1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付)
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昭和二十一年七月十三日(土曜日)午前十時三十四分開議
出席委員
委員長 林田正治君
理事 西村久之君 理事 加藤高藏君
理事 今村等君
本多花子君 森崎了三君
佃良一君 山下榮二君
鹿島透君 原尻束君
森曉君 中田榮太郎君
同日委員原國君辭任に付其の補闕として鹿島透君を議長に於て選定した
出席政府委員
戰災復興院總裁 阿部美樹志君
戰災復興院次長 重田忠保君
内閣事務官 大橋武夫君
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本日の會議に付した議案
特別都市計畫法案(政府提出、貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=0
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001・林田正治
○林田委員長 是より開會致します、議事に入るに先立ちまして、一言御挨拶申上げます、實は私昨日御挨拶申上げる筈でありましたが、故障の爲に出席出來兼ねましたので、本日御挨拶申上げます、今囘圖らずも委員長に就任することになりましたが、私極めて此の方面に經驗の淺い者でありまして、皆樣の御同情と御協力に依りまして此の委員長の大任を果したいと存じます、謹んで御挨拶申上げます、是より政府委員よりの本案の提出理由の説明を聽取致します──どうでございますか、本會議でございませぬから、皆さん御暑いのでありまするから、上衣を取つて戴いたらどうでありますか──さう云ふやうに御願ひ致します、どうぞ政府委員の方も左樣御承知を願ひます、それでは御説明を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=1
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002・阿部美樹志
○阿部政府委員 先づ此の法案制定の趣旨に付て申上げます、現在戰災都市の復興は、之を法制上から申しますと、都市計畫法の定める所に依つて、即ち同法に謂ふ都市計畫及び都市計畫事業の形で行はれて居るのであります、併しながら全國の戰災都市百二十有餘、其の燒失總面積一億六千萬坪と云ふ有史以來の戰災を蒙りました、そこで第一と致しまして、是等戰災地を急速に復興致しますには現行の都市計畫法では不十分な點が少くないのであります、特に都市計畫事業としての土地區劃整理は、他の事業の基礎をなすものでありまして、他の建設的な復興を促進する爲には、之を急速且つ徹底的に施行して行くことが必要であります、所が之に付きまして、都市計畫法は元來今囘のやうな大戰爭の場合を豫想して制定されて居りませぬので、同法の規定だけでは此の事業の迅速と徹底とを期することは出來ないのであります、隨ひまして、主として戰災都市の土地區劃整理に關しまして、新たに立法する必要を認めて、本法を制定せんとする次第であります
次に、此の法案で特別都市計畫法の名稱を用ひましたのは、此の法案を獨立法として制定致しますけれども、他面都市計畫法の特例となす趣意であります、都市計畫法の改正に依らず、獨立法となす理由は、戰災復興の特異性に鑑みまして、戰災都市の復興計畫と其の事業に限つて特に適用する臨時的立法の必要を認めたからであります、併し一面本法に特に規定する事項以外は、現行の都市計畫法で賄つて行くと云ふことが便宜でありますので、都市計畫法の特例として制定することを適當と考へた次第であります
次に此の法案の内容に付て要點を、御説明申上げます、第一、此の法案は都市計畫法の特例を定めるものであります、(第一條)隨て此の法案に謂ふ特別都市計畫及び特別都市計畫事業は、先づ此の法案を適用されることが當然でありますが、次に此の法案に定めて居ないことに付ては、都市計畫法の規定の適用を受けると云ふことになります、右のやうな此の法案と都市計畫法との關係より致しまして、特別都市計畫及び特別都市計畫事業の決定に付きましては、此の法案に別段の定めを設けず、總て都市計畫法の定める手續──同法第三條であります──に依らしむることに致したのであります
第二と致しまして、法案第一條の第二項及び第三項の規定は特別都市計畫の觀念を定めたものでありまして、即ち東京都の三十五區の外内閣總理大臣の指定する戰災都市の都市計畫を特別都市計畫と云ふのであります、尚ほ戰災都市は全國で百二十餘を算して居りますが、是等の中には戰災が極めて輕微で、特に此の法案を適用するまでもないと考へられるものがあります、そこで戰災都市に付て、戰災に因る燒失戸數、罹災面積、罹災人口等に關する綜合的調査の結果と、戰災復興に對する地方の意欲などを勘案致しまして、此の法律を適用すべき戰災都市を指定することと致した次第であります、特別都市計畫事業に付きましては別に定義或は規定を設けて置きませぬが、都市計畫法に謂ふ都市計畫事業と同樣、解釋上特別都市計畫の具體化として施行する事業と考へて居るのであります
第三、都市の過大膨脹を抑止し、且つ市民の健康を保全します爲には、主として都市の周邊部に相當廣大な土地を空地として保存することが必要であります、防空法施行中には、是等の土地は大體都市防衞上の見地から致しまして、防空空地帶として保存されて來ましたので、防空法の廢止に伴ひまして、是等の土地は當然空地帶たるの制限を解除せられることになりますが、特に戰災都市に於ては、他の復興計畫と睨み合せて綜合的觀點から檢討した上、是等の土地を緑地地域として指定する必要を認められ、第三條の規定を設けた次第であります、尚ほ緑地地域は都市の周邊に指定すべき場合が多いので、是が爲に第一條で指定せらるる市町村の區域外に亙ることが相當豫想されるので、此の場合には關係市町村の意見を徴することと致したのであります
