1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
復興金融金庫法案(政府提出)
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昭和二十一年九月七日(土曜日)午前十時五十分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 寺尾豐君 理事 平岡良藏君
理事 細川八十八君
石原圓吉君 片岡伊三郎君
原藤右門君 村上勇君
苫米地義三君 舟崎由之君
本間俊一君 宮前進君
澁谷昇次君 松本七郎君
島田晉作君 森三樹二君
木下榮君 藤井正男君
竹山祐太郎君 岡田勢一君
福田繁芳君
同月六日委員松本瀧藏君辭任に付其の補闕として竹山祐太郎君を議長に於て選定した
出席國務大臣
商工大臣 星島二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 三井武夫君
商工政務次官 小林かなえ君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
復興金融金庫法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 是より會議を開きます、前會に引續いて質疑を繼續致します、――細川八十八君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=1
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002・細川八十八
○細川委員 私の御尋ね致したいことは戰爭遂行上、時に多くの織物業者が企業整備に依つて困憊し、或は戰災を受けて居ります、又は戰災者や復員者、其の他過去に技術を持ち、經驗を持ち、實績を持つて居る者が、唯一枚の特殊預金のみを持つて復興意欲に燃えて居るのでありますが、是等に對しての金融を如何なる方法でされるか、此の點が御尋ね致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=2
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003・福田赳夫
○福田政府委員 織物業者は戰時中に於きましては、戰爭遂行の爲に企業整備をされて、其の犧牲となつた譯であります、如何にもお氣の毒な状況でありまして、其の多くは恐らく特殊預金しか持つて居らぬと云ふやうな状況ではなからうか、斯樣に考へて居る次第であります、今囘國家財政の要請に基きまして、其の唯一の財産である所の特殊預金が百「パーセント」の課税を受ける、斯樣な結果になりますと、織物業の復興と云ふことに非常な障碍があらうかと思ふのであります、併しながら此の企業整備に遭ひました織物業者に於きましては、恐らく優秀なる織員と技術とを持つて居られる、斯樣に考へます、此の優秀なる技術と織員とを母體と致しまして、將來最も重要である所の我が國の織物業を復興されると云ふ確乎たる計畫が樹立されることは、是は私共確信して居ります、其の確乎たる計畫が立ちまして起ち上ると云ふ場合の金融に付きましては、さう云ふ際こそ此の復興金融金庫等が出動すべき典型的な事例ではないか、斯樣に考へて居りますが、其の確乎たる計畫、將來の見透し、是さへ立ちますれば復興金融會社がどんどん出動する、斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=3
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004・細川八十八
○細川委員 母體を持たざる者で、唯技術と經驗と實績とを持ち、特殊預金を持つて居る者は、永年の經驗でありまするから、事業を開始致しますれば、相當の見込が付き得る所の事業主になり得ることは間違ひありませぬ、さう云ふ者に對する所の金融の途は開けますか、此の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=4
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005・福田赳夫
○福田政府委員 此の復興金融金庫法第一條に於きまして、他の金融機關を以て致しましては融資が出來ないと云ふものに對しまして復興金融金庫が出動する、斯樣に相成つて居るのであります、他の金融機關で融資出來ないと云ふ事例は、仰しやられます所の現在は採算は立たぬ、併しながら優秀なる技術と優秀なる織員を持つて居つて、今後大いに活躍し得る、斯樣な事業に對しまして出動すると云ふことが復興金融會社の一つの使命でありまして、現在は中々收支は償はぬが、將來は大いに伸びる、斯樣なものに對しまして復興金融金庫が出動することは、是は勿論であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=5
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006・細川八十八
○細川委員 只今の御答辯に依りますれば、母體を持ち、技術を持ち、織員を持ち、現在戰爭の犧性を被つて居らない者に對する所の金融の途は開けて居るが、企業整備に依つて田舍に疎開をなし、或は戰災を受けて唯一枚の特殊預金のみを持つ者に對して、是は融資の途が開けて居るかと云ふことを私は御尋ねして居るのでありまして、其の點を重ねて御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=6
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007・福田赳夫
○福田政府委員 此の金庫が出動する場合に於きまして、其の人が企業整備の犧牲者であつたかどうかと云ふことは重大なる關心の要素とはならないのであります、犧牲者であらうが、他の者であらうが、今後、現在持つて居る所の施設なり、技術なり、それから織員を利用致しまして、伸びる可能性があるかどうか、斯樣な點が重點でありまして、情に於ては正しく仰しやる通りに、企業整備の犧牲者に對して特殊の關心を拂はなければならぬ譯であらうと思ひますけれども、建前と致しましては、今後の復興に役立つ企業となり得るかどうか、此の點が重大な焦點と相成る、斯樣に御諒承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=7
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008・細川八十八
○細川委員 私は其の點がどうしても呑込めないのでありますが、さうすれば戰爭に依つて犧牲を被つた者は再び起ち上ることが出來得ない結果になるのであります、是こそ私は間違つた政治だと思ふのであります、特殊預金も全面的に打切るか、私は全面的に打切るものにあらずと考へて居ります、若し左樣でありますならば、其の一定限度を前以て解除してやるべきものではなからうか、隨て其の解除額に依つて基礎を作り、其の受入準備が整ふのであります、然るに準備のない、組織を持たない者に金融がされないとするならば、犧牲を被らない者が其の恩惠を蒙るのでありまして、犧牲を受けたる所の戰災者や、企業整備に依つて地方に疎開したる者が起ち上ることが出來得ないと云ふ結果になるのでありますが、此の點を一つ明確に御答へを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=8
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009・福田赳夫
○福田政府委員 此の企業整備に依りまして犧牲者となつた事業は、恐らく今後平和的日本を建設する上に於きましては、眞先に起ち上らなければならない、又起ち上る能力のある企業であらうと思ひます、左樣な状況でありますから、此の犧牲者たる企業整備の適用を受けた團體、個人等に於きまして、起ち上りを致すと云ふ際に於きましては、只今私が申上げましたやうな基準に當嵌まる事例が甚だ多からうかと思ひます、隨ひまして仰しやる所の意味合は、結論に於ては十分到達されるのではないかと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=9
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010・細川八十八
○細川委員 此のことに付きましてはもう是れ以上申上げませぬが過去に於て相當なる事業主であつたにも拘らず、現在は露店商人や闇商人に轉落して居る者が中々多くございます、是等も政府の特殊預金解除後起ち上らなければならないと考へて居るものでありますが、それ等のものに對して若し是が私の考へますのには地方長官が、認める所の團體がさうした戰災者或は企業整備に依つて轉業して居る者、是等に對する所の金融を受けるに裏書するやうな場合には金融が受けられるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=10
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011・福田赳夫
○福田政府委員 地方長官が裏書した團體に付て金融致しますかどうか、斯樣な御尋ねでありますが、要するに復興金融金庫が出動する場合は、將來に於て是は日本の平和産業の一環として育成しなければならぬと云ふ事業でありますが、現在まだ收支償はず、他の金融機關は援助しにくい、斯樣な場合に活動の分野があるのであります、隨ひましてさう云ふ規模に當嵌まる團體でありますれば、是は勿論復興金融金庫の發動する事例であります、併しながら地方長官が如何に裏書しようとも、さう云ふ條件に當嵌まらぬものに付きましては融資する途はなからう、斯樣に思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=11
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012・細川八十八
○細川委員 私の御尋ね申しましたのは地方長官が認める所の諸團體が裏書した場合に融資が出來る途があるかと云ふことを御尋ね申したのでありまして、決して地方長官が裏書する場合と云ふのではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=12
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013・福田赳夫
○福田政府委員 地方長官が認める所の團體が裏書致す、斯樣な場合に於きましても、其の事業が眞に平和日本再建の爲の産業の一環として育成を要すると云ふ事業に限られるのでありますが、恐らく地方長官が認めた有力團體が裏書すると云ふやうな場合に於きましては、之に該當する事例は多からうかと斯樣に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=13
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014・細川八十八
○細川委員 此の際是とは別個のことでありますが、關聯したことでありますから一應御尋ねして置きたいと思ひます、庶民金庫が出來て、之に對して一般庶民金庫を利用する者が都を通じて申込んで居りますが、其の金額たるや東京に於きまして僅かに九十口、二百七十萬圓、さうしてそれが而も對鎖預金でなければ貸出が出來得ない、私は此のやうな零細な金を使ふものは封鎖預金の使ひやうがなからうと考へるのでありますが、此の點に付て之を現金化して、もう少し實際に東京都で九十人位の人に金を貸してやつても意味を成さないものであると私は考へるのでありますが、此の點に對してもつと積極的に貸出の方法を御考へになりませぬか、此の點御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=14
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015・福田赳夫
○福田政府委員 戰後の非常な疲弊した國民經濟の段階に於きまして、庶民金庫が大いに活動しなければならぬと云ふことは全く同感であります、先般戰災者、失業者、復員者、歸還者と云ふやうなものを對象に致しまして庶民金庫より十億圓の融資を行ふと云ふことを研究致して居るのであります、十億圓の融資と云ひますと、是は相當多數のものに行渡る筈でありまして、此の制度はまだ始まつて勿々でありますから、仰しやる通り東京都で如何にも少いのではないかと思ふのでありますが、一世帶當三千圓、保證人も一人立てて貰へば結構である、斯樣なことで貸すことを計畫致したのであります、金額は十億圓であります、ですから相當程度の廣い範圍に行渡ると、斯樣に思つて居ります、尚ほ庶民金庫の現段階に於ける地位と云ふものは極めて重要でありまするので、それに限定せず、益益此の「ルート」を通じまして庶民の金融を疏通致す、斯樣な方面には色々工夫を運らしたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=15
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016・細川八十八
○細川委員 十億圓と云ふ金を實に廣い範圍に使はれると云ふのでありますが、東京で僅かに九十口、九十人の申込しか割當がないと云ふやうなことであり、且又それが封鎖預金でなければ貸出しないと云ふやうな、私は三千圓の金に依つて起ち上らんとする所の者に對して、封鎖預金の使ひやうは實際問題としてないと思ふのであります、或る一定の事業をして其の三千圓で足らざる場合に、取引先の諒解の下に三千圓の封鎖拂ひが出來るか知りませぬが、僅かに三千圓の金に依つて起ち上らんとすべき者が封鎖預金を出されても使ひ途がなからうと思ふのであります、此の點は現金化すべきであると思ふのでありますが、此の點に對して御答辯願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=16
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017・福田赳夫
