1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月十九日(金曜日)午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 本多市郎君
理事 松川昌藏君 理事 本間俊一君
理事 中村高一君 理事 永江一夫君
理事 大原博夫君 理事 竹谷源太郎君
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 田邊讓君
淵田長一郎君 細田忠治郎君
松永佛骨君 水口周平君
綿貫佐民君 小野瀬忠兵衞君
小池新太郎君 佐伯忠義君
關根久藏君 青木清左ヱ門君
八坂善一郎君 大矢省三君
大澤喜代一君 細田綱吉君
宮村又八君 武藤運十郎君
矢尾喜三郎君 稻田健治君
伊藤實雄君 中野四郎君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 谷川昇君
内務事務官 鈴木俊一君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 大變御待たせ致しました、只今内務大臣御出席せられました、是より會議を開きます、通告順に依りまして質疑を許します──松永佛骨君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=1
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002・松永佛骨
○松永(佛)委員 出來るだけ時間の節約の爲に簡單に質問申上げます、第一に御尋ねしたいのは、來るべく行はれる地方選擧に對する追放令の範圍と云ふものを明確にして戴きたい、是であります、此の間の憲法委員會に於ける内務大臣の御答辯の中に、追放令に該當して居るのは、特に今囘の選擧のみであると云つたやうなことを言はれたと云ふことを、慥か新聞紙上で見たのであります、さうしますと、例へば衆議院の選擧の場合は、先般の四月の十日に行はれた選擧には追放令に該當するが、次の選擧には是が該當しないと云ふことにも受取れるやうにも考へられます、又地方で追放せられた人、斯う云ふ方が地方議會へ進出しても差支がないと云ふ見解でありますかどうか伺ひたい
それから今度の衆議院議員選擧の追放の状況を見て居りますと、實際的には相當札附とも云ふべきはつきりした自由主義者であつて、其の人の平素の行動、著作、さう云つたやうなものからも、自由主義的なはつきりしたものを見受けられましたが、偶偶東條内閣當時の總選擧に推薦を受けたと云ふことだけで追放せられて居る人が相當澤山あります、所が此の追放せられた人人が、推薦を受けただけで追放せられて居る、而も東條内閣の手先となつて、是等の人を推薦する爲に積極的な働き掛けをやつた、各府縣に於ける所謂推薦母體となつて働いた幹部、翼贊壯年團とか、或は大政翼贊會の府縣支部の幹部級、斯う云つた人が其の儘色色な職に留まつて居るのが一例でありますが、是等の人が來るべき地方議會に候補者として打つて出て、追放令の範圍に牴觸をするのかしないのか、或は市町村長として適不適はどう云ふ風に御扱ひになるか、是は明確にして戴かないと、地方選擧を控へて非常に人心が混亂します、相當動搖もするし、又選擧の上に於て、あれも多分追放せられる、あいつもあかんだらう、だつたら俺でも出られるか分らぬ、斯う云つたやうな連中が輩出致しまして、さうして神聖なる、嚴正なる選擧に一種の攪亂的な朦朧候補者が現れると云ふことが必然だと思ひます、斯う云つたことに對する内務大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=2
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003・大村清一
○大村國務大臣 所謂公職追放の問題でありますが、是は本年一月四日の聯合國總司令部の覺書に基きまして、政府の責任に於て取扱つて居るのであります、而して政府と致しましては、其の覺書の精神は、今後と雖も十分遵奉致しまして誤りなきを期さなければならぬと考へて居るのであります、該覺書は御承知の如く次の選擧と申しましたが、原文に於きましては來るべき選擧、其の選擧も複數になつて居ります、「コース・カミング・エレクションズ」となつて居ります、それで是が解釋に付きましては、色々に考へられるのでありまするが、併し覺書の他の部分を見ますると、公職追放の範圍は官吏及び之に準ずべき者、それから議員の面に於きましては國會議員の候補者になると存じて居ります、それから更に府縣知事、市長の立候補者を禁止されて居るのであります、併し來るべき地方議會の選擧に付きましては、府縣會議員の場合に於きましても何等の表示がないのであります、でありますから此の覺書其のものから見ますると、府縣會議員の立候補は觸れて居ないことになつて居る譯であります、併しながら先に申上げました如く、覺書の精神は日本政府としても十分に遵奉を致して行く方針で居りますので、其の具體的の取扱は一に今後の問題であります、又現に此の覺書に依ります所の公職追放は、現在も段々と審査の手續が進行を致して居るのであります、是等の實際に即しまして、聯合國に於きましても次の地方議會の選擧までには何等かの意思表示があるか、又無論政府に對する注意があるかも知れませぬ、其のやうな次第で今直ちに正確なる内容を茲に申上げる時期に達して居りませぬが、私共只今考へて居ります所では、公職追放に現に該當して居る人々は、少くとも次の府縣會議員選擧では、立候補を遠慮して貰はなければならぬことに相成るであらうと想像致して居ります、尚ほそれに加ふるに一月四日の指令に明記されて居ない、又其の一月四日の指令に基いて取扱つて居る範圍以外に於きまして、更に府縣會議員の立候補を制限すると云ふやうな、新しい事項を追加するの要ありや否やと云ふ點に於きましては、政府として今後十分に考慮致しまして、少くとも選擧の前までにははつきりした方針を闡明致しまして、選擧に支障なからしめると云ふことに取計らふ積りであります、只今申上げましたやうな大體の事情でございまして、今日はつきりしたことを茲に申述べることが困難でありますが、事情御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=3
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004・松永佛骨
○松永(佛)委員 それから尚ほ今度の改正案を見ますると、府縣會の議事事項の制限が撤廢をされて居ります、是は非常に大進歩でありまして、慶賀すべき状況でありますが、反面議事事項の制限が撤廢されることに依りまして、市町村會はさう云ふ弊はないと思ひますが、府縣會に於きましてはやはり地域代表になつて居りまする關係上、議員が各自のお土産案と云つたやうな形から、自分達の最寄の地方的な、所謂選出區の便宜の爲め色々な施策を持ち集め、さうして茲に豫算が伴ひますから、どうしても厖大な豫算になつて參ります、豫算が増大して行くと云ふ虞れが是は絶對あると思ふのですが、さう云ふものに對しては、公選せられたる府縣知事が之をどう取捨選擇して行くかと云ふことが問題で、之に對しては内務省としてはどう云ふ風に御考へになつて居りますか、此の點併せて御伺ひ致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=4
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005・大村清一
○大村國務大臣 今後の地方議會の運營に付きましては、國民が齊しく民主主義の眞精神に目覺めまして、其の民主主義の選擧に沿うたることは勇敢活溌にやつて行く、又それを利用し惡用するやうな間違つたことは自肅自戒すると云ふやうなことになりまして、政治の民主化が茲に確立されるのでありまして、私は來るべき新しい地方議會に於きましては其のやうな運營が出來ることを希望し、且つそれに大なる期待を掛けて居る次第であります、議決事項の制限を撤廢致しましても、必ずや府縣に關する事項でなければ固より議決されないことは當然のことでありまするが、府縣に關する事項と雖も、所謂お土産議案と云ふやうな自己中心のことは、自戒自肅されるものと思ふのであります、又府縣財政、府縣行政に於て取入れることの出來ない程過大な議案が出來ると致しますれば、それは事務的にも財政的にも處理の出來ないことは、自ら制限もあることであります、其のやうな弊害を豫見致しまして自治權の擴張を惜しむと云ふやうなことは、今日に於きましては避くべきことでありまして、專ら有權者及び地方議會の議員各位の自覺と責任とに於て、それ等は適當に調整せられて行くものと信じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=5
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006・松永佛骨
○松永(佛)委員 只今の質問は、來るべき地方議會に於きまして擴大されたる此の議決事項を、お土産案で濫用すると云ふやうな議員も出て、地方財政の基礎を危くすると云ふことを憂へましたのでありまして、内務大臣から明快なる御所見を承つて置きたかつたのであります、只今の御所見に依りまして、斯う云つた杞憂を杞憂に終らしめると云ふことに有效であつたと存じます、其の點は非常に嬉しく思ひます
尚ほ府縣「ブロック」の打破でありますが、現在大阪府とか東京都と云つたやうな大都市を包繞して居る府縣に於きましては、府縣「ブロック」の爲に非常に惱んで居る點が多いのであります、例へば戰災復興の爲に一日も早く家を建てたい、大阪府では建築許可をどんどんと戰災者に對して與へて居ります、所が具體例を言ひますと、隣縣の奈良縣では木材の搬出を許可しない、そこで色々難かしい折衝が行はれる、其の爲に建築の許可を貰つて木拵へが出來て居つても、それを奈良縣から大阪府へ搬出すると云ふことに付て、三箇月も四箇月も日數が掛かる、斯う云つたやうな例が相當あるのであります、斯う云ふ府縣「ブロック」の弊と云ふものが、今後公選知事の現出其の他に依つて相當ある、是が強力化されて行くと云ふ點を非常に憂へて、私は先般も本會議に於て、寧ろ道州制を布いて、地方の事務は道州廳にやらせて、完全なる地方分權の確立と云ふことに進まれてはどうかと云ふ御意見を申上げたのでありますが、今後生じてくる此の府縣「ブロック」の弊を打破して、本當に封建時代の藩制のやうな弊害を除去することに付ての、具體的な大方策と云ふものがございましたら承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=6
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007・大村清一
○大村國務大臣 府縣「ブロック」の今日に於ける弊害は、是は今後の地方行政を考へて行く上に付きまして十分注意しなければならぬ問題であらうと思ひます、此の弊を矯めると云ふことに付て何等か制度上、行政上のことを考へて居るかと云ふ御尋ねでありますが、此の點に付きましては今日明快なる結論に達して居る譯ではございませぬ、今後の實際の情勢を睨み合せまして、今後考案せらるべき事項に屬して居ると思ふのであります、唯現下の府縣「ブロック」と云ふ問題は、單に府縣の間に存しますのみならず、各地方の間、又各市町村の間にもあることでありまして、是は府縣と云ふ制度もさることながら、他に大きな原因があると思ふのであります、と申しますのは終戰後國民生活が非常に窮迫して參りました、さうして物資は極めて乏しい、そこで乏しき物資を國民の間に分ち合つて、兎も角も其の生活の最小限度を維持するが爲に、國家は食糧、物資其の他に亙りまして、強き統制經濟を施行して行くと云ふ其のことに、府縣「ブロック」と申しますか、地方割據と云ふ根本の原因が伏在して居ると思ふのであります、併し此の問題は戰後の經營に國民が總努力を致し、又日時が段々進んで行きますに連れて、順次緩和されるに相違ないと思ふのであります、さうして國民經濟の主流が大體貨幣經濟、自由經濟に依つて動き得るやうになりますると、只今のやうな地方割據の弊風は、自ら雲散霧消すると云ふことも考へられるのであります、私共はそれ等の點とも睨み合せまして、府縣「ブロック」、地方割據の問題は、是が解決の制度なり行政なりを考へて行かなければならぬと思つて居ります
序に申上げまして甚だ恐入りますが、今囘府縣知事を公選と致しまして、府縣と云ふ公共團體は完全なる自治團體に改組を致しますが、府縣の持つて居りまする國家行政に付きましては、府縣知事を官吏としてそつくり其の儘管掌する、さうして府縣廳の今日の官僚組織は、差當り現状を維持して行くと云ふやうな方途を講ぜんとして居りまするものも、現下の府縣「ブロック」の傾向と云ふやうな點を十分念頭に置きまして、それと調和して、其のやうな弊風が大いに助長されると云ふやうなことのないことを期したい、それが終戰後日尚ほ淺き今日の我が國の地方行政の上に必要であると云ふことに、深き關心を拂ひました結果であるのであります、尚ほ現下の府縣「ブロック」の弊害に付きましては、知事以下の職員の配置に於きましても、深甚の注意を拂つて居る譯であります、それ等の點に於きまして成績の擧らざる者は遺憾ながら之を更迭致し、又府縣制の運營に付きましても、其のやうな點に付きまして十分なる注意を拂ふことを嚴重に勸告、戒告を致して居る次第であります、尚又府縣「ブロック」の弊風の打破に付きましては、地方行政事務局の機能の鋭敏化に依りまして、其の缺點を除去することに努めると云ふやうな、色々の方面から努力を致して居る次第であります、又今後に於きましても其の線に沿うた努力は、必要に應じて十分やつて行く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=7
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008・松永佛骨
○松永(佛)委員 府縣「ブロック」の打破に付きましては、成程仰せの通り色色な統制と云ふものが之を助長して居ることは事實であります、一應御説御尤もと存じますが、此の府縣「ブロック」打破の爲にも知事を官吏とすると云ふ御説は、先般から屡屡承つて居るのでありますが、どうも私共之に付ては承服致し難い點がございます、何れ此の知事の官吏論、公吏論に付きましては、懇談會か何かの方法で御相談申上げるより仕方がないと思ひます、殆ど全議員を通じて之を官吏とすることには反對の御意見があるのではなからうかと思ふ程度でありますが、それでも尚且つ民衆の輿論を突き放してでも之を官吏とする、飽くまでも之を固持されると云ふ御考へであるかどうか、又大體内務大臣の御答辯を總括致しますと、決して是は官僚制度の維持ではない、「アメリカ」あたりでは官吏、公吏と云ふことは問題になつて居らぬ、又中央の政黨と違つた地方政黨に屬して居る者が知事をした時に、其の威令が行はれなかつたらどうするかと云ふ問ひに對しては、其の場合は已むを得ない、中央は中央だ、地方は地方だ、斯うして進んで行くより仕方がない、斯う云ふ御意見であります、又地方の要務は一部分であつて、中央の要務が大部分であるから、知事を官吏として行かなければならぬ、或は官吏の任用は天皇の大權に屬して居る、大體此の間からの御答辯を總括致しますと斯う云ふことに盡きて居りますので、此の上御答辯を承らうとは思ひませぬが、國民大衆が官僚政治に對して非常に慊らないものを持つて居ると云ふことと睨み合せまして、地方制度の自主性と自立性の強化、此の根本目的に立脚されて、懇談會等の席に於て宜しく公吏となさることに御考へを改めて戴きたいのであります、又「アメリカ」の例を御話になりましたが、「アメリカ」では問題がないから日本でも問題はなからうと云ふことは當らぬと思ひます、あの米松は濕度の少い「アメリカ」では非常に結構な建築材料でありますが、どうも濕度の多い日本に持つて來ますと、色が變つたり、腐つたりする弊害があります、又中央は中央、地方は地方、斯う云ふ考へ方は私達の採らない所であります、中央と地方とは所謂二人三脚で、ぴつたり意氣が合つて行かなければ、行政の圓滿な運營は出來ない、若し此の中央は中央、地方は地方で違つた政黨の知事と内務大臣とが、違つた進み方をする場合、内務省は官吏任用令に依つて此の知事を罷免される御積りであるかどうか、又之を罷免するやうな場合は自治權に對する壓迫とはならないか、又それを有耶無耶にやつて行く場合は、内務行政の上に支障がおありにならぬであらうかと云ふ點も承りたいのであります、尚ほ中央の要務が多い、わざわざ私共に御教へを願ふ爲に、地方費と歳入歳出の「バランス」を「リーフレット」で御示し戴いて居りまするが、成程之を見ますると、府縣の歳入歳出等の割合が二一%、委任事務が七九%、斯うなつて居りますが、此の表に現はれた土木費、衞生費、勸業費、社會事業費、道府縣職員費、斯う云つたやうなものは、大體此の表全般を通じて見ますると、所謂「ドイツ」の制度から生れて來た中央集權以外の何ものでもないのであります、自主性と自立性の強化、地方分權主義と云ふことから見ますと、斯う云つた表の大半は道府縣に委讓すべき性質のものだと思ひます、例へば警察費の如きは百「パーセント」が委任事務となつて居りますが、是は恐らく早晩行政警察は地方に委讓される性質のものである、斯樣に考へますと、此の百「パーセント」の警察費は半ば地方に委讓されるものである、さう云ふ風に算へて行きますと、是は地方分權、地方の自主性と自律性の強化に依りまして、二一%、七九%の「パーセンテージ」は之を主客轉倒するものだ、斯う云ふ解釋を私共はして居ります、又さうしなければ自主性と自律性の強化にはならないと云ふ解釋を致して居るのであります、斯う云つた意味から、地方に要務が多いと云ふことが言ひ得るならば、市町村長は公吏として中央の命令に違反なく、今日まで委任事務をやつて來て居ります、斯う云ふ點を考へますと此の御説明も承服致し兼ねる點がございます、尚ほ天皇の大權だと云ふ御言葉もありましたが、是は憲法に定められて居ります通り、字句の解釋は其の通りであります、但し國民の爲の政治である、天皇は國民の象徴であると云ふ意味から行きますと、官吏は天皇の大權だからと云ふ意味で、公選知事を官吏にすることは當つて居ないのではないか、尚ほ知事の具状權に付てでありますが、任免權を與へずに、具状權の程度で以てやつて行けると云ふやうな御説明であり、御解釋でありますが、是は任免權を與へると、官吏である所の部長や課長を、公選された知事が所謂素人政治で以て勝手に任免されたのでは、内務省が統一上困ると云ふやうな理窟が多いのであります、或は一種の官吏身分保障と云ふやうな含みもあつて、是は任免權でなしに、具状權となされるのか、或は公選された知事より内務省の方が公正であり、且つ叡智である、だから任免權は内務省が持たぬといかぬ、公選の知事には渡しにくいのだ、斯う云ふ御解釋であるのか、又知事は自分の好ましくないものを具状權で罷免して、好ましい人物を自由に部長課長に入れることが出來るかどうか、それを又難かしい高等文官任用令で御縛りになるのか、又現在の官吏公吏の待遇問題でありますが、官僚生活と云ふものに國民が慊らないからと言つて、「エキスパート」の官吏を全部廢止しようと云ふやうな考へは、我々毛頭持つて居ない、寧ろ官吏は量より質を尊んで、もつともつと質を良くすると共に、其の待遇を──現在では御話にならない、隨て此の兒は善い頭の兒だから官吏にしようと云ふやうな風が、今後養はれて行くやうな待遇改善を思切つてやつて行かなければならぬ、斯う云つたことをやつて行く上にも、地方の實情に沿うて俸給等を決めて行く必要が生れて來ると思ふ、斯う云ふ點に於ても知事に具状權より任免權を持たしたら宜いと云ふ解釋をして居るのでありますが、此の點一つ御考へを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=8
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009・大村清一
