1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正ずる法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年七月二十六日(金曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 本多市郎君
理事 松川昌藏君 理事 早稻田柳右ヱ門君
理事 中村高一君 理事 大原博夫君
理事 竹谷源太郎君 理事 丸山修一郎君
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 田邊讓君
松永佛骨君 綿貫佐民君
小野瀬忠兵衞君 小池新太郎君
青木清左ヱ門君 八坂善一郎君
大矢省三君 大澤喜代一君
細田綱吉君 宮村又八君
武藤運十郎君 宇田國榮君
伊藤實雄君 中田榮太郎君
増井慶太郎君
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
文部大臣 田中耕太郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君
大藏事務官 加藤八郎君
農林技官 中尾勇君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 是より開會致します、前會に引續きまして質疑を許します──早稻田君、あなたから要求になりました大臣はまだ御出席になりませぬが、内務大臣が御出席になつて居りますから、内務大臣に質疑をなさつて戴きたい、只今閣議中であるさうですから、若し他の大臣に質疑をする場合に、まだ大臣が御出席になりませぬければ、他の通告者に許しまして、さうして大臣の出席された時に御質問を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=1
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002・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 前囘に引續きまして、既に論議された點に成べく觸れないやうに、若干御尋ね致したいと思ひます、最初に地方自治に參與する吏員の待遇に付てであります、市町村吏員に有爲な人材を得ることが自治制の發達に大きな影響のあることは勿論でありまするが、之に對して將來國家的優遇方策を立てられるやうな御意思があるかないか、それから、本法の改正に當つて有給町村長にすることになつて居りまするが、此の有給町村長の基本給料と云つたやうなものは御定めになるかどうか、先づ此の二點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=2
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003・郡祐一
○郡政府委員 町村吏員の待遇を物質的方面と名譽的な方面と兩方面から講じて參りますことは、國としても必要と考へて居ります、隨ひまして町村吏員の給料を、或る程度其の生活を保障し得ますやうに、十分ではございませぬが、國庫の助成等を物質的には致して居りますし、或は全額を補給致します吏員の設置も一部に付き致し、それから市町村長に付きまして名譽的處遇と致しまして、勅任或は奏任の待遇も致して參つたのであります、此の思想に於きましては現在も左樣な處遇を致すことを適當と考へて居りまするが、物質的處遇に付きましては、最早國庫の俸給の形で參りまするよりも、一般的な財源を付與する方法に變りました方が宜しいと思ひます、さうして物質的な處遇が出來得るやうに致したいと云ふやうに考へて居ります、それから名譽的な處遇に付きましても、既に左樣な官吏に匹敵致しまする待遇を與へますることの是非も、檢討致さなければならぬ時期になつて參つて居ると思つて居ります、隨て名譽的處遇に付きましても、民主的に切換へられました現在に相應したやうな方策を考へたいと思つて居ります、それから町村長の基本給料に付きましては、是は一般吏員とは異りまして、確かに給料を支給致すことに相成るのでありまするから、其の生活を保障を致しまする給料であるべきではございまするし、之に付ての大體の基準は指示致したいと考へて居りまするが、併し既に町村長でありまするから、其の町村長の能方なり事務の程度等に依りまして、一應の標凖は決めましても、それの決定等に付きましては、寧ろ町村の自治に任せました方が好ましいことである、非常に破格に、當を失しました給料の決め方を致しました場合にのみ、適當な指圖を致すと云ふやうなことで運用致して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=3
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004・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 御説明御尤もではありますが、地方に於きましては吏員の質が漸次低下するやうな傾向にあります、申すまでもないことでありますが、市町村自治は其の村内に於ける指導的有力者の、心からなる協力がなくては其の目的を達成し圓滑な運營は出來ぬのでありますが、最近非常に此の待遇が惡い爲に、有能の士を得ることが難かしい觀があるのであります、更に又町村長等に於きましても、自分の給料を定めるのに、自分からは言ひ出しにくいと云ふやうな關係で、地方議會に於て定めるに當りましても、そこに非常に感情的或は運營上の難點がある譯であります、そこで、政府から一定の基凖を御定めになると云ふことが、有能の士を求めるに便であり、且つ町村長としても安んじて業に就くことが出來るやうに考へられますので、將來一つ適當に御勘案を戴きたいと存じます
それから最近官公署の暑中休暇を復元なさつた譯でありますが、此の暑中休暇は將來とも普遍的に一定の休暇を與へられると云ふことに相成るものと了解して差支へないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=4
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005・郡祐一
○郡政府委員 市役所、町村役場等に付きましては、從來官吏と同じやうな勤務時間の指示は致して居りませぬ、其の爲に、此の度の官廳に付ての扱ひを其の儘傳へることは致しませぬで、寧ろ市町村役場の現状と云ふものは、第一線の機關でありますが爲に殆ど休日もなしにやつて居る状態であります、隨ひまして、之に付て、第一線の窓口機關である點からも考へまして、現在の所直ちに暑中の半休を致すやうな指示を致しますことは、却て適當ぢやないと考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=5
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006・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次に御尋ねしたいと存じますのは選擧のことでありますが、先般來選擧法の改正をなさる意思のおありのやうな御説もありましたが、選擧法改正に付ての内務大臣の構想を承りたいと思ひます、それから更に今秋行はるる知事公選の方法等に付て具體的の御説明を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=6
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007・大村清一
○大村國務大臣 只今御尋ねになりました選擧は恐らく衆議院議員選擧も地方議會の選擧も含めての御尋ねと思ひますが、政府と致しましては、昨年秋敗戰後の事情に立脚致しまして、「ポツダム」宣言の趣旨に從ひ、衆議院議員の選擧を民主化すると云ふ線で、帝國議會の御協贊を經てあの選擧法が成立致し、それに依つて一囘だけ選擧が行はれた譯であります、さうして其の結果は、大局的に於きましては先づ適正な選擧が行はれて、民意が反映せられたと云ふことは内外共に之を認めて居る所でありまして、一應あの改正で適當であると云ふやうに考へて居ります、併し選擧の行はれました跡を顧みまして世間にも色々討議をされて居る事項がある譯であります、例へば選擧區の點に於て、又連記投票の點に於て、或は又選擧運動の費用の制限乃至は運動方法の點に於て、色々討議をされて居る所もあります、是等の點を私共と致しましては十分に内面的にも調査を致し、又世論も注目致しまして種種考究中でありまするが、未だ政府と致しまして、如何なる線に沿うて選擧法を改正すべきであるかと云ふ結論には達して居ない譯であります、もう暫く能く研究をして見たいと考へます、又偶偶今囘臨時議會が開かれまして、選擧に最も御經驗のある議員各位の、體驗に基いた貴重なる御意見も聽けることでありまして、そこに多大の希望を囑しまして、十分是等の點に付ての率直にして隔意なき御批判、御意見を拜聽致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=7
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008・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 選擧に當りまして、住民權の擴張や政黨の對立を助長せしむるやうな選擧制度の採用は、假令是が自治權の擴充を目標と致して居りましても、自治行政の事態を益益惡化せしめるやうな原因に相成るかと存じまするが、さう云ふ點に對する内務大臣の御意見、竝に地方の選擧に當りましては別に地方に適應した選擧規則を御定めになる御意思はないか、それから今度の改正制度に依つて、納税義務を果さない者を有權者と致して居りまするが、將來滯納者が續出するやうな憾みがあるかと思ひますので、之を認めた理由如何、更に是は先般もどなたか御説がありましたが、選擧權の要素となつて居りまする六箇月の居住期間であります、實際地方に於ての實情を知るには、六箇月では短いと云ふやうな見解を私は持つて居りまするが、此の六箇月とせられた根據如何、更に供託金の制度でありますが、府縣知事、或は市長の選擧には供託金制度を持續せられ、町村の選擧には地方住民の推薦制を執つて居られるやうであります、私は地方住民の推薦制こそ時代に適した選擧方法ではないかと存じまするが、全面的に供託金制度を廢止せらるる御意思はないか、以上の點に付て御答辯を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=8
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009・中島守利
○中島委員長 早稻田君、文部大臣が御出席になつて居るやうですから──此の答辯は長いやうですから後廻にして、文部大臣に質疑を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=9
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010・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 御繁忙中の文部大臣に御出席を戴きまして恐縮でございます、御尋ね致したいと存じますことを率直に申上げますが、地方自治の改革上自治教育に付ての文部大臣の御所見を拜聽したいと存じます、それから學徒竝に青少年に對する自治教育方針を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=10
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011・田中耕太郎
○田中國務大臣 地方自治の改革と教育の關係と云ふ御質問でございますが、其の點に付きましては、教育全體の官僚主義からの解放、それから教育の地方分權化と云ふ方向に向ひまして、終戰後文部省と致しましては色々考へて參つたのであります、此の二つの點に付きまして、米國教育使節團の殘して參られた報告書にも、非常に有益な示唆がございます、さう云ふ意味合に於きまして、さう云ふ線に沿うて目下研究中でございます、是は併し文部省の所管事項以外に亙つて居る問題でございまして、他の關係、殊に内務省の方、又聯合軍最高司令部とも十分協議致しまして、成案を得なければならないものだと存じて居る次第であります
御質問の第二點は學徒及び青少年に對する自治教育でございます、是は學校教育に於きまして、或は青少年に對する社會教育に於きまして、非常な重要性を持つて居ることでございまして、終戰後文部省と致しましては、從來の公民教育と云ふものが誤つて居つた、此の公民教育の中には個人的道徳、詰り從來の意味の修身も含めてでございます、併し特に社會生活又地方の自治體に於ける所の公民的の生活が非常に重要な意義を持つて參る譯であります、其の二つの方面に於きまして、公民教育の徹底と云ふことに力を注がなければならないと存じて居る次第であります、本議會で以て度々論議せられました所の所謂地方青年の教育は、今後どう云ふ風に向いて行くかと云ふ御質問に對しまして、詰り職業教育と竝んで公民教育を徹底させなければならないと云ふ御答へをして參つたのであります、公民教育の方面に於て新たに制定せらるべき憲法の精神に則りまして、青少年殊に青年學校の學徒に對しまする公民教育の一部分として、自治教育を徹底的に實施して參りたいと云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=11
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012・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 文部大臣の御説明に依つて、概念的には御意思のある所を拜聽しましたが、現在都市に於ては御説のやうに青壯年の職業教育が必要であり、地方に於ては自治的の國民教育が必要であるやうに言はれて居ります、即ち戰時中に於ける地方の青年は、青年學校の訓練を通じて軍國主義的な教育を受けて參つた譯であります、所が今後は之を一擲致しまして、變つた教育方針を執らなければならぬと思ひますが、現在の青年學校を解體されまして、さうして眞に地方自治の中堅となるべき青年を養成する爲の、青年の基礎訓練機關を御作りになると云ふやうな御意向はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=12
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013・田中耕太郎
○田中國務大臣 御説の如く青年學校は戰時中軍事教練の機關のやうになつて參つたのであります、それで之を新たな精神で以て活かす、充實すると云ふことは極めて必要でございます、青年學校生徒自身をどう考へるかと云ふことに付きましては、青年學校關係者の側から非常に強い要望がございまして、現在の義務教育の制度を、之を憲法の草案の規定に表はすと云ふやうな要望もございます、又女子にまで及ぼすと云ふ風にしなければならぬと云ふ主張もございます、他方青年學校の現在の虚脱状態と申しますか、又遡れば軍事教練の爲に利用せられ、軍國主義の鼓吹に非常な貢獻をしたと云ふやうなことに鑑みまして、新たに之に代るべき形のものを作る方が宜いぢやないかと云ふやうな、只今のやうな非常に御尤もな御説も承つたことがございます、此の問題は非常に愼重に考へなければならない問題でございまして、「アメリカ」教育視察團の報告書にも、青年教育に付て觸れて居るやうな次第でございますので、是は最近發足することになつて居ります内閣直屬の教育刷新委員會に於きまして、此の委員會には勿論青年學校の方も加へて居りますが、十分討議しました上で、文部省と致しましては善處致したいと思つて居るのでございます、此の際には法律で以て、詰り青年學校教育を強制するのが宜いか、或は此の青年學校──名稱はどうであれ、さう云ふ實質のものを一層充實致しまして魅力あるものにして、自然に地方青年の向學心を旺んならしめ、それに惹付けるやうに行くべきかと云ふやうな問題もございます、又只今の御説のやうな、全く新たに出發すべきだと云ふ有力な御意見もあることであります、十分さう云ふ點に付きまして、研究善處致したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=13
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014・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 御説のやうに敗戰後、學徒青壯年は虚脱状態に陷つて居ります、從來は地方の青年などは軍隊に入る、入營すると云ふことが、青年期と壯年期との段階でありまして、ここで區切を付けられて居りましたが、現在の如く別に訓練機關もなく、又軍隊に行くと云ふやうなこともなくなりまして、地方の青年は非常に堕落の一途を辿つて居る傾向が多分にある譯であります、斯くて地方自治の中心をなす青壯年層に、さうした氣風が瀰漫すると云ふことは由々しいことだと思ひます、願はくば文部當局に於ては速かに適切なる方途を講ぜられて、さうして健全なる地方自治の發達に寄與せられんことを熱望する次第であります
此の問題は是で打切りまして、もう一つ承りたいと存じますのは、地方に於ける文部省所管の土地であります、特に山林が多い譯でありますが、全國で約十二萬町歩あると承つて居ります、是等地方に於ける大學の演習林であるとか或は文部省所管の其の他の山林土地等を此の際地方財政を裕かにする意味に於きまして、關係地方へ拂下げをして戴くなり、或は開放して戴く、斯う云ふ御意思がありやなきやを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=14
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015・田中耕太郎
○田中國務大臣 此の問題に付きましては、或る縣からの陳情も最近參つたやうなこともございまするし、こちらとしても十分研究致したいと存じて居ります、大學が持つて居ります山林等に付きましては、研究上非常に必要なものもございまするし、又研究上必要であつたが、戰時中の研究の必要から取得したもので、今日に於ては、もう或は必要がなくなつたんではないかと思はれるやうなものもあり得るのでございます、斯う云ふ點は十分勘案致しまして、御趣旨に副ふやうに努力致したいと存じて居る次第であります、唯大學の持つて居りますものに付きましては、或る程度に於きまして大學の當局の意向も十分尊重しなければならないことでございますので、文部省と大學と十分協議の上で、善處致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=15
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016・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 大變御理解ある御説を拜聽して感謝しますが、只今御説の大學の演習林は、概ね廢藩置縣當時に、歸屬不明な山林を、便宜上文部省の所管として大學の使用に充てて居ると云ふやうなものが多いと私は存じますが、最近文化交通の發達は、寧ろ大學の演習林として御使用になり、或は研究に充てられるのに、不適當な土地が多いのではないかと思ひます、所がそれに反して大學の演習林が接續町村に不可分の状態に置かれて、非常に必要化して來た譯であります、例へば河川を開くに致しましても、或は道路を開鑿するに致しましても、それから最近の食糧對策上、此の林野の中には水田とするに足るものが相當に澤山ある、更に又畑として耕作することの出來るものも澤山ある、又中には地下に非常に良質な陶土とか、或は其の他の鑛石を埋藏して居るものもある譯でありまして、此の儘に置きますと、其の地方の發達に非常に影響の多い所もある譯であります、所が御承知のやうに大學は別天地の感がありまして、地方から大學等へ御願ひに參りましても、中々御相談に乘つて戴けないと云ふやうな憾みがある譯であります、勿論大學の研究上御必要な所は別でありますが、私共の知つて居る範圍では、寧ろ大學は今御使ひになつて居ない、活用になつて居ないと云ふ所があるやうに見受けて居ります、どうか是は食糧對策上、或は都市の外郭の地などは、保健衞生と云ふやうな觀點から特別に御考慮を賜はりまして、さうして文部大臣閣下より大學當局へそれぞれ御話を戴きまして成べく速急に適切なる御配慮を頂戴したいと思ひます、洵に御多用中を煩はして有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=16
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017・田中耕太郎
○田中文部大臣 只今大學が研究上必要でない範圍まで持つて居る、さうして其處に耕作し得べき、詰り食糧問題に大いに貢獻するやうな開溌の餘地のあるやうなもの、或は又埋藏物の資源等もあると云ふことであります、是は國家經濟から見まして甚だ損失になる譯であります、十分調査致しまして此の趣旨に副ふやうに努力致したい、斯樣に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=17
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018・郡祐一
○郡政府委員 御説のやうに制度の改革が自治の進展に十分即應致し、却て自治を攬亂することがないやうに致すべきことは固より必要なことでございまして、此の度の改正も其の點には特に深甚な考慮を拂つた積りであります、相當大きい理想を持ちつつ、改革が其の事態に即した堅實なものであらしめたいと云ふ氣持は各面に現はれて居るやうに存ずるのであります、唯財政に關しまするやうな改革は、多くの場合常に實情に非常に即して參らなければ宙に浮いてしまひますと同時に、只今御審議を願つて居ります地方制度に付きましては、或る程度啓發的と申しますか、指導的と申しますか、左樣な部分も含ませますことが事の性質上必要であり、其處の調和に付ては十分注意を致さなければ相成らぬと存ずる次第であります
次に地方議會の選擧に付て地方に即した規則を設けるべきではないかと云ふ御話でありまして、是も洵に御尤もな所であります、唯選擧と云ふ技術的な執行を致します事柄の性質上、其の性格から致しましても、事務的に申しましても、現在でも衆議院議員選擧法と或る程度差異を設けて居る所もございますが、非常に根本的に選擧の規則自體に差を設けるべき部分もないのではないかと思つて居ります、唯町村に於きまする選擧等に於きまして、近時町村に於ける各種の選擧が激しい競爭を演ずるやうになつて參りましたが、町村に依りましては極めて簡素な選擧の方法──選擧と申しまするか、良い意味の談合で事が片付くやうな途を開くやうな簡素化と云ふことも、一應考へて見て居ることであります、現在選擧が相當熾烈に行はれまする現状から考へますると、直ちに左樣な方法も採れないかのやうに考へて居る次第であります
