1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月十五日(月曜日)午前十時十九分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 早稻田柳右ェ門君
理事 中村高一君 理事 大原博夫君
理事 丸山修一郎君
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 淵田長一郎君
細田忠治郎君 松永佛骨君
水口周平君 綿貫佐民君
小野瀬忠兵衞君 小池新太郎君
青木清左ヱ門君 八坂善一郎君
大矢省三君 岡田春夫君
堤隆君 細田綱吉君
宮村又八君 矢尾喜三郎君
宇田國榮君 駒井藤平君
伊藤實雄君 中田榮太郎君
細迫兼光君
同月十三日委員坪川信三君辭任に付其の補關として青木清左ヱ門君を議長に於て選定した
同月十一日衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託せられた
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
出席政府委員
内務政務次官 世耕弘一君
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 谷川昇君
内務事務官 鈴木俊一君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 是より會議を開きます、質疑を續行致します──綿貫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=1
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002・綿貫佐民
○綿貫委員 御承知の如く現行法の府縣制や町村制は何れも明治時代の遺物と申しますか、古く制定を見たものでありまして、地方自治と申しましても、結局は封建的、官僚的の統治の粉飾と申しますか、實質のないものであります、殊にここ數年來即ち改選以來中央の議會が拍手議會と言ひまするか、全く無力化致し、之に伴ひまして地方の議會も全く有名無實と相成りまして、所謂民意上達の機關であるべき地方制度は、單なる上意下達の機關と堕したかの感を呈するに至りましたことは、洵に遺憾でありまして、敗戰の大きな原因も亦茲に存するかと私は考へて居るのでありますが、今や終戰の條件と致しまして凡ゆる面に於きまして民主化せられつつあります此の際、民主制の基本であり根本である所の地方自治の完成を致しまして、民主立憲政治の實現を期すべきことは當然であり、國家全體の民主制も此の地方自治が健全な發達をなす限り、其の上に立派な花が咲く所以であらうかと考へるのであります、此の意味に於きまして地方制度の全面的の改革、根本的の改革を斷行することは日本民主化の要件であり、最大の急務であると信ずるのであります、然るに政府の御提案を見ますると、知事竝に市町村長の公選以外には特記すべきものが寥々たるものであり、而も根本的の改革には殆ど觸れて居らないやうに思はれるのであります、惟ふに是は現行憲法の下に於ける所の改正であり、現行憲法にも副はず、又新憲法の精神から申しまして不十分、不徹底な改正に終らざるを得ないのではないかと考へるのであります、即ち所謂過渡期に於ける暫定案であつて、新憲法實施の曉に於ては直ちに根本的の改革をなさるものであらうと考へるのでありまするが、如何に御考へであるかを伺ひたいのであります
地方制度の根本的の改革としまして先づ私共の考へまするのは道州制を布くとか、或は府縣を廢合するとか、或は地方事務所の機構を大改革するとか、或は又北海道の如き廣汎なる土地、而も非常に發展して居りまする土地を、從來の朝鮮の如く數箇の縣に分割して府縣制を布くと云ふやうな根本的地方行政區劃の改正に付て、何等觸るる所がないのでありますが、此の點に付きまして當局は如何に御考へであるか又改革案の最大問題である知事の公選に付きましても、知事だけの公選が示されて居るのであつて、其の他の部長や事務官が依然たる官吏でありましては、たつた一人の知事が宙に浮いたやうな形になりまして、十分に其の威令が行はれない點が多分にあるのではないか、即ち民意を十分に反映致させまするには、憲法第八十九條の趣旨に則つて部長級までを公選にすると云ふやうに、其の範圍を擴げる御意思があるかどうか、又無條件では洵に弱いのでありまして、是非部長以下の官吏に對する生殺與奪の任免權を知事に委任なることにしなければ、地方制度の民主化を徹底せしめ得ないと思ひます、即ち町村長が任期滿了せざる助役に對して之を解職出來ると同樣の扱ひに致すことが出來ないかを伺ひたいのであります、又公選されました知事が官吏の身分でありましては、依然内務大臣の絶大なる監督權の下に置かれるのでありまして、自治行政の基本意義は此のことに依つて大半沒却されてしまふ虞があるのであります、故に知事を公選にする以上は、之を公吏として公選の意義を徹底せしむべきであると信ずるのであります、此の意味に於きまして本案に於て知事を公吏とすることに修正をされた場合に於て、本法案の運營上之に善處する具體案ありや否やを伺ひたいのであります、又内務大臣は將来民主化が進むに從うて中央集權が地方分權となる、其の時は吏僚制度を公吏制度に改める、斯う云ふ風に仰しやいましたが、それは私に言はせますと逆でないかと思ふ、即ち中央集權が合法的に打破せられざる限り、政治機構の民主化は實現しないと存ずるのであります、政府は知事の公選に伴ひ直ちに地方分權を斷行し、一日も早く公務員法を上程すべきであると存じまするが、其の用意ありや否やを伺ひたいのであります、尚ほ地方制度の改革と同時に、最も重要なる關聯性を有する警察制度の根本改革が最も必要であると存じまするが、警察權に付きましては根本方針を一日も早く確立されまして、新事態に即應する警察制度の改革を致しまして、不安のどん底にある所の國民をして、一日も早く安堵せしめられる必要があると存じまするが、内務大臣の御意向を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=2
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003・大村清一
○大村國務大臣 只今綿貫議員から地方制度の根本問題に付て御觸れになりました事項は極めて多方面でありまして、内容も極めて重要なことが澤山にあつたのであります、全部に亙りまして御滿足の行くやうな御答へが出來ますかどうか、私も自信がありませぬが、一應御答へ致しまして、尚ほ不十分の點は更に御問返しを御願ひ致したいと思ひます、戰時中日本の行政の在り方が非常に思はしくなかつた、敗戰後民意を暢達する國民の滿足するやうな政治の行き方に切替へなければならぬと云ふ點に付きましての御見解に付きましては、私共全然御同感であります、そこで從前の制度を新時代の氣持に合ひますやうに改革を致して行きますことは、國政、地方行政全般を通じて政府の責任であらうと思ひます、又國民も之に協力される意味に於きまして、日本國民の多大なる責任であらうと思ふのであります、兩者の責任に於きまして、日本民主化は大いに之を推進しなければならぬものと思ふのであります、そこで政府は今期議會に最重要問題として憲法改正草案を提出致し、現に其の審議が進行中であります、其のやうな事態が展開しますに付きまして、地方制度を如何に取扱つて行くべきかと云ふことを政府としては熟慮致したのであります、一つの行き方と致しましては、先づ新憲法の成立を以ちまして、其の新憲法の條章に從つて、我が國の國政及び地方行政の全般に向ひまして、適當なる改革をして行く、さうなりますと、單に地方の自治制度のみならず、國家行政の政府で扱つて居りますもの、或は又府縣其の他の地方機關で扱つて居りますもの、それ等に向ひましても、新憲法の精神に依つて改革すべき面は極めて多端であらうと思ひます、それ等と相順應致しました地方自治制度を打立てて行くと云ふことになりますと、其の關係して居る事項は極めて多岐でありまして、其の完全なる案を得ると云ふことに付きましては、自然相當の日時を藉さなければ成案を得ないと云ふやうな關係にあらうと思ふのであります、政府と致しましても、今期議會に於きましては、憲法が改正されるならば、最小限度の地方制度の改正でお茶を濁すと云ふことも先づ考へられることであります、而も本年の秋に於きまして、府縣會議員、市町村會議員の選擧が行はれると云ふことは必至であります、さうなりますと、最小限度の改正でお茶を濁すと云ふことになりますと、地方議會の議員の選擧權、被選擧權の擴張をやる、是は何を措いてもして置かなければならぬことでありまして、之を以て此の際打止めて行くと云ふのも、確かに一つの考へ方であります、併し翻つて考へて見まするに、國政の民主化と云ふことは、何としても是は地方自治行政の民主化と相俟つて行かなければ、日本民主化が政治の面に於ても如何にも不徹底であると云ふことは誰しも氣の付くことであります、若し出來ますことならば、地方自治行政に於ける民主化が先行致しまして、さうして其の基礎の上に立つて、中央國政の民主化も初めて全きを得るではないかと云ふことは、是は理論に於きましても、實際に於きましても當然のことだと考へられるのであります、そこで單に選擧權、被選擧權の擴張のみならず、今日の時勢の要請致して居ります所の地方自治の民主化を、出來得る限り作案することは、現政府の責任であらうと云ふやうに考へまして、只今御審議を御願ひ致して居ります程度の民主化案を立案致した次策であります、此の我が國の社會思潮は戰前とすつかり變りまして、戰後は各般の面に於きまして、民主化を策して行きますと云ふことになつて居る、其の時に當りまして、只今御審議を願つて居りますやうな地方自治行政の民主化を圖ると云ふことになりますと、是は今日の社會思潮に向ひまして民主化を助ける非常に強い力になる、民主化の一推進力になると云ふことも考へられると思ふのであります、憲法は何れ近く適當に帝國議會に於て御決定になり、早ければ明年の二月には實施せられると云ふやうなことに相成ると思ひます、地方制度が幸ひにして議會の御議決を經ると云ふことになりますと、民主主義の線に沿ひました新地方制度に依りまして、地方行政の運營の「スタート」は十月頃からは開始されることでありまして、日本民主化の上に大變好都合ではなからうかと考へて居るのであります、そこで段々御質問の點に入る譯でありますが、地方制度を民主主義化する場合に於きましても、是は白紙に字を書くと云ふやうな譯には、政治の實際問題として行き兼ねる點があると云ふことは私が茲に申上げるまでもないことであります、御承知のやうに日本の現状は敗戰が因つて齎しました色々の緊迫したる事項が山積を致して居るのであります、國民の食糧生活の問題、或は思想の動搖、從つて治安の問題、又經濟界の諸混亂に伴ひまして起つて參ります治安面も洵に憂慮すべきものがあるのであります、此のやうな時期に於きまして、如何に民主主義化の上に必要なりと云ひましても、此の日本の社會が其の變革も耐え得るや否や、立派な案が出來ても、そこに移行するだけの日本社會が適應力を持つて居るかどうかと云ふ點は、政治の實際として深く省察しなければならぬことであります、或は地方自治行政の民主化を圖ると致しますと、段々御意見もございました如く、今日の府縣を完全自治體に改組致しまして、府縣と云ふ完全自治體の長は、公選せられたる府縣知事を公吏として運用すると云ふやうなことは、是は確かに民主主義の建前から出發致しますと、そこまで行かなければならぬものであります、それを今日の現前の日本の實情から致しまして、府縣を完全自治體化する──此の際一擧にして化すると云ふことになりますと、又別の方法を講じなければならない、即ち先日も申上げました如く今日の府縣の性格は、自治行政の面は府縣が現にやつて居ります所の國家行政の面に比べまして寧ろ小さいのであります、府縣の性格は中央政府の地方機關である國政の方面に於きまして最も重きものを持つて居ります、府縣の自治行政面に於ける任務はそれに比較致しますと寧ろ少いのでありまして、府縣を一擧にして完全自治體化すると云ふことになりますと、國政面を如何にするかと云ふ點が殘るのであります、是は色々考へられることであります、國政面に付きましては道州制に依つて解決する、或はさう云ふやうな大掛りなものを考へないでも、或は警察に對しましては警察官廳を特設する、乃至は經濟行政の面に於きましても、必要な限度に於きましてそれぞれ食糧特殊行政廳を作ると云ふやうなことに依りまして、解決することも考へられ得ることであります、又もう一つに於きましてはそれ等國政事務は、思ひ切つて自治團體たる府縣に委讓する、委任すると云ふやうなことも考へられることであります、併し是等の點は國政の全般を通じまして、整理を斷行しなければならぬことでありまして、府縣の持つて居ります今日の國政面を、單純に府縣公共團體に委讓してしまふと云ふやうなことは跛行的になりまして、國政の運營が圓滑に進むと云ふことは不可能であります、其のやうなことで、又只今申しました道州制を作るとか、特殊官廳を作ると云ふやうなことが、假に適正なる理論上の案が得られたと致しましても、それを斷行致しまして關係者或は又地方民も、其の新制度の運營に依りまして、完全な效果を收めると云ふのには、どうしても一年とか三年とか、或は十年とか云ふやうな相當の時間が掛ります、其のやうな悠長なことが、果して今日の日本の社會に於て出來ることであるかどうかと云ふ點は、深く省察して見なければならぬ所と信ずるのであります、そこで地方制度の民主化を圖ると云ふことで實際問題として考へを進めて參りますると、我が國の府縣と云ふものはもう既に數十年有力な地方の綜合行政機關として相當の實績を納め、又國民の氣持にも之を民主化する限りに於きましては、ぴつたりと來るものがあることを確信致すのであります、現在の府縣を解體せずして現状の儘之を民主化すると云ふことに付きましては、憲法の草案にも規定されて居ることではございますが、府縣知事は之を直接公選と致します、さうして府縣と云ふ公共團體の長に關する限りは、其の點に於ては府縣が完全自治體になる譯であります、併し先程申上げました如く、府縣の持つて居ります現在の任務、性格は、現状を餘り動かさないと云ふ方針を執りますと、府縣に現在屬されて居ります所の多くの國政事務を如何に處理するかと云ふ問題になりました場合に於きまして、他の一般國政事務の處理のやり方と關聯して考へて參りますと、是は便法として府縣知事に官吏と云ふ資格を與へて、さうして國政事務も從來通り處理して行くと云ふことにするのが、最も實際論として適當ではないか、先にも申上げたことでありますが、一體さう云ふ公選された知事が官吏であるか公吏であるかと云ふやうなことは、理論の上に於きまして私は餘り重要性を持つて居ない問題だと思ふのであります、之を「アメリカ」の制度等で見ましても、公選せられたる知事が官吏であるか公吏であるかと云ふやうなことは、殆ど「アメリカ」では問題にならぬと思ひます、唯日本に於きましては特殊の沿革から致しまして、官吏制度に對する公吏制度と云ふものが多年ございましたので、國民としては其の點に注意が惹付けられると云ふことは考へられるのでありますが、國民事務を府縣知事に併せ處理させます便法として、公吏と云ふ資格を與へた、是は退いて考へますと、我が國の官僚思想から申しますならば、民選せられました府縣知事に持つて行つて、官吏と云ふ名義を與へて國政事務を處理させる如きは以ての外だと云ふやうなことが、從來は考へられて居つたと思ひますが、終戰に依りまして國民の思想に百八十度の轉換がありましたから、公選せられたる知事に官吏と云ふ名目を持たせて、從來官吏でなければ扱つて居なかつたものを公選知事に扱はせると云ふ所には、百八十度の轉換が要ると思ひます、思想上に於きましての國民の民主主義化の、最も大きな現はれが其處にあると私は考へるのでありまして、民主主義の發展の爲に非常に意を強うして居る次第であります、さう云ふ次第でございますので、私共は知事を官吏とすると云ふ點に於きまして、從來の官僚主義を生き延びさせようと云ふやうな氣持は毛頭持つて居ないのであります、次にそれならば今日の社會状態から見て、只今御審議を願つて居りますやうな原案を作成したに付ては、將來日本の民主主義化が更に發展して來た場合に於ては、地方制度を更に改正せられるかと云ふ、謂はば今日の制度は暫定的な地方制度の改正案かと云ふ御尋ねでございます、是は民主主義と申しましても、其の民主主義が榮えて參ります國土に依りまして色々變つた歩みをすると思ひます、日本には日本式の民主主義政治が發展するものと思ふのであります、終戰後日尚ほ淺いことでありまするが、僅か數箇月の間に於ける民主主義の進展振りは目覺しいものがあります、此の勢ひを以て致しまするならば、地方行政と云はず、國政と云はず、、經濟方面、社會方面、總ての面に於きまして、民主主義化は急「テンポ」を以て進んで參ると思ひます、さうして日本の民主主義が大いに發展成長致しますならば、今日の制度は身に合はなくなる、成熟して來た民主主義の發展の程度に應じまして、それに著せるべく、制度が順次改められて行くと云ふことは、私は是は當然のことと思ふのであります、左樣な意味に於きましては今日の地方制度は暫定的なものと言ふことも出來ると思ひます、唯、それでは極めて間に合せ的の地方制度を作つたのかと云ふやうに御反問になりますと、私共の氣持としては必ずしもさうではございませぬ、日本の現状に即しまして、現段階に於きましては、此の程度の民主化が最も適當であると云ふ確信の下に提出を致した積りであります、間に合せに好い加減のものを提案したと云ふやうな氣持ではないのであります
それから次に日本の民主主義化の傾向から、又府縣の自治制の實際の運用上の上から申しまして、知事のみならず部長の如きも、憲法草案の條章に從つて之を公選にしたら宜いぢやないかと云ふ御尋ねであります、是も程度の問題でありまして、日本の民主主義化が段々と進展するに從ひまして、其のやうな時代も來ることと思ひます、唯、知事なり市長の公選と云ふやうなことは我が國として初めて採用することでもございます、又近時各種の選擧が頻々に行はれると云ふやうなこともございますので、此の直接公選と云ふやうな新しい制度を運用して行く上に於きまして、餘りに事項を殖しますると、どの公選も不眞面目に行はれると云ふやうなこともございまして、民主主義化の過程に於て、却て好ましからざる結果を招かないとも限らないと云ふやうな點を考慮致しまして、我が國に於て最も顯職と申しますか、重要な「ポスト」である府縣知事を目標と致しまして、茲に直接公選を實施する、其の運用の結果に徴しまして、更に他のものに及ぼすと云ふことが、寧ろ現状としては適切であらうと云ふやうに考へまして、府縣知事の公選だけに限つた次第であります
それから知事が官吏となりまして、内務大臣の指揮監督を受けるのでは、十分に手腕が發揮されぬではないか、其の點に對する御疑念でございますが、併し數十萬と云ふ府縣民の多數の支持を以て生れて參ります府縣知事と云ふものは、極めて基礎が鞏固でありまして、又縣民多數の輿望を荷つて出て來る知事と云ふものは、私は過日も申上げましたが、今日の政府の任命する官選知事に比しまして、人物に於きましても氣宇に於きましても、其の人の手腕に於きましても、數等上の人が出て來られるに相違ないと思ふのであります、其のやうな衆望を荷ひ、實力を備へたる儼乎たる公選知事が其の職に就かれました場合に於きましては、今日に於けるが如き、微に入り細を穿つたやうな指示なり監督を、政府がやると云ふやうな必要はなくなるものと思ふのであります、事實が之を解決致しまして、必要のない所に監督を致す、指示をすると云ふやうなことは、是は以ての外であります、其のやうな弱い知事ではなくなると確信を致すのであります、又政黨政治が發達し、議會政治が發達すると云ふことを考へますと、大多數の有力なる府縣知事は、必ずや時の中央政權を掌握して居らるるものと相通ずるものがあるに相違ないのであります、それ等の政治的作用を考へますると、制度の上に於きましては知事は官吏でございますから、指揮監督すると云ふやうな形式上の權能はございますが、實際問題と致しましては、知事の地位は獨立性、自主性を段々と確保して來て、地方民の信頼し得る知事、少くとも今日よりもより信頼し得る府縣知事が出來ると云ふことを私は確信して疑はざる者であります、さうして進退の具状權は弱い、任免權を委任したらどうかと云ふことであります、是は今日の憲法下に於て地方制度の改正を致すと云ふことを御考へに入れて戴きたいのであります、今日の官吏制度に於きましては、曾て言つて居りました勅任官、奏任官、今日の一級官、二級官の任免權を天皇以外の方に委任をする途はないのであります、それと調和致します意味に於きまして、任免權は委任は致して居りませぬが、それと實際上の作用は同じになると信ずるのであります、部下の官吏の進退の具状權を知事に付與致しますことで、實質上同樣の效果を收め得ると考へて居るのであります、さうして任免權に等しい具状權を行使しますると、それに依りまして公選知事は部下の官吏を把握すると云ふことは決して困難ではないと思ふのであります、何れ其の内容は殆ど未確定ではございまするが、憲法改正案が成立致しますれば、遠からざる將來に於きまして、公務員法とも云ふべきものが設けられることにならうと思ひます、さうなりますと其の場合に於きまして、私が茲に責任を以て申上げる段階には至つて居りませぬが、官吏と言ひ、公吏と言ひ、是は殆ど差異のないものに立案をされるものと思ふのであります、恐らく官吏と稱するのは、國庫から給與して居る者を言ひ、地方公共團體から費用を支辨して居る者を公吏と言ふ位な相違で官吏と言ひ公吏と言ふも、そこに國家公共の爲に、國民の公僕として奉仕する者を總稱すると云ふやうな工合に、日本の民主化が進むに從ひまして官尊民卑の從來の弊風は、根本から除去すると云ふ線に沿うた改革が出來るに相違ないと思ふのであります、現に朝野の有力なる方を網羅致しまして臨時法制調査會が組織せられまして、其の法制調査會に於きまして新しい意味に於ける公務員を律する法律が立案され、是が帝國議會の審議を經て民主的なる公務員制度が近く打立てられるものと思ふのであります