○大村國務大臣 公選知事は四年の任期を持つて就任するのでありまして、任期を基礎として居る官吏であります、任期は何處までも尊重をするのであります、故に任期中に於きまして、其の知事が單に適當でないと云ふことで、政府に於て之を免ずることは出來ない解釋であります、尤も知事に官吏分限令の場合と同じやうな、精神上の故障が起り、職務が執られぬやうな場合に於きましては、それは官吏分限令に從つて處置をすると云ふことも想像し得るのでありますが、さう云ふやうな極端な事故のあります場合以外に於きましては、何處までも任期を尊重致しまして、任期中に免ずるやうなことは實際問題としてないと云ふやうに御諒承を願ひたいのであります
それから今後議會政治、政黨政治が段々と發展して參ります過程に於きましては、或は中央の政局を持つて居ります政黨と、府縣知事が屬して居る政黨とは時に異なると云ふやうなことは起り得ることと思ひます、さう云ふ場合に於きまして、主義方針の食違ひが起りましても、是は實際問題として已むを得ないと思ひます、併し今後の政黨政治の發展を考へますと、先刻からも申上げました通り、良知と寛容とに依つて、此の間を圓滑に處理するより外に解決法はないと思ひます、是は實際の政治問題として自らそこに解決が求められるものと思ふのであります
尚ほ内務省から提示致しました資料に依りまして、委任事務費、固有事務費の御話がございました、如何にも此の委任事務費で處理して居ります仕事は、常識的には私は府縣の事務、即ち府縣と云ふ公共團體の事務であると考へて宜からうと思ふのであります、唯市町村と大いに異なりますことは、市町村に於きましては直接國費で支辨して居る仕事はないのであります、所が府縣廳に於きましては、直接國費で支辨をして居る仕事が、其の事務の分量に於きましては、寧ろ府縣と云ふ自治團體が處理して居ると認むべき事務に比べて大量であります、其の點は市町村と斷然異なつた所であります、此の點は特に御留意を願ひたいと思ふのであります、それから今囘公選知事を官吏にすると云ふ案になつて居りますのは、現在の我が國の段階に於きましては、地方自治行政を含めての地方行政を運營して行きます上に於きまして、政府は絶對必要なりと考へて居る次第であります、併し今後民主政治が國、地方を通じて段々と進展して參りました曉に於きましては、更に其の新情勢に應ずるやうな改革は、何年後か或は十何年後には、是は必ず行はれなければならぬ、又それだけの民主政治の生長はさせなければならぬものと思ふのであります、府縣知事に部下官吏の進退の具状權を與へると云ふことに致しましたのは、今日此の際地方制度を改正すると致しますと、府縣知事に官吏の任免權を與へることは制度上不可能であります、故に是は具状權としてそこに調和を求めて居るのであります、さうして此の具状權の中には、任免の具状權でありますから、自己の好ましからざる、適當ならざる官吏を罷免することを具状することは固より、自己の欲する官吏を任用したいと云ふ具状權も固より含んで居ります、それから官僚制度が宜しくない、殊に戰時中の官僚制度に於きまして、國民が非常なる不滿を持つて居ると云ふ點は確かに首肯の出來る點もあるのであります、故に此の官僚制度は民主政治の發展の上に、根本的に、拔本的に再檢討致しまして、民主政治に適するやうな新しき吏僚制度を打立てると云ふことは、是は我が國の民主政治の發展の上に絶對必要なことと思ふのであります、新憲法草案に於きましても、公務員法とも云ふべきものを、國民を代表する議會の協贊を經て定めると云ふことが豫想されるのでありまして、民主議會の協贊を受け得るやうな新官吏法は、近く之を政府の責任に於て提案しなければならぬことと思ふのであります、何れに致しましても民主政治に進みましたからと云つて、知事を補助致しまする府縣の吏僚制度は、手當り次第にどんな者でも任用して宜しいと云ふ譯には參り兼ねると思ひます、やはり相當の教養を持ち、相當の訓練を持ち、又相當の經驗を持ちまして、府縣行政を府縣民の爲に完全に遂行し得る知事の有能なる補助者を備へると云ふことは、府縣と云ふ自治體の政治の進展の上に、絶對必要と考へられるのでありまして、現在の官僚制度で組織して居ります府縣廳を一擧に引繰り返しまして、知事の任意に府縣廳を組織させると云ふやうなことは、是は餘程考慮を要することと思ふのであります、私共の望んで居りますることは、新しい吏僚制度が打立てられまして、現在の官僚制度に新しき吏僚制度を以て置換へると云ふ時までは、經過的に、現段階に於きまして知事を官吏と致し、さうして其の補助者は知事の進退の具状權に依つて、適當に改めて行くと云ふことで經過をするのが、最も適切であると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=9
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010・松永佛骨
○松永(佛)委員 只今の御答辯大體承知致しましたが、「リーフレット」の表なんか見て、結果に於て地方には直接國費に依るものがないのだと云ふ話でありますが、是は中央集權主義的な現はれでありまして、今後地方には大幅の税制等を委讓して、さうして恒久的財源を持たして、市町村自體が或は收益事業もやつて、色々なことをやつて、事實やつて行くやうに仕向けて行く必要があらうと思ひます、此の點を再考願ひたいと思ひます、尚ほ公務員法を拵へて、現在の國民から怨嗟の的となり、忌避せられて居る官僚制度を打壊して、吏僚制度を確立すると云ふ、是は非常に結構な御抱負でありますが、此の公務員法と云ふのは大體何時頃御提案になる御豫定でありますか、是は一つ念の爲に伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=10
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011・大村清一
○大村國務大臣 公務員法は現在臨時法制調査會に於きましても、鋭意研究をされて居ると云ふことであります、多分次の議會には間に合ふであらうと云ふやうに考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=11
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012・松永佛骨
○松永(佛)委員 成べく早急に内務大臣の理想とせられる所を以て、我々が承服出來るやうな現實を打立てて戴きたい、斯樣に存じます
尚ほもう一つ「リコール」制問題で、先般から或は濫用とか色々な問題が出たのでありますが、私は此の「リコール」制に付て、之を選擧の直前に、戸別訪問の道具に使ふやうな場合もあるだらうと云ふことを非常に惧れて居るのであります、五分の一の調印を取つて廻る、何か口實を拵へて、選擧の直前にやりますと非常に有効適切なる戸別訪問が、而も合法的脱法合爲で行ひ得るのであります、之に關聯した取締の方法を御考へになつていらつしやるかどうか
それともう一つ、此の選擧年齡の中で、知事の被選擧權が三十歳、斯う云ふ制限もあるのでありますが、私は中央の國會の被選擧權が二十五歳、知事が三十歳、之に付ての御説明は先般承りました、地方議會に於ても二十五歳でありますが、寧ろ私は民主主義確立の上に於て、地方議會等に於ては之を二十五歳と云ふ制限を付せずに、選擧權被選擧權を同一にしてしまつたらどうかと云ふ考へ方を持つて居ります、選擧權は二十歳以上と云ふ制限を付しても宜いが、被選擧權は寧ろ撤廢しても宜いのぢやないか、極端なことで言へば、十五歳の府縣會議員があつたつて敢て差支ない、それが偉大なる天才である、三十歳の人がなし得ないことを、或る種の天才は十五歳でもなし得る、十歳でもなし得る場合も考へられる、日本の今後は天才教育、之に俟つ所が大でありまして、政治方面の天才教育から言つても、選擧權の年齡は二十歳、被選擧權は二十五歳にするとか、知事は三十歳にすると云ふよりも、全廢或は二十歳にしてしまつた方が宜いのぢやないか、勿論二十年位は人間は鍛錬期にありますから、十歳十五歳と云ふのは例へに過ぎませぬが、選擧權、被選擧權を共に二十歳位にしてしまふと云ふことが、地方民主主義教育の上に於ても宜いのぢやないか、斯う云ふ考へ方も持つて居ります、それから曩に申しました町村に於ける收益事業を經營すると云ふ方法に付て、先般御答辯があつたやうに思ひますが、今後町村に於ては町村の税收入、財源の上に有利なる收益事業を積極的に行はしめるやうに、之に付ての御所見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=12
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013・郡祐一
○郡政府委員 請求權に付きましては、成べく親しみ易いものにすることが、既に直接參政の途を開いて居れば必要だと思ふのであります、唯虚僞の記載であるとか、二重記載であるとか、さう云ふことを防ぎます爲の手續は、相當眞面目な請求が行はれますやうに、設けることに致しまするが、署名を求めますこと自體に付きましては、煩鎖なる取締を加へることは如何かと思つて居ります、唯若し選擧の直前等に、選擧の事前運動のやうな方法が行はれました場合には、それは選擧の事前運動の取締として、十分取締らなければ相成らぬことと思つて居ります
それから被選擧年齡の點でありまするが、是は確かに御話のやうな論の十分あり得ることでございまして、左樣な考へ方の持つて居る特徴は非常にあるのでありまするが、唯只今の所では、我が國に於きましても選擧權、被選擧權は常に區別致して居りますし、立法例に見ましても、寧ろ選擧權と同一に致しました所を、却て之を改めまして、やはり被選擧權の年齡を高めて居るやうなこともありまするので、一つの研究題目としては將來考へる値打は十分あると思ひまするけれども、只今の所では此の程度に致すべきものなりと考へて居ります
それから收益事業に付きましては、今後の自治體の發展と申しますものは、堅實な收益事業を營むことでありますので、寧ろ積極的に之を奬勵して參りたいと思つて居ります、隨て今度自治體の方から其の自治體に適應した收益事業を企圖致します場合には、積極的に認めも致しますし、又内務省と致しましても之がやり易いやうな方途を十分講じたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=13
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014・松永佛骨
○松永(佛)委員 色々有難うございました、尚ほ市町村に於ける收益事業其の他市町村から内務省等に色々申達事項が參りました時には、從來の弊を一つ一掃して戴いて、迅速に、極めて速かに之を御處理願ふやうに御願ひ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=14
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015・中島守利
○中島委員長 次は細田君、あと二、三十分しかないのですが、成たけ簡單に御願ひ致します、休憩後にあなたは繼續されるやうになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=15
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016・細田綱吉
○細田(綱)委員 多分さうなると思ひますが、成べく早く打切ります──私は質問の前提として御伺ひして置きたいことが三、四點あります、官吏と公吏はどう云ふ風に區別されて居るのか、言換へて見ますと、憲法、或は行政法上の官吏、公吏の定義、又は給與の面から見ました相違、或は又執務の點と申しますか、事務の分配の點から見ました相違等、それ等を含めた官吏と公吏の定義を伺つて置きたいのであります
それから國政と地方自治制との區別を伺ひたいのであります、先程松永議員からも御伺ひして居りましたが、所謂公務員法が制定された後は、官吏と公吏の一切の區別が、實質の上からも、名稱の上からも、待遇の上からも撤廢されるのであるかどうかと云ふことを伺つて置きたいのであります、それから地方制度と密接の關係がありまする警察制度の點に付ても御伺ひしたいので便宜上、此の數年前の或る一年を取つての例で宜しうございますから、全國に於ける檢束者の數と拘留者の數を御教へ願ひたい、それから現在警察官の待遇が、任用の初期に於てはどうであるか、五年先に於てはどうか、十年先はどうか、及び二十年勤めたらどうであるかと云ふ、平均給與額を御教へ願ひたいと思ひます、それから改正制度の要綱の中に、政府が府縣制の一部を改正する法律案要綱、例へば此の例を取つて申しますると、第四の第六項に「勅令」とありますが、是は現在の勅令を指すのか、憲法改正後に勅令と示ふものが存續されるのか、之を一つ御伺ひ致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=16
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017・郡祐一
○郡政府委員 第一に官吏と公吏の區別でありますが、是は勤務の對象が、官吏は國家に對し、公吏は自治團體に對し、それぞれ無定量の事務に從事致すと申しますか、奉仕を致すと申しますか、全身的に貢獻を致すと云ふことが根本の區別であると思ふのであります、其の爲に任免の方法も、官吏に付ては只今天皇の大權に屬し、憲法の改正後は天皇に認證されると云ふことに相成る區別が生じて參ります、是等の對象と任免の方法が、官吏と公吏の區別の根本的なものかと思ひます、それに伴ひまして物質的の處遇も、精神的處遇も異つて參りますし、官吏に付きましては俸給、給與が、只今の所大權に依つて定められて居り、公吏に付きましてはそれぞれの自治體の自主立法權に依つて定められると云ふことに相成らうと思ふのであります、紀律、分限、懲戒等に付きましても同樣な差別がある譯でございます、但し處遇の點でありますが、處遇の點に付きましては、例へば官吏に付きましては定期敍勳がございますが、事實上現在は停止せられて居ります、左樣な點でも官吏と公吏との處遇は、次第に差別がなくなつて來て居りますし、紀律、分限、懲戒等に付きましても、公吏に付きましても同じやうな規定を設けて居りますので、是等の點の差別と云ふのが漸次稀薄になつて參ると思ひますが、勤務の對象と任免の方法に付ての區別は、依然として新憲法施行後も殘つて參ると思ひます
それから國政事務と自治事務の區別でありますが、國政事務は法令に依りまして、地方團體又は其の機關に委任致されました事務であります、隨て所謂委任事務の概ねは國政事務と相成ることと思ひます、之に反して自治事務は法律上公共事務と致しまして、團體の當然自主的處理に委せられたもの、別の用語で申します固有事務と云ふのが之に當るだらうと存ずるのであります、唯國政事務、自治事務或は固有事務と云ふやうな區別を致しますけれども、實質的にはそれ等の事務が其の地方に非常に縁の深い仕事でありますし、それが即ち當該の地方團體の事務と相成りますので、實際の扱ひとなりますと、此の間の區別と云ふものは左樣に重要ではなく、又場合に依りましては兩者の區別は稀薄になつて居る場合もあるかと思ふのであります
第三番目に御話になりました公務員法制定後の官吏、公吏の區別は、先程申しましたやうに極めて稀薄にはなりますが、改正憲法に於て天皇が認證致されまする所から考へて見ましても、區別と云ふものは依然として或る範圍に於ては殘るものと云ふ工合に考へて居ります、それから警察の檢束者及び拘留者の調、それから巡査の初任給、在職年數に應じましたる給料、是等のものに付きましては何れ書面に致しました統計で、御手許に届けたいと思つて居ります
それから要綱に勅令と云ふことが書いてありましたのは、確かに現行法の下に於ける勅令でございまして、是が制令とか、新憲法に規定されまする適當な命令の形式に變つて參ることは當然だと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=17
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018・細田綱吉
○細田(綱)委員 只今御伺ひしました中で、新憲法施行後、尚ほ官吏、公吏の區別が存續されると云ふ御話でございましたが、只今御答辯の中にもありましたやうに、勤務の對象と認證の差違に依つて公吏と官吏の差違がつく、而もそれは稀薄になりつつあると言はれて居ります、或は又地方政治や國家政治と自治政治の上に於ても其の區別は稀薄であり、且つ區別し難い點もあると云ふことは私も正に其の通りだと思ふのであります、果して然らば、之を新憲法施行後、尚ほ區別して置く必要が何處にあるか、區別しなくちやならぬ根據は何處にあるか、私が申上げるまでもなく官吏が公吏の上に君臨して、幾多の摩擦或は又事務の澁滯を來して居る事例が少くないので、出來れば國政のより良き運營を希ふ限り、此の區別の撤廢されることが望ましいのではないでせうか、是は恐らく内務當局に於ても御異存はないと思ふが、そこに區別を存置しなくてはならぬ根據が何處にあるかと云ふことを御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=18
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019・郡祐一
○郡政府委員 實質上の差異は稀薄に相成つて參りますけれども、憲法上、國と云ふものと、それから地方自治體と云ふ此の兩者は、改正憲法が之をそれぞれ前提として置いて居るのであります、隨ひまして國に對して無定量の勤務に服しますもの、自治體に對して無定量の勤務に服しまするものがあることは當然でございまして、國と自治體を區別致しますと、そこに官吏と公吏と云ふものが起つて參ることも當然なのであります、國、自治體と云ふやうに名稱が變りますやうに、官吏と公吏と二つの種類のものが出來るのであります、唯仰せのやうに官吏が公吏に君臨すると云ふことは考へ方の上でもありませぬし、寧ろ自治體の内容が豐富になりますに連れて、公吏と云ふものの地位は現在よりも十分高めらるべきものだと思ひます、決して上下の關係があるのではありませぬ、勤務の對象の差違がありまする爲に殘ることで、之が兩者がありまするが爲に、憲法改正後の公務員制度と云ふものが不圓滑に行はれる、さう云ふやうなことはなくて濟むであらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=19
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020・細田綱吉
○細田(綱)委員 政府委員の御答辯に、私はどうも了解が出來ないのでありますが、國と地方自治制度と云ふものが區別されて居る限りは、官吏と公吏の區別は已むを得ない、言換へて見ると、結局は國の事務を執るから之を官吏にして置くと云ふことではないかと思ひます、さうすればどんな末端の市町村事務に於ても、殆ど過半數が國の事務であると云ふのが現状であります、先程も松永委員が仰せになつて居りましたやうに、府縣の事務に至つては七割九分までが國の事務であります、成程認證の對象、勤務の對象が國であり、地方自治體であるかも知りませぬが、併し其の内容は同じなんです、特にあなたの議論を承りまして、府縣に於ける公吏と官吏の區別の根據が私には分りませぬ、府縣の中に官吏もあれば、公吏もある、それでは其の公吏は純然たる自治のみの事務を扱つて居るかと云ふとさうではない、豫算の都合であつたり、或は定員の都合でやつて居る、私の伺ひたいことは、どうしてもそれを存續しなくちやならぬと云ふ根據があるのかと云ふことをもう一度伺つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=20
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021・郡祐一