第四、特別都市計畫事業の執行に付きましては、此の法案は行政官廳が執行しないと云ふことと、行政廳が執行する場合のことを定めて居るに過ぎませぬ、即ち國の直接執行は認めないことを第一條で明かにしたのであります、隨ひまして行政官廳以外は都市計畫法の定める所に依つて特別都市計畫事業を執行することが出來る譯であります、同法第五條、第十二條、併し他方に於きまして土地區劃整理に付きましては、之を迅速且つ徹底的に行ひます爲に、相當強力な法的措置を講ずる必要がありますので、市町村長又は府縣知事、都長官が國の行政機關として國の事業を執行すると云ふ建前を取りまして、法案第四條以下では行政官廳を除く行政廳が施行する場合のみを豫定した次第であります、次に費用の負擔に付きましては、此の法案で別段の定めをなす必要を認めませぬので、都市計畫法の規定に依ることとして居ります、同法第六條、同法の規定に依つて行政廳の執行する特別都市計畫事業に付ては國の事業を公共團體の負擔に於ては執行する譯でありますし、而も此の事業は厖大な經費を要するに拘らず、公共團體の財政負擔力は頓に弱化して居ります、其の現状に鑑みまして、國家が費用の相當部分を負擔することが至當と考へられますので、公共團體が此の費用を負擔する場合に相當の國庫補助をすると云ふことに致したのであります、法案第五條より第二十九條までは土地區劃整理に關する規定であります、土地區劃整理事業は申すまでもなく宅地の利用増進を目的として、土地の交換分合、道路、緑地等の整備を行ふのでありますが、原則的に耕地整理法の規定を準用する都市計畫法の定める要領では、事業を能率的に行ふことが困難であるばかりでなく、區劃整理の目的を達成するのには不十分な點が少くないのであります、殊に行政廳が施行することに關しまして、都市計畫法は單に施行し得る旨を定めて居るだけで、他の施行の手續方法等に付ては何等の規定を設けて居りませぬ、是に於て都市計畫法の特例として、行政廳の行ふ特別都市計畫事業たる土地區劃整理に付て以下の規定を設けたのであります、勿論此の法律案は土地區劃整理組合の施行を常に否定するものではありませぬから、土地の權利者の希望に依り、組合を設立して特別都市計畫事業としての區劃整理を施行することは、正當に都市計畫法の定める手續を履めば差支へないのであります、但し此の場合には、第四條以下の實體規定の一部の内容に付ては、組合でも之を履行致しますやう指導致したいと存じて居ります
法案第五條は耕地整理法の除外規定であります、本條第一項の規定では區劃整理を必要とする地區を早急に決定する爲に整理施行地區に無條件に編入する土地の範圍を擴大することとしたのであります、此の結果新たに無條件編入を認める土地は名勝地、舊蹟地及び古墳墓地以外の土地でありまして、即ち御料地、國有地、官有地、公共團體の公用又は公共用地、社寺境内地及び鐵道軌道の用地であります、尚ほ國有地の編入に付てはそれぞれの主務官廳と具體的な打合せを致しまして、運用上遺憾なきを期したいと存じて居る次第であります
次に本條第二項の規定は換地處分の時期に關する特例であります、此の規定は工事進捗上例へば工作物の移轉除却等の爲に必要な場合がありますことと、一般的には成べく早く權利關係を安定させることが望ましいことの二點の要請に應へたものであります
法案第六條は整理施行地區内の土地所有者其の他の權利者の同意を得まして換地を交付せず金錢で清算することが出來る旨を定めたものであります、耕地整理法の建前では、組合の規約などで定めた場合を除いて、換地を全然交付しないことは認めて居ない所でありますから、特に規定を設けまして國有地、軍需工場跡地等に付ては差支へのない限り換價處分を致しまして、公共用地又は民有地の確保に資せんとするものであります、市街地の合理的計畫化を圖る爲に、都市の過密街衢を整理し、建物の敷地面積を適正化しますことは、今次の土地區劃整理に於きまして公共施設の造成、整備と共に、其の主眼點の一つであります、是に於て過小宅地及び過小借地の整理に關する法的措置を必要と認めまして、法案第七條乃至第九條の規定を設けた次第であります
法案第七條は過小宅地の整理に關する現定であります、先づ過小宅地に對する直接の處分方法は本條第一項の定める所でありまして、即ち増換地處分と換價處分であります、増換地處分は耕地整理法の規定に依り、例外的になし得るものでありますが、今度の過小宅地の整理の爲には、之を積極的に行ひ得るやう措置する必要がありますので、此の方針を闡明する趣旨で規定したものであります、換價處分は耕地整理法に謂ふ特別處分の一つでありまして、第六條に付て述べた所と同趣意で明定を要する所であります、是等の處分は一々權利者の同意を要しないのでありますが、包括的に過小宅地の整理を行ふことの可否と増換地處分と換價處分の基準に付きましては土地區劃整理委員會の意見を聽くべきであると考へて居ります
次に過小宅地の整理を容易ならしめる爲の謂はば間接的な方法と致しまして、大きい宅地に對する減歩換地を認めて、第二項に此のことを定めたものであります、是は所謂不足地換地處分でありまして、是も増換地處分と同樣、現行法制で出來るのであります、過小宅地整理の爲に積極的に之を行ひ得るやう規定した次第であります、本條第三項の規定は折角整理して宅地を適正化しましても、其の宅地に用益權が存して居る爲に、適正宅地としての利用が妨げられます時は、之を金錢で清算することが妥當でありますから、是等用益權に付て換價處分の途を開いたのであります
法案第八條は過小借地の整理に關して規定したものでありまして、其の整理の方法は、大體前述の過小宅地の場合と大同小異であります、唯換價處分は勿論、宅地整理の場合の増換地や不足地換地に該當する處分は總て此の法案で、創設せられたものであります、過小宅地や過小借地又は大なる地積の宅地の規模を如何にして定めるかと云ふことは、相當愼重を要する問題でありますが、勅令で定める見込であります
第九條の過小宅地と過小借地に付ては、原則的には百平方「メートル」即ち三十坪以下となすべきであると考へて居ります
法案第十三條及び第十四條は換地豫定地の指定に關する規定であります、區劃整理工事の進捗上、從前の土地の使用收益を制限する必要を生ずる場合が少くありませぬが、之をなす爲には、從前の土地に代り、使用收益を認める土地を權利者に交付することが必要でありますし、又一般的に成るべく早く權利關係を安定させる爲に本換地確定前、大體是と同樣の土地を豫定地として與へることが結構であることは申すまでもありませぬ、斯樣な趣旨で此の制度を設けた次第であります、換地豫定地指定の效力は第十四條の定める所でありますが、原則として指定の通牒を受けた翌日から本換地の確定まで、從前の土地の所有者及び權利者は指定された豫定地を使用收益し、其の代り從前の土地は使用收益が出來ないこと、豫定地の所有者及び權利者は其の土地の使用收益が出來ないことであります、尤も豫定地に建築物があつたり、其の他の事情で其の使用收益が出來ない時には、別に使用開始の日を定めることとして置いたのであります、此の場合は、豫定地指定の效力は其の別に定めた日から生ずる譯であります、換地豫定地の指定に伴ひ損害を受けたる時は、通常生ずる損害に限つて補償することとなつたのであります
法案第十五條は建物其の他の工作物の所有者に對する移轉又は其の占有者に對する立退を強制し得ることを定めたものであります、蓋し市街地の區劃整理に於ては、建物其の他工作物がある爲に工場が妨げられる場合が少くありませぬので、工事の進捗上斯かる必要が少くないのであります、而して此の移轉又は立退を強制する爲には豫め命令を出すのでありますが、此の命令は三箇月の豫告期間を置くことと、移轉の場合は換地豫定地の指定をなすことを要件と致して居ります、移轉又は立退に依り所有者又は占有者が損害を受けました時には、其の通常生ずる損害に限つて補償することと致して居ります
