1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
復興金融金庫法案(政府提出)
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昭和二十一年九月五日(木曜日)午前十時五十五分開議
出席委員
委員長代理理事 寺尾豊君
理事 平岡良藏君 理事 細川八十八君
理事 町田三郎君
石原圓吉君 片岡伊三郎君
原藤右門君 村上勇君
苫米地義三君 舟崎由之君
宮前進君 澁谷昇次君
松本七郎君 宮村又八君
森三樹二君 小川一平君
岡田勢一君 福田繁芳君
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 三井武夫君
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本日の會議に付した議案
復興金融金庫法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=0
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001・寺尾豐
○寺尾委員長代理 只今より會議を開きます、昨日に引續いて質疑に入ります——苫米地君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=1
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002・苫米地義三
○苫米地(義)委員 本案は極めて簡單なやうに見えますけれども、是から補償打切問題に絡みまして、あと重要法案が一聯の關係を持つものと思ひますから、少し廣汎でありますけれども、聊か質間を致したいと思ひます、時間の制限がございますから、出來るだけ端折つてやりたいと思ひますが、御答辯も簡潔で結構であります、唯成べくは具體的に御答へを願ひたいと思ひます
先づ第一に伺ひたいことは、本金庫の主務大臣のことであります、此の間本會議で大藏大臣は、主務大臣は大藏大臣と商工大臣だと云ふことを言明されて居りましたが、昨日商工大臣の御話に依りますと、まだ決定して居らぬと云ふやうな御言葉でありました、どちらが本當でございませうか、又政府としてはどう云ふことを希望して居られるのでございませうか、其の點を先づ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=2
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003・星島二郎
○星島國務大臣 大藏大臣の言明された如く、又私も昨日此處で申上げました如く、共管であることを希望して居るのであります、それで色々勅令或は省令、命令等がありますから、それを全部纏めて決定したいのでありますが、大體に於きまして共管として置きたい、唯共管の場合、大藏省は固より、農林省も其の他の省も皆それぞれ關聯があるのでありますが、商工省が一番關係が深いから、産業關係の省を代表して之に參加することが宜いだらう、斯樣な考へから大藏大臣及び商工大臣、斯樣に願ひたいと思つて居る譯であります、今の場合大體十中の八、九は其の目的通りに行くだらう、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=3
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004・苫米地義三
○苫米地(義)委員 此の金庫の性質から申しまして、形は金融のことでありますけれども、實際は産業の再建であります、隨ひまして金融の運營は其の軍點を産業復興と云ふことに結集しなければならぬと思ふのであります、若し共管でありましても、其の比重をどちらに置くか、斯う云ふことになるのでありますが、どちらも宜い加減な共管であれば、此の金融金庫の使命と云ふものは完全に履行されないと私は思ふのであります、隨ひまして、其の本當の目的の産業復興と云ふ立場に還りまして、さうして寧ろ重點を産業の任に當られる方面で主に主管されるのが妥當ぢやないか、斯う考へるのであります、農林中央金庫が大藏省と農林省の共管でありますけれども、主たる運營の監督は農林大臣がやつて居る、斯う云ふことになつて居りますが、今囘の此の金庫に對しては、其の共管の比重はどう云ふ風に御考へになつて居るのでありませうか、其の點を一つ伺ひたいと思ひます、それから同時に共管が一面弊害を起す場合が相當ございます、例へば兩方の監督を受けます爲に、當事者は非常に運營上苦しむのであります、若し其の爲に一つの官廳の連絡だけでも相當時間を費すのに、兩省に連絡を取らなければならぬと云ふことでありますれば、今のやうな急速を要する産業の復興に對しては非常に其の點は弊害が伴ふと思ふのであります、又斯樣な臨時的な事業を完成するには、官廳の方から餘りに干渉が多いと是れ亦工合が惡いと思ひます、それ等に對する何か申合せでもございまするか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=4
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005・星島二郎
○星島國務大臣 商工省の側から申しますと、或はあなたの御説のやうなことも考へられぬこともありませぬけれども、今囘此の金融と云ふ名前を付けた所からでも大體の性質は分るのであります、隨て仕事其のものは金融に相違ないけれども、併し如何なるものに金融するか、而も早急に決定するのには、現場省である商工省から、此の産業へは出して呉れるやうにと云ふことの鑑定をする、さう云ふことを基本的に最初に決めまして、さうして金を貸す、其の他の事務は金融でありますから、さう云ふことは無論大藏省にやつて貰ふ、大藏省の主務大臣としての御監督を願ふと云ふ工合に、根本法則の本だけを十分連絡して置きまして、從來ありましたやうな共管の弊を免れる爲に、最初に十分打合せをしまして、さうして是れ是れに付ては商工省の方の意見を徴せられると云ふやうなことにして、仕事其のものは寧ろ大藏省の監督に任してしまふと云ふことの方が、却て私は仕事がし宜いだらうと云ふ考への下に、是から後に其の打合せの色んな諸規則を決めたい、だから「レート」から言へば、今度のが所謂銀行式の金融ぢやないから、あなたの仰せられるやうな、詰り事業官廳である商工省側に任されて宜い、併しながら一旦其の方針が決まつた後に於ては、所謂普通の銀行式の間違ひのない金融本位の仕事をやつて貰ふと云ふ點から申しますれば、今度大藏省の監督に移される、だから主たる監督は大藏大臣にならう、斯樣に考へて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=5
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006・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の御話で大體分りましたが、併し是は單純な金融事務の方から見ますと、貸した金は必ず返して貰はなければならぬ、此の囘收と云ふことが一つの基本になる爲に、貸出が産業復興と云ふものに副はない懸念があり得る、それでありますから、一番宜い貸し方は金も囘收になり、産業復興も目的を遂げると云ふことでありませう、けれども動もすれば金の囘收を急ぐ爲に復興に必要なる資金を澁る爲に目的を害する場合があると思ふのであります、私は此の場合に於きましては刻下の重大な産業復興でありますから、百億位の金は犧牲に供しても、其の目的を達する爲には突進して助け合つて宜いぢやないか、斯う思ふ位でありまして、其の點に對しましては、唯事務的に金融をすると云ふ面からは私は出來得ないと思ひます、さればと云つて放漫なる貸出をしますと、元も子もなくなるやうな形になりまして、此の點は又大いに考へなければならぬ、隨ひまして之を運營する當事者の人的構成と云ふことが一番重大になつて來ると思ふ、此の理事長、副理事長、所謂是だけの金を扱つて、而も全面的に日本の産業を見下して要點に投資をして行くと云ふことに付きましては、非常に其の人選を考へ、嚴正公平であり、而も國家の經濟に對する立派な抱負を持つて居る人、斯う云ふ方が此の局に當らなければならぬと思ひますが、それ等に對する御構想がございませうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=6
