1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十四日(水曜日)午前十時二十三分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 本多市郎君
理事 松川昌藏君 理事 早稻田柳右ェ門君
理事 永江一夫君 理事 大原博夫君
理事 竹谷源太郎君 理事 丸山修一郎君
岩本信行君 内海安吉君
田邊讓君 細田忠治郎君
松永佛骨君 水口周平君
小野瀬忠兵衞君 鈴木明良君
八坂善一郎君 大矢省三君
大澤喜代一君 堤隆君
宮村又八君 武藤運十郎君
駒井藤平君 伊藤實雄君
中野四郎君 中田榮太郎君
増井慶太郎君
七月二十三日委員細迫兼光君辭任に付其の補闕として磯田正則君を議員に於て選定した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 是より會議を開きます、前會に引續きまして質疑を許します──内海君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=1
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002・内海安吉
○内海委員 本日の新聞を見ますと、民主警察の確立と題しまして、新憲法の司法制度の改革案と表裏一體となつて、どうしても運營の全きを期さなければならぬ警察制度が、内務省の試案として發表されたことは洵に欣快に堪へないのであります、制度上の改善であるとか、或は待遇上の改善であるとか、教養の充實、設備施設の改善、是等は最も時宜に適したる問題でありますが、茲に問題となるのは運營上の改善であります、人權問題として、人權問題の基本的法令として、今まで忌み嫌はれて居りました所の警察犯處罰令や違警罪即決例、或は行政執行法等の法令を、此の機會に於て飽くまで民主化の徹底を圖る爲に全廢しよう、洵に結構であります、併し之に代るべき何等か法制上の、或は制度上、運營上の方法に付て、内務大臣には如何なる御所存を持つて居られるか、此の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=2
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003・大村清一
○大村國務大臣 本日新聞に要領が載つて居ります、警察制度改善の内務省警保局試案なるものは、唯今まで内務省に於きまして色々研究調査を致して居りました事項を、大體一聯の調整を加へましてそれを羅列致し、さうして問題の所在を御諒解願ふと云ふやうな趣旨の下に一應の試案を作つたのであります、固より其の内容は悉く未定稿であります、是は從來のやり方とすつかり方針を變へまして、廣く民意に聽き、又殊に帝國議會の各位の御意見も前以て十分拜聽致しまして、それ等の世論、公論の在る所を出來るだけ廣く承りまして、之を資料として所謂將來の民主警察の基礎を樹てたいと考へまして發表致したのであります、其の發表の成文は午前中に印刷に付しまして、各位の御手許に届けることが出來ると思ひます、其の案の中にも、只今仰せになりました點も觸れて居る譯でありまするが、之を如何に具體的に變へて行くかと云ふことに付きましては、今後十分世論に聽きまして檢討を致したいと云ふ積りで居ります、併し警察の運營を致して行きますに當りまして、違警罪即決例とか、行政執行法とか、警察犯處罰令と云ふ古い法令は、固より民主主義の線に沿つて、拔本的なる改正を加へなければならぬと思ひますが、併し之を全部全廢してしまふ譯には行き兼ねると思ひます、新しい見地に立ちました警察活動の根據法規は新たに作らなければならぬと考へます、尚ほ違警罪即決例の如きも、只今の如き官僚的なる審理を一擲致しまして、民衆的なる裁判に置き替へると云ふことを大體の著想と致して居ります、之に付きましては警察事犯の特別裁判所の如きものを、司法省と打合せの上特設致しまして、諸外國にも例のあります如く、公正に而も迅速に、又場合に依りますれば夜間開廷もやる、或は休日開廷も考へる、「アメリカ」では是が餘程發達致して居ります、警察犯處罰事犯の如きは、忙しい人々が、會社なり役所の執務時間中に裁判をされては非常に迷惑でありますから、日曜にやるとか、乃至は夜間にやると云ふことも、民主的に運營されて居る事例もあることでありますから、さう云ふやうな民衆本位裁判をやる、さうして裁判の公正を期すると共に、成べく早く事件の終結に達すると云ふやうなことも考慮して見たい、此のことも今囘の發表の中には觸れて居る筈であります、只今申上げます如く、變るべき法律案はどうするかと云ふ具體案は今後の問題でございますが、只今申上げますやうな心持の下に、一つ拔本的なる改正を致したいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=3
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004・内海安吉
○内海委員 昨日の衆議院本會議に於きまして、我が黨を代表して大野君より國内治安維持に關する緊急質問が行はれました、勿論此のことは色々御説明の中にも問題は含まれて居りましたが、要するに現在の警察制度に對して積極的になぜやり得ぬか、思切つてけちな計畫を樹てないで、積極的な計畫を樹てて、今日の治安を維持してはどうかと云ふ、謂はば積極的に鞭撻する精神が十分に含まれて居つたと考へるのであります、之に對して内務大臣より詳細なる御説明がありましたけれども、是が運營の方法に付きましては、核心に觸れて居らなかつたやうに考へるのであります、凡そ斯かる問題は、固より制度機構の改革は必要であります、併しながらそれよりももつと重要なものは、其の衝に當る所の所謂人間であります、人材であります、其の人材を得ることが出來ませぬでしたならば、折角の机上に於て計畫された所の制度も、又法律や規定の條文の差替などを幾度繰返しましても、此の運營の衝に當る所の官吏それ自體の頭を切替へなければ、斷じて其の業績は上るものではないのであります、曾て日本の警察制度改革に當りまして、我々の先輩である松井茂博士が、「ドイツ」の警察制度を親しく視察されまして、さうして日本の所謂地方行政の改革の運營の根柢をなす民衆警察なるものを、「ドイツ」を例に取つて、所謂警察相談と云ふ所の本を表はしました、名實共に行政上に於ける法學博士ではありましたけれども、一面警察博士であると言はれるあの松井茂博士であります、此の方が「ドイツ」に留學して、さうして具さに彼の地に於ける「ベルリン」市制を始め、各都市に於ける警察制度を視察して來られて、其の結果日本の警察界の革新に寄與する所は、實に顯著であつたのであります、然るに今日の日本の情勢を見ますると、市町村制に於ても、又警察制度に於ても、凡ゆる文化施設に於きましても、最初は成程「ドイツ」に其の範を取り、或は英國にも模倣し、今日に於ては何も彼も「デモクラシー」、民本主義の思想の本家である「アメリカ」の制度を取入れようとして居るのであります、現在の府縣制の改革は固より、警察制度に於ても、只今内務大臣の仰せの通り「アメリカ」の制度に則つて、飽くまでも民衆警察の實を擧げたいと云ふのであります、併しながら最近十數年來國交思はしからざる結果として、日本の官僚、或は公務に從事して居る者、或は民間の人々も、所謂國交不和の結果、遂に往來は止められて居つたのであります、隨て今内務省で立案せられて居る所の所謂制度及び法制の改革と云ふものは、皆悉く翻譯物か、或は机上「プラン」である、其の魂がない、どうしても是が運營を全うする爲には、内務官吏の少壯有爲にして、將來自治行政竝に警察行政を託するに足る所の人物、之を「マツカーサー」指令部の諒解の下にどしどし「アメリカ」に送つて、向ふの民衆警察の凡ゆる機構に亙つて之を把握するなり、研究するなり、調査するなり、更に地方自治制に於ても、斯くの如き方面に對して詳細に調査研究することが、最も必要だと思ふのであります、此の機會に於て内務大臣は、けちな計畫を樹てることを止めて、積極的に飛躍的に、新進氣鋭の事務官或は其の他の少壯官吏を「アメリカ」にどしどし送つて、具さに向ふの事情を調査研究するの用意ありや如何、之を認むるや否や、又大英斷を行ふ所の勇氣ありや如何、此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=4
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005・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねに當りまして御述べになりました點に付きましては、私共も全く御同感に考へて居ることであります、又我が國の司法制度、警察制度を民主化する上に於きまして、諸外國殊に北米合衆國の民主主義の運營の實際を見學する、さうして之を他山の石として、我が國の國情に即して、其の長を取入れ、又我が國の短を捨てると云ふことに付きましては、是非やらなければならぬことと、其の必要を痛感致して居る次第であります、只今内務行政に於きまして色々の改革案を練つて居るのでありまするが、併し其の資料と致します所は、僅かに諸外國の文獻に據つて居るに過ぎませぬ、而も其の文獻たるや、何れも數年乃至十數年古いものでありまして、日進月歩の今日に於きましては甚だ心許ないものがあるのであります、偶偶最近に於きまして私共接觸を致して居ります進駐軍の好意に依りまして、二、三の最新の資料も提供されて居ります、僅かに一、二册の書物でありますが、内務省に於きましては之を引張合ひの上で耽讀をして居ると云ふやうな、洵に心許ない憐むべき状態にあるのであります、百尺竿頭一歩を進めまして、向ふに參りまして廣く資料を渉獵し、又深く實際に付て研究調査をすると云ふことは、是非ともやらなければならぬことであります、此のことに付きましては私共豫てから其の機會を與へられんことを切願致して居るのでありまするが、何に致せ未だ諸外國との交通は一切遮斷されております、又講和條約等も何時締結されますか、それすら時期を豫定されないと云ふやうな時期でありますので、現状に於きましては甚だ遺憾でありまするが、其の目的を達することが出來ないのであります、併し今後凡ゆる機會を捉へまして只今のやうな状態から脱却を致し、逸早く優秀なる官吏を、亦民間人を「アメリカ」其の他に送出しまして、我が國の民主化の上に於きまして貴重な資料を得たいと云ふやうに考へて居ります、此の點に付きましては單に此處で御答辯申上げるだけでありませぬで、今後此の點に付きましては出來るだけの努力を致す機會が、一時も早く來るやうに努めると云ふことを、御公約申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=5
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006・内海安吉
○内海委員 只今内務大臣の御答辯に依りまして、其の御精神は能く分りました此のことは獨り我が地方制度に寄與するのみではなく、全く國交親善の上に於て最も有意義なる働きをなすものと信じますから、是非とも具體的案を立てられまして、一日も速かに各省に率先して實現されんことを希望するものであります
次に今我々が審議して居りまする地方制度改正實施後に於て、御承知の如く今年の秋に於ては先づ第一に縣會議員の選擧があります、第二には市町村會議員の選擧があります、第三には縣知事の公選があります、更に市町村長の公選と云ふが如く、實に十指を折れども尚ほ足らぬと云ふが如き、選擧に次ぐに選擧を以てすると云ふ現状なのであります、御承知の如く敗戰後の日本の姿、日本人の思想は洵に混沌たる状態にありまして、本當に一觸即發の現状にあると言つても宜いのであります、而も此の時に當つて特に食糧問題や「インフレ」問題、或は失業問題、戰災問題と云ふが如き、凡ゆる社會政策的にどうしても押へなければならぬ所の問題が山積して居ります、此の機會に於て、全國一齊に此の秋十數箇に亙る選擧が行はれると云ふことは、恰も此の思想方面の此の間に乘じて、何か事あれかしと待つて居る人々の所謂逆用に供せられ、或は逆宣傳に用ひられ、或は地方自治攪亂の手段に供せられると云ふが如きことがありましたならば、是は由々しき所謂大問題が突發しないと云ふことは保證せられないのであります、此の機會に於て、内務省は是が善後措置として、豫め何等かの方法を以て斯かる騷動、斯かる混亂の起らないやうに防止する對策に付て、御考へがありまするならば此の際承つて置きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=6
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007・大村清一
○大村國務大臣 今囘提案致しました地方自治制度の民主化に關する諸改革は、我が國の從來の自治制度の進展と照し合はせました時に、餘程思ひ切つた、二歩も三歩もと申しますよりも、五歩、六歩も進んだ改革が加へられて居ると信ずるのであります、固より民主化の點に於きまして、今直ちに悉くの點に於て決定をすると云ふ程度には至つて居らぬと思ひまするが、併し餘程進歩的のものなりと確信を致して居るのであります、此のやうな大革新を制度の上にやりまして、果して是が實際の上に於きまして、旨く運用されるや否やと云ふことに付きましては、御話の通り餘程の用意と覺悟とを以て臨まなければならぬことと思ふのであります、併し曩に實施せられました選擧權の大擴張、及び民主主義の線に沿つての選擧と云ふやうな點に付きまして、世間では其の結果に頗る危惧の念を懷いた者も少くなかつたのでありますが、選擧の結果は、豫想外に日本國民は民主政治の運營に參加して、他の先進國に對して決して優るとも劣らざる結果を收め得たのであります、是は國民諸君の自覺と努力に依ることであります、又一面に於きましては民間有識者又世を憂ふる人々の、陰に陽に、非常な配慮と努力をされました結果でありまして、あのやうな事態を囘想致して見ますると、地方制度の改革後の運營に付きましても、さう先を暗く見る必要はない、大いに期待をして宜しいと云ふやうに考へて居る次第であります、實は警察權を持つて居ります、又選擧の取締に當つて居ります内務省と致しまして、先囘の選擧に於て所謂公民教育、政治教育と云ふやうな點に於きまして主導權を執りますることは、選擧の公正を害するやうな間違ひが起らないとも限らないと云ふやうに考へまして、是等の點に付きましては、「イニシアティーヴ」は文部省に於て取ることに致し、内務省は其の文部省の定めたる方針を、側面に於て援助すると云ふやうな立場を執つて來たのであります、今後に於きましても、やはり其の方針は維持した方が宜いであらうと云ふやうに考へて居りまするで、併し文部省が主動的に政治教育、公民教育に乘出すことに付きましては、我々は全力を擧げて之に協力をする積りであります、又公民教育、政治教育の如きことは、中央政府が指圖をする、指導をすると云ふことでは其の效果が擧らないのでありまして、之に付きましては何れ地方制度の改正に依りまして、地方廳は大いに民主化されることでありますし、公選知事の下に、地方の自發的なる、鋭敏なる活動を期待して已まないのであります、又單に府縣廳の活動と云ふことに止まらず、民間團體、殊に現在自治的に發達致して居ります所の市長會、町村長會、其の他民間に、段々我が國の政治を改善する上に於きまして自治振興の線に沿うて努力せられて居ります所の團體もあることであります、是等の自發的なる活動に依りまして、地方住民が大いに政治に目覺め、公民としての責務を果すに付ての自覺と責任とを喚起して來ると云ふことは、最も望ましいことであります、又段々と我が國の社會が、政治的に民主化の風潮が進んで參りますると、此の點に多大の期待を掛け得ることと信ずるのであります、内務省と致しましては、是等の點に付きまして絶大の期待を掛け、又及ぶ限りの努力と協力とを致す積りで居ります、以上御答へ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=7
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008・内海安吉
○内海委員 御努力なさると云ふことは洵に結構でありますけれども、單に今年の春行はれました衆議院議員選擧の結果より見てのみ、此の地方選擧と云ふものを安易に斷定を下す、所謂樂觀されることは、餘程是は御考へを要することぢやなからうかと考へるのであります、此の點十分御注意を願ひたいと思ひます、更に町村運營の基本條件である所の町村財政の窮乏枯渇の状態は、既に御當局に於ても能く御認めになつて居られる所であります、私は此の際町村の所謂財政面、經濟面の飛躍的運營確立の爲には、單なる租税收入や、或は分與税を以て之に求むると云ふことは、斷じて出來ないのではないかと考へるのであります、現行町村制第二條には町村自治の根本的規定が掲げられて居る、之に依りますと、「町村は法人とす官の監督を承け法令の範圍内に於て其の公共事務竝從來法令又は慣例に依り……町村に屬する事務を處理す」、是が現在の町村に於ける仕事其の他一切を含めたる所の原則の規定なんであります、是が今日の町村の本體であります、實に簡單にして無味乾燥なんであります、明治二十二年に我々が最も尊敬して居りました山縣公が、内務卿として町村制を發布せられました時に、記憶もして居りますが、「村人が共に誠を盡すこそ國の光りの基ひなりけり」、國の所謂基礎は村にある、是は中央報徳會や或は「市民」等の雜誌に於て、能く市町村に宣傳せられた歌であります、誠の心の結集でなければならぬ、どうしても地方制度の改革に當つては民意の存する所を十分酌み取つて、さうして情味のある納得のある所の立法でなければならぬのであります、唯徒らに一片の所謂翻譯物や、或は文獻等に依る條文の切替や何かでは絶對にいかぬのであります、要するに村人全體の誠の心を如何にして結集するかと云ふ所が、即ち此の自治制度に對する狙ひ所でなければならぬのであります、で、私は憲法に於ても今日色々な點から民權、人權問題や、或は自治制問題に付て論議されて居る此の機會に於て、町村制第二條の第一項、第二項、第三項と云ふが如き規定を設けて、町村の自治體に於ける所謂權利、職務と云ふが如きものを具體的に列擧されてはどうか、御承知の通り今日町村に於ける此の窮乏を打開しなければならぬとする所の一つの癌は、住民と密接不可分の關係にある産業組合の如き、漁業會、水産會の如き、或は各種の經濟團體の如き業務を擧げて、此の際思切つて町村の行政に統合してはどうか、さうして自然に盛上る力を自治制の上に反映せしむることにしたらどうか、此の點であります、即ち現在の市町村制を改正致しまして、總ては役場中心主義で行く、農林省の所管であるとか、或は商工省の所管であるとか云ふが如き變てこな組織を村に存在させて、徒らに相剋摩擦をさせると云ふことは、果して民主主義に適合するかどうかと云ふ點も十分御考へになつて、さうして是等の諸團體を村役場に統合すると云ふ、所謂具體的基本條項を明記されたらどうか、是なんであります、此の事は單り自治運營上萬難を排して斷行すべき問題であるのみならず、圓滑なる自治の運營の確立、生産増強、供出勵行など、國政運營の徹底の觀點からしても、絶對不可缺の條項であると考へらるるのであります、内務大臣は自治の進歩的飛躍的民主化を期せんとするならば、先づ與へよ、さうして明示せよ、然る後に求めよ、是が私の自治に對する要望なんであります、此の點に對して内務大臣は如何なる御見解を持つて居らるるか、承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=8
