特に是れ是れのものは委讓すると云ふことを御答辯が願ひたい、其の上で私は又御尋ねしたいと思ひます
そこで今度の問題で一番重點を置いて居るのは、地方の住民に選擧權を與へて、自治制に對する發言權、權能を非常に強く與へた、是が一つの特徴である、併しながら永い間の日本の風習から見まして、至つて選擧と云ふことに付てはまだまだ訓練を經て居ないのが現状であります、過ぐる總選擧に於きましても、特に大都市の候補者の濫立、或は私共想像するに今後數囘行はれる市町村長、或は府縣會、市會、斯う云ふものを合はせますると、此の物資の少い時に非常に色々なものを消費すると思ひますが、是は徹底した選擧公營をやる意思はないか、過ぐる選擧の時に選擧費用を超過したものは、折角當選しても失格すると云ふ規定がある、併し失格すると云ふだけでありますから、司法警察は積極的に動かない、告發があれば發動致しますけれども、それでなければ放つて置く、隨て私共の知つて居る範圍でも、相當に金を使つて、而も澤山なびらを貼りながら、之を如何ともすることが出來ない現状である、併しながら是等も數を制限して、全部徹底した公營を行つたならば斯う云ふこともなくなると思ふのですが、徹底した選擧公營をやる意思があるかどうか、今一つは是もやはり選擧に關係して居りますから申上げたいのでありますが、特に大都市に於ては非常に候補者が濫立する虞がある、幾ら濫立致しましても選擧民に訓練がありますれば、それをちやんと自覺して、十分立派な人を選擧致しますけれども、今日の現状では私はまだまだ程遠いものがあると思ひますから、甚だ手數も掛り、或はどうかと思ひますけれども、暫定的處置として組織を市會に持つか、或は又別個に銓衡委員會と云ふやうなものを作るか、或は又豫選をやつて更に決選をやると云ふやうに、二重手間でありますけれども、さう云ふことをやつて本當に徹底した、本當に立派な人を選び出すと云ふ選擧の方法を、私は特に大都市の市長選擧の如きは採らなければ、或は知事の如き公選をなしても、私は本當に立派な人材が得られないと思ふ、そこで是等に付ての御考へがあるかどうか、唯此の儘多數決を以て多數を得た者が當選者となると云ふ普通選擧の形を採るのかどうかと云ふことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=46
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047・大村清一
○大村國務大臣 只今御發言の中には御希望の點もありましたが、尚ほ其の點に付きまして一寸御諒解を求めて置きたいと思ふのであります、地方財政の點に付きましては現行の地方制度の上に地方税の面を取上げて居りませぬ、地方制度の外に地方税法と云ふものがありまして、一緒になつて居りませぬので、今度の地方制度の民主化的改正に於きましても、是は地方税法の改正に俟つて行ふと云ふことを致して居りますので、御審議中の法案には入つて居りませぬ、併し地方行政を民主化するに付きましては、當然地方財政の民主化と申しますか、自主化、自律化をなさなければならないのでありまして、此の點に付きましては政府財政諸案の提出と同時に、それと關聯を持つても居りますので、地方財政、殊に地方税法の改正案を提出する積りで居ります、其の際に十分御説明を申上げたいと思ひます
次に警察の點に付きましても御承知の如く今までの我が國の行き方と致しまして、警察は地方自治事務の外に考へて居りましたので、地方行政の改革に付きまして形式上一應是から拔けて居るのであります、併し我が國警察の民主主義的再建に付きましては、餘程思ひ切つた改革をしなければならぬと思つて居ります、尚ほ私共の感じと致しましては警察再建が非常に必要なことではございまするが、終戰後餘り急いで再建に著手致しますると、ともすれば昔の警察に復元をすると云ふ危險もあることであります、終戰後段々と民主主義的な方向に社會の萬般のことが變つて行つて居りますので、國民の氣持も餘程日と共に變つて來て居ります、それが或る時期に達した時に警察再建策を考へることが、寧ろ新しい警察の建設の上には望ましいことではないかと云ふやうなことで進んで來て居つたのでありまするが、是も何時までも遷延して居ることも出來ないことでありますので、最近になりまして色々工夫勘案は致して居ります、併し未だ或は政府案と申しますることは固より内務省案と云ふやうな所まで固まつて來ては居りませぬ、尚又御承知の如く聯合軍側に於きましても、特に日本の警察の新再建に付きましては、所謂警察使節の如きものを派遣致しまして、段段調査、研究もされ、恐らくは適當な時期にそれ等のことに付ての「アドヴァイス」もあるのではないかと考へて居ります、さう云ふやうな點もございますので、今直ちに内務省の警察再建の確定案を御示しすると云ふ段階には達して居りませぬ、若し御示しするとしますると、警察改革草案で、而も未定稿と云ふ程度のものしか得られぬと思ひます、併し其の程度のものを御示し致しまして、議員各位の忌憚なき御意見御批判を仰ぐ、又社會の輿論に聞くと云ふやうなことも、新しい警察再建の上には非常に有益なこととも考へて居りますので、成べく早い機會に關係方面と連絡も付けまして、其の程度のものでありましたならば御覽に入れ得るかと考へて居る次第であります