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007・星島二郎
○星島國務大臣 仰せの通りに考へますので、大藏大臣とも能く協議致しまして、此の人的構成の上には——最初大藏大臣の考へでは、寧ろ産業人を主として金融陣に參加して貰ふと云ふ考へ方で居られました、勿論さう云ふ意味に於ける産業人は代表的な産業界全體の睨みの出來る適當な方を中心として考へて居られたやうに思ひます、尚ほ委員會の組織の如きも、仰せのやうな趣旨を汲みまして、其の人の顏觸れを以て成程此の仕事が出來ると云ふ信用ある人を得たい、さう云ふ氣持を以て行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=7
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008・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の御話で此の重役或は理事の顏觸れに唯産業人を竝べると云ふことだけでなしに、本當に其の仕事の中心となる人に對する考へ方を、先刻申上げましたやうな線に沿ひますことを希望致して置きます
其の次は政府の拂込資金四十億、此の投資は政府は今何處から出して居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=8
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009・福田赳夫
○福田政府委員 四十億圓の中二億圓は先般議會に提案を致しまして、只今御協贊を願ひます改定豫算に於て計上して居る譯であります、殘額の三十八億圓に付きましては、近く提案致されます追加豫算に提出する考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=9
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010・苫米地義三
○苫米地(義)委員 昨日の御答辯の中に、來年の三月まで資金が二百億圓、其の中の六十億は此の金庫で扱ふと云ふことでありましたから、此の事業の拂込だけでは當然足らなくなります、隨ひましてあと二十億なり或は六十億なりは、他に債劵の發行に依らなければならぬと思ひますが、是は民間から債劵を賣出して消化が出來ると云ふ御見込でありませうか、或はさうでなくて他の方法でやらうと云ふことでありまするか、其の點を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=10
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011・福田赳夫
○福田政府委員 債劵の消化に付きましては、理想と致しましては、一般市中に於て消化致したいのであります、併しながら只今の金融界の實情に於きましては、中々消化が難かしからうと思ふのでありまして、具體的に只今の所考へられます債劵引受の方法と致しましては、日本銀行引受、日本銀行に於きましてそれを賣捌くと云ふやうなことが主たる方法と相成らうかと思ふのであります、併しながら理想と致しましては、實は何處までも民間市中に消化されると云ふことが建前でありまして、此の方面にも極力努力致しますし、又多少のことは民間で出來得るのぢやないかと只今の所考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=11
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012・苫米地義三
○苫米地(義)委員 さう致しますと全部が政府の手持から出すと云ふことでありまして、其の通貨の膨脹と云ふものは、相當「インフレーション」に拍車を掛けると思ふのですが、其の「インフレーション」に對する見透しは何かございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=12
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013・福田赳夫
○福田政府委員 御尋ねの點は非常に難かしい問題でありまして、後刻大藏大臣からも御答へがあらうかと思ふのでありますが、只今の状況に於きましては、通貨の増發、是は三月の緊急措置を執りました直後に於ては、相當の増發を見た譯であります、勿論當時民間預金の封鎖を致しました、それから民間に滯留致します所の現金の囘收をやつた譯でありますが、當時に於きまして大體百五十億と云ふやうな少額の流通高を見た譯であります、此の百五十億では當時の物價水準竝に經濟の實勢から見まして足りないと云ふことは勿論でありまして、急激にどんどん殖えた譯であります、併しながら最近に於きまする増勢を見ますると、當時の増勢よりは相當鈍つて居ります、今囘の金融措置の改正に依りまして、更に此の情勢は強化されるのではないかと考へて居るのであります、只今の状況に於きましては、新圓の預金と云ふものは總額で二百億ありますが、其の中地方公共團體、銀行間の預け合ひ等がありまして、一般民間からの預金と云ふものは九十五億、是が自由預金でありまして、それに對しまして通貨は御承知の通り當時の百五十億から現在は既に六百億に垂んとして居ります、四百五十億の増加となつて居るのであります、其の四百五十億に對しまして僅かに新圓の預金と云ふものは九十五億である、斯樣な悲觀すべき状況にあるのであります、今後新圓の預金を殖やすと云ふことに付て、格段の努力を致す必要があるのでありますが、如何樣にも財政の方の關係から、相當の量が放出されて居る、それから本金庫からの放出と云ふものは、只今申上げましたやうな状況で殆ど是は新圓の強化になると考へられます、今後の金融政策の重點と云ふものはどうしても新圓の吸收と云ふ方向に向かなければならぬと思ひますが、今後の當局の施策の重點は此の方面に指向したいと考へて居りますが、只今の所具體的に申上げる譯には行きませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=13
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014・苫米地義三
○苫米地(義)委員 さう致しますと「インフレーション」が進むと云ふことになるのでありますが、此の百億の金を使ひます間に「インフレーション」が進みますと、現在期待して居るやうな百億の物資は「インフレーション」に依つて其の價値を下げられますから、やはり目的の何分しか達せられない、斯う云ふことになると思ふのであります、又一面財政的方面から申しますれば、大藏大臣も此の年末には國債が二千億にならう、斯う云ふことを言はれて居りますから、其の利拂等に對しましても、非常に是は心配しなければならない状態であらうと思ふのでありますが、産業復興に對する特殊の資金でありますから、何か特別な現在の通貨と關係のないやうな方法に於て出來ないものか、研究したことはございませぬでせうか、「イギリス」は前大戰後に「カーレンシー・ノート」と云ふやうなものを發行して復興資金に使つたと云ふやうに聞いて居りますが、さう云ふ點に對する大藏省の御意見がございませうか、其の點を御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=14
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015・福田赳夫
○福田政府委員 只今の状況に於きましては、封鎖制度をやつて居りまして、此の封鎖預金と云ふものが一種の特殊な制度であります、仰しやるやうに必要な方面には特殊な場合に於きまして現金の放出を認め、又特殊な場合に於きましては封鎖拂ひの方法を認める、斯樣なことでありまして、それ自體非常に特殊な方法を採つて居る譯であります、此の上に更に特殊な方法を執ると云ふことも、考へられないことではないと思ひますが、餘りに複雜化する只今の状況に於きましては、封鎖制度と云ふ「ルート」を活用致しまして、此の「ルート」を以ちまして、是が強化に依りまして當面を切拔ける、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=15