法案第十六條は宅地の減小面積に對する補償に關し規定したものであります、土地區劃整理の施行に依り或る程度宅地の總面積が減少すると云ふことは、區劃整理の本質上免れない所でありますが、減少の程度相當に及びます時は、應分の補償をなすことが妥當であると考へるのであります、關東大震災後施行されました舊特別都市計畫法に於きましては、總體の減歩率が一割を超えた部分に對し補償を致したのでありますが、此の法案では一割五分を超えた場合、其の超えた部分に對し補償することと致したのであります、舊法に比べて減歩負擔率を引上げましたのは、總體の減歩率が、舊法の場合は東京が一割五分三厘、横濱が一割四分九厘と云ふ實績でありましたのに反し、今囘は戰災等の經驗に鑑みまして、且つ將來の都市建設に備へて平均三割程度の減歩を見込んだからでありまして、總體の減歩率の振合から考へますと、舊法の一割に對し今囘の一割五分が大體均衡を得たものであると存ずる次第であります
法案第十一條は土地區劃整理委員會の組織に關する規定でありますが、是は區劃整理を施行する行政廳の諮問機關でありまして、區劃整理事務の中、最も面倒な換地に關する事項、其の他重要な事項に付て、權利者の總意に基き決定すると云ふ趣旨で此の機關を設けることと致したのであります
法案第十七條は補償審査會に關する規定であります、補償審査會は前述の土地區劃整理委員會と異り、各種補償金に關する決定機關であります、補償金の決定は公平妥當に之をなすことが肝要でありますから、其の構成も土地の權利者にあらざる第三者の立場にある者を委員と致しまして、又會長も地方長官、市に於ての場合は市長を之に充てることとしたのであります
法案第二十條乃至二十四條及び第二十七條の規定は、專ら清算金又は補償金の徴收又は交付に關して取扱上必要な事柄を定めたものであります
尚ほ附則に於きまして神宮關係特別都市計畫法の廢止を規定して居りますが、神宮關係施設整備事業は昭和十四年度より具體的調査を進めまして、式年御遷宮に當る昭和二十四年度までに關係施設の主要なものを完成せしめる爲に、昭和十五年より同二十四年度に至る十箇年繼續の政府直轄工事と致しまして、宇治山田市の都市計畫及び神域等の改良を施行して參つたのでありますが、諸般の事情に鑑みまして之を中止するのが妥當であると考へまして、此の機會に神宮關係特別都市計畫法をも廢止致したいを思ひます、尚ほ宇治山田市の戰災復興に付ては、此の特別都市計畫法に基いて之を行ふことは勿論であります
次に戰災地の區劃整理を圓滑ならしめる爲に、整理施行地域内にある農地に付ては、特別都市計畫法に於ても、都市計畫法と同樣に取扱ふ必要がありまして、附則の末項で此の趣旨に基いて規定を設けることに致しました、以上本案の要點に付て御説明申上げました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=2
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003・林田正治
○林田委員長 是より質疑を行ふことと致します、發言の順位は通告順に依ります、先づ原尻委員より發言の通告がありますから之を許します──原尻君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=3
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004・原尻束
○原尻委員 私は先づ總理大臣閣下に質問を致したいのでありますが、只今御説明を承りました通り、全國に點在する所の百二十有餘の都市、一億六千萬坪の廣地域に亙つて特別都市計畫をされるのでありますから、此の計畫は實に國家百年否千年の大計でなければならないのでございますが、只今説明を承りまして、私の考へて居りますことと根本的に相違して居りますことを、洵に國家の前途の爲に殘念に思ふのであります、特に最近の政府は、遠き慮りがないからして常に近き憂ひを感じて居る、常に貧乏なる世帶を持つて何時も其の日の生活に焦つて居るのが我が國の状態であるのであります、是に於て國家百年の大計を樹てなければなりませぬが、御承知の通り從來無計畫なる所の大都市を形成しまして、國家の重要施設を雜然と其の中に集團せしめました爲に、戰爭が始まつてから慌てて疎開を致しましたが、殆ど役には立たなかつたのであります、御承知の通り日本は「ポツダム」宣言に依りまして、之を忠實に履行する爲に、新憲法に將來永久戰爭を抛棄し、民主主義平和國家の建設に向つて出發せんとすることは洵に慶祝の至りであります、是は我が國のみに止まらず、世界永久平和の基とならなければならぬと考へるのであります、併しながら「ポツダム」宣言に於て世界永久平和の宣言はないのであります、我が國を第三國の戰場としないと云ふことは、載つて居ないのであります、是に於て若しも我が國が第三國の戰場となる時代が參りましても、再び斯樣な戰災を繰返さないやう、此の機會を以て不幸中の好機として萬全の策を立て、萬一の場合にも其の被害を最小限度に食ひ止める用意が必要であるのであります、現に東京都は大正十二年の震災復興に當つて遠謀深慮が足らなかつた爲に、僅かに二十年餘の間にそれ以上の損害を被つたのであります、此の度は東京都のみでなく、全國の都市、日本全體が其の禍を轉じて永久の幸福となす爲には、特別都市計畫を愼重に進めなければならぬと存じますが、總理大臣閣下には此の構想を持つて特別都市計畫を進められるやうな御意思はございませぬか、それを御伺ひ致したいのであります
其の次は農林大臣、商工大臣、内務、文部各大臣の方に向つて御質問を致したいのでありますが、都市住民の食糧、保健衞生、天災地變、都市と農村との對立激化の是正、工業能率の増進及び地方農村文化の向上の諸點を考慮して、國民皆農即ち國民に皆農業を或る程度させる考へはないか、此の國民皆農に少し説明を加へる必要があると存じますが、即ち工場も學校も農村に分散するのであります、之に依つて生じた空地は耕作地と致しまして、都市住民自らの手に依つて、而も有り餘る所の下肥の自給肥料と、總理大臣初め端役人に至るまで總ての役人、商人、勞働者の家族の手に依つて、主要食糧を初め野菜に至るまで少くとも自給自足せしめ、又地方に分散せる所の工業從業員、學生なども、それぞれ食糧の自給自足をしながら其の職域に勤めるのであります、勿論其の間專業農家はより大仕掛に農業經營をやります、さうして病院其の他の農業不可能な者に對する配給用食糧の生産に邁進するのであります、之に依つて食糧問題は解決すると存じます、是は今まで農業に慣れない都市の方に取つても非常に重大な事件であり、又之を受入れる所の農村と致しましても重大なる事件でありますけれども、之を凌げない限り我が日本の再建はないのであります、只今御説明の如き計畫でありましたならば、あの計畫は恰も財政豐かなりし富豪の娘が、家も燒かれ財産もなくなつて非常な貧苦の底に喘ぎながら、再び元の生活を其の儘實現したいと云ふ希望と同じであります、天皇陛下も現人神であらせられたが現人神でないと云ふまで御下りになつた、然るに國民はやはり一等國時代の氣持で考へて居るのであります、是では日増に國民が筍の生活をして居るのと同じでありまして、其の筍の皮を剥いでしまつた曉には、國民否國家は首を溢つて死ぬより外に方法はないのであります、是に於て最低生活に徹せぬ限り再建の途はないと考へるのであります、尚ほ工業能率の増進の點から申しますならば、現在肥料代が箟棒に高い、其の原因は勞働賃金が高いのが大きな原因でありますが、何故勞働賃金が高くなるか、それは勞働者は一生懸命働くが、其の家族を遊ばして置いて、一人で家族全員を養ふだけの賃金を欲しがるからであります、都市の住民は殆どそれであるのであります、一方農家では夫婦共稼ぎは勿論のこと、老人も子供も一人殘らず農業に從事するのであります、それでありますから假に肥料工場を農村に分散すれば、農村の次男坊、三男坊、未婚の女子などを此の工場に使はれまするから、是等は家族全員を養ふ義務のない者が多いのでありまして、尚ほ家庭では食糧増産が出來て居りますから、都會勞働者の約三分の一の賃金で宜しいのであります、是が肥料工場でありました場合に、肥料の低下する譯を申上げた次第であります