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009・大村清一
○大村國務大臣 仰せの如く、地方自治制度と云ふものは、單に法律關係の上に是が旨く運營されるものではございませぬ、住民の隣保團結と申しますか、隣人愛と云ふ所に基調を置かなければ、完全なる運營の出來ないことは洵に當然のことでありまして、今後地方自治の發達を所期致します上に於きましては、御尋ねになりました誠と云ふことを基本としなければならぬことには全然同感であります、尚又此の隣人愛なり、誠の實踐の上に於きましては、町村役場が町村民生活の凡ゆる中心になつて行くと云ふことも全く御同感に存ずる所であります、今囘の地方制度改正は、憲法の改正と同時に之を行ふことに致しまして、他の農林、商工、教育其の他の諸制度の改革に先行致しましたやうな關係から致しまして、只今の理想を實現することの配慮が洵に不十分であります、此のことも卒直に私は是認せざるを得ない所であります、併し今後我が國の政治の民主化が徹底致しまするに伴ひまして、内務省が所管致して居ります所の、所謂國政事務の如きも、逐次府縣市町村に大幅に委讓すべきものと思ひます、是は私の所管にあることでありますから、既に御覧に入れて居りまする警察制度の改革草案の構想に於きましても、其の趣旨が相當明瞭に現はれて居ると思ふのであります、今後其の線に沿うて諸般の改革を續行する積りであります、又關係各省の所管事項に付きましても、新時代の要請に基きまして、其のやうな措置が執られることを確信致し、又其の措置が執られるやうに、内務省と致しましても努力致す積りであります、唯是等の問題は抽象論と致しますと洵に當然なことではありまするが、實際の面に於きましては、現在の我が國の國情、社會状態、産業状態、又從來の沿革と云ふやうな錯綜した諸事情がございますので、一擧に之を解決することは、實際問題として困難であらうと思ひます、併し地方自治の發展と云ふことを考へますと、洵に重要なことでありますので、今後内務省と致しましては、此の點に大いに努力を致して、さうして民主主義化に對しましては、單に形式のみならず、れそに實を伴はせると云ふことに努力致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=9
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010・内海安吉
○内海委員 是非其の點御努力を願ひたいと思ひます、尚ほ私の質問に關聯致しまして、去る六月東京に開催せられました全國町村長會議決定事項として數箇條受けて居るのであります、隨て是も私が只今質問致しましたる要綱と大體に於て差はありませぬから、只今の内務大臣の答辯を以て先づ大體盡したと思ひますから、此の點は差控へることに致します、尚ほ公民教育、政治教育の問題に付きましても、是れ亦先程併せて御答辯がありましたから、此の點の質問を差控へることに致します
それに次で御聽きしたいことは、所謂自治精神の作興であります、改正案の自治住民の權利義務及び教育の面に於て、義務は僅かに負擔を分擔する義務を負ふとあつて、義務の面が洵に輕視されて居る、凡そ權利の存する所には必ずや義務が附きものである、さなきだに民主主義、自由主義を曲解し、我は故意に濫用し、或は之に便乘し、利己的權利要求に狂奔し、義務協力奉仕を忘れ勝ちの今日であります、殊に今日の所謂敗戰日本の姿は、食糧難、インフレ、失業、戰災、企業中止など山積して、思想混亂を來して居る状態である、一たび此の施策を誤らんか、一朝にして所謂政治的には成功しても、經濟的には有血革命が勃發せんとする現状であります、而も洵に重大なる危機に際して居るのであります、國家の基盤たる地方自治住民に理解ある積極的協力を振起せしめる爲に、所謂自治精神の作興とも言ふか、是等に對する内務省の御見解、内務省の施策は如何なる方法を以て臨まれるか、御所見を承りたいものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=10
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011・中島守利
○中島委員長 一寸御斷り致して置きますが、内務大臣は據どころない公務の爲に、暫く御退席であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=11
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012・郡祐一
○郡政府委員 地方制度に於きまして、權利と共に義務が強調致されなければ相成らぬことは、洵に仰せの通りであります、此の度の改正案に町村民の直接參政等に關しまする各般の權利を規定致して居りまするが、是は當然に高度の義務を伴ひまして、權利を與へられますと同時に、それを正當に執行致し、濫用致すことは當然許されない高度の義務を併せ持つものであると考へるのであります、而して其の點に付きましては只今御指摘の通り、自然精神の作興と云ふことが、事の根本に相成ると存ずるのであります、先程大臣の答辯にも觸れて居られたのでありまするが、先づ以て町村民自體に自治精神と云ふものを強力に注ぎ込まなければ相成らぬ、此の度文部省が各省の協力を得まして、公民館の設置を急いで居りますが、斯の如きはそれ等の機關として洵に適當なものだと存ずるのであります、各種の市町村に關係致します團體と連繋致しまして、又切に希望して居りますことは、町村民等を對象とする文書に依りまする自治精神の徹底、即ち新聞紙の如きものが發行致されますならば、洵に望ましいのではないだらうか、或は市町村長等の關係致されます各種の團體でありますとか、或は政黨等に依りまする自治精神の自發的な徹底──世上地方自治と政黨との關係に付きまして、地方自治の獨立性を論ぜられる場合が多いのでありますが、同時に又良い面から致しまして、政黨の啓發力と云ふものが、町村の隅々までに屆きますことは、現在の民主主義日本と致しまして洵に望ましいのではないだらうか、それ等の御力を十分に借りたいと思ふのであります、而して曩にも御述べになりましたやうに、事務的方面でも、選擧等を差控へまして市町村は多忙な状態にありますので、是は内務省と致しましても選擧の機會に、或は地方制度の御協贊を得ました後、それぞれの部分の施行の段階に至りました際には、それぞれの部分に付きまして、事務的な普及徹底と云ふものを強力に圖つて參りたい、是が爲の講習、講演、實地指導を強力に致さうと思ふのでありますが、其の場合に併せて可及的に廣く各種の團體と役所と合體致しまして、直接市町村民に呼び掛ける方策を講じたいと思ひまして、只今計畫を樹てて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=12
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013・内海安吉
○内海委員 是非さう云ふやうにやつて戴きたい、次に本會議竝に委員會に於ても屡屡質問せられた所でありますが、解職權の問題であります、解職請求權が僅かに住民の五分の一、即ち全住民の二割の署名に依つて解職請求權が法的に成立することになつて居る、若し是が日常鬪爭を以て專念する所謂一黨一派、或はそれぞれの組合等の黨勢擴張や組合擴大の具に惡用され、事毎に問題が發生して、自治古來の美風が混亂化さるるならば、自治體の安定性と云ふものを求むることは極めて困難ではないか、或は惧るるのであります、十數年前、不幸にして全國一萬二千の市町村中、偶偶發生致しましたる所謂役場派、非役場派的鬪爭が再燃する禍根となりはせぬか、此の點に付ては内務大臣よりは何等御答辯がなかつたやうでありまするが、此の機會に於て地方局長より詳細に述べて戴きたいと思ふのであります、即ち上からは地方事務所、府縣、内務大臣の事實に於て三次の監督を受け、横からは縣市町村會の不信任決議、住民の解職請求權の包圍攻撃を受けたならば、誰か安心して其の市町村長に晏如たるものがあるか、全く是は嵐の中に立つて無援孤立の、機械的な所謂市町村長と云ふことになりはしないか、斯うなつた時に於て、一面に於ては徳望高い學識經驗ある人物は皆去つてしまつて、其の市町村長其の他の人物の低下と云ふことは、どうしても免れ得ない結果になりはしないかと思ふのであります、此の點に付て私は最も懸念をせられるのでありますが、此の解職權問題に付てもう少し率直に徹低したる御答辯を願ひたいのであります、更に強いて此の案を固執せんとするならば、現在の五分の一と云ふ所の規定を修正して、三分の一程度に修正するに同意するの意思なきや否や之を簡明率直に御答辯願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=13
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014・郡祐一
○郡政府委員 解職請求制度を設けましたのは、市町村長等を直接選擧と致し、そこまで住民の直接參政の途を擴げまするならば、又其のことが地方自治の民主化に最も效果があるのだと云ふ判斷を致しまするならば、併せて又解職請求と若干の請求權を認めて居りまするが、是と一連をなして考へるべきことではないであらうか、斯樣に考へるのであります、仰せのやうに權利のみを考へまして義務の方を忘れまするやうな場合には、不安な事態も亦考へられないではないのでありますが、先づ其の手續に於きまして、相當是は一方では他人の名義を僞りまして署名し、請求すると云ふやうな不正を防止する意味合もありますが、手續を相當嚴重に致しますので、それ等の點でも徒らなる請求權の發動と云ふことは、或る程度防止されるのではないであらうかと思ふのであります、根本と致しまして從來市町村長等の解職と致しますれば懲戒解職があり、是は職務上の義務違反の場合に起るのでありますが、其の他に市町村長の所謂不適當解職と云ふ途があつたのであります、是は事柄自體として、洵に制度として好ましくないことで、隨ひまして此の度之を廢止致したのであります、左樣に致します場合に、市町村長は市町村民の輿望を擔つて、直接に全市町村民の強力なる背景を持ちまして選出されるものであります、是が前提と致しまして相當強いものであると、私共としては考へて居るのであります、此の場合に五分の一の請求に依りまして非常に市町村長が不安定にされるだらうか、是は監督官廳が其の監督權の發動を促すものでありますが故に、監督官廳が儼とした基準を以ちまして其の事柄に當ります場合には、即ち請求權に依りまして、正當の理由ありと致しまして、監督官廳が解職致す場合は、明瞭に之を監督官廳に於て限定をして置きますならば、請求權を假に濫用致さうと致しましても、それ自體が多くの效果を發生致しませぬが故に、事柄は左樣に激しく起つて來ることはないのではなからうかと思ふのであります、然らば監督官廳が如何なる場合に於て請求を正當なりと認むるであらうかと云ふことになりますと、是は今後の問題に屬する部分もあると思ふのでありますが、今日考へますと市町村長と市町村會等の間に對立抗爭がありまして、而も其の非が市町村長側にありますやうな場合、或は市町村長が犯罪事件に依りまして起訴せられ、或は之に準ずる位重大なる腐敗と申しまするか、瑕疵が市町村長にあります場合、或は長期缺勤其の他の事情に依りまして、市町村長が事實上職務を行ひませぬにも拘はらず、其の職に留まつて居りますやうな場合、斯樣な場合に限りまして解職權請求を是認するやうなことに扱ふことに相成るだらうと存ずるのであります、隨ひまして斯くの如き監督權の發動を促すだけに止まるものでありますが、故に五分の一程度の數を以て足りるのではないであらうか一般投票に依りまして決する場合と非常に趣きを異にして居ります、が故に、其の數と云ふのを非常に──非常にと申しますか比較的に高める必要は先づないのではないだらうか、是が今日考へて居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=14
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015・内海安吉
○内海委員 只今の御答辯に依りますと、殆ど私の質問致しましたやうな惡い結果は見出すことが出來ないやうに御見受けになつて居るやうであります、凡そ法律や制度の改廢を斷行する場合には、徹底的に廢止するか、それとも、撤底か廢止の兩面に立つて、さうして善いか惡いかと云ふ反面の、所謂此の法律制定の結果、其の影響する所は斯うであると云ふ所を、綜合的に、兩面的に檢討してこそ、初めて立法の全きをなすものであると考へるのであります、然るに只今の御答辯に依りますと、さう云ふやうな懸念はない、大體内務省に於ての判斷では斯うであると云ふだけでは、私は此の改正には滿足が出來ないのであります、要するに廢止か撤底かであります、此の際に於て、而も根本的に民主化せんとする地方制度改革に當つては、飽くまでも此の方針に則つて立法の全きを來さなければならぬと思ふのであります、只今の御説明では滿足は出來ませぬ
次で選擧區制の問題でありますが、縣會議員の選擧區制は現行法に於ては市及び郡單位になつて居ります、是は我が東北六縣會の縣會役員全體の希望として最近送つて參りましたる其の決議に依りますと、過去に於ける縣會の所謂選擧の區制の運營は、郡竝に市を單位とする方が極めて便利である、然るに此の現行法を改正して地方事務所を單位にしなければならぬ理由は何處にあるか、私は地方事務所なるものは寧ろ内務大臣初め政府委員諸君の言はるるが如く、今日に於てはさう云つたやうな官僚の臭ひのするものさへ取除きたいと云ふ理想を持つて居られる、所謂民主化の徹底を説いて居られる、斯う云ふ際であるならば、地方事務所の如きは所謂官僚軍閥の所産であつて、斯う云つたやうなものは徹底的に廢止してしまふ、さうして民意より盛上つたる、從來の運營に於て大した不都合のなかつた、郡及び市を單位とする所の選擧區制にして差支へないと思ふのであります、而も我々の東北六縣下に於ける民意は之を以て適正なりと主張して居る、然るに此の聲も聽かず、何故に之を地方事務所單位とせられたか、重大なる理由があるのか、其の理論的根據を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=15
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016・郡祐一
○郡政府委員 只今御話がございましたやうに、府縣會議員の選擧區を昭和十八年郡の單位から地方事務所單位に改正致したのでありますが、其のことに付きましては、此の度の改正では其の儘に致して置いたのであります、郡が地方々々に依りまして、郡制竝に郡役所廢止後も依然として尊重すべき沿革を持つて居ることは多々認めるのであります、併しながら全體を通じて見ますると其の後に於きまする交通、通信系統の發達の結果、必ずしも適當でないものがあるやうに見受けられるのであります、又其の後に於きまする市制施行等の爲に、郡に依りましては、極めて僅かの町村數、人口しか包容して居らないものもあるのであります、それで地方事務所自體の存否に付きましては、色々な御議論のありますことも、能く承知致して居るのでありますが、唯府縣の中に於きまして、一定の行政を致します單位と致しましては、自ら運營上適當なものがある、其の單位と致しましては、寧ろ地方事務所の管轄區域の方が便宜なのではないであらうか、而も是は、其の地方の各般の經濟、交通等の事情を斟酌して居りまするが故に、地方事務所の管轄區域と云ふものを、頻繁に異動致しますことは殆ど致して居りませぬ、其の爲に一應人口に於ても平均致して居り、又選擧事務等を執行致しまする爲にも、一應地方事務所と云ふ機構がございますと、其の單位で運營を致しますることが、諸般の點に於て便宜でございます、色々地方事務所に付ては論はございますが、地方事務所の行政と云ふことにも今日相當慣熟した程度になつて居ると思ひますので、郡を此の單位と致しますよりは、地方事務所を單位に致しました方が適切であらうと云ふ前囘の改正の趣旨は今後も踏襲致しまして、此の度の選擧に於きまして是が成績を見ることに致して見たいと考へる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=16
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017・内海安吉
○内海委員 十八年に縣會の選擧單位が改正せられたのだと仰しやいますけれども、それならば尚更のことであります昭和十八年は大東亞戰爭の眞最中であつて、是は官僚、軍閥が無理國に民に押付けた所の制度でありますから、此の時代に立法せられたるものは、本當を言ふと根本的に廢止を要求するのであります、十八年の戰爭眞最中に於て適當であつたもの必ずしも今日に於て適當であるとは言へませぬ、私はやはり此の問題は市及び郡單位とする選擧區制は妥當であると考へるのでありますが、此の點は意見の相違でありまするから追つて又述べることに致します
次に基本的人權の問題であります、改正町村制の第十二條第二項に於て、選擧權の缺格條件が規定せられて居る、之に依ると六年以上の懲役又は禁錮以上の刑に處せられたる者は選擧權を與へられないことになつて居ります、即ち恩赦に浴した者も、減刑に浴した者も何等明記して居りませぬ、單に六年以上の懲役又は禁錮に處せられたる者は選擧權、被選擧權を與へられないことになつて居る、衆議院議員選擧法に於ては、現に十數年監獄に入つて居つて戻つて來たばかりの人々が選擧權あり、被選擧權ある今日にも拘らず、町村自治體に於ては、六年以上の懲役又は禁錮に處せられたる者、其の恩赦に浴すると如何とに拘らず、選擧被選擧權問題に付ては何等の規定はない、是は地方住民の基本的人權に關する問題であつて、而も此の事務取扱を町村役場に付て見ますると、六年以上の禁錮又は懲役の刑に處せられたる者は、假令恩赦の恩典に浴しても、やはり缺格者と見做して居る、其の事務の取扱はまちまちであります、此の機會に於て此の六年以上の刑罰と云ふ點に對して明瞭な答辯と、更に又何等か此の十二條第二項の規定に、但し恩赦又は減刑に浴したる者は此の限りにあらずと云ふやうな條項を加へることが絶對必要ぢやないかと思ひますが、此の點に付ての當局の御所見は知何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=17
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018・郡祐一