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016・苫米地義三
○苫米地(義)委員 是は非常に重大な國家の運命をも左右する状態でありますから、何か新しい工夫を一つして戴くやうに、是は希望でありますが、ないことはないと私は思ひますから御研究を願ひたいと思ひます、其の次には一般銀行其の他金融方面で復興所要資金をどれ位調達が出來る御見込でありませうか、今後三箇年間の豫想がありますれば尚更結構でありますが、若し出來ませぬでしたら、少くとも今後一箇年間位、一般市中銀行からどれ位事業資金に投資可能であるかと云ふ御見解を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=16
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017・福田赳夫
○福田政府委員 只今の問題は基本的になりまする所の金融經濟の状況が非常に難かしいのであります、新圓預金、即ち貸付の本當の中味のある、財源になりまする所の新圓が、只今申述べまするやうに中々集りませぬ、それで結局日本銀行からの融資と云ふ「ルート」に仰がざるを得ない状況でありますが、此の日本銀行の貸出に依りますれば、結局に於ては通貨量の増加になる譯であります、今後どうしても新圓の預金を吸收しなければならぬことが中心問題であります、只今の所は新圓預金の吸收の限度と日本銀行からの融資の限度と、此の合計されたものが市中銀行の産業資金に對する融資限度でありまして、日本銀行の方の限度に付きましては、是は情勢に依りましては、出すことも出さないことも可能であります、隨ひまして數字的に幾らと云ふやうなことは考へて居らないのでありますが、どうしても總額に於きまして年末までに要する産業資金は二百億、是はどうしても出さなければいかぬだらう、斯樣に考へて居ります、其の中少くとも六十億は日本銀行から出す、それから出來るだけ多くのものを市中銀行から賄つて貰ふ、斯樣な情勢であります、洵にはつきりしない答へでありますが、御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=17
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018・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の御答へははつきり致しませぬけれども、是ははつきりしたことを望むのが無理かと思ふのでありますが、併し昨日御答辯に七割は民間の方で融通が出來るだらう、斯う御話しになつて居りますから百億を使ふ場合には其の七割の程度は民間で調達が出來るかどうかと云ふことになると思ふのでありますが、現在の私共の觀測では非常に困難ではないかと思ふのであります、もう一つは單に金がない爲に困難であるばかりでなしに、企業投資と云ふことに對する銀行側の警戒があると思ふ、なぜかと申しますと、今日投資致しますと非常に高く付きます、生産費の高い商品を賣ると云ふことは、採算上非常に困難な状態になりますので、此の方の安全な見透しが付かない限り、銀行は融資に躊躇する、隨て復興資金の大部分は私は此の金庫の方へ集中すると思ふ、政府が考へられて居りまするやうに七割は民間で引受けるだらうと云ふことはあべこべで、七割以上が本金庫の方へ集中して來るのではないかと私は想像するのであります、隨ひましてさう云ふ結果になりますと、金庫の資金と云ふものは極めて少額になるのでありますが、其の點に對する御見解を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=18
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019・福田赳夫
○福田政府委員 金庫の資金の見透しに付きましては中々困難であります、先づ凡その見當と致しまして七割、三割と云ふやうなことを考へたのでありますが、尚ほ金庫の動き方に依りましては、金庫の資金を増額する必要があるかも知れませぬ、是は百億圓と云ふのが足らなければ更に追加を御願ひする、斯樣なことに相成るのでありますが、是は今後の情勢に依りまして機動的に行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=19
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020・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今生産が比較的停頓して居りますが、或る批評家は之を生産「サボ」と言つて居ります、企業の復興が遲滯して居ること、新しい産業が計畫されないこと、及び銀行が之に對して關心を持たないことは、一種の萎縮病に罹つて居るのではないか、所謂企業萎縮、金融萎縮、兩方から私は事業に向つての投資と云ふことに危惧の念を持つて居るのではないかと思ふのであります、さう云ふ觀點から申しますと、先程申しましたやうに、民間の企業投資は少くなつて、さうして此の金庫へ集中して來ると思ふのでありますから、若しさう云ふ傾向があつて、而も國家の爲に産業の復興を一日も早く遂げなければならぬと云ふ觀測が付きましたならば、此の法律を改正するなりしまして、さうしてもつと積極的にやらなければならぬと思ふ、私は此の構想は少し小さ過ぎると思ふ、其の點に對して一つ御研究を御願ひしたいと思ふのであります、それから更に復興金融金庫と相對しまして商工省では復興建設營團、或は復興産業營團と申しますか、今の産業設備營團に代るやうな機構を作られるやうに伺つて居りますが、是は商工大臣が居られませぬからはつきりした御答辯が出來ないかも知れませぬが、御答辯が出來るならば承りたい、若しさうだとするならば、産業復興建設營團の所要資金をも是で賄ふ積りでございませうか、その點を御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=20
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021・福田赳夫
○福田政府委員 産業建設營團に付きましては、商工事務當局に於て研究中であると云ふ御話は聽いて居るのであります、併しながら未だ正式に御話を伺つたこともありませぬし、何れ是が正式な問題に相成りまする場合に於きまして、安定本部に於て研究を致し、安定本部に於て採決をすると云ふ問題があらうかと思ふのでありますが、未だ安定本部からも御話も伺つて居りませぬが、事務當局の研究して居る案の話を非公式に聽いて見ますと、其の資金は復興金融金庫から融資を受けて、さうしてそこで設備を造つて民間に貸す、或は民間で活用して貰ふ、斯樣な筋途を通ると思ひますが、詳細は未だ決定して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=21
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022・苫米地義三
○苫米地(義)委員 過日商工次官に伺つた所が、さう云ふことを今考へて居る、其の資金は幾ら位豫想するかと言ひましたら五十億と言つて居りました、さうすると此の金庫の半分は其の方で若し使ふならば使はれると云ふことでありまして、民間の方にばら撒くのは五十億と云ふことになるのでありますか、之に對して一體計畫的な施策が現にありませうか、或は今進行中でありませうか、此の實情を御洩らし願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=22
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023・福田赳夫
○福田政府委員 本金庫が構想されて居ります段階に於きましては、産業建設營團と云ふやうな形のものはまだ考へて居りませぬが、唯今囘の企業整備に依りまして相當不急の設備が出て來るだらう、之を誰が保有するか考へられないかと云ふことが同時に並行してあつた譯であります、其の保有の方法と致しましては、政府が保有するか或は特別な營團等を考へまして、其の營團に保有せしむるかと云ふ問題があつたのであります、其の「ライン」に於きまして是は何とかして何れかの方法を考へなければいかぬと云ふことで考へて居つた譯であります、併しながら其の後の段階に於きまして——つい最近でありますが、最近の段階に於きまして、設備の保有のみならず、設備を建設して之を中小工業等の者に貸しまして、中小工業の積極的なる建設を圖らなければ、經濟の復興は出來ぬのではないか、斯樣な意見が持上りまして、目下商工事務當局に於て研究して居る、斯樣な話を聞いて居るのでありまして、まだ全體的に之を組合せてどう云ふものになるかと云ふことは私からまだ申上げられませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=23