○福田政府委員 現在の資金の状況を見ると、日本銀行の兌換券は毎月非常な勢ひを以て増加して居ります、此の増加の原因を繹ねて見ますに、三月十二日と云ふのが兌換券の最低の場合で百五十二億であります、月々相當多額の増加を見まして、今日に於てはもう六百億にならうとして居る、四百五十億圓の増加であります、此の増加の原因は、數字を一寸申上げて見ますと、其の中封鎖預金を解除致すことに基くものが二百八十二億圓を占めて居ります、二百八十二億の中生計費として毎月出す金額は七十八億圓であります、賃金として放出されるものが百二十九億圓、事業費として出るものが二十八億圓、其の他雜多な大藏大臣の許可に依つて出るものが四十六億圓と云ふ割合になつて居るのであります、そこで其の比率を見てみますと、大體に於て生計費二八%、賃金四六%、事業費一〇%、其の他一六%と云ふ比率になつて居るのであります、此の二百八十二億圓と云ふものが封鎖解除に依りまして兌換券増加の原因を成したのであります、一面に於きまして之をどんどん囘收すると云ふ途が付きますれば問題ありませぬが、現在の段階に於ては中中囘收が難かしい、私共も日夜囘收の方途に付きまして思ひ惱んで居るのでありますが、どうも現在の政治情勢、經濟情勢の下に於きまして難かしいのであります、金融緊急措置令の拘束と云ふものは我々の生活と云ふものに非常に壓迫を加へて居る、非常に面倒臭い仕事でありますが、何とかして此の資金の放出を防ぎたいと云ふので、只今申しました三千圓の小口貸付に付きましても封鎖で貸す、斯樣な所までやらぬと、何處まで是が出て行くのか分らぬ、非常に苦しい立場にあるのであります、併しながら三千圓を封鎖で貸出しますことに致しましても、此の人が是は斯かる事業に使ふと云際には、立どころに封鎖は解除されるのでありますから、さう面倒でもないかと思ふのでありますが、此の點は現在の金融の情勢に鑑みまして、抂げて御協力を願ひたい、斯樣に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=17
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018・細川八十八
○細川委員 政府の親心に對する實際問題として封鎖では用をなさないので、此の點再考慮を御願ひし、又或る程度近く之を解除せられるとのことでありますれば、大變結構と思ひますが、只今承りますれば非常に通貨は膨脹して、政府は非常に御困りのやうでありますから、私が一つ愚見を申上げまして、私の質問を終ります、政府に於きましては最近八月一日に料理の丸公を制定されました、所が實際問題として此の價格に依つて販賣して居る所は全國一軒もございませぬ、高い料理をお互ひに食べて居ります、闇で物を買つて闇で賣りまする爲に納税も致して居りませぬ、併し斯うした納税は全國的には大きい數字のものであります、ですから飮食税の如き胡麻化されるやうな税金を課することを御止めになつて、源泉課税にして級別を付けて、そして座敷を持つもの、或は腰掛けるものと云ふやうにして源泉課税を課ければ、相當の税金が上るのであります、「カフェー」に致しましても、料理屋に致しましても、現在私等何處へ參りましても二、三人で二千圓からなければやれませぬ、果してそれで納税が出來て居るかと云ふと、實際問題として決してやつて居りませぬ、更に昨年一昨年からの酒の問題であります、何れ是は私は建議案を出して政府に御願ひしたいと思つて居りまするが、六十五萬石の酒の三倍の密造があります、それが現在各家庭或は全國の飮食料理店に流れて居ります、此の酒の税金は、闇で米を買うて來て造つて、闇で酒を賣るのでありますから、一つも政府には入つて居らない、之に對して少くとも此の脱税を防止する爲には、政府は印紙を御貼りになつたら税金をうんと取立てられる、今は「アルコール」が一番徴税が宜しいと思ひます、一番魅力がありますから、そこで六十五萬石を大藏省から漸たに米を割當てて貰つてやつて居りますが、六十五萬石や百萬石のものぢやない、是は業者自體が自分の國家を救はんが爲の犧牲的な其の話を私は聞きました、少くも二百萬石以上の密造がある、斯樣に私は聞きました、之に對しまして僅かに四十圓の一級酒を決めて居りまするが、今日壜は十七圓で何處の店でも買ひます、壜を十七圓で買つて、二十七圓の税金を課せられたものを四十圓で賣れる譯はございませぬ、此の一例を見ましても、如何に政府の承知しないものが生産されて居るかと云ふことを物語るのであります、それで私は税金は此の酒に依りまして、少くとも一級酒は、生産の三割と押へるならば、現在に於きましても七十億圓位の税が取れるものと確信致します、更に大衆酒に於きましては、百億圓は裕に現在の密造酒の生産高に於ても出來るのであります、私は酒なくして我が國の再建は出來ないと思ひます、勞働者も酒なくしては働きませぬ、そこで、私は思切つて酒を造つて戴きまして、之に對しての税金は是非政府發行の證紙を貼付させて脱税を防止する、値段に拘泥せない、値段を決めますると、是は必ず又拔道を考へますから、やはり値段は業者協定價格でなければいけませぬ、値段を凡そ決めなければならぬし、壜もやる、石炭もやる、米も安い米でやるやうにして、然る後に出來るのでありますから、政府の六十五萬石だけで、又壜も石炭も呉れないのでは中々出來ませぬ、其の點を十分一つ御含み願ひたいと思ひます、業者に於きましては闇で拵へた酒を販賣するのに、一つも税金を納めて居りませぬ、是等を政治的に御考へ下さると政府はさのみ苦しくないと思ひますが、實際の計畫を誤つて御苦しみになる必要はないと思ひますから、其の點私の愚見を申上げまして、私の質問を打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=18
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019・高橋泰雄
○高橋委員長 松本七郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=19
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020・松本七郎
○松本(七)委員 私は根本問題に觸れますので、吉田總理大臣、幣原國務大臣に御出席を御願ひして置いたのでありますが、貴族院の方の憲法委員會へ行かれて居るので、おいでが出來ないさうでありますから、大藏大臣に御答辯を願ひたいと思ひます、實は總理の御忙しいことは能く分つて居ります、併し又一方此の議會に對する誠意と云ふものを私は疑ふのであります、是非首相に御尋ねしたいことは質疑を延期したいとも考へましたけれども、一方審議を急速に進めることも必要でありますので、不本意ながらもやります、併し大藏大臣に御伺ひすること自體が少し無理な範圍かも知れませぬが、此の點は寧ろ私の方で恐縮致しますが、出來るだけ一つ御傳へを願ひたいと思ひます
本法案の第一條に付て一昨々日の政府委員の御答辯、昨日の大藏大臣の御説明は甚だ重要なものを含んで居ると云ふやうに考へられるのであります、第一條に書いてあります普通銀行が必要な資金を他の金融機關等から供給を受けることが困難である、普通銀行からの融通が期待出來ないものを本金庫より融通するのであつて、此の具體的な内容に付きましては、其の御答辯に依りますと、經濟復興上、日本再建の爲にどうしても必要である、併し現在或は將來の收益上の不安其の他の爲に、普通銀行が融資を躊躇するやうなものに對して、本金庫より融通するのである、斯う云ふことであります、此のことは一體何を意味するのでありませうか、至極當然なことではありますけれども、如何に日本經濟の復興が絶對に必要であつても、それは其の銀行の利益に反する限りは融通出來ない、即ち茲に利益が公益に先んずると云ふ事實が認められるのであります、それだからこそ比の法案に依つて復興金融金庫を一刻も早く作らなければならぬと云ふ必要はあるでせう、茲に寧ろ我々は問題があると考へる、現在の日本經濟を復興するのに、斯う云ふ普通銀行の缺陷を補ふ復興金融金庫位の設置で、果して現在日本が擔つて居る大きな使命が達成出來るでありませうか、其の點私は深く疑問に思ふのであります、日本經濟の復興と云ふことは、單なる復興であつてはならないと思ひます、一つの新しい大きな目標に向つて、一歩づつでも前進するものでなければならないと、此の大きな目標と云ひますと、結局徹底的な日本の民主化、眞の平和國家の建設と云ふことなのであります、所で此の目標を達成する爲には、政治の民主化即ち民主政治の徹底と云ふことも必要でありますが、どうしても經濟的な基礎條件を確立すると云ふことが絶對に必要なのであります、即ち國民特に從來裕福な階級に比して文明の恩惠に浴することの遙かに少なかつた惠まれざる狹い意味の勤勞者、或は一般俸給生活者の生活の向上、文化の向上を期し得るやうな經濟的な裏付けを絶對に必要とすると我々は確信するのであります、現在日本經濟の復興は此の目標に向つて進むべきでありますし、之に依つて初めて誤つた戰爭の償ひを果し得る、どうしても、公益を主とする經濟態勢を茲に確立しなければならないと考へて居ります、隨ひまして應急措置としての本金庫に甘んずるやうなことなく、更に以上申述べましたやうな大きな目標を達成せんが爲には、どうしても金融機關竝に炭鑛業其の他の所謂「ベーシックインダストリー」――基礎産業の國有化、而も單なる國有化ではなく、徹底した民主的經營を伴つた國有化こそ先決要件である、而も今こそ絶好の機會であると考へるのであります、政府は是等の點に付きまして御考慮をされて居られるかどうか、此の點を先づ御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=20
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021・石橋湛山
○石橋國務大臣 普通の金融機關と云ふものは、御承知のやうに一般國民の蓄積を預つて、それを運用して行くのであります、無論公益機關でありますが、左樣な立場に立てば或る限度がありまして、自然預つた人達の利益それを擁護しなければなりませぬから、そこに限度があります、其の限度が何處にあるかと云ふことは、無論各金融機關の經營者其の他の判斷に依るのでありますが、同じ民營銀行でも甲の銀行と乙の銀行とは判斷が違ひますから、甲の銀行が是は危險だと思つて融資しないものでも、乙の銀行は融資する場合がある、併し要するに限度がある、其の限度が何處にあるかと云ふと預つて居る資金を保護してやる、斯う云ふ所に限度があります、是は必ずしも私益ではないのでありまして、詰り資金の蓄積をする爲には各個人其の他の預貯金者の利益を或る程度保護してやると云ふことでなければ資金の吸收は出來ませぬ、尤も或る國のやうに殆ど全部の事業が國有國營であつて、其の新しい資本は各個人の蓄積に依らずして租税の形で以て新資金を取りまして、それを事業に投資する、斯う云ふ方法もありますが、今の日本ではさう云ふ方法を執つて居りませぬから、やはり國民各自の蓄積に大體頼らなければならぬ、そこで今申すやうな限度があります、所が今日のやうな變化のひどい經濟界に於ては、其の限度だけでは工合が惡い點がありますから、それを補ふ爲に復興金融金庫の如きもの、是は全く國家の危險負擔に依るものであります、言換へれば、租税に依つて此の危險を負擔してやるものの必要があるのであります、そこで普通の金融機關に併せて復興金融金庫と云ふものを作らう、斯う云ふ譯であります、政府としては只今此の程度の考へ方でありまして、是れ以上に進んで、あなたの御質問の趣意は恐らく總ての金融機關を國營國有にせよと云ふ含みがあるかと思ひすまが、左樣なことは考へて居りませぬ、現伏に於ては只今政府が考へて居るやうなやり方が最も日本に適切である、斯樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=21
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022・松本七郎
○松本(七)委員 只今の普通銀行の公益と私益との限界と云ふ御説明から金融機關の國有は考へて居らないと云ふ御答辯は承りました、次に本法の實施の問題でありますが、本法律案に依る復興金融金庫の效果は結局其の運營の如何にあると考へるのであります、ここで第二條の委員會の構成が問題になるのであります、本會議でも此の委員會でも屡屡問題になりましたやうに、此の委員會にはどうしても衆議院議員を入れる必要があることを痛感するのであります、本會議場で大藏大臣は金融面を政治から切離すと云ふ御答辯をされたやうに承つて居りますが、其の理由が一寸分り兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=22
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023・石橋湛山
○石橋國務大臣 凡ゆる機關施設等の民主化と云ひましても、民主化であるから必ず衆議院議員だけでやらなければならぬと云ふものではないのであります、事柄に依りましては、却て直接の政治の波及を避ける必要も起つて來る譯でありまして、斯樣な金融機關に於ては寧ろ直接に衆議院議員等と結付かずに――無論衆議院議員或は貴族院議員等の人が其の人自身の資格として委員になる場合はあり得るのであります、御承知のやうに是は國々に依つて色々やり方は違ひませうが、日本の現状は、現在までのやり方と致しますと、衆議院から何名の委員に出て戴くと云ふことに依つて、自ら政黨政派に割振つて出すと云ふやうな形を取ります、さう云ふことの良い場合と惡い場合とある、金融機關の如きは左樣な政黨政派に直接結付くと云ふ形を取らない方が却て公正であり民主化であると考へて、復興金融金庫に付きましては特に議員を中心とすることを避けた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=23
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024・松本七郎
○松本(七)委員 どうも其の點の御説明が納得が行き兼ねるのであります、一昨日の商工大臣の御答辯でも、政黨内閣が出來たから強ひて衆議院議員を入れなくても宜い、斯う云ふ風な御答辯である、又色々な斯う云ふ委員會に一々衆議院議員を入れる必要はないと云ふやうな御答辯があつたやうに思ひますが、現在の内閣が政黨内閣として立派に出來上つたものでないことは明かであります、總理大臣自らが總選擧後に自由黨の總裁として迎へられた官僚出であると云ふこと、其の他から決して政黨内閣として完全なものではない、又委員會に一々衆議院議員を入れる必要はないと言はれますけれども、此の復興金融委員會は普通の委員會と違ひまして、非常に大切な任務を持つて居ります、此の重要性から申しましても、どうしても衆議院議員を入れる必要がある、只今大藏大臣は民主主義と云ふものは何も衆議院と結付くだけが民主主義ではないと言はれました、それも一面の眞理ではありませう、併しながら民主政治の根本は、何と申しましても國民の代表に依つて構成される必要があるのであります、此の點を重視するかしないかと云ふことに依つて今の議論が分れるのであります、重視する程度に依つて、何も衆議院と關係がなくても民主主義が成立するのだと云ふやうな議論が成立つて來る譯であります、私は他の委員から申述べられましたやうに、斯う云ふ大切なものにはやはり國民代表の機關である衆議院議員を入れることが當然の民主主義の趣旨に副ふものであると考へるのであります、飽くまでも私は衆議院議員の斯う云ふ專門家或は專門家でなくても、廣範圍に亙つた此の運營を圓滑にする上に適當な人を入れられることを極力要望する者であります、是と關聯致しまして、私は政府の政黨と云ふものに對する認識を問ひたいのでありますが、其の前に商工大臣がお見えになりましたので御伺ひ致します、先程第一點で金融機關の國有化の問題と同時に一寸觸れたのでありますが、炭礦の國有と云ふことが我々としては今絶好の機會であり、どうしても徹底的な民主的經營を伴つた國營化をやらなければいけないと云ふ主張を持つて居るのであります、商工大臣として何等か之に考慮を拂つて居られますか御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=24