それから次に警察制度のことでありますが、御承知のやうに日本の警察制度位終戰後大きな打撃を受けたものはないと思ひます、十月四日の聯合軍の指令に依りまして、全府縣に於ける特高警察網は一令の下に打倒されたのであります、又當時警察部長の職にありました者は其の在任期間の長短を問はず、一率に罷免をされた、數字は詳しくは記憶して居りませぬが、其の爲に警察界から追放せられました警察官は凡そ五、六千位に及んで居ります、其のやうな打撃を受けましたのみならず、敗戰後の社會状態から申しまして、警察官は一時は如何なる職務執行方針を以て日々の業務をやつて宜しいかと云ふ所にも目當てを失つたと云ふやうなことも、可なり長く續いて來たのであります、此のやうな謂はば混亂状態から警察を早く建直すと云ふことは絶對必要なことではありますが、餘りに功を急ぎますと、好ましからざる戰前の警察に復元する虞があるのであります、社會の民主化の風潮が國民的に廣く瀰漫すると云ふやうな時を捉へまして、日本の警察を新しい警察、民主主義の線に沿うた警察にしなければならぬと云ふことでございますので、實は或る時期まで靜觀をして居ると云ふことが、結局は日本警察の民主化の上に得策であると云ふやうに考へて居つたのでありますが、併し最近段々と警察官の職務執行の指針と云ふやうなものに付きましても、はつきりしたものを掴み得るやうな事態に段々になつて居ります、又今日の社會情勢から新しい警察を建設すると云ふことに「スタート」致しましても、元の如き好ましからざる警察に復元することも先づなからうと云ふやうな世の中まで進んで參つたと思ふのであります、まだ警察制度を如何に改善するかと云ふことに付きましての確乎たる成案は持つて居りませぬ、併し草案の草案と云ふやうなものは、段々に主務省に於きまして集めて居ります、成べく最近の機會に先づ職員各位にも御覽に入れまして、さうして御批判を仰ぐ、又それを通して社會の批判、檢討を受け、さうして内容に於きましても、又其の制度を確立する上の手續經過に於きましても、共に民主主義的なるものに依りまして、國民の信頼し得る、納得の行く新警察制度を打ち立てたいと云ふやうに考へて居る次第であります、度々其の點に付きまして、御質疑がございますので、成るべく早い機會に其の程度のものに於きまして、未定稿の未定稿と云ふやうなものでありますが、其の出來上らぬ所で御批判を仰ぐと云ふことが、寧ろ最善な案を得る上に於て却つて宜からうと思ひますので、其のやうな取計ひを致したいと思ひます、尚ほ之を實際の問題と致しましては、何もかも總て警察事項は國家行政の中に留保すると云ふやうな行き方を變へまして、府縣なり、市なり、町村なりに委讓して一向差支がないと云ふやうなものは、寧ろ積極的に之を府縣市町村に、警察權と雖も委讓して行くと云ふやうな線に沿うての改革を致したい、又此のやうな行き方を内務省が執りますことは、今日の府縣の行政の中で自治行政面が狹いのでありますが、官治行政面を府縣自治團體に委讓すると云ふ行き方で、順次完全自治體の活動面を廣くすると云ふことに對する、先づ隗より始めよと云ふ實踐になるであらうと云ふやうに考へて居る次第であります、大變お觸れになつた點が多かつたので、或は御答へ洩れになつて居る點があると思ひますが、尚ほ再質問に依つて其の點を補充させて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=3
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004・綿貫佐民
○綿貫委員 反問したい點が少しございますが、時間の關係上逐條審議の場合に讓りまして、其の次の點に付て御伺ひ致したいと思ひます、公民權竝に名譽職制度を御廢止になりました理由、之を伺ひたいのであります、公民權及び名譽職の制度を廢止致しますことは是は其の地方住民の多年習慣付けられて來ました自治の根本を破壊致しまして、延いては憲法草案の八十八條でありましたかに所謂地方自治の點がございますが、此の本旨に反しやしないか、殊に大きな都會などは別と致しまして、地方の町村でありますが、斯う云ふ所に於きましては却て實情に即しない結果になりまして、町村長に立候補するやうな人が出て來ないで却て大混亂を來すやうな虞がありはしないかと存じますが、此の點どう考へるか伺ひたい
それから地方議會の機關と致しまして理事機關と決議機關でありますが、是がどちらを政府としては主と致しますか、重く扱ふのかと云ふ點であります、それから地方議會の權限を擴大すると云ふことでありますが、どう云ふ點に於て權限を新たに認めようとなさるか、それから選擧權の年齡低下は洵に結構ですが、百尺竿頭一歩を進めまして、選擧權の年齡を十八歳まで引下げまして、所謂年齡引下に依つて青年に對して政治に參與の途を開いてやつて、政治に對して清新溌刺の氣を注入し、さうして庶政一新の清涼劑と云ひますか、さうすることが非常に意義深いと存じますが、内務大臣は如何考へるかを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=4
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005・郡祐一
○郡政府委員 第一に名譽職制度の廢止の問題でありますが、是は仰せの通り我が國の自治制度が發達して參ります爲に、公民權の思想竝に名譽職制度と云ふものは著しい貢獻をして參つたものと思はれます、併しながら其の後に於きまする社會、經濟生活の向上と申しまするものは、住民の中に特に政治能力等の判斷を致しまして、區別を致す必要は現在なくなつて參つて居るのではないであらうか、而して此の度の制度に於きましても、名譽職と有給との長所を兼ね殘して居るやうに致して居りまして、勿論左樣な場合は漸次減つて來て居るとは思ひまするが、名譽職の名の爲に、名譽的に其の事務に當る、專務的な考へを持たないと云ふことは、寧ろ只今の市町村に於ける公職に於きましても相應しくないことであります、併しながら廣く優秀な人物を吸收すると云ふやうな意味合に於ける名譽職制度と云ふものは、十分採り入れて居る積りであります、要は只今の状態で公民權を著しい擴張を致しまするならば、更に公民と云ふものを殘して置き、又名譽職制度を存置する必要がないと考へた爲でございます、隨ひまして公民思想竝に名譽職制度に伴ひます長所と云ふものは、是は十分今後も殘して參るやうな、中味は殘りますやうな考へ方と云ふものは、大切にしなければ相成らぬと思ふのであります
それから理事機關と議決機關とどちらに重點があるか、是は當然理事機關と議決機關とは相共に自治體の中心を成すものでありまして、兩者が或は協調し、或は互ひに他の短を補つて發達して參らなければならぬものでありまするから、隨ひまして此の兩者と申しまするものは、自治體の二本の柱となりまして、何れにも重點が置かれ、さうしてどちらを強く致すと云ふやうな、片方を優越させると云ふやうな考へはなく、兩者を何れも強力に發達させて參りたいと云ふやうに考へて居ります、左樣な意味合に於きまして、三番目に仰せられました、地方議會の權限を、一方に於て直接選擧に依りまして理事者を強力に致しますと同時に、議決機關も可及的其の權限を強めることに致しまして、例へば議會に於きまする議決事項を、制度上規定致されて居りますること以外に、其の條例の規定に依りまして議決範圍を擴張することが出來まするとか、新しく設けられまする選擧管理委員等の選擧を致しまするとか、議會自身が監査委員の監査を要求致しまするとか、議決に付きまして豫算の増額修正を認めることに致しまするとか、又自らの會期、開閉等に付きまして、總て理事機關と離れまして自ら之を定めることに致しまするとか、議會の書記に付きまして議長が之を命ずることと致しまするとか、或は理事者の不信任の議決を致しまするとか、必要な事業に付て、事業の明細が分りまする貸借對照表のやうなものを理事者に要求致しまするとか、考へられまする凡ゆる點に付て、議決機關として有すべき權限は何れも擴張致した積りで居ります
最後に年齡低下の點でありまするが、選擧權の年齡は立法例に依りましても色々な例がございます、大きい國での最も低い例が十八年になつて居りまするが、併し是は他の凡ゆる能力と同じやうに、やはり成年と云ふものと合はせて參りますることが最も適當だと考へまするし、現在の我が國に於きまする國民の政治能力、生活能力等から考へまして、只今の程度が一番適當だと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=5
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006・綿貫佐民
○綿貫委員 もう一つ、來るべき府縣會議員選擧に當りましては連記制を採用しないのでありますが、其の理由、それから女の方も選擧權が出來たのでありますが、字の書けない人も相當居るのであります、此の實情に鑑みまして、投票の自書主義と云ふものを改めて貰つた方が宜いやうに思ひますが、此の點に對する御所信を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=6
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007・郡祐一
○郡政府委員 衆議院議員選擧に付きまして連記制を採用致しましたのは大選擧區制を採りましたが爲めであります、地方議會に付きましては、只今の所選擧區は從來と變化を試みて居りませぬ、それで地方議會に付きましては、連記制の採用の結果に付ての色々な論點がございまするが、其の問題と切離しましても、特に地方議會に付きまして選擧區に異動を試みませぬ以上、連記制を採用する必要はないと考へた次第でありまして、單記制を採用致して居ります
それから有權者の擴張に伴ひまする記號投票の點は、確かに一つの研究問題だとは存じて居ります、唯之に伴ひまして、記號投票でありますると、之の準備の爲に──仰せの點は恐らく自書主義を廢しまして候補者の姓名等を印刷して、印でも附けさせるのだと思ふのでありますが、之を致しますると、相當早い期日に立候補の締切を致して、それを準備致さなければなりませぬ、事柄と致しましては將來左樣に發展致しますことは洵に望ましいのでありますが、現在色々な技術的な點から、直ぐ採用することは困難なのであります、選擧が色々殖えて參りますので、是非採り上げて考へなければならぬ問題だと考へて居ります、來るべき地方議會の選擧には其の準備は一寸間に合ひ兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=7
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008・綿貫佐民
○綿貫委員 私の質疑は是で一應打切りまして、逐條審議の時に讓ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=8
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009・中島守利
○中島委員長 岡田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=9
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010・岡田春夫
○岡田(春)委員 質疑に入ります前に、質疑の基本的な問題を先づ伺つて置きたいと思ひまするが、之に對しましては簡單でありまするし、内務大臣の御意見を伺はして戴けば宜いのでありますから、極く簡單に御答辯願へれば結構であります
先づ第一に、先程からの御答辯、それから前囘の委員會に於ける御答辯、色々聽いて參りますると、民主化の問題に付きまして、徹底的なる民主化と云ふことに付きましては、此の徹底的なると云ふ言葉を御拔きになつたと云ふ御話があり、それから先程の御答辯に依りますると、最小限度の民主化ではないと云ふやうな御話でもありますので、此の民主化と云ふものが一體どの程度のものであるか、どうも未だ明確になつて居らないやうに考へるのであります、特に提案の御説明の時に於きまして、新憲法草案の精神を徹底的に採り入れた、斯う云ふやうに御説明の文書になつて居るのでありまして、此の徹底的と云ふことも御用ひになつて居るやうでありますが、斯う云ふ點を彼此れ見て參りますと、此の新憲法の草案にあります所の精神、此の民主化の問題、之をどのやうに御採り入れになつて居るのであるか、此の新憲法の精神と云ふものを、本質的に改正草案に於て御採り入れになつて居るのであるかどうか、形式的に單に採り入れられて居るのであるかどうか、此の點を簡單に御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=10
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011・大村清一
○大村國務大臣 簡單に御答へ申上げます、日本の地方行政を民主化すると云ふことは、憲法の精神に從つてどうしてもやらなければならぬと思ふのであります、それは日本の現在の社會と睨み合せまして、日本社會に適當なる民主化をやつて行かう、之には自ら順序もあり段階もあらうかと思ひまするから、一足飛びに實情を無視して何處までもやつて行かうと云ふやうな氣持は持つて居りませぬが、實情に即應しながら出來るだけの民主化を急がうと云ふ氣持であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=11
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012・岡田春夫
○岡田(春)委員 それでは大體新憲法の精神である民主化と云ふ問題に付て、出來得る限り組入れられたと斯う云ふ御話でありますので、さうなりますと新憲法が制定公布されました後に於きまして、本改正法律案は其の附屬法の役割として、其の儘其の精神を受入れてやつて行くことになるのであらうと思ひまするが、前囘からの御答辯から見ますると、其の時に於て事改めて本質的な改善をする必要はない、今の儘で行つて構はないと云ふやうな御話であつたと思ひます、斯う云ふやうな點から申しますと、新憲法の精神の本質的な點を取入れて居ると我々考へて居ります、そこで伺ひたいことは、基本法と附屬法との關係でありますが、附屬法と云ふものは、申すまでもなく基本法の精神を飽くまでも具體的に規定するものであつて、苟且にも基本法の精神を拘束したり、或は歪曲したり、制限したりするものであつてはならないと思ひますが、此の點に付きまして内務大臣の御意見如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=12
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013・大村清一
○大村國務大臣 新憲法の條章も十分研究致しまして、只今仰せのやうな矛盾歪曲と云ふやうなことはない積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=13
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014・岡田春夫
○岡田(春)委員 それでは次に御伺ひしますが、やはり基本的な問題でありますが、此の改正法律案と現行憲法との關係はどう云ふやうになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=14
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015・大村清一
○大村國務大臣 現行憲法の條章と矛盾撞著、抵觸すると云ふやうなことのないだけの配慮は致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=15
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016・岡田春夫
○岡田(春)委員 只今の矛盾でないと云ふ點は本質的な意味に於てでありまするか、法律の形式の意味に於てでありますか、其の點に付て御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=16
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017・大村清一
○大村國務大臣 是は偶然のことと申上げて宜いのか、或は又理由のあることと思ひますが、現行憲法に於きましては地方自治制度のことに付て何等觸れて居りませぬ、新憲法の地方自治に關する新方針を採り入れて行く上に立法上大變支障が少かつた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=17
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018・岡田春夫
○岡田(春)委員 若し此の場合に現行憲法の執つて居りまする所の精神、或は具體的な規定、是と先程から御尋ねになつて居りまする所の新憲法の精神と、御互ひに衝突をするやうな場合が事實問題として起きた場合、どう云ふ風に御取扱になつて居られますか、此の點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=18
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019・大村清一
○大村國務大臣 先程申上げましたやうに、地方自治制度に關しまする限りは、舊憲法に於て何等觸れて居りませぬ、只今御指摘のやうな問題は餘り難かしい問題には逢著しなかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=19
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020・岡田春夫
○岡田(春)委員 少し問題が變つて參りますが、やはり基本的な問題であります、實は内務大臣の提案の御趣旨を拜聽致して居りますると、地方自治と地方制度と云ふことを一緒に御使ひになつて居られるやうに私考へる、特に府縣の問題に關しましては、地方制度と地方自治と云ふものを一緒に混同されて御使ひになると云ふことは、非常に問題の理解を誤まる結果になると私考へて居ります、地方制度と地方自治との區別、特に府縣の場合に於きまして此の點を明確に御願ひを致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=20
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021・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねのありました點は一部當つて居ります、又當つて居ない場合もあると思ひます、それは地方制度と申します場合に於て、單に自治制度のみを目途として使つて居る場合がありまするし、又國の中央行政を地方の機關をして取扱はせる場合も地方制度と言つて居ります、之を理論的に申しますると、御話のやうに地方自治制度と、それから中央行政を行つて行く場合に於て地方に分割をしてやつて行く場合、二つの場合が事實あらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=21
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022・岡田春夫
○岡田(春)委員 諄いやうですが、私の御伺ひした今の趣旨は、府縣の場合に地方制度と言ふ場合には、私の理解が或は誤つて居るのかも存じませぬが、地方制度と申しました場合には、一面に於て所謂一時的には先般から色色御話になつたやうに行政官廳としての面、それから他の面に於ては地方自治體としての面を持つて居る、此の二つのものを綜合として、國家の統制と云ふ意味に於て地方制度と云ふ言葉を、我々使つて居るやうに考へて居りますが、地方自治と云ふ場合には寧ろ其の行政的な面は除きまして、地方自治體と云ふ意味に使つて行く方が正しいのではないか、斯う云ふ風に私考へて居りますが、之に付きましては、色色見解の相違もあらうと思ひますので是れ以上は申上げませぬ、唯ここで御伺ひしたいことは、地方自治と云ふものの民主化を盛んに御話になつて居られますが、其の場合に私の只今申述べましたやうな概念に於ける地方制度、特に府縣の場合の地方制度、是が本格的に民主化されると御考へになるかどうか、地方自治の今度の法案の提出に依つて、地方制度と云ふものが民主化されるかどうかと云ふ點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=22
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023・大村清一
○大村國務大臣 今度の改正案に依りますれば府縣と云ふ地方自治制度、其の方に於きましては府縣會が民主主義化の線に沿うて相當に改革をされて居ります、又執行機關の責任者たる府縣知事が直接公選に依りまして、是は最も高度の民主化が行はれて居ると思ふのであります、其の意味に於きまして今囘の改正案に依りましては、現段階に於きまして與ふ限りの民主化が地方自治團體に付ては行はれて居ると思ひます、尚ほそれに附帶致しまして今日府縣の持つて居ります性格に鑑みまして、地方自治行政以外の面に付きましても、府縣自治團體の民主化の際に、其の民主化の力を一般國政事務の方にまで持つて行く、國政の民主主義化も同時に圖つて行きたいと云ふ所を狙つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=23
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024・岡田春夫
○岡田(春)委員 さうしますと、圖つて行きたいと云ふ御考へでございますか、それとも私の先程申述べましたやうな概念に於ける府縣、斯う云ふ地方制度と云ふものが本當に民主化されると御考へになるのでありますか、どうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=24
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025・大村清一
○大村國務大臣 府縣の持つて居りまする國の行政面に付きましても、其の執行者が民主主義の線に沿つて選出されました有力なる、所謂民間知事に依つて掌握されることでありますから、自然國の行政面も、現状に比べますと格段の民主化が行はれると云ふやうに期待して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=25