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024・苫米地義三
○苫米地(義)委員 産業設備營團は殆ど其の機能を失つて居りまして、少しも資金が續かないのであります、併し設備營團のものを轉換して肥料工場に直して居るものも數箇所ございます、此の資金が杜絶して居る爲に肥料が増産出來ないと云ふことに現實に當面して居る譯であります、今御話のやうにそれは出來るか出來ないか分らない、其の時になつて資金を考へると云ふことであれば、恐らくはあの系統に屬する肥料工場は生産は相當に延びるだらうと思ふ、現在の食糧事情に鑑みまして左樣な無方針な金融状態では非常に心細いと思ふのでありまして、此の實情を能く調査されまして、それに對しては何か急速に解決するやうに希望して置きます
其の次は通貨の安定策に付て政府は必要は認めて居られますけれども、具體的に通貨安定をどうしようと云ふ御方針がありますれば、其の點を伺ひたいのであります、今法案が提出されて居ります物資需給調整法が一面にございますが、是は今民間にあります物資竝に機械類其の他設備等を調整集中して國家産業の復興に利用すると云ふ建前で、隨分強力な力を持つ會社が出來るのでありますが、是と相即應して金融の方面でも通貨需給調整とでも申しますか、一方は物である、一方は通貨であると云ふやうな構想を持つべきだと思ふ、隨て現在の通貨を此の儘にして置いて、唯物だけ或は僅かの金を投資しただけでは、どうしても日本の産業の復興と云ふものは私は出來得ないと思ふ、此の點に對して通貨の安定策は何かございませうか、ないとは言はれないと思ふのですが、其の御考への一端を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=24
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025・福田赳夫
○福田政府委員 只今の状況に於きまして、通貨安定と云ふものは非常に難かしい問題でありますが、之をどう云ふ風にして行くかと云ふ問題であります、只今通貨面に於きまして非常に困つて居ると云ふ問題は、對鎖拂制度と現金拂制度、自由拂制度、此の兩建になつて居ると云ふ點が非常に金融界の障碍になつて居る、斯樣に考へます、此の障碍は成べく早く撤廢しなければならぬと云ふ風に考へるのでありまするが、併しながら此の撤廢するまでの段階に於きましては、どうしても現在の封鎖制度を合理化竝に強化すると云ふ方法に行かなければならぬだらうと思ひます、例へば現金拂を致しまする——現金を以て貸付けまする所の資金は、成べく具體的場合に應じまして新圓で囘收を圖るとか、さう云ふ面の未だ徹底して居ない面も相當強化して行かなければならぬ、斯う云ふやうなことはあるだらうと思ひます、併し何れに致しましても、國家の信用と云ふことが一番の問題であります、政府が何事を申しましても、一般大衆は最近の状況より致しまして、どうも信用して呉れない、此の問題が一番であります、此の通貨問題の將來に對しまして、第一の顧慮さるべき問題と云ふのはどうしても政府が強力な形になる、斯樣なことであらうかと思ひます、それと同時に物價であります、物價と云ふものが安定致さない今日に於きまして、預金を吸收すると云ふことを申しましても、是は無理なことでありまして、先づ何としても物價の安定と云ふことを圖らなければならぬ、此の物價の安定が圖られ、而して政府の信頼と云ふものが民衆に浸潤すると云ふ際に於きましては、恐らく此の預金の吸收と云ふことは、是は言ふを俟たず出來ることではないかと思ふのであります、併しながら是は言ふべくして中々困難なことであります、私共と致しましては當面の應急的な措置と致しましては、どうしても銀行の窓口を通ずる所の預金の吸收、之に全力を盡したい、例へば保險屋が個々の家々を廻つて歩いて勸誘すると云ふやうな、あの草鞋履き式な熱意と努力を預金吸收に對してもどうしても拂つて行かなければならぬ、斯う云ふやうな感じも致して居る譯でありまして、御説の通り通貨安定の面に對しましては、何とかして此の恆久的の措置が出來るまでは應急的な何かの措置を執らなければならぬ、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=25
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026・苫米地義三
○苫米地(義)委員 御話の通り通貨安定の必要は確かに焦眉の急であると思ひますが、要するに其の通貨の弊害は隱退藏して居る、所謂通貨が遊休状態になつて居ると云ふことと、偏在して居ると云ふことの二點だと思ふのでありますが、是は物資需給調整と同じやうな意味で、何かしら強力な力を以て調整しなければ私は出來ないと思ふ、自然に唯窓口を多くするとか或は勸誘すると云ふ程度では出來ないと思ふ、現に此の年末になりますと、一千億の通貨が出來るだらうと豫想されて居りまするのに、之を放任して置いて、物價が安定しなければと云ふやうな御話は私は通らぬと思ふ、だからして通貨の安定策に付ては急速に、而も大膽に之をやると云ふ積りで御考へが必要ではないかと思ふのであります
其の次には今御話のありました物價でありますが、一體政府は物價の水準を何處へ置かうかと云ふ大きな基本的な政策がなければならぬと思ふのであります、此の春來戰前の十倍位に押へようと云ふやうな説を伺つたのでありますが、其の當時と現在とは全く樣相を異にして居ります、現在の所政府は此の物價水準を何處に押へようかと云ふ方針があるに相違ないと思ふのでありますが、其の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=26
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027・福田赳夫
○福田政府委員 物價の問題に付きましては、去る三月緊急綜合施策を樹てました場合には、御説のやうな標準を目標にして居つたのでありますが、今日其の後の情勢から見まして、あの水準と云ふものがあの儘維持さるべきかどうかと云ふことは、多大の問題があらうかと思ふのであります、新情勢に對しましては物價廳、即ち經濟安定本部に於て、只今鋭意策案中であります、策案中でありますが、やはり根本的な考へ方と致しましては、上げる下げると云ふことでなくて、現状を以て安定させると云ふことを考へて居るやうであります、具體的なことは安定本部の方より御答へ致すかと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=27
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028・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今の現状を以て押へると云ふことは、實際の施策から云つてさうなつて居ないと思ふのであります、即ち補給金制度を以て之を調整して居りますから、補給金を加へない程度のもの、即ち米ならば四百五十圓、是は戰前の十五倍であります、それから石炭ならば二百圓ですか、さう云つたやうなことで、それを目標として物價水準を決めようと云ふ政府の努力であらうかと思ひます、若し現在の物價を押へて、さうして之を安定すると云ふことであれば、何も財政上苦んで補給金を出す必要は私はないと思ふ、それならばそれのやうに現在の標準をはつきり押へて之に全部の物價を均らす、又勤勞者の收入もそれに均らす、さうして國家財政を輕くすべきであると思ふのであります、此の點に對しましては、今の御話から見ますと、まだ政府に確たる方針がないやうに伺はれるのでありますが、是は大藏大臣なり或は經濟安定本部長官が見えましたならば、重ねて御答へを願ひたいと思ひます、私の調査した所に依りますと、今囘米價を六百圓にしましたことは戰前の二十倍、石炭を三百圓乃