○郡政府委員 仰せのやうに市町村に勿論委任事務がございます、先程御尋ねのありましたやうに、固有事務と委任事務の區別は、府縣のみならず市町村にも勿論あることであります、それは委任された事務でありますから、隨て公吏が之を執行して居る譯でございます、それから府縣の中に恆久支出の財源の爲に區別があると御話になりましたのは、或は官吏の中に國費支辨の官吏と地方費支辨の官吏がございます、是はやはり官吏法上任免されるものでありますけれども、費用の負擔を當該地方團體に委せられて居ります爲に、國費支辨と地方費支辨の區別がございます、それは費用負擔の區別であつて、官吏自體の區別ではないのでございます、隨ひまして府縣に於きます公吏は、御承知のやうに當該自治體の收益事業である國費を以て行ひます公園の管理とか、左樣な意味に付て公吏が働いて居る譯でございます、公吏としては府縣に於きましてはやはり自治事務のみを扱つて居る現状でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=21
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022・細田綱吉
○細田(綱)委員 私の知る範圍では、地方に於ける公吏が、一つの昇進とか、恩給とか、其の他の都合で、例へて申しますると、國庫支辨の月給三圓也は、或は十圓也と云ふやうな金額を支給されて、他は地方自治體である府縣から支給されると云ふやうな、極めて滑稽な一つの便宜の方法が幾多見受けられて居ります、只今の政府委員の御答辯と、實相は可なり違ふものがあるのぢやないかと考へられるのでありますが、それはお互に見方の相違、意見の相違と云ふことにして置きましても、只今御伺ひしました官吏と公吏を、どうしても區別して置かなくちやならぬ根據は何處にあるかと云ふ點を今一つ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=22
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023・大村清一
○大村國務大臣 是は新憲法の立法論になるのだと思ひまするが、憲法の條章を見ますると、官吏公吏を含めまして廣く公務員と云ふことで立法して居る箇所が段々にございます、それから國家が國家事務をやつて行きます場合に於きましては、それは官吏にやらせると云ふ建前から、國の仕事を國の機關に於て仕事をする者に付ては、特に官吏として居ります點がはつきり致して居るのでありまして、殊に其の官吏の任免に付きましては、是は全部の者ではないのでありますが、特定の官吏の任免に付きましては、天皇が認證すると云ふことになつて居ります、併し半面に於きまして地方自治制度を認めて居ります所の憲法の條章に於きましては、地方公共團體の吏員と云ふことになつて居りますが、是が所謂公吏であらうと思ひます、此の吏員に付きましては、天皇の認證と云ふやうなことは一切ないことが看取出來るのであります、要するに是は憲法の立法上の問題でありまするが、憲法草案に於きましては、廣く括りまして公務員と言ひ、それを分ちまして官吏と云ふ部類と、公吏と云ふ部類と、二つに打立てて居るのであります、此の點は寧ろ地方制度論と申しますよりも憲法論であらうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=23
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024・細田綱吉
○細田(綱)委員 只今の内相の御答辯と事實は大分違ふのではないでせうか、勿論認證は單なる認證なんだと言はれるかも知れませぬが、憲法草案の第十四條に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である」斯う云ふやうに一樣に扱つて居ります、而も私或は不勉強で、御指摘を戴いて其の蒙が啓かれるかも知れませぬが、私の憲法草案を研究する範圍内に於ては、官吏と公吏を區別しなければならぬと云ふ根據は何處にも見へて居ない、唯國或は地方自治團體と云ふものがあるから、之を官吏と公吏に分けて置かなくちやならぬと云ふ一つの概念が然らしめるだけではないでせうか、今一度憲法十四條の天皇の所謂官吏任免の上に於ける認證大權と過去の常識で申しまする任免大權とは、新憲法の上では實際に於てどう云ふ風に變更されて行くのか、又今一つは内相の御意見として、官吏と公吏を區別しないと云ふことが若し可能であるならば、其の制度の方がより望ましいのか、或はそれがいけないのか、今一度伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=24
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025・大村清一
○大村國務大臣 一寸私御質問の趣旨が呑込めないのでありますが、國の仕事をする者を一應官吏と言ひ、地方團體の仕事をする者を公吏と言ふと云ふやうな立法になりましても、大して支障はないやうに思ふのでありますが、大體さう云ふやうな前提で此の憲法が立案されて居るのではないかと解して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=25
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026・細田忠治郎
○細田委員 憲法草案では、官吏と公吏を區別すると云ふことが前提として規定されて居ると云ふのでありますが、私洵に不勉強で申譯ないのですが、其の點一つ御教へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=26
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027・郡祐一
○郡政府委員 御指摘の十四條が公務員の選定、罷免の國民の固有の權利の規定でありまして、之に基いて内閣の所に官吏に關しまする權限が書いてございますし、それから天皇の認證の權限が出て居ります、それから地方自治の所に地方團體に對しまする公務員が考へられて居る譯でございます、十四條は總ての左樣な基本權が國民にあると云ふことを明瞭に致して居るのであります、天皇が認證致されることになりまするが爲に、從來の任免に比べましては、任命に依りまして創設的な行爲がなされますのが、確認的な行爲を天皇が致される限度に變つては參りました、それが官吏でありますことに付ては依然變りはないのでありまして、憲法は其の立て方を前提と致しまして立法致されて居るものと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=27
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028・細田忠治郎
○細田委員 是れ以上は意見の相違になりますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=28
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029・中島守利
○中島委員長 午後一時まで休憩致します
午後零時五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=29
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030・会議録情報2
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午後一時二十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=30
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031・中島守利
○中島委員長 休憩前に引續き會議を開きます、質疑を許します──細田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=31
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032・細田綱吉
○細田(綱)委員 午前中質問の前提を伺つたのでありますが、時間が來ましたので、是から質問の點を申上げます、私が申上げるまでもなく、國家の制度としては、其の基本法である憲法、それから國家下部組織を運營する地方制度とは、正に車の兩輪であることは申上げるまでもありませぬ、隨て長い間殆ど半封建的なままに殘されていた地方制度が特に戰爭中幾多の中央集權的な、或は官僚主義的な意企に依つて二度に亙つて改正された所謂地方制度は、憲法改正の此の機會に、憲法に對するやうな熱意を以て、地方制度の民主化を圖るべきであると考へるのであります、所が改正地方制度を通覽致しまして、恐らく私だけの考へではないと思ひますが、例へば憲法第八十九條第二項に依つて知事を直接選擧に依つて選擧しなくてはならぬ、其の他の憲法條章に依つて地方制度を改正しなくてはならぬから、憲法に比較して俺の方の地方制度こそ負けないで民主化を圖るのだと云ふ熱意が見受けられないで、何か所與の改正條章を、如何にしたら喰止められるか、言ひ換へて見ますと、過去の官僚支配に屬して居た地方制度を、如何にしたら持續温存することが出來るかと云ふ所に、多大の苦心と狙ひがあるやうに私共には考へられてならないのであります、私は戰後の立直りに日本の民主化が必要であり、其の爲に革命的であるとまで言はれる新憲法と比較して、地方制度は極めて低調であると云ふことを嘆かざるを得ないのであります、先づ政府が所謂地方制度中一部改正と云ふやうな形を以て出て來られたのでありまするが、殆ど其の過半の條文を改正されて居るのに、なぜ全部を書直して來なかつたのでせうか、他の議員の質問に對し、全部書直すならば口語體で臨む、一部改正の場合は從來の文語體で行くと云ふ御答辯もあつたのでありますが、今度の地方制度の改正に從來の條文の存續するものは存續するもので宜いが、なぜ全部を新らしい民主化の體制を取つて來られなかつたのかと云ふ點を、私は御伺ひしたいのであります、次に此の條文を一覽して考へられますことは、恐らく政府はさうしたことを意識して提案せられたとは私は微塵も考へませぬが、動もすると今囘の改正地方制度を實施する過程に於て、地方民大衆を巧みなる官僚の分割支配下に置く傾向が、此の改正法案中に點在すると云ふことを痛感するのであります、其の一つの例を取つて申しまするならば、他の議員からも指摘して申上げて居つたのですが、一定數以上の選擧人が縣知事或は府縣會議員の解職請求權を與へられたことは、一面に於て地方民大衆に政治面への發言權を強化したと云ふ點はありまするが、之を五分の一と云ふやうな率に致しますると、假に五分の四の人達が、其の府縣會議員なり、或は府縣知事を信用して居つても、少い五分の一の人達が内務大臣に解職の請求をして内務大臣がそれを至當なりと認めるならば、五分の四の人達の意思を蹂躙して、五分の一の人達の意思が通ると云ふやうなことになる、私はさう云ふことが實際にあるなしに拘らず、私が假に取つて申上げました一つの例を見ても、巧みなる官僚の所謂分割支配が織り込まれて居るのではないかと云ふことを痛感せざるを得ないのであります、是等の事項に對して其の弊に陷る心配が十分ありまするので、他の議員が質疑して居りましたと同樣に、更に私は之を三分の一程度に直す必要があると思ひます、徒らに内務大臣にそれ等の解職權を與へて、權限を強化する以外の何ものでもないと思はれるので、選擧人の所謂一定數以上の比率は、私は五分の一と云ふやうな低位のものでなく、之を三分の一と云ふ風な、或はそれ以上の比率に直すことが必要であると考へるのでありまするが、此の點の御所見を伺ひたいのであります
更に先程も伺つた通り、官公吏の制度に付て御伺ひしたいのであります、私の先程の前提の數問に付て御伺ひした時に、其の點を伺つたのでありまするが、申上げ樣が惡かつたので、大臣は質問の趣旨がはつきりしないと仰しやる、地方局長の御答へもありませぬでしたが、何故官公吏を區別しなくちやならぬ必要があらうか、成程官公吏を區別すべきことを前提にして、或は憲法が制定されて居るかも知れぬ、私はさう言はれればさう云ふ風な節が見られる、私は餘り英語の方は堪能でありませぬので、英譯文と對照して、官公吏の定義と云ふものが、可なり政府の原案の方が區別的な印象を與へると云ふことを考へるのであります、少くとも國家の制度は、地方自治體の末端に至るまで國政ならざるはない、と同時に、民主主義國家の建前から行きまして、地方自治團體の末端の事務亦國家の事務ならざるものはないと私は考へるのであります、政府は官公吏の區別を從來の儘にして置くのか、或は此の官公吏の區別の撤廢或は調整に付て、何等かの御考へを持つて居るのか、此の點を御伺ひしたいのであります
尚ほ官公吏の制度に付て御伺ひしたいのは、所謂公務員法が制定されそれが恐らく臨時法制審議會の方へも付議されて居るだらうと云ふ話でありますから、内務大臣其の他の御當局はもう之を關知されて居ると思ひますので、どう云ふ方向に是が改正されて居るか、其の全貌を伺へたら伺ひたいのであります、私は憲法竝に地方制度の改正と共に、所謂公務員法と云ふものが同時に提出されなかつたことを非常に遺憾に存じます、特に伺ひたいことは、此の公務員法に依つて改正されつつある點の中には、現在の所謂官吏任用令、其の他官吏に對する諸規定が、依然として高等文官試驗、即ち高等試驗令に依る行政科、或は外交科、或は司法科と云ふ諸制度、特に行政科、所謂高等文官試驗制度と云ふものが尚ほ存置されるかどうか、之を伺つて置きたいのであります、是は私が申上げるまでもなく、高等文官試驗制度がどうして生れたかと云へば、政黨が非常に力を得て參りました時に、樞密院の牙城に籠る官僚の一群が、政黨人官界に入るべからずとの制札が、高等文官試驗制度となつて現はれて來たことは、私が申上げるまでもなく、色々の著書の上にも顯著な事實であります、是等官僚の牙城が一つの條件を附けて、政黨人入るべからずの制札としたことは否むべからざる歴史的な事實であり、而も此の高等文官試驗制度あるが故に、所謂一部官僚の特權組が、一定の「ポスト」に收まつてしまつて、刻苦勉勵した多くの官僚が、何としても一定以上の地位に就けないで所謂出世が出來ないと云ふことは事實であります、勿論最近官吏任用令が或る程度まで緩和されて、或は一巡査出身の者が警察部長になれないと云ふこともない、知事になれないと云ふこともないけれども、是は殆ど稀有、絶無の例外であります、私の調査にして誤りがないとしますならば、昭和十二年でしたか、或は十一年の統計に依りますと、警視廳と東京府に於ける所謂資格者の平均在職年限は僅かに十一箇月であり、正確に申上げるならば、十一箇月を數日割つて居たと記憶して居ります、所謂資格者たる高等文官試驗を通過した是等の諸君は、官界の特權組として、今日は熊本縣、明日は北海道、其の次は新潟縣と云ふやうに、十一箇月位づつを轉々として居りますると、遂には部長になり、知事になる譯であります、十一箇月と云ふやうな在職年限でどうして其の仕事が出來るでせうか、何と云つても地方の状況が分らないので、一歩進んで仕事をすると云ふことよりも、一歩退いて間違ひなきを保すると云ふ、所謂官僚陣營に見る因循姑息の弊風は、懸つて斯うした高等文官試驗制度存置にあると考へるのであります、隨て又其の半面には、長い間其の地方で其の職務を勉強した人達も、自分は資格を持たないと云ふことに依つて遂に十年二十年の間、一向に出世しないので、つい卑屈に流れてしまふと云ふやうに、人材の點、教養の點、國民の人物經濟の上からも、是等の制度の存置は極めて不合理であります、官界宿弊の根源とまで言はれて居る此の高等文官試驗制度は、所謂公務員法の上に於てはどう云ふやうに取扱はれて居るかを承りたいのであります、特に私が指摘したいことは、過般「アメリカ」から日本の警察制度を指導、視察に來られた人達が、日本の警察制度に對して二つの缺點を指摘されて居るが、其の一つは出發が同一でない、其の一つは給與が惡いと云ふことであります、給與の點は後から又御伺ひ申しますけれども、要するに日本の官僚は出發點が同一でないのであります、其の結果は或る者は判任官に止り、或る者は所謂高等官三等に止り、他の者は高等官一等まで行くと云ふやうに、所謂高等文官試驗制度と云ふやうなことに依つて出發が同一でないと云ふことは、確かに官界に新鮮な氣風を注入することの妨害になつて居るのではないかと思ひまするし、尚ほ民主主義制度の下に地方の政治が出發されなくてはならぬ此の際に、斯うした十一箇月位で、轉々として、而も其の人が官吏最高の地位に就く資格を持つと云ふやうな高等文官試驗制度が、公務員法の上にはどう取扱はれて居るかと云ふことを御伺ひしたいのであります
それから先程も松永議員から質問されて居つたのでありまするが、所謂官僚の縄張り主義と申しませうか府縣「ブロック」或は各省割據主義、斯うしたことが長い間言はれて居るけれども、尚且つ此の宿弊は改まらないのであります、私は人に求めるよりも、此の際は機構の上に、制度の上に、組織の上に是等の通弊、宿弊打破を圖らなくてはならないと思ひます、先程松永議員から申上げて居りましたやうな、道州制を考へることも亦一つの案でありませう、或は又各種の人事を統一した人事廳を内閣に置いて、さうして人事は内閣に於て一手に握つてしまふと云ふやうなことも一つの制度であると考へるのでありますが、政府は之に對してどう考へて居られるかを承りたいのであります、私は重ねて申上げたい一つは、是が今日必要に迫られて居りまする復興を可なり妨げて居ると云ふ事實であります、木材を生産する縣に於ては例へだぶ付いて居ても、又或る所に於ては現實にそれが餘つて居るに拘らず、目に見えない行政區劃に依つて、それより外へは一石の木材も出にくいと云ふやうなことは、明かに戰後の復興を妨げて居るのみならず、或は又薪炭等に於きましても、或る縣に於ては比較的潤澤であるのに拘らず、或る縣に於ては一家に對して二俵の配給しかなかつたと云ふやうな、極めて不均衡な状態にあることも、今申上げました縄張主義の宿弊であります、此の際何とかして此の宿弊を斷ち切る制度、機構を考へなくてはならぬと思ふのでありまするが、之に付て更に内相の御意見を伺ひたいと思ひます
それから官公吏制度に付て最後に伺ひたいことは、今後官吏の非違を矯正する方法はどうするのですか、伺ふ所に依リますると、行政裁判所は廢止されると云ふことでありまするが、官吏の非違はどう云ふ風にして今後矯正されて行くかと云ふ點も爰に御伺ひして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=32
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033・大村清一