○郡政府委員 恩赦令に依り、大赦に依りまして刑の言渡が效力を失ひまする場合、或は特赦に依りまして刑の言渡が效力を失ひまする場合、是等の場合に於きましては、十二條の適用外に相成りまするので、十二條には該當致さぬことに相成るのでございます、特赦に依りまして刑の執行を免除せられまする場合、是は執行の免除だけでございますから、此の場合には該當の問題が起つて參ります大赦又は特赦に依りまする刑の言渡が效力を失ひます場合には、地方自治體の選擧に付きましても何等支障のないことに相成る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=18
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019・内海安吉
○内海委員 大體分りましたが、やはり斯う云ふ問題は町村役場の國民學校を出た程度の吏員の方々が解釋をまちまちにして居りまして、取扱上洵に遺憾な點が多いのでありますから、やはり斯う云ふことは條文の上に、但し是れ是れは斯うだと云つたやうなものを御設けになる方が適當でないかと考へられます、私の質問は之を以て終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=19
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020・中島守利
○中島委員長 宮村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=20
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021・宮村又八
○宮村委員 縣知事の立候補に付きまして、現知事が立候補をする場合、之に付て御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=21
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022・郡祐一
○郡政府委員 選擧管理委員會に於きまして選擧事務を執行することに相成りまするので、隨ひまして選擧事務に關係ある官吏でなくなりまするが爲に、現職知事の立候補は法律上可能になる譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=22
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023・宮村又八
○宮村委員 して見ますと、現縣知事が立候補致しまして、さうして其の配下に居られる人方との關係、斯う云ふ意味からしまして、他から立候補して出た場合、此の縣知事の候補と其の他の候補者の間に、正しい選擧が行はれると思はれますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=23
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024・郡祐一
○郡政府委員 御話の點は現職知事が立候補致します場合に、不當な勢力を選擧の管理事務等を致しまする者に與へることがありはしないかと云ふ御考へかと存ずるのであります、既に知事の立候補を致しまする場合には、之に對する輿論の監視と申しまするものは十分に存在するものであります、それから選擧事務に關係致しまする官吏吏員に付きましても、それぞれ法の規定がある譯でございます、隨ひまして立候補者中の一人が現職の知事であつたと致しましても、其の爲に不當な影響力を及ぼすと云ふことは事實上許されない、事實上左樣なことを行ひますることは不可能であらうと考へて居ります、若し不當な勢力を及ぼすやうな場合に於きましては、是は別途の措置が當然講ぜられることと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=24
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025・宮村又八
○宮村委員 今までの選擧の事情から考へますれば、假りに右の黨と左の黨とあつて、若し知事に其の右黨に關係があれば、理窟なしに反對の黨は壓迫されて目的を達し得られないことが多多ある、又今日までの地方民の選擧に對する無自覺なことは爭はれぬ事實と思ふ、斯う云ふ見地から、現職知事の立候補者に對し何か監督する方法はないものであるか、御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=25
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026・大村清一
○大村國務大臣 地方制度の上に於きましては、今囘の改正に依りまして、現職知事も立候補差支なしと致すことが、地方制度の將來の運營上適切と考へて居ります、唯官選知事が公選知事に移り變る場合の官選知事の立候補に付ては、實際問題として餘程周到な注意を加へませぬと、選擧の公正を害するやうな虞があるやうに考へられます、此の點に付ては深甚の考慮を加へて、誤りのなきを期する積りであります、斯う云ふやうに抽象的に申上げましてもはつきり致しませぬが、一、二具體的に申上げて見ますと、官選知事が立候補致した場合に於て、職務を抛擲して選擧運動に沒頭すると云ふやうなことは一切させないやうに致す積りであります、又現職官選知事が將來の立候補を豫想致しまして、職務上の地位を利用すると云ふやうなことがありますれば是は嚴に取締る積りでありますが、程度が過ぎたならば斷乎たる處置を執る方針で居ります、尚ほ選擧管理委員會を設け選擧事務の運營に付ては知事は責任を持たぬ、のみならずそれには一切干與させない、選擧管理委員會に於て選擧事務を完全に管理すると云ふことに付て、格段の注意を拂ふ積りであります、此の官選知事から公選知事に移り變る場合に於ての官選知事の立候補に付ては、先に申上げたやうな抽象的な方針を、只今申上げたやうな具體的なことで誤りなきを期する積りであります、尚ほ他にも注意事項があらうと思ひますが、それ等の點に付ては深甚の注意を拂ひまして、苟くも選擧の公正を害する虞れのないやうに十分な注意を加へて行く積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=26
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027・宮村又八
○宮村委員 私は、斯うした選擧管理委員などを設けられて居るけれども、それのみでは縣住民は滿足し得ないと考へます、之を民間から監督をするやうな機關を設ける譯には行かないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=27
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028・大村清一
○大村國務大臣 選擧管理委員會は府縣民を代表して出て居ります府縣會に依つて選任をすると云ふ方法を講じて居りますので、民間で監督する實が是で上がるかと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=28
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029・宮村又八
○宮村委員 私は知事の公選に依りまして、さうして公吏でなく官吏であると大臣は言はれました、其の意味に於て日本の思想界に大影響を來す、斯う云ふことを考へました時、私は是が逆效果を來しはしないかと憂へるのであります、なぜかなれば、今日まで長い間資本主義下にありまして、殆ど選擧民は金に依つて買收され、或は物に依つて買收されて來た選擧民が──未だ自覺しない立場にある人が澤山あると考へます、斯う云ふことを考へます時、果して其の選擧民の人方が本當に納得の行くやうな知事が公選されるであらうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=29
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030・大村清一
○大村國務大臣 過去に起きまして選擧に暗い翳が伴うて居ると云ふやうなことは絶無ではなかつたと思ひまするが、併し民主主義政治を打建てる上に於きましては、公正なる選擧に依つて其の民主主義政治の運用の衝に當ると云ふことは絶對必要なことでありますので、時に暗い翳があつたと致しましても、今後選擧民の自覺に俟ちまして、公正なる選擧をやると云ふ積極的な考へで進むより外はないものでありまして、又民主主義に順次目覺めつつある我が國民に於きましては、必ず公正なる選擧の運營に付て自營と責任を以て進むことに期待を持ち、又さうなることを私共は信じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=30
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031・宮村又八
○宮村委員 分りました、知事が官吏になりまして、私は其の知事の思ふことがなし得るかと云ふことは、今日未だ憲法も出來ない──憲法が出來れば又地方制度の會議が二囘も三囘も行はれると云ふことに對して國民はどう思ふのであるか、之を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=31
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032・大村清一
○大村國務大臣 一寸御尋ねの趣旨がよく呑込めないのですが……併し大體分つた積りであります、公選されました知事は地方公共團體の長と致しまして、公選知事として全權を持つことは勿論であります、併し現在の我が國の國家、法律制度が國家の官吏に依つて運營された所の行政上の面を澤山に殘して居ります、是等の諸制度は、追つて漸次民主化の線に沿うて地方公共團體に委讓されると云ふことになるのでありませうが、それが完全に委讓されましたならば、固より公選知事が公選知事として其の全權を持つ譯であります、併しそこまでに參りませぬ間の繋ぎと致しまして、公選知事に官吏と云ふ身分を併せ附與致しまして、そして現在國政事務として殘つて居ります部面を掌理せしめると云ふ趣旨に外なりませぬので、公選知事を官吏にすると云ふ點に於て重點がある譯ではありませぬ、公選知事の持つて居ります民主性を活用致しまして、暫くの間國政事務に付きましても官吏として之を掌理する權能を附與すると云ふ、是は附帶的なものと御承知を願ひたいと思ふのであります、其のやうに御考へを願ひますれば、暫定的と云ふやうな點は寧ろ考へられないのではないかと考へます、尚又憲法の改正は近く實現するでありませう、併し今囘の地方制度改正案に於きましては、憲法草案の精神を十分に參酌致して立案を致して居りますので、憲法が成立したからと云つて、直ちに地方制度の方に其の主要なる事項に付て改正を要するもの──さう云ふ事項はないと思ひます、唯憲法改正に伴ひまして、例へば、度々申上げることでありますが、行政裁判所に出訴することが出來ると云ふ現在の地方制度上の規定が、行政裁判所の廢止に伴ひまして、之を民事裁判所、司法裁判所に出訴することが出來ると云ふやうな、他の制度の改正に影響を受けましての部分的改正と云ふやうなことは、最近の機會にも行はれることと思ふのであります、尚又日本の民主政治が段々發展して參りまして、今囘の改正に依つたものでは民主政治の發達成長に、今日の改正制度では不十分だと云ふやうな時期になりましたならば、更に第二次的の地方制度の改正と云ふことも、是は將來に豫見されることであります、併し憲法改正の結果直ちに本質的な、内容的なものを改正しなければならぬと云ふやうな事情はないものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=32
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033・宮村又八
○宮村委員 私の此の知事の官吏と云ふことに付きまして國土上の關係から御尋ね致します、今日田舍の方に行つて見ますれば、殆ど思想とか或は食糧と云ふ問題は話を聞かない、食糧問題が起るのは東京其の他所謂大部分都市であります、それで今日都市が斯う云ふやうに食糧問題がやかましいと云ふことを考へました時に、都市の膨張と申しますか、都市への集中と云ふことは非常に考ふべきことではないか、斯う云ふ意味から是は地方制度改正と俟ちまして、若し開拓とか開墾するやうなことがあれば、そんな所に建築をして、そして都市から地方に分散するやうな御考へは出來ないのであるか、其の點に付て伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=33
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034・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねになりましたことは、我が國に於きまして適切なる國土計畫を樹て、其の計畫に基いて各般の行政の運用をやつて行く、又産業の配置もやつて行く、或は又人口の都市集中の一つの原因であります所の教育機關の地方分散をやると云ふやうなことは、我が國再建の上に於きまして、是非研究を致し實行しなければならぬことであつて、是は我が國の輿論になつて居ると思ひます、政府に於きましては近く國土計畫調査委員會と云ふやうなものを設けまして、只今仰せになりましたやうな趣旨を實現するに付きましての諸般の調査と立案を致し、之を實際に移すことに致す所存で居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=34
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035・宮村又八
○宮村委員 結構でありました、又それに附加へまして、農村に參りますと殆ど衞生上惠まれない、或は藝術的に惠まれない、それが今日肥料とか、或は農機具だとか農村で言ひますけれども、其の半面に青年或は復員軍人あたりは、さう云ふことを非常に希望して居る、それが爲に金を出してすら遠い都會へ出て來て娯樂の途を求める、半面には又無醫村の爲に非常に困つ居る、文化的な總てのものが都會に集中すると云ふことは、是は地方制度の上から見ても由々しき問題であると考へます、之に付て政府當局としては相當に考へて戴きたい、就きまして、私は地方自治に付て私の方の地方の實情を前知事の永井さんに御話申上げたことがありますが、此の戰爭に依る隱匿物資を、數が足らないからと云ふので町村長、農業會、警察がぐるになつて警察、農業會、食糧營團、役場、斯う云ふ人方が分配をして、地方農民には一つもやらなかつたと云ふことが非常に問題になつた、此の村は山田村と申しまして、近村からも非常に尊ばれて居る所謂模範村であります、それが最近二三箇月も經たぬ間に農民組合を作り、そして村長に向つていけないぢやないかと云ふことで、其の村長がどんなことをするかと云ふと、山を開墾する爲に、麥四俵を持つて其の開墾地に參つた、所が出來た麥は二俵である、それを縣に百六十三俵出來たと申告した、それで縣からはお褒めの言葉を戴くと同時に、記念品か何か貰つた、そこで私達の方ではそれを縣にも訴へ、或は告訴をして見ましたけれども、どうしてもそれが届かない、斯う云ふことが農村にあることを考へました時、地方制度と云ふものは相當に今後力を入れなくてはならぬ問題と考へます、斯う云ふことに付て知事或は警察署長あたりが、はつきりした態度で臨まれるならば、一日も早くあの方面は圓滿に行つたのであります、それが一歩を誤りまして、我々は今は社會黨に蹤いて居りますけれども、もう是が成立たなければ共産黨でも無政府主義にでも行きますよ、斯う云ふことを農村の方方が言はれる、實に是は見方に依れば危險とも存じますが、斯う云ふことの取締に付て、内務省に於かれましては如何御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=35
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036・大村清一
○大村國務大臣 地方官が其の職務の執行に當りまして、極めて嚴正であり公平であると云ふことは當然な職責であります、私共其の當然な職責を果すことに、大多數の地方官は精進して居るものと確信致して居るのであります、只今仰せになりましたやうな事實は私初めて聽くことでありまするが、果してさう云ふやうな、官吏としての職責を怠つて居る事實ありと致しまするならば、信賞必罰の方針に依りまして善處を致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=36
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037・宮村又八
○宮村委員 只今の者は縣會議員であつて村長であります、農業會にも關係して居ります、さうして地方の人方をお金に依つて動かして、さう云ふことが明かになつたにも拘らず、まだ六七箇月後までも村長の椅子に頑張つて居る、それで農民は非常に不平を抱いて居る、是は一日も早く其の強權を以て臨まなければならない、さうして其の人は強權發動の場合は、そんな立派な村に強權發動が農民組合のみに當るやうな方法を執つて居る、斯う云ふやうな状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=37
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038・大村清一
○大村國務大臣 只今の御尋ねの點に付きましては事實を能く調べて見たいと思ひます、或は又さう云ふやうな措置を執つて居らぬのには、それ相當の事情があるのかも存じませぬが、能く取調べました上で適當に處置したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=38
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039・宮村又八
○宮村委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=39
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040・中島守利
○中島委員長 午後一時まで休憩致します
午前十一時五十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=40
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041・会議録情報2
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午後一時二十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=41