至三百五十圓にすると云ふことは、是はやはり戰前の二十倍、又茲に澤山例を擧げて見ますが、皆二十倍以上、硫安の如きは二十六倍、石灰窒素は三十五倍、渦燐酸が、二十五倍、或は農具が二十五倍、それから農藥等もさうであるし、石炭もさうであるし、それから農産物の方面に於ても、今度の値上に依つて大體二十倍以上になつて居りますから、此の現實が下げられないことであるならば、此處で一應押へると云ふ政策を執るのが本當ではないかと思ひます、さうすると補給金の問題は消えると思ふ、此の間官吏の給料設定の方針も決まつたやうでありますが、此の物價の水準を決めずに給料を決めると云ふことは意味ないことであると思ふのでありまして、是はやはり一定の物價及び勞務竝に一般の給與等をも、豫算全部に亙つて急速に一遍地均しをすると云ふことが、基礎的條件ではないかと思ふのであります、此の點を大臣とも能く御相談願ひたいと思ひます、又序でありますから伺ひますが、今囘米價が六百圓になつて、消費者價格が二百圓も上るのでありますが、之をやはり五百圓生活の枠の中に抑へて置くと云ふことは、理論上から云つても相當無理ではないかと思ふのであります、隨ひまして何も五百圓と云ふ枠を六百圓にしようが、七百圓にしようが、それは大局から云つて大した問題ではないと私は思ふのですが、何か閣内に是等に對する御話でもございませうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=28
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029・福田赳夫
○福田政府委員 米價の引上と云ふことに致しました場合に於きまして、五百圓生活を如何に致すかと云ふ問題でありますが、是は五百圓と云ふ基準に重大なる關係があることは勿論であります、併しながら一面に於きまして他の諸物價等との關係もあるのでありまして、安定本部に於て策案致して居ります物價政策とも睨み合せまして、是は合理的に解決致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=29
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030・苫米地義三
○苫米地(義)委員 私は他の物價はもつと進んで居る、米價は、あれは已むを得ずあそこに收まつたものと思ふのでありまして、是は何時までも春のやうな氣分を以て追掛けて居りますと、何時でも政治が社會の現實に遲れて、辻褄の合はないどん底へ落込むのではないかと思ふのでありまして、もつと尖端を切つて民衆の政治をやつて行くやうに御願ひしたいと思ふのであります
其の次には、産業の復興を急いで色色な施策をなさるのでありますが、此の春の三月執られました金融緊急措置に依りまして、資金の民間に流れることが非常に窮屈になつた、隨ひまして生産會社は其の資金を得る爲め非常に困難を極めて居て、其の生産が非常に遲れて居ります、況んや復興建設の如きは相當遲れて居ることは事實であります、此の爲に從來所謂生産「サボ」と云ふものが世間に唱へられまして、手持ちの物を賣食ひして居る、利鞘を唯遊んで食つて居ると云ふやうな状態が續いたのでありますが、今囘補償打切りに依りまして、各會社が整理を致します、隨ひまして手持ちの物や何かを一遍現在の價格に是正することになりますから、居食ひと云ふことは出來なくなると思ふので、自然其の結果として失業群が出ると思ふのであります、此の生産資金の詰つて居るのは、此の春からもう六箇月經つのでありますが、其の間に生産會社は多くは手持ちの資材原料を使ひ盡して居ります、此の資材原料の供給が圓滑に續かなかつたならば、私は近い中に又工場の休止又は減産と云ふことが現はれると思ふ、一方には金を出して促進はしますが、現實に於て段々減ると云ふ空虚な時代が茲に出來るのではないかと私は憂へる、それが爲に此の金庫の設立されることが非常に遲きに失して居ると私は思ふ、此の生産が空虚に中斷されると云ふことは、社會的に見ましても非常に是は心配しなければならぬのでありますが、幸ひにも食糧が或る程度の緩和を得まして、海外から來る船腹が相當空くと思ひます、此の船腹の空いた時期を利用しまして、日本に必要なる原料材料を急速に取つて、そして之を生産會社の呼び水に早くしなければならぬと思ふのでありますが、我々が見る所と政府の見る所と違ひませうか、どうでせうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=30
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031・福田赳夫
○福田政府委員 只今の御説は我々の考へと全く同一でありまして、政府に於ては全力を擧げて御説のやうな資材の對策に力を盡して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=31
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032・苫米地義三
○苫米地(義)委員 例を肥料のことに採つて申上げますが、先程も一寸觸れたのでありますけれども、現實に於て産業設備營團の關係する肥料工場ばかりでなく、一般の肥料工場も資金の行詰りに依つて停滯致して居ります、政府は此の年末になりますと、一箇年百萬「トン」の能力を備へるやうに、硫安工場が囘復すると云ふやうに説明を致して居りますが、實際は其の半ば或は六割程度に過ぎないのであつて、是は全く私は資金面から來て居る原因だと思ふのであります、其の肥料の増産と云ふことは、獨り食糧問題に重要であるばかりでなく、此の増産に依りまして肥料の價格が下がるのです、生産費が相當下がると思ひます、さう云ふ基本的な肥料が生産費を下げると云ふ一つの狙ひがあるのに、若し本當に下がればそこが惡循環の一つの切斷面ではないかと思ふのでありますが、どうして之をもつと早く徹底的にやらないのかと云ふことを私は非常に殘念に思ふのであります、政府はもう少し全般の實際に亙つて能く調査されまして、經濟安定本部なり、經濟閣僚會議なりに掛けて、もつと早く徹底的に之を促進してやつて戴きたいと思ふのであります
それから其の次には日本の産業は「ポツダム」宜言に依つて制限されて居りますし、又戰災等に因りまして非常に跛になつた状態に置かれて居ります、之を調整する爲に、あの強力な産業設備調整機關が出來るのでありますが、我々が産業の状態を見ますれば、さう云ふ一つ一つの思付でなく、綜合的にどう云ふ産業をどの程度に、どの地方に置くべきかと云ふ點と、現在ある設備又は生産能力をどう云ふ風に集中し或は之を分合して、國家の將來の再建に役立てるかと云ふ綜合計畫を持たねばならぬと思ふのであります、此の綜合計畫に對しては經濟安定本部が之に當ると言はれませうが、是は經濟安定本部ばかりに任せて置くことではないのであつて、必ず從來經濟閣僚會議の間にもあつたことと思ふ、現に此の法案でも年限を三箇年にする、此の三箇年と云ふことは、唯思付で三箇年になつたとは我々には考へられぬ、國家の産業再建の三箇年計畫を立てた、斯う云ふ風に解釋したいのです、隨て此の三箇年計畫の全貌と云ふものは大體御分りになつて居つて、其の片方の金融方面を是で擔當すると云ふことになつて居ると思ふのでありますが、其の點に付て御聞込みの點がありましたなら、御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=32
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033・福田赳夫
○福田政府委員 只今御話の三箇年計畫と云ふやうなものがあるかと云ふ問題でありますが、洵に我々と致しましても三箇年なり、何箇年と云ふ少し纒まつた計畫が欲しいのであります、併し何分にも有史未曾有の敗戰と云ふ事態に逢著致しました其の一年の間でありまして、現場の敗戰の非常な「シヨック」に對する經緯にばかり追はれまして、洵に申譯もない遺憾な點でありますが、現在に於きまして左樣な經濟計畫は持たぬと云ふ状態でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=33
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034・苫米地義三