次に特に農林大臣に御伺ひ致したいことは、我が國が敗戰の結果國土が限定されまして、其の範圍内に於て八千萬の國民が永久に生存出來る所の計畫を持たなければならない、此の特別都市計畫も左樣な構想の下に立てなければならぬのであります、人口は増すのに國土の面積が限定されれば、其の國土を立體的に有效に使はなければならないのであります、それをしない限り食糧の不足を生ずるのであります、例へて見ますならば、全國の耕地面積は六百萬町歩で、人口は八千萬、一人當り七畝十五歩の耕作地があるのであります、勿論其の中に桑畑、茶畑もありますが、何れにしても一人當り七畝十五歩の土地から出來る所の食糧は一人では食ひ切れないのであります、それにも拘らず食糧の不足と云ふことは、何か農政の上に矛盾があるのではないかと思ふ、其の矛盾の一、二を申しまするならば、政府は供出と分配だけを考へて絶對量を増す所の生産力に力を注いで居ない、其の例は全國一億六千萬坪の戰災地、之に昨年の十一月に何故全面的に麥を植えさせなかつたか、強權發動はこんな時に使ふべきものである、さうしたら段當り三俵として百五十萬俵の麥が出來た筈である、詰り百五十萬俵だけ買出しが減つた筈であるのであります、食糧不足以來の矛盾した所の例が是であります、農林大臣も當時農政局長をして居られたのでありますから、其の責任は免れないことと存ずるのであります、もう一つは國土の面積は限定されたが未開拓の天地が無限にあることを忘れてはならない、地は地球の中心まで、天は無限の虚空に至るまで使用されることは御承知の通りであります、先づ現在の所農林省で使用して居る國土は、地表から約五寸位しか使用して居ないのであります、全國三百萬町歩の水田を一寸深く耕せば一石の増收がある、即ち一寸一石、二寸二石の増收は確實であることは、現に滋賀縣の若林氏でなくとも、私も其の體驗者の一人であるのであります、前申上げた肥料工場を農村に分散することが間に合はなくても、堆肥段當四百貫、凡ゆる方法を以て造りますれば、三千萬石の増收は簡單であるのであります、是が出來まするならば食糧は外國に依存せず、少くとも食糧だけは獨立國となり得るのであります、食糧自給自足の原則の下に特別都市計畫を立てるべく現在の計畫の變更を御願ひ致したいのであります、それとも永久に國民食糧の、言ひ換へれば生命の糧を外國に依存せんとする御考へであるかどうか、食糧問題と都市計畫とは深い關係がありまするからして、此の點を御伺ひする次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=4
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005・大橋武夫
○大橋政府委員 復興院當局と致しまして只今の原尻議員の御質問の中、私共に關係したものに付てだけ御答へ申上げます、御述べになりました通り、戰災地の復興計畫に於きまして他の部分との國土の全般的の利用と云ふ點を再檢討して此の國土全體の利用と云ふ見地から都市計畫を決定して行くと云ふことは、洵に同感に存ずるのであります、復興院と致しましても昨年以來戰災都市の計畫を研究致しますると併行致しまして、關係各省と寄り寄り相談致しまして、目下國土全體の利用の計畫と云ふことに付て調査中でございます、此の問題に付きましては所謂國土計畫と云ふ──是は戰爭前から左樣な國土計畫が政府部内に於てはございました、此の戰前乃至戰爭中の國土計畫は、所謂國防國家體制を完成する爲の國土計畫でございまして、主として國防經濟の上に於ける自給自足を目標と致して居つたのでございまするが、今日の時代に於きましては此の國土計畫と云ふものは、御述べになりました如く「ポツダム」宣言受諾を前提と致しました平和國家の建設、特に將來日本國に許されるべき自由貿易と云ふものを豫想しまして、平和的國家としての日本國の各種の産業、其の他のものを決定して行かなければなりませぬ、斯樣な平和國家を前提としての國土計畫と云ふものが樹てられなければならぬのであります、此の點に付きまして政府に於きましては、只今内務省を中心に致して調査中でございます、此の國土計畫の線に沿うて戰災都市の計畫が決定せられなければならぬと云ふことは固より申すまでもないのでございます、此の計畫に於きましては、勿論將來國民の生存の基礎になるべき食糧の問題は、國民經濟復興の他の基礎となるべき平和産業の再建の問題と同時に重要なる問題を占めるものであります、又都市に色々な施設が集中して居つたと云ふことが過去の都市計畫の癌でございましたけれども、是等の各種の文化的或は産業的、教育上の左樣な施設を各地に分散させて行くと云ふことも、やはり此の國土計畫の一環として調査決定せらるべきものでありまして、只今調査中の國土計畫の大きな問題の一つに相成つて居る次第であります、尚ほ本案に於きましては、只今御述べになりました事項の中、最後に御述べになりました點、特に食糧と都市の關係及び其の都市の附近に於ける農業適地を確保すると云ふ問題に付きましては、規定を致してあるのでございます、是は此の法案の中にございまする緑地地域の設定の問題でございます、此の緑地地域は都市の周邊に於て設定せられるのでございまして、此の地帶に於きましては、住宅、工場等の所謂都市の膨脹に伴つて生ずる所の一切の建築物が制限せられ、主として農業地帶として是等の土地が確保せられるのであります、之に依りまして都市の周邊部に左樣な地帶が設けられまする結果、從來ありましたやうな都市の無制限の膨脹と云ふものが、合理的に制限されて行くと云ふのが此の規定の狙ひになつて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=5
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006・重田忠保