次に租税の滯納處分者の被選擧權でありますが、租税の滯納は公の團體生活を營みます上に於ては確かに大きい義務違反であります、唯滯納が惡意或は個人的な事情に基くと解しまするよりも、社會經濟上の變動に依つて已むを得ない事情になつた、斯樣な場合にはそれの惡質さを指摘することは出來ないやうに思ふのでありまするし、現在の社會經濟上の情勢から申しまするならば、其のやうな善意に基く、或は非難が自己の下に歸せられないやうな種類のものもあるやうに思はれるのであります、租税の滯納の處分を受けて居るからと云つて、直ちに政治上の無能力と判斷することは、現在の状況では却て當を失すると考へまして是が被選擧權を認めることに致したのであります、六箇月の居住期間の問題でありますが、一般的に見まして、社會經濟生活上の變化と交通の發達に伴ひまして、又職業が非常に複雜になる爲に、住居の異動が極めて頻繁である、斯樣な状況から考へますならば、地方團體の本質上其の土地との繋がりは必ず認めなければ相成らぬと思ひますけれども、當該地方團體に關心と責任を持ちます程度と云ふのに、從來のやうな長期を要することは必要ないではないだらうか、寧ろ參政能力のある者を努めて選擧に網羅致すことが適當であらうと云ふ考へから、六箇月と云ふ所に落付いた次第であります、最後に供託金制度の廢止の御話でありますが、仰せのやうに物的擔歩が必ずしも深い意味を現在の状況では持つとも考へられないのであります、それで町村長の選擧のやうに比較的狹い範圍で、顏見知りの所で、有力な人達の一定數から推されたやうな場合には、此の人的擔歩は非常に有放に働くと思ひます、唯是が府縣とか市とかになりますと、相等數の連署を要求致しましても、是は比較的容易に集められるのであります、又其の擔歩を致しました人間が必ずしも辱知されて居らぬと云ふ場合には、多く其の意味がない、唯人數だけが意味があると云ふことにもなります、隨ひまして物的擔歩には非常に深い意味は認められないやうな状況になつて居ります、之に代位すべき擔歩の問題も大きい團體にはない、さうすれば全然擔歩をなくしてしまふと云ふことも考へられることでありますが、現在のやうな、物的擔歩としての供託金制度があります以上は、之に代位するものが發見せられるまでは、現在の物的擔歩供託金制度で行つて、或る程度の供託金は效果がある、色々な考へ方を持つて居りますが、左樣な意味合を理想的な形ではありませぬが、果して參ることに致したい、斯う云ふ考へで供託金制度を存續致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=18
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019・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 納税義務を果さない者の被選擧權に付ては、私が、先日の委員會で當初にどうも今度の改正制度では、義務を輕視する感があると申上げたのでありますが、是なども一つの現れではないかと存じます、從來納税は國民の大きな一つの義務でありましたが、今囘の改正憲法には納税の義務が載つて居ないやうであります、それ等が此の改正案に影響したと思ひますが、地方には意識して納税しないと云ふ惡質な者も相當ある譯であります、是等の者に選擧權、被選擧權を與へる場合には、地方自治體の運營に非常に支障が多い、納税義務を果さない者は被選擧權を認めない、斯う云ふやうにするのが妥當でないかと思ふのであります、是は更に再考を促したいと思ひます、それから更に供託金の制度でありますが、御説の如く町村と違ひまして、府縣市へ參りますれば選擧の範圍も廣いので、推薦制を採るのは容易でないと云ふことも一應尤もに存じまするが、併し現在の如く供託金の金額が非常に僅少であると云ふのは、一方地方住民の推薦制の人數に對比致しまして、今日の供託金が少いと云ふ感があります、是では濫立の虞れが生ずると私は思ひます、理想と致しましては、やはり推薦制を採るのが私は事態に適合して居ると思ひますが、若しそれが出來ないとすれば供託金をもつと増額すると云ふ御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=19
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020・郡祐一
○郡政府委員 供託金の存廢の問題、供託金の額の問題、是は選擧制度に關しまする一つの研究問題なのであります、現在の状態で供託金の額を相當高めましても、之を調達致しますると云ふことは必ずしも困難でない状態に相成つて居るのであります、供託金の制度は何と申しましても、本が衆議院議員の選擧法に關聯致しまして考へることが適當かと考へますので、選擧法の改正等とも考へ合せまして現に研究も致して居りまするが、時期は左樣な基本法との睨み合せに依つて決めたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=20
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021・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 それからもう一つ選擧に關して伺ひたいと存じますが、知事の公選に當りまして、是は先般の衆議院議員選擧に依つて公營にすると云ふ御説がありましたが、どの程度まで公營になさるか、さうして選擧公報の發行はなさるかどうか、それから郵便等はやはり是も公營せられるかどうか、それから「ポスター」の制限等に付てはどんな方法が講ぜられるかと云ふ點を伺ひたいと思ひます、それからもう一つ、是も先般來論議せられて居りまするが、地方事務所單位で選擧を行ふか、是は府縣會議員の選擧でありますが、地方事務所單位で行ふと云ふ御説であります、併し此の地方事務所の區域が非常に廣い所と狹い所とある譯でありまして、狹い所は大體其の地方を代表する議員を得るのでありますが、大きい所になりますと、場合に依れば一地區へ三人も五人も固まつてしまつて、議員の出ない所が出來る憂へが多分にある譯であります、そこでやはり是は先般どなたかから御説がありましたやうに、地方事務所單位にするよりも、從來の郡單位にすることの方が宜いと云ふ説が地方に多い譯でありますが、之に對する御見解を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=21
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022・郡祐一
○郡政府委員 知事の選擧の公營の方法と致しましては、選擧公報の發行、演説會、此の二つに付て選擧の公營を認めることに致す考へであります、それから事實上の問題と致しまして衆議院の場合と同じやうに、「ラジオ」の施設の利用と云ふことも致したいと思つて居ります、それから「ポスター」に付きましては枚數に依る制限を考へて居りますが、此の問題に付きましては、衆議院議員選擧の場合とも併せて考へて見なければならぬ部分があるやうに考へて居ります、それから府縣會議員の選擧區の問題でありまするが、何分にも元の郡の區域と云ふものが、非常に大小樣々になつて居りまして、合區致さなければ到底人口數からでも一人も出し得ないやうな郡もありまするので、寧ろ現在一つの單位となつて居りまする地方事務所の方が、單位と致しても便宜であり、又前にも申しました選擧事務の扱ひの上からも便利であらうかと存ずるのであります、唯地方事務所單位に依りまする選擧が實際今まで經驗致されませぬので、法律は改正致されましたが、それを實施致されませぬ爲に、如何樣に相成るだらうかと云ふ若干の不安もあるだらうと思ひますが、選擧の單位としてさして不合理なものではない、此の際郡を採りまして合區等を致しますれば、結果に於てもさしたる差がないものである、隨ひまして地方事務所單位で選擧を執行致しまして、別に支障不合理は起らないのだらうと云ふ工合に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=22
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023・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 能く諒解致しました、もう一つ選擧に付て伺ひたい、是は實は先般郡地方局長殿には私的に一寸伺つたことがある問題でありますが、内鮮人の選擧權の問題であります、是は現在條約の締結されて居ない今日、難かしい問題とは存じまするが、先般本會議に於て内務大臣からの御話もあつて、内鮮人の取締り等が嚴重に行はれることに相成つて居りまするが、併し之に對する保護と云ふ面から考へましても、内鮮人が曾ては選擧權を持つて居つた、所が終戰と同時に、本籍のある者は現在選擧權がある譯でありますが、寄留して居つた者は委く選擧權を剥奪されてしまつたと云ふので、善良なる内鮮人の中には、非常に不滿に思つて居る者が多い譯であります、特に歸化を要望して居る者、或は内地人を妻として居る者等は、もう既に二十年も三十年も内地に居住して居りまして、内地人になり切つて居る、是が寄留籍しかなかつた爲に選擧權を無くしたと云ふので、非常に問題に致して居ります、是等の人々に對しては日鮮融和と云ふ觀點から見ましても、又此の人達の盡して居る今日までの功績から見ましても、當然適當の方法を取つて選擧權、被選擧權を與へるのが妥當ではないかと考へて居りますが、之に對する所見を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=23
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024・大村清一
○大村國務大臣 敗戰後未だ講和條約も出來て居りませぬので、大體朝鮮は日本から離れるであらうと云ふことは、略略間違ひのないことでありますけれども、其の時に至りませぬと、朝鮮の國際的歸屬と云ふことは分らぬのであります、さうして是は絶對的なものではないと思ひますけれども、外國人に對して其の國の政治參與權を與へると云ふことは、世界各國に於きましても殆ど其の例のないことでありますし、此の點に付ては尚ほ能く考慮しなければならぬ點が殘つて居ると思ひます、若しやはり國籍に從つて、政治參與權は處理をすると云ふ原則になると致しますれば、善良なる朝鮮人の人は日本に歸化することに依つて、政治參與權を得ると云ふやうな途も固より開かねばならぬことであります、併し歸化の問題も、朝鮮の國際的歸屬が決まるまでは、甚だ遺憾ではありますけれども取扱ひ兼ねることと思ふのであります、尚ほ又もう一つの點に於きましては、固より朝鮮人と致しまして善良なる我が國民と全く同じ水凖に立つて、我が國社會の發展に貢獻をされて居る人々が少くはないのであります、併し又一面に於きましては我が國の敗戰後越規不法の行爲、殊に我が國の社會治安を紊すやうな行動も少からずあるのであります、是等の點ももう少し推移を見まして、是等が適切に處理せられなければ、歸化の問題等も今直ちに解決することは實質上困難な點があるやうに考へて居る次第であります、併し是は講和條約締結、朝鮮の歸屬と云ふやうなことが段々確定して參りますまでの間に於きましては、諸般の情勢を能く研究致しまして、善良なる朝鮮人を冷遇すると云ふやうなことのない配慮は致すべきだと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=24
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025・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 次に御尋ね致したいと存じますのは、府縣「ブロック」に依る地方行政事務局の改廢に付てであります、現存の府縣「ブロック」地方行政事務局は、丁度地方に於ける地方事務所と同じやうに、中間的存在の機關と看做されて居ります、本土寸斷に備へて設置したものと稱へられて居りましたが今後此の地方行政事務局を如何に改廢せられるか、斯う云ふ問題であります、それから此の地方行政事務局の局長と、今後公選せらるべき公選知事との關係はどうなるのでありますか、それから若し之を存置せらるるとすれば、中央集權の弊害を除く爲に大幅な權限を委讓せられて、さうして道州制にまで相成るやうな處置をせらるるのが妥當ではないかと存じますが、是等の諸問題に付て内務大臣の御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=25
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026・大村清一
○大村國務大臣 現在致して居りまする地方行政事務局は、仰せの通り戰時中の總監府と云ふものの名殘であると云ふやうな沿革は持つて居りまするが、併し總監府の性格と今日の事務局の性格とに於きましては非常に大きな相違がありまして、機構から申しましても現在の地方事務局は職員の數も極めて乏しうございますし、又權限から申しましても極めて貧弱なものであります、是は制度若しくは法律關係から、地方行政事務局が其の機能を果して居ると見ますよりも、事實關係で問題を處理して居ると云ふやうに申上げた方が、實情に即して居る説明だと思ふのであります、即ち地方行政事務局長は、各事務局の中に於きまして先づ中樞的な人物、即ち府縣知事と致しまして他の知事から尊敬をされると云ふやうな者を以て局長を兼ねさせて居ります、又其の下に少數の補助者を置いて居るのでありますが、是は指揮、命令、指示をすると云ふやうな格式張つたことでなく、寧ろ關係府縣に對しまして事情を説明して、勸告をする、「アドバイス」をすると云ふやうな、話づくで必要なる調整をやつて居ると云ふのが、現實でありまして、食糧の供出其の他經濟の戰後の復興等、萬般の點に付て各府縣が協力をする、同胞愛に愬へて、又國民としての責務を各府縣が果す上に於きまして、説得づく、「アドバイス」に依つて適切に問題を處理して居ると云ふやうな實情でありまして、此のやうな機關は、知事公選後に於きましても、我が國の國情に鑑みまして、存續する必要を尚ほ認めて居る次第であります、併し將來に於きまして地方事務局の權限を擴大致して、之を道州制にまで發展をさせることは、政府として深甚の研究、調査、考慮をしなければならぬことと思ふのであります、或が國の國情の進み方と致しましては、國内情勢が漸次緩和致して參りますに從ひまして、軍國的とも評せられた中央集權を地方分權に切換へると云ふことが、是は必至の態勢であらうと思ひます、其の場合に於きまして、結局府縣、市町村と云ふ現在の機構の外に、府縣の上に更に各府縣を統轄するやうな有力なる中間機關──政府と地方との問の中間機關を設けると云ふことは、地方分權の方針から申しますると、深甚の考慮をしなければならぬ點もあると思ひます、併し是は一面に於きましては、又我が國の將來の動向に依りまして、其のやうな缺點も尚ほ乘超えまして、道州制を設ける必要があると云ふ結論に達するかも知れませぬ、是は今後の我が國の動向と、又今後の制度の考究に依つて決する問題であります、今政府に於きましては、地方事務局の權限を逐次擴張致し、又此の機構を擴充致して、府縣の上におぶせ掛けると云ふ方針を執ると云ふやうな氣持は持つて居ないのであります、現状でやつて行く、又其の地方事務局の機能も制度の力、權柄づくで行くと云ふやうな行き方でなく、相談づくで行く、又指示に代へるに「アドバイス」で行くと云ふことで、運營をして行く方針で居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=26
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027・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 地方行政事務局を現状の儘で行くと云ふ御方針であると承りましたが、此の場合關係府縣は其の地方「ブロック」の長官、それから内務大臣との二重の監督を受けることに相成るやうに存じますが、さうなる場合は所謂屋上屋を架する結果になりまして、却て地方自治の發達を阻碍し、機能の發揮を妨げるやうな結果に相成るかと存じます、そこで地方行政事務局を現状の儘ならば、廢止される方が宜いやうに考へますが、廢止しない場合はもう少し權限を擴充して、さうして中央集權を地方分權に切替へる、斯う云ふことにするか、何れかの一途を選ばれるのが私は適策だらうと斯う考へまするが、此の點に關して事務局長官と知事との關係、それから改廢に付て、其の點重ねて御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=27
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028・大村清一
○大村國務大臣 此の制度を外部から御覽になりますと、内務行政の上に於きまして府縣知事に對し、内務大臣及び事務局長官と二重監督になつて居る、是は外見は確かにさうなつて居ります、併し實際の運用の事實を十分御注目になりますと、少くとも内務行政に關する限りに於きましては、内務省及び事務局が府縣の上に被さつて、強き監督をやつて居ると云ふやうな事實は全然ないと申上げて宜いと思ふのであります、と申しますのは例へば最近關係各省から府縣知事を起用して居るのでありますが、其の府縣知事の「ポスト」を占められた人が、府縣知事の自由なる手腕が揮へることに於て、如何に自由さがあるかと云ふことに非常に驚いて居るのであります、即ち地方長官に對しましては、其の人選を愼み、其の人の力に依りまして、縣政の發展に全幅の信頼を掛けて居る、さうして細々した監督の如きは内務省と雖もやつて居ないのであります、餘り詰らぬ御節介はしない、是は内務行政に關する限りに於きましては、其の點は餘程徹底して居ると思ふのであります、隨て地方事務局に於きましても、やはり其の方針でありまして、先に申上げますやうに地方行政事務局長官から命令を受けるとか、指揮をされると云ふやうなことは殆ど絶無だと思ふのであります、但しそれならばそんなものはなくて宜いではないかと云ふことになりまするが、是は行政の實際に於きまして、現に食糧危機に對しての食糧の適期搬送と云ふやうな問題に付きましては、地方行政事務局が管轄區域を持つて居りまして、區域内の實情に通じて居ります、何處に米がどれ位あるかと云ふやうなことを能く認識致しまして、東京に於ける窮迫状態を其の關係府縣に愬へて、關係府縣が自主的に米を搬出する、搬出に對しましては小運搬を初め鐡道輸送等に於きましても、色々隘路があるのでありますが、事務局の者が中間を斡旋致しまして、目的を達すると云ふやうな事實上の働きに依りまして多大の貢獻をして居ると云ふことは、大變顯著な事實なのであります、此の行政事務局と云ふ官廳を置きまして、官廳の權限及び權力に依つて物を動かして行くと云ふ面は殆ど絶無でありますが、其の事實上の働きに依りまして所謂府縣「ブロック」と申しますか、府縣割據の弊を矯める點に於ては、多大の貢獻をして居る次第であります、今後に於きましても其のやうな運營ならば、固より出來ることでありまして、公選知事が出來ました曉に於きましても、事務局長官は其の所在地の知事に兼任して貰つて、只今申しますやうな運營であれば、十分に效果を收め得るものであると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=28
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029・中島守利
○中島委員長 まだ質疑は長いですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=29
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030・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 此の問題はもう直ぐであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=30
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031・中島守利
○中島委員長 大藏大臣が出席されて居りますから、大藏大臣に對する質疑をどうぞ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=31
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032・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 それでは只今の問題は一寸中止しまして大藏大臣に質疑を致します、簡單に御尋ね致しますが、戰時中に於て強制買上をなさつた土地或は家屋は、終戰と同時に關係地方住民に還元拂下をなさる意思があるかどうか、斯う云ふ問題が一つ
それから今一つは税務署の民主化の問題であります、是は地方自治體と密接なる關係を持ち、地方民衆に對して喜ばるる、歡迎さるる税務官吏でなければならぬのでありますが、税務官吏は地方に於て官僚臭の殘つて居る一つの代表的機關のやう考へられて居ります、斯うした官僚的な税務官吏の氣持を拂拭する意思ありやなきや、此の二點に付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=32
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033・石橋湛山
○石橋國務大臣 戰時中強制買上をしました土地は、私は詳細は存じませぬが、大體還元する方針になつて居ると承知して居ります、詳しいことは尚ほ政府委員から御答へ致します、御諒承願ひます
それから税務署の改革は御説の通り多年の問題でありまして、十分改革を致したい、尚ほ財務局、それから其の下の税務署は、御話にもありましたやうに地方に於ける一つの經濟の中心機關で、色々な點で、單に税を取ると云ふことだけでなく、私としてはもう少し廣い意味で大藏省の仕事をして貰ふやうに、段々持つて行きたいと考へて居ります、財務局の方は既にさう云ふことになつて居りますが、尚ほ各税務署に付ても、左樣な方向に進めるやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=33
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034・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 此の戰時中、強制買上をしたものに對しては、元の所有者に還元するの方針でいらつしやると伺ひましたが、私共の知る範圍では、大藏省が金儲け主義に立脚をされまして、成べく高く賣付けやうと云ふやうな御考へが多分にあるやうであります、是等は父祖傳來の土地、或は父祖傳來の所有物を、戰爭に勝たんが爲に政府へ殆ど提供した形に相成つて居ります、是等の處分に當りましては、政府が金儲けをして高く賣らうと云ふやうな、さうした御考へは除外せられまして、さうして元の地主に還元されるやうに、切に善處方を希望する次第であります