○苫米地(義)委員 洵に殘念至極でありますが、曾て關東大震災の時に燒拂はれた所の東京の復興に對して、後藤新平伯は速急に計畫を立てて、現在のやうな宏壯なる市街が出來たのでありますが、もう既に一年も經つて居り、而も日本未曾有の難關にある今日、さう云ふ構想がなくて政府の當局省になると云ふことさへ、私は其の心理状態が疑はれるのであります、どうしても日本は其の起ち上りに對して、少くとも大體の構想だけは立てて、其の構想の下に色々なものが出て來なければならぬと思ふのであります、一つ一つ出す案が皆其の場限りに、唯勘に依つて出すと云ふことは非常に、私は政冶の合理性がないと思ふ、政治の合理性がない限り、日本の再建復興と云ふことは、非常に困難だと私は思ふのであります、若し今なければ、どうか急速に其の合理的な綜合計畫を立て、其の綜合計畫に副うたことをやつて戴きたいと思ふのであります、其の場合に於て強い力を要請するとすれば、それこそ色々な方面に於き強權の發動があつて結構だと思ひますが、唯徒らに其の場其の場の短見的な考へで強權發動をすることになりますと、そこに大きな弊害が起ると思ふのであります、此の點はどうか大臣其の他の方に御通じを願ひたいと思ふのであります
其の次には現在の生産状況から考へ、又生産の設備は賠償の爲に撤去されます、さうなりますと日本の限られた産業では、日本の需要をも充すことは出來ないと思ふのであります、況や破壞された生産部面に對しては、どうしても外國からの輸入が之に伴はなければならぬと思ひますし、又諸外國の産業が復興すれば、日本を一つの市場として輸出して來るに相違ないと思ふのであります、此の場合に於て日本の貿易即ち對外的の收支關係は一體どうなるのでありませうか、我々は入れる物ばかり多く、日本から出す物は非常に少いと云ふことに心配を持つものでありますが、政府は之に對してどう云ふ風な見解を持つて居りませうか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=34
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035・福田赳夫
○福田政府委員 貿易と云ふ問題に付きましては、只今自由なる貿易も許されて居りませぬし、此の計畫と云ふものに付きまして申上げる譯に行かないのであります、行かないのでありまするが、只今の許されたる範圍内に於きまして實施されて居る所の貿易に付きましては、非常な出超になつて居ります、併しながら實際問題と致しましては出超ではいけませぬ、どんどん物が入つて來て入超になつて、さうして其の資金は何とかこちらから出せるやうな力がなければいかぬ、若し此の力がない場合に於きましては、「クレヂット」等の許可がなければいかぬと云ふ風に思ふのでありまして、只今の所に於きましては、まだ非常な出超になつて居る、我々の考へまする所の状態と非常に離れたる状況にある、只今申上げ得るのは其の位の所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=35
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036・苫米地義三
○苫米地(義)委員 只今までの所は幸ひに「ストック」がありまして順調に行つて居ることは豫て伺つて居りますが、此の傾向から申しますれば、必ず近い中に輸入超過と云ふ時代が來ると思ひます、況や爲替關係が決定されまして——是は貿易が許されなければならないでせうが、其の場合には一層爲替關係で私は輸入超過の度が増すと思ふのであります、其の場合には政府は——「クレヂット」の設定に付て今御觸れになりましたが、御考へが具體的にございませうか、或はそこまで行つて居りませぬでせうか、又將來日本の情勢からしますと、輸入超過と云ふものは相當長期に亙つて繼續する、支那が米國、英國に對して「クレヂット」を設定する爲に色々の擔保を取られて居ります、日本も亦さう云ふ意味で色々な擔保を取られる時期があるかも知れないと思ふのですが、さう云ふことに對して政府當局は何か豫想して居られませうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=36
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037・福田赳夫
○福田政府委員 「クレヂット」の設定に付きましては、私個人のことを申上げて洵に恐縮でありまするが、私と致しましては當然「クレヂット」が設定出來なければ日本の經濟と云ふものは再興出來ない、斯樣に考へて居ります、さう考へて居り、さう信じて居るが故に、「クレヂット」のことは正式にどう云ふ風な要請をして居るかと云ふやうなことを深く當局者に尋ねて居りませぬが、勿論是はさう云ふ含みを以て最善の努力をして居るのではないか、斯樣に考へて居ります、多少の犧牲を國として拂ふこともありませうが、當面何としても外國の資材を以て、外國の資金を以て復興すると云ふ根本的な考へを持たなければ、日本が今後生きて行くと云ふ復興の途はないと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=37
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038・苫米地義三
○苫米地(義)委員 「クレヂット」の設定は必然である、又政府も期待して居ると云ふことでありますが、是は當然だと思ふのであります、更に今後の日本に於きましては、單に向ふの製品を輸入するばかりでなく、或は原料を輸入するばかりでなく、向ふの企業に對する投資關係が起つて來ると思ふのであります、外國の技術の進歩したものを取入れるとか、或は日本では資金を仰ぐことが困難の爲に海外の資金を求めるとか云ふことで、日本の企業が外國との提携に依つて再生すると云ふ面があるかと思ふのであります、さう云ふ場合に内外の企業に對する政府の取扱ひ方が其の間に差別を付けるのか、或は税金等に付ても何か差別を付けるのか、さう云ふことを豫想して何か考へて居られますか、伺ひたいと思ひます、又極く下の方の日用品、飮食其の他に付て第三國人が活躍する場面も相當あらうかと思ふのでありまして、日本は上下から産業或は實生活の上に壓迫を感ずるやうな時代があるのぢやないかと考へて居りますが、對外資本の導入其の他企業提携に對する政府の見透しが何かあると思ひます、若しありましたら伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=38
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039・福田赳夫
○福田政府委員 先程申上げましたのは「クレヂット」の問題でありますが、投資と云ふことになりますると、事は相當重大な問題になるであらうかと思ふのであります、投資を如何に扱ふかと云ふことに付きまして、内閣に於きまして決定があると云ふやうなことは私はまだ聞きませぬが、是は中々愼重事に處する必要があるのではないか、斯樣に私としては考へて居ります、只今の所、私の知つて居る限りに於きましては、内閣に於て此の問題を取上げて根本態度を決めて居ると云ふやうなことはありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=39
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040・苫米地義三
○苫米地(義)委員 輸出入關係に付きましては何か貿易廳でも豫想或は計畫がございませうと思ひますから、數字的にどう云ふものがどう云ふ風に輸出入されるかと云ふことを表にして一遍知らして戴きたいと思ひます
其の次には、現在の物價高に依りまして先程申上げました復興新設の事業と云ふものは非常に高く付いて居ります、戰前に對して恐らく二十倍乃至三十倍の高價で設備が行はれて居るのでありまして、是では從來の會社と其の生産費で以て競爭すると云ふことは殆ど不可能であります、此の不可能な所へ、此の間伺ひますと云ふと、復興金融金庫の利息が大體五分だと云ふことを御話しになりましたが、同じ程度の利息を拂つて、さうして此の高い建設費を投じて償却もして行かなければならぬと云ふやうな場合に、到底太刀打ちは出來ない譯であります、此の兩方から起る所の差に對して何か調整を執らなければならぬと思ふのでありますが、さう云ふ點に對しては御考へがございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=40