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025・星島二郎
○星島國務大臣 炭礦の國有問題に付きましては、既に本會議に於きまして社會黨の代表の方から御話があり、それに對して御答へしたのでありまして、私は増産第一主義で、此の時局突破の爲に若し國有にすることに依つて増産が出來ると云ふことが直ぐ裏付けられるならば、それも私は否む者ではありませぬが、國有にすることに依つて、此の増産第一主義で行く時に却て色々議論を多く致しまして、さうして増産には直ぐ役立つまい、斯樣な見地からまだ國有と云ふものに付て積極的な考慮を拂ふ所まで參つて居りませぬ、併しながら補給金制度は國家の負擔が餘りにも厖大でありまするから、之に對して何とか考へなくちやならぬと云ふことは大藏大臣も御同感でありまして、之に對して政府は目下研究を致して居りまする譯であります、そこで現在殆ど國有にも近い國家管理を致して居る譯です、其の面から見まして、今後國有問題等も併せ研究しつつ之に處すると云ふことは考へられまするけれども、今日政府は國有にするからと云うて、それが爲に増産になると云ふことも考へられませぬので、目下の所國有問題に付ては考へて居りませぬ、唯石炭の増産は何とかして目的を達成せなければなりませぬことは、既に九月四日の聯合國の極東委員會に於きましても是が取上げられて問題になつて居りますことは、如何に聯合國が日本の石炭の増産に付きまして非常なる關心を持つて居るかと云ふことを物語つて居るのでありまして、我々當局に於きましても之に對して非常な責任を感じ、殊に此の機會に於きまして申上げて甚だ恐懼に堪へませぬけれども、天皇陛下に於かれましては、石炭増産に對して非常な御軫念を遊ばされまして、昨日商工大臣に來て最近の事情を話せとの御言葉がありまして具さに御話がありました、私は現状を御報告申し、殊に九州が此の八月は目標を突破致しまして、食糧の配給が良かつた爲に、勞働組合の非常な自覺に依つて感激の裡に非常な生産に努力致されまして、八十八萬「トン」を越して百一萬「トン」まで出ましたことは最近にない一つの嬉しい事實でありまして、是等を以て只管増産に勵んで行きたい、斯樣な考へから直接國有問題を捉へましても、國有にする爲には調査をせなければならぬ、買收もしなければならぬ、それには何年かの時日を要しまするし、多額の金も掛りまするし、色々な面から致しまして斯かることを以て却て現在の炭礦業者の惑ひを深からしめまして、増産の上に却て支障なきやを懸念致しますので、國有問題は大いに論議すべき一つの資料ではありますが、今日の場合國有にすると云ふことは政府は考へて居ないと云ふことを、此の委員會を通しまして明瞭にする必要もあらうかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=25
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026・松本七郎
○松本(七)委員 前後致しましたが、先程から御伺ひ致しました此の委員會の構成に付ては、唯此の委員會の問題ばかりではないのでありまして、經濟安定本部の人事等にも關係して參ります、私の承知致して居ります所では、安定會議に貴衆兩院議員を入れる、或は勅任の參與と云ふやうなものを任命して――是は既に行はれたと云ふやうなことを新聞で伺つたのでありますが、此の經濟安定本部と政黨との關係と云ふやうなものは、唯内閣を通じてと、もう一つは安定會議と云ふやうなものに依つて結ばれるのみでありますか、此の點を星島商工大臣に御伺ひします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=26
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027・星島二郎
○星島國務大臣 經濟安定會議の中には、現在の所では貴衆兩院からも學識經驗者として、貴衆兩院の各派を代表して入られると云ふのではなしに、學經瞼者識として、貴衆兩院の中からは相當人數の人が入られることは豫定されて居る譯であります、又參與としてもさう云ふ意味に於きまして參與をされることと思ふのでありまして、政黨政治が發達しました時に、得てして甲の政黨に於て樹立された内閣が假に倒れて乙に渡すと云つたやうな場合に、非常に變革が起る、併し斯う云ふ非常時の場合に餘り變革が起ることは國家の爲に宜しくないと云ふ見地から、寧ろ經濟安定本部は政黨政派から超越し、或はもう一つ掘下げて考へれば、時の政府が假に動いても安定本部は動かないと云ふやうな建前であれが出來て居るやうであります、私は其の點から言へば、一面から見れば所謂政黨政治と一寸そこに懸け離れたやうなことが考へられますけれども、今日のやうな日本の現状から見ますれば、成程さう云ふ考へ方もあるだらう、其の代り經濟安定本部が一面から言へば非常な力を持つやうでありますけれども、又其の力を持たせ過ぎてもいかぬと云ふので、之に一年の期限を與へて居る譯でありまして、そこに私は味はひがあると思ひます、一年經つて後、現在の日本としてはもう少し必要であると云ふならばもう一年延ばすと云ふことも起り得るかも知れませぬが、大體が一年を先づ第一期として、さうして其の間に非常な強力な茲に一つの施策の本部を設けさせると云ふことになつて居る所に、私は味はひがあると思ふのでありまして、勿論直接其の經濟安定本部に對しましては、兎も角安定本部總裁は政黨を代表する總理大臣、政黨の總裁である人が總理大臣でありますから、其の政黨の政務調査會との連絡は勿論ある譯でありますから、政黨との結ぼりはさう云ふ意味に於ては間接直接起つて來ると思ひますけれども、安定本部の機構其のものは、私はさう云ふ風なことを目途として今度成立したやうに見て居る譯でありますが、併し官制が發表されて、其の運用が始まつてまだ僅か一箇月經たぬのでありますから明瞭ではありませぬが、大體に於てさう云ふ線に從つて行くことが、今の日本として私は宜いのだらう、茲に多少の彈力性を持たすことも宜いと思ひます、伸縮自在の點もあつて宜いと思ふのございます、是は私一箇の觀點でありますけれども、現在の官制の經緯から考へまして、斯樣な構想を以て私は處して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=27
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028・松本七郎
○松本(七)委員 「アメリカ」の制度のやうな下では、此の安定本部と云ふやうなものが現在考へられて居るやうなものでも宜いと思ふのでありますが、日本では議院内閣制と云ふものが既に、確立されて居ります、今度の新憲法の草案では是は最も明瞭に確立されんとして居るのでありますが、聊か現在の安定本部の方向は是と趣旨が離れ過ぎると云ふやうな感じが致します、少くとも何等か政黨、特に野黨、少數黨から監察と云ふやうな意味で之に入ると云ふことが必要ぢやないか、斯う云ふ風に考へるのであります、是は安定本部ばかりでなく、各省に政務官制度と云ふものがありますけれども、從來此の政務官が監察の任務と云ふものは殆ど其の效を奏して居らないのであります、政黨と内閣との連絡機關に過ぎない、今後各省に先程申上げましたやうな野黨、少數黨からも官吏監察官と云ふやうなものを入れて運營の圓滑を圖ると云ふやうな點、是は私は吉田總理大臣に御伺ひしたかつたのでありますが、此の點兩大臣の何れからでも結構でありますから、さう云ふ考へがおありかどうか御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=28
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029・石橋湛山
○石橋國務大臣 反對黨の人を政務官に入れると云ふ御趣旨なら、さう云ふことは出來ないだらうと思ひます、何處の國にもそんなことをやれる筈もなし又入つて來る反對黨の人もないと思ひます、ですから現在の日本でやつて居るやうな政務官即ち與黨から政務官が出ると云ふことは、是は政治の必然のことでありまして、唯現在の政務次官及び參與官がどれ程の働きをして居るか、もつと多く働かなければならぬのではないかと云ふやうなことは、是はあり得るかも知れませぬが、大體制度としては現状以上に出で得ないものと思ふのであります
尚ほさつき安定本部それから金融金庫の委員會の御話もありましたが、政治の安定を保つ爲には、商工大臣から先程言はれたやうに、何處の國でも政黨内閣であれば迭ることがある、迭つた場合に重大な政策に付て斷層的な變化が起らない限り、或は又只今日本の現状に於きましては、例へば財政問題でありますとか、或は金融の問題でありますやうなものが、内閣が變化しても相當の繼續性を持たなければならぬと云ふやうな時期があります、さう云ふ時には政黨政治の非常に發達した國に於ては、寧ろ調査會とか云ふやうなものは、反對黨の領袖を、例へば委員會にしても委員長にして、さうして調査會を設けると云ふやうなことも行はれて居るやうであります、斯う云ふことは非常に望ましいことであります、直接の政治ではない、委員會と云ふやうなもので調査研究と云ふやうなものに付ては左樣な處置を執つて居る、例へば英國あたりはさう云ふ處置を屡屡執つて居るのであります、隨て此の調査會、委員會が繼續して居る途中で内閣が迭りましても、其の調査會、委員會の調査と云ふものは、其の次の内閣に報告されて相當有用に働くと云ふ大變良い點があるのであります、日本に於ても追々さう云ふことに相成らなければならぬと考へて居りますが、現状に於てはまだそこまで實は政黨其のものの訓練が行つて居ないと云ふことも或はあらうと思ひますが、此の復興金融金庫或は安定本部の如きは無論政黨内閣がやつて居ることでありますから、政黨に關係があるのでありますけれども、併し今申上げたやうな一面に於ては又若干の恆久性を持つて居るものであります、さう云ふ意味に於て日本の現状に於ては復興金融金庫の委員會には直接の政黨の代表者を入れない、先程安定本部の參與其の他に付て述べられたやうに、學識經驗者として貴衆兩院議員等の御手傳は願ふ、併しながら衆議院を代表して入るとか、或は或る政黨を代表して入るとか云ふ建前は執らないのが本筋である、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=29
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030・松本七郎
○松本(七)委員 私の先程御伺ひしましたのは、野黨、少數黨から出すと云ふのは政務官ではないのでありまして、野黨側としての行政の監察と云ふことが必要ではないか、斯う云ふことも考へられるのではないかと思ふが、政府はさう云ふ點に付て何等かの考慮があるかと云ふ點を御尋ねしたいのであります、特にそれは英國のやうな官吏が公僕であると云ふ精神に徹した訓練の行屆いたやうな國では、恐らく斯う云ふ變則的なものは必要ないでありませう、併しながら我が國ではまだまだ是から官吏の再教育と申しますか、相當質を變へて行かなければならない状態にあるのでありますから、斯う云ふ變革期に特にさう云ふ制度は必要なんではなからうかと云ふ意見であります、此の戰時中よく各省の官僚が軍部がどう斯う言ふ、軍部の命令であると云ふやうな言葉に依つて責任を囘避して來たと云ふことは事實であります、尤もあの位横暴であつた軍閥に抗して行くと云ふことはそれは容易なことではありませぬでしたでせう、其の苦衷は能く分りますけれども、其の反面に兎角軍部の名を籍りて責任を囘避して居つたと云ふやうな、長い者には卷かれろと云ふ封建的な根強いものを持つて居るのであります、それが今日ではどう云ふ風に變つて居るかと申しますと、今日既にやはりさう云ふ傾向がある、事毎に「マ」司令部の命令である、或は進駐軍の命に依つてと言ふ、小さい問題まで司令部では一々指令するやうなことは殆どない、それにも拘らず兎角さう云ふ言葉で以て責任を囘避する傾向が既にあるのであります、實例を申しませぬが、餘りおかしいので司令部の方を調査すると勿論そんな馬鹿げたことは言はないと云ふやうなこともあるのでのります、斯う云ふ點で官吏の再教育と云ふやうな點に現政府は何等か具體的な考慮をされて居りますか、是も實は吉田總理に御伺ひしたいのでありますが、聊か、無理かと思ひますけれども、若し出來ましたら御答へを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 官吏の再教育と云ふ言葉が良いかどうか知りませぬが、兎角官吏制度、公吏制度を改革すると云ふことは總理からも再々聲明して居る所であり、現に其の爲に目下相當大規模の調査會を作つて全般的の官吏制度の改革案を作ることに定まつて居ります、それから今の進駐軍の問題でありますが、戰時中軍部が實際横暴であつたでもありませうし、又軍部を笠に著て色々なことをやつた向もありませう、是は豈獨り官吏のみならんやと私は思つて居りますが、現状に於て又司令部等を同じ立場に立てて居ると云ふことも事實であります、何も彼も司令部に持つて行つて自分の責任を囘避するなんと云ふことは許すべからざることであります、併し實際の事情は恐らく御承知ないのでありませうがら、餘り突込んだことを申せませぬ、又私の口からああだ斯うだと云ふことを申せませぬ、司令部に御尋ねになつてどうだつたかと云ふことも決して其の儘それが其の通りであると云ふことも斷言し切れないのであります、左樣御諒承を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=31
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032・松本七郎
○松本(七)委員 只今では占領下にあるのでありますから色々政府の方でも答辯しにくいと云ふやうな事情も能く諒承致しました、併しながら只今官吏制度の調査の進行或は其の他の御答辯を伺ひますと、又非常に頼もしくもあるのでありますけれども、本年の三月十六日の新聞の報ずる所に依りますと、當時政府は昨年の十一月行政整理委員會を作つて、原案に基きまして閣議決定して行政民主化措置案の構想と云ふものを發表して居るのであります、之に依りますと、其の主なるものは國民の行政參加制度の創設、即ち中央地方の行政機構に官民行政協議會の如きものを設置する、さうして是が委員は貴衆兩院議員、政黨、經濟團體協議會、農民組合、消費組合等より選任し、之に依り行政に對し監察を行ひ、配給、窓口事務の刷新を圖り、第二は祕密獨善的行政を廢止して公開行政を實施する、第三には調査研究機關を整備擴充する、第四には官吏研修制度を創設擴充し、官民の交流を圖り、適宜民間人を拔擢する、第五には信賞必罰を嚴重レイ行すると同時に官吏監察制度を創設する、是は内閣各省に監察委員會を設け、委員は官民兩者より選ぶ、大體以上のやうなものであつたのであります、是は其の後一體どう進展して居るのでありませうか、從來斯う云ふ行政整理委員會の原案と云ふやうなものは發表はされても何時の間にか有耶無耶になつて居るのであります、只今もさう云ふ調査會を設けて云々と言はれましたけれども、それが有耶無耶にならないやうに、今後政府の英斷を望みます、當時發表されました只今申しました閣議決定及び文官任用令、高等試驗令等の改正方針は其の後進展して居るのかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=32