それから税務署の民主化に付きましては、最近復員軍人等を採用せられましたが、是が極端な官僚臭を持つて居ると云ふ誇りが多分にあります、是等の人々に對して、再教育をする意思がおありかどうか、斯う云ふことを御尋ねしたいと思ひます、それから更に從來の税法或は課税標凖等を定めらるる場合、是はどうした慣習と申しますか、成べく難かしく、地方民衆には分らないやうに立案するのが官吏の手柄である、斯う云ふやうな氣持が、今も尚ほ大藏省の官吏の方々の中には流れて居るやうに思ひます、最近まで發令されました、各種規則を見ましても全く難解でありまして、私共が税務署の官吏の方に御尋ね致しましても、之を完全に解き得る人がない、税務署の官吏自體が知らずして民衆に接するなどと云ふことは、實に危險なことだと存じます、今後は憲法草案すらああした平易な文體に相成りましたので、税制の改革其の他立案されて居るやうでありまするが、是等はさうした誰にも分る、誰にでも直ぐ呑込める簡易なものにする御意思がおありかどうか、斯う云ふ問題を御尋ね致したいと思ひます
それから更に現在地方税制に依りまする財源は極めて貧弱であります、概ね大藏省の交付金制度或は分與税制度を執つて居られまするが、是等の交付金、分與金は全く見當が付きませぬ、隨て地方に於て豫算を組むに當りまして、健全な豫算を組むことは、如何に技術のある人がやりましても困難であります、それで今少し此の交付金、分與金に對してははつきりした御指示を地方に戴くやうにしたいのと、もう一つは健全な財政を樹て得る獨立税の幅を大きくして戴くことが、税制改革に當つて考へて居つて戴けるかどうか、斯う云ふ問題を承りたいのであります
それからもう一つは、地方民が最近物資不足に鑑みまして、自家用の砂糖であるとか或は自家用の醤油を造ることを非常に研究致して居ります、所が之に對處する税務官吏は非常に嚴罰主義を執つて居られて、僅かの砂糖を造つたが爲に、嚴罰に處する、或は醤油を造つた者に對して不合理な取締をさるると云ふ觀がありまするが、斯うした物資不足の折柄、少しでも増産させると云ふ意味から、地方に於けるあの醤油或は砂糖、或は自家製鹽と云ふやうなものに對しては、課税をしないことにするのが今日の事態に即したものではないかと私は思ひます、是等砂糖、醤油、自家製鹽と云ふやうなものに對して、免税をなさる御意思はないか、斯う云ふやうな點に付て御答辯を頂戴したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=34
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035・石橋湛山
○石橋國務大臣 大藏省が土地を金儲け主義で賣付けると云ふことは絶對にないと思ひます、唯兎に角國有のものでありますから、之を粗末に致しますことは、結局國民全體に損害を掛け、負擔を増すと云ふやうな關係から、愼重を期して係の方でも色々やつて居ることと思ひますから、不當に安い價格で拂下げると云ふことは出來兼ねることであります、若しも御話のやうに不當に高い價格を以て交付すると云ふことがありますならば、無論躊躇なく止めさせる次第であります、恐らく左樣なことはないだらうと考へますが、尚ほ注意は致します
それから税務署に復員軍人等を入れて、それが非常に態度が惡いと云ふ御話であります、實例を私存じませぬが、能く調べまして左樣なことのないやうに取計ふと同時に、税務に關係する者を再教育しろと云ふことは、大藏省としては考へて居る次第であります
それから税などに付ての規則と云ふやうなものが非常に難解であると云ふことは御話の通りでございます、是は出來るだけ左樣なものでないやうに改める積りで居りますが、唯ああ云ふものは非常に正確を期します、正確に書くと兎角難解になるものでありまして、法律の文章が、どんなに平易に書きましても一寸素人が讀んだのでは分りにくくなるのと同樣に、税法なども左樣な點はどうしても免れないものと存じます、併し正確なることを阻碍しない限り、平易なものに致すと云ふことに付ては精々努める覺悟であります
それから地方の税源は、分與税等が多くして獨立税が少く、地方の經營が困ると云ふ御説は、私も嘗て地方の政治にも干與したことがありまして、私自身痛感を致したやうな次第であります、どうかして各地方の自治を眞に獨立させる爲には、其の地方に獨立の收入源があると云ふことを必要とすると存じます、此の點に付ては尚ほ内務省方面で無論御心配になつて居る次第でありますが、能く内務大臣とも話合ひまして然るべく取計らひたいと存じます
それから自家用の砂糖とか其の他のものに付ての免税のことであります、一面から申せば御説のやうなことで御尤もでありますが、又是が餘り放漫に流れますと弊害も現はれて來る譯であります、其の邊が非常に難かしい所であります、是も一々の具體的な場合に付きまして、適當に處理すると云ふことが必要ではないかと考へて居るのであります、全體に付て免税をすると云ふことは、只今は考へて居りませぬし、又考へ得ないだらうと思ひます、左樣に御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=35
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036・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 有難うございました、大蔵大臣への質疑は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=36
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037・中島守利
○中島委員長 成たけ地方制度に直接關係ある質疑をして戴いて、時間が大分長くなりますから、どうぞ簡單に願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=37
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038・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 承知しました──それから府縣「ブロック」の只今の御説明でありまするが、内務大臣の御見解では、府縣「ブロック」が非常に大きな貢獻をして居ると云ふ御説であります、私共の知つて居る範圍に於ては、府縣「ブロック」の地方行政事務局、或は商工事務局等があるが爲に、食糧問題或は肥料問題等の中間斡旋に當つて、寧ろ地方割據的な事實があると云ふやうに考へて居りまするが、是は又何かの機會に申上げることにして、もう一點だけ承つて置きたいと思ひます、それは公選知事の原案執行の問題であります、今度の改正地方制度の第八十五條にやはり知事の原案執行權を認めて居りますが、是は地方自治の民主化に逆行するものであると斯う思ひます、此の點に對して如何なる運營に依り地方民の意思に副ふやうに之を執行なさるか、斯う云ふ點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=38
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039・大村清一
○大村國務大臣 府縣知事の原案執行の問題に付きましては制度に於きまして之を存置を致して居ります、併し實際の運營に於きましては、今度の地方制度の改正の趣旨に副うた運用が行はれると思ひます、と申しますのは、府縣會の權限を大いに擴張致して居りますので、原案執行をやるやうな場合が餘程少くなつて居るのであります、例へば増額修正の如きは今度は明記をされたことであります、増額修正をやつたら原案執行をすると云ふことは理由がないと云ふやうなことが多々あるのであります、さうして原案執行權を殘して居ると云ふのは、何かの事情で府縣の豫算が不成立になるやうな極端な事情が生じました場合に、府縣行政を運營する上に於きまして、原案執行に依つて解決しなければならぬと云ふやうな、府縣行政運營上支障を生ずるやうな場合に於きまして、之を殘して置くと云ふ點が主な點でありまして、隨て今後の原案執行を實際にやります場合の事情は、從來とは餘程趣きを異にして居ります、そこで制度としては殘つて居りまするが、内容に於ては原案執行の點に於きましても、非常な民主化が行はれて居る、官僚化を制限することになつて居るやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=39
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040・中島守利
○中島委員長 早稻田君、農林大臣は公務で差支へて、どうしても午前中こちらへお見えになりませぬ、政府委員が出て居りますから、農林省關係の質疑を此の際なさつたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=40
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041・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 直ぐ終りますから──原案執行の問題に對しましては、只今御説のやうな場合もありますが、府縣會が府縣會の機能を停止した場合、知事は内務大臣の認可を得て、原案執行をなし得るやうになつて居りますが、此の場合若し知事が政府の與黨である場合は、容易に認可されるもののやうに推定されます、斯うして原案執行をした場合、府縣民を代表する縣會の意思、即ち府縣民の意思に相反した原案執行がなし得る、斯う云ふ規定になつて居ると存じまするが、斯う云ふ場合には、豫算の如き、其の儘許可されて原案が執行されれば、非常に禍根を貽すことに相成るかと存じますが、こんな場合何か前年度豫算を踏襲させる範圍とか、或は内務大臣の指示する範圍に於て、と云ふやうな制限事項を付して置くのが民主的ではないか、斯樣に考へまするが、之に對する見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=41
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042・郡祐一
○郡政府委員 御話の點は結局内務大臣の指揮の範圍、限度に相成つて參ると思ひます、左樣致しまして大臣から説明がありましたやうに、事柄が非常に多くの場合使はれると云ふことも考へられませぬし、原案執行と申しまするものは、最後の締括りを付けませぬと何とも動きの付かぬ場合があります、其の場合の爲に置いてある條文でございます、更に之に對する大臣の指揮が、非常に不當な指揮をすると云ふことであつては相成らぬのであります、從來に致しましても原案執行の場合に、大臣の指揮と申しまするものは寧ろ窮屈過ぎる位に、前年度の豫算を踏襲する範圍に止めると云ふ工合に相成つて居りますので、此の指揮の範圍を──事柄が元來非常に例外の場合に起つて來ることでありますから、指揮の範圍を、議決に付て、豫算に付てと云ふやうな工合に、細かく法律で明示することは困難だと思ひますけれども、指揮に對する内務省の方針に依りまして、不合理な妙な場合は起さずに濟むだらうと思ひます、之に付きましては監督官廳の責任上、嚴重な限度を置いて自制することに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=42
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043・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 長時間に亙つて懇切なる御答辯を戴きまして有難うございました、是で内務大臣に對する質疑を終りますが、農林大臣に對する質疑を簡單に致します、是は先程文部大臣に致した質疑と類似して居りますが、農林大臣所管の山林原野等が非常に多い譯であります、此の際之を地方財政を堅實ならしめる意味に於て大幅に地方に拂下げ、或は開放等をなさる御考へはないかと云ふ點と、燃料、材木等の非常に窮屈な折から、是等の統制法規を解いて戴いて、山村農村の堅實なる發達を促すやうに施策を講じて戴く意思はないかと云ふことであります、それからもう一つは、最近地方農村の工業化が叫ばれて居りますが、農村の工業化に對して密接な關係のある農林大臣所管の統制事項を、此の際全面的に解除する御意思があるかどうか、此の三點に付て承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=43
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044・中尾勇
○中尾政府委員 國有林を拂下げるかどうかと云ふことに付きましては、森林經營の立場から適否を判斷する方針でありまして、地元市町村財政の點に關しましては、國有林拂下の方法に依らないで、別途の方法に依りたいと考へて居ります、即ち現在に於きましても地元に對しましては、地方税に代るべきものと致しまして相當額の交付金を毎年交付して居ります、尚ほ其の他地元民に對しましては依託林其の他の制度に依りまして、國有林の利用を認めて居る次第であります
第二の御質問の統制法規の廢止に付てでありますが、木材に付きまする統制法規の廢止に付きましては、別途議會に法案を提出することに致したいと思つて居ります、第三は所管外であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=44
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045・早稻田柳右ェ門
○早稻田委員 有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=45
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046・中島守利
○中島委員長 午後一時まで休憩致します
午前十一時五十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=46
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047・会議録情報2
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午後一時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=47
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048・中島守利
○中島委員長 是より會議を開きます、午前に引續きまして質疑を許します、大澤君に申上げますが、總理大臣は國務で差支があつてまだ御出席が出來ない由であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=48
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049・大澤喜代一
○大澤委員 それでは私は總理大臣が御見えになるまで内務大臣だけに御伺ひ致したい──本案に付ては各先輩竝に同僚諸君から詳細に論じ盡されて居りますので私は極めて簡單に御伺ひしたいと思ひます、併し私の質問に入る前に一言大村内務大臣に御聽きしたいと思ふことは、我々委員の發言の問題に付てであります、實は先程私が控室に居りました時に、見たことのない事務員のやうな若い人が來まして、今日の質問の要綱を教へて呉れ、斯う云ふやうな御話でありましたが、私は變なことだと思つた、併し此の場合ゆつくり考へて貰つて親切に答辯して貰つた方が爲になると思ひましたので、簡潔に要綱だけを御話申して置きました、所が私は先程此の委員會に來ました所、當局の方から委員長の手を通じて、私の質問要綱の中あれも遠慮しろ、是も止めて呉れと云ふやうな話が出て來たので私は實はびつくりした、私はさう云ふ積りであなたの方の事務の方に御話したのではない、私は教へて上げた所の質問要綱の中には、それは成程御氣に入らない點があるかも知れない、けれども其の要綱と云ふものは、此の法案が出たと云ふことは言ふまでもなく、今までの日本の古い官僚政治と云ふものを、出來るだけ早く民主化しようとする根本的な點に、本案の重大なる使命があるのだと考へて居ります、隨て本案を本當に民主化するやうに運營する爲には、日本の古い官僚政治と云ふものを、出來るだけ速かに根本的に拂拭しなければならない、而も所謂官僚政治の支柱となつたものは何か、官僚が長い間人民をいぢめて來た其の支柱となつたものは何か、それは明治二十七年の服務紀律にあるやうに、天皇の官吏だと云ふことを看板にしてやつて來たことであります、だから其の點を私は一應質問しなければならぬと云ふことを、先程來た人に言つた、それを言ふな、此の議會に相應しくないと云ふやうにやつて來ることは甚だ遺憾だと思ふ、私は法律上の義務に基いて教へてやつたのではないから、あなた方がさう云ふ點を氣が附いたならば、此の老紳士たる委員長を煩さなくても、直接私に話したらどうか、紳士的に懇談しても宜しいと思ふ、一體あのちよろちよろと走つて來て「メモ」を取る、ああ云ふやり方は何か法律上の權限に基いてやられるのかどうか、我々は何も教へてやらなければならぬ義務はないと思ふ、日本で昔流行つた「スパイ」的政治のやり方ではないかと思ひますが、一體どう云ふ考へでさう云ふことをしたのか、それから先づ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=49
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050・大村清一
○大村國務大臣 どう云ふ事情か私詳しく存じませぬが、固より當委員會に於て法案の御審議に關係のありまする事項は、何にもあれ御質問の權限がおありになる譯でありまして、又私共も誠意を以てそれに御答へする積りで居りますから、法案御審議に關係のある點に付きましては、何に依らず御質問を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=50
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051・中島守利
○中島委員長 大澤君、委員長も多少關係があるやうでありますから一寸申上げますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=51
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052・大澤喜代一
○大澤委員 それは能く分つて居ります──併しああ云ふ「メモ」を取ることは御止めになつた方が宜いと思ひます
それでは御尋ね致しますが、先づ順序と致しまして、本案は先程申上げましたやうに、新憲法と並行して民主化を圖る爲に極めて重大な改革であることは、大臣屡屡の御話の通りであると思ひます、隨て政府は此の案の提出に先だつて、國民に對し可能な限り其の輿論を喚起し、其の要望する點を明確にする必要があつたのではないか、例へば府縣制度改革に付ては府縣會、市町村改革に付ては市町村會と云ふやうに、假令現在の是等の組織機構と云ふものが、非常に非民主的な基盤を占めて居つたにせよ、一應の輿論動向は推測出來るものと考へて居ります、そこで御伺ひしたいことは、政府はそれ等の自治的團體に對して意見を聽くやうな御方針を執つて居られたかどうか、若しさう云ふ方面からそれぞれの參考資料が集まつて居りましたならば、其の點を一つ集約して御報告願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=52
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053・大村清一
○大村國務大臣 御承知のことと存じますが、戰時中我が國の自治制度は、中央集權的乃至軍國主義的に改正せられた點も段々あつたのであります、是等は終戰後速かに是正せるらべきものであらうと思ひます、又「ポッダム」宣言の趣旨に從ひまして、更に徹底的なる地方制度の民主化を圖ることは極めて必要なことでございましたので、終戰後直ちに是が研究調査に著手致したのであります、さうして世論は、可能なる限り凡ゆる方面から取材を致しまして、其の中には新聞等の論議、乃至は内務當局に對する口頭又は書面に依る意見も段々聞いて居ります、是等の點は出來るだけ廣く參考と致して參つたことは申すまでもない所であります、唯憲法改正の議會に地方制度の改正案を付議することが適切であり、必要であると考へましたので、改正案の提出の手續を急ぎましたから、警察制度改正革案の例に於けるが如く、ゆつくり世論を聽くと云ふ機會を作り得なかつた次第であります、是等の事情は何卒御諒承を御願ひ致したいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=53
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054・大澤喜代一
○大澤委員 次に、二、三日前に御當局から我々の手許に廻はして戴いた例の警察制度改革案の問題でありますが、あれに付て私から希望旁旁御願ひしたいと思ふことは、從來長い間警察──謂はば官僚政治の爲に最も其の害を受けた國民、就中是が爲に政治的に彈壓され、終戰後やつと「ポッダム」宣言に依って、其の人格なり基本權を確立された所謂勞働階級は、今後の警察制度の改革に付ては非常な關心を持つて居るのであります、政府は曩に厚生省が、勞働關係調整法案等に付て公聽會等を開いて色々輿論を聽いたと同樣に、是等の長い官僚政治の中で、最も被害を受けた勞働組合とか、農民組合等の斯う云つた民主的な團體から、今度の警察制度改革案ですか、あれに付て大いに聽いてやると云ふやうな方針を御採りになつてはどうかと思ひますが、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=54
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055・大村清一
○大村國務大臣 警察制度改正試案に付きましては、此の書き物の中にも記述して居ります如く、此の試案は未定稿の試案でありまして、尚ほ考慮檢討を加へなければならぬ點が多分にあるのでございますが、「敢て凡その問題及その方向を提示し、各方面の批判と意向を徴し民主的なる新警察建設に遺憾なきを期したい」と云ふやうに述べて居るのであります、之に依つて私共最も民主的なる方法に依つて、立派な案を得るべく努力する積りであります、併し關係團體の御意見を一々會議を開いてやると云ふことも中々出來兼ねることでありまして、此の試案は廣く天下に公表したのでありますから、どうか是等に付きましては各方面から活溌に御批判を承り、又意見のある所を、どんどん文書なり口頭に依つて内務省に御提出を願ひたいと思ひます、それは十分參考と致しまして、完全なる、適切なる案を得ることの有力な資料に致す積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=55
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056・大澤喜代一
○大澤委員 それでは官僚と戰犯の問題に付て御伺ひ致したいと思ひます、政府は最近地方長官及び東京都長官の更迭をやつて居ります、聞く所に依ると、新潟縣の如きは本年に入つてから三人の知事を更迭して居ると云ふ話であります、それから東京都は、新聞で我々見て居る通り、最近又都長官の更迭があつたやうでありますが、是等を更迭しなければならなかつた所の事情に付て一應御知せらを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=56