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041・福田赳夫
○福田政府委員 既存の企業と、新たに起るべき企業との間に、相當の競爭力の差異があると云ふことは、是は御説の通りであらうかと思ひます、之に對しましては、例へば法人財産税を取ると云ふやうなことも兼々考へたことはあつたのでありまするが、今日の段階に於きましては法人財産税は取らぬ、個人財産税一本で行くと云ふやうなことになつたのであります、御説は洵に御尤もな點もあるのでありまするが、御説の如く致しますと、力のある者を叩きまして、力の弱い所まで持つて行くと云ふやうな姿になるのであります、寧ろ私共の氣持と致しましては、力の弱い者を力の強い者の線まで持つて行くと云ふやうな氣持になりたい所でありまして、其の間調整を致すとしますれば、さう云ふ筋の調整の方が宜からうかと思ふのであります、併しながら只今の所は、まだ調整を要するとも考へて居りませぬので、又其の處置を執つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=41
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042・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今の問題は現實の上に於て非常に各當業者が迷つて居る點でございます、それ故に私は先刻通貨に對しても、何か特別な産業復興に對して御考へがないかと云ふことを伺つたのでありまするが、然らざれば此の金融金庫の利息をうんと下げて、さうして當分舊會社との生産費の調整を圖る、然らざれば思ひ切つて資産評價益を出して、其の評價益は國で取つてしまふ、さうして此の舊い會社を其の「レベル」まで上げて、同等の地均しをすると云ふことを考へませぬと、現實の上に於て私は非常に困難だと思ふ是が私がさつき云ふ企業萎縮病、金融萎縮病になつて居ると私は思ふ、之をどうして調整する、其の調整すべき一つの方法として此の間大臣にも差上げたのでありますけれども、いつそのこと現在の物價を基準として、さうして總ての物價竝に生活基準をそこまで上げて是れ以上の「インフレ」をさせない、現在で押へると云ふことにして、今まで起つた「インフレ」に依る評價益は全部國に收めてしまふ、斯う云ふことを考へてはどうだらうかと云ふことを申上げた、是は極めて簡單な方法で私は出來ると思ひます、と云ふのは全國の株式會社を全部過去六箇月間の平均價格で國が買ひます、丁度農地調整法で土地を一遍買つて、さうして交換分合なり何なりして、之を又元に戻すと同じことでありまして、株主に損を掛けないで過去六箇月の平均價格で之を買ふ、さうして買つた金に對しては其の會社々々の成績に依つて三分なり五分の優先株を以て之を交付する、其の他の評價益は現在の價格に全部見直してしまつて、厖大なる資産に對しては普通株を交付する、此の普通株は若し物價を上げないと云ふならば當分無配當にしたら宜からうと思ふ、又或る程度まで物價を上げても宜いと云ふことならば、一分なり二分なりの配當を可能なやうに物價の調整をすれば宜い、さうして此の「インフレーション」に依る價格差と云ふものは、各各の努力に依つて得た利益でありませぬから、全部是は國家が收めると云ふことにすれば、全國の固定資本の評價益で、私は一千億や二千億は或はあるかと思ふのであります、此の普通株に對して國債を交換してやると云ふことに依つて、其の國債は國家の手に返る、さうして之を償却することが出來る、斯う私は思ふのであります、一つの地均しの方法として、是等の點も御考へになつて然るべきぢやないかと思ふのでありますが、左樣な構想に對して、何か今まで政府でも御考へになつたことがあるかどうか、其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=42
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043・福田赳夫
○福田政府委員 左樣な構想に付て——其の構想ばかりぢやありませぬが、其の「ライン」を入れて考へたものが法人財産税であります、併しながら法人財産税と云ふものは、色々の交渉の結果を以ちまして、現在に於ては「ドロップ」された、斯樣な情勢になつて居ります
それから仰しやられます所の評價益を以て國家に納入致し、之に依つて國債を償却し、且つ新企業舊企業の「バランス」を取ると云ふことは、十分考慮研究を致す必要のある重大な御提案だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=43
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044・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今民間では補償打切りに依つて案外平靜になつて居ります、此の平靜になつて居る反面には評價益を計上することが許されると云ふことがあります、大藏大臣は時價に依ると仰しやいましたが、民間團體では必ずしも時價に依らないで、特殊の便法を執つて居るやうでありますけれども、私は「インフレーション」に依る利益は各個人が、或は會社が全部之を收むべきものぢやない、是は社會正義の觀念から言つてもどうかと思ふのであります、それ故に私は、一擧に根本を衝くやうな案を申上げたのであります、此の頃炭礦國有と云ふ問題が出て居りますが、私が提案するやうな方法であれば國有であらうが、或は合併であらうが、物其のものに依つて國家が考へる通りになると私は思ふ、而も是は實際經營の面に當つて居る人を其の儘にして置いて、單なる株の操作に依つて出來得ることであります、又賠償物資等の補償も要らない、是は皆國家が肩替りするのであります、銀行に對する補償も要らない、全部の「プール」に依つて利益の出ることは確かでありますから、さう云ふ煩はしいことは一切なくて濟むと思ふ、それ故に炭礦國有、又重要な國有に適したものがあれば之を除いて其の儘國有にすると云ふ方法もあり、又弱體會社が、別々になつて居つてはいかぬけれども、之を二社合はすとか、三社合せれば、各各長短を償ふし、立派な會社になる、と云ふことになればそれも自由に出來るのであります、私は之を一つの提案として申上げて、御考慮を願つて置きたいと思ふのであります
補償打切り問題でありますが、現在の此の法案も恐らく其の影響の一つをなすものと思ふのでありますが、非常に澤山の施策を御講じになるやうであります、先刻來私が申上げましたことに依りますれば、何もそんな手數を掛けないで濟むと思ふのでありますが、今更それは已むを得ないと思つて居ります
賠償施設を撤去されますが、之に對して政府は何か補償をなさる御意思がございませうか、御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=44
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045・石橋湛山
○石橋國務大臣 賠償問題は御承知のやうに此の間指定がありましたが、それがまだ實はあれだけで確定して居る譯でもありませぬ、それから其の持つて行く時期其の他のことも分りませぬので、實はまだ政府もどう云ふ風にやるかと云ふことを決めて居りませぬ、何等かのことはやらなければならぬと云ふことは分つて居りますけれども、其の點は決めて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=45
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046・苫米地義三
○苫米地(義)委員 是は民間では非常な關心を持つて居りますので、若し決めるならば早い機會に御決め願つて、そして其の善後處置を民間にさせなければならぬと思ふのであります、それから又あれを取られました後、それならば日本の國内で需要する生産が出來るかどうかと申しますれば、可なりあれは困難ではないかと思ひます、私共觀測しますと、日本の國内の能力から言へば、需給が出來る程度であるかも知れないが、現實の上から言へば出來ない、出來ないものは外國から輸入する餘地、即ち日本を一つの「マーケット」として取つて置くと云ふやうな氣分がないであらうかと云ふことさへ思はれるのでありますが、さう云ふ點に對して何か大藏大臣は見透しを付けて居られませうか、若しありましたら我々企業家に對しても相當の參考になると思ふのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=46