○大村國務大臣 第一點として御尋ねになりました、前提の御話でありますが、政府は此の度「ポツダム」宣言の精神に從ひまして新憲法の改正を致すことになつたのであります、之に依りまして我が國の政治が大いに民主化されるものと、大いなる期待を政府も國民も持つて居ると信ずるのであります、併し我が國政治の全體の民主化と云ふことを考へますと、單に憲法の改正のみでは不十分でありまして、之と相俟ちまして地方制度にも大幅な民主主義化を策することが、日本民主政治の發展の爲に極めて緊切なことと考へます、實は私共と致しましては憲法改正が成立しました後、改正憲法に準據致しまして他の諸制度も段々改正さるることでありますから、其の一環として地方制度を改正すると云ふことの方が、扱ひとしては便利でありますけれども、特に此のやうな便利な道行きを抛擲致しまして、憲法の改正と同時に地方制度の改正を御審議願ふことに取計ひましたことも、一に我が國政治の民主化に寄與致したい、又其のことが甚だ必要であると云ふ見解から致したのでありまして、固より民主政治と申しましても、是はそれぞれの國の國情に應じまして特異なものがあることは當然であります、今囘の地方制度の改正を致しますに付きましても、終戰後の我が國情も深く省察致しまして、其の點に、相當の注意を拂つて居ることは勿論であります、併しそれが爲に決して民主化に出し惜みをして居ると云ふやうな氣持は毛頭ないのであります、世論に於きましても今囘の地方制度改正案は、地方政治民主化に對して一歩、二歩を進めて居ると云ふよりも、寧ろ五六歩を進めて居ると云ふやうな批判も見えて居るのでありまするが、私共其の批判に近い氣持を以ちまして、思ひ切つた民主化を策した積りであります、唯之を條文に表はしますに付きましては、全文改正、又一部改正兩者が考へられるのでありますが、色々の都合から致しまして、便宜上一部改正の形を執つたに過ぎないのでありまして、此の改正の根本の趣旨は、單に一部を一寸直すと云ふ氣持でありませぬで、根本的に檢討を遂げまして、必要なる民主化の諸改正は、此の際一擧に致すと云ふ方針で改正に著手したのであります、此の點に於きましては、一部改正と云ふのは名實伴はないやうな氣持も多分に持つて居る次第であります、次に解職請求權を引例せられまして、官僚の專制を策して居るものであると云ふやうな趣旨の御尋ねがあつたのでありますが、其のやうな意圖は毛頭ないことを明かに言明致して置きたいと思ふのであります、有權者の五分の一から解職請求がありました場合に於きまして、此のやうな新しい權利を附與しますに付きましては、其の運用に付きまして誤りなきを期さなければならぬ、度々申上げました如く此の解職請求が成立しました場合に於きましては、選擧民の一般投票に依つて決すると云ふやうなことも、確かに民主的なる一つの良い方法だと思はれるのでありますが、餘りに度々投票を行ひますことも、未だ之に慣れて居ない一般選擧民に對しまして、適正なることを期し得るや否や疑なきを得ないのであります、それに代るべき方法と致しましては、監督官廳に於きまして公正なる判斷に依つて之を決すると云ふことに致した方が、寧ろ現段階に於ては適切なりと信じて此のやうに致した次第であります、固より此の判斷を致しますに付きましては、解職請求の理由も十分に考究すべきであります、又解職請求を受けた者の辯明も十分に斟酌する、或は解職請求のありました特殊團體に付きましての輿論、又世間一般の公論と云ふやうなことも、凡ゆる方面から考慮致しまして、そこに判斷の誤りなきを期して行く方針でありまして、此のやうな制度を設けましたが爲に、官僚の專制を致すと云ふ樣な趣旨では毛頭ないのであります、隨て其のやうな運用でなく、民主的なる運用が必ず行はるべきものでもありまするし、又政府と致しましても、其の方針で之を處理して行く覺悟であります
それから次に官公吏をなぜ區別するかと云ふ點に付きましては、是は先程來申上げましたやうに、國の仕事をやつて行くのを官吏と云ひ、公共團體の仕事をやつて行くのを公吏と云ふ、或は其の關係で俸給の支給場所も、官吏は國から出す、公吏は公共團體から出すと云ふやうな差別は起るでありませうが、官公吏の本質に至りましては、何れも國民又は團體民の公僕として、民主主義的なる適正なる公務を遂行する責任を附加されて居ることであります、其の點から見ますならば官公吏何等差別はないのでありまして、是は御質問の際に御述べになりました所と全く御同感であります、隨て將來立案さるべき公務員法に於きましても、其の根本精神の上に立脚して、新しき公務員法が打立てられるべく規定されるものと思ふのであります、而して此の公務員法の内容に付きましては、未だ政府に於きまして具體的なる成案を持つて居る譯ではございませぬ、臨時法制調査會に於きましては、公務員法の立案に付きまして如何になすべきかと云ふことに付きましての、取扱ふ内容に付き色々調査會に於て、自主的に調査に著手されて居る次第であります、尚ほ公務員法立案の際に於きまして高等文官制度をどうするかと云ふ點に付ての御尋ねでございますが、御述べになりました如く、我が國の高等文官制度に付きましては大いに批判をし、又反省を要する點が多々あつたと思ふのであります、又それに基きまして逐次官吏制度に於きましても改革が加へられまして、上位の地位を占める官吏は高等文官合格者に限ると云ふやうな點は、段々と障壁を撤廢されて來て居る次第であります、併し新しい時代に即する官吏の任用をするに當りましては、高等文官の試驗制度に付ては、相當檢討を加へて改正をしなければならぬと思ひますが、併し公正なる試驗制度を設けまして、其の合格者の中からも公務員を任用すると云ふやうな行き方は、是はやはり繼續をする必要があるやうに政府は考へて居る次第であります
次に所謂縄張り問題に付ての御尋ねがあつたのでありますが、所謂縄張り、府縣「ブロック」と云ふ言葉に付きましては、共通したものも固よりございますが、又違つた所もあると思ふのであります、官廳の所謂「セクショナリズム」と云ふものは、一つは官吏制度の改革、又官吏の反省と云ふやうなことに依りまして、固より是は拂拭しなければならぬ點であると思ひます、尚ほ今日世間で謂はれて居ります所の府縣「ブロック」乃至は地方割據と云ふ問題は、必ずしも「セクショナリズム」と同義語ではないと思ふのであります、此の問題に付きましては他の質問者に對しましても申上げました如く、現下の我が國の國情から此のやうな形勢を馴致するやうなことになつて居りまして、洵に遺憾なことでありまするが、事實已むを得ない面もあると思ふのであります、是は食糧問題及び其の他の一般經濟問題の解決緩和に依りまして、餘程改善をされるものと思ふのであります、而して今後我が國が戰後段段と立直つて參りましたならば、所謂中央集權を捨てまして地方分權に進みましても、其の地方團體の間に於きまして、所謂割據制を布かなくても成立つて行くと云ふ時が來ることを期待も致し、又さう云ふ風に努力をすべきものと思ふのであります、現在ございます所の府縣の行政を解體致しまして、府縣を純然たる公共團體に致しまして、府縣の持つて居ります性格の大半を占めて居ります所の、中央政府の地方機關としての行政機能を捉へまして、數縣のものを集めて、そこに道州制の如きものを考案すると云ふことも、是も確かに一つの著想ではございますが、併し我が國の如き國土の狹い所に於きまして、其のやうな復雜な行政機構を打樹てることが、果して宜しいかどうかと云ふ點に付ては、多大の疑問がある所であります、又假に其のやうなことを考究致しまして、理論上道州制を打樹てることが宜しいと云ふ結論に達したと致しましても、是等の新制度を實施致しまして、其の行政上の實效を收めると云ふ間に於きましては、國民の側にも、又道州制を運行致して參ります職員の側に於きましても、それに習熟せしめ、訓練を要すると云ふやうな點で、十全の效果を收めます爲には少からざる日子を要することは、我が國の行政機構の曾ての諸改革に依つて、十分經驗濟みのことでもございます、其のやうな理想の制度を、今日の如き緊迫したる我が國の現状に於て直ちに實施することは、少くとも其の時期でないと云ふことも、是は特に茲に申上げるまでもないことであらうと思ふのであります、其のやうな次第で現在の府縣廳を其の儘存續致しまして、其の府縣廳の持つて居ります所の自治行政の部面、官治行政の部面、共に之を民主化すると云ふ方法を採つたことが、現下の情勢から最も適切であると云ふやうに考へて居る次第であります
それから官吏又は官廳が不法越權の行爲を致す、乃至は不當の處分をすると云ふ場合に於ては、行政訴訟の途が現在は開かれて居るのでありますが、新憲法に於きましては行政裁判所と云ふ制度は認めないことになりまして、是は所謂民事裁判所と申しますか、司法裁判所の方に移管をすると云ふ趣旨でありますので、新憲法實施の曉に於きましては、是等の行政救濟は民事裁判所、司法裁判所の管轄に移りまして、從來通り官吏乃至官廳の非違は、糺明矯正される機會をなくするやうな譯ではないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=33
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034・細田綱吉
○細田(綱)委員 一定數以上の選擧人が、府縣知事或は府縣會議員の解職請求權を持つ、其の一定數以上と云ふものの率を増すと云ふことの當不當に付て、只今内務大臣から御説明がありました、其の御趣旨は官僚專制の意圖はない、官僚に於て公正な判斷をした方が、より適切であると云ふ御趣旨の御答辯でありました、併し官僚の所謂公正なる判斷は、やはり官僚的規模に於ける公正なる判斷であつて、時には國民の側から見ますると、極めて公正妥當ならざる場合も我々は能く見る所であります、斯樣な問題がさう云ふ風に官僚には考へられるのかと、國民の側から見ると不思議なやうなことが、官僚では所謂公正妥當なりと考へる場合がよくあります、内務大臣は地方自治團體の中で職を奉ぜられた貴い御經驗もあるので、さうしたことは敢て私が詭辯を弄するのでないことは能く御分りであらうと思ひます、官僚が所謂公正なる判斷をするよりも、寧ろさうした判斷を地方民大衆へ與へたらどうだらうか、五分の一以上の解職請求する人があるならば、四分の三か或は五分の四が解職せざることを適當とする一つの反對投票の機會を、本制度の上に於て與へるべきではないでせうか、四分の三の意見を聽かず、五分の四の意見を聽かずして、五分の一の輿論、希望を採つて、官僚が公正なる判斷をするよりも、其の方がより適切な民意を輿論に聽く制度ではあるまいか、獨り内務大臣だけに任せるよりも、斯う云ふ制度を採るべきではないかと云ふことを、私は更に御伺ひしたいのであります
それから官吏制度の改革に付ては、其の後段々矯正されて、さうした特權的な障壁は取つて居ると云ふ御説明でありまするが、成程それは文字の上ではさう云ふことが言へるかも知れない、私は此の際特に文書を以て其の然らざる資料の一つを請求して置きます、現在の各都道府縣に於ける知事竝に各部長の資格を持つて居る者と持つて居ない者と、又それが官立大學出身なりや否やの點に付て、資料の御提出を御願ひしたいのであります、私は其の資料を御覽になるならば、今内務大臣がさうした障壁は取つて居ると云ふやうな御答辯は、それは寧ろ文字の上ではさうも解釋出來ると云ふこと以外に、何等の意味を持たないと考へるのであります、成程文字の上では取つて居るけれども、依然として一つの高文制度の上に、或は又官立大學萬能の上に、官界制度が打樹てられて居ると云ふことは否むべからざる事實であります、私は寧ろ斯う云ふものを存置するよりも、「アメリカ」から來た日本の警察制度の視察團が率直に指摘された如く、支那の中世紀的な所謂秀才試驗に該當するやうな高文制度を撤廢して、同一の線に立つて官吏を任命の初めから出發させるならば、眞に有能なる官吏がすくすくと伸びて、偶偶官立大學を出たことに依つて、偶偶高等文官試驗を通つたことに依つて、それが唯一の出世道であると云ふやうな宿弊は取去られるのではないかと考へるのであります、私が今御請求申上げた資料を見るまでもなく、現實は依然として官立大學閥、高文試驗閥に依つて獨占されて居る官界であることは、内務大臣が一番能く知つて居られると思ひます、高等文官試驗制度に付て、所謂公正なる試驗制度の繼續と云ふことはどう云ふ御意味であるか、今一度具體的に伺ひたいのであります、所謂官僚の「セクショナリズム」に付て、偶偶松永議員が言はれた道州制度も亦一つの考へであらうと云ふことを申上げただけで、私自身は實は道州制に付てはまだ深く考へて居りませぬ、只今同僚議員の質疑して居りました其の考へも一つの案ではないかと云ふことを申上げただけでありまするが、併し少くとも只今はさうした府縣的な繩張主義は取去られて居ると云ふやうなことを内相は御説明になりましたが、私は寧ろ逆ぢやないかとすら思ひます、私は指摘は致しませぬが、或る縣の如きは此の食糧飢饉の時に、縣の一つの試みとして干鰮──御承知のやうに所謂鰮を干したのを肥料にやるが、それは米と引替であると云ふ方法を執つた、所が驚く勿れ一郡四千俵出たと傳へられて居ます、所が其の縣では米がないと云ふことで豫定だけ供出して居ないので知事はびつくりしてしまつて、一郡四千俵も出てしまつては、是ぢや恰好が付かないと云ふことで、早速干鰮の配給を停止したと云ふやうな事實も言ひ傳へられておるのであります、是は敢て私は知事を惡く言ふ譯ではありませぬ、此の機構に於ては何と言つても自分の縣だけは間違ひなきを欲する熱心の餘りが、遂にさうしたやうな自分の縣には必要以上の米があつても、尚且つ外に出したくないと云ふ氣持になると云ふことは、制度の罪であります、私は之に對して敢て答辯を求めようとはしませぬが、少くとも大分其の弊は直つて居りますと云ふやうな樂觀的な御議論でなく、今少し此の問題に付て御檢討を進められたいと思ひます、尚ほ各省割據主義の問題は御答辯にはありませぬでしたが、敢て其の御答辯を求める譯ではありませぬ、併し私自身の個人の意見から申上げまするならば、各省が人事の權を持つて居るならば、何と言つても其の役人が其の省本位になることは人情の必然であります、内閣に人事廳を置いて、總て政府の人事を集中すると云ふ制度を執るならば、其の官吏の考へは可なり違つて行くのではないかと云ふことを考へるのであります、所謂官僚の「セクショナリズム」の一つの方法、單なる一つの方法であるが、私は内閣に人事廳の設置と云ふやうなことは必要であると云ふ風に考へるのであります、官吏の非違の矯正方法は司法裁判所に讓ると云ふことを伺つたのでありまするが、是は私の御伺ひの仕方が或は下手であつたのでありまするが、從來の所謂行政裁判所に、其の救濟を求められる官吏の不法不當な處分と云ふのは、極めて列擧主義で限られて居ました、今後は所謂列擧主義を執られず、もつと廣汎に、凡ゆる行政處分に對する不當不法の救濟が求められるのか、其の點を今一度御尋ねして次の質問に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=34
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035・大村清一
○大村國務大臣 重ねての御尋ねの第一點でありますが、是は所謂人民投票に依つて問題を決することは、我が國の現状に於ては考慮を要するので、之に代るものとして監督官廳の裁定と云ふことに致したと云ふことで、御答辯を申上げました所で御諒承を願ひたいと思ひます、それから内務省の知事、部長に對する調査の御請求でありますが、是は調査を致しまして後で御覽に入れます、それから行政救濟の新立法をするに際しましては、民主主義の線に沿ひまして現在の如く制限されたるものを大幅に撤廢致しまして、廣く官吏官廳の違法、不當處分に付て、行政救濟の方途を求むることになると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=35
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036・細田綱吉
○細田(綱)委員 それから次に御伺ひしたいのは是は他の委員諸氏から或は質問されたかも知れませぬが、尚ほ私も特に伺ひたいのであります、率直に申上げますが、人事の任免權を持たない知事が、一人だけ官僚陣の中へ自分も官吏となつて入つて仕事が出來るか、之に對して内相の御考へをもう一度伺ひたいのであります、それから地方制度の改革と相俟つて、最も我々の重大な關心が拂はれることは警察制度であります、地方制度の改正と共に、警察制度の改正が併行されない限りは、日本の民主主義は恐らく畫に描いた餅に終るであらうと一般は言つて居りますし、私も亦爾く確信する者であります、最近の新聞紙に依りますると警察大學を拵へると云ふことが出て居ります、事實でありますか、御伺ひしたいのであります、それから先程檢束、勾留の數に付て御調べを願つて置きましたが、御調べの結果が出ましたならば御發表を願ひたいと存じます、それから違警罪即決例を政府は存置する考で居るのか、或は又適當に改正するのか、若し改正されるならばどう云ふ風に改正されるかに付て御伺ひ致したいのであります、それから官公吏に對する待遇改善は此の儘で宜いのかどうかであります、今申上げました警察官の民主化と云ふことも、畢竟するに待遇の問題も與つて力があると思ひます、極めて安い給料、極めて教養の低い人達にいきなり厖大な力を與へるので、遂に惡い意味に於ける官僚意識の權化となると云ふやうな弊に陷り易くなります、此の官公吏の待遇に付てはどう云ふ風に御考へになつて居るかと云ふことも御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=36
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037・大村清一
○大村國務大臣 公選知事が官吏の資格を持ちまして現在の府縣廳に入つて參りまして、さうして府縣としての自治團體、及び國の出先としての行政官廳として、部下の吏僚を率ヰて仕事をして行くと云ふ場合に於きまして、知事が公共團體の長として任命致します所の府縣の吏員はもう問題はありませぬ、併し其の部下の官吏に付きましての問題は、度々御説明申上げました如く、今日の制度と致しましては、直接任免權其のものを持つことは出來ない仕組みになつて居ります、そこで新たに部下の官吏の進退の具状權を附與すると云ふことに致したのであります、而して其の府縣知事は府縣民の多數の要望を擔つて參りました極めて有力なる知事でありまして、其の知事が部下の進退、即ち任用及び黜陟に對する具状權を持つのでありますから、其の運用に依りまして部下の官吏を十分に把握し得ると信じて居る次第であります、そこに知事は府縣廳に入りましても浮いた存在になると云ふ虞は毛頭ないと思ふのであります
次に警察制度の改正は、度々御説明申上げました如く、我が國政治の民主化の上に於きまして極めて重要なことでありますので、私共と致しましては此の地方制度の改革に追掛けまして、思切つた改革を致したと云ふやうに考へて居ります、尚ほまだそれに付きまして具體的なる確定案は持つて居りませぬが、廣く民意に聽いて良い案を得たいと云ふやうな趣旨から致しまして、近く當委員會に改革草案とも言ふべきものを御覽に入れ、又當委員會を通じて國民の聲も聽いて見たいと云ふやうに考へて居る次第であります、それから官吏の待遇に付きましては、最近に於ける物價の騰勢から考へまして、何とか是は政府としても措置をしなければならぬと云ふことに相成つて居ります、又私共と致しましては、警察官の待遇、又市町村吏員の待遇と云ふやうな點に於きましては、一般に比較致しまして一層考慮しなければならぬ點があるやうに考へて居るのであります、政府も屡次の増額は致して參りましたが、最近に於きまして更に適當なる増額を致すと云ふことに相成りまして、今關係方面とも打合はせ中でありまして、近く相當程度の増額が實現するものと豫想致して居る次第であります、他の點に付きましては政府委員より御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=37
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038・谷川昇
○谷川政府委員 警察の教養訓練機關に付ての御尋ねがありましたから御答へ申上げます、現在の警察官の素質の向上、人としての教養なり、或は社會の公僕としての信念の獲得と云ふやうな點に付きましても、根本的に之に對して對策を得たいと思ひまして、色々研究を進めて居るやうな次第であります、就きましては、色々なことも考へて居るのでありますが、一つの施策と致しまして、從來よりありました警察官、消防官吏の教養、教育機關を整理致したいと考へて居るのであります、大體の構想は、今までありました各府縣の警察官の養成所をもう少し高度に擴充を致し、内容の改善を致したいと思つて居るのであります、又全國各地方「ブロック」毎に專門學校程度の警察官養成機關を設けたいと考へて居るのであります、先づ初任者は各府縣毎の警官講習所に於て、相當期間の訓練教養を務めしめまして、是が相當期間公務に服しまして、相當の經驗も積み、更に上級に昇格すると云ふ場合には、之を各地方「ブロック」毎に作つて居ります專門學校程度の教養訓練機關で再教育致しまして、之に「パス」した者を次の段階に昇格採用致したいと考へて居るのであります、更に中央に中央警察大學校とも申すべき、より以上高度の教育機關を設けまして、此處で更に上級の地位に昇格せしめるべき最後の仕上を致したいと考へて居るやうな次第でありまして、大體案も整ひまして、豫算の點に付きましても大藏當局とも話合が段々と付きましたので、近く議會に提案致しまして御審議御協贊を得たいと考へて居ります、尚ほ午前中に御要求になりました點に付きましては、今計算を致して居りますので、此の次までには書き物にして御手渡しを致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=38