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033・石橋湛山
○石橋國務大臣 それは前内閣時代にさう云ふ閣議決定をされたものでありますが、現状に於てはそこに決定された位のことではいけないのでありまして、只今地方制度にしましても知事公選其の他のやうな當時は十分豫測されてなかつた事實も起つて居ります、或は憲法の改正と云ふものも、其の當時豫測されたのと必ずしも同じでもない、斯う云ふ譯でありまして、そこに掲げてある如きことは抽象的には何れも尤もなことでありまして、今後の官公吏制度の中にもさう云つた氣持は取入れられると思ひますが、もつと根本的に官公吏制度を考へ直さなければならぬ、斯う云ふことで今囘特に調査會を設けてやらう、之には尚ほ前から話があつたのでありますが、「アメリカ」の方面からも近く左樣な問題の調査團が見える筈であります、其の援助をも受けまして、さうして今後の新憲法實施後の日本に適切なる官公吏制度を制定しよう、斯う云ふ譯で詰り再出發と言ひますか、新しい事情に基いて改めて出發し直す譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=33
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034・松本七郎
○松本(七)委員 此の際政府の日本の政黨政治に關する見解を少し御伺ひしたかつたのであります、併し首相も幣原國務大臣もお見えになりませぬで、此の點甚だ困るのでありますが、私國民が懷いて居る疑惑其の他に付て申述べますから若し納得の行く説明が大藏大臣から出來ますならば御説明願ひたいと思ふ、それは幣原前内閣は中間内閣として總選擧を是でやつて、總選擧が終つたならば直ちに輿論の向ふ所に從つて引下ると云ふことは全國民が期待して居つた所であります、併しながら實際は選擧が終つたにも拘らず、四十日間も空費した、第一に伺ひたいのはあの選擧が終つてなぜ直ちに挂冠しなかつたか、斯う云ふ點も占領下にあるのでありますから複雜な事情もあるでせうけれども、當時の幣原首相の執つた態度には國民は非常な疑惑を持つて居るのであります偶偶中立無所屬の代議土が澤山出まして、新黨工作なるものが傳へられた、苟くも政黨政治、民主政治をやらうとする時に選擧をやつた直接に於て中立議員其の他で新黨を作ると云ふやうな運動を起すと云ふこと、其のことが既に民主政治、政黨政治を冒涜するものであり、國民を愚弄するやり方なのであります、當然直ちに挂冠すべきと期待して居つた國民は、何の爲に選擧したのか分らぬと云ふやうな、非常に愚弄された感じを持ち、此の幣原首相の動きに非常な疑惑を懷いて居るのであります、未だに此の疑惑が消えない、是は民主政治の發足に當つて一大汚點であつたと思ふし、どうしても此の際國民が十分に納得出來る説明を聽かなければならないと思ふのであります、今後の日本の政治の健全なる發達は一に政黨政治の健全なる發達に懸つて居るのである、あの時偶偶自由黨の總裁の鳩山一郎氏は追放令問題も何だか噂に上つて居つたやうでありますし、さう云ふ關係で或は後のことを心配してと云ふやうなことも言はれるかも分りませぬけれども、若しさうだとすればそれこそ官僚の獨善的なお節介であります、綺麗に政黨に直ちに引渡すと云ふことこそなさるべきことではなかつたか、民主政治の下にあつては、政權の授受は最も「スムーズ」に運ぶべきものであるに拘らず、あのやうになつたと云ふ理由をはつきり御説明願ひたい、此の點御説明が出來ますでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=34
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035・苫米地義三
○苫米地(義)委員 今御質問のやうなことは、此の法案とは非常に距離の遠い問題でありまして、議事促進上斯う云ふ點は少し委員長に於て調整されたらどうかと私は思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=35
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036・高橋泰雄
○高橋委員長 畏まりました、松本君の御質疑は御聽きのやうに此の法案の審議とは一寸離れて居りますが、折角大臣の御出席を今朝から御待ちになつて御發言になつて居るのでありますから、或る程度束縛することもどうかと思ひまして發言を許した譯であります、今後は成るべく直接本案に關係のあることに付て御發言を願ふことに致します、それから如何でせう、松本君に申上げますが、今御質問のやうな事柄は他日幣原國務大臣の御出席を要求して、御出掛け願つた際に國務大臣自身から御答辯を得られた方が宜いと思ひますが――大藏大臣も國務大臣ではありますが、大藏大臣から松本君の御要求のやうな趣旨の御答辯を求められることは困難かと思ひますが、どうでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=36
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037・松本七郎
○松本(七)委員 私もそれを懸念致しましたので最初に御斷り申したやうな譯であります、只今議事進行に付て問題が懸け離れ過ぎて居ると言はれましたが、私は委員會の構成だとか、或は經濟安定本部の人事の構成其の他を通じまして、其の根本を成すものは政黨政治、民主政治の認識の問題に掛つて來るからこそ、私は此の問題を取上げて居るのであります、どうしても現内閣の此の點に對する認識如何を突止めなければ納得する譯に行かないのであります、現内閣の副總理格とも云ふべき幣原國務大臣の過去の行動に對して疑惑を持つて居りますから、此の民主政治に對する疑惑を質す意味で私は聞いて居るのであります、決して無關係なことに亙つて居るとは私は考へませぬ、併しながら是は只今委員長から申されましたやうに、幣原國務大臣が御出席になつた時に質問するのが妥當と思ひます、尚ほ出席願つて質問するかどうかは後程我が黨の理事とも相談して決定致したいと思ひますから、此の點は是で打切ります
次に我が國の經濟復興、經濟安定はやはり何と申しましても食糧安定が第一だと考へます、幸ひに是まで輸入食糧に依りまして危機はどうにか突破致しましたが、併し尚ほ九月十月は相當な輸入食糧に俟たなければならない、又今後は食糧ばかりでなく、色々な意味で聯合國殊に米國の物心兩面の援助を仰がなければならないと考へるのであります、隨て此の際に是非御伺ひして置きたいことは、輸入食糧の問題で「マッカーサー」司令部が曾て聲明したことがあるのであります、其の前に一言申上げたいのは、本年の二月でしたか、其の頃非常な不安が増大し、食糧輸入の問題が出て參りました時に、國民の間には占領軍は其の占領政策として、國民が食糧暴動を起すことを寧ろ待つて居るのぢやないか、之に依つて食糧暴動が起つた時に、全面的な管理を加へる積りでないかと云ふやうなことを大分不安に思ひ、我々の所にも質問に來たものであります、勿論私は聯合軍の占領政策或は米國の對日政策と云ふものはさう云ふものでないことは疑つて居りませぬから、是は否定して參りましたけれども、其の後「マッカーサー」司令部の聲明で食糧の輸入は占領政策の必要からやるものである、斯う云ふことを聲明して居つたのであります、私は是が果して本當の米國の肚であるかどうか當時疑つて居つたのでありますが、其の後の米國の對日政策の動きを見ますと、必ずしも占領政策上の必要からばかりではないやうに思ふのであります、私も當時から我が國は非常に誤つた戰爭をやつた、其の過ちは償はなければならない、又我々は敗戰國民である、併しながら如何に戰爭に敗れた敗戰國民であつても、人間として、民族としての生存權はやはり認められなければならないものであると考へるのであります、此の食糧輸入が唯占領政策の必要から來て居ると云ふことと、根本に於て人間としての生存權を認めての上だと云ふこととでは、受ける方では非常に相違があるのであります、私の考へではどうしても「アメリカ」は日本民族として、人間としての生存權を認めて、之を救助すると云ふ大きな愛の閃きがあるやうに考へるのでありますが、斯う云ふやうに解釋して宜いかどうか、政府の御考へを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=37
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038・石橋湛山
○石橋國務大臣 「マッカーサー」司令部が發表をされた言葉には、色々の政治的其の他の種々の考慮があるものと考へますから、それを各自がどう云ふ風に解釋するか、それは自由でありますが、輕率に其の言葉を種々の解釋を施すと云ふことは、是は此の際寧ろ避けた方が宜いだらうと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=38
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039・松本七郎
○松本(七)委員 何れに致しましても、我々は此の食糧輸入と云ふことには非常に感謝をしなければなりませぬそれだけに此の配給の公平化、配給に依る生活の保障と云ふことも、眞劍に考へなければならぬと思ふのでありますが、今後失業問題、或は「インフレ」の昂進と云ふものに依つて、米の豐作が豫想されて居つても、日本國民生活は不安になつて來ると考へられます、失業對策、配給の公平化、或は配給に依る生活の保障と云ふやうなことに十分なる御努力を願ひたいと存じます、以上を以ちまして私の質問を打切ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=39
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040・高橋泰雄
○高橋委員長 それでは此の際暫時休憩致します、午後一時半から開會致します
午後零時八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=40
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041・会議録情報2
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午後一時五十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=41
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042・高橋泰雄
○高橋委員長 休憩前に引續き會議を開きます――舟崎由之君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=42
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043・舟崎由之
○舟崎委員 私は此の金庫の資本金の問題に付て聊か御尋ね致したいと思ひます、全部使つて百億圓で、此の限度内と言ひますることは、色々前の委員の方からの質問もございましたが、如何にも少いやうに思ふのであります、大藏大臣も産業を起ち上らせると云ふことが、今日の「インフレ」問題を片付ける上に於ても一番大切な問題として取上げて居る、國民もどうしたら再建が出來るであらうと云ふことを非常な期待を以て見て居つたのであります、此の金庫法案が其の唯一の武器である、斯う見まする時に、餘りにも計畫が小さ過ぎると考へるのであります、又市中銀行も、先づ見込みのあるものには金を貸して、其の見込みの立たないものを復興金庫が之を貸して行くと云ふ風なことも、理論としては成立つやうでありまするが、今日の産業界の状況で、而も今日の傷められた銀行の状況で、當局が考へるやうな如く左樣に易々と市中銀行が將來の見込を立てて金を貸すなどと云ふことは豫想が付かないのであります、既に封鎖された其の封鎖の見返りにして金を貸すと云ふことさへ中々逡巡して居ると云ふ風な現状でありますから、今後はやはり産業の金融と云ふものは、どうしても復興金融金庫が主體になつて、市中銀行を當てにすると云ふやうなことを大して問題にしては却て違算が生ずるのではないか、斯樣に考へるのであります、其の意味に於てどうすれば宜いかと云ふことになれば、資本金百億圓と云ふ枠をもう少し幅を付けて貰つて、何億圓以内と云ふことにするか、さう云ふことに此の際御一考を煩はしたいと思ひます、もう一つ私共國民と致しましては、軈て行はれる所の財産税の問題でございます、此の財産税は無論斯う云ふことが度重なると云ふやうなことはあつてはなりませず、又ありましてもさう云ふことは當てにならないことになると思ひますが、此の財産税が私は日本の産業を起ち上らせる所の唯一の財源であると云ふ風に考へたいのであります、國民のなけなしの財産まで、不動産までも投出して國家の爲に馳せ參ずると云ふ此の金、此の資本を以て一つ産業の再開に向けたらどうか、もう既に此の財産税は豫算の赤字を埋めると云ふことを狙つて居るやうでありまするけれども、左樣なことになりますと五百億や六百億の財産税と云ふものは忽ちに消えてなくなるのであります、我々民間人の立場から申しますると、非常に負債があつてどうにもならない、所謂首の廻らないやうな姿の時に或る資本が手許に入つたとする、斯う云ふ場合に如何なる處置を執るかと申しすまると、過去の一切の借金、負債などは或は棒引或は何十年と云ふ年賦償還も頼んで、先づ負債を止め、さうして其の元手を生産一本に振向けて、是で必ずもう一囘男になると誓つて起ち上るのが我々人間の所謂七轉八起の場合の手段であります、今の日本の國も丁度さう云ふ状態で、少し何かやらうとすれば行詰る、又色々負債關係の整理の面も澤山ある、さう云ふ際に此の財産税を其の儘性格をはつきりしないで、其の用途を確然としないで置きますと、燒石に水の財産税になつて、何時の間にか是も消えてなくなるのではないかと思ひます、茲に私は此の五百億、六百億の大きな財産税を其の儘産業の復興に振向ける、是で日本は産業を起ち上らせるのだと云ふ呼び掛けをはつきり、全國民に向つて致しましたならば、國民に頼み甲斐のある、據り所のあると云ふやうな氣持も出まして、産業界が明朗になるのぢやないか、百億位では、そればかりの金では迚も駄目だと云ふ聲が市中に既に瀰漫して居ります、此の際に私は財産税を之に向けると云ふやうな大きな手を一つ打つて戴きたいと思ひます、就きましては、當局に御尋ねしたい點は、財産税は一體どう云ふ風に使ふのだと云ふはつきりした御計畫があられるや否や、もう一つは、金融金庫の資本をもつと大きな枠の範圍に此の際改められてはどうかと云ふことを御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=43
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044・上塚司