○重田政府委員 只今の御質問の中、第一の問題に付きまして、復興院當局としての考へを一應率直に申上げて、御答辯申上げたいと思ひます、御話の通り今囘の戰災は全國百二十餘の都市に亙りまして、其の面積から申しましても、一億六千萬坪と云ふ厖大な土地が戰災に遭うて居るのであります、隨ひまして此の機會に眞に國家百年の見地に立ちました立派な都市計畫を樹立すると云ふことが、御説の通り極めて肝要であると考へます、御話の中にもございましたやうに、東京は大震災で舊地域の大半を燒失致したのでありますが、其の後の復興計畫は、今日から考へますと結局消極的なものであり、又必ずしも當初計畫したやうに實現出來なかつた、一例を擧げますれば、相當所謂不燃都市と云ふことが叫ばれ、「コンクリート」建築物と云ふものが當時唱へられたにも拘はらず、結局舊態依然たる木造家屋の連續となりまして、災害防止の見地から申しますと非常に遺憾な都市が出來上つてしまつたことは御話の通りであります、今囘の戰災の後こそは其の轍を履まないやうに、相當立派な都市計畫を立て、將來に備へたいと云ふことを我々としても念願として居る所でありますそこで昨年十二月の戰災復興に關する處理方針と致しまして、政府が決定致しました中にも、或は道路或は緑地、或は又土地の利用其の他の各種の問題に付きまして、相當根本的な思ひ切つた所謂復興案と云ふものが、基本方針として示されてある譯であります、それに基きまして、現在全國の各都市は、何れも再建の計畫を樹つて居る譯であります、道路或は緑地地帶に付きましても、從來に比較致しまして相當思切りました計畫を樹てまして、現在各都市の計畫が着々と進行をして居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=6
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007・林田正治
○林田委員長 只今原尻君が總理大臣、文部大臣、農林大臣の答辯を要求されましたけれども、此の席に御出席がありませぬから、何れ適當の機會に於て御答辯を願ふことに致します──次に山下榮二君に發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=7
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008・山下榮二
○山下(榮)委員 此の機會に一、二伺つて見たいと思ふのであります、第一に伺ひたいと思ひますことは、戰災後日本の都市の形成と云ひますか、都市の建設には、餘程從來と違つた考へ方を持たなければならぬのではないかと想像されるのであります、從來兎角都市を無暗に大きくすることのみに汲々として居つたやうな感が強かつたのであります、併し戰災を通じて我々の考へることは、もつと國が都市の造り方に付て根本的な方針を定めて、都市の建設に向ふべきものではないかと思ふのであります、例へば人口の點に於きましても、或は其の密度の點に於きましても、家屋の點に於きましても、空襲の教へた經驗から致しましても、餘程思ひ切つた、將來の日本の都市形成と云ふことに對する御考へを持つて戴かなければならぬのではないかと思ふのでございます、或は復興院の方では恐らく左樣な方面のことに對して、仔細拔かりはないと想像は致して居るのでありますけれども、此の際其の邊の御考へがあれば、御聞かせ願ひたいと思ふのであります
次に伺ひたいと思ふことは、本日説明を伺ひました復興事業の大部分は、從來は都市に於ける區劃整理が中心のやうに拜聽致して居るのであります、私は國土計畫と云ふのですか、國の大方針を定めて、例へば國土計畫上から考へる所の國の主要路線、主要幹線と云ひますか、此の決定を見まして、其の線に沿うた各都市の、今説明をされました區劃整理の如き制度が行はれなければならないのではないかと考へるのであります、殊に從來の都市計畫の面から考へましても、それ等の點が巧く行つて居ないと思ふのであります、隨て速かに國土計畫の方と緊密な連絡を取つて、我が國の道路、主要幹線の大計畫を樹立さるべきだと思ふのであります、其の線に沿うた各都市の復興的な區劃整理が進められて、本格的な都市の形成をなすべきものではなからうか、斯う想像致すのであります、其の邊に對する所の復興院の計畫が奈邊にあるかを伺ひたいと思ふのであります
更に其の施行に至りまして、此の復興の計畫ではなくして事業に移りまして、大體話を伺ひ、或は此處にあります戰災復興計畫基本方針の中に書いてあります所を見ますと、市町村長に大體に於て執行させると云ふのが原則のやうに伺つて居るのであります、單なる從來の都市計畫の面から眺めて見ますと、從來の都市計畫は、其の事業はそれぞれの市町村に施行を行はしめて居つたのであります、其の結果は財政裕かな府縣、財政裕かな都市は、それぞれ都市計畫路線の完成を見るのでありますけれども、財政貧弱な府縣、財政貧弱な都市と云ふものは、計畫其の儘でまだ事業施行に入つて居ない部分も澤山あるのであります、道路は目的地から目的地に到達致しまして初めて道路の價値があるのであります、機能を發揮することが出來るのでありまして、一部分だけ道路が出來たのでは、道路の價値を現はすことが出來ないのであります、然るに從來左樣なことの弊害が澤山地方に見られるのであります、例へば大阪、兵庫縣の場合を見てみましても、財政豐かである大阪は、兵庫縣との境までは立派な都市計畫道路が出來上つて來て居るが、兵庫縣に參りまして其の路線が杜絶を致して居る、洵に醜くもありますし、其の道路の機能を發揮することが困難な實情に立至つて居るのであります、折角多額の費用を投じて作り上げました其の大阪府の都市計畫路線と云ふものは、其の多額の費用を投じただけの價値を利用することが出來ないのであります、隨て私は此の施行に當つては、もつと強力な、國家の施行に對する一つの方針を定めらるべきであると思ふのであります、例へば今此處にあります所の、此の事業に對する補助金の問題だと思ふのであります、其の補助金の問題が如何樣な方法で補助されるか、其の地方の財政の貧富と云ひますか、財政力のある所とない所に對する切盛までも出來るものであるかどうか、其の邊に對してどう考へていらつしやるか、出來るだけ私は線を揃へて、足並を揃へて其の復興が緒に就くやうにして戴きたい、斯う御願ひを申上げたいと思ふのであります
更にもう一つ伺ひたいのは、緑地帶の建設に付きまして、最近非常に食糧に困難致して居ります時、此の要綱を眺めて見ますと、市街地面積の大體一〇%の緑地帶を持つ、斯う書いてあるのでありますが、一〇%と云ふ緑地帶は相當思ひ切つた緑地帶のやうにも考へられるのであります、それ等を直ちに緑地帶と云ふことでなくして相當期間食糧の緩和策として、之を食糧増産の面に暫く供用するやうな方法が執られないものか、其の邊のことも伺ひたいと思ふのであります
