1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
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昭和二十一年八月二日(金曜日)午前十時三十一分開議
出席委員
委員長 中島守利君
理事 大塚甚之助君 理事 本多市郎君
理事 早稲田柳右エ門君 理事 中村高一君
理事 永江一夫君 理事 大原博夫君
理事 中野四郎君
岩本信行君 内海安吉君
小野眞次君 細田忠治郎君
綿貫佐民君 小野瀬忠兵衞君
青木清左エ門君 八坂善一郎君
大矢省三君 堤降君
細田綱吉君 原國君
駒井藤平君 竹谷源太郎君
中田榮太郎君 増井慶太郎君
七月二十七日委員松本渟造君辭任に付其の補闕として岡田春夫君を議長に於て選定した
八月一日委員宇田國榮君辭任に付其の補闕として原國君を議長に於て選定した同月二日竹谷源太郎君理事辭任に付其の補闕として中野四郎君が理事に當選した
出席國務大臣
内務大臣 大村清一君
國務大臣 金森徳次郎君
出席政府委員
内務政務次官 世耕弘一君
内務參與官 桂作藏君
内務事務官 郡祐一君
内務事務官 鈴木俊一君
委員長の許可を得た出席者
議員 廣川弘禪君
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本日の會議に付した議案
東京都制の一部を改正する法律案(政府提出)
市制の一部を改正する法律案(政府提出)
町村制の一部を改正する法律案(政府提出)
府縣制の一部を改正する法律案(政府提出)
衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=0
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001・中島守利
○中島委員長 是より會議を開きます、御諮り致しますが、理事の竹谷源太郎君から辭任の申出がありました、之を承認するに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=1
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002・中島守利
○中島委員長 御異議なしと認めます、此の後任は如何致しませうか、委員長より指名致しまして御異存ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=2
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003・中島守利
○中島委員長 御異議なしと認めまして指名致します、中野四郎君を理事に指名致します
東京都制の一部を改正する法律案、之を議題に致しまして、逐條審議の形に依りまして質疑を許しますから、此の際此の法案に對する質疑がございますれば順次御發言を願ひたいと思ひます、茲に御諮り致しますが、東京都制の關係に於ては、委員外でありましても、質疑を差支ない程度に於て許したいと思ふのでありますが、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=3
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004・中島守利
○中島委員長 御異議なしと認めます、委員外に於て御質疑のある方はどうか御發言を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=4
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005・廣川弘禪
○廣川弘禪君 東京都制の一部を改正する法律案に付て五、六點の質疑を申したいのですが、既に地方制度の改正案に關聯致しまして、同僚諸君から色色御聽きになつたことだらうと思ひますので、若し私の質疑の點に於て重なつて聽くやうなことがありましたならば、委員長から御注意を願ひたいと思ひます
第一、東京都制なるものは軍閥内閣の時に、非常に強い力を以て東京市と東京府と二つありましたものを、之を纏めて東京都と致したのであります、而も江戸氏が此の東京に居城を構へて以來、長い間築き上げて參りました東京市制、即ち下から盛上つた所の東京市制と云ふものを全く拂拭致しまして、官吏の最も力の強い都面である所の東京府を殘した形になつて居るのであります、私は此の東京都の、何と言ひませうか所謂面目と言ひませうか、東京都の内容と云ふものは、後人が歴史的に之を見て、此の時代に東京都を作り上げたのだと云ふ臭ひのするものを將來に殘さなければならぬと思ふのであります、假に私達が奈良或は京都の古都を訪ねて見ましても、奈良に行けば飛鳥文化がひしひしと私達の身に迫つて來るのであります、又鎌倉に行きますれば鎌倉文化が我々の身に應へるのであります、而も全日本の道路が未だ鎌倉道路として、鎌倉に行く道路が殘つて居るやうな歴史があるのであります、然るに此の東京都制が最初に出來ました當時、私達は此の點を要望致したのでありますが、あの法律を見ますと更に我々の意見は容れられませぬので非常に殘念に思つて居つたのであります、此の都制の改正を議する際に當りまして、少くとも此の時代に作つた都であると云ふ、一つの臭ひを殘し得るやうなものを私は持ちたいと思ふのであります、現在私達が住んで居る此の東京都は、江戸氏から太田道灌、それから徳川家康が居城を構へましたが、江戸城の構想を見てみますと、箱根の連山からあの秩父の山、それから信州の山を取入れて、こつちは奧羽山脈を入れ、而も利根川を内庭に引入れ、太平洋を全く自分の庭の内に收めて居るやうな、大きな構想で、江戸城と云ふものは出來て居るのであります、然るに現在の東京都、元の東京府の區域であつた此の東京都は、非常に規模が小さいのでありまして、此の食糧危機に當りまして數年來私達都民が苦しんだことは、食糧の自給圈を欲しいと云ふことであつたのであります、生鮮食料品に於きましては、特に都民が因憊致したのでありますが、斯う云ふ點から見ましても、此の都の構想はもう少し大きくならなければならないと考へるのであります、九十九里濱を取入れて、而も亦箱根の裏まで入れるやうな大きな構想で、東京都は作り上げなければならぬと考へるのであります、而も此の東京都が單なる地方の府縣と違ふ所は大きな事業體であることであります、水道事業に致しましても、戰前に於きましては八百萬に垂垂とする人口を養つて居つたやうな上水道があります、而も此の上水道の水源地は、徳川時代より多摩川に依存致して居るのでありますが、あの水源流は殆ど山梨縣のものであるのであります、而も將來此の關東地方の中心である東京都が發展致しますると、あの多摩川の水に依存することは到底出來得ないのであります、箱根の山の水を飮んで、而も足らなければ利根川の水を飮まなければならぬやうになつて居るのであります、水道事業に致しましても其の通りでありますが、其の他電車軌道、此の事業も決して小さな事業ではないのであります、都はさう云つたやうな意味に於きまして、事業體であると云ふ深い性格を持つて居りまするので、此の關係を考慮致しまして、現在のやうな小さな構想でなく、大きな構想でやつて見る意思があるかないかを御聽き致したいのであります、單に之を見ますると、所謂「シビツク・センター」とでも申しませうか、丸ノ内を中心とした一つの構想で、非常に小さいのであります、之を大きく取入れまして、所謂生産力地を十分持ち得るやうな、食糧の自給が或る程度まで可能な構想を持てなかつたものかどうか、又今後に於てさう云ふ考へを持ち得る餘地があるのかないのか、之を御聽きしたいのであります、又單に此の一片の法律で、冷いものでなく、此の法律の中に何處が郷土愛を湧かせるやうな一つの思想を織込むことが出來なかつたかと云ふことであります、東京は御存じのやうに大抵地方の人の集りでありまして、郷土愛を持たせることが非常に困難なのであります、鎭守の森の繋りであるとか、或は川に砂取をするとか云つたやうな、子供の時代に於ける土地が育くんで呉れたものがない、途中から東京に移住する關係上、非常に郷土愛が少いのであります、是が此のやうな大戰災を受けますると、復興意欲に非常に影響致して居るのであります、此の點に付て之を單に今までの所謂法律を作る一つの技術に墮せずして、さう云つたやうな思想を織込む方が宜しいのでありまするが、内務省と致しましてはさう云ふことに付てどう云ふ御考へを御持ちか、之を御聽き致したいのであります
尚又私達が築き上げた所の東京市を解散致しまして、都制になりましてからと云ふものは、所謂官吏と民間とが全く離反してしまつたのであります、東京市時代は民間人と所謂市役所の吏員と云ふものは渾然一體となつて、東京市發展の爲に努力する一つの力を持つたのでありますが、悉く官吏と民間人とが對立致しまして、東京都の事業を見れば分るのでありますが、土木事業に致しましても、水道事業に致しましても、或は又電車軌道の事業に致しましても、殆ど東京市時代の面目は更になくなりまして、水道で言ひますならば、水源林の荒廢、送水路の破壞、或は又細かく細胞に行つて居る所の送水管の修理と云ふものが、殆ど出來得ない現在になつて居るのであります、又戰前戰災を受けない前に、既に清掃事業の如きは行詰つて居るやうな状態であるのであります、斯う云ふやうなことから致しまして、私は是は單なる官吏を据えると云ふことはどうしても承服出來ないのであります、少くとも都長官は無論のことでありますが、官吏の中心に立つ所の者は民間から引上げなければ、どうしても元の所謂東京市と云ふやうなものは築き上げ得ないと考へて居るのであります、是は多分地方制度の方で觸れたことでありませうが、一體公吏とすることはどうしていけないのですか、此の點を聽きたいのであります、民間人を起用致しまして、之を直ちに官吏とせずに公吏と致しまして仕事をさせる方が、此の東京都の事業體である眞面目から言ひまして非常に宜しいのでありますが、今の所では市民の所謂創意と工夫と云ふやうなものが、殆ど事業體の上に現はれて居ないのであります、是は有能な民間人を澤山都の中に入れて、さうして復興しなければならぬと思ふのでありまするが、全部之を公吏とする、所謂一つの公務員とする考へがないかどうかを御聽き致したいのであります
尚ほ其の次は是からの復興と云ふ大事業を控へて居るのでありますが、其の復興に當りましても、現在のやうな東京都と云ふ名に何等の愛著を持たない都民の實情であります、東京市時代の方が親しみが深かつたのでありまして、東京都と云ふ名だけで既に愛想を付かして居るやうな状態でありますが、斯う云ふやうな時でありますから、特に民間人を官吏とせずに、公吏の儘で──下手に位階勳等などと云ふやうなものがちらつきますると、有能な人はそれを避けるやうな状態でありますから、民間の本當の野人を入れて此の復興に當らしめたいと私達は考へて居るのでありますが、さう云ふ御意思があるかどうかを御伺ひ致したいのであります、尚ほあと細かいことは逐條に入りましてから御質問申上げたいと思ひますが、其の點だけを御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=5
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006・郡祐一
○郡政府委員 東京都制に付ての構想の問題でありますが、仰せの通り、東京都と申しまするものは、特に地方團體の中で重要な性格を持ち、且つ御指摘のやうに事業經營主體として非常に廣い面を持つて居るのであります、而して現在の東京都制は、東京都が國家と直近して居る性格を考へまして、現在のやうな制度を考へて居るのでありまするが、是は終戰後の全く一變致しました事態に對處して考へますならば、餘程根本的に考へて見るべき部分があると存ずるのであります、唯一面に於きまして、都は雄大なる構想の下に考へらるべきでありますると共に、又戰災の夥しい痛手を受けて、是が復舊等も極めて容易ならぬ状態になつて居ります、隨ひまして御指摘の區域の問題に致しましても、現在の東京都が曾ての東京府の區域であると云ふ點に付ては、どちらから見ましても不徹底であると云ふ感じは致します(「ノーノー」)或は寧ろ狹めて現在の區の存する區域が宜いと云ふ論も、是は論でありますが、成立つかと思ひます、或は附近の縣を包容するやうな區域に變へて見たらどうかと云ふ論も成立たうかと思ひますが、此の點に付ては東京都の今後の發展性と、それから現實に相當財政的にも凡ゆる面から窮乏致して居ります此の東京を、どう維持して行つたら宜いかと云ふ兩面から考へて見るべきだと思ひますが、國全體の國土計畫と申しますか、國家的に東京都と云ふものを如何に扱つて行かうかと云ふ、國全體の問題を先づ以て十分檢討致しまして、其の總體的の計畫の上に、都の規模と云ふもの、都全體の構想と云ふものを考へて參りたいと思つて居ります、隨ひまして是は他の大都市の問題、或は國土計畫全體の問題とを睨み合せまして、寧ろ其の方の構想が急速に考へ上げられることを期待し、其のやうな努力は致して居る所であります
二番目の御尋ねの都制の中に郷土愛を盛込むやうな考へ方はないか、是は洵に御尤もな點でありまして、非常に多くの人口を包容して居りながら、郷土愛と申しまするか、自治制の根本的でありまする協同友睦の觀念が、都に於ては色々なことを考へて見ましても、湧きにくいと云ふ點があるのであります、隨ひまして此の度の地方制度に於きましても、都の基本的自治體である性格を害しませぬ限度に於きまして、區の自治權と云ふものを擴張致しましたのも、之に依りまして自分の區であると云ふ觀念を盛り立たせる、何と申しましても三多摩の方に於ける市町村に於きましては、相當自治的體の觀念が出て來る、所が區の存する區域に至りますると、どうも是が自分の區であると云ふ觀念が出て參りませぬ、區民であると云ふ觀念、自分の區であると云ふ觀念が出て參りませぬから、自治體としての發展はなしにくい、そこで寧ろ此の度の法律に於きましては區民、自分の區であると云ふ觀念を、區に自治權を附與することに依つて出來るだけ盛り立てて行きたい、斯う云ふ考へになつて居ります、併し此の上に更に東京都に付きまして郷土愛的な結合を持ち得まする方法がありますれば、之に付きましては十分なる檢討を加へて見たいと思ひます
三番目には東京都に於きまする官吏と公吏との調和の問題でありまするが、東京都に於きましても、事業方面等に付ては民間人の方の活躍を期待されまする面は、事業方面に於て特に多いのであります、是等の方面に從來も有能な民間人を起用致すことも考へられたのでありまするが、どうも率直に申しまして、都廳内の官吏との調和の問題、或は待遇の問題、色々な點で、結局企圖は致しましても、必ずしも多くの民間人を包容することが出來なかつたと云ふ經過に相成つて居ります、現在の段階に於きまして、東京都に於きましてもつと良い委員制でも活用致しまして、民間の力と云ふものを之に注ぎ込んで貰ふことが望ましいと思ひまするし、將來公務員法が制定致されまして、官吏と公吏との現在の區別の觀念も相當な變貌を遂げると思ひます、又公吏と云ふものに付きまして、任用分限と云ふやうなことがはつきり致しまして、一方に於きまして「スポイル・システム」で、指摘されましたやうな弊害も、何等かの方法で除去することが出來、そして民間人と云ふものを努めてどの機構の中に取入れると云ふやうな方向には、多分法制審議會で御審議になつて居ります問題と併せまして、東京都に付ても十分に考へたいと存ずるのであります
最後に復興事業等に民間人を大いに活用するやうにと云ふことでありますが、どう云ふ點で民間人の登用が阻まれるのでありませうか、事業方面につきましては、現在の機構に於きましても十分に登用致して、之に手腕を揮つて戴くことは出來ると思ふのであります、唯内務大臣からも屡屡申上げて居りましたやうに、今日直ちに全部を公吏に切替へますると云ふことは、現行の法令の下に於きましては、中央官廳があり、府縣──一般に府縣、東京に於きましては都が、綜合的な地方行政官廳でありまするが爲に、中央官廳があり、さうして地方行政官廳と云ふものは、綜合的な意味合では全部なくしてしまふ、それこそ鐵道と遞信だけに地方官廳があり、綜合的な一般的な面に於きましては、地方官廳と云ふものをなくしてしまふと云ふやうなことは、現行法令の下に於きましては、處理致す爲に、直ちに左樣に致すことは非常に困難な面がある、又都とか府縣とか云ふものが、國の行政官廳としての面と、それから自治體の面と二面性を持ちますることが、地方行政の運用上極めて有利な點があると存じまして、今日の行政體系に於きましては、官吏以外のものに處理致しますることが困難な問題が、或は官吏自身に付きまして、或は司法警察權の執行等に付きまして、或は私立學校等の監督と云ふやうに、色々ございますが、兎に角現在直ちに之を全部公吏に扱はしてしまふことが不可能な問題がありますので、左樣な意味合で今日の段階に於きましては、都長官以下を官吏と致して居るのでありますが、御指摘になりました事業方面に付きましては、是は努めて民間人の登用をし得まするやうに致し得ることでありますから、左樣な努力が十分にされて居りませぬ點に付きましては、改善を急速に致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=6