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057・大村清一
○大村國務大臣 此の知事の更迭と云ふやうな問題は、餘り之を具體的に論議致しますと、問題の性質上面白からぬ結果を招來致しますので、私は餘りに具體的な細部に亙つての御答へを申上げることは差控へたいと思ふのであります、併し洵に重要な、地方行政にも影響のある問題でありますから、總ての點を御答辯を囘避しようと云ふやうな趣旨ではございませぬ、どうか其の邊は宜しく御諒察願ひたいと思ひます、近時頻々として地方官の更迭が起りました理由の大きなものと致しましては、戰犯と仰せになりましたが、戰爭犯罪に依つてどう斯うと云ふ問題ではございませぬが、本年の一月四日の聯合軍からの指令に依りまして、世間で所謂公職追放に牴觸した者が頻發致しました結果、或る府縣に於きましては一年に三囘も四囘も地方長官の更迭を見ると云ふやうなことがありまして、洵に地方行政の持續性の上に於きまして遺憾なことが出來まして、殘念に存じて居る次第であります、唯只今御話になりました新潟縣の例でありますが、新潟縣の過去に於ける更迭に於きましては、公職追放に牴觸した爲に更迭された人もあります、併し最後の更迭はそれには無關係であります、さうして最近數府縣の地方長官に更迭がありましたが、是は地方行政を推進して行きます上に於て、更迭をした方が宜しいと云ふ結論に達しまして、そこで之を斷行致したやうな次第であります、先般の知事の更迭の際に於きまして追放令に牴觸して退職したのは一人だけでありまして、其の他は只今申上げましたやうな理由に依つて更迭をした次第であります、又最近に於ける東京都長官の更迭は、是は公職追放令に牴觸をして、其の結果更迭を見た次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=57
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058・大澤喜代一
○大澤委員 只今の御説明で大體の内容は分りましたが、私等國民が感じますことは、今度の戰爭と云ふものは兎も角國際的にも國内的にもはつきり言はれて居りますやうに、軍閥官僚の所謂侵略戰爭だ、而も敗戰の責任も是等の人達が負はなければならぬのだと云ふやうなことは分つて居ります、是は一致した輿論であります、唯最近の政府に對する責任の糺明と申しますか、例へば只今御話のありました東京都長官の場合も左樣だと考へますが、抑抑松井長官が就任された當時、既に聞く所に依れば東京都の參事會では、松井長官は恐らく公職追放令に該當するだらう、あなたはさう思はないかと云つたやうな話が内輪であつて、色々其の點は論議されたと云ふことを聞いて居ります、其の時松井長官は、いやそれは内務大臣がさうでないと云ふことを言つて居るから大丈夫だと言つたと云ふやうな話まで傳はつて來て居りますが、それは先づ別と致しましても、一般我我國民から見ると、現在の政府當局は自分達官僚の同僚を、出來るだけ公職追放令から庇つてやらうと云つたやうな方針が見えるのではないか、松井長官の場合も、後で成程追放令に該當したからと言ふけれども、當時の情勢から云つて松井長官が該當すると云ふことは、參事會以外の多くの人達も感付いて居つたことであります、私斯う云ふ點が國民に印象付けられて居ると云ふことは非常に遺憾でありまして、日本の民主化を圖る爲には、此の際官僚のさうした該當する人達は徹底的に辭めて貰はなければならない、斯う云ふやうなことを信じて居ります、そこで御聽きしたいのは、現在の内務大臣は官僚のさうした──我々は戰犯と言ふのですが、假に公職追放令に該當する、さう云ふ意味でも一向差支へないと思ひますが、是等に對しましては今後どう云ふ風な方針で臨んで行く積りか、今申しましたやうに、何となしに、今日の當局は同僚の官僚を詰り庇つて、さうして出來るだけ官僚の力を殘して置かうと云ふ印象を與へて居ることは事實である、之に對して一言内務大臣の御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=58
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059・大村清一
○大村國務大臣 公職追放の取扱に付きましては内務大臣は其の方に只今「タッチ」を致して居ないのでありまして、最近に於ける公職追放の取扱の實際に付きましては關知しないのであります、併し私曾て内務次官で居りました時分に、關係委員會の委員も致して居りましたので、當時の事情は聊か心得て居るのであります、御尋ねになりましたのは内務省に於て内務省關係官吏の公職追放に付て、成べく之に牴觸しないやうに庇護をして來たではないかと云ふやうな、過去の傾向も御尋ねになつて居りますので、それに御答へを致します意味に於きまして知れる限りだけのことを申上げる次第であります、内務省に於きましては本年の一月四日に出されました聯合國の公職追放の指令は、之を忠實完全に履行する責任ありと考へまして、最も敏速な處理を致した積りであります、あの條項に牴觸致します者は、逐次所謂追放を致して參りまして、此處で數字は記憶して居りませぬが、内務省官吏に於きまして追放を見たる數は、恐らく他の省に比べまして比較を絶して多いと思ひます、最も早く進捗された積りであります、唯公職追放の指令を御檢討下さると分ることでありますが、極めて簡單に判斷の出來る條件と、それから諸般の事情を調査致しまして、其の上で判斷して最後の決定になると云ふ、大きく分けまして二つの種類になつて居るのであります、標準を適用致しますれば直ちに答への出ると云ふものに付きましては、只今申しますやうに迅速なる處理を致した積りで居ります、又事實其の結果になつて居るのであります、唯所謂G項該當、極めて是は抽象的なる標凖でありまして、各種の方面から判斷を致しまして、軍國主義的、極端なる國家主義的傾向を有する者を排除すると云ふ點に付きましては、或は其の人の著書に依り、或は又公開演説會の演説に依り、其の他各般の經歴等を調査致した上で、綜合判斷で結論に達すると云ふ部類があるのであります、さうして今日に於きまして段々追放の結論に達して居る種類の人は、多く此の後者に類するのでありまして、只今御例示になりました松井東京都長官に付きましても、直ちに分ります所の形式上の諸條件に付きましては、何等問題とすべき所はなかつたのでありまして、實質的審査に依つて──最後の決定に達しまする審査に於て、結局追放されると云ふことに相成つたのであります、是は御承知の如く、今日は美濃部博士を委員長とする官民合同の公正なる委員會が出來まして、其の審理に依りまして決定に達しました場合に於きましては、更に内閣總理大臣に於きまして再審査をして、さうして其の委員會の決定が否であると云ふことになりますると、内閣總理大臣から内務省及び本人に對して、一月四日の指令該當者としての通告が參る譯であります、通告が參りましたならば、それに依りまして後任のことも考へ併せまして、更迭の凖備が整ひますると、そこに更迭をすると云ふ手續になつて居ります、それに依つて松井長官の更迭があつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=59
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060・大澤喜代一
○大澤委員 私は主として官吏の追放令の問題を御聽きして居るのでありますが、同時に必要なことは、戰爭中に人民を極度に迫害した所の官吏と云ふものに對しましては、内務省は峻嚴な態度を以て臨んで貰はなければならぬと思ひます、そこで地方の状況などを見ましてどうなつて居るかと申しますと、先程申しましたやうに依然として舊官僚は下級官僚を庇つて、さうして明白な極端な人民迫害の事實があるにも拘らず、それに對して何等處置をして居らない、處置をしても極めて一時的な、糊塗的なことをやつて居る例が澤山ある、是等は非常に民心に與へる影響が大きく、農村に於きましては供米問題に對しましても非常な影響を持つて居ります、例へば昨年の二月など、日本で一番野蠻だと言はれて居る所の封建的な青森縣あたりでは、當時の警察署長や、村長、事務所長、是等が町役場の二階を利用して、さうして北津輕郡の武田村の百十人と云ふ農民を拉致して、徹底的な拵問を加へて居る、それから又上北郡の浦野館村あたりでは、やはり事務所長や警察署長が學校を借りて、約二百人の村民を全部學校に集めて、もう直ぐ正月だと云ふ三日前に監禁して供米の強權發動をやつて居る、是が囂々たる非難の的になつて居るに拘らず、一體どう云ふことをやつて居るかと言へば、唯其の當時の署長をやつと罷めさして、あと何等それ以外の犯罪者に對しては處罰の手が廻つて居らない、斯う云ふことが澤山あります、是は唯青森の例のみではないが、特に拷問の國と言はれ、最もひどい所だと言はれて居る青森縣に於てはさう云ふことが行はれて居るのである、是等に對しても、大臣は積極的にさう云ふ問題を一掃するやうにやつて貰ふことが私は必要だと考へます、私が特に此の點を通じて考へることは、さう云ふことが澤山あると思ひますから、此の機會に内務省はそれ等を徹底的に調査糺明する所の民主的の機關を作つて、さうして其の目的を達成するやうな御考へがないかどうか、之を一言御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=60
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061・大村清一
○大村國務大臣 内務省系の官吏、職員が職務の執行に於きまして非違をやり、乃至は不當なことをやるやうな場合に於きましては、固より信賞必罰の原則に依りまして、儼然たる措置をすべきことは申すまでもございませぬ、併し此のやうなことは、一應私共の常套語になつて居るやの感を御抱きになるかも存じませぬが、私は文字通り信賞必罰で邁進をする決心を持つて居ります、又私就任以來、儼然として其の方針で臨んで居る積りであります、只今御述べになりましたやうな事實に付きましては、私まだ聽いて居ないのでありまするが、若し其のやうな不届な措置があつたものと致しますと、是は十分糺明致しまして、信賞必罰の趣旨を實現する積りで居ります、どうか其のやうに御諒承願ひたいと思ひます、尚ほ民主的な方法を考案すると云ふことに付きましても、警察制度改革試案に一つの構想──問題を提供する意味で記述してありますが、警察改革の一つの重要事項として、其の點を取上げて實現を見るやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=61
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062・大澤喜代一
○大澤委員 私の言はんとする所は、地方改革を實行する爲には、今までのさうした誤つた官吏と云ふものの肅正を、出來るだけ徹底することが必要なんだ、斯う云ふ見解からであります、特に私が申した先程の例の如きは決して珍しいことではないと思ひます、最近私が手に入れました所の、前に日本に十二年位居りました有名な「アメリカ」の「グルー」大使が書いて居る「東京報告」と云ふやうな本を讀みましても、日本の所謂内務大臣管下にあつた所の警察官が、如何に殘酷な拷問を、「アメリカ」の宣教師であるとか、良民に加へて居るかと云ふことが實に歴々と之に出て居ります、内務大臣は多分「グルー」氏の此の「東京報告」の一書を御讀みになつて居ると思ひますが、我我が考へると「アメリカ」の「グルー」氏が、此の著書に於て世界に發表して居る此の日本の警察官僚の殘虐な事件、是が此の書物に載つて居るにも拘らず、是等に對して若し現在の内務大臣が何等肅正しようとされなかつたならば、私は是は大きな問題ではないかと考へて居ります、そこで一寸御聽きしますが、内務大臣は此の「グルー」氏の「東京報告」を御讀みになつたことがありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=62
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063・大村清一
○大村國務大臣 まだ讀んで居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=63
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064・大澤喜代一
○大澤委員 此處で私は其の内容を讀むことは控へますが、今の内務大臣──元の内務大臣の家來の人達には、さう云ふ殘酷な拷問をした者が澤山居るやうに思ひますから、其の「東京報告」の一書を讀まれて、是等の殘酷な眞似をした警察官吏と云ふものを徹底的に肅正されたらどうか、是は唯「グルー」氏の著書にあるやうに「アメリカ」人に對する迫害のみではないと思ひます、日本の農民運動、政黨運動をして居る者も、同じやうな目に遭つて居ると云ふことは私が説明するまでもない、此の機會に、非常に公明正大である所の内務大臣は、過去に亙りましても是等のことを出來るだけ迅速に調査して、あなたの仰しやる所謂信賞必罰と云ふものをやつて戴きたいと考へて居ります、是は私の希望であります
次に御伺ひしたいのですが、先般大村内務大臣は私等の先輩同僚の質問に答へて、官僚と云ふものは無色透明なものである、斯う言つて居ります、是は今後の民主化の爲に洵に重大な發言だと考へて居ります、果して日本の官僚と云ふものは無色透明な所謂動物であるかどうか、此の意味を能く考へて見ますと、自分達過去の官僚と云ふ者は、決して自發的に積極的に日本を今日あらしめるやうなことをしたのではない、斯う云ふ意味にも解釋されます、謂はば昨日は東條、今日は誰々と云つた風に、昔で言へば明日に平家を送り、夕に源氏を迎へるやうな花魁の意味と同樣にも解釋されますが、決して私は大臣が花魁だと言ふのではない、併し私はさうは考へない、なぜ考へないかと申しますと、日本の官僚とか官吏と云ふ者は、決して無色透明な官吏ではあり得なかつたのです、それは長い間、少くとも半世紀以上に亙つて、日本の支配階級の非常に忠實な善吏として、思想的にもはつきりと武裝して來て居ると思ひます、ですから現に我々見る所に依りますると、現在公職追放令に引掛つて辭めた所の日本の官吏と云ふ者は、今どう云ふことをやつて居るか、是は洵に大きな問題だと考へて居ります、若し大村大臣の言ふやうに無色透明な者であれば、今度の戰爭に敗れて、さうして其の原因が軍閥官僚にあるのだと云ふことを自らも認めなければならぬ時でありますから、當然自己反省して正業に就くと云ふことが當然ではないかと考へます、所謂自己の非を悟ると云ふ反省力が、追放された官僚にあるかどうかと云ふこと、而もそれ等の官僚は今どう云ふ動向を辿つて居るか、是は由々しい問題であると思ひます、私は其のほんの參考までに大村大臣に御知らせして置きまするが、是は昭和二十年十二月十九日の、私の方から出て居ります東奧日報と云ふ新聞の二段に亙る廣告記事であります、是は五百圓の廣告費を收めたと云ふ話ですが、誰が其の廣告を出したかと云ふと、當時縣の特高課の次席として、所謂祕密警察の指導者として、非常な殘虐の限りを盡した所の或る官吏が──名前を言ふ程の者ではないが、此の官吏が公職追放令に依つて祕密警察を辭めたのであります、其の時彼は數百圓の金を投じて地方の一流新聞に堂々と聲明を發して居るが、それを參考までに讀んで見ます、前文は止めます、自分は前期と後期と官吏を勤めた、後期は特高課次席、それから何處々々の警察署長或は警備隊長、警備課長、之を歴任せる五年有半こそは、實に生涯の生甲斐を體驗したる時代であります、生來の魯鈍、至らざりし點固より多かりしとは謂へ、顧みて悔いなしの感懷、私かに心安んじて居る次第であります、斯う云ふ聲明を堂々と縣下の一流新聞に出して居る、自分の金を出して、何等悔いる所がない、洵に本懷の至りだと云つて居る、而も是等は今どう云ふやうな動向を辿つて居るか、是は決して青森縣の一祕密警察のみの動向だとは私は考へて居らぬ、又一祕密警察の所謂顧みて悔いないと云つたやうな者の考へだけぢやないと思ふ、是が今日の追放された所の官吏乃至今日の官僚にも、相當根強く殘つて居るのではないかと云ふことを考へるから、私は此の問題を取上げるのであります、偖て斯う云ふやうに顧みて悔いなしと天下に聲明を發した祕密警察の連中は、現在何をやつて居るか、青森縣の有名な工業地帶の八戸と云ふ所に、先づ此の聲明を發した奴が行きまして、其の當時自分の部下であつてやはり同じやうに追放された所の澤山の警部とか警部補とか云ふ者を集めまして、有限會社八戸合同製材所と云ふものを作つて、彼は社長になつた、而も八戸警察署の巡査の中には、幸ひにして共産黨員、社會黨員が澤山居りますので、具さに我々内情を聽いて居りますが、八戸警察署長自體が今の聲明を發した奴のやはり部下であつた、それがどう云ふ譯か逃れまして署長をやつて居る、ですから八戸と云ふ大きな工業都市に行つて製材所を作つて、殆ど毎夜の如く八戸警察署の自動車を乘廻して、八戸署を巣窟にして、是等の運動をやつて居る、是は社會黨の八戸支部からの詳しい報告を後で御手許に出しても宜しいと思ひますが、斯う云ふことを今やつて居ります、又最近「ドイツ」に於ける例の「ナチス」が一旦壊滅されたかのやうに色々言はれて居りましたが、併しさうではなくて近頃或る事件が起きた、それは斯う云ふことであります、「ナチ」の殘黨がやはり「ベルリン」に於きまして、一見何にも關係のないやうな會社を作つて、そこに澤山の殘黨を集めて、色々「ナチ」再建の地下運動をして居つた、それが偶偶「アメリカ」軍か「ソビエト」軍かに發見されて、大量の檢擧があつたと云ふことが雜誌に出て居ります、是は最近の「ニュース」です、私は期せずして此の「ベルリン」に於ける「ナチ」のさう云つた再建活動と、日本に於ける所の祕密警察の斯うした所の動向と、非常に共通點があるやうな感じがして仕樣がない、なぜ斯う云ふことを言ふかと云ふと、内務當局は單に公職追放令に該當して居るからお前達は辭めなさい、斯う云つた程度で、其の動向に對する嚴重な監視をして居ないからだと思ふ、恐らく大臣は斯う云ふ事實を知らないと思ふ、而も先程申上げたやうに是は決して青森縣のみの例ではない、恐らく全國に斯う云ふ例が澤山あると私は確信致して居る、斯う云ふやうな事實に對しては内務大臣はどう云ふ御考へを持つて居るか、是は延いて「アメリカ」占領軍にも影響する問題だと思ひますから、今後の方針に付ても愼重な御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=64
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065・大村清一
○大村國務大臣 御答辯を申上げます前に一言發言を御許しを願ひたいと思ひます、御話の中に現在の警察官の間に、廣く人權蹂躙の事實があると云ふやうな風に御述べになつた譯ではございませぬけれども、人權蹂躙の事實を擧げまして、今日も尚ほ警察官の間に人權蹂躙の事實ありやの印象を世の中に與へることは、全警察官の名譽の爲に非常に重大なことでありますので、一言辯明を御許しを願ひたいと思ひます
「ポツダム」宣言を受諾致しました我が國と致しましては、個人の基本人權を尊重すべきことは當然のことでありまして、況や警察官たる者が苟くも人權蹂躙の如き暴擧は絶對にあつてはならぬことであります、故に終戰後、内務省と致しましては特に此の點に注意を加へまして、機會ある毎に全國警察官に個人の基本人權を尊重し、苟くも人權蹂躙と云ふやうな暴擧なきを戒告致して參つて居ります、さうして此の注意は既に相當に普及致しまして、終戰前の事態に御比較を願ひますれば、大いに改善されて居ると云ふことを確信致す者であります、尚ほ一部に於きましては固より不心得の者がなきを保せないのでありますが、是は其のやうな非違を犯す者がありましたならば、斷然處分を致しまして、其のやうなことが再び起らないやうに防遏に金力を盡す積りでありまして、此の點御諒承置きを願ひたいと思ふのであります
尚ほ次に御尋ねになりました中に、官僚と申しますか、吏僚は無色透明だと云ふことを曾て申上げたのでありまするが、是は私は過去の官僚が悉く無色透明であつたと云ふことを申上げた積りではないのであります、今後の民主主義時代に於きまして、民主政治が發達して行きます上に於きましては、公の政黨と相協力致しまして、そこに無色透明の理想的な性格を持つた官僚、吏僚が發達しなければならぬと云ふことを申上げた積りであります、終戰前に於きましての官僚の態度に付きましては痛く世論を喚起致して居ります、それ等の點に於きましては、官僚の行動に於きまして批判を受くるも已むを得ないと云ふ事實のあつたことも私は認める者であります、此のやうなことは今後に於きまして絶對にないやうに致しまして、理想的な吏僚制度が發達せんことを、心から希望致して居る者であります、尚ほ一月四日の所謂公職追放令の精神に基きまして、内務省に於きましては、あの指令の各條項の要求して居ります以上のことを、警察官の肅正の爲に措置を執つたのであります、其の中には思想犯其の他の取調に際しまして、人權蹂躙の事實のあつた者は罷免してしまつたのであります、其の他一月四日の公職罷免の指令の精神は、警察官に對しては特に強く適用致しまして、數百人に上る追放も致しましたやうな次第であります、さうして此の公職追放のことたるや、是れ亦「ポツダム」宣言の精神に基いて發せられたものでありまして、一般國民、殊に官途に就いて居りました警察官等に於きまして、「ポツダム」宣言を日本が受諾致しましたからには、其の精神に從つて退職後も行動すべきことは、大多數の者は十分心得て居ると思ふのであります、國民としては聯合國軍の管理下にある今日に於きまして、其のやうな不心得な者は殆どないと思ふのであります、時に不心得な少數の者があり得るかと思ふのでありますが、是は其の人の道義心に俟つべき點もあることでありまして、それが法令に違反をすると云ふやうなことに相成りますれば、固より内務省に於きましては斷乎として取締る積りであります、尚ほ退職警察官が現在警察官と相通じまして適當ならざる振舞ひがあると云ふ點に付きましては、事實を調査致しまして是正等の手段を執る積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=65
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066・大澤喜代一