○上塚政府委員 戰災に依りまして我が國の産業が非常なる打撃を受けて、而もそれが補償打切りに依つて殆ど資金を得ることが出來ない、再建の目途が立たない、さう云ふ事情にあります爲に、此の復興金融金庫と云ふものが企業再建の一つの融通機關として出來上つて居ることは御承知の通りであります、隨て此の非常に打撃を受けたものを復興せしむるに對しましては、百億圓の資本金では足りないと云ふことは御尤もであります、併し一應此の程度に決めて置きまして、他日資金の需要が非常に多くなりまして資本金の増加を必要とすると云ふ目安が付きましたならば、法律に依つて必要なだけを殖やす考へで居るのであります
尚ほ財産税の御話がありました、財産税を産業再建の爲に使つたらどうかと云ふことでございましたが、現在の日本の財政状態が、財産税を其の方に振向けるだけの十分の餘裕がありましたら洵に結構でありますけれども、御承知の如く今年度も數百億の赤字財政でありまして、是は何等かの形に於て國民の負擔とならなければならないものであります、それで今年度に於きましては他に財源がございませぬから、此の財産税を以て赤字を補填して行くと云ふことに決定致して居るのでありますが、元來財産税を斯くの如き用途に使ふと云ふことは御説の如く決して常道ではないのであります、併し現在の日本の困窮せる財政の状態から致しまして、如何ともすることが出來ないで、此の財産税を赤字に向けて居るやうな次第でございます、若し此の他に財源があつて、さうして財産税等を仰せの如き積極的の方向に向け得る状態になれば、洵に日本の産業再建も困難の度を少くすると思ひますけれども、今はさう云ふ事情の下にないのを甚だ遺憾と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=44
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045・舟崎由之
○舟崎委員 今更申上げても少し遲くなつた譯ですが、此の困つて居る國の財政の状況に於きまして、公債を如何にするかと云ふことに付ては當局も一つも仰しやらない、又議會の委員會其の他でも餘り伺つて居りませぬが、本當に困つた場合には出來るだけ借金は待つて貰ふと云ふことでないと、起ち上り得ないと思ふのであります、そこでもう一應公債の利子を財界の復興が出來るまで棚上げをして行く、さうして直すものは直すと云ふ風なことに付て、政府の部内ではさう云ふ問題は持上つたことがないのでございませうか、其の邊を一つ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=45
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046・上塚司
○上塚政府委員 公債政策に付きましては、政府部内に於ても深甚なる注意を以て研究を續けて居るのであります、度々今仰せの如き問題も議論の中には出て參りました、さうして其の可否等に付ても議論して參つた所であります、併しながら今年度に於きましては、金融機關竝に預金部等の非常なる打撃の際でありまして、是れ以上是等の方面に更に公債の利子の棚上げ等に依つて影響を與へますると、其の結果は預金部に預けて居りまする所の所謂郵便貯金、零細なる金を預けて居る人々、さう云ふ人々の非常なる不安を起すと云ふやうなことになります、今囘軍需補償打切り等の非常措置を致した直後でありますから、出來るだけ慘害を此の預金者の上に少く與へるやうに致したいと云ふ氣持を以て、公債に付きましては、其の儘に致して居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=46
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047・舟崎由之
○舟崎委員 公債の問題は極めて重大でございまするから、此の問題は色々御尋ねしたいことがございまするけれども、是れ以上觸れない方が宜しいと思ひます、當局の此の軍需補償打切り、又公債は其の儘にして行くと云ふ風な方針が、どうも金融資本家を何とかして援けて置かなければならぬと云ふ風な所に重點が向けられて居る、其の爲に産業方面が非常な打撃を餘分に食ふと云ふ風に、僻みかも存じませぬがさう云ふ風に考へられるのであります、此の命令産業――命令に依つて工場擴張などをしたことは、確かに社會工場當局の責任でありまして、其の損害を負擔することは當然でありまするが、其の裏にはやはり金融業者も共同責任があると思ふのであります、軍需補賞の打切り、又それの穴埋等に付ての方針は、近い中に確定的なものを發表なさると思ひまするが、産業を餘り痛め付けますと、迚も政府が救濟するなどと云ふ風な力だけでは、救濟出來ない失業問題が起つて來るのであります、寧ろ失業者を成るべく出さないやうにする爲には、産業の被害を出來るだけ少くすると云ふ風な方針の下に、此の軍需補償打切り影響の及ぶ所を、金融機關も共同に何とか負擔をして、さうして産業が被害の防波堤にならぬやうな方法を一つ立てて戴きたい、斯樣に考へるのであります、色々「デマ」が飛んで居りまして、未拂込を先に徴收すると云ふやうなことで、もう既に未拂込の株式などは逆な「プレミアム」が付いて居ると云ふやうな騷ぎのあるやうな状況でありますが、何か軍需補償打切り後の政府の方針に付て、當局では方法が出來て居るのでございませうか、其の邊をはつきり御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=47
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048・上塚司
○上塚政府委員 金融機關を特に擁護して居るやうな政策を執つて居るやうに見えると云ふやうな御話でありますが、政府と致しましては、決して金融機關援護に偏重して居る政策を執つては居りませぬ、今囘の軍需補償打切りに依つて非常な影響を受けて居るものは、單に打切られた所の企業會社ばかりでなく、同時に最も強く金融機關が其の影響を受けて居るのであります、今囘の軍需補償打切りの趣旨は、私が茲に申上げますまでもなく、總ての擬制資本の一掃であります、軍需會社は軍需補償があるからと云ふやうな考への下にそれを豫期致しまして、頼るべからざる補償を一つの資本と見て色々と事業を畫策し、或はそれを食つて行くと云ふやうな状態であります、又金融機關は、殆ど戰時中總ての預金資本を擧げて、軍需會社に資金を貸付けて居ります、其の爲に軍需會社に軍需補償があれば、必ず其の金は金融機關に歸つて來るものとして、是もやはり歸つて來ない所の頼るべからざる資本を土臺として、さうして營業を續けて行くと云ふやうなことが相續いて居る、又其の金融機關に預けて居る預金者も、必ず金融機關から自分の預けて居る預金が歸つて來るものとしての計畫を立てて居る、それが即ち日本の總ての産業を所謂擬制資本の上に立たせて居るのでありまして、もう殆ど總ての經濟界が化膿してしまつて居る、それに「メス」を入れたのが今囘の處置であります、總ての關聯した所の處置が一應完成してしまひますれば、決して此の企業を嚴しく致して、さうして金融機關に寛大であつたと云ふやうなことは出て參りませぬ、今後尚ほ幾多の殘された處置が近い間に議會に提案せられると思ひますから、それ等の總ての處置を綜合されて、さうして十分に考究を御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=48
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049・舟崎由之
○舟崎委員 金融金庫は金を融通する、金を融通しても物がなくては、是は事業が成立たないので、結局本會議以來、物の面をどうするかと云ふ非常に心配の餘り活溌な御意見が出た譯でありますが、私は現在非常に問題になつて居ります鐵とか、石炭とか云ふ問題を一寸御尋ねしたいと思ひます、此の石炭の生産が思ふやうに上らないと云ふ原因は色々ありまするが、私は此の補給金があると云ふことが生産の隘路になつて居ると云ふ風な考へを持つて居るものであります、是は有力な業者などの意見も聽いて見たのでありまするが、補給金と云ふものは帳簿上の辻棲は最後に於て合つて、所謂勘定は合ふと云ふ制度でありまするが、實際の事業を營むには、さう云ふ金では日常の業務を運轉する所の運轉の金が所謂死に金になるのであります、現實に斯かる所の品物の賣上げが大體幾らに決まるかと云ふことが豫想は大體付けて居りましても、握つて見るまでは當てにならない、半歳若しくは十箇月も後に決まると云ふやうな制度を設けて居りまして、さうして最後に於ては帳尻が合ふと云ふやうなことでは、所謂事業家の長い經驗から來た所の勘の働きとか、事業家の手腕とか、度胸と云ふ風なものがどうしても活溌に動かない、其の爲に今日謂ふ炭坑の設備が中々整備出來にくいなどと云ふやうなことも、其處らにあるのではないかと思ひます、炭坑の作業、勞働條件が惡いなどと云ふやうなことも、是は經營者の責任であると同時に、斯う云ふ制度を設けて居る政府に非常な御考へを願はなければならぬ責任があると思ふのでございます、自由經濟時分の過去のことを思ひ出すと斯う云ふ例があります、あまり政府に頼つて補給金を貰つたり、補助金を貰つた事業が巧く行つて居る例しはないのであります、其の巧く行かない實情にある行き方を、一番大切な今日の増産時代に其の儘繼續して、さうして豫算の財源はないので、赤字だと云ふやうなことを言つて居られることは、非常に私としては矛盾があると思ひます、尤も之には物價政策から來たものがあることは無論當然でございますが、物價に付ては一昨日も苫米地君からの質問があつたやうでありますが、大體に於て二十倍位の程度に主要物價がなつて居るのに、石炭だけは大體十倍か十二、三倍で公定相場を抑へて置かうと云ふ所に無理がある、鐵などもどうにか補給金制度を復活して、普通鋼材などに出して居りますが、さう云ふ無理はありましても、一般需要家の方はもう知つて居りまして、實際賣買するのは石炭が五百圓、六百圓もする値段で入つて居る、さう云ふことが實際あるに拘らず、補給金制度に依つて安い値段で抑へて居ると云ふ風な構へ方は、鼠落しで鼠を確かに抑へた積りであるが逃げて居ると云ふ風な行き方と違はないぢやないか、私は經營者の責任をもつと追究することを、我々國民としてはしなければなりませぬが、それには斯う云ふ補給金制度などと云ふ風な矛盾せるものを撤廢して、三百六十圓なら三百六十圓で賣ると、此の思ひ切つた度胸を一つ出されたらどうかと思ひます、是が鐵の場合に致しますと、鐵一「トン」に對して石炭一「トン」でありますから、補給金の二百圓だけが高くなると云ふことであります、所が普通鋼材の現在の價格は四千圓、四千圓に對して二百圓と云ふことは五%の値上りに過ぎませぬ、特殊鋼一「トン」に對して石炭一「トン」とすれば、現在の特殊鋼は八千圓位して居るとすれば、是の二百圓は實に僅かの値上りであります、其の他石炭を使ふ工業品の現在の市價と石炭の値上りに依る「パーセンテージ」を比べて見ますと、左程恐ろしいものではない、寧ろ生産さへ増加しますならば、多少値段が上りましても、其の値段で最高の線を引いて置けば、増産に依つて其の線は必ず守り得るし、又うまく行けば下つて來ると云ふ風なことが起つて來ると思ふのであります、寧ろ私は此の貧乏世帶の日本の豫算面から、二十億にしましても今日の状況から申せば半年分の豫算しか計上して居ないのであります、之を拂つた後はいつそのことあとは打切つて、三百六十圓か何かの所謂業者の嚴肅なる協定相場を政府が立會つて作つて、それで商賣をやると云ふ風な濶達な方法を御執りになつたらどうかと思ひます、又政府としては寧ろ補給金と云ふ制度よりも、各事業會社の從業員に對して、生産の或る高が出た場合には政府からそれに獎勵金を呉れてやる、働く人達に獎勵金を呉れると云ふ方へ金を使つた方が必ず生産は上るぢやないかと思ひます、其の點に付きまして商工當局か大藏當局からの御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=49
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050・上塚司
○上塚政府委員 石炭及び米の價格差補給金と云ふものは非常な莫大な高に上りまして、現在の日本の財政の上から言ひますと重大なる重荷になつて居ります、隨て今御話の如き御説は我々としても洵に御尤もに考へるのであります、唯現在敗戰後の日本の經濟状態と致しまして、非常な物價の上に於ても動搖を來して居る時であります、石炭は總ての産業の基礎を成すものであります、隨て各種物價の基礎となるものでありまするからして、此の消費値段を一時に引上げますると云ふことは、他の多くの物價に影響を及ぼす所が甚だしいのであります、それでもう少し經濟界が安定致しまして、さう云ふ物價の引上げに因つて他の方面にも騰貴を來しても經濟界に影響があまり及ばないと云ふやうな時代になれば、當然價格差補給金と云ふやうなものはなくすべきものと思ひます、まあ今年度に於きましては兎に角相當額の補給金を計上致しましたが、明年度以後に於きましては、十分に之を考慮致しまして對處しなくちやいかぬと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=50
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051・舟崎由之
○舟崎委員 私は物價政策も無論でございますが、石炭を増産せしむると云ふ手段として、増産の爲には國としては如何なる手段も講じなければならぬと云ふ建前からして、多少さう云ふ面に犧性を生ずることがありましても、生産の増強に必要なる手段とあれば忍んでも實行しなければならないことではないかと云ふ意味で御尋ねした譯でございます、併し此の問題は是で打切りまして其の次に移ります
鐵のことでございます、是は私は申すまでもなく現在の鐵の生産高と云ふのは、丁度大正元年の生産高に匹敵して居ります状況でまります、大正元年當時はどんどんと外國の材料も輸入致しまして、生産高と同じ位の輸入量が來て居りましたから、日本の産業の状況は大正元年でも今よりは遙かに宜かつたのであります、其の明治年間のやうな鐵の生産の状況に於て、是から此の金融金庫の資金を動かして行かうと云ふことは容易ならぬことだと存ずるのであります、鐵を造るには「スクラップ」は何百萬「トン」もありますが、取敢ず資源には困らないとしましても、石炭の問題になる、石炭は輸入する、或は重油も輸入の途を付けつつあると云ふ風にも伺つて居るのでありますけれども、私は此處で商工當局として一つ御斡旋を願ひたいと思ひますことは、今日の鐵鋼生産の技術が榮養失調の状況でありまして、非常に熱效率が惡い、理論的に言へば十四萬「トン」の配給の石炭がありますれば、銑鐵二萬「トン」造るには四萬「トン」の石炭があれば濟む、殘り十萬「トン」で普通鋼材を造れば一「トン」一「トン」の交換で行くのでありますから、十萬「トン」の鋼材は出來なければならぬ、それが僅かに普通鋼材が二萬トンそこそこと云ふやうな、四分の一にも足りないと云ふことは、今日の文明時代に科學を全く置き去りにした生産状況が今日行はれて居る、さうして外國から石炭を輸入しなければ生産が上らぬと云ふやうなことは、是は政府當局として、此の儘放つて置いてはならない問題ぢやないかと思ふのであります、「アメリカ」の方々が多數に日本へ見えて居りまして、總て科學的な方法で見て居られる其の眼の前に於て、斯樣な不能率な技術で日本の堂々たる製鐵業者が仕事をやつて居るなど云ふことが分つては國辱だと思ひます、のみならずさう云ふ状況では、石炭が本當に欲しいと云ふ時に、能率調査などやられては、當局としては頭が上らないのではないか、斯う思ひますので、出來るだけ速かに一つさう云ふ各製造會社の社長とか何とか云ふものでなく「チーフ・エンジニア」會議など開いて、早く能率を高める會議を招集せられて、石炭を十分に「フル」の「エフィシエンシー」に使つて居るが而して尚ほ足らないのだと云ふ所まで持つて行かなければ承知出來ない、斯う私共は考へて居るのであります、石炭を掘れと云ふ叫びも宜しうございますし、輸入も必要だと云ふことに相違ありませぬが、現實の問題をもう少し――もう少しどころではない、もつとうんと技術水準に持つて行く、斯う云ふことに御考へを願ひたいと思ふのであります、それに付て私が此處で御尋ねしたいことは、現在商工省には鐵鋼課と云ふのがございますが、あれは鐵鋼局であつたものであります、鐵鋼局が、此の鐵鋼の非常に必要な時代に於てどうして格下げをした鐵鋼課にされたのであるか、斯う云ふ時こそ一つうんと機構も強化して、もつと大きな政治力で突進んで、洗ふべき所を洗つて進んだらどうかと思ふのでありますが、さう云ふことに付て課を局に上げると云ふやうなことに付ての御考へも一つ御所見と同時に承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=51