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007・中島守利
○中島委員長 御諮り致します、金森國務大臣が御出席になりましたので、此の機會に同大臣に對する質疑を許したいと思ひます、其の後で廣川君は御繼續願ひます、それに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=7
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008・中島守利
○中島委員長 御異議がなければ──永江君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=8
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009・永江一夫
○永江委員 私は金森國務大臣の御出席を願ひましたが、其の第一の點は、只今私共が審議致して居ります所謂地方制度改革に關する法律案と、今日審議の途上にあります憲法草案の精神の間に、若し喰違ひなり或は見方に依つては、此の地方制度改正案の中にある條文が、新たに生れんとする憲法の精神に反するが如きことがありと致しますると、非常に此の審議の上で重大な結果になると存じまして、特に私共は或る關係方面の要請に應じまして、我々の地方制度改正に關しまする意見を近く徴せられることになつて居るのであります、其の際に於きましても私共の考へて居りまする地方制度改正上の意見と云ふものを明かに致して置く爲にも、此の審議されて居ります條文が、憲法の精神に何等牴觸しないと云ふことを明かにして置きたい、斯う云ふ見地からわざわざ御出席を願つたのであります、此の點御諒承を願ひたいと思ひます、金森國務大臣に御尋ねを致したい第一の點は、憲法の中に使つて居りまする言葉の中に、公務員と云ふ言葉と、官吏と云ふ言葉と、吏員と云ふ言葉と三つございますが、此の三つはそれぞれどう云ふ區別があるのであるかと云ふ點を先づ御教示を御願ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=9
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010・金森徳次郎
○金森國務大臣 御尋ねになりました憲法の中に使つてありまする公務員と云ふのは、公の事務を職務として、擔任致しまする者と云ふ意味であつて、非常に廣い意味でありまして、具體的に申しますれば議員も固より含んで居ります、司法官も含んで居ります、所謂官吏、吏員と云ふ者も含んで居りまして、最も廣い意味に使はれて居る譯であります、官吏と云ふ言葉を使つて居りまするのは、國家の爲に全部的に服務して、其の公務を擔任して居ると云ふ人を指して居る譯であります、吏員と申しますのは、是は使ひ方に依つて色々の意味を持つて來ますけれども、憲法の八十九條にあります吏員と申しますのは、公共團體に對して全部的な服務關係に立つ人と云ふ意味で使つて居ります、此の意味に於きましては、官吏と吏員とは、服務する相手が、一方は國であり、一方は公共團體である、斯う云ふことに外ならぬと思つて居ります、但し吏員と云ふ言葉は、他の場合には必ずしもさう云ふ風に限定は致して居りませぬ、唯此の場合には八十九條の場合の「吏員」は官吏が國に對するもの、而して國以外の公共團體に對するものと云ふことに對して、吏員と云ふ言葉を使つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=10
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011・永江一夫
○永江委員 今御話のございました憲法第八十九條の「地方公共團體の長、その議會の議員及び法律の定めるその他の吏員は」と云ふ此の吏員を御指しになつて御説明になつて居ります、さう致しますと、此の吏員と云ふのは、私は複數であると考へて居ります、八十九條の吏員は複數であると考へて居ります、さう致しますと知事或は市町村長以外に、助役とか其の他の高級の吏員は、若し法律で定めれば是は直接選擧をしても差支ない、斯う云ふ解釋の下に此の吏員と云ふものを見て宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=11
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012・金森徳次郎
○金森國務大臣 御説の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=12
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013・永江一夫
○永江委員 それで更に御尋ねを申しまするが、憲法第十四條に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と云ふことを明かにして居られるのであります、此の第十四條の精神に基きまして、此の地方制度改正の法律案の中で、府縣知事を其の住民が直接選擧すると云ふ件が整備して居るものと思ふのであります、それで其の場合に府縣制或は本日特に議題になりました都制の中にもありますが、此の直接選擧を受けて當選を致しましたものを、知事に官吏として任命すると云ふ建前になつて居るのであります、法の精神から言ひまして、公務員を選定し及び之を罷免すると云ふ兩者が明かになつて居ると思ひます、それを官吏にすると云ふことは、此の憲法の精神から言つて何等矛盾はないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=13
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014・金森徳次郎
○金森國務大臣 此の第十四條の第一項「公務員を選定し、及びこれを罷免する」と云ふ言葉に付て、何か私共の考へと永江君との御考へとの間に差があるのではないかと云ふ疑がありまするから、一應それを申上げまするが、第十四條の公務員と申しまするのは、曩にも述べましたやうに、公の仕事を公の關係に於て擔任する一切の人を指す譯であります、隨て國の議員も含んで居りますし、國の官吏も含んで居りまするし、又公の團體でありまする所の公共團體の議員も含んで居るし、吏員も含んで居るし、隨て又町村長、府縣知事と云ふ類も固より含んで居るものであります、さうして此の十四條の、選定し罷免することは國民固有の權利であると斯う申しましたのは、此の意味は元來公務員を任命致しますることは、國の中の或る特定の人の權能ではないか、古くから言はれて居りまするやうな、國の中の或る特殊權力者が任免權を持つべき筋合のものではない、國民擧つて之を持つべき本質のものである、裏から申しますると、公務員は國民の意思に依つて作られ又排除せられる、斯う云ふ趣旨であると云ふ根本原則を十四條が表明した譯であります、此の根本原則に基きまして、具體的にそれでは何人の手に依つて任命せられるかと云ふことは、此の憲法に基きまする種々なる規定に依つて又具體的に定めて宜い譯であります、隨て内閣總理大臣は天皇に依つて國會の推薦の下に任命せられる、或は他の官吏は内閣に依つて任命せられ、天皇に依つて認證せられる、更に又下級官吏はもつと簡便な方法で任命せられると云ふことは、此の憲法及び憲法に基く各種の法律に依つて決まる譯であります、今御示しになりました府縣知事の如きは公務員であることは一點の疑ひありませぬ、隨て其の公務員を任免致しまする根本の權利が、國民固有の權利であると云ふことも一點の疑ひはない譯であります、併し其の根本の權利を如何なる形を以て行使をするかと云ふことは、此の憲法及び法律に基いて決まるのでありまするから、今現に此の議に上つて居りまする都制の改正等に依りまして、斯樣な公務員は、一面に於て自治體の長としては其の自治體の住民の選擧に依るのである、國の官吏たる地位に付ては他の一般規定に依つて國が任命するのだと云ふことは、此の憲法の建前から申しますれば、毫末も矛盾はないのであります、殘る問題はそれが果して諸般の立法政策の見地から見て、さう云ふ行き方が妥當であるかどうかと云ふ問題は固より議論として殘り、精密なる研究を待つて居るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=14
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015・永江一夫
○永江委員 どうも最後の點がはつきり致しませぬが、假に今一歩私の考へ方を金森國務大臣の御考へ方に一致したものと考へて見まして、憲法第十四條の「公務員を選定し、」と云ふ點に於きましては、此の地方制度改正案の中には、明かに其の府縣の住民が之を選擧する、此の條文に依れば府縣知事は官吏とする、それで「府縣知事は其の被選擧權ある者に就き選擧人をして選擧せしめ其の者に就き之に任ず」斯うしてありますから、法文の上でどう規定してありませうとも、其の知事を任命致しまする時には、第十四條の精神に合致して居るものと私は考へるのであります、知事を任命する時には、形式はどうありませうとも、此の國民固有の權利の線に沿うて行はれるものと私は考へまするが、それでは知事を罷免する場合には、如何なる法的の根據に依つて行はれるかと云ふことを私は御尋ねして見たいのであります、即ち公務員を選定する場合に於ては、此の十四條の憲法の精神に順應しますが、公務員を罷免すると云ふ點から知事の罷免と云ふことを考へますと、第一は知事が其の府縣會と意見が衝突して不信任を起された場合、此の法の命ずる所に依つて其の府縣會を解散せしめる、さうして又選擧の結果新たに出て參りました府縣會の意向が、更に知事と衝突した場合には、知事は其の職を去ると云ふことになつて居るのであります、此の場合に知事が其の職を去ると云ふ第一の場合があるのであります、此の場合は此の憲法第十四條の精神から申しましても、直接選擧せられたる知事が、間接的に其の府縣民の意思に合はないと云ふ意思表示が、府縣會を通じて二囘に亙つてなされたのでありますから、此の場合に府縣知事が辭めると云ふことは、此の十四條の國民固有の權利を無視して居るとは考へられないのであります、併しもう一つの場合がある、それは此の改正法に依りますと、有權者の五分の一のものが知事解職請求權を持つのであります、其の知事解職請求權が成立致しました場合には、内務大臣が其の要請に基いて知事を罷めさせるか、或は罷めさせなくても宜いかと云ふことを、内務大臣が御決めになると云ふことであります、さう致しますると、罷める場合に於きまして果して公務員を選定し及び之を罷免することが、國民固有の權利であると云ふ憲法の條章から申しまして、後段に申しました知事が、内務大臣の裁定に依つて罷める場合は此の精神に何等抵觸をしないかと云ふことを御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=15
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016・金森徳次郎
○金森國務大臣 只今の御尋ねに付ては、御質問の次第は非常に能く分ります、此の地方制度に付て、私は實は閣員の一部に列なつて居りますけれども、色々任命の時期等が違ひまして、具體的な法律案の詳細は十分に了解致して居りませぬので、私の申上げた所が或は的確に合はないかも知れませぬが、憲法の建前から見ますと、今御論議になりましたやうに、第十四條に依り公務員の罷免は國民固有の權利である、是は明かであります、隨て國民固有の權利に基かずして、之を罷免することの出來ないことは當然と思ふのであります、併し國民固有の權利は前からも申しましたやうに、直接に働く必要はないのでありまして、此の憲法及び憲法に基く法律に依つて働けば宜い譯であります、今囘此の議に上つて居ります都制の法律に依つて斯樣な任免の場合が法律に決まつて居り、國家の手に依つて行はれるならば、間接にはそれは第十四條の國民の基本の權利に歸着するのでありますから、憲法の眼から見てそれが違法であると云ふことは言へないと思ふのであります、唯御質問の恐らく眼目とせらるる所は、さう云ふ形式的な議論ではなくて、苟くも地方自治と云ふものに、本當の筋金を入れて建設して行くと云ふことであるならば、詰りさう云ふ地方自治體の長である者の身分を、例へば國の内務省とか、内閣とか云ふ所で干渉すると云ふことが、妥當でないのではないかと云ふ論點ではなからうかと思ふのであります、其の點は此の憲法自身は何れとも答へて居りませぬ、此の憲法は固より法律であります爲に、非常に冷やかな規定しか持つて居りませぬ、それから先は政治政策の問題となつて行きまして、此の憲法の精神を酌み取つて見て、斯樣な取扱方が政策上妥當であるかどうかと云ふ議論に移つて行くものと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=16
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017・永江一夫
○永江委員 只今の金森國務大臣の御答辯は、斯う云ふ地方制度改正の法律案、或は都制案と云ふ、改正されたものが出來たと云ふことを前提としての御答辯である、勿論是が法律として出來た場合に於ては、色々政治上の議論が出て參るでありませうが、私共は今此の法律を定めようとして居る其の前に立つて居るのである、隨て斯う云ふ法律を定めることが、憲法第十四條の國民固有の權利に相馳背しないかと云ふことに付て疑義がありますから、あなたに御尋ね申上げるのであります、さう云ふ法律が出來てしまつてから、其の法律に依つて五分の一と云ふものが知事の解職請求權を持つて居る、それに依つて内務大臣が最後の斷案を下すと云ふ法律が出來た後に於て、其の内務大臣の裁斷と云ふものは、直接ではなく間接であるかも知れませぬけれども、それは住民なり、人民の意思を或る程度忖度して居るのではないかと云ふやうな言廻はしに聽いたのでありますが、さう云ふことは第二段と致しまして、今我々は此の案を作らうとして居るのでありますから、其の前に於てさう云ふやうに、憲法に明かに示してある所の國民固有の權利に牴觸する疑ひのある限り、條文を我我が此處で可決することが妥當なりや否やと云ふ點に於て、私は自分の考へを決め兼ねて居るのであります、それで御尋ね致したのであります、國務大臣が地方制度の諸般の條章、或は條文に付て十分御承知であるとも私考へて居りませぬ、其の點は追て内務當局から御答辯を願ふことにして、今申上げた知事の任免の面に於ける、後者の場合に於ける内務大臣の最後の裁斷を下すと云ふことは、第十四條の精神に觸れて居るか居ないかと云ふ點に付て、もう一度御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=17
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018・金森徳次郎
○金森國務大臣 今御尋ねの點は能く分りました、それは憲法の法理的なる結論と致しては、第十四條に違反する所はないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=18
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019・永江一夫