それから選擧公營を地方選擧にも廣く採り入れるべきであると云ふ御意見でありますが、是は洵に結構な御意見でありまして、出來ますれば其のやうに取計ひたいと云ふやうに考慮は致したのでありますが、今日の我が國の實情と致しまして、地方選擧に廣く選擧公營を採り入れると云ふことは色々の困難がございます、又從來もそれ等の點を考慮せられまして、地方選擧には一切選擧公營を採り入れられて居なかつたのであります、併し知事公選に當りましては、其の選擧の重要性、又選擧區の廣い所と云ふやうな點を考慮致しまして、知事の公選に際しては選擧公報及び選擧會場の公營をやつて行かう、是は地方選擧の上に選擧公營を採り入れます最初の措置であります、今日の状態としては此の程度で我慢をするより外ないと云ふやうに考へて居る次第であります、今後物資が豊富になり、又地方團體の事務能力が選擧公營に適すると云ふやうなことになりましたならば、其の許す限度に於きまして選擧公營を擴張すると云ふことは是非考へなければならぬ問題だと思ひますが、今囘はそこまで至つて居りませぬ、それから候補者の濫立に付きましては曩の衆議院議員選擧に於きましても、我が國の實際と致しまして、それを何とか適當に整理をする方法はないかと云ふことは朝野の論議されて居る所でありますが、候補者濫立を防止しますることを、法律を以て如何に之を制限するかと云ふことになりますと、是は中々實際問題として難かしいのであります、さうして此の濫立防止の宜しきを得ませぬと、民意を暢達する上に於て大いに缺くる所が出來て來るのでありまして、候補者濫立防止策と致しまして、法律上強い措置を執ると云ふことは、餘程考慮を要することと思ふのであります、併し此の法律外に於きまして適當なる濫立防止法を何等かの方法でやる、考へて行くと云ふことは是は可能なことでありますので、又是は法律できつちりと制限することでありませぬから、非常な大きな實害を殘すと云ふ虞れもないと思ひます、それ等は今後の我が國の實情に依りまして、任意に考慮される所に任せると云ふので如何かと考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=47
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048・大矢省三
○大矢委員 警察のことに付て私の問うたことと多少違ふ御答辯があつたやうであります、私は此の大都市に向つて今持てる府縣知事の權限である保安警察、風俗、衞生、交通、經濟、消防と云ふ風な警察事務なり、或は今まで監督を受けて居ることを、直接どの程度まで大都市に委讓する具體的な御意思があるかどうかと云ふことを御聽きしたのですが、其の點で多少答辯の方で私の聽かんとする所と違つて居ります、御承知の府縣會議員と衆議院議員は兼任することが出來ない、所が市會と縣會は兼任することが出來る、それから市會と聯合會長、部落會長共に兼任することが出來ると云ふことになる、それには報酬を出す、或は實費辨償をやることも規定にあるのでありますが、私は是は非常な弊害が伴ふと思ふ、と言ひますのは是から段々民主主義の地方自治體が完全になつて參りますと、民意の反映する、所が多くて、それぞれ會議と云ふものは多くなる、隨て從來或は二枚羽織と言ひますか、兼任と云ふことが、非常に政治の上に、自治の發達を阻碍すると思ふ、現に私は衆議院議員の中に於ても、地方の町會長或は町長、或は小さな市長の如き人は、此處に居れば其の助役に任せきりで、殆ど事務が執られない、さう云ふ地方の自治の上に支障を來して居る、殊に我々平素地方の自治體に於て經驗する所では、大阪の如きは二百六十校からの學校があつて、其の學校單位に町會、聯合會が組織されて居りまして、町會聯合會長は其の地方のことに至つて熱心であり、其のことが却て部分的な利害を代表する爲に、全體的な利害と云ふものを動ともすると輕視する嫌ひがある、殊に聯合會長或は地方の部分的な代表者を出して居る所の部落會竝に町會聯合會は、それで非常に便宜或は利益を得るが、それを出して居ない地方に於ては却て寧ろ其の人達が非常に迷惑と不便を感ずる、斯う云ふことの爲に今後自治體の強力な發達の上から、全體的な立場に立つてものを處理して行く上から云つて、私は二枚羽織と云ふことは此の機會にはつきり規定して廢止すべきだ、若しそれが宜いとするならば、どうして、府縣會と議會だけが兼任することを得ずと書いてあるのか、若しそれが宜いと言ふならば、もつと下の市町村までも伸ばすと云ふことの意思があるかどうか、其の點を御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=48
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049・郡祐一
