1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
復興金融金庫法案(政府提出)
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昭和二十一年九月十日(火曜日)午前十時三十七分開議
出席委員
委員長 高橋泰雄君
理事 寺尾豐君 理事 平岡良藏君
理事 細川八十八君 理事 町田三郎君
石原圓吉君 片岡伊三郎君
殿田孝次君 原藤右門君
村上勇君 苫米地義三君
舟崎由之君 宮前進君
澁谷昇次君 松本七郎君
島田晉作君 森三樹二君
木下榮君 藤井正男君
大津桂一君 岡田勢一君
福田繁芳君
出席國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
出席政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 福田赳夫君
大藏事務官 三井武夫君
商工參與官 小此木歌治君
商工事務官 三木秋義君
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本日の會議に付した議案
復興金融金庫法案(政府提出)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=0
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001・高橋泰雄
○高橋委員長 是より會議を開きます、前會に引續き質疑を繼續致します——島田晉作君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=1
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002・島田晋作
○島田(晋)委員 大臣がお見えになりませぬから、大臣に御聽きしたいことは又他の機會に讓りまして、政府委員の方に御尋ねしたいと思ひます、今度の此の復興金融金庫の運營に付きまして私共が一番關心を持つて居りますのは、此の法案の第一條にもありますが、此の復興金庫が實際問題と致しまして救濟機關的のものとなつて、百億圓程度は國家で損しても宜しい、結局産業全體の再開の爲に國家が犧牲になつても宜いと云ふ意味の救濟になることを望むのではありますまいか、結果として救濟になつても宜いと云ふ點に重點を置くのか、それともやはり生産再開と云ふことは必ずしも採算に合はなくても、それが積極的な意味を以て今までのものを救濟するのでなく、新しいものを作つて行くと云ふ所に重點を置くのか、さう云ふ點に付て御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=2
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003・福田赳夫
○福田政府委員 本金庫は救濟と云ふことには出動致しませぬ、但し將來育成を要すべきものに付て援助をすると云ふ意味に於て救濟と云ふ風に御考へなさいますならば、其の意味に於ける救濟的な考慮は致す譯であります、純粹の意味に於ける過去の生産資材、資本の救濟ではありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=3
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004・島田晋作
○島田(晋)委員 さうあつて欲しいのであります、單なる救濟では初めから問題にならぬ、それが結果に於て間接に救濟になると云ふことは考へられますけれども、普通の銀行で融資出來ないものを融資するとありまするからして、損失をそこに豫定して居ることは分りますけれども、救濟すると云ふことになりますと云ふと、今の御答辯でさうでないことが分りましたが、巷間傳へる所に依りますと、是が變に惡用されますると云ふと、何と云ふか、會社或は金融機關が惡い債權を持つて居る、焦付きの債權を持つて居る、或は會社が惡い金を借りて置いてそれを拂へなくなつて居る、さうして之を一旦貸付けて置いて肩替りする、間接には其の會社を助けることになって、生産再開すると云ふ口實になりまするけれども、さうした舊債を整理すると云ふことに惡用される危險がありはしないかと思ひます、政府の趣旨はさうでないことは分りますけれども、此の點は餘程監督を嚴にしないと、帳面づらに於て分らぬことが起つて來る、例へば百萬圓を貸す、どうしても外の銀行が貨さぬ、其の百萬圓が實は外の借金を返すことになる、そこに何と云ふか馴合ひのやうな金融をやつて來ると云ふと、本法の根本の趣旨が全然沒却されると思ひますので、斯う云ふ點に對する政府の監督と申しますか——復興金庫の委員會もありますが、委員會と云ふものは、此の前から其の構成に對して問題になつて居りますが.實際の事務と云ふものは私は委員會制度だけでは監督出來ないと思ふ、斯う云ふ點に對して世間の疑惑を一掃し得るやうな監督の仕組と云ふものを何か御考へになつて居るかどうか、御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=4
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005・福田赳夫
○福田政府委員 今囘本金庫が運營されるに當りましては、復興金融委員會に於きまして運營の方針を作る譯です、是が此の金庫の運營上注意しなければならぬと云ふやうな點總てに亙りまして、詳細なる復興融資計畫を作るのでありまして、此の委員會を通じてやる譯であります、御説の通り委員會と云ふものが從來のお坐なりの委員會でありましたならばいかぬと思ひますが、今度は本當に新らしい仕組の委員會でありまして、此の委員會を通じてやる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=5
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006・島田晋作
○島田(晋)委員 此の委員會は中央に於ける委員會と思ひますが、各地方に窓口を開いて、或は興銀なら興銀の支店なり、或は其の他の銀行を借りて、其の金庫の支店と云ふか出張所と云ふか、さう云ふ場合に地方に於きまして、やはり中央に於ける委員會のやうな形體を小さくしたやうなものを作る意思であるか、或は全然さう云ふものはなくして、中央だけの委員會であるか、其の點を一寸御伺致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=6
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007・福田赳夫
○福田政府委員 委員會は中央のみと考へて居ります、併しながら中央の委員會は金庫の運營に付きましては、相當詳細なる運營方針を作りまして、地方末端に徹底せしめる、尚ほ運營に當りましては、日本銀行を差當りの間は補助機關と申しますか參加致させまして、日本銀行に於きまして是は適正なる使途であるかどうかと云ふ觀點から見て戴く、併しながら初め日本銀行を使ふと云ふことに致しますると、是は事務上は中々複雜化致すのであります、即決と云ふやうなことは出來ませぬ、出來ませぬから此の制度は初めの段階に於ては掛りますが、將來は段々簡素化すると云ふことを考へて居ります、差當りは地方に對しては左樣な考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=7
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008・島田晋作
○島田(晋)委員 新聞に依りますると、今興銀にありまする復興金融部ですか、あれが今代りにやつて居る譯でありますが、興銀の人的な機構を出來るだけ活用してやる、と云ふやうなことが新聞に見えましたけれども、其の後には、必ずしも興銀ではない、他からも採つて今度の金庫の人的構成をする、又最近は興銀に歸つて居ると云ふやうなことが出て居りましたが、只今の政府委員の御話では、日本銀行を補助機關とすると云ふやうな御話でございましたが、此の金庫の運營と云ふものは、やはり人的要素が大きいと思ひます、我々が復興金融金庫の構成に付て喧しく言ひ、又眞劍に考へるのも其の點でありますが、同時に委員會よりも、金庫それ自體の人的構成が非常に問題になると思ひます、此の點に付きまして今の政府として考へて居られる構想を具體的に御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=8
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009・福田赳夫
○福田政府委員 只今の過渡的な段階としまして興業銀行を使つて居りますが、興業銀行の補助機關として日本銀行を使ひまして、日本銀行に於て興業銀行の相談に應ずる、斯樣な對策を執つて居りますが、本金庫が出來ました場合に於きましては、是は本金庫は興業銀行でやつて居る業務を引繼ぎまして、獨立の機關になります、獨立機關でありまして、其の職員は各方面より參加を得まして強力體制を作り上げたい、勿論其の場合に於きまして、興業銀行と云ふものが産業金融の「エキスパート」であると云ふ觀點から、興業銀行などは大口の參加を得なければならぬ、斯樣なことは考へられます、尚ほ中小、特に漁村等の關係に於きましては勸業銀行が相當の知識經驗を持つて居ると云ふので、勸業銀行からも相當參加を仰がなければならぬ、其の他各方面の專門家を、優秀なる者を簡拔致しまして、さうして比の金庫を構成致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=9
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010・島田晋作