もう一つ、一番最初に申上げたことに戻るやうでありますけれども、都市の建設に向ひまして、先程私は一定の目安を持つて戴きたいと云ふことを申上げたのでありますが、最近東京都、或は五大都市は勿論、それに近い都市には轉入を絶對に許されて居ないのでありますが、私は唯單に轉入を許さないと云ふことだけでは、都市の人口増加を防止し得ることは到底困難だ、斯う考へて居るのであります、今茲に問題になつて居る所の戰災復興計畫の上から考へまするならば、將來の都市の形成は、人口をそれぞれ配分調和を取る爲には、諸官廳、或は學校其の他の施設の配分の適當な方法を執るのでなければ、其の目的は達せられない、斯う考へて居るのであります、殊に將來平和文化國家として建設さるる日本に立至つて考へます時に、それ等の方法が、唯從來の如く東京都を中心とする、一つの東京のみに物事が集つて參ると云ふ考へ方ではなく、色々地域を決めて分散的な方途を考へらるべきが最も適當ではなからうか、斯う考へるのでありますが、それ等に對する復興院當局の考へ方の程を伺ひたいと思ふのであります
最後に伺ひたいと思ふことは、本戰災復興計畫は、唯單に先程申上げましたやうに區劃整理を中心とする考へ方のやうにありますけれども、私はもつと是は大きく、色々なことを取入れた復興計畫をされるのでなければならぬのではなからうかと思ふのであります、例へば日本の産業復興と云ふことを考へます時に、産業の中心と言はれて居ります所の大阪、殊に大阪の中でも西大阪、或は兵庫縣の尼崎、此の地方では年々歳々戰災と等しいやうな水害に見舞はれて居るのであります、此の本要綱の中に、都市防災と云ふ言葉があるやうでありますが、是等を考へて見ます時に、それ等に對する對策も併せて考へらるべきではなからうかと私は思ふのであります、例へば私は尼崎に住んで居りますが、尼崎のあの工場地帶と云ふものは、年々歳々土地が沈下すると云ふ問題から致しまして、殆ど一年三囘二囘高潮に襲はれて居るのであります、高い所は五尺乃至は一丈近くも工場が浸つて、毎年其の損害と云ふものは一億圓以上を算すると言はれて居るのであります、「モーター」機械其の他が潮水に浸る爲に夥しい損害を蒙つて居るのであります、是等に對しても、私は都市防災と云ふのですか、或は日本の産業復興の面から考へましても、適當な處置を講ぜらるべきではなからうかと思ふのであります、一つの戰災と等しいやうな被害を受けて居るのでありますが、是等は或は御説明に依ると、普通の都市計畫、或は國土計畫の線でやらなければならぬと仰しやるであらうと私は思ふのでありますけれども、それ等の方とも緊密な連絡を執つて、それも是も一切整つた復興の計畫を立てるのでなければ、兎角我が國の今日までの色々な計畫と云ふものは部分的にのみ考へられて、復興計畫に當られる方は戰災復興のみに考へられる傾向が強いと思ふのであります、或は農林省の場合は農林省のみに物事を考へる、商工省の場合は商工省のみに物事を考へると云ふ考へ方が強いやうでありまして、此の戰災復興こそは凡ゆる方面に眼を配りまして、日本の都市の再建でありますから、新しき日本都市の建設でありますから、各方面に眼を注いで完全無缺の都市を建設する、斯う云ふ考へ方で進んで戴きたいことを私は御願ひしたいと思ふのであります、さう云ふ方面に對する復興院の方の御考へは如何樣な御考へをなしていらつしやるか、此の機會に伺ひたいと思ふのであります、以上諸點に付きまして當局の御説明を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=8
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009・重田忠保
○重田政府委員 御答へ致します、第一に、將來の都市の建設に對する根本的な考へ方はどう云ふものであるかと云ふ御質問でございましたが、御話の中にもありましたやうに、從來日本の都市と云ふものは殆ど無秩序に、唯横擴がりに擴がつて大きくなつてしまつたと云ふ都市が非常に多いのであります、それが防災、或は保健、能率、色色な點から考へまして、今日非常に困つた問題になつて居ると云ふことも御話の通りでありまして、我々と致しましては、將來の日本の都市と云ふものは、もつと小さな、立體的な、住み好い美しい都會でありたい、斯樣に考へて居る譯であります、それが又一面から言ふならば、人口の問題、或は交通の調節と云ふやうな問題、保健の問題、さう云ふことの總ての解決に行くのではないか、斯樣な見地から致しまして、實は今囘の全國戰災地の都市計畫の基本方針も定められてある譯でありまして、地域的にも小さな立體的な都市が出來る、斯う云ふのが大體の狙ひになる譯であります、それには申上げるまでもなく、獨り都市計畫法或は特別都市計畫法の關係ばかりでなく、市街地建築物等に依ります建築物の方からの問題がある譯でありまして、此の方は目下色々改正の點を審議致して居りまして、或は次の議會あたりに御審議願ふことになるかと思ひます、兎も角根本的にはさう云ふ考へを以て進んで居ることを御諒解願ひたいと思ひます
それから第二には、此の國土計畫との關聯に付ての御話がございましたが、是も仰せの通りでありまして、我我の方の都市計畫と國土計畫とは、切つても切れない密接な關係を持つて進んで行かなければならぬことは當然でございます、最後に御話のございました、都市の施設の分散と云ふやうな問題に致しましてもさうでありますし、或は又道路計畫等に付きましてもさうであります、さう云ふ點に付きましては内務省の方と十分な連絡を取りまして、例へば國道等の關聯に於きまして、國道が戰災都市内を通過する場合も澤山ございます、さう云ふものは内務省の方の色々國土計畫の面からの將來の計畫と關聯致しまして、それに依つて我々の方の都市計畫路線も決めて行く、斯う云ふやうなことを現實にやつて居る譯であります、更に其の關係は獨り道路のみならず、例へば鐵道等に付てもさう云ふことが言へるのでありまして、是等も鐵道省なり何なりと十分な連絡を取りましてやつて居りまして、是は益益さうして參りたいと考へて居ります
尚ほ最後に、西大阪及び尼崎の土地沈下の問題に付ての御話がございましたが、是は西大阪及び尼崎のみならず、他の都市にも同樣の現象のある處もあるのでありまして、之に付きましては具體的な問題として、今我々の方でも色々研究を致して居ります、私共も西大阪、尼崎の實状等も能く承知致して居りまするし、之を技術的の見地から、今少しく檢討する必要があると思ふのであります、此の點に付きましては、我々の方の問題、同時に又内務省の方の問題と致しまして、政府と致しましては研究を致して居る次第であります、御話の通り戰災復興は凡ゆるものの上に立ちまして、總てを綜合した結果に於て立派な日本の都市の再建をしなければならぬと云ふことは御話の通りでありまして、我々もさう云ふ心組みで現在仕事を進めて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=9
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010・阿部美樹志
○阿部(美)政府委員 山下委員の其の他の御問ひに對して御答辯申上げます