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026・岡田春夫
○岡田(春)委員 それでは伺ひますが、先程現行憲法に於ては、地方自治の面に付ては何等觸れて居らない、それであるから現行憲法の精神と新憲法の精神に於て抵觸する所はない、斯う云ふ御話でございました、成程法律の形式としては其の通りであらうと思ひます、只今の府縣と云ふ地方制度の民主化と云ふものは、果し得られると云ふ御話でありますが、茲で問題になりますことは、府縣の行政の部面に於ては、現行憲法に於て相當色々な規定が現はれて居る譯であります、此の現行憲法に於きまする所の精神と、新憲法の精神でありまする所の民主化の精神とが衝突するやうな場合に於きましては、之をどのやうに御扱ひになられますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=26
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027・大村清一
○大村國務大臣 現行憲法の條章と申しますか、乃至は現行憲法に於ける政治の實際の運用から見ますと、國政事務の掌理は原則として官吏が當つて居ります、公選せられたる知事に官吏の資格を與へて、それに握らせると云ふやうな點は、從來の政治の實際に於きましては、或は是は現行憲法の精神に矛盾するやの論議も起り得るかと思ひます、併し現行憲法と雖も、官吏任命の要件として、公選者を以て官吏に當てると云ふやうなことも、例外的に認めて居ることでありまして、此のやうな時勢になりました場合に、其の例外を活用すると云ふことも一向差支へないと云ふことで、矛盾はない積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=27
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028・岡田春夫
○岡田(春)委員 それでは基礎的な問題に付きましては、大體以上の通りに致しまして、今度は質疑の本論に入つて參りたいと思ひます
只今の御答辯に依つて得た點でありまするが、今度の改正法律案に依つて地方制度と云ふものが、特に府縣に於ける地方制度と云ふものが、相當民主化されると云ふ御見透しを持つて居られるやうに私承ります、所で前囘の委員會の席に於きまして、我々の黨の大矢委員からの質問に於きまして、丁度公選知事を官吏にするかどうかの問題でありますが、此の點に於きまして市町村長は公吏であるにも拘らず、公選知事を官吏にするのは不合理ではないか、不條理ではないか、斯う云ふ質問に對しまして内務大臣は、府縣と市町村とは本質的に異なつた點があるのであるから、公選知事は公吏にすることは出來ない、斯う云ふ御答辯がありました、之に付きまして本日の委員會で段々承はつて居りますると、結局は府縣に於ては國政事務が所謂地方自治事務よりも非常に大きな割合を占めて居る、斯う云ふ御話であります、言葉を換へて申しまするならば、府縣と云ふものは第一次的には行政官廳である、第二次には地方自治團體である、斯う云ふやうな意味に解して宜いではないかと思ひまするが、之に付ては如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=28
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029・大村清一
○大村國務大臣 第一次、第二次と云ふのはどう云ふことになりますか、現在の付縣廳は國の行政機關、それから地方自治團體の行政機關と云ふ、二重性格を持つて居ると云ふやうに考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=29
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030・岡田春夫
○岡田(春)委員 結局は私が第一次、第二次と申しましたのは、先程御答辯のありましたやうに、國政事務と云ふものが非常に大きな割合を占めて居ります、私の記憶が誤りないとするならば本會議の御答辯の時に、六割か七割までが事務の割合を占めて居ると云ふ御話でありましたが、さう云ふ意味に於て地方自治體としての事務よりも、國政事務の方が非常に大きな役割を占めて居る、斯う云ふ意味で是は第一次的と使つたのでありますが、斯う云ふ點に付ては勿論間違ひないものと思ひますが、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=30
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031・大村清一
○大村國務大臣 御説の通りであります、私は過去の經歴に於きまして府縣知事も致したことがあります、又有力なる市の助役等も致しまして、兩者の經驗を相當豐富に持つて居ります、其の經驗に徴しましても、府縣は市町村と違ひまして、現在の府縣廳は國政事務の方が寧ろ比重の重い行政事務をやつて居ると云ふやうに考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=31
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032・岡田春夫
○岡田(春)委員 もう一度御伺ひ致したいのでありますが、それでは今度の法案は申すまでもなく府縣制の改正と致しまして、結局は府縣の地方自治團體の面に於ける所の改正であります、と致しますならば、第一次的な面でありまする所の國政事務の面、行政官廳としての面に付きましては、實は今度の法律案に付ては何等觸れて居られない譯であります、と致しまするならば、茲で御伺ひしたいことは、果して府縣廳と云ふ此の地方制度、是が本當に民主化されたものと御考へになりますか、どうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=32
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033・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねの如く現在の制度に於きましては、市役所等に付きまして市長の職務權限其の他に付て相當詳細なる規定がございますが、府縣に付きましては府縣廳は所謂不完全自治體と稱されて居りましたので、執行機關たる府縣知事に關する規定の如きは府縣制の中にございませぬ、寧ろ官吏法、地方官官制と云ふやうなことに依つて動いて居つたのであります、現在の憲法下に於きまして、一應其の形を執つて進める外ないと思ひます、併し日本民主化が進んで參りまするならば、必ずや將來地方行政官廳法と云ふやうなものも、官制以外に議會の協贊を經て、さう云ふやうな立法がされるやうな機運に向ふと思ひます、形式上に於きましては御尋ねのやうなことでございますが、將來を望見しますれば其のやうになつて居ります、又今囘の地方制度の改正の趣旨、精神に依つて、新制度が適用されることに必ずなると思ひます、實質上に於きましては現状に比して民主主義化が餘程進んで參るものと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=33
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034・岡田春夫
○岡田(春)委員 どうも此處の所が明快ではないのであります、茲で一寸私意見を申上げたいと思ひます、結局今度の府縣制の改正法律案を見た時に惡口を言ふやうでありまするが、何か青空市場の汁粉みたやうなことを聯想した、旨さうに見えるがちつとも旨くない、民主化のやうに見えるが、本質に於ては府縣に於ては何等民主化されて居ないと云ふやうに、實は私痛感したのであります、どう云ふ點かと言へば、結局府縣の長と云ふものの最も本質的なものは、只今御話の通りに行政面である所の第一次的の任務として、先程から再三御話の通りに、行政的な面である所の行政官廳と云ふものが、本質的な第一次的の役割を持つて居る、此の點に付ては何等本質的な解答を與へられずに、半面に於て他方自治體の面だけの民主化を行はれようとして居る、而も私の考へ方に於て誤りがないとするならば、先程から御話のありましたやうに、行政官廳の面に於きましては内閣官制、各省官制、或は地方官制、是等は全部勅令に依つて規定されて居ります、或は又官吏制度の面に於きましても、是は申上げるまでもない譯ですが、高等文官試驗令以下一切の官吏制度は、勅令に依つて御決めになつて居られる、此の點に付ては何等御觸れになつて居られないで、唯法律の部面に於きまする所の此の地方自治體の面だけの民主化を御圖りになつて居られる、是では私、結論から申しますると、決して地方制度と云ふものが本質的に民主化されたとは實は考へられないのでありまするが、茲で問題になつて參りますることは、此の勅令に依つて規定されましたことは、現行憲法の天皇の官吏の任免、大權の規定に依つて、勅令に依つて御出しになつて居られる、斯う云ふやうな現行憲法の規定から考へました場合に、私の考へから申しますると、新憲法の精神、所謂民主化と云ふ點と、茲で衝突が先づ現はれて居ると感じて居ります、斯う云ふ點に付てはどうしても行政組織、斯う云ふものの勅令に對する思切つた改正と云ふものが行はれない限りは、本格的な民主化は行はれないと私は痛感致して居ります、斯う云ふ點に付て本當に地方自治體、府縣に於きまする地方制度の民主化を御圖りになると致しまするならば、地方自治體の民主化と云ふものはさりながら、それよりもつと本質的な、所謂官僚機構の部面に對する民主化と云ふものは、現在行はれて居りまする勅令を改めまして、法律に依つて一緒に御提出にならない限りは本當の民主化にならないと思ひますが、之に付てはどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=34
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035・大村清一
○大村國務大臣 只今御意見を交へての御質問でありますが、大變好い機會だと思ひますから申上げたいと思ひます、私は丁度あなたと全く反對に結論を考へて居ります、と申しますのは、從來の府縣と云ふものは、是は全く官治行政を主と致しまして、ほんの言譯程度に府縣の自治と云ふものを認めて居つたと申して決して過言ではなからうと思ひます、從來の府縣會は僅かに會期が一箇月でありまして、其の間に府縣會の權限と申しますると、知事の編成致しました豫算を審議するに過ぎない、さうして豫算を決議するのが先づ最大の任務でありまして、外の方はそれに附帶致しまして、何か府縣政上に付ての質問をする、乃至は意見を述べると云ふ程度でありまして、極めて自治行政面の作用と云ふものは微弱であつたと思ふのであります、是では其の儘存續致して置きますることは、新憲法の條章から申しまして、洵に不自然なことになるのであります、今囘の改正に於きましては、そこに一大飛躍をして居ると思ひます、現行の府縣制に於きましては、府縣の行政の執行は、官僚の出店である府縣知事が全部を掌握して居つた、所が今度の改正地方制度に依りますると、民意に基いて、府縣民の公選に依つて出て來る府縣知事が執行機關の中樞責任を執るのであります、さうして其の部下の官公吏は完全に府縣知事が把握し得る權能を認められて居るのでありまして、茲に府縣行政は從來の不完全自治體から完全自治體になつたのでありまして、此の位の大飛躍は外にないと思ふのであります、さうしてそれに加ふるに現在の府縣廳の權限を、自治體の長としてでなく、國の官吏としてそつくり其の儘を府縣知事に握らせまして、さうして府縣知事の持つて居ります民主性で以て行つて、國政方面も其の運營は民主的にやらせようと云ふ所を狙つて居るのでありまして、私は今度の府縣制の改正と云ふものは、御尋ねになりましたと全く反對のもののやうに考へて居るのであります、若し其の點を更に説明致しますならば、府縣を完全自治體にした場合には、府縣の持つて居ります國務的な問題は切離しまして、先程來申しますやうに、警察に付ては官僚たる官吏の握る警察廳を設ける、農林行政に付きましても、地方に持つて行つて地方農林局を造つて其處に握らせる、それ等は地方行政廳になりますれば、府縣會に於てそれの行政の進行を批判して見ましても、是は犬の遠吠えと云ふやうなことになります、若しそれ等を民主的に政治的な監督をするとしますと、其のやうな地方行政廳は、國會に於ける論議の的にはなるでありませうが、地方廳から離れて來る、是では批判が非常に間接的になる、それ等の農林行政、警察行政と云ふものは、府縣廳にそつくり其の儘温存致して置きまして、それを運用する府縣知事は、公選せられたる民間知事に依つて運營する、其の運營を批判するものは、縣民に基礎を持ちます所の府縣會に於て批判、論議、檢討せられると云ふことになりますので、現在の府縣行政とは非常な躍進轉換であらうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=35
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036・岡田春夫
○岡田(春)委員 今御話がありましたが、要するに知事と云ふものが民選されるから民主化されるのだ、斯う云ふやうな御話であつたやうに思ひますが、問題は人の問題ではなく、制度の問題ではないかと思ふ、要するに人の問題だけであるとするならば、既に事改めまして公選でなくても、民間の知事は終戰後に於て四人も五人も實は出て居るのであります、此の民間の知事は、それでは果してどの程度知事として民主化の役割を果したかと云ふことを、我々は甚だ疑問に感ぜざるを得ない、斯う云ふやうな點から考へましても、結局是は人の問題ではない、根本的には官僚機構と云ふ制度、或は府縣廳と云ふ地方制度の本質的な問題を改革しない限りに於ては、民主化と云ふことは果し得ないと云ふ點なのであります、斯う云ふ點を私は實は御伺ひ致したいと思つたのでありますが、大分御意見に於て、こちらの方とあちらの方との間に川があつて、遠くの方から話し合つて居るやうなものでありますから、是れ以上追究しても水掛論のやうになつてしまふのでありますが、現在要するに我々の言つて居りますことは、如何に公選知事でありましても、公選知事の補助機關であります所の部長以下の任免權も持たない民間の知事がぽつと出た所で、丁度蜘蛛の巣の中に蝶々が飛込んだやうなもので、結局は官僚機構の中で二進も三進も動けなくなつてしまふと云ふことが我々の感ずる所でありまして、此の制度の拔本的な改革と云ふものが是非必要であると思ひますので、先程實は御質問も致しましたけれども、茲で公務員法に付てもう一度具體的に御話を願ひたいと思ひますが、どうしても茲で此の官僚機構と云ふものを拔本的に改革する上には、此の官吏の制度を拔本的に改革する所の公務員法と云ふものを御出しにならなければならぬ、斯う云ふ意味に於て我々の期待する所は是と一緒に出して戴きたかつたのであります、既に出て居ないことは已むを得ないとして、一體いつ公務員制度法に付きましては御出しになる御考へでありますか、或は所管が違ふと云ふことになるかも知れませぬが、次の議會には本當に御出しになる見透しがありますかどうか、斯う云ふ點、それから出來得れば、公務員法の内容と致しまして、官吏登用の途、或は高等文官試驗、斯う云ふ全般の問題に付て御決めになるのかどうか、斯う云ふ點ももう少し具體的に御話を願ひたいと思ひます、先程實は公選知事を官吏にするか、公吏にするかと云ふことは餘り問題ではないと云ふ内務大臣の御話がありましたが、或る點私は同感であります、要するに現在の官僚機構の下に於て、官吏にするか、公吏にするかと云ふのは大した問題ではない、本質的には此の官僚機構を拔本的に改革して戴かなければ本質的な改革は出來ない、さう云ふ意味に於て公務員制度のもう少し詳細な御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=36
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037・大村清一
○大村國務大臣 此の地方自治行政の健全なる發達を庶幾します上に於きましては、單に御話の如く府縣知事のみを民主化しただけでは不十分であります、やはり府縣知事の屬僚も民主主義の線に向つて公務員法とも言ふべきもので徹底的民主化を圖る必要があらうと思ひます、併し此の行き方と致しまして將來を望見致しますに、公選知事が部下の吏僚を勝手氣儘に任用すると云ふ行き方は、健全なる地方自治制の發展を期する上に於て取るべからざることと思ふのであります、此の點に付きましては民主主義の先進國であります「アメリカ」あたりに於きましては、所謂吏僚制度に於きまして洵に苦き經驗を持つて居るのであります、政治民主化の爲に餘り徹底致しましたが故に、所謂「スポイル・システム」が發達致しまして、行政能率を非常に低下した苦い經驗を持つて居ります、そこで數十年來「スポイル・システム」に代ふるに所謂「メリット・システム」を打樹てなければならぬと云ふ運動が起つて參つたのであります、それはどうしまするかと云ふと、自治團體の市長が氣儘勝手に任用する制度を掣肘致しまして、自治行政の進展に適するやうな吏僚制度を打樹つべきものである、教養のある、經歴のある者から吏員を採用致し、之に十分なる待遇を與へ、教養訓練を與へまして、自治行政の運營に適する者を作らうと、云ふことが段々と輿論になりまして、御承知のやうに慥か一九三五年か六年になりましては、其の輿論が民主黨及び共和黨の中央政黨の綱領の中の重要な所に採り入れられまして、全國的な政治運動として展開する所まで至つて居るのであります、我が國の官僚制度と云ふものは十分反省を致し、改むべきことは改めなければならぬと思ひます、さうして來るべき次の議會までには民主主義の線に沿うた各位の御審議に依つて、是の流石に民主主義の線に沿うた立派な吏僚制度であると云ふだけの、自信を持つたものを提案しなければならぬ責任が政府にあると思ふのであります
尚ほ一寸餘事でありますが、私は東京市役所に長く勤めて居つたのであります、東京市役所の市長は公選されたものでありまして、市吏員は市長が勝手氣儘に任免して居るかと云ふに、決してさうではありませぬ、市役所自體に於ても吏員任用に對する所謂「メリット・システム」が立つて居りまして、そこにちやんと秩序のある任免をして運營されて來て居つたのであります、唯是が東京都制が布かれまして極めて官僚化されたのであります、其の點に於きましては自治の面から申しますと、非常な不滿があり得るのであります、然るに新制度に於きましては東京都長官も都民の公選に依つて出て來るのでありまして、東京市役所時代のやうに、東京都制の上に於きましても、都長公選に依りまして自治の方に力を囘復したと云ふことに必ずならうと思ひます、次の議會までには各位の御承認を經るに足る、立派な公務員法を政府としては立案して、提出すべきものと云ふ考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=37
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038・岡田春夫
○岡田(春)委員 ここで、公選知事と云ふ問題の建設的な考へ方に付きまして、公選制と云ふのは本當の民主主義の觀念、所謂人民の手に依る人民の爲の政治斯う云ふ概念から出發して居ると考へる、斯う云ふ意味で又別の方面から考へて見ますると「ドイツ」の「ハイマードダリン」官吏の地元主義、譯し方は拙劣であるかも知れませぬが、斯う云ふ考へ方が民主主義政治には必然的に現はれて來るものである、斯う云ふやうに實は考へて居りますし、今度の公選制と云ふものも見方に依つてはさう云ふ考へ方の現はれの一つでないかと考へて居ります、そこでやはり府縣廳に於きまする所謂公務員と云ふものは、やはり今後に於て地元の者が相當登用されて來なければならぬのではないか、斯う云ふ裕りを見せた所の公務員法が出來て來なければならぬと私は考へて居りますが、此の點如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=38
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039・大村清一
○大村國務大臣 只今御説の如く、知事が公選になりますれば、公選された知事は恐らく地元と非常に關係の深い人が多いだらうと思ふのであります、斯樣な傾向にならうと思ひます、尚ほ其の知事の決定したる政策を忠實に、實際に實現をして行く、所謂吏僚組織の問題でありますが、それは只今仰せのやうな、地元の知識經驗を活用する面も、甚だ必要なことと思ひますから、新吏僚制度に依つて登用される者は、其の必要の限度に於て地元からも續々登用して然るべきものと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=39
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040・岡田春夫
○岡田(春)委員 兎に角ここで拔本的な官僚制度、官僚機構と云ふものを改革をして戴かなければならない、現行の儘であるとするならば、再三申上げて居りますやうに、現行憲法の規定と新憲法の精神とが違つて來る面がどうしても現はれて參る、之を具體的に御指摘申上げて、如何に運用されるかを一つ御答辯願ひたいと思ひます、新憲法の精神に依りますと公務員、官吏或は公吏と云ふものは、改正憲法第十四條に於きまして、「すべて公務員は全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と云ふことを明記して居ります、結局斯う云ふ精神の下に公務員と云ふものが御進めにならなければならない、所が現在官吏機構と云ふもの、官吏制度と云ふものを其の儘に御進めになるとするものならば、現在官吏が服務致して居ります紀律であります所の、所謂官吏服務紀律に於てはどう書いてあるか、此の官吏服務紀律に於きましては、明治二十年に勅令第三十九號で官吏服務紀律が決まつて居りますが、其の冒頭に於きまして、第一條凡そ官吏は天皇陛下及天皇陛下の政府に對し忠順勤勉を旨とする云々、斯う云ふことが書いてあります、茲で問題が出て參りますることは、全體の爲の奉仕者でない、一部の奉仕者であると云ふことを、茲で少くとも明確に示して居ることになるのであります、此の點に於て、此の二つの現行憲法と新憲法の衝突されました所の作用と云ふものを、實際の運用に於てどう云ふやうに御解決になつて行かれるかどうかと云ふ點を、最後に御聽きして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=40