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042・中島守利
○中島委員長 午前に引續き會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=42
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043・駒井藤平
○駒井委員 私は數點に亙つて御尋ね致したいのであります、知事の身分に關したものでありますが、同僚委員諸君から再々質問がありました、又大臣からも答辯があつて拜聽致したのでありますが、何としても得心は出來ないので、更に御尋ねをする譯であります、一體直接選擧で公選された知事の身分が官吏と云ふが如きことは、今囘の此の自治制度の改正の重大なる要綱として掲げられて居ります政府の御方針が、民主主義の強化、さうして自治的に又自主的に之を強化して行くと云ふ御方針でありますのに對して、恰も家鴨が卵を産んで、其の孵化した卵が鷄であつたと云ふやうなことに相成ります、即ち民主主義を高調し民意を容れると云ひながら、實は今尚ほ官僚を存續して置くと云ふことに相成ると思ふのであります、由來日本の「デモクラシー」の發達途上に一番障碍をされたのは、軍閥、官僚、財閥、是が主なる原因であつたのであります、然る所敗戰の今日軍閥は消えてしまひ、又財閥も解體されましてなくなつたのであります、所が今尚ほ官僚の制度を存續すると云ふやうなことに相成ることは、洵に遺憾だと存ずるのであります、今日の世相を見まするのに、大變化を來したのであります、でありますから從來のやうな御考へでは、口でこそ民主主義である、斯う唱へて居りながら、實は尚ほ官僚獨善主義と云ふものを存續したいと云ふ御考へではないか、斯う考へるのであります、此の知事が若し今尚ほ官吏であると云ふことに相成りますならば、色々な弊害がある、現に實例があるのでありますが、某縣の某村に村長の選擧が終戰直後にあつたのであります、當時は人心不安定で、日本の前途を非常に憂へて居る、さう云ふ際でありますから村内第一人者の村長を選ぶ、選ばなければならぬと云ふことで、期せずして第一人者を選ぶべく努力致したのであります、而して其の選擧で滿場一致で村長を選定し、其の村長に受諾方を依頼されました、幸ひに其の村長は受諾したのであります、さうして其の認可の手續になりましたけれどもどうも、認可が遲い、どうしたことかと云ふので、村の有力者は打揃つて知事を訪問し、さうして其の遲くなる原因を詰問されたのであります、所が知事の日くに、實は表面上何等の支障はない、所が總動員法に觸れて罰金を當選者が出して居る、此のことは内務省の指示事項に觸れるので一寸困る、それで躊躇して居る、暫く待つて呉れと言ひつつ、人事を其の儘にして置いたと云ふ事實があるのであります、斯うしたことは、知事自體が是は村の總意であると云ふことを能く承知して、且つ法規上何等差支ない、認可しても宜いと云ふことを或は覺悟し、確信して居りますのに拘らず、内務省の指示事項にさうしたことがあるから、一應伺はなければ認可することが出來ないと云ふやうなことに相成る、此の村内に供出問題、色々な問題が輻湊して居る折柄、村の執行機關が其の指導者を缺員の儘二箇月も置くと云ふやうなことは、明かに官僚の能率の上らないと云ふ實際であります、斯うした實例は澤山あるのでありまするが、今日大臣は思切つて民主主義を實行せられると云ふ、斯う云ふ御言葉にどうも相應しくない、それであればなぜ公選された知事を公吏になさらないのであるか、民意を代表する知事が更に又内務大臣の指揮を仰がなければならぬ只今申上げましたやうな事例が澤山出來て來ると思ふのであります、さう致しました時には折角民意を代表して出た知事が、民意を表現して善政を布くと云ふ譯には參らぬ、即ち官僚と大衆との板挟みになつて、實は能率が上らないと云ふことにならうと私は考へるのであります、それで是非是は大臣の御再考を願ひまして私共の要望を御容れ願ひたい、斯う存ずるのであります、更に知事の選擧は、是は直接選擧をすると云ふ建前になつて居りまするが、今日の現状から見まするのに、大多數は知事候補者の學識、力量、手腕、總てのことを認識鑑別することに缺けて居ると私は思ふのであります、今暫くはどうしても政治教育をせなければならぬ、啓蒙して行かなければならぬ際に、知事を公選するのに、誰も彼もすると云ふよりは私は間接選擧、即ち各町村民の有權者千人に對して一人の選擧人の選擧をする、斯う云ふことに致しますれば、其の當選者は詰り委任されたのでありますから、愼重に知事の學識、性格、總ての點を調査し、比較對照して、最も適當なる知事を選ぶことに相成ると思ひます、それで大臣は間接選擧に依つてやる御意思があるかないかと云ふことを御尋ね致したいのであります、それだけ先づ御答へ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=43
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044・大村清一
○大村國務大臣 公選知事を官吏とすることは適當でないと思ふと云ふ點に付きまして、重ねて御尋ねでございます、此の點に付きましては、度々當局の所信を申上げたのでありますが、説明の申上げ方がまづいのでありますか、まだ十分に御諒解を得て居りませぬことは、甚だ殘念に考へて居るのであります、成べく簡單に私共考へて居りますことを、今一應御話申上げて見たいと思ひます、御承知の如く今日の府縣は、明治初年以來から段々と發達して參りました沿革を持つて居ります、そして府縣廳は行政機關として相當強力のものであり、又非常な綜合性を持つて居る、地方行政の進展の上に寄與貢獻して居ることは、蓋し多大なものがあると思ふのであります、此の府縣を此の度民主主義の線に向つて改革を加へて行くと云ふ場合に於きまして、改正憲法草案に於きましては知事を直接公選をすると云ふことが案として決まつて居る、それを採り入れて行くと云ふ立場を取ります場合、現在の府縣廳のやつて居りますことを分柝してみますると、一つの大きな部分として、中央政府の地方機關としての國政機關の部面があるのでありまして、又他面に於きまして府縣が地方公共團體としての公共事務を處理して居ると云ふ面、此の二つの面を持つて居るのであります、從來は此の二つの面を持つて居る府縣廳の性格判斷から、是は官治的な行き方にした方が適當であると云ふ見解から致しまして、府縣知事は官吏と致し、其の官吏に偶偶地方公共團體の事務を併せ處理させると云ふ建前になつて居るのであります、此の現實を捉へまして、府縣知事を民主化する場合に於きましての最も安易な方法は、府縣廳を解體致しまして、府縣廳のやつて居りまする仕事は地方公共團體の仕事だけに限定を致し、さうして國政事務の方に付きましては、近頃第二會社案と云ふことがありますが、第二府縣廳と云ふやうなものを作つて、さうして純然たる官吏をして國政事務を處理させると云ふことになりますると、極めて簡單に解決をする譯でありまするが、前に申上げます如く、府縣廳と云ふものは、地方の綜合行政機關として捨て難き長所と特色とを持つて居りまるから、是の解體は民主化の便宜手段とは申せ、非常に考慮を要することでありまして、得策でないと云ふ結論に達しましたので、從來は府縣廳の行政は、官治面も、自治面も擧げて官吏にやらして居りましたのを、今度は全く反對の立場を執りまして、官治面も自治面も、擧げて之を公選知事に掌握させると云ふ、全く正反對の立場、即ち百八十度の轉廻を致したのであります、其の結果を考へますると、住民の輿望を擔つて出ましたる有力なる公選知事は、一面に於きましては府縣の自治事務を完全に掌握致します、それから又同時に官吏の資格に於きまして、官治行政面の事務も完全に掌握するのであります、而して之を自治化の面から見まするならば、府縣知事の持つて居りまする民主性に依りまして、官治行政面も、從來に比して民主化に一大躍進を致すことは、疑ひのない所と確信致すのであります、是は官僚主義を温存すると云ふやうな趣旨は毛頭ないのでありまして、現實に妥協致しまして、府縣行政其のものの全體を民主化する方法としては、我が國の實體に即しましては是が最も賢明な方法であると云ふ結論に達して、其のやうに致した次第であります、尤も尚ほ此の府縣の持つて居りまする官治面と自治面の調整に付きましては、他に執るべき方策は殘つて居ります、と申しまするのは、官治行政面の仕事を出來るだけ自治行政面に委讓をすると云ふ方策は、是は日本の地方行政の民主化の上に於て是非執らなければならぬことであります、此の方針が、一擧にして官治行政面を悉く自治行政面の方に委讓してしまふと云ふことが出來ますならば、何も苦しんで公選知事に官吏と云ふ名目を與へる必要はないのでありますが、御承知の如く、今囘の政府の施措は、憲法の改正と地方自治制度の改正の二つだけしか提案を致してないのであります、府縣廳のやつて居ります官治行政面に付きましては、教育、警察、産業其の他各般の面に於きまして、官治行政機構が其の儘になつて居る譯であります、此の關係法令の改正案を一擧に議會に提案を致して、府縣廳の持つて居ります官治行政面を、悉く擧げて自治面に委讓してしまふと云ふことが可能でありますならば、知事を官吏と致して置くと云ふやうな窮策を執る必要は毛頭ないのでありますが、其のやうな府縣廳の掌理致して居りまする各種の官治行政面の關係法令を一擧に改正すると云ふことは、實際問題として間に合はない、又之を一擧にさう云ふ根本策を講じますることは、我が國の當面して居りまする國情からして、考慮を要する點もあると云ふやうな障碍がありまして、それが出來て居ないのであります、其の爲に現状に妥協──と申すのは適當でないかも知れませぬが、先づ妥協すると云ふ所で、公選知事に官吏と云ふ名目を與へまして、官治行政面も併せて掌握させよう、さうして官治行政面の民主化に資しようと云ふのに外ならないのでありまして、知事を官吏にしたからと云つて、それが直ちに官僚化すると云ふことは、私共何としても諒解に若しむ點があります、若し知事を官吏とするが爲に、公選知事は高等文官試驗を受けて居つて、官吏任用資格を持つて居る者に限つて被選擧權を付與すると云ふやうな、官吏任用の前提條件を知事に適用すると致しますと、それは官僚制度の温存でございませうが、知事の被選擧權に付きましては、其のやうな官吏任用の前提資格條件なんと云ふことは一切採つて居ないのであります、年齡三十年以上の帝國臣民は總て齊しく被選擧權を有して居るのでありまして、其のやうな知事候補者が數十萬と云ふ選擧民の支持を受けまして、有力なる民選知事が成立致し、それに官治行政面を掌握させる一つの「テクニック」として、之に官吏と云ふ身分を併せ付與すると云ふ所の何處に、其のことに依つて知事が官僚化すると云ふことがあるのか、私共と致しましては殆ど諒解に苦しむのであります、さうして是は大體の理論的の御説明でございますが、實際問題として一、二御説明を申上げて見ますると、現在の府縣廳の取扱つて居ります仕事に對しまして、他の法律の改正を伴はないならば、知事を公吏として置きましたのでは運用の出來ぬ面が澤山あるのであります、例へば刑事訴訟法に於きまして、府縣知事は警察權を行使する場合に於きましては、搜査權乃至は起訴權と云ふものは、總て是は官吏でなければ行使が出來ないやうに法律上なつて居るのであります、故に知事に公吏だけの身分を與へて居りましては、警察權の完全なる行使に於きまして、知事は從來の如き權限を持ち得ないと云ふやうに、知事は非常に弱體化するのであります、此のやうな面は産業行政に於て、教育行政に於て、其の他各般の面に於きましてあるのでありまして、公選知事を單に公吏のみに致して置きましては、今日の府縣廳の行政は廻つて行かないのであります、從來の通り府縣廳の行政が廻つて行かないと云ふことになりますと、官吏でなければ處理が出來ない部分に付きましては、別の機關を設けなければならぬ、假令それは當分の間だと致しましても、さう云ふ實際上の難點が發生するのでありまして、それを克服する爲に知事を公選知事にし、官吏と云ふ資格も併せ與へると云ふ是は實際上の必要に基いて居るのであります、只今申上げましたやうな點は、尚ほ要しますれば政府委員から、多數の事例があると思ひますから、一々御指摘申上げても結構だと思ふのであります
それから次に知事を直接選擧することは時期尚早ではないか、是は間接選擧法を採る意思はないかと云ふ御尋ねでありまするが、此の點に付きましては、地方制度立案と申しますよりも、改正憲法を政府に於きまして立案する時に、十分之を採り上げまして檢討を致したのでありまするが、日本政治の民主化の上に於きましては、結論と致しまして府縣知事は直接公選に依るべきが適當であると云ふ結論に達しまして、其の趣旨で憲法の關係條文を立案し、現に憲法の委員會に於て御審議中であるのであります、憲法委員會の憲法の御審議に於きまして、直接選擧は依然として時期尚早である、之を間接選擧に直すと云ふことに御決定になりましたならば、地方制度に於きましても、其の線に沿うて其の適切なる御改正を御願ひすべきであると思ひまするが、只今申上げましたやうな事情及び理由に依りまして、茲に御審議を仰いで居ります地方制度の改正案に於ては、直接公選の制度を採つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=44
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045・駒井藤平
○駒井委員 色々承つたのでありますが、併し「アメリカ」では知事は官吏ぢやない、官吏とは政府の任命された者を言ふのであると云ふことに相成つて居るやうに聞いて居るのであります、民選に依つて公選した知事がどうして公吏としては都合が惡いのでございますか、只今の御話では色々の法規上執行することにも困ると云ふやうな御話がありましたのですが、是はまだ改正することも出來得ると思ふのであります、此の點更に御所見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=45
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046・大村清一
○大村國務大臣 「アメリカ」は御承知のやうに君主政體でございませぬので、固より日本で言ふのと同樣の官吏と云ふ制度はございませぬ、日本に於きましては國の政務を取扱ひまする職員であつて、天皇の任命になりましたものを官吏と言ふのがまあ常識であらうと思ふのでありますが、「アメリカ」には君主制がないのでありますから、日本に於ける官吏と全く同一のものはないことは當然でございます、唯「アメリカ」に於きましては「ナシヨナル・オフィサー」國の吏員と申しますか、合衆國の吏員と、「ステート・オフィサー」各州の「オフィサー」と云ふ區別がありますが、是は恐らくは日本の官吏に相當すると云ふやうに考へて宜いと思ふのであります、唯前に申上げますやうに、我が國は君主制を持つて居り、向ふは民主制であると云ふ相違に依りまして、官吏と云ふ觀念に餘程相違がありますが、若し「アメリカ」で議論があると致しまするならば、各州の事務を取扱ひますものに、「ナシヨナル・オフイシサー」と云ふ名前を付けることは適當でない、寧ろそれは「ステート・オフィサー」で行くべきであると云ふ議論がありと致しますならば、丁度此の府縣知事を國の官吏とすると云ふことと、同じ議論にならうと思つて居ります、御承知のやうに「アメリカ」の各「ステート」は主權を持つて居ります所の獨立國であります、其の獨立國が四十八國寄りまして北米合衆國を立てて居るのであります、府縣の性格と「アメリカ」の州の性格とは全然違つて居りまして、是も同一に論ずる譯には行かないものと考へるのであります、我が國に於きましては前にも申上げましたやうに、府縣廳と云ふものに付きましては地方公共團體と云ふ性格と、國の出先の機關であると云ふ二性格を持つて居るのでありまして、其の二つの性格を依然として存置する限りは、其の府縣廳の事務を取扱はす爲に於きまして、之に官吏と云ふ性格も併せ附與すると云ふことを採るのは、蓋し已むを得ざる措置であります、府縣を解體して地方公共團體と云ふ性格だけに致し、國の出先機關であると云ふものを取除きますならば、固より公吏で結構でありますが、それを存置する限りは必然的に之を官吏と致さなければ、今日の府縣廳の行政を支障なく處理することは不可能だと信ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=46
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047・駒井藤平
○駒井委員 本問題に付きましては、是れ以上申上げることは意見の相違でありますから申上げませぬ、何れ追つての機會に讓りまして、此の間接選擧の方の御答辯でありますが、是は憲法が直接選擧でなくて間接選擧で宜い、直接選擧は時期尚早であると云ふ風に定まれば、隨て此の府縣制の方も間接選擧制と云ふことになる、斯う云ふ御意見でありますか、それを一寸伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=47
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048・大村清一
○大村國務大臣 此の憲法を政府が立案するに當りまして、府縣知事を直接公選にすべきか間接公選にすべきかと云ふ點に付きましては、種々檢討論議を致しまして、結局直接公選案で行くと云ふことに政府の方針が決まりましたので、其の方針に即應して地方制度を改正したのでありますから、審議權を持つて居られます帝國議會に於きまして、憲法草案が間接選擧と云ふことに變りますれば、當然地方制度の方もそれに即應して、國の最高法規たる憲法の精神を採り入れて御修正を願ひたいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=48
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049・駒井藤平
○駒井委員 次に御尋ね致したいのは、地方廳の人的整理を英斷的におやりになる御意思があるかどうか、實は我々見受けますのに、餘り人が多くて、所謂人多くして船山に上ると云ふやうな嫌ひがあるのであります、此の際うんと減員致し、さうして待遇を改善、優遇して、能く働いて貰ふと云ふ風に致したいと考へるのでありますが、大臣の御所見を御伺ひ致したいと思ひます、尚ほ地方の警察官吏は少いのであります、隨て安寧秩序を保持すると云ふ點に遺憾があると考へるのでありますが、此の際減員すると同時に警察官吏を増員する、而も其の待遇を優遇しなければならぬ、今日の状態ではとてもやり切れないと考へるのでありますが、其の邊御所見を御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=49
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050・大村清一