市町村長に於きまして事業を執行することになつて居りまする關係上、事業の進捗が各市町村財政の影響を受けて、一齊に揃つて行かない心配がありはしないかと云ふ點でございまするが、此の點に付きましては、政府と致しましては此の事業に付いての國庫補助と致しまして、今までにない高率を豫定して居ります、現在豫想されて居りまする補助率と致しましては、區劃整理に付ての國庫補助は大體八割、道路に付きましては、大道路に付ては四分の三、其の他の道路に付ては二分の一と云つたやうな、相當高率な補助率を見込んで居るのであります、勿論是だけの補助を致しても、市町村の負擔しなければならぬ點が尚ほ相當多額に上るのでございます、是等の事情に付きましては、戰災都市及び戰災市町村の財政の問題と致しまして、内務省としても將來特別な考慮をされる筈でございまして、市町村財政が貧弱である爲に都市計畫の事業の實現が後れて行くと云ふやうなことは、只今の所豫想致して居りませぬ、出來るだけ斯う云ふ色々な國庫補助ばかりでなく、財政の交付金、其の他市町村財政の全般に付ての問題、兩方の面から一齊に推進出來るやうに、將來とも努力致したいと存じて居る次第でございます
それから緑地の利用方法、殊にここ數年の間、食糧事情が現在の實情で推移致しまする限り、出來るだけ緑地として豫定された土地を食糧増産の一翼として利用するやうにしてはどうかと云ふ御尋ねでございますが、之に付きましては、復興院と致しまして全く同意見を持つて居ります、特に急ぐ事業から先へ行きまして、緑地の造成の如きは自然後れることが多いと思ひます、其の間空いて居る土地を出來得る限り利用して行く、殊に緑地ばかりでなく、街路の豫定地等に付ても、工事の實施までは出來る限り食糧増産其の他に利用すると云ふ方針を執つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=10
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011・山下榮二
○山下(榮)委員 私言ひ廻しが惡かつたのかどうか分りませぬが、もう一つ伺つて置きますが、從來の都市計畫事業等に付て、府縣乃至都市の財政事情に依つて道路が造られて來て居る譯でありますが、さう云ふことから考へまして、私は少くとも此の復興計畫と云ふものは國の幹線道路、主要道路と云ふものの大決定を見て、其の幹線道路に副うた復興計畫と云ふものが樹立されて參らなければならぬと考へて居りますが、さう云ふ方面のことは先程觸れられたやうにも思ひますが、明確を缺いて居ると思ひますので、國土計畫、或は内務省と緊密な連絡を取られて、遺憾のないやうに處理されつつあるものであるか、國は將來日本の理想的な建設を目指して、交通面、殊に主要路線の決定が出來て居るものでありますか、其の線に沿うたものであるかどうか、復興計畫はそれとは全然別個の考へで進められて居るものであるか、其の邊のことを伺つて置きたい、斯う思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=11
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012・阿部美樹志
○阿部(美)政府委員 國土計畫に於きましては、主要幹線の問題は勿論其の一部として取上げらるべき問題だと思ひます、と同時に將來に於ける鐵道改良計畫、又港灣改良の施設、斯う云つた將來の交通の各種の施設が、國土計畫として決定せらるべき問題であるのでございまして、此の點に付きましては、現に内務省に於ても著々調査中でございます、隨ひまして、現在までに決定して居りまする戰災都市の計畫に於きましても、此の豫想せられる將來の國内幹線街路、殊に國土豫定線、或は又所謂彈丸列車と云ふやうな、將來豫想せられて居ります鐵道改良計畫、それから現在の所今後施設さるべき事業として豫想せられますやうな港灣改良計畫、或は又高速度鐵道と云つた問題を前提とし、それとの緊密な關聯に於て、又それの出來得る限りの便宜を計畫の中に於て與へ得るやうな、それらの計畫を織込んだ上で、個々の都市計畫をやつて行くと云ふやうな考へ方をして只今計畫中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=12
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013・林田正治
○林田委員長 一寸ここで御紹介申上げます、只今協同民主黨の原國君が委員を辭任されて、同君の補闕として新たに鹿島透君が委員に指名されました、通告順に依りまして鹿島君の發言を許します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=13
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014・鹿島透
○鹿島委員 私は今日は時間もないやうでありまするから、主として大雜把なことを聽きまして、此の次の委員會で小さい點を伺つて、十分質して見たいと考へて居りますが、その前に希望を申上げたいことは、私は此の委員會には戰災復興院の方々のみならず、内務省の方が當然御列席にならなくてはならないのではないか、それでなければ先程からの質問もありますが、其の質問に對して十分の納得の行くやうな答辯が得られないのではないか、そんな風に思つて居りますので、此の次の委員會には是非内務省、特に國土局方面の責任のある方の御列席を希望して置きます
第一に御尋ねしたいことは、此の法案の根本的な性格に付てであります、是は提案の御説明に依つて大體分りましたけれども、併し何か知らん私の氣持としては、もうちつと御當局に於ても突進んだ立派なものにしたいのだけれども、現にある所の都市計畫法なり、或は市街地建築物法、其の他の色んなことに拘りがあつて、尚又戰災復興院の機構の關係、内務省との關係、さう云つたことで自分達の思つていらつしやる、本當の理想を盛り込んだ戰災復興の法案を作り得なかつたと云ふ御憾みがあるのではないか、先程から聞いて居りましても、御言葉の中にさう云ふことを私は汲み取ることが出來るのでありまして、私が第一に質したいのは其の點であります、言ふまでもなく、我が國が今囘の終戰に依りまして、今後殊に平和的な國を造つて行く──是はもう都市に限らず、地方農村もさうでありますが、新たな構想、新たな考へ方の下に總ての文化、産業を考へ直して行かなくてはならぬのでありまして、此の際宜い加減の所で徹底しない法案を作つて、其の法案の下に出發致しますと、結局將來に於て取返しの付かない、悔いても及ばない結果を招來しはせぬか、さう云ふ意味に於きまして、私は此の法案の性格を、今までの御説明を承つた所ではどうも徹底した大きい見透しの上に、今後國家百年或は千年の大計の上に樹てられたのではないのではないか、さう云ふことも當局としては認めていらつしやつて、兎も角も戰災地の復興を早くやらなければならぬからと云ふので、之を御出しになつたのではないか、さう云ふ根本的な性格に付て、はつきりと率直な御考へを更に御話し願ひたいと思ふのであります、之を尚ほ具體的に申しますと、今までの都市よりかちつと形の變つた、新しい時代に即した都市にしたいのだけれども、此の法案實施の結果は、從來の大都市のやうな弊害を持つた都市になりはしないかと思ふ、さう云ふ不安が當局にあるのではないかと考へて居るのであります、さう云ふことであるとしたならば、急ぐことも必要でありますけれども、併し此の際お互に──政府の方でも國民全體としても十分之を考へまして、將來悔ゆることのない立派な法案を作ることが必要であると考へて居ります、其の根本的性格に付て、今一應當局の僞らざる御氣持を御表明願ひたいと思ふのであります