○郡政府委員 府縣會議員と貴衆兩院議員との兼職を禁止致しますのは、府縣會が府縣と云ふ國家に最直近致しまする地方自治體の議員でありまするので、何分にも今後國會と云ふものは、極めて長期に亙りまして、相互兼務を致すことは困難だと判斷されまするので、左樣に相成つて居るのであります、御説のやうな一人一職論と云ふものは十分あるのでありますが、但し一方に於きましては、又御指摘の聯合會長のやうな、地方の實情に通じましたものが兼務致すことに依りまして、多くの利益を得る面もあるのであります、隨ひまして弊害の面を見まして一人一職論を極端に徹底させることは、却て利益の面を矯める虞がありはしないだらうか、隨て國家と之に直近する自治體間の兼職禁止のみに、只今の所止めてあるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=49
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050・大矢省三
○大矢委員 府縣會議員と衆議院議員は兼ねることはいけないけれども、市會と府縣會は兼ねて構はぬ、或は又地方の實情に非常に明るい人が出來たならば便利だから、其の點は兼任しても構はぬと云ふことでありますと、全體的に出られる場合は贊成ですが、二年三年か以前議員數なんかも極度に減らした、中央集權的になり、地方分權的なことを特に嫌つた、是は軍の方針か官僚の方針か知りませぬけれども、それを減らしたのであります、其の限られた數では、高所に立つて隅々まで見なければ、私は公平な政治は出來ないと思ふ、我々の意見が反映すれば地方的には宜いけれども、それを出して居ない所は非常に困る、斯う云ふ傾向もあるのだが、結局さう云ふことであれば、是は意見の相違と云ふことになりますから、私は是れ以上追求しませぬ
最後に地方自治體に向つて各省から異つた色々な調査統計が、次から次へと來て、之には全く地方は閉口して居る、之を依然として改めない、而も其の費用は幾分補助はございますけれども、地方の負擔になつて居ります、是は事務的から言つても或は經濟的に行きましても、不經濟でありますから、統計課とか或は調査局と云ふやうな一本にして、そこへ命令を出しますならば、直ちにそれが答申出來、目的を達すると云ふやうな簡素化を、徹底的に一つやる意思があるか、其の爲にはさう云ふ獨立した統計局と申しますか統計省と申しますか、さう云ふものが特に今後必要になつて來ると思ひますが、さう云ふことを御考へになつて居るかどうかと云ふことを御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=50
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051・郡祐一
○郡政府委員 御話のやうな統計調査の相當殺到致しますことは、私共は實は困つたことだと思つて居ります、唯只今の各般の事情を申しますと、今までよりももつと精密なる統計なり其の他調査と云ふことを急速に致さなければならぬことが多いことであります、それで將來統計局と云ふ御話──是は統計局のみの御話ではありませぬが、統計局と云ふ機構では、却て動きが十分ぢやないだらう、或は府縣なり市町村なりを直接監督致して居りまする内務省が、努力致さなければ相成らぬことであらうかと思ひまして、時々調製はやつて居るのでございますが、十分なる状態に達して居りませぬ、今後とも努力致しますし、機構の問題も十分考へさせて戴かうと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=51
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052・大矢省三
○大矢委員 私は長い間御聽き致しましたけれども、悉く私の意見と違ひます、そこで是は意見の相違でありますから、是れ以上質問致しませぬが、甚だ私遺憾に考へて居ります、之を以て質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=52
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053・中島守利
○中島委員長 稻田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=53
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054・稻田健治