○島田(晋)委員 此の金庫に私は一番期待しますることは、比の條文にありますやうに、經濟の復興を促進する、此の問題は廣く考へれば色々な問題がございませうけれども、具體的に申しますと、日本の現在の中小工業、中小企業と云ふものをどう發展させるか、此の問題に對する一つの囘答としての金庫法案と云ふものに私は意義があると思ふのであります、單に大きな産業で、普通銀行が融資が困難だから、之を助けてやると云ふのでは、此の金庫と云ふものは、要するに國家の資本に依つて大産業を復興させると云ふ意味で、經濟民主化から離れて行くのぢやないか、勿論大きな産業形態と云ふものが必ずしも惡いと云ふ意味ではありませぬが、大きな産業に付隨する所の資本的な威力、之を囘復させることは、所謂經濟民主化の原則に反するのぢやないか、中小工業に對する金融の仕方、是は本會議に於て大臣からも御答辯がありましたが、抽象的であります、一體どう云ふ中小工業をどう云ふ仕組でやるのか、例へば本金庫に中小産業に對する融資部と云ふやうな機構を作るのか、或は個人の中小工業者よりも、今度議會に出ます商工協同組合法案、ああ云つたものが假に通過するならば、ああ云ふ協同組合を基に置いて、それに對する融資をするのか、或は個人に融資をするのか、或は併用するのか、さう云つた中小工業に對する對策の業種と、それから擔保或は無擔保、擔保のない場合でも貸すと云ふことを仰しやつて居りますが、さう云つた具體的なものがないと、此の金庫が非常に曖昧なことになつて來る、先般我が黨の澁谷君から資金計畫に付て具體性のないことを衝かれまして、政府の方としても是はまだ具體的に決まつて居ない、どう云ふ風に何處へ資金を使ふかと云ふことはまだ考へてないと云ふ御答辯がありました、それもさうでありますが、それと同時に中小工業に對する金融のあり方——今までのやうな中小工業に對する金融では、結局昔と同じことを繰返す、何か新しい具體的な構想と、新たなる決意を以てやられるか、之を一つ抽象的でなく承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=10
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011・福田赳夫
○福田政府委員 戰後の平和日本經濟の再建に於きまして、中小工業と云ふものは非常に「ウエート」が大きくなつた譯です、今までのやうに、大企業中心で日本經濟を打立てて行くと云ふ譯には行かぬ、何としても此の中小企業形態と云ふものを中心と致しまして、是が育成に當ると云ふことが、經濟復興の考へ方の中心を成すべきものではないか、斯樣に考へて居ります、是が金融に當りましては勸業銀行とか、商工組合中央金庫とか、産中金庫とか、それから信用組合、是も相當な活躍をして居ります、それから無盡と云ふものも中小産業に對しまして非常な活躍をして居る譯であります、是等の機關を總動員すると云ふ態勢を作り上げたいと考へて居ります、一方復興金融金庫に於きましても、それ等の機關に於きまして融資出來ない部面に付きましては、重大なる役割を果さなければならぬ、斯樣に考へて居ります、現在の所は此の復興金融金庫に於きまして、中小工業相手の獨立の部門を設けたい、斯樣に考へて居ります、勿論先般大臣から御答辯がありましたが、擔保は場合に依りましては徴しないと云ふことにも致したい、其の他中小工業育成と云ふ、先程申上げました大方針に合ふやうに、的確迅速なる措置を致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=11
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012・島田晋作
○島田委員 從來に於きまして、中小工業者に承りますと、銀行から金を借りる場合、事業の善し惡しは別問題と致しまして、形式手續が非常に面倒だと承つて居ります、大きな會社では御承知の通り、或は庶務課とか色々な經理の方の專門家が居りまして、さう云ふものの書類の作り方とか何とか云ふことを非常に專門的にやる、中小工業者と云ふものは、御承知の通り日本に於きます場合には特にさうでありますが、科學性もないし、中小企業自體の構成、やり方に付てまだ封建的なものが非常に殘つて居る、それが爲に手續とか何とか云ふことは非常に疎い、是が爲に銀行から突放されると云ふことは多々あつたと思ひます、今度の金庫に於きましては、是は非常に技術的な小さい問題になると思ひますが、さう云ふことに付きまして今までの窓口でなくて、寧ろ金庫の方から、是が生産再開、或は經濟復興の爲に宜い事業だと認めた場合には、便宜を圖つて、手續も簡略にしてやる、是は非常に下らないやうな問題でありますが、實際上銀行に對する今の中小工業者、或は融資を受ける方の側と云ふものは、非常に苦心をして居るのであります、是は非常な卑近な話でありますが、戰時中に於きましては軍人が一番威張つた、それに便乘した官吏が好い氣持で威張つて居つた、今日に於て最も強い力を持つて居るものは銀行員だ、斯う云ふ巷の噂もあるのです、一番宴會の多いのは銀行員だ、斯う云ふことは非常に詰らないことでありますが、是が一つの世相を物語つて居ると思ひます、と云ふことは要するに銀行に取付きにくい、銀行に嫌はれたら駄目だ、特に新圓や舊圓、或は封鎖預金、色々七面倒くさい形式、手續になつて居る關係等もありますが、此の金庫に又それ以上に擴大たし惡弊が起ると云ふと、最初の趣旨は殆ど沒却されてしまひます、是は條文とか法文の問題ではなくて、結局さうなれば人の問題になります、先程の政府委員の御話では、各方面の協力を得て、さうして此の金庫の職員を入れると云ふことで、結構だと思ひますが、さう云ふ場合に於きまして、職員の一つの組合と申しますか、勿論自分の生活擁護の爲の金融の職員組合、銀行員の組合は方々に出來て居りますが、此の組合に此の金庫の運營に對する參加と申しますか、經營協議會と云つたやうな組織を持たして、さうして自分達組合員同志の生活を防衞すると共に、本金庫の運營を本當に民主化して行くと云ふ、經營、運營上に對して「タツチ」出來るやうな仕組が、私は必要ではないかと思ひますが、其の點に付て一つ御意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=12
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013・福田赳夫
○福田政府委員 銀行の職員と云ふものは昔は非常に「ハンブル」な階級でありまして、金を貯金をして貰ふことが商賣であると同時に、金を貸付けて其の利を取ると云ふことも亦商賣である、斯樣な建前であつたやうであります、然るに最近の風潮を見ますると、金を貸してやるのは、是は一つの特權を附與するのだと云ふ傾向が動もするとあるのでありまして、斯う云ふ事實は私共店頭に於て間々見受ける現象であります、銀行の使命と云ふものは、今後非常に國家的性格を帶びて來ることは申すまでもない所であります、同時に職員と云ふものが、昔よく批判された所官僚的になると云ふことであつてはならない、國家的使命を持つと共に、純粹の善い意味に於ける所の官僚と云ふやうな面を發揮しなければいかぬ、斯樣に考へて、職員の態度と云ふものに付ては重大なる關心を持ちまして、今後其の面を特に強調したいと思つて居ります、尚ほさう云ふ態勢が職員の間から盛り上ると云ふことは最も望ましいことであります、是は手前味噌を申上げて洵に恐縮なのでありますが、大藏省部内にも職員組合と云ふものがあります、此の第一の「モットー」と致します所は、職員相互の人格を錬成しまして、自己を完成をして、之に依つて行政の運營に貢獻しよう、斯樣な建前でやつて居るのでありますが、此の復興金融金庫ばかりではなく、他の銀行に於きましても、斯樣な本當に眞面目な考へを持つた職員組合が出來まして、そこから出る人格の光を以て銀行の業務改善に貢獻すると云ふことを大いに期待して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=13
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014・島田晋作
○島田委員 只今の政府委員の御答辯は、方向と致しまして結構だと思ひますが、もう少し積極的に、今仰しやつたやうな職員組合と云つたものの機能を、單に希望でなくて、一つの機構としてはつきりされたものにして、さうしてここで限定するならば、復興金融金庫の職員を以て一つの組合を作り、其の組合は、今仰しやつたやうな意味の人格向上も宜しいし、又生活向上も宜しいが、同時に此の金庫たるや實に重大な使命を持つて居りまして、日本の財界整理に對する一つの大きな支柱としての役目を持ち、而も是は國民の税金から出來て居る所の金庫でありますから、此の運營は國民に非常に重大なる影響を與へると思ふ、隨て金庫の組合と云ふものと同時に、之を受ける協同組合、或は農村に於ける農民組合、或は勞働組合——勞働組合と云ふのは唐突に聞えるかも知れませぬけれども、此の金庫が融資する所の會社は、必ずや非常にぼろ會社になつて居るに違ひないと思ひます、他の普通銀行が融資を困難とする企業に對して、此の金庫は融資するのでありますから、要するに商品的に言へば、將來は別として現在に於てはぼろ會社或はぼろ企業になつて居る、さうすれば、そこに必ずや整理問題、勞働問題等色々な問題が起りつつある、又起るであらう所の會社だと思ふのであります、さう云ふ場合の企業に於ける勞働組合の組織と復興金融金庫の方の職員組合、斯う云ふものが有機的に繋がつてやつて行くことが、金庫をも活かし、且又活かすべき企業は活かし、殺すべき企業は殺して行く、斯う云ふ場合の話合が非常に具體的に出來るのぢやないか、復興金融金庫それ自體は私は決して批判は致しませぬが、是が構成に付きましては、我が黨のみならず世間でも問題にして居ります、假に理想的な復興金融委員會が出來ましても、是は迚も一々のことは分らないのです、分るものは、結局やはり現場に於て實際に仕事を擔當する者が一番分つて居る、又融資を受ける方の立場——今までは金融機關と云へば、貸す方の立場から考へて、貸される方、融資を受けて居る方は唯事業が良いか惡いかと云ふ觀點しかなかつたのです、今日に於ては、此の日本の經濟を復興するにはさう云ふ一方的な考へでは私は駄目だと思ふ、而も今申したやうに、大枚の金を投じて國民の税金で以て出來て居る會社だ、さうなれば是は國民全體の金庫であります、國民全體の利益を擁護すると云ふ立場から此の金庫を運營しなければいかぬとするならば、其の一番の實體となつて居る所の金融金庫の職員組合、又受ける方の立場の勞働組合、さう云ふ實際働いて居る人、此の結び付きを此の金庫に於て——今まではさう云ふ形式ではありませぬが、之を機會としまして新しい、本當の下から盛上つた、基盤を持つた、而もそれが空想でない、或は決して「イデオロギー」とか「イズム」からでなくて、其のことが又一番事業を興し、或は復興すべきものを復興させる、金融機關としても必ずしも損するのが目的ではないと思ひますからして、さう云ふ意味から云ひまして、さう云つた所の新しい基礎に立つた有機的な組合せ、構成と云ふものを御考へになる意思があるかどうか、又御考へがなくても、是が宜いと云ふことになれば、さう云ふことに對する特別の御研究なり、御調査なりを要望したいと思ふのでありますが、御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=14