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039・中島守利
○中島委員長 細田君に一寸御忠告を申したいと思ふのであります、委員會は諸君の御協力に依らなければ議事の整理は出來ないのであります、前囘に於きまして、質疑通告者がまだ十四五人殘つて居ります、之を進行しますのには、時間を大體一時間と制限致しまして、大體御諮りして御承認を得た積りであります、細田君の質疑はもう一時間以上になつて居りますから、質疑中でありますから之を御止めする譯ぢやありませぬが、どうか成べく簡單に願ひまして、成べく御協力願ふやうにしたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=39
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040・細田綱吉
○細田(綱)委員 理事會に於てさう云ふ御取極があつたと云ふことは實は私初めて聞くことであります、特に此の問題は憲法と對比する重大な問題であると思ひます、憲法が連日、本會議のある日も尚且つ開いて、熱心にやつて居る態度には私は敬意を表するのであります、勿論理事會に於て御取極のことですから反對ではありませぬが、委員長の方で適當に「コントロール」せられて、憲法と對比する此の重大案件に付ては、各委員に對して十分な審議を盡すことの出來るやう一つ御願ひ致して置きます
只今内務大臣から御答辯がありました知事の官吏問題、もう是は意見に亙りますから、更に御質問を申上げようと云ふ譯ではないが、明かに是は過去の官僚支配を將來に持續しようと云ふ官僚の意圖もあるのではないかと私は憂へざるを得ないのであります知事が浮いた存在にならぬと云ふことは事實に反して行つて詭辯に近くなるのではありませんでせうか、永い間、同じ枠と申しませうか、同一職務系統の中にあつても、警察と檢事の場合、檢事の命令に警察が思ふ通りに動かぬことも其例のあつたことは、人事權を握つて居ないからであります、或は又農林省、文部省等が、地方官廳に對して内務省程に睨みが利かぬと云ふことも、亦明かに人事の權を握らぬからであると云ふことは、是はもう定説であります、それをしも尚且つ押通して、さう云ふ浮いた存在にならぬと云ふやうなことは、官僚支配を地方制度を通じて温存しようと云ふ一つの意圖であると云ふことを、遺憾ながら言はれてもやむを得ないのではないかと思ふのであります、それから、警察制度の點に付て尚ほ御伺ひしたいのは、違警罪即決例の改正或は廢止を御計畫になつて居るかと云ふ點を御伺ひしたいのであります、それから中央に警察大學と云ふやうなものを一つ置くと云ふ御豫定ださうでありまするが、警察官と言つても、私は別に特別な教養を特別な教育機關でしなくてはならぬと云ふふうには考へられません、特に所謂官能搜査方法よりも、科學的搜査方法に移ると言はれて居る現警察官の搜査方法に於て、特別な一つの勘の修養をすることも必要ではありませぬが、特に日本の官立法科大學が、隱然たる官僚養成大學であり、特に又官僚の中心とも言はれる警察官に官立中央警察大學を置いたら、私は手の著けられない官僚思想の培養地が出來るのぢやないかと憂へられます、日本の民主化を圖らなくてはならぬ時に、さう云ふことに費用を國家が投ぜられるよりか、寧ろ警察講座と云ふやうなものを既設官公私立大學に持たして、それに國家が補助金を斯うした方面に交付して、さうした特別の機關を作らない方が妥當なのではなからうか、私は斯く考へるのでありますが、是も御意見を更に伺はして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=40
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041・大村清一
○大村國務大臣 違警罪即決例を改正する意思があるかと云ふ御尋ねでありますが、違警罪即決例は餘程舊い時代の立法でありまして、今日のやうな警察民主化の時代に於きましては、新しい見地から之を再檢討致しまして、時代に沿うやうにする必要があらうと思ひます、是は近い將來に於きまして適當な改正をしたいと思ひます、次に警察大學とも云ふべきものを今政府で考へて居ります點に付きましての、御意見を混へての御尋ねでございます、現在凡そ十萬の警察官を擁して居りますが、是等の警察官が實務に就きまして、又段々彼等の教養と訓練とを進めて行くと云ふことは、是は非常に必要なることと思ひます、別に從來の如き大學閥を作ると云ふことにはなるまいと思ひます、既に警察官になつて居ります者の再教育でありますから、是は警察を改善して行く上に於きまして極めて必要なことと考へますので、提案を致しました場合に於きましては、どうぞ御贊成を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=41
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042・細田綱吉
○細田(綱)委員 委員長の御注意もありまするので、尚ほ數點一時に御伺ひしたいと思ひます、地方自治團體に對する所謂指導方法と云ふのは、從來の儘ではもう行詰つて居る、それであつてはならぬと思ひます、指導方法に付て從來執つて來た態度が是で宜いでせうか、假にそれであつてはならぬと御認めになるならば、どう云ふ方法と方向に向つて之を執つて行かれるかと云ふことを伺ひます、例へて申しますならば、約一箇月前でありましたか、或は群馬縣であつたか栃木縣であつたか、農業會の會計檢査をした所が、殆どと云ふか、一つ殘らず、帳簿の備はつて居るのがなかつたと新聞に報道されております、恐らく新聞紙に報道せられた其の縣だけではない、全國の縣がさうであらうと思ひます、或は又私が知つて居る範圍に於きましても、尚且つ十九年度の麥がまだ其の儘死藏されて居る處がある、一粒の麥、米が必要である此の時に、尚且つ麥がまだ死藏されて居ると云ふやうなことは、結局官僚が高所に居つて來るを待つと云ふ、一つの指導的態度が斯う云ふことをさせて居ると思ひます、もつと一歩出て、さうして責任的な行政措置を講ずる必要があります、印判の行列に依つて責任の分割をすると云ふことでなく、一つ一つに責任行政を執る必要があると考へます、或は又食糧問題に付て、昨年なんかの例を見れば耕作農民がいつの時代でも既に持米がないと言はれて居る三月、四月になつて供米の割當をして、夫れが、思ふ通り行かぬと云ふのは是は當り前であります、而も今年になつて尚且つ麥も芋もまだ割當がない處があると云ふことの如きは、凡そ「スピード」──速力、を全然考へに入れない長い間の官僚政治と、官僚指導方法の誤りであると私は考へて居るのでありますが、地方自治團體に對する官僚、或は政府の指導方法は過去の通りで宜いのかどうか、改正されるとするならば、どの方向に如何なる方法を執つて進まれるのか御伺ひしたいのであります
今一つ、部落會と町内會と云ふやうな所謂最末端の自治體に對する指導は是で宜いのでせうか、滑稽な話の例としてよく我々の口端に上ることでありますが、嘗て東京都制が布かれた時に、區役所まで官僚が來て區長になつてしまふ、課長にもなつてしまふ、それでは一體東京都の都民は何處に自治を求めるのであるかと言つた所が、いやそれは町内會を發達せしめて、其處に東京都民の自治を認めますと云ふやうなことを、明かに議會で答辯されて居たと記憶するのですが、斯く重要視されて居る町内會或は部落會は、殆ど何等の一定の基準すら與へられて居ない、隨て、先程例を農業會に執つた如く、會計方法などに至つては出鱈目のところが多いと聞いて居ます、又は其の選擧方法でも、或る所に行くと單記、他に行くと連記、或る所に行くと一定の期間を置いて告示する、或る所に行くと、幹部連が朝やつて來て今夜までに此の投票用紙に役員を書いて下さい、又役員が投票用紙を頂戴に上りますからと云ふやうな、殆ど無茶苦茶な統一のない經營がなされて居ります、是等最末端の自治體たる所謂部落會、町内會を此の儘置いて宜いのかどうかと云ふことに付て御所見を伺ひたいのであります
其の次に選擧區の問題に付て御伺ひ致します、來るべき縣會議員選擧に於ける選擧區の點では、同僚議員から質疑がなされて居りますので其の點は省略致しまして、衆議院議員選擧の際に於ける選擧區の問題を御伺ひ致します、傳へられて居る所に依りますと、政府は中選擧區制度に復活させると云ふやうな研究を進められて居ると云ふことを伺うのであります、誰が考へましても理想的な選擧方法は大選擧區制を取つた比例代表制であることは、今日本の殆ど異論なき定説であると考へて居るのでありまするが、果して政府は中選擧區制復元の研究を進められて居るかどうかと云ふことを御伺ひして置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=42
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043・大村清一
○大村國務大臣 内務大臣の監督に付きまして御尋ねがあつたのでありまするが、是は二つに分けて御答へを申上げたいと思ひます
内務大臣の監督下にありまする官吏に付きましては、所謂國民の公僕として其の任務を十全に盡すことに付きましては、出來るだけの注意と督勵を致して居ります、又其の點に於きまして遺憾の者がありました場合に於きましては、信賞必罰の原則に依りまして、相當思ひ切つた措置を致し、官紀の振肅に努めて居る次第であります、此の點に於きましては相當の努力を致して居る積りでありますが、何分多數のことでありますから、或はそこに行届かない點もあらうと思ひます、將來に於きましても、此の方針に依りまして、十分官吏としての職責を果すやうに努めさせる方針であります、尚ほ内務大臣の監督下には地方公共團體があると云ふことでありまするが、此の地方公共團體に對する監督に付きましては、今後餘程緩急宜しきを制したる方針と致しまして、地方公共團體は大いに民主化され、自主化されることになつて居りますので、各地方團體の自主權の作用に依りまして、自律性に依りまして、獨り歩きを是非して戴きたい、私共と致しましては必要なる、指導なり、勸告なり、注意は致したいと思ひまするが、ここに官權を振廻はしまして、監督權を發動させるやうなことは極力避けて、地方公共團體の自主的發展を庶幾したい方針であります、固より法令に違反すると云ふやうな非違のあります場合に於きましては、斷乎たる措置を執らなければなりませぬが、然らざる限りに於きましては、出來るだけ監督權を振廻はさないと云ふことで進んで行きたい積りで居ります
次に町内會、部落會に付きましては、現行の地方制度に於きましては極めて簡單なることのみを規定して居りまして、一に町内會部落會の自然的發達に俟つと云ふ建前を取つて居ります、そして多くの町内會、部落會に於きましては、望ましい發展を致して居ると思ふのであります、又是が民生の上に貢獻して居る點も多大であると思ふのであります、又中には思はしからぬものも介在は致して居りまするが、是等も町内會及び部落會を構成して居りまする人々の自肅と努力に俟つて、健全なる發達を庶幾したいと思ふのであります、餘り干渉がましくない限度に於きまして、適切な忠告なり指導は關係當局に於て努める積りで居りますが、是亦先に申上げました地方公共團體に望む監督と同じやうな氣持で進んで行きたいと考へて居る次第であります
それから内務省に於きましては衆議院議員の選擧に關することを所管致して居りまするので、新しい選擧法に依りまして最近總選擧が行はれたことであります、此の總選擧に於きましては御話の如く初めて大選擧區に復歸した選擧であります、又連記制が新たに採用されたと云ふやうな新しい試みも入つて居りますので、選擧の結果とも睨み合せまして、色々の研究調査は致して居ります、併し只今内務省と致しまして、中選擧區を採用しようと云ふやうな意圖を持ちましての調査はして居りませぬ、又調査の結果中選擧區を取るべしと云ふやうな結論にも達して居る譯ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=43
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044・細田綱吉
○細田(綱)委員 末端の自治體に對して官權を振廻はすと云ふことは勿論いけないことでありますが、一つの基準と申しますか、選擧の方法は斯うあれと云ふふうに基準を與へることは、末端自治體が統一ある發達をする上に於て必要ぢやないかと思ひます、而もそれが國政と繋がつた末端組織として發達する爲には、特に必要ではないかと考へるのであります、唯法令違反或は非違があつたら斷乎としてやると言つても、例へて申しますると、部落會、町内會には其の法令すらないのであるから、さう云ふものに對しては一つの基準を與へる必要がありはしないかと思ふのですが、さう云ふ點に付てもう一度伺はして戴きたいと思ひます、尚ほ上級機關の下級組織に對する指導方法は、遺憾ながら内務大臣の御考へは更に一歩を出て居ないのではないでせうか、適當に改善されると云ふやうな御考へであるならば、是は惡口を申上げて洵に恐縮でありますが、もう少し官吏が自分で草鞋を履いて責任を取ると云ふ方向に是非御考へを願ひたい、是は私の御願ひであります
最後に最近今度の新憲法の趣旨に則りまして、市町村に於て市町村長の直接選擧を行つて居る市町村がかなりあります、又現に行はれつつあります、是が憲法が施行された後に、今年末か來年初めか知りませぬが、全國一齊に行はれる此の次の市町村選擧に際しては、斯う云ふ方法で直接選擧を、既に完了して居る市町村はどう云ふ風に扱はれるのか御伺ひ致したいと思ひます
それから官吏は國民の公僕だと言はれて居るのでありますが、過去に於ける天皇の持つて居つた所謂任免大權、是はどうなるでせうか、新憲法の認證大權とどう違ふでせうか、私は天皇が官吏を任命すると云ふことと、認證すると云ふこととは違ひが無くなつて行くのではないかと云ふことを惧れますさうなると結局は天皇政治、天皇が政治の中心になつてしまふ、國家の行政を實際にやつて居る官吏が天皇に依つて任命されるならば、政治と云ふものは天皇中心たらざるを得なくなります、過去に於て言はれた所謂天皇の任免大權と、これから官吏の任命に付て行はれる天皇の認證大權とはどう違ふかと云ふことを、最後に御説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=44
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045・大村清一
○大村國務大臣 内務省管下の官吏が非常に職務を果して居らぬと云ふやうな御意見がありましたが、それはどう云ふ所を御指摘になりますか、はつきり御指摘を願ひたいと思ひます、私の今まで信じて居ります所では、大體内務省系官吏に於きましては、大多數の者は相當忠實に其の職責を果して居ると確信致して居るのであります、又内務省管下の公共團體に於きまして、例へば市町村に於けるが如きもので、帳簿の記入を怠つて居ると云ふやうなことは、殆ど絶無であると思ひます、何か内務省關係以外の所にさう云ふ事例があるのでありましたならば、其の所管の方に御話を願ひたいと思ひます、それから事實上公選をやつて、市長なり、町村長が出來て居る場合に、此の改正地方制度が成立した曉に、それがどうなるかと云ふ御尋ねでありますが、只今やつて居ります公選と云ふものは事實上の公選でありまして、法律上のものではないのでありますから、法律上のものと致しましては、事實上の公選をやりましたものを又取上げまして、市町村會に於て、公式な選擧に依つて決定をして居るのであります、其の後の方の手續に依つて有效なる町村長が出來て居ることでありますから、法律の適用に於きましては後の方で取扱ひまして、事實上の公選と云ふものは、法律上認めない取扱ひであります、隨て事實上の公選に依つて出ました町村長も、新制度の施行に依りまして、新しく公選をやり直すと云ふことに御承知願ひたいのであります、それから次に官吏を任命する場合の任免權と認證權の問題でありますが、是は憲法論になることでありまして、茲で私が地方制度の所で御答へを致しますことは、少し其の場合でないかとも思ふのでありますが、併し政府の見解と致しましては、天皇が之を任命すると云ふことは效力の發生の力が天皇にある譯でありますが、認證權は官吏にすると云ふ事實の存在を公に確認する行爲でありまして、唯效力の發生の要件たるに過ぎないのであります、尚又實際の扱ひと致しましては、現在内閣總理大臣の責任に於きまして、此の任命を仰いで居りますと云ふことでありますので、事實問題と致しましては、憲法改正後に於きましては、一層はつきりして參りまするが、總理大臣の責任に於て任命をする、其の任命を天皇が認證せられると云ふことに相成ると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=45
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046・細田綱吉
○細田(綱)委員 長い間時間を頂戴しまして、私の質疑は是で打切ります、唯只今内務大臣から、私の何か内務省官僚が帳簿をつけて居なかつたり、職務を懈怠したりと云ふやうな誤解された御答辯がありました、私が申上げた言葉の中に、さう云ふことは言つて居ませぬ、唯、偶偶新聞紙で見た農業會が帳簿をつけなかつたと云ふ例を言つたのであります、申上げたいのは、部落會、町内會等是等の末端組織を改善される方法が、まだ内務當局は講ぜられて居ないと云ふことを私は考へられると云ふ趣旨で質問して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=46
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047・中島守利
○中島委員長 次は鈴木君──居らぬやうですな、鈴木委員は通告の順位を抛棄したものと思ひます、次は大塚君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=47
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048・大塚甚之助