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041・大村清一
○大村國務大臣 只今御例示になりました、御引用になりました點でありますが、新憲法の公務員に於きましても、是は固より國民の公僕として、全國民の爲に官吏は忠實に業務に服さなければならぬと云ふことは當然のことであります、併し偶偶御引用になりました現在の官吏服務紀律の第一條と雖も、精神は私は全く同一だと確信致して居るのでありまして、此の點に於て遺憾ながら意見を一に致しませぬ、併し御尋ねの本筋になりました現在の地方制度を改革する上に付きましても、先程來申上げますやうに、現行憲法に於て地方制度は斯うでなければならぬと云ふことを何等規定して居りませぬ、新憲法に於きましては其の大本を規定されて居ります、そこで新憲法の精神に遵ひ、又日本民主主義化の根本方針から、我が國の現状に最もそぐはしい新制度を打立てたいと云ふので提案を致しました次第であります、唯曩にも申上げましたやうに、憲法が成立致しまして、總ての諸制度が新憲法に即應するやうな改正をされて、それが出來上つた上で地方制度は總ての點に於て呂律の合つたものを出すと云ふことになりますと、恐らくは其のやうな地方制度の改正案は、今後一年後にも提案は出來ないのではないかと思ふのであります、所が地方自治の民主化と云ふことは焦眉の急務であつて、國政の民主化よりも寧ろ先行してすべきではないかと云ふやうな有力なる議論もあることでありますので、先程來申上げますやうに、新憲法の條章に從つて、新しい地方制度の大筋は憲法改正に依つて何等影響を受けないと云ふ所に、確信を持つて立案を致したのであります、併し將來公務員法を作るなり、或は警察法を作るなり、乃至は行政裁判が司法裁判の方に統一されると云ふやうなこと、それ等の派生的なる新憲法の條章に依る新制度が打樹てられるに付きまして、若し今御審議中の改正案の條章が牴觸すると云ふやうなことになりますれば、其の派主的なる訂正は今後に御願ひをしなければならぬと云ふやうなことはあり得ると思ひます、是は相當數生ずるであらうと思ふのであります、此の地方自治の大筋に關する所は御審議を願つて居ります所で先づ十分であると云ふ確信で提案を致しました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=41
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042・中島守利
○中島委員長 岡田君、まだ質疑が長いですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=42
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043・岡田春夫
○岡田(春)委員 まだ一寸あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=43
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044・中島守利
○中島委員長 それでは一時まで休憩しまして、一時から續行します、休憩致します
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=44
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045・会議録情報2
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午後一時十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=45
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046・中島守利
○中島委員長 休憩前に引續き會議を開きます──岡田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=46
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047・岡田春夫
○岡田(春)委員 午前中の質疑に依りまして私の得ました御答辯の内容を簡單に要約して見ますると、先づ冒頭に新憲法草案の精神を大いに織込んである法律的にはさう云ふ考へ方の下に於て此の改正法案を制定したのだと云ふ點が先づ第一點、第二の點は地方制度としての──是は私の考へであります、府縣廳と云ふものは當然之に依つて民主化されると云ふ點、第三の點は府縣廳は行政官廳であると共に地方自治團體である而も此の二つの面、特に第一の面が非常に重要であると云ふ意味に於て、公選知事は官吏にしなければならない、其の次に官吏制度の改革として公務員法を次の議會に必ず提出する、斯う云ふ大體四點の主要な御答辯を得たと私記憶致して居ります、それに引續きまして御答辯を伺ひたいと思つたのでありまするが、まだ私自身不明の故か分り得ない點があるのであります、第一に御伺ひしたいことは現行憲法の上に立つてやられると云ふ意味は、一體どう云ふことを具體的に言ふと意味するものであるか、本質的に新憲法の精神に則つておやりになるならば、現行憲法の上に立つと云ふことを、極端な言葉で言へば單に次の新憲法を目途として、所謂經過的な手續上の點に於て、現行憲法の上に立つと云ふ意味であらうかどうか
第二の點は行政の組織でありまする所の地方官制、是は勿論内閣官制各省官制、地方官官制と云ふ一聯の中央集權的な行政組織、此の一環としての問題でありますが、此の行政組織と云ふ面に於ても思ひ切つた改革を行はない限りは、地方制度の民主化と云ふものは現はれて參らない、斯う云ふ意味に於て此の點に付てはどう云ふやうに御考へになるか、此の二つの點に付て先づ冒頭に御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=47
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048・大村清一
○大村國務大臣 今囘の地方自治制度の改正案は新憲法の精神に從ひまして立案したことは、曩に御答へした通りであります、然るに現行憲法に於きましては、地方自治制度に對する何等の規定を持つて居ないのであります、それにも拘らず、立憲政治の基本をなしますものは、地方自治政治でありまして、明治二十三年の憲法が施行せらるると同時に、相當進歩したる自治制度が打立てられて居つたのであります、其のやうな次第でありますので、それを基本と致しまして、それに更に新憲法の精神に依つて、地方自治行政の民主化に更に一歩を進めると云ふことでございますので、地方自治制度の大綱に關する點に於ては、現行憲法に何等齟齬扞格する所はない次第であります、唯大筋でございませぬで、他の面に於ては現行憲法に掣肘を受ける點が現在は存在して居ります、例へば官吏制度の如きは其の一つであります、尚又自治行政の上に於きまする所謂行政救濟の場合に於きまして、其の救濟手段は現行憲法に依つて、行政裁判所に出訴しなければならぬと云ふことになつて居りますけれども、新憲法に於ては行政裁判所を全廢して居りますから、新憲法が施行されますると、行政救濟は普通裁判所の方に出訴すると云ふやうなことに改訂をしなければならぬと云ふやうな所で、現行憲法の掣肘を受けたる點は、枝葉末節と云ふのも少し語弊がございますが、大筋の點以外に於きましては多少の掣肘を受ける點があるのであります、地方官官制の如きも、先にも申上げましたやうに、公務員法を立案する場合に於ては、當然大巾なる改正をしなければならぬことであります、唯現在に於きましては地方官官制、官吏制度の上から申しますると、公選せられたる知事を官吏として、それに進退の具情權を附與すると云ふ改正は直ちにやらなければなりませぬ、是等も從來の考へから申しますると非常に思ひ切つた展開でありまして、此の思ひ切つた改正は新憲法施行を俟たず、本改正案が施行せらるる時までには、其の必要なる改正を現行官制に加へる豫定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=48
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049・岡田春夫
○岡田(春)委員 どうも私分らないのでありますが、結局後に改正を要するは枝葉末節の點である、斯う云ふ話なんですが、地方制度としての府縣廳で非常に大きな役割を占めて居るのは、國政事務の關係であると云ふ考へであります、此の面は地方自治體としての府縣制の面からは、實は規定をされて居らぬ所謂勅令なり、法律なり、省令なり、斯う云ふものを以て規定されて居ることが主體になつて居る、斯う云ふやうな考へ方から行くと、其の面に對する改正と云ふのが、地方制度としての府縣に於て事務を執る場合に於て、非常な大きな役割を占めると云ふことになるのであります、斯う云ふ點から考へますと、此の面の改革は決して枝葉末節の問題ではないと思ふのであります、法律の手續、改廢に於て、條文の改訂と云ふ點に於ては、或は末節と云ふやうに御取りになるかも知れませぬが、地方自治と云ふものは我々人民の爲めの人民の手に依る人民の政治であると云ふ意味、所謂其の效果に於て民主化であるかどうかと云ふものを判定する意味に於て考へますならば、さう云ふ條文の改正と云ふものは枝葉末節であるかどうかと云ふ問題よりも、さう云ふ制度から現はれました所の一つの效果と云ふものが、民主化されて居るかどうかと云ふことに付て判定すべきであつて、さう云ふやうな點から考へると、決して其の勅令なり省令なり、其の反面の部面に於ける改革と云ふものは枝葉末節の部分ではない、寧ろ此の府縣制に依つて提出されました改正法律案よりも、もつともつと大きな本質的な部面をなして居ると我々は考へるのであります、此の點を民主化しない限りは本質的や民主化と云ふものは出來ないのではないか、もつと結論から言へば、そこに中央集權的な官僚の構造と云ふものがあるのだ、此の點を拔本的に改革しない限りは、民主化出來ないのではないかと云ふことで御伺ひ致したのであります、それは現行憲法に於て、地方自治と云ふ點に於ては、御説の通り何等觸れて居らぬことは、勿論能く私存じて居りますが、其の面に付ての御答辯、特に現行憲法との關係に於て、實は御伺ひを致したかつたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=49
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050・大村清一
○大村國務大臣 其の點に付きましては今まで申しましたやうに、府縣廳のやつて居ります仕事は官治面と自治面とがありますから、官治行政の執行に付ては官吏だと云ふ建前に現行憲法上なつて居るのであります、現行憲法の有效期間の間は、そこに萬事を官吏外のものに扱はせると云ふ譯には參り兼ねるのであります、併し自治行政の面に於ては、改正案に依れば公選知事は府縣費を以て必要なる公吏をどんどん置いたら宜からう、さうして其の執務方法等に付きましては、要すれば具情權を以て府縣會の手續を經て、自治行政を執行すべき要員は、必要に應じてどしどし置いたら宜いと思ふのであります、唯官治面に付きましては只今申しますやうなことがございますので、只今直ちにあなたの所謂民主化は困難でありますが、併し新憲法が成立致しますれば、そこに新しい視野から公務員法を議會の協贊を經て定める、其のことに於きまして只今の官吏制度、官僚制度は拔本的な改革をされると云ふことが豫想されるのでありまして、其の段階は來なければなりませぬけれども、其の點に付て餘り大なる危惧を持たれる必要はないではないかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=50
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051・岡田春夫
○岡田(春)委員 大變諄いやうですが、官治制度の面が實は問題なので、而もさうすると官治制度の問題に付きましては、公務員法が御提出にならない限りは所謂民主化されないと云ふことになります譯ですね、さうすると逆に新憲法の精神を採り入れて居ると云ふ、先程申上げました新憲法の十四條の公務員法と其の官治制度の問題、先程特に御伺ひ申上げた現行憲法の上に載つて居る所の、官吏服務紀律に於ける天皇竝に天皇の政府に對する官吏服務紀律との關係、斯う云ふ點が實際問題として現行憲法と新憲法の精神に於て、衝突を來して來ると云ふことは明確なのであります、にも拘らず先程の御話では、精神に於ては同じであると云ふことがどうも私には呑込めないのでありますが、甚だ諄いやうでありますが、特に官吏服務紀律と新憲法の公務員の考へ方、十四條の考へ方に付てもう一度御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=51
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052・大村清一
○大村國務大臣 只今の御尋ねは結局信念の問題だと思ふのでありますが、現行憲法に依りまして、立憲治下に於て官吏が天皇及び政府に忠實にやれと云ふことは、結局是は國民の爲に忠實に其の義務を果せと云ふことと同じだと思ふのであります、新憲法の公務員──國民の公僕としてやれと云ふことと何等相違はないと私は確信致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=52
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053・岡田春夫
○岡田(春)委員 話が一寸横道に外れますが、さうなりますると是は内務大臣の御意見を承りたいと思ふのですが、現行憲法の天皇に關する規定其の他に付ては、現在の民主化された段階に於ても、内務大臣の御考へから參りますると、現行憲法を何等改めなくとも宜いと云ふことになりますのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=53
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054・大村清一
○大村國務大臣 それは別問題だらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=54
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055・岡田春夫
○岡田(春)委員 さうですか、それでは此のことに付て追究しても仕樣がありませぬので、續いて次に少し話を進めたいと思ひます、次に同じく現行憲法と新憲法との衝突の關係を、もう一つ例を以て申上げたいと思ひますが、所謂稱されて居りまする彈劾權の規定の中で、府縣知事竝に市町村長の辭職請求の權利がある譯でありますが、此の解職請求權を住民が行使致しました場合に、之を裁定致しまするのは、申すまでもなく此の法案の規定に依りますると内務大臣又は下級行政機關、官吏としての府縣知事が之を裁定することになつて居る、斯う云ふことになつて居るのであります、所で茲で御伺ひしたいことは、新憲法の十四條に於きまして「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である」斯樣に書いてございます、で府縣知事或は市町村長を選任致しまする場合には、公選の原則に依つて、國民が固有の權利と致しまして直接に公選することを認められて居るのであります、所が選定する場合に於ては此の精神が其の儘生きて居るのでありまするが、罷免する場合にはなぜ國民の意思が其の儘通されないで、内務大臣が之を裁定しなければならないのか、此の點を御伺ひしたいと思ふのであります、若し新憲法の精神が生かされて居るとするならば、内務大臣が裁定することは矛盾して居るのではないかと云ふことを私考へるのですが、どうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=55
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056・郡祐一
○郡政府委員 十四條の第一項に規定して居りますのは一般的な權利の原則であります、天皇の官吏の認證、其の他總て此の固有の權利を代表して行はれるものでありまして、隨て法律上の自治體に對する監督權の行使を否定するものではないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=56
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057・岡田春夫
○岡田(春)委員 冒頭に内務大臣の御答辯を得たのでありますが、基本法と附屬法との關係に付きまして御答辯を願ひます、附屬法と云ふものは基本法の精神を飽くまでも具體的に規定するものであつて、基本法の精神と云ふものを制限したり歪曲したり、制約したりするものではないと云ふ考へ方に立つべきであると云ふ考へ方を實は私は申上げたのでありまするが、之に付きまして内務大臣は同感だと云ふやうな御答辯であつたと承つて居ります、併し只今の御考へから申しますと、新憲法の精神の此の原則的な考へ方を、此の府縣制に依つては制限して居るやうに私は考へますが、是はどうでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=57
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058・郡祐一
○郡政府委員 制限致して居るのではありませぬで、監督權と云ふものの基く所が茲にあるのだ、憲法を淵源としてそれぞれの法律が立てられて居る、それは何等憲法に矛盾するものではないと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=58
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059・岡田春夫
○岡田(春)委員 而も解職の裁定權に付て此の前も本會議の質問であつたのでありますが、同じ系統の上級機關が之を裁定すると云ふことは、甚だ私は不穩當だと思ふ、場合に依つては上級機關の、例へば内務大臣が命令に依つて府縣知事に何等かの行爲をさせる、此の行爲が解職請求の對象となつて解職を請求される場合があり得ると私は考へて居ります、さう云ふ場合、内務大臣が果して此の上級機關として裁定する場合に、之を正しい意味に於て裁定し得るかどうか、斯う云ふ點に付ても此の裁定權を内務大臣が持つと云ふことは、甚だ不條理であると私は考へて居る、本當に民主化されたと云ふならば、もつと別な考へ方に於て是が解決されなければならない、即ち本當に人民の爲の政治と云ふ考へ方、民主政治と云ふ立脚點に立つならば、此の裁定を致しますのは解職請求の對象となるべき機關の所謂執行機關でありますが、執行機關の上級機關が之をやると云ふのでは、私は條理が相立たないと思ふ、第三者の獨立の機關が之を裁定するのでなければ民主政治の徹底と云ふものは果し得ないと私は考へるのでありますが、此の點はどうかと云ふことと、それから最初の上級機關との關係を御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=59
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060・大村清一
○大村國務大臣 只今提案致して居ります地方制度の知事等の罷免請求に關する規定でありまするが、是は只今地方局長から御答へ致しましたやうに、新憲法の條章と照し合はせまして、法律上差支へなしと云ふ結論に達して提案を致したやうな次第であります、而して只今のやうな罷免請求權の最終の決定は、監督官廳の公正なる判斷に委ねると云ふことに致しましたのは、御承知のやうに罷免請求權を認めると云ふことは我が國に於て最初のことであります、而も少數者の發言を尊重する意味で、罷免請求權は有權者の五分の一で足ると云ふことに致したのであります、さうして其の動議を提出されましたものを如何に裁定するかと云ふ方法と致しましては、色々の場合が考へられるのであります、さうして或は御尋ねの如く民主的なる方法と致しますれば、其の動議を住民の一般投票に付して決すると云ふのが、蓋し最も民主的であらうと思ひますが、地方制度其の他の運營に於きまして、最近投票が非常に盛んに行はれると云ふことに相成つて居ります、さうして無暗に投票を濫用致すと云ふことになりますると、總ての投票が不眞面目に行はれると云ふやうな心配もないではありませぬ、故に順次國民が此の訓練を積んで來るまでの間は、主要な事項に投票を限つた方が、民主政治の發達の上に適切であらうと云ふ風に考へまして之を避けたのであります、さうして監督官廳が一定の基準を設け、國民の納得し得るやうな公正なる裁斷を致しますならば、今日の段階に於きましてはそれが最も適當なりと云ふ結論で之を提案致しました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=60
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061・岡田春夫