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015・福田赳夫
○福田政府委員 職員組合と云ふものが事業の運營に對して如何なる地位に立つか、斯樣な問題は一般に關聯する問題でありまして、それは獨り復興金融金庫だけの問題ぢやないと思ふのであります、只今申上げました通り、何と致しましても職員の盛り上る總意と云ふものがなければ、企業體と云ふものは巧くやつて行ける筈はないのであります、職員と云ふものと、幹部と申しますか、理事機關と云ふものとが分離して居る状況では、是は何としても圓滑なる運營が出來るとは云へませぬ、そこで私共と致しましては、本當に職員全體が打つて一丸となつて、又職員、理事機關と云ふものが本當に解け合つて行くと行ふ御説に對しましては、是はもう全く同感であります、併しながら建前上の運營の責任者と云ふものは、一般企業に於きましては企業者自體にあるのぢやないか、只今の政府の見解と致しましては、左樣に考へて居るのだらうと思ふのでありますが、實際上の運營に於きまして、職員組合、即ち職員各自の意見を能く咀嚼し、咀嚼するばかりでなく、其の實際に於きましては一體となつてやつて行くと云ふ態勢は、是は最も今後氣を付けて行かなければならぬ問題ぢやないかと思ひます、其の仕組を變へまして、建前に於きましても、職員組合と云ふものが經營自體に當るかどうかと云ふことに付きましては、是は非常な議論のある所でありまして、私此處で御囘答申上げると云ふ譯には行きませぬ、只今の政府の見解と致しましては責任——理窟の上の責任はどうしても企業者自體にあるのでありまして、左樣な建前を變へると云ふことに付きましては、私此處で御答辯する譯には參りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=15
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016・島田晋作
○島田委員 一寸元へ戻りますが、復興金融委員が地方にある、地方に於きまする産業は大體中小企業が多いのでありますが、斯う云ふ場合に具體的に融資を決定する場合に於きまして、何か特別な措置を講じますか、或は單に甲なら甲の地方に於きまする支店とか出張所の責任者が、責任を持つて或る一定の額だけは融資するか、或はそこに參與と云ふか何と云ふか、諮問機關を置いて一應諮るか、さう云つたやうな地方に於きまする復興金融金庫の運營に付きまして聽きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=16
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017・福田赳夫
○福田政府委員 地方に於きましては、只今の所では各府縣に三つ位の店舖を置きまして、是が復興金融金庫の代理店になる、斯樣なことを考へて居ります、代理店に於きましては、小額なものは即決と云ふか、代理店自身で決定し得るやうな仕組を考へて居ります、それから尚ほ多額のものに付きましては日本銀行と相談をして、相談が出來ますればそこで融資を致す、斯樣に考へて居ります、日本銀行が相談に與かる場合に於きましては、場合に依つたならば地方の大藏當局、商工當局に諮る仕組を作りますか、現在はさう云ふ仕組を作つて居るのでありますが、是が非常に煩雜なものになるやうでありますれば、それを復興金融金庫が出來た際に「オミット」しようか、斯樣なことも考へて居るのでありますが、場合に依りましては、現在の仕組であります所の大藏當局、商工當局等の參加を得まする所の協議機關に諮ると云ふことも考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=17
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018・島田晋作
○島田委員 政府委員に對しまする質問は大體是で打切りまして、後で又大臣に質問した後で御質問することに致します
丁度政務次官が見えて居りますから、政務次官に一つ御聽きしたいのであります、前週の委員會に於きまして、上塚さんは、軍需補償打切りの意味は、總ての擬制資本を整理するのだと云ふ非常に力強い言明がありまして、私共大贊成であります、所で私共考へますのに、此の擬制資本の整理と云ふことは結局公債の棒引に行かなければ、少くとも軍事公債の棒引まで行かなければ徹底しない、是は私共は上塚さん自身の御考への中にもあるのぢやないかと思ひます、而も是は——私は議論するのではありませぬが、是は時期の問題でありまして、默つて置けば自發的か或は他發的に——他發的にと云ふことはありませぬが、關係筋からの慫慂でさうなることは分り切つた問題であらうと私は思つて居ります、大藏大臣の御答辯は、公債を棒引にするならば預金大衆が困ると云ふ一點張りの御答辯で逃げて居りますけれども、是は預金大衆と云ふものは既に非常な迷惑を蒙つて居るのであります、又政府が保障しまして、或る一定の額の預金が保障されて居る、だから預金者を保護する上に於ては、公債を棒引にした所で決して何も不安はない、假に又不安があるとしましても、今の儘で行けば假に預金が全部保障されても、「インフレーション」が昂進すれば自然に金の値打がなくなるのでありますから、十萬圓の預金があつても一萬圓の値打になる、寧ろ經濟が本當に整理されまして、安定しますれば、今の十圓が昔の百圓になるかも知れませぬ、さう云ふ譯で金の値打から申しますれば、必ずしも現實的の貨幤の數量其の儘で以て、或は貨幣の表面だけで、預金大衆に迷惑を掛けるとか掛けぬとか云ふ議論は成立たぬと思ひます、又同時に或る一定の額は政府で保障出來る、だから——大臣のおいでにならぬ所で議論しても始まりませぬが、私は上塚さんの良心的御答辯を願ひたいのは、折角軍需補償の打切りの意味は、擬制資本を總て整理するのだと云ふ正しい方向を思はれて居る所の次官であるから、隨て本當の擬制資本である所の軍事公債の棒引は絶對必要である、勿論時期の問題はありませう、私共は即時斷行しろと云ふ意見でありますが、それは別としまして、次官の僞らない良心的な御考へを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=18
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019・上塚司
○上塚政府委員 公債の問題に付きましては、既に現内閣としては、今囘の整理に當つては一切手を附けないと云ふ方針を決定して、今其の方向に進みつつあるのでありますが、それを飽くまで遂行することに一意努めるやうに致したいと考へて居ります、種々の議論もありませうけれども、我々は今驀らにそれに向つて進んで居るのでありまして、是以上議論に亙ることは申兼ねる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=19
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020・島田晋作
○島田委員 私もそれ以上追及致しませぬが、併しながら是はどうしてもさうなるのでありまして、一意驀らに公債を擁護すると云ふ決意も結構でありませうけれども、是はどうしても時期の問題であります、是は私は斷言して憚らぬと思ふのであります、丁度日本の立場は、身體に譬えますると、今一遍に二つの手術をして身體を丈夫にするか、一つの手術をして、もう少し時期を見てからもう一つの手術をするか、斯う云ふことであつて、それを兩方一緒にやると身體がへたばつてしまふと云ふのが、政府或は其の「バック」の勢力の見解ではないかと思ひます、それは結局外の色々な意味から來たものは別としまして、善意に解釋すれば日本の經濟の實體が弱いのだ、軍需補償の打切りと同時に公債を棒引きにすれば、元も子もなくなつて、經濟はへたばつてしまふのだと云ふ御見解に立つた御議論だと思ふのでありますけれども、私共は寧ろ逆に言へば、日本の經濟はやり方に依つてはさう弱いものではない、であるからして、どうせやるべき手術であるならば、此の際一擧に二つの手術をした方が良いのではないか、良いのではないかと云ふことは單なる抽象論ではなくて、凡ゆる角度から見てそれは實行可能性があると云ふ見解なんです、是は見解の相違で、議論した所で政府の方ではやらぬ、やらぬ方へ驀らに努力すると云ふことでは、こちらの方でやれと言つてもやる譯はないのだから止めますが、是は唯時期の問題で、時期は必ず來ると云ふ見透しを私は持つて居る、けれども政府は驀らに公債を棒引きしないと云ふ方へ努力を續けて行つて、それが成功するのであるかどうか、成功しないと分つて居つてやるのか、一時塞ぎに延ばす爲に延ばすのか、其の見透しを一つ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=20