○大塚委員 私が御伺ひしたいことは數點ありますが、大分皆さんが御質問した點に重複する點がありますので、之に付ては大體私は簡單に御伺ひして見たいと思ひます、先づ第一に質疑の前に、是は内務大臣の心構とでも申しませうか、兎角當局になりますと、提案したものに對してどうも一つの執著とでも申しませうか、或は各質問の上に於て多少其の方が宜いとか、或は斯うしても所謂行先は同じものであると云ふ場合に於きましても、自分等が提案したものは何處までも固執して突つ張らうと云ふやうな氣持のあると云ふことは、是はもう當局の一つの弊であります、私も其の經驗があるのでありますが、斯う云ふことは要するに俗に畦を廻つても田を廻つても、落付く先は同じであると云ふやうな場合には、所謂其の意見を尊重して、お互に圓滿にものを解決する、さう云ふ點に付て固執しないと云ふ方が却つて宜くはないか、私は常に斯う云ふことを申して居ります、當局と云ふものは、自分が其の職分である關係上、年中其の點に付てのみ研究をし、或は總てさう云ふ點に於て自分が立案をすると云ふのでありまして、偶偶我々議員が來て、之を斯うせいとか、ああせいとか云ふことは、それはどうしたつて對等の意見から言ふと當局には負けるものであります、それは當局は常に朝から晩までさう云ふことを研究して居る、我々は偶偶實驗をして此處で議論をするのでありますから、どうしても我々の議論が成立たないと云ふ場合もあります、併しながら澤山の目で見た場合には此の方が宜いんだ、一例を申しますれば、知事は官吏より公吏にする方が宜いんだと云ふことになりましたならば、或はそれに關係のある法律だとか、或は其の他の方法を變へれば公吏になるのでありますから、さう云ふ點に付ては、民主化になつた場合には、さつさとさう云ふ方面に圓滿に御進みを願ふと云ふ心構が、當局としては最も必要ではなからうかと思ふのであります、それに付きまして、重複致しますから唯二點ばかり簡單に御質問申上げたいと思ふのであります、所謂民主化の徹底を圖る上に於きまして、結局地方分權と云ふものの制度の擴張が、最も民主化に相應はしくはなからうかと思ふのであります、其の觀點から申しましたならば、所謂府縣知事に對し、又市町村長に對しまして、或る程度の任免權であるとか、或は認可權であるとか、或は許可權であるとか云ふ方面に對する一つの權利を與へてやる、又地方に相應はしい所の問題は、努めて地方に委讓をすると云ふ所の方法を講じて戴きたい、又兎角從來は中央集權と云ふことで、何も彼も中央へ持つて來まして、中央へ一つの權利が集まつて居る、今度は總ての施設に於きましても、一例を申しますれば教育方面に於ける大學の施設も、何も東京にばかり大學を置く必要はない、全國的に其の地の利を得たならば、何れの府縣へ持つて行つて大學を建てやうと、或はどう云ふものを建てやうとも、總てさう云ふ方面に對しては全國を對象として總ての所謂中央集權と云ふことは、寧ろ地方分權と云ふのに移す方が宜しいかと思ふのであります、それに付ての御所見を伺ひたいと思ふのであります、今一例を申上げますれば、議會に於きまして、或は知事、市町村長が不信任の場合は、解散をすることが出來得ると云ふことに今度なつて居るのであります、此の場合に於きましては内務大臣の認可を得て解散する、斯う云ふことになつて居りまするが、さう云ふことは私は内務大臣の認可を得なくとも、地方の町村長なり、或は府縣知事に其の權利を與へて何等差支へはないと思ふのであります、なぜならば解散をすると云ふ場合には、咄嗟の問題が起きた場合に於ける行爲であります、其の行爲を認可を經て愚圖々々して解散することになりますると、結局其の解散と云ふものの價値がなくなつて來ることになりますので、私はさう云ふ點に付きましては、やはり府縣知事なり、町村長に其の解散の權利も與へてやる、而も其の解散をした結果に於て、又町村長が何處までも不信任であると云つた場合には、初めて其の町村長は自ら自決する、知事も其の場合には自決すると云ふやうな制度にしたらどう云ふものであらうかと思ふのであります
それから是も亦大分質問が出て内務大臣より懇切なる御説明もあつたのでありまするが、地方事務所に付ては色色今後強化したらどうかと云ふやうな御意見もあつたのであります、私は現在の地方事務所は本當に不必要なものであると云ふことを感じて居ります、なぜならば是は實際問題を申上げますが、事務の簡素化を圖ると云ふのが、寧ろ地方事務所がある爲に複雜化して居る、例へて申しますれば、町村から一つの申請をする場合には、地方事務所へも出し、又縣にも出し、二通も要するのであります、而も其の認可に當りまして地方事務所の所長が、所謂地方事務官である關係上、或は縣へ行きまして、斯う云ふ申請が來たがどうであらうかと、縣の課長に相談をする、さうすると課長はそんなことは駄目だから止めなさい、ああさうですかと引退つて來る、何の權利もない爲に唯日數を要するだけであつて、一通の書類で濟む所も二通も出す、而も總ての書類と云ふものが、從來は縣の方に山積されたものが、地方事務所にも山積されると云ふことで、殆ど事務の進捗と云ふものが實際に行はれないのであります、先程内務大臣は、供出米に付て地方事務所が非常に心配をしたから、地方事務所は爲になつたと云ふやうな御話もあつたが、偶偶地方事務所が供出米に打突かつたのでありまして、結局其の郡なりの市町村長に頭を下げて、どうか供出を頼むと云ふことで、實際の働きと云ふものは町村長或は地方の農業會長と云ふやうなものが實務に當つて、兎に角此の成果を得たと云ふことは、是は事實が證明して居るのであります、さう云ふ譯でありまするので私は地方事務所は寧ろ廢止になりまして、町村は直ちに府縣へ行つて總ての仕事をする方が、事務の進捗が早いと云ふことは是は事實であります、併しながら地方事務所がいま少しく權利を委讓されまして、地方事務所に於て町村の總ての事務の進捗が出來得ると云ふことになりますれば、地方事務所も或は其の效果が擧るかも知れないのであります、其の效果を擧げるのにはそれではどうしたら宜いかと云へば、私は頗る簡單だと思ひます、例へて言ひますれば地方事務所長には有爲なる縣の部長級位の人間を任命して、さうして或る程度までそれに權利を委讓したならば、是は相當に有效に使へると思ふのであります、現在の地方事務所の制度を見ると、あれは一つの官吏の姥捨山であります、古手の官吏のやり場のない者が能く地方事務所の所長になる、さうして地方事務所で二三年やれば直ちに馘になつて、お拂ひ箱になり、それから縣の古い官吏が又其の地方事務所長になると云ふことは、是は各府縣共恐らく共通的の人事の異動ではないかと思ふのであります、それ故に地方事務所と云ふものは本當に全力を發揮することが出來ない、又縣の課長位のものに頭を抑へられて、こちらの方から意見を持つて行つても其の意見が採用されない、そこに一つの惱みがあつて、地方事務所の運營が十分出來て居ないと云ふのが事實であるのであります、私は斯う云ふ觀點から申しまして、現在の地方事務所であるならば、是は斷じて廢止して宜い、却て事務を複雜化するばかりである、併しながらどうしても地方事務所を置かなければならぬならば、結局所長の頭を部長級位の程度に變へて、そして或程度まで權利を委讓すると云ふことが宜くはないかと思ふのでありますが、此の點に付きまして御所見を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=48
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049・大村清一
○大村國務大臣 最初に私共の心構に付きましての御話があつたのであります、今囘地方制度改正案を提案するに付きましては、何分にも地方行政の將來に多大の影響を及ぼす改革であります、殊に府縣制度を改革するに付きましては、餘程愼重なる態度を以て臨みませぬと、戰後の經營に於きましても蹉跌を來す虞なしともしないのであります、唯私共が提案をしたから、それで無暗に原案を支持すると云ふやうな心構は毛頭持つて居りませぬ、私共は茲に信念を持ちまして提案を致して居るのであります、併し議會に於きましては固より御討議を願ひ、御審議を願ふことに相成つて居るのでありまして、御審議に對しましては多大の敬意と、御期待とを掛けて居る次第であります、尚ほ御引例になりました官吏公吏の問題でありますが、是は度々御質疑がありまして私の所信も十分に申上げて居ることでありますから、御引例になりました點に付きましては、それに依りまして何卒御諒承を願ひたいと思ふのであります
それから次に地方分權の問題でありますが、是は今後の地方行政を推進めて行きます上に於て、確に一つの大きな指針であると思ふのであります、今囘の地方自治制度改革に際しましても、其の法律の上に規定されて居りまする限りに於きましては、極力地方分權の方針に從ひまして、中央からの無用な干渉を避け、地方に成べく多くの權限を付與すると云ふことに努めた次第であります、尚ほ今囘改正せんとする地方制度以外の點に於ても、内務行政の面に於て、地方分權の線に沿うて改革すべき點が相當あると考へますので、是は逐次其のやうに致したいと思ひます、尚又内務省所管以外の各省所管の行政面に於きまして、地方分權の方針に從つて改革すべき點が多々あるやうに考へますので、是は關係各省とも能く打合はせまして、此の方針を出來るだけ早く實際の上に現はすやうに致したい積りであります
次に町村會の解散は改正案に於ては内務大臣が致すと云ふことになつて居ります、是は一に地方議會と地方自治體の主張が對立を致します場合のことでありますので、内務大臣に解散權を留保しました方が、運營上適當であらうと云ふ見解で、此のやうに致して居る次第であります
次に地方事務所に付きましては、段段と御意見がございまして、傾聽すべき事項が多々あつたやうに存じまして、深く之を參考に致さなければならぬと考へて居ります、唯現在の地方事務所の機能と現下の國情とに鑑みまして、地方事務所を今直ちに廢止することは、其の時機でないと考へて居ります、尚ほ地方事務所を存續致します限り、其の機能を活溌ならしめ、又所長以下の職員に於て其の人を得る、さうして十分に地方事務所を働かせると云ふことに付ては、格段の努力をしなければならぬことは當然でありまして、此の點に付きましては過日の地方長官會議に於きましても、十分其の注意を喚起致して置いたやうな次第であります、尚ほ地方事務所の改善に付きましては、出來るだけ努力を致して行く積りであります、尚ほ更に地方事務所に部長級の職員を配置すると云ふやうな點に付きましては、是は地方事務所を將來永年に亙つてどうするかと云ふ問題と併せて一つ考へて見たいと思ひます、尚ほ現在の所、主要な地方事務所に對しましては、御承知の如く部長級を配置致して居るのであります、全部に之をするかと云ふ點に付きましては尚ほ篤と考へて見たいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=49
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050・大塚甚之助
○大塚委員 只今の點に付きましては、大方皆樣に御意見もあることと思ひますので、何れ懇談會の時に色々御伺ひ致したいと思ひます
次に御伺ひしたいことは、是は府縣の問題でありまするが、從來參事會員は定例に會計檢査を執行することになつて居りました、所が先頃其權限が縮小されまして、今は縣の吏員が會計檢査を執行して居ります、所が今度新しい改正法律に依りますると、四十三條の二に於きまして「府縣會は府縣の事務に關する書類及計算書を檢閲し府縣知事の報告を請求して事務の管理、議決の執行及出納を檢査することを得」斯う云ふことになりまして、又其の權限が復活したやうに思はれるのでありますが、唯斯う云ふ條例でありますると、府縣會議員の何れが會計檢査をして宜いか惡いかと云ふことが實際分りませぬので、結局やはり定例の檢査、所謂會計檢査と云ふものは、參事會員を以て執行せしむると云ふやうに、之を明記すると云ふ御意思がないかどうか、是は私經驗から申上げまするが、一年に一囘の會計檢査と云ふことは、縣會議員に取つては非常に有益なものだと思ふのであります、縣會の運營、或は縣會が豫算を色々と審議する上に於きましても、同じ縣内に於きましても、縣の隅まで知つて居る者は殆ど縣會議員にはないのであります、それで此の學校とか、警察とか、或は事務所、出張事務所等を檢査して歩きますと、其の土地々々の道路網の關係、或は學校、營造物の關係等に於きまして、非常に縣政を認識するのであります、又會計檢査を受ける方は一年に一遍とは言ひ條、隨分色々と小言を言はれますので、會計檢査に來るからと云ふことで、一年を通じて當事者は其の營造物等に於て餘程注意するのであります、さう云ふ觀點から申しましたならば、之を廢止したと云ふことは、私は頗る不可思議に思ふのでありまして、今度復活出來るならば、やはり參事會員をして、さう云ふ定例の會計檢査を行はしめると云ふことに、一つ規定を變へて戴く御意思はないかどうか、それを伺ひたいと思ひます
今一つ、縣會のやうな問題でありますが、常に縣會に於きまする所の議論は、兎角縣の運營、或は縣の事務簡捷に付きまして、どうも一つの癌とも申しませうか、障碍が起きることがあるのであります、それはどう云ふものであるかと申しますれば、縣の一つの課に對する所謂縱の連絡と云ふものは頗る能く附いて居るのであります、併しながら横の連絡と云ふことは何時も支障するのであります、例へて申しますれば、水産の問題に於きまして、水産の總ての問題に對しまして縣の水産課と水産業者と交渉する、それは頗る圓滑に、縱の連絡はずつと取れて巧く行くのでありますが、偶偶燃料が必要であるとか、或は資材がどうであるとか云ふと、今度商工課へ行く、さうすると商工課と水産課との連絡、所謂横の連絡が何時も支障を來ぬのであります、それが爲に折角出來得べき仕事が出來ないと云ふことは、是はもう何處の縣へ行つてもさう云ふ事例が澤山あるのであります是は其の課の何と申しませうか、官吏としての體面を保つとか、或は一つの厭やな感情の上に於きまして、どうしても行閊へて折角簡單に出來る仕事が出來ないのはさう云ふ點が非常に一つの癌になつて居るのであります、是は恐らく本省にもさう云ふ點があると思ひます、只今申上げましたやうに、水産のことも農林省の水産局に行けば簡單に出來ることが、或は燃料とか、或は油とか云ふ問題を、今度商工省に行きますと、さうすると商工省の方でこいつは駄目だと言つて、横の連絡が取れないから非常な支障を來すと云ふやうな場合が多々あると思ひます、斯う云ふ觀點に於きまして私は縣の中に何か横の連絡を執る一つの機關を拵へる必要がありはせぬか、所謂一つの連絡課とでも申しませうか、或は調整課とでも申しませうか、其の課が總て各課の必要なものを扱つて、さうして其の課から他の課へ交渉して、出來るものは出來る、出來ないものは出來ない、之を知事に要求致しますると、知事は何時でも斯う言つて逃げて居るのであります、さう云ふものを拵へるよりか、寧ろ我々は部長會をして居る、だから部長の間に連絡が取れて居るから簡單に出來ますよ、口ではさう言ひますが、どうも其の下の課長以下の課員に於きましてどうも巧く行かない、さう云ふ爲に事務は非常に進捗を害すと云ふことは、實際の事例であります、此の點に付きまして私は一寸御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=50
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051・郡祐一
○郡政府委員 御話がございましたやうに、十八年度までは出納實地檢査の制が認められて居つたのでありますが、之を十八年法で廢止を致し、此の度府縣會が府縣の事務等に對する檢閲、檢査の規定を設けたのでございます、是は御承知の通り市町村會には從來から權限があつたのでありまするが、府縣會には認められて居らなかつたのであります、此の點は寧ろ地方自治團體の議決機關が、常に當該團體の執行を監査致しますることが必要なことでありますので權限を認めたのであります、唯御指摘の出納實施檢査は確かに御話のやうな長所がございまして、之に依つて議員が府縣の執行部に非常に親しみを持つと云ふことはあるのでございますが、何と申しましても、出納の實地檢査自身には相當の專門的知識と申しまするか、經驗と申しまするか、左樣なものを持ちました方が、より完全な檢査が出來ます、それで府縣會議員と學識經驗者と、兩者から半數づつ選びまする監査員と云ふものを認めまして、それに實地檢査をさせることに致したのであります、隨ひまして此の監査員の制度に依つて、實地檢査の方は相當に目的を達することが出來るのではないだらうか、さうして一方では府縣會に於て書面檢査を致し、此の兩者相俟つて檢査の方向として完璧を期し得るのではないだらうか、此のやうに考へて居る次第でございます
それから第二點に、御話の府縣廳内の連絡でございますが、是は正に仰せの通りであります、御指摘に相成りましたやうなことは、常に心配も致し、又左樣な事例を屡屡見るのでございます、それで長官會議の際等にも、知事には十分に申して居りまするし、又それから内務部長等に對しましては、内務部と申しますのは、府縣の中では教育、民生部等を設けたり致しまして、段々と仕事が減つて來て居ります、それで内務部長と云ふのは寧ろ仰せにありました横の連絡を主にして、連絡係、取纒め係として働いて呉れと云ふことを申して居るのであります、左樣な意味合で内務部内に總務課と申しまするか、左樣なものを設けて連絡係を致して居る所もあるのでございます、又總務課を拵へて見ますと、其の總務課は少し威張ると申しますか、他所の課の上に立つて指圖をするやうなことになりました所は巧く行かぬ所もあり、又非常に好く運營の行つて居る所もございます、御指摘の點は確かに現在の府縣廳行政の一つの改善すべき點であると存じますが、左樣な内務部長の働きなり、總務課の働きを更に完全に致しますやうに、用意のない所には用意を致させまするやうに、是から指導して參りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=51
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052・大塚甚之助
○大塚委員 只今の點に付きましては總務課でなくても、連絡課と云ふやうな普通の課のやうなもので結構でありますから、やはり一つの課を設けて、さうして是は本當に事務管捷の上に私は必要だと思ひますので、是非善處して戴きたいことを御願ひして置きます
それから只今監査員を以て出納檢査をさせると云ふ御話でありましたが、監査員と云ふよりか、是は一つの御研究を願つて、やはり縣會議員が其の議決に任に當つて居るのでありますので、學識經驗者を入れて出納檢査をするよりか、寧ろ直接當局と執行機關との間に於て、水入らずで檢査をすると云ふ方が宜くはないかと思ひますから、其の點も御研究を願つて置きたいと思ひます
次に御伺ひしたいことは、是も質問がありましたが、市町村財政の問題であります、昨日でしたか小池さんの質問に對しまして、町村の獨立税を考慮すると云ふ點で色々と詳しい御答辯がありましたのであります、御承知の如く町村の現在の状況は、本當に財政と云ふものは枯渇して居ります、是が何故に枯渇したかと言へば、申上げるまでもなく町村吏員の待遇であるとか、或は消耗品費であるとか、其の他總ての物價が非常に昂騰致しまして、一方待遇の問題も、それからそれと人件費に掛かるのでありまして、殆ど町村の財政と云ふものはそれに消耗されまして、本當の仕事をする上に於て何等の仕事も出來ないと云ふやうな實情は、是はもう全國的の町村の状態だらうと思ふのであります、今後民主化と致しまして町村を發展させるには、町村に或る程度の權利も與へ、而も財政が相當緩和が付いて、さうして安心して町村長を初め吏員が其の職に就き、そして其の町村民の下から盛上る所の所謂民主化と、此の三者が合體致しまして、初めて町村が圓滿に而も發展すると云ふことは、是は申上げるまでもないことと思ふのであります、此の觀點から申しまして先頃の御答辯に依りますと、町村の住民税も四十圓に引上げる、斯う云ふやうな御話でありました、又府縣税に對しましては、府縣の住民税として六十圓まで徴收することを府縣の財源に認める、斯う云ふ御話でありましたが、此の四十圓と六十圓と云ふことは、何か基準があつて此の率を御決めになつたのか、私は今少しく多くして差支はないではなからうか、今の貨幣價値、又物價の値上りと云ふものと對照致しますると、昨年は町村の方は六圓平均でありました、所が物價が十倍上つたと假定して、大體十倍が最小限度だらうと思ふのです、さうならば四十圓でなくても、六十圓平均にして宜くはないか、又府縣の方は六十圓として非常に多くしたが、寧ろ是は町村の方が多くなつて、府縣の方が少くて宜くはないか、斯う云ふやうに考へて居りますが、其の點に對する御所見も伺つて見たいと思ひます