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047・石橋湛山
○石橋國務大臣 特に今具體的にどうかうと云ふ見透しは付けて居る譯ではありませぬが、是は殘存企業がどう云ふことになるか、若し殘存企業が、「ポツダム」宣言等で言はれて居るやうに日本人平和經濟を維持するに足らないものになると云ふことであるならば、其のやうに、交渉其の他の處置を致さなければならぬのであります、今商工省其の他で以て其の點を調べて居ります、もう近い内に一應の調査が出來ると思ひます、其の上で一つ交渉すべき點は交渉すると云ふことをやらうと云ふ申合せになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=47
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048・苫米地義三
○苫米地(義)委員 先程貿易關係の前途に對して申上げましたが、日本の國は今度の占領其の他に依りまして外國人からは非常に記念すべき土地となつたと思ふのでありますが、日本を國際的な觀光國とするやうに、此の際政府は積極的な色々な施策を講ずる御考へがございませうか、どうでせうか、其の點を大藏大臣に伺つてはどうかと思ひますけれども、閣僚會議で御話がありましたら御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=48
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049・石橋湛山
○石橋國務大臣 未だ此の日本を觀光國にすると云ふやうな申合せとか、話合ひはございませぬ、併し是はまあ常に普通の問題になることであり——但し日本を觀光國にすると云ふ其の意味次第で、果して日本の爲に——收支勘定、國際「バランス」から言へばそれは收入がありまして結構でありますが、同時に弊害もありますから、觀光客を呼ぶにしても如何なる施設に依つてどう云ふ風にやるかと云ふことは、一つ十分に研究を要することだと私は思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=49
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050・苫米地義三
○苫米地(義)委員 あと二點ですが、其の第一點は、日本の今後の立場は、人口が八千萬を算へまして、經濟的にも或は民生の安定の上に於ても、非常に重大な將來を思はざるを得ないのであります、此の日本民族の海外に對する移民政策、此の問題に對して相當積極的に考へて宜からうかと思ふのであります、日本は既に武器を捨てて平和民族になつた限り、他の諸國と雖も人類愛に燃える精神から包容しても宜からうと思ひますが、さう云ふ方面に對して政府は大いに努力さるべきだと思ふのであります、現在の所、それに對する何か御交渉でもございませうか、或は今の占領治下に於てはまだそれは早いと云ふことでございませうか、併し是は今度の平和會議に際しましても、此の問題を取上げる必要があると私は思ふのでありますが、此の點に對して大藏大臣に御注文してはどうかと思ひますけれども、他に居られませぬから、御話を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=50
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051・石橋湛山
○石橋國務大臣 特に當面に於て日本國民を移民に出すと云ふやうな交渉は行はれないことは言ふまでもありませぬ、併し平和會議の問題としては、今外務省を中心にして研究をして居ると思ひます、其の場合には、無論さう云ふ問題を含んで居るものと我々は考へなければならぬと云ふことは話に出て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=51
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052・苫米地義三
○苫米地(義)委員 最後に日本の産業は科學性の後れて居ります點、及び工業の規模其の他の進歩が後れて居りましたから已むを得ないのでありますけれども、今後は先程申上げましたやうに、益益海外の安い品物の良い物が入つて來るに相違ないと思ひます、其の場合に其の安い物、便利な物を國民が愛用すると云ふことになれば、日本の産業と云ふものは遂に再び浮上ることは出來ないと私は思ひます、此の點に對して排外的思想ではなしに、祖國を思ふ國産愛用と云ふ思想を植付けることが必要ではないかと私は思ひます、私が先年「イギリス」に參つて、「アメリカ」へ歸る船の中に、丁度「イギリス」の若い三十足らずの青年が居りまして、私と同室でありましたが、其の方の話の印衆が非常に深いのでありまして、茲に申上げたいのでありまするが、大正八年でありますから歐洲戰爭が終つた直ぐ直後であります、其の青年も初めて「アメリカ」へ行くと云はれる、日本人ならば皆調度品は舶來品を調べて行く、然るに其の英國人は自分の國、而も戰爭で疲弊した國でありますから碌なものはない、粗末な調度品を持つて居りました、所が海が非常に荒れまして、船が非常に動搖を來す、毎朝顏を剃るのに、私は安全剃刀を持つて居つたが、其の青年は「イギリス」のあの不恰好な剃刀を持つて居る、船が搖れますから偶に顏を切ります、そこで私は冷かして、君はこんな便利の宜い安全剃刀があるのに、而も初めて「アメリカ」に行くと云ふのに、どうして斯う云ふものを持つて來ないのかと尋ねた、其の青年の答へは、いやそれは能く分つて居るが、其の金は「アメリカ」の鐵だ、其の勞力は「アメリカ」人、而も「アメリカ」に特許を拂つて我々の國に入つて居る今「イギリス」は戰爭に勝つたけれども、非常に疲弊して居る、我々は自分が辛抱さへして居れば宜いのだ、それで自分の國の物で間に合せて居るのだ、斯う云ふ話を聞いて流石私は「イギリス」人だ、必ずや又大をなすに相違ないと斯う感じた、其の話を持つて日本に歸つて色々話をして見ますと、それに類似した話が偶然に得られました、是は寫眞屋の主人が私に申されるには、それに能く似た話がある、自分の店へ「ドイツ」の十二、三歳の子供が冩眞の「フイルム」を買ひに來た、「ドイツ」の「フイルム」はありませぬかと言つて來た、丁度「ドイツ」の品物が切れて居つた、二箇月先でなければならぬ、幸ひ「アメリカ」の製品があつて、非常に良いもので安いんだが、是はどうかと出した、さうしたら其の少年は、いや、それならもう二箇月先に買ひに來ます、斯う言つて歸つた、あなたの話は丁度それに似寄つた話だと言はれたのでありました、「ドイツ」が必ず再興すると云ふことを私はさう云ふ面からも考へたのでありますが、日本の現實に於て是から豫想される、安い便利なものがどんどん入つて來ると云ふやうな場合に、日本人の心構へは本當にそれに適應するやうな氣分になれるでせうか、是は深い根柢の宗教、教育が齎すべき本當に其の國に對する自覺に依らなければならないのであつて、一つの運動とか教育と云ふ、表面的の問題ではならぬのでありますけれども、國民一人々々がさう云ふ氣持に依つて、日本の國産品を愛用し、祖國を再建すると云ふ熱意に燃えなければ、到底私は日本の産業が十分に復活することは困難ぢやないか、斯う思ふ、是等の點も唯物や金だけの面からでなく、十分に内容に於て研究されまして、本當に日本の再建がさう云ふ面から起るべきものだと云ふことを前提にして御考へを願ひたいと思ふ、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=52
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053・寺尾豐
○寺尾委員長代理 本日の質疑は此の程度に致しまして、明日は午前十時から續行致したいと思ひます、是にて散會を致します
午後零時二十二分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00419460905&spkNum=53
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