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021・上塚司
○上塚政府委員 公債問題に付きましては、議論をすれば幾らでも出て參りますけれども、先程申しましたやうに、既に政府としては決定した方針があるのでありますから、今其の方針に從つて進みつつあるのであります、議論に付ては是以上茲に申述べない方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=21
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022・島田晋作
○島田委員 丁度大臣も見えましたから、大臣に御伺ひしたいと思ひますが、今度の此の復興金融金庫法案、それから其の前の二つの法案、それから其の前の金融緊急措置令、あの改正、さう云ふ風にぼつぼつ出て來ると、私共と致しましては實に審議致しますのに不便を感ずるのであります、是は何も別に政府が意識的にぼつぼつ法案を出して、我々の審議を不便ならしめる爲の作戰ではないと思ひますけれども、色々關係筋との關係があることは想像出來ますが、非常に私共は不便であり、迷惑であります、例へば此の法案一つを審議するのにも、此の法案だけの審議では意味をなさぬのでありまして、是は本會議でも私は申しましたが、凡ゆる財界整理の全體の一環に過ぎないのであります、さうすると外の法案の關係と云ふものも、新聞其の他に依つて知識を得ますけれども、それは「オフィシァル」なものではないのであります、其の點に付きましてどうして遲れて居るのか、どの點が今引懸つて遲れて居るのか、是はやはり國民の前に、政府として眞相をはつきりした方が宜いぢやないか、私共自身も呑み込めない點がありますので、此の點先づ大臣の御答辯を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=22
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023・石橋湛山
○石橋國務大臣 何處で遲れて居ると云ふことは、技術的の問題で一寸決まらない點が二、三あつて、其の爲に全體が少し遲れて居るのであります、是は何で遲れて居ると云ふことは申さない方が宜からうと思ひます
それから確に色々の法案の提出が、政府としても豫定のやうに進捗して居ないことは甚だ遺憾でありまして、御審議に際して御迷惑を掛けて居ることは恐縮至極であります、唯此の復興金融金庫は、實は此の間私の説明の中にもさう云ふことを一寸盛込んで置いたかと思ひますけれども、今度の所謂補償整理問題と必ずしも關聯がないのです、是は補償問題をどう處理すると云ふことに拘らず、實は前から復興金融金庫だけは計畫して居つたのです、詰り何れにしても過渡的な經濟界の處理には、普通機關だけでは不足だらう、隨て斯樣な「リコンストラクション・ファイナンス」の機關がある、是は第一次世界戰後に「アメリカ」あたりでも作つた機關でありますが、さう云ふ考へ方で、早く計畫して居つた譯であります、其の後補償整理の問題が、今考へられて居るが如き形で處理されることになりましたから、無論關係ないことはないですが、さう云ふ譯でありまして、政府としましては、復興金融金庫法案は他の法案と切離して御審議を願ひましても、さうして差支ないであらう、斯う云ふ考へで出した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=23
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024・島田晋作
○島田委員 それから是は根本問題でありますが、今度の議會の本會議或は豫算總會其の他の委員會を通じまして、石橋大藏大臣の「インフレ」の見透しであります、「インフレ」が色々論ぜられて居りますが、どうも私には石橋さんの御考への根本が、今の經濟をどう云ふ風に御覽になつて居るか、此の理論——と云ふのは理論鬪爭と云ふ意味でなく、將來——と云つても遠い將來ではなく、來年なら來年春頃までの見透しが確つかり出來て居ないと、復興金融金庫法案にしろ、或は財界整理案にしろ成立たぬのぢやないかと思ひます、是は豫想でありますから、必ず豫想通り行く譯ぢやないと思ひますけれども、今の段階に於て大臣はどう御覽になつて居るか、是は蒸し返しのやうになりますけれども、此の際一つはつきりして戴きたい、大藏大臣は今の財界、經濟界の在り方に付てどう考へるか、是は「インフレ」でないと大臣として仰しやつても居らぬし、非常な「インフレ」になるとも申して居りますまいが、もう少し其の點をはつきり御伺ひしないと、議會の論議を通じましても、私は大臣の眞意がどうもはつきり呑み込めないのであります、總ての審議に當りまして、どう云ふ御考へで、どう御覽になつて居るかはつきりしませぬと、それに對する私共の批判と云ひますか、我々の審議と云ふものも、結局呑み込めない形で、唯法案を預けられて審議すると云ふ結果になりますので、此の點を一つ明瞭にして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=24
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025・石橋湛山
○石橋國務大臣 其の點に付ては、私は相當今まではつきり説明して居つた積りでありますが、どうも一つのものの考へ方と云ふものは、或る角度から見始めると、どうしても其の角度を離れ得ないものでありますから、島田君の方でも、私の考へを多少色眼鏡を掛けて見て居ると云ふ風にも思ふのです、私は斯う云ふ風に考へて居るのです、率直に少しの飾りもなく——是は早くから豫想して居つたのですが、戰時中に「インフレ」はあつた、併し是は色々の統制で抑へられて居りましたから、物價の上に現はれて居らない、餘り現はれなかつた、それから通貨の上にも、是は預金通貨の形に於て非常に膨脹して居つたが、所謂日本銀行の紙幣の發行の形では餘り膨脹をしなかつた、所が昨年の八月の終戰後、此の統制が非常に弘みまして、そこへおまけにああ云ふ敗戰であり、又それに伴つて實は八月、九月、十月頃大部新しく政府の歳出が殖えました、それ等の原因で作年の八、九月以後が日本銀行の紙幣が非常に膨脹した、其の膨脹も、併しながら、本年の二、三月頃までの状況を見ますと、御承知のやうに六百億圓を超えるやうに、本年の二月十八日頃には六百幾らと云ふ風に非常な膨脹をしましたが、其の膨脹の殆ど全部と云つて宜いものは、政府の新しい財政支出から起つたものぢやなく、終戰後經營困難に陷つた諸會社が、銀行から金を借りて經費を支辨して居る、それからもう一つは、多くの人達が色々の關係から戰時中の預金を引出して使つて居る、此の二つで以て非常に日本銀行の紙幣が膨脹した譯であります、それと同時に御承知の通りに物價は上りました、所で其の物價は今年の大體二月頃で以て一應天井を打つた、と云ふのは、公定價格は三月以後、例の五百圓の枠と云ふやうなことから、あれから公定價格を上げましたが、日本銀行の普通の卸賣物價指數で見ますと、三、四、五、六と云ふやうに、却て三月以後非常に急騰して居ります、併しながら同じく日本銀行で、是は餘り發表せられて居ないのですが、作つて居る、昨年の九月を基準にした所謂闇價格で作つた指數でありますが、是は其の後日本銀行でもやり、大藏省でもやり、或は其の外でもやつて居るのでありますが、新橋とか、新宿とか云ふやうな露店の値段の調査、それ等を見ますと、今數字を持つて居りませぬが、慥か二月半ばが一番高く、さうして其の後は多少の波瀾がありますが、大體落著いて居るのであります、餘り上つて居りませぬ、然るに紙幣の方はどうかと云ふと、二月のあの紙幣交換前に六百億圓を超え、それから三月の十何日でありましたか、紙幣交換後一時百五、六十億圓臺に減つた、其の紙幣の減少と云ふものは物價の上に殆ど現はれて居ない、此の卸賣物價指數は云ふまでもありませぬが、露店價格を見ましても、闇價格を見ましても、詰り六百億圓に膨れた時の價格が、幾らかやはり影響がありますけれども、ほんの微弱な影響で、通貨と一緒に動いて居ないのです、それから今度は三月の中頃から、又百五十何億圓臺から膨れて、最近は又六百億圓近くに來たのですが、それが物價に影響あるかと云ふと、今の露店物價とか、或は闇物價とか云ふ上から見る限りは殆ど影響がない、殊に八月になりまして、此の天候の關係とか、或は主食物の増配があると云ふやうな噂から、却て幾らか値段が下つた、是等の状況から見て、現在の日本銀行の紙幣が、三月の半ばの百五十何億圓臺から更に六百億圓臺に膨れ、或は今後千億圓臺になり、千五百億圓におるか分りませぬが、少くとも今までの所は、紙幣の膨脹と云ふものの大部分は、外へそれだけ出て、さうしてそれがぐるぐる流通速度が強くて、物價を上げて居るものではない、即ち其の少からざる部分が退藏されて居ると云ふことを示すと思ふ、ですから、今日の状態から申せば、無論非常な變態的な經濟界でありまするけれども、一應物價は落著いて居る、隨て其の意味に於て「インフレーション」は一應止とつて居る、唯通貨の膨脹は五百億圓になつた、六百億圓になつたと非常に世間の目に付きますが、是は大部分退藏されて居る、隨てそれを言換へれば、通貨其のものに對する信用はまだある、それぢやなぜ退藏されて居る、通貨が銀行、金融機關へ戻つて來ないかと云へば、それは金融機關に預貯金をすれば、又封鎖があるとかなんとか云ふ色々な噂があり、事實政府も此の間第一封鎖、第二封鎖と云ふことをやつたのですから、さう云ふ懸念から金融機關には持つて來ない、皆懷に入れて居るか、或は澤山貯めて居る人は、行李へ入れて中々其の保護に苦心をして居ると云ふやうな噂も聞きますが、さう云ふ風になつて居る、ですから、今後財政が非常な惡質な膨脹をして、其の方面から止めどなしに通貨が發行されると云ふことになれば別問題でありまして、是はどうした所が、さう云ふことになれば「インフレーション」は殆んど止まりませぬ、後で是は申しますが、其の方の心配は假に何とかなる、斯う云ふことであるならば、私は現在の「インフレ」と云ふものは恐れるに足らないものだ、今やつて居る整理が一應濟んで、金融機關に對する信用が囘復する、或は皆さんの言葉で言へば、結局政府に對する信用が囘復すると云ふことになる譯でありますが、政府に對する信用、詰り全體の政治の安定が見透しが付くと云ふことになれば、私は此の問題は處理が出來ると確信して居ります、そこで一番惱みは財政なんです、是は私何も大藏省へ來てからさう云ふことを申すのではなく、以前から、若し今後日本に「インフレ」が起るなら財政だと云ふことを屡屡申して居りますが、或は島田君御覽下さつたことと思ひます、それぢや日本の財政はどうして膨脹するか、是はどんな大藏大臣でも、年々歳々赤字を作る財政を議會へ提出することは出來ない、日本自體の状況からは非常に苦しいことにはなりませうけれども、「インフレ」財政にはならぬ、斯う思ふ、問題は戰時中と同じやうに或る至上命令があつて、日本政府の意思に拘らず、財政の膨脹を來す、さうして其の方から「インフレ」が生ずる、是はあり得ることと思ふけれども、それは戰爭中で、戰爭やるんだから「インフレ」も何もあるかと云ふのとは又事情が違ひまして、屡屡申上げるやうに、聯合國も日本に財政上から「インフレ」を起すことは決して希望して居らないし、そんな馬鹿なことはされないと云ふことは明かだと思ふ、ですから、日本政府自身が、本當に眞面目に財政の整理をして、日本側で以て出來るだけの整理をやり、又歳入の増加に付ても、日本の國民の耐え得る限りの歳入の増加をやる、それだけの誠意を盡して、それで尚ほ赤字が出ると云ふことなら、是は無論日本政府だけでやる譯に行きませぬけれども、處理が付くと信ずるのであります、今年度の豫算は、御承知のやうに改定豫算だけでも相當の歳入不足、それに今後二つ程の追加豫算が現はれる譯であります、其の中には尤も農地調整法のものとか、或は今度の復興金庫の出資金と云ふやうなものも入るのでありますが、兎に角相當の不足を生ずる、それを大部分財産税の收入で賄ふ、斯う云ふことになつて居る譯であります、それで是は私自身率直に認めた如く、本年度の豫算が決して理想的な、健全なものとは言ひませぬ、併し是は財産税の收入で支辨するのと、頭から赤字で支辨するのとは非常に違ふと思ひます、私は此の間本會議の説明の時に、財産税を之に使ふと云ふことは、赤字公債發行と違はないと云ふ點を寧ろ強調して申上げましたが、實際は違ふのであります、と云ふのは、例へば不動産などで以て財産税が入る、それを今の計畫では、大體特別會計を設けて財産税を收納しまして、さうして其の特別會計で公債を發行し得るやうにして、其の發行した公債で此の財政を支辨する、斯う云ふことになる譯であります、それが、假に此の公債が日本銀行の手持になる、隨て紙幣の増加になると致しましても、一方にやはり財産税を國民の一人として納めて居るのでありますから、それだけ國民の——所得税を取られるのとは影響が違ひますけれども、兎に角財産税を納めて居るのでありますから、其の中の或る部分は預金で納めるし、或は不動産でありましても、其の中には收益のある不動産もある譯でありますから、さう云ふものの明年度からの收益が減ると云ふ意味で、自分の財産が減つたと云ふことは國民の消費に直接間接の影響が相當強いと思ひますから、本年度の財政も、ああ云ふ風に相當普通歳入が足りなくて、それを財産税で支辨する、支辨すると云ふことが或る意味に於て赤字で支辨するのと違はないと言へますけれども、併し頭から赤字を出したのと同じかと云ふと非常に違ふ、ですから本年度の豫算の實行は、今後尚ほ此の實行に付ては十分色々の注意を致さなければなりませぬ、無暗に歳出を豫算通りに支出して宜いと云ふ譯ではない、是は物資其の他と見合つて、嚴重な査察を致しながら歳出を進めて行かうと思つて居りますけれども、さう云ふ風に注意して參れば、本年度の財政の實行も、世間で往々にして惧れるが如き「インフレ」を、本年度の財政に依つて起すとは私は信じませぬ、やはり是は「コントロール」出來ると思ひます、それから來年度からの財政のことは、先程も申上げましたやうに、是からやるのでありますから、日本側として十分な處置を行ひまして、さうしてそれで尚ほ足りない所は、例へば進駐軍とか、何とか云ふものに付ては、聯合國とも十分に一つ懇談をして見たい、斯う考へて居ります、ですから、無論此の終戰後の斯樣な場合でありますから、不明確な要素は相當あります、日本國民若しくは日本政府だけで處理し得ない部面が財政上にも相當ありますから、其の點は不安定と云へば不安定でありますが、併し是は戰時中とは違ひますから、不安定と言ひながら私は處理は必ず出來る、又處理しなければいかぬのでありますから、必ず處理出來る、斯う云ふ風に考へて居るのであります、私が此の終戰後の所謂「インフレーション」に對して、先程申しましたやうに、兎に角少くとも二、三月頃までの膨脹は財政から起つたものではない、隨て是は單なる「インフレーション」と見るよりは、寧ろ預金などが引出されるのは一種の恐慌心理であつて、物の上るのは必ずしも通貨と云ふだけでなく、やはり飢饉相場だ、斯う云ふ風な解釋をして居りましたのは、詰り何時も繰返して申すやうに、是が單なる「インフレーション」なら非常に處理は易いのであります、「インフレーション」なら「デフレ」政策をやつて通貨を引締めれば宜い、是は一時世間にはさうすれば宜いと云ふやうな議論が多かつた、政府も左樣な處置を執るやうな風にも見えました、併し私はそれは危險だ、さう云ふ處置を執るべきでない、通貨を引締めることに依つて、却て色々な惡影響があるから、さう云ふことにまで行くべきものではないと云ふことを私が強調しました爲に、そこで私が「インフレーション」の前途に對して非常に樂觀的だとか言はれますが、實は私は全く消極論者ですから樂觀的ではない、寧ろ非觀的だと思つて居ります、「インフレ」の處理だけでは片付かぬと思つて居ります、非常に複雜な面倒な條件にあると思つて居つたから申したのであります、そんな誤解などは別段此處で説く必要はありませぬが、甚だ不完全な言ひ方でありますが、大體私が今の所謂「インフレ」問題、それから前途の財政等に付て考へて居る大體は、以上申上げた通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=25
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026・島田晋作
○島田委員 只今大臣から詳細な御答辯がありましたが、私は決して色眼鏡を以て石橋大藏大臣を見て居るのではない、近眼でありますけれども、決して色眼鏡を著けて居るのではない、併し此の「インフレ」をどう見るかと云ふ問題を此の委員會で御話する必要はない、又論議する必要もないので、唯大臣の仰しやつたやうに、成程金融恐慌的な現象もありますし、及飢饉と云ひますか、非常な過小生産的な傾向もある、是が即ち日本の「インフレ」の特殊性である、金融恐慌的の現象も食付いて居るし、及過小生産的の傾向も食付いて居る、是が日本の「インフレ」の獨特の姿である、大藏大臣が、それだから普通の「インフレ」ではないと仰しやる氣持と、私共がそれだから日本の「インフレ」の特殊性があると云ふ氣持と、之は本當を言ふと同じことを言つて居るのではないかと思ふ、唯大臣は何處までも「インフレーション」と云ふものを、理想的な「インフレ」型と云ふものはありませぬけれども、一つの型を決めて置いてそこへ嵌めて居るのである、そこで是は「インフレーション」ではない、「インフレーション」は進行しないと云ふ印象を我々に與へるのであるが、事實に於て今や金融恐慌的な現象、過小生産的の現象と云ふものが、是が私は日本の「インフレ」の獨特の姿であると解釋して居る、是は解釋論でありますから、別に是れ以上申上げませぬ、又物價が隨時的な傾向にある、成程闇相場あたりは多少さう云ふ傾向はありませう、之に付ては統計がごさいましたら又後で頂戴したいと思ひますが、是は一つは大臣の仰しやつたやうな理由もありませうが、一つ民衆の生活が窮乏して、最早買へないのであります、ですから國内市場は非常に狹くなつて居り、講買力はなくなつて居る、是から來る所の闇相場の隨時的な傾向があるのではないかと思ふ、それだから寧ろ「インフレーション」は激化なして居ないと云ふ論の證據になるかも知れませぬが、日常生活を見ると、五百圓生活の枠——政府が五百圓生活の枠を外しても、實質に於てそれ以上の生活を與へないと云ふ風な社會情勢になつて參りますと、結局國内市場に於て講買力がなくなつて來る、物が買へないと云ふことになつて來る、もう一つは食糧事情でありますが、是が此の内閣には幸ひしたので、別に内閣の努力の賜ものではない、増産と云ふこと海外の色々な食糧事情、農産物の關係からなつたのでありますけれども、是が非常に今の石橋財政には幸ひしたのであります、是は大藏當局の努力の結果でもないし、又農林省の努力の結果でもない、農民が凡ゆる困苦を忍んで、肥料もないのに一生懸命働いたと云ふこともあつたでせう、それと天候と云ふ自然的條件、それが來たので、茲に一つの物價の騰昂阻止の隨時的な傾向に大きな原因になつたと思ひます、併しながら財政面に於きましても、成程仰しやるやうに、戰爭が終つたのであるから、軍事的な支出と云ふものはなくなつた、是から段々さう云つた財政支出の減つて來ることはございますけれども、本年度に於ける御考へを以て、明年度以降のことに付ては、將來のことでありますけれども、私は大藏大臣の言ふやうに樂觀は出來ないと思ふ、此の點に付て詳しく述べる意思もありませぬが、現に既に通貨が殖えて居る、大臣の仰しやるのは、通貨が殖えても、退藏されて居るのだから餘り心配ないと云ふ御話でありますが、さう云ふ點もありませうが、大臣も仰しやつたやうに、千億