○岡田(春)委員 實は私の伺ひたいことと御答辯とが、多分に食違ひがあるやうで、私正直な話、納得が行かないのであります、併し私ばかりに時間を取ると云ふことにも行きませぬので、要するに一應個々の點で要約致しまして、次の點に移つて參りたいと思ひます、只今御指摘致して參りました通りの現行憲法と新憲法の精神の上に於て、少くとも御答辯は兎も角と致しまして、十分御理解を願つたと思ふのでありますが、各地に於て衝突が行はれて居ると云ふことは事實のやうであります、而もここで地方制度の民主化と云ふものを冒頭に置いて、内務大臣は本法案の提出に於て──是は府縣の場合ですが、地方制度の民主化と云ふものが、果して本格的な民主化と云ふものが得られるか、斯う云ふ旨の御話があつたと思ひまするが、私只今御指摘して參りました點を見ましても、先づ第一に此の府縣廳の行政官廳である面に於ては、少くとも現在に於ては何等民主化と云ふものは行はれて居らない、それから地方自治體の面に於て、此の提出されました府縣制の改正法律案に於ても、甚だ不徹底な民主化しかされて居らないのが現状であります、少くとも先程御答辯にありました通りに、官吏制度の部面に於ける民主化と云ふものは、公務員法の提出に依つてのみ初めて民主化される、斯う云ふ御話であつたのでありますから、其の結果から、結論され得ることは、現在の段階に於ては、少くとも地方制度としての府縣廳と云ふものが、此の法案に依つては民主化されないと云ふ結論が生れて來ると私は思ふのであります、當初内務大臣の御話になりました此の法案の提出に依つて、府縣廳は民主化されると云ふ御考へと、大分食違つて居つたやうに考へるのでありますが、之に付ては如何でございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=61
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062・大村清一
○大村國務大臣 是は現在の提案して居ります事實に依つて判斷をすべきことでありまして、私共は現在の段階に於きましては、相當思切つた地方制度の民主化を圖つたと考へて居るのであります、それが極めて不徹底で不十分なりと云ふ御感想は、先の理想的な民主化と比較されれば、或は不徹底かも存じませぬが、私共は現在の我國の状態から致しまして、相當思ひ切つた民主化を策したと云ふやうに信じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=62
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063・岡田春夫
○岡田(春)委員 何時までやつても是は果てしが盡きませぬので、恰度さつきも例を擧げて申上げましたが、川を一つ超えてお互に話をして居るやうな話で、何だかお互に原則的な立場が違ふと云ふのか、甚だ不明瞭であります、此の點をもう少し追究致したいのでありますが、時間もありませぬので、此の程度で是は打切ります
次に簡單な問題を二問題だけ御伺ひしたいと思ひます、今度新な制度として選擧管理の委員制度を設けられました、此の選擧管理委員の選任の方法は、府縣會或は市町村會が之を選任することになつて居るのであります、是はなぜ府縣會或は市町村會が選任するかと云ふ理由を御聽かせ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=63
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064・郡祐一
○郡政府委員 現在の選擧管理事務は執行機關が直ちに之を扱つて居ります、所が選擧事務と申しますのは一方執行面でありますと同時に、議員の選擧に關係して居るものでございますから、從來の執行機關のみが扱つて居たと云ふ建前を直さう、さうして選擧管理事務に對しての住民の關心を昂めよう、公正を確保しよう、斯う云ふ前提に立つて居ります、左樣致します場合には、議決事項或は執行面に屬しませぬ意見の決定を致しますのが議決機關でありまして、隨ひまして議決機關の選擧に依ることが事柄の筋合だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=64
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065・岡田春夫
○岡田(春)委員 結論から申しますると、選擧管理の所謂公正と云ふものを圖る爲に、執行機關から分離させる方が妥當であると云ふ意味の御話であつたと承りまするが、大體左樣でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=65
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066・郡祐一
○郡政府委員 公正を圖ると云ふ點が一つ、それから他にも委員でありまするとか云ふやうなものの選任は議決機關が致して居ります、さう云ふ委員等の選任の一般手續に從ひましたと云ふやうに申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=66
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067・岡田春夫
○岡田(春)委員 それでは監査委員は選任に於て府縣知事が府縣會の同意を得て之を選任することになつて居ります、要するに府縣知事が監査委員を選任する權限を持つて居る譯であります、而も此の身分は吏員になることになつて居りまして、府縣知事の監督を受けることにまで相成つて居るのでありますが、是は先程御話の選擧管理委員の選任の、所謂公正の確保と云ふ點から考へまして矛盾すると御考へになりませぬか、どうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=67
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068・郡祐一
○郡政府委員 監査委員と申しまするものは、監査委員の職務にありますやうに、事業の管理、出納、事務の執行等のことに付て監査をするのであります、申さば自治體の自治的監査と云ふことが主になつて居ります、隨て其の自分は吏員で差支へないと思ひます、其の點は議決機關の公正と云ふ選擧自體に關係致しまする選擧管理委員とは、餘程趣を異に致して居るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=68
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069・岡田春夫
○岡田(春)委員 自治體の自治監査と云ふ意味だと云ふ御話でありましたが、所が所謂自治體の長である執行機關たる府縣知事、此の職務、此の責任の下に於きまする職務を監査するのに、此の監査機關である所の督査委員が府縣知事に依つて選ばれると云ふのは是は不條理ではございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=69
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070・郡祐一
○郡政府委員 自治的監査と云ふやうな考へも主になつたと申上げたのでありまして、單純に今までのやうに唯吏員に命じて知事や市町村長が監査させるよりは、遙かに獨立性を持たせ、構成と云ふ點に於ても獨立性を持たせ、正しく強力にしたいと云ふ點から監査委員制度を考へたのでありますが、監査自體に付きまして全く別個の機關を設ける、議決機關、執行機關の外に更に監査機關と云ふものを設ける、是は却つて自治體監査の面を非常に強力にする、考へますれば左樣な構想も成り立ちませう、併し是はやはり市町村の事業、事務、經理全般と一聯をなすものでありまして、監査の獨立性を考へます爲に、別個の機關を獨立さしてまで立場を變へたものを、非常に強く出してしまふと云ふまでの必要はないであらう、其の身分に付ての獨立法を保障すれば、監査と云ふ仕事自體は何等執行に差支へないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=70
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071・岡田春夫
○岡田(春)委員 餘り重要な問題でないと云ふやうな御話でありますが、私はさう云ふことであるならば、今度の改正法案の非常に重要な點である所の彈劾權の中で所謂監査請求權と云ふのがございます、住民が監査を請求する所の權利でありますが、是が餘り重要でないと云ふことになつて參る、本當に下からの住民が監査請求をする權利と云ふものを活かす爲には、是は決して重要な問題でないと云ふことはないのであつて、飽くまでも是は重要な問題であると思ひます、私自身の考へ方から申せば、執行機關と監査機關と云ふものが、明確に茲で分離を致しまして、飽くまでも正しい執行機關の手に依つて選ばれた監査機關で監査されたものが、果して權威を以て見られるかどうかと云ふことは、甚だ我々納得出來ないと考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=71
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072・郡祐一
○郡政府委員 御答への中に重要でないと云ふことは申上げてないと思ひます、私の申さうとしますのは、寧ろ監査機關を考へます場合にも、是はやはり官廳機構の一つとして監査機構を考へますやうに、執行機關、議決機關と云ふものがあつて、それに比れば何と申しましても、監査機構と云ふのは機構から申しましても小さいものであります、それから事業の執行面自體の結果を判斷して參るものでありまして、隨て自治體に於て議決機關、執行機關の外に別個の對立する機關を設けるまで、現在の段階に於ては監査委員と云ふものは別扱ひにする必要がないのではないか、併し事態の如何に依つては、私は寧ろ自治體の監査機構と云ふもの、今日の府縣、市町村に於きましても、もつと獨立した大きい機構と云ふものが出來て宜いのぢやないか、さうして初めて監査制と云ふものが徹底するのぢやないか、府縣市町村に附屬したるだけでは不十分ではないかと云ふ論もあり得るし、是は考へるべき點であらうとは考へて居ります、唯現在のやうに府縣、市町村に監査機構を置く限りは、是は執行機關の一面と申上げて差支へないと申上げた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=72
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073・岡田春夫
○岡田(春)委員 もう一つ、是は本會議でどなたか御觸れになつたかも知れませぬが、監査委員の半數は府縣會から選任されることになつて居ります、而も選任されました所の府縣會議員は監査委員が吏員である限りに於て、當然府縣會議員は吏員になつて參る譯であります、之に付きまして内務大臣の御答辯はさう云ふ例は先例として何等構はない、斯う云ふやうな御答辯を慥か御話になつたと思ひまするが、内務大臣御自身は此の點に付きまして、意思の決定機關と執行機關とが、之に依つて混同されると云ふやうな點があると私は考へますので、内務大臣は之に付てどう云ふ御考へを御持ちでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=73
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074・大村清一
○大村國務大臣 今まで公共團體の委員は總て吏員と云ふ「カテゴリー」の中に入ることになつて居ります、併し吏員の中にも市長の任命致します所謂一般の吏員と、それから又市會其の他で選任される委員がありまして、成立ちに依りましては自ら性質が違つて來るのでありますから、一律に吏員と言ふからいけないと云ふやうな工合には考へなくて宜いのではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=74
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075・岡田春夫
○岡田(春)委員 どうもどれも徹底しないのでありまするが、まあ致し方ありませぬ、兎に角此の監査委員制度と云ふものを見ますると私は執行機關と監査機關、意思決定機關と云ふものを三つ一緒に混同して居るやうな感じを多分に實は受けるのであります、尤も是は私若いものですから口が惡いので、逆に言ふと、何か斯う執行機關と云ふものが表面に民主化と云ふものを作つて監査請求權なんかを與へて置きながら、逆に執行機關自身が自分の都合の宜いやうな委員と云ふものを選んで、執行機關或は意思決定機關と云ふやうなものを懷柔すると云ふ所まで、惡く取れば見えないこともないやうに感じられるのであります、併し斯う云ふことに付ては今まで御答辯もありましたので、もつと私追究致したいのでありますが、何れ此のあとの機會で私追究致したいと思つて居ります
最後に北海道の地方費法それから北海道會法と云ふものを今度地方制度に依つて一本にされまして、道府縣制と云ふことに相成つて參る、所が此の點に付きまして先づ第一に御伺ひしたいことは、北海道と云ふものを一般の府縣竝に今度は扱つて行かれると云ふことになつた譯でありまして、從來の植民地的な羈絆から脱却させまして、北海道を日本の所謂内地の一部として、植民地的な隸屬性から開放すると云ふ意味であらうと私は理解して實は喜んで居ります、併し茲でもう一度、今度は御伺ひしたい點でありまするが、北海道は事改めて申上げるまでもなく、まだまだ開發をすべき點が多々あるのであります、而も此の開發を要する點に付きましては一部の地方費、斯う云ふやうな費用を以てしては中々開發をなし得ない面が澤山あると私は考へて居ります、而も昭和二年に始まりました第二次拓殖計畫と云ふものが、本年度に於て愈愈終了致すことになつて居ります、此の第二次拓殖計畫の成果と云ふものも、甚だ其の當時の時勢の變轉に依つて覺束ない成果しか現はれて居らない譯であります、此の開發の面、北海道未開地を開發すると云ふ面、それから第二次拓殖計畫終了後に於ける所の對策、之に付て内務省の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=75
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076・大村清一
○大村國務大臣 北海道の取扱に付きましては今度の改正案で餘程劃期的な變りがある譯であります、元北海道の行政に付きましては、内地とは特別の取扱を受けて居つたのでありますが、併し段々北海道が開發、發展されるに伴ひまして、一般府縣と同樣に、北海道にも、地方自治團體としての性格を附與する方が宜しいと云ふことになりまして、北海道會法及び地方費法と云ふ、特殊の地方自治制度が認められたのでありまして、それが段々北海道の發展に伴ひまして數次の改正を經まして、既に今日に於きましては一般府縣と北海道とを、道府縣の自治團體としての取扱の面に於ては殆ど變りがないと云ふ所まで發展して參りましたので、今囘の改正に際して府縣制同樣に扱つて、地方自治團體として特殊扱ひしないと云ふことに致した次第であります、併し北海道廳の取扱つて居りまする行政の上には、他の一般府縣と同じやうに自治行政の面と、官治行政の面があるのであります、殊に北海道に於きましては、御承知のやうに多額の國庫豫算を持ちまして、北海道の拓殖事業を官治行政として強力に推進を致して來て居るのであります、而して此の北海道の拓殖行政は、御話のやうに本年度を以て一應繼續費は終ることになつて居ります、北海道の開拓の現状、殊に又我が國の當面致して居ります所の食糧問題と云ふやうな點から考へますると、一層北海道の拓殖面には力を注がなければならぬことでありますので、北海道を一般府縣竝に自治行政面で取扱ふと云ふことは是は致しまするが、併し拓殖行政、國の行政と云ふ面に於きましては、從來の沿革もあり、北海道の現實の必要から申しまして、政府としては更に二十二年度以降に對しまして、適切なる開拓計畫を打立てる責任があると考へて居ります、尚ほ之を打立てて行きます上に付きましては、現在の事情に立脚致しまして、内務省も農林省其の他關係方面と十分なる接觸を執りまして、最も適切なる開拓計畫を樹立することに努力する方針で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=76
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077・岡田春夫
○岡田(春)委員 大體分りましたが、さうすると内務大臣の御考へでは拓殖計畫の面に於きましては、從來通りやはり内務省の所管に於て、國の費用に依つて之をやつて行かうと云ふやうな御考へなんでありますかどうか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=77
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078・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねの點は、政府と致しまして現在の事態を能く檢討致し、其の上で最も適切なる方途を選びたい、それ等の點も將來十分審議致して見たいと云ふ考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=78
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079・岡田春夫
○岡田(春)委員 さうしますと、内務省でやると云ふことは決まつて居らない譯らしいのでありますが、北海道の實情から申しますと、内務省がやるかどこがやるかは別問題と致しまして、少くとも開發計畫の實行と云ふものは、飽くまでも綜合的にやつて戴きたいと云ふことが、北海道の念願であらうと私は考へて居ります、さう云ふやうな考へ方の下に於て從來の各省の「セクシヨナリズム」と云ふものが出て來て、開發と云ふものが進捗しないと云ふ結果に終らないやうな點を、十分と御考へ置きを願ひたいと思ひます、特に昨年の秋に於きまして農林省で立てられました百五十萬町歩の開發計畫の時にも、既に内務省の主管である拓殖計畫から分離致しまして、農林省直屬の下に於て之を實行しようとした經緯なんかも多々ある譯であります、斯う云ふ點も十分御含みの上で、北海道の開發計畫の爲に、一つ思ひ切つた計畫を樹立せられんことを御願ひしたいと思ひます、色々まだ伺ひたい點もありまするが、大分長くなりましたので一應私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=79
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080・大村清一
○大村國務大臣 一寸只今の點は重要な點でありますので、後日論爭になつても如何かと思ひますから、私の答辯を追加して置きたいと思ひます、御話の通り北海道の拓殖計畫は現在内務省が所管を致して居ります、さうして是は變更するまでは内務省の所管と云ふことは間違ひのないことであります、さうして今後北海道の拓殖を進めます上に於きまして、現在の内務省所管を積極的に動かす必要があれば、それが拓殖の爲に役立つ、只今御話のやうな一貫性、統一性を害さなくて、其の方がより宜いと云ふ結論に達しましたならばそれを固執するものではございませぬが、さう云ふやうなより善いと云ふ案が得られない限りは、固より内務省所管で押通す積りで居ります、其のやうに御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=80
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081・岡田春夫
○岡田(春)委員 さうしますと結局内務省がおやりになると云ふ意味なんですか、大分先刻の話と違つて來ますので……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=81
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082・大村清一
○大村國務大臣 いや、北海道の拓殖計畫を遂行することは内務省所管でありますから、之を動かさなければならぬ有力な理由があれば動かして宜いのであります、さう云ふことがない限りは内務省所管で押通す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=82
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083・岡田春夫
○岡田(春)委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=83
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084・中島守利
○中島委員長 次は細田忠治郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=84
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085・細田忠治郎