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052・三木秋義
○三木政府委員 石炭と鐵との二つが日本の産業の基礎産業でありまして、此の増産が日本の經濟の再建の基本になると考へられます、只今御話のやうに鐵と云ひ石炭と云ひ、何れも甚だ生産の方が振はないのは遺憾に思ひます、商工省と致しましては、此の面に只今全力を注いで居ります、問題の鐵に付きましても、此の際出來るだけの増産を圖りたいと思ひますけれども、基礎原料其の他の諸般の關係から言ひまして、現在非常な不振の状況にあることは御存じの通りでありまして、之に對しまする今後の處置としては、我々としては第一に原材料の確保を圖らなければならぬ、此の面に付きまして聯合軍側の御援助を懇請致しますると同時に、又我が國自體として凡ゆる努力を重ねまして、其の必要な處置を講じて參らなければならぬと思ふのであります、只今御指摘になりました熱效率の點に付きましても、戰爭中から我々は此の點に著眼致しまして、既に各重要工場に付きましては、熱管理委員會、熱處理委員會と云ふやうなものを作りまして、それぞれ效率の増進を圖る、又特に大學の先生方の技術的な御指導を仰いで居る次第であります、さう云ふ次第でございまして、今後技術面に於きまして特に其の向上を圖り、其の品質竝に生産に付て努力して行かなければならぬと存じます、今後の經濟の再建を圖る基礎である所の鐵鋼に付きましては、我々は固より之を疎かにして居る者ではございませぬ、又何と致しましても此の經濟再建の基本と致しましては各企業内部に於ける所の企業の合理化と言ひまするか、經營の合理化が當然取上げて考へなければならないと思ひます、さう云ふ面に於きまして經費の節減或は技術の向上又は能率の増進と云ふやうな面に於きまして今後格段の努力を重ねて參り、研究を續けて必要な處置を執つて參りたいと考へて居る次第であります、尚ほ鐵鋼の重要性に鑑み鐵鋼局を作つたらどうかと云ふ御意見でございましたが、御承知のやうに戰爭中に於きましては、舊軍需省に於きまして鐵鋼局を作つてあつたのでありますが、終戰後の事態に對處致しまして、機構の整備を致しまして現在では鐵鋼關係は鑛山局の鐵鋼課に於て所管して居る譯でありますが、事の重要性に鑑みまして、將來必要な際に於ては當然是は局に引上げまして努力して參らなければならぬと思ふのであります、勿論斯う云ふ點に付きましては、政府として今後の情勢に鑑みまして、必要な處置を執つて參りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=52
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053・舟崎由之
○舟崎委員 貸出方法に付ては、恐らくは民間業者から色々と銀行方面に手蔓を設けて陳情がうるさいことになるだらうと考へるのであります、其の場合に假令銀行の機構がどんなでありませうとも、其の事業が良いか惡いかと云ふ見透しは、どう云ふ所に於て付けられるかと云ふ問題であります、今後の日本の産業は、今でこそ見返り物資などと言つて、日本の品物が外國へ出る如く喜んで居られまするけれども、本當の自由競爭の場合になりますると、日本の現在の技術では一溜りもなく滅亡するのぢやないかと思ふのであります、現在の觀念であれも見込がある、是も有望だと言つて金を貸して置いて、果してそれが自由經濟戰に太力打出來るかどうかと云ふ見据えが非常に問題になると思ふのであります、そこで私は此の實際に金を御貸しする場合に必要な機構として、外國あたりにはあるかどうか存じませぬが、此の際技術局と云ふか技術院と云ふ風な、此の金庫に直屬せしむる機關を設けて、此處に民間の産業に經驗のある人、さう云ふ方々を包容して技術的檢討に當らせる、さう云ふ風にしたら如何かと考へるのでありますが、此の貸出の見込の判斷と云ふものに付てはどう云ふ基準に依られる御豫定でありますか、御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=53
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054・福田赳夫
○福田政府委員 貸出の見込を如何に付けるかと云ふことに付きましては、復興金融委員會と云ふものが出來るのであります、此の復興金融委員會は此の金庫の貸出其の他の業務運營を如何にして行くかと云ふ政治的な部面を決定することを主たる任務とするのでありまして、此の委員會に於て大體の目安を付ける譯であります、此の委員會に於て決めました目安に從ひまして金庫は其の業務を運營して行く、それから此の委員會は經濟安定本部と緊密なる連繋を執ることは申すまでもないのでありますが、尚ほ關係各省は、此の委員會の監督官廳でもあり、又此の委員會の委員にもなる譯でありまして、關係各省とも此の委員會は緊密なる連絡を執る、斯樣に致しまして此の委員會を中心に致しまして如何なる事業に融資をするかと云ふ根本問題は決める、斯樣な機構になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=54
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055・舟崎由之
○舟崎委員 私は是でお終ひに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=55
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056・高橋泰雄
○高橋委員長 大藏大臣が今御見えになりまして直ぐ本會議の方に御歸りにならなくてはならぬと云ふので、澁谷君が此の際發言をなさると云ふことでありますから……澁谷昇次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=56
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057・澁谷昇次
○澁谷委員 私は大藏大臣に御伺ひしたいのでありますが、大變御忙しい中で時間もないやうでありますから、極く簡單に其の筋道だけ御伺ひしたいと思ひます、本金庫は資本金百億圓で、四十億を政府が出資すると言ふが、其の金は政府は一體どう云ふ工合に調達なさるのであるか、其の金が政府に既に用意されて居るのかどうかと云ふことを先づ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=57
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058・石橋湛山
○石橋國務大臣 是は前には政府出資二億圓の積りであつたのでありますが、計畫を變へまして、此の間の改定豫算の中に二億圓入つて居ります、あとの分は近い中に御協贊を願ふ追加豫算で以て出します、それでありますから豫算で出す、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=58
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059・澁谷昇次
○澁谷委員 其の點は了解致しましたが、更に此の金を放出するに當つて、大體どう云ふ方法でなさらうとするのか、例へば現在日本銀行は社會情勢の客觀的の要求に應じて金を出して居ると云ふだけであつて、其の金は輪轉機で掛けられた紙幣であつて、何等そこには裏付がないと云ふ状態でありますから、此の通貨の放出に當つては一つの見透した政策を以てやらなければならぬだらうと思ふのであります、隨て復興金融金庫で將來百億の金を放出するとすれば、それは實際的に經濟の復興に役立つやうな放出の方法を考へなければならぬと思ひますが、大藏大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=59
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060・石橋湛山
○石橋國務大臣 如何にも日本銀行の紙幣にも、又復興金融金庫から出しますものにも以前のやうな金の裏付がないのである、結局資金其のものが經濟を動かし、生産を増して行く、それ自身が裏付になる、斯う云ふことに經濟的になる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=60
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061・高橋泰雄
○高橋委員長 澁谷君に一寸申上げます、本會議の方から大藏大臣を呼びに來て居りまして行かなければなりませぬ、急いで居りますので、次の機會に又御尋ねすることにして、あとは政府委員に御尋ね願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=61
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062・澁谷昇次
○澁谷委員 それでは政府委員に御尋ね致しますが、最近非常に僞造證紙の貼つた通貨が氾濫して居りまして、先月の終りに靜岡縣の日本銀行支店長談として、證紙の貼つてあるものに對しては名前と住所を書かなければ受取らぬ、之に付て政府當局に質した所、僞造證紙の紙幣に付ては政府も國庫も之を負擔しない、斯う云ふことになつた爲に地方銀行としてはどうしても之を自分で負擔すると云ふことでは自分の銀行の破綻になると云ふ爲に、證紙を貼つてある紙幣に對しては住所と氏名を書かなければ受取らない、斯う云ふことになつた譯であります、所が最近全縣下の食糧配給所で米を配給するのに對して、證紙の貼つてある紙幣に對しては、各前と住所を書かなければ受取らぬ、斯樣な現状になつたのであります、そこで此の事態を收拾することが出來なくて、警察では其の管内の銀行業者竝に食糧營團の配給所に對して、住所や氏名を書かなくても受取ることを、警告した譯であります、昨日の毎日新聞竝に讀賣新聞には其のことが殆ど全面を埋めて居る、隨て今日東海地方に於ては、全面的に通貨の混亂を來して居る、斯樣な状況になつて居るのでありまして、是等の状況は恐らく政府に對しても御通達があることと私は承知致しますが、通貨に對する不安は相當のものであつて、更に此の情勢を推進めたならば人心の收攬をすることが出來得ない、斯樣な通貨政策をやつて居つて果して經濟を復興させようと云ふ金を放出して行く確信があるかどうか、斯樣な問題が發生して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=62
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063・福田赳夫
○福田政府委員 大變迂闊な話でございましたが、昨日の新聞に出たと云ふのをまだ見て居りませぬ、初めて御伺ひするやうな譯で非常に驚いて居ります、證紙と云ふものは元々非常に便宜的な手段としてやつたのでありまして、全く我々としては感心して居ない制度であります、そこで何とかして此の證紙の貼つてあるものは、早く囘收したいと云ふことでありまして、近く期限を切りまして、證紙の貼つてあるものは囘收すると云ふことに致したいと思つて居るのであります、まだ其の措置の執られぬ前に、さう云ふ混亂を來したことは、洵に遣憾でありますが、其のことあるを豫期致しまして、左樣な措置を執らうと致して居るのであります、靜岡縣地方に起つたと云ふ混亂に對しましては、是は適當な措置を執らなければいかぬかと思ひますが、歸りまして能く研究調査したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=63
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064・澁谷昇次
○澁谷委員 其の場合僞造されてある證紙に對しては、囘收する場合に、政府は責任を取つて戴けますか、大體銀行の發表に依ると、約二十種位の證紙が出て居るのだと、斯う云ふことまで新聞に實は出て居る譯であります、是等の證紙を善良なる第三者が受取つて居ると云ふやうな事態は、一般の善良なる勤勞大衆に對して、影響が非常に大きいと思ひます、是等に對して非常に全國的に蔓延する可能性が激しいのでありますが、此の際政府が何等かの聲明を出して、或は何等かの措置に出でられるのでなければ、之に對する人心の動搖は阻止出來得ない情勢にあると云ふことを、特に私は政府に向つて警告を發して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=64
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065・福田赳夫
○福田政府委員 能く實情を調査致しまして善處致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=65
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066・澁谷昇次
○澁谷委員 何時頃善處するのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=66
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067・福田赳夫
○福田政府委員 至急調べます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=67
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068・澁谷昇次