○永江委員 其の點は是れ以上言ひますと、議論になりますが、私共はどうも疑點を持つて居るのであります、最初に御尋ねしたやうに、此の憲法中の公務員、それから官吏及び吏員と云ふことを、又御叱りを受けるかも分りませぬが、是は政府で御出しになつた譯でありますが、之に基けば、公務員は「パブリック・オフィシャル」、官吏は憲法第七條に於ては「オフィシャル」、それから公務員は八十九條に「ローカル・オフィシャル」と云ふ言葉が使つてある、斯う云ふ點に付ては我々は英語の面から見ると、はつきりするが、どうも日本文に直される時にそれを官吏、或は今質疑應答の中では公吏と云ふ言葉が使はれて居りますが、公吏と云ふことは憲法の中にないのであります、結局我々が問題にして居るのは官吏である、それで官吏は憲法第七條の五項に「國務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免」を認證することが出來ると云ふことになつて居ります、さうして國務大臣の任免に付ては、同じく憲法の中に於て──第五章の「内閣」の中に於て、國務大臣の任免に付ては、明かに憲法は第六十四條に、「内閣總理大臣は、國會の同意により、國務大臣を任命する。」云々と云ふ條章を明かに致しまして、此處にありまする憲法の第七條の天皇の認證權の中に於ける國務大臣の點は、憲法では明かになつて居る、法律で定める其の他の官吏の任免と云ふことで、今新しい憲法に基く官吏なるものは、此の直接選擧せられた所の府縣知事、或は都長官と云ふものを官吏とすると云ふ言葉が、初めて新たに官吏と云ふ言葉で出て來て居る、隨て此の官吏が唯普通の官吏と考へる譯には行かないのであります、特に都長官或は府縣知事の場合に於ける官吏と云ふことは、其の原則が選擧に依つて出て來て居る、そこで「パブリック・オフィシャル」と云ふ立場に於ける公務員と云ふことから考へると、我々議員も公務員であります、知事も選擧せられれば公務員であります、併しながら本質は知事と我々とは違つて居るのであつて、或は選擧された所の衆議院議員が時に内閣に列し、或は政務次官になる、其處に世耕さんが居られますが、是は政務次官が本職でなく、「パブリック・オフィシャル」の立場から云ふと、明かに衆議院議員が本職である、それが政務次官を兼ねて居るのである、所が同じく選擧された所の知事は、是は兼務ではなく本務である、本職であります、それを此の第十四條の精神に基かずして罷めさせる場合には、其の直接選擧と明かに示されて居る所の、其の直接選擧された所の、意思が最後の決定をせずして、一つの特權を持つ内務大臣が最後の斷案を下して罷めさせる、是は官吏と云ふ爲にさう云ふ條項が出來て居る、餘りに官吏と云ふ言葉に囚はれ過ぎて、さうして憲法の章條の精神を私は蹂躙して居るのではないかと考へる、此の點はどうでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=19
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020・金森徳次郎
○金森國務大臣 御質問から考へて見まして、私が前に申しましたやうに、此の憲法の法理的なる解釋としては差支へはない、併しながら立法政策の上から、地方自治體の長たるべきものを左樣に取扱ふことが良いか惡いかと云ふことになりますれば、飽くまでも立法政策の問題となつて來るのでありまして、此の憲法の解釋と直接關係を持つものではない、斯う云ふことに歸著すると思ふのであります、其の理由は今仰せになりました地方に於て選擧せられ、それに基いて出來ました所のものを、何も國の中央に於て免じて惡いと云ふ所まで、此の憲法のどの條文も見込んで居ないと云ふことに依つて、私の申上げましたことは明かなると思ふのであります、唯繰返しますけれども、妥當問題として之を考へます時に、更に又將來理想的に考へられまする地方の組織を、他の諸般の事情が適切になつて來た場合に考へまする時に、其の考へ方が良いか惡いかと云ふことになれば、本腰を入れて研究をしなければならない問題であらう、斯う思つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=20
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021・永江一夫
○永江委員 御答辯の末端でありますが、此の點に付ては先程二、三囘同じことを仰せられたのでありまして、私は納得をすることが出來ませぬ、是れ以上は見解の相違でありまして、私共は直接選擧と特に明示されて居りまする都長官、府縣知事が官吏であると云ふ點を、非常に強く政府の案として主張されて居りますが、強く主張せられる其の御精神は、今日の日本の官吏制度を將來適切に民主主義的に變更させるのだ、其の過渡的な形として已むなく斯う云ふやうな手を──色々法理上と云ひますか、法文上の取扱としては如何かと思ふけれども、斯う云ふ取扱をして居るのだと云ふ空氣を、過日來内務大臣の御答辯の中にも、或は今の金森國務大臣の御答辯の中にも私共は多少は感知することが出來ます、併しながらどの角度から考へて見ましても、今日直接選擧せられた所の、而も憲法第十四條の精神に基いて選擧せられた所の地方長官が、官吏でなければならぬと云ふ點に付ては、遺憾ながら今までの内務當局の御答辯に依つて私共は承服することが出來ないのであります、之を今法理上から見ましても私共は憲法の精神に相反して居る、遺憾ながらさう云ふ斷案を下さざるを得ないのであります
それから金森國務大臣御出席の間に、之に關聯して御尋ねを致して置きたいと思ひますが、此の憲法の章條に依りますと、是が議會で可決せられましてから六箇月以内に速かに實施をすると云ふことになつて居るのであります、それから此の憲法の精神に馳背する所の法律なり或は御詔勅なりも、全部之を廢止すると云ふことが明示されて居ると思ひます、それで内務省から提案されました此の各種地方制度に關する法律案の中に、色々な言葉が使つてありますが、それが此の憲法の修正に依つて此の條文と觸れるやうな點がありました場合には、法理上是はどう云ふ取扱を受けるか、御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=21
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022・金森徳次郎
○金森國務大臣 今御尋ねの此の法律案の中に織込まれて居りまする諸般の言葉が、新憲法が樹立致しました場合に、文字の上に於て食違ひを生ずる場合にどうなるかと云ふ御趣旨であらうと思つて居りますが、左樣な場合には一般の法律解釋の原則に從ひまして、或る官廳其の他の名前が變りましても、それは實體が若しも何處かに存續して居るならば、其處に移るべきものと考へて居る譯であります、例へば行政裁判所と云ふことが法律の中にあつたと致しまして、新憲法實施の下に於ては行政裁判所はなくなつたと云ふことになりますれば、其の行政裁判所の實體を承繼いで居る他の部局、例へば一般の裁判所と云ふやうな所に、解釋上引繼がれることと思ふのであります、又如何なる解釋に依りましても引繼ぐ所がないと云ふものが出來ました場合には、それは何とも仕樣がないのでありまして、立法的に之を矯正しなければならぬと云ふ風にならうと考へます、又他の食違ひを考へて見ますと、假に萬々一にも此の法律自身が、憲法が改正せられました後の憲法規定と、實質的に齟齬を生ずると云ふ場合が起りますれば、それは此の九十四條に依リまして法律上當然に無效となる、而も又それを有效らしく扱つて實際の處理を致しまするならば、最高裁判所の判決を得る機會があつて其の場合に無放と云ふ風な取扱を受ける、斯う云ふ風なことで解決せられるものと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=22
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023・永江一夫
○永江委員 更に關聯して、憲法第七條の第一項に「憲法改正、法律、政令及び條約を公布する」斯うなつて居りますが、此の政令と云ふことは勅令と云ふことと違ふのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=23
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024・金森徳次郎
○金森國務大臣 改正憲法が成立致しますれば、天皇が命令を御出しになると云ふことがなくなるのであります、隨て勅令と云ふものはなくなつてしまふ譯であります、だから勅令と云ふものを一般的には此の憲法は豫想して居りませぬ、併しながら内閣自身が、詰り行政の一番中心點と考へて居りまする内閣自身が命令を出すのでありまして、それを此の政令と云つて居る譯であります、實質的に申上げますると現在の勅令に當るものは、今後は大體内閣で出しまする政令になる譯であります、今御尋ねの點は、實質的に言へば茲にある政令は、現在の勅令と云つて居るものと略略同じものであると云ふことは言へます、併し形式的に申しますれば全然質を異に致しまして、内閣の發する命令である、斯う云ふことに歸著します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=24
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025・永江一夫
○永江委員 私共の解釋では、此の政令と云ふのは「キャビネット・オーダー」としてありますから、恐らく内閣の命令だと思ひますが、此の政令は形式的には違ふと仰しやつたけれども、從來の勅令と政令と云ふものと、内容的に同じものでありますか、さうすれば憲法の建前から非常に違つて來ると私共は解釋して居りますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=25
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026・金森徳次郎
○金森國務大臣 此の政令と現在の勅令と云ふものは似て居る點もあり、違つて居る點もあると云ふことを申上げましたが、はつきり違つて居りまする點は、現在の勅令は、天皇の裁可に依つて成立するのであります、併しながら今後の政令は内閣が意思決定を致しますれば、それだけで政令として成立致します、隨て天皇の裁可と云ふことは全然ないのであります、唯之を公布せられまする段階に於きまして、第七條第一項に依つて天皇の手に依つて公布と云ふ手續が行はれると云ふだけであります、詰り公布と申しますることは、讀んで字の如く、それを一般が知り得る状態に置く、平たく言へば官報に載せると云ふことでありまして、中身を作ると云ふことには全然關係がないのであります、此の點に於きまして政令と勅令とは根本的に違つて居ります、簡單に言へば、勅令は天皇の意思表示であり、政令は内閣の意思表示であると云ふ點に於きましてはつきり違つて居るのであります、併し中に盛込みまする實質上の中身の點から言へば、今まで勅令に盛込まれて居つたものは、恐らく今後は大部分政令の中に盛込まるることとなると云ふ御趣旨と考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=26
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027・永江一夫
○永江委員 さう致しますと、今までの緊急勅令と云ふやうな形はなくなるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=27
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028・金森徳次郎
○金森國務大臣 緊急勅令は全然なくなるものと考へて居ります、唯其の代りに、それに該當するやうな場合を豫想致しますれば、例へば衆議院解散の間に於きまして、どうしても國會を召集することを得ないと云ふ場合には、參議院の臨事集會を求めまして、そこで暫定法律を決めて貰ふ、斯う云ふ場合が起つて來ます、それは勿論勅令ではありませぬ、國會の一部分である參議院を通じて一つの暫定法律が出來まして、其の法律は次の國會が開かれまして十日間生命を持つて居る、其の間に適當な手續が出來なければそれで效力がなくなる、斯う云ふ風になつて、其の意味だけに於て緊急勅令に類似したものが殘り得ると云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=28
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029・永江一夫
○永江委員 さう致しますと、此の法律案の條文の中に、勅令の定むる所に依ると云ふ文句が澤山使つてあります、是は此の憲法が改正せられました曉に於て六箇月以内に效力を發するのでありますが、我々が審議致しまする此の中にありますことで、先程來御話のやうな行政裁判所と云ふやうなものは、適當な次の機關に引繼ぐと云ふやうに解釋しても宜しいが、是は如何なる手續を取られるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=29
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030・金森徳次郎
○金森國務大臣 此の憲法が成立致しまして實施せられまする場合には、色色な規定を拵へまして、過去の法律と次の法律とを繋いで行く手段はどうしても講じなければなりませぬ、まあ不精を致しますれば、是は法律解釋家に任せて置いて立法家は知らない、斯う云ふことをやつても、多くの場合に解釋と云ふものは可なり餘裕のあるものでありまするからして、動いて行くかも知れませぬと思ひます、併しさう云ふ方法は苟くも注意深く國の政治をやつて行く上に執るべきものではありませぬ、此の遷り變りの時に於きましては、何等かの立法的の措置を講じまして、例へば勅令を以て定むるとあるのは政令を以て定むることにすると云ふやうな意味の、經過的規定を、相當廣い範圍に亙つて制定する手續を執らなければ適當でないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=30
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031・永江一夫
○永江委員 更に細かいことでありますが、此の政正法律案の中に於て、議員の候補者の氏名の外、爵位、職業、身分と云ふことを書いて居る、斯う云ふことをした内務當局の「センス」が分らぬのでありますが、斯う云ふやうなものは一體いつ之を取るものか、我々が此處で修正して宜いのか、さう云ふ點に付ても大臣から御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=31
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032・金森徳次郎
○金森國務大臣 法律の遷り變りまする時には、色々技術的に困る問題が起りまして、今御話になりました諸點はそれと關聯を持つて居る譯であります、固より今度の憲法の改正案が完全に出ると致しますれば、爵位と云ふものも相當の變化を受けることでありますけれども、併し兎に角此の新憲法がはつきり確定し實施されて居りませぬ限りは、現在の秩序其の儘で規定を作らなければなりませぬ、さうすれば爵位と云ふこともあり、偶偶爵位を書いたから過事記入で無效であると云ふことにはなりませぬ、やはりさう云ふ規定を設けて置くことは已むを得ないと思ふのであります、隨て此の憲法がはつきり確定を致しまして、それに基いて、尚ほ此の憲法を施行せられまする間に、色々立法を求むる機會があらうと思ひます、現在の私共の腹案を申しますると、此の憲法が都合好く議會の方が取運ぶと致しましても、先づ相當の期間は掛ります、それが濟みまして、例へば樞密院の御諮詢を仰ぐと云ふ段階が起るかも分りませぬ、それから公布がなされると云ふことになりますと、是が八月末とか九月半ばにならうと思ひます、其の骨組がはつきり決まつて公布されますと、憲法の效力はまだ實質的には生じませぬけれども、確定不動のものとして新憲法が認められることになります、さう致しますると、其の確定不動となつた新憲法に基きまして、必要なる法律を全部新しく作つたり或は修正をしたりしなければなりませぬ、それがいつになりまするかまだはつきりは分りませぬけれども、凡そ一、二箇月の後に於きましては可なり澤山の法律を起草して、臨時議會の召集を仰ぎ、先づ議會の議決を願はなければならぬと云ふ段階が出て來るのであります、それが出て來なければ此の憲法を動かすことは殆ど不可能であります、其の時期がいつになりまするか、世間話では幾らでも言へますが、具體的には先づ二箇月先と見て居ります、其の時あたりに憲法の改正を前提として、修正しなければならぬ點は、全部當局者の手で草案を法律の中に盛込んで、議會の議決を仰ぐと云ふ段階になつて來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=32
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033・永江一夫
○永江委員 今の御説明で大體分りましたが、細かい條文の中に私共が疑ひを持つ點は、將來之を自治法とか公務員法と云ふもので明かにせられて、此の中にある矛盾した點を修正されると云ふ御意思は分るのでありますが、其の場合には飽くまでも末端の條文の中にありまする憲法と觸れて居る點で、僅かな字句の修正の案なら分りますが、まだ二箇月後に、府縣制其の他の法律案の根本に觸れるやうな案が出て來ると云うことになりますれば、我々が今日審議して居ると云ふことは非常に意味のないことである、さう云ふ點を明かにして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=33
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034・金森徳次郎
○金森國務大臣 度々申しますやうに、兎に角今特に拵へて居りまする法律が實施されまするのは、現行憲法の下に實施されるのである爲に、どうしても規定自身は現行憲法制度の諸般の規定と釣合を取つて行かなければなりませぬ、之を改正憲法と釣合を取ると云ふことになりますると、實施の場面に於て困る所が出て來るので、面倒でも二段の手續を取つて、現行秩序の下に於ける法律と、今後憲法改正の後に適用さるべき規定と云ふものを、區別して御審議を願はなければ工合が惡いのであります、若し極めて巧妙なる方法に依りまして、現行法律の下に於ても差支へない、又新憲法の下に於ても同じ言葉で旨く行く、斯う云ふやうな御修正がありますれば、是は聰明さの問題になつて來まして、内務省の肚は知りませぬけれども、私共の肚としては可能なことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=34
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035・永江一夫
○永江委員 それでは金森國務大臣に御尋ね致したことと關聯して、内務大臣の責任ある御答へを戴きたいと思ひます、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=35
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036・中村高一
○中村(高)委員 永江君の質問に關聯して一寸伺ひます、今永江君から質問された最初の問題が極めて重要でありますから、私から重ねて御尋ねしたいのでありますが、都長官或は知事を、公選をした後に於て官吏とすると云ふ問題が、此の委員會で非常に大きな議論の焦點になつて居るのであります、私は新憲法が制定されました場合と、現行憲法の下に於ける場合と、二つに付て國務大臣に御意見を御聽きしたいのでありますが、今永江君は十四條の公務員の規定から質問せられたのでありまして、之に對しては今國務大臣の御意見に依ると、官吏とすることは別に新憲法の法規には觸れないのだ、官吏でも宜いんだ、斯う云ふ消極的な答辯であります、新憲法の所謂地方自治に關する規定の所の八十八條、八十九條の規定に依りますると、「地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と、「地方自治の本旨」と云ふ言葉を最も強力に使つてありまするし、又地方公共團體の長は、直接之を選擧すると云ふやうな趣旨から判斷を致して見ますると、新憲法の精神から行きまするならば、地方團體の長は地方自治の本旨を本と致しまして之を公吏とすると云ふことが、我々としては此の新憲法の精神からは解釋出來るのでありまするが、國務大臣と致しまして新憲法の精神からして、一體地方團體の長は官吏であるべきが好ましいのか、或は公吏であるべきことの方が宜いのか、どうも此の點に付て明確でありませぬでしたので、はつきり御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=36
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037・金森徳次郎
○金森國務大臣 内務省と實は毫も精神上の連絡がない爲に、途方もないことを申上げる危險はあるのでありますが、其の點は暫く寛大に御處置を願ふことに致しまして、私の純粹の憲法は立場から見ました考へと致しましては、地方公共團體の長は公吏であるべきものと考へて居ります併しながら是は地方公共團體は、それが純粹に公共團體であれば其の論を貫くことが出來まするけれども、市町村と違ひまして、府縣と云ふ單位になつて行きますると、今までの扱ひで國の行政地域であるとして居りまするし、且つ公共團體であるとして居ります、隨て此處を所管致しまする爲には、筋から言へば自治體の長が一人、それから國の地方行政の長が一人斯う二人居つてする、一方は公吏であり、一方は官吏である、斯う云ふ風に致しますれば論理的には筋が立つことであり、何處にも紛糾は起らぬことと考へるのであります、併しながら、此の二つのものを分けて、唯理論的に政治を行ふと云ふことは、是は政治の實際が許しませぬと云ふ所に、府縣に對しまする行政の一番困難な問題がありまして、是が今まで色々な推移を取つて來て居るのであります、だから或る場合には何でも彼でも國の官吏でやつて行け、現在の府縣知事は先づ大體は其の建前であります、國の官吏にやらして置いてさうして地方自治の仕事を附足りにやつて行く、斯う云ふ建前であらうと思つて居ります、併しさう云ふ考へは成立し得ない考へでありまして、どうしてもそれに地方公共團體の長であると云ふことに、非常に重きを置いて行かなければならぬと云ふ所から、今を去る二十年も前から知事公選論と云ふものが喧しくなり、又東京の特別市制の關係から言へば、明治二十二、三年の頃から其の議論が喧しくなつて居る、斯う云ふ風に議論としては非常に紛糾して居りますけれども、實行面に於ては遲々として此の問問がはつきりした色彩を持つて行かなかつたと云ふことは、國の行政と自治體の行政と云ふものを、巧く人的に調和せしめる名案がなかつた、或は其の名案を推進する政治力がなかつたと云ふことの何れかに屬するものと思ふ譯であります、今囘の内務省が提出せられました案も、今此處で横から窺ひ見る所に依りますれば、其の困難なる問題を、少くとも相當の分量、地方自治を高める意味に於て推進せられて行くと云ふのでありまして、私の憲法の方を擔任して居りまする眼から見ますれば、謂はば過渡的なものである、是は内務省の方で反對されるかも知れませぬが、私は過渡的な段階にあるものと思ふのであります、もつと徹底した地方自治と云ふものが生れて來なければ、憲法第三章に掲げてありまするやうに、國民の自由とか權利とか云ふ思想と釣合はないやうに思ふのであります、憲法の第八章に地方自治と云ふ制度が出來ましたのは、是が何も國政の中に、地方自治の章を特に入れなければならぬと云ふ必然性がある譯でなく、其の精神の繋りは、憲法の第三章、國民の基本的な權利と云ふことと關聯して居るものと思ふのであります、既に第三章に於きまして、國民の基本的なる權利と云ふものを高らかに力説致しました限りは、是と觸れ合つて、其の國民が自治體を作つて、地方行政を運營して行くと云ふ場合に於きましては、相當強く、今までとは可なりな開きを以て自治の權能を認めて行かなければならぬ、斯う云ふ思想を以て編み込まれて居るものである譯であります、併し之を現實の方面に移して行きますると、複雜な地方制度と國の制度との調和を圖るとことは中々困難でありまして、之を書生流に一足飛びに地方自治に委すと云ふことは難かしいのではないかと思はれるのであります、そこを乘切るにはどうして行けば宜いかと云へば、私の今の考へから申しますと、先の方に可なり徹底したる地方自治制と云ふものを念頭に置きつつ、それまでの段階は國の行政及び地方の行政がなだらかに推移して行く、詰り自治の精神と云ふものがより強く發達して行くのと竝行致しまして、漸次そこの方へ推し進めて行くと云ふことが、此の憲法の理想であると思ふのであります、前に永江君の御質問に對しまして、私は偏狹に、法律解釋の範圍に於て此の改正案は正當であると云ふ辯明を致しました、併しそれははつきり斷つた通り、法律解釋の範圍に於てと申上げたのでありまして、此の憲法を推し進めて行く理想の面から見まして、さう云ふ行き方が妥當であるかどうかと云ふことは、それは大いに研究しなければならぬ問題であり、私の個人の眼から見れば、相當進展せしむべき問題と思つて居るのであります、併し今此の段階の要求に應ぜよと言つても、徒らに紛糾が起るばかりでありますから、今日の段階に於きましては、法律的に、憲法的に適正な範圍が限られて居りますならば、先づ其の考へを基盤と致しまして、漸進的にも或は漸進ではない急進的にも、理想的な地方制度の方へ持つて行くと云ふことが妥當であるのではなからうか、さうして今問題となつて居りました國の官吏と地方自治體の長と云ふものの二つの性格を、人間的にどうしたら巧く纒まつて行くかと云ふ困難な問題は、是は色々な考へ方があらうと思ひます、もう少し他の事情が整つて來ますれば、今までのやうな奧齒に物の挾まつたやうな解決方法でなく、もつと明るい徹底したる解決の方法があると思ひますから、さう云ふ方向へ一つ御努力下さつて御進めを願ふのでありますけれども、今の段階がそれであるとはどうも私には思はれない、斯う云ふことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=37
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038・中村高一
○中村(高)委員 新憲法制度後のことに付きましては、今國務大臣の御意見で、我々も其の線に沿つて進んで行かなければならぬと思ふのでありますが、新憲法制定までの現在の段階に於て、一體長官も官吏としなければならないかどうかが、是れ亦今現實の問題なのでありますが、地方廳の扱つて居る七割近いものが國政事務である、斯う云ふものを扱ふ上に於ては、公吏であるよりは官吏が宜いのだと云ふことを、内務省でも極力主張して居るのであります、一體斯う云ふやうな國政事務が公吏である長官に委任することが、現行憲法の上に於ていけないことかどうか、どうも從來の内務省の解釋は、國政事務は官吏でなければ都合が惡い、さう云ふ考へは長い間官僚制度に生きて來た人にこびり付て居る思想であつて、是が中々拔けないのが一つと、又場合に依つては此の線を守るのだと云ふ風に見えるのでありますが、現行憲法上委任することは決して差支ないと解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=38
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039・金森徳次郎
○金森國務大臣 私の解釋に於ては現行憲法の下に於ては、委任と云ふ言葉に付ては、もう少し辯明さして戴かなければなりませぬが、地方の自治的に選任せられたる職員に國務を擔任せしめることは差支ない、委任でない、初めから國務を授ける、さう云ふことは現行憲法に於ては──政府の意見と言はれると困りますが、私は可能であると思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=39
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040・中村高一
○中村(高)委員 分りました、もう宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=40
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041・廣川弘禪
○廣川弘禪君 東京都の構想がどうあるべきか、又東京都民の熱望、さう云つた問題は可なり古く行はれて居るのでありますが、内務省に於て此の問題がまだ研究中であると云ふことは、我我と致しましては頗る不滿足であります、尚ほ只今此處で同僚の永江、中村兩君と、國務大臣との間に質問應答がありましたが、官吏でも公吏でも都長官は宜いやうに聞かれるのであります、尚又新憲法が施行せられた場合に、當然此の内容の幾分かが變るのでありますが、之に對應致しまして、東京都制の制度の審議會と云ふやうなものを各層から人選して常設的に作つて、完全なる都制を作り上げる意思があるかどうか、一應御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=41
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042・郡祐一
○郡政府委員 地方制度全般に關して今御話のやうな調査會的なものを考へまするか、或は東京都も含めました大都市制度と云ふやうなものに付きまして左樣なことを考へまするか、何れに致しましても左樣な機關を置いて見ることが適當だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=42
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043・廣川弘禪
○廣川弘禪君 それから現行都制に依つて選任されて居りまする都會議員はまだ任期があるのでありまするが、之を施行と同時に選擧するのかどうか、一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=43
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044・郡祐一
○郡政府委員 仰せのやうに都會議員の任期は、今後約一箇年餘つて居るのでありますが、都制の附則に於きまして任期を八月三十一日までと致す、但し新たなる議員が選任されるまでは、尚ほ其の職務を行ふこととして、今秋豫想されまする都會議員の選擧を考へて居るのであります、斯樣に致しましたのは、現に議員の職に居られます方の今までの經過年數から申しますと、確かに府縣會議員の方は任期延長々々で可なり長くなつて居る、都會議員の方はまだ任期が來て居ない、斯う云ふことでありますが、選擧の基礎になつて居りまする有權者も、極めて廣い範圍に擴張されることでありますし、又地方團體の方も、全く從來と違ひました構成の下に活動されることであります、左樣致しますると、此の際重要な地方團體に付ては執行機關、議決機關も切替はることが望ましい、斯樣な判斷を致して居ります、然らば市町村に付ては左樣に致して居らぬではないかと云ふ御話もありますが、市町村の中には隨分大きい小さいもあります、又國に直接する地方團體として都府縣があり、其の下に市町村が存在する譯ですが、其の都府縣に付きましては、今秋一齊に切替をすることが望ましい、斯樣な考へ方で任期前の選擧を法律上施行致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=44
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045・廣川弘禪
○廣川弘禪君 實は此の選擧に付ては私達は異論を持つのであります、左樣な角度から見て選擧をすることは仕方がないのでありますが、此の秋になりますと幾多の選擧があり、尚又物資の足りない時でありますので、此の選擧を任期中延ばしたらどうかと考へて居るのであります
次に御尋ね致したいことは、一體都制の上に於て警察制度と云ふものが全然沒却されて居るのでありますが、東京都から此の警察行政を取つた理由はどう云ふ所にあるのであるか、我々と致しましては少くとも國家警察と地方警察と、例へて言はれるでありませうけれども、少くとも地方警察程度のものは、都長官の下に置いて宜いと思ふのでありますが、如何なる理由で此の警察行政を切離したのであるか、其の所信を一つ御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=45
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046・郡祐一
○郡政府委員 都行政に於きまする警察制度の問題は、二つの面から考へられると思ふのであります、都長官に一般の府縣に於きまするやうに、今日色色の御議論のありました國の行政官廳の面として警察權を持たせ、それから自治體の其の二面性を持つことに依つて、府縣知事と同じやうな立場に置かうと云ふことと、それからそれとは切放して自治體に對します事務と致しまして、警察に關する事項を附與致す、此の二つの面があると思ひます、後者の自治體の事務の内容と致しまして警察の事務を附與致しますことは、急速に寧ろなさるべきことでありまして、今議會に若しそれが法律上必要であると致します部分に付ては、提案を致しまして御協贊願へれば非常に好ましいことだと思つて居りますが、色々な都合で其の方が進みませぬので、單なる研究試案を以て居るに止まつて居る次第であります、此の問題に付ては自治體が相當部分今後警察事務を持つことに付ては、急速に之を實現致したいと思つて居ります、前者の國の機關をどうするかと云ふ問題は、色々な點に於て國の官廳をどの程度に地方に存續するかと云ふ一般の問題と、併せて決定して參ることだと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=46