○細田(忠)委員 私の質問は大體今までの質問者に依つて代辯され、御答辯もあつたのでありますが、唯知事の官吏か公吏かと云ふ所にまだ問題が潛んで居ります、知事が官吏か公吏かと云ふことは、要するに見解の相違でありまして、幾ら言ひましても議論が盡きますまいと思ひます、唯知事が公吏であれば地方議會と共に極めて平民的に肝膽相照して、總ての問題が民主化されて行きまするし、知事などは立候補の際に宣言しました所の政策の實行に致しましても極めて和やかに是が相談出來ますし、各種の施策が地方民に約束した通り行ふことが出來ると云ふ所に大變大きな意味があるのでありますが、若し知事が官吏になれば地方民と云ふものはやはり地方議會と云ふものと一緒になつて、やはり官吏と地方と云ふ所に、どうしても各各の立場に於て關聯する所がある、小さなことでありますが、ここが大きな「ポイント」であります、重要問題は一々内務省に稟請して、それから其の指示を受ける、斯う云ふ風になりますと、地方自治行政の運營は從來とちつとも變らない、地方自治は衆民政治と云ふ美名を貰ひましたけれども、私は從來と少しも變らないと思ふ、即ち改正制度が飽くまでも知事を官吏とすると云ふ前提にありますならば、私は公選制度と云ふものを撤廢して貰ひたい、何故ならば知事の進退が事實上内務大臣の方寸に依つて支配されて居ると云ふことは是までも實例に依つて明かでありますから、斯くなるならば現在の如く一片の辭令でも出してさうして片付けられたら宜しい、大臣は聲を大にして地方の民衆の中から優秀の人を出して、其の人を知事にならしめるならば結構ではないかと云ふことを仰せられて居りますけれども、飽くまでも公選制度で參りますと非常なる物心兩面に於て大變な消耗をするのみならず、唯出來た所の知事を官吏にするのに、何も苦しんで斯樣な形式選擧をする必要はない、私は斯う云ふ固い信念を持つて居る、ですから大臣は公選が重點か或は知事の官吏制と云ふ所に重點を御持ちになつて居るのか、此の邊を先づ以て御聽きしたい、飽くまでも公選の趣旨に則つて公吏とするのが當然でありますると云ふことは、此の本會議を通じて見ましても委員會を通じて見ましても、如何に大臣が綿々と公選知事の、國務と地方自治の兩建制を知事に持たせたい、即ち官治面の民主化を圖ると云ふことが重大な問題であると言はれましても、是は先程申しました通りに、其の出發點に於て既に觀念的にも實體的にも、所詮兩立せぬ問題であります、本會議に於きましては質問者十人、又委員會に於きましても今まで多くの質問が行はれましたけれども、本案に贊成される意見と云ふものは一つも出て來ない、珍らしいことで、十人居りますれば二人か三人はそこに是非の議論があるのでございますけれども、本案に限つては誰も彼も擧つて之に向つて否認しようとせることは、此の問題に付て是が實際に副はぬと云ふことを、如實に物語つて居るのであると云ふことを斷定して憚らない、況や本會議に於きまする所の各議員の質問と云ふのは、何れも一黨一派を代表しました所の黨の代表意見と見ますならば、之を以ちまして一つの議會全體の意見と云ふことを申上げても、私は敢て差支へないと思ふのであります、大臣は現今は尚ほ地方自治の幼稚であると云ふ點に於て老婆心のあると云ふことは能く御察しすることが出來ます、又大臣はお若い時分から行政官として地方の良二千石としての御經驗もおありでありますし、又自治に立入つては名助役として名聲嘖々たるものがありますので、此の邊に付きましての御經驗は私は十分敬意を拂ひますが、そこで大臣が、此の府縣事務の大部分が國政事務を取扱つて居ると云ふことを言はれますけれども、是は昔の話で、戰時中に戰力増強とか、高度の國土防衞と云ふことが唱へられて居りました時には、地方の自治の仕事は殆んど純然たる所の官僚政治をやり、地方政治の實體を掌つて居られた、所が既にそれは一つの幻影であります、斯かることは一切消滅致して居る、將又地方自治に於て、殊に府縣政と云ふものは地方町村事務と異る點に於て、多分に國政の部面を受持つて居ると云ふことを非常に強調されます、是は本會議に於きまして細迫議員が一寸觸れられたやうに記憶致しますけれども、今日の地方事務と云ふものは、府縣政の事務も市町村事務も變りはない、私も地方縣會には本年の四月まで二十四箇年在職致して居りました、微力ながら相當經驗だけは持つて居ります、地方の自治にしましても、市町村の自治は國政の面と云ふものを多分に持つて居る、國政ならざるものはなし、或は戸籍の面に致しましても、税務の面に致しましても、進んで或は開拓とか或は開墾とか、總ての食糧の供出から、増産から、一つとして國政ならざるはなし、斯う云ふ上から申しましても、地方自治には御心配なくとも、地方自治は最早一人前の青年に達して居ります、是が干渉を受くると云ふやうなことがありまするならば、受くる側から申しますと、自治權に對する所の餘計な壓迫である、頗る迷惑である、抑抑斯う云ふ點まで御心配下さると云ふことが、官僚政治と云ふ誤解を受ける所以であらうと考へますので、自治權の擴充、どうしても自治權を民主的に擴充して行かうと云ふのでありますならば、どうしても此の制度と云ふものの御改正を願はなければなりませぬ、一面に於て地方制度を拔本的に改正して、さうして極力民主化を圖ると稱しながら、其の反面に於きまして、肝腎の首長に官僚の知事を仰ぐと云ふが如きことが、今や天下の輿論の攻撃の的になつて居りますことは、本會議竝に此の委員會に於ての各委員の御議論に依つて明白なるものがございます、今囘の地方制度の改正は、何と申しましても此の知事論が一つの議論の山である、此の根本問題の歸趨を定めず致しまして審議を進めますると云ふことは、謂はば本末顛倒の沙汰であらうと私は考へて居る、大臣はどうしても知事を官吏とする信念に對して、飽くまでも官僚式に押切られまするのか、但しは又大勢の赴く所、知事の公選是なりと云ふことに向つて、期せずして此の委員會の意見が一致しまするならば、大雅量を示して民意を容れ、一肌脱いで貰ひたい、此の根本問題を解決して、それから審議を進めますのが、議事進行上に非常に適當であらうと信ずるのでございます、即ち官吏制とするか公吏制とするかと云ふことに向つて、一つはつきりした御答へを重ねて御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=85
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086・大村清一
○大村國務大臣 只今細田委員から突込んだ御尋ねがありました、私は今囘の地方制度を提案致しまして、知事を官吏とすることに對する色々の御意見は、各機會に伺ひましたが、是は結局案の内容を能く御檢討を願ひますれば、其のやうな御意見にはならないであらうと云ふことを、深く確信して居つたのであります、さうして又段々御質問がございまして、何故公選せられたる知事に官吏と云ふ名目を與へるかと云ふことに付きましては、再三再四御説明を申上げまして、其の理論的根據は相當に色々の面から御説明を申上げて居りますので、政府が此のやうなことを立案致しました趣旨は、十分御諒解を願へることを信じて居るのでありまするが、私の申上げやうが惡いか、又私の人格が足りませぬか、どうも私共の考へて居りますことと御判斷との間に、非常な距離がある、是は十分に論議を盡さなくて、各各別のことを言ひ合つて居るのではないかと云ふやうな感じを持つのであります、私は此の點を率直に申上げる次第であります、只今御尋ねの時に、知事は一體公選知事で出發して居るのか、官吏知事で出發して居るのかと云ふ御質問がありました、細田さんは官吏知事で出發して居るやうな御見解のやうに一應伺へたのでありますが、申上げまするまでもなく、新制度に於ける知事は公選知事と云ふ所から出發して居ることは勿論のことであります、故に新制度に依りましての公選知事は、内務大臣が任免黜陟をすると云ふやうなことは、もう全然出來なくなるのであります、何となれば、縣民の直接公選に依りまして、任期四年で以て出て來るのであります、其の知事が退職致しまする場合は、知事が任意に辭職する場合は格別と致しまして、府縣會の不信任決議に依るか、乃至は有權者の退職請求の手續に依るか、それ以外に知事が官吏の身分に依つて、官吏の分限令に依つて措置をされると云ふやうなことは、是は當然制限されて來るのでありまして、生れました新しい知事は、公選と云ふ基本に依つて、強力なる府縣廳の行政執行權の中心となつて、活躍を期待して居る譯であります、さうして此の府縣知事を公選致しましたものを官吏とするに付きましては、先程來申上げます如く、府縣廳の性格として、自治體の面と國家行政の面と二つある、其の二つを合はせて掌理する上に於て、知事を官吏とするに過ぎないのでありまして、別に知事が官吏になつたからと云ふので、知事が官僚化するものでもないと思ひます、引例は餘り適當でないかも存じませぬが、戰時中に於きまして公選せられて出て居る市長を、勅任官待遇と云ふので、待遇官吏に致したのであります、是は市長の優遇と云ふ趣旨でありますから、比喩が必ずしも適切ではございませぬが、公選知事を官吏に致しまするのは、それと略略似たものであります、別に市長を勅任待遇に致しましたからと云つて、公選市長の性格が變る譯ではございませぬ、公選知事が官吏に併せなりまして、さうして府縣の國家行政面を擔當すると云ふことに依りまして、府縣知事の民主制が非常に阻害されると云ふやうに考へるのは、少し考へ過しではないかと思ひます、尚ほ多年の御經驗に依つて色々御話がございましたが、私共府縣知事の現在の立場に於きましても、中央より非常な大幅の權限の委讓を受けて居りまして、府縣知事の自由手腕に中央は全幅の信頼を置いて居ると云ふことは、間違ひのないことだと思ふのであります、それは最近各省の官吏の間の交流を致しまして、各省から出でて府縣知事の職に就いた人が段々あるのでありますが、それ等の述懷談を聞きましても、府縣知事が如何に中央から、大幅の權限の委讓を受けて居るか、實はなつた人が驚いて居る、恐らく地方官廳の中で、中央からの掣肘の最も少いものは、府縣知事であらうと思ふのであります、其のやうな立場でありまするが、今後地方行政の民主化に依りまして、一層府縣知事の權限を擴張し、中央から無用の掣肘をしない、民意に基いて自由手腕を振はせると云ふ點に付ては、更に一段の躍進をするのでありませうが、現状に於ても事實只今申上げたやうな次第でありまして、府縣知事を官吏にするからと云ふので、公選知事が官僚性を非常に強化するやうに御考へは願はなくても宜いのであらうと私は信じて居ります、尚ほ總ての諸制度が新憲法の精神に依つて一時に解決せられまするならば、只今の府縣知事を官吏にすると云ふやうな制度も極めて簡單に解決出來ませう、又公務員法と云ふものが今議會に提案されて居りますれば、それと相順應致しまして各位の御諒解のつくやうな立案も出來たでありませう、併し今議會に於きましては、憲法草案、地方制度改正草案と二つだけしか主なものは出て居ないのでありまして、公務員法は何れ次の議會までには間に合ふものと思ふのでありますが、其のやうな關係がありますので、現在の府縣廳の二重性格を存置致しまして、公選知事に執行權を全部持たせると云ふことに致します限りは、現行の諸制度の關係から致しまして、公選知事に官吏と云ふ名儀を與へさせまして現行制度と調和させると云ふより外は方途がないと思ふのであります、隨て公選知事にしてしまつた場合に、私はそれに對して如何なる態度を執るかと云ふ御尋ねでございまするが、是は只今申上げました本案の持つて居りまする内容實質を十分に御檢討願ひますれば、それで御答へになるやうに考へて居る次第であります、尚ほ此の點に付きましては、私至りませぬから十分なる説明を申上げることが出來ませぬので、御理解を仰ぐことが出來て居ないかも存じませぬ、尚ほ御尋ねに依りまして十分に意のある所は盡す積りであります、又私で不十分な點は他の政府委員からも援助させて、政府の意のある所を十分に御説明を申上げまして、それを呑込んだ上で又御批判を仰ぎたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=86
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087・細田忠治郎
○細田(忠)委員 大臣の御説明は本會議上程以來私御聽き致しましたけれども、之を反對の面から見ますれば、公吏でも官吏でも宜いぢやないか、「アメリカ」は公吏と官吏の區別はないぢやないか、斯う云ふ風な解釋にもなると思ひまするし、又過日來からの御説明の中に、今度劃期的な大幅に權限を地方に委讓するのだ、さうして地方の自治を圓滿化して行かうと云ふことに付ては、まだ日本としては現在の形勢からして、今遽かに總ての點を純然たる所謂徹底的なる民主化には出來ぬと云ふことは、徹底的と云ふ言葉も御取消になつて居る次第でありますから、自治が幼稚であると云ふ點に多分の老婆心があると云ふことは是は察し得る譯であります、私は不敏にして只今の御説明に依りまして信念を枉げることも出來ませぬが、恐らく大臣の懇切丁寧、又懇々として御説明になりましたことを、質問者は十人が十人とも分らぬ筈もなからうと考へて居ります、併し是は私が先程申しました通りに、觀念的にも實際的にも兩立せぬものであります、官吏と云ふものはそんなものぢやない、或は勅任した市長でも、地方の事務をやらせて見たら何等變りがないと仰せられますけれども、少くとも民間人は、是までの體驗から來ます官吏と云ふ言葉が、頭に永年來滲み込んで居りますると、如何樣に官吏の立場を官吏の方が御辯解になりましても、名前が變りませぬければ得心の行かないのは已むを得ませぬ、若し又公吏と云ふ名前を付けられて官吏以上の壓制政治をやりましても、是れ亦公吏と云ふ名前に得心するものではないかも知れませぬが、苟くも公選の知事を官吏にすると云ふことに致しますると、地方人は、どのやうに仰せられましても、官吏と云ふ名前に依つて從來の苦き經驗に照しまして、是は首肯しないと思ひます、況や知事は大臣直屬のものでありまして、重要なる問題は、市町村長と違つて一々大臣が人選致します、市町村長は一々大臣の所に持つて行つて人選する筈はありませぬ、之に依つても官吏分限令の範圍に於て、大臣直屬の官吏として知事を送るに違ひない、斯う云ふ點から申しますれば、如何樣な日本の言葉に於て御辯明を賜りましても、私は知事は官吏たる以上は、分限令に依ります所の大臣直屬の官吏と致しまして之を迎へなければ仕方がないと云ふことの此の信念は動きませぬ、併しここではもう此の問題は此の程度にしまして、何れは此の委員會に於きまして各委員の討論の結果に歸著致すことになると思ひますから、此の問題は此の程度に致しまして後日に讓ることに致します、第二に御尋ね致したいのは公務員制度であります、是は先程岡田君から微に入り細に亙つて御聽きになりましたけれども、是は、憲法改正の曉には、官吏制度の改革を目的とする案を次囘の議會に出すと云ふことでありましたが、次囘と云ふことは此の次に開かれる議會でありませうか、其の邊の所を、或は次囘の議會に出さうと思つたが出來なかつたと云ふやうなことのないやうに、公務員法と云ふものは此の次の議會に御出し願へるものと諒解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=87
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088・大村清一
○大村國務大臣 前に一寸御答へ致しましたが、臨時法制調査會が最近組織されまして、公務員法を立案すべく既に著手致して居ります、次の議會には間に合ふと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=88
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089・細田忠治郎
○細田(忠)委員 其の次に御伺ひしたいのは、今度の改正法に依りますと、市町村に對する監督權が大幅に縮減される、是は大變結構なことで、市町村に對する所の從來の監督權を制限されまして、主なるもの七つあつた中の五つ整理して、もう二つ殘つて居る、其の一つは條例の設定と改廢、もう一つは起債の認可權、此の二つを殘したと云ふことを言はれて居りますが、既に民主主義化しました所の此の地方自治體に、住民の權利義務の基本となる條例の設定改廢と起債の認可權に付て、府縣の地方課の若手の役人が之に「タッチ」して居ると云ふやうなことは不可解も甚だしい、申すまでもなく、國民の正當なる權利義務は取りも直さず人民の基本權利に屬するものでありまして、一片の條例を楯に取つて、官吏の意思に依つて民意が拘束を受けるものでないことは明白であります、そこで今囘の英斷に依つて五つ廢されましたならば、其の中でも隨分重要な市町村の基本財産の處分、或は分擔金の支出變更と云ふやうな、相當地方の財政に影響を及ぼすやうなものも撤廢されて居りますさらば、是と同樣に此の制度もなぜ撤廢出來なかつたか、もう一つは地方債の認可權の問題でございますが、私共の經驗しまする所では、凡そ地方制度に於て此の起債の認可程苦しいものはない、是は内務大臣も地方長官の時には御經驗になつたと思つて居りますが、地方の政治經濟から、文化から、土木、各般に亙りまして地方人を苦しめる、此の地方債の認可權程苦しいものはありませぬので、謂はば知事の命取りとでも言はれる程の惡制度であります、殊に知事が政黨人となりまする限りは、此の起債の認可權一本で、地方自治體と云ふものは生殺如何樣にでも支配されると云ふ危險が多分に伏在して居る、申すまでもなく、起債は地方人の頭に掛つて參りまする所の借金でございますから、區内の全住民が各種團體と練りに練つて、さうして審議を重ねた上に、地元發展の純粹なる目的の下に市町村が立案、計畫致しました時に起ります借金でございますから、的確なる償還財源の見透しもなく父祖累代住んで居ります住民がうかうかと借金をすると云ふ手はございませぬ、監督官廳として政治問題に對する所の老婆心と云ふものは能く了承致しまするけれども、任期の短い若手の役人が勝手に是はすべき問題ではございませぬ、一知半解の門外漢の容易にすべきことでもございませぬ、されば此のやうな自治の發展を目的とする所の計畫に對しましては、地方廳と致しましては、自治の行過ぎだけを御覽になつて御注意になつたら如何なものであらうか、起債を起して地方の發展を致さう、既に先程申しました通りに、基本金の處分から、分擔金の處置まで制限が撤廢されたならば、地方民が地方の頭に被る借金が己のする仕事に對して他人の權利に依つて借金する、せぬと云ふことが、民主主義と云ふ本來の精神に照らしまして宜いか惡いかと云ふことは論ずるまでもございませぬ、竿頭一歩を進められまして、先程申しました通り、條例の設定、改廢と云ふことと、地方の起債の認可權と云ふことも、更に之を撤廢して、高所大所から監督すると云ふ立場に置かれるのが、民主主義の自治發展に資する所以ではないかと考へて居ります、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=89
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090・郡祐一
○郡政府委員 御話の中にございましたやうに、此の度監督事項を極力整理致しましたのは、事前監督に依りまして自治の行過ぎ等を氣に掛けて居ります點を、出來得る限り致さずに、寧ろ事後に於て是正するやうな方向に向けたいと云ふ考へ方に出て居るのでありまするが、條例と申しまするものは、何と申しましても當該團體の權利義務の基本事項でございます、隨ひまして條例に對する許可權を全部撤廢致しますと云ふことは、是は事柄として無理であらうと思ひます、例へば市町村會の増員の條例、是等のものは往々にして著しく増加致す傾向を──將來は存じませぬ、過去に於きましては左樣な傾向もないではなかつたのであります、隨ひまして條例の許可權と云ふものは留保致して居りまするけれども、之を不要許可とし、或は報告を以て許可に代へまする範圍を極力擴めることに致したいと思つて居ります、それから起債の點でありますが、是も個々の起債に付きまして、監督官廳が餘りに微細な點に入つて、心配をして、許可の如何を決すると云ふやうな許可權の行使方は、今後致して參らない方針に致して居ります、然らば何であるか、國全體の資金計畫であります、只今も各種の理由から、本年の國債は勿論でありますが、地方債に於きましても、起債の總體の枠と云ふものは極力壓縮せざるを得ないのであります、爾か致しまして、左樣な資金の全體計畫と云ふものは中央に於て總體の枠だけは決定致さなければ相成りませぬので、其の枠の中で重點度に應じました仕事が出來まするやうにと云ふ統制を保ちますことは差當つてはどうしても必要と致すのであります、隨ひましてうかうかと金を借りて呉れて、後で潰れては困ると云ふやうな心配よりも、國全體が色々な方面との話合の結果決まつて居りまする資金の枠、資金計畫と云ふものが遂行出來まするやうにと云ふ點だけを、監督權の留保と致して參ると云ふことに相成らうと思ひます、隨ひまして此の二つの留保致しました許可權に付きましても、是が實際に適用されると云ふ場合、從來に比べて極めて少い、又やり方が極めて簡素に相成ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=90
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091・細田忠治郎
○細田(忠)委員 一應は了承致しましたが、此の間の御説明にも、國家の財政と睨み合せて此の起債權と云ふものは殘置して居るのだと云ふ御話は確かに伺ひましたが、地方が起債を起します際には、御案内の通り大抵突發的な起債は起りませぬ、概ねやりますのは學校の改築とか、或は道路の改修に對する地元負擔と云ふやうな、大抵恆久的なもので、多年惱みに惱み切つたものであつて、それを償還するには二十年先の公有林野を整理するとか、或は町村有林野を整理するとか云ふ見透しを付けた所の財源を以て請求するに拘らず、仰しやるやうなことの爲に、國債を負擔すると云ふやうな面からも出て參りますけれども、さう云ふ直接的の費途に充てるのではなくして、永久の計畫に基いて、而して永久の財源を茲に豫定してする起債であります、伺ひますと、從來のやうな細かい所まで制限せぬと云ふことでありますから、一應了承致します、どうか是が若し通過しましても、此の點に嚴重なる御監督が願ひたいと云ふことが一つ、それから府縣條例の方を見ますと、府縣制第二章第二款に於きまして、府縣會の職務權限及處務規程の中に、第四十一條に「府縣條例を設け又は改廢すること」と云ふことがあります、第四十一條に付てさう云ふやうに伺つたのですが、府縣會に條例の設定改廢の權を與へますならば、市町村會にも條例の設定、改廢と云ふことに付て、最早市町村自體の自儘に任せても宜いではないか、此の點に付きましてどのやうな御見解を持つて居りますか、御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=91
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092・郡祐一
○郡政府委員 府縣會、市町村會が、條例の制定改廢に關する權能を持つて居りますことは、仰しやいます通り兩方とも權能を持つて居ります、さうして許可權が若干留保致されて居りますのは、先程申しますやうに、何分にも條例に付て極めて重要なことがありますので、市町村の條例等の中、極めて重要なものだけ、事態の推移に應じて定めて參る、併し成べくならば不要許可或は報告を以て代へる部分に命令を以て廻はしてしまひたいと云ふことを考へて居ります、唯基本的な認可權だけは之を一應留保して置くと云ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=92
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093・細田忠治郎