○澁谷委員 更に私は復興金融金庫の問題でありますが、經濟の復興をやる爲には、經濟的な信用を先づ確立すると云ふことが一番の問題であります、從來例へば倉荷證券とか、或は荷爲替等の手形が、信用經濟に重きをなして、預金通貨を創設して、經濟の信用と云ふものは幾何級數的に是が出來て行つた、さう云ふ社會にならなければ經濟の復興と云ふことは出來得ないと思ひます、それは即ち經濟の信用を囘復すると云ふことでございまするが、現在では荷爲替も殆ど是は作ることも出來なければ、倉荷證券のやうに商品が實態的に存在して居りながらも、やはり是が資金化されて圓滑なる經濟の信用を高め、預金通貨の中に吸收し、新しい信用を更に出すと云ふやうな方法は、如何なる社會に於ても見ることが出來ないのである、大藏省は經濟の復興を圖る爲に、本金融金庫を創設するならば、經濟の信用を囘復し、更に其の信用が信用を生むと云ふが如き、如何なる政策をおやりになるかと云ふ點に付て、經濟の信用を囘復する方法と手段を、具體的に承りたいと思ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=68
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069・上塚司
○上塚政府委員 現在の經濟界が信用を破壞せられて、非常な混亂の中にあることは、御説の通りであります、是は言ふまでもなく敗戰日本の受くる所もの幾多の重荷に依つて起つて來て居るのでありまして、敗戰後の日本としては已むを得ない所であると思ひます、政府としては出來るだけ速かに金融機關其の他の信用の囘復を圖るべく、努力致して居ります、先づ第一歩として此の八月十一日に發布せられました所の金融緊急措置令の改正を初めとして、其の後に相次いで提出せらるべき所の法案を、提出せんと致して居るのであります、是等の一貫せる經濟施策が、我が日本の經濟界を動搖の中から救うてさうして稍稍安定せる時に至つて、初めて信用と云ふものは囘復せらるるのでありまして、今やりつつあるものは所謂信用囘復の一つの手段たるを失はないのであります、今後是は凡ゆる機會に於て、さう云ふ趣旨を以て方策を進めて行く考へであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=69
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070・澁谷昇次
○澁谷委員 さう致しますと現在政府が御執りになつて居る色々な法案其の他の成立、整備することが、信用を囘復する、斯う仰しやる譯でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=70
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071・上塚司
○上塚政府委員 其の施策が信用囘復の一つの手段であると云ふことを申したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=71
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072・澁谷昇次
○澁谷委員 私はそれは信用囘復の一つの手段であつて、他にも澤山の手段がなければならぬと思ひます、唯其の一つの少部分の「パーティー」だけで、信用は囘復しないと思ひます、もつと信用に對する本當の根本的な問題が、其の中に如何なる施策で具體的に出來て居るか、私の見解に依りまするならば、現在の日本の通貨が洵に不安定なる状態に置かれて居る間は、經濟の復興は出來得ないと考へて居るのでありまして、將來講和條約等が出來るならば經濟協定竝に通商の協定が出來て來ることは當然であります、其の場合に於てやはり日本の通貨が世界の安定なる通貨と結付いて安定を保つて、初めて日本の國の經濟の信用は復活せられ、生産の再開は安定すると考へて居るのであつて、現在の施策はそれ等の政策に如何なる關聯性を持つて居るのであるか、或は政府は唯單に今日の政策をやれば、信用經濟が囘復する一つの手段であると御考へになつて居るか、根本的に如何なる制度にするならば、通貨と云ふものが安定し、更に生産が再開して行く所の方途が出來ると云ふ基礎の御考へが、那邊にあるかと云ふことを、私は同ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=72
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073・上塚司
○上塚政府委員 我が日本の經濟金融が將來世界の經濟金融と結付かなくては、本當の安定も、又信用の囘復も出來ないと云ふ御説は、御同感であります、それをやるが爲に現在の施策を先づ一歩々々と進めて居るのであります、只今の如き經濟界の破壞混亂の状態にあることは、是はもう何時まで經つても世界の經濟界の水準に達することは出來ないのであります、「ブレトン・ウッヅ」條約等にも參加することは出來ないのであります、速かにそれに參加の出來得るやうに、總ての日本の經濟の基礎を固めて行く、其の爲には先づ金融機關、各種企業の復興再建を圖つて行く、さうしてそれが軌道に乘つて行くことを必要とするのであります、只今の總ての施策は皆之に向つて集中されて居るのであります、一つ一つが、無論總てではないのであります、總てを集中して行つて、關聯したる所の綜合の施策として、初めて完成して行くのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=73
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074・澁谷昇次
○澁谷委員 其のことは能く分りますが、經濟を再建する爲には、さう云ふ基礎條件がなくては再建出來ないと云ふ譯なのです、ですからあなたの仰しやるのは、さう云ふことをやればさう云ふことになる、斯う御考へになつて居るが、さうでなくして、それをやる爲の基礎的な條件と云ふものを決めなければならぬ、なぜ政府はさう云ふことをおやりにならうとするならば貨弊の發券制度の根本を變へると云ふやうな措置に出でられなかつたか、例へば物資準備の發券制度にするとか、或は銀行竝に資金等の煩雜した今日の金融機關に對する根本的な制度の問題を御變へになると云ふ工合にして行かないのであるか、更に又今日政府は放出する通貨を何等の見透しなく、社會情勢の要求に應じてのみ出して居ると云ふやうな状態で、それ等の面が安定せずして生産の再開は私は出來ぬと思ふ、隨てあなたが仰しやるのは枝葉の問題を固めれば根本の問題が解決出來ると云ふ御考へのやうでありますが、私は飽くまで根と幹を決定すれば枝の問題は解決すると斯う云ふ考へを持つて居る譯であります、之に對して御答辯を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=74
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075・上塚司
○上塚政府委員 あなたの仰しやるのは理論の上に於て先づ再建政策を決めよと云ふことであります、我々の方は實行の上に於て先づやつて行かうとするのであります、併し其の理論の上に於て根本の問題をどうするかと云ふことに付きましては、近く金融に關しては金融委員會を作り、財政に付ては財政委員會を作り、税制に付ては税制委員會を作りまして根本の政策を檢討し、さうして戰後日本の再建に必要なる所の諸政策は凡ゆる角度から研究致しまして作られることに致して居ります、併し現在の混亂せる經濟界を兎も角收拾して行く爲には、只今進めつつある所の方策を先づ實行する必要があるので、それに向つて進んで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=75
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076・澁谷昇次
○澁谷委員 政府は通貨を今日六百億近く出して居る、更に豫算に於て相當の金額が又通貨の形で現はれて來ると思ひますが、是等の放出に付て其の他に如何なる見透しがあるか、もう一つ、若し日本の現在の通貨其の儘を以て世界の安定ある通貨と「リンク」する場合には、一體如何なる基準で「リンク」する御考へであるか、御伺ひして見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=76
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077・福田赳夫
○福田政府委員 御説の通り通貨は出る一方であります、之に對しまして囘收は洵に貧弱であります、午前中も一寸申上げたのでありますが、舊通貨の全面交援を致しました三月十二日に於て百五十二億であつたものが、現在六百億にならうとして居る、四百五十億殖えて居ります、其の原因を探究して見ますと、二百八十二億と云ふものは封鎖解除から出て居ります、其の他の部分は財政、即ち國、公共團體の財政關係等に基くものでありますが、此の封鎖を解除してしまつた場合に、之を如何に囘收するか非常に難かしい問題で、出來る限りの努力をして居ります、現在如何なる努力をして居るかと申しますと、先づ根本に於て出さない、それから出しました場合に於きまして、是が銀行からの融資であると云ふ際に於きましては、新圓を以て囘收する、例へば林檎の資金を今三割を現金で七割を封鎖で融通すると云ふ際に於きまして、囘收は來月、再來月、其の次と云ふ三箇月に返して貰ふと致しましても、全部新圓で返して貰ふと云ふやうなそんな窮屈なことまでやつて、只今囘收に注意をして居る譯でありますが、それに致しましても、兎に角此の「ルート」を通じまして、新圓交換以來既に二百八十二億の通貨放出になりました、それに對しまして、銀行に集まる金は極く僅かで、其の同じ期間に於きまして、約九十五億しかない、斯う云ふ貧弱な情勢であります、其の根本の問題と致しましては何と言つても國に對する信頼の問題であります、殊に最近は御承知の通り、色々な「デマ」も飛んで居ります、が併し其の根本は何と言うても國に對する信頼の缺如でありまして、大藏大臣は本議場に於きまてし、何囘となく新圓の再封鎖は致しませぬと言つて居るのでありますが、一般大衆はどうしてもそれを受けて呉れませぬ、何としても國の信頼を打立てることが第一であります、即ち其の信頼を打立てると云ふことは、要するに政府の政治力の問題だらうと思ひます
其の第二は、是は技術的の問題でありますが、財政の問題であります、財政の基礎が固まりませぬと、どうしても通貨の安定は得られませぬ、此の財政の面に付て格段の努力を要するのであります
第三の問題は物價對策を徹底的にやることであります、此の物價對策に付きましては、只今物價廳と云ふものが出來まして、我々は大いにそれに期待して居るのでありますが、併しさう云ふことは言ふべくして中々難かしいのでありまして、私共と致しましては、小さいことを色々手を打つても仕方がないと言ふ人も隨分あるのでありますが、極力小さい資金も掻集めることに努力致したいと云ふことで、只今申上げましたやうな資金放出の「ルート」の抑制、其の囘收の促進と云ふこともやる、一面餘り好ましくないのでありますが、寶籖とか、又色々な形の貯金と云ふやうなものも考へて見るとか、色々手を盡して見たいと思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=77
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078・澁谷昇次
○澁谷委員 石橋さんが何囘も新圓の再封鎖はやらないと言うても、民衆はそれを信用しないと云ふのは、國家の信用の問題でなくて政府に信用がない、斯う云ふ譯であると思ひますが如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=78
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079・福田赳夫
○福田政府委員 御説の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=79
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080・澁谷昇次
○澁谷委員 隨て政府に於ては政治力を強化して信用を先づ囘復することが大切だと思ふのでありますが、之を極力推進して戴きたいと思ひます、更に私は政府が調達しました此の四十億竝に百億の金を經濟の復興に使つて行く上に於て、大體どう云ふ見透しで此の金を使つて行くのか、或は復興金融金庫の店を開いてお客がやつて來るまで待つて居るのかどうか、或は重要なる國家の基本産業に對しては、金庫の方かを自ら斯樣な産業を助成する爲の資金を此の位は放出して行くと云ふ見透しがあるならば御伺ひ致したいと思ひます、是は唯店を開いてお客任せにして、貸して呉れと云ふ人が來なければ其の儘だと云ふことではないだらうと私は思ふのでありまして、やはりそこには一定の經濟の復興を豫想致しまして、一定の産業に對してはどの程度に助成を致さなければならぬと云ふ一つの目途があらうと思ふのであります、其の經濟の復興に對する、各産業に對する大體の目途と構想があつたならばそれを承りたいと思ひます、更にそれは經濟の復興ばかりでなく、銀行に對する復興に對しても、やはり經濟の基礎をなすから相當の金は使はれるだらうと思ひます、隨ひましてそれ等は金融竝に其の他の重要なる産業に使はれるだらうと思ひますが、それ等の「バランス」は如何なる方法でお付けになるかと云ふことを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=80
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081・福田赳夫
○福田政府委員 一寸後の點が分り難かつたのでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=81
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082・澁谷昇次
○澁谷委員 詰り此の金融は、私達が想像するには、興業銀行あたりの未決濟分を引受けてやるのぢやないかと大體考へて居る譯ですが、それは金融の方の形態を確立する爲の産業であるから、さう云ふ方へも相當行くのではないか、斯う考へて居るのであります、隨てそれ等の金がどの程度に放出されて行くかと云ふ一つの基準があるであらうと思ふが、それを承りたい、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=82
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083・福田赳夫
○福田政府委員 本金庫に於て融通致します場合に於きましては、勿論復興金融委員會の監督指導の下にある譯であります、復興金融委員會と云ふものが此の運營の計畫を決める機關でありまして、此の委員會は特に安定本部、それから大藏省等と産業省に緊密な連絡を取りまして其の計畫を立てる譯であります、併しながら安定本部も未だ發足日ならずと云ふ状況でありまして、そちらの方にも全體計畫と云ふものが全然立ち難いやうな現在の状況に於きましては、已むを得ませぬからさうがちんとした計畫の上に乘つかつた理想的な運營は出來兼ねるのでありますが、それに致しましても此の委員會に於きまして出來得る限りの努力をして、優先の序に間違ひなからしめると云ふ建前を執りたい、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=83