○大村國務大臣 我が國の現状から申しまして、國と言はず地方と言はず、財政の掌理は極めて苦しい事態に立至つて居りますので、國、地方ともにそこに剩員があると致しますならば、思切つた整理をしなければならぬと思ひます、殊に官吏の待遇が物價關係等で相當に増額しなければならぬ、それに依りまして財政を壓迫する點が著しいものがある今日でありますから、剩員は之を整理すると云ふことは固より必要なことと思ふのであります、唯具體的の問題と致しましては、果して何處に剩員がありやと云ふやうな點に付きましては、尚ほ能く考究を致して善處しなければならぬと思ひます、各位に於かれましてもここに剩員ありと御氣付になりましたならば、一つ御指摘を願ひまして、我々に有力な資料を御提供願ひたいと思ふ次第であります、尚ほ警察官の優遇に付ては、固より政府も其の必要を認めて居ることでありますが、一般官吏の待遇問題が刻下の重大問題に相成つて居ります此の際に於きまして、獨り警察官だけ特別の優遇を要求することも、中々實際問題として實現困難な所があります、一般官吏の優遇の線に沿ひまして、先づ第一に一般官吏竝に必要なる優遇を致して行きたいと云ふことで、從來努力は致して居つたのでありますが、近く是は或る程度の解決を見ることになつて居ります、其の第一次の優遇案が成立致しました曉に於きましては、警察官の特殊性に鑑みまして、又一は警察官が從來必ずしも一般官吏に比して優遇されて居つたとは言へない節も多々ございますので、それ等の特殊事情に立脚致しまして、大いに優遇を策したいと考へて居る次第であります、尚ほ又其の點に付きましては民間の輿論に於きましても、又政府部内の意見に於きましても、他の一般官吏に比して警察官は一層優遇すべき必要のあると云ふことは、廣く認められて居ることでありますから、此の問題は近く解決をなし得るものと考へて居ります、次に警察力が不足であるから警察官を大いに増員致したらどうかと云ふことに關する質問でありますが、其の點に付きましては、私共警察當局と致しまして、全く同じ見解を持つて居るのであります、併し此の點に付きましては、關係方面とも打合せを要することに相成つて居りまして、今の所現在の警察力を増員致すことは出來ない状況に相成つて居るのであります、唯内務省及び府縣廳の警察官の増員は困難でございますが、併し他の方法を以てすれば、そこに増員も可能な餘地があるやうに考へるのであります、故に先づ第一に私が考へて居りまする所では、鐵道警察官を増員致すことを、運輸大臣とも相談致しまして今檢討中であります、是は案が整ひましたならば關係筋とも打合せまして早急に實現致したい、それから更に警察改正試案にも記述致して置きました如く、現在の内務省及び府縣廳警察事務の中で、市に委讓し得る警察權を研究致しまして、市に市警察を打立てたらどうか、さうして市に警察官を置かうと云ふことも是は可能なものと考へて居るのであります、他の言葉で申しますならば、内務省警察以外に「デストリクト・ポリス」と申しますか、市區警察と云ふやうな、内務省、府縣廳警察以外に他の指揮系統に依る所の警察官を、必要に依つて増員することは可能な餘地があるやうに考へられますので、さう云ふ方法に依りまして差當り警察力の補強を致して見たいと云ふので、折角考究立案中である次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=50
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051・駒井藤平
○駒井委員 御趣旨能く分りました、今大臣の御話では警察官吏の優遇方法に付ては考へて居ると云ふことでありますが、今早急になさなければならぬ問題でありまして、さうゆつくりした問題でなからうと思ふのであります、と申しますのは地方の駐在巡査に付ては其の弊を到る處で聞くのであります、あの薄給で、而も駐在巡査程潤澤に食糧もあり衣服もあるものはない、それはなぜかと云ふと闇の媒介もし、取次もする、詰り大目で見て貰ふと云ふ意味で物を貰つて居る、貰つていけないと云ふことを知りつつ、生活も困ると云ふのでやつて居ると云ふ事實でありますが、先づ衣食住に困らないと云ふ程度に早く優遇して戴きたいと考へて居ります
次に地方議員の選擧權及び被選擧權の一部の問題に付て御尋ね致します、破産者にして復活し得ない者、又貧困で生活の爲に公私の救助を受け、又扶助を受けて居る者でも、選擧權及び被選擧權を與へる、斯う云ふことでありますが、私の考へと致しましては、さう云ふ者は實際家庭に恵まれず、其の日暮しに窮して居る、さうして借金に追はれて困ると云ふやうなことで、直ぐ政治に關與すると云ふやうな考へはない、又縱しあるに致しましても正しい考へをすることは出來ないだらうと考へるのであります、是は從來のやうに選擧權を與へない方が宜からうと思ひます、米國あたりでもさう云ふ者には選擧權を與へて居ないと云ふ事例がある、大臣の御所見を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=51
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052・大村清一
○大村國務大臣 選擧權を貧困者や破産者に對して制限をすると云ふことに付きましても、固より一應の理由はあることであります、併し今日に相成りましては、人の財産上の關係に依りまして選擧權を與へる、或は剥奪すると云ふやうな區別を付けますことは、最早適當でないと思はれるのであります、又殊に我國の現状から申しますと、貧困に陷る、乃至は破産をすると云ふことは、本人の責に歸すべからざる此の經濟界の激動期に於きまして、さう云ふやうな不幸な人も出來て居ることでありまして、さう云ふ點も併せ考へますれば、一層此のやうな制限は撤廢することが妥當であると云ふことで、此の際是等の制限を撤廢することに致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=52
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053・駒井藤平
○駒井委員 次に御尋ねしたいことは女子にも男子と同樣に選擧權を與へる、斯う云ふことでありまするが、私は今日の女子としては男子同樣の政治能力を持つて居らぬ、時期が尚早だ、斯う申すと女子の方から御叱りを蒙るかも知れませぬが、實際上から言ひまして、國民學校を出るなり直ぐに家庭のことに追はれる、或は又それぞれの修業をしなければならぬ、又上流の家庭にしましても、女學校を卒業してから、女は男と違つてそれぞれの修業をしなければならぬので、迚も政治と云ふやうな考へまでは及ばない、多數の女子の方は二十歳で果して政治に關與して、政治を昂揚せしめる批判力があるかどうかと云ふことを私は疑ふのであります、尚ほ二十五歳に達すれば被選擧權はあると云ふことですが、是も男子と同一視すると云ふことは無理だ、女子の政治に關與することは非常に必要だと考へて居りますが、是は率直に申せば尚ほ五年早い、即ち私の考へとしましては、女子は二十五歳を以て選擧權を持ち、さうして被選擧權は三十歳、斯う云ふ風にすれば、緩和することも出來得るし、又正しく選擧もなし得られる、斯う考へるのですが、年齡の引延ばしをする御意見がありや否や伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=53
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054・大村清一
○大村國務大臣 御尋ねの點は確かに政治論としては、我國の現状から考へ得ることでございまするが、併し改正憲法に依りまして、總ての國民に基本的人權を享有せしめる、さうして是が日本民主化の基本をなすものだと云ふ點は、御承知の如く「ポツダム」宣言に於て明示されて居る所であり、又憲法の新條章に依りましても、總ての國民は法の下に平等であつて、性別に依り、政治的、經濟的又は社會的關係に於て、差別を受けないと云ふ風に新しい憲法が草案せられて居りまする以上は、此の精神に從ひまして、地方制度の上にも之を採り入れることが適當であると云ふことで、只今のやうな案に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=54
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055・駒井藤平
○駒井委員 知事の解職請求權に付ては同僚から既に御質疑がありましたから止めます、條例、規則の制定に對して五十分の一の團體の人から出れば地方議會を招集して、さうしてそれを審議すると云ふことに相成りまするが、五十分の一と云ふと極く少數です、少數の有權者が普通なれば、是は提案した所で通らない、併し其の間に工作と云ふか或は運動をして、無理でも通すと云ふやうなことがし易い、詰り人間の同意を得ることが少ければ少い程斯う云ふことがし易いのであります、さうしたことがどう云ふ結果になるかと言ひますと、唯惡い習慣として悔いを貽して、圓滑なる自治を發達させることは難かしからう、若し之をやると云ふことになれば三分の二以上の署名者を要する、斯う云ふ風に多數の人の署名を必要とすると私は考へるのでありますが、其の邊如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=55
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056・郡祐一
○郡政府委員 條例規則の制定請求權を認めましたのは、地方住民をして自治に關心を持たせ、さうして日頃要望して居ります所を、議決機關の議決に依つて實現させることを請求すると云ふ權利を認めたのでありまして、請求權であります、それに依つて町村長は一定の手續を經て發案をし、之を議決致しまするのは、全く當該の議決機關の任意に任されて居るのであります、隨ひまして此の數と云ふのは比較的少い數に致して置きましても、弊害の起る心配はないと存じまするし、五十分の一に致しましたのは、議員の發案請求の場合に、三人以上を以て其の要求數と致して居ります、大體此の議員三人の地方議會に於ける背景となつて居りまする得票數とも釣合ひを取りますと、五十分の一を以て大體宜しいと云ふことに相成りますので、左樣に致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=56
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057・駒井藤平
○駒井委員 最後に御尋ね致したいのでありますが、此の町村會議員の選擧竝に選擧區域なのであります、或る廣大なる村に於きましては、風俗習慣が隨分變つて居ります、又是が一選擧區にして選擧を致しますれば、一部に人數が偏在する、斯う云ふ風なこと、又有權者數に割當てて議員を配置することになれば圓滑に參ると思ふのであります、從來町村制では、條例を決めまして大臣の認可を得ればそれが出來たのでありますが、今囘もさうした特殊な事情があると云ふ所に於きましては、町村會で斯う云ふ條例を置き、議員數を定め、さうして小選擧區制にすると云ふことを御許しになるかどうか、之を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=57
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058・郡祐一
○郡政府委員 町村のやうな規模が狹小であります團體に付て、更に選擧區を設けますると、餘りに部落的な感情と申しまするか、部落代表と云ふ感じが強くなりまするし、一方に於きまして又町村位の區域のものに付きましては、全町村を基礎と致しまする方が、適當な人物を得易いことでありまするので、從來も町村に付ては選擧區を設けたことはないのでありますから、是はやはり將來も一町村一選擧區と云ふことで參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=58
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059・駒井藤平
○駒井委員 私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=59
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060・中島守利
○中島委員長 青木君──青木君は見えないやうですね、それでは此の際御諮り致しますが、青木委員が闕席なので、過日闕席の爲に後廻はしになつて居りました、鈴木明良君に此の際許したいと思ひます、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=60
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061・中島守利
○中島委員長 それではさう致します──鈴木明良君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=61
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062・鈴木明良
○鈴木(明)委員 私は簡單に四つの點に付て御質問致したいと思ひます、第一番目に選擧管理委員の運營に付て、如何なる條項で、又如何なる方法に依つて、即ち言換へまするならば其の選定の方法、二番目に四名とすと限定したこと、又待遇の問題に付て御質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=62
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063・郡祐一
○郡政府委員 選擧管理委員の數は、一方に於きましては管理事務自體の方針を決定致しまする選擧管理委員の性格と致しまして、餘りに多數を要することはない、それと同時に一面選擧の場合でありまするから、關係のと申しまするか、選擧に立候補を致されまする政黨からは概ね關係者を出し得る數にして置くことが望ましい、斯樣な點で數を決定した譯であります、管理委員の報酬に付きましては、其の事務執行の爲に要する實費の辨償は致すことに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=63
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064・鈴木明良
○鈴木(明)委員 選定の方法に付てもう少し具體的に御願ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=64
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065・郡祐一
○郡政府委員 それぞれの議決機關で、被選擧權を有しまする當該の府縣民又は市町村民の中から選ぶ譯であります、之に付きまして別に立候補をなすと云ふことはありませぬで、是は適當な人間を當該議決機關で相談して選任し得ることに相成らうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=65
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066・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に御尋ね致します、條令又は規則の制定請求其の他の選擧人請求の際の連署中に、二重署名とか、又は無權利者の署名、又は詐欺的署名があつたと云ふやうな場合には、どんな風に處置致しますか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=66
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067・郡祐一
○郡政府委員 是等の請求權の發動を求めまする際に、多數から一定の要求事項に對して同意の署名を求めまする者は、多くの場合町内會、部落會毎に別に相成ると思ふのでありますが、左樣な單位に於て署名を求め、一方市役所或は町村役場等に、選擧人名簿の謄本を拵へることにならうと思ひます、謄本と一々對照致しまして、二重署名或は無權利者の署名を防止することに致して居ります、詐欺的な署名と申しまするか、他人の氏名を詐稱致しまして署名を致しました者等に付きましては、是は文書僞造の刑法上の犯罪を構成致しますることに司法省と打合せ濟みでありまするので、其の面からも取締は徹底致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=67
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068・鈴木明良
○鈴木(明)委員 次に地方議會の解散請求權を認めた理由と、其の意義を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=68
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069・郡祐一
○郡政府委員 地方團體は一方に於きまして直接選擧に依りまする強力なる知事或は市町村長を持つ譯であります、それと同時に議決機關は又意思決定機關と致しまして、やはり住民の直接の選擧の結果に依つて成立致し、強力なる存在になる譯であります、左樣に致しまして、今までの考へ方でありまするならば、當該の議決機關の構成の當初に於きましては、住民は直接に之に關與致すのでありますが、其の後に於きましては、任期間と云ふものは選びました住民自身は何等之に對して發言することが出來ない、監督官廳等の判斷が之を決定致すのであります、併しながら既に團體の長まで直接選擧を致しまする段階に、住民の直接參政の途を開きます此の度の段階に於きましては、其の運用が其の團體の議決機關として著しく好ましくないと云ふやうな場合に於きまして、住民が之に發動致しまして、其の解散を要求すると云ふ權利を認めますることが、表裏一貫致しました民主化である、一方之に依ります濫用等の問題に付きましては、本委員會等に於きまして色々御話のありますやうに、十分吟味しなければなりませぬけれども、一つの基本的の權利と致しまして、此の度の地方制度改正の、思想的な一環を成すものと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=69
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070・鈴木明良
○鈴木(明)委員 懇切に有難うございました、次にもう一つ御尋ねしたいことがあります、新憲法草案には戰爭抛棄とあります、然るに此の地方制度の中に現役及び召集中の軍人が公務に參與する權利を認める、斯う條項にありまするが、如何なる考へに基いて斯う云つた條項を入れたのか、御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=70
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071・郡祐一