○細田(忠)委員 もう一つ、そこまで御勇氣があるのであるならば、此の制限規則を二つだけ殘す必要はもうないやうに思ひます、是は篤と又委員會でも研究することに致します、一應此の問題は之に止めて置きます
最後に御伺ひ致したいのは、今囘提案されました主なる地方制度の改正に於きまして、重要なる地方制度の改正を要するものがあるに拘らず、御提案されて居ないと云ふことは非常に怪訝に堪へない、即ち提案漏れになつて居ると云ふことです、御承知の通り府縣制は明治三十二年三月の制度に相成つて居りまして、今囘まで既に九囘の改正を行ひました、今や第十囘目の改正を我々が審議致して居る次第であります、第八囘目即ち昭和十九年までの改正は、比較的所謂地方中心主義に於ての公正なる所の改正でございましたが、昭和十八年の三月と六月との二囘の改正と云ふものは、當時は東條總理の軍閥と、湯澤内務大臣の官僚時代でありまして、我々は此の改正に向つて默々として涙を呑んだ、是は地方自治に携はりました人は、皆等しく經驗致しました所の悲しき歴史を持つて居りまするが、今日から見ますると、實に狂亂的の軍國主義萬能の最高潮の時代でありましたので、無理からぬことでもあります、之に惡性の官僚主義が便乘したと言はれましても、是は逃げ言葉がありませぬ、極力民意を抑へた官制でございまして、茲に從來の改正と全然此の八囘目の改正が違つて居る、此の趣きを異にした所の改正、此の改正を基本としました所のものを基礎として今囘の地方制度の改正が出たのでありまするから、彼此れ時代を對照致しますと、之を根本的に是正しなければならぬことは當然でございます、然るに府縣制は百四十七條からなつて居りまするが、其の中で今囘提案されて居りますものは七十一箇條が改正されるものでありまして、殘餘の條章中には多數當時の官僚の殘滓が、未整理の儘に殘つて居りますることと彼此れ對照致しまするならば、一目瞭然、一例を拾つて見ますると、府縣制の第百十六條を見ましても、是は改正案として提案されて居りませぬ、何故是が復活せなかつたか、怪訝に堪へませぬ、極めて簡單に内容を御話申しまするならば、本條の概要と云ふものは、府縣吏員が知事の命令を受けて、使用料とか、手數料とか、分擔金とか云ふやうな現品に代はる金錢科料などを徴收する際に不當な徴收をする、不當な處分をする、其の場合に不服ある者は知事に上申をすることに相成つて居る、是が條文の骨子なのです、凡そ知事が部下に命じました事項に對して、不服者の不服が假に正當に成立すると致しますならば、委任致しました知事も、命令を受けました官僚も、當然不法行爲の責任を負はなければならない、所が斯う云ふ不服の申立は、私の經驗致しまする所では、千に一つも成立した驗しはございませぬ、凡そ何事に依らず、採決權と云ふものは當事者以外の第三者が執行するのが原則であります、知事が任命した事件の不法處分に對しての不服の申立を、又それを命じた知事が裁決するなどと云ふことは、實に民主主義の黎明の鐘が響く際に、此の條文が軍閥時代の官僚時代に制定された其の儘になつて居りまするが、なぜ此の改正が出來なかつたか、申すまでもなく此の法律は東條内閣以前には斯う云ふことはなかつた、東條内閣以前、昭和十八年までの法規は、不服の訴願は府縣參事會に之を申立てることに相成つて居ります、斯樣なものを斯くの如く知事に其の訴願權を握らしてしまうて、悪改正をして、人民の權利を蹂躙してしまつたものでございますから、今度の改正案として出ないと云ふのはどう云ふ譯か、私は怪訝に堪へない、或は是は過失ではないか知らん、よもや故意ではあるまい、斯樣に考へて居ります、之に似た例は澤山ございまするが、是は逐條に入りましてから一々御伺ひ申上げることに致します、知事の執行權の行使が今日の如く非常に擴大されました際に、此のやうな地方行政の改正では骨拔きになつてしまふ、此の際最後に大臣に御聽きしたいのは、過去の非民主的の條項は假令提案されなくても、見付け次第に之を妥當公正に、現代に合ふやうに修正加除を御許しになりますか、或は審議は飽くまでも提案事項に限るのか、念の爲に裃を脱いで、ざつくばらんの所を御聽かせ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=93
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094・郡祐一
○郡政府委員 御承知の如く府縣參事會は曾ては國家機關的の性格をも之に持たして居りましたけれども、十八年以降の改正に依りまして、申さば府縣の常設委員的のものに致しました、又參事會の性格から見て、それが適當ではないだらうかと云ふ判斷を持つのであります、隨ひまして異議の申立のやうな事後審査に付きましては、參事會等の意見を徴するやうなことに致して居りまするけれども、此の場合の訴願と申しまするものは一般の總稱の決定でありまする訴願でありまして、隨ひまして國家機關が之を決定することが當然でありまして、參事會を常設委員的のものとしまして、國家機關的の性格を是から取除きました以上、其の方が參事會として適當でありまする以上、府縣知事をして訴願の裁決に當らしめることは當然の歸結でありまするので、此の部分に付ては手を加へなかつた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=94
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095・細田忠治郎
○細田(忠)委員 それは甚だ奇怪な御答辯と承知致します、先程から申します通りに、國政に關係するものであつて、主に異議に關係するものを取扱ふと云ふやうな御話でありますけれども、知事の任命した官吏の不法處分に對して、任命した知事が其の訴願を受付けると云ふことである爲に、訴願でありませうとも、訴訟であらうとも、さう云ふやうなことが名目に囚はれないので、實際上あり得べきことかあり得べからざることかと云ふことを御聽きする譯であります、一例を擧げますと、手數料、使用料を押へに來て取られなかつたと云ふので、物件を押へる、物件押へをやりますと其の處理事件が片付くまでは其の物件を處理出來ない、或は永久に持てない物件を公開處分、差押へに付しますと、此の處理が出來ないことになる、參事會に任して置きますと、月二囘は定例參事會があるので、延びましても十五日以上は延びない、之に依つて裁決するから多數の極く零細なる農民が助かる、地方の官吏がさう云ふ財務の上に付きまして手數料、使用料を取りに來て、押へて不法の處分を致します場合には、大家高樓に住んで居る者は受けませぬ、使用料、手數料を納めることが出來ないやうな、其の日暮しの非常に辛いやうな者に對してびしびしやります、其の裁決が不服と申しましても、知事の取扱ひでございますと、曾て不服の申立者の主張が通つたことがありませぬ、是は生きた實例を知つて居ります、斯う云ふ際には東條内閣以前の昭和十八年までは、先程あなたが仰しやつたやうなことぢやない、明治三十二年からこちらまでと云ふものは、ずつとそれに直接の利害關係のない第三者であります、府縣參事會が取扱つて居つた、府縣參事會の取扱權限を地方民主化を行ひまするには擴大すべきで、斯樣な縮減をする必要は絶體にない、之に付きまして私はどの程度まで斯う云ふ條章、まだ未定で提案されてない條章に付きまして、先程大臣にも御伺ひしましたやうに、見付け次第にさう云ふやうな非民主的の制度を御改めになるか、或はここに掲げます七十一條に限るのかと云ふ重大な「ポイント」を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=95
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096・郡祐一
○郡政府委員 考へ方に依りますと、十八年法前の參事會を訴願の裁決機關にすること、是自身も必ずしも適當ではないのであります、參事會の性格と云ふものを先程申上げましたやうに常設委員的なものにし、其の面に於て極力效果を發揮させると云ふことが望ましいと云ふのが、十八年法の改正でありまして、御承知の通りであります、左樣致しますならば、此の場合に又參事會を訴願裁決の爲の國家機關として取上げると云ふことは如何樣に致しましても適當なものではないと思ひます、それで訴願と申しまするのが處分を致しました行政廳、それ自體に出訴致しますやうな例が屡屡多いのであります、御話のやうな見方を致して參りますると、訴願の其のやり方自身がどうも適當でないと云ふやうな、更に根本的な論になるのかも知れないと思ふのであります、只今の所府縣制上に於きまする御指摘の場合の訴願の裁決者と致しましては、府縣知事を用ひる以外に他に適當な機關がないと申せると思ふのであります、唯御承知のやうに行政訴訟手續自體が、近く根本的に改正致さなければ相成らぬのであります、行政裁判所も既になくなつてしまひます、隨ひまして行政訴訟全般の手續の改正は極めて近くなされなければならぬことであります、其の場合に全般の手續に付ては再檢討を徹底的に致して見る考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=96
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097・細田忠治郎
○細田(忠)委員 もう一つ、條章に提案されて居なくても、提案されて居ない事項に付ても、絶對にやはり審議は御許しになりませぬでせうか、審議は提案事項に限られて居りますか、之を御伺ひしたいと思ひます、大臣の御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=97
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098・大村清一
○大村國務大臣 是は一寸議會の權限の問題で、私一寸はつきり分らないのですが、差支へはないのではないかと思ひます、尚ほ能く研究して見ます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=98
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099・細田忠治郎
○細田(忠)委員 其の次に一寸一つ御伺ひしたいのですが、是は政府委員の方に御伺ひ致しますが、最近執り行はれました姫路の市會議員の選擧に於て、新改正法が直ぐ出ると云ふことを目先に控へて、期限が來たものですから、二、三箇月以前に市會の改選を全部行ひました、それが今度の此の新制度の改正に依りまして、來る十月の末とか伺ひましたが、其の時分にやはり強制的に市町村の選擧を命ずる所が、何か法文的にもあるのか、或は若し議員が全部辭職しなければ、舊法に依つて選ばれた所の市會は其の儘に市會として存續するのか、それに付きまして御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=99
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100・郡祐一
○郡政府委員 市町村會に付きましては任期の滿了致しませぬ議會が當然任期滿了前に改選される旨の規定は、此の度の改正法律案にございませぬ、隨て是は自發的に總辭職とか、何とか起りました時は格別、法律的には改選を強要しては居りませぬ、是は御質問の外かも知れませぬが、市町村長は選任の基礎が全く變つてしまひます、新しい法律に依つて基礎が變つてしまひます、是は改選致されることでございます、議員に付きましては左樣なことはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=100
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101・細田忠治郎
○細田(忠)委員 大體質問に對する御答辯を得ました、何れ又詳細のことは各部に入りまして御尋ねすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=101
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102・中島守利
○中島委員長 次は伊藤君、伊藤さんからは農林大臣の出席の要求があります、農林大臣は今日御都合が惡いさうですから、農林大臣の質問は農林大臣の出席の時まで保留しまして、其の他の質問を許すことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=102
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103・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 地方制度の民主化等に付きましては昨朝來引續き質問應答がありまして、就中知事の公吏問題等に付ても度重ねての質疑應答に依りまして、私は斯樣なものに付きましては御尋ね致しませぬ、唯地方制度と云ふものは茲に法律を作つただけで以て自治の運營の出來るものではありませぬ、之に付て、就中町村制に付きまして、私は本日は理論の鬪爭や議論を致さうとは思ひませぬ、大臣を初め政府委員は、自分が只今町村長となつて此の町村制を施行するのである、尚ほ又町村民となつて此の町村制の下に政治を行つて貰ふと云ふ所の立場になられまして、私本當に町村自治を掌る所の町村制の運用に付て御質問を申上げたいと思ふのであります、固より中央の政治が重大なることは論を俟たないのでありまするが、何としても地方の自治行政は直接國民に當つて政治を行ふのでありまして、國の根幹であり、尚ほ基礎であらうと私は固く信じて居ります、隨て市町村長の行政と云ふものは、理論や理想通りに行くものではありませぬ、何としても市町村に對しまする所の仕事は、内務省關係の縣廳の命令もありませうし、大藏省關係の税務署もありませうし、農林省關係の供出或は綜合作付の命令もありませうし、此の各省の關係の命令を一手に引受けまして、而も引受けます所の町村に於きましては、或は縣、或は本省と違ひまして、それぞれに專門な方を使つて居る譯ではありませぬ、本當に役場で以て凡ゆる部門の仕事を直接に取扱ふ、就中此の町村の仕事は、命令を受けて居ります所の仕事を致しましても、机上の通り一遍の仕事ではありませぬ、例へば供出に致しましても、どのやうな方法に依つて供出割當をしようかとか、どう云ふ風な期日を定めて供出をささうかと云ふやうな簡單な机上の決定のみならず、一々之を集めまして、現物を目の前に揃へなくちやならぬ、尚ほ税制に致しましても、どう云ふ風な賦課方法を執つたら宜いのかと、斯う云ふやうな頭に入れて机の上で書くだけでは町村の行政は全くありませぬ、一々現金を取集めまして、さうして尚ほ物品税の如きは送つてまで上げなければならぬ、斯樣なことで以て町村の仕事と云ふものは我々が簡單に考へるやうな左樣な容易い、生易しいものではありませぬ、隨ひまして先づ第一番に御問ひ申上げたいことは、今囘の此の地方制度の改正に當りましては、就中市町村制の改正は、市町村の關係の、何か之に團體を作つて居ります町村會ならば全國町村長會と云ふやうな會がある、此の會に對しまして多少なりとも改正意見に對しての意見を徴せられましたものであるか、此の點先づ第一番に御聽き申上げたいのであります、先日來全國町村長會に於きましては、只今提出になつて居る所の町村制を以て致しましては、到底町村自治の確立は出來ない、何とか之に修正を加へて貰はなければならぬと頻りに私の所に申し來つて居りますが、私永年町村長として携つて居りました過去の經驗に徴しましても、現在御提案になつて居ります市町村制の改正を以てしては、到底自治の確立は出來ないのではないか、斯樣に考へて居るのであります、此の提出までに左樣な關係方面に多少意見を徴せられたか、此の點御答へを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=103
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104・郡祐一
○郡政府委員 市町村會、全國町村會等には地方局の者が手分けを致しまして、或は要求に應じて十分御説明に參り、隨ひまして其の席上で或は書面に依つて御意見は十分承つて居るのであります、且つ採り入れまするものは出來るだけ採り入れたのであります、併しながら其の場合にも、若干の點に付て案と違ひました意見を先方で主張されて居つた點はあるのであります、併しながら多くの點に於きましては十分關係方面の意嚮を參酌致し、又御理解を得て居ることと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=104
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105・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 さう致しますると、先づ第一番に町村長等の名譽職の關係でありますが、只今申上げましたやうに町村の仕事は學問や知識で以て行政の運營の出來るものでは絶對にありませぬ、何としても町村民の中には大臣となる方もあり、全くいろはのいの字の讀めない方もある、此の大幅な町村民に對して、假に一萬人居れば一萬人一々に對して當らなければならない、其の結果町村長の仕事と云ふものは、町村民が本當にあの人が仰しやるかと、其の人格を見て初めて町村の自治が出來て行くのであります、賢いから、偉いから、斯う云ふ資格に依つて町村行政と云ふものは運營出來るものではありませぬ、隨ひまして之を有給に致します時には必ず町村長の質は低下することは爭へない事實であります、今や正にやれ自由主義とか何とか申して居りますが、此の過渡期に於きまして有給の町村長とする時は非常に町村の統制が取れなくなつて來る、隨て町村の自治は確立せないのではないか、私をして言はしむるならば、町村長の有給制は時期尚ほ早し、今暫く名譽職として町村の自治の確立を圖りたい、斯樣に考へて居るのでありますが、當局の御意見を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=105
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106・郡祐一
○郡政府委員 町村長に給料を支給することに致しましたのは、何と申しましても非常に忙しい仕事、又之に或る程度專念して貰はなければなりませぬ仕事であります、之に對しまして給料を給せないと云ふことは不合理でありますので、一般に給料を給することに致したのであります、左樣致しまして從來の名譽職制度の特徴と申しまするのは、午前に申述べましたやうに、其の思想に於きましては洵に望ましい、將來に發展して行きたい所もあるのでありますが、特に公民を區別する必要がなくなりました程度に選擧權が擴張されましたので、隨ひまして公民權も廢し、名譽職も廢止した、併しながら名譽職町村長の特徴と云ふものは、他の報奬ある事業に從事して居つても、町村内に於ける最も適格なるものを採り入れると云ふことに特徴があるのであります、隨ひまして、町村長全部に付て名譽職有給の區別を撤廢して、給料の點では總てに給料を支給する、同時に又一切の町村長に付きまして從來のやうに、名譽職でも他の業務に從事しても宜しい、若しくは他の業務に從事してはいけないと云ふやうなことを除きまして、隨て名譽職町村長制度の利益でありまする點は、制度の上で十分採り入れることと致しました、制度以外の運用に於きまして町村長の氣運と云ふものは、進んで積極的に町村の爲に犧牲的に奉仕して呉れると云ふ優秀なものが出て來るのであります、故に又仕事に當りまして左樣な氣持になつて貰はなければならぬと云ふ點は勿論であると思ひます、良い人間に出て貰ひます爲に支障があります部分は全部取除いてありますので、之に依つて私共は勝れた人に町村長になつて貰ふことが出來やうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=106
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107・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 町村長が有給となりまして、名譽職町村長との兼任の可能不可能な主な職責はどうですか、會社の關係であるとか、或は議員の關係であるとか……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=107
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108・郡祐一
○郡政府委員 色々の場合が考へられると思ひますが、結局從來有給町村長で一番支障になつて居りましたのは、有給町村長は他の報奬ある業務に從事することを得ず他の報奬ある業務の中に、會社の關係とか色々の關係がございました、此の點が一番法律上支障になつて居つた點と思ひます、其の點を取除くことに致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=108
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109・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 議員關係はどうなつて來ますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=109
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110・郡祐一
○郡政府委員 町村長と町村會議員との兼職禁止は從來有給はいけない、名譽職は宜しい、斯う云ふことになつて居ります、併しながら是もやはり名譽職と有給とを立て分けを致すべきものでない、執行機關と議決機關はそれぞれの仕事に於て專念すべきものであり、特に此の度は町村長は直接選擧と云ふ建前になつて居ります、直接選擧で出て參りました以上、今までと基礎を異に致しまして、議員も直接選擧に依る、町村長も直接選擧に依ると云ふ選任方法に改めましたので、是は兼務を認むべきものでないと思ひまして、一律に兼務を認めないことに致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=110