○大澤委員 罷めた祕密警察官の連中に對する御答へとしては甚だ不滿足でありますが、決して是は部分的ではない現象だと考へますので、私は特に念を押して内務大臣は能く御調べになるやうに御願ひ致したいと思ひます、それから今内務大臣の御話を聽くと、内務大臣が就任なさつてから人權蹂躙と云ふやうな事實はないと云ふことでありますが、私は内務大臣がおいでになつてからさう云ふやうな事實があると云ふことを御聽きしたのではない、併し今の御話で一寸私は思出したのであります、今度の讀賣爭議は御承知のやうに今進行中なんですが、最初讀賣爭議の起きた當時には、新聞で見ますると、讀賣新聞の編輯局に武裝警察官隊が「トラック」に乘つて駈け付けて、何百人か檢束し、其の中四人は檢事局に依つて起訴となつた、其の次に今後起つた所の爭議、是は爭議のどつちが正しいか正しくないかと云ふやうな問題ではなく、聞く所に依ると、今度の爭議團に對しては──先般爭議團の代表が、何でも會社側では警視廳を使つて「クーデター」をやる評判があると云ふやうなことを陳情に來たので、黒田壽男君と私とが内務大臣に會ひまして、内務大臣にもそれを御耳に入れた所が、そんなことはないと云ふやうなことで色々御話した筈だ、併し、成程警視廳の「クーデター」はなかつたけれども、其の翌日新聞などに依つて見ますと、會社側が爭議團を解散せしむる爲に、蹴る、毆るの兇暴の極を盡して、暴力を以て五六百人の爭議團を社外に追出してしまつたと云ふやうなことは──私は現に此處に「リンテンキ」と云ふ爭議團の方の機關紙を持つて居ります、勿論私は爭議團の機關紙を全部信ずると云ふ意味ではないが、此の機關紙に詳細に亙つて、暴力を以て爭議團を外に出して爭議を破壊したと云ふことが書いてあります、是は私は實際當時の色々な話を聞いて本當だと思ふ、警官が直接暴力を揮はなくても、最近集團暴力と云ふやうなことが問題になつて居りますが、爭議に對して公平な處置を執らなければならぬ筈の内務大臣は、此の事實に對してはどう云ふ風な御考へを持つて居りますか、事の序でに御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=66
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067・大村清一
○大村國務大臣 此の勞働爭議に對しまして内務省と致しましては、此の勞働爭議其のものに干與する意思は毛頭持つて居りませぬ、由來勞働爭議の問題に付きましては主管は厚生省でありまして、勞働爭議が宜いとか惡いとか云ふやうなことは、警察の判斷すべき以外のことに屬して居るのであります、唯勞働爭議が進行する過程に於きましては、時に暴力等の不法行爲が伴ふことがございますので、それ等の刑事事件が發生致しました場合に於きましては、警察としては固より犯罪防遏の重責を持つて居りますので、そこに警察權が發動すると云ふことは是はあり得る譯であります、讀賣の勞働爭議の過程に於きまして、兩者相對立して居ると云ふ情勢になつて居りますので、警察としてはそれ等の動向を注視致して參つて居りますけれども、只今御話もありました如く、警察權が發動しなければならぬやうな事態は發生して居りませぬので、何等の處置を執つて居らぬ次第であります、尚ほ最初の御話の、何人かを檢束をしたと云ふ點でありますが、是はあの時に現行犯かありましたので、其の現行犯を摘發すると云ふ趣旨で拉致致した事實はあります、さうして是は御話の如く調査の上檢事局に於てそれぞれ處置をされたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=67
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068・大澤喜代一
○大澤委員 讀賣の問題はもつと澤山申上げたいことがあるが、併し此處は勞働關係調整法の委員會ではないので、此の點は何れ後で御尋ね致します、戰犯該當者に對する政府の方針に付てもう一度御伺ひしますが、斯う云ふ例がある、或る解散された、例へば東方會とか、東亞聯盟、斯う云つた解散された團體を構成して居つた構成員其のものは、今度の追放令のG項に該當することになつて居ると思ひます、併し東方會とか、東亞聯盟とか云ふものに入つて居つて、さうして入つて居る時に反戰活動をやつたり、或は治安維持法に觸れた者、是等も一應今度はG項に該當するものとして、色々な法規を適用されて居るやうですが、是はどうも我々が考へると、東亞聯盟等に居つて治安維持法に觸れた者を、所謂戰犯的に追放することはどう云ふものかと考へます、此の點はどう云ふことになつて居りますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=68
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069・郡祐一
○郡政府委員 御話の趣旨は、或は聽違へて居るかも知れないと存じますが、一月四日に結社禁止を致されました團體の創立者、要職にあります者、機關紙の編輯者其の他の者でございますか──一月四日の追放の方の「ディレクティブ」に引用されて居りますやうに、それ等の禁止團體の一定の要職に居りました者が、追放の覺書の該當者となつて居る譯であります、隨ひまして其の範圍に於て運用されて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=69
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070・大澤喜代一
○大澤委員 だから其の東亞聯盟の中に居つても、實際其の人は帝國主義戰爭に反對したり、所謂治安維持法に觸れるやうな行動をした爲に、治安維持法に依つて起訴されて居る譯です、そんならば、考へられるやうに、是は追放されなくても、反對に今日或る程度稱揚されて宜いのではないかと思ひますが、其の人達も一緒に追放されなければならぬと云ふことはどう云ふ譯かと云ふことを御尋ねして居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=70
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071・中島守利
○中島委員長 大澤君、成べく地方制度に關係の深いことを御尋ね願ひたい、まだ質疑者が殘つて居りますから、どうか精々御留意願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=71
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072・郡祐一
○郡政府委員 只今「ディレクティヴ」の範圍外であるが、覺書該當者として追放されて居るかと云ふやうな御話がございましたが、一般的に左樣な扱ひになつて居らぬと思ひます、若し左樣な例がございましたならば、他に覺書該當事項がある場合には格別として、左樣な例に付ては御質しを戴きますれば、能く調査致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=72
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073・大澤喜代一
○大澤委員 さう云ふ事實があるのです、又後で御話致します、それでは次に知事の官吏の問題に付て御尋ねします、私委員會に來まして、各黨の先輩なり同僚諸君の色々の御話を承つて居りますと、今度の地方制度の改革案で一番問題になつて居るのは、知事の官吏と云ふ問題であるやうに聽いて居ります、是はもう私から言ふまでもなく、意識的にも無意識的にも、日本の人民は所謂官吏に對して非常な本能的な反感、憎惡、さう云つたものを持つて居る所の現はれではないかと私は考へて居る、色々内務大臣の御話を承つて居りましても、過去の日本の官僚、官吏、さう云つたものには大いに自省しなければならぬ、肅正しなければならぬ問題があると云ふことを言つて居られる、其の點には異論はないのでありますが、此の際御聽き致したいことは、日本の官吏がさう云ふ風に人民の上に立ちまして、さうして人民から非常に反感を持たれなければならなかつた所の原因は何處にあつたか、是は内務大臣も此の委員會の席上で言はれましたやうに、昔は天皇の官吏であつたが、今日は國民の公僕でなければならないと云ふ意味のことを言つて居られます、私は此の點は正しいと思ふ、正しいけれども、現在の日本の多くの官僚、官吏諸君は、未だ尚ほ過去の天皇の官吏と云つたやうな思想的な影響を多分に受けて居るし、それ等の具體的な現はれが諸々方々に澤山あると私は見て居ります、此の際内務大臣に御聽きしたいのは、天皇の官吏と云ふものの缺陷は一體具體的に何處にあつたのですか、何故國民の公僕と云ふものに切替へなければならぬか、國民の公僕と云ふものは具體的にはどう云ふやうな態度で行かなければならないのか、是は啻に現在の官吏だけでなく、將來の官吏竝に國民全體がはつきり聽きたい所だと考へます、此の點此の機會に大臣の御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=73
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074・大村清一
○大村國務大臣 私は正當なる見解から出發致しますならば、天皇の官吏、或は國民の官吏と云ふことも、二者同一にならなければならぬと思ひます、天皇の官吏であつて國民の官吏でないと言ふ者は、それは官吏の不心得でありまして、天皇の官吏、國民の官吏と云ふことは、本質的には兩者合一すべきものだと思ふのであります、今囘憲法が改正せられまして、又それに伴うて日本の民主主義が大いに高調されると云ふことになりました場合に、天皇の官吏と云ふやうな、ともすれば不心得な間違ひの者を出すやうな行き方よりも、端的に國民の公僕と言ふ方が、間違ひが少いと云ふ點に於きましては、國民の公僕、國民の官吏と言つた方が適切かも存じませぬが、天皇の官吏だから其の本質は非常に國民の官吏と反すると云ふやうには考へて居らぬ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=74
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075・大澤喜代一
○大澤委員 さうするとなんですかな、從來は私知らぬが、聞いて居る所に依ると、今度は國民の公僕でなければならぬと云ふことは、今までの官吏は所謂明治二十年七月に制定された官吏服務紀律第一條の「凡そ官吏は天皇陛下及天皇陛下の政府に對し忠順勤勉を主とし法律命令に從ひ各其職務を盡すへし」是は天皇の官吏の法律的な一つの根據だと考へて居る、所謂日本の官吏が天皇あるを知つて國民あるを知らず、斯う云つたやうな立場から、世界で稀な程人民迫害の先頭に立つて來たのでないか、であるからこそ昨年の議會に於ても當時の政府當路は、私が今御聽きして居つたやうなことを言つて居つたと考へます、今までは天皇の官吏であつたが、是からは國民の公僕でなければならぬと云ふことは、そこらから來たことであると善意に解して居つたが、今内務大臣の御答へでは、天皇の官吏であり且つ國民の公僕である、此の二つのことに對しては何の矛盾がない、斯う云ふ御話ですが、さう云ふ御話ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=75
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076・大村清一
○大村國務大臣 さうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=76
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077・大澤喜代一
○大澤委員 さうでありますか、ほほう、それでは餘程我々は善意に解釋し過ぎたものと思ひますが、それでは御伺ひします、明治二十年七月に制定せられました官吏服務紀律の第一條、是はやはり飽くまでも正しい官吏の指導精神だ、斯う云ふやうに御考へであるのですか、此の點御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=77
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078・大村清一
○大村國務大臣 精神に於きましては兩者同一だと思ひます、唯表現方法が變つて來て居る、今御話の如く、天皇陛下の政府に忠實にやれ、天皇陛下及び政府は國民の敵になるやうなことをやれと云ふやうなことは、一向是は考へられないことであります、國政運營の過程に於きまして、過つたる軍閥專横と云ふやうなことはあつたでありませうが、官吏の本質には、私が先程來申上げる所に毫も間違ひはないものと私は確信致して居ります、併し是は議論になりますることでありまして、此の點に付きまして議論を致して見ても無駄なことではないかと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=78
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079・大澤喜代一
○大澤委員 内務大臣は論戰は厭やださうでありまするから、私は其の點で打切りますが、併し今進歩的な官吏は、恐らく私の言ふやうに考へて居ると思ひます、それは天皇の官吏でなくして國民の公僕になるのだ所謂天皇の官吏であると云ふやうな封建的な考へこそ日本を過つたと思つて居りますが、併し今尚ほ二足の草鞋を履かなければならぬと思ひます、今度の憲法でもさうです、自由黨と進歩黨諸君も、主權は國民に在ると云ふことを、社會黨に先駈けて主張して居るやうに、聞いて居りまするが、さうすると、今までの日本の憲法と官吏との關係と云ふものが、根本的に違つて來ると思ふ、結局國民の公僕と云ふことは、法律的にも思想的にも正しいぢやないか、さうかと言つて天皇に判通せよと云つた馬鹿げたことを主張するのではない、唯過去の天皇の日本の官吏の一大惡害は、所謂天皇の爲ならば、假令如何なる自由主義者、如何なる政黨でもどんな強手段を用ひて叩いても一向何でもない、日本の天皇の軍隊が外國に於て殘虐の限りを盡したやうに、日本の天皇の官吏、天皇の警察官と云ふものは、如何にひどいことをしたかと云ふことは、先程私が二、三申上げたことでも御分りだと思ふ、さう云ふことから免れて、本當に「ポツダム」宣言を忠實に履行する爲には、やはりはつきりと國民の公僕であると言つて官吏を指導するのは、内務大臣の大きな任務ぢやないかと思ふのですが、中々私はそこまで行くのは途が遠いやうですから止めます、私は其の點は一應打切つて別の質問に移ります、尚ほ委員長、一寸御伺ひ致しますが、吉田首相はおいでにならぬのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=79
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080・中島守利
○中島委員長 まだ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=80
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081・大澤喜代一
○大澤委員 若しおいでにならぬとするならば、吉田首相に對する質問は留保致しまして、内務大臣に御願ひ致します
先程私質問の前提に御伺ひ致しましたが、今後の地方制度の改正案に對しましては、全國の自治團體から私等議員の手許にも澤山意見書が參つて居ります、其の中で私が特に御伺ひしたいのは、先程先輩の方も申して居りましたけれども、例の地方に於きましては、一番地方官僚の温存地滯としての地方事務所、是は相當問題になつて居ります、此の地方事務所を今までのやうな状態に置くと云ふことでは、是はもう今政府が出した此の地方自治制度改正案と云ふものも、結局骨拔きになりはしないか、斯う云ふことを地方の人達は非常に心配して居るのです、それで私が御願ひをして頂戴した資料を見ましても、一體此の地方事務所と云ふものは何の爲に出來たのか、是は昭和十七年六月九日の地方事務所設置要綱と云ふものに設置の目的が謳はれて居る、是は政府の書いたものですが、昭和十七年の此の設置の目的を見ますと、時局の推移に伴ふ地方行政の現状と其の趣向に鑑み、國政の滲透徹底と、主要農産物資の増産云々、斯う云ふやうに設置の目的が謳はれて居ります、當時昭和十七年の日本の國内情勢から言ひますると、所謂軍閥官僚が專横を極めて華かな時代であつたのであるから、當然地方事務所の設置は此の目的に適つたやり方であると思ひます、當時としては戰爭を遂行する爲に必要な機關であつた、其の爲に軍事扶助、軍事援護、其の他軍事に關する各般の事務、さう云つた軍事の問題が澤山竝べてあります、此の地方事務所は殆ど地方に於ける軍事の遂行と、それから農民の供米に對する強權發動をする主要な機關として設置されたのではないか、實際の色々な動きを見ると、私は此の點がはつきりして來るのではないかと思ひます、例へば先程申しましたやうに、去年あたりの農民に對する大量的な拷問事件と云ふやうなものには、何時だつて警察署長と地方事務所長と共謀して居る、必ず先頭に立つて居る、それから是はつい最近の話だが、縣の經濟保安課長をした奴が色々な問題を起して、或る地方の警察署長になつた、地方警察署長をやつて居る中に、自分の部下が留置場の看視をして居つた時に、留置人と共謀して「アルコール」を飮んだ、所がそれが「メチール」であつた爲に、到頭經濟事犯の留置人は死んでしまつた、巡査は死ななかつた、巡査も死ねば五分五分で宜かつたと思ふが、死ななかつた、所で死ぬ直前まで、家族のものが幾ら診せて呉れと云つても、醫者に診せなかつた、到頭弘前市に於て市民大會を開いて、莚旗を先頭にして署長を追放しろと云ふ「デモ」をやつた、それで已むを得ず此の署長を馘にしたが、一週間も經たぬ中に又北郡の地方事務所長に榮轉させて居る、あなた方如何に地方官に對してああでない、斯うでないと言つても、地方自治は斯う云ふ所にある、斯う云ふ札付きの警察署長上りの連中が、農村へ行つて米を出せ出せと言つても、農民が喜んで、政府を信頼して米を出すか、供米運動、増産問題は地方の官僚の態度と非常に關係が深いものです、農民が政府を信頼しないと云ふことは斯う云ふ所から來る、此の點に於ても、地方事務所設置の當時の情勢から言つて、是は今何等の必要はないのではないか、寧ろ地方官僚のさう云ふ惡徳警察官邊りの姥捨山である、温存地帶である、現に今度愈愈地方制度を實行する段取になりますと、公選された町村長と、今申上げたやうな地方事務所長あたりの身分關係はどうなるか、是等の所長が、あなた方の書いた當時の目的に依ると、町村長の指導と云ふ所の分に過ぎたものを與へて居る、斯う云ふ連中が、どうして一體農村から公選された町村長を指導することが出來るか、それから尚ほ増産の指導なんと言つて居りますが、増産の指導などは、農業會なり或は町村會なり、幾らでも出來ることなんだ、何も戰爭中に作つた戰爭遂行機關を、今日尚ほ存置しなければならぬと云ふことは諒解出來ないことである、大臣は之を強化もしないし、又弱化もしないし、暫く此の儘放置すると云つたやうな御話が此の間あつたのでありますが、さう云ふやうな消極的な態度では──而も是は全國市町村長の會議で、あなた方の手許にも行つて居る筈だし、我々議員の手許にも來て居りますが、之を見ましても、地方事務所を即時廢めて呉れと言つて居る、是は現在あなた方の地盤になつて居る所の全國市町村長會議の滿場一致の決議である、是ですらも、尚ほあなた方は何處までも戰爭遂行機關と云ふものを、今日平和の時代に於て、飯が食へぬと云ふ現状に於ても必要とするかどうか、どうしても必要とするならば、私にも肚があるから、一應其の點をはつきりして貰ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=81
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082・大村清一
○大村國務大臣 地方事務所が設置されるに至りました事情は、戰局が段々進んで參りまして、我が國の經濟面に於きまして色々の窮迫した状態が發生して參りました、そこで物資の増産も格段に推進されなければならぬ、又物資の集荷配給に付きましても統制を加へなければならぬと云ふやうな必要が強化されて參りましたので、其のやうな状態に立至りました時に、府縣廳と管下の數百の町村と云ふものだけでは、行届いたそれ等の行政措置が出來ないと云ふやうなことに依りまして、是が設置されたと云ふことは、是は私は當時居りませぬが、さうであつたらうと思ふのであります、今や終戰になりまして、それ等の戰爭遂行上から見ての經濟統制は、最早其の必要のなくなつたことは言ふまでもございませぬ、故に之を一擧に撤廢してしまつたらどうかと云ふことも考へられるのでありますが、終戰後日尚ほ淺き今日に於きましては、別の意味に於きまして、戰爭遂行上の理由でなくして、國民生活の安定を圖ると云ふ上に於きまして、物資の増産乃至は生活必需品の集荷配給等の經濟統制は、尚ほ當分やつて行かなければ、國民は生きて行けないと云ふ實情にあるのでありますから、今日の段階に於きましては、地方事務所存置の理由は尚ほあると云ふやうに考へて居る次第であります、尚ほ地方事務所の運營に付きまして、事例を引用して御話がありました、總ての地方事務所が悉く成つて居ないと言ふことは出來ないと思ひます、又實際の状態から申しましても、今日尚ほ地方事務所の大多數のものは、相當鋭敏に所期の活動をして居るやうに思ふのであります、併し其の人を得ない、又運營の方法を過つて居ると云ふものも、是亦何がしかはあることを否認は出來ないと思ふのであります、併し惡い少數のものがあるからと云つて、全部のもとを今一擧に廢止すると云ふ譯には參り兼ねると思つて居ります、尚ほ近く公選知事が地方行政の樞軸を握ることに相成りましたならば、部下の官吏であります所の地方事務所長の進退に付きましても、其の權限を持つことでありまして、公選知事の民主性に依つて、地方事務所の惡い點は大いに改善されることを期待して宜いと思ひます、尚ほ私共と致しましても、其の時期を待たずして、地方事務所の宜しからざる點に付きましては、出來るだけの改善方途を講ずる積りであります、而して地方事務所の將來に付きましては、現下の我が國が直面して居ります所の經濟危機が解消して參りますに伴ひまして、存置するか、或は廢止するか、存置するとしても如何に之を改組するかと云ふやうなことは、其の時の實情に立脚して實行して見たいと思ふのであります、當分の所は現状を維持致しまして、其の人の配置及び運營の改善に付て、極力努力して見たいと云ふ積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=82
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083・大澤喜代一
○大澤委員 中々大臣答辯が巧いものだから、聽いて居る中に成程と思ふやうな點もありまするが、併しどうもさうぢやないと思ひますけれども、何れ又是は逐條審議の時にゆつくり御聽きします