それから此の課税方法でありまするが、是は私は今後は頗る愼重を要する問題だと思ふのは、御承知の如く今度の色々町村税であるとか、或は總ての點から申しますると、所謂地主、小作の問題と云ふやうな觀點から色々の方面を考へますると、恐らく從來の個人の所謂資産と云ふものに大變動を來すと思ふのであります、從來は所謂資産家の方は見立てとか何とか云つて相當取られたのが、今後は總ての所謂擔税者の力と云ふものが非常なる大異動を來すと思ふのであります、斯う云ふ觀點から申しますると非常に難かしいのでありまして、所謂之を公平に徴收するには、營業收益であるとか、或は所得税であるとか云ふやうなものを基準にするよりか、寧ろ是れ亦町村なりに任せまして、さうして其の當事者である町村長を主體に考へまして、さうして所謂見立て、個人々々の内面の懷ろ工合と云ふものは町村長自體が能く知つて居るのであります、さうして町村會議員の中から、或はまあ名前は何であらうと、徴税委員とでも言ひますか、委員でも拵へまして、町村長と相談をして見立て等を主として徴收すると云ふ方が、圓滿に、而も公平に行きはせぬかと云ふことを考へて居ります、斯う云ふ點に付ての御所見を伺ひたいと思ふのであります、又先般大臣から御話のありました通り、附加税であるとか、或は取扱ひの交付金であるとか云ふやうなものも、時節に應じてやはり増額、増強の方途を是非ともやつて戴きたい、斯う思ふのであります、又今一つ私は御意見を伺ひたいのは、此の町村財政に於きまして所謂補助金制度の確立であります、どうも補助金を府縣へ呉れるとか、或は町村へ呉れるとか言ひましても、或は仕事をしてもう忘れた時分になつて補助金が漸く來る、之を府縣へ町村から小言を言つて、呉れるものを──例へて言へば今度の供出に對する奬勵金を呉れるとか、或は斯う云ふものを呉れるとか云つても、初めて其のものを收穫し、其のものが成立つた時に直ぐ金を呉れて、其處に其の金の價値があるのであります、然るに何時まで經つても呉れない、一年も經つて、忘れる時分になつて其の補助をして呉れることが非常に多いのであります、之を縣に當つて見ますると、本省でどうしても呉れないから、呉れないものをこつちで自由勝手にやる譯には行かないと云ふので、何時も補助金が遲れて、非常に其の價値がないのであります、是等は速かに一つ、呉れると云ふものは氣前良く早く出して戴くと同時に、從來の所謂道路の補助であるとか、或は總ての補助金に對しましては、從來は定まり切つた少額の補助を呉れて居るのであります、やはり是等の補助を相當増額すると云ふことが、地方財政に重大なる影響があるのでありますので、斯う云ふ點に於きまして特に私は御心配に預りたい、斯う思ふのであります、又是は教育の問題ですから、或は文部省關係かも知れないのでありまするが、御承知の如く教員の俸給は全額國庫から呉れることになつて居ります、之を私は元へ戻しまして、町村へ澤山の補助を呉れて、町村から學校の教員に適當に呉れると云ふことが宜くはないか、斯う云ふことも考へて居ります、それはなぜかと申しますると、全國的に呉れる俸給と今ふものは千篇一律でありまして、それが爲に從來は市とか町へ非常に希望をして居つた教員が、最近に於きましては山の中に行くことを希望する、又在の方に行くことを希望する、それは同じ俸給であつて、同じ待遇を受けて居りまして、市とか町とか云ふと生活で非常に金が要る、或は菜つ葉一つ買つても十圓、五圓の錢を出さなければならぬ、農村の先生になれば菜つ葉位は隣の家から貰つて來れば呉れる、斯う云ふやうな觀點から申しまして、最近は先生の良いのは農村の方へ行きたがる、さう云ふやうな傾向になつて來て居るのであります、之を澤山の補助を町村に與へまして、さうして町村に於きまして縣と相談をして、適當にそこに彈力性を持つた按配をして教員の俸給を支拂ふ、さうすると教員の配置の上に於きましても、總ての點に於きまして非常に工合宜くはないか、斯う云ふ點も考へて居ります、又從來は校舍の建築と云ふものに對しましては、是は殆ど地元の町村が建設して提供して居りました、所が中々此の校舍の建築と云ふことは、最近に於きましては多額の費用が要るので、町村に於きまして之を負擔すると云ふことは容易なことではないのであります、此の點に於きまして、私はやはり斯う云ふ方面に對しても政府は補助を與へる意思ありや否やと云ふことを聽きたい、殊に戰災に遭つて燒けた所の校舍を建設すると云ふことは、火災に遭つた都市に於きましては本當に氣の毒であります、是等に對しましては相當なる補助を國庫が出して、國民教育の爲に早く一つの教育殿堂を造り上げてやると云ふ親心を以て、是非とも補助を與へてやつて戴きたいと云ふことを御願ひすると同時に、御所見を伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=52
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053・郡祐一
○郡政府委員 初めに住民税の御話でございまして、住民税は御話のやうに市町村四十圓、府縣六十圓と致して居りまするが、更に財政の需要に應じまして此の五割までの制限外課税を認めることに致して居ります、それで之を四十圓と六十圓に分けましたのは、御承知の通りに府縣、市町村の租税收入の主なるものは、三收益税と住民税と配付税とになつて居る譯でありますが、市町村に於きまする住民税の割合を高めますると、三收益税の方を府縣の方へ比較的多く讓り、市町村の方を少くすると云ふことに、財政需要全體から相成つて參るのであります、併し此の收益税は都市と申しまするか、或は都市掛つた所の財政力の上には相當大事なものでありまして、是は府縣と市町村と半々に致します、さう致しますると結局市町村民税の方の率を、府縣より若干引下げて置きましても、現在の財政需要からは十分需要の充足が出來る、斯樣な觀點から四十圓、六十圓に定めてある譯でございます、只今の所一應各團體の財政需要が、此の四十圓、六十圓の制限率で賄へる積りになつて居りまするから、之に五割の制限外課税を認めまするならば、或る程度彈力のある操作が出來ようかと思つて居ります、それから課税方法に付きましては、是は條例に委ねて居りまするので、或る程度從來よりも額が多くなりましたから、實際の指導と致しましては或る部分を均等割にし、或る部分を資力に應じと云ふやうな工合に、適當に指導を與へようと思ひまするけれども、決定は條例に委ねまして、さうして素朴で而も實際に合つた課税方法を執つて貰ふやうに致したいと思ひます、高額所得者等に付きましては、國税、地方税を合はせまして、可なりな高率になることも考へられますので、寧ろ實際の實情を知つて居る町村長、町村會等に於きまする十分なる操作と云ふことが、御説のやうに非常に望ましいことだと考へて居ります、補助金制度の問題でございまするが、是は現在の補助金と云ふものを整理を致すと申しますか、補助政策と云ふものを確立致さなければならぬと云ふことは確かに仰せの通りでありまして、根本的に考へて居りまする所は、地方的色彩の非常に濃い事務に對して、少額の補助を與へるに止めるやうな補助は寧ろ之を整理致しまして、代り財源として税で與へますか、或は配付税で與へますか、左樣な一般的財源を附與し、少額の補助は寧ろ整理してしまふ、さうして從來補助の形で與へて居りましたものも、國費負擔區分を明瞭に致します意味合で、警察費でありますとか、道路費でありますとか、是等の國費と地方費の負擔區分の見地に立つものに付ては、可及的に其の補助率を高める、斯う云ふ方針で補助制度の確立を致したいと思ひます、若干の事項に付きましては此の度も改正を加へた譯でございます、從ひまして數多くの補助金が非常に遲延して交付されまして、補助の效果を失つて居りますもの等に付きましては整理致しまして、何か一つに集めました補助金に變へるやうな方法に致して參りたいと思ひます、現在あります補助金の遲延致しますものに付ては、十分關係方面に督勵を加へて參りたいと思ひます、教員俸給の問題に付きましては、是は御承知の通り大分經緯がありまして只今のやうに相成つて居りますので、御意見は能く承つて置くことに致したいと思ひます、校舍の建築、殊に戰災地の校舍の復舊に對しまして、現在のやうに總てを地方財源と申しましても、財源が餘つて居る譯ではございませぬから、勢ひ起債で求めなければならない、此の状態と云ふのは洵に地方の財政を壓迫することに相成ります、國庫の財政の都合もあるのでありまするが、戰災校舍の復舊に對しまして、何等か國庫補助の途が開かれますことは、内務省と致しましては非常に希望致して居る所でございます、但し一應起債に致しましても、將來是が償還に付きましては、起債に致しました分に付ても、何等か其の元利償還の時期に付ては、時期に立至ります前に、地方財政に著しい負擔を掛けることにならないやうな方途を折衝したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=53
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054・大塚甚之助
○大塚委員 實は町村に對する獨立税に付きましても色々御意見を伺ひたいのでありますが、さうすると非常に長くなりますので、何れ又の時機に讓ることに致しまして、唯此の點を御伺ひして見たいのです、所謂町村の特別の事業がある場合があります、さう云ふ所に對しましては、やはり町村の獨立税を認めまして、所謂特別税として徴收するやうな風なことの方途を講ずることに付ては、御意見如何でありませうか、例へて申しますれば、漁業なら漁業の町がある、非常に漁獲もあるし、而も之に對する加工の工場も盛んにやつて居る、或は冷凍會社もやつて居る、さう云ふものは時ならぬ好況の波に乘つて、非常に工合が好いと云ふやうなものに對して、或る場合には、町村で斯う云ふ仕事があると云ふ時には寄附金等を貰つちやつて居ります、之をやはり特別税化して、さう云ふものには特別なる其の町村の一つの財源となるべき税を附與すると云ふことはどう云ふものであるか、斯う云ふことを考へて居りますが、其の點を一つ御伺ひしたいと思ひます
それから今一つ、是は二十一年度の分與税の問題でありまするが、二十一年度は分與税で各町村に財源を與へると云ふことになつて居るのであります、從來呉れた所の分與税と云ふものは、政府の立案して居る方法は非常に合法的のやうであつて、實際問題で行くとそれが或る特殊の場所へ行くと非常に不公平なものになつて居る、是は所謂第一種税とでも申しませうか、それで行きますと結局營業收益とか、其の町村の所得に反比例して呉れる、斯う云ふことになつて居ります、さう致しますと或る小さな町が借金政策を以てやつて居る、偶偶そこでは營業收益もあるし、或は其の他の所得もある、所謂營業をして居るが爲に所得がある、而も其の町は小さな貧弱な町であると云ふ場合に、是が反比例するものだから、其の町へ來る所の分與税と云ふものは少額である、而も農村で殆ど本年あたりは色々なる農産物の値上り等に依つて所得も納めるでせうけれども、大體に於て從來に於ては所得と云ふものは殆ど少い、あつても出さないのであります、それが所謂反比例するから、此の村は非常に豐かな、本當に呑氣な村であつても、所得税に反比例する爲に、結局分與税と云ふものは多額の金が行く、それが爲に甚だしい例に於きましては、殆ど住民税を課さなくとも、分與税に於て其の村が十分やつて行けると云ふやうな農山村が相當あつたのであります、さう云ふ點に於きまして机の上の議論から行くと營業收益とか、或は所得に依つて反比例する所の分與税は、非常に公平なやうであつて、其の通りの法則を其の儘縣へ指示されるので、縣は其の通りやつて居る、それからそれを緩和する上に於きまして第三種の所謂分與税をやつて居ります、是は大體に於きましてそれに依つて緩和をして凸凹は知事の裁量で直せ、斯う云つて分與税を呉れて居ります、是等は非常に少額の爲にやはり其の緩和が十分出來ないのであつて、結局さう云ふ一つの方程式を拵へると云ふのは結構でありますが、大體の總金額の三分の一位の程度を其の方程式に當嵌めて、あとの三分の二位のものは總て地方の事情を詳しく知つて居る所の其の府縣の知事の裁量に任して、適當に公平に按配させる、斯う云ふことが公平であり、合理的ではないかと考へて居りますが、此の點に付きましての御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=54
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055・郡祐一
○郡政府委員 特定の事業に對しまする財源の點でありまするが、非常に大きい事業と云ふことになりますと、勢ひ起債と云ふことにならうと思ひまするし、又一般的の財源では三税の附加税も引上げられましたし、從つてそれに對しまする制限外課税の割合も殖えますし、先程申しましたやうに住民税に對しても制限外課税を認めて居りまするので、それ等に依つて一般的なる財源を相當額得ることが出來るのではないかと思つて居ります、若し共同施設のやうなものを經營されまするのでありますれば、目的税の共同施設税を御考へになることが、特に受益して居りまする者から徴しまするだけに、一番適切かと存ずるのであります、配付税に相當依存して居りまするにも拘らず、其の配付税が稍稍機械的な配分になつて居ると仰しやいます點は、殊に只今のやうな經濟事情の著しい移り變りの時には特に顯著であります、從來の市町村の配付税の第三種配付額を止めまして、代りに特別配付税と云ふ名稱で、市町村の配付税の總てに通じまして斟酌配分を致し得る特別配付税を設けて居ります、更に戰災に依りまして減收致します團體に對しましては、臨時特別配付税と云ふのを設けて、戰災に依る減收等を補填することに致して居ります、さう致しますと、非常に達觀的な數字でございますけれども、配付税總額の四分の一程度は特別配付税及び臨時特別配付税として操作致し得ることに相成るかと思ひます、隨ひまして現在の實情に應じました配分標準を、此の特別配付税と臨時特別配付税の中に設けまして、さうして實情に副ふやうに働かして參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=55
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056・大塚甚之助
○大塚委員 今の御答辯で了解しましたが、是非是は御考慮願つて、戰災地等に於ける状況は事毎に我々が机の上で考へるとは違つて居りますので、其の方面へ重きを置いて、澤山裁量に任してやると云ふ方途を講ずることを御願ひ致します、是で私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=56
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057・中島守利
○中島委員長 佐伯君、簡單に濟まして下さい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=57
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058・佐伯忠義
○佐伯委員 時間も餘りないやうでございますし、大分御質問も盡きたやうでありますから、美辭麗句を廢しまして率直簡單に二、三點に亙つて御伺ひ致します
過日内務大臣の御説明には、積極的に民主主義政治へ移行する、斯樣に仰しやつたのでありましたが、其の後早速積極的と云ふ言葉は言ひ過ぎであつたからと言つて御訂正になられたと思ひます、今囘御提出になりました議案は、御氣持の中には思ひ切つて民主主義的に切換へなければならぬ、併し現在の民度、政局が伴はないに依つて今囘は此の程度に止めると云ふ御考へであると私は解釋して居るのであります、左樣な心構へであるならば、新憲法のまだ確定して居りませぬ、殊に重大關心を持つて居ります所の政治の調節辯とでも言ひませうか、參議院制度もまだ決定して居りませぬから、新憲法が決まり、殊に參議院制度が決定致してから、思ひ切つた改正案を御提出に相成つては如何かと私は思ふのであります、中途半端な改正では、眞の新日本再建上明朗性を聊か缺くのぢやないか、斯樣に思ふのであります、例へて申しますと、是は少々卑近な例になりますが、一家に於ける戸主が年老ひて、長男が、既に三十歳にもなつて、世間の見る目からすれば獨り立ちが出來る、斯に樣見て居つても、親の目から子を見ますとまだまだ自分が監督指導してやらなければ獨り歩きが出來ない、斯う考へて居つて、何時までも何時までも戸主權を讓らない、其の中に家庭に意見の相違が出來波瀾の斷ヱ間がない、其の爲に又一家の繁榮を鈍らす、遂には産を失ふと云ふやうな事例がないでもありませぬ、此の程度の改正であるならば、官吏に責任があるのであるか、或は最近の國民に責任があるのであるか、釋然としない、結局責任のなすり合ひになつてしまふのであります、其の爲に國の進展を鈍らし、國家再建の進度を遲らすものであると思ふ、大臣の老婆心は洵に有難いのでありますけれども、民も結構やつて行くのではないかと考へて居るのであります、大臣と致されましては此の際思ひ切つて民主主義に移行せしめる御考へがあるかどうか、但しは又先程申しましたやうに、新憲法がはつきり致し、參議院制度が決定致しました上で、思ひ切つた改正を實行されるのが、賢いのではないかと考へて居るのでありますが、此の點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=58
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059・大村清一
○大村國務大臣 言葉尻の御話を申上げるやうでありますが、私今囘の改正地方制度の趣旨を説明致します場合には、衆議院の本會議に於きましても、當委員會に於きましても、徹底的民主化を圖ると云ふ、徹底的と云ふ文字は使つて居らぬのであります、別に取消した譯ではありませぬ、なぜ使はなかつたかと申しますと、餘り言葉の鋭いものを使ひますと事實に反することがある、それで徹底的と云ふ言葉を使ふのは適當ならずと氣が付きまして、使つて居ないのであります、偶偶私の關知せざる資料に其の言葉が入つて居りましたので、其のことを申上げたのであります、隨て私は徹底的と云ふことを言はないと云ふことを申上げたのでありまして、今囘の地方制度の改正は積極的民主化は大いに圖つて居る積りであります、其の點はどうぞ言葉の上のことでありますが、重要なる點でありますので、重ねて辯明致して置きます
それから憲法の改正草案が成立した上で地方制度を民主化したらどうかと云ふ御尋ねでありました、今日我が國の政治を、國政と云はず、地方自治制と云はず、民主化すると云ふことは刻下の急務であらうと思ふのであります、而して國政の民主化の基本となるものは、地方自治行政の民主化であらうと思ふのであります、此の點から申しますならば、寧ろ憲法の民主化に先立つて地方行政の民主化が行はれた方が、尚ほ望ましいとも言へると思ふのであります、殊に我が國の實際の地方政治の動きを見ましても、憲法を改正致し、其の曉にゆつくり地方行政の民主化を圖ると云ふことは、民意にも合はない點が段々現前の事實として現はれて來て居るのであります、故に憲法の改正草案の内容は相當はつきり致して居りまして、日本の國政の民主化の方針、方向は既に草案の上で明かでありますので、それと相照應致しました地方制度の民主化を積極的に行ひまして、國政の民主化と相俟つて地方政治の民主化をする、さうして兩々相俟つて日本政治の民主化を圖ると云ふことは、日本再建の上に洵に緊切なことと考へまして、此の際憲法の御審議と併行して、地方制度民主化の御審議を仰ぐことに致した次第であります、地方政治の民主化と一口に申しましても、是は國々の實情に依りまして内容の廣狹もございますし、それから又之を採用して行きます過程に於きましての緩急もあることであります、是等は各國の實情に即しまして、其の特色に應じた態度をする必要があらうと思ひます、私が特に徹底的民主化と云ふ言葉を避けましたのは、何か民主化の最終の「ゴール」がありまして、其の「ゴール」に比較致すと、非常に不徹底だと云ふやうな論議の起ることを避け、又さう云ふやうな行き方は適當ではないと云ふやうに考へまして、特に之を使つて居ないのであります、併しさりとて民主化に於きまして、極めて消極的にお茶を濁して居ると云ふやうな氣持では毛頭ないのであります、我が國の現在の状況に於きましては、許し得る最大限度の積極的民主化を圖りたいと云ふ趣旨でありますことを、どうぞ御諒承を願ひたいのであります、隨て憲法の改正が成つた曉に於て、地方制の民主化を圖ると云ふことは、遲きに失すると云ふ見解で、本案の御審議を御願ひして居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=59
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060・佐伯忠義
○佐伯委員 それでは此の徹底的と云ふ言葉と、積極的と言ふ言葉を比べて見ますと、聊か物足りない感じが致しますが、大體思切つて民主政治に移行すると云ふ御氣持は存して居ると云ふことを了承致しまして此の問題は終りますが、現在の民度を考へて見ますと、是だけの民度に於て民主主義政治をやつて行かうと思つても、そこに缺陷がありはしないかと私は非常に危惧に堪へない、此の際民度を思切つて向上せしめる御方針がありや否や、本會議の時にも、大臣の御氣持と致しましては拜聽致したのでありますけれども、此の委員會に於て具體的に如何なる方法を以て民度を擧げて行くかと云ふことに付て御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=60