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047・廣川弘禪
○廣川弘禪君 此の地方警察に付ては、一日も速く都の下に置かれるやうに願ひたいのであります
次に補助機關のことでありますが、都制に於ては委員會制度を明記致して居るのでありますが、今まで運用致した所に依ると、委員會の中から都議會議員を締出しまして、殆ど委員會の運用を致して居ないのでありますが、都議會議員を入れて常設委員會の制度を一つ此の中に盛る御意思があるかどうか、御聽きしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=47
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048・中島守利
○中島委員長 それは委員の中に議員が入つて居ると云う答辯があつたのです、其の委員には議員が含まれて居るのだ、議員を除外して居つたことは考へが違つて居つたと云ふ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=48
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049・廣川弘禪
○廣川弘禪君 分りました、之を常設委員會にする意思があるかどうかと云ふことを御聽きします、それから參與制度があるのでありますが、殆ど此の參與制度を活用致したことがないのであります、民間人の本當に立派な方を、どう云ふ譯で今まで都に於て活用しなかつたか、之を活用せしめる意思があるかどうか、その點を御聽きします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=49
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050・郡祐一
○郡政府委員 現在ありまする委員の制度を、常設委員的に十分運用致されますことは好ましいことだと思つて居ります、唯法律上常設委員と云ふのを一般の委員制度の外に設けますことは、都參事會と云うものが、或る意味では常設委員會的の役割を致すもののやうにも考へるのであります、尤も是は他の府縣や市に比べますと、東京都の參事會と云うものは非常に厖大な仕事を持つて居りますから、其の點で困難さはあると思ひますが、參事會制度と云ふものは、大體常設委員會的の意味を加味されて運用さるべきものだと思つて居ります、併し其の他に東京都のやうな非常に大きい機構の所に於きましては、委員制に付きまして常設委員會のやうな運營をして戴くことが望ましいと思つて居ります、それから參與の點に付きましては十分制度として活用して、色々民間の有力な力を集めて戴きたいのでありまして、唯理事者の其の時々の考へに依りまして、顧問と云ふやうな、法律上に基きませぬものを置かれまして、之に依つて參與の部分を稍稍代理して居たやうな時代もございます、色々な經過を取つて居るやうでありますが、參與制が有效に使はれますことは、洵に望ましいことだと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=50
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051・中島守利
○中島委員長 一寸御諮りしますが、一時まで休憩しまして一時から開きたいと思ひます、所でここで御諮り致したいのは委員長は公務上差支があります、午後は委員長の代理に大塚理事を御指名したいと思ひますが、御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=51
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052・中島守利
○中島委員長 それでは午後一時まで休憩致します
午後零時六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=52
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053・会議録情報2
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午後一時四十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=53
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054・大塚甚之助
○大塚委員長代理 只今より開會致します、委員長は公務の爲め出張致しましたので、私代りまして委員長を務めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=54
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055・廣川弘禪
○廣川弘禪君 午前中に御聽き致しました中で補助機關のことでありますが、補助機關を現在施行されて居る都制でやつて居りますことを見ますと、都長官が一人で殆ど自由に事務を工作されて、肝腎な政治折衝や、其の他の外部折衝が、殆ど出來ない状態になつて居るのでありますが、之を補助機關、所謂次長と云ふか、助役と云ふか──助役と言つた方が分り易いと思ひますが、此の助役を三名位置かなければ、本當の都長官の仕事は出來得ない状態に置かれて居るのでありますが、此の助役と云ふやうな制度を作る意思があるかどうか御聽き致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=55
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056・郡祐一
○郡政府委員 現在御承知のやうに最高補助機關としての次長を置いてあるのでありますが、數名の助役を置きますることに付ては、其の權限の分配と、補助機關が數名に分れます爲に、却つて長官が統制に支障がありはしなかと云ふ點、及び助役を置きます場合に、局長の責任を却つて薄くしてしまひはしないかと云ふやうな點から、一名の次長制にして居るのであります、東京都の状況から考へまするならば、今後の東京都の事業内容、復興の内容、例へば東京都が將來配電事業等に進んで行きましたやうな場合、行政面と事業面と云ふやうなことに付て、最高補助者が分れたものがありまする方が、實際の東京都位の規模になると、適當ではないかと云ふやうなことも實は考へて居るのであります、此の點に付きましては内務省と致しまして、東京都が今後終戰後どの程度の事業内容を持ち、どう云ふ工合に發展して行くものであらうかと云ふ、はつきりした判斷の付きますまで決定を暫く待ちたいと思つて居るのであります、併し仰しやる點は大きい研究問題だと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=56
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057・廣川弘禪
○廣川弘禪君 此の最高の補助機關の三名と云ふのは、現在やつて居ります東京の事業内容から見て當然必要だと思ふのであります、東京市時代に高級助役が三名居つたのでありますが、而も局長との間は圓滑に行き、外部折衝が非常に能く行つて居つたのであります、假に事業内容から見ましても、公益事業の方面の擔當と、それから多摩と云ふ特殊な事情があるのでありますが、多摩方面の仕事を擔當する爲にも一人の助役が要る、斯う云ふことになるのでありまして、是は單なる答辯儀禮でなく十分考へて欲しいと思ひます
次は都議會の問題であります、都議會は會期を定められて居るのでありますが、此の會期を定めずして常時開いて行くと云ふやうに願ひたいと思ふのでありまするが、どう云ふ意向でありますか、即ち東京都と云ふのは御承知のやうに大きな事業を──上水道から下水道、其の他の色々な仕事を致して居り、又配電事業に付ても現在非常に問題になつて居る時でありまするので、此の會期を是非定時に定めないやうにして貰ひたい、斯う云ふ私の考へですが、政府の御意見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=57
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058・郡祐一
○郡政府委員 都議會は定例會と臨時會とを開くことが出來、定例會は隔月に開くことに致して居るのであります、それで一囘の會期と云ふものは、或る時期を以て終了致しますることが、却つて能率を高める上に適當であらうと云ふ工合に考へられるのであります、定例會を隔月に開いて參ることに致して居るのでありますが、其の會議の會期は、法律で決めるよりも、自治的に議會自らが決定した方が宜しいと思ひまして、會議規則中に、都議會自體の議決に依つて決めると云ふことにして居ります、隨ひまして都議會が適當と認める範圍に於て、會期を決めて差支へないことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=58
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059・廣川弘禪
○廣川弘禪君 次は議員の出納檢査の制度を復活して貰ひたいと云ふことであります、長い間東京市のことを見て居りますと、現在是がなくなつてからと云ふものは、非常に紊れて居ると云ふことを耳にするのでありますが、之を一體あなたの方はどう御考へになつて居るか
次は參事會のことでありますが、參事會の議事は祕密會になつて居つて、議員すら聽き得ないことになつて居るのです、此の參事會の祕密會を撤廢致しまして、公開にする御意思があるかないか
もう一つは都會の事務局のことでありますが、近頃やつと事務局と云ふものが形を整へたのであります、是は事務係と云ふ名で、而も一財務課長の下に置かれて非常に不便なのですが、將來都議會の事務局を完全に獨立さす御意思があるかどうか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=59
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060・郡祐一
○郡政府委員 出納檢査に付きましては、確かに御説の如く致しますれば、事業の内容を詳細に知り得ると云ふ便宜な點もあるのでありまするが、何と申しましても專門的な知識を持ちませぬと、十分なる檢査が不可能な位までに近頃の自治體の中身はなつて居ります、偶偶議員の中に非常にさう云ふ仕事に堪能な方が居られる場合には、良い結果を生じて居る場合も多々承知致して居るのでありますが、制度上の考へ方と致しましては、率直に專門家を採り入れますと共に、議決機關からも適當な人を選ばれるやうに、此の度監査委員と云ふ方法に依る監査を致すことに致したのであります、隨ひまして都議會は書面に依りまして、事務の管理、議決の執行、收納檢査を致します權限を特に法律上に定めることにしましたが、實地檢査に付ては監査委員の活動を期待することに致しまして、都議會の出納檢査は認めないやうにしたいのであります
第二番目に參事會の公開のことでありますが、是は午前も申上げた通り、參事會には常設委員的な働き部面が非常に多いのであります、それから隔月に定例會を招集することを法律で要求し、且つ臨時會を開くのでありますから、都のやうな所では尚且つ參事會に持つて參ります事件も相當多いのでありますけれども、參事會と云ふものを議決機關としての面と同時に、可及的常設委員的の働きに致したい、それには寧ろ非公開と致して置いて、會議と云ふ面よりも、お互ひに相談し合ふ機關と云ふ位に使つて見た方が宜しいのではないか、斯樣な考へを持つて居る次第であります、事務局に付きましては、議會の書記を議長が理事機關の同意を得て命ずることに致しまして、書記の存在を或る程度はつきり致して居るのでありますが、之に付ては、將來必要な事務局の機構を持ちまして、審議の十分なる準備を致すことが事柄として望ましいことであり、其の地方團體の能力、殊に財政力に應じました事務局の機構が持たれて行くことは、是は結構なことだと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=60
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061・廣川弘禪
○廣川弘禪君 都の下部組織のことであります、舊市部の三十五區はどう云ふやうに整理統合する御考へでありますか、特に戰災後に於ては相當整理統合しなければならぬと思ふのでありますが、之に對して其の御考へを承りたい、それから三多摩地方のことでありますが、是は地方事務所を廢止致しまして區制を施行する意思があるかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=61
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062・郡祐一
○郡政府委員 戰災後に於ける區の併合の問題は、是は當然取上げて、參らなければ相成らなぬことと存ずるのであります、一方從來もあつたのでありますが、現在の區では不便であるから分區して呉れと云ふ要求も時々聞くことがあるのであります、併し是等の點は單に其の關係の地域だけでございませぬで、今少しく廣く各方面の意見を伺ひ、さうして適當な結論を得たいと思つて居るのであります、唯都市計畫の見地から理想的な圖を描いて、此の位の區の數になると云ふやうな判斷では無理なのでありまして、都市計畫的な考へ方に加へて更に都政全般、それから行政運用の可能なる範圍、戰災復興をどの程度に如何なる地方に進めて參るか、謂はば計畫的な面と現實の面とを併せまして判斷致したいと思つて居るのであります、是は私共の方からも都の當局を督勵致し、又都の當局に於きましてもさうした各方面の意見を徴して、成べく速かに、試案の程度でも纒めたいものだと思つて居る次第であります、次に三多摩に區制を布きます點は、現在東京都の區は御覽のやうに、連帶して居ります部分を從來の沿革に來りまして區に分けて居るのでありますが、三多摩は市町村の配置等も、寧ろ他の府縣の市町村のやうな配置になつて居るので、之を集めまして區に分割致しますことが、さして意義を生ずることでもないかのやうに存ずるのであります、地方事務所の存廢に付ては色々の論があるのでありますが、三多摩に付きまして地方事務所を廢止致しまして區制を布いた所で、之に依つて現在の三十五區の區とは又性格も譯も違ひますし、却て機構が復雜になりはしないであらうか、三多摩に付きましては暫く現在の市町村の状態に於て推移して行つて差支へないぢやなからうか、此のやうに考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=62
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063・廣川弘禪
○廣川弘禪君 次は區の權限の擴大のことに付て御伺ひして見たいのですが、政府は一體區の權限をどのやうに擴大する御積りであるのでありますか、現在のやうなものであつては到底問題にならないのでありますが、將來是は適當な課税權まで認めるやうな御意思があるかどうか、之を御聽きしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=63
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064・郡祐一
○郡政府委員 此の度の法律に依りまして區の自治權の擴充と致しまして、區に區住民とか區民とか云ふ觀念を認めまして、基本的に住民の存在する自治體と觀念を致しましたこと、それから區に區條例又は區規則と云ふやうなものの制定權を認めまして、自主的の立法權を與へましたこと、それから區に從來財政的權能がなかつたのでありまするが、課税權と起債權とを認めまして、さうして財政的の方面からも自主的な活動が出來るやうに致したことであります、それから次に區には今まで區自ら持ちます區吏員と云ふものがなかつたのであります、尤も事實上左樣なものに當るものを置いて居ることはありましたが、法律上明かに區吏員と云ふものを認めましたこと、それから區會の權限等に付きましても、市町村等に準じまして權限の擴充を致しました、斯樣な點が主な區の自治權の擴充の點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=64