○稻田(健)委員 それでは簡單に──先程から伺ひますと、知事を官吏とするか公吏とするかと云ふことが相當問題になつて居るのでありますが、どうしても大臣は公吏となし得ないと云ふやうな口吻であります、是れ即ち民主主義にあらずして、官僚獨善ぢやないかと私は思ふのであります、昔から羊頭を懸げて狗肉を賣ると云ふ言葉もあります、大臣は民主主義を懸げて官僚獨善を狙つて居るやうな感がするのであります、是は何かと見た時に、見方はあります、お爺さんお婆さんに見せると、それは佛樣の手だと言ふのであります、金持に見せればお金だと言ひます、子供に見せると輪だと言ふのであります、輪とお金と佛樣の手、大變な違ひであります、官吏と見るか公吏と見るか、是は見方であります、戰爭中には官吏は何をしたかと云ふと、軍閥々々と云うて其の御機嫌を取り、非常に横暴をやつたものであります、それを見て居りますと今では聯合國聯合國と云うて藝者のやうに近接して居るのであります、國民は餘り之に對して好い感じを持つて居りませぬ、其の證據には今まで戰爭中に、頑是ない子供は兵隊さん有難うと云ふ歌を歌つて居つたものであります、我々は戰爭中、或は戰爭が終りましてからも、官吏に御恩があるならば、どうしてあの子供は官吏樣有難う、役人樣有難うと云ふ歌を歌はぬだらうか、あの子供に至るまでさう云つたやうに親しみを持たないのか、併しわざわざ官吏と見ると云ふことは無理ではないか、是を見せるならば公吏と見せたならば宜いではないか、公吏として教へられた方が賢明な策だと私は思ふのであります
更に私は重ねて一遍に御質問したいと思ひますが、副知事を拵へられる制定が望ましいのであります、なぜならば、公選せられる知事必ずしも事務に通じて居る者ばかりではありませぬ、若し茲に事務に通じて居られぬ所の知事が當選せられた場合に、純粹なる官吏である部長が知事に旨いことを説明しまして、官僚獨善をやる虞が多分にあるのであります、此の場合に於きまして、今日憲法が改正されますれば、總理大臣が各省大臣を任命せられる如く、市町村長が助役を選任する如く、知事は副知事を選任する制度を御加へになつた方が官僚獨善を防ぐ最も善い方法ではないかと思ふのであります、此の點大臣の御所見を伺ひます
それから更に市町村制、府縣制の中を見ますと、一定數以上の選任の代表者が申請した場合に於ては、解職とか解散が出來ると云ふ制度があるのであります、其の一定數と云ふ數は甚だ少い數でありまして、容易に纏まる數であります、斯う云ふ僅かな數を以て此の解職、解散が出來るものとするならば、徳を以て出て貰はなければならない人、出たい人にあらずして出て貰ひたい人に出て貰ふ場合に於て、さう云ふことが時々起つた場合に於て、果して其の徳のある出て貰ひたかつた人が喜んで其の職に居るかと云ふことです、是は非常に地方自治體を破壊する虞があるものでありますので、此の點一定數と云ふものを、もう少し多い數に變更せられる意思なきや否や、斯う云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=54
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055・大村清一
○大村國務大臣 公選せられたる知事を官吏に致します點に付きましては、別段官僚制度を維持しようと云ふ意圖から出て居るものではありませぬ、府縣の性格から今囘の制度と併せ考へまして、公選知事を官吏とすることが必要であると云ふ所で之を官吏とするに過ぎないのであります
次に一定數のものが解職の要求が出來ると云ふ點に付ての一定數が、非常に少な過ぎると云ふ御意見でありますが、此の一定數を定めました根據は、市町村長等が公選せられます場合の最低得票數とも睨み合せまして此の數を決めましたやうな次第であります、而して此の一定數が町村等に於きましては比較的容易に集め得る數であると云ふことも考へられるのでありますが、併し解職請求權は、請求して直ちに效力の發生する譯ではございませぬで、監督官廳に於きまして公正なる判斷、即ち解職を要求する理由其の他に付きまして公正なる取調を致しまして、そこで其の決定に依つて採否を決めると云ふことになつて居りますので、其の運用に依りまして實際上大なる支障がなく進み得るものと考へて居る次第であります
それから副知事を置いたらどうかと云ふ御意見でありますが、御尋ねになりましたのは、恐らく副知事は公吏としての副知事と云ふ意味であらうと思ひます、若しさうなると致しますと、知事を官吏と致します以上、其の中間に公吏の副知事を置きましては、國政事務の方の掌理をさせると云ふ點に付きましての繋ぎが出來ないと思ひます、若し副知事を置きまして之を同時に官吏にすると云ふやうなことに致しますことは、行政機構を複雜ならしめる缺點もありますので、之を置かない方が寧ろ適當ではないかと考へるのであります、現制の儘知事を官吏と致しまして、其の知事に部下官吏の進退の具情權を與へますことに依りまして、内務部長以下の官吏を十分に把握致しまして、知事は其の職務を完全に行使することが出來ると信じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=55
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056・稻田健治