なり、千五百億になつた場合に於てどうなるかと云ふ不安が、國民にはまだまだ消えないのであります、是は千億の通貨膨脹になると云ふ豫想、其の豫想を眞實と思ふ所の危惧の念、又之に對して政府がどう云ふ手を打つだらうか、是は大臣が始終言明なさつて居るやうに、新圓の再封鎖とか、或は新々圓と云ふやうなことは考へて居ないと云ふことを何度も仰しやつた、仰しやつて居るが、どうも田舍へ行きましても、何處へ旅行しましても、まだまだ其の點に對する心配は絶えない、私は其の點に答へて、石橋大藏大臣が居る限りはさう云ふことはしまい、如何に政府であつても、あれだけ聲明して居て、それを裏切るやうなことは、如何なる情勢が來ても、其の時は恐らく大藏大臣は御辭めになり、別の大藏大臣でおやりになるか、内閣が迭つてやるかと云ふことでなければ、今の儘では如何に何でもやれない、さう云ふ風に私は言つて居る、先週此の委員會に於て、福田政府委員も仰しやつたやうに、國家に對してでなく、政府に對する、政治に對する信頼がないと云ふことは事實であります、洵に情ないのでありますが、斯う云ふ點に付きまして、是は何度も蒸し返した議論でありまするが、結局さう云ふ不安が何處から來るかと言へば、民衆は決して經濟評論家でもなければ、經濟學者でもないのでありますが、寧ろそれ以上に生々しい現實で、動物的本能と申しますか、彼等は能く分つて居る、是は「インフレーション」が惡性になる、再昂進する、さうして財政支出が高まつて千億になる、千五百億になると云ふやうなことを、理論に依つて教へなくとも、民衆は自分の體感と言ひますか、感覺で以て、どうも政府の言ふことは當てにならぬばかりでなく、政府の見透しは間違つて居て、別な方向に行くのぢやないかと云ふ危惧の念が取れない、寧ろ私は、是は理論ならば理論で論駁したりする方法もありませうが、本能的なことになつて居るのでありますからして、今日では一大藏大臣の聲明だけでは信じなくなつて居ります、それを信じさせると云ふことは、實際の政策の上に於て、さうでないのだ、多少の物價の高低があつても、結局は惡性の、或は外國のやうな大々的な惡性の「インフレ」にならないで、此の邊の所で落著くのだ、多小の動搖性があるが、大體此の邊の所だと云ふことを民衆に納得させなければならない、それには今のやうな政府の根本の政策では、どこまでも民衆の信頼と云ふものは期待し得ない、是はなぜかと申しますと、徹底的な整理をしないからであります、徹底的な整理をしないから、民衆は知識はありませぬ、徹底的な整理とは、何ぞや、擬制資本とは何ぞやと云ふことは民衆は知りませぬが、何となく、是は徹底的に整理されて居るのではない、そこに不安があると思ふ、政府としましては、現在の經濟界を徒らに動搖させないと云ふのは分ります、分りますが整理を根本的にやらなければならぬ、先程大臣が來る前に政府委員とやつて居つたのでありますが、二つの手術がある、比の二つの手術を一度にやる、あの「チャーン」氏が日本に來た時に、日本の産業界を見まして、日本はあれだけの大戰爭をやつて敗けた、然るに拘らずどの會社も一つも破産して居ない、是はあの人の皮肉な言葉でせうが、私想像しまするに、日本と云ふ國は餘程偉大なる經濟力を持つて居る國か、或は餘程「インチキ」な政策をやつて居る國である、あれだけの大きな博奕を打つて、所謂破産したにも拘らず、産業、企業と云ふものは一つも破産して居ない、生産は非常に減つて居りますが、會社自體としては、兎に角生きて居る、斯う云ふことはあり得べからざることで、此の整理と云ふものは、何分の一かは切つて捨てなければ日本の本當の整理は付かぬ、整理が付けば、本當の血を流すけれども、そこに新しいものが出て來る、民衆は理論は分らないけれども、今のやうなあやふやの胡麻化しの、其の日暮しの政策と云ふものは、民衆は身で感じて、そこに不安の原因があるのぢやないか、それは私は私の意見としてさう考へて居ります、大體それに付きまして、若し御答辯願へれば願ひます
國債の整理に付ては、先程次官から非常に愼重な御答辯で、公債の棒引のことを伺ひましたが、是は先週の此の委員會に於きまして、次官が、軍需補償の打切りと云ふことは擬制資本の徹底的な整理が目的だと仰しやられた、私は同感であります、私はなにも此處で議論するのではありませぬが、公債と云ふものは、特に軍需公債と云ふものは、本當は擬制資本で、全然物の裏付のないものであることは言ふまでもない、之を打切らなければ、次官の仰しやつた如く是は正當の御議論も徹底しない、そこで個人として良心的の御答辯になつたのでありますが、次官として、やはり政府の方針は公債は打切らぬ、棒引せぬと云ふ方針に驀らに邁進して居ると言つて居るから、私はそれ以上追究しませぬが、私が其の次に御聽き致しましたのは、それはさうでせうが、併しながらどうせ遲かれ早かれ來る、或は自發的にか、或は他からの慫慂に依つて、或は「サゼッション」に依つてせざるを得ない時が來る、斯う云ふ風に大體考へるかと云ふ見透しを伺ひました、それに對して次官の御答辯はありませぬでしたが、私は必ず來ると思ふ、是は好むと好まざるとに拘らず必ず來ると思ふ、來るとすれば、それに對する對策も考へて置かなければならぬ、私共は公債を棒引すると云ふことは最初から覺悟して居るので、大臣の御答辯は、それに對して一々無理はないと云ふ一點脹りでありますが、私共は決して預金大衆に迷惑が掛からぬと思ふ、政府も今日でも或る一定の限度のものは補償して居る、是は社會黨の意見を代表したものではありませぬで、私個人の意見でありますが、假に預金大衆に迷惑を掛けても仕方がないと思ふ、と云ふのは、是だけの戰爭をやつて斯う云ふことになつて、而も實態と云ふものは戰前の五分の一位の生産力しかない、それを何とか胡麻化して行かう、全部の國民が裸かになるならば預金したものは之を棒引してしまふ、國家が全部の預金を補償出來ない、だから或る場合に於ては、預金大衆に迷惑を掛けても仕方がないと思ふ、是は決して社會黨がさう云ふ意見を持つて居るとか、黨議に上つて居るのではなくて、私の個人的の意見でありますが、さう云ふ風に私は思つて居る、此の機會を遁さずに、徹底的に整理しなければ出來ない、それが理論でなく、民衆には實感として、何かまだ不安が殘るのは其の點である、流ひざらひに本當に洗はなければ駄目だ、斯う云ふ風に私は考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=26
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027・石橋湛山
○石橋國務大臣 今のは島田君の御意見ですから、別にそれに對して御答へする必要もないかと思ひます、まあ何と言ひますか、何か斯う云ふやうな風にもやもやしたものがありますと、今までの例にもあるのでありますが、何かここでさつぱりしたことをやると、それで以て經濟界が明るく轉換するのぢやないかと云ふ氣持を抱くことは、是は外國にもあるかも知れませぬが、今まで私の經驗では、日本には屡屡あることなのです、是は割合に近い例は金解禁の問題でありますが、あれ等も私は、舊平價で金解禁をしたら必ず非常なことになると云ふことは、早くから考へて居つたのでありますが、是は贊成者がなくて、到頭昭和五年——それ前にも色々な破産がありましたが、昭和二年の恐慌を起し、それから昭和五年一月、或は當時の政府はやりたくなかつたのでありますけれども、追込まれて實はやつたのでありますが、それで五年、六年と非常な恐慌を起し、それから後全再禁止となりましたが、及ばずして五・一五事件等が起きた譯であります、それは意見でありますから、色々な意見が出て宜いと思ひますが、兎に角何か思ひ切つたことをやればそれで片付くだらう、今申すやうに公債を打切る、公債を打切ると云ふことは、日本に於ては預金を打切ると云ふことであります、預金を打切つても何でもないぢやないか、元々あつてもなくても同じことぢやないか、工場とか田畑と云ふものは實際は殘つて居るのだから同じことぢやないかと言ひますが、私はさう簡單ではないと思ひます、ですから經濟界の整理と云ふものは、餘程理論的に、又實際の影響がどう云ふ風に及ぶかと云ふことを考へてやらないと、實は非常に損害を大きくする、甚だ「コンサーヴァティヴ」な考へ方ですが、私は左樣に「コンサーヴァティヴ」に考へて居ります、隨て今日誰がやられても、此處で仰しやるやうに、果して公債を吹飛ばせるか、吹飛ばしてもどの位かと云ふことも問題でせうが、今の島田君の言はれるやうに、今度確保しようとする一萬五千圓以下の預金も吹飛ばしてしまつても宜い、斯う云ふことで果して公債の處理が出來るかどうかと云ふことは、私はさう云ふ勇氣のある人があるか實は疑問に存ずるのであります、少くともそれはしてはならぬ、さう云ふことでなくて處理が出來るのだ、なぜかと云ふと、既に御話にもあるやうに、物價が相當に上つて居る、と云ふことは、今日の一千億圓の公債は假に物價が十倍に上つて居れば百億圓の公債になる、さう云ふ風にして端から事實處理されて居るのであります、ですからそれを全體に下げれば、例の平價切下げと云ふものはそれですが、全體に切下げれば、それは「ノミナル」には今の百圓のものが十圓になる、何か氣持が良いやうになるのですが、同じことなんです、唯二階に居るか下に下つたか、「レベル」が違ふだけでありまして、やはり物と通貨との關係と云ふものは、別段そこに變化がある譯ではない、のみならず、さう云ふことをやつて其の激動が——今度の補償問題だけでさへも相當な激動で、やはり生産にも影響するだらうと心配されて居る、それが更に公債を打切つて、全體の預金が吹飛んでしまふと云ふ荒療治をしたら、生産がどうなるか、是はやつて見ないと分らぬことですが、是は前の金解禁問題と同じことで、何かやればそれでさつぱりするだらうとやられる方もあるかも知れませぬが、私は今までの經驗及び理論から云つて、どうもさう云ふ荒療治はすべきでない、斯う云ふ考へで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=27