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065・廣川弘禪
○廣川弘禪君 尚ほ町會の制度ですが、町會は一體どう云ふ風な方向に向けて發展せしめ又完全自治を此の中でやらして行くと云ふ考へでありますか、町會のことは一番最下部組織として洵に重大な所なので、特に御伺ひしたいと思ふのであります、近頃の町會に於て問題になつて居るのは、町會に色々な物資を、區役所を通して賣つて參りまして、新圓稼ぎ、所謂闇市の變形のやうに町會がなつて居るのであります、斯う云ふやうなことから見まして町會をどう云ふ風に一體指導し、整備をして行く御考へであるか、御伺ひしたい、又選擧に際して町會の事務所を使つて、極く小さく町會單位位の選擧にして、どんな選擧でも極く簡單に便宜投票が出來るやうに、町會事務所を選擧投票場にすると云ふ御考へがあるかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=65
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066・郡祐一
○郡政府委員 町會も最も適當に活動致させます爲に、現在與へて居りまする法律的根據よりも今少し擴げた方が、又法律上明瞭に致して置いた方が宜いのではないかと云ふ氣のする部分もあるのであります、併しながら町會と云ふのが自然發生的に發達して參り、其の後戰災に依りまして又趣が洵に變つて居るのでありまして、之を只今の状況で町會に付て性格を明瞭に致させますが爲に若干の規定を設け、却て是が事務的分量を増大させることは、又避けなければならぬことと思つて居るのであります、それで町會に付きましては、從來の戰爭中の指導方針と云ふものが一擲されなければ相成りませぬ、凡ゆる自治生活の單位は町會にあります、之に付ての事務的負擔を多く掛けませぬが、隣保團結の基礎と致しましては、町會が最下部の基本となり、町會内部に於きまする住民の意思と云ふものは、最も能く町會の中で發露致して、是が其の上の機構にそれぞれ反映して參ると云ふやうな指導をして參りたいと思ふのであります、それから町會に付きましては各般の事務的の負擔が加はつて居るのでありますが、之に付きましては私共の所でも關係省に十分折衝致しまして、例へば過般の本年初めの金融措置がありまして以來、町會は洵に色々の證明、統計に忙殺されて居るのでありますが、是等に付きましては町會が行ひますことが適當なことから、國家的に見ても必要な事柄に付きましては之を是認致しますけれども、然らざる分に付ては、成べく是が負擔を輕くしたいと思つて居るのであります、隨て只今御話のやうな闇市の變形のやうな部分がありと致しますならば、之に付ては是が取締の面とも能く努力致しまして、左樣な點は努めて抑制するやうに致して參りたいと思ふのであります、それから町會事務所等を選擧の單位に使つて參ると云ふやうなことは確かに一つの御考へでありまして、現在私共が考へて居りまする選擧人名簿の恆久的な改正の案に於きましては、町内會、部落會等を單位と致しまして、絶えず人間の異動等を明瞭に致して置きたい、又可能ならば町會單位にまで投票區を分割して見たいと云ふ氣持は持つて居るのであります、唯現在の段階に於きまして、直ちに町會を投票區の單位に致しますることは、どうも選擧と云ふものが粗雜になりはしないか、親しみを持たせますと同時に、稍稍事務的にまだ無理の點があると云ふので踏切りが付かぬ所があるのであります、先程申しました名簿の調製法を變へますやうな場合にも、理想と致しましては、其の程度にまで投票單位を分割致すと云ふ位の考へ方で進んで參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=66
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067・廣川弘禪
○廣川弘禪君 私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=67
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068・大塚甚之助
○大塚委員長代理 次は中村高一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=68
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069・中村高一
○中村(高)委員 都制案に付きまして二、三の御質問を致したいのであります、曩に都制案が出來ました當時に於ては、都長官と云ふものは所謂大物を持つて來ると云ふやうな希望が非常に多くて、特に長官は親任官になる、寧ろ是は大臣級、少くとも以上の人物が都長官になつて來ると云ふやうな目標と期待を以て都制案が通過したのでありましたが、其の後長官の任命をされて居る實情を見ますると、少しも大物でもなければ、我々都民の期待して居つたやうなものではなくして、段々「スケール」の小さいことになつてしまつて、現在では殆ど他の府縣知事と餘り變らぬと云ふやうな長官になつて來て居るのでありまして、親任官制にして都長官を重要視した根據が、最近の取扱では全く薄らいで來て居るやうに思はれるのであります、政府でやつて居る所を見ますると、最近どうも役人を永い間勤めた者の中に、其の銓衡の基準を置いて居るやうに見える、さう云ふ我々の期待したものと反して、極く小さい官僚上りが長官に親任されると云ふやうなことになつて居るのでありますが、間もなく公選をされて來るならば、或は相當の人も公選されて來ると思ふのであります、政府は何故に民間から適當な人物を拔擢すると云ふやうなことをせずに、相變らず知事を仕上げた者を探して歩くと云ふやうなことをおやりになるのか、特に政務次官もおいでになつて居りますので、一つ御意見を拜聽致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=69
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070・世耕弘一
○世耕政府委員 御答へ致したいと思ひます、大物と云ふ言葉の意味がどうも私にははつきり取れませぬのですが、我々の考へと致しましては、無論大物と云ふことは、學識經驗共に卓越した人物と云ふことを中心にして御話になつたことと斯樣に考へるのであります、斯う云ふ見地から大東京都の都長官を選ぶと云ふことは、中村君の御所見と變りはない積りであります、但し今日のやうな斯う云ふ現状に於て、大物都長を速かに選ぶと云ふことは、中々種々なる情勢上困難なことが伴うのであります、然らば其の銓衡標準を何處に置くかと申しますならば、先づ時代に即應した新人を選ぶ、新人と云ふことに基礎を置いて、中村君の仰しやる大物の都長と云ふ所に落著いて行かなければならぬ、斯樣に考へるのであります、此の意味に於きまして最近に選びました都長も、要するに新人に大物を加味した人選であつた、斯樣に私は考へて居るのであります、特に意見を求められましたから一應御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=70
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071・中村高一
○中村(高)委員 銓衡の基準を、最近は役人をした者の中から全部選ぶと云ふことに置いて居ることは惡いのぢやないか、民間の者を探したと云ふ樣子がちつともないではないか、一體民間に良い人がないかと云ふやうな話さへなくて、もう内務省の知つて居る役人上りの中からばかり探して來る、さう云ふ都長官では駄目だ、さう云ふけつべたの小さなやり方ではいけないと云ふのだが、次官の御所見如何発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=71
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072・世耕弘一
○世耕政府委員 決してけつの穴を小さくして都長官を選定した譯でなく、實は大いに手を擴げて凡ゆる方面に向つて人材を要求したのでありますが、結局落著く所へ落著いたと、斯う申上げるより外に實は今申上げる材料を持ちませぬ、併しながら中村君の仰しやる我々の都長、苟くも親任官待遇を受けるべき都長官としては、今後さう云ふ人材を求むべきであると云ふ御趣旨には全く同感であります、恐らく將來に於きまして公選される機會があらうと思ひますが、出來れば其の公選の機會の候補者に於ても、御趣旨に副ふやうな人が出て戴きたいと云ふことを熱望して已みませぬ、尚ほ此の機會に一言附加へて申上げたいと思ふことは、先程廣川君から將來の東京都の構想と云ふやうなことに付て、非常に卓見な御所見を承つて、私は近來にない愉快を感じたのであります、從來の日本の國土計畫、或は都市の計畫なんかと云ふものは、餘りに輪廓が小さ過ぎた、恐らく戰災にならなくても、是れまでのやうな状況で行つたならば、行詰つたのではないかと云ふ感を深くするものであります、斯う云ふ際に於きまして先般の廣川君の御所見は、洵に滿腔の敬意を拂つて宜いと思ふのであります、郡局長から將來の都市計畫に付ては、適當な機關を設けて理想案を練り上げ、以て日本の文化都市として恥ぢないものを建てたいとの意見を述べて居られたやうでありましたが、全く其の通りであります、どうぞ其の點を御諒解置きを願ひたいと思ひます、殊に大東京の構想と致しまして、神奈川、山梨、千葉、埼玉、少くとも此の近縣を廣く取入れて、本當の文化都市建設と云ふやうな大きな構想を茲に確立して、而して日本の新しい建設の方圖を明示させなくてはならぬと我々も考へて居る次第であります、中村君から呼び水を向けられたが爲に、一應私の大都市計畫に對する意見を茲に附加へて置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=72
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073・中村高一
○中村(高)委員 都制案を通過させる時の議會の附帶決議があるのですが、それに依りますと、東京都の行政と警視廳との行政に付て、一般行政と警察行政との一元的運營に配意すべしと云ふ意味のことがあります、所が現在では東京都の行政と警視廳の行政との二本建になつて居る、之を一元的な運營が出來ないとしても、議會でさう云ふ決議が行はれて居るのであるから、其の間で附帶決議に盛られて居るやうな趣旨の實行をせられるのが、政府として當然だと思ふ、そこで問題になるのは都長官と警視總監との調整問題であります、今までは都長官と警視總監とが全く別個の獨立の長官で、而も殆ど同格位の人が都長官と警視總監とに分れて居つたのであります、二代目の西尾長官の時だと思ひますが、今度は警視總監の格を非常に下げまして、坂君が警視總監になつた時には、餘程官等の低い人が警視總監になつた、機構の上に於ては長官が監督をすると云ふ建前にはなつて居ないと思ひますが運營の上に於きましては、長官が警視總監を指示し得るやうな運營を致したやうに思つて居るのであります、所が其の後又是が明確を缺いてしまつて、殆ど對等な形になつて居ると思ふのでありますが、内務省として一體どう云ふ扱ひをせられるのか、是は極めて重要でありますから政府の方針を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=73
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074・郡祐一
○郡政府委員 都行政と警視廳行政とを、可及的に調和のある運營を致しますことは、仰せの通り極めて重大な點でございます、隨ひまして都の一般行政に關係の深い行政部面に付ては、警視廳から東京都の方へ或る程度移管を致しまして、從來兩者で分れ分れに仕事をやつて居た分を是正して參つて居る點もあるのであります、尚ほ戰時中特例と致しまして、都長官が警視總監に指示を致して居りましたやうな分もあるのでありますが、是は戰時の一時の特例で、今日は消滅して居ります、隨ひまして都と警視廳との行政の一元的運營を圖ります問題と云ふのは、今後に根本的問題を殘されて居るのでありまして、警察機構の改善に伴ひまして、警視廳の運營と云ふことも極めて重大な問題と相成つて參ります、所謂「デストリクト・ポリス」をどの程度まで確立するか、之に依りまして地方制度にも影響を受ける部分が、極めて多いと思ふのであります、現在の警視廳は極めて廣汎な行政を致して居るのであります、之を警察の純粹なる姿に置きますと同時に、重點的な活動が出來ますやうに致しますことは、都行政の面からも之を授けて參るやうにしなければならぬことは勿論でありまして、暫く藉すに時日を以てして戴きますならば、一元的運營が圖れるやうに計畫致して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=74
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075・中村高一
○中村(高)委員 根本的な一元化に付ては次の議會に待つと致しまして、今直ぐにでもやれる調整をなすべき點は澤山あると思ふのであります、極く最近に於ても、行政警察の部面が非常に警視廳の方から移行されて居りますることは甚だ結構だと思ひます、例へば、衞生方面、建築方面、土木方面、斯う云ふやうなものが大體に於て都の行政に委讓されて來て居るのでありますが、現在の範圍内に於ても、行政上の取扱ひで此の事業は出來ると思ふのであります、警視廳は司法警察と保安の警察だけを殘しまして、例へば現在殘つて居りまする交通警察、斯う云ふ警察などは必ずしも警視廳になくても宜いと思はれる點もあるのであります、特に自動車其の他の交通の免許事務などと云ふやうなものは、一々警視廳でやらなければならないことはないと思ふ、唯街頭に於ける交通の取締なんと云ふやうなものは、多少の論議があると思ひますが、一般的な交通事務など、警視廳に於て一々運轉手の免許から「ガソリン」の配給まで警視廳がやつて居ると云ふやうなことは、甚だどうも今日の實生活上から言つて宜くないと思ふ、至急之を都行政に移行する意思がないかどうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=75
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076・郡祐一
○郡政府委員 御指摘のありました自動車運轉者の免許でありまするとか、或は車體檢査でありますとか、或は一般的な交通取締でありますとか、斯樣なものは都へ移管を致しますことは一つの研究問題とは思ふのであります、併しながら都に於きまする交通警察と申しまするものは、他とは違ひました重要性を持つて居りまする部面もありまするし、即ち他では警察部以外に移しましても差支へない仕事でも、東京なるが故に留保致さなければならない部面もありまするし、先程御話のございました交通警察等は、可なり色色の方面に影響して居る部面がありますので、是は警察の主管部局に於きましても、色々檢討を加へて居るやうでございます、其の他未だ最終的な結論に達して居らぬやうでありまするので、暫く其の時期まで待ちたいと思ふのであります、私共と致しましては、待つと申しましても最早次の準備を急速に致さなければならない段階になつて居りますので、能く内務省全體と致しまして審議の促進を圖りまして、結論を出すと云ふやうに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=76
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077・中村高一
○中村(高)委員 一つ出來ることは手近な所からどんどんやつて戴きたいと思ふのであります、それから先程廣川君からも御質問があつたやうでありまするが、都内に於ける市町村制の存置であります、地方局長は能く其の利害得失が御分りになつて居らないやうであります、それで場合に依りましたならば、鈴木行政課長の方が却つて此の點に付ては分ると思ひますから、鈴木課長から御答へを願ひたいと思ふのであります