次に御聽きしたいのは、最近の地方官吏、一般下級官吏の教育の問題です、終戰後の状況を見ましても、官吏の中で一番進歩的ならざるものは何處の官吏かと云ふと、是は地方的に見ましても、内務省關係ではないかと私は考へて居る、農林省なんかへ行くと農林省にはちやんと職員の勞働組合が出來て居つて、さうして我々は餓死することは絶對反對だ、或は官僚を追放しろとか、實に立派な「ポスター」が澤山掲げてある、併し内務省に於ては絶對にさう云ふ「ポスター」を見たことがない、是は何處から來るかと云ふと、どうも今まで長く内務省で育成された官吏諸君と云ふものは、「ポツダム」宣言に依つて保障された所の、新しい時代の民主主義の動きと云ふものに對して、非常に反撥的な考へを持つて居るのではないか、大臣は勿論さう云ふことはない、大いに勞働組合を推奬して居るかのやうに聞いて居りますが、下級の官吏に行くとさう云ふ點が見えない、現に最近「メーデー」があつた時など、下級官吏の縣廳の連中が集まつて、あの「メーデー」をやつて居る人達は、能く腹も減らずに大きな聲を出して歌を歌つて居ると言つて新聞に問題になつて居る、是れ程官吏と云ふものはまだ反動的な状態に置かれて居る、地方制度を本當に民主的に實行する爲には、是等の地方に於ける内務省關係の下級官吏を、早く民主的に教育する必要があるのではないか、私はさう考へる、そこで一體民主的な教育と云ふものは何かと云ふと、是は決して内務省の上級官吏諸君が下級官吏諸君に對して演説をやつたり、説教をすることではない、是はあべこべだ、非常な逆效果を來す處があると思ひます、私は民主的教育と云ふのは、是は何としても下級官吏が早く本當の正しい勞働組合を、作つて、さうして勞働組合に依る所の自己教育、さう云つた方向に行かなければ、日本の官吏の民主的教育は出來ないと思ふ、所が現状はどうかと云ふと、どうも地方に於ても課長級の上の人達が是等の運動を抑へて居る、例へば先般公職追放令に依つて或る縣の知事が追放された、さうすると直ちに縣廳の議事堂で大會が開かれて、どう云ふ決議をしたかと云ふと、知事の馘り絶對反對、正に逆である、我々は「ポツダム」宣言なり、さう云ふことに依つて追放された知事であるから、斯う云ふ馘り反對と云ふやうな反民主的な、反政府的な、反「アメリカ」的な運動を起すと云ふことは非常に遺憾だと思ふ、所が一堂に集めて誰が指導して居るかと云ふと、今申上げた所の高等官の連中である、さうして勞働組合を作らうと云ふ本當に目覺めた下からの運動があるに拘らず、斯うした馬鹿げた運動に依つて勞働組合と云ふものが出來て居らない、私は下級官吏の民主的な教育と云ふものは絶對に必要だと思ふが、此の點に對しての大臣の御意見と、それから内務省關係の下級官吏諸君が速かに立派な勞働組合を作ることに對して、どう云ふ御考へを持つて居るか、此の點を併せて御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=83
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084・大村清一
○大村國務大臣 是は結局見方の違ひになるかも存じませぬが、私の見て居りまする地方官の傾向と云ふものは、今御尋ねになつたもののやうに實は見て居ないのであります、私も内務省で育ちましたが、相當長い間民間にも下つて居りまして、私今日官僚の片割れだと言はれますと内心憤慨をする一人であります、廣く公平に物を見て居る積りでありますが、私は地方官は比較的民主的だと考へます、此の理由は何處にあるかと申しますと、多年地方議會と接觸を致して居りましたのが一つであります、餘り非民主的なことを致して居りますと、通常縣會、臨時縣會あたりで深く反省を求められると云ふ場面に度々遭遇するのでありまして、それが私は地方議會の政治の民主化の上に、非常に大きな役割をする一面であると云ふことを經驗上深く感じて居るのであります、此の地方議會の官吏の非違を糾明し、反省せしめると云ふ作用は絶大なものがあると思ふのであります、此の多年の訓練を受けて居る地方官でありますのと、もう一つは常に地方民に接觸すると云ふ所で、人間味が出來て來て居ると云ふ點があると思ふのであります、内務省以外の官界に於きましては、其のやうな地方議會との接觸もございませぬ、まあ謂はば對物行政でありまして、人に接する機會が少いと云ふやうな點に於きまして、私は地方官の方は傾向的に申せば最も民主的なる性格を持つて居ると思ふのであります、唯重要なる地方行政に從事致して居りまするから、餘り輕卒なる先走つたことをしない性格は地方官にあると思ふのであります、今日では古い言葉でありますが、民の憂ふるに先立つて憂へ、民の樂しむ後に樂しむと云ふやうな嗜みは、地方官は持つて居ると思ふのであります、是は私が長く内務省、官界に居るから贔屓目に申上げる譯でありませぬで、私は靜かに野にありまして、さう云ふやうな觀測を致して居るのであります、併し是は固より總體的なことでありまして、多數の地方官──警察官でも十萬居ります、又府縣廳に於ても他の官吏がそれに相當する位の者が居りまして、多數の地方官の中に於きましては時に不心得の者もあり、誤つた者もあるのであります、是等は十分戒め、又要すれば處分もすると云ふことも致さなければならぬと思ひます、尚又時勢が非常に急展開を致しまして、今後地方行政は思ひ切つた民主主義化を致さなければなりませぬ、故に今後立案せらるべき公務員法と云ふやうなものに付きましても、從來の官吏制度に對しまして拔本的なる改革を加へて行くことも必要であります、又其のやうに制度を變へましても、人を直ちに入れ替へる譯には參らぬことでありまして、現在居ります地方官を新しい民主主義の線に沿うて、國民の公僕としての重責を果す上に於て遺憾なからしめるやうな教養、訓練と云ふ點に付ても十分考慮を致し、實施をしなければならぬと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=84
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085・大澤喜代一
○大澤委員 警察制度の改革試案、之を拜見致しましたので、若干氣が付いた所を御尋ね致したいと思ひます、第一に私は此の説明を見ますると、内務大臣は此の案を決定する爲に「アメリカ」及び「ヨーロッパ」各國の警察制度を參考にした、斯う云ふことを謳つて居ります、そこで私の御聽きしたいのは、先般六月十日でしたか、「アメリカ」から日本警察觀察團一行が來まして、日本の警察制度を非常に綿密に調査研究した結果、「マッカーサー」元帥の聲明書を附して、日本當局に其の結論を教示して居る筈であります、それに依ると、此の案では「アメリカ」の案を非常に參考にしたと云ふし、又「アメリカ」の日本警察視察團長「ヴァレンタイン」氏の内容を見ると、日本の警察を批判して、其の行き方を示して居るが、是とあなたの出した方と非常に違ひがある、私は此の點を御尋ねしたい、詰り「アメリカ」の日本警察を研究した是等の方々の報告書に依ると、日本の警察制度は、公衆に奉仕する建前ではなく、政權を握つた者が政治上の野心を伸ばす爲に使つて居る、警察機關は人民が選擧し全人民に對して責任を持つ地方當局が關與すべきである、警察長官は市長が任命し、警察長官には副長官の任命權を持たせなければならない、民主的な方法で警官を教育訓練することが重要である、犯罪は地方的であるから之を地方的に取扱はなければならない、警察の地方機關を擴充する爲には、必要な權限を定めた法律を必要とし、又警察長官は法律で定めた權限を持たなければならない云々、是等に對して重ねて「マッカーサー」元帥が聲明して言ふには、各團員が日本の警察状況を頗る徹底的に、又理解を以て檢討したことに對して感謝の外はない、機構改組に付ての視察團の勸告は全體として誠實であり、行届いたものと思はれる、「マッカーサー」元帥がちやんと聲明して居る、私は今までの經驗上、此の「アメリカ」の方々の日本警察に對する觀察と指導方針は、極めて妥當ではないかと考へて居ります、是は例へば現在の大きな問題として警察部長、警察署長も、苟くも所謂警察官が縣知事の任命權の外にある、政府は具状權と云ふやうなことを言はれて居るが、如何に具状しても、時の大臣が立派な大村内務大臣のやうな方でなければ、中々具状は聽かれないと云ふことは、過去の實績に照らして明かである、斯樣に具状權に對しては「アメリカ」の示すやうに、日本警察の改革は不可能であるだから「アメリカ」は警察機關は人民が選擧し、人民に對して責任を持つ地方當局が關與すべきだと主張して居る、之を大村内務大臣が參考にしたかも知れないが、少くとも日本警察改革の方針と云ふものを採用しなかつた、私は「アメリカ」の方針、方向が全部其の儘日本の實情に副ふものだとは假に考へて居らない、やはり研究の足りない所はあると思ひますけれども、我々みたいに長い間警察でひどい目に遭つて來た連中が見ると、此のやうな方法なくして、日本の警察と云ふものは善くなる譯はない、此の所謂「マッカーサー」の聲明と「アメリカ」の日本警察制度視察團長の斯う云ふ方針と云ふものに對しては、どう云ふ考へを持つて居るか、只今私が申上げるやうな、警察機關は人民が選擧する云々と云ふ重大な事項に對しての内務大臣の御考へを聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=85
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086・大村清一
○大村國務大臣 御手許に御覽に入れました警察制度改革試案の、二頁の三行、四行にも書いて居りますやうに、此の案は廣く各界の批判と御意向とを徴したいと云ふ趣旨で、凡そ警察の改善の問題と其の方法に付て一應のことを記述致しまして、其の輿論に基きまして此の試案を完全なものに致したいと云ふ趣旨で發表致したいのでありまして、固より「ヴァレンタイン」氏の日本警察を視察せられた結果が、一部日本の新聞に出て居りました點も十分參酌を致して居ります、日本の警察が政府の番犬であつて、民衆の警察ではないと云ふやうな趣旨の批判は、是は我我として十分味はなければならぬ警告だと思ふのであります、故に此の改革の趣旨の第二の所に、民衆の警察と云ふことに致したいと云ふ趣旨を、明かに此の試案の中にも現はして居る次第であります、尚ほ只今御指摘になりました警察官公選の問題でありますが、是は此の改革試案にも一應の考へ方を申述べて居りますやうに、我が國の現状は警察上非常に惡い状況にありますので急激なる改革に依りまして、混亂を招くやうなことは避ける必要があると云ふやうに考へて居ります、又今日の現行憲法の實施中に於きましては、警察官を民選にしてしまうと云ふことも、是は官吏にすれば、民選の中から官吏にすると云ふさう云ふ方法は固よりございますが、純然たる民選にすることは出來にくい事情もあります、併し是れとても今後輿論に徴しまして、十分考へて見る積りであります、要するに茲に出て居ります所は、一應の考へ方を申述べまして、之に對して各界から忌憚なき御批判を仰いで、それに依つて十分考へ直しまして、さうして出來るだけ完全なものを得たい、即ち警察再建の上に於きましては、方法の上にも民主的な研究方法に依りまして、さうして目標と致しまする所は、新事態に即應した、最も日本の社會に適する民主的警察を再建しようと云ふ趣旨であります、どうぞ其の趣旨を御諒承下さいまして活溌なる御批判と意見とを御聞かせ願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=86
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087・大澤喜代一
○大澤委員 私は是で質疑を切上げますが、最後に一言申上げたいのは、只今大村大臣が警察制度の改革に付ては大いに輿論を聞く、是は非常に私も嬉しいと思ひます、此の原案を必ずしも固執すると云ふ意味ではないと解釋します、さう云ふ點に關しましては、繰返して申すまでもありませぬが、日本を一番誤つたものは軍閥、官僚政治であります、其の軍閥、官僚の前衞となつて、人民を壓迫したのは警察官であると云ふことは、全世界一致した輿論である、でありますから、警察官の改造と云ふことは徹底的に必要であつて、其の意味で我々は「アメリカ」の斯うした考へ、警察機關は人民が選擧し、人民に對して責任を持つ官吏とすべきである、是は飽くまでも正しいと考へて居りますので、今後之を又條文に作られる場合には、是等の意向を十分反映せられるやうに希望致します、それから今日は吉田總理大臣は見えないやうですが、明日見えた時に、吉田大臣に對する一、二の質問がありますから、それを保留致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=87
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088・中島守利
○中島委員長 次は矢尾喜三郎君──居られないやうですから、竹谷君──それでは松川君──成べく重複に亙らないやうに願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=88
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089・松川昌藏
○松川委員 簡單にやります、第一は選擧權の年齡に付て御伺ひ致したいと思ひます、選擧法に依りますと、大體選擧權と被選擧權との年齡が低下致して居るやうであります、所が此の府縣制に於きましては、知事の被選擧權の年齡が三十歳と云ふことになつて居りますが、此の三十歳と云ふ年齡と云ふものは、日本の選擧法を調べて見ましても何處にもありませぬ、町村長の被選擧權の資格も二十五歳であり、市長の被選擧權の資格も二十五歳でありますが、府縣知事であれば五歳延ばさなければならぬと云ふそこの區別が如何なる所から出て來るか、成程公選知事と云ふものは相當偉いと云ふ考へ方で、町村長より五年延ばしたのでありませうが、過去の法律は皆被選擧權が大體三十歳でありましたものを、衆議院議員でも或は貴族院議員でも、全部是は低下して二十五年になつて居ります、然るに日本の選擧法全體を見まして、被選擧權の年齡が三十歳であると云ふのは、唯此の知事一つであります、斯う云つたやうなことから、或は官吏と云ふものは偉いものだ、或は官吏と云ふものは年を取らなければいけないのだと云ふやうな観念を、一般に植付けるやうな虞もあります、府縣知事と市長と町村長、或は衆議院議員との間に、何處に年齡上區別を設ける必要があるか、大體昔は三十歳でありましたが、今度は府縣知事が初めての公選でありますから、三十歳と云ふことになりませうが、或は將來は其の經驗の結果二十五歳でも宜いと云ふことになるのではないか、二十五歳の有能の知事が可なりなければなりませぬ、唯年齡に基いて三十歳以上でなければ知事の適格者になれないと云ふことは、理論から行きまして、選擧法の改正の趣旨が、選擧權竝に被選擧權の年齡を低下すると云ふ趣旨から申しましても、此の事は相當御考慮を願はなければならぬ問題であると思ふのであります、三十歳でなければ府縣知事の資格がないと云ふことに付ての的確なる根據が何處にあるか、其の點を御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=89
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090・郡祐一
○郡政府委員 仰せの通り被選擧資格に付きましては、寧ろ制限を撤廢しても宜いのではないかと云ふ考へ方も成立つのであります、理論的の説明も十分付き得ることと思ひます、唯一般に選擧權と被選擧權に付きまして差を設けてありまするのは、概ね被選擧資格に付きましては、選擧致しますよりも更に其の仕事を執行致します能力と云ふものを、年齡に依つて強化しようと云ふ考へ方があるのだと思ふのであります、衆議院、地方議會等に付きましては、仰せの通り被選擧資格を三十年としてある例はないのでありますが、御承知のやうに貴族院は三十年になつて居りまするし、此の度の參議院に付きましても、衆議院と被選擧資格には差異が設けられるやうなことが、恐らく考へられのではなからうかと思つて居ります、是は將來の問題なのでありますが、府縣會議員と被選擧資格を變へましたのは、一方は議決機關でありまして、多數の合議制に依りまして運用致されますることであり、一方知事は獨任制の機關であります、隨ひまして其の獨任制の機關に或る程度の經驗と、何と申しますか學識其の他を要求致します際に、他の標凖と云ふので區別致しますることは、是は適當でないと考へまして、他の色々な要件も考へられますけれども、是等のものは何れも一長一短のある要件であり、今日適當でないと存ずるのであります、隨ひまして左樣な意味合で、主としては獨任制の機關であると云ふ點と、議決機關との相違を主に致しまして、左樣に年齡を定めた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=90
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091・松川昌藏
○松川委員 さうしますと、町村長と市長及び知事と云ふものは、やはり等しく是は執行機關ではないのでありますか、此の點に於きまして知事は三十歳でなければならない、市長は二十五歳でも宜しい、或は町村長も二十五歳でも宜しい、と云ふことになつて居る、五年と云ふ相違があるが、内務省は然らばどう云ふ考へを以て町村長竝に市長との間に年齡の差異を認めたのであるか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=91
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092・郡祐一
○郡政府委員 只今は府縣の中の執行機關と議決機關との差に付て申したのであります、市の中にも極めて大きい市がございます、確かに市の中に於て府縣に匹敵し、或は府縣を凌駕するもののあることを認めるのでありますが、大體論と致しまして府縣の規模、府縣の持つて居りまする事務の性質、それから管轄區域の廣狹、是等の點を考へまして、市町村に付ては特に之を引上げると云ふことまで致す考はないと思ひましたけれども、府縣知事に付きまして市町村長と同じにしてしまひますることは、府縣團體の規模から申しまして適當でなく、又兩者に差異を設けることは、寧ろ現在の府縣と市町村と云ふものを端的に比較して見ます場合に適當であるのではなからうかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=92
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093・松川昌藏
○松川委員 此の問題は是れ以上申上げることは意見の相違になりますから是で終ります、其の次の問題は府縣制第八十四條に關する問題でありますが、府縣知事に對する不信任の議決であります、此の不信任の議決に付きましては法令は議員の三分の二以上出席して、其の三分の二以上の同意あることを要する、斯う云ふことになつて居ります、私は憲法の規定と對照しまして、憲法に於きまして議會が内閣を彈劾する、不信任を出す場合に於ても、是は三分の二と云ふ規定はないのであります、恐らく民主主義に於ては多數決であります、一票でも多ければそれは其の議會の意思の反映である、三分の二と致したと云ふやうな所に私は理解の出來ない點があるのでありますが、而も再度解散をして最後の議會に於きましても、三分の二以上の不信任の議決がなければ其の議案が成立しないと云ふことは、是はどう云ふ根據に基くものでありませうか、殊に今日の時代に於きまして、議會に於て三分の二以上の不信任を受ける知事或は町村長と云ふやうな者は、私共は殆ど想像し得ないのであります、餘程極惡非道の人でなければ、三分の二以上で以て不信任を出すと云ふやうなことはあり得ない、而も再度に亙つて之をやらなければ此の不信任の意義が徹底しないと云ふやうなことは、私は選擧の方式から考へまして、或は民主主義の原則から考へましても、三分の二とか、四分の三とか、五分の四とか云つたやうな比較的多數でなくして、或は絶對多數に近い不信任を要求すると云ふことは民主主義の原則に悖るのではないかと考へるのでありますが、此の點に付ての御答辯を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=93
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094・郡祐一
○郡政府委員 地方團體に於きまして一方直接選擧制を執りまする以上、其の團體の長に對しまして不信任議決も適法の議決として認めると云ふ前提は執るべきものだと思ひます、併しながら國政の場合に於きまして、多く政黨的な意見の相違等に依りまして不信任議決等が行はれるのでありますが、國政の場合と地方議會の場合とは自ら趣きが變つて參ると思ふのであります、御話の中に非常に極端な場合でなければ、三分の二と云ふやうな特別多數を得てまで不信任議決をすることがないであらうと云ふ御話もありましたが、不信任議決が非常に屡屡地方議會に於て行はれると云ふやうなことは、地方自治の本旨から言ふて必ずしも好ましいことと言はれないのであります、一方に於ては不信任議決を適法の議決として認める、併し地方自治體の性格から云ひまして、又不信任議決の結果、或議會の解散だとか、地方團體の長の辭任とか云ふ重大な結果を惹起すのであります、且つ府縣會は或る程度の數がございますが、それに致しましても地方議會と云ふのは議員數が比較的少いのであります、地方の町村會等に於きまして比較多數と云ふことで、不信任議決が行はれ、之に依りまして其の團體の長の辭任と云ふやうな結果を屡屡惹起しますことは、是は自治體の性質上好ましくない、國政の場合とは區別した方が寧ろ宜いではないか、斯樣な次第で特別多數と云ふことを要求した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=94
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095・松川昌藏
○松川委員 私は此の問題に付ても是れ以上申しませぬが、國の政府に對する不信任は過半數である、縣或は今度市町村等に對する彈劾が三分の二以上でなければならぬと云ふことは、理論上の根據が薄弱であると思ふのであります、隨て此の憲法の改正に於て見る如く、三分の二以上の出席者があつて、三分の二以上の議決でなければ改正が手來ないと云ふことは、憲法の如き重大法案の改正に付て論議されることである、憲法等に比較してそれ程の價値がないと私は思ふ、併し是れ以上のことに付きましては何れ後で申上げたいと思ひますから、氏の問題は是で打切ります、其の次の問題は選擧と供託金制度の問題であります、此の供託金制度に付ては、他の同僚よりも色々論議があつたやうでありますが、供託金制度を設けました時代に於ては、成程供託金を設けた理由があつたのであります、衆議院議員選擧に於て當時二千圓と云ふやうな供託金を出すと居ふことは相當の大金であつた、又候補者の濫立を防ぐと云ふことに相當效果があつたやうでありますが、今日の選擧界に於きまして、或は衆議院議員、或は府縣知事の公選に於て、二千圓位の供託金を納めると云ふことは、金自體に於て何等の效果がないのであります、殊に府縣制に於ては慥か二百圓かの供託金であります、此の供託金と云ふものは唯立候補をする印しと云ふことであります、さう云ふやうな意味に於て選擧に付ての供託金制度と云ふものが過去に於て設けられたのでありますが、今日に於きましては供託金制度を設けても、候補者の濫立を防ぐと云ふやうな譯には參らぬのであります、形式的な金を納めて候補者を確認すると云つたやうなことは、是は過去の制度でありまして、此の供託金制度と云ふやうなことは將來改めらるべきものではないかと思ふのでありますが、果して内務省に於きましては、選擧と云ふものと供託金制度と云ふものは不可分であり、絶對に是はなければならぬと云ふ考へを持つて居るのでありますか、金額の點は別でありますが、今日の選擧に於きましては、私は供託金制度と云ふものは絶對の制度ではないと考へて居ります、其の點に付て御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=95
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096・郡祐一