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028・島田晋作
○島田委員 一寸一言……お互ひに意見が平行するのでありますが、石橋さんの御考への根本と云ふものは、今仰しやつたやうに、既に物價が上つて居るから解決して居るのだ、要するに「インフレーシヨン」は「インフレーシヨン」に依つて解決すると云ふ御氣持がどうしてもあると思ひます、それは一日の解決になりますが、「インフレーシヨン」は「インフレーシヨン」に依つて解決して行くのだ、それで段々行けばどうなるか、其の時其の時のことは分らぬと云ふ所に石橋さんの現實論と云ふものは、非常に人を惡く言へば歸著するのではないか、そこが私はどうしても呑込めない、危なつかしい、個人としましては、私等の大先輩であります石橋さんを尊敬しますが、成程其の考へ方は、一見して非常に現實的な考へ方のやうに見えますが、國家の財政擔當者として、非常に危い橋を渡つて居るのではないかと云ふ氣持を、率直に申しますれば禁じ得ない、此の議論は今やつた所で始まらないのですが、さう云ふやうな氣持で、此の點に付きましては、もう少し國民大衆を納得せしめて、安心させるやうな所へ、一つ何とかして持つて行かれたい、唯現實的だと云ふことは結構で、今までの金解禁の時にも、石橋さんは率先して大分反對なすつて、再禁止を主脹されたことは私も能く存じて居りますけれども、成程其の時は、或る意味に於ては石橋さんの先見の明は中つた譯ですけれども、別の角度から見れば必ずしも中つて居なかつたと云ふことになるので、現實的な御考へは結構だが、それも主觀的な現實と云ふことと、客觀的な現實の流れと云ふことと色々あるので、それは議論になりませぬけれども、さう云つた「インフレーション」は「インフレーション」で既に解決して居るのだと云ふ、「イージー・ゴーイング」な行き方が非常に危險な問題を含んで居るのではないか、此の點だけ最後に述べまして、一應私の質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=28
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029・高橋泰雄
○高橋委員長 澁谷君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=29
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030・澁谷昇次
○澁谷委員 大藏大臣は只今の島田君の質問に對して、「インフレーション」は大したことはないと言はれたのですが「インフレーション」の輪廓とか範圍とか云ふものは、それぞれの見解に依つて差がございます、私は現在大藏省が御出しになつて居る通貨が、完全に國民から信用を失つて居つて、而も人心が其の爲に攪亂されて居ると云ふ事實を、新たに指摘したいと考へる譯であります、私は此處に十數枚の新聞を持つて來て居りますから、之を一々一端を讀上げて御説明したいと思ふ譯であります、九月三日の靜岡新聞に載つて居るのは「僞證紙を嫌つて金融機關が記名を要求、でま一掃へ縣から警告」是は靜岡縣であつた出來事でありますが、「數日來縣下各地で證紙を貼付した百圓紙幣の裏面に銀行や郵便局がその持參者に對し住所名の記入を要求する傾向が強く、證紙の舊圓流通を阻害してゐるが、縣でこれが原因を探つたところ、金融機關が日銀支店に納入する場合、證紙が僞造であると返却され、その捐害は銀行が負はねばならぬのでこの囘避策として預金者等に記名を要求してゐること判明、このため一般商店でも同樣の意味で自己擁護の見地から記名を要求し、甚しいのは記名無きものは流通しないとなし、この種百圓紙幣所持者に不安を與へてゐることが明瞭となつたので、縣はこの際速かにでまを一掃し紙幣流通の圓滑をはかるため二日各警察署長宛にこれが徹底取締の指令を發した、一般縣民は證紙が僞造であることを知らず良心的に受授したものをその損害を個人負擔とするは不當であり當然日銀ないし國庫の負担とすべきである、また當局は眞僞の相違點を發表し僞造紙幣流通防止策を取るべきであるとの聲を昂めてゐる、なほ縣は紙幣を汚損した場合は處罰されることもあるから一般商店は記名して取引することなどのないやう、もし疑はしい證紙の紙幣を發見した場合は信用ある銀行で確めてもらふやう要望してゐる」次に日銀靜岡支店長談として色々細かい記事が載つて居つて、冒頭に「人騒がせな百圓札のでま」斯う云ふことになつて居るのであります、更に九月五日の朝日新聞の靜岡版には、「日銀へ納める札束の中から僞物が現はれるとこれを取扱つた地方銀行の負擔となるので、最近百圓札の僞證紙續出の折柄、縣下の銀行や金融機關に負擔逃がれの手を打ち、證紙貼付の百圓札持參者に對しその裏側に氏名の記入を求め預金者へ責任を轉嫁する態度に出た、内容が判らないところから百圓札をめぐり色々なでまさへ亂れとんでゐる二日この通告を受けた國鐵熱海驛の如きは「萬一僞證紙が現れるといそがしい間に出し入れをしてゐる出札係の負擔となる譯でこんな一方的なやり方はない、あくまで強要するなら管理部へ現金を現金を直送し、取引は中止する」と憤慨、又一般預金者は「何も知らぬ自分達に僞證紙の負擔をさせるのはひどい、日銀か國庫で負擔するのが當然だらう」と攻撃、銀行側では「證紙の不正が多い、僞證紙があれば損害は全部こちらに掛るので、それでは負擔し切れないから靜岡の日銀からの話で、縣内銀行や各金融機關で記入を願つて居る」と苦しい弁解をしてゐる、日本銀行本店出納局談、日本銀行券に證紙を貼つたものを使用する場合、受入者が使用者の住所氏名を訊すのは好ましくない、早速靜岡の日銀へ其のやうなことのないやうに手配した」更にやはり靜岡縣の新聞でありますが、「證紙貼付舊圓受取を拒む、食糧營團配給所へ金谷署警告を溌す、金谷町食糧營團配給所では數日來證紙を貼つた舊圓に關し、紙幣の裏へ住所氏名をはつきり記入して來なければ受取らないと面倒な言ひ草を付けて一船消費者等の支拂を拒んだ、是が爲に同町では證紙が貼つても使用が出來ないのかと非常に悲憤、舊圓は使用出來ないのかと警察署に問合せて來る者があり、三十一日は靜岡銀行金谷支店へ朝から新圓と換へて貰ひたいと押掛けて來る始末、金谷署では此の事實を重視、人心攪亂不安に陷るものとして警告を發すると共に縣宛報告した」更に新聞には各警察署長等が全面的に是等の問題を取上げて居ることを報じて居ります、茲に十數枚を全部讀上げると云ふことは困難でありますが、斯樣なる事實を以て致しましても、今日如何に流通紙幣に對して不安が生じて居るかと云ふことは分るのであります、是は靜岡縣のみでなくて、東海道から九州地方に蔓延し、全國に蔓延しつつある現實であります、之に對して大藏省は何等の手も打つて居らぬ、更に過日、近く證紙の貼つてある舊圓は之を囘收すると銀行局長は言はれたが、斯樣なることでは現實に今日の取引に差支へるし、さうして證紙を受取つて居る所の國民大衆が、今日の米を買ふにさへ、此の證紙を貼つてある舊圓は之を受取らないと云ふやうな状態にあると云ふことは、爲政者として執るべき態度でないと私は考へるのであります、隨て是等の誤つて僞造された證紙が第三者の手に入つた場合には、それは何處の責任であるかと云ふ責任を明かにすること、斯樣なる人心不安が全國に蔓延しようとする傾向にある以上、此の際是等に對する對策をはつきりとして貰ひたい、是が私の大藏大臣に質問せんとする要點であります
更に私は、大藏省は經濟の復興をやらうと仰しやるのに對して、預金通貨を創設して、經濟の信用を囘復するやうな政策を如何なる方法で、如何にしておやりになつて居るか、斯う云ふことを承りたい譯であります、過日是も上塚政務次官に御尋ね致し、御返答がありまして、八月一日以來現在の政府のやつて居る經濟の政策を逐次遂行すれば、經濟の信用は囘復する、斯う言はれますけれども、今日荷爲替等の取極めがあつても是は資金化されないし、更に倉荷證券等に對する問題に對しても、非常に信用が薄らいで居る、隨て預金通貨の創設と云ふやうなことに對しては、やはり金融機關をして新たなる政策を講ぜしめなければ、經濟の信用が高まらない、經濟の信用を高めさへすれば、現在の「インフレ」は或る程度防止出來るし、預金通貨の創設等に依つて經濟活動と云ふものは當然行はれて來る、是等に對しても何等の御説明がなかつたのであります、此の點に付ても大藏大臣の明確なる御答辯を御伺ひしたい
更に日本の現状から考へますると、海外貿易を振興しなければならないことも當然で、既に商工省に於ては貿易廳も出來、貿易をやる輸出の會社も何會社か指名されてありまするが、それに對して大藏省としては、其の貿易に對應する所の處置を講じなければならぬだらうと思ふ、果して如何なる處置を講じて居るかと云ふことを承りたい
更に現在の日本の通貨は、客觀的な社會情勢の要求に應じて、今日の日本銀行の紙幣は輪轉機に掛けられて唯出してあるだけであつて、それの囘收の見透しとか、如何なる範圍に於て通貨を出さうと云ふやうなことに對しても、明確なる御答辯がございませぬでした、隨て今日の不安なる通貨の基礎の上に於ては、經濟の再建は出來得ないと考へまして、貿易等と睨み合せますならば、寧ろ此の際見返り貿易の品物を基礎にした貿易通貨の創設等は當然考へるべきことであつて、世界の安定した通貨へ日本の通貨を「リンク」せしめて行くと云ふ具體的な處置を執らなければ、貿易に對する態勢と云ふものは出來得ないだらうと私は考へて居りますが、大藏省に於ては、それ等の問題に付てどう御考へになつて居るか、而してさうした經濟の一聯の政策を執ることが、日本の經濟の再建をやる上にどう作用して行くかと云ふやうな點に付ての、御見解を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=30
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031・石橋湛山