第一に私達が都内に居つて見まして、同じ都内に市町村制を布くと云ふことは、制度の上に於きましても甚だ調和の取れないことでありまして、是は過渡的な一つの手段としては已むを得ないと思ふのでありますが、都内に於ける市町村は、之を農林省的な觀察から行きますと生産地帶なんであります、同じ帝都の中で片方は消費地であり、片方は生産地帶として農林省は扱つて居ります、最近都内から疎開したり、或は轉住を致して居りまする者は、非常な澤山な數になつて居るのでありますが、あそこは生産地帶としての扱ひを受けて居ります爲に、消費地としての配給は受けられない、鐵道沿線から都内に通つて居ります所の「サラリーマン」其の他の純然たる消費者でありまして、畑一つ持たない消費者が澤山居るのであります、けれども是は生産地帶であります爲に、何等消費者として都内と同じやうな配給が受けられない、其の爲にあそこの消費者は何處かへ買出しに行かなければならないのでありまするが、是が中々思ふやうには出來ない、殊に近くに居る者は餘計買へないと云ふのが實情でありまして、生産地帶と指定された所に於ける消費者程氣の毒なものはないのです、是は何とか解決してやらなければ、皆んな泣いて居ますよ、そればかりではございませぬ、あそこに住んで居りまする所の官公吏、警察官學校の先生達の手當は、都内に居る者に比較して少い、都内を一〇〇%とすると、三多摩の市に住む者は八〇%、町村に住む者は六〇%の手當でありまして、町村に住む者と都内に居る者との間に、非常に手當の不均衡を來たして居る、同じ都内に於ける教員でありながら、同じ都内に於ける警察官でありながら、同じ都内に於ける官公吏でありながら、手當に付ては格段の差別を受けて居る、併し實生活の上に於ては區別する理由は殆んどないのでありまして、斯う云ふ不都合を一體其の儘置いて居つて宜いのであるか、又國民學校の子供の現状を見ましても、小さい町村に分れて居りまして、其の町村の學校に行かなければならぬので、眼の前に學校があつても、隣の町村なるが爲に、自分の町村の遠くの學校に行かなければならぬと云ふ不都合を生じて居る、又最近では擔税力の餘りない人が非常に殖えて參りまして、是等の人が、例へば國民學校が足りなくなつて、建築をして呉れなくちや困ると云ふやうな問題も起きて居る、或は醫療制度に付ても然り、厚生施設などに付ても然り、斯う云ふ問題に付て、擔税力のない人が殖えて來て、學校を造れと言つて見た所で、現在の町村に於て其の建築費を負擔させることは中々難かしい、是はやはり都内から送り込んだ人間が殖えて來て居ると云ふやうな場合には、大きな見地から建築費を見ると云ふやうな建前にすることも必要だと思ふ、是は今日非常に澤山の矛盾が出來て居るのでありまして、直ぐに之を區制にすると云ふことに、依つて、あの厖大なる農村地帶を二つの區役所にすると云ふことの困難は能く分つて居ります、斯う云ふやうな點に付て、現在の町村の、例へば戸籍とか或は配給事務のやうな極く事務的なことは、一人か二人の其處に出張所員を置くことに致すのでありますから調和も出來ると思ふのであります、さう云ふ點に付ては私は一々利害得失と云ふものを、此の機會に申上げることは適當でないと思ひまするから詳細なことは申上げませぬけれども、どうも地方局長は其の邊のことが分つて居ないやうですから、一つ課長から御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=77
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078・鈴木俊一
○鈴木(俊)政府委員 特に御指名でありますので、局長の先程の御答辯を更に補足するやうなことに相成りますが御答へ申上げます、只今御指摘になりました三多摩地方の市町村を、東京都制の上で今後如何に扱つて行くかと云ふ問題でございます、只今仰せになりましたやうに、三多摩地方と舊東京市の所謂區部地帶との關係に於きましては、生産地帶或は消費地帶と云つたやうな實體上の區別がありますことは、やはり正直の所否定し難い所ではないかと存ずるのであります、隨ひまして現在の東京都制に於きましては、區の區域と、市町村の區域と兩建に相成つて居る譯であります、此の實體上の差別と云ふものは、只今御指摘になりましたやうな事情に依りまして、段々と崩れつつあることは事實だらうと思ひます、東京都内に勤めまする者達が三多摩地方から通勤をして居り、生産地帶である所が、段々と消費地帶化しつつあると云ふことは事實であらうと存じます、隨ひまして色々區部地帶と市町村地帶で、配給の上に於きまして、或は官公吏の給與手當の基準に於きまして、現在色々差別がございますのが或る程度不公平になつて來て居る、殊に區部地帶と市町村地帶の境界地帶に於てきまして其の實情が著しいと云ふことは、爭ひ難い事實だらうと存ずるのであります、併しながら何と申しましても區と云ふ制度と市町村と云ふ制度は、本質的に現在の制度で申しますると違ひがあるのであります、御承知のやうに區は財産營造物を維持管理することが主たる任務である、謂はば限定をされた目的を持つた地方團體でありまするし、市町村の方は、凡そ其の地域に於きまする一切の公共事務を處理します所の、基本的地方自治團體であります、さう云ふ公益的な、基本的な地方自治團體であると云ふ性格は、やはり此の三多摩地方の市町村方面に於きましては、今日と雖も尚ほ拂拭し難いと思ふのでありまして、之に強ひて所謂限定された地方團體である所の區制を施行すると云ふことは、やはりどうもそぐはない著物を強ひて着せることになりはしないかと云ふことが考へられるのであります、唯將來區と云ふものの制度を、東京都の新しい構成の問題として考へ直して參りまする場合に於きましては、或は左樣な區別をすることが宜いかどうか、尚ほ檢討する餘地があると思ひますが、少くとも現在の區制、市町村制、斯う云ふ制度の建前から申しますると、三多摩に區制を施行すると云ふことは、尚ほ相當困難な事情があるのではないか、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=78
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079・中村高一
○中村(高)委員 町村制を區制にするかどうかに付きましては色々議論がありまするので、一概には決定することは出來ないと思ひまするが、農林省の決めて居りまする生産地帶扱と云ふやうなことに對しては、一つ内務省は──斯う云ふ問題は必ずしも東京都に限つたことではないのでありまして、生産地帶内に於ける消費者に對しては、一つああ云ふ風に農林省がやるやうな嚴格な區別はせずに、茲は何か調和した扱ひをさせなくてはいかぬのだと思つて居ります、實質上に於ては、東京都の方で生産地帶にある消費者に對しては、何分宛かの配給を、物に依つては取扱上の流しをして居るやうでありますけれども、農林省に聽けば、あすこは生産地帶だから宜いのだと云ふやうな洵に杓子定規的な解決を致して居るやうでありますから、是は是非内務省として御考慮せられたいと思ふのであります
次は都の財政に付て二、三御尋ねして置きたいのであります、御承知の通りに戰災を受けまして、恐らく地租或は家屋税などに付ての收益と云ふやうなものは、戰災の特別な扱ひを受けることに依つて、税收入としても非常に大きな影響を受けるだらうと思ふのでありますが、尚ほ商工業地帶であつた所の帝都が、やはり今日の現状に於きましては、營業税方面に於ける税源も喪失を致して居りまして、是も非常な收入減を來すと思ふのであります、さうして置いて一方に於ては、官公吏從業員等に對する待遇費と云ふやうなものが激増致して居るのでありまして、殆ど收入の總てを從業員の待遇費に使つても尚ほ足らないと云ふやうな今日、財政上の非常に困難を來して居るのでありまするが、此の際最も考慮をして貰はなければならぬと思ひまするのは、都債に對する元利債の延期であります、約一億二千萬圓位の都債元利の支拂を毎年致して居るのであります、政府の大藏省方面の施策とも睨み合せなければ是は出來ないことだと思ひまするが、都債を此の際五年なり十箇年なり、兎に角帝都の復興するまでの間、元利拂を延期させると云ふやうなことは、是は最も必要ではないかと思ふのでありますが、御所見を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=79
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080・郡祐一
○郡政府委員 此の度の地方税方竝に分與税法の改正に於きましても、都市、殊に戰災都市方面の收入の減少等に對處致しまする色々の方法を考へて居るのでありまするが、御話にありました通り、相次いで起りまする職員の待遇改善に要します經費が、年度當初に見積りましたよりも、遙かに厖大なるものを要する現状に相成つて參りました點と、一應二十一年度に於ける收支の計算が成立つやうに、各種の財源附與の途は講じてあるのでありまするが、戰災の復興に對しまして、必ずしも十分なる財源の供與が、國庫財政の都合等の爲に出來て居らないのであります、隨ひまして今後それ等の事柄が進んで參りまする場合には、何等かの財源措置を考へなければ相成らぬ、只今の御話の元利支拂の延期等も其の一つの方法かと思ふのでありますが、只今の所國の財政と地方財政と絡み合せまして、辛うじて何とか切拔けて行かうと云ふ現在に於きましては、中々に根本的な解決策が見受けられないのであります、戰災の復興等に付きましては已むなく制限された中で起債を致し、而して其の償還の時期に至りまして、何等かの方途を講じて財政援助を致すと云ふやうなことで、只今の所考へて居るのであります、隨ひまして現在債に付きまして、更に其の元利支拂の延期等を致しますやうなことに付きましては、國家財政を扱つて居ります主管省と能く折衝致す要があらうと存ずるのであります、兎に角現在一應の二十一年度財政計畫を持つて居りますが、明年度以降に付きましては、より根本的な對策を考へなければ相成らぬと存じますので、其の際に現在の公債に付ての扱ひ等も十分檢討致しまして、處理を致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=80
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081・中村高一
○中村(高)委員 税源を求める爲に、東京都などに於ては新しい獨立税と云ふやうなものを考へて居るやうであります、例へばもう既に廢止されて居ります所の自轉車税を再び復活するとか、或は荷車税を復活させるとか、斯う云ふやうな所謂大衆課税に付ては、我々は非常に財源に困ると云ふことは分るけれども、一度廢止された斯うした大衆課税が又復活をして來ると云ふやうなことは、軈て是が東京都ばかりでなく地方の各都市に於てもやはり獨立財源を求める爲に色々の徴税を考へて來ると思ふのであります、一體さう云ふやうな自轉車税とか荷車税等の如きものを申請せられる場合に御認めになるものかどうか、或は國税としてありました特別行爲税の如きものを、今度は國税で廢止されたから、地方税として之を拾つて物にしたいと云ふやうな意見もあるやうであります、斯う云ふやうな獨立財源を求めることに對して何等か御研究をせられて居りますか、又地方からさう云ふやうな申請が既に來て居りますか、御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=81
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082・郡祐一
○郡政府委員 自轉車税等法定税目になつて居りまして現在徴收して居らないもの、是等に付て課税致しますることは、廢止經減等に付てそれぞれの動機があつて致したことではありますが、現在の財政状態から考へまして、且つ是は名目的な意味合なのでありますが、名目的な收入と云ふものは、何と申しましても納税義務者に付て著しい重課にならない物税等は、是は財政の状況から見合つて、必要であれば徴收することは已むを得ないことぢやないかと思つて居ります、唯法定外獨立税で新しく徴收致しますものとしては色々な相談が參つては居りますが、從來例のない獨立税を、決定的に徴る決心をして居りまする地方團體はまだないやうでございます、例へば御話のございました國税で廢止になるものに付ても、地方の獨立税を考へるとか、或は交通税と云ふやうなものの免税點以下のものに付て徴れるだらうかと云ふやうな點も相談に見えて居るのであります、此の場合に於きまして徴税技術として比較的容易に徴り得まして、且つ義務者の擔税力を相當認めることの出來まするものは認めて參りますが、徴税上非常に困難であり、而も大衆の生活に影響致しまするやうな種類のものに付きましては、國税所得税の増徴の程度とも見合ひまして、十分に地方の状況を調べた上で決めることにして參りたいと思つて居るのであります、東京都に付きましては都民税の増徴等に依りまして、相當程度財源があるかと考へられますので、新税の創設に付ては、都當局の持つて居りまする財政計畫を十分檢討致しまして決定して參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=82
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083・中村高一
○中村(高)委員 政府は各種の補助金などを、例へば、教員の俸給だとか、警官の給與と云ふものに對しまして、都にも相當出して居るやうでありますが、斯う云ふものこそ最近では非常に困つて居つて、爭議なども起つて居るのでありまして、補助金を増額すると云ふやうな問題はどう云ふ風に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=83
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084・郡祐一
○郡政府委員 補助金に付きましては之を二種類に分けて考へて居りまして、國費、地方費の負擔區分の見地から、國税事務が地方費に對しまして壓迫をして居るやうな種類のものに付きましては、可及的國庫の負擔率を高めて見ることに致し、例へば警察費の連帶支辨金の如きものに付きましては、之を可及的高めて參る方法で參りたいと考へて居るのであります、隨ひまして左樣な種類のものに付きましては、警察費の連帶支辨金に付きまして、從來の三割五分を六割に上げましたし、國民學校の義務教育關係の職員の負擔に付きましても、新たに國税に加へたものもございますし、府縣道改良費の補助率を、從來三分の一でありましたのを二分の一に引上げましたり、色々なことを致して居ります、それと同時に補助の第二の種類と考へまする寧ろ地方的色彩が濃いものに對して、僅かばかりの補助を盛付けてある種類のもの、是等のものは寧ろ代り財源として獨立財源を與へるか、又は配付税等を増額致しまして、申さば國で以て見て居ると云ふことを一寸見せるだけの補助は、整理した方が却て宜いのではないか、地方自治體の自主性から見て、寧ろそれは自分が持つのが筋だと云ふやうなものは、國の補助を外しても宜いのではないかと云ふやうな方向に向つて、現在補助に付ては對應致して居るのであります、但し負擔區分の點だ、もつと國から出して貰つて宜い筈のものが、色々な都合でそこまで貰へて居らぬものがあります、是等に付ては洵に財政的にも困ることでありますし、國も亦負擔區分を確立致しますことが必要なことでありますので、折角努力も致して居ります、斯樣な點で不十分な點は洵に遺憾のことでありますので、左樣な意味合での補助は、十分増額の目的を達するやうに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=84
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085・中村高一
○中村(高)委員 是もやはり直接原因をして居るかどうかは必ずしも言へないと思ふのでありまするが、都で行つて居ります公企業、即ち交通事業とか或は水道事業などに付きまして──此の直接の原因は戰災に依るものが非常に多いのでありまするが、是等の收入の非常な減少と、施設の非常な破壞と、更に從業員に對する待遇改善の爲に、今日では是等の公企業の非常な行詰りを來して居るのであります、之に關聯を致して最近關東配電の持つて居る配電事業を、都の交通局に昔のやうに戻して呉れろと云ふやうな運動が起つて居るのであります、之に對しては恐らく國家全體から見た電力の統一と云ふやうな、色々の問題も關聯して來ると思ふのでありますが、將來地方自治體が例へば今まで持つて居つたものを戰時の統制に依つて統制されたものを戻すとか、或は新たに配電事業と云ふやうなものを計畫するものが出て來ると思ふのでありますが、之に對して内務省に於ては其の方針が決定して居るのかどうか承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=85