○郡政府委員 是は現在の禁止規定を削除致して居りますが爲に左樣な御尋ねが起るのだらうと思ひますが、軍人に選擧權の享有を認めませぬことは、是は御承知の通り統帥權理論を背景と致します兵政分離の思想に基くものでありますけれども、既に統帥權を基本と致しまする軍隊が、現在存在しなくなつて居ります此の際、當該條文の存在する理由がなくなつて居るのであります、且つ若干の者は現在内地に歸りますまで、且つ歸りましても應召中等の形式を具へて居ります是等の者も、極めて近い内に全部解除されまして、左樣なものの存在は、所謂軍人と云ふものの存在はなくなりますので、左樣な意味合でも規定を存置する必要はないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=71
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072・鈴木明良
○鈴木(明)委員 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=72
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073・中島守利
○中島委員長 高橋君──闕席のやうです、早稻田君は各大臣の出席を要求されて居るやうですから、あなたは後廻はしにしなければ今日は間に合ひませぬ──大原君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=73
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074・大原博夫
○大原委員 私は連日色々と御質問になりましたのを聽いて居りまして、同一な問題を度々繰返して居られるやうでありまするが、段々と聽いて居ますと其の目標も違ひまして、同じ問題の如くであつても突いて行かれる點が違つて居るやうなことで、自然々々と霞が取れて行つて大變仕合せを得て居るのであります、私は此の地方制度の改正案を側面から觀察して見ますと、大きな缺點と思はれる所があります、之を分類して見ると、第一番には國民に非常に氣前好く權利を與へて置いて、機構の上で之を取上げてしまつて居ることであります、第二は今後發生すると豫想される所の政黨政治の弊害を防ぐ用意がない、のみならず其の認識が異つて居るのではないかと思はれる點であります、第三は民主主義の本質に反した點があると考へるのであります、第四は容易なる彈劾權を與へて町村長の地位を不安定にして居る、斯う云ふ風に大體四つの點に分けて考へられると思ふのであります、此の分類に從つて行きますと長くなりますので、二三の點に付ていきなり御尋ねして見たいと思ひます、其の第一は、又同じことを申上げるやうでありますが、知事を折角公選にして公吏としたと云ふ點であります、此の點も内務大臣の御説明を承つて見ると、官吏として追々民主的性格に合ふやうになつてから、其の間に準備して、知事を公吏とすると云ふことより致し方がないであらうと云ふ風に一應考へても見たのであります、併しながら斯う云ふ缺陷を私は持つて居ると思ひます、やはりどうでも公吏でなければならぬと云ふやうな氣持に又戻つて來るのでありますが、知事が官吏となると官僚に陷ると云ふことは、どうしても合點が行かぬと云ふやうに仰しやつて居られたやうであります、併し知事が選擧せられて官吏となると、やはり下に相當な知識經驗を持つた所の官吏の人が居られて、其の上に坐つて居たのでは單に「ロボット」と化する、又自らが官吏の氣持になるか、乃至は中央の政黨に屬して居ない場合には、從來もあることでありますが、中央の政黨から色々な壓迫を受け、其の下の官吏は又中央の政黨と連絡を取ると云ふことになりまして、結局此の選擧せられた知事が、若し中央の政黨と相反して居りました場合には、どうにも斯うにもやつて行けないと云ふ結果になると思ふので、先般斯う云ふ場合にはもう已むを得ないのぢやないかと云ふやうな内務大臣の御答辯でありましたけれども、私はさう云ふことをするよりは、黨が違つてもやつて行けるやうな制度にしなければならぬのではないかと考へるのであります、一にも二にも是は仕樣がないと云ふやうな考へ方から、官吏でなければいかぬと云ふやうな考へ方を止めて貰ひたい、私は殆ど全部の議員各位が官吏ではさう大した效果がないと考へられて居るのに、内務大臣の御説明の中を見ますれば、知事公選に對して非常な期待を掛けて居られるのでありまして、是は大部分の議員諸君と全く見當を異にし、殆ど天地の差があると言つても宜い程、差があるのでありますから、私は其の點に付ては内務大臣に頭を換へて貰つていま一應之を公吏にすると云ふことに付て、至急再檢討を進めて見て戴きたいと存ずるのであります、之を一つ御尋ね致します
それから續きまして私は今後は眞の民主主義は、官僚政治からも避けなければならぬのでありますけれども、一階級の獨占や、一政黨の專制からも救はれなければならぬと存じます、官僚に對して色々と攻撃が集中されて居るのでありますが、私は官僚に對する攻撃の集中よりも、寧ろ此の場合將來政黨政治の弊害を防がなければならぬものと存じて居るのであります、今囘の地方制度の改正案に付きましても、此の度は此の儘にして置いて、此の次時期を見て改正しようと思ひましても、其の時にはもうそれぞれ政黨の利害が相反して參りまして、私は相當改正が苦しくなるのではないかと思ふのであります、隨て此の場合、全く今日のやうな氣持で、超黨派的に改正を進めて行かなければならぬと存ずるのであります、それから選擧人が五分の一連記すれば知事、市町村長及び吏員の解任又は地方議會の解散の請求が出來るやうになつて居りますが、是は小都市及び町村に於ては、五分の一の數では存外容易に纏められるのでありまして、隨て屡屡斯う云ふ事態が發生して、自治體の紛爭を繁からしむるものであると存じて居ります、殊に今後の町村に於ては、自由解放の氣分のある所へ、或は重税を負はねばならず、其の他の難問題も頻發して參りますので、殊にそこに政黨が絡んで參りますと實に困つたことになると思ふのでありますが、斯う云ふやうな僅かな少數に依つて彈劾權を與へられると云ふと、内務大臣は左樣な困つた結果になるとは御考へになりませぬですか、本會議で質問致して御答辯がなかつたので御尋ねして見るのでありますが、民主主義は其の本質から申しますと、多數決に從ふと云ふことも私はあり得ないのではないかと思ふのであります、是は唯國家社會の秩序の上から多數決を認めて居るのでありますが、少數の意見を尊重することは私は惡いことではないが、理論上はあり得ないと思ふのであります、それを五分の一の少數に律せられると云ふ理由を一つ御伺ひ致したいのであります、次に内務大臣の御話では町村長の選擧に於て、公選の資格を四分の一にしてあるから、五分の一にしたとの御答辯であります、私は此の四分の一は、多數の候補者があつた場合、比較多數の意味で之を採つたものだと思ふのであります、五分の一の彈劾權は理論上之に依つて五分の一とするのは正しい議論ではないと思ふのでありますが、先づ此の邊で御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=74
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075・大村清一
○大村國務大臣 第一の點の御尋ねでありますが、殊に其の場合に、中央政府の政黨と異なる公選知事がありまして、さうして其の知事が官吏として部下の官公吏を率ヰると云ふことになりますと、中間の板挟みになつて、非常に政務の進行の上に困ると云ふ御引例がありましたが、私は實際の場合に於きましても、さう云ふ事例が起ることは、是は想像に難くないと思ふのであります、併しそれを克服します意味に於きまして知事を公吏とし、府縣廳に居ります所の總ての吏員を、悉く自黨の者に置換へると云ふやうな行き方は、日本民主政治の發展の上に於きまして、是れ亦大いに考慮しなければならぬ問題だと思ふのであります、私は民主政治が健全なる發達を致します上に於きましては、政黨が政策を決めると云ふ所に重點を置くべきでありまして、決められた政策は府縣廳の職員の力に依りまして、即ち其の職員の訓練せられたる能力を十分に活用致しまして、決めたる政策を實地に行はせると云ふことに於きましては、是は恒久的の吏僚を以て組織せられました所謂吏僚制度に依つて運營さるべきものであらうと思ふのであります、さう云ふやうな吏僚は、曾ても申上げましたやうに透明なものでありまして、甲黨の知事が立つて甲黨の政策を打樹てまするならば、それを忠實に實現をする、乙黨の人が立ちまして其の乙黨の政策を決めますならば、それを又忠實に實行すると云ふ、健全なる吏僚制度が打樹てられることが絶對必要なことと思ふのであります、其の板挟みの地位を克服する意味に於きまして、吏僚の悉く、乃至は主要な部分を自派で置換へると云ふやうな行き方は、先進國に於てもあつたことでありますけれども、是では健全なる民主政治が發展する所以ではないと云ふことに思ひ至りまして、此のやうな弊害から脱却しようと云ふ努力が致されて、段々成功して來て居るやうな次第でありまして、若し只今申上げましたやうなことが民主政治の發展の上に適當であると云ふことに相成りますれば、只今御例示になりましたやうな板挟みの地位の問題は解消すると信ずるのであります
次に政黨政治の弊害を除去することに付て配慮しなければならぬと云ふことでございます、是は固より可能な、適切なる方法に依りまして之に備へることが出來ますれば、それは考慮すべきことであると思ひますが、併し民主政治を發展さして行く、民意に依つて政治をすると云ふことになりますと、民意には自ら甲説乙説が出て參りまして、そこに政黨的動きと云ふものは必然のものであります、此の政黨的動きと云ふものが所謂私黨的なもので、私利私慾を逞しくすると云ふやうなものでありますれば是は論外で、苟くも國家社會の政治を處理して行くと云ふ立場に立ちまする限り、即ち公黨的立場に立ちました場合に於きましては、さう云ふやうな黨派の爭ひがあり、意見の扞格があると云ふことは、民主政治の發展過程に於きましては當然のことでありまして、又公黨的な立場から申しますると、さう心配をしなければならぬやうな弊害は起きないものと思ふのであります、要するに民主政治の發展を庶幾します以上、國民の良知と寛容と云ふことに期待を懸けて、暗い面は各人の自覺と責任に於て之を捨てる、解消すると云ふ努力を、國家としても、國民としても致すべきであると考へる次第であります
次に五分の一の點、是は少數意見を立てると云ふ點に付ての御尋ねでありまするが、五分の一を要求致して居りまするのは、是は解職請求權の成立の要件でありまして、五分の一の請求權があつたならば、直ちに解職が實現出來ると云ふ趣旨でないことは申すまでもないことであります、而して民主政治は色々議論もございませうが、結局ものを決する場合に於きましては數で決する、是には色々理論上の論議もあることでありまするが、大體民主政治の結末は數に依つて決すると云ふことは已むを得ないことだと思ふのであります、そこで五分の一の解職請求權が成立致しました場合に於きましては、更に之を住民の一般投票に付して、さうして過半數の贊成があるや否やに依つて決することが一つの解決法だと思ふのでありまするが、何に致せ、我が國に於きましては選擧に餘り習熟致して居りませぬ、殊に今囘の地方制度の改正に依りまして、非常に多數の新有權者が出來ることであります、即ち婦人に於て然り、又二十五歳以下の男子に於ても新しく選擧權が附與されると云ふやうな面もございまして、餘り度々各種の選擧投票を行ひますることは、何れの選擧にも無自覺、無責任に流れると云ふやうなことも考へられますので、解職請求權が成立した場合に、一般投票で決すると云ふことも、此の際は避けた方が適切ではなからうかと云ふやうな點を考へ、尚又其の解職請求權は一定の基準を設けまして、監督官廳に於ては公正なる判斷で最終決定をすると云ふことで、適正に始末し得ると云ふやうに考へまして、此のやうな案に致した次第であります、申上ぐるまでもないことでありまするが、五分の一は解職請求權が成立すると云ふだけでありまして、解職權が發生すると云ふ譯ではないのであります、それから御指摘になりました如く、五分の一に致したのは、多數の候補者がありました場合に於きまして、比較多數を當選とする場合の四分の一の點を引用致したのでありまするが、是は理論上正確なそこに關聯がある譯ではありませぬので、先づさう云ふ點も考へて見て五分の一に致したと云ふ事情話に過ぎないのであります、理論の繋りは御指摘の如くない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=75
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076・大原博夫
○大原委員 只今五分の一の請求權であると云ふことに付て御答へがありましたが、私は五分の一と云ふやうな少數のものに、わざわざ權利を與へて、其の認定は内務大臣とか或は知事とか云ふものに持たせることは、權利を濫りに與へて、さうして實權は知事が握る、私は斯かることは民權を寧ろ弄ぶものではないかと思ふのであります、政黨政治から其の弊害を防ぐの途は、私は三つの面があると思ふのであります、一つは立派なる官吏である、即ち官吏道を實踐して貰ふこと、第二は國民の自覺を俟つこと、第三は政黨の弊害の入る餘地のないやうにする外にないと思ふのであります、斯うした僅かな請求權に於て、それを知事がどうするかと云ふ權限を握つて居る、斯う云ふことに私は政黨の入る餘地があると思ふのでありますが、斯う云ふ餘地のないやうにしなければならないと思ふのであります、即ち民主主義は多數を以て解決して行つて、其の間の介在者の意思如何に依つて左右せられないやうな制度にすることであります、比較少數の意思を採用して、介在者たる個人に認定させることは、民主主義に反すると思ふのであります、之に對しての御意見を御伺ひ致します、尚ほ斯かる少數に依つての解職の請求に對して、請求せられたる者は民主的に對抗の權利は認められて居ませぬ、是は片手落ではないかと思ふのであります、又是は本會議に御尋ねして御囘答を得なかつたのでありますが、解職請求者から更に多數の署名を以て解職すべからずとの意見書を提出した場合には、どう云ふ風に對處せられるのでありますか、是は認定に依ると云ふやうに御答辯はあつたと思ひますが、私は犯罪とか被疑とかに依る等の場合は別と致しまして、數を無視することになりはしないかと思ふのであります、此の點の御意見を伺ひたいのであります、私は選擧人五分の一より以上にして、例へば三分の一とか云ふやうにして、罷免、解散の彈劾權をもつと數を多くして、之を知事に請求せずして町村長にし、町村長は投票又は解散に依つて信を問ふと云ふ、是が一番民主的であつて、合理的ではないか、尚且つ請求せられたる者が、民主的に之に對抗する手段ともなるので、斯う云ふことがあつて宜いと存ずるのでありますが、如何でありますか、五分の一以上と云ふが如き少數の請求權で、知事が之を正當なりと認定をした場合、市町村長は是が訴訟等の途が開かれて居ないと思ひますが、斯う云ふことが出來ますか、内務大臣は將來政黨政治が發達するから、是が濫用に陷ることはないと答辯せられたのでありますが、私は政黨の弊害として却て濫用を憂慮して居るものであります、斯かる少數の彈劾權は、濫用の門戸となると思ふのでありますが、御意見は如何でありますか、此の問題を特に分析して質問致します所以のものは、此の法律に依りますと、町村長の地位が非常に不安定なものになつて、うるさくなりますので、立派な人物は町村長等に立候補しないであらうと云ふことを憂慮するものであります、内務大臣は氣輕に之を看過して居られるやうでありますが、私は寧ろ斯う云ふことをすると、市町村を破壊するものなりと思ふのであります、又もう一つ先般の御囘答で觸れられたのでありますが、選擧した知事が政府の指揮監督に服從しない場合、犯罪其の他の場合は別でありますが、さうでない場合は罷免しないと云ふやうな御話でありましたが、今一度確めて置きたいと存ずるのであります、知事を官吏として任命した以上、之を罷免することが出來ないのであるかと云ふ點を御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=76
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077・郡祐一
○郡政府委員 解職請求權の問題は、午前にも一寸申上げたやうに思ひますが、御承知のやうに現在市町村長に對しまする不適當解職と云ふのは、監督權の發動としてございます、併し是は何分にも現在の考へ方から致しますならば不穩當なことであります、此の制度は廢止すべきものと思ふのであります、左樣致しまする場合に直接選擧に依つて選ばれました者を、選びました者が著しく不適當であると云ふ判斷の場合に、其の解職を請求すると云ふことを認めることは、寧ろ首尾一貫して居るのではないであらうか、其の場合に、然らば直ちに所謂「リコール」のやうな一般投票に依つて事を決してしまふ、是は全く當該の市町村長等を住民の意思の自由に委せてしまふことでありまして、是も一つの徹底した民主的な思想であると思ひます、併しながら地方自治團體と云ふものが國家との關聯に於て、憲法上にも其の思想が現はれて居りまするやうに斯くの如き團體のありますることが、國家の存在上適當であると云ふ判斷の下に、出來上つて居る團體であります、隨ひまして監督官廳と云ふものが存在するのであります、而も監督官廳は現在まで不適當と認めるやうな場合には解職を致して居つたのであります、さうしたならば其の監督官廳の不適當解職と云ふやうなことは、是は撤廢すべきものでありますけれども、監督官廳が解職の判斷を致す、是が現在の段階では一番妥當なことではなからうか、其の場合に内務大臣或は知事に對して請求するのでありまするから、是は比較的少數のものに對して置きましても、それに依つて直ちに、請求者が比較的少數であるから、結果が左右されると云ふことには相成りませぬので、此の場合に於きましては「リコール」の場合のやうな工合に、過半數を要求すると云ふやうな必要はなく、是は監督官廳の發動を促す手段と見て置けば宜しいと存ずるのであります、それから解職すべからずと云ふやうな要求、恐らく是は廣い意味の請願のやうな形とでも申しまするか、左樣な形が現はれて來る、是等のものは解職請求自體は監督官廳に致すものでありますが、解職すべからずと云ふ要求、是は法律上其の效果は認めて居りませぬけれども、監督官廳が之に依つて判斷を下すのに適當な材料となることと存ずるのであります、それから訴訟の途は現在開いて居りませぬ、是は不服の申立を如何樣に致しますかと云ふことは、我が國の行政一般に關しまする爭訟の制度が如何樣に組立てられるか、恐らく次の議會等で御協贊を願ふことにならうと思ひまする一連の憲法附屬の法律で決まることと思ふのであります、隨ひまして之に付きまして、現在直ちに爭訟の途等を特に置いて居りませぬのでありまするが、町村長の解職等の場合には、現在の町村制に依りまする知事の處分に不服ある場合と致しまして、内務大臣への訴願が認められることに相成るだらうと思つて居ります、是は現行法の解釋で左樣に相成るだらうと存じて居ります、知事の罷免の問題に付きましては、知事は任期を付けられまして、從來の官吏とは其の選任に於きまして、身分の保障に於きまして、全く其の類を異にする官吏でありますから、是は一般の罷免の形は執られないことでありまするが、一方に於きましては官吏でありまするから、現在の段階に於ては、官吏懲戒令等の適用のある場合は起りまするが、一般の官吏に對しまするやうな罷免の形は、是は發動する場合があり得ない、それは新府縣制の建前上左樣なことはないと云ふ工合に解釋して宜しいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=77