○石橋國務大臣 第一の、新聞を御讀みになりました靜岡に於ける證紙の問題は、今日本銀行をして眞相を調べさせて居りますが、證紙の僞造か何かがありましてさう云ふ事件が起つた、是は元々證紙を使ふと云ふことは、前内閣の時に急に紙幣を交換しなければならぬと云ふ必要上、ああ云ふことになつたものと思ひますが、當時としてもあの方法に滿足し難き節があつたと思ひます、併し是は技術上已むを得なかつたのでありますが、最近準備も出來ましたので、ここ一兩日の内に多分發令し得ると思ひます、十月一ぱいにはあの證紙を貼つた紙幣は全部囘收する積りであります
預金通貨のことは上塚政務次官が御答へしたと云ふことでありますが、やはり今の状況では、一應今日やり掛けて居る整理は整理で遂行して、さうして金融機關の新勘定と云ふものもはつきり出來まして、それでからなければ、中々今の状況で、信用通貨を大いに盛んにしろと口で言うた所が、是は先程島田君から言はれた通り、やはり由らしむべし知らしむべからずで、中々口で言うた所がさう思ふやうにやつて呉れませぬから、金融機關の態勢を至急に整へて、御話のやうな信用の再開を圖りたいと考へて居るのが今の政府の方針であります、甚だ遲々としてもどかしい感はありますけれども、それが常道であると思ひます、又其の常道を踏んで行く積りであります
それから貿易に付きましては、無論商工省の方で貿易廳がやつて居る、之に大藏省も何かと參畫して居る譯であります、之に對して大藏省の仕事としては、例へば税關を設けるとか云ふことも一つ、其の外金融上の處置と云ふものもありますが、それは現に税關の如きは既に作りましたし、其の外の處置も必要に應じて著々やる方針を決めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=31
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032・澁谷昇次
○澁谷委員 第一問の證紙を取換へる場合に、僞造の證紙は一體何處が負擔するか、而も其の僞造證紙を善意の第三者が持つて居る場合に、其の責任は何處が御取りになるかと云ふことを、もう一遍御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=32
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033・福田赳夫
○福田政府委員 僞造の證紙に對する責任は證紙を持つて居る人の責任であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=33
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034・澁谷昇次
○澁谷委員 さうすると、當局は持つて居る人の保護をやる爲に、それ等の取締をなぜおやりにならないか、其の責任を御取りにならなくて、善良なる第三者に負擔をせしめる、斯う承知して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=34
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035・福田赳夫
○福田政府委員 僞造の證紙は當局に於て取締つて居るのでありますが、萬一それが出來まして發展致すと云ふことになると、取引の安全を非常に害すると云ふことは御説の通りであります、之を全部日本銀行に於て取換へると云ふことに致しますれば、是は僞造を奬勵したやうになりますから、左樣な建前を執つて居らないのであります、僞造がありますれば、僞造紙幣を持つて居る人が責任を負ふ、斯う云ふ建前であります、是が非常な大事態でありまして、別途政治的な考慮を要すると云ふやうな問題でありますれば、又別途の觀點から處理されると云ふことになりますけれども、法律上の建前では持つて居る人個人が責任を持つ、斯樣なことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=35
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036・澁谷昇次
○澁谷委員 只今の御答辯で、取締をして居ると仰しやいますが、取締をして居れば斯樣な證紙は出ない筈であります、取締が事實に於て行はれて居るなら、どう云ふ程度に於て行はれて居るか、其の點に付て御伺ひ致します、更に、今日までに判明した所に依ると、大體日銀の靜岡支店の勘定だけで四十六萬圓位と云ふことが言はれて居る、取締がしてあつたならば、斯樣な多額の僞造證紙が出ない筈である、取締をしてあると云ふ御答辯でありましたが、若し取締がしてあるならば、其の状況を一つ御囘答して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=36
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037・福田赳夫
○福田政府委員 取締を致しましても、僞造をしようと云ふ人がありました場合に、それが未遂で終るか既遂になるかと云ふと、凡ゆる場合に未遂の中に押へると云ふ譯には行かないのであります、是は他の犯罪行爲に付ても全く同じでありまして、僞造したと云ふ聞込みがありますれば、其の根源に立入つて取締を致す、是は當然のことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=37
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038・澁谷昇次
○澁谷委員 さう致しますると、あなたの御考へで行きますると、現在持つて居る善良なる第三者の國民は、それで泣寢入りだ、斯う云ふ譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=38
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039・福田赳夫
○福田政府委員 法律上の建前と致しましては左樣なことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=39
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040・澁谷昇次
○澁谷委員 更に私は大藏大臣に御伺ひしたいのですが、是は一寸重要な問題でありますので、大藏大臣の責任のある所見を伺ひたいのであります、それは、大藏大臣竝に自由黨の人達は、軍需補償を打切つたのでは日本の國の財界は潰れてしまつてやつて行けない、隨て、軍需補償は打切つても、或る程度しか打切る譯には行かない、軍需補償は全面的に之を打切ることは出來ない、其の下に日本の國を救ふことが出來る、斯う云ふ御主張であつたのであります、さうして軍需補償の打切りに對しては反對であつたのであります、所が、如何なる事情か分りませぬが、噂に聞く所に依れば、特殊方面からの慫慂で軍需補償を打切ることになつたと承つて居ります、其の時になぜ、自分の考へは軍需補償を全面的に打切つたのでは日本の國の經濟の再建は出來ない、自分達は軍需補償は打切らないで、斯くの如くにすることが日本の國を救ふと云ふ立場に立つて政策をやつて居るのだと云ふことを御説明なさらなかつたか、軍需補償を打切つたのでは、日本の國の經濟を再建することは出來ないと云ふ信念を自分が持つて居つたならば、其の信念を押通し、全面的な打切りを慫慂されたならば、政治的の信念の下にそれを阻止しなかつたか、私は、政治家と云ふものは其の主義主張の爲には忠實でなければならぬと考へるのであります、若しさう致しますると、先に主張したのは、信念があつて軍需補償と云ふものは全面的に之を打切ることに反對した、斯う云ふことになると思ふのでありますが、是等の點に付て、一體どう云ふ信念でおやりになつて居つたのか、先の信念と、某方面から言はれた時とは信念が違つて居つたのか、私の考へから行けば、眞に自分の主張と信念に忠實であり、國民に選擧に依つて公約された所の政策は勇敢に遂行すべきであり、若し其の政策が敗れるならば、自ら身を退くべきが私は政治家の態度だと思ふのでありますが、一體大藏大臣は如何なる御信念を以てそれ等の政策を主張し、更に之を變更したかと云ふことを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=40
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041・石橋湛山
○石橋國務大臣 私は軍需補償の問題に付ては論じたことはありますが、打切りに反對だとか、打切つたら日本の經濟が出來ないとか言つたことはありませぬ、唯、軍需補償の整理に付ては色々の方法があります、詰り棚上げ、是は一般に以前考へられて居つたのは、一應棚上げして後で此の整理を徐々にしよう、斯う云ふ方法であります、今囘の打切りと云ふのは、全面的の打切りと申すかどうか知りませぬが、課税の方法に依つて或る程度の打切りをやる、是は事柄に依りますが、詰り一つの技術的なやり方で、之を棚上げして整理するか、或は課税の形で或る程度打切つて整理するかと云ふことは、私は技術的な問題だと思ふのです、ですから、自由黨がどう云ふことを云つて居つたとか——私は自由黨に於てはそれはないと思ひますが、兎に角假にさうであつても、私はそれ程大した問題ぢやないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=41
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042・高橋泰雄
○高橋委員長 それでは本日は是で散會致します、明日午前十時より開會致します
午後零時十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009013078X00719460910&spkNum=42
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