それから先程申しましたやうに、此の法案は都市計畫法竝に市街地建築物法等と密接不可分の關係にあります、特に都市計畫法とは一緒に行ふものであります、所が現在の都市計畫法なり市街地建築物法等は、是は大正八年頃に作られたものでありまして、十三年頃から行はれたと考へて居ります、其の頃の我が國の産業、文化の方面の状態、色々なことを考へ合せて見ますと、今とは非常に違ふのであります、言ひ換へますと、資本主義的な經濟體制の下に、所謂大都市中心の文化が打立てられまして、都會が段々膨脹して、其の色々な缺點を暴露して居る、之を何とかして是正しようと云ふ氣持の下に作られたのが此の都市計畫法、或は市街地建築物法であります、所が今度出來ました所の戰災復興の法案は、是は殆ど都市に依つては全然潰れたと云つて宜いやうな都市があるのでありまして、唯從來ある都市を是から是正して行かうと云ふのでなく、全くここに新しい都市を作つて行かうと云ふやうな立場にあるものであります、それでありますから、やはりそれに付ては將來のことを見透して、本當に新たな構想の下に、理想的なものをやつて行くと云ふ考へで此の法案を立てなければならぬ、さう云ふ考へもあつて此の法案を御出しになつたと思ひますが、政府御當局でも何等か物足らない氣持がおありのやうに想像申上げるのでありますが、さう云ふ譯でありますから、どうせ此の現在の都市計畫法、或は市街地建築物法──市街地建築物法に付ては、先程改正の用意があることを申されましたが、都市計畫法も併せて今度改正をする、此の都市計畫法と市街地建築物法と特別都市計畫法と、此の三つを同時に改正して、一緒に出して審議してこそ、初めて我々の考へるやうな、從來と思切つて變つたものが出て來るのではないかと云ふ氣持を持つて居ります、市街地建築物法に付ては先程出ましたが、都市計畫法に付て改正の意圖があるかどうか、是は是非やらなければならぬと考へるのでありますが、此の點に付て御伺ひ致したいと思ひます
それから、先程から色々御質問がありまして、それに對する御答へを伺つても、内務省の方でやつて居る國土計畫の方と連絡を執つてやつて行くのだと云ふ、所が國土計畫が一體どう云ふやうに進捗して居るのか、どう云ふ構想の下で行はれて居るのか、我々一向分らぬのでありますが、此の方は内務省の方で、尚ほ戰災復興の方は復興院で、又一般都市の方は内務省でと云ふやうな、さう云ふちぐはぐなことでは、とても國土計畫なり、或は國土計畫を基本にした舊都市竝に新都市の復興は出來ないのではないかと考へます、斯う云ふことは無論復興院が主としてやつて行くのが當然でありますが、それだけでは十分でないのではないかと考へますので、復興院の仕事及び内務省の國土計畫局の仕事、それ等を一緒にして、國土省と云ふやうなものを御作りになつてやられれば、さう云つた大事な將來の國家の計畫が實に綜合的な、而も有機性を持つた、而して非常に力強いものになつて行くのではないかと考へるのであります、是は今日御尋ねしましても、之に對する御返答は恐らくなからうと思ひますが、どうか國土省の設置の意思はないかと云ふことを、内務省の方にも御尋ね下さいまして、此の次の委員會の時御答へを願ひたいと思ひます
私の考へとしては、先程申しましたやうに、どうしても茲に強力なるさう云つた一省を設けて行くにあらざれば、到底戰災復興の方も十分行かない、尚ほ國土計畫の方も巧く行かないのではないかと考へて居ります、今日は時間の都合もありまして、是だけを御尋ね申上げまして、後は此の次の委員會で更に質問を續けたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=14
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015・大橋武夫
○大橋政府委員 都市計畫法と特別都市計畫法の關係に付て御答へを申上げます、從來都市計畫に關する法制としてございました都市計畫法、是は御話の通り相當古い立法でございまして、殊に終戰後の今日と致しまして、其の内容に付きましては、今日の事態から見て相當檢討を要する部分があり、殊に又戰災地の復興をやるに付きましては、或る程度其の不備を補はなければならぬと云ふ點もございます、此の問題は現在復興院と致しましても調査中でございまして、市街地建築物法の改正の問題と併せて調査中でございます、成案を得次第御審議を願ふやうになると思ふのであります、唯特別都市計畫法を立案するに付て、内務省との關係上やりにくい點がありはしなかつたかと云ふ御尋ねでございまするが、此の點に付きましては、戰災地に關ししまする限り、都市計畫法も市街地建築物法も、復興院の關係して居る都市に付ては復興院が管轄することになつて居りますので、戰災都市の都市計畫法の實施に付きましては、直接内務省の管轄になつて居りませぬ、隨ひまして、此の都市計畫法の運用上復興院が不便をすると云ふことはない譯でございまして、唯現在の法規では、復興院と致しまして戰災都市の復興上不備な點があるので、之を改正する必要があつて目下調査を致して居る次第であります、今囘特別都市計畫法だけを切離して出しましたのは、都市計畫法竝に市街地建築物法に關する調査をして、尚ほ一部未了の部分がございますので、是が完了した後に改正法案を提案するやうにしたい、特別都市計畫法に於きましては、特に其の中で最も急速を要する點、即ち緑地地帶の指定と云ふ問題は、是は特別都市計畫法が出來ませぬと、防空法に依つて現在實施して居りまする關係上、防空法が近く效力を失ひますので、此の次の議會まで待つことが困難であると云ふ事情がございます、それから區劃整理の點に付きましては、區劃整理を急速に實施しなければならぬ關係上、是亦次の議會まで待つことが出來ないのであります、斯う云ふ事情で、特に急速を要します點のみを今囘の法案の内容の基底として取上げて居るやうな次第であります、どうぞ左樣御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=15
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016・林田正治
○林田委員長 本日は別に發言の通告もありませぬので、是を以て散會致します、次會は明後十五日月曜日の午前十時と致したいと思ひますが、尚ほ公報を以て御通知申上げます、本日は是にて散會致します
午後零時十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009012788X00219460713&spkNum=16
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