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078・大原博夫
○大原委員 私が思ひまするのは、五分の一と云ふやうな數字が甚だ出來易いので、最近に於きましては思想の變化もありますやら、殊に斯う云ふ風に法律の改正に伴つて來る所の租税其の他の問題もありまして、五分の一程度の者が町村長に對して不備を懷いて居つたり、其の政府に對する懷疑を持つて居ることは極めてあり易いことであつて、而も出來易いことであります、さうした出來易い數字を以て請求さして置いて、而もそれを途中で握つて居ると云ふことは、私は是がいかぬと云ふのであります、隨て斯う云ふ出來易いやうな數字に依つて請求させるならば、請求された者は之に對する對抗の手段がなければならぬと思ふのであります、其の手段はなくして、此の僅かな數字に依つて判斷をする所の立場にある府縣知事に向つて、是が請求權を有すると云ふやうなこと自體が不合理であると思ふのであります、私は斯う云ふやうな時に政黨の弊害が入つて來て、それが爲に是が紊されはしないだらうか、即ち判斷が間違つて來やしないだらうか、斯う云ふことを憂慮するものであります、隨て之に對し町村長が非常に不快な感じを持つて、不安定な地位にあると云ふのであります、要するに此の數字をもつと出來にくい數字に上げますならば、自ら又考へが違つて來ると存ずるのであります、私は數字をもつと増して、さうして或は罷免を請求された人が民主的に對抗する手段として、解散或は選擧と云ふやうな問題が出て來るのではないか、斯う云ふ意味で御尋ねしたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=78
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079・郡祐一
○郡政府委員 現在の段階に於きましては、解職請求に依りまして解職するや否やを決定致します場合には、關係者の出頭を求め、審査をし、其の理由ありと認めた場合に發動致しますやうに法律上規定致しまして、監督官廳の判斷に委ねられて居る譯でございます、之を理事者の側に解散權を認めるとか云ふことに致しますることは、先程一般の投票に付しまするやうな場合には、是は直接參政の度合を、現在の段階に於ては稍稍擴げ過ぎるだらうと云ふ工合に申上げましたし、それから解散權を理事者の側に其の場合に置きますると云ふことは、國の場合と異なりまして、議決機關と理事機關とは、何れも直接に住民から選ばれて出て參つて構成した相對する機關でありますから、片一方に解散權を與へますことは、一方を非常に強くすることになります、根本に於て是等の場合に一體監督官廳が介入すると云ふことは、監督官廳に不當な「インフルエンス」を與へはしないだらうかと云ふやうな、色色な考へ方もあるだらうと思ひますけれども、現在はそれ等の問題を監督官廳の存在に依つて解決して居る譯でございます、併しながら解散權の所在を如何樣に致すとか、或は爭訟に依つて決定する方が宜しいのかと云ふやうな問題は、是は一つの研究問題ではあらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=79
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080・大原博夫
○大原委員 私は其の時に、例へば町村長の場合であるならば、知事に請求をしたものを認定をして貰ふと云ふこと自體が、そこに政黨等の意識に依つて間違つた判斷が下されはしないかと云ふことを憂慮するのであります、此の點に付ては先程申しました通り、町村民の自覺が十分になつて來て、又政黨の意識も正しくなつて來るならば、是は憂慮することはないと思ひます、又一つは、之が認定をする所の官僚が、本當に立派な官僚になつて貰へば結構なことと思ふのでありますが、私は此の法律を見て、將來政黨の弊害の入るべき其の道に對して、何等の用意がしてないと云ふことが憂慮の一つであります、私は此の數字ではどうも得心が行き兼ねるのであります、隨て此の少數に依つて請求させて、さうして、是が一部に依つて如何樣にも認定が出來ると云ふ風に任せて置くことが、政黨政治の弊害に對する所の道が塞いでない、斯う云ふことを憂慮するのであります、併しながら何度申上げても同じことですから、一應此の程度で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=80
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081・中島守利
○中島(守)委員長 早稻田君、あなたは内務大臣に對する質疑だけ今日濟ませて、あと御要求の大臣は次會に出席を要求して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=81
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082・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 私は主として市町村自治に關する實際の問題を捉へて、内務大臣、大藏大臣、文部大臣、其の他の方に質疑を試みたいと思つたのでありますが、只今委員長の御説もありますので、本日は内務關係のことのみを御尋ねしたいと存じます、是は項目が約二十項目に亙つて居りまして、非常に長いので、どうか途中で適當な時間で御切り下さるやうに委員長に御願ひして置きます
先づ第一番に御尋ねしたいと存じますことは、私が數々御尋ねしたいと思ふ基本になる三つの問題を御尋ねしたいと存じます、其の第一は自治制の到達すべき最高の理想如何、政府は自治體の指導目標を何處に置いて居るか、第二は、地方制度改正の理由に、世論の動向に鑑みる云々と云つて居られますが、世論とは如何なるものを指すか、もう一つは、政府は今日の地方行政地區が住民の實情に即して居る、特に市町村地域を適當と認めて居るかどうか、先づ此の三點を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=82
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083・大村清一
○大村國務大臣 何れも御尋ねになりましたことは抽象的なことでありまして、是等は非常に固くなつて御答へしますと、殊に第一點の如きは學説に依つて決すると云ふやうな問題であらうと思ひます、故にさう云ふやうな學者的の御答辯を私申上げるやうな資料もございませぬ、申上げますことは俗論に流れると思ひますから、其の點は御諒承を願ひたいと思ひます、一國の政治を進めて行く上に付きましては、凡ゆることを國政でやつてしまふと云ふ行き方もあるのでありますが、併しそれでは痒い所に手の届いた、國民の滿足するやうな政治が行ひにくいのであります、故に適當なる地方自治團體を作りまして、國家の是認し得る範圍の自由行動を各地方團體に認めまして、各地方團體にそれぞれ適切なる仕事をやらせ、其のやるに付きましては住民の意思に依りまして、又住民の手で、又住民の醵出しまする金に依りまして總てやつて行くと云ふのが、地方自治の存立の基本であり、又地方自治の運營の方針でなければならぬと思ふのであります、而して是等のことは他の言葉で申しまするならば、我が國が「ポツダム」宣言を受諾致しまして、日本の政治其の他百般のことを民主化すると云ふ責任を負荷されたのでありますが、此の民主主義の上から參りましても、地方自治と云ふことは、全く符節を合するが如くぴつたりとすることでありまして、只今申上げましたやうな大體の趣旨を基本と致しまして、現在の我が國の實情に即して、能ふ限りの地方自治の民主化と申しますか、自治化と云ふことを畫した譯であります、世論の動向如何と云ふ御質問でありますが、是は或は此の議會に於ける意見乃至は操觚界の論調、乃至は政府に對し色々の形を以ちまして民間から意見を、或は口頭に依り、或は書面に依り、又政府の職員が地方を實地に視察觀察すると云ふやうなことに依りまして、色々の資料を得て居ります、それ等のものを綜合致しました所で、私共は世論の動向が何處にあるかと云ふやうな點を發見致し、それに依つて行政百般のことに、出來るだけ誤りなからんことを期して居る次第であります
行政地區の點に付きましては、町村の場合と府縣の場合が實際の問題としてあると思ひます、市に付きましても同樣の問題が起ることでありますが、是は町村合併に依つて市を作る、或は町村の地域を擴張致しまして町村を併合すると云ふやうな、實際の必要に依りまして逐次解決致して居ります、市に付きましては區域問題は府縣町村に於ける場合とは事情は違つて居ります、併し府縣及び町村に付きまして色色の事情の變化に依りまして、現在の區域は適當でないと云ふやうな結論を下し得る場合も段々あることでありますが、併し是は何れの場合に於きましても住民團結の一つの區域でございますので、理論上どうも區域が狹過ぎる、乃至は廣過ぎると云ふやうな場合に於きましても、之を民意に反して合併するとか、或は分割すると云ふやうなことは、實際問題として考慮しなければならぬ問題であります、又民意に反しましてさう云ふやうな無理を致しますことは、結局は民主主義の精神にも反することでありまして、それ等の點は理論上の結論、又民意の赴く所、兩者睨み合せて解決を求めると云ふより外はないものだと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=83
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084・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 御尋ね致しました三點が抽象的であつたので稍稍的の外れた點もありますが、併し第一點、第三點に付きましては學説其の他もあり、理論的に御尋ねして居れば到底切りがありませぬので是は追求致しませぬ、第二點の本改正案の提出理由に、世論の動向に鑑み云々とあるが、世論とはどうかと御尋ねしたのに對して操觚界其の他の世論を基調として改正法案を出したと斯樣に御説明がありましたが、私は地方自治に關する限りは、地方民の代表的意見として最も尊重すべきものは、全國の町村長會の意向ではなからうかと思ふ、既に御當局も御承知のやうに、全國の各町村長は都市府縣別に、或は地方事務所別に、更に全國的に會合を致しまして、本改正案に對して所見を開陳致して居ります、隨て御當局へもそれぞれ廻付されて居ると存じますが、併し此の要望に對して、本改正案には容れられて居ない點が頗る多いのであります、本委員會に於て委員各位より御尋ねの點も、概ね此の全國町村長會の決議に基いての御尋ねが多いのであります、私をして言はしむるならば、所謂本案改正に對する世論とは、全國町村長會の決議などが最も正確なものではなからうか、身を以て體驗して居る人々の意見である、斯樣に私は存じまするが、なぜ此の全國町村長會の意向を容れられなかつたか、斯う云ふことを御尋ねしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=84
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085・大村清一
○大村國務大臣 私世論の動向の見解を申述べます上に於きまして、具體的に全國町村長會と云ふことは申上げなかつたのでありますが、併し内務省に於きましては各方面から書面、口頭等に依りまして意見を拜承して居ると云ふ中には、固より全國町村長會の御意見も含まれて居ります、尚又或は全國市長會乃至は全國府縣會議長會、其の他のさう云ふ自治發展の上に色々御心配を願ひ、御協力を願つて居りまする各種團體の御意見も、大いに參酌は致して居る次第であります、尚ほ今囘の立案に對しましても、全國町村長會を初め、其の他の御意見も十分に參酌致して居ることでありまするが、御意見の悉くを茲に其の通りに採用して居ることにはなつて居ない點があると思ひます、私茲で一々それ等の御意見の點を記憶認識致して居りませぬので、其の具體的の御話を申上げる譯には參りませぬが、御指摘に依りまして、御意見に從つて居る、又從ひ得なかつた點は、御説明を申上げる積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=85
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086・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 内務大臣の只今の御説では、全國町村長會の決議は概ね熟知して居るが、併し是の全部を容れ得なかつた、斯樣な御説であります、私は本改正案を拜見致しまして感じたことは、此の地方の町村長が要望して居ることに殆ど相反して居る、斯う云ふことが言ひ得るかと存じます、此の問題に付ては既に同僚委員各位からそれぞれ詳細に指摘を致して居られます、是は悉く町村長會で言つて居る問題ばかりであります、其の他でも、府縣を完全自治體にするとか、或は知事は是非公吏にしなければならぬとか、道州制を設けて貰ひたい、地方事務所を廢止して貰ひたいと云ふやうなことも、何れも是れ悉く全國の町村長の要望する所なのであります、所がさうした點は何等顧みられなかつたと云ふことは、私の本案改正に當りまして最も遺憾とする所であります、先程大原委員でございましたか、駒井委員でございましたかからも御話のありましたやうに、今日こそ私は斯うした自治制の改革に當つて絶好の機會だと思ひます、此の機會を逸しては益益是が改正は困難となつて、實踐に對する理想の實現に難儀になつて來る、斯樣に私は存じて居りまして、其の點非常に遺憾に存じまするが、併し此の場合之を是れ以上追究することを私は止めたいと思ひます、どうか次の機會に地方町村長の意向を十分容れるやうに御留意あらんことを期待するものであります
それから次に御尋ねしたいと思ひますることは、是も全國町村長會の決議の第一番に取上げて居ります、即ち町村長をして町村内に於ける各種施策の綜合的運營を、一層圓滑に行はしめる爲に、必要なる規定を町村制中に設けて欲しい、斯う云ふ一文であります、是は私が御説明申上げるまでもなく、輓近各町村内に色々な團體が簇生致して居ります、即ち經濟方面に於ては農業會、商工關係組合、金融機關、其の他社會團體としては勞働組合、保險組合、教員組合と云ふやうに、各種團體が結成をされて居ります、其の中には本當に必要でないやうなものが行政官廳の局課が所謂割據對立的に設立をさせて居るやうなものもあります、是は色々な意味を含んで居ると存じまするが、各省の局課が割據對立的に地方團體に臨んで、地方に於て局課の手足になるやうな直系獨立團體の育成に努めて居ることは、世間周知の事實であります、此の設立に當りましては、之を強要したやうなものもあり、之を利用して地方民を顰蹙させて居るやうなものもあります、固より是等の中には必要なものもありますが、殊更市町村と別個に作るやうな必要のないものもある譯であります、斯くの如く各種團體の濫立は、徒らに地方自治體の事業經理を無統制にするのみならず、住民の負擔を益益過重に陷れらしめまして、地方自治を不振に陷れる結果に相成りつつあるかと思ひます、隨て町村等に於きましては、是と何等の關係連繋がない爲に非常に困つて居ります、是等の團體はそれぞれ系統級上團體からの指導下に、縱斷的獨立活動を致して居りまして、町村とは何等の關係を持つて居りませぬ、隨て町村では之が關係連繋に困つて居るものがあります、私は此の際地方制度の改正と同時に、各町村長も熱望致して居ります、是等各種團體を整理統合せられまして、其の大部分を市町村機構の中に歸屬せしめ、自治行政の範疇内に於て處理することの出來るやうに改正法案中に規定するのが、所謂世論の動向に副ふ地方自治の發達を圖る所以でないかと考へるのでありますが、之に對する御當局の所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=86
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087・郡祐一
○郡政府委員 町村内の各種施策の綜合調整を圖りますことは、極めて必要なことであり、能ふべくんば、更に町村と云ふ團體の中に總てを吸收すると云ふことが、最も理想的な形態であると云ふ御意見、洵に私共としても同感なのであります、唯現在の各種の構成體系、それから國の致して居ります各種の事業、是等の關係から致しまして、俄に之を拔本的に解決致しますと云ふことには幾多の支障が伴つて居ります、唯現在私共が心掛けて居りますことは、町村以外の團體が院外統制を致し、團體外のものにまで統制力を伸ばしますことに付きましては、各省間に於きましても極力之を防止致して居ります、地域團體以外の、地域團體に類似するやうな團體の存在と云ふものは、可及的に是は抑制しなければ相成らぬと存じますが、町村内に於ける各種の事業も、曾ての町村のやうに粗朴な状態ではなく、可なりに分化して參りました今日に於きましては、將來地方自治法と云ふやうなものが、更に現在の組織運營の外に、より豐かな内容を盛り込み得ますやうな時期には、又左樣な時期の來ますことは非常に望ましいのでありますが、それまでの段階に於きましては、町村制中に規定致されて居ります團體に對します指示權の發動、是等を可及的完全な状態に運用致すと云ふやうな状態で賄つて參らなければ、今現在の段階に於ける改正に於て、御話のやうな理想的な姿で物を解決すると云ふことは、聊か困難であるやうに感じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=87
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088・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 此の問題は非常に難かしい問題ではありまするが、併し難かしいからと言つて、今日の如く各省の局課が、先程申上げたやうに割據的に各種團體を濫立するやうな傾向の續く限りは、私は地方自治の發達は望まれないと思ひます、只今局長殿も仰せになりましたやうに、今出來んとして居る或る組合の如きは、其の組合の統制規定を決めた以上は、組合員以外にまで其の統制力が及ぶやに私は聞及んで居ります、若し夫れ斯くの如きことが實現致しますることと相成りまするならば、此の組合、即ち農業であれば農業、商業であれば商業者以外の住人にまで、其の統制力が及ぶやうなことに相成りますれば、地方の小さな自治體は、結局其の支配下に置かれんければならぬやうな結果に相成りはしないかと、私は杞憂するものであります、ここで當局に於てさうした各省各局課が之を濫立しようとするやうな動向は、此の際是正して欲しい、是正と云ふことに付ての御所見を承りたいと存じます