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086・郡祐一
○郡政府委員 都の配電事業の經營と申しますることは、地方團體の事業竝に將來に於きまする財政上の見地からは、之を行ひますることを適當と考へるのであります、唯現在の配電會社の状況から考へますると、東京都を除きました經營と云ふものは、直ちに經營自體に非常な支障を來すと云ふやうな面もありますし、關係方面との折衝は重ねなければならぬと存ずるのであります、併しながら配電事業が地方住民全船の生活に及ぼしまする影響が極めて深いものがありますし、又地方の福祉増進の爲にも缺くことの出來ないものであると存じます、既存の會社との關係、隨ひまして買收費用の問題等に付きましては、十分檢討を重ねて見ることと致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=86
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087・中村高一
○中村(高)委員 配電關係のみでなく、交通事業などに付ても、從來地下鐵などと云ふものは東京都で持つて居つたのですが、交通統制に依つて交通營團に移管をされたものであるのであります、斯う云ふ問題も軈て出て來ると思ふのでありまするが、地方分權とか、或は地方公共團體の財源を求めると云ふ趣旨で行きまするならば、さう云ふものを順次戻すと云ふことも一つの方法だと思ふのでありまするけれども、交通方面などに付てもやはり同じやうな御見解でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=87
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088・郡祐一
○郡政府委員 配電、交通其の他公企業と云ふものが地方團體で營まれると云ふことは、財政を二義的に考へましても、地方住民の福祉の爲に極めて必要なことでありますし、將來の計畫さへ立ちますならば、此の財源調達の爲には、相當一時負擔を掛けても之を營むことが適當のやうに考へて居ります、隨ひまして計畫さへ具體化しますならば、それと同時に、是等の事業に付ては中々に關係者の多いことでありまして、相當折衝に暇が掛かることでありますが、是等のものは帝都の復興と云ふこと自體と關聯致しまして、非常に重要なことでありますから、何とか出來る方向に進みたいものだと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=88
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089・中村高一
○中村(高)委員 財政方面に付きましては其の程度にして、先に廣川君からも御尋ねのあつた都議會の運營に付てであります、定例會と臨時會と定めたことに對して先程政府委員の御意見も拜聽致しましたが、非常に事務の多い、殊に東京のやうな所に於て各月定例會を開いて、後は臨時會にすると云ふ風な、ああ云ふ風な窮屈な決め方をすることは不適當だと思ふのであります、地方の都市や府縣等に於ては多少事情が違ふと思ふのでありますが、東京の如き非常に事務の複雜にして煩多な所に於ては、一律に地方の府縣と同じやうにせずに、是はやはり何時でも開き得るやうにして置くことが親切であり、又極めて便宜だと思ふのであります、政府ではそれに付て斯う云ふ風な形式的な決め方を飽くまで支持せられるかどうか、私は適當でないと思ふのでありますし、又一般の空氣等も、斯う云ふ決め方が困ると云ふ意見が多いやうでありますが、之に付てどう御考へになるか、強いて固執せられるのか、或は修正でもされるなら、強いて固執せられないものか、此の點に付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=89
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090・郡祐一
○郡政府委員 議會を頻繁に開きますことは是は地方制度の民主化の上にありたいことだと思ふのであります、唯會期に付きまして當該都議會の決する所に任せて置きますならば、常例會を隔月に開き、必要な都度に於ては更に臨時會が何時でも開けると云ふ状態に置きまする以上、考へ方を變へて見ますれば、是は萬年市會のやうに、會期なしと申しまするか、一年中開かれるやうな形に致しまするよりも、より能率的な運用が出來るのではないだらうか、一應決まつた會期の中でものを決議し、又事が起れば何時でも開くと云ふ態勢に於て運んで行く方が、寧ろ議事能率も増進されますし、會議體の何と申しますか、責任もはつきりと致すのではないだらうか、此の方が寧ろ適當ではないだらうか、斯樣な見地で都制に付ても他の府縣に於けると同じやうに決めてあるのであります、仰せの通り仕事の分量は確かに多いのであります、隨て會期等に付ては適當な、必要にして十分なる長さを決めて貰ひたいものだと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=90
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091・中村高一
○中村(高)委員 都制の中に都の參與に關する規定がありまして、是も先程御議論になつたのでありますが、參與制と云ふものは町村制にも市制の上に於ても、府縣制にもあるやうであります、此の東京都にあります所の參與と云ふものは、町村制に於ける所の參與とは意味が違ふやうになつて居るやうであります、町村に於ける所の參與と云ふものは、何か團體の長などを、特に村政の連絡の便宜とか云ふやうな意味があるのださうでありますが、此の都の參與と云ふものは、都長官の最高顧問官であると云ふやうなことを、是が立案せられた當時の政府委員の答辯に見るのであります、今まで是は置いた實例はないやうで、まだ都の參與の任命をせられた實例はないのでありまして、なくても宜いのでありますが、寧ろ其の趣旨から行きますと、顧問が都の參與の趣旨のやうでありまして、町村に於ける所の參與と趣を異に致して居るのでありますから、寧ろ是は都顧問と云ふ政府の解釋するものと同じと云ふことにして置く方が、町村の參與などとの區別にもなるし、又長官の最高顧問だと云ふ意味にも副ふやうに思はれるのでありますが、是は參與と言ふより顧問とお直しになつたら如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=91
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092・郡祐一
○郡政府委員 仰せの通り都參與は町村參與と異りまして、都長官の最高の諮問機關であります、隨てそれに相應しい人間を得ることが望ましいのでありますが、都參與と云ふ名前の内容と致しまして諮問機關、隨て顧問と申しても宜いのでありまして、左樣な役割を演じさせて居るのであります、隨て之を顧問と致しましても實質には何等變りのないことであると思ふのでありますが、現に參與と云ふことで制度が出來て居りますので、特に變へるまでもないと云ふ程度のことに御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=92
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093・中村高一
○中村(高)委員 あとは委員會に付てでありますが、東京市時代にありましたやうに、都で條例の制定權は認められて居るのでありますから、條例を作つてどんどん──と言つては語弊がありますが、委員會を作る、例へば土木に付ては土木委員會、或は水道に付ては水道の委員會、港灣に付て、或は産業に付てさう云ふやうな委員會を條例を設けて作る、斯う云ふものと此の都制にある委員とは違ふのだと云ふやうに、制定當時の議論はされて居るやうでありますが、一體此の規定にあります所の委員と云ふものは、常置委員として置かれるものか、或は議員を中心とする所の、都議會を中心とする所の委員會なのか、或は又是が理事者の單なる諮問機關として、別に都議會とは關係のない委員會なのか、又其の仕事と云ふものはどう云ふ範圍に豫定されて居るのか、此の委員制度と云ふものが明確でないので、其の點を一つ明確にして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=93
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094・郡祐一
○郡政府委員 都の委員は制度上都吏員と致すことに相成つて居りまして、學識經驗ある者の中から廣く選んで居るのでありますが、都の職員と致しまするが爲に、其の委員を何と申しますか、常任的に必要な事務の調査を致す、さう云ふことに相成つて居るのであります、隨て此の學識經驗ある者の中に都議會議員等を含みますけれども、それは學識經驗者としてでありまして、隨て都議會の常設委員的なものでなく、都の職員としての存在だと云ふ工合に御考へを願ひたいのであります、それから事務の範圍に付きましては、是は都のやうな非常に多くの事業を持つて居りまする所に於きましては、色々の方面で都長官が委託を致すと云ふことはあり得ることであります、隨てそれが都事務である限りに於きましてはどのやうな事項に付ても委員を設けて差支へないことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=94
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095・中村高一
○中村(高)委員 是は諮問の機關になるのですか、區の方の委員にははつきり調査をさせると云ふ言葉が使つてあるのであります、區の方には區の必要なる事項を調査すとなつて居ります、都の方のはなにが出て居らぬので、調査以上にやはり諮問を含む意味で斯う云ふ風に區別してあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=95
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096・鈴木俊一
○鈴木(俊)政府委員 委員は都制の場合には、組織の方と職務權限の方と規定を分けて書いてございます、今仰せになりました都の委員の職務の方の規定は、第百七條に規定してございます「委員は都長官の委託を受け都の事務に關し必要なる事項を調査す」と云ふ風に規定してございまして、區の委員とやはり同じ性質を持つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=96
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097・中村高一
○中村(高)委員 それではもう一つ、區に關しまして御尋ね致して置きたい、區長の公選が問題になつて居るのでありますが、今度のやうに區の權限が擴張されまして、起債權或は課税權、條例の制定までも認められるやうになりました以上は、獨立した法人區として之を扱ふことが改正の内容に副うて居るもののやうに思ふのであります、非常に區の自治と云ふものが與へられて來たのでありまして、さう云ふ趣旨から致しますならば、區長もやはり公選をさせると云ふことが、最も適當したことだと思ふのであります、唯都の區は市町村などとは趣きを異にしまして、都全體の統一或は都全體を目標にした區と云ふものを考へなければならない點に付ては、是は無論考慮しなければならぬと思ふのでありますが、今囘の改正案程度に區の自治と云ふものが認められまする以上は、區に公選した區長と云ふものを選んで、其の區全體の調和に付ては又別の考へを持つことが宜いのではないかと思ひます、此の點を一つ御聽き致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=97
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098・郡祐一
○郡政府委員 仰せのやうに區と云ふものの自治權を可及的に擴張致して參ることに、改正法に於ては考へて居るのであります、事實區は都に於きましては、住民と最も身近な關係にあります地方團體でありますから、之に自主的な發展を圖らしめますことは、都行政の圓滿なる進展を圖る所以だと存ずるのであります、唯仰せの中にありましたやうに、其の自治權は何處までも充實致して參りたいと思ひますけれども、それには自ら限度がありまして、東京都制が自らを理想的な公共團體と致しまして、區を都の構成致しまする内部的な團體として立法致して居りますので、隨ひまして其の團體自身には、自治權を成べく多く認めますが、團體の長の任命權は内部的團體たる基本的な性格から致しまして都長官が持ちまして、さうして都の統制を確保することが望ましい、併し區會との繋りも必要であるから意見を徴しまして、區長の身分權だけは都長官が持つと云ふことが、現在の都制の構成から考へまして必要な限度であらう、斯樣に考へて區の自主性と都の統一性との調和を圖つて參ると云ふのが、此の度の改正の趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=98
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099・中村高一
○中村(高)委員 多少意見が相違しますが、其の點に付ては逐つて考慮することに致しまして、もう一つ、區に是から課税權とか起債權とか云ふやうなものを認めることに依つて、同一都内に於ける區に於て違ひが出て來ると思ふのであります、非常に財源或は其の他に於きまして有力な區と、力の弱い區との間に非常な相違が出て來ると思ふのであります、舊東京市制の當時に於きましても、麹町とか日本橋とか云ふやうな非常に裕福な所と、新市域のやうに人口ばかり多くて非常に苦しい區とがありまして、此の調和に色色苦勞を致したことがあるのでありますが、是から又課税權或は起債權と云ふやうなものが與へられました時に當つて、再び區に依つての相違が現はれて來ると思ふのであります、之に對する調整に付ては十分に御研究をせられて居りますかどうか、御意見を聽きたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=99
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100・郡祐一
○郡政府委員 御話のやうに區に自治權を認めましても、行政執行の統一性だけは失ふことは好ましくないことであります、隨ひまして區が課税權を持ちますが、是は地方税法に於きまして東京都の課し得まする税の全部、又は一部を區税として課することを得る、其の場合には東京都條例で其の限度等を定めることに致して居ります、斯樣に致しまして區に於て課することを得まする税目及び税率に付きましては、都の統一性が一方保たれまして、著しい不均衡の起ることは防いで參りたいと思ふのであります、尚ほ都制の上に於きましても、區の財政調整上必要な交付金を區に交付することを考へまして、隨ひまして一方には課税權に付きましても、東京都條例に依つて努めて統一性を保持し、更に財政調整上必要な場合には交付金を交付致しまして、其の間の著しい不均衡は防いで參りたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=100
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101・中村高一
○中村(高)委員 私は此の程度で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=101
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102・大塚甚之助
○大塚委員長代理 是で通告は全部終了致しました、本日は此の程度に致しまして、次會は五日午前十時から開會したいと思ひます、本日は是を以て散會致します
午後三時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012722X00919460802&spkNum=102
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