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111・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 次に町村長竝に助役收入役、監査員等の退職請求權でありますが、是は固より任意に依つて町村長、助役、收入役は働かなければならぬ、斯う云ふ意味から左樣な議論に對して全く民主化でありませうけれども其の五分の一以上を以て退職の請求を致すと云ふことに付ては私は非常なる疑惑を持つて居るのであります、私曾て國民學校の移轉問題を試みまして、而も此の國民學校は非常に邊鄙な所にあると云ふので、中央に移轉するやうな議決を執りまして、著々移轉工事を進めたのでありますが、舊校地でありまする地元關係の方は僅かに村の九分の一に過ぎない所の戸數を持つて居る、然るに移轉反對である所の判を捺しまして、所謂連判を持つて來ましたのは我が町の二千五百戸あります戸數の中で、千五百戸ある、隨て贊成である方面から見ますると、是が滿足に行かないと一つ贊成のものに判を取らうと云ふので連署を致します、所がそれが何と驚く勿れ二千二百戸ある、さうすると反對が千五百戸、贊成が二千二百戸一體町村民と云ふものは、左樣に斯うなくてはならぬと云ふ所の信念が未だ生み付けられて居ないのぢやないか、まあ隣り心易い方が判を捺して呉れと言へば判を捺す、名を書いて呉れと言はれれば名を書くと云ふやうな工合で、左樣な現状にある中に、五分の一と言へば二割であります、町村長が立候補致します時には、二割以下の札を取つて落選なさるやうな方は立候補なさいませぬ、どうしたつて三割以上の自分の投票數のないやうな方が立候補なさる譯はない、さうしますと二割と云ふことになりますと、何囘町村長の選擧をやりました所が是はいかない、直ちに地方長官に對して解職を要求致す、斯う云ふことになりますと、町村長たるものは地方長官に對して御機嫌を御伺ひしなくちやならぬ、選擧の度に私は斯う云ふ風なことに依つて當選したのだが、反對派が斯樣な請求をするであらうから、どうぞ私を解職して呉れるなと、常に府縣知事に對して頭を下げて、ぺこぺこしなくてはならぬと云ふ結果になりはせぬか、就中二割の數は、一割の自分の味方があれば二割と云ふ數は取れるのぢあないか、斯樣に考へます、此の問題に付きまして私の意見としましては二分の一以上の連署を以て町村長の解職要求を致したら、町村長は直ちに之を全有權者の決裁を仰ぎ、所謂全有權者の可否を取つて解職贊成のものが多數であつたなら、初めて是の解職を致す、此の解職權を知事に與へると云ふことは正に自治を確立するものでない、ここを政府と致しましては如何樣な意味を以て五分の一を決定され、而も之を知事に決定權を與へたのであるか、此の眞意に付て御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=111
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112・郡祐一
○郡政府委員 市町村の自治が動搖しはせぬであらうか、市町村長等が絶えず搖すぶられはせぬであらうかと云ふ點が能く問題とされるのでありますが、既に其の團體の長を直接選擧致すと云ふ考へ方を憲法でも採り、地方制度でも採り入れて居ります場合に、殆ど是と表裏致しまして、各種の請求權と云ふものを認めて參ると云ふことが必要だらうと存ずるのであります、隨ひまして其の運用と云ふことに付ては多くの注意を致さなければならぬことありと存じまするけれども、事柄自體は先以て之を認めなければならないことであると思ふのであります、而して五分の一の數を要求致しましたものは、自治の場合では、選擧の場合に有效投票の總數の四分の一と云ふやうな工合に決められて居りますし、概ね是等の選出されます場合と、大體同じ程度の數を解職請求の數と致しますことが適當であらう、外國の例等を見ましても、二割であるとか三割であるとか、色々の例はございますけれども、二割一分乃至二割五分に近い數、二割程度と云ふものが最も多く見受けられる數なのであります、而して解職請求權に基いて一般投票に依つて決定し、或は住民自體が決定すると云ふことは、是は只今の日本の國情或は自治に付ての發展の状況、政治能力等から見まして稍稍人民政治的な色彩を強くしはしないであらうか、それで從來は不適當解職權を監督官廳が持つて居りましたが、是等の不適當解職權は之を拂拭することに致しましたけれども、監督官廳と云ふものが存在し、其の判斷に依りまして──監督官廳自身が不正不當を犯すと云ふ前提を執りますと本が崩れて參りますが、監督官廳が其の場合公正な判斷を致すと云ふ前提に立ちますれば、決定を監督官廳に任す、隨て全住民の意見を聽くと云ふことは、決定は決定でありますけれども、事態を極端な所に置かないことが適當であらうと考へた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=112
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113・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 さう致しますと、外國に二割と云ふやうな例が多いと云ふことですが、我が國の現状としまして五分の一で町村長或は助役、收入役、監査委員の解職請求權があるとするならば、日々の如く各地方に於て町村長、助役、收入役の解職請求があるであらうと私は固く信じて居りますが、政府御當局に於かれましては、いや二割位の程度にして置いたならば左樣に町村と云ふものは紛擾するものではない、此の自信ありや否や、御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=113
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114・郡祐一
○郡政府委員 是等の數を要求致します際には、一定の手續に依り住所、氏名、年齡等の署名を求め、市役所或は町村役場等に於て名簿に對照の手續を執り、之を提出致させまして、誤載、誤記、二重記載等の事態の起りませぬやうに、同時に又其の手續は可及的愼重に致しますやうな方法を執ります、隨て手續から申しましても左樣に著しく起つて來るとは考へませぬ、それから又監督官廳に付きましても一定の方針を立てまして、請求が出て參りましても不當な場合は之を拒否して參ります、隨ひまして當初に於きまして、假に或る地方に於て左樣な傾向が若干出て參ると致しましても、是が絶えず市町村の圓滿な行政遂行の爲に支障が起りますやうなことにはならないのではなからうか、又之に付きましての啓發を致しまして、事態を左樣に導きませぬ爲の努力と云ふものは、制度を改正致します以上内務省と致しましても、責任を持つて、不眞面目と申しますか、亂に流れました請求等の事態が起らぬやうには努力して參らなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=114
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115・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 之に付きましては私と御當局との意見の相違でありますが、私は必ず落選された方は左樣な請求をなすものと信じて居ります、就きましては何とか内務省より公選された知事に對して本當に公平な立場に於て判斷を下せよ、左樣な意味を以て實際は町村長の認可權はなくなつたが、此の解職權の實行に依つて、實質に於ては知事が認可すると同樣の恰好になつては、町村の自治或は民主化と云ふものにはならない、どうか公平な處置を長官が執るやうに、呉々も内務省より此の示達をして貰ひたい、斯樣に希望を申上げて置きます、尚ほ其の次は町村會の解散請求權でありますが、是がやはり五分の一となつて居ります、此の五分の一もやはり町村會議員の選擧の際に相當な落選をする譯でありますが、此の落選組が一致して起つた時には直ちに五分の一位は平氣です、是が又非常な町村會の問題になつて來る譯でありますが、之に付て私の意見としては、内務大臣が之を決定するなんと云ふことは、洵に我々には考へ得られないのであつて、此の解散權は町村長が行ひまして、而も二分の一以上の連署を以て請求致す、其の時には町村長が此の解散を行ふやうに致したならば自治の確立ではないか、斯樣に考へて居りますが、五分の一に御決めになつた政府の意見と、尚且つ左樣な憂ひのない御自信がありましたならば、御確答を御願ひ申上げたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=115
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116・郡祐一
○郡政府委員 解散權と申しますものは、當該の團體の議決機關を一旦解消してしまふものでありますし、執行機關と議決機關とは自治體の基本となります相對する機關であります、隨ひまして執行機關が議決機關の解散權を持つと云ふことは、執行機關に優越せしめることになるとも考へられます、隨ひまして是は監督官廳たる内務大臣が持つべきものであると存じて居るのであります、さうして五分の一の數が極めて容易に集められて、常に濫生の傾向を起すかどうかと申しますことは──先程の改訂の場合と同じやうな事態を非常に屡屡惹起すると云ふことは、凡ゆる方法を用ひて防止しなければ相成らぬと思ひますが、左樣にして出て參りました解散の請求に對しましては、監督官廳たる内務大臣は、議會と執行機關の長とが相對立し抗爭をして居りまして、而も其の非が議決機關の方にありますやうな場合、或は議決機關の議員の中に、犯罪等に依りまして極めて不適當なものが多く居りまして、それが解散請求の原因になりますやうな場合、或は著しく定數を缺いて會議の成立にも支障があるやうな具合に議會がなりまして、隨ひまして議決の圓滑なる遂行が不可能と思はれますやうな場合、明瞭に議決機關に非があると云ふやうな場合に限りまして、解散を致すことに相成らうと思ひます、隨ひまして發動を求むる權利は認めますけれども、之に依りましてやたらに議會の解散がされる、是が脅かされると云ふ事態を起すことは、萬あるまいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=116
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117・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 次に町村條例、町村規則の制定は五十分の一、〇・二割と云ふことになつて居りまして、町村長は町村會が本人を呼びました場合は、直ちに會議に出掛けると云ふことになつて居るのでありますが、只今としては國民學校の兒童でも、やれ自由主義だとか何とか言つて居るやうな世相の混沌たる場合に、五十分の一で町村條例の制定の請求權と云ふことは、町村としては左樣なことにばかり沒頭して居ることになりはしないか、斯樣なことを考へますので、此の五十分の一は是こそ五分の一が妥當ではないか、如何なることに根據を置かれて五十分の一と云ふ數字を出されたか、此の數字の根源に付て御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=117
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118・郡祐一
○郡政府委員 條例規則の發案の請求と申しますのは、其の最終的な決定は、當該の縣會なり町村會なりに任せられて居りまして、請求自體は何等其の議決を拘束するものでもありませぬ、隨ひまして餘りに多くの請求者の數は要しないものと存ずるのであります、只今も議決機關に於きまして、地方議會に於きましては議員三人以上の發案に依りまして、議案の發案が出來るのであります、大體議員三人の持つて居りまする「ウエート」を直接に考へて見ますると、議員三人が、實質上支持を受けて居りまする選擧人の數は、概ね當該の團體に於きましては五十分の一位の選擧人の數を見れば適當であると思ひます、是等の點との均衡を考へまして、五十分の一とする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=118
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119・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 其の次に府縣制に付て一寸御尋ね致したいのでありますが、地方事務所の問題であります、只今地方事務所と云ふものは、私町村役場に居りまして色々なことに折衝を致しましたが、現在なして居りまする所の仕事は、町村と縣廳との書類の取次であります、さなきだに非常に郵送が遲延致しまする今日に於て、地方事務所で又一旦手間取つて郵送すると云ふことに依つて、何時か濟んだ書類ではないかと云ふ風なことが多々あるのです、私地方事務所に付ては百害あつて假りに一利あるかと、斯樣な考へを持つて居る譯でありまするが、如何樣なる意味を以て政府は此の地方事務所をどうしても廢止せられないか、此の政府の所信を伺ひたい、尚ほ此の地方事務所を廢止致しますと、内務省の郡に於ける所の足がなくなり、手がなくなると仰しやるでありませうが、左樣な時には常に町村長會と云ふものを御利用になつた方が、非常に行政の運營上宜いぢやないか、是は例へて見ますならば、只今米や麥の供出割當に致しましても、地方事務所に來ましたものは、地方事務所長は町村長を二、三集めて、警察署長とか色々な方々を集めまして、所謂人民の意見を聽くとか何とか言つて居りますが、實際は地方事務所の役人が割當をするのであります、茲に於て斯う云ふ大きな問題に付きましても、町村農會を利用致しますならば、縣の割當は郡の町村長が行ふとすれば、町村長は理事者である、自分は之をどうしても供出しなければならないから、普通ならば縣に於ける供出割當も中々解決が付きませぬでせうが、割當を受けました町村長は命を賭して此の供出の完遂を致す、尚ほ地方事務所の代行機關として、町村長會の運營宜しきを得るならば、各町村長が寄つて郡の各町村の割當數量を示すと云ふことになれば、其の町村長會は非常に議論は激しくなりませうが、少くとも決定致しました上は、理事者としての町村長が、自分が供出するのでありますから、本當に命を賭して全農家に對して御願ひ申して、只今まだ決定して居らぬ食糧緊急措置令と云ふものを御置きにならなくても、町村長の責任の下に於て食糧の供出は完遂されるのではないか、只今本當に知事が公選になり、町村長が公選になる其の間に於て、地方事務所長獨り、是のみが官吏として存在すると云ふことは非常に不自然ではないか、此の不自然なる存在に於て、如何に政府が供出の民主化を圖ると言つた所が、官僚主義であると云ふ所の意見の下に、供出に對する所の促進が非常に意の如く行かぬではないか、斯樣に考へるのでありますから、直ちに此の地方事務所は廢止致しまして、さうして行政の運營に付ては此の中間の町村長會を利用する、是う云ふ風にして自治の完全なる發達を圖つて戴けば、總ての行政部面に有益ではないか、斯樣に考へて居りまするので、なぜ地方事務所を置かなくてはならないか、此の點に付きまして詳細なる御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=119
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120・大村清一
○大村國務大臣 地方事務所の存在に付きましては、各方面から論議をされて居る所であります、さうして現在の地方事務所が極めて理想的に完全に行つて居ると云ふやうには、私も申上げる譯に行かないと思ひます、又地方事務所の今日の現状から致しまして、所長に其の人宜しきを得れば、今日程の惡評を受けぬでも濟んだではないかと云ふやうな點が多分に反省せられるのであります、併し其の存廢問題に關してでありますが、戰時中、實際上の必要に基きまして、段々と地方事務所が地方行政上に於ける重要性を増して參りまして、殊に食糧問題經濟行政と云ふ面に於きましては、府縣と町村との中間に存在致しまして、或る受持の地方の實情に即して、此の經濟行政の運營に貢獻した所が少くないと思ふのであります、若しあのやうな場合に於きまして、府縣と市町村が直接致しまして、中間に責任を持つた地方事務所の介在がありませぬと、經濟行政は餘程難かしかつたと思ふのであります、現に食糧の供出の實際を見ますると、是は地方事務所管内の町村長、或は地方民の協力の度にも依ることでもありまするが、地方事務所が適正なる又行屆いた活動をやつて居ります所に於きまして、米の供出の如きも好成績を擧げて居ると云ふやうな事例が非常に多いのでありまして、戰時中又戰後に於きまして、今日我が國の社會が要求して居りますやうな所に貢獻する上に於ての地方事務所の機能と云ふものは、餘程高く評價して宜しいと思ふのであります、固より今御話のやうな、之に代ふるに町村長會を以てせよ、是も確かに一つの著想であります、併し町村長會のそれぞれの場合に依りまして考へなければならぬことでありまして、非常に理想的に行くものもございませうが、必ずしもさうでないものもあり得ると思ふのであります、現下のやうな窮迫した所の状態に於きまして、食糧の供出其の他の經濟行政をやつて行きまする上に於きましては、尚ほ當分地方事務所は存續するの外なしと云ふやうに考へて居る次第であります、併し之を存續致すと致しましても、時勢の變化に應じまして、必要な職能上の改革も加へ、又其の人選に付きましても、不斷の注意を拂ふと云ふやうな改善は固よりしなければならぬ、只今の所當分地方事務所は、尚ほ其の機能を存續さして置く必要があると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=120
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121・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 地方事務所を御置きになるやうな御意向でありますが、只今の地方事務所で之を存置されますることは、帶に短し襷に長しで、我々は全面的に反對なんでありますが、置かれるとすれば將來此の地方事務所に對して相當な權限を與へる、縣廳に行かなくても殆んど間に合ふと云ふ風な權限を御與へになる考へでありますか、或は現在の儘で以て存置する、斯樣な御考へでありますか、どちらでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=121
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122・大村清一
○大村國務大臣 地方事務所長及び其の職員に非常に有能の者を配置致しまして、縣廳に十分代り得るだけの實力を持つと云ふ確信がありますれば、相當の權限を委讓しても宜しいのでありますが、是はやはり其の實力相應な所をやらせないと間違ひが起る因でもありますし、是は其の地方事務所の持つて居りまする實力に依つて判斷しなければならぬ、所が一般の地方事務所の運營を見まするに、設置當初豫期して居つた如き、鋭敏有效なる活動と云ふ所までは、必ずしも行つて居ると思はないのでありまして、そこに色々世論も起るのでありまして、今の程度の地方事務所の構成で以て、餘り大幅なる權限を與へると云ふことは却つて危險だと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=122
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123・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 以上で以て大體御尋ね致したい要點は濟んだ譯でありますが、振返つて見ますると、先刻來御尋ね致しました解職の請求權或は解散請求權、將又町村條例規則の設定請求權、尚ほ最後に地方事務所の關係でありますが、どうしても斯う云ふことは町村制或は府縣制に置かなければならぬ、斯う云ふことになりますると、私達と致しましては、どうしても此の解散請求權、解職請求權は、五分の一を二分の一程度にして貰ひたい、尚ほ條例規則の設定請求權は、少くとも五十分の一を五分の一にして貰はなければならぬ、地方事務所は只今の所もう廢止して貰はなければならぬ、斯樣な考へを持つて居る譯でありますが、此の委員會に於て全會一致で以て左樣なことが決定になりましても、只今の五分の一を二分の一にするとか、五十分の一を五分の一にするとか、地方事務所を廢止すると云ふやうなことは絶對に當局としては出來得ないものであるか、或は又一考して見ると云ふのであるか、今日はつきり御答辯願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=123
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124・大村清一
○大村國務大臣 さう云ふやうな御決議があつた場合にどうするかと云ふやうなことは、只今一寸此處で私から申上げることは出來兼ねますので、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=124
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125・伊藤實雄
○伊藤(實)委員 以上で一旦私は打切りまして、又次の機會に於て農林大臣に御伺ひしたいことがありますので、其の席で御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=125
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126・中島守利
○中島委員長 本日は是にて散會致します、次會は十七日の午前十時に開會致します
午後三時三十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00319460715&spkNum=126
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