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084・澁谷昇次
○澁谷委員 委員會は大體内定はして居るかも知れぬが、まだ決定はして居らないので、金だけは或る程度斯う云ふやうに積んで置いて、其の使ふ方法は委員會にお任せすると云ふことになりますならば、經濟の復興が目標であつても、現實に委員會が運營すると云ふことになつて、委員會の權限が擴大されてやることになりますが、大體復興金庫をして經濟の復興をやらう、斯う云ふ構想であるならば、其のやる時に大體斯樣な他の銀行で融通しないやうな産業に對しても國家が此の位に伸ばして行かう、其の爲には例へば鐵鋼なら鐵鋼、「セメント」なら「セメント」と云ふやうに、此の位はやつてやらうと云ふ一應の目途がなくして、唯豫算と金だけを金庫が取つて、後は委員會に任せようと云ふやうな漠然とした考へで始めた譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=84
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085・福田赳夫
○福田政府委員 幾何のものを普通銀行に於て賄ひ、幾何のものを復興金融金庫に於て賄ふかと云ふ區分は、抽象的には決められないと思ひます、是は個々具體の企業の經理内容等に付きまして決めらるべき問題でありまして、其の問題が出て來た其の現場に於て處理すべきものであります、左樣一つ御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=85
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086・澁谷昇次
○澁谷委員 それならば御伺ひしますが、四十億と云ふ金もやはり抽象的に御決めになつた譯ですね、何等基礎がなくして決めたと承知して宜しい譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=86
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087・福田赳夫
○福田政府委員 併しながら大體の目安を決めなければ資本金等の構成は出來ませぬ、是は一々此の企業は幾ら幾らと云ふ風にやるのではありませぬが、大體に於きまして年末までの此の金庫の資金需要を百億と見まして、其の中四十億を計上する、斯樣にして來たのであります、其の百億と云ふのはどう云ふものかと申しますと、年度末の産業資金の需要を大體二百億と見たのです、二百億の約七割と云ふものは民間の銀行で賄ひまして、三割と云ふものは此方に持つて來る、さうすると六十億になりますが、其の他色々臨時の融資を要するものがあります、其の豫備を認めまして百億と斯樣に決めた譯です、それから四十億と見込んだと云ふのは、是はまだ議會も度々開かれることであります、それから四十億だけで金庫が賄ふのではなくて、場合に依りましたならば、其の差額に付きましては復興金融債券も發行出來る、斯樣なことになつて居りますので、一應四十億と決めた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=87
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088・澁谷昇次
○澁谷委員 私が申すのはさう云ふやうに、一應資金の需要と云ふものが大體目途があつて、それを使ふのにやはり或る程度の産業に對しては斯う云ふ程度に復興せしめようと云ふ一つの目標を早く政府は御持ちになつて戴きたいと私は思ひます、是は現在私が追求してもないやうですから、是は早く持つて戴きたいと思ひます、さうしてやはり重要な産業に對して、それ等を使つて行くのだ、他にまだ已むを得ない問題があると思ひますので、私は特にそれ等の點に付て御注意を申上げたいと思ひます
更に經濟の復興を圖ると云ふ文字は非常に漠然として居ります、是等の範圍は一體どの範圍におやりになるかと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=88
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089・福田赳夫
○福田政府委員 經濟の復興と云ふ文字は、御説の通り極めて漠然たるものであります、併しながら經濟の復興と申しましても、單に無計畫にどんどん出來て來る企業を全部包含すると云ふ譯ではありませぬ、是は國家的に見まして、最も優先的に育成を要すると云ふ企業を指すのでありまして、さう云ふ國家經濟復興全體計畫から見たら、優先順序と云ふものは勿論ある譯であります、それから更に非常に優先さるべき性質の企業でありましても、清算中のものであるとか、或は借金を返すとか、さう云ふやうな復興と云ふものに關係のない資金を出すやうな意思はないのです、さう云ふ消極的な制限と云ふか、さう云ふことも考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=89
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090・澁谷昇次
○澁谷委員 それから更に私は復興金融金庫の債券を發行すると云ふことになりますと、是は一般に公募して行くことにどの程度確信が持てるか、或は是は公募に依らないのかと云ふことを承りたいと思ひます
更に私は金融金庫は、勿論理事長が其の最高責任者でありますが、此の規約を見ると、金融復興委員會が非常な責任がある、若し責任を問はれる問題が起つた場合に、誰が責任を持つかと云ふことが將來重要な問題になつて來ると思ふのであります、是が第二
更に私は貸付の囘收に付て、勿論是は三年間と云ふことに限定されて居りますが、將來に對する囘收の方法が、若し經濟の攪亂とか恐慌が來て、殆ど全部囘收が付かないと云ふやうな場合が或は來るかも分らぬ、特に農業恐慌とか其の他の經濟の恐慌が或る程度豫想されて居ると云ふやうな情勢がなきにしもあらずと云ふ状態にある時に、それ等の囘收に付て、囘收不能になつた場合に、其の責任が當然問はれて來ることになると思ふのでありまして、此の責任は誰が取るのかと云ふことを私は御伺ひしたいと思ひます、勿論最高の責任は此の法案の審議に當つた議會が持つのは當然でありまするが、併し當面の責任者と云ふものは、やはり委員會であるか理事長であるかと云ふことは歸著しはせぬかと私は思ふ、さう云ふ將來のことは――或はないかも知れぬが、やはり審議に當つては將來のことも慮つて一應考へて置かなければならぬ、斯う思ひまして此の點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=90
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091・福田赳夫
○福田政府委員 金庫の發行致します債券は、是は相成るべく民間から公募を致したいのであります、併しながら先程申上げましたやうな状況では、中々公募と云ふことは難かしからう、實際問題と致しましては日銀引受、それから若干賣出すとか或は市中等に割當をすると云ふ程度が落ちではないかと斯樣に考へる譯であります、それから理事長、復興金融委員會の責任論でありますが、是は理事長が此の金庫の第一次の責任者であることは他の場合とちつとも變らぬと思ひます、それから其の監督機關である委員會が、監督と云ふ意味合に於ける責任を持つことも、是れ亦他の場合と變りはないと思ひます、唯其の上に更に主務大臣は本金庫竝に復興委員會を監督するのでありまして、第三次の、而して最も重要なる責任と云ふものは主務大臣にあると思ふのであります、其の關係は他の監督系統の場合と變る所はないやうに存じます、將來囘收不能の事態が起る、斯樣な場合に於きましても、勿論それは其の事態が起つた場合の責任と云ふものは、是は只今申上げましたやうな三人の責任でありまして、外にどうも責任の取りやうもないものと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=91
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092・澁谷昇次
○澁谷委員 更にもう一點御願ひしたいのは、今日鐵鋼とか石炭、肥料、「コークス」、工業鹽、「曹達」と云ふものは重要なる基礎産業として經濟安定本部でも既に御取上げになつて居りまするが、今日の社會情勢から見まするならば、失業者の數は相當に増大するし、隨て今日に於ても尚ほ失業救濟の費用は豫算に於ても百何十億と云ふ多額を要して居る際に、是等の失業者を救濟して新しい産業に就かせる爲には、どうしても「セメント」が重要な事業になると私は思ひます、此の「セメント」がなかつたならば、勿論破壞された日本の國の復興も出來なければ、失業救濟の土木事業も港灣事業も殆ど出來ないのでありまして、今日肥料其の他よりも更に重要なる産業であると私は考へて居りますので、本金庫に於ても、是等の産業に付ては特に御考慮を煩はして、失業問題と絡み合せて重要なる産業として私は考慮を要するものではないかと考へて居ります、政府の御所見を伺ひます、若し政府の御所見が此の邊にないならば、是非此の際「セメント」は他の産業よりも重要であると云ふ御認識を改めて持つて戴きたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=92
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093・福田赳夫
○福田政府委員 「セメント」は御説の通り極めて重要なことだと考へまして、資金計畫に於きましては、「セメント」に付きまして相當重要なる因子と致しまして考へて居ります、斯樣なことだけを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=93
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094・澁谷昇次
○澁谷委員 更に財産税が近く徴收されます、其の財産税の際に物納でも宜いと云ふことが言はれて居りますが、金融金庫は是等の經濟復興に寄與しようとなさるならば、是等の物納物件をして復興の經濟に直接之を作用せしめるやうなことを御考へになつて居るかどうか、或は金庫で考へて居らなかつたならば、如何なる部門で是等を取上げて經濟復興に資しようとして居るのか、或はそれ等の物納物品を新しい經濟の産業に御使ひになるのかならぬのかと云ふやうな點を明確にして置いて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=94
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095・福田赳夫
○福田政府委員 財産税に於きまして物納として納められるものの利用方法に付きましては、只今大藏省に國有財産部と云ふのがありまして、其處で相當大量の國有財産の管理運用をやつて居るのであります、殊に最近に於きましては軍から引繼ぎました物件の管理竝に運用に當つて居るのでありまするが、此の運用とも睨み合せまして、目下物納財産を如何に處理するかと云ふことを研究中であります、其の從來の儘の國有財産と云ふ風な式に理解して行きますか、或は別個の體系に持つて行きますか、只今の所決まつて居りませぬが、何れにしても此の運用は非常に重要な問題でありまして、只今研究中でありますから、追つて決定次第申上げると云ふことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=95
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096・澁谷昇次
○澁谷委員 更に私は、先程も御話がありましたが、戰爭の前に企業整備が行はれまして、祖先傳來の事業が企業整備の爲に出來なくなつた、今日配給所とか其の他の商賣が出來て居る人達は、戰時中是等の多くの祖先の傳來の事業をやつて居た人の犧牲の下に商賣が成立つて居るのが現状でありまするから、是等の犧牲になつた人達に此の金庫を活用するかどうかと云ふことを伺ひたい、若し活用するとするならば、如何なる方法で此の金庫へ申込めば、それ等の生産資金が得られるのか、さうして是等の資金を放出する具體的な方法はどのやうに御考へになつて居るかと云ふことを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=96
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097・福田赳夫
○福田政府委員 企業整備に依りまして戰時中御商賣を廢められました方々は、全く此の戰爭の犧牲者とも申すべきものでありまして、情に於ては洵に國民全體が御同情申上げなければならぬと云ふ立場にあるのぢやないかと思ひます、本金庫がさう云ふものに對してどう云ふ立場を執りますかと申しますと、企業整備に依りまして轉廢業を受けたやうな方は、大體に於て相當さう云ふ專門の知識とか、經驗なり、企業能力と云ふものがあるのぢやないかと思ひます、さうして企業能力があり、確たる企業計畫と云ふものがありまして、是がどうしても國家的要請上育成を要すると云ふ性質のものでありますれば、是は復興金融金庫が出動すべき筋合ひのものであります、併しながら其の企業整備を受けたものに於きましても、唯單に生計に途がないのだからとか、さう云ふやうなことでは本金庫が出動すると云ふ譯には參らぬのであります、確乎たる計畫、確乎たる見透しを持つた事業でありますれば、企業整備者たると何たるをと問はず此の金庫は出動するのでありますが、先づ企業整備を受けた人、斯樣な人に於きましては其の年來の經驗、年來の技術と云ふやうなものがあり、且つ企業整備を受けたと云ふ程のことであるから、將來の平和日本産業の再建上は相當役割を買ふべきものである、斯樣なことは考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=97
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098・澁谷昇次
○澁谷委員 尚ほ私は通貨政策と物價と爲替等の問題に對して、大藏大臣から詳細なる説明を求めたいのですが、居られませぬから、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=98
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099・高橋泰雄
○高橋委員長 本日は是にて散會致します、次會は十日の午前十時より開會致します
午後三時二十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00619460907&spkNum=99
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