それから更にもう一つここで御尋ね致しますることは、地方に於ける行政と經濟との調和であります、只今私の申した各種團體の中には經濟團體も多數含まれて居ります、是等經濟團體の活動が動もすれば地方自治體を凌駕する傾向が多分にあります、御承知のやうに我が國の地方自治不振の原因は色色ありまするが、市町村住民の經濟生活と地方制度が不調和であり、遊離して居ると云ふことも、私は一つの大きな原因であらうかと存じます、由來我が國の地方制度は封建制度の後を受けまして、經濟的にも文化的にも、未だ地方的には發達を見て居なかつた頃に、畫一的に其の機構分子たる市町村に平等の地位を與へられまして、之に國家の委任事務をやらせるやうに相成り、專ら其の自主自律主義の建前を執つて來たものが、今日の我が地方自治制度であります、隨ひまして經濟に關する面は何等顧みられなかつた、何等勘案されて居なかつたと私は存ずるのであります、然るに其の後地方に於ける經濟事情は地方制度と跛行的に發達を致しまして、現在に於ては農業會であるとか商工組合であるとか云ふものは異常な發達を遂げて、建物に於ても地方の役場等よりも遙かに立派なものが出來、立派な人材を擁し、財力を擁して地方民に臨んで居ります、斯う云ふ經濟團體は地方自治と分化對立の形を致して居ります、地方自治團體は之に反して經濟上の基盤を持つて居ない關係上、年毎に不振に相成つて居りまするが、是等は寧ろ私は此の儘難かしいからと仰しやつて放つて置くならば、地方制度は破壞せらるる結果に相成ならうかと存じます、從來忘れられたことでありまするが、地方住民は此の爲に非常に岐路に立つて惱んで居ります、又地方に於ける爲政者、支配階級、即ち町村役場に於ても是が統治には非常に困つて居ります、私はここで自治體の機構の中に、是等を何等かの方法を以て加へて、綜合的に且つ有機的に地方自治の擴充強化を圖るやうに、何とか善處せんければならぬと存じまするが、之に對して當局は何等か御考へになつたことがあるかどうか、承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=88
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089・大村清一
○大村國務大臣 只今地方の實情に立却致されまして大變適切なる御意見を交へての御質問であります、大體に於きましては私は至極御同感に思ふ次第であります、御承知の如く我が國の明治以來の發達の跡を繹ねて見ますると、先づ一つの大きな行き方と致しまして、中央集權的な行き方が取られ、又從來當委員會等にも論議の的になりましたやうに、官僚中心主義の行政の運營が發達して來たのであります、そこに世論を卷起して居りまするやうな所謂「セクシヨナリズム」が發展して來た、それ等の影響を受けて地方自治は萎微して振はず、又其の官僚統制及び官僚政治、及び「セクシヨナリズム」の弊が市町村にまで及んで居ると云ふやうな現實は、是は現實として認めざるを得ないのであります、此の因つて來る所は極めて遠く、又根強いものがあるのでありまして、之を打開致しまして、地方自治をして本然の姿に立還らせると云ふ上に於きましては、是は日本の政治の民主化、又自治化と云ふことが、結局根本に與へる「メス」でありまして、之に依つて私は逐次解決されるものと思ふのであります、今囘新憲法が成立致し、又民主主義の線に沿うて立案致した地方制度が實施されると云ふことになりますると、我が國の政治の民主化と云ふことは、國論に於きましても實際に於きましても、非常に速度を加へて來ることと思ふのであります、此の行き方に依りまして、必ずや從來の中央集權主義は、逐次地方分權主義に移行するに相違ないと思ひます、又地方分權が確立致しますならば、そこに民意に基いた公選知事、市町村長が出來まして、民意に基いた各般の行政の運營が行はれることになると思ひます、其の新しい行き方に依りまして御指摘のやうな點は解決さるべきものだ、そこに大なる期待を持つて居る次第であります
尚ほ私考へますにもう一つの點と致しましては、我が國に於きましては、戰爭經濟の立場から致しまして、統制經濟が經濟上に各種の統制を致さなければならぬと云ふやうな必要から、地方自治面の上に於きましても、經濟問題は地方團體に委ねずして、之を國家が直接統制する、國家が統制すると致しましても是は具體的の問題と致しましては、農林省、商工省が統制をすると云ふやうな所で、「セクシヨナリズム」が自ら發展したと云ふ面もあると思ふのであります、既に戰爭を抛棄し、又今後戰後の經營建設が進むに應じまして、食糧問題其の他の經濟問題も段々解決せられまして、從來にありました如き經濟統制と云ふやうな枠も段々外されまして、大體の經濟の運營は、統制經濟に代へるに自由經濟と云ふことになると思ふのであります、是等の點からも將來を望見致しまして地方自治を發展させ、地方分權に我が國の政治が段々と進展發達して參りますると、市町村の機能と云ふものも大いに充實を致し、只今理想の町村に付て御述べになりましたが、それに近いものに順次近寄ると云ふやうに、多大のそこに期待を持つて居るやうな次第であります、併し是は此の樣に申上げますると、總てそれに委ねて置いたらどうかと云ふやうなことになるのでありまするが、併しそれだけでは不十分だと思ひます、内務省と致しまして地方自治、地方行政の發展を庶幾致します立場を執つて居ります所以のものは、今後只今御述べになりましたやうなことに逆行致しますやうな行き方に付きましては、極力之を防止しなければなりませぬ、又其の理想に到達しますやうな方途に付きましては、機會ある毎にそれに力を致しまして、少しでも早く其のやうな目的に、一つでも多く持つて行くと云ふ努力を致すべきだと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=89
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090・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 内務大臣の御説御尤もだとは存じまするが、併し此の本案の改正に當りましては、地方住民は憲法草案の審議よりも寧ろ大きな期待を持つて居ります、大きな關心を持つて居ります、併し只今のやうな内務大臣の御説では、地方民は恐らく之に滿足をしないと私は思ひます、出來るならば此の地方行政と經濟の調和、地方住民の經濟生活と行政の運用、是は切實なる關係のある問題であります、御承知の如く凡ゆる物の配給或は販賣所、其の他は一々お互ひ其の日の生活に關係のあるものでありまして、是が調和の取れることの如何に依つて、地方自治の發達が促されると存じます、そこで私は内務大臣の御説は御尤もでありまするが、此の際是等地方民の要望を一つ御酌み取り戴きまして、さうして此の經濟生活と地方自治と先づ結び付けると云ふ方途として、市町村に連絡委員會と云ふやうな構想のものを設置致しまして、縱の統制に對する横の經濟的連絡の一線を劃すること、入れることが先づ地方行政にさうした只今御説のやうな構想を汲み入れる第一歩ではあるまいかと存ずるものであります、そこで内務大臣には、さうした一項目を本改正案の條章の中に入れる意思があるかどうかと云ふことを御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=90
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091・郡祐一
○郡政府委員 御話のやうな問題を解決致しますのに、地方制度自體で解決致しまするか、地方制度は御承知のやうに地方自治體の基本法であります、基本法は現在のやうな形に致して置きまして、凡ゆる方途に依りましてそれぞれ別個の行程に於て地方自治體の内容を豐富に致す、是が委任事務の形で來る場合もございませう、左樣な内容を豐富に致すと云ふことより、寧ろ後者に依りまして解決する場合が多いのではないかと思ひます、最後に連絡委員に付て御述べになりましたが、是は現に町村に付きましては參與が必置機關にもなつて居りますし、尚ほ參與に付きましては重要事項の審議と云ふことになつて居つて稍稍其の職務權限に於ては漠と致して思りますけれども、他に委員制の運用もあります、何とか此の參與と云ふものを極力、内容豐富に致して、さうして仰しやるやうな連絡委員に充てて行くことが、最も早い途であり、且つ適切ではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=91
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092・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次は本案改正後に於ける地方自治體の指導監督方法をどうせられるか、斯う云ふ問題であります、現今の地方自治に對する當局の監督方法は極めて消極退嬰的でありまして、法の解釋とか、或は理論に拘泥をせられ、專ら過ちのないやうに消極的な監督を致して居られたやうに見受けて居ります、併し今後本案改正後に於ては、少くとも民主化した自治體を造り上げる意味から云つて、自治體個々の變つた實情の上に立つて、積極的な監督を願はなければならぬと存じますが、斯うした問題に對しての當局の所見を承りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=92
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093・郡祐一
○郡政府委員 地方團體に付きまして之を積極的に伸ばして參りますことには、凡ゆる力を盡したいと思ひまするが、唯監督の形に於きまして何と申しますか、後見的の監督、事前に一々指圖をするやうな監督、斯うしたものは出來得る限り寧ろ手を引いて貰ひたいと思ひます、さうして國と云ふものは親切な相談相手になり、斯樣な行き方があると云ふやうな、相談に應じて物を教へて行くと云ふやうな態度を取つて參りたいと思ひます、行政それ自體の中味に入ります監督と云ふものは、決して萎縮した意味合ひに於てではないのでありますけれども思ひ切つて自治體に法律の許容範圍に於て伸びて行つて貰ひたいと云ふ意味合ひでも、左樣な意味合ひの監督と云ふものは省いて參りたい、それが自治體を本當に自主的にあらしむる所以ではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=93
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094・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 從來手續上或は形式に終始致しまして、許可、認可なんかの場合は、地方末端自治體から上級官廳へ稟請した場合、色々形式的法規的なことを取上げられて、難かしい解釋に苦しむやうなことのみ押付けて認可許可を遲らかして、其の爲に折角自治體が絶好の機會を逸するやうな場合が多かつたのでありますが、今後さうしたものに對する取締、或は御監督を如何にせらるるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=94
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095・郡祐一
○郡政府委員 監督に付きましては無意味な遲らし方を致しまして、自治體に迷惑を掛けて居つたことは例があるやうに存じて居ります、之に付きましては一切左樣なことはなく致したい、監督自體を可及的に整理致しましたが、併し起債等に付ては尚ほ如何樣に致しましても監督を嚴にしなければならない、是等に付きましては可及的に早く此の分は認められる、此の分は現在の状態に於ては或る期間だけ留保して置く、此の分は駄目だと云ふやうな扱ひを致すやうに努めて居ります、此の問題に付ては直接町村を第一に監督を致します府縣廳等に對しても、監督の方法と云ふものを十分に徹底して御趣旨に副ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=95
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096・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次は市町村の區域に關する問題であります、是は當初に御尋ねを致しまして、現在の市町村に於ける區域は適當と認めるものと認めないものとある、斯う云ふ御答辯でありましたが、私は今般の改正法案中に規定されて居るやうな村と村、或は町と町との自發的な話合ひに依つて廢置統合の出來るやうな場合は結構でありまするが、場合に依りますれば、國策上さうした住民の氣持に反してでも、廢置統合をせんければならぬやうな事態が、今後益益起つて來るのではないかと存じますが、之に對して何等規定を致して居らぬ、此の點政府が却て不便であり不自由ではないか、斯う云ふ點を御尋ねしたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=96
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097・郡祐一
○郡政府委員 市町村の廢置分合の問題は、省内に於きましても大臣の指示を受けまして、色々と扱ひに付て研究を致して居るのであります、終戰後何と申しましても状態が著しい變化を來して居ります、隨ひまして廢置分合と云ふ事柄が、今後の自治體の發展の爲に必要であれば、是は相當限度までは認めて宜しいことと考へて居ります、唯何と申しまするか、從來も談合に依つてやつて居つたのでありまするが、戰爭中等に稍稍干渉の度を過して併せましたやうな町村に付きましては、或は明治二十一年頃にありましたあの大合併の場合でも、無理のありました所にはやはり其の禍根と云ふものが、長く今日にまで殘つて居る風がありますので、お話のやうな相當強い力を用ひました合併分村と云ふやうなことは、寧ろ避けて行かなければいかぬと云ふ風に考へて居るのであります、隨ひまして規定の上で左樣なことを致しますのは時機ではないのではないかと云ふ工合に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=97
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098・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 御説の通り、勿論民情其の他の關係もありまして、町村の廢置分合には、進んで併合するとか、或は分離すると云ふのが望ましいのでありまするが、今局長の御説の中にありましたやうに、戰時中に強制的に合併したものもあり、それから疎開等に依つて人口の異動の非常に甚だしい地方もあります、更に地下に埋藏物資を持つて居るけれども、財力が乏しいが爲に是が開發が出來ぬと云ふやうな所も相當にある譯であります、現在の地方の行政地區は、概ね機械的に古來の村、町と云ふものを廢合整理したものでありまして、實際地方の實情にぴつたり合つて居りませぬ、殊に經濟、社會事情の變革に伴ひ、地域的には狹く、人口的には人口が少く、獨立不可能なやうな町村も少くありませぬ、其の爲め住民の負擔は非常に過重となり、十分に自治機能を發揮し得ないやうな所もあるのであります、隨て私は民主化した今後の市町村の自治の發達を促すには、此の際寧ろ政府御當局に於て廢置分合、實際土地の事情村の事情に合致したやうな廢置分合の機運を釀成するやうな方途を執らるることが適策ではないかと存じまするが、それに對する御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=98
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099・郡祐一
○郡政府委員 是は必要なことと存じます、實際の地方々々に就きまして、今後自治が發達出來まするやうな基盤を作ります意味合ひに於きまして、十分調査を遂げまするし、左樣な方向に府縣廳を督勵して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=99
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100・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次は地方の住民の權利と義務とに付て伺ひたいと存じます、本改正法案を披見致しますと、權利を認め、義務を輕視し過ぎて居るやうな感があるのであります、近次民主主義を履き違へて、徒らに權利のみを主張し、自治體の道義秩序を紊し、幾多の禍根を釀成して居るやうなものもあります、自治政治は決して法の力や理窟のみでは運營の出來ぬものでありまして、住民相互の道義を基調とし、義務と責任との融合理解に依つて、健全且つ圓滿なる發達が出來ると存じます、然るに本法はさうした權利を認め過ぎて、義務を認めないやうな感がありはしないか、此の點に對する御見解を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=100
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101・郡祐一
○郡政府委員 何れの事柄に付きましても、義務と權利とは相表裏をなして居るものでありまするが、負擔等に付きましては是は明瞭に義務の面が強く出て參る譯であります、併しそれ以外に此の度住民の基本的權利として列擧致しましたものは、何れも特に之に付きまして義務としての表現は致して居りませぬけれども、正常に之を執行し、濫りに之を執行すべからざる義務と云ふものは、當然それぞれの基本的權利の内容に含まれて居ることであります是は法律に左樣な表現になつて居らぬ權利の面から書いて居ると致しましても、勿論其の趣旨の徹底と云ふことは、十分圖つて參りたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=101
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102・中島守利
○中島委員長 本日は此の程度で散會致します、次の會は明後二十六日午前十時より開會致します
午後三時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00619460724&spkNum=102
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