○稻田(健)委員 さう仰しやいますとどうしても中央集權と云ふことを斷念出來ないやうに窺へるのであります、今日國が破れて此處まで來た時に於て、民主主義が斯くまで叫ばれまして「ポツダム」宣言を受諾した日本が、一部の官僚に依つて──一部の官僚と云へば率直に申しますれば内務省でありますが、内務省がさうまでも輿論を無視して中央集權にやらなければならぬと云ふことはどう云ふことか、私は先程申しましたやうに必ずしも官吏でなければならぬ、公吏でなければならぬと申しませぬ、官吏で宜いものであるならば副知事も官吏とせられて、知事が任免權を持つやうにせられたならば、非常に國民が安心すると思ふのであります、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=56
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057・大村清一
○大村國務大臣 副知事を置きまして知事が官吏として任命すると云ふことは一寸行ひ兼ねると思ふのであります、官吏の任免權は知事に與へると云ふ譯には行き兼ねるのであります、是は先に御説明を申上げた通りであります、尚又御意見の所に一寸申上げて置きたいと思ひます、我が國の終戰後の現状と致しまして、中央集權と云ふのは語弊があるかと思ひますが、地方行政の上に中央の統制が及ぶと云ふことは、當分の間絶對必要だと思ふのであります、段々建直つて參りまして、食糧其の他の經濟行政に於きましても、國家の統制の枠を外し得る時期が一日も速く來らんことを、私共も國民と共に切望致して居りますが、ここ當分は中々さうは參らぬと思ひます、又治安の面に於きましても同樣のことがあらうと思ひます、併し戰後の經營宜しきを得まして段々建直つて參りましたならば、自由經濟の下物資も極めて圓滑に動く、國民の生活も配給統制をやらなくても十分にやつて行ける、又さう云ふ状態になりまして社會が靜謐化しまして國民の道義心も高まつて來る、さう云ふやうなことで、治安の面に於きましても非常に改善されて來ると云ふことになりますると、我が國の地方行政の運營に於きましても、大體府縣なり市町村の自治に俟ちまして、國家が統制的な作用を收縮して行くと云ふことが段々可能になつて來ると思ひます、其の時期の來ることを國民と共に望み、又大いに努力しなければならぬと思ひますが、終戰後日尚ほ淺き今日に於きましては、地方行政の面に於きましても、相當國家統制を加へることは必要已むを得ざることと思ふのであります、其の現状に即して考へますと、府縣に對しまして度々御説明を申上げましたやうな二重性格を與へて之を維持すると云ふことは、我が國情として必要已むを得ざる要求であると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=57
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058・稻田健治
○稻田(健)委員 そこに於て意見の相違でありますが、私は最近追放令と云ふ言葉を聽きまして、内閣が追放令に依つて該當者を調査し、發表して居りますが、我々が若し其の審査する地位に立つならば、今日居られます官僚の大部分が追放令に該當する方であります、其の大部分の官吏が追放されまして、新しい官吏に依つて地方自治體を監督、或は中央集權されますに對しましては國民は異議ありませぬ、所が戰爭中の官吏の大部分が存續せられまして、自分の手で自分が審査して、該當しなかつたから俺は正しいのであると云ふやうな、謂はば圖々しい氣持を以て地方監督をやられるに至りましては、國民は納得する譯には行かないのであります、此の點に關しての大臣の所見如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=58
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059・大村清一
○大村國務大臣 私から其の點に付てはつきり御答へを申上げる立場でないと思ひまするが、併し此の官吏の資格審査に付きましては、聯合軍側の指令に基きまして相當嚴重に進行せしめて居るやうに聞いて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=59
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060・稻田健治
○稻田(健)委員 私の質問は是れ位にして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=60
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061・中島守利
○中島委員長 本日は是で散會致します、此の次は十五日月曜の午前十時より開きます
午後四時二十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00219460712&spkNum=61
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