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061・大村清一
○大村國務大臣 多年に亙る事變、戰爭に依りまして、我が國民の民度は非常に消耗し、低下をして居ると云ふことは、當然のことであります、殊に敗戰と云ふ苦境に沈淪を致して居ることでありまして、此の戰後の經營宜しきをなして、漸次民度を高め、國民をして各各其の途に安んぜしめ、平和國家として世界各國と伍して國際生活を樂しむと云ふ理想を顯現致します爲に於きましては、政府に於きましても凡にる面に於て適切なる政策を打樹て、之を實現致して行くことが極めて必要でありますが、又八千萬縣民の總努力、總協力と云ふことが、是は絶對の基礎要件であると思ふのであります、此の點に付きましては朝野心を協せまして、勇往邁進しなければならぬと思ふのであります、此の國民の民度向上の方針如何と云ふことは、餘りにも現下の實情と致しましては重大な問題でありまして、單に私が内務行政の面だけから彼此れ申上げる以上に大きな問題でありまして、是は只今問題になつて居ります所の所謂擬制資本を整理して、水膨れを取りまして、さうして堅實な基礎に立還りまして、今後各方面の經濟再出發をすると云ふやうな點は、一つの重大なる項目と思ひます、尚又民主主義的なる新教育の方針を確立致しまして、學校教育及び社會教育と相俟ちまして、國民の精神を作興して行くと云ふことも、是は最も重大なる項目の一つであらうと思ひます、尚又是等の經濟面、精神面、兩者の向上を策する上に於きましては、政治の民主化こそ其の基本とも裏打ちともなることでありまして、今囘新しく選出せられました新議會に於きまして新憲法が審議せられ、又地方自治制度の改革が取扱はれて居ると云ふやうな所は、是は蓋し我が國の今遭遇して居りまする段階に於ける國力、民度向上の第一著手と申しますか、基本を打立てて居るのであると考へるのであります、御尋ねの問題が甚だ大きい問題でありまして、私の御答へも抽象的に失つて居るかも存じませぬが、私の考へて居りますことを申述べまして、御參考に供したいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=61
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062・佐伯忠義
○佐伯委員 民度の向上と云ふことは、少し廣汎に過ぎたのでありまして、質問の要點を掴んで戴けなかつたのでありますが、現在の國民の知識、教養の程度が低い、之を基礎にして市町村長の公選をする、知事の公選をすると云ふやうなことでは、選良が得られないと云ふことを暗示して居ると思ひます、であるから速かに社會教育其の他の方法に依つて、公民教育を盛んにして行く必要があると思ひます、又逸早く是が教育の目的が達せられるものではありませぬが、全國の青少年、八十割に達します所のあの階層をして、徹底的に青年教育をして行く必要があらうと考へる、所謂機會均等ならしめて、是が知識、技能或は教養を高めることに依つて、隨て民主主義政治と云ふものが熱して來ると思ふ、それ等に對しまして、文部省の所管であるとは考へますけれども、民主主義政治を思切つて熟成さして行くと云ふことに付きましては、内務大臣の又責任であるとも考へる、其の點にも十分御力を注いで戴かなければなりませぬが、御方針を重ねて承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=62
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063・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねの趣旨が十分呑込めませぬで、失禮致しました、我が國の民度が民主政治の運營の上に於きまして、どうであらうかと云ふやうな點は、識者が曾て、又現に憂へて居る所であります、併し此の點に付きましては私は案外日本の國民は民主政治に適すると云ふやうな證據も、段々現はれて來て居るやうに思ふのであります、曩に選擧權が婦人に與へられ、又男子にも二十年に年齡が低下せられまして、一躍新有權者を倍加致したのであります、其のやうな改革が施された後の衆議院議員の總選擧は、必ずや、そこに多數の棄權者が出る、乃至は投票も不眞面目であつて、十分に民意を反映することは困難であらうと云ふやうなことが叫ばれたのであります、尤も此の點に付きまして選擧の啓蒙運動も大いに全國的に展開すべきであると云ふことは内務省も痛感致したのであります、御承知の如く内務省は從來思想警察と云ふやうな面に於きまして、國民の思想の馬車馬的指導に當つたと云ふやうな印象を世間に與へて居りましたので、選擧の啓蒙運動の如きは、是は擧げて文部省に一任をするのが宜からうと云ふ私共の方針でありました、文部省に御願ひをして其の音頭を取つて戴いた、又我々は文部省の音頭の下に地方廳はそれに全幅の協力を致すのに付きまして、蔭ながら援助を致したと云ふ態度を執りました、又之に付きましては言論界、又民間の有力者等の多大の御協力を賜はつたこともありまするが、兎に角總選擧の結果は、御承知のやうに意外に良好なる成績を收め得たのであります、又あの選擧に付きましては聯合軍司令部に於きましても、殆ど最大の讚辭を呈されると云ふやうな次第でありまして、結論から申すと心配をされて居りました衆議院議員の總選擧も、意外に民主的な僥倖なる效果を收め得たのであります、地方自治制度が改正せられまして、是が民主化された曉に於きましては、國民の自覺と努力に依りまして、私は丁度先囘の總選擧の場合と同じやうな良結果を期待して宜しい、但し此の良結果を收めますに付きましては、政府當局に於きましても、又民間の言論機關乃至は有識先覺者に於かれましても、全國民に民主政治に對する自覺と努力とを致すと云ふことに付きましての皷舞激勵を怠つてはならぬと思ひまするが、其のやうに注意を致しますならば、總選擧の場合と同じやうな良果を收め得るものと考へて居ります、又内務省と致しましても、其の職能に鑑みまして餘り差出がましいことに付きましては注意をしなければならぬことと考へるのでありまするが、十分善處を致して行く方針で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=63
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064・佐伯忠義
○佐伯委員 聊かまだ物足りませぬが、私の述べましたことは青年學校でも盛んにして、教養の度を高めて、知識智能を高めて行くと云ふことに付て御所見を承つたのであります、餘り長くなりますので一括して後で御伺ひ致したいと考へて居ります
今囘此の戰爭に於て米國があれだけの大勝を博したと云ふことは、即ち科學、即ち計數と云ふものを基礎に置いて總てを進めて參つたことが、一つの大きな原因であらうかとも考へられます、翻つて我が國の是までの國情を見ますと、數と云ふことに餘り重きを置いて居ない、特に統計と云ふことに付て、洵に閑却されて居るのではないかと考へるのであります、勿論内務省の方に於て、統計と云ふことに絶對責任を持つて御進み相成つて居りますけれども、最近の實際の統計數字の事實とは、餘程相違があるのであります、是はどの點に向つて調べて見ましても、さうであると云ふことは承知して居ります、今後新日本再建の基礎となるべきものは何としても統計にある、數字にある、數字が間違つて居つたならば、如何なる政治も結局是は砂上の樓閣に相成るかと思ひます、立直らんとする時の新政治なるものは、飽くまでも數字に立脚し、統計に立脚し、間違はない統計に依つて成立つて行かなければなりませぬ、そこで地方制度を改正せられるに當つては、市町村が一番統計の基本になると思ひまするが、茲に統計吏員と云ふものをもつともつと強化し、現在で謂ふ收入役或は助役程度の資格を持たせて、完全に責任を持つべき機構を整備する必要があらうかと思ひます、現在の統計から言ひますと、町村役場で統計を報告した數字、或は農業會の方から、或は縣の方から、其の他食糧檢査所の方から出した數字と、皆區々になつて居りますから、善政が行はれやう筈がありませぬ、是は一本にして何處までも重大なる責任を負はせて、縱から見ても横から見ても、きちんと完全無欠な統計なり數字が現はれて來ることこそ、新日本再建の一番捷徑であると私は信じて居ります、之に對して内務大臣の今後に於ける地方制度改正に當つての所信を御披瀝願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=64
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065・大村清一
○大村國務大臣 現在の統計が不十分でありまして、之を正確にすると云ふことの必要なることは、全く御説の通りだと思ひます、此の我國の統計の不備を改善致しまして、信頼し得る統計、又今後の國策を遂行して行く上に於きまして、確實なる基礎數字を與へると云ふことの緊要なる點は、政府も夙に之を認めて居る所であります、又此の點に付きましては「アメリカ」側からも段々深刻なる批判も受けて居るのであります、そこで政府と致しましては、此の際急速に統計の調査機構、及び運用方法の拔本的改善をすると云ふことに相成りまして、最近閣議に於きまして其のやうな方針を決定致し、そこで適切なる改善案を得て、即時之を實施に移さうと云ふ申合せに相成つた次第であります、其の所で十分に研究致しまして、地方行政の面に於ける統計の改善に付きましても、それに依つて大いに改革が施されるものと期待して居る次第であります、私共と致しましても其の改革案に協力致しまして、只今御述べになりましたやうな趣旨を、一日も早く實現したいと云ふやうに考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=65
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066・佐伯忠義
○佐伯委員 遲くなりましたからもう一、二點で止めます、本會議に於て宮澤委員から質問がありましたが、參與制と云ふものは是は市には參與制を置いても置かなくても宜いと云ふことになつて居りますが、町村には絶對置け、斯樣に規定せられて居ります、町村には成程中には必要な町村もあると考へて居りますけれども、大半は左樣な必要を認めて居りませぬ、町村財政は決して豐かでありませぬ、參與に與へる報酬と云ふものは僅かなものでありますけれども、之にすら實際問題として捻出に困つて居る現況であります、又參與を置いて一々諮問すると云ふことも、結局村會と摩擦が起ることにも相成りまするし、非常に複雜なことに相成つて參りまして、村政を運營する上には無用のものに歸すると思ふのであります、之を市竝みに一つ、置くことを得と云ふ程度に改めて置いて戴きたいと思ふ、尚又、助役を廢した理由と云ふことに付て御伺ひ致します、是は、助役と云ふものは村長が不在の場合にはどうしてもそれを代行する者が居らなければ相成りませぬ、之を置いても宜し置かぬでも宜しい云ふやうなことになつたのでは、村行政と云ふものを眞に内務省が重視して居られるか否か危まざるを得ない、如何に小さい貧弱な町村と雖も、助役がなければどうしても運營が付かぬと思ふ、待遇の如何は問はず、非常に此の責任が重大であることは、町村長の常に感じて居る所でございますから、不在したり或は病氣をしたり其の他の場合に於て、後で責任者がないと云ふやうなことがあつては、國家國政の上に非常な惡影響を及ぼすものと思ふのであります、是は如何なる譯でさうしたことに態態御訂正せられたかと云ふことを御伺ひ致したい、私の意見と致しましては、どうしても從來通り助役は置くべしと云ふことに、元通りにして置かなければ相成らぬと思ふのであります
次に御質問申上げまする點は、知事が官吏であるとか或は公吏であるとか云ふことに付ては、非常に論議が盡されて居ります、勿論私も公吏にすべきであると叫びたいのでありますが、結局是は官吏吏員或は公吏の服務紀律に依つて定まる問題であると思つて居ります、明治二十年に發布された官吏服務紀律と云ふものの第一條に「凡そ官吏は天皇陛下及天皇陛下の政府に對し忠順勤勉を主とし法律命令に從ひ各其職務を盡すへし」斯う云ふ風に明記してあります、又府縣吏員紀律、是は明治三十五年に發布になつて居りますが、是は「第一條、府縣吏員は法令に從ひ忠實に其の職務を盡すへし、府縣吏員は其の職務に付指揮監督者の命令を遵守すへし」、或は第七條には他の營業をしてはならないとか、或は家族にもさうしたことをさせてはならないと云ふことがはつきり書いてあります、又市町村吏員服務紀律の第一條には「市町村吏員は忠實勤勉を旨とし法令に從ひ其の職務に盡すへし」と云ふ風にあります、何れにしても是は此の憲法改正に伴つて改正に相成ると云ふことは疑ひを容れない所であります、地方制度を改正になる今日に於ては、此の服務紀律と云ふことにも十分現在御腹案があることと私は考へて居るのでありますが、之に對して如何なる御腹案を御持ちになつて居りますか、御準備があるかどうか、御答へを願ひたい、是が我々の意のある所に合致致しまするならば、官吏と云ふ名稱であらうと或は公吏であらうと、決して差支へないと私は思ふのであります、結局は此の問題が根本になると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=66
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067・郡祐一
○郡政府委員 初めに御話の町村參與を必置機關に致して居る點でございますが、是は、御承知のやうに、町村の參與は町村内に於きまする各種の施策に關しまする重要事項を審議致しまして、申さば町村内の施策の綜合調整を致すものであります、それで、勿論町村の中には色々差異はございますけれども、概ね生活の態樣は同一性を保つて居る所が多く、端的に言へば、農業を中心と致して居りまする町村と云ふのが、何と申しましても數が多く、且つ分科が激しくない町村のやうな所に於きましては、努めて綜合調整を保ちますることが好ましいのであります、所が國の色々な制度と云ふものが、地域團體でありまする自治體の外に、色色な團體を設けますると、其の間に調整が取れるやうに致して置きますることが一番好ましいことである、斯樣な考へ方で、都市に於きまして都市全體の綜合調整を圖ると申しましても、是は事實上困難であります、大きい町になりますと、都市に似て參る所もありますが、先づ大體論と致しましては、都市とは違つて、町村と云ふのは其の生活状態から見ても、分科の工合から見ても、そこで團體間の施策と云ふものが十分に調整されるならば非常に好ましいことである、斯樣な考へ方で必置機關になつて居るのであります、隨ひまして是が其の趣旨に役立ちますやうに、而も是は團體間の施策の調整でありますから、町村自治體自身の意思の決定とは違ふのでありますから、町村會とも矛盾することがなく運用されることが望ましいと思つて居ります、但し此の運用が十分に行つて居りませぬ所等に付きましては、又それぞれの町村に付て十分事情を調べて善處したいと思つて居ります
それから町村助役を置かないことを得ることに致して居りまするが、是は勿論人口が極めて少い所と云ふやうな特別の事情のあります町村でありまして、現在は町村の吏員數も大分殖えて來て居りますが、曾て統計を取りました際には、町村長、助役、收入役の三役がありました外に、吏員がない町村とか、吏員が一人しか居ない町村とか、町村の中にも隨分色々な種類のものがありました、近頃はそれでも吏員の數が隨分殖えて參りましたが、尚ほまだ可なり小さい町村もあるのであります、助役と云ふものは仰せの通り非常に大事な機關でありまして、一般の町村に於きまして助役が活動する、助役が責任を負ひます所は勿論非常に廣いのでありますが、町村に依りましては又助役が必要でないと云ふ程度にまで簡單な、吏員數も少い所もあり得るであらう、其の爲に道を開いた次第であります、其の場合に於きまして町村長に故障を生じました場合の代理者に付きましては、法律にも町村長が之を指定するやうに致して居りますので、故障の場合の運用は付くだらうと考へて居ります
それから服務紀律の問題でございますが、仰せの通り現在の官吏及び公吏の服務紀律と云ふものは、何と申しましても現在の状況から考へますと時代にそぐはないものがあるのであります、官吏の服務紀律に付きましては、法制調査會で審議を致し決定致す部分でありまするが、公吏に付きましては、御承知のやうに府縣制、市制、町村制に根據を置きまして、命令を以て定めることに相成つて居りまするが、之に付きましても當然官吏服務紀律と表裏をなして改正を致し、國民の公僕であると云ふ思想を十分植付け、滲透を致しまするやうに、改正を加へることに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=67
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068・佐伯忠義
○佐伯委員 もう一點警察官とか或は消防署員の政治活動を禁止することは出來得ない、さう云ふことになつて居りますと、現知事が再び知事の公選に立候補した場合、選擧干渉になるとか、或は偏頗な處置が生ずるとか云ふ、洵に不合理極まる非民主的な事象が起きはしないかと云ふ感じを持つのであります、之に對して内務大臣の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=68
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069・郡祐一
○郡政府委員 警察官等に付きまして、政黨の加入が許されると致しましても、それを以て其の直接の關聯に於て知事が現職の儘立候補致すやうな場合に於きましても、直ちに選擧の公正を害すると云ふことにはならないのではないだらうか、從來知事は選擧事務に關係のある官吏、吏員として、管内に於きまして被選擧權を持つて居りませぬでした、併し選擧の管理事務に付きましては、選擧管理委員と云ふのを此の度設けることに致したのでありまして、一方警察官吏に付きましても、被選擧權の制限を致して居りますが、是は警察執行官吏でありまして、單に指揮權だけ持つて居ります知事に付きましては、此の警察官吏の中に含まれて居りませぬし、根本に於きまして若干選擧の公正を害するのではないかと云ふ疑懼を御持ちになります點も御尤もと存ずるのでありますが、現任知事の被選擧權を制限せずに、寧ろ知事公選の本質に則りまして、民意の存する人材を成べく廣く立候補せしめる、是が公選の趣旨に最も合ふのではないか、それから從來の執行官吏の面として、被選擧權を制限せられて居りませぬ知事に付きまして、既に選擧事務にも關係がなくなつて居る、さう致しますれば現行法に比べて見ても、知事の被選擧權を制限致す理由はなくなつたのではないだらうか、斯樣に考へて居るのであります、殊に法律問題を離れましても、現在知事の立候補に付きましては、十分なる輿論の監視の下に立つことでありますので、左樣に不公正な事態は惹起することはないのではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=69
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070・佐伯忠義
○佐伯委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=70
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071・中島守利
○中島委員長 本日は是で散會致します、次會は二十四日午前十時より開會致します
午後四時三十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00519460719&spkNum=71
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