○郡政府委員 仰せのやうに供託金制度は絶對のものとは考へないのであります、考へ方と致しましては、政黨が高度に發達を致しまして、政黨に依つて立候補が統制されると云ふやうな時期になりましたら、擔保の必要もなくなるかとも思ひます、或は擔保の方法と致しましても、一定の連署を要求すると云ふやうな人的擔保の方法も考へられるかと思ふのであります、唯府縣とか市とか大きい團體の選擧になりますと、連署の要求數が少ければ容易に集まりますが、數多くなりますとそれに伴ひまして運動めいたやうなことも起ります、それから物的擔保ですと、只今仰せの通りの非常に薄らいだ效果しか持ち得ないと云ふ状態に相成つて居ります、隨ひまして之に付きましては十分選擧法とも併せまして研究致すことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=96
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097・松川昌藏
○松川委員 此の供託金制度は現在の法規に於きまして、知事には二千圓の供託金制度があるのであります、然るに一方に於きまして町村長の選擧には──是やはり同じやうな理事者の選擧であります、私は地方自治體の理事者の選擧でありますから、官吏であらうと、公吏であらうと、大體理論に於ては同一でなければならぬと思ひますが、町村長の選擧に付ては、三十人以上の連署に依つて立候補を保證すると云ふ保證制度を設けて居る、私は供託金制度と云ふものは實質的に於て選擧に關係のないものであるが、内務省に於ては此の點に於て明確に此の規定を設けて居るやうにも考へられるのであります、若し供託金制度が必要であるとしますならば、知事の選擧に於きましても供託金制度を採り、又市町村長の選擧に於ても、金額は少いにしても供託金制度を採らなければならない、然るに町村長の選擧に於ては、三十人以上の連署である、是は人員等に付きましては相當考究する必要があらうと思ひますが、今日町村内に於て三十人位の連署などと云ふものは、是は何にもならぬと思ふのであります、一つの隣組をぐるつと廻りますれば、三十人の連署は直ぐ取れるのであります、そこで三十人と云ふやうな數字を持つて來ました理論上の根據は何處にありますか、此の點に付きまして知事と町村長との選擧に付て、一方に於ては供託金制度を採り、一方に於ては供託金制度を採らなつかた所の理論上の根據は何處にありますか、伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=97
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098・郡祐一
○郡政府委員 知事に付きましては其の選擧の規模から申しましても、運動の範圍から申しましても非常に廣いのであります、之に付きまして人的擔保を求めると致しますと、先程申上げましたやうな弊害も豫想されますし、又其の推薦者と云ふものに依つて其の候補者の適否を斷判致しまする爲に、徒らに人數を竝べただけでは大した意味はないのであります、之に反しまして町村程度の規模の團體になりまするならば、そこに主だちの推薦に依りまして、自らあれ等の人が推薦するならば適當であらうと云ふ判斷が、團體の規模が小さうございますから出來易いのであります、それで先程も申上げましたやうに物的擔保が理想的な形だとは思はない、併しながら一方人的擔保等に伴ひまする弊害も豫想されます、併しながら町村には左樣な弊害の起ることも先づ先づ少いし、其の人的擔保の結果が、町村内部の人は多くの場合顏見知りが多いと云ふやうなことから申しますならば、人的擔保の效果が強く發揮出來ると云ふ點であります、それから人數を三十人に致しました點は、著しく多い場合は寧ろ其の連署を求めますること自體に弊害が豫想致されますし、町村内で三十名の數、而も若しそれが相當の各部落の主だちに依りまして推薦されました場合、選擧致しますに付ても非常に適切なる判斷材料になるであらう、斯う云ふ結果であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=98
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099・松川昌藏
○松川委員 是は後で選擧の公營と云ふことに關聯しまして更に御尋ねすることに致します
其の次の問題は、今度の改正法に於きましては、市町村會其の他に對しまして豫算の増加修正を認めたことであります、是は今までの町村制度は地方制度から見ますると非常な變革であります、過去の地方制度に於きましては、豫算の修正増額は明かに法規を以て禁止せられて居つたのであります、此の法規を以て禁止致して居つたと云ふことは、理論的には根據があると云ふことで、法規を以て禁止致したのであらうと思ひます、然るに今囘は反對に修正増額を認めたと云ふのであります、併しながら豫算に關する限り修正増額を自由にすると云ふことは、是は財源に關係致すことであつて、豫算の財源を持たない所謂議決機關が、勝手に豫算を修正増額致すと云ふことになりますれば、結局其の修正増の部分に付ては新しい議案の發案となると思ふのであります、町村制に於きましては豫算の修正増は認めて居るけれども、新しい議案の豫算に關する發案は出來ないことになつて居ります、斯う云ふやうな點に付きまして、此の修正増額は豫算の財源に拘らず自由になし得ると云ふ趣旨でありませうか、此の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=99
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100・郡祐一
○郡政府委員 豫算の増額修正を認めることに致しましたのは、議會の權限を出來得る限り擴充致す方向に改正を考へて參ります場合に、豫算に對する議決權のみを特に嚴重に制限すると云ふことは、實際上寧ろ不穏當であらう、唯仰しやいますやうに收支の執行が不可能なるが如き事態を起しましては固より許されない所でありますから、隨ひまして此の増額修正と申しまするものは、新たなる發案を伴はない限り之を認むることであり、地方議會は豫算の發案權は持つて居りませぬから、隨ひまして増額修正權の行使も亦其の發案權を侵害しない範圍に於てのみ認められると云ふことは、是は條理上當然なことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=100
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101・松川昌藏
○松川委員 さうすると是は結論として、一方に於ては豫算の修正増をしたのだが、そこて豫算の辻褄が合はなければ、他の一面に於ては豫算の減額をして、此の辻褄を合はせなければならぬと云ふことになるのでありませうか、其の辻褄が合はない以上は、豫算の財源と云ふものを出しやうがありませぬから、其の辻褄を合せる限度に於て豫算の修正増が認められる、斯う云ふ趣旨に解釋して宜しいのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=101
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102・郡祐一
○郡政府委員 發案權を侵害せざる範圍でありますから、仰せのやうに御考へ戴いて宜しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=102
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103・松川昌藏
○松川委員 さうしますと豫算の修正増と云ふことを認めたいと云ふ趣旨にはならないと思ひます、是は意見の相違になるかも知れませぬが、唯款項目を合せたと云ふことだけになるのであります、豫算の修正増と云ふことは、如何なる場合に於ても修正増額が出來る、斯う云ふことでなければならぬと思ひますが、此の點は或は意見の相違になるかも知れませぬので、此の程度に致します
それから次の問題は、現に各地に於て行はれて居ります所の地方制度に於きまする市町村長の選擧であります、所謂公選選擧でありますが、此の公選選擧の中に於きまして、各地方に於きまして現行法の下に一般投票を行つて居るやうであります、此の現行法があるに拘らず、各地方に於て斯くの如き選擧を致して居ると云ふことは、私は頗る不可解なりと考へるのであります、又内務省は之に對して何等の指示も通牒も發して居らぬのであります、苟くも選擧と云ふものは公法關係に立つものであります、私法關係ではありませぬ、各人勝手に或は市長、町村長を定める場合に於て、現行法の認めないやうな選擧管理委員會の如き規定を設けまして各地に於て致して居ります、今日も新聞の神奈川版にありますが、川崎市長の選擧に不正投票ありと社會黨が言つて居ります、是は不正投票であるか、どうであるか、所謂選擧法に明示しない所の選擧でありますから、戸別訪問をやらうと、買收をやらうと勝手だと思つて居ります、斯う云ふやうな選擧をやつても宜ければ、やらなくても宜い、所謂參考の選擧でありますが、併しながら其の結果と云ふものは、實質的には此の參考的の選擧が確定的の效果を各地で持つて居るやうであります、町村會議員も、市會議員も總て此の國民投票の制度に向つて投票を致す、其の結果は市會議員、町村會議員の公正なる選擧權の妨害となり、或は抑制となつて居るやうであります、法の表と裏とを行つて居るのでありますが、現行法が尚ほ生きて居るのであります、隨て選擧法と云ふものは、被選擧權のある所の市會議員なり町村會議員が、何人の制肘も受けないで選擧せらるべきものであります、然るに公々然として各地に於て選擧會で規定を設け、管理委員を設け、色々なことをやつて居る、戸別訪問、買收などはどうでありますか分りませぬが、到る處に於て暗黒な政治が行はれて居る、而も非常に不眞面目なる結果が現はれて居るのであります、斯う云ふやうな選擧を何故に内務省は默つて居るのであるか、私は斯う云ふものに對してやつてもやらなくても宜い、それは效果がない、斯う云ふのでありますならば、それは放つて置いても宜いのでありますけれども、事實上に於て選擧に對して相當の效果がある、而してまだ選擧法が改正になりませぬが、將來軈て選擧法が改正になりますと公選になるのだからと云ふ意味に於てやつて居ると思ひますが、それでも私は十分の弊害があると思ひます、或る所に行きますと斯う云ふことを言つて居る人もある、近い將來に於て選擧の公選が行はれるのだ、公選投票を先にやつて置けば之を免れることが出來るから、今のうちに公選投票をやるのだと云ふやうなことを言つて居る人もありますが、それは法的根據は何處にもないと私は思ひます、斯う云ふことに付て未だ曾て内務省が善いとも惡いとも、やるなともやれとも、何處にも新聞記事に一つも現はれて居るものはありませぬが、私は各地に於て行はれつつある所の選擧と云ふものが、形は民主主義である、形は民主主義を辿つて居るやうでありますが、其の蔭に隱れまして非常に色々な忌はしき事實が行はれて居りますので、今後に於ても斯う云ふ選擧は相當警戒して、之を指導して行く必要があらうと思ひます、此の點に付ての御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=103
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104・郡祐一
○郡政府委員 市町村長の退職に際し、後任市町村長を推薦致します場合に、豫選會的のものを致しますと云ふことは、必ずしも例のなかつたことではありませぬ、併し近頃行はれて居ります市町村長の直接選擧めいたやり方と云ふものは、確かに近頃の一つの風潮だと思ふのであります、此の公選の結果、弊害と認めるべきものが生じて居りますことも仰せの通りでありまして、一方に於きましては民主的な風潮と致しまして、場所に依りましては割に好ましい結果を收めて居る所もあります、場所に依りましては却て民意尊重の名の下に、法律を無視するやうな傾向も見受けられないではないのであります、隨ひまして新法律の施行までの間は、市町村會をして其の全責任に於て市町村長の推薦を致させまするやうに、主管課長の會同等の際には、既に數囘でありますが、是等に付きまして方針を十分指示致して居るのであります、唯土地々々に依りまして餘程趣きを異にして居りますので、其の地方々々の實情を聽きまして、さうして指示を致して居りますが、一般的に申せば新法律の施行に至るまで、私的な直接選擧は止めるやうに指示を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=104
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105・松川昌藏
○松川委員 大體分りますが、最後に質問致しました一般に於きまして形の上で公選選擧をして居れば、此の次の選擧に於て免れると云ふやうな流言がある、斯う云ふことは非常に此の選擧を促進する一つの例となつて居るやうに思ふのでありますが、此の點に付きまして内務省の所見を明かにせられたいと思ふのであります、或はさう云ふことが明確になりますれば強ひて此のやうな選擧をやらなくても濟むと云ふやうなこともあると思ひますが、内務省に於きましては次に行はれます地方議會の公選に於きましては、此の所謂一般投票に於ける選擧に依つて出た町村長は、選擧を免れると云ふ御考へを持つて居りませうか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=105
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106・郡祐一
○郡政府委員 法律的に申しますと市町村會で推薦致されたものでありまして、それは現行法の下に據つて選ばれたものであります、隨て新法施行になりますれば、勿論新法に據りまする基礎は、假に直接選擧があつたと致しましても、それは事實上の問題でありまして法律上の問題ではありませぬから基礎を失ひます、隨ひまして如何なる方法を執りませうとも、一般の市町村長と同じやうに變るべきことは勿論であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=106
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107・松川昌藏
○松川委員 次には選擧人名簿の作成に付て御伺ひ致したいと思ひます、現在の法制に於きまして選擧人名簿と云ふものは、各選擧に於て別箇になつて居るやうであります、衆議院議員選擧法に於きましてはやはり其の選擧名簿があり、或は町村會、或は府縣會、公選知事、市町村長と云つたやうに、選擧名簿は各種であります、併しながら此の選擧權の根柢は今囘の法規に依つて大體統一せられたのであります、住居の制限等も今までは皆ばらばらでありましたが、六箇月と云ふやうなことで統一せられて居るのであります、殊に府縣會議員の選擧は大體衆議院議員の選擧、或は町村會議員の選擧に據ると云ふことになつて居るのであります、從來に於きましても各種の選擧に於て選擧人名簿を別々に各町村に於て作つて居ります、所が選擧人名簿を各町村に於て別々に作ると云ふことは、非常に手數を多く要することであります、隨ひまして將來に於きましては、各種の選擧人名簿を一本にし、さうしてどの選擧にも適用することが出來るやうな、統合した選擧人名簿を作るのが宜しいと思ふのでありまするが、内務省に於ては其の點をどう考へて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=107
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108・郡祐一
○郡政府委員 只今衆議院議員選擧人名簿を基本と致しまして、地方議會に付きましては、衆議院議員選擧人名簿に合せまして、補充名簿で補完致しまして、さうして選擧を行つて居るのであります、其の補充選擧人名簿は、只今の制度でございますと、地方議會には特免と云ふやうな事柄もございます、今度の改正法でも、特別の縁故關係者に對する選擧權の附與等もございます爲に、衆議院議員選擧人名簿と若干食ひ違つて居る所もあります、隨ひまして衆議院議員選擧人名簿を本として、それに漏れて居ります分に付て補充選擧人名簿を調製して、兩者を合せて行つて居るのでありますが、名簿の簡易化に付きましては、今後も十分檢討して見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=108
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109・松川昌藏
○松川委員 私は只今の問題は、法規上今直ちに實行すると云ふことが出來ないことは分つて居ります、併しながら恐らく同じやうな選擧で、同一の性質を持つて居る選擧でありますから、將來はどうしても選擧人名簿位は一つにするやうな研究を進めて、其の實現に努力せられたいと考へるのであります
其の次は連記制の問題であります、連記投票制に付きましては、今囘の衆議院議員選擧に於て唯一囘行使致したのみでありまするから、其の實績に付ては十分なる調査が出來ないと云ふことも言はれ得るかと思ふのであります、併しながら大體に於きまして我々日本人に對しましては、連記投票制は適しないと云ふことが、是は各識者の考への一致致して居る所であります、斯う云ふ點に付きまして、衆議院議員の選擧法が連記投票制でありまするから、之に倣つてやはり此の地方選擧に付きましても改革を加へず、連記制を實施すると云ふことに相成るのではないかと思ふのでありますけれども、私は斯う云ふ點に付きまして、内務省は將來此の連記投票制を如何に考へて居るか、此の點を御質問致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=109
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110・郡祐一
○郡政府委員 制限連記制は、前囘の衆議院議員選擧に於て色々な經驗を致して見まして、率直に申しまして、當初制限連記制に付て期待して居りましたやうな結果の、必ずしも起つて居らない部分もありますので、之に付ては十分なる檢討を加へて見たいと思ひます、制限連記制は、御承知の通り大選擧區制の採用に伴ひまして採りました制度でありまするので、地方議會に付きましては選擧區に手を加へて居りませぬ爲に、從來通り單記投票に致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=110
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111・松川昌藏
○松川委員 最後に選擧の公營と云ふことに付て御伺ひ致したい、選擧の公營も現行法に於て一部行はれて居る所もあるやうでありますが、併しながら本當の選擧と云ふものは、私は選擧の徹底的公營でなければいけないと思ふ、第一現行法の謂うて居ります選擧費用の一點を申上げましても、選擧公營でなければ、是で選擧を實施することが出來得ないことは明かであります、大體の區に於きましては、選擧の運動費用は二萬圓から二萬五千圓位になつて居るのであります、然るに今日有權者が非常に増加致しまして、物價が騰貴致しました今日に於て、選擧運動の何れの一つを取りましても、二萬五千圓位の選擧費用で當選をすると云ふことは多く出來得ないのであります、文書に於きましても、衆議院議員選擧に於きましては、大體の文書の發送は無料郵便物として取扱はれますけれども、多くの選擧區に於きましては或は四十萬、五十萬、六十萬と云つたやうな有權者があるのであります、是等の人々に對しまして、無料郵便物でありましても文書一通づつ發送致しますと、二萬や三萬の金では封筒も買へなければ、或は紙も買ふことが出來ないと云ふやうな状況であります、隨ひまして斯う云ふやうな場合に於て選擧の公營を徹底的に行ふと云ふことは、法定の選擧費用で選擧が完全に行はれると、云ふことにならなければならないのであります、然らずして多くの選擧費用を選擧に投じなければ選擧が出來ないと云ふことになりますならば、そこに或は買收であるとか、或は金權候補と云ふやうなものが蔟出する處があるのであります、私は斯う云ふ意味に於きまして、第一は文書の發送に付きましては、選擧公報一本にすべし、選擧公報以外の文書は發送することは出來ない、斯う云ふことに依つて文書は完全に公營化することが出來るのであります、第二は選擧演説會場の公營であります、今日國民學校の校舍は無料で借り受けることが出來るのであります、恐らくは全縣下で演説會を致します場合に、國民學校以外の會場を利用致しましたならば、それだけでも選擧費用が莫大なものになるのであります、多くの場所に於きましては、國民學校と云ふやうな所では人が集まらないやうな處もあるのでありまして、場合に依りましては國民學校以外の會場をも使用致して居るのであります、さう云ふやうな場合に於きましても、是は各候補者、有權者に共通なことでありますから、選擧演説會場と云ふものも全部公營に致しまして、公營會場以外に於ては選擧演説會は出來ない、斯う云ふことにしますれば、茲に選擧の公營が徹底致すのであります、其の次には、今囘の選擧で多く行はれたのでありますが、演説會の「ビラ」のやうなものであります、演説會の「ビラ」だけでも、之に制限がなかつた爲め、候補者に依りましては何萬と云ふ演説會の「ビラ」を撒いて、さうして自分の宣傳に使つたのであります、ああ云ふ點に付きましても全部を調査致しましたならば、恐らくは演説會の「ビラ」だけでも選擧運動費用を超過すると云ふやうな疑ひが多々あつたのであります、斯う云ふやうな點から見まして、選擧を全部公營化致しますならば、法定選擧費用の範圍に於て選擧運動が出來ると思ふのであります、是等の問題に付きまして、是は現行法上直ちに選擧公營を徹底強化する譯には參らないのでありますが、將來内務省に於きましては、斯う云ふ問題に付て、是非とも此の選擧公營と云ふものが徹底的に完全に行はれて、初めて選擧の公正と云ふものが期せられると云ふ見地から致しまして、將來選擧公營調査會のやうなものを設置して、之に付て眞劍に研究する御考へがあるかどうか、此の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=111
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112・郡祐一
○郡政府委員 選擧運動に付きましては、一方に於きまして選擧運動が嚴肅と申しまするか、正しく行はれますことと、選擧運動が自由に行はれますこと、此の兩者の調和を圖つて参ることが必要だと存ずるのであります、それで比較的激烈でない選擧に付きましては、自由に任せて宜い部分も相當にあるのでありますけれども、選擧が激烈でありまする種類のものに付きましては、之を緩和致しまする爲にも、選擧公營は相當致すことが望ましいのであります、但し事務的、技術的に申しまして、非常に徹底して公營を致しますることに困難な部分もございまするし、御指摘になりましたやうな事柄に付きましては、仰せの通り選擧法との關聯も考へまして、十分適當な結果に結論を得ますやう努めて行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=112
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113・松川昌藏
○松川委員 現行法に於きましては選擧費用の超過と云ふことは、前の法律と違ひまして犯罪にはならないのであります、費用が超過した場合には、それに依つて當選が或る場合に無效となり、無效を主張することが出來ると云ふ消極的な規定であります、斯う云ふ點から見まして、私は法定選擧費用と云ふやうなことを此の選擧法に書いて置きますることは、殆ど行はれないことを書いて居るやうな感がするのであります、譬へて言へば、物價に付ての公定價格のやうなものであります、唯此の基凖の上で屆出すれば宜いのだ、二萬五千圓以下に打突けるやうにさへすれば、幾ら使つても宜いのだ、斯う云ふやうになつて、之に對する取締は全然出來ないのであります、隨て一般に於きましても選擧費用と云ふやうなことは問題にせず、眼中に致して居らぬのであります、一方に於て勿論選擧公營は望ましいことであるから、出來るだけ選擧の公營をすると云ふ御趣旨のやうでありますが、併しながらものには如何なるものに對しましても長所と缺點がある、選擧公營を徹底しますならば、選擧民の自由なる、或は有權者の、或は候補者の自由なる選擧運動を妨害すると云ふ理論上の缺陷に到著することは勿論當然である、併しながら今日に於て選擧運動の弊害と云ふことは──寧ろさう云ふ點に於て、潛り拔けるやうな、非合法的な選擧運動が行はれ易いと云ふやうなものは、徹底的に是は是正しなくちやいかぬ、二萬五千圓であるならば、二萬五千圓と云ふ金額で以て本當に選擧が行はれるやうでなければ、選擧界の肅正は斷じて行はれないと思ふのであります、殊に選擧演説會などに於きましては、是は候補者に立つ方ばかりではありませぬが、有權者の方から申しましても非常に是は迷惑であることが多々あるのであります、忙しい時に多數の候補者が同じ村に入つて來まして、二十囘も三十囘も選擧演説會を開く、さうして其の結果がどうであるかと云ふと聽く人よりも喋る人の方が多い、或は流會になつたと云ふやうな實例が相當あるのであります、私は斯う云ふ點に付て内務省が唯お座なり的に、或は國民學校を提供するとか、選擧公營を徐々に擴張するとか云ふやうな程度でありましては、さう云ふ點の矯正は出來ないと思ふのであります、併しながら縣下に於ける候補者を集めて、或は選擧管理委員會等で相當練つた案を以て、演説會場でも或は共同演説會でも何でも宜しいのですが其の演説會で演説をやるべし、其の以外に於ては演説會が出來ないと云ふやうなことに致しまするならば、恐らくは流會になる演説會と云ふやうなことはないと思ふ、候補者もさうであります、凡ゆる所に行かなければならぬ、而も聽く方は凡ゆる、人のを聽かなければならぬ、斯う云ふやうな點に於て、今年は五囘も六囘も選擧がある、來年度以降に於ても選擧が澤山行はれるでありませうが、さう云つたやうなことで、聽く方も喋べる方も非常に無駄があり、金が掛つて到底行はれないやうな現在の選擧法に對しては一大改革をして、さうして是は多少の弊害があり、多少の窮屈な點があり、多少理論に合はぬ點があるかも知れませぬが、完全なる選擧公營を實施せらるるやう、内務省に於て格段の御配慮を御願ひ致したい、是にて終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=113
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114・中島守利
○中島委員長 青木清左ヱ門君──簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=114
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115・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は民主的な基礎訓練と云ふことを、先づ主題として御伺ひして見たいと思ふ、先づ政府當局が過去に行はれました選擧が甚だ低調であつた、國民が無關心な状態にあつたと云ふ此の原因が何處にあつたか、反省して見られたかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=115
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116・大村清一
○大村國務大臣 過去の選擧と申しましても、年代に依つて餘程相違があると思ひます、最近の衆議院議員の選擧に付きましては、世間一般に、頗る低調で棄權者も非常に多いだらうと云ふやうに言はれて居つたのでありまするが、民主主義に目覺めたと申しませうか、殊に最も心配をされて居りました新有權者たる婦人及び青年に於きましても、中々出足が宜しうございまして、あのやうな徹底的な選擧權の擴張をやりましたのに、諸外國の事例に比べましても寧ろ成績が良かつたと云ふやうに考へて居るのであります、併し是は先頃行はれた總選擧でありまして、其の後行はれました再選擧等に於きましては、極めて選擧界が低調であり、棄權者も多かつたこともございます、尚又更に遡りますると、能く世間で言はれますやうに、軍閥、官僚の跋扈に依りまして議會政治が低調になつた頃に於きましては、選擧に關する國民の關心が自ら低くなつたと云ふやうなことも隱れもないことであります、併し私共は先頃の選擧の結果から考へまして、今後國民の間に民主主義政治に對する趣旨が能く徹底普及致しまするならば、段々と此の選擧に對しまして國民が積極的に參加致しまして、日本再建の爲に大いに政治的に目覺めて來ると云ふことが期待されると思ふのでありまして、茲に望みを囑しまして、我々と致しましては地方當局も督勵し、又文部省其の他關係方面にも能く依頼し協力致しまして、國民が各種の選擧に對しまして熱意を示し、又自由なる民意を表明することに遺憾なきを努めて參りたいと思ひます、斯樣なことを致しますと同時に、民間に於かれましてもどうぞ其の點に凡ゆる方面から御協力を願ひまするならば、從來とは面目を一新した選擧が行はれるだらうと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=116
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117・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 私は今御説明の原因に付ても同感でありまするが、併し之を更に解剖して見ると、國民の感情が、進駐軍に對して非常な信頼の念を持つて居ると云ふことが先づ第一であります、進駐軍が何等かの方法を以て、日本の政治を好い方面に導いて下さるであらうと云ふ、一つの信頼感を持つて居ると云ふことが先づ擧げられる、第二には、我々選擧したつて何にもならない、所謂政治に對する不信任と云ふ意味が第二に考へられるのであります、第一の問題は甚だ宜しいことである、第二の問題の内容を更に解剖して見ると、先づ第一は物資の統制などが甚だ亂脈になつて居つて、闇市などが現に存することが、如何にも政府に力がない、政府に統制力がないと云ふことを國民が考へて居るのではないかと思ふのでありますが、當局としてはやはり此の闇市場と云ふもの──青空市場と申しますか、之を此の儘放任される御積りであるか、如何にされる御積りであるか、先づ之を御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=117
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118・大村清一
○大村國務大臣 御説の通り、政治に對する信頼が國民の間に薄くなつて參りますと、民主政治の基本である所の參政權の行使と云ふことが鈍つて參りますので、此の點に付きましては深甚の注意を拂つて行かなければならぬと考へて居ります、終戰後政府の諸般の施策が、政治的に申しまして低調化したと云ふことは、是は事實であります、殊に私共最も責任を痛感致します所の警察面に於きましても、同樣の事實のあることは承認せざるを得ないのであります、之に付きましては色々理由があることでありまして、敗戰後國民が一種の虚脱状態に陷り、遵法精神がなくなつたと云ふことも一つの原因であります、又警察界に於きましても、やはり一種の虚脱状態が起り、又終戰後警察の向ふべき所などに於きましても、確たる信念を持ち得ない、そこに職務上の危惧、動搖があつたと云ふやうなことも事實であります、又物價の騰貴等からの生活の不安もあり、又警察署の諸裝備に於きまして、例へば警察電話でありますとか、交通機關と云ふやうな點に於きましても不備なものがある、原因は何れに致せ、さう云ふやうな事實があるのであります、併し警察の面から申しますと、段々とそれ等の惡條件が克服されて參りまして、今日に於きましては餘程警察力は囘復したと思ふのであります、又只今御指摘の闇市場、青空市場乃至は汽車交通上に於ける不秩序に付きましても逐次關係方面とも打合せ、諒解が付きまして、警察が占むべき限界、やるべきこと、やらなければならぬことに付きましての不明な點が段々はつきりして參りましたので、餘り遠からざる將來までの中には、略略戰前と同樣な警察機能が發揮される所まで行くと云ふやうに、大なる期待を持つて居る次第であります、而して青空市場の問題に付きましては種々の弊害を伴うて居ります、併し一面に於きましては、之に依りまして窮迫したる消費部面に對して便宜を與へて居る點もあることでありまして、それ等の點は民生安定の上から緩急宜しきを制せなければならぬ現状にあるのでありますが、併し御承知の如く青空市場のことに關聯致しまして、澁谷及び新橋に於て忌むべき騷擾事件が發生致しました、そこで是は關係方面とも連絡の上で、兩市場は斷乎撤廢することに致しました、又他の方面に付きましても、自發的の所謂自肅休業も行はれて居ると云ふことであります、それ等の他の市場に付きましても、私共としては逐次是は閉鎖をする方針で處理する積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=118
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119・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 次に國民が投票してもそれは無駄だと考へる第二のことは、不正選擧に對する投書とか申告が、相當國民から出て居ると思ひます、是が取扱を現在政府は如何なる方法を以てやつて居るか、投書したものには相當根據を持つて居りますので、之を下手に致しますと、所謂政治家と官僚との妥協であると云ふやうな觀念を生むのでありまして、此の點政府は現在どう云ふ取扱をし、尚ほ之に對してはどう云ふ對策を持つて居るか、先づ御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=119
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120・大村清一
○大村國務大臣 民間からの我々の方に對する投書なり申出に付きましては、洵に傾聽すべきものも段々あるのでありまして、又時には餘程用心致しませぬと、それを盲信して處置致しますと、とんでもないことになるやうなこともあるのでありまして、注意は加へなければなりませぬが、それ等のものに對しましては、國民の意向、輿論を知ります上に於きまして、非常に貴重な資料でありますので、内務省に於きましてはそれ等のものは、例へば私に對しまして親展書で參りました意見なり投書は、必ず内容に依つて關係部下に囘付して、それを皆檢討するやうに致して居ります、又内務省の窓口に參りますものに付きましてはそれぞれ關係部局に送達致しまして執務上の資料に致して居ります、或は又選擧以外の點になりまするが、隱匿物資の摘發とと云ふやうな問題、乃至は犯罪檢擧の端緒をそこから得ましたやうなことも段々ある次第でありまして、是は餘程それに注目致して取扱つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=120
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121・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 非常に注意深く此の問題を御取扱ひになつて居られることは洵に結構でありますが、此の投書の中には匿名のものと記名式のものとがある、私の考へでは恐らく此の匿名のものは、場合に依つては投書の眞の目的を外して、唯之を中傷すると云ふやうなものが相當あると思ひます、隨て匿名のものなどは寧ろ御取上げにならない方が宜いと思ふのでありまするが、斯うした投書が、萬一事實に反したるが如きものがあるならば、是は如何なる方法を以て御取扱ひになりますか、又或る一方に於て斯う云ふことを聞いて居ります、是は或る警察署の内部の話でありまして、是も私は今確たる證據を示せと言はれると色々困る事情があるのでありますが、斯う斯う斯う云ふ事情があると云ふことを或る人が持つて行つた、さうした所が其の中の或る警察官は、それは置いたら宜からう、當の責任者はさう云ふことを我々の方で幾ら言つても取上げて呉れぬのだから、置いたら宜からうと云ふやうな話のあることを私は仄聞して居るのであります、實際にさうしたことがありますならば、勿論是は斷乎として其の官吏を處分されることが當然でありますけれども、澤山の投書が溜つて居りながらそれに對して何等の手段も講じて居らないやうな官廳があるとすると、それに對してどう云ふ處置を執られるか、私の言ふのは投書が澤山溜つて居る、所がそれを其の儘にして居る場合にはどうするか、又それを見出すのに、あなた方は何處の官廳がさう云ふ怠慢をして居ると云ふことを見出す方法を考へて居られるか、又どう云ふ手續を執つて居られるか、其の檢察の方法と言ひますか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=121
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122・郡祐一
○郡政府委員 投書に付きましは、大臣から御説明のありましたやうに愼重に扱ひ、且つ記名でありましても投書の内容等に依りまして、果して眞實に實際のものがありますものであるか、又匿名でも相當重要な内容を持つて居る、而もこちらで眞相の判明致しませぬものは、或は縣廳を使ふ場合もありますし、或は他の方法を使ふ場合もありますし、事態に付ては先づ以て十分眞偽を徹底致させます、兎角投書と云ふものは先入感に囚はれ易い處もありますので、其の點を警戒しながら、併し調査は十分徹底してやつて居る次第であります、而して非常に投書が多い、それを扱はずに放つてあるとか、故意に左樣な扱ひを捨ててあるとか云ふやうなもの、或は申告があるのを取上けぬとか云ふやうな事態がどの程度に起つて居るか、一寸推測に難いのでありますけれども、是は一般的な事務處理の監督を致して居りますし、それから府縣廳等が第一線の機關に付きまして考査を致し、監督を致し、指導致しまする場合には、只今のやうな點は、此の地方では斯樣な申告、投書等があるが、それをどう云ふ工合に處理を致して居るか、斯う云ふのが左樣な場合の一つの調査の項目であります、隨ひまして之に對してそれぞれの監督官廳が放置して居ると云ふ場合は先づなからうと思ふのであります、何か特異のものがありましたならば、更にそれに付て調べたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=122
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123・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 其の次に問題となりますのは官紀の頽廢であります、是も今一々例を擧げてどうの斯うのと云ふのではありませぬが、一般的に官吏の誰某が斯う云ふことをやつた、警察官の誰某が斯う云ふやうなことをやつて居る、特に闇物資の買漁りなどに付て、官吏の地位を利用してやつて居ると云ふやうな風説が多いのでありますが、私は其の風説のある官吏の一人々々を攻撃するのではないのであります、寧ろさうした聲が起ると云ふことは、私は恐らく官吏に對する待遇が餘りに低いからではないかと思ひます、參考書類として戴きました警察官の待遇の問題に致しましても、私は此の程度の待遇ならぱ、さうした噂の出るのも無理はないと思ふのであります、是等に付ては勿論他の委員諸君からも、恐らく意見が出て居るものと思ひますし、政府と致しましては、勿論色々な勞働法上の問題もあると思ひますが、進んで是等の待遇を向上されるのが當然と思ひますが、今後どう云ふ御見込を持つて居られるか、御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=123
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124・大村清一
○大村國務大臣 官吏が待遇が惡いから如何なる行動に出ても宜いと云ふ工合には考へて居らぬのであります、併し生活難が深刻になりますと、そこに不心得の者が起る可能性もある譯でありますから、物價の状況等と考へ合せまして、適切なる待遇をする必要は、政府も痛憾を致して居ることであります、又勞働組合が段々發達して參りまして、官廳内部に於ける勞働組合からも、省に依りましては眞面目なる待遇改善を要求して來て居つたこともあるのであります、そこで政府に於きましては、是等の情勢に鑑みまして、現在の情勢に適應する程度の待遇改善を致すべく只今考慮中であります、さうして關係方面とも大體結論に達せんとして居るのであります、其の待遇は先程申しました眞面目なる官廳勞働組合から要求して參りまする所に、先づ近いものを認めると云ふ結果になるやうに考へて居る次第であります、此のやうになりますれば、内務省關係に於きましては別段さう云ふやうな要求があつた譯ではございませぬが、政府に於きまして全般的に官廳職員に對して其の優遇を致されますると、今まで薄遇で非常に氣の毒に思つて居りました警察官吏等に對しましても、一應家庭的な生活の安定が得られるやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=124
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125・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 以上の三つの點を完全に實行されまするならば、恐らく政府に對する不信任と云ふことに依つて、選擧が低調に流れると云ふことはないと思ひます、併しながらもう一つ最後に殘されて居る問題は、民主教育の徹底なのであります、如何に機構のみ民主的なものを國民に押付けましても、國民それ自體の民主教育が完成して居らなければ、百の機構も何等の利益を齎さないと私は思ふ、殊に今後本年中に於ても、凡ゆる選擧が行はれることに相成るのでありますが、此の選擧に對する民主教育を、政府當局としては如何なる方法を以ておやりになる御積りであるか、例へて申しますならば、民主選擧凖備會と云ふやうな機構を作ることも一つの考へ方であります、是は勿論民間團體にやらせることも一つの方法であるが、今民主教育、選擧訓練に於ける特別な民主教育と云ふものを、如何なる方法に依つて實行されるお積りであるか、御聽きしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=125
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126・大村清一
○大村國務大臣 仰せの點は洵に將來必要なことと思ふのでありまして、此の席でも曾て申上げたと思ふのでありますが、内務省が先に立ちまして國民の思想を指導すると云ふやうな立場を執りますことは、過去の警察の誤つた行き方と考へ合せまして、餘程深甚の考慮を加へなければならぬと云ふやうに現存考へて居ります、故に本年の總選擧の場合もさうでありましたが、昨年末來文部省を中心に致しまして、學校教育、社會教育の機能の動員に依りまして、國民に政治教育、選擧教育をすると云ふことに付きましての出來得る限りの措置を講じたのであります、文部省の「イニシァティーヴ」に依りまして、其のやうな措置が講ぜられるに伴ひまして、内務省と致しましても、地方廳に十分それに協力するよう要請致しまして、相當に努力致した積りであります、此のやうな行き方は今後の選擧に對しましても、固より大いに致す積りであります、尚又今日新聞、「ラジオ」等の社會教育方面に於ける效果は絶大なものがありますので、それ等の方面とも連絡を執りまして、御協力を願ふ積りであります、尚又一般大衆の政治教育と申しますか、政治的訓練を致す上に於きましては、何と致しましても、地方に於ける有識者、有識團體の御活動に俟つ點が最も效果があるやうに考へられますので、是等の自主的なる活溌なる運動を期待して已まない所であります、尚ほ是等の點に付きましても地方廳を鞭撻致しまして、從來のやうな地方廳が指導的立場に立つと云ふやうな態度を一擲致しまして、それ等の活溌なる自主的運動が行はれますやうに、陰に陽に御協力すると云ふやうな立場で、それ等の活溌なる運動の進展を期待致したい積りで居ります、要するに今後の行き方と致しましては、餘り内務省が人を引張つて行く、指導して行く、押付けると云ふやうな態度を一擲致しまして、各方面の自發的、自主的運動にこちらの方から御協力申上げると云ふやうな態度で、最善を期したい積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=126
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127・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 議事進行に關してですが、私まだ是から後、選擧に關すること及び町村府縣の機構に關しての質疑を續けたいと思ふのですが、又明日繼續されてはどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=127
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128・中島守利
○中島委員長 もう三十分位で濟みませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=128
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129・青木清左ヱ門
○青木(清)委員 中々濟みませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=129
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130・中島守利
○中島委員長 それでは明二十七日午前十時に委員會を開きます、明日は質疑は通告になつて居りますのは、青木さんと武藤君だけであります、それが終へましたならば公開した懇談會を開きましてお互ひに此の法案に對して協議を致して見たいと思ひます、成べく各黨から缺席のないやうに、どうか御勸誘下さつて、懇談會には出席するやうに願ひたい、明日質疑が濟んでから懇談會を致したいと思ひます、本會議もありますが、特に一つ御勉強願ひたいと思ひます、其の代り二十九日はやめる積りで居ります、本日は是で散會致します
午後四時十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00719460726&spkNum=130
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